区分 基盤スキル科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
SDGs力 科学コミュニケーション力 研究力
カリキュラム・ポリシーとの関係
教養 応用力 実践力
科目間連携 総合心理力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
この科目は「基盤スキル科目」に位置づけられる必修科目である。
科目の目的
本講義の目的は、心理学の研究法について、単なる知識としてではなく、実際に活用できる理解を身につけることである。具体的には、実験、尺度、面接、観察といった各研究法の特徴と限界を比較し、それぞれがどのような問いに適しているかを判断できる力を養う。また、研究結果をそのまま受け入れるのではなく、その方法や信頼性を批判的に検討する視点を身につける。さらに、研究倫理や再現性の問題を通して、心理学研究に求められる責任ある態度を理解することを目指す
到達目標
本講義では、心理学研究法を歴史的な流れの中で理解し、内観法・実験法・尺度・面接・観察といった各方法の特徴と限界を説明できる力を養う。また、それぞれの方法がどのような問題に対応して生まれたかを理解し、研究目的に応じた適切な方法を判断できるようになることを目指す。さらに、再現性問題や研究倫理について学び、心理学研究を批判的かつ総合的に理解する力を身につける。
科目の概要
本授業は、目に見えない心を、心理学がどのような証拠と方法によって明らかにしてきたのかを、心理学の歴史と代表的な研究方法を通して体系的に理解することを目的とする。心理学研究法を、実験法、質問紙法、面接法、観察法などの名称や手続きを個別に暗記するのではなく、それまでの方法では何が十分に分からなかったのか、その問題を解決するためにどのような新しい方法が必要になったのかという流れから学ぶ。前半では、観察と解釈の違い、自己報告、精神物理学による測定、事例研究、相関と因果、実験、知覚研究、認知心理学における仮説検証を通して、心理学がどのように心についての証拠を作り、そこから見えない心理過程を推論するのかを学ぶ。後半では、質問紙と心理尺度、信頼性と妥当性、面接法、観察法を扱い、一つの方法では十分に捉えられない心をどのように補いながら研究するのかを理解する。さらに、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスを通して、一つの研究結果を研究の蓄積の中で評価する視点を身につけ、最後に研究倫理を取り上げる。講義全体を通して、研究法の名称を覚えることではなく、心理学研究を見たときに「何を証拠としているのか」「どのように測定しているのか」「その結果からどこまで言えるのか」「別の説明はないか」「その研究は倫理的に適切か」を自分で判断できることを目指す。
科目のキーワード
本講義では、心理学研究法を歴史的な流れの中で理解し、内観法・実験法・尺度・面接・観察といった各方法の特徴と限界を説明できる力を養う。また、それぞれの方法がどのような問題に対応して生まれたかを理解し、研究目的に応じた適切な方法を判断できるようになることを目指す。さらに、再現性問題や研究倫理について学び、心理学研究を批判的かつ総合的に理解する力を身につける。
授業の展開方法
この科目は、各回で文字教材を準備し、その文字教材を使用しながら講義を進める。講義内で用いるその他の参考書や論文等を予習や復習に使用する場合には、その都度、講義内でその旨をアナウンスする。主に各回の文字教材を、教員が読み上げることで講義を進める。
オフィス・アワー
前期:月曜1限・4限
火曜1限・2限・3限
水曜1限~3限
木曜1限~4限
後期:月曜1限・2限
火曜1限・2限
木曜1限~昼
金曜1限・2限

科目コード RC2020
学年・期 1年・後期
科目名 心理学研究法
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 必修
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 なし
展開科目
関連資格 公認心理師
担当教員名 野内類
回主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 観察から始まる心理学 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 人は行動から心を推測している ② 日常的な観察と科学的な観察 ③ 心理学は何をデータにするのか
細目レベル ① 私たちは日常生活の中で、他者の心を直接見ることができないにもかかわらず、表情、視線、声の調子、姿勢、発言、行動などから、その人が何を感じ、何を考えているのかを推測している。たとえば、普段よく話す学生が今日は一人で黙って座っていれば、「怒っている」「緊張している」「疲れている」「何か悩みがある」など、複数の解釈が可能である。しかし、実際に観察できるのは「黙っている」「一人で座っている」「下を向いている」といった行動であり、怒りや緊張そのものが見えているわけではない。本Partでは、行動が心を理解する重要な手がかりである一方、観察された事実と、そこから推測された心的状態とは区別しなければならないことを学ぶ。さらに、同じ行動から複数の解釈が成立することを通して、心理学が「心を読む」学問ではなく、目に見えない心について、観察可能な証拠から慎重に推論する学問であることを理解する。
② 日常生活では、人は相手の行動をすべて同じように観察しているわけではない。すでに持っている印象、期待、過去の経験、その場の感情などによって、注目する情報や行動の意味づけが変化することがある。「あの学生はやる気がない」と一度考えると、授業中に下を向いている場面ばかりが目につき、積極的に課題へ取り組んでいる場面を見落とすこともありうる。また、「元気がない」「落ち着きがない」といった印象は、そのままでは別の観察者が同じように確認できるとは限らない。本Partでは、日常的な観察に入り込む偏りを踏まえたうえで、何を見るのか、どのような行動を記録するのか、いつ観察するのか、どの基準で判断するのかをあらかじめ定めることの意味を学ぶ。科学的な観察とは、人間らしい判断を完全になくすことではなく、その判断がどのような証拠に基づいているのかを他者が確認できる形にすることであることを理解する。
③ 心そのものを直接見ることのできない心理学では、行動、発言、選択、正答率、反応時間、生理反応など、観察や測定が可能な変化をデータとして利用する。ただし、これらのデータは心そのものではなく、心について考えるための手がかりである。たとえば「緊張」を調べる場合、本人が「緊張している」と答えること、手が震えること、発言が減ること、心拍が変化することなど、複数の証拠が考えられる。しかし、これらが常に一致するとは限らない。本人は緊張していると感じていても行動には表れない場合もあれば、生理反応が変化していても本人は自覚していない場合もある。本Partでは、一つの心理現象を複数の証拠から捉える意味を理解するとともに、一種類のデータだけから心を一つに決めることの危険性を考える。ここから、外から観察した証拠だけで十分でないなら、本人自身に心の中を報告してもらえばよいのではないかという次回の問いを導く。
キーワード ① 観察 ② 科学 ③ 客観性 ④ データ ⑤ 心理学研究法
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習
日常生活で、他人の行動を見て、その人の気持ちや考えを判断した経験を一つ思い出す。「実際に見たり聞いたりしたこと」と、「そこから自分が考えた相手の心」を分けて書き出す。たとえば、「返事をしなかった」と「自分を無視した」、「黙っていた」と「怒っていた」は同じ情報なのかを考える。また、自分が最初に考えた説明とは別に、その行動を説明できる可能性を二つ以上挙げる。
復習
第1回で学んだ「観察された事実」と「心理的な解釈」を、自分が予習で挙げた事例を用いてもう一度分ける。そのうえで、一つの行動だけから他人の心を決めることが難しい理由と、それでも心理学が行動を重要なデータとして利用する理由を説明する。最後に、「外から見える行動だけで十分でないなら、本人に尋ねれば心は分かるのか」という次の問題について、自分の予想をまとめる。

2 自分の心なら、正確に報告できるのか――主観的経験を心理学の証拠にする 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 心について考えることと、心を調べること ② 内観法は主観をどう研究したのか ③ 本人の報告は、心そのものなのか
細目レベル ① 第1回では、外から観察できる行動だけでは、その人の心を一つに決めることができないことを学んだ。そこで、本人に「何を感じているのか」「何を考えているのか」を尋ねれば、心についてより直接的な情報が得られるように思える。しかし、日常的に自分の気持ちを語ることと、それを心理学的な証拠として扱うことは同じではない。本Partでは、哲学的に心について考えることと、一定の条件のもとで経験を記録し、比較可能な証拠として扱うことの違いを考える。ヴントによる実験心理学の成立を取り上げる際にも、「最初の心理学実験室を作った人物」と暗記するのではなく、意識や感覚といった主観的経験を、一定の刺激条件と手続きのもとで経験的に研究しようとした点を重視する。心理学が科学になるとは、心を捨てることではなく、心について語る方法を変えることでもあったことを理解する。
② 自分自身の経験について報告することは、一見すると最も直接的に心を調べる方法に見える。しかし、「今どのように感じますか」と自由に尋ねるだけでは、人によって使う言葉が異なり、報告内容を比較することも難しい。初期の実験心理学では、刺激条件や観察のタイミングなどを一定にし、その条件のもとで生じた経験を報告させることによって、主観的経験をできるだけ統制された形で記録しようとした。本Partでは、内観法を単に「自分の心を見る方法」と理解するのではなく、どの刺激を提示し、何を報告対象とし、どのような条件で報告させるかを整えることで、主観的経験を研究対象へ変えようとした試みとして捉える。そのうえで、主観的な経験も一定の研究手続きに従えばデータになりうることを理解し、同時に、そのデータが他者によってどこまで確認可能なのかという問題にも目を向ける。
③ 本人の報告は、その人の感情や思考を知るための重要な情報である。しかし、本人が語った内容を、そのまま心そのものと考えることはできない。人は自分の感情をうまく言葉にできないことがあり、同じ経験をしても異なる表現を使う。また、自分がなぜその判断をしたのか、なぜその行動をとったのかを本人自身が正確に理解しているとは限らない。さらに、他人からよく見られたいという気持ちや、質問者への配慮によって回答が変わることもある。本Partでは、自己報告が心理学にとって重要なデータである一方、それが心への直接的な窓ではないことを理解する。外から観察した行動にも、本人自身の報告にも限界があるなら、異なる人の主観的経験をどのように比較すればよいのかという問題が残る。ここから、感じ方を一定の手続きによって数量化しようとした精神物理学の発展へつなげる。
キーワード ① ヴント ② 内観 ③ 意識 ④ 主観 ⑤ 自己報告
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 予習
第1回で学んだ「行動は心そのものではなく、心について考えるための証拠である」という考えを使い、今度は本人の言葉について考える。緊張、怒り、悲しみなどから一つを選び、自分自身ならその状態をどこまで正確に説明できるかを書き出す。さらに、「本人がそう言った」という事実と、「実際にその心理状態にある」という判断は同じなのかを、第1回の観察と解釈の区別を使って考えておく。
復習
第1回の「外から観察した行動」と、第2回の「本人による自己報告」を比較する。それぞれについて、分かりやすいことと分かりにくいことを整理する。さらに、本人は「緊張していない」と答えているが、手が震えているという場合、どちらか一方を自動的に正しいと考えてよいかを検討する。最後に、異なる人が異なる言葉で自分の経験を報告する場合、それらをどのように比較すればよいかを考える。

3 感じ方を、数字で表すことはできるのか ――精神物理学から心理測定の出発点を考える 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 刺激の大きさと、感じ方の大きさ ② 精神物理学は心をどう測ったのか ③ 測定値は、心そのものなのか
細目レベル ① 外界の物理的な刺激が変化すれば、私たちの感じ方も同じ割合で変化するとは限らない。たとえば、軽い荷物に少し重さを加えたときには違いに気づいても、非常に重い荷物に同じ重さを加えたときには違いが分かりにくいことがある。明るさ、音量、温度などでも、物理的な変化と心理的な感じ方は単純には一致しない。本Partでは、物理的に測定できる刺激量と、人がどのように感じるかという心理量を区別する。第2回では主観的経験を言葉で報告する方法を扱ったが、今回は刺激条件を系統的に変化させ、その変化に気づいたかどうかという反応を記録することで、経験そのものを比較する方法を考える。心理学における測定とは、心を直接数字に変えることではなく、一定の刺激と反応との関係を利用して、目に見えない心理的経験を比較可能な形にすることだと理解する。
② ウェーバーやフェヒナーによる精神物理学は、刺激の物理的特性と人間の感覚との関係を体系的に調べることで、心理学に数量的測定の考え方を導入した。ある刺激を感じ取れるかどうかの境界や、二つの刺激の違いに気づけるかどうかの境界を調べることによって、主観的な感覚を行動反応として記録することが可能になった。本Partでは、絶対閾や弁別閾、ウェーバーの法則などを扱うが、公式を暗記することを目的とはしない。重要なのは、「見えない感覚をどのような手続きを使えば比較できるか」という研究上の問題に対して、刺激を段階的に変化させ、反応を記録するという方法が生まれたことである。心理学において数量化が導入された意味を理解するとともに、測定には必ず具体的な手続きが伴うことを学ぶ。
③ 心理現象を数値で表せるようになると、その現象を客観的に捉えられたように感じる。しかし、心理学で得られる測定値は心そのものではなく、一定の条件と手続きのもとで得られた反応である。どの刺激を用いるか、どの反応を記録するか、どの基準を閾値とするかによって、得られる値も変化しうる。また、同じ刺激でも人によって感じ方に違いがあるため、集団の平均値だけを見れば個々の経験の特徴が見えにくくなることもある。本Partでは、「数値になったから正しい」と考えるのではなく、その数値がどのような手続きを通して作られたのかを確認する必要性を学ぶ。さらに、多くの人を同じ方法で測定すれば一般的な傾向を知ることはできるが、一人の人の経験や変化を深く理解できるとは限らないという問題を残し、次回の事例研究へつなげる。
キーワード ① 精神物理学 ② ウェーバー ③ フェヒナー ④ 閾値 ⑤ 測定
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習
第1回では行動、第2回では自己報告を心についての証拠として扱った。二つの方法について、「人と人を比較しやすいか」「同じ人の変化を比較しやすいか」という観点から考える。そのうえで、重さ、明るさ、音量など一つを選び、「感じ方」を言葉だけに頼らず比較する方法を自分なりに考える。第1回で学んだ観察可能な証拠という考え方も利用する。
復習
第1回の「観察」、第2回の「自己報告」、第3回の「測定」を並べ、それぞれが目に見えない心について、どのような証拠を作っているのかを整理する。そのうえで、精神物理学によって数値が得られるようになったことと、心そのものを直接測れるようになったことは同じではない理由を説明する。さらに、多くの人を同じ方法で測定して平均を求めた場合、何が見えやすくなり、何が見えにくくなるかを考える。

4 一人の人を詳しく調べると、何が分かるのか ――事例研究から個別性と一般化の問題を考える 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 平均的な人は、本当に存在するのか ② 事例研究は一人をどう理解するのか ③ 詳しく分かることと、原因が分かることは同じか
細目レベル ① 心理学では、多くの人を同じ方法で測定し、その平均や一般的な傾向を明らかにする研究が多く行われる。平均値は集団の特徴を理解するうえで有効だが、それだけでは一人の人の中で起きている変化や、その人特有の経験を十分に捉えられない場合がある。たとえば、100人の記憶成績の平均を求めれば集団としての傾向は分かるが、その平均値に一致する「平均的な一人」が実際に存在するとは限らない。また、ある人の記憶が時間とともにどのように変化したのかという過程も、集団平均からは見えにくい。本Partでは、第3回までに学んだ数量化の利点を認めつつ、集団間の違いと個人内の変化を区別する。一人を繰り返し調べることや、特徴的な一人の事例を詳しく分析することによって、平均値からは見えない心理過程を明らかにできる可能性を理解する。
② 心理学や神経心理学では、特徴的な症状を示す一人の患者を詳しく調べることで、人間の記憶や認知の仕組みに関する重要な発見がなされてきた。重い記憶障害を持つ人を対象とする場合、心理検査の得点だけを見るのではなく、どの出来事を覚えられるのか、日常生活でどのような困難があるのか、過去の生活歴はどうだったのか、家族はどのような変化を観察しているのかなど、複数の資料を組み合わせる必要がある。本Partでは、事例研究における面接、観察、心理検査、生活史、家族からの情報などの役割を学ぶ。また、一時点の結果だけではなく、時間の経過に沿って変化を追うことで、その人の心理過程をより深く理解できることを確認する。一人を詳しく調べることは、人数が少ないから「弱い研究」なのではなく、集団研究とは異なる問いに答える方法であることを理解する。
③ 一人の対象を長期間にわたって詳しく調べれば、その人にどのような変化が起きたのか、どの能力が保たれ、どの能力が損なわれたのかを詳細に記述できる。しかし、その結果が他の人にも同じように当てはまるとは限らない。さらに、ある出来事の後に行動や心理状態が変化していたとしても、その出来事が変化の原因だったと結論することはできない。生活の中では複数の出来事が同時に起こり、どの要因が影響したのかを切り分けることが難しいからである。本Partでは、事例研究によって得られる深い記述、そこから可能な一般化、原因を特定する因果推論を区別する。個人を詳しく理解することの価値を損なわず、その方法から言えることの範囲を考えることで、「原因を確かめるには何と何を比較すればよいのか」という次回の実験法の問題へつなげる。
キーワード ① 事例研究 ② 個別性 ③ 一般化 ④ 生活史 ⑤ 集団研究
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習
第1回の「一つの証拠だけから心を決めない」、第2回の「本人の報告にも限界がある」、第3回の「測定値は心そのものではない」という三つの考えを振り返る。そのうえで、「100人を1回ずつ同じ方法で調べる研究」と「一人を100回にわたって詳しく調べる研究」を比較し、それぞれから分かりやすいことと分かりにくいことを整理する。どちらが優れているかではなく、答えられる問いがどう違うかを考える。
復習
第3回の数量的測定と、第4回の事例研究を比較し、集団の一般的傾向を明らかにすることと、一人の心理過程を詳しく理解することの違いを説明する。さらに、第1回の「複数の証拠」という考え方と第2回の自己報告を使い、事例研究で観察、面接、心理検査、生活史などを組み合わせる意味を考える。最後に、多くの情報を集めても、その人に起きた変化の原因まで自動的に分かるわけではない理由を整理する。

5 ある出来事が、行動の原因だとどう確かめるのか ――相関と因果を区別し、実験の論理を学ぶ 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 一緒に変化することと、原因であることは同じか ② 行動を実験によって調べる ③ 原因を調べる実験の基本構造
細目レベル ① 二つの出来事が同時に起きていると、私たちは一方がもう一方の原因だと考えやすい。たとえば、褒められることが多い子どもほど勉強時間が長かった場合、「子どもを褒めれば勉強するようになる」と結論したくなる。しかし、よく勉強するから褒められている可能性もあるし、家庭環境や学習意欲など第三の要因が、褒められることと勉強時間の両方に影響している可能性もある。本Partでは、二つの変数が一緒に変化する相関関係と、一方の変化がもう一方の変化を引き起こす因果関係を区別する。さらに、逆方向の因果や第三の変数という考えを用いて、観察された関連だけから原因を決めることの危険性を理解する。心理学研究を読む際に、「関係があった」という結果と「原因である」という結論を区別する視点を身につける。
② 相関関係だけでは原因を確定できないという問題に対して、心理学では条件を意図的に変化させ、その結果として行動がどう変化するかを比較する実験という方法が発展した。20世紀初頭の行動主義は、直接観察しにくい心的状態よりも、環境条件と行動との関係を研究の中心に置いた。ワトソンやスキナーを単なる心理学史上の人物として覚えるのではなく、「どの条件を変えると、どの行動がどのように変化するのか」を実証的に調べるという方法上の転換として捉える。本Partでは、研究者が条件を操作することによって、自然に生じた関連を観察するだけの場合よりも因果関係へ近づける理由を学ぶ。同時に、実験は現実世界のすべてをそのまま再現する方法ではなく、原因を切り分けるために条件を単純化する方法でもあることを理解する。
③ 実験では、研究者が意図的に変化させる要因を独立変数、その結果として測定する行動や反応を従属変数として区別する。しかし、二つの条件を比較するだけでは十分ではない。独立変数以外の条件まで異なっていれば、得られた差が何によって生じたのか分からなくなるからである。たとえば、褒める群と褒めない群を比較するとき、担当する教員や授業時間まで異なれば、それらが交絡変数となる可能性がある。本Partでは、実験群、統制群、独立変数、従属変数、交絡変数を具体的な研究例から判断する。実験の本質は「何かをやってみること」ではなく、ある要因だけを変え、ほかの説明をできるだけ排除することで、その要因が結果に影響したかを検討することだと理解する。そして、条件を同じにしても人間が刺激を同じように経験するとは限らないという次回の問題へつなげる。
キーワード ① 相関関係 ② 因果関係 ③ 独立変数 ④ 従属変数 ⑤ 交絡変数
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習
第1回で学んだ「別の解釈を考える」、第3回の「比較可能な測定」、第4回の「詳しく記述することと原因を明らかにすることは異なる」という考えを使う。「睡眠時間が長い学生ほど成績が高い」という結果について、①睡眠時間が成績に影響する、②成績や生活の仕方が睡眠時間に影響する、③別の要因が両方に影響する、という少なくとも三つの説明を考える。
復習
一つの研究事例について、第1回の観察と解釈、第3回の測定、第4回の記述、第5回の相関と因果を順に当てはめる。何が実際に観察され、何を測定し、どのような別の説明があり、因果関係を確かめるためには何を操作する必要があるかを整理する。そのうえで、独立変数以外の条件をできるだけそろえる理由を説明し、「条件をそろえれば人間は同じ刺激を同じように経験するのか」という次の問いを考える。

6 同じ刺激でも、なぜ違って見えるのか ――物理的世界と心理的経験を区別する 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 知覚は刺激の足し算では説明できない ② 錯視を研究することには、どんな意味があるのか ③ 刺激と反応の間には何があるのか
細目レベル ① 第5回では、実験によって条件を統制し、ある刺激や環境条件の変化が行動に与える影響を調べる方法を学んだ。しかし、同じ刺激を同じように提示すれば、誰もがそれを同じように経験するとは限らない。人間の知覚は、個々の刺激要素を単純に足し合わせて成立するわけではなく、周囲との関係や全体のまとまりによって変化する。本Partでは、ゲシュタルト心理学が示した近接、類同、閉合などの体制化の原理を手がかりに、物理的に存在する刺激と、心理的に経験される世界を区別する。重要なのはゲシュタルト心理学の法則名を暗記することではなく、「同じ刺激条件であっても、刺激がどのような全体の中に置かれるかによって経験が変化する」という問題を理解することである。実験で外的条件を統制することと、人間の内的経験まで同じにすることは別であることを確認する。
② 錯視は、物理的には同じ長さや大きさである刺激が異なって見える現象であり、しばしば「目がだまされる現象」として紹介される。しかし、心理学にとって重要なのは、人間が誤ったということではなく、なぜ特定の条件で一定方向の見え方が生じるのかという点にある。同じ線分でも周囲の形や配置によって異なる長さに見えるなら、知覚は対象そのものの物理的性質だけでなく、文脈や刺激間の関係によって成立していると考えられる。本Partでは、錯視を単なる面白い現象としてではなく、普段は意識されにくい知覚の仕組みを明らかにする研究材料として扱う。錯視量を測定したり、周囲の刺激条件を操作したりすることで、目に見えない知覚過程について検討できることを理解し、「誤り」から通常の心の働きを研究するという心理学的発想を学ぶ。
③ 心理学者が直接観察できるのは、研究者が提示した刺激と、それに対して参加者が示した回答や反応である。刺激そのものと反応そのものは観察できても、その間でどのような知覚や判断の過程が起きているかを直接見ることはできない。しかし、刺激条件を系統的に変え、その結果として反応がどのように変化したかを比較すれば、刺激と反応の間にある心理過程について仮説を立てることができる。本Partでは、第3回の測定、第5回の実験操作、第6回の知覚研究を結びつけ、目に見えない心の働きを行動から推論するという心理学研究の中心的な考え方を明確にする。刺激と反応の間にあるものを単なる「ブラックボックス」として残すのではなく、反応時間や誤答などを用いて内部過程を推理することができるのではないかという問いを残し、次回の認知心理学へつなげる。
キーワード ① ゲシュタルト ② 知覚 ③ 錯視 ④ 体制化 ⑤ 文脈
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小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習
第3回では物理的な刺激と心理的な感じ方を区別し、第5回では条件を操作して実験する方法を学んだ。この二つを組み合わせ、「物理的に同じ刺激を提示すれば、心理的な経験も同じになる」と考えてよいかを検討する。代表的な錯視を一つ選び、第3回の測定と第5回の独立変数・従属変数を使って、その錯視を研究するとしたら何を変え、何を測るかを考える。
復習
一つの錯視研究について、第3回の「物理量と心理量」、第5回の「独立変数と従属変数」、第6回の「知覚と文脈」を対応させる。また、第1回の「観察された事実と解釈」の区別を使い、「この線を長いと答えた」という結果と、「周囲の文脈が知覚を変えた」という心理学的説明が同じではないことを確認する。刺激と反応の間にある心の働きを、どのようにすればさらに詳しく調べられるかを考える。

7 行動から、見えない心の動きを推理できるのか ――認知革命から反応時間と仮説検証を考える 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 行動だけでは説明できなかった心の働き ② 答えるまでの時間と間違い方から何が分かるのか ③ 仮説は、どのように研究結果と結びつくのか
細目レベル ① 行動主義は、直接観察できる行動を研究対象とすることで心理学の客観性を高めたが、人間の記憶、注意、言語、判断などを刺激と反応の単純な関係だけで説明することには限界があった。たとえば、同じ刺激を与えても、過去の経験や注意の向け方によって反応が異なる場合、刺激と反応の間で何らかの情報処理が行われていると考える必要がある。1950~60年代の認知革命では、こうした内部過程を再び心理学の研究対象とし、人間を情報処理システムとして捉える考え方が発展した。本Partでは、認知心理学が「心を直接観察する方法」へ戻ったのではなく、観察可能な行動を手がかりとして、直接見ることのできない内部過程について検証可能な仮説を立てる方法を発展させたことを理解する。第6回までの学習を、刺激―心理過程―反応という構造として統合する。
② 認知心理学では、正解したかどうかだけでなく、答えるまでにどのくらい時間がかかったか、どのような誤りをしたかも重要なデータになる。ストループ課題では、文字の意味と文字色が一致しない条件で、色を答えるまでの反応時間が長くなり、誤答も増える。この結果は、文字を読む処理が自動的に生じ、色を答える処理と競合している可能性を示している。しかし、反応が遅くなったという事実そのものが、「抑制」や「注意」という心理過程を直接見せているわけではない。本Partでは、反応時間、正答率、誤答パターンなどの観察可能なデータから、どのように内部の認知過程について推論するのかを学ぶ。重要なのは結果の数字だけでなく、「ある心理過程が存在するなら、どの条件でどのような差が生じるはずか」という予測と実際の結果を比較することであることを理解する。
③ 心理学的な説明は、研究結果を見た後で「きっとこのような心の働きがあったのだろう」と説明するだけでは十分ではない。ある心理過程が存在すると仮定した場合、特定の条件でどのような反応が生じるはずかを事前に予測し、その予測とデータが一致するかを確かめる必要がある。本Partでは、仮説、予測、独立変数の操作、従属変数の測定、結果の解釈という流れを整理する。仮説は「自分が正しいと思う答え」ではなく、観察可能な結果によって検討できる説明であることを理解する。第1回から学んだ観察、第3回の測定、第5回の実験、第6回の推論をここで統合し、心理学研究とは、目に見えない心について証拠から検証可能な説明を組み立てる営みであることを確認する。これを前半7回の到達点とする。
キーワード ① 認知心理学 ② 認知革命 ③ 情報処理モデル ④ 反応時間 ⑤ 仮説
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小テスト
復習・予習課題 予習
第1回の「証拠から心を推測する」、第3回の「測定」、第5回の「実験による比較」、第6回の「刺激と反応の間に心理過程を考える」という四つの考えを使って、ストループ課題を分析する。①何が刺激か、②研究者は何を変えるか、③何を測定するか、④どのような心理過程を推測しようとしているか、の四点を整理しておく。
復習
第1~7回を回ごとに並べるのではなく、「証拠を得る」「測定する」「比較する」「条件を操作する」「心的過程を推論する」という研究の流れとして再構成する。ストループ課題を一つの例として、第1回なら何が観察された事実か、第3回なら何を測定するか、第5回なら独立変数・従属変数は何か、第6回なら刺激と反応の間に何を考えるか、第7回ならどのような仮説を検証するのかを説明する。

8 心理学の歴史と研究法 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 心理学では、何を「証拠」としているのか ② 比較することで、どこまで原因を確かめられるのか ③ 見えない心の働きを、どのように推論するのか
細目レベル ① 第1~3回では、目に見えない心そのものを直接観察することはできず、行動、自己報告、刺激に対する反応などを証拠として用いることを学んだ。中間テストでは、用語の定義を覚えているかだけでなく、具体的な研究事例を読んだときに、「実際に観察されたこと」と「そこから研究者が推論した心理状態」を区別できるかを確認する。また、本人の自己報告も心そのものではなく、一つのデータであり、測定値も一定の手続きによって作られた結果であることを理解している必要がある。本Partでは、第1回の観察、第2回の自己報告、第3回の測定を一つにつなげ、心理学研究では、どのような証拠を用いて心について考えているのかを改めて整理する。
② 第4~6回では、一人を詳しく調べること、多くの人や条件を比較すること、さらに研究者が条件を操作することによって、心理学研究から言えることがどのように変わるかを学んだ。事例研究によって一人の心理過程を詳細に理解することはできても、その結果をすべての人に一般化したり、変化の原因を特定したりできるとは限らない。また、二つの変数に関連が見られても、それだけで因果関係を結論することはできない。本Partでは、一般化、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数といった考え方を、個別の用語としてではなく、「何と何を比較すれば、どこまで結論できるのか」という一つの研究上の問題として整理する。
③ 第6・7回では、同じ物理的刺激であっても心理的な経験が同じになるとは限らず、刺激と反応の間に知覚、注意、記憶、判断などの心理過程を考える必要があることを学んだ。しかし、これらの心理過程そのものを直接見ることはできない。そこで心理学では、反応時間、正答率、誤答の種類などの観察可能なデータを用い、仮説から予測される結果と実際のデータを比較する。本Partでは、第1回から続いてきた「証拠から心を推論する」という問題が、認知心理学における仮説検証へどのようにつながったのかを整理する。中間テストでは、一つの研究について、どの証拠からどの心理過程を推論しているのかを自分で判断できることを前半の到達点とする。
キーワード ① 観察 ② 測定 ③ 実因果関係 ④ 実験 ⑤ 仮説
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小テスト
復習・予習課題 予習
第1~7回をそれぞれ独立して暗記するのではなく、一つの架空研究を使って横断的に整理する。①何が観察された事実か、②何を心理学的データとしているか、③どのように測定しているか、④相関と因果を区別できているか、⑤独立変数と従属変数は何か、⑥交絡する要因はないか、⑦どの証拠からどの心理過程を推論しているか、という七つの観点から研究を評価する。
復習
中間テストで誤答した問題について、正答だけを書き直すのではなく、「第何回のどの考え方を使えば判断できたのか」を整理する。さらに、一つの問題について複数の回の内容が利用できないかを検討する。たとえば相関と因果の問題であっても、第5回だけでなく、第1回の「一つの解釈に決めない」という考えとどのようにつながっているかを確認する。

9 実験できない心を、どうやって測るのか ――質問紙と心理尺度から構成概念を考える 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 行動を見れば、その人の考えが分かるのか ② 心理尺度は心をどう数値にするのか ③ 質問の仕方によって回答は変わる
細目レベル ① 第7回まででは、刺激や条件を操作し、反応を測定することで心理過程を推論する方法を中心に学んだ。しかし、心理学が研究する現象のすべてを研究者が自由に操作できるわけではない。孤独感、抑うつ、価値観、政治的態度、性格などを研究する際、研究者が意図的にその状態を作り出すことが不可能であったり、倫理的に望ましくなかったりする場合がある。また、外から見える行動だけでは、その人がどのように感じ、何を考えているのかを十分に理解できない場合もある。本Partでは、このように直接観察できない心理的特徴を「構成概念」として捉える考え方を学ぶ。構成概念は目に見える物体ではないため、研究するには具体的な質問や行動など観察可能な指標へ置き換える必要がある。実験できない心を研究するためには、何をどのように測定すればよいのかという問題から質問紙法へ導く。
② 「あなたは孤独ですか」と一問だけ尋ねれば、孤独感を簡単に測定できるように見える。しかし、一つの質問だけでは、その質問の表現やその日の気分、回答者の言葉の理解などに結果が左右されやすい。心理尺度では、一つの構成概念に関係する複数の質問項目を用意し、それぞれの回答を一定の規則に従って数値化し、全体として一つの得点を作る。本Partでは、リッカート尺度を例として、「まったく当てはまらない」から「非常によく当てはまる」までの回答を数値に変換し、複数項目をまとめる方法を学ぶ。ただし、得点が得られたからといって、孤独感そのものを直接数字にしたわけではない。尺度得点は、あらかじめ決めた質問と得点化のルールによって構成概念を測定した結果である。ここから、心理尺度を作ること自体が一つの研究行為であることを理解する。
③ 質問紙は短時間で多くの人から情報を集められるという利点を持つが、回答は質問文の作り方によって変化する可能性がある。曖昧な言葉を使った質問、二つの内容を一度に尋ねる質問、特定の回答へ誘導する質問などは、回答者が何について答えればよいのかを不明確にする。また、他人からよく見られたいという社会的望ましさや、直前の質問内容、選択肢の配置なども回答に影響する可能性がある。本Partでは、質問紙を「聞きたいことをそのまま質問すればよい方法」と考えず、どのような質問項目を作るかによってデータの意味が変わることを学ぶ。さらに、回答を数値化して心理得点を得られたとしても、その得点が安定しており、本当に測りたい心理を捉えているかは別の問題であることを確認し、次回の信頼性と妥当性へつなげる。
キーワード ① 質問紙法 ② 心理尺度 ③ 構成概念 ④ リッカート尺度 ⑤ 回答バイアス
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小テスト
復習・予習課題 予習
第2回では自己報告、第3回では数量化、第5回では実験、第7回では仮説検証を学んだ。これらを使って、孤独感や性格のように、研究者が自由に操作することが難しく、直接観察もできない心理をどう調べられるか考える。特に、第2回の「本人に尋ねること」と第3回の「比較可能な値にすること」を組み合わせると、どのような方法になるかを予想する。
復習
第2回の自己報告、第3回の数量化、第9回の心理尺度を比較し、心理尺度が単に「質問をする方法」ではなく、主観的な報告を一定のルールで比較可能な測定値へ変える方法であることを説明する。また、第1回の「心そのものと証拠を区別する」という原則から、「孤独感得点=孤独感そのもの」とはいえない理由を整理する。さらに、第5回を使い、二つの尺度得点が関連しても因果関係までは分からないことを確認する。

10 その心理検査は、本当に信用できるのか ――信頼性と妥当性から測定の質を考える 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 心理測定には、なぜ誤差が含まれるのか ② 同じものを安定して測る――信頼性 ③ 安定していても、正しいとは限らない
細目レベル ① 同じ人が同じ心理尺度に回答しても、毎回完全に同じ得点になるとは限らない。その日の気分や体調、質問の読み違い、集中力、偶然選んだ回答など、測りたい心理的特徴とは別の要因も得点に影響するからである。心理測定では、実際に観察された得点には、その人が持つ比較的安定した特徴だけでなく、さまざまな測定誤差が含まれていると考える。本Partでは、観測された得点をそのまま「本当の性格」「本当の不安」とみなすことの問題を理解する。心理学で数値を得ることは重要だが、数値が出た時点で測定が完成するわけではない。第9回で心理尺度を使って得点を作る方法を学んだうえで、その得点がどの程度安定しており、どの程度誤差の影響を受けているのかを検討する必要があることを確認し、測定の質を評価するという新しい問題へ進む。
② 心理検査が同じ人について測るたびにまったく異なる結果を示すなら、その結果を安定した心理的特徴として解釈することは難しい。信頼性とは、心理尺度や検査が、測定しようとしているものをどの程度一貫して測れているかを考える概念である。本Partでは、一定期間を空けて再度測定した結果がどの程度一致するかを見る再検査信頼性や、同じ構成概念を測る複数の質問項目がどの程度まとまって動くかを見る内的一貫性を取り上げる。ここでは、係数の計算方法を覚えることよりも、「何と何の一致を確認することで信頼性を評価しているのか」を理解することを重視する。また、信頼性が高いことは、偶然によるばらつきが比較的小さいことを意味するが、それだけで測りたい心理を正しく測っているとは限らないことを示し、次の妥当性の問題へつなげる。
③ 毎回同じ数値を示す体重計でも、実際の体重より常に2kg多く表示されているなら、「安定している」ことと「正しい」ことは区別しなければならない。心理測定でも同様に、毎回よく似た得点が得られる尺度であっても、本当に測りたい構成概念を測定しているとは限らない。本Partでは、尺度項目が内容を十分にカバーしているか、外部の基準と適切に関連するか、理論的に予測される他の変数との関係が得られるかなどを手がかりに、妥当性を検討する考え方を学ぶ。内容的妥当性、基準関連妥当性、構成概念妥当性という名称を暗記するだけでなく、「この得点を本当に○○の得点と呼んでよいのか」を複数の証拠から判断することが重要である。さらに、正確な得点を得られても、その数字が本人にとってどのような経験を意味するかまでは分からないという次回の問いへ進む。
キーワード ① 信頼性 ② 妥当性 ③ 測定誤差 ④ 内的一貫性 ⑤ 構成概念妥当性
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小テスト
復習・予習課題 予習
第3回では「測定値は心そのものではない」、第9回では「構成概念を尺度得点として測る」と学んだ。さらに、第1回の「他者が確認できる証拠」という考えも利用し、心理尺度の得点を信用するためには、どのような証拠が必要なのかを考える。同じ人を複数回測った場合、似た得点になることと、「本当に測りたい心理を測っていること」は同じなのかも検討する。
復習
第1回の客観性、第3回の測定、第9回の構成概念、第10回の信頼性・妥当性を一つにつなげる。架空の心理尺度について、①何を測ろうとしているか、②どのように得点化しているか、③結果は安定しているか、④本当にその心理を測っていると判断する証拠は何か、を評価する。また、第5回で学んだ「別の説明を排除する」という発想と、妥当性を複数の証拠から確認する発想の共通点について考える。

11 同じ得点なら、同じ心だといえるのか ――面接法から数値の背後にある意味を考える 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 同じ得点でも、同じ経験とは限らない ② 面接の構造によって何が変わるのか ③ 語られた内容を研究データにする
細目レベル ① 心理尺度を使えば、多くの人を共通の基準で測定し、得点を比較できる。しかし、同じ得点を示した二人が、同じような経験をしているとは限らない。たとえば、孤独感尺度で同じ得点だった二人のうち、一人は友人が少ないことを強く苦痛に感じているかもしれないが、もう一人は一人で過ごす時間を好み、家族との関係に満足しているかもしれない。尺度得点は、その人がどの質問にどのように答えたかをまとめた値であり、得点に至った生活状況、経験、その人自身が与えている意味まで完全に表すものではない。本Partでは、第9・10回で学んだ数量的測定の価値を認めながら、数値による比較では捉えにくい個人の経験や文脈に目を向ける。数量的データと質的データを対立させるのではなく、研究上の問いによって必要なデータが異なることを理解する。
② 個人の経験や意味を詳しく理解する方法の一つが面接法である。しかし、面接といっても、研究者が自由に話を聞くだけではない。すべての参加者に同じ質問を同じ順序で行う構造化面接では、回答を比較しやすい一方、予想していなかった経験を深く尋ねにくい。半構造化面接では、基本となる質問を用意しつつ、相手の回答に応じて追加質問を行うことで、比較可能性と柔軟性の両方をある程度確保できる。さらに非構造化面接では、より自由な語りを得られるが、参加者間の比較は難しくなる。本Partでは、三つの形式を単なる分類として覚えるのではなく、「同じ質問をすること」と「その人の経験を深く理解すること」のどちらを重視するかによって面接構造が変わることを学ぶ。研究目的に応じて、どの程度質問を固定するのかを判断する視点を身につける。
③ 面接で得られた言葉は、録音した瞬間に自動的に研究結果になるわけではない。面接者がどのように質問したか、どのタイミングで相づちを打ったか、どの話題を深掘りしたかによって、参加者の語りは変化しうる。また、録音した音声を文字に起こし、どの部分を分析対象とするかを決め、発言を分類し、意味を解釈する過程にも研究者の判断が入る。本Partでは、面接者の影響、録音、逐語化、カテゴリー化、分析手続きなどを取り上げ、質的データでも研究過程を明確にする必要があることを学ぶ。さらに、本人が話した内容を重視する面接法にも、本人が自覚していない行動や、言葉にしにくい行動を捉えにくいという限界がある。そこで次回は、本人の報告に依存せず、実際の行動を体系的に記録する観察法を考える。
キーワード ① 面接法 ② 構造化面接 ③ 半構造化面接 ④ 非構造化面接 ⑤ 質的データ
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小テスト
復習・予習課題 予習
第4回では一人の人を詳しく調べる価値を学び、第9・10回では多くの人を共通の尺度で測定する方法と、その測定の質を学んだ。同じ心理尺度得点を示した二人について、第4回の個別性、第9回の尺度、第10回の妥当性という三つの視点から、「得点だけでは何が分からないか」を考える。さらに、第2回の自己報告を使い、本人にどのようなことを尋ねれば理解を深められるかを考える。
復習
第2回の自己報告、第4回の事例研究、第9回の質問紙、第10回の妥当性、第11回の面接法を比較する。同じ一人の心理について、尺度得点だけの場合、面接を加えた場合、生活史まで加えた場合で、どのように理解が変わるかを整理する。また、第1・2回の原則を使い、面接で本人が語った内容も心そのものではなく、一つのデータであることを説明する。

12 本人が語らない行動を、どう記録するのか ――観察法から自然な行動をデータに変える 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 普段の生活の中で行動を観察する ② 複雑な行動をデータに変える ③ 同じ行動を見ても、同じ記録になるのか
細目レベル ① 本人への質問や面接だけでは、すべての心理現象を調べることはできない。幼児の遊び、教室内での児童の行動、集団の中で自然に生じるやり取りなどは、本人が正確に言葉で説明できない場合があり、質問されることで行動そのものが変わってしまうこともある。本Partでは、実際の行動を直接観察して記録する観察法を扱う。普段の生活環境の中で行動を調べる自然観察、研究者が一定の状況を設定して行動を観察する実験的観察、研究者自身が集団に参加しながら観察する参与観察などを取り上げ、それぞれがどのような問いに適しているのかを考える。重要なのは、「自然な行動を見ること」がそのまま客観的な研究になるわけではないことである。自然な場面を保つことと、研究者が必要な情報を正確に記録することの両方を考える必要がある。
② 「子どもが友達とうまく遊んでいる」「学生が授業に集中していない」といった印象は、日常的には理解できる表現であっても、そのままでは心理学的なデータとして扱いにくい。観察研究では、何を一つの行動として数えるのかを具体的に定める必要がある。たとえば「友達と関わる」を、話しかける、物を渡す、一緒に遊ぶなどの行動カテゴリーに分け、それぞれの出現回数や持続時間を記録することができる。また、一定時間ごとにその時点の行動を記録する時間サンプリングなど、観察の方法も目的に応じて選択する。本Partでは、第1回で扱った「印象」と「観察された事実」の違いを再び取り上げ、曖昧な印象を具体的な行動へ変換することの重要性を理解する。観察法を通して、第1回の科学的観察の考えをより具体的な研究手続きとして再構成する。
③ 観察対象となる行動を具体的に定義しても、複数の観察者がまったく同じ記録をするとは限らない。ある子どもの行動を一人は「友達への援助」と判断し、別の人は単なる「物の受け渡し」と判断する可能性がある。そこで観察研究では、観察者に事前の訓練を行い、同じ場面について複数の観察者がどの程度一致した記録をするかを確認する。本Partでは、観察者間一致の考え方を学び、研究データが一人の研究者の印象だけに依存していないかを点検する方法を理解する。また、映像記録やデジタルログを利用すれば、後から同じ場面を再確認できるという利点もある。第1回から学んできた観察をここで体系的な研究法として捉え直したうえで、どれほど丁寧に観察しても、どの研究にも誤差や限界が残ることを確認し、一つの研究結果をどこまで信じてよいのかという次回の問題へ進む。
キーワード ① 観察法 ② 自然観察 ③ 行動カテゴリー ④ 観察者間一致 ⑤ ログデータ
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小テスト
復習・予習課題 予習
第1回では科学的観察、第3回では測定、第4回では複数の資料による個人理解、第11回では本人の語りを扱った。これらを使って、本人が自覚していない行動や、言葉にできない行動を研究する方法を考える。「幼児が友達とうまく遊んでいる」「学生が授業に集中している」などの曖昧な表現を、第1回と第3回の考えを使って観察可能な行動へ変換する。
復習
第1回と第12回を直接つなぎ、第1回で学んだ「観察を科学的な証拠にする」という考えが、具体的な観察法としてどのように発展したのかを説明する。さらに、第3回の測定、第10回の信頼性を使って、行動カテゴリーと観察者間一致の意味を考える。第4回の事例研究、第11回の面接も加え、一人の子どもを理解する場合に、観察、尺度、面接をどのように組み合わせられるかを考える。

13 一つの研究結果を、どこまで信じてよいのか ――追試と研究の蓄積から心理学の信頼性を考える 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 一つの研究だけで、事実と言えるのか ② 同じ結果が繰り返し得られることの意味 ③ 多くの研究結果をまとめて判断する
細目レベル ① 心理学の研究結果は、論文として発表されたからといって、その瞬間に普遍的な事実になるわけではない。同じ研究方法を使っても、研究に参加した人の特徴、研究が行われた時代や文化、測定に用いた課題、実験環境、偶然のばらつきなどによって結果が変化することがある。たとえば、大学生を対象に得られた結果を、年齢や文化の異なるすべての人にそのまま当てはめることはできない。本Partでは、一つの研究が「どのような人を、どのような条件で調べた研究なのか」を確認することの重要性を学ぶ。また、研究対象の選び方を細かな標本抽出法の分類として暗記するのではなく、得られた結果をどこまで一般化できるかという問題として扱う。科学的な知識は一つの研究で完成するのではなく、複数の研究によって少しずつ確かめられるという考え方を理解する。
② ある研究で興味深い結果が得られたとき、それが偶然ではなく安定して生じる現象なのかを確認するためには、同じまたは類似した方法で研究を繰り返す必要がある。これが追試である。本Partでは、追試と再現性の意味を学び、研究結果が一度だけ得られたことと、さまざまな研究者や条件で繰り返し確認されることの違いを考える。ただし、追試で同じ結果が得られなかったからといって、元の研究がただちに「間違い」になるとは限らない。参加者、刺激、手続き、文化、時代などの違いによって結果が変化した可能性もあるからである。逆に、一度有意な結果が出ただけで正しいと考えることも適切ではない。再現されるかどうかを調べることは、結果を白黒で判定する作業ではなく、その現象がどのような条件で成立するのかを明らかにする研究でもあることを理解する。
③ 同じテーマについて複数の研究が行われると、ある研究では効果が見られ、別の研究では見られないということが起こる。その場合、一つの研究だけを選び、自分の考えに都合のよい結果だけを重視することは適切ではない。本Partでは、多くの研究結果を統合して全体的な傾向を検討するメタ分析の考え方を学ぶ。また、統計的に有意な結果や興味深い結果の方が公表されやすい出版バイアスが存在すると、公開されている研究だけを見たときに実際以上に効果が強く見える可能性があることを考える。さらに、研究計画の事前登録やデータ共有など、研究過程の透明性を高めようとするオープンサイエンスの考えを扱う。心理学が自らの研究方法と結果を点検し続ける科学であることを理解したうえで、「信頼できる研究であれば、どのような方法でも人に実施してよいのか」という研究倫理の問題へつなげる。
キーワード ① 追試 ② 再現性 ③ メタ分析 ④ 出版バイアス ⑤ オープンサイエンス
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小テスト
復習・予習課題 予習
第3回では測定の仕方、第4回では一般化の限界、第5回では交絡変数、第7回では仮説、第10回では信頼性・妥当性、第12回では観察者間一致を学んだ。それぞれを丁寧に考えた研究でも、別の研究では同じ結果にならない可能性があるのはなぜかを考える。過去の授業回から、研究結果が変わる原因になりそうなものを少なくとも四つ挙げる。
復習
第3回の測定、第4回の一般化、第5回の交絡、第7回の仮説、第10回の信頼性・妥当性、第12回の観察者間一致を使い、一つの研究のどこに不確実性が入りうるかを整理する。そのうえで、第13回の追試、再現性、メタ分析が、それぞれの研究の弱点を一つずつなくす方法ではなく、複数の研究を積み重ねることで知識の確かさを検討する仕組みであることを説明する。

14 人の心を調べるためなら、何をしてもよいのか ――研究倫理から科学と参加者の権利を考える 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① 研究への参加は、誰が決めるのか ② 本当の目的を隠す研究は許されるか ③ 倫理を守ることは、研究の妨げなのか
細目レベル ① 心理学研究では、人間の心や行動について明らかにするために、実際の人々に研究へ参加してもらう。そのため、研究者が知りたいことや科学的な価値だけを優先することはできない。参加者には、研究へ参加するかどうかを自分で決める権利があり、参加を断ったり、途中で参加をやめたりしても不利益を受けないことが求められる。本Partでは、研究参加の自発性、拒否する権利、撤回する権利、身体的・心理的な負担から守られる権利を扱う。そのうえで、研究の目的、方法、予想される負担、データの扱いなどについて説明を受け、理解したうえで参加に同意するインフォームド・コンセントの意味を学ぶ。未成年者や判断能力に配慮が必要な参加者などの場合には、同意のあり方がさらに慎重に検討されることも理解する。
② 心理学研究では、研究の本当の目的を事前に説明すると、参加者が意図を推測し、普段とは異なる行動をとることで研究結果が変化する場合がある。そのため、研究目的の一部を伝えなかったり、別の説明を用いたりする欺瞞が用いられてきた。しかし、研究に必要であるという理由だけで、人を自由にだましてよいわけではない。本Partでは、ミルグラムの服従研究などを手がかりに、科学的価値と参加者の心理的負担との間に生じる緊張を考える。欺瞞を利用する場合には、代替方法がないか、予想される負担が許容可能か、研究終了後に本当の目的を説明するデブリーフィングをどのように行うかなどを検討する必要がある。歴史的な研究を単純に「昔は倫理が緩かった」と評価するのではなく、研究目的と参加者保護を両立させるためにどのような判断が必要かを考える。
③ 研究者自身が「この研究には問題がない」と判断するだけでは、参加者の権利や安全を十分に守れない可能性がある。そこで、人を対象とする研究では、研究開始前に第三者が研究目的、方法、参加者への負担、同意手続き、個人情報の扱いなどを確認する倫理審査が行われる。本Partでは、倫理審査に加えて、氏名や連絡先などの個人情報をどのように扱うか、データを匿名化または仮名化する方法、研究終了後のデータ管理、捏造・改ざん・盗用などの研究不正についても考える。倫理は研究者の自由を単に制限するために存在するのではなく、参加者が安心して研究へ参加でき、社会が研究結果を信頼できるための基盤でもある。第1回から学んできた「何を証拠とするか」「どう測るか」「どこまで結論できるか」に、「その証拠をどのように得てよいのか」という問いを加え、心理学研究を方法と倫理の両面から評価する視点を完成させる。
キーワード ① 研究倫理 ② インフォームドコンセント ③ 欺瞞 ④ デブリーフィング ⑤ 倫理審査
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復習・予習課題 予習
第5回では原因を明らかにするために条件を操作し、第7回では仮説を厳密に検証し、第13回では再現可能な研究結果の重要性を学んだ。しかし、科学的に強い研究を作ることと、参加者に何をしてもよいことは同じではない。さらに、第2回の自己報告、第4回の事例研究、第9回の質問紙、第11回の面接、第12回の観察について、それぞれどのような倫理上の問題が起こりうるかを考える。
復習
一つの架空研究について、第1回の「証拠」、第3回の「測定」、第4回の「一般化」、第5回の「因果」、第7回の「仮説」、第10回の「信頼性と妥当性」、第13回の「再現性」、第14回の「倫理」という八つの観点から総合的に評価する。そのうえで、「方法論的に優れた研究」と「よい心理学研究」が必ずしも同義ではない理由を説明する。最後に、「よい心理学研究とは何か」を複数の授業回を引用しながら300字程度でまとめる。

15 心理学研究を、自分で評価できるか 科目の中での位置付け 第1回では、観察された事実と心理的解釈の違いを考え、心理学が何を証拠として心を研究するのかを学ぶ。第2回では、ヴントと内観法を通して、主観的経験を研究する方法とその限界を扱う。第3回では、精神物理学から心を数量化する考え方を学ぶ。第4回では事例研究を取り上げ、個別性と一般化の問題を考える。第5回では、相関と因果、独立変数、従属変数、交絡変数から実験法の基本を学ぶ。第6回では、ゲシュタルト心理学と錯視研究から、刺激と心理的経験の違いを理解する。第7回では、認知革命、反応時間、仮説検証を扱い、行動から見えない心理過程を推論する方法を学ぶ。第8回では中間テストを行い、第1~7回の内容を統合する。

第9回では、質問紙法と心理尺度を扱い、構成概念を測定する方法を学ぶ。第10回では、信頼性と妥当性から心理測定の質を考える。第11回では面接法を取り上げ、数値では捉えにくい経験や意味を理解する方法を学ぶ。第12回では観察法を扱い、自然な行動を体系的なデータに変える方法を学ぶ。第13回では、追試、再現性、メタ分析、オープンサイエンスから研究の蓄積と信頼性を考える。第14回では、インフォームド・コンセント、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査など研究倫理を学ぶ。第15回では最終確認テストを行い、証拠、測定、因果推論、研究の信頼性、研究倫理を統合し、心理学研究を自分で評価する力を身につける。

コマ主題細目 ① その研究は、何をどのように測っているのか ② その研究結果から、本当にそこまで言えるのか ③ よい心理学研究とは、どのような研究なのか
細目レベル ① 第1~12回では、観察、自己報告、精神物理学、事例研究、実験、質問紙、心理尺度、面接、観察法など、心を研究するためのさまざまな方法を学んだ。しかし、最終的に重要なのは研究法の名称を覚えることではなく、その研究が「何を心についての証拠として用い、それをどのような手続きで測定・記録しているのか」を判断できることである。本Partでは、研究対象となる構成概念と実際の測定値を区別し、質問紙得点、反応時間、面接による語り、観察された行動などが、それぞれ心のどの側面を捉えているのかを整理する。また、一つの方法だけでは十分に捉えられない場合に、別の研究法を組み合わせる意味についても確認する。
② 心理学研究を読むときには、結果そのものだけでなく、その結果からどこまで結論できるのかを検討する必要がある。第4・5回で扱った一般化、相関と因果、交絡変数に加え、第9・10回では心理尺度の信頼性と妥当性、第13回では追試、再現性、メタ分析、出版バイアスを学んだ。本Partでは、これらを一つの研究評価の枠組みとして統合する。たとえば、有意な関連が得られていても因果関係とは限らず、高い信頼性を持つ尺度でも妥当性が十分とは限らない。また、一つの研究で得られた結果が再現されるかどうかも確認する必要がある。研究結果をそのまま受け入れるのではなく、「別の説明はないか」「他の対象にも当てはまるか」「他の研究でも確認されているか」と問い直せることを重視する。
③ 第14回では、方法論的に正確で再現可能な研究であっても、それだけでよい研究とはいえないことを学んだ。参加者が自由意思によって参加し、必要な説明を受け、過度な心理的・身体的負担から守られ、個人情報が適切に管理されることも、心理学研究を成立させる重要な条件である。本Partでは、第1回から学んできた「何を証拠とするか」「どのように測定するか」「何と比較するか」「どこまで結論できるか」「結果をどこまで信頼できるか」という方法論上の問いに、「その証拠をどのように得てよいのか」という倫理の問いを加える。最終確認テストでは、一つの架空研究を方法と倫理の両面から検討し、「この研究から、本当にそこまで言えるのか」を自分で判断できることを講義全体の到達点とする。
キーワード ① 証拠 ② 測定 ③ 因果推論 ④ 研究の信頼性 ⑤ 研究倫理
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
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小テスト
復習・予習課題 予習
第1~14回を回ごとに暗記し直すのではなく、「証拠」「測定」「個別性」「比較」「因果」「心理過程の推論」「構成概念」「測定の質」「意味」「観察」「再現性」「倫理」という問題ごとに関連する授業回を結びつける。一つの架空研究について、少なくとも5回以上の授業内容を使い、研究の長所、問題点、改善方法を説明できるようにする。
復習
最終確認テストの解説をもとに、自分が今後心理学研究を読む際に使う「研究評価のチェック項目」を作成する。それぞれの項目に、「第1回:観察と解釈」「第5回:相関と因果」「第10回:妥当性」など対応する授業回を記入する。最後に、第1回で提示した「目に見えない心を、心理学はどのような証拠と方法によって明らかにするのか」という問いに、第1~14回の学習を用いて自分なりの回答をまとめる。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
心理学が心を証拠として捉え、測定する考え方を理解できる 観察された事実と心理的解釈を区別し、自己報告や測定値が心そのものではなく、一定の手続きによって得られた証拠であることを理解できる。また、主観的経験を比較可能な形にし、心理現象を数量化する基本的な考え方を説明できる。 観察/科学/客観性/データ/心理学研究法/ヴント/内観法/意識/主観/自己報告/精神物理学/ウェーバー/フェヒナー/閾値/測定 16 第1~3回
個人を理解することと、原因を明らかにすることの違いを理解できる 事例研究によって個人を詳しく理解することの意義と限界を説明し、個別性と一般化を区別できる。また、相関関係と因果関係を区別し、独立変数、従属変数、交絡変数などから実験による因果推論の基本を判断できる。 事例研究/個別性/一般化/生活史/集団研究/相関関係/因果関係/独立変数/従属変数/交絡変数/第三の変数/実験群/統制群 16 第4・5回
行動データから見えない心理過程を推論できる 物理的刺激と心理的経験を区別し、刺激と反応の間に心理過程を仮定する意味を理解できる。さらに、反応時間などの行動データと仮説・予測を結びつけ、直接観察できない認知過程をどのように検証するのか説明できる。 ゲシュタルト心理学/知覚/錯視/体制化/文脈/認知心理学/認知革命/情報処理モデル/反応時間/仮説/心理過程/予測/検証/反証可能性 18 第6・7回
実験できない心理現象を測定し、その測定の質を評価できる 直接観察したり実験的に操作したりできない心理的特徴を構成概念として捉え、質問紙や心理尺度によって測定する考え方を理解できる。また、測定誤差、信頼性、妥当性を用いて、得られた心理得点をどの程度信用できるか評価できる。 質問紙法/心理尺度/構成概念/リッカート尺度/回答バイアス/信頼性/妥当性/測定誤差/内的一貫性/構成概念妥当性/再検査信頼性/内容的妥当性/基準関連妥当性 18 第9・10回
数値だけでは捉えられない経験や行動を研究データにできる 面接法によって個人の経験や意味を捉える方法と、観察法によって実際の行動を体系的に記録する方法を理解できる。それぞれのデータの特徴と限界を踏まえ、研究目的に応じて適切な方法を考えることができる。 面接法/構造化面接/半構造化面接/非構造化面接/質的データ/観察法/自然観察/行動カテゴリー/観察者間一致/ログデータ/比較可能性/文脈/記録 16 第11・12回
研究結果を研究の蓄積と倫理の両面から評価できる 一つの研究結果だけで結論を確定せず、追試、再現性、メタ分析などから研究の蓄積を評価できる。また、研究参加者の権利、同意、欺瞞、デブリーフィング、倫理審査などを踏まえ、科学的方法だけでなく倫理的観点から心理学研究を評価できる。 追試/再現性/メタ分析/出版バイアス/オープンサイエンス/研究倫理/インフォームド・コンセント/欺瞞/デブリーフィング/倫理審査/参加者保護/研究の蓄積 16 第13・14回
評価方法 定期試験によって評価(100%)する。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書
参考文献
実験・実習・教材費