区分
基盤教養科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
SDGs力
科学コミュニケーション力
研究力
カリキュラム・ポリシーとの関係
教養
応用力
実践力
科目間連携
総合心理力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
この科目は「基盤教養科目」に位置づけられる必修科目である。
科目の目的
本科目の目的は、心理学が行動を科学の中心に置くようになった後に、改めて「心とは何か」を問い直すことである。心や意識を直接観察できないなら、外から見える行動だけを研究すればよいのか。ある行動を細かな反応へ分解すれば、その人や動物が経験していることを十分に理解できるのか。本人にしか直接触れられない感覚、思考、意味、自己を科学はどのように扱えるのか。本科目では、まずカフカ『変身』を用いて、外から見える身体や行動と本人の経験との隔たりを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究を通して、部分の足し算では捉えにくい全体構造と洞察を扱う。最後にスキナーの徹底的行動主義から、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心までを行動科学の中で扱う試みを学ぶ。心を一つの答えに閉じるのではなく、何を証拠としてどこまで説明できるのかを考える力を養う。
到達目標
全授業終了後には、カフカ、ケーラー、スキナーを通して、「心」を外から観察できる行動、本人の経験、場面全体の構造、私的出来事と学習履歴という異なる観点から説明できることを目標とする。『変身』では行動と本人の経験の隔たりを具体的な出来事から説明し、ケーラーではゲシュタルト心理学と洞察を、観察された行動と代替説明の検討に基づいて説明できるようになる。スキナーについては、徹底的行動主義が私的出来事を否定せず、それを行動の最終原因にもせず、環境と履歴から分析しようとしたことを説明できるようになる。さらに、それぞれの立場が何を「心」の証拠とし、どこに説明の限界を置くのかを比較できることを到達目標とする。
科目の概要
本科目は15回で、行動主義の時代を背景に「心とは何か」を改めて考える。第1回から第3回ではカフカ『変身』を読み、グレゴール本人の経験と、家族から観察できる身体・声・行動とのずれを通して、他者の心を外からどこまで理解できるのかを考える。第4回から第7回では、ゲシュタルト心理学とケーラーのチンパンジー研究を扱い、仮現運動、迂り路、棒、箱、道具製作、洞察、偶然、模倣から、部分と全体、行動と説明の関係を学ぶ。第8回から第13回ではスキナーの徹底的行動主義を取り上げ、私的出来事、オペラント行動、知覚、言語、思考、人格、自己、他者理解までを行動科学から検討する。第14回は模擬テストで三者を結び、第15回に「心とは何か」という問いへ戻って全体を総括する。
科目のキーワード
行動主義、ケーラー、ゲシュタルト心理学、スキナー、徹底的行動主義
授業の展開方法
まずは、このシラバスを読み講義を受ける準備をしていただく。そして、講義は、教材を一緒に読みながら展開される。教材をしっかりと読むので、ページ番号、行番号を手がかりに、受講して欲しい。講義後には、小テストを10問実施するので、内容確認に活用すること。帰宅後には、小テストで曖昧だった箇所を見直した上で、教材を再度、読んで欲しい。その後、次の講義に出席する前に、再度、教材を読み、流れを理解するようにする。
オフィス・アワー
高野裕治:前期:火曜1~5限
後期:火曜1~5限
伊藤義徳:※できるだけアポイントを取ってください
前期:火曜3限・4限
木曜1限・2限
後期:火曜3限・4限
木曜1限・2限
武田知也:前期:火曜1限
後期:火曜1限
横光健吾:前期:金曜4限
後期:金曜4限
科目コード
RB2040
学年・期
1年・後期
科目名
こころとは何か(動物・人間・AI)
単位数
2
授業形態
講義
必修・選択
必修
学習時間
【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目
なし
展開科目
関連資格
担当教員名
高野裕治・伊藤義徳・武田知也・横光健吾
回
主題
コマシラバス項目
内容
教材・教具
1
もしも身体が変わったら
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは15回の出発点として、カフカ『変身』を用い、身体が突然変わったグレゴールの内側と、家族や会社から見える外側とのずれを読む。行動主義の時代の後に、心を直接見ることのできない他者をどう理解するのかという問いを開く回である。このあと、食事、隠れる行動、家具や絵、父親のりんごの場面を通して、行動から分かることと、行動だけでは届きにくい意味を具体的に検討する。
カフカ「変身」(角川文庫)
コマ主題細目
① ある朝、身体が変わっていた:『変身』のはじまり ② 身体が思うように動かない:それでも日常は続いている ③ 扉の内と外:声は届くのか
細目レベル
① 『変身』第一部の冒頭を中心に読む。グレゴール・ザムザは、ある朝目を覚ますと、自分の身体が突然まったく別のものになっていることに気づく。ところが彼は、まず「なぜこんな姿になったのか」と原因を探すより、寝坊したこと、列車に間に合わないこと、会社で叱責されることを気にする。読者は異常な出来事に驚かされる一方、本人の思考は昨日までの日常から切れていないことに気づく。ここでは、作品を心理学の理論へ急いで当てはめず、「もしも朝起きたとき身体が変わっていたら」という奇妙な設定そのものを楽しみながら読む。そのうえで、身体が変わることによって、それまで当たり前だった部屋、仕事、時間、家族との関係がどのように違って見え始めるのかを考える。文学が、実験では作ることのできない極端な状況を通して、心と身体の関係を考える場になることにも注目する。(
② グレゴールに起きた変化は、外見だけではない。仰向けになった身体を起こせず、多数の脚を思うように動かせず、ベッドから降りることさえ難しくなる。それでも彼が考えているのは、出張のつらさ、上司への不満、家族の借金、そして自分が働き続けなければならない事情である。身体はこれまで通りに動かないのに、仕事人としての習慣や家族への責任はそのまま続いている。ここでは、変身を「身体が変わっても心は変わらない」という結論に単純化しない。新しい身体によって感じ方や行動の可能性が変わり始める一方、過去から続く記憶、習慣、役割、責任感も現在の思考を強く支えている。身体と心の関係について結論を出すのではなく、作品の中で両者が少しずつずれていく様子を読む。そのずれが、やがて他者との関係にも影響していくことを確認する。
③ 部屋の外では、父、母、妹がグレゴールに声をかけ、やがて会社の業務代理人まで訪ねてくる。グレゴール自身は相手に答えているつもりだが、その声は以前とは違って聞こえ、家族は異変を感じ始める。本人には自分の事情も意図もよく分かっているのに、扉を隔てた他者には、その内側がそのまま届くわけではない。しかも、まだ扉が閉じているあいだ、周囲の人々が知ることができるのは、聞こえてくる声や物音だけである。ここでは、部屋の「内」と「外」という作品の仕掛けに注目する。読者にはグレゴールの考えが読める一方、家族たちは外から得られるわずかな手がかりだけで状況を判断しなければならない。同じ出来事が、本人と他者とで異なる世界として経験されることを確認し、この隔たりが、次回さらに大きくなることを考える。
キーワード
① 心理学 ② 文学 ③ 科学 ④ 変身 ⑤ カフカ
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、グレゴールが変身した後も仕事や家族のことを考え続けること、身体や声の変化によって扉の内側と外側で状況の理解がずれていく物語の展開を整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、今回の内容が本科目全体の流れのどこにあるのかを確認する。人物名や用語だけでなく、前回までに何を学び、今回何が加わったのかを、自分の言葉で説明できるようにする。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
2
行動から他者の心をどこまで読めるのか
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは、『変身』を用いる三回の中央に位置し、外から行動を見ることが他者理解にどこまで役立つのかを考える。妹は食べ残しから好みを推測し、グレゴールも妹の行動から気持ちを読み、自分の行動を変える。このあと、家具や絵が本人にとってもつ意味、父親による誤解とりんごの場面へ進み、観察可能な行動が有力な手がかりでありながら、意味を一意には決めないことを確かめる。この全体の地図の中で、今回がどの地点にあるのかを意識しながら学ぶ。前後の内容だけでなく、15回全体の中での現在地を確認することが重要である。
カフカ「変身」(角川文庫)
コマ主題細目
① 何を食べたのかを見る:行動から好みを知る ② 隠れるグレゴール:互いに行動から心を読む ③ 家具をなくした方がよいのか:同じ行動をどう読むか
細目レベル
① 第二部では、妹がグレゴールの世話を引き受ける。何を食べられるのか本人に尋ねることはできないため、妹はさまざまな食べ物を置き、何が食べられ、何が残されたのかを見て好みを推測する。新鮮な食べ物には手をつけず、腐りかけたものを好むことも、妹には行動の結果としてしか分からない。ここでは、相手の心を直接聞けなくても、選択、接近、回避、食べ残しなどの観察可能な行動から、状態や好みについてかなり多くのことを推測できることに注目する。ワトソンまで学んできた「外から観察する」という方法を、最初から限界のあるものとして退けるのではない。むしろ、行動を見ることで他者について何が分かるのかを、妹が少しずつ世話の仕方を変えていく過程から考える。観察された行動は、他者理解の重要な手がかりになりうる。
② グレゴールもまた、妹の行動を見ながら相手の気持ちを推測している。妹が部屋へ入ってくるとき、自分の姿を見れば不快にさせるだろうと考え、ソファの下へ隠れ、さらに身体が見えないよう布をかける。妹も、食事の減り方や隠れる場所、部屋の使い方を手がかりに、グレゴールが何を望んでいるのかを考えて世話の仕方を変える。ここでは、観察する側と観察される側が固定されているのではなく、互いが相手の行動から気持ちを読み、自分の行動を変えていることに注目する。行動は心を知るための重要な手がかりである。しかし、その行動が何を意味するのかは、単独の反応としてではなく、それまでの関係や前後の状況と結びつけて解釈されている。行動の読み取りは、相互作用の中で絶えず更新されるのである。
③ やがて妹は、グレゴールが壁や天井を這い回るようになったことから、家具を取り除いて自由に動ける空間を作ろうと考える。行動だけを見れば、それはグレゴールの現在の生活に合った合理的な配慮に見える。しかし母親は、家具をすべて運び出せば、グレゴールが人間に戻ることを家族が諦めたようにも見えるのではないかとためらう。同じ「部屋を空ける」という行為が、妹には自由を与えること、母には人間だった過去を奪うこととして異なる意味をもつ。ここでは、観察された行動から相手の必要を推測することはできても、その行動や周囲の物が本人にとってもつ意味まで同じように分かるのかを考える。行動から心を読むことの有効性を確認したうえで、その先に残る意味の問題へ進む。
キーワード
① 心理学 ② 文学 ③ 科学 ④ カフカ ⑤ 変身
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、妹が食べ物からグレゴールの好みを推測し、グレゴールが妹を避けて隠れ、さらに家具をめぐって家族の考えが分かれていく物語の展開を整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、今回の内容が本科目全体の流れのどこにあるのかを確認する。人物名や用語だけでなく、前回までに何を学び、今回何が加わったのかを、自分の言葉で説明できるようにする。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
3
行動だけでは越えられない壁とは何か
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは、『変身』を通して外側と内側の隔たりを考えるまとまりの最後に位置する。家具や絵がグレゴールの過去と結びつくこと、父親が状況を誤って受け取り、りんごを投げる場面から、行動の観察だけでは意図や経験を決めきれないことを考える。このあと心理学史へ戻り、ゲシュタルト心理学とケーラーを扱う。そこでは「外から見えるか」だけでなく、現象を部分に分解しすぎると全体を失うのではないかという別の問いへ進む。この全体の地図の中で、今回がどの地点にあるのかを意識しながら学ぶ。
カフカ「変身」(角川文庫)
コマ主題細目
① 家具はただの障害物なのか:本人にとっての意味 ② 絵を守るグレゴール:行動の意味は外から分かるのか ③ りんごが背中に食い込む:行動からは届かないもの
細目レベル
① 母と妹は、グレゴールが動きやすいように家具を運び出し始める。ところがグレゴールの側から見ると、机や箪笥は単なる障害物ではない。それらは、人間として暮らし、働き、家族と生活していた過去につながる物でもある。広い空間を得れば虫のように自由に這い回れる一方、家具を失えば以前の生活の痕跡まで消えてしまう。ここでは、「動きやすくする」という外から見れば親切な行動と、それを受ける本人が感じる意味とが一致しない場面を読む。何をしたかという行動そのものは観察できても、その行為が相手にとって何を奪い、何を残すことになるのかは、行動の記録だけから一意に決まらない。行動を見ることと、その行動が置かれた人生の意味を知ることとの違いを考える。ここから、行動だけでは扱いにくい「意味」の問題が前景化する。
② 家具が運び出されるなか、グレゴールは壁に掛けられた毛皮姿の女性の絵だけは守ろうとして、その上に身体を張りつける。外から見れば、虫のような存在が一枚の絵にしがみついているだけである。しかし読者は、なぜ彼がそれを手放したくないのかという内側の流れも同時に読むことができる。やがて母親はグレゴールの姿を見て気を失い、妹は彼を部屋へ戻そうとする。ここでは、一つの行動を観察しただけでは、その行動が本人にとってどのような記憶や価値と結びついているのかまでは決められないことに注目する。文学では読者にグレゴールの内側が与えられる一方、家族には外から見える姿と動きしか与えられない。その二つを同時に見られること自体が、この作品の仕掛けである。同じ行動が、本人と他者に全く違う意味をもつ可能性を考える。
③ 帰宅した父親は、倒れた母親を見て、グレゴールが何か危害を加えたのだと受け取る。グレゴールが事情を説明することはできず、父親は彼を追い回し、最後にはりんごを次々に投げつける。家族には外から見える出来事しかなく、グレゴールの側には家族を傷つけようとした意図がない。この場面では、行動を観察することの限界が、単なる誤解ではなく、取り返しのつかない結果へつながる。だからといって、ここから行動主義が誤りだと結論するわけではない。外から確かめられる行動を科学の対象とすることと、そこからは直接越えられない他者の経験が残ることは、別の問題である。父親が投げたりんごの一つは、グレゴールの背中に深く食い込んだ。この傷が、その後のグレゴールに…。
キーワード
① 心理学 ② 文学 ③ 科学 ④ カフカ ⑤ 変身
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、家具が運び出され、グレゴールが絵を守ろうとし、父親がりんごを投げつけるまでの出来事と、それぞれの人物が何を見て行動したのかを整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、今回の内容が本科目全体の流れのどこにあるのかを確認する。人物名や用語だけでなく、前回までに何を学び、今回何が加わったのかを、自分の言葉で説明できるようにする。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
4
部分を足せば全体になるのか:ゲシュタルト心理学からケーラーへ
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは、文学から再び心理学へ戻り、ゲシュタルト心理学に入る最初の回である。メロディーや仮現運動を手がかりに、経験される全体には、個々の刺激や反応を足しただけでは捉えられない関係や構造があるという考えを学ぶ。このあと、ケーラーのチンパンジー研究へ進み、迂り路、棒、箱、道具製作、洞察を見る。心や知能を語るとき、「全体」をどう科学的に扱うのかを確かめていく。この全体の地図の中で、今回がどの地点にあるのかを意識しながら学ぶ。前後の内容だけでなく、15回全体の中での現在地を確認することが重要である。
ケーラー「類人猿の知恵試験」
コマ主題細目
① 「ゲシュタルト」とは何か:全体は部分の和ではない ② 動いていないのに動いて見える:ヴェルトハイマーの仮現運動 ③ 行動にも「全体」はあるのか:ワトソンと並行したもう一つの心理学
細目レベル
① 「ゲシュタルト」とは、個々の部分をばらばらに捉えるのではなく、それらが作る全体のまとまりや関係、構造に注目する考え方である。ワトソンがアメリカで行動主義を打ち出したのとほぼ同じ時期、ドイツではヴェルトハイマー、ケーラー、コフカらが、心理学を別の方向から科学化しようとしていた。その背景には、エーレンフェルスが挙げたメロディーの問題がある。曲を別の高さへ移調すれば、一つ一つの音はすべて変わる。それでも私たちは同じメロディーだと分かる。逆に、同じ音をばらばらに並べても同じ曲にはならない。ここから、経験される全体には、個々の要素を足しただけでは捉えられない関係や構造があるという問題が生じる。ゲシュタルト心理学は、この「全体」を曖昧な心の働きとしてではなく、実験によって明らかにしようとしたもう一つの科学的心理学である。
② 1912年、ヴェルトハイマーは、二つの静止した刺激を適切な時間差で提示すると、一方から他方へ何かが動いたように見える仮現運動を実験的に研究した。物理的には二つの刺激が順番に現れただけなのに、経験されるものには「運動」が現れる。したがって、外から与えた刺激を一つずつ記述することと、実際に知覚された現象を記述することは同じではない。ここでは、この研究をゲシュタルト心理学の出発点として扱う。心理学を科学にするために現象を細かな要素へ分解することが、かえって研究したい現象そのものを失わせる場合があるという問題を理解し、個々の要素ではなく、それらが作る関係やまとまりを研究するという発想へ進む。また、錯覚を単なる誤りとして片づけず、知覚の仕組みそのものを示す現象として研究する姿勢にも注目する。
③ ゲシュタルト心理学と行動主義は、どちらも20世紀初頭に、それまでの心理学を批判しながら登場した。しかし両者が選んだ道は異なる。ワトソンは、観察できない意識を心理学の中心から外し、刺激と反応、習慣などの観察可能な行動へ研究対象を移した。一方ゲシュタルト心理学は、意識経験を研究対象から捨てず、その経験がどのような全体構造をもつのかを実験によって明らかにしようとした。そしてケーラーは、この考えを知覚だけでなく、動物の行動や問題解決へ広げていく。チンパンジーが目標へ到達するとき、個々の反応が偶然つながっただけなのか、それとも問題場面全体の関係を捉え直して行動したのか。ここでは、行動主義とほぼ並行して生まれた別の科学化の流れから、ケーラーの『類人猿の知恵試験』へ進む。
キーワード
① ゲシュタルト心理学 ② ケーラー ③ 仮現運動 ④ ヴェルトハイマー ⑤ 部分と全体
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、ゲシュタルト心理学の「全体は部分の和ではない」という考え、仮現運動、そしてケーラーがこの考えを動物の問題解決へ広げたことを整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、今回の内容が本科目全体の流れのどこにあるのかを確認する。人物名や用語だけでなく、前回までに何を学び、今回何が加わったのかを、自分の言葉で説明できるようにする。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
5
目標は見えているのに届かない:迂り路から道具使用へ
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは、ゲシュタルト心理学の「全体」という考えを、ケーラーのチンパンジー研究という具体的な行動へ移す回である。迂り路、棒の使用、箱積みを通して、目標、障害物、道具、自分の位置が作る問題場面全体から行動を見る。このあと、道具製作、二本の棒の接続、中間目標へ進み、より複雑な問題解決を扱う。さらに、洞察という説明を偶然、習慣、模倣という別の説明と比較していく。この全体の地図の中で、今回がどの地点にあるのかを意識しながら学ぶ。前後の内容だけでなく、15回全体の中での現在地を確認することが重要である。
ケーラー「類人猿の知恵試験」
コマ主題細目
① 近づくだけでは届かない:迂り路の問題 ② 手が届かない餌を棒で取る:道具が問題場面を変える ③ 箱を積めば届くのか:ズルタンの「建築」
細目レベル
① ケーラーが最初に注目するのは、目標が見えているのに、そこへ真っ直ぐ進むだけでは到達できない場面である。柵や障害物があるとき、動物は一度目標から遠ざかる方向へ進み、回り込んでから餌へ向かわなければならない。目標へ近づく反応だけを一つずつ積み重ねるなら、この「遠ざかる」行動は理解しにくい。ケーラーは、動物が目標と障害物、自分の位置を含む場面全体をどのように捉えているかに注目する。ここでは、迂り路を単に賢さのテストとして見るのではなく、行動の一部分だけを切り出しても、その意味が分からない場合があることを理解する。行動が目標との関係の中で組織されているというゲシュタルト的な見方が、知覚から問題解決へ広がる最初の場面として扱う。
② 餌が檻の外にあり、手では届かないとき、チンパンジーは棒を使って餌を引き寄せることがある。重要なのは、棒を握ったという行動だけではなく、それまで届かなかった餌との関係が、棒を介することで変わる点である。棒は単なる物体ではなく、目標へ到達するための道具として問題場面の中へ組み込まれる。ケーラーは、偶然棒が餌に触れたことと、棒を機能的に使い続けることを区別しながら観察した。ここでは、道具使用を「棒を使った」という結果だけで判断せず、動物がどのような状況で棒へ向かい、持ち方や方向を変え、餌との位置関係に応じて使用するのかを見る。対象の物理的性質だけでなく、目標との関係によって同じ物が「道具」になるという考えを理解する。
③ 高いところに吊された餌には、棒だけでは届かない。ズルタンは箱を運び、餌の下へ置き、その上に登る。さらに高さが足りなければ、複数の箱を積み上げる。ケーラーはこの行動を「建築」と呼び、その過程を細かく観察した。箱は最初から階段として与えられているのではなく、部屋の別の場所にある物体である。それを目標との関係の中で移動させ、足場として用い、さらに複数の箱を組み合わせることで、問題場面そのものが作り替えられる。ここでは、成功した最後の瞬間だけでなく、箱を運ぶ位置、積み方、失敗、やり直しにも注目する。問題解決を、刺激に対する一つの反応ではなく、場面全体の関係を組み替えて目標へ到達する一連の行動として読む。次回は、この箱積みをさらに詳しく検討する。
キーワード
① ケーラー ② ゲシュタルト心理学 ③ 洞察学習 ④ チンパンジー ⑤ 道具
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、迂り路、棒の使用、箱積みの各課題で、チンパンジーの行動が目標・障害物・道具の関係からどのように組織されているのかを整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、今回の内容が本科目全体の流れのどこにあるのかを確認する。人物名や用語だけでなく、前回までに何を学び、今回何が加わったのかを、自分の言葉で説明できるようにする。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
6
道具を使うから作るへ:問題場面を組み替える
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは、ケーラーの問題解決研究を、すでにある道具を使う段階から、環境そのものを組み替える段階へ進める回である。物を加工する、二本の棒をつなぐ、最終目標の前に中間的な行動をとる課題を通して、複数の関係が再構成されることを学ぶ。このあと、ケーラーが洞察という説明を、偶然、習慣、模倣といった別の可能性とどう区別したのかを検討し、心的な説明を科学的説明として採用するための証拠を考える。この全体の地図の中で、今回がどの地点にあるのかを意識しながら学ぶ。
ケーラー「類人猿の知恵試験」
コマ主題細目
① 使える道具がなければどうするか:道具製作 ② 二本の棒を一つにする:複数の行動を組み合わせる ③ 目標へ行く前に別のことをする:途中の目標
細目レベル
① 道具使用の次にケーラーが調べるのは、使える道具が最初から完成した形では存在しない場合である。短すぎる棒しかない、枝が邪魔をしている、道具の一部を加工しなければ目標へ届かないといった状況で、チンパンジーは物をそのまま使うだけでなく、問題に合う形へ変えることがある。ここでは、道具製作を人間だけの特別な能力として最初から結論づけず、どのような場面で加工が生じ、どの程度目標に適した変化が行われるのかを観察する。物の形を変えること自体が目的なのではなく、餌との関係の中で、その物がより有効な道具へ変わることが重要である。問題解決が、与えられた選択肢から一つを選ぶだけでなく、環境の側を変化させて新しい手段を作るところまで広がることを理解する。
② 一本の棒では餌に届かないが、二本をつなげれば届く。この課題では、「棒を使う」という既に可能な行動だけでは足りず、二つの物体を一つの長い道具として組み合わせなければならない。ケーラーは、チンパンジーが棒をいじる中で偶然つながっただけなのか、それとも長さと目標との関係の中で接続する行動が生じたのかを観察する。ここでは、問題解決を一つの反応の獲得としてではなく、複数の行動や物の関係が新しいまとまりへ再構成されることとして捉える。前回の箱積みでも、箱を運ぶ、上に乗る、積むという別々の行動が一つの問題場面で結びついていた。道具の接続は、その組み替えがさらに明瞭に現れる場面である。後にスキナーが同じ棒つなぎを別の仕方で読むことにもつながる。
③ 複雑な問題では、最終的な餌へすぐ向かうのではなく、その前に別の課題を解かなければならないことがある。箱を取りに行く、棒を手に入れる、別の場所へ移動するなど、目の前の行動は一見すると餌から遠ざかっている。しかし、その途中の行動が成立して初めて最終目標へ到達できる。ケーラーは、このような行動を、目標へ向かう場面全体の構造から理解しようとする。ここでは、動物の行動が常に「いま見えている餌へ近づく」だけで説明できるわけではないことを確認する。直接の報酬をいったん脇へ置き、必要な中間手段へ行動を向けることは、問題の全体構造を踏まえた行動の組織化として捉えられる。道具使用から道具製作、そして複数段階の問題解決へ、ケーラーがどこまで行動のまとまりを追ったかを見る。
キーワード
① ケーラー ② ゲシュタルト心理学 ③ チンパンジー ④ 洞察学習 ⑤ 道具
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、道具製作、二本の棒の接続、中間目標を含む問題解決によって、動物が環境や複数の行動をどのように組み替えるのかを整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、今回の内容が本科目全体の流れのどこにあるのかを確認する。人物名や用語だけでなく、前回までに何を学び、今回何が加わったのかを、自分の言葉で説明できるようにする。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
7
それは本当に洞察なのか:偶然と模倣を疑う
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは、ケーラーを扱うまとまりの最後として、「洞察」という説明を何によって支えるのかを考える。一度の鮮やかな成功だけでは、偶然に正しい動作が出た、習慣化した、他個体や人間を模倣したという別の説明も残る。このあと、スキナーの徹底的行動主義へ進む。スキナーは行動主義を捨てずに私的出来事まで扱い、さらにケーラーの洞察を行動レパートリーと履歴から読み直す。この全体の地図の中で、今回がどの地点にあるのかを意識しながら学ぶ。前後の内容だけでなく、15回全体の中での現在地を確認することが重要である。
ケーラー「類人猿の知恵試験」
コマ主題細目
① 偶然にできただけではないのか:成功の前後を見る ② 他の個体をまねしただけなのか:模倣という説明を検討する ③ ゲシュタルト心理学は何を残したのか:行動を研究する心理学へ
細目レベル
① 箱を積む、棒をつなぐといった行動が一度成功しても、それだけで「洞察」の証拠になるとは限らない。たまたま動かした箱が餌の下へ来た、偶然棒がつながった、という可能性もある。ケーラーはそのため、成功した瞬間だけでなく、その前後の行動、同じ課題を再び与えたときの反応、失敗の仕方まで観察する。解決の前に長い試行錯誤が続くのか、関係が捉えられた後には行動がまとまって変化するのかを比較するのである。ここでは、印象的な成功例を見てすぐに高い知能を認めるのではなく、代替説明を一つずつ検討する科学的姿勢に注目する。「突然できた」という外見だけでは、偶然と洞察を区別できない。何を証拠とすれば説明を選べるのかという問題が、ケーラー自身の実験の中にあることを理解する。
② もう一つの説明は模倣である。チンパンジーが他個体や人間の行動を見たあとで同じ行動をすれば、それは問題の関係を理解したのではなく、単に動作をまねただけかもしれない。ケーラーは、観察する機会の有無や、見た行動がどの程度再現されるかを比較し、模倣がどこまで説明になるのかを検討する。実際、チンパンジーは他個体だけでなく人間から新しい行動形式を学ぶ場合もある。しかし、見たものをそのまま複写するだけでは説明できない場面も残る。ここでは、「模倣」という語を出しただけで説明を終えず、何を見て、何が再現され、どの条件で新しい行動が生じるのかを問う。偶然説と同様に、別の説明可能性を比較することによって、洞察という解釈の根拠を絞り込もうとする姿勢を理解する。
③ 害物、道具、自分の位置が作る全体的な関係を重視し、成功だけでなく偶然や模倣という別の説明まで検討した点に特徴がある。一方、ゲシュタルト心理学は、その後も独立した学派として同じ形を保ち続けたわけではない。ナチス政権下で主要研究者の多くがドイツを離れ、アメリカでは行動主義が大きな勢力となる中で、学派としてのまとまりは次第に弱まった。しかし、行動を細かな反応の足し算だけで説明してよいのかという問題は残る。ここまで、ワトソンの行動主義とほぼ同時代に成立した別の科学化としてゲシュタルト心理学のケーラーを読んできた。
キーワード
① ケーラー ② ゲシュタルト心理学 ③ 洞察学習 ④ 問題解決 ⑤ 部分と全体
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、洞察という説明に対して、偶然や模倣という別の可能性をどのように検討し、何を証拠として説明を選ぼうとしたのかを整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、今回の内容が本科目全体の流れのどこにあるのかを確認する。人物名や用語だけでなく、前回までに何を学び、今回何が加わったのかを、自分の言葉で説明できるようにする。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
8
徹底的行動主義:心を捨てずに科学する
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは、後半の大きなまとまりであるスキナーへ入る最初の回である。ワトソン以来の行動主義が公的に観察できるものを重視したのに対し、徹底的行動主義は、感じること、考えること、自己観察のような私的出来事を排除しない。このあと、オペラント行動を基礎に、知覚、注意、言語、思考、洞察、人格、発達、自己、他者理解へ進み、行動主義が「心」をどこまで扱えるのかを順に確かめる。この全体の地図の中で、今回がどの地点にあるのかを意識しながら学ぶ。ここが、外からの行動だけを扱う立場から心の問題へ戻る重要な転換点である。
スキナー「スキナーの徹底的行動主義」
コマ主題細目
① ワトソンからスキナーへ:観察できるものだけでよいのか ② 内観を復活させる:皮膚の内側も科学の対象にする ③ 「痛い」はどう学ぶのか:私的出来事と言語共同体
細目レベル
① ワトソン以来の行動主義は、心理学を客観的な科学にするため、誰にでも観察できる刺激と行動を中心に据えた。その後、この方向は、私的な出来事を研究対象から外し、公的事象だけを科学の資料とする方法論的行動主義として整理されていく。スキナーも、心的事象を行動の原因に置かないという原則は受け継ぐ。しかし、公的に観察できないという理由だけで、感じることや考えることを捨てる必要はないと考えた。そこで登場するのが徹底的行動主義である。行動主義を弱めて心を戻すのではなく、観察する自分、感じる自分、それについて語る行動まで、行動主義の対象に含めようとする。ワトソン以来の「行動を科学する」という選択をさらに押し進めた結果、行動主義が一度脇へ置いた内面までも、再び行動の側から扱うことになる。この点が、ワトソンからスキナーへの最も大きな違いになる。(
② 徹底的行動主義の「徹底」は、心をさらに強く排除するという意味ではない。スキナーは、自己観察や自己知識の可能性と有用性を否定せず、むしろ内観を行動科学の中に「復活」させる。ただし、哲学者や内観心理学者が考えたように、心という別の世界を直接のぞき込むとは考えない。人は自分の皮膚の内側で起こる出来事に特別な仕方で接触でき、それを感じ、部分的に観察し、言葉で報告する。その感じや報告もまた、どのような身体状態と環境、学習の履歴のもとで生じたのかを問われる行動である。したがって、私的な出来事は科学から排除されないが、それ自体が行動の最終原因にもならない。外から見えないものまで対象にしながら、そこで説明を止めない。私的事象を認めることと、それを独立した説明原因にすることを分ける点に、徹底的行動主義の特徴がある。
③ 私的な出来事は本人にしか直接接触できない。それにもかかわらず、私たちは「痛い」「かゆい」「悲しい」と語る。スキナーは、この不思議を言語共同体との関係から説明する。子どもが転び、膝をすりむき、血が出て泣いているとき、大人はその痛み自体を見ることはできないが、公的に観察できる傷や泣く行動を手がかりに「痛いね」と語りかける。こうした経験を通して、子どもは自分にしか感じられない私的刺激に対して「痛い」と報告するようになる。重要なのは、内面を行動に置き換えて消してしまうことではない。痛みは私的なまま残る。しかし、その痛みについて語れるようになる過程は、公的な環境と社会的学習から分析できる。他者の内面に直接入れないという限界を認めたまま、心についての言葉がどのように成立するかを科学しようとするのである。
キーワード
① スキナー ② 徹底的行動主義 ③ 方法論的行動主義 ④ 内観 ⑤ 言語学習
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、方法論的行動主義と徹底的行動主義の違い、私的出来事や内観を排除せずに扱う考え、「痛い」という言葉が学習される仕組みを整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、今回の内容が本科目全体の流れのどこにあるのかを確認する。人物名や用語だけでなく、前回までに何を学び、今回何が加わったのかを、自分の言葉で説明できるようにする。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
9
オペラント行動:結果が行動を選ぶ
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは、スキナーの議論を支える中心的な仕組みとしてオペラント行動を扱う。生物が種の歴史で備える行動傾向と、個体の生涯で結果によって変化する行動を二つの選択の歴史として捉え、強化を行動の生起確率への効果から理解する。このあと、この枠組みを知覚と注意、言語、思考、問題解決へ広げ、さらに人格、発達、自己、他者の心まで扱うことで、心的な語を行動科学の中でどう読み替えるかを見る。この全体の地図の中で、今回がどの地点にあるのかを意識しながら学ぶ。
スキナー「スキナーの徹底的行動主義」
コマ主題細目
① 生得と学習をつなぐ:自然淘汰と刻印づけ ② オペラントとは:行動の後に何が起こるか ③ 目的や意図も扱える:未来ではなく履歴から説明する
細目レベル
① スキナーは、行動をすべて後天的な学習へ還元しない。生物は自然淘汰の結果として、生存に寄与してきた行動傾向をもって生まれ、その上に個体の学習が重なる。刻印づけはその関係を考える好例である。子ガモは動く対象へ接近し追従するが、スキナーはこれを「母親を認識する本能」と名づけて終わらせない。子ガモが受け継いでいるのは、対象との距離を縮めたり維持したりすることによって行動が強化されうる仕組みだと考える。もし随伴性を逆転させ、離れると対象が近づくようにすれば、離れる行動が形成される可能性もある。種の歴史における自然淘汰と、個体の生涯におけるオペラント条件づけは、ともに結果によって行動が選択されるという点でつながる。生得か学習かという二分法ではなく、二つの歴史が現在の行動をつくるのである。学習は、生得性を否定するのではなく、それを土台に働く。
② オペラント条件づけについて、スキナーはきわめて簡潔に書く。ちょっとした行動が、強化的と呼ばれる種類の結果を伴うと、その行動は再び起こりやすくなる。水を引き寄せて飲む、痛い靴を脱ぐといった行動は、その後に起きた結果によって、似た状況で再び生じる確率が変わる。ここで強化子は、最初から「うれしい物」や「欲しい物」と定義されているのではない。ある結果の後に、その行動が実際に起こりやすくなったという機能的な関係から定義される。したがって、スキナーの行動主義は、刺激が反応を引き起こす単純なS-Rの連鎖ではない。現在の状況、そこで生じた行動、その後の結果、そして過去の強化履歴を結びつけて、なぜ今この行動が起こりやすいのかを説明する。心的原因を置かずに、行動が変化する仕組みそのものを追うのである。つまり、強化は結果の価値ではなく、行動への効果から判断される。
③ 行動主義は、目的や意図を扱えないと批判されてきた。スキナー自身も、単純な刺激―反応の定式では、この問題に十分答えられないと認める。しかし、オペラント行動こそ目的と意図を扱う領域だと考える。人は「合格するために勉強する」「餌を得るためにレバーを押す」と、未来の結果へ向かって行動しているように見える。ただし、未来の出来事が時間を逆行して現在の行動を引き起こすわけではない。過去に似た行動がどのような結果をもたらしてきたかという強化履歴が、現在の行動を将来の結果へ向けて方向づけるのである。目的や意図という語を捨てるのではなく、それが指している行動の時間的構造を説明し直す。人間らしい目的的行動も、行動の科学から例外扱いしない点にスキナーの特徴がある。未来を語ることと、未来を原因にすることを区別するのである。
キーワード
① スキナー ② 徹底的行動主義 ③ オペラント ④ 強化 ⑤ 来歴
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、オペラント条件づけにおける強化の定義、行動が結果によって選択されるという考え、目的的行動を過去の強化履歴から説明する方法を整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、今回の内容が本科目全体の流れのどこにあるのかを確認する。人物名や用語だけでなく、前回までに何を学び、今回何が加わったのかを、自分の言葉で説明できるようにする。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
10
知覚と言語:意味はどこにあるのか
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは、オペラント行動の枠組みを知覚、注意、言語という、従来は心の中に意味や表象を置きやすかった領域へ広げる回である。「見る」ことを刺激性制御として捉え、注意や言葉の意味も環境との関係と学習履歴から分析する。このあと、さらに思考と問題解決へ進み、ケーラーの洞察とスキナーの説明を直接比較する。その後は人格、防衛機制、発達、自己、他者理解へと対象を広げる。この全体の地図の中で、今回がどの地点にあるのかを意識しながら学ぶ。前後の内容だけでなく、15回全体の中での現在地を確認することが重要である。
スキナー「スキナーの徹底的行動主義」
コマ主題細目
① 「見る」とは何をすることか:刺激性制御 ② 意味を獲得する:ハトは「見やすくする」 ③ 言葉は意味を運ぶ容器なのか:言語行動
細目レベル
① 第5章でスキナーは、知覚を「外界の像が心の中へ取り込まれること」とは考えない。私たちは世界を受動的に写し取っているのではなく、過去の随伴性によって、環境の特定の特徴に反応しやすくなっている。同じ道路を見ても、運転者には信号や標識、車間距離が強く行動を制御し、同乗者には別のものが目につく。物理的に同じ刺激に接していても、何を見るか、何を見落とすかは同じではない。スキナーはこの関係を刺激性制御として捉える。刺激は反射のように行動を直接引き起こすのではなく、その状況で、過去に強化されてきた行動を起こりやすくする。したがって「見え方」の個人差も、心の中に別の世界があるからではなく、遺伝的履歴と環境的履歴の違いから分析できる。知覚そのものを、環境との関係の中で生じる行動として扱うのである。「見る」ことにも、その人自身の学習史が刻まれている。
② 行動主義は「その人にとって世界がどう見えるか」「どんな意味をもつか」を扱えない、と批判されてきた。スキナーは、意味を心の中に保存された表象として仮定するのではなく、その状況で実際にどのような行動が生じるかを見る。第7章には、その考えを鮮明にするハトの例がある。赤いキーのときだけつつく行動が強化され、緑では強化されないなら、色は行動を分ける手がかりになる。さらに色が薄く判別しにくいとき、別のキーをつつけば色を濃くできるなら、その「見やすくする」行動も学習される。注意や意味を説明するために、頭の中の門番や表象を置く必要はない。何が行動上重要な刺激になるかは、行動と結果の履歴によって獲得される。ここでは注意さえも、刺激を変え、自らの次の行動を変えやすくする行動として扱われる。知覚する個体は、刺激を受け取るだけの受動的な存在ではない。
③ 言語についても、スキナーは意味を心の中の内容物として扱わない。人類では発声がオペラント制御のもとに置かれ、言葉が他者の行動を変える社会的行動として発達した。ある発話が繰り返されるのは、それが聞き手の反応を生み、その結果によって話し手の言語行動が強化されてきたからである。この立場では、言葉があらかじめ意味を「持って」おり、その意味が話し手の頭から聞き手の頭へ運ばれるとは考えない。同じ言葉でも、話し手と聞き手では、その言葉に結びついた履歴と反応が異なる。意味を知りたければ、その言葉がどの状況で使われ、どの行動を生み、どのような結果と結びついてきたかを調べる必要がある。私的経験を語ることから抽象的な言語まで、言葉を一貫して行動として扱うのである。言葉の内側に意味を置かず、言葉が働く関係を見る。言葉の意味は、言葉の中ではなく、その働きの中にある。
キーワード
① スキナー ② 徹底的行動主義 ③ オペラント ④ 刺激性制御 ⑤ 意味
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、知覚を刺激性制御として捉えること、ハトが刺激を「見やすくする」行動、言葉の意味を行動と環境の関係から考えるスキナーの立場を整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、今回の内容が本科目全体の流れのどこにあるのかを確認する。人物名や用語だけでなく、前回までに何を学び、今回何が加わったのかを、自分の言葉で説明できるようにする。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
11
思考と洞察:考えることまで行動にできるか
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは、スキナーの分析を、もっとも内面的に見える思考と複雑な問題解決へ進める回である。「考える」ことを非顕現的行動として扱い、書く、並べる、測る、図を描くことも、次の行動を生じやすくする問題解決の一部として捉える。さらにケーラーの棒つなぎを取り上げ、洞察という全体的な説明と、必要な行動レパートリーや履歴を問う説明を比較する。このあと、人格、発達、自己と他者の心へ進む。この全体の地図の中で、今回がどの地点にあるのかを意識しながら学ぶ。
スキナー「スキナーの徹底的行動主義」
コマ主題細目
① 思考は弱い行動である:非顕現的行動 ② 問題解決とは環境を変えることである ③ ケーラーへの応答:洞察を来歴から説明する
細目レベル
① 「考える」ことは、外から見えないため、行動主義には扱えないように見える。スキナーはここでも対象を捨てず、「考える」とはしばしば「弱く行動する」ことだと述べる。「行くと思う」と「行くと分かっている」の違いは、反応の確率の違いとして表れる。また、チェスの選手が次の手を考えているとき、実際に指す前の行動が、他者には検出しにくい小さな規模で生じていることがある。こうした行動を非顕現的行動として扱う。ただし、スキナーは非顕現的行動を新しい「心」にしてしまわない。それもまた、なぜそのように生じたのかを説明されるべき行動であり、顕現的行動の原因として置いて終わることはできない。外から見えない思考まで行動として認めながら、そこでも随伴性と履歴の分析を続ける。思考を認めることと、思考で行動を説明することは別なのである。
② 問題解決も、スキナーは頭の中で答えを発見する特別な過程とは考えない。将来強化的となる状態を生み出したいのに、現在そのための反応がないとき、そこに「問題」がある。人は答えが突然現れるのを待つのではなく、二つの物を並べる、分類する、順番をつける、数える、測る、図を描く、言い換えるなど、自分の次の行動が起こりやすくなるよう環境を変える。紙に書くことやベン図を描くことも、内的な思考を外へ表した付属物ではなく、問題を解く行動そのものの一部である。考える人は環境から切り離されているのではなく、環境へ働きかけながら自分の行動条件を作り替えている。この見方によって、問題解決は見えない心的操作から、観察し分析できる行動の連鎖へ戻される。思考は頭の中だけで完結せず、机の上や紙の上にも広がっているのである。環境を操作すること自体が、思考の一部なのである。
③ ここで、直前に扱ったケーラーのチンパンジーが再登場する。棒をつないで遠くのバナナを取った行動を、ケーラーは洞察的問題解決として捉えた。スキナーが問うのは、洞察が「あるか、ないか」だけではない。「距離の障壁を克服する方法を知的に理解した」と名づけた瞬間に、そこで何が成立していたのかを調べる仕事を止めていないか、という点である。手を伸ばすのをやめる、短い棒では届かないことを学ぶ、長短を弁別する、二本の棒を持つ、一方を他方へ差し込むなど、必要な行動レパートリーを一つずつ問う。ケーラーが要素へ分解すると全体を失うと考えたのに対し、スキナーは「洞察」という全体語でまとめると成立条件を失うと問い返す。同じ行動を前に、何を科学的説明とみなすかの違いが鮮明になる。両者の違いは、観察よりも、その先で何を説明しようとするかにある。
キーワード
① スキナー ② 徹底的行動主義 ③ 思考 ④ 問題解決 ⑤ 洞察
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、思考を非顕現的行動として扱うこと、問題解決を環境を変える行動として捉えること、ケーラーの洞察説明との違いを整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、今回の内容が本科目全体の流れのどこにあるのかを確認する。人物名や用語だけでなく、前回までに何を学び、今回何が加わったのかを、自分の言葉で説明できるようにする。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
12
スキナーによる人格、防衛機制、発達段階の説明
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは、行動分析を人格、フロイトの防衛機制、発達段階といった、人間理解で広く使われる概念へ広げる回である。名称を内的な原因として置くのではなく、その語が指す行動を形づくった罰、強化、社会的条件、履歴へ戻す考えを学ぶ。このあと、スキナー編の最後として自己と他者の心へ進み、自己知識の社会的起源と、他者の私的経験を完全には共有できない限界を扱う。そこから二回の総括へ入る。この全体の地図の中で、今回がどの地点にあるのかを意識しながら学ぶ。説明の位置を問い直す。
スキナー「スキナーの徹底的行動主義」
コマ主題細目
① 動機や人格は原因なのか:説明語をもう一度ほどく ② フロイトさえ行動で読み替える:防衛機制 ③ エリクソンの発達段階説:発達も随伴性から読む
細目レベル
① 第10章では、動機、情動、人格といった、行動の「内側の原因」として使われやすい語が次々に検討される。「やる気があるから頑張る」「内向的だから話さない」と言えば、行動を説明したように感じる。しかしスキナーは、その語が指している現象を否定するのではなく、説明の位置を問い直す。ある人物が多くの場面で似た振る舞いを示すなら、それをパーソナリティと呼ぶことはできる。ただし、それは行動を生み出す内的な力ではなく、これまで形成されてきた行動レパートリーのまとまりを記述した語である。同じ人でも、家庭、職場、友人関係で異なる行動が現れるなら、それぞれの場で何が強化されてきたかを調べられる。内的な名前を原因にせず、行動が生じ、変化する条件を残しておく。記述として有用な概念と、原因としての概念を分けるのである。性格という語で説明を終えず、その行動が作られた履歴へ戻るのである。
② スキナーの徹底性がよく表れるのが、フロイトの防衛機制の扱いである。抑圧、転換、昇華といった概念は、矛盾した行動や本人にも理解しにくい行動を、心の内部の力動として巧みに整理する。スキナーは、その現象を笑い飛ばすのではなく、同じ出来事を行動の語彙へ翻訳できるかを試す。たとえば抑圧なら、受け入れがたい願望が心の奥へ押し込められると考える代わりに、ある行動が罰や嫌悪的結果と結びついて弱化され、見たり語ったりしない行動が強化されてきた可能性を問う。おもちゃの銃で攻撃的に遊べるようになることも、内側にたまった力の「ガス抜き」とするより、罰を受けずに攻撃的な行動が可能になったと説明できる。フロイトが記述した現象を残したまま、原因だけを行動と環境の関係へ戻すのである。防衛機制さえ、心の奥の装置ではなく、行動と結果の関係から読み直される。
③ スキナーはさらに、エリクソンの発達段階説へ進み、内側の発達によって人の変化を説明する考え方を検討する。乳児期、幼児期、青年期と進むにつれて、信頼、自律、同一性といった課題が現れると考えれば、人の変化を人生の流れの中で理解しやすい。しかしスキナーは、その「段階」自体を行動の原因として置く必要があるのかを問う。成長とともに、養育者との関係、自分で行動する機会、学校や仲間から受ける評価、進路や社会的役割など、個人が曝される随伴性も大きく変化する。発達上の変化も、行動レパートリーが変わりつつある随伴性の中で組み替えられる過程として捉えることができる。発達を否定するのではなく、「発達したから行動が変わった」で説明を止めず、その変化を作った環境と履歴まで追うのである。人生の段階そのものより、各時期で変わる環境との関係を見るのである。
キーワード
① スキナー ② 徹底的行動主義 ③ フロイト ④ エリクソン ⑤ 人格
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、動機・人格・防衛機制・発達段階を行動の原因として置かず、それらが指す現象を随伴性や行動履歴から説明し直す考えを整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、今回の内容が本科目全体の流れのどこにあるのかを確認する。人物名や用語だけでなく、前回までに何を学び、今回何が加わったのかを、自分の言葉で説明できるようにする。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
13
自己と他者:行動から心をどこまで扱えるか
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは、スキナーを扱う最後の内容回として、自己と他者の心という本科目の根本問題へ戻る。自己を行動の背後にいる別の主体ではなく、固有の遺伝的条件と学習履歴をもつ個人として捉え、自己知識が社会の中で形成されることを学ぶ。さらに、他者の私的経験は完全には共有できないという限界を認めながら、行動、言葉、環境、履歴から理解を深める可能性を考える。このあと、カフカからスキナーまでを二回で総括する。この全体の地図の中で、今回がどの地点にあるのかを意識しながら学ぶ。
スキナー「スキナーの徹底的行動主義」
コマ主題細目
① 自己は行動の主人なのか:履歴としての個人 ② 自己知識には社会的な起源がある ③ 他者の心はどこまで分かるのか:限界を残したまま科学する
細目レベル
① 最後にスキナーが向かうのは「自己」である。行動の科学は生物としての人間だけを扱い、個人や自分自身を失わせるのではないかという批判に対し、スキナーは、退けるべきなのは個人ではなく、行動の背後で身体を動かすもう一人の主体だと考える。個人とは、ヒトという種の一個体であると同時に、固有の遺伝的条件と環境的履歴のもとで行動レパートリーを獲得してきた存在である。人を行動の「動作主」ではなく、遺伝と環境の効果が集まる一つの「場」と捉えても、一人ひとりの独自性は失われない。むしろ誰一人として同じ履歴をもたないことが、その人をその人にしている。自己を消すのではなく、自己と呼ばれてきた一貫性や個人差を、行動履歴の独自性として捉え直す。自己は行動の原因となる内的実体ではなく、長い履歴をもつ個人を記述する語として残る。
② では、自分自身について「知っている」とはどういうことか。スキナーは、自己知識を生まれつき備わった内観能力の産物とは考えない。ヒト以外の動物は、自分がそのように行動していると知らずに行動している。人間も、言語共同体から「何をしているのか」「なぜそうしたのか」と問われ、その問いに答えることを学ぶことで、自分の行動について記述するようになったと考える。したがって、自己知識には社会的な起源がある。さらに、どのような自己を語れるようになるかは、どのような問いを受け、何を報告することが強化されてきたかによって変わる。スキナーは内観を復活させるが、その内観さえ、社会から独立した純粋な窓にはしない。自分の内側を見る行動そのものにも、他者との関係と言語学習の歴史がある。何を自分について知るかも、社会的な問いかけによって形づくられるのである。
③ 他者の心についても、スキナーは「直接見えないから扱わない」とはしない。私たちは表情、姿勢、言葉、行動を手がかりに、相手が何を感じているかを知ろうとする。しかし、感じていることを言葉にしても、話し手の経験そのものが聞き手へ移るわけではない。同じ表現でも、話し手と聞き手では、それを形づくった履歴が異なる。スキナーは、強制収容所で暮らした人だけが、それがどのように感じられるかを本当に知っているという例まで挙げ、私的経験には越えられない距離があることを認める。それでも、他者の行動と言葉、過去と現在の環境を調べることで、理解を深めることはできる。『変身』で現れた他者の内面との壁は最後まで残るが、スキナーはその壁を理由に心を捨てず、届かなさそのものを含めて行動から扱おうとする。この地点で、行動主義が心の問題へどこまで踏み込んだかを確認する。
キーワード
① スキナー ② 徹底的行動主義 ③ 自己 ④ 来歴 ⑤ 他者
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、自己を固有の履歴をもつ個人として捉えること、自己知識の社会的起源、そして他者の私的経験を知ることの可能性と限界を整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、今回の内容が本科目全体の流れのどこにあるのかを確認する。人物名や用語だけでなく、前回までに何を学び、今回何が加わったのかを、自分の言葉で説明できるようにする。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
14
カフカからスキナーまでの総括
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは、第1回から第13回までを模擬テスト形式で結び直す回である。カフカでは外から見える行動と本人の経験、ケーラーでは部分と全体、スキナーでは行動と私的出来事という、それぞれ異なる「心」の問題を一つの地図に置き直す。このあと最終回では、三者を「心はどこにあるのか」「何を証拠として心を語れるのか」「科学はどこまで届くのか」という問いから総括し、本科目名そのものの「心とは何か?」へ戻る。この全体の地図の中で、今回がどの地点にあるのかを意識しながら学ぶ。
コマ主題細目
① 外から見えることと本人の経験:カフカ ② 部分を足せば心が分かるのか:ケーラー ③ 行動主義は心を取り戻せるか:スキナー
細目レベル
① 第1回から第3回で扱ったカフカ『変身』を振り返る。グレゴールの身体と行動は家族から観察できるが、本人の意図や経験はそのまま共有されない。妹は食べ残しから好みを推測し、家具を動かすことで生活を助けようとする一方、その家具や絵がグレゴールにとってもつ過去との結びつきまでは十分に知ることができない。父親のりんごの場面では、外から見える出来事の解釈のずれが深刻な結果へつながる。ここでは、行動が他者理解の重要な手がかりであることと、行動だけから本人の意味を一意に決められないことを同時に整理する。模擬テストでは、作品の具体的な出来事を根拠に、身体、行動、本人の経験、他者からの判断の関係を説明できることを目標とする。
② 第4回から第7回で扱ったゲシュタルト心理学とケーラーを振り返る。仮現運動では、物理的刺激を一つずつ記述しても、実際に経験される「動き」をそのまま説明できないことが示された。チンパンジーの問題解決でも、迂り路、棒、箱、道具製作を個々の反応として切り離すのではなく、目標、障害物、道具、自分の位置が作る場面全体の関係から行動を見る必要がある。さらにケーラーは、鮮やかな成功だけを洞察の証拠とせず、偶然、習慣、模倣という別の説明も検討した。模擬テストでは、「全体」という語を便利な答えとして用いるのではなく、どの観察がどの説明を支えるのかを区別し、心的な理解を科学的な証拠と結びつけて説明できることを目標とする。
③ 8回から第13回までのスキナーを振り返る。徹底的行動主義は、感じることや考えることを科学から排除せず、私的出来事として認めたうえで、それ自体を行動の最終原因にはしない。オペラント行動、刺激性制御、言語、思考、洞察、人格、自己知識を、行動と環境の関係および学習履歴から分析しようとする。とくにケーラーの洞察を、必要な行動レパートリーへ分解して読み直した点では、「全体を捉えた」と説明することと、「その行動が成立した条件を示す」ことの違いが明瞭になる。模擬テストでは、私的経験を認めることと心的原因で説明を止めることを区別し、行動主義が心の問題へどこまで踏み込んだのかを説明できることを目標とする。ここに徹底的行動主義の特徴がある。
キーワード
① カフカ ② ケーラー ③ ゲシュタルト心理学 ④ スキナー ⑤ 徹底的行動主義
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、カフカ、ケーラー、スキナーについて、外から見える行動と本人の経験、部分と全体、行動と私的出来事という三つの対比から整理し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」を読み直し、15回全体の中で今回の模擬テストがどこに位置するのかを確認する。
予習:次回のシラバスを読み、次の授業で扱う人物・テーマと授業内容を確認しておく。
15
心とは何か?
科目の中での位置付け
本科目「心とは何か?」では、行動主義が心や意識を心理学の中心から外した地点を背景に、改めて心とは何かを問い直す。まずカフカ『変身』を通して、外から見える身体や行動と本人の経験がどこまで重なるのかを考える。次にケーラーのゲシュタルト心理学とチンパンジー研究から、行動を部分の足し算ではなく全体構造として捉える見方を学ぶ。最後にスキナーの徹底的行動主義を通して、私的出来事、思考、人格、自己、他者の心まで行動科学から扱う可能性と限界を検討する。本コマは「心とは何か?」の最終回である。カフカが描いた本人の経験と他者から見える姿の隔たり、ケーラーが示した場面全体の構造、スキナーが私的出来事まで行動科学へ戻した試みを、一つの問いのもとに結び直す。心を身体の内側にある一つの物として決めるのではなく、経験、行動、関係、意味、履歴をどのように研究し説明するかという問題として捉え直し、科学による理解の可能性と残る限界を確認して科目を閉じる。
コマ主題細目
① 心は外から見えるのか:カフカから考える ② 心は部分の中にあるのか:ケーラーから考える ③ 心を科学するとは何か:スキナーからもう一度問う
細目レベル
① 最終回では、まずカフカ『変身』から本科目の問いを振り返る。私たちは他者の心を直接見ることはできず、身体、表情、言葉、選択、接近や回避といった外から得られる手がかりを通して理解しようとする。『変身』では、グレゴールの家族には外から見える姿と行動しか与えられない一方、読者には本人の思考も示されるため、その二つのずれを同時に見ることができた。行動は他者理解の重要な資料であるが、同じ行動が本人にとってもつ意味まで自動的に決まるわけではない。ここでは、「心とは身体の内側に隠れたもの」と単純に決めるのではなく、本人の経験と他者から観察できる事実の間にどのような関係があるのかを問うこと自体が、心を考える出発点になることを確認する。
② 次にケーラーを通して、「心」をどのような単位で捉えるべきかを振り返る。仮現運動では、刺激を要素へ分けただけでは経験される運動を失い、チンパンジーの問題解決では、個々の反応だけを追っても、目標、障害物、道具の関係の中で行動がもつ意味を捉えにくい。ゲシュタルト心理学は、心を神秘的な全体として置くのではなく、関係や構造そのものを実験と観察の対象にしようとした。ここでは、科学が対象を細かく分けることで明らかにできることがある一方、分け方によっては研究したい現象そのものを失うこともあると確認する。「心とは何か」という問いには、心をどこに置くかだけでなく、どの大きさの単位で現象を捉えるかという方法の問題も含まれている。
③ 最後にスキナーを通して本科目全体を閉じる。徹底的行動主義は、心を科学から追放するのではなく、痛み、思考、意味、人格、自己知識、他者の私的経験までを対象に戻した。ただし、それらを身体の内側にある独立した原因として置くのではなく、行動、環境、言語共同体、学習履歴との関係から説明しようとする。他者の感じていることを完全には共有できないという限界も残るが、その届かなさを理由に研究をやめるのではない。カフカ、ケーラー、スキナーを通して見えてきたのは、「心」が一つの場所にある一つの物ではなく、経験、行動、関係、意味、履歴をどのように結びつけて理解するかという問いだということである。心を科学することは、その問いに一つの答えを固定することではなく、何を証拠にどこまで説明できるかを問い続ける営みである。
キーワード
① カフカ ② ケーラー ③ スキナー ④ 科学的心理学 ⑤ 文学
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
復習:小テストで間違えた問題、なんとなく正答した問題などを必ず確認する。授業で使用した教材を最低でも3回は読み直す。特に、カフカ、ケーラー、スキナーを通して、「心とは何か」「他者の心を何から知るのか」「何を科学的説明とみなすのか」を結び直し、自分の言葉で説明できるようにする。さらに、「科目の中での位置付け」と履修判定指標を読み直し、15回全体を一つの流れとして整理する。今後の専門科目でも、心的概念を使うときに、それが何を記述し、何を原因として説明しているのかを区別できるようにする。
履修判定指標
履修指標
履修指標の水準
キーワード
配点
関連回
フランツ・カフカ
カフカ『変身』について、グレゴール・ザムザが異形の身体へ変身した後、仕事へ行こうとする場面から、家族との関係が変化し、妹による世話、家具の撤去、父親によるりんごの投擲、ヴァイオリンの演奏、妹の決断、グレゴールの死、残された家族の生活へ至るまでの主要な出来事を正確に説明できることを求める。そのうえで、グレゴール自身の考えていることと、家族が外から見て判断していることが必ずしも一致しない場面が作品中にあることを理解する。ただし、その意味について一つの解釈を正解として覚えることは求めず、作品中の具体的な出来事を手がかりに、身体、行動、他者理解について考えることができればよい。
『変身』/グレゴール・ザムザ/家族/身体/他者
8
1, 2, 3
ヴォルフガング・ケーラー① 全体は部分の足し算なのか
ゲシュタルト心理学が、心理現象を個々の刺激や反応へ分解するだけでは、その現象がもつ全体の構造を失うと考えたことを説明できる。メロディーや仮現運動の例を通して、個々の要素が同じでも関係が変われば異なる全体が成立し、逆に要素が変化しても関係が保たれれば同じまとまりとして知覚されることを理解する。また、この考えがケーラーによって知覚だけでなく、動物の行動や問題解決へ広げられたことを説明できることを求める。
ゲシュタルト/全体/部分/仮現運動/構造
18
4,5
ヴォルフガング・ケーラー② 洞察とは何を説明したことになるのか
ケーラーのチンパンジー研究について、迂り路、棒の使用、箱積み、道具の組み合わせなどを、単に「賢かった」「洞察した」という結果だけでなく、目標、障害物、道具、自分の位置という問題場面全体の関係から説明できる。また、ケーラー自身が、成功をただ洞察の証拠とせず、偶然、習慣、模倣といった別の説明を検討していたことを理解する。観察された行動から、どの説明を採用するのが妥当なのかを考えることができることを求める。
洞察/迂り路/道具使用/箱積み/偶然・習慣・模倣
18
6,7
B・F・スキナー① 心を捨てずに行動主義を徹底する
スキナーの徹底的行動主義を、心や内面を否定する立場としてではなく、感じること、考えること、痛み、自己観察などの私的出来事も行動科学の対象に含める立場として説明できる。ただし、私的出来事をそのまま行動の原因として説明を終えるのではなく、それがどのような環境、身体状態、学習履歴のもとで成立したのかをさらに問うことを理解する。また、オペラント条件づけについて、行動の結果によって将来の行動の生起確率が変化する関係として説明できることを求める。
徹底的行動主義/私的出来事/内観/オペラント条件づけ/強化
24
8,9,10,11
B・F・スキナー② 思考・自己・他者の心まで行動から考える
スキナーが、思考、洞察、人格、発達、自己、他者理解といった、一見すると心の内部にあるように見える問題まで行動の分析へ戻そうとしたことを説明できる。「洞察した」「性格だから」「発達段階だから」と名づけたところで説明を止めず、その行動を成立させた行動レパートリー、随伴性、環境、履歴を問う考えを理解する。また、自己知識には言語共同体との関係があり、他者の私的経験には完全には共有できない距離が残ることを認めながら、それでも他者理解を科学的に進めようとしたことを説明できることを求める。
思考/行動レパートリー/自己知識/言語共同体/他者の心
22
12,13
評価方法
テスト
評価基準
評語
学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・
S (100~90点)
学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・
A (89~80点)
学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・
B (79~70点)
学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・
C (69~60点)
学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・
D (60点未満)
教科書
参考文献
実験・実習・教材費