区分
環境データサイエンス科目 社会環境科目 社会環境展開科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門性
理解力
実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
専門知識
教養知識
思考力
実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
多様化する環境問題や地域社会の諸問題に関心を持ち、環境・情報・社会に関連する幅広い基礎知識と専門的な理解を深めると共に、学際的な柔軟性を有し、実践的な能力を有する。グローバルな視野と研究調査力を持ち、昨今の情報社会に貢献できる力を有する。企業・地域社会などのあらゆるコミュニティに寄与する組織的な活動能力を有する。
科目の目的
経済学の先人たちは経済問題や環境問題の本質を洞察する力を持っていたが、彼らの思想は極端な思想を持った人々の都合に合わせ単純化・歪曲されて流布されることが多い(例えば、アダム・スミスが理想とした経済は、新自由主義のそれとは異なるし、マルクスが理想とした経済は、ソビエト連邦の計画経済とは大きくかけ離れている)。先人の知恵を再発見し、かつ特定の人々にそれを悪用されることを防ぐことが本科目の目的である。
到達目標
それぞれの経済学者が活躍した時代背景を踏まえながら、彼らの問題意識とその問題対応に関する提言を適切に理解できる。
科目の概要
本講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。
科目のキーワード
①純生産物②再生産③富④株式会社⑤公平な観察者⑥限界概念⑦均衡⑧外部性⑨自己実現⑩科学の統合
授業の展開方法
パワーポイント(スライド資料も紙で配付する)を用いながら講義を進める。上映するスライドはカラーであるが、配布する紙のスライド資料には色が付いておらず、またメモのスペースが取られているので、受講生は講義を聴きながら適宜鉛筆でメモを取ったりマーカーで印をつけたりする。毎回、理解度チェックのための演習問題を配布し、授業の中間や終わりに解き、その後解説をする。また、毎回、次回の予習のためのプリントを配布する。
オフィス・アワー
【火曜日】2時限目、【木曜日】3・4時限目、【金曜日】2時限目(後期のみ)、昼休み、3・4時限目
科目コード
ENS627
学年・期
3年・前期
科目名
環境経済学史
単位数
2
授業形態
講義
必修・選択
選択
学習時間
【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目
なし
展開科目
関連資格
担当教員名
山根卓二
回
主題
コマシラバス項目
内容
教材・教具
1
イントロダクション
科目の中での位置付け
イントロダクションでは、本講義全体の流れをつかむ.前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回は①に入るまえに、経済学史とはどんな学問かについて簡単に触れておく。
細目レベル①
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、i-v
細目レベル②
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、22-28
細目レベル③
マーシャル、永澤越郎訳『経済学原理』1985年、14-23
細目レベル④
山根卓二「ウィリアム・カップの社会的価値の理論と「最小許容限度」」『経済学史研究』54 巻1 号、2012 年、43-60
コマ主題細目
① 経済学史とは何か ② アダム・スミスに対する誤解 ③ マーシャルの「支払意思額」とその適用範囲 ④ カップが指摘した「個の合計≠全体」
細目レベル
① 他の学問と同様、経済学も人間が作ったものである。経済学史の目的は、各時代の経済学者がどのような意図を持ってその時代の経済学を作ったのかを知るためにある。経済学者のもともとの意図が誤解されていることは非常に多い。例えば、経済学の父と呼ばれるアダム・スミスの言葉に「見えざる手」というものがある。これは一般的に「政府が経済に介入せず、人々が利己的にお金儲けをすれば、社会全体が豊かになる」という意味で解釈されている。そして、スミスの名を借りて政府の役割を否定する政策がとられたりする。しかしながら、スミスは別の箇所で無制限の利己心を批判している。また、そもそも、スミスは「富≠お金」だと考えていたのである。
② スミスの経済思想は重商主義への批判から生まれた。重商主義のベースには、「富=お金」という考え方がある。重商主義は、一国のお金を増大させるためには、貿易の差額(輸出額-輸入額)で稼げば良いと考え、輸出を増やすために輸出産業を保護し、貿易独占ルートを確保するために軍備増強を行った。その結果、確かに貿易差額でお金を稼ぐことができたが、必要な人員を奪われたり重税をかけられたりした国内産業が衰退した。アダム・スミスは生活必需品こそが富であると考えた。重商主義が富をお金と考えて、生活必需品の生産を軽視したのとは対照的である。彼は、生活必需品をイギリス国民に行き渡らせるにはどうすれば良いかについて『国富論』で論じたのである。
③ マーシャルは支払意思額(その消費者が最大限どこまで払っても良いと考えているか)という概念と価格によって消費者の行動を説明した(需要曲線)。支払意思額を左から右へ高い順に並べていくと需要曲線の原型ができあがる。しかし、これは需要曲線の「原型」であって、これだけではまだ需要曲線そのものではない。そこから、例えば、価格が高いときから始まって、だんだん価格を下げていくと、それに対応して需要量がだんだんと増えていくことを確認できる。そのようにして導かれた価格と需要量との関係を表わす線のことを需要曲線というのである。しかしながら、マーシャルはそれは幸福度や善悪の判断の基準を表しているわけではないと断っていた。
④ お金で成り立っている社会では、何でもお金の価値で測ろうとする傾向がある。お金の世界では100円+100円=200円である。ところが、この世界の多くの現象は単なる足し算では説明し尽くせない。例えば、生命はその一部である呼吸器系がダメージを受けただけで健康を害したり死んでしまったりする。湖の生態系はある魚の個体数が減少したことにより全体の質が変化することもある。また、土砂の流出で被覆が剥がれると、その土地に生態系が回復するのは非常に困難である。であるにもかかわらず、経済学のみならず他の学問も自分たちの興味分野を他の世界から完全に切り離して議論する傾向がある。しかしながら、初期の経済学は経済を多の分野と切り離さずに議論していたし、学問の専門分化が進んで以降も科学を統合しようとする動きもあった。
キーワード
① 経済学史 ② お金 ③ 個と全体 ④ 価値 ⑤ 科学
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。経済学も人間が作ったものであり、経済学史の目的は、各時代の経済学者がどのような意図を持ってその時代の経済学を作ったのかを知るためにある、ということ。個別の経済主体から見ると、使ったお金はなくなるが、社会全体で見れば、お金は使っても減ることも増えることもなく、ただ社会の中を動くだけであること。「ものやサービスを売り買いするだけは」社会全体がお金を増やすことはできないし、全員が同時にお金を増やすことはできないということ。現在のあなたがお金を使えるのは、同じ空間の中に働いてくれる人がいるからであるということ。この世界の多くの現象は単なる足し算では説明し尽くせないこと。予習課題:井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2-18を読み、富とは何かについて自分なりに考える。
2
黎明期の経済学(1)
科目の中での位置付け
黎明期の経済学をたずねることで、経済学がなぜ、どのように興ったのかについて知る。本講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回は主に①と②について学ぶ。
細目レベル①
柳沢哲哉『経済学史への招待』社会評論社、2017、11-14
細目レベル②
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、3-8
細目レベル③
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、8-18
コマ主題細目
① 古代・中世の経済学 ② 重商主義 ③ 重農主義
細目レベル
① 古代のギリシャ哲学や中世のキリスト教において経済がどのように捉えられていたかを知る。経済学の語源はギリシャ語のオイコノミアである。「オイコス(家)」と「ノモス(法律・法則)」の合成語で、「家財を管理する方法」「家政術」の意味である。古代ギリシャのアリストテレスは私有財産を容認していた。それは私有財産が容認されていない場合よりも交易が盛んとなり社会全体が豊かになると思われるからである。もともと物資を得ることが経済の目的であったが、交易にお金が用いられるようになると、お金を増やすこと自体が目的となった。アリストテレスは貨殖術を批判した。中世の神学者も利益の追求を非難した。そして、価格には公正な価格とそうでない価格とがあると主張した。
② 重商主義とは、15~18世紀のヨーロッパ諸国が採用した経済政策である。重商主義のベースには、「富=お金」という考え方がある。重商主義は、一国のお金を増大させるためには、貿易の差額(輸出額-輸入額)で稼げば良いと考え、貿易差額(輸出額-輸入額)を増大させるためには国家が保護と統制を行うべきであると主張した。輸出を増やすために、重商主義は輸出産業を保護し、貿易独占ルートを確保するために軍備増強を行った。貿易を独占することで、取引相手国には高い価格で売ることができた。その結果、確かに貿易差額でお金を稼ぐことができる。しかしながら、この考え方には重大な弱点がある。重農主義やアダム・スミスの経済思想は重商主義への批判から生まれたのである。
③ フランスの重農主義は重商主義への批判として生まれた。フランスのルイ14世(1638-1715)の下で仕えたコルベールは重商主義政策を行った。コルベールの重商主義は三つの柱から成り立っている。第一に、輸出産業の保護育成を行い、輸出を増大させる。第二に、穀物の低価格政策をとり、輸出を増大させる。第三に、輸入品に高い関税をかけ、輸入を抑制する。穀物の低価格政策や重商主義戦争を継続させるための課税や賦役は農村の疲弊をもたらした。ケネーをはじめとする重農主義者は「コルベール主義によって人為的にゆがめられた経済を自然の姿に戻すべきだ」と主張した。ケネーの著わした『経済表』では、自然主義から見た「理想の農業王国」が描かれている。
キーワード
① 家政術と貨殖術 ② 重商主義 ③ 重農主義 ④ F.ケネー ⑤ 純生産物(余剰生産物)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。古代ギリシャのアリストテレスはもともとどんなことを経済の目的と考えていたのかということ。また、アリストテレスは経済の目的を「何ではない」と考えていたのかということ。中世の神学者は経済の目的「何ではない」と考えていたのかということ。重商主義のベースには、どんな考え方があるのかということ。それに基づいて重商主義者がどんな経済政策を提唱していたのかということ。F.ケネーをはじめとするフランスの重農主義が重商主義への批判として生まれたということ。予習課題:井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2-18を読み、再生産の意味を事典などを調べておく。
3
黎明期の経済学(2)
科目の中での位置付け
F.ケネーの再生産「様々な階級が1年間生産や取引を行いお金が循環すると、次年度も同じ人々が同様の生産や取引をするための条件が整うこと」概念について理解する。本講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。その後、資本主義が形を整えるにしたがって時の課題がどう変化し、それに経済学がどのように対応していったかを順に学んでいく。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回は②について学ぶ。
細目レベル①
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、8-18
細目レベル②
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、8-18
細目レベル③
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、8-18
コマ主題細目
① 3つの階級 ② 再生産 ③ 経済表で示されること
細目レベル
① ケネーは主著『経済表』において、経済モデルを構築し展開した。その経済モデルには3つの階級が登場する。第一に、生産階級である。生産階級とは農業従事者のことを指す。重農主義者たちがさまざまな産業の中で農業のみが純生産物(余剰生産物)を生産していると考えていたためである。農業従事者とは、農業資本家と農業労働者の両方を指している。第二に、不生産階級である。不生産階級とは商工業従事者を指している。不生産階級は農業をサポートする階級と見なされている。第三に、地主階級である。地主階級とは地主と国家を指す。(理想の)地主は灌漑・道路整備などを行う階級である。これらの階級の間で経済取引が行われることで果たして再生産がうまく行われるのかを見る。
② 農業生産のためには「前払い」が必要である。前払いとは、生産開始時点で必要とされる生活資料、道具、原材料、貨幣などのことである。灌漑・道路整備などのための支出を土地前払い(今回の授業では省略する)、農機具や機械などを修理・補てんするための支出を原前払い、農業労働者への支払(生活資料)、種子などの原材料への支出を年前払いという。食料や原材料(農業従事者が生産)、加工品(工業従事者が生産)が生産され、3つの階級の間でそれらがお金を通じて売買される。ケネーの『経済表』に基づき、「様々な階級が1年間生産や取引を行いお金が循環すると、次年度も同じ人々が同様の生産や取引をするための条件が整うこと」(再生産)について理解する。
③ 上記の再生産を実際にシミュレーションしてみる(グループワーク)。すると、「経済表」でケネーが何を主張したかったのかが見えてくる。第一にわかることは、地主階級も不生産階級も、農業が純生産物を生み出すための重要なサポートの役割を果たしている、ということである。重農主義者は農業のみが富を生み出すと考えていたが、工業や商業、そして地主階級や不生産階級が不要であるとは考えていなかったのである。第二に、一定の条件が成立すれば、「3つの階級が一定期間、生産や交換を行いお金を循環させると、次年度も同様の生産や取引をするための条件が整うこと」(再生産)がうまくいくことがわかる。第三に、商業や工業が金銭的利益の追求に走ると、純生産物が減る可能性がある。
キーワード
① 生産階級 ② 不生産階級 ③ 地主階級 ④ 前払い ⑤ 再生産
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。ケネーは主著『経済表』において、どんな階級を想定していたのかということ。それぞれの階級がどんな役割を果たしていたのかということ。農業生産に必要な「前払い」とはなんであるかということ。前払いにはどんな種類があるかということ。それぞれの前払いは何のために行われるのかということ。「再生産」とは何かということ。どんな条件が成り立てば、再生産がうまく行われるのかということ。再生産がうまくいかなくなるのはどういうときかについて。予習課題:井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、22-37を読み、農工商業そして政府の役割について自分なりに考えておく。
4
アダム・スミス(1)
科目の中での位置付け
富とは何か、どうしたら富は増やせるのか、についてスミスはどう考えていたのか知る。本講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回は③について学ぶ。
細目レベル①
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、22-28
細目レベル②
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、28-34
細目レベル③
高哲男編『市場と反市場の経済思想』ミネルヴァ書房、2000年、91-95
コマ主題細目
① 富とは何か ② 富はどうしたら増えるか ③ 国家の役割
細目レベル
① スミスの経済思想は重商主義への批判から生まれた。重商主義のベースには、「富=お金」という考え方がある。重商主義は、一国のお金を増大させるためには、貿易の差額(輸出額-輸入額)で稼げば良いと考え、輸出を増やすために輸出産業を保護し、貿易独占ルートを確保するために軍備増強を行った。その結果、確かに貿易差額でお金を稼ぐことができたが、必要な人員を奪われたり重税をかけられたりした国内産業が衰退した。アダム・スミスは生活必需品こそが富であると考えた。重商主義が富をお金と考えて、生活必需品の生産を軽視したのとは対照的である。彼は、生活必需品をイギリス国民に行き渡らせるにはどうすれば良いかについて『国富論』で論じたのである。
② スミスは、『国富論』において、富がどうしたら増大するかについて論じた。第一に、分業である。彼は同書の中で実際に視察したピン工場の例を挙げ、ピン製造のすべての工程を一人が担当する場合よりも各工程を別の人が担当した方が生産性が飛躍的に上昇することを示した(工場内分業)。また、現実には社会的分業も行われている。それぞれの商品を別々の人が生産し、それらを市場で交換すると、自給自足の場合よりも富の量が飛躍的に増大する。第二に、資本の蓄積である。農民は穀物を生産すると同時に消費もする(生産的労働者)が、召使いは穀物を消費するだけで生産はしない(不生産的労働者)。生産的労働者の割合を増やせば富の量は増大する。
③ スミスは(よく誤解されるが)自由放任主義者ではない。市場経済がうまく機能するため(さらには市場経済の弊害を除去するため)に国家が役割を果たすべきだと考えていた。国家の役割には次のものがある。第一に、国防。これは蓄積した富を他国に収奪されないためである。ただし、戦争はあくまで防衛のためであり、重商主義的な戦争は否定した。第二に、司法である。これは蓄積した富を(同国民から)収奪されないためである。第三に、公共事業である。まず、社会全体にとって有益であるが、どの1個人にも費用負担が不可能なものは国家が整備すべきであると考えた(道路、橋、運河、港など)。また、スミスは、分業社会は国民の総合的判断能力の欠如を招くため、これを補うための初等教育も国家が行うべきであると考えていた。
キーワード
① 富 ② 分業 ③ 生産的労働と不生産的労働 ④ 資本投下 ⑤ 重商主義
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。スミスの経済思想は重商主義の何に対しての批判か。スミスは重商主義国家が衰退した原因は何であると考えていたか。アダム・スミスは富を何であると考えていたか。イギリス国民の富を増やすためにスミスはどうすれば良いと考えていたか。分業とは何か。資本の蓄積とは何か。生産的な労働とはどんな労働か。スミスは国家の役割をどう考えていたか。スミスは教育の役割を何であると考えていたか。スミスは戦争についてどう考えていたか。予習課題:井上義朗『「新しい働き方」の経済学』現代書館、66-75、を読み、市場における競争の意味について自分なりに考えておく。
5
アダム・スミス(2)
科目の中での位置付け
『国富論』は今日と同様の資本主義経済を描いていたのではない。当時は市場経済であったが、資本主義経済ではなかった。本講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。その後、資本主義が形を整えるにしたがって時の課題がどう変化し、それに経済学がどのように対応していったかを順に学んでいく。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回も③について学ぶ。
細目レベル①
井上義朗『「新しい働き方」の経済学』現代書館、2017年、66-71
細目レベル②
井上義朗『「新しい働き方」の経済学』現代書館、2017年、71-97
細目レベル③
井上義朗『「新しい働き方」の経済学』現代書館、2017年、113-139
コマ主題細目
① 市場経済と資本主義は同じものか? ② 競争について ③ 株式会社
細目レベル
① 『国富論』は資本主義経済が未完成の時期に書かれている。スミスは市場経済の本質について『国富論』で描いたが、今日のような資本主義的な市場経済については知らなかった。スミスの時代(18世紀後半)の市場経済は貧困を解決するとスミスは考えていた。しかしながら、現在の市場経済はスミスの時代の市場経済とは別物である。現在は市場経済といえば資本主義経済のことを指すことが多い。この経済においては、貧困と過剰な富裕が同時に存在している。現代資本主義では市場競争を原動力とする果てしない資本蓄積が行われており、この競争の結果として負け組と勝ち組が生じている。皮肉なことに、競争を徹底しようとすることで、独占化が進み、競争が消滅することも起こっている。
② スミスが『国富論』で描いた企業間の競争(誰からも支配を受けることがなく、誰もが貧困から解放されている競争)と、現代の資本主義的な市場経済における企業間の競争(弱肉強食の競争)とは異なる。スミスが理想とする競争においては、他の大多数の製品(例えばニンジン)の価格よりも高い価格をつけようとすると消費者は買ってくれないため、価格を下げざるを得なくなる。スミスの時代には農家が保有する農地面積が小さかった。その農地が十分に利用されているとすると、そこからさらにニンジンの生産量を増やそうとすれば、ニンジン1本あたりにかかるコストが高くなる。コストが高くなると製品価格も高くせざるを得ないため、ニンジンの数を増やそうとはしない。つまり、一人勝ちが生まれることはなかったのである。
③ スミスの時代における競争と現在の競争の違いはなんであるか?スミスの時代においては、個々の企業の規模が小さく、土地や設備の容量が限られていた。それに対して、現在では個々の企業の土地や設備の容量を増やすことが可能となっており、企業の規模を拡大できる。つまり規模の経済を実現できる。規模の経済を実現可能にしたものが株式会社である。ただし、株式会社は規模の経済を意図して解禁されたのではない(株式会社の解禁の結果として規模の経済が実現したのである)。スミスの時代には株式会社はまだ普及していなかった。スミスは、出資者が配当の大小や株価の上下にばかり目を向けるようになるとして、株式会社制度に対して批判的であった。
キーワード
① 市場経済 ② 資本主義 ③ 競争 ④ 規模の経済 ⑤ 株式会社
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認しておく。スミスの時代の市場と現代の市場とはどう違うか。スミスの時代の市場は何を実現してくれると彼は考えていたか。競争とは何か。スミスの時代と現代では競争の意味はどう異なるか。現代の競争は経済社会にどんな影響を与えているか(プラス面とマイナス面)。規模の経済とは何か。規模の経済と株式会社の関係は?株式会社はどういう期待をかけられて解禁されたか。スミスは株式会社をどう評価していたか。予習課題:井上義朗『「新しい働き方」の経済学』現代書館、146-156を読み、社会全体を豊かにする企業とはどんなものかについて自分なりに考えておく。
6
アダム・スミス(3)
科目の中での位置付け
過去三回のアダム・スミスに関する議論をふまえ、『国富論』を現代にどう生かせるかを問う。本講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。その後、資本主義が形を整えるにしたがって時の課題がどう変化し、それに経済学がどのように対応していったかを順に学んでいく。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回も③について学ぶ。
細目レベル①
井上義朗『「新しい働き方」の経済学』現代書館、2017年、146-156
細目レベル②
井上義朗『「新しい働き方」の経済学』現代書館、2017年、177-181
細目レベル③
井上義朗『「新しい働き方」の経済学』現代書館、2017年、192-203
コマ主題細目
① 社会的企業 ② 社会的企業の例 ③ 規模の経済が働きにくい分野 ④ 社会的企業と経済全体の安定性
細目レベル
① 近年、スミスの思想を体現し、福祉・教育・環境分野を本業とする「社会的企業」が次々と現れてきている。こうした企業は規模の経済を追求してきた従来型の企業とどう違うのか?社会的企業はどんな企業か?第一に、社会的課題への取り組みを本業としている((貧困、失業、教育、地域振興、環境など)。従来のCSR(企業の社会的責任)の考え方では利益が最優先で、株主が第一であると考えられている。したがって、社会的課題の取り組みといっても、例えば本業の片手間に少しだけ環境に優しいことをする程度である。第二に、独立採算制である。従来からあるNPOやNGOでは黒字を出すのが難しく、多くの場合寄付金や公的助成金に頼っているのが現状である。また、そもそもそれらの団体は黒字を出すと非難される。
② 日本や海外の社会的企業の事例を紹介する。社会的企業の事例としてHomedoorがある。この企業はホームレスの人々に就業経験を持ってもらい、社会復帰への橋渡しをしている。例えば、レンタサイクル事業である。まず、公共機関の軒先を借りてレンタサイクルステーションを設置する。そして、自転車の準備、整備、貸出手続き、料金回収をホームレスの人が行う。ホームレスの人は労働の見返りに給与がもらえるが、ずっとそこで雇われるわけではない。つまり、Homedoorは救貧施設ではなく、社会復帰への足がかりの場なのである。
③ 規模の経済が働きにくい分野として、医療や介護福祉の分野がある。物理的には例えば介護福祉現場でも「養鶏用」や「養豚場」のように人間を一箇所に押し込めて世話をすることは可能であろう。しかしながら、そうすると個性を持った介護対象者一人一人の個別のニーズに対応ができなくなる。一人一人のニーズに完全に答えようとすると結局膨大なコストがかかってしまうだろう。そういう意味で医療や介護の分野では規模の経済が働きにくいのである(そもそも養鶏場・養豚場でも「密」によるパンデミックの多発により、かなり無理が生じている)。政府の方針では今後、介護の現場でも機械化によって労働生産性を高めることが目指されているが、それは重労働の軽減、という意味合いでなら理解できる。
④ 社会的企業が活躍する福祉・教育・環境などの分野は通説とは逆に経済を安定化させる産業であるかもしれない。規模の経済性がはたらく経済は不安定である。その理由は以下のとおりである。企業による設備投資が増大すると設備を製造した人々に所得が入る。その所得の一部を消費する。しかしながら、同じ設備投資の増大は製品の供給能力の増大にも貢献する。消費の増大よりも製品の供給能力の増大の方が大きいならば設備投資は抑制されざるをえない。そして、この設備投資抑制はさらなる設備投資の抑制の原因となる。Hoomdoorの場合、不況の受け皿となり、むしろ経済の不安定化を和らげることに貢献している。また、社会的企業は大規模の設備投資を必要としない。
キーワード
① 社会的企業 ② 経済の安定性 ③ 規模の経済 ④ 貧困 ⑤ 失業
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。社会的企業とはそもそも何か。社会的企業にはどんなことが期待されているか。こうした企業は規模の経済を追求してきた従来型の企業(株式会社の解禁以降生じてきた企業)とどう違うのか?従来のCSR(企業の社会的責任)の考え方やNPO・NGOとどう違うのか。社会的企業が活躍する福祉・教育・環境などの分野はなぜ経済を安定化させると期待されているのか。逆に、規模の経済性を重視する企業はなぜ経済を不安定にするのか。など。予習課題:堂目卓生『アダム・スミス』中公新書を読み、スミスの幸福概念が現代人が抱いているものとどう違うかを考えておく。
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アダム・スミス(4)
科目の中での位置付け
スミスは『国富論』とは別に『道徳感情論』を著していた。スミスの『道徳感情論』を現代にどう生かせるかを問う。講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回も③について学ぶ。
細目レベル①
堂目卓生「日本の復興と未来 アダム・スミスの総合知に学ぶ」『中央公論』2011年8月号、中央公論新社、45
細目レベル②
堂目卓生「日本の復興と未来 アダム・スミスの総合知に学ぶ」『中央公論』2011年8月号、中央公論新社、46
細目レベル③
堂目卓生「日本の復興と未来 アダム・スミスの総合知に学ぶ」『中央公論』2011年8月号、中央公論新社、50-53
コマ主題細目
① 共感 ② 公平な観察者 ③ スミスの考える幸福
細目レベル
① 人間誰しも利己的であることは否定できないが、どんな悪人でさえも他者に対して共感する。私たちは死者にさえ共感することがある。つまり、共感とは当事者と全く同じ気持ちになることではなく、自分を他者の立場に置き換えて考えた場合に生じる感情である。私たちは、当事者の感情や行為に関心を持ち、「自分も同じ立場に立ったら、どのように感じるだろうか」と想像する。社会生活を営むうち、私たちは、他人も自分に対して同感することに気づく。できるだけ多くの人々から是認されるように行動する。そのようにして、社会を形成する人々が共感という行為を繰り返す中で道徳感情というものが次第に形成されていくとアダム・スミスは主張したのである。
② 自分が行為者を評価する際、自分と行為者の境遇を入れ替え、その立場になってみて共感する。わたしたちは、行為者の感情に観察者の共感が一致すればその行為は正当とみなすだろう。逆に自分の行為が他者によって評価されることがある。そのようなことが繰り返されるうちに、行為者は、他者の判断を先取りし、それをふまえた上で行為するようになる。しかし、人によって行為者に対する評価は分かれる。ある行為者がお金を使わなかった場合、ある観察者はその行為者の行為を倹約的だとプラスに評価するだろうし、別の観察者は同じ行為をケチで人付き合いが悪いとマイナスの評価をするかもしれない。そうこうするうちに、あらゆる他者の判断を超越した「公平な観察者」の立場から自分自身の行為の正当/不当を判断した上で行動するようになる、とスミスはいう。
③ 共感とは他者と全く同じ気持ちになることではない。それゆえ、自分が悲しんでいても他者は自分ほどには悲しんでくれないかもしれない(多くの場合にはそうである)。他者がそれほどに共感してくれないことを感じとった当事者は、悲しみのレベルを小さく調整する。公平な観察者を心の中に獲得できた人は(悲しみを消し去ることはできないが)いつまでも悲しみ続けることはない。スミスは真の幸福を「心の平静」であると考えた(公平な観察者を胸中に置く人は心の平静を得る能力を持っている)。スミスは最低限の富がそろっていればそれ以上の富の追求には意味がないと考えていた。だが、多くの人間は他人からの是認を得ようと野心を持ち、最低限を超えてもなお富を追求しがちである。
キーワード
① 共感 ② 公平な観察者 ③ 賢い人 ④ 弱い人 ⑤ 心の平静(心の平穏)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。スミスは、利己的な人でさえ共感する、悪人でさえ共感する、私たちは死者に対してさえ共感する、といったが、なぜそんなことがいえるのか(そもそも共感とはどういう意味か)。あなたはどんなときに共感しているか。そのとき共感はどんな役割を果たしているか。道徳感情はどのように形成されるか。私たちはある人の好意を何を根拠に「正当な行為」であると判断しているか。「正当な行為」は評価する人によって異なったりはしないか。「公平な観察者」とは何か。スミスは何を幸福であると考えたか。スミスはなぜ、富の飽くなき追求を幸福と見なさなかったのか。
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復習
科目の中での位置付け
前半の復習。講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回は前半の復習であり、黎明期の経済学(古代ギリシャやヨーロッパ中世の経済学らしきもの、重商主義、重農主義)とアダム・スミスを振り返る。
細目レベル①
柳沢哲哉『経済学史への招待』社会評論社、2017、11-14
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、3-18
細目レベル②
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、22-34、66-139
高哲男編『市場と反市場の経済思想』ミネルヴァ書房、2000年、91-95
細目レベル③
井上義朗『「新しい働き方」の経済学』現代書館、2017年、146-156、177-181、192-203
堂目卓生「日本の復興と未来 アダム・スミスの総合知に学ぶ」『中央公論』2011年8月号、中央公論新社、44-53
コマ主題細目
① 復習(第2・3回) ② 復習(第4・5回) ③ 復習(第6・7回)
細目レベル
① 前半の内容の中でも次のことを確認する。古代ギリシャのアリストテレスはもともとどんなことを経済の目的と考えていたのか。中世の神学者は経済の目的「何ではない」と考えていたのかということ。重商主義のベースには、どんな考え方があるのか。それに基づいて重商主義者がどんな経済政策を提唱していたのか。F.ケネーをはじめとするフランスの重農主義が重商主義への批判として生まれたということ。ケネーは主著『経済表』において、どんな階級を想定していたのか。それぞれの階級がどんな役割を果たしていたのか。農業生産に必要な「前払い」とはなんであるかということ。「再生産」とは何か。どんな条件が成り立てば、再生産がうまく行われるのかということ。
② 前半の内容の中でも次のことを確認する。スミスの経済思想は重商主義の何に対しての批判か。スミスは重商主義国家が衰退した原因は何であると考えていたか。アダム・スミスは富を何であると考えていたか。イギリス国民の富を増やすためにスミスはどうすれば良いと考えていたか。分業とは何か。資本の蓄積とは何か。生産的な労働とはどんな労働か。スミスは国家の役割をどう考えていたか。スミスは教育の役割を何であると考えていたか。スミスの時代の市場と現代の市場とはどう違うか。スミスの時代の市場は何を実現してくれると彼は考えていたか。スミスの時代と現代では競争の意味はどう異なるか。規模の経済とは何か。株式会社はどういう期待をかけられて解禁されたか。スミスは株式会社をどう評価していたか。
③ 前半の内容の中でも次のことを確認する。社会的企業とはそもそも何か。社会的企業にはどんなことが期待されているか。こうした企業は規模の経済を追求してきた従来型の企業とどう違うのか?従来のCSRの考え方やNPO・NGOとどう違うのか。社会的企業が活躍する福祉・教育・環境などの分野はなぜ経済を安定化させると期待されているのか。逆に、規模の経済性を重視する企業はなぜ経済を不安定にするのか。共感とは何か。道徳感情はどのように形成されるか。私たちはある人の好意を何を根拠に「正当な行為」であると判断しているか。「正当な行為」は評価する人によって異なったりはしないか。「公平な観察者」とは何か。スミスは何を幸福であると考えたか。スミスはなぜ、富の飽くなき追求を幸福と見なさなかったのか。
キーワード
① 重商主義 ② 重農主義 ③ アダム・スミス ④ 『国富論』 ⑤ 『道徳感情論』
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。古代ギリシャのアリストテレスはもともとどんなことを経済の目的と考えていたのか。中世の神学者は経済の目的「何ではない」と考えていたのかということ。重商主義のベースには、どんな考え方があるのか。重農主義が重商主義への批判として生まれたということ。ケネーは主著『経済表』において、どんな階級を想定していたのか。「再生産」とは何か。スミスの経済思想は重商主義の何に対しての批判か。アダム・スミスは富を何であると考えていたか。イギリス国民の富を増やすためにスミスはどうすれば良いと考えていたか。スミスは国家の役割をどう考えていたか。スミスの時代の市場と現代の市場とはどう違うか。スミスの時代の市場は何を実現してくれると彼は考えていたか。社会的企業とはそもそも何か。共感とは何か。「公平な観察者」とは何か。スミスは何を幸福であると考えたか。スミスはなぜ、富の飽くなき追求を幸福と見なさなかったのか。予習課題:井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、44-56を読み、昨今のTPPをめぐる議論について調べておく。
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新古典派経済学(1)
科目の中での位置付け
講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回は、⑤について学ぶ。
細目レベル①
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、104-107
細目レベル②
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、108-110
細目レベル③
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、110-116
コマ主題細目
① 新古典派経済学 ② メンガー ③ ワルラス、マーシャル
細目レベル
① 新古典派経済学の「限界革命」の思想の時代的背景について解説する。新古典派経済学は、現在の経済学の教科書のベースとなっている考え方である。新古典派経済学の基本概念に「限界概念」がある。財(例えばダイヤモンド)を1個ずつ追加していく際、「最後の追加分に感じる満足度」のことを限界効用という。水は普段大量に存在するので、最後の追加1杯の価値は小さいが、ダイヤモンドの量は非常に限られているため、最後の追加1個の価値は非常に大きいのである。財を1個ずつ追加するごとに、最後の追加分に感じる満足度は減っていく。このことを限界効用逓減の法則という。限界概念は、消費者の理論だけでなく、企業の理論の中でも登場する。
② オーストリア学派のメンガーは、限界概念(いわゆる「メンガー表」)を用いて消費者行動を説明した。メンガー表を見ると、横軸には財の種類が書かれている。左が当該消費者にとって最も重要な財(例えば基本的な食料など)であり、右に行くにしたがって重要度は小さくなる。縦軸には何も書かれていないが、いちばん上が各財の1個目、次が2個目、次が3個目…となる。メンガー表のいちばん左上の数字がいちばん大きいが、これは、当該消費者にとって、最も重要な財の1個目から得られる効用(限界効用)(ただし、メンガー自身は効用という用語は用いていない)が最も大きいことを表している。メンガー表には限界効用逓減の法則が表現されている。
③ ワルラスの一般均衡理論について解説する。一般均衡理論の基本形は2人の間での2財の交換である。各人にとって希少な財の限界効用は大きく、多く持っている財の限界効用は小さい。各人は多く持っている財を手放し、希少な財を得ようとする。そとき、何対何で財を交換するかが物々交換における価格となる。価格調整のメカニズムが働いた結果、市場で需要と供給が一致し、調整過程が完了した状態を均衡という。ワルラスの一般均衡理論では「せり人」が登場し、価格の調整役を担っている。現実には、このようなせり人は存在せず、需要と供給がぴったりと一致することは稀である。後の回で取り上げるが、一般均衡理論では不況そして失業の問題をうまく説明できない。次に、マーシャルの需要曲線について説明する。
キーワード
① 限界効用 ② 限界効用逓減の法則 ③ メンガー表 ④ 一般均衡 ⑤ 交換
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
予習課題:今回配付した資料を見直し、次のことを再確認する。新古典派経済学の基本概念である限界概念について。限界効用とは何か。「水とダイヤモンドのパラドックス」とは何か。限界効用逓減の法則とは何か。メンガー表の読み方について。メンガー表において限界効用逓減の法則がどのように表現されているか。ワルラスの一般均衡理論について。価格調整のメカニズムについて。均衡とは何か。ワルラスの一般均衡理論におけるセリ人の役割について。現実には、需要と供給がぴったりと一致することは稀であるのはなぜか。一般均衡理論では不況そして失業の問題をうまく説明できないこと。復習課題:予習用の配付資料を読み、マーシャルの考え方が日常感覚と合致しているか考えてみる。
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新古典派経済学(2)
科目の中での位置付け
講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回も、①のうちの新古典派経済学の基礎について学ぶ。
細目レベル①
マーシャル、永澤越郎訳『経済学原理』1985年、133-135
細目レベル②
マーシャル、永澤越郎訳『経済学原理』1985年、183
細目レベル③
マンキュー『マンキュー経済学Ⅰミクロ編』東洋経済新報社、2000年、274-277
コマ主題細目
① マーシャル ② 消費者余剰と生産者余剰 ③ 外部性
細目レベル
① マーシャルは限界効用を財の追加的な1個にたいする支払意思額(その消費者が最大限どこまで払っても良いと考えているか)によって説明した。支払意思額を左から右へ高い順に並べていくと需要曲線の原型ができあがる。しかし、これは需要曲線の「原型」であって、これだけではまだ需要曲線そのものではない。そこから、例えば、価格が高いときから始まって、だんだん価格を下げていくと、それに対応して需要量がだんだんと増えていくことを確認できる。そのようにして導かれた価格と需要量との関係を表わす線のことを需要曲線というのである。ちなみに、支払意思額の考え方は、現代の環境経済学の環境評価理論に用いられている。各企業の生産費用を左から右へ低い順に並べていくと供給曲線の原型ができあがる。
② 支払意思額と価格の差を消費者余剰といい、価格と生産費用の差を生産者余剰といい、両者の合計を社会的余剰という。新古典派経済学(主流派経済学)によれば、需要と供給が均衡するところで社会的余剰は最大となる。現代の経済学の教科書では社会的余剰を最大にすることが望ましいとされているが、実はマーシャルは余剰の大きさだけで人々の幸福を図ろうとしていたのではなかった。一応の理論的説明が終わったあとで、需要と供給に関わる実験を行い、価格と取引数量が理論通りに決まるかを調べてみる。また、その実験から、余剰がどれくらいの大きさになるのかを調べ、これが新古典派経済学(主流派経済学)の理論通りになるかを実際に確かめる。
③ 生産者による生産の拡大が他者に悪影響を与えているとき、社会的余剰は最大とならない。社会的余剰を最大にするために環境税などの政策が実施される。マーシャルの弟子であるピグーは環境税の理論的な先駆者である。ただし、ピグーも人々の幸福を金銭だけで測れるとは思っていなかった。一応の理論的説明が終わったあとで、外部性が存在する場合の需要と供給に関わる実験を行い、価格と取引数量が理論通りに決まるかを調べる。また、余剰がどれくらいの大きさになるのかを調べ、理論通りになるかを確かめる。環境税をかけた場合に価格と数量が理論通りに決まるかを調べる。また、余剰がどれくらいの大きさになるのかを調べ、理論通りになるかを確かめる。
キーワード
① 支払意思額 ② 需要曲線と供給曲線 ③ 消費者余剰 ④ 生産者余剰 ⑤ 外部性
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
予習課題:今回配付した資料を見直し、次のことを再確認する。マーシャルは限界効用をどのように説明したか。支払意思額とは何か。需要曲線・供給曲線はどのように導出されるか。消費者余剰・生産者余剰・社会的余剰とは何か。社会的余剰はどんなときに最大となるか。マーシャルはが余剰の概念を考案した真意は何か。需要と供給に関わる実験を行ったが、価格と取引数量が理論通りに決まったか。また、余剰も理論通りの大きさになったか。社会的余剰はどんな条件の時に最大とならないか。そのような条件下でも社会的余剰を最大にするためにどんな政策が提唱されているか。ピグーの厚生経済学の真意は何か。復習課題:予習用の配付資料を読み、幸福について自分なりに考えておく
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新古典派経済学(3)
科目の中での位置付け
講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回も、①のうちの新古典派経済学の基礎について学ぶ。
細目レベル①
メンガー『一般理論経済学』みすず書房、1982年、27-32
細目レベル②
マーシャル、永澤越郎訳『経済学原理』1985年、14-23
細目レベル③
ピグウ『厚生経済学Ⅰ』東洋経済新報社、1953年、15-27
コマ主題細目
① メンガーの欲求論 ② マーシャルの人間論 ③ ピグーの厚生経済学
細目レベル
① メンガーは人間の非合理的な側面について有益なコメントをしていた。オーストリアで生まれたメンガーは、自由主義の影響を受けて育った。大学卒業後にジャーナリストになり、オーストリアの機関誌の市況欄を担当するうちに従来の価格理論に対して疑問を持つようになった。こうして書き上げられたのが彼の主著『国民経済学原理』である。彼は後にハプスブルク帝国の皇太子の教育係になり、皇太子に自由主義の理念を教育したが、その皇太子は自殺してしまう。また、自由主義的思想を取り入れた国々が次々と恐慌に巻き込まれてしまう。そこで彼は『国民経済学原理』の改訂を行うようになる(未完)。そこでは、現実の人間の欲求の中には非合理的な欲求が含まれていることなどが追加された。
② 支払意思額の概念を提示したマーシャルは、それは幸福度や善悪の判断の基準を表しているわけではないと断っていた。ケンブリッジ大学で当初数学を先行していたマーシャルは、討論団体に所属し、倫理学者シジウィックと親交を持った。シジウィックから影響を受けたマーシャルは、人間の生きる目的は快楽の最大化ではなく、支払いい差額の大きさは倫理的判断とは関係ないと考えた。1890年の彼の主著『経済学原理』においても、「経済学は一面においては富の研究であると同時に、他面において、また重要な側面として、人間研究の一部である」と書かれており、経済学は高級な人格形成のためにあるとマーシャルは考えていた。彼にとって所得や富は人格形成の手段に過ぎないのである。
③ ピグーは、1920年に主著である『厚生経済学』を著した。彼のいう厚生とは満足度の大きさのことをいい、効用の意味にほぼ近い。この満足の大きさは倫理的判断とは関係ないとピグーはいう。また、ピグーは厚生を経済的厚生(貨幣で測定可能な厚生)と非経済的厚生(貨幣で測定不可能な厚生)に分類し、両者の関係について論じていた。産業革命の影響で生産性が上昇し、私的財産制度が一般化し。これによって国民所得が増大したので経済的厚生は増大したが、その一方で労働の楽しみや村人どうしの交流などが消滅したり、同僚どうしがライバルとなりお互いに猜疑心を抱くようになったりしたため、非経済的厚生は減少するようになったとピグーは主張する。
キーワード
① 支払意思額 ② 消費者余剰と生産者余剰 ③ 需要曲線と供給曲線 ④ 外部性 ⑤ 環境政策
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
予習課題:今回配付した資料を見直し、次のことを再確認する。メンガーの主著『国民経済学原理』はどんな経緯で書かれたか。メンガーの『国民経済学原理』は古典派経済学のどんな欠点を補っているか。その後メンガーはなぜ『国民経済学原理』の改訂(未完)を行ったのか。彼の言う非合理的な欲求とは例えばどんな欲求か。マーシャルの主著『経済学原理』において、彼は経済学をどんな学問であるといっていたか。マーシャルは所得と富をどう捉えていたか。ピグーによると、厚生とは何か。経済的厚生とは何か。非経済的厚生とは何か。ピグーは産業革命の影響で非経済的厚生が減少したと述べているが、なぜそう言えるのか。復習課題:予習用の配付資料を読み、特に「セイ法則」について事典などで調べておく。
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カップ(1)
科目の中での位置付け
講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回は、⑥について学ぶ。
細目レベル①
山根卓二「ウィリアム・カップの社会的価値の理論と「最小許容限度」」『経済学史研究』54 巻1 号、2012 年、43-60
細目レベル②
山根卓二「ウィリアム・カップの社会的価値の理論と「最小許容限度」」『経済学史研究』54 巻1 号、2012 年、43-60
細目レベル③
山根卓二「ウィリアム・カップの社会的価値の理論と「最小許容限度」」『経済学史研究』54 巻1 号、2012 年、43-60
コマ主題細目
① 科学の統合 ② 環境の価値を金銭的に測ることに対する批判 ③ 最小許容限度(社会的最低限)
細目レベル
① カップは学問の専門分化的な状況を危惧していた。専門分化の弊害としては次の(1)(2)がある。(1)部分的な説明のため、現実がゆがめて解釈される。例えば、十分な所得がありながら栄養失調になる人について主流派経済学は好きで「そうなったのだ」と説明しがちである。(2)それぞれの学問で全く異なった説明がなされる。例えば物質の振る舞いに関して古典物理学と量子物理学では異なる説明をする。そこでカップは、様々な要素どうしの相互作用を考慮することが必要なのでは?と考えた。統合の方法には学際主義による統合やアナロジーによる統合などがあるが、いずれも不十分である。カップの提唱する方法は分野どうしを異質さを保ちながらつなぐことである。
② カップは環境の価値を金銭的に測る理論を批判した。環境の価値をお金で計ることはできる(例えば、支払意思額…その環境を改善するために最大限どれくらい払うつもりか、受入許容額…その環境を手放すには最低限どれくらい払って欲しいか、などをアンケートで調査することによって)。しかし、お金で評価しても意味のない環境も多く存在する。光化学スモッグは少量の化学物質が加わっただけでその地域全体の大気の質が変化することで発生する。生命は、その一部である呼吸器系を破壊されるだけで活動できなくなる。土砂の流出で被覆が剥がれると、その土地に生態系が回復するのは非常に困難である。いずれの現象も(金銭の場合には容易な)足し算や引き算で説明することはできないのである。
③ 生命や生態系には、汚染水準などが限度を超えると不可逆的な質的変化を被る性質がある(これは煙が洗濯物を汚すようなケースとは異なる。洗濯物が汚れたら、そこだけしか汚れない)。カップは、環境政策を考える際には、そうした限度に関する科学的知見を重視すべきであると主張した。カップの提唱する環境政策は最低許容限度を設定し、それを守らせることである(ピグーの環境税は金銭的利益の最大化が目的である)。科学的知見として、NOxの最低許容限度、オゾンの最低許容限度、気象条件などがある。また、年齢、性別、既往症の有無も重要である。さらに、新しい原材料、生産技術、産業や都市の立地の研究に対して政府が助成金を与えることも重要であるとカップは主張した。
キーワード
① 支払意思額・受入許容額 ② 光化学スモッグ ③ 生命 ④ 生態系 ⑤ 最小許容限度(社会的最低限)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
予習課題:今回配付した資料を見直し、次のことを再確認する。専門分化の弊害としては次の(1)(2)があること。(1)部分的な説明のため、現実がゆがめて解釈される(2)それぞれの学問で全く異なった説明がなされる。カップの提唱する科学の統合の方法分野どうしを異質さを保ちながらつなぐことである。カップが環境の価値を金銭的に測る理論を批判したこと。光化学スモッグは少量の化学物質が加わっただけでその地域全体の大気の質が変化することで発生する。生命は、その一部である呼吸器系を破壊されるだけで活動できなくなる。土砂の流出で被覆が剥がれると、その土地に生態系が回復するのは非常に困難である。カップは、環境政策を考える際には、環境のそうした不可逆的な質的変化を考慮して科学的知見を重視すべきであると主張した。復習課題:自己実現の意味について調べてくる。元々心理学者はこの言葉をどういう意味で使っていたか?
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カップ(2)
科目の中での位置付け
講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回も、⑥について学ぶ。
細目レベル①
山根卓二「ウィリアム・カップの科学統合論と実質的合理性」『経済学史研究』50 巻2 号、2009 年、21-37
細目レベル②
山根卓二「ウィリアム・カップの科学統合論と実質的合理性」『経済学史研究』50 巻2 号、2009 年、21-37
細目レベル③
山根卓二「ウィリアム・カップの科学統合論と実質的合理性」『経済学史研究』50 巻2 号、2009 年、21-37
コマ主題細目
① 形式的合理性批判 ② カップの人間像 ③ 実質的合理性
細目レベル
① 新古典派の経済モデルに登場する人間は与えられた目的を達成するだけのロボットのような存在である。このような人間像に対して、カップは(1)目的がいかにして形成されたのかが不問である(2)生存や健康の観点から目的を評価することを回避している、などの批判を行った。プラグマティズムの哲学は形式的合理性を批判し、目的を能動的に形成する人間像を描いた。しかしながら、カップは、プラグマティズムを楽観的な進歩主義であると批判した。彼は心理学者フロムから影響を受けていた。フロムは『自由からの逃走』において、西洋の近代化の過程で政治的・宗教的権威から脱して様々な自由を獲得してきたはずの市民が、なぜ再びナチズムのような新しい権威に自ら服従してしまったのかと問うた。
② 新古典派経済学の形式的合理性に基づく人間像やプラグマティズムの哲学に基づく人間像に対抗して、カップの描いた人間像は以下のようなものである。人間は他の動物より優れた概念形成能力を持っているため、自我意識を持ったり、過去や未来について考えたり、知識をストックして他者や将来世代にそれを伝えることもできる。しかし、この特殊能力があるゆえに過去を悔やみ、不確実な未来におびえ、孤独の不安を感じる。こうした悩みや不安を和らげるために、文化が宗教・哲学などの「はけ口」(依存対象)を提供する。このはけ口は場合によっては人間の自己実現(世間に流布されている「夢の実現」は自己実現とは全く異なるので注意)を阻害する。
③ まず、多数派による合意は実質的合理性ではない。多数派の人々の合意が非合理的な結果をもたらしうることはナチスドイツなどの例を見てもわかる。実質的合理性の基準は肉体的・精神的な人間的欲求の動態的構造や,様々な社会環境において人間的欲求を決定する客観的・文化的要因を考慮しなければならない。また、実質的合理性は最低許容限度を考慮した基準である。結局、実質的合理性とは、最低許容限度を超えるほどの損失を出してまで安全への欲求を満たしていないかどうかで合理性を見分ける基準、であるといえる。例えば、豪華な車への出費のために食費を削って体を壊す人、社会的承認を得るためにひたすら利益を増やすことに邁進する経営者、などは実質的な観点から見て合理的ではないとカップは考えた。こうした行動は自分の身体や自然環境に大きな負荷を与えることになる。
キーワード
① 形式的合理性 ② 安全への欲求 ③ はけ口 ④ 自己実現 ⑤ 実質的合理性
コマの展開方法
社会人講師
AL
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その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
予習課題:今回配付した資料を見直し、次のことを再確認する。新古典派の形式合理的な人間像に対して、カップが(1)目的がいかにして形成されたのかが不問である(2)生存や健康の観点から目的を評価することを回避している、などの批判を行ったこと。カップは、プラグマティズムをも楽観的な進歩主義であると批判したこと。カップの描いた人間像は以下のようなものである。人間は他の動物より優れた概念形成能力を持っているため他の動物ができないこともできる。しかし、この特殊能力があるゆえの弱点もある。人間は不安を紛らわそうと努力して、かえって自己実現に失敗することもあること。実質的合理性は多数派の合意とは関係ないこと。実質的合理性とは、最低許容限度を超えるほどの損失を出してまで安全への欲求を満たしていないかどうかで合理性を見分ける基準、であるということ。復習課題:予習用の配付資料を読み、自分が研究している分野と他の分野のつながりについて考えてみる。
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カップ(3)
科目の中での位置付け
講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回も、⑥について学ぶ。
細目レベル①
山根卓二「ウィリアム・カップによる外部性の二分法批判」『人間と環境』5 巻 、2014年、45-62
細目レベル②
山根卓二「ウィリアム・カップによる外部性の二分法批判」『人間と環境』5 巻 、2014年、45-62
細目レベル③
山根卓二「ウィリアム・カップによる外部性の二分法批判」『人間と環境』5 巻 、2014年、45-62
コマ主題細目
① 外部性の二分法に対する批判 ② 技術革新の社会的費用 ③ 私営林業の社会的費用
細目レベル
① 新古典派経済学では、外部性を技術的外部性と金銭的外部性の二つに分類し、前者のみを重大な問題視する。カップは外部性の二分法を批判する。カップも外部性のことを論じているのだが、新古典派経済学の外部性論とかなり違っている。『私的企業の社会的費用』(1950)の目次には社会的費用の項目がずらりと並んでいるが、彼はあたかも社会的費用の分類を行ったかのように思われてしまう。実際、新古典派の人々は『私的企業の社会的費用』の第4章から第9章までの社会的費用を技術的外部性であると分類し、それ以降の社会的費用を金銭的外部性であると分類している。しかし、社会的費用の分類学は彼の真意ではない。一つ一つの社会的費用は独立しておらず、お互いに関係し合っているからである。
② 新古典派によれば、技術的外部性は市場を経由しないで直接影響を与えるタイプの外部性である。また、金銭的外部性とは市場を経由して影響を与えるタイプの外部性である。しかし、それらは個々別々に発生しているわけではない。カップは第10章技術革新の社会的費用において次のような議論を展開している。企業間の技術革新の競争は設備の価値の低下(返済能力の低下)と過剰な設備の導入(資源の無駄遣い)を累積的に引き起こす。つまり技術的外部性と金銭的外部性は累積的循環的に引き起こされる。このことは失業という社会的費用を引き起こす。企業は不況から脱出するために合併や広告などを行う。合併は独占傾向をもたらし、広告は自己実現の阻害や無駄な消費の原因となる。
③ 林業は投資(植林)から収益を得るまでに100年かかるものもある。それまで待っていられないために若木を切ってしまいがちである。私営林業どうしの競争が木材価格の低落をもたらす。このことは林業家たちに森林管理費用の節約を促し、森林の減少と質の悪化を引き起こす。そうすると伐採作業、市場から離れた場所で行われるようになり、運搬費が上昇したり、移動のため森林が損傷したりする。このように、環境問題と不景気の問題は複合的に発生する。両者を分離して議論すると問題の本質を見失うことになる。森林の過剰伐採は土壌流出を招き、ひいては洪水の頻度や規模の増加をもたらす。また、森林の所有規模が大きいほど木材の質がよい傾向が有ることをカップはデータで示した。
キーワード
① 技術的外部性 ② 金銭的外部性 ③ 社会的費用 ④ 技術革新の社会的費用 ⑤ 私営林業の社会的費用
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
予習課題:今回配付した資料を見直し、次のことを再確認する。新古典派経済学では、外部性を技術的外部性と金銭的外部性の二つに分類し、前者のみを重大な問題視する。カップは外部性の二分法を批判する。技術的外部性は市場を経由しないで直接影響を与えるタイプの外部性である。また、金銭的外部性とは市場を経由して影響を与えるタイプの外部性である。しかし、それらは個々別々に発生しているわけではない。カップは第10章技術革新の社会的費用において次のような議論を展開している。企業間の技術革新の競争は設備の価値の低下(返済能力の低下)と過剰な設備の導入(資源の無駄遣い)を累積的に引き起こされていることを示している。また、カップは私営林業においても金銭的外部性と技術的外部性が相互作用で引き起こされていることも論じている。復習課題:来週は後半の復習である。これまで配布した資料を見直して復習問題に備えておく。
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後半の復習
科目の中での位置付け
後半の復習。講義の前半では、①重商主義を批判し、②重農主義から影響を受けつつ経済社会に関する考え方を根本から変えた③アダム・スミスの思想(①②③のそれぞれが何を富であるとみなし、それに応じてどんな経済政策を提唱したかなど)について学ぶ。後半では、④現代の環境政策(例えば、環境税や排出権取引)の経済的手法に取り入れられている新古典派経済学の基本的考え方について学ぶ。⑤初期の頃の新古典派の論者たちは人間や環境についての深い洞察力を持っていたが、時代が下るにつれて、彼らの理論が形骸化することになった。新古典派の手法はある程度まで有効ではあるものの、その視野はあまり広くない(経済を市場だけから成り立っていると考えたり、幸福をモノやサービスなどから得られる満足度からのみ説明する傾向があったりして)ため限界も多く存在する。そこでより広い視野から社会問題や環境問題にアプローチし、新古典派の限界を乗り越えようとした⑥制度派経済学のウイリアム・カップについても解説する。今回は後半の復習である。
細目レベル①
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年、104-116
細目レベル②
マーシャル、永澤越郎訳『経済学原理』1985年、14-23、133-135、183
メンガー『一般理論経済学』みすず書房、1982年、27-32
ピグウ『厚生経済学Ⅰ』東洋経済新報社、1953年、15-27
細目レベル③
山根卓二「ウィリアム・カップの社会的価値の理論と「最小許容限度」」『経済学史研究』54 巻1 号、2012 年、43-60
山根卓二「ウィリアム・カップの科学統合論と実質的合理性」『経済学史研究』50 巻2 号、2009 年、21-37
山根卓二「ウィリアム・カップによる外部性の二分法批判」『人間と環境』5 巻 、2014年、45-62
コマ主題細目
① 復習(第9・10回) ② 復習(第11・12回) ③ 復習(第13・14回)
細目レベル
① 後期の内容の中で次のことを確認する。限界効用とは何か。「水とダイヤモンドのパラドックス」とは何か。限界効用逓減の法則とは何か。メンガー表の読み方について。ワルラスの一般均衡理論について。価格調整のメカニズムについて。均衡とは何か。ワルラスの一般均衡理論におけるセリ人の役割について。一般均衡理論では不況そして失業の問題をうまく説明できないこと。マーシャルは限界効用をどのように説明したか。支払意思額とは何か。需要曲線・供給曲線はどのように導出されるか。消費者余剰・生産者余剰・社会的余剰とは何か。社会的余剰はどんなときに最大となるか。マーシャルが余剰の概念を考案した真意は何か。ピグーの厚生経済学の真意は何か。
② 後期の内容の中で次のことを確認する。メンガーの主著『国民経済学原理』はどんな経緯で書かれたか。その後メンガーはなぜ『国民経済学原理』の改訂(未完)を行ったのか。彼の言う非合理的な欲求とは例えばどんな欲求か。マーシャルの主著『経済学原理』において、彼は経済学をどんな学問であるといっていたか。マーシャルは所得と富をどう捉えていたか。ピグーによると、厚生とは何か。経済的厚生とは何か。非経済的厚生とは何か。ピグーは産業革命の影響で非経済的厚生が減少したと述べているが、なぜそう言えるのか。専門分化の弊害としては次の(1)(2)があること。(1)部分的な説明のため、現実がゆがめて解釈される(2)それぞれの学問で全く異なった説明がなされる。カップの提唱する科学の統合の方法分野どうしを異質さを保ちながらつなぐことである。カップが環境の価値を金銭的に測る理論を批判したこと。光化学スモッグは少量の化学物質が加わっただけでその地域全体の大気の質が変化することで発生する。生命は、その一部である呼吸器系を破壊されるだけで活動できなくなる。土砂の流出で被覆が剥がれると、その土地に生態系が回復するのは非常に困難である。カップは、環境政策を考える際には、環境のそうした不可逆的な質的変化を考慮して科学的知見を重視すべきであると主張した。
③ 後期の内容中で次のことを確認する。新古典派の形式合理的な人間像に対して、カップが(1)目的がいかにして形成されたのかが不問である(2)生存や健康の観点から目的を評価することを回避している、などの批判を行ったこと。カップは、プラグマティズムをも楽観的な進歩主義であると批判したこと。カップの描いた人間像は以下のようなものである。人間は他の動物より優れた概念形成能力を持っているため他の動物ができないこともできる。しかし、この特殊能力があるゆえの弱点もある。人間は不安を紛らわそうと努力して、かえって自己実現に失敗することもあること。実質的合理性は多数派の合意とは関係ないこと。実質的合理性とは、最低許容限度を超えるほどの損失を出してまで安全への欲求を満たしていないかどうかで合理性を見分ける基準、であるということ。カップは外部性の二分法を批判する。技術的外部性と金銭的外部性は個々別々に発生しているわけではない。企業間の技術革新の競争は設備の価値の低下(返済能力の低下)と過剰な設備の導入(資源の無駄遣い)を累積的に引き起こされていること。また、カップは私営林業においても金銭的外部性と技術的外部性が相互作用で引き起こされていることも論じている。
キーワード
① メンガー ② ワルラス ③ マーシャル ④ ピグー ⑤ カップ
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。マルサスは18世紀末の食料不足の原因を何であると考えていたか。マルサスはなぜ自由貿易に反対したのか。リカードはなぜ自由貿易に賛成したのか。リカードの比較優位の原理とはどんな学説か。「価値分解説」とはどんな考え方か。投下労働価値説とはどんな考え方か。「差額地代説」とはどんな考え方か。リカードは経済成長が進むと結局イギリス経済はどうなると考えていたか。賃労働とは何か。マルクスは労働を本来は何であると考えていたか。商品生産関係とはどんな関係か。共同体や家族における人の関係とどう違うか。物神崇拝(フェティシズム)とは何か。労働と労働力の違いは何か。剰余価値とは何か。どうすれば剰余価値は生まれるか。絶対的剰余価値とはどんな剰余価値か。相対的剰余価値とはどんな剰余価値か。特別剰余価値とはどんな剰余価値か。労働者がお金に支配されずに自由になるにはどうすれば良いとマルクスは考えたか。特別剰余価値を獲得するために資本家たちが競って機械導入することは経済全体にどのような影響を与えるか。そうしたことが続くと将来どうなるとマルクスは予想していたか。マルクスの予想が当たらなかったのは条件が変わったからであるが、では、具体的に、マルクスの時代とどう変わったか。
履修判定指標
履修指標
履修指標の水準
キーワード
配点
関連回
黎明期の経済学
古代ギリシャのアリストテレスや中世の神学者トマス・アクイナスが経済活動の目的をどう考えていたかを理解している。ケネーの『経済表』に登場する三つの階級の役割を理解している。ケネーがいうところの再生産とは何であるかを説明できる。ケネーの『経済表』をふまえて、再生産がうまくいく(うまくいかない)条件を説明できる。ケネーがフランスのルベールが主導した重商主義政策を批判した理由、ケネーが農業を重視した理由を説明できる。
第2・3回のキーワード
18
2・3
スミスの『国富論』
アダム・スミスが重商主義政策を批判し、国内産業における富の生産を重視した理由を理解している。スミスが富(=生活必需品)を増やすために提言した方法について理解している。スミスが国家の役割についてどう考えていたかを説明できる。スミスの時代における市場と現代における市場の違いについて理解している。スミスの時代における競争と現代における競争の違いについて理解している。スミスが株式会社をどう評価していたかを説明できる。
第4・5・6回のキーワード
24
4・5・6
スミスの『道徳感情論』
スミスの方法論のベースにある『道徳感情論』について理解している。共感とは何であるかを理解している。道徳感情はどのように形成されるかを理解している。私たちがある人の好意をどのようにして「正当な行為」であると評価しているか説明できる。「公平な観察者」とは何であるかを説明することができる。スミスは何を幸福であると考えたかを理解している。スミスはなぜ、富の飽くなき追求を幸福と見なさなかったのかについて説明できる。
第7回のキーワード
8
7
新古典派
限界効用とは何かを理解している。メンガー表の読み方を理解している。ワルラスの一般均衡理論における価格調整について理解している。セリ人の役割について理解している。支払意思額とは何か、需要曲線・供給曲線はどのように導出されるかを理解している。マーシャルが余剰の概念を考案した真意は何か、ピグーの厚生経済学の真意は何かを理解している。メンガーの主著『国民経済学原理』はどんな経緯で書かれたか、その後メンガーはなぜ『国民経済学原理』の改訂(未完)を行ったのかを理解している。マーシャルの主著『経済学原理』において、彼は経済学をどんな学問であるといっていたかを理解している。ピグーのいう経済的厚生、非経済的厚生について理解している。
第9・10・11回のキーワード
26
9・10・11
カップ
専門分化の弊害としては次の(1)(2)があることを理解している。(1)部分的な説明のため、現実がゆがめて解釈される(2)それぞれの学問で全く異なった説明がなされる。カップの提唱する科学の統合の方法について理解している。カップが環境の価値を金銭的に測る理論を批判したことを理解している。光化学スモッグ、生命は、生態系などは金銭的に評価しても意味がないのはなぜかを理解している。新古典派の形式合理的な人間像に対して、カップが次の点を批判したことを理解している(1)目的がいかにして形成されたのかが不問である(2)生存や健康の観点から目的を評価することを回避している。カップの描いた人間像について理解している。自己実現のもともとの意味について理解している。実質的合理性とは何かを理解している。カップは外部性の二分法の批判について理解している。技術的外部性・金銭的外部性について理解している。それらは個々別々に発生しているわけではなく複合的に発生していることを理解している。技術革新の社会的費用について説明できる。私営林業の社会的費用について説明できる。
第12・13・14回のキーワード
24
12・13・14
評価方法
期末試験100%
評価基準
評語
学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・
S (100~90点)
学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・
A (89~80点)
学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・
B (79~70点)
学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・
C (69~60点)
学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・
D (60点未満)
教科書
なし
参考文献
井上義朗『コア・テキスト経済学史』新世社、2004年.井上義朗『「新しい働き方」の経済学』現代書館、2017年.佐々木隆治『私たちはなぜ働くのか』旬報社、2017年.
実験・実習・教材費