区分 (心)心理学科基盤科目 心理学基礎科目 (犯)犯罪心理学基盤科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門的知識と実践的能力 分析力と理解力 地域貢献性
カリキュラム・ポリシーとの関係
課題分析力 課題解決力 課題対応力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
(心)本科目は1年生の必修科目であり,心理学基盤科目の心理学基礎科目に配置されている。本科目を履修することで,心理学の研究法の基礎、心理学の歴史の概略、心理学の諸領域に関する基本的な理解が可能になる。このことは、心理学基盤科目の2年次以降の科目内容において専門的知識を深める基礎となるもので,さらなる心理学専門領域科目,心理学専門隣接科目に配置される科目との関連とも有機的に結びついた学習が可能となる。
(犯)犯罪心理学基盤科目に位置づけられ,心理学の歴史と研究方法について概観し,さまざまな分野の心理学(感覚・知覚,記憶,学習,動機づけ,コミュニケーション,社会的影響,組織,学校,文化など)の基礎知識を身につける。当科目では,学問としての心理学の全体像を理解し,2年次以降の専門的な学修に必要となる基礎知識を修得することが可能になる。

科目の目的
「心理学概論」は、まさにその言葉通りに、心理学の全体のあらましを要約して説明するという目的を持つ。つまり、心理学の対象、目的、方法を明らかに、その学問がどのような領域を形成し、知識を蓄積してきたのかを要約的に示すことになる。この心理学概論を学ぶことで、その後に展開される心理学科の専門授業のあらましを知ることができる。心理学概論では、1)心理学の定義・歴史・領域、2)心理学の研究法、3)生活体と環境・行動の神経的基礎、4)学習心理学、5)感覚・知覚心理学、6)記憶心理学、7)言語・思考、8)知能 9)感情・情動心理学、10)パーソナリティ心理学、11)発達心理学、12)社会心理学、13)臨床心理学、14)健康心理学、15)環境心理学、の領域においてこれまでに明らかになってきた重要なテーマについて30コマの授業で学び、これからの4年間での心理学を学ぶために必要な基礎的知識を身に着ける。心理学的にものを考えることができるという基本的能力を身につけることが目的である。
到達目標
心理学の対象、目的、方法をまず理解し、心理学がどのような知識を蓄積したのか、その代表的な事実や理論について理解する。そして身近な心的現象を心理学的な枠組みで理解できるようになることを目標とする。
科目の概要
初学者が心理学を理解するために必要な知識を、「科目の目的」に示した15の心理学領域について、30回の授業でそれらを講義する。第1回・2回は、1)心理学の歴史について、現在の心理学に至る過程を概観する。第3・4回では、心理学研究における方法論について学ぶ。これは心理学の基本中の基本で、心理学がどのようにして心や行動の規則、個人差についての知識を得てきたかに関わる知識獲得の方法論の学である。第5・6回は環境と人間の関わりと行動の神経学的基礎について学ぶ。第7・8回は、新しい行動がどのようにして獲得されるのかに関する「学習心理学」について学ぶ。第9・10回は、外界の認識の成立のプロセスである「感覚・知覚心理学」について学ぶ。第11・12回は、知識や経験がどのように獲得されるのかに関する「記憶心理学」について学ぶ。第13・14回は言葉の心理学と問題解決などの能力に関する「言語・思考」について学ぶ。第15・16回は知的であるということはどのようなことかを「知能心理学」から学ぶ。第17・18回は「感情・情動心理学」、第19・20回は個性の心理学である「パーソナリティ心理学」、第21・22回は心の発達の様相について「発達心理学」から学ぶ。第23・24回は人間関係の多様な様相を「社会心理学」から学び、第25・26回は、心の健康と心のケアについて「臨床心理学」から学んでいく。第27・28回は心の健康に関わる諸要因は健康維持の方法に関する心理学を学ぶ。第29・30回は私たちとマクロな環境との関係に関わる環境心理学を学ぶ。
科目のキーワード
心理学の定義 心理学の歴史 行動 動機づけ 感覚と知覚 記憶心理学  思考と言語 パーソナリティ 知能心理学 発達 社会心理学 臨床心理学 環境心理学
授業の展開方法
講義形式の授業の展開である。授業はパワポの資料を提示しながら解説するので、学生諸氏はヨリソルにアップロードされている資料に目を通しておくこと。学生諸氏は資料を印刷するか、もしくはコンピュータかノートなどに、授業における解説の要点や重要な事項を書き込めるようにしておくこと。授業では、必要に応じてYouTubeなどにアップロードしてある貴重な視覚教材も参照するので、百聞は一見にしかずという現象も経験すること。このような視覚教材に関する概要や感想も書き留めておき、学習に役立てること。
オフィス・アワー
【月曜日】4時限目(後期のみ)、【火曜日】3時限目(前期のみ)・4時限目(後期のみ)、【水曜日】2・3時限目(前期のみ)
科目コード PSC100
学年・期 1年・前期
科目名 心理学概論
単位数 4
授業形態 講義
必修・選択 必修
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 なし
展開科目 (心)心理学統計法 心理学とキャリア 臨床心理学概論他(犯)犯罪心理学概論(司法・犯罪心理学) 心理学とキャリア 臨床心理学概論他
関連資格 公認心理師、認定心理士
担当教員名 厳島行雄
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 心理学の歴史・定義・方法 科目の中での位置付け 心理学は心と行動を科学的に研究する学問である。その定義は歴史とともに変遷してきた。古代ギリシアではプラトンやアリストテレスが魂(プシュケー)を哲学的に論じた。19世紀後半になるとヴィルヘルム・ヴントが1879年にライプツィヒ大学に実験室を開設し、心理学は実験科学として産声を上げた。その後、ジョン・B・ワトソンの行動主義は観察可能な行動を重視し、内観を批判した。その間、ゲシュタルト心理学、精神分析学が起こった。20世紀後半になると認知革命が起こり、心的過程を情報処理として研究する認知心理学が発展した。心理学の定義は以上のようなそれぞれの立場によって幾分ともニュアンスが異なるが、主に科学を志向する点が強調される点は類似している。また、研究方法としては、実験法(因果関係の検討)、観察法、調査法、相関研究、事例研究などが用いられる。近年は脳画像法などの神経科学的方法や統計的モデリングも活用され、心の働きを多角的に解明してきている。今回授業では、2回の授業で心理学の歴史・定義・方法を学ぶ。
教材は授業にて配布する。
コマ主題細目 ① 心理学の歴史 ② 心理学の定義 ③ 心理学の方法
細目レベル ① 心理学の起源は古代ギリシア哲学にさかのぼり、魂や心の本質をめぐる思索として始まった。近代には経験論や合理論の影響のもとで心を科学的に解明しようとする動きが強まる。19世紀後半、ヴィルヘルム・ヴントが実験室を設立し、内観法によって意識を分析して心理学を独立した実験科学とした。一方、ウィリアム・ジェームズは意識の流れと適応的機能を重視する機能主義を提唱した。20世紀初頭にはジョン・B・ワトソンが行動主義を唱え、観察可能な行動の客観的研究を心理学の中心に据えた。その後、1950年代以降の認知革命により心的過程の研究が復活し、今日では神経科学や社会・発達・臨床など多様な分野と結びつきながら発展している。この授業では、これらの心理学の流れを図示しながら、その発展を辿る。そして、それぞれの心理学の立場がどのような目的、方法によって人間の心について科学的に説明しようとしてきたのかの理解を得る。



② 心理学の定義は時代とともに変遷してきた。古代ギリシアではアリストテレスの『魂について』に代表されるように、心は「魂(プシュケー)」の働きを探究する哲学的対象とされた。近代に入ると、意識の内容を内観によって分析する学問と定義され、19世紀後半にヴィルヘルム・ヴントが実験心理学を創設して「意識の科学」として確立した。これに対し、20世紀初頭のジョン・B・ワトソンは心理学を「行動の科学」と再定義し、観察可能な反応の法則を重視した。その後、認知革命により再び心的過程が研究対象となり、今日では心理学は「行動およびその背後にある心的・神経的過程を科学的方法で解明する学問」と広く定義されている。以上のような定義は歴史的な発展とともに提出されてきた。それぞれの立場が何を説明しようとしているのかを理解していこう。
③ 心理学の研究法は、心と行動を科学的に解明するための多様な方法から成る。中心となるのは実験法であり、独立変数を操作し従属変数への影響を検討することで因果関係を明らかにする。観察法は自然場面での行動を記録し、生態学的妥当性を確保する方法である。調査法(質問紙法・面接法)は態度や意識など主観的側面を測定するのに用いられる。さらに検査法では知能検査や性格検査など標準化された尺度を使用する。近年は脳画像法や生理指標の測定も発展し、神経科学的アプローチが進んでいる。また、相関研究や縦断研究、メタ分析など統計的手法も重要であり、再現性や倫理的配慮を重視する姿勢が現代心理学の特徴である。どのような学問もその学問に特有の方法論を持っている。その方法論を理解することが大切である。
キーワード ① 心理学の歴史 ② 心理学定義 ③ 心理学研究法
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の最後に10問の小テストを行う。
復習・予習課題 予習課題:第1回の講義のシラバスを読み,関心のあるキーワードについて調べる。また,調べた内容と日常生活との関わりについて考えることが課題である。
復習課題:1については,「心はどこに存在しているのか」という問いに対して,現時点での 自分自身の考えをまとめることが課題である。2については,「心理学の歴史」の流れをおさえたうえで,現在の「心理学の学問体系」について理解する。あわせて,卒業研究のテーマ決 定の第一段階として,自身の興味のある心理学の分野について調べることが課題である。3については,それぞれの「心理学の研究法」の具体的な方法とその特徴,また,それぞれの「研 究方法の⻑所と短所」についてまとめることが課題である。

2 心理学の歴史・定義・方法(2) 科目の中での位置付け 第2回授業は、第1回授業で展開した、心理学の歴史、定義、方法を独立した内容としてではなく、それぞれの心理学に対する確信となる考え方と、それを支える方法を歴史的な流れの中で、展開することとする。第2回の授業は、いわば、第1回の授業の内容の理解を深める授業であるが、その方法として、受講者が、ただ受け身的に授業を聞くのではなく、能動的に授業に参加し、それぞれの心理学的立場が、人間の心の何を解明しようとしてきたのかの理解を深める授業である。
この目的のために、第1回の授業で提示した基本的な重要概念について、丁寧に追いかけていく。その際の方法としては、第1回授業よりも具体的なテーマで説明を試みるので、第2回目の授業は演習的な要素を含む内容となる。

授業にて資料を配布する
コマ主題細目 ① 心理学の歴史と定義 ② 心理学の方法
細目レベル ① 心の考え方についての展開(歴史と定義)
1)「霊魂」の学問(古代 〜 16世紀)
定義: 身体から独立した「魂(プシュケー)」の本質を探求すること。
特徴: 哲学の一領域であり、アリストテレスのように「生命の原理」として心を捉えていた。
2)「意識」の学問(19世紀後半:近代心理学の誕生)
定義: 人間の**「直接経験(意識)」**を分析すること。
代表: W. ヴント(心理学の父とも呼ばれる)
特徴: 1879年、実験心理学が成立。「内観法」を用いて、感覚や感情といった意識の構成要素を科学的に測定しようとした。
3)「行動」の学問(20世紀初頭:行動主義)
定義: 客観的に観察可能な**「行動」**を研究すること。
代表: J.B. ワトソン、B.F. スキナー
特徴: 目に見えない「心(意識)」をブラックボックスとし、外部からの刺激(S)と反応(R)の連鎖のみを科学の対象とした。
4)「情報処理(認知)」の学問(1950年代後半 〜 :認知革命)
定義: 刺激から反応の間にある「内的過程(認知)」を解明すること。
代表: U. ナイサー
特徴: コンピュータの発展に伴い、知覚、記憶、思考といった「心の仕組み」を情報処理プロセスとして捉え直した。
5)「行動と心的過程」の学問(現代)
定義:「行動と心的過程(メンタルプロセス)」**についての科学的研究。
特徴: 現在の最も一般的な定義です。目に見える「行動」と、脳科学や統計学を駆使して推測する「心」の両方を統合的に扱いう。
ポイント:心理学は「心」という目に見えないものをどうにかして「科学」にするために、意識 → 行動 → 脳・認知へと、その焦点を移してきた。

② 方法についての展開
1.)実験法(Cause and Effect)
原因と結果の因果関係を明らかにするための、心理学で最も強力な手法。
やり方: 条件を変えたグループ(実験群)と変えないグループ(統制群)を作り、反応の違いを測定する。
例: 「報酬を与えると、学習スピードは上がるか?」を調べる。
2) 調査法(Survey)
大人数の傾向や意識を把握するために使われる。
やり方: 質問紙(アンケート)やインタビューを用いて、回答を集計・分析する。
例: 「現代の若者の幸福度とSNS利用時間の相関」を調べる。
3)観察法(Observation)
対象者の自然な振る舞いを記録する手法。
やり方: 実験室ではなく、日常の場面で行動をありのままに観察・記録する。
例: 「公園で遊ぶ子供たちの社会性の発達」を観察する。
4)検査法(Psychological Test)
知能や性格などの個人の特性を数値化する。
やり方: 知能検査(WAISなど)や性格検査(ビッグファイブなど)を用いる。
例: 「個人の適性やストレス耐性」を測定する。
5)事例研究法(Case Study)
特定の個人や少数の集団を深く掘り下げる。
やり方: 特定の症例や人物について、詳細な記録を分析。
例: 「特殊な記憶障害を持つ患者の経過」を数年にわたって追う。

キーワード ① 心理学の定義 ② 心理学の歴史 ③ 心理学の研究方法
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 予習・復習課題
予習課題:第1回の講義のシラバスを読み,関心のあるキーワードについて調べる。また,調べた内容と日常生活との関わりについて考えることが課題である。
復習課題:1については,「心はどこに存在しているのか」という問いに対して,現時点での 自分自身の考えをまとめることが課題である。2については,「心理学の歴史」の流れをおさえたうえで,現在の「心理学の学問体系」について理解する。あわせて,卒業研究のテーマ決 定の第一段階として,自身の興味のある心理学の分野について調べることが課題である。3については,それぞれの「心理学の研究法」の具体的な方法とその特徴,また,それぞれの「研 究方法の⻑所と短所」についてまとめることが課題である。

3 心理学は何を対象に研究しているのだろうか?心理学の研究領域について 科目の中での位置付け 心理学は、人間および動物の行動と心的過程を科学的に研究する学問である。その対象は、知覚・注意・記憶・思考・感情・動機づけといった内部過程から、対人関係や集団行動、発達やパーソナリティ、さらには脳や神経の働きに至るまで極めて広い。19世紀末、ヴィルヘルム・ヴントが実験心理学を創始して以来、心理学は哲学から独立し、実証的研究を基盤とする学問として発展してきた。その後、ジョン・B・ワトソンによる行動主義、ジークムント・フロイトの精神分析、さらに20世紀半ばの認知革命を経て、現代では多様な理論と方法が併存する統合的学問となっている。
また心理学を基礎心理学と応用心理学の二つに大きく分けて対象領域を説明する場合がある。この授業では、心理学が心のどのような領域を主に対象として研究を進めているのかについて理解を深める

授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 基礎心理学 ② 発達心理学 ③ 社会心理学 ④ 人格心理学 ⑤ 臨床心理学
細目レベル ① 心理学は、人間および動物の行動と心的過程を科学的に研究する学問である。その対象は、知覚・注意・記憶・思考・感情・動機づけといった内部過程から、対人関係や集団行動、発達やパーソナリティ、さらには脳や神経の働きに至るまで極めて広い。19世紀末、ヴィルヘルム・ヴントが実験心理学を創始して以来、心理学は哲学から独立し、実証的研究を基盤とする学問として発展してきた。その後、ジョン・B・ワトソンによる行動主義、ジークムント・フロイトの精神分析、さらに20世紀半ばの認知革命を経て、現代では多様な理論と方法が併存する統合的学問となっている。
また心理学を基礎心理学と応用心理学の二つに大きく分けて対象領域を説明する場合がある。この授業では、心理学が心のどのような領域を主に対象として研究を進めているのかについて理解を深める

② 発達心理学は、乳児期から老年期に至るまでの心身の変化を生涯発達の観点から研究する。言語や社会性の獲得、アイデンティティの形成、加齢に伴う認知機能の変化などが主題である。縦断研究や観察法が多用される。
③ 社会心理学は、個人が社会的状況の中でどのように認知し、感情を抱き、行動するかを扱う。態度変容、同調、対人魅力、ステレオタイプなどが代表的テーマである。集団力学の研究では、クルト・レヴィンが「場の理論」を提唱し、行動は個人と環境の相互作用の関数であるとした。
④ 人格心理学は、個人差の構造と形成過程を明らかにする分野である。特性論、類型論、社会的学習理論など多様な理論があり、ビッグファイブ理論などの統計的モデルも用いられる。
⑤ 臨床心理学は、心理的問題や精神障害の理解と支援を目的とする応用領域である。心理査定、心理療法、カウンセリングなどが中心で、エビデンスに基づく実践が重視される。精神分析、認知行動療法、人間性心理学など理論的背景も多様である。らに応用領域として、教育心理学、産業・組織心理学、健康心理学、法心理学などがある。たとえば法心理学では、目撃証言の信頼性、取調べの影響、裁判員の判断過程などを実証的に研究する。教育心理学は学習過程や動機づけを扱い、産業・組織心理学は職場におけるリーダーシップやストレス管理を研究する。

このように心理学は、基礎から応用まで多層的に展開している。その特徴は、厳密な方法論に基づきつつ、人間理解という根源的課題に取り組む点にある。実験、調査、観察、統計解析、さらには数理モデルや神経科学的手法を統合しながら、人間の心と行動の法則性を探究する総合科学として発展を続けている。

キーワード ① 基礎心理学 ② 発達心理学 ③ 社会心理学 ④ 人格心理学 ⑤ 臨床心理学
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の最後に10問の小テストを行う。
復習・予習課題 心理学は、基礎から応用まで多層的に展開している。その特徴は、厳密な方法論に基づきつつ、人間理解という根源的課題に取り組む点にある。実験、調査、観察、統計解析、さらには数理モデルや神経科学的手法を統合しながら、人間の心と行動の法則性を探究する総合科学として発展を続けている。これらの方法論が各領域にどのように展開されているのかを理解しよう。
4 心理学の領域の中を覗いてみよう 科目の中での位置付け 第3回で学んだ心理学の領域の区分について、さらにそれらの領域では何が研究されているのかを理解しよう。実際に5回以降の授業では、それぞれの領域について心理学研究が明らかにしたことの主要な知識をだいぶ詳細に学んでいくことになるが、この授業では、ある意味、先行オーガナイザー(道案内)の役割を果たすように設計している。つまり、ここで学んだことのより詳細な内容を学んでいくことになる。ただ、このだい4回授業では、演習形式での授業を中心に展開するので、学生の身近なテーマを選んで理解の促進を狙っている。扱うテーマ(コマ主題細目)は、基礎心理学、応用心理学である。発達心理学は後期で学ぶし、社会心理学も専門科目として、皆さんは学ことになるので、ここでは、基礎心理学とは何かそしてその内容について、応用心理学とは何かそしてその内容について学ぶ。
コマ主題細目 ① 基礎心理学 ② 応用心理学
細目レベル ① 基礎心理学とは、人間や動物の心の働きを、できるだけ客観的・科学的に明らかにしようとする心理学の基盤となる分野である。日常生活の悩みを直接解決することを目的とする応用心理学に対して、基礎心理学は「心はどのような仕組みで働いているのか」という根本的な問いを探究する。研究対象は幅広く、感覚や知覚、注意、記憶、学習、思考、言語、感情、動機づけなどが含まれる。たとえば感覚研究では、光や音といった物理的刺激がどのように主観的な体験へと変換されるのかを調べる。記憶研究では、情報がどのように符号化・保持・検索されるのかを実験的に検討する。
方法としては、実験法が中心となる。条件を統制し、変数を操作し、その結果の変化を測定することで因果関係を明らかにする。また、反応時間測定、質問紙調査、行動観察、脳活動計測なども用いられる。近年では神経科学や情報科学と連携し、脳画像法や計算モデルを取り入れた研究も進んでいる。
基礎心理学の意義は、心の働きについての普遍的な法則や理論を構築する点にある。たとえば学習の原理や記憶の仕組みが明らかになることで、教育や臨床、産業などの応用分野に理論的基盤を提供する。つまり基礎心理学は、心理学全体を支える土台であり、人間理解の科学的出発点といえるのである。
なぜ基礎心理学と呼ばれるのか
基礎心理学と呼ばれるのは、心理学全体の「土台(基礎)」となる知識や理論を明らかにする分野だからである。心理学には、臨床心理学、教育心理学、産業・組織心理学、法心理学など、具体的な問題解決を目指す応用分野があるが、それらは人間の記憶、学習、感情、判断といった基本的な心の仕組みに関する理解の上に成り立っている。
基礎心理学は、「心はどのような原理で働くのか」「どのような法則があるのか」といった普遍的な問いを扱う。例えば、記憶の容量や忘却の過程、注意の限界、感覚の法則などを実験的に明らかにする。こうして得られた理論やデータが、教育方法の改善や臨床的支援、司法判断の検討などに応用される。
つまり基礎心理学は、すぐに実生活の問題解決を目指すのではなく、まず心の基本原理を解明することを目的とする。その意味で、他の心理学分野を支える「基礎」と位置づけられているのである。

② 応用心理学

応用心理学とは、心理学の理論や研究成果を実際の社会的課題の解決に生かす分野である。基礎心理学が心の仕組みや法則を明らかにすることを目的とするのに対し、応用心理学はその知見を教育、医療、産業、司法、福祉などの現場で活用することを目指す。つまり、研究室で得られた知識を現実社会に橋渡しする役割を担っている。
代表的な分野の一つが臨床心理学である。ここではうつ病や不安障害などの心の問題に対して、カウンセリングや心理療法を通して支援を行う。また教育心理学は、学習や発達の仕組みに関する知見をもとに、効果的な指導方法や学習環境の整備を考える。産業・組織心理学では、職場の人間関係やリーダーシップ、モチベーション向上などを研究し、働きやすい環境づくりに貢献する。さらに法心理学は、目撃証言の信頼性や裁判員の判断過程などを研究し、司法の公正さを支える。
応用心理学の特徴は、理論だけでなく実践と結びついている点にある。現場の問題は複雑であり、個人差や社会的要因も大きく影響する。そのため、実験研究に加えて、調査や事例研究、フィールド研究など多様な方法が用いられる。また、効果を検証するためには統計的分析やエビデンスの蓄積が欠かせない。
このように応用心理学は、人間の心に関する科学的知識を社会の中で役立てる学問である。基礎心理学が築いた理論的土台の上に立ちつつ、現実の課題に向き合い、人々の生活の質の向上に貢献することを目的としている。

応用心理学と呼ばれるのは、心理学で得られた理論や研究成果を「応用」し、現実社会の具体的な問題解決に役立てることを目的とする分野だからである。心理学には、感覚や記憶、学習、感情など心の基本的仕組みを明らかにする基礎心理学があるが、それらの知見を実際の場面に活用するのが応用心理学である。
たとえば、記憶研究の成果は教育現場での効果的な学習法の開発に生かされるし、感情やストレスの研究は臨床場面での心理支援に活用される。さらに、判断や意思決定の研究は司法や経済行動の理解にも応用される。このように、理論を現実の課題へと橋渡しする点に特徴がある。
つまり「応用」という言葉は、単に知識を知るだけでなく、それを社会の中で使い、役立てるという意味を示している。そのため、実践との結びつきが強い心理学の領域を応用心理学と呼ぶのである。


キーワード ① 基礎心理学 ② 応用心理学
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の最後に10問の小テストを行う。
復習・予習課題 予習課題:第1回の講義のシラバスを読み,関心のあるキーワードについて調べる。また,調べた内容と日常生活との関わりについて考えることが課題である。
復習課題:1については,「基礎心理学とは何か」という問いに対して,現時点での 自分自身の考えをまとめることが課題である。2については,「応用心理学」の内容をおさえたうえで,現在の「心理学の学問体系」について理解する。。

5 行動の生物学的基礎(1) 科目の中での位置付け 人間も生物である。私たちの身体は進化によって、今のような形状、機能を持つようになった。そして、この地球上の世界で行動するのに適した能力を獲得してきた。では、私たちの行動の生物学的基礎はどのようなところにあるのだろうか。私たちの身体の秘密を行動との関係で捉えるのがこの授業と次回の授業の目的である。
行動の生物学的基礎とは、人や動物の行動をさせる生物学的仕組みのことである。心理学では、行動は単に意識や環境だけで決まるのではなく、私たちの持つ脳や神経系、ホルモン、遺伝子などの働きと深く関係している。そこで、まず重要なのは神経系の構造と機能である。脳は数百億の神経細胞(ニューロン)から構成され、電気的・化学的信号によって情報を伝達する。感覚情報は受容器から脳へ送られ、脳内で処理された後、運動指令として筋肉へ伝えられる。この神経回路の活動が、知覚、記憶、感情、意思決定といった行動の基盤となる。また、ホルモンを分泌する内分泌系も行動に大きな影響を与える。例えばストレス状況では副腎皮質ホルモンが分泌され、身体を緊張状態にする。性行動や攻撃行動にもホルモンの働きが関与している。さらに遺伝的要因も重要である。気質や感受性の一部は遺伝的影響を受けることが双生児研究などから示されている。ただし、遺伝がすべてを決めるわけではなく、環境との相互作用によって行動は形成される。
このように行動の生物学的基礎とは、脳・神経・ホルモン・遺伝といった身体的メカニズムを通して行動を理解しようとする視点であり、近年では脳画像法や分子生物学的手法の発展により、その解明が進んでいる。

授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 生物学的仕組み ② 神経系の構造 ③ 内分泌系と遺伝子
細目レベル ① 細生物学的仕組みとは、私たちの身体や行動がどのような身体的・生理的メカニズムによって成り立っているかを説明する枠組みである。心理学においては、とくに脳や神経系、内分泌系、遺伝の働きが重要である。
まず神経系は、情報の伝達と処理を担う中心的な仕組みである。神経細胞(ニューロン)は電気信号を発生させ、シナプスを介して化学物質(神経伝達物質)により情報を次の細胞へ伝える。このネットワークによって、感覚の受容、運動の制御、記憶の形成、感情の生成などが行われる。脳の部位ごとに役割が分かれており、大脳皮質は思考や判断、辺縁系は情動、自律神経系は呼吸や心拍などの調整に関与する。

② 神経系は、体内外の情報を受け取り、処理し、反応を生み出すための情報伝達システムである。その構造は大きく「中枢神経系」と「末梢神経系」に分けられる。
中枢神経系は、脳と脊髄から成る。脳は思考や感情、記憶、意思決定など高度な機能を担う中枢であり、大脳、小脳、脳幹などに分かれる。大脳はさらに前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉に区分され、それぞれ運動、感覚統合、聴覚・言語、視覚などの機能を担う。小脳は運動の調整や平衡に関与し、脳幹は呼吸や心拍など生命維持に重要な働きを行う。脊髄は脳と身体を結ぶ通路であり、反射運動の中枢でもある。
末梢神経系は、中枢神経系と全身の器官をつなぐ神経で、体性神経系と自律神経系に分けられる。体性神経系は感覚情報の伝達や随意運動を担い、自律神経系は内臓や血管の働きを無意識に調整する。自律神経系はさらに交感神経と副交感神経に分かれ、前者は活動・緊張状態を高め、後者は休息・回復を促す。

③ 内分泌系は、ホルモンを血液中に分泌して全身に作用させる仕組みである。ホルモンは比較的ゆっくりと作用するが、持続的に身体状態や行動に影響を与える。ストレス時のコルチゾール、成長ホルモン、性ホルモンなどがその例である。
さらに遺伝子は、身体の構造や神経系の発達に影響を与える設計図の役割を果たす。ただし、遺伝子は固定的に働くのではなく、環境との相互作用の中で発現が調整される。
このように、生物学的仕組みは神経活動、ホルモン作用、遺伝的基盤が相互に連携しながら、私たちの行動や心の働きを支えている。

キーワード ① 生物学的仕組み ② 神経系の構造 ③ 内分泌系と遺伝子
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の最後に10問の小テストを行う。
復習・予習課題 予習:今回授業は生活体と環境、そして神経系について学ぶ。ここでは神経の仕組みから始まって、神経系の構造と機能について学ぶことになるが、事前にコマシラバスを読んでおくこと。使用されている学術用語について覚えるようにしておこう。中枢神経系と末梢神経の機能と構造について学ぶので、私たちが適応的に生存できるのは、まさにこのような神経系によって外界の情報を適切に取り込み、加工し、効果器に伝えることで成り立っている。心をどのように考えるかは別として、これらの仕組みが生存の基礎であることを認識しよう。
復習:私たちの生命維持に欠かせない、外部環境、内部環境、心理的環境、そして中枢神経系(脳と脊髄)、末梢神経系について、それぞれの構成要素が独自の機能を持っているので、それらの関係について理解を深めておくこと。

6 行動の生物学的基礎(2) 科目の中での位置付け 生物学的基礎で心理学にとって重要な役割を演じるのは、中枢神経系と末梢神経系である。第6回授業では、第5回授業を受けて、その内容をしっかりと理解するとともに、心理学により関連の深い神経系の理解を行う。特にここでは、それらの構造と機能について、演習形式と、配布資料での図解によって、理解を深めるように努めよう。特に、これらの神経系は私たちの生活と深い関連性を持っている。私たちの認知能力、感情生活、動機づけ(やる気)など、この神経系と深いつながりのあることが、神経心理学や神経科学によっても明らかになっている。
授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 中枢神経系 ② 末梢神経系
細目レベル ① 中枢神経系とは、脳と脊髄から成る神経系の中枢部分であり、体内外からの情報を統合・処理し、適切な行動や反応を生み出す中心的な役割を担っている。私たちが見たり聞いたりする感覚情報は、まず受容器から末梢神経を通って中枢神経系へ送られ、そこで分析・統合される。その結果として生じた指令が再び末梢神経を通って筋肉や内臓へ伝えられ、運動や生理的反応が起こる。脳は中枢神経系の中核であり、大脳、小脳、脳幹などに分けられる。大脳は最も発達した部分で、思考、判断、言語、記憶、感情など高次の精神活動を担う。大脳皮質は前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉に区分され、それぞれ運動制御、感覚統合、聴覚や言語理解、視覚処理などの機能をもつ。小脳は主に運動の協調や平衡の維持に関与し、滑らかな動きを可能にしている。脳幹は呼吸や心拍、血圧など生命維持に不可欠な働きを制御する。脊髄は脳と身体を結ぶ情報の通路であり、感覚情報を脳へ送り、運動指令を身体へ伝える。また、脳を介さずに起こる反射運動の中枢でもある。熱いものに触れたときに瞬時に手を引っ込める反応は、脊髄反射の例である。
このように中枢神経系は、情報処理の司令塔として働き、知覚、運動、情動、認知などあらゆる行動の基盤を形成している。その高度な統合機能によって、私たちは環境に適応し、複雑な社会生活を営むことができるのである。

② 末梢神経系とは、脳と脊髄から成る中枢神経系と、身体の各部位とを結びつける神経の総称である。中枢が「司令塔」だとすれば、末梢神経系はその指令や情報を運ぶ通信網の役割を果たす。皮膚、筋肉、内臓、感覚器など全身に広がり、外界や体内の情報を中枢へ伝え、また中枢からの命令を各器官へ送り届ける。
末梢神経系は大きく体性神経系と自律神経系に分けられる。体性神経系は、感覚神経と運動神経から構成される。感覚神経は、視覚・聴覚・触覚などの情報を受容器から脳や脊髄へ伝える。一方、運動神経は中枢からの指令を骨格筋へ送り、歩く、話す、物をつかむといった随意運動を可能にする。つまり体性神経系は、私たちが意識的にコントロールできる行動を担っている。
これに対して自律神経系は、内臓や血管、腺などの働きを無意識のうちに調整する。自律神経系はさらに交感神経と副交感神経に分かれる。交感神経は活動や緊張時に優位になり、心拍数の増加や瞳孔の拡大などを引き起こす。副交感神経は休息や回復時に働き、心拍を落ち着かせ、消化活動を促進する。両者は拮抗的に作用しながら、身体の恒常性(ホメオスタシス)を維持している。
末梢神経系は単なる伝達路ではなく、環境の変化に素早く対応し、身体機能を細かく調整する重要な仕組みである。中枢神経系と協調しながら働くことで、私たちは外界に適応し、安定した生命活動を維持しているのである。

キーワード ① 中枢神経系 ② 末梢神経系
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の最後に10問の小テストを行う。
復習・予習課題 予習:今回授業は生活体と環境、そして神経系について学ぶ。ここでは神経の仕組みから始まって、神経系の構造と機能について学ぶことになるが、事前にコマシラバスを読んでおくこと。使用されている学術用語について覚えるようにしておこう。中枢神経系と末梢神経の機能と構造について学ぶので、私たちが適応的に生存できるのは、まさにこのような神経系によって外界の情報を適切に取り込み、加工し、効果器に伝えることで成り立っている。心をどのように考えるかは別として、これらの仕組みが生存の基礎であることを認識しよう。
復習:私たちの生命維持に欠かせない、外部環境、内部環境、心理的環境、そして中枢神経系(脳と脊髄)、末梢神経系について、それぞれの構成要素が独自の機能を持っているので、それらの関係について理解を深めておくこと。

7 学習心理学 基礎編 科目の中での位置付け 学習心理学は、経験によって生じる比較的永続的な行動や心的過程の変化を科学的に解明する心理学の一分野である。ここでいう学習とは、疲労や薬物の影響のような一時的変化ではなく、経験や練習の結果として持続する変化を指す。20世紀初頭、**John B. Watsonは、内観に頼らず観察可能な行動を研究対象とすべきだと主張し、行動主義を確立した。この立場では、学習は刺激と反応の結びつきとして説明される。代表的研究に、Ivan Pavlovの古典的条件づけがある。これは、無条件刺激と条件刺激を対提示することで、新たな反応が形成される現象であり、情動や恐怖の形成理解にも応用された。また、B. F. Skinner**はオペラント条件づけを提唱し、行動の結果である強化や罰がその後の行動頻度を変化させることを示した。強化スケジュールの研究は、習慣形成や依存行動の理解に重要な知見を与えている。
その後、1950年代以降には認知的アプローチが発展し、学習を単なる連合形成ではなく、情報処理過程として捉えるようになった。**Edward C. Tolmanは潜在学習を提唱し、報酬がなくても環境についての認知地図が形成されることを示した。さらに、Albert Bandura**は観察学習の重要性を明らかにし、人は他者の行動やその結果を観察することで新しい行動を獲得することを示した。
現代の学習心理学は、神経科学や計算論モデルとも結びつき、強化学習とドーパミン活動の関係や予測誤差理論などを通して、学習の脳内基盤を解明している。このように学習心理学は、行動・認知・神経の各水準を統合しながら、人がどのように経験から変化し適応していくのかを探究する学問である。

授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 学習心理学 ② 連合主義 ③ 認知主義
細目レベル ① 経験によって生じる比較的永続的な行動や心的過程の変化を科学的に解明する心理学の一分野である。ここでいう学習とは、疲労や薬物の影響のような一時的変化ではなく、経験や練習の結果として持続する変化を指す。基礎的な説明としてはそのよう内容であるが、学習心理学はまた、応用領域でも様々な展開を見せている。
学習心理学は、経験によって行動や思考がどのように変化するかを明らかにし、その原理を現実社会に応用する学問である。教育の場面では、強化やフィードバックの効果を活用し、効果的な指導法や学習法が開発されてきた。たとえば、B. F. Skinnerのオペラント条件づけ理論は、望ましい行動を強化することで学習を促進する方法として教育実践に取り入れられている。また、テストによる想起練習や間隔をあけた反復学習など、認知心理学の知見も学力向上に応用されている。
臨床心理学の領域では、不安症や恐怖症の治療に条件づけ理論が用いられる。**Ivan Pavlov**の古典的条件づけは恐怖反応の形成を説明し、その原理に基づく曝露療法は恐怖の軽減に効果を示している。さらに、行動修正法は発達支援や依存行動の改善にも活用されている。
産業や組織の分野では、報酬制度や評価制度の設計に学習理論が応用され、従業員の動機づけや安全行動の促進に役立っている。健康分野でも、禁煙や運動習慣の形成など行動変容プログラムに強化の原理が取り入れられている。このように学習心理学は、教育、医療、産業、健康など幅広い領域で、人の行動変容を支える理論的基盤となっている。


② 連合主義の学習理論とは、学習を「心的要素どうしの結びつき(連合)」の形成として説明する立場である。人間の心は生得的に複雑な構造をもつというよりも、経験によって観念や反応が結びつくことで構成されると考える。この思想は経験論哲学に由来し、John Lockeは心を白紙(タブラ・ラサ)にたとえ、経験によって観念が形成されると述べた。David Humeは、観念の連合には類似・時間的空間的近接・因果関係という原理があるとした。
心理学において連合主義は、条件づけ研究として具体化された。Ivan Pavlovの古典的条件づけでは、無条件刺激と条件刺激が繰り返し対提示されることで両者の間に連合が形成され、新しい反応が生じると説明された。さらに、Edward Thorndikeは試行錯誤学習の実験から効果の法則を提唱し、満足な結果をもたらす反応は強められ、不満足な結果をもたらす反応は弱められるとした。この考えはB. F. Skinnerのオペラント条件づけへと発展し、行動とその結果との連合の強さが行動頻度を決定すると考えられた。
このように連合主義は、学習を刺激と刺激、あるいは刺激と反応の結びつきの強化・弱化として説明する点に特徴がある。後の認知心理学は、学習には期待や意味理解といった内部過程が関与すると批判的に発展したが、連合主義の枠組みは現在でも強化学習モデルなどの理論的基盤として重要な位置を占めている。

③ 連合主義の学習理論とは、学習を「心的要素どうしの結びつき(連合)」の形成として説明する立場である。人間の心は生得的に複雑な構造をもつというよりも、経験によって観念や反応が結びつくことで構成されると考える。この思想は経験論哲学に由来し、John Lockeは心を白紙(タブラ・ラサ)にたとえ、経験によって観念が形成されると述べた。David Humeは、観念の連合には類似・時間的空間的近接・因果関係という原理があるとした。
心理学において連合主義は、条件づけ研究として具体化された。Ivan Pavlovの古典的条件づけでは、無条件刺激と条件刺激が繰り返し対提示されることで両者の間に連合が形成され、新しい反応が生じると説明された。さらに、Edward Thorndikeは試行錯誤学習の実験から効果の法則を提唱し、満足な結果をもたらす反応は強められ、不満足な結果をもたらす反応は弱められるとした。この考えはB. F. Skinnerのオペラント条件づけへと発展し、行動とその結果との連合の強さが行動頻度を決定すると考えられた。
このように連合主義は、学習を刺激と刺激、あるいは刺激と反応の結びつきの強化・弱化として説明する点に特徴がある。後の認知心理学は、学習には期待や意味理解といった内部過程が関与すると批判的に発展したが、連合主義の枠組みは現在でも強化学習モデルなどの理論的基盤として重要な位置を占めている。

キーワード ① 学習心理学 ② 行動変容 ③ 連合主義 ④ 認知主義
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小テスト 授業の最後に小テストを行う。
復習・予習課題 予習
ここでは行動の変容に関する諸理論を学ぶ。特に、コマ主題細目で示した学習心理学が小判おつる考え方について調べておくこと。特にキーワードと関連した内容の検索と理解を行うこと。学習の連合説である古典的条件づけ、オペラント条件づけについて調べる。学習の認知説・・・洞察説、サインゲシタルト説(認知地図)、社会的学習説について、事前にシラバスを読んでおくこと。
復習
授業で学習した、それぞれの学習理論の特徴について、1)どのように新たな行動が獲得されていくのか、2)その原理をきちんと言葉で説明できるようにしておくこと。それぞれの条件づけに固有の術語があるので、その整理をしておくこと。

8 学習心理学 応用編 科目の中での位置付け 学習心理学は、経験による行動や思考の変化の原理を明らかにし、それを社会のさまざまな場面に応用している。教育分野では、強化やフィードバック、反復練習、テスト効果などの知見を活用し、効率的な学習法や指導法の開発に役立てられている。臨床分野では、条件づけ理論に基づく曝露療法や行動療法が、不安症や恐怖症、依存行動の改善に用いられている。産業・組織領域では、報酬制度や評価制度の設計に強化の原理が応用され、従業員の動機づけや安全行動の促進に貢献している。さらに、健康分野では禁煙や運動習慣の形成などの行動変容プログラムに活用されている。このように学習心理学は、人の行動をより良く変えるための理論的基盤として、教育、医療、産業、健康など幅広い領域で重要な役割を果たしている。
授業において資料を配布する。
コマ主題細目 ① 教育分野での応用 ② 臨床分野での応用
細目レベル ① 学習心理学は教育分野において重要な理論的基盤を提供してきた。学校教育では、子どもがどのように知識や技能を獲得し、それを保持し応用するのかを理解することが不可欠であり、そのために学習の原理が活用されている。行動主義的立場では、B. F. Skinnerのオペラント条件づけ理論に基づき、望ましい学習行動を強化することが重視された。具体的には、正答に対する即時フィードバックや賞賛を与えることで反応を強化し、誤答には適切な修正機会を与えるといった方法である。プログラム学習やスモールステップによる教材構成も、この理論に基づいて発展した。
一方、認知主義的立場では、学習者が情報をどのように理解し、既有知識と関連づけ、意味づけるかが重視される。単なる反復ではなく、整理された構造で提示することや、具体例と抽象概念を関連づけることが効果的とされる。さらに、テストによる想起練習(テスト効果)や、時間をあけて復習する間隔反復は、長期記憶の保持を高める方法として教育実践に取り入れられている。メタ認知の育成も重要であり、学習者が自分の理解度を点検し、学習方略を調整できるよう支援することが求められている。
また、社会的学習の観点からは、Albert Banduraが示したように、他者の行動観察やモデリングが学習を促進する。教師や仲間の模範行動は、知識だけでなく態度や社会的技能の形成にも影響を与える。協同学習やピアラーニングは、この原理を応用した教育方法である。
近年では、ICTやAIを活用した個別最適化学習も進展しており、学習履歴に基づいて適切な課題やフィードバックを提示する適応的学習システムが開発されている。このように学習心理学の知見は、指導法、教材設計、評価方法、学習支援システムの開発に至るまで幅広く応用され、教育の質の向上に貢献している。

② 学習心理学は臨床分野において、主に不適応行動の形成とその修正を理解する理論的基盤として応用されている。とくに行動療法は、学習理論に直接基づいて発展した。古典的条件づけの研究を行ったIvan Pavlovの理論は、不安症や恐怖症の形成を説明する枠組みを提供した。中立的な刺激が恐怖体験と結びつくことで恐怖反応が生じると考えられ、この原理に基づいて恐怖刺激に段階的に慣らしていく曝露療法が確立された。曝露を繰り返すことで恐怖反応は弱まり、新たな学習(消去や抑制学習)が成立すると理解されている。
また、オペラント条件づけを提唱したB. F. Skinnerの理論は、行動修正法の基礎となった。問題行動がどのような結果によって維持されているかを分析し、強化随伴性を調整することで望ましい行動を増やす。トークンエコノミー法や行動契約はその代表例であり、発達障害支援や児童臨床、依存症治療などで活用されている。
さらに、観察学習の観点からは**Albert Bandura**の理論が重要である。モデリング技法は、対人不安の軽減や社会的スキル訓練に応用され、適応的な行動を学習させる方法として用いられている。
近年では、学習理論は認知行動療法へと発展し、行動だけでなく思考パターンの修正も治療対象となっている。このように臨床分野では、学習の原理を用いて問題行動の成り立ちを理解し、より適応的な行動や認知を再学習させる実践が行われている。

キーワード ① 古典的条件づけ ② オペラント条件付け ③ 認知説 ④ 観察学習
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小テスト 授業の最後に小テストを行う。
復習・予習課題 ここでは学習理論が応用としてどのような領域で、露のように生かされているのかについて予習しておくこと。
復習
授業で学習した、それぞれの学習理論の特徴について、1)どのように新たな行動が獲得されていくのか、2)その原理をきちんと言葉で説明できるようにしておくこと。それぞれの条件づけに固有の術語があるので、その整理をしておくこと。

9 感覚の心理学 科目の中での位置付け 感覚の心理学とは、外界の物理的刺激がどのように受容され、神経過程を経て主観的経験として生じるかを研究する領域である。起源は19世紀の精神物理学にあり、グスタフ・フェヒナーは刺激強度と感覚量の関係を数量化し、ウェーバー‐フェヒナーの法則を提唱した。感覚には視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚などがあり、それぞれ特有の受容器と神経経路をもつ。研究では絶対閾や弁別閾、順応、マスキングなどが扱われ、物理量と心理量の対応を明らかにする。さらにスティーヴンスのベキ法則は感覚量が刺激強度の冪関数として増大することを示した。近年は神経科学的手法と結びつき、脳活動計測や計算モデルにより、感覚符号化の仕組みが多層的に解明されつつある。
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コマ主題細目 ① 感覚の種類 ② 感覚の能力測定 ③ 感覚能力の法則
細目レベル ① 感覚は受容器の所在と機能によって大きく三つに分類される。第一に外受容感覚で、外界からの刺激を受け取るものであり、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・皮膚感覚(触覚・温冷覚・痛覚など)が含まれる。第二に固有受容感覚で、筋や腱、関節から身体の位置や運動状態を知らせる感覚であり、運動の調整に不可欠である。平衡感覚もここに含まれることが多い。第三に内受容感覚で、内臓の状態や空腹・渇きなど体内環境の変化を伝える。これらはそれぞれ特有の受容器と神経経路をもち、環境への適応や自己の維持に重要な役割を果たしている。


② 感覚能力は主に精神物理学的方法によって測定される。代表的指標は、刺激をかろうじて知覚できる最小強度である絶対閾と、二つの刺激の差を弁別できる最小差である弁別閾である。測定法には、刺激強度を段階的に変える極限法、無作為順に提示する恒常法、参加者が自ら強度を調整する調整法がある。近年は信号検出理論に基づき、感度(d′)と判断基準を分離して推定する方法も用いられる。さらに反応時間測定や脳活動計測を組み合わせることで、感覚処理の精度や効率を多面的に評価することが可能となっている。
③ 感覚能力に関しては、刺激の物理的強度と主観的感覚量との数量的関係を示す法則が提案されている。まずウェーバーの法則は、弁別閾(ΔI)が基準刺激強度(I)に比例することを示し、ΔI/I=k(kは一定)と表される。これは、刺激が強くなるほど差を感じるためにより大きな変化が必要になることを意味する。これを基にフェヒナーは、感覚量Sは刺激強度Iの対数に比例するとして、S=k log I という式を示した。さらにスティーヴンスは、感覚量が刺激強度の冪関数に従うとし、S=kIⁿ と表した。ここでnは感覚の種類によって異なり、痛覚ではn>1、明るさではn<1となることが多い。これらの式は、感覚が物理量に対して非線形に変化することを示している。
キーワード ① 精神物理学 ② 刺激閾 ③ 弁別閾 ④ ウェーバー比 ⑤ フェヒナーの法則
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小テスト 授業の最後に素湯テストを行う。
復習・予習課題 予習
感覚心理学では、どのようにして感覚能力を測るのかにさまざまな試みがなされてきた。その中でも大切な概念が、閾値(刺激閾)、弁別閾、ウエーバー比、フェヒナーの法則である。また知覚の過程に関しては、形の発生、形のまとまり、奥行き知覚について、シラバスを事前に読んでおくこと。

復習
感覚心理学では、どのようにして感覚能力を測るのかにさまざまな試みがなされてきた。その中でも大切な概念が、閾値(刺激閾)、弁別閾、ウエーバー比、フェヒナーの法則、スティーブンスの法則である。また知覚の過程に関しては、形の発生、形のまとまり、奥行き知覚について学んだ。これらの重要なキーワードをきちんと説明できるように理解を深めておくこと。

10 感覚の多様性 科目の中での位置付け 感覚に関する興味深い現象について、第9回で習った内容を深く理解するために、演習形式で学習していく。特に、感覚の多様性を知ることを目標にする。
感覚に関する興味深いトピックの一つに感覚順応がある。これは同じ刺激が続くと感覚が次第に弱まる現象で、例えば入浴後に感じていたお湯の熱さがしばらくすると気にならなくなるといった体験がこれにあたる。また、異なる感覚どうしが影響し合うクロスモーダル知覚も注目されている。食べ物の色が味の感じ方を変えたり、高い音が明るい印象と結びついたりする現象がその例である。さらに、文字や音に色を感じる共感覚は、脳内の感覚間結合の特性を示す現象として研究されている。加えて、錯覚の研究は、私たちの知覚が単に刺激を写し取るのではなく、脳が積極的に解釈・構成していることを明らかにしている。これらのトピックは、感覚が動的で統合的な働きであることを示している。

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コマ主題細目 ① 感覚順応 ② 弁別閾 ③ 動物の弁別閾
細目レベル ① まず感覚順応である。一定の刺激が続くと感覚が弱まる現象で、暗い部屋に入った直後は見えにくいが、次第に見えるようになる暗順応が代表例である。受容器や神経系が刺激に適応する働きを示している。
感覚順応とは、同じ刺激が一定時間続くと、その刺激に対する感覚が次第に弱くなる現象である。日常生活の中にも多くの例がある。例えば、部屋に入った直後は香水や料理の匂いを強く感じても、しばらくするとほとんど気にならなくなる。これは嗅覚の順応である。また、冷たいプールに入った瞬間は強い冷たさを感じるが、時間がたつとそれほど冷たく感じなくなるのも順応の一例である。視覚でも、暗い映画館に入った直後は周囲が見えにくいが、しばらくすると徐々に見えるようになる暗順応が起こる。さらに、腕時計や衣服の感触も、身につけた直後は意識されるが、次第に感じなくなる。このように感覚順応は、変化の少ない刺激への反応を弱め、環境の新たな変化に敏感になるための重要な働きである。

② 弁別閾とは、二つの刺激の違いをかろうじて区別できる最小の差のことであり、日常生活の中にも多く見られる。例えばテレビの音量を少し上げても違いが分からないことがあるが、ある程度以上大きくすると「音が大きくなった」と感じる。その境目が弁別閾である。また、500グラムほどのペットボトルに数グラム加えても重さの違いは感じにくいが、ある程度増えると気づくことができる。明るさについても同様で、暗い部屋ではわずかな光の変化に敏感であるのに対し、明るい屋外では多少光が強くなっても気づきにくい。さらに、飲み物に砂糖を少し加えても味の変化が分からないことがあるが、一定量を超えると甘くなったと感じる。このように弁別閾は私たちの身近な経験の中に現れている。
③ 動物の弁別閾を比較する研究は、種ごとの感覚能力や生態的適応を明らかにするうえで重要である。弁別閾は、刺激の差をかろうじて区別できる最小差であり、視覚・聴覚・嗅覚など各感覚で測定される。一般に、ある動物が生存や採餌に強く依存している感覚ほど弁別能力が高い。
例えば、聴覚ではコウモリやイルカはエコーロケーションを用いるため、周波数や時間差の弁別閾が非常に小さい。一方、犬は人間よりも高周波音の弁別に優れている。視覚では猛禽類は遠距離の小さな動きを識別する能力が高く、細かな視覚弁別が可能である。嗅覚では犬やネズミは極めて低濃度の匂い差を識別でき、人間よりはるかに小さい弁別閾を示す。

キーワード ① 感覚順応 ② 弁別閾 ③ 動物の弁別閾
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小テスト 授業の最後に小テストを行う。
復習・予習課題 予習
感覚心理学では、どのようにして感覚能力を測るのかにさまざまな試みがなされてきた。その中でも大切な概念が、閾値(刺激閾)、弁別閾、ウエーバー比、フェヒナーの法則である。また知覚の過程に関しては、形の発生、形のまとまり、奥行き知覚について、シラバスを事前に読んでおくこと。

復習
感覚心理学では、どのようにして感覚能力を測るのかにさまざまな試みがなされてきた。その中でも大切な概念が、閾値(刺激閾)、弁別閾、ウエーバー比、フェヒナーの法則、スティーブンスの法則である。また知覚の過程に関しては、形の発生、形のまとまり、奥行き知覚について学んだ。これらの重要なキーワードをきちんと説明できるように理解を深めておくこと。

11 知覚の心理学(1) 科目の中での位置付け 回の感覚で学んだように、私たちは日々、光や音、匂い、触覚などの刺激に囲まれて生きている。しかし、私たちが経験している世界は、単なる物理的刺激の集合ではない。脳は感覚器から入力された情報を選択し、整理し、解釈し、意味づけることで「知覚」を形成している。このことはすでに学んできた。知覚の心理学とは、このような外界の情報がどのように心の中で構成され、経験として立ち現れるのかを探究する学問領域である。私たちが適応的に生きていくためには、外界の情報をこの知覚の働きによって、適切に処理しなくはならないことは理解できるだろう。では、そのような外界の情報が意味を持つまでの心理学について学んでいこう。まずは視知覚の心理学である。
私たちの視覚世界は極めて複雑で、多くの情報を含んでいる。しかし私たちはそれをランダムに知覚しているのではなく、一定の規則性や法則によって知覚していると考えられている。では、そのような規則性や法則性とはどのようなものなのだろうか。

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コマ主題細目 ① 形の発生 ② 図と地 ③ 形のまとまり ④ ゲシタルト心理学
細目レベル ① 形のない世界は、全体野と呼ばれる。全体野(Ganzfeld)とは、視野全体が均一で構造をもたない刺激によって満たされた状態を指す概念である。たとえば、濃い霧の中で周囲を見渡したときのように、視野に明確な輪郭や境界、コントラストの差が存在しない状況がこれにあたる。このような状態では、私たちは特定の対象を「図」として取り出すことができず、安定した形を知覚することが難しくなる。
 では、形はどのように発生するのだろうか。通常、形の発生や図地分化は、明暗差や色の違い、囲まれた領域、対称性などの「差異」によって引き起こされる。しかし全体野では、そうした差異が存在しないため、知覚は組織化の手がかりを失う。これは、形や対象が外界にそのまま存在しているのではなく、視覚場の中に生じる不均一性や勾配から構成されることを示している。
さらに、全体野状態が長時間続くと、光のゆらぎや色の変化、幻覚様体験が生じることがあると報告されている。これは、外部刺激が乏しい状況では、内部の神経活動や予測的過程が知覚経験を補完しうることを示唆する。したがって全体野は、「何も見えない」状態を通して、知覚がいかに能動的かつ構成的な過程であるかを明らかにする重要な概念である。

② 図と地の分化とは、私たちが視覚場を「対象(図)」と「背景(地)」に分けて知覚する過程を指す。私たちは目に入るすべての情報を同じように処理しているわけではなく、ある部分を前景として浮かび上がらせ、それ以外を背景として退けながら世界を見ている。この分化が成立してはじめて、私たちは「形」や「物体」を明確に捉えることができる。
一般に、図として知覚される部分は、形をもち、輪郭がはっきりし、前に位置しているように感じられる。一方、地は広がりをもつ背景として経験され、明確な形をもたない。たとえば、白地に黒い文字が書かれているとき、私たちは自然に文字を図として、白い部分を地として知覚する。このとき、文字の輪郭は文字側に属しているように感じられる。
図と地の関係は固定的ではなく、条件によって入れ替わることがある。Edgar Rubin が示した有名な壺の図形では、中央の白い部分を壺として見ることもできるし、両側の黒い部分を向かい合う顔として見ることもできる。しかし同時に両方を図として見ることはできない。このことは、図と地が相補的で排他的な関係にあることを示している。
地分化は、刺激の物理的特徴にも影響される。小さい領域や対称的な形、囲まれた領域、コントラストの強い部分は図になりやすい。また、意味のある形やよく知っている対象も図として選ばれやすい。このことは、知覚が単なる刺激の受動的反応ではなく、経験や知識といった心的要因の影響も受けることを示している。
このように、図と地の分化は、視覚世界を組織化するための基本的な働きである。私たちは外界をそのまま写し取っているのではなく、視覚場を能動的に構造化することによって、対象と背景の区別を生み出し、意味ある世界を構成しているのである。

③ のまとまりとは、視覚場に存在する複数の要素が、ばらばらの点や線としてではなく、一つのまとまった構造や対象として知覚される現象を指す。私たちが世界を見るとき、網膜に映るのは光の強弱や色の分布にすぎないが、それらは自然に組織化され、意味のある「形」として経験される。この組織化の過程が、形のまとまりである。
この問題を体系的に明らかにしたのがゲシュタルト心理学であり、特に Max Wertheimer は、要素がどのような条件で一つのまとまりとして知覚されるかを示した。彼は、知覚は部分の単純な足し算ではなく、全体として最も安定した構造に組織化されると考えた。
形のまとまりを生み出す代表的な原理には、いくつかの法則がある。たとえば、互いに近くにある要素は一つの集団として見えやすい(近接の法則)。色や形が似ている要素も同じまとまりとして知覚されやすい(類同の法則)。滑らかに連続している線分は一つの形として統合される(良い連続の法則)。さらに、欠けた部分があっても全体が閉じた形として補完されることがある(閉合の法則)。これらの原理は、私たちの知覚が自然に秩序や単純さを求める傾向をもつことを示している。
形のまとまりは、静止した配置だけでなく、運動の中でも生じる。同じ方向に動く点群は一つの対象として知覚されることが多い。これは、変化の仕方が共通しているものを一体として捉える傾向があるためである。
このように、形のまとまりは、視覚場の要素を秩序づけ、安定した構造を形成する基本的な働きである。私たちは世界を断片の集合としてではなく、意味あるまとまりとして経験している。その背後には、知覚系が自動的に要素を統合し、最も単純で安定した形を構成しようとする組織化の働きがあるのである。


キーワード
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小テスト 授業の最後に小テストを行う。
復習・予習課題 復習・予習 私たちが外界の情報を適切に処理して、環境がどのようなものであるかを知ることは、私たちの生存のために必要不可欠の能力である。その適応のために、感覚器官を進化させ、そのソフトウエアとも言うべき、世界の理解のための知覚能力が用意された。その特徴について、学んでおこう。
12 知覚研究を知る 科目の中での位置付け 形の発生から形のまとまりまでの内容の理解の促進を行う授業である。形のない世界、つまり前回授業で全体野として学んだ現象は日常生活で体験しているのだろうか。この授業では、前回授業で学んだ諸現象について、実際に学生諸君が経験してきた出来事を通して、その仕組みの意味、知覚世界の安定性などについて学んでいく。
例えば、前回授業で習った図と地がどのように実際の生活で生かされているのだろうか。それらを具体的な事例によって学んでいこう。



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コマ主題細目 ① 図と地の関係の応用例 その1 ② 図と地の関係の応用例 その2 ③ 形のまとまりの応用例
細目レベル ① 図と地の原理とは、視覚場の中である部分が「図」として前景に浮かび上がり、残りの部分が「地」として背景に退くという知覚の基本的構造を指す。この原理は、デンマークの心理学者エドガー・ルビンによって体系的に示され、壺と向かい合う顔が入れ替わって見える「ルビンの壺」はその代表例である。図と地は固定されたものではなく、注意や状況によって入れ替わる点が特徴である。
この原理はさまざまな実践領域で応用されている。まずデザインや広告の分野では、強いコントラストや余白の利用によって対象を図として際立たせ、見る人の注意を効果的に誘導する。ロゴやポスターで背景を単純化し、主題を明確に浮き立たせる技法は図地分化の直接的な応用である。また、ユーザーインターフェース設計においても、重要なボタンを色や影で強調したり、ポップアップ表示の際に背景を暗くしたりすることで、操作対象を図として前景化させている。これは視認性を高め、誤操作を防ぐための工夫である。

② さらに交通標識や安全表示では、高コントラスト配色や単純な形態を用いることで対象を明確な図として知覚させ、瞬時の判断を可能にしている。芸術の領域では逆に、図と地を意図的に曖昧にすることで多義的な意味や奥行きを生み出すこともある。背景と人物が視覚的に入れ替わる構図は、鑑賞者の注意を揺さぶり、知覚の能動性を強調する効果をもつ。

また臨床心理学、とくにフリッツ・パールズが創始したゲシュタルト療法では、意識の中で何が「図」となり、何が「地」となっているかに注目する。未解決の感情や欲求が背景から前景へと浮かび上がる過程を通して、自己理解と統合が進むと考えられている。

このように図と地の原理は、単なる視覚現象にとどまらず、注意の配分、情報の強調、意味の生成といった認知の基本構造に関わる概念であり、デザイン、教育、臨床、さらには社会的認知の研究に至るまで広く応用されているのである。

③ 形のまとまり(群化)の原理とは、近接・類同・連続・閉合・共通運命などの法則によって、ばらばらの要素がひとつのまとまりとして知覚される現象を指す。これはゲシュタルト心理学で体系化され、とくにマックス・ヴェルトハイマーによって法則化が進められた。形のまとまりは、単なる視覚的特徴ではなく、人間が情報を効率的に整理し理解するための基本的仕組みであり、さまざまな領域で応用されている。

まずデザインやレイアウトの分野では、近接の法則が広く利用されている。例えば、関連する情報同士を空間的に近づけることで、見る人はそれらを一つのグループとして理解する。ウェブページや教科書のレイアウトで、見出しと本文を適切な余白で区切るのは、不要なまとまりを避け、意味単位ごとに知覚させるためである。また、類同の法則により、同じ色や形をもつ要素は同一カテゴリーとして知覚される。そのため、同一機能のボタンを同じ色で統一する設計が行われる。

交通表示や案内サインでも、形のまとまりは重要である。矢印や線を連続させることで進行方向を自然に示すのは連続の法則の応用である。スポーツ観戦では、同じユニフォームを着た選手が一つのチームとして瞬時に把握されるが、これも類同の原理に基づく。

教育の場面でも応用は顕著である。板書やスライドにおいて、関連項目を囲んだり箇条書きで整理したりすることで、学習者は情報構造を把握しやすくなる。これは閉合や近接の法則を活用したものであり、理解と記憶を促進する効果がある。

さらに認知心理学や目撃証言研究の観点から見ると、群化は記憶の形成にも影響を与える。出来事の中で同時に動いた人物や物体は「共通運命」によって一つのまとまりとして符号化されやすく、その結果、実際には別個の対象であっても関連づけて記憶してしまう可能性がある。これは誤結合やスキーマ的再構成にも関係する。

このように形のまとまりの原理は、人間の知覚が情報を効率よく整理するための基本的枠組みであり、デザイン、教育、交通、安全、社会的認知など多方面に応用されている。私たちが世界を秩序あるものとして理解できる背景には、この群化の働きがあるのである。

キーワード
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の先後に小テストを行う。
復習・予習課題 予習
シラバスを読んで、実際の知覚の現象がどのように応用されているのかを理解すること。

復習
授業で学習した応用例をもとに、自分なりに応用の例を発見してみよう。

13 知覚の心理学2  錯視 奥行き 運動知覚の心理学 科目の中での位置付け 前回授業では、視知覚における形の発生、まとまりを中心に講義を展開した。今回授業ででは、錯視と奥行き知覚、そして運動知覚について学ぶ。錯視とは、物理的刺激の性質と主観的知覚が一致しない現象である。長さや大きさ、色、明るさなどが実際とは異なって見える。錯視は知覚が単なる受動的写像ではなく、文脈や対比、過去経験に基づいて構成されることを示す。脳は最も合理的と思われる解釈を行うが、その推論が特定条件でずれることで錯視が生じる。
奥行き知覚とは、二次元の網膜像から三次元空間を把握する働きである。両眼視差や輻輳などの両眼手がかりに加え、線遠近法、重なり、陰影、運動視差などの単眼手がかりが利用される。これらの情報を統合することで、私たちは距離や立体構造を安定して知覚し、空間内で適切に行動できる。
運動知覚は、対象の位置変化や変化のパターンから動きを捉える過程である。実際の移動だけでなく、静止刺激の時間的提示によっても運動は知覚される(仮現運動)。視覚系は網膜上の変化を分析し、方向や速度を計算する。運動知覚は環境の変化を素早く検出し、生存や行動調整に重要な役割を果たす。
 以上の知覚現象は私たちのまさに心理学的要因が、その物理的対象の解釈の場に作用することを示している。

授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 錯視 ② 奥行き知覚 ③ 運動知覚
細目レベル ① 錯視とは、対象の客観的な形、大きさ、色といった物理的属性と、実際に知覚されるイメージとの間に食い違いが生じる現象である。これは単なる目の疲れや視力の問題ではなく、目から入った情報を脳が処理・解釈する過程で引き起こされる「知覚の誤り」として、心理学の研究対象となっている。錯視の主な分類としては、主に以下の種類がある。幾何学的錯視: 直線の長さ、方向、角度などが周囲の図形に影響され、正しく認識されないもの(例:ミュラー・リヤー錯視)。
明るさと色の錯視: 周囲の色のコントラストによって、同じ色が異なる明るさや色調に見えるもの。
多義図形: 同一の図形が、注視点や意識の持ち方によって二通り以上の対象として認識されるもの(例:ルビンの壺)。
錯視の現象は何を教えているのか
錯視は、人間が世界を「ありのまま」ではなく、「脳による推論」を通じて見ていることを示唆している。脳は過去の経験や周囲の文脈から、欠落した情報を補い、最も合理的と思われる像を作り出す。この高度な情報処理の仕組みを解明する上で、錯視は極めて重要な手がかりを提供しているのである。

② 奥行き知覚のメカニズム:生理的・心理的要因
奥行き知覚は、身体の構造に由来する生理学的要因と、脳が経験に基づいて情報を解釈する心理学的要因(経験的要因)の相互作用によって成立している。
1. 生理学的要因
主に身体の機能や構造に依存する手がかりであり、近距離の空間認識において強力に作用する。
両眼視差: 左右の目が離れているために生じる左右の網膜像のわずかなズレのこと。脳はこのズレを計算し、物体の立体感や距離を割り出す。
輻輳(ふくそう): 近くのものを見る際、両目が内側に寄る筋肉の動きのこと。この筋肉の緊張状態が脳に伝わり、距離を判断する情報となる。
調節: 対象にピントを合わせる際、水晶体の厚みを変える毛様体筋の運動のこと。この変化も距離を知る生理的な信号となる。
2. 心理学的要因
過去の学習や経験に基づき、視覚情報から「意味」を推論する手がかりである。片目でも認識可能なため「単眼性手がかり」とも呼ばれる。
相対的な大きさ: 同じ種類の物体であれば、網膜に大きく映るものほど近く、小さく映るものほど遠いと解釈する。
線遠近法: 平行な線が遠方で収束して見える視覚的なパターンを、奥行きとして認識する。
きめの勾配: 地面の模様などが、遠くへ行くほど細かく密集して見える現象を利用する。
空気遠近法: 遠景ほどコントラストが低下し、青みがかって見えるという自然界の経験則に基づく判断。
結論
生理学的要因が「身体による自動的な計測」であるのに対し、心理学的要因は「脳による論理的な推論」といえる。これらが統合されることで、我々は二次元の網膜像から豊かな三次元の世界を構築しているのである。

③ 運動知覚とは、視野内における物体の位置変化や、自分自身の移動を認識する働きである。網膜上の像の動きを単に追うだけでなく、脳が身体の動きや周囲の状況と照らし合わせることで、「何が動いているのか」を正しく判別する高度な仕組みである。運動知覚には、実際には動いていない対象に対して運動を知覚するという現象がある。それらは以下の運動である。
誘導運動: 止まっている月が、流れる雲の影響で動いているように見える現象。これは、周囲の大きな対象(フレーム)が動くと、その中の静止物体に逆方向の運動を感じる生理的な仕組みに由来する。
仮現運動: 静止画を素早く切り替えることで、滑らかな動きを感じる現象。アニメーションや映画、電光掲示板の文字などは、この「脳の補完」を利用している。
自動運動: 暗闇の中でじっと静止した光点を見つめていると、光が不規則に動き出して見える現象。視覚的な基準がないため、脳がわずかな眼球の揺れを物体の動きと誤認することで起こる。
運動残効: 滝をしばらく見続けた後に周囲の岩場を見ると、岩が上方に動いて見える現象(滝の錯視)。特定の方向への反応が疲弊し、知覚のバランスが崩れることで生じる。
結論
運動知覚は、生存において「接近する危険」や「獲物」を察知するための極めて重要な機能である。単なる網膜像の変化を超え、身体感覚や過去の経験を統合することで、我々は一貫した動的な世界を捉えているのである。


キーワード ① 錯視 ② 奥行き知覚 ③ 運動知覚
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小テスト 授業の最後で実施する。
復習・予習課題 復習・予習
錯視は知覚が単なる受動的写像ではなく、文脈や対比、過去経験に基づいて構成されることを示す。その事例を見ておこう。また網膜は2次元なのに、なぜ3次元の知覚が可能なのか、その不思議を理解しよう。

14 知覚の心理学2 科目の中での位置付け 私たちの知覚世界は構成されたものという理論がある。つまり、知覚は目の前にある対象をそのままコピーするのではなく、いくつかの階層を仮定して、それぞれの階層に応じた処理がなされ、最終的なアウトプットとして、私たちが「見ている」視覚世界が存在しているという考え方である。つまり、脳は世界を解釈して知覚像を作り出しているとする。このような知覚理論に対して、直接的なアフォーダンスという、ジェームズ・ギブソンが提唱した**「直接知覚説(生態学的視覚論)」(環境の中に情報は十分に存在し、脳はそれを直接拾い上げるだけであるとする考え)という考えもある。この二つの考え方は知覚心理学における二大勢力として対立関係にある。理論はいずれにせよ、まずは現象を探ってみよう。
授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 幾何学錯視 ② 奥行き知覚 ③ 奥行き知覚
細目レベル ① 幾何学的錯視の代表的な例をいくつか挙げ、それぞれの特徴を簡潔に説明する。
1. ミュラー・リヤー錯視
最も有名な錯視の一つである。同じ長さの線分の両端に、外向きの矢羽と内向きの矢羽を付けた場合、外向きの矢羽(<―>)の方が、内向きの矢羽(>―<)よりも線分が長く見える現象である。
2. ポンゾ錯視
二つの収束する線(遠近法のように見えるV字の線)の間に、同じ長さの水平な線を上下に配置すると、上方の線の方が長く見える現象である。脳が収束線を「奥行き」として解釈し、遠くにあるはずの上方の線をより大きいと補正するために起こる。
3. ツェルナー錯視
平行に並んだ複数の直線に対して、斜めの短い羽線を交互に逆向きに交差させると、本来は平行であるはずのメインの直線が、互いに傾いているように見える現象である。角度の知覚が周囲の線に引きずられることで生じる。
4. ヘリング錯視とヴント錯視
ヘリング錯視: 一点から放射状に広がる線の上に、二本の平行線を置くと、線が外側に膨らんで見える。
ヴント錯視: 逆に、外側から内側へ向かう放射線の上に平行線を置くと、線が内側に反って見える。 いずれも背景の放射線によって、直線の平行性が歪められて知覚される。
5. エビングハウス錯視(ティチェナー錯視)
同じ大きさの円を中央に置き、一方を大きな円で囲み、もう一方を小さな円で囲むと、小さな円に囲まれた中央の円の方が大きく見える現象である。周囲の大きさとの比較(対比効果)によって生じる。
結論
これらの幾何学的錯視は、脳が「角度」「大きさ」「奥行き」を単独で判断しているのではなく、常に周囲の文脈や配置と関連付けて処理していることを示している。

② 奥行き知覚は、身体の構造に由来する生理学的要因と、脳が経験に基づいて情報を解釈する心理学的要因(経験的要因)の相互作用によって成立している。以下それらの要因を挙げていこう。
1. 生理学的要因
主に身体の機能や構造に依存する手がかりであり、近距離の空間認識において強力に作用する。
両眼視差: 左右の目が離れているために生じる左右の網膜像のわずかなズレのこと。脳はこのズレを計算し、物体の立体感や距離を割り出す。
輻輳(ふくそう): 近くのものを見る際、両目が内側に寄る筋肉の動きのこと。この筋肉の緊張状態が脳に伝わり、距離を判断する情報となる。
調節: 対象にピントを合わせる際、水晶体の厚みを変える毛様体筋の運動のこと。この変化も距離を知る生理的な信号となる。
2. 心理学的要因
過去の学習や経験に基づき、視覚情報から「意味」を推論する手がかりである。片目でも認識可能なため「単眼性手がかり」とも呼ばれる。
相対的な大きさ: 同じ種類の物体であれば、網膜に大きく映るものほど近く、小さく映るものほど遠いと解釈する。
線遠近法: 平行な線が遠方で収束して見える視覚的なパターンを、奥行きとして認識する。
きめの勾配: 地面の模様などが、遠くへ行くほど細かく密集して見える現象を利用する。
空気遠近法: 遠景ほどコントラストが低下し、青みがかって見えるという自然界の経験則に基づく判断。
結論
生理学的要因が「身体による自動的な計測」であるのに対し、心理学的要因は「脳による論理的な推論」といえる。これらが統合されることで、我々は二次元の網膜像から豊かな三次元の世界を構築しているのである。

③ 心理学的要因(知覚の構成)
物理的な移動が不完全、あるいは存在しない場合に、脳が「動き」を推論・生成する要因である。
図と地の関係(誘導運動): 橋の上から川面を見ていると、自分が動いているように感じることがある。脳は「大きな背景(地)が静止し、小さな対象(図)が動く」という前提を持つため、周囲が動くと静止しているものが動いて見える。
時間的・空間的補完(仮現運動): 少しずつ位置のずれた静止画を適切な間隔で提示すると、脳はその間を補完して滑らかな動きとして認識する(映画やアニメの原理)。
順応と疲弊(運動残効): 特定の方向の動きを長時間見続けると、その方向を検出する細胞が疲弊し、静止画を見た際に逆方向への動きが知覚される(滝の錯視)。
文脈と期待: 対象が何であるかという知識や、次にどう動くかという予測も運動知覚に影響を与える。

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小テスト 授業の最後に実施する。
復習・予習課題 今回取り上げるのは、まさに視覚的知覚の不思議現象である。私たちの知覚は物理的な世界をそのままコピーしているのではなない。しかし、その知覚形成の秘密は依然としてわからないところもある。しかし、私たちは何不住なく、生活している。その不思議の一端を今回授業の 内容を整理して、理解しよう。
15 記憶の心理学 科目の中での位置付け 記憶の心理学は,人がどのように情報を符号化し,保持し,想起・再認するのかという過程を明らかにする学問である。古典的研究としては,ヘルマン・エビングハウスが無意味綴りを用いて忘却曲線を示し,時間経過とともに記憶が急速に減衰することを実証した。その後,記憶は感覚記憶,短期記憶,長期記憶からなる多重貯蔵モデルで説明されるようになった。短期記憶は容量が限られ,リハーサルによって保持が延長される。一方,長期記憶は意味的記憶やエピソード記憶などに分かれ,知識や経験を比較的長期間保持する。

さらに,記憶は単なる保存ではなく,再構成的過程であることが強調されている。フレデリック・バートレットは物語再生実験から,スキーマに基づいて内容が変容することを示した。近年では,ワーキングメモリや神経科学的研究が進み,海馬や前頭前野の役割が明らかにされている。このように記憶の心理学は,実験的手法と脳科学的知見を統合しながら,人間の学習や目撃証言,教育・臨床場面への応用にも広がっている。

授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① エビングハウスの実験 ② バートレットの実験 ③ 認知心理学の記憶理論
細目レベル ① ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスは、1885年に発表した著書『記憶について』において、自らを被験者とした厳密な実験を行い、記憶の保持と忘却のメカニズムを科学的に解明した。
1. 実験方法:無意味綴り
エビングハウスは、意味のある言葉(単語)を用いると、過去の経験や知識が記憶に影響を与えてしまうと考えた。これを避けるため、子音・母音・子音を組み合わせた意味を持たない音節(無意味綴り:例「DAX」「BOK」など)を2,300個作成し、それをリストにして暗記する実験を繰り返した。
2. 節約率の概念
彼は「一度覚えた内容を、再度完全に覚えるまでにどれだけ時間を短縮できたか」を測定し、これを節約率と呼んだ。
節約率 ={(初回の学習時間 - 再学習の時間)}/{初回の学習時間} X100
この数値が高いほど、記憶が保持されていることを意味する。
3. エビングハウスの忘却曲線
実験の結果、時間の経過とともに節約率は急激に減少し、その後緩やかに推移することが示された。これが有名な忘却曲線である。
20分後: 約58%を保持(42%を忘却)
1時間後: 約44%を保持(56%を忘却)
1日後: 約34%を保持(66%を忘却)
1ヶ月後: 約21%を保持(79%を忘却)
※この数値は「内容の何%を覚えているか」ではなく、あくまで「再学習にかかる時間の節約度」を示しているという点に注意してほしい。
4. 実験の結論と意義
忘却の速さ: 忘却は学習直後に最も急激に起こり、時間が経つほどその速度は緩やかになる。
反復学習の効果: 忘却が起こる前に再学習(復習)を繰り返すことで、忘却曲線は緩やかになり、記憶は定着しやすくなる(分散学習の有効性)。
心理学における重要性
エビングハウスの功績は、それまで主観的で測定困難と考えられていた「記憶」という精神現象を、実験的手法によって定量的・客観的に扱えることを証明した点にある。これは現代の認知心理学の基礎を築く先駆的な研究であった。

② フレデリック・バートレットは、1932年の著書『記憶:実験心理学的および社会心理学的研究』において、エビングハウスの実験手法を鋭く批判し、記憶の本質を捉え直す新たな視点を提示した。
1. バートレットによるエビングハウス批判
バートレットは、エビングハウスの実験が「不自然で、現実の記憶のあり方からかけ離れている」と主張した。
「無意味綴り」の否定: エビングハウスは純粋な記憶力を測るために意味を排除したが、バートレットは**「人間は意味のないものをそのまま覚えることはできない」**と説いた。
受動的 vs 能動的: エビングハウスは記憶を「情報の単純な貯蔵(受動的)」と捉えたが、バートレットは記憶を**「既存の知識体系を用いた能動的な再構築プロセス」**であると考えた。
文脈の欠如: 記憶は日常の文脈や興味、文化的な背景から切り離せないものであり、実験室内の特殊な環境でのみ成立する法則(忘却曲線など)には限界があると批判した。
2. バートレットの実験:『幽霊の戦い』
バートレットは、意味のある複雑な情報を人間がどのように記憶し、変容させるかを調べるため、北米先住民の民話**『幽霊の戦い(The War of the Ghosts)』を用いた実験を行った。
実験手法(連続再生法)
イギリス人被験者に、彼らにとって馴染みの薄い文化背景を持つこの物語を読ませ、一定期間(数時間から数年)の後に、その内容を繰り返し思い出して記述させた。
実験結果:記憶の変容
被験者の記憶は、時間の経過とともに以下のように変化した。
脱落(省略):自分の文化や常識で理解できない「幽霊」や「超自然的な要素」が抜け落ちた。
合理化:意味の通じない展開を、自分の知識(スキーマ)に合うように勝手に解釈し、論理的な話に書き換えた(例:カヌーを「ボート」と言い換える、狩りを「仕事」にする)。
強調:特定の詳細や馴染みのある部分だけが誇張され、物語の中心へと変化した。
3. キーワード:スキーマ(Schema)
バートレットは、この実験を通じて**「スキーマ」**という概念を提唱した。
スキーマとは: 過去の経験によって形成された、知識や情報の枠組みのことである。
再構築的記憶: 人間は情報をそのままビデオのように再生するのではなく、自分の持つスキーマに適合するように情報を変容させ、作り直して(再構築して)思い出す。
結論
エビングハウスが「忘却の量」という正確性に注目したのに対し、バートレットは「記憶がいかに変容するか」という意味の構成に注目した。このバートレットの研究は、後の認知心理学におけるスキーマ理論や、証言の信憑性研究などの基礎となった。


③ フレデリック・バートレットは、1932年の著書『記憶:実験心理学的および社会心理学的研究』において、エビングハウスの実験手法を鋭く批判し、記憶の本質を捉え直す新たな視点を提示した。
1. バートレットによるエビングハウス批判
バートレットは、エビングハウスの実験が「不自然で、現実の記憶のあり方からかけ離れている」と主張した。
「無意味綴り」の否定: エビングハウスは純粋な記憶力を測るために意味を排除したが、バートレットは**「人間は意味のないものをそのまま覚えることはできない」**と説いた。
受動的 vs 能動的: エビングハウスは記憶を「情報の単純な貯蔵(受動的)」と捉えたが、バートレットは記憶を**「既存の知識体系を用いた能動的な再構築プロセス」**であると考えた。
文脈の欠如: 記憶は日常の文脈や興味、文化的な背景から切り離せないものであり、実験室内の特殊な環境でのみ成立する法則(忘却曲線など)には限界があると批判した。
2. バートレットの実験:『幽霊の戦い』
バートレットは、意味のある複雑な情報を人間がどのように記憶し、変容させるかを調べるため、北米先住民の民話**『幽霊の戦い(The War of the Ghosts)』を用いた実験を行った。
実験手法(連続再生法)
イギリス人被験者に、彼らにとって馴染みの薄い文化背景を持つこの物語を読ませ、一定期間(数時間から数年)の後に、その内容を繰り返し思い出して記述させた。
実験結果:記憶の変容
被験者の記憶は、時間の経過とともに以下のように変化した。
脱落(省略):自分の文化や常識で理解できない「幽霊」や「超自然的な要素」が抜け落ちた。
合理化:意味の通じない展開を、自分の知識(スキーマ)に合うように勝手に解釈し、論理的な話に書き換えた(例:カヌーを「ボート」と言い換える、狩りを「仕事」にする)。
強調:特定の詳細や馴染みのある部分だけが誇張され、物語の中心へと変化した。
3. キーワード:スキーマ(Schema)
バートレットは、この実験を通じて**「スキーマ」**という概念を提唱した。
スキーマとは: 過去の経験によって形成された、知識や情報の枠組みのことである。
再構築的記憶: 人間は情報をそのままビデオのように再生するのではなく、自分の持つスキーマに適合するように情報を変容させ、作り直して(再構築して)思い出す。
結論
エビングハウスが「忘却の量」という正確性に注目したのに対し、バートレットは「記憶がいかに変容するか」という意味の構成に注目した。このバートレットの研究は、後の認知心理学におけるスキーマ理論や、証言の信憑性研究などの基礎となった。


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コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
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小テスト 授業にて資料を配布する。
復習・予習課題 記憶のかんがえ方がどのように進化してきたのか。知覚の現象と異なり、記憶は知覚できない。そのために、研究法に様々な工夫がなされている。予習では、そのような方法について調べてみよう。また復習では、研究法、研究によって得られた現象がどう言う意味を持つのか、考えてみよう。
16 記憶機能の多様性について 科目の中での位置付け 第15回授業では記憶研究の流れを、代表的な研究例を用いて説明した。記憶の科学がどのような経緯を辿って、私たちの実際の記憶に近いところを明らかにしているのかが理解できたことと思う。第16回授業では、実際に、私たちの記憶の現象を体験して、種類の異なる記憶、つまり、感覚記憶、短期記憶、長期記憶の存在を実感しよう。また、記憶が失われる、いわゆる忘却がどのようにして起こるのかについても考えていこう。16回授業は演習、実習を中心に展開する。
授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 感覚記憶 ② 短期記憶 ③ エピソード記憶   ④ 自伝的記憶
細目レベル ① 感覚記憶の代表的研究として知られるのが、George Sperlingによる実験である。彼は視覚的感覚記憶(アイコニック・メモリ)の容量と持続時間を検討した。実験では、3行×4列の計12文字からなるアルファベット配列を約50ミリ秒という極めて短時間提示し、その直後にできるだけ多く再生させる「全報告法」を用いた。その結果、参加者は平均して4〜5文字しか報告できなかった。
しかし、スパーリングは続いて「部分報告法」を導入した。文字提示直後に高・中・低い音のいずれかを鳴らし、それぞれ上・中・下段を報告するよう指示したところ、どの段についてもほぼ完全に再生できた。これは提示直後にはほぼ全ての情報が保持されていることを示す。さらに音の提示を数百ミリ秒遅らせると成績は急速に低下した。
これらの結果から、視覚的感覚記憶は大容量だが持続時間がきわめて短く(約0.5秒以内)急速に減衰することが明らかになった。この研究は感覚記憶の存在を実証し、後の情報処理モデルの基礎を築いた重要な実験である。

② 短期記憶とは、外界から入力された情報を数秒から数十秒のあいだ一時的に保持する記憶であり、思考や判断を行うための作業的な場として機能する。古典的研究では、保持できる情報量は7±2項目程度であるとされ、この知見はGeorge A. Millerによって示された。ただし、近年では実際の容量は4±1項目程度と考えられている。
短期記憶の情報は、繰り返し唱えるなどのリハーサルを行わなければ急速に消失する。これを示したのがLloyd PetersonとMargaret Petersonの実験で、無意味綴りを覚えた後に逆算課題を行わせると、数十秒以内に再生率が大きく低下した。
さらに、短期記憶は単なる貯蔵庫ではなく、情報を操作する働きも担うとされ、現在ではワーキングメモリという概念で説明されることが多い。短期記憶は長期記憶への入り口としても重要であり、学習や日常的な認知活動を支える基盤となっている。

③ エピソード記憶とは、自分が経験した出来事を、そのときの時間・場所・状況・感情などと結びつけて思い出す記憶である。たとえば「昨日どこで誰と会ったか」「入学式の日の出来事」など、個人的体験を具体的な文脈とともに想起できる点が特徴である。この概念を提唱したのは、カナダの心理学者 Endel Tulving である。
Tulvingは、エピソード記憶を意味記憶(知識や事実に関する記憶)と区別した。意味記憶が「東京は日本の首都である」といった一般的知識であるのに対し、エピソード記憶は「自分が初めて東京を訪れた日の体験」のように、自伝的で主観的な再体験(自己関与的な想起)を伴う。彼はこの再体験の感覚を「自己意識的意識(autonoetic consciousness)」と呼んだ。
神経科学的には、エピソード記憶は海馬を中心とする内側側頭葉系と深く関係している。エピソード記憶は時間の経過や他者からの情報の影響を受けやすく、変容や再構成が生じやすいという特徴もある。そのため、目撃証言や自伝的記憶の研究において重要なテーマとなっている。

④ 自伝的記憶とは、自分の人生に関する出来事や経験を内容とする記憶であり、「いつ・どこで・誰と・何をしたか」といった具体的体験だけでなく、自分に関する知識も含む広い概念である。この概念を体系的に研究したのは Endel Tulving で、彼は自伝的記憶の中核にエピソード記憶があると考えた。
自伝的記憶は、出来事を再体験するように思い出すエピソード的側面と、「自分は内向的だ」「高校は名古屋だった」といった意味記憶的側面の両方から構成される。また、自己概念やアイデンティティの形成と深く結びついており、過去の経験を物語として再構成することで「自分とは何者か」という感覚を支えている。
特徴として、感情との結びつきが強いこと、重要な人生転機の記憶が鮮明に残りやすいこと(レミニセンス・バンプ)、そして想起のたびに再構成され変容する可能性があることが挙げられる。そのため、自伝的記憶は固定された記録ではなく、現在の自己や状況の影響を受けながら動的に再構成される記憶体系である。



キーワード ① 感覚記憶 ② 短期記憶 ③ エピソード記憶 ④ 自伝的記憶
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小テスト 授業の最後に実施する。
復習・予習課題 それぞれの記憶のコンポーネントがどのような働きをして私たちの記憶をさせているのか、各コンポーネントをきちんと説明できるようにしておこう。
17 記憶研究の応用:目撃証言の心理学 科目の中での位置付け 目撃証言心理学が必要とされる最大の理由は、人間の記憶が正確な記録装置ではないからである。 私たちは出来事をそのまま保存していると思いがちだが、実際の記憶は知覚・注意・感情・事後情報・社会的影響などによって容易に変容する。特に犯罪場面では、強いストレスや武器への注意集中(いわゆる凶器注目効果)、暗闇や短時間呈示などの条件によって知覚が制限される。その結果、本人は確信していても誤った同定や供述が生じうる。
実際に、冤罪の主要因の一つは誤った目撃証言である。アメリカの無実救済活動を行うInnocence Projectの報告では、DNA再鑑定によって無罪が証明された事件の多くに誤同定が関与しているとされる。これは、記憶の可塑性と捜査手続きの影響(誘導質問、ラインナップの提示方法、事後フィードバックなど)が重大な結果をもたらすことを示している。

目撃証言心理学は、こうした問題を科学的に解明し、司法制度を改善する役割を担う。例えば、適切なラインナップ手続き(ダブルブラインド法、逐次提示法)、供述聴取の工夫(認知面接法)、確信度と正確性の関係の分析などは、実証研究に基づいて提案されてきた。近年では信号検出理論や階層ベイズモデルを用いた分析も進み、証言の信頼性を定量的に評価する試みも行われている。
つまり、目撃証言心理学は「人は間違える」という前提に立ち、誤判を防ぎ、公正な司法を実現するために不可欠な学問領域である。科学的知見によって制度を改善し、無実の人を守り、真犯人の特定精度を高めることがその社会的使命である。

授授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 刑事事件における目撃者 ② 目撃者による冤罪 ③ 目撃証言心理学
細目レベル ① 刑事事件における目撃者とは、犯罪や事故などの出来事を直接見聞きし、その内容を証言できる立場にある人物を指す。目撃証言は犯人特定や事実認定において重要な証拠となるが、心理学的研究はその記憶が必ずしも正確とは限らないことを示している。
目撃証言は、すでに記憶の心理学で学習したように、①符号化(事件を見たとき)、②保持(時間経過)、③検索(思い出して話すとき)の三段階で影響を受ける。例えば、凶器があると顔の記憶が低下する「凶器注目効果」や、事後に与えられた情報によって記憶が変容する事後情報効果が知られている。事後情報効果を実証した代表的研究者はLoftus教授 である。
また、目撃証言の正確性には、照明条件、観察時間、ストレス、他者との会話、取調べ方法など多くの要因が関与する。近年では、ラインナップ手続きの改善や録音・録画の徹底など、制度的(システム変数)な工夫により誤認逮捕を減らす取り組みが進められている。このように、目撃者の証言は重要である一方で可塑的でもあり、心理学的知見を踏まえた慎重な扱いが不可欠である。

② 目撃が原因の冤罪とは、目撃者の誤った記憶や誤認識に基づく証言によって、無実の人が有罪と判断される事例を指す。心理学研究は、目撃証言が強い確信を伴っていても必ずしも正確とは限らないことを示している。特に、犯人の顔を取り違える誤認識別は、冤罪の主要な原因の一つである。
アメリカの Innocence Project がDNA鑑定によって再審無罪を勝ち取った事例の多くで、誤った目撃証言が有罪判決の決め手となっていたことが報告されている。ストレス下での観察、短い目撃時間、異人種間識別の困難さ(クロスレース効果)、不適切なラインナップ手続き、誘導的な取調べなどが誤認を生む要因として知られている。
さらに、目撃者は時間の経過や他者からの情報によって記憶が再構成されやすい。確信度も、フィードバックによって変化することが示されている。そのため近年では、ダブルブラインド方式のラインナップ、適切なフィラー選定、初期確信度の記録など、制度的改善が提唱されている。目撃証言は有力な証拠になり得るが、その限界を理解し、科学的知見に基づいて慎重に扱うことが、冤罪防止のために不可欠である。

③ 目撃証言心理学が必要とされる理由は、目撃証言が強力な証拠として扱われる一方で、人間の記憶が本質的に可塑的で誤りやすいからである。裁判では目撃者の「はっきり見た」「間違いない」という確信が重視されがちだが、心理学研究は、確信と正確さが必ずしも一致しないことを示している。
記憶は録画のように保存されるのではなく、符号化・保持・検索の各段階で再構成される。そのため、ストレス、照明、観察時間、凶器の存在、事後情報、取調べ方法など多くの要因が正確性に影響する。これらを科学的に解明し、どの条件で信頼性が高まり、どの条件で誤りが増えるのかを明らかにすることが目撃証言心理学の役割である。さらに、この分野は理論的研究にとどまらず、実務への応用を目的とする。たとえば、ダブルブラインド・ラインナップ、適切なフィラー選定、初期確信度の記録、誘導を避けた聴取法など、制度設計(システム変数)の改善に貢献してきた。
つまり、目撃証言心理学は「人は間違える」という前提に立ち、誤認逮捕や冤罪を防ぐために、司法制度を科学的知見で支える不可欠な学問領域なのである。

キーワード ① 刑事事件 ② 目撃者 ③ 記憶 ④ 冤罪 ⑤ 司法
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の最後に実施する。
復習・予習課題 目撃証言心理学は、司法における問題を科学的に解明し、司法制度を改善する役割を担う。例えば、適切なラインナップ手続き(ダブルブラインド法、逐次提示法)、供述聴取の工夫(認知面接法)、確信度と正確性の関係の分析などは、実証研究に基づいて提案されてきた。このことを具体的に予習・復習で調べておこう。
18 目撃証言心理学の論文を読む 科目の中での位置付け 第17回の授業で習ったことを実験研究で見てみよう。最初は誘質問導効果に関する研究である。誘導質問効果とは、質問の仕方によって目撃者の記憶内容が変化してしまう現象である。たとえば「車はぶつかったときどれくらいの速度でしたか」と聞くよりも「激突したとき」と強い表現を用いると、より速かったと誤って報告しやすくなる。この効果は Elizabeth Loftus の研究で示され、記憶が再生時に再構成されることを示す代表的証拠とされる。
次は、記憶の社会的汚染(social contagion of memory)とは、他者との会話や集団での想起過程を通じて、自分の記憶が他者の情報に影響され、誤った内容が取り込まれてしまう現象である。たとえば、共同で出来事を振り返る際に、実際には見ていない事柄を他者が述べると、それを自分の記憶として受け入れてしまうことがある。この現象は Henry L. Roediger III らの実験研究で示され、目撃証言が共犯者や他の目撃者との会話によって変容する危険性を示す重要な知見とされている。記憶は個人的なもののように見えても、社会的相互作用の中で再構成される動的な過程である最後に、識別後のフィードバック効果について見ていこう。
ポストIDフィードバック効果(post-identification feedback effect)とは、ラインナップで容疑者を選んだ後に「よく当てました」などの肯定的フィードバックを受けると、目撃者の確信度や当時の見え方の記憶が事後的に高まってしまう現象である。この効果は Gary L. Wells と Amy L. Bradfield によって実証され、確信度が捜査過程で歪められる危険性を示した。

授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 誘導質問効果 ② 誘導質問効果 ③ 識別後のフィードバック効果
細目レベル ① Elizabeth Loftus & John C. Palmer(1974)**は、誘導質問が記憶を変容させることを示した古典的研究である。参加者は自動車事故の短い映像を見た後、「車はどのくらいの速度でぶつかったか」と質問されたが、動詞だけが「hit(ぶつかった)」「smashed(激突した)」「collided(衝突した)」などに変えられていた。その結果、「smashed」と尋ねられた群は他の群よりも推定速度を有意に高く報告した。
さらに別実験では、実際には映像に存在しなかった「割れたガラス」について質問すると、「smashed」と聞かれた群で誤って「見た」と答える割合が増加した。これは、質問に含まれる言語情報が記憶内容そのものに影響を与えることを示している。
この研究は、記憶が固定的に保存されるのではなく、想起時に再構成されることを明確に示し、目撃証言の信頼性評価に大きな影響を与えた。

② Henry L. Roediger III・Michelle L. Meade・Kathleen B. McDermott(2001)**は、記憶の社会的汚染(social contagion of memory)を実証した研究である。
実験では、参加者が日用品の場面(例:キッチン)の写真を見た後、共同想起課題を行った。実際には存在しなかった物品を、実験協力者(サクラ)が「見た」と発言すると、その誤情報を聞いた参加者は、後の個別テストでそれを自分も見たと誤って報告する割合が有意に高まった。
この結果は、記憶が個人内だけで保持されるのではなく、他者との社会的相互作用の中で変容し得ることを示す。目撃証言の文脈では、共犯者や他の目撃者との会話が誤記憶を生む危険性を示す重要な証拠とされている。

③ Gary L. Wells & Amy L. Bradfield(1998)**は、いわゆるポストIDフィードバック効果(post-identification feedback effect)を実証した研究である。
実験では、参加者が犯人不在の写真ラインナップから人物を選択した後、「正解です」「実は違います」「何も言わない」といった異なるフィードバックを与えた。その結果、「正解です」と肯定的フィードバックを受けた群は、①当時よく見えていた、②注意深く観察していた、③すぐに判断できた、④現在の確信度が高い、などと事後的に報告する傾向が強まった。重要なのは、実際には全員が誤って選択していた点である。それにもかかわらず、フィードバックによって主観的確信や記憶の質の評価が大きく歪められた。
この研究は、目撃者の確信度が捜査過程で変容し得ることを示し、初期確信度の即時記録やダブルブラインド方式の必要性を強く支持する根拠となった。

キーワード ① 誘導質問効果 ② 誘導質問効果 ③ 識別後のフィードバック効果
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の最後に実施する。
復習・予習課題 記憶は録画のように保存されるのではなく、符号化・保持・検索の各段階で再構成される。そのため、ストレス、照明、観察時間、凶器の存在、事後情報、取調べ方法など多くの要因が正確性に影響する。これらを科学的に解明し、どの条件で信頼性が高まり、どの条件で誤りが増えるのかを明らかにすることが目撃証言心理学の役割である。このことを具体的に説明できるように予習復習しておくこと。
19 パーソナリティ心理学(1) 科目の中での位置付け パーソナリティとは何か。ラテン語のペルソナ(persona)に起源がある。ペルソナは、もともとはギリシア劇で用いられ、ローマにも伝えられた仮面(mask)のことであり、特定の役割を与えられていた。その後、これから転じて、見せかけの表情、演技者の役割、演技者自身の内面的な心的特性、あるいは威厳とか重みをも意味するようになったと伝えられている。パーソナリティーには、以上のように外側からの期待に対してこたえる役割的な演技の意味があるとともに、その人独自の人柄を表す全体的な統一体な意味もある。日本語でパーソナリティーにあたる「人格」は、その人独自の人柄または徳性を備えた「品格」を意味するが、人間をパーソナリティーという概念でとらえる場合には、気質と素質のような生得的に得られたものを基礎に、獲得された行動傾向を表す「性格」を意味していると言えよう。知能のところで見てきたように、心理学の主要な概念には多くの定義がなされてきていて、どのような立場で定義するかによってその表現するところが変わってくる。この傾向はパーソナリティにおいても同様である。今回授業では、そのようなパーソナリティを説明する理論について展望する。
授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① ビッグファイブ ② 測定論 ③ 質問紙法 ④ 作業検査法 ⑤ 投影法
細目レベル ① 4)新しい理論展開
新しいパーソナリティ理論は、1990年代にアメリカでゴールドバーグ(Goldberg, L. R.)によって提唱された、ビッグ・ファイブBig Five(性格の5大因子)と呼ばれる理論で、外向性(extraversion)、神経症傾向(neuroticism)、誠実性(conscientiousness)、調和性(agreeableness)、そして経験への開放性(openness to experience)から成る5因子説である。この理論は今まで個別に扱われてきたパーソナリティ理論を包含するような内容になっている。5つの因子と言われると数が少ないような印象を与えるが、実際には5大因子それぞれが双極だから相当に複雑な構成になっている。また因子分析は分析される最初の分布に影響を受けるので、たとえば経験への開放性を見いだすため、それに関する項目数がある程度必要となってくる。そのために開放性に関する議論が続いている。また、「ビッグ・ファイブ」の5要素は、研究者によって多少その内容は異なるが、基本的な考え方は全て同じであり、現在最も広く利用されているのは「コスタ&マックレー」のモデルで、それぞれの因子を構成する下位の尺度が見出されている。特性輪に依拠する測定は基本的に質問紙法であるが、授業ではそれ以外の方法についても言及する。

5)パーソナリティ測定
パーソナリティはパーソナリティ検査(性格検査とも)によって行われる。個人の行動様式や反応様式などから,その個人のパーソナリティ特性を定量的に評価することを目的としている。検査方法は通常次の3つに分類される。 (1) 自己評定法:パーソナリティ特性に関する質問に対し被験者自身に答えさせるもので、質問紙法、行動目録法などがある。 (2)作業検査法 :単純な作業の実施から、作業過程を追いかけて、それらの結果からパーソナリティを測定するもの。 (3)投影法 :曖昧な刺激を意味あるものとして解釈してもr会うことで、定性的にパーソナリティ特性を測定しようとする。ロールシャッハ・テスト、絵画統覚テスト、文章完成法などがある。
(1)自己評価法による測定は、質問紙を用いて行われる。多くの性格検査がこの形式を採用している。MMPI(ミネソタ式多重人格目録)、ビッグ・ファイブなどなどである。MMPIは質問項目が多く(550問)、ビッグファイブは国内版で60項目(和田版, 1996)、その後、29項目からなる短縮版の提案もなされている (並川ら, 2012)。
(2)作業検査法 :この方法は作業を伴うような課題を実施し、その結果のパタンや成績から、作業者の内面の性格を理解しようとする方法である。内田・クレペリン精神作業検査などはこの代表的方法である。
(3)投影法:この検査の代表格はロールシャッハ・テストであろう。インクブロットを用いた検査用項目に対して、被検査者が自由にその曖昧刺激を解釈し、その解釈を分析することで、深層にある心理を解釈する方法である。そのほかにも曖昧な描画を用いたり、「私は・・・」の文書を20問書かせていく文章完成法なども用意されている。それぞれの方法に短所、長所がある。授業ではその点についても言及する。

キーワード ① ビッグファイブ ② 測定論 ③ 質問紙法 ④ 作業検査法 ⑤ 投影法
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の最後に実施する。
復習・予習課題 予習
授業は個性の心理学に該当するパーソナリティの学習である。パーソナリティは、個人の比較的安定した行動傾向のことである。これらの行動がどのように説明されるのか、 シラバスを事前に読んでおくこと。パーソナリティの力動論、類型論、特性論という3つの代表的理論を学習する。それぞれの理論の特徴についてポイントを整理して、自分の言葉で説明できるようにしておこう。また新しいパーソナリティ理論について学び、その後に実際にパーソナリティが心理学的にどのように測定されるのかを学ぶ。新しい理論は従来の特性論を踏まえた幾分とも複雑な構造を持つが、それをきちんと理解しよう。また心理学がどのようにしてパーソナリティを測定してきたのかも読んでおくこと。
復習
パーソナリティの新しい理論と測定法について、まとめておくこと。ビッグファイブについては、現在、最も信頼の置かれている理論である。それを簡潔に説明できるようにしておこう。また測定に関しては自己評定法、作業検査法、投影法について説明できるようにしておくこと。

20 パーソナリティ心理学(2) 科目の中での位置付け パーソナリティとは何か。ラテン語のペルソナ(persona)に起源がある。ペルソナは、もともとはギリシア劇で用いられ、ローマにも伝えられた仮面(mask)のことであり、特定の役割を与えられていた。その後、これから転じて、見せかけの表情、演技者の役割、演技者自身の内面的な心的特性、あるいは威厳とか重みをも意味するようになったと伝えられている。パーソナリティーには、以上のように外側からの期待に対してこたえる役割的な演技の意味があるとともに、その人独自の人柄を表す全体的な統一体な意味もある。日本語でパーソナリティーにあたる「人格」は、その人独自の人柄または徳性を備えた「品格」を意味するが、人間をパーソナリティーという概念でとらえる場合には、気質と素質のような生得的に得られたものを基礎に、獲得された行動傾向を表す「性格」を意味していると言えよう。知能のところで見てきたように、心理学の主要な概念には多くの定義がなされてきていて、どのような立場で定義するかによってその表現するところが変わってくる。この傾向はパーソナリティにおいても同様である。今回授業では、そのようなパーソナリティを説明する理論について展望する。
授業にて医療を配布する。
コマ主題細目 ① 力動論 ② 類型論 ③ 特性論
細目レベル ① 1) 類型論
類型論は古くはギリシアに登場する。医者であり、諸学に通じていたガレノスは、ヒポクラテスの4体液説(人間には血液、粘液、黒胆汁、黄胆汁の4種類の体液があると主張)を発展させて、これに対応する4気質説という類型論を発展させた。多血質は楽観的で健康、粘液質は静かで無関心、黒胆汁質は抑うつ的で落ち込みやすい、黄胆汁質は苛立ちやすいなどであった。これらは特に科学的根拠がないものの、20世紀になるとドイツの精神科医のクレッチマーが、彼の臨床経験から、体格と精神病との間に関係があり、さらに研究を続けて、体型と気質に関係のあるということに注目した。彼はパーソナリティの中心に気質があると考えていた。彼は3つの体型(細長型、肥満型、闘士型)とその対応する気質特徴があると考えた。このような考えに近いものにシェルドンの類型論、人生の価値や目的によるn分類を行ったドイツの哲学者の分類、精神分析のユングの分類などがある。

2)特性論
類型論が全体論的なアプローチであるのに対して、特性論は要素的なアプローチである。この特性論の特性とは、さまざまな状況においても比較的一貫した個人の行動傾向が見られることを言う。特性論とは、この特性という概念を用いて人のパーソナリティを説明しようという立場である。そして、この特性にどのような種類があるのかということ、その特性の強弱によってその特性が測定できるのか、ということに関心が集中した。その中で最も体型的にこの理論を展開したのが、オルポート(Allport, G.W.)であった。彼は個人の中で比較的変化する特性を個人特性とし、もう一つの特性である共通特性を分けて考えた。科学が語れるのは後者の共通特性であり、それぞれの特性は、たとえば身長や体重のように、正規分布に従うと考えられた。このアイデアから、オルポートは特徴を抽出する方法として性格を記述する用語を辞書の中に求め、多くの言葉から共通する概念を拾い出した。その結果、20個近い特性を選び出した。その後、特性論はキャテル(Carttell, M.)、アイゼンク(Eysenck, H.J.)、ゴールドバーグ(Goldberg, L.R.)らによって更なる展開を遂げてきている。

キーワード ① 力動論 ② 類型論 ③ 特性論
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の最後の実施する。
復習・予習課題 予習
授業は個性の心理学に該当するパーソナリティの学習である。パーソナリティは、個人の比較的安定した行動傾向のことである。これらの行動がどのように説明されるのか、 シラバスを事前に読んでおくこと。パーソナリティの類型論、特性論という2つの代表的理論を学習する。それぞれの理論の特徴についてポイントを整理して、自分の言葉で説明できるようにしておこう。また新しいパーソナリティ理論について学び、その後に実際にパーソナリティが心理学的にどのように測定されるのかを学ぶ。新しい理論は従来の特性論を踏まえた幾分とも複雑な構造を持つが、それをきちんと理解しよう。また心理学がどのようにしてパーソナリティを測定してきたのかも読んでおくこと。
復習
パーソナリティの新しい理論と測定法について、まとめておくこと。ビッグファイブについては、現在、最も信頼の置かれている理論である。それを簡潔に説明できるようにしておこう。また測定に関しては自己評定法、作業検査法、投影法について説明できるようにしておくこと。

21 発達心理学(1) 科目の中での位置付け 心理学における発達とは、人間が生まれてから死に至るまでの時間の経過に伴って生じる心身の変化を表している。関連した言葉として成長、成熟、学習があるが、成長は一般的には発達と同じような意味合いで使用されてきている。また成熟は遺伝によってある程度規定された心理・身体・行動の変化を意味し、学習は生まれたのちの経験による心理・身体・行動の変容を指している。
発達心理学はアメリカのホール((Hall, S.)が19世紀末に児童心理学として創設し、それまであまり理解されていなかった児童の権利を擁護しようという運動と合わさりながら発展してきた。現在、世界的にかつてない高齢化社会が到来し、老年期の精神発達についての知見への社会的要請も高まり、だいぶ以前より生涯発達心理学という考え方が広まった。研究の方法論として、人間と動物の発達過程を比較する比較行動学(エソロジー)的な方法や、異文化間の発達過程の相違や共通点を検討する比較文化的な方法など、その研究方法も多様な広がりをみせ、心理学に限らず行動の発生学的説明を試みる学問領域を包含する総合的な発達科学として成長してきている。今回授業では、2回に分けて心身の発達の過程を見ていくことにしよう。

授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 発達とは何か ② 発達段階 ③ 幼児期
細目レベル ① ① 1) 発達とは
すでに科目内での位置付けで見たように、発達心理学とは、主に精神の発達を対象として、時間経過に従って生じる変化に関する特徴や法則性、変化を推し進める要因について検討する心理学の分野である。発達とは、誕生から死にいたるまでの過程での変化を指す。学習心理学における“学習”もある種の“変化”を扱うが、発達はより長期の変化・獲得であり、遺伝的な規定と環境の影響の交互作用として理解される。この発達心理学において、遺伝要因はより基本的な発達に関わるものであるとされ、より個人的(個性的)な細かな発達は環境要因によるものであるとされている。環境要因には、家族・家庭などや、さらに社会的・文化的な影響も含まれる。近年、単に「発達心理学」というのではなく「生涯発達心理学」という用語が使われるようになってきているが、生涯発達心理学とは、人間の受胎・誕生から老年までの生涯のライフ・コースを通じて、どのような恒常的な心理的特性が存在するか、どのような量的変化や質的変化を生ずる心理的特性が作用しているかなどを包括的に捉える必要から、そのような領域名が付けられて、使用されるようになった。従来の発達心理学が主に幼児期から青年期に至るまでの上昇的変化を対象にし、発達段階の特徴やその移行の過程を捉えてきたのに対して、生涯発達心理学は全生涯的な発達の中で見直していくというメタ方法論的な側面を含むものとなっている。

2)発達段階
発達段階の考え方について知ろう。発達は連続的な過程であるが、実際にはその連続性が分かりにくい。そこで、特徴的な変化が持続し、また新たな変化が起こって維持される段階を考えて、発達段階という考え方が導入されている。発達は心理学的発達にせよ、運動機能の発達にせよ、さらに細分化してみることができる。たとえば、心理学的発達と言っても知覚能力、記憶能力、言語能力、問題解決能力などの認知能力から始まって、感情の発達、パーソナリティの発達など・・・心理学が扱う諸領域の発達を見ることができる。つまり、発達心理学は心理学の領域でも極めて広い範囲を扱う心理学であることがわかってもらえるだろう。ここは概論なので、代表的発達について見ていくことにしよう。

3)乳児期
乳児は、外界への急激な環境の変化に対応し、著しい心身の発達とともに、生活のリズムの形成を始める。特に、視覚、聴覚、嗅覚などの感覚は鋭敏で、泣く、笑うなどの表情の変化や、からだの動き、「あーうー」「ばぶばぶ」といった 喃語(なんご)(まだ言葉にならない段階の声)により、自分の欲求を表現する。また、保護者など特定の大人との継続的な関わりにおいて、愛されること、大切にされることで、情緒的な絆(愛着)が深まり情緒が安定し、人への信頼感をはぐくんでいくが、特にスキンシップは大きな役割を果たすと言われている。乳児は、この基本的な信頼感を心の拠りどころとし、徐々に身近な人に働きかけ、歩行の開始などとともに行動範囲を広げていく。幼児期になるにつれ、身近な人や周囲の物、自然などの環境とかかわりを深め、興味・関心の対象を広げ、認識力や社会性を発達させていくとともに、食事や排泄、睡眠といった基本的な生活習慣を獲得していく。また、子ども同士で遊ぶことなどを通じ、豊かな想像力をはぐくむとともに、自らと違う他者の存在や視点に気づき、相手の気持ちになって考えたり、時には葛藤をおぼえたりする中で、自分の感情や意志を表現しながら、協同的な学びを通じ、十分な自己の発揮と他者の受容を経験していく。こうした体験を通じ、道徳性や社会性の基盤がはぐくまれていく。

キーワード ① 発達とは何か ② 発達段階 ③ 幼児期
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の最後に実施する。
復習・予習課題 予習
今回授業は発達心理学について学ぶ。発達は英語でdevelopment、成長growthとは似ているが異なる概念である。成長は身体の変化に対して使用されるが、発達は精神の変化や変化の規則性に対して使用される。この発達は、心のあらゆる側面に起こる系統的・規則的変化で、今まで学習した心理学の領域に関わる事項である。今回授業では、乳児期・幼児期の発達、児童期・青年期の発達に分けて、その特徴を読んで理解の努力をしておくこと。

復習
乳児期・幼児期の発達、児童期・青年期・中年期の発達、高齢期の発達の諸特徴を要領よくまとめておくこと。発達研究の初期では、これらの年代の心理学につてはあまり意識されていなかった。しかし、生涯発達という概念が提唱されてから、揺り籠から墓場までという生涯の発達を解明しようという機運が高まった。今回は人生の中盤から後半にかけての心理学である。

22 発達心理学(2) 科目の中での位置付け 心理学における発達とは、人間が生まれてから死に至るまでの時間の経過に伴って生じる心身の変化を表している。関連した言葉として成長、成熟、学習があるが、成長は一般的には発達と同じような意味合いで使用されてきている。また成熟は遺伝によってある程度規定された心理・身体・行動の変化を意味し、学習は生まれたのちの経験による心理・身体・行動の変容を指している。
発達心理学はアメリカのホール((Hall, S.)が19世紀末に児童心理学として創設し、それまであまり理解されていなかった児童の権利を擁護しようという運動と合わさりながら発展してきた。現在、世界的にかつてない高齢化社会が到来し、老年期の精神発達についての知見への社会的要請も高まり、だいぶ以前より生涯発達心理学という考え方が広まった。研究の方法論として、人間と動物の発達過程を比較する比較行動学(エソロジー)的な方法や、異文化間の発達過程の相違や共通点を検討する比較文化的な方法など、その研究方法も多様な広がりをみせ、心理学に限らず行動の発生学的説明を試みる学問領域を包含する総合的な発達科学として成長してきている。今回授業では、2回に分けて心身の発達の過程を見ていくことにしよう。

授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 児童期の発達 ② 青年期の発達 ③ 中年期の発達 ④ 高年期の発達
細目レベル ① 1)児童期
児童童期の知的発達の特徴を見てみよう。この時期における学校での組織的な教育のもとで、子どもはさまざまな基礎的諸能力や諸技能(読み・書き能力、計算能力など)、自然、社会についての科学的諸知識を習得する。さらに、学習活動を通して観察力、思考力、注意力、記憶力などの認知機能が飛躍的に発達する。この時期の知的発達の大きな特徴は、心理諸過程に随意性(意志性、意識性)が発生し、随意的な知覚(観察)、随意的注意、随意的記憶、随意的思考が発達することである。また、内言(ないげん)の発達と結び付いて、課題を(頭のなかで)内的に解決したり、課題解決の計画をあらかじめ内的にたてたり、自分の行為を随意的に統制・調整する能力が発達する。また、論理的思考操作、空間表象の発達も著しく進展する。しかし、形式的な論理・命題操作の発達は、今日の教育条件のもとでは、11、12歳以降になって行われるので、J・ピアジェは、この期の子供の思考を具体的操作期の思考と命名している。

2)青年期
青年期とは依存している小児が自立した成人に成長する発達時期である。この時期は10歳頃から始まり10代後期または20代早期まで続く。青年期は身体的、知的、情緒的に著しい成長を遂げる。この期間を成功的に乗り切ることは、本人にとって困難な課題である。青年期初期に、抽象的、論理的な思考能力が発達し始める。思考の複雑さが増すことにより自己認識が強化され、自己の存在について深慮するようになる。青年期に起こる多くの目立つ身体的変化のため、この自己認識はしばしばぎこちなさの感覚を伴う自意識過剰へと変化する。青年は、容姿や魅力のことばかりを考えるようになり、友人との相違に過敏になる。青年はまた、この新たな熟考力を用いて道徳的問題に対処する。青年期以前の小児は、善悪を固定的かつ絶対的なものとして理解する。しかし、年長の青年はしばしば行動規範に疑問を抱き伝統を否定して、親を狼狽させることがある。理想は、このような熟考によって、最終的に青年自身の道徳律が発達し内在化することである。

3)中年期
身体的発達:体力に限界を感じたり、疲労回復に時間がかかったり、健康に関心が増すなどの変化が生じる時期である。生活習慣病(高血圧、糖尿病など)が起こりやすくなるのもこの時期です。また、女性の場合は、閉経などの生理的な変化も大きく影響してくる。
さらに後期になると、体力や目や耳などの感覚器の衰えに加え、老親や、同年配の人たちの重い病気や訃報に接する機会も増えることで、死ということが現実味をおびはじめる。心理的発達:社会的役割の変化、体力的な衰えなどから、今までのやり方ではどうもうまくいかないと感じ始め、「自分の人生はこれでよかったのか」「本当に自分のやりたいことは何なのか」という、自分の生き方、あり方そのものについて、見直しを迫られる時期でもあります。さらに後期になると、社会的にも身体的にも「喪失」を体験する時期です。この喪失を受け入れ、自分自身の新たな人生の歩みを作り上げる時期でもある。

4)高年期
高齢期における精神機能の老化は、すでに述べたように、個人差が大きいという特徴がある。その理由は、中枢神経系が年齢を重ねて変化をしていく中で、心理的、身体的、環境的な要因が加わり、その結果として精神機能の症状が出現するためといわれている。特に記憶に関しては、エピソード記憶が関与する「新しいこと」を覚えることが困難になる。これは、記銘力(きめいりょく:新しいことを覚える能力)が低下するためである。また、短期記憶の機能も低下するため、直近の出来事を思い出せないとか、覚えていないということもよく起こる。さらに、過去の出来事は覚えているのだが、思い出すのに時間がかかるようになる。これは想起力(以前の出来事を思い出す能力:検索の問題)が低下するためである。さらに他の認知能力である、注意力や集中力の保持も困難になる。知的能力の面で見てみると、高齢者は計算や記銘といった単純作業や、知的作業の能力は低下するとされる。しかし、言語的理解能力のような、経験や知識に結びつけて判断する能力は、比較的高齢まで維持される。

キーワード ① 児童期 ② 青年期 ③ 中年期 ④ 高齢期
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の最後に実施する。
復習・予習課題 予習
授業は発達心理学について学ぶ。発達は英語でdevelopment、成長growthとは似ているが異なる概念である。成長は身体の変化に対して使用されるが、発達は精神の変化や変化の規則性に対して使用される。この発達は、心のあらゆる側面に起こる系統的・規則的変化で、今まで学習した心理学の領域に関わる事項である。今回授業では、乳児期・幼児期の発達、児童期・青年期の発達に分けて、その特徴を読んで理解の努力をしておくこと。

復習
乳児期・幼児期の発達、児童期・青年期・中年期の発達、高齢期の発達の諸特徴を要領よくまとめておくこと。発達研究の初期では、これらの年代の心理学につてはあまり意識されていなかった。しかし、生涯発達という概念が提唱されてから、揺り籠から墓場までという生涯の発達を解明しようという機運が高まった。今回は人生の中盤から後半にかけての心理学である。

23 社会心理学(1) 科目の中での位置付け 社会心理学は、人間の社会行動を広範囲に捉える心理学の一分野である。そこでは、個個人レベル、小集団レベル、大集団レベルの行動が対象に研究されている。個人のレベルでは、社会的認知、欲求と価値、自我とアイデンティティ、役割行動など、小集団レベルでは、小集団における各種の相互作用や群衆行動など、大集団レベルでは、流言や流行、あるいは社会運動などの集合行動を扱っている。このように社会心理学の対象を区分することはある意味で便利であるが、実際にはこの区分が難しい、つまり、お互いに関連し合っている場合もあることを知っておくことが重要である。今回授業では、この社会心理学の概要を2回に分けて講義する。初回は、1)社会心理学とは何か、2)社会的知覚・認知、3)態度と説得をテーマに学習する。1)では、社会心理学の発展を歴史的に捉え、2)では個人がどのようにして他者の認識(つまり、知覚や認知)を行っているのかについて学習し、3)では人々が持つ他者や物に対する好意や非行為的な評価であり、その結果としての他者の評価の変更を促すコミュニケーションである、説得について学ぶ。
人間は社会的存在であり、人と人、人と物、人と情報の間に様々な相互作用が起こっている。そのような相互作用の関係を明らかにするのが、今回の授業の後半で扱うテーマである。最初は社会的影響について学ぶが、これは私たちの行動が促進されたり、抑制される要因についての学習を行う。このような要因については、9種類程度の要因が考察されてきた(賞影響力、罰影響力、正当影響力、専門影響力、参照影響力、情報影響力、魅力影響力、対人影響力、役割影響力)。また対人魅力とは、人が他者に対して持つ肯定的感情(態度)や否定的感情(態度)のことである。そして、対人魅力が好意や嫌悪などの感情、信念などの認知、接近や回避などの行動傾向の三つの要素で構成されると考えられている

授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 社会的知覚・認知 ② 態度と説得
細目レベル ① 1)社会的知覚・認知
社会的知覚や社会的認知は、私たちが他者を理解するために、その人物の情報を収集し、推論し、判断する過程のことである。ここでは第一印象が、重要な役割を果たす。学生のみなさんも初めて会う人物に対して、特定の印象(好印象、悪印象などなど)を経験したことがあるだろう。これが第一印象である。この印象は形成が素早くなされ、しかも持続して、変化しにくいことがわかっている。このような印象が形成されるのは、私たちがステレオタイプと呼ばれる心理学的機能を持っているからである。ステレオタイプとは、特定の集団に属する人たちに対する一般化された信念や期待を意味している。また、原因帰属とは、私たちが行動の原因がどこにあるのかを認識する方法である。ハイダー(Heider, 1958)は、この原因帰属に内的帰属と外的帰属があるとした。前者は行動の原因を当人の内にある態度、期待、能力などに帰属させるもので、後者は行動の原因を、当該人物を囲む環境や状況に帰属させる物である。

2)態度と説得
態度とは、人々が持つ他者や物に対する好意や非行為的な評価であり、その結果としての他者の評価の変更を促すコミュニケーションが説得である。まず態度に関しては、ある特定の対象が良いとか悪いというような信念、その対象が好きであるとか嫌いであるという感情、そしてその対象に接近するとか離れるというような行動の側面を持っている。そしてこの態度は様々な学習(第 回授業で学習)を通して形成される。またザイヨンスの提唱した単純接触効果による影響力もある。説得による態度変化に関しては、マスメディアの心理学でも取り上げるが、説得に関してはさまざまなモデルや理論が提唱されてきている。精緻化見込みモデルや認知的不協和の理論が代表的な考え方である。

キーワード ① 社会心理学 ② 社会的知覚 ③ 社会t形認知 ④ 態度 ⑤ 説得
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
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復習・予習課題 予習
社会心理学は広汎なテーマを扱う。それは人間が社会的動物であり、他者とのさまざまな関係の中で生活しているからである。シラバスの社会心理学についての授業回のレジメを読んでおくこと。

復習
社会心理学は広汎なテーマを扱う。それは人間が社会的動物であり、他者とのさまざまな関係の中で生活しているからである。そのような他者の持つ諸特徴、また集団の持つ諸特徴、集団対個人の力関係、集団対集団の力学など、多くの要因が私たちの意思決定や行動に影響することをまとめておくこと。

24 社会心理学(2) 科目の中での位置付け 社会心理学は、人間の社会行動を広範囲に捉える心理学の一分野である。そこでは、個個人レベル、小集団レベル、大集団レベルの行動が対象に研究されている。個人のレベルでは、社会的認知、欲求と価値、自我とアイデンティティ、役割行動など、小集団レベルでは、小集団における各種の相互作用や群衆行動など、大集団レベルでは、流言や流行、あるいは社会運動などの集合行動を扱っている。このように社会心理学の対象を区分することはある意味で便利であるが、実際にはこの区分が難しい、つまり、お互いに関連し合っている場合もあることを知っておくことが重要である。今回授業では、この社会心理学の概要を2回に分けて講義する。初回は、1)社会心理学とは何か、2)社会的知覚・認知、3)態度と説得をテーマに学習する。1)では、社会心理学の発展を歴史的に捉え、2)では個人がどのようにして他者の認識(つまり、知覚や認知)を行っているのかについて学習し、3)では人々が持つ他者や物に対する好意や非行為的な評価であり、その結果としての他者の評価の変更を促すコミュニケーションである、説得について学ぶ。
人間は社会的存在であり、人と人、人と物、人と情報の間に様々な相互作用が起こっている。そのような相互作用の関係を明らかにするのが、今回の授業の後半で扱うテーマである。最初は社会的影響について学ぶが、これは私たちの行動が促進されたり、抑制される要因についての学習を行う。このような要因については、9種類程度の要因が考察されてきた(賞影響力、罰影響力、正当影響力、専門影響力、参照影響力、情報影響力、魅力影響力、対人影響力、役割影響力)。また対人魅力とは、人が他者に対して持つ肯定的感情(態度)や否定的感情(態度)のことである。そして、対人魅力が好意や嫌悪などの感情、信念などの認知、接近や回避などの行動傾向の三つの要素で構成されると考えられている

授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 社会的影響 ② 対人的影響 ③ 対人魅力
細目レベル ① 4)社会的影響
たとえば、「来週までにレポート提出しないと単位が与えられないよ」と言われたとする。こうした働きかけがあった場合に、それを受けて行動する場合もあれば、そうでない場合もある。しかし、生活においては人からの依頼や指示に満ちていることも確かである。このような場合、私たち自身が依頼や指示の受け手、相手が与え手となっているが、私たちが相手の言う通りに行動した場合、なぜ与え手は受け手である私たちに影響を及ぼすことができるのだろうか。実は、それを説明する心理学的概念が社会的影響力(あるいは、社会的勢力, social power)と呼ばれるものである。その与え手には受け手に影響を与えるための資源があると捉え、それを社会的影響力と呼んでいまる。社会的影響力とは、「受け手の行動,態度,感情などを,与え手が望むように変化させうる能力のこと」である。そして、社会的影響力にはどのような種類でよく引用されている研究がFrench & Raven (1959)によるものである。彼らは、社会的影響力を5種類に分類した。すなわち、賞影響力、罰影響力、専門影響力、正当影響力、そして、参照影響力です。その後、Raven (1962)は、情報影響力を付け加えて6種類とした。今井(1996)は、さらに魅力影響力、対人関係影響力、役割影響力を付け加えて9種類とすることを提案した。

5)対人的影響
社会的影響は、個人間で行なわれる対人的影響(interpersonal influence:説得、依頼、指示、命令など)のほかに、多数の人々に影響を与えることを目的とした広告、宣伝、プロパガンダ(政治的宣伝)も含まれる。広い意味では、送り手(influence agent)となる他者の積極的な働きかけがまったくない状況のもとで、他者の存在自体が受け手に影響を及ぼすことも社会的影響に含まれる。たとえば,援助行動の研究では,緊急場面に居合わせた人の数が多くなるほど援助行動が抑制されることが知られており,傍観者効果(bystander effect)と呼ばれている(Fischer,P.,Krueger,J.,Greitemeyer,T.,Kastenmüller, A.,Vogrincic,C.,& Frey,D.,2011)。以上のように社会的影響のうち、個人間での対人による影響を対人的影響と言う。

6)対人魅力
既に見たように、対人魅力とは他者への肯定的な態度と言えるが、社会心理学の研究では、その態度に影響する要因が調べられてきた。それらの研究が示すのは以下の要因である。
① 身体的魅力:研究によれば学生における異性への魅力は、学業成績や性格よりも身体的魅力が高感度を規定する。
② 性格:対人魅力と性格との関連に関しては,類似説,相補説,社会的望ましさ説の三つの仮説が提唱されている
③ 状況要因 居住空間や教室内の座席などの物理的な距離の近さ(近接性propinquity)も魅力を引き起こす。たとえばシーガル(Segal,M.W.)は,警察学校の新入生が入学6週間後に教室内で座席の近い人と友人になりやすいことを明らかにしている。近接性に関しては,時間の経過とともに効果が減少していくとする研究や,好意だけでなく嫌悪も高めることを示した研究も見られる。
④ 心理状態 一般的には快適な状態では魅力が高まり,不快な状態では魅力が低下する。しかし,生理的覚醒を伴う状態では異なる結果が示されている。たとえばダットン(Dutton, D. G.)とアロン(Aron, A. P.)は,不安定な吊り橋を渡った直後や電気ショックを与えられる直前など,不安が生じた際に異性に対する好意が高まることを明らかにした。
⑤ 魅力の対象からの好意や評価 自分に好意を抱く人や自分を高く評価する人に対しては,魅力を感じやすい。この現象は,好意の互恵性(好意の返報性)reciprocity of likingとよばれる。

キーワード ① 社会的影響 ② 対人的影響 ③ 対人魅力
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復習・予習課題 予習
社会心理学は広汎なテーマを扱う。それは人間が社会的動物であり、他者とのさまざまな関係の中で生活しているからである。シラバスの社会心理学についての授業回のレジメを読んでおくこと。

復習
社会心理学は広汎なテーマを扱う。それは人間が社会的動物であり、他者とのさまざまな関係の中で生活しているからである。そのような他者の持つ諸特徴、また集団の持つ諸特徴、集団対個人の力関係、集団対集団の力学など、多くの要因が私たちの意思決定や行動に影響することをまとめておくこと。

25 感情の心理学 科目の中での位置付け 感情の心理学とは、喜び・怒り・悲しみ・恐れなどの感情がどのように生じ、どのような仕組みで身体や行動に影響を与えるのかを科学的に研究する分野である。感情は主観的体験だけでなく、生理的反応(心拍の変化など)、表情や行動、認知的評価を含む複合的な現象と考えられている。
感情の理論にはいくつかの代表的立場がある。ウィリアム・ジェームズは、身体反応が先に起こり、それを知覚することで感情が生じるとする説(ジェームズ=ランゲ説)を唱えた。一方、ウォルター・キャノンは、身体反応と感情体験は同時に生じると主張した。さらに、リチャード・ラザルスは、出来事に対する認知的評価が感情を決定すると考え、認知の役割を強調した。
また、ポール・エクマンは、怒りや恐れなどの基本的感情には文化を超えて共通する表情があることを示した。近年では脳科学的研究も進み、扁桃体などの神経基盤が明らかになっている。
このように感情の心理学は、生理・認知・社会的側面を統合しながら、人間の情動の仕組みを多面的に解明している分野である。

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コマ主題細目 ① ジェームズ・ランゲの抹消説 ② キャノン・バードの中枢説 ③ ラザラス説
細目レベル ① ウィリアム・ジェームズとカール・ランゲが提唱したジェームズ=ランゲの末梢説は、感情は身体反応を知覚することによって生じるとする理論である。この説によれば、外界の刺激を受けるとまず身体に変化が起こり、その変化を自覚することが感情体験そのものであると考える。たとえば、危険な動物を見たとき、心拍の上昇や発汗、震えなどの生理的反応が先に生じ、その身体反応を感じ取ることで「恐怖」という感情が成立すると説明する。つまり「怖いから震える」のではなく、「震えるから怖い」という立場である。
この理論は、感情の原因を脳の中枢ではなく心臓や内臓、筋肉などの末梢神経系の変化に求めたため、末梢説と呼ばれる。その後、ウォルター・キャノンは、身体反応は感情ごとに明確に区別できないことなどを理由に批判したが、ジェームズ=ランゲ説は感情と身体の密接な関係を示した重要な理論として現在も評価されている。

② キャノン・バードの中枢説とは、情動の発生において中枢神経系、特に脳が中心的な役割を果たすとする理論である。この理論は、Walter CannonとPhilip Bardによって提唱された。
この説は、ジェームズ・ランゲ説(情動は身体反応の知覚によって生じるという理論)を批判する形で生まれた。キャノンは、内臓反応は情動体験を説明するには遅すぎ、また同じ身体反応が異なる情動に対応することもあるため、身体反応が情動の原因であるとは考えにくいと主張した。
キャノン・バード説によれば、外界の刺激を受けると、その情報は視床を中心とする中枢神経系に伝えられ、そこで処理される。そしてその結果、情動体験(主観的な感情)と身体反応(心拍増加や発汗など)が同時に、しかも独立して生じると考える。つまり、「悲しいから泣く」のではなく、「刺激によって脳が活動し、その結果として悲しさの感情と涙が同時に起こる」と説明する。
この理論の重要な点は、情動の発生において脳(特に視床)の役割を強調したことであり、情動研究を中枢神経系の観点から発展させる基礎となったことである。その後の神経科学的研究では、視床だけでなく大脳辺縁系や扁桃体などの関与も明らかになり、情動研究はさらに精緻化されていった。

③ ラザラスの感情理論とは、感情は出来事そのものによって直接生じるのではなく、その出来事をどのように評価(認知的評価)するかによって生じるとする理論である。この理論は、アメリカの心理学者 Richard Lazarus によって提唱された。
ラザラスは、感情の発生には「認知的評価(cognitive appraisal)」が不可欠であると考えた。人は何らかの出来事に直面したとき、まずそれが自分にとってどのような意味をもつかを無意識的・自動的に評価する。この評価の仕方によって、怒り、不安、喜び、悲しみなどの具体的な感情が決まるとされる。
ラザラスは認知的評価を大きく二段階に分けた。第一に一次的評価であり、これは「その出来事が自分にとって重要か」「利益か脅威か」といった判断である。例えば試験の結果を聞く場面で、それが将来に大きく関わると評価すれば強い情動が生じやすい。第二に二次的評価であり、「自分はそれに対処できるか」という対処可能性の判断である。脅威だと評価しても、対処可能だと思えば怒りや挑戦的感情になりやすく、対処困難だと評価すれば不安や恐怖が生じやすい。
この理論の特徴は、感情とストレス、コーピング(対処行動)を統合的に説明した点にある。感情は単なる生理的反応ではなく、個人の目標や価値、信念と密接に結びついた意味づけの過程の結果であると考えられる。ラザラスの理論は、情動研究だけでなく、ストレス研究や健康心理学、臨床心理学にも大きな影響を与えている。

キーワード ① ジェームズ・ランゲの抹消説 ② キャノン・バードの中枢説 ③ ラザラス説
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復習・予習課題 感情の心理学とは、喜び・怒り・悲しみ・恐れなどの感情がどのように生じ、どのような仕組みで身体や行動に影響を与えるのかを科学的に研究する分野である。受講者の日々の感情体験について内省し、授業で展開された感情の現象について、まとめておくこと。また各理論が何を説明しようとしているのかを明確に説明できるようにしておくこと。
26 感情の測定法 科目の中での位置付け 感情の研究法は、大きく「主観的指標」「生理的指標」「行動的指標」「神経科学的方法」の四つに分けられる。感情は主観体験・身体反応・行動変化を含む多面的現象であるため、複数の方法を組み合わせて測定することが重要である。今回授業では以下の3つを取り上げる
第一に主観的指標である。これは質問紙や評定尺度を用いて、本人が感じている感情を自己報告させる方法である。代表的な尺度には、James A. Russellの円環モデルに基づく感情評定や、David Watsonらが作成したPANAS(ポジティブ・ネガティブ感情尺度)などがある。簡便で多くの感情を測定できる利点があるが、社会的望ましさや内省の正確さに影響を受ける。
第二に生理的指標である。感情に伴う自律神経系の変化を測定する方法で、心拍数、皮膚電気反応(GSR)、血圧、呼吸、筋電図などが用いられる。恐怖や不安では心拍増加や発汗がみられるなど、客観的データを得られる利点がある。ただし、同じ生理反応が異なる感情でも生じる場合があり、解釈には注意が必要である。
第三に行動的指標である。表情、声のトーン、姿勢、回避行動などを観察・分析する方法である。特に表情研究では、Paul EkmanのFACS(顔面動作符号化システム)が有名である。実際の行動に近い指標であるが、文化や状況の影響を受けやすい。
授業では実際に主観的指標を用いて測定を経験しよう。
感情の主観的測定法とは、個人が自分の感情状態をどのように感じ、どのように意味づけているかを自己報告によって測定する方法である。ここでは代表的な三つを取り上げて説明する。


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コマ主題細目 ① 質問紙法 ② 感情評定尺度 ③ 経験サンプリング法 ④ 生理的指標 ⑤ 生理的指標
細目レベル ① 質問紙法は、あらかじめ用意された感情語や文章項目に対して、現在の気分や普段の感情傾向を評定させる方法である。代表的な尺度としては、David WatsonらによるPANAS(ポジティブ・ネガティブ感情尺度)がある。この尺度では「活気がある」「不安だ」などの形容詞について、どの程度当てはまるかを数段階で回答させる。状態感情(今この瞬間の気分)と特性感情(普段の傾向)の両方を測定できる点が特徴である。多数の被験者から効率的にデータを収集でき、統計分析にも適している。一方で、回答は内省能力や社会的望ましさの影響を受けやすく、無意識的な感情までは捉えにくいという限界がある。
② 感情を快―不快や覚醒度などの次元で数量化する方法である。理論的背景としては、James A. Russellの感情円環モデルが知られている。このモデルでは感情を「快―不快」と「高覚醒―低覚醒」の二次元上に配置する。実験では、刺激提示後に「どの程度快いか」「どの程度興奮しているか」を数値で評定させる。離散的な感情語(怒り、悲しみなど)に限定せず、連続的な強度として測定できる点が利点である。そのため、微妙な気分変化や時間的推移を捉える研究に適している。ただし、感情の質的な違いを単純な次元に還元してしまう可能性があるという理論的課題も指摘されている。
③ 経験サンプリング法は、日常生活の中でその都度感情を報告させる方法である。一定時間ごとやランダムなタイミングで通知を送り、その瞬間の感情や状況を記録させる。従来の回顧的質問紙と異なり、記憶の歪みを最小限に抑え、自然な文脈での感情変動を測定できる点が大きな特徴である。近年はスマートフォンを用いた調査が主流であり、時間的変動や個人内変化を詳細に分析できる。一方で、回答の負担が大きく、参加者の協力が得られにくい場合もある。また、報告そのものが感情体験に影響を与える可能性も考慮する必要がある。
このように、主観的測定法にはそれぞれ異なる長所と限界があり、研究目的に応じて適切に選択・併用することが重要である。

④ 生理的指標である。感情に伴う自律神経系の変化を測定する方法で、心拍数、皮膚電気反応(GSR)、血圧、呼吸、筋電図などが用いられる。恐怖や不安では心拍増加や発汗がみられるなど、客観的データを得られる利点がある。ただし、同じ生理反応が異なる感情でも生じる場合があり、解釈には注意が必要である。
⑤ 表情、声のトーン、姿勢、回避行動などを観察・分析する方法である。特に表情研究では、Paul EkmanのFACS(顔面動作符号化システム)が有名である。実際の行動に近い指標であるが、文化や状況の影響を受けやすい。

キーワード ① 質問紙法 ② 感情評定尺度 ③ 経験サンプリング法 ④ 生理的指標 ⑤ 生理的指標
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復習・予習課題 感情の研究法は、大きく「主観的指標」「生理的指標」「行動的指標」「神経科学的方法」の四つに分けられる。これらの指標が意味するところをきちんと説明できるように下調べし、授業にてしっかり理解を深め、服従で知識ときちんと固定すること。自分の言葉で各概念を説明できるようにしておくこと。
27 健康心理学(1) 科目の中での位置付け 健康とは、個人においては、日常生活を送るために必要な最低限度の身体と精神の両面の条件が十分に満たされている状態のことである。身体面においても精神面においても重い疾病にかかっているならば健康ではないであろう。ただ、明らかな疾患があっても、生活を変えなければならない状態でなければ健康といえるであろう。つまり、個人がある社会において社会生活を営むうえで、その社会にうまく適応していける場合は健康といえる。 ところで、公式に健康心理学が確立されたのは、1973年にアメリカ心理学会(APA)に健康研究特別委員会が設置されたことで始まった。比較的新しい心理学領域である。それまでの健康と病気の問題に関する心理学的な研究はまだ不十分であり、健康行動の理解と改善に心理学の諸原理と方法を応用すべきとの勧告が行われた。このような経緯を背景に、1978年にアメリカ心理学会(APA)では、第38部会として健康心理学部会が成立し、1980年には健康心理学を「健康の推進・維持,疾病の予防・治療,健康・疾病・機能不全に関する原因・診断の究明、およびヘルスケア・システム(健康管理組織)・健康政策策定の分析と改善等に対する心理学領域の特定の教育的・科学的・専門的貢献の全てを指す」と定義した。 1950年代以降、人間の行動パタンと健康の関係が研究の対象になってきた。今回授業では、この人間の行動パタンと健康にどのような関係があるのかを学ぶ。最初に学ぶのは、タイプA行動と呼ばれる行動パタンと健康の関係である。この関係を最初に明らかにしたのが、アメリカの循環器内科医であるフリードマン(Friedman, M.)とローゼンマン( Rosenman, R. H. ,1959)である。彼らはタイプAの行動特徴を、⑴短時間にできるだけ多くのことをやろうと精力的に活動する、⑵競争心が強い、⑶短気で敵意や攻撃性をもつ,⑷自分への評価や承認・地位にこだわる、⑸多方面の仕事に没頭していつも締切に追われている、⑹せっかちで動作が速い、などを挙げている。つまり、このタイプの行動パタンを持つ人物は、いつも忙しい人物で、アグレッシブで、・・・という燃え尽き症候群を示すような人である。これに対して、タイプBという行動パターンはゆったりとしていて、リラックスしているタイプの行動様式である。今日ではタイプDまでの行動パタンが知られている。
授業にて資料を配布する。。
コマ主題細目 ① 心理学と健康の関連 ② ストレスと健康
細目レベル ① 1)心理学と健康の関連
健康に関する考え方は時代とともに変化してきた。第二次世界大戦以降における健康の定義は、1946年の世界保健機構(WHO)の憲章で明らかにされている。それは「健康等は完全な肉体的、精神的および社会福祉の状態であり、単に疾病又は病弱が浸剤しないということではない。到達しうる最高基準の健康を享受することは、人種、宗教、政治的信念または経済的若しくは社会的条件の差別なしに万人の有する基本的権利の一つである」というものである。このように定義していても、時代と共に環境、社会、経済的状況は変化していく。たとえば死因を見ても、1947年では1位が結核、2位が肺炎、3位が脳卒中であった。1961年は国民皆保険が実現したが、この年の死亡原因を見ると、1位が脳卒中、2位ががん、3位が心臓病で、結核は第6位であった。2010年には死亡原因の1位はがんである。また平均寿命(0歳児の平均余命)も年々長くなる傾向が知られている。
また我が国のみならず、世界的な傾向として長寿化の傾向が知られている。総人口に対する高齢者の比率がどんどん高くなっている。そのために高齢者の病気を持つ率も高くなり、その結果としての国民所得に対する国民医療費の広津も高くなってきている。

2)ストレスと健康
私たちの健康と関連が深いのがストレスである。ストレスという言葉はよく聞くが、それは一体何を意味しているのであろうか。ストレスは元来、物体に外から力が加わった時に生じる歪みを意味していた。ところがカナダの生理学者であるセリエ(Selye, H.)が、生体が中毒、感染、外傷、環境変化などの有害な刺激に晒されたときに体内に生じる機能的・器質的な心身の負担をストレスという概念で説明した。そしてストレスを生じさせる原因をストレッサーと呼んだ。
このストレスが生体に与えられると最初に身体に警告反応期が現れる。これはショック期であり、数分から1日程度、副腎皮質ホルモンの相対的な低下、血圧低下、低血糖、低体温、緊張低下、アドレナリンの分泌などが現れる。続いて抵抗力が高まる時期(反ショック期)を迎え、下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモンが増加し、血圧や体温の上昇、血糖値や神経活動の上昇が現れる。さらに次の段階では第2段階として、ストレス状態に対する反応が持続し、ストレスとの間に一定のバランスが取れる抵抗期に入る。
心理学とストレスの関係はどうであろうか。1980年代になるとラザラス (Lazarus, R.S.)のストレスモデルが優位になってくる。このモデルでは、ストレス対処の有効性が問題になることを指摘している。そしてストレスの認知、評価、対処行動、対処結果という流れが出てくる。

キーワード ① 世界保健機構 ② 健康 ③ ストレス
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復習・予習課題 復習・予習課題 予習
14回授業のシラバスを読んで、健康とはどういう状態を言うのか、それはどのような憲章によって表現されているのか、心理学的健康とはどのようなものか、健康に影響する諸要因について理解に努めること。
復習
私たちの生活にとって、身体的・心理学的健康は欠かせない。この健康に関わる諸問題とその対応について理解を深めること。

28 健康心理学(2) 科目の中での位置付け 健康とは、個人においては、日常生活を送るために必要な最低限度の身体と精神の両面の条件が十分に満たされている状態のことである。身体面においても精神面においても重い疾病にかかっているならば健康ではないであろう。ただ、明らかな疾患があっても、生活を変えなければならない状態でなければ健康といえるであろう。つまり、個人がある社会において社会生活を営むうえで、その社会にうまく適応していける場合は健康といえる。
ところで、公式に健康心理学が確立されたのは、1973年にアメリカ心理学会(APA)に健康研究特別委員会が設置されたことで始まった。比較的新しい心理学領域である。それまでの健康と病気の問題に関する心理学的な研究はまだ不十分であり、健康行動の理解と改善に心理学の諸原理と方法を応用すべきとの勧告が行われた。このような経緯を背景に、1978年にアメリカ心理学会(APA)では、第38部会として健康心理学部会が成立し、1980年には健康心理学を「健康の推進・維持,疾病の予防・治療,健康・疾病・機能不全に関する原因・診断の究明、およびヘルスケア・システム(健康管理組織)・健康政策策定の分析と改善等に対する心理学領域の特定の教育的・科学的・専門的貢献の全てを指す」と定義した。
1950年代以降、人間の行動パタンと健康の関係が研究の対象になってきた。今回授業では、この人間の行動パタンと健康にどのような関係があるのかを学ぶ。最初に学ぶのは、タイプA行動と呼ばれる行動パタンと健康の関係である。この関係を最初に明らかにしたのが、アメリカの循環器内科医であるフリードマン(Friedman, M.)とローゼンマン(
Rosenman, R. H. ,1959)である。彼らはタイプAの行動特徴を、⑴短時間にできるだけ多くのことをやろうと精力的に活動する、⑵競争心が強い、⑶短気で敵意や攻撃性をもつ,⑷自分への評価や承認・地位にこだわる、⑸多方面の仕事に没頭していつも締切に追われている、⑹せっかちで動作が速い、などを挙げている。つまり、このタイプの行動パタンを持つ人物は、いつも忙しい人物で、アグレッシブで、・・・という燃え尽き症候群を示すような人である。これに対して、タイプBという行動パターンはゆったりとしていて、リラックスしているタイプの行動様式である。今日ではタイプDまでの行動パタンが知られている。

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コマ主題細目 ① パーソナリティと健康 ② エクササイズと健康
細目レベル ① 3)パーソナリティと健康
1960年代から70年代にかけて8年半にわたる前向き疫学調査(prospective epidemiological study:健康人を対象として、追跡調査によって病気になった人の要因を調べる調査)であるアメリカの西部共同研究Western Collaborative Group Study(WCGS: 1975年発表)を手始めに多くの研究の結果から、タイプA行動者はタイプB行動者の約2倍CHD(coronary heart disease: 冠状動脈性疾患)を発症すること、さらに心筋梗塞の再発率は5倍であることが示された。そこでCHDの危険因子である高血圧、肥満、喫煙などと同様に、それら疾患の危険因子として、タイプAが注目されるようになったのである。
またこのような行動を生じさせる背景となる性格(タイプA性格)の心理学的研究も行われてきた。グラス(Glass, D. C., 1977)はタイプA行動の本質を、環境に対する統制の確立であると主張した。それは、タイプA行動は挑戦的と判断される環境ストレスが高まるほど、コントロール感に動機づけられて強くなる、というものである。とくに事態の対処不可能性という脅威に直面すると、タイプAは最も先鋭化した形で発揮される。しかし,この対処不可能性が慢性化すると、自己コントロール感は逆に無力感に転じてしまい、徐々にうつ状態に陥る危険性があるといわれている。最近では、研究が進んで、CHDの危険因子としてとくに敵意や怒りが注目されるようになった。
このような行動パタンに関しては、タイプCやタイプDも知られるようになった。タイプCは癌患者に多く見られる性格として、怒り・悲しみなどの感情を抑制したり、自分を抑えて他者を気づかうことなどが挙げられている。このタイプCは、 癌のcancerのCを採用して命名されという(Temoshok, L. 1992)。
さらにCHDの危険因子として、タイプDの行動パタンの存在も指摘されてきている。これはデノレット(Denollet, J.)ら(2008)によって提唱されたタイプ D(憂うつdepressionのD)で、これもCHDの発症要因として注目されている(石原,2010)。タイプDの行動パタンは、ネガティブ感情(落ち込み・不安・抑うつ)を喚起することが多く、かつ社会的場面において感情表現を抑制する社会的抑制も高いものである。デノレットらがCHD患者を5~10年追跡調査した結果、タイプDが死亡率や心事故発生率に対して非常に高い予測要因であることが明らかにされた。残炎ながら、日本においてはタイプDに関する研究はまだほとんどなされていないが、今後注目される要因であるといえよう。


キーワード ① パーソナリティ ② エクササイズ ③ タイプA ④ タイプB
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復習・予習課題 復習・予習課題 予習
14回授業のシラバスを読んで、健康とはどういう状態を言うのか、それはどのような憲章によって表現されているのか、心理学的健康とはどのようなものか、健康に影響する諸要因について理解に努めること。
復習
私たちの生活にとって、身体的・心理学的健康は欠かせない。この健康に関わる諸問題とその対応について理解を深めること。

29 環境心理学(1) 科目の中での位置付け 環境心理学とは、環境が人の心理に与える影響を研究する学問であり、人間の生活環境を向上させることを目標とする応用心理学の一領域である。古くはレビンLewin,K.の場の理論に始まるとされる。環境心理学という名前で独立した研究領域と認められるようになったのは1960年代の終わりから1970年代の初めである。地理的環境,物理的環境,居住環境から家庭環境や対人環境、心理的環境まで広い意味での環境が含まれるが、家庭環境はすでに発達心理学の主要テーマであり、対人環境は社会心理学の主要テーマであったため、環境心理学の主要テーマとしては、都市化、人口の密集化、大気汚染、騒音など地理的・社会的・居住的環境をテーマにした研究が多い。1973年に初めて環境心理学というタイトルの論文が『Annual Review of Psychology』に発表され,環境心理学は主流の心理学に受け入れられることとなった。
環境心理学の具体的な研究テーマとしては,環境の評定、環境認知、都市のイメージ、環境とパーソナリティ、環境と意思決定、環境への態度、環境の質、空間行動などがある。つまり、照明や窓の位置に始まり公園までの距離といった物理的環境から、環境の認知やさまざまな環境への反応や態度といった心理的環境まで幅広いテーマの研究が環境心理学として位置づけられることとなった。
日常生活では、プライバシーの侵害とかプライバシーを守との言葉がしばしば目に付く。この際、プライバシーは他人の干渉を許さない個人の持つ自由とか権利を意味する。しかし、環境心理学では、自分のことについて何を相手に伝えるか、誰にそれを伝えるかという選択の自由のことを意味している。つまり、プライバシーとは、個人の情報を伝えることや他者との接触を自分で調整する過程のこととして捉えている。アルトマン(
Altman, I.)は、欲求プライバシー(こうあって欲しいという選択の自由)と達成プライバシー(置かれた環境で満たされていること)という2種類のプライバシーを提案した。アルトマンは両者のバランスが取れていることが、ストレスのない状態と考えた。望んでいる自由よりも達成されている自由が極度に多いと、私たちはクラウディングを感じ、達成されている自由よりも望んでいる自由が極度に多いと、社会的孤立を感じると考えた。今回授業では、パーソナルスペース、テリトリー・テリトリアリティ、クラウディングなど、私たちを取り巻く多様な環境要因についての心理学を学ぶ。

授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① 機能的確率論 ② 環境認知 ③ 認知地図
細目レベル ① ① 1)環境知覚・認知
機能的確率論
伝統的な知覚理論はデカルトのアイデアを踏襲し、環境からの入力が網膜を通り、脳内で知覚されるという解釈である、しかし、同じ知覚対象の知覚内容が人によって異なるのはなぜか?ブルンズウイック(Burunswik, 1952)は、遠刺激(現実の環境)が多数の近刺激(網膜上の刺激)に分解され、これを手がかりに知覚的な結果がもたらされると説明した。近刺激が遠刺激を反映している程度は比較的低い。網膜像は私たちの視覚イメージよりも不正確だからである。人による知覚内容の違いはこの生態学的妥当性の低さを反映したものと考えられる。しかし、実際の私たちのイメージ(知覚的な結果)は、比較的正確で、現実と良い近似を成している。なぜか。それが知覚における補完作用(代理機能)である。このようにして、遠刺激と知覚的結果が一致して、知覚機能が達成される程度(機能的妥当性)が高まるのである。機能的妥当性は確率的に変動するので、この知覚における理論は、確率論的機能主義と呼ばれる。

1)環境認知
環境認知とは、空間認知(位置や配置などの場所についての情報処理)、及び環境についての広い思考内容(推論や評価)を伴う認識である。空間認知は環境のイメージである認知地図に依拠する。認知地図は5つの構成要素からなると考えられている(リンチ;Lynch, 1960)。それらは、1)パス(道路や線路などの経路)、2)エッジ(場所を遮ったり範囲を規定する川、湖の縁、線路など)、3)ノード(人が多くいるポイント。交差点や広場など)、4)ランドマーク(遠くから眺められる目印。塔や目立つビルなど)、4)ディストリクト(ある共通性を持った領域。商店街や住宅地)である。この認知地図には、いくつかの興味深い、奇妙な特徴がある。一つはユークリッドバイアスと呼ばれる特徴で、パスやエッジは直線と直角でイメージされやすい。二つ目は、上位尺度バイアスである。これは、場所の位置判断がその場所を含む、上位領域の位置に影響されやすいというものである。例えば、トロント(カナダ)はミネアポリス(米国)よりも北にあるなど。これは、カナダはアメリカより北にあるという、上位概念によってそのように判断されたもの。実際は、トロントの方がミネアポリスよりも南にある。

さらに認知距離バイアスも知られている。これは推定される距離などに現れる。このバイアスは、判断される距離のなかにある曲がり角の数や交差する道路の数に影響を受ける。これらが多いほど長い距離と判断されやすい。

2)認知地図
認知地図の諸相
女性は地図が読めないのか?これはよく話題に上がるものであるが、空間認知能力の性差の問題である。この問題に関しては、経験説(元来、女性は外を出歩くことが少なく、男性は狩などで広い範囲を頻繁に歩いていたために、そのような能力差が生まれた)。このような性差の問題も最近、認知地図研究で検討されてきている。授業で幾分とも詳細な研究を紹介する。
私たちは環境に対しても好悪を示す。つまり、好きな環境、嫌いな環境という評価が与えられる。一般的に環境の理解を促すような環境の探索は好まれる。探索したくなるような環境ということである。このような目の前の環境に理解と探索を促す環境特性を、カップランとカップランは、一貫性と複雑性と定義し、その先にある未知の環境の理解と促進を促す要素を解読性と神秘性と定義した。

キーワード ① 機能的確率論 ② 環境認知 ③ 認知地図
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の最後に実施する。
復習・予習課題 環境とは私たちが行動する舞台である。この舞台がどのように私たちに認知されているのか、その認知の結果としての知識の獲得、生活空間の特徴、他者との関係など、基本的なマクロな環境と私たちの関係を、シラバスを読んで理解すること。

復習
私たちの環境認知は複雑な認知過程である。この理解が今まで学習してきた心理学の内容と深く関わる。今回の授業とそれらの心理学の関係について、考察する試みをしてみよう。


30 環境心理学(2) 科目の中での位置付け 環境心理学とは、環境が人の心理に与える影響を研究する学問であり、人間の生活環境を向上させることを目標とする応用心理学の一領域である。古くはレビンLewin,K.の場の理論に始まるとされる。環境心理学という名前で独立した研究領域と認められるようになったのは1960年代の終わりから1970年代の初めである。地理的環境,物理的環境,居住環境から家庭環境や対人環境、心理的環境まで広い意味での環境が含まれるが、家庭環境はすでに発達心理学の主要テーマであり、対人環境は社会心理学の主要テーマであったため、環境心理学の主要テーマとしては、都市化、人口の密集化、大気汚染、騒音など地理的・社会的・居住的環境をテーマにした研究が多い。1973年に初めて環境心理学というタイトルの論文が『Annual Review of Psychology』に発表され,環境心理学は主流の心理学に受け入れられることとなった。
環境心理学の具体的な研究テーマとしては,環境の評定、環境認知、都市のイメージ、環境とパーソナリティ、環境と意思決定、環境への態度、環境の質、空間行動などがある。つまり、照明や窓の位置に始まり公園までの距離といった物理的環境から、環境の認知やさまざまな環境への反応や態度といった心理的環境まで幅広いテーマの研究が環境心理学として位置づけられることとなった。
日常生活では、プライバシーの侵害とかプライバシーを守との言葉がしばしば目に付く。この際、プライバシーは他人の干渉を許さない個人の持つ自由とか権利を意味する。しかし、環境心理学では、自分のことについて何を相手に伝えるか、誰にそれを伝えるかという選択の自由のことを意味している。つまり、プライバシーとは、個人の情報を伝えることや他者との接触を自分で調整する過程のこととして捉えている。アルトマン(
Altman, I.)は、欲求プライバシー(こうあって欲しいという選択の自由)と達成プライバシー(置かれた環境で満たされていること)という2種類のプライバシーを提案した。アルトマンは両者のバランスが取れていることが、ストレスのない状態と考えた。望んでいる自由よりも達成されている自由が極度に多いと、私たちはクラウディングを感じ、達成されている自由よりも望んでいる自由が極度に多いと、社会的孤立を感じると考えた。今回授業では、パーソナルスペース、テリトリー・テリトリアリティ、クラウディングなど、私たちを取り巻く多様な環境要因についての心理学を学ぶ。

授業にて資料を配布する。
コマ主題細目 ① プライバシー ② パーソナルスペース ③ テリトリー
細目レベル ① 3プライバシー
羽生(2008)は「環境心理学における本来の定義は『他者に対する開放性/閉鎖性を調整するような変化過程』(Akman&Chemers, 1980)であり、言い換えると『個人の情報の外部への伝達や他者との接触を自分自身でコントロールする過程』のことである」と述べている。つまり、望ましい他者との接触量の水準が存在しており、それよりも実際の接触の量が多いときには、「他者から離れること」がプライバシーの機能に望まれることになる。特に親の監督下にある青少年や有名人の場合にはこれが顕著であるため、プライバシーの欠如が強く意識されることになる。しかし、接触の量が少ないときには、「他者に接近すること」もプライバシーの機能に望まれることになり、これもまたプライバシーの問題なのである。そして、接触の量を調整するメカニズムがパーソナルスペースやテリトリアリティなのである。ではプライバシーはどのように定義されるのか?以下に、アルトマンの定義を示しておく。
 アルトマンは、プライバシーとは「自己あるいは自分のグループに対する接近(アクセス)を選択的にコントロールすることである」と捉えている。具体的には、自分自身の情報の管理および社会的交流の管理という2つのテーマがある。つまり「自己への接近」とは自分についての情報のことであってもよいし、あるいは自分の社会的交流のことであってもよい。また、アルトマンの定義はプライバシーの他の側面を受け入れる余地を持っている。

4)パーソナルスペース
パーソナルスペースとは、私たち個人が身体の周りにまとっている空間のことと定義される。ホール(Hall, E..T.)は、社会的相互作用が生じている場面での相手との距離の取り方に4種類あることを見出した。4種類とは、①親密距離、②個人距離、③社会距離、④公衆距離である。そして各々の距離に、近接相と遠方相があるので、合計8種類のパーソナルスペースの存在が仮定されている。

5)テリトリー・テリトリアリティ
テリトリーとは、パーソナル・スペースと同様に、個体が占有する一定の広がりを持った空間のことをいう。パーソナル・スペースが個体の周りを取り巻く空間であるのに対し、テリトリーは個体の位置とは関係なく、特定の場所に固定された空間である。
アルトマンは、テリトリーを以下の3種類に分けている。
一次テリトリー:極めて私的な場所で、自室や職場の個室などが該当する。
二次テリトリー:一次テリトリーほどではないが、私的な場所で、職場の机周りやカフェのお気に入りの席、いつも訪れる居酒屋などが該当する。
公共テリトリー:そこに入る資格を持ち、社会的ルールを守る全ての者に解放されているもので、公園や公共のベンチ、学生食堂、などが該当する。
テリトリアリティ(なわばり性、なわばり行動と訳される)の定義は、明確になっているわけではないが、「個体自身、あるいは配偶者・子孫などの家族の安全を確保するためにテリトリーを守ること(守る意識・行動・機能)」である。これはある種の動物(たとえば、アユやモズなどが有名)に見られるが、人間にも同様の機能が見られる。

キーワード ① プライバシー ② パーソナルスペース ③ テリトリー
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 授業の最後に実施する。
復習・予習課題 環境とは私たちが行動する舞台である。この舞台がどのように私たちに認知されているのか、その認知の結果としての知識の獲得、生活空間の特徴、他者との関係など、基本的なマクロな環境と私たちの関係を、シラバスを読んで理解すること。

復讐
私たちの環境認知は複雑な認知過程である。この理解が今まで学習してきた心理学の内容と深く関わる。今回の授業とそれらの心理学の関係について、考察する試みをしてみよう。


履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
心理学の歴史的展開と各学派の特徴を理解する 第1回から第4回授業
①心理学の定義や心理学形成に至る歴史的展開について理解しておくこと。心理学が科学として誕生する経緯について考えておくこと。
②それぞれの心理学の歴史的展開で重要な働きをした心理学者の考えについて、理解すること。特に構成主義、機能主義、行動主義、ゲシタルト心理学、認知心理学の主張についての知識を獲得しておくこと。
③心理学の諸領域にどのような領域があるのかを理解しておくこと。これは第5回からの授業の内容と関わるが、代表的な心理学の領域にどのような領域があるかは答えられるようにしておくこと。
③心理学が研究のために使用する方法論について紹介されている。科学が普遍的知識の獲得を目指す方法論を工夫して獲得してきたことを理解し、心理学が科学と言われるのは、心理学が採用する研究方法にある。また心理学が使用している方法論(実験法、調査法、質問紙法、観察法、面接法)のそれぞれの特徴(長所・短所も含めて)を理解していること。
また基礎心理学と応用心理学の区分と、内容についても理解しておくこと。
①心理学の定義、領域、研究方法 ②歴史的展開
③構成主義、機能主義、連合主義、認知phぎ
10 1,2,3,4
生活体と環境の関係、行動を支える神経系について理解すること 第5回&第6回授業
 行動の生物学的基礎について理解すること。ここではニューロンと神経の仕組みから始まって、神経細胞やニューロンの構造、神経系の構造と機能につい、それぞれ教科書に太字で示されている学術用語について理解し、説明できるようになっていること。中枢神経系と末梢神経の機能と構造について、私たちが適応的に生存できるのは、まさにこのような神経系によって外界の情報を適切に取り込み、加工し、効果器に伝えることで成り立っている。心をどのように考えるかは別として、これらの仕組みがについて説明できること。ポイント:中枢神経系は脳と脊髄に分かれている。さらに脳も下位構造を持ち、複雑な構造を成している。またそれぞれの構成要素に独自の機能を持っているので、それらの機能や関係について理解できるようにしておくこと。また末梢神経系の機能についてもきちんと説明できるようになっていること。末梢神経の構造と機能についても理解しておくこと。
①生活体と環境 ②神経系の基礎 ③中枢神経系 ④末梢神経系 10 5,6
学習心理学の現象や理論を理解する 第7回&第8回授業
 学習の基本である行動の変容にはどのような現象があるのか、また学習がどのようにして起こるのかに関する理論の諸特徴を理解していること。特に、くん化、鋭敏化、般化、脱くん化について理解していること。また理論に関しては、レスポンデント条件づけとオペラント条件づけのそれぞれの学習理論の特徴を理解していること。特に、学習心理学では、特殊な用語が使用されるので、それらの個々の概念を丁寧に説明できるレベルにまで理解をしておくこと。また授業で展開する、観察学習、洞察学習、試行錯誤説などの学習理論に関してもその内容をきちんと理解していること。
また学習理論が応用される教育分野、臨床分野において、どのような応用がなされているか理解しておくこと。
①学習の定義  ②試行錯誤  ③レスポンデント条件づけ  ④オペラント条件づけ⑤社会的学習説
教育領域での応用、臨床での応用
10 7,8
感覚過程・知覚過程を理解する 第9回から14回授業
 感覚について知るためには感覚の能力について、どのような概念によってそれを表現してきたかの理解が不可欠である。感覚の種類にどのようなものがあるか理解しておくこと。また感覚能力を示す閾値(刺激閾)、弁別閾、ウエーバー比があるが、これらの概念の意味を明確にしておくこと。また感覚の法則としてのフェヒナーの法則、スティーブンスの法則をきちんと説明できるようにしておくこと。また、これらの概念がどのようにして測定されるのかについても説明できること。さらに、これらの感覚情報を元に、知覚が成立する。視知覚の生理学的基礎、形の発生、形のまとまり、錯視、奥行知覚、運動知覚について、きちんと知識が整理されていること。自身の言葉で以上の概念を説明できること。
また知覚の現象をうまく利用して、それらの現象や原理が現実生活にどのように生かされているのか、を理解しておくこと。
①感覚過程  ②視知覚の生理学的基礎  ③形の発生・形のまとまり  ④錯視  ⑤運動の知覚 ⑥奥行知覚 10 9-14
記憶の機能を理解する。尾の基礎を中心に 第15回から16回授業
 この一連の授業ではまず記憶の心理学について展開した。ここでは、記憶研究の2大潮流なったエビングハウスの研究、バートレットの研究についてその方法まできちんち理解しておくこと。エビングハウスの研究では、無意味綴り、節約率、忘却曲線など、重要な概念が提案されている。またその計算式も展開されている。一方、バートレットの研究は、日常の物語や伝言ゲームのような伝達による記憶の変容を扱った。その中で、記憶の変容を説明する重要な概念である、スキーマが提案されるようになった。この伝統は認知心理学にも受け継がれた、重要な提案であった。
①エビングハウスの忘却曲線 ②節約率、3無意味綴り、 ④節約率、⑤バートレット、⑥物語、⑦伝言ゲーム、⑧スキーマ展望記憶 10 15,16
記憶の多様性と応用研究を学ぶ。 第17回から第18回授業
 その後、認知主義のもとで発展した記憶研究について解説した。記憶の符号化、貯蔵、検索という区分が基本である、その後、記憶のモデルの提案があった。アトキンソンとシフリンのモデルである。感覚記憶、短期記憶、長期記憶の区分がなされている。次に、長期記憶のさらなる区分であるエピソード記憶、自伝的記憶が説明された。これらも説明できるように。
次に、実際の記憶が問題視される応用研究を紹介した。ここでは刑事事件の目撃者の誘導効果、記憶の汚染、ポストIDフィードバック効果が説明された。これらを説明できるように。また、その後は、それぞれの効果の研究論文を紹介した。論文はなかなか手強いが、これらが諸君の知識の大元なのである。それぞれの研究内容を、方法、結果で整理し理解しておくこと。
①符号化、②貯蔵、③検索、④感覚記憶、⑤短期記憶、⑥長期記憶、⑦エピソード記憶、⑧自伝的記憶 ⑧目撃証言心理学 ⑨司法 冤罪 10 17,18
人の個性と行動の一貫性についてのパーソナリティの心理学を理解する
発達心理学・社会心理学の概要を理解する
第19回かと20回授業
 パーソナリティの力動論、類型論、特性論という3つの代表的理論を学習したが、それぞれの理論の特徴についてポイントを整理して、自分の言葉で説明できること。また新しい理論であるビッグ・ファイブは従来の特性論を踏まえた、幾分とも複雑な構造を持つが、それをきちんと理解していること。
 発達は英語でdevelopment、成長growthとは似ているが異なる概念である。成長は身体の変化に対して使用されるが、発達は精神の変化や変化の規則性に対して使用される。乳児期・幼児期の発達、児童期・青年期の発達につて、そして中年期の発達、高齢期の発達、高齢期の発達について説明できるようになっていること。
①力動論 ②類型論 ③特性論 ④ビッグ・ファイブ ⑤測定

①発達心理学とは何か ②乳児期・幼児期の発達 ③児童期・青年期の発 ④中年期・高年期の発達 ⑤社会的認知  ⑥態度と説得 ⑦社会的影響  ⑧対人魅力 ⑨援助行動
10 19,20
発達心理学と社会心理学のテーマと内容の理解 21回と22回 発達心理学
発達は英語でdevelopment、成長growthとは似ているが異なる概念である。成長は身体の変化に対して使用されるが、発達は精神の変化や変化の規則性に対して使用される。乳児期・幼児期の発達、児童期・青年期の発達につて、そして中年期の発達、高齢期の発達、高齢期の発達について説明できるようになっていること。また認知発達、感情発達、身体発達ついても学習しておくこと。

第23回と24回授業
社会心理学の定義の理解。社会的知覚や認知が私たちの対人行動で持つ意味を考える。具体的には印象形成、第一印象、ステレオタイプの形成と影響、原因帰属などの社会心理学の概要を理解するどの概念が理解できていること。
また社会的影響、対人的影響、対人魅力という他者の力や影響力に関する理解ができていること。
認知発達 身体発達 感情発達

①印象形成 ②第一印象 ③ステレオタイプの形成と影響 ④原因帰属 ⑤社会的影響 ⑥対人的影響 ⑦対人魅力
10 21.22
感情心理学の理解 25回と26回 感情の生まれる神経的基礎である抹消説、中枢説、さらに心理学理論であるラザラスの説について説明できるようにしておくこと。さらに研究法としての、調査法、質問紙法などについても理解をすること。 ①末梢説、②中枢説、③ラザラス説、④主観的測定法、⑤行動測定法 10 25,26
健康心理学・環境心理学を理解する 第27回から第30回授業
人間行動は複雑であるが、そのうち健康と関わる部分を取り上げて、健康心理学の領域が形成された。心理学では比較的新しい領域である。ここでは、心理学と健康の関連、ストレスと健康について、パーソナリティと健康、エクササイズと健康について、それぞれの関係について理解していること。特に、パーソナリティと健康では、その行動パタンによって心臓系の病気との関連が指摘されている。その行動パタンを理解しよう。また健康的なエクササイズとはどのようなものか、その効果についても理解しよう。また効果がなかったり、逆の効果になる場合もある。それらについても理解していること。多様な側面を持つ環境の認知や評価がどのような特徴を持っているのか、それらについて知識を整理しておくこと。
プライバシー、パーソナルスペース、テリトリー・テリトリアリティなど個人や集団を守る空間の特性について理解していること。
①健康 ②ストレス ③パーソナリティ ④エクササイズ ⑤環境認知 ⑥環境評価 ⑦プライバシー ⑧パーソナルスペース ⑨テリトリー・テリトリアリティ 10 27,28,29,30
評価方法 定期試験の結果で評価
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書
参考文献
実験・実習・教材費