区分 資格科目-教職関連科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
実践能力 倫理観 専門性探求
地域社会貢献 グローバル性
カリキュラム・ポリシーとの関係
豊かな人間性 広い視野 知識・技術
判断力 探求心
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
教職の社会的意義と役割について考察する。
科目の目的
教職論は、教員免許取得のための必須科目である。単に教えるという行為は日常的で誰にでも可能なことである。しかし、教職は専門職である。児童生徒から見た教師像だけを頼りにして教職を行うことは困難である。教えられる者から教える者へと教育の視座に転換を図らなければならない。そこで、本科目においては、教職についての基本的な知識を身につけるとともに、教職の社会的意義と専門性への理解を深め、関心を高めて、自らのめざす教師像を意識化することができることを本科目の目的とする。
到達目標
・我が国における今日の学校教育や教職の社会的意義について理解できる。
・教育の動向を踏まえ、今日の教員に求められる役割や資質能力について理解できる。
・教員の職務内容の全体像や教員に課せられる服務上・身分上の義務について理解できる。
・学校の担う役割が拡大・多様化する中で、学校が内外の専門家等と連携・分担して対応する必要性について理解できる。

科目の概要
これまで幼児・児童・生徒として多くの教職にある人々に出会い、教職とはどのような職業か何となく理解してきている。しかし、それは教職の一面を捉えたに過ぎない。教職を目指すならば、深く教職について知ることが重要になる。すなわち、教職を抽象的・空想的・観念的に理解するだけでなく、具体的・現実的・実践的に理解し、また、客観的な視点で教職を見るだけでなく、近い将来の自分である当事者の視点でも教職を見ることが大切である。そこで、本科目では、教職に関する関心を高めて知識理解を深めるとともに、資質・能力の向上に努めながら自己の適性について洞察し、教職に対する態度形成を図り、自分は教職課程の履修を続けるべきか、どうかを的確に判断できる力をつけることも目指す。そのため、学校教育と教職の意義、教員の役割、職務内容、研修等、教職について歴史、理念、制度、実態など多角的多面的に探究していく。
科目のキーワード
専門性、教師の役割、教師の責務、聖職者教師像、新自由主義
授業の展開方法
教育現場の経験から、教職論にかかわる具体的事例やエピソードなどを交えて内容に言及しながら進めるが、ときには、教職経験のあるゲスト・ティーチャーを招聘したり、各自が聞きたい教師へのインタビュー等を計画したりする。教師インタビューでは、各自が発表して学びを共有する。また、テキスト第9章と第10章はセクションごとに各自がまとめ、その内容を発表する機会を設ける。授業の提示では、パワーポイントを使用し、必要に応じて視聴覚教材を取り入れる。積極的な質問や意見を求めたい。
オフィス・アワー
(準備中)
科目コード BD01
学年・期 1年・後期
科目名 教職論
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択(養護教諭は必修)
学習時間 【授業】30h 【予習・復習】60h
前提とする科目 教育原理
展開科目 教職実践演習(養護教諭)
関連資格 養護教諭
担当教員名 宮田延実
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 オリエンテーション、教職とは 科目の中での位置付け 教師とは、子供たちにとって、親にとって、社会にとって、国家にとって、どのような存在なのであろうか。教職は、どのような専門性を持った職業だと言えるだろうか。思い起こせば、学校に行けばそこにいつも教師がいた。学校と言う場では、教師と関係の中で子供は生徒として振る舞うことになる。一人ひとりの教師といかに付き合うか、教師の働きにいかに応じるかを考えてきたと思われる。また教師が授業を行うだけではなく、様々なことをあなたにしてくれた。そのために、教師とはどのような仕事であるのか、何を専門とする専門家なのか、子どもの発達や学習においてどのような意味を持つ存在でありのかを改めて取り直すことはなかった。教師は、子供から見ると最も身近で働いている大人である。そのために教職と言う仕事は自明であり、教師と言う存在、教師の教職の意義は不問に付されてきた。しかし学校教育と言うまでの営みと子どもの発達を考えたとき、教師と言う存在や教師を表したらしめている専門性、教職の持つ意味への問いを避けて通ることはできない。この問いは教師として生きていくために、様々な教科内容や教育の方法、児童生徒の発達の知識や教習技法などを考えて基盤と考えていく基盤となるものである。本科目の目標は、教職についての基本的な知識を身につけるとともに、教職の社会的意義と専門性への理解を深め、関心を高めて、自らのめざす教師像を意識化することができることである。そこで、本コマは、これから教師を志す人、学校教育について考えたいと思っている人、そして教職を改めて振り返りたいと考えている人に向けての導入として位置づける。
①配付資料
②配付資料
③秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p19
コマ主題細目 ① 教師論とは ② 教職論を学ぶ意義 ③ 一人の子どもと教師の出会い
細目レベル ① 1998年7月教育職員免許法の改正が行われ、教職科目の中に「教職の意義等に関する科目」が新設された。教職論は、多くの大学で教職課程において最初に学ぶ科目となっている。そのため、教職論はこれから教職を志望する学生の入門として、教員の専門性や教職の魅力を学び、教員を目指す上での基本的認識を高める科目である。同時に、自分は教職課程の履修を続けるべきか、どうかを的確に判断できる力も身に付けたい。今日、教師が行っている仕事量は膨大であり、生徒への責任を担うだけに複雑な判断が常に求められる。ここでは、現代社会が抱えている教育的諸問題と教員の関係を考察し、教職とはどんな仕事か、その基本的な性格や社会的使命などのついての学ぶ科目であることを理解する。
② 教師を志望するが、自分はなぜ教師を志望するのか、教師に向いているのか、教師になるには大学でどんな勉強をすればよいのか、深く考えたことはあるだろうか。漠然と考えて教職に就くのでは、子どもの問題や教育の問題が起こるたびに、教師はスケープゴー卜として常に批判の的となり、教師として生きていく自信が揺らぐことになる。教師になり、教師として生きていこうとするためには、まず教職について知識を広め、理解を深め、同時に自分をよく見つめて、適性を探り、将来プランを持つために、教職論を学ぶのである。これまで多数の教職にある人々に出会い、小学校から高校までの12年間の経験を考えても、どのような職業か何となく理解してきている。しかし、それは教職の一面を捉えたに過ぎない。教職を目指すならば、できるだけ深く、具体的・現実的・実践的に理解し、近い将来の自分である当事者の視点でも教職を見詰めることが大切である。ここでは、このような理由で教職論を学ぶ意義を理解する。
③ 戦前の尋常小学校での一人の子どもと教師の出会いを描いた絵本『からすたろう』を提示する。ここには、からすたろう磯部先生によさを認められ、卒業後も彼がからすたろうという名に自信と誇りを持って生きていく姿が描かれている。この絵本を通して、受講者と教師の子どもに与える存在について考える。一人の教師が学業に限らず子どもの優れた点を見出し、その子らしい行動に意味を与えることで、周囲の人との関係が変わり、子どもが生き生きと生きていく様は、時代を越え国境を越え訴えかけるものだといえる。教師は人と人をつないだり引き裂いたり、子どもをめぐる人々のまなざしをつくりだす重要なアンカーポイントであることをまずは理解することを期待したい。
キーワード ① 教師の存在 ② 教職イメージ ③ 養護教諭 ④ からすたろう ⑤ 専門性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するだけでなく、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で扱った箇所について、テキスト『新しい時代の教職入門』の前書きも参考にして、教職とはどんな性格をもった職業であるか、自分なりの印象をまとめておくこと。それが、15回終了後にどんなイメージ変化があるか比較できるとよい。その他には、興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第2回のシラバスをよく読んでおくこと。特に、教師が専門家と考えられる理由、教師はその仕事の際限のなさから、どのような言葉で捉えられているか、テキスト『新しい時代の教職入門』の第1章を事前に読んでくること。
2 社会人としての教師と職業倫理(教師の日常世界へ) 科目の中での位置付け 本科目の目標は、教職についての基本的な知識を身につけるとともに、教職の社会的意義と専門性への理解を深め、関心を高めて、自らのめざす教師像を意識化することができることである。第一回で、「教師」ということばから思い浮かべるイメージや学校で教わった教師の姿、あるいは、テレビドラマや漫画、小説などに出てくる熱血教師の姿について意見交換する。本コマでは、自分自身が生徒の立場で見てきた教師像や教師の仕事ではなく、教師という仕事はどのような活動や要素から成り立ち、どのように組織され行われているか。教師にはどのような知識や技能が求められるのかといった、教職という職業の特徴を考える。そして、その後の教員等へのインタビューによる具体事例との出会いを通じて、各自の教職への理解と関心を高め、教職についての基本的な知識を身につける活動を通して、自らのめざす教師像を意識化する。
①秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p1~6
②秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p6~15
③秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p15~18
コマ主題細目 ① 専門職としての教職 ② 教職の性格 ③ 情動的実践
細目レベル ① 教職とは、毎年多くの生徒との出会いがあり、そこから学ぶことのできる仕事である。学校の中で3年なり6年間にわたって生徒たち の成長に立ち会っていくことができる仕事といえる。そして生徒にとっても、一人の教師との出会いが成長にとってプラスにも、時にはマイナスにもなる大きな影響力をもつ。校長の民間からの任用というごく一部の例外を除けば、学校では校長・副校長・教頭・主幹教諭・主任教諭という職階はあるが、校長も教員免許状をもち教壇に立って教師として教えていた経験をもっており、生徒を教え育てる点では同じ仕事を生涯繰り返し行っているということができる。このように教職とは、この経験の積み重ねの中で、専門家としての豊かな力量を身につけていくことのできる仕事であることについて理解する。
② 教師が引き受けるべきいずれの仕事も、どこまでやってもそれで終わりということはなく、生徒のためによりよくやろうとすると、ここまでやればよいという境界は明らかではなく非限定的である。金田先生は授業のための教材や資料を準備していたが、このような仕事はどこまでやればよいということはなく、その人の判断に任されることになる。仕事の無境 界性と教師個々の自律性が大きな特徴である。そして個々の仕事が無境界であると同時に、多様な種類の違う仕事を、同時に並行して担うという仕事内容の多元性と仕事時間の複線性をもっている。教師は教科の指導だけではなく幅広い指導活動に関与している。この多元性が仕事のやりがいにもつながれば 多忙感にもつながっていく。複線的な仕事の流れにおける「中心性・周辺性」を考えてみると、さまざまな仕事があるという多元性と同時に、その時々に中心にすべき仕事が予期せぬかたちで変化していくことになる複線性、重層性をもっている仕事であり、価値の不確実性をもたらす葛藤を感じつつ対処していくジレンマ・マネージャーであることも理解する。
③ 授業中には3分に1回は重要な意思決定を行っているといった報告もある。しかし知的というだけでは教師という職業を説明することはできない。喜び、心配、願い、思い、愛情、誇り、失望、落胆、妬み、不満など、仕事に伴ってさまざまな感情が生まれてくる。そして、このような感情が教師の仕事を支え、やりがいを生み出している、認知と感情、行動が強く一体化しているということができる。どのような仕事にも感情はかかわってくるが、人の成長•発達にかかわる教師という仕事では、この面は特に強く現れてくる。このように、教師の仕事が、多忙惑を覚えつつも生涯続けていけるものであるのは、このような感情に支えられたやりがいをもった職業であるからだともいえる。しかし一方では教職のもつ無境界性によって、自分の感情を押し殺しシャドーワーク(影の仕事)をして相手に尽くしていくことで消耗惑を覚える感情労働であるという一面もあることを理解する。
キーワード ① 知識基盤社会 ② 専門家 ③ 感情労働 ④ ジレンマ・マネージャー ⑤ シャドーワーク
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するだけでなく、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で扱った、教師が専門家と考えられている理由、そして、教師はその仕事の際限のない、無境界性、感情労働、再帰性といった言葉は押さえておくこと。予習(30分):第3回のシラバスをよく読んでおくこと。特に、授業の構成、授業のデザインという言葉の意味やその内容、また、授業デザインを支える教師の知識と思考については、授業において刻々と変化する子どもとのやりとりの中で教師ならでは仕事である。これについては、テキスト『新しい時代の教職入門』の第2章に掲載されているので、事前に読んでくること。
3 子どもの発達を支える教師の意義と役割 科目の中での位置付け 幼い頃、「学校ごっこ」をして遊んだ経験があると思われるが、たいていは授業場面で、先生役と生徒役がいて、という設定だったと推察する。授業は学校教育において中心的な活動であり、教師と生徒がともにいることで営まれていることは、私たちの社会において個別の経験を超えて広く認知されている。本コマでは、授業に関する教師の仕事を「授業のデザイン」ととらえた上で、授業のデザインにあたり教師が考えていることの具体例を見ていく。第2回で、金田先生の事例をもとに教師の日常世界について触れ、無境界性・副先生・不確実性を伴う仕事であることを理解し、感情労働の一面にも触れてきた。本コマでは、自分自身が生徒の立場で見てきた教師像や教師の仕事ではなく、教師という仕事はどのような活動や要素から成り立ち、どのように組織され行われているか。また、教師にはどのような知識や技能が求められるのかといった、教職という職業の特徴を考える。
①秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p22~27
②秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p28~41
③秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p42~45
コマ主題細目 ① 授業の構成 ② 授業のデザイン ③ 授業デザインを支える教師の知識と思考
細目レベル ① 私たちは、小学校に入学してから大学生になるまで、約1万数千時間の授業を受けている。その中で生徒の立場から教師の仕事を観察し、教職についての知識や信念を得ている。大学生と教師を対象に「教えること(授業、教師)」のイメージについて調査した秋田によれば、大学生では、授業は「伝達の場」であり「筋書き通り」に進み、教師は「伝達者」であるととらえる者が多く見られた。それに対して、現職教師では、授業は子どもと「共同作成する場」、教えることは「未知の展開」への対応で、教師は「支え手」であるととらえる者が多く見られた。教わる側と教える側の、このような授業の見方の違いはどうして起こるのか。ここでは、教師の側から見ると授業がどう見えるのか、できるだけ具体的に探ってみたい。
② さまざまな出来事が絡み合い、時間の流れの中でその様相を変えていく、まるで生きているように具える授業における教師の仕事を授業のデザインととらえる。デザインということばは、「事前の計画」という印象を受けるかもしれない。そして、「授業を行う」ことは、事前の計画(Plan)を実現する(do)ものとしてみなされていたのである。しかし、実際には単に計画をそのまま実施に移したものではありえず、実際に行ってみなければどう展開するかわからないような複雑で未知のものなのである。授業のデザインという考え方は、このような複雑性や曖昧性を授業の本質であるとする授業観に根ざしている。授業を行うという教師の仕事は、教師があらかじめ立てた計画通りに子どもを操作し動かすことではない。子ども一人ひとりの学びの道筋を大切にしながら、それらを編み上げる作業である。ここでは、「テーマを設定する」「コミュニケーションを組織する」「認識を共有する」という3つの点について考える。
③ 授業を行うには、教科や教材の内容に対する知識が必要である。しかしそれだけでは授業はできない。その教材をどのように教えたら学習者にとってわかりやすいか、つまり学習指導の方法に関する知識や、学習者のわかり方についての知識が必要になる。グロスマンは、授業内容を想定した教材内容の知識を構成するものとして次の3つを挙げている。第1に「生徒の理解に関する知識」である。これには、子どもの認知や発達の過程、子ども一人ひとりの特性、学校や学級が置かれている状況、学校文化に関する知識などが含まれる。第2に「カリキュラムについての知識」である。第3に「授業方法に関する知識」である。学習形態や指導方法、評価、授業や学級経営に関する知識などが含まれる。ここでは、教師がこれらの知識を総動員させて授業をデザインしていくことについて理解する。
キーワード ① 授業のデザイン ② 教室談話 ③ マネージメント ④ 授業方法 ⑤ 教材
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するだけでなく、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で扱った、授業の構成、授業のデザインにおいて、教師が授業において、子どもの反応や意見を瞬時に判断して進めていく過程があることを理解しておくこと。予習(30分):第4回のシラバスをよく読んでおくこと。子どもの心によりそうこと、子どもの言葉を受け取るという意味内容は、教職にとって大切な営みである。しかし、教師と子どもとの関係において教師が陥る留意事項がある。これらの学級システムに発生しがちな落とし穴である。これらについては、テキスト『新しい時代の教職入門』の第5章に掲載されているので、事前に読んでくること。
4 子どもの心に寄り添うことと教師のあり方 科目の中での位置付け 受け持ちクラスをもつ教師の1日は多忙である。とりわけ日本の場合、担任教師の肩にかかる仕事は数多くある。教科指導にとどまらず、生徒指導的関わりや教育相談、さらに中学生ともなると、進路指導も担 任教師の役割とされる。教えることと育てること。これは、教師役割の双璧ともいえる重要な機能である。昨今のように、子どもたちの心の問題が多様化し、さまざまな要求が学校現場に持ち込まれる現状では、教師に期待される任務はますます重い。本科目は、教職についての基本的な知識を身につけるとともに、教職の社会的意義と専門性への理解を深め、関心を高めて、自らのめざす教師像を意識化することができることが目標である。そのために、本コマでは、子どもの心を育むという観点から、教師としてどのように子どもの心に寄り添えばよいか教職の専門性に接近して考える。
①秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p86~88
②秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p89~95
③秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p96~99
④秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p100~106
コマ主題細目 ① 子どもの心に寄り添う ② 子どもの言葉を受け取る ③ 陥りやすい落とし穴 ④ 守りの器をつくる
細目レベル ① 子どもは、人から強制されても自分の言葉を発しない。周りが理解してくれている、そう信じたときに本当の心を表現することができるのである。Nちゃんの場合も、教師が子どもの上に「君臨」する大人の立場を捨て子どもと同じ地平に降りてきた時に初めて教師への抵抗が消え、クラスの中で守られている自分を感じることができたのではないか。教師が子どもの心に寄り添おうとするとき必要となるのは、冷たい「評価者」ではなく、「理解者」としての目である。「謝らなかった Nちゃん」ではなく「謝りたくなかったNちゃん」ととらえたM 先生は、理解者としての目でNちゃんに近づこうとしている。教師が教壇を降^子どもと同じ地平に立つことは、決してやさしいことではない。教壇の上で教師は守られている。教師としての権威を保つこともある。しかし教壇の上から見下ろすだけの教師に、子どもが心を開くことはないことを学ぶ。
② 子どもたちの心の問題がいろいろな不適応行動というかたちをとって表されることは少なくない。学校という公共の場で、ルールに反する誤った行動そのものは許されない。教師としては厳しい指導を求められることもある。ただし、その裏に心の悩みがひそんでいる 場合、「問題とされる行動」(いじめ、反抗等)だけを無くせばそれで「解決」ではないのである。子どもの問題行動について、それがどういう「意味」をもつのか、その行動を通して子どもたちが何を訴えようとしているのか、その根本を考えることが重要である。「わがままだ」とか「問題児だ」という言葉で切り捨ててしまっては、子どもは大人へのアプローチを諦めてしまう。表面的な「問題」にごまかされるのでなく、行動や症状の裏にある「意味」を理解すること、そこに子どもからのSOSを読みとるという見方が必要である。「教師にとって困った事態であるから消し去る」というのではなく、実際に困っているのは誰なのか、本当に助けが必要なのは誰なのか、 そういう視点が大切である。
これに対し、非社会的行動といわれる内向的・自罰的な傾向を示す子どもの場合、教師や学級に攻撃を向けることはありません。それよりも、教師の目には「頑張り屋」「いい子」「優等生」に映ることも多いものである。こういう子どもの場合、「あの子は勉強ができるから、しっかりしているから大丈夫」、そんな思い込みが子どもを過信し、ささやかなSOSを見落とすこともあるのである。「手がかからないいい子」が、突然、学校に行かなくなったり、非行に走ったりして周りの大人を驚かせることがある。しかし、それは決して「突然」ではなく、そこに至るまでに必ず予兆があったはずなのである。「手がかからない」のではなく、親や教師の思い込みや安心感ゆえに「手をかけてもらえなかった」という場合もある。レッテルを貼って安心したり切り捨てたりすることは簡単である。しかしこの「過信」や「手抜き」が、その後に大きな代償を 支払わねばならないことにもつながる。子どもを理解するとは、 多大なエネルギーを必要とする作業なのである。

③ 一つは、子どものことを人間として最大限に尊重することである。これは、対等な人間として真摯に子どもの言葉に耳を傾けることにも通じる。子どもから相談を受けたりすると、頼られたことが嬉しくて、その子どものことがすべてわかったかのような気になることもある。しかし、人の心をそのままに理解するのは不可能である。「教師なんだから、子どもの心はわかっている」「教師は子どもの心を理解すべきだ」と思うのは、不遜な思い上がりなのかもしれない。「人間の心はわからない。だから こそ、少しでも理解できるよう真摯に聴くことが大切なんだ」という意識に立ち戻ることが必要である。
④ 教師は、「一国一城の主」であり、その教室は、ややもすると密室化しやすいといわれる。教師のプライドや勤務評定への気遣いから、教室の中の問題を一人で抱え込んでしまうこともある。教師自身が自らを開き、自らのクラスを開くということは、決して容易なことではないのである。まずは、職場の同僚や管理職への信頼感が不可欠である。互いのミスを共有しかばい合える精神的な余裕も必要である。教師一人ひとりの自信と勇気は、学校全体の信頼関係と協力体制に支えられてはじめて身につくもの。子どもにとって、教師は器である。器に求められる役割は、子ども一人ひとりに真正面からぶつかり、理解し、受け止めていくという作業である。この器に守られてこそ、子どもはのびのびと成長することができるのである。そして、器としての教師には、子どもの言葉に真摯に耳を傾け、言葉にならない叫びにも耳を澄ます根気強さを備えるとともに子どもの心に寄り添っていく繊細さも必要であろう。しかし、教師が守りの器として機能していくためには、器もまた守られていなくてはならない。そのためにも、教師自身が自らの限界を知り、弱さをもった人間として正直にかつ真摯に子どもと向き合うことが大切である。
キーワード ① 心に寄り添う ② 受け止める ③ 教師-子ども関係 ④ 教師のメンタルヘルス ⑤ ケア
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するだけでなく、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で扱った、子どもの心によりそうこと、子どもの言葉を受け取るという意味内容は、教職にとって大切なことであるが、教師と子どもとの関係において、教師が疲弊することにもつながることを理解し、そのことを押さえておくこと。予習(30分):第5回のシラバスをよく読んでおくこと。養護教諭の経験がある講師に、子どもに寄りそうこと、養護教諭ならではの仕事について具体的に説明をしてもらうので、前回の学修箇所と重なるが、テキスト『新しい時代の教職入門』の第5章に掲載されているので、よく事前に読んでくること。
5 養護教諭として生きる 科目の中での位置付け 学校の先生といっても、ほかの先生のように職員室にいることがほとんどない養護教諭。保健室が主な仕事場になるため、一般的に「保健室の先生」と呼ばれている。学校全体の保健の管理を行うことが役割で、専門的な立場からすべての児童や生徒の保健や環境衛生を的確に把握しています。具体的な仕事内容は、生徒たちが怪我をしたり病気になったりしたときの応急処置。それ以外にも毎日の健康観察を行ったり、定期的に行われる身体測定の準備をしたりする。また、悩みが多く不安定な年ごろの生徒の心のケアをするのも養護教諭の大事な仕事のひとつ。中には、教室で授業を受けるのが難しく、保健室でほとんどの時間を過ごすという生徒もいる。そういった生徒たちの悩みを聞きながら、どんな形でサポートしてあげられるかを考えることも養護教諭の仕事になっている。本コマでは、長年、中学校に養護教諭として勤務した講師に養護教諭の仕事やそれに求められる役割について講義をしてもらい、養護教諭の仕事について具体的に考える。
①配付資料
②配付資料
③配付資料
コマ主題細目 ① 養護教諭の存在 ② 保健室への来室者へのケア ③ 養護教諭の行う健康相談活動
細目レベル ① 生徒が怪我をしたり、熱を出したりしたときには、すみやかに手当をする。近年は友達や家族との関係でストレスを抱える生徒も多く、悩みを聞いてほしいと保健室を訪れた児童生徒と面談することも少なくない。悩みが多く不安定な年ごろの生徒の心のケアをするのも養護教諭の大事な仕事のひとつ。担任の先生やクラスの友達には相談しにくいようなことも、保健室の先生になら話せるという児童生徒も少なくない。このように、養護教諭に求められる役割は年々重くなっているといえます。一方で、保健室が生徒にとって「心の居場所」になっている、養護教諭がストレスを抱える子どものカウンセラーの役割を担っていることを考えると、生徒の悩みや問題を解決に導き、彼らに明るい未来をつくるという、非常にやりがいのある仕事ともいえる。担任を持つ教師とは異なる立場で、生徒にとってかけがえの存在となっていることを理解する。
② 養護教諭は保健室での児童の心を開くために様々な活動や工夫をしている。たとえば、毎日たくさんの児童に声をかける、ちょっとした言葉かけやスキンシップにつと、和顔と愛語を心がける。かかわり方が上手くできないことで自分自身が出せない児童には、保健室の中でまず友だちと一緒に遊ばせることにより、自然に友だちと一緒に遊ぶ姿が見られるようになる。授業中にイライラして保健室にきた児童には、まず見守り、落ち着くと教室に戻していった。一時的に教室に入れず、保健室登校傾向となった児童には、自分で一日の課題を決めさせ、担任からの課題をさせながら過ごさせ、背中を押していいタイミングを見つけながら、担任と連携をとり、次の日も登校できるような手立てをする。気持ちが落ち込んでしまったときに保健室へ来室してくる児童には、絵本を勧めることが多い。休み時間が終了すると多くの子どもはすぐに教室へ復帰していく。精神的にかなりしんどくなった児童に対しては、管理職・児童生徒支援担当・担任・スクールカウンセラーと連携をとり、本人の回復力を見守りつつ支援している。実際に養護教諭経験者から聞き、理解を深める。
③ 養護教諭の行う健康相談は、児童生徒の健康に関して専門的な観点から行われる。児童生徒の心身の健康問題の変化に伴い、従来(1960年代から)から養護教諭の重要な役割となっていたが、平成9年の保健体育審議会答申においては、広く周知され、中央教育審議会答申(平成20年 1 月 以下、中教審答申という)においても、その重要性が述べられている。学校保健安全法に養護教諭を中心として学級担任等が相互に連携して行う健康相談が明確に規定されるなど、個々の心身の健康問題の解決に向けて養護教諭の役割がますます大きくなっている。養護教諭の職務については、中教審答申において、保健管理、保健教育、健康相談、保健室経営、保健組織活動の5項目に整理されている。健康相談が特出されていることは、単に個々の児童生徒の健康管理に留まらず、自己解決能力を育むなど児童生徒の健全な発育発達に大きく寄与しており、養護教諭の職務の中でも大きな位置を占めているとともに期待されている役割でもあるからである。また、養護教諭は、職務の特質から児童生徒の心身の健康問題を発見しやすい立場にあることから、いじめや児童虐待などの早期発見、早期対応に果たす役割や、健康相談や保健指導の必要性の判断、受診の必要性の判断、医療機関などの地域の関係機関等との連携におけるコーディネーターの役割が求められている。以上の養護教諭の行う健康相談活動について理解する。
キーワード ① 寄り添う ② 理解する ③ 聴く ④ 受け止める ⑤ 手当
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するだけでなく、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で扱った、養護教諭として、子どもに寄りそうこと、養護教諭ならではの仕事について聞いた具体的な内容は自分なりに整理してまとめておくこと。予習(30分):第6回のシラバスをよく読んでおくこと。教師の仕事の実際と教師としてのアイデンティティに関する箇所は、テキスト『新しい時代の教職入門』の第6章に掲載されている。生涯を教師として生きる中で、さまざまな危機に直面する。しかし、その危機を乗り越え、どのように次のステージに上っていくかについて、どの教師にも共通項があることを探しながら、事前に読んでくること。
6 教師の仕事の実際と教師としてのアイデンティティ 科目の中での位置付け 生涯を教師として生きることはいったいどのような経験なのだろうか。短期間、教師を体験することと、生涯を教師として歩むこととの間には、どのような違いがあるのか。また、教師として生きる人生にはどのような困難と喜びが待ち受けているのか。誰もが初めから一人前の教師ではありえない。教師は、専門教科や授業についての研究、子どもたちとの出会い、そして同僚、先輩の教師、 保護者等との交流等を通して、時間をかけて教師として育っていく。その間には、いくつかの危機があり、ターニング.ポイント(転機)がある。危機への直面を意味あるターニング.ポイントにつなげることができるかどうかは、教師としての成長の質を大きく左右するファクターであるといえる。本コマでは、教職生活におけるいくつかのターニング・ポイントに注目しながら、教師の人生行路を辿っていく。
①秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p108~113
②秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p114~116
③秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p117~124
④秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p125~132
コマ主題細目 ① 教育実習から新任の教師へ ② 教師としてのアイデンティテイの模索 ③ 中年期の危機 ④ ベテラン教師として
細目レベル ① 教育実習は心揺さぶられる経験である。教育実習を経験したことで、少なからぬ数の実習生が、教職への思いを強くする。「自分の職業として教職を心に決めた一番大きなきっかけ」 として「教育実習の経験」が20%近くに上ることが明らかにされている。新任期は、多くの教師たちは、「小・中・高の教師の影響」や「教育実習の経験」を通して、教職にあこがれを抱き、採用の難関をくぐり抜け、新任期というステージを迎える。しかしながら、教職に就く前に抱いていた教師と子ども関係についてのあこがれや教職イメージは、現実をくぐり抜けていないまさにイメージであるから、しばしば教育現場の中で厳しい試練に遭うことがある。これをリアリティ・ショックという。ここでは、新任期は、リアリティ・ショックという危機への対応をめぐって、教職生活のターニング・ポイントを形成している。新任期における、教師の仕事、教師の役割のとらえ方の深さが、この後の教師としての成長の可能性を大きく規定していることを理解する。
② 当初は「子どもが好き」という思いだけで教職に向かった教師たちも、4、 5年目になると、もう少し確かなものを得たいと思うようになる。そして、より大きな社会的文脈の中で自分自身の仕事の意味を確認し、教育実践を確かなものにしたいという思いが沸きあがってくる。子どもと関わることに精一杯だった新任期を過ぎてはじめて、自分はどうして教師でありうるのかというアイデンティティの問いに直面することになるのである。自分はどうして教師でありうるのかというアイデンティティの問い、存在証明の問いは、この後教職生活を通して、向き合い続けなくてはならない問いである。とりわけ、教師にとってのターニング・ポイントには、この問いが大きくクローズ・アップされる。ここでは、教師はどのようにこの問いに向き合うかまで探る。
③ 教職に就き、15年ないし20年ほど中年期の危機とは歳月が流れると、ここまでいくつかの危機と向き合うことで教師としての自己を育ててきた教師たちは、一通りの仕事を身につける。授業においても、生活指導においても、 教師として期待される水準でのふるまいができるようになる。この時点で、教師はその職業で必要とされる技能やふるまいを習得し職業的社会化を終え、一人前の教師になったといえる。ところが、近年、教師の仕事が困難になる中で、ようやく教師としての役割を身につけた時期に、新たな関門が待ち受けていることが指摘され始めた。それは中年期にさしかかる頃の難しさであるので、ここではこの関門を「中年期の危機」と名づけられた。社会の変動による子どもたちをめぐる環境の変化、加齢による子どもたちとの世代のギャップ、経験を重ねることによる教師としての役割の硬直化などによってもたらされる。しかし、ここでは、これは教職生活の試練でもあるが、子ども観、学び観を深め、もう一つ深く統合された教職アイデンティティに組み替えるという教師としての成長の契機にもなることを理解する。
④ 40代の半ばを過ぎると、ある教師たちは、学校全体を見渡す視点の校長、教頭といった管理職を経験するステージに到達する。もちろん、管理職を経験することなく子どもたちと授業を行うことに力を注ぎ、教職生活を全うする教師たちも大勢いる。いずれにしても、40代の半ばを過ぎると、学校の中では、ベテランの域に入り、他の教師たちに助言したり、若い教師たちを支えたりする役割を求められるようになる。このような制度上の地位・役割においては、40代以降の教師のライフサイクルは、多様に分岐する。ここでは教師にとってのベテラン期の難しさと課題について考えていく。
キーワード ① 教育実習 ② 初任者研修 ③ アイデンティティ ④ 危機 ⑤ ライフサイクル
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するだけでなく、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で扱った、生涯を教師として生きることについて、どの教師もさまざまな危機に直面するが、その危機を乗り越え、それを転機として次のステージに上っていくきっかけ、あるいは、成長につなげていたことを理解しておく。予習(30分):第7回のシラバスをよく読んでおくこと。教師の仕事の実際と教師としてのアイデンティティに関する箇所は、あなたがインタビューしたいと思う現職教員にも当てはまるところがあるのだろうか、さらなる、学びとなるよい話がきけるであろうか。そのために、まずは、インタビューしたいと思う現職教員を決めること。
7 現職教員等へのインタビュー・プラン 科目の中での位置付け 本科目の目標は、教職についての基本的な知識を身につけるとともに、教職の社会的意義と専門性への理解を深め、関心を高めて、自らのめざす教師像を意識化することができることである。そのために、第一回で、「教師」ということばから思い浮かべるイメージや学校で教わった教師の姿、あるいは、テレビドラマや漫画、小説などに出てくる熱血教師の姿について意見交換する。そして、第二回では、自分自身が生徒の立場で見てきた教師像や教師の仕事ではなく、教師という仕事はどのような活動や要素から成り立ち、どのように組織され行われているか。教師にはどのような知識や技能が求められるのかといった、教職という職業の特徴を考える。そして、本コマでは、いよいよ実際に教員等へのインタビューをする準備に移る。各自がインタビューしたい教師のどんなことが知りたいか、そのためにどんなことを質問するか考え、自らのめざす教師像を意識化する。
①配付資料
②配付資料
③配付資料
コマ主題細目 ① インタビュー項目の設定 ② 発表内容の焦点化 ③ キーワードを軸にする
細目レベル ① インタビューする教師は各自で決めるが、教師インタビューで何を聞くかについてグループで各自の思う質問案を出し合う。これまでのキーワード、「専門家」「他の職業との違い」「免許状主義」「専門的資格と人格的要素」「教師という仕事」「つねに忙しい」「無境界性」「複線性」「不確実性」「ジレンマ・マネージャー」「人の成長に携わる仕事」「やりがいと消耗感」「感情労働」「計画通りに進まない」「教室談話」「子どもなりの論理」「教師も守られるべき」「ベテラン教師として」「教職のアイデンティティ」「危機やターニング・ポイント」などを参考にして質問案を考える。全員の質問案が出そろったところで、全体の場に出して検討する。そして上位3件を共通の質問にするのである。その他に、各自の個性的な問いを用意する。
② 質問をして、聴き取ったことをそのまますべて報告するのではない。みんなに何を伝え、何は自分の学びのストックとしておくかを考える。一定の時間、自分の知っている先生からお話を伺って、あれも大事な話、これもいい話と思うと、どれも盛り込んで報告したくなる。ここで大事なことは、フォーカシングすることである。つまり焦点を絞って報告することである。そのためには、お話を伺って教師の仕事について自分が一番学べたこと、教職を目指すうえで大いに参考になったこと、あるいは、教師の仕事を知って一層教職への思いが強まったことなどを手掛かりにして、絞り込む。ここでは、このような教職論の目的に迫るまとめ方について理解する。
③ インタビューした先生の話には、たいていその先生ならでは「キーワード」がある。教師として大切にしてきた信条や教師として拘ってきた信念などが語りの中に出てくると考えられる。それをあなたは気づいていますか。聴き取れていますか。その「キーワード」を軸にして報告をまとめると、その先生の個性とテーマ性とを備えた報告として一層よい報告となる。また、インタビュー報告の「フェイス」に当たる情報の記載が必要。 5W1Hといわれる、記事を書く要件とほぼ同じで、日時、場所、インタビューをした相手(教師)、その教師の勤務校種、学年、校内での公務などを(分かれば)説明として入れておく。これらの箇所は、「インタビューした日時や先生の情報はレジュメの通りである」と、みんなには見てもらえば済む。その時間を報告の中身に充てる。
キーワード ① 聞き取りのポイント ② インタビュー計画 ③ 仕事として ④ 子どもを育てる ⑤ アポイント
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した資料の該当箇所を通読するだけでなく、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で考えた質問案は、あなたがインタビューしたいと思う現職教員から、学びとなるよい話がきけるであろうか。また、生涯を教師として生きているただなかの話がきけるであろうか。さらには、教職を学ぶあなたへのよきメッセージが聞けるであろうか。自分なりに修正を施すこともよい。準備をして予約した日に実行すること。予習(30分):第8回のシラバスをよく読んでおくこと。教師の勤務と学校づくりは、同僚性と教師文化に関係がある。テキスト『新しい時代の教職入門』の第7章を読んで、同僚性と教師文化という言葉とその意味について理解してくること。
8 教師の勤務と学校づくり(同僚性と教師文化) 科目の中での位置付け 実習や見学で学校を訪問すると、校風や伝統、学校雰囲気とよばれる学校の特徴があることに気がつく。また職員室で日常的に教師の間で語られる会話や職員間の様子、また校内研修や職員会議での内容や様子から、その学校の校長や教師たちが大事にしている価値や考え方にふれることができる。新任教師や勤務先を異動した教師は、新たな勤務校で同僚の仕事を見、同僚との日常の会話のやりとりを通して、その学校での仕事の仕方やその学校における暗黙のルール、そしてその背景にあるその学校の教師たちが大事にしている価値や考え方を学んでいく。転勤すると「最初の1年くらいは学校に慣れるのにかかる。自分らしさをだして仕事ができると感じるのは、半年から2、 3年たってから」とベテラン教師でも語るのには、学校規模や地域による生徒や保護者の特質の違いだけではなく、このような教師文化・学校文化の違いという側面もある。学校という組織の中で、学校全体として誰かが分担して行わなければならない業務を校務分掌によって担い支え合い、 授業や学級活動、学校行事等を通して生徒を育てる仕事を教師は行っている。本コマでは学校という組織の視点と教師の専門性との関係から、教師の仕事や教師文化について考えていく。
①秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p134~140
②秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p141~146
③秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p147~152
コマ主題細目 ① 学校での授業の探求 ② 学校における同僚性 ③ 教師文化を形成するもの
細目レベル ① ここでは、一人の中学校教師に焦点を当て、10年間の経験を3つの時期を通して考えることで、学校における同僚性と教師文化について考えていく。着任した学校では「思考過程の練り上げ」「3年間を見通したカリキ ュラム」といった言葉が教師たちの間でよく使われ、職員室でも授業について教師たちが語り合っていた。この雰囲気は、生徒指導や生活指導、部活動を中心として教師たちが連帯していた前任の学校の雰囲気とはおおいに違っていたという。多くの学校では. 学校の研究主題を毎年決め、授業を通して教育方法についての仮説を検証していく研究をし、2年か3年単位で研究設定が変更されていくスタイルがとられている。ここでは、こうした学校での授業の探究は教師同士の関係性にどのような影響を与えるか考える。
② 同僚として重要なのは、同じ職場に所属して働いているというだけではなく、教育についてのビジョン(展望)を共有することである。そして、その学校が求めるビジョンに向かって、ともに探究や構築をし、学び合って専門性を高め合っていくことである。またそこで培う専門的見識とアイデンティティや学び合うことの歴史を共有することだといえる。牧田さんの学校では、授業やカリキュラムのあり方を通して、このような関係が築かれていったことがわかる。学校目標が単なる題目にとどまらず、教師たち同士が教育のあり方を協働で探究することを通して、ビジョンが共有され明確になっていく。そしてそのビジョンに基づき、活動や語り、授業で使用される道具や教材が生まれていくのである。このような教師たちの関係性は「同僚性」(collegiality)とよばれることを認知する。
③ 専門家としての教師は相互に不可侵・無関心でいるのではなく、常に同僚から学んでいくことができること、そのためには協働で何かをつくりあげていくことが必要である。効率よく仕事をこなすという観点から見ると冗長な情報に見えても、生徒に関わるできごとやその話し合いを共有することが、学校の中に教師としての一体感をつくりだしていく。生徒の学びや育ちをとらえた語り、授業やカリキュラム、行事のデザインを通して、教師たちの間に共通する教育への見方や実践の思考様式をかたちづくっていく。また、教師の仕事は知的な仕事である一方で、よろこび、悲しみ、とまい、憤りなどのさまざまな感情を伴う「感情労働」でもある。ここでは、教師の仕事はどこまでいってもこれでよしという終わりがないため、多忙感、ストレス、消耗感に襲われることもあるが、そのストレスを低減し精神的な支えとなり、精神的健康を支えることができるのもまた、語り聞き合える同僚の力であることを理解する。
キーワード ① 校内研修 ② 同僚性 ③ 教師文化 ④ 校務分掌 ⑤ 授業研究
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するだけでなく、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で扱った、同僚性と教師文化は、学校ぐるみの協同研究や研修を通して、醸成されること、そして、教師たちの専門性を高めることにもつながっていることを理解する。また、これらが学校の独特の教師文化であることを押さえておくこと。予習(30分):第9回のシラバスをよく読んでおくこと。教師の専門性と教師の服務・規律・研修等について、テキスト『新しい時代の教職入門』の第8章を読んで、教師の教えるという専門性を再度考え直し、また、国際的に見た日本の教師養成の課程について調べてくること。
9 教職の専門性と教師の服務・規律・研修等 科目の中での位置付け 教師は専門家であるとされていますが、教職の専門性とは果たしてどのような内実を備えているのか。教職の専門性には、校種に応じて異なった側面があるのかもしれないが、どの校種であろうとも、教師とよばれ、教師ととらえられていることには変わりがない。したがって、校種の違いを超えて教職が共有している専門性があると考えられる。本コマでは、さまざまな校種を通底している教職の専門性について考えてみる。具体的には、国際的に教職の専門性はどのように把握され、そして教師がその専門性を開発するためにどのような教育がなされる必要があると認識されているのか、また専門性の開発に関して、日本の教職にはどのような特徴があるのかを検討していく。
①秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p154~156
②秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p157~162
③秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p163~170
コマ主題細目 ① 教職の専門性とは ② 教職に対する国際的認識 ③ 教師の養成、成長
細目レベル ① 本コマでは教師が果たしている機能について検討する。教師は学校や教室で、実にさまざまなことを行っている。授業とその準備はもちろんのこと、学級運営、学級通信や学年通信の作成と配布、生徒指導(生活指導)、進路指導、保護者との面談、学校行事の運営、クラブ活動の指導、校内研修、職員会議をはじめとする各種会議、各種の事務処理、地域との連携など。しかし、学校は子どもが学ぶ場であるとするならば、子どもの学びを支援し保障する行為に、学校教育制度のエージェントである教師の機能は集約される。前述の諸活動は、子どもの学びを支援し 保障する行為に、直接的にあるいは間接的につながるものである。
教師の機能が学びを支援し保障する行為、言い換えれば、教えるという行為に集約され、教えるという行為を媒介として、私たちが 教師を教師として認識するのであれば、教えるという行為を基礎づけている教職の専門性とは、一体何なのでしょうか。子どもからは見えない部分にまで踏み込んで意識化していく。

② どの国家も、教育改革が地域や学校レベルの教育的意思決定に大きな自律性を与えつつあることを指摘した上で、教育改革の過程に教師の参加を促す必要があるいう。そのための方策として、教育目標と改革の方向を明確に定める協議会、調整、対話に教師も参加することを挙げ、その協議会や調整、対話は教育計画や教育改革の実行段階だけに限定されるのではなく、計画や改革の企画、開始、追跡、評価にもかかわるのが望ましいとしている。また、授業方法や学習方法、教育活動 の組織化、成果評価システムの実施にかかわる決定を行えるように、学校に十分な自律性を与えることも方策として挙げている。教師を批判する常套句として、誰にでもできる職業と語られることがある。しかし、教職は決して単純な職業ではなく、誰もが将来の展望を見出すことができない複雑化した社会において、高い専門的見識と政治的関与、端的にいえば幅広い教養によって、子どもの教育に貴任を負うという困難な課題に挑む専門職であるととらえていることを理解する。
③ 大学院修士課程レベルにおける教師の養成教育を充実させていくことや教育実習の期間が著しく短い点が日本の養成教育の課題の一つとなっている。2008年に教育職員免許法施行規則が改正され、「教職に関する科目」に「教職実践演習」が新設されたことによって、従来よりも養成教育の内容が教育実践とのあいだに緊密な関連を有するようになった。ただし、教職に関する科目では講義形式を中心とする授業も多くその内容が教育実践や教育実習と密接に関連していない場合もあるという難点を抱えている。教育実習の期間についても教員の役割と地位に関する勧告が提起した「授業実践の位置づけを強化する」という改善策にどのように応えていくのかということが、日本の養成教育の教育内容における課題の一つであるといえる。ここでは、養成教育の課題について理解し議論できるようにする。
キーワード ① 専門性 ② 教員の地位に関する勧告 ③ TALIS ④ 現職教育 ⑤ 教育改革
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するだけでなく、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で扱った、教師の教えるということは誰にでもできることではなく、その専門性は子どもの教育に貴任を負うという困難な課題に挑む専門職としての認識であることを押さえておくこと。また、国際的に見た日本の教師養成についても理解しておくこと。予習(30分):第10回のシラバスをよく読んでおくこと。ここは、近代以前からの学校の教師の歩みについて学ぶ。まとまりごとを全員で分担してまとめ、報告する。テキスト『新しい時代の教職入門』の第9章を読んでおくこと。担当にあたっている人は、担当箇所だけでなく、全体も頭に入れてくること。
10 時代の中の教師 科目の中での位置付け 近代以前の日本にあった庶民のための教育機関は寺子屋で、教師は「師匠」、生徒は「寺子」とよばれていた。そして、近代学校の教師の誕生は、1872年の学制頒布とともに始まった。いかなる教師もみな、それぞれの時代においてさまざまな歴史性を帯びて存在している。理想の教師像も、その時々の政策や社会状況に応じて、大きく変化するのが実情である。教師のイメージも聖職者教師像から専門職教師像、労働者教師像と移り変わっていくが、外から見る教師像には根強い固定的なものもある。現代の教師は、いかなる時代性を背負って生きていると考えることができるのだろうか。そのことを考える手がかりとして、以下では主としてテキストにどのように教師と生徒との関係が描がれているかに注目をし、そこにいがなる時代性が織り込まれているのかを明らかにする。本コマは、各受講生が要約を発表して進めていく。
①秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p180~181
②秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p182~184
③秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p185~186
④秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p187~189
⑤秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p190~193
コマ主題細目 ① 近代学校成立以前の教師 ② 日本における教育の風景の転換 ③ 定型的教師像の誕生 ④ 植民地ならびにファシズム期の教師像 ⑤ 戦後の教師像
細目レベル ① 明治以前の日本にあった庶民のための教育機関は寺子屋だった。寺子屋では教師は「師匠」、生徒は「寺子」とよばれていた。師匠は寺子と向かい合うのではなく、隣の部屋から子どもの様子を見守る様子や師匠が寺子の習字を後ろから手をとって直していたようである。並んでいる寺子の机はコの字とはいえ、座る向きもばらばらで並べ方もやや乱雑である。また、男子と女子の座る位置が分かれ、男子と女子だけでなく、身分差・家格差が大きい家庭の子どもがともに同じ寺子屋に通う場合は、席を分けることも多かったようである。寺子屋では、「手習い」といわれた自習が基本で、必要に応じて一対一で師匠が寺子に教える、というものだった。従うべき教え方の様式などはなかった。
② テキストには1894年に発行された『校訂尋常小学修身書』に掲載された挿絵がある。教師が教壇の上に立ち、その後ろには黒板がある。そして生徒たちは整然と並べられた机を使い、教師と対面し、全員椅子に座っている。教師が教科書を読み上げ、生徒全員がそのテキストを目で追っている。「センセイ」(先生)「ホウイウ」(朋友)という字は、教室の中に2種類の人がいることを示している。ここではもはや家格や地位に応じて座る位置が変化するという差別的取り扱いはなく、生徒同士はみな「ホウイウ」として同等の友達間係とみなされていた。教師-生徒の近代的な関係の成立をここに読み取ることができる。なかでも当時の人たちにとって大きな変化は一人の教師が全員の生徒に同じことを教える一斉教授法である。
③ ここにみられる教師像を聖職者教師像とよぶことがある。聖職者は神の意思を大衆へと媒介する存在であるとしたならば、戦前期の教師は、天皇の意思を子どもたちに媒介して伝達することを求められていたからである。子どもたちと遊んでいる教師の姿がこの時期初めて描かれることになったのは第三次小学校令と関係している。第三次小学校令を普通学務局長として準備した沢柳政太郎は、1908年に『教師及校長論』を出版し、教育者は国民の先覚者であり、次代の国民を養成する者であるとの立場から、教師個々人が「立派な国民」かつ「忠良な臣民」として「道徳」「理想」「希望」「忠実心」などをもつベきであると説いている。1900年以降の学校教育は、天皇の忠実な「臣民」を育てるという目的(臣民教育)に国家の構成員を育てるという目的(国民教育)が新たにつけ加えられることになった。
④ 教科書の図像で確認しうるのは、国民教育の教師という要素が徐々に強化されていくありさまである。挿絵と文章を見ると、あたかも戦後の教科書を思わせるようなやさしい教師の姿がここにはある。教師は子どもの目線に立って会話をしている。この絵と文章が掲載されたのは、1923年に作成された台湾総督府 『公学校用国語読本』である。植民地での教育というと、強権的・強圧的な教育を想像しがちであるが、子どもの自主性や自発的協力を獲 得しうるような教師の愛情や慈悲深さを理想として強調する傾向も同時にあったことに注目したい。当時の台湾では初等学校すら希望者全員が入学できず、日本の内地の子弟と台湾の本島人の子弟との教育機会の差別もあった。
⑤ 戦後の新たな教員像として指摘しうるのは、労働者教師像と専門職教師像で、どちらも聖職者教師像を否定するという含意があった。1945年、GHQの後押しもあって全日本教員組合と日本教育者組合が発足する。2つの組合が合併してできあがった日本教職員組合は1952年に「教師の倫理綱領」を発表して教師を労働者として規定し階級闘争の立場を鮮明にする。これは、必ずしも恵まれ いるとはいえなかった教師の生活条件を改善することをめざすとともに、聖職者教師像を否定するという意味合いをもっていた。戦前の聖職者イメージは国家によって付与されたものではありましたが、 一人ひとりの教師もまた聖職者としてふるまい、子どもたちを死地へと追いやってしまったことへの反省を含んでいたのである。
キーワード ① 寺子屋 ② 一斉教授法 ③ 聖職者教師像 ④ 国民教育教師 ⑤ 労働者教師像
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するだけでなく、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で各自が発表した、近代以前からの学校の教師の歩みについて、特に日本の近代化と教育の関係、戦前と戦後の違いなど、自分なりに整理してまとめておくこと。予習(30分):第11回のシラバスをよく読んでおくこと。ここも教師の仕事においてジェンダーがどのように移り変わっていったかについて各自がまとめ報告をする。女性だけでなく男性も興味を持って学ぶことが必要な箇所である。テキスト『新しい時代の教職入門』の第10章を読んでおくこと。担当にあたっている人は、担当箇所だけでなく、全体も頭に入れてくること。
11 教師の仕事とジェンダー 科目の中での位置付け 日本に近代的な学校制度が成立した当初、小学校における女性教師の割合はわずか1.596に過ぎなかった。それに対して現在では、小学校教師の62.496、中学校教師の42.696を女性が占めている(平成26 年度学校基本調査)。男性職として成立した近代的な職業のうちで、学校の教師ほど女性化(feminization:女性が増加すること、伝統的に女性のものとされる役割に近づくこと)の進んだ職業はない。教師の仕事は、女性の進出を可能にする特徴をもつと同時に、女性の進出によって特徴づけられてきた。すなわち教職はジェンダー (gender:社会的性役割や身体把握など文化によってつくられた性差)を組み込んで成立してきたといえる。しかし今なお、。学年配置のジェンダー不均衡がある。男性教師は、高学年に配置される際に、しばしば荒れた学級の立て直しを依頼されている。すなわち男性教師は、学級の規律化という役割が配分されている。その背景には、女性が家庭責任を担う性別役割分業、家庭責任と両立が困難なほどの高学年担任の多忙、規律化に重点を置いた学校経営がある。本コマでは、ジェンダーの観点から教師の仕事を考察し、教師の仕事のより深い理解をめざしたい。そして、各受講生が要約を発表して進めていく。
①秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p202~207
②秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p208~218
③秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p219~226
コマ主題細目 ① 教職におけるジェンダー ② 歴史の中の女性教師 ③ 教師の仕事と母親業
細目レベル ① 女性教師が低年齢の子どもを担当する傾向にあるのは、女性は低学年向きである、あるいは高学年に向かないという固定観念が存在しているからだとされてきた。後述のように、歴史的に低学年教育が女性の仕事とされてきたのは事実である。しかし実際には、ジェンダーがより複雑に機能して学年配置を形成している。学年配 置は個々の教師の希望をきいた上で、学校の事情を考慮して校長が決定している。子育てや介護に従事する女性教師はしばしば低学年を希望する。本人が希望しなくても配慮によって配置されることもある。授業時数と行事が少ない低学年担任は、女性教師が仕事と家庭責任を両立しうる役割として機能しているのである。ここではまだ学校現場に残るジェンダー不均衡について考える。
② 1950年代から1960年代前半の女性教師は、補助的な役割を担う女性教師像からの脱却をめざしつつも、自らの女性性の発揮については肯定的にとらえていた。ところが1970年代の「女教師問題」の議論では明確に転換が起きている。この時期には、新採用の小学校教師の80%を女性が占める中で、1910年代と同様に、女性教師の増加が小学校教育の危機として喧伝される。批判の多くは、女性教師は「職業意識が薄い」というステレオタイプに基づくものであった。しかし1910年代とは異なり、1970年代の議論では、女性教師に女性的な役割を配分することは主張されなかった。展開されたのはむしろ、労働条件が整えば女性教師も男性教師と同等の十全たる教師でありえるとの論理であった。
③ 必要なケアを受けていない子どもは日本でも増加しつつある。それに対して母性を賛美し女性を再び家庭に押し込めようとすることは、無意味であり有害である。家父長制の家族、男性による女性の 支配の上に成り立っていた家庭が解体するのは必然である。しかし、女性が家庭で担ってきたケアと再生産の役割の重要性は明白である。子どもにとって、かけがえのない存在として大切にされること、信頼関係の中で安心して育つことは必要なのである。ノディングズとマーティンの構想は、単に学校にケアの関係を成立させようとしてい るだけではない。女性だけがケア役割を担ってきた歴史に対して、女性と男性の双方をケアする者へと育てようとするものとなっている。
キーワード ① 性差別 ② ジェンダー ③ 教職の女性化 ④ 母親業 ⑤ ケア
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するだけでなく、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で各自が発表した、教師の仕事においてジェンダーがどのように移り変わっていったかについて、自分なりに整理してまとめておくこと。予習(30分):第12回のシラバスをよく読んでおくこと。教育改革と教師の未来についての該当箇所は、テキスト『新しい時代の教職入門』の第11章である。改革の方向として、公立学校を民営化し国家による統制から市場のセクターによる統制へと移す新自由主義の改革と、公立学校を国家の統制から地域共同体のセクターの統制へと移す社会民主主義の改革について理解できるように読んでくること。
12 教育改革と教師の未来 科目の中での位置付け これまで公教育制度は、国民国家の統合と産業主義社会の進展を促進する目的のために中央政府による管理と統制によって維持されてきた。しかし、グローバリゼーションの進展によって国民国家と産業主義の時代は転換期を迎え、国家が官僚的に統制するシステムに代わって、地方分権化と規制緩和によって学校を地域共同体と市場統制に移譲する改革が展開されている。他方、高度知識社会と情報社会と生涯学習社会の出現は、21世紀の教師に新しい役割を求めている。環境問題の深刻化、多文化共生社会の出現、局地戦争の持続と宗教や文化の衝突、貧富の格差の拡大、民主主義と公共倫理の解体などの現象は、未来を担ラ教育に新しい課題を要請している。学校改革についても大別して2つある。一つは、公立学校を民営化し国家による統制から市場のセクターによる統制へと移す新自由主義の改革である。もう一つは、公立学校を国家の統制から地域共同体のセクターの統制へと移す社会民主主義の改革である。同じ地方分権化と規制緩和といっても、新自由主義による改革と社会民主主義による改革では、改革される学校の制度も組織も異なる。このコマでは、主要な教育改革を俯瞰することにより、未来に備える教師の生き方を考える。
①秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p228~232
②秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p233~236
③秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p237~238
コマ主題細目 ① 転換期の学校 ② 改革の推移 ③ 教師の使命
細目レベル ① 日本を含む先進諸国は、 モノの大量生産と大量消費を中心とする産業主義の社会から、知識や情報や対人サービスが市場の中心になるボスト産業主義社会へと移行している。OECD (経済協力開発機構)は、2020年には、日本のような経済的な先進国においては、これまで労働人口の大多数を占めてきた製造業の労働人口が全体の4%程度にまで激減すると予測している。このように、公教育制度の基盤であった国民国家と産業主義社会は、いずれもグローパリゼーションによって急激に再編されつつある。日本の学校制度は、明治以来、中央集権的な国家統制を特徴としてきたが、1984年の臨時教育審 議会以後の改革は、いずれも国家が中央集権的に管理し統制してきた学校を地方分権化し民営化する方向へと大きくシフトしているのが特徴である。この地方分権化と規制緩和は、改革に伴う大きな問題を派生させている。文部省(現文部科学省)を中心に国家が責任を負ってきた公教育制度は、今後、どのようなシステムによって管理され統制されるのか。公教育制度の責任は誰が担い、教育の公共性や平等性はどのようなシステムによって保障されるのか、詳細に調べていく。
② 改革の方向は大別して2つある。一つは、公立学校を民営化し国家による統制から市場のセクターによる統制へと移す新自由主義の改革である。もう一つは、公立学校を国家の統制から地域共同体のセクターの統制へと移す社会民主主義の改革である。同じ地方分権化と規制緩和といっても、教育行政の責任と権限と財源をどこに移譲するのかによって、すなわち教育の責任と権限と財源を文部科学省、都道府県教育委員会、市町村教育委員会、校長、学校、教師、親、市民がどのように担うのかによって、学校改革は多様な方向に分岐することになる。日本政府による教育改革においては、1984年に中曾根首相が組織した臨時教育審議会以降、新自由主義のイデォロギーと政策が主流を形成してきた。「小さな政府」をめざす新自由主義の政策は、選択の自由を導入して教育や医療や福祉などの公共サービスの市場競争による統制に委ね、行政や組織の責任を極小化し、個人の責任を極大化する特徴を示している。「個性化」「選択の自由」「自己責任」などの兵庫による改革がそれである。新自由主義の改革においてどのような問題が生じるか考えたい。
③ 教師の公共的使命とは、すべての子どもたちが学びの権利を実現する平等な機会を提供し、子どもたち一人ひとりが主人公として政治と経済と文化の活動に参加する基礎となる市民的教養を教育し、民主主義社会の実現と発展に貢献することである。これからの社会は、むしろ教師の公共的使命と責任をいっそう増大させるに違いない。21世紀の社会は「知識基盤社会」であり学習社会であり、教育と学びの機能が政治や経済や文化の中心となる社会である。そしてグローパリゼーションの進行は、公教育を「国民教育」から「市民性の教育」(education for citizenship)ヘシフトさせている。「市民性の教育」とは「地球市民」「日本社会の市民」「地域社会の市民」の3つの層における市民として子どもたちを育てることを意味している。この転換は、これまで「国民」のカテゴリーに閉ざされてきた教育目的を多層化し拡大することを要請している。
キーワード ① グローバリゼーション ② 学ぶ専門職 ③ 教師の公共的使命 ④ 市民性の教育 ⑤ 現職教育
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するだけでなく、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で扱った改革の方向として、公立学校を民営化し国家による統制から市場のセクターによる統制へと移す新自由主義の改革と、公立学校を国家の統制から地域共同体のセクターの統制へと移す社会民主主義の改革では、日本は前者の方向に進んでいることを押さえておくこと。予習(30分):第13回のシラバスをよく読んでおくこと。学び続ける教師については、国際比較による日本の現状を統計資料で読む。また、養護教諭免許の取得に関すること、教員採用試験に関することを扱う。テキスト『新しい時代の教職入門』の該当箇所は、p248~p276である。
13 学び続ける教師 科目の中での位置付け 本コマでは、まず、世界の国々の教育事情と対比した統計資料を通して現代の日本の教職を取り巻く状況について読み解く。とりわけ、学級規模では、日本の国公立学校での平均学級規模(2002年)は、初等教育28.7人、前期中等教育34.2人であり、OECD平均を上回っており、OECD加盟国中もっとも高い国の一つである(日本の数値が、学校基本調査と異なっているのが、これは各国間での比較において、特殊学級が除かれていることなどによる)。国公私立学校での教員1人当たり児童生徒数(2002年)は、初等教育20.3人、前期中等教育16.2人であり、OECD平均を上回っている(日本の数値が、学校基本調査と異なっているが、これは各国間の比較において、校長・教頭が除かれていることなどによる)。
このような状況のなかで日本の教員は学力向上に尽力しているといえる。また、養護教諭免許の取得に向けて学修に励むこと、難関といわれる採用試験に合格を目指して努力することについても話し合う。そして、養護教諭は、学校カウンセラーや保健師、医師などと協力し、子どものケアをしていくことが今まで以上に求められていること、そして、養護教諭の役割は学校の保健を管理することであるが、それだけではなく、生徒の相談に応じる役割もある。そのため、包容力があり、親しみが持てる人柄であることが養護教諭に求められることを理解する。

①秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』p256~261
②配付資料
③配付資料
コマ主題細目 ① 教職の今を探る ② 養護教諭免許の取得 ③ 採用試験に合格
細目レベル ① 現代の日本の教職を取り巻く状況について統計資料から読み解く。各種学校の国立公立私立の本務教員数の資料からは、設置者による教員数に違いがある状況について考察する。教育段階別平均学級規模の国際比較では、まだ先進国の中では1クラスあたりの人数は多いことが分かる。教員年齢構成の国際比較では日本は若手教員の割合が低い。普通プログラムの必須授業時間数の国際比較では、日本は、ほぼ平均的な時間数である。また、女性教員の割合の国際比較では、日本は前期中等教育において女性管理職が最も少ない。教員のライフステージと研修の資料などから、生涯を教員として生き、それぞれのライフコースに合ったものであろうか。受講者が読み解いたことをグループで読み解く。
② 他の教員と同じように、免許を持っているだけでは養護教諭として働くことはできない。養護教諭の免許を取得した後、学校の教員採用試験に合格することによって、養護教諭として働くことができる。公立学校の保健室で正規採用として勤務するためには、各都道府県の教育委員会が行なう教員採用試験に合格しなければならない。もちろん、私立学校で働く際も採用試験があります。公立学校の採用倍率は約10倍。教員採用数が多い都市部の倍率が低く、地方の倍率が高いという傾向にある。しかし、産休・育休の代替講師として募集する自治体・年度もあるので、臨時採用で養護教諭の職を経験することもできる。養護教諭の今後の見通し不登校や心の悩みを抱えた生徒が増えており、養護教諭の役割がますます重要になってきている。
③ 他の教員と同じように、免許を持っているだけでは養護教諭として働くことはできない。養護教諭の免許を取得した後、学校の教員採用試験に合格することによって、養護教諭として働くことができる。公立学校の保健室で正規採用として勤務するためには、各都道府県の教育委員会が行なう教員採用試験に合格しなければならない。もちろん、私立学校で働く際も採用試験があります。公立学校の採用倍率は約10倍。教員採用数が多い都市部の倍率が低く、地方の倍率が高いという傾向にある。しかし、産休・育休の代替講師として募集する自治体・年度もあるので、臨時採用で養護教諭の職を経験することもできる。養護教諭の今後の見通し不登校や心の悩みを抱えた生徒が増えており、養護教諭の役割がますます重要になってきている。
キーワード ① 教職の現状 ② ライフコース ③ 国際比較 ④ 教育免許 ⑤ 教育採用試験
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するだけでなく、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で扱った、国際比較による日本の現状を統計資料で読むと学力について日本の教師はよく頑張っていることを理解しておく。養護教諭免許の取得や教員採用試験の制度についてよく理解しておくこと。予習(30分):第14回のシラバスをよく読んでおくこと。教師インタビューの結果はA4プリント両面1枚以内にまとめ、質問の内容やインタビューして学んだことを分かりやすくプレゼンテーションできるように準備をしておくこと。特に、第14回で発表する人は、その時間内に終えることができるように準備をしておくこと。
14 インタビュー結果のプレゼンテーション① 科目の中での位置付け 本科目の目標は、教職についての基本的な知識を身につけるとともに、教職の社会的意義と専門性への理解を深め、関心を高めて、自らのめざす教師像を意識化することができることである。第一回で、「教師」ということばから思い浮かべるイメージや学校で教わった教師の姿、あるいは、テレビドラマや漫画、小説などに出てくる熱血教師の姿について意見交換する。第2回では、自分自身が生徒の立場で見てきた教師像や教師の仕事ではなく、教師という仕事はどのような活動や要素から成り立ち、どのように組織され行われているか。教師にはどのような知識や技能が求められるのかといった、教職という職業の特徴を考える。そして、本コマでは、教員等へのインタビューから学んだ成果を各自が発表することを通して教職への理解と関心を高め、教職についての自らのめざす教師像を意識化する。
①~③各自が作成した教師インタビューのレジュメ
コマ主題細目 ① 発表の方法とマナー ② 発表の内容 ③ インタビューの発表
細目レベル ① アナウンサーの話によると、400字詰め1枚を普通のスピードで読み上げるのに約1分。すると「持ち時間〇分」は、相当の文字量に値する。かなりの情報を盛り込める。その濃淡、わかりやすさを工夫する。ここがプレゼンの「いのち」ともいえる。「プレゼンの時間」に相当する話し言葉の量を見込んでおく。レジュメばかりを見ると、下をうつむいての報告、になって印象としても、声の通りとしてもよくない。6:4から慣れれば7:3へと変化したい。最後は「ご清聴ありがとうございました」とお礼を述べるとよい。聞き手は、できる限り質問をする。それによって、インタビューがより共有でき深まりのある発表になる。発表時間は短すぎることなく越えることなく厳守することが大切である。
② みんなに何を伝え、何は自分の学びのストックとしておくか、一定の時間、自分の知っている先生からお話を伺って、あれも大事、これもいい話と思うと、どれも盛り込んで報告したくなる。ここで大事なことは、フォーカシング、つまり焦点を絞って報告すること。そのためには、お話を伺って教師の仕事について自分が一番学べたこと、教職を目指すうえで大いに参考になったこと、あるいは、教師の仕事を知って一層教職への思いが強まったことなどを手掛かりにして、絞り込む。そして、インタビューした先生の話には、たいていその先生ならでは「キーワード」がある。それを聴き取って、その「キーワード」を軸にして報告すると一層よい報告ができる。個性とテーマ性とを備えたよい発表になる。
③ インタビューを依頼する先生への趣旨の説明は次の通りである。本学では、①養護教諭養成コースを設けており、その志望者には教職科目を選択必修として位置づけていること、②養護コースの学生たちは、看護師のための専門科目と併行して養護教諭の資格のための教職科目を履修していること。③第1学年開講の「教職論」の科目では、教職の内容や特性などを中心に講義をし、子どもの成長と発達に関わる教職の役割をともに考えること。④教職への学生のこころざしと、現場で子どもたちの人間形成への願いをもって日々、教育の仕事を実践されている先生方とを、たとえわずかな接点であっても、つなぐことを期待していること。⑤その学びが、教職をさらに具体的に知ってその自覚につながると考えること。以上の趣旨を忘れずにプレゼンテーションを行う。「教職論」の一環として、直接、先生から話を聴き、教職のリアリティを理解する大事な機会となる。
④ >
キーワード ① 発表マナー ② インタビュー ③ プレゼン ④ 現職教員 ⑤ 共有化
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで教師インタビューを発表したメンバーの発表内容を自分なりに整理し、これまで教職論で学んだ、学校文化や生涯を教師として生きる人々の共通性や特殊性を見いだすこと。また、インタビューした教師の言葉や発表者の学びから、教職という仕事を具体的・現実的・実践的に理解し、また、客観的な視点で教職を見るだけでなく、近い将来の自分である当事者の視点でまとめること。そして、各自のプレゼンテーションの方法についてコメントを出し、互いに見せ合うことによって、自分のプレゼントを振り返り、改善をするところを見付けるようにすること。予習(30分):第15回に発表するメンバーの発表内容を記したプリントを読み、質問ができるように準備をしておく。それによって、全員が深い学びをすることができるからである。
15 インタビュー結果のプレゼンテーション② 科目の中での位置付け 本科目の目標は、教職についての基本的な知識を身につけるとともに、教職の社会的意義と専門性への理解を深め、関心を高めて、自らのめざす教師像を意識化することができることである。第一回で、「教師」ということばから思い浮かべるイメージや学校で教わった教師の姿、あるいは、テレビドラマや漫画、小説などに出てくる熱血教師の姿について意見交換する。第2回では、自分自身が生徒の立場で見てきた教師像や教師の仕事ではなく、教師という仕事はどのような活動や要素から成り立ち、どのように組織され行われているか。教師にはどのような知識や技能が求められるのかといった、教職という職業の特徴を考える。そして、本コマでは、教員等へのインタビューから学んだ成果を各自が発表することを通して教職への理解と関心を高め、教職についての自らのめざす教師像を意識化する。
①~③各自が作成した教師インタビューのレジュメ
コマ主題細目 ① 発表の方法とマナー ② 発表の内容 ③ インタビューの発表
細目レベル ① アナウンサーの話によると、400字詰め1枚を普通のスピードで読み上げるのに約1分。すると「持ち時間〇分」は、相当の文字量に値する。かなりの情報を盛り込める。その濃淡、わかりやすさを工夫する。ここがプレゼンの「いのち」ともいえる。「プレゼンの時間」に相当する話し言葉の量を見込んでおく。レジュメばかりを見ると、下をうつむいての報告、になって印象としても、声の通りとしてもよくない。6:4から慣れれば7:3へと変化したい。最後は「ご清聴ありがとうございました」とお礼を述べるとよい。聞き手は、できる限り質問をする。それによって、インタビューがより共有でき深まりのある発表になる。発表時間は短すぎることなく越えることなく厳守することが大切である。
② みんなに何を伝え、何は自分の学びのストックとしておくか、一定の時間、自分の知っている先生からお話を伺って、あれも大事、これもいい話と思うと、どれも盛り込んで報告したくなる。ここで大事なことは、フォーカシング、つまり焦点を絞って報告すること。そのためには、お話を伺って教師の仕事について自分が一番学べたこと、教職を目指すうえで大いに参考になったこと、あるいは、教師の仕事を知って一層教職への思いが強まったことなどを手掛かりにして、絞り込む。そして、インタビューした先生の話には、たいていその先生ならでは「キーワード」がある。それを聴き取って、その「キーワード」を軸にして報告すると一層よい報告ができる。個性とテーマ性とを備えたよい発表になる。
③ インタビューを依頼する先生への趣旨の説明は次の通りである。本学では、①養護教諭養成コースを設けており、その志望者には教職科目を選択必修として位置づけていること、②養護コースの学生たちは、看護師のための専門科目と併行して養護教諭の資格のための教職科目を履修していること。③第1学年開講の「教職論」の科目では、教職の内容や特性などを中心に講義をし、子どもの成長と発達に関わる教職の役割をともに考えること。④教職への学生のこころざしと、現場で子どもたちの人間形成への願いをもって日々、教育の仕事を実践されている先生方とを、たとえわずかな接点であっても、つなぐことを期待していること。⑤その学びが、教職をさらに具体的に知ってその自覚につながると考えること。以上の趣旨を忘れずにプレゼンテーションを行う。「教職論」の一環として、直接、先生から話を聴き、教職のリアリティを理解する大事な機会となる。
キーワード ① 発表マナー ② インタビュー ③ プレゼン ④ 現職教員 ⑤ 共有化
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで教師インタビューを発表したメンバーの発表内容を自分なりに整理し、これまで教職論で学んだ、学校文化や生涯を教師として生きる人々の共通性や特殊性を見いだすこと。また、インタビューした教師の言葉や発表者の学びから、教職という仕事を具体的・現実的・実践的に理解し、また、客観的な視点で教職を見るだけでなく、近い将来の自分である当事者の視点でまとめること。そして、各自のプレゼンテーションの方法についてコメントを出し、互いに見せ合うことによって、自分のプレゼントを振り返り、改善をするところを見付けるようにすること。予習(30分):定期試験に向けて、第1回から第15回までを振り返るとともに、シラバスの履修判定指標に基づいて復習をすること。
履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
教職への理解★ 学ぶ側から教える側へ視点を転換する中で、専門職としての教師がかかわる次の言葉の意味を理解し、押さえておくこと。専門職、同僚性、無境界性、複線性、授業のデザイン、教室談話、授業研究、学級王国、一斉授業法、聖職者教師像、ジェンダー、性別役割分業、女教員問題、新自由主義など。 専門職、同僚性、無境界性、複線性、授業のデザイン、教室談話、授業研究、学級王国、一斉授業法、聖職者教師像、ジェンダー、性別役割分業、女教員問題、新自由主義 15 1,2,5
教師として生きること★★ 生涯を教師として生きる中で、教育実習から初任者、ベテランになるまでの歴史の中で、教師人生にかかわる次の言葉の意味を理解し、押さえておくこと。感情労働、ジレンマ・マネージャー、リアリティ・ショック、イニシエーション、アイデンティティ、キャリア・ステージ、バーンアウトなど。 感情労働、ジレンマ・マネージャー、リアリティ・ショック、イニシエーション、アイデンティティ、キャリア・ステージ、バーンアウト 15 5,6,8,13
教師の社会的役割★★★ 教員の職務内容の全体像や教員に課せられる服務上・身分上の義務教育の動向を踏まえ、教員に求められる社会的役割や資質能力について説明できるようにしておくこと。 教師の役割、資質能力、服務と身分 20 3,4,9
教育改革の方向性★★★ グローバルセーションによって公教育制度の再編がある。今日の学校教育は、近代の公教育制度を基盤として制度化されてきた。一方で、社会は産業主義社会からポスト産業主義社会へと移行している。その中で日本の教育改革の方向性と具体的な改革について押さえておくこと。 グローバリゼーション、新自由主義、社会自由主義、 20 8,10,11,12
現職教員から学ぶ★ それぞれのインタビューしたい現職教員に聞き取りを行い、その人なりの教師として大切な価値や信条に触れ、教師としての生き方を学び、また、相互の報告によってそれぞれの現職教師が大切にしている共通性にも気づくであろう。現職教師からの学びについてまとめておくこと。 現職教員、インタビュー、生き方 30 7,14,15
評価方法 期末試験(70%)インタビュー結果の報告(30%)によって評価する。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 秋田喜代美・佐藤学編著、『新しい時代の教職入門(改訂版)』、有斐閣、2052円。
参考文献 八島太郎著,『からすたろう』,偕成社,1,980円。
実験・実習・教材費