区分
犯罪心理学発展科目 捜査・防犯領域
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門的知識と実践的能力
分析力と理解力
地域貢献性
カリキュラム・ポリシーとの関係
課題分析力
課題解決力
課題対応力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
個人・社会・自然が直面する課題に対して専門的な理解を深めると共に、学際的な柔軟性を有し、実践的な能力を有する。
科目の目的
本科目では,犯罪を個人の特性や動機のみで説明するのではなく,「犯罪機会」という観点から科学的に理解する力を養うことを目的とする。犯罪発生の構造,日常活動理論,犯罪不安,被害リスク認知,犯罪予防行動,コミュニティ防犯,防犯環境設計(CPTED)などの理論を体系的に学び,理論間の関連を整理できる思考力を育成する。さらに,これらの理論を具体的事例に適用し,現実社会における犯罪問題を分析・検討できる基礎的能力を身につけることを目指す。
到達目標
本科目の履修を通して,以下の到達を目指す。
(1)犯罪発生の三要素(犯罪者・被害者・環境)を理解し,具体例に当てはめることができる。
(2)日常活動理論および犯罪機会論の基本構造を説明できる。
(3)犯罪不安と被害リスク認知を区別し,両者の関係を整理できる。
(4)犯罪予防行動の心理的メカニズムを説明できる。
(5)CPTEDの原則を挙げ,具体的な場所の安全性を検討できる。
(6)学修した理論を用いて,身近な社会現象を分析する視点を身につける。
科目の概要
本科目では,犯罪を個人の性格や動機のみで説明するのではなく,「犯罪機会」という視点から理解する。まず,犯罪の三要素や日常活動理論などの基礎理論を学び,犯罪がどのような状況で発生するのかを整理する。次に,犯罪不安や被害リスク認知といった心理的要因が犯罪予防行動にどのように影響するのかを検討する。さらに,コミュニティ防犯,ホットスポット,防犯環境設計(CPTED)などの理論を通して,環境や地域への介入方法を学ぶ。理論と現実社会の具体的事例を往復しながら,犯罪を防ぐための科学的視点を体系的に身につけることを目指す。また,現代社会における地域課題やデジタル環境の広がりも踏まえ,理論を多様な社会状況に応用する姿勢を養う。
科目のキーワード
防犯,犯罪予防,未然防止,再犯防止,犯罪機会論,日常活動理論,犯罪不安,被害リスク認知,犯罪予防行動,CPTED,集合的効力感,ホットスポット,説得的コミュニケーション,安全・安心まちづくり
授業の展開方法
本授業は講義形式を基本とし,理論の体系的理解を重視しながら進める。各回では小テストを実施し,学習内容の定着と理解度の確認を行う。前半では犯罪発生の理論的枠組みを整理し,第7回に中間まとめを行って理論構造を再確認する。後半では心理的要因および環境的介入の理論を扱い,具体的事例を通して応用的理解を深める。最終回では全体を統合し,理論を現実社会に適用する視点を確認する。適宜,小テストの振り返りなどの時間を設け,主体的な理解を促す。
オフィス・アワー
【月曜日】4限(前期のみ)、【水曜日】3・4限(会議日は除く)、【木曜日】2限、【金曜日】4限(後期のみ)
科目コード
PSC663
学年・期
3年・後期
科目名
防犯科学
単位数
2
授業形態
講義
必修・選択
必修
学習時間
【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目
犯罪心理学概論(司法・犯罪心理学) 捜査心理学
展開科目
総合演習Ⅲ・Ⅳ
関連資格
なし
担当教員名
皿谷陽子
回
主題
コマシラバス項目
内容
教材・教具
1
オリエンテーション:「防犯科学」とは
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
第1回は,本講義の出発点として「犯罪機会の理解」に入る前段階に位置づけられる導入回である。本回では,本科目全体の見取り図を提示するとともに,防犯の概念,犯罪の定義,犯罪予防の分類(一般予防・特別予防,1次〜3次予防など)を整理し,以後の理論学修の基礎枠組みを構築する。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.126-127)
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.1-27)
【コマ主題細目②】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.126-127)
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.1-27)
・清永 賢二・篠原 惇理・田中 賢・川嶋 宏昌(2010).デザインは犯罪を防ぐ防犯環境設計の基礎 彰国社(pp.9-35)
【コマ主題細目③】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.126-127)
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.1-27)
【コマ主題細目④】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.126-127)
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.1-27)
コマ主題細目
① 「防犯」とは ② 「犯罪」とは ③ 犯罪予防とは
細目レベル
① 「防犯」とは犯罪を未然に防止することであり,本科目では“犯罪機会を下げる”という観点から理解する。受動的防犯は,侵入盗や暴力など予測可能な犯罪に対して,防犯ガラス・錠・警報器・カメラ等の設備や手順を事前に整え,被害を回避・軽減する方法である。一方,能動的防犯は地域パトロールや見守り等の活動を通じて,犯罪者が犯行しにくい環境(監視性の確保,死角の縮小,接近の制御など)を形成し,機会犯罪を起こしにくくする。ここでは両者の違いを「誰に向けた介入か(被害者側/環境側)」「どのタイミングで効くか(事前準備/環境形成)」「継続性(単発/継続)」の観点から整理し,防犯を“道具”ではなく“仕組み”として捉える基盤をつくる。
② 犯罪(crime)とは刑罰法規により処罰対象となる行為であり,構成要件該当性・違法性・有責性を満たす行為と整理される。ただし防犯科学では,犯罪を「起きた後の出来事」ではなく「起きる(発生する)現象」として捉え,どのような条件が重なると犯罪が生じるのかを問う。社会生活上の有害行為のうち,刑罰という強い手段が必要と宣言された行為のみが犯罪となり,刑法犯に限らず特別法・行政取締法規違反でも刑罰が規定されれば犯罪となる。ここでは法的定義を押さえたうえで,防犯科学の対象が「犯人探し」ではなく「発生条件の理解と再発防止・未然予防」にあることを確認する。以後の回で扱う犯罪機会論・日常活動理論の前提となる視点である。
③ 犯罪予防(crime prevention)は,「実際の犯罪水準と知覚された犯罪不安を引き下げるために企図されたすべての方策」と捉えられる。犯罪予防は複数の軸で分類できるため,分類の「使い分け」が重要である。第一に,一般予防・特別予防(刑罰の効果)という分類があり,主に刑事政策の枠組みで用いられる。第二に,発達的犯罪予防(成育環境・非行化リスク)と状況的犯罪予防(機会削減)という分類があり,本科目はとくに後者を中心に扱う。第三に,公衆衛生モデルに対応する1次〜3次予防があり,対象人口の広さと被害化/犯罪化の程度に応じて介入を設計する。ここでは各分類の特徴と限界を整理し,「どの問題にどの分類が効くか」を考える土台をつくる。
キーワード
① 防犯(受動的/能動的) ② 犯罪の定義 ③ 犯罪予防 ④ 状況的犯罪予防 ⑤ 1次・2次・3次予防
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習: 配布資料と授業内容を読み返し,「防犯(受動的/能動的)の違い」「犯罪の法的定義」「犯罪予防の3つの分類軸(一般/特別,発達的/状況的,1次〜3次)」について,自分の言葉で要点を箇条書きにまとめる。とくに“分類は暗記で終わらず,使い分けが目的”である点を意識し,具体例(例:見守り活動,防犯カメラ,教育啓発など)を当てはめて整理する。
予習: 第2回の「犯罪者(犯罪企図者)の行動心理」に向けて,犯罪が“やりやすい状況”を探すという観点で,身近な場面(駅,商業施設,ネット上の詐欺など)で「なぜそこが狙われるのか」を考えてメモする。生成AI(ChatGPT等)は用語確認や視点整理に使ってよいが,誤情報が混ざる可能性があるため,授業資料・指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,必ず自分の理解として再構成する。
2
犯罪者(犯罪企図者)の行動心理
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
第2回は,第1回で確認した犯罪の定義と犯罪予防の枠組みを踏まえ,犯罪者の行動を「犯罪機会」「リスクと利益の見積り」「環境の解釈」という観点から整理する回である。本回の内容は,後に扱う犯罪機会論や日常活動理論,CPTEDの理解につながる基礎となる。犯罪者像を固定的な性格特性として捉えるのではなく,「状況に応じて選択が変化する」という前提に立ち,犯罪の転移性や犯罪が集中しやすい条件を理解することを目指す。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・清永 賢二・篠原 惇理・田中 賢・川嶋 宏昌(2010).デザインは犯罪を防ぐ防犯環境設計の基礎 彰国社(pp.9-35)
・竹花 豊(監修)・樋村 恭一・飯村 治子(編集)(2007).地域の防犯―犯罪に強い社会をつくるために― 北大路書房(pp.60-77)
【コマ主題細目②】
・清永 賢二・篠原 惇理・田中 賢・川嶋 宏昌(2010).デザインは犯罪を防ぐ防犯環境設計の基礎 彰国社(pp.9-35)
・竹花 豊(監修)・樋村 恭一・飯村 治子(編集)(2007).地域の防犯―犯罪に強い社会をつくるために― 北大路書房(pp.60-77)
【コマ主題細目③】
・清永 賢二・篠原 惇理・田中 賢・川嶋 宏昌(2010).デザインは犯罪を防ぐ防犯環境設計の基礎 彰国社(pp.9-35)
・竹花 豊(監修)・樋村 恭一・飯村 治子(編集)(2007).地域の防犯―犯罪に強い社会をつくるために― 北大路書房(pp.60-77)
コマ主題細目
① 犯罪現象の転移性とやりやすさ ② 犯罪発生の必須要素(犯罪者・被害者・環境)と機会 ③ 犯罪者の合理性(リスク・利益の見積り)と認知的特徴
細目レベル
① 犯罪は固定された場所や手口で起き続けるとは限らず,対策が強まれば場所・時間・対象・手口を変化させることがある。これを犯罪現象の転移性と呼び,防犯を考えるうえで重要な前提となる。転移性を理解することは「対策をしたのに別の場所で増えた」という現象を誤解しないためにも必要である。ここでは,転移が起きる理由を,犯罪者が“やりやすい条件”を求めて選択を変えるという観点から整理する。また,転移が必ず起きるわけではなく,介入が成功すると周辺にも抑止効果が広がる可能性(拡散的便益)もあることを示し,防犯施策の評価の視点(どこをどう見れば効果と言えるか)につなげる。以後,ホットスポットや場所に基づく防犯を学ぶ際の基礎概念となる。
② 犯罪は,(1)犯罪者(犯罪企図者),(2)被害者/対象物,(3)両者を結びつける環境が同時に交わることで発生する。犯罪者がいても標的がなければ成立せず,標的があっても犯罪者がいなければ成立しない。また両者が接近しても,周囲の環境が「見られる」「止められる」「入りにくい」など犯罪実行を不利にすれば犯行は起こりにくい。ここでは三要素を“条件”として捉え,防犯の狙いが「犯罪者の心を変える」だけでなく「環境条件を変えて機会を減らす」ことにある点を確認する。さらにデジタル環境では,環境が“画面・手続き・認証・情報の提示”として現れることを例に,リアルとネットの共通性(機会の設計)を理解する。この三要素の同時性が犯罪成立の前提であることを強調する。
③ 犯罪者の行動は衝動だけでなく,主観的な合理性に基づく選択として理解できる。合理性とは,社会規範に沿うという意味ではなく,「捕まる確率」「得られる利益」「手間」「成功可能性」などを当人なりに見積もって選ぶという意味である。ここでは,犯罪者の行動心理の要素として,動機,認知的歪み,社会的・環境的要因,心理的特性を概観しつつ,「個人特性だけでは一般化できない」点も押さえる。重要なのは,犯罪者が環境の手がかりから“ここならやれそう”と判断するプロセスであり,これがCPTED(監視性・領域性など)や説得的コミュニケーションにも接続する。ネット詐欺では,警告表示や文面,認証手順が“環境手がかり”となり得ることも示し,後半の回への伏線とする。
キーワード
① 犯罪現象の転移性 ② 犯罪発生の三要素 ③ 合理性 ④ 死角 ⑤ 機会
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:本回で扱った「犯罪現象の転移性」「犯罪発生の三要素(犯罪者・被害者・環境)」「犯罪者の合理性」の3点について整理すること。特に,犯罪が“やりやすい状況”を求めて変化するという視点から,具体例を挙げながら説明できるようにしておく。また,三要素のうちどの要素に介入すれば犯罪機会が低下するのかを,自分なりにまとめておくこと。
予習:次回は犯罪不安と被害リスク認知を扱うため,ニュースや自治体の防犯情報を一つ取り上げ,「どのような危険が示されているか」「どのような行動が勧められているか」を整理しておく。ChatGPT等の生成AIを用いて用語の意味を確認することは差し支えないが,誤情報が含まれる可能性があるため,授業資料や指定文献と照合しながら活用すること。
3
犯罪予防のための心理学的アプローチ
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
第1回・第2回では,犯罪発生の三要素および犯罪企図者の合理的選択という視点から,犯罪がどのような条件で生じるのかを整理した。第3回では,その前提のもとに,犯罪をめぐる人々の「認知」と「感情」に焦点を当てる。具体的には,人々が犯罪リスクをどのように解釈し,どのような犯罪不安を抱き,それがどのように犯罪予防行動へとつながるのかという心理的過程を検討する。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.5 -17)
【コマ主題細目②】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.5 -17)
【コマ主題細目③】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.17 -31)
コマ主題細目
① 犯罪不安の形成要因と影響 ② 犯罪被害リスク認知と心理的評価 ③ 犯罪予防行動と説得的コミュニケーション
細目レベル
① 「犯罪不安」とは,個人が犯罪や犯罪に関連する出来事に対して抱く恐れや不安といった感情的反応を指す。犯罪不安は一時的な感情にとどまらず,日常生活の質や行動選択に影響を及ぼす。例えば,過度な不安は外出の抑制や社会参加の減少を招く可能性がある一方で,適度な不安は防犯行動を促進する機能も持つ。本細目では,犯罪不安がどのような要因(個人的特性,地域環境,メディア接触や被害経験など)によって形成されるのかを整理する。さらに,犯罪不安が健康状態,地域への愛着,コミュニティ参加に与える影響を検討し,「不安は常に否定的なものではない」という両義的視点を確認する。犯罪不安の機能と課題を多面的に理解することが,本科目における心理的基盤となる。
② 「犯罪被害リスク」とは,個人や団体が犯罪の被害に遭う可能性や危険性に関する主観的な見積もりである。被害リスク認知は,統計的確率や実際の発生率とは必ずしも一致せず,過去の被害経験,家族や知人からの情報,メディア報道,SNS上の話題や周囲の噂など,多様な情報源の影響を受けて形成される。本細目では,被害リスク認知がどのような情報や経験によって構築されるのかを整理する。また,犯罪不安との関係を区別しつつ,リスク認知が先行し,それに対する感情的反応として犯罪不安が生じるという基本的枠組みを理解する。さらに,リスク認知が過小である場合には無防備な行動につながり,過大である場合には過度の回避や社会的縮小を招く可能性があることを検討し,適切なリスク評価が合理的な防犯行動を支える基盤となることを確認する。
③ 犯罪予防の現場では,人々に具体的な防犯行動を取ってもらうために,情報提供や啓発活動が行われている。本細目では,犯罪予防行動を促進するために用いられる心理学的アプローチを整理する。とくに,脅威情報の提示がリスク認知や不安を喚起しつつ,同時に「その行動は有効である」という行動効果性を示すことが行動意図の形成に重要である点を理解する。また,説得的コミュニケーションは,単に恐怖をあおるのではなく,受け手の自由意志を尊重しながら論拠を提示し,合理的判断を支援する点に特徴がある。「何が危険か」だけでなく,「どうすれば防げるのか」を具体的に示すことが不可欠である。本細目は,第8回以降で扱う説得的コミュニケーション理論への導入として位置づけられる。
キーワード
① 犯罪不安 ② 犯罪被害リスク ③ 犯罪予防行動 ④ リスク評価 ⑤ 説得的コミュニケーション
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:本回で扱った「犯罪不安」「被害リスク認知」「犯罪予防行動」の三つの概念を区別し、それぞれの意味と相互関係を整理すること。特に、被害リスク認知がどのように形成され、それに対する感情的反応として犯罪不安が生じ、さらにどのような条件で犯罪予防行動へとつながるのかを、自分の言葉で説明できるようにしておく。また、犯罪不安が高まることの利点と問題点の両面について具体例を挙げて考察すること。講義資料を再読し、重要語句を確認しておく。
予習:次回は犯罪不安の理論モデルを扱うため、ニュースや自治体の防犯情報を一つ選び、その情報がどのようなリスク認知や感情を想定しているかを分析しておくこと。可能であれば、情報提示の仕方(事例提示か統計提示かなど)にも注目する。ChatGPT等の生成AIを用いて用語の確認や視点整理を行うことは差し支えないが、誤情報が含まれる可能性があるため、必ず授業資料や指定文献と照合しながら活用すること。
4
犯罪予防に関する理論と実証研究
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
第1回から第3回では,防犯の基本概念,犯罪発生の三要素,犯罪者の合理性,犯罪不安や被害リスク認知といった基礎的視点を整理してきた。第4回では,それらを個別の概念として理解するだけでなく,「犯罪はどのような理論によって説明されてきたのか」という観点から体系化する回である。具体的には,犯罪不安に関する理論,犯罪被害リスクに関する理論,犯罪予防行動に関する理論を取り上げ,それぞれがどの水準(個人・環境・社会)で犯罪を説明しているのかを比較する。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.34-43)
【コマ主題細目②】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.43-50)
【コマ主題細目③】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.50-67)
コマ主題細目
① 犯罪不安に関する理論 ② 犯罪被害に関する理論 ③ 犯罪予防行動に関する理論
細目レベル
① 犯罪不安の形成については複数の理論が提示されている。代表的なものとして,「間接被害モデル」「秩序違反の痕跡モデル」「リスク解釈モデル」が挙げられる。間接被害モデルは,他者の被害経験やメディア報道などの情報接触を通して犯罪不安が形成されるとする立場であり,直接的な被害経験がなくても不安が高まることを説明する。秩序違反の痕跡モデルは,落書きやゴミの散乱,放置自転車などの秩序違反の兆候が,潜在的な犯罪の存在を想起させ,不安を増大させるとする。リスク解釈モデルは,被害リスクの主観的見積もりを媒介として不安が形成されるとする理論である。これらの理論を比較することで,不安が情報・環境・認知といったどの水準で形成されるのかを整理し,多面的理解を図る。
② 犯罪被害リスクの理解には,犯罪がどのような状況や条件で発生しやすいのかを説明する理論が重要である。代表的なものとして,日常活動理論,犯罪機会論,構造的選択モデルなどが挙げられる。日常活動理論は,「動機づけられた犯罪者」「適切な標的」「有能な監視者の不在」という三要素の結合によって犯罪が成立すると説明し,状況的要因の重要性を示す。犯罪機会論は,犯罪を可能にする機会構造に注目し,環境条件を調整することで犯罪発生を抑制できると考える。構造的選択モデルは,犯罪者が主観的にリスクと利益を比較しながら合理的に選択を行う点を強調する。これらの理論を比較することで,被害リスクが個人の属性のみならず,環境配置や監視体制,社会的文脈によっても大きく左右されることを理解する。また,理論ごとの焦点の違いを整理することで,後に扱う環境的介入やCPTEDの意義をより明確に把握できる。
③ 犯罪予防行動の説明には,環境犯罪学,理性的選択理論,社会的結合理論,社会的学習理論など,多様な理論的視点が存在する。環境犯罪学は犯罪機会への働きかけを重視し,状況調整によって行動を変化させる可能性を示す。理性的選択理論は,個人が費用と便益を比較しながら行動を選択すると考える。社会的結合理論は,他者や地域との結びつきの強さが逸脱抑制に影響すると説明し,社会的学習理論は,周囲の行動や規範から予防行動が学習される過程を重視する。また,犯罪被害経験が行動変容をもたらすとする「経験-行動仮説(一度打たれると用心深くなる仮説)」も重要である。犯罪予防行動は単に知識の有無だけでなく,被害経験,自己効力感,社会的規範,利用可能な資源や環境条件など複数の要因によって規定される。本細目では,これらの理論が示す規定因を比較整理し,第6回以降で扱う実証研究や行動変容モデルとの接続を明確にする。
キーワード
① 犯罪不安の理論 ② 犯罪機会論 ③ 日常活動-ライフスタイル理論 ④ 構造的選択モデル ⑤ 経験-行動仮説
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:本回で扱った理論(犯罪不安に関する理論,犯罪被害に関する理論,犯罪予防行動に関する理論)を,「何を説明する理論なのか」という観点から整理すること。とくに,それぞれの理論が個人・環境・社会のどの水準に焦点を当てているのかを意識しながら,自分の言葉でまとめる。また,「機会」に着目する理論がどれかを明確にし,第1~3回で扱った内容と接続できるようにしておく。
予習:第5回では犯罪不安の構造と文脈効果を扱う。犯罪不安が個人の特性だけでなく,地域や社会的文脈によって変化するとすれば,どのような要因が考えられるかを事前に整理しておくこと。生成AI(ChatGPT等)は用語確認や視点整理に活用してよいが,誤情報が含まれる可能性があるため,必ず授業資料や指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,必ず自分の理解として再構成すること。
5
犯罪不安の形成
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
1回から第4回では,防犯の基本概念,犯罪発生の三要素,犯罪者の合理性,さらに犯罪不安や犯罪被害リスクに関する主要理論を整理してきた。第5回では,それらの理論を踏まえ,犯罪不安が実際にはどのような構造を持ち,どのような要因によって形成・変動するのかを実証研究に基づいて検討する。犯罪不安は単なる感情ではなく,個人特性,地域環境,情報接触,防犯対策への信頼など複数の要因が相互に影響して生じる。本回では,犯罪不安の構造,近隣防犯対策の効果,さらに文脈効果や時間的変化に焦点を当て,不安がどのように変動するのかを理解する。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.70-79)
【コマ主題細目②】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.79-96)
【コマ主題細目③】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.96-112)
コマ主題細目
① 犯罪不安の構造 ② 近隣防犯対策と市民の認知・感情 ③ 犯罪不安の文脈効果と時間的影響
細目レベル
① 犯罪不安は単一の感情ではなく,「個人的特性」「社会的要因」「情報と認知」「対策への信頼や希望」といった複数の要因が相互に関連して形成されると考えられている。例えば,年齢や性別などの個人特性,地域の犯罪発生状況や秩序状態,メディア報道やSNSからの情報接触などが,不安の程度に影響を及ぼす。また,落書きやゴミの散乱,放置自転車といった秩序違反の痕跡は,潜在的な犯罪の存在を想起させ,不安を高める可能性がある。本細目では,これらの要因を構造的に整理し,犯罪不安が客観的危険そのものではなく,環境や情報をどのように解釈するかという主観的評価の産物であることを明確にする。その理解は,不安の適切なマネジメントを考える基礎となる。
② 近隣防犯対策(例:青色防犯パトロール,犯罪発生マップの掲示,防犯カメラの設置,見守り活動など)は,実際の犯罪発生件数の変化だけでなく,市民の犯罪不安や被害リスク認知にも影響を与える。公的機関や地域住民による能動的な対策は,「監視が機能している」「地域が守られている」という認識を生み,安心感や地域への信頼を高める効果を持つとされる。一方で,犯罪発生情報の提示方法や頻度によっては,犯罪の存在を過度に意識させ,不安や警戒感を強めてしまう可能性もある。たとえば,犯罪発生マップが危険地域を強調する形で示される場合,実際の発生率以上にリスクを高く見積もる傾向が生じることが指摘されている。本細目では,防犯対策が人々の認知や感情にどのようなメカニズムで作用するのかを実証研究に基づいて学修し,「対策そのものの効果」と「対策の伝え方・見せ方」の両面から防犯政策を評価する視点を養う。
③ 犯罪不安や被害リスク認知は,一時点の調査結果だけでは十分に理解することができない。地域全体の犯罪状況や秩序状態といったマクロな環境要因が,個人の認知や感情に影響を与える「文脈効果」の視点が重要である。また,犯罪発生の増減,メディア報道の変化,防犯対策の導入などによって,人々の認知や感情は時間の経過とともに変動する可能性がある。こうした変化を捉えるためには,「時間的因果」という観点が不可欠であり,単純な相関関係ではなく,因果の方向性を検討する必要がある。本細目では,縦断的調査やパネルデータを用いた研究を紹介し,犯罪不安や被害リスク認知がどのような条件のもとで増減するのかを整理する。さらに,短期的な出来事によって生じる一時的な不安と,構造的要因に支えられた持続的な不安とを区別する視点を獲得し,防犯政策の効果を評価する際の理論的基盤を形成する。
キーワード
① 犯罪不安の構造 ② 近隣防犯対策 ③ 文脈効果 ④ 時間的影響 ⑤ 被害リスク認知
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:本回で扱った「犯罪不安の構造」「近隣防犯対策の影響」「文脈効果と時間的影響」について整理すること。とくに,犯罪不安が個人の特性だけでなく,地域や情報環境の影響を受ける点を説明できるようにしておく。また,犯罪不安が時間とともにどのように変化し得るのかを,自分の言葉でまとめる。
予習:第6回では犯罪予防行動と犯罪被害の関係を扱う。犯罪不安や被害リスク認知がどのような条件で実際の犯罪予防行動につながるのかを事前に考えておくこと。生成AI(ChatGPT等)は用語確認や視点整理に活用してよいが,誤情報が含まれる可能性があるため,必ず授業資料や指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,必ず自分の理解として再構成すること。
6
犯罪予防行動と犯罪被害
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
第1回から第5回では,防犯の基本概念,犯罪発生の三要素,犯罪者の合理性,犯罪不安や被害リスク認知の理論,さらに犯罪不安の構造や文脈効果について学修してきた。第6回では,それらの理論を踏まえ,犯罪予防行動と犯罪被害との関係を統合的に整理する。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.114-129)
【コマ主題細目②】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.130-145)
【コマ主題細目③】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.145-156)
【コマ主題細目④】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.156-170)
コマ主題細目
① 犯罪予防行動の要因 ② 日常活動-ライフスタイルと被害リスク ③ 犯罪被害経験と行動変容
細目レベル
① 犯罪予防行動は,個人の知識や防犯意識の高さだけで決まるものではなく,「自己効力感」「環境条件」「過去の被害経験」「社会的規範」など複数の要因によって規定される。たとえば,自分の行動が被害防止に有効であると感じられる場合には行動が促進されやすいが,効果への確信が弱い場合には実行に至りにくい。また,犯罪被害の経験は防犯への関心を高める契機となることがある一方で,不安の増大や無力感につながる場合もあり,必ずしも一貫して予防行動を促すとは限らない。本細目では,犯罪予防行動がどのような心理的・社会的要因の組み合わせによって生起するのかを整理し,「行動は状況の中で合理的に選択される」という視点を確認する。
② 日常活動-ライフスタイル理論は,個人の生活様式や日常的な行動パターンが被害リスクに影響を与えるとする理論である。犯罪は偶発的に発生するのではなく,「どこにいるか」「誰と行動しているか」「どのような防犯習慣を持っているか」といった日常的選択の積み重ねの中で生起すると考える。外出頻度,夜間活動の多寡,施錠習慣,防犯設備の有無などは,犯罪機会の多寡を左右する要因となる。本細目では,犯罪予防行動の効果が,こうした日常活動やライフスタイルによって調整される可能性を理解する。すなわち,予防行動の効果は一律ではなく,生活様式との相互作用の中で発揮されるという視点を押さえ,機会構造との関連を改めて再確認する。
③ 犯罪被害経験は,必ずしも一方向的に防犯行動を促進するとは限らない。被害後に施錠の徹底や情報収集を強化する人もいれば,逆に無力感や諦め,過度の不安によって行動を取らなくなる人もいる。この差異には,被害の深刻度,社会的支援の有無,自己効力感,周囲の反応などが影響すると考えられる。本細目では,被害経験と行動変容の多様なパターンを整理し,「経験-行動仮説(一度打たれると用心深くなる仮説)」の理論的前提とその限界を検討する。さらに,被害経験が時間の経過とともにどのように意味づけられ,再評価されるのかという視点も踏まえ,行動変容が一時的な反応にとどまるのか,持続的な変化につながるのかを考察する。あわせて,被害後の適切な支援や情報提供が行動の方向性を左右する可能性についても検討する。
キーワード
① 犯罪予防行動の要因 ② 日常活動-ライフスタイル理論 ③ 文脈効果 ④ 時間的因果 ⑤ 犯罪被害経験
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:本回で扱った「犯罪予防行動の要因」「日常活動・ライフスタイル」「文脈効果と時間的因果」「犯罪被害経験」の関係を図式化して整理すること。特に,犯罪予防行動と犯罪被害が一方向ではなく,相互に影響し合う可能性について,自分の言葉で説明できるようにしておく。
予習:第7回は中間まとめである。第1回から第6回までの内容を振り返り,「犯罪はどのような条件で発生するのか」「犯罪不安と被害リスクはどのように形成されるのか」「犯罪予防行動はどのように生起するのか」という3点を整理しておくこと。生成AI(ChatGPT等)は復習の補助として活用してよいが,誤情報が含まれる可能性があるため,必ず授業資料や指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,必ず自分の理解として再構成すること。
7
まとめ①
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
第1回から第6回では,「防犯とは何か」という基本概念から出発し,犯罪発生の三要素,犯罪者の合理性,犯罪不安や被害リスク認知の理論,さらに犯罪予防行動の規定因と時間的因果までを学修してきた。第7回は,これらを個別の知識として確認するのではなく,「犯罪はどのような構造で発生し,どのように抑制できるのか」という全体枠組みに再整理する中間的統合の回である。本回では,犯罪機会,心理的メカニズム,予防行動という三層構造の関係を明確化し,理論間のつながりを可視化する。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.126-127)
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.1-27)
【コマ主題細目②】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.126-127)
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.1-27)
【コマ主題細目③】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.70-112)
【コマ主題細目④】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.50-67)
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.145-156)
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.185-204)
コマ主題細目
① 犯罪発生の構造 ② 犯罪不安・被害リスク ③ 犯罪予防行動の位置づけ ④ 理論間の接続
細目レベル
① 犯罪は,犯罪者・被害者・環境の三要素が同時に交わることで発生するという基本構造を再確認する。また,犯罪者の合理性や機会選択の視点を再整理し,「犯罪は偶然に起こるものではなく,特定の条件が揃った結果として生じる」という理解を確立する。さらに,犯罪現象の転移性を踏まえ,単に犯罪者を排除するのではなく,「機会を低減させる」ことが防犯の基本的発想であることを改めて確認する。本細目では,これまで学修してきた理論を一つの構造図として整理し,各理論がどの水準(機会・心理・行動)を説明しているのかを明確化する。これにより,個別理論の位置づけを再確認し,後半で扱う心理的介入や環境的介入へと接続するための統合理解を形成する。
② 犯罪不安と被害リスク認知を概念的に区別し,両者の関係構造を整理する。不安は犯罪に対する感情的反応であり,リスク認知は被害可能性に関する主観的見積もりであることを再確認する。また,第3回から第5回で扱った犯罪不安の構造や文脈効果を踏まえ,個人特性,地域環境,情報接触といった要因がどのように相互作用しながら認知や感情に影響を与えるのかを整理する。ここでは,「不安が高まれば必ず行動が促進される」という単純な図式ではなく,自己効力感や社会的規範など複数の媒介要因が存在することを理解する。心理的メカニズムを構造的に再確認することが本細目の目的であり,後半の介入論を理解する理論的基盤となる重要な整理作業である。
③ 犯罪予防行動がどのような要因によって規定され,被害リスクとどのように相互作用するのかを再整理する。日常活動-ライフスタイル理論や経験-行動仮説を踏まえ,行動は単独で自動的に生じるのではなく,心理的要因(リスク認知・自己効力感),環境条件(機会構造・監視体制),さらには過去の経験や社会的規範との相互作用の中で形成されることを確認する。犯罪予防行動は,単に「正しい知識を持てば実行される」という単純なものではなく,状況に応じた合理的選択として位置づけられる。また,予防行動が被害リスクを低減する場合もあれば,生活様式や地域環境によっては効果が限定的となる場合もあることを理解する。本細目では,「機会・心理・行動・被害」という循環的関係を一つの枠組みとして統合し,後半で扱う説得的コミュニケーションや環境的介入が,どの層に働きかけるのかを見通す視点を形成する。これにより,防犯科学を断片的知識ではなく,構造的理解として捉えることを目指す。
④ これまで扱ってきた諸理論を,「機会」「心理」「行動」という三層構造の枠組みに再配置する。犯罪機会論や日常活動理論は主として「機会」の層を説明し,犯罪不安理論やリスク解釈モデルは「心理」の層を扱い,犯罪予防行動に関する理論は「行動」の層を対象としていることを整理する。個々の理論が何を説明し,どの水準に位置づくのかを明確にすることで,理論間の重なりや補完関係を可視化する。また,これら三層は独立して存在するのではなく,相互に影響し合いながら犯罪現象を形成していることを確認する。たとえば,機会構造の変化は心理的認知に影響を与え,心理の変化は行動選択に反映される。本細目では,理論を縦割りに理解するのではなく,構造的連関の中で把握する視点を養い,後半で扱う説得的コミュニケーションや環境設計(CPTED)が,どの層に働きかける介入なのかを見通せるようにする。これにより,「防犯科学」の体系的理解を確立する。
キーワード
① 犯罪発生の三要素 ② 犯罪機会 ③ 犯罪不安 ④ 被害リスク認知 ⑤ 犯罪予防行動
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:第1回から第6回までの内容を振り返り,「犯罪はどのような条件で発生するのか」「犯罪不安と被害リスクはどのように形成されるのか」「犯罪予防行動はどのように生起するのか」の3点を一枚のメモに整理すること。各理論がどの位置にあるのかを明確にし,構造として説明できるようにしておく。
予習:第8回では説得的コミュニケーションを扱う。犯罪予防行動を促進するために,どのような情報提示が有効と考えられるかを事前に整理しておくこと。生成AI(ChatGPT等)は復習や視点整理に活用してよいが,誤情報が含まれる可能性があるため,必ず授業資料や指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,自分の理解として再構成すること。第8回では説得的コミュニケーションを扱う。犯罪予防行動を促進するために,どのような情報提示が有効と考えられるかを事前に整理しておくこと。生成AI(ChatGPT等)は復習や視点整理に活用してよいが,誤情報が含まれる可能性があるため,必ず授業資料や指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,自分の理解として再構成すること。
8
犯罪予防のためのコミュニケーション①:説得的コミュニケーション
科目の中での位置付け
本科目は,「防犯」についての基本的な知識を習得する。「防犯」いわゆる犯罪予防は,行動科学,法学,医学,工学などさまざまな分野で取り扱われている。そして,本科目「防犯科学」では,犯罪を防ぐ「防犯」に関する心理学的知見を理解し,現在行われている「防犯」について科学的な根拠を基にさまざまな実践的課題や問題への理解を深めていく。具体的には,第1回に授業の概観を説明し,「防犯科学」とはどのような学問なのかを考える。第2回では,「防犯」を考える上での犯罪者(犯罪企図者)の視点を理解する。第3・4回では各学問分野に散在する犯罪被害・犯罪不安に関する理論を学修する。第5・6・7・8回では社会調査で行われている被害リスクについて理解を深める。第10回では日本でも唱導されるようになった「エビデンスに基づく政策形成」について学修し,問題解決型警察活動,犯罪オープンデータに基づく犯罪予防の動向を理解する。第11・12・13・14回では,市民が犯罪に対して意図的に関わる犯罪予防,都市や地域,まちにおける「防犯」について学修する。なお,第9回,第15回は授業全体を振り返る復習の回とする予定である。
上記のような本科目全体の中で,第8 回は犯罪予防のためのコミュニケーション②として「説得的コミュニケーション」と「犯罪予防」の関係性について学修する。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.114-129)
【コマ主題細目②】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.130-145)
【コマ主題細目③】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.145-156)
コマ主題細目
① 犯罪予防と説得的コミュニケーション ② 防犯情報の提示方法 ③ 情報提示の効果と限界
細目レベル
① 説得的コミュニケーションとは,相手の態度や行動を変容させることを目的とした情報伝達の方法である。犯罪予防の現場では,防犯キャンペーンや啓発ポスター,地域説明会などを通じて,市民に具体的な予防行動を促す取り組みが行われている。説得は,「誰が(送信者)」「何を(メッセージ)」「どのように(提示方法)」伝えるかという構造を持ち,その効果は受け手の特性や状況によって左右される。本細目では,説得の基本構造(論理的説明,証拠の提示,共感の形成,具体的行動の提示)を整理し,犯罪予防の文脈においてどのように活用されているのかを理解する。また,説得は単なる情報提供ではなく,「受け手の認知と感情をどのように動かすか」という心理的過程を踏まえる必要があることを確認する。
② 防犯情報の効果は,「具体性」「明確性」「受け手への適合性」「媒体の選択」などの要素によって大きく左右される。統計的データの提示は客観性を高める一方で,具体的事例やストーリーの提示は受け手の印象や感情に強く作用し,行動意図に影響を与えることが示されている。また,メッセージは受け手の年齢,経験,関心に応じて調整される必要がある。本細目では,情報提示の方法が犯罪予防行動にどのような心理的影響を与えるのかを整理する。特に,「脅威の提示」と「対処可能性(行動の有効性)の提示」のバランスが重要であり,恐怖のみを強調するのではなく,「何をすれば防げるのか」を明確に示す必要があることを改めて確認しておくことが重要である。
③ 防犯情報によって行動意図が高まったとしても,必ずしも実際の行動に結びつくとは限らない。いわゆる「意図―行動ギャップ」が存在し,行動の実行には時間的・物理的コストや習慣の影響が関わる。犯罪予防行動には継続的な努力が必要なものも多く,一時的な意図の高まりだけでは不十分である。また,過度な脅威提示は不安を高める一方で,「どうせ防げない」という無力感や情報回避行動を生む可能性もある。さらに,受け手の経験や自己効力感が低い場合には,脅威情報が逆効果となることも指摘されている。本細目では,説得的コミュニケーションの効果がどのような条件のもとで発揮され,どのような場合に限界が生じるのかを整理する。そのうえで,単なる恐怖喚起ではなく,対処可能性や具体的行動指針を組み合わせる必要性を確認し,次回以降で扱う防衛動機理論や脅威アピール研究との理論的接続を明確にする。
キーワード
① 説得的コミュニケーション ② 防犯情報の提示 ③ 行動意図 ④ 脅威提示 ⑤ 対処可能性
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:本回で扱った「説得的コミュニケーション」「防犯情報の提示方法」「行動意図と実行の差異」について整理すること。特に,犯罪予防における説得が単なる情報提供ではなく,心理的過程を通じて行動変容を目指すものである点を説明できるようにしておく。
予習:第9回では脅威アピールや防衛動機理論を扱う。犯罪の脅威を強調する情報がどのような場合に有効で,どのような場合に逆効果になり得るかを自分なりに整理しておくこと。生成AI(ChatGPT等)は視点整理に活用してよいが,誤情報が含まれる可能性があるため,必ず授業資料や指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,自分の理解として再構成すること。
9
犯罪予防のためのコミュニケーション②:脅威アピールと防衛動機理論
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
第8回では,犯罪予防行動を促進するための説得的コミュニケーションの基本構造を学修した。第9回では,その具体的理論として「脅威アピール」および「防衛動機理論」に焦点を当てる。犯罪は被害者にとって望ましくない結果をもたらす脅威であるため,犯罪予防の現場では脅威情報と対処行動を組み合わせた情報提示が広く用いられている。しかし,脅威を強調するだけでは行動の持続にはつながらず,場合によっては否認や回避といった防衛的反応を生む可能性もある。本回では,脅威の深刻さや生起可能性の認知,さらに対処可能性や自己効力感の認知がどのように防衛動機を形成し,犯罪予防行動へと結びつくのかを理論的に整理する。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.1-35)
【コマ主題細目②】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.130-145)
【コマ主題細目③】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.185-204)
コマ主題細目
① 脅威アピールの理論的枠組み ② 防衛動機理論 ③ 脆弱性と行動変容
細目レベル
① 脅威アピールとは,災厄や犯罪の危険性を強調することによって,受け手に予防行動を促す情報提示の方法である。脅威アピールは,「脅威の深刻さ」「被害の生起可能性」「受け手の関与度」といった要素から構成され,受け手がその問題をどれほど自分事として捉えるかが重要となる。一般に,脅威が深刻であり,かつ自分にも起こり得ると認知された場合に動機づけは高まるとされる。しかし,脅威のみを強調すると,不安が過度に高まり,問題から目を背ける回避反応や,「どうせ防げない」という無力感を生む可能性がある。また,脅威の信頼性が低い場合には,情報そのものが否定されることもある。本細目では,脅威提示の構造とその心理的影響を整理し,犯罪予防において効果的かつ過度に恐怖をあおらない情報提示のあり方を理論的に検討する。
② 防衛動機理論は,脅威情報と対処情報がどのように行動意図を形成するかを説明する理論である。この理論では,「脅威評価(深刻さ・生起可能性)」と「対処評価(効果性・自己効力感)」の二つの認知過程が防衛動機を規定するとされる。脅威評価が高くても,対処評価が低ければ行動は生起しにくく,逆に対処可能性が高くても脅威が低く認識されていれば動機づけは弱い。つまり,犯罪が深刻であると認識し,かつ「自分にも起こり得る」と感じ,さらに「対処行動は有効であり,自分にも実行可能だ」と評価された場合に,防衛動機が高まり,予防行動が促進される。本細目では,脅威提示と対処可能性提示のバランスが重要であることを理解するとともに,認知評価の組み合わせによって行動結果が異なることを整理する。
③ 現実の犯罪予防では,犯罪に対して脆弱性の高い集団に対して適切に介入する必要がある。脆弱性とは,被害に遭いやすい条件や状況,あるいは防御資源の不足を指し,年齢,生活様式,地域環境,情報リテラシーなど多様な要因によって規定される。脅威アピールは,自身の脆弱性を高く認知した場合に強く作用しやすいが,他方で自己効力感が低い場合には,「自分には対処できない」という無力感や回避反応を引き起こす可能性がある。とりわけ高齢者や若年層など特定集団では,脅威強調のみの情報提示が逆効果となることも指摘されている。本細目では,脆弱性認知と自己効力感の相互作用を整理し,防衛動機理論の枠組みに位置づけながら理解する。また,対象集団の特性に応じて脅威と対処可能性の提示を調整する必要性を確認し,犯罪予防における情報設計の重要性とその実践的課題を検討する。
キーワード
① 脅威アピール ② 防衛動機理論 ③ 脅威評価 ④ 対処評価 ⑤ 脆弱性
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:本回で扱った「脅威アピール」「防衛動機理論」「脆弱性と自己効力感」の関係を整理すること。特に,脅威が高いだけでは行動につながらない理由を,自分の言葉で説明できるようにしておく。また,脅威評価と対処評価の二つの側面を区別してまとめる。
予習:第10回では,犯罪不安と犯罪被害の抑制について学修する。犯罪被害経験や間接被害情報が,どのように被害リスク認知や行動に影響を与えるかを事前に考えておくこと。生成AI(ChatGPT等)は視点整理の補助として活用してよいが,誤情報が含まれる可能性があるため,必ず授業資料や指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,自分の理解として再構成すること。
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犯罪不安と犯罪被害の抑制
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
第8回・第9回では,説得的コミュニケーションおよび脅威アピール・防衛動機理論を通して,犯罪予防行動を促進する心理的メカニズムを学修してきた。第10回では,それらの理論を実証研究の知見と結びつけ,犯罪不安と犯罪被害がどのように相互に影響し合い,どのように抑制され得るのかを整理する。犯罪被害経験は被害リスク認知を高め,防犯行動を促進する契機となる場合があるが,他方で過度の不安や無力感を生み,回避的態度につながる可能性もある。また,間接被害情報の影響も無視できない。本回では,犯罪被害経験,間接被害情報,犯罪予防行動の関係を整理し,「機会・心理・行動」の循環構造の中で不安と被害をどのように低減できるのかを検討する。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.206-207)
【コマ主題細目②】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.207-214)
【コマ主題細目③】
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.214-236)
コマ主題細目
① 犯罪被害経験と被害リスクの認知 ② 犯罪の間接被害の影響 ③ 犯罪予防行動と犯罪被害の関係
細目レベル
① 犯罪被害経験は,個人の被害リスク認知を高める重要な契機となる。被害経験を通じて「自分にも起こり得る」という現実的な認識が強まり,犯罪を抽象的な問題ではなく具体的な脅威として捉えるようになる。その結果,防犯への関心や行動意図が高まることがある。しかし,被害経験が必ずしも予防行動に結びつくとは限らず,被害の深刻さや心理的影響の程度によっては,無力感や諦め,過度の不安を生む場合もある。また,社会的支援や情報提供の有無が,経験後の認知や行動に影響することも指摘されている。本細目では,被害経験がリスク認知を媒介して行動を喚起するメカニズムを整理するとともに,その過程が時間とともにどのように変化するのかを検討する。そして,「経験-行動仮説」の意義と限界を確認する。
② 犯罪に関する情報は,直接の被害者だけでなく,それを伝え聞いた人々にも影響を及ぼす。マスメディア報道,SNS,対人ネットワークを通じた間接被害情報は,受け手の犯罪不安や被害リスク認知を高める重要な要因となる。実際の発生率が低い場合であっても,繰り返し報道されることで犯罪が身近な脅威として認識され,主観的リスクが増幅されることがある。一方で,適切な文脈説明や対処方法が併せて提示されれば,間接情報は予防行動を促進する契機にもなり得る。本細目では,間接被害情報がどのような心理的メカニズムを通じて不安や行動意図に影響を与えるのかを整理する。さらに,情報の量・頻度・提示方法が認知に与える影響を検討し,「情報環境」が防犯行動や犯罪不安の形成に果たす役割を構造的に理解する。
③ 犯罪予防行動は,被害リスクを低減させる可能性を持つが,その効果は一様ではない。日常活動-ライフスタイル理論や防衛動機理論を踏まえると,予防行動の実施度だけでなく,地域の機会構造,監視体制,個人の生活様式や社会的資源などが相互に作用することが示唆される。また,一部の研究では,特定の条件下では予防行動がかえって標的化を招く可能性も指摘されており,単純な「行動すれば安全になる」という図式では説明できない。さらに,予防行動が被害を抑制するのか,あるいは被害経験が後の予防行動を変化させるのかという時間的因果の視点も重要である。縦断研究の知見を踏まえ,因果の方向性を慎重に検討する必要がある。ここでは,犯罪不安と犯罪被害を単純な直線的因果関係ではなく,状況に応じて変化する動的な相互作用モデルとして捉える。
キーワード
① 犯罪被害経験 ② 間接被害 ③ 被害リスク認知 ④ 犯罪予防行動 ⑤ 防衛動機理論
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:本回で扱った「犯罪被害経験」「間接被害」「犯罪予防行動」の関係を整理すること。特に,犯罪不安が必ずしも予防行動を促進するとは限らない理由を説明できるようにしておく。また,被害経験と行動変容の多様なパターンについてまとめ,時間的因果の視点も含めて整理すること。
予習:第11回ではコミュニティと防犯を扱う。個人の防犯行動だけでなく,地域やコミュニティがどのように犯罪予防に関与し得るかを考えておくこと。生成AI(ChatGPT等)は視点整理の補助として活用してよいが,誤情報が含まれる可能性があるため,必ず授業資料や指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,自分の理解として再構成すること。また,参考にした場合は使用方法を明示すること。
11
コミュニティと防犯
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
第1回から第10回では,犯罪発生の構造,犯罪不安や被害リスク認知の形成,犯罪予防行動の心理的メカニズムについて学修してきた。第11回からは,個人レベルの理解を超え,地域やコミュニティという社会的単位に焦点を移す。犯罪予防は個人の努力のみで完結するものではなく,地域住民の協働や社会的関係の質,すなわちコミュニティの機能に大きく依存する。本回では,防犯方法の歴史的変化,自主防犯活動の展開,コミュニティ機能の強化といった観点から,市民が主体的に関わる防犯のあり方を整理する。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.130-136)
【コマ主題細目②】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.136-145)
【コマ主題細目③】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.145-160)
コマ主題細目
① 防犯方法の変化 ② 地域の自主防犯活動 ③ 自主防犯活動の評価と課題
細目レベル
① 近年,防犯の方法は大きく変化している。かつては鍵や照明,防犯カメラといった物理的・工学的対策が中心であり,犯罪を外部からの脅威として遮断する発想が主流であった。しかし現在では,犯罪を個人の逸脱行為としてのみ捉えるのではなく,地域社会の構造や人々の関係性の中で理解する視点が重視されている。社会的孤立や地域のつながりの希薄化が犯罪機会に影響を与えることが指摘され,心理的・社会的側面を含む包括的アプローチが求められている。本細目では,犯罪理解の枠組みがどのように変化してきたのかを整理し,防犯が「個人の防御」から「地域の協働」へと拡張してきた経緯とその理論的背景を確認する。そして,防犯を社会的資本の形成という観点から捉える視点も導入する。
② 地域の自主防犯活動は,住民が主体的に犯罪予防に取り組む活動である。青色防犯パトロール,見守り活動,地域安全マップの作成,防犯講習会の開催などが代表例として挙げられる。これらの活動は,犯罪抑止効果のみならず,住民同士の結びつき(ソーシャルキャピタル)を強化し,「地域として問題に対処できる」という集合的効力感(collective efficacy)を高める点に意義がある。集合的効力感が高い地域では,非公式な社会的統制が機能しやすく,犯罪機会の抑制につながるとされる。本細目では,1次・2次・3次予防の枠組みの中で自主防犯活動を位置づけ,それぞれの水準での役割を整理する。また,担い手の固定化や参加者の減少といった課題を踏まえ,活動の持続可能性と地域特性との関係についても検討する。
③ 自主防犯活動の効果は,単に犯罪発生件数の減少のみで評価できるものではない。活動の目標達成度,参加者の満足度や継続意欲,地域住民間の信頼関係の強化,さらには長期的な地域安全意識の向上など,多角的な観点から検討する必要がある。また,地域特性や人口構成,参加者の多様性を十分に考慮しなければ,活動の持続性は確保されにくい。形式的な巡回やイベントにとどまる場合,実質的な効果が限定される可能性もある。本細目では,領域性(territoriality)や監視性(surveillance)といった環境犯罪学の概念を踏まえ,コミュニティ機能の強化が犯罪機会の抑制や不安の低減にどのように寄与するのかを整理する。さらに,自主防犯活動の課題と今後の展望についても検討する。
キーワード
① 自主防犯活動 ② 集合的効力感 ③ ソーシャルキャピタル ④ 領域性 ⑤ 監視性
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:本回で扱った「防犯方法の変化」「自主防犯活動」「コミュニティ機能の強化」の関係を整理すること。特に,領域性や監視性がどのように犯罪機会の低減に結びつくのかを説明できるようにしておく。また,自主防犯活動が集合的効力感の形成にどのように寄与するのかも確認すること。
予習:第12回では子どもの防犯を扱う。コミュニティによる防犯が,子どもの安全確保にどのように関与し得るかを事前に考えておくこと。登下校時の見守りや地域環境の整備など,具体的な場面を想定して整理しておくとよい。生成AI(ChatGPT等)は視点整理の補助として活用してよいが,誤情報が含まれる可能性があるため,必ず授業資料や指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,自分の理解として再構成すること。
12
子どもの防犯
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
第11回では,コミュニティと防犯の関係を整理し,地域住民が主体的に関わる犯罪予防の意義を学修した。第12回では,その具体的応用として「子どもの防犯」に焦点を当てる。子どもは発達段階や社会的立場の特性から判断力や行動範囲に制約があり,犯罪被害に対して脆弱な存在である。一方で,子どもの防犯対策は単なる監視や管理では十分ではなく,発達段階に応じた理解や主体的な危機管理能力の育成が求められる点に特徴がある。本回では,子どもの防犯対策の特性と難しさを整理するとともに,地域安全マップの作成などの実践的取り組みを通して,危険を認知し回避する力をどのように育成できるかを検討する。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.184-187)
【コマ主題細目②】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.187-198,203-212)
【コマ主題細目③】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.199-202)
コマ主題細目
① 子どもの防犯の特徴 ② 子どもの防犯の難しさ ③ 地域安全マップと危機管理能力
細目レベル
① 子どもを対象とした犯罪への社会的関心は1990年代後半以降高まり,防犯ブザーの配布や防犯カメラの設置,地域による声かけ運動など,さまざまな対策が実施されてきた。これらは一定の抑止効果を持つと考えられるが,必ずしも子ども自身の防犯能力そのものを高めるとは限らない。とりわけ,機器や大人の監視に過度に依存した対策は,子どもの主体的な判断力や危険察知能力の形成を十分に促さない可能性がある。本細目では,防犯機器への依存と危機管理能力の育成との違いを整理し,子どもの発達段階に応じた防犯教育の重要性を確認する。また,発達特性を踏まえた支援のあり方についても検討し,防犯を教育的課題として位置づける視点を導入すること。
② 子どもの防犯対策が難しい理由として,(1)対策主体と対象が異なること,(2)大人の不安低減と子どもの安全確保が必ずしも一致しないこと,(3)被害リスクの正確な評価が困難であること,が挙げられる。第一に,防犯対策の多くは大人が設計・実施する一方で,実際に行動するのは子どもであるため,認知や判断力の差が影響する。第二に,大人の不安を軽減する対策が,必ずしも子どもの主体的な危機回避能力の向上につながるとは限らない。第三に,子どもをめぐる犯罪は発生頻度が低い一方で社会的関心が高く,リスクが過大評価されやすい傾向がある。本細目では,大人の安心と子どもの安全を区別する視点を強調し,防犯対策は感情的反応ではなく,客観的リスク評価と発達特性を踏まえて設計されるべきであることを確認する。
③ 地域安全マップは,危険箇所や犯罪が発生しやすい場所を可視化する取り組みである。その理論的背景には,CPTED(防犯環境設計)や割れ窓理論があり,環境の特徴が犯罪機会に影響を与えるという視点に基づいている。しかし,本細目では,地域安全マップを単なる「不審者情報の共有」や危険箇所の一覧化として捉えるのではなく,「場所に着目して危険を予測する能力の育成」という教育的実践として位置づける。子ども自身が地域を歩き,環境を観察し,危険の兆候を考える過程が,主体的な危機管理能力の形成につながる。また,こうした活動は地域への愛着や帰属意識を高め,住民間のコミュニケーションを促進する効果も期待される。本細目では,地域安全マップの多面的意義を整理し,子どもの防犯教育とコミュニティ形成との接点を確認する。
キーワード
① 子どもの防犯 ② 危機管理能力 ③ 地域安全マップ ④ CPTED ⑤ 割れ窓理論
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:本回で扱った「子どもの防犯の難しさ」と「地域安全マップの意義」を整理すること。特に,防犯機器の活用と危機管理能力の育成の違いを説明できるようにしておく。また,大人の安心と子どもの安全を区別する視点や,発達段階に応じた防犯教育の必要性についてもまとめておくこと。
予習:第13回では場所に基づく防犯を扱う。犯罪が特定の場所に集中する理由について,自分なりに整理しておくこと。通学路や駅前,商業施設周辺など具体的な場所を想定し,環境条件や人の流れとの関係を考察しておくとよい。生成AI(ChatGPT等)は視点整理の補助として活用してよいが,誤情報が含まれる可能性があるため,必ず授業資料や指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,自分の理解として再構成すること。
13
場所に基づく防犯
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
第11回ではコミュニティと防犯,第12回では子どもの防犯を扱い,地域や社会的文脈における犯罪予防の意義を確認してきた。第13回では,さらに視点を絞り,「場所」に焦点を当てて犯罪の地理的集中現象を理論的に整理する。犯罪は無作為に発生するのではなく,特定の時間・空間条件のもとで集中的に生起する傾向がある。この視点は,第1回から扱ってきた犯罪機会論や日常活動理論とも密接に関連している。本回では,ホットスポット,クライム・マッピング,場所に基づく犯罪予防(place-based crime prevention)の考え方を整理し,空間的データの活用と環境への戦略的介入の理論的基盤を明確にする。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.160-164)
【コマ主題細目②】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.164-175)
【コマ主題細目③】
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.175-184)
コマ主題細目
① 犯罪と場所の関係 ② 場所に基づく犯罪予防の理論 ③ 日本における実証研究と評価
細目レベル
① 犯罪発生地点を地図上に可視化すると,犯罪は均等に分布しているのではなく,特定の地域や場所に集中する傾向がある。このような地理的集中は「ホットスポット」と呼ばれ,実証研究においても繰り返し確認されている。日常活動理論の観点から見ると,犯罪は「動機づけられた犯罪者」「適切な標的」「監視者の不在」が同時に揃う場所で発生しやすいと説明される。また,交通結節点や商業施設周辺など,人の流動性が高い場所では犯罪機会が増加する傾向も指摘されている。本細目では,犯罪が場所の特性とどのように関連しているのかを整理し,「場所そのものが犯罪の一因となり得る」という視点を確立する。さらに,場所への介入が有効な防犯戦略となる理由を理論的に確認する。
② 場所に基づく犯罪予防(place-based crime prevention)は,犯罪が集中する特定の場所に対して意図的に介入し,犯罪機会を減少させるアプローチである。都市計画や環境設計の見直し,アクセスコントロール,照明の改善,視認性の向上などはその代表的な手法である。これらの介入は,犯罪機会論や日常活動理論と密接に関連しており,「動機づけられた犯罪者」「適切な標的」「監視者の不在」という三要素が同時に揃う状況を崩すことを目的とする。例えば,視認性を高めることで監視機能を強化し,侵入経路を制限することで標的への接近を困難にする。本細目では,物理的環境への介入がどのように機会構造を変化させ,犯罪発生の確率を低下させるのかを理論的に整理する。また,場所への限定的介入が効率的な犯罪抑止策となる理由についても確認する。
③ 日本においても,地域犯罪分析やクライム・マッピング,地域安全マップの効果検証など,場所と犯罪の関係に関する実証研究が蓄積されている。これらの研究では,犯罪の地理的集中を可視化し,特定地点への重点的介入が犯罪発生の抑制につながるかどうかが検討されてきた。また,防犯カメラ設置や環境整備の前後比較,パネルデータを用いた分析など,多様な方法による評価が行われている。本細目では,場所への介入がどのような指標によって評価されてきたのかを整理し,「理論→介入→評価」という循環的枠組みを理解する。さらに,場所への介入は単なる物理的整備にとどまらず,住民の認知や行動,犯罪不安にも影響を与えることを確認し,心理的側面との接続を再確認する。
キーワード
① ホットスポット ② クライム・マッピング ③ 場所に基づく犯罪予防 ④ 犯罪機会論 ⑤ 地理的集中
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:本回で扱った「犯罪と場所の関係」「ホットスポット」「場所に基づく犯罪予防」の概念を整理すること。特に,場所への介入がどのように犯罪機会を低減させるのかを,三要素(犯罪者・被害者・環境)の観点から説明できるようにしておく。また,理論と実証研究の関係についても確認すること。
予習:第14回では防犯環境設計(CPTED)を扱う。これまで学修した犯罪機会論や場所に基づく防犯の内容を振り返り,CPTEDがどの位置に位置づくのかを考えておくこと。具体的な環境改善の例(照明,見通し,動線設計など)を思い浮かべながら整理しておくとよい。生成AI(ChatGPT等)は視点整理の補助として活用してよいが,誤情報が含まれる可能性があるため,必ず授業資料や指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,自分の理解として再構成すること。
14
防犯環境設計の実際
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
第13回では,犯罪が特定の場所に集中するという地理的特性と,場所に基づく犯罪予防の理論を整理した。第14回では,その具体的実践として防犯環境設計(CPTED:Crime Prevention Through Environmental Design)を扱う。CPTEDは,犯罪機会を減少させるために物理的環境へ計画的に介入する理論であり,本科目で扱ってきた犯罪機会論や日常活動理論の実践的応用にあたる。本回では,CPTEDの基本原則を体系的に整理するとともに,物理的デザインがどのように三要素の同時成立を崩し,犯罪機会を制御するのかを理解する。また,環境整備はハード面の改善だけでなく,住民の意識やコミュニティ形成と結びつくことで効果を発揮することを確認する。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・小出 治(監修)・樋村 恭一(編集)(2011).都市の防犯―工学・心理学からのアプローチ― 北大路書房(pp.149-185)
・清永 賢二・篠原 惇理・田中 賢・川嶋 宏昌(2010).デザインは犯罪を防ぐ防犯環境設計の基礎 彰国社(pp.45-59,62-81,118-135)
【コマ主題細目②】
・小出 治(監修)・樋村 恭一(編集)(2011).都市の防犯―工学・心理学からのアプローチ― 北大路書房(pp.149-185)
・清永 賢二・篠原 惇理・田中 賢・川嶋 宏昌(2010).デザインは犯罪を防ぐ防犯環境設計の基礎 彰国社(pp.45-59,62-81,118-135)
【コマ主題細目③】
・小宮 信夫(2017).驚きのアイデアで犯罪を「あきらめさせる」 写真でわかる世界の防犯-遺跡・デザイン・まちづくり 小学館
コマ主題細目
① 防犯環境設計(CPTED)の基本原則 ② 物理的環境と犯罪機会 ③ 犯罪機会論との接続
細目レベル
① CPTEDは,「環境デザインを通じた犯罪予防」を意味する理論である。犯罪者の動機そのものに直接介入するのではなく,犯罪が発生しやすい環境条件を計画的に変更することによって犯罪機会を低減させることを目的とする。基本原則としては,「対象物の強化(target hardening)」「接近の制御(access control)」「監視性の強化(natural surveillance)」「領域性の確保(territorial reinforcement)」が挙げられる。対象物の強化は標的への侵入を困難にし,接近の制御は動線を限定することで機会を制限する。監視性の強化は視認性を高めて潜在的犯罪者に抑止効果を与え,領域性の確保は「ここは管理されている空間である」という認識を明確にする。これらは犯罪の三要素の同時成立を崩すための具体的手法である。本細目では,各原則の意味と相互関係を整理し,CPTEDが単なる設備導入ではなく,理論に基づく総合的な設計思想であることを確認する。
② 物理的デザインは,犯罪者にとっての「入りやすさ」や「見えにくさ」といった環境条件に直接的な影響を与える。照明の改善,見通しの確保,フェンスや出入口の配置,建物の動線設計などは,犯罪機会を制御する重要な要素である。これらの工夫は,潜在的な犯罪者に対して「発見されやすい」「侵入しにくい」という認識を与え,行動選択に影響を及ぼす。本細目では,物理的環境の設計が犯罪機会論や日常活動理論とどのように結びつくのかを整理する。特に,「入りやすさ」は接近の制御や領域性の確保と関係し,「見えやすさ」は自然監視の強化と対応することを明確にする。また,環境改善が三要素の同時成立を崩す具体的メカニズムを確認し,物理的介入の理論的意義を理解する。
③ 犯罪機会論は,犯罪が特定の状況的機会のもとで発生するという理論であり,犯罪者の動機そのものよりも機会構造に注目する点に特徴がある。CPTEDは,その機会構造を物理的環境の設計によって調整し,犯罪機会を減少させる実践的アプローチである。両者は,「三要素が同時に揃う状況をいかに崩すか」という共通の目的を持っている。本細目では,犯罪機会論が提示する理論的枠組みが,どのように都市設計やまちづくりの現場で具体化されているのかを整理する。また,物理的整備のみでは持続的効果が限定される可能性があることを踏まえ,地域住民の参加やコミュニティ形成との連動が重要であることを再確認する。理論と実践の往還関係を理解することが本細目の目的である。
キーワード
① 防犯環境設計(CPTED) ② 対象物の強化 ③ 監視性 ④ 領域性 ⑤ 犯罪機会論
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:本回で扱ったCPTEDの基本原則(対象物の強化・接近の制御・監視性・領域性)を整理し,それぞれが犯罪機会のどの要素に作用するのかを説明できるようにしておく。また,CPTEDが単なる設備強化ではなく理論に基づく設計思想である点を,具体例を挙げてまとめること。
予習:第15回は最終まとめである。第1回から第14回までの内容を振り返り,「機会」「心理」「環境」という三つの視点がどのように統合されるのかを整理しておくこと。特に,各理論がどの層に位置づくのかを再確認しておくとよい。生成AI(ChatGPT等)は視点整理の補助として活用してよいが,誤情報が含まれる可能性があるため,必ず授業資料や指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,自分の理解として再構成すること。
15
まとめ➁
科目の中での位置付け
本科目「防犯科学」は,犯罪を個人の資質や動機だけで理解するのではなく,犯罪が生じる“状況”や“機会”に着目して,心理学と環境・社会の観点から犯罪予防を体系的に学ぶ科目である。防犯(犯罪予防)は行動科学,法学,医学,工学など多領域にまたがるが,本科目ではとくに①犯罪機会の構造(犯罪者・被害者・環境),②犯罪不安や被害リスク認知などの心理要因,③犯罪予防行動,④コミュニティ防犯と防犯環境設計(CPTED),⑤現代社会におけるデジタル環境(ネット社会)も含めた応用,を柱として扱う。前半(第1〜第6回)で理論の骨格を固め,第7回で中間まとめを行い,後半(第8〜第14回)で心理・コミュニティ・場所に基づく介入を統合し,第15回で後半のまとめと復習を行う。
第1回から第14回まで,本科目では「犯罪はどのように発生し,どのように予防できるのか」という問いを,機会・心理・環境という三つの視点から段階的に整理してきた。第15回は,それらの知見を統合し,「防犯科学」という枠組みとして再構成する最終まとめの回である。前半では犯罪機会の構造と心理的メカニズムを,中盤では説得的コミュニケーションや犯罪予防行動を,後半ではコミュニティや環境設計を扱ってきた。本回では,これらを個別理論の集合としてではなく,相互に関連し合う体系として整理し,「機会・心理・環境」の三層がどのように循環的に作用するのかを確認する。さらに,リアルな地域社会だけでなく,ネット社会やデジタル環境における犯罪予防への応用可能性も検討し,防犯科学の全体像と今後の展望を再確認する。
・配布資料
【コマ主題細目①】
・今までの配付資料
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.126-127)
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.1-27)
・清永 賢二・篠原 惇理・田中 賢・川嶋 宏昌(2010).デザインは犯罪を防ぐ防犯環境設計の基礎 彰国社(pp.9-35)
【コマ主題細目②】
・今までの配付資料
・島田 貴仁(2021).犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入― ナカニシヤ出版(pp.206-236 )
【コマ主題細目③】
・今までの配付資料
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.130-160)
【コマ主題細目④】
・今までの配付資料
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.184-202)
【コマ主題細目⑤】
・今までの配付資料
・小俣 謙二・島田 貴仁(2011).犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか― 北大路書房(pp.160-184)
・小出 治(監修)・樋村 恭一(編集)(2011).都市の防犯―工学・心理学からのアプローチ― 北大路書房(pp.149-185)
・清永 賢二・篠原 惇理・田中 賢・川嶋 宏昌(2010).デザインは犯罪を防ぐ防犯環境設計の基礎 彰国社(pp.45-59,62-81,118-135)
・小宮 信夫(2017).驚きのアイデアで犯罪を「あきらめさせる」 写真でわかる世界の防犯-遺跡・デザイン・まちづくり 小学館
コマ主題細目
① 防犯科学の理論構造の整理 ② 犯罪不安・犯罪被害・予防行動の統合 ③ コミュニティ・環境への応用 ④ リアル社会とデジタル社会への展開
細目レベル
① 犯罪は,「犯罪者」「被害者」「環境」の三要素が同時に交わることで発生するという基本構造を再確認する。また,犯罪者の合理性,犯罪機会論,日常活動理論などの理論が,どのように犯罪発生の条件を説明してきたのかを整理する。これらの理論は,犯罪を偶発的現象としてではなく,特定の機会構造のもとで生起する行為として捉える点に共通性がある。本細目では,第1~6回で扱った理論を「機会」という軸で再統合し,個々の理論の位置づけと相互関係を明確にする。さらに,三要素の同時成立をどのように崩すことが予防につながるのかという観点から,理論の実践的含意も整理する。そして,防犯科学の理論的基盤が,機会構造の理解に根ざしていることを再確認する。
② 犯罪不安,被害リスク認知,犯罪予防行動は,相互に関連し合う動的な関係にある。本細目では,第3回~第10回で扱った理論(防衛動機理論,経験-行動仮説,日常活動-ライフスタイル理論など)を再整理し,不安がどのような認知過程を経て行動意図に結びつき,さらに行動がどのように被害リスクや実際の被害経験に影響するのかを統合的に理解する。また,被害経験が再びリスク認知や不安を変化させるという循環的構造にも注目する。ここでは,単線的な因果関係としてではなく,心理・行動・被害が相互作用するプロセスとして捉える視点を確認し,防犯科学の中核的モデルを再構築する。そのうえで,理論と実証知見との接続も改めて整理しておく。
③ 第11回~第14回で扱ったコミュニティ防犯,子どもの防犯,場所に基づく防犯,CPTEDを振り返り,理論がどのように実践へと応用されているのかを整理する。領域性・監視性・接近の制御といった概念が,都市設計やまちづくり,地域活動の中でどのように具体化されているのかを再確認する。また,環境への介入は単なる物理的整備にとどまらず,住民の意識や行動の変容と結びつくことで効果を発揮することを強調する。本細目では,「機会・心理・環境」という三層構造が地域レベルでどのように統合されるのかを整理し,リアル空間だけでなくデジタル環境における防犯にも応用可能であることを確認する。理論と実践を往還する視点を最終的に確立することが本細目の目的である。
④ 防犯科学は,物理的空間における犯罪予防だけでなく,デジタル環境にも応用可能である。ネット詐欺やフィッシング,SNSを利用した犯罪においても,「機会」「心理」「環境」という三層構造は存在する。たとえば,匿名性の高さや情報の非対称性は「機会」を生み出し,被害リスク認知や恐怖訴求は「心理」に作用し,プラットフォーム設計やセキュリティ機能は「環境」として機能する。本細目では,これまで学修してきた理論をデジタル社会に適用する視点を提示し,犯罪機会論や防衛動機理論がオンライン犯罪にもどのように応用可能かを整理する。さらに,リアル社会とデジタル社会の共通点と相違点を比較しながら,防犯科学の射程と今後の課題を確認する。
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キーワード
① 防犯科学 ② 犯罪機会 ③ 犯罪不安 ④ コミュニティ防犯 ⑤ CPTED
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テストを実施します。
復習・予習課題
復習:第1回から第14回までの内容を振り返り,「機会」「心理」「環境」という三つの視点から防犯科学の全体構造を整理すること。特に,各理論がどの位置にあり,どのようにつながっているのかを図示できるように説明しておくこと。
予習(期末試験準備):これまで学修した理論や概念(犯罪機会論,犯罪不安理論,日常活動理論,防衛動機理論,CPTEDなど)について,自分の言葉で簡潔に説明できるよう整理しておくこと。また,各理論の共通点と相違点も確認しておくこと。生成AI(ChatGPT等)は復習の補助として活用してよいが,誤情報が含まれる可能性があるため,必ず授業資料や指定文献と照合すること。AIの出力をそのまま提出物に貼り付けることは不可とし,自分の理解として再構成すること。
履修判定指標
履修指標
履修指標の水準
キーワード
配点
関連回
防犯科学の基本構造の理解
「防犯科学」の基本枠組みを理解し,犯罪が「犯罪者・被害者・環境」の三要素の相互作用によって発生するという構造を説明できることを履修判定の指標とする。また,犯罪機会論や日常活動理論に基づき,犯罪が偶発的に発生するのではなく,特定の機会構造のもとで生起することを理解していることを求める。さらに,「機会・心理・環境」という三層構造の中で各理論がどの位置にあるのかを整理し,防犯科学の体系的理解を示せることを到達水準とする。
防犯,犯罪,犯罪予防,犯罪予防の分類,一般予防・特別予防,発達的犯罪予防と状況的犯罪予防,1次予防・2次予防・3次予防 など
15
1,7,15
犯罪者(犯罪企図者)の合理性と機会の理解
犯罪者の行動を固定的特性ではなく,「状況に応じた選択」として理解できることを履修判定の指標とする。構造的選択モデルや合理的選択の視点を踏まえ,リスクと利益の見積り,環境解釈,機会の存在がどのように犯罪行動を規定するのかを説明できることが求められる。また,犯罪の転移性や場所的集中との関係を理解し,機会への介入が予防につながる論理を具体的事例と関連づけて理解していることを到達水準とする。その理解が体系的であることを重視する。
合理的選択,構造的選択モデル,犯罪転移,機会構造,ホットスポット など
15
2,6,13
犯罪不安・被害リスク認知と予防行動の理解
犯罪不安と被害リスク認知の概念的区別を理解し,両者がどのように相互作用しながら犯罪予防行動に影響を与えるのかを説明できることを履修判定の指標とする。間接被害モデル,リスク解釈モデル,防衛動機理論などの理論を踏まえ,不安が必ずしも一方向的に行動を促進するわけではないことを理解していることが求められる。さらに,経験-行動仮説や時間的因果の視点を含め,動的相互作用モデルとして説明できることを到達水準とする。
犯罪不安,被害リスク認知,防衛動機理論,間接被害,経験-行動仮説 など
20
3,4,5,6,10
説得的コミュニケーションと心理的介入の理解
犯罪予防における説得的コミュニケーションの理論的枠組みを理解し,脅威アピールと防衛動機理論の構造を説明できることを履修判定の指標とする。特に,「脅威評価」と「対処評価」のバランスが防衛動機を規定すること,脅威提示のみでは逆効果となり得ることを理解していることを求める。また,情報提示の効果と限界,脆弱性認知と自己効力感の相互作用について,具体的な防犯場面と結びつけて理解していることを到達水準とする。
説得的コミュニケーション,脅威アピール,防衛動機理論,自己効力感,脆弱性 など
25
8,9,10
コミュニティ・環境介入とCPTEDの理解
地域やコミュニティにおける犯罪予防の意義を理解し,自主防犯活動や集合的効力感の役割を説明できることを履修判定の指標とする。さらに,場所に基づく犯罪予防および防犯環境設計(CPTED)の基本原則(対象物の強化,接近の制御,監視性,領域性)を理解し,それらが犯罪機会のどの要素に作用するのかを論理的に説明できることを求める。物理的整備とコミュニティ形成の連動,リアル社会とデジタル社会への応用可能性まで含めて体系的に説明できることを到達水準とする。
コミュニティ防犯,集合的効力感,ホットスポット,CPTED,領域性,監視性,場所に基づく犯罪予防,デジタル環境 など
25
11,12,13,14,15
評価方法
最低限の出席回数をクリアしていることを条件に,期末試験で評価する。*成績発表後,教務課にて試験・レポートに関する総評が閲覧できます。
評価基準
評語
学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・
S (100~90点)
学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・
A (89~80点)
学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・
B (79~70点)
学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・
C (69~60点)
学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・
D (60点未満)
教科書
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参考文献
・島田 貴仁(著)『犯罪予防の社会心理学―被害リスクの分析とフィールド実験による介入―』ナカニシヤ出版(\6100+税) ・小俣 謙二・島田 貴仁 (編著)『犯罪と市民の心理学―犯罪リスクに社会はどうかかわるか―』北大路書房(\3200+税) ・小出 治(監修)・樋村 恭一(編集)『都市の防犯―工学・心理学からのアプローチ―』北大路書房(\3200+税) ・清永 賢二・篠原 惇理・田中 賢・川嶋 宏昌(著)『デザインは犯罪を防ぐ防犯環境設計の基礎』彰国社(\2300+税) ・小宮 信夫(著)『驚きのアイデアで犯罪を「あきらめさせる」 写真でわかる世界の防犯-遺跡・デザイン・まちづくり』小学館(\1800+税)
実験・実習・教材費
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