区分
専門科目-統合看護
ディプロマ・ポリシーとの関係
実践能力
倫理観
専門性探求
地域社会貢献
グローバル性
カリキュラム・ポリシーとの関係
豊かな人間性
広い視野
知識・技術
判断力
探求心
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
科目の目的
痛みの緩和は看護学において古くからの重要課題の1つである。痛みは誰もが日常生活において経験するものであり、多くの疾患の診断や治療を行う上で、重要かつ基本的な症候でもある。痛みを緩和するためには、その痛みの原因は何か、どのようなメカニズムで発生した痛みなのか、痛みに影響する要因は何かなど、わかっていないと的確に痛みを軽減することはできない。本科目では、痛みに関する基礎知識や評価方法、緩和方法を学修することによって様々な疾患に伴う疼痛を緩和する方法が選択できる。
到達目標
患者の安楽を確保する役割を担っている看護師は,痛みの緩和のために何ができるかを考え,患者の苦痛を最小限にするよう援助しなければならない.なぜ「痛い」のかから,どうやって「痛み」に対応するのかまで,患者の痛みに対する看護の役割,痛みの反応と痛みをもつ患者心理の理解,痛みの看護診断過程,痛みに対する具体的な緩和ケアなど,痛みの看護・ケアに必要な基礎知識について学び,痛みのアセスメントについて判断し,具体的な評価技能を身につけ,痛みの医学的・リハビリテーション学的治療・マネージメントについて判断したうえで具体的な技能を実践できるようになる.
科目の概要
本科目では、痛みの発生や病態について、そのメカニズムを踏まえて理解し、エビデンスに基づく看護を実践できる知識を身につける。具体的には、第1回痛みの定義と分類について学び、第2回は痛みのシグナルと痛みに影響する要因について学修する。第3回目は近年増加している慢性痛について分類やメカニズムについて学修する。第4回は痛みの評価方法について学修する。疼痛のある患者をケアする際、痛みを正しく評価しなくては、適切な介入はできない。痛みは主観的なものであり、対象者の背景も含めていかに的確に評価するか学習する。第5回は疼痛、特に慢性痛の薬物療法・緩和方法について学修し、看護実践への応用を考える。第6回はがん性疼痛、第7回は高齢者の疼痛、そして第8回は薬物以外の緩和方法、補完代替療法について学修する。
科目のキーワード
痛みの定義,侵害受容と痛みの伝導路,シナプス可塑性,中枢での痛み認知,痛みの修飾機構の異常と慢性痛,ストレスと痛み知覚,痛みの評価,薬物療法と非薬物療法,がんの痛み,高齢者の痛み
授業の展開方法
疼痛疾患の看護の理解のために,①疼痛の成立ち,原因,経過(難治化)など疼痛疾患の本質を理解する.その前提となる解剖生理学や病理・病態生理,生化学,心理学,薬理学の知識,②痛みの評価と治療方針,③代表的な薬物治療や非薬物療法の特徴や作用機序などは明快な図表を用いて効果的に学修することで,疼痛の緩和とQOL,ADLの向上が授業の枠組みの中で理解できるように構成している.さらに,患者の最も近くにいて緩和医療にあたる看護師にとっての必須な情報となる④与薬や処置後に注意すべき特徴・重篤な副作用について授業を展開する.
オフィス・アワー
研究室:701
Email:y-saeki@uhe.ac.jp
科目コード
ERQ05
学年・期
3年・前期
科目名
痛みの看護論
単位数
1
授業形態
講義
必修・選択
選択
学習時間
【講義】16h
【予習・復習】29h
前提とする科目
本科目は慢性疼痛の緩和医療を学修するための基礎をなすものであり,様々な痛みの性質について,痛みの発生・認知・情動及びそれらを修飾するメカニズムなどを理解し,薬物療法や認知行動療法などの非薬物療法につなげるためにも,生理学,生化学,解剖学,生物学,病態生理学,心理学,薬理学等の幅広い知識を必要とします.
展開科目
統合科目であり該当しない
関連資格
―
担当教員名
佐伯由香
回
主題
コマシラバス項目
内容
教材・教具
1
痛みの定義と分類
科目の中での位置付け
本科目では,痛みとくに慢性痛の病態について,そのメカニズムを踏まえて理解し,エビデンスに基づく看護医療を実践できる知識を身につける.具体的には,第1回痛みの定義と生物学的意義づけについて学び,第2回から第4回にかけて,疼痛認知の基礎であり,痛みの管理を学ぶにあたって必須の知識となる,①痛みシグナルの発生とシグナル伝達,②疼痛の感作および疼痛の抑制機構とそれに影響を与える因子,③痛みの評価について概念を理解した後,第5回から第6回にかけて,慢性疼痛の発症メカニズムとメカニズムに応じた疼痛緩和治療,薬物治療,インターベンショナル治療,心理的アプローチについて学修する.第7回から第8回にかけて,がん性疼痛,高齢者の疼痛治療について現代的にアプローチする.
上のような本科目全体の中で,本コマ(第1回)は,痛みとはどうゆうも痛みの緩和は看護学において古くからの重要課題の1つである。痛みは誰もが日常生活において経験するものであり、多くの疾患の診断や治療を行う上で、重要かつ基本的な症候でもある。痛みを緩和するためには、その痛みの原因は何か、どのようなメカニズムで発生した痛みなのか、痛みに影響する要因は何かなど、わかっていないと的確に痛みを軽減することはできない。本科目では、痛みに関する基礎知識や評価方法、緩和方法を学修することによって様々な疾患に伴う疼痛を緩和する方法が選択できる。第1回は痛みとはどういうものなのか(痛みの定義)、痛みの分類とそれぞれの痛みの性質、生体にとってどういった意義があるのかなどについて学ぶ。また、痛みは「感覚」なのか「知覚」なのかについて学修し、痛みは単なる体性感覚ではなく「感情」と「思考」を統合した極めて複雑な知覚「情動」であり、侵害刺激がなくても脳内で「痛み」を出力できること、加えて高次脳機能で行われる実存に影響する「認知」や「評価」が強く関与することの見識を深める。
配布プリント
コマ主題細目
① 痛みの定義 ② 痛みのメカニズム ③ 痛みの分類
細目レベル
① 痛みの定義:1979年国際疼痛学会(IASP)が「痛み」を「組織の実質的または潜在的な傷害に伴う不快な感覚・情動体験、‥このような傷害を含む傷害を言い表す言葉を使って述べられる不快な感覚・情動体験である」と定義した。その後、2020年にIASPはこの定義を改訂し、痛みは「実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」とした。さらに、6項目が定義を補足するNoteとして付記されている。特徴的なのは、6番目の「言葉に表すことができないからといって痛みがないとは限らない」という項目で、組織に損傷があることが前提であった旧定義と異なり、組織の損傷がないことも含まれている。
② 痛みのメカニズム:感覚とは外部からの刺激を受容する受容器がある。痛みに関しては特別な構造物はなく、自由神経終末で、物理的な刺激や化学的刺激といったあらゆる刺激を感知することができる。組織の損傷が起こるとこれを侵害受容器が感知して、感覚神経を介して脊髄、視床、大脳皮質に情報を送る。大脳皮質に到達すると損傷している部位の痛みを感じることができる。侵害受容器ニューロンには有髄神経のA線維ニューロンと無髄神経のC線維ニューロンが存在し、A線維ニューロンは「鋭い痛み」を、C線維ニューロンは「鈍い痛み」を感じる役割があると報告されている。また、視床から大脳皮質と共に大脳辺縁系に情報が送られると「つらい」「苦しい」という情動が生じる。
③ 痛みの分類:痛みは主観的な意識内容であり、その病態はさまざまである。痛みを発生する原因により分類すると、主に侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、Nociplastic painの3つに分類できる。(1)侵害受容性疼痛:有害な刺激(侵害刺激)が神経終末の受容器を刺激して起こる痛みで、変形性関節症や関節リウマチ、椎間板ヘルニアなどが代表的疾患になる。(2)神経障害性疼痛:神経の損傷、あるいはそれに伴う機能異常によって起こる痛みで、三叉神経痛や帯状疱疹後神経痛に代表される。(3)Nociplastic Pain:以前は「心因性疼痛」ともいわれ、身体的な異常がないにもかかわらず、不安や社会的ストレスなど心理・社会的な要因によって生じる痛みの考え方である。しかし、神経系が感作されて、ちょっとした信号を神経が過敏に検知するという概念に変わってきた。
また、痛みの持続期間によって急性痛と慢性痛に分けることができる。急性痛には、外傷、手術に伴う痛みなどが挙げられる。慢性痛は、痛みが消失するであろうという期間が過ぎても痛みがあり続ける状態が長く続いている状態と定義されてきた(IASP)。
キーワード
① 痛みの定義 ② 痛みのメカニズム、侵害受容器 ③ 痛みの種類
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テストを実施します.
復習・予習課題
事前学習:シラバスを熟読するとともに事前に配布された講義資料およびの内容と合わせて,学習課題を必ず講義前に把握し,その学習課題の必要な解剖学・生理学・病態生理学・生化学・薬理学で該当する各項,および教材・教具の項に記載した論文やガイドラインを参照してよく復習しておく.特に,痛みの定義やその生理学的役割,痛みの分類とその特徴について,既習の基礎的知識を振り返り,整理しておくことが理解の近道である.
事後学習:IASPが提唱する痛みの定義では,痛みとは,生体に加えられた刺激に対する感覚としての痛みだけでなく,情動としての要素も含んでおり,痛みは常に個人的な経験であり,主観的なものである.痛みを記憶し,そのため痛みが大きければ記憶として保存され,時として侵害刺激が加わらなくても呼び起こされる,などの痛み特徴について復習する.このことは,これから痛みの学習をしていくうえでの基礎となるものである.WEB上で様々な動画配信が行われているので,それらも参考にしながら,確実に自分のものにする.
2
痛みシグナルと痛みに影響する要因
科目の中での位置付け
痛みの緩和は看護学において古くからの重要課題の1つである。痛みは誰もが日常生活において経験するものであり、多くの疾患の診断や治療を行う上で、重要かつ基本的な症候でもある。痛みを緩和するためには、その痛みの原因は何か、どのようなメカニズムで発生した痛みなのか、痛みに影響する要因は何かなど、わかっていないと的確に痛みを軽減することはできない。本科目では、痛みに関する基礎知識や評価方法、緩和方法を学修することによって様々な疾患に伴う疼痛を緩和する方法が選択できる。第2回は,痛みシグナルの発生と痛み神経を刺激する化学物質(発痛物質)、さらに痛みに影響する要因について学修する.組織を損傷するような物理的な刺激だけではなく、痛みを起こす発痛物質にはヒスタミン、ブラジキニンといった炎症性物資や電解質のH+やK+が含まれている。天気が悪いと痛みが増悪することについて、なぜこのようなことが起こるのか学習する。
配布プリント
コマ主題細目
① 痛みのシグナル発生 ② 発痛物質 ③ 天気と痛み ④ 痛みの悪循環
細目レベル
① 痛みシグナルの発生:痛みのシグナル発生には,侵害性刺激を受けてそれを電気信号(インパルス)に変える装置が必要である.末梢知覚神経先端部分に痛み刺激を感知する侵害受容器がある(自由神経終末)。侵害受容器には組織を損傷するに至るような機械刺激刺激〈侵害刺激〉にのみ反応する高閾値機械受容器や非侵害刺激から侵害刺激まで広い範囲で刺激強度に応じて反応するポリモーダル受容体がある。ポリモーダル受容器は皮膚だけでなく、骨格筋や内臓諸器官にも分布している。内臓の痛みは自律神経と並走する求心性の内臓神経で伝えられる。皮膚は切創や火傷の湯な刺激で痛みが起こるが、内臓ではこれらでは痛みは起こらないと言われている。内臓痛を起こす障害は虚血,酸性化,痙攣などで、これらに求心性の内臓神経が反応する。
② 発痛物質:侵害性の物理的な刺激だけでなく、化学的な刺激によっても痛み神経は興奮する。特に急性炎症による疼痛発症のメカニズムにはカリウムやヒスタミン、ブラジキニン、プロスタグランジン、H+などの化学物質が関与しており、これらは炎症性メディエーターと呼ばれている。侵害刺激で細胞が壊れると細胞内に多いK+が細胞外に出て痛みの神経を刺激する。また、内臓で虚血が起こるとその周辺のH+が増加して、痛み神経を興奮させる。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)はプロスタグランジンの合成を抑制することによって様々な痛みを抑える鎮痛薬として使用される。
③ 天気と痛み:「梅雨のときは膝が痛む」など、天気の崩れや季節の変わり目に体調を崩す人は決して少なくない。これらは気象関連痛あるいは天気痛と呼ばれている。この病態メカニズムはいまだ不明であるが、瘢痕組織が天気の崩れなどに反応する可能性や気圧の変化によって関節炎局所の侵害受容線維が興奮する可能性などが示唆されている。そのほか、自律神経系のバランスが崩れたり、心理的な要因も関わっていると考えられているが、内耳が気圧の変化を感知することによって起こると考えられている。
④ 痛みの悪循環:局所に痛みがあると,中枢(脳)は交感神経を介してその局所の血管を収縮させ,筋肉を緊張させる.通常,痛みが生じても交感神経の反応はすぐにおさまり,血行が改善されて痛みが鎮まる.しかし,痛みが長引くと,血液の流れの悪い状態が続いて血管を通して送られる酸素や栄養が不足し,組織が障害されてしまう.その結果,疼痛物質が発生し,さらなる痛みを引き起こす.痛みがあれば必ず悪循環になるというわけではないが,一度悪循環に陥ってしまうと,なかなか抜け出せなくなってしまう.痛みの悪循環は痛みだけが原因で起こるわけではなく,知覚神経障害や筋の過緊張,血管攣縮や末梢循環障害(糖尿病)などから悪循環に陥ってしまうこともある.
キーワード
① 痛みシグナルの発生 ② ブラジキニン、ヒスタミン、K+、H+ ③ 気圧 ④ 痛みの悪循環
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テストを実施します.
復習・予習課題
事後学習:体に生じた痛みの原因(侵害刺激)が痛みのインパルスを引き起こすメカニズムやそれを伝達・伝導する神経経路と伝達する痛みの特徴,さらに痛みのインパルスを増やしたり,減らしたりして修飾・調節する基礎的な仕組みについて,しっかりと復習する.
3
慢性疼痛
科目の中での位置付け
痛みの緩和は看護学において古くからの重要課題の1つである。痛みは誰もが日常生活において経験するものであり、多くの疾患の診断や治療を行う上で、重要かつ基本的な症候でもある。痛みを緩和するためには、その痛みの原因は何か、どのようなメカニズムで発生した痛みなのか、痛みに影響する要因は何かなど、わかっていないと的確に痛みを軽減することはできない。本科目では、痛みに関する基礎知識や評価方法、緩和方法を学修することによって様々な疾患に伴う疼痛を緩和する方法が選択できる。第3回は、看護の対象者が多く有している慢性疼痛について学習する。慢性疼痛の定義、分類、慢性疼痛が発生するメカニズムならびに特徴について学習する.
配布プリント
コマ主題細目
① 慢性疼痛の定義 ② 慢性疼痛の分類 ③ 中枢性感作 ④ 下行性疼痛制御系
細目レベル
① 慢性疼痛の定義:一般的に3か月以上の持続または再発、急性組織損傷の回復後1か月以上経過しても持続する痛みををいう。急性痛は外傷や打撲など外力が原因で起こるのに対し、慢性疼痛は日常的に行う動作が原因となる場合が多い。時には不安や緊張といった精神的ストレスによる起こったり、増悪することもある。
② 慢性疼痛の分類:急性痛を繰り返す慢性疼痛、急性痛が遷延化した慢性疼痛と難治性慢性疼痛に分類できる。前者は侵害受容器の興奮が原因で、組織の修復期間をやや超える場合である。それに対して難治性慢性疼痛は中枢神経系の機能変化や心理社会的要因によって修飾され、組織の修復期間を大幅に超える場合である。両者とも疼痛のほか睡眠障害や食欲不振などの症状を伴うことが多い。身体的な随伴症状だけでなく、不安や抑うつ、破局的思考といった精神症状を伴うこともある。
ICD-11では慢性一次性疼痛と慢性二次性疼痛に分けられている。慢性一次性疼痛とは、原因が複合的あるいは不明な場合で、慢性広範疼痛症や慢性一次頭痛などが含まれる。慢性二次性疼痛は原因がはっきりしている場合で、慢性がん関連疼痛などが含まれる。
③ 中枢性感作:通常であれば痛みと感じない程度の身体の異常でも連続的に刺激が与えられると次第に痛みに変わっていくことで、中枢が疼痛の感度を高める現象をいう。これによって痛みのある状態で繰り返し痛み刺激が与えられると、次々に来る痛みを大きくし、次第に痛みが強くなり、時には広範囲に広がっていくこともわかっている。怒りっぽい人や不安の強い人などが中枢性感作が起きやすいため慢性疼痛になりやすいともいわれているが、正確なところは不明である。
④ 下行性疼痛制御系:痛みを修飾する脳の部位には、側坐核や吻側延髄腹内側部などいくつかあるが、中でも中心的な役割を果たしているのが中脳水道灰白質(PAG)である。PAGが痛みに関する信号を受けとると下行性疼痛修飾系を起動すると考えられている。PAGが下降性疼痛抑制系の起始核となっており,ここからの下行性出力と青斑核に走行する線維群(ノルアドレナリン神経)と吻側延髄内側部 (RVM) に走行する線維群(セロトニン神経)があり,内因性鎮痛として最も重要な役割を果たしている.鍼灸治療や運動療法などで痛みが軽減するのも,下降性疼痛抑制系が賦活するためとも考えられている.逆にうつ病を発症したり,不安などの感情的ストレスが長期間加わると普段より痛みを強く感じることがあるが,これにはセロトニン神経を介した自己鎮痛の変調が関与している.
キーワード
① 慢性疼痛の定義 ② 慢性疼痛の分類 ③ 中枢性感作 ④ 下行性疼痛制御系
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テストを実施します.
復習・予習課題
事後学習:痛みを抑える生体内システムとして,ゲートコントロール,広汎性侵害抑制調節,ストレス鎮痛,下降性疼痛抑制系,内因性オピオイド鎮痛などについて押さえる.加えて,痛みを強めるシステムとしての,末梢性感作(侵害受容器の閾値変化,自発放電頻度の増加,神経性炎症,侵害神経と非侵害神経のクロストークなど)と中枢性感作(ワインドアップ現象,神経の可塑的変化,下降性疼痛促進係,下降性疼痛抑制系の機能減弱)などについて十分に復習する.この様な生体に備わった,痛みのインパルスを増やしたり,減らしたりして修飾・調節する仕組みは,次回からの学修:慢性痛の発症(痛みの難治化)メカニズムや難治性疼痛の緩和治療を考えて行くうえでの基礎となる.WEB上で様々な動画配信が行われているので,それらも参考にしながら,確実に自分のものにする.
次回事前学習:痛みの評価について学ぶ.痛みを訴える患者に適切な医療提供を行うためにはその痛みを可及的客観的に把握する必要がある.痛みは主観的で多元的な経験である.そのため,痛みの評価法は様々存在する.シラバスを熟読するとともに,事前配布した講義資料の内容について,教材・教具の項に記載した論文やガイドラインを参考にしてよく復習しておく.既習の基礎的知識を振り返り,整理しておくことが理解の近道である.
4
痛みの評価
科目の中での位置付け
本科目では,痛みとくに慢性痛の病態について,そのメカニズムを踏まえて理解し,エビデンスに基づく看護医療を実践できる知識を身につける.具体的には,第1回痛みの定義と生物学的意義づけについて学び,第2回から第4回にかけて,疼痛認知の基礎であり,痛みの管理を学ぶにあたって必須の知識となる,①痛みシグナルの発生とシグナル伝達,②疼痛の感作および疼痛の抑制機構とそれに影響を与える因子,③痛みの評価について概念を理解した後,第5回から第6回にかけて,慢性疼痛の発症メカニズムとメカニズムに応じた疼痛緩和治療,薬物治療,インターベンショナル治療,心理的アプローチについて学修する.第7回から第8回にかけて,がん性疼痛,高齢者の疼痛治療について現代的にアプローチする.上のような本科目全体の中で,本コマ(第4回)は,痛みの評価と臨床で痛みを扱う医療従事者の基本的態度について学ぶ.
疼痛は目に見えない症状で,なおかつ主観的な感覚であるため,痛みを訴える患者に適切な医療を提供するためには,患者の痛みの部位や痛みの感じ方などを確認したうえで,その痛みを可及的客観的に把握する必要がある.今日,痛みはその様相から3つに分類される.1つ目は痛みが「どこに発生したか」「どうゆう痛みか」「どのくらいの強さの痛みか」といった感覚的側面である.痛みが慢性化すると脳の機能不全の様相が強くなる.これが2つ目の「痛みの情動・社会的側面」あるいは3つ目の「認知・身体的側面」である.このように痛みは主観的で多元的な経験である.そのため,痛みの評価は一般に急性痛は心理学的に不安や苦悩と切り離すことができず,慢性痛では抑うつ,身体的潜入概念,身体制限,睡眠障害や絶望感を含んだ複雑な苦悩の要素を有している.そのため,痛みの評価法は種々存在し,しかも標準となりえる評価方法がない.痛みを評価するに際して求められる項目としては,①痛みの感覚強度評価,②感情的評価(情動などの評価も含まれる),さらに,③患者の有する心理的背景も痛みの表出を修飾するため,不安,抑うつ,怒り,苛立ち,欲求不満などの精神・心理的評価,加えて,④外向性性格や神経症性格といったパーソナリティ評価がある.また,⑤痛みは個人の経験ということから,患者の日常での活動制限も評価に含める必要がある.それぞれの評価法について学ぶ.
配布プリント
コマ主題細目
① 痛みの一元的評価 ② 痛みの多元的評価 ③ 客観的評価法(オブザーバ・スコア) ④ 実験現象学的評価法 ⑤ 医療従事者の基本的態度
細目レベル
① 痛みの一元的評価:自己申告法には言語的報告や面接法,自己評価法など様々な方法がある.現時点での痛みの評価はもちろん,過去にさかのぼって患者が経験した,あるいは記憶にある痛みも評価できる点が特徴である.
1)カテゴリー・スケール/用語記述スケール:僅かに,少し,中等度,激しい,耐え難いなど用語を用いて疼痛強度や痛みに関する事象を自己評価して申告する.2)数値化スケール(Numeric Rating Scale; NRS):痛みの強度や痛みの内容を用語の代わりに1~5の数字などで自己申告する.3)Visual Analog Scale; VAS:直線状の左端を「無痛」とし,右端を「耐え難い痛み」として,患者の痛みやその内容について当てはまる位置に印をつける.この方法では,痛みの全体強度は推測できるが,痛みの性状,持続時間,頻度などについては情報が得られない.4)痛みの日記:1日を24時間に分け,痛みが生じた時期,頻度,持続時間,程度,服薬状況などについて記録させるものである.痛みの発現のパターンを知ることができ,行動との関連から痛みへの対処法を推測できる,日常での痛みの誘発因子を探し出すことが可能となり,患者自身の病気の知識も高くなる等の利点がある等について理解を深める.
② 痛みの多元的評価:臨床では痛みの強度のみならず,不安,抑うつ,あるいはパーソナリティも含めて評価しなければならない.1)感情的評価法:強度のみならず,痛みの性質を含めて多元的に評価する方法としては,マギル疼痛質問表などがある.「痛み」を現す単語を,「痛み」の性質や程度から感覚的表現,情動的表現,評価的表現,その他の表現に分類し,それぞれスコア化したものである.信頼性と妥当性が確認されており,痛みを多元的に評価できる点で,国際的に用いられている.2)心理的評価法,パーソナリティ評価法:テストに用いる方法によって,課題テスト,質問紙テストおよび投影法テストに分類される.これらに心理テストを用いる目的は,得られた評価から不安や抑うつなどを確定することではなく,疑わしき患者に精神神経科への受診を進めるためである.従って,これらの検査の妥当性(他の検査とに一致など)は大きな問題にならない.3)日常活動障害度評価法:痛みの日常活動障害度を評価する検査は少なく,疾患の帰結としての残存機能の評価といった障害評価となっている. Slade and Spencerの質問表は,機能制限,身体痛,心理的不快感,身体的能力障害,心理的能力障害,社会的能力障害およびハンディキャップの区分で,様々な日常活動制限評価に用いることが可能であるところまで押さえる.
③ 客観的評価法(オブザーバ・スコア):患者の痛み行動を第三者(観察者)が評価する方法,あるいは観察者の経験と医学的見地から評価する方法である.医師あるいは看護師が患者に意識させない状況下で患者の疼痛行動を評価する.例えば,足が痛いという患者に対し,日常生活で足の痛みをどの程度行動に表しているか,すなわち,痛む足をどの程度保護しながら日常を過ごしているかを評価するものである.また,患者の痛みを一般に経験する痛み,たとえばう蝕の痛み,何かにぶつかったときの痛み,手を切ったときの痛み,電気に触れた時の痛みなどと比較して,自己評価する方法もある.本法は疼痛自体を客観的に提示できるが,それらを他者と共有することは困難である.第三者による疼痛行動評価のみの信頼性は低いとされる.
④ 実験現象学的評価法:患者に疼痛刺激を誘発させて実験現象出評価する方法で,自己申告と観察者評価の二種がある.
1)自己申告法:ある一定の刺激を与え,その評価を患者自身によって評価してもらう方法である.この方法は1回目をベースラインとして,同一患者に同一の痛み負荷を与えられることから,個人内での痛みの変化を評価するのに適している.しかし,個人間での痛みの比較にはまだ制御しきれない因子がある.代表的なものとして加圧疼痛閾値検査が挙げられる.2)観察者評価法:一定の刺激に対する痛み反応を観察者によって評価する方法である.その一つにface scale を用いたものがある.本来この図は,患児自身によって選択させるものだが,観察者が疼痛の評価に用いたり,疼痛反応の判定に用いることもあるところまで押さえる.
「痛みの評価」とは,「痛みを訴えている患者が有している痛みを広い視野から評価するもの」であって,痛みだけを拾い上げて評価するものではないことを把捉する.
⑤ 医療従事者の基本的態度:臨床で疼痛を扱うには正常痛と異常痛を理解し,さらに急性痛,関連痛,がん性疼痛あるいは反復痛および慢性痛の概念を含めて理解する必要がある.「痛い」という主訴に対して,常に局所にのみ原因を求めてはならない.少なくとも,局所に医学的原因が見られない場合は,いたずらに処置に進まないことである.様々な落とし穴が存在することも忘れてはならない.
医療従事者は患者の訴えを正直であると受け止めるべきであるが,そこに何らかの虚偽-意識された虚偽ではないにしろ,患者自身の偏りが入りこんでくる可能性を忘れてはならない.医療従事者がもっとも注意しなければならないことは「痛いはずはない」「たいしたことはない」「嘘でしょう」「死ぬわけじゃない」などといった否定の言葉あるいは態度を示すことである.たとえ患者の訴えが大げさにみえても,(それは厳に慎まなければならない)してはならない.痛みの治療は相手の痛みを認めることから始まることを銘記すべきである.
キーワード
① 痛みの一元的評価 ② 痛みの多元的評価 ③ 客観的評価法(オブザーバ・スコア) ④ 実験現象学的評価法 ⑤ 医療従事者の基本的態度
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テストを実施します.
復習・予習課題
事後学習:痛みを訴える患者に適切な医療提供を行うためにはその痛みを可及的客観的に把握する必要がある.それが痛みの評価の意義である.疼痛の訴えには痛みの感覚的及び情動的因子以外に,心理・社会的および性格因子が加わり複雑な多元的状態を示す.慢性痛では抑うつ,身体的先入概念,身体制限,睡眠障害や絶望感を含んだ複雑な苦悩の要素を有している.「痛みの評価」とは,正確には「痛みを訴えている患者が有している痛みを広い視野から評価するもの」であって,痛みだけを拾い上げて評価するものではないことを理解する.このことは,疼痛治療や疼痛看護を考えて行くうえでの基礎となる.WEB上で様々な動画配信が行われているので,それらも参考にしながら,確実に自分のものにする.
次回事前学習:慢性痛においては遷延する痛み自体が大きな問題となっている.心理社会的な背景により痛みの強さや訴え方が大きく修飾され,脳内報酬系が持続的に抑制され,患者のADLやQOLの著しい低下につながり,惹いては人々の健康(寿命,生活習慣病,睡眠障害,認知機能など)に深く関わっている.慢性痛の発症(痛みの難治化)のメカニズムについて学ぶ.シラバスを熟読するとともに,事前配布した講義資料の内容について,教材・教具の項に記載した論文やガイドラインを参考にしてよく復習しておく.特に前回学習した,疼痛シグナル伝達制御や脳の解剖・生理機能について,既習の基礎的知識を振り返り,整理しておくことが理解の近道である.
5
慢性疼痛の薬物療法、緩和方法
科目の中での位置付け
痛みの緩和は看護学において古くからの重要課題の1つである。痛みは誰もが日常生活において経験するものであり、多くの疾患の診断や治療を行う上で、重要かつ基本的な症候でもある。痛みを緩和するためには、その痛みの原因は何か、どのようなメカニズムで発生した痛みなのか、痛みに影響する要因は何かなど、わかっていないと的確に痛みを軽減することはできない。本科目 全体の中で,第6回は,侵害受容性疼痛や炎症性疼痛の治療において主要な地位を占める非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)およびNSAIDsが使用できない時に安全性が高い薬物として使用が増加しているアセトアミノフェン,神経障害性疼痛やがん性疼痛の治療の主要薬物である麻薬性鎮痛薬,鎮痛補助薬の作用メカニズム,安全性,副作用およびその対処法,禁忌,薬物依存などについて学ぶとともに,薬物治療で改善が難しい疼痛疾患に対するインターベンション治療や心理的アプローチについて学修する.
配布プリント
コマ主題細目
① 薬物療法に用いる鎮痛薬 ② 麻薬性鎮痛薬、非麻薬性鎮痛薬 ③ 鎮痛補助薬 ④ インターベンショナル治療 ⑤ 心理的アプローチ
細目レベル
① 薬物療法に用いる鎮痛薬(非ステロイド性鎮痛薬,アセトアミノフェン):
1) 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):シクロオコシゲナーゼ(COX)を阻害することでプロスタグランジン(PG)の生成を抑え,解熱・鎮痛・抗炎症作用をあらわす薬物の総称である.多くの場合,抗血栓・抗血小板作用,尿酸排泄抑制作用がある.一般に用いられる痛み止めで,炎症が関与する急性痛には有効であるが,慢性痛には無効であることが多い.
2)アセトアミノフェン〔パラセタモール〕:アスピリンと同等の鎮痛,解熱作用をもつ有用な薬物であるが,抗炎症作用は非常に弱い.主に中枢に作用して鎮痛作用を発現する.副作用として,過剰投与による肝細胞壊死があるが,消化管,腎機能,血小板機能,心血管系イベントに対する影響は少ない.
② ② 麻薬性鎮痛薬,非麻薬性鎮痛薬:1) 麻薬性鎮痛薬(オピオイド系鎮痛薬):モルヒネで代表されるオピオイド類は古代より鎮痛に用いられており,μ,δ,κの3種類の受容体に作用する.オピオイドの薬理作用は多彩である.鎮痛作用を惹起するモルヒネの用量を1とした時,便秘(0.02),嘔吐.(0.1),鎮痛(1),行動抑制(眠気)(2.6),呼吸抑制(10.4)となる.鎮痛作用:モルヒネが代表であり,μ受容体が関与した機構である.
2)非麻薬性鎮痛薬:単独でオピオイド鎮痛薬のような鎮痛作用を示すことから、がん性疼痛や非がん性慢性疼痛の緩和に用いられる。
③ 鎮痛補助薬:鎮痛薬による副作用軽減とQOLの向上,鎮痛薬の効果増強,精神神経学的・心理学的な補助などを目的として使用される薬物であり,神経障害性疼痛をはじめとするオピオイド抵抗性の痛みに対して,多くの薬剤が鎮痛補助薬として使用されている.抗うつ薬、 抗痙攣薬、 抗てんかん薬、 抗不整脈薬、抗不安薬などがある。これらの薬物の使用について,ドラッグ・チャレンジテストにより疼痛機序部位を特定し,それに対して薬物を選択することが大切である
④ インターベンショナル治療(神経ブロック):速やかにかつ安全に痛みを除去できる魅力 的な治療法である.神経ブロックは痛みの原因となっている神経やその他の組織に針を刺入して局所麻酔薬や神経破壊薬を注入する治療法である.神経ブロックの効果は数分以内に発現し,ブロックの選択が適切であれば通常無痛となる.薬物療法で改善が乏しく,かつ痛みの原因となっている神経が詳細に同定されている場合に限って適応されるものである.適応を考えるとき,患者の持つ痛みの意味(疼痛行動としての痛み,疾病利得を含んだ痛みなど)は何かということなど,心理的側面の把握も重要である.とことまで押さえる.
⑤ ⑤ 心理的アプローチ(認知行動療法):認知行動療法は,ものの考え方や受け取り方(認知)に対して,また,何らかの行動に対して働きかけることで,気持ちを楽にしたり,ストレスを軽減させる治療方法である.障害を持っている場合は心と体のバランスが崩れやすいので,ストレスを感じやすく,不安や怒りといった激しい精神的変化を生じやすいと言われている.障害を持っていても,気持ちを整理しコントロールしていくことができる.このような心 理回復能力をより発揮しやすくするために,治療としての支援(認知行動療法)が活用されている.薬と作用の仕方が異なるため,投薬治療と組み合わせることで治療成功率を高めることも可能になるとされる.
キーワード
① ステロイド性・非ステロイド性鎮痛薬、アセトアミノフェン ② 麻薬性・非麻薬性鎮痛薬 ③ 鎮痛補助薬 ④ インターベンショナル治療、神経ブロック ⑤ 認知行動療法
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テストを実施します.
復習・予習課題
痛みがさらに痛みを引き起こすことがあるため、疼痛は早く除去することが重要である。通常、薬物療法がおこなわれるが、それぞれの薬物、ステロイド性・非ステロイド性鎮痛薬、麻薬性・非麻薬性鎮痛薬は臨床だけでなく在宅においても、多く使用されていることからそれぞれの特徴と適応、副作用は正確に理解しておく。
次回事前学習:がん患者の疼痛について学習するため、がんの病態や進行、そして使用される薬物について予習しておくこと。
6
がん性疼痛の緩和療法
科目の中での位置付け
痛みの緩和は看護学において古くからの重要課題の1つである。痛みは誰もが日常生活において経験するものであり、多くの疾患の診断や治療を行う上で、重要かつ基本的な症候でもある。痛みを緩和するためには、その痛みの原因は何か、どのようなメカニズムで発生した痛みなのか、痛みに影響する要因は何かなど、わかっていないと的確に痛みを軽減することはできない。本科目では、痛みに関する基礎知識や評価方法、緩和方法を学修することによって様々な疾患に伴う疼痛を緩和する方法が選択できる。第7回は,がん性疼痛の緩和治療について取り上げる.
がん性疼痛の成り立ちは複雑で,がん細胞由来物質による炎症性疼痛,がん組織の神経圧迫に起因する神経障害性疼痛,疼痛の中枢性感作,情動や感情が影響し,がんの発育・進展に伴い,痛み発生の要因も複雑に変化する.以前のがん性疼痛治療はWHOのがん除痛ラダーに従って行われていたが、現在ではWHOの4原則に沿った疼痛コントロールも行われている。その他、がん性疼痛の突出痛の対処法とレスキュー薬の使用法,オピオイドの副作用とその対処法,オピオイドローテーションについて学修する.
配布プリント
コマ主題細目
① がん性疼痛地腸 ② オピオイドの副作用と予防 ③ オピオイドローテーション ④ 疼痛とオピオイド依存性
細目レベル
① がん性疼痛治療:オピオイド鎮痛薬は非がん性疼痛とがん性疼痛に適用される.「非がん性慢性疼痛へのオピオイドの適用」は厳格に定められており,医師の厳重な管理・指導のもとで行われている。一方,「がん性疼痛へのオピオイド適用」では,WHO方式3段階除痛ラダーに従って積極的に用いる.(1)重篤な副作用がない限り上限はなく,(2)継続使用も可能であり,(3)急な疼痛の増強でレスキュー薬の頓用も可能である.
WHOの4原則は以下の通りである;(1)経口的に、(2)時間を決めて.(3)患者ごとに.(4)細かい配慮をすること.
② オピオイドの副作用の予防:麻薬性鎮痛薬の鎮痛効果は強力である.一方で,嘔気,便秘,眠気,呼吸抑制などの副作用から,高用量あるいは長期使用に伴う弊害が明らかになっている.(1)嘔気・嘔吐:経口オピオイド投与の約半数に認められる.耐性が生じやすく約2週間で消失する.投与開始直後,短期に大幅な増量で現れやすい.(2)便秘:オピオイド投与開始直後からほぼ全例に発生.耐性は生じないので,投与量が増えれば便秘はどんどん重症化する.(3)眠気・傾眠:投与初期から1週間程度みられることが多い.(4)呼吸抑制:用量依存的な延髄の呼吸中枢への直接の作用によるもので,二酸化炭素に対する呼吸中枢の反応が低下する。オピオイドによる疼痛管理において副作用の発現と対処については重要である.内容をしっかり把捉すること.
③ オピオイドローテーション(スイッチング):(1)増量しても鎮痛効果が十分に得られない,(2)十分な対策を施しても副作用が軽減しない,(3)同一成分で投与経路の変更ができない等により,患者のQOLが維持できない時は,投与しているオピオイドを他のオピオイドに変更する.オピオイドローテーションはμ受容体完全アゴニスト(モルヒネ,オキシコドン,フェンタニル)間で行う.μ受容体部分アゴニスト(ペンタゾシン,ブプレノルフィン)は定時処方しているオピオイドの作用に拮抗して鎮痛効果が抑制されることがあるので,ローテーションには使わないことを理解する.
④ 疼痛とオピオイド依存性:医療用麻薬はがん性疼痛治療に必須の鎮痛薬となっている.しかしながら,がん性疼痛にモルヒネなどの医療用麻薬を使用したら依存に陥るので最後まで使いたくないと考えている人々が多い.このような麻薬恐怖症(narcotic phobia)を払拭しなければ,満足のいくがん性疼痛治療は行えないと考えられる.臨床経験上,がん疼痛治療においてオピオイドの精神依存が問題にならないことが知られており,詳細な機序も明らかにされている.
キーワード
① オピオイド ② オピオイドの副作用とその予防 ③ オピオイドローテーション ④ 疼痛とオピオイド依存性
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テストを実施します.
復習・予習課題
復習課題:がん性疼痛に用いられるオピオイドの作用機序や副作用とその克服方法や看護のポイントや注意点についてしっかりと学習する.さらにオピオイドローテーションについてもその必要性や適応、注意事項を確実に理解しておくこと。がん性疼痛には医療用麻薬が使用されているが、がん治療においてオピオイドの精神依存が問題とならないことも理解しておrく。
次回事前学習:高齢化が進むわが国では、あらゆる診療領域で高齢者が増加している。加齢に伴い、種々の機能が低下していく。薬物治療においてどのような機能低下が治療効果や副作用の予防に役立つのか、高齢者の諸機能の変化を予習しておく。
7
高齢者の痛みの特徴と治療
科目の中での位置付け
痛みの緩和は看護学において古くからの重要課題の1つである。痛みは誰もが日常生活において経験するものであり、多くの疾患の診断や治療を行う上で、重要かつ基本的な症候でもある。痛みを緩和するためには、その痛みの原因は何か、どのようなメカニズムで発生した痛みなのか、痛みに影響する要因は何かなど、わかっていないと的確に痛みを軽減することはできない。本科目では、痛みに関する基礎知識や評価方法、緩和方法を学修することによって様々な疾患に伴う疼痛を緩和する方法が選択できる。高齢者の愁訴の第一は疼痛であり,25~50%の高齢者が腰痛や関節痛などで苦しんでいる. 高齢者の慢性痛は一般成人に比べ,痛みや鬱状態はそれほど強くないが,活動(行動)制限は大きく出現する.そのため痛みの評価には, 痛みの強さだけでなく痛みに対する活動(行動)を検索することで多角的に評価することが重要である.高齢者においては痛みがADLの低下に直結しやすく,高度な痛みでは寝たきり,ひいては痴呆にまで発展することも稀ではない.また慢性痛を予防するためには早期からの鎮痛が重要であることが明らかにされ,高齢者においても積極的に痛みをとることが奨められている.しかし一方では高齢者は合併症も多く個人差も大きいことから,疼痛治療にも高齢者特有の配慮が求められる.そこで,加齢に伴う痛みに関する生理学的変化,高齢者の特徴的な疼痛疾患,高齢者の痛みのアセスメントと疼痛治療法について学ぶ.
配布プリント
コマ主題細目
① 高齢者の疼痛に関する生理学的変化 ② 高齢者特有の疼痛疾患 ③ 高齢者の痛みアセスメント ④ 高齢者疾患における緩和治療
細目レベル
① 高齢者の疼痛に関する生理学的変化:加齢に伴う感覚閾値の変化は,加齢に伴い次第に閾値が上昇していく。皮膚の痛点の分布は部位によって多少異なるが,高齢者のそれは若年者の約半分になる.さらに神経伝導速度が加齢にともない低下するなど高齢者では痛みに対して鈍感になる傾向にある.高齢者では疼痛刺激に対する被刺激性が高く,慢性痛に移行しやすい可能性が推測されるなど,加齢に伴う痛み神経の生理的な変化を理解する.
② 高齢者特有の疼痛疾患:
加齢により身体・精神機能が低下する。高齢者に多い痛みを伴う疾患に多いのは、運動器の退行性変化や変形によるものが原因で、腰痛、肩こり、関節痛などがあり、疾患でいうと変形性膝関節症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などが該当する。運動器の痛みはADLやQOLに影響するため、早急の緩和が必要である。また、帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害など神経障害による場合やそのほか、脳血管障害や閉塞性動脈硬化症などの循環器疾患に起因することもある。高齢者特有の疼痛疾患について理解を深める。
③ 高齢者の痛みアセスメント:高齢者が痛みを体験するとADLとQOLに影響がでる.したがって基本的な機能評価,とくにADLの状態を観察する.高齢者の疼痛治療上の問題についての調査では,痛みの評価には複雑な社会的・家庭的背景が関連し,立場により疼痛に依存性がでること,さらに以前からの慢性痛の評価が重要である.認知障害がある場合は,痛みの自己報告だけでなく表情や態度などから客観的にとらえる.高齢者の複雑な痛みと痛みによる影響について正確に判断するために,より多くの情報を得る.高齢者自身が痛みを語りやすいように環境を整え,信頼感を築くことが重要となる.日常生活の影響について医療者と十分に話しあい,同時に十分な観察による評価を行うことが,隠れた原因を見出すことになる.アセスメントを行う過程で観察による手がかりが得られると,痛みの隠れた原因を見出すことがあり,痛みの原因に対する治療がされれば,高齢者のQOL,ADLは改善することを理解する.
④ 高齢者疼痛疾患における緩和治療:
高齢者の痛みの治療は、薬物療法、神経ブロック、理学療法など、基本的には成人と同様であるが、身体機能が低下していること常に考慮する必要がある。高齢者の薬物療法は痛みのアセスメントを慎重に行った上で,患者背景や患者データをよく読み取り,鎮痛薬の選択や用量設定には十 分に注意しなくてはならない.高齢者への神経ブロック法では予想以上に効果が出る場合があるので,いかなる神経ブロックにおいても低濃度,少量から開始しなければならない.しかし高齢者には個人差が大きいことから,低濃度少量がよいというのではなく個々の患者にあった濃度,投与量を用いる必要がある.理学療法として、温熱療法,電気刺激治療,レーザー治療などがある.特に高齢者では痛みの部位が多いことや,鎮痛薬によっては副作用がでやすいことから,レーザー治療は高齢者にとって非常に有用な鎮痛法の一つとなる.
キーワード
① 高齢者の疼痛に関する生理学的変化 ② 高齢者特有の疼痛疾患 ③ 高齢者の痛みアセスメント ④ 緩和治療
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テストを実施します.
復習・予習課題
復習課題:加齢変化に伴い、身体機能は低下していく.高齢者の諸機能がどのように変化しているのか、再度復習して理解する。それらをふまえて薬物治療する際の注意事項に関しても確実に自分のものにする.
次回事前学習:疼痛に対して基本的には薬物治療が行われるが、薬物以外の方法を学修するので、どの湯な緩和方法があるのか事前に調べておく。そして、特に興味をもった方法に関して、具体的な方法やその効果等調べておくと、理解しやすい。
8
補完代替療法
科目の中での位置付け
痛みの緩和は看護学において古くからの重要課題の1つである。痛みは誰もが日常生活において経験するものであり、多くの疾患の診断や治療を行う上で、重要かつ基本的な症候でもある。痛みを緩和するためには、その痛みの原因は何か、どのようなメカニズムで発生した痛みなのか、痛みに影響する要因は何かなど、わかっていないと的確に痛みを軽減することはできない。本科目では、痛みに関する基礎知識や評価方法、緩和方法を学修することによって様々な疾患に伴う疼痛を緩和する方法が選択できる。第8回は,薬物を使用しない補完代替療法を取り上げる. 補完代替療法は疼痛緩和以外にもストレスの軽減や集中力の向上など、いろいろな場面で日常的に用いられている。痛みに影響する要因としてストレスや睡眠障害などがあり、このような要因を減らすだけでも痛みの緩和に繋がる。医療の現場においても、手術室で患者の不安を軽減させる目的で音楽を流したり、歯科医院においては同様に不安軽減の目的でリラックスできるような香りが用いられている。実際に行われている補完代替療法を例に、疼痛看護との関連を理解する.
配布プリント
コマ主題細目
① 芳香療法 ② 音楽療法 ③ アニマルセラピー
細目レベル
① 芳香療法:芳香療法はアロマセラピーともいわれ、植物から採取される精油(エッセンシャルオイル)を用いて行う療法である。特に精油の効能を引き出し、自然治癒力を高めて予防医学的に使用したり、症状の緩和を目的に使用されるものはメディカルアロマセラピーといわれている。単に香りを楽しむだけではなく、マッサージなどにも使われている。しかし、日本においては精油は薬事法においては雑貨の扱いとなっている。これまで行われてきた芳香療法に関する研究をもとに、看護実践への応用、そして疼痛看護との関連について理解を深める。
② 音楽療法:音楽療法とは、「音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身の障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること」である(日本音楽療法学会の定義)。音楽を鑑賞する、演奏する、体を動かす、創作する行動も含まれる。対象も障碍児・者、高齢者、成人と幅広い。芳香療法同様、様々な対象者に実施された音楽療法の効果を紹介し、看護実践への応用、疼痛看護との関連について理解を深める。
③ アニマルセラピー:アニマルセラピーとは、動物とのふれあいで心を癒すことである(日本アニマルセラピー協会)。歴史は古く、古代ローマ時代に負傷した兵士のリハビリに馬を用いていた。家庭でペットを飼うこともアニマルセラピーの1つである。実際、ペットを飼っている人は飼っていない人より、年間20%前後病院に行く回数が減少したとか、ペットの影響によってドイツでは7500億円、オーストラリアでは3000億円もの医療費が削減したともいわれている。目的や方法に応じて、動物介在療法、動物介在教育、同部く介在活動の3つにわけることができる。アニマルセラピーを行った効果を報告した具体的な研究を紹介し、看護実践への応用、疼痛看護との関連について学ぶ。
キーワード
① 芳香療法 ② 音楽療法 ③ アニマルセラピー
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テストを実施します.
復習・予習課題
復習課題:今回は3つの療法について、これまで報告されている効果について紹介をしたが、他にも多くの緩和療法がある。興味のある療法についてより掘り下げて調べ、今後の看護実践にどのように活かせるか考察するとよい。
履修判定指標
履修指標
履修指標の水準
キーワード
配点
関連回
痛みの定義,痛みの多元性(痛みの分類)を理解し,慢性的な痛みがある病態と治療
痛みの定義では,痛みを刺激と結びつけることを避けている.即ち,侵害刺激によって侵害受容器及び侵害受容経路に引き起こされる活動が痛みであるのではなく,痛みはいつも主観的(心理的な状態)であること.痛みの生物学的意義(痛みは情動として記憶され,その学習を通して危険を遠ざけるために重要な役割を果たす,警告信号であること)を理解できている.
侵害受容性,神経障害性,nociplastic(痛覚変調性)な疼痛の分類とその性質について説明できる.痛みの慢性化に伴う患者個人の身体的問題および社会全体の問題について理解できている.
痛みの定義,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛,痛覚変調性疼痛,痛みと社会
5
第1回
痛みの神経解剖および神経生理学
痛みの理解を深めるには,痛みのインパルスの発生や伝わり方,その増減の仕組み,さらには痛みの認知の在り方や,痛いときに表す行動など,末梢組織から高次の脳に向かう流れの中で痛みを捉える必要がある.このためには,痛みに関連する生理学,解剖学の知識が十分ある.
正常時の痛み(生理的疼痛)のメカニズム:「痛みの発症から侵害受容器,侵害受容器から脊髄までの伝導路,脊髄から脳への伝導路,脳での痛みの処理」について説明できる.病態時の痛みのメカニズム「炎症による痛み(組織損傷と炎症,炎症反応と痛み),神経障害による痛み(神経損傷,神経再生時の痛み,脊髄での可塑的変化),脳(情動)による痛み認知(情動の痛みへの影響,うつ状態の痛みへの影響)」について説明できる.生理的疼痛と慢性疼痛の違いについて理解できている.痛みと情動の関連について説明できる
痛みシグナルの発生と刺激伝導路,新脊髄視床路,旧脊髄視床路,情動神経回路,情動の生物学的意味,痛みと情動,痛みの弁別系と情動系
10
第2回
疼痛シグナルの伝達制御:痛みをつよめる仕組み・痛みを弱める仕組み
痛みは通常抑制的制御を受けている.痛みを抑える生体内システム:生体が持つ鎮痛機序(末梢性オピオイド鎮痛,ゲ-トコントロール,広汎性侵害抑制調節,ストレス鎮痛,下降性疼痛抑制系)と鎮痛に関わる内因性オピオイドペプチド,オピオイド,セロトニン,ノルアドレナリンとの関係について説明できる.
生体には痛みを抑える仕組みと同時に痛みを強める仕組みもある.その一つに「感作」という現象がある.感作とは刺激に対する閾値が下がり,同じ刺激でも通常より強い痛みが生じる現象である.末梢性感作には侵害受容器の閾値変化,自発放電頻度の増加,軸索反射による神経性炎症,侵害神経線維と非侵害神経線維とのエファップスによるクロストーク,DRGニューロン細胞体の変化誘導などがある.中枢性感作には,2次痛の時間的加算(Temporal Summation)や”ワインドアップ”現象,神経系の可塑的変化や下降性疼痛抑制系の機能低下,さらに高次の脳の働きの異常による痛みの過敏などが考えられていることを理解している.
痛みの感作,ストレス鎮痛,ゲートコントロール,広汎性侵害抑制調節,下降性疼痛調節系,神経の可塑性
15
第3回
慢性痛の発症メカニズム
痛みの慢性化を説明するために可塑性(Plasticity)という概念が大切となってきた.神経系での可塑性とは,外界からの刺激に対して神経系が構造や機能を変化させ,その後変化を起こした刺激がなくなっても,起きた変化が神経系に保持される性質である.
痛みの慢性化を理解する上での脊髄レベルの主たる神経可塑性としては,1) 長期増強(LTP)の発現,2) グリア細胞と神経細胞との情報交換(クロストーク)長期増強に関与するミクログリアとアストロサイト,3) 抑制性介在ニューロンの機能障害が機能しており,大脳皮質レベルでの神経回路の可塑性として,4) シナプスレベルでの神経回路の再編,5)一次体性感覚野神経回路の可塑的変化,6) 未熟化したアストロサイトによる神経回路再編成とアロディニア,7) 興奮と抑制のバランス破綻などがある.これらの機構が慢性侵害受容性疼痛,関連痛,神経障害性疼痛,痛覚変調性疼痛の発症と難治化にどの様に関連しているか,さらに疼痛の心理と神経発達にも強く影響していることが理解できている.
痛みが恐怖体験と結びつきやすい人なら,破局的志向や恐怖,回避行動が過剰になり,過度な安静や不動が痛みを悪化させるなど疼痛遷延の原因になる可能性もあることを理解できている.
睡眠と痛みとの関りやストレスと痛みの関係,環境と痛みの関係など痛みについての必要な情報の見極めとアセスメントについて説明できるとともに,慢性疼痛患者と医療関係者とのかかわり方,患者と家族や友人との関り方について説明できる.
痛みの脳科学,痛みの感作機構,神経回路の再編成,慢性痛は脳で作られる(脳が痛みを変える),疼痛の心理と神経発達,疼痛行動に関連する精神症状と社会的問題
15
第5~8回
痛みの評価と治療および医療従事者の基本的態度
痛みの一元的評価(自己申告による評価),多面的評価(肉体的痛みと心理・社会的痛みの評価),実験現象学的評価,および,痛みの背景となる因子の評価(①画像評価,②神経機能評価,③身体的機能評価,④血液検査やその他の評価)についてその特徴と注意点,使い分けについて理解できている.
痛みの要素(痛いという感覚,不快に思う情動,痛みに対する考え(認知))それぞれについて正しい知識と対応を⾝につけている.
医療従事者がもっとも注意しなければならないこと,たとえ患者の訴えが大げさにみえても,「痛いはずはない」「嘘でしょう」「死ぬわけじゃない」などといった否定の言葉あるいは態度を示すことである.痛みの治療は相手の痛みを認めることから始まることが理解できている.
痛みの一元的評価,多面的評価,実験現象学的評価,痛み背景因子の評価,医療従事者の基本的態度
10
第4回
疼痛疾患の薬物治療:治療薬の作用機序,有効な投与方法,薬物動態,主作用,副作用,禁忌に対する相互理解
医師が処方した治療薬(鎮痛薬および鎮痛補助薬)について,疾患の理論に基づいた治療戦略などを理解し,当該薬物の作用機序や作用点,副作用・有害作用,相互作用,禁忌等について把握できており,患者の容態の変化を予測し,その症状と評価,問題点,対処法について説明することができ,看護過程・看護計画に役立てることができる.多職種が連携した薬物療法を実践することが、患者の安全と,療養生活にどのように影響を及ぼすかが考えられる.薬を扱うことの重要性について認識でき,看護のポイントや誤薬の危険性について理解できている.誤薬を起こさないための医療人としての行動について理解できている.
生体内鎮痛系以外の賦活(筋緊張の緩和,血流の改善,自律神経系の調節,免疫系の賦活,内分泌系の賦活)による痛みの抑制について説明できる.
疼痛疾患の治療戦略,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),ステロイド性抗炎症薬,鎮痛補助薬,オピオイド,薬物動態,主作用,副作用,禁忌,看護計画
10
第6~8回
痛みの精神療法と行動のアプローチ
薬物治療で改善が難しい疼痛患者に対して実施される,インターベンショナル治療(神経ブロック),心理的アプローチ(認知行動療法,マインドフルネスなど),神経調節技術(電気刺激療法:脳深部刺激療法(DBS),大脳皮質運動野刺激療法(MCS),脊髄電気刺激療(SCS),経皮的神経電気刺激療法(TENS)など),認知音楽療法(神経の可塑性に基づいて神経ネットワークの再編成を図るニューロリハビリテーション)等の適応範囲と有効性,使用上の注意について説明できる.
慢性痛に対してセルフケアが必要な理由と痛みに対するセルフケアの現状,慢性痛の管理で推奨するセルフケアについて説明できる.
インターベンショナル治療,痛みの心理的アプローチ,神経調節技術(脳へのニューロモデュレーション治療)
10
第6~8回
がん性疼痛の緩和治療
がん性疼痛の成立ちは複雑で,各ステージによって痛みの原因は異なっていることが理解できている.
オピオイド鎮痛薬の使用法と鎮痛メカニズム,副作用とその対応はどうしたらいいのか,禁忌等についてどんなことに注意が必要か理解できている.WHOの三段階除痛ラダーに基づいた疼痛コントロールやオピオイドローテーション(スイッチング)について説明できる.
突出痛に対するレスキュー薬はどうするのか,がん関連疼痛(化学療法による痛み,術後痛,放射線治療による痛み)への対応はどうするのか理解できている.オピオイドを使いたがらない患者さんへの対応はどうするのか,がん性疼痛のように痛みが強い場合は依存が起こり難いことについて患者さんに解るように説明できる.
がん性疼痛,オピオイド鎮痛,WHOの3段階除痛ラダー,レスキュー薬,オピオイドの副作用とその克服,オピオイドの精神依存,鎮痛補助薬
10
第7回
高齢者特有の疼痛疾患に対する緩和治療
高齢者の痛みについて,加齢による痛み閾値の変化について理解できている.慢性腰痛と変形性脊椎症,高齢者の特有の痛み(変形性関節症,骨粗鬆症,サルコペニア)についてその発症メカニズム,疼痛緩和治療(薬物療法,理学療法),看護のポイントなどについて説明できる.
高齢者特有の痛み,腰痛,変形性膝関節症,骨粗鬆症の痛み,サルコペニアの痛み,薬物療法,理学療法
10
第6~8回
慢性疼痛治療における目的と最終目標
医療者は慢性化した痛みの訴えに対して,あるいは痛みを慢性化させないためにも,痛みの理解をより深めて,「痛覚」≠「痛み」似て非なるものであることを理解し,痛みの慢性化の予防にあたることが肝要である.患者さん個々の多様性をふまえた上で,一人ひとりの1) QOLを高めることを目標に,2) 患者さんが痛みを受容できるように,3) 痛みがっても前向きに歩めるように,4) よき同伴者となることが求められることを理解している.
痛みの軽減は慢性疼痛治療の目的と最終目標の一つであるが,第一目標ではない.医療者は,治療による副作用をできるだけ少なくしながら痛みの管理を行い,患者のQOLやADLを向上させることが重要である.「痛みをとってあげる」ことが最終目標ではないことを理解している.
痛覚と痛み,慢性疼痛治療の目的,最終目標
5
第1,4回
評価方法
最終到達目標は,痛みの受容・伝達機構,痛みの生体内調節,脳での痛みの認知機構について学び,疼痛の病態や治療に関して医学的アプローチのみならず,心理学的,社会学的アプローチを理解することである.筆記試験(100%)で評価する.
評価基準
評語
学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・
S (100~90点)
学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・
A (89~80点)
学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・
B (79~70点)
学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・
C (69~60点)
学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・
D (60点未満)
教科書
当該教科については専門書やガイドラインは出版されているが,適切な教科書がない.独自に作成したオリジナルプリントを用いて,授業を実施する.
参考文献
疼痛医学,田口敏彦,飯田宏樹,牛田享宏 監修 医学書院,2020. ISBN 978-4-260-04083-9.\6,600. 増補改訂新版 痛みと鎮痛の基礎知識,小山なつ 著 技術評論社,2016.ISBN 978-4-7741-8543-9.\3,608. エモーショナル・ブレイン―情動の脳科学,Joseph LeDoux 著, 松本元・小幡邦彦 ほか訳 東京大学出版,2003.ISBN 978-4-13-063319-2.¥4,180. 痛みへの挑戦: R.Melzack, P.D.Wall 著, 中村嘉男 監訳 誠信書房,2000. ISBN 9784414402452.¥4,950. “痛みのしくみ”とその歪み https://www.nippon-zoki.co.jp/medical/pain.html 看護学テキスト NiCE 薬理学,荻田喜代一,首藤誠 編 南江堂,2020.ISBN978-4-524-25291-6.\2,860. その他 教材・教具の項に記載した専門書,ガイドラインを参照
実験・実習・教材費