区分 基盤教養科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
SDGs力 科学コミュニケーション力 研究力
カリキュラム・ポリシーとの関係
教養 応用力 実践力
科目間連携 総合心理力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ

科目の目的
心理学を学ぶ上で、最も重要なことは、皆さんが学んだ心理学的知見(発見)が、どの程度、確からしいかどうか、どのような科学的根拠を持っているのか(あるいは、持っていないのか)です。本講義では、皆さんが学んだ(あるいは学ぶ)心理学的知見の確からしさ、科学的根拠(科学的根拠のなさ)について説明します。このような講義を通じて、卒業までに、皆さんが学んだ心理学知見について、皆さんが正当な評価をできるようになります。
到達目標
上記の講義の目的に基づき、心理学に関する基礎的知見に関して、その科学的根拠と、その確からしさについて、十分な知識を獲得します。
大衆が持つ心理学の知識の多くは、「間違い」あるいは「正しくない(正確ではない)」のどちらかである。それは大学で心理学を学んだ人も同じである。その原因の多くは、「科学と科学的発見に対する誤解」と「科学的発見を伝える過程」にある。最終講義では、大衆が心理学の発見を誤解する仕組みと、心理学の発見が歪(ゆが)められて、大衆に伝えられる仕組みについて説明する。この章を通じて、読者には、心理学の本当の姿を理解することを期待している。それこそが、正しい心理学を知ることであり、本講義の目的でもある。
 この講義では、「非科学的心理学」や「否定された理論や法則」も紹介している。また、アーティファクトが疑われる研究や、追試に失敗している研究も紹介している。心理学の歴史は、非科学的心理学から決別しようと、模索(もさく)してきた長い戦いである(これからも戦い続ける)。先人は、科学的方法を用いるために、多くの努力や工夫をしてきた。「非科学的心理学」や「否定された理論や法則」は、それを教えてくれる貴重な教材である。
 例えば、シラバスには、以下の文言を加筆しました。
本講義では、出席を重視しています。欠席は3回までは可能ではなく、できる限り、1度も欠席しないようにしましょう。1度でも欠席をすると、講義の内容が分からなくなる場合があります。それゆえ、毎回積極的に講義に出席してください。また、この講義では、小テストも重視しています。小テストは、学期末の試験とも関連しています。小テストで出題された問題は、必ず復習し、理解できるようにしましょう。理解が難しい場合は、質問に来てください。あるいはメールをしてください。

科目の概要
この科目は、基盤教養の科目である「こころとは何か」「こころは数値化できるか」そして、「心理学概論」を受け、こころと科学との関係について、ある程度理解を深めた学生に向けた講義である。主に上記の科目を基盤とし、さらに深く掘り下げ、こころとは何か、こころを科学することとはどのようなことなのか、こころを科学することの問題点などについて概説する。しかし、この講義では、心理学という狭い領域からだけのアプローチではなく、科学全体から見た心理学という広いアプローチ(視野)から説明する。さらに、科学全体から見た心理学的知見の限界や、心理学の測定方法や研究方法、心理学統計法を含めて推測統計の限界について、具体的な例をあげながら説明する。この点が、本講義の特徴であり、心理学を専攻とする学生が、狭い視野だけにとらわれず、広い視野で心理学を理解し、本当の意味での心理学を理解することができる。
科目のキーワード
科学的根拠、確からしさ、心理学的方法論、科学、科学的根拠
授業の展開方法
 本講義は、演習ではなく、一般的に言われている講義形式の講義に該当する。しかし、学生が自ら学ぶ姿勢を促すための多くの工夫を行うという点では、アクティブ・ラーニング(学生の学び方を「受動的な学習」から「能動的な学習態度」に変容させることで学びの質を高める方法)。そのため、講義はパワー・ポイントを使用することなく、必要なことは板書をしながら、講義を進めてゆく。また、教材テキストとして、講義を担当する教員が科学としての心理学を学ぶ学生のために記載したものを使用する。
 また、本講義では、部分的に正確ではない説明の仕方をしている。正確に書くなら、「○○という人に限って、そして、○○という状況に限って、○○のようなことが起こる可能性がある。その可能性は○○程度であるかもしれない。しかし、○○のような現象が起こらないという報告もある。それは、○○理論では○○のように説明できるが、それ以外の説明方法も存在する。しかし、すべての説明が誤っているかもしれない」などとなる。このような表現は、文章を理解しにくくし、多くの時間を必要とするからだ。それゆえ、学生のみなさんが理解しやすいように、わかりやすく説明する。

オフィス・アワー
高野裕治:前期:火曜1~5限
後期:火曜1~5限
伊藤義徳:※できるだけアポイントを取ってください
前期:火曜3限・4限
木曜1限・2限
後期:火曜3限・4限
木曜1限・2限
武田知也:前期:火曜1限
後期:火曜1限
横光健吾:前期:金曜4限
後期:金曜4限

科目コード RB3050
学年・期 2年・後期
科目名 科学と人間(科学の可能性と限界)
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 必修
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目
展開科目
関連資格
担当教員名 高野裕治・伊藤義徳・武田知也・横光健吾
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 ガイダンス・何を学ぶのか・心理学的根拠 科目の中での位置付け 心理学が人の心を研究する学問ならば、哲学、文学、思想、文化、宗教なども心理学である。心理学を学んだ読者なら、人の心を理解するには、哲学や文学などの方が優れていると思うだろう。これらの学問と心理学が異なる点は、人の心を探求するかどうかではなく、科学的方法を用いるかどうかである(心理学だけが、科学的方法を用いている)。それゆえ、心理学の研究方法を理解することは重要であり、そのことによって、心理学の根拠を知ることができる。本講義は、他のすべての講義に書いている心理学の知見が、どのような根拠に基づいたものであるのか、「なぜ、そんなことをいうことができるのか」を理解するための講義である。心理学の根拠は、心理学の研究の手順にそって説明する。心理学の手順は以下のとおりである。①仮説の生成、②データの収集、③データの分析、④論文を書いて発表。この章では①から③まで説明し、④は補講で説明する。本講義で使用している「科学」は、「心理学」に読みかえることができる。
コマ主題細目 ① 仮説 ② データ収集 ③ データ分析
細目レベル ①  化学では、化合物Aと化合物Bが化学反応を起こし、予期せず新しい化合物Cを発見することがある。その発見に、仮説は不要かもしれない。しかし、少なくとも推測統計(あとで説明)を用いる科学(心理学も含まれている)では、明確な仮説が必要である。このような仮説の生成の根拠について、自分なりに、100字程度で説明できるようになる。 科学で用いる仮説は、「ひらめき」や「思いつき」ではない。仮説は論理的でなければならない。つまり、誰もが納得できなければならない。加えて、その論理のひとつひとつが、科学的方法を用いた先行研究のデータによって、裏づけられていなければならない。さらに、仮説は他者によって確かめることができ(検証可能)、かつ、反論できなければならない(反証可能)。
②  データ収集の科学的方法は、誰でも同じ方法を用いることができ、同じ方法を用いれば、同じデータが収集できることである(再現可能)。研究をした人物しか、再現できないデータ収集の方法は、科学的方法ではない。
 実験法、自然観察法、測定方法などの科学的根拠を十分に理解し、それぞれについて、自分なりの言葉で、100字程度で説明できるようになる。
 実験法とは、「意図した操作」と「厳格な統制」によって、仮説が正しいかどうか、確かめることである。詳しくいえば、実験は、操作した変数(原因)のみが、目的としている変数(結果)に影響を与えるように、状況を統制することである。
 観察し記録することは、科学の基本である。自然観察法も実験も、観察法のひとつである。しかし、自然観察法と実験法は全く異なる方法である。その違いは、研究をする場所ではない。自然観察法は、手を加えることなく(操作しない)、観察対象の行動を記録する方法である。

③  2014年Nature誌が発表した被引用数上位100論文に、心理学関連の論文は6篇(へん)含まれていた。そのうち5篇が、測定法に関する論文であった。正確にいえば、5篇が尺度に関する論文であり、残り1篇は統計の論文であった。科学論文の評価方法は、その論文がどのくらい引用されたか(被引用数)である。このことを考えると、科学における心理学の最大の貢献は、測定法かもしれない。しかし、それぞれの測定方法には、それぞれに問題や限界がある。その問題と限界は、心理学がかかえている問題と限界でもある。
 そのような心理学の研究方法の問題点と限界について、それぞれについて、自分なりの言葉で、100字程度で説明できるようになる。また、そのような問題や限界点が、心理学的知見(発見)とどのような関係にあるのか、今後の講義の内容を踏まえ、大まかに理解できるようになる。詳細は、今後の講義を通じて、理解すればよい。

キーワード ① 検証可能性 ② 反証可能性 ③ 実験法 ④ 神経生理学的測定法 ⑤ 検査の信頼性と妥当性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第9章の「心理学の根拠」(111ページから128ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。仮説に関しては、111ページから114ページに、データの収集に関しては、114ページから123ページに、データの分析に関しては、123ページから127ページに書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。
 今回の講義は、他のすべての講義で説明する心理学の知見が、どのような根拠に基づいたものであるのか、「なぜ、そんなことをいうことができるのか」を理解するための講義であるので、十分な復習をすること。
 その際、心理学の知見がどのような根拠に支えられているのかを理解できているかどうかを十分に確認すること。

2 生得的行動と生理的動機についての科学的根拠 科目の中での位置付け  本格的な講義の最初である本講義で話す内容は、生まれ持った行動である生得的行動と、生命維持の基盤である生理的動機を取りあげる。それは、ヒトの行動を理解する最初の段階です。みなさんは、そのような低次の行動や動機は、高次の機能であるヒトの「こころ」とは関係がないと思っているかもしれません。しかし、みなさんの日常の「こころ」の動きが、どのような行動から生まれたのかを考えると、その究極の答えは、生得的行動と生理学的動機にたどりつきます。ここで取りあげた行動は、のちに学ぶ「学習理論」(第5回講義「古典的条件づけとオペラント条件づけ」、第6回講義「生物学的制約と観察学習」)の基盤にもなります。特に、生得的行動と生理的動機は、第5回講義で行われる「古典的条件づけとオペラント条件づけ」と深い関連性があります。
 実際に行われた実験の手続きなどについて説明しながら、こうした心理学的知見(発見)の科学的根拠について、概説します。

コマ主題細目 ① 生得的行動 ② 生理的動機 ③ 内発的動機と獲得性動機
細目レベル ① 生得的行動は、経験によって獲得した行動ではなく、生まれ持った行動である。生得的行動として、走性(そうせい)、反射、本能行動があります。走性とは、光、化学物質、電気などの刺激に向かって移動したり、あるいは、その刺激と反対の方向に移動したりする性質です。反射とは、特定の刺激に対して、意識することなく機械的に、体の一部が起こす反応です。本能行動は走性や反射とは異なる生得的行動であるが、本能行動のとらえ方は、研究者によって違いがある。動物行動学では、本能行動は、特定の刺激(触発(しょくはつ)刺激、信号刺激、あるいは鍵(かぎ)刺激という)によって生じる生得的行動としてとらえています。このような生得的行動のそれぞれについて十分に理解し、その根拠について、自分なりの言葉で、100字程度で説明ができるようになること。
②  生理的動機は、飢(う)え、渇(かわ)き、眠気、便意(べんい)や尿意(にょうい)などであり、生理的な不均衡(ふきんこう)によって生じる。生理的動機による行動(摂食行動、飲水行動、睡眠、排泄(はいせつ)など)をすると、生理的な不均衡状態は解消する。例えば、体内で水分がたりなくなると、生理的な不均衡状態になり、のどが渇く。水を飲むと、生理的な不均衡状態が解消し、のどの渇きはなくなる。このように、生理的動機は、生命維持にとって必要な機能である。このような生理的動機のそれぞれについて十分に理解し、その根拠について、自分なりの言葉で、100字程度で説明ができるようになること。また、動因、誘因、動機づけとの違いについても説明できるようになること。
③  内発的動機とは自発的に生じる動機で、行動すること自体が目的になっている。内発的動機は、生理的動機に基づく生得的な動機ではなく、別の生得的な動機です。内発的動機の例として、知的好奇心を思い浮かべると、理解しやすいと思います。一般的に、報酬や罰などによって行動が起こる外発的動機に対置する用語として、よく用いられています。
 動機は生理的動機だけではない。経験によって学習した獲得性動機もあります。獲得性動機のひとつは、生理的動機から生まれた派生的な動機です。例えば、摂食行動は生理的動機による行動のひとつであるが、食事をするためには、お金が必要であり、お金を得たいという動機が生まれます。つまり、生理的動機から、お金を得たいという動機が生まれたのです。獲得性動機について、十分に理解し、自分なりの言葉で、100字程度で説明ができるようになること。

キーワード ① 走性と反射 ② 本能行動 ③ 動因 ④ ホメオスタシス ⑤ 摂食行動
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第1章の「生得的行動と生理的動機」(9ページから22ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。生得的行動に関しては、9ページから11ページに、生理的動機に関しては、11ページから18ページに、内発的動機に関しては、18ページから19ページに、獲得性動機に関しては、19ページから22ページ書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。
 脳の機能についての復習には、13ページの図、シナプスの復習には、15ページの図が理解しやすい。
本講義に関連のある重要な人名・学術用語として、以下のものがあります。マクドゥ-ガルの本能論、性行動、肥満、神経性無食欲症、神経性大食症、マレー、アトキンソンと期待・価値モデル、マズローの欲求階層説、メタ認知(メタ動機づけ)、自己調整学習

3 感情 科目の中での位置付け  本講義は、感情がどのようにして生まれるのか、主に認知との関係から説明すます。なお、情動、感情、気分は、厳密には異なりますが、理解しやすさを優先させ、ここでは「感情」に統一している。みなさんには、われわれが日常的に経験している感情を、科学的に研究するために、研究者がどのような工夫をしてきたか、感じてほしい。これは、感じるだけでよい。
 進化論の提唱者であるダーウィンは、動物とヒトの表情は類似しており、表情には、動物からヒトにつながる進化的連続性があると考えました。そして、ヒトには、文化普遍的表情が存在することを実証しました。つまり、どのような文化でも、同じ表情があり、その表情が意味することは同じであるということです。エクマンやイザードなどは、このようなダーウィンの考えに影響を受け、ヒトの感情や表情は、進化の過程で残された適応的なものであり(例えば、表情があるために危険を回避できた)、いくつかの文化普遍的な基本感情が存在すると考えました。それが、基本的感情になります。
 本講義では、感情に関する心理学的知見や発見について、実際に行われた実験の手続きなどについて説明しながら、こうした心理学的知見(発見)の科学的根拠について、概説します。

コマ主題細目 ① 感情の喚起と身体反応 ② 認知の役割 ③ 社会における感情と認知
細目レベル ①  クマに遭遇すると恐怖を感じ、体がガタガタとふるえます。これは一般的な考え方であるが、ジェームズは、クマに遭遇したことを知覚した直後に、体がガタガタとふるえ、そのふるえを感じると、恐怖が生まれると説明しました(図2-1、テキスト教材の25ページ)。つまり、末梢(まっしょう)の身体変化(体がふるえること)が中枢(ちゅうすう)(脳や脊髄(せきずい))に伝達することで、感情(恐怖)が生るといえます。いい換えると、感情が生まれるためには、その感情に先んじて、何らかの身体的変化が必要になります。また、ジェームズは、それぞれの感情に対応する自律神経系(第4回講義で詳しく説明します)の活動によって、特有の身体変化が存在すると考えました。
 このような感情の喚起について、十分に理解し、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。

②  ジェームズの研究に強い影響を受けたシャクターは、感情が生まれるためには、生理的覚醒(かくせい)(例えば心拍数や呼吸数の増加)に加え、状況の認知が必要であると考えました。状況の認知とは、個人が置かれている状況などから判断して、生理的覚醒状態の意味を認識することです。例えば、クマに遭遇したという状況が、どのような意味を持つかを考え、心拍数が増加していることに対して、この感情は恐怖であると判断します。このような考えをシャクターの二要因説といいます。それ以外にも、われわれが日常的に感じている感情には、いろいろな形で、認知が関与していることが分かっています。
 このような認知の影響を受けて感情が喚起するメカニズムの説明について、十分に理解し、自分なりの言葉で、200字程度で説明ができるようになること。


③  ここでは、感情が認知に与える影響について説明します。このような現象のひとつに、気分一致効果があります。気分一致効果とは、ある感情を経験した時に、その感情と一致する認知(記憶や行動も含む)が生じる現象です。例えば、楽しい気分の時に、ある出来事を経験すると、その出来事を楽しいと判断します。次のような気分一致効果の研究があります。たとえば、晴れの日(気分の良い日)の電話調査では、雨の日(気分が悪い日)の調査より、生活満足感が高かった。気分の良い研究参加者は、他者に対して好印象を持った。気分を良くした参加者は、購入した商品に対して高い満足感を示した。その一方で、否定的感情に対しては、気分一致効果が観察できなかったり、感情と真逆の認知が生じたりする場合もあります。
 このような感情の喚起に関するメカニズムに関して、十分に理解し、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。

キーワード ① 基本的感情 ② ジェームズ・ランゲ説 ③ キャノンバード説 ④ シャクターの2要因説 ⑤ 吊り橋効果
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第2章の「感情」(テキスト教材の24ページから33ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。基本的感情に関しては、24ページから25ページに、感情の喚起と身体反応に関しては、25ページから27ページに、感情における認知の役割に関しては、27ページから31ページに、社会における感情と認知に関しては、31ページから33ページ書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。
 関連する感情の神経学的基盤に関しては、テキスト教材の27ページに加えて、テキスト教材の37ページの図も参考になります。
 本講義に関連のある重要な人名・学術用語として、以下のものがあります。アーノルド、グロス、感情制御、ヤーキンス・ダットソンの法則、情動伝染、ミラーニューロン、報酬系、恐怖条件づけ

4 ストレス 科目の中での位置付け  日常会話で使用しているストレスには、ストレッサーとストレス反応、2つの意味がある。ストレッサーは、ストレス源(ストレスの原因)を意味しています。ストレスに対処するための生理学的仕組みと、心理学的仕組みについて紹介します。人文・社会学系の読者には、苦手かもしれないが、人の「こころ」を理解するためには、人の体の仕組みを理解しなければなりません。その内容がストレス理論(身体的反応)であり、そこについても図解入りで説明します。本講義を通じて、読者には、「こころ」と「体」は、相互に深く関係していることを理解するようにしてください。
 この講義では、他の講義と比較して、〇〇理論が多く出てきますが、実際に行われた実験の手続きなどについて説明しながら、こうした心理学的知見(発見)の科学的根拠について、概説します。
 本講義は、第3回講義の「感情」とも深い関係にあります。また、本講義の基盤としては、第1回講義で行った「生得的行動と生理的動機」があります。
 


コマ主題細目 ① ストレス理論(身体的反応) ② 心理社会的ストレス理論 ③ ラザルスのストレス理論
細目レベル ① 日常会話で使用しているストレスには、ストレッサーとストレス反応、2つの意味がある。ストレッサーは、ストレス源(ストレスの原因)を意味する。ストレッサーには、友人とのもめごと、失恋、受験など、不快な感情を生む情動的刺激だけでなく、寒冷、騒音、放射能などの物理的刺激、酸素欠乏、薬物、毒物などの化学的刺激、感染、出血、疼痛(とうつう)などの生物学的刺激などがある。ストレス反応とは、ストレッサーによって生じる情動や感情の変化、認知・行動の変化、身体反応の総称である。ストレッサーを経験すると、不安になったり、落ちこんだり、失敗が多くなったり、眠れなくなったり、病気になったりする。
 こうしたストレスに対する身体的反応について、十分に理解し、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。苦手かもしれませんが、専門用語の理解も必要です。

②  ホームズとレイは、ストレスの心理社会的要因に注目した初期の研究者である。彼らは、生活環境に重大な影響を与えるライフイベントに注目しました。ライフイベントは、精神的に大きなショックを受けるストレッサーです。ライフイベントは、生涯に数度程度しか経験しないような出来事です。また、ホームズとレイは、ライフイベントに適応するために、必要とするエネルギーの総量を得点化(LCU得点)した社会的再適応評価尺度を作成しました)。過去一年間に経験したライフイベントのLCU合計得点によって、疾患の発症率を予測しました。このように、精神的に大きなショックであるライフイベントが、ストレスに関連した疾患につながるという考え方をライフイベント理論といいます。
 このライフイベント理論をはじめ、心理社会的ストレス理論に関して、十分に理解し、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。

③  ライフイベント理論に対し、多くの研究者が、主に以下の2つの点で異論をとなえました。第一に、LCU得点は、ストレスに関連した疾患や健康状態を十分に予測しない点です。多くの研究は、ストレスに関連した疾患を含めた健康状態を悪化させるのは、ライフイベントではなく、日常的に繰り返し経験するささいなストレッサー(日常苛立ちごと)であることを明らかにしました。第二に、ライフイベント理論では、ストレス反応性(個人差)を説明できない点です。実際の研究では、同じようなストレッサーを経験しても、病気になる人もいれば、病気にならない人もいる。そして、ストレス反応は個人差が大きい。つまり、身体的反応も精神的反応も、人によって大きく違う。ライフイベント理論は、このようなストレス反応の個人差を軽視しました。こうした問題点を解決し、現在の心理的ストレスモデルの中心的な役割をはたしている理論が、ラザルスのストレス理論です。
 ライフイベント理論と違いに関して、説明できるようになること。

キーワード ① ラザルス ② ストレスマネジメント ③ ホメオスタシス ④ コーピング ⑤ 認知的評価
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第3章の「ストレス」(テキスト教材の34ページから48ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。ストレス理論(身体反応)に関しては、34ページから41ページに、心理社会的ストレス理論に関しては、41ページから42ページに、ラザルスのストレス理論に関しては、42ページから45ページに、ストレスマネジメントに関しては、46ページから48ページ書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。ストレスに対する身体的反応に関しては、テキスト教材の図3-2 37ページがとても参考になります。
 本講義に関連のある重要な人名・学術用語として、以下ものがあります。キャノンの闘争-逃走反応、ウォルフ、ワイナー、エイダ―と免疫条件づけ、防衛機制、対象喪失、ウオルピィの逆制止理論、行動医学、行動療法、楽観主義、バイオフィードバック、シュルツと自律訓練、ストレス免疫訓練、ソーシャルサポート、

5 古典的条件づけとオペラント条件づけ 科目の中での位置付け  この講義では、心理学に最も貢献した研究者であるスキナー、ワトソン、パブロフなどが登場する。みなさんの多くは、心理学といえば、カウンセリングや性格テストのようなものを思い浮かべるかもしれません。しかし、「学習」は、科学としての心理学が誕生し、成長することに貢献した中心的研究分野です。また、本章で紹介する古典的条件づけやオペラント条件づけの手続きは、心理学のみならず、さまざまな研究領域の基礎になっています。その研究を支えてきた研究者が行動主義者です(テキスト教材の61ページ)。
 本講義は、次回の講義である「生物学的制約と観察学習」の前篇に位置付けられます。本講義と次回の講義を通じて、みなさんが、「学習は、科学としての心理学が誕生し、成長することに貢献した中心的研究分野」であることを理解できるようになることが、おおきな目的です。

コマ主題細目 ① 学習の基礎 ② 古典的条件づけ ③ オペラント条件づけ
細目レベル ①  学習とは、経験によって生じた行動の獲得過程であり、行動の変化です。しかし、その行動は、比較的長期間維持している場合に限っています。飲酒をしたり、ある種の薬物を飲んだりすると、確かに行動が変化します。しかし、それらの行動は、学習による行動ではない。そのような行動は、一時的であり、酔(よ)いがさめたり、薬物の影響が切れたりすると、見ることができなくなるからです。同様の理由で、疲労や感情の変化による行動の変化も、学習ではありません。また、学習は、生得的行動の獲得過程でもありません。そのため、走性(そうせい)、反射、本能行動(第1回講義を復習してください)などの生得的行動も学習ではありません。同じ理由から、成熟もまた学習ではありません(第9回講義の「発達」で説明します)。成熟とは、時間の経過とともに、遺伝の要因によって、成長・変化する過程のことです。
 このような学習について、十分に理解し、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。

②  イヌに肉片を見せると唾液(だえき)が出ます。しかし、メトロノームの音を聞かせても、唾液は出ません。この意味で、メトロノームの音は中性刺激です。ここからが実験の説明である。パブロフは、イヌに肉片を見せると同時に、メトロノームの音を聞かせました(イヌは実験装置に固定されているために、肉を食べることはできない)。この手続きを繰り返した。すると、メトロノームの音を聞いただけで、唾液が出るようになりました(肉片を見せなくても、唾液が出た)。パブロフの実験におけるこのような行動を、条件反射と呼んだ(のちに、条件反応と呼ばれる)。パブロフの実験で、イヌが学習した行動の仕組みを、古典的条件づけといいます。
 古典的条件づけのメカニズムと、それに関するすべての学術用について、理解し、説明できるようになること。

③  スキナーは、スキナー箱と呼ばれる実験箱に、ラットを入れて実験をしました。スキナー箱にはレバーがあり、レバーを押すと、エサ箱からエサが出る仕組みでした。スキナー箱に入れたラットは、箱の中を探索したあと、レバーを押すとエサが出ることを学習しました。レバーを押すとエサが出ることを、一度学習すると、急速に、レバーを押す回数が増加した。スキナーの実験は、ソーンダイクの実験と似ていますが、現象のとらえ方は、スキナーとソーンダイクでは大きく違っていました。それゆえ、スキナーの実験は、オペラント条件づけと呼ばれる新しい学習の仕組みにつながりました。
 このオペラント条件づけのメカニズムと、それに関するすべての学術用について、理解し、説明できるようになること。

キーワード ① 学習 ② パブロフ ③ 条件刺激 ④ 弁別 ⑤ 消去
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第4章の「古典的条件づけとオペラント条件付け」(テキスト教材の34ページから48ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。学習の基礎に関しては、49ページから50ページに、古典的条件づけに関しては、51ページから53ページに、オペラント条件づけに関しては、54ページから57ページに、罰による学習に関しては、57ページから60ページ書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。
 本講義に関連のある重要な人名・学術用語について、いかのようなものがあります。定位反応、連合学習、スペンスの誘因動機づけ、動因低減説、ソーンダイクの効果の法則、ガスリー、マウラーの二過程説、シドマン型回避、レスコーラ、ワグナー、プレマックの原理、自発的回復、脱制止、条件性制止、学習性無力感、道具的条件づけ、シェーピング、迷信行動、認知地図

6 生物学的制約と観察学習 科目の中での位置付け  学習の研究を進めると、古典的条件づけやオペラント条件づけでは、十分に説明できない現象が観察され始めました。そのような現象に、味覚嫌悪(けんお)学習や模倣(もほう)がある。本講義では主に、味覚嫌悪学習を説明するために生物学的制約を、模倣を説明するために観察学習を紹介します。学生のみなさんには、心理学の中核である「学習」は、動物実験によって支えられていることも理解してください。もちろん、学習のメカニズムン関して、十分に理解することは、必ず必要です。
 行動主義者は、学習の基本的法則は、種を超えて、普遍的であると考えていました。つまり、動物のどの種でも、学習の法則があてはまると考えていました。しかし、1960年ころから、種によって、学習の法則があてはまらない現象が観察され始めました。つまり、種によって、条件づけに、何らかの制約があることを発見しました。このような現象を、学習に対する生物学的制約といいます。この生物学的制約が本講義の主題です。
 本講義は、前回の講義の後半に位置付けられます。また、本講義の基盤としては、第1回講義で行った「生得的行動と生理的動機」があります。前回の講義の内容と、第1回目の講義の内容に関して、復習しておいてください。


コマ主題細目 ① 味覚嫌悪学習 ② 模倣と観察学習 ③ 動物実験
細目レベル ①  味覚嫌悪学習は、古典的条件づけにおける生物学的制約の代表例です。ラットに、新奇(しんき)な味のするエサ(条件刺激)を与えます。そのあと、吐(は)き気を起こす薬(無条件刺激)を投与します。すると、ラットは、その味覚のエサ(条件刺激)を食べなくなります(条件反応)。実生活で、ある食べ物を食べ、下痢(げり)をしたり、気分が悪くなったりすることがあります。その後、その食べ物を食べたくなくなる。その食べ物が、好物であった場合でも、その食べ物を食べようとしただけでも、吐き気がします。このように、ある味覚の飲み物や食べ物を避ける学習を、味覚嫌悪学習といいます。
 味覚嫌悪学習に関して、十分に理解し、実際の実験例を踏まえ、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。


②  模倣とは、モデルの行動をまね、同じような行動を獲得する学習のひとつです。模倣は、ヒトだけでなく、多くの動物で観察できる。古くは、模倣は本能行動だと考えていました。しかし、現在では、模倣は、オペラント条件づけのひとつであるという考え方と、観察学習によって獲得するという考え方があります。
 観察学習は、バンデューラが体系化した社会的学習理論に基づく学習で、他者の行動を観察することによって生じます(社会的学習理論は、のちに社会的認知理論と呼んだ)。これまでの学習理論では、行動は環境によって決定します。しかし、社会的学習理論では、行動は、行動環境を含めた環境と認知の相互作用によって決定します。また、他者の行動も環境の一部としてとらえており、行動環境は他者の行動の観察を意味します。
 模倣と観察学習との違いについて、十分に理解し、実際の実験例を踏まえ、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。

③  「学習」の章では、動物を使った実験例を、多く紹介しています。そこで、読者は、「動物実験では、人の「こころ」を理解できない」と思うかもしれません。その裏には、「動物には「こころ」など存在せず、人は特別な存在だ」という思い込みがあります。残念なことであるが、大学で心理学の講義をしている者の中にも、そのような考えの者がいます。医学、生命科学、薬学などの自然科学では、ヒトとヒト以外の動物との間に、ある種の等価性を仮定している。そのような自然科学に対して、異論をとなえる人はいません。しかし、心理学でヒト以外の動物を対象に研究を行うと、上記のような疑問を持つ人が出てきます。ヒトとヒト以外の動物には違いも多いが、多くの研究が共通した行動の仕組みを観察している。特に、「学習」で紹介した多くの現象は、ヒトでも確認できます。
 動物実験の意義について、十分に理解し、実際の実験例を踏まえ、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。

キーワード ① 味覚嫌悪学習 ② ガルシア ③ 学習の準備性 ④ 社会的学習理論 ⑤ 洞察学習
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第5章の「学習:生物学的制約と観察学習」(テキスト教材の62ページから70ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。生物学的制約に関しては、62ページから66ページに、模倣と観察学習に関しては、66ページから68ページに、洞察学習に関しては、68ページから69ページに、動物実験に関しては、69ページから70ページ書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。味覚嫌悪学習に関しては、62ページから65ページに、詳しい実験の内容が書かれていますので、読んでおいてください。この実験に関しては、講義でも説明します。学習の準備性に関しては、テキスト教材の65ページから66ページに書かれています。
 本講義に関連のある重要な人名・学術用語として、いかものもがあります。自動反応形成、種に固有の防衛反応、問題解決学習です。

7 記憶 科目の中での位置付け  なぜ、記憶が「こころ」と関係しているのか、疑問を持つ学生がいるかもしれません。この講義では、ヒトの記憶が、コンピューターのように、正確に記録し、保存していないことを紹介する。そして、なぜ、そのようなことが起こるのか、その仕組みについて説明します。当然のことですが、その根拠となる科学的発見(実験)をあげながら説明します。また、ヒトの記憶がコンピューターと同じではないことを通じて、学生には、記憶が心理学のひとつの分野であることを、理解してほしいと思います。この場合もまた、その根拠となる科学的発見(実験)をあげながら説明します。
 記憶に関する実験は古くから行われていますが、その実験の多くは実験室で行われており、普段、生活を行っている記憶とは違うかもしれません。その点に関しても、十分に考えながら、本講義を受けてください。本講義は、第1回講義は言うまでもありませんが、第2回講義とも深く関係しています。

コマ主題細目 ① 記憶のプロセス ② 記憶貯蔵庫 ③ 日常生活の記憶
細目レベル ①  記憶は、3つの段階からなる情報処理機能です。その3つの段階とは、符号化、貯蔵、検索です。符号化は、入ってきた情報を、処理可能な情報記号に変換して、記憶として記憶(貯蔵)するまでの過程です。たとえば、目から入ってきた情報は映像であり、耳から入ってきた情報は音波です。その音波や映像を、記憶として保存できるように変換(符号化)します。簡単にいえば、符号化は覚える過程です。貯蔵は、記憶として保存する過程です。簡単にいえば、貯蔵は覚えておく過程です。検索は、貯蔵した情報を引き出す過程です。単純にいえば、検索は思い出す作業です。
 これらの3つの記憶のプロセスと、なぜ、そのような記憶のプロセスが存在するかに関する科学的根拠などを、自分自身の言葉で、それぞれ100字程度で説明できるようになること。

②  入力した情報は、貯蔵時間の異なる感覚貯蔵庫、短期記憶貯蔵庫、長期記憶貯蔵庫の3つの貯蔵庫に保存します。この理論は、アトキンソンとシフリンが提唱し、二重貯蔵モデルといいます。
(1)感覚貯蔵庫
 感覚器官から入ってきたすべての情報は(目で見たり、耳で聞いたりした情報)、感覚貯蔵庫に送られます。感覚貯蔵庫に送られた記憶を感覚記憶といいます。
(2)短期貯蔵庫
 短期貯蔵庫に送られた情報は、作業記憶(ワーキングメモリ)といいます。短期貯蔵庫に保存できる容量には制限があります。
(3)長期貯蔵庫
 長期貯蔵庫に送られた情報は、長期記憶といます。長期貯蔵庫の容量は無限であると考えていますが、本当のところはよくわかっていません。長期記憶は、数分から数年間程度、貯蔵できます。しかし、長期記憶は、永遠になくならないという考え方もあります。
 これらの3つの記憶のプロセスと、なぜ、そのような記憶のプロセスが存在するかに関する科学的根拠などを、自分自身の言葉で、それぞれ100字程度で説明できるようになること。

③  ナイサーは、実験室での記憶実験が、日常生活の記憶とかけ離れていると批判しました。そして、1980年ころから、日常生活での記憶を理解するための研究が進みました。ここでは、日常生活場面に近い記憶の研究を紹介します。れいとして、目撃証言のひとつをあげます。
(1)目撃(もくげき)証言
 目撃証言が事実と異なることは、よく知られている事実です。オルポートの古典的研究では、研究参加者に地下鉄構内の絵を見せました。その絵には、カミソリを持っている白人、その白人と向かい合っている黒人、その後ろのベンチに座っている乗客をえがいていました。その後、その絵を見た参加者から話を聞くと、参加者のおよそ50%が、「カミソリを持っていたのは黒人である」と回答しました。より実生活に近い状況でも、目撃証言に誤りがあることが、明らかになっています。
 このような日常生活の記憶に関して、実際の実験例を踏まえ、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。

キーワード ① 二重貯蔵モデル ② 記憶回復術 ③ 長期記憶 ④ 短期記憶 ⑤ 潜在記憶
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第6章の「記憶」(テキスト教材の71ページから84ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。記憶のプロセスに関しては、テキスト教材の71ページから72ページに、記憶貯蔵庫に関しては、72ページから80ページに、自伝的記憶と展望記憶に関しては、82ページから83ページに、日常生活に関する記憶に関しては、80ページから84ページ書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。顔の記憶に関しては、83ページから84ページに、詳しい実験の内容が書かれていますので、読んでおいてください。この実験に関しては、講義でも説明します。
 本講義に関係のある重要な人名・学術用語に関して、以下のものがあります。スパーリング、再生、再認、チャンキング、直観像、記憶術、体制化、中央実行系、顔認識モデル、処理水準説、相貌(そうぼう)失認、健忘症、前向性健忘、逆行性健忘、ジェニファー・トンプソンの記憶、メタ記憶

8 個人差 科目の中での位置付け  本講義では、ヒトの個人差に関する科学的発見や科学的根拠に関して説明します。まず、遺伝、精神分析、人間性心理学、学習理論など、さまざまな視点から、個人差のとらえ方を紹介します。特に、その科学的根拠や科学的発見が誤解されて、あるいは誤って理解されている分野が、以前による個人差です。最後に、個人差のひとつである知能について説明します。本章を通じて、学生たちには、遺伝に関する正しい知識を獲得してほしいともいます。
 加えて、本講義では、人間性心理学や精神分析の話をしますが、そこには科学的根拠が一切なく、実験などではなく、創始者などの主観によって、理論が掲載されています。そのような学問分野が心理学には存在していることも、学生たちは理解すべきです。また、そのような学問分野が、社会与えてきた影響などもを知り、如何に、非科学的な知見が問題をはらんでいるのかについて、十分理解できるようになったほしいと思います。

コマ主題細目 ① 性格のとらえ方 ② 遺伝による個人差 ③ 知能
細目レベル ①  人格(パーソナリティ)とは、行動に影響を与えるあらゆる個人の特徴です。それゆえ、性格や知能は人格の一部です。おもに、以下の二つの捉え方があります。性格のとらえ方には、類型論と特性論がある。どちらのとらえ方が正しいというわけではなく、性格に対するアプローチが異なるだけです。
(1)類型論
 類型論では、血液型迷信や星座占いのように、性格をいくつかのタイプに分け、それぞれのタイプの特徴を記述する。代表的な類型論に、クレッチマーの類型論があります。
(2)特性論
 特性論では、個人全体の性格は、複数の特性(内向性や神経質傾向など)の多少によって構成していると考えている。そして、それらの特性の量的な違いによって、個人差を記述しようとした。例えば、「ある人物の性格は、内向性が○○程度あり、神経質傾向が○○程度である」というように、個人を特徴づける。どのような特性に注目するかは、研究者によって異なるため、数多くの特性が存在する。例えば、楽観性、自尊心、刺激希求性(リスクを求める)、シャイネス(内気)、完全主義などがある。現在、多くの性格研究が、特性論の立場から性格をとらえている。
 この二つの性格の捉え方に関して、十分理解し、実際の実験例を踏まえ、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。

②  両親の身長が高いと、子どもの身長(表現型)も高くなります。同じように、性格や行動(表現型)も遺伝子の影響を受けます。遺伝子は、性格や行動の個人差を生み、子どもに受けつがれます。しかし、身長や体重と同じように、性格や行動そのものは、直接遺伝子に影響しないし、遺伝しない(遺伝子と表現型は違う)。つまり、どのような行動をしようとも、その行動が子どもに遺伝することはありません。また、遺伝子は、必ずしも誕生した瞬間から発現するわけではない。発現とは、遺伝情報が具体的にあらわれることであり、別のいい方をすれば、スイッチがONになることです。
 遺伝による個人差のとらえ方に関して、十分理解し、実際の実験例を踏まえ、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。

③  知能の定義は、研究者の立場によって異なる。ボーイングは、知能を「知能検査によって測定されたものである」と定義した。知能検査の原型は、フランス政府の命によって、ビネーが1905年に作成した知能検査にある。その目的は、義務教育に先駆(さきが)け、学習遅滞児(ちたいじ)を特定し、より適切な教育をすることだった。つまり、ビネーは、学習遅滞児のスクリーニングのために、知能検査を開発した。ビネーは、それぞれの検査を何歳で達成できるかによって、個人の知能を測定した(達成標準年齢との比較によって測定した)。
 知能による個人差のとらえ方に関して、十分理解し、実際の実験例を踏まえ、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。

キーワード ① 特性論 ② ビックファイブ ③ 双生児法 ④ 行動遺伝学 ⑤ フロイト
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第7章の「個人差」(テキスト教材の85ページから96ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。性格のとらえかたに関しては、テキスト教材の85ページから88ページに、遺伝によるとらえ方に関しては、88ページから92ページに、個人差の捉え方に関しては、92ページから94ページに、知能に関する記憶に関しては、94ページから96ページ書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。これらの実験に関しては、講義でも説明します。
 本講義に関連のある重要な人名・学術用語には、以下のものがあります。体液説、対人円環モデル、社会的報酬理論、オルポート、キャテル、ゴールドバーク、クロニンジャー、ケリーのパーソナル・コンストラクト理論、ミシェル、アンダーソン、アドラー、ユング、エリクソン、自我心理学、クライン、ウイニコット、対象関係論

9 発達 科目の中での位置付け  古くから、発達に大きな影響を与えるのは、遺伝なのか、環境なのかに関する研究を行ってきました。いずれの考え方も、「遺伝のみ」「環境のみ」が発達に影響するとは考えていません。そのような研究の積み重ねにおいて、発達の初期段階の重要性が繰り返し報告されてきました。この講義では、その発達の初期段階に焦点をあて、初期経験、母子関係、認知や道徳性の発達について説明します。初期経験とは、発達の極めて早い段階における経験が、その後のパーソナリティ、発達、生活などに強い影響を及ぼすことです。そのためのさまざまな科学的発見が存在します。その一方で、そのような発達早期の経験ではなく、その後の学習による経験が大きな影響を及ぼすという考え方もあります。こちらの考え方もまた、さまざまな科学的発見が存在します。これらは、以前の講義で説明した学習と遺伝にとても関係しています。
 本講義においても、それぞれの理論などの根拠となる科学的発見(実験)をあげながら説明します。


コマ主題細目 ① 初期経験 ② 母子関係の発達 ③ 認知と道徳性の発達
細目レベル ①  成熟とは、人の発達において、時間の経過とともに、遺伝の要因によって、成長・変化する過程である。成熟優位説とは、発達は、成熟によって決まっているという考え方である。成熟優位説をとなえた古典的研究者であるゲゼルは、ある学習をするためには、その学習に必要なレディネス(準備状態)にあることを重視した。つまり、学ぶためには、一定の成熟を待つ必要があるという意味である。例えば、赤ん坊は微分(びぶん)積分(せきぶん)を理解するためのレディネスにはなく、赤ん坊が微分積分を理解できるには、成熟を待つ必要があるという考えである。
 初期経験に関するさまざまな学術用語を理解し、実際の実験例を踏まえ、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。

②  ハーローが代理母実験をした1950年代当時は、学習理論(第5回講義で使用したテキスト教材「学習とは」を参照)では、母親への愛情欲求は、一次的動因(どういん)(飢えや渇(かわ)きなどの生理的欲求)が、減退することによって生じる派生的動因であると考えていた(第2回講義で使用したテキスト教材「獲得性動機」参照)。つまり、学習理論では、母親への愛情は、「母親が母乳や食物を子どもに与えることで生まれる」と考えていた。
 発達初期の母子関係がその後のパーソンリティの形成などに大きな影響を及ぼすということに関して、さまざまな学術用語を理解し、また、その根拠となる実際の実験例を踏まえ、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。

③ 以下の二つの発達に関して、その根拠となる実際の実験例を踏まえ、自分なりの言葉で、300字程度で説明ができるようになること。
(1)認知の発達
 ピアジェは、子ども(主に自身の子ども)の行動を観察することによって、子どもの認知に関する幅広い発達理論を考えた。ピアジェによれば、子どもの認知能力は、質の異なる段階を経験して発達する。ピアジェは最も著名な発達心理学者であり、認知心理学者のひとりでもある。
(2)道徳性の発達
 ピアジェによれば、子どもの道徳性の発達(善悪の判断)は、客観的道徳性から自律的道徳性へ移行する。客観的道徳性では、権威や力に服従(ふくじゅう)する。自律的道徳性では、自己中心性から脱し、他者の視点を考慮して、社会的な規範(きはん)にしたがう。自己中心性とは、自分の視点で外界を理解することである。コールバーグは、ピアジェの道徳性の発達を発展し、道徳性に関する認知的枠組みは、質的に異なる6つの段階(3水準)をへて発達すると考えた。

キーワード ① レディネス ② 野生児 ③ 代理母実験 ④ 内的作業モデル ⑤ 自己中心性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第8章の「発達」(テキスト教材の98ページから110ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。初期経験に関しては、テキスト教材の98ページから101ページに、母子関係の発達に関しては、101ページから104ページに、認知と道徳性の発達に関しては、104ページから109ページに、心の理論に関する記憶に関しては、107ページから108ページ書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。野生児の実験に関しては、テキスト教材の100ページに説明があります。これらの実験に関しては、講義でも説明します。
 本講義に関連のある重要な人名・学術用語には、以下のものがある。ハヴィガースト、エリクソン、自我同一性、環境はく奪実験、生理的早産、ポルトマン、分離不安、ヴィゴツキー、ギリガン、クラインの対象関係論、同化と調節、ギブソン、視覚的断崖、奥行き知覚、アフォーダンス、選考注視法、馴化・脱馴化法

10 人間関係 科目の中での位置付け  人間関係は、友人関係、親子関係、恋人関係など、関係の種類によって異なり、それぞれの関係において、いろいろな理論が存在します。しかし、この講義では、それぞれの関係ではなく、人間関係の形成に焦点をあて、その形成に関するさまざまな理論や現象について紹介します。学生のみなさんには、国際社会に適応するためにも、特にステレオタイプが偏見や差別を生む過程について、学びを深めてほしいと思います。
 本講義は、第1回の講義である「ガイダンス・何を学ぶのか・心理学的根拠」はもちろんのこと、第2回講義「生得的行動と生理的動機についての科学的根拠」、第3回講義「感情」、第4回講義「ストレス」、第5回講義「古典的条件づけとオペラント条件づけ」、第6回講義「生物学的制約と観察学習」、第7回講義「記憶」、第8回講義「個人差」、第9回講義「発達」が、その基盤にありますので、これらの講義と深い関係にあります。特に、第1回の講義である「ガイダンス・何を学ぶのか・心理学的根拠」との関連性は強いものです。

コマ主題細目 ① 人間関係の始まり ② 人間関係の発展 ③ 人間関係の理論
細目レベル ①  人間関係が始まるきっかけ、そのきっかけに影響する対人魅力、印象形成、印象を歪(ゆが)める要因について紹介する。まず、好意を持たれる(あるいは、友達になりやすい)、テキスト教材に書かれている対人魅力の規定要因がよくしられています。いずれも、よく知られている対人魅力の規程要因である。
 同調の研究でも有名なアッシェは、実験参加者に、架空(かくう)の人物の特徴を書いたいくつかの形容詞を読みあげ、参加者にその人物の印象を聞いた。すると、参加者は最初に読みあげた特徴(形容詞)に強い影響を受け、その人物の印象を決定した。読みあげる順番を逆にしても、最初に読みあげた特徴が、その人物の印象に強い影響を与えた。つまり、最初に読みあげた特徴が、その人物の全体の印象を決定づけたわけである。アッシェは、この現象を初頭効果と呼んだ。この結果は、印象を決める時、第一印象が重要であることを意味している。
 人間関係形成の初期段階に関する、さまざまな学術用語を理解し、また、その根拠となる実際の実験例を踏まえ、自分なりの言葉で、100字程度で説明ができるようになること。


②  自己開示は、自分の情報を他者に伝えることであり、人間関係を深める手助けになる。自己開示はジェラードによって体系的に研究され、その後、アルトマンとテイラーの社会的浸透(しんとう)理論によって理論化された。社会的浸透理論は、自己開示が、人間関係の発展に与える影響についての理論である。そして、自己開示の内容は、関係が深まるにつれ、特定の話題から広い範囲の話題(例えば、趣味の話から、外見、友人関係、精神的側面などについて話)、表面的な話題から深い話題になる。
 人間関係形成の発達期段階に関する、さまざまな学術用語を理解し、また、その根拠となる実際の実験例を踏まえ、自分なりの言葉で、100字程度で説明ができるようになること。

③  人は、報酬に対して好意的反応を示す(無条件反応)。そして、繰り返し報酬を与えてくれる人物(条件刺激)に対しても、好意的に評価するようになる(条件反応)。このような古典的条件づけ(第5回講義のテキスト教材「古典的条件づけ」参照)によって、人物の評価を形成する(変化する)学習を評価条件づけという。例えば、あなたを繰り返しほめる人(条件刺激)に対して、好意的に評価するようになる(条件反応)。商品(条件刺激)と一緒に、好感度の高いタレント(無条件刺激)を、テレビCMで繰り返し流すことによって、商品の評価が高くなる(条件反応)ことと同じ原理である。
 人間関係形成の崩壊期段階に関する、さまざまな学術用語を理解し、また、その根拠となる実際の実験例を踏まえ、自分なりの言葉で、100字程度で説明ができるようになること。

キーワード ① 認知的不協和理論 ② 衡平理論 ③ 自己開示 ④ ステレオタイプ ⑤ 初頭効果
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第9章の「人間関係」(テキスト教材の129ページから139ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。人間関係の始まりに関しては、テキスト教材の129ページから132ページに、人間関係の発展に関しては、132ページから134ページに、人間関係の始まり・発展・崩壊に関しては、134ページから138ページに書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。印象形成に関しては、テキスト教材の129ページから130ページに説明があります。これらの実験に関しては、講義でも説明します。
 本講義に関連のある重要な人名・学術用語には、以下のものがあります。非言語コミュニケーション、マースタインのSVR理論、フィルター理論、親近効果、アンダーソンの情報統合理論、ブリューワーの印象形成二過程理論、ニューカムのA-B-Xモデル、ペネベイカー、ソーシャルサポート、

11 社会的行動 科目の中での位置付け  本講義では、社会で生活する人間の行動として、攻撃性、社会的推論、社会的態度について紹介します。学生のみなさんには、特に攻撃を起こす仕組みを理解し、われわれができなかった争いのない社会を作るため、何らかのヒントを得ることを願っています。
 もちろん、攻撃性、社会的推論、社会的態度に関する実験などによる科学的根拠がありますが、これまで学んできた科学的根拠とは、確からしさが違います。
 本講義は、第1回の講義である「ガイダンス・何を学ぶのか・心理学的根拠」はもちろんのこと、第2回講義「生得的行動と生理的動機についての科学的根拠」、第3回講義「感情」、第4回講義「ストレス」、第5回講義「古典的条件づけとオペラント条件づけ」、第6回講義「生物学的制約と観察学習」、第7回講義「記憶」、第8回講義「個人差」、第9回講義「発達」が、その基盤にありますので、これらの講義と深い関係にあります。特に、第1回の講義である「ガイダンス・何を学ぶのか・心理学的根拠」が、本講義の基盤にあります。類似した講義として、第10回講義「人間関係」とも関連性があります。

コマ主題細目 ① 攻撃性 ② 社会的推論 ③ 社会的態度
細目レベル ①  「攻撃性は本能行動である」という考え方は、古くからある(第1章「本能行動」参照*頁)。例えば、社会心理学者のマクドゥ-ガルは、攻撃性を本能行動のひとつと考えた。精神分析の創始者であるフロイトは、死の本能としてタナトスを提唱した。タナトスとは、他者に向けた攻撃性が、自己に向かう衝動(しょうどう)であり、その究極の形が、自分自身の死を望むことである。また、動物行動学(エソロジー)では、ローレンツやティンバーゲンなどによって、攻撃は縄張(なわば)りを守るために、生得的に備わった本能行動とみなした(両者はノーベル生理学・医学賞受賞者)。
 攻撃性の諸理論に関する科学的根拠について、自分なりの言葉で、400字程度で説明ができるようになること。

②  社会的推論の中心的テーマのひとつが帰属である。心理学では、帰属は、ある現象や出来事の原因を考える過程を意味する。社会心理学における帰属の研究は、ハイダーから始まった。ハイダーは、普通の人々が、日常生活の常識的な説明を重視した。このようなハイダーの考え方は、素朴心理学という。多くの帰属理論が、ハイダーの素朴理論の影響を受けた。ワイナーの帰属理論では、ワイナーは、成功・失敗場面で用いる3つの帰属の次元に注目した。3つの帰属の次元とは、原因の所在、安定性、統制可能性である。しかし、実際に行っている帰属は、正しいとは限らない。むしろ、歪(ゆが)んだ帰属をする場合が多い。このような帰属の歪みを帰属バイアスという。
 社会的推論の諸理論に関する科学的根拠について、自分なりの言葉で、400字程度で説明ができるようになること。


③  社会的態度とは、他者に対する態度や行動のことである。社会的態度を変化させる目的でするコニュニケーションは、説得的コニュニケーションという。ここでは、社会的態度のひとつである説得的コニュニケーションを紹介する。精緻化(せいちか)見込みモデルでは、説得的コミュニケーションによって、態度の変容過程を説明する枠組みのひとつに、ペティとカシオッポが提唱した精緻化見込みモデルがある。精緻化見込みモデルでは、説得を受けた時、その説得について、精緻化できる見込みがあるかどうかによって、中心的経路か周辺的経路かの2つ経路(ルート)のいずれかをたどる。
 社会的態度の諸理論に関する科学的根拠について、自分なりの言葉で、400字程度で説明ができるようになること。

キーワード ① ダラード ② 社会的学習理論 ③ 社会的推論 ④ 帰属バイアス ⑤ 接種理論
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第11章の「社会的行動」(テキスト教材の140ページから152ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。攻撃性に関しては、テキスト教材の140ページから146ページに、社会的推論に関しては、146ページから149ページに、社会的態度に関しては、150ページから151ページに、傍観者効果に関しては、152ページに書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。比較動物学(動物行動学)に関しては、テキスト教材の140ページから141ページに説明があります。これらの実験に関しては、講義でも説明します。
 本講義に関連のある重要な人名・学術用語には、以下のものがあります。衝撃的攻撃説、社会的情報処理モデル、サイコパシー、対応推論モデル、自己知覚理論、自発的帰属、社会的判断理論、適合性理論

12 心理療法とプラセボ効果 科目の中での位置付け  行動療法、精神分析、来談者中心療法を紹介したのち、心理療法の治療の効果とプラセボ効果について説明します。学生のみなさんの中には、心理療法に過剰(かじょう)な期待を持つ読者もいるが、心理療法の実際の効果を知り、さらに、プラセボ効果について理解を深めてほしいと思います。
 本講義は、第1回の講義である「ガイダンス・何を学ぶのか・心理学的根拠」はもちろんのこと、第2回講義「生得的行動と生理的動機についての科学的根拠」、第3回講義「感情」、第4回講義「ストレス」、第5回講義「古典的条件づけとオペラント条件づけ」、第6回講義「生物学的制約と観察学習」、第7回講義「記憶」、第8回講義「個人差」、第9回講義「発達」が、その基盤にありますので、これらの講義と深い関係にあります。特に、第1回の講義である「ガイダンス・何を学ぶのか・心理学的根拠」が、本講義の基盤にあります。
心理療法に関しては、行動療法が、第5回講義「古典的条件づけとオペラント条件づけ」、第6回講義「生物学的制約と観察学習」の発展にあたり、精神分析と来談者中心療が、第8回講義「個人差」の発展にあたります。このあたりを復習しておくと、理解がスムーズです。

コマ主題細目 ① 臨床心理学小史 ② 心理療法の方法 ③ 治療効果とプラセボ効果
細目レベル ①  臨床心理学は、ヴントに学んだウイットマーが、1896年ペンシルバニア大学に心理相談室を開いたことに始まる。そこでは、不適応を起こした児童や生徒に対する教育指導をしていた。臨床心理学の中核は、心理療法と心理アセスメントである。ここでいう心理アセスメントには、性格検査だけではなく、診断や介入効果の測定が含まれている。まず、心理療法の流れを示す。フロイトが1895年「ヒステリ研究」を発表し、精神分析が誕生した。1913年ワトソンによる行動主義宣言(テキスト教材のコラム7参照)や行動分析の誕生(1930年代)などが基盤となり、1950年代アイゼンク、ウォルピ、スキナーなどによって、行動療法が提唱された。臨床心理学の基本的概念について、十分理解できるようになること。この講義では、主に、学術用語の理解が必要である。
② 以下に関して、それぞれの科学的根拠について、自分なりの言葉で、400字程度で説明ができるようになること。
(1)行動療法と応用行動分析
 行動療法は、検証可能な実験によって確立された、法則や手続きに基づいた介入技法と、介入技法の背景にある学問体系である。アイゼンクによる行動療法の誕生当初、その理論的根拠は、十分に確立された学習理論のみであった(第5回講義のテキスト教材「学習とは」参照)。
(2)認知行動療法
 認知行動療法には、主に2つの流れがある。ひとつは行動療法の流れである。1970年代に、社会的学習理論の誕生など、行動療法の基盤である学習理論が大きく変化した。
(3)第三世代の行動療法
 第三世代の行動療法(臨床行動分析ともいわれる)は、応用行動分析の基盤である徹底的行動主義に基づいた介入技法の総称である。

③  心理療法の効果に、疑問を投げかけた最初の研究者が、アイゼンクである。1952年、アイゼンクは、神経症患者を対象に、心理療法の治療効果を検証した。その結果、精神分析では44%、折衷(せっちゅう)的心理療法(特定の介入技法にこだわらない技法)では64%の神経症患者の症状が改善した。しかし、心理療法を受けていない神経症患者の72%の症状が改善した。心理療法を受けた神経症患者より、心理療法を受けていない神経症患者の方が、症状がよくなったのである。つまり、心理療法は、神経症を悪化させたのである。別の研究では、精神的問題をかかえた人の場合、教育者や宗教的指導者(牧師など)などによる助言によって、30%から60%の人が改善すると報告している。
 心理療法の科学的根拠を踏まえた治療効果について、400字程度で説明ができるようになること。

キーワード ① 応用行動分析 ② 認知行動療法 ③ 行動アセスメント ④ 第三世代の行動療法 ⑤ 精神分析
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第12章の「心理療法とプラセボ効果」(テキスト教材の153ページから165ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。臨床心理学の歴史に関しては、テキスト教材の153ページから154ページに、心理療法の方法に関しては、154ページから160ページに、治療効果とプラセボ効果に関しては、160ページから164ページに、ノセボ効果に関しては、165ページに書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。行動療法の諸技法に関しては、テキスト教材の158ページに説明があります。これらの実験に関しては、講義でも説明します。
 本講義に関連のある重要な人名・学術用語には、以下のものがあります。条件性制止、フラッディング、ソーシャルスキル訓練、バイオフィードバック、セルフコントロール、主張訓練、ストレス免疫訓練、認知再構成法、非指示的療法、体験過程療法、遊戯療法


13 うつ病 科目の中での位置付け  精神疾患(しっかん)の中でも、生涯罹患率(りかんりつ)が高く、注目を集めている症状がうつ病である。生涯罹患率とは、死ぬまでの間に、病気が発症する割合である。ここでは、さまざまな精神疾患の代表として、うつ病を取りあげる。心理学では、うつ病をどのように説明しているかを紹介する。読者には、多くの身体的病気とは異なり、うつ病を含む精神疾患が主観的に定義されていること、うつ病が発症する仕組みを、心理学的に明らかにすることには、限界があることを理解してほしい。
 本講義は、第1回の講義である「ガイダンス・何を学ぶのか・心理学的根拠」はもちろんのこと、第2回講義「生得的行動と生理的動機についての科学的根拠」、第3回講義「感情」、第4回講義「ストレス」、第5回講義「古典的条件づけとオペラント条件づけ」、第6回講義「生物学的制約と観察学習」、第7回講義「記憶」、第8回講義「個人差」、第9回講義「発達」が、その基盤にありますので、これらの講義と深い関係にあります。特に、第1回の講義である「ガイダンス・何を学ぶのか・心理学的根拠」が、本講義の基盤にあります。
うつ病の発症モデルを理解するためには、第5回講義「古典的条件づけとオペラント条件づけ」、第6回講義「生物学的制約と観察学習」、第4回講義「ストレス」がその基盤になります。このあたりを復習しておくと、理解がスムーズです。

コマ主題細目 ① うつ病の症状 ② うつ病の学習モデル ③ うつ病のストレス理論
細目レベル ①  世界保健機関による国際調査では、日本人のうつ病の生涯罹患率はおよそ6.6%である(富裕(ふゆう)国では14.6%)。日本人女性の罹患率は、日本人男性のおよそ2.5倍程度である。一卵性双生児のおよそ60%は、養育環境にかかわらず、うつ病を発症するかどうか一致する。うつ病患者再発率は、50%から60%である(初めてうつ病を発症した場合)。うつ病患者のおよそ10%が自殺する。うつ病が発症すると、主に以下のような症状があらわれる。ほぼ毎日のように、抑うつ気分、興味・喜びの減退、不眠(または過剰睡眠)、精神運動性の焦燥(しょうそう)(いらいら)・制止(のろくなる)、過剰な罪悪感あるいは無価値観、疲労・気分減退、集中力の減退あるいは決断困難、自殺念慮(ねんりょ)(自殺のことを考える)、自殺企図(きと)(自殺を計画する)などである。体重が著しく増加・減少する場合もある。
 このようなうつ病の症状について、自分なりの言葉で、200字程度で説明ができるようになること。

② うつ病のモデルに関する諸理論に関して、科学的根拠をふまえて、自分なりの言葉で、200字程度で説明ができるようになること。うつ病のモデルには、たとえば、以下のようなものがある。
学習によって、うつ症状に似た症状を作り出すことができる。セリッグマンは、学習によって作り出した症状を、学習性無力感と呼んだ。古典的な学習性無力感の実験では、「先行処置」「逃避・回避学習」の2つの手続きからなる。先行処置は、逃避不可能な電気ショックを被験体に与える手続きである。逃避・回避学習は、被験体をシャトル・ボックスに入れ、逃避あるいは回避学習(第5回講義のテキスト教材「逃避学習と回避学習」参照)を行う処置である。

③  最も洗練(せんれん)したうつ病の発症モデルが、ストレスモデルである。ある研究では、うつ病患者の50%から80%が、うつ病を発症する前に、ストレッサーを経験している(特に人間関係のストレス)。また、うつ病は再発率が高く、慢性化することが知られているが、ストレスモデルは、うつ病の発症と再発をよく説明できる。ストレッサーとうつ病の発症との間には、何らかの関係があることは明らかであるが、その関係性のとらえ方は、研究者の間で異なる。すなわち、うつ病のストレスモデルは、ひとつではなく、複数あり、それぞれ異なる科学的背景と科学的根拠を持っている。
 うつ病のストレスモデルに関する諸理論に関して、科学的根拠をふまえて、自分なりの言葉で、200字程度で説明ができるようになること。

キーワード ① セリッグマン ② 学習性無力感 ③ 慢性ストレス ④ ストレス脆弱性 ⑤ 認知モデル
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第13章の「うつ病」(テキスト教材の166ページから176ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。うつ病の症状に関しては、テキスト教材の166ページから166ページに、うつ病の学習モデルに関しては、167ページから169ページに、うつ病のストレスモデルに関しては、160ページから172ページに、うつ病の認知モデルに関しては、テキスト教材の172ページから175ページに書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。)ストレス脆弱性に関しては、テキスト教材の171ページに説明があります。ここで説明しているさまざまな実験に関しては、講義でも説明します。
 本講義に関連のある重要な人名・学術用語には、以下のものがあります。統合失調症、不安障害、人格障害、運動療法、抗うつ薬、DSM-Ⅲ、精神病理学、行動薬理学、了解と説明

14 愛と協力行動 科目の中での位置付け  この講義では、愛と協力行動について、少し変わった視点から説明する。変わった視点とは、個人の損得(進化心理学やゲーム理論)と脳内の活動(性ホルモン)である。読者には、進化心理学の科学的限界と、愛の生理学的仕組みについて理解してほしい。一部の読者は、愛を過剰(かじょう)に美化する傾向がある。しかし、人が愛している時、脳の中では、どのようなことが起きているかを知れば、愛を客観的にとらえることができるかもしれない。また、若者が経験している恋と、若者の両親が経験している愛との間には、根本的な違いがあることにも気づいてほしい。
 本講義は、第1回の講義である「ガイダンス・何を学ぶのか・心理学的根拠」はもちろんのこと、第2回講義「生得的行動と生理的動機についての科学的根拠」、第3回講義「感情」、第4回講義「ストレス」、第5回講義「古典的条件づけとオペラント条件づけ」、第6回講義「生物学的制約と観察学習」、第7回講義「記憶」、第8回講義「個人差」、第9回講義「発達」が、その基盤にありますので、これらの講義と深い関係にあります。特に、第1回の講義である「ガイダンス・何を学ぶのか・心理学的根拠」が、本講義の基盤にあります。
 愛と協力行動を理解するためには、第11回講義「人間関係」がその基盤になります。このあたりを復習しておくと、理解がスムーズです。

コマ主題細目 ① 進化心理学 ② 男女の恋愛 ③ ゲーム理論と協力行動
細目レベル ①  進化心理学は、進化の理論(主に自然淘汰(とうた)説と性淘汰説)に基づき、ヒトの心や行動を理解しようとする研究分野である。進化心理学では、身体の姿や形と同様に、ヒトの心や行動も進化による適応の産物であると考える。
 親から子どもへ遺伝子を受けつぐ時、偶然にランダムで、変異(へんい)した遺伝子を持つ個体が生まれる(変異)。変異は遺伝することがある(遺伝的変異)。変異によって生じた性質(姿・形や行動などの表現型)が、他の性質よりも、環境に適応し、生存や繁殖(はんしょく)に有利な場合もある(多くの場合、生存や繁殖に不利である)。その結果、ある性質を持つ変異個体が、他個体よりも子孫を残すことがある。この現象が自然淘汰である。
 ここでは、進化心理学に関する基本的な学術用語の理解と、その科学的根拠について、自分なりの言葉で、350字程度で説明ができるようになること。

②  胎児(たいじ)の性(せい)腺(せん)(生殖腺)は、遺伝的に男性であれば精巣(せいそう)に、女性であれば卵巣(らんそう)にできる。性腺から放出したテストステロン(性ホルモン)によって、脳が男性化する。男性化する(あるいは女性化する)とは、性ホルモンによって、男女の行動が影響を受けるという意味である。いい換えれば、テストステロンの介入がない限り、女性の脳になる。思春期に入ると、性ホルモンに変化が起こる(図14-1)。視(し)床(しょう)下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモンが分泌(ぶんぴつ)し、下垂体(かすいたい)から性腺刺激ホルモンが放出する。循環(じゅんかん)系によって性腺に運ばれた性腺刺激ホルモンによって、性腺(卵巣・精巣)からエストロゲンとアンドロゲン(性ホルモン)が分泌する。男性の精巣からは、アンドロゲン(代表的なホルモンはテストステロン)がエストロゲンよりも多く分泌し、女性の卵巣からは、エストロゲンがアンドロゲンより多く分泌する。その一方で、性腺からのフィードバックが脳に伝わることで、性ホルモンは男女の行動に影響を与える(男女の行動に違いが生まれる)。
 ここでは、恋愛・性に関する基本的な学術用語の理解と、その科学的根拠について、自分なりの言葉で、200字程度で説明ができるようになること。

③  以下で説明するようなゲーム理論の諸理論に関して、その科学的根拠について、自分なりの言葉で、200字程度で説明ができるようになること。
 ゲーム理論は、利得(りとく)関係のある状況において、個人(プレイヤー)の行動を分析する学問であり、1940年代に、経済学者のノイマンが提唱(ていしょう)した。以下、ゲーム理論で用いている代表的な課題として、囚人(しゅうじん)ジレンマと進化ゲームを紹介する。囚人ジレンマや進化ゲームは、進化心理学や行動経済学で使用されることが多く、心理学との関連性が強い。
 囚人ジレンマには、2名の共犯(きょうはん)者(プレイヤー)がいる。ふたりは別々の部屋で取り調べを受け、以下のことを伝える。ふたりが自分の罪を自白すると、ともに懲役(ちょうえき)5年になる。逆に、ふたりがともに黙秘(もくひ)すると、証拠不十分で懲役(ちょうえき)1年になる。一方の容疑者が仲間を裏切って自白した場合、裏切った容疑者は警察との取引によって釈放(しゃくほう)されるが、裏切られた容疑者(黙秘した容疑者)は懲役10年になる。そして、「自白」(裏切り)か「黙秘」(協力)か、その判断(意思決定)をすることになる(テキスト教材の図13-2参照)。

キーワード ① 自然淘汰説 ② 適応度 ③ バス ④ テストステロン ⑤ 性ホルモン
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第14章の「愛と協力行動」(テキスト教材の177ページから190ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。進化心理学に関しては、テキスト教材の177ページから180ページに、男女と恋愛に関しては、181ページから185ページに、ゲーム理論と協力行動に関しては、185ページから189ページに、激しいキスによる免疫活性化とイグ・ノーベル賞に関しては、テキスト教材の190ページから190ページに書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。)嫉妬との性差と進化心理学の限界に関しては、テキスト教材の182ページに説明があります。ここで説明しているさまざまな実験に関しては、講義でも説明します。
 本講義に関連のある重要な人名・学術用語には、以下のものがあります。社会生物学、人間行動生態(せいたい)学、ナッシュ均衡(きんこう)、最適反応学習、行動経済学

15 振り返りとまとめ 科目の中での位置付け  大衆が持つ心理学の知識の多くは、「間違い」あるいは「正しくない(正確ではない)」のどちらかである。それは大学で心理学を学んだ人も同じである。その原因の多くは、「科学と科学的発見に対する誤解」と「科学的発見を伝える過程」にある。最終講義では、大衆が心理学の発見を誤解する仕組みと、心理学の発見が歪(ゆが)められて、大衆に伝えられる仕組みについて説明する。この章を通じて、読者には、心理学の本当の姿を理解することを期待している。それこそが、正しい心理学を知ることであり、本講義の目的でもある。この章を読む前に、第1回講義の「心理学の根拠」をふり返ることを強く勧める。
 本講義は、第1回の講義である「ガイダンス・何を学ぶのか・心理学的根拠」はもちろんのこと、第2回講義「生得的行動と生理的動機についての科学的根拠」、第3回講義「感情」、第4回講義「ストレス」、第5回講義「古典的条件づけとオペラント条件づけ」、第6回講義「生物学的制約と観察学習」、第7回講義「記憶」、第8回講義「個人差」、第9回講義「発達」が、その基盤にありますので、これらの講義と深い関係にあります。特に、第1回の講義である「ガイダンス・何を学ぶのか・心理学的根拠」が、本講義の基盤にあります。

コマ主題細目 ① 科学と科学的発見 ② 科学的発見を伝える過程 ③ 振り返りと研究の限界
細目レベル ①  科学的に正しいことは、絶対的真実のように思うかもしれない。しかし科学では、断言できる真実は存在しない。科学的に正しいこととは、「反証されず残っている仮説」のことである。つまり、あらゆる理論や法則は、仮説にすぎない。しかし、「反証されず残っている仮説」には、「確からしさ」に違いがある。科学的発見が発表されると、その仮説が正しいかどうかを確かめる研究を行なう。例えば心理学の場合、研究対象の属性を変えたり、条件を変えたりしながら(夏に研究をしたなら、冬に実験をする)、研究を繰り返す。同じ結果が繰り返された発見は、「確からしさ」が高くなり、矛盾した結果が発表された発見は、「確からしさ」が低くなる。この場合の「確からしさ」を再現性という。ヒトを対象にした心理学の実験(特に社会心理学や認知心理学)の再現性は、他の科学分野と比べて極めて低い(コラム26参照)。
 科学的確からしさについて、自分なりの言葉で、500字程度で説明ができるようになること。

②  科学的発見は、誰でも確かめることができるために、科学英語で書いており、審査を通過した論文が学術雑誌に掲載(けいさい)される。論文は、厳格なルールにしたがって、研究の方法や結果などを正確に記載している。その内容を正確に理解することは、大衆には難しいかもしれない。それゆえ、大衆の多くは、科学的発見の内容を、論文からではなく、メディアを通じて知ることになる。この過程で科学的発見が歪(ゆが)められる。メディアやタレント心理家は、大衆に理解しやすくするために、科学的発見を歪めて(解釈して)伝えるからである(テキスト教材のコラム29と30参照)。さらに、メディアやタレント心理家は、科学的発見に関して、伝えなければならない事実を伝えない。その結果、心理学に関する大衆の知識は、間違っているか、あるいは正確ではなくなる。それは心理学に対する信頼を奪(うば)ってしまう。
 科学的知見が歪められる過程に関して、自分なりの言葉で、500字程度で説明ができるようになること。

③  科学論文の最後には、発見の「限界」を書く。限界は、科学的発見を歪めたり、誤解させたりすることを防(ふせ)ぐ文章である。いい換えれば、限界とは、その発見が適用できる範囲(身の程)である。すべての科学的発見には、多くの限界がある。先に説明した一般化できないことも、研究の限界である。本章では説明できなかった測定方法の問題点も、発見に限界をもたらす。科学者は、科学的発見そのものよりも、その発見の限界を強調してきた。しかし、メディアやタレント心理家は、科学的発見を伝えても、その限界は伝えない。こうした行為は、医者が「現代医学で、治せない病気はない」と患者に断言するようなものである。そのような医者を信用する者はいないだろう。
キーワード ① タレント科学者 ② 一般化 ③ 因果関係 ④ 直観的思考 ⑤ 再現性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義はテキスト教材の第15章の「補講:あなたの心理学の知識は間違っている」(テキスト教材の191ページから208ページ)をもとに話をします。事前に、該当箇所をよく読み、理解しておくこと。わからないことや、十分理解できなかったことをメモっておき、そこを重点的に、講義を聞くこと。科学と科学的発見に対する誤解に関しては、テキスト教材の191ページから200ページに、科学的発見を伝える過程に関しては、200ページから207ページに、出版バイアスに関しては、203ページから204ページに、大衆の問いに対する回答に関しては、テキスト教材の204ページから205ページに書かれているので、それぞれについて、事前の学習準備をしてください。)くつがえる発見に関しては、テキスト教材の193ページに説明があります。確率計算におけるバイアスに関しては、テキスト教材の198ページに説明があります。引きこもりを嘘つきにするに関しては、テキスト教材の205ページに説明があります。タレント心理家と良識ある心理学者に関しては、テキスト教材の208ページに説明があります。ここで説明しているさまざまな実験に関しては、講義でも説明します。
履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
科学的方法論の理解と科学への理解  科学的方法論の理解と科学を十分に理解するためには、仮説の生成、科学的根拠の確からしさ、反証可能性、演繹法、操作的定義、実験法、因果関係などの学術用語について十分に理解するだけではなく、それらの学術用語と心理学との関係性や、心理学が科学であることとのつながりについて、理解しなければならない。同時に、それは、心理学の分野だけではなく、科学として、どのような位置づけがあるのかについても理解する必要がある。 仮説、反証可能性、確からしさ 20 第1回(主に)と第15回講義
生物学的基盤、感情、ストレス、学習、記憶の科学的根拠の理解 生物学的基盤、感情、ストレス、学習、記憶の科学的根拠の理解するためには、生得的行動、生理的動機、視床下部、ニューロン、感情を喚起するさまざまな理論、ストレスに関する諸理論などの学術用語や諸理論について十分に理解するだけではなく、それらの学術用語と心理学との関係性や、心理学が科学であることとのつながりについて、理解しなければならない。また、脳の機能と人間の行動についての理解も必要である。さらに、学習のメカニズムに関する理解はとても重要である。 生得的行動、ストレス、感情、記憶、学習理論、古典的条件づけ、オペラント条件づけ 20 第2回から第7回
個人差、発達、人間関係、社会的行動に関する科学的根拠の理解 個人差、発達、人間関係、社会的行動に関する科学的根拠の理解するためには、印象形成、パーソナリティ、精神分析、人間性心理学、社会的推論、社会的態度、関係の進展に関する諸理論、攻撃性などの学術用語や諸理論について十分に理解するだけではなく、それらの学術用語と心理学との関係性や、心理学が科学であることとのつながりについて、理解しなければならない。また、遺伝に関して、正しい理解をすることには注意が必要である(間違った知見を覚えやすいため)。 発達理論、パーソナリティ、攻撃性、社会的行動 20 第8回から第11回と第7回
心理療法とプラセボ効果、うつ病、愛と協力行動に関する科学的根拠 心理療法とプラセボ効果、うつ病、愛と協力行動に関する科学的根拠を理解するためには、うつ病発生の諸理論、セロトニン、行動療法、認知行動療法などの学術用語や諸理論について十分に理解するだけではなく、それらの学術用語と心理学との関係性や、心理学が科学であることとのつながりについて、理解しなければならない。特に、心理療法の効果を理解するためには、プラセボ効果の役割や、プラセボ効果を除いた心理療法の効果測定方法への理解が最低限に必要となる。愛の基盤となる性ホルモンの理解も必要である。

心理療法、プラセボ効果、性ホルモン、進化心理学、行動りょほう 20 第12回から第14回
科学と科学的発見 と 科学的発見を伝える過程の理解 科学と科学的発見 と 科学的発見を伝える過程の理解するためには、「大衆が持つ心理学の知識の多くは、「間違い」あるいは「正しくない(正確ではない)」のどちらかである」という意味の理解が必要である。そして、その原因の多くは、「科学と科学的発見に対する誤解」と「科学的発見を伝える過程」にあることも理解すべきです。より具体的言えば、大衆が心理学の発見を誤解する仕組みと、心理学の発見が歪(ゆが)められて、大衆に伝えられる仕組みについて理解が必要です。 再現可能性、出版バイアス、主観的バイアス、一般化、大衆化、大衆迎合 20 第15回とまとめ
評価方法 期末テストによって評価する(100点)。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 「正しく理解する教養としての心理学」福村出版 ISBN-9784571200854
参考文献 講義時間中に紹介します。
実験・実習・教材費 ありません。