区分 専門基礎科目-人体の構造と機能
ディプロマ・ポリシーとの関係
コミュニケーション能力 アセスメント能力 判断力
創造力 実践力 自己研鑽力
カリキュラム・ポリシーとの関係

カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ

科目の目的
科学的根拠に基づいた臨床判断に基づき質の高い看護実践の習得を目指すためには、解剖生理学・疾病治療論などの専門基礎科目の知識と看護学を関連付けて学習することが重要である。本科目のねらいは、人体の構造・機能、病態生理、疾病治療についての知識を看護学に関連付けて教授することで、解剖生理学がどのように人間の生活行動と関連するのか、病態生理や疾病がどのように対象者への看護と関連するのかを理解させる。
到達目標
1. 消化管、消化管の付属腺、循環器系、呼吸器系、内分泌系、脳神経系、筋骨格系、および女性生殖器の構造と機能について理解できる
2. 系統別に代表的な疾病について、症状・徴候の病態生理を理解できる
3. 疾病の症状・徴候・看護を理解するために必要な解剖生理を理解できる
4. 解剖生理学の基礎知識を人間の生活行動や疾病・看護に関連して習得できる

科目の概要
本科目は、消化器系、循環器系、呼吸器系、脳神経系、筋骨格系、内分泌代謝、生殖器系の系統別に展開していくことを基本とし、それぞれの解剖生理がどのように人間の生活行動と関連するかを学習したのちに、それぞれの代表的疾患における病態生理を学習し、対象への看護の理解につなげる科目である。
まず系統別に、人体の正常な構造と機能を学修した後、これらの形態や生理機能に異常な変化を生じることで、症状や徴候といった病的な状態が引き起こされることを学修する。そこからさらに、ある疾患を持つ患者の治療や援助にどのようにつなげるかを考える根拠を知ることができる。よって、解剖生理学から、病態生理学、看護へとリレーすることによってそれぞれを関連付けて学修する。

科目のキーワード
解剖生理学、病態生理学、代表的疾患、、症状、徴候、看護
授業の展開方法
解剖生理学では、教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」とコマ用オリジナル配布資料を使って授業を行う。臓器間の位置関係を理解するために、等身大の模型を用いる。模型を観察し、取り出し可能な臓器を出し入れすることにより、三次元的な立体構築がイメージできるよう促す。病態生理学では、教科書「病態生理学 疾病の成り立ちと回復の促進②」とコマ用オリジナル配布資料を使って授業を行う。また、看護師としての実践で得た経験や事例をもとに、対象の看護を理解するために必要な形態機能と疾病について講義を進める。以上の知識を踏まえた上で、実際の看護ではどのような援助が必要なのかを学修する。
オフィス・アワー
(準備中)
科目コード BE11
学年・期 1年・後期
科目名 看護のための形態機能と疾病
単位数 4
授業形態 講義
必修・選択 必修
学習時間 【授業】60h 【予習・復習】180h
前提とする科目 人体の構造と機能を学ぶ科目の基盤となる科目である。体の仕組みと生活
展開科目 人体の構造と機能を学ぶ科目の基盤となる科目である。形態機能学、微生物学、生化学、栄養学、生活援助技術、フィジカルアセスメント
関連資格 看護師,保健師,養護教諭
担当教員名 西由紀・原好恵
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 本科目の総論 科目の中での位置付け 本科目は、消化器系、呼吸器系、循環器系、脳神経系、筋骨格系、皮膚、内分泌代謝、生殖器系の系統別に展開していくことを基本とし、それぞれの解剖生理がどのように人間の生活行動と関連するかを学習したのちに、それぞれの代表的疾患における病態生理・疾病治療を学習し、対象への看護の理解につなげる科目である。
科学的根拠に基づいた臨床判断に基づき質の高い看護実践の習得を目指すためには、解剖生理学・疾病治療論などの専門基礎科目の知識と看護学を関連付けて学習することが重要である。本科目のねらいは、人体の構造・機能、病態生理、疾病治療についての知識を看護学に関連付けて教授することで、解剖生理学がどのように人間の生活行動と関連するのか、病態生理学や疾病治療論がどのように対象者への看護と関連するのかを理解させることである。
本コマでは本科目の進め方について解説する。上記に示したように系統別に授業を展開していくことになる。4回で1つの系統を学修する。すなわち、解剖生理学、代表的疾患における病態生理・疾病治療、対象への看護、その系統のまとめの順に展開する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p2-4, p27-28
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p55-62
コマ主題細目③:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p2-4
コマ主題細目 ① 解剖生理 ② 代表的疾患 ③ 看護
細目レベル ① 解剖生理学は、人体を正常な臓器の構造と機能を系統立てて理解し、学ぶ分野である。解剖生理学に加え、生化学、栄養学、薬理学、病理学、病態生理学、微生物学等の知識を総動員することにより、健康・疾病・障害に関する観察力、判断力を養い、臨床で活用可能なものとする。また、臨床において看護を実施する際に、様々な場面に遭遇する。その時自らの知識により的確かつ迅速に対応するには、解剖生理学による基礎知識が必須となる。
すなわち、人体の臓器の正常な構造や機能、その位置関係を理解することは、医療従事者としての専門知識と技術を習得する上での盤石な礎となるのである。
本科目では、消化器系、呼吸器系、循環器系、脳神経系、筋骨格系、皮膚、内分泌代謝、生殖器系の解剖生理学を学修する。

② 身体を構成している細胞・組織・器官が正常な形態を保ち、的確に生理機能を果たすことで、私たちは健康な生活を営んでいる。これらの形態や生理機能に異常な変化が生じることで、 症状や徴候といった病的な状態が引きおこされる。病的な状態の身体におきている異常な変化を研究し、疾病の原因やなりたち進展など, 疾病の背後にある問題を学修する。 本科目では、胃がん・大腸がん、糖尿病、心不全、慢性閉塞性肺疾患・誤嚥性肺炎、脳血管障害、大腿骨頸部骨折および乳がん・月経異常について学ぶ。
これらの代表的疾患を学ぶことで、失われた機能を補填するにはどうすればよいかを知り、治療や援助にどうつなげるかを考える根拠を知ることができる。これは、疾病の理解だけでなく、患者への援助を行う際の根拠となるため、看護師が病態生理学を理解し、その知識を持つことは非常に重要である。

③ 本科目では、系統別に、人体の臓器の正常な構造や機能(形態機能)を理解し、それぞれの形態や機能に異常な変化が生じた状態や、病的な状態の身体に起きている異常な変化について、代表的疾患の病態生理を学修する。代表的疾患は、どこに、何による、どのような異常が生じているのかという視点を持ちながら、各臓器の構造と機能について理解を深める視点が重要となる。このような学修を通して、看護の対象である人のからだや生活行動を理解するために必要な基礎的知識を習得し、正常な形態やその機能および疾患などで異常な状態にある対象者への看護ケアに繋げていく視点を学修する。人間の健康の保持・増進・回復を目標とする看護を学修するための基礎的知識として、非常に重要な科目であることを理解する。
キーワード ① 解剖生理学 ② 病態生理学 ③ 疾病治療 ④ 看護 ⑤ 生活活動
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」2ページから4ページを読む。人体の構造と機能についてなにを学び、どのように学ぶかを理解する。教科書27ページから28ページを読む。そのほか、教科書55ページから62ページを読む。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」2ページから4ページを読む。
復習:人体の階層性についてまとめる。また、「解剖生理学 人体の構造と機能①」56ページの表を確認する。器官が、系統別にまとめられている。ホメオスタシス(内部環境・外部環境)について「解剖生理学 ワークブック」の14.15ページの問題を解く。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」2ページから4ページを読み返し、「病態生理」、「症状」、「徴候」、「症候」のワードについてまとめておく。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

2 消化器系の構造・機能①(口腔~胃) 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、本コマ(第2回)から4回にわたって、消化器系の形態機能と疾病について学修する。
私たちは食物を摂取することで、活動のエネルギーや身体の構成に必要な物質を得ている。消化器系は、食物を体内へ取り込み、不要物を体外へ送り出す働きをする臓器の集まりである。消化器系は、摂取された食物が通過する消化管(口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肛門)と、消化を助ける付属器(歯、舌、唾液腺、肝臓、胆嚢、膵臓)からなる。口から取り入れた食物は、胃・小腸に移送される間に、消化管内に分泌される消化液中の消化酵素の作用を受けて消化される。消化液は、胃や小腸などの消化管の細胞から分泌されるだけでなく、唾液腺や膵臓、肝臓からも分泌される。本コマ(第2回)では口腔から胃までの構造と機能を学修する。ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p64-72
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p72-75
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p75-76
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p76-78
コマ主題細目⑤:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p78-82
コマ主題細目 ① 口腔 ② 咽頭 ③ 食道 ④ 胃の構造 ⑤ 胃の機能
細目レベル ① 口腔の表面は、重層扁平上皮の粘膜で覆われ、口腔前庭と固有口腔に区分される。口腔の天井である口蓋は、前2/3が骨を含む硬口蓋で、後1/3は筋肉性の軟口蓋である。舌には4種類の乳頭(糸状乳頭・葉状乳頭・茸状乳頭・有郭乳頭)がある。舌粘膜も重層扁平上皮であり、味の受容体である味細胞を含む味蕾が点在している。口腔には唾液を分泌する大唾液腺(耳下腺・舌下腺・顎下腺)が3対ある。それぞれの導管が口腔のどこに開口するか学修する。また、唾液の成分とその作用についても理解する。唾液分泌の調節には交感神経も関与するが、主に副交感神経の支配を受けて反射的に行われる。歯では、乳歯と永久歯の本数の違い、咀嚼では、咀嚼筋(側頭筋・咬筋・内側翼突筋・外側翼突筋)の種類とその作用について学修する。
② 咽頭は、鼻腔・口腔・喉頭の後ろにあり、口腔から食道に抜ける食物路と、鼻腔から喉頭に抜ける呼吸路との交差点である。咽頭は、①上咽頭(咽頭鼻部)、②中咽頭(咽頭口部)、③下咽頭(咽頭喉頭部)の3つに分けられる。通常、喉頭蓋は開いており、気道を確保するように軟口蓋と喉頭蓋が反射的な動きをしている。しかし、食塊を飲み込むときは、軟口蓋が背側に動いて鼻腔と耳管への逆流を防止し、同時に喉頭蓋によって気管入口がふさがれ、声門の閉鎖と呼吸の停止が起こる。これによって食塊が食道へ送り込まれ、気管は食物の通路から遮断されて、誤嚥を防ぐことができる。咀嚼された食物が、口腔から咽頭を通って運ばれ、飲み込まれる過程(嚥下)の3相(口腔相、咽頭相、食道相)を理解する。
③ 食道では、3ヶ所の生理的狭窄部について図をみながら確認する。咽頭に続く食道の入口(輪状軟骨の下縁)、大動脈弓によって圧迫される部位(気管分岐部の後ろ)、横隔膜貫通部であり、食塊の停滞などの問題が起こりやすい。筋層が口側では骨格筋であるが、次第に平滑筋に置き換えられていくことを理解する。食道と気管の位置関係も再度確認する。食道の口側3-4㎝の部位の輪状咽頭筋は強く収縮しており、上部食道括約筋と呼ばれる。食道の下端、胃との接合部から2-5㎝の部位では食道輪状筋が収縮しており、下部食道括約筋として機能している。上部食道括約筋と下部食道括約筋は、食塊の移送に大きく関与する。食道には消化吸収の機能はないが、口腔で咀嚼された食物を胃に送り、それを逆流させないことが食道の大きな役割である。
④ 胃では、各部の名称(噴門、胃底、胃体、幽門、小弯、大弯)について図を見ながら確認する。胃壁の構造は機能を理解する上で重要である。胃体部にある胃底腺は1日に1~2Lの胃液を分泌する。胃腺を構成する3種類の細胞(壁細胞:塩酸を分泌する、副細胞:粘液を分泌する、主細胞:ペプシノゲンを分泌する)、幽門部にある幽門腺(ガストリン:胃酸分泌を促進する消化管ホルモン)について理解する。胃の筋層は平滑筋であり、他の消化管と同様に、内層の輪状筋と外層の縦走筋の2層からなっている。しかし、噴門から胃体部までには最内層に斜走筋層があり、3層となっている。塩酸を含むため胃液のpHは1~2の強酸性であり、食物とともに胃に入った細菌を殺菌する働きがある。胃液の分泌調節は、刺激の作用部位によって3相(頭相、胃相、腸相)に分けられる。胃の蠕動運動によって、胃の内容物を胃液と混和するとともに粉砕し、かゆ状液の消化が促進される。
⑤ 胃に食塊が入ると、反射的に胃壁は弛緩し、胃内圧をあまり高めずに胃内容積を増やす。しばらくすると、蠕動運動が始まる。胃内の食塊は攪拌され、胃液と混和されて糜汁となる。胃運動は自律神経によって調節されている。胃の蠕動運動はアウエルバッハ神経叢にあるニューロンによって調節されるが、このニューロンはさらに迷走神経による調節を受ける。食塊は胃の消化作用によって細かくなり、固形物の直径が1㎜程度になってはじめて十二指腸に送られる。十二指腸への排出は液体では比較的速い(10分ほど)が、固形物では遅く3~6時間を要する。栄養素別にみると、胃から排出されるまでにかかる時間は脂肪が最も長い。胃から十二指腸へのかゆ状液の排出は、幽門部の内圧上昇による排出促進と、十二指腸からの神経性刺激およびホルモン性刺激による抑制によって調節される。胃底腺に存在する3種類の細胞からそれぞれ分泌液が産生される。そのほか、幽門部からはガストリンが分泌される。胃液はpH1~2の強い酸性で、主成分は、塩酸、消化酵素、粘液で、各種電解質なども含まれる。壁細胞から分泌される塩酸は、食物とともに胃に入った細菌を殺菌するはたらきがある。また胃酸は、タンパク質を変性させると同時に、主細胞が分泌するペプシノゲンに作用して、これを活性型のペプシンにかえる。ペプシンはタンパク質を分解してポリペプチドにする。さらに胃酸は、十二指腸に排出されると、十二指腸粘膜を刺激してセクレチンという消化管ホルモンを分泌させ、膵液の分泌を促進するとともに、それ以上の胃液の分泌を抑制する。胃液分泌調節は、自律神経系、ヒスタミン、消化管ホルモン(ガストリン、セクレチン、GIP)などにより調節される。
キーワード ① 唾液腺 ② 味蕾 ③ 生理的狭窄部 ④ 胃底腺 ⑤ 蠕動運動
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:「系統看護学講座 解剖生理学」p.64-82を熟読し、わからない部分について明らかにしておく。
復習:口腔~胃までを復習する。口腔では、舌(舌乳頭、味蕾)、唾液腺、歯(乳歯と永久歯)、咀嚼(咀嚼筋)について復習する。咽頭は、消化器系と呼吸器系を兼務する器官であること、食道の構造と合わせて嚥下の3相について復習する。食道では、構造上の特徴(生理的狭窄部)について図をみて確認する。胃では、各部位の名称について復習する。胃壁の構造と機能(内側から粘膜、粘膜下組織、筋層、漿膜)、胃底腺と幽門腺すなわち、粘膜上皮(円柱上皮)、胃底腺(壁細胞、副細胞、主細胞)、幽門腺(ガストリン分泌)について復習する。消化における胃の役割は、①食べた物を一時的に収納して十分に消化するとともに少しずつ腸へ送ること、②胃酸による殺菌作用、酵素の活性化、鉄のイオン化、③ペプシンによるタンパク質の消化、④粘液分泌による胃壁の保護、⑤消化管ホルモンの一種であるガストリンの分泌による胃液分泌促進、⑥内因子放出によるビタミンB12の吸収促進であることを復習する。「系統看護学講座 解剖生理学」p64-82を読み返し、「系統看護学講座準拠 解剖生理学ワークブック」16~20ページを解答し、復習する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

3 消化器系の構造・機能②(小腸~大腸) 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第2回から4回にわたって、消化器系の形態機能と疾病について学修する。
私たちは食物を摂取することで、活動のエネルギーや身体の構成に必要な物質を得ている。消化器系は、食物を体内へ取り込み、不要物を体外へ送り出す働きをする臓器の集まりである。摂取された食物が通過する消化管(口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肛門)と、消化を助ける付属器(歯、舌、唾液腺、肝臓、胆嚢、膵臓)からなる。本コマ(第3回)では小腸・大腸の構造と機能を学修する。小腸は、胃の幽門に続いており、長く軟らかい管状の器官である。明確な境界はないが、十二指腸、空腸、回腸に区分され、右下腹部で大腸につながる。大腸は、回盲弁から肛門までの約1.5mの管状の器官で、盲腸、結腸、直腸、肛門から成り立っている。結腸はさらに4部に分けられ、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸を区分する。小腸は消化・吸収における最も重要な部分であり、すべての栄養素の消化と吸収がここで行われる。また、大腸運動および分泌機能と排便機構について学修する。ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p82
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p82-87
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p87-90
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p90-93
コマ主題細目⑤:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p94-95
コマ主題細目 ① 十二指腸 ② 小腸の構造・機能 ③ 栄養素の消化と吸収 ④ 大腸の構造 ⑤ 大腸の機能
細目レベル ① 胃から送られてきた糜粥は、腸液、胆汁、膵液の働きによって消化され、ほとんどの栄養分が吸収される。そして、その残りかす(残渣)は大腸に送られる。十二指腸は消化の中心的役割を担っており、胆汁と膵液を排出する大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)とオッディ括約筋の構造を理解することは機能の理解にもつながる。十二指腸は後腹壁に固定されているが、空腸と回腸は腹膜腔にあり、可動性で、大腸が囲む腔の中に収まっている。十二指腸下行部の中央辺りに、総胆管と主膵管がY字状に合流して、胆汁と膵液が十二指腸に流入する部位があり、十二指腸の内側の開口部を大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)という。ここには、輪状の平滑筋(オッディ括約筋)があり、胆汁と膵液の流入を調節している。
② 空腸は輪状ヒダが発達していることから、消化の中心的な役割を担っている。また、回腸下部ではパイエル板が発達している。パイエル板は集合リンパ小節であり、消化管の内容物に対する免疫反応の場となっている。小腸粘膜は、輪状ヒダをもち、粘膜の表面には一面に絨毛がある。さらに絨毛の上皮細胞には無数の微絨毛があるため、小腸粘膜の表面積は著しく広いものとなる。小腸の分泌液(腸液)は1日に約3L分泌される。十二指腸からの分泌液はアルカリ性であり、胃酸による消化作用から十二指腸を保護する役割がある。一方、小腸全体に分布する腸腺からの分泌液は、ほぼ純粋な細胞外液で、弱アルカリ性である。腸内の消化産物を希釈し、その消化・吸収を促進する。
小腸壁の平滑筋の収縮・弛緩によって、かゆ状液が消化液と混和されるとともに、徐々に大腸へ向かって移送される。小腸壁の運動は、胃と同様に筋原性の活動電位が基本リズムとなる。この活動電位は、筋層の間にあるアウエルバッハ神経叢による調節を受け、さらに自律神経と消化管ホルモンによってリズムが修飾される。小腸の運動は、振子運動(縦走筋の働きによる運動で、粥状液を行ったり来たりさせる)、分節運動(輪走筋による運動で、粥状液を混和させる)、蠕動運動(主として輪走筋による運動で、粥状液を大腸方向へ移動させる)の3種類に分けられる。基本的に小腸の運動は小腸平滑筋自体の性質や壁内神経叢によって調節される。小腸運動はさらに副交感神経の興奮で亢進し、交感神経の運動で抑制される。蠕動音は、腹壁に聴診器をあてれば聞き取ることができ、腸が正常に動いているか否かの指標となる。

③ 小腸において糖質、タンパク質、脂肪などの各栄養素は、膵液、小腸上皮細胞に含まれる消化酵素の働きにより、それぞれグルコースなどの単糖類、アミノ酸、脂肪酸とモノグリセリドなどの最終分解産物にまで分解される。十二指腸に流入する胆汁は消化酵素を含まないが、脂肪の消化に重要である。十二指腸に分泌される膵液には、酸性の胃液を中和する重炭酸イオンと多くの消化酵素が含まれている。十二指腸壁に酸性のかゆ状液が接触すると、セクレチンが分泌される。セクレチンは膵臓に作用して重炭酸イオンに富んだ膵液を分泌させる。一方、十二指腸に、アミノ酸やペプチドなどのタンパク質分解産物や、脂肪が触れると、コレシストキニンが分泌され、消化酵素に富んだ膵液の分泌を刺激する。
④ 大腸は右下腹部の盲腸から結腸に続く。結腸は、右腹部の上行結腸、上腹部の横行結腸、左腹部の下行結腸、下腹部にまわるS状結腸と続き、骨盤内の直腸となって肛門に開く。盲腸は、回盲弁より下にある短い袋状の部分で、腹腔後壁に癒着している。虫垂は、盲腸の左後壁から出る鉛筆くらいの太さの突起である。虫垂の粘膜にはリンパ組織が豊富にあり、免疫系の一部をなす。青年期には細菌感染により虫垂炎を起こしやすく、マックバーニー点(臍と右上前腸骨棘を結ぶ線上の臍から2/3の位置)に圧痛を生じる。結腸は4部に分けられ、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸を区分する。結腸のうち、上行結腸と下行結腸は後腹壁に接しており、結腸間膜をもたない。また、結腸の外観上の特徴として、結腸ヒモ、腹膜垂、および結腸膨起が挙げられる。結腸の内側には小腸のような絨毛はない。ほとんどの栄養素が大腸に到達する前に吸収されているからである。その代わり、粘液を産生する杯細胞がたくさん存在している。粘液は潤滑剤として働き、便が消化管末端である肛門の方向へ移動するのを助けている。大腸の壁は、小腸と同じように粘膜と平滑筋層を備えているが、少し違いがある。大腸の粘膜には輪状ヒダも腸絨毛もなく、腸腺だけが備わっている。平滑筋層は内輪・外縦の2層からなるが、結腸では外縦の筋が3か所に集まって結腸ヒモをつくる。
⑤ 大腸では、消化はほとんど行われない。栄養素のほとんどが小腸で吸収されるため、大腸では水と電解質のみが吸収される。しかし、大腸の吸収能は高いため、肛門から大腸内に挿入して薬剤を吸収させる坐薬などに利用される。大腸の運動は主として分節運動であり、内容物の移動速度は遅い。ただし食事の後には大腸の蠕動運動が亢進し(胃大腸反射)、結腸の内容を急激に直腸に送る(大蠕動)。大蠕動では、横行結腸からS状結腸にかけての広範囲の平滑筋が同時に収縮して、内容物は一気に直腸へ運ばれる。大腸には、小腸で十分に吸収されなかった水分を吸収し、消化されなかった食物残渣を便に形成して体外へ排泄する働きがある。口から摂取した食物は、約4時間で盲腸に達する。食物の残渣は大腸に12~24時間以上とどまっている。大腸内には大腸菌や腸球菌、ビフィズス菌など、1000種類以上の細菌が常在している(これらの細菌群は腸内細菌叢とよばれる)。大腸自体は消化酵素を産生しないが、大腸内の細菌がいくつかのビタミン(ビタミンK、各種のビタミンB複合体)を合成する。このように大腸は、食物残渣からこれらのビタミン、ある種の電解質、水分を吸収し、便を形成する。腸内細菌によるビタミンKの産生は、1日の必要量をまかなえるほどの量に達しており、重要である。直腸に糞便が送り込まれ直腸壁が伸展されると、その情報が大脳に伝えられて便意を催すとともに排便反射が起こる。すなわち、直腸壁が伸展し、その情報が脊髄の排便中枢に伝わると、反射的にS状結腸、直腸が収縮し、内肛門括約筋と外肛門括約筋が弛緩する。排便反射の中枢は仙髄にあるが、通常は大脳皮質からの神経線維により抑制されている。大脳皮質からの抑制がなくなると、副交感神経である骨盤内臓神経を介して直腸の収縮と内肛門括約筋の弛緩を生じる。このとき、外肛門括約筋は一時的に収縮するが、意志によって排便開始を決めると、陰部神経を介して弛緩がおこる。息を吸い込んだ状態でとめ、腹筋を収縮させて腹腔内圧を上昇させることで排便は促進される。
キーワード ① ファーター乳頭 ② 輪状ヒダ ③ 腸絨毛 ④ 回盲弁 ⑤ 肛門括約筋
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:「系統看護学講座 解剖生理学」82~95ページを熟読し、わからない部分を明らかにしておく。
復習:小腸と大腸について復習する。小腸は、消化・吸収における最も重要な部分であり、すべての栄養素の消化と吸収がここで行われる。すなわち、小腸において糖質、タンパク質、脂肪などの各栄養素は、膵液、小腸上皮細胞に含まれる消化酵素の働きにより、それぞれグルコースなどの単糖類、アミノ酸、脂肪酸とモノグリセリドなどの最終分解産物にまで分解される。十二指腸は消化の中心的役割を担っており、胆汁と膵液を排出する大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)とオッディ括約筋の構造を理解する。空腸は輪状ヒダが発達していることから、消化の中心的な役割を担っている。また、回腸下部ではパイエル板が発達している。パイエル板は集合リンパ小節であり、消化管の内容物に対する免疫反応の場となっている。虫垂の粘膜にはリンパ組織が豊富にあり、免疫系の一部をなす。青年期には細菌感染により虫垂炎を起こしやすく、マックバーニー点に圧痛を生じる。結腸は4部に分けられ、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸を区分する。結腸のうち、上行結腸と下行結腸は後腹壁に接しており、結腸間膜をもたない。また、結腸の外観上の特徴として、結腸ヒモ、腹膜垂、および結腸膨起が挙げられる。直腸膨大部、肛門管および直腸静脈叢について復習する。肛門では、内肛門括約筋と外肛門括約筋について排便の機序と合わせて復習する。
「系統看護学講座 解剖生理学」p82-95を読み返し、「系統看護学講座準拠 解剖生理学ワークブック」21~25ページを解答し、復習する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

4 消化器系の構造・機能③(膵臓・肝臓・胆嚢、腹膜) 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第2回から4回にわたって、消化器系の形態機能と疾病について学修する。
私たちは食物を摂取することで、活動のエネルギーや身体の構成に必要な物質を得ている。消化器系は、食物を体内へ取り込み、不要物を体外へ送り出す働きをする臓器の集まりである。摂取された食物が通過する消化管(口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肛門)と、消化を助ける付属器(歯、舌、唾液腺、肝臓、胆嚢、膵臓)からなる。本コマ(第4回)では膵臓・肝臓・胆嚢の構造について学修し、それらの機能について詳しく見ていく。また、腹膜の構造と機能を学修する。膵臓の大部分は、膵液をつくる外分泌部からなるが、その間にインスリンなどのホルモンを出す膵島(ランゲルハンス島)すなわち内分泌部がある。肝臓の機能は、代謝機能、解毒・排泄機能、胆汁の産生、貯蔵機能、胎児期の造血機能である。腹部内臓をおおう漿膜は腹膜とよばれ、腹部の内臓は腹膜との位置関係により分類される。臓器の大部分が腹膜によって包まれているものは腹膜内器官、腹腔後壁に埋め込まれているものは後腹膜器官である。ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p96-97
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p97-102
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p97-99
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p102-105
コマ主題細目 ① 膵臓 ② 肝臓 ③ 胆嚢 ④ 腹膜
細目レベル ① 膵臓は腹腔後壁にある。膵頭は十二指腸のC字にはまり込み、膵体は左側に向かってのびて、膵尾は脾臓に達する。膵頭、膵体、膵尾について図をみながら確認する。導管は、主膵管を形成し、膵頭の内部で総胆管と合流し、大十二指腸乳頭に開口する。主膵管の走行と総胆管と合流し、大十二指腸に開口することも押さえる。食物中の糖質、脂肪、タンパク質は、膵臓で生成される膵液によって消化される。膵臓の大部分は、消化酵素に富む膵液をつくる外分泌部からなるが、その間にインスリンやグルカゴンなどのホルモンを出す膵島(ランゲルハンス島)、すなわち内分泌部が散在する。すなわち、膵臓は消化器系と内分泌系をあわせ持つ器官であることを理解する。
② 肝臓は、重さ1~1.5㎏ほどの人体で最大の実質臓器で、上腹部のやや右寄りにあり、横隔膜の直下に付着する。肝臓に出入りする血管は3種類あり、門脈、固有肝動脈、肝静脈が肝門を出入りする。肝鎌状間膜により右葉と左葉に区分されるが、臨床的にはカントリー線によって区分される。肝臓の組織は肝小葉という単位からなる。肝小葉では肝細胞とその間を通る洞様毛細血管が放射線状に並んでいる。血液は周辺のグリソン鞘から中心静脈に向かって流れ、胆汁は周縁部に向かって流れる。すなわち、流れの向きがそれぞれ逆である。肝臓の腹膜腔内における位置、周辺の器官との位置関係を理解する。肝門を出入りするものは何か、肝臓の区域について解剖学的と臨床的区分では違いがあること、肝小葉において血液と胆汁の流れが異なることを理解する。肝臓は体内におこる代謝の中枢臓器といえる。肝臓の機能には、不要・有害な物質を胆汁中に分泌し、腸管を通して排泄するという重要な役割(代謝機能)がある。特に、グリコーゲンの合成と分解については、血液中のグルコース濃度(血糖値)が高い時には、膵臓から分泌されるインスリンの刺激に応じて肝細胞がグルコースを取り込み、グリコーゲンにかえて肝臓内に貯蔵する。血糖値が低下すると、膵臓から分泌されるグルカゴンに反応してグリコーゲンを分解してグルコースに変え、血液中に放出して血糖値を正常範囲に維持する。また、血漿タンパク質の生成、脂質代謝、ホルモン代謝の機能もあることを理解する。肝臓の他の機能としては、解毒・排泄機能、脂肪の消化に重要な役割を果たす胆汁の産生、貯蔵機能、胎児期の造血機能が備わっていることを理解する。
③ 胆嚢は肝門の下面の右前方にあるナス形の袋である。胆嚢から出た胆嚢管と肝臓から出た肝管は、合流して総胆管となる。これがさらに主膵管と合流して大十二指腸乳頭に開口する。胆嚢は、胆汁を一時的に貯蔵し、水分を吸収して濃縮する。コレシストキニンの作用により、胆汁が十二指腸に排出される。肝臓でつくられた胆汁は、総肝管から胆嚢管をへて胆嚢に入る。肝臓から出た胆汁は胆嚢で10~20倍に濃縮されて緑褐色となる。胆汁は1日に600-1200ml排出される。上部消化管で食物が消化され始め、脂肪が十二指腸へ流入すると、胆嚢ではリズミカルな収縮によって胆汁の排出運動が始まる。しかし、効果的に排出するためにはオッディ括約筋の弛緩が必要であり、胆嚢からの胆汁排出は、頭性分泌相と腸性分泌相によって調節されている。
④ 腹腔の内臓の大部分は、漿膜により覆われている。腹部内臓を覆う漿膜は、腹膜とよばれる。臓器の表面を覆う腹膜(臓側腹膜)は、臓器に血管などが出入りする場所の周囲で折り返して、腹壁の内面を覆う腹膜(壁側腹膜)に続く。臓側腹膜と壁側腹膜にはさまれた空間は腹膜腔とよばれ、少量の液を含んでいて、臓器の動きをなめらかにしている。腹部消化管の多くの部分(胃、空腸、回腸、横行結腸、S状結腸)では、臓側腹膜と壁側腹膜が直接つながるのではなく、腸間膜が間にはさまっている。腹部の内臓は、腹膜との位置関係により分類される。臓器の大部分が腹膜によって包まれているものは腹膜内器官(胃、回腸、肝臓など)、腹腔後壁に埋め込まれているものは後腹膜器官(上行結腸、下行結腸、十二指腸、膵臓など)である。後腹膜器官のうちで、腹膜に覆われないものを特に腹膜外器官という(腎臓・副腎など)。
キーワード ① 大十二指腸乳頭 ② 代謝機能 ③ 解毒・排泄機能 ④ 胆汁 ⑤ 後腹膜器官
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:「系統看護学講座 解剖生理学」96~105ページを熟読する。
復習:肝臓の機能についてまとめておく。肝臓の主な機能として代謝機能、解毒・排泄機能、胆汁の産生、貯蔵機能が挙げられる。糖代謝ではグリコーゲンの生成と貯蔵、ガラクトースと果糖のブドウ糖への転換などがある。脂肪代謝では、他の身体機能にエネルギーを供給するための脂肪酸の酸化、リポタンパクの形成、コレステロールやリン脂質の合成、糖質やタンパク質の脂肪への転換などがある。タンパク代謝では、アミノ酸の脱アミノ化、アンモニアの除去、血漿タンパク質の生成、アミノ酸の合成およびアミノ酸からの重要な化学物質の合成などがある。腹膜について、臓側腹膜と壁側腹膜、腸間膜、腹部内臓と腹膜との位置関係(後腹膜器官など)について説明できるように復習しておく。
「系統看護学講座 解剖生理学」p96-105を読み返し、「系統看護学講座準拠 解剖生理学ワークブック」26~29ページを解答し、復習する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

5 消化器系の代表的疾患とその看護、解剖生理まとめ 科目の中での位置付け 本コマ(第5回)では、消化器系の代表的疾患について学修する。消化管は人体を貫く管であり、その内腔は身体の外の環境とつながっているため、多種多様な疾患が発生する。本コマを通して、取り上げる疾患や関連する症状を学んでいくことを通じて、これまで学修してきた正常の解剖・生理とどのように異なっているかを理解する。消化管の異常は色々な自覚症状を引き起こすが、嚥下障害、嘔吐、吐血、食欲低下、腹痛、便秘、下痢、下血などが代表的な消化管由来の症状であるため、正常の解剖・生理とどのように異なっているか理解する。常に様々な物理的・化学的刺激にさらされている消化管は、腫瘍の発生が多い臓器である。代表的な悪性腫瘍(がん)である胃がん・大腸がんについて学修する。さらに、小腸や大腸の一部は腹腔内での固定が緩いため、色々な走行の異常を起こしやすく、腹部ヘルニアが問題となる。また様々な原因によって腸が通過障害を起こした状態をイレウスという。いずれの疾患も、消化器のどの部分にどのような異常が生じると起こるものかを意識して学修を深めることが重要である。ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。
コマ主題細目①:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p145-148,p151-157,教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p95
コマ主題細目②:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p148-151
コマ主題細目③:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p156-157
コマ主題細目④:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p154-155
コマ主題細目 ① 消化器症状 ② 胃がん ③ 大腸がん ④ イレウス
細目レベル ① 代表的な消化管由来の症状として、嚥下障害、嘔吐、吐血、食欲低下、腹痛、便秘、下痢、下血がある。嘔吐は、胃以下の消化管内容物が食道を通って口腔へと逆流し、体外に排出される身体の防御運動である。様々な刺激が延髄にある嘔吐中枢を介して様々な筋肉に指令を出し嘔吐という調節された一連の運動を引き起こす。便秘は排便回数が著しく減少した状態と定義され、大腸内の便の輸送が滞ることで起こる。便秘は便の通過を妨げるような大腸の物理的な狭窄があると器質性便秘となり、狭窄がなく腸管の機能的な異常があると機能性便秘となる。下痢は腸管での水分吸収が不十分になり水分の多い便が排出されることである。消化管内腔への出血が、口から排出されると吐血、肛門から排出されると下血という。
② 代表的な消化器系の悪性腫瘍である胃がんについて学修する。胃の悪性腫瘍の大部分は胃粘膜からできる胃癌である。胃癌は50~60歳代の男性に発症しやすく、幽門部に好発する。組織学的には分化型腺癌がほとんどで、その多くはヘリコバクター・ピロリ感染によるものが多い。胃癌の症状として、進行しても無症状であることが多いのが特徴であり、症状がある場合は、心窩部痛、悪心・嘔吐、食欲不振といった腹部症状や体重減少、持続的出血に伴う貧血などが起こる。胃癌の転移には、リンパ行性転移、血行性転移、播種性転移がある。リンパ行性転移では周囲のリンパ節にまず転移するが遠隔のものでは左鎖骨上窩リンパ節へのウィルヒョウ転移が有名である。血行性転移では、胃から門脈を経由する静脈血が最初に通過するため、肝転移が最も多く、肺転移も起こりやすい。胃癌が漿膜を突き破ると、腹膜腔内へと播種性転移を起こす(腹膜播種)。腹水が貯留する癌性腹膜炎や、ダグラス窩(女性)や直腸膀胱窩(男性)に腫瘤をつくるシュニッツラー転移が起こることもある。胃癌の治療の原則は、身体から腫瘍細胞を完全に排除することで、早期胃癌の治療の中心となるのは内視鏡治療である。また内視鏡治療では不十分と判断された場合は手術が行われ、標準的な手術では胃の2/3以上を大きく切除し、同時にリンパ節を郭清する。手術後は、残胃を含む消化管を適当な再建法によってつなぎ合わせるため、食道からの食物の流れと、十二指腸で合流する胆汁・膵液の流れを十分に理解する。胃癌の切除以外の治療の中心となるのは、化学療法である。
③ 代表的な消化器系の悪性腫瘍である大腸がんについて学修する。大腸がんは盲腸、結腸、直腸に発生する癌である。大腸がんは50~70歳代に多い癌で、発癌の環境要因として食生活の欧米化(高脂肪、高蛋白、低繊維)が挙げられている。組織分類では約95%が腺癌で、その多くは高~中分化型である。大腸の中でS状結腸、直腸に多く発生し、発癌の過程としては大腸腺腫からの癌化が多い。大腸がんの症状として早期の大腸がんは無症状であり、微量の出血が検診などで便潜血検査陽性となり発見されることもある。進行がんでは出血の繰り返しによる貧血が生じる。がんが肛門に近いほど、血便、便秘などの症状が現れやすく、逆に結腸前半の癌では内容物が液状で管腔が広いためなかなか症状が現れない。大腸がんの血行性転移では、結腸癌や上部直腸がんでは門脈を経由するため肝転移が多いのに対して、下部直腸がんでは静脈血が門脈・肝臓を通らないため肺転移を起こしやすい。リンパ行性転移では、周囲のリンパ節や左鎖骨上窩リンパ節への転移(ウィルヒョウ転移)がある。がんが漿膜を突き破ると、腹膜播種からがん性腹膜炎に至る。漿膜を介さずに骨盤内臓器と接する直腸の癌は直接浸潤を起こしやすく、男性では膀胱浸潤、女性では子宮浸潤などが問題となる。早期大腸がんは隆起性のものが多く、注腸造影検査や内視鏡検査で、茎のあるポリープや粘膜面の隆起として観察される。進行がんの注腸造影では壁の不整を伴う内腔の狭窄があり、全周性のものではリンゴの芯の形に似るアップルコアサインという有名な像が見られる。直腸がんでは排便の抑制を行う肛門括約筋や恥骨直腸筋を含めて切除することが必要な場合があり、このとき人工肛門(ストーマ)が造設される。
④ さまざまな原因で消化管内容物の通過が障害された状態を総称して、イレウスあるいは腸閉塞という。イレウスは、消化管の内腔の物理的閉塞から通過障害をきたす機械的イレウスと、閉塞がなく運動障害で生じる機能的イレウスの2つに大きく分けられる。機械的イレウスはさらに、閉塞はあるが血流は正常である単純性(閉塞性)イレウスと、消化管の血流障害を伴う複雑性(絞扼性)イレウスに分類される。機能的イレウスは、消化管の運動が全体的に低下する麻痺性イレウスと、異常な収縮による痙攣性イレウスに分類される。最も多いイレウスは単純性イレウスであり、その原因は腹部手術後の癒着で、ほかに腫瘍や炎症、異物、結石などによる閉塞もある。複雑性イレウスは腸重積症、ヘルニア嵌頓、腸軸捻転症などが原因となる。イレウスの共通する症状には排便・排ガスの停止、腹痛、悪心・嘔吐、腹部膨満感がある。単純性イレウスでは間欠的な腹痛(内臓痛)にとどまるのに対し、複雑性イレウスでは症状が急激に強まり、持続的な激痛(体性痛)となるのが典型的である。イレウスの検査には、腹部の聴診で、蠕動が亢進している単純性イレウスにおいて腸蠕動音の亢進や金属音などの異常音の聴取を認め、他のイレウスでは腸蠕動音の低下が認められる。閉塞部位より口側の腸管内腔にガスと液体が貯留し、立位単純X線でニボー(鏡面像)が現れる。
キーワード ① 嚥下障害 ② 便秘 ③ イレウス ④ 腸蠕動音 ⑤ 二ボー
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:「系統看護学講座 病態生理学」142~174ページを熟読し、わからない部分を明らかにしておく。主に「病態生理学」p.142-145の消化管の構造と機能は、第2~4回の復習となる。また、第5回では、嚥下障害・誤嚥、胃がん、腸管運動の障害(腹痛、便秘、下痢、腸閉塞、嘔気と嘔吐、消化管からの出血)について説明するので、「系統看護学講座 病態生理学」の該当ページを読んでおく。
復習:「系統看護学講座 病態生理学」p.142-174を読み返し、復習する。嚥下のしくみと嚥下障害を起こす原因や、消化器症状の種類や原因について説明できるように理解を深める。また、胃がんや大腸がんによる機能喪失・低下に伴う病態をふまえ、胃・大腸の機能をあらためて復習する。イレウス(腸閉塞)の病態や検査上みられる特徴について復習する。ビリルビン代謝経路を復習し、黄疸の病態について復習する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

6 内分泌器官の構造・機能① 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第6回から9回にわたって、内分泌系の形態機能と疾病について学修する。
本コマ(内分泌系構造と機能①)は、ホルモンの概念、フィードバック機構および視床下部・下垂体ホルモンおよび松果体について学修する。ホルモンとは、一般に内分泌腺にある内分泌細胞から直接血液中に分泌され、血行を介してホルモンに対する受容体を持つ特定の器官に達し、微量で特異的な効果を及ぼす物質をいう。内分泌腺には、下垂体、甲状腺、副甲状腺、膵臓の膵島、副腎、卵巣、精巣、松果体などがある。消化管や腎臓は、特定の内分泌腺を持たないが、内分泌細胞を有し、ホルモンを分泌する。さらに視床下部のある種の神経細胞もホルモンを分泌する。内分泌腺がホルモンを血液中に放出するのに対し、外分泌腺は汗や消化液などの分泌物を消化管腔や体外に放出する。このように、従来ホルモンと定義されてきた内分泌腺のほかに、消化管ホルモンなどにも触れていく。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p272-277
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p299-301
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p277-283
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p277-283
コマ主題細目⑤:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p298
コマ主題細目 ① ホルモンの概念 ② フィードバック機序とホルモンの種類 ③ 視床下部 ④ 下垂体 ⑤ 松果体
細目レベル ① 体内の各種の器官の機能を協調的に調節する機構には、神経系のほかに内分泌系がある。神経系が主に迅速な調節を行うのに対し、内分泌系は主として緩慢であるが、長期にわたるような調節を行う。
内分泌系は、内分泌器官からホルモンをいう情報伝達物質を出し、標的細胞に作用して体内の種々の生理状態を調節または制御する。内分泌器官から血流を介して運ばれ、標的細胞に作用するものが、従来のホルモンの概念である。しかし近年の研究で、神経細胞であるにもかかわらずホルモンを産生し、軸索の終末から血中にホルモンを放出する神経内分泌細胞や、血中に分泌せずに周辺の細胞に作用するホルモン、いったん分泌されて自分自身に作用するホルモンが発見され、ホルモンの概念が変わってきた。女現在では、古典的概念も含めた広い意味で、細胞同士の間で刺激や情報を伝える物質を「ホルモン」と呼んでいる。

② ホルモンの血中濃度はある範囲に保たれている。生体にはホルモンの分泌を調節するしくみがあり、様式として階層的支配、フィードバック機構、血液成分による調節および自律神経による調節がある。下垂体から出るホルモンの多くは、他の内分泌器官に対してホルモンを出させるように作用する。一方、その内分泌器官から分泌されたホルモンの一部は上位ホルモン器官に戻って、上位ホルモンの分泌を制御する。その際、上位ホルモンを増加させるように作用する場合を正のフィードバック、減少させるように作用する場合を負のフィードバックという。生体内では多くが負のフィードバックによる。正のフィードバックの例を挙げると、分娩時、排卵時および性決定の3つである。
ホルモンは化学構造の違いによって3種類に分けられる。①ペプチドホルモン、②ステロイドホルモン、③アミン類である。また、それぞれのホルモンの科学的性質(水溶性か脂溶性か)によって、標的細胞内にあるホルモン受容体の部位が違うことを理解する。

③ 内分泌系の調節において中心的な働きをしているのは、間脳にある視床下部と下垂体である。視床下部は、第三脳室の底部と側壁下部を形成する部分である。前方には視神経交叉があり、視床の下方に位置し、正中隆起から下垂体へ漏斗状に連続している。体性感覚や内臓感覚の入力を受け、自律神経系および内分泌系の高次中枢として身体の恒常性の維持に働く。視床下部の内部には複数の神経核が存在する。それぞれを構成する細胞は、神経細胞と内分泌細胞の両方の形態と機能をもつ神経内分泌細胞からなっている。視床下部からは各種下垂体ホルモンの放出因子(プロラクチンや成長ホルモンの抑制因子)、ならびに下垂体後葉ホルモン(バソプレシンとオキシトシン)を分泌する。
④ 下垂体は頭蓋底にあるトルコ鞍の内腔に位置するそら豆状の小体である。下垂体は、ほかの内分泌器官の機能を指揮し、制御する働きがある。組織学的には前葉と後葉からなる。視床下部と下垂体後葉の間には神経線維による連絡があり、下垂体前葉と視床下部の間は下垂体門脈で連絡されている。下垂体前葉は、数種類の分泌細胞とそれを取り巻く血管腔などから構成されている。7種類のホルモンを産生している。下垂体後葉は視床下部の続き、つまり脳の一部と考えてよい。後葉からは神経細胞内でバソプレシンとオキシトシンが分泌されるが、バソプレシンは視床下部の視索上核の神経細胞内で、またオキシトシンは視床下部の室傍核の神経細胞内でつくられる。
⑤ 松果体は視床下部に属し、第三脳室後端・正中部に位置する。メラトニンを分泌する松果体細胞と支持細胞(神経膠細胞由来)からなる。またヒト、特に老人では脳砂と呼ばれるカルシウムを含む沈着物が細胞の間に見られ、しばしば頭部のレントゲン写真で識別できる。松果体から分泌されるメラトニンは、網膜から光刺激が入る昼間には抑制され、光の入らない夜間には促進される。これによって、体内のさまざまな機能を、一日の明暗のサイクルに同調させている(概日リズム、サーカディアンリズム)。またメラトニンは、下垂体に作用して性腺刺激ホルモンの分泌を抑制し、性機能を抑制する作用もある。
キーワード ① フィードバック機構 ② 下垂体前葉ホルモン ③ 標的細胞 ④ ペプチドホルモン ⑤ 神経内分泌細胞
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」272ページから283ページ、298ページを読む。
復習:ホルモンとは、一般に内分泌腺にある内分泌細胞から直接血液中に分泌され、血行を介してホルモンに対する受容体を持つ特定の器官に達し、微量で特異的な効果を及ぼす物質をいう。内分泌腺には、下垂体、甲状腺、副甲状腺、膵臓の膵島、副腎、卵巣、精巣、松果体などがある。ホルモンの概念、フィードバック機構および視床下部・下垂体ホルモンおよび松果体について教科書を使い、読み返す。内分泌腺の特徴、分泌方法、化学構造について、まとめる。また、ホルモン産生部位、ホルモンの作用についてもまとめておく。「解剖生理学 ワークブック」67,68ページの問題5~7を解く。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

7 内分泌器官の構造・機能② 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第6回から9回にわたって、内分泌系の形態機能と疾病について学修する。
本コマ(内分泌系構造と機能②)は、甲状腺、上皮小体(副甲状腺)および副腎髄質について学習する。甲状腺は、頚部前面の甲状軟骨下に位置する蝶形をした器官である。両葉の後面に、通常上下左右各1コずつ計4個の上皮小体が付着している。甲状腺の内分泌細胞は血中からヨード(ヨウ素)を取り込み、甲状腺ホルモンの前駆体(サイログロブリンというタンパク質)をまずつくって濾胞中にたくわえる。 細胞は、下垂体前葉から分泌される甲状腺刺激ホルモン (TSH) の刺激を受けると濾胞中からサイログロブリンを取り込み、これを分解して甲状腺ホルモンをつくり血液中に分泌する。 分泌される甲状ホルモンには、分子中 分子のヨードを含むサイロキシン(T₄)と、3分子のコードを含むトリヨードサイロニン(T₃)の2種類があるが、量的にはほとんどがT₄である。上皮小体ホルモン(PTH)は血中カルシウム濃度上昇させる作用があり、血中カルシウム濃度が低下すると PTHの分泌が促進される。副腎髄質は、交感神経節が内分泌器官に変化したもので、交感神経系の興奮により交感神経の節後線維と似たかたちでおもにアドレナリンを分泌する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p283-287
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p287-288, p302-303
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p290-291, p296
コマ主題細目 ① 甲状腺 ② 上皮小体 ③ 副腎髄質
細目レベル ① 甲状腺は、頚部前面の甲状軟骨下に位置する蝶形をした器官である。羽に当たる部分を右葉・左葉、その間をつなぐ胴に当たる部分を峡部という。甲状腺の内部は、結合組織によって小葉に分けられる。この小葉の中には濾胞と呼ばれる構造物があり、周囲に濾胞細胞が並んでいる。この細胞から甲状腺ホルモンが分泌され、濾胞の内腔にサイログロブリンという形で貯蔵されている。この濾胞に面して、または濾胞の間に濾胞傍細胞(C細胞)があり、カルシトニンを分泌している。カルシトニンは、血中のカルシウムイオンが増加すると分泌が亢進し、減少すると分泌が低下する。甲状腺ホルモンはヨードを含んだアミノ酸である。その合成には、食物から摂取されたヨードが必要である。ホルモン作用をもつのはサイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)甲状腺ホルモンの合成は、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって促進される。甲状腺ホルモンの作用は非常に多岐にわたる。主な作用は、ほとんどの臓器で酸素消費を刺激して代謝を亢進し、熱を産生することである。また、タンパク質・核酸合成を促進するので、身体や脳の発育・骨格の成長に不可欠である。そのほか、血糖値を上げたり、コレステロールの分解を促進する。
② 甲状腺の両葉の後面に、通常上下左右各1コずつ計4個の上皮小体が付着している。1個の重量は30~40㎎程度である。上皮小体(副甲状腺)には主細胞と好酸性細胞が存在する。主細胞は上皮小体ホルモン(パラソルモン:PTH)を合成・分泌する。上皮小体ホルモンの主な作用は、骨吸収を促進して、骨からカルシウムを遊離させ、血中のカルシウム濃度を上昇させることである。そのほか、腎臓の近位尿細管から無機リンや水酸化物イオンの排出を促進するとともに、遠位尿細管からカルシウムの再吸収を促す。間違って上皮小体を切除することなどにより、上皮小体の機能が低下すると、血中カルシウム濃度が低下し、神経や筋の興奮性が異常に亢進する。その結果、全身の筋に痙攣を生じる(テタニーとよばれる)。
③ 副腎は左右の腎臓の上に位置する一対の内分泌器官である。外層はステロイドホルモンを分泌する皮質(発生学的に中胚葉由来)、中心部はアドレナリンとノルアドレナリンを分泌する髄質(発生学的に外胚葉)である。副腎皮質は最外層から中心部にかけて、球状帯(鉱質コルチコイド分泌)、束状帯(糖質コルチコイド分泌)、網状帯(性ホルモン分泌)の3層を認める。副腎髄質は副腎の中心部に当たる。髄質細胞は、発生学的にも機能的にも交感神経節細胞と似ている。ともにカテコールアミン(主なものはドパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン)を生成・分泌する。副腎皮質ホルモン:ヒトでは鉱質コルチコイドのほとんどがアルドステロンである。アルドステロンの合成・分泌にはレニン-アンジオテンシン系が最も関与している。糖質コルチコイドは、ヒトではコルチコステロンやコルチゾンも分泌されるが、主なものはコルチゾールである。性ホルモンとしては、副腎性アンドロゲン(男性ホルモン)があり、ヒトではデヒドロエピアンドステロンもある。副腎髄質ホルモン:交感神経の興奮状態はカテコールアミン分泌を亢進する。このとき、ストレスに対して闘争あるいは逃走する状態となる。
キーワード ① 濾胞細胞 ② サイロキシン ③ カルシトニン ④ パラソルモン ⑤ アドレナリン
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」283ページから291ページ、296ページを読む。
復習:甲状腺、上皮小体(副甲状腺)および副腎髄質について該当する教科書のページを読み返す。甲状腺と副甲状腺の構造について、教科書中の図を見ながら確認する。特に、副甲状腺は、甲状腺の裏側に存在する米粒ほどの小さな腺であることを、図で確認する。甲状腺の機能は多岐にわたる。標的器官はどこで、どのような作用を及ぼすかまとめておく。副甲状腺は、ビタミンDと合わせて理解する。血中カルシウム濃度の調節に働くホルモンである。副腎髄質から産生されるホルモンの名称とその作用について確認する。「解剖生理学 ワークブック」68~71ページの問題8,10,11,13を解く。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

8 内分泌・代謝系の代表的疾患の病態生理 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第6回から9回にわたって、内分泌系の形態機能と疾病について学修する。
本コマ(内分泌系・代謝系の代表的疾患の病態生理)は、膵臓と副腎皮質のホルモン分泌器官とその異常について学修する。膵臓は、胃の後方(後腹膜腔)に位置し、頭部を十二指腸側、尾部を脾臓側にして横たわる約15㎝の臓器である。膵臓の働きは外分泌部分と内分泌部分からなるが、ここでは内分泌部分について学習する。内分泌は膵島(ランゲルハンス島)が担当する。成人膵臓には100万~160万個ほどあり、膵尾部に多い。副腎は左右の腎臓の上に位置する一対の内分泌器官である。副腎皮質からは電解質(ミネラル、鉱質)コルチコイド、糖質(グルコ)コルチコイド、性ホルモンの計3種類のホルモンが分泌される。いずれもコレステロールから合成され、コレステロールとよく似た構造をしているため、ステロイドと呼ばれる。副腎皮質ホルモンは脂質の一種であり、経口摂取が可能なホルモンである。
糖代謝の異常として、糖尿病を取り上げる。血糖値を上げるホルモンは何種類もあるのに下げるホルモンインスリンただ1つしかない。私たちは基本的に 飢餓に強いが過食に対して耐性がないという特性を示す。また、副腎皮質の異常についても取り上げる。ここでは、糖質コルチコイドあるいは副腎皮質刺激ホルモンの分泌過剰で起こるクッシング症候群について学修する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p288-290
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p290-295
コマ主題細目③:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p227-230
コマ主題細目④:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p222,p223
コマ主題細目 ① 膵臓 ② 副腎皮質 ③ 糖尿病 ④ 副腎皮質の疾患
細目レベル ① 膵臓は、胃の後方(後腹膜腔)に位置し、頭部を十二指腸側、尾部を脾臓側にして横たわる約15㎝の臓器である。膵臓の働きは外分泌部分と内分泌部分からなるが、ここでは内分泌部分について学習する。内分泌は膵島(ランゲルハンス島)が担当する。成人膵臓には100万~160万個ほどあり、膵尾部に多い。膵島には、少なくとも4種類の分泌細胞が存在する。約20%がグルカゴンを分泌するA(α)細胞、約70%がインスリンを分泌するB(β)細胞、5~10%がソマトスタチンを分泌するD(δ)細胞、残り1~2%が膵ポリペプチドを分泌する膵ポリペプチド(PP)細胞である。血糖値は、血中に入るグルコース(消化管からの吸収と肝臓からの放出)と血中から出るグルコース(筋肉や脂肪組織への取り込みと肝臓でのグリコーゲン合成)のバランスによって決定される。
② 副腎は左右の腎臓の上に位置する一対の内分泌器官である。外層はステロイドホルモンを分泌する皮質(発生学的に中胚葉由来)、中心部はアドレナリンとノルアドレナリンを分泌する髄質(発生学的に外胚葉)である。副腎皮質は最外層から中心部にかけて、球状帯(鉱質コルチコイド分泌)、束状帯(糖質コルチコイド分泌)、網状帯(性ホルモン分泌)の3層を認める。副腎髄質は副腎の中心部に当たる。髄質細胞は、発生学的にも機能的にも交感神経節細胞と似ている。ともにカテコールアミン(主なものはドパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン)を生成・分泌する。副腎皮質ホルモン:ヒトでは鉱質コルチコイドのほとんどがアルドステロンである。アルドステロンの合成・分泌にはレニン-アンジオテンシン系が最も関与している。糖質コルチコイドは、ヒトではコルチコステロンやコルチゾンも分泌されるが、主なものはコルチゾールである。性ホルモンとしては、副腎性アンドロゲン(男性ホルモン)があり、ヒトではデヒドロエピアンドステロンもある。副腎髄質ホルモン:交感神経の興奮状態はカテコールアミン分泌を亢進する。このとき、ストレスに対して闘争あるいは逃走する状態となる。
③ 身体が消費するエネルギー以上の食物を摂取しつづけると、インスリンを分泌する膵臓のB細胞はしだいに疲弊し、インスリン分泌量が低下してくる。また体脂肪の蓄積は、インスリンの感受性を低下させ(これをインスリン抵抗性という)、インスリンが十分に分泌されているにもかかわらず、膵臓からのさらなるインスリン分泌促し、結果としてB細胞の疲弊をまねくことになる。 成人にみられる糖尿の多くこのようインスリン抵抗性とインスリン分泌不全との組み合わせによっておこるもので、2型糖尿病とよばれる。一方、なんらかの理由からインスリンを分するB細胞の機能が廃絶し、ほとんどインスリンを分できなくなってしまう場合がある。これらの多くは 小児期 (おおよそ20歳以下) におこるもので、 1型糖尿病とよばれる。1型糖尿病は、すぐにでもインスリンを体外から補う必要があり、かつ 生涯にわたってインスリン補充を続ける必要がある。これに対して2型糖尿病はある段階までは可逆的な病態で、食事や運動など生活習慣の是正によって改善が可能である。しかし、糖尿病が進行し、B細胞のインスリン分泌能がある程度以下になれば、1型糖尿病と同じようにインスリンの補充が必要になる。
④ 糖質コルチコイド分泌細胞が腫瘍性に発育するとコルチゾールなどの糖質コルチコイドが過剰産生され、糖質コルチコイド産生過剰による病態が出現する。糖質コルチコイドの作用は非常に多岐にわたるため、糖質コルチコイド過剰による症状も多岐にわたる。糖代謝異常による高血糖や脂質代謝異常による 脂質異常症や脂肪組織の増大などがおこる。脂肪組織の増大は、顔面を含む躯幹部の皮下脂肪や内臓脂肪が増大する中心性肥満が特徴的で、顔面は満月様となり、頸背部の脂肪組織も増大する。タンパク質の合成が抑制されるため筋肉は減少して筋力は低下し、四肢は細くなる。また、血管はもろくなり皮下に出血しやすくなる。動脈硬化や循環障害もおこりやすくなる。 皮膚の構造ももろくなり、とくに下腹部では皮下組織が肥満による伸展に耐えきれず裂けて皮膚線条ができる。カルシウム代謝異常もおこり骨ももろくなる。免疫力も低下するので感染症にも罹患しやすくなる。また精神神経症状も示す。糖質コルチコイドは、電解質コルチコイドや男性ホルモンのような作用も持っているため、低カリウム血症や高血圧、さらには月経異常、多毛症、痤瘡などの症状も示す。同様なことが下垂体腫などによるACTHの過剰産生でもおこる。これらをまとめてクッシング症候群という。
キーワード ① インスリン ② ステロイドホルモン ③ 血糖 ④ 糖質コルチコイド ⑤ クッシング症候群
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」288ページから295ページを読む。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」227ページから230ページ、および222,223ページを読む。
復習:膵臓と副腎皮質について該当する教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」のページを読み返す。膵臓の構造と機能について、教科書中の図を見ながら確認する。膵臓は内分泌腺と外分泌腺をもつ腺組織であることを確認する。膵臓から分泌するインスリンの作用についてまとめる。標的器官はどこで、どのような作用を及ぼすかまとめておく。副腎皮質から出るホルモンについても同様である。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」を読み返し、糖質コルチコイドの分泌過剰により、どのような症状が出るのかをまとめる。症状を理解するためには、糖質コルチコイドの作用を理解することが早道である。糖尿病について、1型糖尿病と2型糖尿病についてそれぞれの特徴を押さえる。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

9 内分泌・代謝系の構造・機能まとめ 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第6回から9回にわたって、内分泌系の形態機能と疾病について学修する。
本コマ(内分泌系・代謝系の代表的疾患の病態生理)は、これまでの内分泌系の病態生理をふまえて、正常な内分泌・代謝系の構造・機能について整理していく。
ホルモンは、前述のように内分泌腺から直接血管の中に分泌され、そのホルモンに対する受容体をもつ細胞 (標的細胞) にのみ作用する。標的細胞が多く含まれる器官は,標的器官とよばれる。 また、ホルモンは非常に微量で有効であり、たとえば甲状腺ホルモンは1ng(ナノグラム)/Lの濃度でその効果を発揮する。これは甲状腺ホルモン1gを、100万トン)の水 (100万m(立方メートル]) にとかしたときの濃度に等しい。 ホルモンのもう1つの特徴は,化学構造が非常によく似ていても、その効果がまったく異なる場合があることである。 たとえば、代表的な男性ホルモンであるテストステロンと, 代表的な女性ホルモンであるエストラジオールの化学 構造は酷似しているが、その作用はしばしばまったく逆である。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p272-303
コマ主題細目②:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」:p227-230, p222,p223
コマ主題細目③:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」:p222,p223
コマ主題細目 ① 上位ホルモンと下位ホルモン ② ホルモン分泌制御の破綻(分泌量不足) ③ ホルモン分泌制御の破綻(分泌量過剰)
細目レベル ① ホルモンの分泌は、 別のホルモンにより調節 (通常は分泌促進)されていることが多い。 たとえば、甲状腺からの甲状腺ホルモンの分泌は、下垂体前葉からの甲状腺刺激ホルモンthyroid-stimulating hormone (TSH) の分泌により調節さ れている。この場合、上位のホルモン (甲状腺刺激ホルモン) から見ると、下位のホルモン (甲状腺ホルモン)の分泌細胞 (甲状腺)が標的細胞である。さらにTSHは視床下部から分泌される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン thyrotropin releasing hormone (TRH) によって分泌が調節されている。この場合TRHが上 位ホルモン、TSHが下位ホルモンである。そして標的細胞の反応、すなわち甲状腺ホルモン濃度が上位ホルモン分泌細胞(視床下部と下垂体)へフィードバックされる。
② ホルモン異常とは基本的にはホルモン分泌量の不足か過剰のいずれかである。 どちらにせよそのホルモンの作用に応じた過不足の症状が出現する。 また、ホルモン濃度は上位ホルモンを含めたフィードバック機構で調節されているので、 あるホルモンの過不足が生じると、その上位ホルモン濃度も変化を受ける。 原因分泌量不足の原因は、上位の刺激ホルモンの低下により分泌刺激が減弱した場合と、分泌細胞自体の障害で分泌不全に陥った場合とがある。 上位の刺激ホルモンの低下による場合,責任病巣は上位ホルモンの分泌器官にある。 分泌細胞自体に障害がある場合には上位の刺激ホルモンの血中濃度が増加している。例えば、成長ホルモンの分泌不足の場合は低身長となる。
③ 分泌量過剰の原因には、上位の刺激ホルモンが過剰分泌されている場合と、 分泌細胞が腫瘍性に増殖した場合とがある。上位の刺激ホルモンが過剰分泌されている場合、責任病巣は上位ホルモンの分泌器官にある。
一方、分泌細胞が腫瘍性に増殖した場合、上位ホルモンの刺激がなくても腫瘍化した分泌細胞が独自にホルモンを産生できるようになってしまうため、ホルモンの血中濃度が上昇してしまう。 これには本来の分泌器官内でその分泌細 胞が腫瘍化した場合と、本来の分泌器官とは無関係の場所に発生した腫瘍がそのホルモンを異所性に分泌する場合とがある。腫瘍性の場合には、上位の刺激ホルモンの血中濃度は負のフィードバックにより低下している。また、この過剰分泌されたホルモンが上位ホルモンの場合には、当然その下位ホルモンの分必量は増加する。

キーワード ① フィードバック機構 ② 分泌不全 ③ 責任病巣 ④ 腫瘍 ⑤ 分泌量過剰
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」272ページから303ページを読む。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」227ページから230ページ、および222,223ページを読む。
復習:正常なホルモンの産生と分泌について該当する教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」のページを読み返す。内分泌腺には、下垂体、甲状腺、副甲状腺、膵臓の膵島、副腎、卵巣、精巣、松果体などがある。ホルモンの概念、フィードバック機構および視床下部・下垂体ホルモンおよび松果体について教科書を使い、読み返す。内分泌腺の特徴、分泌方法、化学構造について、まとめる。また、ホルモン産生部位、ホルモンの作用についても再度、まとめておく。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」を読み返し、副腎皮質の異常と、糖代謝の異常についてもまとめておく。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

10 循環器系の構造・機能①(心臓の構造、刺激伝導系、心電図) 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第10回から4回にわたって、循環器系の形態機能と疾病について学修する。
身体を構成する細胞は、体重の約60%を占める組織液の中に浮かんだ状態にある。細胞にとって、この組織液は栄養の供給源であり、同時に老廃物の排出先である。この組織液に摂取した栄養を届けたり、細胞から排出された老廃物を排泄器官に送ったりするための輸送路を循環器系といい、脈管系とリンパ管系とに大別できる。本コマ(第10回)では、主に心臓の構造と刺激伝導系について学修する。刺激伝導系は、神経組織ではなく、心臓の大部分を構成する固有筋とは異なる特殊な心筋でできている。歩調とりである洞房結節に始まった電気的興奮が、心房から心室全体へと広がっていく様子を体表面に電極をあてて記録したものが心電図である。ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p168-170
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p170-174
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p174-175
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p175-179
コマ主題細目⑤:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p179-185
コマ主題細目 ① 体循環と肺循環 ② 心臓の構造 ③ 心臓の血管(冠状動脈)と神経 ④ 刺激伝導系 ⑤ 心電図
細目レベル ① 脈管系は、血液が血管内を巡る系で、心臓のポンプ作用を動力とする。血管には、心臓の血液を末梢組織に送る動脈、組織内で連絡網をなす毛細血管、各組織から心臓に血液を還す静脈がある。流通のポンプは心臓であり、ここから出ていく血管を動脈、心臓に向かう血管を静脈という。これらの血管は、体循環系と肺循環系に大別される。心臓から出て全身をめぐる体循環系(大循環系)は、酸素濃度が高く、栄養に富む血液を全身の臓器・組織・細胞に供給する。左心室は全身に血液を送り出す強いポンプ作用をもつ。肺をめぐる肺循環系(小循環系)は右心室から出て左心房に戻る血液循環をいう。血液を肺に運んでガス交換を行う機能を果たしている。
② 心臓は生命の維持に必要な血液を全身に送り出す重要な臓器である。心臓は左右の心房および心室の4つの部屋からなる。血液を一方向に流すために、4つの部屋の各々の出口には弁がある。心臓はおよそ円錐の形をしており、心筋という特殊な筋肉からなる中空性の器官である。心臓の大きさはその人の握りこぶしくらいである。心臓の上端は心基部(心底)と呼ばれ、第2肋間に位置する。心臓の下端は心尖と呼ばれ、左第5肋間の鎖骨中線上に位置する。心臓は房室弁(右:三尖弁、左:僧帽弁)によって上部の心房と下部の心室に分かれている。心房は、静脈から血液を受け入れる部分である。これに対して心室は、動脈へ血液を絞り出すポンプの働きをする。心臓の壁は心内膜・心筋層・心外膜の3層からなることを理解し、心膜腔がどの膜から形成されているか、心嚢とはどの膜を指すのかが理解できるように学修する。心内膜は、心臓の内腔に面する薄い膜で、血管の内膜につながる。心臓の弁は、心内膜がヒダ状に突き出したものである。心筋層は、心臓壁の主体をなす厚い層で、心筋組織からなる。刺激伝導系は心臓内で刺激を発生し伝導する組織で、特殊化した心筋細胞からできている。心外膜は、心臓表面をおおう漿膜からなる。心臓は心膜という二重層の袋で包まれる。心臓に接する臓側心膜はいわゆる心外膜であり、この膜が大血管の基部で折り返って壁側心膜を形成する。臓側心膜と壁側心膜の間を心膜腔といい、少量の漿液を含む。
③ 心臓を栄養する冠状動脈の走行を理解する。冠状動脈は左右1本で、それぞれ大動脈弁のすぐ上の上行大動脈の壁から、大動脈の最初の枝として分岐する。右冠状動脈、左冠状動脈の走行について図を見ながら確認する。特に、左冠状動脈については、すぐに前室間枝と回旋枝に枝分かれする点に注意する。また、静脈系は最終的には冠状静脈洞となって右心房に血液が環流することを理解する。狭心症とは動脈硬化などにより冠状動脈が十分に拡張できなくなった状態であり、心筋の酸素不足から胸痛発作をおこす。また、心筋梗塞とは血栓などにより冠状動脈が閉塞して、その流域の心筋組織に酸素が行きわたらなくなった状態であり、心筋が壊死をおこす。自律神経系には、心拍数を増やす働きをする交感神経と、心拍数を減らす副交感神経(迷走神経)があり、両者の拮抗する作用によって身体の生理的状況に応じた心臓の活動がコントロールされる。心臓は交感神経と副交感神経(迷走神経)によって支配されている。これらの神経は、生体の必要性に応じて心臓の活動を変化させることができる。副交感神経(迷走神経)は主に洞房結節と房室結節、心房筋に分布している。副交感神経の刺激は、インパルス発生の速度を減少させ、心拍数と拍動力を低下させる。交感神経は、洞房結節と房室結節、心房筋、さらに心室筋に分布している。
④ 血液を全身に拍出するためには、心房・心室を構成する心筋細胞がそれぞれ同期して、順序正しく収縮・弛緩を繰り返す必要がある。このような同期性と心拍動のリズムは、電気的に調節されていることを理解する。心筋は体内でただ1ヵ所、心臓だけに存在する。心臓の壁をつくる筋肉で、組織の上では骨格筋と同じ横紋筋であるが、自律神経の支配を受ける内臓に含まれ、不随意筋に属する。心筋は、心臓に内蔵されたペースメーカー(洞房結節)によって収縮し、運動したときなどはその働きによって、収縮回数を増加させる。心臓は、体外に取り出しても自動的に拍動を続ける。これを自動性という。この規則正しい拍動のリズムは、上大静脈と右心房の境界近くにある洞房結節の細胞で発生する。ここをペースメーカーという。洞房結節の細胞に発生した興奮は、心房筋を興奮させて心房を収縮させる。心房筋の興奮は、右心房と右心室の境界近くにある房室結節に伝えられ、さらに心室中隔を走るヒス束に伝播する。ヒス束に伝えられた興奮は、右脚と左脚、さらに枝分かれしたプルキンエ線維を通って心室筋全体に伝えられる。その結果、心室は収縮する。これを刺激伝導系という。刺激伝導系の心筋は、興奮の発生や伝導に適するように特殊化しているため、特殊心筋ともいう。
⑤ 心電図の解釈、記録方法、および異常について学修する。心電図は、歩調とりに始まった電気的興奮が心房から心室全体へと広がっていく様子を体表面に電極をあてて記録したものである。不整脈の診断や心筋梗塞の部位診断に用いられるほか、手術中や重症患者における循環動態のモニターの目的で広く用いられている。診断目的で心電図を記録する場合は12誘導心電図が用いられる。心電図で記録される代表的な波形は、通常はP波、QRS波、T波が記録される。P波は最初にあらわれる比較的小さくなだらかな波で、心房の興奮をあらわし、心房に負担がかかると増高したり二相性になったりする。PQまたはPR部分は基線(電位の基準となる線)となり、興奮が房室結節をゆっくりと伝導し、心室に興奮を伝える時期である。PR間隔は房室間に興奮伝導障害があると延長し(房室ブロック)、異常な興奮伝導路があると短縮する(WPW症候群)。QRS群は上下に鋭く振れる波であり、棘波と呼ばれる。QRS群は心室の興奮開始を意味し、プルキンエ線維を伝わって、興奮が心室全体に広がる時期である。したがって右脚・左脚を含むプルキンエ線維に伝導障害があると、QRS群の幅(持続時間)が広くなる。ST部分は心室全体が興奮している時期であり、基線上にあるのが原則であるが、上昇あるいは下降している場合は、狭心症や心筋梗塞が疑われる。T波は心室筋の再分極によって生じる波であり、心室の興奮終了を意味する。高カリウム血症の場合にはT波はとがった山となる。
キーワード ① 動脈弁 ② 房室弁 ③ 冠状動脈 ④ 洞房結節 ⑤ 心電図
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:「系統看護学講座 解剖生理学」168-185ページを熟読し、わからない部分を明らかにしておく。
復習:心臓の構造について復習する。心臓は左右の心房および心室の4つの部屋からなる。血液を一方向に流すために、4つの部屋の各々の出口には弁がある。心臓はおよそ円錐の形をしており、心筋という特殊な筋肉からなる中空性の器官である。心臓の壁は心内膜・心筋層・心外膜の3層からなる。心臓に接する臓側心膜はいわゆる心外膜であり、この膜が大血管の基部で折り返って壁側心膜を形成する。臓側心膜と壁側心膜の間を心膜腔といい、少量の漿液を含む。心臓の壁については、自身でも図を描き、立体的にとらえることを勧める。冠状動脈の走行を教科書の図をみて確認する。心臓にある特殊心筋からなる刺激伝導系、および自律神経系が心筋の収縮をコントロールする。刺激伝導系は、神経組織ではなく、心臓の大部分を構成する固有筋とは異なる特殊な心筋でできている。自律神経系には、心拍数を増やす働きをする交感神経と、心拍数を減らす副交感神経(迷走神経)があり、両者の拮抗する作用によって身体の生理的状況に応じた心臓の活動がコントロールされる。歩調とりに始まった電気的興奮が、心房から心室全体へと広がっていく様子を体表面に電極をあてて記録したものが心電図である。「系統看護学講座 解剖生理学」p168-185を読み返し、「系統看護学講座準拠 解剖生理学ワークブック」42-46ページを解答し、復習する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

11 循環器系の構造・機能②(心拍出量、心周期、前負荷と後負荷、末梢循環系) 科目の中での位置付け 身体を構成する細胞は、体重の約60%を占める組織液の中に浮かんだ状態にある。細胞にとって、この組織液は栄養の供給源であり、同時に老廃物の排出先である。この組織液に摂取した栄養を届けたり、細胞から排出された老廃物を排泄器官に送ったりするための輸送路を循環器系といい、脈管系とリンパ管系とに大別できる。本コマ(第11回)では、心拍出量と心周期について学修する。
また、動脈・静脈・毛細血管の構造について学修する。
血管は、血液を心臓から末梢に送り出す動脈、血液を末梢から心臓に送り戻す静脈、動脈と静脈をつなぐ毛細血管の3種類に分けられる。特殊な血管系についても学修する。
人体の主要な動脈について学修する。すなわち、大動脈弓から直接分枝する動脈3本、頭頚部の動脈、大脳動脈輪、上肢の動脈、胸大動脈、腹大動脈、総腸骨動脈、下肢の動脈である。
さらに、人体の主要な静脈、皮静脈と門脈について学修する。静脈は動脈に並行して走ることが多く、動脈と同じ名前がつけられている。四肢では、動脈に伴行する深部の静脈以外に、動脈とは関係なく体表近くを走る皮静脈がある。門脈の特徴として、腹膜腔内を流れた静脈血は直接右心房に戻らず、門脈に流れ込む。門脈は消化管から吸収した栄養に富む血液を肝臓に運び、そこで肝動脈の酸素に富んだ血液と混じることを理解する。ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p185-188
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p188-193
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p193-197
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p197-201
コマ主題細目⑤:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p201-206
コマ主題細目 ① 心周期 ② 前負荷と後負荷 ③ 血管の構造 ④ 主要な動脈 ⑤ 主要な静脈
細目レベル ① 心拍動の周期を心周期という。心周期は心筋の収縮・弛緩に従って、収縮期と拡張期に分けられる。胸壁に聴診器を当てると、心臓の拍動ごとに発生する音を聞くことができる。これを心音という。聴取する部位によって、各弁の異常を観察することができる。心周期と心臓の動き、心周期と心音・心内圧との関係について図をみながら理解する。1分間の心臓の拍動数を心拍数という。心拍出量は心臓が1分間にどれくらいの量の血液を拍出できるのかという指標で、心臓のポンプ機能をあらわす。1回の心臓拍動により左心室から拍出される血液量を1回拍出量という。1分間の心拍出量を毎分心拍出量といい、1回拍出量×心拍数で求められる。一般に心拍出量といった場合は毎分心拍出量を示す。
② 心室の機能状態に影響を与える要因には、前負荷、後負荷、収縮性がある。心室は拡張してその内腔に血液をため、ついで収縮してその血液を動脈内の圧(血圧)に逆らって拍出することを繰り返している。心拍出量を増減するには、1回拍出量または心拍数を増減すると考える。まず心臓は、静脈還流量が増えるほどに心収縮力を増加させて、1回拍出量を増加させることができる(フランク・スターリングの法則)。静脈還流量のことを、心臓の手前からかかる負荷であるとして前負荷という(戻ってくる血液量の増大なので容量負荷ともいう)。前負荷が増えると1回拍出量(心拍出量)は増える。前負荷に対して、大動脈の血圧を後負荷という(圧力の負荷なので圧負荷ともいう)。体循環のポンプである左心室は、収縮期に心筋を収縮させ、高い血圧を作り出して大動脈の壁を押し広げながら血液を拍出する。大動脈の血圧が高ければそれだけ強い心収縮力が必要になり、大動脈の血圧が低ければ心収縮力は低くてすむ(末梢の血管が収縮した場合や、大動脈弁狭窄などでも後負荷は増大する)。このように、後負荷が増えると1回拍出量(心拍出量)は減る。このように、心拍出量は、心収縮力、心拍数、前負荷、後負荷などによって決められている。
③ 血管は、血液を心臓から末梢に送り出す動脈、血液を末梢から心臓に送り戻す静脈、動脈と静脈をつなぐ毛細血管の3種類に分けられる。血管壁を組織学的に学修する。動脈からみていくと、特徴として中膜が最も厚く、動脈壁の本体をなしている。組織学的に2種類の動脈に分類できる。大動脈のような太い動脈は、弾性動脈とよばれ、器官の中の細い動脈は筋性動脈とよばれる。毛細血管は、太さが5~10μmほどで、赤血球が変形して通り抜けることができる。特徴としては、扁平な内皮細胞とその基底膜のみで構成されており、平滑筋を欠く。静脈の壁は、動脈同様に3層構造をもつが、壁が薄いので血管が透けて青くみえる。また、直径約1㎜以上の四肢の静脈には弁が備わっている。
④ 大動脈弓から直接分枝する3本の動脈(腕頭動脈・左総頸動脈・左鎖骨下動脈)を確認する。大動脈は脊柱の前面を下行し、第3腰椎の高さで、左右の総腸骨動脈に分かれる。それぞれの総腸骨動脈から内・外腸骨動脈が分枝する。内腸骨動脈は主に骨盤腔内に分布し、外腸骨動脈は、鼡径靭帯を通過したのち、大腿動脈へと名称を変える。腹大動脈では腹腔動脈、上腸間膜動脈、腎動脈、性腺動脈、下腸間膜動脈が分枝する。上肢の動脈は、上腕動脈から橈骨動脈と尺骨動脈に分枝する。下肢の動脈は、大腿動脈が内転筋管を通過後、膝窩動脈へと名称を変え、さらに膝窩動脈から前・後脛骨動脈が分枝する。また、大脳動脈輪は内頚動脈と椎骨動脈由来の動脈が脳底で動脈輪を形成することを学修する。
⑤ 静脈は動脈に並行して走ることが多く、動脈と同じ名前がつけられている。太いところでは、動脈と静脈が1本ずつ対応するが、中程度より細いところでは、1本の動脈に、複数の静脈が伴行する。上半身と下半身の血液は、それぞれ上・下の大静脈に集まり、別々に右心房に注ぐ。脳からの血液は、脳の表面に向かう静脈を経て、最終的にはS状静脈洞に集まり、内頚静脈となって頭蓋腔を出る。皮静脈の大きなものには、橈側皮静脈と尺側皮静脈がある。両者は互いに吻合し、とくに肘窩では肘正中皮静脈をつくる。下肢では大伏在静脈と小伏在静脈がある。総腸骨静脈は内・外腸骨静脈が合流してできる。内腸骨静脈は、骨盤内臓・殿部・陰部の血液を集める。外腸骨静脈は大腿静脈からの続きである。門脈は腹部の消化管と付属器官、および脾臓からの血液をすべて集めて肝臓に運ぶ静脈であり、この門脈を通して腸管で吸収された栄養素が肝臓に集まる。
キーワード ① 心周期 ② 心音 ③ 心拍出量 ④ 門脈系
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:「系統看護学講座 解剖生理学」185-206ページを熟読する。
復習:心周期と心臓の動き、心周期と心音・心内圧との関係について解剖生理学p.176-177の表4-2、図4-14をみながら復習する。
血管壁の構造、動脈系の名称と走行について復習する。上肢の動脈、胸大動脈、腹大動脈、下肢の動脈、頭頚部の動脈、大脳動脈輪について覚えておく。
静脈系について復習する。上半身と下半身の血液は、それぞれ上・下の大静脈に集まり、別々に右心房に注ぐ。静脈系には動脈と伴行しない特殊な静脈が存在する。皮静脈と硬膜静脈洞である。脳からの血液は、脳の表面に向かう静脈を経て、硬膜静脈洞に注ぐ。皮静脈の大きなものには、橈側皮静脈と尺側皮静脈がある。下肢では大伏在静脈と小伏在静脈がある。また、静脈系特有の走行もみられ、奇静脈系と門脈系についても復習する。「系統看護学講座 解剖生理学」p185-206を読み返し、「系統看護学講座準拠 解剖生理学ワークブック」46-55ページを解答し、復習する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

12 循環器系の構造・機能③(血液の循環調節、血圧、微小循環、リンパ) 科目の中での位置付け 身体を構成する細胞は、体重の約60%を占める組織液の中に浮かんだ状態にある。細胞にとって、この組織液は栄養の供給源であり、同時に老廃物の排出先である。この組織液に摂取した栄養を届けたり、細胞から排出された老廃物を排泄器官に送ったりするための輸送路を循環器系といい、脈管系とリンパ管系とに大別できる。本コマ(第12回)では血液の循環調節や血圧について学修する。心臓のポンプ作用によって血管系に拍出された血液は、血管の中を圧の高い方から低い方へ向かって流れる。これを血流という。血管内に生じる圧を血圧という。一般に血圧というと、動脈血圧をさす。血圧は大動脈で最も高く、動脈から細動脈、毛細血管と末梢にいくにつれて低下する。
また、物質交換の機序について学修する。毛細血管壁を通して物質移動は主として濾過と拡散により行われる。水溶性物質は濾過によって血管外へ出て、拡散によって移動する。呼吸ガスのような脂溶性物質は、内皮細胞を貫通して拡散によりきわめてすみやかに交換される。拡散は、ある物質の濃度勾配にしたがっておこる物質の移動である。グルコースなどの栄養素は、濃度の高い血管内から濃度の低い組織へ移動し、老廃物は逆に濃度の高い組織から血管内へ移動する。
さらに、リンパ系の構造について学修する。毛細血管を通る血液から血漿の一部が漏れ出て、間質液になる。リンパ管は間質液を集めて再び血液に戻す脈管で、そこを流れる液はリンパ(リンパ液)と呼ばれ、液体成分と細胞成分(おもに白血球の一種であるリンパ球)からなる。
ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p206-215
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p215-220
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p215
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p220-222
コマ主題細目⑤:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p226-228
コマ主題細目 ① 血圧 ② 血圧・血流量の調節 ③ 脈拍 ④ 毛細血管 ⑤ リンパ
細目レベル ① 血圧は、心臓の収縮によって拍出された血液が末梢の血管を押し広げる力であり、動脈壁の伸展と復元は波動として末梢へ伝播し浅在性の動脈に触れて感じる波動を脈拍とよぶ。血圧・心拍数などは、自律神経とホルモン様生理活性物質によって調節される。動脈の血圧は、心臓の拍動によって変動する。血圧は心臓の収縮期において最も高くなり、これを最高血圧あるいは収縮期血圧という。反対に心臓の拡張期において最も低くなり、これを最低血圧あるいは拡張期血圧という。最高血圧と最低血圧の差を脈圧という。血圧に影響を与える因子、例えば血液量の増大、血管収縮による血管断面積の縮小などである。血圧は心拍出量と総末梢血管抵抗の積で表される。したがって、血圧に影響を与える因子は心拍出量と末梢血管抵抗の2つが考えられる。
② 血管の収縮・拡張を調節する機構には、心臓血管中枢を中心とする神経性調節、血中に流れるホルモンなどによる体液性調節がある。心臓血管中枢は、脳内の相互に連結したニューロンの塊であり、延髄と橋の内部に存在する。心臓血管中枢からの出力は、自律神経を介して心臓に向かっており、血圧変化に素早く反応できるようになっている。心臓血管中枢へ血圧変化を伝える入力装置として、圧受容器と化学受容器、高位中枢が挙げられる。血管平滑筋の収縮・拡張に関わる体液性の調節は、神経性調節より長時間にわたって、血圧をはじめ血液量まで変化させる特徴がある。この調節に関与するのは、副腎髄質ホルモン、レニン・アンジオテンシン系、下垂体後葉のバソプレシンなどである。
③ 心臓の収縮によって、血液が大動脈から全身に送り出される。血液が送り出されるたびに動脈内の圧力は変化し、その変化が末梢へ移動して血管壁を押し広げる衝動が脈拍である。原則として、心臓の拍動1回に対して一つの脈拍が対応する。脈拍は皮下の浅い動脈で触れることができ、成人で1分間に60~100回打つ。脈拍からは、脈拍数(脈の速さ)や脈拍のリズム(調律)、拍動の強さ(振幅)、動脈の緊張度(動脈の性状)、左右の違いなどの情報を読み取ることができる。実際に脈拍を触れる動脈は、浅側頭動脈、総頸動脈、上腕動脈、橈骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、足背動脈、後脛骨動脈などである。正常では、脈拍数と心拍数は同じになる。
④ 毛細血管壁を通しての物質移動は主として濾過と拡散により行われる。水溶性物質は濾過によって血管外に出て、拡散によって移動する。呼吸ガスのような脂溶性物質は、内皮細胞を貫通して拡散によりきわめてすみやかに交換される。拡散は、ある物質の濃度勾配にしたがっておこる物質の移動である。グルコースなどの栄養素は、濃度の高い血管内から濃度の低い組織へ移動し、老廃物は逆に濃度の高い組織から血管内へ移動する。毛細血管では、血液と血管周囲の組織とが薄い内皮細胞のみを介して接触し、血管内外での物質交換が行われる。毛細血管の血圧(毛細血管圧)は、水を血管外へ押し出す圧力を生じる。一方、血漿タンパク質は毛細血管壁を透過しないため、このタンパク質によって生じる浸透圧(膠質浸透圧)は水を血管内に吸い込む力を発生させる。毛細血管の動脈側は、毛細血管圧が高いために、水は血管内から外へと濾過される。しかし、静脈側では毛細血管圧が低くなるため、水は膠質浸透圧により血管内に再吸収される。つまり、水の局所循環が行われていることになる。血管外に出た水の一部はリンパ管に流入し、リンパ液となる。なお、毛細血管圧は動脈圧よりも静脈圧の影響を強く受ける。つまり、静脈にうっ血を生じると静脈圧が上昇し、毛細血管圧も上昇するため、血管外への水の濾過が増加して浮腫を起こす。
⑤ リンパ系は、リンパ管とリンパ節からできている。リンパ管には毛細血管から漏れ出た血漿に近い体液の一部が収容される。リンパ管は合流してしだいに太くなり、弁をもつようになる。最終的に下半身と左上半身からのリンパ管は胸管、右上半身からのリンパ管は右リンパ本幹に集まり、両者は頚部でそれぞれ左および右の静脈角(鎖骨下静脈と内頚静脈の合流部)に注ぐ。胸管は最大のリンパ管である。下肢と骨盤からの左右の腰リンパ本幹と腹部内臓からの腸リンパ本幹とが合流して胸管ができる。合流部は乳び槽とよばれ、小腸壁で吸収された脂肪滴によって白濁したリンパを含んでいる。リンパ管は毛細リンパ管の網に始まり、次第に集まっていくつかの本幹になり、静脈に注いで終わる。その途中に何回かリンパ節という濾過装置を通過する。異物や細菌が間質液からリンパ管に流れ込むと、この濾過装置に引っかかり、リンパ節炎を引き起こす。リンパ節の防衛力が勝れば、細菌や異物は細胞の食作用で処理され、抗体によって無害化される。リンパ節は細網組織からなり、リンパ球を産生する能力をもつ。つくられた無数のリンパ球がリンパ節の中でいくつかの球状の集団(胚中心)をなし、リンパ小節をつくっている。胚中心は抗体産生細胞の分化にあずかる。リンパ節は、頚部、腋窩、鼡径部および胸腹部の血管に沿って多く分布する。
がん細胞はリンパの流れにのって転移することが多いため、がん化した組織の近傍のリンパ節は、最初の転移場所になりやすい。左の大鎖骨窩に位置する鎖骨上リンパ節は、胸管との連絡により胸部~骨盤部のがんが転移する部位として知られ、臨床ではウィルヒョウのリンパ節と呼ばれる。 がんの外科的切除に際しては、所属リンパ節の除去(郭清)があわせて行われることを理解する。

キーワード ① 血圧 ② 濾過 ③ 拡散 ④ 浮腫 ⑤ 胸管
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:「系統看護学講座 解剖生理学」206-228ページを熟読し、わからない部分を明らかにしておく。
復習:血圧は、心拍出量と末梢血管抵抗と循環血液量の3要素によって調節される。さらに大動脈の弾性や血液の粘性など、多くの要因が血圧に影響を与える。血圧の調節は局所性、ホルモン性、および自律神経性に行われる。実際に脈拍を触れる動脈について、教科書の図を見ながら確認する。
毛細血管壁を通しての物質移動は主として拡散と濾過により行われるため、濾過と再吸収、拡散のしくみを理解する。また、浮腫とは組織間隙に正常以上に水が貯留した状態であり、血管からの漏出の増加、またはリンパ管への流出減少によって生じるが、浮腫の要因について復習する。
リンパについて、最終的に下半身と左上半身からのリンパ管は胸管、右上半身からのリンパ管は右リンパ本幹に集まり、両者は頚部でそれぞれ左および右の静脈角(鎖骨下静脈と内頚静脈の合流部)に注ぐことを復習する。
「系統看護学講座 解剖生理学」p206-228を読み返し、「系統看護学講座準拠 解剖生理学ワークブック」55-57ページを解答し、復習する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

13 循環器系の代表的疾患とその看護、解剖生理まとめ 科目の中での位置付け 本コマ(第13回)では、循環器の正常機能の理解を深めるために、いくつかの循環器疾患について学修する。動脈硬化は血管に生じる異常で、高血圧や虚血性心疾患など、様々な循環器疾患のベースとなる病態である。動脈硬化は動脈壁が厚くなって弾力性を失うことで、血管抵抗が下がりにくくなり、高血圧を引き起こす。また動脈の内腔が狭くなるので、動脈硬化を起こしている部位から先の血流が途絶えてしまい、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を引き起こしやすくなる。
さらに、心臓の弁の病気である弁膜症や、刺激伝導系の病気である不整脈についても学修する。弁膜症は心臓内腔に存在する弁がきちんと働かなくなるために血行動態が乱れて、さまざまな障害を及ぼすものである。また不整脈は心臓の刺激伝導系が正常に機能しなくなり、ベースメーカーではない心筋細胞が電気刺激の発信源となり、心拍数と心拍のリズムが乱れてしまうものである。
心不全はあらゆる循環器疾患がたどりつく最終ステージで、心臓のポンプ機能が低下して、末梢組織が必要とするだけの血液を拍出できなくなってしまった状態である。いずれの疾患も、循環器のどの部分にどのような異常が生じると起こるものかを意識して学修を深めることが重要である。
ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。

コマ主題細目①:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p114-117,教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p225-226
コマ主題細目②:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p93-97,教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p175
コマ主題細目③:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p97-100,教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p183-185
コマ主題細目④:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p106-107,教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p224-225
コマ主題細目 ① 動脈硬化と循環器疾患 ② 狭心症と心筋梗塞 ③ 不整脈 ④ 心不全
細目レベル ① 動脈と静脈の構造を理解する。動脈硬化は、年齢とともに生じる血管の老化である。頸動脈や脳動脈で動脈硬化が起こると脳梗塞やくも膜下出血といった脳血管障害を起こす。冠動脈で起こると狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を引き起こしてしまう。動脈硬化が起こる機序は、大きく3つあり、粥状硬化(内膜と中膜の間にアテローム蓄積)、メンケベルグ動脈硬化(中膜の石灰化)、細動脈硬化(血管壁全体の硝子変性、フィブリノイド変性)である。特に粥状硬化は、大動脈などの弾性動脈と、冠動脈に起こりやすく、重篤な疾患に直結しやすい最も重要な動脈硬化である。動脈壁の内膜と中膜の間にアテローム(粥腫)という、粥状でどろどろの物質が蓄積し、プラークという隆起を形成することが主要病態である。アテロームが破綻すると、そこに血栓ができ、一気に血管が完全閉塞してしまう。高血圧は、全身の細動脈の動脈硬化が一因であると考えられている。高血圧には本態性高血圧と二次性高血圧があり、9割以上は血圧上昇の原因がはっきりとわからない本態性高血圧に分類される。高血圧の原因としては、加齢に伴う高コレステロール血症などで、動脈硬化が起こり血管が固くなること、体重増加によって血液量が増加することなどが推察されている。高血圧と動脈硬化は、お互いに悪化させ合う負の関係にある。
② 心臓を栄養する冠状動脈の走行を理解する。冠状動脈は左右1本で、それぞれ大動脈弁の左半月弁と右半月弁の基部から約1㎝のところで大動脈から分岐する。右冠状動脈、左冠状動脈の走行について図を見ながら確認する。特に、左冠状動脈については、すぐに前室間枝と回旋枝に枝分かれする点に注意する。また、静脈系は最終的には冠状静脈洞となって右心房に血液が環流することを理解する。狭心症とは動脈硬化などにより冠状動脈が十分に拡張できなくなった状態であり、心筋の酸素不足から胸痛発作をおこす。また、心筋梗塞とは血栓などにより冠状動脈が閉塞して、その流域の心筋組織に酸素が行きわたらなくなった状態であり、心筋が壊死をおこした病態である。
③ 心臓の刺激伝導系について理解する。不整脈とは、心臓の刺激伝導系が正常に機能しなくなったり、ペースメーカーではない心筋細胞が電気刺激の発信源となったりすることで、持続的に心拍数と心拍のリズムが正常洞調律から外れてしまう病態である。不整脈は2種類に大別され、徐脈性不整脈と頻脈性不整脈がある。徐脈性不整脈は心拍数が減少し、洞不全症候群(洞結節の異常によって脈拍が異常に遅くなる)、房室ブロック(刺激伝導系の伝導障害で脈拍遅延や欠落が生じる)がある。頻脈性不整脈は心拍数が上昇し、上室性不整脈(不整脈の起源が心室よりも上位、つまり心房と刺激伝導系にある)と心室性不整脈(心室性期外収縮、心室頻拍、心室粗動・細動)がある。期外収縮自体は頻脈ではないが、他の頻脈性不整脈に移行しやすいことで頻脈性に分類されている。
④ 心不全は疾患の名前ではなく、さまざまな循環器疾患が重症化してたどりつく、最終ステージのようなものである。心不全とは、急性心筋梗塞や重症不整脈などによって心臓のポンプ機能が大きく障害され、末梢組織が必要としている血液需要に心臓が応じることができない状態である。ポンプ機能が低下すると、ポンプの手前はうっ血し、ポンプの先では血液が不足する。心不全は左心系に起こる左心不全と、右心系に起こる右心不全に分類され、右心不全の多くは左心不全に続発して生じる。左心室のポンプ機能が障害されるとその影響がまず左心房に及び、左心房圧が上昇する。さらに手前の肺静脈に影響が及び、肺静脈圧が上昇する。そして肺にも影響が及び、肺うっ血から肺水腫が起こる。うっ血による症状には発作性夜間呼吸困難と起坐呼吸がある。ポンプが心拍出量を保てなくなると、循環不全のために腎血流量や尿量が低下する。これがポンプの先での血液不足による症状である。うっ血が右心系に及び、右心室のポンプ機能が障害されると、その影響が右心房に及び、さらに全身の静脈がうっ滞し、静脈圧が上昇して右心不全の症状が現れる。
キーワード ① 動脈硬化 ② 狭心症 ③ 心筋梗塞 ④ 不整脈 ⑤ 心不全
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:「系統看護学講座 病態生理学」90~118ページを熟読し、わからない部分を明らかにしておく。主に「病態生理学」p.90-93の心臓の構造と機能は、第10~12回の復習となる。また、第13回では、動脈硬化と循環器疾患、狭心症と心筋梗塞、不整脈、心不全について説明するので、「系統看護学講座 病態生理学」の該当ページを読んでおく。
復習:「系統看護学講座 病態生理学」p.90-118を読み返し、復習する。動脈硬化症は動脈壁へ脂質が沈着し、動脈壁が肥厚して血流が障害されることがあり、血管の弾力性の低下や血管内腔の狭小化、血管内皮細胞の機能不全などの障害が起こることを復習する。心臓は冠状動脈で栄養されており、この冠状動脈に狭窄が生じると狭心症、完全閉塞すると心筋梗塞となり、それぞれの病態生理について復習する。不整脈は正常洞調律以外の電気現象を生じたものであり、洞房結節からの刺激が心室に正しく伝わらなくなると伝導ブロックとなり、洞房ブロックと房室ブロックの違いについて復習する。心筋興奮の異常として現れる期外収縮、細動などの病態生理を復習する。左心不全と右心不全により引き起こされる病態生理を復習する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

14 呼吸器系の構造・機能①(上気道、下気道の構造) 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、本コマ(第14回)を含めて4回にわたり、呼吸器系の形態機能と疾病について学修する。生命を維持するエネルギー産生に酸素は不可欠であり、ヒトは空気の21%を占める酸素を利用して生きている。一方、エネルギー産生の過程で発生する二酸化炭素は血流にのって肺に送られ、そこで体外に排出される。呼吸器系は、鼻・鼻腔・咽頭・喉頭・気管・主気管支・2つの肺・肺を覆っている胸膜・呼吸に必要な筋肉(横隔膜・肋間筋など)からなる。本コマ(第14回)は、呼吸器系の概要と上気道・下気道の構造について学修する。鼻腔には嗅覚をつかさどる機能があり、咽喉頭では発声を行う。肺は、肺表面活性物質を産生したり、さまざまな血管に作用する物質の産生や代謝を行ったりするなど、代謝器官として機能している。肺の中では、空気は、主気管支から順に枝分かれした気管支、細気管支を通って、ガス交換の場である肺胞に到達する。肺胞に至るまでの空気の通路を総称して気道という。特に、鼻腔から喉頭までの気道を上気道、気管から末梢の気道までを下気道という。気道や肺胞は外界と通じている。大気中の空気には塵や埃のほか、細菌やウイルスなどの病原体も含まれるが、気道には、体に害を与える異物を除去するとともに、冬場の冷たく乾燥した空気でもちょうどよく加温・加湿する機能が備わっている。
ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p108-112
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p112-114
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p114-115
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p116-118
コマ主題細目⑤:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p118-120
コマ主題細目 ① 鼻・咽頭 ② 喉頭 ③ 気管・気管支 ④ 肺 ⑤ 胸膜・縦隔
細目レベル ① 鼻腔は前方の外鼻孔で外界と、後は後鼻孔で咽頭鼻部と連絡する。鼻腔は鼻中隔で左右に分けられ、それぞれの外側壁には3つの棚状突起(上・中・下鼻甲介)をもつ。棚状構造により、鼻腔内の空気と粘膜の接触面積はかなり大きく、加温・加湿・濾過(異物の除去)がより効果的に行える。鼻中隔前下方部はキーゼルバッハ部位と呼ばれ、粘膜は薄く、毛細血管網をつくっており、鼻出血の好発部位である。鼻粘膜は多列線毛上皮からなり、粘液を分泌する杯細胞がところどころに存在する。副鼻腔は、鼻腔周囲の骨の内部にある空洞で鼻腔に通じており、上顎洞、前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞の四つがある。副鼻腔には空気が入っていて、内面は鼻腔粘膜の続きで覆われる。副鼻腔があることで頭蓋は軽くなり、鼻腔とともに音声に共鳴を与える。
咽頭は、前方の鼻腔・口腔からつながり、前下方の喉頭と下方の食道につながる。上から鼻部(上咽頭)・口部(中咽頭)・喉頭部(下咽頭)の3部に分かれる。咽頭は、空気が通過する呼吸器系の一部であるとともに、食べ物が通過する消化器系の通路でもある。咽頭鼻部には、耳管の開口部が存在する。すなわち、耳管のもう一方の端は中耳とつながっている。咽頭の機能は、誤嚥防止など、交通整理を行いながら空気と食塊を通過させる以外に加温・加湿・濾過および鼓膜内外の圧較差の調節を行う。

② 喉頭は、咽頭の下方で舌根・舌骨の高さから気管まで続いており、いくつかの軟骨(喉頭軟骨)で構成されている。これらの軟骨をつなぐ喉頭筋がいくつかある。喉頭筋は骨格筋であるが、迷走神経によって支配されている。また、喉頭の内部には、前庭ヒダと声帯ヒダという上下2対のヒダが壁の両側から張り出しており、声帯ヒダは発声に関わる。声帯ヒダとその内部の声帯靭帯および声帯筋を含めて声帯とよぶ。後方の披裂軟骨を動かすことにより、声帯ヒダの間のすきま、すなわち声門の幅がかわる。喉頭の粘膜の大部分は多列線毛上皮でおおわれるが、前庭ヒダと声帯ヒダの一部などは重層扁平上皮でおおわれる。声帯の状態は、喉頭鏡を口から挿入して観察することができる。
③ 喉頭に続いて気管が始まる。気管は食道の前を通って縦隔を下降し、第5胸椎の高さにおいて、心臓の後方で左右の主気管支に分岐する。気管の壁には、馬蹄形をした気管軟骨が一定の間隔で15~20個並んでおり、気道がつぶれないように補強している。食道と接している気管後面には軟骨はなく、結合組織と平滑筋でできた膜性壁となっている。気管から分かれた気管支は、右のほうが左よりも太く、短く、傾斜も急で垂直に近い。そのため気管支に吸い込まれた異物は、右主気管支に入ることが多い。気管支は左右対称ではないことが重要である。模型を使って左右の気管支の違いを理解することにより、なぜ誤嚥すると異物が右気管支に入りやすいかを理解する。
④ 気管支は肺に入ると葉気管支→区域気管支→細気管支→終末細気管支→呼吸細気管支→肺胞管と分岐し、最終的には肺胞という小さな袋になって終わる。肺は、胸腔の中で、中央の縦隔を除いた大部分を占め、胸膜に包まれている。右肺は左肺よりも大きい。また、右肺は3葉に、左肺は2葉に分かれている。さらに気管支の分岐に対応して、右肺は10区域に、左肺は8~9区域に区別される。最終形の肺胞は、直径200㎛ほどの空気を含む小さな袋で、互いにごく薄い膜で仕切られている。その壁には毛細血管が広がっている。ガス交換はここで行われることを肺胞と毛細血管の構造を図で確認しながら学修する。
⑤ 肺は、気管支や肺動静脈が出入りする肺門を除いて、臓側胸膜(肺胸膜)に覆われている。臓側胸膜(肺胸膜)は、胸膜腔という狭い隙間を挟んで壁側胸膜と向かい合い、壁側胸膜は胸郭や横隔膜の裏打ちとなっている。胸膜腔には少量の漿液が存在し、その潤滑作用により、両胸膜は呼吸のたびにぴったりとくっつきながら、滑らかに横隔膜や胸腔の動きに追従する。胸腔の中央部で、左右の肺に挟まれた部分を縦隔とよぶ。縦隔は、後方では胸椎により、前方では胸骨により、側方では左右の壁側胸膜により境される。上方ではとくに明瞭な境界なく頸部につながり、下方では横隔膜を隔てて腹部に接する。縦隔内には、肺以外の胸部内臓と血管・神経がすべて含まれており、その最大のものが心臓である。縦隔には肺を含まないこと、心臓・気管・食道・大血管などは縦隔内におさまることを理解する。
キーワード ① 鼻甲介 ② 副鼻腔 ③ 主気管支の左右差 ④ 右肺3葉・左肺2葉 ⑤ 縦隔
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:「系統看護学講座 解剖生理学」p.108-120を熟読し、わからない部分について明らかにしておく。
復習:上気道・下気道の構造について復習する。上気道について、鼻腔は前方の外鼻孔で外界と、後は後鼻孔で咽頭鼻部と連絡する。鼻腔は鼻中隔で左右に分けられ、それぞれの外側壁には3つの棚状突起(上・中・下鼻甲介)をもつ。咽頭は、前方の鼻腔・口腔からつながり、前下方の喉頭と下方の食道につながる。上から鼻部(上咽頭)・口部(中咽頭)・喉頭部(下咽頭)の3部に分かれる。咽頭は、空気が通過する呼吸器系の一部であるとともに、食べ物が通過する消化器系の通路でもあることを復習する。喉頭は、咽頭の下方で舌根・舌骨の高さから気管まで続いており、喉頭軟骨で構成されている。下気道について、気管の特徴として気管軟骨は馬蹄形をしており、後方は食道と接する。気管支は左右対称ではなく、左右の気管支の違いを復習し、なぜ誤嚥すると右気管支に入りやすいかを整理する。気管支は肺に入ると葉気管支→区域気管支→細気管支→終末細気管支→呼吸細気管支→肺胞管と分岐し、最終的には肺胞となることを復習する。
「系統看護学講座 解剖生理学」p108-120を読み返し、「系統看護学講座準拠 解剖生理学ワークブック」30~33ページを解答し、復習する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

15 呼吸器系の構造・機能②(呼吸のメカニズム、呼吸気量) 科目の中での位置付け 第14回から4回にわたり、呼吸器系の形態機能と疾病について学修する。生命を維持するエネルギー産生に酸素は不可欠であり、ヒトは空気の21%を占める酸素を利用して生きている。一方、エネルギー産生の過程で発生する二酸化炭素は血流にのって肺に送られ、そこで体外に排出される。
本コマ(第15回)では外呼吸と内呼吸、呼吸のメカニズムについて学修する。呼吸器系の重要な機能は、酸素を生体に供給して二酸化炭素を取り除くことである。そのためには換気、外呼吸、ガスの運搬、内呼吸について理解することが必要である。新しい空気を肺に吸い込んで肺胞腔に酸素を取り入れ、肺にある空気を吐いて二酸化炭素を肺胞腔から体外へ排出する(換気)。肺胞腔と血液の間で、酸素と二酸化炭素の交換を行う(外呼吸)。酸素を肺から身体の各組織へ運び、二酸化炭素を組織から肺へと運搬する(ガスの運搬)。身体の各組織において、血液と組織との間で、酸素と二酸化炭素の交換を行う(内呼吸)。これらの過程を総称して呼吸であることを理解する。
ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p120-121
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p121-123
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p123-125
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p125-126
コマ主題細目⑤:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p127-130
コマ主題細目 ① 内呼吸と外呼吸 ② 気道・肺胞の機能 ③ 呼吸のメカニズム ④ 呼吸筋 ⑤ 呼吸気量
細目レベル ① 外気(空気)から酸素(O₂)を血液中に取り込み、体内で発生した二酸化炭素(CO₂)を血液中から体外へ排出する働きを外呼吸という。外呼吸によってCO₂を失いO₂を受け取った血液は、動脈血となって心臓に戻り、左心室から全身に向かって拍出される。この血液は末梢に達し、毛細血管に入って、体組織との間でガス交換を行う。このときの呼吸ガスの出入りの方向は、肺における外呼吸の場合とは反対で、O₂は血液中から出て組織の細胞に取り込まれ、細胞の代謝の結果生じたCO₂は細胞から出て血液中に移動する。末梢におけるガス交換を内呼吸という。
② 気道の機能には、加温作用、加湿作用、防御機能がある。鼻腔内にある上・中・下の鼻甲介は鼻腔内の表面積を大きくし、吸い込まれた空気を体温近くにまで温め、冷気によって受ける刺激を和らげている(加温作用)。鼻腔から気管、気管支の気道表面から分泌されている粘液によって、吸い込まれた空気が気道を通過する間に加湿されるため、乾燥を防いでいる(加湿作用)。吸い込まれる空気中には塵埃や最近、その他さまざまな物質が含まれているが、気道はこれらの物質を除去し、有害な物質が肺胞に達するのを防いでいる(防御機能)。肺胞をつくっている肺胞上皮には、Ⅰ型肺胞上皮細胞とⅡ型肺胞上皮細胞の2種類がある。Ⅰ型細胞は表面が比較的平滑で、きわめて壁の薄い袋であるため、表面張力が袋を押しつぶす方向に作用する。これに対し、Ⅱ型細胞は、Ⅰ型細胞の間に散在する膨隆した厚みのある細胞で、表面に短い微絨毛を認める。Ⅱ型細胞は、サーファクタントと呼ばれる表面活性物質を分泌し、表面張力を下げ、肺胞の虚脱(つぶれること)を防いでいる。サーファクタントは胎生期後期に産生されるため、それ以前に生まれた未熟児はサーファクタントを十分に産生できず、肺胞がつぶれて呼吸に障害をきたすことがある(新生児呼吸窮迫症候群)。
③ 肺の中に空気が吸い込まれたり吐き出されること、つまり換気は、肺が能動的に膨張したり収縮したりするからではなく、胸骨・肋骨・脊柱そして横隔膜によって構成される胸郭の拡大と復元により、肺が受動的にふくらまされたり縮ませられたりすることで行われる。さらに、膨らんだ肺は単独でも縮む力(肺弾性収縮力)をもっている。呼吸のメカニズムは、肺を風船に、胸郭をピンに、横隔膜を下部のゴム膜としたモデルを考えると理解しやすい。吸息時には、横隔膜が収縮し、胸膜腔の圧が低下することにより、肺がふくらむ。逆に、呼息時には、横隔膜が弛緩し、胸膜腔の圧が上昇することにより、肺から空気が出ていく。胸膜腔内の圧、すなわち胸腔内圧は吸息時の呼息時にも常に陰圧に保たれている。しかし肺胞内圧は呼息時に陽圧となることを理解する。
④ 呼吸運動に関わっているのが呼吸筋で、横隔膜と外肋間筋が相当する。胸郭は肋骨、胸骨および胸椎によって構成される。下部には横隔膜がある。胸郭の内腔を胸腔という。胸郭は、胸腔を拡大・縮小させる吸息と呼息により成り立つ呼吸運動に関与する。吸息時には外肋間筋と横隔膜が収縮する。外肋間筋は肋骨と肋骨との間にはる筋で、肋間神経に支配され、収縮することによって肋骨を外上方に引き上げ、胸郭の前後・左右の幅を増大してその容積を増加される。横隔膜は横隔神経に支配され、収縮すると下方に移動して胸腔を拡大させる。呼息時にはこの2つの筋(外肋間筋と横隔膜)は弛緩する。主として横隔膜の収縮によって行われる呼吸を腹式呼吸、肋間筋の収縮によって行われる呼吸を胸式呼吸、両者をともに使う呼吸を胸腹式呼吸とよぶ。深呼吸や努力呼吸では、その他の筋群も呼吸にかかわってくる。これらの筋群は補助呼吸筋とよぶ。
⑤ 肺と気道は常に空気で満たされているが、呼吸の状態によって空気量は変化する。肺内に含まれる空気の量を呼吸気量(肺気量)とよぶが、呼吸気量のうち呼吸に伴って吸い込まれたり吐き出されたりする空気の量はスパイロメータ(肺活量計)を用いて測定できる。測定値は年齢や性別、身長、健康状態によって異なる。1回換気量は、1回の呼吸で吸い込まれる、あるいは吐き出される空気の量であり、通常は成人で500mL(0.5L)程度である。吸い込まれた500mLの空気の内の一部は、肺胞まで達することなく、鼻腔や気管・気管支などにとどまり、血液との間のガス交換に関与しない。この空気量を死腔といい、約150mLである。したがって肺胞まで達してガス交換にかかわる空気量は350mLであり、これを肺胞換気量という。スパイロメータは短時間で簡便に行うことができる呼吸機能検査で、肺活量の測定と1秒量・1秒率の測定からなる。スパイロメータによって閉塞性換気障害や拘束性換気障害の有無が判定できる。さらに、閉塞性換気障害はフローボリューム曲線によって気道閉塞の部位をある程度判定できる。
キーワード ① 内呼吸 ② 外呼吸 ③ 陰圧 ④ 横隔膜 ⑤ 肺活量
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:「系統看護学講座 解剖生理学」p.120-130を熟読し、わからない部分について明らかにしておく。
復習:内呼吸と外呼吸の違いについて復習する。気道の機能には、加温作用、加湿作用、防御機能があることをそのしくみをふまえて復習する。呼吸のメカニズムについて模式図をみながら原理を理解する。換気に伴う空気の移動として呼吸筋による呼吸運動を復習する。胸腔内圧についても、胸腔内圧は常に大気圧よりも低いため、肺胞は虚脱しないで広がっていることを理解する。肺に含まれる空気の容積や肺を出入りする空気の量を肺気量といい、年齢や性別、身長、健康状態によって異なる。スパイロメータで測定する肺活量と残気量、1秒量・1秒率の意味を復習し、肺機能との関係について理解する。「系統看護学講座 解剖生理学」p120-130を読み返し、「系統看護学講座準拠 解剖生理学ワークブック」34~35ページを解答し、復習する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

16 呼吸器系の構造・機能③(ガス交換、肺の循環と血流、呼吸運動の調節) 科目の中での位置付け 第14回から4回にわたり、呼吸器系の形態機能と疾病について学修する。生命を維持するエネルギー産生に酸素は不可欠であり、ヒトは空気の21%を占める酸素を利用して生きている。一方、エネルギー産生の過程で発生する二酸化炭素は血流にのって肺に送られ、そこで体外に排出される。
本コマ(第16回)では、ガス交換、呼吸受容器、呼吸中枢について学修する。肺におけるガス交換は、肺胞内の空気と肺毛細血管内の血液との間で行われる。ガスの移動は、分圧差(濃度差)に伴う拡散によって起こる。また、呼吸調節系の基本は、呼吸状態の情報収集を行う受容器、その情報に基づいて呼吸数の深さに関する指令を出している呼吸中枢、その指令に基づいて換気を実行する効果器(呼吸筋)の3要素からなる。受容器での情報収集に基づく呼吸中枢への入力と呼吸中枢からの出力に問題が生じると、呼吸の回数・深さ・リズムに異常をきたす。呼吸のさまざまな異常パターンには、チェーン-ストークス呼吸、クスマウル呼吸、睡眠時無呼吸症候群などがある。
ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p130-133
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p133-134
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p134-138
コマ主題細目 ① ガス交換とガスの運搬 ② 肺の循環と血流 ③ 呼吸運動の調節
細目レベル ① 酸素と二酸化炭素の移動は、分圧差(濃度差)に従う拡散によって行われる。すなわち、拡散によって酸素は血管内から細胞へ移動し、酸素は細胞内でエネルギー産生に利用される。細胞内では、代謝によって二酸化炭素が産生され、拡散によって二酸化炭素は細胞内から血管内へ移動するというしくみである。拡散量は、組織の面積と、血液と組織間の濃度勾配に比例し、血液と組織細胞間の障害の厚さに反比例する。拡散により血漿中に移動した酸素は、赤血球内に入り、ヘモグロビンに結合する。動脈血中のヘモグロビンの酸素飽和度はおよそ97.5%であり、94%未満の場合はなんらかの異常が考えられる。組織の細胞の代謝によって発生したCO₂は血管に入る。そのCO₂のうち5%は血漿に溶解し、5%はHbなどのタンパク質と結合する。残りはHCO₃⁻に変換され、血漿または赤血球内に溶解して肺へと運ばれる。肺に運ばれたCO₂は、濃度が低い肺胞へと排出される。
② 心臓から出た血液の経路は、全身に送られたのちに心臓に戻ってくる体循環(大循環)と、肺へと流れて心臓に戻ってくる肺循環(小循環)に大きく分けられる。右心拍出量は左心拍出量と等しいが、肺循環抵抗は体循環抵抗の約1/5であるため、右心室の発生圧は左心室圧の1/5程度である。このように肺循環は比較的低圧であるため、肺血流量は肺動脈圧や肺静脈圧、肺胞内圧の影響を受ける。心臓より高い位置にある肺上部の血管は、心室拡張期には肺胞に押されて閉塞し、血流が途絶する。肺下部では、血管は常に開口しており、血流が多い。このように肺の部位によって血流量が異なることを理解する。換気が十分に行われたとしても、そこに十分な血流がなければ、血液の酸素化は不十分となる。逆に、十分な血流があったとしても、その部分の肺胞の換気が不十分であれば、これも十分な血液の酸素化は行えない。このように換気と血流はちょうどよく釣り合っている必要がある。この釣り合いがくずれた状態を換気血流比不均等という。
③ 生体では、換気量を注意深くコントロールして、必要な酸素を供給し、不要な二酸化炭素を排出しながら、血中の酸素分圧と二酸化炭素分圧をいつもほぼ一定に保っている。こうした呼吸調節は私たちが意識して行っていることではなく、通常、不随意に行われている。延髄にある中枢化学受容器は、脳脊髄液中の二酸化炭素分圧や水素イオン濃度の変化に反応し、呼吸中枢に情報を伝えて換気をコントロールしている。末梢化学受容器は2種類あり、内頚動脈と外頚動脈の分岐部にある頚動脈小体と、大動脈弓にある大動脈小体である。また、肺には、化学的刺激以外の情報を受けて、呼吸中枢へ連絡する受容器が存在する。呼吸中枢は、呼吸数と呼吸の深さを調節している。中枢と末梢にある化学受容器や肺にある各種受容器から送られてくる情報をもとに、呼吸の情報を認識し、酸素分圧や二酸化炭素分圧を一定に保つように呼吸筋へ指令を出し、呼吸を促進したり抑制したりしている。呼吸中枢は延髄にあり、腹側部(腹側呼吸ニューロン群)と背側部(背側呼吸ニューロン群)に存在する。呼吸は意識しなくても呼吸中枢の周期的興奮によって規則的に行われるが、呼吸中枢の異常や気道の閉塞などによって、呼吸の規則性が失われると呼吸運動の異常をきたす。睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に呼吸が一時的にとまる状態であり、喉頭の筋が睡眠中に弛緩して下がり気道を閉塞してしまうために起こる。チェーン-ストークス呼吸は呼吸と無呼吸を周期的に繰り返す状態であり、呼吸中枢の機能低下や器質的障害によって呼吸の周期性が失われることによって出現する。ビオー呼吸は、深さの一定しない速い呼吸と無呼吸を、不規則な周期で繰り返す状態であり、呼吸中枢の障害によって起こり、生命の危機を示唆する。クスマウル呼吸は、規則正しい、深く大きな呼吸で、1回換気量の増加がみられる状態である。
キーワード ① ガス交換 ② 頸動脈小体 ③ 大動脈小体 ④ 呼吸中枢 ⑤ 延髄
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:「系統看護学講座 解剖生理学」p.130-138を熟読し、わからない部分について明らかにしておく。
復習:呼吸調節系の基本は、呼吸状態の情報収集を行う受容器、その情報に基づいて呼吸数の深さに関する指令を出している呼吸中枢、呼吸中枢の指令に基づいて換気を実行する効果器(呼吸筋)の3要素からなることを理解する。また、呼吸の受容器の存在部位と作用について、さらに呼吸中枢の存在部位について理解する。受容器での情報収集に基づく呼吸中枢への入力と呼吸中枢からの出力に問題が生じると、呼吸の回数・深さ・リズムに異常をきたすことを復習する。「系統看護学講座 解剖生理学」p130-138を読み返し、「系統看護学講座準拠 解剖生理学ワークブック」36~37ページを解答し、復習する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

17 呼吸器系の代表的疾患とその看護、解剖生理まとめ 科目の中での位置付け 人間が正常な生活を営むためには、十分な量の酸素を取り込み、適度な量の二酸化炭素を呼出する必要がある。そのために、呼吸運動によって換気が行われ、呼吸ガスは拡散によって肺胞と血液との間を移動し、そして呼吸ガスを運ぶ血液は肺胞を通って流れ去っていく。この過程の一部に異常が生じると疾患が出現する。本コマ(第17回)では、呼吸器の正常機能の理解を深めるために、いくつかの呼吸器疾患について学修する。呼吸器疾患呼吸器の感染症には、かぜ症候群や肺炎、肺結核などがあり、気道から肺胞のどこに何の病原微生物(細菌やウイルスなど)が感染を起こすのかがポイントとなる。換気障害については、呼気時に気道がつぶれやすくなるため息を吐き出せない閉塞性換気障害、そして肺をふくらませることができない拘束性換気障害について理解する。肺に水が溜まる胸水や肺水腫では、どこにどのようなしくみで水が溜まるのかが重要である。胸膜が破れて胸膜腔に空気が溜まる気胸、肺葉、肺区域の空気が抜けてしぼむ無気肺、気管支がふくらんで大量の痰や血痰を発生させる気管支拡張症についても理解する。呼吸器に発生する腫瘍については、原発性肺がんを理解する。いずれの疾患も、どこに、何による、どのような異常が生じているのかを意識して呼吸器系の代表的疾患を理解することで、正常な構造と機能の理解を深める。
ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。

コマ主題細目①:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p125-127
コマ主題細目②:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p127-132
コマ主題細目③:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p132-138,教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p139
コマ主題細目④:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p130-134
コマ主題細目⑤:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p125-126
コマ主題細目 ① 症候(呼吸困難・咳嗽・喀痰・喀血) ② 呼吸器感染症と誤嚥性肺炎 ③ 換気障害 ④ 胸水と肺水腫 ⑤ 肺がん
細目レベル ① 呼吸が苦しい、呼吸をするのに努力がいる、といった自覚症状が呼吸困難である。呼吸器疾患による慢性的な呼吸困難の程度はヒュー・ジョーンズの分類で評価する。左心不全や気管支喘息などで呼吸困難を訴える患者では、上半身を起こした起坐位や半坐位(ファウラー位)にした方が呼吸困難は軽減する。これを起座呼吸とよぶ。仰臥位より坐位の方が下半身から心臓に戻る静脈還流量が減少して肺への負担が軽減する。また横隔膜が下がって呼吸容積も増大するため、呼吸が楽になるためである。
咳嗽には喀痰を伴う湿性咳嗽と伴わない乾性咳嗽がある。湿性咳嗽を呈する代表疾患には肺炎や慢性気管支炎などがあり、乾性咳嗽は胸膜や間質の病変(胸膜炎、気胸、間質性肺炎)に伴うことが多い。気管支喘息で咳嗽を主症状とするものもある。喀痰は気道粘膜からの分泌物であり、黄色や緑色を呈する膿性痰と色調に乏しい(白い)非膿性単に大別される。膿性痰の色調は含有する好中球に起因するものであり、気道に感染が存在することを意味する。喀痰に血液が混じっているものを血痰、血液そのものを喀出することを喀血とよぶ。

② 呼吸器感染症の中で最も罹患頻度が高いのは、かぜ症候群である。かぜ症候群は、基本的には上気道(鼻腔、咽頭、喉頭)の炎症の総称で、ほとんどの原因がウイルスである。炎症が下気道に波及すると気管支炎、全身症状の強いインフルエンザも広義に含む。炎症が肺胞に波及すると肺炎となり、肺胞の炎症は肺胞性肺炎、肺間質の炎症は間質性肺炎という。肺炎は細菌感染によって起こると細菌性肺炎となり、膿性の痰を伴う咳嗽、呼吸困難、胸痛などの呼吸器症状に悪寒、発熱などの全身症状を伴う。このように、呼吸器感染症の病巣部位により上気道炎、気管支炎、肺炎の3つに区分されることを理解する。結核菌による呼吸器感染症は肺結核である。
誤嚥性肺炎とは、誤嚥(飲食物が喉頭から気道に入ること)した飲食物が原因で細菌感染が起こり、肺炎が発症するものである。誤嚥は加齢による嚥下反射の低下や、脳血管疾患による嚥下障害があると起こりやすく、誤嚥性肺炎は免疫力が低下している高齢者や基礎疾患がある場合に起こりやすくなる。口腔ケアや嚥下訓練により、ある程度、誤嚥性肺炎の予防が可能である。

③ 換気障害は換気が障害されている状態、つまり吸気や呼気がうまくいかない状態のことである。気道が狭窄・閉塞することによっておこる閉塞性換気障害(呼気がうまくいかない)と、肺胞の拡張が妨げられておこる拘束性換気障害(吸気がうまくいかない)、そして両者の混合型(混合性換気障害)に分けられる。換気障害の指標には%肺活量(対象者の肺活量が肺活量予測値の何%を満たすかという比率)と1秒率(努力肺活量に対する1秒量の割合)があり、これらによって換気障害の有無と種類が決定される。閉塞性換気障害は呼息時に気道がより強く圧迫されることによる1秒率の減少が特徴であり、拘束性換気障害は肺活量の減少が特徴である。閉塞性換気障害の代表的疾患としては、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD:慢性気管支炎や肺気腫)が挙げられる。COPDは気道・肺胞の慢性炎症(喫煙など)が原因で生じるもので、進行性・不可逆性の気流制限(息を吐きだせない)を有する疾患の総称である。口すぼめ呼吸を行うことにより、気道内圧を高めて気道の狭窄・閉塞を防ぎ、1回換気量を増やすことができる。拘束性換気障害としては、肺胞の拡張が障害される肺線維症、胸郭の拡張が障害される重症筋無力症などが挙げられる。
④ 胸水は壁側胸膜から胸膜腔へ分泌される組織液で、呼吸運動に伴う壁側・臓側胸膜の摩擦を軽減し呼吸運動の潤滑液として、肺がスムーズにふくらんだり縮んだりできるようにする働きがある。胸膜腔には正常でも常に10mL程度の胸水が存在する。胸水は血液から作られ、胸水の量は、毛細血管の静水圧が上昇したり、膠質浸透圧が低下したり、あるいは血管透過性が亢進することによって、病的に増加する。病的な状態である胸水貯留は、毛細血管透過性亢進による滲出性胸水と、静水圧上昇・膠質浸透圧低下による漏出性胸水の2つに大別される。
肺水腫は肺胞毛細血管の濾過と再吸収のバランスが崩れ、肺間質や肺胞が水浸しになるもので、胸膜腔に水が溜まる胸水と区別して理解する。肺水腫は、心臓に原因がある心原性肺水腫が多い。心原性肺水腫は左心不全(左心室のポンプ機能低下)により血液の流れが滞り左心房に血液がうっ滞し、肺静脈に血液がうっ滞し、順に手前に影響がおよんで肺胞毛細血管の静水圧が上昇し、濾過量が増加・再吸収量が減少し肺水腫となる。

⑤ 肺に発生する悪性腫瘍のほとんどは原発性肺癌とよばれる。気管から肺胞までの上皮細胞を発生母地とする悪性上皮性腫瘍である。原発性肺癌は、特に気管支の粘膜上皮細胞を発生母地とし、癌組織の特徴により小細胞癌(原発性肺癌の15%を占める)、非小細胞癌(原発性肺癌の80%強を占める)に分けられる。非小細胞癌には扁平上皮癌、腺癌、大細胞癌に大別される。肺がんの三大症状は咳嗽、喀痰、血痰であり、病気が進むと胸背部痛、呼吸困難、体重減少、全身倦怠感などの症状が現れる。肺がんの特殊な症状として、肺がんの増大による圧迫症状である上大静脈症候群、パンコースト症候群、反回神経麻痺、そして圧迫症状以外の特殊症状であるランバート・イートン症候群、ばち指などがある。
キーワード ① 呼吸困難 ② 閉塞性換気障害 ③ 拘束性換気障害 ④ 誤嚥性肺炎 ⑤ 肺がん
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:「系統看護学講座 病態生理学」120~140ページを熟読し、わからない部分を明らかにしておく。主に「病態生理学」p.120-125の呼吸器系の構造と機能は、第14~16回の復習となる。また、第17回では、症候(呼吸困難・咳嗽・喀痰・喀血)、肺炎、換気障害、胸水と肺水腫、肺がんについて説明するので、「系統看護学講座 病態生理学」の該当ページを読んでおく。
復習:「系統看護学講座 病態生理学」p.120~140を読み返し、復習する。呼吸困難の原因や重症度評価のヒュージョーンズの分類について復習する。呼吸器感染症の病巣部位により上気道炎、気管支炎、肺炎の3つに区分されることを理解する。閉塞性換気障害や拘束性換気障害の違いについては、「系統看護学講座 解剖生理」p.139を読み返し、「系統看護学講座準拠 解剖生理学ワークブック」38ページ問題8を解答し、復習する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

18 脳神経系の構造・機能① 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第18回から21回にわたって、内分泌系の形態機能と疾病について学修する。
本コマ(神経系の構造と機能①)は、大脳・小脳・脳幹・間脳・脊髄について学修する。中枢神経系は脳と脊髄からなり、これらは頭蓋骨基部の大後頭孔で連なっている。骨による保護に加えて、髄膜と呼ばれる結合組織の膜と脳脊髄液に囲まれている。脳は大脳、間脳、脳幹および小脳にわけることができる。大脳では、大脳皮質の働きについて位置(前頭葉、後頭葉など)と機能(運動野、感覚野など)を押さえる。小脳は、脳幹の背側にあり、身体の姿勢や平衡、そして運動の制御などを行っている。脳幹は、呼吸や循環などの生命維持に直結する機能の制御を行っており、中脳・橋・延髄に分けられる。間脳は脳の中心部、大脳と脳幹の間に位置し、視床と視床下部などがある。視床はおもに感覚情報の中継点であり、嗅覚以外の感覚情報を大脳皮質へ中継している。脊髄は、頚部以下の末梢神経の出入り口であり、それらの情報が脳との間で行き来する通路である。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p401-406
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p400
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p397-399
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p400-401
コマ主題細目⑤:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p395-397
コマ主題細目 ① 大脳 ② 小脳 ③ 脳幹 ④ 間脳 ⑤ 脊髄
細目レベル ① 中枢神経系の組織は白質と灰白質からなる。白質は髄鞘のため白くみえる領域で、有髄神経線維が集まり、それぞれの機能に従って神経経路を構成している。灰白質は主に細胞体・介在ニューロン・無髄神経からなる。細胞体が集まって小さな集団を形成すると、別の名前がつく。中枢神経系では神経核または核(例;大脳基底核)、末梢神経系では神経節(例;自律神経節)と呼ばれている。大脳は中心溝と外側溝によって、①前頭葉、②後頭葉、③側頭葉 ④後頭葉の4つの小葉に分けることができる。大脳皮質には、同じような働きをする神経細胞が集まって配列している。皮質の各部位はそれぞれ異なる働きを担っており、これを機能局在という。この機能局在については、大脳の図と照らし合わせながら確認する。
大脳の内部は白質が占めているが、大脳基底核と呼ばれる灰白質が、白質の中に散在している。尾状核・レンズ核・扁桃体の3群が区別される。レンズ核は淡蒼球と被殻という2つの核に分かれている。尾状核とレンズ核は、機能的には錐体外路系に属する。つまり、運動性下行路の1つである錐体外路系を構成しており、姿勢の保持や身体運動を調整している。大脳基底核や黒質に病変があると、錐体外路症状とよばれる筋緊張の異常や不随意運動がみられる。たとえばハンチントン病では、手足をくねらせるなど奇妙で無目的な運動が起こり、筋の緊張が低下する。パーキンソン病では、筋の緊張が高まり、運動が減少し、顔から表情がなくなる。扁桃体は側頭葉の前端に位置し、機能的には大脳辺縁系に属する。

② 小脳は、左右の小脳半球と中間の虫部に分かれ、上・中・下3対の小脳脚で中脳・橋・延髄と連結している。小脳の内部は、皮質と髄質からなる。小脳皮質は、3層の規則的な構築(分子層・プルキンエ細胞層・顆粒層)をもつ灰白質である。小脳髄質は深部の白質で、さらに小脳内部にあるいくつかの灰白質は小脳核とよばれ、歯状核はその最大のものである。小脳には、歩く、階段を昇降するなど、特に意識していなくても運動や姿勢のバランスを維持できるよう調整する働きがある。眼、耳、骨格筋を含む身体中からの情報が小脳に送られ、これらの情報を統合して筋運動が円滑に行えるように調節している。腫瘍や出血により小脳に障害がおこると、運動障害(筋収縮のタイミングが遅れる)といった症状が出てくる。
③ 延髄、橋、中脳をまとめて脳幹という。延髄は大後頭孔を出て脊髄に移行し中脳は上方で間脳とつながる。脳幹を脊髄と大脳、間脳、小脳とを連絡する上行性および下行性の神経線維がすべて通過する。白質の間には神経細胞が集まった灰白質が散在して、核や反射中枢を形成する。これらは大脳、小脳、脊髄とを連絡して中枢神経系の広い領域に影響を及ぼし、生命にとって非常に重要な役割を持つ。脳幹は、12対ある脳神経のうち、嗅神経と視神経以外の10対の脳神経の核を含み、脳神経を介して筋肉、腺、頭部の感覚受容器、胸腹部の多くの器官と連絡する。中脳には運動の調節に関わる灰白質(黒質や赤核)、覚醒や意識に働く網様体などが存在する。橋と延髄では、多くの脳神経核や生命維持に必要な中枢が存在する。
④ 間脳は脳の中心部、大脳と脳幹の間に位置し、視床と視床下部などがある。間脳の後上部には松果体、前下部には下垂体が突き出す。視床は、嗅覚以外の感覚性インパルスを大脳皮質に投射する中継地点として働いている。また、意識レベルと関連がある上行性網様体賦活系が視床に存在している。さまざまな感覚情報がこの部位を中継し、大脳全体を興奮させることで覚醒が維持されていると考えられている。視床下部は、視床の下にある小さな領域である。多くの内臓活動を調節し、ホメオスタシスを維持する上で重要な役割を担っている。また、視床下部の下には、ホルモンを産生・分泌する下垂体が存在する。この分泌活動を調節しているのも視床下部で、神経系と内分泌系の相互連絡の役割もある。
⑤ 脊柱管の中に納められた神経細胞の集まりを脊髄という。成人で長さ約40㎝、太さ約1㎝の器官である。上は頭蓋の入り口である大後頭孔の直下に始まる。下は脊髄の成長が椎骨の成長より遅れるため、成人では第1~2腰椎の高さで終わる。脊髄からは、末梢神経である31対の脊髄神経が出ている。
脊髄は白質と灰白質から構成されている。白質は前索、側索、後索に分けられる。脳へ情報を送る上行路と、脳からの情報を受ける下行路を含む。脊髄の伝導路がある高さで損傷すると、それより下位の脊髄は脳との連絡を失い、そこから支配される部位の運動ができなくなり(麻痺)、感覚も失われる(感覚消失)。灰白質は神経細胞体の集合である。前角には大型の運動神経細胞が存在する。後角には感覚神経からの情報が入る。

キーワード ① 大脳皮質 ② 運動失調 ③ 脳幹毛様体 ④ 視床 ⑤ 灰白質
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」395ページから409ページを読む。
復習:中枢神経系(大脳、小脳、脳幹、間脳、脊髄)について該当する教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」のページを読み返す大脳では、大脳皮質の働きについて位置(前頭葉、後頭葉など)と機能(運動野、感覚野など)を押さえる。図をみながら機能局在を確認する。脳幹を脊髄と大脳、間脳、小脳とを連絡する上行性および下行性の神経線維がすべて通過する。白質の間には神経細胞が集まった灰白質が散在して、核や反射中枢を形成する。これらは大脳、小脳、脊髄とを連絡して中枢神経系の広い領域に影響を及ぼし、生命にとって非常に重要な役割を持つ。小脳は、左右の小脳半球と中間の虫部に分かれ、上・中・下3対の小脳脚で中脳・橋・延髄と連結している。小脳の内部は、皮質と髄質からなる。小脳には、歩く、階段を昇降するなど、特に意識していなくても運動や姿勢のバランスを維持できるよう調整する働きがある。脊柱管の中に納められた神経細胞の集まりを脊髄という。脊髄は白質と灰白質から構成されている。脊髄からは、末梢神経である31対の脊髄神経が出ている。
「解剖生理学 ワークブック」90ページから92ページの問題5~8を解く。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

19 脳神経系の構造・機能② 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第18回から21回にわたって、内分泌系の形態機能と疾病について学修する。
本コマ(神経系の構造と機能②)は、脳神経・脊髄神経・自律神経について学修する。末梢神経系は脳および脊髄より出て全身に広く分布する。末梢神経系は機能的には、運動や感覚機能を司る体性神経系と、各種の自律機能を司る自律神経系とに分類される。
体性神経系や自律神経系には中枢神経系からの指令を末梢の効果器に伝える遠心性神経と、末梢の情報を中枢へ伝える求心性神経がある。体性神経系の求心性神経は、感覚受容器からの情報を中枢へ伝え、感覚神経と呼ばれる。遠心性神経は骨格筋を支配し、運動神経と呼ばれる。自律神経系の求心性神経は、内臓感覚受容器からの情報を中枢へ伝える内臓求心性線維で、遠心性神経には内臓の平滑筋や分泌腺を支配する交感神経と副交感神経がある。
末梢神経は解剖学的には、脳から出る神経を脳神経、脊髄から出る神経を脊髄神経と呼ぶ。解剖学的区分と機能的区分は重なり合っており、各脳神経や脊髄神経には、体性神経系の神経線維しか含まないものもあれば、体性神経系と自律神経系の神経線維の両方を含むものもある。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p414-418
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p409-414
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p264-272
コマ主題細目 ① 脳神経の構造と機能 ② 脊髄神経の構造と機能 ③ 自律神経系の特徴
細目レベル ① 脳底部から12対の脳神経が起始している。脳神経は脳底部から起始する順に従い、ローマ数字と名前の両方で表される。脊髄神経と異なり、脳神経はそれぞれ明瞭な個性を持っていて、隣の脳神経と神経叢をつくることはない。脳神経は、機能と由来をもとに3つの群に分けることができる。体性運動神経の群:外観筋を支配する動眼神経・滑車神経・外転神経および舌の筋を支配する舌下神経がこれに含まれる。②特殊感覚神経の群:嗅覚を伝える嗅神経、視覚を伝える視神経、聴覚と平衡覚を伝える内耳神経がこれにあたる。③鰓弓神経の群:鰓弓神経は、魚の鰓の神経にあたるものである。ヒトでも、ごく初期の胎児の頸の横に、魚の鰓に似た切れ込みとふくらみが見える。このふくらみを鰓弓という。三叉神経、顔面神経、舌咽神経、迷走神経、副神経が鰓弓神経にあたる。
② 31対の脊髄神経が脊髄から起始している。各神経は脊髄の分節に一致しており、それに従って名前がついている。頚神経(8対)、胸神経(12対)、腰神経(5対)、仙骨神経(5対)、尾骨神経(1対)に区分される。脊髄神経が脊髄から出ると、多くの線維に分かれる。種々の部位でこれらの神経線維は集まり、ひとまとまりになってネットワーク、つまり神経叢を形成する。身体には3つの大きな神経叢(頚神経叢、腕神経叢、腰仙骨神経叢)がある。それぞれの脊髄神経は後根と前根で脊髄に接続している。後根は感覚神経のみ、前根は運動神経のみからなる。後根には、一部膨大化している後根神経節があり、感覚神経の細胞体がここに存在している。これらの神経線維は脊柱を出る直前に一緒になって、脊髄神経を形成する。すべての脊髄神経は感覚神経と運動神経の両方を含んだ混合神経である。
③ 自律神経系の遠心路は、胸腰髄に起始する交感神経系と脳幹および仙髄に起始する副交感神経系の2つの系により構成される。自律神経系の特徴として、①自律性、②二重支配、③拮抗支配が挙げられる。自律神経系は交感神経系と副交感神経系の2つに分けられる。交感神経系は身体や精神の活動に適した状態、副交感神経系は休息や栄養補給に適した状態を整える。中枢神経系から出た神経は自律神経節においてシナプスを介してから効果器に至る。中枢神経系に細胞体を持つ神経を節前神経、自律神経節に細胞体を持つ神経を節後神経と呼ぶ。交感神経節前神経終末と副交感神経の節前、節後神経終末とから放出される神経伝達物質は、アセチルコリンである。一方、交感神経節後神経終末から放出される神経伝達物質は、一般にノルアドレナリンである。
キーワード ① 脳神経12対 ② 脊髄神経31対 ③ 体性神経 ④ 感覚神経 ⑤ 神経伝達物質
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」409ページから418ページ、264ページから272ページを読む。
復習:末梢神経系(脊髄神経、脳神経、自律神経)について該当する教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」のページを読み返す。末梢神経系は機能的には、運動や感覚機能を司る体性神経系と、各種の自律機能を司る自律神経系とに分類される。
体性神経系や自律神経系には中枢神経系からの指令を末梢の効果器に伝える遠心性神経と、末梢の情報を中枢へ伝える求心性神経がある。体性神経系の求心性神経は、感覚受容器からの情報を中枢へ伝え、感覚神経と呼ばれる。遠心性神経は骨格筋を支配し、運動神経と呼ばれる。自律神経系の求心性神経は、内臓感覚受容器からの情報を中枢へ伝える内臓求心性線維で、遠心性神経には内臓の平滑筋や分泌腺を支配する交感神経と副交感神経がある。
末梢神経は解剖学的には、脳から出る神経を脳神経、脊髄から出る神経を脊髄神経と呼ぶ。解剖学的区分と機能的区分は重なり合っており、各脳神経や脊髄神経には、体性神経系の神経線維しか含まないものもあれば、体性神経系と自律神経系の神経線維の両方を含むものもある。
「解剖生理学 ワークブック」92,93ページの問題9,10を解く。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

20 脳神経系の代表的疾患の病態生理 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第18回から21回にわたって、内分泌系の形態機能と疾病について学修する。
本コマ(神経系の代表疾患の病態生理)は、主に脳血管障害の病態生理について学修する。
脳への血流は、脳の前方の循環を司る左右の内頚動脈、脳の後方の循環を司る左右の椎骨動脈という4本の動脈によって供給されている。脳の動脈はクモ膜下腔で分岐しながら脳表面全体をおおうように広がり、同時にところどころ脳の中心部に向ってほぼ垂直に細い枝を脳実質内に出している。この枝を穿通枝という。ウィリス動脈輪より末梢側の動脈は吻合がないのが特徴で、このような吻合枝をもたない動脈を終動脈という。
脳組織は100gあたり約50ml/分と、他の組織に比べて大量の血液供給を必要としている。脳血流が途絶えると数秒で意識を失い、数分で不可逆性の変性をおこすため、つねに安定した血液供給が必須である。 脳血管の病変には、虚血をきたす閉塞性病変と血管破裂による出血性病変とがある。急性症状を示す脳血管障害を脳卒中という。卒中とは突然なにかにあたった状態を意味し、脳卒中は閉塞性病変である脳梗出血性病変である脳内出血(脳実質内出血)、クモ膜下出血など複数の疾患を含んでいる。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p198,p199, p201,p202
コマ主題細目②:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」:p258-259
コマ主題細目③:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」:p259-260
コマ主題細目 ① 脳・脊髄の血管系 ② 閉塞性病変 ③ 脳出血
細目レベル ① 総頚動脈は、気管および食道の外側を上行し、頭部のあたり(舌骨の後方)に触れるので、脈を取ることができる。 上行して舌骨の高さで、顔面に血液を送る外頸動脈と、脳に血液を送る内動脈に分かれる。 内頸動脈は途中で枝を出さずに、頭蓋腔に入って脳の大部分に分布し、眼を養う枝(眼動脈)も出す。 脳への血液は、左右の内頸動脈と椎骨動脈の、合計 4本で供給される。 この4本の動脈は、脳の下面で互いに吻合して、大脳動脈輪(ウィリス Willis 動脈輪)をつくっている。
大脳に分布する大きな枝は片側3本あり, 前方から前大脳動脈,中大脳動脈・後大脳動脈である。 この3本の中では中大脳動脈が最も灌流域が広く内頸動脈をそのまま直進すると中大脳動脈になる。
脳の動脈はクモ膜下腔で分岐しながら脳表面全体をおおうように広がり、同時にところどころで脳の中心部に向かってほぼ垂直に細い枝を脳実質内に出している。この枝を穿通枝という。ウィリス動脈輪より末梢側の動脈は吻合がないのが特徴で、このような吻合枝をもたない動脈を終動脈という。
脳からの血液は、脳の表面に向かう静脈を経て、硬膜静脈洞に注ぐ。硬膜静脈洞は、脳硬膜にはさまれた広い静脈で、頭蓋腔の内面を走っている。血液は頭蓋内腔の底面にあるS状静脈洞に集まり、そこから頸静脈孔を通って太い内頸静脈となり、頭蓋腔を出る。 内頸静脈は、顔面の静脈なども集め、総頸動脈に沿って頸部の両側で深層を下り、上肢からの鎖骨下静 と合流して腕頭静脈になる。この合流点をとくに静脈角とよび、リンパ本幹が流入する部位である。

② 脳の動脈は終動脈で互いに物合していないため動脈がどこかで閉塞をおこすと末梢への血流が途絶え、その灌流域の組織は虚血による壊死をおこす。これを脳梗塞という。太い動脈の閉塞ほどその灌流域が広く、当然症状も強くなる。 脳には機能の局在があるので、たとえ狭い領域の梗塞でも重大な症状があらわれることもあれば、比較的大きな梗塞なのに明確な症状を示さないこともある。大脳に小梗塞(これをラクナ梗塞という)が多数できると、しびれ感・手が不器用になる・うまくしゃべれない (構音障害)・うまく飲み込めない(嚥下障害)などの症状が出現してくる。
動脈が閉塞をおこす原因としては、動脈硬化によるものと、他の部位(左心房など)で形成された凝固塊(血栓塞栓子)が遊離し, 血流に乗って脳に達し脳動脈を閉塞するものとがある。後者を脳塞栓という。

③ 脳動脈の破裂は突然おこり、その発症も突然である。その背景には高血圧や血管病変が存在することが多い。
クモ膜下出血:クモ膜下腔の動脈が破れたのがクモ膜下出血である。 クモ膜下出血は、クモ膜下腔という液体中での動脈性出血のため、圧迫による止血作用がはたらかず自然止血しないことも多く、死亡率が高い。発症時にはいままで経験したことのないような非常に激しい頭痛を伴い、頭蓋内圧亢進や髄膜刺激症状も出現する。 クモ膜下出血の原因は動脈硬化ではなく動脈瘤の破裂が多い。クモ下出血では発症から2週間位までの間に脳血管攣縮(スパムス)をおこしやすく、血管狭窄による脳虚血はクモ膜下出血の予後をさらに悪化させる。
脳実質内での出血:脳実質内への出血を一般に脳出血(狭義の脳出血)または脳内出血という。脳実質内の動脈は高血圧があるとフィブリノイド変性を伴う細動脈硬化症をおこしやすくなる。

キーワード ① 内頚動脈 ② ウィリス動脈輪 ③ 脳梗塞 ④ クモ膜下出血 ⑤ 脳内出血
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」198,199ページおよび201,202ページを読む。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」258ページから260ページを読む。
復習:脳・脊髄の血管について該当する教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」のページを読み返す。心臓から脳への血流量は約750mL/分であり、安静時心拍出量のほぼ15%を占める。脳への血流は、脳の前方の循環を司る左右の内頸動脈と、脳の後方の循環を司る左右の椎骨動脈という4本の動脈によって供給されている。これらの血管は頭蓋腔内ではクモ膜下腔に入り、椎骨動脈は脳幹部で脳底動脈を形成し、小脳・脳幹部へ枝を出している。
内頸動脈と脳底動脈は大脳底部でウィリス動脈輪(大脳動脈輪)とよばれるリング状の血管を形成し、前方 (内頸動脈系)と後方(椎骨動脈系)の血液の交通と左右の血液の交通がはかられている。つまり、これら4本の動脈は脳底部ですべて吻合しており、お互いにある程度までは血液供給の代償が可能である。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」を読み返し、脳血管障害についてもまとめておく。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

21 脳神経系の構造・機能まとめ 科目の中での位置付け この回は、病態生理をふまえて、正常な脳神経系の構造・機能について整理する。ここでは、くも膜下出血を例にとり、これまでの脳神経系の構造・機能のまとめを行う。
まずは、くも膜下出血について復習し、それに付随する髄膜刺激症状について学修する。また、髄膜炎を発症していないか確かめるために、腰椎穿刺を実施する。脳血管造影にて動脈瘤が見つかった場合の患者への対応、その後の手術における看護について学修する。
脳血管造影にて動脈瘤が見つかった場合、「開頭クリッピング手術」を受ける。術前には、再出血を防ぐためには血圧の上昇を避ける必要がある。くも膜下出血が起こると光刺激や音刺激に敏感になる。したがって術前は極力、光や音の刺激を避ける。くも膜下出血の急性期には、血圧上昇や肺水腫が出現しやすい。不整脈や心筋梗塞に似た心電図の変化も発生することが多いため、よく観察する。
くも膜下出血後、注意すべき合併症のひとつに脳血管攣縮がある。脳血管攣縮とは、出血した血液成分によって引き起こされる持続的な血管(けいれんを伴う収縮)のことである。これにより脳が虚血状態となって意識障害や、片麻痺などの局所神経症状が出現する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」:p198,199ページ, p201,p202
コマ主題細目②:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」:p258-260
コマ主題細目③:配布資料
コマ主題細目④:配布資料
コマ主題細目 ① くも膜下出血 ② 髄膜刺激症状 ③ 髄膜炎の診断 ④ 脳動脈瘤
細目レベル ① 脳は直接頭蓋骨に接しているのではなく、その間には髄膜がある。髄膜は外側(頭蓋骨側)から硬膜、くも膜、軟膜と3重の膜により形成されており、一番内側の軟膜が脳表面に接している。くも膜と軟膜の間にはくも膜下腔という空間があり、そこは脳脊髄液で満たされていて、衝撃が脳に直接伝わらないようになっている。脳脊髄液は、側脳室や第三脳室にある脈絡叢というところから分泌されて、上矢状静脈洞に突出するくも膜顆粒から吸収される。くも下出血は、脳動脈瘤の破裂 (80%以上) などにより、くも膜下腔へ急激に血液が流入することにより生じる病態である。これにより短時間で頭蓋内圧が亢進するため突然の激しい頭痛を伴い、悪心、嘔吐、意識障害 けいれんなどが起こり、髄膜刺激症状がみられる。頭部CTにて診断が確定したら、再出血や脳ヘルニア防ぐため外科手術や血管内治療を行う。 血圧管理や鎮痛鎮静などの術前管理が重要になる。
② 項部硬直:首を前方に曲げようとすると抵抗感があり、痛みを感じる。ケルニッヒ徴候:仰臥位で片足を持ち上げると、膝関節が伸展できない。小児では成人に比べて髄膜刺激症状を認めにくいので、注意する必要がある。特に項部硬直はケルニッヒ徴候に比べて認めにくいとされている。たとえば足を上げておむつを交換するたびに乳児が泣くようなときにはケルニッヒ 候の出現を疑う。
髄膜に炎症が起こっていたり、出血があったりすると、首や足の筋肉が緊張して動かすときに抵抗や痛みを感じることを髄膜刺激症状という。くも膜下出血や髄膜炎でみられる。
髄膜炎とは くも膜下腔に炎症が起きたもので、主に細菌やウイル スによる感染が原因で起こる。髄膜炎の診断には、腰椎穿刺による髄液検査が必要である。髄膜刺激症状である頭痛、悪心・嘔吐, 項部硬直, ケルニッヒ徴候などの症状がみられる。 しばしば合併症として頭蓋内圧亢進を認めることがあるため、意識レベルの変化にも注意が必要である。

③ 腰椎穿刺は脳炎や髄膜炎などを診断するための髄液採取や圧測定、髄腔内への薬剤投与などを目的として行われる。
両側腸骨稜の最上端を結んだヤコピー線がベッド平面に対して垂直になるように側臥位での体位を固定する。 ヤコビー線上に第4腰椎が位置しているため、これを目安として腰椎間を穿刺する。
終了後に頭部を挙上すると穿刺部位から液が漏れて頭蓋内圧が低下(低髄圧症) し、頭痛や嘔吐を起こす可能性がある。そのため終了後1~2時間は絶対安静とし、頭痛、めまい、悪心などの副作用を予防することが重要である。

④ 脳血管造影にて動脈瘤が見つかった場合、「開頭クリッピング手術」を受ける。術前には、再出血を防ぐためには血圧の上昇を避ける必要がある。くも膜下出血が起こると光刺激や音刺激に敏感になる。したがって術前は極力、光や音の刺激を避ける。くも膜下出血の急性期には、血圧上昇や肺水腫が出現しやすい。不整脈や心筋梗塞に似た心電図の変化も発生することが多いため、よく観察する。
くも膜下出血後、注意すべき合併症のひとつに脳血管攣縮がある。脳血管攣縮とは、出血した血液成分によって引き起こされる持続的な血管(けいれんを伴う収縮)のことである。これにより脳が虚血状態となって意識障害や、片麻痺などの局所神経症状が出現する。血管攣縮は、くも膜下出血後約72時以降に出現し、2週間ほど持続する。攣縮により脳虚血が不可逆的になると脳梗塞に至ることがあるため、髄液ドレナージや、ファスジルやオザグレルナトリウムなどの投与による攣縮の予防と出現時の早期治療が重要となる。

キーワード ① クモ膜下腔 ② 脳脊髄液 ③ 髄膜刺激症状 ④ ヤコビー線 ⑤ 動脈瘤
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」198,199ページおよび201,202ページを読む。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」258ページから260ページを読む。
復習:脳・脊髄の血管について該当する教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」のページを読み返す。心臓から脳への血流量は約750mL/分であり、安静時心拍出量のほぼ15%を占める。脳への血流は、脳の前方の循環を司る左右の内頸動脈と、脳の後方の循環を司る左右の椎骨動脈という4本の動脈によって供給されている。これらの血管は頭蓋腔内ではクモ膜下腔に入り、椎骨動脈は脳幹部で脳底動脈を形成し、小脳・脳幹部へ枝を出している。
内頸動脈と脳底動脈は大脳底部でウィリス動脈輪(大脳動脈輪)とよばれるリング状の血管を形成し、前方 (内頸動脈系)と後方(椎骨動脈系)の血液の交通と左右の血液の交通がはかられている。つまり、これら4本の動脈は脳底部ですべて吻合しており、お互いにある程度までは血液供給の代償が可能である。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」を読み返し、脳血管障害についてもまとめておく。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

22 筋骨格系の構造・機能① 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第22回から25回にわたって、筋骨格系の形態機能と疾病について学修する。
本コマ(筋骨格系の構造と機能①)は主に全身の骨(主要な骨の名称、関節、)について学修する。
骨の形態、全身の骨格、関節の構造と種類について学修する。ヒトの体は、全身で約200個の骨から構成されていて、形から長骨、短骨、扁平骨、不規則骨、種子骨、含気骨に分けられる。関節は、その形状によって球関節、蝶番関節、楕円関節、鞍関節、顆状関節、車軸関節、平面関節、半関節に分類される。運動の方向を押さえる。①屈曲と伸展、②外転と内転、③内旋と外旋、④回内と回外である。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p309-314
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p324-365, p361-367
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p334-361
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p316-318
コマ主題細目 ① 骨の形態 ② 頭蓋・体幹の骨 ③ 体肢の骨 ④ 関節の構造と種類
細目レベル ① 骨は形から長骨:四肢などに存在する長い管状の骨である。短骨:手根骨や足根骨など、いびつなサイコロ上の骨である。扁平骨:頭蓋骨・骨盤骨などにみられる、扁平な板のような骨で、内腔を囲んで中の臓器を保護する。不規則骨:椎骨や顔面骨などは上記のいずれにも属さない、特有の形を示す。種子骨:腱の中に形成される小骨で、大腿四頭筋の腱部分に存在する膝蓋骨、母指の指節間関節の掌側などにある。含気骨:内部に鼻腔や鼓室などと連結する含気腔(空気の入った空間)をもつ骨で、上顎骨などがある、に分けられる。骨は関節面を除いて骨膜に覆われていて、周囲は硬い骨質、内部は軟らかい骨髄から構成されている。
② 頭蓋骨は、頭を納める脳頭蓋と、顔面の骨格を作る顔面頭蓋とに分けることができる。下顎骨以外は縫合という辺縁でのかみ合わせによって連結している。さらに脳頭蓋のドーム状の天井部は頭蓋冠と呼ばれ、脳をのせる底部は頭蓋底と呼ばれる。新生児の頭蓋は成人と異なり、まだ骨化していない箇所がある。骨間をふさぐ線維性の膜部を泉門という。身体の支柱である脊柱は、脊椎動物の体軸となる主要な骨格で、脊髄を保護し、頭を支え、下肢で骨盤と連絡する。上下に連絡する32~34個の椎骨および椎間板とからなる。脊柱には二つのS字状の弯曲があり、歩いたり走ったりするときの頭への衝撃を弱めたり、あるいは頭、肺や臓器の重みのバランスをとる働きをする。胸郭は12個の胸椎、12対の肋骨および1個の胸骨からなる円錐形の骨格である。
③ 上肢は、胴体から離れている自由上肢(上腕骨、橈骨、尺骨、手根骨、中手骨、指骨)と胴の部分にあって体幹と自由上肢とを連絡する上肢帯(鎖骨と肩甲骨)とに分けられる。下肢では脊柱が下肢と比較的しっかりと固定されているのに対して、上肢帯は脊柱と極めて可動的な結合によって連結されている。このため、上肢は下肢に比べて広い運動範囲を持つことができる。下肢は、上肢と同様、自由下肢(大腿骨、脛骨、腓骨、足根骨、中足骨、趾骨)とそれを体幹に連絡する下肢帯からなる。下肢帯は寛骨と呼ばれる左右1対の骨からなる。寛骨は仙骨と仙腸関節を作る。この関節はほとんど可動性のない半関節であるため、下肢の運動範囲は上肢に比べて狭いが、より大きな加重に耐えうる。寛骨・仙骨・尾骨からなる骨盤は、男性と女性では形が異なる。
④ 関節とは、2個またはそれ以上の骨が連結することである。関節には、ほとんど動きのない不動関節、わずかに動きのある半関節、普通に動く可動関節がある。可動性の関節では、骨端同士の間に関節腔が存在する。関節面は関節軟骨で滑らかに覆われていて、関節包によって包まれている。関節包は普通、靭帯によって補強されている。関節腔の内部は、滑液という粘液で満たされていて、表面が滑らかになるようになっている。骨が体を支持するのを補助するだけでなく、運動するには、関節が重要な働きをもっている。関節は、その形状によって球関節、蝶番関節、楕円関節、鞍関節、顆状関節、車軸関節、平面関節、半関節に分類される。運動の方向は、①屈曲と伸展、②外転と内転、③内旋と外旋、④回内と回外である。
キーワード ① 球関節 ② 回内と回外 ③ 自由上肢 ④ 関節 ⑤ 関節包
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」316ページから318ページ、324ページから365ページの骨系に関する箇所を読む。
復習:骨系について該当する教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」のページを読み返す。骨の形態、全身の骨格、関節の構造と種類について学修する。ヒトの体は、全身で約200個の骨から構成されていて、形から長骨、短骨、扁平骨、不規則骨、種子骨、含気骨に分けられる。関節は、その形状によって球関節、蝶番関節、楕円関節、鞍関節、顆状関節、車軸関節、平面関節、半関節に分類される。運動の方向を押さえる。①屈曲と伸展、②外転と内転、③内旋と外旋、④回内と回外である。
「解剖生理学 ワークブック」73~77ページの問題2,4,7,8および、80~85ページの問題1~6,9を解く。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

23 筋骨格系の構造・機能② 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第22回から25回にわたって、筋骨格系の形態機能と疾病について学修する。
本コマ(筋骨格系の構造と機能②)は、筋の種類と収縮機序、全身の骨格筋の作用について学修する。骨格筋細胞は筋線維とも呼ばれる。骨格筋細胞は各を多数持ち、筋鞘という細胞膜が存在する。筋原線維によって中は充満している。筋原線維には明調(I)と暗調(A)の帯が交互に存在し、そのため筋細胞が全体として横縞模様になる。さらに細かく見ると、明るいI帯の中には暗いZ線、暗いA帯の中に明るいH帯が存在する。
筋を刺激すると収縮を起こす。随意運動では、筋の収縮は大脳の運動中枢から命令が発せられ、神経路によって末梢の筋に伝達されることによって発生する。光学顕微鏡のレベルで観察すると、筋線維は、太いミオシンフィラメントと細いアクチンフィラメントからなり、両者が少しずつ重なっている。運動神経から興奮性の電位が伝わると、ミオシンフィラメントの間にアクチンフィラメントが滑り込み、筋肉が収縮する。筋収縮のエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)の分解によってもたらされる。人体には大小400余りの筋があり、人体の各部位で協調しながら運動を行っている。骨格筋は、骨格を動かして身体の運動を行う。骨格筋は、中枢神経からの指令に従って収縮を行う。よって骨格筋の神経支配も押さえておきたい。骨格筋は関節と関連付けて学習する。例えば、肩関節を外転する場合、三角筋が収縮する。内転の場合は大胸筋が収縮する。股関節を屈曲する場合、腸骨筋が収縮し、伸展では大殿筋が収縮する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p319-323
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p369-374
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p328-334, p366-369
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p334-361
コマ主題細目 ① 筋の種類 ② 筋の収縮機序 ③ 頭頚部・背部・胸腹部の筋 ④ 上肢・下肢の筋
細目レベル ① 筋肉は、人体の運動、姿勢保持に大切な役割を果たす。筋肉に特有の機能は、収縮ないし短縮であり、これによって、骨格、関節を動かし体全体のさまざまな運動を起こすことができる。筋肉は、伸び縮みするひも状の筋細胞からなり、顕微鏡で観察したときの特徴から、縞模様がある横紋筋と縞模様がない平滑筋に区別される。横紋筋は、さらに骨格筋(いわゆる筋肉)と心筋とに分類される。また、筋の収縮には、人の意思で行われる随意運動と、意思によらない不随意運動がある。それぞれの主な特徴について図をみながら確認する。ここでは、おもに骨格筋について学修する。骨格筋細胞の構造、すなわち多核であり、細胞質は筋原線維によって充満している。筋原線維には明調(I)と暗調(A)の帯が存在すること、筋節の中には太いタンパク質のミオシンフィラメントと細いタンパク質のアクチンフィラメントが存在することを理解する。
② 骨格筋細胞は、運動ニューロン(運動神経)からの刺激を受ける。そのニューロン(神経細胞)が神経伝達物質(アセチルコリン)を放出する。アセチルコリンが骨格筋細胞にある受容体に結合すると、筋への透過性が変わり、ナトリウムイオンを細胞内に侵入させる。これによって電流(活動電位)が発生し、その結果として筋小胞体からカルシウムイオンを放出する。アクチンフィラメントがミオシンフィラメントの間に滑り込み、筋が収縮する。アクチンフィラメントの一端はZ線と呼ばれる太い仕切りに付着している。太いミオシンが存在する部分は暗く見えてA帯と呼ばれ、ミオシンの存在しない部分はI帯と呼ばれる。筋の収縮には、等張性(筋が短縮して運動を生じる)、および等尺性(筋は短縮せず緊張を増す)の収縮がある。
③ 頭部の筋は、顔面の表情をつくる顔面筋と食物を咀嚼するための咀嚼筋の2群に大別される。顔面筋には、前頭筋、眼輪筋、口輪筋、頬筋、頬骨筋などがある。顔面筋は顔面神経によって支配される。したがって、顔面神経麻痺になると、眼を強く閉じられない、口の閉じ方が不完全であるなどの麻痺が出てくる。頚部の筋は、頭や上肢を動かす働きをする。背部の筋をまとめて背筋というが、主に浅層の筋は上肢の運動に、中層の筋は胸部の運動、深層の筋は脊柱の運動に関与する。浅層に存在する僧帽筋と広背筋の働きは押さえておきたい。胸部の筋である大胸筋は、三角筋の拮抗筋である。横隔膜は、呼吸の際に重要な働きをする。円蓋状の骨格筋で、中央は腱膜でできている。
④ 主要な関節を動かしている筋の作用を重点的に押さえておく。上腕の内転には大胸筋が収縮し、上腕の外転には三角筋が収縮する。上腕筋と上腕二頭筋は肘関節の屈曲を行い、上腕三頭筋は伸展を行う。腸腰筋と大腿直筋は股関節を屈曲し、殿部の大殿筋は、伸展する。殿部の中殿筋と小殿筋は股関節を外転し、大腿内側の内転筋群は内転する。大腿前面の大腿四頭筋は膝関節を伸展し、大腿後面の屈筋群は屈曲させる。前脛骨筋などの下腿前面の伸筋群は足首を背屈し、下腿後面の下腿三頭筋(腓腹筋とヒラメ筋)は底屈する。前脛骨筋は深腓骨神経支配であるので、この神経が麻痺すると足の背屈不能による下垂足が生じる。また、下腿三頭筋は麻痺するとつま先を下げられず踵足となり、拘縮を起こする足は底屈位固定され(尖足)、踵を地面につけられなくなる。
キーワード ① 横紋筋 ② 筋原線維 ③ アセチルコリン ④ 収縮 ⑤ 支配神経
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」319ページから373ページの骨格筋系に関する箇所を読む。
復習:骨格筋について該当する教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」のページを読み返す。骨格筋の収縮機序について押さえておく。主要な関節を動かしている筋の作用を重点的に押さえておく。上腕の内転には大胸筋が収縮し、上腕の外転には三角筋が収縮する。上腕筋と上腕二頭筋は肘関節の屈曲を行い、上腕三頭筋は伸展を行う。腸腰筋と大腿直筋は股関節を屈曲し、殿部の大殿筋は、伸展する。殿部の中殿筋と小殿筋は股関節を外転し、大腿内側の内転筋群は内転する。大腿前面の大腿四頭筋は膝関節を伸展し、大腿後面の屈筋群は屈曲させる。前脛骨筋などの下腿前面の伸筋群は足首を背屈し、下腿後面の下腿三頭筋(腓腹筋とヒラメ筋)は底屈する。前脛骨筋は深腓骨神経支配であるので、この神経が麻痺すると足の背屈不能による下垂足が生じる。また、下腿三頭筋は麻痺するとつま先を下げられず踵足となり、拘縮を起こする足は底屈位固定され(尖足)、踵を地面につけられなくなる。
「解剖生理学 ワークブック」73~79ページの問題3,5,6,9,10-13および、84~86ページの問題7,810,11を解く。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

24 筋骨格系の代表的疾患の病態生理 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第22回から25回にわたって、筋骨格系の形態機能と疾病について学修する。
本コマ(筋骨格系の代表的疾患の病態生理)では、主に脊髄損傷と大腿骨頸部骨折の病態生理について学習する。
骨格筋の運動は大脳皮質からの命令で行われており中枢神経内ではその経路の局在が明確に存在する。 運動路の代表は錐体路である。 錐体路は,上位運 動ニューロン(一次ニューロン)が大脳皮質から出発し、内包を通り脳幹部で交叉し,脊髄で下位運動ニューロン (二次ニューロン) にシナプスをつくる。 この 下位運動ニューロンの軸索は脊髄を出て、末梢神経として目的の筋にシナプスをつくっている。
このように錐体路は上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの2つのニューロンにより構成されているので、これらの破綻はそれぞれ異なった病態 を示す。上位運動ニューロンは下位運動ニューロンに対して刺激を伝えているが、同時に下位運動ニューロンの抑制も行っている。したがって、上位運動ニューロン障害では痙性麻痺を示し、腱反射は亢進する。下位運動ニューロン障害では弛緩性麻痺なり、腱反射は減弱もしくは消失する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p429-430
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p431-434
コマ主題細目③:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p264-265
コマ主題細目④:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p232
コマ主題細目 ① 下行性伝導路 ② 上行性伝導路 ③ 運動麻痺 ④ 大腿骨頸部骨折
細目レベル ① 脳から運動神経への下行性の指令は、錐体路と錐体外路の2つの経路を通る。ⅰ)錐体路:大脳皮質の運動野に存在する大型の神経細胞は上位運動ニューロンと呼ばれ、随意運動を支配する。錐体路は大脳皮質の細胞から始まり、内包→大脳脚→橋底部→延髄の錐体を通って下行し、大部分の線維は延髄下端の錐体交叉で反対側に移り、脊髄の側索後部を下行して、脊髄のいろいろな高さで前角の運動神経細胞に達して終わる。ⅱ)錐体外路:錐体外路系は錐体路以外の運動に関与する系を総称したもので、大脳の運動皮質から大脳基底核や脳幹を経由して脊髄に下行する経路が含まれる。これらの経路の異常により、錐体外路症状が生じる。錐体外路症状とは、大脳基底核の損傷によって生じる不随意運動や筋緊張異常などの症状である。
② 皮膚感覚や深部感覚を伝える一次感覚ニューロンは、脊髄神経節の中にある。ここから脳への経路は、感覚の種類によりいくつかに分かれている。体性感覚の伝導路:手足、頭部、体幹の体性感覚の情報は、脊髄神経の後根を通って脊髄に送られた後、主に後索路と脊髄視床路の2通りの経路を通って上位中枢に伝えられる。精細な触覚や筋の伸長状態などの深部感覚の経路は、脊髄の後索と脳幹の内側毛帯を通る。脊髄神経節の一次ニューロンの軸索は脊髄に入って後索を上行し、延髄の後索核に達する。二次ニューロンの軸索は、内側毛帯を上行し、視床に達する。三次ニューロンの軸索は、そこから大脳皮質に投射する。痛覚と温度感覚の経路は、脊髄の側索を通って視床に達する。二次ニューロンは脊髄の後角にあるが、その軸索は、反対側の脊髄側索を上行して視床に達する。
③ 中枢神経系・末梢神経系筋肉のいずれの障害より、意図した運動を遂行できなくなること運動麻痺という。運動麻痺は麻痺の強さにより完全麻痺と不全麻痺に、また筋緊張の程度により、弛緩性麻痺と痙性麻痺とに分けられる。弛緩性麻痺は脱力状態で緊張を失い収縮できない状態 痙性麻痺は収縮自体可能であるが異常な筋緊張の亢進を伴う状態である。麻痺といっても必ずしも脱力しているとは限らない。
運動麻痺は、また障害部位により中枢麻痺(核上麻痺)と末梢性麻痺 (核下麻痺)に分けられる。中枢麻痺は上位運動ニューロンの障害で、下位運動ニューロンも筋肉も健在であり筋の収縮自体は可能である。したがって中枢性麻痺では痙性麻痺になることが多く、筋萎縮は おこりにくい(病期によっても変化する)。 末梢性麻痺は下位運動ニューロンの障害で、通常その神経の支配領域に一致して弛緩性麻痺を示し、長期間持続すると筋萎縮がおこる。

④ 大腿骨頸部・転子部骨折は、骨粗鬆症と関連がある骨折である。高齢者が転倒して立てなくなった場 合は、この骨折をまずは考える。高齢者は臥床によりいろいろな合併症を引き起こしやすいため、早期離床のために手術を行うことが多い。概念:大腿骨近位部の骨折である。高齢者に多い骨折で、 骨粗鬆症に関連する骨折である。高齢者が転倒して立てなくなった場合は、この骨折を考えるといわれるほどである。原因と分類:転倒した場合に起こる。とくに側方に転倒し大転子部を打ったときに起こる。頸部(内側) 骨折と転子部(外側)骨折に分類される。臨床症状:いずれの骨折も起立不能となり股関節部に疼痛が生じる。治療:頸部骨折は関節内骨折で骨癒合には不利である。さらに血行の遮断により骨頭の壊死の可能性もある。転子部骨折ではこの点では心配はないが、高齢者では、とくに臥床による認知症や肺炎などの合併症が問題となる。したがって、いずれの骨折も高齢者では全身状態が許す限り、できるだけ早く手術を行い、早期離床を図る。頸部骨折では人工骨頭置換術、転子部骨折ではネイルプレートによる手術が主として行われる。
キーワード ① 内包 ② 錐体路 ③ 視床 ④ 運動麻痺 ⑤ 骨粗鬆症
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」316~373ページを読む。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」232ページを読む。
復習:下行性・上行性伝導路について該当する教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」のページを読み返す。伝導路を構成するものについて、教科書中の図を用いて、確認し直す。上行性伝導路は嗅覚を除いて、視床を中継することを確認する。どの部位が障害された場合、どのような麻痺が出るのかを、伝導路を用いて説明できるようにする。
大腿骨頸部骨折について、再度大腿骨の構造を振り返り、血流障害になり、骨頭が壊死するのはなぜか考えてみよう。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」を読み返し、骨粗鬆症と大腿骨頸部骨折との関連ついてもまとめておく。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

25 筋骨格系の構造・機能まとめ 科目の中での位置付け この回では、高齢女性に多い大腿骨骨折を例に挙げて、正常な筋骨格系の構造・機能について整理する。
高齢女性に多い骨粗鬆症は、要因として生活習慣や遺伝などが挙げられる。 日常生活における予防法や注意点について学びぶ。 また、骨粗鬆症のリスク状態から大骨頸部骨折への病態も理解する。
大腿骨骨折について:大腿骨骨折のなかでも高齢者に多いのが、頚部骨折と転子部骨折である。骨折線が関節包の内側にあるものを頸部骨折、外側にあるものを転子部骨折と呼ぶ。関節包の内側 (頸部骨折) は骨癒合が最も難しい箇所のひとつである。同じような骨折にみえるが、転子部骨折は骨癒合しやすく、頸部骨折はしにくい。
頸部骨折で、人工骨頭置換術を行った場合、術後の観察が重要となる。人工骨頭置換術後は、脱臼や腓骨神経麻痺に注意する必要がある。
腓骨神経麻痺は、仰臥位で下腿が外旋することで腓骨頭部や頸部がベッドに接してし、そこを走行する総腓骨神経が圧迫されて起こる。進行すると下垂足につながる。

コマ主題細目①:配布資料
コマ主題細目②:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」:p232
コマ主題細目③:配布資料
コマ主題細目 ① 大腿骨頸部骨骨折 ② 人工骨頭置換術後 ③ 腓骨神経麻痺とその予防
細目レベル ① 大腿骨骨折について:大腿骨骨折のなかでも高齢者に多いのが、頚部骨折と転子部骨折である。骨折線が関節包の内側にあるものを頸部骨折、外側にあるものを転子部骨折と呼ぶ。関節包の内側 (頸部骨折) は骨癒合が最も難しい箇所のひとつである。 骨癒合が難しい理由は、骨折によって骨頭への血行が不十分になることと、関節液が豊富に存在することなどが挙げられる。手術法:頸部骨折では、関節包内での血流が悪いために骨癒合が得られないことがあり、通常は人工骨頭置換術を行う。 ただし、頸部骨折であっても完全に骨折していない不全骨折であれば、骨癒合する可能性があるため、 CCHS (canulated cancellous hip screw) 法やハンソンピン法(先端にフックの付いたピンで固定する方法) などによる骨接合術が行われることもある。
同じような骨折にみえるが、転子部骨折は骨癒合しやすく、頸部骨折はしにくい。

② 頸部骨折で、人工骨頭置換術を行った場合、術後の観察が重要となる。人工骨頭置換術後は、脱臼や腓骨神経麻痺に注意する必要がある。
まず術後患肢を適切に固定しておかないと 人工骨頭が脱臼してしまう可能性がある。 もし後方 (おしりのほう)からの人工骨頭置換術を受けた場合、手術中は内転 (両足を閉じた状態)、内旋(内股)、屈曲の状態で手術を行うので、それと同じ姿勢をとると脱臼しやすい。この場合、患肢を外転した状態になるように枕などで調整する。
腓骨神経麻痺というのは、仰臥位で下腿が外旋することで腓骨頭部や頸部がベッドに接してし、そこを走行する総腓骨神経が圧迫されて起こる。進行すると下垂足につながる。

③ 腓骨神経麻痺を防ぐには、がに股” (外旋位) にならないようにする。外旋位だと腓骨神経麻痺になる可能性がある。膝の外側には、 腓骨神経が走行している。 膝の裏にクッションを入れる。腓骨神経麻痺は 足の親指(母趾)から人差し指(第二趾) にかけてのしびれから発症する。したがって、術後は頻回に確認する。人工骨頭置換術(後方アプローチ)の術後:①人工骨頭が外れやすくなるので内転・内旋 90度以上の過屈曲禁止、②腓骨神経麻痺予防のため、外旋禁止である。具体的には、「正座、足を組む、重い荷物を持つ、和式のトイレを使う、 低いソファに座る、などの動作をしてはいけない」ということになる。つまり内転、内旋、 過屈曲となる動きは、極力避けるべきである。とにかく、 人工骨頭が外れやすい動き、つまりは和式のトイレや低いソファーでは、股関節が屈曲しすぎたりする。 患肢の伸展が保たれるように意識して動くとよい。
キーワード ① 大腿骨頸部 ② 骨粗鬆症 ③ エストロゲン ④ 人工骨頭置換術 ⑤ 腓骨神経
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」316ページから318ページ、324ページから365ページの骨系に関する箇所を読む。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」232ページを読む。
復習:大腿骨の形状について教科書の図を用いて確かめる。大腿骨頚部、大腿骨頭、大転子などの部位を図から確かめる。股関節の関節包はどこまで覆っているのかをみる。高齢女性が骨粗鬆症になりやすいのはなぜか、閉経とホルモンの関係からまとめる。エストロゲンの作用について再確認する。
大腿骨頸部骨折について、再度大腿骨の構造を振り返り、血流障害になり、骨頭が壊死するのはなぜか考えてみよう。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」を読み返し、骨粗鬆症と大腿骨頸部骨折との関連ついてもまとめておく。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

26 生殖器の構造・機能① 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第26回から29回にわたって、女性生殖器の形態機能と疾病について学修する。
本コマ(生殖器の構造と機能①)では、女性生殖器の構造と機能について学修する。
女性生殖器は、①性腺にあたる卵巣、②卵管から腟までの生殖路、③1つの付属生殖腺を含む。卵巣、卵管、子宮、腟といった女性生殖器は、骨盤の中におさまっている。骨盤の中央に子宮がある。その上端から左右に卵管がのび出し、さらにその先端近くに卵巣がある。子宮の下端は腟につながり、さらに腟は腟前庭に開いている。乳腺は皮膚の腺であるが、生まれた子を発育させるのに必要であるため、生殖器に含める。
また、受精卵が子宮に着床して発育を遂げるためには、卵膜、胎盤、臍帯などが必要である。ここでは特に胎盤の構造と機能および臍帯について学修する。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p500-502
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p503-504
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p505-507
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p517-520
コマ主題細目 ① 卵巣 ② 卵管・子宮・腟 ③ 外生殖器・乳腺 ④ 胎盤と臍帯
細目レベル ① 卵巣は卵細胞をたくわえ、これを成熟させる器官であり、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を内分泌する働きも行う。卵巣は子宮の左右に1つずつある器官で、子宮とは固有卵巣索により、腹壁とは卵巣提索によりつながっている。12~14歳頃の思春期になると、卵巣は活発に発育し始める。生殖可能年齢では3.5×2.0×1.0㎝ほどの大きさになり、重さは約7.0gとなる。閉経後、卵巣は急速に小さくなり、生殖可能年齢の約半分の大きさとなる。新生児も卵巣をもっているが、主に原始卵胞で占められており、血管などの間質はほとんどない。また卵巣は、卵管とは直接つながっておらず、排卵された卵子は卵管の腹腔口から取り込まれる。
② 卵管は、卵巣から排卵された卵子を子宮へ移送する、長さ約10㎝の管で左右1対ある。卵管は卵巣に直接つながっていない。子宮は壁が厚く(約2㎝)、洋梨を逆さにした形状の中腔器官で、膀胱と直腸の間にある。子宮は上から子宮底、子宮体、子宮頚に分けられる。腟は長さ約7㎝の、子宮から腟口(腟前庭)に至る管である。腟は産道として、また交接器官として機能する。子宮は子宮内膜に着床した受精卵を発育させる器官であり、子宮外での生存が可能な段階まで発育した胎児は娩出される。成熟女性の子宮は鶏卵大で、多くは前傾前屈である。子宮は、大きく子宮体部(子宮体)と子宮頚部(子宮頚)の2つに分かれる。腟粘膜は重層扁平上皮でおおわれている。腟は子宮と外性器を連結する筋性の管状器官で、子宮からの月経や粘液の排泄管の役割を果たす。エストロゲンの作用により腟粘膜ではグリコーゲンがつくられる。グリコーゲンは常在菌であるデーデルライン桿菌(乳酸菌)により乳酸にかえられ、腟内は酸性に保たれる。これにより、腟内は外部からの細菌などの侵入を防ぐことができる。
③ 女性の外生殖器は、尿道口と腟口を囲む部分である。大陰唇:表皮は厚く、色素沈着があり、皮脂腺や汗腺が存在する唇状の皮膚のヒダである。その内側に小陰唇がある。小陰唇:色素沈着があり皮脂腺に富む。小陰唇の内側の腟前庭に外尿道口と腟口が開口する。小陰唇の先端に陰核がある。小陰唇の両側には海綿体からなる前庭球と、粘液を分泌する大前庭腺がある。大前庭腺はバルトリン腺ともよばれ、左右の前庭球の後端に位置する。性的興奮時に粘液を分泌する。乳腺は乳房の脂肪組織中にある皮膚腺であり、女性で特に発達する。乳頭およびそれを囲む乳輪の皮膚は色素に富み、その直下には平滑筋がある。乳輪にはMontgomery腺とよばれる特有の皮脂腺が散在する。乳房を覆う皮膚は薄く、乳房提靭帯(クーパー靭帯)とよばれる線維束が付着する。
④ 胎盤は円盤状で、母体側の基底脱落膜と胎児側の絨毛有毛部とが向き合い、その間に母体の血液を満たす空洞(絨毛間腔)をつくる。胎児側の絨毛は、水草の根のように母体の血液にひたり、母体側の動脈はこの空洞に直接開口して血液を灌流する。絨毛内の胎児の血管は、絨毛の外の母体の血液から酸素と栄養素を吸収し、二酸化炭素やその他の老廃物を排泄する。胎盤はヒト絨毛性ゴナドトロピンを分泌して、妊娠初期に卵巣の黄体からのプロゲステロン分泌を刺激する。10週以降は、おもに胎盤がプロゲステロンを分泌するようになる。臍帯は、胎児と胎盤をつなぐ血管の通路である。2本の臍動脈と1本の臍静脈を含み、その間を膠様組織(ワルトンのゼリー)が埋め、表面は羊膜に覆われる。
キーワード ① 卵巣ホルモン ② 卵管采 ③ 子宮体腔 ④ 乳房提靭帯 ⑤ 基底脱落膜
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」500ページから507ページ、および517ページから520ページの女性生殖器に関する箇所を読む。
復習:女性生殖器について該当する教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」のページを読み返す。女性生殖器は、①性腺にあたる卵巣、②卵管から腟までの生殖路、③1つの付属生殖腺を含む。卵巣、卵管、子宮、腟といった女性生殖器は、骨盤の中におさまっている。骨盤の中央に子宮がある。その上端から左右に卵管がのび出し、さらにその先端近くに卵巣がある。子宮の下端は腟につながり、さらに腟は腟前庭に開いている。乳腺は皮膚の腺であるが、生まれた子を発育させるのに必要であるため、生殖器に含める。
また、受精卵が子宮に着床して発育を遂げるためには、卵膜、胎盤、臍帯などが必要である。ここでは特に胎盤の構造と機能および臍帯についてまとめておく。
「解剖生理学 ワークブック」105ページの問題3,4,9を解く。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

27 生殖器の構造・機能② 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第26回から29回にわたって、女性生殖器の形態機能と疾病について学修する。
本コマ(生殖器の構造と機能②)では、性周期と女性のライフサイクルに大きく関わるゴナドトロピン、エストロゲン、プロゲステロンの作用について学修する。女性の生殖機能は、平均28日周期の妊娠準備期間と、妊娠期とに分けられる。ここでは、女性の妊娠準備期間における性周期について学習する。日常の妊娠準備期間には、卵巣に周期的におこる卵巣周期と、卵巣から分泌されるホルモンの分泌量の周期的変化によって引き起こされる月経周期がある。卵巣周期は、卵胞期、排卵期、黄体期に分けられる。月経周期は、月経期、増殖期、分泌器に分けられる。
エストロゲン・プロゲステロンの産生と分泌は2つの卵巣の細胞(顆粒膜細胞、莢膜細胞)において、下垂体前葉から産出される2つのゴナドトロピン(LH、FSH)の作用によって行われる。ゴナドトロピンは性腺刺激ホルモンとも呼ばれる。

コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p296-297
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p507-510
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p296-297
コマ主題細目 ① 卵巣のホルモン ② 性周期 ③ 卵巣ホルモンのさまざまな作用
細目レベル ① 排卵に関与するホルモンは、視床下部からの黄体形成ホルモン放出ホルモン:LH-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモンGnRH)、下垂体からの性腺刺激ホルモン(黄体形成ホルモン:LHと卵胞刺激ホルモン:FSH)、ならびに卵巣からのエストロゲンとプロゲステロンである。エストロゲンは成熟卵胞の顆粒膜細胞から分泌され、主に子宮内膜の腺増殖を刺激する。加えて、プロゲステロン受容体の合成を刺激する。その後、プロゲステロンが黄体から分泌され、妊娠を成立させ、かつ維持する。その主な標的器官は子宮内膜および子宮筋で、あらかじめエストロゲンによって準備された増殖期の子宮内膜を分泌期へ変化させ、着床の準備を行う。妊娠時には、子宮内膜を脱落膜に変化させ、同時に子宮筋の緊張を抑えて妊娠の維持を図る。
② 卵巣の周期は下垂体前葉より分泌される2種類の性腺刺激ホルモン(FSHとLH)の変化にともなって起こる。FSH(卵胞刺激ホルモン)は、卵胞の成熟を促すと同時に卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌を増加させ、受精の準備状態を作る作用がある。LH(黄体形成ホルモン)は、排卵の誘発を促すと同時に黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌を増加させ、受精卵の着床しやすい状態をつくる作用がある。月経周期の増殖期では、エストロゲンの作用により、子宮内膜が増殖する。分泌期では、プロゲステロンの作用により、内膜の分泌腺が活発となり、受精卵が着床しやすい状態となる。受精、着床が起こらないと黄体は退化し、プロゲステロンの分泌は低下して、再び月経期が始まる。
③ 卵巣ホルモンのさまざまな作用について学修する。①生殖器への作用:エストロゲン優位の子宮筋はオキシトシンに対し、より敏感になる。②中枢神経への作用:ヒトの性欲を高める。③乳房への作用:乳管の成長を促し、思春期の乳房発育に作用する。④二次性徴への関与:思春期の女性の乳房、腟、子宮、その他の身体的変化のほとんどは、エストロゲンの「女性化作用」による。⑤循環器への作用:エストロゲンは血漿コレステロールを著しく減少させる。それはLDL(低比重リポタンパク)を低下させ、HDL(高比重リポタンパク)を増加させることにつながる。⑥体液への影響:エストロゲンは、塩分と水分の貯留を促す作用をわずかながらもっている。⑦ある種のサイトカインの破骨細胞に及ぼす刺激作用を抑制することにより、骨粗鬆症を抑える。
キーワード ① 卵胞ホルモン ② 黄体ホルモン ③ 月経周期 ④ 子宮内膜 ⑤ 下垂体前葉ホルモン
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」507ページから510ページの女性生殖器の機能に関する箇所を読む。
復習:女性生殖器について該当する教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」のページを読み返す。性周期と女性のライフサイクルに大きく関わるゴナドトロピン、エストロゲン、プロゲステロンの作用について作用をまとめる。女性の生殖機能は、平均28日周期の妊娠準備期間と、妊娠期とに分けられる。ここでは、女性の妊娠準備期間における性周期について確認する。日常の妊娠準備期間には、卵巣に周期的におこる卵巣周期と、卵巣から分泌されるホルモンの分泌量の周期的変化によって引き起こされる月経周期がある。卵巣周期は、卵胞期、排卵期、黄体期に分けられる。月経周期は、月経期、増殖期、分泌器に分けられる。
エストロゲン・プロゲステロンの産生と分泌は2つの卵巣の細胞(顆粒膜細胞、莢膜細胞)において、下垂体前葉から産出される2つのゴナドトロピン(LH、FSH)の作用によって行われる。ゴナドトロピンは性腺刺激ホルモンとも呼ばれる。
「解剖生理学 ワークブック」106,107ページの問題5-7を解く。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

28 生殖器の代表的疾患の病態生理 科目の中での位置付け 本科目全体の中で、第26回から29回にわたって、女性生殖器の形態機能と疾病について学修する。
本コマ(生殖器の代表的疾患の病態生理)では、主に乳がん・月経異常の病態生理について学修する。
性周期や生殖機能は視床下部・下垂体・卵巣・子宮などの共同作業であり、ホルモンにより各臓器のはたらきが調節されている。そのため視床下部・下垂体・卵巣のどこに異常があってもホルモン分泌の破綻が生じ性 能に異常がおこる。
たとえば視床下部や下垂体の腫瘍では、下垂体ホルモン分泌の増加や減少がおこる。小児の場合は、それにより思春期を迎えるのが早くなったり遅くなったりする。 成人の場合は、下垂体からのゴナドトロビン(FSHとLH) 分泌が低下すると無月経が生じる。心理的なストレスや拒食症などでもゴナドトロピン分泌が低下し、性周期の異常がおこる。またプロラクチンには乳汁分泌と性腺機能抑制の作用があるので、プロラクチンの分泌過剰では乳汁漏出とともに無月経になる。 プロラクチンの分泌過剰は薬物の副作用でもおこる。
乳がんは乳腺から発生する悪性腫瘍である。近年わが国で増加しており初経、肥満, 授乳経験なしなどが乳がんの危険因子と考えられている。内側上部・下部、 外側上部・下部、乳輪部の部位に分けた場合、 乳がんの発生部位は外側上部に多く、周囲の乳腺組織や脂肪組織に浸潤しながら発育する。 がんが表面方向に浸潤すると皮膚に、深部方向に浸潤すると大胸筋に達する。乳管に沿って浸潤すると血性乳頭分泌や乳頭びらんとなる。

コマ主題細目①:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p237-p238
コマ主題細目②:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p238
コマ主題細目③:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」 p241-p242
コマ主題細目 ① 月経異常 ② 子宮内膜症 ③ 乳がん
細目レベル ① 卵巣からは、排卵までの期間はおもにエストロゲンが、排卵後はエストロゲンに加え黄体からプロゲステロンが分泌される。黄体の寿命は通常2週間であるが、黄体機能が低下してプロゲステロンの分泌持続日数が短くなると次の月経の開始がそのぶん早くなり、基礎体温は高温相が短縮する。
破綻出血:破綻出血 エストロゲンは分泌されているのにプロゲステロンがほとんど分泌されない場合は、子宮内膜の肥厚が継続し、やがてはその肥厚に血行が追いつかずに血行障害をおこして内膜剝脱をおこす。これを破綻出血という。 破綻出血は消退出血とは原因が異なるため、 消退出血と同じような性器出血ではあるが、出血の時期や量は異なっている。
破出血をおこすまでの期間は、エストロゲンの分泌量に左右される。また、排卵はある場合とない場合とがある。 エストロゲンがほとんど分泌されない場合は、内膜の肥厚や排卵がおこらず、かつ無月経となる。いずれの場合もプロゲステロンは分泌されていないので、基礎体温は低温相がずっと持続する。

② 子宮内膜症:子宮内膜あるいはその類似組織が子宮内膜以外の場所に存在するものを子宮内膜症という。代表的なものは腹膜、とくに腹部臓器(卵巣や子宮、ダグラス [直腸を含む]) の表面に発生するものである。そのほか、卵巣内や子宮筋層内、さらには肺などの遠隔臓器にも発生することがある。
子宮内膜はエストロゲンにより増殖するため、子宮内膜以外の場所に存在する子宮内膜も性周期のたびに増殖・剥脱を繰り返す。この増殖に伴う線維芽細胞やコラーゲンの増加による癒着の伸展は, 月経困難症や下腹部痛、腰痛などをおこす原因となる。
卵巣内の場合は月経血に相当するものが袋状に貯留しチョコレート様に見えるため、卵巣チョコレート嚢胞という。子宮筋層内のものは子宮腺筋症とよぶ。 肺に発生すると月経時に喀血をおこす。

③ 乳がんは腫瘤を形成するため 「しこり」として触知可能なことが多く、腫瘤は、凹凸不整、境界不鮮明、可動性不良, 弾力性なし、硬固、無痛性、圧痛なし、といった特徴がある。 がんは周囲組織を巻き込みながら発育していくので、腫瘤上部の皮膚のひきつれや陥没乳頭陥凹や乳頭が病巣方向に向くなどの所見を示す。腫瘤上の皮膚を引き寄せると「えくぼ」のようになるのも特徴の 1つである (えくぼ症状)。 腫瘍細胞が皮膚へ浸潤すると皮膚潰瘍や出血がおこる。
転移:がんがリンパ管へ浸潤するとリンパ節転移をおこし、リンパの流れにしたがってリンパ節を順番に転移していく。やがて腋窩リンパ節や鎖骨下リンパ節にいたるとかたい腫瘤として触れたり、リンパ節どうしあるいは周囲組織と癒着を生じたりする。リンパ管内の腫瘍細胞は、最終的には鎖骨上リンパ節から静脈内 に流入して全身に広がるため、 鎖骨上リンパ節に転移があれば、すでに血流を介した全身性転移が開始されていると想定される。乳がんでは、血行性転移も比較的早期からおこると考えられている。
ホルモン療法:乳腺は性ホルモン依存性に発育するため, 乳がん細胞も性ホルモン依存性に発育することが多い。 エストロゲン(卵胞ホルモン) 受容体を持つ腫瘍細胞であれば、エストロゲンの有無により発育が促進・低下するため、抗エストロゲン薬の投与により乳がんの発育を抑制させることができる。ただし腫瘍細胞がエストロゲン受容体を持っていない場合、ホルモン療法は無効である。

キーワード ① エストロゲン ② 破綻出血 ③ 無月経 ④ 卵巣チョコレート嚢胞 ⑤ リンパ節転移
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」237,238および241,242ページを読む。
復習:月経異常、子宮内膜症および乳がんについて該当する教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」のページを読み返す。性周期や生殖機能は視床下部・下垂体・卵巣・子宮などの共同作業であり、ホルモンにより各臓器のはたらきが調節されている。そのため視床下部・下垂体・卵巣のどこに異常があってもホルモン分泌の破綻が生じ性能に異常がおこる。
たとえば視床下部や下垂体の腫瘍では、下垂体ホルモン分泌の増加や減少がおこる。成人の場合は、下垂体からのゴナドトロビン(FSHとLH) 分泌が低下すると無月経が生じる。心理的なストレスや拒食症などでもゴナドトロピン分泌が低下し、性周期の異常がおこる。またプロラクチンには乳汁分泌と性腺機能抑制の作用があるので、プロラクチンの分泌過剰では乳汁漏出とともに無月経になる。
乳がんは乳腺から発生する悪性腫瘍である。近年わが国で増加しており初経、肥満, 授乳経験なしなどが乳がんの危険因子と考えられている。内側上部・下部、 外側上部・下部、乳輪部の部位に分けた場合、 乳がんの発生部位は外側上部に多く、周囲の乳腺組織や脂肪組織に浸潤しながら発育する。 がんが表面方向に浸潤すると皮膚に、深部方向に浸潤すると大胸筋に達する。乳管に沿って浸潤すると血性乳頭分泌や乳頭びらんとなる。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

29 生殖器の構造・機能まとめ 科目の中での位置付け この回では病態生理をふまえて、正常な生殖器の構造・機能について整理する。
月経とは、子宮内膜が一定の周期で剥がれ落ち、それに伴って出血が起こるものである。 一定の日数、出血が継続すると、子宮が自然に収縮して血管を修復し、止血する。
正常の月経では、月経が始まった日から次の月経が始まる前日までの日数 (月経周期)が25 ~38日 (28~30日型が最多)で、持続日数 が3~7日、経血量が20~140mL (平均37 ~43mL) である。月経の異常は、後述のように分類される。
頸管狭小や、プロスタグランジンなど内因性生理活性物質の過剰産生によって子宮に強い収縮が起こることで、子宮筋の血流量の低下や虚血、骨盤内うっ血が生じ、これらによって引き起こされると考えられている(機能性月経困難症) 。そのほか、子宮筋腫や子宮内膜症などの疾患が原因で痛みが強く現れる場合 (器質性月経困難症)もある。
乳房には乳汁をつくる小葉と、乳汁を乳頭まで運ぶ乳管が張り巡らされている。これらを乳腺組織といい、ここに発生するがんを乳癌と呼ぶ。乳癌はその広がりによって非浸潤癌、浸潤、Paget病 (乳頭から乳輪に広がるもの)に分けられ、浸潤性乳管癌が圧倒的に多くみられる。

コマ主題細目①:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p237, p238
コマ主題細目②:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」 p241, p242
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p506-510
コマ主題細目 ① 月経異常 ② 乳がん ③ 性周期と乳腺
細目レベル ① 月経時にみられる内分泌的変化によるさまざまな自覚症状を月経随伴症状という。月経随伴症状では、下腹部の重圧感や下腹痛、腰痛、便秘・下痢、乳房の腫脹、疲労感、めまい、眠気、悪心などがみられる。これらの症状は全女性の半数以上にみられるが日常生活に支障をきたすほど症状が異常に強く、治療が必要な状態は月経困難症と呼ぶ。
また月経3~10日前に、下腹部痛やむくみ、腹部膨満感、精神的症状(不安やいらいらなど)が重く、月経が開始するとこれらの症状が消失する場合は、月経前症候群 (PMS)と呼ぶ。
月経の異常:月経がない→18歳になっても初経がない→原発性無月経、月経不順で3か月以上月経がない→続発性無月経
周期の異常:39日以上3か月以内→希発月経、24日以内→頻発月経
月経日数の異常:8日以上→過長月経、2日以内→過短月経
月経量:140mL以上→過多月経、20mL以下→過少月経
正常の月経:①月経周期: 25~38日、②持続日数: 3~7日、③経血量:20~140mL
思春期の続発性無月経:思春期の続発性無月経は、その後の妊孕性 (妊娠できる可能性) や骨粗鬆症の発生にも影響するため、 長期に及ばないよう、治療が必要である。誘因として、過食や過度の減食による急激な体重の増減、過度の運動、ストレスが挙げられる。 ここでは例として、体重減少性無月経の病態をみる。
体重減少性無月経とは、急激な体重減少に対する反応として、視床下部におけるGnRHの分泌が低下することで、 無月経を引き起こす病態である。
月経が正常に起きるには、①視床下部からGnRHが分泌される、② 下垂体前葉からLH. FSHが分泌される、③ 卵巣でエストロゲン、プロゲステロンが分泌される、④子宮、膣が正しく機能する、このすべてが正常に行われる必要がある。どの過程が障害されても無月経が起こり得る。
体重減少性無月経は、①の過程の障害である。①の過程の障害による無月経を視床下部性無月経という。体重減少性無月経では、 GnRHの基礎分泌が低下するため、下垂体からのLH、FSHの分泌も、卵巣からのエストロゲン、プロゲステロンの分泌も低下する。エストロゲンには、乳房や子宮への作用のほかに、骨量を維持したり、LDLコレステロールを下げたりする作用がある。このため、エストロゲン分泌が低下すると、骨吸収の増加(骨密度の低下)や、脂質異常症も起こってくる。

② 乳房には乳汁をつくる小葉と、乳汁を乳頭まで運ぶ乳管が張り巡らされている。これらを乳腺組織といい、ここに発生するがんを乳癌と呼ぶ。乳癌はその広がりによって非浸潤癌、浸潤、Paget病 (乳頭から乳輪に広がるもの)に分けられ、浸潤性乳管癌が圧倒的に多くみられる。
乳管外に浸潤して浸潤癌になると、しこりやくぼみ、乳頭の陥没などの症状が現れる。がん細胞が基底膜を破り、リンパ管や血管に流入すると、腋窩リンパ節や骨・肺・肝 脳に転移することもある。特に乳癌は、肺癌や前立腺癌とともに、骨転移を起こしやすい腫瘍である。
センチネルリンパ節生検とは、腋窩リンパ節のうち、最初にがん細胞がたどり着くリンバ節を調べて、がんの浸潤の程度を調べる検査である。乳癌の補助療法:① 放射線療法、② 化学療法 、③ ホルモン療法 (エストロゲン受容体陽性例に対して)。乳がんの手術後の合併症:浮腫や知覚障害、運動障害などが現れる。乳癌の手術直後~数日後のケア:・上肢を体幹より高く保つ。・指や肘関節の軽い運動をする。・末梢から中枢へ優しくマッサージする

③ 卵巣の周期は下垂体前葉より分泌される2種類の性腺刺激ホルモン(FSHとLH)の変化にともなって起こる。FSH(卵胞刺激ホルモン)は、卵胞の成熟を促すと同時に卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌を増加させ、受精の準備状態を作る作用がある。LH(黄体形成ホルモン)は、排卵の誘発を促すと同時に黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌を増加させ、受精卵の着床しやすい状態をつくる作用がある。月経周期の増殖期では、エストロゲンの作用により、子宮内膜が増殖する。分泌期では、プロゲステロンの作用により、内膜の分泌腺が活発となり、受精卵が着床しやすい状態となる。受精、着床が起こらないと黄体は退化し、プロゲステロンの分泌は低下して、再び月経期が始まる。
乳腺は乳房の脂肪組織中にある皮膚腺であり、女性で特に発達する。乳頭およびそれを囲む乳輪の皮膚は色素に富み、その直下には平滑筋がある。乳輪にはMontgomery腺とよばれる特有の皮脂腺が散在する。乳房を覆う皮膚は薄く、乳房提靭帯(クーパー靭帯)とよばれる線維束が付着する。

キーワード ① 月経周期 ② 視床下部 ③ 下垂体 ④ 腋窩リンパ節 ⑤ クーパー靭帯
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」506~510ページを読む。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」237, 238, 241, 242ページを読む。
復習:女性生殖器について該当する教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」のページを読み返す。性周期と女性のライフサイクルに大きく関わるゴナドトロピン、エストロゲン、プロゲステロンの作用について作用をまとめる。女性の生殖機能は、平均28日周期の妊娠準備期間と、妊娠期とに分けられる。ここでは、女性の妊娠準備期間における性周期について確認する。日常の妊娠準備期間には、卵巣に周期的におこる卵巣周期と、卵巣から分泌されるホルモンの分泌量の周期的変化によって引き起こされる月経周期がある。卵巣周期は、卵胞期、排卵期、黄体期に分けられる。月経周期は、月経期、増殖期、分泌期に分けられる。
月経異常、子宮内膜症および乳がんについて該当する教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」のページを読み返す。性周期や生殖機能は視床下部・下垂体・卵巣・子宮などの共同作業であり、ホルモンにより各臓器のはたらきが調節されている。そのため視床下部・下垂体・卵巣のどこに異常があってもホルモン分泌の破綻が生じ性能に異常がおこる。乳がん手術後の看護についても確認する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

30 科目のまとめ 科目の中での位置付け この回では、科目のまとめを行う。
本科目は、消化器系、呼吸器系、循環器系、脳神経系、筋骨格系、内分泌代謝、生殖器系の系統別に展開していくことを基本とし、それぞれの解剖生理がどのように人間の生活行動と関連するかを学習したのちに、それぞれの代表的疾患における病態生理・疾病治療を学習し、対象への看護の理解につなげる科目である。
科学的根拠に基づいた臨床判断に基づき質の高い看護実践の習得を目指すためには、解剖生理学・疾病治療論などの専門基礎科目の知識と看護学を関連付けて学習することが重要である。人体の構造・機能、病態生理、疾病治療についての知識を看護学に関連付けて学修することで、解剖生理学がどのように人間の生活行動と関連するのか、病態生理学や疾病治療論がどのように対象者への看護と関連するのかを理解することである。

コマ主題細目①:配布資料
コマ主題細目②:配布資料
コマ主題細目③:人体模型
コマ主題細目 ① 解剖生理 ② 病態生理 ③ 人体模型を使って確認
細目レベル ① 消化器系では、口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸と付属消化腺(肝臓、胆嚢、膵臓)の構造と機能について学修した。呼吸器系では、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺の構造と機能について学修した。循環器系では、心臓、血管、リンパ管の構造と機能について学修した。神経系では、中枢神経系・末梢神経系の構造と機能について学修した。筋骨格系では、全身の骨、関節の種類、筋の作用について学修した。内分泌系では、内分泌腺とそこから産生されるホルモンとその作用について学修した。女性生殖器では、卵巣、卵管、子宮、腟、外陰部の構造、および性周期とそれに関わるホルモンの作用について学修した。
② 系統別で人体の正常な構造と機能を学修した上で、それぞれで、代表的な疾患について学修した。
消化器系では、胃がん・大腸がんについて学修した。消化管粘膜の構造と機能の理解が重要である。呼吸器系では、慢性閉塞性肺疾患、誤嚥性肺炎について学修した。気管支や肺胞の構造から理解する。循環器系では、心不全・心筋梗塞について学修した。神経系では、脳血管障害について学修した。筋骨格系では、脊髄損傷と大腿骨頸部骨折について学修した。女性生殖器では、月経異常と乳がんについて学修した。

③ 解剖生理学の学修内容を振り返る。教科書中心で授業を進行してきたが、ここでは人体模型を使って臓器間の位置関係や、実際に模型を観察することで臓器の構造を確認し、さらにはその機能ついて知識の定着を図る。この回では、全身の人体解剖模型、心臓、呼吸器、血管系の模型を使用する。全身の人体解剖模型は、臓器が取り外し可能で30パーツに分解できる。分解した臓器を組み込んでいくことにより、臓器の構造や位置関係を確認することができる。心臓の模型は、心臓を出入りする血管、弁構造、冠状動脈の走行などを確認できる。血管系の模型では、全身の動脈・静脈について立体的に確認することができる。呼吸器の模型は、気管と食道の位置関係、主気管支の左右差、喉頭の構造などを確認することができる。
キーワード ① 人体の構造と機能 ② 病態生理学 ③ 代表的疾患 ④ 看護 ⑤ 人体模型
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 消化器系では、口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸と付属消化腺(肝臓、胆嚢、膵臓)の構造と機能について学修した。呼吸器系では、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺の構造と機能について学修した。循環器系では、心臓、血管、リンパ管の構造と機能について学修した。神経系では、中枢神経系・末梢神経系の構造と機能について学修した。筋骨格系では、全身の骨、関節の種類、筋の作用について学修した。内分泌系では、内分泌腺とそこから産生されるホルモンとその作用について学修した。女性生殖器では、卵巣、卵管、子宮、腟、外陰部の構造、および性周期とそれに関わるホルモンの作用について学修した。また、上記の講義内容から病態生理学および代表的疾患を学び、それぞれの疾患に対する看護について学んだ。この回では総まとめとして、今まで学んだことを教科書およびワークブックで振り返る。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
科目の総論 人体の階層性について説明ができる(★★)細胞と組織の違いについて説明できる(★★)動物機能と植物機能で分類した器官系について述べることができる(★)細胞内液と細胞外液について違いを説明できる(★★)体液の区分とその組成について図を使って説明できる(★★)疾病の分類について表をみて説明できる(★)症状・徴候・症候についてそれぞれ簡潔に説明できる(★★) 人体の階層性、細胞、組織、症状、徴候、症候 6 第1回
消化器系の形態機能と疾病 消化管を図示し、口腔から順に各部の名称について説明できる(★)。唾液腺の名称と唾液の機能を説明できる(★)。食道の生理的狭窄部を挙げることができる(★)。嚥下の機構を説明でき、誤嚥の病態生理について説明できる(★★)。胃を図示し、各部の名称や胃底腺を構成する3種類の細胞と分泌物を挙げることができる(★★)。消化管や付属腺から分泌される消化酵素の名称と、各々が作用する物質を説明できる(★★★)。糖質・タンパク質・脂質の消化・吸収について説明できる(★★★)。大腸の機能や排便の機序を説明できる(★)。膵臓・肝臓の機能を説明できる(★)。胆汁の生成および胆管への外分泌機構について説明できる(★★)。腹膜や、腹部内臓と腹膜との位置関係(後腹膜器官)を説明できる(★)。消化器症状の種類や原因・機序を説明できる(★★)。胃がん・大腸がんによる胃・大腸の機能低下に伴う病態を説明できる(★★)。イレウス(腸閉塞)の特徴を説明できる(★★)。 嚥下、消化、吸収、代謝、排泄 14 第2-5回
内分泌系の形態機能と疾病 ホルモンの定義と作用するしくみを説明できる(★)外分泌腺と内分泌腺の違いを説明することができる(★)どのようなフィードバック機構がホルモン分泌にみられるかを、例を挙げて説明できる(★)下垂体前葉および後葉から分泌されるホルモンの名称とその作用を説明できる(★)下垂体について発生の観点から前葉と後葉とを説明できる(★★)下垂体門脈について説明できる(★)松果体から分泌されるホルモンの名称とその作用を説明できる(★)
甲状腺から分泌されるホルモンの名称とその作用を説明できる(★)上皮小体から分泌されるホルモンの名称とその作用を説明できる(★)副腎の構造について説明できる(★)副腎皮質と髄質の違いを発生の観点から説明できる(★)髄質細胞の特徴について説明できる(★)副腎髄質から分泌されるホルモンの名称とその作用を説明できる(★)
膵臓の構造について説明できる(★)膵臓から産生されるホルモンとその作用について説明できる(★)副腎皮質ホルモンを列挙し、それぞれのホルモンにについて作用を述べることができる(★)1型糖尿病と2型糖尿病について、それぞれの特徴、症状について説明できる(★★★)糖尿病による合併症を3つ挙げ、それぞれの症状について簡潔に説明することができる(★★★)
上位ホルモンと下位ホルモンとの関係について図を使って説明することができる(★)ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックについて、それぞれ具体例を挙げて説明できる(★★)ホルモン分泌制御の破綻について:分泌量不足の原因を挙げることができ、その結果、どのような症状が出るのか述べることができる(★★★)クッシング症候群について、コルチゾール濃度、副腎皮質刺激ホルモン濃度、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンの濃度をみながら説明できる(★★★)
内分泌腺、フィードバック機構、ホルモンの作用、産生部位、 13 第6回-9回
循環器系の形態機能と疾病 心臓の各部位の名称と体内を循環する経路(肺循環系、体循環系)について説明できる(★)。冠状動脈の名称と、冠状動脈の異常(狭窄・閉塞)によって起こる病態生理を説明できる(★★)。刺激伝導系の名称と、心電図の関係を説明できる(★★)。主な不整脈について刺激伝導系の異常を説明できる(★★★)。心周期と心音、心電図の関係を説明できる(★★)。心拍数と1回心拍出量を調節する因子を挙げることができる(★★)。血管(動脈・静脈・毛細血管)の構造の違いと、体循環系の動脈・静脈の名称を述べることができる(★)。血圧の調節因子を説明できる(★★)。毛細血管を通しての物質移動のしくみ(濾過と拡散)を説明できる(★)。リンパの静脈への流入経路を説明できる(★)。左心不全と右心不全による病態生理と症状を説明できる(★★)。 心臓の4つの部屋と4つの弁、冠状動脈、刺激伝導系、心拍出量、血圧 14 第10-13回
呼吸器系の形態機能と疾病 鼻や口から入る空気が肺に至るまでに通過する呼吸器官を挙げることができる(★)。気管と食道の位置関係について図を用いて説明できる(★)。主気管支および肺の左右差(構造)を説明できる(★)。肺胸膜、壁側胸膜および胸膜腔を説明できる(★★)。外呼吸と内呼吸の違いを説明できる(★)。吸息に関する筋と神経、吸息・呼息時の横隔膜の状態を説明できる(★)。呼吸のメカニズムについて説明できる(★★)。ガス交換のしくみを説明できる(★★)。呼吸の神経性調節について、呼吸中枢、化学受容器の働きを説明できる(★★)。呼吸中枢の異常によって起こる呼吸運動の異常と病的呼吸を説明できる(★★★)。換気障害の病態生理と症状を、呼吸気量(肺活量、1秒率)との関連をふまえて説明できる(★★)。呼吸困難の原因や、肺炎の病態生理を説明できる(★★)。 主気管支の左右差、右肺3葉・左肺2葉、陰圧、横隔膜、呼吸筋、ガス交換、呼吸中枢、化学受容器 14 第14-17回
神経系の形態機能と疾患 中枢神経系と末梢神経系について特徴を説明することができる(★)ニューロンの基本構造を説明することができる(★)ニューロンの活動電位が生じ、他の神経細胞へ伝導される過程を説明できる(★)神経伝達物質について述べることができる(★)大脳・小脳・間脳・脳幹の構造と機能を説明することができる(★★)脊髄の機能と構造を述べることができる(★★)髄膜の構造を述べることができる(★)脳脊髄液の産生とその機能を説明できる(★★)
12対の脳神経の名称を挙げ、その働きを述べることができる(★★)脊髄神経の種類(特に、腕神経叢、腰神経叢、仙骨神経叢)、支配領域、障害時にみられる症状(猿手、鷲手、下垂手など)を説明することができる(★★)交感神経系と副交感神経について、主な支配臓器、働きについて説明することができる(★★)節前線維と節後線維について説明できる(★)神経伝達物質を挙げることができる(★)副交感神経線維を含む脳神経を挙げることができる(★★)
脳に分布する動脈(内頚動脈と椎骨動脈)の走行について説明できる(★)大脳動脈輪について図を用いて説明できる(★)終動脈について説明できる(★)硬膜静脈洞について説明できる(★)閉塞性病変(脳梗塞・脳塞栓)について、発生機序、原因、症状について説明できる(★★)脳出血(クモ膜下出血・脳内出血)について、発生機序、原因、症状について説明できる(★★)
髄膜(三層)について説明できる(★)脳脊髄液の性状、働き、産生場所などについて説明できる(★)クモ膜下腔について図を用いて説明できる(★)項部硬直・ケルニッヒ徴候について説明できる(★★)腰椎穿刺について説明できる(★★)脳血管攣縮につて説明できる(★★)
中枢神経系、末梢神経系、脳に分布する動脈、大脳皮質機能局在、脳血管障害 14 第18回-21回
筋骨格系の形態機能と疾患 全身の骨を形状によって分類することができる(★)基本的な関節の構造について図を用いて説明できる(★)関節の種類について、具体的な関節部位を挙げることができる(★★)頭蓋骨、体幹の骨(椎骨・胸郭・骨盤)について、具体的に骨の名称を挙げることができる(★★)上肢・下肢の骨について、具体的に骨の名称を挙げることができる(★★)運動の方向について図を用いて説明できる(★)
3種類の筋組織の特徴、存在する臓器名を述べることができる(★★)骨格筋の収縮に関連して、活動電位、等張性収縮、等尺性収縮を説明することができる(★★)神経筋接合部とアセチルコリンの作用を説明できる(★★)ミオシンフィラメントとアクチンフィラメントによる筋の収縮機序について説明できる(★★)起始と停止について説明できる(★)協力筋と拮抗筋について、具体的に筋名を挙げて説明できる(★)体表面に近い主要な筋の名称を、顔面、頸部、胸部、腹部、背部、上肢、下肢について述べ、その作用について説明できる(★★)
下行性伝導路・上行性伝導路について、脊髄、脳幹、大脳のどこを通っていくのか説明できる(★★)伝導路の障害部位によって、麻痺の出現が異なることを理解し、かつ説明することができる(★★★)完全麻痺と不全麻痺、、弛緩性麻痺と痙性麻痺についてそれぞれ違いがわかるように説明することができる(★★★)大腿骨頸部骨折について、骨粗鬆症と関連付けることができる(★★)女性で骨粗鬆症になりやすい理由について、ホルモンを用いて説明できる(★★)
頸部骨折と転子部骨折の違いについて説明できる(★★)総腓骨神経の走行が理解できる(★)股関節外旋位の場合、総腓骨神経麻痺になる理由を説明できる(★★)
関節の種類、全身の骨、筋の作用、運動の方向、神経支配 12 第22回-25回
女性生殖器の形態機能と疾患 卵巣の機能を述べることができる(★)卵管、子宮、腟と膀胱、直腸との位置関係を説明できる(★)子宮と腟の構造について説明することができる(★)外生殖器について説明できる(★)腟前庭について説明することができる(★)会陰について図を用いて説明できる(★)胎盤・臍帯について説明することができる(★★)臍動脈・臍静脈の特徴について説明できる(★)胎盤から産生するホルモンを挙げることができる(★)
卵胞、黄体、卵子発生を説明できる(★)下垂体と卵巣、それぞれから産生するホルモンの名称とその作用について説明できる(★★)排卵の時期を述べることができる(★)月経周期に伴う子宮内膜の変化、下垂体前葉ホルモンおよび卵巣ホルモンの変化を述べることができる(★★★)排卵の機序、受精と受精卵の着床を説明できる(★★)エストロゲンについては女性生殖器以外の器官に関与する作用も述べることができる(★★)
視床下部や下垂体の腫瘍では、下垂体ホルモン分泌の増加や減少が起こることを理解する(★)成人の場合、下垂体からのゴナドトロビン(FSHとLH) 分泌が低下すると無月経が生じる過程を説明できる(★★★)心理的なストレスや拒食症などでも性周期の異常がおこる機序を説明できる(★★)またプロラクチンの作用について説明できる(★★)プロラクチンの分泌過剰では何が起きるのか
卵巣の構造と機能、性周期、子宮内膜、下垂体前葉ホルモン、胎盤、乳腺 13 第26回-29回
評価方法 期末試験100%
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 ①坂井建雄,他『系統看護学講座 解剖生理学 人体の構造と機能①』(医学書院)¥4,180(税込),②田中越郎『系統看護学講座 病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②』(医学書院)¥2,530(税込),③坂井建雄,他『系統看護学講座準拠 解剖生理学ワークブック』(医学書院)¥2,200(税込)
参考文献 浅野嘉延,他『看護のための臨床病態学』(南山堂)¥9,680(税込)
実験・実習・教材費 なし