区分
(生)フィールド生態科目 フィールド生態共通科目 (環)フィールド生態科目 (心・犯)学部共通科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
(心)専門的知識と実践的能力
(心)分析力と理解力
(心)地域貢献性
(環)専門性
(環)理解力
(環)実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
(心)課題分析力
(心)課題解決力
(心)課題対応力
(環)専門知識
(環)教養知識
(環)思考力
(環)実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
個人・社会・自然が直面する課題に対して専門的な理解を深めると共に、学際的な柔軟性を有し、実践的な能力を有する。グローバルな視野を持ち、国際社会に貢献できる力を有する。
科目の目的
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうためには、環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める。その元素に係る環境問題として認識されている諸事例についてその要因、現象、対応策を理解する。これらの学ぶ知識を基にして自然環境と生物に配慮した人間活動について理解を深めることを目指す。
到達目標
主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策について理解する。
科目の概要
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうためには、環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、その解説を通して、生態系を把握するには物質の動きの理解無しには成し得ないことを学ぶ。また、主要な元素を例に挙げ、その地球上での動きについて、存在形態を確認しながら環境中の物質循環に対する理解を深めると同時に、その元素に係る環境問題として認識されている諸事例についてその要因、現象、対応策を理解する。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動き、第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。
科目のキーワード
生物の活動、物質の動き、微生物の働き、養分、環境問題
授業の展開方法
本科目は配布プリントとスライドを用いて授業をおこなう。配布プリントは、スライドに基づいた資料であり、手元とスライドを相互に確認をしながら授業を受講することとなる。事前にコマシラバスを参照し、忘れている単語などを確認しておくようにする。担当教員の解説を聞きながら配布プリントへ書き込みを行うことで配布資料が自分だけの教科書となるようにする。計算が必要な部分では途中の式も記載するスペースを設け、見直した時にも自分が注意すべき部分がわかるようにすることで講義後の復習を行う。
オフィス・アワー
【火曜日】1時限目(前期のみ)、2時限目、3・4時限目(後期のみ)、【水曜日】1時限目、【金曜日】2時限目、昼休み・3・4時限目(前期のみ)
科目コード
ENS214
学年・期
1年・後期
科目名
生態系における物質循環
単位数
2
授業形態
講義
必修・選択
選択
学習時間
【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目
生態系の機能と社会
展開科目
環境化学の基礎、流域環境学、生態系機能評価学
関連資格
なし
担当教員名
神本祐樹
回
主題
コマシラバス項目
内容
教材・教具
1
土壌環境や湖沼・海域などの水環境を中心とした環境問題
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第1回は、導入として現在から江戸時代までの環境問題を学ぶ。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 環境省(2020)令和3年度版環境白書 循環型社会白書/生物多様性白書、118-122頁
コマ主題細目② 環境省(2020)、環境白 書・循環型社会白書・生物多様性白書、289-294頁
コマ主題細目③ 北尾高嶺他(1996)、浄化槽の基礎知識、日本環境整備教育センター、4362円+税、46-49頁
コマ主題細目
① 地球規模での環境問題 ② 人間の生産活動による公害問題 ③ 循環型社会の歴史
細目レベル
① 地球規模での環境問題は様々なものがあるが、気候変動は世界の全ての場所で影響を与えている。気候変動は二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、代替フロン類等の温室効果ガスの大量排出の主たる要因とされている。気候変動によって気温上昇が生じることで、様々な海の生き物が生息する珊瑚礁にも影響が生じ、珊瑚礁の生態系にも影響が生じることが予測されている。また、気候変動によって陸域の生物多様性や生態系にも何らかの影響を及ぼすことが示唆されている。例えば、光合成で二酸化炭素を消費する植物も大気中の二酸化炭素濃度が高くなると生育不良を起こす場合もある。気候変動が陸と海ともに生態系に影響を及ぼしていることは否定ができず、我々の生活が気候変動を引き起こす要因になっていることも否定できない。そのため、我々の生活から気候変動を引き起こす要因を減らし、気候変動を拡大させない行動は必要である。
② 細目レベル①にて人間の生産活動によって温室効果ガスが排出され、地球規模での環境問題が生じていることを説明した。これまで生じてきた環境問題の多くは地域規模で生じるものがほとんどであった。例えば、高度成長期に水銀による健康被害が生じた水俣病は、工場から海域に排出された水銀が水俣湾内の生態系に取り込まれ、汚染された魚介類を地域住民が摂食することで生じた。その影響が生じた範囲は水俣湾の地域に限定されているが、汚染された土壌や水環境の浄化には長い期間が必要であり、水俣湾では漁業が再開できるまでに約40年が必要であった。40年の間、水銀が蓄積している底部のヘドロの浚渫や体内に水銀を蓄積させた魚類の回収などを行い、多くの手間と費用をかけて地域規模の環境汚染を浄化してきた。また、このような経験から、水銀による環境汚染から人の健康と環境の保護を目的として、2013年10月に水銀に関する水俣条約(水俣条約)を制定した。水俣条約によって、水銀の取り扱いに対して多く規制をかけ、水俣病が別の地域で生じないように規制を行っている。
③ 江戸時代は高度な循環型社会が構築されていたといわれ、江戸前といわれた東京湾や大阪湾は水産資源の宝庫と伝えられている。同時期の西洋の都市が水環境の悪化に悩まされていたこととは大きく異なっている。これは、当時の水環境を汚染する要因となるし尿が肥料として余すことなく農地に運ばれて再利用されていたことによる。現在と同じ排水処理方法が発明されたのが20世紀に入ってからであり、昔の下水道は排水を処理せずに河川や海域に放流する水路であった。そのため、先に述べたように西洋の都市の水環境の悪化に対して当時の下水道は防止策とならなかった。化学肥料が入手可能な今日ではし尿の肥料としての価値はほぼなく、戦後にし尿の農地への投入が禁止されると処理に困ったし尿は海域に投入されて富栄養化などの一因にもなった。
キーワード
① 気候変動 ② 温室効果ガス ③ 水俣病 ④ 水俣条約 ⑤ 循環型社会
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は本科目の導入として土壌環境や湖沼・海域などの水環境を中心とした環境問題について、地球規模での環境問題と人間の生産活動による公害問題、循環型社会の歴史を取り上げた。キーワードであげた気候変動、温室効果ガス、水俣病、水俣条約、し尿処理について例をあげて説明できる様にしておくとよい。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は生物が活動・移動するために必要なエネルギー物質についての講義を行うため、その内容について化学や生物の教科書やインターネットなどで確認することとする。
2
生物が活動・移動するために必要なエネルギーと物質
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第2回は、導入として土壌や水環境の環境問題を学ぶ。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 齋藤勝裕(2017)、ステップアップ大学の総合化学、裳華房、2200円+税、121-128頁
コマ主題細目② 齋藤勝裕(2017)、ステップアップ大学の総合化学、裳華房、2200円+税、121-128頁
コマ主題細目③ 社団法人産業環境管理協会(2006)、新・公害防止の技術と法規2006、7000円+税、274-279頁
コマ主題細目
① 地球で使用できるエネルギー ② 地球上での熱移動と海流の関係 ③ 生物が関連するエネルギー物質
細目レベル
① 地球規模でのエネルギーの循環を考えるうえで太陽から得られるエネルギーは極めて大きく、地球の発するエネルギーと他の天体から得られる潮汐(海の満ち引き)のエネルギーと比較して4000倍程度といわれている。太陽から得られるエネルギーの全てが利用できるわけでなく、大部分が未利用の状態で反射される。日食は太陽エネルギーが遮断されている状態であり、日食時は太陽からのエネルギーの供給が制限される一方で地球からのエネルギーの宇宙空間への放出は継続されている。そのため、日食が生じている時間は気温が低下する。日食時の気温変化は体感できるほど大きく、太陽エネルギーが気球のエネルギー循環に対して大きな影響因子であると体感できる一つの現象である。
② 現時点での地球規模のエネルギー循環を考える場合には、太陽エネルギー以外に降雨や降雪によって山岳地に蓄積している水の位置エネルギーや化石燃料のエネルギーもエネルギー循環で大きな割合を占めている。山岳地に蓄積している水の位置エネルギーは水力発電によって電気エネルギーとして世界のいたるところで使用されているが、降雨や降雪は海域などの水分が太陽エネルギーによって蒸発して生じる。また、エネルギーは高いところ(暖かいところ)から低いところに移動する。この移動は風や海流の駆動動力となるとともに、その移動によって物質も移動させる。熱も物質も密度の高いところから低いところに移動する。お好み焼きで鰹節が揺れる姿を想像してほしい。鰹節が揺れるのは暖かいお好み焼きの熱が空気中に移動するときに空気が動くために生じるものである。お好み焼きの香りもこの熱の移動による空気に移動とともに広がっていく。このようにエネルギーの移動によって様々なものが移動している。
③ 多くの生物は物質からエネルギーを取出すが、これは生物による化学反応である。このときにエネルギー源として用いられる物質の多くは有機物である。有機物は主に炭素原子と水素原子から構成されるものである。我々の体を構成するタンパク質や脂質、ホルモンなどは有機物であり、糖質やメタノール、メタンなども有機物である。エネルギー源となる有機物を生物は合成するが、そのときには適切な環境条件が必要である。この場合の環境条件とは温度や酸素濃度、pH、原料となる物質やエネルギーである。例えば、天然ガスの主成分であるメタンを微生物によって生産するとき、温度は36から38℃もしくは53から55℃とし、水中に酸素は存在せず、pHは中性、メタンの原料かつ微生物のエネルギー源となる物質として酢酸などの有機酸が存在することが必要である。エネルギーや物質の移動は生物の反応を継続的に行うためにはエネルギーを適切に保持し、さらにエネルギーとなる物質の安定供給が必要となる。
キーワード
① 太陽エネルギー ② 反射 ③ 熱 ④ 代謝 ⑤ 環境条件
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は本科目の導入として生物が活動するためのエネルギーについて、地球で使用できるエネルギーと地球上での熱移動と海流の関係、生物が関連するエネルギー物質を取り上げた。キーワードであげた太陽エネルギー、反射、熱、代謝、難生物分解性物質について例をあげて説明できる様にしておくとよい。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は土壌環境や水環境における物質の動きと環境問題に関する元素についての講義を行うため、その内容について化学や生物の教科書やインターネットなどで確認することとする。
3
土壌環境や水環境における物質の動きと環境問題に関する元素
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第3回は、土壌環境や水環境における物質の動きと環境問題に関する元素を学ぶ。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 環境省(2013)平成25年度版環境白書、93-94頁
コマ主題細目② 環境省(2013)平成25年度版環境白書、94-95頁
コマ主題細目③ 石油天然ガス鉱物資源機構(2019)鉱物資源マテリアルフロー2018 リン(P)、1-18頁
コマ主題細目
① 二酸化炭素の動き ② 窒素の循環量変化とその問題 ③ リンの動き
細目レベル
① 二酸化炭素の排出削減は日本のみならず世界中の環境問題である。炭素循環は世界規模で考える方が適切である。炭素は大気中の二酸化炭素濃度の変化と地上の炭素の蓄積量、海洋の蓄積量から算出される。太古の高濃度の二酸化炭素は、植物や藻類の光合成によって同化され、化石燃料である石炭や石油などの状態で地中に堆積・保存さえている。炭素の大部分は大気でも植物の存在する地上でもなく、海域、特に中・深海部に存在している。その値は海の広大な体積と二酸化炭素の水への溶解度などから見積もられている。二酸化炭素の溶解度は温度上昇に伴って減少するため、地球温暖化による海水温の上昇が海域の中・深部を中心とした海域からの二酸化炭素の放出が加速し、炭素循環が変化する予想されている。
② 窒素は生物のタンパク質を構成する元素であり、生物の必須元素である。窒素は大気中に分子の形として78%含まれており、生物が活動する領域では反応しない(不活性)物質である。大気中の分子状態の窒素(N2)は、自然界では根粒菌による窒素固定作用によって大気と土壌環境、水環境を循環していた。20世紀初頭にフリッツ・ハーバーとカール・ボッシュによって発明されたハーバー・ボッシュ法によって、大気中の窒素を用いたアンモニア合成法が確立された。ハーバー・ボッシュ法によって大量の窒素肥料が生産され、水環境や土壌環境での窒素の循環量が2倍になった。窒素肥料は農作物の収量に大きく影響を与え人類の食に関する環境改善に貢献する一方で、富栄養化などの問題も引き起こしている。
③ リンは窒素と同様に生態必須元素であり、タンパク質や骨に含まれる。植物にとってもカリウムや窒素とならんで必須元素である。リンは金属などの他の資源と同様に地中から鉱石の形で得られる。日本のリン資源は枯渇しており、全量を輸入に依存している。しかし、リン鉱石は戦略物質として輸出を禁止する国もあり、世界的な需要増大から価格が増加している。日本では、リンの鉱石もしくはリン肥料などの化学製品として輸入する以外に食料としても多く輸入している。リンは人間や家畜から排泄物として排出され、排水処理施設で有機物を分解する微生物が自身の生体維持・増殖にそれらのリンが用いられる。リンは富栄養化の原因物質とされ、排水処理施設では排水中のリンだけでなく、増殖した微生物に含まれるリンも対象としてリン除去・回収が行われている。
キーワード
① 化石燃料 ② 光合成 ③ 二酸化炭素の溶解度 ④ 化学肥料 ⑤ 富栄養化
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は土壌環境や水環境における物質の動きと環境問題の概要を、炭素と窒素、リンを取り上げて説明した。キーワードであげた化石燃料、光合成、二酸化炭素の溶解度、化学肥料、富栄養化について例をあげて説明できる様にしておくとよい。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は日本の規模での土壌環境や水環境における物質の動きと環境問題についての講義を行うため、その内容について化学や生物の教科書やインターネットなどで確認することとする。
4
日本の規模での土壌環境や水環境における物質の動きと環境問題
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第4回は、日本の土壌環境や水環境における物質の動きと環境問題を学ぶ。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 農林水産省(2021)令和2年度 食料・農業・農村白書、61-68頁
コマ主題細目② 北尾高嶺他(1996)、浄化槽の基礎知識、日本環境整備教育センター、4362円+税、215-216頁
コマ主題細目③ 環境省(1998)平成10年度版環境白書、総説 第3章第1節3
コマ主題細目
① 炭素循環としての輸出入 ② 窒素による地下水汚染 ③ リンによる環境汚染とその対応
細目レベル
① 物質の動きを追うためには物質がどれだけ入って、どれだけ留まり、どれだけ出て行くかを把握する必要がある。炭素は有機物を構成する基本元素である。そのため、有機物がどのように日本に入ってくるかを考えることが日本規模での炭素の動きを把握する必要がある。日本に入る炭素には石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料以外に食品もある。小麦の約85%(重量ベースの自給率)は海外からであり、牛肉や豚肉、鶏肉、乳製品などの動物性の食品は50%未満である。また、家畜の飼料を加味すると、先に示した50%よりも動物性の食品の自給率は低下する。このように炭素という切り口で考えるだけでも地球規模での移動が生じ、輸入したものが廃棄されるときには適切な処理が現地で求められる。移動や処理にはエネルギーが必要でることにも注意する必要がある。
② 日本では窒素は肥料として大量に使用されている。施肥された窒素はその場に留まることはなく、降雨などで流入する水分によって移動する。移動する先は湖沼や河川などの他に地下水もある。つまり、降雨によって農地に流入した水は水平方向と垂直方向の両方に移動する。水平方向の移動によって窒素は河川や湖沼に移動し、その水環境にいる生物の養分として使用される。生物の養分となることから農地から流出した窒素成分の環境への負荷は、我々の生活排水や産業排水と比較して水環境に及ぼす影響は大きくない。垂直方向の移動によって地下水の汚染を引き起こすために小さくなく、一部の地域では地下水が飲料水として用いることができないくらいまで汚染されている。
③ 現在は日本でのリンの用途は工業と農業がほとんどであるが、過去には家庭用合成洗剤がリン汚染の原因とされ、次に示す様な官民あげての運動があった。1979年に滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例(琵琶湖条例)が制定されるまでは、家庭用合成洗剤(化学的に作った洗剤)にリンが含まれていた。洗剤に含まれるリンが琵琶湖の水質悪化の要因とされ、「何人も、県内(琵琶湖に流入しない河川の流域その他の地域で規則で定める区域を除く。以下この章において同じ。)において、りんを含む家庭用合成洗剤を使用してはならない。」と琵琶湖条例でリンを含んだ洗剤の使用を禁止した。琵琶湖条例によるりんを含む洗剤の使用が禁止された後の琵琶湖のリン濃度は減少した。
キーワード
① 化石燃料 ② 食品 ③ 施肥 ④ 合成洗剤 ⑤ 琵琶湖条例
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は日本の規模での土壌環境や水環境における物質の動きと環境問題を炭素と窒素、リンを取り上げて説明した。キーワードであげた化石燃料、食品、施肥、合成洗剤、琵琶湖条例について例をあげて説明できる様にしておくとよい。今回の内容は第7回目以降の基礎となるため、理解をしておくことが重要である。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は日本の規模での土壌環境や水環境における物質の動きと環境問題についての講義を行うため、その内容について化学や生物の教科書やインターネットなどで確認することとする。
5
世界規模での土壌環境や水環境における物質の動きと環境問題
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第5回は、世界規模の土壌環境や水環境における物質の動きと環境問題を学ぶ。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 環境省(2021)令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書、46-47頁
コマ主題細目② アジア水環境パートナーシップ(2018)アジア水環境管理アウトルック2018、39-134頁
コマ主題細目③ 石油天然ガス鉱物資源機構(2019)鉱物資源マテリアルフロー2018 リン(P)、1-18頁
コマ主題細目
① 海洋プラスチック ② 世界の地下水汚染 ③ 輸出入によるリンの移動
細目レベル
① プラスチックは炭素を主たる元素として構成されている。海洋のプラスチックごみの問題は海洋に面した国以外も関連する世界的な問題である。海洋プラスチックごみの起源は、アジアの新興国・途上国からが多いと言われている。アジアの内陸国も海洋につながる国際河川が国内を流れ、その河川を通じて内陸国から不法投棄されたプラスチックが海洋に流入する。このように世界的な問題となっている海洋プラスチック問題を解決するために、日本は2019年6月に開催されたG20大阪サミットで2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を提案した。2021年3月時点で、86の国と地域がビジョンを共有し、2019年6月に開催されたG20持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関する関係閣僚会合において、「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」が採択され、各国が対策について定期的に情報共有するとともに相互学習を通じて効果的な対策を実施していくことで海洋プラスチックごみの問題解決に乗り出した。
② 第4回の細目レベル②で垂直方向の窒素の移動の移動に伴って地下水の汚染が生じていることを学んだ。窒素による地下水汚染は日本に限った現象ではなく、世界各地で窒素による地下水汚染が生じている。アメリカやオーストラリア、中国、韓国、マレーシア、タイでは地下水の窒素の化合物である硝酸態窒素が基準値を超過した箇所が確認された。アメリカやオーストラリア、中国、タイでは農業地域での地下水汚染が顕著であり、農業の施肥に由来する地下水の窒素汚染であることが示唆される。地下水の窒素汚染が報告される国は先進国が多いことも特徴であり、農業への化学肥料の投入が先進国では当然の様に行われていることもその一因であるといえる。また、途上国はヒ素などのより毒性の高いものによる汚染が深刻であり、窒素汚染に焦点が当てられないことも報告が少ない理由の一つである可能性もある。
③ リンは金属などの他の資源と同様に地中から鉱石の形か鳥の糞が堆積してできたグアノから得られる。日本のリン資源は枯渇しており、全量を輸入に依存している。しかし、リン鉱石は戦略物質として輸出を禁止する国もあり、世界的な需要増大から価格も高騰している。日本では、リンの鉱石もしくはリン肥料などの化学製品として輸入する以外に食料としても多く輸入している。世界各地から日本に持ち込まれるリンの約4分の1は食料が占めている。第4回の細目レベル①で示したことを同様に、世界的なリンの物質循環を考えるときには、食料として移動する量はリンの物質循環において無視できない。リンは戦略物質として鉱石の形での輸入を制限しているが、より付加価値の高い食品などの形態で輸出が行われている。
キーワード
① 海洋プラスチック ② G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組 ③ 地下水汚染 ④ 農業地帯 ⑤ 戦略物質
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
今回は世界規模での土壌環境や水環境における物質の動きと環境問題について炭素と窒素、リンを取り上げて説明した。キーワードであげた海洋プラスチック、G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組、地下水汚染、農業地帯、戦略物質について例をあげて説明できる様にしておくとよい。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は第2部の土壌や水環境における炭素や窒素、リンの環境中での動きのまとめを行うため、その内容について化学や生物の教科書やインターネットなどで確認することとする。
6
土壌や水環境における炭素や窒素、リンの環境中での動きのまとめ
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第6回は、土壌や水環境における炭素や窒素、リンの環境中での動きのまとめを行う。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 環境省(2013)平成25年度版環境白書、93-94頁 環境省(2021)令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書、46-47頁 農林水産省(2021)令和2年度 食料・農業・農村白書、61-68頁
コマ主題細目② 環境省(2013)平成25年度版環境白書、94-95頁 北尾高嶺他(1996)、浄化槽の基礎知識、日本環境整備教育センター、4362円+税、215-216頁 アジア水環境パートナーシップ(2018)アジア水環境管理アウトルック2018、39-134頁
コマ主題細目③ 石油天然ガス鉱物資源機構(2019)鉱物資源マテリアルフロー2018 リン(P)、1-18頁 環境省(1998)平成10年度版環境白書、総説 第3章第1節3
コマ主題細目
① 炭素 ② 窒素 ③ リン
細目レベル
① 二酸化炭素の排出削減は日本のみならず世界中の環境問題である。物質の動きを追うためには物質がどれだけ入って、どれだけ留まり、どれだけ出て行くかを把握する必要がある。炭素の大部分は海域の中・深海部に存在しているが、地球温暖化による海水温の上昇が海域からの二酸化炭素の放出を加速させるとされている。地表に存在する炭素の循環を考えると化石燃料以外に食品の移動を考える必要がある。日本は重量ベースの自給率ベースで海外から50%以上の食品を輸入し、炭素を海外から日本に移動させている。炭素の移動による環境問題として海洋のプラスチックごみの問題がある。海洋プラスチックごみの発生源はアジアの新興国・途上国といわれ、G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組によって削減の試みが進められている。
② 窒素は大気中に78%含まれており、生物が活動する領域では不活性(反応しない)物質である。窒素はタンパク質を構成する元素であり、生物の必須元素である。20世紀初頭に発明されたハーバー・ボッシュ法によって、大気中の窒素から肥料の主たる成分であるアンモニアの合成法が確立されたこれによって、窒素の循環量が2倍となり、人類の食に関する環境改善に貢献する一方で、富栄養化などの問題も引き起こしている。施肥された窒素は降雨などで流入する水分によって移動し、湖沼や河川、地下水に移動する。特に地下水の汚染は、一部の地域では地下水が飲料水として用いることができないくらいまで汚染されている。それは世界的にも同様であり、先進国の農業地帯では地下水の窒素汚染が広く報告されている。
③ リンは生態必須元素であり、生物にとって窒素とならんで必須元素である。リンは金属などの他の資源と同様に地中から鉱石の形か鳥の糞が堆積してできたグアノから得られる。大気から得ることができないため、リン鉱石は戦略物質とされる。現在のリンの用途は、主に工業と農業である。1979年までは合成洗剤に添加されてきたが、琵琶湖条例によって製造から使用までが制限され、リンの用途が変化した。日本では、リンの鉱石もしくはリン肥料などの化学製品として輸入する以外に食料としても多く輸入し、世界各地から日本に持ち込まれるリンの約4分の1は食料が占めている。そのため、世界的なリンの物質循環を考えるときには、食料として移動する量はリンの物質循環において無視できない。
キーワード
① 食品自給率 ② 施肥 ③ 地下水汚染 ④ 合成洗剤 ⑤ 琵琶湖条例
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は第2部のまとめとして土壌や水環境における炭素や窒素、リンの環境中での動きに関して炭素、窒素、リンの変化について確認をした。キーワードであげたについて例をあげて説明できる様に改めて確認をしておくとよい。特に何か別の形に変化されて物質が動くことが多いため、その物質が何でできているかを把握することが物質循環では重要である。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は主に微生物等に分解されやすい炭素を含む物質の環境中での動きについての講義を行うため、その内容について化学や生物の教科書やインターネットなどで確認することとする。
7
主に微生物等に分解されやすい炭素を含む物質の環境中での動き
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第7回は、主に微生物等に分解されやすい炭素を含む物質の環境中での動きを学ぶ。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 北尾高嶺他(1996)、浄化槽の基礎知識、日本環境整備教育センター、4362円+税、121-122頁
コマ主題細目② 春⼭志郎(2017)、⾼専の化学、森下出版株式会社、1900円+税、178-180、190-200頁
コマ主題細目③ 北尾高嶺(2003)、生物学的排水処理工学、コロナ社、4200円+税、47-49頁
コマ主題細目
① 易分解性 ② 易分解性炭素化合物 ③ 異化・同化
細目レベル
① 難生分解性有機物は易分解性有機物の対義語であり、微生物によって分解されにくい有機物のことを示す。難生物分解は、日を含めた38ヶ国の先進国が加盟する国際機関であるOECD(Organisation for Economic Co-operation and Development)の方法で測定した28日後の値と初期値から評価される。難生物分解性を示す有機物は多くのものがあり、健康や環境被害を与えるPCBやダイオキシンに加えて、土壌腐食やリグニンなどがある。他に、農薬や医薬品、抗生物質なども難生物分解を示すものが多い。医薬品などは生体内で一定時間以上は変化せずに存在することが求められるため、生分解性が低いことが必要である。しかしながら、排泄物とともに水環境中に排出されるため、河川や湖沼では微量汚染物質として水生生物への影響を含めて監視対象となっている。
② 一般的に糖類やデンプン、タンパク質、脂肪は易分解性有機物に分類される。糖は、ショ糖(砂糖)であるグルコースが最も知られる物質である。糖は生体のエネルギー源として最も重要であり、一般的にCnH2nOn(n≧3)で表される。糖には単糖と多糖に分類され、グルコースは単糖である。多糖類は複数のグルコースなどの単糖が結合したものである。多糖類には易分解性のデンプンもあるが、カニなどの殻の成分であるキチンなどの生分解性が低いものもある。タンパク質は、21種類のアミノ酸が鎖状に連結してできた化合物であり、生物の重要な構成成分である。アミノ酸の種類や構成によって、分子量は大きく変化する。脂質は大豆油や牛脂などがあり、水に不溶であるがアルコールなどの有機溶媒との親和性が高い。
③ 生物が生きていくうえではエネルギーの獲得と消費が必要であることは自分自身の生活でよくわかると思う。また、生物は構成する細胞が死滅するために新たな細胞を作り出す必要がある。このようにエネルギーの獲得と細胞の合成は生物にとって必須の活動であり、このことを理解することは生物の活動や生態系の理解をするためには必要不可欠である。生物が有機物等からエネルギーを獲得することを異化といい、細胞の合成をおこなうことを同化という。生体が消費するエネルギーは、生体を維持するための代謝エネルギーと生体の細胞を合成するエネルギー、細胞を構成する成分のエネルギーがある。有機物等からエネルギーを獲得する異化は生体を維持するための代謝エネルギーと生体の細胞を合成するエネルギーに関連する。また、細胞の合成などを行う同化は、生体の細胞を合成するエネルギーと細胞を構成する成分のエネルギーが該当する。
キーワード
① 微生物 ② 有機物 ③ 易分解性有機物 ④ 異化 ⑤ 同化
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は主に微生物等に分解されやすい炭素を含む物質の環境中での動きを易分解性、炭素化合物、異化・同化を取り上げて説明した。キーワードであげた微生物、有機物、易分解性有機物、異化、同化について例をあげて説明できる様にしておくとよい。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は微生物等に分解されにくい炭素を含む物質の環境中での動きについての講義を行うため、その内容について化学や生物の教科書やインターネットなどで確認することとする。
8
微生物等に分解されにくい炭素を含む物質の環境中での動き
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第8回は、微生物等に分解されにくい炭素を含む物質の環境中での動きを学ぶ。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 竹内健祐(2019)、化審法における分解性及び蓄積性評価、1-24頁
コマ主題細目② 北尾高嶺他(1996)、浄化槽の基礎知識、日本環境整備教育センター、4362円+税、135-136頁
コマ主題細目③ 北尾高嶺(2003)、生物学的排水処理工学、コロナ社、4200円+税、158-167頁
コマ主題細目
① 難生分解性 ② 農薬・殺虫剤 ③ 増殖速度
細目レベル
① 難生分解性有機物は易分解性有機物の対義語であり、微生物によって分解されにくい有機物のことを示す。難生物分解は、OECDの方法で測定した28日後の値と初期値から評価され、28日後の濃度が70%未難の場合にその物質が難生物分解と定義される。難生物分解性を示す有機物は多くのものがあり、健康や環境被害を与えるPCBやダイオキシンに加えて、土壌腐食やリグニンなどがある。他に、農薬や医薬品、抗生物質なども難生物分解を示すものが多い。医薬品などは生体内で一定時間以上は変化せずに存在することが求められるため、生分解性が低いことが必要である。しかしながら、排泄物とともに水環境中に排出されるため、河川や湖沼では微量汚染物質として水生生物への影響を含めて監視対象となっている。
② 農薬や殺虫剤は様々な構造をしており、その構造によって特性は様々である。今日では環境影響と残留性が小さくなるように設計された農薬や殺虫剤が使用されているが、過去に使用された農薬や殺虫剤には水に溶けにくい構造をしたものがあり、それらは土壌や水環境中で残留している場合もある。水に溶けにくいことは脂(油)に溶けやすい(親油性、疎水性)ことを意味し、野生生物の体内に水に溶けにくい農薬や殺虫剤は蓄積されやすい。また、水に溶けにくい農薬や殺虫剤の毒性は高いものが多い。土壌や水環境には多くの微生物が存在しているが、それらの環境中に残存する農薬や殺虫剤は微生物による分解が行われにくいため難生物分解を示す。しかし、一部の特異的な微生物は難生物分解の農薬や殺虫剤を分解することができるが、その増殖速度は極めて遅い。
③ 細目レベル②にて難生物分解の物質を分解できる微生物が存在するが、その微生物の増殖速度が遅いことを示した。増殖速度とは文字のとおりに微生物が増殖する速度のことである。易分解性有機物を分解する微生物の増殖速度は速く、そのために微生物の中で大部分を占める。増殖速度は微生物の代謝の方法にも影響を受ける。有機物からエネルギーと生体を構成する炭素を得る微生物は従属栄養微生物といわれ、従属栄養微生物の増殖速度は早いものが多い。有機物以外から得られるエネルギーを獲得し、二酸化炭素から生体を構成する炭素を獲得する微生物を独立栄養微生物という。独立栄養微生物は従属栄養微生物に比べて生体を構成する炭素やエネルギーの獲得効率が低いために増殖速度は遅い。
キーワード
① 微量汚染物質 ② ダイオキシン ③ 疎水性 ④ 従属栄養 ⑤ 独立栄養
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は微生物等に分解されにくい炭素を含む物質の環境中での動きについて、難分解性、農薬・殺虫剤、増殖速度を取り上げて説明した。キーワードであげた微量汚染物質、ダイオキシン、疎水性、従属栄養、独立栄養について例をあげて説明できる様にしておくとよい。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は肥料等に使用される窒素を含む物質の環境中での動きについての講義を行うため、その内容について化学や生物の教科書やインターネットなどで確認することとする。
9
肥料等に使用される窒素を含む物質の環境中での動き
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第9回は、肥料等に使用される窒素を含む物質の環境中での動きを学ぶ。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 公害防止の技術と法規 編集委員会(2020)公害防止の技術と法規 編集委員会2020水質編、9000円+税、、346-360頁
コマ主題細目② 嶋田正和・上村慎治・増田建・ 道上達男(2019)生物学入門、2200円+税、80-82頁
コマ主題細目③ 春⼭志郎(2017)、⾼専の化学、森下出版株式会社、1900円+税、152-153頁
コマ主題細目
① 窒素化合物 ② 土壌や水環境での変化 ③ ハーバー・ボッシュ法
細目レベル
① 窒素には、タンパク質やアミノ酸などの有機物に含まれる有機体窒素や、ハーバー・ボッシュ法によって合成されるアンモニア、亜硝酸、硝酸、一酸化窒素、一酸化二窒素(亜酸化窒素)、分子状窒素がある。分子状窒素は大気の主成分である窒素分子のことである。水に溶解する窒素として、アンモニアと亜硝酸、硝酸がある。アンモニアは水中ではアンモニウムイオンとなり、亜硝酸は亜硝酸イオン、硝酸は硝酸イオンとなる。一酸化窒素や一酸化二窒素の水への溶解度は低い。一酸化二窒素はN2Oと表され、亜酸化窒素ともいわれる。一酸化二窒素は二酸化炭素の約300倍の温室効果係数(温室効果ガスとしての強さ)を有しており、排出源として農業生産に起因することが知られている。
② 土壌や水環境では窒素化合物は大きく変化する。生物に由来する窒素化合物を例にして土壌や水環境での循環を考える。生物に由来する窒素化合物は細目レベル①で示した様に有機体窒素である。有機体窒素は微生物の作用によって分解されてアンモニアとなる。施肥で農地に投入される窒素には様々な種類があるが、多くは硫安といわれる硫酸アンモニウム(硫酸アンモニア)であり、アンモニアが肥料としての主成分である。第4回で示した窒素の垂直方向の移動による地下水の窒素汚染に触れたが、地下水汚染の原因となっているものは硝酸である。アンモニアは地中を通過する際に細目レベル①で示した様に硝酸に変換され、その硝酸から分子状窒素にならずに残ったものが地下水に到達して汚染する。
③ ハーバー・ボッシュ法とは、大気中に存在する分子状窒素と分子状の水素を結合させてアンモニアを合成することであり、分子状窒素と分子状水素の比率は1:3である。その時に生じる反応は、N2(分子状窒素)+3H2(3つの分子状水素)→2NH3(2つのアンモに)となる。分子状窒素は極めて安定であり、この安定な物質を変化させるためには高い温度と高い圧力が必要である。温度は400から600℃であり、圧力は200から1000atmである。我々が生活している圧力を1atmとしているので、その200倍から1000倍である。地球で最も深いとされるマリアナ海溝の海底での圧力が約1000atmである。圧力をかけるにもエネルギーが必要であり、その圧力に耐える容器も必要となる。これらのことから、窒素肥料の主成分であるアンモニアの合成には非常に大きなエネルギーを必要としていることがわかる。
キーワード
① イオン ② 一酸化二窒素 ③ 硝化 ④ 脱窒 ⑤ 高温・高圧
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は肥料等に使用される窒素を含む物質の環境中での動きを窒素化合物、土壌や水環境での変化、ハーバー・ボッシュ法を取り上げて説明した。キーワードであげたイオン、一酸化二窒素、硝化、脱窒、高温・高圧について例をあげて説明できる様にしておくとよい。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は日本の規模での土壌環境や水環境における物質の動きと環境問題についての講義を行うため、その内容について化学や生物の教科書やインターネットなどで確認することとする。
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肥料等に使用されるリンを含む物質の環境中での動き
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第10回は、肥料等に使用されるリンを含む物質の環境中での動きを学ぶ。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 石油天然ガス鉱物資源機構(2019)鉱物資源マテリアルフロー2018 リン(P)、1-18頁
コマ主題細目② 春⼭志郎(2017)、⾼専の化学、森下出版株式会社、1900円+税、89頁
コマ主題細目③ 環境省(2010)平成22年度版環境白書第1部2章2節
コマ主題細目
① リン化合物 ② 土壌や水環境での変化 ③ グアノ
細目レベル
① リンには、タンパク質やアミノ酸などの有機物に含まれる有機体リンと水中で安定な形態であるリン酸イオン、五酸化二リンがある。肥料の分野では、リン成分のすべてを五酸化二リンであるP2O5の形で表すことがある。水中ではリン酸イオンが最も安定な形態であり、PO4^3-と表される。リン酸イオンを含む化合物は様々なものがあり、ポリリン酸やメタリン酸などの食品添加物で使用されるリン化合物は、リン酸が直線もしくは平面的に連なった物質である。リン酸は化学実験では水のpHを一定に保持する緩衝液として広く用いられる。生物の細胞にリン酸イオンが含まれており、生物の組成と同じ組成の緩衝液を用いることが多い。そのため、生物系の実験でもリン酸を用いた緩衝液は広く使用されている。
② 土壌や水環境ではリン酸は様々な形で存在するが、主にリン酸イオンとして存在するかカルシウムやマグネシウムなどと結合して水に溶けにくい(難溶性)化合物を形成する。リン肥料として最も用いられるものとして過リン酸石灰があり、これはリン酸カルシウムと石膏の混合物である。リン酸カルシウムは先に述べたように水に溶けにくいため、施肥した場所から大きく移動することは少ない。そのため、窒素のアンモニアと異なり、リン酸による地下水汚染は少ない。また、肥料から溶出したリン酸が植物に使用されなかった場合は、カルシウムなどと再び結合して固体となる。このように溶出したリン酸が再び固体となることもリン酸に移動を制限することになっている。
③ リンはアミノ酸の構成成分であるため、全ての生物が体内に保持している。おおよそ動物や微生物では乾燥後で約2%がリンの質量である。そのため、広く薄く存在しており、肥料中のリン濃が2%よりも高いことからこれらを濃縮することが必要である。生き物は動植物を捕食し、リンが濃縮されたふんを出す。海鳥や海獣などのふんが化石化したものをグアノという。グアノはふんが長い期間、風雨にさらされることで水に溶ける成分や微生物が分解できる成分が除去される。そのため、水に溶けにくいリン化合物が濃縮され、グアノは生態系の営みが与えた資源といえる。グアノは主に渡り鳥の宿営地となる離れ小島に産出し、日本では沖縄本島の東に位置する北大東島、世界的にはナウル共和国が知られていたが、すでに枯渇している。
キーワード
① リン酸イオン ② 緩衝液 ③ 難溶性 ④ 肥料 ⑤ 濃縮
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は肥料等に使用されるリンを含む物質の環境中での動きについてリン化合物、土壌や水環境での変化、グアノを取り上げて説明した。キーワードであげたリン酸イオン、緩衝液、難溶性、肥料、濃縮について例をあげて説明できる様にしておくとよい。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は炭素や窒素、リンなどの生物に必要な元素の環境中での動きのまとめを行うため、これまでの内容について講義で用いた資料などを確認することとする。
11
炭素や窒素、リンなどの生物に必要な元素の環境中での動きのまとめ
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第11回は、を第3部として炭素や窒素、リンなどの生物に必要な元素の環境中での動きのまとめを行う。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 北尾高嶺他(1996)、浄化槽の基礎知識、日本環境整備教育センター、4362円+税、121-122、135-136頁 春⼭志郎(2017)、⾼専の化学、森下出版株式会社、1900円+税、178-180、190-200頁 北尾高嶺(2003)、生物学的排水処理工学、コロナ社、4200円+税、47-49、158-167頁 竹内健祐(2019)、化審法における分解性及び蓄積性評価、1-24頁
コマ主題細目② 公害防止の技術と法規 編集委員会(2020)公害防止の技術と法規 編集委員会2020水質編、9000円+税、、346-360頁 春⼭志郎(2017)、⾼専の化学、森下出版株式会社、1900円+税、152-153頁 嶋田正和・上村慎治・増田建・ 道上達男(2019)生物学入門、2200円+税、80-82頁
コマ主題細目③ 石油天然ガス鉱物資源機構(2019)鉱物資源マテリアルフロー2018 リン(P)、1-18頁 春⼭志郎(2017)、⾼専の化学、森下出版株式会社、1900円+税、89頁 環境省(2010)平成22年度版環境白書第1部2章2節
コマ主題細目
① 炭素 ② 窒素 ③ リン
細目レベル
① 易分解性とは、土壌や水環境に存在する微生物によって分解されやすい特性のことであり、難生分解性有機物は易分解性有機物と反対に生物によって分解されにくい有機物のことを示す。このとき用いる微生物は特殊な環境ではなく、我々の住んでいる環境にいる微生物である。一般的にデンプンを含む糖類や、タンパク質、脂肪は易分解性有機物に分類される。難生物分解性を示す有機物は多くのものがあり、健康や環境被害を与えるポリ塩化ビフェニル(Poly-Chlorinated Biphenyl、PCB)やダイオキシンに加えて、土壌腐食やリグニンなどがある。他に、農薬や医薬品、抗生物質なども難生物分解を示すものが多い。難生物分解性物質は疎水性のものが多く、野生生物の体内に蓄積されやすく、毒性は高いものが多いといわれている。どのような生物でもエネルギーの獲得は必須であり、難生物分解性物質からもエネルギーを獲得する微生物が存在する。
② 窒素には、タンパク質やアミノ酸などの有機物に含まれる有機体窒素や、ハーバー・ボッシュ法によって合成されるアンモニア、亜硝酸、硝酸、一酸化窒素、一酸化二窒素、分子状窒素がある。水に溶解する窒素として、アンモニアと亜硝酸、硝酸がある。アンモニアは水中ではアンモニウムイオンとなり、亜硝酸は亜硝酸イオン、硝酸は硝酸イオンとなる。有機体窒素は微生物の作用によって分解されてアンモニウムイオンとなる。アンモニウムイオンは独立栄養微生物によって酸化されて亜硝酸イオンになる。亜硝酸イオンはさらに微生物によって酸化されて硝酸イオンに変化する。アンモニウムイオンから硝酸イオンへ微生物による酸化反応は硝化反応という。硝酸イオンから嫌気で活動する嫌気性従属栄養微生物によって還元されて亜硝酸イオンになった後に、一酸化窒素や一酸化二窒素と窒素化合物中の酸素が減少し、分子状窒素まで還元される。硝酸イオンから微生物によって還元されて分子状窒素になることを脱窒反応という。
③ リンは、主に渡り鳥の宿営地となる離れ小島に海鳥や海獣などのふんが化石化したグアノから得ることができる。リンは、タンパク質やアミノ酸などの有機物に含まれる有機体リンと水中で安定な形態であるリン酸イオン、五酸化二リンがある。水中ではリン酸イオンが最も安定な形態であり、PO4^3-と表される。生物の細胞にリン酸イオンが含まれており、生物系の実験でもリン酸は広く使用されている。また、リン酸イオンは水への溶解度の低い(難溶性)化合物を簡単に形成するため、溶出したリン酸は近くに存在するカルシウムなどと結合する。そのため、リン酸の移動速度は極めて遅くなり、施肥した場所から大きく移動することは少ないためにリン酸による地下水汚染は少ない。
キーワード
① 異化・同化 ② 難生物分解 ③ 硝化・脱窒 ④ リン酸イオン ⑤ 難溶性化合物
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は炭素や窒素、リンなどの生物に必要な元素の環境中での動きのまとめを行った。各元素のよく用いられる物質や土壌や水環境での生物等による変化、特に重要となる反応について取り上げた。化学反応が出てくるが、各元素の土壌や水環境で重要な現象を説明できることが需要であり、その時に化学反応を示して説明できるとよい。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は炭素と窒素、リンの環境問題の変遷についての講義を行うため、その内容について化学や生物の教科書やインターネットなどで確認することとする。
12
炭素と窒素、リンの環境問題の変遷
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第13回は、養分である窒素とリンの環境問題の変遷を学ぶ。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 北尾高嶺他(1996)、浄化槽の基礎知識、日本環境整備教育センター、4362円+税、121-122頁
コマ主題細目② 松尾友矩他(2004)水環境工学、2800円+税、59-61頁
コマ主題細目③ 環境省(2021)令和3年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書、222-227頁
コマ主題細目④ 環境省(2021)令和3年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書、226-227頁
コマ主題細目
① 酸素 ② 富栄養化 ③ 水質汚濁防止法 ④ 貧栄養化
細目レベル
① 炭素を主成分とする有機物が環境中に放出されると、それを分解する微生物が活発に活動する。微生物の活動には異化や同化があるが、ともに呼吸によって得る酸素を必要とする。そのため、有機物の分解には酸素が必要である。大気中には約20%の酸素が存在しており、換気が十分に行われる地上では酸欠になることはほとんどない。しかし、酸素の移動が制限される地中や存在的できる酸素が大気中と比べて極めて低い水中では有機物の分解による急激な酸素消費は酸欠を招くおそれがある。水への酸素の溶解度は低く、25℃で1atmのときには8mg/Lの酸素濃度となり、河川や湖沼のように酸素供給が海面からのみに制限される場所では少しの有機物の混入がその水域の酸欠を引き起こすことになる。
② 富栄養化は養分である窒素やリンが湖沼や内湾などの水の出入りが緩やかな水域に過剰に流入し、光合成によって流入した窒素やリンを用いながら異常に増殖した藻類が死滅して有機性(有機物の)汚濁物となって水質を悪化させる現象と定義される。閉鎖性水域とは水が入ってから出るまでに数十日から数百日程度かかる水域のことであり、瀬戸内海や日本海も閉鎖性水域として定義される場合もある。一般的には窒素やリンの濃度が高い状態を富栄養化が進行していると表現することもある。藻類は光合成を行うが光が当たらない状態では呼吸も行うため、夜間や他の藻類等に遮光された場合には呼吸を行う。そのため、増殖しすぎた藻類は水環境中の酸素濃度を減少させ、藻類自身とそこに生息する魚介類の死滅を引き起こすことになる。
③ 水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)は事業所(大学も含む)から排出される排水の濃度を規制する法律である。水質汚濁防止法には罰則規定があり、違反した排水の排出を続けると逮捕されることがある。また、自治体が特に規制を強化したい場合には上乗せ基準を設けることができる。愛知県は、一日あたりの平均的な排出水の量が50立方メートル以上のものについて、濃度規制基準とは別に排出される汚濁負荷量の許容限度を定めている。水質汚濁防止法は濃度を基準に定められており、薄めて排出すれば基準値を満足できる抜け穴に対応するものである。また、基準値を技術的に満足できない業種には暫定基準が設けられることがあり、温泉施設から排出される排水中のフッ素は源泉中に含まれることから暫定基準値が設定されている。
④ 水質汚濁防止法対策として排水処理施設が整備され、閉鎖性海域の水質は改善傾向にある。一部の海域では排水処理によって養分となる窒素やリンが不足する現象が発生し、貧栄養化が進行しつつある。瀬戸内海に排水を流入させる自治体を対象とする瀬戸内海環境保全特別措置法の一部を改正した。瀬戸内海環境保全特別措置法は、水質汚濁防止法よりも厳しい基準である。この改正によって排水の一部を海域の養分の供給を目的として排出することが可能となった。養分を一定量供給することでその海域の生態系ピラミッドを拡大することになり、きれいになりすぎて痩せた海からきれいで生態系が豊かな海を目指すことになった。
キーワード
① 閉鎖性水域 ② 藻類 ③ 罰則規程 ④ 総量規制 ⑤ 法律改正
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は養分である窒素とリンの環境問題の変遷を富栄養化、水質汚濁防止法、貧栄養化を取り上げて説明した。キーワードであげた閉鎖性水域、藻類、罰則規程、総量規制、法律改正について例をあげて説明できる様にしておくとよい。特に法律の改正は非常に大きな転換点であることから理解をすることが重要である。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は炭素や窒素、リンを環境中から除去するための方法についての講義を行うため、その内容について化学や生物の教科書やインターネットなどで確認することとする。
13
炭素や窒素、リンを環境中から除去するための方法
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第13回は、炭素や窒素、リンを環境中から除去するための方法を学ぶ。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 松尾友矩他(2004)水環境工学、2800円+税、153-156頁
コマ主題細目② 嶋田正和他(2019)生物学入門、2200円+税、80-82頁
コマ主題細目③ 松尾友矩他(2004)水環境工学、2800円+税、172-174頁
コマ主題細目
① 炭素の無機化 ② 生物学的窒素除去 ③ 肥料化
細目レベル
① 炭素は有機物に主に含まれることは第4回で示した。我々が生活するうえで、食品として有機物を摂取し、し尿として有機物を排出する。また、食品として摂取した有機物は我々の体の細胞を構成するとともに、二酸化炭素に変換されて排出される。このように有機物を生物等の反応によって無機物である二酸化炭素に変換することを無機化という。これは人間や哺乳類、魚類、は虫類などの大型生物以外にも微生物でも同様に行われている。生活する上で生じる排水を生活排水というが、生活排水は微生物によって処理されている。つまり、我々が排出したし尿等は微生物の作用によって炭素成分は二酸化炭素に無機化されることで排水の処理が行われる。微生物の活動は排水処理を行う施設以外でも行われ、土壌中や河川や海域でも行われている。
② 第1回で示した様にし尿には窒素が高濃度に含まれている。細目レベル①で示した微生物による排水処理を生物学的排水処理法といわれる。生物学的排水処理法では炭素以外にも窒素を除去することができ、これを生物学的窒素除去という。微生物による窒素除去は、微生物に反応である硝化と脱窒の2段階で構成される。アンモニウムイオンは独立栄養微生物によって酸化(この場合は酸素とくっつくこと)されて亜硝酸イオンになる。亜硝酸イオンはさらに微生物によって酸化されて硝酸イオンに変化する。アンモニウムイオンから硝酸イオンへ微生物による酸化反応は硝化反応という。硝酸イオンから酸素が存在しない条件(嫌気)で活動する嫌気性従属栄養微生物によって還元(この場合は酸素を取りのぞかれること)されて亜硝酸イオンになった後に、一酸化窒素や一酸化二窒素と窒素化合物中の酸素が減少し、分子状窒素まで還元される。硝酸イオンから微生物によって還元されて分子状窒素になることを脱窒反応という。
③ リンはカルシウムとリン酸が結合すると骨の成分であるリン酸カルシウムとなり、マグネシウムとリン酸、アンモニウムイオンが結合するとリン酸マグネシウムアンモニウムとなる。リン酸カルシウムとリン酸マグネシウムアンモニウムはともに肥料成分であり、この2つの化合物を合成させることで水中のリン酸イオンを除去している。このときのカルシウムとして溶解度の高い除雪剤や除湿剤などに使用される塩化カルシウムが使用されている。このほかにもアルミニウムや鉄などとも水への溶解度の低い化合物を簡単に形成するため、塩化アルミニウムや塩化鉄などもリン除去を目的として使用される。微生物によってリン酸イオンを除去することはできるが、微生物のどうか作用を除いて微生物によるリン除去は複雑な操作が必要なために導入例は少ない。
キーワード
① 生物学的排水処理 ② 硝化 ③ 脱窒 ④ 溶解度 ⑤ リン除去剤
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は炭素や窒素、リンを環境中から除去するための方法を、炭素と窒素、リンを取り上げて説明した。キーワードであげた生物学的排水処理、硝化、脱窒、溶解度、リン除去剤について例をあげて説明できる様にしておくとよい。化学反応を示しながら説明したが重要な物質がどれであるかを明確にして理解するとこが重要である。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は炭素や窒素、リンの除去方法のまとめを行うため、この内容に関して講義で用いた配付資料で確認することとする。
14
炭素や窒素、リンの除去方法のまとめ
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第14回は、炭素や窒素、リンを環境中から除去方法のまとめを行う。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 北尾高嶺他(1996)、浄化槽の基礎知識、日本環境整備教育センター、4362円+税、121-122頁 松尾友矩他(2004)水環境工学、2800円+税、153-156頁
コマ主題細目② 松尾友矩他(2004)水環境工学、2800円+税、59-61頁 嶋田正和他(2019)生物学入門、2200円+税、80-82頁
コマ主題細目③ 環境省(2021)令和3年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書、222-227頁 松尾友矩他(2004)水環境工学、2800円+税、172-174頁
コマ主題細目
① 炭素 ② 窒素 ③ リン
細目レベル
① 炭素を主成分とする有機物が環境中に放出されると、それを分解する微生物が活発に活動する。微生物の活動には異化や同化があるが、ともに呼吸によって得る酸素をと有機物中の炭素を結合させて無機物である二酸化炭素に無機化する。我々が排出した有機物は微生物の作用によって炭素成分は二酸化炭素に無機化されることで排水の処理が行われる。微生物の活動は排水処理を行う施設以外でも行われ、土壌中や河川や海域でも行われている。酸素の移動が制限される地中や存在的できる酸素が大気中と比べて極めて低い水中では有機物の分解による急激な酸素消費は酸欠を招くおそれがある。水への酸素の溶解度は低く、25℃で1atmのときには8mg/Lの酸素濃度となり、河川や湖沼のように酸素供給が海面からのみに制限される場所では少しの有機物の混入がその水域の酸欠を引き起こすことになる。
② 富栄養化は養分である窒素やリンが原因とされている。そのため、窒素除去やリン除去が行われている。窒素は主に微生物による窒素除去法ある硝化と脱窒によって行われる。アンモニウムイオンは独立栄養微生物によって亜硝酸イオンを経由して硝酸イオンに酸化される。アンモニウムイオンから硝酸イオンへ微生物による酸化反応は硝化反応という。硝酸イオンから嫌気条件で嫌気性従属栄養微生物によって亜硝酸イオンと一酸化窒素、一酸化二窒素を経由して分子状窒素まで還元される。硝酸イオンから微生物によって還元されて分子状窒素になることを脱窒反応という。脱窒反応では外部から何らかの影響が与えられた場合に、二酸化炭素の約300倍の地球温暖化係数をもつ一酸化二窒素で反応が止まる場合がある。
③ リンは、カルシウムとリン酸が結合してリン酸カルシウムとなり、マグネシウムとリン酸、アンモニウムイオンが結合してリン酸マグネシウムアンモニウムとなる。このほかにもアルミニウムや鉄などとも水への溶解度の低い化合物を簡単に形成する。このようにリンの除去は排水処理施設では比較的容易に行うことができる。そのため、排水処理施設から放流される処理水中のリン濃度が低く、一部の海域で窒素やリンが不足する現象が発生しつつある。そこで、瀬戸内海に排水を流入させる自治体を対象とする瀬戸内海環境保全特別措置法の一部を改正し、排水の一部を海域の養分の供給を目的として排出することが可能となった。これによって、きれいになりすぎて痩せた海からきれいで生態系が豊かな海を目指すことになった。
キーワード
① 生物学的排水処理 ② 溶存酸素 ③ 硝化・脱窒 ④ リン除去 ⑤ 貧栄養
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は炭素や窒素、リンの除去方法のまとめについて炭素と窒素、リンごとに説明した。キーワードであげた生物学的排水処理、溶存酸素、硝化・脱窒、リン除去、貧栄養について例をあげて説明できる様にしておくとよい。化学反応を示しながら説明したが重要な物質がどれであるかを明確にして理解するとこが重要である。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。
予習:次回は全体のまとめを行うため、これまで本科目で講義してきた内容についてこれまでの配付資料で確認することとする。
15
全体のまとめ
科目の中での位置付け
自然環境や生物に配慮した人間活動を行なうために環境や生物内での物質のふるまいに関する知識を習得することが必要である。そのために、森林生態系や河川生態系などの系内における物質の動きに注目し、主要な元素を例にして環境中の物質循環に対する理解を深める必要がある。本科目では主要な元素について、地球上での存在形態や動き、生物の活動による存在形態の変化や動き、生じている環境問題とその対策についてふれることで物質の動きによって生態系を学ぶ。具体的には、第1回と第2回は導入として環境問題の歴史や土壌や水環境での生物とエネルギーの動きについて説明する。第3回から第5回を第2部として土壌や水環境における炭素や窒素、リンについてスケールの異なる範囲での動きを第7回から第10回を第3部として炭素や窒素、リンの生物との関係と動き、第13回と第14回を第4部として炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術について学ぶ。第6回と第11回、第14回には第2部と第3部、第4部のまとめとして演習を行い、第15回では全体のまとめを行うことで知識の定着を図る。第15回は、全体のまとめを行う。
各細目レベルに対応する資料は以下のものである。
コマ主題細目① 環境省(2013)平成25年度版環境白書、93-94頁 環境省(2021)令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書、46-47頁 農林水産省(2021)令和2年度 食料・農業・農村白書、61-68頁 北尾高嶺他(1996)、浄化槽の基礎知識、日本環境整備教育センター、4362円+税、121-122、135-136頁 春⼭志郎(2017)、⾼専の化学、森下出版株式会社、1900円+税、178-180、190-200頁 北尾高嶺(2003)、生物学的排水処理工学、コロナ社、4200円+税、47-49、158-167頁 竹内健祐(2019)、化審法における分解性及び蓄積性評価、1-24頁 松尾友矩他(2004)水環境工学、2800円+税、153-156頁
コマ主題細目② 環境省(2013)平成25年度版環境白書、94-95頁 北尾高嶺他(1996)、浄化槽の基礎知識、日本環境整備教育センター、4362円+税、215-216頁 アジア水環境パートナーシップ(2018)アジア水環境管理アウトルック2018、39-134頁 公害防止の技術と法規 編集委員会(2020)公害防止の技術と法規 編集委員会2020水質編、9000円+税、、346-360頁 春⼭志郎(2017)、⾼専の化学、森下出版株式会社、1900円+税、152-153頁 嶋田正和・上村慎治・増田建・ 道上達男(2019)生物学入門、2200円+税、80-82頁 松尾友矩他(2004)水環境工学、2800円+税、59-61頁
コマ主題細目③ 石油天然ガス鉱物資源機構(2019)鉱物資源マテリアルフロー2018 リン(P)、1-18頁 環境省(1998)平成10年度版環境白書、総説 第3章第1節3 環境省(2010)平成22年度版環境白書第1部2章2節 環境省(2021)令和3年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書、222-227頁 春⼭志郎(2017)、⾼専の化学、森下出版株式会社、1900円+税、89頁 松尾友矩他(2004)水環境工学、2800円+税、172-174頁
コマ主題細目
① 炭素 ② 窒素 ③ リン
細目レベル
① 物質循環を考えるときには、物質の動きを追うためには物質がどれだけ入って、どれだけ留まり、どれだけ出て行くかを把握する必要がある。炭素の大部分は海域の中・深海部に存在し、地球温暖化よって海域から二酸化炭素が放出されることで地球温暖化が加速させるとされている。炭素の循環を考えるときには、日本は重量ベースの自給率ベースで海外から50%以上の食品を輸入しているため、食品による移動を考える必要がある。また、炭素の移動による環境問題として海洋のプラスチックごみの問題がある。プラスチックは生物によって分解されにくい難生分解性有機物である。プラスチック成分が溶け出した場合、難生物分解を示すものが多い。難生物分解性物質は疎水性のものが多く、野生生物の体内に蓄積されやすく、毒性は高いものが多いといわれている。また、易分解性有機物が環境中に放出されるとそれを分解する微生物が活発に活動し、有機物の分解による急激な酸素消費は酸欠を招くおそれがある。そのため、環境中に排出を行う前に排水処理を行うことが環境保全には必要である。
② 窒素は20世紀初頭に発明されたハーバー・ボッシュ法によって大気中の分子状窒素からアンモニアの合成が行うことができるようになり、窒素の循環量が2倍なった。しかしながら、窒素の循環量の増加によって、富栄養化などの問題を引き起こしている。また、施肥された窒素は降雨などで流入する水分によって移動し、硝酸汚染により地下水が飲料水として用いることができなくなっている地域もある。これはアンモニウムイオンから硝酸イオンへ微生物による酸化反応である硝化反応に由来している。硝酸イオンから嫌気で活動する嫌気性従属栄養微生物によって分子状窒素まで還元され、この反応を脱窒反応という。脱窒反応では外部から何らかの影響が与えられた場合に、二酸化炭素の約300倍の地球温暖化係数をもつ一酸化二窒素で反応が止まる場合がある。
③ リンは生態必須元素であり、生物にとって窒素とならんで必須元素である。リンは金属などの他の資源と同様に地中から鉱石の形か鳥の糞が堆積してできたグアノから得られる。現在のリンの用途は、主に工業と農業である。1979年までは合成洗剤に添加されてきたが、琵琶湖条例によって製造から使用までが制限され、リンの用途が変化した。日本では、リンの鉱石もしくはリン肥料などの化学製品として輸入する以外に食料としても多く輸入し、世界各地から日本に持ち込まれるリンの約4分の1は食料が占めている。リンは排水処理施設ではリン酸イオンをリン酸カルシウムなどの不溶性化合物にすることで除去され、一部の海域で窒素やリンが不足する現象が発生しつつある。そこで、法律が改正され、排水の一部を海域の養分の供給を目的として排出することが可能となった。
キーワード
① 物質収支 ② 輸入による移動 ③ 生物学的反応 ④ 難溶性物質 ⑤ 法律・条例
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:今回は全体のまとめを炭素と窒素、リンごとに説明した。キーワードであげた物質収支、輸入による移動、生物学的反応、難溶性物質、法律・条例について例をあげて説明できる様にしておくとよい。また、小テストによって理解状況を把握し、理解が不足している部分については改めて進捗確認のための課題を課す場合もある。講義の内容には化学と生物の内容を含むため、各回のシラバスを確認して高校・中学の教科書や参考書を事前に復習しておくとよい。化学を高校で学んでいない学生もいるためにできる限り化学に関する専門用語を少なくしているが、必要な専門用語は存在する。また、生物反応は化学反応であるため、反応式も説明では排除できない。今回示した化学に関する内容は生物を学ぶ上で最低限必要なものであるため、理解することが必要である。
履修判定指標
履修指標
履修指標の水準
キーワード
配点
関連回
物質の循環と環境問題
時代によって環境問題は変化してきたが、これまで様々な環境問題を社会背景とともに理解し、その要因について事例を示しながら説明できる。人間の活動は自然から得られるエネルギーによって営まれており、その主たるエネルギーである太陽のエネルギーがどのように変化されて我々が使用しているのかについて説明できる。生態系での物質の動きを理解するために重要な有機物についてどのようなものが有機物であるかなど、具体的な事例を示して説明できる。
気候変動、循環型社会、太陽エネルギー
10
1-2, 15
炭素や窒素、リンの土壌や水環境の動き
地球規模ならびに日本規模、地域規模での炭素や窒素、リンの動きと環境問題について物質の移動の概念に沿って説明することができる。炭素では地球上のどこに蓄積されているかを把握し、プラスチック、食品の輸入による炭素の動きから環境に及ぼす影響を説明できる。窒素ではどのように地球の窒素循環量が増加し、それによってどのような環境問題が生じているかを窒素の動きから説明できる。リンでは富栄養化防止の観点から環境問題にどのように日本が取り組んだかについて事例を示して説明できる。
食品自給、施肥、地下水汚染、琵琶湖条例
30
1-6, 15
炭素や窒素、リンの生物との関係と動き
炭素や窒素、リンは生物にとって必須元素であるが、生物のどのような形で含まれているかを説明できる。有機物を取り込むことは生物のエネルギーと生体保持にとって必要不可欠であるが、その生物反応について説明できる。また、微生物によって分解しやすい物質について例を示して説明できる。窒素では、環境を汚染する要因とその移動について説明できる。リンでは、環境汚染が少ない理由についてリン化合物の特性を示して説明できる。
異化・同化 難生物分解 硝化・脱窒
30
1-2, 7-11, 15
炭素や窒素、リンの環境問題とその対策技術
環境中に有機物などが混入するとその酸化分解による貧酸素や富栄養化が生じるが、その物質の動きについて有機物の組成を示して説明できる。炭素の除去では微生物が主に分解するが、その時に生じる二酸化炭素と消費される酸素について反応式を示して説明できる。窒素では微生物の反応によってアンモニアから分子状の窒素にするが、どのような反応であるかについて反応時の環境と関連する微生物を示して説明できる。リンでは水に溶解しにくい物質を作ることでリンは除去されるが、リンの除去に伴って生じた新たな問題について説明できる。
生物学的排水処理、溶存酸素、硝化・脱窒、栄養
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1-2 12-15
評価方法
期末試験(100%)により行う。
評価基準
評語
学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・
S (100~90点)
学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・
A (89~80点)
学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・
B (79~70点)
学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・
C (69~60点)
学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・
D (60点未満)
教科書
参考文献
実験・実習・教材費