区分 (環)環境データサイエンス科目 環境情報科目 環境情報基本科目 (生)環境データサイエンス科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門性 理解力 実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
専門知識 教養知識 思考力
実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
個人・社会・自然が直面する課題に対して専門的な理解を深めると共に、学際的な柔軟性を有し、実践的な能力を有する。グローバルな視野を持ち、国際社会に貢献できる力を有する。企業・地域社会などのあらゆるコミュニティに寄与する組織的な活動能力を有する。
科目の目的
地球環境問題への対応やその解決においては、科学的知見を得ると共に、問題への柔軟な解釈と策を見出す能力が求められる。また、農薬に代表される化学物質は私たちの身近なものである。それらを使用する、もしくは使用されたものを扱う際には、使用者個人に使用の程度について判断を委ねられることになる。このことから、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けることが本講義の目的である。
到達目標
提示されたデータについて、その検証ができる。環境問題の現場のみならず、日常生活における多角的で合理的な物の見方を基に、自身の意見を形成できる。
科目の概要
本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回の講義では、本講義における基本的なリスクの考え方を概観する。第2回の講義では、リスクを考える際の指標となる「安全」について、個人レベルと社会的な合意との違いについて理解する。第3回の講義では、リスク評価の目的が管理対策を決めることであることを学び、対応の遅れがより環境リスクを進行させる恐れがあることを理解する。第4回の講義では、リスクを学ぶにあたり、そもそもリスクの発生元である環境問題がどのようなものであるかを、具体例を挙げながら確認していく。第5回の講義では、第4回で確認した環境問題について、優先して取り組むべき課題を考える際に、リスク評価を指標として比較できることを学び、それを実行するために様々な学問を学ぶ必要があることを理解する。第6回の講義では、第5回で確認した様々な学問の中でも科学が重要であり、物事を科学的に解釈することの重要性と利点を、講義担当者の実体験も取り入れながら解説する。第7回の講義では、本講義において核となるリスクというものの考え方の基礎を学ぶ。ここでは基準値をもとに、社会的な安全と個人の安全を例に挙げて理解を深める。第8回の講義では、ここまでの講義での学びの復習を行い、各自の理解を深める。第9回から第12回までの講義では、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶ。第13回の講義では、これまでの講義で学んできたリスクというものの考え方を各自に定着させるため、グループディスカッションを通して他者と意見交換を実施しながら理解を深める。第14回の講義では、グループディスカッションを通して各自が整理したリスクの考え方を全員で共有するため、発表会を行う。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観する。
科目のキーワード
①地球環境  ②科学 ③環境リスク  ④多角的視点  ⑤熟慮 ⑥複雑さ
授業の展開方法
第13回のグループディスカッションと、第14回のグループ発表以外は、教員がパワーポイントの資料を投影しながら解説する。それらの回における配布資料は、パワーポイントを一部空欄などにした資料を用いる。教員の解説を聞きながら、スライド投影されたパワーポイントと同様の資料に書き込みすることで、学生は当該箇所を確認しながら授業に参加できる。第13回のグループディスカッションでは、6グループ程度に別れて議論を行うことで、意見交換を通して理解を深める。第14回のグループ発表では、グループディスカッションを通して各自が整理したリスクの考え方を全員で共有する。
オフィス・アワー
【火曜日】2時限目(後期のみ)、昼休み・4時限目、【水曜日】昼休み(会議日は除く)、【木曜日】1・2・昼休み・3・4時限目、【金曜日】2時限目・昼休み、3時限目(後期のみ)
科目コード ENS500
学年・期 1年・前期
科目名 環境リスク概論
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 なし
展開科目 環境調査分析
関連資格 なし
担当教員名 谷地俊二
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 概論(本講義の進め方) 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回では、第一部の根幹として、基本的なリスクの考え方を概観する。また、ここでの学びに関連した学生の活動について紹介する。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1-10。
(2) コマ用オリジナル資料P. 11-17。
(3) 命をつなぐPROJECT編,ecoReco aichi, フリーペーパー,P. 1-21。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材3「ecoReco aichi」

【参考】
(1) 加茂将史(2017)生態学と化学物質とリスク評価,共立出版,P. 1-18.
(2) 谷地ら(2017)全国350の流量観測地点を対象とした水田使用農薬の河川水中予測濃度の地域特異性の解析,日本農薬学会誌42,1-9
(3) 酒井聡樹(2017)これからレポート・卒論を書く若者のために,共立出版,P. 157-169.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「生態学と化学物質とリスク評価」、2「日本農薬学会誌42」

主題細目② 
参考3「これからレポート・卒論を書く若者のために」
コマ主題細目 ① 講義のテーマと概要 ② 情報の引用方法 ③ 大学生による環境保全活動
細目レベル ① まず、講義を担当する教員の自己紹介から始める。これは、大学の講義はその分野の専門家によるものであるが、その素性や実績が示されなければ、今後の講義を展開する上で、何を担保として信頼していいのかが学生には伝わらないためである。次に、講義のテーマと講義の進め方について確認し、環境問題の捉え方やリスクの考え方を学ぶ過程を概観する。「リスク」という言葉が一般化してきた現代において、「リスク」という言葉を使う機会は多い。その一方、地球環境という広い領域において使用する場合や、個人のような身近な領域において使用する場合において、その考え方や使い方を混同してしまうことも多い。よって、講義のテーマと講義の進め方について確認し、環境問題の捉え方やリスクの考え方を学ぶ過程を概観する。

② レポートや卒論を作成するには、正しい引用を行う必要がある。誰が発言した言葉なのか、どのような意味を持って発言したのかを理解して引用しなければ、引用された側と異なる趣旨の内容を第三者に伝えてしまうことになる。また、引用という作業自体を怠った場合、自分本位の見解のみで理論構築をしてしまうことにもつながる。さらに、引用を示さない場合、あたかも自分が実施した研究によって得た情報のように扱ってしまうことになる。例えば、日本の耕地面積を示したい場合、農林水産省から統計データを得られるが、引用を示さない場合は、自分が全国を回って調査したことになる。本講義において核となる科学的なものの考え方を身に付けるにあたり、適切な情報を集めて利用することは重要である。引用文献を示すべき理由、引用文献の示し方、webページの情報の扱い方について理解する。

③ 私たちの普段の生活は、様々な工場による生産活動によって支えられている。一方、工場が建設されれば、そこに存在していた生態系は損なわれてしまう。このトレードオフの関係について、工場立地法では、特定工場に対し、敷地面積に対して一定の割合で緑地を整備することを義務付けることで生態系保全に取り組むこととしている。しかし、この緑地も、適切な管理がなされなければ生き物がすみかとして最大限に活用することは困難である。ここでは、愛知県内の様々な大学に所属する学生が共同で運営するインカレサークルの活動を、学生や活動支援団体職員によって紹介してもらう。主な活動として、企業緑地での生態系の保全活動、様々な地域での環境啓発活動、フリーペーパー制作による環境啓発普及活動などがある。このように、大学生とは、企業、行政、地域の次世代の担い手として自らが主体となって活動し、社会に発信していくことができることを知る。
キーワード ① 環境問題 ② リスク ③ 引用文献 ④ 科学的思考 ⑤ インカレサークル
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:講義担当者は谷地俊二である。これまでの研究として、代表的なものが5つある。1、ヤマビル忌避剤のトビムシや土壌生態系への生態影響評価として、非標的生物への薬剤散布リスクを評価してきた。2、水生ミミズに対する水田農薬の生態影響評価として、水田での営農にとって生態系機能を有する生物の薬剤に生態リスクと、その機能の損失の関係を研究してきた。3、藻類の化学物質曝露期間とその後の回復期間におけるクロロフィル遅延発光の変動として、薬剤ダメージとその回復性をもとに、現状の登録基準値制定における生物影響評価手法について新しい手法の開発を行った。5、全国350地点における水田農薬の河川水中予測濃度の地域特異性の解析により、予測環境中濃度の地域的な空間分布を算出する方法を開発した。これらの情報をもとに、講義担当者に対する興味と本講義に対する興味を心に留める。また、配布された主要論文から、引用の方法を確認する。インカレサークルの活動に興味を持った場合は、学内の参加学生にコンタクトをとるか、谷地研究室(5401室)まで気軽に遊びに来ること。
予習:「安全」という言葉を、辞書を用いて調べ、ノートにまとめる。

2 安全について 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回では、第一部の基礎として、本講義において環境問題の捉え方やリスクの考え方を学んでいくにあたり、リスクを考える際の指標となる「安全」について、個人レベルと社会的な合意との違いについて理解する。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1-3。
(2) コマ用オリジナル資料P. 4-6。
(3) コマ用オリジナル資料P. 7-8。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 西尾実ら編(2011)岩波国語辞典第七版新版,岩波書店.「安全」と「安心」と言う言葉を検索.
(2) 日本農薬学会編(2004)農薬の環境科学最前線−環境への影響評価とリスクコミュニケーション−,ソフトサイエンス社.P. 64-66.
(3) 日本農薬学会編(2004)農薬の環境科学最前線−環境への影響評価とリスクコミュニケーション−,ソフトサイエンス社.P. 66-74.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「岩波国語辞典第七版新版」

主題細目② 
参考2「農薬の環境科学最前線」

主題細目③ 
参考3「農薬の環境科学最前線」 
コマ主題細目 ① 個人としての安全と社会としての安全 ② 受け入れられないリスク ③ 基準値
細目レベル ① 「安全」という言葉に似た言葉で「安心」という言葉がある。この言葉は、よく「安全・安心」としてまとめて表記されることがある。しかし、私たちのイメージでは、「安全」は客観的・科学的であり、「安心」は主観的な感情であると思える。つまり、異なる概念であると考えられる。「安全」と「安心」を考える際に、まず辞書を用いて「安全」と「安心」という言葉を調べ、定義する必要がある。岩波国語辞典第7版では、安全は「危なくないこと。物事が損傷・損害、危害を受けない、または受ける心配のないこと。」と記載されている。安心は、「気にかかる事がなく、またはなくなって、心が安らかなこと」と記載されている。安全は、損傷・損害と記載されているように、ある程度物理的に定まることであることがわかるが、安心は心の安らぎであり、感情的である。このことから、安全と安心は異なる性質を持っていることがわかる。しかしここで、「安全」の意味の中に、心配という言葉が用いられている。すなわち「安全」とは個人の主観的なものである一面も持ち合わせているといえる。一方、社会としての「安全」を考える際に、個人の主観をもとにして考えると、人それぞれの価値観の違いから社会としての「安全」を確保することは困難となる。この個人と社会における「安全」の違いについて概観する。なお、岩波国語辞典は講義担当教員の好みという理由で選定したため、学生は各自の好みで辞書を選定すること。
② 社会としての「安全」を考える際に、個人の主観をもとにして考えると、人それぞれの価値観の違いから社会としての「安全」を確保することは困難となることは示された。これを受けると、社会としての「安全」を確保する際に共通の尺度を持って考える必要があるといえる。その尺度を決定する際に、ひとつの方法として、リスクを用いることができる。本講義ではリスクを「望ましくない結果が生じる確率」×「その結果のひどさの程度」として考える。こうして求められたリスクについて、受け入れられない「リスク」の程度はどれくらいであるかを社会が合意を持つことによって、共通の尺度として利用できることになる。この一連の流れについて、本学で起こり得る事例を紹介し、参加学生個人がどのように感じたか、もしくは合意(納得)できたかを全員で共有することで、リスクの必要性を身につける。
③ 細目レベル②によって、リスクについて、受け入れられない「リスク」の程度はどれくらいであるかを社会が合意を持つことによって、共通の尺度として利用できることになることは示された。ここで、共通に利用できる尺度が決まった場合、ある一定の基準を設けなければ、その尺度を利用することは困難である。そのため、尺度に対する一定の基準として「基準値」が設けられる。基準値を設けることで、リスクは高い・低いという判断をする際の材料として利用することができる。しかし、基準値が設けられたとしても、ここで「安全」の定義が食い違うと、社会としての合意を得ることは困難となる。例えば、「基準値以下のため、安全だ」といった場合、それは「受け入れられないと社会が合意したリスクよりも低いから安全だ」としたことになる。一方、「基準値以下でも安全と思えない」といった場合、「自分にとっては受け入れられないリスクだから安全ではない」ということになる。このように、リスクや基準値が設けられたとしても、「安全」に対する考え方によって捉え方が異なってくることをおさえる。
キーワード ① 安全 ② 安心 ③ 社会 ④ 合意 ⑤ 基準値
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:本講義ではリスクを「望ましくない結果が生じる確率」×「その結果のひどさの程度」として考えるとした。次回以降の講義において、この考え方は理解できているものとして進行していく。そのため、考え方の理解を深めることを目的として、例えを各自で考え、ノートにまとめる。
身の回りには様々な基準値が設けられているが、私を含め、知らずに使っている場合が多いと思われる。身近に用いられている基準値を探し、それを5個程度列挙し、その基準値が何を目的として設定されているかを調べ、ノートにまとめる。
予習:「環境」という言葉を、辞書を用いて調べ、ノートにまとめる。リスク評価の目的は、利用できる情報を最大限活用して管理対策を決めることであるということをノートに書き、余力があればその理由について個人の考えをノートに書いてまとめる。

3 環境とリスク 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回では、第一部における環境問題の捉え方やリスクの考え方を学んでいくにあたり、影響を知ることと、管理対策決めることといった、毒性学とリスク評価の目的の違いについて理解をする。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1。
(2) コマ用オリジナル資料P. 2。
(3) コマ用オリジナル資料P. 3-10。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 西尾実ら編(2011)岩波国語辞典第七版新版,岩波書店.「環境」と言う言葉を検索.
(2) 日本農薬学会編(2004)農薬の環境科学最前線−環境への影響評価とリスクコミュニケーション−,ソフトサイエンス社.P. 64-74.
(3) 永井と谷地(2013)情報基盤としての農薬インベントリーとその出口としての生態リスク評価, 環境毒性学会誌16, p. 43-48.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「岩波国語辞典第七版新版」

主題細目② 
参考2「農薬の環境科学最前線」、3「環境毒性学会誌16」

主題細目③ 
参考3「環境毒性学会誌16」 
コマ主題細目 ① 環境とは ② リスク評価の体系と目的 ③ リスク評価と対応策
細目レベル ① 「環境」を考える際に、まず辞書を用いて「環境」という言葉を調べ、定義する必要がある。岩波国語辞典第7版では、「人間または生物をとりまく、まわりの状況。そのものと何らかの関係を持ち、影響を与えるものとして見た外界。」と記載されている。つまり、環境とは、あるものに注目して初めて現れてくる主体中心的な性格がある。その主体となるものは、私たち人間にとっては、人間となるケースが多いと考えられる。ここに「評価する」という考えを加えると、主体の立場でしか「環境」を評価できないといえる。すなわち、人間が環境を評価する際には、人間主体としての評価になる。よって、私たちの生活圏を取り巻き、かつ直接的・間接的に関係を持つものを評価することになるということを押さえる。
② リスク評価の体系を理解するために、まずは目的を理解する必要がある。リスク評価の目的は、管理対策を「決める」ことである。この目的は、よく毒性学の目的に置き換えられて理解されていることがある。
毒性学の分野における目的は、生物への毒性値を「知る」ことである。リスク評価の体系は、制御可能なリスクの明確化、リスクの定性的記述、リスク管理の方法の検討、リスク管理の方法の実施、利害関係者との話合いの順に進められる。この際に、リスクの定性的記述までが毒性学の分野である。
この次にリスク評価として、得られた毒性値と曝露される量の比較を行う。この結果を受けて管理対策を決めることを、リスク管理と呼ぶ。なおこの講義では、リスク評価とリスク管理をまとめて、リスク評価として学ぶ。この体系の流れをおさえる。

③ リスク評価の目的は、管理対策を「決める」ことであり、毒性学の分野における目的は、生物への毒性値を「知る」ことであることは示した。ここで、目的が明確に分かれていることに着目する。もしも、この目的が混同されて理解され、例えばリスク評価の目的を「毒性を知る」とした場合、「知る」という作業はその研究者の研究意欲に裁量されることとなる。また、「知る」ことができる情報は限られてくる。つまり、「知る」ことに重きを置きすぎると、発生する・発生しているリスクに対する管理対策は進まないこととなる。すなわち、環境に対してリスクが高いと分かったとしても、その対応はほったらかし同然となるといえる。そのため、「知る」ことができる情報は少ないが、それでも対策を「決め」なければならないということをおさえる。
キーワード ① 環境 ② リスク評価 ③ 管理対策の決定 ④ 毒性値を知る ⑤ 毒性学
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:リスク評価の体系は、制御可能なリスクの明確化、リスクの定性的記述、リスク管理の方法の検討、リスク管理の方法の実施、利害関係者との話合いの順に進められる。この際に、リスクの定性的記述までが毒性学の分野である。この次にリスク評価として、得られた毒性値と曝露される量の比較を行う。この結果を受けて管理対策を決めることを、リスク管理と呼ぶ。この一連の流れは、本講義や、3年次の講義科目「生態毒性」においても理解しておかなければならない。よって、この一連の流れをノートにまとめる。なお、毒性影響を「知る」側に興味を持った場合は、第1回の講義を参考に、講義担当教員へ相談すること。
予習:次週は環境問題について考える。その際に、環境問題とはどのようなものかをあらかじめ考えてくることが望ましい。よって、自身が考える(聞いたことがある・興味がある)環境問題を5つ程度、ノートにまとめる。

4 環境問題とは何か 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回では、第一部における環境問題の捉え方やリスクの考え方を学んでいくにあたり、そもそも環境問題とはどういった事象なのか、について理解をする。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1-2。
(2) コマ用オリジナル資料P. 3-4。
(3) コマ用オリジナル資料P. 5-16。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 西尾実ら編(2011)岩波国語辞典第七版新版,岩波書店.「環境」と「問題」と言う言葉を検索.
(2) 環境省編(2019)環境白書,環境白書.P. 4-26.
(3) 環境省編(2019)環境白書,環境白書.P. 29-52.
(4) 東京商工会議所編(2019)改訂7版 環境社会検定試験 eco検定公式テキスト. P. 60-61.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「岩波国語辞典第七版新版」

主題細目② 
参考2「環境白書」

主題細目③ 
参考3「環境白書」、4「eco検定公式テキスト」 
コマ主題細目 ① 環境問題の定義づけ ② 環境問題とは ③ 取組の紹介
細目レベル ① 「環境問題」を考える際に、まず辞書を用いて「環境問題」という言葉を調べ、定義する必要がある。しかし、岩波国語辞典第7版では、環境問題という言葉が載っていない。そのため、「環境」と「問題」の二語に分けて調べる。
「環境」とは、人類の活動の結果によって周囲の環境が変化したことで発生した問題である。「問題」とは、答えを求めて他が出しまたは自分で設けた問い。扱いが面倒な事件と記載されている。この言葉を合体させると、人間または生物をとりまく、まわりの状況で起こる、扱いが面倒な事件、もしくは、そのものと何らかの関係を持ち、影響を与えるものとして見た外界で起こる、扱いが面倒な事件ということになる。つまり、我々の周りで起こる難解な課題であることと取れることをおさえる。

② 環境問題には様々な事例が挙げられる。例えば、化石燃料の枯渇、地球温暖化、放射能汚染、森林伐採、ゲリラ豪雨、赤潮、異常気象、オゾンホールの拡大、サンゴ礁の減少、生物の絶滅、遺伝子汚染、酸性雨などがよく耳にすると思われる。これらは概して、人類の活動の結果、周囲の環境の変化によって発生した問題で、人の健康や生命への被害、地球の生態系の破壊が発生する危険性の大きいものといえる。これらはすべてがひとつひとつ独立した問題であると同時に、いずれも相互に関連しあってもいる。
例えば、化石燃料の枯渇は、化石燃料の使用によるものであり、化石燃料の使用の影響を受けて、地球温暖化が進むこととなっている。このように、個別として捉えると同時に、問題群として環境問題を捉える視点をおさえる。

③ 気候変動影響について、環境省発行の環境白書に記載された取組の概観を例に挙げる。すでに起こっている・今後進行する気候変動に対処し、国民の生命・財産を将来にわたって守り、経済・社会の持続可能な発展を図るためには、緩和策(温室効果ガスの排出削減等対策)に全力で取り組むことはもちろんのこと、現在生じており、また将来予測される気候変動による被害の回避・軽減を図る適応策に、多様な関係者の連携・協働の下、一丸となって取り組むことが重要とされる。ここでは「緩和」と「適応」の対応が重要な考え方となる。温室効果ガスの増加については、温室効果ガスの排出を抑制するという環境への「緩和」が必要であり、結果としての温暖化による影響に対しては、被害を回避・軽減する「適応」が必要となる。このような、問題に対する段階ごとの対応の方法をおさえる。
キーワード ① 環境 ② 主体 ③ 環境問題 ④ 相互関係 ⑤ 緩和と適応
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:環境問題には様々な事例が挙げられることを示した。例えば、化石燃料の枯渇、地球温暖化、放射能汚染、森林伐採、ゲリラ豪雨、赤潮、異常気象、オゾンホールの拡大、サンゴ礁の減少、生物の絶滅、遺伝子汚染、酸性雨などがある。これらは概して、人類の活動の結果、周囲の環境の変化によって発生した問題で、人の健康や生命への被害、地球の生態系の破壊が発生する危険性の大きいものといえる。講義において、これらはすべてがひとつひとつ独立した問題であると同時に、いずれも相互に関連しあってもいることを学んだ。これを踏まえて、先週の予習課題として各自が挙げた環境問題について、その相互に関連していると考えられる環境問題を線でつなぎ、その理由をノートにまとめる。
予習:上記予習とおよそ同じとなるが、自身が興味のある環境問題や、身の回りの環境に関する問題などを考え、それにどう対応するかをノートにまとめる。

5 環境(問題)の見方 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回では、第一部における第4回で確認した環境、環境問題というものをどのように扱っていくべきか。環境を扱うにあたり様々な観点があるが、その多様さについてどのような側面があるのかについて確認を行う。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1。
(2) コマ用オリジナル資料P. 2-7。
(3) コマ用オリジナル資料P. 8-15。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 第4回講義のコマ用オリジナル資料の2から6ページを参照.
(2) 永井と谷地(2013)情報基盤としての農薬インベントリーとその出口としての生態リスク評価, 環境毒性学会誌16, p. 43-48.
(3) 日本農薬学会編(2004)農薬の環境科学最前線−環境への影響評価とリスクコミュニケーション−,ソフトサイエンス社.P. 64-74. 
(4) 環境省編(2019)環境白書,環境白書.P. 255-287.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「第4回講義のコマ用オリジナル資料」

主題細目② 
参考2「環境毒性学会誌16」、3「農薬の環境科学最前線」

主題細目③ 
参考4「環境白書」 
コマ主題細目 ① 環境の多様さ ② 総合的理解の必要さ ③ 環境問題を捉える際の原則
細目レベル ① 「環境」とは「人間または生物をとりまく、まわりの状況。そのものと何らかの関係を持ち、影響を与えるものとして見た外界。」と辞書に記載されている。これを学ぶ際には、その多様さについて理解する必要がある。
学問領域について、環境学は、総合科学であるとされている。つまり、環境を本当に理解しようとすると「地球のすべて」、「ヒトのすべて」、「人間社会のすべて」を知る必要がある。すなわち、理学、医学、工学、農学、経済学、法学など、多くの学問分野を身に付けることとなる。環境問題について、例えば途上国においては、水資源の問題、経済発展と環境汚染とのバランスをどこで取るかという問題、エネルギー消費量と経済発展の問題、食糧供給や再生資源の使用法に関する問題などがある。さらに時間的広がりについては、今後どのくらの時間を考慮すべきかなどが挙げられることをおさえる。

② 上記の通り、「環境」を考える際には、様々な事柄について考える必要がある。それらは、環境は多様な観点があるといえる。また、環境問題を引き起こす原因や事象も様々であり、その影響の現れ方も様々である。これは、人間活動を原因とする環境負荷と、地球の環境能力の限界によるものといった、相互に関連し合うものによって引き起こされるものであるためといえる。その中で、どの環境負荷が重大な要素となりうるのか、本来は全ての環境負荷に目配せする必要がある。このことから、環境に対しては、総合的理解や総合的評価が必要といえる。ただし、すべての事柄について同時に対応策を研究することは実質上困難であり、解決にむけた対応をとるべく優先順位を考える必要がある。その際に、リスク評価で比較することが有効であることを、おさえる。
③ 環境問題を認識した場合、対応策や解決策を講じる必要がある。環境問題の原因の探求のためには、様々な分析技術やモデルの構築といった方法論が必要であり、自然科学的な問題解明が行われる。この解析によって、その直接的な原因を引き起こしている活動や事象が特定される。このことから、環境問題を捉える際の基本原則として、環境問題にも科学が必須であるといえることをおさえる。なお、基本原則は以下に挙げるものが代表される。
第1原則:全体トレンドの原則、第2原則:トレードオフ必在の原則、第3原則:グローバル/ローカルの原則、第4原則:リスク非ゼロの原則、第5原則:将来世代/現世代の原則、第6原則:種/個体の原則、第7原則:シナリオ必須の原則、追加基本原則:統計的バラツキの原則。

キーワード ① 総合科学 ② 環境負荷 ③ 重大要素 ④ 優先順位 ⑤ 直接的な原因
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:先週の復習課題において、環境問題には様々な事例が挙げられることをノートにまとめてあり、各自が挙げた環境問題について、その相互に関連していると考えられる環境問題を線でつなぎ、その理由をノートにまとめてあるはずである。また、先週の予習課題として、自身が興味のある環境問題や、身の回りの環境に関する問題などを考え、それにどう対応するかをノートにまとめてあるはずである。これらについて、科学的な視点をもって、より具体的に対応策を考え、ノートにまとめる。
予習:今週の復習課題を考える際に、科学的な視点をもつこととされている。これを達成するためには、コミュニケーションツールとして数字を扱うと他者に伝えやすい。復習課題をまとめる際に、数字を使って具体的に説明できるかを考えることとする。

6 科学的なものの捉え方,考え方 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回では、第一部における、環境問題を扱う際の科学の必要性について、科学や科学的な考え方とはどのようなことであるのかについて理解する。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1-4。
(2) コマ用オリジナル資料P. 5。
(3) コマ用オリジナル資料P. 6-12。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 西尾実ら編(2011)岩波国語辞典第七版新版,岩波書店.「科学」と言う言葉を検索.
(2) ゲルト・ギーゲレンツァー(2010)リスク・リテラシーが身につく統計的思考法,早川書房.P. 1-84.
(3) 加茂将史(2017)生態学と化学物質とリスク評価,共立出版,P. 1-18.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「岩波国語辞典第七版新版」

主題細目② 
参考2「リスク・リテラシー」

主題細目③ 
参考3「生態学と化学物質」
コマ主題細目 ① 科学とは ② 科学リテラシーの必要性 ③ 科学を避けるということ
細目レベル ① 「科学」を考える際に、まず辞書を用いて「科学」という言葉を調べ、定義する必要がある。岩波国語辞典第7版では、「一定領域の対象を客観的な方法で系統的に研究する活動。」と記載されている。客観的な方法と記されている通り、科学の基本として、常にそれが再現できること、誰にでも観察できることが重要といえる。再現される事象を見極めれば、これから起こることが予測できる。これらを実践していく際に、他者に間違った情報が伝わらないようにしなければならない。これを防ぐためのコミュニケーションツールとして、数字を用いることが有効であることをおさえる。また、研究を実践する際に、仮説を設定することも必要である。その際に、個人の価値観に立ち入らずに、事実を明らかにして再現することも科学における活動であることをおさえる。
② 地球環境問題は、「即座に人的被害が生じるようなものではないが影響を受ける人数は多い」という特徴を持つ。このことから、一人一人がより確からしい情報を選び、より適切な行動をとることが求められている。そのため、適切な科学リテラシーを身に付けることを学ぶ必要があることをおさえる。個人における健康問題としては、講義担当教員の不健康を例に考えることができる。講義担当教員は大の甘党であるため、自身が健康診断で糖尿病の疑いありとされた際に、週に一度は必ずケーキという食習慣を改めようと反省した。しかし、実際に検査した結果からは、遺伝的に糖尿病になりやすい体質であることが判明した。それにより、週に一度のケーキを諦めるのではなく、毎日の食生活の改善で対処できることがわかった。このように、個人レベルであっても、思い込むのではなく、原因を明らかにし、因果関係を理解することが重要であることをおさえる。なお、講義担当教員は毎日の食生活を改めた結果、別の健康リスクが高まってしまった。この関係をトレードオフと呼ぶこともおさえる。
③ 科学を避けるということは、不利益をもたらすばかりでなく、危険でさえあることを学ぶ。ここでの科学を避けるということは、「理論や数字をもとにした説明は考えることが面倒臭いため不要である。結論のみ教えて欲しい。」と言った状況を想定している。しかしながら、科学とは「情報」ではなく、「方法」である。つまり、発生する現象について結論のみで構成されるものではなく、その現象が発生するプロセスを解明する活動が科学といえる。このプロセスを理解することができれば、危険に対するその被害の程度も理解することができ、必要な対策を考案することができる。逆に、その過程を省くと、考えること自体が面倒となり、その結論は自分本位なものにもなりえる。よって、プロセスの必要性と、対応の関係性を、例を挙げながら説明することでおさえる。
キーワード ① 科学 ② 再現 ③ リテラシー ④ 結論 ⑤ 方法
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:講義中に、講義担当教員の実体験をもとにした科学のリテラシーを活かした対応例を紹介した。具体的には、個人における健康問題として、講義担当教員の不健康を例に考えることができる。講義担当教員は大の甘党であるため、自身が健康診断で糖尿病の疑いありとされた際に、週に一度は必ずケーキという食習慣を改めようと反省した。しかし、実際に検査した結果からは、遺伝的に糖尿病になりやすい体質であることが判明した。それにより、ケーキを諦めるのではなく、毎日の食生活の改善で対処できることがわかった。ということである。各自も自身の身の回りを振り返り、身近な例で科学のリテラシーを用いた、もしくは用いればよかったと思うエピソードをノートにまとめる。
予習:本講義におけるリスクの定義をノートにまとめる。

7 リスクという考え方 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回では、本講義において核となるリスクというものの考え方の基礎を示す。第9から12回にかけてリスクやその評価の考え方について扱うに際し、前提となる内容である。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1-5。
(2) コマ用オリジナル資料P. 6-12。
(3) コマ用オリジナル資料P. 13-16。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 日本農薬学会編(2004)農薬の環境科学最前線−環境への影響評価とリスクコミュニケーション−,ソフトサイエンス社.P. 64-74.
(2) 加茂将史(2017)生態学と化学物質とリスク評価,共立出版,P. 40-53.
(3) 第2回の配布資料の2から3ページを参照.
(4) 加茂将史(2017)生態学と化学物質とリスク評価,共立出版,P. 19-29.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「農薬の環境科学最前線」

主題細目② 
参考2「生態学と化学物質」

主題細目③ 
参考3「第2回の配布資料」、4「生態学と化学物質」 
コマ主題細目 ① リスクとは ② 生態毒性 ③ 社会的安全とは何を目指すか
細目レベル ① リスクとは、望ましくない出来事の重大さに、望ましくない出来事が起こる可能性を掛け合わせたものとして表現される。本講義中には、本講義ではリスクを「望ましくない結果が生じる確率」×「その結果のひどさの程度」として模式的に示している。こうして求められたリスクについて、受け入れられない「リスク」の程度はどれくらいであるかを社会が合意を持つことによって、共通の尺度として利用できることになる。今回は合意形成について、リスクとベネフィットをもとに考える。理想と現実の違いを金銭の介在を含めて考え、受講者自身になぜ考えが変わったのかを体験させることで、実務的に実現可能となる解を選ぶ思考を身につけるところまでをおさえる。
② 毒性学には、「全ての物質は用量次第で毒になる」「毒となるか薬となるかは量次第」といった基本原理がある。これは、フィリップス・アウレオールス・テオフラストゥス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイム (通称:パラケルスス1493-1541)が提唱した言葉である。つまり、有害物質と無害物質といったものが存在するのではなく、どのような物質であってもその摂取量によって、悪影響がでたり、逆に好ましい効果を得られたりするものということを示している。よって、毒性物質が近所の河川や土壌から検出されたとしてもごく微量であれば、直ちに問題が生じる可能性は少ない場合が多いことを学ぶ。それをもって、社会的に話題となった問題などを用いることで、リスク評価における毒性学のポジションをおさえる。
③ ②の一方で、有害物質が検出されると不安を抱く場合が多い。具体的には、リスク評価は「〇〇という物質を毎日△△g摂取したら…」という仮定の下に行われ、その中で第2回の講義で学んだ基準値をもとにした判断がなされる。しかしながら、場合によっては世界的な基準値を日本の基準値が超えているような状況もある。このようなケースでは、これまでの講義で学んできた科学によるプロセスの解明と、①で学んだような金銭の介在を含めた総合的な解釈が必要になる。つまり、危険度の大きさと、見返りのよる利益の大きさを明らかにし、どちらを選ぶべきかを関係者が議論することで解決案を探すことになる。受け入れられないリスクをどの程度にするかを学び、具体的で定量的な議論が展開できるようにする。
キーワード ① リスク ② 程度 ③ 理想と現実 ④ 合意形成 ⑤ 基準値
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:講義において、水道水を例にしてリスクとベネフィットの関係性を解説した。また、社会的に話題となった問題もとりあげた。これらの解釈は、講義担当教員の考えによるものであり、受講生各自の考えとは異なることもある。各自が情報を集め、それを科学的に他者に伝えることで、話し合いは可能となる。調べ始める際には価値観は極力除きたいが、少なからず主観は入る可能性はある。その状態でも構わないので、今回の講義で取り扱った話題に対して、自分の考えについて科学的根拠をもとにノートにまとめる。毒性学の基本原理を提唱した人物については、通称であるパラケルススを覚えることを推奨する。
予習:本講義の第一部におけるまとめの回となる。これまでの講義の予習復習に用いた各自のノートを見直し、質問箇所などまとめること。

8 まとめ 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回は、第一部のまとめであり、本講義の基盤となる内容である。その知識や考え方の定着のために復習を行う。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1-2。
(2) コマ用オリジナル資料P. 2-10。
(3) コマ用オリジナル資料P. 11-14。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 第2回から第5回の配布資料の全てを参照.
(2) 第6回の配布資料の2から8ページを参照.
(3) 第2回の配布資料の2から3ページを参照.
(4) 第7回の配布資料の1から12ページを参照.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「第2回から第5回の配布資料」

主題細目② 
参考2「第6回の配布資料」、3「第2回の配布資料」

主題細目③ 
参考5「第7回の配布資料」 
コマ主題細目 ① 環境問題の捉え方 ② 科学という方法 ③ リスクリテラシーを身に付ける
細目レベル ① 環境問題には様々な事例が挙げられる。例えば、化石燃料の枯渇、地球温暖化、放射能汚染、森林伐採、ゲリラ豪雨、赤潮、異常気象、オゾンホールの拡大、サンゴ礁の減少、生物の絶滅、遺伝子汚染、酸性雨などがよく耳にすると思われる。これらは概して、人類の活動の結果、周囲の環境の変化によって発生した問題で、人の健康や生命への被害、地球の生態系の破壊が発生する危険性の大きいものといえる。これらはすべてがひとつひとつ独立した問題であると同時に、いずれも相互に関連しあってもいる。例えば、化石燃料の枯渇は、化石燃料の使用によるものであり、化石燃料の使用の影響を受けて、地球温暖化が進むこととなっている。このように、個別として捉えると同時に、問題群として環境問題を捉える視点をおさえる。
② 「科学」を考える際に、まず辞書を用いて「科学」という言葉を調べ、定義する必要がある。岩波国語辞典第7版では、「一定領域の対象を客観的な方法で系統的に研究する活動。」と記載されている。客観的な方法と記されている通り、科学の基本として、常にそれが再現できること、誰にでも観察できることが重要といえる。再現される事象を見極めれば、これから起こることが予測できる。これらを実践していく際に、他者に間違った情報が伝わらないようにしなければならない。これを防ぐためのコミュニケーションツールとして、数字を用いることが有効であることをおさえる。また、研究を実践する際に、仮説を設定することも必要である。その際に、個人の価値観に立ち入らずに、事実を明らかにして再現することも科学における活動であることをおさえる。
③ これまでに、リスクの考え方や安全について学んだ。社会的な安全を求めるために定められた基準値の設定背景について、リスクの観点から改めて概観する。リスク評価は「〇〇という物質を毎日△△g摂取したら…」という仮定の下に行われ、その中で第2回の講義で学んだ基準値をもとにした判断がなされる。しかしながら、場合によっては世界的な基準値を日本の基準値が超えているような状況もある。このようなケースでは、これまでの講義で学んできた科学によるプロセスの解明と、金銭の介在を含めた総合的な解釈が必要になる。つまり、危険度の大きさと、見返りのよる利益の大きさを明らかにし、どちらを選ぶべきかを関係者が議論することで解決案を探すことになる。受け入れられないリスクをどの程度にするかを学び、具体的で定量的な議論が展開できるようにすることで、リスクリテラシーの素養を身に付ける。
キーワード ① 環境問題 ② 相互関係 ③ 数字 ④ 基準値 ⑤ リスクリテラシー
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けるように段階を追って展開していく。今回によって、本講義の基盤となるリスクという言葉と、その意味を学ぶ過程は修了したことになる。各回の講義資料を見直し、分からない点があればノートにまとめる。
予習:次回からは、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。身の回りにあるリスクに関する事柄について、問題提起、リスクとベネフィット、解決案をノートにまとめる。

9 身のまわりのリスク 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回からは第二部として、より実践的なリスク管理について展開する。リスクという観点では、我々の周りには環境問題のみならず様々な危険要因が存在する。そのような生活に関わる危険要因を挙げていくと、環境問題として認識している事象にも結びついてくることを確認する。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1-6。
(2) コマ用オリジナル資料P. 7-10。
(3) コマ用オリジナル資料P. 11-16。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 中谷内一也(2003)環境リスク心理学,ナカニシヤ出版.P. 86-110.
(2) 日本農薬学会編(2004)農薬の環境科学最前線−環境への影響評価とリスクコミュニケーション−,ソフトサイエンス社.P. 136-162.
(3) 第7回の配布資料の5から8ページを参照.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「環境リスク心理学」

主題細目② 
参考2「農薬の環境科学最前線」

主題細目③ 
参考3「第7回の配布資料」 
コマ主題細目 ① 様々な危険要因 ② ハザードとリスク ③ 身近なリスク
細目レベル ① 環境問題として挙げられるような事象以外にも、我々は多くの危険要因と隣り合わせで生活をしている。例えば、たばこ、アルコール、交通事故などは、よく知られた死亡リスクの高い要因である。しかし、これら以外に、入浴はあまり認知されていないが死亡リスクの高い要因のひとつである。このように、身近に潜む死亡リスクの高い要因と同じ指標で、カドミウムやヒ素、メチル水銀や残留農薬といった、聞いたことはあるがあまり身近には感じられない・過去に勉強したことのある事例などがどの程度危険なのかを評価できれば、生活の中の危険要因と環境問題として認識している要因を比較することが可能である。様々な評価指標(エンドポイント)の中から、死亡リスクを例にリスクについて考え、その比較方法までをおさえる。
② 化学物質に代表される管理方法には、2種類のアプローチが異なる管理方法が存在する。例えば、「毒物が存在すると問題があるため、毒物の低減をするべきである」という管理の方法はハザード管理と呼ばれる。一方「毒物が存在するのでリスク評価を行い、ヒト健康や生態系への実害が懸念される際は問題があるとして、リスクの低減策を考える必要がある」もしくは「「毒物が存在するのでリスク評価を行ったが、ヒト健康や生態系への実害が懸念されるレベルではない」と考えることはリスク管理である。
かつてはハザード管理が一般的に用いられてきたが、毒性学の回で学んだ通り、「全ての化学物質は何らかの有害性を有しており、有害になるか否かはその量に依存する」という、「影響の量依存性」の考え方に従うと、ハザード管理では我々が化学物質から享受されるベネフィットも一律に除いてしまうこととなる。よって、リスク管理の視点を持つことが、今後一層に求められると考えられる。これらの管理方法の考え方をおさえる。

③ 第7回の講義で紹介した社会的な問題のケースを今一度振り返り、第一部での学びを発展させる。第8回の復習課題として、「身の回りにあるリスクに関する事柄について、問題提起、リスクとベネフィット、解決案をノートにまとめる。」とした。講義担当教員が紹介する社会的な問題について、どこに問題提起があり、リスクとベネフィットの関係をより具体的に示し、講義担当教員が考える解決案を提示することで、学生個人がまとめてきた身近なリスクについて、考え方を確認する。
重要となる考え方は、②で示した「リスク管理」の考え方であり、「基準値を超えた・基準値を超えない」に重きを置きすぎず、これまでの講義で学んできた科学によるプロセスの解明と、金銭の介在を含めた総合的な解釈が必要になる。つまり、危険度の大きさと、見返りのよる利益の大きさを明らかにし、どちらを選ぶべきかを関係者が議論することで解決案を探すことになる。これまでの学びから得た知識をもとにした活用方法をおさえる。

キーワード ① 危険要因 ② エンドポイント ③ 死亡リスク ④ ハザード管理 ⑤ リスク管理
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:第8回の復習課題とした、「身の回りにあるリスクに関する事柄について、「問題提起、リスクとベネフィット、解決案をノートにまとめる。」について、講義中にも確認した各自のテーマと一連の流れを、再度構成し直してノートにまとめる。また、新たなテーマで身の回りのリスクを考えたいというチャレンジングな学生は、新たなテーマに挑み、問題提起、リスクとベネフィット、解決案をノートにまとめる。
予習:次週は講義のはじめに、「有機農業」について、学生が普段どのような印象を持っているかを問う。印象というのは、その栽培方法であったり、野菜の味であったりと抽象的でも構わない。各自がどのように考えているかをノートにまとめる。

10 環境リスク~食のリスク 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回は第二部として、より実践的なリスク管理のうち、環境問題に係るリスクの一例として、食について考える。
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1-3。
(2) コマ用オリジナル資料P. 4。
(3) コマ用オリジナル資料P. 5-16。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 中野明正(2012)未来の循環型農業インテグレーテッド有機農業論,誠文堂新光社, P. 1-41.
(2) 農林水産省,有機農業を推進しましょうパンフレット, P. 1-3.
(3) 松永和紀(2010)食の安全と環境「気分のエコ」にはだまされない,日本評論社.P. 3-141.
(4) 松永和紀(2010)食の安全と環境「気分のエコ」にはだまされない,日本評論社.P. 3-20.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「インテグレーテッド有機農業論」、2「有機農業を推進しましょうパンフレット」

主題細目② 
参考3「食の安全と環境」

主題細目③ 
参考4「食の安全と環境」 
コマ主題細目 ① 有機農業の好み ② リスク評価の切り口 ③ 評価すべき項目
細目レベル ① 国内における有機農業とは、平成18年12月8日、「有機農業の推進に関する法律」が国会で制定され、同年 12月15日に施行された。本法律に基づき、国及び地方公共団体が連携して有機農業を推進するため「有機農業の推進に関する基本的な方針」(基本方針)を、平成19年4月27日に策定された。有機農業とは、「1、化学肥料や農薬を使用しない。」、「2、遺伝子組換え技術を利用しない。」の以上を基本として、環境への負荷をできる限り低減する農業生産の方法を指す。有機農業の意義について、有機農業は、環境負荷の低減、自然循環機能の増進、生物多様性の保全に資する取組である。その一方、現状では技術が十分に確立されていないなどの課題を抱え、消費者ニーズはあるが、有機農業の取組は未だに少ないことから、有機農業のさらなる推進、普及に向けた取組が必要とされている。これらを踏まえて、各自が第9回の予習課題でまとめてきた内容を、グループで話し合い、有機農業についてどう思うかを意見交換することで、講義開始前の各自が自分自身でどのような構成で考えたかという現状をおさえる。
② この問題を考える際の切り口として、「無農薬」に対する意識や、「有機農産物」に対する印象、「国産」という言葉への印象、「遺伝子組み換え作物」への印象を例として挙げる。例えば、有機農産物は安全という印象を持つことが多いと思う。しかし、健康影響の面では、「有機食品が通常の食品よりも健康にいいという証拠はない」ということを、英国環境・食料・農村地域省大臣:デービッド ミリバンド氏が発言している。また、農薬によるリスクの観点からは、一般的な農薬は分解性が高いこと、先進諸国ではADIを超える農薬残留は認められないことから、有機農産物の農薬リスクは、通常の農産物と変わらないことが科学的に説明できる。また、農薬の不使用により、カビ毒汚染が検出された例があり、むしろ防げる危険を見逃す可能性もある。
このように、様々な切り口について、ひとつひとつ科学的な根拠を示すことで、他者との議論がスムーズになるという手法をおさえる。なお、講義担当教員は、特段の理由はなく特定の野菜のみ有機農産物を購入するが、これは個人の好みであり、第6回の講義で学んだ「価値観」である。個人の好みを議論に持ち込むことはできないこともおさえる。

③ 地産地消について、環境に優しいというイメージが強くあると思われる。この議論に際に「フード・マイレージ」の算出が用いられることがある。フード・マイレージとは、食品の輸入量と、その輸出国からの距離を掛け合わせて計算される。そのため、国外から輸入した場合は距離に依存して高い値が算出される。しかしながら、エネルギーの観点から貨物の移動に使用するトラックと外航貨物船を比較した場合、国外からの輸入に使用する外航貨物船の方が消費エネルギーは少ない。つまり、環境負荷の観点から地産地消を評価する際に、輸送形態や燃料効率を問わずに、距離の情報のみを用いて議論することは、問題の問いに対して困難だといえる。この場合、原料調達方法、栽培方法、輸送方法、販売場所といった情報を総合して評価するべきである。このように、一般的に使用されている評価方法について、評価すべき項目を適正に選出できているのかという点まで考える視点をおさえる。
キーワード ① 有機農業 ② 価値観 ③ 健康影響 ④ 地産地消 ⑤ フード・マイレージ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:第9回の予習課題では、「有機農業」について、各自が普段どのような印象をもち、どのように考えているかをノートにまとめることとした。本講義を受講した後に、どのように考えが変わったか、あるいは考えに理論的な解釈が付与できたかをノートにまとめる。また、考え方の切り口について学んだが、これは有機農業についてのみいえることではなく、日常生活や他の講義においても応用できる。よって、講義ノートを読み返し、普段の生活に活用する。
予習:次週は農薬のリスクについて学ぶ。インターネットを用いて、「ネオニコチノイド系農薬」を検索し、社会的な背景をノートにまとめる。それをもとに、各自がネオニコチノイド系農薬に抱いた印象もノートにまとめること。

11 環境リスク~農薬のリスク 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回は第二部として、より実践的なリスク管理のうち、環境問題に係るリスクの一例として、農薬を取り扱う。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1-4。
(2) コマ用オリジナル資料P. 5-9。
(3) コマ用オリジナル資料P. 10-20。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 加茂将史(2017)生態学と化学物質とリスク評価,共立出版,P. 1-18.
(2) 谷地ら(2017)全国350の流量観測地点を対象とした水田使用農薬の河川水中予測濃度の地域特異性の解析,日本農薬学会誌42,1-9.
(3) 国立研究開発法人農業環境技術研究所化学物質環境動態・影響評価リサーチプロジェクト(2016)【技術資料】農薬の生態リスク評価のための種の感受性分布解析,P. 8-17.
(4) SANCO (2012) Guidance document on the authorisation of plant protection products for seed treatment. P. 15-24.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「生態学と化学物質」、2「日本農薬学会誌42」

主題細目② 
参考3「種の感受性分布解析」

主題細目③ 
参考4「SANCO/10553」 
コマ主題細目 ① リスク評価についてまわる不確実性 ② 従来のリスク計算法 ③ 減らすべきは農薬かリスクか
細目レベル ① 第7回において学んだ通り、リスク評価は仮定の下に行なわれる。リスク評価は、ある意味で未来予想をしているということができ、その結果には不確実性が存在することを学ぶ。例えば、農薬の生態リスク評価は、農薬による生物への毒性影響値と、農薬の環境中予測濃度の比較によって評価される。この際に、環境中予測濃度は「水産動植物の被害防止に係る農薬登録基準」における計算方法を用いて算定される。
ここで、算定に用いるシナリオは、全国平均的な値を用いて考えられたモデル流域である。このモデル流域を用いた場合、得られる値はあくまでモデル流域としての値であり、地域ごとのパラメータのバラツキは考慮されていない。すなわち、地域ごとの空間分布という不確実性を含んだものである。ここでは、不確実性ということばと、その意味についてまでをおさえる。

② 現状のリスク計算法は、ある特定の生物種を用いて単位曝露レベルあたりの有害度を算出し(生物への毒性影響の値)、それを環境中の濃度と比較して問題があるかないかを判定する。しかし、この計算法では、特定の生物種に対してのみの影響を考慮することとなり、必ずしも生態系全体への影響をフォローできていることを示さない。また、生物への毒性影響の値を、環境中予測濃度が上回るか下回るかの議論(決定論)であり、どの程度のリスクがあるのかという問いに対応できることはできない。
その解決方法として、種の感受性分布(SSD)という考え方がある。この方法では、複数種の生物に対する個々の毒性影響の値を用いて、その農薬から影響を受ける種の割合を算出し、分布型で示すことによってその対象農薬の濃度の場合に、どの程度(パーセントなど)の生物が影響を受けるのかという議論が可能になる。このような方法を確率論的手法と呼ぶ。ここでは、現状の計算方法における問題点までをおさえる。

③ 第10回の予習課題として、インターネットを用いて、「ネオニコチノイド系農薬」を検索し、社会的な背景をノートにまとめる。それをもとに、各自がネオニコチノイド系農薬に抱いた印象もノートにまとめることとした。ここでは、Guidance document on the authorisation of plant protection products for seed treatment, SANCO/10553/2012というハチへのリスク評価方法のガイドラインに基づき、ハチへの農薬曝露量の算出を行う。その後に、算定根拠となっている論文をもとに、用いられているパラメータを精査する。これにより、評価に用いられている値のどこに問題があるかを確認する。これらの作業の後に、現行の国内における「環境保全型農業」を紹介する。現状では、農薬の使用回数を減らすことによって、環境保全型農業直接支払い交付金が給付されるが、これで農薬リスクは減るのかについて考える。
キーワード ① 環境中予測濃度 ② 登録基準値 ③ シナリオ ④ ガイドライン ⑤ リスク評価
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:本講義の③において、Guidance document on the authorisation of plant protection products for seed treatment, SANCO/10553/2012というハチへのリスク評価方法のガイドラインに基づき、ハチへの農薬曝露量の算出を行った。これについて、異なる農薬の場合の算出を課題とする。配布された課題プリントには、対象農薬について計算する際に必要な情報が記載されている。講義内で学んだ通りに算出を行い、算出された値をEFSA Journal 2013に記載された値と比較し、どのような結果になったかをノートにまとめること。
予習:次週は、重金属のリスクを学ぶ。国内における過去に発生した重金属汚染による公害問題について、インターネットを用いて検索し、その公害の名称、発生した地域、関係した物質、被害の状況、国の対応、現在の状況などをノートにまとめること。

12 環境リスク~重金属のリスク 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回は第二部として、より実践的なリスク管理のうち、環境問題に係るリスクの一例として、重金属を取り扱う。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1-8。
(2) コマ用オリジナル資料P. 9-12。
(3) コマ用オリジナル資料P. 13-20。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 大木道則ら編(1989)化学大辞典,東京化学同人.「重金属」と言う言葉を検索.
(2) 村上道夫ら(2014)基準値のからくり 安全はこうして数字になった,講談社,P. 130-218.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「化学大辞典」

主題細目② 
参考2「基準値のからくり」

主題細目③ 
参考2「基準値のからくり」
コマ主題細目 ① どこでも存在する重金属 ② 公害問題や基準値について ③ 汚染地にも生態系が成立している
細目レベル ① 「重金属」を考える際に、まず辞書を用いて「重金属」という言葉を調べ、定義する必要がある。化学大辞典では、「密度の大きい金属をいう。一般に密度4~5g/cm^3以上を重金属という。」と記載されている。次に、周期表を確認し、どのような物質が該当するのかを確認する。これらの情報から、有害物質としてよく知られている重金属類はどこにでも存在していることがわかる。また、重金属のなかには、銅、亜鉛、マンガン、クロム、コバルトといった必須金属も存在する。これらは生物体内において低濃度のときは欠乏状態となり、高濃度のときは毒性をしめす。また、生物に影響を及ぼすのは全量ではなくその一部であり、生物が利用できる形態のみである。この全量のうち、どの程度を生物が利用できるかをバイオアベイラビリティ(bioavailability)という。この考え方までをおさえる。
② カドミウム汚染による公害病について、日本国内ではイタイイタイ病がある。カドミウムは、急性毒性として消化器への障害、呼吸器への疾病などがある。慢性毒性として、腎臓障害、生殖障害、内分泌かく乱作用、高血圧や動脈硬化等の循環器障害、骨への影響、発がん性がある。1968年に厚生省により、イタイイタイ病の本態はカドミウムの慢性中毒による骨軟化症であり、カドミウムは神通川上流の神岡鉱業所の事業活動によって排出されたものであると断定された。水銀汚染による公害病について、水俣病がある。食物連鎖によるメチル水銀の生物濃縮・蓄積がおこり、これを摂取した住民にメチル水銀中毒症が起こった。1968年に厚生省により、メチル水銀化合物によるものと断定された。歴史をおさえたうえで、現在の重金属に対する環境基準値とその成り立ちをおさえる。
③ ②において環境基準値を学んだ。しかし、この環境基準値を超過したことで汚染地と定められた土壌であっても、その地には生態系が成立していることが多い。一方で、汚染地は浄化しなければヒトにとっては農業や宅地といった利用価値が発生しないため、浄化をすることになり、そこに存在する生態系は破壊することになる。すなわち、非汚染地における生態系との違いから、汚染地の生態系を破壊してでも浄化すべきであると判断できるかどうかが評価のポイントとなる。
リスク評価を実施するにあたっては、従来の評価法のような画一的な選択の余地のない策の提示ではなく、定量的なリスク評価に基づいた複数の解決策とそれに伴う効果を提示した上で、社会に選択を図るという方法が適切であるとされている。この考え方について学ぶ。

キーワード ① 公害病 ② 基準値 ③ 重金属 ④ 汚染地 ⑤ 解決策の選択
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:本講義の③において、カドミウム汚染された土壌の、浄化、その必要性、汚染地における生態系について学んだ。ここではリスクとベネフィットの視点から、浄化をすべきかについて考えてもらいたい。第7回の講義では、科学によるプロセスの解明と、金銭の介在を含めた総合的な解釈を学んだ。本講義でも同様に、危険度の大きさと、見返りのよる利益の大きさを明らかにし、どちらを選ぶべきかを関係者が議論することで解決案を探すことになる。この考えをもとに、浄化するか否かについて、必要だと考えられる情報をノートにまとめる。
予習:次週は、グループディスカッションを実施する。各自は、興味のあるリスクについて、問題提起、リスクとベネフィット、解決案などをノートにまとめること。

13 グループディスカッション 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回は、第三部として、第二部までに学んだことを定着させるため、グループディスカッションを行う。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材1「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 各自のノート.
(2) 第1回から第12回までのコマ用オリジナル配布資料.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「各自のノート」、2「第1回から第12回までのコマ用オリジナル配布資料」

主題細目② 
参考1「各自のノート」、2「第1回から第12回までのコマ用オリジナル配布資料」

主題細目③ 
参考1「各自のノート」、2「第1回から第12回までのコマ用オリジナル配布資料」
コマ主題細目 ① 身のまわりの危険要因 ② 日本の農薬管理施策はどうしていくべきか ③ 重金属は一掃すべきか
細目レベル ① 第9と10回において、我々の身のまわりには多くの危険要因が存在していることを確認した。その危険要因のうち、どのようなものに対してリスクを受容し、どのようなものに対してリスクを大きく認識して生活から遠ざけているのかについて、理解や考えを確認する。重要となる考え方は、「リスク管理」の考え方であり、「基準値を超えた・基準値を超えない」に重きを置きすぎず、これまでの講義で学んできた科学によるプロセスの解明と、金銭の介在を含めた総合的な解釈といえる。つまり、危険度の大きさと、見返りのよる利益の大きさを明らかにし、どちらを選ぶべきかを関係者が議論することで解決案を探すことになる。これまでの学びから得た知識をもとにした活用方法をおさえる。
② 第11回において、日本における農薬の使用量について言及した。日本における農薬管理や、危険性やその評価の考え方や目指していくべき農薬に対する管理施策について、理解や考えを確認する。重要となる考え方は、「リスク管理」の考え方であり、「基準値を超えた・基準値を超えない」に重きを置きすぎず、これまでの講義で学んできた科学によるプロセスの解明と、金銭の介在を含めた総合的な解釈といえる。つまり、危険度の大きさと、見返りのよる利益の大きさを明らかにし、どちらを選ぶべきかを関係者が議論することで解決案を探すことになる。これまでの学びから得た知識をもとにした活用方法をおさえる。また、個人の価値観や一般論に囚われず、科学的根拠をもとに、どこに不確実性が存在しているかを明らかにしていく作業が必要であることをおさえる。
③ 第12回において、重金属はどこにでも存在することや、汚染地と認められる土地にも生態系が成立していること等を学んだ。もし、近所で重金属汚染が発覚した場合、どのような検討が必要か。その検討すべき内容について、理解や考えを確認する。重要となる考え方は、「リスク管理」の考え方であり、「基準値を超えた・基準値を超えない」に重きを置きすぎず、これまでの講義で学んできた科学によるプロセスの解明と、金銭の介在を含めた総合的な解釈といえる。つまり、危険度の大きさと、見返りのよる利益の大きさを明らかにし、どちらを選ぶべきかを関係者が議論することで解決案を探すことになる。これまでの学びから得た知識をもとにした活用方法をおさえる。
キーワード ① 危険要因 ② 危険度 ③ 利益 ④ 農薬 ⑤ 重金属
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:グループ内で、資料作成者、発表担当者を決定すること。資料作成者、発表担当者は、次週の発表に向けて資料作成および発表練習を行うこと。この準備において、講義担当教員への質問・相談は歓迎する。時間をみつけて研究室まできてくれたら大変うれしい。その際に、もしも可能であれば事前にメールで予約を入れていただけると対応はスムーズである。発表時間は10分程度とする。すなわち、スライドは10枚程度を目安に作成すると、聴衆にとっては聞きやすい発表になる。スライドは分かりやすく作成すること。
予習:復習と同様に、資料作成者、発表担当者は、次週の発表に向けて資料作成および発表練習を行うこと。この準備において、講義担当教員への質問・相談は歓迎する。時間をみつけて研究室まできてくれたら先生は大変うれしい。その際に、もしも可能であれば事前にメールで予約を入れていただけると対応はスムーズである。発表時間は10分とする。すなわち、スライドは10枚程度を目安に作成すると、聴衆にとっては聞きやすい発表になる。スライドは分かりやすく作成すること。

14 グループ発表 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回は、第三部として、第13回で行ったグループディスカッションの結果をまとめ、全体にむけて発表する。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 AからG。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材1「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 各自のノート.
(2) 第1回から第12回までのコマ用オリジナル配布資料.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「各自のノート」、2「第1回から第12回までのコマ用オリジナル配布資料」

主題細目② 
参考1「各自のノート」、2「第1回から第12回までのコマ用オリジナル配布資料」

主題細目③ 
参考1「各自のノート」、2「第1回から第12回までのコマ用オリジナル配布資料」
コマ主題細目 ① 発表 ② 聞く姿勢 ③ 質問
細目レベル ① 規定時間内に、各グループはグループディスカッションの結果から、最も興味深かった内容について発表を行う。発表時間は10分とする。この際に、目安は9分40秒から10分の間に発表を完了するようにする。すなわち、スライドは10枚程度を目安に作成すると、聴衆にとっては聞きやすい発表になる。スライドは分かりやすく作成すること。発表は、誰もが緊張する。講義担当教員の経験からは、緊張すると早口になり、発表中の経過時間が分からなくなり、最悪の場合は発表内容すら忘れてしまう。そのため、事前に読み原稿を作成し、よく練習してから臨むこととする。また、発表中は、読み原稿を見ずに発表することが望ましい。読み原稿を読んで発表すると、聴衆の反応を得る機会を失うこととなる。また、発表スライドを読むだけにならないようにも注意する。発表スライドを読むだけの場合、聴衆にとっては紙媒体で配布されていることと同様となり、発表の意味がなくなる。よって、スライドには字が多くなりすぎないよう、箇条書きにするなど工夫をすること。
② 聴衆は、ただ発表を聞くのではなく、発表会に参加すること。つまり、発表に対して質問することを考え、ノートに要点を書きまとめながら聞くこと。この際に、批判と批評は異なることに注意する。批判的な姿勢で臨むと、良い点よりも悪い点のみを探してしまう傾向に陥りやすい。よって、中立な立場で冷静に批評することを推奨する。発表中は、他者と会話をせずに、静かに聞くこと。他者と会話をすると、会話をしている当人同士はその間の発表内容を聞き逃すことになる。また、周囲の聴衆も発表内容を聞き逃す原因となる。発表中は、極力席を立たないようにすること。トイレなどの生理現象を我慢する必要はないが、発表中に席を立つことは、発表者や聴衆にとって会の進行の妨げとなる。発表時間は10分程度であることから、発表が終わった後に静かに席を立つこと。
③ 聴衆は、発表内容に対して質問をすること。質問内容は簡潔かつ端的に伝えること。質問内容に関係のないことや、自身のエピソードを延々と話されると、質問の受け手および聴衆は、質問内容を理解できない恐れがある。また、最悪の場合では、質問者自身も質問内容がわからなくなることがある。複数の内容を質問する際には、予め「質問は2つあります」のように、数をはじめに伝えると、質問の受け手はスムーズに対応できる。質問の受け手は、質問内容がわからなかった場合は、「もう一度お願いします」のように聞くか、「つまり○○ということでしょうか」のように確認すること。質問内容がわかったフリをして対応しても、特に誰も得をしないことに注意する。同様に、質問者も質問内容に対する返答が理解できなかった場合は、「もう一度お願いします」のように聞くか、「つまり○○ということでしょうか」のように確認すること。返答の内容がわかったフリをして対応しても、特に誰も得をしないことに注意する。
キーワード ① 発表スライド ② 発表時間 ③ 質疑応答 ④ 批評 ⑤ 緊張
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:各グループの発表内容をノートにまとめること。他者の発表を聞くことで、自身にとって新しい発見があることはよくあることである。新しい知見を得て、それに興味を持ち調べることで、自身にとっての成長につながる。発表会場で質問をすることが望ましいが、質問しにくいこともある。その場合は、授業終了後に発表者に声をかけて、疑問などは解決するようにする。その際に、発表者にとっては定められた時間外での対応となるため、発表者の都合を最優先すること。
予習:次週はこれまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。講義資料やノートを見直すこと。

15 環境問題の複雑さと解決指向型リスク管理 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的で合理的な思考法を身に付けられるように段階を追って展開していく。具体的には、第1回の講義から第8回の講義にかけては、リスクという言葉と、その意味を学ぶことを主軸として展開される(第一部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、身の回りのリスクから環境問題に関するリスクについて、実例を挙げながら、問題点と対応策を学ぶことで、より実践的なリスク評価およびリスク管理を学ぶことを主軸に展開される(第二部)。第13回の講義から第14回の講義にかけては、参加学生が、問題提起、議論、発表を行うことで、これまでの講義で学んだ内容を自分のものに定着させることを主軸に展開される(第三部)。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開する。今回では、本講義のまとめを行うとともに、新しいリスク評価の考え方について紹介する。
【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料 P. 1-12。
(2) コマ用オリジナル資料P. 13-28。
(3) コマ用オリジナル資料P. 29-32。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1) 第1回から第8回の配布資料.
(2) 第9回から第12回の配布資料.
(3) 永井孝志(2013)リスク評価とリスク管理の位置付けを再構成する解決思考リスク評価,日本リスク研究学会誌23, 145-152.

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1「第1回から第8回の配布資料」

主題細目② 
参考2「第9回から第12回の配布資料」

主題細目③ 
参考3「日本リスク研究学会誌23」
コマ主題細目 ① 第一部のまとめとしてのリスクについて ② 第二部のまとめとしての実践的なリスク管理について ③ 問題志向リスク管理と解決指向リスク管理
細目レベル ① 第一部では、リスクの考え方や安全について学んだ。社会的な安全を求めるために定められた基準値の設定背景について、リスクの観点から改めて概観する。リスク評価は「〇〇という物質を毎日△△g摂取したら…」という仮定の下に行われ、その中で第2回の講義で学んだ基準値をもとにした判断がなされる。しかしながら、場合によっては世界的な基準値を日本の基準値が超えているような状況もある。このようなケースでは、これまでの講義で学んできた科学によるプロセスの解明と、金銭の介在を含めた総合的な解釈が必要になる。つまり、危険度の大きさと、見返りのよる利益の大きさを明らかにし、どちらを選ぶべきかを関係者が議論することで解決案を探すことになる。受け入れられないリスクをどの程度にするかを学び、具体的で定量的な議論が展開できるようにすることで、リスクリテラシーの素養を身に付ける。これらを復習し、確認する。
② 第二部では、身の回りのリスクから、環境問題としてのリスクまでを確認し、その対応や管理について学んだ。身の回りのリスクでは、例えば、たばこ、アルコール、交通事故などは、よく知られた死亡リスクの高い要因である。しかし、これら以外に、入浴はあまり認知されていないが死亡リスクの高い要因のひとつである。このように、身近に潜む死亡リスクの高い要因と同じ指標で、カドミウムやヒ素、メチル水銀や残留農薬といった、聞いたことはあるがあまり身近には感じられない・過去に勉強したことのある事例などがどの程度危険なのかを評価できれば、生活の中の危険要因と環境問題として認識している要因を比較することが可能である。様々な評価指標(エンドポイント)の中から、死亡リスクを例にリスクについて考え、その比較方法までをおさえた。環境問題のリスクとしては、食、農薬、重金属の話題に触れた。いずれも、数字をコミュニケーションツールとし、科学的な根拠をもとにリスク管理することをおさえた。これらを復習し、確認する。
③ 本講義の最後に、最近のリスク評価手法を紹介する。これまでに本講義で展開したリスク評価手法は「問題志向リスク評価」と呼ばれるものに類体する。これは、例えば、ある悪影響シグナルを受けた際に、そのリスクはどの程度であるかを評価し(ベネフィットの定量化)、そのシグナルに対するコスト・リスク・ベネフィット分析をもとに、科学的に最適化された方法を持って解決に挑むものである。しかし、この方法の場合、科学的に管理対策が決まるため関係者への選択の余地はない。その一方、「解決志向リスク評価」は、ある悪影響シグナルを受けた際に、どのようなプロセスなどが曝露に関係するのかを考えることでリスク管理オプションを複数設定し、それぞれの管理オプションを実行する際のコストを算定し、それぞれを実行したさいのリスクを評価・比較し、最終的にはその中から関係者間による合意形成によって最適な管理対策を決定するというものである。両者の違いのポイントとしては、最終的に選択の余地があるかないかになる。現状では科学的根拠に基づき最適化されたリスク管理が実行されているが、このような新しい手法も考えられていることをおさえる。
キーワード ① リスク ② 環境問題 ③ 数字 ④ 解決志向リスク評価 ⑤ 合意形成
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:これまで学んできた環境問題の捉え方やリスクの考え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観することで、講義のまとめとして展開した。講義資料やノートを見直すこと。次週の期末試験に備え、不明な点はノートにまとめ、解決するように復習すること。その際に、必要があれば講義担当教員に相談すること。相談の際には、もしも可能であれば事前にメールで予約を入れていただけると対応はスムーズである。また、新しいリスク評価手法として「解決志向リスク評価」にも触れた。身近な例で置き換えることで、よりリスク評価手法としてなじみやすいものとなる。授業中に挙げた例をもとに、ノートに考え方をまとめること。
予習:なし。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
環境問題の捉え方 環境という言葉の示す意味はというものはどのように捉えるべきものなのかを説明することができる。また、環境という言葉を踏まえて環境問題というものはどのように捉えるべきものなのかを説明することができる。注意として、ここでは言葉の意味自体を問うているのではない。例えば「環境」を辞書で調べると「人間または生物をとりまく、まわりの状況。そのものと何らかの関係を持ち、影響を与えるものとして見た外界。」と記載されているが、そのようなことではなく、捉え方の考え方を理解できているかを確認する。 環境,主体,総合的理解 70 1, 4, 5, 8
科学という方法 「科学」という言葉を辞書で調べると、「一定領域の対象を客観的な方法で系統的に研究する活動。」と記載されている。この言葉をもとに、本講義ではリスク評価における「科学」の必要性について展開してきた。環境問題に関わる人が、より確からしい情報を得て、より適切な行動をとるために、なぜ科学という方法が優れているのかについて説明することができる。また、そもそも科学とはどのようなものかについて説明することができる。 科学,リテラシー,情報 6, 8
身のまわりの危険要因 我々は、様々なものや事象の危険要因を受容して生活をしている。それらはどこかで環境問題に結びつくことが多い。そのような事例におけるもの、もしくは事象を示された際、どのような点において環境問題と結びつくのかについて説明をすることができる。また、直接的に環境問題に結びつかなくても、直接的に自身の身体に影響を及ぼす事例も多い。その際に、どのような点においてリスクが潜んでいるかを認識することが必要である。それらの危険要因についても、科学的根拠をもとにして説明することができる。 危険要因,受容,科学的根拠 1, 2, 7, 9, 10
環境リスクの観点 データ、もしくは情報が与えられた際に、環境リスクの観点から複数の考え方を提示することができる。この際に、個人の「価値観」を持ち込んでの議論を行うと、他者へ伝えることは困難となる。科学的な根拠をもとに議論する際には、コミュニケーションツールとして「数字」を用いる必要があることを本講義において学んだ。これらのポイントをおさえたうえで、問題提起、リスクとベネフィット、解決案を科学的根拠に基づいて説明することができる。 考え方,解決策,代替案 13, 14, 15
汚染物質の管理 リスク管理の観点から、農薬の利用において注意すべき点、重金属汚染土壌の活用を考えた際の注意すべき点について、それぞれ説明することができる。この際に、個人の「価値観」を持ち込んでの議論を行うと、他者へ伝えることは困難となる。科学的な根拠をもとに議論する際には、コミュニケーションツールとして「数字」を用いる必要があることを本講義において学んだ。これらのポイントをおさえたうえで、問題提起、リスクとベネフィット、解決案を科学的根拠に基づいて説明することができる。 農薬,重金属,管理 30 3, 11, 12, 13, 14
安全な食糧 安全な食糧を確保するために、考慮すべき事項や、文献を読んだ際に注意すべき点について説明することができる。この際に、個人の「価値観」を持ち込んでの議論を行うと、他者へ情報を適切に伝えることは困難となる。科学的な根拠をもとに議論する際には、コミュニケーションツールとして「数字」を用いる必要があることを本講義において学んだ。これらのポイントをおさえたうえで、科学的根拠に基づいて他者へ説明することができる。 安全,食糧,数字 2, 10
リスクの算定 特定の対象物や事象に対してデータを示された際、問題があるかないか、リスクの大小について算定ができる。この際に、個人の「価値観」を持ち込んでの考察を行うと、そのリスクの大小の根拠を他者へ伝えることは困難となる。科学的な根拠をもとに議論する際には、コミュニケーションツールとして「数字」を用いる必要があることを本講義において学んだ。これらのポイントをおさえたうえで、そのリスクの大小を算定したことを説明することができる。 リスク,データ,算定 11
評価方法 期末試験による(100%)。  *成績発表後、教務課にて試験・レポートに関する総評が閲覧できます。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 なし
参考文献 加茂将史 (2017)「生態学と化学物質とリスク評価」共立出版¥1,800(ISBN978-4-320-00917-2)。谷地ら(2017)全国350の流量観測地点を対象とした水田使用農薬の河川水中予測濃度の地域特異性の解析,日本農薬学会誌42,1-9。酒井聡樹 (2017)「これからレポート・卒論を書く若者のために」共立出版¥2,600(ISBN4-320-00571-6) 。命をつなぐPROJECT編 (2019) ecoReco aichi, フリーペーパー。西尾実ら (2011)「岩波国語辞典第七版新版」岩波書店¥3,300(ISBN978-4-00-080046-4)。日本農薬学会編 (2004)「農薬の環境科学最前線?環境への影響評価とリスクコミュニケーション?」ソフトサイエンス社¥3,800(ISBN4-88171-110-5)。永井と谷地(2013)情報基盤としての農薬インベントリーと その出口としての生態リスク評価, 環境毒性学会誌16, p. 43-48。環境省 (2019)「環境白書」。ゲルト・ギーゲレンツァー (2010)「リスク・リテラシーが身につく統計的思考法」¥860(ISBN978-4-15-050363-5)。中谷内一也 (2003)「環境リスク心理学」¥2,000(ISBN4-88848-751-0)。中野明正 (2012)「未来の循環型農業インテグレーテッド有機農業論」¥1,800(ISBN978-4-416-91236-2)。松永和紀 (2010)「食の安全と環境「気分のエコ」にはだまされない」¥1,600(ISBN978-4-535-04831-7)。国立研究開発法人農業環境技術研究所化学物質環境動態・影響評価リサーチプロジェクト (2016)「【技術資料】農薬の生態リスク評価のための種の感受性分布解析」。SANCO (2012) Guidance document on the authorisation of plant protection products for seed treatment。大木道則ら編「化学大辞典」¥42,000(ISBN4-8079-0323-3)。村上道夫ら (2014)「基準値のからくり 安全はこうして数字になった」講談社¥920(ISBN978-4-06-257868-4)。永井孝志(2013)リスク評価とリスク管理の位置付けを再構成する解決思考リスク評価,日本リスク研究学会誌23, 145-152。
実験・実習・教材費 なし