区分
(心)心理学専門領域科目 子ども・発達領域 (犯)犯罪心理学基盤科目 (生・環)学部共通科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
(心)専門的知識と実践的能力
(心)分析力と理解力
(心)地域貢献性
(環)専門性
(環)理解力
(環)実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
(心)課題分析力
(心)課題解決力
(心)課題対応力
(環)専門知識
(環)教養知識
(環)思考力
(環)実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
(心)本科目は1年生の必修科目であり,心理学専門領域科目の子ども・発達領域に設置されている。本科目を履修することで,子ども・発達領域の2年次以降の科目内容における専門的理解と教育現場で生じる現象および支援の理解を深めるとともに,他の領域の専門科目との関連においても有機的に結びついた学習が可能となる
(犯)犯罪心理学基盤科目に位置づけられ,教育心理学の基礎的な内容として,学習,動機づけ,発達の基本について学ぶ。当科目では,犯罪心理学発展科目の学びの基盤となる,心理学の主要な領域に関する基礎知識を修得する。
科目の目的
教育の営みに含まれる要因は,対象としての幼児・児童・生徒、働きかけるものとしての教師,両者の関係を通して起こってくる成長,学習,教授等の事象であり,その背景には家庭や地域の特性も影響している。これらを理解するため,教育・学校心理学の基礎的な内容として,学習,教授-学習過程,個人差と動機づけ,発達,学校不適応などの内容を取り上げる。また,学校現場における幼児・児童・生徒の内面や環境面で生じる現象やその背景要因について理解することを本講義の目的とする。さらに,学校現場は,いじめ,不登校,発達障害,虐待などの問題も抱えている。これらの課題に対し問題意識を持ち,追究していく姿勢も身につけたい。
到達目標
教育・学校心理学で取り上げる内容の学びを通して,教育現場で起こるさまざまな問題に関連する要因や現象を把握することができ,教育現場の抱える問題を分析し,援助・支援につないでいく視点を身につけることが目標である。また,履修判定指標に示されている①基本概念,学習過程の理解,②学習の理解,③個人差と動機づけの理解,④発達段階の理解,⑤不登校・いじめの理解,以上の5つの履修指標すべての内容を修得することを目指す。
科目の概要
本講義では,はじめに教育心理学の目的,研究,歴史的背景について概観し全体像を捉え,その後,教育・学校心理学の基礎的内容である「学習」,「個人差」,「動機づけ」,「学習過程」,「発達」,「学校生活と不適応」の内容について取り上げる。「学習」では,行動論的アプローチ,認知論的アプローチ,情報処理論的アプローチという3つのアプローチについて学ぶ。これらは人の行動の変容全体を学習として捉えている。次に「個人差」ではパーソナリティの測定や学力および創造性の測定といった内容,「動機づけ」はやる気にかかわる要因の特徴や理論,「学習過程」は教授―学習過程で生じる主な現象を取り上げる。「発達」においては,乳幼児期から青年期に至るまでの主要な発達段階的特徴を捉え,最後に「学校生活と不適応」として学校生活で生じる問題すなわちいじめや不登校に関する現状と課題そして支援の可能性について学んでいく。
科目のキーワード
①教育心理学 ②行動論 ③認知論 ④パーソナリティ ⑤動機づけ ⑥知能 ⑦学力・想像力 ⑧発達 ⑨いじめ・不登校
授業の展開方法
授業の展開として,基本的に講義形式を取る予定であるが,受け身的な形式ではなく,積極的に考える姿勢を尊重し適宜質疑応答を含めディスカッションを取り入れることも視野に入れている。なお,スクールカウンセラーの実務経験を生かし,特に6回,11回~14回の授業において実践現場の児童生徒が抱える問題について取り上げていく。問題の背景にある発達的特徴や家庭の影響なども踏まえ,事例(ケース)を示しながら支援の実践的な理解(個人の支援と同時に教師や保護者との連携や地域機関との連携など)を促進できるような展開をしたい。
オフィス・アワー
【月曜日】4時限目(前期のみ)、5時限目(後期のみ)、【水曜日】昼休み(会議日は除く)、【木曜日】1時限目(前期のみ)、2時限目(後期のみ)、昼休み、3時限目(後期のみ)
科目コード
PSC221
学年・期
1年・後期
科目名
教育・学校心理学
単位数
2
授業形態
講義
必修・選択
必須
学習時間
【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目
発達心理学
展開科目
(心)学習・言語心理学 子どもの心理療法 スクールカウンセリング
(犯)学習・言語心理学
関連資格
公認心理師、認定心理士
担当教員名
坂本真也
回
主題
コマシラバス項目
内容
教材・教具
1
オリエンテーション・教育心理学の概要
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第1回は,オリエンテーションとして授業全体の主題や評価方法について確認し,教育・学校心理学の目的,研究領域および研究方法,歴史的背景について学んでいく。
①コマシラバス,教科書p.1~2,参考文献『教育・学校心理学』p.13~19
②教科書p.2~3,参考文献『新教育心理学』p.17~24
③教科書p.1~3,参考文献『新教育心理学』p.3~15
配布プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① 全体像と評価方法 ② 教育心理学の目的と研究領域 ③ 教育心理学の歴史的背景 ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 授業の全体像を把握し,評価方法および履修判定指標について理解することを目指す。授業の全体像として,コマシラバスを基に,第1回~第15回の各回の授業主題を確認していく。各回の主題は,第1回:「オリエンテーション・教育心理学の概要」,第2回~第4回:「学習(1)~(3)」,第5回~第7回:「個人差(1)~(2)」,第7回~第8回:「動機づけ(1)~(2)」,第9回:「学習過程」,第10回「教育と発達」,第11回~第13回:「発達(1)~(3)」,第14回:「学校生活と不適応」,第15回:「授業全体の復習とまとめ」である。成績評価は,履修判定指標に示された5つの履修指標および履修指標の水準を基に期末試験により行うため,毎回の授業内容について予習・復習が重要である。
② 教育心理学の目的と研究領域では,以下の内容について学習していく。まず,教育心理学の目的は,「教育心理学は,教育に関連する諸事象について心理学的に研究し,教育の効果を高めるのに役立つような心理的知見と心理的技術とを提供しようとする学問である」(教育心理学エッセンシャルズ第2版,p1.)とされており,今日では,教育心理学は教育現象を扱う独自の理論,研究方法,技術をもつ心理学の分野として広く受け入れられるようになっている。また,研究領域として,「発達」「性格」「社会」「教授-学習」「測定・評価」「臨床」「障害」の7領域に整理(日本教育心理学会,2002)され,研究方法は観察法,実験法,調査法,事例研究法が主として採用されている。
③ 教育心理学の歴史的背景では,心理学の歴史を踏まえつつ以下の内容を中心に学習する。心理学のはじまりは,イギリス経験論哲学に端を発している。特に,ジョン・ロックの精神というのは生まれた時は白紙の状態「タブラ・ラサ:tabula rasa」にあり,それが環境との相互作用により染め出されていく,という考え方の影響を強く受けている。教育心理学のはじまりは,近代教育学の父であるペスタロッチ,その影響を受けた教育学の祖であるヘルバルトが,教育の方法に心理学を基礎として教育の体系化を試みたところにある。また,科学としての心理学は,ヴントの構成主義,1879年ドイツにライブチヒ大学に心理学実験室の開設がはじまりとされる。その後,行動主義,ゲシュタルト心理学,児童研究,精神測定,教育測定運動の影響を受けて教育心理学は発展したとされる。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① 授業の全体像 ② 研究領域 ③ 研究方法 ④ 心理学史 ⑤ 教育心理学の歴史
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:授業の全体像を把握し,教育心理学の目的と研究領域,教育心理学の歴史的背景について心理学の歴史を踏まえたジョン・ロックから教育測定運動までの内容をまとめてある配付プリントをノートにまとめておくこと。また,教科書p1~8を確認し,教育心理学の目的,教育心理学の研究領域および教育心理学の歴史的な流れの補足も行い,専門用語の説明ができるようにしておくとよい。予習:教科書p9~10の「学習への行動論的アプローチ」を読み,パブロフの古典的条件づけにおける無条件刺激,無条件反応,条件刺激,条件反応,対呈示,連合,といったメカニズムやワトソンの行動主義と「アルバート君の実験」について読んでおき,その概要を把握しておくこと。
2
学習(1)
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第2回「学習(1)」は,前回の教育心理学の歴史的背景とのつながりを確認しながら,行動論的アプローチとしてワトソンの行動主義,ハル,トールマン,スキナーらの新行動主義を取り上げていく。
①教科書p.3~5,参考文献『新教育心理学』p.50~54
②教科書p.5~8,,参考文献『新教育心理学』p.50~54
③教科書p.3~5,9~10
配布プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① 教育心理学の歴史的背景続き ② 教育測定学の発展と精神分析学 ③ パブロフの古典的条件づけ ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 教育心理学の歴史的背景続き,行動論的アプローチ前提内容として,ワトソンの行動主義,ハル,トールマン,スキナーらの新行動主義を取り上げていく。ワトソンの行動主義は,ヴントの構成主義を批判するところから,パブロフの条件反射説の影響を受け,心理学が科学になるためには,外部から観察できる「行動」を研究対象とし,刺激(stimulus)と反応(response)の関係から「行動」は成り立つ(S-R説)としている。その後,ハル,トールマン,スキナーらによる行動主義の理論の修正が唱えられ,刺激(stimulus)と反応(response)の間に生活体(organism)を組み込み,刺激-生活体-反応の関係を考える(S-O-R説)新行動主義が台頭し現代心理学に影響を与えている。
② 教育心理学の歴史的背景の後半部として,行動主義や新行動主義に続いて,教育心理学の測定理論の発展や知能検査,精神分析学を取り上げていく。ソーンダイクやキャッテルらの教育心理学における測定方法の発展として,サーストンが大きく寄与しており,態度,社会的判断,パーソナリティといった心理学のさまざまな変数を捉えた間隔尺度や比例(率)尺度といった開発をしている。ヨーロッパでは,フランスのビネーらによる知能検査も開発され,精神年齢という概念も提出されている。一方,人間の理解するためには,意識よりも無意識を分析すること必要性を説いたフロイトの精神分析学は,自由連想法や夢分析といった方法で無意識を探ることは考案されている。
③ 行動論的アプローチ前半として,パブロフのイヌの実験から得られた古典的条件づけのメカニズム,ワトソンのアルバート君(ぼうや)の実験から得られた知見についても説明する。学習(Learning)の導入として,心理学で扱う学習とは,「経験に基づく比較的永続的な行動の変容」に焦点を当てるという例を示し心理学における学習を踏まえた上で,古典的条件づけを理解していく。パブロフの古典的条件づけのメカニズムは,イヌの実験から音により唾液の分泌が生じるという現象に着目し,刺激とある反応が結びつくことを示すものといえる。このメカニズムは知らない間に学習しており,他の行動にも影響を受けるとされており,その応用としてワトソンの実験についても取り上げていく。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① 行動主義と新行動主義 ② 教育測定学 ③ 精神分析学 ④ 古典的条件づけ ⑤ ―
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:教育心理学の歴史的背景の続きである行動主義および新行動主義,教育心理学における測定方法に関する研究の発展,知能検査の開発,精神分析学の登場をまとめておく。また,学習の行動論的アプローチの古典的条件づけのメカニズム,古典的条件付けの応用などについても配付プリントをノートにまとめておくこと。これらの内容が記載されている教科書p6~10の確認もしておくと理解が深まる。予習:教科書p10~18の「第2章:学習への行動論的アプローチ」の続きを読み,ソーンダイクの試行錯誤説および道具的条件づけ,スキナーのオペラント条件づけ,トールマンの認知行動論的アプローチ,バンデューラ―のモデリング,「第3章:学習への認知論的アプローチ」におけるゲシュタルト心理学の項目を読み,概要をつかんでおく。
3
学習(2)
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第3回は,「学習(2)」として行動論的アプローチのソーンダイク,スキナー,トールマン,バンデューラ,認知論的アプローチの前半ではケーラーの洞察学習を取り上げていく。
①教科書p.11~13,参考文献『心理学』p.104~106,150~151
②教科書p.13~15,参考文献『新教育心理学』p.55~58
③教科書p.17~18,参考文献『心理学』p.108,151
配付プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① ソーンダイクとスキナー ② トールマンとバンデューラ ③ ケーラーの洞察学習 ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 行動論的アプローチの後半として,ソーンダイクの試行錯誤説・道具的条件づけ,スキナーのオペラント条件づけ・プログラム学習について解説していく。それぞれの概要は,まず,ソーンダイクは,「ネコの問題箱」による実験を通して,問題解決事態における動物のさまざまな試行錯誤(trial and error)が重要であり,試行錯誤が問題解決の道具となることを示し,これが道具的条件づけという。次に,スキナーは,スキナーボックスとよばれるネズミを用いた実験装置により,オペラント行動の条件づけの成立要因について研究し,このオペラント条件づけにより行動の強化のメカニズムを発見している。行動の強化は,刺激―反応―強化といった参考随伴性から成り立っているとされている。
② 行動論的アプローチの後半として,①に続いて,トールマンの潜在学習,バンデューラの観察学習について解説していく。トールマンは,行動主義を提唱したワトソンが示したS-Rの図式に代わり,「S(stimulus)-O(organism)-R(response)」という図式を提唱。ここで追加された「O」とは「生活体の内的過程」を構成概念として扱う,環境での体験が内的な観察できない事象を引き起こし,それが行動を生じさせるというものである。一方,バンデューラによると,人間において最も顕著にみられる学習様式は“モデリング”とされる。人間は,全てのことを直接経験して学ぶのではなく,誰かがするのを見て学ぶことが多いという現象を踏まえ,モデリングが学習様式として利用されることを明らかにしている。
③ 学習における認知論的アプローチ前半として,ケーラーの洞察学習について解説していく。認知論的アプローチとはどういうものか簡単に説明すると,そのルーツはゲシュタルト心理学にあるとされている。そのゲシュタルト理論では,学習を問題解決自体に直面した際に生じる認知構造の変化という側面から捉えるという特徴を持っている。ケーラーは,チンパンジーの問題解決場面(チンパンジーを檻の中に配置し,その中からバナナを取るための一連の行動)を設定して,問題解決は試行錯誤によって生じるのではなく問題場面の刺激配置の認知体制が変化することが,問題解決の基礎であり,学習の本質は認知の再体制化であり,それは,こうするとできる,といった「洞察(insight)」が生じることを示している。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① 試行錯誤説,オペラント条件づけ ② 潜在学習,観察学習 ③ 洞察学習 ④ ― ⑤ ―
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:行動論的アプローチの続きであるソーンダイクの試行錯誤説・道具的条件づけ,スキナーのオペラント条件づけ・プログラム学習,トールマンの潜在学習,バンデューラの観察学習,認知論的アプローチのケーラーの観察学習についてその特徴をまとめる。これらは教科書p.11~18や配付プリントにも記載されているため,ノートにまとめて整理しておくこと。 予習:教科書p18~25「認知論的アプローチ」の続きおよび「情報処理論的アプローチ」を読んでおく。認知論的アプローチの続きは,ピアジェ,ヴィゴツキー,ロジャーズの内容を概観し,情報処理論的アプローチでは記憶モデル,長期記憶の諸相およびエピソード記憶から意味記憶の項を把握しておくこと。
4
学習(3)
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第4回は,「学習(3)」として,認知論的アプローチの後半部では,ピアジェとヴィゴツキーの発達,ロジャーズの人間観,情報処理論的アプローチの記憶の諸相について学んでいく。
①教科書p.17~20,参考文献『新教育心理学』p.67,115~117
②教科書p.20,参考文献『心理学』p.478~482
③教科書p.20~26,参考文献『新教育心理学』p.64~67,参考文献『心理学』p.77~98
配付プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① ピアジェとヴィゴツキーの発達理論 ② ロジャーズの人間中心主義的アプローチ ③ 学習記憶モデルと長期記憶 ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 学習における認知論的アプローチの後半として,ピアジェの認知的発達段階,ヴィゴツキーの社会文化的発達理論について解説していく。それぞれの概要は以下の通りである。ピアジェは,「認識の形成は,生得的に規定されるものでも,経験によって書き込まれるものでもなく,主体が環境と相互作用する中で構成されるもの」という立場で認知発達を捉えている。その構成にかかわる中心的な概念は,シェム(シェマ,スキーマ),同化と調節,均衡化である。一方,ヴィゴツキーは,ピアジェと同様に子どもの発達研究に関心を持ち,子どもの知的発達の水準を2つに分けて考えることを提唱している。1つは,自力で問題解決できる現下の発達水準であり,もう1つは,他者からの援助や協同によって達成が可能になる水準である。
② 学習における認知論的アプローチの後半として,続いて,ロジャーズの人間中心主義的アプローチについて解説する。その概要は以下の通りである。ロジャーズは,心理療法ではこれまで患者に対し,“治療者中心”であったものから,クライエント(来談者)を尊重するクライエント中心療法(Client-Centered Therapy)を実践している。さらに,パーソンセンタード“人間中心” (person-centered)へと発展させている。また,教育現場でもパーソンセンタードの教育による教育再生の必要性を訴えている。教育現場における「人間中心とは」教師と生徒,親と子ども,上司と部下,一人ひとりが対等な存在として,お互いを尊重し,その可能性を信頼し,成長し合うという意味を含んでいる。
③ 情報処理論的アプローチとして,情報処理としての学習・記憶モデル,長期記憶の諸相およびエピソード記憶から意味記憶への移行に関する内容について解説していく。その概要は以下の通りである。まず,記憶の働きにおける3段階のモデルとして,「符号化(記銘)」,「貯蔵(保持)」,「検索(想起)」があり,さらに,時間ごとの記憶の種類として,感覚記憶,短期記憶,長期記憶が存在し,課題のための一時的な記憶の貯蔵を作動記憶(あるいは作業記憶)といいワーキングメモリーとされる。また,長期記憶の顕在記憶にはエピソード記憶(いつ,どこでといった時空間的に定位された自己の経験に関する記憶)と意味記憶に分かれている。またこの意味記憶は学校などで勉強し獲得した知識を含むものである。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① 認知的発達段階と社会文化的発達理論 ② クライエント中心,人間中心 ③ 長期記憶,エピソード記憶,意味記憶 ④ ― ⑤ ―
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:学習への認知論的アプローチの続きであるピアジェの認知的発達段階,ヴィゴツキーの社会文化的発達理論,ロジャーズの人間中心主義的アプローチと,学習への情報処理論的アプローチの情報処理としての学習・記憶モデル,長期記憶の諸相およびエピソード記憶から意味記憶への移行に関する内容についてまとめておくこと。 予習:テキストp.27~31の個人差の「パーソナリティ」を読んでおく。内容としては,パーソナリティとはどういうものなのか,どのように分類したり特性を捉えたりしているのか,といった点に留意した上で,質問紙法によるパーソナリティの測定,パーソナリティ検査,その他の検査,学級内での人間関係の項について把握しておくこと。
5
個人差(1)
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第5回は,「個人差(1)」として,パーソナリティの捉え方(類型論と特性論),パーソナリティの測定方法として代表的な質問紙法,学校内での人間関係の把握方法などについて学んでいく。
①教科書p.27,参考文献『心理学』p.213~221
②教科書p.27~31,参考文献『心理学』220~224
③教科書p.31,99~100,参考文献『新教育心理学』p.134~140
配付プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① パーソナリティの捉え方 ② 質問紙法によるパーソナリティ検査 ③ 学級内の人間関係 ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 個人差におけるパーソナリティとして,パーソナリティの捉え方について理解することを目指す。パーソナリティ(personality:人格)とは,「人の広い意味での行動(具体的な振る舞い,言語表出,思考活動,認知や判断,感情表出嫌悪判断など)に時間的・空間的一貫性を与えているもの」と定義されている。パーソナリティの捉え方には,類型論と特性論がある。類型論とは,一定の原理に基づいて,典型的な性格を設定し,それによって多様なパーソナリティを分類し,理解を容易にしようとする立場であり,特性論とは,パーソナリティ特徴の中で,一貫して出現する行動傾向やそのまとまりを特性とし,特性をパーソナリティ構成の単位とみなし,各特性の組み合わせによって個人のパーソナリティを記述する立場である。
② 個人差におけるパーソナリティの測定方法として最も用いられている質問紙法について理解することを目指す。質問紙法では,行動や考え方の特徴を記述した項目を多数用意し,冊子形式にまとめたものを調査協力者に提示して実施される。その他の実施方法には,集団で実施(集団調査)したり,郵送による調査(郵送調査)などで行われるものもあり,最近では,インターネットを利用して調査を行ったオンライン調査も行われている。質問紙法によるパーソナリティ検査は,これまで1つの検査で1つの側面を測定するものであったが,1940年代頃から1つの検査で複数のパーソナリティ特性を測る質問紙が多く作られていった。また,その他の検査として,職業興味検査や学習意欲に関する検査もある。
③ 個人差の中でも,学級内の人間関係を把握する方法として質問紙法についても理解することを目指す。学級内では,周囲とよくかかわっている児童生徒,その周辺にいる児童生徒,孤立している児童生徒などさまざまな人間関係が存在している。これらを把握するために,ソシオメトリック・テスト(sociometric test)を利用するなど人間関係の構造を測定する方法を理解していく。また,ゲス・フー・テスト(guess who technique)といった,学級などの集団内の構成員の性格特徴を第三者ではなく,構成員相互の評価により把握する検査もある(しかし,現在では学級内での人間関係に影響する懸念もあり,他の質問紙法による把握が利用されている点にも留意する必要がある)。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① 類型論と特性論 ② パーソナリティ検査 ③ ソシオメトリック・テスト ④ ― ⑤ ―
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:個人差におけるパーソナリティとして,パーソナリティの捉え方,パーソナリティ検査としての質問紙法,学級内の人間関係に関する内容を教科書p.27~31や配付プリントを参照しノートにまとめておく。具体的には,まずパーソナリティの類型論と特性論の特徴や相違,パーソナリティ検査としての質問紙法の歴史的な流れとそれに応じたパーソナリティ検査の種類や特徴,学校内の人間関係については,ソシオメトリック・テストやゲス・フー・テストの概要を押さえておくこと。 予習:教科書p.31~37,個人差における「知能,学力」の内容を読んでおく。知能とはどういうものか,知能を捉える立場や知能の構造,知能検査とその利用,学力とはどのようなものであるのか,など概観しておく。
6
個人差(2)
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第6回は,「個人差(2)」として,知能を捉える立場や知能の構造,知能の測定方法(ビネーやウェクスラーの知能検査),知能検査の利用,学力の考え方について取り上げていく。
①教科書p.31~32,参考文献『新教育心理学』p.107~111
②教科書p.32~35,参考文献『新教育心理学』p.112~116
③教科書p.35~37
配布プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① 知能の立場と知能の構造 ② 知能の測定 ③ 知能検査の利用と学力 ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 個人差としての知能において,知能の本質を捉える立場と知能の構造について解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下の通りである。科目の中での位置づけでも述べているが,知能(intelligence)の本質について研究者の立場は,大きく3つに整理されおり,①抽象的思考能力とみる立場,②学習能力とみる立場,③環境に対する適応能力とみる立場,があげられる。また,知能の構造は,知能の2因子説,多因子説(重因子説),知能構造モデル,結晶性知能と流動性知能といった構造があると考えられている。その中でも,知能は「環境に適応する能力」「新しいことを学ぶ能力」が中核をなすものだと考えられており,結晶性知能は,言語理解や経験を通して得た知識,流動性知能は,記憶,問題解決,新しい場面への適応というものである。
② 個人差としての知能において,知能の測定について解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下のとおりである。知能の測定方法として,ビネー式知能検査とウェクスラー式知能検査が広く利用されている。前者では,知能レベルをわかりやすく表示するため精神年齢という概念を採用している。さらに,知能指数(intelligence quotient;IQ)という概念が導入され,IQ=精神年齢MA/生活年齢CA×100といった形で数値化されて表現されるようになっている。後者のウェクスラー式知能検査では,ビネー式の知能であるIQとは問題の構成や算出方法が変わり,偏差IQを採用している。また,一般知能を結晶性能力,短期記憶,流動性能力,視空間能力,処理速度の各側面を4つの指標(言語理解,ワーキングメモリー,知覚推理,処理速度)から把握している。
③ 個人差としての知能において,知能検査の利用と,学力に関する導入部分について解説する。今回の授業で扱う内容の概要は以下のとおりである。知能検査の利用については,学業や職業場面に入る受験者のスクリーニングが目的(①予測・配置のため)としたものと,予測という目的で利用される場合,テストを行う側の必要性のみで受験者の利益は関心ごとではない。それに対して,個々の受験者の学習指導に活かすことを第一義として知能検査が用いられる(②診断・指導のため),という目的の違いにより使い分けられている。一方,学力に関しては,導入部分において,学力は教科指導のみによって身につくもののみという捉え方だけではなく,近年その捉え方が変わってきている側面として「生きる力」などについても議論されている。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① 結晶性知能と流動性知能 ② ビネーとウェクスラー ③ スクリーニングと個別支援 ④ ― ⑤ ―
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:個人差における知能として,知能の本質を捉える立場,知能の構造,知能の測定,知能検査の利用,個人差における学力の近年の傾向,といった内容をノートにまとめておくこと。配布プリントにも示されているように,知能の本質を捉える立場や知能の構造のモデルにはどのようなものがあるか,知能の測定すなわち知能検査を開発したビネー式知能検査やウェクスラー式知能検査の特徴や相違,知能検査の利用(スクリーニングや個別支援)に関する留意点,学力の考え方などまとめておく。 予習:教科書p.38~49,個人差における「学力,創造性」の内容を読んでおく。具体的には,学力の測定と評価,学力検査の利用,創造性とはどういうものか,創造性の測定・教育,創造性と知能の関係など概要を把握しておくこと。
7
動機づけ(1)
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第7回は,個人差の続きとして学力の測定方法や創造性を概観し,「動機づけ(1)」の内容の基本的メカニズムである外発的動機づけ,内発的動機づけについて取り上げていく。
①教科書p.37~45
②教科書p.47~48,参考文献『新教育心理学』p.58~60
③教科書p.48~49,参考文献『新教育心理学』p.111~112
配布プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① 学力と創造性 ② 外発的動機づけと内発的動機づけ ③ アンダーマイニング効果 ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 個人差の続きとして,学力および創造性について解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下のとおりである。学力については,学力の測定と評価として,形式に基づく分類,作成過程にもとづく分類,得点解釈の基準に基づく分類,時期にもとづく評価の分類といった分類と評価について取り上げていく。創造性は,人間の思考力は他の動物と比較して,「高度」といわれるが,それは人間の思考力には創造性が備わっているためといわれる。さらに,創造性は特定の領域で発揮されるが,その領域についての知識が豊富であることが基盤としている。創造性の測定については,ギルフォードの①拡散的思考と ②収束的思考,といった内容を検討する必要があり,特に①の拡散的思考が創造性の側面を示している。
② 動機づけとして,外発的動機づけと内発的動機づけについて解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下のとおりである。まず,動機づけ(motivation)とは,「人が一定の目標に向かって行動を開始し,それを維持する一連の働き」のことを指している。また,外発的動機づけとは,賞(報酬)や罰(叱責)のように,外的な働きかけによって行動が引き起こされ,方向づけられるもの,とされる。このような特徴は,古典的条件づけやオペラント条件づけの研究からも知られている。内発的動機づけとは,興味や関心など動機づけの源が自分の内側にあり,その行動自体が目的となるもの,とされる。学習場面では,子どもの主体的活動を重視する際,賞罰などに左右される外発的動機づけよりも,自らの意欲・意志によって学習に動機づけられる内発的動機づけが望ましいとされている。
③ 動機づけとして,内発的動機づけと関連のあるアンダーマイニング効果について解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下のとおりである。内発的動機づけとは,興味や関心など動機づけの源が自分の内側にあり,その行動自体が目的となるもの,であるが,アンダーマイニング効果(undermining effect)とは,「内発的動機づけによってなされている行動に,賞や褒美など外発的な報酬を与えることで,内発的動機づけが低下する現象」を指している。これは,外的報酬により,統制されている感覚を持ち,自己決定の欲求が阻害されたため内発的動機づけが低下するような現象である。このような現象を把握した上で,教育現場では児童生徒の動機づけのあり方を検討していく必要がある。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① 学力と創造性の測定 ② 外発的動機づけと内発的動機付け ③ アンダーマイニング効果 ④ ― ⑤ ―
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:個人差における学力および創造性を,さらに動機づけとして外発的動機づけ,内発的動機づけ,アンダーマインニング効果といった内容をノートにまとめておくこと。配布プリントにも示されているように,学力の測定や評価の4分類,創造性とはどのようなもので,その測定では拡散的思考を測る必要がある点,外発的動機づけと内発的動機づけの特徴や影響,内発的動機づけと関連するアンダーマインニング効果の影響についてノートにまとめておくこと。 予習:教科書p.49~54「動機づけの認知理論」の内容を読んで,アトキンソンの達成動機づけ理論,原因帰属,学習性無力感,目標理論,自己効力,自尊感情などの概要を把握しておくこと。
8
動機づけ(2)
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第8回は,「動機づけ(2)」として,動機づけ理論に関連した内容であるアトキンソンの達成動機理論,ロッターとワイナーの原因帰属,セリグマンらの学習生無力感に関して学んでいく。
①教科書p.49~50,参考文献『やさしい教育心理学』p.71~72
②教科書p.50~51,参考文献『やさしい教育心理学』p.77~85
③教科書p.51~54,参考文献『心理学』p.109
配布プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① 達成動機理論 ② 原因帰属について ③ 学習性無力感に関連する内容 ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 動機づけの認知理論として,アトキンソンの達成動機づけ理論について解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下のとおりである。アトキンソン(Atkinson,J.W.)は,成功に向けてがんばろうとする動機づけ(達成行動の動機づけ)の強さは, その人のもつ ①達成動機の強さと ②成功できそうかどうかという見込み(主観的成功確率=期待)と ③成功することの自分にとっての価値 によって決まると考えている。さらに,アトキンソンの達成行動の動機づけの強さは,達成行動の動機づけの強さ(接近傾向Ts)=達成動機(Ms)×期待(Ps)×価値(Is)で示されるという。つまり,達成動機は,その人の性格傾向であり一定とすると,達成行動の動機づけの強さは, 期待と価値で決まるという主張である。
② 動機づけの認知理論として,原因帰属について解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下のとおりである。原因帰属とは, ある行動の結果についてその原因を推測する認知過程のこと,である。ロッター(Rotter)は,原因帰属のあり方を,内的統制型と外的統制型の2つの傾向示している。一方,ワイナー(Weiner)の原因帰属理論では,子どもによって,学業に対する動機づけが異なるのは,各個人が持っている達成動機の強さや以前のテストの成績の悪さといった経験の違いではなく,それは,子どもが経験した出来事(外部から与えられる評価)に対する主観的な認知(解釈)が異なるためと考えている。このように,原因帰属の特徴を把握することで,動機づけのあり方が異なることを理解していく。
③ 動機づけの認知理論に関連して,セリグマンらの学習性無力感とそれに附随する事象について解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下のとおりである。学習性無力感(learned helplessness)とは,「強制的・不可避的な不快経験やその繰り返しの結果,何をしても環境に対して影響をおよぼすことができないという誤った全般的ネガティブな感覚が生じることにより,解決への試みが放棄され“あきらめ”が支配する」こととされる。これらを乗り越える要因として,自己効力感と自尊感情がある。前者は,「効力期待を自分が持っていると意識したときに生じる自信のようなもの」であり,後者は「自己に対する評価感情で,自分自身を基本的に価値のあるものとする感覚」とされている。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① アトキンソン ② ロッタ―とワイナ― ③ セリグマン ④ ― ⑤ ―
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:動機づけの認知理論であるアトキンソンの達成動機づけ理論,原因帰属,学習性無力感,目標理論,自己効力,自尊感情といった内容をノートにまとめておくこと。配布プリントにも示されているように,アトキンソンの達成動機づけ理論における達成行動の動機づけの強さ,ロッタ―やワイナ―の原因帰属の特徴,セリグマンらが提唱した学習性無力感とそれに関連する自己効力感および自尊感情についてノートにまとめておくこと。 予習:教科書p.55~60「学習過程」の内容を読んで,学校現場の授業における教師および児童生徒の相互作用について学ぶため,教授―学習過程,有意味受容学習,発見学習,プログラム学習,適性処遇交互作用などの概要を把握しておくこと。
9
学習過程
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第9回は,「学習過程」として,学習場面の児童生徒-教師関係に関連する事象を取り上げる。オースベルの有意味受容学習,ブルーナーの発見学習,スキナーのプログラム学習,クロンバックの適性処遇相互作用といった内容である。
①教科書p.55,60,参考文献『新教育心理学』p.71~75
②教科書p.55~57,参考文献『新教育心理学』p.77~80
③教科書p.57~60,参考文献『やさしい教育心理学』p.133~141
配布プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① 教授―学習過程 ② 有意味受容学習と発見学習 ③ プログラム学習と適正処遇交互作用 ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 学習過程の内容として,教授―学習過程および一斉授業について解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下のとおりである。教授は,教師が児童・生徒を,その指導目標に到達させていく過程であり,学習は,児童・生徒が教師からの適切な指導によって,その目標に対して到達していく過程である。これらは独立しているわけではなく,相互に力動的に依存関係にある。また,クラスの学習指導の形式として,一斉授業,グループ学習,個別学習,の3つに大別することができるが,その中でも,一斉授業では,個別に対応するというよりも,目前の集団に働きかけていき,児童・生徒に対し,同一時間内に,同一目標に到達するように,同一内容を教えることを目的としている。
② 学習過程の内容として,オースベルの有意味受容学習とブルーナーの発見学習について解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下のとおりである。有意味受容学習(meaningful reception learning)の提唱者のオースベル(Ausubel,D.P)は,学習には「有意味-機械的」「受容-発見」の2次元あり,そのうちで「有意味」と「受容」が特に重要としている。発見学習(discovery learning)とは,学習すべき原理や法則を学習者自身が発見し,知識だけではなく,解決方法を身につけるタイプの学習(ブルーナーにより提唱)である。これは,最先端の研究者が行っている創造的な思考過程を子どもたちに追体験させ,科学的思考力を育成しようとするのが目的とされている。
③ 学習過程の内容として,スキナーのプログラム学習とクロンバックの適性処遇交互作用について解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下のとおりである。プログラム学習は,スキナーによって提唱された学習法で,基本原理はオペラント条件づけである。具体的には,6つの原理から成り立っており,①スモールステップ,②積極的反応,③即時フィードバック,④自己ペース,⑤フェーディング,⑥学習者の検証,である。適性処遇交互作用(aptitude treatment interaction:ATI)という教育指導上の効果は,アメリカの教育心理学者クロンバック(Cronbach,L.J.)によってより強調されており,適性と処遇の組み合わせにより,効果が異なることを示している。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① 一斉授業 ② オースベルとブルーナー ③ スキナー,クロンバック ④ ― ⑤ ―
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:学校現場の授業における教師および児童生徒の相互作用について学ぶため,教授―学習過程,有意味受容学習,発見学習,プログラム学習,適性処遇交互作用といった内容をノートにまとめておくこと。配布プリントにも示されているように,教授と学習の関係,一斉授業の目的と工夫,オースベルの有意味受容学習とブルーナーの発見学習の特徴,スキナーのプログラム学習およびその6原則,クロンバックの適正処遇相互作用の学校現場での適用などについてノートにまとめておくこと。 予習:教科書p.61~69「発達と教育」の内容を読んで,発達と教育の関係性を捉えるために,子ども観,発達の要因に関する遺伝と環境,社会的存在としての子ども,などの概要を把握しておくこと。
10
発達と教育
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第10回は,「発達と教育」の内容として,子ども観の変遷,遺伝と環境要因のさまざまな立場(環境優位説,成熟優位説,輻輳説,相互作用説),学習の臨界期・敏感期に関連するローレンツの初期経験,ボウルビィの母性剥奪などについて学習していく。
①教科書p.61~62,参考文献『やさしい教育心理学』p.169~172
②教科書p.62~66,参考文献『やさしい教育心理学』p.173~185
③教科書p.66~69,参考文献『やさしい教育心理学』p.185~189
配布プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① 子ども観 ② 遺伝と環境 ③ 社会的存在としての子ども ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 発達と教育の内容の細目①として,子ども観の変遷と発達と成長の相違などについて解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下のとおりである。子ども観について,中世の時代,子どもは,大人の小さなもの,または未熟な・不完全な大人と捉えられていたが,ルソーのエミールの出版が大きな原動力となり,18世紀末になり子ども観を見なおす動きへと変わっていく。一方,発達と成長について,広義では,発達と成長は同じ意味であるが,狭義では,次のように分類される発達は質的変化,成長は量的変化,と捉える。また,人の発達は,きわめて複雑な経過をたどっており(分化と統合を繰り返す),身体の発達では,「頭部から尾部へ」「中心分から周辺部へ」という一定の方向性が認められる。
② 発達と教育の内容の細目②として,発達の要因に関する遺伝と環境の考え方について解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下のとおりである。遺伝と環境については次のような議論や変遷がみられている。生後の学習(条件づけなどの学習)こそが行動のすべてという立場のワトソンの環境(学習)優位説,適切な成熟を待たなければ,訓練の効果は期待されないゲゼルの成熟優位説,「遺伝も環境も」重要であるシュテルンやルクセンブルガーの輻輳説,現在発達を捉える際,遺伝と環境の相互作用によるという考えが広く受け入れられていてその代表がジェンセンやサメロフとチャンドラーの相互作用説である。また,発達は各年齢時期の段階的特徴が認められるとされ発達段階が示されており,代表的なのがフロイト,ピアジェ,エリクソンである。
③ 発達と教育の内容の細目③として,社会的存在としても子どもについて解説していく。今回の授業で扱う内容の概要は,以下のとおりである。社会的存在としての子どもについては,子どもは社会の中に生きており,その社会文化の中で子どもの発達や学習の過程を捉える必要がある。その中でも,子どもが生まれてから初めて出会う経験すなわち初期経験の重要性が指摘されている。それが動物行動学者ローレンツの刷り込みあるいは刻印づけと呼ばれる現象である。刷り込みとは,ふ化直後に出会ったものに ついていく現象をさしている。また,児童精神科医ボウルビィの生まれたばかりという早期に母性が奪われること(母性はく奪)について指摘し,後の発達の影響に影を大きく落とすこと示している。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① 子ども観の変遷 ② 遺伝要因・環境要因 ③ 社会的存在 ④ ― ⑤ ―
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:発達と教育の内容として,発達と教育の関係性を捉えるために,子ども観の変遷および発達と成長の相違,発達の要因に関する遺伝と環境の考え方,社会的存在としての子ども,といった内容をノートにまとめておくこと。また,配布プリントに示されているように,子ども観の変遷によりどのように子どもを捉え発達を考えるか,発達と成長の意味の違いについて,発達の要因である遺伝や環境について考えられている4つの学説の特徴を把握しておくこと,社会的存在としての子どもに関する初期経験の重要性を説明できるようノートにまとめておくこと。 予習:教科書p.71~76「乳幼児期の発達」の内容を読んで,乳幼児期の発達として,最初の1年,運動の発達,ことばの発達,愛着の形成と発達過程などの概要を把握しておくこと。
11
発達(1)
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第11回は,「発達(1)」として,ヒトと動物の誕生の違い(ポルトマン,生理的早産),ボウルビィの愛着形成理論,エインズワースのストレンジ・シチュエーション法など乳幼児期の特徴について考えていく。
①教科書p.71~74,参考文献『新教育心理学』p.35~41
②教科書p.74~75,参考文献『心理学』p.242~246
③教科書p.75~76,参考文献『心理学』p.477
配布プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① 乳児期の発達的特徴 ② 愛着の形成 ③ 愛着の発達過程 ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 発達の内容として,乳児期の発達の特徴と関連する事項について解説していく。乳児期の発達の特徴では,まず人が赤ちゃんとして生まれた際の「ヒト」の特殊性に着目したポルトマンの生理的早産について取り上げていく。それから,乳児期の終わりころに見られる運動と感覚の発達に関して,不随意運動(反射)から随意運動(自律・自発運動)へと発達を遂げ,運動面の発達に加えて,感覚や認知の機能の発達も相互作用し,能動的・主体的行動ができるといった内容を扱っていく。また,ことばの発達とコミュニケーションの発達についても触れていく。中でも,新生児であっても他者とかかわりを示すような反応である新生児模倣といった現象の意味についても取り上げていく。
② 発達の内容として,愛着の形成について解説していく。愛着の形成では,6か月を過ぎた乳児は,養育者に対して人見知りや養育者への後追いなど特別な行動を示すようになる。それは,乳児と養育者との間に心理的絆(emotional bonding)が形成されたことを示し,特定の人と人との愛情的絆を愛着(アタッチメント;attachment)という。愛着とは,ボウルビィによって提唱された概念で,「ある特定の人間もしくは動物と,ほかの特定の人間もしくは動物との間に形成された情緒的絆である」と定義している。この愛着の考えは,アカゲザルの実験によっても裏付けられており,栄養摂取よりも接触によるぬくもりが大切とハーロウも同様に愛着の重要性を示している。
③ 発達の内容として,愛着の発達過程について解説していく。愛着の発達過程の研究では,愛着の成立を示す子どもの行動を愛着行動といい,愛着対象へ接近を維持し,接触を求める行動でボウルビィによれば,①発信行動(泣く,微笑など),②定位行動(注視,後追いなど),③接近行動(抱きつき,しがみつきなど)のカテゴリーに分類されている。エインズワース(Ainsworth,M.D.S.)は,ボウルビィの共同研究者の1人であり,生後1歳~1歳半の子どもの愛着の個人差についての研究(ストレンジ・シチュエーション法)を行っている。このストレンジ・シチュエーション法では,子どもが初めての場所で親と分離し,見知らぬ人との対面によりストレスを体験し親と再会する様子を観察する実験方法を実施して愛着関係を分類化している。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① 生理的早産,新生児模倣 ② 愛着形成 ③ ストレンジ・シチュエーション法 ④ ― ⑤ ―
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:乳幼児期の発達の内容として,人としての誕生に関するポルトマンの生理的早産,運動や感覚の発達,ことばの発達とコミュニケーションについてまとめ,さらに,愛着の形成として,情緒的絆すなわちアタッチメントの定義やそれに関連する見解など,また,愛着の発達過程については,ボウルビィの愛着の定義を踏まえた上で,愛着行動やエインズワースのストレンジ・シチュエーション法による親子の愛着関係の分類といった内容をノートにまとめておくこと。予習:教科書p.76~86「幼児期の発達」および「児童期の発達」の内容を読んで,幼児期と児童期の認知の発達(ピアジェの発達段階)とこの時期の思考の特徴と関連した内容,社会性や友人関係の発達など概要を把握しておく。併せて,教科書とは幼児期・児童期の問題と関連して,別に発達障害に関しても調べておくこと。
12
発達(2)
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第12回は,「発達(2)」として,幼児期や児童期に関連する事項を取り上げていく。ピアジェの認知発達段階,児童期の仲間関係(ギャング・エイジ,ギャング・グループなど),発達障害の特徴などについて学習していく。
①教科書p.76~84,参考文献『教育・学校心理学』p.28~30
②教科書p.84~86,参考文献『新教育心理学』p.41~43
③教科書p.122~131,参考文献『教育・学校心理学』p.91~95
配布プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① 幼児期・児童期の認知および思考の発達 ② 社会性の発達 ③ 児童期の発達的問題 ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 発達の内容として,幼児期と児童期の発達,特に認知や思考の発達を示しているピアジェの発達段階について解説していく。ピアジェの発達段階では,①0~2歳を感覚・運動期,②2~7歳頃を前操作期,③7~10,11歳頃を具体的操作期,④11歳以降を形式的操作期,としている。各時期の認知・思考の特徴は,①は目の前にある物を見て触れて知識を獲得(同化,調節,均衡化),単純な思考,②論理的思考はできないが,想像することはできる,原始的思考がある(生物と無生物の混同,観念世界のものが実在する,知的自己中心性から「心の理論」は4歳前後に獲得) ,③質量の保存の概念ができる ・論理的思考の萌芽があり,具体的な物や状況であれば,筋道をたてて考えられる,④具体的な物や状況なしに,例をあげたり仮説を想定したりして,言葉や記号を使い,抽象的観念的に論理的思考ができる,という内容である。
② 発達の内容として,社会性の発達における遊び,友人関係を中心に解説していく。まず子どもの遊びは,運動面や認知面だけでなく,気持ちや社会性の発達にも影響している。人間関係の拡がりにも寄与しているとされている。友人関係については,親子関係と関連した対人関係の発達的変化の研究を見ると,3・4年生あたりから親への同調は減少していき,思春期にかけて仲間への同調が増加していく。また,5年生あたりから友人に対する自己開示が両親よりも多くなり,思春期には両親への自己開示は急激に減少する。という特徴があることが研究より指摘されている。それと関連して,ビゲローの友情の概念の発達の3段階,ギャング・エイジについても取り上げていく。
③ 発達の内容と関連が深い児童期の発達的問題である発達障害について解説していく。発達障害(developmental disorder)とは,幼児期や児童期における多様な原因によって,発達の遅れやひずみが生じ,知的機能などの獲得が困難となる症状のことをいう。主な発達障害の分類については,知的な問題として知的障害,注意・行動や衝動性の問題として注意欠陥多動性障害(ADHD:Attention Deficit Hyperactivity Disorder),学習の問題として学習障害(LD:Learning Disability),認知・コミュニケーション・社会性の問題として自閉症スペクトラム障害(あるいは自閉スペクトラム症:ASD,昔は広汎性発達障害PDDと言われていた)について概要を把握していく。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① ピアジェの発達段階 ② ギャング・エイジ ③ 発達障害 ④ ― ⑤ ―
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:幼児期と児童期の発達の内容として,幼児期と児童期の認知の発達(ピアジェの発達段階)とこの時期の思考の特徴と関連した内容,社会性や友人関係の発達,幼児期・児童期の問題と関連した発達に関する問題をまとめること。具体的には,ピアジェの発達段階についてそれぞれの時期・段階における特徴を把握しておくこと,知的自己中心性(三山の課題やサリーとアンの課題)についてもまとめておく,次に社会性では遊びと発達の意味,友人関係の発達(ビゲローの友情の概念の発達,ギャング・エイジ),発達障害の分類とその特徴について,配布資料を中心にノートにまとめておくこと。予習:教科書p.87~92「思春期の発達」および「青年期の発達」の内容を読んで,思春期の心理・身体・社会性の変化を捉えておくこと,第二反抗期(親子関係と自立),友人関係,青年期のアイデンティティ,職業選択などの概要をつかんでおくこと。
13
発達(3)
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第13回は,「発達(3)」として,思春期・青年期の心理発達を取り上げていく。その内容は,思春期の特徴である第二次性徴,第二反抗期,自立と親子関係,青年期の発達課題であるエリクソンの提唱したアイデンティティの確立,マーシャの自我同一性地位などについて学習していく。
①教科書p.87~90,参考文献『心理学』p.255~260
②教科書p.90~92,参考文献『教育・学校心理学』p.31~33
③教科書p.92~94
配布プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① 思春期の心理・身体・社会的変化と第二反抗期,友人関係 ② 青年期のアイデンティティ ③ 青年期の職業選択 ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 発達の内容として,思春期の心理的,身体的,社会的変化について解説していく。思春期の心理・身体・社会性では,12歳頃~18歳頃までの第二次性徴の発現から身長が伸び止まるまでの期間において変化する身体的変化と同時に社会的・心理的変化の側面として,心理的離乳や第二の誕生と言われ,大人との関係の変化,「個」としての自覚を持つ側面を取り上げていく。これまでの依存的な親子関係からの離脱すなわち自立を目指す思春期へと動き始めるという特徴を持つ。また,第二反抗期および友人関係では,「個」の自覚に伴い,親,教師,周囲の大人,社会などに反抗,攻撃,批判,嫌悪,苛立ちを示す。一方で,親子関係や友人関係の中では,自立に伴いその中で不安を感じたり,甘えが出てきたりさまざまな葛藤を抱えることになる。この葛藤や悩みに向き合っていくことが思春期・青年期の発達課題でもある。
② 発達の内容として,青年期のアイデンティティとそれに関連する事象について解説していく。青年期とは,前期(12歳前後~18歳前後)と後期(18歳前後~30歳前後)にわかれ,青年期前期を思春期,青年期後期を青年期と呼ぶが,青年期の最も重要な発達が,自我同一性(アイデンティティ:ego-identity)の獲得(確立)である。このアイデンティティとは,①これまで生きてきた・これから生きていく自分(過去から将来までの自分:連続性・斉一性),②他者や社会の中での自分(他者と比較して,他者から見られている自分:対他的・心理社会的側面),といった2つの側面から成り立っている。また,アイデンティティの分類である自我同一性地位として,①同一性達成,②モラトリアム,③早期完了,④同一性拡散といったものもある。
③ 青年期の発達と関連して,職業選択も重要な意味を持っているため,その点についても現代の親子関係も背景に含めて解説していく。職業に就くことは,社会的・現実的生活において自分自身を定義づけることになり,大人として認められるための必要条件の1つである。職業選択は,生き方の選択であり,職業的同一性の獲得は青年期の主要な課題となっている。職業生活の発達段階として,スーパーは,5つの段階を示している。①成長段階(0~14歳),②探索段階(15~24歳),③確立段階(25~44歳),④維持段階(45~64歳),⑤下降段階(65歳以降)。また,現代の親子関係は,「養育者への反抗」よりも「養育者との一体性からの離脱」という色彩が強くなっている。自立や職業選択に大きな影響を与えている可能性がある。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① 依存と自立 ② アイデンティティと同一性地位 ③ 職業生活の発達段階 ④ ⑤
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:思春期および青年期の発達の内容では,思春期の心理・身体・社会的な変化,第二反抗期(親子関係と自立),友人関係,青年期のアイデンティティ,職業選択について取り上げてきた。その内容をまとめておくことが必要である。具体的には,第二次性徴から身体的変化が起こり,大人として成長すると共に心理的,社会的変化も迎え,「個」としての自覚が目覚めること,同時に第二反抗期といわれる親や教師周囲の大人などへの反発に加え友人関係の重要性といった依存と自立の課題についてもまとめおく。さらに,アイデンティティとはどのような特徴があるのかという点,職業選択についても職業的アイデンティティや職業生活の発達についてもそれぞれノートにまとめておくこと。 予習:教科書p.103~116の「学校生活への不適応」の内容を読んで,不登校,いじめの問題の概要を把握しておくこと。
14
学校生活と不適応
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第14回は,「学校生活と不適応」の内容として,不登校・いじめの問題を取り上げる。不登校の現状,定義,背景要因を概観し,いじめの現状,定義,関連する法律,いじめの課題と予防プログラムについて学んでいく。
①教科書p.103~110,,参考文献『教育・学校心理学』p.105~109
②教科書p.110~115,,参考文献『教育・学校心理学』p.116~125
③教科書p.115~116,参考文献『教育・学校心理学』p.125~127
配布プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① 不登校の背景 ② いじめの定義と課題 ③ いじめ予防について ④ ― ⑤ ―
細目レベル
① 学校生活と不適応として,不登校の問題を取り上げ,わが国の不登校の名称や推移そして背景要因について解説する。不登校の定義は,「何らかの心理的,情緒的,身体的,あるいは社会的要因・背景により,児童生徒が登校しないあるいはしたくてもできない状況にあること(ただし,病気や経済的理由を除く)」また,30日以上の長期欠席者を不登校とみなすようになっている。不登校数の推移を捉えると,近年再び増加傾向に転じており,その本人にかかわる理由の多くは,不安や無気力の傾向,次いで人間関係の課題であり,学校や家庭にかかわる理由では,家庭の状況,友人関係の問題,学業不振が上位に挙げられている。不登校の背景は,さまざまな要因が複合的に重なって生じていると考えられていて,本人の要因に加え,家族,学校,社会の要因も複雑に絡んでいる。
② 学校の不適応として,いじめの問題を取り上げ,いじめの定義やいじめ防止対策推進法,いじめの課題について解説していく。いじめが社会問題として認識されて久しいが,現在いじめは,自殺を引き起こす深刻な「教育的課題」として人々に理解されるようになっている。そのため,いじめを防止するために,2013年にいじめ防止対策推進法(いじめ防止法)が制定されており,学校現場でもその防止に努めるよう,組織を挙げて対応すること問われている。また,不登校同様にいじめも近年増加が著しい問題であり,さまざまな課題を抱えているのが現状である。その課題には,いくつかあるが,特に小中学生の間でもインターネットを利用する頻度が年々増えており,その中でのネットいじめの対応が挙げられており,さらに,メディア・リテラシー教育に取り組む必要性も喫緊の課題となっている。
③ 世界で取り組まれているいじめ予防プログラムについて解説していく。学校で行われる予防教育(1次的援助サービス,2次的援助サービス)の中で,いじめに焦点を当てたプログラムが開発され,効果を挙げている。ここでいう1次的援助サービスとは,すべての子どもを対象とした発生予防の側面を持っており,2次的援助サービスとは,一部の子どもが対象であり,問題が見られつつあり,早期にかかわる側面を意味している。各国のいじめ予防プログラムには,①ノルウェー:「オルヴェウスいじめ予防プログラム」(オルヴェウス:Olweus, D.),②イギリス:「シェフィールド・プロジェクト」(スミス:Smith, P.K.),③フィンランド:「キヴァ・プログラム」(サルミヴァリ:Salmivali, C.)といった名称の取り組みが行われている。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① 不登校 ② いじめ ③ いじめ予防プログラム ④ ― ⑤ ―
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:学校生活と不適応について,学校現場が抱える問題である不登校およびいじめといじめ予防について授業では取り上げてきた。不登校では,名称の変遷や推移について触れ,主な理由について概観し,そして背景要因(本人,学校,家庭,社会)が複雑に重なっている点を取り上げてきた。これらを配付プリントも参照しながらノートにまとめておくこと。さらに,いじめ問題については,定義およびいじめ防止対策推進法を示し,いじめ問題の課題となる内容についても取り上げている。特にいじめ問題ではインターネットを利用したいじめ行為についても取り上げており,メディア・リテラシー教育の必要性についても扱った。また,いじめの予防プログラムについて,諸外国の動向や取り組みについても紹介してきた。いじめ問題の内容についてもまとめておくこと。予習:教科書p.1~92および103~116のこれまで取り上げた内容全体について概観し,ノートにまとめてあるかどうか確認しておく。
15
授業全体の復習とまとめ
科目の中での位置付け
本講義では,教育現場における幼児・児童・生徒の諸側面,教師との関係,家庭や地域特性など多層的に理解することを目指し,教育・学校心理学の基礎的内容について学習する。具体的には,第1回「オリエンテーション・教育心理学の概要」では,教育・学校心理学の全体像把握と導入,第2回~第4回にかけて「学習」に関連する心理学的知見や理論,第5回・第6回では「個人差」にかかわるパーソナリティや知能の理解や測定方法,第7回・第8回において「動機づけ」の基本的メカニズム,第9回「学習過程」は授業における教師-児童生徒の相互作用,第10回「発達と教育」の内容を通して子どもの発達と教育との関係性,第11回~第13回にかけて「発達」について教育場面における発達段階に応じた特徴,第14回「学校生活と不適応」として不登校・いじめの問題の背景要因や予防・支援の基礎知識,第15回では「授業全体の復習とまとめ」の作業,といったものである。本講義の全体の中で,第15回は,「授業全体の復習とまとめ」の回となっている。まず,第1回~6回で取り上げた教育心理学の概要,学習,個人差の内容を振り返り,次に第7回~第9回の内容である動機づけや学習過程を復習し,最後に第10回~第14回で取り上げた発達と教育の関連事項,乳幼児期から青年期までの発達,不登校といじめ問題について振り返り,要点をまとめていく。
①教科書p.1~46
②教科書p.47~60
③教科書p.61~94,99~116
配布プリント(必要に応じて視聴覚教材)
コマ主題細目
① 学習と個人差 ② 動機づけと学習過程 ③ 発達と学校不適応 ④ ⑤ ―
細目レベル
① 学習と個人差の内容について再確認を行っていく。学習において,行動論的アプローチでは,パブロフの古典的条件づけ,ソーンダイクの試行錯誤説,スキナーのオペラント条件づけ,トールマンの潜在学習,バンデューラの観察学習,といった事項。認知論的アプローチでは,ケーラーの洞察学習,ピアジェの認知的発達,赤ちゃんの原始反射,ヴィゴツキーの社会文化的発達理論,ロジャーズの人間中心的アプローチの事項。情報処理論的アプローチでは,記憶の3段階モデル,短期記憶,長期記憶,顕在-潜在記憶,エピソード記憶,意味記憶の事項であった。また,個人差において,類型論と特性論,質問紙法の質問項目や回答方法に加えパーソナリティ検査,質問紙法の長所と短所,学級内の人間関係としてソシオメトリック・テストなど。知能では知能の構造と知能の測定として,ビネー式知能検査,ウェクスラー式知能検査と,知能検査の利用など。学力および創造性では,その測定方法と評価などについて取り上げてきた。
② 動機づけと学習過程の内容について再確認を行っていく。動機づけにおいて,外発的動機づけ,内発的動機づけ,アンダーマイニング効果,アトキンソンの達成動機理論,原因帰属(ロッターとワイナー),学習性無力感(セリグマンら),自己効力感,自尊感情,などの項目を取り上げてきた。また,学習過程において,教授-学習過程の一斉授業,有意味受容学習(オースベルの学習タイプ),先行オーガナイザー(説明と比較),発見学習(ブルーナーによる提唱,仮説実験授業),プログラム学習(スキナーによる学習法で基本原理=オペラント条件づけ,CAI),6つの原理(スモールステップなど),適性処遇交互作用(ATI)などの内容を取り上げてきた。
③ 発達と学校不適応の内容についての再確認を行っていく。教育と発達において,遺伝と環境要因として,環境優位説(ワトソン),成熟優位説(ゲゼル),輻輳説(シュテルンなど),相互作用説(ジェンセンなど),発達段階(フロイト,ピアジェ,エリクソン),ハヴィガーストの発達課題,初期経験(ローレンツ,ボウルビィ)などを取り上げてきた。発達において,乳児期ではポルトマンの生理的早産,運動と感覚の発達,ことばの発達,愛着の形成,愛着(情緒的絆,アタッチメント),ストレンジ・シチュエーション法の事項。幼児期・児童期では,ピアジェの発達段階,原始的思考,知的自己中心性,遊びの発達,友人関係の発達。思春期では,心理的離乳,依存と自立,第二反抗期(自立と親子関係),友人関係。青年期では,自我同一性(アイデンティティ)の確立と発達プロセス,エリクソンの発達段階,自我同一性地位,職業選択の各内容。学校不適応では,不登校の定義,名称,背景要因,いじめの定義,いじめ防止対策推進法,いじめの課題,いじめ予防プログラムに関する内容を取り上げてきた。
④ ―
⑤ ―
キーワード
① 学習と個人差 ② 学習過程と動機づけ ③ 発達と学校不適応 ④ ⑤ ―
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:教科書p.1~94,99~116のこれまで学んできた内容についてノートにまとめてある内容を確認しておくこと。繰り返しになるが,内容としては以下のとおりである。「学習」では,行動論的アプローチ,認知論的アプローチ,情報処理論的アプローチという3つのアプローチ。「個人差」では,パーソナリティの測定や知能と知能検査,学力および創造性の測定といった内容。「動機づけ」は,やる気にかかわる要因としての外発的動機づけや内発的動機づけの特徴や達成動機理論,原因帰属理論,学習性無力感などであった。「学習過程」は,教授過程において生じる現象,有意味受容学習,発見学習,プログラム学習,適性処遇交互作用(ATI)など。「発達」は,乳幼児期から青年期に至るまでの主要な発達段階的特徴,各段階で重要な内容。「学校不適応」といった学校の抱える問題であるいじめや不登校に関する現状と課題そして支援の可能性についてである。
履修判定指標
履修指標
履修指標の水準
キーワード
配点
関連回
基本概念,学習過程の理解
教育心理学の目的,研究領域(発達,性格,社会,教授-学習,測定・評価,臨床,障害の7領域),研究方法(観察法,実験法,調査法,事例研究法)および歴史的背景(心理学のはじまり,教育心理学のはじまり,19世紀末~20世紀の心理学・教育心理学)について理解し,説明することができる。また,学習過程(授業形式,有意味受容学習,発見学習,プログラム学習,適正処遇交互作用)の各内容についてそのメカニズムや特徴および専門用語の意味を理解している。
教育心理学,目的と歴史背景,学習過程
10
1,9,15
学習の理解
行動論的アプローチ(古典的条件づけ,試行錯誤説,オペラント条件づけ,潜在学習,観察学習),認知論的アプローチ(洞察学習,認知的発達,原始反射,社会文化的発達理論,人間中心的アプローチ),情報処理論的アプローチ(記憶の3段階モデル,短期,長期,顕在-潜在,エピソード,意味)といった各内容について,そのメカニズムや特徴,専門用語を理解し,説明することができる。また,各内容および事項について具体例を挙げることができる。
行動論,認知論,情報処理論
20
2~4,15
個人差と動機づけの理解
パーソナリティ(類型論,特性論,質問紙法の構成や長所と短所,パーソナリティ検査の特徴や種類,ソシオメトリック・テスト,ゲス・フー・テストなど),知能(知能の捉え方,知能の構造,ビネー式知能検査,ウェクスラー式知能検査,知能検査の利用の意図など)学力(学力の測定と評価,テストの種類など),創造性(拡散的思考の測定),動機づけ(外発的動機づけ,内発的動機づけ,アンダーマイニング効果,達成動機,原因帰属,学習性無力感など)についてそのメカニズムや特徴,専門用語を理解し,説明することができる。また,各内容および事項について具体例を挙げることができる。
パーソナリティ,知能,学力,動機づけ,達成動機,原因帰属
30
5~8,15
発達段階の理解
乳幼児期(生理的早産,運動・感覚・ことばの発達,愛着の形成,愛着の発達過程,ストレンジ・シチュエーション法,ピアジェの発達段階,原始的思考,自己中心性など),児童期(社会性の発達としての遊びの発達,友人関係の発達など),思春期・青年期(心理的離乳,依存と自立,親子関係と友人関係,自我同一性,自我同一性地位,職業選択など)について,そのメカニズムや特徴,専門用語を理解し,説明することができる。また,各内容もしくは事項について具体例を挙げることができる。
乳幼児期,児童期,青年期
30
10~13,15
不登校・いじめの理解
学校現場の不適応の問題として,不登校(定義や名称,推移,背景要因の個人・家族・学校・社会など),いじめ(定義,いじめ防止対策推進法,いじめの分類やいじめの課題,いじめ予防プログラム)の問題その特徴を理解し,説明することができる。また,不登校やいじめに関する内容について,問題や課題などを踏まえた上で,不登校もしくはいじめの問題に対する心の健康を支える援助の可能性など検討し,考えや意見などを述べることができる。
学校不適応,不登校,いじめ
10
14~15
―
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―
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―
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―
―
評価方法
期末試験(100%)によって評価する。 *成績発表後、教務課にて試験・レポートに関する総評が閲覧できます。
評価基準
評語
学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・
S (100~90点)
学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・
A (89~80点)
学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・
B (79~70点)
学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・
C (69~60点)
学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・
D (60点未満)
教科書
西村純一・井森澄江編『教育心理学エッセンシャルズ』第2版(ナカニシヤ出版/2,200円+税)
参考文献
1.石隈利紀編『教育・学校心理学』(遠見書房/2,600円+税),2.曻地三郎(監修)『新教育心理学』(ナカニシヤ出版/2,000円+税),3.無藤隆・森敏昭・遠藤由美・玉瀬耕治『心理学』(有斐閣/3,600円+税),4.鎌原雅彦・竹綱誠一郎『やさしい教育心理学』(有斐閣アルマ/1,900円+税),その他適宜授業中に紹介します。
実験・実習・教材費
なし