区分
公認心理師関連科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
SDGs力
科学コミュニケーション力
研究力
カリキュラム・ポリシーとの関係
教養
応用力
実践力
科目間連携
総合心理力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
科目の目的
本科目の目的は、公認心理師として働く上での職責について理解と学びを深めることである。公認心理師として働くとはどういうことなのか、そのためには何が必要で、公認心理師として社会に貢献する意識を持っていただきたい。そして、公認心理師として仕事をする上で必要な自覚、知識、覚悟を持つ機会としていただきたい
なお、公認心理師の取得を目指さない人は、前提科目の履修にかかわらず、自由選択科目として履修しても構わない。将来目指す仕事において責任感を自己の中で形成する機会としてほしい。
到達目標
1. 公認心理師法および関連制度の内容を説明できる。
2. 倫理原則および倫理的意思決定モデルを用いて事例を分析できる。
3. リスクアセスメントおよび危機介入の基本的手順を示すことができる。
4. 多職種連携における心理師の役割と限界を説明できる。
5. 専門職としての自己課題を明確化し、生涯学習計画を立案できる。
科目の概要
本科目「公認心理師の職責」は、公認心理師として活動するために不可欠な法的基盤・倫理原則・専門職としての実践能力を体系的に学ぶ科目である。公認心理師法に基づく職責の理解に加え、倫理的意思決定、リスクマネジメント、多職種連携、自己研鑽といった実践的能力の獲得を重視する。講義・事例検討・グループディスカッション・意思決定演習を組み合わせ、知識理解にとどまらず判断力・対応力・省察力を養う。法・倫理・実践の三層を往還し、現場で適切に行動できる基盤形成を目指す。
科目のキーワード
公認心理師の職責、公認心理師法、公認心理師のコンピテンシー、生涯学習、情報管理、リスクアセスメント、公認心理師の職場、役割、スキル
授業の展開方法
この科目は、主に授業ごとの文字教材を、教員が読み上げ、解説を加えながら講義を進める。必要に応じて、動画等を視聴する。
また、近い将来に公認心理師として責任を持って働けるように、グループによる討論や全体討論を行い、知識の活用を促す。これは、心理実習として現場に赴くときに役に立つ経験となるであろう。
オフィス・アワー
※時間を要する相談の場合は事前にメールをお願いします。
前期:火曜3限・4限
水曜3限・4限
木曜3限・4限
後期:月曜2限・3限
水曜4限
木曜4・5限
科目コード
RG5060
学年・期
3年・前期
科目名
公認心理師の職責
単位数
2
授業形態
講義
必修・選択
選択
学習時間
【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目
展開科目
関連資格
公認心理師
担当教員名
藤代富広
回
主題
コマシラバス項目
内容
教材・教具
1
公認心理師の役割と制度
科目の中での位置付け
本科目は、公認心理師という職業について理解を深め、それを目指すための知識及び姿勢の準備をするための科目である。
そのために、前半は公認心理師という職業に求められる様々な知識を紹介する
本回では、公認心理師という国家資格がなぜ生まれ、社会においていかなる意義を持つのかを多角的に理解することを目標とする。制度の歴史的・社会的背景を学ぶことで、単なる知識習得に留まらず、専門職としての誇りとアイデンティティの礎を形成する。
下山晴彦 2020 公認心理師とはどのような資格か(下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修)下山晴彦・慶野遙香(編著) 公認心理師スタンダードテキストシリーズ1 公認心理師の職責 ミネルヴァ書房)pp.2-13.
菅沼慎一郎 2020 心理支援に必要な技能(コンピテンシー)(下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修)下山晴彦・慶野遙香(編著) 公認心理師スタンダードテキストシリーズ1 公認心理師の職責 ミネルヴァ書房)pp.14-25.
コマ主題細目
① 公認心理師法の成立背景 ② 公認心理師の定義と業務 ③ 国家資格としての責任と専門職アイデンティティ ④ 他資格との比較 ⑤ 専門職アイデンティティの形成
細目レベル
① 公認心理師法の成立背景
わが国では長年にわたり、心理職は法的根拠を持たない民間資格のみで運用されてきた。しかし、うつ病・発達障害・認知症・学校不適応・職場のメンタルヘルス問題など、心理的支援のニーズが急速に拡大する中で、専門的知識と技術を持つ心理職の法的整備が強く求められるようになった。医療・教育・福祉・司法・産業の各分野の利害調整を経て、2015年に公認心理師法が成立し、2017年に施行された。この過程をたどり、国家資格化が心理支援の質保証・利用者保護・多職種連携の円滑化という社会的課題にどう応えるものか理解すること。
また、制度化が国民のメンタルヘルス向上に与える中長期的影響を理解することも重要である。法制化に至る政策過程を把握することで、公認心理師が担う社会的責任の重さを自覚すること。
【到達目標】
◆ 公認心理師法制定の社会的背景を説明できること。
◆ 国家資格化の目的を論理的に整理できること。
◆ 心理職の制度化が社会に与えた影響を分析できること。
② 公認心理師の定義と業務
公認心理師法第2条は、公認心理師の業務を(1)心理状態の観察・分析、(2)本人への相談・助言等、(3)関係者支援、(4)心の健康教育の4領域に定める。ここでは条文の逐条理解を通して、アセスメント・介入・コンサルテーション・予防教育の連関を把握し、各領域が多分野においてどのように具体化されるかをりかいすること。
また、名称独占資格として業務独占資格との違いを整理したうえで、他職種が心理的支援を行うことが法的に制限されない現状における公認心理師の専門的優位性とは何かを理解すること。法的定義の正確な理解は、日常業務における自己の役割と限界を明確にするための出発点であり、他職種との連携においても自らの専門性を説明するための根拠となる。条文を読み解くことで、実践場面での判断力を高めることを意識すること。
【到達目標】
◆ 公認心理師法第2条の定義を正確に説明できること。
◆ 業務内容を法的文言に基づいて説明できること。
◆ 名称独占資格の意味を説明できること。
③ 国家資格としての責任と専門職アイデンティティ
国家資格を取得するとは、単に特定の称号を名乗る権利を得ることではなく、国家が認定した専門的能力を社会に対して保証することを意味する。公認心理師には、支援を必要とする人々の心理的安全と福祉を守るという社会的使命が課されており、この使命を果たす上で不可欠なのが「信頼性」と「説明責任(アカウンタビリティ)」の二つの柱である。信頼性とは要支援者・家族・他職種・社会全体から「この専門家に任せて大丈夫だ」と思われる存在であることを指し、日々の言動・態度・成果の積み重ねによって醸成される。説明責任とは、自らの判断・介入の根拠を当事者や関係者に対して明確に説明できることを意味する。
ここでは、これらの概念を専門職倫理の観点から検討するとともに、「なぜ自分は公認心理師になろうとしているのか」「どのような公認心理師でありたいか」を内省的に問い直すことを受講者に求める。そして、専門職としてのアイデンティティを形成することを意識してほしい。さらに、信頼される専門家であり続けることの意味を、具体的な行動水準で言語化する意識を持つこと。
【到達目標】
◆ 国家資格者の社会的責任を説明できること。
◆ 信頼性と説明責任の関係を理解できること。
◆ 専門職としての公共性を論じることができること。
④ 他資格との比較
公認心理師以前から実践されてきた「臨床心理士」は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格であり、長年にわたり心理職の事実上の標準資格として機能してきた。両資格の主な相違点は、(1)法的根拠の有無、(2)養成課程の設計、(3)業務範囲の法的規定の3点に集約される。また、精神保健福祉士・社会福祉士・作業療法士など隣接する資格との役割分担も検討する。
心理支援が必要な場面で複数の資格者が関わる際、それぞれの専門性と限界を相互に理解した上で協働することが不可欠である。名称独占資格としての位置づけを踏まえ、専門性の境界とリファーの判断基準を明確化する。各資格の強みを活かした補完的連携が利用者の最善の利益につながることを理解してほしい。
【到達目標】
◆ 臨床心理士等との違いを説明できること。
◆ 法的根拠の有無の違いを説明できること。
◆ 役割分担の視点を持てる
⑤ 専門職アイデンティティの形成
専門職への社会的信頼は、長年にわたる誠実な実践の積み重ねによってのみ醸成される。しかし、ひとたび不祥事が発生すると、その影響は当事者個人に留まらず、公認心理師という資格全体の信頼性を損なう波及効果をもたらす。過去の専門職不祥事事例(情報漏洩・二重関係・財産的搾取・不適切な身体的接触等)を分析し、なぜそれが起きたのか、どのような予防策が有効であったかを検討する。
そして、専門職の信頼形成要因として広く知られる技術的能力・誠実性・慈善性の3因子が日常実践においていかに具体化されるかを考える。さらに、「自分が目指す公認心理師像」を文章化する個人演習を行い、専門職アイデンティティを自己の言葉で表現する経験を積む。自らの価値観と行動規範を内省することにより、将来公認心理師として実務に従事している場面を想像し、判断の軸を確立する意識を持ち始めてほしい。
【到達目標】
◆ 専門職における信頼形成要因を説明できること。
◆ 不祥事が与える影響を分析できること。
◆ 自らの専門職アイデンティティを言語化できること。
キーワード
① 公認心理師法 ② 公認心理師の業務 ③ 専門職アイデンティティ ④ 臨床心理士等の他資格との比較
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。
2
公認心理師の法的義務
科目の中での位置付け
本科目は、公認心理師という職業について理解を深め、それを目指すための心の準備をするための科目である。そのために、前半は公認心理師という職業に求められる様々な知識を紹介する。
第2回では、公認心理師が法律上負う義務の内容を正確に把握し、日常実践において適法・適切な行動を取るための判断基準を身につける。義務違反のリスクを事例から学ぶことで、法的感覚と予防的思考を養う。
慶野遙香 2020 心理支援の専門職になるために(下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修)下山晴彦・慶野遙香(編著) 公認心理師スタンダードテキストシリーズ1 公認心理師の職責 ミネルヴァ書房)pp.26-39.
高橋美保 2020 心理支援の専門職として働くために(下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修)下山晴彦・慶野遙香(編著) 公認心理師スタンダードテキストシリーズ1 公認心理師の職責 ミネルヴァ書房)pp.40-59.
コマ主題細目
① 信用失墜行為の禁止(第40条) ② 秘密保持義務(第41条) ③ 関係者等との連携義務(第42条) ④ 資質向上の責務(第43条) ⑤ 法違反事例の検討とリスクマネジメント
細目レベル
① 信用失墜行為の禁止(第40条)
公認心理師法第40条は「公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない」と規定する。この条文は抽象的に見えるが、実際には非常に広範な行為を包含する。具体的には、要支援者との性的関係・金銭的搾取・虚偽記録の発行・無資格者への業務委託・SNSでの守秘義務に反する情報発信・反社会的組織との関係など多岐にわたる。これらは単に「道徳的に問題がある」というレベルを超え、登録取消・業務停止命令という法的処分の対象となる。
そして、信用失墜行為の事例を取り上げ、なぜその行為が信用失墜行為に該当するのかを法的・倫理的観点から多角的に分析する。さらに、組織レベルでの予防策(倫理委員会の設置・定期的な倫理研修)と個人レベルの予防策(定期的な内省・スーパービジョンの活用・境界設定)を具体的に検討する。専門職としての高い自律性が同時に高い自己管理責任を伴うことを深く理解してほしい。
【到達目標】
◆ 信用失墜行為の具体例を挙げられる
◆ 法的・倫理的リスクを分析できること。
◆ 予防策を組織的・個人的視点から提案できること。
② 秘密保持義務(第41条)
公認心理師法第41条は「公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする」と定める。この義務は業務終了後も存続する「永続的義務」であり、資格喪失後も効力を持つ点が重要である。「正当な理由」として認められる例外は限定的であり、(1)本人の同意がある場合、(2)法令上の義務(虐待通告・感染症届出等)がある場合、(3)生命・身体に対する重大かつ急迫した危険を防止するために必要な場合などが挙げられる。しかし、これらの例外はケースバイケースの慎重な判断を要し、安易な「例外適用」は守秘義務違反を構成しうる。
ここでは、守秘義務違反が要支援者・家族・社会に与える影響を具体的に分析するとともに、「誰に・何を・どの範囲で」伝えることが許容されるかという実務的判断基準を事例演習を通じて習得する。
【到達目標】
◆ 秘密保持義務の法的根拠を説明できること。
◆ 守秘義務の例外を適切に説明できること。
◆ 情報開示の範囲と対象を事例で判断できること。
③ 関係者等との連携義務(第42条)
公認心理師法第42条第1項は、保健医療・福祉・教育等が密接な連携のもとで総合的かつ適切に提供されるよう、関係者等との連携を保つ義務を定める。また第2項では、主治の医師がいる場合の「指示を受ける義務」も規定されている。
連携義務が課された背景には、心理的問題が身体的・社会的問題と複合して存在することが多く、単一の専門職による対応では限界があるという認識がある。連携不足の事例として、自殺リスクのある要支援者への精神科受診勧奨の遅れ、虐待対応における機関間の情報共有の失敗、学校と医療の連携不全による不登校の長期化などが報告されている。
ここでは、適切な連携の要件(情報共有の範囲・タイミング・方法)を整理し、連携を妨げる要因(組織文化・守秘義務への過度な配慮・役割意識の硬直化)の克服方策を検討する。そして、公認心理師が連携のコーディネーターとしての機能を果たすための実践的スキルを培うことを目標にしてほしい。
【到達目標】
◆ 関係者等との連携の必要性を説明できること。
◆ 連携不足がもたらすリスクを分析できること。
◆ 適切な連携の要件を具体的に提示できること。
④ 資質向上の責務(第43条)
公認心理師法第43条は「知識及び技能の向上に努めなければならない」と規定する。この規定は努力義務に留まるが、倫理的観点からは「常に最善の支援を提供するためにアップデートし続ける義務」として解釈すべきである。
心理学・精神医学・神経科学の知見は急速に更新されており、10年前の知識のみで実践を行うことは要支援者への不適切な支援につながるリスクをはらんでいる。具体的な資質向上の方法としては、学会参加・専門誌購読・研修受講・スーパービジョンへの参加・事例検討会・自己分析などが挙げられる。
ここでは、継続的な自己研鑽がなぜ倫理的義務として位置づけられるのかを理解してほしい。そして、自らの専門性向上に向けた3年・5年・10年の段階的計画を立案する演習を行う。生涯にわたり学び続ける姿勢が、要支援者の安全と利益を守る根拠になることを深く認識すること。形式的な研修参加に留まらず、実践へのフィードバックを意識した学習サイクルを確立することが重要である。
【到達目標】
◆ 継続研修の倫理的意義を説明できること。
◆ 自己研鑽の具体的方法を挙げられる
◆ 専門性向上の段階的計画を立案できること。
⑤ 法違反事例の検討とリスクマネジメント
ここでは、実際の法違反・倫理違反事例を素材として、ケーススタディ形式で分析を行う。分析の枠組みは、(1)事実関係の整理、(2)関係する法的規定・倫理規程の特定、(3)当事者の判断プロセスの再構成、(4)適切な対応との比較、(5)再発防止策の提案という5段階で構成する。取り上げる事例のカテゴリーとしては、守秘義務違反(不注意な情報漏洩・SNSへの投稿等)、多重関係(クライエントとの個人的・金銭的関係)、虚偽記録の作成、インフォームド・コンセント不備などを想定している。
グループワークとして、提示された事例の問題点を抽出し、組織的・個人的な再発防止策を発表する演習を行う。法違反が単なる個人の道徳的失敗ではなく、組織的要因・職場環境・支援者への支援体制の不備とも深く関連していることを認識し、予防的マネジメントの視点を養う。問題が表面化する前の早期介入(相談しやすい職場環境・定期的な倫理振り返り)の重要性についても検討する。
【到達目標】
◆ 事例から法的問題点を抽出できること。
◆ 適切な対応策を示せる
◆ 組織的・個人的再発防止策を提案できること。
キーワード
① 信用失墜行為の禁止 ② 秘密保持義務 ③ 関係者等との連携義務 ④ 資質向上の責務 ⑤ リスクマネジメント
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。
3
職業倫理の基本原則
科目の中での位置付け
公認心理として現場で的確な判断を行えるように、心理職の倫理的行動の根幹となる原則を習得し、具体的な支援場面への適用能力を養う。倫理と法の相互関係を理解し、専門職共同体の一員として高い倫理的水準を保ち続ける姿勢を形成する。具体的には、生命倫理学者のBeauchamp,T. & Childress,J.F.(ビーチャム&チルドレス)によって提唱された「4つの原則」である自律の尊重、善行、無危害、正義を理解する。
慶野遙香 2020 公認心理師の法的義務と倫理(下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修)下山晴彦・慶野遙香(編著) 公認心理師スタンダードテキストシリーズ1 公認心理師の職責 ミネルヴァ書房)pp.58-69.
コマ主題細目
① 善行・無危害の原則 ② 自律尊重の原則 ③ 公正の原則 ④ 倫理規程の理解と適用 ⑤ 倫理と法の交錯
細目レベル
① 善行・無危害の原則
「善行(beneficence)」とは要支援者の最善の利益のために積極的に行動する義務であり、「無危害(non-maleficence)」とは意図的・非意図的を問わずクライエントへの害を避ける義務である。この二原則は医療倫理の研究者であるBeauchamp,T. & Childress,J.F.(ビーチャム&チルドレス)によって提唱されたものであり、心理職の職業倫理においても中核的位置を占める。
善行と無危害は一見矛盾しないように見えるが、実際の臨床場面では、ある介入が要支援者の回復には有益である一方で短期的には苦痛や不安を生じさせる場合など、微妙なバランスの判断が求められる。過度な介入(必要以上の依存の助長・プライバシーへの過度な立ち入り)と不作為(リスクを察知していながら対応しない)のいずれもが倫理的問題となりうる。
ここでは、各原則の定義を明確にした上で、具体的な支援場面への適用を検討し、倫理原則を「知っている」から「使える」水準に高めることを意識すること。善行と無危害のバランスを実践的に判断する能力が公認心理師としての成熟の証であることを理解すること。
【到達目標】
◆ 善行・無危害の各原則を正確に定義できること。
◆ 両原則の緊張関係を事例で説明できること。
◆ 介入の利益とリスクを比較検討できること。
② 自律尊重の原則
「自律尊重(autonomy)」とは、クライエントが自身の心理・医療に関する情報に基づき、自由意思で意思決定する権利を尊重し、パターナリズム(本人の意向に反して「本人のため」として支援者が決定を行うこと)に陥らないよう留意する義務を指す。自律尊重の実践的根拠は、インフォームド・コンセント(説明に基づく同意の取得)・守秘義務の遵守・選択肢の提示といった具体的手続きによって支えられる。
しかし、自律尊重は無条件ではなく、意思能力の低下(認知症・精神疾患の急性期・発達的制約等)がある場合には、代理意思決定の考え方や家族・後見人との協働が必要となる。ここでは、意思能力の評価方法と代理意思決定の倫理的枠組みを具体的に学ぶとともに、クライエントの自律を最大限尊重しながらも安全確保を怠らないという複層的な判断の実践を検討する。そして、自律尊重がクライエントとの信頼関係の基盤であり、同時に支援の質を高める要素でもあることを理解する。
【到達目標】
◆ 自律尊重の定義とパターナリズムの違いを説明できること。
◆ 意思能力の評価視点を示せる
◆ 代理意思決定の倫理的枠組みを説明できること。
③ 公正の原則
「公正(justice)」とは、心理支援の資源・機会・サービスを公平に配分し、個人の属性(性別・人種・宗教・障害・経済状況・性的指向等)によって差別的な取扱いを行わない義務を指す。公正の原則は、制度的・社会的な不平等が心理的健康にどのような影響を与えるかという構造的視点とも深く結びついている。実践的には、心理支援へのアクセス格差(地理的・経済的・文化的・言語的障壁)をどう克服するか、限られた面接枠をどう公平に配分するか、文化的背景の異なるクライエントに対していかに適切な支援を提供するか、という課題として現れる。
ここでは、文化的コンピテンシー(異なる文化的背景を持つクライエントへの理解と対応能力)の概念を学び、自己の無意識的バイアスや文化的偏見を認識する演習を実施する。公正の原則が「同一の扱い(equal treatment)」ではなく「公平な扱い(equitable treatment)」を意味することを理解し、個々の状況に応じた柔軟な対応の重要性を把握すること。
【到達目標】
◆ 公正の原則の定義を説明できること。
◆ 制度的制約下での公正の実現方法を論じられる
◆ 文化的コンピテンシーの概念を説明できること。
④ 倫理規程の理解と適用
職業倫理規程とは、専門職共同体が共有する価値観・行動基準・責任を体系的に文書化したものであり、法律とは異なる次元で専門職の行動を規律する。わが国の公認心理師倫理規程の内容を概観するとともに、米国心理学会(APA)倫理規程・カナダ心理学会(CPA)倫理規程など国際的に影響力のある規程と比較し、共通する原則と文化的・制度的差異を把握する。
倫理規程は「禁止事項のリスト」としてではなく、「高い専門的行動水準を目指すための指針」として活用することが重要であり、条文の字義的解釈に留まらず、その背後にある価値観と目的を理解した上で実践に適用することが求められる。
ここでは、倫理規程の各条項を具体的な実践場面に適用する検討を行い、規程の「使い方」を習得する。また、倫理規程に違反した場合の専門職内部での対応(倫理委員会への申立て・処分手続き)についても概観し、倫理規程の実効性を担保するメカニズムを理解してほしい。
【到達目標】
◆ 国内外の倫理規程の主要内容を説明できること。
◆ 倫理規程を具体的な場面に適用できること。
◆ 倫理委員会等の対応手続きを概説できること。
⑤ 倫理と法の交錯
倫理と法律は密接に関連しながらも、その性質と要求水準において異なる次元に存在する。法律は最低限遵守されるべき行動基準を強制力をもって規定するものであり、違反は刑事・民事・行政上の制裁を伴う。一方、職業倫理はより高い水準の行動を専門職共同体の規範として求めるものであり、倫理的であることは法的に適法であることを超えた要請である。「合法だが非倫理的な行動」(例:法的に義務付けられていないにもかかわらず要支援者への説明を著しく省略する行為)と「倫理的だが法的に問題が生じる行動」(例:生命の危機を回避するための緊急の守秘義務例外適用)という両方向の交錯事例を検討する。
また、法律が倫理的要請の全てをカバーできない「法的グレーゾーン」において、専門職としての高い倫理的判断能力が特に求められることを理解すること。専門職として「法律を守れば十分」という思考に陥らず、常により高い倫理的水準を目指し続けることの重要性を十分認識すること。
【到達目標】
◆ 倫理と法の相違点を明確に説明できること。
◆ 両者が衝突する事例を分析できること。
◆ グレーゾーンでの判断プロセスを説明できること。
キーワード
① 善行と無危害 ② 自律尊重 ③ 文化的コンピテンシー ④ 倫理規程 ⑤ 倫理と法の交錯
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【本講義の復習】
文字教材を今一度よく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認をするとよいだろう。そして、ChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはネットで検索してみるとよい。次回は、公認心理師に求められる倫理的意識の代表的な例として、情報管理と多職種連携について扱う。情報管理についてはこれまでの講義で触れられる機会はなかったと思うので、どのようなことが話されるのか、想像を逞しくしておいてほしい。
4
公認心理師の倫理的意思決定
科目の中での位置付け
公認心理師として倫理的問題に直面した際、感情的・直感的に反応するのではなく、体系的な思考プロセスに従って判断する能力を養う。倫理的意思決定モデルを習得し、複雑なジレンマ状況においても透明性と再現性のある判断を下せるようになることを目指す。
コマ主題細目
① 倫理的問題の認識と特定 ② 倫理的意思決定モデルの習得 ③ 複数選択肢の比較検討 ④ 倫理的ジレンマの分析 ⑤ 倫理的意思決定の演習
細目レベル
① 倫理的問題の認識と特定
倫理的意思決定の第一歩は、目の前の状況に倫理的問題が含まれていることを認識することである。しかし、多忙な実践現場では倫理的問題がしばしば見過ごされたり、「実務的な判断」として処理されたりする危険性がある。
倫理的問題の兆候としては、(1)複数の関係者の利益が衝突する状況、(2)守秘義務・同意・安全確保の原則が緊張関係にある状況、(3)「何か変だ・気になる」という直感的な違和感がある状況などが挙げられる。問題の特定には、関係するすべての利害関係者(要支援者・家族・機関・社会)と、それぞれが持つ価値・権利・利益を明確にするプロセスが含まれる。
ここでは、倫理的問題を見落とさないための「倫理的感受性(ethical sensitivity)」の概念を学び、日常実践において倫理的アンテナを高く保つ姿勢を養う。具体的な事例を用いて、倫理的問題の有無を判断する演習を行い、認識精度を高める。倫理的問題の早期認識が、後の対応を円滑にするための最も重要な前提条件であることを理解すること。
【到達目標】
◆ 倫理的問題の兆候を識別できること。
◆ 利害関係者と価値の衝突を明確化できること。
◆ 倫理的感受性の概念を説明できること。
② 倫理的意思決定モデルの習得
倫理的問題に直面した際の体系的な思考プロセスとして、代表的な意思決定モデルを学ぶ。一般的なモデルの手順は、(1)倫理的問題の認識、(2)関係する当事者の特定、(3)関係する倫理原則・法規の確認、(4)取りうる行動選択肢の列挙、(5)各選択肢の倫理的結果の予測、(6)同僚・スーパービジョンへの相談、(7)最善の行動の決定、(8)実行、(9)結果の評価と振り返りという9段階から構成される。このモデルは、感情的・直感的な判断を排除するためではなく、直感に頼りすぎることを防ぎながら、直感と論理的分析を統合した判断を促進するためのツールである。
ここでは、このモデルを提示する事例(例:「クライエントが犯罪行為を打ち明けた場合」など)に適用し、モデルの各ステップを実際に踏む演習を行う。モデルを「知っている」から「自動的に使える」水準まで内面化することを目指す。各ステップの目的と具体的な実施方法を体験的に、能動的に学んでほしい。
【到達目標】
◆ 倫理的意思決定の手順を正確に説明できること。
◆ モデルの各ステップを実際に適用できること。
◆ 直感と論理的分析を統合した判断ができること。
③ 複数選択肢の比較検討
倫理的意思決定において、単一の「正解」を見つけることよりも、複数の選択肢を網羅的に検討し、それぞれの利点・欠点・リスク・影響を比較評価するプロセス自体が重要な意味を持つ。選択肢の列挙においては、「何も行動しない(現状維持)」という選択肢も必ず含めること、および「理想的な解決」と「現実的に可能な解決」の両方を視野に入れることが重要である。各選択肢の評価軸としては、(1)関係するすべての倫理原則への適合性、(2)法的問題の有無、(3)短期的・長期的影響、(4)関係者それぞれへの影響、(5)実施可能性(資源・時間・スキルの観点)が挙げられる。
ここでは、事例を用いて複数の選択肢を列挙・比較する演習を行い、特定の選択肢に思考が集中してしまう「トンネルビジョン」(周囲の視界が失われ、筒の中を覗くように中心部分しか見えなくなる「視野狭窄」状態のこと)を防ぐ能力を培う。選択肢の比較検討が終わった後も、選択の根拠を明確に言語化し、後の振り返りに活用できるよう記録することの重要性についても学ぶ。
【到達目標】
◆ 複数の行動選択肢を網羅的に列挙できること。
◆ 各選択肢の利点・リスクを比較できること。
◆ 判断の根拠を言語化できること。
④ 倫理的ジレンマの分析
倫理的ジレンマとは、複数の倫理原則が同時に妥当し、どの選択をしても何らかの倫理的価値を犠牲にせざるを得ない状況を指す。公認心理師が直面しやすい典型的なジレンマとして、(1)守秘義務と危険防止義務の衝突(クライエントが第三者への暴力をほのめかす場合)、(2)クライエントの意向と家族の要求の不一致(治療内容の情報開示を巡る対立)、(3)機関の方針と個人の倫理的判断の乖離(組織から不適切な対応を求められる場合)、(4)本人の自律と安全確保の緊張(自傷リスクを持つクライエントが支援を拒否する場合)などがある。
ここでは、グループディスカッション形式でこれらのジレンマ事例を検討し、単純な「正解」がない状況でいかに最善の判断に近づくかを体験的に学ぶ。「完璧な答えを見つけること」ではなく、「誠実で透明性のある判断プロセスを踏むこと」ことが重要であるという姿勢を培ってほしい。複数の倫理原則の優先順位をつける根拠を明らかにして示すことが、専門職としての誠実さの表れである。
【到達目標】
◆ ジレンマ状況を正確に抽出できること。
◆ 複数の倫理原則の優先順位の根拠を示せる
◆ グループで建設的な意思決定ができること。
⑤ 倫理的意思決定の演習
ここでは、前項までで学んだ倫理的意思決定モデルと分析枠組みを、複数の具体的事例に実際に適用する演習を行う。事例の複雑性は段階的に設定し、単一の倫理原則で解決できる基本的事例から、複数の原則が衝突する複雑なジレンマ事例へと進む。
演習の評価基準として、(1)問題の正確な認識と定義、(2)関連する倫理原則・法規の適切な特定、(3)選択肢の網羅的な列挙、(4)選択の根拠の明確な言語化、(5)判断の透明性と再現性の確保という5点を用いる。「良い倫理的判断」とは必ずしも結果がよかった判断ではなく、プロセスが透明で誠実であった判断であることを理解してほしい。
演習後にはグループによる振り返りを行い、各自の思考パターンや盲点を認識する機会とする。将来、公認心理師になったことを想定し、スーパービジョンや同僚との相談が倫理的意思決定の質を高める重要な資源であることも確認する。この演習を通じて、実践場面での倫理的判断を自信を持って行えるようになることを目指す。
【到達目標】
◆ 倫理的意思決定モデルを事例に完全適用できること。
◆ 判断の透明性と再現性を高められる
◆ 演習から自己の思考パターンの特徴を認識できること。
キーワード
① 倫理的問題 ② 倫理的意思決定モデル ③ トンネルビジョン ④ 倫理的ジレンマ
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。
5
情報の適切な取扱い
科目の中での位置付け
心理支援において扱われる個人情報・要配慮情報の保護に関する法的・倫理的要件を総合的に理解する。デジタル時代における新たな情報管理上のリスクにも対応できる実践的な知識と判断力を養う。
五十嵐友里 2020 情報の適切な取り扱い(下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修)下山晴彦・慶野遙香(編著) 公認心理師スタンダードテキストシリーズ1 公認心理師の職責 ミネルヴァ書房)pp.80-89.
コマ主題細目
① 守秘義務の範囲と限界 ② 個人情報保護法の理解と実践 ③ 専門家間の情報共有の原則 ④ 記録管理の原則と実践 ⑤ デジタル時代の情報管理リスク
細目レベル
① 守秘義務の範囲と限界
守秘義務は、公認心理師法第41条のほかに、刑法第134条(秘密漏示罪)・個人情報保護法・各種特別法(医療法・学校教育法等)にも規定されており、公認心理師はこれらの法規定を複合的に理解する必要がある。
守秘義務の適用範囲は「業務上知り得た秘密」に限定されないことにも注意が必要であり、廊下での立ち話・他機関への電話連絡・電子メールの誤送信など、意図しない形での漏洩も義務違反を構成しうる。守秘義務違反に該当する具体的行為としては、(1)関係者への無断情報提供、(2)不特定多数が閲覧可能な場所への記録の放置、(3)匿名化が不十分な事例発表、(4)SNSへの業務に関連する投稿などが挙げられる。
ここでは、守秘義務の「当たり前」を疑い直すことで、日常実践に潜む漏洩リスクを発見する批判的視点を持ってほしい。そして、曖昧な場面での判断基準を明確に理解し、迷ったときに立ち返るための思考の軸を自己の中で形成することを目指すこと。守秘義務は利用者との信頼関係の根幹であり、その遵守が支援の有効性を支えていることを理解すること。
【到達目標】
◆ 守秘義務の法的根拠の複層性を説明できること。
◆ 違反に該当する行為を具体的に指摘できること。
◆ 実務場面での判断基準を説明できること。
② 個人情報保護法の理解と実践
個人情報保護法は、生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別できるものを「個人情報」として保護対象とする。さらに、心理・精神に関する情報・病歴・身体障害・犯罪歴などは「要配慮個人情報」として特に厳格な保護が求められる。
公認心理師が業務において個人情報を扱う際には、取得段階(利用目的の明示・同意取得)・利用段階(目的外利用の禁止・第三者提供の制限)・保管段階(安全管理措置・アクセス制限)・廃棄段階(確実な消去・廃棄方法の確認)の各段階で遵守すべき原則がある。安全管理措置の具体例としては、鍵のかかるキャビネットへのファイル保管・電子記録の暗号化・アクセス権限の設定・定期的なパスワード変更・廃棄記録の保管などが挙げられる。研究目的での個人情報利用には、倫理審査委員会による審査・承認が求められ、臨床目的とは異なる厳格な手続きが必要となる。ここでは、違反事例から法的問題点を抽出する演習を通じて、情報管理上の注意点を理解すること。
【到達目標】
◆ 個人情報と要配慮個人情報の定義を説明できること。
◆ 情報取得・利用・保存・廃棄の各原則を説明できること。
◆ 安全管理措置を具体的に提案できること。
③ 専門家間の情報共有の原則
多職種連携において、支援に必要な情報を関係専門職間で共有することは、適切なケアを提供するために不可欠である。しかし、この情報共有は無制限に許されるものではなく、「必要最小限の情報を必要な関係者の間でのみ共有する」という最小限共有の原則に従う必要がある。情報共有の法的・倫理的根拠としては、本人の明示的または黙示的な同意・要保護児童対策地域協議会等の法定協議会の枠組み・緊急安全確保の必要性などが挙げられる。
多職種カンファレンスにおいて公認心理師が発言する際には、守秘義務に基づき開示できる情報の範囲を事前に確認すること、クライエントの名誉を傷つける不必要な詳細を避けること、公認心理師としての専門的見解と事実報告を明確に区別することが重要である。同意取得の具体的方法としては、支援開始時の説明文書への記載・口頭での個別説明・情報共有の目的と範囲を明記した書面同意などが挙げられる。ここでは、カンファレンス場面の模擬演習を通じて、適切な発言内容と情報共有の実践を理解すること。
【到達目標】
◆ 最小限共有の原則を説明できること。
◆ 多職種連携における共有範囲を判断できること。
◆ 同意取得の具体的方法を説明できること。
④ 記録管理の原則と実践
心理面接の記録は、(1)支援の継続性確保、(2)多職種間の情報共有、(3)スーパービジョン・事例検討の素材、(4)法的・倫理的問題発生時の証拠という複数の目的を持つ重要な専門的文書である。記録の基本形式としてSOAP形式(Subjective:主観的情報、Objective:客観的情報・観察事項、Assessment:アセスメント・解釈、Plan:今後の方針)が広く用いられる。
記録作成における重要原則は、(1)客観的事実と心理師の主観的解釈・推測を明確に区別すること、(2)差別的・侮辱的な表現を避けること、(3)推測を事実として記載しないこと、(4)訂正する際は原文を読み取れる形で修正することである。記録の保管年限については医療機関では5年が一般的な基準とされ、成年に達しない者については成年到達時まで保管することが推奨される。電子記録には、セキュリティ上のリスク(不正アクセス・情報漏洩・バックアップ不備)への対策が特に重要であり、施設ごとのセキュリティポリシーの整備が不可欠である。
【到達目標】
◆ SOAP形式等の基本構造を説明できること。
◆ 客観的記述と主観的解釈を区別できること。
◆ 電子記録管理のリスクと対策を説明できること。
⑤ デジタル時代の情報管理リスク
情報技術の急速な普及により、心理支援の場面もデジタル化が進んでいる。オンライン面接は、クライエントの居住地域・移動能力・感染リスク等の障壁を低減する利点がある一方で、端末・通信環境のセキュリティ、第三者の同席リスク、録画・スクリーンショットの可能性、プラットフォームによるデータ処理の問題など固有のリスクを伴う。
また、クラウドサービスへの記録保存はデータの保管場所・プロバイダーによるアクセス可能性・サービス終了時のデータ消失リスクを十分に検討する必要がある。SNSの職業的利用については、(1)プライベートな投稿でも職業的側面と不可分であること、(2)クライエントとのつながりを避けること、(3)業務に関連する内容の投稿を厳に慎むことが求められる。
そして、情報セキュリティ事故(端末紛失・不正アクセス・誤送信等)が発生した際の初期対応として、速やかな報告・被害範囲の確認・当事者への通知・再発防止策の実施という手順を学ぶ。デジタル化が進む時代においても、情報保護の本質的な価値は変わらず、新たな技術への対応力を継続的に更新することが専門職の責務であることを確認すること。
【到達目標】
◆ オンライン面接の情報管理リスクを説明できること。
◆ SNS利用における職業倫理上の注意点を説明できること。
◆ 事故発生時の初期対応を説明できること。
キーワード
① 守秘義務 ② 個人情報保護法 ③ 専門家間の情報共有 ④ 記録の管理 ⑤ 情報管理リスク
コマの展開方法
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該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。
6
要支援者中心の支援
科目の中での位置付け
心理支援の根幹に要支援者の安全・福祉・自律を置くという基本姿勢を確立する。パーソンセンタードケアの理念と実践を学び、支援者の権力性や文化的背景が支援に与える影響を批判的に考察する力を培う。
コマ主題細目
① 人権尊重と尊厳の保持 ② 自己決定の尊重とインフォームド・コンセント ③ パーソンセンタードケアの実践 ④ 支援者の権力性と関係性の非対称性 ⑤ 文化・多様性への倫理的配慮
細目レベル
① 人権尊重と尊厳の保持
公認心理師の実践の根底には、すべての人が持つ固有の尊厳と人権の尊重がある。人権尊重とは、支援の対象者を「心理的問題を抱えた存在」としてではなく、独自の歴史・価値観・関係性・強みを持つ「人間全体」として捉える姿勢を指す。
精神疾患・発達障害・依存症などに対する社会的スティグマ(偏見・差別)は、当事者が支援を求めることを妨げ、社会参加を制限するという意味で二重の障害をもたらす。公認心理師は、このようなスティグマを内面化せず、また支援場面で再強化しないよう細心の注意を払う必要がある。具体的には、診断ラベルに依存した固定的な見方を避けること、要支援者の強みと資源に着目したストレングスベースのアプローチを採用すること、「問題のある人」ではなく「問題を抱えた環境の中にいる人」として理解する生態学的視点を持つことが含まれる。ここでは、無意識的な差別や偏見を認識するための自己内省に関する演習を行い、専門職として人権を尊重する意識を持つように努めること。
【到達目標】
◆ 人権尊重の概念を心理実践に即して説明できること。
◆ スティグマの影響を具体的に説明できること。
◆ ストレングスベースのアプローチの視点を持てる
② 自己決定の尊重とインフォームド・コンセント
要支援者の自己決定権は、人権尊重の具体的実践形態であり、心理支援における最も基本的な倫理的義務の一つである。インフォームド・コンセント(IC)を構成する4要素は、(1)説明(支援の目的・方法・期間・予測される効果と限界・代替的方法・費用等の開示)、(2)理解(説明された内容を要支援者が実質的に理解していること)、(3)同意(理解に基づいて支援を受け入れる意思の表明)、(4)自発性(脅迫・強制・不当な誘導がない自由意思によること)の4点である。
「継続的IC」の概念は、同意が支援開始時のみでなく、方針変更・新しい技法の導入・支援終了時にも繰り返し求められることを意味する。意思能力が低下している場合(認知症・重篤な精神疾患・知的障害等)には、代理同意の枠組みと意思決定支援のアプローチを組み合わせることが求められる。ここでは、IC不備のリスクと適切なICの実施手順を学ぶとともに、様々な状況(子ども・高齢者・障害のある方・緊急時等)でのICの変容を検討する。
【到達目標】
◆ インフォームド・コンセントの4要素を説明できること。
◆ 継続的ICの重要性を説明できること。
◆ 同意能力の評価方法を概説できること。
③ パーソンセンタードケアの実践
パーソンセンタードケア(Person-Centred Care)とは、支援の目標・方法・評価の軸を常に要支援者の価値観・希望・生活状況・強みに置き、支援者の都合・機関の論理によって歪めないという支援の思想であり、ロジャーズの来談者中心アプローチに源流を持ちながら、現代医療・福祉・心理の実践全体に広がっている。
支援者中心思考の具体例としては、「機関の都合による面接時間・頻度の制限」「診断ラベルに基づく固定的な支援方針」「要支援者の声を聴かずに立てられた支援計画」などが挙げられる。一方、パーソンセンタードケアの実践では、(1)要支援者の声を正確に聴取するための傾聴技術、(2)支援計画への要支援者の参加と共同作成、(3)定期的な要支援者の満足度と目標達成度の確認、(4)支援者の働きかけに対する要支援者の反応へのフィードバックの活用が重要である。
ここでは、支援者とクライエントのパートナーシップモデルを実践する演習を行い、パーソンセンタードの対話技術を体験的に習得する。
【到達目標】
◆ パーソンセンタードケアの理念を説明できること。
◆ 支援者中心思考との違いを具体例で示せる
◆ 要支援者参加型の支援計画を立案できること。
④ 支援者の権力性と関係性の非対称性
公認心理師と要支援者の関係は、表面的には対等なように見えても、実際には資格・専門知識・情報・組織的権限などの面で著しく非対称な権力関係を内包している。この権力の非対称性は、(1)専門家が持つ知識・診断能力がクライエントの自己理解を方向付ける力を持つこと、(2)機関の規則・制度が要支援者の選択を制約することがあること、(3)要支援者が支援者への依存状態になりやすいこと、などとして現れる。
支援者の権力性を自覚することなしに行われる支援は、要支援者の自律を損ない、依存を強化するリスクを持つ。批判的反省実践(critical reflective practice)とは、自らの実践に内包された権力関係・文化的前提・無意識的バイアスを継続的に問い直す姿勢を指す。
ここでは、支援関係の非対称性が具体的にどのような場面で現れるかを事例を通じて検討し、権力性に自覚的でありながら、それを適切に管理した上で要支援者の利益のために活用する方法を考える。支援者としての謙虚さと真摯さが、良質な支援関係の基盤であることを確認すること。
【到達目標】
◆ 支援関係の権力的非対称性を説明できること。
◆ 権力性が支援に与える影響を分析できること。
◆ 批判的反省実践の概念を説明できること。
⑤ 文化・多様性への倫理的配慮
現代の心理支援は、多様な文化的背景・価値観・アイデンティティを持つ要支援者と出会う場であり、文化的コンピテンシー(multicultural competence)の向上は専門職としての倫理的責務の一つである。文化的コンピテンシーは、(1)自己の文化的前提・偏見・価値観への認識(self-awareness)、(2)他文化への知識と理解(knowledge)、(3)文化的に適切な技術の習得(skills)という3次元から構成される。具体的に配慮すべき多様性の次元には、民族・人種・国籍・宗教・性的指向・性自認・障害・経済階層・年齢などが含まれる。
アクセシビリティとは、支援を必要とするすべての人がその支援にアクセスできるようにするための工夫であり、言語・物理的環境・経済的障壁・時間的障壁の除去が含まれる。合理的配慮とは、障害者差別解消法に基づき、障害のある人への社会的障壁を除去するための必要かつ適切な変更・調整を意味する。
ここでは、文化的に多様なクライエントとの架空事例を用いたロールプレイを通じて、文化的配慮の実践を体験する。
【到達目標】
◆ 文化的コンピテンシーの3次元を説明できること。
◆ 合理的配慮の概念を具体例で説明できること。
◆ 多様性への配慮を支援計画に組み込める
キーワード
① 人権尊重 ② インフォームド・コンセント ③ パーソンセンタードケア ④ 支援者の権力性 ⑤ アクセシビリティ
コマの展開方法
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該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはネットで検索してみるとよい。
7
リスクアセスメント
科目の中での位置付け
要支援者が自己または他者に対して危害を加える可能性を体系的に評価するプロセスを習得する。自殺・他害リスクの評価指標を学び、リスクアセスメントが予測ではなく「リスクの文脈理解と管理」であることを理解する。
コマ主題細目
① 自殺リスクアセスメント ② 他害リスクアセスメント ③ リスクアセスメントツールの活用と限界 ④ リスクアセスメントから支援計画へ ⑤ アセスメントの限界と支援者のバイアス
細目レベル
① 自殺リスクアセスメント
自殺リスクのアセスメントは、公認心理師が実践のあらゆる場面で求められる最も重要な臨床スキルの一つである。評価すべき主要な次元は、(1)自殺念慮の有無・強度・頻度・持続性、(2)自殺計画の具体性と致死性(手段・場所・時期の特定度)、(3)手段へのアクセス可能性(薬剤・凶器等の入手しやすさ)、(4)過去の自傷・自殺未遂歴(頻度・方法・救急処置の必要性)、(5)精神疾患の有無と重症度(うつ病・統合失調症・物質依存症等)、(6)社会的サポートの有無と質、(7)希望の有無・将来への見通しの7次元である。
保護因子(自殺を抑制する要因)として、強固な社会的絆・問題解決スキル・宗教的信念・責任を感じる子ども・家族の存在などが挙げられ、リスク因子だけでなく保護因子も包括的に評価することが重要である。ここでは、半構造化面接を用いた模擬自殺リスクアセスメント演習を実施し、「聞きにくいこと」を適切に聴取するスキルを体験的に学ぶ。
【到達目標】
◆ 自殺リスクの評価次元を網羅的に説明できること。
◆ 保護因子の概念と役割を説明できること。
◆ 模擬アセスメント演習を適切に実施できること。
② 他害リスクアセスメント
他害(暴力)リスクのアセスメントは、司法・精神医療・矯正施設等の特定の場面においては特に重要な実践であるが、一般的な心理・相談場面においても、暴力の可能性がある場合に適切な評価を行う能力が求められる。他害リスクの評価に用いられる構造化・半構造化ツールとして、HCR-20(Historical Clinical Risk Management-20)等が国際的に活用されており、その構成は歴史的(Historical)要因・臨床的(Clinical)要因・リスク管理(Risk Management)要因の3領域にわたる。評価の視点として、(1)過去の暴力歴(頻度・重篤度・ターゲットの特定性)、(2)現在の精神状態(被害妄想・命令幻聴・衝動制御困難等)、(3)将来のリスク管理要因(社会的サポート・生活安定性・治療アドヒアランス)を包括的に評価する。
タラソフ判決(1976年)が示した「危険の警告義務(duty to warn)」の概念は、守秘義務の例外として心理師が第三者への危険を防止するための行動を取る義務を示しており、この判例の倫理的・法的含意を日本の文脈で検討する。
【到達目標】
◆ 他害リスクの評価領域を説明できること。
◆ HCR-20等の構造を概説できること。
◆ 危険の警告義務の概念を日本の文脈で検討できること。
③ リスクアセスメントツールの活用と限界
リスクアセスメントツール(半構造化面接・チェックリスト・標準化尺度等)は、評価の系統性・網羅性・透明性を高め、個人の直感や主観的判断に過度に依存することを防ぐという重要な機能を持つ。
しかし、ツールの活用には適切な訓練が必要であり、ツールの使用経験が不十分なまま結果を機械的に解釈することは、アセスメントの質を損なうリスクがある。ツールの主要な限界として、(1)予測的妥当性の限界(ツールはグループレベルの傾向を示すが個人の予測精度には限界がある)、(2)文化的・言語的妥当性の問題(標準化が行われた集団と異なる文化・言語背景への適用の限界)、(3)「点の評価」の問題(アセスメントは特定の時点での評価であり、状況変化によってリスクは変動する)、(4)ラベリングの危険性(リスクスコアが固定的なラベルとして一人歩きするリスク)が挙げられる。
ここでは、ツールを「判断の代替」としてではなく「判断の補助」として活用する姿勢を養い、継続的な再評価と文脈的理解の重要性を確認する。
【到達目標】
◆ リスクアセスメントツールの機能と限界を説明できること。
◆ ツールを適切に活用・解釈できること。
◆ 継続的再評価の必要性を説明できること。
④ リスクアセスメントから支援計画へ
リスクアセスメントは、それ自体が目的ではなく、要支援者の安全を守るための支援計画立案の出発点である。アセスメント結果を支援計画に適切に接続するためには、(1)リスクの程度(高・中・低)の評価に基づく介入の優先度の設定、(2)特定されたリスク因子への直接的介入(危機介入・医療機関への紹介等)と保護因子の強化(社会的サポートの充実・コーピングスキルの向上等)の両方を含む計画の立案、(3)多職種連携によるリスク管理体制の構築、(4)定期的なリスクの再評価と計画の修正という手順が重要である。
ここでは事例を用いた演習を行う。架空のリスクアセスメント結果を用いて支援計画を立案し、グループで検討プロセスを通じて、実践的判断力を培う。そして、安全確保計画(Safety Plan)の作成技術として、危機時の対処行動・連絡先・環境的安全確保の手順を要支援者と共同で作成する方法を学ぶ。リスク管理は「管理する・制限する」ではなく、「要支援者とともに安全を守る」という協働的姿勢から行うことが重要である。
【到達目標】
◆ リスクアセスメント結果を支援計画に接続できること。
◆ 安全確保計画を共同で作成できること。
◆ 多職種によるリスク管理体制を設計できること。
⑤ リスクアセスメントの限界と支援者のバイアス
リスクアセスメントは科学的・体系的な手続きを用いるにもかかわらず、その精度には根本的な限界がある。個人の将来の行動予測は本質的に不確実性を伴い、現在のツールや手続きをもってしても偽陽性(危険がないのに高リスクと評価)と偽陰性(危険があるのに低リスクと評価)を完全に排除することはできない。
支援者のバイアスとして、(1)確証バイアス(初期仮説を支持する情報を優先的に収集・解釈する傾向)、(2)後知恵バイアス(事後的に「予測できた」と感じる傾向)、(3)楽観バイアス(「この人は大丈夫だろう」という過楽観的な評価)、(4)文化的・社会的ステレオタイプに基づく評価の歪みが挙げられる。これらのバイアスを低減するための方法として、(1)チームによる共同アセスメント(複数の視点の統合)、(2)スーパービジョンの活用、(3)構造化ツールの使用、(4)自己のバイアスへの継続的な内省が有効である。
ここでは、不確実性の中で最善の判断を下すことへの耐性(ambiguity tolerance)を養い、「完璧な予測」を追求するのではなく「適切なプロセスを踏んだ誠実な判断」を目指す姿勢を形成することを目指す。
【到達目標】
◆ リスクアセスメントの根本的限界を説明できること。
◆ 支援者のバイアスの種類を挙げられる
◆ バイアス低減のための実践的方法を説明できること。
キーワード
① 自殺リスク ② 違いリスク ③ リスクアセスメントツール ④ 支援計画 ⑤ 支援者のバイアス
コマの展開方法
社会人講師
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PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはネットで検索してみるとよい。
8
危機介入と自殺予防
科目の中での位置付け
危機理論の基礎を習得し、危機状態にある要支援者への初期対応・安全確保・資源動員の技術を学ぶ。自殺予防の三次予防モデルとゲートキーパーの役割を理解し、一次・二次・三次の各レベルでの介入能力を養う。
コマ主題細目
① 危機理論の基礎 ② 危機介入の基本手順 ③ 支援資源の活用と連携 ④ 自殺予防の三次予防モデル ⑤ ゲートキーパーとしての役割
細目レベル
① 危機理論の基礎
Caplanが体系化した危機理論によれば、危機(crisis)とは個人が通常の問題解決資源では対処できない圧倒的なストレス事態に直面し、心理的均衡が失われた急性状態を指す。危機状態は4〜6週間で何らかの方向(適応的解決または不適応的解決)に収束する時限性を持ち、この期間が最も効果的に支援介入できる「機会の窓」であるとされる。
危機の発生要因として、(1)予期しない喪失(死別・失業・離婚等)、(2)役割移行(退職・結婚・出産等のライフイベント)、(3)慢性ストレスの蓄積による閾値越え、(4)トラウマ的体験(災害・事件・暴力等)が挙げられる。危機状態は病理ではなく、あらゆる人間が経験しうる「人生における転機」であり、適切な介入によって個人の成長の契機にもなりうることを理解する。
ここでは、危機の種類(偶発的危機・発達的危機・実存的危機)と、それぞれへの対応の基本的違いを整理し、後続の介入技術学習の基盤を形成する。
【到達目標】
◆ 危機の定義と時限性を説明できること。
◆ 危機の種類を分類できること。
◆ 危機が成長の機会にもなりうることを説明できること。
② 危機介入の基本手順
危機介入(Crisis Intervention)の基本的手順は、(1)安全の確認と確保(自傷他害リスクの即時評価・危険物の確認・安全な環境の設定)、(2)感情的サポートの提供と治療的関係の形成(共感的傾聴・感情の正常化・孤立感の軽減)、(3)問題の定義と焦点化(現在の危機を引き起こした主要問題の特定)、(4)サポート資源の探索と動員(自然的サポート・専門的サポートの確認と活性化)、(5)行動計画の立案と合意(現実的で具体的な次のステップの共同設定)、(6)フォローアップの設定(継続的な関与の約束)という6段階から構成される。
危機介入は従来の心理療法とは異なり、時間的緊迫性・指示的なアプローチ・具体的目標への焦点化という特性を持つことを理解する。電話・対面・オンラインの各媒体での危機介入の特性と留意点を学び、それぞれの媒体で求められる工夫と限界を理解すること。ロールプレイを通じて初期対応スキルを学び、実際の介入場面を体験する。
【到達目標】
◆ 危機介入の6段階手順を説明できること。
◆ 媒体(電話・対面・オンライン)ごとの特性を説明できること。
◆ ロールプレイで初期対応を実践できること。
③ 支援資源の活用と連携
危機状態にある要支援者への支援は、心理師一人で完結するものではなく、医療・警察・福祉・地域等の多様な資源との迅速な連携を必要とする。支援資源の主要なカテゴリーとして、(1)精神科救急・緊急外来(入院・薬物療法が必要な場合)、(2)警察・救急(生命の危険が切迫している場合)、(3)福祉機関(生活上の緊急支援が必要な場合)、(4)危機介入専門機関(自殺防止センター・DV相談窓口等)、(5)自然的サポート(家族・友人・地域のサポーター)が挙げられる。
適切なリファーの判断基準としては、(1)要支援者のニーズが自身の専門的能力や機関の機能を超えている場合、(2)生命の安全確保のために他機関の介入が必要な場合、(3)より集中的・専門的な介入が必要と判断される場合、(4)地理的・時間的制約がある場合などが挙げられる。連携先への情報提供においては守秘義務の範囲を確認し、要支援者の同意を可能な限り得た上で行うことが原則であるが、生命の危険が切迫している場合には例外的な対応が求められることも理解すること。
【到達目標】
◆ 支援資源の種類と役割を説明できること。
◆ リファーの判断基準を具体的に示せる
◆ 緊急連携時の守秘義務の扱いを説明できること。
④ 自殺予防の三次予防モデル
わが国の自殺者数は年間約2万人前後で推移しており、自殺予防は公衆衛生上の最重要課題の一つである。自殺予防の介入には3つのレベルがあり、(1)一次予防(全体に対する予防:普及啓発・メンタルヘルスリテラシーの向上・ゲートキーパー養成・危険因子の環境的軽減)、(2)二次予防(ハイリスク者への介入:早期発見・早期介入・危機対応・リスクアセスメントと安全確保計画の作成)、(3)三次予防(自殺企図後の支援:救命後の心理的ケア・再企図防止・遺された者への支援(ポストベンション))に分類される。
自殺の危険因子(精神疾患・自殺企図歴・社会的孤立・経済的困窮・慢性疼痛等)と保護因子(社会的サポート・問題解決スキル・医療へのアクセス等)を把握した上で、各レベルでの介入を設計する。ここでは、自殺予防における心理師の役割を三次予防の枠組みで整理し、実践場面で活用できる知識体系を構築する。
【到達目標】
◆ 自殺予防の三次予防モデルを説明できること。
◆ 各レベルでの心理師の役割を具体的に示せる
◆ 危険因子と保護因子を総合的に評価できること。
⑤ ゲートキーパーとしての役割
ゲートキーパー(gatekeeper)とは、自殺のサインに気づき、適切な支援につなげ、見守る役割を担う人を指し、専門職だけでなく、教師・管理職・家族・友人・地域住民など幅広い人が担いうる。しかし、専門的訓練を受けた公認心理師は、一般的なゲートキーパーを超えた専門的な早期発見・介入の能力を持つことが期待される。
ゲートキーパーの基本行動として「気づく(自殺のサインを認識する)・つなぐ(適切な支援への橋渡しをする)・見守る(支援後も継続的に関与する)」という3行動が国内外で普及している。自殺のサインとして、(1)言語的サイン(「死にたい」「消えたい」という直接的・間接的発言)、(2)行動的サイン(大切なものを手放す・突然静かになる・自傷行為)、(3)状況的サイン(重大な喪失体験・慢性的なストレスの蓄積)の3種類を的確に認識する能力を養う。また、「自殺について尋ねることで自殺を誘発するのではないか」という支援者の不安に対して、研究知見に基づいた正確な知識(適切に尋ねることは自殺リスクを高めない)を習得する必要がある。
【到達目標】
◆ ゲートキーパーの役割と3行動を説明できること。
◆ 自殺の3種類のサインを認識できること。
◆ 自殺について適切に尋ねるスキルを習得できること。
キーワード
① 危機理論 ② 危機介入 ③ リファー ④ 自殺予防 ⑤ ゲートキーパー
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはネットで検索してみるとよい。
9
児童虐待・ハイリスク事案への対応
科目の中での位置付け
児童虐待・ドメスティック・バイオレンス(DV)などハイリスク事案の基礎知識を習得し、通告義務の法的根拠と守秘義務との関係を整理する。多機関連携の実際、被害者へのトラウマインフォームドケア、そして二次受傷への対処まで包括的な視点で学ぶ。
コマ主題細目
① 児童虐待の類型と基礎知識 ② 通告義務と法的責任 ③ 多機関連携の実際 ④ トラウマインフォームドケアと被害者支援 ⑤ 二次的外傷性ストレスとセルフケア
細目レベル
① 児童虐待の類型と基礎知識
児童虐待とは、力関係における優位な立場を利用した他者への意図的・非意図的な傷つけであり、身体的虐待・心理的虐待・性的虐待・ネグレクトの4類型に大別される。児童虐待防止法(2000年)・高齢者虐待防止法(2005年)・DV防止法(2001年)はそれぞれ対象・定義・支援体制を規定しており、心理師はこれらの法律の基本構造を正確に理解することが求められる。
児童虐待のリスク要因は多層的であり、個人要因(加害者の被虐待歴・精神疾患・依存症等)・家族要因(経済的困窮・社会的孤立・夫婦葛藤等)・社会的要因(地域のサポート不足・文化的規範)が複合的に絡み合っている。被害者の心理的影響としては、PTSDの発症・解離症状・愛着障害・自己評価の低下・対人関係困難などが挙げられる。
児童虐待が疑われる初期兆候(不自然な傷・説明の矛盾・急激な行動変化・年齢不相応な性的表現等)を事例から的確に抽出する能力を培うことが、早期発見と介入の基盤となる。
【到達目標】
◆ 虐待の4類型を具体例とともに説明できること。
◆ 各法律の基本構造を説明できること。
◆ 虐待が疑われる初期兆候を事例から抽出できること。
② 通告義務と法的責任
児童虐待防止法第6条は、虐待を受けたと思われる児童を発見した者すべてに通告義務を課している。これは「確認された虐待」ではなく「虐待と思われる」段階での通告を義務付けており、公認心理師が「確証がなければ通告しない」という判断は法的義務に反しうる。守秘義務と通告義務が衝突する場面では、同法第6条第3項が「守秘義務はこれを妨げない」と明記しており、通告義務が守秘義務に優先することを法律が明確に定めている。
通告判断の実務的基準としては、(1)身体的証拠の存在、(2)言動からの虐待示唆、(3)保護者の態度の異常さ、(4)子どもの情緒・行動的変化の程度などを総合的に判断する。通告後は児童相談所・市区町村が対応主体となり、心理師はその後の支援チームの一員として関与する。
ここでは、通告を逡巡させる心理的障壁(「自分の思い違いかもしれない」「関係が壊れるかもしれない」等)を認識した上で、迅速かつ適切な通告判断のための思考プロセスを理解すること。
【到達目標】
◆ 通告義務の法的根拠を説明できること。
◆ 守秘義務と通告義務の優先関係を説明できること。
◆ 通告判断の実務的基準を具体的に示せる
③ 多機関連携の実際
児童虐待・DVなどのハイリスク事案への対応は、単一機関・単一専門職では完結できない。児童虐待対応においては、児童相談所(一時保護・措置権限の主体)・市区町村(要保護児童対策地域協議会の運営)・警察(捜査・保護)・医療機関(受診・診断書作成)・学校(日常観察・通告)・福祉機関(家族支援)という複数の機関が役割分担しながら協働する体制が構築されている。
多機関連携における情報共有は、要保護児童対策地域協議会(要対協)の枠組みの下で「守秘義務の例外」として法的に許容されているが、共有できる情報の範囲は「支援に必要な最小限」という原則に従う。公認心理師は、ケース会議において行動観察の結果・心理アセスメントの所見・支援計画への助言という形で専門的貢献を行う。
ここでは、連携困難事例(機関間の方針不一致・情報共有を拒む機関等)への対処として、第三者機関の活用・コーディネーターへの相談・文書による記録の重要性を理解すること。そして、要保護児童対策地域協議会の構造と機能を理解し、ケース会議における公認心理師の具体的な役割を学ぶ。
【到達目標】
◆ 各機関の役割を説明できること。
◆ ケース会議における心理師の貢献を説明できること。
◆ 連携困難事例への対処方法を提案できること。
④ トラウマインフォームドケアと被害者支援
トラウマインフォームドケア(TIC)は、支援の全場面においてトラウマの影響を認識し、再トラウマ化を防ぎながら安全・信頼・選択・協働・エンパワメントの5原則に基づいて支援を提供するアプローチである。TICの中心的メッセージは「あなたに何が問題があるのか(What is wrong with you?)」ではなく「あなたに何が起きたのか(What happened to you?)」という問いへの転換である。
被害者支援においては、(1)安全の確保(身体的・心理的・情報的安全)、(2)関係の構築と信頼の形成、(3)適切なタイミングでのトラウマ処理(EMDR・PE・CPT等の実証的アプローチ)、(4)統合と社会復帰支援という段階的モデルが有効とされる。
一方、加害者支援は「加害者を擁護すること」ではなく「加害行為の再発を防ぎ、家族・社会を保護するため」に必要であり、怒りのコントロールプログラム・認知行動療法的アプローチ等が実践されている。公認心理師が同一機関内で被害者と加害者の両方を担当することは利益相反を生じさせるため、原則として担当の分離が求められる。
【到達目標】
◆ TICの5原則を説明できること。
◆ トラウマ支援の段階的モデルを説明できること。
◆ 被害者と加害者支援の担当分離の理由を説明できること。
⑤ 二次的外傷性ストレスとセルフケア
二次的外傷性ストレス(Secondary Traumatic Stress: STS)とは、他者のトラウマ体験を傾聴・支援することを通じて、支援者自身がPTSDに類似した症状(侵入症状・回避・覚醒亢進等)を呈する現象を指す。バーンアウト(燃え尽き症候群)が職業的過剰負荷の蓄積による慢性的消耗であるのに対し、STSはトラウマ的内容への急性・亜急性の曝露によって生じる点で異なる。
児童虐待・DV・性犯罪の被害者支援に従事する公認心理師は特にSTSのリスクが高く、「自分は専門職だから大丈夫」という思い込みが早期のサインの見過ごしにつながることに注意が必要である。ここでは、共感疲労(compassion fatigue)との関連概念も整理し、支援者が感じる疲弊・無力感・感情的距離化などのサインを適切に認識する方法を学ぶ。
セルフケアの方法として、(1)定期的なスーパービジョンへの参加、(2)同僚とのピアサポート、(3)身体的健康管理(睡眠・運動・食事)、(4)職場外の豊かな生活領域の維持、(5)専門家としての自己の限界の認識と受け入れが挙げられる。セルフモニタリングツールの使用方法と具体的なセルフケア計画を立案する演習を通して、STSを自分ごととして受け止め、心理支援を要する人に関わる公認心理師が長期に渡り仕事をする上で極めて重要なものであることを理解すること。
【到達目標】
◆ STSとバーンアウトの違いを説明できること。
◆ STSのリスクサインを認識できること。
◆ 具体的なセルフケア計画を立案できること。
キーワード
① 児童虐待の類型 ② 通告義務 ③ 要保護児童対策地域協議会 ④ トラウマインフォームドケア ⑤ 二次的外傷性ストレス
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはネットで検索してみるとよい。
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多職種連携の基礎
科目の中での位置付け
医療・福祉・教育・司法・産業の各分野に共通する多職種連携(IPW)の基本原理を理解し、心理師の固有の専門的貢献と各職種の役割を明確化する。チーム医療・チーム学校の実際と連携における課題克服の方法を学ぶ。
吉田沙蘭 2020 保健医療分野で働く(下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修)下山晴彦・慶野遙香(編著) 公認心理師スタンダードテキストシリーズ1 公認心理師の職責 ミネルヴァ書房)pp.108-119.
石川悦子 2020 教育分野で働く(下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修)下山晴彦・慶野遙香(編著) 公認心理師スタンダードテキストシリーズ1 公認心理師の職責 ミネルヴァ書房)pp.136-147.
コマ主題細目
① チーム医療の構造と心理師の役割 ② チーム学校と教育現場での協働 ③ 各職種の専門性と連携の要点 ④ 連携の課題と組織文化 ⑤ 公認心理師の役割の明確化とリファー判断
細目レベル
① チーム医療の構造と心理師の役割
チーム医療(Interprofessional Team Care)とは、多職種の専門家が共通の目標(患者・利用者の最善の利益)に向けて協働し、各専門性を有機的に組み合わせながら包括的なケアを提供するアプローチである。医療チームの構成員としては、医師・歯科医師・看護師・薬剤師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・管理栄養士・精神保健福祉士(PSW)・医療ソーシャルワーカー(MSW)・公認心理師が挙げられ、各職種の専門性は重複しながらも固有の役割を持つ。
公認心理師がチームに貢献できる固有の専門性として、(1)行動・心理の科学的観察と解釈、(2)心理検査・アセスメントの実施と解釈、(3)エビデンスに基づく心理療法的アプローチの提供、(4)要支援者の内的世界への理解の深化という4点が挙げられる。カンファレンスでの報告においては、行動観察・心理検査結果の客観的報告・心理的アセスメントに基づく解釈と提言・支援計画への心理的視点からの意見という構成で貢献する。ここでは、チーム内での心理師の立ち位置を演習を通じて体験的に理解する。
【到達目標】
◆ チーム医療の概念を説明できること。
◆ 心理師の固有の専門的貢献を言語化できること。
◆ カンファレンスでの発言を適切に組み立てられる
② チーム学校と教育現場での協働
「チーム学校」とは、学校が多様な専門スタッフと協働し、一人ひとりの子どもの多様なニーズに対応できる体制を構築するという2015年の中央教育審議会答申に基づく概念である。チームの構成員として、校長・教頭・担任・学年主任・養護教諭・特別支援教育コーディネーター・スクールカウンセラー(SC)・スクールソーシャルワーカー(SSW)等が挙げられ、それぞれの専門性と担当領域を明確にした上で、生徒のニーズに応じて機動的に協働する体制が求められる。
SCとSSWの役割の違いは、SCが「子どもの心理的状態の評価とカウンセリング的支援」を専門とするのに対し、SSWが「子どもを取り巻く環境(家庭・地域・制度)への働きかけ」を専門とするという大まかな区分がある。教育行政(教育委員会・校長)との関係は、SCの独立性(守秘義務・心理的中立性)を維持しながら学校組織の一員として機能するという二重の立場から生じる固有の緊張を持つ。この緊張を健全に管理するための具体的方策を検討する。
【到達目標】
◆ チーム学校の概念と構成を説明できること。
◆ SCとSSWの役割の違いを説明できること。
◆ 教育行政との関係における独立性の維持方法を説明できること。
③ 各職種の専門性と連携の要点
効果的な多職種連携のためには、自職種の専門性を明確に説明できると同時に、他職種の専門性と役割を正確に理解することが不可欠である。主要な連携職種として、医師(診断・処方・医療行為の主体)、看護師(身体ケア・日常的な精神的サポート・患者教育)、精神保健福祉士(PSW)(生活・社会復帰・制度利用の支援)、社会福祉士(SW)(生活環境・福祉制度の調整)、作業療法士(OT)(日常生活動作・職業能力の回復支援)との役割の重複と相違を整理する。
それぞれの職種が使用する専門用語・思考の枠組み・優先する価値は異なることが多く、コミュニケーションの齟齬が連携を困難にする要因となりうる。ここでは、公認心理師として他職種の視点を理解し、「心理の専門用語」から「共通言語」への翻訳能力を高める演習を行う。また、各職種が持つ守秘義務の範囲と連携における情報共有の許容範囲の違いについても整理し、連携時の情報管理の実務的判断力を培う意識を持ってほしい。
【到達目標】
◆ 主要な連携職種の専門性と役割を説明できること。
◆ 心理師の専門性を他職種に分かりやすく説明できること。
◆ 連携時の情報管理の実務的判断ができること。
④ 連携の課題と組織文化
多職種連携は理念的には望ましいが、実際の実践においては様々な障壁が存在する。組織文化的障壁として、(1)縦割りの組織構造による情報共有の制約、(2)専門職間の権力関係(医師の決定権の強さ等)による意見表明の困難さ、(3)各職種の時間・業務量の違いによる連携への参加困難、(4)各機関の守秘義務ポリシーの差異による情報共有の躊躇が挙げられる。
専門職間の葛藤として、役割の重複による縄張り意識・価値観の相違(医学モデルvs社会モデルvs心理モデル)・責任の所在の曖昧さが問題となりうる。これらの障壁を克服するための個人的・組織的方策として、(1)定期的な合同カンファレンスの開催、(2)他職種への研修・交流機会の創出、(3)連携のルール(情報共有の手順・責任の明確化等)の文書化、(4)連携困難事例の振り返り(デブリーフィング)を学ぶ。ここでは、連携困難事例のシミュレーション演習を通じて、組織文化の壁を越えるためのコミュニケーション能力を培う。
【到達目標】
◆ 連携の主要な障壁を説明できること。
◆ 専門職間の葛藤への対処方法を提案できること。
◆ 組織文化を変えるための行動を提案できること。
⑤ 公認心理師の役割の明確化とリファー判断
多職種連携において心理師が有効に機能するためには、自らの役割・権限・限界を自分自身と他職種に対して明確にする能力が不可欠である。公認心理師の役割の3機能として、(1)評価機能(心理検査・アセスメントによる心理的状態の客観的評価)、(2)介入機能(心理療法・カウンセリング・心理教育等の直接支援)、(3)コンサルテーション・調整機能(他職種への助言・連携の促進・ケースの調整)を明確化し、各機能の具体的な実践内容をチーム内で共有することが重要である。
専門性の限界認識とは、自分が担当できる対象・問題・手法の範囲を正確に把握し、その範囲を超えた場合に適切にリファー(他の専門家・機関への紹介)を判断する能力を指す。リファーの判断基準として、(1)要支援者のニーズが自身の専門的能力の範囲を超える、(2)利益相反または多重関係が発生している、(3)支援関係が行き詰まっている、(4)地理的・物理的制約がある場合などが挙げられる。リファーは「負け」ではなく「要支援者の最善の利益を優先した専門的判断」であるという認識を持つこと。
【到達目標】
◆ 心理師の役割の3機能を説明できること。
◆ 専門性の限界を認識し説明できること。
◆ リファーの判断基準を具体的に示せる
キーワード
① チーム医療 ② チーム学校 ③ 多職種連携 ④ 組織文化 ⑤ チームにおける公認心理師の役割
コマの展開方法
社会人講師
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該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはネットで検索してみるとよい。
11
連携の実践とケース会議
科目の中での位置付け
多職種連携の実践技術を演習を通じて習得する。ケース会議の運営・コンサルテーションの技法・コンフリクトの調整・事例検討の方法を学び、チームの中で心理師としての専門性を最大限発揮するための実践力を養う。
コマ主題細目
① ケース会議の設計と運営 ② 多職種間の情報共有の実際 ③ コンサルテーションの技法 ④ コンフリクト調整と合意形成 ⑤ 事例検討の方法と実践
細目レベル
① ケース会議の設計と運営
ケース会議(カンファレンス)とは、特定の要支援者の支援方針を多職種で共同検討する場であり、適切に運営されることで支援の質と効率性を大幅に向上させることができる。ケース会議の種類として、(1)初回会議(アセスメント結果の共有・支援方針の合意)、(2)定期会議(進捗確認・計画修正)、(3)緊急会議(危機的状況への対応)、(4)終結会議(支援終了の確認・引継ぎ)があり、それぞれの目的に応じた設計が必要である。
会議の準備として、(1)参加者の確認と役割分担の明確化、(2)事前情報の共有と会議の目標設定、(3)時間配分と進行計画の策定が重要である。会議の進行においては、全員が意見を述べやすい心理的安全性の確保、一部の参加者(特に権力的立場にある医師等)による議論の独占を防ぐファシリテーション技術、合意事項の明確化と記録、次回会議の設定という要素が含まれる。ここでは、模擬ケース会議を通じて、心理師がファシリテーターまたはメンバーとして機能する練習を行う。
【到達目標】
◆ ケース会議の種類と目的を説明できること。
◆ 会議の進行を適切にファシリテートできること。
◆ 合意形成のプロセスを設計できること。
② 多職種間の情報共有の実際
多職種連携における情報共有は、「支援に必要な最小限の情報を適切な関係者の間でのみ共有する」という最小限共有の原則に基づく必要がある。ケース会議における情報共有の実際として、(1)誰の情報をどの範囲の関係者と共有することに本人が同意しているかを事前に確認すること、(2)心理師固有の情報(面接内容・心理検査の詳細等)の共有範囲についての判断基準を持つこと、(3)共有される情報の正確性・解釈の明確さを確保すること、(4)会議録の作成と保管(誰が・何を・決定したかの記録)が重要である。
文書による情報共有(紹介状・経過報告書・心理所見書等)では、(1)目的と宛先の明確化、(2)要支援者の強みと課題のバランスのとれた記述、(3)専門用語の平易化、(4)守秘義務の範囲内での情報に限定することが求められる。ここでは、心理所見書の作成演習を行い、多職種が読む文書に求められる明確さ・簡潔さ・専門的根拠を体現する書き方を習得する。
【到達目標】
◆ 最小限共有の原則を実践場面に適用できること。
◆ 心理所見書を適切に作成できること。
◆ 情報共有の倫理的判断基準を説明できること。
③ コンサルテーションの技法
コンサルテーションとは、コンサルタント(心理師等の専門家)がコンサルティ(教師・医師・他の専門職等)の抱える困難事例や問題状況に対して、専門的知識・視点・技術を提供しながら共同で解決を図るプロセスである。コンサルテーションはカウンセリング(直接支援)とは区別され、コンサルタントがクライエントに直接働きかけるのではなく、コンサルティの能力向上を通じて間接的にクライエントへの支援の質を高めることを目的とする。
効果的なコンサルテーションの要件として、(1)コンサルタントとコンサルティの協働的・平等的関係(上から教える関係ではなく共に考える関係)、(2)問題の明確な定義(コンサルティの主訴の傾聴と問題の共同整理)、(3)具体的で実行可能な提案(コンサルティの文脈と能力を踏まえた現実的な助言)、(4)フォローアップ(提案後の経過確認と修正)が挙げられる。ここでは、模擬コンサルテーション演習を通じて、「専門家が答えを教える」役割から「共に問題を解決する」役割への転換を理解してほしい。
【到達目標】
◆ コンサルテーションとカウンセリングの違いを説明できること。
◆ 効果的なコンサルテーションの要件を説明できること。
◆ 模擬コンサルテーションを実践できること。
④ コンフリクト調整と合意形成
多職種連携においては、専門的視点の相違・優先順位の違い・組織の方針と個人の判断の乖離などから、チーム内でコンフリクト(意見の不一致・対立)が生じることは避けられない。コンフリクトそのものは問題ではなく、その扱い方が問題である。健全なコンフリクト(建設的な意見の対立)は、支援の質を高める創造的緊張として機能することがある。一方、回避・抑圧・個人攻撃に発展したコンフリクトは、チームの機能を著しく損なう。
コンフリクト解決のアプローチとして、(1)問題の明確化(コンフリクトの本質は何か:事実の不一致・価値観の相違・役割の不明確さ等)、(2)各立場の根拠の相互理解(傾聴と立場の尊重)、(3)共通の上位目標(要支援者の最善の利益)への立ち戻り、(4)創造的な代替案の探索、(5)合意とフォローアップという段階的プロセスが有効である。ここでは、コンフリクトシミュレーションを通じて、公認心理師として対立場面で建設的に機能する能力の習得を目指す。特に、権力的立場の職種(医師・上司等)との意見不一致においても、要支援者の最善の利益を主張できる専門職としての自律性の習得を目指す。
【到達目標】
◆ コンフリクトの種類と性質を分析できること。
◆ コンフリクト解決の段階的プロセスを実践できること。
◆ 権力的立場との意見不一致に建設的に対応できること。
⑤ 事例検討の方法と実践
事例検討(case consultation)は、実際の支援事例を素材として、支援者の実践を振り返り、理論・エビデンスとの統合を図り、支援の質を高めるための学習活動である。事例検討の形式として、(1)プロセスレコード(面接の逐語的な再現と振り返り)、(2)事例定式化(ケースフォーミュレーション:問題の理解と維持要因の仮説化)、(3)支援計画の評価と修正、(4)倫理的問題への対処という複数のアプローチがある。
スーパービジョンとの違いとして、スーパービジョンが個人の専門的成長を目的とした個別的関係であるのに対し、事例検討は集団学習の場としての性格が強い。事例提示者の負担に対する配慮として、心理的安全性の確保(批判ではなく学習のための場であることの明示)・プライバシーの保護(事例の匿名化・記録の管理)・称賛と改善点のバランスのとれたフィードバックが重要である。ここでは、グループによる事例検討演習を実施し、提示者・参加者それぞれの役割を体験し、事例検討が専門的成長の有効な手段であることを実感してほしい。
【到達目標】
◆ 事例検討の方法を複数説明できること。
◆ 事例提示と参加者の役割を適切に担える
◆ 事例検討を通じた実践改善のプロセスを説明できること。
キーワード
① ケース会議 ② 多職種間の情報共有 ③ コンサルテーション ④ 多職種間のコンフリクト ⑤ 事例検討
コマの展開方法
社会人講師
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教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはネットで検索してみるとよい。
12
専門職コンピテンシーと自己理解
科目の中での位置付け
公認心理師として求められる専門職コンピテンシーの概念を習得し、現時点での自己の強みと成長課題を明確化する。倫理的態度・文化的感受性・専門性の限界認識という観点から、高度な専門職としての自己形成の方向性を定める。
コマ主題細目
① ンピテンシーモデルの理解 ② 自己理解とメタ認知 ③ 倫理的態度の体現 ④ 専門性の限界の認識と対応 ⑤ リファーの判断と実践
細目レベル
① コンピテンシーモデルの理解
コンピテンシー(competency)とは、特定の職務を効果的に遂行するために必要な知識・技術・態度・価値観の統合体を指す。単なる知識量や特定の技術の習熟度ではなく、実践場面での統合的な発揮能力を指す概念であり、「何を知っているか」だけでなく「何ができるか」「どのような姿勢で行動するか」を包含する。
公認心理師のコンピテンシーモデルとして、Rodolfa et al.(2005)の「Cube Model」が広く参照されており、基礎的コンピテンシー(科学・倫理・専門的発達・反省的実践等)と機能的コンピテンシー(アセスメント・介入・コンサルテーション・研究・スーパービジョン・教育等)という2次元に加えて、発達段階(訓練の段階)という軸を持つ3次元モデルとして構成されている。
ここでは、コンピテンシーモデルを用いて自己評価シートを記入する演習を行い、現時点での自己の強みと弱みを体系的に把握する。「自分が何を知らないか(未知の未知)」を認識することが特に重要であり、初学者ほど自己評価が過大になりやすいという研究知見(ダニング=クルーガー効果)に留意する。
【到達目標】
◆ コンピテンシーモデルの概念を説明できること。
◆ 自己評価を体系的に実施できること。
◆ 強みと成長課題を具体的に特定できること。
② 自己理解とメタ認知
専門職としての自己理解(self-awareness)とは、自分の価値観・信念・感情・偏見・強み・限界が、専門的実践に与える影響を継続的に監視・評価する能力を指す。公認心理師の自己理解は、(1)理論的自己理解(自分がどのような理論的立場・価値観を持っているか)、(2)感情的自己理解(特定のクライエントや状況に対して生じる感情的反応と逆転移)、(3)文化的自己理解(自分の文化的背景・価値観がクライエントへの見方に与える影響)、(4)バイアスの自己理解(確証バイアス・帰属バイアス・文化的ステレオタイプ等への自覚)という4次元から構成される。
メタ認知(metacognition)とは「自己の思考プロセスを客観的に観察・監視する能力」であり、これは単純な内省とは異なり、自己の思考の傾向・パターン・盲点を体系的に把握することを指す。定期的なリフレクション(振り返りジャーナルの記録・スーパービジョン・個人療法等)によって自己理解とメタ認知能力を継続的に高めることが、専門的成長の根幹となる。ここでは、構造化された自己内省演習を実施し、自己理解の深化を実感してほしい。
【到達目標】
◆ 自己理解の4次元を説明できること。
◆ メタ認知の概念を説明できること。
◆ 構造化された自己内省を実践できること。
③ 倫理的態度の体現
倫理的態度とは、倫理的知識を「持っている」状態を超えて、その知識が日常の実践に自然に現れるような内面化された価値観と行動傾向を指す。倫理的態度を構成する主要な要素として、(1)誠実性(integrity):自分の行動が価値観と一致しているかの継続的な確認と、矛盾がある場合の率直な認識・修正、(2)境界設定の能力:専門的関係の枠組みを維持するための判断と行動、(3)文化的感受性(cultural sensitivity):自己の文化的前提を認識した上で、異なる文化的背景への理解と尊重を実践すること、(4)謙虚さ(humility):自己の専門的能力の限界を認識し、他者から学ぶ姿勢を保つことが挙げられる。
これらの倫理的態度は、知識として学ぶことはできても、実際の実践においてはさまざまな圧力(時間的制約・組織的圧力・個人的な感情的反応)の下で維持することが困難になりやすい。ここでは、倫理的態度が揺らぐ典型的な場面(倫理的問題に初めて直面したとき・組織と個人の倫理的判断が衝突したとき等)を取り上げ、その状況下での態度の維持方法を検討する。
【到達目標】
◆ 倫理的態度の主要要素を説明できること。
◆ 態度が揺らぐ場面を特定し対処方法を提案できること。
◆ 文化的感受性を実践場面に適用できること。
④ 専門性の限界の認識と対応
専門職としての自己の限界を正確に認識することは、要支援者への安全で倫理的な支援を提供するための根本的条件である。専門的限界には、(1)知識・技術上の限界(未習得または訓練不足の技法・専門分野外の問題)、(2)個人的限界(特定のテーマ・クライエント・状況において冷静で客観的な支援が困難な心理的状態)、(3)時間・環境的限界(要支援者のニーズと現在の支援環境のミスマッチ)の3種類がある。
限界の認識が困難になる典型的な状況として、(1)支援者が「できるはずだ」という自己期待から無理な継続をする場合、(2)クライエントの強い依存・感謝がリファーを困難にする場合、(3)組織や機関の事情が適切なリファーを妨げる場合が挙げられる。「専門職として限界を認識し、それを適切に伝えること」は弱さではなく、要支援者の最善の利益を守るための成熟した専門的行動であることを深く理解すること。
ここでは、自己の現時点での専門的限界を客観的に評価し、限界を超えた場合のリファー先と連携方法を具体的に計画することを学ぶ。
【到達目標】
◆ 専門的限界の3種類を説明できること。
◆ 限界の認識が困難になる状況を分析できること。
◆ 限界への対応(リファー等)を具体的に計画できること。
⑤ リファーの判断と実践
リファー(referral)とは、要支援者の最善の利益のために、より適切な専門家・機関へ支援を引き継ぐ専門的な意思決定と行動を指す。リファーは「失敗」や「限界の露呈」ではなく、「要支援者のニーズに最も適した支援を保証するための積極的な専門的行動」として理解される。
適切なリファーの判断基準として、(1)要支援者のニーズが自身の専門的能力の範囲を明確に超えている場合、(2)利益相反または多重関係が発生しており中立的支援が困難な場合、(3)支援関係が行き詰まっており専門的転換が必要な場合、(4)地理的・時間的・制度的制約がある場合などが挙げられる。
リファーを行う際の手順として、(1)リファーの必要性の認識と判断根拠の整理、(2)要支援者へのリファーの理由と意義の丁寧な説明、(3)適切なリファー先の選定(問題の性質・地理的アクセス・経済的負担等を考慮)、(4)引継ぎ情報の適切な提供(守秘義務の範囲内で)、(5)リファー後のフォローアップの確認という段階を踏む。ここでは、模擬リファーのロールプレイを通じて、リファーを行う際のコミュニケーションスキルを体験的に学ぶ。
【到達目標】
◆ リファーの判断基準を具体的に説明できること。
◆ リファーの手順を適切に踏めるようになれる
◆ リファーを要支援者に丁寧に説明できること。
キーワード
① コンピテンシーモデル ② 専門職としての自己理解 ③ 倫理的態度 ④ 専門性の限界 ⑤ リファーの判断
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。
13
生涯学習とスーパービジョン
科目の中での位置付け
専門職としての成長は生涯にわたる継続的プロセスである。スーパービジョン・事例検討・自己研鑽・キャリア形成の各側面から、公認心理師として自律的に成長し続けるための実践的な方法と姿勢を習得する。
コマ主題細目
① 生涯学習の意義と方法 ② スーパービジョンの活用 ③ 事例検討と実践知の統合 ④ 自己研鑽の計画と実践 ⑤ キャリア形成と専門領域の選択
細目レベル
① 生涯学習の意義と方法
公認心理師法第43条に規定された資質向上の責務は、形式的な研修参加義務ではなく、生涯にわたる学習・成長へのコミットメントとして理解される。心理学・精神医学・神経科学の知見は急速に更新されており、資格取得時の知識だけで生涯の実践を行うことは、要支援者への不適切な支援につながるリスクをはらんでいる。
生涯学習の方法として、(1)学術的学習(学会参加・専門誌購読・文献レビュー・自主研究)、(2)実践的学習(スーパービジョン・事例検討・ロールプレイ・模擬実習)、(3)省察的学習(振り返りジャーナル・個人療法・スーパービジョンでの自己探求)、(4)共同学習(学習コミュニティへの参加・ピア学習・勉強会)の4種類を組み合わせることが効果的とされる。
ここでは、自らの学習スタイル(視覚型・聴覚型・体験型等)と現時点での知識・技術の強みと弱みを分析した上で、大学院修士課程修了までの今後3年半の段階的学習計画を立案する演習を行う。継続的な学習が義務ではなく、専門職としての生きがいの根幹であるという認識を持つことを意識してほしい。
【到達目標】
◆ 生涯学習の4種類の方法を説明できること。
◆ 自らの学習スタイルを分析できること。
◆ これからの3年半の段階的学習計画を立案できること。
② スーパービジョンの活用
スーパービジョン(SV)は、専門的成長・倫理的実践・要支援者保護という三つの目的を持つ専門的監督・指導プロセスであり、専門家への道のりにおいて最も重要な学習形態の一つとされる。SVの機能は、(1)教育的機能(知識・技術の指導・フィードバックの提供)、(2)支持的機能(スーパーバイジーの感情的サポート・専門的アイデンティティの支援)、(3)管理的機能(要支援者への倫理的・適切なサービス提供の保証)の3つに整理できる。
SVの形態として、個人SV・グループSV・ピアSV(同僚間)・セルフSV(反省的実践)があり、それぞれの利点と限界を理解した上で組み合わせて活用することが理想的である。事例提示の方法としては、面接のプロセスノート・逐語録・録音録画の活用などがあり、事実の報告と公認心理師の感情・解釈を分けて提示することが有効である。防衛的反応(批判への過敏な反応・感情的回避等)はSV関係を阻害するが、この反応自体が重要な臨床的情報として活用できる。こここでは、模擬SVを体験し、スーパーバイジーとしての姿勢を実践的に学ぶ。
【到達目標】
◆ SVの3機能を説明できること。
◆ 事例提示を適切に実施できること。
◆ スーパーバイジーとしての姿勢を体験的に習得できること。
③ 事例検討と実践知の統合
事例検討は、個別の実践事例を素材として理論・エビデンスと実践を統合し、支援の質を継続的に高めるための学習プロセスである。ケースフォーミュレーション(事例の概念化)とは、「なぜこの人はこの時点でこの問題を呈しているのか」という問いへの仮説的回答であり、主訴・問題の歴史・生育歴・現在の機能・環境的要因等を統合して構成される。ケースフォーミュレーションは固定的な「診断」ではなく、支援の進展に伴い継続的に更新される生きた仮説であることを理解する。
事例検討グループの運営においては、(1)心理的安全性の確保(批判ではなく学習のための場であることの明示)、(2)事例提示者の脆弱性への敬意(事例の共有は高度な信頼を要する行為である)、(3)理論と実践の往還(事例から理論を照らし直し、理論から事例の新たな見方を発見する)、(4)倫理的問題への開放的な検討(倫理的問題を持ち込むことへの心理的障壁の除去)が重要な要素として挙げられる。
【到達目標】
◆ ケースフォーミュレーションを実際に作成できること。
◆ 事例検討グループの参加者として適切に機能できること。
◆ 理論と実践を往還させる思考ができること。
④ 自己研鑽の計画と実践
自己研鑽とは、専門職として自律的に自己の能力・知識・態度を向上させるための意図的・計画的な活動全般を指す。自己研鑽の方法は大きく3カテゴリーに分類できる。(1)知識の更新と深化:専門誌の定期的購読・学術書の精読・学会への参加と発表・研修受講・e-learningの活用など。(2)技術の精錬:ロールプレイ・録画を用いた自己評価・新しい技法の訓練(ワークショップ・認定資格の取得等)・模擬実践など。(3)反省的実践の習慣化:振り返りジャーナルの定期記録・スーパービジョンへの定期参加・同僚へのフィードバックの要請・個人分析への参加など。
自己研鑽の計画を立てる際には、(1)現時点の能力の客観的アセスメント(コンピテンシー自己評価・スーパーバイザーからのフィードバックの統合)、(2)優先すべき成長課題の特定、(3)具体的・測定可能な目標の設定、(4)学習リソース(時間・費用・支援者)の確保、(5)進捗の定期的評価と計画の修正という5段階のプロセスを踏むことが有効である。ここでは、個人の自己研鑽計画書を作成する演習を行う。
【到達目標】
◆ 自己研鑽の3カテゴリーの方法を説明できること。
◆ 自己研鑽計画の5段階プロセスを実践できること。
◆ 具体的で実行可能な自己研鑽計画書を作成できること。
⑤ キャリア形成と専門領域の選択
公認心理師としてのキャリア形成は、単一のキャリアパスが存在するのではなく、個人の関心・強み・価値観・生活状況に応じて多様な方向性が開かれている。主要な活動領域として医療保健・福祉・教育・司法・産業の5分野があり、さらに各分野の中で対象(年齢・疾患・問題の種類等)・手法(心理療法・アセスメント・コンサルテーション・研究・教育等)・役割(実践家・研究者・教育者・行政担当者等)によって細分化された専門性が存在する。
専門領域の選択においては、(1)自己の価値観・関心・強みとのマッチング、(2)社会的ニーズとのマッチング、(3)経済的現実(雇用状況・収入)の考慮、(4)継続的な成長が見込めるかという視点が重要である。キャリアの各発達段階(学生期・初任期・中堅期・熟達期・後継者育成期)に応じた課題と成長の方向性を理解し、現在の段階での適切な目標設定を行うことが重要である。ここでは、10年後の自分のキャリアビジョンを描き、そこに至るまでの節目ごとの目標と学習計画を作成する演習を行い、長期的な専門職発達の見通しを持つ力を持てるように努めること。
【到達目標】
◆ 5分野のキャリアパスの特徴を説明できること。
◆ 自己の強みと関心に基づくキャリア方向性を言語化できること。
◆ 10年間のキャリア計画を立案できること。
キーワード
① 公認心理師の生涯学習 ② スーパービジョン ③ 事例検討 ④ 自己研鑽の計画 ⑤ 公認心理師としてのキャリア形成
コマの展開方法
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該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。
14
専門職としての責任
科目の中での位置付け
公認心理師が社会に対して負う責任の多層的な構造を理解する。説明責任・社会的信頼の形成・専門職像の確立を通じて、法と倫理の統合的実践者としての自己を形成し、日常場面での具体的な行動基準を確立する。
コマ主題細目
① アカウンタビリティ(説明責任) ② 社会的信頼の形成と維持 ③ 専門職不祥事の影響と予防 ④ 日常実践における倫理的行動 ⑤ 望ましい専門職像の形成
細目レベル
① アカウンタビリティ(説明責任)
アカウンタビリティ(説明責任)とは、自らの専門的判断・行動・結果について、関係するすべての当事者(要支援者・家族・機関・社会)に対して透明性をもって説明する義務を指す。専門職のアカウンタビリティは、(1)要支援者への直接的な説明責任(なぜこの介入を選択したのか・どのような効果が期待されるのか・限界は何か)、(2)機関・組織への説明責任(業務の記録・実績の報告・倫理的判断の根拠の説明)、(3)専門職共同体への説明責任(倫理的実践の維持・倫理違反の告発・後進への教育)、(4)社会への説明責任(公的資格として社会に認められた専門性の誠実な行使)という4つの次元を持つ。
記録(心理面接記録・アセスメント報告書・連携記録等)は、アカウンタビリティの物理的根拠として機能し、後の法的・倫理的問題発生時に支援者を守る役割も果たす。適切な記録の維持が、単なる事務作業ではなく専門職としての責任履行の重要な側面であることを理解し、「説明できる実践」を日常の目標とすること。
【到達目標】
◆ アカウンタビリティの4次元を説明できること。
◆ 記録のアカウンタビリティ機能を説明できること。
◆ 「説明できる実践」を日常的に実践できること。
② 社会的信頼の形成と維持
公認心理師という資格への社会的信頼は、個々の実践者の誠実な行動の積み重ねによって醸成される。社会的信頼の形成要因として、心理学研究では(1)能力への信頼(competence-based trust):「この専門家は必要な知識・技術を持っている」という評価、(2)誠実性への信頼(integrity-based trust):「この専門家は誠実であり、約束を守る」という評価、(3)善意への信頼(benevolence-based trust):「この専門家は自分の利益より依頼者の利益を優先する」という評価という3因子モデルがある。
ひとたび不祥事が発生すると、その影響は当事者個人に留まらず、公認心理師という資格全体の信頼性を損なう波及効果をもたらす。信頼の「毀損と回復」のプロセスについて、毀損の速さと回復の困難さ(非対称性)を理解し、予防的アプローチの重要性を確認する。社会的信頼の維持が、個人的な品行の問題ではなく、専門職共同体の公共的責任であるという視点を持てるようにしてほしい。
【到達目標】
◆ 社会的信頼の3因子を説明できること。
◆ 不祥事の波及効果を分析できること。
◆ 信頼維持のための予防的行動を計画できること。
③ 専門職不祥事の影響と予防
専門職不祥事(professional misconduct)とは、専門職として求められる倫理的・法的行動基準から逸脱した行為を指し、その影響は当事者個人・要支援者・機関・専門職共同体・社会全体に広く及ぶ。公認心理師分野で実際に報告されている不祥事のカテゴリーとして、(1)二重関係・性的関係(要支援者との恋愛・性的関係が最も重大な倫理違反とされる)、(2)守秘義務違反(不注意な情報漏洩・SNSへの投稿・研究発表での不適切な事例提示)、(3)虚偽記録・誇大広告・資格詐称、(4)金銭的搾取・不当な料金設定、(5)不適切な心理療法の使用(エビデンスのない危険な技法の使用等)が挙げられる。
不祥事が生じる背景要因として、個人要因(疲弊・自己中心的思考・倫理的感受性の低下等)だけでなく、組織要因(孤立した実践・スーパービジョンのない環境・相談しにくい職場文化等)が重要な役割を果たしていることを理解し、個人と組織の両レベルでの予防策を検討する。自分が不祥事の当事者になるリスクを「他人事」ではなく「自分ごと」として捉える姿勢を持つこと。
【到達目標】
◆ 専門職不祥事の主要カテゴリーを説明できること。
◆ 不祥事の背景要因(個人・組織)を分析できること。
◆ 個人・組織レベルの予防策を提案できること。
④ 日常実践における倫理的行動
倫理的実践は、特別な状況での大きな決断だけでなく、日常の実践の細部において積み重ねられるものである。日常実践における倫理的行動の具体的基準として、(1)時間の約束の遵守(面接時間の管理・記録提出の期限の遵守)、(2)準備の誠実さ(各面接への十分な準備・継続的な知識更新)、(3)コミュニケーションの誠実さ(要支援者・同僚・上司への正直な報告・不確実性の率直な伝達)、(4)記録の正確さ(事実と解釈の区別・timely な記録作成)、(5)自己の状態の管理(疲弊・感情的不安定の認識と適切な対処・帰属先の確保)が挙げられる。
倫理的実践が困難になりやすい場面として、過度な業務量・時間的プレッシャー・複雑な事例への孤立した対応・個人的な生活上のストレス・組織からの不適切な圧力などが挙げられる。こうした困難な状況下においても倫理的行動を維持するための内的資源(価値観の明確さ・専門職アイデンティティの強さ)と外的資源(スーパービジョン・同僚サポート・倫理相談窓口)の活用方法を学ぶ。
【到達目標】
◆ 日常実践における倫理的行動基準を具体的に説明できること。
◆ 倫理的実践が困難になる場面を特定できること。
◆ 困難な状況下での倫理維持のリソースを活用できること。
⑤ 望ましい専門職像の形成
「望ましい公認心理師像」とは何かという問いは、単なる倫理規程の遵守レベルを超えて、専門職としての深い自己形成を促す根本的な問いである。望ましい専門職像を構成する要素として、(1)技術的卓越性(常に最善の支援を提供するための継続的な学習と実践研鑽)、(2)倫理的誠実さ(価値観と行動の一致・倫理的困難に直面した際の誠実な対処)、(3)対人的真摯さ(要支援者・同僚・社会との関係における誠実さと思いやり)、(4)批判的省察(自己の実践を継続的に問い直す勇気と知的誠実さ)、(5)社会的使命感(個別のクライエント支援を超えた社会へのコミットメント)が挙げられる。
「望ましい専門職像」は固定的な到達目標ではなく、生涯を通じて更新され続ける理想のベクトルとして理解することが重要である。ここでは、本科目全体の学習を振り返りながら「自分が目指す公認心理師像」を文章化し、その実現に向けた具体的な行動計画(今後1年間・3年間・10年間)を作成する演習を行う。専門職としての出発点に立つ今、自らへの約束として宣言する機会とする。
【到達目標】
◆ 望ましい専門職像の構成要素を自己の言葉で説明できること。
◆ 自らの専門職像を言語化できること。
◆ 実現に向けた具体的行動計画を作成できること。
キーワード
① アカウンタビリティ ② 社会的信頼の形成 ③ 専門職不祥事 ④ 倫理的行動 ⑤ 望ましい公認心理師像
コマの展開方法
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「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。
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本科目のまとめ
科目の中での位置付け
これまでの14回の学習成果を総合的に活用し、複合的な事例への対応を通じて統合的な判断力を養う。法・倫理・実践の三層を往還しながら、専門職としての自己を振り返り、今後の成長への具体的な計画を立案する。
コマ主題細目
① 複合事例の分析と課題同定 ② 法・倫理・実践の統合的判断 ③ 多職種連携計画の立案 ④ リスク対応と安全確保の演習 ⑤ 総合的振り返りと学習統合
細目レベル
① 複合事例の分析と課題同定
本回では、複数の倫理的・法的・実践的問題が絡み合う複合事例を素材として、情報の統合と課題の同定という最高次の専門的能力を演習する。複合事例とは、例えば「自殺リスクを持つ要支援者が同時に虐待の被疑者でもある事例」「要支援者の自律尊重と安全確保が深刻に対立する事例」「多職種間で支援方針が根本的に異なる事例」のように、単一の原則や手続きでは対応できない複層的な困難を含む事例である。
情報統合のプロセスでは、(1)事実情報の整理(確認された事実と推測・仮説の区別)、(2)問題の定義と優先順位の決定(すべての問題に同時に対処できない場合に何を優先するか)、(3)関連するすべての法的・倫理的原則の特定と相互関係の整理、(4)利用可能な資源(専門的・組織的・地域的)の把握、(5)暫定的な支援計画の立案という5段階を踏む。
グループワークとして、各グループが事例の分析結果を発表し、多様な視点からの検討を通じて、より包括的な理解を深める。複雑な現実場面では「完全な理解が得られてから行動する」のではなく、「限られた情報の下で最善の判断を行動しながら更新し続ける」という実践知を体得する。
【到達目標】
◆ 複合事例の多層的問題を整理できること。
◆ 課題の優先順位を根拠とともに決定できること。
◆ 限られた情報での実践的判断ができること。
② 法・倫理・実践の統合的判断
本回の中心テーマは、法・倫理・実践という三層の統合的判断を、実際の演習を通じて体験的に習得することである。法律は最低限の行動基準を外側から規定するものであり、倫理はより高い水準の行動を内側から促すものであり、実践は両者を特定の文脈・関係・タイミングの中で具現化するものである。
三層の統合が最も問われる場面として、(1)法的規定が倫理的要求と乖離する状況(合法だが非倫理的・倫理的だが法的グレーゾーン)、(2)複数の倫理原則が同時に妥当し優先順位が明確でない状況、(3)新しい技術(AI・オンライン支援等)への対応など正解が一義的に決まらない状況がある。
受講者が架空の複合事例に対して「法・倫理・実践の統合的判断」を記述するミニケースレポートを作成し、グループで批評し合う演習を行う。評価の基準は「正解に至ったか」ではなく「判断のプロセスが透明で誠実であったか・法的根拠と倫理的根拠が明示されていたか・実践的現実性があるか」という3点を用いる。本科目を通じて培った統合的思考を確認する機会とする。
【到達目標】
◆ 法・倫理・実践の統合的判断プロセスを説明できること。
◆ 複合事例に統合的判断を記述できること。
◆ 判断の透明性と根拠の明示性を確保できること。
③ 多職種連携計画の立案
複合事例への対応において、心理師一人の判断と行動だけでは対処できない場面は多く、適切な多職種連携計画の立案能力は、実践現場での必須スキルである。連携計画の立案演習では、(1)必要な関係機関・職種の特定(問題の性質に応じた支援チームの構成)、(2)各関係者の役割と責任の明確化(誰が何をいつまでに行うか)、(3)情報共有の範囲と方法の決定(守秘義務の配慮のもとでの最小限共有)、(4)連携の優先順位と時系列の設計(緊急性・重要性・実現可能性を考慮)、(5)連携計画の評価基準と修正のタイミングの設定という5要素を含む包括的な計画を立案する。心理師の連携における役割を「調整者(coordinator)」「貢献者(contributor)」「相談者(consultee/consultant)」という3機能に分類し、状況に応じたポジションの取り方を演習する。
ここでは、グループで連携計画を作成し、発表・批評し合うことを通じて、多様な視点からの連携計画の強化を体験する。連携計画が「机上の空論」ではなく現実の実践に耐えうる計画となるためには、各機関の実際の機能と限界を知識として持つことが不可欠であることを改めて確認する。
【到達目標】
◆ 多職種連携計画の5要素を含む計画を立案できること。
◆ 状況に応じた心理師の連携ポジションを取れる
◆ 連携計画の実現可能性を現実的に評価できること。
④ リスク対応と安全確保の演習
リスクアセスメント・危機介入・安全確保計画の技術を統合した演習を実施する。ここでは、自殺リスク・他害リスク・虐待の可能性が複合した架空事例に対して、安全確保を最優先とした総合的な対応計画を立案する実践的演習を行う。
演習の進行として、(1)初期情報からの緊急度・危険度の暫定評価、(2)追加情報の収集計画(何を・誰から・どのように確認するか)、(3)安全確保のための即時的行動(面接でできること・連携が必要なこと)、(4)中長期的な安全管理計画(支援チームの構成・安全確保計画の共同作成・フォローアップ体制の設計)、(5)倫理的配慮(守秘義務の扱い・インフォームド・コンセント・要支援者の自律の尊重)という段階を踏む。安全確保と要支援者の自律尊重の緊張関係に対して、「安全確保のためには自律を犠牲にやむを得ない」という安易な解決に流れず、要支援者とのパートナーシップとして安全計画を構築する姿勢を実践的に学ぶ。
リスク対応における公認心理師の専門性の核心は「管理すること」ではなく、「協働して安全を守ること」にあることを理解してほしい。
【到達目標】
◆ 複合リスクへの統合的対応計画を立案できること。
◆ 安全確保と自律尊重のバランスを実践的に検討できること。
◆ リスク対応における協働的アプローチを実践できること。
⑤ 総合的振り返りと学習統合
最終回の締めくくりとして、本科目全15回の学習成果を個人的・集合的に振り返り、公認心理師としての専門性形成の現在地と今後の方向性を明確化する。個人的振り返りとして、(1)本科目の学習を通じて最も変化した「自己の見方・考え方」の同定、(2)当初よりも深く理解できた概念・原則の確認、(3)今後さらに学習・実践が必要な課題の明確化、(4)自己の「公認心理師としての強みの種」の言語化という4軸でのリフレクションシートの記入を行う。
総合的振り返りとして、グループ内での学習成果の共有・他者の視点を通じた自己認識の豊富化・ピアラーニングを行う。今後3年半の自己研鑽計画(学会参加・研修受講・スーパービジョン・読書計画等)を具体化し、実行可能性のある計画として記述する。
本科目が扱った法・倫理・実践の全体像を俯瞰し、「公認心理師の職責」とは法律的な義務の遵守だけでなく、人々の心理的健康と尊厳を守るという社会的使命への応答であることを再確認して、本科目の全15回を締めくくる。
【到達目標】
◆ 学習成果を4軸で振り返り言語化できること。
◆ 今後の成長課題を具体的に特定できること。
◆ 3年間の自己研鑽計画を実行可能な形で立案できること。
キーワード
① 情報統合 ② 法・倫理・実践の統合的判断 ③ 多職種連携計画 ④ 要支援者の安全確保 ⑤ 自己研鑽
コマの展開方法
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該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
【本講義の復習】
文字教材をよく読んでおくこと。その際、文字教材の太字の箇所は不可欠な知識であるため、太字の箇所を見なくてもその単語が思い出せるか確認しながら読んでみると良い。また、アンダーラインの箇所はそこがなぜアンダーラインが引かれているか説明できるかを確認してほしい。その他、自身が線を引いたりメモをとったことについて、なぜそうしたかが説明できるか確認してほしい。そして、文字教材を素材としてChatGPTによるテストワークを各自で行うこと。
【次回に向けての予習】
次回のコマシラバスを読んでおくこと。そして、気になる用語、不明な用語についてはインターネットで検索してみるとよい。
履修判定指標
履修指標
履修指標の水準
キーワード
配点
関連回
公認心理師の役割と制度、法的義務
・公認心理師法制定の社会的背景を説明できる
・国家資格化の目的を論理的に整理できる
・公認心理師法第2条の定義を正確に説明できる
・ 業務内容を法的文言に基づいて説明できる
・名称独占資格の意味を説明できる
・専門職における信頼形成要因を説明できる
・不祥事が与える影響を分析できる
・自らの専門職アイデンティティを言語化できる
・信用失墜行為の具体例を挙げられる
・秘密保持義務の法的根拠を説明できる
・守秘義務の例外を適切に説明できる
・情報開示の範囲と対象を事例で判断できる
・関係者等との連携の必要性を説明できる
・継続研修の倫理的意義を説明できる
・自己研鑽の具体的方法を挙げられる
・ 専門性向上の段階的計画を立案できる
公認心理師法第2条、名称独占、公認心理師カリキュラム、公認心理師試験、コンピテンシー、自己研鑽、反省的実践、バーンアウト、キャリア発達、信用失墜行為
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1、2
公認心理師の職業倫理、倫理的意思決定
・善行・無危害の各原則を正確に定義できる
・ 介入の利益とリスクを比較検討できる
・自律尊重の定義とパターナリズムの違いを説明できる
・意思能力の評価視点を示せる
・ 代理意思決定の倫理的枠組みを説明できる
・公正の原則の定義を説明できる
・制度的制約下での公正の実現方法を論じられる
・倫理規程を具体的な場面に適用できる
・倫理と法の相違点を明確に説明できる
・倫理的問題の兆候を識別できる
・倫理的意思決定の手順を正確に説明できる
・倫理的ジレンマ状況を正確に抽出できる
・倫理的意思決定モデルを事例に適用できる
介入の利益とリスク、自律尊重の定義、代理意思決定、公正の原則、倫理規程、倫理的問題の兆候、倫理的意思決定の手順、倫理的ジレンマ状況、倫理的意思決定モデル
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3、4
情報の適切な取扱い
・守秘義務の法的根拠の複層性を説明できる
・違反に該当する行為を具体的に指摘できる
・個人情報と要配慮個人情報の定義を説明できる
・ 情報取得・利用・保存・廃棄の各原則を説明できる
・最小限共有の原則を説明できる
・多職種連携における共有範囲を判断できる
・同意取得の具体的方法を説明できる
・客観的記述と主観的解釈を区別できる
・ 電子記録管理のリスクと対策を説明できる
・オンライン面接の情報管理リスクを説明できる
・ SNS利用における職業倫理上の注意点を説明できる
・事故発生時の初期対応を説明できる
守秘義務、個人情報と要配慮個人情報、多職種連携における共有範囲、同意取得、客観的記述と主観的解釈、 電子記録管理
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要支援者中心の支援
・ 人権尊重の概念を心理実践に即して説明できる
・スティグマの影響を具体的に説明できる
・ インフォームド・コンセントの4要素を説明できる
・要支援者参加型の支援計画を立案できる
・支援関係の権力的非対称性を説明できる
・権力性が支援に与える影響を分析できる
・文化的コンピテンシーの3次元を説明できる
・合理的配慮の概念を具体例で説明できる
・多様性への配慮を支援計画に組み込める
人権尊重、スティグマの影響、インフォームド・コンセント、要支援者参加型の支援計画、権力性、合理的配慮、多様性への配慮
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リスクアセスメント、危機介入と自殺予防、虐待・ハイリスク事案への対応
・ 自殺リスクの評価次元を網羅的に説明できる
・ 保護因子の概念と役割を説明できる
・ 他害リスクの評価領域を説明できる
・ リスクアセスメントツールの機能と限界を説明できる
・ リスクアセスメント結果を支援計画に接続できる
・ 多職種によるリスク管理体制を設計できる
・ 危機の定義と時限性を説明できる
・ 危機介入の6段階手順を説明できる
・ 媒体(電話・対面・オンライン)ごとの特性を説明できる
・ 支援資源の種類と役割を説明できる
・ リファーの判断基準を具体的に示せる
・ 緊急連携時の守秘義務の扱いを説明できる
・ 自殺予防の三次予防モデルを説明できる
・ 虐待の4類型を具体例とともに説明できる
・ 通告義務の法的根拠を説明できる
・ 守秘義務と通告義務の優先関係を説明できる
・ トラウマインフォームドケアの5原則を説明できる
・ 被害者と加害者支援の担当分離の理由を説明できる
・ 二次的外傷性ストレス(二次受傷)とバーンアウトの違いを説明できる
自殺リスク、他害リスク、リスクアセスメント、多職種によるリスク管理体制、危機介入、自殺予防、トラウマインフォームドケア、二次的外傷性ストレス
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多職種連携の基礎、連携の実践とケース会議
・チーム医療の概念を説明できる
・ チーム学校の概念と構成を説明できる
・ SCとSSWの役割の違いを説明できる
・ 主要な連携職種の専門性と役割を説明できる
・ 公認心理師の専門性を他職種に分かりやすく説明できる
・ 専門性の限界を認識し説明できる
・ リファーの判断基準を具体的に示せる
・ ケース会議の種類と目的を説明できる
・ 情報の最小限共有の原則を実践場面に適用できる
・ 情報共有の倫理的判断基準を説明できる
・ コンサルテーションとカウンセリングの違いを説明できる
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専門職コンピテンシーと自己理解
・コンピテンシーモデルの概念を説明できる
・ 自己評価を体系的に実施できる
・ 自己理解の4次元を説明できる
・ メタ認知の概念を説明できる
・ 倫理的態度の主要要素を説明できる
・ 態度が揺らぐ場面を特定し対処方法を提案できる
・ 専門的限界の3種類を説明できる
・ 限界の認識が困難になる状況を分析できる
・ リファーの判断基準を具体的に説明できる
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生涯学習とスーパービジョン(SV)
・ 生涯学習の4種類の方法を説明できる
・ 自らの学習スタイルを分析できる
・ SVの3機能を説明できる
・ ケースフォーミュレーションを実際に作成できる
・ 自己研鑽の3カテゴリーの方法を説明できる
・ 自己研鑽計画の5段階プロセスを実践できる
・ 具体的で実行可能な自己研鑽計画書を作成できる
・ 10年間のキャリア計画を立案できる
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専門職としての責任
・アカウンタビリティの4次元を説明できる
・ 不祥事の波及効果を分析できる
・ 不祥事の背景要因(個人・組織)を分析できる
・ 個人・組織レベルの予防策を提案できる
・ 日常実践における倫理的行動基準を具体的に説明できる
・ 倫理的実践が困難になる場面を特定できる
・ 望ましい専門職像の構成要素を自己の言葉で説明できる
・ 自らの専門職像を言語化できる
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評価方法
期末テストの成績により評価する。
評価基準
評語
学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・
S (100~90点)
学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・
A (89~80点)
学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・
B (79~70点)
学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・
C (69~60点)
学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・
D (60点未満)
教科書
文字教材を使用する。
参考文献
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修)下山晴彦・慶野遙香(編著) 2020 公認心理師スタンダードテキストシリーズ1 公認心理師の職責 ミネルヴァ書房
実験・実習・教材費
無し