区分
(生)フィールド生態科目 フィールド生態共通科目 (環)フィールド生態科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門性
理解力
実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
専門知識
教養知識
思考力
実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
個人・社会・自然が直面する課題に対して専門的な理解を深めると共に、学際的な柔軟性を有し、実践的な能力を有する。
科目の目的
この科目のテーマは、生態学の理解を通じて動物の生活の法則と環境の関係の理解を深めることにある。生態学は様々な分類群に共通の学問であるため、動物と植物の間に共通の部分も多くあるが、この科目(動物生態学)では、動物に関する内容や事例に焦点を当てて生態学を学ぶ。具体的には、生態学の中で重要となる、適応度や進化の考え方、個体群のふるまい、生物群集内での種間相互作用などに重きを置いている。生態学を学ぶ中で、日常生活と学問の関係についても触れる。
到達目標
生態学に関する教科書や論文を独力で読み進められるようになるために、また生態学に関する内容を他者に的確な用語を用いて説明できるようになるために、生態学に関する基礎的な用語や考え方を理解して使用できるようになることが目標です。
科目の概要
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。各回の授業では、前半に担当学生が作成した資料をもとに用語の説明を行い、後半に教員が各回のポイントとなる考え方を説明する。生物の生活の法則をその環境との関係で解き明かす科学である生態学を学ぶ。生態学は対象動物に関わらず、広く生物を対象とする学問であるが、特に動物に関するテーマを中心に学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。
科目のキーワード
生態学、進化、行動、個体群、種間競争、生物群集、生態系
授業の展開方法
各回の授業は、主に3つのパートに分けられる。1つ目のパートでは、前回のコメントシートへの返答や担当学生が作成した発表資料(スライド1枚)をもとに用語の復習を行う。二つ目のパートでは、動物の生態についての理解を高め、授業内容を理解しやすくするために野生動物の生態に関するドキュメンタリー映像を視聴する。三つ目のパートとして、教員が各回のポイントとなる生態学の考え方や用語をパワーポイントで用いて説明する。講義中にわからないことがあれば、出席確認を兼ねるコメントシートにコメントを記載すること。
オフィス・アワー
【月曜日】昼休み(前期のみ)、【火曜日】昼休み(後期のみ)、【木曜日】昼休み
科目コード
ENS209
学年・期
1年・後期
科目名
基礎生態学
単位数
2
授業形態
講義
必修・選択
必修
学習時間
【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目
生態系の機能と社会、基礎生物学、自然地理学
展開科目
森林生態学、海洋生態学、河川生態学、ビオトープ論、景観生態学、生物資源学、動物行動学、野生動物管理学、陸生動物保全学、水生動物保全学、海洋資源管理学
関連資格
なし
担当教員名
立脇隆文
回
主題
コマシラバス項目
内容
教材・教具
1
生態学とはどんな学問か
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第1回は、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。
①テキスト(p.1-11)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.1-11)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.1-11)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 授業の進め方 ② 生態学とは ③ 生態学の階層性
細目レベル
① 各回の授業は、主に3つのパートに分けられる。1つ目のパートでは、前回のコメントシートへの返答や担当学生が作成した発表資料(スライド1枚)をもとに用語の復習を行う。二つ目のパートでは、動物の生態についての理解を高め、授業内容を理解しやすくするために野生動物の生態に関するドキュメンタリー映像を視聴する。三つ目のパートとして、教員が各回のポイントとなる生態学の考え方や用語をパワーポイントで用いて説明する。講義中にわからないことがあれば、出席確認を兼ねるコメントシートにコメントを記載すること。なるべくイメージを持ちやすいように、学生の興味に合わせたたとえを用いて説明することもある。成績評価は試験で行う。
② 生態学とは、“生物の生活の法則をその環境との関係で解き明かす科学”である。生態学はいくつかの定義があり、生物の分布および存在量とそれらを決定する相互作用についての科学的研究などともいわれる。生態学はアリストテレスの博物学やフンボルトの植物地理学(植物の生育分布を気候などで説明)、ダーウィンの自然選択(個体の変異が種間相互作用や無機的環境によって選ばれる)の考え方などの流れを汲んでいる。生態学という用語は、1869年にヘッケルがドイツ語で家または家計という意味のoikosと論理という意味の-logosを合わせて作ったOecologie(英語でecology)が最初であると言われている。生態学は、様々な生物を対象として扱い、その類似性や多様性を明らかにしている。
③ 生態学では、対象とする種や環境の範囲や空間スケール(広がり)の違いによって、階層ごとに研究分野が分かれている。一つの独立した生物体は「個体」と呼ばれ、通常細分することのできない一つの体を持っている。「個体」の中には遺伝形質を規定する因子である「遺伝子」がある。一方、同種の個体の集団は「個体群」と呼ばれ、異なる種の個体群を纏めた集団を「生物群集」と呼ぶ。「生物群集」に生物の生活に関与する無機的環境の要素を加えたシステム(系)を「生態系」と呼ぶ。このような生物のまとまりに対応して生態学の分野がある。例えば、遺伝子、群れ、個体群を対象とする分野には、個体群生態学・社会生物学・行動生態学・進化生態学などがあり、異種個体群から生物群集を扱う分野には、群集生態学が、生態系を扱う分野には、生態系生態学などがある。
キーワード
① 遺伝子 ② 個体 ③ 個体群 ④ 生物群集 ⑤ 生態系
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
2
生物界の共通性と多様性
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第2回は、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。
①テキスト(p.13-25)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.13-25)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.13-25)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 前回の振り返り ② 生物の多様性 ③ 生物の共通性
細目レベル
① 第1回は、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観した。本科目は、前回のコメントシートや学生のまとめ資料をもとにした復習、野生動物の生態に関するドキュメンタリー映像の視聴、教員による講義の3つの要素で進める。生態学とは、“生物の生活の法則をその環境との関係で解き明かす科学”である。生態学では、対象とする種や環境の範囲や空間スケール(広がり)の違いによって、階層ごとに研究分野が分かれている。一つの独立した生物体は「個体」と呼ばれ、通常細分することのできない一つの体を持っている。「個体」の中には遺伝形質を規定する因子である「遺伝子」がある。一方、同種の個体の集団は「個体群」と呼ばれ、異なる種の個体群を纏めた集団を「生物群集」と呼ぶ。「生物群集」に生物の生活に関与する無機的環境の要素を加えたシステム(系)を「生態系」と呼ぶ。
② 地球上にはさまざまな生物が生息・生育している。生物多様性は遺伝子の多様性、種の多様性、生態系の多様性の3つのレベルからなるが、そのうちの種の多様性がもっともイメージしやすいだろう。地球の陸上を広く見渡すと、種の多様性は、赤道付近で高く、緯度が高くなるにつれて低くなる傾向がある(例えば、哺乳類)。日本は比較的、低緯度から高緯度まで及び、地形が複雑で標高の高い地域もあるため、面積のわりに多様な生態系と種を含む国である。日本と英国を比べると、面積は日本が38万km2で英国が24万km2で日本が英国のおよそ1.5倍であるが、維管束植物の種数は日本で5565種、英国で1623種と3.42倍であり、哺乳類でも188種と50種で3.76倍となっている。
③ 細目レベル②で見たように、世界中にはさまざまな生物が生息・生育しているが、これらの生物には3つの共通性がある。まず、すべての生物は細胞から構成されていることである。次に、すべての生物のエネルギーの受け渡しにはATP(アデノシン三リン酸:エネルギーの通貨と呼ばれる)がはたらいていることである。最後に、すべての生物は遺伝物質としてDNA(デオキシリボ核酸)を持つことである。これらの共通性から、生物の条件である、自己境界性、自己維持性、自己複製性が生まれる。自己境界性は、細胞はすべて共通の細胞膜で囲まれ、外界と内界をへだてていることである。自己維持性は、細胞内の代謝過程で化学物質に固定されていた化学エネルギーからATPを合成し、ATPを用いて生命活動を維持することである。自己複製性は、すべての生物は遺伝物質としてDNAをもち、これらが親世代の細胞から子世代の細胞に同じ遺伝情報として受け継がれることである。
キーワード
① 自己境界性 ② 自己維持性 ③ 自己複製性 ④ 種多様性 ⑤ 系統樹
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
3
進化から見た生態
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第3回は、自然選択による進化について学ぶ。
①テキスト(p.26-61)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.26-61)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.26-61)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 前回の振り返り ② 進化とは ③ 自然選択による進化
細目レベル
① 第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学んだ。地球上にはさまざまな生物が生息・生育している。生物多様性は遺伝子の多様性、種の多様性、生態系の多様性の3つのレベルからなる。種の多様性は、赤道付近で高く、緯度が高くなるにつれて低くなる傾向があり、日本は比較的、低緯度から高緯度まで及び、地形が複雑で標高の高い地域もあるため、面積のわりに多様な生態系と種を含む国である。世界中にはさまざまな生物が生息・生育しているが、これらの生物には3つの共通性があり、生物の条件である、自己境界性、自己維持性、自己複製性が生まれる。すべての生物は細胞から構成されていること、すべての生物のエネルギーの受け渡しにはATP(アデノシン三リン酸:エネルギーの通貨と呼ばれる)がはたらいていること、すべての生物は遺伝物質としてDNA(デオキシリボ核酸)を持つことをおさえておく。
② 進化とは、生物の遺伝的性質が世代を通して変化していくことである。生物学上の進化の概念には、進歩や改良という意味合いは含まれておらず、いわゆる“退化”も、集団の遺伝的構成が変化するプロセスだから進化に含まれる。一般的に(ゲームなどで)いうところの進化では、個体の形態が変化することを進化とすることもあるが、これは生物学的な進化とは異なるものである。個体の形態が変化することは、幼虫が蛹(さなぎ)になってチョウになるのと同じく、変態というのが適切である。進化を理解するためには、集団の中の遺伝子頻度(一つの遺伝子座について、集団中の各個体がもつ対立遺伝子を合計して、ある特定の対立遺伝子がその中で占める割合)の考え方を理解し、適応度(ある遺伝子型の個体が、1個体あたり次世代に残す子の数の平均)と進化の関係を理解する必要がある。
③ 自然界の中で生じる最も一般的な進化の一つに、自然選択による進化がある。自然選択による進化は、①ある形質が個体間で異なること(変異)、②その変異が遺伝すること(遺伝)、③その変異が原因となって繁殖や生存に個体差が生じること(淘汰)の条件がそろうと自律的に進むものである。例えば、キリンの首が長いのは、キリンの個体の間に首の長さの違いがあり(変異)、首の長い個体の方が多くの餌を食べれたため死亡率が低く次世代に残す子孫の数が多く(淘汰)、首の長さは遺伝子によって次世代に受け継がれるとき(遺伝)、次世代のキリンはより多く首を長くする遺伝子を持つというものである。ここで、キリンが頑張って高い位置にある葉を食べようとしたかどうかは、関係しないことに注意が必要である。自然選択による進化は、個体の努力を介さないものとして理解されている。
キーワード
① 遺伝子頻度 ② 適応度 ③ 自然選択 ④ 小進化 ⑤ 遺伝的浮動
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
4
生活史の適応進化
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第4回では生活史の適応進化について学ぶ。
①テキスト(p.62-87)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.62-87)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.62-87)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 前回の振り返り ② 生活史とは ③ 生活史の適応進化
細目レベル
① 第3回では、進化の生物学的な概念と、自然選択による進化の進み方について学んだ。進化とは、生物の遺伝的性質が世代を通して変化していくことである。生物学上の進化の概念には、進歩や改良という意味合いは含まれておらず、いわゆる“退化”も、集団の遺伝的構成が変化するプロセスだから進化に含まれる。進化を理解するためには、集団の中の遺伝子頻度(一つの遺伝子座について、集団中の各個体がもつ対立遺伝子を合計して、ある特定の対立遺伝子がその中で占める割合)の考え方を理解し、適応度(ある遺伝子型の個体が、1個体あたり次世代に残す子の数の平均)と進化の関係を理解する必要がある。自然界の中で生じる最も一般的な進化の一つに、自然選択による進化がある。自然選択による進化は、①ある形質が個体間で異なること(変異)、②その変異が遺伝すること(遺伝)、③その変異が原因となって繁殖や生存に個体差が生じること(淘汰)の条件がそろうと自律的に進むものである。
② 生活史とは、生物の個体が誕生し、成長・繁殖を遂げて最後に死亡するまでの一生涯のサイクルのことを言う。人のように、母親から生まれて成長し、また子を生むというようなものだけでなく、様々な生活史を持つ動物がいる。例えば、北海道にすむ魚類の1種であるイワナは、河川で卵から孵化した幼魚の一部が3才ごろに海に下り、海洋で大きく成長し、河川に戻って繁殖する(降海型)。一方、河川に残留した個体は降海型よりも成長が遅いが、同様に繁殖に参加する。変わった生活史を持つ他の例としてアブラムシがある。アブラムシの生活史は、自身と同じ遺伝子を持つ個体を生む単為生殖と、雌雄の精子と卵が結合して個体が生じる有性生殖を含んでいる。
③ 生活史の各過程は、進化によって獲得されてきたと理解することができる。例えば、繁殖については、繁殖数や繁殖頻度などを考えることができる。同じ種類の鳥の巣を除くと、だいたい同じ大きさの卵が同じ数ずつ入っているものである。大きめの卵が2個、3個、3個といった中に急に大きめの卵が100個見つかることはまずないだろう。一方で、別の種の巣をのぞくと、小さめの卵が5個、6個、5個と入っていることがあるだろう。では、ある鳥類の種の卵の大きさや数はどのように決まるのだろうか。親鳥は、無尽蔵に卵を埋めれば自身の遺伝子を持つ個体を多く残せるが、親鳥は卵を産むのに栄養素やエネルギーといった資源を消費するため卵にかけられる資源の量には上限がある。卵を産むのにかけられる資源量が決まった中では、卵の数を増やすとひとつの卵に配分できる量が減っていく。卵が小さいと子の生存率が低くなるだろうから、卵の数と子の生存率は反比例するはずである。このように、片方の形質を大きく進化させれば、他方の形質の進化をある程度犠牲にしなければならないというような、形質間の拮抗的な関係のことをトレードオフと言う。このようにして、増加率や性などを含む生活史は適応的に進化している。
キーワード
① トレードオフ ② r-K選択説 ③ 内的自然増加率 ④ 環境収容力 ⑤ 表現型可塑性
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
5
まとめ①
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第5回では、第1回から第4回の内容をまとめ、生物の形質や生活史の進化についての理解を深める。
①テキスト(p.1-87)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.1-87)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.1-87)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 前回の振り返り ② 生物の共通性と多様性 ③ 自然選択による進化
細目レベル
① 第4回では、動物の生活史を紹介し、生活史が適応進化することを学んだ。生活史とは、生物の個体が誕生し、成長・繁殖を遂げて最後に死亡するまでの一生涯のサイクルのことを言う。人のように、母親から生まれて成長し、また子を生むというようなものだけでなく、河川で生まれて一部だけが海に降りるイワナや単為生殖と有性生殖を含むアブラムシなど、様々な生活史を持つ動物がいる。生活史の各過程は、進化によって獲得されてきたと理解することができる。例えば、卵を産むのにかけられる資源量が決まった中では、卵の数を増やすとひとつの卵に配分できる量が減っていく。卵が小さいと子の生存率が低くなるだろうから、卵の数と子の生存率は反比例するはずである。このように、片方の形質を大きく進化させれば、他方の形質の進化をある程度犠牲にしなければならないというような、形質間の拮抗的な関係のことをトレードオフと言う。
② 第1回で生態学の全体像を示したうえで、第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学んだ。地球上にはさまざまな生物が生息・生育している。生物多様性は遺伝子の多様性、種の多様性、生態系の多様性の3つのレベルからなる。種の多様性は、赤道付近で高く、緯度が高くなるにつれて低くなる傾向があり、日本は比較的、低緯度から高緯度まで及び、地形が複雑で標高の高い地域もあるため、面積のわりに多様な生態系と種を含む国である。世界中にはさまざまな生物が生息・生育しているが、これらの生物には3つの共通性があり、生物の条件である、自己境界性、自己維持性、自己複製性が生まれる。すべての生物は細胞から構成されていること、すべての生物のエネルギーの受け渡しにはATP(アデノシン三リン酸:エネルギーの通貨と呼ばれる)がはたらいていること、すべての生物は遺伝物質としてDNA(デオキシリボ核酸)を持つことをおさえておく。
③ 第3回・第4回では、進化の生物学的な概念と、自然選択による進化の進み方について学んだ。進化とは、生物の遺伝的性質が世代を通して変化していくことである。進化を理解するためには、集団の中の遺伝子頻度(一つの遺伝子座について、集団中の各個体がもつ対立遺伝子を合計して、ある特定の対立遺伝子がその中で占める割合)の考え方を理解し、適応度(ある遺伝子型の個体が、1個体あたり次世代に残す子の数の平均)と進化の関係を理解する必要がある。自然界の中で生じる最も一般的な進化の一つに、自然選択による進化がある。自然選択による進化は、①ある形質が個体間で異なること(変異)、②その変異が遺伝すること(遺伝)、③その変異が原因となって繁殖や生存に個体差が生じること(淘汰)の条件がそろうと自律的に進むものである。進化は、大きさや形といった形態だけでなく、繁殖特性や性などの生活史の特徴でも生じうる。片方の形質を大きく進化させれば、他方の形質の進化をある程度犠牲にしなければならないというような、形質間のトレードオフによって決まっている考えられる例もある。
キーワード
① 生態学 ② 生物の共通性 ③ 進化 ④ 生活史 ⑤ 形質
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
6
動物の行動と社会①
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第6回では、動物の行動と社会について生態学的な視点から学ぶ。
①テキスト(p.107-113)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.107-113)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.107-113)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 前回の振り返り ② 利益とコスト ③ 動物の空間利用と最適採餌
細目レベル
① 第5回では、第1回から第4回までのまとめを行い、生物の共通性と多様性、自然選択による進化を振り返った。生物には3つの共通性があり、生物の条件である、自己境界性、自己維持性、自己複製性が生まれる。すべての生物は細胞から構成されていること、すべての生物のエネルギーの受け渡しにはATP(アデノシン三リン酸:エネルギーの通貨と呼ばれる)がはたらいていること、すべての生物は遺伝物質としてDNA(デオキシリボ核酸)を持つことをおさえておく。一方、自然選択による進化は、①ある形質が個体間で異なること(変異)、②その変異が遺伝すること(遺伝)、③その変異が原因となって繁殖や生存に個体差が生じること(淘汰)の条件がそろうと自律的に進むものである。
② 動物が長い時間をかけて周囲の環境による自然選択を受け、適応的に振る舞うように進化してきたとするなら、現在の動物の行動は周囲の環境に対して適応度を高める方向に最適化されているはずである。適応度は、繁殖成功の指標であり、ある遺伝子型の個体が、1個体あたり次世代に残す子の数の平均である。ある個体が繁殖する前に死亡してしまっては、次世代に子を残せないため、生き残って繁殖するということが適応度に反映される。個体が生きているには、捕食者から逃げる能力などとともに、獲得したり確保することでその個体にとって適応度が高くなる資源(餌や配偶相手など)を必要量獲得する必要がある。適応度の上昇を利益、低下をコストと呼び、適応度が高いことを有利、低いことを不利という。例えば、餌を獲得する際には、移動に伴うエネルギー消費のコストと、餌を獲得した時に得られるエネルギーなどの利益がある。
③ ある地域を切り取ったとき、その中には動物の生息地となる環境と、そうでない環境(マトリクス)がある。生息地のまとまりをパッチといい、パッチごとにパッチの質(餌資源の量や捕食者の量など動物にとっての生息のしやすさ)が異なる。もし、動物の個体間に互いを排除するような干渉が生じない、各個体がパッチの質の情報を持っているなどの条件がそろえば、各パッチに定着する個体の適応度がほぼ等しい状態(理想自由分布)になるだろう。パッチの内部やその周囲では、動物はある程度の範囲の中で動き回っていることがあり、この動き回る範囲を行動圏と呼ぶ。行動圏は個体間で重複することがある。一方、他の個体の侵入から防衛されている空間は、なわばりと呼ばれる。なわばりには、防衛するものによって採食なわばり、配偶なわばり、繁殖なわばりなどがある。なわばりを防衛にはコストがかかるため、防衛によって得られる利益と防衛のコストの間で、なわばりをもつことと有利かどうかが決まる。また、餌資源獲得量とコストの関係などにおいて、動物が理論上最適な行動(最適採餌)を行っていることがある。
キーワード
① 資源 ② パッチ ③ 理想自由分布 ④ 行動圏 ⑤ なわばり
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
7
動物の行動と社会②
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第7回では、動物の配偶システムや性選択について学ぶ。
①テキスト(p.113-128)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.113-128)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.113-128)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 前回の振り返り ② 動物の配偶システム ③ 性選択による進化
細目レベル
① 第6回では、適応度に関する利益とコストの概念と、動物の空間利用について学んだ。適応度は、繁殖成功の指標であり、ある遺伝子型の個体が、1個体あたり次世代に残す子の数の平均である。適応度の上昇を利益、低下をコストと呼び、適応度が高いことを有利、低いことを不利という。例えば、餌を獲得する際には、移動に伴うエネルギー消費のコストと、餌を獲得した時に得られるエネルギーなどの利益がある。生息地のまとまりをパッチといい、パッチごとにパッチの質(餌資源の量や捕食者の量など動物にとっての生息のしやすさ)が異なる。パッチの内部やその周囲では、動物はある程度の範囲の中で動き回っていることがあり、この動き回る範囲を行動圏と呼ぶ。行動圏は個体間で重複することがある。一方、他の個体の侵入から防衛されている空間は、なわばりと呼ばれる。なわばりを防衛にはコストがかかるため、防衛によって得られる利益と防衛のコストの間で、なわばりをもつことと有利かどうかが決まる。また、餌資源獲得量とコストの関係などにおいて、動物が理論上最適な行動(最適採餌)を行っていることがある。
② オスやメスが生涯にそれぞれ何頭の異性とつがい関係をもつかについての分類を配偶システムという。オス1個体がメス1個体とつがい関係をもつものを一夫一妻、オス1個体が複数のメスとつがい関係をもつものを一夫多妻、オス複数個体がメス1個体とつがい関係をもつものを一妻多夫、オス複数個体がメス複数個体とつがい関係をもつものを乱婚という。動物種間あるいは動物種内で配偶システムが異なることがある。また、同じ一夫多妻の配偶システムであっても、トンボなどにみられるように繁殖に必要な資源を防衛する資源防衛型一夫多妻、ゾウアザラシなどでみられる雌防衛型(ハレム型)の一夫多妻、アズマヤドリなどでみられるメスに好まれる特徴を披露しあうレック型の一夫多妻、オスもメスも集まって一斉に交尾をするスクランブル競争型の一夫多妻など異なる性質をもつものが知られている。
③ 配偶相手の獲得の際には、オス間の競争が生じたり、メスの選り好みが生じたりする。オス間の競争には、メスとの遭遇前に生じる闘争、交尾前後に行われる交尾前(交尾後)ガード、受精前に行われる精子競争、出産後に行われる子殺しなどがある。身体の大きなオスが闘争で有利な場合、闘争では不利な体の小さなオスは移動力を増すなどして配偶者の獲得を目指すことがある。交尾の際に働く、オス間の競争という選択と、メスによる交尾相手の選り好みという選択をまとめたものを性選択という。メスによる交尾相手の選り好みは、オスの特定の形質の遺伝子を選択するとともに、メスが好む遺伝子を介してオスの形質を進化させることがある(ランナウェイ説)。性選択は、自然選択で説明できない性的二型の進化を考える上で重要な概念である。
キーワード
① 配偶システム ② スニーカー ③ 戦略と戦術 ④ 性的二型 ⑤ 性選択
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
8
個体間の相互作用と同種・異種の個体群①
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第8回では、個体間の相互作用と同種・異種の個体群として個体群のふるまいについて学ぶ。
①テキスト(p.129-139)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.129-139)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.129-139)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 前回の振り返り ② 個体群の成長 ③ 密度効果とアリー効果
細目レベル
① 第7回では、配偶システムや性選択について学んだ。オスやメスが生涯にそれぞれ何頭の異性とつがい関係をもつかについての分類を配偶システムという。オス1個体がメス1個体とつがい関係をもつものを一夫一妻、オス1個体が複数のメスとつがい関係をもつものを一夫多妻、オス複数個体がメス1個体とつがい関係をもつものを一妻多夫、オス複数個体がメス複数個体とつがい関係をもつものを乱婚という。配偶相手の獲得の際には、オス間の競争が生じたり、メスの選り好みが生じたりする。交尾の際に働く、オス間の競争という選択と、メスによる交尾相手の選り好みという選択をまとめたものを性選択という。性選択は、自然選択で説明できない性的二型の進化を考える上で重要な概念である。
② 第7回までは、個体や遺伝子のふるまいに注目することが多かったが、ここでは個体群のふるまいに注目する。生態学の一面に、個体群の動態を扱う個体群生態学と呼ばれる分野がある。生態学の有名な教科書を書いたクレブスは「生物の数と分布を決める相互作用」を生態学の重要な課題として位置付けている。古くから、動物の個体数については関心がもたれており、日本の和算の中にも「ねずみ算」が登場する。ねずみ算を行うと、繁殖して個体が増えていくと、個体数が指数関数的に増えていくことを理解できる。また、一部の動物では、個体数が周期的に変動することが知られており、この変動パターンの理解も個体群生態学の対象となる。こうした個体数のふるまいの理解は、動物を保護・管理していくうえでも重要である。
③ 「ねずみ算」でみたように、個体数は指数関数的に増加する。しかしながら、地球上には動物が足の踏み場もないほどあふれかえっていることはない。個体が増え、密度(ある一定の面積の個体数)が増加すると、密度効果と呼ばれる個体数の増加に負の影響が表れる。密度効果は、密度が高まったことにより餌資源をめぐる個体間の競争が深刻化するなどして繁殖力や生存率が低下することによってあらわれる。実際に、シジュウカラでは、ある地域の繁殖個体数と1個体あたりの巣立ち雛数の間に負の関係があることが知られている。一方で、密度が低いときには、個体数の増加にアリー効果と呼ばれる影響が生じることも知られている。アリー効果は、密度効果が個体数の増加にマイナスにかかるのと対照に、個体数の増加が密度に比例することをいう。言い換えれば、個体数が減っている場合に、個体数の増加率が低下していくものであり、希少種の保護において、アリー効果の理解は重要である。
キーワード
① ねずみ算 ② 個体数変動 ③ 密度効果 ④ アリー効果 ⑤ 生命表
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
9
個体間の相互作用と同種・異種の個体群②
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第9回では、種間競争とニッチの概念を学ぶ。
①テキスト(p.139-167)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.139-167)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.139-167)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 前回の振り返り ② 種間競争と競争排除則 ③ ニッチ
細目レベル
① 第8回では、個体群の成長、密度効果、アリー効果について学んだ。生態学の一面に、個体群の動態を扱う個体群生態学と呼ばれる分野がある。古くから、動物の個体数については関心がもたれており、日本の和算の中にも「ねずみ算」が登場する。ねずみ算を行うと、繁殖して個体が増えていくと、個体数が指数関数的に増えていくことを理解できる。個体が増え、密度(ある一定の面積の個体数)が増加すると、密度効果と呼ばれる個体数の増加に負の影響が表れる。密度効果は、密度が高まったことにより餌資源をめぐる個体間の競争が深刻化するなどして繁殖力や生存率が低下することによってあらわれる。アリー効果は、密度効果が個体数の増加にマイナスにかかるのと対照に、個体数の増加が密度にプラスに比例することをいう。言い換えれば、個体数が減っている場合に個体数の増加率が低下していくということであり、希少種の保護において、アリー効果の理解は重要である。
② 種間競争は異なる種の間で起こる競争のことである。競争にはある個体が資源を消費することで別の個体の取り分が少なくなるような消費型競争や、個体が直接的に干渉的作用をする干渉型競争がある。種間競争の個体群への影響を調べるために2種のゾウリムシをフラスコで培養すると、同じ種類の資源を利用する2種の間では片方の絶滅することが観察される。このような実験結果から、同一のニッチ(細目レベル③参照)を共有する2種は、その平衡状態において長くは共存できないとされている(ガウゼの法則)。個体群動態モデルを用いることで、種間競争の強さと環境収容力の値によって、2種が共存するか片方が排除されるかを予想することができる。
③ 生態学において「ニッチ」とは、それぞれの種が必要とする資源の要素と生存可能な条件の組み合わせのことである。もともと「ニッチ」とは隙間や壁のくぼみのことを言い、生態学におけるニッチは、資源(餌など)や環境条件(気温など)で作られる空間の中にある、生物が生息できる範囲のことを指している。ニッチの重複は種間競争を引き起こすため、自然界の中では、種ごとに少しずつ異なる資源を使うことが観察される。このような、2種間の相互作用の結果、実現ニッチが重ならないように分かれていることをニッチ分化という。また、ある種のニッチは常に固定的なものではなく、別の種の存在によって変わることがある。ある種が単独で存在するときのニッチを基本ニッチとよび、他種との競争によって変形させられたニッチのことを実現ニッチとよぶ。種間競争によって、実現ニッチが基本ニッチより狭くなる。
キーワード
① 種間競争 ② 競争排除則 ③ 基本ニッチ ④ 実現ニッチ ⑤ 形質置換
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
10
まとめ②
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第10回では、第6回から第9回の内容をまとめ、動物の個体の行動や個体間の相互作用や、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係を整理する。
①テキスト(p.107-167)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.107-167)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.107-167)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 前回の振り返り ② 動物の行動と社会 ③ 個体間の相互作用と同種・異種の個体群
細目レベル
① 第9回では、種間競争やニッチの概念を学んだ。種間競争は異なる種の間で起こる競争のことである。競争にはある個体が資源を消費することで別の個体の取り分が少なくなるような消費型競争や、個体が直接的に干渉的作用をする干渉型競争がある。同一のニッチを共有する2種は、その平衡状態において長くは共存できないとされている(ガウゼの法則)。生態学において「ニッチ」とは、それぞれの種が必要とする資源の要素と生存可能な条件の組み合わせのことである。2種間の相互作用の結果、実現ニッチが重ならないように分かれていることをニッチ分化という。ある種が単独で存在するときのニッチを基本ニッチとよび、他種との競争によって変形させられたニッチのことを実現ニッチとよぶ。種間競争によって、実現ニッチが基本ニッチより狭くなる。
② 第6回から第7回では、動物の行動と社会について学んだ。適応度は、繁殖成功の指標であり、ある遺伝子型の個体が、1個体あたり次世代に残す子の数の平均である。適応度の上昇を利益、低下をコストと呼び、適応度が高いことを有利、低いことを不利という。生息地のまとまりをパッチといい、パッチごとにパッチの質(餌資源の量や捕食者の量など動物にとっての生息のしやすさ)が異なる。パッチの内部やその周囲では、動物はある程度の範囲の中で動き回っていることがあり、この動き回る範囲を行動圏と呼ぶ。一方、他の個体の侵入から防衛されている空間は、なわばりと呼ばれる。なわばりを防衛にはコストがかかるため、防衛によって得られる利益と防衛のコストの間で、なわばりをもつことと有利かどうかが決まる。オスやメスが生涯にそれぞれ何頭の異性とつがい関係をもつかについての分類を配偶システムという。オス1個体がメス1個体とつがい関係をもつものを一夫一妻、オス1個体が複数のメスとつがい関係をもつものを一夫多妻、オス複数個体がメス1個体とつがい関係をもつものを一妻多夫、オス複数個体がメス複数個体とつがい関係をもつものを乱婚という。交尾の際に働く、オス間の競争という選択と、メスによる交尾相手の選り好みという選択をまとめたものを性選択という。
③ 第8回から第9回では、個体群動態、種間競争、ニッチの概念を学んだ。個体が増え、密度(ある一定の面積の個体数)が増加すると、密度効果と呼ばれる個体数の増加に負の影響が表れる。密度効果は、密度が高まったことにより餌資源をめぐる個体間の競争が深刻化するなどして繁殖力や生存率が低下することによってあらわれる。アリー効果は、密度効果が個体数の増加にマイナスにかかるのと対照に、個体数の増加が密度にプラスに比例することをいう。言い換えれば、個体数が減っている場合に個体数の増加率が低下していくということであり、希少種の保護において、アリー効果の理解は重要である。種間競争は異なる種の間で起こる競争のことである。競争にはある個体が資源を消費することで別の個体の取り分が少なくなるような消費型競争や、個体が直接的に干渉的作用をする干渉型競争がある。同一のニッチを共有する2種は、その平衡状態において長くは共存できないとされている(ガウゼの法則)。生態学において「ニッチ」とは、それぞれの種が必要とする資源の要素と生存可能な条件の組み合わせのことである。ある種が単独で存在するときのニッチを基本ニッチとよび、他種との競争によって変形させられたニッチのことを実現ニッチとよぶ。
キーワード
① 適応度 ② 性選択 ③ 個体群動態 ④ 種間競争 ⑤ ニッチ
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
11
生物群集とその分布①
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第11回では、生物群集内で生じる種間相互作用について学ぶ。
①テキスト(p.167-185)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.167-185)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.167-185)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 前回の振り返り ② 種間相互作用 ③ 種間相互作用を介した間接効果
細目レベル
① 第10回では、第6回から第9回までのまとめを行い、動物の個体の行動や個体間の相互作用や、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係を振り返った。適応度は、繁殖成功の指標であり、ある遺伝子型の個体が、1個体あたり次世代に残す子の数の平均である。適応度の上昇を利益、低下をコストと呼び、適応度が高いことを有利、低いことを不利という。交尾の際に働く、オス間の競争という選択と、メスによる交尾相手の選り好みという選択をまとめたものを性選択という。個体が増え、密度(ある一定の面積の個体数)が増加すると、密度効果と呼ばれる個体数の増加に負の影響が表れる。密度効果は、密度が高まったことにより餌資源をめぐる個体間の競争が深刻化するなどして繁殖力や生存率が低下することによってあらわれる。アリー効果は、密度効果が個体数の増加にマイナスにかかるのと対照に、個体数の増加が密度にプラスに比例することをいう。
② 同じ場所に生息する動物種間の間には、様々な関係が見られる。こうした種間相互作用には、捕食関係、競争関係、寄生関係、共生関係がある。寄生とは、他の生物の組織や細胞をすみ場所にし、その生物の栄養分を奪ったりDNAの複製機構を拝借して子孫を増やすことである。共生とは、お互いの種が正の影響を及ぼし合う関係である。共生には、種間の関係によって、栄養共生、消化共生、防衛共生、送粉共生などの区分がある。このような種間相互作用を介して、生物群集のすべての構成種が、多種の生物とさまざまな関係をもちながら個体を維持し個体群を存続させ、多種と共存しているときの種間関係のことを種間相互作用ネットワークと呼ぶ。食物網は、種間相互作用のうち、捕食関係を抜き出したものである。
③ 種間相互作用のうち、捕食や種内・種間競争、共生などを直接相互作用、第三者を介して作用するものを間接相互作用という。例えば、ナナホシテントウはアブラムシを食べ、アブラムシはソラマメを食べるという関係があるとする。これらの捕食関係は、直接相互作用である。一方で、ナナホシテントウがアブラムシを食べたことによって、アブラムシに食べられたソラマメが増えたとすれば、ナナホシテントウによってソラマメへの間接相互作用があったと言える。種間相互作用ネットワークを通じて、2種の植食者とその捕食者の関係において、2種の植食者間で餌をめぐる競争がなくても、捕食者の増減を介して2種の植食者間であたかも競争が生じて植食者の数が減少するように見える「見かけの競争」や、ある栄養段階の捕食関係が他の栄養段階の捕食者につぎつぎと影響をおよぼす「カスケード効果」などが生じる。行動や生活様式による環境の物理的改変を通じ、他種の生物の生息場所などを作る生物(生態系エンジニア)も環境改変を通じて、他の生物への間接相互作用を与えていると言えよう。
キーワード
① 寄生 ② 共生 ③ 見かけの競争 ④ 生態系エンジニア ⑤ カスケード効果
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
12
生物群集とその分布②
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第12回では、種の多様性の意味や、多種共存のメカニズムを学ぶ。
①テキスト(p.185-209)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.185-209)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.185-209)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 前回の振り返り ② 種の多様性 ③ 多種共存の機構
細目レベル
① 第11回では、種間相互作用やその間接効果について学んだ。種間相互作用には、捕食関係、競争関係、寄生関係、共生関係がある。このような種間相互作用を介して、生物群集のすべての構成種が、多種の生物とさまざまな関係をもちながら個体を維持し個体群を存続させ、多種と共存しているときの種間関係のことを種間相互作用ネットワークと呼ぶ。種間相互作用のうち、捕食や種内・種間競争、共生などを直接相互作用、第三者を介して作用するものを間接相互作用という。種間相互作用ネットワークを通じて、2種の植食者とその捕食者の関係において、2種の植食者間で餌をめぐる競争がなくても、捕食者の増減を介して2種の植食者間であたかも競争が生じて植食者の数が減少するように見える「見かけの競争」や、ある栄養段階の捕食関係が他の栄養段階の捕食者につぎつぎと影響をおよぼす「カスケード効果」などが生じる。
② いろいろな動物・植物や菌類、バクテリアなどが生息・生育しているということを種多様性という。多様性は種数と均等度という二つの異なる要素からなる概念である。例えば、同じ面積の中に1種だけの動物がいる場所と、3種いる場所では、後者の方が種数の点で多様である。また、同じ面積の調査地に同じように3種類いても、A種が4個体、B種が1個体、C種が1個体という場所と、A種が2個体、B種が2個体、C種が2個体いる場所では、均等度の点で多様である。多様性は、生息地内に区画を設けると、小区画内の種多様性であるα多様性、全体の種多様性であるγ多様性、α多様性とγ多様性の違いであるβ多様性に区別して表現することができる。他にも、グラフ化して相対優占度曲線を示す方法や、種々の多様性指数を計算して多様性を表現することができる。
③ 第9回の細目レベル②で説明した、同一のニッチを共有する2種は、その平衡状態において長くは共存できないとされるガウゼの法則(競争的排除則)が成り立つなら、自然界にはニッチの異なるごく少ない種だけしか生息しないだろう。しかしながら、自然界では多種が共存していることが観察できる。ではなぜ共存できるのだろうか。共存できるかどうかを、資源とニッチの類似度の2つの観点から検討してみる。エサなどの資源が豊富にあり、ニッチが異なる場合、2種は問題なく共存するだろう。資源が需要に対して豊富にあり、ニッチが類似している場合には、平衡状態にはないときには同一ニッチを共有しても長く共存できる「非平衡な共存」の状態にあると考えられる。一方で、資源量と需要が同程度であり、ニッチが類似している場合に共存しているなら、「競争平衡」にある可能性がある。資源量と需要が同程度であり、ニッチが違うなら、ニッチの重複が小さいほど種間競争が穏やかになるため、その重複が一定水準以下である場合には共存が可能になるという「ニッチ類似限界説」で説明できるだろう。こうしたもののほかにも、キーストーン捕食や中規模撹乱によって競争する場合などがある。
キーワード
① 種多様性 ② ニッチ類似限界説 ③ 非平衡な共存 ④ キーストーン捕食者 ⑤ 中規模攪乱説
コマの展開方法
社会人講師
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ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
13
生態系の構造と機能
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第13回では、生態系全体の構造と機能を学ぶ。
①テキスト(p.210-226)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.210-226)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.210-226)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 前回の振り返り ② 生態系の構造 ③ 生態系の機能
細目レベル
① 第12回では、多様性や多種の共存の機構について学んだ。いろいろな動物・植物や菌類、バクテリアなどが生息・生育しているということを種多様性という。多様性は種数と均等度という二つの異なる要素からなる概念である。多様性は、生息地内に区画を設けると、小区画内の種多様性であるα多様性、全体の種多様性であるγ多様性、α多様性とγ多様性の違いであるβ多様性に区別して表現することができる。ガウゼの法則(競争的排除則)が成り立つなら、自然界にはニッチの異なるごく少ない種だけしか生息しないだろう。しかしながら、自然界では多種が共存していることが観察できる。平衡状態にはないときには同一ニッチを共有しても長く共存できる「非平衡な共存」が生じている可能性がある。もし、資源量と需要が同程度であり、ニッチが類似している場合には、「競争平衡」にある可能性がある。資源量と需要が同程度でありニッチが違うなら、ニッチの重複が小さいほど種間競争が穏やかになるため、その重複が一定水準以下である場合には共存が可能になるという「ニッチ類似限界説」で説明できるだろう。
② 生態系は生物群集に物理化学環境を含めた系である。生態系の「系」は、系統(タイプ)の意味の「系」ではなく、システムの意味の「系」である。システムの意味の系は、循環器系や神経系などと同じように、各所が繋がっている状態である。例えば海洋の生態系では、日光の光エネルギーや、海中の栄養塩類が植物プランクトンの光合成に利用され、植物プランクトンが生育する。植物プランクトンを動物プランクトンが食べ、動物プランクトンを魚類などが食べ、と高次の捕食者へとエネルギーや元素が受け渡されていく。この間、どの段階においても死体や排せつ物が生じる。これらは細菌類などによって分解され、植物プランクトンが利用できる栄養塩類となる。このように、生態系の中で、エネルギーや元素などが生物を介しながら繋がっている。生態系の構造を表す際に、光合成を行う生物を生産者、生産者を食べる動物を一次消費者、一次それ以上の生物を高次消費者などと呼ぶことがる。
③ それぞれの生態系は機能を持っている。生態系の機能には、1)生態系内での過程、2)生態系の特定条件下での応答、3)生態系内の役割、4)生態系サービスの概念などが含まれているが、ここでは、4)生態系サービスの概念を中心に説明する。生態系機能は、エネルギーの利用効率、物質のリサイクル効率、環境変動に対する緩衝作用などから評価されるものである。生態系を箱に例えると、箱に何かを入れたら別のものに変わって出てくる。このような場合、生態系の機能によって、入れたものが別のものに変わったと考えることができる。例えば、光、水、二酸化炭素などを入れると、有機物や酸素などが出てくるようなものや、窒素ガスが植物に利用可能な形の窒素化合物になることを考えることができる。生態系の機能は、生物群集のタイプ(植生など)や生物群集の多様性によって変化すると考えられる事例がある。海から川を上ったサケがクマによって地上に持ち上げられる例のように、動物は引力など物理法則と異なる物質の動きに貢献することがある。
キーワード
① 生食連鎖 ② 腐食連鎖 ③ 分解者 ④ 生態系機能 ⑤ 他生的流入
コマの展開方法
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ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
14
まとめ③
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第14回では、第11回から第13回で学んだ生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を整理する。
①テキスト(p.167-226)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.167-226)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.167-226)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 前回の振り返り ② 生物群集内の種間相互作用と多種共存 ③ 生態系の機能と構造
細目レベル
① 第13回では、生態系の構造と機能を学んだ。生態系は生物群集に物理化学環境を含めた系である。海洋の生態系では、日光の光エネルギーや、海中の栄養塩類が植物プランクトンの光合成に利用され、植物プランクトンが生育する。植物プランクトンを動物プランクトンが食べ、動物プランクトンを魚類などが食べ、と高次の捕食者へとエネルギーや元素が受け渡されていく。生態系機能は、エネルギーの利用効率、物質のリサイクル効率、環境変動に対する緩衝作用などから評価されるものである。生物群集のタイプ(植生など)や生物群集の多様性によって変化すると考えられる事例がある。海から川を上ったサケがクマによって地上に持ち上げられる例のように、動物は引力など物理法則と異なる物質の動きに貢献することがある。
② 第11回から第12回では、種間相互作用と多種共存について学んだ。種間相互作用には、捕食関係、競争関係、寄生関係、共生関係がある。このような種間相互作用を介して、生物群集のすべての構成種が、多種の生物とさまざまな関係をもちながら個体を維持し個体群を存続させ、多種と共存しているときの種間関係のことを種間相互作用ネットワークと呼ぶ。種間相互作用のうち、捕食や種内・種間競争、共生などを直接相互作用、第三者を介して作用するものを間接相互作用という。多様性は種数と均等度という二つの異なる要素からなる概念である。多様性は、生息地内に区画を設けると、小区画内の種多様性であるα多様性、全体の種多様性であるγ多様性、α多様性とγ多様性の違いであるβ多様性に区別して表現することができる。ガウゼの法則(競争的排除則)が成り立つなら、自然界にはニッチの異なるごく少ない種だけしか生息しないだろう。しかしながら、自然界では多種が共存していることが観察できる。資源の供給と需要のバランスで平衡状態にあるかどうかや、ニッチが重複しているかどうかによって、異なる共存の機構が考えられる。
③ 第13回では、生態系の機能と構造を学んだ。生態系は生物群集に物理化学環境を含めた系である。海洋の生態系では、日光の光エネルギーや、海中の栄養塩類が植物プランクトンの光合成に利用され、植物プランクトンが生育する。植物プランクトンを動物プランクトンが食べ、動物プランクトンを魚類などが食べ、と高次の捕食者へとエネルギーや元素が受け渡されていく。生態系機能は、エネルギーの利用効率、物質のリサイクル効率、環境変動に対する緩衝作用などから評価されるものである。生物群集のタイプ(植生など)や生物群集の多様性によって変化すると考えられる事例がある。海から川を上ったサケがクマによって地上に持ち上げられる例のように、動物は引力など物理法則と異なる物質の動きに貢献することがある。
キーワード
① 種間相互作用 ② 共存の機構 ③ 生態系の構造 ④ 景観 ⑤ 共存
コマの展開方法
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PowerPoint・Keynote
教科書
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コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
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本講義のまとめ
科目の中での位置付け
本科目では、動物に関する内容や事例に焦点を当てながら、生態学の多様な領域を遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系の順で学ぶ。具体的には、第1回では、生態学の学問としての位置づけを紹介し、生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回では、生態学の理解に必要な生物学の知識を復習しながら、生物に共通の仕組みと多様性について学ぶ。第3回から第5回では、自然選択による生物の形質や生活史の進化について学ぶ。第6回から第7回では、動物の個体の行動や個体間の相互作用を適応度の観点から概観するとともに性選択の概念について学ぶ。第8回から第10回では、個体群のふるまいや、異種の個体群の関係について学ぶ。第11回から第14回では、生物群集の内部での種間相互作用や共存の機構、生態系の構造や機能を学ぶ。第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。このような科目構成の中で、第15回では、これまでの回の復習を通して生態学全体を概観する。
①テキスト(p.1-226)、配布資料、視聴覚資料
②テキスト(p.1-226)、配布資料、視聴覚資料
③テキスト(p.1-226)、配布資料、視聴覚資料
コマ主題細目
① 生態学の扱う対象とその階層性 ② 生態学の応用 ③ 日常生活と生態学
細目レベル
① 生態学とは、“生物の生活の法則をその環境との関係で解き明かす科学”である。生態学はいくつかの定義があり、生物の分布および存在量とそれらを決定する相互作用についての科学的研究などともいわれる。生態学は、様々な生物を対象として扱い、その類似性や多様性を明らかにしている。本科目では、遺伝子、個体、個体群、生物群集、生態系と、扱う空間スケールをあげながら回を重ねてきた。これらの内容は、相互に影響しあっている。例えば、ある個体群の個体の適応度はその個体のもつ遺伝子によって影響されるが、個体の適応度によって次世代の遺伝子が決まる。個々の個体の生存や死亡によって、個体群成長が決まるが、個体数が増えて環境収容力に近づくと、密度効果として個々の個体の生存や死亡に影響する。生態学は、このような様々な視点を持って、生物の生活の法則を環境との関係で解き明かす学問である。
② 生物の生活の法則と環境との関係の学問である生態学の考え方は、生き物の保全(保護・管理)に活かすことができる。例えば、第8回や第9回で扱った個体群動態の考え方は、保護や管理にとって重要な個体数を推定したり、個体群に影響を与えている要因を特定したり、個体群の将来予測をするのに役立つだろう。また、第11回で扱ったような、種間相互作用ネットワークによる影響を理解していると、既存の生態系に外来種が入った場合にどのような影響が出るか予想することができるかもしれない。さらには、自然選択による進化の考え方を理解していれば、在来種と外来種の違いについて思いを巡らせることができる。生物の保全には、社会学などによる人間社会の理解も必要であるが、生態学などによる生物側の理解なしには、科学にもとづく保全活動はできないと考える。
③ 生態学は生物の生活の法則と環境の関係を解き明かす学問であるが、私の個人的な感覚としては、生態学を日常生活のさまざまなことに活かすことができる。生態学の語源(ecology)と経済学(economy)の語源はともにギリシャ語で家や家計を表す「oikos」であり、生態学を自然の中での経済学(economy of nature)などと定義する場合もある。このような流れがあるためか、生態学での餌などの資源を、人間社会の中の食糧やお金に換えてみると、生態学の競争で見てきたようなことが、個々人の間や企業の間の競争のように思える。生物が小さな差異から自然選択によって進化しニッチを分けていく過程と、他の人よりも少しだけ得意だったことを伸ばして仕事に就く過程とは、個体の選択による進化か、個体による学習かという点でメカニズムは違うが、共通する部分があるであろう。他の多くの学問と同様に、生態学は人生を豊かにするものである。
キーワード
① 生態学 ② 階層性 ③ 外来種 ④ 学問 ⑤ 類推
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【このコマを受けるにあたっての予習課題】:右にある教材・教具に示したテキスト(日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を再度テキストで確認する。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。
履修判定指標
履修指標
履修指標の水準
キーワード
配点
関連回
生態学の理解
生態学の定義や扱う範囲やその階層性、種の多様性を生みだした生物の共通性を理解していることをみる。例えば、生態学が扱う生物の階層性(「遺伝子」、「個体」、「個体群」、「生物群集」、「生態系」)について、その上下関係を含めて意味を理解し、用語の意味を適切に記述できる。生物の多様性を創出した生物の3つの共通性(「自己境界性」、「自己維持性」、「自己複製性」)について意味を理解し、用語の意味を適切に記述できる。「種多様性」や「系統樹」について意味を理解し、用語の意味を適切に記述できる。
生態学、階層性、共通性、多様性
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全て
動物の生態と進化の理解
生態学でいう自然選択による進化の意味や、個体群動態や生活史について理解できている。例えば、進化の理解に重要な、「進化」、「遺伝子頻度」、「適応度」、「自然選択」について理解し、用語の意味を適切に記述できる。「小進化」や「遺伝的浮動」といった遺伝子頻度に関する言葉について理解し、用語の意味を適切に記述できる。動物の「生活史」や「形質」の理解に重要な「トレードオフ」、「r-k戦略」、「表現型可塑性」について理解し、用語の意味を適切に記述できる。個体群動態に影響する「内的自然増加率」「環境収容力」について理解し、用語の意味を適切に記述できる。
進化、自然選択、適応度
20
2,3,4,5
動物の行動と社会の理解
動物の行動を進化的観点から理解できていることと、自然界で生じるもうひとつの進化の力となっている性選択について理解できていることをみる。例えば、動物の空間分布に関連する、「資源」、「パッチ」、「理想自由分布」、「行動圏」、「なわばり」について理解し、用語の意味を適切に記述できる。また、動物の性にかかわる側面として、「配偶システム」、「スニーカー」、「戦略と戦術」、「性的二型」、「性選択」について理解し、用語の意味を適切に記述できる。
行動、性選択、配偶システム
20
6,7,10
個体群と種間競争の理解
動物の個体群動態に関する基本的な用語が理解できていることと、ニッチの概念を理解し、種間競争について理解できていることをみる。例えば、動物の個体群に関する、「ねずみ算」、「個体数変動」、「密度効果」、「アリー効果」、「生命表」について理解し、用語の意味を適切に記述できる。また、種間関係を理解するうえで重要な、「ニッチ」、「基本ニッチ」、「実現ニッチ」、「種間競争」、「競争排除則」、「形質置換」について理解し、用語の意味を適切に記述できる。
個体群、密度効果、アリー効果、種間競争
20
8,9,10
生物群集と生態系の構造と機能の理解
生物群集の中で生じる種間相互作用や間接効果、種多様性の評価や多種共存の機構、生態系の構造や機能についての理解ができていることをみる。例えば、生物群集内での種間相互作用である「捕食」、「競争」、「寄生」、「共生」について理解し、用語の意味を適切に記述できる。生物群集内の間接効果に関係する、「見かけの競争」、「カスケード効果」、「生態系エンジニアリング」について理解し、用語の意味を適切に記述できる。種多様性や多種共存の機構に関する、「種多様性」、「ニッチ類似限界説」、「非平衡な共存」、「キーストーン捕食」、「中規模攪乱説」について理解し、用語の意味を適切に記述できる。生態系の構造と機能に関する、「生食連鎖」、「腐食連鎖」、「分解者」、「生態系機能」、「他生的流入」について理解し、用語の意味を適切に記述できる。
種間相互作用、種の多様性、多種共存の機構、生態系機能
20
11,12,13,14
評価方法
試験による。
評価基準
評語
学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・
S (100~90点)
学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・
A (89~80点)
学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・
B (79~70点)
学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・
C (69~60点)
学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・
D (60点未満)
教科書
日本生態学会編『生態学入門(第2版)』東京化学同人, 3,024円.
参考文献
宮下『生物多様性のしくみを解く』工作舎, 2,160円. 酒井ほか『生き物の進化ゲーム(大改訂版)』共立出版, 2,808円. 土肥ほか『哺乳類の生態学』東京大学出版会, 4,104円. 宮下・野田『群集生態学』東京大学出版会, 3,456円.
実験・実習・教材費
なし