区分 (心)心理学科基盤科目 心理学基礎科目 (犯)犯罪心理学基盤科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門的知識と実践的能力 分析力と理解力 地域貢献性
カリキュラム・ポリシーとの関係
課題分析力 課題解決力 課題対応力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
(心)本科目は1年生の必修科目であり,心理学基盤科目の心理学基礎科目に配置されている。本科目を履修することで,2年次以降の心理学基盤科目の実践・研究スキル科目において専門的知識および実践的技能を獲得し,さらに心理学専門領域科目,心理学専門隣接科目に配置される専門科目との関連においても有機的に結びついた学習が可能となる
(犯)犯罪心理学基盤科目に位置づけられ,心理学における実証的研究法(実験法,観察法,調査法,検査法,面接法)の基礎について学ぶ。当科目では,心理学の多様な研究法について理解を深め,2年次以降の専門的な学修に必要となる基礎知識を修得する。

科目の目的
われわれは日常生活において心に関係するさまざまな現象や問題に遭遇している。その中で,多くの人が持つ行動のバイアスや思考のバイアスなどがある。この授業では,それらの現象や問題を扱った心理学の代表的な研究を通して,実験法,観察法,調査法,面接法の心理学研究法を概観する。そして,各研究法におけるメリットとデメリットを理解し,研究目的や研究対象に応じた研究方法を適応し,データを用いた実証的な思考方法を身につける。そして,研究を行う上での研究倫理を理解する。
到達目標
大学で心理学を専門的に学ぶために必要な問題意識と基礎知識,専門的な立場から心の問題に取り組むための実践力の基礎を身につける。また,心理学における実証的研究方法について,研究目的に応じた適切な方法が適応でき,データを用いた実証的な思考法を身につける。特に,本科目で扱う,「実験法」,「観察法」,「調査法」,「面接法」について,それぞれの特徴と欠点をおさえる。そして,心理学研究における倫理を理解し,自分自身が研究する際に,それら倫理を遵守できるようにする。
科目の概要
『こころ』へアプローチするための心理学の基本的な研究方法である「実験法」,「観察法」,「調査法」,「面接法」について,基礎知識を学ぶ。特に,各研究方法においては,どのような特徴があり,それぞれの長所・短所がどのようなものであるのかについて,実際の研究例を交えながら説明していく。そして,適切な対象に適切な研究法を適応できるようにする。また,心理学は科学的な視点によって行われていることを理解するため,これらの研究法で得られたデータを用いた実証的な思考方法を習得し,研究の問題点を指摘できる思考力を身につける。そして,心理学の研究を行う上で必要な,倫理的な配慮を理解する。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。
科目のキーワード
心理学研究法 実験法 観察法 調査法 面接法 記述統計 推測統計 研究倫理
授業の展開方法
教科書およびパワーポイントを用いた講義が中心となる。また,講義中にはWebアンケートにより,意見を求めることがある。そのため,内容理解だけではなく,研究方法の問題点を自分が行う立場だと想定して,常に考えなければならない。そして,自分で研究を行う際には,自分で問題提起をし,それを解決するためどのようなアプローチ(研究方法)が適切なのか,実践的な心理学研究の考え方やデータの扱い方を身につけられるようにする。
オフィス・アワー
【火曜日】昼休み・3時限目、【水曜日】昼休み(会議日は除く)
科目コード PSC101
学年・期 1年・前期
科目名 心理学研究法
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 必須
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 なし
展開科目 (心)心理学統計法 心理学とキャリア 心理学文献講読 他
(犯)心理学統計法 心理学データ解析 心理学文献講読
関連資格 公認心理師、認定心理士
担当教員名 鑓水秀和
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 心理学を「研究」するということ 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第1回では,(1)心理学における実証研究法の中から,心理学が行動の科学であることを説明する。最初にこの科目を今後どのように展開していくのかを説明する。その後,心理学における研究が科学的であることを解説し,実証の重要性について説明する。このように,今回の講義を通して,心理学の研究が科学的であるということを理解する。
【主題細目①:授業の進め方】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目②:心理学の定義】
●三浦 麻子 (2017).序章 心理学とは何か,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 1-3. 北大路書房
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目③:実証(的)科学とは】
●三浦 麻子 (2017).序章 心理学とは何か,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 3-7. 北大路書房
●プレゼンテーション資料(オリジナル)
コマ主題細目 ① 授業の進め方 ② 心理学の定義 ③ 実証(的)科学とは ④ ⑤
細目レベル ① この授業は,講義形式からなることを説明する。この授業の目的は,心理学を専門的に学び,また研究するための基礎知識を身につけることであり,必修科目であること,公認心理師取得のために必要な科目であることを確認する。授業では,2つの教科書を用いる。1つ目の教科書 (三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」北大路書房 2,200円) の章立てに沿って,授業は進行する。2つ目の教科書 (山田 剛史,杉澤武俊,村井潤一郎「Rによるやさしい統計学」株式会社オーム社 2,700円) は,後期の心理学統計法の教科書でもある。この教科書は,第5回から9回の記述統計の理解の際に,主に用いる。この回には,PCを使った演習が含まれるので,十分に充電されたノートPCを必ず持参する。ただし,Webを介した出席確認,小テスト,課題,感想の提出を課すことがあるので,PCは毎回持参することを推奨する。
② 「心理学」の定義を理解する。19世紀以降の現代の心理学は,研究対象が「こころのはたらきや行動」であることと,「実証 (的) 科学」であることと定義される (三浦,2017)。実証 (的) 科学であることとは,心理学の研究目的が,経験的事実にもとづくデータを収集し,その積み重ねによって現象を正確に記述し,秩序や法則を発見して,現象の理解,予測,制御を行うことであることを意味する。研究対象としての行動は,外部からの観察が可能であるが,こころのはたらきはそうとは限らない。自らのこころのはたらきであっても,そのすべてを意識できるわけではないからである。心理学では,こころのはたらきについて推論するために行動に手がかりを求めることまでを理解する。
③ 実証 (的) 科学とは何かを理解する。「実証」とは科学において重要な要件であることを説明する。私たちは誰でも,直観に頼って物事を判断するときがある。例えば,結果を知った後で,それを前から予測していたと感じたり(後知恵バイアス),ランダムな事象であるにも関わらず,何か法則性があるかのように感じてしまう。このような,直観だけで議論するのであれば,何が正しいのかわからず,もっともらしい結論が出ないかもしれない。特に,「血液型性格診断」は典型的な例である。これは,日本だけの現象であるが,直感的に血液型と性格が合っているかのように感じているヒトも多い。しかしながら,科学的な研究にもとづけば,血液型と性格に関係性は見られない。このような直観に頼ってしまうと,何が正確な情報であるのかが明らかではなくなってしまう。そこで,何が正確であるのかを明らかにするためにも,「実証」をすることが重要である。以上のことから,実証とは現実の世界を正確にとらえるための方法であることを説明できるレベルまで理解する。


キーワード ① 心理学 ② 科学 ③ 観察可能性 ④ 数量化 ⑤ 予測と制御
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『目に見えない人の「心」を,心理学はどのようにして観察し,数量化しているのか』について,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。Webを通じて(授業内で開示)回答すること。また,心理学のなりたち (三浦 麻子 (2017).序章 心理学とは何か,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 10-23. 北大路書房) について,授業内で取り扱えなかった内容は各自で読んでおくこと。

【次回のための予習課題】第2回のシラバスと教科書 (三浦 麻子 (2017).2章 研究の準備:心理学研究の基礎知識,「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」 北大路書房) の該当頁を読み,それぞれの細目レベルの第1文にある問い(何を理解するのか)に対する答えをピックアップしたノートを作成する。また,「因果関係」と「相関関係」とは何かを調べ,これらの差異を説明できるようにしておく。その上で,普段の生活における「因果関係」と「相関関係」について,それぞれ例示できるようにしておくこと。

2 心理学研究の基礎知識 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第2回では,(1)心理学における実証研究法から,心理学研究に着手するにあたり,誰もが共通理解を持っておくべき重要事項について解説する。解説する項目には,概念的定義と操作的定義,信頼性と妥当性,因果関係と相関関係の関係性が含まれる。
【主題細目①:概念的定義と操作的定義】
●三浦 麻子 (2017).2章 研究の準備:心理学研究の基礎知識,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 25-27. 北大路書房

【主題細目②:信頼性と妥当性】
●三浦 麻子 (2017).2章 研究の準備:心理学研究の基礎知識,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 27-30. 北大路書房

【主題細目③:相関と因果】
三浦 麻子 (2017).2章 研究の準備:心理学研究の基礎知識,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 30-34. 北大路書房
コマ主題細目 ① 概念的定義と操作的定義 ② 信頼性と妥当性 ③ 相関と因果 ④ ⑤
細目レベル ① 『概念的定義,操作的定義』を理解する。心理学を含む社会科学では,実際に直接観測できる事象だけではなく,直接観測することは不可能だが,言葉としては存在するもの,つまり概念を扱う (三浦,2017)。心理学が研究対象とする「こころ」は,第1回で学んだ通り,概念に該当する。概念は,それが位置づけられる文脈において,きちんと定義しておく必要がある。定義には,概念的定義と操作的定義の2つのレベルがある。概念的定義とは,その概念の意味を説明する言葉のことで,意図している意味合いを出来るだけ正確に表現するために不可欠である。これに対して,操作的定義とは,操作主義に立脚し,その概念を観察・測定する手続きによって,より分かりやすく明確に定義する。知能検査の例を用いて,2つの定義の違いを説明できるところまで理解する。
② 『信頼性と妥当性』を理解する。心理学においてある概念をなんらかの方法で測定した場合には,その信頼性と妥当性が確保されているかどうかが,常に研究の根幹にかかわる問題となる (三浦,2017)。信頼性は,同じ対象に同じ条件で同じ測定を繰り返し実施した場合に同様の結果が得られるかどうかを意味する。信頼性の高低は,測定の精度,つまり何らかの心理的状態や行動を安定して測定できている程度を表す。妥当性は,測定の方法が概念をきちんと捉えられるものになっているかどうかを意味する。妥当性の高低は,測定の有意味性,つまり目的の心理的状態や行動を確かに測定できている程度を表す。あわせて,測定の際に発生する「誤差」についても理解する。
③ 『相関関係と因果関係とはそれぞれどのような関係のことか』を理解する。「因果関係」とは,原因と結果の関係性であり,これを明らかにするためには,原因となると考えられる変数と,その結果だと思われる変数との間に,規則的な関係があるかどうかを調べる必要がある。言い換えれば,「因果関係」があるという状態は,原因と結果の間には規則的な関係性が生じるはずである。一方,「相関関係」とは,2つの変数(例えば,体重と身長の関係性)に規則的な関係があることを指す。一見すると,「因果関係」と「相関関係」は同じ意味のようにとらえられるが,「相関関係」はどちらを原因あるいは結果とするかまでは言及することができない。つまり,体重が重いから身長が高いということは言えない。そのため,「相関関係」があるからといって,必ずしも「因果関係」が成り立つというわけではない。このように,「因果関係」は「相関関係」に内包された関係である。以上のことから,「因果関係」と「相関関係」の差異が,原因と結果の規則性があるか否かであることを理解する。


キーワード ① 概念的定義 ② 操作的定義 ③ 信頼性 ④ 妥当性 ⑤ 相関と因果
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『直接測定が不可能な対象の概念的定義と操作的定義とは何か』,『測定における信頼性と妥当性とは何か』,『因果関係と相関関係とはそれぞれどのような関係のことか』の各問いについて,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。

【次回のための予習課題】第3回のシラバスと教科書 (三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」 北大路書房) の該当頁を読み,それぞれの細目レベルの第1文にある問い(何を理解するのか)に対する答えをピックアップしたノートを作成する。また,第3回に学ぶ4つの研究法(実験法,調査法,観察法,面接法)以外の方法はないか調べてみること。

3 研究法概説 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第3回では,(2)心理学研究法の概観から,心理学研究で用いられる4つの代表的な手法について概説する。各研究法の利点と限界までを整理し,第10回以降で各研究法の実際を学ぶための下準備とする。
【主題細目①:実験法】
●三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 53-58. 北大路書房

【主題細目②:調査法】
●三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 58-61. 北大路書房

【主題細目③:観察法】
●三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 61-63. 北大路書房

【主題細目③:面接法】
●三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 64-65. 北大路書房
コマ主題細目 ① 実験法 ② 調査法 ③ 観察法 ④ 面接法 ⑤
細目レベル ① 『実験法とはどのような研究手法なのか』を理解する。「実験法」とは,「独立変数」を操作したり,「剰余変数」を統制して,「独立変数」と「従属変数」の間にある「因果関係」を明らかにする方法である。この「実験法」には,「実験室実験」と「質問紙実験」がある。「実験室実験」とは,大学や研究機関などにある実験室に参加者を呼び出して行う実験である。多くの場合は,個室で一人ずつ実験を実施するため,環境を統制することができる。しかし,現実性が乏しい,倫理的な問題,参加者の代表性の問題があるため,これらの問題に対処したうえで,実施しなければならない。「質問紙実験」とは,複数の条件の質問紙を配布することによって行われる実験である。一度に多くの参加者からデータを短時間で集めることができ,場面想定法が用いられる。しかし,実験室実験よりもより現実性が低くなる問題もある。これらの「実験法」の特徴をとらえ,欠点を理解する。以上のことから,「実験法」が「因果関係」を明らかにするための方法であることを説明でき,「実験室実験」と「質問紙実験」の特徴・欠点をそれぞれ指摘できるレベルまで理解する。
② 『調査法とはどのような研究手法なのか』を理解する。「調査法」では「質問紙」が用いられる。そのため,「調査法」は質問紙法とも呼ばれ,「質問紙」によって,ヒトの意識や行動に関するデータを回答者の自己報告から回収する方法である。この質問紙調査には,(1)データ,(2)組織的,(3)自己報告という3点が重要になる。(1)データは,ヒトのこころの状態や意識・行動を数値化したものであり,ヒトのこころを研究するための手がかりとなる。(2)組織的とは,同じ質問紙を用いて,同じ手順で質問を行うことである。そのため,質問の内容や順序を統制することになる。(3)自己報告とは,言語によって内面を観察できる形にしたものである。心理学がヒトの内面を研究対象とする以上,何らかの方法で内面を観察できる形にしなければならない。そして,回答者から得られたデータは,スケール(例えば,5件法)の数値を量的データとして扱う量的研究と,自由記述のように記述された内容を扱う質的研究があることを説明する。以上のことから,「調査法」が「質問紙」によってヒトの心を数値化したり,ことばそのものを質的に扱う研究法であることを理解する。
③ 『観察法とはどのような研究手法なのか』を理解する。「観察」という言葉は,どちらの漢字にも「観(み)る」と「察(み)る」と読むことができる。前者の「観る」は,周囲をよくみて,念入りにじっくりとみるという意味がある。それに対して,後者の「察る」は,何かに覆われて漠然としないものを詳しくみるという意味がある。したがって,「観察」とは,ある観察対象に対して,目的を絞り込んで,見える情報や聞こえる情報など,その対象に関わる情報をすべて得ることである。その上で,「観察」した情報の背後に潜むこころという内面的な側面を明らかにする。このように,「観察法」とは,単に見ているだけではなく,観察されたあらゆる情報を活用して,こころに迫る方法である。そして,観察によって得られたデータは,行動内容を記述したものを扱う質的研究が主流であるけれども,行動パターンをカテゴリー化し,その頻度を扱うことにより量的研究としても検討することができることを紹介する。以上のことから,「観察法」がただ見るのではなく,こころの内的側面まで見ることであることを説明できるレベルまで理解する。
④ 『面接法とはどのような研究手法なのか』を理解する。「面接法」は,臨床心理学において最も用いられる研究方法である。具体的には,研究の目的のために,直接対面してコミュニケーションを取り,理解や支援を行う方法である。面接で重要になってくるもののひとつが面接対象者の発する「ことば」となる。「ことば」は視覚的に観察することのできない内的なこころを具体化し,他者との関係で生み出されるものである。例えば,「いいえ」という「ことば」でも,質問紙において「はい」か「いいえ」で回答を求めたときの「いいえ」と,面接によって得られる「いいえ」は違う意味を持つことがある。また,「面接法」で得られる「いいえ」という「ことば」はその先に,どのような内的な意味が隠されているのかをさらなる質問で探ることもできる。これらの語られた内容は,逐次録として,速記や録音で記録する。これらの面接を通して,相手の「個別性」を解釈する。この「個別性」を理解するためには,一般的な法則性を理解する必要がある。以上のことから,「面接法」はこれまで用いてきた研究法の知見にもとづいて確立された方法であることを理解する。

キーワード ① 心理学研究法 ② 実験法 ③ 調査法 ④ 観察法 ⑤ 面接法
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『実験法とはどのような研究手法なのか』,『調査法とはどのような研究手法なのか』『観察法とはどのような研究手法なのか』『面接法とはどのような研究手法なのか』の各問いについて,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。今回の内容は,第10回以降にも詳しく学ぶことになる。

【次回のための予習課題】第4回のシラバスと教科書 (三浦 麻子 (2017).5章 研究の基礎:人間を対象とする測定における諸問題,「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」 北大路書房) の該当頁を読み,それぞれの細目レベルの第1文にある問い(何を理解するのか)に対する答えをピックアップしたノートを作成する。

4 心理学特有の問題 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第4回では,(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理から,心理学研究特有の問題として,参加者効果,実験者効果,生態学的妥当性を概観する。実験者,参加者ともに人間であるために生じる問題について解説する。
【主題細目①:参加者効果】
●三浦 麻子 (2017).5章 研究の基礎:人間を対象とする測定における諸問題,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 66-71. 北大路書房

【主題細目②:実験者効果】
●三浦 麻子 (2017).5章 研究の基礎:人間を対象とする測定における諸問題,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 71-73. 北大路書房

【主題細目③:生態学的妥当性】
●三浦 麻子 (2017).5章 研究の基礎:人間を対象とする測定における諸問題,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 77-78. 北大路書房
コマ主題細目 ① 参加者効果 ② 実験者効果 ③ 生態学的妥当性 ④ ⑤
細目レベル ① 『参加者効果を低減するにはどのような手法を用いるのか』を理解する。測定される立場の人は,そのような自覚を持って行動することになるため,日常生活とは異なる特有の行動をとる可能性がある。これを参加者効果という。そして,ある特定の反応を参加者に要求するような圧力をもたらす要素のことを「要求特性」という (三浦,2019)。この「要求特性」には,(1)社会的に望ましい参加者になる場合と,(2)実験者にとって望ましい参加者になる場合とがある。例えば,(1)の事態は,未成年に「飲酒したことありますか?」という質問紙を実施する場合,真実ではなく,社会的に望ましい「いいえ」と回答することである。したがって,研究によって得られるデータは「社会的望ましさ」が反映した「要求特性」が生じている可能性があるために,被験者の匿名性を確保したり,守秘があることを強調するなどの工夫が必要である。また,(2)の事態は,この実験の目的はどのようなものか?という気持ちで反応する場合である。目的を知った上で,研究に参加すると自然な行動ではなくなってしまう(例えば,プラセボ効果)。そのため,被験者に偽りの目的を教示する「ディセプション」を用いて,そのための「カバーストーリー」を作成したりする。以上のことから,「要求特性」を理解した上で,このような「要求特性」の問題を最小限するためにはどのような工夫を行う必要があるかを説明できるレベルまで理解する。
② 『実験者効果を低減するにはどのような手法を用いるのか』を理解する。心理学特有の問題として,「参加者効果」以外にも,得たデータを扱う側の「実験者効果」が挙げられる。「実験者効果」とは,研究者自身が苦労して考え出した仮説や予測が,自分が苦労して実施している実験のデータに支持されることを強く期待し,それが事件に影響を及ぼすことである。このような「実験者効果」は,意図的に行うつもりがなくても,意図せず無意識的に働かせる可能性がある。そのため,この効果を最小限にするために,研究者以外のヒトが実験者として従事したり,実験が同じ手続きで進むように,シナリオを作成して,それに厳密に沿って実験を行ったりする必要がある。また,複数条件の実験や調査を行う際には,参加者自身がどのような条件で行われているのかを悟られない工夫が必要となる。以上のことから,「実験者効果」の特性を理解し,この効果を低減するための方法を説明できるレベルまで理解する。
③ 『心理学研究における生態学的妥当性の考え方とはどのようなものか』を理解する。「生態学的妥当性」とは,ヒトの日常生活の自然な状況を扱っているかどうかという問題のことである。心理学で扱う心理現象は,複雑な現実世界の中に紛れている。そのため,人工的で非日常的な研究環境(実験室など)を設定することにより,日常生活の中では見えにくい,非日常的な環境の中で人工的に再現する必要がある。ここで重要なことは,実験などによって人工的に作られた環境で生み出された心理現象が,「生態学的妥当性」を脅かしているという理由だけでは,研究として致命的な問題とはならない。なぜならば,心理現象によっては,積極的に人工的な環境を導入することによって,心理現象を理解できることもあることをスラットンの逆転視実験をもとに説明する。以上のことから,心理学研究において,「生態学的妥当性」が問題となるのは,人工的な環境が目的とした心理現象に重大な影響を及ぼしている事態に対して,それに気がついていないということを理解する。



キーワード ① 参加者効果 ② 要求特性 ③ 実験者効果 ④ 二重盲検法 ⑤ 生態学的妥当性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『参加者効果を低減するにはどのような手法を用いるのか』,『実験者効果を低減するにはどのような手法を用いるのか』,『心理学研究において,統制するとはどのようなことか』,『心理学研究における生態学的妥当性の考え方とはどのようなものか』の各問いについて,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。

【次回のための予習課題】第5回のシラバスと教科書 (三浦 麻子 (2017).6章 データの中身を知る:記述統計,「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」 北大路書房) の該当頁を読み,それぞれの細目レベルの第1文にある問い(何を理解するのか)に対する答えをピックアップしたノートを作成する。

5 心理尺度 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第5回では,(3)心理学研究法で用いる統計の理解から,心理統計の基本的な考え方を説明した上で,心理学で測定するデータの特徴について説明する。特に,心理尺度の尺度水準を取り扱う。

【主題細目①:名義尺度】
●三浦 麻子 (2017).6章 データの中身を知る:記述統計,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 79-81. 北大路書房
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目②:順序尺度】
●三浦 麻子 (2017).6章 データの中身を知る:記述統計,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」p. 82. 北大路書房
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目③:間隔尺度】
●三浦 麻子 (2017).6章 データの中身を知る:記述統計,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」p. 82. 北大路書房
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目④:比率尺度】
●三浦 麻子 (2017).6章 データの中身を知る:記述統計,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 82-83. 北大路書房
●プレゼンテーション資料(オリジナル)
コマ主題細目 ① 名義尺度 ② 順序尺度 ③ 間隔尺度 ④ 比率尺度 ⑤
細目レベル ① 『名義尺度』について理解する。「尺度」とは,いわゆるデータを測定するための物差しであり,尺度の性能の高低に関して4つの水準 (尺度水準) がある。いくつかのカテゴリーに分類することだけを目的とした尺度のことを名義尺度という。たとえば,「四季のうちいつが一番好きですか」という問いに対して,「1. 春,2. 夏,3. 秋,4. 冬」という選択肢が設けられていたとする。これは,単に春に1,夏に2という数字を割り当てただけで,どれが上でどれが下という順序性はない。ある数値をとるデータの度数を,つまりその数値を当てはめたカテゴリーに含まれるデータを数えることはできるが,数値どうしの四則演算に意味はない (三浦,2017)。このような名義尺度の例をあげることができるように理解する。
② 『順序尺度』について理解する。「尺度」とは,いわゆるデータを測定するための物差しであり,尺度の性能の高低に関して4つの水準 (尺度水準) がある。測定データの数値が対象間の大小関係のみを表現するものである尺度が順序尺度である。たとえば,成績の順位は,成績の良い順に1位,2位,3位という数値を当てはめる。成績の良さは,数字が小さいほうがより成績がよいことをいみすることは確かであるが,1位と2位が2位と3位の差と同じであるとは限らない。つまり,尺度の間隔が等間隔ではない。1位だけがずば抜けてよくできて,それ以下はドングリの背比べといった場合もあるであろう。順序はあるがその間隔がさまざまなので,順序尺度には四則演算はできない (三浦,2017)。このような順序尺度の例をあげることができるように理解する。
③ 『間隔尺度』について理解する。「尺度」とは,いわゆるデータを測定するための物差しであり,尺度の性能の高低に関して4つの水準 (尺度水準) がある。0があってもそれが何もないことを意味するわけではない尺度が間隔尺度である。温度計がわかりやすい例で,0度であっても温度が何もないことを示しているわけではない。つまり0度は,絶対的原点ではない。そのため,比率尺度とは違って倍数表現はできず,気温が摂氏20度であれば,摂氏10度より10度暖かいとはいえるが,2倍暖かいとはいえない。しかし,0度と1度の差と30度と31度の差は同じだけの熱量1度を示していて,等しい。つまり,間隔尺度の目盛りは等間隔であり,足し算や引き算は可能だが,掛け算や割り算はできない (三浦,2017)。このような間隔尺度の例をあげることができるように理解する。
④ 『比率尺度』について理解する。「尺度」とは,いわゆるデータを測定するための物差しであり,尺度の性能の高低に関して4つの水準 (尺度水準) がある。重さや時間のように,0が何もないことを示している尺度が比率尺度である。この場合の0を絶対的原点と呼ぶ。絶対的原点を持つことにより,差分だけではなく,倍数表現で関係を記述することが可能となる (三浦,2017)。たとえば,体重100㎏は40㎏よりも60㎏重いと表現することも出来るし,2.5倍重いと表現することもできる。すなわち,四則演算 (足し算,引き算,掛け算,割り算) のすべてを適用することが可能である。他にも,通貨単位や反応時間などが比率尺度に当てはまる。このような比率尺度の例をあげることができるように理解する。

キーワード ① 尺度 ② 名義尺度 ③ 順序尺度 ④ 間隔尺度 ⑤ 比率尺度
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】心理尺度の4つの尺度水準『名義尺度』,『順序尺度』,『間隔尺度』,『比率尺度』について,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。さらに,それぞれの尺度に該当する例をあげられるようにしておくこと。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。

【次回のための予習課題】第6回のシラバスと教科書 (山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).2章 1つの変数の記述統計「Rによるやさしい統計学」 株式会社オーム社) の該当頁を読み,それぞれの細目レベルの第1文にある問い(何を理解するのか)に対する答えをピックアップしたノートを作成する。また,配布資料を見て,「R」を授業で使用するPCにインストールしておくこと。

6 1つの変数の要約 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第6回では,(3)心理学研究法で用いる統計の理解から,心理統計の基本的な考え方を説明した上で,心理学で測定するデータの特徴について説明する。特に,1つの変数の要約の仕方を通して心理学のデータの特徴を学ぶ。
【主題細目①:代表値】
●山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).2章 1つの変数の記述統計「Rによるやさしい統計学」pp. 42-45. 株式会社オーム社
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目②:散布度】
●山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).2章 1つの変数の記述統計「Rによるやさしい統計学」pp. 46-54. 株式会社オーム社
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目③:データの視覚表現】
●山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).2章 1つの変数の記述統計「Rによるやさしい統計学」pp. 40-42. 株式会社オーム社
●プレゼンテーション資料(オリジナル)
コマ主題細目 ① 代表値 ② 散布度 ③ データの視覚的表現 ④ ⑤
細目レベル ① 『代表値』にはどのようなものがあるかを理解する。データを要約する方法の1つとして代表値を用いることができる。代表値は,「ある特定の数学的な観点からデータの中心的な特徴を表した指標」といえる (板口・森,2017)。 平均(値)は「試験の平均点」など日常的に用いられる。論文や統計の本では,記号を用いてあらわされる。英語の「mean」から平均は「M」といった記号を使う。一方,中央値や最頻値は日常的にはあまり使われない。論文などでは,中央値は用いられることがある。英語の「median」から中央値は「Me」の記号が使われる。中央値とは,収集したデータを大きさ順に並べたときに中央に位置する値のことである。最頻値とは,最も度数の多い測定値およびカテゴリーのことをいう。これら3つの代表値を理解する。
② 『散布度』にはどのようなものがあるかを理解する。散布度は,データの散らばり具合を示す指標であり,分散や標準偏差などがある。その中で,特に,心理学では標準偏差を用いる。「標準偏差」は,測定値の平均値からの散らばり具合をあらわしたものである。同様に,「分散」も測定値の平均値からの散らばり具合をあらわしたもので,「標準偏差」と「分散」は収集したデータがどのように散らばっているのかを知るための重要な数値である。論文などでは,標準偏差をSD(standard deviation)と表記し,平均値などと併記するのが通例である。これは,標準偏差は分散と異なり,もともとのデータと単位が一致する ためであると考えられる。分散と標準偏差の計算式の違いから,このことを理解する。
③ 1つの変数の特徴を把握するために,データを図や表にして視覚的に表現してみることは有効である。ここでは,「R」という主として統計解析に利用されているフリーソフトウェアを用いて,データの視覚化を行う。 まず,R上での簡単な四則演算,変数の操作を学んだ上で,細目レベル①,細目レベル②で学んだ,代表値,散布度の指標の計算を行う。次に,Rにより,表やヒストグラムを描画する関数を用いて,サンプルデータの視覚化を実行する。ここで使用した関数の使い方や引数の指定などを理解する。また,ヒストグラムとは何かを知り,どのようなデータを視覚化でき,どのような特徴があるか,ヒストグラムをびょうがすることで何が読み取れるかも理解する。


キーワード ① 平均値 ② 中央値 ③ 分散 ④ 標準偏差 ⑤ ヒストグラム
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『代表値にはどのようなものがあるか』,『散布度にはどのようなものがあるか』の各問いについて,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。また,授業内で行った演習については,周りの人の助けなしに自力で実行できるようにしておくこと。

【次回のための予習課題】第7回のシラバスと教科書 (山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).3章 2つの変数の記述統計「Rによるやさしい統計学」 株式会社オーム社) の該当頁を読み,それぞれの細目レベルの第1文にある問い(何を理解するのか)に対する答えをピックアップしたノートを作成する。教科書該当頁内の演習について,可能な範囲で実行しておき,不明点は授業内で質問できるようにしておくこと。

7 2つの変数の関係 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第7回では,(3)心理学研究法で用いる統計の理解から,心理統計の基本的な考え方を説明した上で,心理学で測定するデータの特徴について説明する。特に,2つの変数の関係の検討を通して心理学のデータの特徴を学ぶ。
【主題細目①:散布図】
●山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).3章 2つの変数の記述統計「Rによるやさしい統計学」pp. 55-62. 株式会社オーム社
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目②:相関係数】
●山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).3章 2つの変数の記述統計「Rによるやさしい統計学」pp. 62-64. 株式会社オーム社
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目③:クロス集計表】
●山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).3章 2つの変数の記述統計「Rによるやさしい統計学」pp. 64-69. 株式会社オーム社
●プレゼンテーション資料(オリジナル)
コマ主題細目 ① 散布図 ② 相関係数 ③ クロス集計表 ④ ⑤
細目レベル ① 『散布図』とは,どのような図であるかを理解する。2つの変数の関係を検討する前に,データを図や表にして視覚的に表現してみることは有効である。ここでは,「R」という主として統計解析に利用されているフリーソフトウェアを用いて,データの視覚化を行う。 量的変数と量的変数の関係を検討する際には,散布図を描画してデータの特徴を視覚化することができる。例えば,データに外れ値が含まれる場合,細目レベル②で学ぶ,相関係数に影響を及ぼす。散布図を描いてデータを確認することは,外れ値を検出するために有効な方法の1つである。また,2つの変数の間に直線的な関係があるかどうか,いわゆるU字相関,逆U字相関のような曲線相関の関係がないかどうかを見抜くためにも有効である。
② 『相関係数』は2つの変数の関係を示すことを理解する。ここでは,最も用いられることの多い,「ピアソンの積率相関係数」を中心に学ぶ。ピアソンの相関係数は,-1から1の値をとり,その符号によって相関の方向を示し,絶対値によって相関の強さを示す (板口・森,2017)。 「2つの変数が関連しているのかを知りたい」場合に相関関係を検討することになる。たとえば,1つの変数が増加するときに,もう1つの変数は増加するのか,減少するのかは,相関係数の符号によって示される。2つの変数の関係(相関関係)が強いのか,弱いのかは相関係数の絶対値によって示される。ピアソンの積率相関係数は,この関係に直線(一次関数)を想定することを理解する。
③ 『クロス集計表』は,どのような表であるかを理解する。クロス集計表は,2つの質的変数のそれぞれのカテゴリの組み合わせに該当する度数を表に整理したものである。行数aと列数bのカテゴリ数を明示して「a×bのクロス集計表」のようにサイズもあわせて表現することもある。2つの質的変数の関係を「連関」とよぶ。 連関の強さは連関係数により示すことができる。例えば,連関の強さを示すファイ係数は,クロス集計表に記載された観測度数によって算出することができる。サンプルデータのファイ係数を,Rを使って実際に算出してみる。また,質的変数と質的変数の関係を検討するためにクロス集計表を作成することが有効であることを理解する。


キーワード ① 散布図 ② 相関 ③ 相関係数 ④ 連関 ⑤ クロス集計表
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『散布図とはどのような図であるか』,『相関係数はとは何か』,『クロス集計表とはどのような表であるか』の各問いについて,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。また,授業内で行った演習については,周りの人の助けなしに自力で実行できるようにしておくこと。

【次回のための予習課題】第8回のシラバスと教科書 (山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).4章 母集団と標本「Rによるやさしい統計学」 株式会社オーム社) の該当頁を読み,それぞれの細目レベルの第1文にある問い(何を理解するのか)に対する答えをピックアップしたノートを作成する。教科書該当頁内の演習について,可能な範囲で実行しておき,不明点は授業内で質問できるようにしておくこと。

8 母集団と標本 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第8回では,(3)心理学研究法で用いる統計の理解から,心理統計の基本的な考え方を説明した上で,心理学で測定するデータの特徴について説明する。特に,母集団と標本の関係を通して,心理学のデータの特徴を学ぶ。
【主題細目①:母集団】
●山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).4章 母集団と標本「Rによるやさしい統計学」pp. 71-75. 株式会社オーム社
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目②:標本】
●山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).4章 母集団と標本「Rによるやさしい統計学」pp. 75-82. 株式会社オーム社
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目③:正規分布】
●山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).4章 母集団と標本「Rによるやさしい統計学」pp. 82-88. 株式会社オーム社
●プレゼンテーション資料(オリジナル)
コマ主題細目 ① 母集団 ② 標本 ③ 正規分布 ④ ⑤
細目レベル ① 『母集団』とは何かを理解する。心理学が対象とする母集団は,例えばヒト全体であったり,日本人全体であったりする。しかし,日本人全てを対象としてデータを収集すること,ましてや世界中のヒトを対象とすることはほとんどの場合,不可能である。そこで,大きな母集団から抜き取ってきた比較的小さなデータを用いて,研究の仮説を検討する。母集団からデータを抜き取ってくる作業をサンプリングといい,サンプリングされたデータのことをサンプル(標本)とよぶ。標本の示す特徴から,母集団の特徴を推測することを目指す。すなわち,母集団とは,手元にあるデータの背後に存在すると仮定されるサンプルよりも大きな集団を指すことを理解する (板口・森,2017)。
② 『標本』とは何かを理解する。心理学が対象とする母集団は,例えばヒト全体であったり,日本人全体であったりする。しかし,日本人全てを対象としてデータを収集すること,ましてや世界中のヒトを対象とすることはほとんどの場合,不可能である。そこで,大きな母集団から抜き取ってきた比較的小さなデータを用いて,研究の仮説を検討する。母集団からデータを抜き取ってくる作業をサンプリングといい,サンプリングされたデータのことをサンプル(標本)とよぶ。標本の示す特徴から,母集団の特徴を推測することを目指す。すなわち,標本とは,母集団からサンプリングされたデータを指すことを理解する。また,標本は,母集団の特徴を適切に推測するために,母集団から偏りなく抽出 (無作為抽出) されたサンプルでなくてはならないことを理解する (板口・森,2017)。
③ 『正規分布』とはどのような分布であるかを理解する。心理学における実験研究では,数人から数十人を,調査研究では,数十人から数百人規模のデータを取得する。このような比較的大きなデータに対しても,平均値と標準偏差といった統計量を用いることによって,そのデータ分布についてのおおよその見当をつけることができる。これは心理学研究であるかう多くのデータが正規分布に従うという,経験的事実にもとづく (板口・森,2017)。横軸にデータの値,縦軸に全体に占めるデータの割合を表すグラフを描画すると,データが正規分布しているならば,平均値を頂点としたなめらかな山型のデータ分布になる。また,平均値を中心に左右対称となり,山の裾野は傾斜が緩やかとなることを理解する。


キーワード ① 母集団 ② 標本 ③ 単純無作為抽出 ④ 確率分布 ⑤ 正規分布
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『母集団とは何か』,『標本とは何か』,『正規分布はどのような分布であるか』の各問いについて,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。また,授業内で行った演習については,周りの人の助けなしに自力で実行できるようにしておくこと。

【次回のための予習課題】第9回のシラバスと教科書 (山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).5章 統計的仮説検定「Rによるやさしい統計学」 株式会社オーム社) の該当頁を読み,それぞれの細目レベルの第1文にある問い(何を理解するのか)に対する答えをピックアップしたノートを作成する。教科書該当頁内の演習について,可能な範囲で実行しておき,不明点は授業内で質問できるようにしておくこと。

9 統計的仮説検定 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第9回では,(3)心理学研究法で用いる統計の理解から,心理統計の基本的な考え方を説明した上で,心理学で測定するデータの特徴について説明する。特に,統計的仮説検定の考え方を通して心理学のデータの特徴を学ぶ。
【主題細目①:帰無仮説と対立仮説】
●山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).5章 統計的仮説検定「Rによるやさしい統計学」pp. 109-113. 株式会社オーム社
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目②:有意確率】
●山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).5章 統計的仮説検定「Rによるやさしい統計学」pp. 113-119. 株式会社オーム社
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目③:検定統計量】
●山田 剛史,杉澤 武俊,村井 潤一郎 (2008).5章 統計的仮説検定「Rによるやさしい統計学」pp. 119-123. 株式会社オーム社
●プレゼンテーション資料(オリジナル)
コマ主題細目 ① 帰無仮説と対立仮説 ② 有意確率 ③ 検定統計量 ④ ⑤
細目レベル ① 統計的仮説検定で用いられる『帰無仮説と対立仮説』とは何かを理解する。対立仮説とは,統計的仮説検定において,主張したい仮説である。例えば,2つの群から得られたデータの間に「差がある」,「効果がある」ということを主張する。一方で,帰無仮説は対立仮説とは矛盾する仮説である。つまり,「差がない」,「効果がない」という仮説である。帰無仮説が正しいと仮定したときに,母集団からその標本が得られる確率を算出する (板口・森,2017)。統計的仮説検定は,帰無仮説が正しい確率がとても低い場合に,帰無仮説を棄却し,対立仮説を採択することで,研究の仮説を検討することを理解する。一方で,帰無仮説を棄却できない場合には,仮説に対する判断を保留する必要があることを理解する (板口・森,2017)。
② 『有意確率』とは何を示す指標かを理解する。統計的仮説検定では,帰無仮説が正しいと仮定したときに,母集団からその標本が得られる確率を算出する。帰無仮説が正しい確率がとても低い場合に,帰無仮説を棄却し,対立仮説を採択することで,研究の仮説の正しさを裏付ける。このときに算出する確率を有意確率といい,p値として表す。有意確率は,帰無仮説が正しい確率を意味している (板口・森,2017)。また,統計的に有意な差がないかどうかを判断するための基準 (有意水準) を設け,有意確率が有意水準より低い場合には,2群の平均値の間に統計的な有意差があると結論する。一方で,有意確率が有意水準以上である場合,2群の平均値の間に統計的な有意差がないと結論することを理解する。
③ 『検定統計量』とは何を示す指標かを理解する。統計的仮説検定では,帰無仮説が正しいと仮定したときに,母集団からその標本が得られる確率を算出する。帰無仮説が正しい確率がとても低い場合に,帰無仮説を棄却し,対立仮説を採択することで,研究の仮説の正しさを裏付ける。このときに算出する確率を有意確率といい,p値として表す。検定統計量は,自由度とともに用い,有意確率を算出するために必要な数値である (板口・森,2017)。例えば,代表的な検定統計量であるt値は,データのばらつき,データ数,平均値差などの要素により求められることを理解する。また,どのような場合に検定統計量が大きくなり,有意確率が低くなるかもこの3つの要素の観点から理解する。


キーワード ① 帰無仮説 ② 対立仮説 ③ 有意確率 ④ 有意水準 ⑤ 検定統計量
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『統計的仮説検定で用いられる帰無仮説と対立仮説とは何か』,『有意確率とは何を示す指標か』,『検定統計量とは何を示す指標か』の各問いについて,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。また,授業内で行った演習については,周りの人の助けなしに自力で実行できるようにしておくこと。

【次回のための予習課題】第10回のシラバスと教科書 (三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」 北大路書房) の該当頁を読み,「実験法とはどのような研究手法なのか」について復習をしておく。第10回において,実験法の実際について,演習方式での体験を用意する場合には,別途授業中に予習内容を指示するので聞き逃さないようにすること。

10 実験法 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第10回では,(2)心理学研究法の概観から実験法について理解を深める。第3回で学んだ内容の詳細を解説する。また,出来るだけ演習による研究法の体験を含めることで,実際の手順等まで理解できるようにする。
【主題細目①:実験法の概要】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目②:現場実験と自然実験】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目③:準実験】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)
コマ主題細目 ① 実験法の概要 ② 現場実験と自然実験 ③ 準実験 ④ ⑤
細目レベル ① 『実験法とはどのような研究手法なのか』を理解する。「実験法」とは,「独立変数」を操作したり,「剰余変数」を統制して,「独立変数」と「従属変数」の間にある「因果関係」を明らかにする方法である。この「実験法」には,「実験室実験」と「質問紙実験」がある。「実験室実験」とは,大学や研究機関などにある実験室に参加者を呼び出して行う実験である。多くの場合は,個室で一人ずつ実験を実施するため,環境を統制することができる。しかし,現実性が乏しい,倫理的な問題,参加者の代表性の問題があるため,これらの問題に対処したうえで,実施しなければならない。「質問紙実験」とは,複数の条件の質問紙を配布することによって行われる実験である。一度に多くの参加者からデータを短時間で集めることができ,場面想定法が用いられる。しかし,実験室実験よりもより現実性が低くなる問題もある。これらの「実験法」の特徴をとらえ,欠点を理解する。以上のことから,「実験法」が「因果関係」を明らかにするための方法であることを説明でき,「実験室実験」と「質問紙実験」の特徴・欠点をそれぞれ指摘できるレベルまで理解する。
② 『現場実験と自然実験との違いは何か』を理解する。細目主題①で紹介したように「実験法」は,現実性が低くなるといった問題があった。そこで,現実性を高める方法として,「現場実験」と「自然実験」を用いる。「現場実験」とは,剰余変数の統制を人為的に行うものであり,実験参加者の同意のないまま,研究のために参加者の生活環境を変えたりすることによって,剰余変数を統制するものである。しかしながら,実験参加者の同意もないまま実験が行われるため,倫理的な問題がある。一方,「自然実験」は倫理的な問題を解決している。「自然実験」は,社会のなかで,もともと存在している独立変数の操作を利用する実験である。そのため,実験参加者の生活を実験者が変えるわけではない。しかし,「自然実験」では,研究の目的に合致しているのか,実験者が想定している独立変数が操作できているのかは不明な場合が多い。これらの実験の特徴をとらえるため,研究例を交えながら「実験法」の限界を明らかにする。以上のことから,「現場実験」と「自然実験」の差異を指摘できるレベルまで理解する。
③ 『準実験とは,どのような手続きのことか』を理解する。細目主題②で紹介したように,研究者によって条件の割り振りふる「現場実験」や,その割り振りされている環境を利用したりする「自然実験」によって,「実験法」の現実性が低くなる問題に対処することができた。しかし,実際にはこれらの条件の割り振りが困難な場合もある。そこで用いられる手続きが「準実験」である。「準実験」とは,剰余変数の統制を犠牲にする代わりに,現実性が低くなる問題を解決する方法である。例えば,教育効果を調べる際に,その個人の学習能力の差が剰余変数となり,真の因果関係を特定することは難しくなる。そこで,教育効果を調べる前に一度,学力を測定し,実験前後での成績の変化を分析対象とすることができる。この際,教育効果を調べる前に行われる実験が「準実験」となる。さらに,「準実験」に横断的比較と縦断的比較に大別されることについて,研究例を通して解説する。以上のことから,「準実験」が剰余変数の統制を犠牲にする一方で,現実性が低くなる問題を解決する手続きであることを説明できるレベルまで理解する。


キーワード ① 実験法 ② 因果関係 ③ 実験室実験 ④ 現場実験・自然実験 ⑤ 準実験
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『実験法とはどのような研究手法なのか』,『現場実験と自然実験との違いは何か』,『準実験とは,どのような手続きのことか』の各問いについて,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。さらに,「準実験」で用いられる横断的比較と縦断的比較について,授業内で用いた研究例をもとに,自分の言葉で説明できるようにしておくこと。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。

【次回のための予習課題】第11回のシラバスと教科書 (三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」 北大路書房) の該当頁を読み,「調査法とはどのような研究手法なのか」について復習をしておく。第11回において,調査法の実際について,演習方式での体験を用意する場合には,別途授業中に予習内容を指示するので聞き逃さないようにすること。

11 調査法 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第11回では,(2)心理学研究法の概観から調査法について理解を深める。第3回で学んだ内容の詳細を解説する。また,出来るだけ演習による研究法の体験を含めることで,実際の手順等まで理解できるようにする。
【主題細目①:調査法の概要】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目②:質問紙の構成】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目③:回答方法】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目④:調査方法】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目⑤:質問紙の留意点】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)
コマ主題細目 ① 調査法の概要 ② 質問紙の構成 ③ 回答方法 ④ 調査方法 ⑤ 質問紙の留意点
細目レベル ① 『調査法とはどのような研究手法なのか』を理解する。「調査法」では「質問紙」が用いられる。そのため,「調査法」は質問紙法とも呼ばれ,「質問紙」によって,ヒトの意識や行動に関するデータを回答者の自己報告から回収する方法である。この質問紙調査には,(1)データ,(2)組織的,(3)自己報告という3点が重要になる。(1)データは,ヒトのこころの状態や意識・行動を数値化したものであり,ヒトのこころを研究するための手がかりとなる。(2)組織的とは,同じ質問紙を用いて,同じ手順で質問を行うことである。そのため,質問の内容や順序を統制することになる。(3)自己報告とは,言語によって内面を観察できる形にしたものである。心理学がヒトの内面を研究対象とする以上,何らかの方法で内面を観察できる形にしなければならない。そして,回答者から得られたデータは,スケール(例えば,5件法)の数値を量的データとして扱う量的研究と,自由記述のように記述された内容を扱う質的研究があることを説明する。以上のことから,「調査法」が「質問紙」によってヒトの心を数値化したり,ことばそのものを質的に扱う研究法であることを理解する。
② 『質問紙は何によって構成されているのか』を理解する。「調査法」で「質問紙」調査を実施するときには,分析の計画を立てる必要がある。最初から漠然と調べたい内容について探索的に調査を行うと,そのデータにどのような意味合いがあるのかを見出すことができない。研究によっては探索的に行う場合もあるが,これは分析の計画については十分立てられたときにのみ行われるものである。そこで,「質問紙」を用いた調査法を行う場合には,必ず研究の目的と仮説を立てる。研究の目的では,どのようなヒトを対象として,調査を行い,どのような結果が予測されるのかまで考えておかなければならない。そしてこの目的と仮説を踏まえて,分析をどのように行うのかを計画する。このように調査法で用いられる「質問紙」はバックグラウンドを明確にした上で行う手法であることを理解する。以上のことから,「質問紙」を構成する手順を理解する。
③ 『質問紙に対してどのような回答方法があるのか』を理解する。研究で用いられる「質問紙」の回答方法には,「単一回答法」,「複数回答法」,「自由回答法」がある。「単一回答法」は,複数の選択肢の中から,当てはまるものを1つだけ回答してもらうものである。「複数回答法」は,複数の選択肢の中から,当てはまる回答を複数選択してもらうものである。これらの回答法に得られたデータは量的データとして扱うことができる。「自由回答法」は,質問項目に対して,自由に記入してもらう方法であることから,質的データとして扱われる。このように「質問紙」では,量的データと質的データの両方得られることから,研究計画および分析計画に応じて,どのような構成にするのかを選択しなければならない。以上のことから,「質問紙」を構成する際に,目的に応じた回答方法を選択できるレベルまで理解する。
④ 『質問紙を用いた調査にはどのような方法があるのか』を理解する。調査法実施のための「質問紙」,そして対象者の抽出方法が決まったら,どのような方法で「質問紙」を実施するのかを決めなければならない。ここでは,「質問紙」の実施方法を解説する。「質問紙」の実施方法には,「面接調査」,「留置(とめおき)調査」,「電話調査」,「郵送調査」,「Web調査」,「集合検査」がある。「面接調査」は,その名の通り,調査対象者と面接しながら調査する方法である。「留置調査」は,調査対象者に質問紙を手渡した後,一定時間留め置いて回収する方法である。「電話調査」は,電話を用いて,「郵送調査」は,質問紙を郵送し,「Web調査」は,インターネットを用いて質問紙を実施する方法である。そして,「集合調査」は,1カ所に集合してもらって一斉に回答してもらう方法である。それぞれの調査方法には利点・欠点があるため,それらを踏まえながら,実施方法の選択をする方法について説明する。以上のことから,「質問紙」調査する方法について,それぞれの利点・欠点を指摘できるレベルまで理解する。
⑤ 『質問紙調査を行う上で,注意する点は何か』を理解する。「質問紙」を実際に用いる際には,いくつか留意点がある。一つ目がワーディングの影響である。つまり,設問の言い回しの問題であり,これは誘導的な質問にならないような言葉遣いにする必要がある。このワーディングに気をつけないと,ゆがんだデータが採取される可能性がある。二つ目は,質問形式や配置などの聞き方についてである。例えば,暗黙の仮定と呼ばれるもので,「高校を卒業したらどの学校に行きますか?」という設問の場合,高校卒業後には学校へ行くという暗黙の仮定が生じてしまうことである(実際は,就職といった道もあるため,回答がゆがむ)。他にも,ダブルバーレル質問と呼ばれるものやコンテクスト効果を紹介する。これらの「質問紙」の問題点を解決する方法としては,心理学ではスケールを用いた回答方法などの工夫をする。さらにこのスケールを用いることにより,こころの状態を数値に置き換えることができ,統計的分析が可能になることを紹介する。以上のことから,「質問紙」の留意点を説明できるレベルまで理解する。
キーワード ① 調査法 ② 質問紙調査法 ③ 回答方法 ④ 調査方法 ⑤ ワーディング
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『調査法とはどのような研究手法なのか』,『質問紙は何によって構成されているのか』,『質問紙に対してどのような回答方法があるのか』,『質問紙を用いた調査にはどのような方法があるのか』の各問いについて,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。

【次回のための予習課題】第12回のシラバスと教科書 (三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」 北大路書房) の該当頁を読み,「観察法とはどのような研究手法なのか」について復習をしておく。第12回において,観察法の実際について,演習方式での体験を用意する場合には,別途授業中に予習内容を指示するので聞き逃さないようにすること。

12 観察法 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第12回では,(2)心理学研究法の概観から観察法について理解を深める。第3回で学んだ内容の詳細を解説する。また,出来るだけ演習による研究法の体験を含めることで,実際の手順等まで理解できるようにする。
【主題細目①:観察法の概要】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目②:観察法の種類】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目③:観察データの分類】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目④:データのバイアス】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)
コマ主題細目 ① 観察法の概要 ② 観察法の種類 ③ 観察データの分類 ④ データのバイアス ⑤
細目レベル ① 『観察法とはどのような研究手法なのか』を理解する。「観察」という言葉は,どちらの漢字にも「観(み)る」と「察(み)る」と読むことができる。前者の「観る」は,周囲をよくみて,念入りにじっくりとみるという意味がある。それに対して,後者の「察る」は,何かに覆われて漠然としないものを詳しくみるという意味がある。したがって,「観察」とは,ある観察対象に対して,目的を絞り込んで,見える情報や聞こえる情報など,その対象に関わる情報をすべて得ることである。その上で,「観察」した情報の背後に潜むこころという内面的な側面を明らかにする。このように,「観察法」とは,単に見ているだけではなく,観察されたあらゆる情報を活用して,こころに迫る方法である。そして,観察によって得られたデータは,行動内容を記述したものを扱う質的研究が主流であるけれども,行動パターンをカテゴリー化し,その頻度を扱うことにより量的研究としても検討することができることを紹介する。以上のことから,「観察法」がただ見るのではなく,こころの内的側面まで見ることであることを説明できるレベルまで理解する。
② 『観察するには,どのような手段があるのか』を理解する。観察といっても,その方法には複数の手法がある。特に観察状況に対して,人為的な操作を加える方法には「自然観察法」と「実験観察法」とがある。「自然観察法」は,観察者が観察対象者に対して何らかの操作をすることなく,自然に生じる行動を観察する方法である。この方法は,日常生活における行動を抽出するのに適している。一方,「実験観察法」は,ある特定な行動が生起しやすい環境に観察対象者を操作し,そこでの振る舞いを細かく観察する方法である。これは,観察したい行動が日常的には生じない場合に適した方法である。しかし,「実験的観察法」は,「生態学的妥当性」が低くなる危険性もあるため,研究目的に応じて,適切な観察法を選択する必要があることを解説する。以上のことから,「自然観察法」と「実験観察法」の利点・欠点を指摘できるレベルまで理解する。
③ 『観察された情報(データ)をどのように適切に扱うか』を理解する。まず,「観察」された情報をどのように記述するかである。記述方法には,「行動描写法」と「カテゴリー・チェック法」がある。「行動描写法」とは,観察された行動をいつ誰が誰に何をどのようにといった形で直接的に描写する方法である。この方法では,観察対象者をリアルに再現できるという利点がある一方で,データが膨大になりやすいという欠点があることを紹介する。一方,あらかじめ目的が明確でいくつかのカテゴリーが決まっている場合には,「カテゴリー・チェック法」を用いる。これは,ある行動が設定したカテゴリーに相当するのかをチェックしていく方法である。この方法では,データを数量的な分析に用いることができるという利点があるが,研究目的から適切なカテゴリーを設定する必要があることを注意しなければならないことを理解する。以上のことから,観察されたデータを扱うための方法である「行動描写法」と「カテゴリー・チェック法」の利点と欠点を指摘できるレベルまで理解する。
④ 『観察された情報(データ)を分析するときに留意することは何か』を理解する。「観察法」のデータを扱う際に観察者のバイアスが生じる。「観察法」ではデータは,本来であれば,誰が見ても,何度見ても同じ記述になることが望ましいが,観察者の見方や記述の仕方に依存するため,データのバイアスが生じやすい。そこで,データのバイアスできるだけ小さくするために,先行研究によってデータの分析方法を熟考したり,可能であればビデオ撮影をするなどして繰り返し検討できる形にする。さらに,研究者自身が観察者となることによって,あらかじめ研究目的や仮説を熟知した上で観察することにより,観察されたデータがゆがむ危険性も秘めている(論理的誤り)。そこで,これら行動のバイアスを理解することにより,観察者によるバイアスをできるだけ小さくする方法について解説する。以上のことから,観察されたデータを客観的に分析するための工夫を説明できるレベルまで理解する。

キーワード ① 観察法 ② 自然観察法 ③ 実験観察法 ④ 行動描写法 ⑤ 行動バイアス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『観察法とはどのような研究手法なのか』,『観察するには,どのような手段があるのか』,『観察された情報(データ)を分析するときに留意することは何か』の各問いについて,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。

【次回のための予習課題】第13回のシラバスと教科書 (三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」 北大路書房) の該当頁を読み,「面接法とはどのような研究手法なのか」について復習をしておく。第13回において,面接法の実際について,演習方式での体験を用意する場合には,別途授業中に予習内容を指示するので聞き逃さないようにすること。

13 面接法 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第13回では,(2)心理学研究法の概観から面接法について理解を深める。第3回で学んだ内容の詳細を解説する。また,出来るだけ演習による研究法の体験を含めることで,実際の手順等まで理解できるようにする。
【主題細目①:面接法の概要】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目②:面接の構造】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目③:面接者の態度】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)

【主題細目④:面接データの分類】
●プレゼンテーション資料(オリジナル)
コマ主題細目 ① 面接法の概要 ② 面接の構造 ③ 面接者の態度 ④ 面接データの分析 ⑤ ―
細目レベル ① 『面接法とはどのような研究手法なのか』を理解する。「面接法」は,臨床心理学において最も用いられる研究方法である。具体的には,研究の目的のために,直接対面してコミュニケーションを取り,理解や支援を行う方法である。面接で重要になってくるもののひとつが面接対象者の発する「ことば」となる。「ことば」は視覚的に観察することのできない内的なこころを具体化し,他者との関係で生み出されるものである。例えば,「いいえ」という「ことば」でも,質問紙において「はい」か「いいえ」で回答を求めたときの「いいえ」と,面接によって得られる「いいえ」は違う意味を持つことがある。また,「面接法」で得られる「いいえ」という「ことば」はその先に,どのような内的な意味が隠されているのかをさらなる質問で探ることもできる。これらの語られた内容は,逐次録として,速記や録音で記録する。これらの面接を通して,相手の「個別性」を解釈する。この「個別性」を理解するためには,一般的な法則性を理解する必要がある。以上のことから,「面接法」はこれまで用いてきた研究法の知見にもとづいて確立された方法であることを理解する。
② 『面接に用いられる構造にはどのようなものがあるのか』を理解する。「面接法」には,「非構造化面接」,「半構造化面接」,「構造化面接」がある。「非構造化面接」は,面接対象者が話したいことを何でも話すことのできる面接であり,内容だけではなく,話し方についてもデータを収集するときに用いる。そのため,仮説にもとづいた質問によってコミュニケーションが繰り広げられる。「半構造化面接」は,臨床面接とも呼ばれ,どのようなデータを集めるのかをあらかじめ決めておいて,面接対象者の反応によって,質問内容を変えていく方法である。具体的には,面接前に相手の答えをある程度想定し,枝分かれ的に質問を準備しておく。「構造化面接」は,あらかじめ質問する順番が決められた状態で,質問紙のような形で質問していく方法である。これも「非構造化面接」と同様に仮説にもとづいたものとなる。以上のことから,各面接の構造がどのような特徴を持っているのかを説明できるレベルまで理解する。
③ 『面接はどのような態度で行うべきか』を理解する。来談者中心療法を唱えたロジャーズは,面接者と面接対象者との信頼関係を形成するための基本的態度として,「共感的理解」,「無条件の肯定的関心」,「自己一致」を挙げている。「共感的理解」では,わかったつもりになるのではなく,相手の語る内容にじっくり耳を傾け,能動的に内容をとらえる姿勢(傾聴)のことである。そして,「無条件な肯定的関心」として,相手のことばに善悪といった評価をせず,関心を持って受け入れる。「自己一致」では,相手のことばに耳を傾けつつ,同時に面接者自身の中で起こる感情や思考にも目を向ける態度である。これらの基本的な態度を通じて,面接対象者との信頼関係を築いていく。以上のことから,「面接」の態度を実践できるレベルまで理解する。
④ 『面接法のデータはどのように扱うのか』を理解する。一般的には,話された内容をカテゴリー化する方法と,文脈を重視する方法,面接対象者の体験過程に注目した方法がある。カテゴリー化する方法では,面接対象者が語ったことばを内容のまとまりからカテゴリー化し,ほかのカテゴリー分けされた変数との関連性を検討する方法である。文脈を重視する方法では,面接対象者のことばを細分化せず,面接の過程すべての語りを対象として分析する方法である。そして,体験過程に注目した方法では,ことばの内容だけではなく,それを語る面接対象者の内的体験に注目し,面接過程そのものを分析する方法である。以上のことから,「面接法」で得られたデータの分析方法を説明できるレベルまで理解する。

キーワード ① 面接法 ② 個別法 ③ 面接の構造 ④ 来談者中心療法 ⑤ グラウンデッド・セオリー・アプローチ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『面接法とはどのような研究手法なのか』,『面接に用いられる構造にはどのようなものがあるのか』,『面接はどのような態度で行うべきか』,『面接法のデータはどのように扱うのか』の各問いについて,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。

【次回のための予習課題】第14回のシラバスと教科書 (三浦 麻子 (2017).8章 研究倫理:研究者として「なすべきこと」,9章 研究倫理:研究者として「やってはいけないこと」,10章 研究倫理:モラル違反を抑止するシステム,「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」 北大路書房) の該当頁を読んでおくこと。

14 研究倫理 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第14回では,(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理から,心理学研究における倫理として,研究プロセスで「なすべきこと」と研究プロセスで「やってはいけないこと」にわけて解説する。また,研究プロセスで「やってはいけないこと」を抑止するシステムとしてどのようなシステムがあるかについても解説する。

【主題細目①:研究倫理】
●三浦 麻子 (2017).8章 研究倫理:研究者として「なすべきこと」,三浦 麻子 (監) 「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 113-124. 北大路書房

【主題細目②:研究者のモラル】
●三浦 麻子 (2017).9章 研究倫理:研究者として「やってはいけないこと」,三浦 麻子 (監) 「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 125-134. 北大路書房

【主題細目③:モラル違反の抑止システム】
●三浦 麻子 (2017).10章 研究倫理:モラル違反を抑止するシステム,三浦 麻子 (監) 「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 135-148. 北大路書房
コマ主題細目 ① 研究倫理 ② 研究者のモラル ③ モラル違反の抑止システム ④ ⑤
細目レベル ① 『研究を行う上でどのような倫理的な配慮をする必要があるのか』を理解する。倫理的な問題を解決するためには,「参加者の保護とリスクの最小化」,「自発的参加」,「デブリーフィング」,「匿名性と守秘性」,「倫理審査委員会による審査」がある。「参加者の保護とリスクの最小化」は,研究内容によって異なるが,研究手法の組み合わせによって解決したり,リスクが伴うことについて,同意書をもって同意したヒトのみを研究対象としたりする。「自発的参加」は,研究の参加を強要するのではなく,参加者自らが自発的に参加することを保証しなければならない。そして,実験あるいは調査後には,参加者に対して実験手続きについて説明し(デブリーフィング),データの匿名性および守秘性を保証する。ときには,これらの配慮が一人では判断が困難なことがあるため,「倫理審査会」を通じて,どのような配慮が必要かを対処しながら研究を行わなければならない。以上のことから,研究上の倫理的な配慮を行う上で,どのような手続きが必要になるのか,順を追って説明できるレベルまで理解する。
② 『研究者として守るべきモラル』について理解する。研究仮説の正しさに対する強い信念や,仮説に対して肯定的な結果を得なければいけないという思い込みは,問題のある研究実践を引き起こすことがある。剽窃,データの捏造・改竄などの明らかな研究不正をやってはいけないことは当然である。一方で,認知バイアスや統計的仮説検定の誤用による,無自覚にやってしまいがちなモラル違反が存在する。これらのモラル違反を抑止するためには,「仮説を立て,それを検証するために研究を実施する」という手続きそのものの中に,研究者の心理と行動にもたらす負の影響が潜んでいることに自覚的になる必要がある (三浦,2017)。研究者としてのモラルは,当然ながら卒業研究の遂行,卒業論文の執筆時においても守られなければならない問題であることを理解する。
③ 『研究者がモラル違反をしにくくなるようなシステム』について理解する。1つは,材料や手続き,データを公開する制度で,もう1つは研究計画の事前登録制度である (三浦,2017)。これらは,科学としての信頼性を守るための学界ぐるみの取り組みである。研究に際しては,人として一定のモラルを遵守する必要があると同時に,科学としてモラルを遵守する必要がある。モラルに抵触するような行為が研究の中に塗り込められてしまうと,第三者が発見することが難しくなる。モラル違反がもたらす研究の歪みは,研究の再現性の低下というかたちで露見する。2つの取り組みが,どのようにして研究者がモラルを守りやすく,また違反をしにくくさせるかについて理解する。


キーワード ① 研究倫理 ② リスクの低減 ③ 匿名性 ④ 問題のある研究実践 ⑤ 再現性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『研究を行う上でどのような倫理的な配慮をする必要があるのか』,『研究者として守るべきモラルとは何か』,『研究者がモラル違反をしにくくなるようなシステムとはどのようなシステムか』の各問いについて,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。

【次回のための予習課題】第15回のシラバスと教科書 (三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」 北大路書房) の該当頁を読み,「実験法とはどのような研究手法なのか」,「調査法とはどのような研究手法なのか」,「観察法とはどのような研究手法なのか」,「面接法とはどのような研究手法なのか」について復習をしておく。

15 各種研究法の復習 科目の中での位置付け 本科目は,「こころ」を研究するために,心理学の研究方法についての基礎知識を学ぶ。この科目で扱う心理学研究法は,「実験法」,「調査法」,「観察法」,「面接法」である。これらの研究法を理解するために必要な基礎知識を解説するとともに,心理学研究特有の問題や倫理的問題についても説明する。また,後期の必修科目「心理学統計法」への展開を意識して,心理学研究で用いられる統計の概観についても学んでおく。具体的には,(1)心理学における実証研究法(第1回と第2回),(2)心理学研究法の概観(第3回,第10回から第13回,第15回),(3)心理学研究法で用いる統計の理解(第5回から第9回),(4)心理学研究特有の問題,心理学研究における倫理(第4回と第14回)の4部構成となる。第15回では,(2)心理学研究法の概観から心理学研究法の総まとめとして復習を行う。各種研究法の利点と限界にとどまらず,心理学特有の問題,研究倫理,心理統計などで学んだ項目と関連付けて,改めて各種研究法がどのような研究手法かを解説する。
【主題細目①:実験法の復習】
●三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 53-58. 北大路書房

【主題細目②:調査法の復習】
●三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 58-61. 北大路書房

【主題細目③:観察法の復習】
●三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 61-63. 北大路書房

【主題細目③:面接法の復習】
●三浦 麻子 (2017).4章 心を「測定する」ということ,三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」pp. 64-65. 北大路書房
コマ主題細目 ① 実験法の復習 ② 調査法の復習 ③ 観察法の復習 ④ 面接法の復習 ⑤
細目レベル ① 『実験法の全体像』を理解する。第10回で扱った実験的研究法の「実験法」について特徴を復習するとともに,利点と欠点を整理する。「実験法」は,実験室実験に代表されるように,統制された環境でデータを取得し,最も因果関係を検討するためには適した研究法である。また,実験者が操作する「独立変数」,実験者が測定する「従属変数」,実験者が統制する「剰余変数」が正確に統制しやすい。利点としては,変数を正確に統制できたり,因果関係の推定が可能であることが挙げられる。一方,欠点としては,生態学的妥当性の問題がつきまとうことになり,実験室環境に慣れない場合には,データがゆがむ可能性を秘めている。以上のことから,「実験法」の詳細区分をフローチャートとして整理することができ,この研究法の利点と欠点を説明することができるレベルまで理解する。
② 『調査法の全体像』を理解する。第11回で扱った観察的研究法の「調査法」について特徴を復習するとともに,利点と欠点を整理する。『調査法』は,質問紙を用いて,段階的に評定を求めたり,なんらかの心理的概念の程度を測定する研究法である。質問紙の尺度構成における順序やワーディングの問題があるが,一度に多くのデータを収集できるといった特徴がある。利点としては,統制された方法によって,多くのデータを一度に取得することができたり,実際にためらうような環境も設定することができる。一方,欠点としては,質問紙のワーディングが誘導的にならないようにしなければならないことや,欠損値やときには粗悪なデータが紛れることが多いことが挙げられる。以上のことから,「調査法」の詳細区分をフローチャートとして整理することができ,この研究法の利点と欠点を説明することができるレベルまで理解する。
③ 『観察法の全体像』を理解する。第12回で扱った観察的研究法の「観察法」について特徴を復習するとともに,利点と欠点を整理する。「観察法」は,より自然な状況下で観察対象者(ときにはヒト以外の動物)を観察し,データを取得する研究法である。利点としては,統制された方法で研究が行われることから,「生態学的妥当性」が高いことから,研究の知見を現実世界に適応しやすい。一方,欠点としては,統制されていない剰余変数が多かったり,参加者によって観察されることを知っている場合に行動が変わってしまったり,採取したデータの科学的な分析のための整理作業が膨大であったりすることが挙げられる。以上のことから,「観察法」の詳細区分をフローチャートとして整理することができ,この研究法の利点と欠点を説明することができるレベルまで理解する。
④ 『面接法の全体像』を理解する。第13回で扱った観察的研究法の「面接法」について特徴を復習するとともに,利点と欠点を整理する。「面接法」は,面接車が面接対象者と直接対面して,両者の会話を通してデータを収集する研究法である。利点としては,時間をかけて丁寧にそれぞれのより深いところまで探ることができたり,質問紙の「はい・いいえ」といった2択の回答に対しても,その回答をした内的な側面まで検討することができる。一方,欠点としては,言語によるコミュニケーションが必要であることや,誘導尋問や心理的圧力が生じてしまうことが起こりやすいため,面接対象者との信頼関係を構築しながら行う必要がある。以上のことから,「面接法」の詳細区分をフローチャートとして整理することができ,この研究法の利点と欠点を説明することができるレベルまで理解する。

キーワード ① 心理学研究法 ② 実験法 ③ 調査法 ④ 観察法 ⑤ 面接法
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【今回の復習課題】『研究法の授業全体を通して改めて実験法とはどのような研究手法なのか』,『研究法の授業全体を通して改めて調査法とはどのような研究手法なのか』,『研究法の授業全体を通して改めて観察法とはどのような研究手法なのか』,『研究法の授業全体を通して改めて面接法とはどのような研究手法なのか』の各問いについて,授業内容および授業資料をもとに,自分の言葉で要約する。これらの内容はWebを通じて(授業内で開示)回答すること。

【次回のための予習課題】履修判定指標を熟読し,定期試験に備えること。そして,定期試験に向けて,これまで配布した資料や教科書,自作のノートを再整理する。この際,自分の言葉で用語の説明ができるレベルまで理解しておくこと。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
心理学研究法を用いる上での基礎知識 心理学の研究をするうえで,必要となる基礎用語を説明することができること。特に,直接測定が不可能な対象の概念的定義と操作的定義の両者の関係を踏まえてそれぞれ説明できること。また,測定の信頼性と妥当性について,両者の関係を踏まえてそれぞれ説明できること。また,「科学的な説明をする」には「因果的な説明」が必要であることを根拠を踏まえて論じることができるようこと。そして,因果関係と相関関係の差異を具体的な例を用いて説明できること。 科学,概念的定義,操作的定義,妥当性,信頼性,因果関係,相関関係, 20 1, 2
実験法の概要とその利点と欠点 「実験法」は独立変数を直接操作することができ,因果関係を直接的に検討することのできる方法であることを説明できること。また,実験を細分化したときの「実験室実験」,「質問紙実験」,「現場実験」,「自然実験」,「準実験」が,それぞれどのような実験であるのか区別でき,それぞれの実験について特徴を説明できること。そして,「実験法」には因果関係を直接検討することができるなどの利点だけではなく,要求特性や実験者効果などの欠点があるということを論じられること。 実験法,独立変数,従属変数,剰余変数,実験室実験,質問紙実験,現場実験,自然実験,準実験 10 3,10,15
調査法の概要とその利点と欠点 「調査法」は質問紙によってなんらかの心理学的概念の程度を測定することのできる方法であることを説明できること。そして,質問紙の「単一回答法」,「複数回答法」,「自由回答法」が,それぞれどのような実験であるのかそれぞれ説明できること。また,調査対象者を抽出する方法をすべて説明できること。そして,「調査法」には一度にデータを採取することができるなどの利点だけではなく,粗悪なデータがまぎれる可能性があるなどの欠点があるということを論じられること。 調査法,質問紙,単一回答法,複数回答法,自由回答法,抽出法,調査方法,ワーディング 10 3,11,15
観察法の概要とその利点と欠点 「観察法」はより自然な状況でのヒトを見てその行動を観察する方法であることを説明できること。そして,観察には「自然観察法」と「実験観察法」があり,それぞれどのような観察方法であるのか説明できること。また,得られたデータの扱い方として「行動描写法」と「カテゴリー・チェック法」があり,それぞれどのような扱い方によるものかを説明できること。そして,「観察法」には生物学的妥当性が高いなどといった利点だけではなく,分析のためのデータが膨大であるといった欠点があるということを論じられること。 観察法,自然観察法,実験観察法,行動描写法,カテゴリー・チェック法 10 3,11,15
面接法の概要とその利点と欠点 「面接法」は面接者が面接対象者と直接対面することにより,会話を通してデータを収集する方法であることを説明できること。そして,面接法には「非構造化面接」,「半構造化面接」,「構造化面接」があり,それぞれがどのような方法であるのかを説明できること。また,面接者の態度として,,「共感的理解」,「無条件の肯定的関心」,「自己一致」があり,これらがどのような態度であるのか説明できること。そして,「面接法」には時間をかけて対象者の内面の深いところまで検討することができるといった利点だけではなく,言語によるコミュニケーションの必要性や誘導尋問,心理的圧力といった倫理的な問題があることを論じられること。 面接法,非構造化面接,半構造化面接,構造化面接,面接者の態度 10 3,12,15
心理学研究法で用いられる統計の知識 心理学研究では,科学的な方法にもとづき,収集したデータを数量化する。数量化したデータから研究の仮説を検討するために統計が用いられる。心理尺度を4つの水準にわけることができ,4つの水準それぞれの性質について理解し,具体例を挙げて説明できること。得られたデータの特徴を知るための記述統計の指標やデータの視覚化の方法を理解し,説明できること。また,得られたデータから母集団の性質を知るための推測統計の考え方について理解していること。 尺度水準,代表値,散布度,相関,連関,ヒストグラム,散布図,クロス集計表,統計的仮説検定 20 5~9
心理学特有の問題と研究倫理 心理学の研究特有の問題点として,「生態学的妥当性」がある。この「生態学的妥当性」がどのようなものであるのかについて説明することができ,心理学研究法として,「生態学的妥当性」を最も高めるものが「観察法」であることを説明することができる。また,その他の問題として,「要求特性」と「実験者効果」がそれぞれどのようなものであるのかについて説明できるようにすること。そして,「要求特性」と「実験者効果」の最も生じやすいものが「実験法」であることをその根拠を踏まえて論じられるようにすること。
また,心理学の研究は生物を対象とする以上,倫理的な配慮が必要となってくる。その際,研究倫理的には,どのような問題があるのかをそれぞれの研究法(実験法,調査法,観察法,検査法,面接法)について,説明できること。さらに,これらの研究法で生じる倫理的な問題を解決するために,リスクの低減,匿名性,守秘性などの工夫が用いられることを説明できること。そして,倫理審査委員会がなぜ必要であるのかを論じることができること。
生態学的妥当性,要求特性,実験者効果,研究倫理,リスクの低減,匿名性,守秘性,デブリーフィング,倫理審査委員会 20 4,14
評価方法 定期試験の結果によって評価する。 *成績発表後、教務課にて試験・レポートに関する総評が閲覧できます。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 三浦 麻子 (監)「心理学ベーシック第1巻 なるほど!心理学研究法」北大路書房 2,420円(税込)
山田 剛史,杉澤武俊,村井潤一郎「Rによるやさしい統計学」株式会社オーム社 2,970円(税込)
参考文献
実験・実習・教材費 なし