区分 フィールド生態科目 陸生動物生態科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門性 理解力 実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
専門知識 教養知識 思考力
実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
個人・社会・自然が直面する課題に対して専門的な理解を深めると共に、学際的な柔軟性を有し、実践的な能力を有する。
科目の目的
地球上には私たち人間だけでなく様々な野生動物が暮らしており、私たちの活動は野生動物に影響し、その逆に野生動物たちの変化は私たちの生活に影響する。この講義では、人間と個体数が増えた野生動物との持続可能な関係の在り方を考えることを目的とし、主に日本を舞台として、以下の内容を学ぶ。まず、過去から現在までの人間と野生動物のかかわりの歴史を概観する。次に、現在の野生動物管理の手法を紹介する。そして、より実践的な理解を深めるために、特に問題が大きい野生動物の基本生態と各動物種の管理の考え方を紹介する。最後に、多くの動物種に関連するロードキル問題を紹介し、野生動物と共存する未来の形を描く。
到達目標
野生動物の管理がどのような歴史的背景をもって生じたものかを理解している。野生動物による被害にはどのような種類のものがあるか理解している。現在の野生動物管理の3つの柱である個体数管理、被害防除、生息環境管理を理解している。現在の日本において管理の要となっている、特定鳥獣保護管理計画の特徴とその進め方を理解している。日本で管理の対象となることの多い動物種について、個々の種の基本的な生態、被害の特徴、管理方法の特徴を理解している。これらの理解をもとに、今後の野生動物管理に必要なことを提案できる。
科目の概要
本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。第1回では、自然環境の中で生物の一員として野生動物がどのように進化してきたかを概観し、この授業での主な対象とする哺乳類の位置づけを明らかにする。第2回では、野生動物の生息状況の歴史的な変遷を概観し、人間によって野生動物の個体数が減少したときには絶滅が問題となり、野生動物の個体数が増加しすぎたときには被害が問題となってきたことを示すとともに、個体数の増減に影響する基本的なルールを押さえる。第3回では、野生動物が増えすぎたことにより、生じた人間が受ける被害の種類を紹介し、社会の中での問題の大きさを示す。第4回は、増えすぎた野生動物との関係を調整する野生動物管理という考え方を紹介し、野生動物管理の3つの柱となる対策を示し、第5回において、人間と野生動物の関係性と野生動物管理の位置づけをまとめる。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方を紹介する。第6回では、野生動物管理に関わる法制度の成り立ちや掌握範囲を抑える。第7回では、鳥獣保護管理法に位置づけられる、特定鳥獣保護管理計画で用いられる順応的管理やモニタリングの考え方を紹介する。第8回では、野生動物管理の現場での対策として、捕獲と被害防除の事例を紹介する。第9回は、こうした管理活動を行う主体の整理と、様々な利害関係者を巻き込みながら管理計画を進めるための合意形成など、野生動物管理に関わる人側の側面を紹介し、第10回において、現在の野生動物管理の基本的な進め方をまとめる。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論である。第11回は、シカ・イノシシの生態や管理方法を例に、個体数管理と被害防除を主軸とした管理を扱う。第12回は、クマ・サルの生態や管理方法を例に、動物の特性や社会、学習を考慮した管理を扱う。第13回は、外来種の管理の現状を学ぶ。第14回には、人間と動物の双方に影響するロードキル問題を紹介し、人側および動物側に影響する要因を分解して理解することを扱う。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
科目のキーワード
野生動物、被害、管理、順応的管理、モニタリング、合意形成、シカ、イノシシ、クマ、サル、外来種、ロードキル問題
授業の展開方法
各回の授業は、主に3つのパートに分けられる。第1パートでは、前回の授業のコメントへの返答や小テストの解説をもとに前回の復習を行う。第2パートでは、各回で扱う内容についてパワーポイントの資料をもとに解説する。第3パートでは、教員から出される問いかけや、小テストをもとに、第2パートの内容の理解度を確認する。回によっては、野生動物管理の理解を高め、授業内容を理解しやすくするために野生動物の生態や管理に関するドキュメンタリー映像を視聴することやグループワークを行うことがある。講義中にわからないことやより深く知りたいことがあれば、コメントを収集するフォームにコメントを記載してもらいたい。
オフィス・アワー
【月曜日】昼休み(前期のみ)、【水曜日】1時限目(後期のみ)、【木曜日】昼休み
科目コード ENS320
学年・期 3年・前期
科目名 野生動物管理学
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 基礎生態学、動物行動学
展開科目 陸生動物保全学、フィールド生態学演習Ⅱ、フィールド生態学演習Ⅲ、フィールド生態学演習Ⅳ
関連資格 鳥獣管理士
担当教員名 立脇隆文
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 生物多様性と野生動物-哺乳類 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第1回は、自然環境の中で野生動物がどのように進化してきたかを概観するとともに、この授業で主な対象とする哺乳類の位置づけ確認する。

【コマ主題細目①】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.1-12. 宮下直・井鷺裕司・千葉聡(2012)『生物多様性と生態学-遺伝子・種・生態系-』p1-6.

【コマ主題細目②】日本生態学会編『生態学入門(第2版)』p.167-185

【コマ主題細目③】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.13. 小池伸介・佐藤淳・佐々木基樹・江成広斗(2022)『哺乳類学』
コマ主題細目 ① 持続可能性と生物多様性 ② 生態系と野生動物 ③ 哺乳類
細目レベル ① 私たちが暮らす地球は、生命が満ちあふれた世界である。今からおよそ38億年前に生命体が誕生して以来、生物は、地球環境の変化や、生物自身による地球環境の改変にあわせて、適応進化と絶滅を繰り返しながら、現在の多様な生物種が存在するようになった。多様な生物種は、互いに捕食被食、競争、共生、寄生などの関係を結んでおり、周辺環境とともに生態系を構成している。生態系の中の生物種は、互いに関係しあうことによって、有機物の生産、物質循環、浄化などに関わる生態系機能が発揮され、維持している。ヒトを含む人類は今から600万年前頃に近年のチンパンジーと袂を分かち生じた生物であるが、古来より、ヒトは、自然の恵み(生態系サービス)として、生物を衣食住のための資源として利用してきた。ところが、産業革命以降、人間活動が地球環境に大きな影響を与え不安定化を招いている。個々の生物種の絶滅を防ぎ、生態系サービスを生み出す源である生物多様性を保全することは、地球環境や人間社会の持続可能性を考える上で重要である。


② 動物には、昆虫類、甲殻類、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類など様々な分類群が含まれるが、その多くは、無機物を有機物から生産できる植物などの独立栄養生物を採食するものや、他の動物やデトリタスを食べて生活する従属栄養生物である。そのため、動物は、生物群集の中では、捕食者として他の生物と捕食被食関係を結んでいる。また、動物は他の生物と同様に、捕食被食関係だけでなく、競争関係や寄生、共生関係を結ぶなど、生物群集のネットワークを複雑にすることにも寄与している。加えて動物は、移動能力の乏しい植物や細菌類などと異なり、自ら移動できる能力を持つ。動物は、その移動能力によって、植物の種子や花粉、化学物質などを、物理法則とは異なる方向に運ぶ機能を果たしている。こうした機能を持つ動物は、生態系あるいは生物群集の中において、重要な構成要素のひとつである。


③ 哺乳類とは「単孔類、有袋類、有胎盤類の共通する祖先以降のすべての子孫」と定義される生物の分類群である。現存する脊椎動物の中では、体毛や乳腺などの特徴を持つ動物を示す。進化の過程における哺乳類に共通する重要な適応の特徴は、内温性と子への大きなエネルギー投資である。哺乳類は約3億年前に生息していた哺乳類型爬虫類とも呼ばれる単弓類から派生したグループであり、カモノハシやハリモグラからなる単孔類、カンガルーやコアラなどの有袋類、有胎盤類を含む。現代の哺乳類には6500種近くが確認されており、齧歯目、翼手目、奇蹄目、偶蹄目、食肉目、霊長目、鯨目など20を超える目に分けられている。日本には170種の哺乳類が生息しており、鯨目と海牛目を除いた116種のうち、50種(43.1%)が日本の固有種である。


キーワード ① 持続可能性 ② 生物多様性 ③ 生態系サービス ④ 生態系内での役割 ⑤ 哺乳類
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

2 野生動物の生息状況の歴史的変遷 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第2回は、野生動物の生息状況の歴史的な変遷を概観し、人間によって野生動物の個体数が減少したときには絶滅が問題となり、野生動物の個体数が増加しすぎたときには被害が問題となってきたことを示すとともに、個体数の増減に影響する基本的なルールを押さえる。

【コマ主題細目①】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.13-18.

【コマ主題細目②】Vandermeer J.H. and Goldberg D.E. 著 (佐藤一憲・竹内康博・宮崎倫子・守田智訳)(2007)『個体群生態学入門 生物の人口論』p.7. 共立出版., 巌佐庸(1990)『数理生物学入門』p.100-114. 共立出版.

【コマ主題細目③】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.194-204.

コマ主題細目 ① 野生動物の減少・増加の歴史 ② 個体数の増減の基本 ③ 個体数がわからない中での個体数推定
細目レベル ① 日本の代表的な哺乳類の全国分布は、環境省によって過去数回にわたって調べれてきた。大型有蹄類であるシカやイノシシは、2000年以前には東北地方にはほとんど分布していなかったが、2015年ごろには近隣の分布域から分布を拡大してきたことが明らかとなっている。分布拡大の背景には、近年のシカやイノシシの個体数の増加が関係していると考えられているが、東北地方にはなぜシカやイノシシがほとんどいなかったのであろうか。縄文時代の貝塚から出土した動物の骨の分布や江戸時代の地域ごとの産物の取引き記録をまとめた論文によると、縄文時代から江戸時代には東北地方を含む全国にシカやイノシシが分布していた。その後、江戸時代後期以降に東北地方のシカやイノシシの分布域が大きく縮小したと考えられている。この時期、開墾による森林伐採などにより全国的にはげ山が広がるとともに、獣害の激化に対応するために農民が銃を農具として利用して駆除にあたるとともに、大規模な公共事業としての狩猟も行われてきたことから、森林の減少と狩猟圧の強化によって、分布域の縮小や地域的な絶滅が生じたと考えられている。その後、保護政策が進むとともに、森林の回復と狩猟圧の減少が、近年の個体数の回復や分布拡大を招いたと想定されている。こうした流れは、ヨーロッパや北米でも類似しており、狩猟が自由化されると大型獣の乱獲が起こり、19世紀後半には遊底類の個体数が著しく減少し、生息地も縮小した。そのため、狩猟期間の制限などを含む法制度が整えられたところ、直近の過去75~150年間に個体数は著しく増加した。


② 動物の個体数は、出生、死亡、移出、移入の4つで変化する。ある時点の個体数がわかり、出生、死亡、移出、移入のそれぞれの数がわかれば、次の時点の数が計算できる。実際に、人間では、すべての世帯に回答を依頼する国勢調査などによってある時点の人口を把握し、出生届、死亡届、転出届、転入届などによって人口を確認しており、そのパターンを解析することによって将来予測もできている。しかしながら、野生動物に対してはアンケートへの回答を求めることも、届け出も出してもらうこともできないため、観察されたデータから、個体数や出生率、死亡率、移出入率を推定することになる。推定に誤差はつきものであるため、誤差をふまえた上で、個体数や増減を確認していくことになる。


③ 簡単のため、決まった時期に年に1回、繁殖・死亡する動物の個体数を考えてみる。移動、移出を考えない場合、(翌年の個体数)=R×(前年の個体数)で表すことができる。ここで、Rは有限の個体群成長率と呼ばれるパラメータである。動物の繁殖(出生率)や死亡(生存率)を考える場合には、例えば、R=(出生率+生存率)のような形など、動物の生活にあてはまるように変更することで、より具体的なモデルとして記述することもできる。捕獲がある場合、(翌年の個体数)=R×(前年の個体数)-捕獲数と考えることができ、他の手法から、前年の個体数と翌年の個体数の比率やどちらが多いかがわかれば、連立方程式のような形でRと個体数を推定することができる。こうした捕獲数と個体数の関係式はハーベストベーストモデルと呼ばれており、階層ベイズ法などを用いて、シカなどの個体数推定に活用されている。個体数がわからない中での個体数推定の難しさを体験するために、神様と管理者に分かれ、捕獲数から個体数を推定できるかどうかというゲームを行う。


キーワード ① 分布 ② 出生と死亡 ③ 移出と移入 ④ 統計モデル ⑤ 個体数推定
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

3 野生動物の過増加がもたらす被害 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第3回は、野生動物が増えすぎたことにより、生じた人間が受ける被害の種類を紹介し、社会の中での問題の大きさを示す。

【コマ主題細目①】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.18-19.

【コマ主題細目②】羽山伸一・三浦慎吾・梶光一・鈴木正嗣編(2016)『増補版 野生動物管理-理論と技術-』p. 79-93. 文永堂出版.

【コマ主題細目③】三浦慎吾(2008)『ワイルドライフ・マネジメント入門』p.21-24, 57-67. 岩波書店.

【コマ主題細目④】農林水産省『野生鳥獣被害防止マニュアル-ハクビシン-平成20年3月. https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/manyuaru/old_manual/manual_haku_bisin_old/hakubi.html、厚生労働省『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について』
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000169522.html
コマ主題細目 ① 野生動物の過増加 ② 農林業被害 ③ 人身被害 ④ その他の被害
細目レベル ① 動物は内在的に増加する性質を持つ。したがって、死亡率が低下したり、繁殖率が向上したり、環境収容力が増加すれば、多くの動物の個体数は環境収容力に達して密度効果と釣り合うまで増加すると考えるのが自然である。密度効果は実験室のフラスコの中や島嶼のような閉鎖環境では観察されるが、少なくても中大型哺乳類の場合には、生息地が続いている開放系ではなかなか観察されないようである。これは、個体数が増えた場合には環境収容力に達して密度効果が十分に働くより前に、分散して生息域を拡大する方向で個体数が調整されるためであろう。さて、死亡率の低下は、例えば、狩猟者の減少や嗜好の変化による狩猟数(狩猟圧ともいう)の低下や捕食者の減少、冬季の気温の上昇などによって生じうる。繁殖率の向上は、餌資源量の増加に伴う栄養状態の改善によって生じうる。餌資源の向上は、環境収容力の増加にもつながるだろう。こういった変化によって、動物は増加傾向に転じ、指数関数的に個体数が増えることとなる。


② 農林業被害は、野生動物による農作物や木材、林産物という人の財産への損害のことをいう。元来、自然の中にあるものは誰のものでもなかったはずであるが、人は社会を発展させる中で土地の所有権を国や個人に認めている。土地の所有者は、そこに家を建てて住んだり、土地を利用して物を生産したりすることができる。人間社会においては、その土地でできる農作物や林産物はその所有者のものとなり、農家や林業家はその作物や木材、林産物を自家消費したり販売したりして生活する。しかしながら、言語の通じない野生動物には土地の所有者の概念がないと考えられるため、所有権のある作物も所有権のあいまいな植物も区別なく資源となる。土地の所有者は、自身の生活のために必要な作物がなくなると困るため、野生動物に農作物や木材、林産物などを消費されることは被害となる。農林業被害は、農作物を食べられる農作物被害、樹皮を向かれる林業被害などに分けられる。これらの被害は人の財産の損害による被害といえよう。農作物被害は実際の被害額に加え、被害の感じ方にも影響される。同じ量の作物を食べられたとしても、野生動物が食べるのは仕方ないと考えている人にとっては、損害とならず被害とされないこともある。農作物被害を起こす動物の中には、個体密度の増加に比例して被害量が増加するものと(ニホンジカなど)、特定の個体や群れが加害個体となり集中的に被害を起こすと考えられている動物がいる(イノシシやサルなど)。



③ 被害とは人やその財産が危害や損害を受けることである。人身被害は、野生動物と人が直接的に遭遇した時に生じる。遭遇するには、ある場所に野生動物と人が同時に存在する必要がある。野生動物がある場所に存在する頻度は、動物の密度と行動(その場所の選好性など)によるだろう。ランダムに動物が動く場合、密度が増えれば必然的にその場所にその動物がいる頻度は上がる。一方で、動物の密度が変わらなくても、ある場所にその動物が好む餌資源(果樹など)があれば、利用頻度は上がるだろう。人側についても同様である。ある場所の利用頻度は、人口と行動で変わるだろう。動物の行動が人口によって影響を受ける場合や、動物によって人の利用が減る場合もあるため、一概には言えないが単純にはこのような関係になる。こうして遭遇頻度が決まったあと、遭遇した際に実際に死傷するか、お互いが逃げ出すかなどが決まる。


④ 生活環境被害は、家屋に巣をつくるために損壊する物損被害や(クリハラリスなどによる)、屋根裏に動物が侵入し糞尿をすることで生じる衛生面での被害や(ハクビシンなどによる)、人身被害の生じる恐れのある動物の目撃情報によって生活が制限される被害(ツキノワグマなど)の生活に影響する被害のことである。
人獣共通感染症は、人間と動物の間でうつる感染症のことである。感染症自体は野生動物によるものではないが、野生動物が運び屋となる点で野生動物による被害とみなされることもある。狂犬病やエキノコックス症などがよく知られている。近年は野生動物が運ぶマダニ類が保有するウイルスによる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の問題もある。
生態系被害は主に外来種の文脈で使用される、上述の被害と少し異なる概念である。生態系被害は、外来種が在来生物への影響を通じて生態系に与える影響を人間の存続に重要な生態系への被害ととらえたものと考えられる。外来種以外には、ニホンジカの採食による植生の変化や森林生態系への影響を、生態系被害と呼ぶこともある。



キーワード ① 過増加 ② 農林業被害 ③ 人身被害 ④ 生活環境被害 ⑤ 生態系被害
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

4 野生動物管理とその方法 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第4回では増えすぎた野生動物との関係を調整する野生動物管理という考え方を紹介し、野生動物管理の3つの柱となる対策を示す。

【コマ主題細目①】羽山伸一・三浦慎吾・梶光一・鈴木正嗣編(2016)『増補版 野生動物管理-理論と技術-』p. 6-8. 文永堂出版

【コマ主題細目②】農林水産省『被害防止対策の進め方』

【コマ主題細目③】農林水産省『被害防止対策の進め方』

【コマ主題細目④】農林水産省『被害防止対策の進め方』

【コマ主題細目⑤】小池伸介・佐藤淳・佐々木基樹・江成広斗(2022)『哺乳類学』
コマ主題細目 ① 野生動物管理 ② 個体数管理 ③ 被害防除 ④ 生息地管理 ⑤ その他の管理
細目レベル ① 野生動物の管理は、個体数や生息地の範囲が増加した動物に対し、個体数や生息地の範囲を適正な水準に減少させることである。野生動物を対象に科学による管理を発展させたのは、アルド・レオポルドだといわれる。レオポルドは、狩猟で最大収量を得るための最適化を提案したり(個体数管理の基礎)、狩猟管理学を展開したりした。当時、保護や捕食者の駆除が進み、大型草食獣の個体数が回復しつつあった。しかし、その一方で、保護の流れに押されて個体数の調整がうまくいかず、個体数が増えすぎてクラッシュした経緯がある。こうした時代背景から、個体数管理の必要性が認識された。レオポルドは、1993年に『狩猟鳥獣管理(Game Management)』という本を執筆した。その中で、「狩猟鳥獣管理とはレクリエーション(この場合は狩猟)利用のために野生鳥獣の持続的な収穫を生み出すような土地をつくるアートである」と述べている。この本が野生動物管理を体系化した最初の教科書であり、保全思想を、野生動物をあてはめ、科学による管理へと発展させた。現在の日本においては、被害の防止という観点から、野生動物を管理するという意味合いが強い面がある。野生動物管理においては、主に、個体数管理、被害防除、生息地管理といった3つの管理オプションが用いられている。


② 個体数管理とは、地域個体群の長期にわたる安定的な維持と被害の低減を図るために、野生鳥獣の個体数、生息密度、分布域又は群れの構造などを適切に管理することである。個体数管理は生息地管理と同様に、長期的かつ広域で取り組む必要があるため、各地域の実情に合わせて、科学的データに基づき都道府県が特定鳥獣保護管理計画を策定し、その計画に基づいて動物が捕獲され、科学的に個体数が管理されている。個体数管理は、広域での個体群の密度や分布を評価する試験研究機関や、捕獲を担う狩猟者団体等との連携によって進められる。個体数管理は、密度と被害の相関関係などの根拠をもとに目標捕獲数を決めて行うべきであるが、相関関係を仮定して被害がなくなるまでというように、無計画に行われている場合もある。無計画な捕獲は、被害の軽減が認められない事例が多いだけでなく、行動圏の変化などを介して、被害が増加する場合もある。



③ 被害防除とは、農林業や人身に対する被害発生の原因やプロセスを解明し、様々な被害防止技術を用いて被害の軽減を図る手法である。被害状況(加害獣種、被害の発生時期や頻度、被害対象作物、被害地域の範囲など)を把握し、適切な被害防止技術を選択するものである。被害防除技術には、柵の設置、追い払い、放棄果樹などの誘引物の除去などがあり、対象種や地域の状況に応じて選択する。例えば、柵においては、ワイヤーメッシュ、電気柵、ワイヤーメッシュと電気柵を組み合わせたもの、などがあり、対象種の体サイズや、跳躍力、探索行動などを考慮して選択する。農作物被害に対する被害防除は、個々の農家や農家を中心とした地域・集落の住民の集まりが担い、行政や普及指導センター、試験研究機関等がそれを財政的あるいは技術的に支援する形態が一般的である。


④ 生息地管理とは、野生鳥獣の生息地を適切に整備すること、あるいは野生鳥獣の生息地と農地との間に緩衝地帯を設けることによって、農地や集落への出没を減少させ、被害を減らす管理である。生息地管理によって、農作物被害を減少させるためには、長期的及び短期的な目標設定のもとで取り組む必要がある。例えば、イノシシやクマなどが潜む可能性のある集落周辺の藪の刈払いは、生息環境管理の1つであるが、一時的な予算で一度だけ借り払ってもすぐに再生するであろうから、長期的な目標設定が必要となる。短期的な仮払いは、光条件の改善を通じて、シカなどを誘引する可能性がある点も考慮すべきである。また、野生鳥獣の生息環境の保全・再生については、おもに国や都道府県、市町村など行政が実施主体となって進める必要がある。


⑤ 野生動物管理の個体数管理、被害防除、生息地管理のほかに、「分布管理」や「個体管理」という考え方もある。「分布管理」は、対象種の分布を管理するものであり、個体数管理の一部とみなされることもある。密度管理が被害の生じた後に事後的に行われることが多いのに対し、事前予防として行われるものである。守るべきものを明らかにし、適切なリスク評価をもとに、対象種の分布を回避すべき生息地を明らかにすることから始まり、例えば、アリー効果を示す種に対しては、遅滞相管理という方法が提案されている。「個体管理」は動物行動学にもとづく被害の制御を目指したものであり、近年注目があつまっている。これは、被害の発現させやすさ(加害レベル)に関して、個体差や集団差が顕著にみられ、負のサービスの多寡に密度非依存性が確認される事例がさまざまな哺乳類で明らかにされてきたことに由来する。加害レベルを利用した選択捕獲や、加害レベルの高い個体が集中しやすい場所での選択捕獲の有効性が指摘されている。


キーワード ① 野生動物管理 ② 個体数管理 ③ 被害防除 ④ 生息地管理 ⑤ 個体管理
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

5 第1回から第4回のまとめ 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第5回では、第1回から第4回の内容をまとめ、人間と野生動物の関係性と野生動物管理の位置づけをまとめる。


【コマ主題細目①】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.1-24.

【コマ主題細目②】コマオリジナル配布資料

【コマ主題細目③】コマオリジナル配布資料
コマ主題細目 ① 第1回から第4回のまとめ ② 適正な個体数とは何か ③ 被害とは何か
細目レベル ① 第1回から第4回までは、野生動物の管理が必要とされるようになった経緯を紹介する回であった。地球環境や他の生物との相互作用の中で、動物も、長い年月をかけながら、生態系の中での役割を持つように進化してきた。哺乳類は、比較的体サイズの大きな分類群であり、捕食を通じながら生態系の中で重要な役割を占めることも多い。ヒトは、祖先から種分化して以降、分布拡大に伴って大型動物を減少させており、また、開発や乱獲などにより多くの種を絶滅させてきた。絶滅を加速させたことへの反省等から、野生生物を保護する思想が生まれ、保護の結果、野生動物が増加するようになった。しかしながら、増えすぎた動物種が他の生物や人間環境に影響するなど、今度は増えすぎた動物による被害が発生するようになった。増えすぎた動物に対処する分野として、現在、野生動物管理が注目されており、個体数管理、被害管理、生息地管理などの手法を用いて、野生動物と人の共存を目指した活動が行われている。


② 鳥獣保護管理法では、大雑把に言うと、減って絶滅しそうな動物を増やす活動を保護、増えて被害を起こす動物を減らす活動を管理と定義している。保護と管理は、個体数を、増やす、と減らす、という逆の方向性を持つため、最終的には適正と考えられる範囲を目指すことになるであろう。では、適正と考えられる範囲とはどのように決められるものであろうか。ここでは、学生を4~5人ずつのグループに分け、シカを例に、適正と考えられる範囲や、それを決めるのに必要な視点を話し合い、まとめるグループワークを行う。複数のグループの結果を並べて示すことで、私たちが適正と考える範囲に分布があるということと、人によって視点が違いうることを理解することを目指す。


③ 第3回には、農林業被害や人身被害など、様々な被害を見てきた。ここで、被害という言葉を考えてみたいと思う。シカが農作物を食べることは被害と考えられるが、シカが野山に生えている植物を食べることは被害と考えられるのだろうか。また、アライグマが在来のサンショウウオの卵を食べるのは被害であろうか、外来のアメリカザリガニを食べるのはどうであろうか。私たちは、ある基準をもって「被害」という言葉を定義して使用している。この定義が人によって異なると、うまくコミュニケーションが取れなくなる。ここでは、被害と言えるかどうか悩ましいと思われるいくつかの事例を示し、グループ内で被害の定義についての話し合いを行う。そして、「被害」と「影響」という2つの言葉を、野生動物の保護管理の文脈の中で使い分けられるようになることを目指す。



キーワード ① 保護 ② 管理 ③ 適正範囲 ④ 被害 ⑤ 影響
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

6 野生動物管理に関する法制度 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第6回では、野生動物管理に関わる法制度の成り立ちや掌握範囲を抑える。

【コマ主題細目①】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.34-38.

【コマ主題細目②】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.25-32.

【コマ主題細目③】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.33-34, 126-128.
コマ主題細目 ① 生物多様性および野生動物に関する法体系 ② 鳥獣保護管理法 ③ 鳥獣被害防止特措法
細目レベル ① 生態系保全についての国際的な取り組みとして、「生物の多様性に関する条約(生物多様性条約)」が1992年に国際環境計画で採択された。この条約は、生物多様性の保全と持続的利用のための国家的な戦略もしくは計画の策定を求めており、日本では、2008年に制定された生物多様性基本法に基づき、生物多様性国家戦略が法定計画になった。生物多様性基本法は、環境省の環境基本法の2つの主軸のうちの1つであり、この基本法の下で、「自然環境保全法」、「自然公園法」、「種の保存法」、「鳥獣保護管理法」、「外来生物法」、「カタルヘナ法」、「自然再生推進法」、「エコツーリズム推進法」、「生物多様性地域連携促進法」の9つの方が整備されている。また、生物多様性や野生動物に関する他の法律・条約には、「文化財保護法」、「ワシントン条約」、「ラムサール条約」、「世界遺産条約」、「二国間渡り鳥等保護条約・協定」などがある。


② 野生動物の保護や管理に大きくかかわる鳥獣保護管理法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)の現状と歴史的な変遷を概観する。鳥獣保護管理法は、「鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するとともに、猟具の使用に係る危険を予防することにより、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保(生態系の保護を含む。以下同じ。)、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資すること」を目的としている。現在の鳥獣保護管理法は、狩猟法から改変されてきたものである。1873(明治6)年に、鳥獣狩猟則が制定され、狩猟制度の法制化に向けた試行錯誤が始まった。1895(明治28)年に、狩猟法(旧)が制定され、鳥獣保護繁殖のための改変が進んだ。その後、1918(大正7)年には、狩猟法の全部改正が行われ、狩猟鳥獣を指定するなど、現行制度への道筋が示されてきた。1963年(昭和38)年には、狩猟法は「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」(鳥獣保護法)へと改称され、鳥獣保護事業と狩猟規制を通じて、鳥獣の保護増殖・有害鳥獣駆除・狩猟事故の予防を測ることによって、「(人間の)生活環境の改善と農林水産業の進行を行うこと」が法律の目的に決定した。その後、1999年(平成11)年には、特定鳥獣保護管理計画制度の創設が行われ、2014年に、指定管理鳥獣保護等事業の創設とともに、「鳥獣の保護管理及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(鳥獣保護管理法)へと名称を変更し、保護と管理の定義が規定された。このように、鳥獣保護管理法は鳥獣保護管理事業と狩猟の適正化の二つを含む法律となっている。所管は環境省である。



③ 鳥獣保護管理法以外の、野生動物管理に大きくかかわる法律に、農林水産省所管の鳥獣被害防止特措法(鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律)がある。2007年の議員立法により策定された法律であり、主な内容は、市町村が被害防止計画を策定して管理を実行し、都道府県は策定市町村に対し、有害鳥獣捕獲(許可捕獲)の権限を委譲するというものである。国や県の財政的な支援や、市町村による「鳥獣被害対策実施隊」の設置などが盛り込まれており、被害の現場を抱える市町村が主体的に被害防止に取り組める仕組みとなった。また、2021年の一部法改正においては、捕獲等の強化のために都道府県が市町村と連携して広域的な有害鳥獣捕獲等事業を実施することが明記された。このような経緯により、日本の野生動物管理に関わる法制度は、環境省所管の特定計画制度(都道府県)と農林水産省所管の鳥獣被害防止特措法(市町村)によるものが併存している。この重層的な状態の中で、市町村の対応が困難な場合にはより上位の都道府県や国が補完する(補完性原則)する案が提案されている。


キーワード ① 生物多様性条約 ② 生物多様性基本法 ③ 鳥獣保護管理法 ④ 鳥獣被害防止特措法 ⑤ 補完性原則
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

7 特定鳥獣保護管理計画に基づく順応的管理 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第7回では、鳥獣保護管理法に位置づけられる、特定鳥獣保護管理計画で用いられる順応的管理やモニタリングの考え方を紹介する。

【コマ主題細目①】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.110-111.

【コマ主題細目②】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.110-115.

【コマ主題細目③】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.115-120.

コマ主題細目 ① 特定鳥獣保護管理計画 ② 順応的管理 ③ モニタリング
細目レベル ① 都道府県は鳥獣保護管理法に基づき、鳥獣保護事業計画により基本方針を定めたうえで、獣種ごとの特定鳥獣保護管理計画を策定することができる。社会的課題が大きい野生動物種に対して、都道府県(一部は国)が独自の計画を策定できる制度であり、科学生と計画性を柱とした保護管理の要となる。地方分権の流れの中で、地方自治体が責任をもって野生動物管理を担うための精度であるため、計画を策定する必要性については、各自治体の判断となり、課題認識がない場合は、計画策定が行われない。都道府県知事が策定する計画には、第一種(保護)計画と第二種(管理)計画の2種類がある。個体数が減少傾向にある場合は第一種、増加していることにより問題が生じている場合は第二種となる。地域によって増減傾向が異なる場合には、同じ対象種でも、第一種と第二種が混在する場合がある。特定鳥獣保護管理計画制度の根幹を支えているのは、順応的管理とモニタリングデータである。



② 無計画な活動は効率的にゴールに向かうことができないばかりか、動物を絶滅させるなど最悪の事態を迎えことにつながる。しかしながら、絶滅危惧種の保護や外来種の管理の場面では、十分な科学的根拠がそろっておらず、個体数推定にも大きな不確実性が伴うまま、計画を立てるという難しい状況に迫られる。野生動物、とくに哺乳類の保全(保護や管理)の分野では、こうした不確実な状況で失敗なく計画を進めるために「順応的管理」の考え方に基づいて保全を進めることが推奨されている。順応的管理では、目標に基づいて、計画を立て(Plan:P)、実践し(Do:D)、モニタリングデータ(細目レベル③参照)を用いて結果を評価し(Check:C)、計画を改善する(Action:A)というPDCAループを経時的に回していくことで、実践を通じて対象動物の情報を蓄積しながら改善していく方法である。



③ 施策の評価に用いるモニタリングデータは順応的管理の鍵となる情報の一つである。モニタリングは監視、観察することの意味を含んでおり、モニタリングデータは野生動物の保全の分野では、統一した手法で定期的に取得するデータのことである。野生動物の保全においては、対象動物の個体数(や密度や分布)は増えたのか減ったのか、施策の実施によって被害は増えたのか減ったのかなどのモニタリングデータを集める場合が多い。モニタリングデータを集める際には、施策の効果を測定できるよう施策より前からデータを蓄積することが望ましい。モニタリングデータの取得方法は、対象とする空間範囲、保全に必要な情報精度、調査項目数、継続して利用できる予算によって、検討されるべきである。例えば、個体数や密度を正確に推定しなくても、密度に比例する密度指標を用いても普通種の管理を達成できることもある。モニタリングデータは、その性質上、問題が生じる前から蓄積しておくことが望ましいが、個体群の状態を理解するための最も基礎的な分布情報でさえも、問題が生じる前は整備されていないことも少なくないのが現状であり、対策が後手に回ることも多い。



キーワード ① 鳥獣保護事業計画 ② 特定鳥獣保護管理計画 ③ 順応的管理 ④ モニタリング ⑤ 密度指標
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

8 野生動物管理の実施方法-捕獲、被害防除、合意形成 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第8回では、野生動物管理の現場での対策として、捕獲と被害防除の実態を紹介する。


【コマ主題細目①】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.128-129.

【コマ主題細目②】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.33-34.

【コマ主題細目①】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.133-139.

コマ主題細目 ① 野生動物管理の役割分担 ② 捕獲の実際 ③ 獣害に強い集落づくり
細目レベル ① 被害を防ぐには、防護柵の設置、藪の刈払い、放棄果樹の伐採、組織的な追い払い、加害個体の駆除、個体数の管理、モニタリング、計画策定、これらの運用のための体制整備や資金獲得など、さまざまなタスクがある。野生動物管理のこれらのタスクはどのように分担されているのだろうか。被害対策を主眼とした役割分担においては、自助、共助、公助の3つにわけて整理することができる。まず、個々の住民は、個々の農地を守る(自助)。農地を電気柵等で囲う、収穫残渣を除去するなど、個々の取り組みが重要である。一方で、獣害対策には個人でできないことも多い。集落や地域で共同して取り組むものとして、集落防護柵の設置や組織的なサルの追い払いなどがある(共助)。餌付けや檻の管理の分担や、檻の設置、移設、見回り、など集落で取り組むことのできることがある。市町村や都道府県は、地域の取組支援や、地域を超えた支援を担う(公助)。市町村は、鳥獣被害対策特措法を背景に、被害防止計画を策定し、交付金に申請するなどして柵や檻の補助などを行い、都道府県は、鳥獣保護管理法に基づいて、特定鳥獣保護管理計画を策定し、モニタリングを通じた、広域管理を担う。このように、小さな空間スケールから大きな空間スケールになるにつれて、自助、共助、公助と変わりながら、被害対策が行われている。


② レクリエーションのための狩猟だけでなく、野生動物管理の3つの柱のうちの1つである個体数管理のためにも、野生動物の捕獲が行われている。鳥獣保護管理法では、鳥獣やその卵の捕獲や採取等は、原則として禁止されている。そのため、捕獲を行うためには、鳥獣保護管理法や外来生物法に定められた条件に沿って捕獲する許可を得る必要がある。捕獲区分は大きく分けて狩猟と狩猟以外の捕獲に分けられる。狩猟による捕獲は狩猟鳥獣を対象に、法定猟法によって、狩猟期間に行うものであり、狩猟免許を取得し狩猟者登録を行った狩猟がそれぞれの目的で行うものである。一方、狩猟以外の捕獲には、特別な許可を得て行う捕獲として、学術研究のための学術捕獲、農林業被害等の防止を目的とした有害捕獲、鳥獣の管理のための個体数調整に関する捕獲などがあり、許可を受けた期間・区域における捕獲が可能となる。また、特定の管理者に捕獲事業を委託する指定管理鳥獣捕獲等事業による捕獲もある。捕獲の方法は、主に銃猟とわな猟であり、銃猟では巻き狩りと呼ばれるチームで行う猟法や個人で行う忍び猟などが行われており、わな猟では、くくり罠、はこ罠、かこい罠などが用いられている。


③ 被害防止は、個人、地域、市町村、都道府県と分担して行うことになるが、市町村や都道府県といった行政が、地域に対して主体的に獣害対策に取り組むことを促す働きかけをすることも、公助の重要な役割の一つである。地域によって状況はさまざまであるため、最適な方法も異なるであろうが、自助や共助を促し、獣害対策の当事者になってもらうことが重要である。対象を「その気」にさせるためには、「理解」→「納得」→「共感」への段階を踏む体系的な働きかけが重要である。例えば、1)役員などとの事前協議、2)研修会・座談会、3)アンケート調査や事前の被害MAP作成、4)集落の現地点検、5)問題点や課題整理のためのワークショップ、6)被害対策の実施、7)効果の評価と残された課題の整理である。こうして整理された課題を対象に、再度、地域からの改善への気づきの声を大切に育てていくことができる。こうした課題解決の力は、獣害だけに限らない様々な地域課題に対応する技術にもなる。


キーワード ① 自助 ② 共助 ③ 公助 ④ 狩猟 ⑤ 課題解決
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

9 合意形成のロールプレイ 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第9回では、こうした管理活動を行う主体の整理と、様々な利害関係者を巻き込みながら管理計画を進めるための合意形成など、野生動物管理に関わるヒューマン・ディメンションを紹介する。

【コマ主題細目①】桜井良, 秋庭はるみ,松田裕之. (2015). 『ヒューマン・ディメンションとレギュラトリ科学: 野生動物管理における意思決定や政策評価のための科学の創生に向けて』政策科学23(1), 47–52. 桜井良, 江成広斗. (2010). 『ヒューマン・ディメンションとは何か: 野生動物管理における社会科学的アプローチの芽生えとその発展について』 ワイルドライフ・フォーラム, 14(34), 16–21.

【コマ主題細目②③】エリザベス=バークレイ・パトリシア=クロス・クレア=メジャー著(安永悟監訳)『協同学習の技法』“ロールプレイ”p.123-127. ナカニシヤ出版

コマ主題細目 ① ヒューマン・ディメンション ② 合意による目標設定 ③ 利害関係者の思い
細目レベル ① 野生動物に関する研究は、これまでは生態学、生物学、獣医学など、動物そのものに焦点を当てたものが多かったが、軋轢を防ぐためには、人々の意識や行動、更に政策や法律についても理解を深める必要がある。こういった社会的側面に関する情報の獲得とそれに伴う意思決定の促進を目指す学問が Human Dimensions of Wildlife Management(野生動物管理における社会的側面、以下 ヒューマン・ディメンション)である。ヒューマン・ディメンションの分野では、野生動物管理における意思決定や政策の実施を効果的に行うことを手助けすることを目的に、利害関係者同士、または利害関係者と実務者との間の軋轢解消、住民の意識・行動の推測、住民の意識を反映させた政策の実施などの研究が進められている。米国のある地域において、住民がオオカミの再導入に否定的な意見を持っている中で、社会的な合意形成のプロセスを経ることなく、生物学的な判断のみによってオオカミ4頭が再導入された際、放獣後8カ月以内に3頭が撃ち殺され1頭が車に跳ねられて死亡した。この例は、野生動物管理において、利害関係者間の合意形成が重要であることを示している。また、ヒューマン・ディメンション研究で使用される理論のひとつに、野生動物に対する人々の許容性モデルがある。例えば、ある地域のクマの数が住民の許容度を超えると、人々によるクマに関する苦情が増加し、駆除の要請が高まると考えられる。野生動物による被害が何かということを考える際、同じだけ作物を食べられたとしても、許容できるかできないかによって、被害となりうるかが変わるということを考えることにもつながる。野生動物管理における社会的側面であるヒューマン・ディメンションは、社会の中で、野生動物管理を円滑に進める視点を提供するものである。



② 管理を進めるには、利害関係者間での管理目標の合意形成と、順応的管理の考え方に基づいた施策の実施と改善が求められる。この回では、管理の現場の一例を提示し、管理目標の合意形成から順応的管理の方針を決めるまでを体験をするロールプレイを行う。まず、学生が数人ずつのグループに分かれる。グループの内部では、個々人に利害関係者の役割(行政職員、農業従事者、狩猟者、保護論者、一般市民など)を割り当てる。話し合いを始める前に、各グループの同じ役割の担当者が集まって、配布した役割シートに書かれた内容を参考に、その役割になりきるための準備を行う。再度グループに分かれたら、学生同士で役割を演じながら管理目標の合意形成と、順応的管理の方針を話し合って決める。こうして議論する中で、各利害関係者の考え方のイメージや、合意形成の難しさ、順応的管理の方法についての理解を深める。


③ 動物とのかかわり方は多様であり、人によって考えも様々であるため利害関係者の特徴を一概に決めることは本来不可能である。しかしながら、職業や立場によって、振る舞いが変わる部分もあると思われる。例えば、市民の意見をまとめて保全活動を進める立場にある行政職員は、他の利害関係者の意見を聞き出し、議事を進行し、取りまとめる必要があるだろう。農業従事者は、ニホンジカやイノシシ、ニホンザルなど農業被害を出す動物はなるべく被害がないようにしたいと考えるはずである。また、保護論者はなるべく動物が殺されるのを減らしたいと願うかもしれない。このような立場の違いはステレオタイプ的であり、現実のものと異なるかもしれないが、考え方を理解するのに役立つ部分もあるだろう。


キーワード ① ヒューマン・ディメンション ② 合意形成 ③ 利害関係者 ④ 農業従事者 ⑤ 行政職員
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

10 第6回から第9回のまとめ 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第10回では、現在の野生動物管理の基本的な進め方をまとめる。

【コマ主題細目①】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.25-38, 110-120.

【コマ主題細目②】コマオリジナル配布資料

【コマ主題細目③】コマオリジナル配布資料

コマ主題細目 ① 第6回から第9回のまとめ ② 順応的管理の設計 ③ 被害のモニタリングだけでの管理は可能か
細目レベル ① 第6回から第9回までは、日本における野生動物管理の方法として、法制度の歴史的発展の経緯をまとめ、現在の野生動物管理の要となっている特定鳥獣保護管理計画の要点を確認した上で、管理を進める現場で行われている捕獲、被害対策、合意形成の実際を伝える回であった。野生動物の保護管理を支える法律には、鳥獣保護管理法と鳥獣被害特措法がある。鳥獣保護管理法は、狩猟を管理する狩猟法から、保護の時代、管理の時代を迎える中で、狩猟だけでなく保護管理の視点を踏まえた法律へと改正された。また、近年の被害の増加に伴い、鳥獣害対策の現場を支える鳥獣被害特措法が制定した。このうち、鳥獣保護管理法を支えとして、現在の野生動物の保護管理は、都道府県などが特定鳥獣保護管理計画を策定して進める形がとられている。特定鳥獣保護管理計画では、不確実な状態に柔軟に対応できる方法である、順応的管理とモニタリングに基づく科学的な管理が進められている。野生動物管理の現場では、自助、共助、公助と役割分担をしながら、管理が進められている。個体数管理や加害個体の駆除にあたっては、捕獲が行われることがある。捕獲においては、銃猟やわな猟が行われており、担い手の確保が課題である。また、被害防除においては、個人あるいは地域単位での防護柵の設置や、組織だった追い払いなどが進められている。管理計画の目標を決めるにあたっては、利害関係者ごとに違う思いがあることを踏まえ、合意形成を行うことが必要となる。


② 第7回において、不確実な状態の中では、モニタリングデータに基づく順応的管理が重要であると紹介した。順応的管理の考え方は、野生動物管理にのみ使われるものではなく、身近なことにおいても用いることができるものである。例えば、夏休みまでに体重を〇kgにするには、どのような期間ごとに、何をモニタリングして、何を実施する計画を立てればよいだろうか。また、ある就職先から確実に内定をもらいたい場合、どのような期間ごとに、何をモニタリングして、何を実施する計画を立てればよいだろうか。ここでは、学生を4~5人ずつのグループに分け、グループごとに、順応的管理の設計を体験することで、モニタリング指標に基づいて実施内容を改善することの効果を理解することを目指す。


③ 第7回において、不確実な状態の中では、モニタリングデータに基づく順応的管理が重要であると紹介した。モニタリング調査は、定期的に同じことを行うため、長期間にわたって多くの経費がかかる調査である。経費が限られている中では、どの程度の空間解像度でデータを取得するかの検討や、何年に1回モニタリングをするかといった実施頻度の検討、どのくらい正確な値を取得するかといったモニタリングデータの確度や精度の検討、何をモニタリングするかといったモニタリング項目の種類の検討などが必要となる。ここで、被害管理を目的とした管理を目指す場合、被害金額や被害面積といった被害のデータだけをモニタリング指標にすることも考えられるであろう。被害データのみを管理指標にした場合、順応的管理による管理はうまくいくだろうか。それとも、何らかの理由でうまくいかないであろうか。ここでは、学生を4~5人ずつのグループに分け、グループごとに、シカを例に、被害金額をもとに順応的管理を行う思考実験を行う。複数のグループの結果を並べて示すことで、被害金額だけをモニタリング指標とすることの難しさを理解することを目指す。


キーワード ① 捕獲の担い手 ② 不確実性 ③ 計画策定 ④ 被害金額 ⑤ モニタリング指標
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

11 シカ・イノシシの管理 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第11回では、シカ・イノシシの生態や管理方法を例に、個体数管理と被害防除を主軸とした管理を扱う。

【コマ主題細目①】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.51-58.

【コマ主題細目②】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.59-61.

【コマ主題細目①】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.59-61,67-69. 江口祐輔 監修(2013)『最新の動物行動学に基づいた動物による農作物被害の総合対策』


コマ主題細目 ① シカの基礎生態とシカによる被害 ② イノシシの基礎生態とイノシシによる被害 ③ シカ・イノシシの管理方法
細目レベル ① ニホンジカは、分布域が南北に広く多様な環境に適応したシカである。分布域の異なる亜種には、体サイズに差異が認められる。自然環境や生息密度に応じて多様な生態を示す「可塑性」を持っており、それが管理を難しくしている側面がある。ニホンジカの体サイズは緯度が高くなるほど大きくなり、ベルグマンの法則に従っている。体重は、北海道のエゾシカで100~150kg、成獣メスで70~100kgであり、ホンシュウジカは、西日本では、成獣オス60~80kg、成獣メス30~50kg程度である。シカの枝角はオスのみにあり、毎年生え変わる。1歳でのみ1本角と呼ばれる小さな角であるが、2歳以降は、3叉4尖の角が生える。シカは、9月~10月に交尾期、5~6月に出産する。1歳以上のメスは、交尾期間中24時間のみ発情し、約7カ月間の妊娠期間を経て、5~6月に出産する。オスもメスも約1歳4か月程度で生成熟し、メスは満2歳で所産を迎える。通常は1頭の子を出産し、約1年は母子で過ごし、メスの子は、その後も母親とともに行動するが、オスは満1歳ごろに親から離れる。ニホンジカのオスとメスは1年の多くの期間、別々の群れで生活している。メスは母系を単位とした群れで活動するが、オスは単独、もしくは数頭のオスの群れを形成する。行動圏については、年間を通じて定着しているものと、季節移動をするものがある。ニホンジカによる被害は、農業被害や林業被害だけでなく、自然植生への影響に及ぶことに特徴がある。自然植生への影響は、種間相互作用を介して、他の生物に広く影響する点で大きな影響を及ぼしている。


② イノシシはユーラシア大陸の多様な環境に適応した動物である。海辺から高山帯、また湿地帯から砂漠まであらゆる環境に分布していることから、ハビタットの制限を受けない適応幅の広い動物とされる。日本においては、主に広葉樹林帯に生息するが放棄農地が広がる人為的環境なども利用する。中山間地域に広がる里地と山地が入り組んだ地域は、イノシシにとって好適な環境であり、密度が高くなりやすい。また、都市環境にも容易に適応することが観察されており、ゴミを食べに出てきたイノシシと遭遇する事例もある。イノシシの成獣は60~160kg、メスは40~80kgほどである。オスもメスも牙をもつが、オスの方が大きく発達する。イノシシは繁殖力の高い動物であり、兵庫県の例では、妊娠率は、1歳で85%、2歳以上では95%であり、平均産子数は4頭である。イノシシは雑食性であり、ミミズなどの土壌動物や、サワガニやカエルなどの小動物、植物の地下茎などを食べる。通常、イノシシのオスは単独で過ごし、メスは血縁で結ばれた母系グループで主に活動する。鼻先で70kgほどのものを持ち上げる力があり、成獣は1.2mほどの高さをジャンプすることもできる。イノシシによる被害は、主に農作物被害と掘り返しである。様々な農作物を利用するが、根菜類や果実、水稲などを好む。掘り返し行動により、畦の破壊、柵の破壊、公園・緑地などでも被害が生じる。


③ シカもイノシシも多くの都道府県で特定鳥獣保護管理計画の第二種(管理)計画が策定されており、モニタリングデータに基づく順応的管理が行われている。主要なモニタリングデータとしては、両種ともに、被害量、捕獲数、捕獲努力量、カメラトラップ調査などがある。これらに加え、密度指標としての狩猟者が1日猟に出た際の目撃頭数、繁殖状況を示す妊娠率や、個体群の連続性などを検討するための遺伝情報などの情報が使われる。また、シカでは、密度指標としての糞塊密度調査、森林被害の程度を示す下層植生調査が行われることがあり、イノシシでは、密度指標としての痕跡密度調査や、行動追跡調査などが行われることがある。シカやイノシシは個体数が多いため、密度指標と被害量の関係から、被害を許容できる密度指標を求め、管理目標に据えることも行われている。また、捕獲数と密度指標の関係から生息数を推定する個体数推定(Harvest-based estimation)を行うことができる。そのため、個体数管理と被害防除を中心とした管理が行われている。被害防除の観点では、シカやイノシシには、ワイヤーメッシュ柵などが用いられるが、シカやイノシシは柵の下部をくぐり抜けようとすることが多いため、柵の接地面の補強が重要である。


キーワード ① 自然植生への影響 ② 掘り返し ③ 捕獲努力量 ④ 糞塊密度 ⑤ 痕跡密度
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

12 クマ類・サルの管理 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第12回は、クマ・サルの生態や管理方法を例に、動物の特性や社会、学習を考慮した管理を扱う。


【コマ主題細目①】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.72-79.

【コマ主題細目②】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.79-90.

【コマ主題細目③】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.91-93.

【コマ主題細目④】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.93-109.

コマ主題細目 ① クマ類の基礎生態 ② クマ類による被害と管理方法 ③ サルの基礎生態 ④ サルによる被害と管理方法
細目レベル ① 日本には、ヒグマとツキノワグマが生息している。国内においては、ヒグマは北海道のみに生息し、ツキノワグマは本州と四国に分布している。九州では1957年に死亡個体が確認されてから、生息確認がないまま50年以上経過したため、環境省は2012年に絶滅を宣言し、レッドリストからも削除された。また、本州の個体群は分布が拡大する傾向にあるが、四国の個体群は減少している。成獣の平均体重はヒグマのオスで200kg、メスでは100kg、ツキノワグマのオスでは60~160kg、メスで40~80kgほどであり、両種の間にはかなり大きな体格差がある。また、両種ともに体重には顕著な個体差が認められるとともに、性的二型が顕著である。クマ類の生活史の特徴として、冬眠することが挙げられる。冬眠中は採餌も飲水も行わず、排泄・排尿もしない。冬眠前に体脂肪を蓄積できた成獣メスは、妊娠し、2月頃ごろ1~3頭出産し、冬眠しながら、授乳をするという特殊な生理特性による保育が行われる。交尾期は初夏であるが、受精卵が着床せずに着床せず(着床遅延)、エネルギー(皮下脂肪)が十分に蓄積された時点で着床する。交尾期の初夏と冬眠に向けて食欲を増す秋(特に堅果類の凶作年)には行動が活発になる。


② クマ類による被害は、農作物被害だけでなく、人里への出没に伴う人身事故や精神的被害があることが特徴である。クマ類に対しては、出没や被害に際して、人間側の恐怖心から、駆除の要望が高まることが多い。一方、マスメディア等で被害が報道されると、被害力離れた地域からは、動物愛護の立場からの保護の要請も高まり、対策者や行政担当者が駆除と保護の主張の板挟みにあることが少なくない。そのような状況下で、管理を進めるためには、生息や被害のデータに基づく状況診断による客観的で透明な対策方針を明示し、具体的な手法などについて、丁寧に説明するなどの理解を得るための努力が必要である。クマ類の出没対策として主要な管理手法は、①誘引物除去、②電気柵等の設置による防護柵の設置、③学習放獣、④加害個体の駆除、⑤集落環境の整備の5つである。出没の理由は、クマが食物を求めて人里に出没することなので、予防のための対策は具体的な誘引物をつきとめて、それを取り除くことである。特定鳥獣保護管理計画に基づく保護管理では、個体群の状態に合わせ、生息数が多い場合には個体数管理、生息数が少ない場合には個体管理と使い分けることや、都道府県を超えた広域管理が行われている。


③ ニホンザルは、本州に分布するホンドザルと、屋久島に亜種ヤクシマザル(ヤクザル)が生息する。青森県の下北半島の個体群は「北限のサル」として、霊長類では最も高緯度域に分布することで世界的に有名である。よじ登る能力が高く、常緑広葉樹林や落葉広葉樹林の地表および樹上でも活動する。母系集団の群れをつくり、その行動圏は大きい場合には100km2にもなることがある。群れは、オトナメスとそのアカンボウ、コドモ、ワカモノ、オトナオスからなり、自然状態では概ね40頭程度とされるが、餌などの条件などによっては100頭以上の群れになることもある。オスは生後6年程度で生まれた群れを出て、別の群れに入る。一方、メス刃大部分が生まれた群れで一生を過ごす。詳しい理由はわかっていないが、個体数が増えた場合や、群れの個体を捕獲した後などに、群れが分裂することがあり、群れ単位での分布拡大が生じる。


④ ニホンザルによる農業被害金額は2008年頃の15億円から2018年には約8億円と減少傾向にある。また、鳥獣害全体に占める割合も2018年で約5%と比較的少ない。しかしながら、ニホンザルの被害は日中に発生し、人目に付きやすいこと、果菜類や果樹など比較的高額な農作物にも被害が及ぶことなどから、被害に対する心理的な負担感は大きい。サルは明確な群れをつくる点が、シカ、イノシシ、クマなどと異なる。そのため、ニホンザルによる被害を軽減させるには、群れ単位の管理が必要となる。個体数管理の観点からは、群れごとの分布を明らかにし、群れごとの頭数や加害レベルを評価し、群れの位置関係や連続性を考慮して、全頭捕獲(群れの除去)か部分的捕獲(頭数の削減)、加害個体の選択的捕獲等の捕獲オプションを選択する。また、被害防除の観点からは、「安全」で「餌」を食べることができる場所を減らすことを意識し、無意識の餌付けをなくす、藪などの隠れがとなるところをなくす、効果のある防護柵で覆う、組織的な追い払いを実施するなどの方法がある。


キーワード ① 冬眠 ② 着床遅延 ③ 堅果類の豊凶 ④ 群れ ⑤ 選択的捕獲
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

13 外来種と野生動物由来の感染症の管理 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第13回は、外来種の管理の現状を学ぶ。


【コマ主題細目①②】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.141-151.

【コマ主題細目③】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.152-165.

コマ主題細目 ① 外来種の基礎生態 ② 外来種による被害と管理方法 ③ 野生動物由来の感染症
細目レベル ① 外来種は、人または人間活動によって、意図的あるいは非意図的に本来の分布域外に導入された種である。国外から導入されたものだけでなく、国内において他地域に導入された種も外来種(国内外来種)と考えられている。日本においては、外来種は生物多様性生を脅かす4つの危機のうちの1つであり、外来生物法のもと、外来種のリスト化や対策のための具体的な指針が整理された。日本の外来生物については、生態系被害防止外来種リストにまとめられており、それぞれの定着・影響の状況によって、定着予防外来種、緊急対策外来種、重点対策外来種にグループ分けされている。哺乳類において、すでに定着した緊急対策外来種としては、フイリマングース、アライグマ、ヌートリア、クリハラリス、キョンなどがおり、重点対策外来種としては、ハクビシン、ハリネズミ属、アメリカミンク、シベリアイタチ(対馬を除く)などがいる。このうち、本州で比較的一般的にみられる、アライグマ、ハクビシン、ヌートリア、クリハラリス、シベリアイタチなどの生態的特徴を紹介する。


② 外来種がおよぼす影響は、人間活動に関わるものと、生態系に関わるものに大別できる。人間活動に関わるものは、①カミツキガメなどによる直接的な人身被害、②シベリアイタチやハクビシンなどの家屋侵入による汚染や破壊、マダニなどの寄生虫を介した感染症の媒介といった生活被害、③アライグマやハクビシンによる農作物の被害や、ヌートリアによる畔の破壊などの農林水産業への被害などがあげられる。一方、生態系に関わるものとして、捕食、競争、交雑の3つが挙げられる。外来種の被害を予防するために3つの原則がある(外来種被害予防三原則)。非分布域へ「入れない」、飼養・栽培個体を「捨てない」、すでに定借している外来種を「拡げない」である。対象種によって被害の容態はさまざまであるが、外来種対策においては、理想的には分布してさえいれば根絶するまで捕獲圧をかけ続けるべきである。しかしながら、現状では、他の在来哺乳類と同様の有害駆除の枠組みで対応される場合も多い。対策の目的を外来対策に転換することが重要である。分布拡大中あるいはすでに分布可能域全体に分布を広げた外来生物に対しては、どこに、どのくらい生息しているかを明らかにし、密度に見合った捕獲圧をかけることが必要となる。密度推定が困難な場合には、捕獲努力量当たりの捕獲数を代替指標として使用すること有効である。これらの情報をもとに、戦略を立て、外来生物法による捕獲従事者制度などを考慮に入れながら、実行可能な体制を整備して対策を実施していくことが重要である。


③ 人を含めて動物には、それぞれの病原体がいる。感染とは、宿主の体内や体表に病原体が住み着き、そこに増殖するようになった状態をいう。感染症とは、感染の成立が原因で発症する疾病のことであり、病原体が存在し、感染を引き起こす原因となる生物体や物体、物質などを感染源と呼ぶ。感染していても症状が現れない場合もあり、この状態を不顕性感染という。病原体によっては、特定の宿主の体内でなければ寄生・増殖できない性質を持つことがあり、この現象を宿主特異性という。狂犬病のように、動物のみならず人も罹患する感染症を人獣共通感染症という。病原体は、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫に分けられる。病原体が人や動物へと伝搬される経路を感染経路とよび、直接伝播と間接伝播に分けられる。直接伝播には親から子への感染である垂直感染と、それ以外の個体間での水平感染がある。間接伝播では、動物もしくは非生物を介し間接的に病原体が運ばれる。病原体を運ぶ動物を媒介動物(ベクター)とよび、その媒介様式は機械的伝播と生物学的伝播に分けられる。野生動物から人や家畜との間での病原体の伝搬は、野生動物の生息地への人の立ち入りや家畜の持込もしくは人の生活圏や家畜の飼育施設への野生動物の侵入により発生する。野生動物を扱う上で、特に注意を有する感染症を紹介する。


キーワード ① 生態系被害防止外来種リスト ② 緊急対策外来種 ③ 重点対策外来種 ④ 外来種被害予防三原則 ⑤ 人獣共通感染症
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

14 ロードキル問題 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
このような科目構成の中で、第14回は、人間と動物の双方に影響するロードキル問題を紹介し、人側および動物側に影響する要因を分解して理解することを扱う。

【コマ主題細目①】立脇隆文・小池文人(2016)『アンケート調査によって明らかになった日本の市区町村のロードキル記録の現状』野生生物と社会, 3(2), 15–28.

【コマ主題細目②】大泰司紀之・井部真理子・増田泰(1998)『野生動物の交通事故対策【エコロード事始め】』p.15-22, 139-152. 北海道大学図書刊行会.

【コマ主題細目③】大泰司紀之・井部真理子・増田泰(1998)『野生動物の交通事故対策【エコロード事始め】』p.15-22, 139-152. 北海道大学図書刊行会.
コマ主題細目 ① ロードキルとWVC ② ロードキルの発生要因 ③ ロードキルの対策
細目レベル ① ロードキル(Roadkill)とは、野生動物が自動車に轢かれることや、轢かれた轢死体のことをいう。ロードキルと似た言葉に、野生動物と自動車の衝突(WVC; wildlife vehicle collision)がある。WVCは純粋に衝突を表すのに使い、ロードキルは動物側への影響を包含した言葉である部分に違いがある。WVCは文字通り、野生動物と自動車の衝突を表すため、野生動物にも、自動車にも影響が及ぶことになる。そのため、WVCは動物の死傷と、自動車の損壊や人身事故といった人の安全の2つの側面で問題となっている。動物の死傷の側面では、ロードキルにより動物個体が死亡することから、自動車という文明の産物が自然界の動物に直接的な影響を与えているという意味で動物の保護の観点から問題視される。一方、自動車の損壊や人身事故といった人の安全に関する側面では、道路を管理する企業や行政部局(道路管理者)やドライバーなどから安全を脅かすものとして管理の観点から問題視される。


② こうした2面性を持つロードキルは、動物にとっても人にとっても問題であるものとして、減らす方向を目指した対策が進められている。対策としては、まず初めに、どこで衝突が起きやすいかを、ロードキルの収集記録や、WVCの発生地点の記録を目的変数として、道路周辺の動物の密度、交通量、走行速度、道路周辺の環境(森林率、河川からの距離、塩場の有無、餌生物の量など)、道路の構造(車線数、切土/盛土、カーブの有無など)、対策の状況(柵の有無、警告板の有無など)などで説明する統計モデルをつくり、衝突頻度(例えば、頭/km/年)をハザードマップとして推定することが多い。こうしたモデルを作ることで、現状のWVC発生の発生パターンを推定し、衝突の多い場所とその理由を推測することができる。


③ 衝突の多い場所とその理由が推測できたら、対策を検討する。最も一般的な対策は、侵入防止柵を張って道路に出ないようにすることである。道路の全てを侵入防止柵で囲った場合、野生動物の遺伝的交流を妨げてしまうため、侵入防止柵の設置とともに、アンダーパスやオーバーパス、高架橋など動物の横断経路を確保することも検討される。アンダーパスやオーバーパスを設置する際は、動物がその場所に到達しやすいような間隔や、入口に誘導するようなガイドを作ることも検討されている。侵入防止柵のように動物が道路に侵入することを遮断してWVCを減らすものの他には、動物事故注意看板の設置や、動物が道路に近づくと検出して光や音を出す動物用の忌避装置の利用、動物の接近を光などで運転手に知らせる仕組み、スマホアプリを用いて危険個所を知らせる取り組みなどが進められているが、動物や運転者の馴れにより効果が薄れると考えられるため、長期的な効果の実証が求められている。また、ロードキルは動物の密度が増加すると増えると考えられるため、外来種や被害の大きい動物などにおいては、個体数管理によってロードキルを減らせる可能性がある。


キーワード ① ロードキル ② WVC ③ ハザードマップ ④ 侵入防止柵 ⑤ アンダーパス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

15 野生動物と共存する未来を描く 科目の中での位置付け 本科目は全15回の授業を5回ずつの3ブロックに分けて、歴史的背景から概論、各論へと流れるように構成されている。第1回から第5回は、人間と野生動物の関係性を、歴史軸に沿って概観することによって、野生動物の管理を行う背景を理解することを目指す。続く、第6回から第10回は、現在の野生動物管理の基本的な進め方である特定鳥獣保護管理計画の内容や実施方法を紹介する。第11回から第15回は、個々の対象動物や問題に対する理解を深めるための各論として、主な管理対象となる動物種の生態を紹介するとともに、人と野生動物の双方に影響するロードキル問題について紹介する。最終回となる第15回には、これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。
これまでの各回の内容をまとめるとともに、過去から現在の流れを踏まえ、野生動物と共存する未来を描くために必要なことを話し合う。

【コマ主題細目①】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』p.51-109,141-165.

【コマ主題細目②】鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』授業で扱った全ページ.

【コマ主題細目③】コマオリジナル配布資料
コマ主題細目 ① 第11回から第14回までのまとめ ② 野生動物管理学のこれまで ③ 野性動物と共存する未来を描く
細目レベル ① 第11回から第14回までは、各論として、管理の対象になりやすい動物種の生態を紹介し、動物種に特有の被害や管理方法について紹介した。また、農業被害や人身被害と異なり、人と野生動物の双方に影響がある問題としてロードキル問題を紹介し、発生要因の分析と、現行の対策方法を紹介した。シカやイノシシは、個体数が特に多く問題が表面化している動物である。シカは、在来種でありながら、人間活動に対する影響だけでなく、植物の採食を通じて、植物量の減少、種構成の改変などを起こし、他の生物への間接効果により生態系に関わる影響がある点で問題が大きい。一方、イノシシは、シカのように生態系に関わる影響が顕著なわけではないが、農作物被害や掘り返し被害が多い。強い鼻による防護柵の突破や、産子数の多さから個体数が回復しやすいことも特徴的である。クマ類やサルは、シカやイノシシと比べて個体数は少ないが、管理に特別な視点が求められる。クマ類は、潜在的に人を死傷させる能力を持つことから、人身事故や精神的な被害が生じる。クマ類においては、都市部に生息させないようにする分布管理や、個体ごとの加害度に応じた個体管理が重要となる。サルについては、群れで行動することが特徴的であり、群れを単位とした管理が必要となる。群れごとの頭数や加害レベル、周辺の群れとの位置関係などを踏まえて、全頭捕獲、部分捕獲、選択捕獲などを進めていくことになる。外来種においては、最終的な目標は根絶となるが、小さな島嶼以外での根絶例は少ない。今後、広い分布域を持つ外来種の実践的な管理方法を検討する必要がある。人側および動物側の双方に負の効果があるロードキルについては、減らすべきものと考えられており、侵入防止柵などの対策が取られている。


② 無秩序な狩猟による絶滅や個体数の減少を背景に、狩猟獣の継続的な利用を目指して生じた野生動物管理学は、狩猟の制限や保護区の設定などによる保護により個体数が回復・増加した後に生じた、増えすぎた動物による問題に対処する学問として注目されるようになった。野生動物の管理においては、動物の個体数を調整する個体数管理、守るべきものから動物を遠ざける被害防除、動物の生息域と人間活動の場の配置を調整する生息地管理という、3つの視点での管理が行われてきた。近年では、クマ類やサルなどにおいて、個体や群れの加害状況を考慮して加害度を調整する個体管理や、外来種などにおいて分布拡大を予防的に防ぐ分布管理の考え方も生じてきている。これらの管理は、特定鳥獣保護管理計画の下で行われており、科学的根拠をもった目標設定が行われるようになってきた。加えて鳥獣被害対策特措法による地域支援の強化も行われてきた。こうした経緯を受けて、2014年以降、シカやイノシシの個体数は減少傾向にある。


③ ここまで、人と野生動物の間の軋轢を調整する野生動物管理の現状の到達点を紹介してきた。現在までに、特定鳥獣保護管理計画が採用され、順応的管理を基軸とした科学的な管理や、指定管理鳥獣捕獲等事業が導入され、抜本的な鳥獣捕獲強化対策が実施されるなど、様々な工夫が取り入れられてきた。これらの結果、増え続けていたシカやイノシシの個体数が減ってきたところである。しかしながら、これまで捕獲の主力を担ってきた銃猟の狩猟者の減少が進むことや、人口減少による中山間地からの人の撤退などが進むことが予想される。一方で、AIやドローンなどの実装が進み、社会が新たな状態へと遷移する兆しも見えている(Society5.0)。このような中、10年後に人と野生動物がよりよい形で共存する姿はどのようなものであろうか。目指すべき将来を起点として、バックキャスティングの手法を用いて、その姿に至るまでに、達成すべき要となる事柄は何であるかを探る。これまでに学んできた内容を踏まえ、グループワーク形式で議論することで、これから先の野生動物管理分野が進むべき道を描く。


キーワード ① 科学的根拠 ② 目標設定 ③ 人口減少 ④ Society5.0 ⑤ バックキャスティング
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【このコマを受けた後の復習課題】:授業中に示したキーワード及びその意味を踏まえ、再度、教材欄にある教科書の該当ページを読んでおく。意味が掴めていないキーワードがある場合には、シラバスに挙げた参考文献や、図書館などにある他の野生動物管理に関する教科書、インターネットなどを参照して意味を理解しておく。また、キーワードから意味を言えるか、意味からキーワードを言えるかの両方の視点から、キーワードの意味を覚えることができたかチェックしておくこと。

【次のコマを受けるにあたっての予習課題】:次回の教材・教具に示したテキスト(鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』)の該当ページを読み、太字で書かれている重要項目の意味を抜き出してまとめておく。この予習課題を行うことにより、授業で使用するスライドの理解が深まる。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
野生動物の生息状況の歴史的変遷の理解 野生動物は、捕食被食関係などの種間相互作用を介して生態系の中での役割を担っていることを理解している。野生動物は、人間による影響などによって減少した時代を経て、現在は、保護の結果として増加したことにより問題が生じていることを理解している。現在、シカ・イノシシ・クマ・サルなどの生息が見られない地域においても、縄文時代には分布していたことを理解している。個体数の増減は出生、死亡、移出、移入により生じ、制限がなければ動物は指数関数的に増加することを理解している。現在のシカやイノシシの個体数推定の方法は、当年の個体数、翌年の個体数、捕獲数、増加率のパラメータを用いたモデルを用いて、密度指標の増減を指標に推定していることを理解している。 生態系内での役割、種間相互作用、分布、哺乳類、増減 10 1,2,5
野生動物による被害と野生動物管理の理解 野生動物による被害には、主に、農林業被害、人身被害、生活環境被害、生態系被害などがあることを理解しており、それぞれの特徴を説明できる。農林業被害は、実際の被害額に加え、被害の感じ方にも影響される。同じ量の作物を食べられたとしても、野生動物が食べるのは仕方ないと考えている人にとっては、損害とならず被害とされないこともあることを理解しており事例を示すことができる。人身被害は、ある場所の動物の利用頻度と、人の利用頻度で大雑把には決まることを理解し事例を示すことができる。生活環境被害には、物損、汚損、精神的被害などが含まれることを理解し事例を示すことができる。生態系被害は、外来種が在来生物への影響を通じて生態系に与える影響を人間の存続に重要な生態系への被害ととらえたものであることを理解し、事例を示すことができる。野生動物管理においては、個体数管理、被害防除、生息地管理の3つの柱があることを理解し、それぞれの事例を判断できる。また、個体管理や分布管理の視点を理解し、事例を判断できる。 農林業被害、人身被害、生活環境被害、生態系被害、個体数管理、被害防除、生息地管理 10 3,4,5
野生動物管理に関する法制度の理解 生物多様性条約と生物多様性基本法の違いを示すことができる。生物多様性基本法に含まれる法律を示すことができる。野生生物の保護管理に関わる生物多様性基本法に含まれない法律を示すことができる。鳥獣保護管理法の内容に、狩猟の適正化、野生動物の保護、野生動物の管理の3つの視点が含まれていることを理解し、内容を示すことができる。鳥獣被害防止特措法の内容が、地域の支援であることを理解し、鳥獣被害対策実施隊の設置を推進するとともに、被害対策に関する費用の支援や、市町村に対して都道府県から有害鳥獣捕獲に関する権限の委譲が行われていることを理解し、内容を示すことができる。 生物多様性条約、生物多様性基本法、鳥獣保護管理法、鳥獣被害防止特措法 10 6,10
特定鳥獣保護管理計画に基づく順応的管理の理解 特定鳥獣保護管理計画に基づく科学的管理の根幹となる、順応的管理とモニタリングの考え方を理解している。順応的管理は、野生動物の生息状況や増加率などは変動するものであり、その推定結果も不完全なものであるという前提の中で行う必要があることを踏まえ、目標に基づいて、計画を立て(Plan:P)、実践し(Do:D)、モニタリングデータ(細目レベル③参照)を用いて結果を評価し(Check:C)、計画を改善する(Action:A)というPDCAループを経時的に回していくことで、実践を通じて対象動物の情報を蓄積しながら改善していく方法である。主なモニタリングデータの種類を理解している。 順応的管理、モニタリング、PDCAサイクル、不確実性、科学的管理 10 7,10
野生動物管理の実施方法の理解 野生動物管理は、個人(自助)や地域(共助)、行政(公助)の役割分担によって行われていることを理解し、自助、共助、公助の事例を示すことができる。野生動物の捕獲においては、主に銃猟とわな猟が行われており、巻き狩り、忍び猟、シャープシューティングといった銃猟の方法の違いや、わな猟で用いるくくり罠、はこ罠、かこい罠の種類や特徴を理解し、示すことができる。また、集落で獣害対策に取り込む際に、心がけるべきポイントを理解し、示すことができる。 自助、共助、公助、補完性原則、銃猟、わな猟、組織ぐるみの獣害対策 10 8,10
利害関係者との合意形成の理解 計画を策定し評価する場面では、利害関係者との合意形成を行う必要がある。野生動物管理に関わる基本的な利害関係者(行政職員、農業従事者、狩猟者、保護論者、一般市民)などの立場の違いや、あらかじめ合意形成を行うことが重要であることを理解し、利害関係者から出ると想定される意見を示すことができる。合意形成を行わなかった事例をあげ、その結果生じた不都合な結果を示すことができる。ヒューマン・ディメンションの理論のひとつである人々の許容性モデルを理解し、例を示すことができる。 ヒューマン・ディメンション、利害関係者、合意形成、人々の許容性モデル、農業従事者、行政職員 10 9,10
動物種ごとの生態特性、被害、管理方法の理解 シカ、イノシシ、クマ類、サル、外来種(アライグマ、ハクビシン、ヌートリア、シベリアイタチ)などについて、個々の動物種の生態特性を理解し、示すことができる。具体的には、妊娠率、産子数、生活史、行動圏サイズ、食性、特徴的な運動能力などを理解し、示すことができる。また、各種の被害の特徴や、管理の際に気を付ける点を理解し、示すことができる。具体的には、シカの自然植生への影響、イノシシの掘り返し、クマの出没に影響する交尾期や堅果類の豊凶の関係、サルの群れ管理と全頭捕獲、部分捕獲、選択捕獲の捕獲オプションなどを理解し、示すことができる。外来種の被害予防三原則を理解し、示すことができる。 自然植生への影響、掘り返し、堅果類の豊凶、選択的捕獲、外来種被害予防三原則 20 11-13,15
ロードキル問題の理解 ロードキルとWVCという言葉の使い分けができ、WVCは人と野生動物の双方に影響を及ぼす現象であることを理解している。ロードキルの発生要因には、生活史イベントによる行動変化や個体密度の増減といった動物側のものと、交通量や走行速度の変化といった人間側のもの、見通しの良し悪しなど動物や人間が反応できるかどうかを左右するような場所の要因があることを理解しており、侵入防止策、アンダーパス、オーバーパス、光や音による忌避機器、横断注意看板などの役割との対応関係を理解して、要因に応じて適切な方法を使い分けることができる。ハザードマップを作成し、対策を施す地域を絞り込む流れを理解している。 ロードキル、WVC、ハザードマップ、侵入防止柵、オーバーパス 10 14,15
野生動物と共存する未来への目標設定 捕獲の主力を担ってきた銃猟の狩猟者の減少が進むことや、人口減少による中山間地からの人の撤退などが進むことが予想される。また、AIやドローンなどの実装が進み、社会が新たな状態へと遷移する兆しも見えている(Society5.0)。このような社会の変化の中、10年後に人と野生動物がよりよい形で共存する姿はどのようなものであろうか。目指すべき将来を起点として、バックキャスティングの手法を用いて、その姿に至るまでに、達成すべき要となる事柄は何であるかを、具体的に想定して説明することができる。 担い手不足、人口減少、Society5.0、バックキャスティング、目標設定 10 15
評価方法 期末試験による(100%)
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 鷲谷いづみ(監修・編著)(2021)『実践 野生動物管理学』培風館. 3300円(税込み)
参考文献 教材・教具欄を参照のこと。
実験・実習・教材費 なし