区分 (生)フィールド生態科目 フィールド生態共通科目 (環)フィールド生態科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門性 理解力 実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
専門知識 教養知識 思考力
実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ

科目の目的
景観の構造と機能との関係、それらの変化と社会との関係を科学的に明らかにすること、そして、その科学的成果を用いて生態学的により良い土地利用のあり方を提示することを目的とする学問分野が景観生態学である。本科目では、景観生態学の理論、調査計画における実践のためのツール、そして森林、農村、水辺、海辺、都市といった異なる景観において景観生態学がどのように実社会へ応用されているかを連続的に学習する。これらを身に着けることで、景観を対象とする理学研究や国土計画管理の基礎となる知識を習得する。
到達目標
景観生態学の理論を理解し、景観生態学的調査の設計手法に基づいて、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。
科目の概要
本講義では、景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、景観生態学的調査の設計手法を理解し、個々の景観要素における社会実装の状況を学び、最後に景観計画の策定を学ぶ。これらを通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。第一部として第一回から第三回の講義では景観生態学における理論を学ぶ。第四回から第六回の第二部では景観生態学的調査研究に不可欠な情報収集ツール、景観生態学的調査の設計手法、種分布モデルを学ぶ。第七回から第十四回の第三部では個々の景観要素における景観生態学的アプローチの事例と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。
科目のキーワード
景観、PCMモデル、モザイク、レジリエンス、攪乱、ニッチ、景観計画
授業の展開方法
各回の授業は、主に2つの方法で展開する。第一部である第1回から第3回および第三部である第7回から第15回では本科目の教科書である日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版をもとに授業を実施する。この際、パワーポイント投影およびコマオリジナル資料を配布することで教科書の内容の理解を促すとともに、より詳細で実践的な情報を学習する。第5回および第6回はより実践的な景観生態学的課題の解決方法として分布調査の設計と種分布モデルについて学習する。これらについては、日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版は用いず、国外の専門書や学術論文に基づいて作成したパワーポイント投影およびコマオリジナル資料を用いた授業を実施する。本科目では、景観生態学において用いられるwebツールやアプリケーションの説明を行うため、教科書に加えてノートパソコンの持参を推奨する。講義中にわからないことがあれば、授業中に指定されるweb上のフォームにコメントを記載すること。
オフィス・アワー
立脇隆文:【月曜日】昼休み(前期のみ)、【水曜日】1時限目(後期のみ)、【木曜日】昼休み
岡久雄二:【火曜日】昼休み、3時限目(前期のみ)、【水曜日】昼休み・3時限目、【木曜日】昼休み

科目コード ENS222
学年・期 2年・前期
科目名 景観生態学
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 基礎生態学
展開科目 野生動物管理学、陸生動物保全学
関連資格 なし
担当教員名 立脇隆文・岡久雄二
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 景観生態学とは 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第一部の第一回の講義では、本科目で取り扱う「景観」の概念を明示し、「景観生態学」がどのような学問であるのか解説する。また、景観を構成する様々な生態系から私たちがどのような恵みを得ているのかを、生態系サービスの概念を用いて説明する。そして、自然と人・文化との相互作用の結果を表出している景観を総体として把握するために、どのような学問分野との連携が必要であるのかを考える。最後に、それら基礎的な科学的知見を社会に実装していくうえでの、造園学、建築学、土木工学との接点について概観する。
【コマ主題細目①】『景観生態学コマシラバス』
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.Iii~6貢.

【コマ主題細目②】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.7~11貢.

【コマ主題細目③】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.11~15貢.
コマ主題細目 ① 景観生態学の概要 ② 景観生態学と社会 ③ 景観生態学と周辺学問領域
細目レベル ① 景観(landscape)は「任意の空間スケールにおいて認識されるパッチ、コリドー、マトリックスが、相互に関係しあう生態的システムを形成している状態」と定義される。
「任意の空間スケールにおいて」との断り書きがあるのは,上述のように私たちがどのような高さから空間を眺めるのかによって把握することができる空間の広がりや空間構成要素の最小サイズが異なるからである。宇宙から地球全体を見渡すと、森林、砂漠などの非森林地、大湖、海洋に区分して見ることができる高度を下げていくと、草地、大河川、大都市などが見えてくる。ロシアやカナダの北方林地帯やアフリカや南米の熱帯林地帯では、広大な森林の中に小さな集落や草地が点在する。さらに地表面に近づくと、小河川、公園緑地、並木、家屋まで見分けることができるようになる。このように、私たちが把握・認識する景観は、空間をどのようなスケールで捉えるかに依存している。それぞれのスケールで景観を見たとき、内部が均質だと認識できる最小の空間単位のうち、面として把握されるもの(例えば、森林や草地)はパッチ(patch)と呼ばれ、線として把握されるもの(例えば,河川や並木)はコリドー(corridor:生態的回廊)と呼ばれる。さらに、パッチやコリドーを浮かび上がらせる背景となる空間(例えば広大な森林や草原・耕作地)はマトリックス(matrix)と呼ばれる。「景観の構造(structure)と機能(function)との関係、それらの変化と社会との関係を科学的に明らかにすること、そして、その科学的成果を用いて生態学的により良い土地利用のあり方を提示すること」を目的とする学問分野が「景観生態学(landscape ecology)」である。

② 私たちは生態系から様々な恵みを受けつつ暮らしているが、そのような恵みをもたらす景観の構造を明らかにすることは景観生態学の大きな目的の一つである。人間にとってかけがえのない生態系サービスを得るためには、生態系が健全な状態で維持されなければならず、そのためには、生物間の相互作用を含めた「生物多様性(biodiversity)」が保持されなければならない。 景観生態学が目指すのは景観構成要素としての生態系が提供してくれる4つの生態系サービスのどれをも損なうことなく、持続的に得ていくことができる土地利用のあり方である。景観生態学では、景観の構造と機能の関係を把握し,景観構造の変化によって機能がどのように変化するのかを提示すること、すなわち、景観のパターンとプロセスを明らかにすることで持続可能な土地利用のあり方の科学的根拠を示す。ただし、その景観が発揮できる潜在的な「機能」のうち、どれを人が「サービス」として重視し選択するかは、その地域の人々が土地に見出す「価値」によって変わる。人がサービスを得ようとするとき、景観に働きかけ、その構造を変化させる。景観生態学の科学的成果は、景観の基層を扱う学問領域の成果を取り込みながら造園学・建築学・土木工学領域に「デザイン」を通してつながれ、地域社会で実践される。
③ 景観はそれぞれの地域における人の働きかけの強度や頻度と、その土地がもつ復元力とのバランスの結果として出現し維持され、変化してきている。景観は自然と人・文化との相互作用の結果を表出しているのであり、社会一生態系(social-ecological system)として把握する視座をもつことも求められる。人を主体とした空間や景観の構造は人文地理学の研究対象とされてきた。人文地理学では生活者自身がもつ独自の環境観に基づく環境利用のあり方を理解し、そこにどのような利用の仕組みがあるのかを明らかにする研究が行われてきている。人が直接経験することによって認識される「環境」を主体から見たものとして理解しようとする現象学的な立場から、人々の空間認識や景観の構造の変化を解明しようとする現象学的地理学や人文主義地理学の研究もある。景観生態学は人間一自然一文化の複合的アプローチを採用すべきだとして、景観の概念を拡張するための語として「景相」を提案した。生態学は基礎的な部分では,生物・生態系の空間分布を扱う「生態学」,地質・地形の空間配置を扱う「地質・地形学」、人による空間認識を扱う「地理学」、また「風土論」と接点をもつ。そして、自然の側から人の暮らしを見ながら、自然の過程や風土に無理なく寄り添う形で地域社会を維持していくための考え方や手法・技術を提示していこうとする.こうした応用的な部分で、景観生態学は「造園学」、「建築学」、「土木工学」などでの「景観計画」や「景観デザイン」と接点をもつ。
キーワード ① 景観の構造と機能 ② 空間階層性 ③ 社会科学との連携 ④ 景観計画 ⑤ 景観デザイン
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の該当ページを読む。そのうえで、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。また、この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。

【このコマを受けた後の復習課題】
講義で学んだ景観生態学の概要をもとに自らが目指す進路、就職において景観生態学がどのように関わりうるか検討する。併せて、日本景観生態学会企画交流委員会による解説セミナー『景観生態学の歴史』(https://www.youtube.com/watch?v=hSs7A920_rw)の視聴を推奨する。また、日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の該当ページを読み、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

2 景観生態学の理論① 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第一部の第二回の講義では、景観生態学の理論を学ぶ。生態学は他の自然科学と同様に普遍性を追求するために、均質な空間を仮定して発展した、しかし、現実の世界は複雑で多様な景観で満ちている。景観は、気候、地形、土壌などの非生物的要因、洪水など自然攪乱、植生遷移など生物的な要因、人間による土地利用など様々な要因によって形作られる。景観パターンの違いは、物質の移動、生物の種組成、個体数変動など生態系のプロセスに影響する。景観のパターンとプロセスは場所ごとに異なっているが、共通する法則が存在するはずである。本コマでは、景観のパターンとプロセスがいかに生じるか、また時間や空間の不均質性が景観全体で生じる自然現象の安定性や復元性にどのように関わっているかを紹介する。
【コマ主題細目①】『景観生態学コマシラバス』
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.31~33貢.

【コマ主題細目②】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.34~36貢.

【コマ主題細目③】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.36~39貢.
コマ主題細目 ① スケールとパターン ② 空間パターン ③ 空間・時間的な不均質性とプロセス
細目レベル ① スケールの概念は生態学において1980年代に急速に重視されるようになった。理由の一つは、人工衛星による地上観測や地球規模での環境問題の顕在化によって、観測範囲を拡大すると小さな範囲では認識できなかった現象が生じていることがわかってきたことである。例えば、数十メートルの範囲で植生を調べると、何種かの樹木から構成される森林だと記録された場所であるが、調査範囲を数キロメートルに拡大すると、森林だけでなく草地や池が含まれるかもしれない、逆に範囲をもっと小さく数ミリメートルにすると樹木は見えず、根や菌糸が網の目状にあるのが見えるだろう。空間スケールによる現象の違いは、時間スケールと対応している。小さな空間スケールで生じる現象は、より頻繁に生じ、影響が後に残りにくい。一方、大陸移動のような大規模な空間スケールのできごとは、数億年の時間をかけて進行する。これは人間について考えてみると概念として捉えやすい。細胞レベルの出来事は一瞬だが、影響は小さい。人間一人が行動を変化させることは中規模のものであり、すぐに変化させることができる。一方、人間社会を変化させることは大規模な変化が必要であり時間を要する。こうした時空間のスケールを表現する際には、「範囲(range)」と「最小単位(grain size、解像度)」という2つの属性を用い、パターンの発現には両者が関わっている。範囲はどの程度の範囲を対象とする現象なのか?自分の研究や事業はどの程度の範囲を扱うのか?といった研究対象全体のことである。例えば、気候変動のように広域で生じる現象を対象とする場合には、空間的には広く時間的には長期間を対象とする必要がある。最小単位はデータを取得する単位のことであり、最小単位以下のサイズで起こる現象は認識することはできない、そして、範囲と最小単位の間には費用や能力に制約がある限り、トレードオフの関係がある。
② 衛星画像などで地上を見ると、様々な形の土地や水面が組み合わさっている。こうした空間配置をパターンとして捉えることができる。最も単純な空間パターンは、2種類の土地の組み合わせである。景観の背景となる広く連続した土地被覆をマトリックス(matrix)、その中にあるマトリックスと異なる土地被覆をパッチ(patch)、マトリックスと異なる線状の土地被覆をコリドー(corridor:生態的回廊)と呼ぶ。3者の頭文字をとって、PCMモデルとも呼ばれる。空間パターンには、様々な属性が存在する。それぞれのタイプの土地の面積率、パッチやコリドー、マトリックスの特徴などであるパッチの属性としては、サイズ、形、個数、配置、連結性がある。PCMモデルでは、パッチは種にとって好適な生息・生育地(habitat:ハビタット)として、マトリックスは不適当な環境として、それぞれ描かれることが多いが、実際には両者の違いは様々である。マトリックスが多くの種にとっての生息・生育地となる例は多い。例えば、アマゾンの残存する熱帯雨林のパッチに生息する鳥の70%が周囲のマトリックスも利用していたし、ジャワの孤立林に生息する鳥の種は、孤立林周囲のマトリックスの鳥相を反映していた。Diamond et al.(1987) はこれを生態的コンテクストと呼んだ。また、パッチとマトリックスの境界がゆるやかに推移する推移帯(エコトーン:ecotone)の存在も重要である。
③ 空間パターンが生じる原因は3種類に分けられる。すなわち、(1)基盤の不均質性、(2)自然攪乱、(3)人間活動である。基盤の不均質性とは、地質や地形の違いなどである。蛇紋岩や石灰岩などが地表面に露出している環境では、土壌が存在しないため、特殊な植物しか生育できない。これらの基盤岩は風化して地形に高低差を生み、削られた土砂は水流で運ばれて堆積し、平野をつくる。また、尾根は土壌が薄く、谷では厚い。このような土壌の差は植物の生育に大きな影響をもつ。極端な例として、ニューカレドニアでは重金属を大量に含む超苦鉄質土壌が広大な面積を占めており、ほとんどの植物は生育できない。そのため、固有種のみが生息する独自の植生が成立している。攪乱(disturbance)は「外部の要因によって引き起こされる、関心のあるレベルの最小構造の変化」であり、「不連続なできごとで生態系、生物群集、個体群の構造を混乱させ、資源利用や物理環境を変化させるもの」である。自然攪乱には、噴火、火災、暴風、氾濫などがある。これらの自然攪乱は景観の不均質性をもたらす。景観の不均質性を生じさせる人間活動には森林伐採や火入れ、耕作、道路などがある。攪乱は生物間相互作用にも影響する。場所や資源を共有する種間には競争排除が働き、共存できないことが多い。しかし、攪乱によって競争的に優勢な種が減少し、劣位の種の生息が可能になることがある。その結果、群集中の種数が増加する。これを中規模攪乱説(intermediate disturbance theory)という。
キーワード ① スケール ② 空間パターン ③ 中規模撹乱仮説 ④ PCMモデル ⑤ 生態的コンテクスト
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の31~39貢を読む。そのうえで、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。また、この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。

【このコマを受けた後の復習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の31~39貢を読み、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。特に、本コマで学んだ用語は景観生態学の基礎としてあらゆる場面において用いられる重要な概念である。登下校時などの普段の生活の中で目にする景観(森林、都市、河川など)のどの部分がパッチやコリドー、マトリックスに該当するのか、身の回りの景観はどのような要因によってそこに成立しているのかを常に意識し、自身が生活する景観を改めて捉えなおすように試みること。

3 景観生態学の理論② 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第一部の第三回の講義では、前回に引き続き景観生態学の理論を学ぶ。生態学は他の自然科学と同様に普遍性を追求するために、均質な空間を仮定して発展した、しかし、現実の世界は複雑で多様な景観で満ちている。とくに景観は時空間的に変動し、こうした変化には回復力であるレジリエンス、空間の不均質性、生物間相互作用が強く影響する。景観生態学におけるもっとも代表的な理論である島嶼生物地理学モデルを中心として、景観のパターンとプロセスがいかに生じるか、また時間や空間の不均質性が景観全体で生じる自然現象の安定性や復元性にどのように関わっているかを紹介する。
【コマ主題細目①】『景観生態学コマシラバス』
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.39~40貢.

【コマ主題細目②】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.40~44貢.

【コマ主題細目③】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.40~44貢.
コマ主題細目 ① レジリエンス ② 空間の生態学と景観生態学 ③ 島嶼生物地理学モデル
細目レベル ① レジリエンス(回復力)とは災害や故障などが発生した場合の回復力のことである。東日本大震災や気候災害の激甚化を受けて、レジリエンスに対する関心が様々な分野で高まっている。レジリエンスの構成要素にはシステムやハードが発揮する外力に対する強さ(頑健性)、部分やシステムが故障した際にその代用となるものを確保しておくこと(冗長性)、問題が発生した際に、その原因と対応策の優先順位を決めて資源と人員を動かすこと(臨機応変性)、被害拡大を抑えるために迅速に対応策と復旧を進めること(迅速性)がある。生態学的存在が分布・量・機能を攪乱以前の状態に回復する生態系レジリエンス(ecosystem resilience)においてもこれらの概念が重要である。植生遷移のように、生態系は攪乱から時間をかけて回復するものと考えられている。ただし、生態系は単一の平衡状態にあるのではなく、複数の平衡点が存在し得るため、回復された生態系は元の生態系とは異なる可能性がある。これを多重定常状態(multiple steady states)という。
② 初期の生態学は均質な空間を仮定して理論化されてきた。しかし、理論の再現には実際には空間の不均質性が重要な役割を果たすこともある。たとえば、捕食者‐被食者の個体群動態を示すモデルとして、Lotka-Volteraモデルがある。このモデルでは捕食者が増えると被食者が減り、被食者が減ると捕食者も減る、捕食者が減ると被食者が増えるという関係性により周期的に両者の個体数が変動することが予測される。これを再現しようとしてGauze(1935)が実験を行ったが、均質な空間では捕食者か被食者かのいずれかあるいは両方が絶滅する結果しか得られなかった。一方、Haffaker(1958)は空間の不均質性を持ち込むことで捕食者と被食者が生存するシステムの持続性を実現した。彼はオレンジを餌とするハダニとそのハダニを食べる捕食性ダニを用いて、平面上にオレンジとゴムボールを配置して不均質な空間で実験を行い、両種が持続的に変動する系をつくり出すことに成功した。
③ 生息・生育地によって種数が異なる理由について、空間の不均質性を考慮せずに研究を進めることはできない。例えば、どの種も一様に分布していれば、面積が増加しても種数は変化することはないはずである。面積と種数の関係についてはいくつかの仮説があり、静的な状態を考えるものと、動的な状態を考えるものがある。広い面積の生息・生育地では環境が多様になるという説明は、静的モデルの例である。動的モデルの例として、島の種数は新規の移入と絶滅のバランスによって決まるという島嶼生物地理学モデル(MacArthur&Wilson 1967)がある。さらにLevins(1969)は島状に孤立した生息・生育地に関するメタ個体群モデルを提案した、メタ個体群とは、多数のパッチ状の生息・生育地があって、一部のパッチに局所個体群が分布しているような構造のことである。Levinsは、局所個体群の絶滅と他のパッチからの移動による回復がある確率で生じると仮定して、すべてのパッチのうち局所個体群によって占有されているパッチの割合がどのように変化するかを説明するモデルを考えた。
キーワード ① 生態系レジリエンス ② Lotka-Volterraモデル ③ 環境収容力 ④ メタ個体群 ⑤ エコロジカルトラップ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の39~44貢を読む。そのうえで、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。また、この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。

【このコマを受けた後の復習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の39~44貢を再読し、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。特に、本コマで学んだ用語はあらゆる分類群において当てはまりうる極めて一般的な概念である。登下校時などの普段の生活の中で目にする景観(森林、都市、河川など)のどの部分がどのような攪乱を受けて現在成立しているのか考えてみること。そして、自身が興味のある無脊椎動物、昆虫、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類について、それらがどのような生物間相互作用によって個体数を変動させ、現在その景観に生息しているのか考えること。

4 空間情報収集ツール 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第四回の講義からは第二部としてより実践的な景観生態学の手法を学ぶ。景観生態学では生物と環境や人間との相互関係を空間的に分析することが多い、広域スケールでは、人工衛星や航空機から情報収集するリモートセンシングが用いられることが多く、地上あるいは地表付近における詳細スケールで利用可能な技術としては、GNSSやUAVなどがある。また、絵図や地図、空中写真、生物標本を用いた過去の景観や生物の情報も景観生態学に有用である。さらに、自然に対する人間の意識や関わり方には社会調査法が用いられる。得られた空間情報はGISによって視覚化され、分析されることが多い。本コマでは、これらの情報の特徴や収集・分析方法を解説する。
【コマ主題細目①】『景観生態学コマシラバス』
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.46~49貢.

【コマ主題細目②】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.49~51貢.

【コマ主題細目③】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.52~54貢.
コマ主題細目 ① リモートセンシングによる空間情報の収集 ② 地上や地表付近における空間情報の収集 ③ 景観や生物に関する過去の情報の収集
細目レベル ① リモートセンシング(remote sensing)とは「遠隔から接触することなしに物体の情報を取得すること」をいう。特に、人工衛星や航空機などから地上を観測することをリモートセンシングと呼ぶことが多い。
リモートセンシングの特長は、(1)地上の物体の情報を非破壊・非接触で取得できること(非破壊性・非接触性)、(2)広域を同時に観測できること(広域性・同時性)、(3)反復して観測できること、特に人工衛星の場合は定期的に観測できること(反復性)、である。広域を同時に調査することは、地上フィールド調査ではほとんど実現不可能であるが、リモートセンシングでは容易に可能である。そのため、広域の空間情報が必要になる景観生態学において、リモートセンシングは有力な情報取得の手段である。光学リモートセンシングでは、植生抽出や土地被覆分類(landcover classification)を行うことができる。例えば、衛星画像から植生を抽出して、パッチ、コリドー、マトリックスに分類し、パッチの大きさやパッチ間の距離、コリドーによる連結性などを評価することができる。

② 景観生態学では、比較的広域を対象に生物の分布情報などを収集し、環境要因との関係を地理情報システム(GIS)を使って空間解析することがよくある。そのため、生物の確認地点や踏査ルートなどの位置情報を効率的に収集する必要がある。そこで威力を発揮するのが衛星測位システム(Global Navigation Satellite System: GNSS)である。なお、広く知られているGPSは米国の運用するGNSSである。数万円程度で入手できる簡易GNSSを使えば、生物の確認地点や踏査ルートなどを容易に記録できる。近年新しい技術として登場したのがドローンなどの無人航空機(Unoccupied Aerial Vehicle: UAV)で、様々な環境調査に応用されている。衛星画像や空中写真と比較したUAVの利点は、高い地上分解能と適時性、低コストに集約される。UAVは航空機より低い高度(法定では150m以下)で飛行するため、画像の地上分解能が高く、より詳細なものまで判読できる。UAVとフォトグラメトリを使う方法は景観生態学の情報収集に革命をもたらしたが、その技術は写真測量をベースにしているため、森林内の情報など画像に写らないものは当然、データ化できない。しかし、UAVにセンサーを搭載する際に使われるジンバル(スタビライザ)を取り付けたカメラを持って歩きながら撮影し、フォトグラメトリで処理すれば、UAVの画像と同様の手順で林床のDSMやオルソモザイク画像を取得できる。この方法を使えば、樹木の幹の位置や実生の分布、草本層の被度などをデータ化することができ、従来の方形枠を使ったサンプル調査とは異なる空間的に連続したデータを取得できる。
③ 現在の景観をより良く理解するには、その景観の変遷や管理履歴などの過去の情報も有用である。過去の景観は、絵図や地図、空中写真などを利用することで、ある程度推測することができる。日本において正確で広域的な地図が作成されるようになったのは明治時代以降であり、江戸時代以前の景観は絵図から推測されることが多い。絵図には、近代的な地図が一般化する前の中世・近世につくられた空間についての図的表現がすべて含まれる。絵図には年貢高の調査や治水工事のための測量などの何らかの作成目的があり、現代の地図のように全体を概観するために描かれたものは少ない。そのため、まずはその絵図について、だれが、いつ、何の目的で、どのようにして、なにを描いたのかを精査する必要がある。
採取場所や時期の情報をもつ生物の標本は、いつ、どこにどんな生物がいたのかを示す重要な在データである。100年以上前から蓄積されてきた生物標本のデータは、外来種の侵入スピードの推定や気候変動による開花時期の変化など、環境変化に対する生物の応答評価などに用いられてきた。かつては、生物標本は各地域の自然史博物館の標本庫などを訪れないと確認することができなかった。現在では、日本の自然史系博物館などが所蔵する生物の標本情報は、独立行政法人国立科学博物館が運営するポータルサイトに集められており、検索や閲覧が可能である。また、地球規模生物多様性情報機構(GBIF)のウェブサイトでは世界中の自然史系博物館の標本情報に加えて、世界各地で観察された動植物の情報や文献からの生物情報が集約されている。

キーワード ① リモートセンシング ② 地図 ③ 空中写真 ④ 生物標本 ⑤ GIS
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の46~54貢を読む。そのうえで、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。また、この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。

【このコマを受けた後の復習課題】
本景観生態学会企画交流委員会による解説セミナー『GISを用いた空間情報の分析』(https://youtu.be/8Rx8Vm0fMGo?feature=shared)の視聴を推奨する。日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の46~54貢を再読し、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。本コマではweb上で活用できる具体的なアプリケーションやポータルサイトを紹介した。自身でもそれらのサイトにアクセスし、どのような空間情報を利用することができるのか確認する。そのうえで、自身の興味のある生物群の景観生態学的研究を行う場合にそれらのツールをどう活用できそうか考えをまとめる。

5 個体数・種分布の調査 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第二部第五回の講義では、景観生態学における調査手法を学ぶ。生物を対象とする景観生態学的研究においては、個体数・種分布の調査を行うことが必要である。その際には様々な専門用語を正しく理解することが必要である。さらに調査の設計にあたっては、調査目的、範囲、サンプリング戦略、調査手法、目的を丁寧に検討し、目的に対応し実施可能な調査を設計することが必要である。本コマでは用語と調査設計手法、調査方法を解説することで、景観生態学的研究の実践において不可欠な調査設計手法を学ぶ。
【コマ主題細目①】
Sutherland, W. J., Newton, I., & Green, R. (2004). Bird ecology and conservation: a handbook of techniques (Vol. 1). OUP Oxford. 1~2.1

【コマ主題細目②】
Sutherland, W. J., Newton, I., & Green, R. (2004). Bird ecology and conservation: a handbook of techniques (Vol. 1). OUP Oxford.2.2.

【コマ主題細目③】
Sutherland, W. J., Newton, I., & Green, R. (2004). Bird ecology and conservation: a handbook of techniques (Vol. 1). OUP Oxford.2.3~2.4.
コマ主題細目 ① 調査に関する用語 ② 分布調査の設計 ③ 生物分布の調査方法
細目レベル ① 生物を対象とする景観生態学的研究においては、個体数・種分布の調査を行うことが必要である。これらの調査を設計し、実施する際にはサーベイ、センサス、モニタリング、アトラス、正確度、精度、バイアスといった用語を正しく理解することが必要である。サーベイ(Survey)とは限定的な事前調査に基づいて広範囲を多種について簡便な調査を行うものである。一方、センサス(Census)は限定的な範囲において目的とする少数の種について集中的な調査を行うことである。サーベイの一部としてセンサスが用いられることもある。モニタリング(Monitoring)とは繰り返し調査を行うことで経時的な変化をとらえることである。一般的にはサーベイの一種とされる。アトラス(Atlas)は種の分布図を作成するための調査、および分布図集のことである。
 正確度(真度・Accuracy)は推定値がどれだけ真値に近い値となっているかということである。例えば実際には500羽のオウムが生息している場所に何羽が生息しているか推定した結果が510羽であれば正確な推定ができたと判断される。一方、推定値が2000羽になっていれば不正確な推定になっていると判断される。また、精度(Precision)は推定値が互いにどれだけ近い値となっているかということである。例えば実際には500羽のオウムが生息している場所を5回カウントした場合に490羽、495羽、500羽、505羽、510羽というカウント結果であれば高精度な調査が行えていると考えられる。一方、100羽、400羽、500羽、600羽、900羽というカウント結果の場合、極めて低精度である。
 バイアス(系統バイアス)は推定値(観測値)と真値の間にある「偶然できたものでないズレ」のことであり、不正確さともいえる。現地調査方法、調査の労力と速度、生息地、生物の密度、時間帯、季節、天候、二重カウント、観察者のスキルなど、あらゆる要因がバイアスにつながる可能性がある。

② 分布調査の設計にあたっては、①何が目的の調査なのか、②どこを調査するのか、③どういうサンプリングをするのか、④どれくらいの解像度で調査するのか、⑤どういった調査手法をとるべきか、といった項目を丁寧に検定することが必要である。目的は、開発によって影響を受ける種のアセスメント、保護区の設計、どの種を保全すべきかの優先順位の決定などといったものである。目的に曖昧さや不確実性があると、時間と費用を浪費し、結果の有用性を制限することになりかねない。よくある失敗例として、必要以上の量の情報収集を優先し、調査精度に支障をきたすことがある。目標、それを達成するために必要なデータ、これらのデータを収集するために必要な時間をリストアップし、目標を再検討して優先順位をつけることが必要である。どこを調査するかは、目的によって異なる。国、県、市、島など明確な境界が設定できる場合、調査範囲は自明である。ただし、対象種が明らかにいないだろう場所を調査範囲に含めるべきかは熟考が必要である。全域センサス(真のセンサス・True census)決めた範囲全域で生物の個体数を調査する。サンプリングとは調査範囲の一部(サンプル)を選んで調査することである。個体数や分布については推定値と誤差を統計学的に算出する。サンプリング手法には①ランダムサンプリング(Random Sampling)、②ランダム層別サンプリング(Random stratified Sampling)、③レギュラーサンプリング(Regular Sampling)があり、これらを理解して戦略を立てて調査を設計することが必要である。研究の解像度は目的と実現可能性によって異なる。最小単位を小さくして、解像度を高め、できるだけ多くの場所を調査すれば、より詳細な状況を評価できる。ただし、調査者は何人集まるのか、予算はあるのか、自分の研究目的に応じて設計することが必要である。最後に、調査法の特性を理解し、調査を行う季節と時間帯、各サンプルプロットまたはエリアへの訪問回数、推奨される調査方法、記録項目を決め調査を行う。
③ 生物分布・個体数調査の例として、鳥類のポイントトランセクト、テリトリーマッピング、カウント調査について紹介する。ポイントトランセクトは、観察者はあらかじめ定められた地点で停止し、鳥が落ち着くまで時間を置き、その後、設定時間内に見聞きした鳥をすべて記録する方法である。推奨される調査回数は、毎シーズン最低2回、最高4回である。調査時間:1地点10分程度とし、カウント時間は5分または10分とし、初期設定時間を1分とする。その他注意事項として、長い時間カウントする場合、最初の5分間と後半の5分間に記録された鳥を別々に記録することが推奨される。また、観察者と鳥の距離を分けて個体数を記録することが推奨される。
テリトリーマッピングは生物の縄張りを記録する症である。温帯の繁殖期には、多くの鳥が比較的狭い地域に限定され、活発に縄張りを守ったり、巣の周りで多くの時間を過ごしたりする。ある地域を何度も訪れ、鳥の正確な位置を地図上にプロットすれば、それぞれの種のペアやテリトリーの総数を直接推定することが可能になる。テリトリーマッピングでは各サイトに最大10回訪れて調査することが推奨される。記録する量が多いため調査時間がかかり、狭い範囲しかカバーできない。また、鳥類を識別し記録するための高度なスキルが必要である。結果の解釈も難しく、主観的になりやすい。カウントは鳥の個体数を数える調査である。鳥類の約15%は、崖、樹上、地上、洞窟、穴などのコロニーに巣を作る。このため、鳥類は一般に目立つ集合体に集まっているので、数えやすいという面もある。しかし、コロニーで鳥を数えることには問題もある。最も重要なステップは、何を数えるのかを決めることである。鳥の総数、繁殖ペア数、巣の数などの何を対象にするのかを目的に応じて決めねばならない。また、コロニー内の鳥の数は時間および年間を通じて大きく変動することがあるので、異なる時間帯や季節に何度かカウントすることが必要な場合がある。

キーワード ① センサス ② サーベイ ③ 正確度 ④ 精度 ⑤ バイアス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
オンラインシステムに事前掲示されるコマ用プリント配布資料を読み、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。

【このコマを受けた後の復習課題】
本コマで扱った概念はあらゆる野外調査において基本となる考え方である。そのため、自身の興味のある生物群(無脊椎動物、昆虫、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)や地域において、実際に調査を行うことを想定し、どのようなサンプリング戦略に基づいてどのような調査を実施するか例示してみること。これにより、自身が理解できていない概念が明確になる。そののちに、コマ用プリント配布資料を再読し、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。

6 種分布モデル 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第二部第六回の講義では、種の分布を解明し、種にとって必要な生息・生育地を明らかにするための種分布モデルについて学ぶ。さらに、α多様性、β多様性、γ多様性という3つの多様性とその具体的インデックス、ホットスポットについて学ぶことで景観生態学的視座からの保護区設計について理解する。
【コマ主題細目①】『景観生態学コマシラバス』
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.42~43貢.
Antoine Guisan et al. (2017)『Habitat Suitability and Distribution Models With Applications in R』.久保田ほか(訳).2020. 野生生物の生息適地と分布モデリング: Rプログラムによる実践.共立出版.21~48貢.

【コマ主題細目②】
Antoine Guisan et al. (2017)『Habitat Suitability and Distribution Models With Applications in R』.久保田ほか(訳).2020. 野生生物の生息適地と分布モデリング: Rプログラムによる実践.共立出版.49~56貢.

【コマ主題細目③】
リチャード B プリマック,小堀洋美(2022)『保全生物学のすすめ』文一総合出版.24~34貢.
コマ主題細目 ① ニッチ ② 種分布モデル ③ 生物多様性
細目レベル ① ニッチとは、ある生物が生態系のなかで占める地位のことであり、景観生態学では生物が生息する環境や空間として表現される。ニッチは非生物学的環境と生物学的環境から評価される。
非生物学的環境とは生物の生理的機能によって生息を制限する要因であり、気温、湿度、降水量、日照などがあげられる。一方、生物学的環境とは種間相互作用によって分布を制限する要因である。例えば、片利共生、相利共生、生物的エンジニアリング、競争排除、捕食、寄生など様々な生物間の相互作用が生物の分布には影響する。生物のニッチは、ある種が理論上、存続できる環境を示す基本ニッチ(fundamental niche)とある生物が実際に野外で占めている基本ニッチである実現ニッチ(realized niche)とに分けられる。非生物学的環境のみを考慮した場合、多くの生物は潜在的には広い環境に生息することが可能である。しかし、多くの場合生物間相互作用によって分布が制限されるため、実際に生息する環境は狭い範囲となる。

② 生物多様性の保全のためには、種にとって必要な生息・生育地を明らかにすることが必要である。生物の分布を環境から説明しようとした歴史は古く、気温や降水量と植生や植物種の分布との関係が調べられてきた。1970年代になって、社会的な生物保全の要請のもとで、種分布モデル(SDM: species distribution model)の研究が増加し始めた。保全策を講じるためには、現在の保護区で生物多様性がどれだけ保護できているか知ることが必要であるし、新しい保護区を計画する際に生息・生育地として適した面積がどの程度含まれるか知ることが重要である。分布を推定するには、対象生物の分布と環境の関係を知らなければならない。科学的な再現性のためには、実際の生物の分布や個体数の情報と、その分布に影響を及ぼしていると想定される要因を用いた、統計モデルの構築が必要である。
③ 生物多様性条約において、生物多様性とは「すべての生物(陸上生態系、海洋その他の水界生態系、これらが複合した生態系その他生息又は生育の場のいかんを問わない。)の間の変異性をいうものとし、種内の多様性、種間の多様性及び生態系の多様性を含む。」と定義される。本学科の他の講義において学んできた通り、生物多様性の保全では生態系の多様性、種の多様性、種内の多様性を考慮することが重要であるが、最も多く用いられる指標は種の多様性である。多様性の評価には3つの多様性を用いることが必要である。まず、場所内の多様性はα(アルファ)多様性と呼ばれ、その場所の種数と個体数の組み合わせから評価される。場所間の違いはβ(ベータ)多様性である。そしてα多様性とβ多様性を組み合わせた全体の多様性をγ(ガンマ)多様性と呼称する。α多様性についてはシンプソンの多様度指数やシャノン・ウィナーの多様度指数が具体的計算方法として用いられる。β多様性についてはJaccard 距離が多く用いられる。景観生態学においてはこれらの指標に基づく評価のみでなく、空間的な生物多様性の偏りを評価し、地図化し、優先的に保護すべき対象を示すことが求められる。たとえばホットスポットとは、地球の陸面積の1.4%にあたる場所に陸域生物種の60%以上が集中して生息するという、極めて生物多様性が高い生態系であるにもかかわらず、著しくその生態系が破壊の危機に瀕している地域であり、日本もその一つに含まれている。
キーワード ① 基本ニッチ ② 実現ニッチ ③ α多様性 ④ β多様性 ⑤ γ多様性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
オンラインシステムに事前掲示されるコマ用プリント配布資料を読み、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。またこれまでに受講した科目の中で生物多様性について扱った回の資料をもとにその意味と概念を復習する。

【このコマを受けた後の復習課題】
本コマで扱った種分布モデルは保全の現場と調査研究において極めて一般的なツールである。本講義資料をもとに、自身の興味のある生物群(無脊椎動物、昆虫、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)の1種以上について、具体的にどのような要因によってその分布と個体数が影響されていそうか整理する。そのうえで、これまでの講義で扱った調査方法の設計、リモートセンシング等による環境情報の収集を行った場合に、どのように分布を推定できそうか例示してみること。これにより、自身が理解できていない概念が明確になる。そののちに、コマ用プリント配布資料を再読し、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。

7 森林の景観生態学 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第三部第七回の講義では森林景観について学ぶ。森林を中心とする景観は、古来より人間活動による影響を強く受けてきた。本コマでは、森林の小面積化、分析、孤立、林縁の形成、モノカルチャー化など、人間が引き起こす森林景観の構造変化を概観し、景観変化に伴う生物多様性や生態的なプロセス・機能の変化、およびこれらを踏まえた森林景観管理の自然科学的方法論について解説する。また、伝統的な地域資源の持続的利用形態である里山の萌芽林管理と、地域の人々によって集積・維持されてきた森林の伝統的知識について、その意義や今後のあり方を解説する。
【コマ主題細目①】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.74~77貢.

【コマ主題細目②】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.77~80貢.

【コマ主題細目③】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.80~84貢.

【コマ主題細目④】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.84~86貢.
コマ主題細目 ① 森林の分断・孤立と生物多様性 ② 林縁効果 ③ 人工林問題と景観生態学 ④ 里山の萌芽林
細目レベル ① 森林景観の変化は、森林の全体的な劣化・消失と、部分的な森林の変革による空間構造の変化の2つに大別できる。これらの変化は自然要因によっても引き起こされるが、開発や土地利用の改変など人間活動による景観変化は、自然要因に比べて生物多様性や生態系サービスへのインパクトが強いものが多い。自然の森林景観は本来、不均一な空間構造を有している。不均一性は、景観全体の生物多様性の維持や生態系サービスの発揮に貢献している。人為的な景観構造の変革は、自然に形成される不均一性をまったく異質なものに変化させる。例えば大規模な土地開発による森林の消失は、本来の森林景観の不均一性をすべて消失させる。森林状態が維持される場合でも、単一樹種による人工林造成は景観の不均一性を著しく低下させる。一方、景観内の部分的な森林の消失・劣化は、本来の不均一性とは別の形で景観構造を不均一化する。森林の一部が消失すると、森林と非森林という不均一な要素が生まれ、森林面積が減少する(小面積化)。森林の消失が面的に広がると、残された森林は互いに分断されたパッチとなる(分断、断片化:fragmentation)。さらに森林の消失が進んで分断された森林パッチ間の距離が広がると、パッチ間の相互作用が失われ、各パッチは生態学的に孤立(isolation)する。戦後の日本の林業は大面積皆伐と一斉造林が主流であったが、近年は生物多様性や生態系サービスの劣化の反省から「多様な森づくり」が志向されている(林野庁、2020)。これを景観レベルで実現するためには、本来の景観の不均一性を考慮した森林配置が重要であり、生態学的な立地区分が必要である。また、木材生産林でもすべての樹木を伐採せず、いくつかの樹木を残し続ける“保持林業(retention forestry)”が各国で実践されている。保持林業は、木材を収穫しつつ他の生態系サービスと生物多様性を保持する管理方法である。樹木個体ではなく小面積の森林パッチが保持される場合は、生物学的遺産が景観レベルで保持され、景観構造の不均一性もある程度維持されることから、木材生産を主目的とする森林景観の管理で有効な手法の一つと期待される。
② 林縁(forest edge)は森林の縁(ふち)のことである。土地被覆図や植生図では、異なるパッチの境界(boundary)として線で描かれ、林縁長や林縁の形状を規定する。この時、林縁は林冠の切れ目を意味することが多い。しかし、実際の林縁は単なる線ではなく空間的幅(範囲)をもっており、森林パッチ内部とは異なる環境をもつ部分と定義される。よく似た言葉に推移帯(エコトーン)という用語があるが、これはパッチ境界部における環境の推移部分のことであり、林縁をエコトーンと呼ぶこともある。林縁の幅は林縁タイプ(パッチの組み合わせ)によって異なり、またたとえ同じ場所であっても、林縁が形成されてからの時間によって変化する。
 林縁が形成されると、境界付近で森林内部とは異なる様々な生態的作用が働く。これは林縁効果(edge effect)と呼ばれる。林縁効果には、物理的(非生物的)効果と生物的効果がある。林縁形成によって境界付近の微気象は大きく変化する(物理的効果)。この物理的効果に対して、特に植物が直接的な反応を示すことで植生が変化する(生物的効果)。林縁における動物の行動や群集構造の変化は、植生の変化に反応した間接的な林縁効果といえる。

③ 日本の人工林率は41.1%である。この数値は世界合計値の7.3%に対して非常に高い。日本の人工林の拡大は、第二次世界大戦後の造林政策によるものである。荒廃地の造林に加え、1950年代後半から木材生産の増強を目的として天然生林を人工林へと転換する拡大造林政策が推進された。拡大造林政策は、里山の薪炭林だけでなく奥地の老齢天然林までも対象としたことから、人工林は日本全土に拡大した。日本の人工林は主に針葉樹の同齢単層林であるため、地域の生物多様性が著しく低下するなど様々な問題が指摘されている。木材供給サービスに特化して拡大した人工林をどう管理するかが、持続的森林管理(様々な生態系サービスを高い水準でバランスよく長期的に維持できる森林管理)を達成するうえで大きな課題となっている。持続的森林管理に向けた人工林配置をデザインするためには、自然立地条件と生態系サービスとの関係を把握する必要がある。立地条件によって生態系サービスのポテンシャル(例えば、成長の良さや災害の発生確率など)が規定され、その場所に実際に成立している森林の構造によってそのポテンシャルがどのように発揮されるかが変わる。生態学的立地区分(Ecological Site Classification: ESC)は、生態系サービスのポテンシャルに関わる立地条件を生態学的に評価する手法である。景観生態学の観点から人工林のゾーニングを考えれば、木材生産のポテンシャルが高い場所に人工林を配置し、その他の生態系サービス(山地災害防止、生物多様性保全など)が重要な場所には自然林・半自然林を配置するのが妥当であろう。ただし、実際には森林所有者や地域住民といった多様なステークホルダーが存在する場合が多く、科学的根拠に基づいた調整が必要になる。その際、様々な生態系サービスのポテンシャルを地図化し、これに基づいて様々なシナリオによるゾーニング案を提示することが、ステークホルダー間の合意形成を支援するうえで有効である。
④ 萌芽林とは人間が伐採した後に萌芽によって再生した森林のことであり、里山の景観を形作る多様な生態系の一つである。多くの樹木は、台風や伐採などによって攪乱を受けた後に、残った幹や枝から新しい幹や枝を発生させる能力を有しており、これらを総称して萌芽と呼ぶ。人間はこの能力を活用して古くから萌芽林を循環利用してきた。伝統的な萌芽林の循環利用は、小面積の伐採を15~20年程度の間隔で繰り返し行うことで、森林景観内に明るいハビタットを作り続ける役割を果たしてきた。これによって、攪乱に依存した生物で構成される貴重な“二次的自然”が形成され、維持されてきたのである。現在の萌芽林は2つの理由で危機に面している。一つは、木材生産のために里山の生態系がスギやヒノキなどの人工林に置き換えられ減少したことであるこれは生態系の開発や過剰利用が原因となる生物多様性の「第1の危機」の典型である。もう一つは、萌芽林の過少利用(伐採の放棄)や管理放棄である。低下してしまった萌芽林の生物多様性を再び回復させるには、大きく2つの方法がある。一つは循環利用されていた頃のように萌芽林を再び伐り戻して、開地環境を作り続けることであり、もう一つは下層の再侵入を促進することでより発達した「老齢段階」に移行させることである。これらの生物多様性復元手法の選択には、対象となる萌芽林の発達段階や復元したい生物種の特徴(草原生か森林生か)だけでなく、その萌芽林が置かれた景観構造も考慮する必要がある。例えば、「幹の排除の段階」にある広大な萌芽林の一部を伐採して開地環境を作ることは、二次的自然の復元に有効であるが、その萌芽林が暗いスギ人工林に囲まれて存在している場合は、周囲の人工林の生物多様性の創出や自然林化のための種子源として機能する可能性が高い。また、農地などの開地環境に島のように存在する小面積の萌芽林の場合、そこを敢えて伐り戻す必要もないであろう。その景観に残るわずかな森林パッチとして、森林生の生物の貴重なハビタットになっているかもしれない。
キーワード ① 分断 ② 孤立 ③ 林縁効果 ④ GAP ⑤ Eco-DRR
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の74~84貢を読む。そのうえで、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。また、この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。

【このコマを受けた後の復習課題】
本学の岡崎キャンパスは周囲を演習林に囲まれている。そして大学周辺にも多様な緑地が存在する。本コマで扱った森林の小面積化、分断、孤立化が岡崎キャンパス周辺でどのように生じているのか通学時に考えてみること。さらに、通学路に存在する林縁を認識し、そこに生じる物理的効果と生物的効果を整理する。また、電車等での通学時に目にする景観には人工林だけでなく薪炭林も存在している。そうした森林景観のポテンシャルを発揮し、生物多様性の第一の危機を除外するためにはどのような取組みが可能か考えてみること。これにより、自身が理解できない概念が明らかとなる。そのうえで、コマ用プリント配布資料を再読し、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。

8 農村の景観生態学 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第三部第八回の講義では農村景観について学ぶ。農村の景観は、作物を生産する農地(生産地)と、農業生産に直接は関わらないが水や家畜の餌、燃料、資材を供給する半自然地から構成される。農村景観は古くから人々の生活に密接に結びつき、人間活動の影響を強く受けてきた。とくに日本では里山と水田によって二次的自然として機能する景観が維持され、そこに数多くの生物が生息している。本コマでは、農村景観の特徴とその利用を概観し、農村景観の主要な要素である水田、狭義の里山(二次林)そして半自然草原の生態学的な特性と資源利用の歴史的変化について解説する。
【コマ主題細目①】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.90~93貢.

【コマ主題細目②】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.93~95貢.

【コマ主題細目③】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.96~98貢.
コマ主題細目 ① 農村景観の構造・機能とその変遷 ② 農村における生態系サービス ③ 水田を中心とする農地景観と生物多様性 ④ 環境保全型農法と水田生物
細目レベル ① 農村の景観は、基本的に作物を生産する農地(生産地)と農業生産に直接関わらない半自然地(二次的自然)から構成されるが、生産地と半自然地の間には様々なタイプの景観要素があり、農村景観はそれらの複雑なモザイクとして捉えられる。「農村」は意味する範囲が広く、ひたすら田んぼが広がるような景観も含む。その中で「里山」はとくに、異なる生態系が有機的に連結したモザイク景観を指す。例えば、日本の典型的な里山景観は、水田、二次林、半自然草原、ため池、水路、畑など多種の環境から構成される。日本の里山は、農作物を生産する水田と畑を核として、刈敷(田畑に敷きこむ草木)や燃料、資材の供給源としての二次林、家畜の飼料や屋根資材を供給する草地、水の供給源としてのため池や水路が一体となった景観である。
② 自然生態系、農業生態系と社会は、それらの管理とサービスを通じて相互に関連しており、農業は周囲の生態系に大きな影響を与えると同時に、周囲の生態系・景観から生態系サービスを享受している。農地の拡大は、世界の脊椎動物にとって最大の脅威である。一方、農地の放棄や農業の激化は、各地で農地の鳥の減少を引き起こしている。特に発展途上国において、近年の農地の拡大が著しく、それが原生林や湿地を破壊することによって、二酸化炭素吸収や水の浄化など調整サービスや生物多様性を劣化させている。伝統的な農林業と生物多様性は、密接な相互関係を保っていた。作物の生産は送粉や天敵などの調整サービスを享受し、多くの生物が農業生態系を生息・生育地として利用してきた。しかし、世界的な農業生産の増加のために、農地の拡大と化学肥料や殺虫剤の使用、灌漑施設や農業機械の投入が増加した。日本やヨーロッパでは、過去に圃場整備や農薬の使用によって生物多様性を損なってきた。今後の農地の生物多様性の保全と生態系サービスの発揮・享受には、資源の賢明な利用、農業と農業生態系の多様性、および将来の気候変動に耐性のある生態学的農業手法が必要である
③ 日本の水田や水路には5,668種もの生物が生息・生育する。私たちはフナやメダカカエル、ホタルのような小動物を田園の生物として認識し、それらが生息する空間を日本の原風景の一つとしてきた。農事暦に応じた周期的で適度な強さの攪乱の下で数百年以上稲作を継続してきた結果、人が作り出した環境である水田は原生的な自然を代替し生物多様性の保全に欠かせない存在である。河川の氾濫源のような低地に広がる水田は、その立地特性ゆえに湿地の代替として機能し得る、止水域で産卵するフナ類やナマズなど、あるいは生活史の多くの段階で止水域に依存するドジョウやメダカなどにとって、水田は重要な再生産の場である。また、傾斜地の伝統的な水田景観では、隣接する里山林に採草地があったり、あるいは林縁の植生が刈り払われて明るい光環境が維持されるため、畦畔に林縁や採草地と共通する種も分布していた。現在では採草地のような土地利用が消失したために、草原生植物の生育地としての代替機能を畦畔が果たしていると考えられる。
④ 水田の生物多様性は農業の集約化に伴い低下してきたが、近年は、除草剤、殺虫剤や化学肥料を使用しない有機栽培や、減農薬栽培を含む特別栽培のような環境保全型農法が各地で行われている。除草剤を使用しない水田や冬期湛水を行う水田では、圃場内に出現する植物の種数が多い。動物群集においては、無農薬栽培がアシナガグモ類、コオイムシ科、タイコウチ科、ゲンゴロウ科、ガムシ科などの多様な分類群の個体群密度を増加させるが、慣行農法と環境保全型農法が及ぼす影響は水管理方法の違いにより、分類群によって異なるとの報告もある。日本においては生物の保全を目的とする環境保全型農業のシンボルとしては鳥類が用いられることが多く、新潟県佐渡市のトキ認証米、兵庫県豊岡市のコウノトリ認証米などが特に有名である。
キーワード ① 生態系サービス ② モザイク景観 ③ 環境保全型農法 ④ 里山 ⑤ 湿地
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の90~98貢を読む。そのうえで、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。また、この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。

【このコマを受けた後の復習課題】
本学の岡崎キャンパス周辺の環境は農村が住宅地に置き換わることで徐々に都市化かが進みつつある。岡崎キャンパス周辺においてどのような里山景観が見られるか、通学時に確認すること。また、スーパー等の小売店において販売される農作物のうち有機栽培や減農薬栽培を含む特別栽培が行われているものがどの程度あるか確認するとともに、それらの小売価格と本講義で学んだ農法の効果を総合して、どのような側面が自身の購買行動を規定しているか整理すること。そのうえで、日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の90~98貢およびコマ用プリント配布資料を再読し、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。

9 水辺の景観生態学 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第三部第九回の講義では水辺の景観について学ぶ。「水辺」は、普段、何気なく使用している言葉であるが、それかどのような景観構成要素なのかを的確に定義することは難しい。景観生態学会が定義する水辺とは「水域と陸域およびそれらのエコトーンを含む、ある程度の広がりをもった空間」である。本コマでは中小河川、湧水地およびため池を中心とした小規模な池といった我々の身近に存在する水辺を取り上げ、水辺の成因、内包する様々な機能や多様な生態系サービス、人との関わりなどを解説する。また水辺の機能は、水自体の構造に加え、水辺を取り巻く景観構造の影響をも受けており、それらの要因は、時間とともに移り変わり、往々にしてそこには、水辺と人との関わりの変化が関与している。
【コマ主題細目①】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.106~109貢.

【コマ主題細目②】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.109~112貢.

【コマ主題細目③】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.115~117貢.
コマ主題細目 ① 水辺景観の機能と人との関わり ② 河川流域と景観生態学 ③ ため池のハビタット機能と保全・管理
細目レベル ① 水域と陸域からなる水辺は、多面的な機能をもつ景観構成要素である。例えばため池は、(1)用水の供給機能、(2)食糧供給機能、(3)微気象緩和機能、(4)水質浄化機能、(5)親水機能、(6)レクリエーション機能などを有するため、(1)や(2)による供給サービス、(3)や(4)による調整サービス、(5)や(6)による文化的サービスを提供してくれる(角田 2017)。さらに、エコトーンが存在する水辺では、これらの機能がより高くなる場合もある。また、都市に存在する庭園などの小サイズの池も、都市に暮らす多様な生物にとっての重要なハビタットとして機能している。そのため、日本でも学校ビオトープ等が注目されている。水辺は(1)河川、(2)湧水地、(3)ため池などのいくつかの景観タイプに分けることができる。これらの身近な水辺は、生物多様性保全の場、自然との触れ合いの場新たな形での自然や農山村とのつながりの場、地域性や風土性の保全伝承の場、防災・減災の場など、多面的な機能や生態系サービスを内包した景観構成要素である。我々は、水辺の機能やサービスを享受しつつ、持続的に管理していく必要がある。そのためには、水辺の機能や、それらに影響を及ぼす要因を、様々な時間・空間スケールで評価する必要がある。また、地域住民や利活用に関わる多様な主体が水辺に期待する機能やサービス、あるいは水辺に対する認識などを把握する必要もある。これらの情報をもとに、水辺活用のための具体的な目標像を設定し、目標像の達成に向けた具体的な管理方法などを検討することが望まれる。かつて我々は、自然の氾濫を許容あるいは活用する、地域性をもった伝統技術や伝統的生態学的知識を築いてきた。これらは、水辺をグリーンインフラや、生態系を基盤とした防災・減災(Eco-DRR)として活用する際の有益な情報となり得る。
② 降った雨がある河川に集まる範囲を流域(watershed)と呼ぶ、今日、流域治水に象徴されるように、流域を軸に地域づくりを考えることの重要性が再認識されている。流域を流程区分という景観単位に区分することは流域を捉える重要な手段であり、景観生態学の重要な研究テーマの一つである。その際、様々なレイヤーやスケールで見ることが重要である。流域は、任意の地点について、それより上流側の集水範囲として定義できるが、河川が海に流れ出る河口を地点とした流域(例えば、淀川流域、荒川流域など)は、景観を捉えるうえで基本的な空間単位となる。河川の上流から下流への流れを、流程と呼ぶ。河床勾配や河床材料の粒径、水質、水温などは流程に沿って連続的に変化し、それに応じて生物の分布も変化する。一般に底生動物の種数は上流の方が多く、魚類の種数は下流の方が多くなる傾向がある。
③ ため池は、人工的な構造物であるが、野生生物にとっての貴重なハビタットとしても機能する。ため池のハビタット機能に影響を及ぼす要因には、池面積と堤体長の比、コンクリート護岸の有無やその長さ、堤から池底へ至る垂直方向の形状などの構造的特性が挙げられる。さらに、ため池を取り巻く空間の土地利用状況も、複合的あるいは間接的な過程を通して、また空間スケール依存的に、ため池のハビタット機能に影響を及ぼす。1950年代中頃には、国内に約29万箇所のため池が存在しており、当時の総水田面積の約37%がため池によって賄われていたと推定されている。しかし、1950年代後半以降、農地整備や都市域の拡大などに伴い、小規模のため池を中心に、改廃が急激に進行した。また、農業従事者の減少や高齢化などによって放置されたため池も多数存在するようになったこのような管理放棄は、ため池の湿性遷移を進行させ、生物の種多様性の低下をもたらす。さらに、富栄養化や化学物質による汚染、外来生物の影響などによっても、ため池の水生生物に対するハビタット機能が低下している。
キーワード ① エコトーン ② 流域 ③ 流程 ④ 氾濫原 ⑤ ため池
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の106~117貢を読む。そのうえで、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。また、この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】
本学の岡崎キャンパスのすぐそばには鉢地川が流れている。また、徒歩でも行くことができる中山湿地もある。こうした身近な水辺が自身の普段の生活にどのようなサービスを提供しているか考えること。また、河川の流域がどこまでなのか、エコトーンはどの部分なのかを現地で観察してみると良い。そのうえで、日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の06~117貢およびコマ用プリント配布資料を再読し、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。

10 海辺の景観生態学 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第三部第十回の講義では海辺の景観について学ぶ。海辺は「陸域と海域の境界」として、独特の環境を有する景観である。そのため、古くから豊かな恵みをもたらす場所として人々の生活に密接に結びつき、一方で自然環境の変化と人間活動の影響を強く受けてきた。本コマでは、砂浜海岸の発達した海辺に着目して、その景観特性を概観し、流砂系から見る総合的沿岸域管理の重要性について解説する。さらに海浜のエコトーンについて理解を深め、エコトーンを構成する海岸林や砂浜といった個々の景観ユニットの特性について解説する。
【コマ主題細目①】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.122~125貢.

【コマ主題細目②】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.125~128貢.

【コマ主題細目③】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.128~135貢.
コマ主題細目 ① 海辺の総合的管理 ② 海岸砂丘の形成と危機 ③ 砂浜海岸エコトーン
細目レベル ① 海岸は砂浜や岩礁などから構成され、つねに授乱にさらされる不安定な環境である。海岸に隣接する干潟や河口、砂丘や潟湖、海岸林、後背湿地といった特有の生態系ユニットからなる景観を海辺と呼ぶ。海辺では、これらの生態系ユニットが相補的に機能することで環境変動に対する生態系の安定性が維持されてきた。この異なる生態系が連続的に推移する推移帯(エコトーン)の維持には変動幅を考慮した空間の確保(動的安定状態)が重要となる。この特有の景観はまた、様々な生態系サービスを提供してくれる。とくに近年は、防災における海岸砂丘、海岸林、マングローブ林や砂浜といった生態系の重要性が再認識され生態系を活用した防災・減災(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction: Eco-DRR)が注目されるようになった。すなわち、海浜が有する生態系サービスが防災・減災に資する防災インフラとしても機能することが認められ、これらは従来のコンクリートを主体とした人工構造物(グレーインフラ:Gray Infrastructure)に対して、グリーンインフラ(Green Infrastructure)と呼ばれている。
② 河川や沿岸流によって海岸に運搬された大量の砂礫が波の働きで打ちあげられ、砂浜が形成される。強い風があれば、砂浜の砂は後背地に運ばれて「砂丘」となる。100年ほど前まで、日本には内陸に張り出した大きな砂丘のある海浜が至る所にあった。しかし現在の日本で見られる海浜は海岸沿いに細長く残る砂浜のみで砂丘はほとんどない。20世紀後半の40年間で全国の砂浜と砂丘の奥行きは4分の1に減少した。この主な原因は、内陸側からの開発と海岸林の造成であった。かつては比較的普通に見ることのできた広大な砂浜と海岸砂丘は、今やほぼ絶滅状態といえるほど減少してしまっている。日本では、堤防や道路といった人工物の見られない海浜はわずか13%という報告もあり、砂浜や海岸砂丘の減少は人為的な要因がほとんどである。かろうじて残された海沿いの細長い砂浜も、今日、気候変動に伴う海水面の上昇に直面している。人為が引き起こした砂浜海岸エコトーンの危機は、今後ますます深刻化することが懸念される。
③ 自然な砂浜に縁取られた海辺を構成する地形ユニットには、汀線付近に位置する前浜、後浜、潟湖、干潟、砂州や、内陸側に展開する砂丘、後背湿地などがある。そして、こうした様々な地形ユニットの総体としての砂浜海岸エコトーンの形成には、地殻変動・海水準変動といった地史的イベントや、流砂系という地形形成プロセスによる日常的な地表変動が関与している。砂浜海岸エコトーンを景観生態学の視点で探求する際、「立地、生物、環境変動」という枠組みを設定し、3者を関連づけて解析してみることが有益である。すなわち、(1)塩水・汽水・淡水や泥・砂・礫・岩といった基質の、水陸間における成帯的な分布パターン、および成帯内におけるモザイク的な配置様態、(2)そうした多様な立地のいずこかをハビタット(生息・生育地)とする、ニッチ(niche)を異にする様々な水陸生物種の存在、そして(3)干満や海流・河川流、波、風、水温・地温などの周期性のある変動と、津波や高潮、洪水、暴風といった予見が難しい高強度の攪乱の発生、である。
キーワード ① 総合的沿岸域管理 ② 海岸砂丘 ③ エコトーン ④ レジリエンス ⑤ 海浜植物
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の122~135貢を読む。そのうえで、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。また、この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】
本景観生態学会企画交流委員会による解説セミナー『海辺の景観生態学』(https://youtu.be/kU3S3jcGagw?feature=shared)の視聴を推奨する。愛知県渥美半島には広い海岸砂丘が広がり、砂浜海岸エコトーンが認められる。休日等に海へ出かけた際には、本講義で学んだ海岸における景観要素の区分を現地で確認し、それぞれの要素がどこまで広がっているのかを観察してみると良い。そのうえで、日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の122~135貢およびコマ用プリント配布資料を再読し、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。

11 都市の景観生態学 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第三部第十一回の講義では都市の景観について学ぶ。2017年現在、世界人口の約55%が都市に居住している。都市には、旺盛な人間活動を支えるために、膨大な量の物質やエネルギーの流入と流出があることから、都市が地球環境に与える影響は、その面積が小さいにもかかわらず非常に大きい。都市は、人工系の土地利用・被覆が優占する場所である。しかし、都市にも多かれ少なかれ自然地があって生物の生息環境を形成し、様々な環境問題を緩和する生態系サービスが発揮されている。本コマでは、都市を景観生態学的に捉え、都市生態系の多面的な機能を理解するとともに、都市の持続性を高める都市生態系の役割について学ぶ。
【コマ主題細目①】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.137~139貢.

【コマ主題細目②】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.139~143貢.

【コマ主題細目③】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.143~145貢.
コマ主題細目 ① 景観生態学から見た都市景観の機能 ② 都市の生物多様性と景観生態 ③ 鳥類を指標とした都市の景観生態
細目レベル ① 景観生態学的に見ると、都市は様々な人工物と自然(生態系)がモザイクを織りなす景観である。人工系と自然系(緑被地:樹林・草地、農地、河川地、公園)の土地利用・被覆の割合は都市ごとに異なるが、自然系の被覆の割合はベルリンモスクワなどの高い都市で40%前後あり、低い都市では5%以下しかない。都市には、(1)ヒートアイランド現象などの都市気候化、(2)大気汚染物質や二酸化炭素の大量排出、(3)水循環の異常(地下水位低下・都市型洪水)、(4)廃棄物の大量発生、(5)生物の地域的絶滅と都市生物の増大による生物群集の歪みなどの問題が生じている。また、過密な都市環境は人々の心身にも強いストレスをもたらす。これらの現象は互いに関連しあっており、根本的原因は都市における人口集中や物質とエネルギーの大量流入・排出、環境の極度な人工化である。都市景観に内在する緑地生態系(緑被地:森林・草地・農地・河川・公園などの自然的・半自然的空間)は、都市環境を向上させる複合的機能を有しており、緑地の面積拡大、質的向上、連続性の確保・回復が、都市の環境問題の対策として有効である。
② 生態系を活かした町づくりには、政策レベル、計画レベル、事業レベルの時空マルチスケールの景観生態学的アプローチが役立つ。政策レベルの取組として、生物多様性条約第10回締約国会議(CBD-COP10)の議決事項の中で、「都市の生物多様性指標」が取り組みの進捗状況管理ツール(CBIシンガポール指標)として例示され、日本では国土交通省が簡易版を開発した。都市域の緑地計画については、市街化調整区域、建ぺい率、風致地区、近郊緑地、古都保存、生産緑地、工場立地法などの都市計画的な制度や指標がある。「緑の基本計画」や「生物多様性地域戦略」なども、市街地での生物生息・生育環境の確保に有効である。事業レベルとしては、大阪万博公園や平安神宮神苑などの事業における取り組みを紹介する。
③ 都市の鳥類といえばせいぜいスズメとカラス、ツバメくらいと思われるかもしれない。しかし都市の中でも少しまとまった樹林があれば、キジバト、ヒヨドリ、シジュウカラなどの樹林性鳥類の声を聴くことができる。近年はキツツキの仲間のコゲラのような種も都会に進出してきており、街路樹や庭木などの緑が点在する住宅地で暮らせるものもいる。都市内にあるパッチ状の樹林に生息する樹林性鳥類の種類数や種組成を決める最も重要な要因は、パッチの面積である。なお、鳥類は季節移動(渡り)をするので、繁殖期(初夏)と非繁殖期(冬季)は分けて考えるべきである。パッチの質には面積の他に形状(特にエッジ効果に関わる)や植生とその階層構造、枯死木や樹洞の存在、孤立度などが関わる。
キーワード ① 都市生態学 ② 生物多様性地域戦略 ③ PCMモデル ④ 生態系ネットワーク ⑤ 緑道
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の137~145貢を読む。そのうえで、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。また、この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】
本景観生態学会企画交流委員会による解説セミナー『都市の景観生態』(https://youtu.be/eQxDdDLU7Mo?feature=shared)の視聴を推奨する。人間環境大学岡崎キャンパス周辺はあまり都市化されていないが、電車等に乗って移動するとすぐに都市化した地域を確認することができる。本コマで学んだ政策レベル、計画レベル、事業レベルの取り組みはそれらの地域で実践されているほか、都市を歩けば生息する鳥類を目にすることができるだろう。本講義で学んだ都市景観の構成要素を現地で観察してみると良い。そのうえで、日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の137~145貢およびコマ用プリント配布資料を再読し、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。

12 景観のプランニングとデザイン 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第三部第十二回の講義では景観のプランニングについて学ぶ。景観のプランニングとデザインの役割は、人が暮らす空間の過去から現在までの歴史、文化、環境の姿を翻訳し、より豊かな空間をもつ未来につないでいくことである。景観生態学は、「風景を構成する自然的要素である景観」の成立・維持の過程やその機構を探り、自然の側から人の暮らしを見ながら、そうした過程に無理なく寄り添う形で地域社会を維持していくための考え方や、手法・技術を提示していこうとする。本コマでは、造園や建築、土木におけるランドスケープのプランニングとデザインについて、その歴史と課題を概観する。そして、景観生態学に基づくプランニングとデザインのプロセスについて、都市域や水辺で社会実装された事例を参照しながら解説する。
【コマ主題細目①】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.154~156貢.

【コマ主題細目②】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.157~159貢.

【コマ主題細目③】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.160~166貢.
コマ主題細目 ① 生態学的プランニングと景観生態学 ② 環境形成技術としてのランドスケープデザイン ③ ランドスケープデザインの社会実装と実践
細目レベル ① 造園、建築、土木などの実践においては、景観の概念の扱いが景観生態学と一部異なり、実用・精神的価値の創出・向上を目的として空間や構造物を計画・設計する景観の操作が志向される。そのため、森林、農地、住宅などの土地利用が複合的に混じり合う景観を対象とし、総合的な視点でランドスケーププランニングやデザインを行っていくうえでは2つの課題がある。一つは造園、建築、土木といった専門技術領域の間における視点や考え方の相違によるものであり、もう一つは総合的な計画の必要性について社会的な理解や合意を得ることの難しさによるものである。そのようななかで、生態学的プランニング(Ecological Planning)と景観生態学は極めて重要な役割をはたしている。生態学的プランニングとは、土地の価値(生態保全機能、浸透能)と制限(災害リスク)など、異なる視点からの自然科学的な空間評価を相対ランクという同じ形式で可視化することで、オーバーレイ(重ね合わせ)を実現する計画論である。一方、本講義でたびたび扱ってきたFormanらによるPCMモデル(パッチ、コリドー、マトリックス)は、ランドスケープのデザインにおける自然の生態系の保全や、新たな創造を誘発する空間的目標の導入に大きな役割を果たした。
② ランドスケープデザインは、アメリカでの近代工業化、市民社会の成立を背景に、19世紀中期、都市の衛生環境悪化予防や、社会階級を問わずすべての市民が平等に利用できる共有の緑地の創出を目的として考案された技法である。この技法は、ランドスケープアーキテクチャと呼称され日本では「造園」と訳される。一般に、ランドスケープデザインによる土地利用・環境形成は、計画対象地および周辺地域の調査、構想、設計、施工、運営・維持管理の段階に分けられる、公共事業においては、計画対象地の利用者や周辺の生活者などのステークホルダーからの意見聴取や、関係者間の合意形成が重要となる。景観生態学に基づくランドスケープデザインは、当初用いられた造園設計に比べ、その過程で考慮する事項を増やすことで科学的・論理的基盤を強化し、より多くの地域課題に対応するものとなっている。
③ この細目では、地域課題を解決するために実施されてきた実際の生態系復元のプロジェクト事例から、景観生態学に基づくランドスケープデザインの実践について解説する。水辺は景観の中でも機能的に非常に重視される空間であり、社会実装を進めていくうえでは、水辺生態系の復元・維持に加えて、人間生活の安全の両方を考慮したデザインや、グリーンインフラとしてのデザインも要求される。多くの場合、開発によって生態系の破壊や著しい劣化が起きていることから、その復元を含めた景観の再構築が必要となる。そのためには、景観における生物多様性を景観生態学の視点で適切に評価する必要があり、これに基づいて生態系復元を適切に計画し、実行することが要求される。つまりプランニングとデザインにおいて景観生態学の知見が活用されることとなる。
キーワード ① 土地利用計画 ② ランドスケープ ③ 生態学的プランニング ④ 風土 ⑤ 順応的管理
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の154~166貢を読む。そのうえで、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。また、この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】
本講義では景観のプランニングについて概要を学んだが、より詳細な造園の知識を身に着けるためには亀山ほか(2022)『造園学概論』を一読することを推奨する。なお、書籍は本学岡崎キャンパスの図書館にも収蔵されている。本コマまでに学んだ様々な景観要素のうち、自身が目にしたものについてそれらのサービスと、景観の改善案、改善する場合には何をするべきか考えてみること。併せて、日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の154~166貢およびコマ用プリント配布資料を再読し、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。

13 景観管理とアセスメント 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第三部第十四回の講義では環境アセスメントについて学ぶ。環境アセスメントは事業が環境や社会に与える負の影響をより少なくするためのツールとしてわが国では1970年より実施されるようになってきた。近年の景観生態学の著しい進歩にともなって、生物に対する影響評価はより具体的かつ詳細なものに発展を遂げてきた。とくに近年は戦略的環境アセスメントの重要性が認識され、生物多様性の損失をゼロとするだけでなく、生物多様性をプラスにすることを目指す保全活動が求められるようになっている。本コマでは環境アセスメントの概要からミティゲーションの実例、そして、戦略的アセスメントまでを解説する。
【コマ主題細目①】
環境アセスメント学会(2019)『環境アセスメント学入門』恒星社.10~137貢.

【コマ主題細目②】森本幸裕・亀山章(2001)『ミティゲーション』ソフトサイエンス社.11~243貢.

【コマ主題細目③】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.206~210貢.
コマ主題細目 ① 環境アセスメント ② 戦略的環境アセスメント ③ ミティゲーション
細目レベル ① 環境アセスメントは事業が環境や社会に与える負の影響をより少なくするためのツールである。その目的は持続可能な開発の支援であり、長期的には持続可能な社会の実現である。環境アセスメントにおいては、事業主体が自主的に環境配慮を行うための手続きを定めており、その手続きは事業主体が環境配慮の説明責任を果たすための社会とのコミュニケーション過程として定められ、情報公開を基礎としている。道路やダム、発電所、廃棄物処理用など様々な開発事業では環境や社会への影響を及ぼさずに事業を進めることはできない。そのため、公害対策、社会、生物など幅広い分野に対する影響を評価することを事業計画に含めるという仕組みである。我が国においては1997年に環境影響評価法が制定されたのに伴って環境アセスメントが実施されるようになった。環境アセスメントは事業の環境影響を特定、予測、評価するシステマティックな手続きであり、大きくは、スクリーニング、スコーピング、調査、予測、環境保全対策検討、審査、事後対策という6つの段階がある。評価対象は、排気ガス、騒音、振動、排水、風の流れ、土地改変そして景観変化など様々なものがある。事業特性と地域特性に応じて環境影響評価項目の選定が行われる。
② ミティゲーション(環境保全措置、環境影響の緩和・補償措置)とは、痛みを和らげることや影響を軽減させる意味の英語として広く一般に用いられる言葉である。環境アセスメントにおいては動植物や生態系に関する調査・予測・評価の手法は公害系の調査項目と比較して、データの数値化やモデル化、基準などが確立されていないために影響が軽微であることを理由として事業の実施を認めることが多かった。しかし近年、動植物や生態系に関する調査研究が著しく進歩し、人為の影響に対する反応も詳細に具体的に捉えられるようになった。さらに、環境アセスメントは事業の事前評価のみでなく、事後調査(モニタリング)を行うことが必要とされるようになった。こうした結果、自然環境のアセスメントにおいてはミティゲーションは不可欠のものとして取り組まれるようになっている。
③ 戦略的環境アセスメントとは、環境アセスメント対象事業の事業実施段階より上位の政策立案段階、もしくは計画段階などの早い段階からの合意形成や意思決定に際して実施されるもので、自然環境への配慮のみならず、政策や計画のもつ社会・経済的な側面への配慮をも含めて環境への影響を評価するプロセスのことである。戦略的環境アセスメントの最大の利点は、政策・計画の意思決定に環境配慮を徹底させることが可能なことである。戦略的環境アセスメントでは、事業を実施しない案(ゼロオプション)を含めて、事業の妥当性について複数の代替案を比較検討することが必要となる。事業段階から始まるアセスメントとは異なり、早い段階ほど計画の熟度が低いことから、戦略的環境アセスメントの対象となるエリアは事業アセスメントと比べて広い範囲が想定される。そのため、事業アセスメントで実施されるような現地における詳細な調査や検討は難しく、既存の資料による机上検討が中心とならざるを得ない。一方で、その広域性から、個別箇所、個別種に限らない、まさに生息・生育地(ハビタット)の多様性へと観点を広げることが可能となり、有効な生物多様性確保を戦略的に描くこともできる。したがって、戦略的環境アセスメントを生物多様性保全の観点から効果的に実施するためには、対象地域の自然環境や人文社会環境など幅広い環境情報の一元化や、多様な主体が合意形成を図るための環境データの総合化など、景観生態学の理念に基づいた整理が事前に準備されていることが重要となる。
キーワード ① スクリーニング ② スコーピング ③ ミティゲーション ④ ゼロオプション ⑤ ノーネットロス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
オンラインシステム上に事前に掲示される本コマの講義資料を読む。そのうえで、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。また、この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】
本講義では環境アセスメントを学んだ。環境関係の就職先として環境アセスメントに関わる分野は求人が多いものである。自らの興味のある生物分類群と環境アセスメントを検索ワードとしてインターネットでの検索を行い、どのような企業や自治体がそれらの環境アセスメントを実践しているか確認し整理してみるとよい。また、コマ用プリント配布資料を再読し、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。

14 景観管理と地域づくり 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第三部第十四回の講義では景観管理について学ぶ。自然資源の過少利用(アンダーユース)による生態系や景観の劣化に対する課題解決には、地域社会をはじめとする関係者間での協働が必須となる。本コマでは、シカやイノシシなどの野生動物による農作物や林地の被害に対する対策、里山で拡大する竹林の管理、湿地再生といった具体的事例から、地域での協働による景観管理の進め方について紹介する。そして、管理活動を進めていくうえで協議会のもつ意味や、ガバナンスのあり方について解説する。
【コマ主題細目①】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.168~171貢.

【コマ主題細目②】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.171~175貢.

【コマ主題細目③】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.175~182貢.
コマ主題細目 ① ボトムアップによる景観管理 ② 野生動物の管理 ③ 協働による自然再生
細目レベル ① 20世紀半ば以降、日本の景観は地域・社会の変化とともに大きく変化してきた。1945年の終戦後、日本は荒廃した国土をめざましい勢いで復興し、1955年からは年平均経済成長率が10%を超える高度経済成長期に突入し、農村から都市圏へと多くの人々が移り住んだ。さらに、地域外から供給される資源の利用に依存するようになったことで、地域の人々により地域の中で循環的に利用されてきた自然資源が利用されなくなった。これにより、里山の景観は大きく変容し、里山生態系を支える生物の多様性が損なわれ、また里山から得てきていた生態系サービスの質・量も著しく低下してきている。また、未利用地の拡大は、竹林を拡大させ、野生動物の行動範囲を広げた。これが、自然資源の過少利用(アンダーユース)の問題である。アンダーユースによって生じた生態系や景観に関する課題は法のみでは解決できず、市民が単独で解決することも不可能である。アンダーユースに由来する景観の課題を解決するためには、価値が低下し未利用となっている景観構成要素である生態系の新たな価値や利用のあり方、すなわち、生態系が発揮すべき機能について関係者の間で合意が形成され、目標が共有されなければならない。
② 現在、日本国内の野生動物による農作物被害の金額は約150億円にものぼる。その7割がニホンジカ、イノシシ、ニホンザルによるものであり、特にニホンジカとイノシシによる被害の増加が顕著である。これら動物による被害は、人口減少社会において営農意欲の減退、ひいては耕作放棄地の増加をもたらすことから、被害の金額以上に深刻な影響を与えている。これらの被害が深刻化している要因として、耕作放棄地の増加によって生息環境が好転し、野生動物の生息域を拡大させたこと、狩猟者の高齢化と捕獲従事者の減少によって捕獲圧が低下したことなどが挙げられる。野生動物の被害に悩む現場では、行政や専門家と住民、あるいは行政部署同士でのコミュニケーションが不足し、対策や予算の必要性が理解されないまま、悪循環に陥っている場合がある。この課題を解決するには、情報、意思決定、対策効果などを関係者全員が理解できる状態にすることが必要である。そのためには、地図化とワークショップが有効なツールである。
③ 自然再生推進法(2003年施行)において、自然再生は「過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的として、関係行政機関、関係地方公共団体地域住民、特定非営利活動法人、自然環境に関し専門的知識を有する者等の地域の多様な主体が参加して、河川、湿原、干潟、藻場、里山、里地、森林その他の自然環境を保全し、再生し、若しくは創出し、又はその状態を維持管理すること」と定義されている。自然再生と地域づくりのためには、熱意、組織と指導力、土地、費用と労力、技術、時間を必要要素とし、自治の器である市役所・町村役場や自治会などの地元のコミュニティ、そして、NPO、企業・商店、研究機関、地域の環境について学ぶ機会を提供する学校など、地域に愛着をもつ組織や個人が自立的に集まり、地域の生態系を管理するための目標と具体の活動を作り上げていく、その地域独自の「ローカルガバナンス」が必要となる。
キーワード ① 自然資源の過少利用 ② 協働 ③ 鳥獣害 ④ 自然再生 ⑤ ローカルガバナンス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の168~182貢を読む。そのうえで、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。また、この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】
本講義では地域づくりに基づく景観管理を学んだ。こうした実践例は我々の普段の生活においても身近なものである。例えば、ごみの収集場所の設定、集落単位での一斉清掃活動などもっと小規模なものも実施されている。自分の住む集落においてどのような協働が行われているか確認し整理してみるとよい。併せて、日本景観生態学会企画交流委員会による解説セミナー『ローカルガバナンスに基づく景観管理』(https://youtu.be/Gpz9iyWYaDc)の視聴を推奨する。また、日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の154~166貢およびコマ用プリント配布資料を再読し、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。

15 自然環境政策と景観生態学 科目の中での位置付け 本講義では、第一部として景観生態学における理論に基づく考え方を踏まえた上で、第二部において景観生態学的調査の設計手法を理解し、第三部において個々の景観要素における社会実装の状況と景観計画の策定を学ぶ。これらの三部の講義を通じ、科学的観点に基づいて景観を構築するという景観生態学のアプローチを総合的に身に着ける。このような授業構成のなかで、第三部第十五回の講義では景観管理について学ぶ。日本の自然環境政策は国際動向や地域課題、社会意識の変化に対応しながら施策の対象を拡大してきた。国立公園などの保護地域や貴重な動植物保護に関する施策の強化に加えて、国土全体の生物多様性の質を向上させ、地域社会がより良い形で生態系サービスを得ていくための広範な施策が求められている。本コマではまず、自然環境政策の展開の中で広域の景観管理の重要性が増大してきた過程を示す。そのうえで、国土空間の保全・利用の羅針盤となる生物多様性国家戦略、早期の立地段階の環境配慮に不可欠な戦略的環境アセスメント、地域の参加・協働で進める基礎自治体の生物多様性戦略づくりについて解説する。
【コマ主題細目①】『景観生態学コマシラバス』
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.198~202貢.

【コマ主題細目②】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.188~191貢.202~206貢.

【コマ主題細目③】日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.202~206貢.
コマ主題細目 ① 環境政策としての景観管理 ② 生物多様性の保全と豊かな人間生活とを両立させるための仕組み ③ 生物多様性国家戦略とOECM
細目レベル ① 1931年に日本の大風景の保護開発を目的として国立公園法が制定され、私有地であっても区域指定することで一定の行為規制がかけられる地域制の「国立公園制度」が導入された。その後、「自然公園法」への全面改定など、時代の変化に応じた制度改正を重ねながら、国立公園は国土の自然環境保全の中核的な役割を担ってきた。これまで自然環境政策は国際的な議論や地域で起きている問題に対応しながら施策の対象を拡げてきたが、今後は環境・社会・経済にわたる統合的な取り組みの中で改めて自然環境政策の役割を捉え直していく必要がある。そのためにはエコリージョン区分に基づき、国土・地方ブロックのあるべき姿を描き、自然地域、中山間地域、農業地域、沿岸地域、都市域などに適した生態系インフラの構造と配置方針を示すことが重要となる。そして、地域社会が様々な生態系サービスをより良い形で得ていくための生態系管理の指針や、エリアマネジメントを基本として生態系インフラを広範な主体の参加・協働により持続的に管理運用していくための社会的仕組みと具体的な施策を立案・実施していくことが有効と考えられる。
② 人間活動に起因する自然環境の変化・劣化は世界的な生物多様性低下の駆動要因である。これに対して、世界的な対策の必要性が高まっているものの、その状況は依然として改善されていない。このような世界的状況の中、生物多様性保全の安全保障として機能する保護地域(protected area)の重要性が高まっている。保護地域は、地球上の一定の土地を人間以外の生物のために確保される土地で、国内外には様々な種類の保護地域が存在する(大澤、2008)。代表的な保設地域として、国際条約に基づく世界自然遺産や、自然公園法に基づく国立・国定公園や都道府県立自然公園などがある。自然保護には、原生自然をできるだけ手つかずにそのまま維持することを目指す保存(preservation)と、人間にもたらされる自然の恵みを重視し、自然を使いながら守ることを目指す保全(conservation)がある。保存の具体例として、世界自然遺産が挙げられる。一方、自然を利用しながら保全を目指す保護地域として、ユネスコエコパークがある。
③ 「生物多様性国家戦略2012-2020」においては、日本の国土が地形・地質や気候、植生帯、生物相などの違いによって区分されることを踏まえたうえで、生物相と人間活動の関係も考慮に入れ、次の7つの地域区分を基本的な単位として、目指す方向や望ましい地域のイメージといった国土のグランドデザインを示している。また、国土全体での生態系の保全・再生に向けて、脊梁山脈から海洋域までつながる生態系ネットワークを形成するため、保護地域を核としながら、それぞれの生物の生態特性に応じて生息・生育地のつながりや適切な配置が確保されるよう、各生態系における施策の方向性を示している。OECM(Other Effective area-based Conservation Measures)は、愛知目標において掲げられた2020年までの生物多様性の保全目標(陸域および内陸水域の17%、沿岸域および海域の10%の保全)を達成するための手段として、保護地域とともに掲げられたものである。日本においては、「自然公園法」や「自然環境保全法」などに基づき指定された保護地域により、2021年1月時点で陸域の約20.5%、海域の約13.3%が保全されている。今後、さらに国土の幅広い地域において、多様な主体による生物多様性の保全と持続可能な利用を促進し、生態系の連結性を高めていく観点から、OECMが注目されている。
キーワード ① 景観管理 ② 生物多様性条約 ③ 世界自然遺産 ④ ユネスコエコパーク ⑤ OECM
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【このコマを受けるにあたっての予習課題】
日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の188~206貢を読む。そのうえで、この回のキーワードを参照し、その言葉の意味を調べ、ノートや電子ファイルにまとめる。また、この回の細目レベルを読んで、講義の流れを理解する。この予習課題を行うことにより、講義内容の理解が深まる。
【このコマを受けた後の復習課題】
本講義では景観管理に関わる環境政策と生物多様性の国家戦略を学んだ。これらの大計画や景観保全は普段意識することが少ないものの、生物多様性保全の取組みの基本となるものである。生物多様性国家戦略を一読し、自身の興味のある環境保全に関わる分野とどのように関わっているか確認し整理してみるとよい。併せて、日本景観生態学会企画交流委員会による解説セミナー『基礎自治体の生物多様性戦略』(https://www.youtube.com/watch?v=eKMzvUu3gn0)の視聴を推奨する。また、日本景観生態学会(2022)『景観生態学』の188~206貢およびコマ用プリント配布資料を再読し、意味が掴めていないキーワード等がある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の生態学の教科書、インターネットなどを参照して意味を理解する。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
景観生態学の理論への理解 景観生態学の基礎である各種の理論について、その意味を正しく理解し、用語を正しく用いて、他者に説明することができること。この指標では、授業で示した景観生態学の理論に関する用語の意味もしくはその意味を持つ用語の回答を求める。とくに第2回および第3回の授業中に取り上げた生態学と景観生態学に関する専門用語およびコマシラバスに示すキーワードについて、その意味を具体例とともに説明する回答をよく考えておくとよい。 PCMモデル、空間階層性、スケール、攪乱、メタ個体群、島嶼生物地理学モデル 40 2,3
個体数・種分布の調査への理解 生物を対象とする景観生態学的研究においては、個体数・種分布・多様性の調査を行う際に、様々な専門用語を正しく理解することが必要である。この指標では、第4回、第5回と第6回の授業で扱った専門用語の意味と、その具体的な利用方法について問う。授業で示した専門用語およびコマシラバスに示すキーワードについて、その意味を具体例とともに説明する回答をよく考えておくとよい。そして、生物多様性の数値化について、実際の計算方法に習熟しておくこと。 センサス 、サーベイ、正確度、精度、バイアス、ニッチ、α多様性、β多様性、γ多様性 20 4,5,6
森林の景観生態学への理解 第七回の講義で扱った森林の小面積化、分析、孤立、林縁の形成、モノカルチャー化など、人間が引き起こす森林景観の構造変化、そして森林における生態的なプロセス・機能の変化について用語の意味もしくはその意味を持つ用語の回答を求める。授業で示した専門用語およびコマシラバスに示すキーワードについて、その意味を具体例とともに説明する回答をよく考えておくとよい。森林が人為によってどのように変化してきたか、生物活動によってどのように変化してきたかを考えると良い。 分断、孤立、林縁効果、GAP、Eco-DRR 10 7
農村の景観生態学への理解 第八回の講義で扱った農村景観の特徴とその利用、農村景観の主要な要素である水田、里山(二次林)についての用語の意味もしくはその意味を持つ用語の回答を求める。授業で示した専門用語およびコマシラバスに示すキーワードについて、その意味を具体例とともに説明する回答をよく考えておくとよい。特に、水田生態系における環境保全のために、どのような取組みが実践されているか、授業で示した具体例をよく整理し理解しておくと良い。 生態系サービス、モザイク景観、環境保全型農法、里山、湿地 10 8
水辺の景観生態学への理解 第九回の中小河川、湧水地およびため池を中心とした小規模な池といった我々の身近に存在する水辺を取り上げ、水辺の成因、内包する様々な機能や多様な生態系サービス、人との関わりの用語の意味もしくはその意味を持つ用語の回答を求める。授業で示した専門用語およびコマシラバスに示すキーワードについて、その意味を具体例とともに説明する回答をよく考えておくとよい。特に、流域と流程区分について、授業で示した具体例をよく整理し理解しておくと良い。 エコトーン、流域、流程、氾濫原、ため池 10 9
自然環境政策への理解 第12回から第15回の講義で示した自然環境政策やプランニングについて、その意味を正しく理解し、他者に説明することができること。この指標では、授業で示した個々の自然環境政策の名称を上げ、どのような政策であるか説明できるかを問う。とくに、国土空間の保全・利用の羅針盤となる生物多様性国家戦略、早期の立地段階の環境配慮に不可欠な戦略的環境アセスメント、地域の参加・協働で進める基礎自治体の生物多様性戦略づくり、その意味を整理し、具体例とともに説明する回答をよく考えておくとよい。 環境アセスメント、ミティゲーション、ローカルガバナンス、景観管理、生物多様性条約、世界自然遺産、ユネスコエコパーク、OECM 10 12,13,14,15
評価方法 期末試験100% *成績発表後、教務課にて試験・レポートに関する総評が閲覧できます。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 日本景観生態学会(2022)『景観生態学』共立出版.
参考文献 Sutherland, W. J., Newton, I., & Green, R. (2004). Bird ecology and conservation: a handbook of techniques (Vol. 1). OUP Oxford. 環境アセスメント学会(2019)『環境アセスメント学入門』恒星社. 森本幸裕・亀山章(2001)『ミティゲーション』ソフトサイエンス社. Antoine Guisan et al. (2017)『Habitat Suitability and Distribution Models With Applications in R』.久保田ほか(訳).2020. 野生生物の生息適地と分布モデリング: Rプログラムによる実践.共立出版.
実験・実習・教材費