区分 (環)環境データサイエンス科目 社会環境科目 社会環境基本科目 (生)環境データサイエンス科目 (心・犯)学部共通科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
(心)専門的知識と実践的能力 (心)分析力と理解力 (心)地域貢献性
(環)専門性 (環)理解力 (環)実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
(心)課題分析力 (心)課題解決力 (心)課題対応力
(環)専門知識 (環)教養知識 (環)思考力 (環)実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
環境データサイエンス科目に位置づけ、経済学の基礎的な知識を身につける。
科目の目的
日常の仕事や生活で直面する現象や環境問題の背後に潜む原理(例えば、「ベストセラーの本が数年後に文庫化される」や「環境を汚すのはみんなにとって望ましくないと分かっているのに、みんな環境を汚してしまう」)を浮き彫りにし、その原理の有効利用について考える。また、こうした簡単な経済原理であらゆる現象を全て説明できるわけではないし、また説明すべきでない(むしろ、心理学の理論で説明した方がよいこともある)、ということも実感してもらう。
到達目標
各回の重要概念の意味について説明できる。それらの概念を用いて現実の経済現象などを説明できる。
科目の概要
現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。
科目のキーワード
サンクコスト、機会費用、比較優位、インセンティブ、モラルハザード、逆選択、価格差別、裁定、囚人のジレンマ、共有地の悲劇、割引現在価値、ネットワーク外部性
授業の展開方法
パワーポイント(スライド資料も紙で配付する)を用いながら講義を進める。上映するスライドはカラーであるが、配布する紙のスライド資料には色が付いておらず、またメモのスペースが取られているので、受講生は講義を聴きながら適宜鉛筆でメモを取ったりマーカーで印をつけたりする。毎回、理解度チェックのための演習問題を配布し、授業の中間や終わりに解き、その後解説をする。また、毎回、次回の予習のためのプリントを配布する。
オフィス・アワー
【火曜日】昼休み、【木曜日】3・4時限目、【金曜日】2時限目(後期のみ)、昼休み・3・4時限目
科目コード ENS601
学年・期 1年・前期
科目名 現代社会と経済
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 なし
展開科目 環境経済学入門
関連資格 なし
担当教員名 山根卓二
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 イントロダクション 科目の中での位置付け イントロダクション。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、講義全体の導入部分である。経済学に登場する需要曲線などのツールが、使い方を間違えなければ身近な事例をクリアに説明できるということを感じてもらう。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、49

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、119-122

細目レベル③
伊藤元重『ビジネス・エコノミクス』日本経済新聞社、2004年、17-23
コマ主題細目 ① 経済現象の例(1) ② 経済現象の例(2) ③ 吉野家の価格決定 ④ ⑤
細目レベル ① まずは講義の進行の仕方について説明する。身近な経済現象を経済学で読み解くことの意義を理解する。例えば、以下のような現象を経済学特有の原理を用いて説明する。環境を汚すのはみんなにとって望ましくないと分かっているのに、なぜみんな環境を汚してしまうのか?ベストセラーの本が数年後に文庫化されるのはなぜか?幕末に外国の商人が自由な経済取引を求めてやってきたのはなぜか、その動きに反発する人がいたのはなぜか?このように、お金に関わる人間行動はもちろん、そうでない行動も説明する。つまり、お金が関係するしないにかかわらず、人間は損得勘定で行動するという「仮定」の上で(仮定であるから、それが現実に成り立っていないこともありうる)、人間行動を説明していく。
② 環境汚染のメカニズムは、経済学特有の行動原理を適用すれば説明可能である(ただし、「仮定」に基づいているので、それが成立していなければ別の仮定をおいて説明しなければならない)。環境汚染のメカニズムは、いわゆる「共有地の悲劇」のモデルで説明可能である。このモデルにおいて、各人は合理的(利己的で計算高い)であり、戦略的(他人の行動を読んだ上で行動)であると仮定されている。大きな教室で授業中に騒々しくなるのもこのモデルで説明できる。ベストセラーの本が数年後に文庫化されるのは、「価格差別」というモデルで説明できる。価格差別とは、消費者ごとに別の価格設定をすることをいう。このモデルにおいても各個人は合理的であることが前提されている。
③ 吉野家の牛丼の価格設定がなぜ○円なのかについても経済モデルで説明可能である(実際に元社長が行っていた価格設定方法である)。このモデルでも、消費者も企業も合理的(利己的で計算高い)であると仮定されている。企業は自社の利益を最大化するように行動する。消費者は自分の満足を最大にするように行動する。消費者の牛丼の消費量(需要量)は牛丼一杯あたりの価格の変化に応じて変化する。価格と需要量の関係を示したグラフのことを需要曲線と呼ぶ。需要曲線を描くことができれば、何円のときに販売数量(需要量)が市場全体で何杯かを導くことが出来る。価格×販売数量=売上収入であるが、吉野家は売上収入を最大にするように価格設定を行ったのである。


キーワード ① 共有地の悲劇 ② 裁定 ③ 価格差別 ④ 価格 ⑤ 売上
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。身近な経済現象を経済学で読み解くことの意義を理解する。お金に関わる人間行動はもちろん、そうでない行動も説明する。つまり、お金が関係するしないにかかわらず、人間は損得勘定で行動するという「仮定」の上で(仮定であるから、それが現実に成り立っていないこともありうる)、人間行動を説明していく。環境汚染のメカニズムは、経済学特有の行動原理を適用すれば説明可能であることを理解する。ベストセラーの本が数年後に文庫化されるのは、「価格差別」というモデルで説明できることを理解する。予習課題:吉本佳生『出社が楽しい経済学』p11-22を読む。
2 サンクコスト 科目の中での位置付け 本当は重要ではないが、世間では重要だと思われているサンクコストについて学ぶ。イントロダクション。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」について学ぶ。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、11-12

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、13-17

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、18-21
コマ主題細目 ① サンクコスト(1) ② サンクコスト(2) ③ 固定費用・変動費用 ④ ⑤
細目レベル ① どうしても回収できない費用のことをサンクコストという。例えば、恋愛対象(男性あるいは女性)にプレゼントを贈るとする。プレゼントを買うにしても自分で作るにしても費用(コスト)がかかる。その一方で、プレゼントを恋愛対象に贈るとその人のハートを射止めることができる(かもしれない)。これは、プレゼントを贈ることから得られる収入と考えることができる(お金ではないものをお金で考えるのは倫理的におかしいかもしれないが、これも仮定である。あまりにも非現実的な仮定であれば、別の仮定を置いて説明すべきである)。プレゼントをあげるべきか否かを決める際、過去のことを気にせずに決めたほうが良い、というのが経済学的な考え方である。
② プレゼントをあげるべきか否かを決める際、どうしても過去のことが気になる人がいる。その人は過去に恋愛対象にプレゼントを何回か贈ったことがあるが、ハートを射止めることができなかったとしよう。過去のことを引きずっている人はプレゼントをあげてしまう。その人の心理は次のようである。もう一度あげても振られることは間違いないが、でも、過去にプレゼントあげているし、ここでやめるのはもったいない、と。過去のことを考えない人はもっと可能性高い人に恋愛対象を移す。過去にあげたプレゼントにかかった費用は回収できないからきっぱりと忘れよう、というのがその人の心理である。経済学的に言えば、サンクコストは忘れるべきである。
③ 企業はヒト・カネ・モノを用いてモノやサービスを生産する。その際、諸々の費用が発生する。企業に発生する費用は変動費用と固定費用に分類される時がある。生産量に関わらず一定である費用を固定費用、生産量に応じて変化する費用を変動費用という。例えば、テレビの生産を始めるとき、企業によって採算が取れると予想したからこそ、生産を始めるのであるが、もしも生産を初めてまもない段階で、ライバル企業がもっと良い製品を売り始めたら、売上の予想は下方修正され、採算は取れなくなるかもしれない。操業を停止したとき、固定費用には回収できない部分(サンクコスト)とできる部分とがあるが、サンクコストは無視して操業停止を考えるべきである。


キーワード ① サンクコスト ② 固定費用 ③ 変動費用 ④ 設備投資 ⑤ 売上
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認しておく。サンクコストの定義は何か。過去に払ったコストの中で、回収できるものは何だろうか。過去に払ったコストの中で、回収できないものは何だろうか。過去に払ったコストのうち、忘れてしまってもよいのは、回収できるコストの方か。それとも、回収できないコストの方か。企業に発生するコストのうち、変動費用とは何か。企業に発生するコストのうち、固定費用とは何か。企業に発生する費用のうち、サンクコストになりやすいのは変動費用か、それとも固定費用か。また、そう答えた理由は何であるか。予習課題:吉本佳生『出社が楽しい経済学』p23-34を読む。
3 機会費用 科目の中での位置付け 会計上の費用ではないけれども重要な費用概念である、「機会費用」について学ぶ。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、一般の人々や会計には馴染みの薄いが重要な費用概念である、「機会費用」について学ぶ。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、23-24

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、25-28

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、29-33
コマ主題細目 ① 機会費用(1) ② 機会費用(2) ③ 格安の理由 ④ ⑤
細目レベル ① 機会費用とは「その行動を選択したことであきらめることになった利益」である。例えば、仕事場に帰るためにバスを利用するのかタクシーを利用するのかについて考えるとする。通常はタクシー代の方が高い。会計的なコストを考慮するのなら、タクシーを選択せずにバスを選択するだろう。ところが、経済学的に考えるならそうはならないかもしれない。なぜなら、タクシーを利用すると1時間節約できるからである。バスを選択するとバス代は安いが、1時間何も仕事ができない。それに対して、タクシーに乗るとタクシー代は高いが、早く仕事に帰ることができ、浮いた時間で仕事をすることができる。1時間仕事をすれば新しい価値を生み出すことができる。
② タクシーを選択すれば1時間分多く働くことができ、価値を生み出すことができるが、バスを選択すればその価値を生み出すことができない。機会費用とは「採用しなかった選択肢を、もしも選択していたなら得られたはずの利益」である。機会費用は複数のことが「同時にできない」ときに発生する。逆を言えば、ヒマなときには機会費用は発生しない。ひまな状態から何かをすることを選んだとしてもそれによって失うものは何もないからである(ひまをこよなく愛する人にとって、何かをすることは機会費用を発生させるが)。機会費用は会計上の概念ではないため、企業は無視しがちである(例えば、森林は保水や二酸化炭素の吸収を行なうが、そこを切り開いて工場を建てるとそれらの機能は得られなくなる)。
③ 工場の設備が稼働していないとき、それを稼働させることであきらめることになった利益はゼロである。また、いままで稼働していなかった時間帯に工場の設備を稼働可動するかどうかを決めるときには、それを稼働させることで発生する限界費用のみを考慮すればよい。限界費用とは、何かを追加的に行うことで、追加的に発生する費用のことである。これまで夜に稼働していなかった工場を夜に稼働すると(追加的に生産を増やすと)追加的に発生する費用は原材料費や光熱費くらいのものである。夜の時間帯に追加的に生産されるPB(プライベートブランド)商品が通常の商品(中身はPBとほぼ同じ)より安いのは、稼働率の低いメーカーの工場に生産を委託しているからである。


キーワード ① 機会費用 ② 限界費用(追加的費用) ③ 価格 ④ 利益 ⑤ プライベートブランド
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。機会費用の定義は何か。機会費用は会計学上の概念か。そうである/そうでないのはなぜか。機会費用はどんな場合に生じるか。機会費用はどんな場合に生じないか。機会費用の例を挙げなさい。居酒屋が格安ランチを始める理由は何か。居酒屋が昼営業を始めるのはなぜか。居酒屋が昼営業で出すランチが格安なのはなぜか。限界費用とは何か。PB(プライベートブランド)商品が通常の商品(PB商品と中身はほとんど同じ)よりも格安であるのはなぜか。PB商品はどんなところで作られているか。そこでは機会費用は発生しているか。予習課題:吉本佳生『出社が楽しい経済学』を読む。
4 比較優位 科目の中での位置付け 分業すると効率が高まることということを理解する(分業の利益があることを知る)。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、一般の人々や会計には馴染みの薄い「機会費用」の応用である「比較優位」について学ぶ。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、35-37

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、38-40

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、41-45
コマ主題細目 ① 絶対優位 ② 比較優位 ③ 国際貿易 ④ ⑤
細目レベル ① 現代は分業社会である。ペットボトルのお茶が私たちのもとに届くまでにも、いろいろな役割分担がある。では誰がどんな役割を担えば良いのだろうか。A君はB君より営業が得意で、B君はA君より資料作成が得意だとする。これを経済学の難しい言葉を用いて表現すると、「A君は営業に絶対優位を持ち、B君は資料作成に絶対優位を持つ」と表現できる。となると、A君が営業をやり、B君は資料作成をやったほうが良いだろう。しかし、例えば、A君はB君より営業・資料作成のどちらも得意な場合はどう考えたら良いのだろうか。A君は営業も資料作成もやって、B君は何もやらないのが最善の策なのだろうか。絶対優位で考えると行き詰まる問題も、比較優位という概念なら解決可能である。
② 「比較優位」という概念は前回学んだ「機会費用」の応用で理解できる。機会費用は複数のことを同時にできないことから生じた。今回の場合も、A君の体は一つしかなく、二つの仕事を同時にはできない。B君にも仕事をさせるべきなのである。では、A君とB君はそれぞれどちらの方がより活躍できるのだろうか。これを比較優位という概念を使って考えるのである。A君もB君も営業をやると資料作成ができず、資料作成をやると営業ができない。ここに機会費用が生じる。そこで営業をやることの機会費用と資料作成をやることの機会費用を両者で計算する。どちらの作業についても、機会費用が小さい人が比較優位を持つ。どちらの作業にも比較優位を持つということはあり得ない。
③ 国際貿易も比較優位論で語られることが多い。実際、貿易とは国際分業であるといえる。各国が比較優位を持つ産業に特化して国際分業すると、生産量が増加する。増えたものを貿易を通じて分け合えば、世界全体が豊かになるといわれる。以前、日本はコンピュータ製造に比較優位を持っていたが、現在ではアジア諸国がその製造に比較優位を持つ。このように、誰が何に比較優位を持つかは時間がたてば変化する。今はA君が営業に、B君が資料作成に比較優位を持つとしても、環境の変化や個々人の努力によって比較優位は変化するかもしれないのである(例えば、A君が病気やケガでパフォーマンス悪化する。B君が勉強してスキルを向上させる。などなど)。


キーワード ① 絶対優位 ② 比較優位 ③ 国際貿易 ④ 交換の利益 ⑤ 機会費用
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。絶対優位とは何か。それがあるとなぜ分業に利益が生まれるのか。絶対優位は必ず存在するか。存在しない場合の例を挙げなさい。比較優位とは何か。それがあるとなぜ分業に利益が生まれるのか。比較優位は必ず存在するか。比較優位は機会費用の応用であると言われるが、どういう意味でそう言われるのか。日本は昔/現在何に比較優位を持っていたか/いるか。将来は何に比較優位を持つことになるだろうか。現実の世界(例えば国際貿易の場面)は比較優位の原理に基づいて交易が行われているだろうか。予習課題:吉本佳生『出社が楽しい経済学』47-58を読む。
5 インセンティブ 科目の中での位置付け 望ましい結果を生み出すためには、倫理観だけでなく、インセンティブが必要であるということを学ぶ。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解する。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、47-49

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、50-52

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、53-57
コマ主題細目 ① インセンティブ ② インセンティブを用いた政策 ③ インセンティブの歪み ④ ⑤
細目レベル ① 人をやる気にさせる誘因のことを、「インセンティブ」と呼ぶ。インセンティブには、正のインセンティブと負のインセンティブとがある。正のインセンティブには補助金や名誉や家族の支え、肯定的な評価など、金銭的なものからそうでないものまでさまざまなものがある。負のインセンティブにも税金や罰や否定的な評価など、金銭的なものからそうでないものまでさまざまなものがある。経営学や経済学では、金銭的な(正・負の)インセンティブに注目する(例えば、価格、賃金、金利、税金、補助金など)。例えば、歩合家賃とは、店の売上の大きさによって変動する家賃のことであるが、こうした家賃のことを「インセンティブ契約」と呼ぶことがある。
② インセンティブは経済政策にも用いられている。例えば空き缶のポイ捨てをなくすためにはどうすれば良いかを考える。モラルに訴えることももちろん必要である。例えば、CMで「ポイ捨てはやめよう」と呼びかけるのがそうである。しかし、誰も見ていなかったら捨てる人は減らないだろう。そこで法律を作って、捨てた人に罰金を払わせる、という考え方がある。これは負のインセンティブである。しかし、効果は小さいであろう(なぜか?)。これとは別の方法に、デポジット制度がある。これは消費者が飲料を購入するときにあらかじめデポジット料を払わせておき、空き缶をお店に持ってきたらこれを変換するという制度である。これは、罰金よりも効果がある(なぜか?)。
③ 誤った方向のインセンティブを与える制度を導入すると社会的なムダが生じる可能性がある。例えば、家賃の値上げの規制を考える。これは低所得者層にとってはとても良い制度のように思える。なぜなら、彼らの家賃は上がることはないのだから。ところが、結果としては彼らにとって悪い結果が起こるかもしれないことが指摘されている。家賃を上げることができなければ、大家は改築しても改築にかかったコストを家賃収入で穴埋めできなくなる。となれば、最初から改築しない方がましだということになる。したがって、いつまでたっても改築は行われず、住環境は悪化する一方であり、結果として低所得者層の暮らしはむしろ悪化することになるのである。


キーワード ① インセンティブ ② インセンティブ契約 ③ 価格 ④ 歩合家賃 ⑤ デポジット制度
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認しておく。インセンティブとは何か。インセンティブには、正のインセンティブと負のインセンティブとがある。正のインセンティブには補助金以外にどんなものがあるか。負のインセンティブには、税金以外にどんなものがあるか。経営学や経済学では、金銭的な(正・負の)インセンティブに注目すること。歩合家賃とは何か。インセンティブはどんな経済政策に用いられているか。デポジット制度は何か。誤った方向のインセンティブを与える制度を導入すると、社会的なムダが生じる可能性があること、など。予習課題:吉本佳生『出社が楽しい経済学』p59-70を読む。
6 モラルハザード 科目の中での位置付け 情報に格差があるためにインセンティブが有効に働かないケースについて学ぶ。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、経済主体の行動原理である「インセンティブ」の応用である、「モラルハザード」について学ぶ。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、59-63

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、64-65

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、66-69
コマ主題細目 ① モラルハザード ② 銀行の放漫経営 ③ 保険契約で生じるモラルハザード ④ ⑤
細目レベル ① まず、モラルハザードの構図は以下のようである。依頼人たとえば代理人(バイト君)にビラ配りを依頼するとする。依頼人は代理人が仕事の現場で怠けずに仕事をしているかどうかを観察できない(そもそも自分で仕事をする暇がないのでバイトに依頼したのである)。ビラ配りのバイト君は観察されないのをいいことにビラ配りを怠ける(もちろん誠実な人は観察されていなくても怠けたりしないが、ここでもビラ配りのバイト君は合理的(利己的で計算高い)と仮定されていることに注意しなければならない)。モラルハザードとは、代理人が依頼人に観察されない状況で依頼人の利益に反する行動をとることをいう。ちまたでは、「道徳的危険」や「倫理の欠如」と訳され、代理人の人格を責める傾向があるが、この解釈はもともとの意味と異なっている。
② 銀行は、預金者から集めたお金を企業や家計に貸し出している(実をいうと、この説明には間違いがあるのだが、本講義では通説に従って話を進める)。銀行は、預金者に預金金利を支払い、貸出先から貸出金利を受け取っている。この二つの金利の差額で銀行は稼いでいる。預金者という依頼人は銀行という代理人にきちんとお金を運用するように依頼している形となる。ところが、代理人である銀行は、預金者が(企業への)貸出の現場を観察できないのをいいことに、返済不能リスクのある企業に貸出をしてしまうかもしれない。こうした放漫経営を防ぐための制度としてペイオフ制度がある。これは預金者の預金を最低でも1000万円しか保護しない制度である。
③ 保険契約とは保険会社と保険加入者との間で結ばれる契約のことである。多数の保険加入者たち保険料を少額ずつ納めておくと、病気や事故の際に多額の保険金が支給される。この関係において依頼人は保険会社であり、代理人は保険加入者である。保険加入者は、保険会社が加入者の普段の生活現場を観察できないのをいいことに、危険な運転や暴飲暴食をする可能性がある。加入者がことごとく不摂生や危険な行動をとると、結果として多くの加入者が事故に遭ったり病気になったりして膨大な保険金が支給されなければならなくなり、払っていた保険料ではまかないきれなくなる可能性がある。保険契約をめぐるモラルハザードには今述べた場合と依頼者・代理人が逆転するパターンもある。


キーワード ① モラルハザード ② 依頼人・代理人 ③ 情報の非対称性 ④ ペイオフ制度 ⑤ 報奨金
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。モラルハザードとは何か。モラルハザードの構図について説明できるか。ちまたでは、「道徳的危険」や「倫理の欠如」と訳されるが、それはなぜ間違っているのか。銀行の放漫経営をモラルハザードでどのように説明できるか。銀行の放漫経営を防止する制度として「ペイオフ」制度があるが、なぜこれが防止策となるのか。保険契約で生じるモラルハザードの構図について説明できるか。依頼人が保険会社で代理人が加入者のパターンと、依頼人が加入者で代理人が保険会社のパターンとでそれぞれ説明する。予習課題:吉本佳生『出社が楽しい経済学』p71-82を読む。
7 逆選択 科目の中での位置付け 情報に格差があるためにインセンティブが有効に働かないケースについて学ぶ。今回はそのうちの「逆選択」について学ぶ。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、経済主体の行動原理である「インセンティブ」の応用である、「逆選択」について学ぶ。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、71-73

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、74-75

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、76-80
コマ主題細目 ① 逆選択 ② 金融における例 ③ シグナリングとスクリーニング ④ ⑤
細目レベル ① 逆選択の「選択」とは淘汰を意味する。ふるいにかけられて選ばれることをイメージすると良い。逆選択の「逆」とは「良いものが生き残る」という普通のイメージとは逆という意味である。つまり、悪いものが生き残ることを意味する。ネットショッピングでは、消費者は商品の現物を見ることができないので、本物と偽物の見分けができない。それに対して、売り手側は自分が本物を出品しているのか偽物を出品しているのかもちろん知っている。消費者が本物・偽物を見分けられないことから、商品の価格は本物と偽物の間の価格に落ち着く。すると、本物を売っていた人はもうからないと考えて退場するし、偽物を売っている人はもうかるので参入する。最後には偽物だらけになる。
② 銀行は借り手の情報を正確には知らないのに対し、借り手は自分の返済能力の高低を知っている。銀行は借り手の返済能力を見分けられないので、金利は平均的なものを提示せざるを得ない。返済能力が高い人にとってその金利は割高であるし、返済能力が低い人にとってはその金利は割安である。こうして返済能力の低い人だけが集まってくる。保険会社は加入者の情報を正確には知らないのに対し、加入者は自分の性格の良し悪しを知っている。保険会社は加入者の性格を見分けられないので、保険料は平均的なものを提示せざるを得ない。注意深い人にとってその保険料は割高であるし、不注意な人にとってはその保険料は割安である。こうして不注意な人だけが集まってくる。
③ 逆選択を防ぐ方法としてシグナリングとスクリーニングがある。シグナリングは、偽物と間違えられたくない本物の人が行う方法である。つまりシグナリングとは、自分の品質を証明する信号(シグナル)を発信することをいう。シグナリングの例としては、学歴や資格などがある。就職活動の際、面接だけでは学生の人格や能力を見抜くことができないので、そういった信号を送るのである。本物と偽物を見分けられない(情報を持たない)人が行う方法がスクリーニングである。スクリーニングとは、取引相手のタイプを判定するしくみを作ることをいう。つまり、情報で不利な立場に立つ者が、相手が持つ本当の品質・能力を引き出そうと努力することで逆選択を防ぐことをスクリーニングという。


キーワード ① 逆選択 ② シグナリング ③ スクリーニング ④ 資格 ⑤ 修理保証
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。逆選択の「選択」とは何を意味するか。逆選択の「逆」とは何を意味するか。逆選択の構図について説明できるか。モラルハザードと逆選択はともに情報の非対称性が原因で生じるが、両者はどのように異なるか。銀行と借り手の構図で起こる逆選択のケースの結末は何か。保険会社と保険加入者の構図で起こる逆選択のケースの結末は何か。逆選択を防ぐ方法としてシグナリングとスクリーニングがある。シグナリングは誰が何の目的で行うか。スクリーニングは誰が何の目的で行うか。予習課題:次回は復習であるが、復習問題に備えて、前半の配布資料をもう一度確認しておく。
8 前半の復習 科目の中での位置付け 前半部分の復習(サンクコスト、機会費用、比較優位、インセンティブ、モラルハザード、逆選択、に関する復習)。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、第2回から第7回までの復習である(復習問題を解く)。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、11-33

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、35-57

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、59-80
コマ主題細目 ① 復習(第2・3回) ② 復習(第4・5回) ③ 復習(第6・7回) ④ ⑤
細目レベル ① 復習問題を解いて、以下のことを確認する。サンクコストとは何か。過去に払ったコストのうち、忘れてしまってよいのは、回収できるコストの方か。それとも、回収できないコストの方か。企業に発生するコストのうち、変動費用とは何か。固定費用とは何か。企業に発生する費用のうち、サンクコストになりやすいのは変動費用か固定費用か。機会費用の定義は何か。機会費用はどんな場合に生じるか。居酒屋が格安ランチを始める理由は何か。居酒屋が昼営業を始めるのはなぜか。居酒屋が昼営業で出すランチが格安なのはなぜか。限界費用とは何か。PB(プライベートブランド)商品が通常の商品(PB商品と中身はほとんど同じ)よりも格安であるのはなぜか。
② 復習問題を解いて、以下のことを確認する。絶対優位とは何か。比較優位とは何か。それがあるとなぜ分業に利益が生まれるのか。比較優位は必ず存在するか。比較優位は機会費用の応用であると言われるが、どういう意味でそう言われるのか。インセンティブとは何か。正のインセンティブには補助金以外にどんなものがあるか。負のインセンティブには、税金以外にどんなものがあるか。経営学や経済学では、金銭的な(正・負の)インセンティブに注目する。歩合家賃とは何か。インセンティブはどんな経済政策用いられているか。デポジット制度は何か。誤った方向のインセンティブを与える制度を導入すると、社会的なムダが生じる可能性があるか、など。
③ 復習問題を解いて、以下のことを確認する。モラルハザードとは何か。モラルハザードの構図について説明できるか。銀行の放漫経営をモラルハザードでどのように説明できるか。銀行の放漫経営を防止する制度として「ペイオフ」制度があるが、なぜこれが防止策となるのか。保険契約で生じるモラルハザードの構図について説明できるか(依頼人が保険会社で代理人が加入者のパターンと、その逆)。逆選択とは何か。モラルハザードと逆選択はともに情報の非対称性が原因で生じるが、両者はどのように異なるか。銀行と借り手の構図で起こる逆選択のケースの結末は何か。保険会社と保険加入者の構図で起こる逆選択のケースの結末は何か。シグナリングは誰が何の目的で行うか。スクリーニングは誰が何の目的で行うか。


キーワード ① サンクコスト ② 機会費用 ③ 比較優位 ④ インセンティブ ⑤ モラルハザード・逆選択
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。サンクコストとは何か。企業に発生するコストのうち、変動費用とは何か。固定費用とは何か。企業に発生する費用のうち、サンクコストになりやすいのは変動費用か固定費用か。機会費用の定義は何か。機会費用はどんな場合に生じるか。限界費用とは何か。比較優位とは何か。比較優位は機会費用の応用であると言われるが、どういう意味でそう言われるのか。インセンティブとは何か。インセンティブはどんな経済政策用いられているか。デポジット制度は何か。モラルハザードとは何か。銀行の放漫経営をモラルハザードでどのように説明できるか。銀行の放漫経営を防止する制度として「ペイオフ」制度があるが、なぜこれが防止策となるのか。保険契約で生じるモラルハザードの構図について説明できるか。逆選択とは何か。シグナリングは誰が何の目的で行うか。スクリーニングは誰が何の目的で行うか。予習課題:吉本佳生『出社が楽しい経済学』p83-94を読む。
9 価格差別 科目の中での位置付け 現実に行われている企業の価格戦略の一つである、「価格差別」について学ぶ。今回はインセンティブの応用編でもある。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、経済主体の行動原理である「インセンティブ」の応用である、「価格差別」について学ぶ。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、83-86

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、87-89

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、90-93
コマ主題細目 ① 時間差・地域差を利用した価格差別 ② 価格弾力性を利用した価格差別 ③ 製品差別化の価格差別 ④ ⑤
細目レベル ① 高く買ってくれる人には高く売り、安くないと買わない人には安く売ることを価格差別という。AさんとBさんに同じ○円で売るより、Aさんには○円でうち、Bさんには○円で売るほうが、合計の売上は大きくなる。AさんとBさんに別の価格で売ったことがバレれば気まずいが、企業にとってこうした戦略は一般的である。問題はどうしたらクレームを受けずに価格を差別できるかである。地域別の価格差別では、所得の高い都会の人々へは○い価格で売り、所得の低い地方の人々へは○い価格で売るのが普通である。時間差を利用した価格差別では、最初は○い価格で売り、その価格で買ってくれる人がいなくなれば、それより○い価格で売れば、一律の価格で売るより売上が大きくなる。
② 価格の需要弾力性を利用した価格差別について理解する。需要の価格弾力性とは、価格の微小な変化への需要の反応度合いを表すものである。需要の価格弾力性が大きいとは、価格の微小な変化に需要が大きく反応することをいい、需要の価格弾力性が小さいとは、価格の微小な変化に需要があまり反応しないことをいう。値上げに敏感に反応して買わなくなる人には○く売り、値上げしても買ってくれる人には○く売ると、一律の価格を設定する場合よりも売上を大きくできる。価格の需要弾力性をたくみに利用した価格差別は、クーポン券やポイントカードなどを用いて行われている。需要の価格弾力性が大きい人はクーポン券やポイントカードを利用するが、そうでない人は利用しない。
③ 機能を微妙に変えて価格を差別したり、店舗を変えたりして価格差別をする戦略がある。例えば、500円の高級化粧品と10,000円の高級化粧品は中身はほとんど同じだが、見た目を少しだけ変えている場合が多い。中身がほとんど変わらないので、両者の費用はほとんど変わらないのに対して、価格が大幅に変わるので、両者の利益は大きく違ってくるのである。高級品を買う人々は、敢えて言うなら、「高級感」を買っているのである。高級感を買う人々は支払い意思額が大きいのに対して、そうでない人は支払い意思額が小さい。支払い意思額が大きい人には高級化粧品を買ってもらい、高いと買ってくれない人には安い化粧品を買ってもらうことで、価格差別をしないときよりは売上を伸ばすことができるのである。


キーワード ① 価格差別 ② 需要の価格弾力性 ③ 転売 ④ 支払意思額 ⑤ スクリーニング
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。高く買ってくれる人には高く売り、安くないと買わない人には安く売ることを価格差別という。価格差別はなぜ行われるのか。地域別の価格差別では、誰に対してどんな価格を付けるか。時間差を利用した価格差別はどのようにして行うか。価格の需要弾力性とは何か。価格の需要弾力性を利用した価格差別とはどのようにして行うか。機能を微妙に変えて価格を差別したり、店舗を変えたりして価格差別をする戦略がある。具体的にはどのように行うか。倫理的に問題があるように思えるが、良いことをしていると主張する人もいる。なぜか。予習課題:吉本佳生『出社が楽しい経済学』p95-106を読む。
10 裁定 科目の中での位置付け 裁定が現実の経済で果たす役割について学ぶ。裁定も以前学んだインセンティブの応用とみなすことができる。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、経済主体の行動原理である「インセンティブ」の応用である、「裁定」について学ぶ。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、95-97

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、98-99

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、99-105
コマ主題細目 ① 裁定 ② 一物一価の法則 ③ 取引コスト ④ ⑤
細目レベル ① 同じ時点において、異なる場所であるモノの価格に差があれば、安い方の場所で買って、高い方の場所で売ると差額が儲かると期待できる。この行為を裁定という。例えば、BさんがAさんから100円で買い取ったDVDをCさんに2000円で売ることができる。この行為を見て、倫理的観点から「ひどい」という見方もできるが、いちおう、どの人も得をしているため、経済的観点から見ると問題ないと見ることもできる(ただし、この三者以外に影響が及ばないと仮定するならばの話である)。Aさんは、DVDにもう価値を見いだせなかったので、100円で売った。Cさんは2000円出してでも買おうと思うくらい、そのDVDのことを評価していた。Bさんは1900円もう買ったのである。
② 裁定が完全に働くところでは、同じ財の価格は同一になる傾向がある。例えば、YさんがA市場で1匹500円で魚を買い取って、B市場で1匹1000円で同じ魚を売れば、1匹あたり500円もうかる。ところが、そのような、もうけばなしを、他の人達が指をくわえて静観しているわけがない(もちろん、他の人達が経済的に合理的であるならば、の話であるが)。その他大勢の人もこの裁定取引に参入してくるはずである。そうすると、需要と供給の関係から魚の価格は変動することになるだろう。このケースでは、その後、A市場では魚の需要が○るので、価格は○くなる。B市場では魚の供給が○るので、価格は○くなる。これが繰り返されると、両市場の価格は近づいていく。
③ 運送費などの取引コストが存在する場合には裁定が完全に働かず一物一価の法則は成立しない(場所が離れていれば輸送費がかかるのは当然なので、現実には一物一価にはならないだろう。しかし、一物一価の法則を全否定することも間違いであると思われる。まずは、理想状態を想定して、その状態から現実に近づけていくことが必要である)。先の例において、A市場では魚の需要が○るので、価格は○くなる。B市場では魚の供給が○るので、価格は○くなる。これが繰り返されると、両市場の価格は近づいていく。ところが、運送費がかかっているので、両市場の価格差が運送費より縮まることはない。裁定取引以外の場面でも取引コストは重要である。家電店やラーメン店が一箇所に集まってくる理由について考える。


キーワード ① 裁定 ② 一物一価の法則 ③ 取引コスト ④ 投機 ⑤ 需要・供給
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。同じ時点で価格差があれば、安いところで買って高いところで売る。この行為を裁定という。この取引に倫理的問題があるという人もあるが、問題ないという人もいる。なぜか。問題ないという人も、ある前提に基づいてそう言っている。その前提とは何か。一物一価の法則とは何か。一物一価が成立する条件は何か。取引費用とはどんな費用か。家電の店やラーメンの店が同じ街に集まる現象を取引費用を用いてどのように説明できるか。投機とは何か。裁定と投機はどう違うか。裁定と投機の例をそれぞれ挙げなさい。予習課題:吉本佳生『出社が楽しい経済学』p107-118を読む。
11 囚人のジレンマ 科目の中での位置付け 「個人的な最適行動」と「社会的な最適行動」とが一致しない原因について理解する。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、経済主体の行動原理である「インセンティブ」の応用である、「ゲーム理論」について学ぶ。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、107-111

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、107-111

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、111-117
コマ主題細目 ① ゲーム理論 ② 囚人のジレンマ ③ 繰り返しゲーム ④ ⑤
細目レベル ① まずは、ゲーム理論の基本的構造について理解する(詳しくは、2年次配当の科目「ゲーム理論」で学ぶが、今回取り上げるのは、いわゆる「同時ゲーム」であって「交互ゲーム」ではない)。ゲームには3つの構成要素(プレイヤー・戦略・利得)がある。各プレイヤーが戦略を選ぶと利得が決まる様子を描いたものを利得行列と呼ぶ。プレイヤーは、相手がとりあえず特定の戦略を選ぶと仮定して、その場合自分の利得が最大になる戦略を選ぶ。「相手がこれならば、自分はこれを選び、相手がこれならば、自分はこれを選び・・・」を繰り返す。どのプレイヤーも同じことする。その結果、各プレイヤーにとっての最適な戦略というものが見えてくるのである。
② 同時ゲームの一種である「囚人のジレンマ」について理解する。このゲームでは個人合理性と社会合理性の間に開きが出てくるため、このゲームは社会問題を考える際に参考になるゲームである。プレイヤーは二人の囚人である。二人は共同して罪を犯したが、捕まって別々の取調室にいる。二人とも取調官から同様の条件を提示されている。「黙秘」するか「自白」するかである。相手が同じ条件を提示されていることはお互いに知っている。どんな結果がナッシュ均衡として成立するだろうか(「両者とも黙秘」?「両者とも自白」?「どちらかが黙秘で、どちらかが自白」?)。○をつける作業を行い、その結果左右両方とも〇がついている戦略の組合せがゲームの解である。
③ 囚人のジレンマゲームには解が一つしかないが(自白、自白)、社会合理性(パレート最適)の基準から見ると望ましい均衡とはいえない。このジレンマから抜け出る方法はあるだろうか?これまでは、「1回限りのゲーム」を見てきた。このようなゲームでは、裏切っても報復されるわけではないので、裏切った者勝ちである。そして、結局は誰もが裏切る。ところが、同じゲームを何度も繰り返す「繰り返しゲーム」では報復の可能性がある。なので、報復合戦でお互いに傷つくよりは、今協調する方がトクかもしれない、とプレイヤーたちは考えるかもしれない(ただし、いつもこうなるとは限らない。繰り返しゲームには、それこそ無限の数の均衡が存在する)


キーワード ① プレイヤー・戦略・利得 ② 囚人のジレンマ ③ 繰り返しゲーム ④ しっぺ返し戦略 ⑤ 暗黙の共謀
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。ゲーム理論の基本的構造について理解する。プレイヤーとは何か。戦略とは何か利得とは何か。利得行列の読み方を理解しているか。各プレイヤーにとっての最適な戦略を見つけることができるか(相手が○を選べば自分は◇、相手が□を選べば自分は△・・・など)。「囚人のジレンマ」とはどんなゲームかを理解している。このゲームをどんな社会現象に当てはめることができるか理解している。同じゲームを何度も繰り返す「繰り返しゲーム」では報復の可能性がある、ということをきちんと理解しているか。予習課題:吉本佳生『出社が楽しい経済学』p119-130を読む。
12 共有地の悲劇 科目の中での位置付け 個人的な最適と社会的な最適とが一致しない原因について理解する。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、経済主体の行動原理である「インセンティブ」の応用である、「共有地の悲劇」について学ぶ。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、119-122

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、126-127

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、123-125
コマ主題細目 ① 共有地の悲劇 ② 環境問題 ③ 環境施策 ④ ⑤
細目レベル ① 共有地の悲劇も囚人のジレンマゲームの一種と解釈できる。「ある昔話」の例を用いて、共有地の悲劇を説明する。ある村の男性が10人集まって、その日の晩に宴会を開くことになった。お酒は各人が家から持ってきて、一つの大きな器に注ぐことになった。この話は囚人のジレンマの多人数版である。それぞれの個人に「酒」「水」という戦略がある。ある人Aさんは、「酒」「水」どちらを選択すべきか考える際、他の9人の行動を読む。①他の9人が酒だとするならば、自分だけ水なら、ただで酒が飲める。なので、○を選択する。②他の9人が水だとするならば、自分だけ酒を入れるのは割に合わない。なので、○を選択する。誰もが①、②のように考えるので、中身は○となる。
② 共有地の悲劇は代金を払わない利用者を排除できないために生じる。大気汚染や水質汚染など、ある種の環境問題は共有地の悲劇と解釈することが可能である。①他者が汚染物質を排出したり・自然を利用したりしないなら、自分だけ汚染物質を排出したり・自然を利用したりすることは得である。②他者が汚染物質を排出したり・自然を利用したりしているなら、自分だけ汚染物質を排出したり・自然を利用したりしないことは損である。誰もが①、②のように考えるので、汚染や過剰利用となり、結局、全員の生活が脅かされるのである。問題の本質はフリーライダー(ただ乗り)の存在にある。したがって、環境をタダで利用させないことが解決法の一つである。
③ 環境問題の解決策として、インセンティブを利用した環境税や排出権取引などがある。汚染物質を排出するごとに課税する(環境税)というルールを設定すると、負のインセンティブが働いて、企業が汚染物質の排出を抑制するだけでなく、税収が入ってきて、これが環境改善や、その他の目的のために支出される。排出権取引は、「キャップ・アンド・トレード」ともいわれる。というのも、以下のルールで行われるからである。「①その地域全体の排出量に上限(キャップ)。②上限を超えてしまう企業が、余裕のある企業から「排出権」を買い取り可能(トレード)。」排出権取引の意義は、単純な規制と全く同じことを、より安いコストで実現することにある。


キーワード ① 共有地の悲劇 ② フリーライダー問題 ③ 排除不可能性 ④ インセンティブ ⑤ 環境税・排出権取引
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。共有地の悲劇も囚人のジレンマゲームの一種と解釈できることを理解しているか。フリーライダーとはどんな人間か。大気汚染や水質汚染など、ある種の環境問題は共有地の悲劇である、とはどういうことか。環境問題におけるフリーライダーとはどんな人間か。環境税にはどんな効果があるか(主に二つある)。排出権取引とはどんな制度か(キャップ・アンド・トレードともいう。ここから推測しなさい)。排出権取引は何を目指した制度か。環境税と排出権取引のどちらを企業は歓迎する(している)だろうか。予習課題:吉本佳生『出社が楽しい経済学』p131-142を読む。
13 割引現在価値 科目の中での位置付け 金融取引では、割引現在価値を考慮しなければ、投資の効率性を評価できないということを理解する。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を順に学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、金融の分野で用いられている「割引現在価値」の概念について学ぶ。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、131-136

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、140-141

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、138-139
コマ主題細目 ① 割引現在価値 ② 資産価格 ③ 金利の決定要因 ④ ⑤
細目レベル ① 今回学ぶ割引現在価値の「割引」とは、「1割引セール」の場合の「割引」とは計算方法が違うのでまず注意が必要である。今回学ぶ割引とは「利子がつく」の逆のことである。そこで、利子の計算について学ぶ。例えば、「金利(利子率)が年10%のとき、現在の1000万円は1年後に何万円?」など。現在の1000万円の1年後の価値は1100万円である。これは1000万円の1.1倍で求まる。逆に、1年後の1100万円の現在価値は1000万円である。これは、先の計算の逆をやれば求めることができる。つまり、1100万円を1.1で割ると求まる。割引計算は2年間でも、3年間でも…できる。長期の事業計画書では割引計算が用いられる。現在価値で考えると期間の異なる事業計画も比較できる。
② 株価や地価のような資産価格は基本的には将来そこから生まれるお金の割引現在価値の合計によって決まると考えられている。例えば、駐車場からは毎月いくらかの駐車代が得られる。ここから、駐車場として貸している土地の価値(の目安)は将来にわたって得られる駐車代の割引現在価値の合計として計算されるのである。株式とは、会社の所有者であることの証である。これを持つ人は会社が利益を出したときに、その一部を配当としてもらえる。配当は定期的にもらえる。ここから、株式の価値(の目安)は将来にわたって得られる配当の割引現在価値の合計として計算されるのである(ただし、後期の「経済学概論」で学ぶように、実際の株価はこの値から乖離するのが普通である)。
③ そもそも、金利はどのような要因で決まるのか。金利とは、基本的には「貸し手のがまんに対する見返り」であると言われる。これにリスクプレミアムが付け加わる。返済が確実な人はリスクプレミアムは小さく、返済が確実でない人はリスクプレミアムが大きい。普通は、国が借金するときの金利が一番低い。必ず返済できると信じられているためである。ただし、ギリシャが借金するときの金利は他国よりもかなり高い。信用されていないためである。予想物価上昇率を考慮すると実質金利が定義できる。金利でお金が増えても、物価が上昇するとお金が減るのと同じ効果がある。実質金利は次のように定義される。「実質金利=名目金利- (予想)物価上昇率」


キーワード ① 金利 ② 割引現在価値 ③ 資産価格 ④ 名目金利/実質金利 ⑤ 予想物価上昇率・リスクプレミアム
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。今回学んだ割引は「1割引セール」の意味の割引とはどう違うか。利子率○%のとき、○円は1年後に何円になるか計算できるか。利子率○%のとき、○円は2年後に何円になるか計算できるか。利子率○%のとき1年後の○円は現在価値に直すと何円になるかを計算できるか。利子率○%のとき2年後の○円は現在価値に直すと何円になるかを計算できるか。株価や土地の価格がどのように決まる(とされている)か。金利がどのように決まるか説明できるか。リスクプレミアムとは何か。実質金利が計算できるか。予習課題:吉本佳生『出社が楽しい経済学』p143-154を読む。
14 ネットワーク外部性 科目の中での位置付け ネットワーク外部性と企業戦略との関わりについて理解する。ネットワーク外部性もインセンティブの応用であると見ることもできる。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、企業戦略との関わりが深い、「ネットワーク外部性」について理解する。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、143-146

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、147-149

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、150-153
コマ主題細目 ① ネットワーク外部性 ② 無料配布の目的 ③ 規模の経済・範囲の経済 ④ ⑤
細目レベル ① (非常に古典的な話であるが)カラーファックスが普及しなかったのには訳がある。カラーファックスが出てきた当初においては、すでに白黒ファックスが普及していた。ある人が白黒ファックスとカラーファックスのどちらを購入するのかを選択する状況を考える。この人が白黒ファックスを購入すると、多くの人と情報交換ができて利便性が高い。他方で、この人がカラーファックスを購入すると、少ない人としか情報交換ができず利便性が低い。そして、白黒ファックスの方は、もう一人加入することで、白黒ファックスの利便性がさらにアップする。このように、加入者の数が多くなるほどネットワークの利便性が高まる効果のことをネットワーク外部性という。
② 無料配布の目的はネットワーク外部性をライバルよりもいち早く獲得することである場合が多い。かつて、携帯端末は無料の場合が多かった。自社の携帯のネットワークの加入者を早い段階から増やしておき、ネットワーク外部性を利用してさらなる加入者増加を実現するためである。ある人がA社の携帯(無料だったため、すでに加入者が多い)とB社の携帯のどちらに加入するのかを選択する状況を考える。この人がA社の携帯に加入すると、多くの人と情報交換ができて利便性が高い。他方で、この人がB社の携帯に加入すると、少ない人としか情報交換ができず利便性が低い。そして、A社の携帯の方は、もう一人加入することで、A社の携帯の利便性がさらにアップする。
③ 生産効率のアップを実現するためのキーワードとして他に規模の経済・範囲の経済がある。生産規模が大きくなるほど「平均費用」が安くなることをいう。自動車をたった1台しか生産しないとき、その1台の自動車にかかっている費用(つまり平均費用)はとてつもなく大きい。これが2台、3台、‥・100台…1000台…10000台…100000台と増えていくにしたがって、1台あたりにかかる費用(平均費用)は小さくなる。範囲の経済とは共通のコストの部分を節約することをいう。例えば、従来の携帯電話は通話しかできなかった。また、従来の携帯音楽プレイヤーは音楽しか聞くことができなかった。現在のスマホはたくさんの機能を果たすことができるため、機能の異なるものを何台も持ち歩かなくても良い。


キーワード ① ネットワーク外部性 ② 規模の経済 ③ 範囲の経済 ④ 補完的な商品 ⑤ 無料
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認しておく。カラーファックスが普及しなかった理由をどう説明できるか。ネットワーク外部性の例を複数挙げることができるか。無料配布とネットワーク外部性の関係をうまく説明できるか。規模の経済とは何か。規模の経済が働くと企業にとってどんなメリットがあるのか。規模の経済をうまく利用した企業の例を挙げることができるか。範囲の経済とは何か。範囲の経済が働くと企業にとってどんなメリットがあるのか。範囲の経済をうまく利用した企業の例を挙げることができるか。予習課題:次回は後半の復習問題を行うので、配付資料をもう一度見直して備えておく。
15 後半の復習 科目の中での位置付け 後半部分の復習(価格差別、裁定、囚人のジレンマ、共有地の悲劇、割引現在価値、ネットワーク外部性についての復習)。本講義では、現実の経済現象を理解するために重要な概念を各回に1つずつ理解していく。はじめに、一般の人々や会計には馴染みの薄い「サンクコスト」、「機会費用」の概念を理解し、その応用である「比較優位」の原理について学ぶ。次に、個々の主体の経済的行動原理である「インセンティブ」の概念を理解し、その応用である「モラルハザード」、「逆選択」、「価格差別」、「裁定」を学ぶ。さらに戦略的思考を「囚人のジレンマ」「共有地の悲劇」で、金融の常識を「割引現在価値」で、情報化やグローバル化された社会を理解するのに有用な知識を「ネットワーク外部性」でそれぞれ学ぶ。それらの概念が現実の経済現象や環境問題を説明するためにどれくらい有用であるかも確認する。今回は、第9回から第14回までの復習である(復習問題を解く)。
細目レベル①
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、83-105

細目レベル②
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、107-125

細目レベル③
吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年、131-153
コマ主題細目 ① 復習(第9・10回) ② 復習(第11・12回) ③ 復習(第13・14回) ④ ⑤
細目レベル ① 復習問題を解いて、以下のことを確認する。価格差別とは何か。地域別の価格差別では、誰に対してどんな価格を付けるか。時間差を利用した価格差別はどのようにして行うか。価格の需要弾力性を利用した価格差別とはどのようにして行うか。製品差別化を用いた価格差別とはどのようにして行うか。裁定とはどんな取引か。この取引によって誰がどれだけトクをするかについて説明できるか(この取引には倫理的問題があるという人もいる)。一物一価の法則とは何か。一物一価が成立する条件は何か。取引費用とはどんな費用か。家電の店やラーメンの店が同じ街に集まる現象を取引費用を用いてどのように説明できるか。投機とは何か。裁定と投機はどう違うか。
② 復習問題を解くことで、以下のことを確認する。プレイヤーとは何か。戦略とは何か利得とは何か。利得行列の読み方を理解しているか。各プレイヤーにとっての最適な戦略を見つけることができるか。「囚人のジレンマ」とはどんなゲームか。同じゲームを何度も繰り返す「繰り返しゲーム」では報復の可能性がある、ということをきちんと理解しているか。共有地の悲劇も囚人のジレンマゲームの一種と解釈できることを理解しているか。フリーライダーとは、どんな人間か。環境税には、どんな効果があるか(主に二つある)。排出権取引とはどんな制度か(キャップ・アンド・トレードともいう。ここから推測しなさい)。排出権取引は何を目指した制度か。
③ 復習問題を解くことで、以下のことを確認する。利子率○%のとき、○円は1年後に何円になるか計算できるか。利子率○%のとき、○円は2年後に何円になるか計算できるか。利子率○%のとき、1年後の○円は現在価値に直すと何円になるかを計算できるか。利子率○%のとき2年後の○円は現在価値に直すと何円になるかを計算できるか。株価や土地の価格がどのように決まる(とされている)か。金利がどのように決まるか説明できるか。リスクプレミアムとは何か。実質金利が計算できるか。カラーファックスが普及しなかった理由を説明できるか。無料配布とネットワーク外部性の関係をうまく説明できるか。規模の経済とは何か。範囲の経済とは何か。


キーワード ① 価格差別 ② 裁定 ③ 囚人のジレンマ・共有地の悲劇 ④ 割引現在価値 ⑤ ネットワーク外部性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。価格差別とは何か。地域別の価格差別、時間差を利用した価格差別はどのようにして行うか。価格の需要弾力性を利用した価格差別とはどのようにして行うか。製品差別化を用いた価格差別とはどのようにして行うか。裁定とはどんな取引か。この取引によって誰がどれだけトクをするかについて説明できるか。一物一価の法則とは何か。取引費用とはどんな費用か。家電の店やラーメンの店が同じ街に集まる現象を取引費用を用いてどのように説明できるか。投機とは何か。プレイヤー・戦略・利得とは何か。各プレイヤーにとっての最適な戦略を見つけることができるか。「囚人のジレンマ」とはどんなゲームか。同じゲームを何度も繰り返す「繰り返しゲーム」では報復の可能性がある、ということをきちんと理解しているか。共有地の悲劇も囚人のジレンマゲームの一種と解釈できることを理解しているか。フリーライダーとはどんな人間か。環境税にはどんな効果があるか。排出権取引とはどんな制度か。割引現在価値を計算できるか。株価や土地の価格がどのように決まる(とされている)か。金利がどのように決まるか説明できるか。カラーファックスが普及しなかった理由を説明できるか。無料配布とネットワーク外部性の関係をうまく説明できるか。規模の経済とは何か。範囲の経済とは何か。
履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
サンクコスト サンクコストとはどんな費用かを説明できる。過去に払ったコストの中で回収できるものは何か、回収できないものは何かを理解している。過去に払ったコストのうち、忘れてしまってよいのは、回収できるコストの方か。それとも、回収できないコストの方か理解している。企業に発生するコストのうち、変動費用とは何か、固定費用とは何かを理解している。企業に発生する費用のうち、サンクコストになりやすいのは変動費用か固定費用かを理解している。 サンクコスト、固定費用、変動費用 10 2
機会費用 機会費用の定義は何かを理解している。機会費用は会計学上の概念でないことを理解している。機会費用はどんな場合に生じるかを理解している。居酒屋が格安ランチを始める理由は何かを説明できる。居酒屋が昼営業を始めるのはなぜかを説明できる。限界費用とは何かを理解している。PB(プライベートブランド)商品が通常の商品(PB商品と中身はほとんど同じ)よりも格安であるのはなぜか、PB商品はどんなところで作られているかについて理解している。 機会費用、限界(追加的)費用 10 3
比較優位 絶対優位とは何かを理解している。それがあるとなぜ分業に利益が生まれるのかを理解している。比較優位とは何かを理解している。それがあるとなぜ分業に利益が生まれるのかを理解している。比較優位は機会費用の応用であると言われるが、どういう意味でそう言われるのかを理解している。機会費用を計算することで、それぞれの人が何に比較優位を持っているか言うことができる。どんな人にも必ず比較優位となるものがあることを理解している。 ロックイン、スイッチングコスト、ロックイン戦略 10 4
インセンティブ・モラルハザード インセンティブとは何かを理解している。インセンティブには、正のインセンティブと負のインセンティブとがあることを理解している。インセンティブを利用した政策(デポジット制度など)について説明できる。モラルハザードとは何かを理解している。銀行の放漫経営をモラルハザードで説明できる。モラルハザードを防ぐための仕組み(「ペイオフ」制度など)を理解している。保険契約で生じるモラルハザードの構図にについて説明できる。 インセンティブ契約・モラルハザード 10 5,6
逆選択 逆選択とは何かを理解している。モラルハザードと逆選択は、ともに情報の非対称性が原因で生じるが、両者はどのように異なるかについて理解している。銀行と借り手の構図で起こる逆選択について理解している。保険会社と保険加入者の構図で起こる逆選択について理解している。逆選択を防止するための方法として、シグナリングとスクリーニングがあるが、シグナリングとスクリーニングはそれぞれ、誰が何の目的で行うかを理解している。 逆選択・シグナリング 10 7
価格差別 価格差別とは何かを理解している。価格差別はなぜ行われるのかを理解している。地域別の価格差別では、誰に対してどんな価格を付けるか、時間差を利用した価格差別はどのようにして行うかを理解している。価格の需要弾力性とは何かを理解している。価格の需要弾力性を利用した価格差別とはどのようにして行うかを理解している。製品差別化による価格差別とはどのようにして行うかを理解している。価格差別は倫理的問題について議論できる。 価格差別・需要の価格弾力性 10 9
裁定 裁定とは何かを理解している。裁定取引によって誰がどれだけ得をするかを説明できる。この取引の倫理的問題について議論ができる。一物一価の法則とは何かを理解している。一物一価が成立する条件は何かを理解している。取引費用とはどんな費用かを理解している。家電の店やラーメンの店が同じ街に集まる現象を取引費用を用いて説明できる。投機とは何かを理解している。裁定と投機はどう違うかを説明できる。裁定と投機の例をそれぞれ挙げることができる。 裁定・一物一価の法則・取引コスト 10 10
囚人のジレンマ・共有地の悲劇 プレイヤーとは何か、戦略とは何か、利得とは何かを理解している。利得行列の読み方を理解している。各プレイヤーにとっての最適な戦略を見つけることができる。「囚人のジレンマ」とはどんなゲームかを理解している。「繰り返しゲーム」とは何かを理解している。共有地の悲劇も囚人のジレンマゲームの一種と解釈できることを理解しているか。フリーライダーとはどんな人間かを理解している。ある種の環境問題は共有地の悲劇である、とはどういうことかを理解している。環境税や排出権取引の仕組みと意義について理解している。 囚人のジレンマ・しっぺ返し・
共有地の悲劇・排除不可能性
10 11,12
割引現在価値 利子の計算ができる。割引現在価値の計算ができる。投資プロジェクトなどの効率性を測る際に割引現在価値で見なければならない理由を説明できる。資産価値が割引現在価値で決まることを説明できる。株価や土地の価格がどのように決まる(とされている)かを理解している。金利がどのように決まるかを理解している。リスクプレミアムとは何かを理解している。実質金利とは何かを理解している。実質金利を計算で求めることが出来る。 割引現在価値・金利・資産価格 10 13
ネットワーク外部性 ネットワーク外部性の生じる理由を説明できる。ネットワーク外部性を獲得するための企業の戦略について説明できる。カラーファックスが普及しなかった理由を説明できる。無料配布とネットワーク外部性の関係をうまく説明できる。規模の経済とは何かを理解している。規模の経済が働くと企業にとってどんなメリットがあるのか説明できる。範囲の経済とは何かを理解している。範囲の経済が働くと企業にとってどんなメリットがあるのかを説明できる。 ネットワーク外部性 10 14
評価方法 期末試験(100%) *成績発表後、教務課にて試験・レポートに関する総評が閲覧できます。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 なし
参考文献 吉本佳生『出社が楽しい経済学』NHK出版、2009年。
実験・実習・教材費 なし