区分 フィールド生態科目 水生動物生態科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門性 理解力 実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
専門知識 教養知識 思考力
実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
個人・社会・自然が直面する課題に対して専門的な理解を深めると共に、学際的な柔軟性を有し、実践的な能力を有する。
科目の目的
保全生態学とは,生物の分布や個体数,生息環境,生態系の相互作用などを研究する生態学を基礎とし,そこに社会・政策・管理の視点を加えて発展した学問である.本講義では,人間生活に近い水域である河川と対象とし,事例研究の多い淡水魚類を主な対象分類群とする.ただし,生態系の問題把握やその解決方策の考え方は,多くの水生動物分類群に共通する部分が多く,様々な水生動物に応用可能である.以上を踏まえて,本講義では,水生動物の保全のために必要な生物・非生物的事象の把握,及びそれらの生態的な機能の理解を通じて,水生動物の保全研究に必要となる生物観を醸成することを目的とする.
到達目標
本講義の受講によって,魚類などの水生動物の生活史,繁殖戦略,生息場所利用の特徴を理解し,それらが環境要因(水深,流速,底質)とどのように関係しているかを説明できるようになる.また,河川改修や外来種導入などの人間活動が水生動物や水域生態系に与える影響について理解し,そのメカニズムを説明できる.さらに,水生生物の保全課題とそれに対する保全手法を理解することで,水生動物の保全について考察できるようになる.
科目の概要
本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.

科目のキーワード
①河川,②淡水魚類,③生物多様性,④環境,⑤生息場所
授業の展開方法
主たる参考図書として「淡水生物の保全生態学~復元生態学に向けて~(森 誠一 編著)」,補足資料として「河川の生態学(沖野外輝夫著、協立出版社)」を用いながら,河川生態系における生物学的なコンテンツだけでなく,水理学観点などの非生物的事象と生物(群集)間との相互作用の理解を深めながら,水生動物保全の関連知識を講義する.また、水生動物保全に関連する学術文献や研究成果の紹介も併せて行う.以下の授業の予定は,聴講者の理解度等によって変更が有り得る.
オフィス・アワー
【月曜日】2時限目,昼休み,【金曜日】2時限目,昼休み
科目コード ENS340
学年・期 3年・前期
科目名 水生動物保全学
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】30分以上×15 【復習】30分以上×15
前提とする科目 基礎生態学
展開科目 海洋資源管理学、フィールド生態学演習Ⅱ、フィールド生態学演習Ⅲ、フィールド生態学演習Ⅳ
関連資格 なし
担当教員名 小野田幸生
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 淡水魚類の危機的な状況 科目の中での位置付け 本科目では、水生動物、特に淡水生物に関する内容や事例に焦点を当てながら、「生態と環境の変化」、「構造物と水生生物の生活」、「自然への配慮事業」、「移入種の実態」、「湖沼の生物環境」、「活用のために~地域の中から」の順で学ぶ。具体的には、第1回では、水生動物保全学の学問としての位置づけを紹介し、保全生態学の対象テーマの広がりを概観する。第2回から第4回では、「生態と環境の変化」に焦点を当て、関連する生物学の知識を復習しながら、具体的な研究事例を交えて生物保全の実態について学ぶ。第5回から第8回では、「構造物と水生生物」に焦点を当て、在来種・外来種の研究事例に基づく両者の関連性を学ぶとともに、水田やダムのもたらす影響に関しても概観する。第9回~第10回では、「自然への配慮事業」に焦点を当て、主に復元生態学の観点から、多自然型川づくりを通じた環境復旧の実態や、関連する住民参加等の実態とその効果を学ぶ。第11回から第12回では、「移入種の実態と結果」に焦点を当て、魚類相にもたらす移入種の影響や我が国の危機的な淡水生態系の実態についてその概観を学ぶ。第13回から第14回では、「湖沼の生態環境とその後」に焦点を当て、湖沼を対象とした生物種の基礎的な現況と近年の生態状況の水位に関する概況を、実例を用いて解説する。第15回では、これまでの回の復習を通して保全生態に関して概観するとともに、その活用法に関する総合的な講義を、事例紹介を交えて行う。このような科目構成の中で、第1回は、水生動物保全学の学問としての位置づけを紹介し、同分野の対象テーマの広がりを概観する。
コマ主題細目①~③:
・配布資料

参考資料:
コマ主題細目①Sayer, C.A et al.(2025)  One-quarter of freshwater fauna threatened with extinction. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08375-z

コマ主題細目②環境省HP.レッドリスト・レッドデータブック.https://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/redlist/

コマ主題細目③淡水生物の保全生態学~復元生態学に向けて~(森 誠一 編著),P45~55.
コマ主題細目 ① 論文での報告事例 ② レッドリストとレッドデータブック ③ 地域個体群の重要性
細目レベル ① 多くの学術論文において,淡水魚類は地球規模で最も危機的な状況にある生物群の一つであることが報告されている.河川などの淡水域は陸域や海洋に比べて面積が小さい一方,非常に高い生物多様性を支えているが,人間活動の影響を強く受けやすい環境でもある.近年の研究では,生息地の分断,流域開発,外来種の侵入などの複合的要因により,多くの種が絶滅の危機にあることが示されている.これらの研究成果は,淡水魚類の保全が生物多様性保全の重要課題であることを示しており,科学的根拠に基づく保全施策の必要性を強調している.以上に基づき,水生動物の保全を考える際に,淡水魚類を例として取り上げる妥当性について学ぶ.
② 淡水魚類の危機的状況を理解するうえで,レッドリストおよびレッドデータブックは重要な基礎資料となる.本講義では,絶滅リスクについて国内の現状を整理した環境省のレッドリスト・レッドデータブックなどを活用し,淡水魚類の危機的な状況を概観する.これらの資料には,種ごとの分布域,個体数動向,減少要因,保全上の課題などが整理されており,地域的特徴と絶滅リスクの関係を把握することができる.講義では,カテゴリー区分(絶滅危惧Ⅰ類・Ⅱ類、準絶滅危惧など)の意味や評価基準を理解するとともに,掲載種の事例を通じて,河川改修,外来種,環境の悪化などが絶滅リスクを高める過程を考察する.
③ 淡水魚類の保全を検討する際には,種全体のみならず地域個体群の保全に着目する視点が重要である.近年の分類学では,遺伝解析技術の進展に伴い,形態的差異が小さい集団であっても独立した進化的系統として区別する「スプリッター」的傾向が強まっている.この結果,従来は同一種とされていた広域分布種が複数種に再分類される事例が増え,地域固有系統の存在が明らかになってきた.こうした分類の細分化は、地域個体群が独自の遺伝的特徴や生態的特性を有し,保全上重要な単位であることを示している.特に河川環境では分断や環境差によって個体群間の遺伝的交流が制限されやすく,局所的絶滅が種全体の遺伝的多様性の損失につながる可能性が高い.以上を踏まえて,保全を考える際に地域個体群に着目する重要性や必要性を理解する.
キーワード ① 淡水魚類 ② レッドリスト ③ レッドデータブック ④ 地域個体群 ⑤ スプリッター
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:淡水魚類の現状を概観するため,国内外のレッドリストなどを参照し,代表的な掲載種を確認しておくとよい.
復習:淡水魚類が特に人為的な影響を受けやすい理由を説明できるようにする.また,レッドリストのカテゴリー区分と評価基準を再確認し,事例として取り上げた種について,減少要因と保全上の課題を対応づけてまとめる.

2 減少要因 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第2回は、減少要因として生息場所利用に着目し,淡水魚の生活史を保証するためにどのような生息場所が必要となるのかについて学ぶ.

教材:
コマ主題細目①~③:
・配布資料

参考資料:
コマ主題細目①~③:
・原色日本淡水魚類図鑑(宮地伝三郎ほか)保育社,全体(魚類の生態解説文)
コマ主題細目 ① 生活に必要な資源 ② 生活史に応じた生息場所利用 ③ 目的に対応した生息場所利用
細目レベル ① 淡水魚が生活していくためには様々な資源(餌資源や生息場所など)が必要となる.これを人間で例えるなら,生活していくうえで衣食住の確保が必要となることと同じである.本講義では,まず餌資源として,動物プランクトン,水生昆虫,付着藻類,小型魚類など,種や成長段階によって異なる食性の特徴を学ぶ.次に生息場所について,河川の瀬・淵・ワンド・氾濫原といった多様な環境が,採餌場,避難場所,繁殖場所として機能することを概観する.
② 淡水魚類は,卵・仔魚・稚魚・成魚といった生活史段階ごとに異なる環境条件を必要とし,それぞれに適した生息場所を選択的に利用する.本講義では,生活史と生息場所利用の関係を,生態学的視点から理解する.たとえば,産卵期には,流れが緩やかで透水性の高い砂礫底や水草帯が産卵場として利用され,卵の流失防止・生残率向上や捕食回避に寄与する.孵化後の仔魚・稚魚期には,流速が小さく餌生物が豊富なワンドや水際域の植物帯が重要な成育場となり,外敵からの避難場所としても機能する.本講義では,生活史戦略と生息場利用の関係を理解し,生息場所を保全する意義について理解する.
③ 生物の生息場所利用は生活史段階だけでなく,採餌・休息・避難・繁殖などの利用目的に応じても変化する.本講義では,淡水魚類が目的別に生息環境を使い分ける行動生態学的特徴を理解する.採餌時には餌生物が豊富で流下物が集まりやすい瀬などが利用され,流速の変化や河床構造が摂餌効率を左右する.一方,増水時や捕食者の出現時には,流れの緩やかな淵や障害物周辺,水際の植物帯などが避難場所として機能し,生残率の向上に寄与する.さらに繁殖期には,産卵基質の安定性や卵保護や生残率向上に適した環境が選択されるなど,同一個体であっても状況に応じて生息場所を使い分ける行動が見られる.これらの目的別の生息場所利用は,河川環境の空間的多様性によって支えられており,環境改変により特定の機能を持つ場所が失われると個体の生存や繁殖成功に影響が及ぶことについて学ぶ.
キーワード ① 餌資源 ② 生息場所 ③ 生活史 ④ 生残 ⑤ カバー
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:河川における淡水魚の基本的な生息環境(瀬・淵・ワンド・氾濫原など)の名称と特徴を事前に確認し,それぞれがどのような特徴を持つかを整理しておくとよい.
復習:魚類が採餌・避難・繁殖などの目的や生活史に応じて生息場所を使い分けることを理解し,生息場所の多様性が個体群維持に重要である理由を自分の言葉で簡潔に説明できるようにしておく.

3 絶滅リスク 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第3回は、絶滅リスクについて,アリー効果,遺伝的劣化,人口学的確率性などのキーワードを解説しながら,理解を深める.

教材:
コマ主題細目①~③:
・配布資料

参考資料:
コマ主題細目①~③:
・淡水生物の保全生態学~復元生態学に向けて~(森 誠一 編著)信山社サイテック,P33~41.
コマ主題細目 ① アリー効果 ② 遺伝的劣化 ③ 人口学的確率性
細目レベル ① アリー効果とは,個体数や個体密度が低下した個体群において,個体あたりの繁殖成功率や生存率がさらに低下する現象を指し,絶滅リスクを高める重要な要因である.本講義では,個体数減少が単に集団規模を縮小させるだけでなく,個体群の成長率そのものを負の方向へ変化させる仕組みを理解する.たとえば,個体数が少ないと雌雄が出会いにくくなり繁殖機会が減少するほか,群れ形成による捕食回避や採餌効率の向上といった集団効果が失われ,生存率が低下する.淡水魚類においても,河川の分断化などにより個体群が小規模化すると,繁殖相手の不足や遺伝的多様性の低下が進み,個体群存続確率が急速に低下することが知られている.以上を踏まえ,小規模個体群の保全が重要となる理論的背景を理解する.
② 遺伝的劣化とは,個体群規模の縮小や隔離によって遺伝的多様性が失われ,繁殖成功率や生存率の低下を招く現象であり,絶滅リスクを高める重要な要因である.本講義では,個体数減少が遺伝的変異の喪失を通じて個体群の適応能力を低下させる仕組みを理解する.小規模個体群では近親交配が起こりやすくなり、有害遺伝子の発現によって成長不良や繁殖力低下が生じる「近交弱勢」が問題となる.以上の解説などによって,遺伝的多様性の重要性と遺伝的劣化の過程を学び,個体群間連結性の確保や遺伝的管理の必要性について理解を深める.
③ 人口学的確率(人口学的ゆらぎ)とは,出生や死亡といった個体レベルの事象が偶然的に変動することで,個体群規模が確率的に増減する現象を指,特に小規模個体群において絶滅リスクを高める要因となる.本講義では、個体群動態が平均的な増加率だけで決まるのではなく、偶発的な出生数の減少や死亡率の上昇によって大きく変動する仕組みを理解する.たとえば,繁殖可能な雌雄の偏り,繁殖成功個体の偶然的減少,特定年における仔魚死亡率の上昇などが重なると,個体群は急速に縮小する可能性がある.大規模個体群ではこれらの変動は統計的に平均化されるが,小規模個体群では変動の影響が直接的に現れ,回復困難な水準まで減少する危険性が高い.河川分断や生息地劣化により個体数が限られる淡水魚類では,この確率的変動が個体群存続を左右する重要な要因となることを理解する.
キーワード ① 分断化 ② 小規模個体群 ③ 近交弱勢 ④ 有害遺伝子 ⑤ 最小存続可能個体数
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:個体群の絶滅がどのような要因によって引き起こされるかを概観するため,個体数減少,生息地の縮小,環境変動などの基本的な絶滅要因について,インターネットなどを活用して確認しておく.
復習:講義の内容を基に,小規模個体群ほど絶滅確率が高まる理由を論理的に説明できるようにしておく.

4 生息場所 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第4回は、生息場所について,その階層性や,可児藤吉による分類,微生息場所の要因などを解説しながら,理解を深める.

コマ主題細目①~③:
・配布資料

参考資料:
コマ主題細目①,②
・河川生態学(中村太士 編著)講談社,P13~33.
コマ主題細目 ① 河川の階層性 ② 可児藤吉による分類 ③ 微生息場所の要因
細目レベル ① 河川の階層性とは,河川環境が空間的スケールに応じて入れ子状の構造を持ち,微生息場所から流域レベルまで,それぞれの階層として把握できるという概念である.本講義では,流域,河川区間,リーチ,瀬・淵,微生息場所といった複数の空間スケールに分けて河川環境を理解する.これらの階層は独立して存在するのではなく,上位スケールの環境条件が下位スケールの物理環境や生物分布を規定することを解説する.また,調査に関しては,下位スケールほど詳細に把握しやすい河川環境であることも紹介する.保全策として河川環境の改善を考えるときに必要となる,空間スケールについて理解する.
② 生息場所の理解において,可児藤吉による河川形態の分類は,日本の河川生態学の基礎として重要である.この分類は、一蛇行区間を河川形態の単位とし,その中における瀬の数と瀬の状態によって区分するもので,河川を上流域の急流的環境から下流域の緩流的環境まで連続的に捉える.つまり,流程に沿って河川環境を把握する際に便利な分類といえる.可児の分類は,河川環境の縦断的変化を体系的に理解する枠組みを提供し,魚類群集の分布特性や生活史戦略を説明する基盤となっている.本講義では、この分類を用いて河川形態と生息場所の対応関係を理解し,生息場所保全に必要な知識を習得する
③ 微生息場所とは,河川に存在する局所的な物理環境の違いによって形成される小規模な生息空間であり,水生動物の分布や行動を規定する重要な要素である.本講義では、微生息場所を特徴づける主要因として水深、流速、底質に着目し,それぞれが生物に与える影響を理解する.水深の例として,浅場は仔魚や稚魚の成育場として,深場は成魚の休息場や越冬場として機能する.流速は遊泳能力や採餌様式などと密接に関係する.底質は礫・砂・泥などの粒径の違いにより生息可能な底生生物相を規定し,産卵基質や隠れ場所の形成にも影響する.本講義では,これら三要因の組み合わせが多様な微生息環境を形成し,水生動物の分布や行動に関連していることを理解する.
キーワード ① 流程 ② 可児藤吉 ③ 河川形態 ④ 微生息場所 ⑤ 水深・流速・底質
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:河川の階層性について調べ,それを区別して認識する必要性について考えておく.川の写真などを見て,どのようなまとまりとして認識されるかを考えておく.
復習:瀬と淵を例として,水深・流速・底質といった物理環境要因が生息場所の違いを生み出す仕組みを理解するとともに.生息場所の多様性が水生動物に重要である理由を自分の言葉で説明できるようにする.

5 河川生態系の構造と機能 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第5回は、河川地形とその形成要因を学ぶとともに,その地形に関連した河川連続体仮説やフラッドパルス理論などを解説しながら,河川生態系の構造と機能について理解を深める.

教材:
コマ主題細目①~③:
・配布資料

参考資料:
コマ主題細目①
・身近な水の環境科学第二版(日本陸水学会東海支部会 編)朝倉書店,P7~11.

コマ主題細目②
・河川生態学(中村太士 編著)講談社,P37~39
コマ主題細目 ① 河川地形の形成 ② 河川連続体仮説 ③ フラッドパルス理論
細目レベル ① 河川地形は,水の流れと土砂移動が長期的に作用することで形成される動的な構造であり,流域の地質・地形条件や気候の影響を強く受ける.本講義では,侵食・運搬・堆積という三つの基本過程を軸に河川地形の形成機構を理解する.上流域では勾配が大きく流速が速いため,河床や河岸の侵食が進み,V字谷や岩盤河床が発達する.中流域では流速の低下に伴い土砂の運搬と堆積が繰り返され,蛇行や瀬・淵構造が形成される.下流域ではさらに勾配が緩やかになり,細粒土砂の堆積が進むことで三角州などが発達する.これらの地形は固定的なものではなく,流量変動や土砂供給量の変化に応じて継続的に変動する.以上を踏まえ,河川地形の形成過程を理解し,地形構造が生息環境の多様性を生み出す基盤であることを学ぶ.
② 河川連続体仮説は,河川を上流から下流まで連続した一つの生態系として捉え,物理環境やエネルギー供給様式,生物群集が縦断的に連続変化するという概念である.本講義では,河川の縦断勾配に沿った生態系構造の変化を理解する.上流域では森林に覆われた狭い河道が特徴で,落葉など外部から供給される有機物が主要なエネルギー源となり,これを分解・利用する底生無脊椎動物が多い.中流域では河道幅が広がり,日射量の増加により付着藻類の一次生産が活発化し,採食様式の異なる生物群集が形成される.下流域では流速の低下とともに微細有機物が集積し,それを利用するろ過食者や浮遊生物が増加する.以上を踏まえ,河川の縦断的連続性が生態系機能を支える基盤であることを理解し,河川改変がこの連続性に及ぼす影響について考察できるようにする.
③ フラッドパルス理論は,大規模河川において洪水による水位変動が生態系構造と機能を規定する主要因であるとする概念であり,氾濫原を含む河川景観全体を統合的に理解する枠組みを提供する.本講義では,洪水の周期的発生が生物生産や物質循環に果たす役割を学ぶ.増水期には河川水が氾濫原へ広がり,陸域由来の有機物や栄養塩が水域へ供給されることで一次生産が活発化する.同時に魚類や無脊椎動物は氾濫原へ移動し,豊富な餌資源を利用して成長できる.減水期には生物が本流へ戻ることでエネルギーと物質が再び河道内へ集約され,食物網が維持される.このように洪水の繰り返しは攪乱であると同時に,生態系の生産性と多様性を支える駆動力として機能する.本講義では,河川と氾濫原の動的な連結性を理解し,出水パターンを人為的に改変することによる生態系機能への影響を考察できるようにする.
キーワード ① 侵食・運搬・堆積 ② 食物連鎖 ③ 食物網 ④ 生食連鎖・腐食連鎖 ⑤ 氾濫原
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:侵食・運搬・堆積の基本過程を調べ、流程に応じた河川地形がどのように形成されるかを理解しておく.
復習:講義の内容を踏まえ,河川の縦断的連続性と横断的連続性(例:氾濫原との連結性)が,生物生産や生物分布を支える仕組みを自分の言葉で簡潔に説明できるようにしておく.

6 ダムによる影響 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第6回は、人為的な影響事例としてダムによる影響を取り上げ,流況の改変,土砂の扞止と河床環境の変化,分断化などについて学ぶ.

教材:
コマ主題細目①~③:
・配布資料

参考資料:
コマ主題細目①~③
・淡水生物の保全生態学~復元生態学に向けて~(森 誠一 編著)信山社サイテック,P86~99.
コマ主題細目 ① 流況の改変 ② 土砂の扞止と河床環境の変化 ③ 分断化
細目レベル ① ダム建設は河川の流況を大きく改変し,水生生態系の構造と機能に多面的な影響を及ぼす.本講義では,流量の時間的・空間的変動に着目し,自然河川との違いを理解する.自然河川では降雨や融雪に応じて流量が季節的・周期的に変動し,この変動が土砂移動や氾濫原の攪乱などを通じて多様な生息環境を形成する.一方,ダムによって流量は人為的に調節され,洪水ピークの抑制や渇水時の補給が行われる結果,流況が平準化される.その結果,攪乱作用が減少し糸状藻類の異常繁茂などが発生することがある.本講義では、流況改変が生息環境などに及ぼす影響を理解し,出水攪乱や環境流量の確保など,持続的管理の重要性を学ぶ.
② ダムは上流から供給される土砂を貯水池内に滞留させるため,下流域への土砂供給量が大幅に減少する.本講義では,この土砂の捕捉によって生じる河床環境の変化を理解する.自然河川では土砂の連続的な供給と移動により砂礫河床が維持され,多様な河床環境が形成される.一方,ダム下流では新たな土砂供給が乏しくなるため,出水時に細粒土砂の抜け出しが生じ,粗粒化や露岩化が進行する.これにより,細粒土砂を利用する水生動物に負の影響が生じる可能性がある.本講義では,土砂動態の分断が河床構造と生物群集に及ぼす影響を学び,土砂還元などの対策の意義を理解する一助とする.
③ ダムは河川の縦断方向の連続性を遮断し,生物の移動経路を分断する.本講義では,この分断化が水生動物の生活史と個体群維持に及ぼす影響を理解する.回遊性魚類は産卵場・成育場・越冬場など複数の環境を移動して利用するが,ダム堤体はこれらの移動を妨げ,繁殖機会の喪失や個体群の孤立化を引き起こす。また、個体群が小規模化・孤立化すると遺伝的多様性が低下し,環境変動への適応力が弱まる.本講義では,河川の連続性の消失による魚類への影響を学び,魚道整備やスリット化など連結性回復策の意義について理解する.
キーワード ① 自然流況 ② 流況の安定化 ③ 粗粒化 ④ アーマーコート化 ⑤ 分断化
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:ダムの基本的な役割(治水・利水・発電)と構造を確認しておく.ダム運用に伴う河川の変化(流量変動や土砂移動の改変)について調べておく.
復習:ダムの影響例として,ダム下流において粗粒化が生じるメカニズムを自分の言葉で簡潔に説明できるようにしておく.

7 河川改修による影響 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第7回は、人為的な影響事例として河川改修による影響を取り上げ,カバーの消失,直線化に伴う多様な流れの減少,落差工による分断化などについて学ぶ.

教材:
コマ主題細目①~③:
・配布資料
コマ主題細目 ① カバーの消失 ② 直線化に伴う多様な流れの減少 ③ 落差工による分断化
細目レベル ① 河川改修では治水安全度の向上を目的として河道の直線化や護岸工事などが行われるが,その過程で水中および水際域のカバーが失われる.カバーとは,倒木,抽水・沈水植物,岩陰,水際植物など,生物が外敵から身を隠したり,流れを避けて休息したりするための構造物を指す.河川改修により河岸がコンクリート化され,河道内の障害物が除去されると,物理的な隠れ場所が減少し,魚類は捕食圧の増大やエネルギー消費の増加といった影響を受ける.また,流速の緩和域が減ることで仔稚魚の生残率も低下する.本講義では,カバーの消失が生息環境の質を悪化させる仕組みを理解し,多自然川づくりなどの環境配慮型整備の意義を学ぶための基礎とする.
② 河川改修による直線化は,洪水流下能力を高める一方で,流れの多様性を低下させる.本講義では,蛇行河川が持つ複雑な流況構造と生息環境形成の関係を理解する.自然河川では湾曲部ごとに流速や水深が変化し,瀬・淵や側方の緩流域が形成される.これにより多様な生息場所が生まれ,種ごとの生態的要求に応じた環境利用が可能となる.しかし,直線化によって流れが単調化すると,局所的な流速変化や水深のばらつきが減少し,生息場所の異質性が失われる.本講義では,上記の直線化の影響について学ぶ.
③ 河川改修や農業水利施設として設置される落差工は,水位や流速を調整する役割を持つ一方で,河川の連続性を分断する要因となる.本講義では,落差工が水生動物の移動に及ぼす影響を理解する.多くの魚類は産卵や成長の過程で上流・下流間を移動するが,落差が大きい構造物は遡上や降下を物理的に阻害する障壁となる.特に遊泳力の弱い小型魚や底生魚では影響が顕著で,生息域の縮小や繁殖機会の喪失を招く.また,個体群が分断されることで遺伝的交流が減少し,地域個体群の孤立化や遺伝的多様性の低下にもつながる.本講義では,小規模構造物であっても生態系への影響が大きいことを学ぶ.
キーワード ① 河川改修 ② カバー ③ 水際域 ④ 落差工 ⑤ 分断化
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:河川改修の代表的な工法(直線化,護岸工事,河床整正,落差工設置など)を確認しておく.
復習:カバーの消失,流れの単調化,構造物による分断化などの影響を整理し,それぞれが生物の生息・移動・繁殖にどのように関係するかをまとめる.

8 外来種の影響 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第8回は、人為的な影響事例として外来種による影響を取り上げ,外来種の定義や分類,外来種の具体的な影響,外来種対策などについて学ぶ.

教材:
コマ主題細目①~③:
・配布資料

参考資料:
コマ主題細目①~③:
・淡水生物の保全生態学~復元生態学に向けて~(森 誠一 編著)信山社サイテック,P133~168.
コマ主題細目 ① 外来種について ② 外来種による具体的な影響 ③ 外来種対策
細目レベル ① 外来種とは,人間活動に伴って本来の分布域の外へ移動・導入された生物種を指す.ここでは,外来種の定義と分類を整理し,生態系への影響を理解する基礎を学ぶ.本来の分布域の違いによって,国外外来種と国内外来種に分類される.また,定着後の影響の程度が大きく,在来種や生態系へ顕著な悪影響を及ぼす種は「侵略的外来種」と呼ばれる.本講義では,外来種問題を科学的に評価するため,導入経路や影響様式という観点から体系的に整理し,保全対策の前提となる基礎概念を理解する.
② 外来種は在来生態系に多面的な影響を及ぼし,生物多様性の低下を引き起こす.ここでは,代表的な影響として捕食,競争,遺伝的攪乱などを中心に解説する,捕食では,在来種が新たな捕食者への防御行動を持たないため,個体数が急減する場合がある.競争では,餌資源や産卵場所を巡る競合により在来種が排除され,生息域の縮小が生じる.遺伝的攪乱では,近縁種との交雑により地域固有の遺伝的特徴が失われる.このように,外来種が及ぼす影響を総合的に理解し,防除と管理の必要性を学ぶ.
③ 外来種対策は,生態系や在来種への影響を未然に防ぎ,被害拡大を抑制するための重要な保全施策である.本講義では,侵入予防・早期発見・防除・長期管理の段階的対策を理解する.特に法制度は対策の基盤となり,日本では外来生物法に基づき,侵略的外来種を「特定外来生物」に指定し,輸入・飼養・運搬・放出を原則禁止している.現場では捕獲・駆除などが実施されるが,完全排除は困難であり,被害の最小化と拡散防止が現実的目標となることを学ぶ.
キーワード ① 国外外来種 ② 国内外来種 ③ 特定外来生物 ④ 生物多様性 ⑤ 防除
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:外来種の基本的な定義と導入経路(意図的導入・非意図的導入)を確認し,在来種との違いを理解しておく.
復習:講義で学んだ外来種の影響(捕食、競争、遺伝的攪乱)を整理し,それぞれが生物多様性や生態系機能に及ぼす影響を説明できるようにする.

9 温暖化の影響 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第9回は、人為的な影響事例として温暖化の影響を取り上げ,水温上昇の影響,降雨強度・パターンの変化,季節性への影響などについて学ぶ.

教材:
コマ主題細目①~③:
・配布資料

参考資料:
コマ主題細目①~③:
・身近な水の環境科学第二版(日本陸水学会東海支部会 編)朝倉書店,P1~6.
コマ主題細目 ① 水温上昇による影響 ② 降雨強度・パターンの変化による影響 ③ 季節性の攪乱
細目レベル ① 地球温暖化に伴う水温上昇は,冷水環境に適応した渓流魚や水産有用魚種であるアユの分布や生活史に大きな影響を及ぼす.本講義では,冷水性魚類であるイワナを例に,水温制約による生息域縮小を理解する.イワナは低水温環境を必要とするため,水温上昇により生息可能域が上流や高標高域へと限定され,生息域の縮小や個体群の孤立化が進む.一方,アユの回遊パターンは水温によって規定されており,水温変化によってそれらのタイミングが変化を受ける.以上の例などを基に,水温上昇が種ごとの生理特性や生活史戦略に影響し,分布や行動の変化を引き起こす仕組みについて学ぶ.
② 地球温暖化は降雨強度と降雨パターンを変化させ,河川生態系に大きな影響を及ぼす.本講義では,極端降雨の増加と渇水期間の長期化という二面性に着目する.短時間強雨の頻発は急激な増水を引き起こし,河床攪乱の激化,卵や仔稚魚の流失,生息場所の破壊などを招く.一方,降雨の偏在化は渇水の深刻化をもたらし,水位低下や瀬切れによる生息域縮小,水温上昇を進行させる.以上の例などを基に,流況変動の極端化が物理環境の変化を通じて生態系を変化させる仕組みを理解する.
③ 地球温暖化は水温上昇を通じて,淡水魚類のフェノロジー(季節的生活周期)にも影響を及ぼす.本講義では,産卵時期・孵化時期・回遊時期の変化と,それに伴う生態的影響を理解する.水温上昇により成熟や産卵開始が早期化すると,仔魚の出現時期も前倒しされるが,餌資源となるプランクトンなどの発生時期が同調しない場合,仔稚魚は十分な餌を得られず生残率が低下する.このように,環境変化によって生物が本来適応的であった行動選択を行った結果,かえって適応度が低下する現象は「生態的罠(エコロジカル・トラップ)」と呼ばれる.このように,気候変動が時間的な生活史戦略を乱し,生態的罠を通じて個体群動態に影響する仕組みを学ぶ.
キーワード ① 冷水性魚類 ② 分布域 ③ 瀬切れ ④ フェノロジー ⑤ エコロジカル・トラップ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:冷水性魚・温水性魚や温度耐性などについて調べ、水温変化が淡水魚類に影響するメカニズムについて知る.
復習:水温上昇による影響(生理的影響,分布域変化,フェノロジーの変化)の仕組みを整理し,それぞれについて簡潔に説明できるようにしておく.

10 ダム管理の工夫 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第10回は、保全策としてダム管理の工夫について取り上げ,フラッシュ放流,土砂還元,魚道設置やスリット化などについて学ぶ.

教材:
コマ主題細目①~③:
・配布資料

参考資料:
コマ主題細目①~③:
・ダムと環境の化学I ダム下流生態系(池淵周一 編著)京都大学出版会,P195~230.
コマ主題細目 ① フラッシュ放流 ② 土砂還元 ③ 魚道設置やスリット化
細目レベル ① フラッシュ放流とは,ダム下流の河川環境を改善するために,人工的に短時間の大流量放流を行い,自然洪水に近い攪乱を再現する管理手法である.ここでは,流況改変によって失われた河川の物理環境と生態系機能を回復させる仕組みを理解する.フラッシュ放流は流況の平滑化による細粒土砂の堆積や付着藻類の過剰繁茂を洗い流すことで,河床環境の更新をもたらす.本講義では,環境を意識した流量管理の一手法としての意義とその限界について学ぶ.
② 土砂還元とは,ダムにより遮断された土砂輸送を,ダム下流での置土などによって人工的かつ部分的に代替させ,河川の物理環境と生態系機能の回復を図る管理手法である.土砂の扞止とそれに伴う河床環境の変化を緩和させる効果が期待される.実際,異常繁茂した付着藻類を剥離させる効果(クレンジング効果)やそれに伴う魚類の食性の回復などに関する報告などがある.本講義では,物理環境と生態系の相互作用の観点から土砂管理の重要性を学ぶ.
③ ダムは河川の連続性を分断し,魚類の移動を阻害するため,移動経路の回復を目的とした管理手法が重要となる.その具体策として,魚道設置とスリット化について解説する.魚道はダムや堰の上下流を連結し,魚類が遡上・降下できる通路を人工的に整備するもので,回遊魚の経路確保や生息域拡大に寄与する.スリット化は堰堤などの一部に開口部を設けて水と土砂,生物の通過を可能にする方法であり,より自然に近い連続性の回復が期待される.本講義では,構造的対策の効果と限界を理解し,河川連続性の回復の重要性について学ぶ.
キーワード ① フラッシュ放流 ② 置土 ③ クレンジング効果 ④ 総合土砂管理 ⑤ 魚道
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:ダムが河川生態系に及ぼす主な影響(流況改変,土砂供給の遮断,河川の分断化)を再確認しておく.
復習:フラッシュ放流,土砂還元,魚道設置・堰堤のスリット化などの管理手法を整理し,それぞれが流況・河床環境・移動経路の回復にどのように貢献するかをまとめる.

11 多自然川づくり等の取組 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第11回は、保全策として多自然川づくりなどの取組を取り上げ,河岸処理の工夫や小さな自然再生などの具体例について学ぶ.

教材:
コマ主題細目①~③:
・配布資料

参考資料:
コマ主題細目①~③:
・多自然川づくりポイントブックIII(リバーフロント研究所 編)日本河川協会,270pp.
・小さな自然再生HP. http://www.collabo-river.jp/
コマ主題細目 ① 河岸処理 ② 小さな自然再生 ③ 再蛇行化
細目レベル ① 多自然川づくりでは,河岸(水際)部の構造を工夫することで,淡水魚類などの水生動物に配慮した生息環境を創出する.たとえば,ヨシなどの抽水植物帯を再生することは,流速緩和や隠れ場の提供などを通じて,遊泳能力の低い仔稚魚の生育場としての水際域の機能を回復させる効果がある.ほかにも,捨石・自然石を積み上げすき間の多い構造を作ることで,水生動物の隠れ場を確保するなどの事例もある.本講義では,多自然川づくりなどで行われる水際構造の改善が生息場所としての機能の回復や向上に果たす役割について学ぶ.
② 「小さな自然再生」とは,大規模改修に頼らず,地域住民や行政が協働して小規模・低コストで生息環境を改善する取り組みであり,淡水魚類の保全にも有効である.ここでは,身近な河川環境の部分的改善が生態系に及ぼす効果を理解する.具体例としては、水路や小河川における簡易魚道の設置,落差の小規模改良,河岸への自然石配置,バーブ工の設置などが挙げられる.これらの対策は局所的であっても,移動経路の回復,カバーや多様な水理環境の創出などを通じて生息場所としての機能を高める効果がある.以上を踏まえ,小規模対策の積み重ねが生物多様性保全につながることを学ぶ.
③ 再蛇行化とは,直線化された河川の流路をかつての蛇行形状やそれに近い形へ復元し,自然に近い流況と地形構造を回復させる河川再生手法である.ここでは,再蛇行化が淡水魚類の生息環境に及ぼす効果を理解する.再蛇行化により多様な流れと底質環境が生まれ,採餌場,産卵場,休息場など多様な生息場所が創出されることが期待される.本講義では,研究事例を参照しながら,河道形状の回復が物理環境と生物群集構造を改善する保全策であることを学ぶ.
キーワード ① 多自然川づくり ② 水際域 ③ カバー ④ 多孔質 ⑤ バーブ工
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:従来の河川改修(直線化・コンクリート護岸など)の問題点を整理し,自然河川が持つ蛇行構造,瀬・淵,河畔林・水際植物などの機能を確認しておく.
復習:多自然川づくりや小さな自然再生の具体的手法(例:水際域の改善,隠れ場創出など)を整理し,それらが生息環境の質の回復にどのように貢献するかをまとめる.

12 保全策の事例:イタセンパラと二枚貝 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第12回は、保全策の事例としてイタセンパラと二枚貝を対象とした保全の取組について学ぶ.

教材:
コマ主題細目①~③:
・配布資料

参考資料:
コマ主題細目①~③:
・淡水生物の保全生態学~復元生態学に向けて~(森 誠一 編著)信山社サイテック,P9~18,223~239.
コマ主題細目 ① イタセンパラと二枚貝の関係 ② 二枚貝の生息条件 ③ 冠水頻度に着目した保全策
細目レベル ① イタセンパラは,産卵場所として淡水産二枚貝に依存する特異な繁殖生態をもつタナゴ類であり,二枚貝との共生関係が個体群維持の鍵となる.イタセンパラは二枚貝に卵を産み付け,孵化した仔魚は一定期間,貝の外套腔(がいとうこう)内で保護されながら発育する.この環境は外敵からの捕食圧を低減し,初期生残率を高める役割を果たす.一方で二枚貝側も,グロキディウム幼生を排出しイタセンパラやヨシノボリ類に運搬してもらうことで分布域を広げている.このように,対象生物の保全には,関連する生物相互作用にも着目する必要があることを学ぶ.
② イタセンパラの保全では,産卵宿主となる淡水産二枚貝の生息状況が個体群維持を左右するため,二枚貝は重要な指標種として位置づけられる.また,ワンド内の魚類の多様性に対する指標でもあることも知られている.その二枚貝にとって,特に重要なのが洪水時の冠水頻度であり,ワンドが本川と連結することによって低溶存酸素条件が回避されることで生存率や成長率が高くなることが知られている.本講義では,自然共生研究センターの報告事例を参照しつつ,二枚貝の生息条件について学ぶ.
③ 河川における二枚貝の保全では,冠水頻度を復元することが生息環境改善の鍵となる.ここでは,盤下げ(ばんさげ)という工法とその効果検証について概観する.盤下げとは,氾濫原やワンドなどの浅場の底質を掘削し,本川との連結性を高めることで,冠水頻度の高い環境を人工的に再現する手法である.これにより河川本流との水交換が促進され,溶存酸素の供給・底質の更新などが改善される.本講義では,盤下げという具体策とその効果検証から,本川との連結性が動的に維持されるようなワンドの創出が二枚貝とそれに依存する魚類保全につながる仕組みについて学ぶ.
キーワード ① 産卵母貝 ② グロキディウム幼生 ③ ワンド・たまり ④ 冠水頻度 ⑤ 盤下げ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:タナゴ類の繁殖様式を確認し,イタセンパラが二枚貝に産卵を依存する生態的特徴を理解しておく.
復習:イタセンパラと二枚貝の相互依存関係を整理し,産卵母貝の減少が繁殖成功率に直結する仕組みを説明できるようにする.また,冠水頻度の低下や水域の孤立化が二枚貝の生息条件を悪化させる過程をまとめる.

13 保全策の事例:ネコギギ 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第13回は、保全策の事例としてネコギギを対象とした保全の取組について学ぶ.

教材:
コマ主題細目①~③:
・配布資料

参考資料:
コマ主題細目①~③:
・淡水生物の保全生態学~復元生態学に向けて~(森 誠一 編著)信山社サイテック,P105~114.
コマ主題細目 ① ネコギギについて ② ネコギギの生息場所要求 ③ 実際の保全策
細目レベル ① ネコギギは,ナマズ目ギギ科に属する日本固有の淡水魚で,伊勢湾・三河湾に流入する河川の河川中上流域に分布する希少種(天然記念物)である.体は細長く,夜行性である.昼間は河岸の岩陰や石の隙間など流れの緩い場所に潜み,夜間に水生昆虫や甲殻類などの底生動物を捕食する底生魚類である.砂礫底と岩盤が混在する清流環境を好み,河床の間隙は休息場や隠れ場として重要である.その間隙が,河川改修などで消失することが,本種の減少要因として指摘されている.ネコギギの保全を考える基礎として,本種の生態的特徴について解説する.
② ネコギギの主な生息環境は砂礫底と岩盤が混在する区間であり,特に石礫の隙間や河岸のえぐれ,倒木周辺など流速が緩和された場所が利用される.これらの空隙環境は,昼間の休息場や捕食者からの避難場所として機能する.夜間には河床付近を移動し,水生昆虫や小型甲殻類などの底生動物を採餌するため,餌生物が豊富な礫質河床が重要である.さらに,産卵には石の隙間や護岸の空隙など安定した微環境が必要とされる.本講義では,河床構造の複雑性などが本種の生息を規定する要因であることを学ぶ.
③ ネコギギの保全では,生息環境の回復と個体群維持を目的とした多角的な対策が実施されている.まず,参考資料で触れられている「床固めブロック岸におけるネコギギの生活」の事例について,その効果の検証方法も含めて詳しく解説する.その後,それ以外のネコギギの保全事例(例:河川改修区間における自然石の再配置や礫の補充による石礫の間隙や隠れ場となる空間の再生など)についても紹介し,どのような視点で保全策が検討されているのかについて考察する.
キーワード ① ネコギギ ② 天然記念物 ③ 効果の検証 ④ 床固めブロック ⑤ 石のすき間
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:ネコギギの分類的位置,日本固有種であること,分布域の特徴を確認しておく.
復習:「床固めブロック岸におけるネコギギの生活」に関して,ネコギギの生態解明のために行われた調査内容について理解し,効果検証の考え方について説明できるようにする.

14 保全策に関する予測手法 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第14回は,淡水魚の保全策の効果に関する予測手法として,PHABSIM,iRIC及び選好曲線について学ぶ.

教材:
コマ主題細目①~③:
・配布資料

参考資料:
コマ主題細目①,③:
・河川生態環境評価法:潜在自然概念を軸として(玉井信之ほか 編),東京大学出版会,P.168~183
コマ主題細目 ① PHABSIM(Physical Habitat Simulation System) ② iRIC ③ 湖の透明度
細目レベル ① iRIC(International River Interface Cooperative)は,河川の流れや河床変動を数値解析するための統合的な河川シミュレーション基盤であり,河川環境の変化予測や保全計画の立案に活用されている.iRICは,流況・地形・土砂移動などを再現する複数の解析ソルバーを備え,河川改修や出水時の物理環境変化を可視化できる点に特徴がある.その中でもEvaTRiP(Evaluation Tools for River environmental Planning)は,生息場所の評価に特化したソルバーであり,流速・水深・地形条件に魚類による選好度を重ねることで生息場所の質を定量的に解析できる.このように,物理モデルと生態応答を結び付けた保全計画支援ツールとしての意義を理解する.
② 湖沼の水位変動は、沿岸の魚類やその餌料となる動植物プランクトンなど、多くの生物相に影響をもたらすことが明らかになっている。欧米の事例では、湖沼の水位変動と魚類仔稚魚の現存量に相関があることも示されている。水位の変動は、湖岸の水際植物群落の消長に大きな影響を与えるだけでなく、減水時には浅場が干出することにより、減水前に産み付けられた魚卵が干出し、大量に死亡するリスクもはらんでおり、魚類をはじめとする資源量に大きな影響を及ぼす。ここでは、漁獲対象物としても重要な琵琶湖のコイ・フナについてその仔稚魚の生態を解説するとともに、それらの仔稚魚、ひいては生産量に関して、水位変動によって生じる影響を解説する。
③ 物理環境に対する魚類の選好曲線(Habitat Suitability Curve)は,流速・水深・底質などの環境条件に対して,魚類がどの程度利用・選択するかを定量的に示した評価曲線である.選好曲線の作成には様々な方法があるが,ここでは野外調査や実験水路において個体の出現頻度や行動を記録し,各環境要因との対応関係を統計的に整理することで,選択指数として曲線化する手法を紹介する.選好曲線は,淡水魚類の生息場所評価モデルなどに活用され,物理環境の変化が生物生息に及ぼす影響を予測する基礎資料となる.以上を基に,生態的知見を定量化する手法としての意義と不確実性について理解する.
キーワード ① IFIM(Instream Flow Incremental Methodology) ② PHABSIM(Physical Habitat Simulation System) ③ EvaTRiP(Evaluation Tools for River environmental Planning) ④ 選好曲線 ⑤ 生息場所評価
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:河川における物理環境要素(水深・流速・底質)が淡水魚の生息に与える影響について整理しておく.
復習:選好曲線を用いたPHABSIMやiRICによる生息場所評価の概要を自分の言葉で簡潔に説明できるようにしておく.

15 順応的管理 科目の中での位置付け 本講義では,水生動物とりわけ淡水魚の保全に関する基礎知識と実践的視点を体系的に学ぶ.そのために,①魚類の危機的な状況,②人為的な影響,③保全策の事例,④保全策の考え方と評価手法の4つの項目で構成する.
まず①魚類の危機的な状況として(第1回目~第5回目),レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状を理解し,個体数減少の要因を整理する.次に②人為的な影響として(第6回目~第9回目),河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から学習する.さらに③保全策の事例として(第10回目~第13回目),ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例を取り上げるとともに,それに関連した研究事例も紹介する.最後に④保全策の考え方と評価手法として(第14回目~第15回目),順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方を学び,効果検証と持続的管理の重要性を理解する.
このような科目構成の中で,第15回は,順応的管理の考え方やそれに必要となる効果の検証方法などについて学ぶ.

コマ主題細目①~③:
・配布資料
コマ主題細目 ① 河川の営力 ② EBPM ③ BACIとBARCI
細目レベル ① 河川の営力とは,流水の持つ侵食・運搬・堆積作用を通じて河道地形や河床構造を形成する力であり,淡水魚の生息場所はこの営力条件に適合した環境として成立している.つまり,生息場所は偶然存在するのではなく,河川の営力によって長期的に維持されてきた動的平衡の産物と言える.そのため,河川の営力に適合しない構造物や人工的な生息場を造成しても,出水時の洗掘や土砂堆積により形状が変化し,期待された機能は持続されない場合が多い.そのため,実施した保全策の効果を検証しながら,適宜修正を加える順応的管理の考え方が重要となることを学ぶ.
② EBPM(Evidence-Based Policy Making:証拠に基づく政策立案)とは,科学的データや客観的根拠に基づいて政策を立案・実施・評価する考え方であり,自然環境の保全行政においても重要性が高まっている.河川環境の再生や生息場整備などの施策は,多額の公共事業費を伴うため,効果が不明確なまま実施されると資源の浪費につながる恐れがある.そのため「何をどの程度改善するのか」という具体的な数値目標を設定し,事前予測と事後モニタリングにより効果を検証する過程が不可欠である.以上を踏まえつつ,科学的根拠に基づき政策を改善する適応的管理の重要性を理解する.
③ 保全策の効果を科学的に検証するためには,自然変動と対策効果を区別できる評価デザインが不可欠である.ここでは,その代表的手法であるBACIおよびBARCIの考え方を学ぶ.BACI(Before–After Control–Impact)は,対策実施「前後」と,対策を行わない対照区との比較により効果を判定する方法で,時間変動と空間差の両方を考慮できる点に特徴がある.BARCIはBACIにR(Reference,自然状態を保持する目標区)を追加することで,保全策による変化が望ましいものかを評価できる.このように,BACIやBARCIなどが,科学的根拠に基づく適応的管理を支える基盤的手法であることを理解する.
キーワード ① 営力 ② 順応的管理 ③ EBPM ④ BACIとBARCI ⑤ 効果の評価
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 講義内容に対する理解の確認のため,キーワードなどに関する簡単な小テストを実施する.
復習・予習課題 予習:科学的根拠に基づいて政策を改善するEBPMの基本概念について調べておく.
復習:順応的管理を支える,BACIやBARCIといった評価デザインの特徴をまとめ,自然変動と対策効果を区別する科学的評価の考え方を説明できるようにしておく.

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
魚類の危機的な状況 レッドリストやレッドデータブックにおける絶滅危惧種の増加や生物多様性の損失の現状や個体数減少の要因について理解し,自分の言葉で説明できる. 生物多様性,絶滅危惧種,生息場所利用,カバー,絶滅リスク,近交弱勢,人口学的確率性 25 1-5
人為的な影響 河川改修,ダム建設,外来種導入などが水生生態系へ及ぼす影響を生態学的観点から理解し,自分の言葉で説明できる. ダム,流況改変,土砂扞止,分断化,河川改修,外来種,温暖化 25 6-9
保全策の事例 ダム管理の工夫や多自然川づくりなどの実践例について,その目的と効果について理解し,自分の言葉で説明できる. フラッシュ放流,土砂供給,多自然川づくり,小さな自然再生,イタセンパラと二枚貝,ワンド,ネコギギ 25 10-13
保全策の考え方と評価手法 順応的管理や予測・評価手法(選好曲線,PHABSIM,BARCIデザイン)など科学的根拠に基づく保全の進め方について理解し,自分の言葉で説明できる. PHABSIM,選好曲線,河川の営力,EBPM,BACIとBARCI 25 14-15
評価方法 期末試験(100%)により行う。 
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 なし
参考文献 淡水生物の保全生態学(森誠一 編著、信山社サイテック)664円(中古)、河川生態学(中村太士編、講談社)6380円(入荷無し)など
実験・実習・教材費 なし