区分 専門基礎科目-人体の構造と機能
ディプロマ・ポリシーとの関係
コミュニケーション能力 アセスメント能力 判断力
創造力 実践力 自己研鑽力
カリキュラム・ポリシーとの関係

カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ

科目の目的
臨床において看護を実施する際に、様々な場面に遭遇する。その際に自らの知識により的確かつ迅速に対応するには、人体のしくみを理解していることが重要となる。加えて、日々の生活をケアするためには、日常生活行動のしくみを理解する必要がある。すなわち、日常生活を送るために、食べること、呼吸すること、排泄すること、眠ることなどの生活行動は、すべて人体が正常に機能している上で成立している。このような人体の機能について理解することは、看護実践や看護学につながっていく。
到達目標
1. 内部環境の恒常性の維持がどのような機構で成り立っているか理解する。
2. 食行動、咀嚼・嚥下、消化・吸収のしくみを理解する
3. 呼吸運動とガス交換のしくみを理解する
4. 排便機構と排尿機構のしくみを理解する
5. 話す・聞く、サーカディアンリズム、ノンレム睡眠・レム睡眠のしくみを理解する
6. 皮膚とその付属物、粘膜のしくみを理解する

科目の概要
本科目は、人体のしくみを生活行動から理解することを目標とする。具体的には、日常生活行動(食べる、呼吸する、排泄する、話す・聞く・眠る、入浴)の観点から人体の構造や機能を学修する。
内部環境の恒常性の維持がどのような機構で成り立っているかを物質の流通、神経性調節および液性調節に分けて学修する。その後、生活行動「食べる」、「息をする」、「トイレに行く」、「話す・聞く」、「眠る」、「お風呂に入る」と順に学修していく。
以上のように、本科目で学ぶ生活行動はすべてからだのはたらきの上で成り立つ。看護の主眼は、健やかな時、そうではない時にも毎日繰り返される日常生活行動を支えることである。からだのはたらきを総合的に捉えることは、看護実践や看護学を学ぶ土台となる。

科目のキーワード
恒常性、神経性調節、液性調節、生活行動、食べる、呼吸する、排泄、話す・聞く・眠る、入浴
授業の展開方法
教科書「看護形態機能学 生活行動からみるからだ」とコマ用オリジナル配布資料を使って授業を行う。臓器間の位置関係を理解するために、必要に応じて等身大の模型を用いる。模型を観察し、取り出し可能な臓器を出し入れすることにより、三次元的な立体構築がイメージできるよう促す。また、以前に人体解剖を行った経験から、心臓の弁構造、心臓壁の厚さの違い、動脈と静脈の血管壁の違いなど、実務経験談を交えながら授業を進めていく。
オフィス・アワー
(準備中)
科目コード BE10
学年・期 1年・前期
科目名 からだの仕組みと生活
単位数 1
授業形態 講義
必修・選択 必修
学習時間 【授業】15h 【予習・復習】30h
前提とする科目 人体の構造と機能を学ぶ科目の基盤となる科目であるため、他の科目の履修を前提としない
展開科目 人体の構造と機能を学ぶ科目の基盤となる科目である。看護のための形態機能と疾病、形態機能学、微生物学、生化学、栄養学、生活援助技術、フィジカルアセスメント
関連資格 看護師,保健師,養護教諭
担当教員名 西由紀・原好恵
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 内部環境の恒常性と物質の流通について 科目の中での位置付け 本コマでは、内部環境の恒常性と流通について学修する。体の内部環境の恒常性を保つためにさまざまなしくみが備わっている。体液もその一つで、体液は体重の約60%を占める。この数値が増加すると、高血圧や浮腫を引き起こしたりする。また減少すると脱水や出血を疑う。血漿pHは、体液の性質の中で最も重要であり、ホメオスタシス機構に深く関与することを理解する。
細胞にとっての環境であり細胞に必要な物質を運び、また不要となった物質 運び去るのは、細胞外液である。 細胞外液のうち細胞が直接物質交換を行うのは間質液である。間質液は血液が毛細血管を通り抜けて管外に出たものであり再び血管内に吸収され一部はリンパ管内に吸収される。
血液やリンパ液は、細胞の代謝に必要なさまざまな物質を運ぶ媒体であり、心臓を中心にして全身に張り巡らされた血管およびリンパ管は生体の物流経路である。私たちが生きていくには、この物流システムが有効にはたらき代謝に必要な材料を運び代謝産物を流通させて, 内部環境を一定範囲内に保っていなければならない。

コマ主題細目①:教科書「看護 形態機能学」第2章 p19-25
コマ主題細目②:教科書「看護 形態機能学」第2章 p25-30
コマ主題細目③:教科書「看護 形態機能学」第2章 p30-38
コマ主題細目 ① 流通の媒体である血液 ② 流通路 ③ 流通の原動力
細目レベル ① 血液中には、物質を運ぶ運搬船である赤血球や蛋白質、また体内に侵入してくる異物に対応するパトロール隊である白血球、さらに血管の損傷に対する修復部 隊である血小板やフィブリノーゲンなどが流れている。 血液は形態的には、液体成分の血漿と、細胞成分の赤血球・白血球 (顆粒球として好中球・好酸球・好塩基球、リンパ球 単球がある)・血小板からなる。赤血球、白血球、血小板は、すべて骨髄の造血幹細胞から前駆細胞を経て分化する。 血小板は巨細胞の細胞質がちぎれてできるので、核を有しない。 赤血球は骨髄の中では核があるが、 血流中に出たときは核を失っている。 白血球は多様に分化した細胞群で、細胞質に顆粒があるもの (顆粒球と呼ぶ) とないものがあり、顆粒球は細胞核の形態から分核球ともよばれている。顆粒のないものはリンパ球と単球である。血液の働きを列挙する。1.血液の恒常性維持、2.物質の運搬、3.侵入物に対する防御、4.血液凝固、である。
② 心臓を中心にして、心臓から出る血管を動脈,心臓に入る血管を静脈という。 動脈は3層からなる厚い血管壁を有し、弾力性がある。 静脈は壁が薄く、要所要所に弁があり、逆流を防いでいる。一般に動脈は深部を通り、静脈が伴行 (伴行静脈)している。 静脈は伴行静脈のほかに表在部にも通っている。動脈は分岐を繰り返し, 毛細血管を経て静脈へ移行する。動脈の血流速度は早いが、毛細血管では赤血球が通れる程度の細い管をゆっくり流れる。毛細血管は、1層の内皮からできており、ここで間質液との物質交換がなされるのである。間質液は、血管およびリンパ管に吸収され、循環している。リンパ管は血管と異なり末梢の組織から始まって静脈につながる、帰り道のみの運搬路である。リンパ管は壁が薄く、静脈と同様に弁があるほかに、ところどころにリンパ節がある。リンパ球の前駆細胞のほとんどは、骨髄からリンパ節、胸腺、脾臓に移動して分化する。リンパ節は複数の輸入リンパ管が表面から入り動静脈と輪出リンパ管が門から出入りしている。全身のリンパ管は、右リンパ本幹と胸管に集まり、それぞれ静脈角(鎖骨下静脈に総頸静脈が注ぐ部分)に合流する。つまり血液中に戻るのである。
脾臓は、左上腹部の背側よりにあり、握り拳を薄くしたくらいの器である。脾臓に血液を送る脾動脈は大動脈の枝の腹腔動脈から分かれる。脾臓の静脈血は、脾静脈から門脈を通って肝臓に流れ込む。脾臓の組織の大半は赤脾髄とよばれ、赤血球を満たした静脈洞で占められており、残りの白脾髄はリンパ組織からなる。脾臓では、老化した赤血球が破壊される。 かたくなったり、形のかわった赤血球は脾臓内の細い動脈を通り抜ける際に機械的にこわれたり、マクロファージに処理される。
白脾髄にはリンパ球が常駐し、樹状細胞やマクロファージが血液中の抗原を捕捉して提示し、リンパ球からの抗体産生を促す。さらに胎児期には、造血も行われる。 疾患の治療のために脾臓を手術により摘出することがあるが、免疫機能が低下することが知られており、とくに小児では影響が大きいので脾臓 出を避ける。

③ 血管という閉鎖されたホース内を血液がぐるぐる回るためには、どこかで圧力をかけなければならない。そのポンプの役目を心臓が担っている。心臓は心筋でできた袋で、その外側を線維性の心嚢が包んでいる。 心筋は伸ばされると、伸びただけ収縮力が増す性質がある (Starling's law of the heart: スターリングの心臓の法則)。したがって心臓に還る血液が多いと、拍出量が増える。各細胞が代謝を続けられるかどうかは、心臓が有効に収縮して、全身に必要な血液を循環させられるかどうかにかかっている。心筋に必要な酸素などを運ぶために、栄養血管である冠動脈が分布している。
看護師が心拍数や、心拍が血管壁に与える拍動である脈拍を観察するのは、生体の物流システムの要である心臓の機能の要素の1つをアセスメントし、心機能を推測するためである。 脈拍の測定では、1分間の拍動数と心臓の収縮のリズム (これが異常になると血液を抽出できないことがある)。大小 (拍出量が少ないと小さくなる) をみる。
1回の心室の収縮と弛緩を心周期という。心周期が眠っている間も繰り返されているのは、心筋に刺激伝導系と呼ばれる一連の特殊な筋肉が備わっているためである。洞房結節から発する刺激は心房を収縮させ、房室結節からヒス (His) 束を経て左脚、右脚を伝わり、ブルキンエ線維を経て心室筋を収縮させる。
血圧とは、血管内の血液の示す圧力である。全身のあらゆる物質の輸送路である血管を血液が流れていくためには, 血圧の恒常性が保たれなければならない。低すぎれば、血液が組織の隅々まで行き渡らないし、高すぎれば、入れ物の血管を壊してしまう危険性がある。通常「血圧」は動脈内の圧を指し、静脈の血圧をいう場合は「静脈圧」 と呼ぶ。
血圧の2つの指標のうち、血管抵抗の要因である細動脈に対する調節をみる。細動脈の平滑筋の収縮と弛緩のコントロールが、血管抵抗を決定する。引き伸ばされれば縮むという筋肉の性質によって血管の径は変化するし、代謝産物が血管を拡張させ、血流を増やすように作用することもある。これらは局所性の調節である。 血管の平滑筋に分布している交感神経によって全身性の血圧の調節が行われている。血管収縮神経は常に軽く緊張をしていて、これによって血管抵抗を与え、血圧が保たれている。血管収縮性の交感神経がより緊張すると血管壁の平滑筋の収縮力が増し血管は狭くなり、その結果血圧は上昇する。 収縮性の交感神経の活動が低下すると、血管は拡張し、血圧は下がる。

キーワード ① 血液 ② 血管 ③ 心臓 ④ 血圧 ⑤ 血圧調節
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:教科書19ページから38ページを読み返す。血液の組成について確認する。血液中には、物質を運ぶ運搬船である赤血球や蛋白質、また体内に侵入してくる異物に対応するパトロール隊である白血球、さらに血管の損傷に対する修復部 隊である血小板やフィブリノーゲンなどが流れている。血管の種類、リンパ管の特徴についてまとめておく。全身を循環する血管について26ページから29ページの図をみて確認する。心臓の4つの部屋と4つの弁について確認する。刺激伝導系、血圧、血圧の調節について確認する。血圧の調節は37ページの図をみておく。
予習:教科書39ページから65ページを読んでおくこと。神経性調節は、感覚器系や神経系と連動して機能を理解することが重要である。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

2 恒常性維持のための調節機構・神経性調節 科目の中での位置付け 本コマでは、恒常性維持のための調節機構、神経性調節について学修する。
からだは外部環境からの刺激をとらえ、適切な反応をして身の安全を図っている。また、外部環境から生体に必要な物質を選んで取り入れ、不要な物質を外部に捨てている。これらの外部環境とのやりとりが、すなわち私たちの日々の生活行動である。これと同時にからだの内部でも、刻々と変化する内部環境の状態をとらえ、その変化に反応して恒常性を維持している。 外部・内部環境の情報をとらえ、適切な反応をして調節する機能は、日常生活行動のすべてに関わっている。からだ全体の調節と統合は、即効性の神経性調節と、発現は遅いが持続性がある液性調節の2つの方法で行われている。進化上、ホルモンを使った液性調節のほうが古く、神経性調節は動物になって出現した方法であるが、 両者は、微量な化学物質によって情報を伝達する点で共通な仕組みをもっている。 この化学物質を液性調節ではホルモンといい、神経性調節では神経伝達物質と呼んでいる。

コマ主題細目①:教科書「看護 形態機能学」第3章 p39-47
コマ主題細目②:教科書「看護 形態機能学」第3章 p48-56
コマ主題細目③:教科書「看護 形態機能学」第3章 p57-59
コマ主題細目④:教科書「看護 形態機能学」第3章 p59-65
コマ主題細目 ① 受容器 ② 中枢神経 ③ 末梢神経 ④ 情報の伝わり方
細目レベル ① 受容器は、刺激に反応する感覚細胞のことであり、アナログ信号をデジタル信号に変換している。各受容器は、特定の刺激に反応する。 たとえば、通常光が耳に入っても耳にある音の受容器は反応しないし、 音に対して鼻は反応しないのである。 いろいろな刺激の中でとらえることができる刺激を、その受容器にとっての適合刺激という。適合刺激は感覚細胞に刺激を与え、感覚細胞によって末梢神経を伝わる電気的な刺激に変換され、中枢神経に送られる。受容器に刺激が加わっても、中枢神経で読み取られない限り、その刺激は認識されない。受容器 (感覚細胞)には、外部環境からの情報を受けるものと、 内部環境の情報を受けるものがある。 内部環境からの種々の情報は自覚されないものが多いが、非常に大切な刺激である。たとえば動脈圧、血液の浸透圧などの情報は、目に見えたり、耳に聞こえたりする情報に比べて目立たない。しかしこれらの受容器があって体内の情況を把握できるからこそ、私たちはからだの恒常性を保ち得ているのである。
② 頭蓋骨と脊柱に囲まれた脳と脊髄が、中枢神経である。中枢神経は受容器から送られてきた情報を読みとり、記憶と照らし合わせて対応を決め、効果器に指令する。
中枢神経は、骨、3枚の脳脊髄膜(硬膜、クモ膜, 軟膜)、さらにクモ膜と軟膜 の間のクモ膜下腔にある脳脊髄液に囲まれている。重要な機能を果たしているので、幾重にも保護されているのである。
神経細胞(ニューロン)は、細胞体と軸索 (神経線維ともいう)からなる。細胞体には、比較的大きな核があり、情報を認識して判断をしている。 その判断を伝えるのが軸素である。
中枢神経系は、大脳、間脳、中脳、脳幹および脊髄を指す。中枢神経において細胞体が集まった部分を灰白質、神経線維が集まって走っている部分を白質と呼ぶ。

③ 末梢神経は、受容器と中枢神経, 中枢神経と効果器をつないでいる情報を送るケーブルである。中枢神経に出入りする部位によって脳神経と脊髄神経に分類され、また受容器および効果器の違いによって体性神経と自律神経に分類される。
体性神経は、皮膚・骨格筋・眼・耳・鼻・舌からの情報を中枢に運ぶ体性感覚神経と、中枢の指令を骨格筋に伝える体性運動神経のことである。 からだと外部環境との相互作用に関与する神経といえる。これに対し自律神経は、内臓の平滑筋腺血管壁の平滑筋と中枢を結ぶ神経である。
体性神経と自律神経は,脳幹から出入りする12対の脳神経と脊髄から出入りする31対の脊髄神経 (頸神経8対, 胸神経12対 腰神経5対. 仙骨神経5対. 尾骨神経1対)を通る。解剖学的名称は、脳神経と脊髄神経につけられており、一本の脳神経または脊髄神経の神経線維には、体性感覚神経、体性運動神経 自律神経がともに束ねられていることもある。末梢神経を考えるときは、その神経束に含まれている線維の種類を確認しなければ、作用がわからない。

④ 受容器で受けた情報は、ニューロンの細胞膜の内側の電位(膜電位という)に変化を及ぼし、電気信号となって中枢に運ばれる。膜電位を変化させるのは細胞膜内外のイオンの移動である。神経伝達物質が 細胞膜のナトリウムチャネルを開き、細胞外から細胞内ヘナトリウムイオン (Na⁺) が入ることが興奮の引き金である。
静止膜電位が刺激によって (+) に傾くことを脱分極という。 脱分極が一定の閾値を超えると、一気に活動電位に達する。活動電位が生ずることを興奮という。閾値を超える刺激に対し、常に同じ活動電位が生じるので、1回の興奮の情報量は一定である。これを「全か無か (all or none) の法則」という。情報量の強弱は、興奮が起こるニューロンの数と、興奮が起こる頻度によって伝わる。
活動電位はすぐに下がり、静止膜電位よりやや低くなる。 これを過分極という。この過分極の間は、次の刺激がきても反応しないので、不応期といわれる。この後再び元の静止膜電位に戻る。 これを再分極という。

キーワード ① 大脳 ② 脊髄神経 ③ 自律神経系 ④ 静止膜電位 ⑤ ナトリウムイオン
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 教科書39ページから65ページを読み返す。神経性調節は、受容器、中枢神経、効果器、およびこれらを結ぶ末梢神経からなり立っている。刺激を受ける受容器には、そのために特殊に分化した感覚器(例: 耳、目)をもつものと、感覚神経の神経終末が直接分布しているものとがある(例: 皮膚、筋)。受容器は、各種の物理的・化学的刺激を神経の電気的情報に変換する装置である。情報を読み取り、判断し、反応方法を決めるのが中枢神経であり、その決定にしたがって、反応を起こすのが効果器である。受容器と中枢神経中枢神経と効果器を結ぶのが末梢神経である。 受容器と中枢神経を結ぶ末梢神経を感覚神経または求心性神経という。 これに対し、中枢神経と効果を結ぶ末梢神経を運動神経または遠心性神経という。図をみながら、神経性調節について理解する。
予習:教科書66ページから77ページを読んでおくこと。フィードバック機構について、図をみて確認する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

3 恒常性維持のための調節機構・液性調節 科目の中での位置付け 本コマでは、恒常性維持のための調節機構、液性調節について学修する。
からだ全体の調節と統合は、即効性の神経性調節と、発現は遅いが持続性がある液性調節の2つの方法で行われている。進化上、ホルモンを使った液性調節のほうが古く、神経性調節は動物になって出現した方法であるが、 両者は、微量な化学物質によって情報を伝達する点で共通な仕組みをもっている。 この化学物質を液性調節ではホルモンといい、神経性調節では神経伝達物質と呼んでいる。
神経は、次のニューロンや効果器である筋肉などに接するところまで自分の軸索を伸ばし、直接情報を伝える。これに対しホルモンは、内分泌細胞でつくられると間質液中に分泌され、近傍の細胞に作用したり、 周囲の毛細血管中に入って運ばれる。体内の物流システムを使い、遠隔の効果器にも情報を伝えることができる。このホルモンによる調節を液性調節という。ホルモンは、そのホルモンに反応する受容体をもっている細胞にのみ作用する。この細胞を特に標的細胞、臓器としては標的器官と呼んでいる。
ホルモンは、間質液、血液を経るので、伝達速度は神経に比べると遅いが、効果の持続性は高い。

コマ主題細目①:教科書「看護 形態機能学」第3章 p66-67
コマ主題細目②:教科書「看護 形態機能学」第3章 p68-69
コマ主題細目③:教科書「看護 形態機能学」第3章 p70-74
コマ主題細目 ① ホルモンの作用機序 ② ホルモン分泌の調節 ③ 恒常性維持のためのホルモン
細目レベル ① ホルモンは微量で効果を発現する化学物質で、組成によって、ペプチドホルモン、ステロイドホルモン、アミン型ホルモンに分類される。いくつかのホルモンは、神経伝達物質と共通しており、同じ物質が神経伝達物質としても、ホルモンとしても機能している。
ホルモンが、標的細胞にはたらきかける方法には2通りある。1つは標的細胞 の受容体 (蛋白でできている) に結合し、細胞内の第2メッセンジャーの遊離によって細胞機能の変化を起こす方法である。 もう1つは細胞内に取り込まれて核に入り、その細胞の蛋白合成を刺激する方法である。
ペプチドホルモンとアミン型ホルモンは細胞膜の受容体と結合し、細胞内の酵素活性を変化させることによって細胞機能を変化させる。
ステロイドホルモンは細胞内に入り込み、細胞内の受容体と結合してから核に入って特定の遺伝子の転写を促進する。その結果、蛋白質が合成され 細胞の機能が変化する。

② ホルモン分泌の調節の中枢は視床下部である。 視床下部は、自律神経とホルモン分泌の両方の中枢と考えられている。自律神経とホルモンの両者は、からだの内部環境の恒常性を維持するための種々の調節を受けもっており、その中枢である視床下部は重要なはたらきを担っている
視床下部には、ホルモンをはじめ、からだの中の化学物質の受容細胞がたくさんある。その受容細胞が生体内の化学物質の刺激を受けてホルモンを出し, 内分泌器官や神経細胞の活動を調節していると考えられている。 視床下部から出るホルモンには大きく2種類がある。
1つは下垂体後葉ホルモンであり、もう1つは下垂体前葉ホルモンの分泌を刺激したり抑制したりする調節ホルモンである。下垂体後葉は、視床下部の神経細胞の軸索末端が集まったものであり、神経細胞がつくった分泌物を放出し、血液を介するホルモンとして作用させている。これは神経細胞と内分泌細胞のちょうど中間の形であり神経分泌と呼ばれている。
下垂体前葉は、視床下部から下垂体門脈を経て、ホルモン分泌の調節を受け、 複数のホルモンを分泌している。下垂体前葉から分泌されるホルモンには、さらに下位の内分泌細胞を刺激する調節ホルモンと最終的な標的細胞に作用するホルモンがある。
このように1段階の調節をもつもの、2段階の調節が解明されているものがあるほか調節ホルモンをもたないものもある。 また自律神経の支配を介して分泌されるホルモンもある。

③ ホルモンは血液中の電解質や糖分を一定に保ち、血漿量を保ち、血圧を保って物質の流通に支障がないようにするほか、細胞の代謝速度を調節している。また食物をからだに取り込むための消化液の分泌調節にも、ホルモンがはたらいている。 個体の成長や維持に関わる作用ばかりでなく、種の保存に関する生殖機能の調節も行っている。 ここでは代謝に関するホルモンを取りあげる。
1.体液量の調節:バゾプレッシン、2.代謝速度の調節:甲状腺ホルモン、3.蛋白質の促進:成長ホルモン、4.血糖の調節:インスリンとグルカゴン、5.血中ナトリウム・血中カリウムの調節:ミネラルコルチコイド、6.血中カルシウムの調節:ビタミンD、パラトルモン、カルシトニン、である。

キーワード ① ペプチドホルモン ② 標的細胞 ③ フィードバック機構 ④ 視床下部 ⑤ 下垂体
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:教科書66ページから77ページを読み返す。ホルモン分泌の調節の中枢は、視床下部である。そこから調節ホルモンが分泌され、下垂体前葉に作用する。下垂体前葉から各種ホルモンが分泌し、標的器官に作用する。この一連の流れを、教科書の図を用いて確認する。また、ホルモン産生部位とホルモンの名称、および作用についてまとめておく。ホルモンは血液中の電解質や糖分を一定に保ち、血漿量を保ち、血圧を保って物質の流通に支障がないようにするほか、細胞の代謝速度を調節している。また食物をからだに取り込むための消化液の分泌調節にも、ホルモンがはたらいている。 個体の成長や維持に関わる作用ばかりでなく、種の保存に関する生殖機能の調節も行っている。
予習:第5章「食べる」の該当ページに目を通しておく。「食べる」という生活行動には、さまざまな器官が連動している。それぞれの器官の構造と機能を理解し、それを「食べる」という生活行動に結びつける。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

4 生活行動「食べる」(食行動、咀嚼・嚥下、消化・吸収のしくみ) 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、本コマ(第4回)は、「食べる」生活行動に必要な解剖生理について理解を深める。食べる・飲むは、生理学的にいえば、個体の維持に必要不可欠のエネルギー源、蛋白源、水などを供給するものであり、これができなければ経管栄養(胃にチューブを入れて、食物の代わりとなる栄養源を注ぐ)や輸液(血管に針を刺し、薬の形にして栄養源を入れる)によって補給が必要となる。
生活行動として「食べる」ことは、食欲を感じること、食物を口に入れる動作、食物を噛み砕いて飲み込むこと、そしてからだの中で消化され吸収されること、からだに必要なものをつくる材料にすること、これらの過程が成立して、食べる行為の目的が達成される。この過程の一部でも欠けた場合、食べることが障害されている状態となる。食べることに関する看護援助は、上記の各段階が順序良くなされているかどうかを観察し、障害されているなら段階ごとに必要なケアを行い、食べる生活行動を援助することである。

コマ主題細目①:教科書「看護 形態機能学」第5章 p109-110
コマ主題細目②:教科書「看護 形態機能学」第5章 p110-112
コマ主題細目③:教科書「看護 形態機能学」第5章 p112-114
コマ主題細目④:教科書「看護 形態機能学」第5章 p114-115
コマ主題細目⑤:教科書「看護 形態機能学」第5章 p116-126
コマ主題細目 ① 食欲 ② 食行動 ③ 咀嚼 ④ 嚥下 ⑤ 消化・吸収
細目レベル ① 「食べる」「飲む」は、お腹が空いた、喉が渇いたという感覚によって生じる行為であり、生理学的に正常な反応である。血液中のブドウ糖が低下すると、摂食中枢が促進される。また、血液中の物質が空腹感や満腹感に影響するが、消化管ホルモンのコレシストキニンは摂食を抑制し、胃から分泌されるグレリンは摂食を亢進させる。喉の渇きも脳の視床下部に中枢があり、喝中枢は浸透圧の上昇(体液が濃くなる)を感知する浸透圧受容器からの刺激と、血漿量の低下(体液量が少なくなる)によって活性化されたアンギオテンシンⅡによる刺激を受け、飲水行動に向かうのである。以上のように、空腹感、口渇感は、生理学的に正常な反応であることを理解する。
② 食行動は、視床下部の摂食に関わる中枢の刺激で誘発される。視床下部から大脳皮質に情報が流れ、実際に手や口の運動が起こるまでには、脳の中で、次の過程(①食物を口まで運ぶ、②食物の性質の判断、③口の準備)がある。①食物を口まで運ぶには、食卓に向かって座り、箸を使って食物を口まで運ぶために姿勢を保持し、坐位をとれることが必要である。また箸を持ち、箸で食物をつまむという手の機能も必要である。これらには、骨、筋肉と神経系の働きが欠かせないことを理解する。②食物の性質の判断とは、食物を見たとき固形物か液状か、熱いか冷たいか、硬いか柔らかいか、さらに素材、調理方法、色どりまで情報を得ていることである。視覚のみでなく、におい(嗅覚)からの情報によって食物が何であるかを判断していることが重要である。③口の準備とは、口に入れる食物の性質を判断し、それに合わせた口の開け方、舌の位置を瞬間的に準備することである。これも筋肉と神経系の連動の結果であることを理解する。空腹を感じ、食物の性質を判断し、食べたいという情動が視床下部へ伝わると、視床下部から自律神経系を介して耳下腺、顎下腺、舌下腺の唾液分泌が促進され、口腔内の準備が整うこととなる。
③ 咀嚼とは、上下の歯によって食物を細かく砕き、唾液とよく混合する運動である。上下32本の歯によって、食物を噛み砕きながら漿液性の唾液と混ぜ合わせると、食物に水分が加わり、飲み込みやすくなる。咬筋、側頭筋などの働きで下顎骨を引き上げることによって上下の歯が噛みあう。唾液は水分を加えるばかりでなく、唾液アミラーゼという消化酵素を含んでおり、唾液が分泌されることによって、口の中でまずでんぷんの消化が始まる。咀嚼と同時に、食べ物の味と香りを楽しむには、味覚受容器(舌、口蓋、咽頭、喉頭蓋の味蕾にある味細胞)が機能する。味覚は嗅覚と関連していることを理解する。
④ 嚥下とは、口腔内の食塊を咽頭、食道を経て胃に送り込む現象である。嚥下は3相(口腔相、咽頭相、食道相)に区別できる。第1相(口腔相)は舌による食物の後方への移動であり、第2相(咽頭相)は嚥下反射として、咽頭腔に食物が触れると、それを飲み下し胃に送る一連の反射である。第3相(食道相)は嚥下反射の一部で、食物の蠕動運動で食物が胃に至るまでの相である。咽頭は食物と空気の共通する通路で、嚥下時には、気道は軟口蓋、喉頭蓋によって閉鎖され、食物は咽頭から食道へ流れ落ちる。嚥下反射の際には、軟口蓋によって鼻腔と口腔が区切られ、鼻腔に食物は逆流しない。また咽頭が前方に挙上し、喉頭蓋で喉頭の入口を塞ぐ一方、食道は開いて食物が滑り降りる仕組みになっている。このときタイミングが合わず喉頭に食物がいくと、それを押し出そうとしてむせが生じる。食物と空気の経路を理解することは嚥下のしくみを理解する上で重要である。
⑤ 消化とは、食物を吸収される形にまで分解することである。消化には2つの方法があり、機械的消化(咀嚼・消化管での移送)による分解と、化学的消化(消化液中の消化酵素)による分解である。消化に関わるからだの器官を消化器という。消化器の中で、食物を通す中空器官を消化管、消化液を分泌する器官を消化腺という。消化管の構造について理解する。嚥下された食物は胃に移送され、胃液で消化される。消化液である胃液と膵液には、消化酵素が含まれており、蛋白質、炭水化物、脂肪を細かい分子に分解し、体液中に取り込める大きさになるまで分解される。胃で塩酸(解毒作用)、蛋白消化酵素ペプシン、脂肪消化酵素リパーゼによって消化された食物は、胃から十二指腸に入る。十二指腸には、総胆管と膵管が開口(大十二指腸乳頭)しており、膵液と胆汁が注がれている。膵液には、漿液性のもの、蛋白消化酵素トリプシン、脂肪消化酵素の膵リパーゼ、でんぷん分解酵素の膵アミラーゼが含まれている。胆汁は肝臓で作られ、胆嚢で濃縮される。胆汁は脂肪性の食物が十二指腸に入ってくると注がれ、消化や吸収を助ける。消化液の分泌には、自律神経とホルモンが関与しており、副交感神経支配が優位なときに消化器官がよく働く。空調と回腸では粘膜上皮に消化酵素があって、最後の消化が行われる。小腸の粘膜は絨毛でおおわれており、絨毛の細胞膜上から栄養分を吸収する。小腸の絨毛には毛細血管が分布しており、これが集まって門脈になり、すべて肝臓に運ばれる。肝臓に運ばれた栄養分は、肝細胞に吸収され、糖はグリコーゲンとして蓄えられ、アミノ酸からは血漿蛋白が作られる。小腸で養分を吸収された食物は、結腸へ進み、水分が吸収される。
キーワード ① 咀嚼 ② 嚥下 ③ 消化 ④ 吸収 ⑤ 栄養
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習課題として、教科書p.109-126を熟読し、わからない部分を明確にしておく。
復習課題として、「食べる」生活行動として、食欲を感じること、食物を口に入れること、食物を噛み砕いて飲み込むこと、体の中で消化・吸収されて体に必要なものをつくる材料となることを理解する。咀嚼は上下の歯によって食物を細かく砕き、唾液とよく混合する運動のことで、咀嚼のために必要な筋や、唾液腺(耳下腺・顎下腺・舌下腺)の名称と唾液アミラーゼのはたらきについて理解する。口腔内の食塊を正常に咽頭、食道を経て胃に送り込むための嚥下の3相(口腔相、咽頭相、食道相)を復習し理解する。消化管の構造を理解し、消化には咀嚼・消化管での移送(蠕動)による分解と、消化液中の消化酵素による分解があること、消化液の作用と消化液分泌の調節について復習する。また、空腸と回腸で栄養分の吸収がどのようになされているかを理解する。教科書p.109-126を読み返す。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

5 生活行動「呼吸する」 科目の中での位置付け 本コマでは、呼吸運動とガス交換のしくみについて理解する。息をすることは、日常生活の中で最も意識されずに行われる動作であろう。 食べようと思って食べる行動と違い、息をしようと思って息をすることは、特別な事情がない限り起こらない。 息は無意識のうちに調節されており、眠っている間も一定のリズムで行われているが、同時に息は、早くしたり遅くしたり、あるいは息をこらえてみたりなど、自分の意思で調節することも可能である。
からだにとって息をすることは、酸素を体細胞に取り入れて、細胞内で酸化(燃焼) してエネルギーをつくり出すことと、その結果できた二酸化炭素を体外に捨てることである。鼻から息を吐いたり、吸ったりすることだけではない。吸った息 (大気) から酸素を吸収して赤血球に乗せて運び、末梢血管から間質液中に酸素を放し、さらに間質液から細胞内へ酸素が入ってはじめて意味をもつ。 また細胞で生成された二酸化炭素は、血液によって運び去られ、呼気中から体外に排出されて、息を吐くことが完了する。

コマ主題細目①:教科書「看護 形態機能学」第6章 p127-129
コマ主題細目②:教科書「看護 形態機能学」第6章 p129-133
コマ主題細目③:教科書「看護 形態機能学」第6章 p133-135
コマ主題細目④:教科書「看護 形態機能学」第6章 p135-136
コマ主題細目⑤:教科書「看護 形態機能学」第6章 p136-137
コマ主題細目 ① 呼吸運動とその支配神経 ② 気道 ③ 肺気量 ④ 外呼吸と内呼吸 ⑤ ガスの運搬
細目レベル ① 呼吸運動に関わっているのが呼吸筋で、横隔膜と肋骨筋が相当する。胸郭は肋骨、胸骨および胸椎によって構成される。下部には横隔膜がある。胸郭の内腔を胸腔という。胸郭は、胸腔を拡大・縮小させる吸息と呼息により成り立つ呼吸運動に関与する。吸息時には外肋間筋と横隔膜が収縮する。外肋間筋は肋骨と肋骨との間にはる筋で、肋間神経に支配され、収縮することによって肋骨を外上方に引き上げ、胸郭の前後・左右の幅を増大してその容積を増加される。横隔膜は横隔神経に支配され、収縮すると下方に移動して胸腔を拡大させる。呼息時にはこの2つの筋は弛緩する。深呼吸や努力呼吸では、その他の筋群も呼吸にかかわってくる。これらの筋群を補助呼吸筋とよぶ。
② 喉頭に続いて気管が始まる。気管は食道の前を通って縦隔を下降し、第5胸椎の高さにおいて、心臓の後方で左右の主気管支に分岐する。気管の壁には、馬蹄形をした気管軟骨が一定の間隔で15~20個並んでおり、気道がつぶれないように補強している。食道と接している気管後面には軟骨はなく、結合組織と平滑筋でできた膜性壁となっている。気管から分かれた気管支は、右のほうが左よりも太く、短く、傾斜も急で垂直に近い。そのため気管支に吸い込まれた異物は、右主気管支に入ることが多い。気管支は左右対称ではないことが重要である。模型を使って左右の気管支の違いを理解する。理解することにより、なぜ誤嚥すると右気管支に入りやすいかが解る。
気管支は肺に入ると葉気管支→区域気管支→細気管支→終末細気管支→呼吸細気管支→肺胞と分岐し、最終的には肺胞となって終わる。肺は、胸腔の中で、中央の縦隔を除いた大部分を占め、胸膜に包まれている。右肺は左肺よりも大きい。また、右肺は3葉に、左肺は2葉に分かれている。さらに気管支の分岐に対応して、右肺は10区域に、左肺は8~9区域に区別される。
最終形の肺胞は、直径200㎛ほどの空気を含む小さな袋で、互いにごく薄い膜で仕切られている。その壁には毛細血管が広がっている。ガス交換はここで行われることを肺胞と毛細血管の構造を図で確認しながら学修する。肺胞をつくっている肺胞上皮には、Ⅰ型肺胞上皮細胞とⅡ型肺胞上皮細胞の2種類がある。1型細胞は表面が比較的平滑で、核の部分以外は扁平な膜状をなして広がっている。Ⅱ型細胞は、Ⅰ型細胞の間に散在する膨隆した厚みのある細胞で、表面に短い微絨毛を認める。Ⅱ型細胞は、サーファクタントと呼ばれる表面活性物質を分泌し、肺胞の虚脱を防いでいる。サーファクタントは胎生期後期に産生されるため、それ以前に生まれた未熟児は呼吸困難をきたす。

③ 肺と気道は常に空気で満たされているが、呼吸の状態によって空気量は変化する。肺に含まれる空気の容積や肺を出入りする空気の量を肺気量といい、年齢や性別、身長、健康状態によって異なる。さまざまな状態での肺の空気容積を分類したものを肺気量分画という。スパイロメーターは肺に出入りする空気の量(換気量)を測定する検査であり、空気の流れを記録した曲線をスパイログラムという。スパイロメーターは短時間で簡便に行うことができる呼吸機能検査で、肺活量の測定と1秒量・1秒率の測定からなる。スパイロメーターによって閉塞性換気障害や拘束性換気障害の有無が判定できる。さらに、閉塞性換気障害はフローボリューム曲線によって気道閉塞の部位をある程度判定できる。
④ 大気中には酸素が21%含まれており、換気により肺内へ取り込まれる。組織で産生された二酸化炭素は静脈血によって肺に運ばれる。酸素と二酸化炭素は単純拡散によって呼吸膜を通過し、酸素は毛細血管内へ、二酸化炭素は肺胞内へ移動する。このように、血液と肺胞の間でガス交換が行われることを外呼吸という。
血液によって肺から運搬された酸素と、組織で生成された二酸化炭素の交換が血液と組織の間で行われることを内呼吸という。肺で行われるガス交換(外呼吸)とは反対に、血液から酸素が除かれて組織に供給され、二酸化炭素が組織から血液に排出される。酸素と二酸化炭素の移動は、この場合も単純拡散によって行われる。すなわち、拡散によって酸素は血管内から細胞へ移動する→酸素は細胞内でエネルギー産生に利用される→細胞内では、代謝によって二酸化炭素が産生される→拡散によって二酸化炭素は細胞内から血管内へ移動する。拡散量は、組織の面積と、血液と組織間の濃度勾配に比例し、血液と組織細胞間の障害の厚さに反比例する。

⑤ 拡散により血漿中に移動した酸素は、赤血球内に入り、ヘモグロビンに結合する。動脈血中のヘモグロビンの酸素飽和度はおよそ97.5%であり、94%未満の場合はなんらかの異常が考えられる。この関係を示したグラフが酸素解離曲線である。pH、体温、PCO2、2,3-DPGの増減に対応して酸素解離曲線が右あるいは左に偏位する。二酸化炭素の運搬は①血漿に溶解した溶存炭酸ガス②重炭酸イオン③タンパクと結合したカルバミノ化合物の3通りの状態で行われる。体内の代謝過程で生じたCO2は血液中に溶け、血中の水と反応してH+を遊離する。血中のH+は血液を酸性の方向に動かそうとする。呼吸は血液中のH+を減らして、体液の酸塩基平衡を保つのに重要である。
キーワード ① 外肋間筋 ② 横隔膜 ③ 1回換気量 ④ 拡散 ⑤ ヘモグロビン
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 教科書127ページから137ページを読み返す。呼吸運動の際につかう筋とその筋の作用および支配神経についてまとめる。気道について、教科書の図を見ながら各器官についてどこに位置しているのか確認する。また、気管支の左右差、肺の左右差についてもまとめておく。
からだにとって息をすることは、酸素を体細胞に取り入れて、細胞内で酸化(燃焼) してエネルギーをつくり出すことと、その結果できた二酸化炭素を体外に捨てることである。鼻から息を吐いたり、吸ったりすることだけではない。吸った息 (大気) から酸素を吸収して赤血球に乗せて運び、末梢血管から間質液中に酸素を放し、さらに間質液から細胞内へ酸素が入ってはじめて意味をもつ。 また細胞で生成された二酸化炭素は、血液によって運び去られ、呼気中から体外に排出されて、息を吐くことが完了する。
肺気量についてまとめておく。肺気量を示す図から何を読み取ることができるのか教科書を読み直す。外呼吸と内呼吸についても、教科書を読み直しまとめておく。
予習:第7章「トイレに行く」の該当ページに目を通しておく。「トイレに行く」という生活行動は、泌尿器系だけでなく、神経系も関与している。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

6 生活行動「排泄」(排便機構と排尿機構のしくみ) 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、本コマ(第6回)は、「排泄」の生活行動に必要な解剖生理について理解を深める。生活行動として「排泄する=トイレに行く」ことは、外部環境から取り入れた食物や水を、内部環境を整えることに使ったあとに、外部環境へ戻す行為である。トイレに行く行動は、まず尿意あるいは便意を感じることに始まり、その場所からトイレまで移動し、立位・坐位をとる、下着を外す、排泄する、後始末をするという一連の行為が含まれる。そして尿意・便意を感じてから実際の排泄行為に至るまでの間、我慢できることが日常生活において大切である。また、尿意や便意を感じるには、膀胱や直腸に内容物(尿、便)がたまる必要がある。尿や便を生成する過程も、トイレに行く行為の前提として必要である。看護者は、対象者の排泄行動やトイレに行く過程を観察し、その過程に障害があるかをアセスメントし、排泄障害があれば看護援助が必要となることを理解する必要がある。
コマ主題細目①:教科書「看護 形態機能学」第7章 p139-144
コマ主題細目②:教科書「看護 形態機能学」第7章 p145-148
コマ主題細目③:教科書「看護 形態機能学」第7章 p148-149
コマ主題細目④:教科書「看護 形態機能学」第7章 p149-153
コマ主題細目 ① 排尿 ② 尿の生成 ③ 体液量調節の機構 ④ 排便
細目レベル ① 膀胱に尿が150mL位たまると尿意を感じ始め、400mL程度になると膀胱内圧が急激に上昇し、強い尿意を感じる。膀胱は3層の平滑筋の壁からなる袋で、内面は移行上皮で覆われた粘膜になっており、膀胱の容積によって表面積を広げたり縮めたりできる上皮である。膀胱壁の平滑筋は自律神経の交感神経と副交感神経の二重支配を受けている。膀胱は、蓄尿機能(尿をためるはたらき)と排尿機能(尿を出すはたらき)をあわせ持つ袋である。膀胱内に尿がたまり、膀胱内圧が上昇すると、膀胱壁の伸展受容器からの信号は副交感神経を経て、仙髄の膀胱反射中枢に伝わる。内圧上昇の情報は、膀胱反射中枢の副交感神経を興奮させ、排尿筋を収縮、内尿道口を弛緩させる。また同時に、膀胱内圧上昇の知らせは脊髄・橋を経て脳に至り、トイレに行きたいという尿意を感じさせる。尿意を感じて内尿道口の弛緩があっても随意筋である尿道括約筋が収縮しているので、トイレに行くまで尿の漏れも防ぐことができる。
排尿に関する神経支配の中枢は、脊髄、橋、さらに高位の排尿中枢がある。副交感神経による脊髄反射が中心的役割を持っているが、高位の排尿中枢の命令がないと排尿という行為は起こらない。逆に高位の中枢が機能しないと、脊髄反射だけで排尿が起こることになる。排尿には、副交感神経による膀胱壁の平滑筋(排尿筋)の収縮と内尿道口の弛緩および尿道筋の弛緩が必要である。これに腹圧がかかると排尿が可能となる。

② 尿は腎臓でつくられ膀胱にたまる。尿は不要な水を体外に排出し体液量を一定に保っている。汗が多いときには尿量が減り、たくさん水分を飲んだ時には多量の尿が出る。このようにして体液量を保ち、体の中の細胞の内部環境を整えている。尿は水のみでなく、体液の電解質とpHの調節を一定に保つために、Na⁺、Cl⁻、K⁺、H⁺の尿中への排泄を調節している。蛋白分解後の尿素も尿中に排泄される。体内の代謝産物を排泄するのに最低必要な尿量は成人で1日500mLと考えられている。尿は腎臓で生成されるが、その原料は大量に流れ込んでいる血液である。左右の腎臓には、大動脈より直接分岐した腎動脈が尿をつくる材料を運び、かつ腎臓の細胞に酸素を送り込んでいる。腎臓の構造的、機能的単位をネフロンという。ネフロンは、1つの糸球体とそれを取り囲むボウマン嚢、ボウマン嚢に続く尿細管、および糸球体から続いて尿細管を取り巻く毛細血管からなっている。腎動脈から入った血液は、小葉間動脈から輸入動脈となって糸球体へ流れ込む。糸球体内の血液はボウマン嚢へ濾過され、濾液は尿細管で再吸収、分泌の過程を経て尿になる。尿細管はボウマン嚢に近いところから近位尿細管、ヘンレの係蹄、遠位尿細管の3つに区分され、近位尿細管、遠位尿細管には曲がりくねった曲尿細管とまっすぐの直尿細管が区別される。
③ 腎臓での体液量調節には主にレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系、抗利尿ホルモンの2つの機構が働いている。レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系は、腎臓に入ってくる血液量を感知し、血液量が少ないと腎臓からレニンを分泌して尿量を抑える、液性の調節機構である。尿は血液から作るので、腎臓に流れてくる血液量を確保することが、尿をつくるために必要である。抗利尿ホルモンは、細胞外液の浸透圧を視床下部で感知し、抗利尿ホルモン(ADH、バゾプレシン)の分泌によって水の再吸収を調節するものである。抗利尿ホルモンは視床下部に細胞体があって、下垂体後葉に軸索を伸ばしている神経分泌細胞から分泌されるホルモンである。集合管の水の再吸収は抗利尿ホルモンのはたらきに依存しており、ここで尿をどの程度濃縮するかによって水分量を調節し浸透圧を保つのである。このように体液量を維持し、血圧を維持することによって、体液の循環の恒常性を保っている。その調節を行っているのが腎臓である。
④ 通常、便はS状結腸にたまっており、これが蠕動によって直腸に移動すると、直腸内圧が亢進する。この内圧亢進の情報が副交感神経を介してS2~4に伝わり、脊髄を上行して大脳にいたり便意をもよおす。直腸内圧が亢進し40~50mmHgになると排便反射が起こる。肛門には内肛門括約筋と外肛門括約筋があり、通常は両方締まっているが、排便反射が起こると、副交感神経が内肛門括約筋を弛緩させ、直腸の運動を促進する。内肛門括約筋が開いたとき、横紋筋である外肛門括約筋を意図的に弛緩させると、便が排出される。実際の排便行為では、さらに腹圧をかけて押し出す。トイレに行くには、トイレへの移動能力も重要である。トイレに行けるか、トイレに座る姿勢がとれるか、手が自由になるかなどの運動能力も、トイレに行くという生活行動には欠かせない点である。
キーワード ① 尿意 ② 蓄尿 ③ 排尿 ④ 便意 ⑤ 排便
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習課題として、教科書p.139-153を熟読し、わからない部分を明確にしておく。
復習課題として、トイレに行く行動は、まず尿意あるいは便意を感じることに始まり、その場所からトイレまで移動し、立位・坐位をとる、下着を外す、排泄する、後始末をするという一連の行為が含まれることを理解する。また、排尿機構と排便機構は、生活援助技術方法論・演習の「排泄の援助」にもつながる内容であるため、復習しておく。尿の生成では、腎臓の働きにもつながる内容であるため、理解しておく。教科書p.139-153を読み返す。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

7 生活行動「話す・聞く・眠る」 科目の中での位置付け 本コマでは、話す・聞く、眠るのしくみについて理解する。人と人とのコミュニケーションにはいろいろな手段があるが、日常生活の中で 最も多いのが、言語による会話である。会話は、話し手と聞き手がいて成立する。 話すことと聞くことは、日常生活の中では表裏一体の関係である。

さまざまな疾病や障害のため、声を使って話すことができない場合や声を聞く ことができない場合にはそれに代わるコミュニケーションの手段が必要になっ てくる。 会話に代わるコミュニケーションの手段を見つけ体得していく過程を ともにするのも、 看護者の仕事である。
1日の活動を終え、寝床について眠れることを幸せに思えるのは健康な生活 のバロメーターといえよう。 眠りはエネルギーの消耗を防ぐ行動で、睡眠時には 物質代謝が低下しエネルギーの消費が減る。 眠りは外界からの刺激を受けとら ず従って反応がなく意識がない状態である。 この間に脳は覚醒中に得た情報を 整理し、記憶する。

コマ主題細目①:教科書「看護 形態機能学」第8章 p155-157
コマ主題細目②:教科書「看護 形態機能学」第8章 p157-159
コマ主題細目③:教科書「看護 形態機能学」第8章 p160-161
コマ主題細目④:教科書「看護 形態機能学」第9章 p163-167
コマ主題細目⑤:教科書「看護 形態機能学」第9章 p167-170
コマ主題細目 ① 発声 ② 聞く ③ 言葉 ④ サーカディアンリズム ⑤ 睡眠
細目レベル ① 言葉は初めは「運動」である。その後「思考」に転化する。赤ちゃんが言葉を覚えていく段階で、必ず運動としての言葉を通過する。言語的意味をもたない喃語が1~2ヵ月から始まり、次第に意味のある言葉を獲得していくのである。
通常、言葉は周囲の者が発する言葉から学んでいく。耳から入る音を模倣するのが6~7ヵ月からであり、その「音」がもつ意味を理解できるようになるのは12カ月ごろである。音の模倣は意図した音をつくることであり、発音は構音機構の発達によって可能になる。
言葉を介した会話がなり立っていく過程は、脳の発達と並行する。言葉(音)の意味の理解には、側頭葉の感覚性言語野(Wernickes area: ウエルニッケ野)の発達が必要である。発声するには、発声器の筋運動を司る運動性言語(Bromis area:ブローカ野)の発達が必要である。そして、音を聞く器官(耳)から言葉という音が入力され、大脳の聴覚野に伝わるルートと、運動神経と構音に関わる筋肉のはたらきとが連携して、会話によるコミュニケーションができるのである。

② 耳は、外耳・中耳・内耳からなり、聴覚と平衡覚の2つの感覚を受容する。外耳は音を集め、鼓膜に伝える伝音部をなし、耳介と外耳道からなる。中耳は、鼓室・耳管からなる。鼓膜の振動は、ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨の3つの耳小骨を介して伝わり、増幅されて中耳と内耳の境にある前庭窓の膜を振動させる。内耳は側頭骨の錐体にある。錐体の乳突部にある腔所は、複雑な形状をした骨迷路をなす。骨迷路の内部には、骨迷路に似た形状の膜迷路がおさまっている。蝸牛、前庭および半規管より構成される。蝸牛には聴覚受容器が存在し、前庭と半規管には平衡感覚受容器が存在する。
蝸牛はラセン形に約2回転半巻かれた管である。内部は基底膜と前庭膜によって前庭階、蝸牛管、鼓室階の3つの階に分けられている。前庭階と鼓室階は外リンパで満たされており、蝸牛管は内リンパで満たされている。内リンパと外リンパの電解質組成は明らかに異なり、互いに交通はない。蝸牛管の基底膜上にコルチ器(ラセン器)があり、その中に聴覚受容器である有毛細胞が並んでいる。音波は、外耳道を通って鼓膜を振動させた後、これに連なる3つの耳小骨によって増幅されて、蝸牛に伝えられる。蝸牛では、有毛細胞と呼ばれる細胞によって、音波の振動の情報が電気信号に変えられる。この電気信号は蝸牛神経を通って大脳皮質の聴覚野へ伝えられる。
聴覚野は音をとらえるのであり、とらえられた音の意味は、側頭葉の聴覚野近くにある感覚性言語野 (ウエルニッケ野)で解読される。 感覚性言語野は一側にのみ存在し、利き手を支配する半球にあるので、左半球にある人が多い。したがって、脳の障害が起きた場合は、どこで起こったかによって、言語活動への影響は異なってくる。

③ 左脳と右脳は、受け持つ仕事に違いがある。一般に左脳はカテゴリー化作用を営む半球、右脳は表現化作用を営む半球といわれる。カテゴリー化作用は、言語化をし、分析的、時間系列でみる世界であり、表現化作用は、空間的、視覚的関係でみる世界である。虫の音をどちらの脳で開くかによって、音楽に聞こえたり、雑音に聞こえたりするのである。 カテゴリー化作用の脳で開けば雑音、表現化作用の半球で聞けば音楽になる。
ウェルニッケ野では聴覚のみならず。 視覚から入る言葉の意味も認識する。 相手の顔を見て○○さんと認識するのも、文字を見てその意味を認識するのも、ウエルニッケ野である。 ウエルニッケ野の認識は弓状束を通ってブローカ野へ連絡する。そして認識された言葉に対する言葉による反応が生まれるのである。
音波が感覚神経にとらえられるまでの過程の障害を伝音性難聴、感覚神経の障害による難聴を感音性難聴という。 または単に耳が聞こえないということではなく、コミュニケーション障害ととらえるべきである。
中枢の障害により、言語の障害も生じる。 ウエルニッケ野に障害が起こると、音が聞こえ、目が見えていても、その情報がもつ意味を了解することができなくなる (感覚性失語)。ブローカ野に障害が起こると、話したいと思う言葉を、音声に変換することができなくなる(運動性失語)。いずれの場合も会話によるコミュニケーションに障害が生ずるので、新しいコミュニケーション手段をとう獲得するかが課題になる。

④ 動物は、地球の条件である明暗つまり昼夜によって、その種にとって都合のよいように、活動期と不動期の交代リズムを形成した。
約1日の周期で繰り返される生体のリズムを、サーカディアンリズム(ラテン 語のcirca=おおよそ、 dies=日の意味で、日周期ともいう)という。 覚醒と睡眠のリズムだけではなく体温や各種ホルモン分泌、自律神経活動にも、サーカディアンリズムが認められる。体温は日中上昇し、夜間は低い。 成長ホルモン は夜間の分泌が多く、睡眠中にタンパク合成が進む。ストレスに対応するコルチゾールは、夜半から分泌が増加し明け方に最高値になる。メラトニンは松果体から分泌されるホルモンで、光刺激があると合成が抑制され、光刺激がないときに分泌が促進する。

⑤ 眠りの状態は、脳波の変化を中心にして研究されており、睡眠の段階が明らかにされている。 寝床に入り、 まず出てくる眠りをノンレム睡眠という。 眠りの導入では、浅い睡眠(紡錘波の出現)がみられ、この眠りが段々深くなり、熟睡の状態になる。 この後の眠りは浅くなり、今度はレム睡眠という眠りに移行する。
1回のノンレム睡眠とレム睡眠のセットを睡眠周期 (睡眠単位) という。 一晩の眠りでは、睡眠周期が4~5回繰り返されている。 ノンレム睡眠からレム睡眠へ、そしてまたノンレム睡へ移行するときに体動がある。ノンレム睡眠の終わりに、中脳のインパルスは自発的に活性化される。ノンレム睡眠とレム睡眠のスイッチの切り替えは、橋の網様体のはたらきによる。

キーワード ① 声帯 ② 聴覚野 ③ ウェルニッケ野 ④ レム睡眠 ⑤ コルチゾール
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:教科書の第8章と第9章を読み返す。「話す」というのは、呼吸器系、消化器系の一部、筋骨格系および神経系の各器官が連動して、はじめて成り立つ。どのように連動しているのかを各自でまとめておく。「聞く」というのも「話す」と同様、いくつかの器官が関わる。主に聴覚器と神経系である。この連動が障害されると、感覚性失語、運動性失語を生じる。
睡眠に対し、目覚めているというのは意識がある状態である。この覚醒しているという意識の座は、脳幹である。脳幹は、発生学的に古い脳で、大脳という情報処理装置のスイッチを握っている。 脳幹の中央部には神経細胞体と神経線維が入り混じった脳幹網様体がある。中脳網様体から意識を目覚めさせるニューロンのインパルスが、視床を経て大脳皮質へ至る。これを脳幹網様体活系あるいは上行性覚醒系という。 睡眠と覚醒には、複数の神経系が関与しており、覚醒させる刺激と睡眠に向かう刺激が、大脳皮質の活動を調整している。
睡眠中の大脳は、その日にあったできごと、つまり、入ってきた情報をもう一 度呼び起こし、整理をして記憶するという作業を行っている。 眠りは、情報を整 理する時間で、個人差はあるが、6~8時間程度は必要といわれる。 睡眠をとらないと、記憶ができなくなり、覚醒中に情報整理を行うようになる。 これが幻覚である。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

8 生活行動「入浴」(皮膚とその付属物、粘膜のしくみ) 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、本コマ(第8回)は、「お風呂に入る」生活行動に必要な解剖生理について理解を深める。皮膚は個体を覆い、個体を外界から区別する重要な働きをしている。皮膚は三層に分かれており、外側から表皮、真皮、皮下組織である。表皮は皮膚表面を覆っており、重層扁平上皮からなる強力な壁である。真皮は外界からの情報をとらえる神経終末が多くある。これによって圧力や振動、温度、痛みを感知することができる。また真皮には汗腺や毛根、皮脂腺、立毛筋、血管がある。汗腺には温度調節に役立つ漿液性のエクリン腺と、交感神経の緊張に伴って分泌されるアポクリン腺がある。皮下組織には脂肪細胞が多くあり、断熱作用とクッションの働きがある。本コマ(第8回)では、お風呂に入る、あるいはシャワーを浴びる、顔を洗うといった、きれいにする、さっぱりするための生活行動から改めて皮膚の機能について理解を深め、皮膚の清潔を維持することの重要性について学修する。
コマ主題細目①:教科書「看護 形態機能学」第10章 p171-172
コマ主題細目②:教科書「看護 形態機能学」第10章 p172-175
コマ主題細目③:教科書「看護 形態機能学」第10章 p175-177
コマ主題細目④:教科書「看護 形態機能学」第10章 p177
コマ主題細目 ① 垢を落とす ② 皮膚と付属物 ③ 皮膚と粘膜 ④ 温まる
細目レベル ① 垢は皮膚の角化した細胞の死骸と脂腺、汗腺からの分泌物、さらに外部環境の塵芥が付着したものである。垢を落とす方法は、お風呂に入る、またはシャワーを浴びるなど文化背景や個人の好みによって異なっている。日本では入浴が一般的であるが、からだを洗ってきれいにする行為は、個人の好みによりその頻度や時間、方法はさまざまである。垢を落とさないと、熱の損失が妨げられて体温調節が障害される。また、不感蒸泄や発汗による熱の喪失、皮膚からの対流や伝導が障害され、不要な体熱を捨てることができなくなる。お風呂に入り垢を落とすことは、皮膚を清潔にし、皮膚の機能を保たせることと、外界と自分の境を刺激して自分を確認するという作業である。
② 皮膚は、皮下組織、真皮、表皮からなる。表皮の細胞はケラチンを多く含み、ケラチノサイトと呼ばれ、基底層、有棘層、顆粒層、角化層の4層からなる。最も深い基底層の基底細胞のみが細胞分裂を行っており、分裂してできた新しい細胞は上層の有棘細胞を経て顆粒細胞になり、最後は角化して剥離する。表皮の細胞が真皮や皮下組織中に入って形成した腺に汗腺、脂腺、乳腺がある。毛や爪は角質器である。角質には神経も血管も分布していない。発汗には、体温調節に関わる温熱性発汗、精神的緊張による精神性発汗、刺激物に対する味覚性発汗の3種類がある。汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺があり、いずれも真皮または皮下組織にあって導管を有し、アポクリン腺は毛包に、エクリン腺は皮膚表面に開口する。汗腺は交感神経の支配を受けているが、精神的刺激ではノルアドレナリン作動性、体温調節に関わる発汗はコリン作動性である。アポクリン腺は腋窩、鼻翼、乳輪、陰部、肛門に分布しており、粘稠性の汗を分泌する。アポクリン腺の汗は無臭であるが、皮膚表面で常在細菌により分解され臭う。主に精神的刺激で発汗する。エクリン腺は全身に分布し、漿液性の汗を分泌する。体温調節中枢が温刺激を受けるとエクリン腺の発汗を促進する。体温調節にはエクリン腺の活動が重要であり、汗腺の分泌口をふさがないように、清潔にしておく必要がある。手掌と足底のエクリン腺は、精神性発汗をするため、交感神経系の活動指標にもなる。脂腺は皮脂を分泌する外分泌腺で、毛包に開口する。皮脂は皮膚の表面に脂質の薄い膜をつくり、皮膚を滑らかにし、脂肪酸のためにやや酸性で殺菌作用もある。毛は手掌と足底を除いた皮膚のほぼ全面にあり、体表の保護や体温の維持に関わっている。
③ 皮膚は体表を覆い、粘膜は体腔の内面を覆う。皮膚と粘膜は連なっており、両者の構造は似ている。紅唇は皮膚と粘膜の移行部で、メラニン細胞がほとんどなく、血管の中の血液が透けて見えるため赤く、血流状況の観察ポイントとなる。皮膚血管の神経支配は交感神経による収縮であり、拡張性神経は分布していない。交感神経の緊張や血中アドレナリン、ノルアドレナリンの上昇は、皮膚血管を収縮させる。細動脈が収縮すると、皮膚の色は青くなる。ただし運動によって血中アドレナリン、ノルアドレナリンが上昇した場合は、皮膚血管は収縮しない。これは運動によって生じた熱を発散させるために、視床下部の体温調節中枢が皮膚血管の拡張を指令するからである。皮膚血管の拡張と発汗によって体温を調節することが優先されるのである。
④ 皮膚には熱さを感受する温点(38~43℃に反応)と、冷たさを感受する冷点(25~30℃に反応)が点在する。32℃程度の刺激では、温覚も冷覚も反応せず、45℃以上および10℃以下になると、いずれも痛覚が反応する。熱は温かい方から冷たい方へ伝導するため、湯につかると皮膚は温かくなる。一般に、入浴時は一時的に交感神経が緊張して皮膚血管が収縮し、血圧がやや上昇するが、次いで皮膚血管が拡張して末梢の血液分布が増加するため、血圧が下がるといわれている。ただし湯の温度によって反応は異なる。温まることによって皮膚血管が拡張し、血圧が下がることは、緊張がとれてリラックスをもたらすことになる。入浴は皮膚を清潔にするとともに、社会的皮膚ともいえる衣服をとった裸の状態で、からだを緊張から解放する機会である。
キーワード ① 垢 ② 皮膚 ③ 粘膜 ④ 温点 ⑤ 冷点
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習課題として、教科書p.171-177を熟読し、わからない部分を明確にしておく。
復習課題として、皮膚の構造と機能について理解する。皮膚は三層に分かれており、表皮、真皮、皮下組織からなる。表皮は重層扁平上皮からなる強力な壁である。真皮は外界からの情報をとらえる神経終末が多くあり、圧力や振動、温度、痛みを感知できる。また真皮には汗腺や毛根、皮脂腺、立毛筋、血管がある。汗腺にはエクリン腺とアポクリン腺がある。皮下組織には脂肪細胞が多くあり、断熱作用とクッションの働きがある。入浴、シャワー、洗顔などの生活行動の意義として皮膚の清潔を維持することの重要性を理解する。教科書p.171-177を読み返す。
本コマが科目の最終回となるため、本科目の疑問を解決しておく。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
内部環境の恒常性と物質の流通について 血液の成分について述べることができる(★)血液の恒常性維持について述べることができる(★★)白血球の作用(食作用・免疫)について説明できる(★★)止血について説明できる(★★)血管の種類と特徴について説明できる(★)リンパ管とリンパ節について説明できる(★)心臓の構造について説明できる(★)刺激伝導系について説明できる(★)心周期について説明できる(★★★)血圧のしくみについて説明できる(★★)血圧の調節について説明できる(★★★) 血液、血管、心臓、心周期、刺激伝導系、血圧 13 1
恒常性維持のための調節機構・神経性調節 「見る」「聞く」「におう」「触れる」のステップについて述べることができる(★)中枢神経系に属するものを挙げることができる(★)末梢神経系に属するものを挙げることができる(★)中枢神経系の機能について説明できる(★★)大脳皮質の機能局在について説明できる(★★)末梢神経系の機能について説明できる(★★)自律神経系についてどこにどのように作用するのか述べることができる(★★)神経細胞膜の興奮の伝わり方を説明できる(★★★) 大脳、小脳、脳幹、間脳、脊髄、脳神経、脊髄神経、自律神経 13 2
恒常性維持のための調節機構・液性調節 ホルモンの種類を挙げることができる(★)全身のホルモンの産生部位を挙げることができる(★)ホルモンの作用機序を説明できる(★★)フィードバック機構について説明できる(★★)成長・代謝の苦情性を保つホルモンを挙げることができる(★)生殖に関するホルモンを挙げることができる(★)免疫に関するホルモンを挙げることができる(★)体液量の調節について説明できる(★★)血糖の調節について説明できる(★★)血中カルシウムの調節について説明できる(★★) 内分泌腺、ホルモン、フィードバック機構、視床下部、下垂体、甲状腺、上皮小体、膵臓、副腎 12 3
生活行動「食べる」 摂食中枢、渇中枢について説明できる(★)。
食行動(食物を口まで運ぶ、食物の性質の判断、口の準備)について説明できる(★)。
咀嚼のしくみ(歯、舌、唾液)を説明できる(★)。
嚥下のしくみ(口腔相、咽頭相、食道相)を説明できる(★★)。
消化管の構造(名称、位置、筋層)と消化液の作用、消化液分泌の調節のしくみを説明できる(★★★)。
栄養分の吸収(小腸の絨毛、門脈、肝臓、リンパ管)のしくみを説明できる(★★)。
食行動、咀嚼、唾液腺、嚥下の3相、蠕動運動、消化管、消化腺、消化酵素、絨毛 13 4
生活行動「息をする」 呼吸運動に関与する筋肉とその支配神経を挙げることができる(★)上気道・下気道について気道の名称と実際の位置を示すことができる(★)胸腔内圧について説明できる(★★★)肺胞上皮細胞について機能を説明できる(★)肺気量について説明できる(★★)肺の左右差、主気管支の左右差について説明できる(★)外呼吸と内呼吸の違いを示すことができる(★★)血液によるガスの運搬について説明できる(★★★) 呼吸運動、横隔膜、気道、肺気量、外呼吸、内呼吸、ガスの運搬 13 5
生活行動「排泄」 排尿機構のしくみを説明できる(★)。
腎臓が尿を生成するしくみを説明できる(★★)。
腎臓での体液量調節の機構について説明できる(★★★)。
排便機構のしくみを説明できる(★★)。
トイレに行くという生活行動を説明できる(★)。
尿意、膀胱内圧、移行上皮、自律神経、尿道括約筋、排尿中枢、腎臓、便意、直腸内圧、肛門括約筋 12 6
生活行動「話す・聞く」「眠る」 発声に関わる器官を挙げることができる(★)声を出すときにどの器官系がどのようにかかわっているか器官名を挙げて説明できる(★★★)聞くときにどの器官系がどのようにかかわっているか器官名を挙げて説明できる(★★★)感覚性失語・運動性失語について説明できる(★★)サーカディアンリズムについて説明できる(★★)レム睡眠・ノンレム睡眠についてそれぞれの特徴を挙げることができる(★★)睡眠パターンについて説明できる(★★) 発声、声門、大脳皮質、ウェルニッケ野、ブローカー野、サーカディアンリズム、レム睡眠、ノンレム睡眠 12 7
生活行動「入浴」 垢と垢を落とす方法について説明できる(★)。
皮膚とその付属物について説明できる(★★)。
皮膚と粘膜のしくみについて説明できる(★)。
皮膚にある温点、冷点について説明できる(★★★)。
温まることによる心身への効果を説明できる(★★)。
入浴などの清潔を保持する生活行動について説明できる(★)。
表皮、真皮、皮下組織、重層扁平上皮、汗腺、皮脂腺、脂肪組織、清潔行動 12 8
評価方法 期末試験100%
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 菱沼典子『看護形態機能学 生活行動からみるからだ(第4版)』(日本看護協会出版会),3,410円(税込)
参考文献 各回で提示
実験・実習・教材費 なし