| 回 | 主題 | コマシラバス項目 | 内容 | 教材・教具 |
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1
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知覚と認知ってどんなもの?・その1
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科目の中での位置付け
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科目概要で述べたように知覚・認知は,人間という情報処理システムのうち,外界の情報を取り入れ(入力),その入力をもとに自身と周囲の状況を認識したうえで意思決定や行動を行う(処理)という前半部分を担っていると言える。では,最初の外の世界の情報を取り入れる段階で,カメラで風景写真を撮影するときのように,外の世界の物理的な情報をそのまま写し取って,それをそのまま他の場所に伝えているのだろうか。どうやら,人間が行っているのはカメラの撮影やメモリへの保存とは異なるようである。それを私たちにわかる形で表してくれているのが,1年前期の『基礎ゼミナール(初等心理学実習)』で扱った「錯視」であろう。私たちの目から取り入れた光情報が伝えられて視覚系で分析された結果,私たちが見ている錯視は,外の世界の物理的なものとは異なっている。「人間はどうも,カメラとは違った情報の取り入れ方をしているようだぞ」。それに気づくところから,『知覚・認知心理学』の学びが始まる。 第01回では,この『知覚・認知心理学』の導入として,この「人間の知覚や認知は外の世界をそのまま写し取ったり伝えたりしているのではなく,それを超えた情報処理を行っている」ことを,さまざまな例をとおして理解してもらう。そして第02回で学ぶ知覚・認知の測定法や研究手法とあわせて理解を得ることが,第03回以降の知覚と認知についての学びへとつながっていく。
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コマ主題細目
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① 情報処理システムとしての「こころ」 ② 物理世界と知覚世界の違い ③ 認知の特性と限界
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細目レベル
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① 本日から人間の知覚と認知についての心理学を学んでいく。皆さんが興味関心をもっているのは「こころの変化」「行動」といった面かと思われるが,それらが生じるには,自身の周囲からもたらされる映像や音といった情報を取り入れ,それをもとにして自分がどういった状況にいるのかということを認識する必要がある。私たち人間は,外界の情報を取り入れ(入力),取り入れた情報を分析,解釈することで(処理)自分自身のまわりの状況を理解して思考して判断を下しており,その結果として私たちにこころの変化や適切な行動が生じている(出力),という情報処理システムのような面をもつものであると言えるだろう。こうした「情報処理システムとしてのこころ」のあり方を理解することが,これから知覚・認知を考えていくうえで重要となる。
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② 私たちが自分の周囲,外界の状況を認識するのは,情報を取り入れるところから始まる。たとえば,視覚に関して体内に取り入れられ感覚を生み出すのは光である。可視光と呼ばれる範囲の光が,感覚受容器である眼球を通して取り入れられ,その結果として視覚という感覚・知覚が生じる。そう説明をされると,眼球が光を取り入れるメカニズムを完全に理解すれば,知覚も理解できるのではないかと思われるかもしれない。しかし,知覚心理学で取り扱われているさまざまな現象,特に錯視図形を観察すれば,カメラのように外界をそのまま写しとったものではないことがわかるだろう。私たちが知覚している世界が外の世界の完全なコピーではないことを,自分自身の目でさまざまな現象例を観察することによって理解を深めることがここでの目的である。
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③ 私たちは,自身の周囲の状況すべてを詳細に認識しているわけではない。私たちが知覚した外界のうち,細かく分析したい,判断に使いたい部分や対象に注意を向け,その部分や対象のみを記憶したり判断に用いたりしている。このような詳細な情報処理をいつも,すべての位置や対象に用いることができればよいのだが,この認知情報処理には一定の限界があり,すべての状況に対して使えるわけではない。詳細な分析が使えない場合,自分がもっている知識をうまく使って,限られた時間で効率的な思考や判断を行っているのである。そうした人間の認知特性についての簡単な例を体験することによって,認知情報処理の特性と限界についての一端を理解することが目的である。
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キーワード
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① 情報処理システム ② 錯視と知覚世界 ③ 間違い探し
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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予習: (1) 開始前までにこの第01回コマシラバスをよく読んでおくこと。 (2) 1年前期の『基礎ゼミナール(初等心理学実習)』の授業資料を復習し,「刺激(入力)」「こころ(処理)」「反応/行動(出力)」で構成される「情報処理システムとしてのこころ」のあり方について復習しておくこと 復習: (1) この第01回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 『基礎ゼミナール(初等心理学実習)』の授業資料を復習し,「情報処理システムとしてのこころ」のあり方について理解を深めるとともに,錯視作成の部分を振り返って「私たちの知覚世界が外の世界の完全なコピーではない」ことについての理解を深めること (3) 図書館に行き,外の世界の物理的なものとは異なる知覚が得られる,講義内で紹介した以外の錯視図形を探し,それが物理的なものとはどのように異なるのかを文章で論理立てて説明してみよう
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2
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知覚と認知ってどんなもの?・その2
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科目の中での位置付け
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科目概要で述べたように知覚・認知は,人間という情報処理システムのうち,外界の情報を取り入れ(入力),その入力をもとに自身と周囲の状況を認識したうえで意思決定や行動を行う(処理)という前半部分を担っていると言える。では,最初の外の世界の情報を取り入れる段階で,カメラで風景写真を撮影するときのように,外の世界の物理的な情報をそのまま写し取って,それをそのまま他の場所に伝えているのだろうか。どうやら,人間が行っているのはカメラの撮影やメモリへの保存とは異なるようである。それを私たちにわかる形で表してくれているのが,1年前期の『基礎ゼミナール(初等心理学実習)』で扱った「錯視」であろう。私たちの目から取り入れた光情報が伝えられて視覚系で分析された結果,私たちが見ている錯視は,外の世界の物理的なものとは異なっている。「人間はどうも,カメラやレコーダーとは違った情報の取り入れ方をしているようだぞ」,それに気づくところから,『知覚・認知心理学』の学びが始まる。 では,「錯視がどのように見えているか」といった人間の「心理量」を測るにはどうしたらよいだろうか。人間が知覚している「長さ」「大きさ」「角度」は,物理的な長さ・大きさ・角度とは異なるため,定規や分度器では正しく測れない。「『精神(こころ)』を測定するなんて可能なんだろうか?」という問いについて考え,近代の知覚心理学が歩んできた歴史を振り返ってみよう。その流れをつかむと,近代の知覚・認知研究は,神経生理学と大きく関わっていることが理解できる。感覚受容器から脳へと感覚情報を伝達することを理解するために,「神経細胞(ニューロン)」の構造とその伝達のしくみについて概要をつかんでおく必要があるだろう。 第02回では,第01回に続く『知覚・認知心理学』の導入として,知覚・認知の測定法ならびに研究法の歴史を振り返る。(1) 心理量の法則化,(2) 心理(精神)物理学的測定法,(3) 知覚や認知の研究方法についての理解を得ることが,第03回以降の知覚と認知についての学びへとつながっていく。
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細目①・② 村上 郁也 (2019). Progress & Application 知覚心理学 第1章 知覚の問題設定,p. 13-22. 細目③ 三上 章允 (2022). カラー図解 脳の教科書 はじめての「脳科学」入門 講談社ブルーバックス,p. 80-115. 理化学研究所脳科学総合研究センター (編) (2011). 脳科学の教科書 神経編 岩波書店,p. 25-46. 岡田 隆・廣中 直行・宮森 孝史 (2015). 生理心理学 脳のはたらきから見た心の世界 第2版 サイエンス社,p. 29-46.
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コマ主題細目
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① 心理量の法則化 ② 心理(精神)物理学的測定法 ③ 知覚や認知の研究方法
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細目レベル
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① 人間や動物が見たり聞いたりしているとき,それぞれが違った主観的経験をする。知覚的経験は心理量(感覚量)であり,物理的刺激の「大きさ」「長さ」「角度」といった物理量がそのまま反映されているとは限らない。19世紀の心理学者は,私たちの知覚(反応)を法則化できるかどうかを追求していったのである。ドイツのエルンスト・ウェーバーは,2つの対象の違いを区別できる限界の値である弁別閾は一定ではなく,刺激の物理的強度に比例するという法則を見出した。また,同じくドイツのグスタフ・フェヒナーは,人間の感覚の大きさは受ける刺激の強さの対数に比例するという法則を見出した。彼らの見出した法則を併せて「ウェーバー・フェヒナーの法則」と呼んでいる。他に,アメリカのスティーヴンスは,「人間は自分の感覚の大きさを直接,数値表現できる」と主張し,人間の感覚の大きさは刺激の強さのベキ関数であるというスティーヴンスのべき法則を見出した。こうした感覚・知覚に関する心理法則を理解することを目指す。
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② 人間の「心理量」を測るために理解しておきたいのが,1年前期の『心理学概論』『こころは数値化できるか』でも学んだ「心理(精神)物理学的測定法」である。19世紀の心理学者ヴントが提唱した,自分自身の意識の内容を客観的かつ分析的に報告する内観法は,誰にでもできるものではなく,客観性や信頼性に欠けるといった批判があった。そこで,刺激をシステマティックに提示して,実験参加者(観察者)に対して,限定された反応1つだけをさせる課題を課すという測定法が提案された。この心理(精神)物理学的測定法には,単純化された測定手法であり,主観が(比較的)入りにくいという利点がある。閾値や主観的等価点を求めるための,調整法,極限法,上下法,恒常法といった方法の違いを理解することが目的である。今後の『心理学実験I・II』などでの学びとあわせて,実験を実施するときに適切な測定法を採用できるようになることが望ましい。
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③ 20世紀の知覚心理学は,神経生理学が進展するとともに大きく発展した。私たちの感覚情報を感覚受容器から大脳へと伝えており,さらに脳の中で知覚・認知のための情報を伝達しているのは,「神経細胞(ニューロン)」と呼ばれる細胞である。情報伝達の基本素子である神経細胞は,細胞内では活動電位などの電気信号,細胞間では神経伝達物質と総称される化学信号を使って,情報を伝達する。ここでの目的は,典型的な形状をした神経細胞の情報伝達のしくみを理解するのが目的である。これに加え,近年急速に発展した,生理指標を計測してそこから「こころ」を推測する方法,そして私たちの脳の活動を計測することによって知覚や認知のしくみを明らかにする脳機能計測法についても概要を紹介する。
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キーワード
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① ウェーバー・フェヒナーの法則 ② スティーヴンスのべき法則 ③ 心理(精神)物理学的測定法 ④ 閾値 ⑤ 神経細胞(ニューロン)
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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予習: (1) 開始前までにこの第02回コマシラバスをよく読んでおくこと。 (2) 『心理学概論』と『こころは数値化できるか』の授業資料を復習し,心理(精神)物理学的測定法および閾値などについて復習しておくこと
復習: (1) この第02回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 『心理学概論』と『こころは数値化できるか』の授業資料を改めて参照し,本講義で学んだ内容とあわせて,心理(精神)物理学的測定法および閾値,人間の感覚変化の特徴などについて復習して理解を深めること
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3
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視覚①
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科目の中での位置付け
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私たちの知覚は,光や音,化学物質,圧力や温度といった,私たちの内部で反応を引き起こす「刺激」を,感覚受容器をとおして取り入れるところから始まる。刺激は,感覚受容器に存在する受容体によって受容されることで,私たちの体内を伝わることができる電気の信号へと変換されるのである。感覚の情報は,電気信号と化学物質の2つの様式にて神経細胞を伝わり,私たちの脳へと伝達される。さらに脳の中で情報が伝わっていき,最終的に私たちの知覚が成立するのである。しかし,情報がただそのまま伝わっていくわけではないということが面白い。感覚受容器の段階から感覚情報の分析が始まるけれども,感覚受容器の段階ですでに大変興味深い分析が行われている。さらに,感覚情報が感覚受容器から大脳へと伝わり,大脳でもさらに分析が行われるが,これらの段階でも興味深い分析が行われているのである。私たちの知覚を実現する段階で,実はけっこうすごい情報処理が行われているのだということを伝えたい。 第03〜08回では,最も研究されている感覚である「視覚」について,光刺激が眼球の網膜に受容され,網膜から大脳へと情報が伝わり,そして大脳で視覚の情報処理が行われる視覚処理経路にて,視覚情報に対して特別な分析が行われていることを説明する。この第03回では,人間が外界からもたらされる刺激を感覚受容器をとおして体内に受容するまでの流れについて,人間の視覚,特に色の知覚を例にして,(1) 刺激としての光,(2) 外界にある物体と光の吸収/反射の関係,そして (3) 光を受容する網膜の視細胞/光受容細胞,の3つの過程に分けて,具体的にみていく。続く後半第04回の視細胞/光受容細胞の使い分けの話とあわせて,網膜での視覚メカニズムについて理解する。 この回で学んだ視覚の特性を,第04〜08回で学ぶ視覚の特性とあわせて理解するとともに,この後の第09回以降で聴覚,味覚,嗅覚,触覚について学び,各感覚特性を比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。
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細目①〜③ 松田 隆夫・高橋 晋也・宮田 久美子・松田 博子 (2014). 色と色彩の心理学 培風館,p. 5-39, 54-67. 細目① 稲場 秀明 (2019). 波のはなし 科学の眼で見る日常の疑問 技報堂出版,p. 117-191. (特に 第9章 可視光線,p. 153-170) 細目③ 三上 章允 (2022). カラー図解 脳の教科書 はじめての「脳科学」入門 講談社ブルーバックス,p. 116-131.
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コマ主題細目
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① 刺激としての光 ② 外界にある物体と光の吸収/反射の関係 ③ 光を受容する網膜の視細胞/光受容細胞
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細目レベル
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① 視覚系で,私たちの内部で反応を引き起こす刺激となるのは「光」,さらに言えば,光のなかでも「可視光(線)」と呼ばれる,波長が約380〜780 nmの電磁波である。可視光を含めた光は光源から発せられて,それが私たちの眼に入ることで色が見えるようになるのである。単一の波長の光が入ったときには特定の色が知覚されるが,光源から発せられる光はたいてい単一の波長のみではなく,さまざまな波長が混ざっている光になる。この光は光源によって異なっていて,光源からの光が異なると,その光が当たったときの物体の色も違って見えるのである。細目②の説明とあわせて,人間の眼に入る光が,光源からの光に含まれる波長と物体の性質によってどのように変わるかを理解することが重要である。
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② 色の見えに関係してくるのは,細目①で説明された,光がもつ波長成分の違いだけではない。光源から発せられた可視光(線)が外界の物体に当たると,対象物に吸収される成分と,対象物に吸収されず反射される成分に分かれる。このうち,物体に当たって反射される成分が私たちの眼に届く。色の見えには,光のうちどの成分をどのくらい反射させるのかという物体の特性が重要なのである。たとえば,可視光がリンゴに当たると,可視光のうち短い波長の光はリンゴに吸収されてしまうのに対し,比較的長い波長の光はリンゴに吸収されず反射される。この反射された長波長の成分が眼に届くことによって,私たちは「リンゴが赤い」と知覚しているのである。細目①の説明とあわせて考えると,色の見えは,光源から発せられた光がどんな成分をもっているかと,可視光のうちどの成分を吸収してどの成分をどのくらい反射するかという物体の特性との関係性で決まっていると考えることができる。
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③ 可視光(線)がそのまま眼球に届く,あるいは可視光のうち物体に当たって反射された成分が,眼球のレンズを通って眼球の内側にある網膜に到達する。この光が,網膜の中に存在する視細胞/光受容細胞に吸収されることで,視細胞の中で電気の信号が生まれる。光の情報が視細胞内のしくみによって視覚の電気的な情報に変換されることで,神経細胞から神経細胞へ,そして眼球から大脳へと,視覚の情報が伝達されるのである。ある波長の光がやってくると,視細胞のうち3種類の錐体(細胞)がそれぞれ,その光を一定程度吸収し,それぞれ異なる応答をする。この3種類の錐体の応答の差をもとにして,知覚される色が区別されるのである。色の知覚には,光そのものだけでなく,光を受容する生物の視覚系がどのようにして色の情報を分析しているのかという視覚系のしくみが関わっているのである。 色の知覚を理解するためには,① 刺激である光がどのような成分をもち,② 光が伝わる周囲の環境や物体がどうなっており,③どのような視覚系のしくみによって光が受容され分析されているのかという視覚のメカニズムを明らかにする必要がある。
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キーワード
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① 可視光(線) ② 波長 ③ 反射率 ④ 視細胞/光受容細胞 ⑤ 錐体(細胞)
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第03回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 『心理学概論』の授業資料を再度参照して,光と色との関係,網膜と視覚系の細胞の話を,本講義で学んだ内容とあわせて復習して理解を深めること
次回の予習: (1) 第04回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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4
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視覚②
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科目の中での位置付け
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私たちの知覚は,光や音,化学物質,圧力や温度といった,私たちの内部で反応を引き起こす「刺激」を,感覚受容器をとおして取り入れるところから始まる。刺激は,感覚受容器に存在する受容体によって受容されることで,私たちの体内を伝わることができる電気の信号へと変換されるのである。感覚の情報は,電気信号と化学物質の2つの様式にて神経細胞を伝わり,私たちの脳へと伝達される。さらに脳の中で情報が伝わっていき,最終的に私たちの知覚が成立するのである。しかし,情報がただそのまま伝わっていくわけではないということが面白い。感覚受容器の段階から感覚情報の分析が始まるけれども,感覚受容器の段階ですでに大変興味深い分析が行われている。さらに,感覚情報が感覚受容器から大脳へと伝わり,大脳でもさらに分析が行われるが,これらの段階でも興味深い分析が行われているのである。私たちの知覚を実現する段階で,実はけっこうすごい情報処理が行われているのだということを伝えたい。 第03〜08回では,最も研究されている感覚である「視覚」について,光刺激が眼球の網膜に受容され,網膜から大脳へと情報が伝わり,そして大脳で視覚の情報処理が行われる視覚処理経路にて,視覚情報に対して特別な分析が行われていることを説明する。この第04回では,人間の視覚を例にして,網膜に入ってきた光刺激を受容する視細胞/光受容細胞および網膜の視覚情報処理について考える。(1) 2つの視細胞:錐体と桿体,(2) 人間の2つの見えと2つの視細胞との関係,そして (3) 網膜の神経細胞の受容野,の3つの過程に分けて具体的にみていく。第03回のどのように刺激を受容するのかということとあわせて,網膜での視覚メカニズムについて理解を深める。 この回で学んだ視覚の特性を,第05〜08回で学ぶ視覚の特性とあわせて理解するとともに,この後の第09回以降で聴覚,味覚,嗅覚,触覚について学び,各感覚特性を比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。
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コマ主題細目
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① 2つの視細胞:錐体と桿体 ② 人間の2つの見えと2つの視細胞との関係 ③ 網膜の神経細胞の受容野
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細目レベル
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① 眼球に入ってきた光を受容する視細胞/光受容細胞は,3種類の錐体(細胞)と1種類の桿体(細胞)に分類される。この2つの視細胞は,網膜の視覚情報処理で果たす役割が大きく異なっているのである。細目②でその役割の違いを理解するまえに,まずは錐体と桿体にはどのような違いがあるのかを理解しよう。第一に,錐体は先端がとんがっている形状をしているのに対し,桿体は細長い棒状の形をしている。次に,錐体の大部分は私たちの視野の中心部に集まっているのに対し,桿体は視野の周辺部のほうが多くなっているというように,分布の傾向にも違いがある。細胞の数も,錐体が約650万個ほどなのに対し,桿体は約1億2000万個程度と,大きな違いがあるのである。ここでは,2つの視細胞の違いをしっかり覚えて,細目②での果たす役割の違いへとつなげる。
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② 視細胞は,私たちの周囲の外界からやってくる光刺激を受容する細胞である。では,私たちを取り巻く外界の光の状況はどうなっているか。私たち人間は,昼から夜中まで,つまり非常に明るい直射日光の下から星明かりすら無い真っ暗な中までという,生活環境の明るさが非常に広い範囲で変化する状況のなかで活動している。このような環境変化に上手く適応して生活するには,どのような視覚のメカニズムをもっているとよいのだろうか。昼間のようなたくさん光があふれている状況では,錐体(細胞)が十分な光を受容して細かいところまでものをしっかりと見ることができて,夜間のような光の量が非常に少ない状況では,少ない光を受容してものを見るのに使うことができる桿体(細胞)が主にはたらくことで,私たちは多様な光環境のなかを適切に行動できているのである。明るい環境では錐体がはたらき,暗い環境では桿体が主にはたらくという2つの視細胞の使い分けについて理解することが目的である。
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③ 視覚の情報は,視細胞/光受容細胞から網膜の他の神経細胞に送られるなかでどのように扱われるのであろうか。約1億2000〜3000万個もある視細胞から送られた視覚情報が,網膜に100万個ほどしかない網膜神経節細胞へと伝わる。たくさんの視細胞からの情報が少数の神経細胞へとまとめあげられていく段階で,視野のなかで重要なところを強調して,重要でないところを重要な部分だとは扱わないという面白いことが行われている。私たちにとって重要なのは,「ここから先は別の物体になっている!」という,境界部分を認識することである。私たちの視覚は明るさの情報をもとに対象をとらえている。そのときに視覚系は,対象やその境界部分の明るさの差(コントラスト)を強調して,見る対象を背景から見分けやすくしているのである。ここでの目的は,錯視の例を題材として,境界部分の明るさの差を強調して対象を背景から見分けやすくしているという視覚系の分析を理解することである。
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キーワード
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① 錐体(細胞) ② 桿体(細胞) ③ 暗順応と明順応 ④ 受容野 ⑤ 境界のコントラストの強調
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第04回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること 次回までの予習: (1) 第05〜06回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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視覚③
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科目の中での位置付け
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私たちの知覚は,光や音,化学物質,圧力や温度といった,私たちの内部で反応を引き起こす「刺激」を,感覚受容器をとおして取り入れるところから始まる。刺激は,感覚受容器に存在する受容体によって受容されることで,私たちの体内を伝わることができる電気の信号へと変換されるのである。感覚の情報は,電気信号と化学物質の2つの様式にて神経細胞を伝わり,私たちの脳へと伝達される。さらに脳の中で情報が伝わっていき,最終的に私たちの知覚が成立するのである。しかし,情報がただそのまま伝わっていくわけではないということが面白い。感覚受容器の段階から感覚情報の分析が始まるけれども,感覚受容器の段階ですでに大変興味深い分析が行われている。さらに,感覚情報が感覚受容器から大脳へと伝わり,大脳でもさらに分析が行われるが,これらの段階でも興味深い分析が行われているのである。私たちの知覚を実現する段階で,実はけっこうすごい情報処理が行われているのだということを伝えたい。 第03〜08回では,最も研究されている感覚である「視覚」について,光刺激が眼球の網膜に受容され,網膜から大脳へと情報が伝わり,そして大脳で視覚の情報処理が行われる視覚処理経路にて,視覚情報に対して特別な分析が行われていることを説明する。この第05回では,(1) 刺激を受け取る「受容野」の考え方,(2) 網膜〜大脳皮質にかけての情報伝達,(3) 視覚野の神経細胞の刺激選択性とコラム構造,といった細目にて,網膜から出た視覚情報が視神経を通って大脳皮質まで伝達され,そして大脳皮質の第一次視覚野で視覚情報が明るさ,色,形,運動,奥行き等に分かれて分析されるまでを解説する。続く後半の第06回に,第一次視覚野以降に「ものを見る」視覚情報がどのような視覚処理経路をたどるのかを解説する。加えて,そうした視覚処理経路の中で分析される奥行きについて考えていく。 この回で学んだ視覚の特性を,第03〜04回および第06〜08回で学ぶ視覚の特性とあわせて理解するとともに,この後の第09回以降で聴覚,味覚,嗅覚,触覚について学び,各感覚特性を比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。
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細目①〜③ 花沢 明俊 (2007). 講座〈感覚・知覚の科学〉① 視覚I 視覚系の構造と初期機能 p. 23-63. M・F・ベアー,B・W・コノーズ,M・A・パラディーソ (2021). カラー版 ベアー コノーズ パラディーソ 神経科学 脳の探求 [改訂版] 第10章 中枢視覚系 p. 253-281. 細目③ 村上 郁也 (2019). Progress & Application 知覚心理学 サイエンス社 p. 40-48.
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コマ主題細目
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① 刺激を受け取る「受容野」の考え方 ② 網膜〜大脳皮質にかけての視覚情報伝達の特性 ③ 大脳皮質視覚野の神経細胞の刺激選択性とコラム構造
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細目レベル
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① 神経細胞は,やってきた刺激をなんでも受容しているわけではない。神経細胞1個1個は視野全体の情報を扱っているわけではなく,視野内の限られた範囲に出現した光刺激に対して反応している。この各細胞が担当する範囲の領域のことを「受容野」と呼ぶ。ある段階の神経細胞から次の段階の神経細胞へと視覚情報が伝わっていくなかで,後の段階の神経細胞は,複数の視野範囲(神経細胞)からの情報をまとめて,より広い範囲の情報を分析するのである。次に,この受容野の形状も,神経細胞によっては複雑な形状になっている。たとえば網膜神経節細胞の受容野は同心円型の構造をしていて,中心にある小さな円の中に光が当たると細胞は興奮の応答をするが,その小さい円の周辺の部分に光が当たると,細胞の応答が抑制されるのである。こうした受容野の構造が視覚情報の分析でどのような役割を果たしているのかを,錯視の具体例とともに理解することがここでの目的である。
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② 網膜の神経細胞で処理された視覚の情報は,視神経を通って,外側膝状体と呼ばれる部位を経由して,大脳皮質へと送られる。このとき,この経路を通って情報がそのまま送られるわけではない。この経路を通るときに,視覚情報が仕分けされているのである。具体的には,1年前期の『心理学概論』で説明されたように,私たちの“左側の視野”に映った像は“右の脳半球”に,“右側の視野”に映った像は“左の脳半球”に送られることがわかっており,これは半交叉と呼ばれている。あるいは,動きやものの変化についての情報は “M cell“ と呼ばれる大きめの神経細胞(大細胞)で,形や色のパターンについての情報は “P cell“ と呼ばれる小さめの神経細胞(小細胞)で伝達される。このように,情報ごとに分かれて大脳皮質に伝えられることで,大脳皮質でも,明るさ,色,形,運動といった情報処理が別々に行われる下地になっている。この情報の分け方をしっかりと頭に入れ,それがどのような意義をもつのかについて理解する必要がある。
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③ 網膜から出て大脳皮質へと入力された視覚情報は,後頭葉と呼ばれる領域にある第一次視覚野と呼ばれる部位で分析が行われる。この第一次視覚野の神経細胞は,自分のうけもつ刺激の情報が入力されたら応答して,自分の担当外の刺激の情報には応答しないという,刺激選択性と呼ばれる性質をもっている。たとえば,ある神経細胞はナナメの線によく応答し,ある細胞は縦の線によく応答し,ある細胞は横の線によく応答するといった,異なる刺激選択性をもつ神経細胞たちが存在してそれぞれまとまって集まっている。その他にも,左眼から視覚情報を受け取った神経細胞と右眼から視覚情報を受け取った神経細胞もあり,それぞれまとまって集まっている。このように,それぞれ異なる刺激選択性をもつ神経細胞たちがまとまって集まるコラム構造という構造がつくられていることで,あらゆる視覚情報に対しても情報の分析が行えるようになっている。刺激選択性とコラム構造の特徴をしっかり理解することが目標である。
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キーワード
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① 受容野 ② 半交叉 ③ 大細胞と小細胞 ④ 第一次視覚野 ⑤ 刺激選択性とコラム構造
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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6
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視覚④
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科目の中での位置付け
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私たちの知覚は,光や音,化学物質,圧力や温度といった,私たちの内部で反応を引き起こす「刺激」を,感覚受容器をとおして取り入れるところから始まる。刺激は,感覚受容器に存在する受容体によって受容されることで,私たちの体内を伝わることができる電気の信号へと変換されるのである。感覚の情報は,電気信号と化学物質の2つの様式にて神経細胞を伝わり,私たちの脳へと伝達される。さらに脳の中で情報が伝わっていき,最終的に私たちの知覚が成立するのである。しかし,情報がただそのまま伝わっていくわけではないということが面白い。感覚受容器の段階から感覚情報の分析が始まるけれども,感覚受容器の段階ですでに大変興味深い分析が行われている。さらに,感覚情報が感覚受容器から大脳へと伝わり,大脳でもさらに分析が行われるが,これらの段階でも興味深い分析が行われているのである。私たちの知覚を実現する段階で,実はけっこうすごい情報処理が行われているのだということを伝えたい。 第03〜08回では,最も研究されている感覚である「視覚」について,光刺激が眼球の網膜に受容され,網膜から大脳へと情報が伝わり,そして大脳で視覚の情報処理が行われる視覚処理経路にて,視覚情報に対して特別な分析が行われていることを説明する。この第06回では,前の回まででお話しした網膜〜第一次視覚野までの情報処理をふまえて,(1) 第一次視覚野以降の視覚処理経路,(2) 腹側経路と背側経路の情報処理の違い,(3) 奥行き手がかりと制約条件による奥行き空間の推定,といった細目にて,第一次視覚野以降に「ものを見る」視覚情報がどのような視覚処理経路をたどるのか,そして視覚処理経路の中で分析される「奥行き」感について考えていく。 この回で学んだ視覚の特性を,第03〜05回および第07〜08回で学ぶ視覚の特性とあわせて理解するとともに,この後の第09回以降で聴覚,味覚,嗅覚,触覚について学び,各感覚特性を比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。
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細目①・② M・F・ベアー,B・W・コノーズ,M・A・パラディーソ (2021). カラー版 ベアー コノーズ パラディーソ 神経科学 脳の探求 [改訂版] 第10章 中枢視覚系 p. 253-281. 福田 淳・佐藤 宏道 (2002). 脳と視覚 ー何をどう見るか,第11章 V1以遠の視覚情報処理,p. 231-259. 細目③ 日本バーチャルリアリティ学会VR心理学研究委員会 (2006). だまされる脳 バーチャルリアリティと知覚心理学入門,第2章 脳のだまし方,p. 27-66, 89-99. 藤田 一郎 (2015). 脳がつくる3D世界 立体視のなぞとしくみ,第2〜3章,p. 27-112.
【総説論文】 細目①・② Mishkin, M., Ungerleider, L. G., & Macko, K. A. (1983). Object vision and spatial vision: Two cortical pathways. Trends in Neurosciences, 6, 414-417.
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コマ主題細目
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① 第一次視覚野以降の視覚処理経路 ② 腹側経路と背側経路の情報処理の違い ③ 奥行き手がかりと制約条件による奥行き空間の推定
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細目レベル
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① 大脳皮質の第一次視覚野で明るさ,色,形,運動,奥行き等に分けられて分析された各情報は,分かれたままそれぞれ次の第二次視覚野に送られる。第二次視覚野も均一な構造をしておらず,いくつかの構造に分かれていて,色,形,運動,奥行き等の情報が,第二次視覚野の中の3つの脳領域に分かれて入っていくのである。その後,これらの視覚情報は,色やものの形を分析する視覚経路である「腹側経路」と,運動や奥行きを分析する視覚経路である「背側経路」の2つに大きく分かれて分析されるとする説が有力である。ここでは,視覚の情報が分かれて分析されること,そして分かれたまま情報が他の脳領域に送られることの意義を認識し,視覚の巧妙さを理解することを目指していく。
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② 細目①で説明した大脳皮質での2つの視覚経路の存在は,どのようにして明らかになったのだろうか。サルを対象とした実験ではサルに2つの課題を学習させた。ひとつは,異なる2つの物体を区別できればエサが得られる形状弁別課題,もうひとつは,ランドマークとなる物体の近くにある穴の中に手を伸ばせばエサが得られる位置弁別課題である。これら2つの課題を学習したサルに対して,大脳皮質の側頭葉を損傷させた。その結果,サルは位置の弁別はできている一方,物体の形状弁別ができなくなった。側頭葉損傷により形態視の機能が選択的に阻害されたと考えられた。それに対して,大脳皮質の頭頂葉を損傷させると,サルは物体の形状弁別ができるが,位置がわからなくなった。頭頂葉損傷により空間視の機能が選択的に阻害されたと解釈されたのである。以上のサルの実験とその結果から,腹側経路と背側経路の情報処理の違いについてしっかり理解することが求められる。
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③ カメラで撮影したら二次元のフィルムに外界が写るように,外の世界の像が私たちの網膜に映った段階で,外界の奥行き情報は無くなってしまう。その状態から私たちが奥行きのある空間を知覚するためには,私たちの視覚系で,得られた視覚情報から外界を解釈して,奥行きある外環境だと推定するしかない。これに関わる視覚情報は「奥行き手がかり」と呼ばれており,視覚系によって分析され,奥行きある空間の状態を推定するのに使われる。しかし,奥行き手がかりからだけでは,奥行き関係の推定がひとつに決定できない場合がある。その場合,奥行き関係に答えを出せるように,私たちの脳が「外の世界はこうなっているはずだ」と条件を狭めて推定をしていると考えられている。こうした脳で行われている奥行き推定の様式を理解することがここでの目的である。
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キーワード
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① 腹側経路 ② 背側経路 ③ 物体認知と空間認知 ④ 奥行き手がかり ⑤ 制約条件
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第06回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること 次回までの予習: (1) 第07〜08回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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7
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物体と顔の知覚①
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科目の中での位置付け
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私たちの知覚は,光や音,化学物質,圧力や温度といった,私たちの内部で反応を引き起こす「刺激」を,感覚受容器をとおして取り入れるところから始まる。刺激は,感覚受容器に存在する受容体によって受容されることで,私たちの体内を伝わることができる電気の信号へと変換されるのである。感覚の情報は,電気信号と化学物質の2つの様式にて神経細胞を伝わり,私たちの脳へと伝達される。さらに脳の中で情報が伝わっていき,最終的に私たちの知覚が成立するのである。しかし,情報がただそのまま伝わっていくわけではないということが面白い。感覚受容器の段階から感覚情報の分析が始まるけれども,感覚受容器の段階ですでに大変興味深い分析が行われている。さらに,感覚情報が感覚受容器から大脳へと伝わり,大脳でもさらに分析が行われるが,これらの段階でも興味深い分析が行われているのである。私たちの知覚を実現する段階で,実はけっこうすごい情報処理が行われているのだということを伝えたい。 第06回までの学びで,私たちの左右の眼の網膜に映った映像が視覚系で分析され,ただ検出されるだけでなく,境界部分が強調されたり,答えが決まらない奥行き構造に対して人間が制約条件を当てはめることで答えを出したりする,といったことを理解した。ある程度限定された範囲の分析だけでなく,より広い世界の構造を認識して,適切に行動していくためには,さらにどのような知覚を得ることが必要だろうか。この第07回では,(1) 視野の領域分割と図地分化,(2) 主観的輪郭による領域分割,(3) 知覚的体制化とゲシュタルト要因,といった,検出した対象を背景から分離したり,複数の対象をまとめあげたりして,ひとかたまりの構造として認識するという知覚の機能について説明する。 この回で学んだ視覚の特性を,第03〜06回で学んだ視覚の特性とあわせて理解するとともに,この後の第09回以降で聴覚,味覚,嗅覚,触覚について学び,各感覚特性を比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。
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細目①〜③ 村上 郁也 (2019). Progress & Application 知覚心理学 サイエンス社 p. 175-185. 大山 正・今井 省吾・和気 典二 (1994). 新編 感覚・知覚心理学ハンドブック,10. 形の知覚,p. 606-658. 細目② ドナルド・D・ホフマン (2003). 視覚の文法 脳が物を見る法則,第3章 輝ける見えない表面,p. 73-111.
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コマ主題細目
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① 視野の領域分割と図地分化 ② 主観的輪郭による領域分割 ③ 知覚的体制化とゲシュタルト要因
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細目レベル
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① 第6回までで説明してきたように,左右の眼に映った映像が視覚系で分析されて知覚の成立へとつながるが,私たちは視野内にある視覚情報をすべて同じように扱っているわけではない。歩道を歩いているときに注目するのは車や他の歩行者であり,建物や電柱は背景として扱われ注目されていない。一方で,その日泊まるホテルを探しているときには,建物が注目される対象となるだろう。このように,観察者の注目度や認識によって,視空間内の情報の扱われ方が変わってくるのである。私たちは視野内の空間の情報を,どのようにして「もの(図)」と「背景(地)」とに分割しているのか,さまざまな事例,特にその分割があいまいとなって見える図形をもとに考えていく。この「図地分化」と呼ばれる私たちの知覚様式について理解をすることを目指す。
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② 視空間内が「もの(図)」と「背景(地)」とに分割される場合,明確な明るさの差があれば,差があるところを境界として領域が分割される。しかし,明確な差(境界)が無い,均質な領域同士であっても,別々の領域であるように知覚される場合がある。明るさの違い等の視覚特性の変化がない部分に主観的に知覚される輪郭のことは「主観的輪郭」と呼ばれる。主観的輪郭で囲まれた領域は,背景領域から明確に分離されて見え,主観的輪郭をもたらす誘導図形に対して手前の部分にあるように見え,背景領域とは明るさが異なって知覚されることが知られる。複数のタイプの主観的輪郭図形を観察しながら,主観的輪郭が知覚される理由を考えていく。ここでは,明るさの差がない場合でも主観的輪郭という知覚的な境界によって領域が分割される可能性に思い至るのが目標である。
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③ 視覚系で分析され,「もの」となるかもしれない個別の対象を,私たちは無関係なバラバラのものとして見ているのではなく,いくつかの要因に従ってそれぞれの要素をまとめて秩序だったものとして知覚している。その知覚的なまとめあげのことは「知覚的体制化/知覚的群化」と呼ばれている。どのようなときに「まとまって知覚される」のか,知覚心理学では,対象同士をまとめあげている要因が「ゲシュタルト要因」としていくつか提案されてきた。近接の要因,類同の要因,共通運命の要因,閉合の要因などである。この知覚の傾向がどうして成立しているものであるのか,いまだ解明されていないことも多いが,その特性を理解することがデザインなどの応用分野でも役に立つ。この知覚的体制化の要因とその特性を理解することが必要となる。
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キーワード
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① 図地分化 ② 図と地 ③ 主観的輪郭 ④ 知覚的体制化/知覚的群化 ⑤ ゲシュタルト要因
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第07回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること 次回までの予習: (1) 第09〜10回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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8
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物体と顔の知覚②
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科目の中での位置付け
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私たちの知覚は,光や音,化学物質,圧力や温度といった,私たちの内部で反応を引き起こす「刺激」を,感覚受容器をとおして取り入れるところから始まる。刺激は,感覚受容器に存在する受容体によって受容されることで,私たちの体内を伝わることができる電気の信号へと変換されるのである。感覚の情報は,電気信号と化学物質の2つの様式にて神経細胞を伝わり,私たちの脳へと伝達される。さらに脳の中で情報が伝わっていき,最終的に私たちの知覚が成立するのである。しかし,情報がただそのまま伝わっていくわけではないということが面白い。感覚受容器の段階から感覚情報の分析が始まるけれども,感覚受容器の段階ですでに大変興味深い分析が行われている。さらに,感覚情報が感覚受容器から大脳へと伝わり,大脳でもさらに分析が行われるが,これらの段階でも興味深い分析が行われているのである。私たちの知覚を実現する段階で,実はけっこうすごい情報処理が行われているのだということを伝えたい。 第06回までの学びで,私たちの左右の眼の網膜に映った映像が視覚系で分析され,ただ検出されるだけでなく,境界部分が強調されたり,答えが決まらない奥行き構造に対して人間が制約条件を当てはめることで答えを出したりする,といったことを理解した。加えて第07回では,検出した対象を背景から分離したり,複数の対象をまとめあげたりして,ひとかたまりの構造として認識するという知覚の機能について説明した。この「1個1個のパーツをまとめた,ひとかたまりの構造」として認識されている代表的な「もの」は「顔」である。顔についての心理学研究によって,目や眉毛,鼻や口といったパーツをそれぞれ分析してまとめあげる以上の,特別な分析が私たちの顔に対してなされていることがわかってきている。この第08回では,特に顔の知覚処理に関係する内容に焦点を当て,(1) 顔の知覚・認知の特殊性,(2) 顔の倒立効果からわかる顔の知覚特性,(3) 顔の空間周波数分析,といったトピックを説明することにより,まとまりをもった全体として認識されている「対象」としての「顔」について理解を深める。 この回で学んだ視覚の特性を,第03〜07回で学んだ視覚の特性とあわせて理解するとともに,この後の第09回以降で聴覚,味覚,嗅覚,触覚について学び,各感覚特性を比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。加えて,この回で理解した内容を,3年次の科目『顔認知とコミュニケーション』の学びへとつなげる。
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細目① 中野 珠実 (2024). 顔に取り憑かれた脳 第1章 顔を見る脳の仕組み p. 17-61. 細目②・③ 吉川 左紀子・益谷 真・中村 真 (編)(1993). 顔と心 —顔の心理学入門— 第8章 顔の認識過程 p. 170-196. 【発展資料:より深く理解をするためにぜひ読んでみよう!】 細目① 山口 真美・柿木 隆介 (編) (2013). 顔を科学する 適応と障害の脳科学 東京大学出版会.p. 107-199.
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コマ主題細目
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① 顔の知覚・認知の特殊性 ② 顔の倒立効果からわかる顔の知覚特性 ③ 顔の空間周波数分析
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細目レベル
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① 私たちは社会で生活するなかで,所属する集団のメンバーを正しく認識し,適切な行動をとる必要があるため,個々の人を表す「顔」を認識することが非常に重要となる。そのため,顔は,第07回で学んだ「複数の対象のまとめあげ」の代表的なものというだけでなく,それ以上の特別な「もの」と言えるかもしれない。たとえば,意味のない模様の配置からも人の顔を認識するという知覚現象がよく知られる。加えて,顔に特化して応答を示す神経細胞が側頭葉から発見されたことをはじめとして,顔に特に強い応答を示す脳領域が存在することも明らかとなっている。さらに,相貌失認と呼ばれる顔に特化した認知障害があることもわかっている。こうした知見は,人間の視覚処理では目や眉毛,鼻や口といったパーツをそれぞれ検出するという以上の,「顔」に特別な分析が行われている可能性を示しているのである。
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② 私たちの視覚系において顔に特化した分析が行われている可能性を支持する代表的な知覚現象が,「顔の倒立効果」と呼ばれる心理現象である。顔を上下逆さにして呈示することで顔認知が困難になるというこの現象は,目や口など個々のパーツをそれぞれ検出してそれらを合計するだけでは起こらない。「眉,目,鼻,口といった顔の構成要素が,このように配置されている」という全体的なパターンを検出する処理が,私たちの視覚系に組み込まれているといってよいだろう。この顔に対する処理のしくみについて,顔の錯視として有名な「サッチャー錯視」を題材として,より深く考えていく。ここでは,顔に対してどのような視覚的処理が行われているのかについて理解したうえで,次の細目③へとつなげる。
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③ 刺激として扱われた光点や線,図形と比べると,「顔」というのは非常に複雑な対象だというのは,ぱっと見てもわかる。では,そのような複雑な対象に対して,どのような視覚的分析が行われているのだろうか。視覚の刺激となる「可視光(線)」は,振動が繰り返される「波」の性質をもち,一定範囲にどれくらいの波の数が繰り返されるかによってパターンが変わってくる。このパターンの数を「空間周波数」と呼ぶ。顔に対して,顔の中のおおまかな明暗の違いの情報(低い空間周波数)から,目や鼻の輪郭や顔のシワ,肌の状態などの微細な情報(高空間周波数)までに分けて分析されていることがわかっている。視覚系はこの空間周波数ごとの分析ををもとにして顔の知覚と認知を成立させていると考えられている。ここでは,顔の空間周波数分析がどのような処理なのか,どの空間周波数範囲が顔知覚・認知に重要なのかを理解することを目指す。
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キーワード
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① 顔ニューロンと紡錘状回顔領域 ② 相貌失認 ③ 顔の倒立効果 ④ サッチャー錯視 ⑤ 空間周波数
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第08回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 顔に対して人間が行っている分析について,文章にまとめて説明してみる 次回までの予習: (1) 第09〜10回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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9
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聴覚①
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科目の中での位置付け
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私たちの生活には,音楽を聴く,目の前の相手の話を聴く,といった経験以外にも,聴覚が役割を果たしている場面が多くある。たとえば,車のエンジンの音やクラクションの音が後ろから聞こえてきたら,「車が後ろから近づいてきているな」と認識する。聴覚が役割を果たしているのが,この例のような「後ろの状況を認識する」という場合であろう。私たち人間の正面200度ぐらいの範囲は視覚によって周囲の状況をとらえることができるけれども,後方の状況をとらえるためには視覚以外の感覚を使う必要がある。このように,「周囲の状況を認識する」という目的を達するために,いくつかの感覚をあわせて,知覚を確実なものにしていると考えてもよいだろう。そういった点から,視覚以外の感覚が外界の認識に果たす役割についても学んでいく必要がある。 第08回までの視覚についての学びで理解したこととして,刺激である光が感覚受容器で視細胞に受容されるところから感覚情報の分析が始まるけれども,この感覚受容器での処理の段階ですでに,大変興味深い分析が行われている。続いて,感覚情報が感覚受容器から大脳へと伝わる段階,そして大脳で感覚情報が処理される段階でも,さらに興味深い分析が行われているのである。こうした刺激の受容段階から大脳での処理に至るまで,けっこうすごい情報処理が行われて,その結果として私たちの知覚が実現されていることが理解できたと思われる。実は聴覚でも,視覚と同様の,大変興味深い情報処理が行われている。聴覚の刺激である「音」を感覚受容器である「耳」で受容する最初の段階で,外からやってきた音がそのまま受容されるわけではなく,集音された音が振動へと変換され,その振動の強さが増幅されているのである。さらに,振動が電気信号へと変換される段階でも,その聴覚の信号が大脳に伝わる段階でも,さらに音がまとまりをもったものとして知覚される段階でも,視覚と似た興味深い分析が行われる。そうした音の処理の不思議さを語る。この第09回では,聴覚の情報処理のなかでも,聴覚の刺激である「音」が感覚受容器である「耳」で受容され,電気信号へと変換されるまでの過程に焦点を当て,(1) 音の性質,(2) 聴覚末梢系の構造,(3) 蝸牛における音の周波数分析,といったトピックを説明することにより,音の受容について理解を深める。 この回で学んだ聴覚の特性を,第03〜08回で学んだ視覚の特性と比較しながら理解するとともに,この後の第11回以降で味覚,嗅覚,触覚について学び,各感覚特性を比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。
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細目① 米村 俊一 (2021). 「音」を理解するための教科書 ―「音」は面白い:人と音とのインタラクションから見た音響・音声処理工学― 第3章 そもそも「音」とはなにか? p. 41-67. 細目② 川崎 悟司 (2022). 人間と比べてわかる 動物のスゴい耳図鑑 宝島社,p. 13-96.
細目②・③ 杉浦 彩子 (2014). 驚異の小器官 耳の科学 -聞こえる仕組みから、めまい、耳掃除まで- 講談社ブルーバックス p. 27-67.
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コマ主題細目
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① 音の性質 ② 聴覚末梢系の構造 ③ 蝸牛における音の周波数分析
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細目レベル
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① 聴覚や音声知覚のしくみについて考える最初として,「音」とはどのようなものなのかを理解する必要がある。音とは空気中を伝わる圧力の変化であり,この音圧の変化は波の性質をもつ。波のてっぺんからてっぺんまで,谷から谷までといった,波1周期分の長さである波長や,この波長が1秒間に何周期分含まれるかという値である周波数でとらえられており,周波数の値が大きいほど高い音として,周波数の値が小さいほど低い音として聴こえる。日常場面で私たちが聴いている音は,波長をひとつだけもった純音であることは非常に少なく,どちらかというとさまざまな波長の波が足し合わされて組み合わさった,複雑な形の波であることが多い。私たちの聴覚のしくみでは,周波数ごとに分析が行われている。ここでは,聴覚における刺激である音の性質について,しっかりと理解することが必要である。
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② 外界からやってきた音刺激を受け取る「耳」について学ぶ。「耳」というと,頭の横に付いている部分のことを思い浮かべるかもしれないが,その頭部の外の部分は「耳介」と呼ばれる構造であり,聴覚末梢系の一部でしかないのである。耳介と,外に開いている耳の穴から頭の内部に音が入ってくる「外耳道」とを併せて,「外耳」と呼んでいる。外耳道の奥にある鼓膜で,空気の音圧の変化が振動へと変換されるのである。この振動は,鼓膜と接している耳小骨と呼ばれる3つの骨によって,効率良く伝えられている。こうした「中耳」の構造から,「内耳」と呼ばれる構造へと振動が伝わる。内耳にある蝸牛によって,振動が聴覚の電気信号へと変換されるのである。これら「外耳」「中耳」「内耳」と合わせた構造が,音を受容する「耳」ということになる。外耳が外の音を集めて中耳に送り,中耳で音を振動に変えて内耳に送り,内耳で振動が分析されるという流れを理解する必要がある。
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③ 聴覚末梢系のうち内耳は,蝸牛,前庭,三半規管から構成される。このうち音の振動を受け取り電気の信号へと変換している場所は蝸牛であり,全長35 mmの薄い骨でできた管が2.75回転巻かれた,カタツムリのような渦巻き形状の器官である。蝸牛内の基底膜の幅と厚みは一様ではなく,先端部にいくに従って幅が広く,厚さが薄い形状をしている。基底膜に伝わってきた音の振動は,高い周波数の音の振動は基底膜の広い部分で,低い周波数の音の振動は基底膜の細い先端部分のあたりで特に振動を強くする。この基底膜の振動は,有毛細胞内の電位を変化させることによって電気の信号へと変換され,聴神経へと伝えられる。このように,蝸牛基底膜では音の高さが振動場所の違いという形によって区別されるのである。
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キーワード
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① 波長と周波数 ② 外耳・中耳・内耳 ③ 音の増幅 ④ 蝸牛基底膜 ⑤ 周波数分析
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第09回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 音を聴覚情報として変換する外耳,中耳,内耳での情報処理のしくみと役割を,文章にまとめて説明する 次回までの予習: (1) 第11〜12回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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10
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聴覚②
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科目の中での位置付け
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私たちの生活には,音楽を聴く,目の前の相手の話を聴く,といった経験以外にも,聴覚が役割を果たしている場面が多くある。たとえば,車のエンジンの音やクラクションの音が後ろから聞こえてきたら,「車が後ろから近づいてきているな」と認識する。聴覚が役割を果たしているのが,この例のような「後ろの状況を認識する」という場合であろう。私たち人間の正面200度ぐらいの範囲は視覚によって周囲の状況をとらえることができるけれども,後方の状況をとらえるためには視覚以外の感覚を使う必要がある。このように,「周囲の状況を認識する」という目的を達するために,いくつかの感覚をあわせて,知覚を確実なものにしていると考えてもよいだろう。そういった点から,視覚以外の感覚が外界の認識に果たす役割についても学んでいく必要がある。 第08回までの視覚についての学びで理解したこととして,刺激である光が感覚受容器で視細胞に受容されるところから感覚情報の分析が始まるけれども,この感覚受容器での処理の段階ですでに,大変興味深い分析が行われている。続いて,感覚情報が感覚受容器から大脳へと伝わる段階,そして大脳で感覚情報が処理される段階でも,さらに興味深い分析が行われているのである。こうした刺激の受容段階から大脳での処理に至るまで,けっこうすごい情報処理が行われて,その結果として私たちの知覚が実現されていることが理解できたと思われる。実は聴覚でも,視覚と同様の,大変興味深い情報処理が行われている。聴覚の刺激である「音」を感覚受容器である「耳」で受容する最初の段階で,外からやってきた音がそのまま受容されるわけではなく,集音された音が振動へと変換され,その振動の強さが増幅されているのである。さらに,振動が電気信号へと変換される段階でも,その聴覚の信号が大脳に伝わる段階でも,さらに音がまとまりをもったものとして知覚される段階でも,視覚と似た興味深い分析が行われる。そうした音の処理の不思議さと巧妙さを語る。この第10回では,前回第09回で説明した聴覚の情報処理がうまくいかなくなった場合の障害である (1) 難聴(聴覚障害)について説明したあと,聴覚の情報処理のなかでも,入力である音から,どのようにして音源の方向を認識しているのか,そしてさまざまな位置にある複数の音源からの音に分離して知覚できているのかという聴覚の情景分析の過程に焦点を当て,(2) 音の方向知覚,(3) 聴覚における知覚的体制化,といった聴覚の特性についてのトピックを説明することにより,音の知覚・認知について理解を深める。 この回で学んだ聴覚の特性を,第03〜08回で学んだ視覚の特性と比較しながら理解するとともに,この後の第11回以降で味覚,嗅覚,触覚について学び,各感覚特性を比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。
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細目① 杉浦 彩子 (2014). 驚異の小器官 耳の科学 -聞こえる仕組みから、めまい、耳掃除まで- 講談社ブルーバックス p. 69-211. 坂田 俊文・白石君男 (2021). 第12章 聴覚異常・補償技術(古川 茂人 (編)(2021). 音響学講座5 聴覚 p. 280-304.) 細目② 飯田 一博 (2021). 5章 空間知覚・両耳聴(古川 茂人 (編)(2021). 音響学講座5 聴覚 p. 98-128.) 細目③ 柏野 牧夫 (2021). 7章 知覚体制化(古川 茂人 (編)(2021). 音響学講座5 聴覚 p. 160-181.) 【発展資料:より深く理解をするためにぜひ読んでみよう!】 細目① 小島 博己 (編)(2023). 耳は悩んでいる 岩波新書 細目③ 柏野 牧夫 (2010). 音のイリュージョン 知覚を生み出す脳の戦略(岩波科学ライブラリー 168) 岩波書店
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コマ主題細目
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① 難聴(聴覚障害) ② 音の方向知覚 ③ 聴覚における知覚的体制化
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細目レベル
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① ここまで聴覚と発声のメカニズムについて説明してきたが,音や音声を聴き取るのが困難になる場合がある。それが「難聴」と呼ばれる聴覚の障害である。まず,難聴は複数の種類に分けられている。前回(第09回 聴覚①)で説明された,音が外耳に入ってから脳に伝わり,音や音声が認識されるまでのどこかの段階で障害が生じると,音や音声が聞こえにくくなる。どういった原因によって難聴が起こっているのかを,まず把握する必要があるだろう。その理解が進むと,原因ごとに,難聴で聞こえが悪くなった状態を補う機器を作り出したり,難聴を治療する方法を考案したりすることが可能になるのである。ここでは,難聴の状態および発生のしくみに応じた補聴機器や治療法の概要を理解することが求められる。
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② 私たちは,さまざまな方向から聞こえてくる音の方向を把握することができている。しかし,前回(第09回 聴覚①)説明した音の波形には「どの位置の音源から発せられた音なのか」という情報が含まれていない。では,私たちはどうして,音がどの方向から聞こえているかを知覚することができているのだろうか。この音源定位/音像定位といった音の方向知覚を実現するための手がかりとなっているのは,両耳間時間差,そして両耳間レベル差といった,両耳の間に生じる音の違いである。加えて,耳介の複雑な形状も,音源定位を助けていることがわかっている。こうしたしくみを使って,私たちは音の方向を推定しているのである。第06回で学んだ,視覚の奥行き推定と似た聴覚のしくみを,視覚と比較しながら理解してみよう。
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③ 細目②で説明した音源定位のしくみも含めて,日常生活を送る私たちの周囲にはたくさんの音があり,複数の方向からさまざまな高さの音が聴取者の耳に届いている。私たちの耳に届いて受容されるのは複合音の波でしかないのだが,私たちはどうやって自らの周囲の豊かな音環境を認識できているだろうか。私たちの聴覚系は,耳に入ってきた複合音の信号から,複数の音源がどの位置に置かれていて,それぞれどのような音が出ているのかに答えを出そうとしている。この分析は「聴覚情景分析」と呼ばれており,たとえば音楽では,この音とこの音がつながってメロディーを形成するのかといった知覚的体制化が生じていたり,この音とこの音が区別されて,別の音源(楽器)から発した別の音だと認識されるという音脈分凝が生じているのである。こうした聴覚情景分析の巧妙さを理解してみよう。
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キーワード
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① 難聴 ② 聴覚情景分析 ③ 音源定位/音像定位 ④ 両耳間時間差・両耳間レベル差 ⑤ 聴覚における知覚的体制化
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第10回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること 次回までの予習: (1) 第11〜12回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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11
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味覚①
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科目の中での位置付け
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私たちが外の世界と関わる目的のひとつが,食料を確保するためである。人間を含む動物は自分の生命を維持するために,体内で作り出せない栄養分を,外の世界から手に入れることができる食物から得て,それを生きていくためのエネルギーに変換している。しかし,外の世界のものを体内に取り入れるということは,自分の身体にとって毒となるものをうっかり取り入れてしまう可能性がある。そこで,体内に物質を取り入れる窓口である「口」に,食べようとしている食料が自分の身体にとって有益なものなのか,それとも有害なものなのかを判断する特殊な感覚が発達したと考えられる。その感覚が「味覚」であると考えることができるだろう。進化の過程では,「甘い」という味覚は,生体にとって重要な,体内に取り入れるべき物質であり,「酸っぱい」「苦い」という味覚は,生体にとって生命維持に害となる物質を示していると考えられた。そうした,狩猟採集の時代にはシンプルだった味覚も,食料が非常に多様化した現代社会では,味覚も複雑化し,味の嗜好,好みも多様化している。私たちは,味覚だけでなく他の感覚や,味に関する記憶や価値判断などさまざまな要因も含めて,食べ物の「おいしさ」を認識しているのである。 味覚でもこれまでに学んだ視覚や聴覚と同様に,食物の中に含まれている化学物質が刺激として,感覚受容器である舌をとおして,味細胞に受容されるところから始まる。この感覚受容器による分析においてすでに,どの味がやってきたのかということが区別されているのである。さらに,その味覚情報が味神経をとおって大脳皮質にもたらされ,他の感覚からの情報や,大脳辺縁系のさまざまな部位とのやりとりを経て,「おいしさ」が認識されていると考えられる。この講義では,味覚についての問題のうち,「私たちはどのようなしくみ(メカニズム)によって複雑な味を区別しているのだろうか」「私たちは味覚情報と他の感覚情報とをどのようにあわせて『おいしさ』を認識しているのか」といった点を考えていくことにしたい。 この第11回では,特に末梢系の味覚情報処理に焦点を当て,(1) 味覚の刺激となる味物質,(2) 味覚を構成する基本味,(3) 味物質を受容する味蕾と味覚受容体のしくみ,について説明する。この回および次回第12回で学んだ味覚の特性は,第13〜14回で学ぶ嗅覚の特性と密接に関連する。両感覚の特性を比較しながら理解するとともに,これまでの視覚や聴覚,そしてこの後に学ぶ触覚とあわせて,各感覚特性を比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。
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コマ主題細目
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① 味覚の刺激となる味物質 ② 味覚を構成する基本味 ③ 味物質を受容する味蕾と味覚受容体のしくみ
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細目レベル
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① 私たちはどういう物質から味を感じているだろうか。私たちが毎日の食事で食べている,たとえばごはんやパン,ラーメンなど「炭水化物」と呼ばれる物質には味がないが,口内で唾液によって炭水化物を分解して糖にすることで,その糖から甘味を感じている。このように,私たちの口に入れて味を感じさせる物質はある程度決まっている。具体的な例を挙げると,甘味を感じさせる物質は糖類や人工甘味料,塩味を感じさせるのは塩化ナトリウム(のナトリウムイオン),酸味を感じさせるのは酢酸,塩酸などからの水素イオン,苦味を感じさせるのはニコチンやカフェインなどであろう。ここでは,どういう味物質からどのような味覚が生じるのかについて,その関係性を理解することが必要である。
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② 私たちが日常の食事から知覚している味は,甘味,酸味といった単一の味のみではなく,さまざまな味が混ざりあった複雑な味である。複雑な味の知覚がどのようにして実現しているかについては古くから,他の味からでは作り出せない基本となる味がいくつか存在していて,それらの味が組み合わさって複雑な味ができていると考えられてきた。そして,この基本となる味がどのようなもので,いくつ存在するのかが問題とされ,長らく議論されてきたのである。この,複雑な味を構成している基本となる味のことを「基本味」と呼ぶ。20世紀には基本味が4つだという考え方が有力だったが,日本人が提唱した「うま味」という味も基本味の1つであることが明らかとなり,現在では基本味が5つであるとされている。ここでは,5つの基本味と,それらが確立した経緯を把握することが求められる。
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③ 光が眼球に入って網膜にある視細胞/光受容細胞で受容され,電気信号に変わったように,味覚でも,味物質を受け入れる味覚の細胞,そして受容体がある。それは味覚受容体として,舌の表面にある味蕾と呼ばれる部位に存在している。複数の種類の味覚受容体が存在していて,それぞれどの物質に対して反応するかが決まっている。つまり,味覚受容体は味物質の構造を区別して反応することで,受容体との対応関係を成立させているのである。味物質が味覚受容体に受容されることで,味物質が電気信号に変わり,味覚の神経を通って脳へと伝えられる。脳では,まず大脳皮質第一次味覚野にて味が識別され,入力された他の感覚の情報とあわせて,食物の複雑な感覚要素が総合的に判断されていると考えられている。ここでは特に,味蕾の構造や味覚受容体のしくみについて十分に理解することが目標である。
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キーワード
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① 味物質 ② 基本味 ③ 味蕾 ④ 味覚受容体 ⑤ ラベルドライン説
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第11回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 【発展課題】味覚受容体が味を区別しているしくみについて文章で説明してみよう 次回までの予習: (1) 第13〜14回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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12
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味覚②
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科目の中での位置付け
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私たちが外の世界と関わる目的のひとつが,食料を確保するためである。人間を含む動物は自分の生命を維持するために,体内で作り出せない栄養分を,外の世界から手に入れることができる食物から得て,それを生きていくためのエネルギーに変換している。しかし,外の世界のものを体内に取り入れるということは,自分の身体にとって毒となるものをうっかり取り入れてしまう可能性がある。そこで,体内に物質を取り入れる窓口である「口」に,食べようとしている食料が自分の身体にとって有益なものなのか,それとも有害なものなのかを判断する特殊な感覚が発達したと考えられる。その感覚が「味覚」であると考えることができるだろう。進化の過程では,「甘い」という味覚は,生体にとって重要な,体内に取り入れるべき物質であり,「酸っぱい」「苦い」という味覚は,生体にとって生命維持に害となる物質を示していると考えられた。そうした,狩猟採集の時代にはシンプルだった味覚も,食料が非常に多様化した現代社会では,味覚も複雑化し,味の嗜好,好みも多様化している。私たちは,味覚だけでなく他の感覚や,味に関する記憶や価値判断などさまざまな要因も含めて,食べ物の「おいしさ」を認識しているのである。 味覚でもこれまでに学んだ視覚や聴覚と同様に,食物の中に含まれている化学物質が刺激として,感覚受容器である舌をとおして,味細胞に受容されるところから始まる。この感覚受容器による分析においてすでに,どの味がやってきたのかということが区別されているのである。さらに,その味覚情報が味神経をとおって大脳皮質にもたらされ,他の感覚からの情報や,大脳辺縁系のさまざまな部位とのやりとりを経て,「おいしさ」が認識されていると考えられる。この講義では,味覚についての問題のうち,「私たちはどのようなしくみ(メカニズム)によって複雑な味を区別しているのだろうか」「私たちは味覚情報と他の感覚情報とをどのようにあわせて『おいしさ』を認識しているのか」といった点を考えていくことにしたい。 この第12回では,(1) 味覚の心理学的性質,(2) 味覚障害,といった点に着目して説明するとともに,特に嗅覚との相互作用の関係性をとりあげ,(3) 味覚と嗅覚の相互作用とその特性についても説明する。前回第11回に続きこの回で学ぶ味覚の特性は,第13〜14回で学ぶ嗅覚の特性と密接に関連する。両感覚の特性を比較しながら理解するとともに,これまでの視覚や聴覚,そしてこの後に学ぶ触覚とあわせて,各感覚特性を比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。
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コマ主題細目
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① 味覚の心理学的性質 ② 味覚障害 ③ 味覚と嗅覚の相互作用とその特性
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細目レベル
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① 味物質が味覚受容体に受容され,味覚の信号として脳へ伝達されるまでの過程によって味が認識されるが,その過程で感じた味はどのような心理学的特性をもつだろうか。ひとつめに,味物質の濃度の限界値である味覚の閾値が,基本味によって違いがあるのだろうか,つまりこの味は感じやすい/感じにくいなど,味の種類によって味の感じ方に違いはあるのだろうかという問題について考える。検討の結果,甘味や塩味に比べて,苦味や酸味の閾値が低いことが示されている。つまり,甘味よりも少ない量の苦味/酸味物質でも苦い/酸っぱいと感じることができるのである。この結果については,苦味や酸味を感じさせるような危険物・毒物を低濃度でも検出できるようになっている可能性があり得る。さらに,舌のなかで舌の先では○○味が感じやすい,舌の奥では●●味が感じやすいといった,舌の部分ごとの味の感じ方の違いはあるのかという問題についても,舌の端の部分では基本味の感じ方に違いはないが,舌の中央部は端の部分と比べて感度が悪いことが示されている。こうした人間の味覚の心理学的特性について理解を深める。
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② 前回(第11回)に理解したように,味物質が味覚受容体に受容されて味覚の信号が脳へ伝達されて情報処理がなされるが,この味覚処理経路のいずれかの段階・過程に異常が生じることによって,味が感じにくかったり,味を感じなかったりといった極端な症状があらわれることを「味覚障害」と呼んでいる。味の感じ方が鈍くなる症状「味覚減退/低下」,味を感じなくなる症状「味覚消失(無味症)」,本当は酸っぱいのに甘く感じるなど違う味を感じる症状「異味症・錯味症」,ある特定の味がわからなくなる症状「解離性味覚障害」がある。加えて,前回(第11回)の細目③で説明した味蕾は10日程度で入れ替わっており,この味蕾の再生に関わっているのが「亜鉛」という物質である。この亜鉛欠乏の効果についても注目したい。
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③ 味覚に関する情報は,舌の上にある味蕾にある味覚受容体から脳へと伝わり分析される。しかしこの情報だけから私たちが「おいしさ」を認識しているのではない。たとえば,風邪をひいて鼻が詰まったとき,食べた食事から味が感じにくかった,という経験がないだろうか。つまり私たちが味を認識するのに「ニオイ」が重要であり,味とニオイが合わさることによって,私たちは食べ物の「おいしさ」を認識しているのではないか。ただし,味とニオイがどんな組み合わせでもよいわけではなく,ニオイによる味覚の増強効果が生じるのは,ニオイに対する味覚イメージと実際の味とが適合する場合である。こうした味覚と嗅覚の相互作用の特性について理解するのがここでの目標である。
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キーワード
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① 味覚の閾値と感度 ② 濾紙ディスク法 ③ 味覚障害 ④ 味嗅覚相互作用 ⑤ 適合性
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第12回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 【発展課題】どのような場合に味嗅覚相互作用が生じるかのポイントについて,文章で説明してみよう 次回までの予習: (1) 第13〜14回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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13
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嗅覚①
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科目の中での位置付け
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私たちが外の世界と関わる目的のひとつが,食料を確保するためである。人間を含む動物は自分の生命を維持するために,体内で作り出せない栄養分を,外の世界から手に入れることができる食物から得て,それを生きていくためのエネルギーに変換している。第11-12回「味覚」で学んだように,外の世界のものを体内に取り入れるということは,自分の身体にとって毒となるものをうっかり取り入れてしまう可能性がある。そのため,物質を体内に取り入れる入口である「口」の段階で,食べようとしている食料が有害なものなのかどうかを判断する。しかし,口に入れた食物が少量で死んでしまうような危険な物質だったら,口に入れた段階で死んでしまうかもしれない。そこで,体内に取り入れる前に,物質から出てくるニオイから有害かどうかを判断するための「嗅覚」が発達したのではないか。進化の過程では,生体にとって重要な,体内に取り入れるべき物質からは良いと感じるニオイが感じられることが適応的であり,生体にとって生命維持に害となる物質からは不快なニオイが感じられることが適応的であろう。 ニオイも味と同じく,非常に多くの種類のニオイがあると言われており,人間や動物がニオイをどのように感じ取って,多種多様なニオイを区別しているのかが問題となる。この講義では,私たちがニオイを受容し感じるしくみについて考えていく。刺激であるニオイ物質と嗅覚受容体との関係,そしてニオイの知覚と認知に焦点を当てて説明をする。 この第13回では,特に刺激であるニオイ物質と嗅覚受容体との関係について,(1) ニオイ物質の特徴と分子構造,(2) 基本となるニオイは存在するか,(3) 嗅細胞による嗅覚情報処理の特徴,について説明する。この回および次回第14回で学ぶ嗅覚の特性は,第11〜12回で学んだ味覚の特性と密接に関連する。両感覚の特性を比較しながら理解するとともに,これまでの視覚や聴覚,そしてこの後に学ぶ触覚とあわせて,各感覚特性を比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。
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細目① 長谷川 登志夫 (2021). 香料化学 におい分子が作るかおりの世界,p. 1-24. 細目② 新村 芳人 (2018). 嗅覚はどう進化してきたか――生き物たちの匂い世界,p. 27-71. 澁谷 達明・市川 眞澄 (編)(2007). 匂いと香りの科学,p. 81-165.
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コマ主題細目
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① ニオイ物質の特徴と分子構造 ② 基本となるニオイは存在するか ③ 嗅細胞による嗅覚情報処理の特徴
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細目レベル
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① 化学物質であるニオイ物質が嗅覚受容体によって受容されることにより,嗅覚の情報処理が始まる。私たちがニオイを感じるにはまず,ニオイを感じさせる刺激である化学物質が鼻の中に到達しないといけない。そのためニオイ物質には,分子量が少ない=重くない物質であり,人間が生活している常温の空間で気体となって漂う物質であるといった条件が必要となる。化学物質には官能基と呼ばれる特定の分子構造をもつものがあって,特定の官能基(分子構造)をもつ物質は同じニオイを発することが知られる。しかし,分子構造は似ているが違うニオイという場合があるし,分子構造は似ていないが似たニオイという場合もある。つまり,分子構造だけではどういうニオイになるかわからない(ニオイが決まらない)ということであろう。嗅覚を理解するために,ニオイ物質の特徴とその構造について理解する必要がある。
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② 人間が感じているニオイの種類は,一説には何十万種類だとも言われている。視覚の場合には原色,味覚の場合には基本味という,複雑な色や味を作り出している色や味が存在するように,嗅覚にも基本のニオイである「原臭/基本臭」が存在するかどうかが,古くから議論されてきた。しかし嗅覚では,「原臭/基本臭」がいろいろ提唱されているものの,現在に至るまで定まっていない。ニオイの表現や分類がかなりあいまいであり,ニオイの種類が何十万種類といわれ,さらにニオイの受容体遺伝子が約400種類存在することが明らかとなっている。これらの知見から,どうもニオイと嗅覚受容体は一対一に対応しているのではなく,膨大な数のニオイを嗅ぎ分けるために,複雑な情報処理が行われているのである。これらのことを理解したうえで,次のニオイの情報処理の学びへと進む必要がある。
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③ 光が眼球に入って網膜にある視細胞/光受容細胞で受容され,電気信号に変わったように,嗅覚でも,ニオイ物質を受け入れる嗅覚の細胞,そして嗅覚受容体がある。ニオイ物質が鼻へと入ってくると,鼻腔最上部の嗅上皮と呼ばれる粘膜に吸収される。この粘膜には嗅細胞から伸びている嗅繊毛があり,嗅繊毛に存在する嗅覚受容体によって,ニオイ物質が受容される。他の感覚と異なる点は,ニオイ物質は複数の嗅覚受容体に受容され,嗅覚受容体も,構造的に類似した複数のニオイ分子に対して反応できる。つまり,ニオイ物質と嗅覚受容体は,一対一の関係ではなく,多対多の関係をもつのである。複数の受容体からもたらされる応答パターンができて,それが嗅球の僧帽細胞に伝えられる。この神経パターンの違いによって,私たちは複雑なニオイを識別していると考えられている(アクロスファイバーパターン説)。
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キーワード
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① ニオイ物質 ② 嗅覚受容体 ③ 嗅上皮 ④ 嗅細胞 ⑤ アクロスファイバーパターン説
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第13回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 【発展】ニオイ分子と嗅覚受容体との関係にはどのような特徴があるか,味覚の場合と比較して,詳細に説明できるように文章にまとめて説明する 次回までの予習: (1) 第15〜16回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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14
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嗅覚②
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科目の中での位置付け
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私たちが外の世界と関わる目的のひとつが,食料を確保するためである。人間を含む動物は自分の生命を維持するために,体内で作り出せない栄養分を,外の世界から手に入れることができる食物から得て,それを生きていくためのエネルギーに変換している。第11-12回「味覚」で学んだように,外の世界のものを体内に取り入れるということは,自分の身体にとって毒となるものをうっかり取り入れてしまう可能性がある。そのため,物質を体内に取り入れる入口である「口」の段階で,食べようとしている食料が有害なものなのかどうかを判断する。しかし,口に入れた食物が少量で死んでしまうような危険な物質だったら,口に入れた段階で死んでしまうかもしれない。そこで,体内に取り入れる前に,物質から出てくるニオイから有害かどうかを判断するための「嗅覚」が発達したのではないか。進化の過程では,生体にとって重要な,体内に取り入れるべき物質からは良いと感じるニオイが感じられることが適応的であり,生体にとって生命維持に害となる物質からは不快なニオイが感じられることが適応的であろう。 ニオイも味と同じく,非常に多くの種類のニオイがあると言われており,人間や動物がニオイをどのように感じ取って,多種多様なニオイを区別しているのかが問題となる。この講義では,私たちがニオイを受容し感じるしくみについて考えていく。刺激であるニオイ物質と嗅覚受容体との関係,そしてニオイの知覚と認知に焦点を当てて説明をする。 この第14回では,特に人間の嗅覚やニオイ認知の性質について,(1) 動物と人間の嗅覚の違い,(2) 人間の嗅覚の性質と嗅覚障害,(3) ニオイの認知と学習,のそれぞれについて説明する。前回第13回およびこの回で学ぶ嗅覚の特性は,第11〜12回で学んだ味覚の特性と密接に関連する。両感覚の特性を比較しながら理解するとともに,これまでの視覚や聴覚,そしてこの後に学ぶ触覚とあわせて,各感覚特性を比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。
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細目② 澁谷 達明・市川 眞澄 (編)(2007). 匂いと香りの科学,p. 184-202.
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コマ主題細目
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① 動物と人間の嗅覚の違い ② 人間の嗅覚の性質と嗅覚障害 ③ ニオイの認知と学習
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細目レベル
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① 人間の嗅覚の情報処理およびニオイの知覚・認知に関係して,動物のなかには人間よりも嗅覚の感度が良いとされる動物がいることが知られている。たとえば,嗅覚遺伝子の数を動物種同士で比較すると,人間は他の哺乳類と比べて多いほうではない。またニオイの感度でも,特にイヌは「人間の●億倍も鼻が良い」などと一般に言われている。そのイヌと人間の嗅覚感度の違いは,嗅覚受容体や嗅細胞の性能が違うからではなく,嗅上皮の面積や嗅細胞の数の違いのためだと考えられている。さらに動物は,人間がもつのとは別の嗅覚情報処理経路である,副嗅球系の経路をもつことも知られている。こうした人間と動物との嗅覚の違いについてみていくことで,生物の嗅覚について,より深い理解を得ることを目指す。
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② 嗅覚の情報処理によって実現している,人間の嗅覚の性質とはどのようなものか。基礎研究分野および応用分野では,オルファクトメーターと呼ばれる装置を使い,人間の嗅覚の閾値を測定する。その閾値測定の結果,個人内では変動が少ない一方,個人間では変動が多い,つまり嗅覚の個人差が大きいことがわかっている。ニオイの感度に影響を与える要因として,年齢,男女差,そして喫煙数といった要因がある。さらに,嗅覚の感度が著しく悪い(低い),もしくは嗅覚の情報処理にエラーが出ている状態が,嗅覚障害と呼ばれる状態である。ここではニオイの知覚について,人間の嗅覚の性質と障害を把握することを目指す。
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③ ニオイに対する認知は人によって違いがあることがわかっている。生まれ育ってきた国の違い,あるいは日本国内でも生まれ育った場所の違いによって,ニオイの好みに違いがあるのである。生まれてから成長するまでの一定の期間を過ごしていく間にニオイに接していくことで,そのニオイに馴染んでいくのだろう。さらに,それまで馴染んでいないニオイであっても,そのニオイを経験させることによって,ニオイの認知や好みが変化するという報告もある。そうした研究の結果から,育った環境やその文化的背景,そしてそこで得た食生活経験によって,ニオイに対する反応が後天的に形づくられているのではないかと考えることができるだろう。そうしたニオイの認知と学習についての研究結果をしっかり理解することを目標とする。
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キーワード
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① 副嗅球系 ② ニオイの感度 ③ 嗅覚障害 ④ ニオイ認知 ⑤ ニオイの学習
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第14回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 【発展課題】ニオイの認知が個人個人でどのように形成されるのかを,国際比較,地域間比較の研究結果を例にだしながら,論理的に文章にまとめて説明する 次回までの予習: (1) 第15〜16回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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15
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触覚と体性感覚①
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科目の中での位置付け
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人間として生きていくためには外の世界と「ふれあう」ことが大事である。自分が手を伸ばして外の世界に「ふれる」だけでなく,誰かの手によって自分の身体に「ふれられる」ことから,自分の外の世界と関わるコミュニケーションが始まる。そのような外界と関わる感覚である触覚にもとづくコミュニケーションが成立するのは,触覚および触覚を含む体性感覚の特性が大きく関係している。ひとつめは,感覚受容器がほぼ全身の皮膚内にはりめぐらされていることであろう。これは,目(網膜)や耳,舌や鼻(の中)といった限られた場所にしか感覚受容器が存在しない他の感覚と異なる点である。ふたつめは,手の平や足の裏には他の身体場所よりも,感覚受容器が数多く存在していることである。これは,自分が対象にふれたときに感度を良くするためであろう。ただ何かを触るだけでなく,感覚受容器が密に存在する手や足を使って外の世界に主体的に触れていくことで,外の世界がどうなっているかを積極的に認識しているのである。悲しいことに事故などで手足を失ってしまった場合に,そうした外の世界と関わるための情報処理が変化する(してしまう)可能性があることも知られている。自分の身体の状態が変わったり,外の状態が変わったりしたとしても,私たち人間はこの「可塑性(かそせい)」と呼ばれるしくみによって適応することができるのである。こうした「さわる」「ふれあう」ことに関する情報処理について考えていくことにしよう。 この第15回では,触覚や,振動覚,温冷感覚の感覚・知覚について,(1)皮膚と受容体の分布,(2) 機械受容器の種類とその特性,(3) 体性感覚野の特性,のそれぞれについて説明する。この第15回および次回第16回で学んだ触覚と体性感覚の特性を,第14回までの4つの感覚特性と比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。
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細目② 田﨑 權一 (2017). 触覚の心理学 認知と感情の世界 第2章 触覚の生理的基礎,p. 13-23. 岩村 吉晃 (2001). タッチ 第2章 タッチの生理学,p. 26-29. 細目③ 岩村 吉晃 (2001). タッチ 第3章 タッチの大脳表現,p. 55-80.
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コマ主題細目
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① ふれあうことの重要性 ② 皮膚内の受容器分布状態および受容器の種類と特性 ③ 体性感覚野の特性
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細目レベル
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① 私たちにとって「さわる」「ふれあう」ことの重要性は,心理学の歴史の中でけっこう古くから言及されていた。心理学者ハーロウは,生まれたばかりのアカゲザルを対象として「代理母(親)実験」と呼ばれる実験を行った。生まれたばかりのアカゲザルの子を母親から引き離し,人工的に作られた,針金を組んで作られた針金製の身体に乳が出る哺乳ビンを取り付けた針金製の母親と,柔らかい布で作られた布製の身体に頭部が取り付けられた布製の母親の,2種類の母親を与えた。アカゲザルの子どもは,食事を得るとき以外の大部分の時間を布製の代理母親にしがみついていたのである。この結果は,母親(養育者)との愛着形成には授乳は重要なものではなく,温かい接触が重要であると解釈されている。こうした温かい接触の重要性は,ペットロボットとの接触や,人間の子どもの木育活動にも表れていると考えることができる。
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② 触覚(皮膚感覚)の感覚受容器は身体全体に分布している。怪我や麻痺状態など特殊な場合を除けば,しっかり触られたときに「触られたと感じない」場所は無いと思われる。しかし分布は一様ではなく身体部位によって変わり,皮膚のうち指先,手のひら,足の裏(足底)といった無毛部に,受容器が特に密に分布している。触圧覚の受容器は機械受容器といい,マイスナー小体,メルケル盤,パチニ小体,ルフィニ終末に分類され,刺激に対する応答範囲や応答特性がそれぞれ異なっている。また,温度感覚に関する温冷受容器,痛みに関する侵害受容器/痛覚受容器も皮膚内に多数存在しており,私たちが感じている皮膚感覚の特性は,これらの受容器の分布や特性に応じて決まっている。ここでは皮膚内の感覚受容器の分布の状態およびそれらの特性を理解する必要がある。
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③ 手や足をはじめとする末梢から伝導された体性感覚情報は,視床を通じて,大脳皮質の頭頂葉にある体性感覚野へと送られる。第一次体性感覚野へと入力された体性感覚情報は,第二次体性感覚野などの他の体性感覚野と密接につながり情報を処理している。脳神経外科医のペンフィールドからの,脳の特定の部位を電極で刺激した際の心的体験の報告以来,体性感覚野の特徴が調べられてきた。特徴のひとつめは,大脳皮質でも末梢からの情報同士の関係性がある程度保たれたまま情報が扱われる体部位局在表現である。ふたつめは,身体部位によって,その情報が扱われる体性感覚野の領域と広さが異なるという点である。特に,顔(特に唇)や手を担当する脳領域が広いことが知られている。こうした体性感覚野の特徴を理解することがここでの目的である。
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キーワード
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① 皮膚 ② 有毛部と無毛部 ③ 機械受容器 ④ 侵害受容器/痛覚受容器 ⑤ 体性感覚野
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第15回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること 次回までの予習: (1) 第17〜18回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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16
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触覚と体性感覚②
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科目の中での位置付け
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人間として生きていくためには外の世界と「ふれあう」ことが大事である。自分が手を伸ばして外の世界に「ふれる」だけでなく,誰かの手によって自分の身体に「ふれられる」ことから,自分の外の世界と関わるコミュニケーションが始まる。そのような外界と関わる感覚である触覚にもとづくコミュニケーションが成立するのは,触覚および触覚を含む体性感覚の特性が大きく関係している。ひとつめは,感覚受容器がほぼ全身の皮膚内にはりめぐらされていることであろう。これは,目(網膜)や耳,舌や鼻(の中)といった限られた場所にしか感覚受容器が存在しない他の感覚と異なる点である。ふたつめは,手の平や足の裏には他の身体場所よりも,感覚受容器が数多く存在していることである。これは,自分が対象にふれたときに感度を良くするためであろう。ただ何かを触るだけでなく,感覚受容器が密に存在する手や足を使って外の世界に主体的に触れていくことで,外の世界がどうなっているかを積極的に認識しているのである。悲しいことに事故などで手足を失ってしまった場合に,そうした外の世界と関わるための情報処理が変化する(してしまう)可能性があることも知られている。自分の身体の状態が変わったり,外の状態が変わったりしたとしても,私たち人間はこの「可塑性(かそせい)」と呼ばれるしくみによって適応することができるのである。こうした「さわる」「ふれあう」ことに関する情報処理について考えていくことにしよう。 この第16回では,第15回で説明した体性感覚の情報処理のしくみをふまえ,自分の身体の状態が変わったり,外の状態が変わったりした場合に,外の世界と関わるための情報処理が変化する(してしまう)可能性である (1) 幻肢と知覚の可塑性について説明する。これに続いて,触覚を含む皮膚感覚の心理学的特性である (2) 皮膚感覚の基本特性と加齢変化,そして感覚受容器が密に存在する手や足を使って,より積極的に外の世界に主体的に触れていく (3) アクティブタッチ:主体的な触認知,といった点について説明する。前回第15回およびこの第16回で学んだ触覚と体性感覚の特性を,第14回までの4つの感覚特性と比較することで,知覚の統一的な理解を目指す。
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細目① 岩村 吉晃 (2001). タッチ 第7章 認識の基盤としての体性感覚,p. 167-206. 細目② 田﨑 權一 (2017). 触覚の心理学 認知と感情の世界 第3章 触覚の知覚現象のいろいろ,p. 25-49. 岩村 吉晃 (2001). タッチ p. 19-24, 42-53. 細目③ 岩村 吉晃 (2001). タッチ 第6章 さわる,さわられる,p. 147-165.
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コマ主題細目
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① 幻肢と知覚の可塑性 ② 皮膚感覚の基本特性と加齢変化 ③ アクティブタッチ:主体的な触認知
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細目レベル
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① 私たちが外の世界を認識するのに非常に重要である,皮膚感覚の情報をもたらしている手や指,足が失われてしまったらどうなるだろうか。事故などで手や足を失ってしまった人が,まだ手や足が存在するかのように感じる,あるいはその失った手足の位置からの痛みを感じるという症状が報告されており,「幻肢(痛)」と呼ばれている。手や足といった末梢から入力される情報が失われると,それを受け取ってきた脳の中の情報処理が変化する可能性がある。自分の身体の状態が変わった場合,外の状態が変わった場合であっても,「可塑性(かそせい)」と呼ばれるしくみによって人間も動物も,状態の変化に適応することができるのである。幻肢(痛)を題材とした可塑性の役割について,理解を深めることを目指す。
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② 皮膚感覚という感覚は「触圧覚」「振動覚」「温度感覚」「痛覚」といった感覚に分類される。これらの感覚の特性はどういったものだろうか。それを明らかにする心理学実験に,「触2点閾」と呼ばれる触圧覚の空間的限界値を測定する実験がある。この実験の結果,感度が良いのが顔や手足の指先であることが明らかになっている。この結果の傾向は,前回第15回に理解した機械受容器が密に分布する場所,体性感覚野で広く表現されている身体部位の両者と関係がありそうではないだろうか。ここでは,「触圧覚」「振動覚」「温度感覚」「痛覚」のそれぞれで,身体部位ごとに閾値がどう異なるか,そして歳をとるごとにその閾値がどのように変わっていくのかについて,整理して理解することが目標となる。
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③ 私たちは,誰かに皮膚を触られて反応する機械受容器からの情報や,熱い/冷たい温度刺激に対して反応する温点と冷点と呼ばれる温冷受容器からの情報といった感覚だけを受身的に(受動的に)感じているのではない。感覚受容器が密に存在する手や足を伸ばして主体的に外界に触れていくことで,外の世界がどうなっているかを積極的に認識している。そのような主体的・能動的な触認知を「アクティブタッチ」と呼ぶ。このアクティブタッチを実現するには,大脳皮質運動野からの運動指令によって手を動かして,つまり手の位置を変化させ続けながら,その瞬間瞬間の手の位置での対象の触覚をまとめ上げて,「これはどういう対象だろうか?」と判断する必要がある。手や指,足といった末梢から中枢である脳まで,あるいは脳から手足までといった,触行動についての情報のやりとりと情報処理のメカニズムを理解することを目指す。
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キーワード
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① 幻肢(痛) ② 可塑性 ③ 触2点閾 ④ 温点と冷点 ⑤ アクティブタッチ
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第16回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 【発展課題】皮膚感覚(触覚,振動覚,温冷感覚,痛覚)の基本特性と加齢変化について,受容器の分布や特性とからめて文章にまとめて説明してみよう 次回までの予習: (1) 第17〜18回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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17
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注意①
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科目の中での位置付け
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何かに集中できない,テスト勉強で用語が覚えられない,あるいは覚えても記憶が定着せずすぐに忘れてしまう,短い思考時間で判断したことによって失敗してしまうなど,私たちが日常生活を送るなかで,限界を感じることがあるだろう。これらの限界は,私たち人間の情報処理のなかでどこに限界があるからなのだろうか? ここまでの回で説明してきたように,感覚受容器によって刺激が受容されるところから人間の情報処理が始まる。感覚受容器を構成している神経細胞により刺激が信号へと変換されて脳まで伝達されるなかで,感覚情報の分析が行われる。視覚を例にすれば,網膜の視細胞/光受容細胞によって光が視覚の信号に変換され,大脳皮質の視覚野に伝達され,視覚情報の分析がなされる。このとき,線分の方位や運動方向をとらえる情報処理には限界が非常に大きく(限界は神経細胞の応答限界であろう),上で述べたような意識的な限界に関わっているとは考えにくい。そうすると,感覚情報の分析よりも高次の情報処理の段階に限界があるのだろう。こうした限界も含めた,注意,記憶,知識,思考・推論といった認知機能の特性を理解することが,情報処理システムとしての人間の知覚・認知の理解を進めるだろう。 第17回から第20回にて,「注意」と呼ばれる認知機能について説明する。みなさんは日常のなかで「注意を引く」「ご注意ください」「注意が足りない」など,「注意」という言葉をなにげなく使っているだろう。しかし,注意とはどんなものかと質問されると,正確に答えるのがなかなか難しいのではないだろうか。上で述べた言葉から考えると,注意にはどうも「何かに向けられたり向けられなかったり,移動したりするもの」「(足りないということは)一定の量があるもの」といった一般的なイメージがあるものだと推測することができる。心理学の分野で,この物理的な実体が無い「注意」という機能が,どのようなものとして考えられ,どのように実証的に研究され,そしてどのようなことが明らかにされてきたのかを説明していく。 この第17回では,(1) 注意研究の歴史的な流れについて簡単に説明したうえで,「選択」という観点から,入ってきた感覚情報に対して「注意による選択」がどのように行われて,どのような注意の効果がもたらされるのかについて,(2) 両耳分離聴による注意研究,(3) 注意の初期選択と後期選択の研究を説明する。次回第18〜20回の注意についての説明,第21回以降の記憶,知識,思考と推論についての説明と併せて,人間の認知の特性について総合的に理解することを目指す。
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岩崎 祥一 (2011). 現代の認知心理学4 注意と安全 第1章 注意の理論とその歴史 北大路書房,p. 2-35. 河原 純一郎・横澤 一彦 (2015). 注意 選択と統合 第6章 注意選択の段階 勁草書房,p. 211-256.
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コマ主題細目
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① 注意研究の歴史的な流れ ② 両耳分離聴による注意研究 ③ 注意の初期選択と後期選択:どの時点で選択されるのか?
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細目レベル
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① 私たちは常に膨大な量の情報を受け取っているが,それらをすべて完璧に処理していくのは人間の情報処理能力では不可能である。そこで,必要な情報だけを選択して,それを詳細に分析する過程が重要となってくる。それが注意と呼ばれる認知機能である。心理学者ウィリアム・ジェームズは1890年の著作のなかで,注意は誰もが知っている,我々にとって馴染みのある機能であると述べ,注意による選択の役割について言及している。しかし20世紀の実験心理学分野では行動主義が隆盛であり,注意,記憶,思考といった内的な精神操作や構造に関する研究は下火になっていたようである。その後,コンピュータの誕生から人間を情報処理システムとしてとらえる考え方が広がり,認知心理学へとつながっていくのである。
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② たくさんの人が集まっていて多くの会話が飛び交っているパーティー会場は,膨大な量の音声情報であふれている。周囲の話し声の音量が非常に大きくなっている会場であっても,隣で話している相手の会話に注意を向けることで,会話を聞き取ることができる。「カクテルパーティー効果」と呼ばれ,選択的注意の効果の例である。初期の注意研究では,このような複数の音声が聞こえてくる状況のなかで,特定の音声に注意を向けるという方法が採用された。ヘッドフォンをから実験参加者の左右の耳に同時に異なる音声を与える,両耳分離聴と呼ばれる方法で音声刺激が提示され,どちらか一方の音声に注意を向けてその音声をそのまま口に出させる追唱と呼ばれる選択法を採用した。この音声と注意に関する研究方法を理解することが目的である。
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③ 初期の注意研究では,複数の音声から特定の音声が選択される場合に,情報処理のどの段階で選択されるのかという問題が議論された。ひとつは,感覚情報がより後の処理段階に送られるときに注意のフィルタがかかって情報が選択される「初期選択」の可能性で,ブロードベントのフィルタモデルや,そのモデルの修正であるトリーズマンの減衰モデルが提案された。それに対して,感覚情報が詳細に分析された後の段階になって注意の選択がなされる「後期選択」の可能性もドイッチュらのモデルによって主張された。そして,それぞれの可能性を支持する実験結果が報告されたのである。これらのモデルのしくみと,それを支持する研究結果を,まとめて理解することが目的である。
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キーワード
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① カクテルパーティー効果 ② 両耳分離聴 ③ 追唱 ④ 初期選択:フィルタモデル・減衰モデル ⑤ 後期選択:後期選択モデル
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第17回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること 次回までの予習: (1) 第19〜20回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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注意②
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科目の中での位置付け
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何かに集中できない,テスト勉強で用語が覚えられない,あるいは覚えても記憶が定着せずすぐに忘れてしまう,短い思考時間で判断したことによって失敗してしまうなど,私たちが日常生活を送るなかで,限界を感じることがあるだろう。これらの限界は,私たち人間の情報処理のなかでどこに限界があるからなのだろうか? ここまでの回で説明してきたように,感覚受容器によって刺激が受容されるところから人間の情報処理が始まる。感覚受容器を構成している神経細胞により刺激が信号へと変換されて脳まで伝達されるなかで,感覚情報の分析が行われる。視覚を例にすれば,網膜の視細胞/光受容細胞によって光が視覚の信号に変換され,大脳皮質の視覚野に伝達され,視覚情報の分析がなされる。このとき,線分の方位や運動方向をとらえる情報処理には限界が非常に大きく(限界は神経細胞の応答限界であろう),上で述べたような意識的な限界に関わっているとは考えにくい。そうすると,感覚情報の分析よりも高次の情報処理の段階に限界があるのだろう。こうした限界も含めた,注意,記憶,知識,思考・推論といった認知機能の特性を理解することが,情報処理システムとしての人間の知覚・認知の理解を進めるだろう。 第17回から第20回にて,「注意」と呼ばれる認知機能について説明する。みなさんは日常のなかで「注意を引く」「ご注意ください」「注意が足りない」など,「注意」という言葉をなにげなく使っているだろう。しかし,注意とはどんなものかと質問されると,正確に答えるのがなかなか難しいのではないだろうか。上で述べた言葉から考えると,注意にはどうも「何かに向けられたり向けられなかったり,移動したりするもの」「(足りないということは)一定の量があるもの」といった一般的なイメージがあるものだと推測することができる。心理学の分野で,この物理的な実体が無い「注意」という機能が,どのようなものとして考えられ,どのように実証的に研究され,そしてどのようなことが明らかにされてきたのかを説明していく。 この第18回では,第17回で説明した初期の注意研究の流れをふまえ,注意を情報処理のための資源と考える考え方についてとりあげる。(1) 注意の容量と注意資源配分について,代表的なモデルおよび注意資源配分を調べる二重課題法と呼ばれる実験方法について説明する。続いて,(2) 物理的な実体が無い「注意」という機能を測定するために使われる反応時間という指標と,反応時間から情報処理にかかる処理時間を割り出す減算法の考え方について説明する。そして,(3) 代表的な注意の研究方法である先行手がかり法について説明する。第17回,次回第19〜20回の注意についての説明,第21回以降の記憶,知識,思考と推論についての説明と併せて,人間の認知の特性について総合的に理解することを目指す。
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細目① 岩崎 祥一 (2011). 現代の認知心理学4 注意と安全 第1章 注意の理論とその歴史 北大路書房,p. 2-35. 河原 純一郎・横澤 一彦 (2015). 注意 選択と統合 第6章 注意選択の段階 勁草書房,p. 211-256.
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コマ主題細目
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① 注意の容量と注意資源配分 ② 反応時間:注意を測定するとは ③ 先行手がかり法による注意研究
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細目レベル
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① なぜ情報処理には限界があるのだろうかという疑問に対するひとつの答えとして,「情報処理にはある程度の認知的な資源が必要であり,その資源の容量に限界がある」という説が有力になった。カーネマン(Kahneman)の容量モデルでは,さまざまな活動に対して,必要に応じて,注意の容量の範囲内で,認知資源/注意資源を情報処理に配分していると説明されている。私たちの注意容量や注意資源配分について,実験参加者に2つ(以上)の課題を同時に課して遂行させる「二重課題」という実験方法を使って検討が行われている。ここでは,容量モデルならびに関連する注意研究の流れをしっかりと理解する必要がある。そうすれば,「歩きスマホ」「ながら運転」がなぜダメな行為なのかも理解できるだろう。
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② ここまで述べてきた注意という認知機能は,具体的にどのようにとらえられてきただろうか。注意のはたらきという心的活動を直接観察することはできない。そこで,刺激が提示されてから反応が生起するまでにかかった時間である「反応時間」を測定することで,情報処理にかかった注意のはたらきを間接的にとらえようとするのである。しかし,注意の効果を反応時間の絶対量として測定できないため,実験条件間での反応時間の差分を計算することで,人間が行っている心的処理である注意のはたらきの度合を推測する,減算法によって注意の効果を求めているのである。その代表的な方法である先行手がかり法を紹介し,減算法による注意の効果の求め方について考えていく。
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③ 注意についての研究が進むと,「注意」という認知機能が単一なものではなく,その特徴から複数に分類できるのではないかと考えられるようになった。対象に対してある程度自動的に引きつけられる注意と,自分から意識的に対象に向ける注意があるという分類である。これらはそれぞれ「外発的注意」と「内発的注意」と呼ばれ,前者と後者では効果をもたらす時間のタイミングが異なることが報告されている。外発的注意は,ターゲットの出現位置のあたりに提示される外発的手がかりによって,数十ミリ秒程度というごく短時間で生じるのに対し,内発的注意は,固視点の位置などに提示される内発的手がかりによって,数百ミリ秒程度で生じるという違いがある。これらの複数の注意の違いを把握することが目的である。
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キーワード
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① 注意の容量モデル ② 二重課題 ③ 減算法 ④ 先行手がかり法 ⑤ 外発的注意と内発的注意
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第18回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 【発展課題】「ながら運転」「ながらスマホ」という行動がなぜやってはいけないのか,注意の容量と課題への負荷の観点から,文章にまとめて説明してみよう。 次回までの予習: (1) 第19〜20回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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注意③
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科目の中での位置付け
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何かに集中できない,テスト勉強で用語が覚えられない,あるいは覚えても記憶が定着せずすぐに忘れてしまう,短い思考時間で判断したことによって失敗してしまうなど,私たちが日常生活を送るなかで,限界を感じることがあるだろう。これらの限界は,私たち人間の情報処理のなかでどこに限界があるからなのだろうか? ここまでの回で説明してきたように,感覚受容器によって刺激が受容されるところから人間の情報処理が始まる。感覚受容器を構成している神経細胞により刺激が信号へと変換されて脳まで伝達されるなかで,感覚情報の分析が行われる。視覚を例にすれば,網膜の視細胞/光受容細胞によって光が視覚の信号に変換され,大脳皮質の視覚野に伝達され,視覚情報の分析がなされる。このとき,線分の方位や運動方向をとらえる情報処理には限界が非常に大きく(限界は神経細胞の応答限界であろう),上で述べたような意識的な限界に関わっているとは考えにくい。そうすると,感覚情報の分析よりも高次の情報処理の段階に限界があるのだろう。こうした限界も含めた,注意,記憶,知識,思考・推論といった認知機能の特性を理解することが,情報処理システムとしての人間の知覚・認知の理解を進めるだろう。 第17回から第20回にて,「注意」と呼ばれる認知機能について説明する。みなさんは日常のなかで「注意を引く」「ご注意ください」「注意が足りない」など,「注意」という言葉をなにげなく使っているだろう。しかし,注意とはどんなものかと質問されると,正確に答えるのがなかなか難しいのではないだろうか。上で述べた言葉から考えると,注意にはどうも「何かに向けられたり向けられなかったり,移動したりするもの」「(足りないということは)一定の量があるもの」といった一般的なイメージがあるものだと推測することができる。心理学の分野で,この物理的な実体が無い「注意」という機能が,どのようなものとして考えられ,どのように実証的に研究され,そしてどのようなことが明らかにされてきたのかを説明していく。 この第19回では,第18回で説明した初期の注意研究の流れをふまえ,注意を情報処理のための資源と考える考え方についてとりあげる。(1) 注意のメタファー(比喩)によって注意のはたらきの特性をとらえる考え方を説明する。この説明をふまえて,(2) 視覚探索による視覚的注意研究の概要を説明し,視覚探索を説明するためのモデルである特徴統合理論を中心として (3) 探索モデルで説明される注意のはたらきについて説明する。前回第17〜18回,と次の第20回の注意についての説明,第21回以降の記憶,知識,思考と推論についての説明と併せて,人間の認知の特性について総合的に理解することを目指す。
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細目②〜③ 熊田 孝恒・横澤 一彦 (1994). 特徴統合と視覚的注意 心理学評論,37, 19-43. 横澤 一彦・熊田 孝恒 (1996). 視覚探索—現象とプロセス 認知科学,3, 119-138. 河原 純一郎・横澤 一彦 (2015). 注意 選択と統合 第4章 視覚探索 勁草書房,p. 117-162.
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コマ主題細目
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① 注意のメタファー ② 視覚探索による視覚的注意研究 ③ 探索モデルで説明される注意のはたらき
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細目レベル
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① 私たちは常に膨大な量の情報を受け取っているが,それを全部,詳細な部分まで処理していくのは,人間の情報処理能力では不可能である。そこで,必要な情報を選択する注意の機能が重要な意味をもつ。そんな注意による選択機能は,メタファー(比喩)を用いて現実世界のものにたとえられてきた。そのひとつが,注意をスポットライトにたとえるというメタファーである。スポットライドが舞台の上の対象を照らすように,一定の大きさで分割できない,単一の焦点の注意領域が視野内を移動して,一定の空間的な範囲を選択するというものである。あるいは,注意が選択する空間的範囲の大きさは固定ではなく可変であるという,注意をズームレンズにたとえるメタファーも提唱されている。ここではこうしたメタファーを通じて,空間範囲を選択するときの注意のふるまい方について考える。
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② 私たちは,人混みのなかから待ち合わせの相手の人を探す,コンビニに入って新作の商品を探す,といった具合に,日常的に「探す」という行動を行っている。ここまで述べてきたように,特にコンビニや人混みのような物体がたくさんあるような状況下では,自分の周囲の情報をすべて完璧に処理し,詳細に認識するのは不可能なので,一部に注意を向けて探索しながら分析していく機能が必要となる。視覚的な対象を探索するという課題は「視覚探索」と呼ばれ,この探索課題を用いて数多くの研究が行われている。初期の視覚探索研究で注目されたのは,単一の特徴の中での違うものを探索する特徴探索課題と,2つの特徴を組み合わせた刺激の中から探索する結合探索との,結果の違いである。ここでは視覚探索の基本的な方法と内容を理解することが重要である。
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③ 視覚探索課題で問題とされたのは,探索の対象が多くてもパッと簡単に見つかる場合と,探索の対象が多くなるほど時間をかけて探さないと見つけることができない場合があり,それはどうしてかということである。1970年代〜80年代初めの頃の視覚探索課題の研究にて,単一の特徴の中での違うものを探索する特徴探索でははやく見つかり,2つの特徴を組み合わせた刺激の中から探索する結合探索では時間がかかるという結果の違いを説明するために提案されたのが,特徴統合理論というモデルである。色や方位といった視覚の特徴ごとに分析をする第一段階と,注意によって特徴を統合して対象を認識する第二段階に分けられるというモデルの構造を理解することを目指す。
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キーワード
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① 注意のスポットライト ② 注意の勾配 ③ 視覚探索 ④ 特徴探索と結合探索 ⑤ 特徴統合理論
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第19回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること 次回までの予習: (1) 第21〜22回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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20
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注意④
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科目の中での位置付け
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何かに集中できない,テスト勉強で用語が覚えられない,あるいは覚えても記憶が定着せずすぐに忘れてしまう,短い思考時間で判断したことによって失敗してしまうなど,私たちが日常生活を送るなかで,限界を感じることがあるだろう。これらの限界は,私たち人間の情報処理のなかでどこに限界があるからなのだろうか? ここまでの回で説明してきたように,感覚受容器によって刺激が受容されるところから人間の情報処理が始まる。感覚受容器を構成している神経細胞により刺激が信号へと変換されて脳まで伝達されるなかで,感覚情報の分析が行われる。視覚を例にすれば,網膜の視細胞/光受容細胞によって光が視覚の信号に変換され,大脳皮質の視覚野に伝達され,視覚情報の分析がなされる。このとき,線分の方位や運動方向をとらえる情報処理には限界が非常に大きく(限界は神経細胞の応答限界であろう),上で述べたような意識的な限界に関わっているとは考えにくい。そうすると,感覚情報の分析よりも高次の情報処理の段階に限界があるのだろう。こうした限界も含めた,注意,記憶,知識,思考・推論といった認知機能の特性を理解することが,情報処理システムとしての人間の知覚・認知の理解を進めるだろう。 第17回から第20回にて,「注意」と呼ばれる認知機能について説明する。みなさんは日常のなかで「注意を引く」「ご注意ください」「注意が足りない」など,「注意」という言葉をなにげなく使っているだろう。しかし,注意とはどんなものかと質問されると,正確に答えるのがなかなか難しいのではないだろうか。上で述べた言葉から考えると,注意にはどうも「何かに向けられたり向けられなかったり,移動したりするもの」「(足りないということは)一定の量があるもの」といった一般的なイメージがあるものだと推測することができる。心理学の分野で,この物理的な実体が無い「注意」という機能が,どのようなものとして考えられ,どのように実証的に研究され,そしてどのようなことが明らかにされてきたのかを説明していく。 この第20回では,第19回で説明した視覚探索課題における視覚的注意研究および特徴統合理論のモデルの説明に続き,(1) 対象の顕著性と探索モデルの発展といった,探索課題と注意との関係についてのその後の研究の展開をとりあげる。続いて,(2) 注意の抑制や見落とし,(3) 注意の障害といった,ここまで説明してきた注意機能が抑制される,もしくはうまく機能していない状態について説明する。前回までの第17〜19回と併せて注意のはたらきについてまとめたうえで,第21回以降の記憶,知識,思考と推論についての説明と併せて,人間の認知の特性について総合的に理解することを目指す。
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細目② 河原 純一郎・横澤 一彦 (2015). 注意 選択と統合 第7章 見落としと無視 勁草書房,p. 257-280. 細目③ 緑川 晶・越智 隆太 (2020). 研究テーマ別 注意の生涯発達心理学 第11章 注意と認知症 ナカニシヤ出版,p. 141-147.
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コマ主題細目
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① 対象の顕著性と探索モデルの発展 ② 注意の抑制や見落とし ③ 注意の障害
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細目レベル
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① 前回第19回で説明した特徴統合理論には,その後の実験結果などさまざまな観点から「ちょっと違うのでは?」と批判が出てくるようになった。ひとつは,注意が引きつけられてしまうような目立ちやすいものがあることである。たとえば,漢字の名前ばかりの商品の中にひとつだけカタカナの名前の商品がある,あるいは,青色のパッケージの商品の中にひとつだけ赤色のパッケージの商品があると目立つだろう。これらの例のような目立ちやすさのことを「顕著性」と呼び,その目立ちやすさが分析された結果の部分に注意が向いて,対象が見つけられるのだという顕著性にもとづく探索モデルが提案されている。対象がもつ特徴の顕著性に加えて,探索する者がもつ知識などトップダウンの要素によっても顕著性が変わることもある。現在の研究で主流となっている顕著性と誘導探索モデルについて十分な理解を得ることがここでの目標である。
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② 注意が向けられて対象が見つけられるようになる一方で,注意が向きにくくなる,対象が見つけられにくくなる,対象を見落としてしまう場合があるといった,情報処理がうまくいかなくなったと思われる認知的現象も報告され,なぜそれが発生するのかが研究されてきた。ひとつめは,一度向いた空間や対象には注意が向きにくくなる「復帰抑制」と呼ばれる現象である。ふたつめは,人が入れ替わるなどの変化を見落としてしまう「変化の見落とし/変化盲」と呼ばれる現象である。みっつめは,注意がそらされると対象を見つけにくくなるなど情報処理がうまくできなくなる「非注意による見落とし」の事例である。これらの現象の状況で刺激の処理と注意のふるまいとの関係について考え,理解を深めることが目標である。
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③ 注意が制御されない極端な例として,注意の障害が考えられる。臨床的には,意識の水準を保つ全般的な注意と,注意を一定の方向に向ける方向性注意に分けられ,注意がはたらかない症状を「注意障害」と総称する。代表的な例は,大脳半球の損傷と反対側の空間に気づかない「半側空間無視」と呼ばれる症状である。また,「バリント症候群」という,より広範な注意の障害も報告されている。特に半側空間無視については,右脳半球と左脳半球では左右視野に向ける注意の扱い方が異なるために生じるという説が提唱されており,脳との関係が注目されている。ここでは,注意の障害の事例を把握するとともに,注意のはたらきと脳との関係について理解することを目指す。
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キーワード
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① 顕著性 ② 誘導探索モデル ③ 変化の見落とし/変化盲 ④ 半側空間無視 ⑤ 注意ネットワーク
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第20回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 【発展課題】コンビニでどのような商品の配置にすると目立ちやすくなるか,顕著性と誘導探索モデルを使って理論的に説明してみよう。 次回までの予習: (1) 第21〜22回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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21
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記憶①
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科目の中での位置付け
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何かに集中できない,テスト勉強で用語が覚えられない,あるいは覚えても記憶が定着せずすぐに忘れてしまう,短い思考時間で判断したことによって失敗してしまうなど,私たちが日常生活を送るなかで,限界を感じることがあるだろう。これらの限界は,私たち人間の情報処理のなかでどこに限界があるからなのだろうか? ここまでの回で説明してきたように,感覚受容器によって刺激が受容されるところから人間の情報処理が始まる。感覚受容器を構成している神経細胞により刺激が信号へと変換されて脳まで伝達されるなかで,感覚情報の分析が行われる。視覚を例にすれば,網膜の視細胞/光受容細胞によって光が視覚の信号に変換され,大脳皮質の視覚野に伝達され,視覚情報の分析がなされる。このとき,線分の方位や運動方向をとらえる情報処理には限界が非常に大きく(限界は神経細胞の応答限界であろう),上で述べたような意識的な限界に関わっているとは考えにくい。そうすると,感覚情報の分析よりも高次の情報処理の段階に限界があるのだろう。こうした限界も含めた,注意,記憶,知識,思考・推論といった認知機能の特性を理解することが,情報処理システムとしての人間の知覚・認知の理解を進めるだろう。 この第21回からは「記憶」という認知機能について説明する。記憶といえば,「何かを覚えること」というイメージがあるかもしれない。たとえば,学校のテスト前に漢字や英単語を必死に覚えたという経験は誰しもが持っているだろう。また,覚えた単語や内容がテスト中に思い出せなくて困った,という経験をしたこともあるかもしれない。このように,記憶とは,何かを覚えること(記銘/符号化),覚えたことを忘れないように保つこと(保持/貯蔵),そして思い出すこと(想起/検索)という過程に分けることができる。しかし記憶の役割はこうした過程だけにとどまらず,私たちが生きて活動していくなかで非常に重要な役割を果たしている。私たちの「こころ」に関わる重要な心的機能である「記憶」についてみていくことにしよう。 第21回では,(1) 古典的記憶研究として代表的なエビングハウスの記憶研究と,そこから得られた知見を題材にして,(2) 記憶の測定方法をはじめとする,心理学的な記憶研究の方法の基本について説明する。続いて,(3) 現在の記憶研究に大きな影響をもたらした,「短期記憶」と「長期記憶」という記憶の分類について説明する。次回の第22回以降の記憶のはたらきについてまとめたうえで,記憶と知識との関係,思考や推論についての説明と併せて,人間の認知の特性について総合的に理解することを目指す。
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コマ主題細目
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① 記憶の古典的研究 ② 記憶の測定方法 ③ 保持時間による記憶の分類とそのモデル
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細目レベル
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① 一番古い実証的な記憶研究とされているのが,19世紀後半に心理学者エビングハウスが行った記憶研究である。エビングハウスの記憶研究は以下の2点から,現在にも記憶の理解に重要だとされている。1つめは,この研究によって現在の記憶研究へとつながる重要な研究方法が考案された点である。記憶材料として既に知っている単語を使用すると,単語についての知識が記憶のしやすさに影響を及ぼすこと,記憶すべき単語リスト同士に関係があると連想しやすくなることなどが考えられる。そこで無意味綴りと呼ばれる単語を使用することで,これらの影響を排除しようとしたのである。2つめは,得られた実験の結果である。事柄を記憶してから時間が経つほど覚えていることが難しいという結果が得られ,忘却曲線という概念で現在に伝えられている。古典的な記憶研究を振り返ることで,記憶および記憶研究で重要となる点を理解することを目指す。
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② 何かをどれだけ覚えたかという記憶の程度を測定するにはどうしたらよいだろうか。細目①で学んだように,単語リストなどを研究対象者に記憶してもらい,一定時間覚えておいてもらい,そして一定時間後に覚えたものを思い出してもらうという手法がとられる。この記憶の過程は,覚えることを「記銘/符号化」,一定期間覚えておくことを「保持/貯蔵」,そして覚えたものを思い出すことを「想起/検索」と呼んで区別する。思い出す方法として,覚えたことを口頭もしくは記述で再生してもらうことを「再生」,提示されたものが過去に覚えたものかどうかを判断してもらうことを「再認」と呼び区別する。ここでは記憶の測定法を学び,「再生」と「再認」といった記憶の測定法の違いがあること,再生法はさらにいくつかの方法に分かれていること,再認法も現在では信号検出理論とあわせて分析されていることなど,記憶の測定法の基本について理解を進める。
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③ 20世紀中頃の記憶研究では,記憶の保持時間の長さから,覚えたことを一時的に保持する「短期記憶」と,長期的,永続的に保持する「長期記憶」という2つの記憶に分類されるという考えが有力だった。これに加え,スパーリングが部分報告法という手法で実証した「感覚記憶」を加えて,「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」の3つから構成される記憶モデルが,アトキンソンとシフリンによって提唱されるに至った。ここでは上記の3つの記憶の違いについて詳細を理解することを目的とする。特に,部分報告法という手法と,そこから明らかとなった感覚記憶の特性はどのようなものか,そして記憶範囲/メモリースパンの測定から明らかになった短期記憶の特性はどのようなものかを理解することを目指す。
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キーワード
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① 無意味綴り ② 忘却曲線 ③ 再生と再認 ④ 感覚記憶・短期記憶・長期記憶 ⑤ 記憶範囲(メモリースパン)
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第21回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 【発展課題】記憶の「再生法」と「再認法」の違いについて,実際に研究で使えるようになるように,理解した手続きを文章にまとめて説明してみよう。 次回までの予習: (1) 第23〜24回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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22
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記憶②
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科目の中での位置付け
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何かに集中できない,テスト勉強で用語が覚えられない,あるいは覚えても記憶が定着せずすぐに忘れてしまう,短い思考時間で判断したことによって失敗してしまうなど,私たちが日常生活を送るなかで,限界を感じることがあるだろう。これらの限界は,私たち人間の情報処理のなかでどこに限界があるからなのだろうか? ここまでの回で説明してきたように,感覚受容器によって刺激が受容されるところから人間の情報処理が始まる。感覚受容器を構成している神経細胞により刺激が信号へと変換されて脳まで伝達されるなかで,感覚情報の分析が行われる。視覚を例にすれば,網膜の視細胞/光受容細胞によって光が視覚の信号に変換され,大脳皮質の視覚野に伝達され,視覚情報の分析がなされる。このとき,線分の方位や運動方向をとらえる情報処理には限界が非常に大きく(限界は神経細胞の応答限界であろう),上で述べたような意識的な限界に関わっているとは考えにくい。そうすると,感覚情報の分析よりも高次の情報処理の段階に限界があるのだろう。こうした限界も含めた,注意,記憶,知識,思考・推論といった認知機能の特性を理解することが,情報処理システムとしての人間の知覚・認知の理解を進めるだろう。 第21回からは「記憶」という認知機能について説明する。記憶といえば,「何かを覚えること」というイメージがあるかもしれない。たとえば,学校のテスト前に漢字や英単語を必死に覚えたという経験は誰しもが持っているだろう。また,覚えた単語や内容がテスト中に思い出せなくて困った,という経験をしたこともあるかもしれない。このように,記憶とは,何かを覚えること(記銘/符号化),覚えたことを忘れないように保つこと(保持/貯蔵),そして思い出すこと(想起/検索)という過程に分けることができる。しかし記憶の役割はこうした過程だけにとどまらず,私たちが生きて活動していくなかで非常に重要な役割を果たしている。私たちの「こころ」に関わる重要な心的機能である「記憶」についてみていくことにしよう。 第22回では,アトキンソンとシフリンの記憶モデルを支持する重要な研究結果として,(1) 記憶の系列位置効果と呼ばれる現象を題材にして,(2) 記憶の分類を実証する研究方法について学ぶ。をはじめとする,心理学的な記憶研究の方法の基本について説明する。さらに,(3) 記憶の神経心理学的研究についてみていくことで,記憶の分類についてより詳細に考えていく。前回の第21回および次回第23回以降の記憶のはたらきと併せて記憶について総合的にまとめて理解したうえで,それ以降の記憶と知識との関係,思考や推論についての説明と併せて,人間の認知の特性について総合的に理解することを目指す。
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コマ主題細目
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① 記憶の系列位置効果 ② 系列位置効果が明らかにする記憶の分類 ③ 記憶の神経心理学研究
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細目レベル
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① アトキンソンとシフリンの記憶モデルでは短期記憶と⻑期記憶は異なるメカニズムであるとされている。これらは本当に異なるメカニズムなのだろうか。次のような記憶課題の実験から得られた結果をみてみよう。無意味綴りの単語10〜20個程度から構成される単語リストがあり,実験参加者にそのリストの単語を1つ1つ順番に呈示して覚えていってもらい,リストの単語が全部呈示され終わったら,それを思い出してもらうという記憶課題の実験である。その結果,先頭部の単語と終末部の単語の再生率が高くなることが知られており,「系列位置効果」と呼ばれている。特に,先頭部(1番目や2番目)の単語が思い出しやすくなることを「初頭効果」,後部/終末部(※リストの単語数によって何番目かは異なる)の単語が思い出しやすくなることを「新近(性)効果」と呼ぶ。ここでは上記の記憶課題実験を体験し,単語の呈示順序と記憶成績の関係について身をもって理解することを目指す。
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② 細目①で実施した記憶課題実験で,先頭部と後部/終末部の単語がどうして思い出しやすくなったのかについて考察する。単語リストの覚えはじめのときは,頭の中で繰り返しリハーサルして保持するべき単語数が少ない。少ない単語を繰り返しリハーサルして覚えていく分,長期記憶に転送されやすくなって,思い出すときまで覚えていられるのである。つまり,初頭効果は⻑期記憶のはたらきを反映している。一方,リストの最後のほうの単語は,呈示されて覚えてからすぐに報告を求められる。つまり,単語が短期記憶に残っているうちに報告できるので,思い出しやすいのではないか。このことから,新近(性)効果は短期記憶のはたらきを反映しているのである。さらに,長期記憶への転送を妨害する実験手続き,あるいは短期記憶の保持を超えた保持時間を要求する実験手続きの実験を行うと,それぞれ初頭効果,新近(性)効果のみが消失するという結果が得られる。以上の結果から,系列位置効果の結果の傾向のうち,初頭効果は長期記憶のはたらきを,新近性効果は短期記憶のはたらきを反映している結果だと解釈できるのである。ここまで説明した,記憶実験を行って,実験の手続きや結果と記憶のメカニズムとの関係について関連づけて理解できることを目指す。
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③ 短期記憶と長期記憶が区別される証拠として,系列位置効果の他に,記憶の神経心理学的研究から得られたものがある。2つめの証拠は,短期記憶は保たれているのに長期記憶の内容が思い出せないという男性の症例である。イニシャルでH. M. と呼ばれる男性は,27歳で脳外科手術をして,脳の側頭葉の内側の部分「内側側頭葉/側頭葉内側部」を除去した。その後,数字を短時間だけ覚えておくといったような短期記憶は保たれている一方で,誰かと話したりといった出来事を長期間覚えていられなくなった。このH. M. の症例は,短期記憶は保たれているが⻑期記憶が失われている症例,つまり短期記憶と⻑期記憶は異なるメカニズムであることを示した例なのである。ここでは記憶のメカニズムを脳の構造と関連づけて考えることができるようにすることを目的とする。
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キーワード
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① 系列位置効果 ② 初頭効果 ③ 新近(性)効果 ④ H.M.の症例 ⑤ 記憶の神経心理学
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第22回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 【発展課題】記憶の多重貯蔵モデルとそれを支持する記憶の系列位置効果の一連の研究について,文章にまとめて説明してみよう。 次回までの予習: (1) 第23〜24回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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23
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記憶③
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科目の中での位置付け
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何かに集中できない,テスト勉強で用語が覚えられない,あるいは覚えても記憶が定着せずすぐに忘れてしまう,短い思考時間で判断したことによって失敗してしまうなど,私たちが日常生活を送るなかで,限界を感じることがあるだろう。これらの限界は,私たち人間の情報処理のなかでどこに限界があるからなのだろうか? ここまでの回で説明してきたように,感覚受容器によって刺激が受容されるところから人間の情報処理が始まる。感覚受容器を構成している神経細胞により刺激が信号へと変換されて脳まで伝達されるなかで,感覚情報の分析が行われる。視覚を例にすれば,網膜の視細胞/光受容細胞によって光が視覚の信号に変換され,大脳皮質の視覚野に伝達され,視覚情報の分析がなされる。このとき,線分の方位や運動方向をとらえる情報処理には限界が非常に大きく(限界は神経細胞の応答限界であろう),上で述べたような意識的な限界に関わっているとは考えにくい。そうすると,感覚情報の分析よりも高次の情報処理の段階に限界があるのだろう。こうした限界も含めた,注意,記憶,知識,思考・推論といった認知機能の特性を理解することが,情報処理システムとしての人間の知覚・認知の理解を進めるだろう。 第21回からは「記憶」という認知機能について説明する。記憶といえば,「何かを覚えること」というイメージがあるかもしれない。たとえば,学校のテスト前に漢字や英単語を必死に覚えたという経験は誰しもが持っているだろう。また,覚えた単語や内容がテスト中に思い出せなくて困った,という経験をしたこともあるかもしれない。このように,記憶とは,何かを覚えること(記銘/符号化),覚えたことを忘れないように保つこと(保持/貯蔵),そして思い出すこと(想起/検索)という過程に分けることができる。しかし記憶の役割はこうした過程だけにとどまらず,私たちが生きて活動していくなかで非常に重要な役割を果たしている。私たちの「こころ」に関わる重要な心的機能である「記憶」についてみていくことにしよう。 第23回では,アトキンソンとシフリンの記憶モデル以降の記憶研究の展開について説明する。覚えた内容を一時的に保持する短期的な記憶について,単に記憶を保持するだけのものではない,という批判が寄せられるようになった。そこで短期記憶に代わって提唱されたのが「ワーキングメモリ」と呼ばれる概念である。最初に (1) 多重貯蔵モデルに対する批判について説明したうえで,(2) ワーキングメモリの概念とモデルの構造についての概要を説明し,(3) ワーキングメモリの測定方法およびワーキングメモリが必要となる記憶課題の例を紹介する。前回の第21〜22回および次回第24回以降の記憶のはたらきと併せて記憶について総合的にまとめて理解したうえで,それ以降の記憶と知識との関係,思考や推論についての説明と併せて,人間の認知の特性について総合的に理解することを目指す。
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コマ主題細目
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① 多重貯蔵モデルに対する批判 ② ワーキングメモリの概念とモデル ③ ワーキングメモリの測定方法
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細目レベル
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① アトキンソンとシフリンの記憶モデル以降の,覚えた内容を一時的に保持する短期的な記憶(短期記憶)について,単に記憶を保持するだけのものではない,という批判が寄せられるようになった。計算課題や言語理解など,私たちが日常生活で行っている知的機能では,情報を保持(貯蔵)しながら処理が行われている。このように,保持(貯蔵)と処理の両方を行うしくみがあるのではないかと主張された。加えて,短期記憶に問題があっても一般的な知能テストでは標準的な成績であるなど,長期記憶に問題がない症例も知られるようになった。このことから,多重貯蔵モデルの修正が求められるようになったのである。
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② Baddeleyが短期記憶に代わって提唱したのが「ワーキングメモリ」と呼ばれる概念である。たとえば2桁の数字の暗算課題では,1桁目の計算の結果を一時的に覚えたまま2桁目の計算をするといったように,保持と処理の両方を行っている。このワーキングメモリを説明するモデルは,音韻ループ,視空間スケッチパッド,エピソードバッファといった構成要素と,それらを統合する中央実行系と呼ばれる構造による,複数の構成要素から成り立っている。ここでは,モデルの全体像と,構成要素がそれぞれどのような役割であり,どのような処理を行うものなのかを理解することが必要である。さらに,実行機能と呼ばれる心的機能についても,個人差や注意機能との関連も含めて説明する。
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③ ワーキングメモリを評価,測定するテストや課題について説明する。ワーキングメモリを測定する基本的なテストはスパンテストと呼ばれ,そのうち言語や文章の処理に関わるリーディングスパンテストを紹介する。加えて,短い時間ずつ連続的に呈示される文字列もしくは数字列を見て,呈示されている数字がn個前の文字と一致しているかいないかを答えるn-back課題を紹介する。これらのテストや課題を遂行するには,情報の一時的な保持と処理というワーキングメモリの過程を必要とするものである。これらのテストや課題にどのようにワーキングメモリが関わるのかを,テストや課題を体験しながら理解することを目指す。
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キーワード
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① 保持(貯蔵)と処理 ② ワーキングメモリ ③ 中央実行系 ④ n-back課題
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第23回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 【発展課題】Baddeleyが提唱しているワーキングメモリのモデルがどのような構造になっているのか,各部の名称と役割を文章にまとめて説明してみよう。 次回までの予習: (1) 第25〜26回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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24
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記憶④
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科目の中での位置付け
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何かに集中できない,テスト勉強で用語が覚えられない,あるいは覚えても記憶が定着せずすぐに忘れてしまう,短い思考時間で判断したことによって失敗してしまうなど,私たちが日常生活を送るなかで,限界を感じることがあるだろう。これらの限界は,私たち人間の情報処理のなかでどこに限界があるからなのだろうか? ここまでの回で説明してきたように,感覚受容器によって刺激が受容されるところから人間の情報処理が始まる。感覚受容器を構成している神経細胞により刺激が信号へと変換されて脳まで伝達されるなかで,感覚情報の分析が行われる。視覚を例にすれば,網膜の視細胞/光受容細胞によって光が視覚の信号に変換され,大脳皮質の視覚野に伝達され,視覚情報の分析がなされる。このとき,線分の方位や運動方向をとらえる情報処理には限界が非常に大きく(限界は神経細胞の応答限界であろう),上で述べたような意識的な限界に関わっているとは考えにくい。そうすると,感覚情報の分析よりも高次の情報処理の段階に限界があるのだろう。こうした限界も含めた,注意,記憶,知識,思考・推論といった認知機能の特性を理解することが,情報処理システムとしての人間の知覚・認知の理解を進めるだろう。 第21回からは「記憶」という認知機能について説明する。記憶といえば,「何かを覚えること」というイメージがあるかもしれない。たとえば,学校のテスト前に漢字や英単語を必死に覚えたという経験は誰しもが持っているだろう。また,覚えた単語や内容がテスト中に思い出せなくて困った,という経験をしたこともあるかもしれない。このように,記憶とは,何かを覚えること(記銘/符号化),覚えたことを忘れないように保つこと(保持/貯蔵),そして思い出すこと(想起/検索)という過程に分けることができる。しかし記憶の役割はこうした過程だけにとどまらず,私たちが生きて活動していくなかで非常に重要な役割を果たしている。私たちの「こころ」に関わる重要な心的機能である「記憶」についてみていくことにしよう。 第24回では,第23回で学んだワーキングメモリに関する研究が進展した一方で,長期的な記憶に関しても記憶の分類がなされ,それぞれの記憶について検討が進められた。(1) 長期記憶の分類の知見をもとに,(2) 非陳述記憶/非宣言的記憶の分類と各記憶について説明し,(3) 陳述記憶/宣言的記憶のうちエピソード記憶について,忘却との関係を説明する。前回の第21〜23回での記憶のはたらきと併せて記憶について総合的にまとめて理解したうえで,それ以降の記憶と知識との関係,思考や推論についての説明と併せて,人間の認知の特性について総合的に理解することを目指す。
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コマ主題細目
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① 長期記憶の分類 ② 非陳述記憶/非宣言的記憶の分類とそれらの特性 ③ エピソード記憶と忘却との関係
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細目レベル
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① 覚えたものを短い間だけ保持する短期記憶やワーキングメモリに対し,非常に長い間覚えている長期的な記憶は,それと異なる多くの特徴をもつ。長期記憶を調べた研究から,単一の「長期記憶」というものがあるというより,記憶の様式や記憶内容によって,複数の種類の長期記憶に分類されている。大きく分けて,昨日食べた晩御飯のメニューのような,言葉に表現できる記憶と,自転車に乗るときの操作のような,言葉で表現できない(しにくい)記憶とに分けられ,それぞれ「陳述記憶/宣言的記憶」と「非陳述記憶/非宣言的記憶」と呼ばれる。さらに,陳述記憶は,個人的な体験や出来事(エピソード)に関する記憶と,言葉の意味や一般的知識に関する記憶に,非陳述記憶は,物事を行う場合の手続きに関する記憶などに分けられている。具体的な例を頭に描きながら,この長期記憶の分類とそれぞれの違いについて理解することがここでの目標である。
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② 長期記憶のうち「非陳述記憶/非宣言的記憶」と呼ばれる記憶について,その記憶の区分とそれぞれの特徴を詳細にみていく。1つめは,同じ刺激に繰り返しさらされていると,それに対する反応が減少する「馴化/慣れ」があり,動物にみられる基本的な記憶として動物のさまざまな行動に表れる。2つめは,生来の反応を引き起こす無条件刺激と一緒に,反応を引き起こさない条件刺激を対呈示することで,新たに反応を引き起こすようになる「古典的条件づけ/レスポンデント条件づけ」である。3つめは,刺激を連続して呈示したときに,先行刺激を処理することによって後続刺激の処理が促進される現象が知られており,この現象を「プライミング」と呼ぶ。4つめは,自転車の乗り方,ピアノの弾き方といったような運動技能に関する記憶である「手続き的記憶」である。これらの記憶の特徴と相違を理解することが目標である。
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③ 第21回に,エビングハウスが行った記憶研究について紹介し,事柄を記憶してから時間が経つほど覚えていることが難しいという結果が得られたことを説明した。記憶研究の初期から,なぜ時間が経過するほど記憶成績が下がる=思い出せないのかが問題とされ,どのようにして忘却が起こるのか,そしてどうしたら忘却を避けることができるのか,について検討が行われてきた。初期にはどうやら時間が経つほど記憶が単純に無くなっていく「減衰」ではなく,別な記憶から「干渉」を受けた結果として記憶が抑制させている説が支持された。ここでは,記憶の忘却についての「干渉」や「抑制」といったテーマの研究を把握し,「忘れる」という観点から記憶の性質について理解を深める。
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キーワード
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① 長期記憶 ② 陳述記憶/宣言的記憶 ③ 非陳述記憶/非宣言的記憶 ④ 馴化,古典的条件づけ,手続き的記憶,プライミング ⑤ 忘却
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第24回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2). 【発展課題】長期記憶がどのように分類されていて,それぞれどのような記憶だと提示されているのか,,名称と役割を文章にまとめて説明してみよう。 次回までの予習: (1) 第25〜26回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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記憶⑤
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科目の中での位置付け
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何かに集中できない,テスト勉強で用語が覚えられない,あるいは覚えても記憶が定着せずすぐに忘れてしまう,短い思考時間で判断したことによって失敗してしまうなど,私たちが日常生活を送るなかで,限界を感じることがあるだろう。これらの限界は,私たち人間の情報処理のなかでどこに限界があるからなのだろうか? ここまでの回で説明してきたように,感覚受容器によって刺激が受容されるところから人間の情報処理が始まる。感覚受容器を構成している神経細胞により刺激が信号へと変換されて脳まで伝達されるなかで,感覚情報の分析が行われる。視覚を例にすれば,網膜の視細胞/光受容細胞によって光が視覚の信号に変換され,大脳皮質の視覚野に伝達され,視覚情報の分析がなされる。このとき,線分の方位や運動方向をとらえる情報処理には限界が非常に大きく(限界は神経細胞の応答限界であろう),上で述べたような意識的な限界に関わっているとは考えにくい。そうすると,感覚情報の分析よりも高次の情報処理の段階に限界があるのだろう。こうした限界も含めた,注意,記憶,知識,思考・推論といった認知機能の特性を理解することが,情報処理システムとしての人間の知覚・認知の理解を進めるだろう。 第21回からは「記憶」という認知機能について説明する。記憶といえば,「何かを覚えること」というイメージがあるかもしれない。たとえば,学校のテスト前に漢字や英単語を必死に覚えたという経験は誰しもが持っているだろう。また,覚えた単語や内容がテスト中に思い出せなくて困った,という経験をしたこともあるかもしれない。このように,記憶とは,何かを覚えること(記銘/符号化),覚えたことを忘れないように保つこと(保持/貯蔵),そして思い出すこと(想起/検索)という過程に分けることができる。しかし記憶の役割はこうした過程だけにとどまらず,私たちが生きて活動していくなかで非常に重要な役割を果たしている。私たちの「こころ」に関わる重要な心的機能である「記憶」についてみていくことにしよう。 第25回では,長期記憶のうちエピソード記憶と呼ばれる記憶の特性について説明する。個人的に体験した出来事(エピソード)に関する記憶である「エピソード記憶」は,出来事の内容に加えて,周囲の環境すなわち時間・空間的文脈や,出来事体験時の自己の身体的・心理的状態など,出来事を体験したときのさまざまな付随情報とともに記憶されている。ゆえに,エピソード記憶に関する「符号化」「貯蔵」「検索」の3つの過程についても,これらの付随情報とのつながりに影響されるのである。エピソード記憶研究の知見のうち, (1) 記憶の処理水準,(2) 記銘時の材料と符号化,(3) 記銘と想起の関係性,といった観点について説明する。これまでの第21〜24回および次回第26回以降の記憶のはたらきと併せて記憶について総合的にまとめて理解したうえで,それ以降の記憶と知識との関係,思考や推論についての説明と併せて,人間の認知の特性について総合的に理解することを目指す。
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コマ主題細目
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① 記憶の処理水準 ② 記銘時の材料と符号化 ③ エピソード記憶における記銘と想起の関係性
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細目レベル
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① アトキンソンとシフリンが提唱した多重貯蔵モデルに対する批判として,人間の情報処理過程にはさまざまな水準があり,その処理水準が深くなれば,情報が⻑期間蓄えられる,あるいは記憶痕跡が強固になるため、忘却も生じにくくなるのではないかと主張された。この記憶の処理水準の考え方は,偶発学習課題を用いた記憶実験によって,より深い処理水準で処理させたほうが記憶成績が良くなることが示された。さらに,記憶の処理水準に関する一連の研究によって,記憶成績は記銘/符号化時の処理水準の深さによって,さらに記銘/符号化時と想起/検索時のテスト・課題の要求との適合度によって変化することがわかっている。このことを転移適切性処理と呼ぶ。こうした処理水準の考え方を理解することが求められる。
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② エピソード記憶を記銘/符号化するとき,言葉や文字だけで材料を提示するよりも,絵や画像で材料を提示するほうが,記憶成績が良いことが知られる。この効果を画像優位性効果と呼ぶ。この効果を含めた情報処理の理論として,ペイヴィオによって二重符号化理論が提唱された。言葉や文字は言語のみで符号化されるのに対し,絵や画像はイメージと言語の両方で符号化される。そのため,二重に符号化される絵や画像のほうが,1つの符号化しかされない言葉よりも記憶成績が良くなるという理論である。加えて,言葉であっても,イメージしやすい具体語のほうが抽象語よりも記憶成績が良くなるのである。記銘時の材料によって変化する記憶のしやすさについて,実験結果を把握することで理解を深めることが大事である。
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③ エピソード記憶を記銘しやすく,想起しやすいものにするためには,記銘/符号化時と想起/検索時の状況や状態が一致していることが重要な意味をもつ。そのひとつが,記銘時と想起時の外的な状況(文脈)が一致していることであり,文脈依存性効果と呼ばれている。実験では,水中で記銘した場合には陸上で想起する場合よりも水中で想起する場合のほうが記憶成績が良く,陸上で記銘した場合には水中で想起する場合よりも陸上で想起する場合のほうが記憶成績が良いことが示されている。もうひとつは,記銘時と想起時の内的な状態(気分)が一致していることであり,気分依存性効果もしくは気分一致効果と呼ばれている。実験では,記銘時と想起時の感情状態が同じだと記憶成績が良くなることが示されている。こうした記銘時と想起時の関係性について理解することが,ここでの目的である。
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キーワード
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① エピソード記憶 ② 処理水準 ③ 二重符号化理論 ④ 文脈依存性効果 ⑤ 気分依存性効果
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第25回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること 次回までの予習: (1) 第27-28回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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26
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記憶⑥
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科目の中での位置付け
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何かに集中できない,テスト勉強で用語が覚えられない,あるいは覚えても記憶が定着せずすぐに忘れてしまう,短い思考時間で判断したことによって失敗してしまうなど,私たちが日常生活を送るなかで,限界を感じることがあるだろう。これらの限界は,私たち人間の情報処理のなかでどこに限界があるからなのだろうか? ここまでの回で説明してきたように,感覚受容器によって刺激が受容されるところから人間の情報処理が始まる。感覚受容器を構成している神経細胞により刺激が信号へと変換されて脳まで伝達されるなかで,感覚情報の分析が行われる。視覚を例にすれば,網膜の視細胞/光受容細胞によって光が視覚の信号に変換され,大脳皮質の視覚野に伝達され,視覚情報の分析がなされる。このとき,線分の方位や運動方向をとらえる情報処理には限界が非常に大きく(限界は神経細胞の応答限界であろう),上で述べたような意識的な限界に関わっているとは考えにくい。そうすると,感覚情報の分析よりも高次の情報処理の段階に限界があるのだろう。こうした限界も含めた,注意,記憶,知識,思考・推論といった認知機能の特性を理解することが,情報処理システムとしての人間の知覚・認知の理解を進めるだろう。 第21回からは「記憶」という認知機能について説明する。記憶といえば,「何かを覚えること」というイメージがあるかもしれない。たとえば,学校のテスト前に漢字や英単語を必死に覚えたという経験は誰しもが持っているだろう。また,覚えた単語や内容がテスト中に思い出せなくて困った,という経験をしたこともあるかもしれない。このように,記憶とは,何かを覚えること(記銘/符号化),覚えたことを忘れないように保つこと(保持/貯蔵),そして思い出すこと(想起/検索)という過程に分けることができる。しかし記憶の役割はこうした過程だけにとどまらず,私たちが生きて活動していくなかで非常に重要な役割を果たしている。私たちの「こころ」に関わる重要な心的機能である「記憶」についてみていくことにしよう。 第26回では,前回第25回に続いて,エピソード記憶と呼ばれる記憶の特性について説明する。個人的に体験した出来事(エピソード)に関する記憶である「エピソード記憶」は,後から付け加わった情報によって変容してしまうことがあり得る。この特性が問題となるのは,目撃した事件や事故に関する詳細を法廷などで証言する場合である。この記憶の変容について,(1) 人間の記憶の変容とその問題状況,(2) 目撃証言の変容を実証した心理学実験,そして(3) 司法面接という目撃証言状況における証言の変容とその対処法,について説明する。これまでの第21〜25回および次回第27回以降の記憶のはたらきと併せて記憶について総合的にまとめて理解したうえで,それ以降の記憶と知識との関係,思考や推論についての説明と併せて,人間の認知の特性について総合的に理解することを目指す。
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コマ主題細目
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① 人間の記憶の変容とその問題状況 ② 目撃証言の変容を実証した心理学実験 ③ 司法面接における目撃証言の変容とその対処法
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細目レベル
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① 人間の記憶とコンピュータの記憶の大きく異なる点のひとつが,人間の記憶は変容するという点である。これまでに説明した,「短期記憶の保持時間の限界」や「記憶の忘却/干渉」も,この変容に当たるとみなせるであろう。この「人間の記憶が変容してしまう」という点が,私たちの日常生活の現場でも問題となることがある。それは,人間が覚えたことを正確に報告しなければいけない場合である。正確性が求められる状況のひとつが,取り調べや法廷で,目撃した事故や犯罪について覚えていることを証言するときであり,問題となるのが「その目撃証言が変容してしまう」ことなのである。こうした目撃証言をする状況下で,これまでに間違った犯人を捕まえてしまうといった問題がどの程度発生していたのかを把握する。
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② 事件や事故の目撃者は,事件や事故を目撃してから証言するまでの日常生活のなかで,さまざまな情報を取り入れ処理している。目撃した事故や犯罪から得た情報よりも後から入った情報によって,目撃者の記憶が変容してしまう可能性が非常に大きいのである。心理学者エリザベス・ロフタスが行った実験によって,目撃した情報の記憶が変容することが実証的に示された。実験では,事故状況を撮影した動画を実験参加者に試聴させた後,実験者がその事故について参加者に質問をした。このとき,「車がぶつかったとき」「車が激突したとき」といった,実験者が事後に与えた説明の違いによって,参加者の回答が変化したのである。この記憶変容の実験をとおして,この問題の大元にある記憶の変容の性質について,深く理解することが求められる。
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③ 記憶の変容が起こるかもしれないという状況のなかで,事件や事故の目撃者に対して正しく証言をしてもらうにはどうしたらよいだろうか。目撃者から証言を聴取する者がどのような態度で質問をすべきか,最近注目されている「司法面接」における聴取の手法についてみていこう。聴取時に,聴取者の質問に含まれる内容項目が目撃者の記憶に混入してしまう可能性がある。このように聴取者の質問で情報を与える問題をはらむクローズ質問は,事後情報による記憶の変容が生じやすい。その可能性を排除するために,目撃者に自発的に,自由に話してもらうオープン質問を採用することによって,目撃者は誘導にかかりにくく,より多くの情報を証言することができるとされる。ここでは,記憶の変容の問題に対処する司法面接場面での証言聴取の方法について理解を深めることを目的とする。
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キーワード
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① 記憶の変容 ② 目撃証言 ③ 事後情報効果 ④ 司法面接 ⑤ 虚記憶
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については,毎回の授業時間内に,LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第26回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること 次回までの予習: (1) 第27〜28回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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27
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記憶と知識①
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科目の中での位置付け
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第21回からの説明より,「記憶」という認知機能についての特性が明らかとなってきている。特にエピソード記憶と呼ばれる記憶について,記憶の容量は非常に大きく,記憶が思い出せなくなるようなことがあっても記憶そのものが無くなっているかはよくわかっておらず,記憶が変容したり間違った記憶が活性化することがある。こうした記憶を支える基盤,ハードウェアはどのようなものであろうか。また,私たちの「こころ」の中で,言葉の意味や一般的な知識に関する記憶である「意味記憶」そして知識は,どのように形作られて,どのような形で保たれているのだろうか。心理学の研究の結果,知識に関する意味内容が近かったりするネットワークのようなつながりがあると考えられている。そうした意味ネットワークによって,知識の枠組みが形成されているとも考えられ,それらは「スキーマ」「スクリプト」などと呼ばれている。この知識の枠組みに沿って思考や判断を行うことで,認知の容量を節約し,状況に応じて適切な行動をとることが可能になるのだろう。この第27-28回では「記憶と知識」がよく似た特性をもつことから,それらの関係について考えていく。 第27回では,上記の問題点について,(1)記憶に関わる神経基盤と神経応答,(2) 記憶の脳との関係,について考えながら,記憶の内的様式について考察していく。そして,(3) 記憶と知識との関わりについてみていくことで,次の第28回で説明する知識の構造やトップダウン処理へつなげる。
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コマ主題細目
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① 記憶に関わる神経基盤と神経応答 ② 記憶の脳との関係 ③ 記憶と知識との関わり
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細目レベル
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① 「記憶」という心的機能があるのであれば,「覚える」「保持する」といった記憶の機能を実現しているハードウェアも存在するであろう。神経細胞(ニューロン)や脳についての研究の進展とともに,記憶の実態が追求されてきた。しかし,私たちの体内にある特定の物質や単一の細胞が記憶を保持しているという考え方には疑問が投げかけられている。そこで,1つめに記憶と神経回路の関係について説明したヘッブの「セル・アセンブリ」の考え方,2つめに「海馬」と呼ばれる脳領域の神経細胞で特定の刺激を与えると細胞の応答が増大する「長期増強」と呼ばれる現象に注目する。これらの考え方や現象から,神経細胞の集団が協調的にはたらくことによって記憶が保たれるという可能性を思い描くことができるのである。ここでは,記憶の機能を実現しているハードウェアや神経応答がどのようなものかという基本的な考え方をつかむことを目的とする。
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② 細目①に続き,記憶の機能を実現しているハードウェアについて考えていく。脳損傷患者の神経心理学的研究や長期増強をはじめとする海馬研究から,海馬をはじめとする複数の脳領域が記憶に大きく関わっていると考えられるようになった。それを支持したのはH. M. の症例をはじめとする脳損傷患者の神経心理学的研究であり,脳損傷患者の記憶障害の症状と,損傷した脳領域とを照らし合わせることで,記憶に関係する脳領域が明らかにされてきた。加えて,特定の脳領域を破壊した霊長類に対して遅延見本合わせ課題という記憶課題を行わせた研究により,破壊した脳領域と課題成績との関係をみて記憶と脳との関係が探られている。そうした基本的研究をみていくことで,記憶と脳との関係をさらに深く理解することを目指す。
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③ ここまでで学んできた記憶は,どのようにして一般的な知識になるのだろうか。長期記憶のなかでも陳述記憶/宣言的記憶のひとつに分類されるエピソード記憶は,記銘されたときのそのままの形で保持されず,さまざまな要因によって変容することを説明してきた。また,記憶の保存様式が,特定の物質ではなく神経細胞の回路というネットワークに蓄えられるのであれば,無限に蓄えられる一方で記憶が変容することも説明がつく。私たちの記憶がこのような様式のものであるので,エピソード記憶のときから内容が特定の文脈から切り離されて,一般化/抽象化され,より一般的な事柄の記憶である意味記憶となっていくと考えられる。意味記憶について確認することをとおして,次回のカテゴリー化と知識構造の説明につなげる。
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キーワード
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① セル・アセンブリ ② 海馬 ③ 長期増強 ④ シータリズム ⑤ 意味記憶
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第27回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること 次回までの予習: (1) 第29〜30回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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28
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記憶と知識②
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科目の中での位置付け
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第21回からの説明より,「記憶」という認知機能についての特性が明らかとなってきている。特にエピソード記憶と呼ばれる記憶について,記憶の容量は非常に大きく,記憶が思い出せなくなるようなことがあっても記憶そのものが無くなっているかはよくわかっておらず,記憶が変容したり間違った記憶が活性化することがある。こうした記憶を支える基盤,ハードウェアはどのようなものであろうか。また,私たちの「こころ」の中で,言葉の意味や一般的な知識に関する記憶である「意味記憶」そして知識は,どのように形作られて,どのような形で保たれているのだろうか。心理学の研究の結果,知識に関する意味内容が近かったりするネットワークのようなつながりがあると考えられている。そうした意味ネットワークによって,知識の枠組みが形成されているとも考えられ,それらは「スキーマ」「スクリプト」などと呼ばれている。この知識の枠組みに沿って思考や判断を行うことで,認知の容量を節約し,状況に応じて適切な行動をとることが可能になるのだろう。この第27-28回では「記憶と知識」がよく似た特性をもつことから,それらの関係について考えていく。 第28回では,前回第27回で説明した記憶と知識との関わりや共通点をふまえ,(1) 概念とカテゴリー化,(2) 知識の構造のモデル,(3) 知識によるトップダウン処理,といった内容について説明する。知識やその枠組みによるトップダウン処理を理解することは,第29-30回で説明する思考や推論といった認知機能の理解へとつながる。
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コマ主題細目
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① 概念とカテゴリー化 ② 知識の構造のモデル ③ 知識によるトップダウン処理
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細目レベル
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① 一般化された知識構造はどのように形作られていくのだろうか。まず複数の異なる事物を,何らかの共通の内容を取り出してまとめあげ,ひとつのまとまりとしていく。これをカテゴリー化と呼ぶ。しかしカテゴリーに属するすべての事物がもつ,そのカテゴリーを定義づける特徴というのは存在しない。部分的に共通する特徴を通じて事例が相互にゆるくつながっているという家族的類似性という考えにもとづき,カテゴリーをとらえていく。そして形作られたカテゴリーにもとづき,新しい事物に遭遇した場合に,既存の事物・カテゴリーとの共通項を見つけて分類しているのである。カテゴリー内の典型的なプロトタイプを中心に置いたカテゴリーモデルによってカテゴリー判断が行われるという説を理解することを目指す。
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② 知識の構造はどのようなものになっているのだろうか。知識の構造に関する理論として初期に提唱されたのは,各概念が階層的な構造を形成しており,ネットワークによってつながっているという階層的ネットワークモデルである。文章の正誤判断課題によって階層的な構造の可能性が示されたが,その一方で,階層構造の説に合わない実験結果も報告されるようになった。そこで,階層ではなく,意味的な関連性による概念同士のネットワークが作られているという活性化拡散モデルが提唱されている。概念同士の距離で意味的関連性を表し,強い連想関係にあるほど近い位置に配置されているというこのモデルによって,プライミングなどの記憶現象も説明できる。ここでは,知識の構造を示す代表的なモデルを比較することで,人間の知識の構造についての理解を深めることを目的とする。
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③ 構造化された知識はどのように使われるのだろうかという問題意識のもと,知識によるトップダウン処理について考えていく。私たちは,構造化された知識のまとまり,認知的な枠組みである「スキーマ」や「スクリプト」を適用して,外界を認識している。このスキーマやスクリプトが,記憶や問題解決などの認知過程で重要な役割を果たしている。たとえば,初見で読むと理解が困難な文章であっても,情報が与えられスキーマとしての知識が利用可能になると,文章の内容が良く理解されるようになり,その文章についての記憶も成績が向上することが知られている。私たちは日常生活で初めて経験する出来事に対して,スキーマやスクリプトを適用することで,効率的に状況を理解し,適切に行動できるようになっているのである。こうした知識によるトップダウン処理の有効性について理解を深める。
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キーワード
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① カテゴリー化 ② 典型性とプロトタイプ ③ 意味ネットワークモデル ④ 活性化拡散モデル ⑤ スキーマ・スクリプト
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第28回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) スキーマやスクリプトと呼ばれる機能とその具体例について説明してみよう 次回までの予習: (1) 第29〜30回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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29
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思考と推論,問題解決①
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科目の中での位置付け
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私たちは感覚受容器を通して受け入れている情報をもとにして自分の周囲の状況を把握し,それにもとづいて思考し判断をしているという情報処理の流れを,第28回までで説明してきた。ここまでで理解した,知識とその枠組みを使って私たちが行う知的活動が問題解決である。問題解決とは,現実と目標との間に何らかの乖離や障害があるとき,目標に到達する方法を見つけることをいう。第29-30回では,こうした問題解決研究や思考・推論研究で用いられる問題・課題をみていきながら,人間の思考や推論の特性がどのようなものかについて考えていく。人間は必ずしも,論理的・抽象的なルールに従って,論理的・形式的に考えて問題を解決しているわけではない。問題と解こうとしたり判断をする際には,何らかのバイアス(偏り)が入ってくるのではないかと考えられている。そうした人間の思考の特性について,そして判断を行う際の認知システムについて説明をしていく。 この第29回では,人間の思考や推論,問題解決の研究の流れの概要と,特に用いられている重要な課題について説明する。次の第30回とあわせて,人間の思考や推論,問題解決に関する特性について理解を深める。
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コマ主題細目
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① 問題解決についての初期研究 ② ハノイの塔問題と問題解決の構造 ③ 類推による問題解決
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細目レベル
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① 古典的な問題解決の研究の有名なものが,ゲシュタルト心理学者ケーラーによって行われた一連の研究である。ケーラーは,「知的な行動がすべて条件づけで身についているわけではない」と考え,チンパンジーにさまざまな「知恵実験」を施して,それがどのように解決されるかを観察した。たとえば「箱とバナナの問題」では,チンパンジーは自身の頭上にあるバナナをとろうとして,部屋の中をうろついているうちに,部屋の隅に置いてあった木箱をつかんでバナナの下に運んで積み上げて,それに乗ってバナナを入手した。このような解決行動は突然ひらめくものであり,学習や条件づけによって徐々に獲得されたものではないとした。こうした初期の問題解決研究の流れを理解することを目的とする。
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② 初期の問題解決研究からでは,問題解決プロセスにおいて私たちの頭の中で具体的に何が起こっているのかが未解明であった。この問題に対し,課題のなかで具体的な目標が与えられている場合に,人間はどのように思考し問題解決をしているかについて,「よく定義された問題」を用いた研究が行われることとなった。この「よく定義された問題」は,初期状態と目標状態が明らかにされており,問題を成立させている要素全体(問題空間)が明示されているものである。有名な課題として「ハノイの塔」問題や「ホビットとオーク」問題などが挙げられる。こうした「よく定義された問題」を用いた研究アプローチについて,理解を深めることがここでの目標である。
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③ こうした問題解決において,特に複雑な問題の場合に,問題を解決に導くような画期的なひらめきはどのようなところから得られるのかを考えると,何もないところから突然生まれない(経験が全く関与しない場面では生じない)のではないだろうか。こうした点を検討したのが,放射線問題/腫瘍問題と呼ばれる問題を解決させる場合に,要塞を攻略するためにどうするかという問題の結末を実験参加者に読ませたうえで,放射線問題/腫瘍問題の解決方法を考えさせた研究である。多くの参加者が,要塞問題の物語の内容と放射線問題の類似性に気づき,物語中の攻略作戦から類推して問題を解くことができた。ひらめきによる解決は,何もないところから突然生まれるのではなく,それ以前に獲得されていた行動や知識の組み合わせや相互作用の結果として自発することを示唆する。こうした類推は,長期記憶内のスキーマによるトップダウン処理と密接な関係だと考えられる。こうした類推の効果とトップダウン処理との関係に対する理解を進めることが重要である。
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キーワード
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① 洞察学習 ② よく定義された問題 ③ ハノイの塔問題 ④ 問題空間 ⑤ 類推/アナロジー
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第29回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること 次回までの予習: (1) 第30回コマシラバスを読み,授業で説明されるストーリーを理解しておくこと
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30
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思考と推論,問題解決②
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科目の中での位置付け
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私たちは感覚受容器を通して受け入れている情報をもとにして自分の周囲の状況を把握し,それにもとづいて思考し判断をしているという情報処理の流れを,第28回までで説明してきた。ここまでで理解した,知識とその枠組みを使って私たちが行う知的活動が問題解決である。問題解決とは,現実と目標との間に何らかの乖離や障害があるとき,目標に到達する方法を見つけることをいう。第29-30回では,こうした問題解決研究や思考・推論研究で用いられる問題・課題をみていきながら,人間の思考や推論の特性がどのようなものかについて考えていく。人間は必ずしも,論理的・抽象的なルールに従って,論理的・形式的に考えて問題を解決しているわけではない。問題と解こうとしたり判断をする際には,何らかのバイアス(偏り)が入ってくるのではないかと考えられている。そうした人間の思考の特性について,そして判断を行う際の認知システムについて説明をしていく。 この第30回では,前回第29回の説明をうけ,人間の思考や推論,問題解決に関する特性について理解を進めるとともに,これまで学んできた注意,記憶,知識構造といったテーマの学びとあわせて,人間の認知の特性についてまとめを行い,総合的な理解を深める。
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コマ主題細目
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① 選択課題と思考のバイアス ② 内容効果/主題効果 ③ 2つの判断システム ④ 全体のまとめ
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細目レベル
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① 人間の思考や推論の研究で用いられる「4枚カード問題」と呼ばれる推論課題を用いた研究から,問題の構造自体はそれほど難しくないにもかかわらず,大学生という知的水準が低くない人々であっても,正答率が低くなることが知られている。なぜ正答率が低いのかという疑問に対する仮説として,この課題に対して何らかのバイアス(偏り)がはたらいていると考えられた。たとえば,人間が自分の把握している仮説が正しいかどうかを確認する場合に,自分の仮説に合致する証拠を重視するというバイアスがあるためだと説明される。同様にバイアスがはたらいていることを示すその他の推論課題も紹介し,この思考のバイアスがどのような特徴をもつのかについて理解することを目指す。
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② 細目①で説明した推論課題の正答率の低さについて,課題の問題文に対してストーリーを与えたり,内容を具体化したりすることによって,正答率が上昇するという研究結果が報告されている。問題の論理的な構造は変わっていないのに,どうして内容が具体的になるだけで正答率が上がるのだろうか。ここまで学んできたスキーマやカテゴリー,典型性(プロトタイプ)といった知識の構造によって思考が影響を受けるとも考えられた。ここでは,この推論課題に関係するいくつかの理論,「実用的推論スキーマ説」「社会契約説」「情報獲得理論」について理解することで,人間の認知処理を行う際の思考・推論の特性について理解を進める。
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③ こうした人間の思考の不思議さに対して,人間の思考が2つの異なる過程の結果として生まれているのではないかという説が提唱された。この2つの過程は,無意識的,自動的で素早い処理であるが領域依存的でもある「システム1」と,意識的で遅い,汎用的な「システム2」という違いがあると言われている。この2つの過程を想定する理論をまとめて「二重過程理論」と呼んでいる。ここで述べた「二重過程理論」の2つの過程の特徴について理解することを目指す。そして私たちが解決すべき問題に直面した場合に,限られた時間内で効率的に情報を得て,知識の枠組みを使って素早い思考や判断をしようとする一方で,熟慮して論理的・分析的な思考や判断も行うことで,より適切な結果を導く認知システムであることを理解するのが目標である。
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④ こうした思考・推論の特性を,他の注意や記憶といった認知機能とあわせて考えると,似通った点がみられる。たとえば注意と思考の間には,はやい注意と遅い注意がある,はやく答えを出す思考と遅く答えを出す思考がある,という時間的な共通点がある。あるいは,知識の構造と思考の間には,論理形式に従ってじっくり厳密に答えを出すよりは,もっている知識やその枠組み(スキーマ)を使って(もしかしたら間違っているかもしれないが)効率的に答えを出そうとする過程があるという点で似通っている。このように,認知機能間での共通点や,相違点もあわせて考えていくことで,人間の認知システム全般に対する理解を深めることを目指す。
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キーワード
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① ウェイソン選択課題/4枚カード問題 ② バイアス ③ 内容効果/主題効果 ④ 二重過程理論 ⑤ ヒューリスティクス
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
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復習・予習課題
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復習: (1) この第30回コマシラバスを読み直し,授業で得た理解と合っているかを確認すること (2) 必ずしも論理的・抽象的なルールに従って論理的・形式的に考えているわけではない人間の思考の特性について,文章にまとめて説明してみよう
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