区分 環境データサイエンス科目 社会環境科目 社会環境基本科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門性 理解力 実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
専門知識 教養知識 思考力
実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
多様化する環境問題や地域社会の諸問題に関心を持ち、環境・情報・社会に関連する幅広い基礎知識と専門的な理解を深めると共に、学際的な柔軟性を有し、実践的な能力を有する。グローバルな視野と研究調査力を持ち、昨今の情報社会に貢献できる力を有する。企業・地域社会などのあらゆるコミュニティに寄与する組織的な活動能力を有する。
科目の目的
現在、あらゆる経済活動がグローバル化の真っただ中にある。グローバリゼーションがもたらす弱肉強食の殺伐さに不安を感じる人もあれば、成長の好機ととらえてこれを推進しようとする人もいる。例えば、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)をめぐる議論では、「国益増進」「成長促進」を掲げる賛成派と、「食糧自給率の確保」「産業空洞化の阻止」「格差拡大」などを警戒する反対派が真っ向から対立している。本授業の目的は、それぞれの言い分を明確にし、より良い着地点を見いだすきっかけを作ることにある。また、こうした作業を行うことは、現在さまざまな場面で起こっている深刻な分断をなくし、共通理解を深める能力を養うことにつながるであろう。
到達目標
自由貿易推進派が主張する貿易の利益とは何かを理解している。保護貿易政策をとると貿易の利益がどうなるかを理解している。世界貿易機関(WTO)や自由貿易協定(FTA)について理解している。様々な食料自給率やそれらがどのような要因で変化するのか、そして食料自給率と「食料自給力」の違いを理解している。日本の農業が先進国の農産物輸出国と比べてどのような特徴を持っているかを理解している。農産物の需要の特性と、そこから生じる価格の急激な変化について理解している。自由貿易推進派が用いる経済学のモデルにおいて仮定されている可塑性や完全競争市場は、現実の経済では成立していないことを理解している。自由貿易化と環境問題の関係について説明できる。寡占化が進んだ市場における農家の交易条件について説明できる。多国籍企業と海外直接投資の意味を理解している。それらが国間・国内の所得分配にどのような影響を与えるかデータをふまえて説明できる。
科目の概要
第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。
科目のキーワード
多国籍企業、貿易の利益、自由貿易、保護貿易、WTO・FTA、競争、海外直接投資、産業空洞化、一極集中、地域内経済循環
授業の展開方法
パワーポイント(スライド資料も紙で配付する)を用いながら講義を進める。上映するスライドはカラーであるが、配布する紙のスライド資料には色が付いておらず、またメモのスペースが取られているので、受講生は講義を聴きながら適宜鉛筆でメモを取ったりマーカーで印をつけたりする。毎回、理解度チェックのための演習問題も配布し、授業の中間や終わりに解き、その後解説をする。また、毎回、次回の予習のためのプリントを配布する。
オフィス・アワー
【火曜日】2時限目、【木曜日】3・4時限目、【金曜日】2時限目(後期のみ)、昼休み、3・4時限目
科目コード ENS622
学年・期 2年・前期
科目名 新時代の国際貿易と環境リスク
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 環境経済学入門
展開科目 なし
関連資格 なし
担当教員名 山根卓二
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 自由貿易をめぐる古典的な論争
(マルサスvs.リカード)
科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、約200年前にマルサスとリカードの間で行われた自由貿易をめぐる論争について取り上げ、貿易論争の大まかな対立点について確認する。
①井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、50-53

②井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、53-56

③経済学史学会編『古典から読み解く経済思想史』ミネルヴァ書房、160.
コマ主題細目 ① 穀物法論争 ② 比較優位の原理 ③ 19世紀後半のイギリス農業の衰退 ④ ⑤
細目レベル ① ナポレオンとの戦争が終結すると、ヨーロッパ大陸から安い穀物が大量に輸入されるのではないかとの期待から、イギリスの穀物価格は下落した。このようなことを背景としてリカードとマルサスの間で、穀物法論争が起こった。地主階級の代表であるマルサスは、自由貿易には反対し、穀物法を制定して穀物の輸入を阻止することを主張した。これに対し、資本家階級の代表であるリカードは、自由貿易に賛成し、穀物法に反対して、穀物を積極的に輸入することを主張した。マルサスが自由貿易に反対した理由として、国防上の理由、農家と工業従事者の所得減少、田園生活の消滅、などがある。リカードが自由貿易に賛成した理由として、雇用の拡大への期待、国際分業の利益、などがある。
② リカードが自由貿易に賛成した理由の一つに国際分業の利益がある。国際分業の利益はいわゆる比較優位の原理(比較生産費説)によって説明できる。リカードはイギリスとポルトガルの例を用いて、織物とワインのうち、両国ともどちらかの財に特化して生産し、それを後で交換すれば国際分業の利益が生じることを示した。リカードの設定した数値例ではイギリスは織物に比較優位を持ち、ポルトガルはワインに比較優位を持つ。したがって、イギリスは織物に特化して生産し、ポルトガルがワインに特化して生産し、両国がそれらを交換すれば、どちらの財も両国内で生産するよりも有利になる。どちらの財に比較優位を持つかは、両方の財の一定量の生産に必要な労働者の人数に注目すれば判明する。
③ 穀物輸入を制限してきた穀物法は1846年に廃止された。穀物法廃止後には穀物輸入が急増した。当初は輸入増加を一時的現象とする見方もあったが、現実はこうした議論を越えて進んだ。輸送コストの大幅な低下もあって、イギリスの小麦自給率は大幅に低下した。農業生産額は1870年代から20世紀初めにかけて農作物(穀類・ジャガイモ・野菜など)は半減し、畜産物でも減少傾向を示した。小麦生産額は同時期に5分の1までに減少し、農業生産額に占める小麦の割合は5パーセントまでに低下した。また、1870年代には穀物法廃止後最大の不況が農業を襲った。この時期から穀物栽培から畜産への転換が進められた。富者だけでなく労働者も穀物と肉の消費割合を変えつつあった。国内農業は衰退したが、イギリス人の食生活は向上した。


キーワード ① 自由貿易論 ② 保護貿易論 ③ 穀物法論争 ④ 国際分業 ⑤ 比較優位の原理
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。地主階級の代表であるマルサスは、自由貿易には反対し、穀物法を制定して穀物の輸入を阻止することを主張した。これに対し、資本家階級の代表であるリカードは、自由貿易に賛成し、穀物法に反対して、穀物を積極的に輸入することを主張した。国際分業の利益はいわゆる比較優位の原理(比較生産費説)によって説明できる。穀物輸入を制限してきた穀物法は1846年に廃止されたこと。穀物法廃止後には穀物輸入が急増した。1870年代には穀物法廃止後最大の不況が農業を襲ったが、この時期から穀物栽培から畜産への転換が進められた。国内農業は衰退したが、イギリス人の食生活は向上した。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
2 貿易の利益 科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」の「国益」とは何であるのか、そして、賛成派は具体的に誰に利益があり誰に損失が生じると言っているのかを明らかにする。
①石川城太・椋寛・菊池徹(2013)『国際経済学をつかむ 第2版』有斐閣、37-40

②石川城太・椋寛・菊池徹(2013)『国際経済学をつかむ 第2版』有斐閣、41-43

③神取道宏(2014)『ミクロ経済学の力』日本評論社、196
コマ主題細目 ① 余剰分析 ② 貿易の利益 ③ 比較優位の決定要因 ④ ⑤
細目レベル ① 前回学んだ比較優位の原理は、需要曲線・供給曲線を用いても説明が可能である。消費者がある商品に対して支払って良いと思う最高金額のことを支払意思額という。個々の消費者の支払意思額を高い順に左から並べるとしよう。そうすれば、価格が高いときには少数の消費者がお金を支払って買おうとするが、価格が下がるにつれて多くの消費者がお金を支払って買おうとすることが理解できる。つまり、そのグラフは需要曲線とみなすことができる。需要曲線と価格で挟まれた領域のことを消費者余剰と呼ぶ。次に、個々の生産者を生産費用の安い順に左から並べるとしよう。そうすれば、価格が安いときには少数の生産者が商品を売ってお金を得ようとするが、価格が上がるにつれて多くの生産者が商品を売ってお金を得ようとすることが理解できる、つまり、そのグラフは供給曲線とみなすことができる。供給曲線と価格で挟まれた領域のことを生産者余剰と呼ぶ。産業全体で技術が進歩すると以前よりも安い費用で生産できるため、供給曲線は下にシフトする。
② ある国が全く貿易を行っていないときの余剰の大きさと、貿易を行ったときの余剰の大きさを比較する。貿易を行っていないときの市場均衡価格は、需要曲線と供給曲線の交点で決まる。それとは別に世界市場で決まっている国際価格があるとし(本当は「小国の仮定」というものがあるのだが、話が難しいので省略する)、国内の価格よりも国際価格の方が安いとする。ここで自由貿易を開始すると(輸送費はかからないと仮定する)、国外から価格の安い商品が入ってくるため、国内消費者の需要量は以前より増加する。国内生産者は輸入品の価格と同じくらいに安くしないと買ってもらえないが、価格よりも生産費が高くなる生産者はこの市場から撤退しないといけなくなるため、国内生産者の供給量は減少する。国内消費者の需要量の増加と国内生産者の供給量の減少によるギャップは輸入品が埋めることになる。消費者余剰は貿易前よりも貿易後の方が大きくなる。生産者余剰は貿易前より貿易後の方が小さくなる。しかしながら、生産者余剰の減少分よりも消費者余剰の増加分の方が大きいため、消費者余剰と生産者余剰の合計(総余剰と呼ぶ)は貿易前よりも貿易後の方が大きくなる。したがって、貿易には利益があると言える。ただし、得する消費者が損する生産者に金銭的補償をしなければ全員が納得することにはならないかもしれない。以上が、自由貿易論者が自由貿易を推進しようとする主な理由である。
③ こうした経済モデルを用いて自由貿易を擁護する論者は、次のように主張する。経済政策には「関係省庁」があるが、コメの場合は農水省である。農水省は自由貿易化についての試算を行い、例えば「TPPがあるとこれだけの悪影響がある」ということを主張するが、そこでは自由貿易化によって消費者が得る利益が完全に無視されている。関係省庁が検討委員会を立ち上げるとそこに参加するのは生産者を代表する人たちがほとんどである。このように、経済政策の現場で、消費者の利益を代表する人がいないのが、大きな問題である。このことを是正するには、国民やマスコミが経済学の知識(需要曲線と供給曲線など)を得て、消費者の権利を主張していかなければならない、と。


キーワード ① 需要曲線・供給曲線 ② 消費者余剰 ③ 生産者余剰 ④ 総余剰 ⑤ 貿易の利益
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。比較優位の原理は、需要曲線・供給曲線を用いても説明が可能である。消費者がある商品に対して支払って良いと思う最高金額のことを支払意思額という。需要曲線と価格で挟まれた領域のことを消費者余剰と呼ぶ。供給曲線と価格で挟まれた領域のことを生産者余剰と呼ぶ。自由貿易を開始すると、国外から価格の安い商品が入ってくるため、国内消費者の需要量は以前より増加する。消費者余剰は貿易前よりも貿易後の方が大きくなる。生産者余剰は貿易前より貿易後の方が小さくなる。しかしながら、生産者余剰の減少分よりも消費者余剰の増加分の方が大きいため、消費者余剰と生産者余剰の合計(総余剰と呼ぶ)は貿易前よりも貿易後の方が大きくなる。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
3 保護貿易、
世界貿易機関(WTO)
科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、自由貿易賛成派がなぜ関税という保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、自由貿易を推進する国際機関であるWTOについて解説する。
①浦田秀次郎・小川英治・澤田康幸『新版 はじめて学ぶ国際経済』有斐閣アルマ、29-40

②浦田秀次郎・小川英治・澤田康幸『新版 はじめて学ぶ国際経済』有斐閣アルマ、43-47

③浦田秀次郎・小川英治・澤田康幸『新版 はじめて学ぶ国際経済』有斐閣アルマ、48-51
コマ主題細目 ① 輸入関税と非関税措置 ② 保護貿易政策に関する議論 ③ 世界貿易体制 ④ ⑤
細目レベル ① 政府は貿易に対してさまざまな政策を適用している。それらを貿易政策と呼ぶ。貿易を制限する政策としては、輸入関税や輸入数量制限などがあるが、最も単純かつ一般的な貿易政策は輸入関税である。世界諸国の平均関税率は1990年の15%から2017年の5%に大きく低下した。輸入関税の効果は次のようである。輸入される商品に関税が課されると、輸入される商品の国内での価格は国際価格に関税が上乗せされたものとなる。その結果、国内消費者の需要量は完全自由貿易の場合よりも減少し、国際生産者の国内供給量は完全自由貿易の場合よりも増加するため、輸入量は完全自由貿易の場合よりも減少する。消費者余剰は減少し、生産者余剰は増加する。政府は関税収入を得る。経済全体で見ると総余剰は減少する。このことを理由に、自由貿易推進派は輸入関税には反対する。
② ①で見たように、輸入保護政策は経済全体に対しては損失を発生させるが、現実の経済においては輸入保護政策が多くの国々によって適用されている。実施される大きな理由の一つは前回見たように、消費者が政策決定において影響力を持っていないからである。その他の理由も考える。保護貿易政策を擁護する議論の中で最も古くからありよく知られているものが幼稚産業保護論である。幼稚産業保護論は、発展の初期段階にある産業を競争力のある外国の企業との競争から一時的に保護することで、将来幼稚産業が競争力を持つようになれば、そのような保護は正当化されるとする議論である。幼稚産業保護論は理論的には正当化できるが、現実には問題も指摘されている。
③ 世界貿易機関(WTO)とその前身期間である関税と貿易に関する一般協定(GATT)は世界における自由な貿易を推進することを目的としている。GATT/WTOでは加盟国による輸入関税の削減などを進めるために多角的貿易自由化交渉(ラウンド)を実施してきた。GATT/WTOでの2大原則は「最恵国待遇」と「内国民待遇」である。最恵国待遇とは、すべてのGATT/WTO加盟国を同等に扱うということを意味する。また、内国民待遇とは、輸入品と国産品を同様に扱うことを意味することから、輸入品と国産品に対して異なる内国税をかけるような措置はとれない。現在WTOのもとでは、ドーハ・ラウンドと名付けられた多角的貿易交渉が2001年から進められているが、自由化に対する加盟国間の意見の違いにより、交渉ははかどっていない。


キーワード ① 輸入関税 ② 非関税措置 ③ 幼稚産業保護論 ④ 規模の経済 ⑤ GATT/WTO
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。輸入される商品に関税が課されると、国内消費者の需要量は完全自由貿易の場合よりも減少し、国際生産者の国内供給量は完全自由貿易の場合よりも増加するため、輸入量は完全自由貿易の場合よりも減少する。消費者余剰は減少し、生産者余剰は増加する。政府は関税収入を得る。経済全体で見ると総余剰は減少する。現実の経済においては輸入保護政策が多くの国々によって適用されている。保護貿易政策を擁護する議論の中で最も古くからありよく知られているものが幼稚産業保護論である。WTOは世界における自由な貿易を推進することを目的としている。WTOでの2大原則は「最恵国待遇」と「内国民待遇」である。現在WTOのもとでは、ドーハ・ラウンドが進められているが、交渉ははかどっていない。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
4 自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA) 科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、現在WTOの下では交渉があまり進んでおらず、交渉の場が地域的な自由貿易協定(FTA)の方に移っていることを確認する。
①山本和人・鳥谷一生編『世界経済論』、97-98

②山本和人・鳥谷一生編『世界経済論』、98-102

③山本和人・鳥谷一生編『世界経済論』、102-106
コマ主題細目 ① FTA・EPA ② FTA・EPAの経済効果 ③ FTA・EPAをめぐる政治経済 ④ ⑤
細目レベル ① WTOの枠外で結ばれる貿易協定のうち、ある特定国家間の経済関係をより密接にする協定のことを地域経済統合という。かつての地域経済統合は、貿易の自由化・規制緩和措置が中心であり、FTA(自由貿易協定)の締結を通じて推進された。21世紀になると日本ではEPA(経済連携協定)という、国家間でヒト・モノ・カネの移動の自由化や経済取引の円滑化、経済協力促進を目的とする協定、つまり貿易以外の内容も含めた協定が出現した。第12回以降で学ぶように、グローバル・バリューチェーンの発展とともに、貿易だけでなく、海外直接投資などの問題もあわせて協議する必要性が高まり、貿易以外の内容も含めた協定が各国で締結されるようになった。WTOの多国間交渉が進まないために、まずはFTA・EPAの締結国間で進めようというねらいもある。
② FTA・EPAにはさまざまな効果がある。貿易創出効果:域内の貿易障壁撤廃・削減により、輸入価格の低下・輸入量の拡大、ひいては域内貿易が拡大する効果。貿易転換効果:域内の貿易障壁撤廃・削減により、域外の生産国からの輸入が、域内からの輸入に転換される効果。交易条件効果:域内取引が活発になることで、取引の減少を懸念した域外が価格を引き下げる結果、交易条件が改善する効果。市場拡大効果:域内の障壁撤廃により市場や取引が拡大した結果、規模の経済が機能し、生産性の上昇をもたらす効果。投資転換効果:域内に新たな投資をもたらす効果。技術拡散効果:協定締結によってもたらされた新たな投資が、技術やノウハウの流入・蓄積を通じて生産性・品質の上昇をもたらす効果。競争促進効果:自由化・市場開放により域内での競争圧力が高まった結果、生産性・品質の上昇をもたらす効果。制度革新効果:FTA交渉や協定内容を通じて締結国間の制度や政策を変化させ、その変化が生産性・品質の上昇をもたらす効果。ドミノ効果:あるFTAに締結していない国が、自らもFTAを結ぼうとして、それがドミノ倒しのように各地で誘発される効果。
③ 世界各地でFTA・EPAが締結され、日本もTPP(環太平洋パートナーシップ協定)など、対象国・地域や協定内容の幅が広い経済統合が各国・地域で進んでいる。TPPは当初12カ国で締結されたが、トランプ政権の誕生後、大統領選挙中の公約どおりにアメリカがTPPを脱退した。FTA・EPAによって貿易制限措置が低減・撤廃された国は、輸出条件が有利になり輸出の増加が期待できる一方、その商品と競合する域外の国と国内の生産者には脅威となる。FTAやEPAの目的は、締結そのものではなく自国の利益である。FTAやEPAを求める企業は国境を越えて活動できる一方、国民の多くは国境を越えて活動するのが困難であり、この点で企業と国民との利益は必ずしも一致しない。その国そしてその国で暮らす人々にとっての全体的・長期的な利益が考慮される必要がある。


キーワード ① TPP ② 貿易創出効果 ③ 貿易転換効果 ④ 市場拡大効果 ⑤ 競争促進効果
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。FTAは、協定加盟国間の貿易に関する輸入関税の撤廃を通じて貿易を自由化する一方、非加盟国に対しては独自の関税を適用する取り決めである。FTAはWTOにおける基本原則の一つである最恵国待遇に違反する取り決めである。TPP協定はモノの関税撤廃だけでなく、サービス貿易、投資、知的財産、さらには環境や労働など新分野におけるルールが含まれる包括的な内容である。FTA急増の要因はいくつかある。FTA形成の障害もいくつかある。FTAは主に貿易への影響を通して、FTA加盟国や非加盟国の経済に影響をもたらす。FTAの貿易への影響はいくつかある。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
5 食料はどこまで輸入に頼るべきか(1) 科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、世界の食糧事情を概観し、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、本当に重要なのは食料自給「力」であることを説明する。そしてそうした情報をもとに、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることを確認する。
①生源寺眞一(2018)『新版 農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』家の光協会、14-44

②生源寺眞一(2018)『新版 農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』家の光協会、88-109

③生源寺眞一(2018)『新版 農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』家の光協会、110-124
コマ主題細目 ① 世界の食料事情 ② 食料自給率 ③ 万能ではない自由貿易 ④ ⑤
細目レベル ① 食料をどこまで輸入に頼るべきかを考えるために、まず、世界の食料事情を確認する。食料事情を左右するのは三大穀物と大豆である。2007-2008年に食料価格が高騰し、現在もまた高騰している。原因としてさまざまなものがある。一つ目は天候不順や戦乱などによる供給不足。2008年がピークであった価格高騰の前にオーストラリアの干ばつがあった。ロシアによる農業国ウクライナの侵攻は現在の食料価格高騰の大きな原因である。基礎的な食料のような生活必需品は需要の価格弾力性が小さいため、供給不足に対して価格が大きく上昇する(逆に豊作の場合、価格は暴落する)。不作以外の原因もある。投機:価格が上昇すると、それがいっそうの価格上昇の予想を生み、需要が高まって上昇する。エネルギー資源としての農産物:トウモロコシがバイオ燃料に仕向けられることで、トウモロコシと他の穀物の価格が上昇した。10を超える国々が輸出禁止措置:これは食料問題を考える上でかなり重要な点となる。
② 現在日本のカロリーベースの食料自給率は40%を下回っている。カロリーベースの食料自給率の他に、生産額ベースの食料自給率や穀物自給率などがある。生産額ベースの食料自給率は食料の経済的価値を尺度にして計算されている。また、穀物は基礎的な食料であり、食料政策上の重要度も高いことから、国際比較に穀物自給率が用いられることがある。日本の食料自給率は長期にわたって低下している。1980年代の後半までの時期においては、国内生産全体は伸びていたが、国内消費がそれを上回って増加したため食料自給率は低下した。1990年代に入る頃から、消費量は横ばいか幾分減少しているが、食料自給率の低下傾向には歯止めがかかっていない。つまり、現在の自給率の低下の原因は国内生産の縮小である。自給率が100%以上であってもそれだけで安心ということにはならない。今の日本の農業や漁業の力でどれほどの食料を供給することができるか、という意味での食料自給「力」が、食料安全保障という意味でも重要である。
③ 確かに、自由貿易は私たちの生活を豊かにしてくれる。全部自前で生産するよりも、それぞれが得意なものを集中的に生産して、その成果を売り買いする方が、全体としての富は増加する。けれども、食料に代表される絶対的な必需品については、かりに自由貿易が機能不全に陥ったときでも、最低限の量が確保されていなければならない。完全な自由貿易を適用するのが望ましいのはその最低限を超える部分であるといえる。アメリカやフランスやカナダはカロリー自給率が100%を超えていて、しかも十分に食事ができている国である。にもかかわらず、それらの国は農家に補助金を出して輸出を奨励している。大事なことは、自由貿易に委ねてよい領域と、国としてのミニマムの必要量の確保に責任を持つべき領域があることについて、他国の合意を得ていくことである。


キーワード ① カロリーベース ② 生産額ベース ③ 食料自給力 ④ 食料安全保障 ⑤ ミニマムの食料
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。食料事情を左右するのは三大穀物と大豆である。2007-2008年に食料価格が高騰し、現在もまた高騰している。原因としてさまざまなものがある。日本の食料自給率は長期にわたって低下している。現在の自給率の低下の原因は国内生産の縮小である。今の日本の農業や漁業の力でどれほどの食料を供給することができるか、という意味での食料自給「力」が、食料安全保障という意味でも重要である。食料に代表される絶対的な必需品については、かりに自由貿易が機能不全に陥ったときでも、最低限の量が確保されていなければならない。大事なことは、自由貿易に委ねてよい領域と、国としてのミニマムの必要量の確保に責任を持つべき領域があることについて、他国の合意を得ていくことである。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
6 食料はどこまで輸入に頼るべきか(2) 科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、日本の農業はコストひいては価格の面では世界と勝負にならないが、品質の良さで勝負ができることを確認するほか、農業にはさまざまな副産物があるため、食料の輸入を認めつつも農業を全廃するような事態は避けた方がよいということを確認する。
①生源寺眞一(2018)『新版 農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』家の光協会、126-136

②生源寺眞一(2018)『新版 農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』家の光協会、136-158

③生源寺眞一(2018)『新版 農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』家の光協会、160-178
コマ主題細目 ① 集約型農業 ② 土地利用型農業 ③ 農業の正の副産物 ④ ⑤
細目レベル ① 日本にも頑張って伸びてきた農業がある。頑張って伸びてきた農業に共通するのは、土地面積あたりの所得が大きいことである。野菜作・果樹作・酪農・養豚の農業経営の10アールあたりの収入は、北海道の酪農を除いて、水田作経営のそれを大きく上回っている。ただし、10アールあたりの経費も4種の経営は水田作を上回っている。それでもなお、10アールあたりの所得は、やはり野菜作・果樹作・畜産(都府県の酪農と養豚)が水田作の何倍もの水準となっている。土地面積あたりの付加価値の大きい農業は、限られた面積の土地を舞台に、経費と労働を集中的に投入する農業である。こうした農業を集約型農業と呼ぶ。施設を多く使う集約型農業で気がかりなのは飼料や燃料の高騰である。2007-2008年や現在はその懸念が現実のものとなっている。しかしながら、集約型農業は人を多く雇うことができるという特徴も持っている。
② コメ・麦・豆・イモなどカロリーを多く含む農業の共通点は、それらが土地利用型農業であるということである。土地利用型農業、特に水田農業は極端に高齢化が進んでいるため衰退の危機にある。農業でも技術革新と設備投資が進んだが、その成果が現れたのは集約型農業にほぼ限られていた。ただし、北海道の水田では規模の拡大が実現している。しかしながら、北海道以外の地域では規模の拡大が実現していない。これから平地の水田農業では高齢農業者の引退が進む中で、農地を貸したいと考える農家が増えると見込まれる。だが、10ヘクタール以上土地を拡大しても稲作の平均費用はそれ以上は低下しないという傾向が見られる。そこで、土地利用型農業の活路は(1)生産物の価値を高める(2)土地利用型農業に集約型農業を組み合わせる(3)農産物の加工や流通に取り組む、など経営の厚みを増すことであると言える。
③ 品質の良さで勝負する日本の農産物には、国際社会で十分通用するものもあるが、価格で勝負となると全体的に旗色が悪いことは否定できない。日本では10ヘクタールまで土地を拡大すればベストなコスト水準になると言ったが、海外にはこれよりも安く生産されるコメがある。日本の農家の1000倍近い規模の土地で超大型の機械を駆使して作業効率も高いため、かなり安く作ることができる。また、中国のコメなど、人件費が安いことで高い競争力を発揮するコメもある。それではいっそのこと農産物は海外から調達すれば良いのか?前回学んだように、食料安全保障の問題があり、その部分は自由貿易には委ねられない。日本にも農業が必要である別の理由として、農業がプラスの副産物を生み出しているから、というものがある。いわゆる農業の多面的機能である。また、農村コミュニティの共同力という要素も重要である。


キーワード ① 集約型農業 ② 土地利用型農業 ③ 規模の経済 ④ 農業の多面的機能 ⑤ 農村コミュニティ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。集約型農業は、限られた面積の土地を舞台に、経費と労働を集中的に投入する農業である。集約型農業で気がかりなのは飼料や燃料の高騰であるが、集約型農業は人を多く雇うことができるという特徴も持っている。土地利用型農業、特に水田農業は極端に高齢化が進んでいるため衰退の危機にある。品質の良さで勝負する日本の農産物には、国際社会で十分通用するものもあるが、価格で勝負となると全体的に旗色が悪いことは否定できない。食料安全保障の問題以外にも、日本にも農業が必要である別の理由として、農業がプラスの副産物を生み出しているから、というものがある。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
7 貿易自由化によって飢餓と失業が生じる可能性 科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、農産物の価格は乱高下しやすく、農業を市場経済に委ねると農家が廃業に追い込まれやすくなるが、いったん廃業すると再開は難しく(経済理論が想定しているような「可塑性」は現実にはないのである)、これを放置すると餓死者も出かねないため、輸入関税はやはり必要であるかもしれないことを解説する。また、アメリカなどの農業大国は農家に補助金を与えて輸出を奨励していることも説明する。
①関良基(2012)『自由貿易神話解体新書』花伝社、103-111

②関良基(2012)『自由貿易神話解体新書』花伝社、112-140

③関良基(2012)『自由貿易神話解体新書』花伝社、140-150
コマ主題細目 ① 農産物の需要特性 ② 輸入関税再考 ③ 攻撃的保護主義 ④ ⑤
細目レベル ① 農産物の価格は少し生産が余っただけでも急落するが、需要は伸び悩み、結局苦しむのは生産者である。多くの農家が廃業に追い込まれた後、今度は供給が不足すれば価格が高騰し、消費者が苦しむ。特に世界の貧困層が飢餓に追い込まれる。仮に自由化の結果、30年間のうち28年は食料の価格が自由化前の半分近くになり、残りの2年間は価格が自由化前の3倍になったとする。経済学者は「平均価格が下がったから消費者余剰は高まった」と言うかもしれない。しかし、28年間は利益を受けても、残りの2年間で貧困者は食べていけなくなり、下手をすれば餓死に至ってしまう。実際にメキシコでこのようなことが起こった。第2回で学んだ経済モデルでは、タイムラグがなく生産が瞬時に調整され、あらゆる現象は可逆的であるという仮定に基づいて構築されている。しかし、現実世界においては、生産を再開するための調整には時間がかかるし、死んだ人は生き返ったりしない。
② 同じ現象を今度は主に生産者の農業経営の面に視点を当てて考える。第2回で学んだように、供給曲線は個々の生産者を生産費用の安い順に左から並べたときにできる曲線であった。農業の場合、肥沃な土地(優等地)で生産する農家はあまり費用をかけずに生産できるが、不毛な土地(劣等地)で生産する農家は費用をかけないと生産できない。輸入食料の影響で価格が下がったとすると、劣等地で生産する農家は採算割れを起こして経営破綻する。インドにおいては、実際に借金を返済できなくなった農家が自殺に追いやられる事態が起こった。再び価格が上がれば生産を再開すればよいといわれるかもしれないが、すでに農家は経営破綻している(そして自殺している場合も)ためにそれができない。食料価格が急騰すると外国も自国を優先して食料を売ってくれなくなるため、飢餓が発生する。このような事態を回避する方法として輸入関税が有益だという主張がある。
③ アメリカの農家の農業所得に占める政府からの直接支払の比率は50%前後である。アメリカ政府は、自国の農家が満足に暮らし営農を再生産するために必要な目標価格(A)を決める。ところが国際市場で競争力を持つための市場価格(B)はAより低い。そこでAとBの差額は、全額政府が補てんする。そのダンピング輸出により、アメリカの穀物は必ず国際競争力を持つのである。この制度は、国際社会から大きな批判を受けながらも維持され続けている。アメリカの綿花の輸出補助金はインドの綿花農家の経営を破綻させる大きな原因の一つとなっているし、また、大きな財政負担でもある。こうした輸出攻勢をかわすために輸入関税を設けることは正当防衛であるし、財政収入にもなるという主張がある。


キーワード ① 需要の価格弾力性 ② NAFTA ③ 可塑性(マレアビリティ) ④ 輸入関税 ⑤ 輸出補助金
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。農産物の価格は少し生産が余っただけでも急落するが、需要は伸び悩み、結局苦しむのは生産者である。多くの農家が廃業に追い込まれた後、今度は供給が不足すれば価格が高騰し、消費者が苦しむ。経済モデルでは、タイムラグがなく生産が瞬時に調整され、あらゆる現象は可逆的であるという仮定に基づいて構築されている。このような事態を回避する方法として輸入関税が有益だという主張がある。輸出補助金により、アメリカの穀物は必ず国際競争力を持つ。こうした輸出攻勢をかわすために輸入関税を設けることは正当防衛であるし、財政収入にもなるという主張がある。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
8 前半の復習 科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、前半の復習である。
①石川城太・椋寛・菊池徹(2013)『国際経済学をつかむ 第2版』有斐閣、37-43
浦田秀次郎・小川英治・澤田康幸『新版 はじめて学ぶ国際経済』有斐閣アルマ、29-40、43-51

②山本和人・鳥谷一生編『世界経済論』、97-106
生源寺眞一(2018)『新版 農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』家の光協会、14-44、88-109、110-124

③生源寺眞一(2018)『新版 農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』家の光協会、126-178
関良基(2012)『自由貿易神話解体新書』花伝社、103-150
コマ主題細目 ① 第2・3回の復習 ② 第4・5回の復習 ③ 第6・7回の復習
細目レベル ① 需要曲線と価格で挟まれた領域のことを消費者余剰と呼ぶ。供給曲線と価格で挟まれた領域のことを生産者余剰と呼ぶ。ある国が全く貿易を行っていないときの余剰の大きさと、貿易を行ったときの余剰の大きさを比較する。消費者余剰は貿易前よりも貿易後の方が大きくなる。生産者余剰は貿易前より貿易後の方が小さくなる。しかしながら、生産者余剰の減少分よりも消費者余剰の増加分の方が大きいため、消費者余剰と生産者余剰の合計(総余剰と呼ぶ)は貿易前よりも貿易後の方が大きくなる。したがって、貿易には利益があると言える。輸入される商品に関税が課されると消費者余剰は減少し、生産者余剰は増加する。政府は関税収入を得る。経済全体で見ると総余剰は減少する。現実の経済においては輸入保護政策が多くの国々によって適用されている。世界貿易機関(WTO)は世界における自由な貿易を推進することを目的としている。
② 自由貿易協定(FTA)は、協定加盟国間の貿易に関する輸入関税の撤廃を通じて貿易を自由化する一方、非加盟国に対しては独自の関税を適用する取り決めである。FTAは主に貿易への影響を通して、FTA加盟国や非加盟国の経済に影響をもたらす。基礎的な食料のような生活必需品は需要の価格弾力性が小さいため、供給不足に対して価格が大きく上昇する。自給率が100%以上であってもそれだけで安心ということにはならない。食料自給「力」が、食料安全保障という意味でも重要である。食料に代表される絶対的な必需品については、かりに自由貿易が機能不全に陥ったときでも、最低限の量が確保されていなければならない。アメリカやフランスやカナダは十分に食事ができている国であるが、農家に補助金を出して輸出を奨励している。大事なことは、自由貿易に委ねてよい領域と、国としてのミニマムの必要量の確保に責任を持つべき領域があることについて、他国の合意を得ていくことである。
③ 日本にも頑張って伸びてきた農業があり、それらに共通するのは、土地面積あたりの所得が大きいことである。こうした農業を集約型農業と呼ぶ。コメ・麦・豆・イモなどカロリーを多く含む農業の共通点は、それらが土地利用型農業であるということである。これから平地の水田農業では高齢農業者の引退が進む中で、農地を貸したいと考える農家が増えると見込まれる。品質の良さで勝負する日本の農産物には、国際社会で十分通用するものもあるが、価格で勝負となると全体的に旗色が悪いことは否定できない。しかしながら、日本にも農業が必要である別の理由もある。農産物の価格は少し生産が余っただけでも急落するが、需要は伸び悩み、結局苦しむのは生産者である。多くの農家が廃業に追い込まれた後、今度は供給が不足すれば価格が高騰し、消費者が苦しむ。特に世界の貧困層が飢餓に追い込まれる。このような事態を回避する方法として輸入関税が有益だという主張がある。アメリカの農家の農業所得に占める政府からの直接支払の比率は50%前後である。この制度は、国際社会から大きな批判を受けながらも維持され続けている。こうした輸出攻勢をかわすために輸入関税を設けることは正当防衛であるし、財政収入にもなるという主張がある。
キーワード ① 貿易の利益 ② 輸入関税 ③ WTO・FTA ④ 食料自給 ⑤ 可塑性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。消費者余剰は貿易前よりも貿易後の方が大きくなる。生産者余剰は貿易前より貿易後の方が小さくなる。総余剰は貿易前よりも貿易後の方が大きくなる。輸入される商品に関税が課されると消費者余剰は減少し、生産者余剰は増加する。政府は関税収入を得る。経済全体で見ると総余剰は減少する。世界貿易機関(WTO)は世界における自由な貿易を推進することを目的としている。自由貿易協定(FTA)は、協定加盟国間の貿易に関する輸入関税の撤廃を通じて貿易を自由化する一方、非加盟国に対しては独自の関税を適用する取り決めである。基礎的な食料のような生活必需品は需要の価格弾力性が小さいため、供給不足に対して価格が大きく上昇する食料自給「力」が、食料安全保障という意味でも重要である。集約型農業と土地利用型農業のメリットとデメリット。農産物の価格は少し生産が余っただけでも急落するが、需要は伸び悩み、結局苦しむのは生産者である。このような事態を回避する方法として輸入関税が有益だという主張がある。アメリカの輸出補助金は、国際社会から大きな批判を受けながらも維持され続けている。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
9 貿易と環境問題 科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、自由貿易が進むと農業大国の農地が拡大されて環境破壊を引き起こすほか、近代農業が大量のエネルギー消費産業であることを説明する。
①関良基(2012)『自由貿易神話解体新書』花伝社、153-161


②H・E・デイリー、佐藤正弘訳(2014)『エコロジー経済学』NTT出版340-341

③関良基(2012)『自由貿易神話解体新書』花伝社、178-188
コマ主題細目 ① 自由貿易と森林破壊 ② WTO・FTAと各国の環境法 ③ 農業のエネルギー効率 ④ ⑤
細目レベル ① ブラジルの大豆収穫面積は、ちょうどWTOが発足した1995年、多くの国々が農産物貿易を自由化したことを契機として急上昇に転じている。WTO発足からわずか10年で2倍以上に拡大した。アマゾンの熱帯雨林破壊の大きな原因は、大豆プランテーションの拡大である。単純計算では、1990年から2005年までの間のアマゾンの森林消失の約30%は大豆栽培面積の拡大で説明できる。中国は1996年に大豆の貿易の自由化を実施して以来、大豆の輸入量が伸びていき、現在は世界第1位の大豆輸入国である。ブラジル同様、インドネシアの熱帯雨林も大幅に減少している。インドネシアの森林破壊の大きな原因はアブラヤシのプランテーションの拡大である。ヤシ油の輸入量を大量に増やしたのは中国とインドである。
② 世界各国の環境法は、WTOやFTAによってそれらの法律が貿易の障壁であると公言され、脅かされる場合がある。WTOはアメリカに対して、カメを混獲しないようにする道具を義務づけていない国からのエビの輸入を禁止した絶滅危惧種法の適用を除外させた。メキシコはGATTの下で、アメリカ海洋哺乳動物保護法における、イルカに害を与えない方法で獲得されたマグロについての条項に反する決定を勝ち得た。NAFTAにより、企業は、政府の決定や規則が投資に影響を及ぼす場合、NAFTA加盟国の政府を訴えることができる。カナダが健康リスクのためにあるガソリン添加物を禁止した際、エチル社はカナダを訴えた。カナダはエチル社の訴訟費用と賠償金を支払っただけでなく、禁止も取り消すこととなった。
③ 現在でもアジアのいくつかの地域では牛や水牛の労働力を使って農業が行われている。畜力を用いた小規模農業は非効率なものに思えてくる。確かに経済学的な観点で言えば効率的とは言えない。ところが、エネルギーの観点(エネルギー効率;エネルギー産出/投入比)からみると、畜力を利用した小規模農業の方が機械化された大規模農業よりも効率的である。人力と畜力のみに依存する農業は、エネルギー投入1に対して10のエネルギー産出をもたらすが、アメリカの機械農業は、輸送や加工まで含めればエネルギー投入1に対して0.1の産出しかもたらさない。それは、石油を多く用いていることの必然的な結果である。しかも、石油の価格が高騰すれば、経済学的な観点からみても非効率な農業になってしまう。


キーワード ① プランテーション ② 環境法 ③ 大規模農業 ④ 小規模農業 ⑤ エネルギー産出/投入比
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。アマゾンの熱帯雨林破壊の大きな原因は、大豆プランテーションの拡大である。中国は1996年に大豆の貿易の自由化を実施して以来、大豆の輸入量が伸びていき、現在は世界第1位の大豆輸入国である。インドネシアの熱帯雨林も大幅に減少している。インドネシアの森林破壊の大きな原因はアブラヤシのプランテーションの拡大である。ヤシ油の輸入量を大量に増やしたのは中国とインドである。世界各国の環境法は、WTOやFTAによってそれらの法律が貿易の障壁であると公言され、脅かされる場合がある。エネルギー産出/投入比からみると、畜力を利用した小規模農業の方が機械化された大規模農業よりも効率的である。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
10 自由競争の意味についての混乱(1)
農産物取引における寡占
科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、「競争」の意味に混乱があることを指摘する。自由貿易賛成派が用いる第2章で説明した経済理論における競争は、現実の世界経済で起こっている寡占市場とは異なり、農家や消費者の利益は小さくなっていることを理解する。
①H・E・デイリー、佐藤正弘訳(2014)『エコロジー経済学』NTT出版、335-337

②荏開津典生・鈴木宣弘(2020)『農業経済学 第5版』岩波書店、80-83

③ラジ・パテル、佐久間智子訳(2010)『肥満と飢餓』作品社、28-35
コマ主題細目 ① 競争の意味のズレ ② 大企業と農家の取引 ③ コーヒーの取引の事例 ④ ⑤
細目レベル ① 第2回で学んだ経済モデルは、完全競争市場を想定している。完全競争市場では、ほぼ同じ規模の企業が多数存在して競争している。このモデルにおいては確かに、自由化が行われると効率的な(無駄のない)結果が生じる。しかしながら、現実のグローバル競争は完全競争市場ではない。グローバル化は、企業に世界規模で競い合うことを強いる。しかし、外国市場に参入するだけの資源を持っているのは、極めて大きな企業だけである。大企業は規模の経済を有しているために、ローカルな中小企業を破産に追い込んだり買収したりすることもできる。そうすることで、大企業はますます大きくなり、企業の総数は減っていく。こうした集中は農業部門では珍しくない。遠方から食料を輸入し、加工して出荷するには巨額の資本が必要であり、お金がなければこのビジネスに参入できない。これは規模がものをいうビジネスでもある。つまり、企業の規模が大きければ大きいほど、より大量の食料を扱うことができ、その結果、コストを最小にすることができる。
② 農業(農家)が農産物の売り手としても農業資材の買い手としても零細で多数の経営から成り立っているのに対して、農業の加川上にある農業資材産業も、川下にある食品産業も、少数の大きな企業がかなりの部分を占めていることが多い。零細多数の売り手(または買い手)と大規模少数の買い手(または売り手)とが取引することになれば、どうしても零細多数の方が立場が弱くなるのは当然である。市場での取引におけるこのような力の違いを市場交渉力という。市場交渉力の弱い農業では、大企業から肥料や農機具を買うときには不当に高い価格を支払わされたり、逆に生産物を売るときには不当に安く買いたたかれる可能性がある。これが農業と他の産業の交易条件問題である。
③ ウガンダには生活必需品を満足に買えないほど生活に困っているコーヒー栽培農家がいる。最低でもコーヒー豆が1キロ34セントでないと生活に困るのだが、実際には1キロ14セントである。経済理論によれば、こうしたコーヒー豆生産者は、コーヒーの生産から撤退して他の作物を生産すべきだということになる。だが、現実には他の作物を生産するには気候や土壌が適していない。農業をやめて都市に行けば仕事にありつけるかもしれないが、その望みもない場合、しかたなく、コーヒーの生産を続けるしかない。農民は1キロ14セントで仲買人に売り、仲買人はそれを加工工場に19セントで売る。工場はそれを加工して1キロ24セントで売る。袋詰めにされてウガンダの首都まで運ばれたコーヒーは1キロ26セントになっている(輸送業者の付加価値は1キロ2セント)。首都のコーヒー輸出業者が輸出する(この輸出業者もほとんど利益がないという)。コーヒーがネスレ社のコーヒー加工工場があるウエスト・ロンドンに到着すると、1キロ1ドル64セントになっている(増加分は輸入業者の付加価値)。この時点でいちばん最初から10倍の価格になっている。さらにネスレ社のコーヒー加工工場で焙煎された豆は1キロ26ドル40セントになっている。つまりネスレ社の付加価値は1キロ24ドル76セントである。ネスレ社がコーヒー生産者の受け取る金額を引き上げることは十分可能なはずであるが、「安く買って、高く売る」ことをしないと競合他社に負けてしまう。ネスレはその巨大な規模によって、生産者、加工工場、輸出業者、輸入業者との取引条件を一方的に決定し、買いたたくことができる。


キーワード ① 規模の経済 ② 寡占 ③ 市場占有率 ④ 市場交渉力 ⑤ 交易条件
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。完全競争市場では、確かに、自由化が行われると効率的な結果が生じる。しかしながら、現実のグローバル競争は完全競争市場ではない。グローバル化は、企業に世界規模で競い合うことを強いる。しかし、外国市場に参入するだけの資源を持っているのは、極めて大きな企業だけである。大企業はますます大きくなり、企業の総数は減っていく。市場交渉力の弱い農業では、大企業から肥料や農機具を買うときには不当に高い価格を支払わされたり、逆に生産物を売るときには不当に安く買いたたかれたりする可能性がある。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
11 自由競争の意味についての混乱(1)
種子は誰のものか?
科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、これまで公共のものとされていた種子が、法律の廃止や改正によってグローバル企業の専有物となりつつあり、日本でも農業で寡占市場化が進むかもしれないことを説明する。
①鈴木宣弘(2022)『協同組合と農業経済』東京大学出版会、45-49

②鈴木宣弘(2022)『協同組合と農業経済』東京大学出版会、49-53

③鈴木宣弘(2022)『協同組合と農業経済』東京大学出版会、54-55
コマ主題細目 ① 種子の私物化 ② 種子の私物化の様々なデメリット ③ 種は誰のものか ④ ⑤
細目レベル ① コーヒーの国際取引で、ネスレなどのグローバル食品企業や種子・農薬企業などの行動で問題にされるのは、農家から農産物を買いたたいて(種を含む生産資材は高く売りつけ)、消費者に食料を高く売ってマージンを得ていることである。諸外国で、それに農家、国民が運動を起こしているときに、日本ではグローバル企業が進出しようとしているという主張もある。2017年に種子法の廃止が採決された。これまでは、都道府県が優良品種を安く普及させるために種子法を根拠に国が予算措置をしてきた。その根拠法がなくなるため、今後は種子の開発は民間企業に委ねられることになる。1951年から2018年までのデータを見ると、民間による種子供給が増えている野菜の種子価格は17.2倍になったのに対し、種子法によって公共で管理されてきた稲・麦・豆は2~5倍に抑制されている。また、農業競争力強化支援法により公共種子の知見が海外を含む民間企業に払い下げられ、さらに種苗法が改定され、農家の自家増殖が制限され、企業が払い下げ的に取得した種を農家は毎年購入せざるを得ない流れができた。
② 企業が主導して種の供給から農産物の販売まで生産・流通過程をコントロールしやすい環境が提供されることのデメリットがいくつかある。種を握った種子・農薬会社が、種と農薬をセットで高く買わせ、できた生産物も全量安く買い取り、販売ルートは確保して高く売るという形で、農家を囲い込んでいくことが懸念される。本来、農協が共販によって取引交渉力の強い相手と対峙して農家の利益を守ってきたのであるが、そうした農協の役割も削がれてしまうリスクがある。これは、農家・農協のみならず、地域の食料生産・流通・消費が企業の支配下に置かれることを意味するかもしれない。地域の伝統的な種が衰退し、種の多様性も伝統的食文化も壊され、災害にも弱くなる。
③ 種は本当は誰のものなのかということを、もう一度私たちは考え直す必要があるという主張がある。食料は安全保障の要であり、その源である種は、何千年もみんなで守り育ててきたものである。各地域に根付いた伝統的な種は、地域農家が代々育成してきた一種の共有資源である。地域全体として膨大なコストをかけて守ってきたものであり、個々の所有権はなじまないのである。「自家増殖禁止がグローバルスタンダードであり、日本がようやく世界に追いついた」という意見もあるが、アメリカでは、原則、自家増殖を禁止していない。EUでも,飼料作物、穀類、などは自家増殖禁止の例外に指定されているし、小規模農家はそもそも許諾料が免除されている。


キーワード ① 種子法 ② 種苗法 ③ 遺伝子組み換え作物(GMO) ④ グリホサート ⑤ コモンズ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。2017年に種子法の廃止が採決された。今後は種子の開発は民間企業に委ねられることになる。また、農業競争力強化支援法により公共種子の知見が海外を含む民間企業に払い下げられ、さらに種苗法が改定され、農家の自家増殖が制限され、企業が払い下げ的に取得した種を農家は毎年購入せざるを得ない流れができた。企業が主導して種の供給から農産物の販売まで生産・流通過程をコントロールしやすい環境が提供されることのデメリットがいくつかある。種を握った種子・農薬会社が、種と農薬をセットで高く買わせ、できた生産物も全量安く買い取り、販売ルートは確保して高く売るという形で、農家を囲い込んでいくことが懸念される。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
12 多国籍企業と直接投資 科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、大企業が資金を投入して外国に営業拠点を設け、そこで事業活動を展開して多国籍化している現状について解説する。
①石川城太・椋寛・菊池徹(2013)『国際経済学をつかむ 第2版』有斐閣、235-238

②石川城太・椋寛・菊池徹(2013)『国際経済学をつかむ 第2版』有斐閣、238-242

③石川城太・椋寛・菊池徹(2013)『国際経済学をつかむ 第2版』有斐閣、242-248
コマ主題細目 ① 国境を越える企業 ② 直接投資の目的 ③ 直接投資の影響 ④ ⑤
細目レベル ① 資金を投入して外国に営業拠点を設け、そこで事業活動をしてはじめて企業は多国籍化する。投資先企業の経営の支配あるいは経営への参加を目的とした外国への投資活動を直接投資または海外直接投資(FDI)という。直接投資の形態としては(1)グリーン・フィールド投資:投資先の国に新規に法人を設立する形態(2)M&A投資:外国の既存の企業の吸収合併や買収をする形態、がある。M&A投資は比較的少ない資金で海外に進出でき、また熟練した労働者や技術・経営ノウハウなど投資先の企業がもつ様々な経営資源を活用できるというメリットがある。全投資のほとんどをM&A投資が占めている。ただし、先進国に比べて現地企業が十分に育っていない発展途上国に関しては、グリーン・フィールド投資が多く見られる。
② 直接投資のメリットには次のものが挙げられる。(1)貿易障壁の回避:外国が高い関税などを設けている場合、現地消費者向けの生産拠点を外国内に設けて、現地生産により現地の消費者に直接販売すれば、貿易障壁を回避することができる。(2)生産コストの削減:進出先の国で労働者を低い賃金で雇用することができたりする場合、外国の方がより低い生産コストで生産活動を行うことができる。このとき、企業は外国に生産拠点を設けてコストの削減を図り、そこから現地のみならず本国や他国に商品の供給を行うことで利益を拡大できる。ある海外工場で使用される部品や中間財などが同一企業の他国の拠点から提供される場合には、企業内貿易が行われることになる。(3)販売拠点の設立:企業が直接投資により外国に販売拠点を設立し、消費者のニーズに合わせた製品開発や販売促進活動を行うことにより、自社製品の認知度・普及度が低い外国市場で自社製品の需要を高めることができる。(4)天然資源の安定確保:直接投資により外国の天然資源の開発プロジェクトに参加することで、外国に資源開発拠点を確保でき、価格変動リスクに直面することなく資源の安定確保を図ることができる。
③ 受け入れ国へのプラスの影響としては、設備投資が促進され経済成長を促す資本蓄積効果や、現地労働者の雇用機会を増大させる雇用増大効果、進出企業のコストが削減されるために競争が活発になり、非効率な企業の退出や価格の低下などをもたらす競争促進効果などが挙げられる。受け入れ国のマイナスの影響としては、進出企業のコスト削減がコストの高い国内企業の撤退や新規参入の抑制につながり、上記の競争促進効果とは逆に多国籍企業の価格支配力を高め競争を阻害してしまう可能性が指摘されている。さらに、多国籍企業の活動が児童労働などの労働問題を引き起こしているとの指摘もある。投資国に与える影響としては、直接投資の増加による国内生産拠点の縮小が国内産業の衰退をもたらし、国内の雇用が減少し技術水準が低下するという、いわゆる産業の空洞化の懸念が1980年代頃から盛んに論じられてきた。比較優位論に基づけば、国内の生産拠点の縮小を伴う直接投資は比較劣位産業で起こる場合が多く、したがって、その進行は比較優位にもとづいた生産特化を促し、特化の利益を高める効果があると考えられる。


キーワード ① 多国籍企業 ② グリーン・フィールド投資 ③ M&A投資 ④ 企業内貿易 ⑤ 産業空洞化
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。資金を投入して外国に営業拠点を設け、そこで事業活動をしてはじめて企業は多国籍化する。投資先企業の経営の支配あるいは経営への参加を目的とした外国への投資活動を直接投資または海外直接投資(FDI)という。受け入れ国へのプラスの影響としては、設備投資が促進され経済成長を促す資本蓄積効果や、現地労働者の雇用機会を増大させる雇用増大効果、などが挙げられる。受け入れ国のマイナスの影響としては、児童労働などの労働問題などがある。投資国に与える影響としては、いわゆる産業の空洞化の懸念が1980年代頃から盛んに論じられてきた。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
13 グローバリゼーションで誰が得をしたのか? 科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、経済のグローバル化、企業の多国籍化によって、主流派の経済学が予想していたことに反して、所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。
①ブランコ・ミラノヴィッチ、村上彩訳(2012)『不平等について』みすず書房、92-114

②ブランコ・ミラノヴィッチ、立木勝訳(2017)『大不平等』みすず書房、11-26

③ブランコ・ミラノヴィッチ、立木勝訳(2017)『大不平等』みすず書房、27-32
コマ主題細目 ① 所得平等化の理論 ② エレファントカーブ ③ 所得の絶対増加の分布 ④ ⑤
細目レベル ① 主流の経済学理論によれば、グローバリゼーションで世界各国の所得は収束しなければならない。なぜならグローバリゼーションの下では、貧しい国々は豊かな国々よりも急速に発展することになっているからである。その第一の理由は、豊かな世界からの対外直接投資の主な受け手は貧しい国々であるはずだからである。低い賃金と投資に対する高い収益に魅せられて、豊かな国々の資本家たちは貧しい国々に投資するだろう。そうなれば貧しい国々の成長率は上昇するに違いない。第二の理由としては、豊かな国々で成熟した技術を貧しい国々は比較的低いコストで取り入れて、必要とあらば模倣し、技術的に追いついていくプロセスを開始することができるからである。第Ⅲの理由は、貧しい国々が比較的得意とする物品の生産に特化することで、成長率を加速させることができるからである(比較優位の原理)。しかしながら、現実は理論どおりにはならなかった。海外直接投資の多くは、豊かな国から豊かな国へのものである。
② グローバリゼーションの利益は均等に分配されてはいないことを「エレファントカーブ」は示した。エレファントカーブでは、元の所得に対して所得が何%増えたかをプロットしていくことで、過去数十年間にどの所得層が最も多くの利益を得たかがわかる。1988-2008の20年間は、ベルリンの壁崩壊からリーマンショックまでの時期とほぼ重なる。これは「高度グローバリゼーション」期といえる時期でもあって、中国やソ連や東欧などの計画経済の国々が資本主義化し、通信革命によって、企業は、遠い国に工場を移転しても、本国からの管理を放棄することなしに、現地の安価な労働力を利用できるようになった。そうした二つの偶然が重なったことによって、いわゆる「周縁」市場が開放され、「中核」となる諸国が周縁の労働力を現地で雇えるようになった。しかし、グローバル化の利益は平等には分配されてはいない。「新興グローバリゼーション中間層」の所得の伸びが最も大きい一方で、「豊かな世界の下位中間層」の所得はほとんど伸びていない。1980年代から始まる新自由主義は保護主義的な福祉体制よりもグローバリゼーションを受け入れる方が豊かになると主張していたが、現在手に入るデータによると逆の結果が生じている。また、「グローバルな超富裕層」も所得の伸びがかなり大きい。
③ 1988-2008年の全世界の所得増加の合計を100とする。絶対増加分の44%は世界で最も裕福な5%の人たちの手に入った。しかも、全増加分のほぼ5分の1は上位1%層が受け取っている。対照的に、現在のグローバリゼーションで最大の受益者だとされた「新興グローバル中間層」は、グローバルなパイの増加分の2-4%、しか受け取っていない。「相対的な所得増」の図(=エレファントカーブ)と「絶対的な所得増」の図を比較することで、グローバル化がもたらした変化を分析するときによく目にする、一方的な決めつけなどできないということである。新興市場経済の中間層の所得が相対的に大きく伸びたからといって、それが必ずしも絶対的利益の増加につながっていないことがわかる。グローバル化が善悪どちらの力にもなることを、意識する必要がある。


キーワード ① エレファントカーブ ② 新興グローバリゼーション中間層 ③ 豊かな世界の下位中間層 ④ グローバルな超富裕層 ⑤ 相対的・絶対的な所得増
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。経済学理論によれば、グローバリゼーションで世界各国の所得は収束しなければならないと言われている。いわゆる「周縁」市場が開放され、「中核」となる諸国が周縁の労働力を現地で雇えるようになった。しかし、グローバル化の利益は平等には分配されてはいない。「新興グローバリゼーション中間層」の所得の伸びが最も大きい一方で、「豊かな世界の下位中間層」の所得はほとんど伸びていない。また、新興市場経済の中間層の所得が相対的に大きく伸びたからといって、それが必ずしも絶対的利益の増加につながっているとは限らない。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
14 グローバル化時代の地域経済 科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、多国籍企業時代の現在、日本では東京一極集中の状態になっており、地域で稼がれた所得が東京の本社に流れていき、地域に環流していないことをデータを示しながら解説する。
①岡田知弘・川瀬光義・鈴木誠・富樫幸一(2022)『国際化時代の地域経済学 第4版』有斐閣アルマ、94-98、107-109

②日本政策投資銀行 株式会社価値総合研究所(2019)『地域経済循環分析の手法と実践』ダイヤモンド社、40-42

③日本政策投資銀行 株式会社価値総合研究所(2019)『地域経済循環分析の手法と実践』ダイヤモンド社、46-47
コマ主題細目 ① 多国籍企業時代と東京一極集中 ② 地域経済循環 ③ 悪循環のパターン ④ ⑤
細目レベル ① 経済のグローバル化によって、ニューヨーク、ロンドン、東京などの主要都市が多国籍企業の拠点となった。多国籍企業論では、グローバルな組織管理体制に注目して、組織管理体制のそれぞれの機能に対応した都市の階層構造が形成されることを強調している。しかしながら、こうした階層構造の形成によって、それぞれの都市の自律性が外部資本の進出によって失われてきている側面もある。例えば、企業城下町が本社の工場閉鎖の決定で衰退したり、地域内で生産された価値の多くが、大企業組織の本社-分工場(支店)関係を通して、本社所在地の東京に移転している(これに、海外現地法人からの所得移転も加わる)。2012年の第1次産業・第2次産業・第3次産業の生産額の都道府県シェアと、法人企業所得の同様のシェアを比較すると、東京が、それぞれの産業部門の生産額をはるかに上回る、5割以上の法人企業所得を占有していることが分かる。
② 地域経済循環構造とは「生産・販売(所得の向上)」→「分配(家計や企業の所得の受け取り)」→「支出(消費や投資等の所得の使い方)」→ ……の経済の三面における所得の循環と地域内外の所得の流出入を示すものである。「生産・販売」は地域の事業所が財・サービスを生産・販売して所得を得ることであり、この生産面で得た所得が家計や企業に「分配」される。そして、分配された所得を消費(食料品などの購入)や投資(生産設備やオフィスのPCなどの購入)などで「支出」することになる。さらに支出面で消費・投資されたお金が環流して、再び生産・販売につながり、地域の所得を拡大させることができる。以上述べた円環に出入りするお金も大変重要である。居住地と勤務地が異なり、勤務地で得た所得を居住地に持ち帰る場合には勤務地から所得が流出する。同じ企業でも本社と工場、事業所の立地地域が異なり、企業内で本社への送金などによって本社の立地する地域(主に東京)に所得が流入する。居住地に持ち帰った所得を他地域で買い物などの消費をすると所得が流出する。居住地の所得が少なく、国や他地域から交付金や補助金などの財政移転がある場合には、所得が流入する。
③ 企業誘致が成功しても住民には所得が還元されないこともある。原因は、その地域における所得循環構造が構築されていないことである。このような地域では、地域内の企業との取引が少なく、販売・調達ともに地域外の企業と行うことが多い。このような地域では、生産面で得た所得を住民や企業に分配する際に、本社機能などに企業所得や財産所得として流出する場合があり、これらの流出所得が多ければ地域の所得増が小さくなる。特に子会社の場合には、配当やロイヤリティなどの所得流出が大きくなる。さらに、このような地域では生産面が好調であるため、国や都道府県からの財政移転などの公共の所得移転は少なく、所得増加は見込めない。また、原材料を地域外から調達していれば、お金は地域の外に出て行く。


キーワード ① 東京一極集中 ② 地域経済循環構造 ③ 生産・販売 ④ 分配 ⑤ 支出
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。経済のグローバル化によって、東京などの主要都市が多国籍企業の拠点となった。それに伴い、主要都市以外の自律性が外部資本の進出によって失われてきている。地域経済循環構造とは「生産・販売(所得の向上)」→「分配(家計や企業の所得の受け取り)」→「支出(消費や投資等の所得の使い方)」→ ……の経済の三面における所得の循環と地域内外の所得の流出入を示すものである。企業誘致が成功しても住民には所得が還元されないこともある。原因は、その地域における所得循環構造が構築されていないことである。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
15 後半の復習 科目の中での位置付け 第1回では、貿易論争の大まかな対立点について確認する。第2~4回では、自由貿易賛成派が根拠とする「国益増進」とは何なのか、なぜ保護貿易政策に反対するのかを説明した後で、WTOやFTAについて解説する。第5・6回では、「食料自給率」の正確な意味を理解した上で、食料の分野では自由貿易に委ねてよい部分とそうでない部分があることなどを確認する。第7回では、農業の特性を考慮して、輸入関税や輸出補助金の功罪について論じる。第9回では、自由貿易が引き起こす環境問題について解説する。第10・11回では、自由貿易賛成派の経済理論での競争市場は、現実の経済の寡占市場とは異なり、自由貿易の推進が「国益増進」にはならない可能性について説明する。第12~14回では、企業の多国籍化により貿易のあり方が様変わりしていることを説明した後で、そうしたグローバル化によって、自由貿易推進派が予想していたことに反して、国際的なあるいは国内的な所得の平等化が起こっているとは言えないことを、データを示しながら解説する。今回は、後半の復習である。
①関良基(2012)『自由貿易神話解体新書』花伝社、153-161、178-188
H・E・デイリー、佐藤正弘訳(2014)『エコロジー経済学』NTT出版340-341、335-337
荏開津典生・鈴木宣弘(2020)『農業経済学 第5版』岩波書店、45-55、80-83
ラジ・パテル、佐久間智子訳(2010)『肥満と飢餓』作品社、28-35

②鈴木宣弘(2022)『協同組合と農業経済』東京大学出版会、45-55
石川城太・椋寛・菊池徹(2013)『国際経済学をつかむ 第2版』有斐閣、235-248

③ブランコ・ミラノヴィッチ、村上彩訳(2012)『不平等について』みすず書房、92-114
ブランコ・ミラノヴィッチ、立木勝訳(2017)『大不平等』みすず書房、11-32
岡田知弘・川瀬光義・鈴木誠・富樫幸一(2022)『国際化時代の地域経済学 第4版』有斐閣アルマ、94-98、107-109
日本政策投資銀行 株式会社価値総合研究所(2019)『地域経済循環分析の手法と実践』ダイヤモンド社、40-47
コマ主題細目 ① 第9・10回の復習 ② 第11・12回の復習 ③ 第13・14回の復習 ④ ⑤
細目レベル ① アマゾンの熱帯雨林破壊の大きな原因は、大豆プランテーションの拡大である。中国は1996年に大豆の貿易の自由化を実施して以来、大豆の輸入量が伸びていき、現在は世界第1位の大豆輸入国である。インドネシアの熱帯雨林も大幅に減少している。世界各国の環境法は、WTOやFTAによってそれらの法律が貿易の障壁であると公言され、脅かされる場合がある。エネルギー産出/投入比からみると、畜力を利用した小規模農業の方が機械化された大規模農業よりも効率的である。現実のグローバル競争は完全競争市場ではない。グローバル化は、企業に世界規模で競い合うことを強いる。しかし、外国市場に参入するだけの資源を持っているのは、極めて大きな企業だけである。大企業はますます大きくなり、企業の総数は減っていく。市場交渉力の弱い農業では、大企業から肥料や農機具を買うときには不当に高い価格を支払わされたり、逆に生産物を売るときには不当に安く買いたたかれたりする可能性がある。
② 2017年に種子法の廃止が採決された。また、農業競争力強化支援法により公共種子の知見が海外を含む民間企業に払い下げられ、さらに種苗法が改定され、農家の自家増殖が制限され、企業が払い下げ的に取得した種を農家は毎年購入せざるを得ない流れができた。種を握った種子・農薬会社が、種と農薬をセットで高く買わせ、できた生産物も全量安く買い取り、販売ルートは確保して高く売るという形で、農家を囲い込んでいくことが懸念される。投資先企業の経営の支配あるいは経営への参加を目的とした外国への投資活動を直接投資または海外直接投資(FDI)という。受け入れ国へのプラスの影響としては、設備投資が促進され経済成長を促す資本蓄積効果や、現地労働者の雇用機会を増大させる雇用増大効果、などが挙げられる。受け入れ国のマイナスの影響としては、児童労働などの労働問題などがある。投資国に与える影響としては、いわゆる産業の空洞化の懸念が1980年代頃から盛んに論じられてきた。
③ 経済学理論によれば、グローバリゼーションで世界各国の所得は収束しなければならないと言われている。いわゆる「周縁」市場が開放され、「中核」となる諸国が周縁の労働力を現地で雇えるようになった。しかし、グローバル化の利益は平等には分配されてはいない。「新興グローバリゼーション中間層」の所得の伸びが最も大きい一方で、「豊かな世界の下位中間層」の所得はほとんど伸びていない。また、新興市場経済の中間層の所得が相対的に大きく伸びたからといって、それが必ずしも絶対的利益の増加につながっているとは限らない。経済のグローバル化によって、東京などの主要都市が多国籍企業の拠点となった。それに伴い、主要都市以外の自律性が外部資本の進出によって失われてきている。企業誘致が成功しても住民には所得が還元されないこともある。原因は、その地域における所得循環構造が構築されていないことである。


キーワード ① 環境問題 ② 寡占市場 ③ 直接投資 ④ エレファントカーブ ⑤ 地域経済循環
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。アマゾンの熱帯雨林破壊の大きな原因は、大豆プランテーションの拡大である。中国は1996年に大豆の貿易の自由化を実施して以来、現在は世界第1位の大豆輸入国である。世界各国の環境法は、WTOやFTAによってそれらの法律が貿易の障壁であると公言され、脅かされる場合がある。エネルギー産出/投入比からみると、畜力を利用した小規模農業の方が機械化された大規模農業よりも効率的である。現実のグローバル競争は完全競争市場ではない。大企業はますます大きくなり、企業の総数は減っていく。市場交渉力の弱い農業では、大企業から肥料や農機具を買うときには不当に高い価格を支払わされたり、逆に生産物を売るときには不当に安く買いたたかれたりする可能性がある。種子法の廃止・種苗法の改正により、農家は種を大企業から毎年購入せざるを得ない流れができた。投資先企業の経営の支配あるいは経営への参加を目的とした外国への投資活動を直接投資または海外直接投資(FDI)という。経済学理論によれば、グローバリゼーションで世界各国の所得は収束しなければならないと言われている。グローバル化の利益は平等には分配されてはいない。経済のグローバル化によって、東京などの主要都市が多国籍企業の拠点となった。それに伴い、主要都市以外の自律性が外部資本の進出によって失われてきている。
履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
比較優位・貿易の利益 消費者余剰とは何かを理解している。生産者余剰とは何かを理解している。貿易を自由化すると生産者余剰の大きさと消費者余剰の大きさがそれぞれどうなるかを理解している。保護貿易の政策にはどんなものがあるか説明できる。輸入関税を導入すると、貿易が完全自由化された状態と比べて消費者余剰の大きさと生産者余剰の大きさがそれぞれどうなるか、関税収入はどれくらいになるかを理解している。幼稚産業保護論とは何かについて理解している。 生産者余剰、消費者余剰、関税、非関税障壁、幼稚産業保護論 14 1・2・3
WTOとFTA・EPA 世界貿易機関(WTO)とその前身期間である関税と貿易に関する一般協定(GATT)は何を目的として誕生したかを理解している。「最恵国待遇」とは何か、「内国民待遇」とは何かについて理解している。WTOのラウンドの最近の流れを説明できる。自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)はどんな取り決めであるかを理解している。FTA・EPAとWTOの整合性について説明できる。FTA急増の原因、FTAを妨げる要因を理解している。FTAが加盟国や非加盟国の経済に与える影響について理解している。 最恵国待遇、内国民待遇、ラウンド、TPP 10 3・4
貿易と食糧自給 現在の世界の食料事情について説明できる。カロリーベースの食料自給率、生産額ベースの食料自給率、穀物自給率とは何かについて説明でき、それらがどのような要因で変化するのかについて理解している。食料自給率が100%であっても十分でない理由を理解している。食料自給率と「食料自給力」の違いを理解している。日本の農業が先進国の農産物輸出国と比べてどのような特徴を持っているかを理解している。日本の農業がどんなプラスの副産物を生み出しているのか理解している。 カロリーベースの食料自給率、生産額ベースの食料自給率、穀物自給率、食料自給「力」 16 5・6
貿易と飢餓・失業 農産物の需要の特性と、そこから生じる価格の急激な変化について理解している。自由貿易推進派が用いる経済学のモデルにおいては可塑性(マレアビリティ)が仮定されているが、現実の経済ではそれが成立していないため、一度経営破綻した農家が農業をすぐに再開したり、死んだ消費者が生き返ったりはしない、ということを理解している。アメリカの農業がなぜ国際競争力を持っているのかを理解している。どのような場合に輸入関税が正当防衛とみなされるかを理解している。 需要の価格弾力性、可塑性(マレアビリティ)、輸入関税、輸出補助金 14 7
貿易と環境問題 大豆やアブラヤシのプランテーションが拡大されたアマゾンやインドネシアの熱帯雨林でどのようなことが起こっているか説明できる。そして、そうした出来事と自由貿易化の関係について説明できる。WTOやFTAによって世界各国の環境法がどのように脅かされているか、例を挙げて説明できる。小規模農業は、お金の面で見れば大規模農業よりも非効率であるが、エネルギーの面から言えば大規模農業よりもむしろ効率的であるのはなぜかを説明できる。 プランテーション、森林破壊、環境法、エネルギー産出/投入比 10 9
貿易と寡占市場 自由貿易推進派が用いている第2回で学んだ経済理論における競争と、現実のグローバル競争は異なることを理解できる。現実の競争の結果、寡占化が進んだ食料の市場では農家や消費者の余剰が完全競争市場の場合と比べてどうなるかを理解している。同様に、寡占化が進んだ市場における農家の交易条件について説明できる。農家によって栽培されたコーヒーが加工されるまでに生ずる、それぞれの段階の付加価値の大きさがどれくらいかを理解している。種子法廃止や種苗法改定の意味を理解できる。共有されていた種が私有に代わることのメリット・デメリットを理解できる。 完全競争市場、寡占市場、規模の経済、付加価値、種子法、種苗法 16 10・11
多国籍企業とグローバル化化 多国籍企業と海外直接投資の意味を理解している。企業にとっての直接投資のメリットを理解している。直接投資が投資国と受入国に与える影響について理解している。主流の経済学理論がグローバル化により世界の人々の所得が平等化すると主張する理由について理解している。「エレファントカーブ(=「相対的な所得増」の図)」が示すことを理解している。「絶対的な所得増」の図が示すことを理解している。グローバル化によって日本国内の所得の流れがどうなったか説明できる。地域経済循環構造とは何かを説明できる。地域経済の悪循環のパターンについて説明できる。

多国籍企業、直接投資、エレファントカーブ、東京一極集中、地域経済循環構造 20 12・13・14
評価方法 期末試験100%で評価する。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 なし
参考文献 石川城太・椋寛・菊池徹(2013)『国際経済学をつかむ 第2版』有斐閣生源寺眞一(2018)『新版 農業がわかると、社会のしくみが見えてくる』家の光協会関良基(2012)『自由貿易神話解体新書』花伝社ブランコ・ミラノヴィッチ、村上彩訳(2012)『不平等について』みすず書房
実験・実習・教材費 なし