区分 基盤専門科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
SDGs力 科学コミュニケーション力 研究力
カリキュラム・ポリシーとの関係
教養 応用力 実践力
科目間連携 総合心理力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
本授業は,犯罪と司法を心理学的に捉える視点を体系的に学ぶ全15回の構成である。冒頭では犯罪白書や犯罪観の歴史的変遷をたどり,目撃証言の信頼性やシミュレーション実験を通じて記憶研究の司法的意義を理解する。続いて裁判員の知識や虚偽自白,被疑者・被疑少年の聴取,偽りの記憶の形成,マクマーチン事件など,冤罪や供述弱者に焦点を当てる。後半では司法面接を中心に,自由報告や改訂プロトコル,話さない子どもへの対応など,科学的根拠に基づく面接技法を学ぶ。さらに心理学鑑定,被害者陳述や不採用証拠の影響,法廷証言と録画反対尋問までを扱い,法と心理学の協働が公正な裁判と人権保障に不可欠であることを示す。全体を通じ,理論と実務を架橋し,誤判防止と司法の信頼性向上を目指すことが本授業の柱である。
科目の目的
 本科目は、公認心理師標準シラバス及び公認心理師試験出題基準に準拠し、公認心理師が要支援者として犯罪者、非行少年、犯罪被害者に対して支援を行うにあたって必要な知識及び技能を習得することを目的とする。具体的には、犯罪や非行の発生状況や発生要因から捜査、加害者の更生及び犯罪被害者の支援を理解することを目指す。また、犯罪が及ぼす影響を解決するために必要とされる事柄を検討する力を醸成し、さらに、安心・安全な社会づくりに必要な事柄を検討する力を培うことを目的とする。
到達目標
(1)司法・犯罪分野における主要な法制度(刑事司法・少年司法・医療観察制度・更生保護制度・犯罪被害者支援制度)の構造と公認心理師の関与場面を理解する。
(2)犯罪・非行の原因論(生物学的・心理学的・社会学的アプローチ、発達犯罪学)とリスク・ニーズ理論(RNRモデル・GLM)を説明できる。
(3)犯罪・非行に関わる個人への心理的アセスメント(リスクアセスメント・ケースフォーミュレーション・司法面接等)の目的・方法・限界を理解し、基礎的な実施能力を身につける。
(4)施設内処遇および社会内処遇における認知行動療法・動機づけ面接等のエビデンスに基づいた処遇プログラムの理論と実践を理解し、公認心理師としての関与能力の基礎を身につける。
(5)犯罪被害者・家事事件当事者へのトラウマインフォームドな心理支援の考え方と技法を習得する。
(6)司法・犯罪分野における多職種連携・多機関協働の枠組みを理解し、公認心理師として適切な役割を果たすための素地を形成する。
(7)司法・犯罪分野で活動する公認心理師に求められる高い倫理的感覚(二重の責任・守秘義務と情報開示・スティグマの排除等)を身につける。

科目の概要
 心理学の中でも応用心理学の分野に位置付けられる司法・犯罪心理学について、非行・犯罪の予防や捜査、非行少年や犯罪者のアセスメント、更生や社会復帰のための支援、犯罪被害者への支援、家事事件への支援など社会問題の解決に資する知識を習得し、公認心理師を目指す上であらゆる分野で関わる可能性がある非行・犯罪に係る要支援者の心理と対応の理解を深めるものである。
 内容は、公認心理師試験の出題基準及び過去に出題された問題を踏まえ、犯罪心理学の歴史、犯罪統計、わが国の刑事司法制度、犯罪心理に関わる専門職の業務、非行少年及び犯罪者の心理と更生支援、医療観察制度、犯罪捜査支援、犯罪被害者の心理と支援、司法・犯罪分野における多職種連携などである。

科目のキーワード
犯罪心理学の歴史、犯罪統計、わが国の刑事司法制度、犯罪心理に関わる専門職の業務、非行少年及び犯罪者の心理と更生支援、医療観察制度、犯罪捜査支援、犯罪被害者の心理と支援、司法・犯罪分野における多職種連携
授業の展開方法
 本授業は,担当教員が文字教材を読み上げ、そこに記載されている内容の理解を確実にし、公認心理師試験に対応できる知識の習得に重点を置く。適宜グループ討議を交えて理解を深める。第8回及び第15回の復習回では理解の定着度を測定するテストを実施する。
オフィス・アワー
※時間を要する相談の場合は事前にメールをお願いします。
前期:火曜3限・4限
水曜3限・4限
木曜3限・4限
後期:月曜2限・3限
水曜4限
木曜4・5限

科目コード RD6120
学年・期 3年・後期
科目名 司法・犯罪心理学
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目
展開科目
関連資格 公認心理師
担当教員名 藤代富広
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 犯罪心理学の基礎と歴史 科目の中での位置付け  本科目の出発点として、犯罪心理学の誕生・発展・現代的潮流を俯瞰する。理論的・倫理的基盤を確立することで、以降の各テーマへの接続を可能にする導入回である。
 公認心理師試験でも詳細な知識を問われる分野であるため、犯罪心理学の歴史をはじめとした基本的事項を確実に理解することにより、今後の応用的・現代的な事項の理解が深まるので、確実な理解が必要である。

コマ主題細目 ① 犯罪心理学の誕生と発展 ② 犯罪行動研究の基本的枠組み ③ 社会学的犯罪理論の展開 ④ 新しい犯罪心理学の潮流 ⑤ 公認心理師としての倫理と専門性
細目レベル ① 犯罪心理学の誕生と発展
 犯罪心理学は19世紀後半、実証主義的な科学精神のもとで誕生した。ロンブローゾに代表される初期の生物学的犯罪論は、犯罪者には身体的・生物学的な特徴があるとする見解を示したが、方法論上の問題から批判を受けた。その後、フロイトらの精神分析的アプローチ、行動主義的アプローチなどが登場し、犯罪行動の心理学的説明が多様化してきた。
 現代では、認知・感情・行動・環境の相互作用を包括的に捉える視点が重視されており、科学的根拠に基づいた実践(エビデンスベイスト・プラクティス)が求められるようになっている。犯罪心理学の歴史を概観することは、現代的な知識体系の位置づけを理解する上で不可欠である。
【到達目標】
• 犯罪心理学の成立史を、主要な理論的転換点と関連させて説明できる。
• 生物学的・精神分析的・行動主義的各アプローチの特徴と限界を比較対照できる。
• 科学的根拠に基づく実践(EBP)の意義を犯罪心理学の文脈で述べられる。


② 犯罪行動研究の基本的枠組み
 犯罪行動を研究・理解するためには、個人要因と環境要因の双方を視野に入れた統合的枠組みが必要である。なぜある人は犯罪を行い、他の人は行わないのかという問いに答えるには、生物学的・心理学的・社会学的要因を複合的に検討しなければならない。また、犯罪行動は一時点のできごとではなく、発達的な経緯のなかで理解されるべきものであり、縦断的な視点が重要である。
 研究手法としては、記述・説明・予測・制御という科学的探求の四段階が基本となり、量的研究と質的研究の双方が活用される。公認心理師として犯罪・非行問題に関わる際にも、こうした研究の枠組みへの理解が実践の基盤となる。
【到達目標】
• 犯罪行動研究における量的・質的研究の役割を説明できる。
• 個人要因と環境要因の相互作用の視点を、具体例を用いて説明できる。


③ 社会学的犯罪理論の展開
 犯罪を社会構造や社会過程の問題として捉える社会学的犯罪理論は、20世紀を通じて大きく発展した。ハーシによる社会的絆理論は、社会への絆が弱まることで犯罪抑制が失われると主張するものである。マートンによるアノミー論は、社会的目標と合法的手段のズレが逸脱を生み出すとした。またサザーランドによる分化的接触理論は、犯罪的な態度・技術の学習を強調した。ラベリング理論は、社会的反応がいかに逸脱者アイデンティティを強化するかを明示した。
 これらの理論は互いに補完的であり、個人の行動を社会的文脈のなかで理解するための視点を提供している。公認心理師も多職種連携の文脈でこれらを活用する必要がある。
【到達目標】
• 社会的絆理論・アノミー論・差異的接触理論・ラベリング理論の要点を各理論家の名前とともに説明できる。
• 各理論の実践的示唆(予防・介入への応用)を述べられる。


④ 新しい犯罪心理学の潮流
 1990年代以降、犯罪心理学は「何が犯罪を引き起こすか」という原因論から「いかに再犯を防ぐか」という実践的・臨床的方向へと大きく転換した。「何が効果的か(What Works)」を問うアプローチが主流となり、リスク・ニーズ・反応性(RNR)モデルや、グッドライブズモデル(GLM)などのエビデンスに基づいた処遇理論が発展した。
 また、神経科学・遺伝学・発達心理学との融合が進み、犯罪行動の多面的な理解が深まっている。さらに、文化的・ジェンダー的多様性への配慮も重要視されるようになり、普遍的な処遇モデルの文化的修正や女性犯罪者への固有のアプローチも議論されている。
【到達目標】
• 「What Works」の問いがもたらした犯罪心理学の実践的転換を説明できる。
• RNRモデルとGLMの違いを整理して述べられる。


⑤ 公認心理師としての倫理と専門性
 司法・犯罪分野で活動する公認心理師には、高度な専門的知識とともに、厳格な倫理的姿勢が求められる。クライエントの福祉と公共の安全という二重の責任を抱えることが、この分野の特徴であり、価値的葛藤が生じやすい。守秘義務の例外(危険の予告や虐待など)については、法的・倫理的根拠を理解した上で判断する必要がある。
 また、犯罪者・被疑者・被害者など、立場が異なる人々に関与することから、各々に対する偏見を排し、個人の尊厳を尊重する姿勢が不可欠である。公認心理師法に定める義務(秘密保持義務・誠実義務等)を遵守しつつ、プロフェッショナリズムを発揮することが求められる。
【到達目標】
• 公認心理師法に定める義務(秘密保持義務・誠実義務等)を司法分野の文脈で説明できる。
• 「二重の責任」のジレンマについて具体例を挙げて検討できる。

キーワード ① 生物学的犯罪論  ② 社会学的犯罪理論 ③ RNRモデル ④ 二重の責任
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業終了時、当該授業の理解を確認する10問の小テストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

2 わが国の刑事司法制度 科目の中での位置付け  公認心理師が実際に関与する場面を制度的に把握するための基礎回である。第3回以降の少年司法・各処遇回への橋渡しとなるため、知識を各自なものにする必要がある。
 犯罪者や非行少年の心理を知っていても、実際に彼ら彼女らがどのような手続きを経て処分・処遇を受けるのかに関する知識がないと公認心理師は現実社会で仕事できないことを十分に理解し、司法・犯罪分野の基礎知識として刑事司法制度を能動的に学ぶことが必要である。

コマ主題細目 ① 古代法典と客観主義的視点 ② 主観主義刑法理論と人間の自由意志 ③ 犯罪者研究と犯罪社会学の登場 ④ 統制理論と社会化の視点 ⑤ McGuireの5水準モデルと現代的犯罪理解
細目レベル ① 刑事司法制度の基本構造
 刑事司法とは、犯罪行為を行ったとされる者を国家が訴追・裁判・処罰する一連の制度的営みである。日本の刑事司法は、捜査(警察・検察)、起訴・不起訴の判断(検察)、裁判(裁判所)、刑の執行(矯正施設・保護観察所)という流れで構成されている。
 刑事訴訟法が手続きの基本を定めており、無罪推定の原則・適正手続の保障・被告人の権利保護が根幹をなす。また、日本では検察官の起訴裁量が広く、不起訴となるケースが多い。公認心理師はこの制度全体の流れを理解した上で、どの段階でどのような心理的支援・アセスメントが求められるかを把握しておく必要がある。
【到達目標】
• 日本の刑事司法の流れを、警察→検察→裁判所→矯正・保護の各段階に沿って説明できる。
• 無罪推定の原則・適正手続きの意義を述べられる。


② 警察・検察・裁判所の機能と心理職の関わり
 刑事司法には多様な機関が関与しており、それぞれに心理職が活動できる領域がある。警察では、捜査支援や被害者支援、ポリグラフ検査、犯罪者プロファイリングなどに心理学の知見が活用される。検察では、起訴・不起訴の判断に関わる情報収集や、被害者への対応が行われる。裁判所では、家庭裁判所調査官が少年事件・家事事件において調査・調整・支援を担う。
 また、精神鑑定の実施や心理学的鑑定書の提出も、裁判過程における心理職の重要な役割である。これらの機関との連携を理解することは、多職種協働の観点からも不可欠である。
【到達目標】
• 各機関(警察・検察・裁判所)における心理職の役割を列挙できる。
• 精神鑑定の位置づけと鑑定者に求められる姿勢を説明できる。


③ わが国の成人犯罪の実態
 日本における成人犯罪の件数は、2002年をピークに長期的な減少傾向にある。特に窃盗などの財産犯が大幅に減少しており、全体の刑法犯認知件数の低下を牽引している。一方で、特殊詐欺(振り込め詐欺等)やサイバー犯罪は増加傾向にあり、犯罪の質的変化が顕著である。高齢者による犯罪も増加しており、貧困・孤立・認知機能低下などの背景要因が指摘されている。
 また、再犯者の占める割合が高まっており、再犯防止対策の充実が政策的課題となっている。こうような量的・質的変化を踏まえることで、現代日本の犯罪問題に対応するための視点が形成される。
【到達目標】
• 日本の刑法犯認知件数の長期的動向と、増加・減少が顕著な犯罪類型を説明できる。
• 再犯者割合の増加と再犯防止対策の必要性を関連づけて述べられる。


④ 裁判員裁判制度
 2009年に導入された裁判員裁判制度は、一般市民が重大刑事事件の裁判に参加する制度である。対象となるのは、死刑・無期懲役にあたる罪や故意の犯罪行為による死傷事件などである。裁判員6名と職業裁判官3名が合議体を構成し、事実認定と量刑判断を行う。
 心理学的観点からは、裁判員の意思決定や証言の信頼性評価、被告人・被害者の心理的影響など多くの研究課題がある。また、裁判員が精神的苦痛を受けるリスクも指摘されており、裁判員のメンタルヘルス支援も重要な課題である。公認心理師は、この制度の下での証言評価や精神鑑定において重要な役割を担う。
【到達目標】
• 裁判員裁判の対象事件・構成・手続きを説明できる。
• 裁判員のメンタルヘルスリスクと公認心理師による支援の可能性を述べられる。


⑤ 刑の種類と矯正・保護の概要
 日本の刑罰は、死刑・拘禁刑(懲役・禁錮を統合)・罰金・拘留・科料から構成される。有罪となった者は、刑務所等の矯正施設に収容され、または執行猶予・保護観察によって社会内処遇を受ける。矯正施設では、受刑者の改善更生と円滑な社会復帰を目指した処遇が実施されており、認知行動療法に基づく各種プログラムが導入されている。
 一方、保護観察所は仮釈放者・執行猶予者等の社会内処遇を担い、指導監督と補導援護を行う。公認心理師は、施設内・社会内双方の処遇場面で心理的アセスメントや支援を提供する専門職として、矯正・保護の仕組みを熟知しておく必要がある。
【到達目標】
• 日本の刑罰の種類と各刑罰の意義を説明できる。
• 施設内処遇と社会内処遇の違いを整理して述べられる。


キーワード ① 犯罪白書 ② 少年非行 ③ 更生保護 ④ 再犯防止 ⑤ 犯罪心理学
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業終了時、当該授業の理解を確認する10問の小テストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

3 少年非行と少年司法制度 科目の中での位置付け  少年を対象とした司法制度の全体像を把握する回。第4・5回の犯罪原因論・アセスメントと接続し、少年非行への理解を深める基盤となる。
 教育、福祉の分野における公認心理師も要支援者が少年司法の手続きに係属するケースに対応することが少なくないため、少年司法制度の理解が重要である。

コマ主題細目 ① 少年非行の現状と動向 ② 少年法と少年司法制度の概要 ③ 家庭裁判所と家庭裁判所調査官の役割 ④ 少年院と少年鑑別所の機能 ⑤ 少年非行の心理発達的背景
細目レベル ① 少年非行の現状と動向
 日本の少年非行は、1980年代の第三のピークをへて長期的に減少傾向にある。刑法犯少年の検挙人員は近年も減少を続けており、人口比でみても戦後最低水準にある。しかしその一方で、特定の深刻な非行(重大事件・凶悪事件)や、不登校・ひきこもりと関連した問題行動、SNSを介した犯罪被害・加害は注目すべき課題である。
 また、触法少年(14歳未満)の行為への対応や、犯罪少年・ぐ犯少年の区分の理解も重要である。少年非行の背景には、家庭環境の問題(虐待・貧困・養育の機能不全)、学校不適応、発達上の問題(発達障害等)など複合的な要因が絡んでおり、個別のアセスメントが不可欠である。
【到達目標】
• 日本の少年非行の現状(件数・類型・年齢等)を概説できる。
• 少年非行の複合的背景要因を列挙し、それぞれの予防的示唆を述べられる。


② 少年法と少年司法制度の概要
 少年法は、20歳未満の少年が非行を行った場合の手続きを定める法律である(2022年改正により18・19歳は「特定少年」として一部異なる扱い)。少年事件は警察・検察から家庭裁判所に送致され、家庭裁判所調査官による調査・審判を経て、保護処分(保護観察・少年院送致・児童自立支援施設送致)または不処分・審判不開始・検察官送致(刑事処分相当)が決定される。
 少年司法は成人刑事司法と異なり、「保護の原則」を基本とし、少年の健全育成を目的とする。一方で重大事件については原則逆送の規定もあり、厳罰化の方向性と保護的アプローチのバランスが問われ続けている。
【到達目標】
• 少年法の基本理念と成人刑事司法との相違を説明できる。
• 2022年少年法改正による「特定少年」制度の内容と問題点を述べられる。
• 保護処分の種類(保護観察・少年院・児童自立支援施設)を説明できる。


③ 家庭裁判所と家庭裁判所調査官の役割
 家庭裁判所は、少年事件と家事事件の双方を扱う特別裁判所である。少年事件においては、家庭裁判所調査官が少年・保護者・関係者に面接し、非行事実の背景にある心理・生活・家族・学校・交友関係等の環境的要因を調査する。この調査に基づいて、少年の処遇に関する意見が審判官(裁判官)に提供される。
 家庭裁判所調査官は心理学・社会学・教育学の素養を有する専門職であり、公認心理師とも密接に連携する場面が多い。調査においては、少年のパーソナリティや認知特性、動機・問題行動の機序などの心理的アセスメントが活用され、処遇選択における科学的根拠を提供する役割が期待されている。
【到達目標】
• 家庭裁判所調査官の職務内容と心理アセスメントの活用方法を説明できる。
• 公認心理師が家庭裁判所調査官と連携する場面を例示できる。


④ 少年院と少年鑑別所の機能
 少年鑑別所は、家庭裁判所の決定により観護措置がとられた少年を収容し、医学・心理学・教育学等の専門的知見から鑑別(アセスメント)を行う施設である。法務省矯正局の管轄であり、法務技官(心理)が鑑別業務を担う。
 少年院は、保護処分として少年院送致が決定した少年を収容し、矯正教育を行う施設であり、第1種から第5種に分類されている。矯正教育は生活指導・職業指導・教科指導・保健体育指導・特別活動指導から構成され、個々の少年のニーズに応じた処遇が行われる。心理的支援の観点からは、トラウマへの対応や認知行動療法的プログラムの実施、発達上の課題への個別支援が重要な課題となっている。
【到達目標】
• 少年鑑別所と少年院の機能の違いを明確に説明できる。
• 少年院における心理的支援の内容を具体的に述べられる。


⑤ 少年非行の心理発達的背景
 少年非行の背景には、発達的・心理的・環境的要因が複雑に絡み合っている。幼少期の不適切な養育(虐待・ネグレクト・養育放棄)は、愛着の問題や感情調節の困難さ、自己評価の低さにつながりやすく、非行リスクを高める。
 また、注意欠如多動症(ADHD)・自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害は、非行少年においても一定の割合で認められ、個別の支援ニーズを生み出す。さらに、仲間集団への帰属欲求・承認欲求が反社会的グループへの加入を促進するケースも多い。ライフコース発達的視点では、早期介入の重要性が強調されており、学校・家庭・地域が連携した予防的アプローチが求められる。
【到達目標】
• 少年非行の心理発達的リスク要因(愛着・発達障害・仲間影響等)を説明できる。
• 早期介入の重要性と、介入のエビデンスを述べられる。


キーワード ① 触法少年、犯罪少年、特定少年  ② 少年非行 ③ 更生保護 ④ 少年鑑別所 ⑤ 矯正教育
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業終了時、当該授業の理解を確認する10問の小テストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

4 犯罪原因論とリスク・ニーズ理論 科目の中での位置付け  犯罪行動のメカニズムを理論的に理解する核心回である。第5回のアセスメントと第6・7回の処遇プログラムへの橋渡しとなる理論的基盤を形成する。
コマ主題細目 ① 犯罪原因論の系譜 ② リスク因子と保護因子 ③ RNRモデル(リスク・ニーズ・反応性原則) ④ グッドライブズモデル(GLM) ⑤ 発達犯罪学と早期介入
細目レベル ① 犯罪原因論の系譜
 犯罪原因論は、なぜ人は犯罪を行うのかを説明しようとする理論群である。生物学的アプローチ(遺伝・神経学的要因)、精神分析的アプローチ(超自我の欠如・衝動統制の問題)、社会学的アプローチ(環境・機会・学習)など、各時代においてさまざまな視点が提唱されてきた。
 現代では単一要因による説明は否定され、複数の要因が相互作用するという多因子モデルが主流である。特に発達犯罪学(モフィット・ファリントンら)は、非行・犯罪の軌跡に着目し、生涯持続型と青年期限定型の区別を提唱するなど、縦断的な視点から重要な知見を提供している。
原因論の理解は、適切な介入ターゲットの選定と処遇設計の基盤となる。
【到達目標】
• 犯罪原因論の歴史的系譜を主要アプローチ別に整理できる。
• 発達犯罪学の「生涯持続型」と「青年期限定型」の区別とその実践的意義を説明できる。


② リスク因子と保護因子
 リスク因子とは、犯罪・非行の発生を統計的に予測する特性や環境であり、個人要因(衝動性・反社会的態度・物質乱用等)と環境要因(機能不全家族・非行仲間・貧困地域等)に分類される。一方、保護因子は、リスクがあっても犯罪・非行に至ることを防ぐ緩衝的役割を果たすもの(親との良好な関係・学業への関与・社会的サポート等)である。
 重要なのは、リスク因子が累積するほど犯罪リスクが高まるという「累積的リスクモデル」であり、複数リスクへの包括的対応が求められる。保護因子は介入の資源としても位置づけられ、ストレングス・ベースド・アプローチとも接続される。リスク・保護因子の双方を評価することが、科学的処遇の出発点である。
【到達目標】
• 静的リスク因子と動的リスク因子の違いを説明できる。
• 累積的リスクモデルを用いて、介入ターゲットの優先順位を説明できる。
• 保護因子を介入の資源として活用する考え方を述べられる。


③ RNRモデル(リスク・ニーズ・反応性原則)
 アンドリュースとボンタが提唱したRNRモデルは、効果的な犯罪者処遇の指針として国際的に広く採用されている。リスク原則とは、処遇の強度を再犯リスクの高低に合わせるべきというものであり、高リスク者に集中的な介入を提供する。ニーズ原則とは、再犯に直結する動的リスク因子(犯罪促進ニーズ)を処遇ターゲットとするというものである。反応性原則とは、個人の学習スタイル・認知特性・文化的背景等に応じた処遇様式を選択すべきというものである。
 RNRモデルはメタ分析によって再犯低減効果が支持されており、日本の矯正・保護現場でも各種処遇プログラムの設計に取り入れられている。
【到達目標】
• RNRモデルの三原則(リスク・ニーズ・反応性)を各々説明できる。
• 「犯罪促進ニーズ(クリミノジェニックニーズ)」の概念と具体例を述べられる。


④ グッドライブズモデル(GLM)
 グッドライブズモデル(Good Lives Model:GLM 良き人生モデル)はウォードらが提唱したポジティブな犯罪者処遇理論であり、RNRモデルへの批判的補完として位置づけられる。GLMは、犯罪者が追い求めてきた「一次的人間の善」(知識・関係性・達成感・幸福感等)を、社会的に承認された方法で充足できるよう支援することを目指す。犯罪行動は、その欲求を反社会的な方法で充足しようとした結果と理解される。
 GLMでは、個人の強み・価値観・資源を活かした「よりよい人生設計」を共同作業で構築することが核心であり、動機づけと自律性の促進に優れている。日本でも性犯罪者処遇や薬物依存回復支援などへの応用が検討されており、ストレングス・ベースド実践として注目されている。
【到達目標】
• GLMの中心概念(一次的人間の善)とRNRモデルとの関係を説明できる。
• GLMの視点から処遇計画を立案する際の要点を述べられる。


⑤ 発達犯罪学と早期介入
 発達犯罪学は、犯罪行動を生涯にわたる発達の軌跡として捉える分野であり、ファリントンのケンブリッジ研究やモフィットの類型論が代表的である。研究は、幼少期の要因(低出生体重・親の犯罪歴・貧困・虐待等)が後の非行・犯罪を予測することを一貫して示している。
 特に重要な点として早期介入の効果が挙げられる。就学前や学童期に行われる家族支援・育児支援・社会的スキル訓練等が、長期的な非行予防に有効であることがエビデンスとして蓄積されている。また、生涯持続型犯罪者は全犯罪者の一部であるが、犯罪の大部分を占めるとされており、この層への的を絞った集中的介入が再犯防止政策において重視される。
【到達目標】
• 発達犯罪学の代表的な縦断研究の知見を概説できる。
• 早期介入プログラムのエビデンスを踏まえて、予防策を提案できる。


キーワード ① 犯罪原因論 ② 静的リスク因子と動的リスク因子 ③ RNRモデル ④ グッドライブズモデル ⑤ ケンブリッジ非行発達研究
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業終了時、当該授業の理解を確認する10問の小テストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

5 犯罪・非行のアセスメント 科目の中での位置付け  理論(第4回)から実践(第7・8回の処遇)へと橋渡しする回である。アセスメントのプロセス全体を網羅し、公認心理師の実務に直結する内容を扱う。
 教育及び福祉分野の公認心理師にとっても必要な知識となるため、将来出会う少年の問題行動のアセスメントを的確に行うためにも十分に理解してほしい。

廣井亮一(2013).司法臨床入門:家族臨床・学校臨床との協働(第2版).日本評論社.
仲真紀子(編)(2016).子どもへの司法面接:考え方・進め方とトレーニング.有斐閣.
岡本吉生(2019).犯罪者処遇のためのアセスメント:最新の動向と課題.犯罪心理学研究,57(1),1–15.
コマ主題細目 ① アセスメントの目的と種類 ② リスクアセスメントの理論と方法 ③ ケースフォーミュレーション ④ 精神鑑定と心理学的鑑定 ⑤ 司法面接の概要
細目レベル ① アセスメントの目的と種類
 司法・犯罪分野におけるアセスメントとは、犯罪・非行に関わる個人について、心理的特性・行動傾向・リスク・ニーズ等を科学的に評価する過程である。その目的は、①処遇の必要性と内容の判断、②処遇効果のモニタリング、③危険性の評価(リスクアセスメント)、④裁判・審判への情報提供等である。アセスメントの手法には、面接法・観察法・心理検査・行動評定尺度などがあり、複数の方法を組み合わせることが精度を高める。
 特に構造化・半構造化面接の活用、信頼性・妥当性の検証された標準化ツールの使用が推奨される。アセスメントは処遇計画の起点であり、継続的な見直しを前提とした動的プロセスとして位置づけるべきである。
【到達目標】
• アセスメントの目的(処遇判断・危険性評価・情報提供等)を列挙できる。
• 構造化・半構造化面接の利点と限界を説明できる。


② リスクアセスメントの理論と方法
 リスクアセスメントとは、個人が将来的に犯罪・暴力行為を行う可能性を評価することであり、アクチュアリアル(統計的)方式と構造的臨床判断方式の2種類が主に用いられる。アクチュアリアル方式は、統計的に再犯と関連する項目を点数化して機械的にリスクレベルを算出するものであり、客観性・一貫性に優れる。
 構造的臨床判断方式(SPJ)は、エビデンスに基づいたリスク因子を評価しながら最終的に臨床的判断を組み合わせるもので、動的因子への感応性が高い。代表的ツールとして、HCR-20(暴力リスク)、LS/CMI(一般犯罪者)、Static-99(性犯罪者)等がある。日本では法務省が独自のアセスメントツール(CFP等)を開発・運用している。
【到達目標】
• アクチュアリアル方式とSPJ方式の違いを比較説明できる。
• 代表的なリスクアセスメントツール(HCR-20、LS/CMI等)の特徴を述べられる。
• リスクアセスメントの倫理的問題(スティグマ・過剰予測等)を指摘できる。


③ ケースフォーミュレーション
 ケースフォーミュレーションとは、個々のクライエントについて、問題行動の発生・維持・変化を説明する仮説的な枠組みを構築する作業である。犯罪・非行分野では、過去の経験・現在の思考・感情・行動・環境の相互作用を整理し、なぜその人が当該犯罪行為に至ったのかを理解するために行われる。
 認知行動理論に基づくフォーミュレーションでは、トリガー状況→自動思考→感情→行動のチェーンを同定することが重要である。ケースフォーミュレーションは、処遇計画の個別化に直結するものであり、リスクアセスメントの結果を補完する機能を持つ。また、クライエントとの共有を通じて治療同盟を構築し、変化への動機づけを高める効果もある。
【到達目標】
• 犯罪・非行へのケースフォーミュレーションの手順を説明できる。
• ケースフォーミュレーションをクライエントと共有する治療的意義を述べられる。


④ 精神鑑定と心理学的鑑定
 精神鑑定は、刑事事件において被告人の責任能力(心神喪失・心神耗弱の有無)や訴訟能力を判断するために行われる医学的・心理学的評価であり、裁判官の判断に証拠として提供される。主に精神科医が担当するが、心理検査(知能検査・人格検査等)の施行と解釈において心理士が補助的役割を果たす場合がある。
 心理学的鑑定(情状鑑定)は、被告人の生育歴・人格・動機・心理的背景等を解明する目的で行われ、量刑判断の参考とされる。公認心理師が鑑定補助者として関与する可能性があるため、鑑定書の構造・倫理的課題・証言における留意点について理解しておく必要がある。
【到達目標】
• 精神鑑定と心理学的(情状)鑑定の目的・内容の違いを説明できる。
• 鑑定における倫理的留意点(二重役割・中立性等)を述べられる。


⑤ 司法面接の概要
 司法面接とは、犯罪・虐待・暴力等の被害を受けた子どもや、証言能力に疑問のある証人・被疑者に対して、バイアスを最小化しながら情報を収集するための科学的な面接技法である。通常の臨床面接とは異なり、誘導的な質問を避け、オープン質問を中心とした段階的な手続きが定められている。国際的には「NICHD面接プロトコル」が広く用いられており、日本でも導入が進んでいる。
 司法面接は、子どもの供述の信頼性を高めるとともに、繰り返し面接による二次被害を防ぐことを目的とする。警察・検察・児童相談所が連携した「協同面接」の実施も推奨されており、公認心理師の専門的関与が期待されている。

【到達目標】
• 司法面接の目的と通常の臨床面接との違いを説明できる。
• NICHD面接プロトコルの基本構造(ラポール形成・練習・主質問等)を概説できる。
• 協同面接における公認心理師の役割を述べられる。


キーワード ① リスクアセスメント ② 構造的臨床判断 ③ ケースフォーミュレーション ④ 司法面接 ⑤ NICHDプロトコル
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業終了時、当該授業の理解を確認する10問の小テストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

6 施設内処遇 科目の中での位置付け  公認心理師が直接関与する処遇の場として、施設内処遇の仕組みと心理職の役割を詳細に学ぶ回である。第7回の社会内処遇と対比させることで処遇の全体像が形成される。
配布資料
コマ主題細目 ① 施設内処遇の目的と原則 ② 刑務所における処遇と心理職の役割 ③ 少年院における矯正教育 ④ 被害者の視点を取り入れた教育 ⑤ 施設内処遇における課題と今後の展望
細目レベル ① 施設内処遇の目的と原則
 施設内処遇とは、受刑者・収容少年等を矯正施設に収容し、改善更生と社会復帰を目指して行われる一連の処遇である。日本では、刑務所・少年刑務所・拘置所・少年院・少年鑑別所・婦人補導院などが施設内処遇を実施する機関である。
 処遇の原則として、個別処遇主義(個人のニーズに応じた処遇)、科学的処遇主義(アセスメントに基づく処遇)、段階的処遇(改善の進捗に応じた処遇段階の移行)が挙げられる。施設内処遇は単なる隔離・拘禁にとどまらず、就労支援・生活指導・教科教育・各種プログラムを通じた積極的な改善更生の場であることが求められる。
【到達目標】
• 施設内処遇の三原則(個別・科学的・段階的処遇)を説明できる。
• 日本の矯正施設の種類と機能を分類して説明できる。


② 刑務所における処遇と心理職の役割
 刑務所では、受刑者分類の上、個別処遇計画を策定して矯正処遇が実施される。法務省矯正局が管轄する刑務所には法務技官(心理)が配置されており、心理鑑別・アセスメント・各種処遇プログラムの実施・心理相談等を担う。
 特別改善指導として、性犯罪再犯防止指導・薬物依存離脱指導・暴力団離脱指導・被害者の視点を取り入れた教育・飲酒運転防止指導・交通安全指導が設けられており、認知行動療法的手法に基づいて構造化された内容が提供される。また一般改善指導として、社会復帰に向けた就労支援・家族関係調整・コミュニケーションスキル訓練等も行われる。
【到達目標】
• 法務技官(心理)の職務内容と公認心理師との協働関係を説明できる。
• 特別改善指導の種類と内容を列挙できる。


③ 少年院における矯正教育
 少年院では、在院少年に対して矯正教育計画が策定され、生活指導・職業指導・教科指導・保健体育指導・特別活動指導の5領域にわたる矯正教育が実施される。生活指導の中核には、各種の指導プログラム(被害者の視点を取り入れた教育・薬物非行防止指導・性非行防止指導・暴力防止指導・家族関係指導・交友関係指導等)がある。
 処遇は段階的に進められ、改善の度合いに応じて外出・外泊等の機会が与えられる。法務省は少年院の種別として第1種~第5種を定めており、対象少年の心身の状態や非行傾向に応じた施設が選定される。公認心理師は、個別の心理支援や集団プログラムを通じて矯正教育を支える役割を担う。
【到達目標】
• 少年院における矯正教育の5領域を説明できる。
• 少年院の種別(第1〜5種)とその対象を説明できる。


④ 被害者の視点を取り入れた教育
 被害者の視点を取り入れた教育は、犯罪者・非行少年が自らの行為が被害者・被害者家族に与えた影響を理解し、責任を自覚することを目的とした処遇プログラムである。刑事施設・少年院において特別改善指導・矯正教育の一環として実施されている。
 プログラムでは、被害者の体験談を読む・犯罪被害者のビデオを視聴する・被害者への謝罪文を書くなどの課題を通じて、被害者の苦しみを想像し感情移入する能力を高めることが目指される。共感性の欠如・自己中心的認知の修正・被害最小化思考の変容が中心的な焦点となる。公認心理師はグループファシリテーターとして、安全な集団過程を維持しながら内省を促す役割を担う。
【到達目標】
• 被害者視点教育の目標と構成要素を説明できる。
• グループファシリテーターとしての公認心理師の役割を述べられる。



⑤ 施設内処遇における課題と今後の展望
 施設内処遇の課題として、第一に過剰収容の問題がある。施設の定員超過は処遇の質を低下させ、個別処遇の実現を困難にする。第二に、入所者の高齢化・障害化への対応が急務となっている。認知症・身体障害・知的障害を抱える受刑者の増加により、通常の処遇プログラムの適用に困難が生じている。第三に、出所後の地域定着支援が不十分であり、高齢・障害受刑者の再入所率の高さが問題となっている。これを受けて、出所後の福祉サービスへの橋渡しを行う「特別調整」制度や、地域生活定着支援センターとの連携が重要視されている。
 公認心理師は施設内の処遇にとどまらず、地域移行を見据えた支援者としての役割が期待される。
【到達目標】
• 施設内処遇の主要な課題(高齢化・障害化・地域移行等)を説明できる。
• 「特別調整」制度の仕組みと地域生活定着支援センターの役割を述べられる。



キーワード ① 科学的処遇主義  ② 特別改善指導 ③ 被害者視点教育 ④ 矯正教育5領域 ⑤ 法務技官
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業終了時、当該授業の理解を確認する10問の小テストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

7 社会内処遇 科目の中での位置付け  施設から地域へという文脈で、犯罪者・非行少年への地域支援を学ぶ回回である。第6回の施設内処遇との連続性を意識しつつ、第14回の多職種連携への布石となる。
コマ主題細目 ① 社会内処遇の意義と概要 ② 保護観察の仕組みと保護観察官・保護司の役割 ③ 保護観察の仕組みと保護観察官・保護司の役割 ④ 犯罪予防と再犯防止推進計画 ⑤ 社会内処遇における心理支援
細目レベル ① 社会内処遇の意義と概要
 社会内処遇とは、犯罪者・非行少年を施設に収容せず、地域社会のなかで生活させながら行う処遇である。施設内処遇と対比して、社会関係の維持・就労継続・家族関係の保全など、社会復帰にとって重要な要素が損なわれにくいという利点がある。
 日本の社会内処遇の主な制度として、保護観察(仮釈放者・少年院仮退院者・保護観察付執行猶予者・少年の保護観察処分)・更生保護・社会奉仕命令等がある。保護観察官と保護司が協働して指導監督と補導援護を担う。社会内処遇の効果は、犯罪者のリスク・ニーズに応じた個別支援と、社会的資源(家族・就労・住居・福祉)の確保に大きく依存する。
• 社会内処遇の利点と課題を施設内処遇と対比して説明できる。
• 社会内処遇の主な種類と対象者を列挙できる。


② 保護観察の仕組みと保護観察官・保護司の役割
 保護観察は、保護観察所が実施する社会内処遇の中核的制度である。保護観察官は国家公務員であり、心理学・社会学等の専門知識を有する専門職として指導監督・補導援護・環境調整を担う。保護司は法務大臣から委嘱された民間のボランティアであり、地域の生活実情に精通した立場から保護観察対象者の指導・相談・支援を行う。
 保護観察では、特別遵守事項(プログラム参加等)と一般遵守事項(届出義務・住居変更禁止等)が課される。保護観察官と保護司が連携して処遇を進める「官民協働」の仕組みは日本独自の制度であり、地域に根ざした支援を可能にしている。
【到達目標】
• 保護観察官と保護司の役割の違いと協働の仕組みを説明できる。
• 特別遵守事項と一般遵守事項の内容を説明できる。



③ 更生保護施設と社会復帰支援
 更生保護施設は、住居がない・家族からの援助が得られないなど、直ちに自立した社会生活を送ることが困難な保護観察対象者や刑務所出所者等を一時的に宿泊させ、生活指導・就労支援等を行う民間施設である。全国各地に設置されており、更生保護法人が運営する。入所者に対しては、日常生活訓練・就職活動支援・薬物依存プログラム・食事提供・健康管理等の支援が行われる。
 施設を退所した後も、地域のさまざまな社会資源(ハローワーク・障害福祉サービス・医療機関等)との連携によって継続的支援が図られる。公認心理師は更生保護施設において心理的支援や依存症回復プログラムの提供など重要な役割を担いうる。
到達目標】
• 更生保護施設の機能と公認心理師の関与可能性を説明できる。
• 出所後の支援ネットワークにおける各機関の役割を説明できる。



④ 犯罪予防と再犯防止推進計画
 再犯防止推進法(2016年施行)に基づき、国・地方自治体が再犯防止推進計画を策定し、就労・住居・医療・福祉への切れ目ない支援が推進されている。再犯者が刑法犯全体に占める割合は増加傾向にあり、特に高齢者・障害者・薬物依存者の再入所が社会問題となっている。
 再犯防止のためには、出所後の福祉サービスへの確実な接続が必要であり、刑事司法と福祉の連携(司法と福祉の橋渡し)が不可欠である。地域の支援ネットワーク形成には、保護観察所・矯正施設・地域生活定着支援センター・医療機関・行政機関・NPO等の多機関連携が求められる。公認心理師はその中核的な連携調整者としての機能を担う可能性がある。
到達目標】
• 再犯防止推進法の目的と主要施策を説明できる。
• 高齢・障害受刑者の再犯問題と福祉的支援の必要性を論じられる。



⑤ 社会内処遇における心理支援
社会内処遇において公認心理師が提供できる心理支援として、個別の心理相談・カウンセリング、グループプログラム(認知行動療法・動機づけ面接等)、家族支援、就労前支援(ソーシャルスキルトレーニング等)などがある。特に薬物依存・アルコール依存を抱えるクライエントに対しては、ダルク(民間薬物依存回復施設)や断酒会との連携も重要となる。
また、性犯罪者や家庭内暴力の加害者への地域処遇プログラム(コミュニティ・スーパービジョン)も発展しつつある。
心理支援においては、対象者の変化への動機づけを丁寧にアセスメントしながら、段階に応じたアプローチを選択することが求められる。
【到達目標】
• 社会内処遇において公認心理師が提供できる心理支援の種類を説明できる。
• ダルク等の民間回復支援機関との連携の意義を述べられる。



キーワード ① 保護観察 ② 特別遵守事項 ③ 再犯防止推進法 ④ 司法と福祉の橋渡し ⑤ ダルク
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業終了時、当該授業の理解を確認する10問の小テストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

8 復習回(1) 科目の中での位置付け  本回は、第1回から第7回までに学んだ内容を横断的に整理し、犯罪心理学の理論、制度、アセスメント、処遇を一つの流れとして再統合するための復習回である。受講者には、個別の用語や制度を断片的に暗記するのではなく、「なぜ犯罪・非行が生じるのか」「それをどのように評価するのか」「どのような制度と支援につなげるのか」という連続した視点から理解し直すことが求められる。
 とりわけ、公認心理師が刑事司法・少年司法・矯正・更生保護の各段階でどのような役割を担いうるのかを再確認し、後半回で扱う精神障害と犯罪、犯罪被害者支援、家事事件、多職種連携の学修へと接続する基盤を固める。

コマ主題細目 ① 犯罪心理学と刑事司法の基本構造の再整理 ② 少年非行と少年司法制度の要点の再確認 ③ 犯罪原因論・RNRモデル・GLMの総合整理 ④ 犯罪・非行のアセスメントの目的と方法 ⑤ 施設内処遇と社会内処遇の連続性の理解
細目レベル ① 犯罪心理学と刑事司法の基本構造の再整理
 第1回で扱った犯罪心理学の成立史と研究の基本的枠組み、第2回で扱った刑事司法制度の全体像は、本科目の以後の学修を支える土台である。復習に当たっては、犯罪心理学が単に「犯罪者の心を当てる学問」ではなく、犯罪行動の理解、予測、予防、処遇、被害者支援までを含む実証的学問であることを再確認する必要がある。あわせて、日本の刑事司法が捜査、起訴、不起訴判断、裁判、刑の執行という段階的構造を持ち、各段階で人権保障と社会防衛のバランスが問われていることを整理する。
 ここでは、理論と制度を切り離して覚えるのではなく、心理学的知見がどの段階で実務に活用されるのかという観点から見直すことで、犯罪心理学を社会実装された知として捉え直すことを目指す。
【到達目標】
・犯罪心理学の成立と現代的役割を、刑事司法制度の基本構造と関連づけて説明できる。
・捜査・起訴・裁判・矯正・更生保護の各段階で心理学が活用される場面を述べられる。


② 少年非行と少年司法制度の要点の再確認
 第3回で学んだ少年非行と少年司法制度は、成人刑事司法との違いを理解するうえで特に重要な領域である。少年法は、非行行為そのもののみならず、少年の発達段階、家庭環境、教育環境、交友関係、再非行の可能性などを踏まえ、健全育成と再社会化を重視する制度設計となっている。復習では、犯罪少年・触法少年・ぐ犯少年の区別、家庭裁判所による審判、家庭裁判所調査官の調査、少年鑑別所による鑑別、少年院送致や保護観察といった流れを時系列で整理することが重要である。
 また、少年の問題行動を個人の資質だけで理解せず、虐待、不適切養育、学校不適応、発達上の課題など複数の要因の重なりとして捉える視点を再確認することで、保護主義の意味と限界をより具体的に考えられるようにする。
【到達目標】
・少年司法制度の理念と、成人刑事司法との相違点を説明できる。
・非行少年の類型と、家庭裁判所・少年鑑別所・少年院の役割を整理して説明できる。


③ 犯罪原因論・RNRモデル・GLMの総合整理
 第4回で扱った犯罪原因論とリスク・ニーズ理論は、犯罪行動の理解から処遇計画の設計に至るまでをつなぐ中核的内容である。復習では、犯罪原因を生物学的・心理学的・社会学的・発達的要因のいずれか一つに還元するのではなく、複数の要因が相互作用して犯罪・非行が成立するという多因子モデルとして把握することが重要となる。その上で、リスク因子と保護因子の違い、クリミノジェニック・ニーズ(犯罪に直接結びつく動的リスク要因)を標的にするRNRモデルの発想、さらに当事者の強みや価値を重視するGLMの考え方を比較し、再犯防止実践におけるそれぞれの役割を整理する。
 本項目の復習を通して、理論が単なる説明装置にとどまらず、アセスメントや処遇選択の判断基準として機能していることを理解する。
【到達目標】
・主要な犯罪原因論を比較し、RNRモデルとGLMの位置づけを説明できる。
・リスク因子・保護因子・クリミノジェニック・ニーズの違いを述べられる。


④ 犯罪・非行のアセスメントの目的と方法
 第5回で学んだアセスメントは、司法・犯罪分野における心理実践の出発点であり、復習では「何のために、何を、どの方法で評価するのか」を明確に再整理する必要がある。面接、観察、心理検査、行動評定尺度などの方法は、それぞれ得意とする情報の種類が異なり、単独で用いるのではなく複数の資料を統合して判断することが求められる。
 また、リスクアセスメントは再犯や暴力の可能性を推定し、ケースフォーミュレーションは問題行動の生起・維持のメカニズムを仮説的に理解し、司法面接は供述の正確性と二次被害防止を両立させるために用いられる。復習では、これらの違いと補完関係を整理し、アセスメント結果が処遇計画や支援方針にどのように反映されるのかを一連の流れとして理解する。
【到達目標】
・リスクアセスメント、ケースフォーミュレーション、司法面接の目的と特徴を説明できる。
・アセスメント結果が処遇計画の立案に結びつく過程を具体的に述べられる。


⑤ 施設内処遇と社会内処遇の連続性の理解
 第6回・第7回で扱った施設内処遇と社会内処遇は、しばしば対立的に理解されがちであるが、実際には再犯防止と社会復帰を支える連続的支援の両輪として捉える必要がある。施設内処遇では、刑務所や少年院において個別処遇、科学的処遇、段階的処遇の原則のもと、生活指導、教科教育、就労支援、認知行動療法的プログラム、被害者の視点を取り入れた教育などが行われる。
 一方、社会内処遇では、保護観察官と保護司の協働、住居・就労・医療・福祉資源との接続、地域での継続的な心理支援が中心となる。復習では、施設から地域への移行を切れ目なく支えることの重要性、公認心理師が多職種連携の中でアセスメント、動機づけ支援、家族支援を担う意義を整理し、処遇を「収容か地域か」という二者択一ではなく、回復と社会参加を支えるプロセスとして理解する。
【到達目標】
・施設内処遇と社会内処遇の特徴・利点・課題を比較して説明できる。
・矯正施設から地域支援へとつながる再犯防止の流れを説明できる。


キーワード ① 刑事司法制度、少年司法制度 ② RNRモデル  ③ リスクアセスメント ④ 施設内処遇 ⑤ 社会内処遇
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業終了時、当該授業の理解を確認する10問の小テストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

9 精神障害と犯罪、医療観察制度 科目の中での位置付け  医療と司法の接点に位置する特殊な領域を扱う。第2・5回の制度・アセスメントの知識を統合し、精神障害を抱える犯罪者への専門的関与の在り方を理解し、医療、福祉の分野でも係る可能性がある要支援者への支援について考察を深める機会とする。
コマ主題細目 ① 責任能力と刑事司法 ② 医療観察制度の概要 ③ 精神障害と犯罪の関係 ④ さまざまな精神障害と司法的対応 ⑤ 医療観察制度における多職種連携
細目レベル ① 責任能力と刑事司法
 刑法は、行為時に心神喪失の状態にあった者は罰しない(刑法39条1項)、心神耗弱の状態にあった者は刑を減軽するとしている。心神喪失とは、精神の障害により事物の弁識能力または行動制御能力が失われた状態、心神耗弱とはそれが著しく減退した状態を指す。責任能力の判断は法的・規範的なものであり、精神科診断と直接一致するわけではない。
 鑑定精神医は医学的観点からの評価を提供するが、最終判断は裁判官が行う。責任能力評価において、知的能力・認知機能・精神症状・意識状態・行為時の心理状態の総合的理解が求められ、公認心理師も心理検査等を通じて貢献しうる。
【到達目標】
• 心神喪失・心神耗弱の法律上の定義と、責任能力評価のプロセスを説明できる。
• 精神科診断と責任能力判断の違い(法的・医学的区別)を説明できる。


② 医療観察制度の概要
 医療観察法(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)は2005年に施行された。心神喪失・心神耗弱を理由に不起訴・無罪となった重大他害行為者を対象に、適切な医療の提供と社会復帰の促進を目的とする。
 処遇は、審判(地方裁判所の精神保健審判員と裁判官による合議)→入院処遇または通院処遇→社会復帰という流れで進む。指定入院医療機関では、多職種チームによる集中的な治療プログラムが実施される。精神科医・看護師・作業療法士・心理職・社会福祉士等の連携が不可欠であり、公認心理師は心理アセスメント・認知行動療法的介入・動機づけ支援等を担う。
【到達目標】
• 医療観察制度の対象・手続き・処遇の流れを説明できる。
• 指定入院医療機関における多職種チームの構成と公認心理師の役割を述べられる。


③ 精神障害と犯罪の関係
 精神障害と犯罪の関係については、誤解や偏見が根強いが、精神障害を持つ人々が一般人口と比べて犯罪を起こしやすいとは言えない。重要なのは、物質使用障害・反社会性パーソナリティ障害・未治療の精神病状態などが犯罪行為のリスクを高めうることであり、「精神障害=危険」という一般化は誤りである。
 研究では、精神障害者による重大犯罪は全体の数パーセントにすぎないことが示されている。公認心理師は、精神障害を抱える犯罪者・被疑者に接する際に、診断と行動の関係を個別的・文脈的に理解し、スティグマに基づく偏見なく支援する姿勢が求められる。
【到達目標】
• 精神障害と犯罪の実証的な関係(統計・研究知見)を正確に説明できる。
• スティグマに基づく偏見を排した支援姿勢の重要性を論じられる。


④ さまざまな精神障害と司法的対応
 犯罪・非行に関連する精神障害として、統合失調症・気分障害・パーソナリティ障害(特に反社会性・境界性)・発達障害(ASD・ADHD)・物質使用障害・知的障害などが挙げられる。それぞれに固有の特性があり、処遇や支援においては障害特性に応じた個別アプローチが必要である。例えば、ADHDでは衝動性への対応と環境調整が重要であり、ASDでは社会的ルールの明示的な学習や感覚過敏への配慮が求められる。
 物質使用障害では依存回復プログラムと再発防止が中心となる。障害の有無にかかわらず、犯罪行為の責任を適切に帰属しながら支援を組み立てることが、司法・犯罪分野における心理職の専門的課題である。

【到達目標】
• 主要な精神障害(統合失調症・パーソナリティ障害・発達障害・物質使用障害)と犯罪行動との関連を説明できる。
• 各障害特性に応じた処遇上の配慮を具体的に述べられる。


⑤ 医療観察制度における多職種連携
 医療観察制度の指定入院・通院医療機関では、精神科医・看護師・精神保健福祉士・作業療法士・公認心理師(心理士)が連携するチーム医療が基本とされている。各職種が専門性を持ち寄り、当事者の包括的なアセスメントと治療計画を共同作成する。公認心理師は、神経心理学的検査・パーソナリティ評価・リスクアセスメント・認知行動療法の実施を担う。
 社会復帰に向けては、地域の精神保健福祉サービス・保護観察所・生活支援機関との連携も重要であり、多機関連携コーディネートの視点も求められる。医療観察制度は「治療と司法の接点」に位置する制度であり、医療倫理・司法倫理の双方への感覚が公認心理師に求められる。
【到達目標】
• 医療観察制度における多職種連携の構造と公認心理師固有の役割を説明できる。
• 社会復帰に向けた地域連携の枠組みを述べられる。


キーワード ① 心神喪失、心神耗弱  ② 医療観察法 ③ 指定入院医療機関 ④ スティグマ ⑤ 物質使用障害
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト これまでの学習内容の定着を確認するテストを実施する。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

10 犯罪捜査と心理学 科目の中での位置付け  臨床実践の文脈から離れ、捜査・証拠評価という公認心理師の別の関与領域を俯瞰する回である。特に目撃証言・虚偽自白・司法面接の知識は第5回と相互補完関係にある。
 公認心理師は心理臨床に限らず、警察本部の科学捜査研究所の心理科に勤務する職員もおり、社会での心理学の応用に携わる専門家としての資格であることに留意してほしい。

コマ主題細目 ① 自由報告の定義と特徴 ② 自由報告の心理的意義 ③ 自由報告を引き出す質問技法 ④ 面接の構造と自由報告を支える要素 ⑤ 実務上の課題と面接の標準化
細目レベル ① 犯罪捜査と心理学の関わり
 心理学は犯罪捜査のさまざまな局面で活用されている。主な領域として、①被疑者・参考人の取調べ、②目撃証言・記憶の信頼性評価、③犯罪者プロファイリング、④ポリグラフ(虚偽検出)検査、⑤被害者・証人への支援的面接がある。
 かつては「犯人の自白」が証拠の王として過重視されたが、虚偽自白研究の発展により、自白の信頼性評価と心理的に公正な取調べの重要性が認識されるようになった。近年の日本では、取調べの可視化(録音・録画)が一部事件で義務化され、透明性と客観性の確保が進んでいる。公認心理師は、供述分析・心理学的鑑定・面接支援等において専門的役割を担いうる。
【到達目標】
• 犯罪捜査における心理学の主要な応用領域を列挙できる。
• 取調べの可視化の意義と日本における現状を説明できる。


② 目撃証言の信頼性と誤判問題
 目撃証言は犯罪捜査において重要な証拠とみなされてきたが、心理学的研究はその信頼性に多くの問題があることを明らかにしている。記憶は録画のように固定されたものではなく、想起の度に再構成される動的なプロセスであり、事後情報・暗示・面接者の態度によって容易に歪められる。
 ロフタスの研究は、目撃者の記憶が事後情報によって汚染される「誤情報効果」を実証した。誤った目撃証言が冤罪の主要原因となってきたことはDNAイノセンス・プロジェクトが明示している。こうした知見から、ラインアップ手続き・取調べ方法・証拠評価に関して心理学的勧告が司法の実務へと反映されるようになってきている。
【到達目標】
• 目撃記憶の可塑性と「誤情報効果」のメカニズムを説明できる。
• 目撃証言の信頼性に関する心理学的知見を司法実務への示唆とともに述べられる。



③ 犯罪者プロファイリング
 犯罪者プロファイリングとは、犯行現場や犯行手口等の情報から、未知の犯罪者の心理・行動特性・属性等を推測する捜査支援技法である。FBIが開発した「犯罪者プロファイリング」(組織的vs.無組織的分類)は広く知られているが、その科学的妥当性については批判も多い。
 現在は統計的・心理学的手法を用いた「捜査心理学(investigative psychology)」や「地理的プロファイリング」が発展しており、科学的根拠に基づく捜査支援が志向されている。日本では警察庁が独自のプロファイリング研究を実施している。プロファイリングはあくまで捜査の補助手段であり、その限界と誤用リスクを理解した上で活用されることが求められる。
【到達目標】
• 犯罪者プロファイリングの方法と科学的妥当性についての議論を説明できる。
• プロファイリングの限界と誤用リスクを指摘できる。


④ ポリグラフ(虚偽検出)検査
 ポリグラフ検査とは、呼吸・心拍・皮膚電気活動などの生理的指標を計測することによって、被験者が虚偽を述べているかどうかを推定しようとする技法である。日本の警察では、有罪知識検査(Guilty Knowledge Test:GKT/ Concealed Information Test:CIT)と呼ばれる方法が主に使用されており、犯人しか知り得ない情報(犯行に関連する刺激)への生理反応を利用する。
 GKTは一般的な「緊張最高点質問法」よりも理論的妥当性が高いとされる。なお、ポリグラフ検査の証拠能力については日本の裁判所でも議論があり、補助的証拠にとどまる場合もあることに留意する。偽陽性・偽陰性の問題、訓練による回避の可能性など、限界についての科学的知識が必要である。
• GKT(有罪知識検査)の原理を説明できる。
• ポリグラフ検査の科学的限界と法的証拠能力についての議論を述べられる。



⑤ 被疑者取調べと虚偽自白
 虚偽自白とは、実際には犯罪を行っていない者が自白することであり、冤罪の重大な原因の一つである。心理学的研究から、虚偽自白の背景には、①長時間・高圧的な取調べによる疲弊、②自白すれば早く楽になるという誤った判断(道具的自白)、③被暗示性の高さ・知的障害・精神障害などの個人的脆弱性がある。カセル・ドリズィン・レオらの研究は、虚偽自白のメカニズムと促進要因を体系的に明示した。
 このような知見に基づき、イギリスのPEACEモデル(自白の強要ではなく「正確な情報収集」を目的とした科学的な司法面接・取調べ手法)のような情報収集型取調べモデルが開発されており、日本においても導入が議論されている。公認心理師は供述の信頼性評価において専門的な分析的視点を提供できる。
• 虚偽自白の三類型(自発的・強制的・内面化型)を説明できる。
• 情報収集型取調べ(PEACEモデル等)の特徴と高圧型取調べとの違いを述べられる。


キーワード ① 犯罪白書 ② 少年非行 ③ 更生保護 ④ 再犯防止 ⑤ 犯罪心理学
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業終了時、当該授業の理解を確認する10問の小テストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

11 犯罪被害者の心理と支援 科目の中での位置付け  犯罪者側の支援から被害者側の支援へと視点を転換する回である。これまで学んだ知識を活用しつつ、被害者支援の専門性を確立することが求められる。
 犯罪者・非行少年の中には子ども期逆境体験を受けている人も少なくないため、犯罪被害者の心理と支援を学ぶことは犯罪者や非行少年の立ち直り支援にも有用であることを理解してほしい。

コマ主題細目 ① 犯罪被害者が置かれる状況と心理 ② 犯罪被害者支援の歴史と法制度 ③ トラウマとトラウマケア ④ さまざまな機関での被害者支援 ⑤ 犯罪被害者への心理面接
細目レベル ① 犯罪被害者が置かれる状況と心理
 犯罪被害者は、事件そのものによる直接的被害(身体的・精神的・財産的)に加えて、刑事手続きの中で証人・被害者として繰り返し被害体験を語ることを求められる「二次被害」にさらされやすい。さらに、マスメディアの過剰報道・周囲の無理解・社会的孤立といった「三次被害」の問題もある。
 被害直後から、恐怖・怒り・悲嘆・無力感・罪悪感・回避・過覚醒など多様な心理反応が生じる。一部の被害者には急性ストレス障害(ASD)・外傷後ストレス障害(PTSD)・抑うつ・複雑性PTSDが生じうる。公認心理師は、被害者が求めるサポートを個別に見極め、回復を支えるための専門的支援を提供する役割を担う。
【到達目標】
• 犯罪被害者が経験する一次・二次・三次被害の内容を説明できる。
• 被害後に生じうる心理反応(ASD・PTSD・複雑性PTSD)の特徴を比較できる。


② 犯罪被害者支援の歴史と法制度
 日本の犯罪被害者支援は、1970年代の被害者遺族による運動を契機に発展してきた。1980年に犯罪被害者等給付金支給法が制定され、国による経済的支援が始まった。2004年には犯罪被害者等基本法が制定され、「被害者の権利の主体」としての位置づけが明示された。2005年には第1次犯罪被害者等基本計画が策定され、以後計画的な支援施策が推進されている。
 近年は、被害者参加制度(2008年)・損害賠償命令制度・意見陳述制度など、刑事司法手続きへの被害者参加が拡充された。さらに、ストーキング規制法・DV防止法・性犯罪関連法の整備も進められており、法的保護の枠組みが充実してきている。
1980年の犯罪被害者等給付金支給法から始まり、2004年の犯罪被害者等基本法、2008年の被害者参加制度と展開してきた。ストーキング規制法・DV防止法・性犯罪関連法の整備も進んでいる。
【到達目標】
• 日本の犯罪被害者支援に関する法制度の発展の経緯を時系列で説明できる。
• 被害者参加制度の内容と意義を述べられる。


③ トラウマとトラウマケア
 犯罪被害によるトラウマ(心的外傷)は、当事者の日常生活・対人関係・心身の健康に深刻な影響を及ぼす。PTSDの中核症状は、侵入症状(フラッシュバック・悪夢)・回避症状・認知・気分の陰性変化・過覚醒の4群である。複雑性PTSDは、長期反復的なトラウマ体験(性被害・DV等)に特有の感情調節困難・自己否定的信念・対人関係の困難さを特徴とする。
 エビデンスに基づくトラウマ治療として、持続エクスポージャー療法(PE法)・認知処理療法(CPT)・EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)等が有効性を示している。トラウマインフォームドケアの観点から、支援のあらゆる場面でトラウマの影響を念頭に置き、安全・信頼・選択・協働を重視することが求められる。
【到達目標】
• PTSDの4群の症状を説明できる。
• PE・CPT・EMDRの各治療法の特徴と適応を概説できる。
• トラウマインフォームドケアの基本原則(安全・信頼・選択・協働)を説明できる。


④ さまざまな機関での被害者支援
 犯罪被害者への支援は、多様な機関が連携して提供される。警察には被害者支援要員が配置されており、被害届受理・情報提供・精神的サポートを行う。検察庁の被害者支援員は、被害者の手続き参加をサポートする。全国の民間被害者支援センター(公益社団法人全国被害者支援ネットワーク加盟)は、電話相談・面接相談・法廷付き添い・日常生活支援等を提供する。
 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターは、医療・心理・法的支援を一か所で受けられる体制を整えている。DV被害者には配偶者暴力相談支援センター・女性シェルターが対応する。支援者間の連携と情報共有が被害者の回復を支える。
【到達目標】
• 犯罪被害者支援に関わる主要機関の役割を列挙できる。
• ワンストップ支援センターの機能と公認心理師の役割を説明できる。


⑤ 犯罪被害者への心理面接
犯罪被害者への心理面接は、通常のカウンセリングとは異なる配慮と技術が求められる。まず、安全と安心の確保が最優先であり、被害体験の詳細を早急に語らせることは禁物である。心理教育(トラウマ反応の正常化・回復過程の見通し)の提供が初期支援として有効である。面接において被害者の主体性・自律性を尊重し、何を求めているかを丁寧に確認することが基本姿勢である。
PTSD症状が顕在化している場合には、トラウマに焦点化した証拠に基づく治療(PE・CPT・EMDR等)への移行を検討する。また、被害者の家族・重要他者への支援や心理教育も、回復を促進する上で欠かせない視点である。
【到達目標】
• 犯罪被害者への心理面接における初期対応の原則を説明できる。
• PTSD症状が顕在化した場合のトラウマ焦点化治療への移行判断を述べられる。
• 支援者の二次的トラウマリスクと自己ケアの重要性を説明できる。


キーワード ① 二次被害 ② 急性ストレス障害(ASD)、PTSD  ③ 持続エクスポージャー療法(PE)、認知処理療法(CPT)、EMDR  ④ トラウマインフォームドケア  ⑤ ワンストップ支援センター
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業終了時、当該授業の理解を確認する10問の小テストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

12 家事事件と子どもの福祉 科目の中での位置付け  家庭裁判所・離婚・DV・面会交流という実務に直結した領域を扱う。これまで学んだ司法制度や被害者支援の知識と統合し、子どもの福祉を中心軸に置いた家事事件への心理的関与を学ぶ。
コマ主題細目 ① 家事事件の概要と種類 ② 離婚が子どもに与える心理的影響 ③ 親権と監護をめぐる問題 ④ 面会交流(親子交流)の意義と支援 ⑤ ドメスティック・バイオレンス(DV)と家事事件
細目レベル ① 家事事件の概要と種類
 家事事件とは、家族・親族間の法律関係に関する紛争を家庭裁判所が扱う事件の総称である。家事事件手続法に基づいて処理され、調停・審判・訴訟等の手続きが用いられる。主な事件類型として、①離婚(協議離婚・調停離婚・裁判離婚)、②親権の決定・変更、③養育費・婚姻費用の決定、④面会交流(親子交流)の取決め、⑤遺産分割・相続紛争等がある。
 公認心理師が関与する可能性が高いものとして、離婚に伴う子どもの親権・監護・面会交流に関する事件があり、家庭裁判所調査官と連携した心理的支援やアセスメントが求められる。家事事件では当事者の感情的対立が激しい場合が多く、子どもの利益を中心に置いた支援が求められる。
【到達目標】
• 家事事件の主要な種類と家庭裁判所における手続きの流れを説明できる。
• 公認心理師が関与しやすい家事事件の場面を具体的に述べられる。


② 離婚が子どもに与える心理的影響
 親の離婚は、子どもにとって喪失体験であり、その心理的影響は年齢・発達段階・離婚前後の親の関係・経済的変化・生活環境の変化によって異なる。幼児期の子どもは自己中心的認知から「自分のせいで離婚した」と感じる罪悪感を抱きやすく、退行・分離不安等が生じやすい。
 学童期では、学業不振・引きこもり・攻撃行動等が現れることがある。青年期では、アイデンティティの混乱・親への怒りや落胆、将来の対人関係への不信が生じやすい。しかし、離婚後の両親が協力的な共同養育を維持できる場合、子どもへの悪影響は最小化されることが研究から示されている。子どもの幸福・福祉を中心とした支援設計が重要である。
【到達目標】
• 発達段階別の離婚の影響(幼児期・学童期・青年期)を説明できる。
• 離婚後の親の協力的関係が子どものwell-beingに与える影響を述べられる。


③ 親権と監護をめぐる問題
 日本では離婚後の単独親権制度が民法上定められてきたが、父母が離婚後も適切な形でこどもの養育に関わりその責任を果たすことは、こどもの利益を確保するために重要であるという趣旨のもと、2024年民法改正により共同親権が導入された。すなわち、父母が離婚した後もこどもの利益を確保することを目的として、こどもを養育する親の責務を明確化するとともに、親権、養育費、親子交流などに関するルールを見直したものである。親権には「身上監護権」(居所指定・懲戒・職業許可等)と「財産管理権」が含まれる。親権争いが生じた場合、家庭裁判所は子の福祉を最優先として判断する。この法律は、2026 年(令和8年)4月1日に施行された。
 家庭裁判所調査官は、子どもの生活環境・両親の養育能力・子どもの意向等を調査する。心理的観点からは、子どもとの愛着関係・養育行動の質・精神的安定性・虐待・DV等のリスク要因が重要な判断材料となる。公認心理師は、子どものアセスメント・面接・心理支援を通じて、裁判所の判断や当事者の養育計画形成を支援する役割を担う。
• 親権の内容(身上監護権・財産管理権)と2024年民法改正による共同親権制度を説明できる。
• 親権判断において心理アセスメントが果たす役割を述べられる。


④ 面会交流(親子交流)の意義と支援
 面会交流(現在は「親子交流」と呼称)とは、離婚等により子どもと別居している親と子どもが定期的に交流することであり、子どもの権利として位置づけられている。子どもにとって、別居親との継続的な関係維持は心理的発達にとって重要であることが研究で示されている。しかし、高葛藤な離婚・DV・虐待が存在する場合、面会交流の実施には慎重な判断と安全管理が求められる。
 面会交流支援機関が全国各地に存在し、第三者機関による付き添い型・受け渡し型支援が提供されている。公認心理師は、子どもの気持ちの聴取・心理的準備支援・親への助言・面会交流の観察評価等を通じて、安全で子どもの幸福を促進する交流の実現を支援することが求められる。
• 面会交流の意義と子どもの福祉の影響を説明できる。
• DV・虐待がある場合の面会交流における安全管理の考え方を述べられる。


⑤ ドメスティック・バイオレンス(DV)と家事事件
 DVは家事事件に深く関連する問題であり、離婚・親権・面会交流において重要な安全上の考慮事項となる。DVの被害者(主に女性・子ども)は身体的・心理的・性的・経済的暴力にさらされており、被害による複雑なトラウマ症状を示すことが多い。
 DVがある家庭の離婚手続きでは、被害者の安全確保が最優先であり、加害者との直接交渉を避けるための代理人選任・シェルター利用等の措置が必要となる。面会交流においても、DVがある場合は子どもが被害にさらされるリスク・子どもへの間接的影響(DVの目撃)が十分に評価されなければならない。公認心理師は、被害者への心理支援と安全計画の策定、子どものトラウマのアセスメント等の役割を担う。
【到達目標】
• DVが家事事件(離婚・親権・面会交流)に及ぼす影響を説明できる。
• DV被害者への安全計画立案の考え方を述べられる。
• 子どものDV目撃(間接被害)の心理的影響を説明できる。


キーワード ① 家事事件 ② 親権、共同親権(2024年民法改正)  ③ 面会交流(親子交流) ④ 子の福祉  ⑤ トラウマのアセスメント
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業終了時、当該授業の理解を確認する10問の小テストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

13 各種犯罪の特徴と対応 科目の中での位置付け  性犯罪・薬物・DV・ストーキング・高齢者犯罪など各論的テーマを扱う。これまで学んだ処遇・被害者支援の知識を実際の犯罪類型に適用する応用回である。
コマ主題細目 ① 性犯罪の特徴と心理 ② 薬物・アルコール関連犯罪と依存症対応 ③ ドメスティック・バイオレンス(DV)、児童虐待と対応 ④ ストーキング、サイバー犯罪への対応 ⑤ 高齢者犯罪と特殊詐欺への対応
細目レベル ① 性犯罪の特徴と心理
 性犯罪は、被害者に深刻かつ長期的なトラウマをもたらす重大犯罪であり、その実態は暗数が多く実態把握が困難である。加害者の動機・特性は多様であり、「見知らぬ人による突発的暴行」というステレオタイプは現実と乖離していることが多い。顔見知りによる犯行、デートレイプ、性的グルーミングを伴う子どもへの性虐待なども含まれる。
 加害者の認知的特性として、「被害者が実際には望んでいた」「子どもが同意している」といった認知の歪みが見られることが多い。被害者への心理支援においては、PTSD・抑うつ・羞恥心・自己責任感への対処が中心となる。性犯罪者処遇では、CBTと動機づけ面接を組み合わせたプログラムが活用される。
【到達目標】
• 性犯罪の多様な形態と、ステレオタイプと実態の乖離を説明できる。
• 性犯罪加害者に見られる「認知の歪み」の具体例を挙げられる。


② 薬物・アルコール関連犯罪と依存症対応
 薬物犯罪は日本における再犯率が高い犯罪類型の一つであり、覚醒剤・大麻等の違法薬物使用が多くを占める。薬物依存は脳の報酬回路に関わる慢性疾患として理解され、意志の問題に還元することは科学的に誤りである。刑事施設における薬物離脱プログラム(SMARPP等)に加えて、出所後の断続的な通院・グループ支援(ダルク・NA等)との連携が再犯防止に不可欠である。
 アルコール関連犯罪(DV・交通事故・暴力等)においても、アルコール依存の治療と動機づけ支援が根本的対応となる。公認心理師は、依存症に対する「疾患モデル」の視点を持ち、スティグマなく治療・回復支援に関わるとともに、再発を否定的に捉えない回復志向の支援を提供することが求められる。
【到達目標】
• 薬物依存を慢性疾患として理解する「疾患モデル」の考え方を説明できる。
• 再発(再使用)を否定的に捉えない回復志向の支援について述べられる。


③ ドメスティック・バイオレンス(DV)、児童虐待と対応
 ドメスティック・バイオレンス(DV)や児童虐待は、被害者の心身に甚大な影響を与えるとともに、社会的に見えにくい特性を持つ。児童虐待(身体的・心理的・性的虐待・ネグレクト)は、被害児童の発達・愛着・自己概念・感情調節に深刻な影響を及ぼし、成人後の精神健康問題・反社会的行動のリスクを高める。公認心理師は、虐待が疑われる子どもへの司法面接的アプローチ・トラウマアセスメント・心理支援を担う。
 加害者(虐待親・DV加害者)への対応では、加害行動の維持要因(衝動統制の問題・パーソナリティ・依存症・機能不全的育ちの再演等)を理解した上で、適切な心理的介入・家族支援を行うことが求められる。児童相談所・警察・学校等との多機関連携が不可欠である。
【到達目標】
• 児童虐待の4類型とそれぞれの心理発達的影響を説明できる。
• 虐待対応における多機関連携(児童相談所・警察・学校等)の仕組みを述べられる。


④ ストーキング、サイバー犯罪への対応
 ストーキングは、特定の相手への執着・親密関係の一方的な追求から生じる行動であり、被害者の生活・安全・精神健康に重大な影響を及ぼす。加害者の心理的背景は多様であり、境界性パーソナリティ特性・アタッチメント障害・反社会性等が関連する場合がある。ストーカー規制法に基づく警告・禁止命令・接近禁止命令等の法的措置とともに、加害者への心理的介入プログラムも求められる。
 サイバー犯罪(ネット上のハラスメント・リベンジポルノ・不正アクセス等)は近年急増しており、加害者・被害者双方への心理的支援と法的対応が複合的に必要とされる。公認心理師は被害者支援とともに、加害リスク評価・加害者への介入的関与においても役割を持つ。
【到達目標】
• ストーキング加害者の類型と心理的背景を説明できる。
• ストーキング・サイバー犯罪の被害者支援における公認心理師の役割を述べられる。


⑤ 高齢者犯罪と特殊詐欺への対応
 高齢者による犯罪、特に軽微な窃盗(万引き)の繰り返しは社会問題となっており、その背景には経済的困窮・孤立・認知機能低下・依存的行動などが複合している。刑事司法での対応だけでは限界があり、福祉的支援・地域のセーフティネットとの接続が不可欠である。
 一方、特殊詐欺(オレオレ詐欺・還付金詐欺等)は高齢者を被害者とする犯罪であり、認知的脆弱性・孤独感・社会的情報の乏しさなどが被害リスクを高める。
 被害者支援においては、経済的損害への対処とともに心理的ダメージ(自責感・恥・喪失感)への関わりが重要である。地域包括支援センター・社会福祉協議会・警察等との連携した予防的アプローチも公認心理師に求められる視点である。
【到達目標】
• 高齢者犯罪の背景要因と、福祉的支援との連携の必要性を説明できる。
• 特殊詐欺被害者への心理支援の要点を述べられる。


キーワード ① 性的グルーミング ② 薬物依存 ③ 児童虐待の4類型 ④ ストーキング ⑤ 高齢者犯罪
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業終了時、当該授業の理解を確認する10問の小テストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

14 司法・犯罪分野における多職種連携と地域支援 科目の中での位置付け  司法・犯罪分野における個別の支援技法から制度・組織・地域のレベルへと視点を広げる回である。これまで学んだ制度に関する知識と実践知識を、連携・協働という軸で統合する。
コマ主題細目 ① 多職種連携の必要性と基本的枠組み ② 刑事司法と福祉の連携(司法ソーシャルワーク) ③ 学校・教育機関との連携 ④ 地域における犯罪予防と被害者支援ネットワーク ⑤ 公認心理師に求められる専門性と自己研鑽
細目レベル ① 多職種連携の必要性と基本的枠組み
 司法・犯罪分野における問題は複合的であり、単一の専門職・機関では対応困難な場合がほとんどである。犯罪者・非行少年・犯罪被害者が抱える問題の背景には、貧困・障害・疾患・家族機能不全・住居不安定・就労困難などが絡み合っており、「司法+福祉+医療+教育」の統合的連携が必要となる。
 多職種連携には、各専門職の役割と専門性を相互に理解すること、共通の目標と情報共有の仕組みをもつこと、連携を妨げる制度的・組織的障壁を把握することが前提となる。公認心理師はコアコンピテンシーとして「多職種協働/学際的な考え方」が求められており、連携の中での自らの役割と限界を自覚した上で機能することが重要である。
【到達目標】
• 多職種連携が必要な理由を、司法・犯罪分野の具体例を用いて説明できる。
• 公認心理師のコアコンピテンシーとしての「多職種連携」を説明できる。


② 刑事司法と福祉の連携(司法ソーシャルワーク)
 刑事司法に関わる人々の中には、知的障害・精神障害・認知症・高齢等の脆弱性を持ちながら、適切な福祉サービスに接続されていない者が少なくない。こうした人々が犯罪を繰り返す背景には、支援の欠如があることも多い。地域生活定着支援センターは、出所後に福祉サービスへの接続が困難な高齢者・障害者の「特別調整」を担う機関であり、矯正施設・保護観察所・福祉機関をつなぐ橋渡し役を果たす。
 司法ソーシャルワークは、刑事司法と福祉の接点に立ち、犯罪の背景にある生活上の困難に対処するための専門的実践であり、公認心理師も精神保健・心理支援の立場からこの連携に積極的に参与することが期待される。
【到達目標】
• 地域生活定着支援センターの役割と「特別調整」制度を説明できる。
• 刑事司法と福祉の連携における公認心理師の貢献可能性を述べられる。


③ 学校・教育機関との連携
 少年非行の予防と早期対応において、学校・教育機関との連携は重要である。生徒の問題行動・不登校・いじめ・薬物使用等の早期把握と介入には、スクールカウンセラー(公認心理師)・スクールソーシャルワーカー・教師・校長・家庭裁判所調査官・少年補導委員・警察のサポートチームが協働することが有効である。
 少年事件後においても、処遇機関(少年院等)から学校への情報共有と復帰支援が再非行防止に寄与する。学校において薬物教育・DV防止教育・性教育・感情調節スキル訓練等の予防的プログラムを実施することも、犯罪予防の観点から重要である。公認心理師は、学校という日常的場面での一次予防・二次予防に中核的役割を担う。
【到達目標】
• 学校における一次・二次・三次予防の役割と公認心理師の関与を説明できる。
• 少年事件後の学校復帰支援における関係機関の連携を述べられる。


④ 地域における犯罪予防と被害者支援ネットワーク
 犯罪予防・再犯防止・被害者支援のいずれにおいても、地域を基盤としたネットワークの形成が不可欠である。保護司・民生委員・更生保護女性会・BBS会(学生ボランティア組織)などの地域ボランティアは、地域に根ざした見守りと支援において大きな役割を果たしている。
 被害者支援センター・性暴力ワンストップ支援センター・配偶者暴力支援センター等の被害者支援機関も地域のネットワークに位置づけられる。犯罪の発生しにくい地域づくり(環境設計・コミュニティ形成・住民連携)という環境的予防の視点も重要である。
 公認心理師は、地域ネットワークの構成員として専門的知見を提供するとともに、地域住民・ボランティアへの心理教育・コンサルテーションを担うことが期待される。
【到達目標】
• 地域における犯罪予防ネットワークの構成員と各役割を説明できる。
• 環境的犯罪予防(CPTED等)の考え方を概説できる。


⑤ 公認心理師に求められる専門性と自己研鑽
 司法・犯罪分野で活動する公認心理師には、心理的アセスメント・心理的支援の専門的技能に加えて、法的知識・制度理解・倫理的判断力が幅広く求められる。この分野は、常に法律改正・制度変更・新たな処遇プログラムの開発が進んでいるため、継続的な学習と専門的更新(スーパービジョン・事例検討会・研修参加等)が不可欠である。
 また、支援を行う中で二次的外傷性ストレス(共感疲労)やバーンアウトを経験するリスクがあり、自己ケアと職場内のサポート体制の整備も重要な課題である。倫理綱領の遵守・秘密保持と開示のバランス判断・権力関係の非対称性への自覚など、倫理的意識の高さが日常的に求められる。専門的コミュニティへの参加を通じた継続的成長が求められる。
【到達目標】
• 司法・犯罪分野における公認心理師の二次的トラウマリスクとその対処法を説明できる。
• 専門的成長のためのスーパービジョン・継続教育の重要性を述べられる。


キーワード ① 多職種連携 ② 司法ソーシャルワーク ③ 非行と学校 ④ 犯罪予防 ⑤ 二次的外傷性ストレス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業終了時、当該授業の理解を確認する10問の小テストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
 次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。

15 総括 科目の中での位置付け  これまでの14回の知識を統合する仕上げの回である。理論→制度→アセスメント→処遇→連携というサイクルを、実際のケースを通じて体験的に理解する。
コマ主題細目 ① 本科目の総括:司法・犯罪心理学の全体像 ② 事例演習①:非行少年のアセスメントと支援計画 ③ 事例演習②:犯罪被害者への心理支援
細目レベル ① 本科目の総括:司法・犯罪心理学の全体像
 本科目では、犯罪心理学の歴史と理論から始まり、刑事司法・少年司法制度、犯罪原因論、アセスメント、施設内・社会内処遇プログラム、精神障害と司法、犯罪捜査、犯罪被害者支援、家事事件、多職種連携にわたる広範なテーマを扱ってきた。これらは「①犯罪・非行・被害・家事事件の基本知識」「②心理的アセスメント」「③心理支援」という三本柱に整理できる。
 司法・犯罪分野における公認心理師の役割は、犯罪者処遇・被害者支援・家庭裁判所調査・捜査支援・医療観察など多岐にわたり、いずれも高度な専門性と倫理的判断が求められる。本科目で得た知識を大学院科目「司法・犯罪分野における理論と支援の展開」および実習でさらに深化させることが求められる。
【到達目標】
• 本科目全体の主要テーマを三本柱(基本知識・アセスメント・心理支援)で整理できる。
• 公認心理師が司法・犯罪分野で活動する際に求められる専門性の全体像を述べられる。


② 事例演習①:非行少年のアセスメントと支援計画
 少年院収容中の17歳男子(窃盗・傷害歴複数)のケースを題材に、アセスメントから処遇計画策定までのプロセスを演習形式で検討する。まず、利用可能な情報(生育歴・家族背景・学校歴・非行歴・精神状態・発達特性)から、リスク因子・保護因子を整理する。
 RNRモデルに照らして処遇の優先ターゲットを選定し、認知行動療法的アプローチを中核とした処遇計画を立案する。動機づけ面接の視点から、少年の変化への動機づけをどう評価し高めるかを検討する。施設内処遇と社会内処遇の連続性を意識した退院後の支援計画(家族連携・就労・地域サポート)まで含めた包括的な支援構想を議論する。
【到達目標】
• 事例情報からリスク因子・保護因子・犯罪促進ニーズを整理できる。
• RNRモデルに基づいた処遇計画を立案できる。
• 退院後支援を含む包括的支援計画の要点を述べられる。


③ 事例演習②:犯罪被害者への心理支援
 性犯罪被害を受けた20代女性のケースを題材に、公認心理師として初期介入から継続的支援に至るプロセスを演習形式で検討する。まず、初回面接での安全確保・インフォームドコンセント・心理教育の提供を検討する。
 トラウマ症状のアセスメント(PCL-5等の活用)と、PE法・CPT等のトラウマ焦点化認知行動療法の導入可否の判断を考える。被害者参加制度・民間支援センターとの連携、家族支援の必要性を検討する。刑事手続きへの参加(証人尋問・意見陳述等)に際しての心理的サポート方法も議論する。支援者の二次的外傷性ストレスへの対処と、スーパービジョンの重要性についても振り返る。
【到達目標】
• 犯罪被害者への初期対応の原則(安全確保・心理教育等)を実践できる。
• トラウマアセスメント(PCL-5等)の結果に基づいて治療方針を検討できる。


キーワード ① RNRモデル ② リスク因子・保護因子 ③ 犯罪被害者支援 ④ トラウマ症状のアセスメント ⑤ 二次的外傷性ストレス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト これまでの知識の定着を測定するテストを実施します。
復習・予習課題 【本講義の復習】
 文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
犯罪心理学の基礎と歴史 • 犯罪心理学の成立史を、主要な理論的転換点と関連させて説明できる。
• 生物学的・精神分析的・行動主義的各アプローチの特徴と限界を比較対照できる。
• 個人要因と環境要因の相互作用の視点を、具体例を用いて説明できる。
• 社会的絆理論・アノミー論・分化的接触理論・ラベリング理論の要点を各理論家の名前とともに説明できる。
• RNRモデルとGLMの違いを整理して述べられる。
• 公認心理師法に定める義務(秘密保持義務・誠実義務等)を司法分野の文脈で説明できる。
• 「二重の責任」のジレンマについて具体例を挙げて検討できる。

犯罪心理学の成り立ち、生物学的・精神分析的・行動主義的各アプローチ社会的絆理論・アノミー論・分化的接触理論、RNRモデル 10 1
わが国の刑事司法制度、少年非行と少年司法制度 • 日本の刑事司法の流れを、警察→検察→裁判所→矯正・保護の各段階に沿って説明できる。
• 各機関(警察・検察・裁判所)における心理職の役割を列挙できる。
• 精神鑑定の位置づけと鑑定者に求められる姿勢を説明できる。
• 日本の刑法犯認知件数の長期的動向と、増加・減少が顕著な犯罪類型を説明できる。
• 再犯者割合の増加と再犯防止対策の必要性を関連づけて述べられる。
• 裁判員裁判の対象事件・構成・手続きを説明できる。
• 裁判員のメンタルヘルスリスクと公認心理師による支援の可能性を述べられる。
• 日本の少年非行の現状(件数・類型・年齢等)を概説できる。
• 少年非行の複合的背景要因を列挙し、それぞれの予防的示唆を述べられる。
• 少年法の基本理念と成人刑事司法との相違を説明できる。
• 保護処分の種類(保護観察・少年院・児童自立支援施設)を説明できる。
• 家庭裁判所調査官の職務内容と心理アセスメントの活用方法を説明できる。
• 少年鑑別所と少年院の機能の違いを明確に説明できる。
• 少年院における心理的支援の内容を具体的に述べられる。

刑事司法の流れ、(警察・検察・裁判所、精神鑑定、刑法犯認知件数、再犯者割合、裁判員裁判、少年非行の現状、少年法、保護処分、家庭裁判所調査官、少年鑑別所、少年院 10 2、3
犯罪原因論とリスク・ニーズ理論 • 犯罪原因論の歴史的系譜を主要アプローチ別に整理できる。
• 静的リスク因子と動的リスク因子の違いを説明できる。
• RNRモデルの三原則(リスク・ニーズ・反応性)を各々説明できる。
• グッドライブズモデル(GLM)の中心概念(一次的人間の善)とRNRモデルとの関係を説明できる。
• 発達犯罪学の代表的な縦断研究の知見を概説できる。
• 早期介入プログラムのエビデンスを踏まえて、予防策を提案できる。
犯罪原因論、静的リスク因子と動的リスク因子、RNRモデル、グッドライブズモデル、発達犯罪学、早期介入プログラム 10 4
犯罪・非行のアセスメント • アセスメントの目的(処遇判断・危険性評価・情報提供等)を列挙できる。
• 構造化・半構造化面接の利点と限界を説明できる。
• 代表的なリスクアセスメントツール(HCR-20、LS/CMI等)の特徴を述べられる。
• 犯罪・非行へのケースフォーミュレーションの手順を説明できる。
• ケースフォーミュレーションをクライエントと共有する治療的意義を述べられる。
• 精神鑑定と心理学的(情状)鑑定の目的・内容の違いを説明できる。
る。
• 司法面接の目的と通常の臨床面接との違いを説明できる。
• NICHD面接プロトコルの基本構造(ラポール形成・練習・主質問等)を概説できる。
アセスメントの目的、リスクアセスメントツール、ケースフォーミュレーション、精神鑑定と心理学的(情状)鑑定、司法面接、NICHD面接プロトコル 10 5
施設内処遇、社会内処遇 • 日本の矯正施設の種類と機能を分類して説明できる。
• 法務技官(心理)の職務内容と公認心理師との協働関係を説明できる。
• 特別改善指導の種類と内容を列挙できる。
• 少年院における矯正教育の5領域を説明できる。
• 少年院の種別(第1〜5種)とその対象を説明できる。
• 被害者視点教育の目標と構成要素を説明できる。
• 施設内処遇の主要な課題(高齢化・障害化・地域移行等)を説明できる。
• 社会内処遇の利点と課題を施設内処遇と対比して説明できる。
• 社会内処遇の主な種類と対象者を列挙できる。
• 保護観察官と保護司の役割の違いと協働の仕組みを説明できる。
• 特別遵守事項と一般遵守事項の内容を説明できる。
• 更生保護施設の機能と公認心理師の関与可能性を説明できる。
• 再犯防止推進法の目的と主要施策を説明できる。
• 高齢・障害受刑者の再犯問題と福祉的支援の必要性を論じられる。
• 社会内処遇において公認心理師が提供できる心理支援の種類を説明できる。
矯正施設、法務技官(心理)、特別改善指導、少年院の種別、被害者視点教育、保護観察官と保護司、特別遵守事項と一般遵守事項、更生保護施設、再犯防止推進法、高齢・障害受刑者の再犯問題 10 6、7
精神障害と犯罪、医療観察制度 • 心神喪失・心神耗弱の法律上の定義と、責任能力評価のプロセスを説明できる。
• 精神科診断と責任能力判断の違い(法的・医学的区別)を説明できる。
• 医療観察制度の対象・手続き・処遇の流れを説明できる。
• 精神障害と犯罪の実証的な関係(統計・研究知見)を正確に説明できる。
• スティグマに基づく偏見を排した支援姿勢の重要性を論じられる。
• 主要な精神障害(統合失調症・パーソナリティ障害・発達障害・物質使用障害)と犯罪行動との関連を説明できる。
• 医療観察制度における多職種連携の構造と公認心理師固有の役割を説明できる。
• 社会復帰に向けた地域連携の枠組みを述べられる。
心神喪失・心神耗弱の法律上の定義、責任能力評価、医療観察制度、スティグマ、社会復帰 10 9
犯罪捜査と心理学 • 犯罪捜査における心理学の主要な応用領域を列挙できる。
• 取調べの可視化の意義と日本における現状を説明できる。
• 目撃記憶の可塑性と「誤情報効果」のメカニズムを説明できる。
• 目撃証言の信頼性に関する心理学的知見を司法実務への示唆とともに述べられる。
• 犯罪者プロファイリングの方法と科学的妥当性についての議論を説明できる。
• GKT(有罪知識検査)の原理を説明できる。
• ポリグラフ検査の科学的限界と法的証拠能力についての議論を述べられる。
• 虚偽自白の三類型(自発的・強制的・内面化型)を説明できる。
• 情報収集型取調べ(PEACEモデル等)の特徴と高圧型取調べとの違いを述べられる。
取調べの可視化、目撃記憶、目撃証言の信頼性、犯罪者プロファイリング、GKT(有罪知識検査)、ポリグラフ検査、情報収集型取調べ(PEACEモデル等) 10 10
犯罪被害者の心理と支援 • 犯罪被害者が経験する一次・二次・三次被害の内容を説明できる。
• 被害後に生じうる心理反応(ASD・PTSD・複雑性PTSD)の特徴を比較できる。
• 日本の犯罪被害者支援に関する法制度の発展の経緯を時系列で説明できる。
• 被害者参加制度の内容と意義を述べられる。
• PTSDの4群の症状を説明できる。
• PE・CPT・EMDRの各治療法の特徴と適応を概説できる。
• トラウマインフォームドケアの基本原則(安全・信頼・選択・協働)を説明できる。
• 犯罪被害者支援に関わる主要機関の役割を列挙できる。
• 性暴力被害者ワンストップ支援センターの機能と公認心理師の役割を説明できる。
• 犯罪被害者への心理面接における初期対応の原則を説明できる。
• PTSD症状が顕在化した場合のトラウマ焦点化治療への移行判断を述べられる。
• 支援者の二次的外傷性ストレスのリスクと自己ケアの重要性を説明できる。
二次被害、PTSD、日本の犯罪被害者支援に関する法制度、被害者参加制度、トラウマインフォームドケア、PE、性暴力被害者ワンストップ支援センター、二次的外傷性ストレス 10 11
家事事件と子どもの福祉 • 家事事件の主要な種類と家庭裁判所における手続きの流れを説明できる。
• 公認心理師が関与しやすい家事事件の場面を具体的に述べられる
• 発達段階別の離婚の影響(幼児期・学童期・青年期)を説明できる。
• 離婚後の親の協力的関係が子どもの幸福・福祉に与える影響を述べられる。
• 親権の内容(身上監護権・財産管理権)と2024年民法改正による共同親権制度を説明できる。• 面会交流の意義と子どもの福祉・幸福への影響を説明できる。
• DV・虐待がある場合の面会交流における安全管理の考え方を述べられる。
• DVが家事事件(離婚・親権・面会交流)に及ぼす影響を説明できる。
• DV被害者への安全計画立案の考え方を述べられる。
• 子どものDV目撃(心理的虐待)の心理的影響を説明できる

家事事件、離婚の影響、親権、共同親権制度、面会交流、DV 10 12
各種犯罪の特徴と対応、司法・犯罪分野における多職種連携と地域支援
• 性犯罪の多様な形態と、ステレオタイプと実態の乖離を説明できる。
• 性犯罪加害者に見られる「認知の歪み」の具体例を挙げられる。
• 児童虐待の4類型とそれぞれの心理発達的影響を説明できる。
• 虐待対応における多機関連携(児童相談所・警察・学校等)の仕組みを述べられる。
• ストーキング加害者の類型と心理的背景を説明できる。
• 高齢者犯罪の背景要因と、福祉的支援との連携の必要性を説明できる。
• 特殊詐欺被害者への心理支援の要点を述べられる。
• 公認心理師のコアコンピテンシーとしての「多職種協働」を説明できる。
• 地域における犯罪予防ネットワークの構成員と各役割を説明できる。
• 環境的犯罪予防(CPTED等)の考え方を概説できる。

性犯罪加害者、児童虐待の4類型、ストーキング加害者、高齢者犯罪、犯罪予防ネットワーク、環境的犯罪予防(CPTED等) 10 13、14
評価方法 期末試験(100%)によって評価する。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 なし
参考文献 原田隆之(編著)(2024).司法・犯罪心理学(公認心理師スタンダードテキストシリーズ19).ミネルヴァ書房、 ボンタ,J & アンドリュース,D.A. (2017) The Psychology of Criminal Conduct. 原田隆之(訳) 犯罪行動の心理学. 北大路書房
実験・実習・教材費 なし