区分 犯罪心理学発展科目 法心理学領域
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門的知識と実践的能力 分析力と理解力 地域貢献性
カリキュラム・ポリシーとの関係
課題分析力 課題解決力 課題対応力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
目撃証言心理の授業は犯罪心理学科が学ぶべき大きな4つの柱としているものの一つで、法心理学領域の一分野を形成する供述心理学の授業である。供述心理学は刑事事件や民事事件において、関係する人々が行う多様な供述の信用性を、心理学を援用して科学的に研究し、その研究結果の知識を応用して問題解決にあたる領域のことである。犯罪心理学を学ぶ者は、犯罪に関わる関係者の証言がどのような要因によって歪んだり、変更されてしまうのかを知っておく必要がある。本授業はそのような証言の中でも、冤罪の起事を起こす主要な原因となる目撃者の証言に関わる心理学の研究について、幅広く学ぶ。
科目の目的
供述心理学は19世紀の末にヨーロッパー、特にフランス、ドイツで始まり、その後心理学の発展とともに広がりを見せた学問領域である。各国に応じて法体系の違いから、供述心理学の発展にもその影響が出るものの、人間心理に関わる根本的な供述の心理は普遍的な法則に支配されていると推察される。つまり、社会文化を超えて、成立する供述の一般法則について理解することが目標となる。目撃証言心理学に関しては、以上のような経緯を辿りつつ、1950年代に興った認知心理学によって一層の発展を遂げるようになった。そして、1970年代以降、極めて重要な発見が行われるようになり、その状況は今日まで至っている。本授業では、目撃証言の心理科学が明らかにしてきた現象、その現象の背後にある諸要因、そのような諸要因の関与によってどのように記憶が歪むのかに関するメカニズムに関する知識を獲得することが目的となる。
到達目標
目撃証言の心理学にはそれが形成されて今日に至るまで長い歴史があり、相応の知識の蓄積がある。目撃証言の心理学は20世紀の初頭には錚々たる研究者によって研究が行われたが、体系的な研究が始まったのは1970年代からである。これには認知心理学、日常認知心理学の発展が大きく貢献しているが、その事情をきちんと理解することがなぜ、目撃証言心理学が形成されたのかを知る重要な背景となる。次に、実際の科学的研究によって明らかになった、目撃証言の信用性に影響する多くの関与要因が明らかになってきた。それらは、目撃者の記憶を形成する段階(検索段階)、記憶を貯蔵する段階、そして記憶を想起する段階の3段階に分けられる。ただ、それぞれの段階に影響する要因一つ一つが重要な関与要因であり、それらの要因を実際に検討した研究も数多い。学生諸君は、各要因に関して、どのような研究が行われr、何が明らかになったのかをきちんと整理して、理解をすること。
科目の概要
認知心理学
日常認知心理学
生態学的妥当性
誤判研究
目撃証言の問題点
目撃証言に影響する諸要因について
影響要因の分類法
記憶の3段階による分類
推定変数とシステム変数による分類
記憶の3段階による各要因の分類
符号化段階(明るさ、距離、目撃時間、凶暴性、
貯蔵段階(保持時間、事後情報効果、社会的影響)
検索段階(ラインナップの構成法、実施法、各種バイアス)
アーカイブ研究
以上の項目に関して、それぞれの概念を理解できるように授業で展開する


科目のキーワード
認知心理学
日常認知心理学
生態学的妥当性
誤判研究
目撃証言の問題点
目撃証言に影響する諸要因について
影響要因の分類法
記憶の3段階による分類
推定変数とシステム変数による分類
記憶の3段階による各要因の分類
符号化段階
貯蔵段階
検索段階
アーカイブ研究

授業の展開方法
授業は、パワーポイントを使用して展開する。学生諸君にはこのパワポを印刷したものを配布するので、こちらも利用して、ノートおよび教科書として使用することができる。学生諸君にとっては新しい学習内容が多いので、必ず復習して、知識を着実に理解するように努めてほしい。資料はヨリソルに展開するので、そちらを利用することも可能である。また小テストを授業終了10分前より実施する。
オフィス・アワー
【月曜日】4時限目(後期のみ)、【火曜日】3時限目(前期のみ)・4時限目(後期のみ)、【水曜日】2・3時限目(前期のみ)
科目コード PSC603
学年・期 3年・前期
科目名 供述心理学特論(目撃証言の心理学)
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 個人・社会・自然が直面する課題に対して専門的な理解を深めると共に、学際的な柔軟性を有し、実践的な能力を有する。企業・地域社会などのあらゆるコミュニティに寄与する組織的な活動能力を有する。
前提とする科目 供述心理学
展開科目 総合演習Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ
関連資格 なし
担当教員名 厳島行雄
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 目撃証言心理学とは何か? 科目の中での位置付け 認知心理学が興った1960年代から60年近くが経過した。その間、人間の認知能力に関して多くのことがわかってきた。特に、注意、記憶、思考に関して、基礎的研究が、私たちが外界を認知する方法に関して、明らかにしてきた。そして、多くの科学的事実やその事実を説明するための理論が提唱されてきた。
ただ、それらは実験室実験の要因を統制した研究から生まれたものである。しかし、生身の人間は実験室で生活しているわけではない。生身の人間は、複雑な環境で生きている。そこで、第1回授業では、1)認知の基礎研究で分かったこと、特に人間の認知がどのように働くのかの概略を学。次に、2)基礎研究から日常認知の研究への移行について学ぶ。ここでは、なぜ、日常の認知研究が必要なのか、生態学的妥当性というキーワードを中心に、その必要性を考える。最後に、3)日常認知における目撃証言心理学研究について学ぶ。これは、まさに日常に起こる事故や事件を理解する人間の能力の科学的理解が要求される問題で、実は、心理学が日々起こる事故や事件のリアルを正確に理解する助けになる研究領域である。

目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① 認知心理学 ② 応用認知心理学 ③ 目撃証言心理学
細目レベル ① 認知心理学
認知心理学とは心理学における大きな研究領域の一つであり、注意、言語使用、記憶、知覚、問題解決、創造性、推論などの心的過程を科学的に研究する学問として位置付けられている。認知心理学は、1920年代から1950年代にかけて、観察不可能な精神過程は経験科学の領域外であるとした行動主義からの脱却として、1960年代に誕生した。言語学やサイバネティクスの研究者や応用心理学の研究者が、人間の行動を説明するために精神処理のモデルを用いるようになったことが、この断絶につながった。認知心理学から派生した研究は、心理学の他の分野や、認知科学、言語学、経済学などの様々な近代的学問分野に統合された。初期の認知心理学は、心理学の隣接領域科学(言語学、サイバネティクス、計算科学、・・)の研究者が開発したアイデアを取り込んで、人間の情報処理を説明するモデルを提案するようになった。そして、認知心理学の領域は、より学際的なアプローチをとり、人間以外の対象や人工知能の研究を含む認知科学の領域と重なっている。

② 日常認知心理学
日常認知心理学は日常的な生活の中で生じている認知がどのような機能や過程によって支えられているのかを解明することを目的とする心理学である。従来、心理学研究は人間の認知機能を解明するために実験室実験を利用してきた。そこでは複数の要因が統制されて、その要因の結果としての行動が測定された。その結果、莫大な事実が明らかになり、その事実の説明のために多くの理論が提唱されてきた。ただ、1980年代になり、日常記憶研究、認知科学領域の認知の文化依存性・社会構成性といった概念の提唱によって、日常の場で発揮されている人の認知機能が、実験室内で観察されるような課題達成とは異なっている可能性が高い(全てではないが)、そのために、日常の生活・活動の中で認知機能を研究する必要性が強調されるようになった。
 その中で生まれた重要な概念が生態学的妥当性(ecological validity)という考え方である。つまり、実際に人が日常の活動の場で行なっている行動と関連する意味をもつ程度と言い換えても良いかもしれない。これは人工的な実験室研究で観察される現象が、どの程度「実際に人が日常の活動の場で行なっている行動と関連する意味をもつものか」ということを意味し、その程度を評価しようとする考え方である。たとえば一般に,無意味綴りnonsense syllableを用いた実験で測定できる認知能力が、実際に人が生活の中で見せる「意味のある認知対象に対する認知的な処理」との間に直接的な関連性があるのかどうかを考えるアイデアになる。そこで、より日常の文脈で働く認知能力研究の必要性が高まったといえよう。ただ、厳密な意味での条件統制が難しい研究が多くなり、その統制と知識の厳密性との関係が問われるようになった。

③ 目撃証言心理学
刑事裁判における目撃証言は、たとえ善意でなされたものであったとしても、(a)基礎科学の研究により、目撃者の記憶がいかに惑わされやすいかが明らかにされていること、(b)現実の不当な有罪判決の多くが、無実の被告を目撃者が誤認していることに起因していることから、問題を含んだものと考えられている。しかし、科学的心理学研究によって、目撃者の記憶に基づく供述が信頼できる条件と、信頼できない条件があることも知られるようになった。まさに、記憶は非常に壊れやすいものであるために、目撃者の記憶に基づく供述は、警察の捜査の初期に行われる最初のテストが最も信頼できる。実際、記憶をテストするという行為そのものが、記憶を変化させる(すなわち、汚染する)のであり、このことは、警察の取調べ(詳細の想起)によって記憶をテストする場合でも、警察の写真並べ(顔の認識)によって記憶をテストする場合でも起こり得る現象である。この目撃者の証言に影響する諸要因を明らかにし、現実の司法制度への貢献を行い、司法の誤りを予防できるのが目撃証言の心理学である。1970年代以降明らかにされてきた、この領域における事実や理論、研究法について学ぶ。



キーワード ① 認知心理学 ② 日常認知心理学 ③ 目撃証言心理学 ④ 生態学的妥当性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 学生諸氏はすでに心理学の基礎を学んできている。この授業はすでに学んだ供述心理学の中の目撃証言の心理学を学ぶものである。諸君は供述心理学で展開した目撃証言の箇所を予習しておくこと。特に、目撃者の記憶の誤りが誤った裁判につながりやすいこと、その記憶がどのような要因によって影響を受けるのかを予習しておくこと。
2 誤判とは何か? 科目の中での位置付け 日常心理学の中でも、特に心理学的検討が進んできたのが、目撃供述の心理学研究である。応用認知心理学に位置付けられる目撃供述心理学は、応用認知心理学の中でも最も成功した領域と言われている。その研究の量も多く、質的にも優れたものが多い。今回の授業では、この目撃供述が誤ったがために、裁判が誤るという悲劇について、誤判研究と呼ばれる研究領域からの成果を中心に授業を進める。授業の前半は従来型の、古典的手法による誤判研究を紹介し、後半では1990年代にアメリカ合衆国で始められた、イノセンス・プロジェクトという全米の訴訟組織が行っている冤罪救済から明らかになった事例を紹介し、誤判がなぜ起こるのかを考え、次の授業につなげたい。
目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① 誤判研究 ② 新しい研究法 ③ DNA鑑定
細目レベル ① 誤判研究とは
過去、少なからず裁判が誤ったという報告が存在する。なぜ誤判とわかるのか、それは新しい証拠の出現や真犯人の検挙、新たな事件の犯人の過去の事件等に関する情報から明らかになったのである。誤判研究で私たちが目にしやすいその研究の多くは米国からの報告であった。特に注目に値するのが、ラトナー(1986)によって報告された研究である。彼はオハイオ大学の法学部の教員で、1900年代中庸までの米国における冤罪の情報を収集した。それらは、法学者や心理学者が収集したもので、それらの情報に基づいて冤罪の内容が分析されたのである。収集された事例は300件を超えたものの、分析の対象となる情報が欠損していたために、実際に分析されたのは205件であった。このラトナーの報告では、205件の罪状、釈放されるまでの期間などの分析も行われているが、ここでは誤判原因のみを示すと、最も多い誤判原因は目撃者の誤りで100 件、続いて証人による偽証で、これが21件と続く。次に多いのが刑事裁判当局者の怠慢で、これが19件であった。このことから、誤判原因は圧倒的に目撃者による誤りにあることが明らかになった。その後、誤判研究に画期的な方法が現れた。それが次のテーマでる。

② 新しい究明法:イノセンス・プロジェクトの存在が示したことが、誤判原因の究明に画期的な方法となった。それはDNA分析から明らかになった事実に基づいている。1992年、アメリカにはイノセンス・プロジェクトという全米の訴訟組織が立ち上がった。どの時代にも、自分たちが誤った有罪判決を受け、収監させられていると主張する人々の存在があった。このプロジェクトでは、そのような主張をする人たちの生態情報である血液や髪などの部分からDNAを抽出し、犯罪現場等に慰留されていた犯人の生体情報であるDNAの型のマッチングが行った。もし冤罪を主張する人物が犯人であれば、DNAの型が一致するはずである。然るに、一致しなければ、収監されていて冤罪を主張する人物は犯人でないということになる。この手法を用いて、イノセンス・プロジェクトは冤罪救済を行ってきているのである。
彼らの活動の結果、現在までに冤罪が明らかになった375件のうち、約70%で目撃供述が関わっていたことが明らかになったのである。ラットナーの分析結果よりも20%も多い割合である。では、なぜ目撃者は誤るのであろうか?そのテーマは次回の授業でお話ししよう。


③ 2) DNA鑑定
私たちの体は、たんぱく質、糖、脂質や核酸などいろいろな物質から成り立っている。この生物体の構成を規定しているものが遺伝子である。この遺伝子の物質的本体が、いわゆるDNAと呼ばれるもので、DNAとは、デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)の頭文字をとって略したものである。遺伝子の本体であるDNAは、人間の体を形づくる細胞すべてに存在し、糖、リン酸、さらにアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)という4種類の塩基から構成される。この4種類の組み合わせが遺伝情報となり、親から子へ、子から孫へと受け継がれる。
DNA型鑑定とは?
DNA鑑定とは、DNA多型の存在する部位を検査し、それが誰のDNAのものであるのかを特定することによって個人識別を行うものである。たとえば、犯行現場に残された犯人のものと思われる毛髪、血痕等から抽出したDNAを用いてDNA多型を検査し、犯人のDNAと照合する。例えば、子供のDNAは父親および母親から1対ずつ受け継がれるので、それを利用し親子鑑定をおこなう。なお、DNA型鑑定に用いられる部分は、身体的特徴や遺伝病などの遺伝情報を持たない部分について検査している。 現在、用いられている検査方法では、DNAの塩基配列そのものではなく、4塩基を1単位とする繰り返し数をもつ部位(DNA多型領域)を検査している。従って、この鑑定は、DNA鑑定というよりDNA型鑑定と呼ばれる。

キーワード ① 誤判研究 ② イノセンスプロジェクト ③ DNA鑑定
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 復習:心理学研究がどのように、認知心理学、日常認知心理学、目撃証言心理学を発展させてきたのかを理解しておこう。
予習:目撃証言研究は現実の法的問題の解決に役立つ心理学としても意味がある。また、日常に私たちの出来事の知覚や記憶がどのような要因によって成立し、また歪むのかを明らかにしている。参考図書に目を通しておくと理解が促進する。またシラバスを読んでおくこと。

3 目撃証言理解の基認:認知能力の仕組み 科目の中での位置付け 私たちが外界に適応的に過ごすためには、外界で起こっていることを正確に知る必要がある。しかし、正確と言っても、そこには自ずと限界がある。私たちは外界の情報全てを取り込んでいるわけではない。視覚世界においても、聴覚的世界においても、注意の働きによって、選択的に情報の取り込みが行われる。初期の注意研究では、聴覚における選択についての研究が行われた。授業では、この注意研究の展開を学ぶ(選択的注意、注意のフィルターモデル、特徴統合理論等)。次に、知覚に関しては形の発生、形のまとまり、3次元知覚、運動知覚を学んできた。そしてそれらの解釈された世界を記憶にとどめる。記憶に関する理論もすでに学んできたが、ここでは新たに目撃記憶に関する内容を学ぶ。そして最後に、私たちの持つ既有知識(スキーマ)によって、記憶が歪むという現実について、それがどのように影響するのかについても学ぶ。
目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① 注意の理論:フィルター説 ② 注意の理論:特徴統合説 ③ 記憶の理論:ボックスモデル ④ 記憶の理論:符号化特定性原理
細目レベル ① 注意の理論
外界からの入力は一時的な感覚記憶(sensory buffer)に登録され、その後、物理的特徴が」分析される。その中から選択された情報のみがフィルターを通り(フィルターで濾過されて)、次なるシステムに移行し意味的処理を受ける。ここに入れないと、低次な処理のままであり、情報は消失される。追唱しない側のメッセージは、物理的変化の特徴は検出できるが、使用言語の変化や意味の内容は認知できないことが説明できる。このフィルター理論は初期選択説と呼ばれる(入力の早い段階で情報の選択がなされるという意味で)。比較的新しい理論としては特徴統合理論がある。特徴統合モデルは2段階の処理モデルである。第1段階では視野全体が並列的に処理されて、視覚情報が色、方向、動きの特徴ごとに分解された特徴マップ群が作られる。第2段階では、位置のマスターマップ上で注意のスポットによって、空間位置の選択が逐次的に行われる。そしてその位置に対応した特徴マップ群の情報が統合される。そして、その後に記憶表象と照合され、認知に至る。この理論の特徴:①低次視覚から高次視覚の視覚情報処理を2段階のモデルとして定式化したこと。②注意の働きによって特徴が統合されると主張している(結びつけ問題への一つの回答)。

② 記憶の理論
ボックスアプローチ
1968年のアトキンソン&シフリンによって提唱された有名なモデルである。このモデルは、感覚記憶、短期記憶、長期記憶という大きくは3つのコンポーネントから構成されるモデルである。感覚記憶は視覚的感覚記憶に関するスパーリングなどの研究から、極めて短時間に貯蔵される記憶であることがわかっている。そしてその感覚記憶の情報の中でも、注意のメカニズムによって捕捉された情報が、意識的体験を伴う短期記憶もしくはワーキングメリーに転送されて、意味づけが行われると仮定されている。このワーキングメモリーは1970年代中庸に、バッドレーによって疑念化されたモデルであり、現在までにいくつかの主要な修正が行われている。私たちの文章理解や、新しい知覚情報の過去の情報との照合が行われるシステムとして提案されている。そして、このワーキングメモリーの処理の結果が長期記憶に貯蔵される。この長期記憶はさらにいくつかの主要な機能区分が行われるようになってきている。スクワイアーの区分を参照のこと。

③ 記憶の理論
符号化特定性原理
符号化特定性原理とは、人々が処理する情報がその情報が存在する文脈と結び付けられて記憶され、符号化時と検索時の文脈が一致するとよく想起がなされると説明する。このことは感情や気分と記憶の間にも成立する。特定の気分状態のときに,その気分と感情的に一致する刺激情報が符号化されやすく、検索されやすいということで知られる、気分一致処理という現象が存在する。また、特定の気分状態において符号化された情報は同じ気分状態において検索され やすいという、気分依存検索という現象も知られている。いずれの現象も符号化特定性原理を基礎にした感情ネットワーク理論で説明される。強い感情喚起を伴う出来事を知ったときの状況の記憶はフラッシュバルブ記憶と指定知られている。.以前は特殊な記憶処理メカニズムが仮定されて説明されていたが、最近ではリハーサル機会の多さなど通常の記憶と同様のメカニズムによって説明可能とされている。また、不快感情を喚起する出来事の記憶では、注意が向けられる中心的情報は注意の向けられていない周辺的情報よりも記憶がよいこと、周辺的情報は不快感情を喚起しない場合に比べて喚起する場合の方がより記憶が悪狗なることが知られている。この現象は、最近では記憶の問題というよりも有効視野の変化という観点からの説明がなされている。

キーワード ① 注意の理論 ② フィルター説 ③ 特徴統合 ④ 記憶のボックスモデル ⑤ 記憶の符号化特定性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 復習:誤判とは何か、その原因には何があるのかを整理してまとめておくこと。また誤判原因の種類、その内容について理解すること。特に、目撃証言が誤判原因の主要な原因であることの意味を考えておくこと。予習:私たちの認知能力がどのような特性を持つのかを知ることが極めて重要である。シラバスをよく読んでおくこと。知覚・認知の授業を受けたものは、その学習を復讐しておくこと。
4 目撃証言の正確さに影響する要因:要因と要因の分類法 科目の中での位置付け 目撃証言の正確さに影響する多くの要因があることが、科学的研究によって明らかになっている。それらの要因は目撃の体験時に関わる要因に始まり、その出来事を想起するまでの間に関わる要因、そして早期の段階において関わる要因に分類される。この授業では、それらの要因にどのような要因があるのかを学ぶ。次に、それらの要因を分類する方法について学ぶ。この後者の分類に関しては、現在まで2種類の方法が考えられている。一つは ロフタス、グリーン、ドイルという研究者によって提案された、記憶の段階による区分(符号化段階、貯蔵段階、検索段階という3段階の区分)であり、もう一つは、ウエルズによって提唱された目撃への影響を推定せざるを得ない変数と、司法制度が統制可能な変数という区分である。目撃証言の正確さに関与する要因が数多く知られているので、今回授業では、それらの概略を示すにとどめ、具体的な要因がどのようにして明らかになっていったかに関する、研究についての授業は第5回以降の授業で展開する。
目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① 目撃証言の正確さへの影響要因 ② 記憶の3段階による区分 ③ 推定変数とシステム変数による区分
細目レベル ① 目撃者の記憶の正確さに影響する要因は、多くが研究によってわかってきている。Kassin et al.(2001)の研究では、目撃証言の研究の専門家に30の要因に関して、その要因がどれほど信用できると考えているかを調査している。そこで採用された要因は、ストレス、凶器注目、ショーアップ、ラインナップの公平さ、ラインナップの教示、知覚時間、忘却曲線、正確さ−確信度、事後情報、質問の語法、無意識的転移、訓練された観察者、催眠の正確さ、催眠の暗示性、期待と態度、出来事の凶暴性、異人種バイアス、確信度の従順性、アルコールの摂取、マグショットバイアス、長期の抑圧、誤った児童期の記憶、弁別性、子どもの目撃の正確性、子どもの被暗示性、記述に合ったラインナップ、提示の様式、高齢の目撃者、識別の速さ、である。
② 記憶の3段階による区分
記憶の機能的区分に関しては、さまざまな理論が提唱されていきている。すでに知覚・認知心理学で学んだように、感覚記憶、ワーキングメモリー、長期記憶、潜在記憶、顕在記憶、意味記憶、エピソード記憶、自伝的記憶、展望記憶などの概念はそれらの理論的要請によって提案されてきた考え方である。ただ、記憶の最もシンプルなモデルは、記憶への情報の取り込み(符号化)、その維持(貯蔵)、貯蔵された情報の利用(検索)という、3つの段階である。これが、ロフタス、グリーン、ドイルという研究者によって提案された、記憶の段階による区分(符号化段階、貯蔵段階、検索段階という3段階の区分)であり、それぞれの段階での影響が目撃者の記憶や記憶の報告に影響することがわかっている。本授業ではその分類を学ぶ。

③ 記憶の3段階による区分
記憶の機能的区分に関しては、さまざまな理論が提唱されていきている。すでに知覚・認知心理学で学んだように、感覚記憶、ワーキングメモリー、長期記憶、潜在記憶、顕在記憶、意味記憶、エピソード記憶、自伝的記憶、展望記憶などの概念はそれらの理論的要請によって提案されてきた考え方である。ただ、記憶の最もシンプルなモデルは、記憶への情報の取り込み(符号化)、その維持(貯蔵)、貯蔵された情報の利用(検索)という、3つの段階である。これが、ロフタス、グリーン、ドイルという研究者によって提案された、記憶の段階による区分(符号化段階、貯蔵段階、検索段階という3段階の区分)であり、それぞれの段階での影響が目撃者の記憶や記憶の報告に影響することがわかっている。本授業ではその分類を学ぶ。

キーワード ① 目撃証言の正確さへの影響要因 ② 記憶の3段階による要因の分類(符号化・貯蔵・検索) ③ 推定変数とシステム変数
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 復習:目撃証言の正確さに影響する多くの要因が研究され、発見されてきている。それらの要因を体系的に整理する方法が考案されている。記憶段階による分類とシステム変数と推定変数に分ける分類である。これらの内容を理解すること。予習:記憶の段階で影響要因を分類する方法のうち、符号化段階に関する要因をシラバスにて調べておくこと。
5 符号化段階に影響する要因(1):出来事変数 科目の中での位置付け 目撃者が出会う出来事は突然に訪れる。その出来事も様々である。強盗、暴力など様々なシーンを目撃する。ただ、目撃は必ずしもショッキングな出来事ばかりではない。厳島の経験した目撃者の記憶の信用性に関する鑑定では、車の助手席の人物の記憶(自民党本部放火事件)、車とその近くにいた人物の記憶(飯塚事件)、夜に暗いアパートに入る階段での人物の目撃(東電O L殺人事件)、民家の入り口に立っている人物の目撃(布川事件)、夜にタバコを買いに行って、そのすぐ後で建物の入り口で目撃した人物の記憶(神戸質屋事件)、・・・などなど、むしろ凶暴な現場の目撃は数少ない。では、そのような目撃にはどのような要因が関与するのだろうか。ロフタス、グリーン、ドイル(1986)の分類では、符号化段階に影響する要因ということになる。この段階における影響要因は、さらに二つに分類できる。一つは出来事要因で、目撃の物理的環境要因である。もう一つは目撃者に関わる要因である。前者には、対象の明るさ、対象までの距離、対象を見ていた時間などが分類される。後者では、目撃者の年齢、視力、情動の有無、知的水準などが関わる。今回授業は出来事要因について学ぶ。


目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① 照明要因 ② 距離要因 ③ 凶器要因(凶器注目効果)
細目レベル ① 照明
先行研究では、距離の増加と明るさの減少により、目撃者の識別の正しさが低下することが示されているが、それらの複合的な効果はよく理解されていない。紹介する照明に関する論文では、低ルクス(lx)において、ターゲット・プレゼンス(TP)ラインアップにおける目撃者の後日識別が信頼できなくなる最大距離を設定することである。応用心理学研究に掲載された本論文が、この要因に関する知識獲得に大いに参考になる。実験参加者(N=178)を3つのルクス条件(高:300ルクス、中:10ルクス、低:0.7ルクス)のいずれかに無作為に割り付け、8つの距離(6~20m)に8つの標的(一度に1つずつ)を提示した。各標的提示の後、8人同時のTPラインアップが行われた(すなわち、偶然に標的を正しく選択する確率は0.125であった)。すべてのlx条件において、TP識別の正答率は距離の増加とともに減少することがわかった。20mでの正答率は、高視野角条件では0.53、中視野角条件では0.41、低視野角条件では0.11であった。しかし、この結果は、20mの低照度下(0.7lx)での観察では、信頼できる正しい標的の存在同定は非常に困難であることを示している(2019年論文)Cogent Psychology誌

② 距離
目撃者と犯人の距離が離れるほど、目撃者同定の精度は低下するが、それでも信頼できる観察ができる最大距離は不明である。我々の目的はこの閾値を特定することである。われわれは、距離が長くなると、同定と否認の精度と信頼度が低下し、反応時間が長くなるという仮説を立てた。距離の増加は、若年層と高齢層の参加者(対若年層)により悪影響を及ぼし、その結果、診断性が1となる年齢層特有の距離閾値が生じるという交互作用効果を期待した。8人用のコンピュータを用いたラインアップ課題を用いて、5~110mの距離にある4つの生きた標的を参加者に提示した。同時および逐次的なターゲット不在または存在するラインアップを用い、1588名の参加者(年齢範囲6-77歳、女性61%、フィンランド人95%)に提示し、6233名の回答を得た。その結果、40m地点での診断度は5m地点よりも50%低く、距離が長くなるにつれて診断度は先細りとなり、100m地点ではすべての年齢層とラインアップのタイプで1(±0.5)となった。しかし、幼児(6~11歳)と高齢者(45~77歳)は、高齢者(12~17歳)と若年成人(18~44歳)に比べ、より短い距離で診断度1に達した。その結果、距離が長くなるにつれて信頼度が低下する一方、反応時間は安定しており、信頼度が高く反応時間が短いことが40mまでの識別精度と関連していることがわかった。授業では、本論文の先行研究も紹介する。

③ 凶器注目効果
凶器注目効果とは、目撃者の注意が犯罪の加害者が持っている凶器に集中し、加害者の外見などの周辺的な詳細が損なわれることを指す。この現象に関する研究は、1960年代に心理学と法学への関心が再び高まった時期に活発化した。1960年代に心理学と法学への関心が再燃し、目撃証言の能力と限界が法心理学者の主要な焦点となった。法心理学者の大きな焦点となった。刑事訴追がどの程度、目撃者の証言に依存しているかが明らかになったのである。有罪判決を勝ち取るために、刑事訴追が目撃者の証言にどの程度依存しているかということから、状況的要因や知覚的要因が目撃者の証言にどのような影響を与えるかという研究が生まれた。 知覚的な要因が、目撃者の記憶にどのような影響を与えるかという研究が生まれた(Marshall, 1966)。早くから 凶悪犯罪における凶器の有無は、目撃者の記憶に影響を与えうる要因の1つとして特定された(Marshall, 1966, Kuehn, 1974)。授業では、凶器集中の原因として考えられている2つの主要な仮説を検討する。覚醒仮説と固着仮説である。そしてこの現象の生態学的妥当性を検討する。

キーワード ① 出来事要因 ② 照明 ③ 距離 ④ 狂気の介在:凶器注目効果
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 復習:出来事要因のうち、目撃者の証言に影響する照明要因、距離要因、凶器の要因について、きちんと説明できるようにしておくこと。予習:出来事の凶暴性要因、異人種要因、色彩知覚の要因について、シラバスを読んでおくこと。


6 符号化段階に影響する要因(2):出来事変数 科目の中での位置付け 今回の授業で学ぶトピックスは、符号化段階における出来事要因のうち、出来事の凶暴性、異人種、色彩の要因を扱う。事件の中には凶暴性のある出来事が含まれることも多い。人が殴り合ったり、殺人が行われたりということである。またその現場に残された暴力の跡を目撃するかもしれない。そのような場合には、私たちは、情動的覚醒を覚える。また、ネガティブな感情を抱くこともある。そのような経験は私たちの記憶にどのような影響を与えるのであろうか。今回授業と次回の授業では、そのような出来事の凶暴性が私たちの認知能力に与える影響について考える。
 また、目撃対象となる人物は、目撃者と同じ人種であるとは限らない。特に、西欧諸国では多くの人種が同じ地域で生活している。そういう意味で犯罪の国際化に伴って、異人種の目撃の問題は今後さらに大きくなっていくことが予想される。授業では、この要因に関する研究を紹介する。
 また、色彩の知覚は夜間に極端に困難になる。これは視細胞の種類に依存する。色彩をコントロール錐体細胞は、夜間には働かない。や後生動物にはこの細胞がないことも知られている。この色彩の知覚のメカニズムを探る。

目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① 出来事の凶暴性 ② 異人種効果 ③ 色彩知覚
細目レベル ① 出来事の凶暴性
1986年1月に起きたスペースシャトル "チャレンジャー号 "の爆発事故を例に、認知心理学者のウルリック・ナイサーは事件の翌日、エモリー大学の学生108人を対象に調査を行った。その調査には、その出来事にまつわる状況、どこにいたか、誰といたか、何をしていたか、といった質問が含まれていた。1988年、彼は同じ学生に再び同じアンケートを行った。今度は多くの回答が違っていた。実際、2度目にはすべての質問に対して異なる回答をした生徒もいた。しかし、2度目は相反する回答をしたにもかかわらず、ほとんどの学生は自分の回答の正確さに強い自信を持っていると答えた。
心理学者のエリザベス・フェルプスは2011年の研究で、ある出来事が特に興奮したりトラウマになったりした場合、その記憶は脳に焼きつき、しばしば周辺の詳細が犠牲になると結論づけた。目撃者の記憶の焦点は、それが起こった状況ではなく、起こった行為にある。この記事は、特に刑事事件で目撃証言に大きく依存する場合、これが問題であると指摘している。目撃者が見聞きしたと主張することに、陪審員が反論するのは難しい。しかし、フェルプスの研究が示したように、目撃者が自分の言い分に自信を持っているからといって、その証言が正確であるとは限らない。
フェルプスは最近、米国科学アカデミーの委員会に出席し、裁判における目撃証言についての提言を行った。委員会は、現在の手続きをこれらの新しい知見に沿ったものにするための提案として、「ダブルブラインド」による目撃者確認、標準化された目撃者指示、目撃者証言に関連する視覚と記憶研究に関する警察の訓練、ビデオテープによる本人確認、目撃者の信頼性をめぐる問題に関する専門家の証言などを挙げた。これらの勧告が採用されれば、刑事裁判における目撃者の役割は、評決を選択する時に間違いを犯しにくくなる可能性がある。


② 異人種効果
同人種の顔が異人種の顔よりも正確に認識されるという異人種効果(Cross-Race Effect:CRE)は、社会的に明らかな影響を持つ、よく再現された心理現象である。その影響が最も顕著に現れるのは、目撃者の誤認である。DNA鑑定の登場以来、多くの人々が無実の罪で冤罪で投獄されていることが明らかになった。この論文では、バイアスの社会的認知的背景に関する新たな研究を含め、CREの原因に関する既存の見解をレビューする。次に、犯罪を目撃した時点と、目撃者の整列時の両方において、目撃者識別における異人種間効果を低減することを目的とした提言を行う。この研究の目的は、政策立案者がCREの原因と調整要因に関する現在の理解に基づいて提案を実施するよう促すことである。

③ 目撃で問題となるのは、夜間である。夜間には錐体の機能が低下し、色彩の知覚が極めて難しくなる。
電磁波のスペクトルは、数キロメートルの長さの電波から、原子核の大きさの波長10~14メートル以下のガンマ線まで、幅広い波長域をカバーしている。赤外線と紫外線の間に挟まれているのが可視スペクトル、可視光線、または単に光で、波長が1000分の1ミリメートル以下の非常に狭い範囲であり、私たちの網膜はこれに敏感である。可視光線は、紫、青、緑、黄、オレンジ、赤の各色に分けられる。視覚は、網膜にある光に敏感な視細胞から脳に伝達される信号の結果である。視細胞には錐体と桿体の2種類があり、外形から錐体と桿体と呼ばれている。
錐体は昼光のような強い光によってのみ活性化し、波長や色に敏感に反応する。錐体には、可視スペクトルの長波長、中波長、短波長に感応する3つのタイプがあり、それぞれ赤、緑、青のゾーンに一致する。このため、私たちは非常に幅広い色を知覚することができる。錐体は主に網膜の中心部に集中しており、そこで色の知覚が行われる。これらの錐体の視覚は、昼光視力または光視力と呼ばれる。逆に桿体は、月夜のような非常に薄暗い照明条件下でも活動できるが、錐体と違って色に敏感ではない。桿体は網膜の周辺部(周辺視覚)に多く存在し、白黒を認識する。桿体視力は夜間視力または暗所視力として知られている。そのため、光がないときは色を識別できず、暗闇ではすべてが同じように見える。

キーワード ① 出来事の凶暴性 ② 異人種効果 ③ 色彩知覚
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 復習:符号化における出来事要因のうち、照明要因、距離要因、凶器要因がどのように証言の正確さに影響するのかについて、説明できるようにしておくこと。予習:符号化段階における目撃者要因について、シラバスを読んでおくこと。


7 符号化段階に影響する目撃者要因(1) 科目の中での位置付け 符号化段階に影響する要因で重要な要因として、目撃者の要因がある。今回、次回は目撃者の持つ要因に関して学ぶ。ここで目撃者の要因とは、目撃者に固有の要因である。この要因には多くの要因がかかわるが、第7回授業では、子どもの目撃者、高齢の目撃者、アルコール摂取の要因について理解を深める。子どもの要因に関しては歴史が長く、知能検査を世界で最初に考案したビネーも子どもの被暗示性(誘導による影響の受けやすさ)を検討している。子どもならではの特性を考える。次に、高齢者におけるであるが、高齢者はエピソード記憶の能力の低下を受けやすい。また、ワーキングメモリーの効率も低下する傾向が認められる。高齢の目撃者の特徴を学ぶ。次に異人種の問題を扱う。目撃者(自分)の人種と同じ人種である場合には、異人種を目撃した場合に比較して、識別の正確さが低下する。この現象はいったいどのように説明されるのであろうか。その現象と説明理論を考える。次に、犯罪に遭遇するときにはアルコールを摂取した場合が想定される。このアルコールに関しては、研究が存在するものの、決定的な傾向ははっきりしない。研究の現状を探る。

目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① 子どもの目撃者 ② 高齢の目撃者 ③ 薬物(アルコール)の影響
細目レベル ① 子どもの目撃者(一般)
子どもの目撃証言に関する研究の多くは、面接の特徴がパフォーマンスにどのような影響を与えるかに焦点を当ててきた。その結果は、法的な文脈に直接適用されてきた。例えば、被害者とされる子どもへの面接が、経験的研究において誤りや全く誤った出来事の報告につながることが示されている方法で行われたために、いくつかの刑事有罪判決が覆されている。また、面接官は現在、子どもの被害者とされる人/目撃者に質問をする際に、適切な面接戦術と、どのような戦術を避けるべきかを教えられることが多い。
質問の言い回しは、子どもの報告の完全性と正確性に影響を与える。質問はしばしば「自由想起」質問と「直接」質問に分けられます。自由想起質問とは、子どもに過去の出来事を物語形式で語るよう促す漠然とした一般的な質問である(例えば、「~のときに何があったか話してください」)。直接質問には、ノンリーディング質問、誘導質問、暗示質問があります。ノンリーディングの質問は、間違った情報や特定の返答を示唆するものではありません(例:「車の色は何色でしたか?) 誘導的な質問は、特定の回答を暗示します(例:「車は赤でしたか?) 暗示的質問には、誤った情報が埋め込まれていたり(例:「部屋に入ったとき、男は何を着ていましたか」実際には男はいませんでした)、どの答えを出すべきかを明示的に暗示したりします(「彼が先に部屋に入りましたね」実際には男は先に部屋に入っていません)。
重要なことは、子どもの思うように話してもらう、いわゆる自由想起の報告は、一般に正確だが不完全であり、直接質問に対する子どもの回答は正確さに欠けるということであるが、こうした傾向には2つの例外があることを述べておかなければならない。第一に、自由想起の質問をする前に、子どもたちが誤った暗示的な情報にさらされると、自由想起の正確性が損なわれる可能性がある。例えば、面接の前に、親や面接官が、加害者とされる人物が何か悪いことをしたと子どもに暗示をかけたり、子どもが他の子どもから、疑惑の出来事で何が起こったかを学んだりすることがある。このような面接前の誤った暗示は、自由想起と直接質問の両方に対する子どもの回答の誤りを増加させる。第2に、虐待がなかった場合、虐待に関連した直接質問(例えば、"トイレにいるときに写真を撮られましたか?"、"お尻を触られましたか?"[単に虐待を経験した児童に質問])に答える際、児童はより正確に答える傾向がある。[例えば、"トイレに行ったときに写真を撮られた?"、"お尻を触られた?"など)。このように、直接的な質問に対する子どもの誤答意欲は、質問の内容によって異なる。

② 高齢の目撃者
異なる年齢層で比較した場合、若年成人の方が高齢者よりも目撃者の技能において優れていることが判明している。例えば、Dan Yarmeyの研究では、若年成人は高齢者よりも加害者の特徴、環境の詳細、行動の詳細を正確に思い出すことができると報告している。これは、自由想起(目撃者が自分自身の視点から物語的な説明をすること)にも、誘発想起(目撃者が面接者の質問に答えること)にも当てはまる。高齢者の目撃者は、若い目撃者よりも加害者についての記述(身体的特徴や衣服の特徴)を少なくする傾向がある。想起の量と正確さにおける若年者と高齢者の差は、想起間隔が長く(1ヵ月など)、目撃時の状況が悪く、起こっていることに注意を向けるために利用できる資源が減少している場合には、さらに大きくなる可能性がある。これは、目撃者が情報を取り戻そうとするときに利用できる手がかりが少ないことを意味するかもしれない。ファーガス・クレイクの記憶プロセスに関する古典的な研究によると、高齢者は質問中(検索段階)に「環境的支援」を受けるとよい。このような環境支援は、証人が情報を検索する際に、目撃時の個人的、身体的、感情的な状況を再現する方法について、証人に何らかの指示を与えるインタビューという形をとることができる。例えば、高齢者に認知的面接(Cognitive Interview)という、記憶の検索と想起を補助する方法を用いて質問した場合、高齢者は若年成人と同程度、場合によってはそれ以上の情報を想起することができる。ただし、1つだけ注意すべき点がある。成人(老若男女を問わず)の教育水準と言語的知能は、若年成人と比較して、その想起能力を高める重要な要因であるようだ。この問題についてはさらなる研究が必要であるが、警察官や陪審員は、高齢になると言語的な想起力が低下する可能性はあるものの、言語能力に優れ、十分な教育を受けた高齢者は、若年成人と同様に信頼できる証人になりうることに留意すべきである。

③ 薬物(アルコール)
犯罪の目撃者は、アルコールの影響下にあることが多く(Evans, Schreiber Compo, & Russano, 2009; Haggard-Grann, Hallqvist, Langstrom, & Moller, 2006; Palmer, Flowe, Takarangi, & Humphries, 2013)、犯罪について事情聴取を受ける際にも酩酊状態にあることが多い(Van Oorsouw, Merckelbach, & Willems, 2013)。警察官は、酩酊状態の目撃者から事情を聴くことの危険性を認識しているが、多くの国(米国、オランダなど)では、このような人物にどのように対処するかについての明確なプロトコルがない(Evans et al.) 例えば、酩酊状態の目撃者にいつ事情聴取を行うか、即座に、あるいは酔いがさめてから、といった方針はない。この問題にもっと光を当てることが、今回の2つの実地調査の目的である。
今回授業で紹介するのはのは、直後テスト(酔った状態またはしらふの状態)、反復テスト(しらふの状態)、遅延テスト(最初の遅延テストではしらふの状態)において、酔いが目撃者の記憶能力に及ぼす影響を検証することである。この目的のため、(以前)酩酊した目撃者に質問する最適な時期について相反する予測を行う3つの理論、すなわち、コンソリデーション理論、ディケイ理論、回想理論の有用性を調査した。アルコール近視理論(AMT)は、酩酊が注意の割り当て方に影響を与え(つまり、より中心的な細部に)、それによって、どの細部が符号化され想起されるかに影響を与えると主張する理論である。最後に、アルコール中毒が誤情報の受容や被暗示性のリスクにどのように影響するか、また、このリスクが中毒による記憶力の低下から生じる矛盾検出の問題に関連するかどうかを調べることを目的とした。2つのフィールド研究では、即時、遅延、反復テストにおいて、アルコール中毒が生の相互作用の記憶に及ぼす影響を検証した。研究1(N = 86)では、1人の研究者がバーテンに、別の研究者との事前のやりとりに関する(誤解を招く)質問を提示した。1週間後、参加者の記憶が再度テストされた。研究2(N = 189)は、遅延テストのみの条件を追加した。酩酊が記憶を損ない、被暗示性を高めるという仮説を立て、テストの時間がこれらの変数の結果に影響するかどうかが調べられた。研究1では、予測通り、酩酊は誤情報の受容を増加させ、即座のテストより遅延テストでその傾向が増加した。この効果は記憶の完全性に媒介され、不一致検出理論(記憶力が低いと誤った情報を受け入れやすくなる)と一致した。予測通り、酩酊は被暗示性を増加させ、即座のテストではより増加した。この効果は記憶の完全性に媒介され、不一致検出理論(記憶力が低いと誤った情報を受け入れやすくなる)と一致した。

キーワード ① 子どもの目撃者 ② 高齢の目撃者 ③ 薬物効果(アルコール摂取)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 予習:符号化段階に影響する目撃者要因のうち、子どもの目撃者の特性、高齢者の特性、薬物の影響についてシラバスを読んでおくこと。復習:各要因の目撃者証言への影響がどのような研究によって、その効果が認められるのか、研究計画の段階から理解を深めておくこと。
8 目撃者要因(2):符号化段階に影響する要因 科目の中での位置付け 符号化段階における目撃者要因は、まさに目撃時の目撃者の様々な属性が関与する。今回の授業では、目撃者の情動状態(感情的な昂りもしくは覚醒水準)が、目撃内容の記憶の正確さとどのように関わるのかをまず検討する。事件における目撃者は時に、極めて凄惨な出来事を経験することがある。例えば、実際に人が暴力を振るわれているような、いわゆるショッキングな出来事である。このような状態における目撃記憶の正確さを検証した研究を学ぶ。次に、記憶が曖昧な場合でも、目撃者は出来事の説明に、推測や期待によって話をまとめて報告することがある。このような推測や期待は、実際の出来事とは異なるものの、話の筋が通っていたり、それらしく判断できるので、問題となることが多い。実際の出来事の目撃者による解釈の誤りについて、スキーマ(バートレット)という概念によって、その誤りの起こり方を学ぶ。
目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① 覚醒水準 ② ヤーキース=ドッドソンの法則 ③ 期待 ④ スキーマ
細目レベル ① 覚醒水準
目撃者が強い情動を喚起するような出来事(例えば、暴行シーンや怪我した人物など)を目撃したとしよう。そのような強い情動喚起は私たちの認知や記憶の機能に影響することが知られている。この授業では、目撃証言に関する文献では、感情的ストレスは記憶障害につながり、したがって不快な感情的出来事の詳細は、中立的または日常的出来事の詳細よりも正確に記憶されないと主張されることが多い。この見解の背景にある一般的な仮定は、感情的興奮が高い状態では、利用可能な処理能力が低下するため、記憶処理の効率が低下するというものである。ここでレビューした研究は、この考えが単純すぎることを示している。現在の研究では、出来事の種類、詳細情報の種類、テストの時間、検索情報の種類の間に顕著な相互作用があることが示されている。本稿ではまた、ストレスの多い出来事の記憶に関する文献を、ヤーキース・ドッドソンの法則とイースター・ブルックの手がかり利用仮説という2つの主要な理論に関してレビューする。現実の研究と実験室での研究から得られた知見を説明するために、本稿では、情動的な出来事が、早期知覚処理と後期概念処理に関連する因子を媒介として、何らかの優先的処理を受ける可能性について論じる。

② ヤーキース・ドットソンの法則
ヤーキース・ドッドソンの法則は、ストレスとパフォーマンスには経験的な関係があり、最適なパフォーマンスレベルに対応する最適なストレスレベルが存在するというものである。一般的に、練習生はこの関係を逆U字型の曲線で示される。研究によると、一般に適度な覚醒が最適であり、覚醒が非常に高いか低い場合には、パフォーマンスが低下する傾向がある(Yerkes & Dodson, 1908)。
ロバート・ヤーキース(発音は「ヤーク・イーエス」)とジョン・ドッドソン は、最適な覚醒レベルは実行するタスクの複雑さと難易度に依存 することを発見した。この関係はヤーキス・ドッドソンの法則として知られ、単純なタスクは覚醒レベルが比較的高いときに最もよく実行されるとしている。
ヤーキス=ドッドソンの法則の原型は、1908年に発表された、電気ショックを用いて白い箱と黒い箱の識別を学習する日本舞踊マウスの実験に関する論文に由来する。この研究は、1950年代にヘブの覚醒の概念と「U字型曲線」によって、人間の覚醒とパフォーマンスにおけるヤーキス・ドドソンの法則の一般的な応用に再び関心が集まるまで、ほとんど無視されていた。ヤーキス=ドッドソンの法則は最近になって、当初の実験デザインが稚拙であったことや、パーソナリティや経営慣行、さらには目撃証言の信頼性に関する説明にまで範囲を拡大しすぎているという批判を浴びている。

③ 期待
目撃者識別に関する研究では、参加者に模擬犯罪を体験させ、その後にラインナップを用いて記憶をテストすることが多い。それらの研究では、イベント前の指示(イベントにさらされる前に行われる指示)はほとんど報告されておらず、報告されているものでも、イベントやタスクの性質について参加者にどの程度警告しているかは様々であることを示した。実際の目撃者の経験とは相反するが、いくつかの研究では、イベント前の指示で、参加者にこれから起こる犯罪や整列作業について明確に警告している。基礎的な文献も応用的な文献も、事前の指示が目撃者の識別能力に影響を及ぼす可能性があると考える根拠を与えている(期待効果)。今回授業で展開する実験研究では、事前指示がラインアップ識別の決定と確信に与える影響を検証した。参加者は、非特異的な事前指示(すなわち、「このビデオを見てください」)または目撃者の事前指示(すなわち、「この犯罪ビデオを見てください、後でラインアップを完成します」)を受け、犯人不在または存在するラインアップを完成した。その結果、目撃者事前指示を受けた参加者は、非特異的事前指示を受けた参加者よりも識別能力が高いという仮説を支持する結果は得られなかった。さらに、確信度-精度較正は条件間で有意差はなかった。しかし、目撃者条件の参加者は、非特定条件の参加者よりも、出来事を犯罪と見なし、識別を行う可能性が高かった。目撃者同定研究の実施と解釈、および指示と注意に関する基礎研究への示唆が議論される。

④ スキーマ
この概念を記憶研究で最初に使用したのはバートレットであった。彼は記憶研究に従事し、1932年に『想起の心理学Remembering』を出版した。当時の記憶研究は、エビングハウス(Ebbinghaus, H.)の研究で使用された無意味綴りを用いた厳密な実験室的研究が中心であった。バートレットはこのような研究方法とは異なり、日常場面における記憶を解析して過去経験の正確な記録よりも、むしろ変容の過程の解明に向かった。北米インディアンの民話をイギリス人の学生に提示してその再生を求めた実験では、再生文に次のような規則的変容が見られた。①省略:固有名詞、特有の文体などの詳細が欠落して文章は短く簡潔になる。②同化:すでにもっている概念に合わせて標準化され、なじみのない言葉はよく知ったことばにおき換えられる。③合理化:文章は,筋が通り,読み手の期待に一致するようになっていく。つじつまの合わない部分を説明するのに役立つ情報が付加されることもある。バートレットはこのような発見から,物語の理解や記憶は,読み手がすでにもっている知識に導かれて進行すると考えた。すなわち,スキーマに矛盾しない情報は積極的に取り込まれ,スキーマに合わない情報には省略,同化,合理化などが生じる。このような過程を「構成のしなおし」という意味で,再構成とよぶ。このように、バートレットの研究は日常記憶や目撃証言研究に大きな影響を及ぼすようになった。

キーワード ① 覚醒水準 ② ヤーキース=ドッドソンの法則 ③ 期待 ④ スキーマ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
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小テスト
復習・予習課題 復習:符号化段階に影響する目撃者要因は多種にわたる。ただ、重要な変数は授業で説明したものである。これらの要因の影響の仕方について、しっかりと理解しておくこと。予習:符号化段階における目撃者の要因のうち、覚醒水準や期待、また覚醒水準の効果に関する法則について、シラバスを読んでおくこと。
9 貯蔵段階に影響する要因(1)保持時間の影響 科目の中での位置付け 貯蔵段階に目撃者の記憶に影響する要因には、1)時間の経過による忘却が挙げられる。この時間の経過による記憶の変容や誤った記憶の形成が行われる可能性がある。また、時間の経過に伴う記憶の減衰が知られている。古くは、エビングハウスの忘却曲線によって示されるように、無意味綴りを材料にした彼の実験では、出来事の経験(無意味綴りの完全学習)から1時間の経過で、記憶したことの半分以上が忘却されてしまう。その後の研究によっても、この記憶の保持時間の長さが記憶の正確さに強く影響することが知られている。また、出来事の経験から時間が経過すると、その間にその出来事に関する様々な情報にさらされる。事後情報として知られる現象である。もしこの事後情報が、目撃した内容と関わる誤った情報である場合、その情報によって記憶が汚染されることが知られている。誤情報効果と呼ばれる。授業では、この効果にl関する実験的研究を紹介する。さらに、この事後情報に関して、その情報が第3者や他の人から与えられた場合にも、私たちの記憶は強く影響を受けて誤る。記憶への社会的影響とか記憶の同調効果と呼ばれる現象である。授業では、この現象に関する研究も紹介する。
目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① エビングハウスの実験 ② 子どもの目撃者と保持時間 ③ 現実場面に近い状況での長期の保持について
細目レベル ① エビングハウスの実験から
ヘルマン・エビングハウス(1850-1909)はドイツの心理学者で、記憶の実験的研究の先駆者であり、忘却曲線とスペーシング効果の発見で知られている。彼はまた、学習曲線を初めて記述した人物でもある。1885年、彼は画期的な『Über das Gedächtnis』(『記憶について』、後に『記憶』として英訳)を出版した: のちに『記憶:実験心理学への貢献』と訳される)を出版した。この中で彼は、学習と忘却のプロセスを説明するために自分自身で行った実験について述べている。エビングハウスは、今日でも関連性があり、支持されているいくつかの発見をした。まず、間違いなく彼の最も有名な発見である忘却曲線である。忘却曲線とは、学習した情報を忘れる速さを指数関数的な曲線で表したものである。最初の20分間に最も急激に減少し、その後1時間で減少し、約1日後に曲線は均等になる。このように、出来事の記憶は時間の経過とともに減衰することを認識しておく必要がある。

② 子供の目撃者と保持時間
子どもの証人は、被疑犯罪を目撃したり、その被害者となってから、刑事法廷での証拠提出を求められるまで、約6ヶ月の遅れに耐えなければならない。法曹界では、幼い子どもの記憶は時間の経過に特に敏感であると考えられているようだが、発達心理学では、この推定を支持したり反論したりするための関連データはほとんど得られない。本研究では、6歳と9歳の子供と大人を対象に、演出された出来事を目撃し、その出来事の数日後および/または5ヵ月後に聞き取り調査を行った。その結果、すべての目撃者がこの期間に情報を忘れていたが、年少の子ども(6歳)は年長の子どもや大人よりもわずかに少ない情報を思い出していた。誤った情報の総量は、同じ期間に増加しなかった。2つの異なる面接技法が使用された-キュード回想と「強化された」回想-後者は認知面接の手順の一部を取り入れたものである。採用された面接技法に関連する差異は認められなかった。この結果は、可能な限り子どもの証人との最初の面接を記録することの重要性を強調している。果たして子どもの記憶は長期の保持でどれほど正確に出来事の記憶を正確に想起できるのだろうか。

③ 現実場面に近い状況での長期の保持
現実場面に近い状況で、保持の長期化はどのような影響を目撃者の記憶に与えるのだろうか。
要旨:刑事司法制度における遅延の悪影響については、国際的な懸念がある。問題には、遅延が証人の記憶の正確さや、証人が自分の記憶を正確に校正する能力に及ぼす悪影響が含まれる。これらの問題と、項目の難易度、正確性と信頼性の関係について、実証的な研究はほとんど行われていない。本稿では、これらの問題を調査する。
21人の証人が、観察された犯罪についてインタビューを受け、記憶可能性の観点から「容易」、「中程度」、「困難」に分類された対象項目に関する、反対尋問で用いられる弁護士的質問に答えるよう求められた。参加者は6ヵ月後に再度面接を受けた。6ヶ月の遅れは、すべての質問難易度において記憶精度を有意に低下させた。被験者内C-A関係は、遅延の影響を比較的受けないようであった;すなわち、簡単な問題と中程度の問題では正、難しい問題では負の傾向があった。被験者間のC-A関係もまた、簡単な項目と中程度の項目の両方で正であったが、6ヵ月後には改善した。一方、難しい項目のC-A関係は、6ヵ月の遅延後も負のままであり、統計的に有意ではなかった。遅延は、C-Aキャリブレーションの改善では補いきれない、立会人の正確さに重大な悪影響を及ぼす可能性がある。リバプール大学の研究者たちの研究からこの問題を紐解く。

キーワード ① 長期の保持 ② 子どもと保持時間 ③ 現実の記憶における保持時間
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 復習:符号化段階の影響要因として、覚醒水準、期待など重要な影響要因を学んだ。これらの影響要因の作用をきちんと説明できるようにしておくこと。
予習:目撃者の証言において、目撃から証言までの時間経過は極めて重要になる。ただ、この要因に関しては、目撃者によっても、出来事によってもその影響が異なる。シラバスを読んでおくこと。


10 貯蔵段階に影響する要因(2)事後情報効果および関連現象 科目の中での位置付け 例えば、事後情報効果に関しては、誤情報効果とも呼ばれ、出来を目撃した後に、その出来事に関わる誤った情報に接すると、その後にその経験した出来事を想起すると、実際には経験していない事後の情報が、存在していたもののように、誤って想起される現象のことである。この事後情報効果は別名、誤情報効果とか誤誘導情報効果と呼ばれたりもする。このような出来事の記憶はエピソード記憶に貯蔵されるために、事後情報効果はこのエピソード記憶の誤りとして説明される。誤情報効果は1970年代半ばから研究されるようになった。エリザベス・ロフタスは、この分野で最も影響力のある研究者の一人である。特に、彼女が同僚と報告した(Loftus, Miller, & Burns, 1978)は、この効果を6つの実験的研究によって示したことで知られている。この現象を説明する理論は、オリジナルの情報と事後的に提示された誤解を招く情報が混ざり合ってしまうというものである。このような理論に関しては、次回の授業にて詳細に紹介する。
目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① 先行研究としてのLoftus & Palmer(1974) ② 社会的影響 ③ 現実の事件での社会的影響
細目レベル ① 先行研究
 事後情報効果につながる先行研究は、Loftus & Palmer(1974)などの語法効果に関する研究であろう。この研究では、出来事の目撃ののちにその出来事に関わる一連の質問が行われた。Loftus & Palmerは、z自動車事故のフィルムを実験参加者に見せたのちに、その事故の質問に衝突の程度の異なる言語表現を使用して、その言葉が事故の目撃者の記憶を変更させてしまうのではないかという疑問を解決する実験を行ったのである。結果は、まさに、研究者が仮定する結果になった。つまり、激しい衝突を表現する言葉を使用して質問すると、その結果としてより早いスピードでぶつかったと報告するようになった。つまり、質問に使用される言葉により、報告される速度の報告という結果が異なることを明らかにした。しかもこの報告が、記憶の変容すら痴あう可能性が指摘されたのである。このことは、後のLoftus, Miller, & Burns(1978)の研究の基礎になったと考えるのが自然である。この研究では、実験1で、誤情報効果の生成、実験2では、要求特性問題、実験3では、出来事の直後に事後情報を挿入する場合と、最終テストの直前に事後情報を挿入する場合の効果が、実験4では事後情報の対象となった事象の記憶の程度が、実験5では誤情報効果の普遍性が検討された。
 この研究では、実験1で、誤情報効果の生成、実験2では、要求特性問題、実験3では、出来事の直後に事後情報を挿入する場合と、最終テストの直前に事後情報を挿入する場合の効果が、実験4では事後情報の対象となった事象の記憶の程度が、実験5では誤情報効果の普遍性が検討された。

② 事後情報効果は、オリジナルの研究では、質問の形で中立的に与えられた誤情報によって起こる現象であった。この効果がどのように生起するかの研究が今日まで研究されてきているが、1990年代中庸になると、この誤情報が他者から与えられる場合の研究が進むようになった。これは、事後情報が何を媒介に伝達されるのかに対する興味から出発したのである。例えば、伝達者が公共放送のニュースである場合はどうか、また親友から、また年上の人からなどなど、伝えられる情報のソース(オリジン)が信頼できるかどうかなどの要因も検討される必要が理解されるようになったのである。これらの研究は、厳島・丸山・藤田(2005)によってレビューされているので、そちらの方を読まれたい。このような事後情報が社会的な情報として提供される場合の効果は、より現実的な意味合いを持つ研究として重要である。
③ 記憶への事後情報の社会的影響が現実の事件でも起こっている。過去の世間を騒がせるような大事件においても、目撃者が複数存在して、目撃情報を交換しあうことで記憶を汚染させることが知られている。スエーデンのアンナ・リンド外相は、ストックホルムの中心街にあるデパートで昼間に買い物をしているところを、突然ナイフを持った男性に襲撃された。外相は市内北部にあるカロリンスカ病院に運ばれたが、翌朝の5時過ぎに亡くなった。本件では、その事件の起こった場所柄、多くの目撃者がこの事件を目撃していた。その目撃者たちはお互いにその事件を話し合い、警察の事情聴取にも応じたが、後日、実際のCCVに映っていた内容と照合されたところ、多くの点で、特定の人物の誤った目撃が他の目撃者によって報告されるという現象が起こった。現実の世界で起こった記憶への社会的影響が観察された事例として報告されている。
キーワード ① 事後情報効果 ② 誘導効果 ③ 社会的影響 ④ 現実の事件における社会的影響
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
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小テスト
復習・予習課題 復習:符号化段階における目撃者の要因のうち、覚醒水準や期待、また覚醒水準の効果に関する法則について、シラバスを読んでおくこと。予習:貯蔵段階に影響する要因は符号化要因とは異なる働きをする。シラバスを読んでおくこと。
11 貯蔵段階に影響する要因(3)事後情報効果の説明理論 科目の中での位置付け 誤情報効果は、出来事後の情報のために、エピソード記憶の想起の正確性が低下する場合に起こる[1]。誤情報効果は1970年代半ばから研究されている。エリザベス・ロフタスは、この分野で最も影響力のある研究者の一人である。1つの理論は、オリジナルの情報と事後的に提示された誤解を招くような情報が混ざり合ってしまうというものである。誤情報効果は遡及的干渉の一例であり、後から提示された情報が、以前に符号化された情報を保持する能力を阻害する場合に起こる。基本的に、人が受け取った新しい情報は、時間をさかのぼって元の出来事の記憶を歪めるように働く。誤情報効果はまた、記憶障害にも起因しているようであり、つまり、出来事後の誤情報によって人々がその出来事を思い出すことが難しくなるということである。誤情報は、記憶の大罪のうちの2つを反映している。すなわち、他者の期待が私たちの記憶に及ぼす影響である「被暗示性」と、誤った情報源に起因する情報である「誤帰属」である。
誤情報効果に関する研究は、記憶の永続性と信頼性に関する懸念を明らかにしている。他の目撃者との会話、警察による尋問、法廷への出廷などを通じて、目撃者の記憶に誤情報が組み込まれる機会が多いため、誤情報効果を理解することは、目撃証言の正確性に影響を与えるという意味でも重要である。

目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① ブレンド仮説(混合仮説) ② ソースモニタリング仮説 ③ ファジートレース仮説
細目レベル ① ブレンド仮説
位置付けにおいて示したように、事後情報効果は。目撃者が何らかの出来事を目撃した後で、その出来事に関する情報にさらされるという状況を仮定している。そしてその事後の情報に、オリジナルの出来事にはなかった情報に晒されるという状況が問題となる。この事後情報効果を報告した最初の心理学研究は、Loftus, Miller, & Burns(1978)の一連の実験である。彼らは、自動車事故を描く一連のスライドを提示し、その後、その事故に関する誤った情報が目撃者に与えられた。その後、目撃者は誤った情報が入ったスライドと、正しい情報が入ったスライドを提示され、実際に見た方のスライドを選ぶ強制選択再認課題が行われた。その結果、誤った情報を受け取った目撃者は、実際にはなかった誤った情報を含むスライドを選ぶ確率が高まった。つまり、事後情報が目撃者の記憶を歪ませるように作用したという証拠として解釈された。ロフタスたちは、のちに、この現象を記憶のブレンド仮説として説明した。

② 2) ソースモニタリング仮説
ソース・モニタリング・エラーとは、記憶のソースが、ある特定の回想体験に誤って帰属してしまう記憶エラーの一種である。例えば、ある出来事について友人から聞いたのに、後になって地元のニュースで知ったと報告するような場合である。このような誤りは、情報源情報のエンコーディングが制限されたり、情報源モニタリングに使用される判断プロセスが中断されたりして、正常な知覚・反射プロセスが中断された場合に生じる。うつ病、高ストレスレベル、関連する脳領域の損傷は、このような混乱、ひいては情報源監視エラーを引き起こす要因の一例である。
ソース・モニタリングの背後にある重要な考え方の1つは、処理中に記憶に対する実際のラベルを受け取るのではなく、人の記憶記録が活性化され、判断プロセスを通じて評価されることである。ソースモニタリングは、個人の活性化された記憶記録に大きく依存する。出来事が発生する間に、その出来事の文脈的な詳細をエンコードすることを妨げるものがあれば、関連する情報が十分に検索されず、エラーが発生する。記憶表現の属性が高度に区別されていれば、エラーの発生は少なくなると予想され、逆もまた同様である[2]。ソースモニタリングに関する2つの認知的判断プロセスが存在し、これらは一般にヒューリスティック判断プロセスと体系的判断プロセスと呼ばれる。

③ 3) ファジートレース理論
ファジィ・トレース理論では、逐語的記憶と要約的記憶の過程が独立していると仮定している。正確で文字通りの逐語的記憶と、意味に基づく直感的な要旨記憶との間のこの区別は、真実の記憶と虚偽の記憶との間の解離、虚偽の記憶が真実の記憶よりも長持ちすること、発達に伴う虚偽記憶の増加などの記憶のパラドックスを説明する。ファジートレース理論の概要を述べるとともに、数理モデルを用いて、物語文や推論の真偽認識における逐語記憶と要旨記憶の実証結果を示す。その結果、ファジートレース理論による記憶の二重過程観が支持された:逐語的記憶は、(想起拒絶を介して)意味は一致するが提示されていない文を拒絶するために頼りにされた。しかし、逐語的記憶はしばしば検索されず、要旨記憶は(類似性判断と幻想によって)これらの文の受容を支えた。このように、言葉の数学的モデルは、物語などの複雑な刺激に対する記憶、つまり法律で問われるような種類の記憶を説明するために拡張することができる。


キーワード ① ブレンド仮説 ② ソースモニタリング仮説 ③ ファジートレース仮説
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小テスト
復習・予習課題 復習:事後情報効果は現実においても極めて重要な影響要因である。この効果の意味についてしっかり理解しておくこと。予習:事後情報効果に関する理論的説明について、シラバスを読んでおくこと。
12 検索段階の影響要因(1)犯人を探す 科目の中での位置付け 容疑者が逮捕されたとしよう。そして、目撃者がいて事件現場で犯人を見て、その人物の特徴を述べていたとしよう。捜査側は当然のことながら、目撃者にインタビューし、その当該の人物の特徴等を供述調書に書き留めているはずである。特にその目撃者が相応の犯人の特徴を述べていれば、その重要度は増す。警察では、目撃者の犯人に関する供述をもとに、写真帳を作成し、目撃者に識別を試みさせる。この目撃者による犯人識別の過程に、目撃者の記憶に影響するさまざまな心理学的要因が知られている。そして識別や面接に関わるさまざまな方法が展開されている。この12回授業から14回授業までは、この検索段階(記憶から情報を検索する段階で、記憶の心理学では想起の段階と呼ばれる)における諸テーマを学ぶ。
この検索段階の諸相は、実際の捜査における極めて重要なテーマとなり得る。捜査においてはまず、目撃者の発見が行われる。事件を目撃していれば、その事件に関わる人物(たち)を同定できる(誰かを明らかにすることができる)可能性がある。目撃者がいれば、事情聴取が行われる。この事情聴取の方法に関しては、多くの問題が内在しているとの指摘がある。近年では、そのような問題をクリアする方法(認知面接法、司法面接法)が開発され、正しい記憶をより多く想起できる方法が工夫されている。また、犯人識別のための方法もさまざまであり(単独面通し、同時提示ラインナップ、継時提示ラインナップ、ビデオラインナップ、ライブラインナップ)、現在、多くの研究がなされている。この想起の段階の影響要因は、すでに示したように、システム変数として知られ、その研究成果が直接に捜査に利用できるという利点がある。

目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① システム変数 ② ラインナップの構成法 ③ ラインナップの実施法
細目レベル ① システム変数
システム変数とは、目撃者証拠に影響を与える可能性があり、刑事司法システムの管理下にあるものである。システム変数には、警察が目撃者に質問する方法や、識別パレードで目撃者に加害者を識別するよう求める手順が含まれる。システム変数を調査する研究は、取り締まりの方針と実践に重要な意味を持つことがある(Wells, 1978)。たとえば、ある一連の手順が、正確な証拠を引き出す上でより効果的であることが判明した場合、間違いなく、それは一般的な慣行として採用されるべきである。このように、システム変数に関する研究は、捜査や裁判の進め方を変えることによって応用することができる。つまり、司法制度がコントロール可能な変数であり、記憶心理学の用語では検索段階に影響する変数である。

② 警察のラインナップテストで、目撃者によって犯罪を犯した容疑者として特定されると、裁判での重要な証拠となり得る。警察のラインナップでは、目撃者が似たような人々の中から犯罪の容疑者を特定するために実施される。理論的には、警察のラインナップは、犯罪の目撃者が容疑者を特定するために、犯罪の容疑者を似たような人物の中に並べるというものである。もし目撃者が、容疑者を、目撃者の記憶と一致するものとして、ラインナップの中から選んだ場合には、その容疑者は、来るべき刑事裁判で有罪判決を受ける基礎としての強力な証拠になる可能性がある。
警察はまた、容疑者の写真を似たような一連の人物の写真の中に並べ、目撃者が記憶に基づいて容疑者を選べるようにする、写真ラインナップを使用することもある。ただ、ラインナップの問題点は、目撃者の記憶が信頼できずに、誤った人物(犯人でない人物)を選んでしまう可能性を秘めている。また、多くの手続きが不適切に行われ、目撃者が特定の容疑者を特定するよう影響を与える可能性がある。

警察のラインナップには、主に3つのタイプがある
ライブ・ラインナップ - 目撃者は、容疑者を複数の似たような人たちと一緒にライブで見る;写真による整列 - 目撃者は、他の人々と一緒に容疑者の写真のみを見る;ショーアップ - 目撃者は容疑者だけを見る、である。このような異なる方法によって、識別の違いが出てくるのかどうかが積極的に検討されてきた。例えば、Rubinova et al.(2021)の研究では、写真による識別よりも実人物を使用したラインナップが優れるので花井かとの仮説のもと、実験的検討が行われた。実験1aおよび1bでは、ライブ識別優位仮説は支持されなかった。参加者は、ライブの容疑者が有罪か無罪かを識別する能力は、容疑者の写真やモンタージュを識別する能力よりも有意に優れていなかった。
このような異なる方法によって、識別の違いが出てくるのかどうかが積極的に検討されてきた。例えば、Rubinova et al.(2021)の研究では、写真による識別よりも実人物を使用したラインナップが優れるので花井かとの仮説のもと、実験的検討が行われた。実験1aおよび1bでは、ライブ識別優位仮説は支持されなかった。参加者は、ライブの容疑者が有罪か無罪かを識別する能力は、容疑者の写真やモンタージュを識別する能力よりも有意に優れていなかった。

③ ラインナップの実施法
最近、カリフォルニア州刑法859.7条に基づき、写真や生中継のラインナップについて、正確性を高め、不正行為を減らすために、以下のような新しい手順が導入されている。これらの方法は心理学の研究結果が反映された結果である。
二重盲検法:この方法では、警察官は容疑者を誰か知らないということが保証される、2)警察は目撃者に、正しい容疑者を選んだかどうかを伝えることができない、というものである。さらに次のような方法も提供されるようになった。3)容疑者が列に並んでいない可能性があることを証人に伝える(いない可能性の伝達)。4)複数の目撃者を互いに引き離すこと(社会的影響の排除)。5)カリフォルニア州における警察のラインナップの実施については、参加者の理解を深めるためにロサンゼルスの刑事弁護団は心理学の研究結果のレビューを提供している。

キーワード ① システム変数 ② ラインナップの構成法 ③ ラインナップの実施法
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復習・予習課題 復習:貯蔵段階に影響する要因は、時間経過の要因から始まり、その時間経過の途中で入り込む事後情報の影響が大きい。実際の事件でもそれが観察されている。その効果の意味についても理解しておくように。予習:検索段階の影響要因について、シラバスを読んでおくこと。
13 検索段階に影響する要因(2) 反復された識別(マグショットバイアス) 科目の中での位置付け 第12回で見たように、容疑者や犯人の識別には識別用のラインナップの構成方法やラインナップの実施法が、その正誤に大きな影響を及ぼす。今回授業では、識別に関わる要員として、反復された識別の問題と衣服の類似性の識別に及ぼす影響について学ぶ。反復された識別とは、まず、当該の容疑者を探すために、複数のラインナップでの識別を繰り返す方法である。例えば、まずは特定の容疑者がラインナップで識別されたとしよう。操作段階では、さらにその容疑者を単独もしくは複数の人物を用いたラインナップを用いて、同一の目撃者に識別させるという手続きが取られる場合が多い。このような識別を持ちいると、目撃者の識別は回を重ねるごとに確信度が強まり、その確信度ゆえに目撃者の識別結果が信用されてしまう傾向がある。このような識別の問題点を考えるのが今回の授業である。
目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① 反復された識別 ② 衣服によるバイアス:成人の目撃者の場合 ③ 衣服によるバイアス:子どもの目撃者の場合
細目レベル ① 反復された識別
警察の実務では、犯人識別において、複数回同一の人物(容疑者)が入ったラインアップを目撃者に見せて、犯人識別を行うという手続きが取られることが多い。これは確認のために行われると推察されるが、このような手続きは果たして、正確な識別になり得るのであろうか。法執行機関と目撃者科学者とでは、2回目の識別ラインナップの有効性と意味について異なる評価を下す可能性がある。DNAで冤罪を晴らした事例では、いくつかの法域における警察の慣行が、同一容疑者の2回目の並び替えを、1回目の並び替えで「識別不能」「仮識別」「本識別」のいずれかの結果を出した目撃者に許可し、しばしば奨励してきたことを示している 。このようなアプローチは正しいのであろうか。
この問題に直接アプローチした論文を紹介する(Steblay, Tix, & Benson, 2013)。研究で目撃者は、同じ容疑者を連続してラインアプから識別するように求められることがあるかもしれない。本研究では、2×2×2の混合モデルによる要因計画で、同じ容疑者を繰り返し並べることが目撃者の判断にどのような影響を及ぼすのかを検討した。ビデオ視聴で犯罪を目撃した参加者は、容疑者(有罪または無罪)が共通する、2週間の保持間隔を隔てた2つの同じ形式のラインナップ(ラインナップ1、ラインナップ2)から犯人を特定することを試みた。予測される結果は次のようであった。すなわち、反復されるラインナップでは、1)1回目のラインナップで生じた識別の誤りが、2回目のラインナップにおいて修正されるよりもむしろ持ち越されること、および2)無実の容疑者を誤認識する数が1回目から2回目へと増加することである。この予測は支持され、逐次ラインナップよりも同時ラインナップの方が、繰り返しラインナップの悪影響が強かった。さらに、ラインアップ2で有罪の被疑者と無実の被疑者を選択した証人は、同じように自信があり、選択を拒否した証人よりも有意に自信があった。この結果は、繰り返されるラインアップがもたらしうる否定的な結果についての懸念を強調するものである。

② 衣服によるバイアス:成人への影響
成人への影響衣服によるバイアスとは、容疑者が現れた時に着ている服装によって起こるバイアスのことである。特に容疑者が目撃者によって作成された犯人の服装の説明と一致する服装をしている場合、信頼できる影響源となりうる。例えば、一般的な服装(ブルーグレーのシャツ)または一般的でない服装(ハーレーダビッドソンのTシャツ)を着た人物と交流した後に、参加者(店員)にショーアップを提示した。その結果、対象(つまり、前に見た人)が符号化時と同じか類似の服装をしていた場合、正選択の有意な増加は見られなかった。しかし、ターゲットが一般的でないと思われる服を着ていた場合には、識別精度に有意な影響が見られた。さらに興味深いことに、ターゲットが着用していたものと同じような服を着た、非常によく似た外見の犯人以外の人の顔(ラインナップにいる犯人以外の人の顔という意味)が目撃者に提示された場合、誤認識が有意に増加した。このことは、衣服バイアスは潜在的に非常に強力であり、警察がショーアップの手順を用いているときに、犯人に似ていて、似たような服装をしている(そして犯行現場に近い)人物は、犯人と誤認される危険性が大きいことを示唆している。服装バイアスに関する情報はまだまだ少ないが、問題となる要因であることは間違いない。

③ 衣服のバイアス:子どもへの影響
2)では成人の目撃者への衣服のバイアスについて紹介した。では子どもが目撃者の場合にはどのような影響が出るのであろうか。授業で報告する文献は2006年に報告された論文である。
この研究では、衣服の手がかりが、並んだ人物の識別精度に及ぼす影響を調べた。4~14歳児(n = 228)は、それぞれ色のはっきりしたシャツを着た人物のビデオクリップを12本見た。各映像を見た後、子どもたちはターゲットが存在する、または存在しない写真を提示された。3つの服装条件が含まれた。2つの条件では、並んだ全員が同じ色のシャツを着ていた。3つ目の偏った条件では、1人だけが前のクリップで見たシャツの色と一致した(標的が存在する試行では標的、標的が存在しない試行では代替者)。標的が存在する試行では、偏った条件下で標的を正しく識別する頻度が最も高かったが、標的が存在しない試行では、偏った条件下で置換標的を誤って識別する頻度が高かった。高学年の子どもは低学年の子どもよりも、標的が存在する試行から標的を選択する場合も、標的が存在しない試行から標的を拒否する場合も、正確であった。これらの結果は、シャツの色のような単純な衣服の手がかりが、子どもの並べ替え識別精度に大きな影響を与えることを示唆している。

キーワード ① 反復提示方 ② 成人への影響 ③ 子どもへの影響
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復習・予習課題 復習:事後情報効果の理論的説明をきちんとできるようにしておくこと。予習:いよいよ犯人探しの段階である(検索段階と専門用語ではいう)。この段階は、識別を誤る多くの要因が明らかになっている。シラバスを読んでその種類を見ておくこと。
14 検索段階に影響する要因(3)単独面通しにまつわる諸問題 科目の中での位置付け 単独面通し(ショーアップ)とは、警察が目撃者を特定する目的で、実人物もしくは写真を用いて、1人の人物のみを識別で提示する手続きのことである(Valentine, Davis, Memon, & Roberts, 2012)。通常、このような方法は、現場において空間的にも時間的にも犯罪に近接して行われることが多い(Behrman & Davey, 2001)。ショーアップを用いた同定は、ラインナップ同定(複数の人物が目撃者に提示される)に代わるものであるが、連邦最高裁判所、州裁判所、社会科学研究者は、ショーアップ同定はラインナップ同定よりも信頼性が低いと繰り返し述べている(Gronlund et al.) Gronlundら(2012)の研究によると、ショーアップはラインアップよりも識別能力が劣る。この所見は他の研究者たちによっても確認されている(Clark & Godfrey, 2009; Steblay, Dysart, Fulero, & Lindsay, 2003; Wetmore et al., 2015a)。Garrett(2011)は、160件のDNA鑑定免責事件の裁判記録を検討し、34%(53/160)がショーアップによる誤認であることを発見した。とはいえ、鑑定は依然として最も広く採用されている身元確認方法の一つである(Goodsell, Wetmore, Gronlund, and Neuschatz, 2013を参照)。全鑑定に占めるショーアップ鑑定の割合は、30~77%と推定されている(Gonzalez, Ellsworth, & Pembroke, 1993; McQuiston & Malpass, 2001)。
目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① 単独面通しとは ② 衣服によるバイアス ③ 子どもの目撃者
細目レベル ① 単独面通しとは
目撃者に容疑者を1人だけ提示する識別手続きである単独面通しは、その特徴ゆえに、ショーアップ手続きを非常に暗示的なものにしている。授業では、この識別手順に関して、どのような要員が絡むとこの手続きに問題が発生するのかを学ぶ。また、この単独面通しも、正確さが保証される場合がある。その条件とは何か、現在の研究の概要を示す。扱う変数は、衣服、教示、時間の遅延などであるが、いくつかのメインになる変数の重要性も指摘する。また、推定変数およびシステム変数との関連も議論し、この単独面通しの問題点を理解することが重要である。

② 単独面通しと衣服バイアス
服装のバイアスとは、容疑者が現れた時に着ている服装のことである。これは、特に容疑者が目撃者によって作成された犯人の服装の説明と一致する服装をしている場合、信頼できる影響源となる。例えば、ある研究では、一般的な服装(ブルーグレーのシャツ)または一般的でない服装(ハーレーダビッドソンのTシャツ)を着た人物と交流した後に、参加者(店員)にショーアップを提示した。その結果、対象(つまり、前に見た人)がエンコード時と同じか類似の服装をしていた場合、正選択の有意な増加は見られなかった。しかし、ターゲットが一般的でないと思われる服を着ていた場合には、識別精度に有意な影響が見られた。さらに興味深いことに、ターゲットが着用していたものと同じような服を着た、非常によく似た外見の箔の顔が目撃者に提示された場合、誤認識が有意に増加した。このことは、衣服バイアスは潜在的に非常に強力であり、警察がショーアップの手順を用いているときに、犯人に似ていて、似たような服装をしている(そして犯行現場に近い)人物は、犯人と誤認される危険性が大きいことを示唆している。またYarmey ら(1996)は、衣服の二重性の危険性を支持する同様の研究を行い、目撃者が、ターゲットが着用している衣服と同じような衣服の類似した容疑者を含むショーアップを見た場合、容疑者が類似していない衣服を着用していた場合と比較して、有意に多くの誤認を行うことを発見した。ただ、元々識別する人物の顔とフォイルの顔の類似性との関係は明確ではない。これらの研究では、ターゲットと外見が似ていない容疑者に服装の偏りが見られるという結果は得られていない。ただ、顔の違いが、類似した服装の影響を相殺する傾向があるかもしれない。言い換えれば、目撃者は、同じような服を着た2人の異なる外見の人物を区別することはできるが、同じような服を着た2人の異なる外見の人物を区別することは難しいかもしれない。今後の検討が待たれるところである。


③ 単独面通しと教示の影響
単独面通し手続きにおいてその実施の教示が偏っている場合には、証人は選択しないという回答は推奨されず、犯人はショーアップの中にいて、証人の仕事はただ「犯人を選び出す」ことだと考えるようになる[2]。ラインアップに関する研究をレビューしたメタ分析によると、偏った指示(すなわち、犯人がラインアップに存在するかしないかを明記していない指示)があったラインアップでは、偏りのない指示と比較して、有意に多くの選択が行われたことがわかった[16]。研究者たちは、目撃者が識別を行った後でも、正しい識別を行ったという目撃者の確信を高めることによって、ラインナップに偏りが生じる可能性があることさえ発見している(識別後のフィードバック効果)[17]。これは、並べられた人物の中から正しい人物を選んだことを証人に確認することによって行われる(例えば、「よろしい、容疑者を確認したね」)。このように、潜在的な識別の前後に行われる指示は、目撃者に大きな影響を与える可能性があるようだ。これらの所見と同様に、Smithらによる再研究[3]では、目撃者に偏りのない指示(例えば、無実の容疑者を晴らすことは、有罪の犯人を特定することと同じくらい重要である。あなたが身元を確認しなくても、警察の捜査は続行される)、あるいは偏りのない指示がないかのいずれかである。その結果、偏りのない指示を受けた証人は、指示を受けなかった証人に比べて、無実の容疑者を否認する可能性が有意に高いことが判明した。このことは、偏った指示の影響が、ラインアップだけでなく、ショーアップにも当てはまることを示唆している。

キーワード ① 単独面通し ② 衣服バイアス ③ 教示効果
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
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復習・予習課題 復習:ラインナップによる識別を謝らせる要因について、きちんと説明できるようにしておくこと。
予習:反復される識別の問題、衣服バイアス、についてシラバスを読んでおくこと。

15 現実の事件における目撃者の証言 科目の中での位置付け 今まで、目撃者の記憶に影響するさまざまな要因(変数)について学んできた。では、現実の事件での目撃者はどのような目撃証言をするのだろうか。今回の授業で学ぶトピックスは、符号化段階における出来事要因のうち、出来事の凶暴性、異人種、色彩の要因を扱う。事件の中には凶暴性のある出来事が含まれることも多い。人が殴り合ったり、殺人が行われたりということである。またその現場に残された暴力の跡を目撃するかもしれない。そのような場合には、私たちは、情動的覚醒を覚える。また、ネガティブな感情を抱くこともある。そのような経験は私たちの記憶にどのような影響を与えるのであろうか。今回の授業では、現実の事件において、そのような出来事の凶暴性が私たちの認知能力に与える影響について考える。今回は特に、現実の事件についての研究を取り上げる。一つは米国のシアトル市で起こった事件のアーカイブデータをまとめた心理学研究、一つはカナダのバンクーバー市で起こった事件のアーカイブ研究、そして、スウェーデンのストックホルム市で起こった銀行強盗の目撃者を調べた研究を見ていくことにする。
目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
コマ主題細目 ① シアトル市で起こった事件のアーカイブデータ ② カナダのバンクーバー市で起こった事件のアーカイブデータ ③ スウェーデンのストックホルム市で起こった銀行強盗の目撃者を調べたアーカイブデータ
細目レベル ① シアトル市で起こった事件のアーカイブデータ
本研究はちょっとデータが古いが、興味深い現象が報告されたアーカイブ研究の例として取り上げる。アーカイブとは、目撃証言心理学的には、過去の事件で目撃に関わる(諸記録の総称)で、目撃者の供述(調書、録音、録画等)、識別方法(使用された識別写真)、事件現場の記録、関連する統計的データ、捜査手法などが含まれる。米国のワシントン州シアトル市で起こった100件の犯罪(殺人2件、強姦22件、傷害15件、強盗61件)の警察報告書を調査。データは、犯罪加害者の認知(記述の完全性によって示される)は、犯罪と被害者の特徴に関連するいくつかの変数に依存することを示している。人の知覚という観点から見ると、これらのデータは、「現場で」対象を知覚し描写することが、犯罪の種類や行為の空間的・時間的特性など、さまざまな条件に影響される可能性があることを示唆している。さらに、ある種の被害者は、逮捕につながる可能性のある識別を行うための能力に差があることが示唆された。
この研究では、1)被害者の傷害:傷害を受けた被害者は、受けなかった被害者よりも報告が多いこと、2)黄昏時では、昼や夜よりも目撃者による記述が少ないこと、3)黒人の被害者で白人の加害者の場合、被害者からの報告が少ないことなどがわかった。

この研究では、1)被害者の傷害:傷害を受けた被害者は、受けなかった被害者よりも報告が多いこと、2)黄昏時では、昼や夜よりも目撃者による記述が少ないこと、3)黒人の被害者で白人の加害者の場合、被害者からの報告が少ないことなどがわかった。


② カナダのバンクーバー市で起こった事件のアーカイブ研究(Yuill & Cutshall, 1986)
カナダのバンクーバ市、バーナビーで起こった事件。1人が死亡、2人目が重傷を負った発砲事件を21人が目撃した。事件は昼下がりの大通りで起こった。目撃者全員が警察による事情聴取を受け、13人(15~32歳)が事件から4~5ヵ月後の調査面接に同意した。本研究では、警察による聞き取り調査と研究者による聞き取り調査の両方で得られた目撃証言を分析した。目撃者の証言は非常に正確であり、5ヵ月以上経っても想起の量や正確さにほとんど変化はなかった。しかし、色彩記憶や年齢、身長、体重の推定には誤りが認められた。目撃者は誘導尋問に抵抗し、事件当時のストレスレベルはその後の記憶に悪影響を及ぼさなかったようである。この結果は、目撃者の記憶に関する多くの実験室研究のパターン(すなわち、本研究の目撃者が出来事に積極的に関与していた度合い)とは異なっており、実験室実験の一般化可能性を評価するために、この種の実地研究の必要性を指摘している。
 本研究は情動の生起と記憶の関係を示唆するものとしてもよく引用される文献である。しっかり吟味していこう。

③ スウェーデンのストックホルム市で起こった銀行強盗の目撃者を調べた研究(Christiansen & Hubinette, 1993)
この研究はスウェーデンのストックホルム市で起こった銀行強盗を、被害者または傍観者として目撃した58人の目撃者(18~82歳)に、感情的反応と強盗に関する詳細な情報の記憶に関してインタビューを行った研究である。目撃者の証言の一貫性は、警察の報告書に記載された情報と、リサーチ・インタビューでの記憶との比較によって測定された。目撃者のデータは強盗との接近の程度から、3群に分けて整理された。目撃者への手紙には、日記や新聞等      に頼らないように、また仲間の強盗の経験者とは相談などしないように求める内容が書かれていた。その結果、強盗に関する具体的な詳細(行動、凶器、衣服など)については、時間が経過した後でも比較的高い正確性が示された。しかし、いくつかの詳細(例:目や髪の色、周囲の状況の詳細)については、Ssはかなり低いパフォーマンスを示した。感情の程度と記憶された詳細の数との間に有意な関係は見られなかった。この結果は、ストレスと記憶との負の関係を否定するものである。

キーワード ① アーカイブ研究 ② 現実の目撃者 ③ アーカイブ研究の問題点
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小テスト
復習・予習課題 復習:検索段階の問題は、警察における捜査に対応するものが多い。つまり、ウエルズの言うことのシステム変数であり、司法の側がコントロールできる問題である。その意味を理解しておくこと。予習:現実の事件を扱う心理学の方法について、シラバスを読んでおくこと。
履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
目撃証言心理学の成立の基礎 目撃証言心理学はその基盤に、心理学の基礎研究が存在している。この基礎研究によって、私たちの感覚・知覚の機能が解明されてきた。加えて1950年代以降、認知心理学の登場によって、心の機能についての科学的理解が深まった。それは、心が外界の情報の処理をどのように行い、その結果としての情報の貯蔵と利用(記憶や思考、言語、問題解決)の理解が深まった。しかし、基礎研究だけでは生態学的妥当性を高めることはできない。そこで登場するのが、1970年代以降に発展する日常認知心理学である。この日常の認知機能の解明が、まさに、目撃証言心理学のテーマである、偶発的に生起する複雑な事象である出来事の記憶の問題を明らかにすることに貢献したのである。学生諸君は、基礎心理学、認知心理学、応用認知心理学、そして目撃証言心理学の生成の過程についてきちんと説明できるようにしておくこと。 基礎心理学、行動主義、認知心理学の成立、応用認知心理学の誕生の経緯、目撃証言心理学、生態学的妥当性 10 第1回
刑事事件における誤判という現象と誤判原因 目撃証言心理学が発展する背景には、刑事事件の目撃者の問題がある。目撃者の存在によって事件の解決が見込まれることも多いが、この目撃者の証言によって、過去、少なからぬ誤判が起こってきた。特に1990年代以降のイノセンスプロジェクトはDNAの情報を用いて、冤罪の証明と無実の人間の釈放に貢献してきた。この活動の結果から、誤判の主要な原因が目撃者の証言や識別の誤りにあることが明らかになった。このプロジェクトの使用した方法論であるDNAの型判定、誤判原因、目撃以外の原因等について簡潔に説明できるようにしておくこと。 誤判、誤判原因、イノセンスプロジェクト、DNA型判定 10 第2回
目撃証言が生まれる基礎である認知能力について 目撃証言は視覚情報処理の結果として、記憶に貯蔵され、それが想起されるというプロセスを経て生まれる。この授業では、そのような過程を明らかにしてきた、認知心理学の成果につい学んだ。特に重要なのは、私たちの情報収集に重要な役割を演ずる注意のメカニズム、記憶のメカニズムである。注意のメカニズムで重要なフィルターモデル、特徴統合モデル、記憶のボックスモデル、符号化特定性原理をきちんと説明できるようにしておくこと。 注意、フィルターモデル、特徴統合モデル、記憶へのボックスアプローチ、符号化特定生原理 10 第3回
目撃証言の正確さに影響する要因:要因と要因の分類法 目撃証言の正確さに影響する多くの要因があることが明らかになっている。それらの要因は目撃の体験時に関わる要因に始まり、その出来事を想起するまでの間に関わる要因、そして早期の段階において関わる要因に分類される。記憶の3段階におy流分類法である。もう一つの分類法が、ウエルズによって提唱された目撃への影響を推定せざるを得ない変数と、司法制度が統制可能な変数という区分である。推定変数とシステム変数による区分である。この2種類の区分の理解と、それぞれに分類される要因の理解をしておくこと。 記憶の3段階(符号化、貯蔵、検索)、推定変数、システム変数 10 第4回
符号化段階に影響する要因出:来事変数について 符号化段階に影響を及ぼす要因については、目撃対象となるものの明るさ、対象までの距離、その対象を目撃していた時間的長さ、目撃対象に凶器が介在しているかどうか、出来事の凶暴性、異人種の目撃、色彩知覚の諸要因について、これらの要因がどのように目撃者の記憶形成に影響するかを説明できるようにしておくこと。 明るさ、対象までの距離、その対象を目撃していた時間的長さ、凶器の介在、出来事の凶暴性、異人種の目撃、色彩知覚 10 第5、6回
符号化段階に影響する要因:目撃者変数について 符号化段階に影響及ぼす要因のうち、目撃者に関わる要因についての理解を求めるのがこの履修指標である。目撃者に関わる要因については、子どもの目撃者、高齢の目撃者 、アルコールの影響、覚醒水準、ヤーキース=ドッドソンの法則、期待、 スキーマの各要因が説明できるようにしておくこと。特にこれらの要因の関与を明らかにした研究について、知っておくこと。 どもの目撃者、高齢の目撃者、アルコールの影響、覚醒水準、ヤーキース=ドッドソンの法則、期待、 スキーマ 10 第7、8回
貯蔵段階に影響する要因:保持時間の影響 時間の経過による忘却は誰でもが経験する事実であろう。この時間の経過によって目撃者の記憶も変容や誤った記憶の形成が行われる。また、時間の経過に伴う記憶の減衰が知られている。古くは、エビングハウスの忘却曲線によって示されるように、無意味綴りを材料にした彼の実験では、出来事の経験(無意味綴りの完全学習)から1時間の経過で、記憶したことの半分以上が忘却されてしまう。授業では、長期の保持時間、子どもと保持時間、現実の事件と保持時間の問題を取り上げた。これらの内容を説明できるようにしておくこと。 長期の保持時間、子どもと保持時間、現実の事件と保持時間 10 第9回
貯蔵段階に影響する要因:事後情報効果と関連理論 出来事の経験から出来事を報告するまでが保持期間として知られている。この保持の期間に目撃者はさまざまな情報に晒される。特に目撃で問題になるのは、経験した出来事に関わる(誤)情報である。このような情報に接した場合の記憶の運命について学んだ。具体的には、事後情報効果、誘導効果、社会的影響、現実の事件における社会的影響、および事後情報効果を説明する理論である、ブレンド仮説、ソースモニタリング仮説、ファジートレース仮説であった。以上の項目をきちんと説明できるようにしておくこと。 事後情報効果、誘導効果、社会的影響、現実の事件における社会的影響、ブレンド仮説、ソースモニタリング仮説、ファジートレース仮説 10 第10、11回
検索段階の影響要因:犯人の識別方法、識別方法の問題点 目撃者の犯人に関する供述をもとに、写真帳を作成し、目撃者に識別を試みさせる。この目撃者による犯人識別の過程に、目撃者の記憶に影響するさまざまな心理学的要因が知られている。そして識別や面接に関わるさまざまな方法が展開されている。具体的には以下の項目について、理解し、説明できるようにしておくこと。システム変数、ラインナップの構成法(ライブラインナップ、写真ラインナップ、単独面通し)、ラインナップの実施法。さらに実際に問題となる識別方法についても知っておくこと。それらの方法には、反復された提示方法、威風によるバイアス(成人の場合、子どもの場合)である。


ライブラインナップ、写真ラインナップ、単独面通し、復された提示方法、威風によるバイアス 10 第12、13回
現実の事件における目撃者の証言 過去、諸外国で起こった事件で目撃証言の興味深いデータを紹介する研究論文を紹介した。それらの研究はアーカイブ研究として知られる。そのデータは貴重であるが報告されたデータは結果の解釈に幾つかの重要な視点が必要である。現実の事件を知り、そこからどのような情報を得るのかを知ることが大切である。使用する研究は、5 現実の事件における目撃者の証言である。 アーカイブ研究、現実の事件での目撃証言、批判的吟味、仮説の発見 10 第14、15回
評価方法 期末試験の成績によって評価する
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書
参考文献 目撃証言の心理学 厳島・仲・原(2003)北大路書房
実験・実習・教材費