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1
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犯罪・非行理論の概要、犯罪心理学の歴史
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科目の中での位置付け
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この科目は、犯罪に至る人間の心理と行動に関する科学としての犯罪心理学の基礎を理解することを目的とする。犯罪心理学を学ぶ前提となる知識として、犯罪及び非行に関する理論を理解するとともに、犯罪心理学の歴史、特に犯罪の原因に関する理論の歴史を理解することを目指す。 具体的には、犯罪の生物学的要因論、犯罪を起こす者のパーソナリティ特性論、犯罪の原因に係る社会学的理論、犯罪心理学の実証的研究、犯罪神経学である。 これらの詳細な語句について全て覚えるには時間を要するが、各種心理学の試験において頻出の内容であるため、第1回講義において示された5つのコマ主題細目の枠組みを把握し、今後学習する内容を格納する意識を持ち、犯罪心理学の学習のスタートを切るにあたって、犯罪心理学に関する様々な知識をしまう「引き出し」または「器」を作るイメージを持つこと。
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細目レベル① 原田隆之(2024).新しい犯罪心理学.原田隆之(編)司法・犯罪心理学.ミネルヴァ書房.pp16-29.
ジェームス・ボンタ、D.A.アンドリュース(2017).犯罪行動の生物学的基盤. 原田隆之(訳)(2018) 犯罪行動の心理学.北大路書房.pp75-110.
細目レベル②、③ 大渕憲一(2006).犯罪心理学-犯罪の原因をどこに求めるか.培風館.pp19-42.
大渕憲一(2024).犯罪心理学の誕生と社会学的犯罪論.原田隆之(編)司法・犯罪心理学.ミネルヴァ書房.pp2-15
高橋哲(2020).犯罪とは?―犯罪・非行理論を概観する. 門本泉(編). 司法・犯罪心理学―社会と個人の共生を目指す. ミネルヴァ書房.15-30.
細目レベル④ 原田隆之(2024).新しい犯罪心理学.原田隆之(編)司法・犯罪心理学.ミネルヴァ書房.pp16-29.
ジェームス・ボンタ、D.A.アンドリュース(2017).犯罪行動の生物学的基盤. 原田隆之(訳)(2018) 犯罪行動の心理学.北大路書房.pp75-110.
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コマ主題細目
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① 生物学的要因論 ② パーソナリティ特性論 ③ 社会学的犯罪理論 ④ 犯罪心理学の実証的研究 ⑤ 犯罪神経学
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細目レベル
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① 生物学的要因論 ア 生来性犯罪者説 人間がなぜ犯罪を起こすのかについて、人間の生物学的要因、すなわち身体面の特性に注目したものが犯罪の生物学的要因論である。最初期の研究はロンブローゾ(Lombroso,C.)によるもので、19世紀後半、素行不良の者の身体的特徴(頭の形が左右非対称、あごや耳が異常に大きいなど)を見出し、犯罪者は進化の一段低い人間であろうと考えた。しかし、生まれながらにして犯罪者というレッテルを貼られる人がいるという生来性犯罪者説は多くの批判を浴びた。 イ 脳機能の障害 犯罪者が示す行動特徴、心理検査等における反応から、脳機能に変異があるのではないかという仮説からの研究もおこなわれてきた。モフィット(Moffitt)は、常習犯罪者には微細な脳損傷があり、これが犯罪者の反社会性の一因であると主張している。また、犯罪行動に対する生物学的要因と環境との相互作用を見出している。そして、モフィットは、環境要因と相互作用する可能性のある生物学的要因に関する行動の側面として、刺激希求性、高い活動性、自己統制力不足、情緒性、冷酷性を見出した。これらの特徴を有する子どもは、環境次第で犯罪行動を示す可能性が高く、遺伝的・生物学的要因の発言は環境的条件に依存するとされている。 ウ 遺伝的影響 一卵性双生児と二卵性双生児について、ある特性がどの程度一致しているのか、あるいは相関を持っているのかについて検討する双生児法を用いて、犯罪の遺伝要因と環境要因の影響が研究されている。メドニックとクリスチャンセン(Mednick & Chiristiansen)は、3,586人の双生児サンプルをもとに、犯罪性を含め、二卵性双生児よりも一卵性双生児の間で一般に性質の類似性が強く見られたことを報告している。そのほかの双生児研究においても、遺伝と反社会性の間に中程度の関連が見出されている。 エ 脳の発達 脳磁気共鳴画像研究の進歩により、犯罪の抑制に関わっている背外側前頭前皮質の容積や機能がヒトの20歳代後半まで進行する一方、感情と報償感を制御している大脳辺縁系は前頭前皮質が未熟な10歳ころにホルモン量が増えて成熟が促されることがわかっている。すなわち、10代の若者は感情をつかさどる大脳辺縁系と衝動的な行動を抑制する前頭前皮質の成熟がミスマッチな状態であり、犯罪等の危険な行動を取りやすいことをギード(Giedd et al.)により明らかにされた。しかし、環境が適切に整えられれば、10代の若者も適応することが可能であるという脳の可塑性も明らかにされている。 犯罪心理学の歴史及び基礎として、生物学的要因論について研究者とその理論の対応を簡潔に説明できるようになることが望まれる。 【到達目標】 • 犯罪の生物学的要因論の基本的な考え方について説明することができる。 • ロンブローゾの生来性犯罪者説の内容と、その問題点について説明することができる。 • 脳機能、遺伝的影響、脳の発達と犯罪行動との関連について概説することができる。
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② パーソナリティ特性論 ア アイゼンクによる犯罪行動モデル理論 アイゼンク(Eysenck)は、人のパーソナリティは外向性、神経症傾向、精神病傾向という3次元によりとらえられると考えて性格検査を開発したが、外向性と神経症傾向が犯罪行動に強く影響していると考えた。 イ 5因子モデル(ビッグファイブ・モデル)による実証研究 ほとんどのパーソナリティ特性は5つの次元で記述することができるとされ、その因子及び特性の例は次のとおりである。(1)神経症傾向:不安傾向、怒り、衝動性。(2)外向性:ポジティブな感情性、興奮希求性。(3)経験への開放性:創造性、開放性、知性。(4)協調性:信頼性、愛他性、迎合性。(5)誠実性:有能さ、几帳面さ、自己統制。 ライナムら(Lynam et al.)は、一般人と受刑者といった対照的な2群を対象に犯罪者のパーソナリティを研究し、反社会的なパーソナリティの者と向社会的な者において顕著な差が見られた因子として協調性と誠実性を見出した。 【到達目標】 • アイゼンクの犯罪行動モデル理論の特徴を説明することができる。 • ビッグファイブ・モデルにおける主要な特性因子を挙げることができる。 • 犯罪行動と関連するパーソナリティ特性について説明することができる。
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③ 社会学的犯罪理論 ア アノミー理論 フランスのデュルケーム(Durkheim)は社会学の祖とされるが、彼は犯罪が何か固有の性質を持つ行為ではなく、社会の側に存在する規範によってそうであると認定された行為であると主張した。すなわち、社会規範は社会変動によって変化するため、古い規範に則った遵法行為が新しい規範では違反とされる現象も起こりうるものであり、犯罪は社会変動に伴って避けられない現象であるという犯罪社会学を提唱した。デュルケームは、産業革命によって伝統的な農村共同体が崩壊していた19世紀フランスの社会状況を分析した結果、人々の内側に存在していた社会規範が弱まり、新しい社会秩序が確立していない社会状況において、人々の相互信頼や社会的連帯が弱まり、自分の利益を追求したり、社会的逸脱行為をする人が多数出てくる状態を道徳的無規制状態(アノミー)と呼び、犯罪を誘発する社会的要因であると主張した。 イ 緊張理論 社会学者であるマートン(Marton)は、犯罪の分析において社会内部の構造的差別に注目し、社会文化的構造の中に個人を逸脱に向かわせる要因があると仮定した。現代においても、資産形成を促す政府等の呼びかけがあるが、当時のアメリカにおいても資産形成をいう人生目標を人々が共通に抱くことに注目し、これを文化的目標と呼んだ。文化的目標を達成するためには、教育や仕事等の社会制度を利用する必要があるが、低い階層の人たちの中には利用できない人たちも出て、差別あれていると感じた人々は目標を達成できないストレスや不満を抱き、社会に対する反感を形成する基礎となる。このような欲求不満を生み出す社会状態を、マートンはアノミーと呼んだ。 ウ 下位文化理論 社会の主流である文化に対し、一部の人たちが持つ価値観や慣習等を下位文化と呼ぶ。サザーランドは、ある地域において犯罪性を持つ文化が伝承され、犯罪文化との接触が個人の反社会性を強めると論じ、これを分化的接触理論と呼んだ。 コーエンは、緊張理論と下位文化理論の統合を目指し、犯罪に対する集団の影響について心理学的要素を取り入れ、非行下位文化理論を提唱した。彼が分析した当時のアメリカでは、教育や仕事で成功するには勤勉、非暴力、合理性等を身に付ける必要があるが、低階層の若者が育つ環境はそれらと正反対の価値観を持つ文化であるため、反社会性を持つようになるとコーエンは論じた。 エ 統制理論 ハーシ(Hirshi)は、人はなぜ犯罪を起こさずに規則を守るのかについて研究し、人は自分の心理状態を統制していることにより行動を抑制していると結論付けた。これは社会的絆理論と呼ばれ、人は所属する集団と情緒面で強く結びついていると感じることにより逸脱行動を自制するとハーシは考えた。社会的絆の要因には、愛着、コミットメント、インボルブメント、規範信念の4種類がある。 犯罪者の生物学的研究ができない時代に社会学的犯罪理論が盛んとなった背景を理解し、それぞれの研究者と理論について簡潔に説明できるようになることが望ましい。 【到達目標】 • アノミー理論、緊張理論、下位文化理論、統制理論の概要を説明することができる。 • 各理論が犯罪の発生をどのように捉えているかを比較して説明することができる。 • 主要な研究者と理論の対応関係を整理して説明することができる。
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④ 犯罪心理学の実証的研究 ア 大規模調査研究 ある地域に生まれた子どもたちを長期間にわたり追跡して心理学的調査を行うことにより、非行・犯罪の発達過程を明らかにする大規模調査研究として、ケンブリッジ大学のウェスト(West)らによって開始され、現在はファーリントン(Farrington)が中心を務めるケンブリッジ非行発達研究がある。この研究の目的は、(1)都市部の男性における非行と犯罪行為の発達の検討、(2)非行・犯罪行為を予測する要因の検討、(3)非行がどのように始まり、成人の犯罪に結びつくのかの検討、(4)多くの非行が20歳代で収束する理由の検討であった。この研究によって明らかになったこととして、青年期に非行を行う者は8~10歳ころに特徴が見られた。具体的には、知的能力が低く、学業成績が不良、衝動性が強いことなどが明らかになった。また、パーソナリティの面で非行のリスクを減らす要因として、不安が強いことが見出された。 イ RNR原則 ボンタとアンドリュース(Bonda & Andrews)は犯罪者を対象とした実証研究に基づき、犯罪者への効果的な治療に関するRNR原則という三原則を見出した。一つ目のRはリスク原則であり、アセスメントによって判明した再犯リスクの大きさに応じて指導の強度を変えることである。二つ目のNはニーズ原則であり、一人一人の問題性(治療ニーズ)を標的とし、それに的を絞った指導を行う。三つ目のRは治療反応性原則であり、指導に応じて相手が反応するような介入を行うべきということである。 【到達目標】 • ケンブリッジ非行発達研究の目的と意義を説明することができる。 • 非行・犯罪の発達過程を明らかにする縦断研究の特徴を説明することができる。 • RNR原則の内容と、再犯防止支援における意義を説明することができる。
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⑤ 犯罪神経学 犯罪心理学の歴史では、生来的な気質によって犯罪者になりうると決めつけるおそれがあることから社会学的要因が注目され、生物学的研究や遺伝に関する研究はタブーとされてきた。しかし、近年の研究のより、遺伝的傾向は環境によって変化する可能性が明らかとなり、犯罪者の脳や神経系の特徴など、犯罪に関する生物学的な要因を探求する犯罪神経学が近年さかんに行われるようになった。 ア 大脳辺縁系 レイン(Rein)は、犯罪と関連する様々な脳神経系の異常を見出している。特に、情動の表出、食欲や性欲などの本能、血圧や心拍などの自律神経系の働き、記憶などの機能に関する部位である大脳辺縁系の異常がわかってきた。 イ 自律神経系 粗暴犯罪者には自律神経系の低い覚醒状態が見られる。たとえば、安静時心拍数や呼吸数が少ない。たとえば、子どもが悪いことをして親に叱られたとき、子どもは恐怖や不安を感じ、心拍数が上昇する。この時、問題行動と恐怖や不安などの情動や心拍数の上昇が条件づけられ、のちに同じような問題行動をとろうとしたとき、条件づけられた恐怖や不安が生じ、心拍数が上昇し、問題行動が抑制される。これが良心の源泉となる。 一方、生理的覚醒度が低い子どもは、親から叱られても心拍数が上昇せず、恐怖や不安を感じず、問題行動を抑制する機能を持つ良心の形成が不十分となる。また、生理的覚醒度が低い人は、覚醒度を上げるために刺激的な行動をとりやすくなり、危険な行動や危険な薬物を摂取するなどの行動をとりやすい傾向がある。 近年は犯罪者に対する科学的研究の重要性から生物学的研究も盛んになっていることを理解し、これらの内容を簡潔に説明できるようになることが望ましい。 【到達目標】 • 犯罪神経学が注目されるようになった背景を説明することができる。 • 大脳辺縁系や自律神経系の特徴と犯罪行動との関連を説明することができる。 • 生物学的要因と環境要因の相互作用という視点から犯罪を理解することができる。
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キーワード
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① 犯罪者の脳内神経伝達物質 ② パーソナリティ理論 ③ 緊張理論 ④ RNR原則 ⑤ 犯罪神経学
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 第1回目のコマシラバスを読み、犯罪心理学の歴史の大枠を把握すること。 【復習】 犯罪心理学の各理論と研究者については心理学の各種試験で頻出するものであることからも、それぞれの理論と研究者について簡潔に説明できるように確認しておくこと。 また、犯罪神経学に関する理論についても心理学の各種試験で出題されているので、文字教材を読み直し、理解に努めること。
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2
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犯罪・非行の実態~公式統計による実態把握及び現代の犯罪・非行の動向の理解
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科目の中での位置付け
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犯罪心理学の理論及び臨床を学ぶ上で、日本における犯罪・非行の実態を把握することにより、現代において犯罪心理学の知見をどのように活用するかを能動的に考える力を醸成することを目指す。 犯罪統計は加害者や被害者の心理状態に比べると無機質に感じられるかもしれないが、犯罪の捜査、犯罪抑止のための各種防犯活動、刑務所や少年院での矯正、社会内での更生支援などさまざまな司法・犯罪領域における課題に限られた人員を投入する上で、必要なデータとなるため、犯罪統計の背景にある諸問題を考え、今後学習する犯罪心理学の諸課題の解決策を考える力を培うことが期待される。
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細目レベル①~④ 角田亮(2020). 犯罪・非行の実態―日本の犯罪・非行の状況を知る.門本泉(編).司法・犯罪心理学―社会と個人の共生を目指す. ミネルヴァ書房.33-49.
小林良樹(2019). 犯罪学入門―ガバナンス・社会安全政策のアプローチ. 慶應義塾大学出版会. 29-48.
岡田和也(2006). 警察統計. 浜井浩一(編) 犯罪統計入門―犯罪を科学する方法(第2版). 日本評論社. 46-74.
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コマ主題細目
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① 犯罪・非行の実態把握の方法 ② 犯罪の類型 ③ 犯罪の動向 ④ 少年非行の動向 ⑤ 高齢者の犯罪
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細目レベル
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① 犯罪・非行の実態把握の方法 犯罪・非行の実態を把握する方法として、警察庁が発行する「犯罪統計」、法務省が発行する「犯罪白書」がある。「犯罪統計」は、警察が届け出を受けた刑法犯の認知件数をまとめたものであり、届け出られていない被害(暗数)は含まれていない。「犯罪白書」は、犯罪の動向や犯罪者の処遇の状況について、統計資料等に基づいて説明しているものである。少年の非行についても「犯罪統計」及び「犯罪白書」にまとめられている。 効果的な刑事政策を立案するためには犯罪の情勢に即した検討が必要であり、犯罪心理学の実践の上でも、犯罪・非行の実態を把握し、現実社会で何が必要なのかを考える必要がある。犯罪統計を単なる数字と捉えず、現実社会の問題を探る姿勢を持つことが望まれる。 【到達目標】 • 犯罪統計と犯罪白書の違いを説明することができる。 • 犯罪統計に暗数が含まれないことの意味を説明することができる。 • 犯罪・非行の実態把握が刑事政策や犯罪心理学にとって重要である理由を説明することができる。
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② 犯罪の類型 犯罪の類型を罪種と呼び、戦後一貫して全刑法犯の70%以上を占める窃盗犯、凶悪犯、粗暴犯、知能犯、風俗犯、その他の刑法犯が挙げられる。これらの罪種の主なものは次のとおりである。(1)凶悪犯:殺人、強盗、放火、不同意性交等。(2)粗暴犯:暴行、傷害、脅迫、恐喝、凶器準備集合。(3)窃盗:窃盗。(4)知能犯:詐欺、横領、偽造、汚職、背任、あっせん利得処罰法。(5)風俗犯:賭博、わいせつ。(6)その他の刑法犯:公務執行妨害、住居侵入、逮捕監禁、器物損壊等上記に掲げるもの以外の刑法犯。 犯罪の類型をすべて覚える必要はないが、これから総合犯罪心理学を学ぶ上で土台となるものであるため、避けずに接することが重要である。 【到達目標】 • 刑法犯の主要な罪種を挙げることができる。 • 凶悪犯、粗暴犯、窃盗犯、知能犯、風俗犯の代表例を説明することができる。
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③ 犯罪・非行の実態把握の方法 犯罪・非行の実態を把握する方法として、警察庁が発行する「犯罪統計」、法務省が発行する「犯罪白書」がある。「犯罪統計」は、警察が届け出を受けた刑法犯の認知件数をまとめたものであり、届け出られていない被害(暗数)は含まれていない。「犯罪白書」は、犯罪の動向や犯罪者の処遇の状況について、統計資料等に基づいて説明しているものである。少年の非行についても「犯罪統計」及び「犯罪白書」にまとめられている。 効果的な刑事政策を立案するためには犯罪の情勢に即した検討が必要であり、犯罪心理学の実践の上でも、犯罪・非行の実態を把握し、現実社会で何が必要なのかを考える必要がある。犯罪統計を単なる数字と捉えず、現実社会の問題を探る姿勢を持つことが望まれる。 【到達目標】 • 犯罪・非行の実態把握に用いられる代表的資料を挙げることができる。 • 統計資料を読む際に、数字の背後にある社会的問題を考察することができる。 • 実態把握の視点から、現実社会に必要な支援や対策を考えることができる。
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④ 少年非行の動向 ア 凶悪犯(殺人、強盗、放火、強制性交等) 凶悪犯における少年の関与は相対的に少数であるものの、社会的影響は極めて大きい。特に路上強盗において少年の検挙・補導人員が総検挙人員の50%を占めている。背景には衝動性の高さ、将来への見通しの欠如、仲間集団の影響などが挙げられる。近年はSNSを通じた犯行計画の共有や、社会情勢の変化による経済的困窮が要因として注目されている。 イ 粗暴犯(暴行、傷害、脅迫、恐喝等) 粗暴犯は少年非行の中核を成し、感情制御の未熟さが直接的に表出される犯罪類型である。学校内外での対人関係のトラブル、家庭環境の不安定さ、ストレス耐性の低さが主要因となっている。デジタルネイティブ世代特有の現象として、ネット上での誹謗中傷が現実世界での暴力行為に発展するケースも増加している。 ウ 窃盗犯 オートバイ盗において少年の検挙・補導人員が92%を占めるなど、窃盗犯は少年非行の最大の構成要素である。動機は遊ぶ金欲しさ、スリルの追求、仲間からの承認欲求など多様化している。経済格差の拡大や消費文化の影響により、物質的欲求を満たすための安易な手段として選択される傾向が強い。 エ 知能犯(詐欺、横領、偽造等) デジタル技術の普及に伴い、少年による知能犯は質的変化を遂げている。特殊詐欺の受け子や出し子としての関与、インターネットを活用した詐欺行為が増加している。従来の知能犯と異なり、組織の末端として利用される構造的問題が顕著である。情報リテラシー教育の重要性とともに、社会全体での少年の社会参加機会の創出が求められている。 少年非行の動向を知ることは、彼らの立ち直りや再犯防止支援を考える上で不可欠であり、過去から現在までの長期的な推移を把握することも求められる。 【到達目標】 • 凶悪犯、粗暴犯、窃盗犯、知能犯における少年非行の特徴を説明することができる。 • 少年非行に影響する要因として、衝動性、家庭環境、仲間集団、SNSの影響を説明することができる。
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⑤ 高齢者の犯罪の動向 ア 全体的特徴と社会背景 高齢者の刑法犯検挙人員において、70歳以上の者が77.4%を占めるなど、高齢者犯罪の高年齢化が顕著に進行している。検挙人員総数に占める高齢者の割合は、平成元年の2.1%から令和元年には22.0%まで上昇し、社会全体の高齢化と並行して犯罪者層の高齢化も深刻な問題となっている。 イ 犯罪類型と背景要因 高齢者による犯罪の主なものは、万引き、占有離脱物横領、暴行及び傷害で、これらの犯罪の検挙人員で高齢者の刑法犯検挙人員の約7割を占める。特に万引きは高齢者犯罪の中核を成しており、経済的困窮、社会的孤立、認知機能の低下などが複合的に作用している。 単身者が多く、親族や親族以外との接触がない人、収入がないまたは低収入の人が多いという特徴が確認されており、社会的支援の欠如が犯罪行動に結びつく構造的問題が浮き彫りになっている。 高齢者特有の心理的・社会的要因を踏まえた予防策と再犯防止のための包括的支援システムの構築が求められる。 【到達目標】 • 高齢者犯罪の増加と高年齢化の特徴を説明することができる。 • 高齢者に多い犯罪類型と、その背景要因を説明することができる。 • 高齢者犯罪に対して必要な予防策や包括的支援の方向性を考察することができる。
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キーワード
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① 犯罪統計 ② 罪種 ③ 犯罪の発生状況 ④ 少年事件の推移 ⑤ 高齢者の犯罪
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 第2回のコマシラバスを読み、日本の犯罪の罪種と統計について、傾向を把握すること。 【復習】 犯罪の統計に関する推移は各種試験に頻出されることからも、犯罪の動向や近年顕著に増加している犯罪について簡潔に説明できるようになることが望ましい。文字教材を読み、各罪種の検挙人員のピークの年や少年犯罪についても材種ごとの検挙件数のピーク等を把握するように努めること。
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3
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刑事司法手続きの概要
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科目の中での位置付け
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犯罪・非行に対する刑事司法手続きを理解することにより、犯罪の発生から支援、更生、そして予防に至る総合犯罪心理学科での学びを社会実装する意識を涵養する。 犯罪はその行為のみで完結するものではなく、警察による捜査、検察庁による起訴・不起訴の判断、裁判所での裁判という刑事司法手続きがなされ、その過程で犯罪行為の動機、刑罰の検討などがなされる。これらの知識を有することにより、今後学ぶ各種犯罪とその加害者・被害者の心理が実社会の中でいかに扱われるかを理解することが可能となる。
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細目レベル①~④ 岡秀明(2020). 日本の刑事政策. 門本泉(編).司法・犯罪心理学―社会と個人の共生を目指す. ミネルヴァ書房.51-62.
新海浩之(2024). 刑事司法. 原田隆之(編)司法・犯罪心理学.ミネルヴァ書房.pp60-72.
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コマ主題細目
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① 成人による刑事事件の手続き ② 非行少年に関する手続き ③ 警察の業務 ④ 検察庁の業務 ⑤ 裁判所の業務
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細目レベル
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① 成人による刑事事件の手続き 司法制度とは、社会の決まり事を法律の観点から制度として見たものである。刑事事件とは、犯罪を起こしたとされる者が被疑者として警察に検挙され、検察庁に送られるものを指す。 刑事司法制度では、どのような行為を犯罪とするのか、犯罪の捜査や検察官による起訴をどのように行うか、裁判はどのような形式であるのか、どのような刑罰を科すか・科さないかなどを扱う。人を刑事事件の対象として扱うことは、捜査したり、刑務所等の刑事施設に入所させたりすることで、その人の人権を著しく制限することになるため、無制限に行うことはできない。そこで、厳格な法的制限や時間的制限が設けられている。刑務所や少年院等での介入・援助の必要性と人権の保護を調整することは難しいことであるため、司法・犯罪領域にかかわる公認心理師等の専門職は刑事司法手続きを理解することが求められる。 成人の刑事事件の場合、犯罪を起こしたとされて警察に検挙されたものを被疑者と呼ぶ。警察は被疑者を検察庁に送致し、検察官は事件の調査に基づいて被疑者を起訴するか不起訴にするかを決める。被疑者が起訴された場合は、被疑者は被告人となり、裁判所で公判(刑事裁判)が行われる。有罪判決が出て、執行猶予がつかずに実刑の場合、被告人は刑務所等に入所となる。 犯罪心理学の知見を効果的に生かすためには、刑事司法制度を知ることが必要であるので、その概要の理解が求められる。 【到達目標】 • 成人の刑事事件における被疑者、被告人、公判の流れを説明することができる。 • 犯罪心理学を活用する上で刑事司法手続の理解が必要である理由を説明することができる。
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② 非行少年に関する手続き ア 非行少年とは 非行少年の司法手続きの根拠となるものは少年法である。少年法に定める少年とは、20歳に満たない者を指し、男子と女子の両方を含む。このうち、18歳と19歳の者は、民法の成年年齢引き下げにより、重要な権利や自由を認められ、責任ある主体として社会に参加することが期待されることとなったが、成長途上にあり、犯罪を起こした場合でも適切な教育や処遇による更生が期待できることから、2022年に改正された少年法では、18歳と19歳の者を「特定少年」とした。特定少年は、17歳以下の者と異なる扱いを受ける。例えば、検察庁に原則として逆走される事件として、不同意性交等罪や現住建造物等放火罪などが追加された。なお、14歳未満は刑事責任を問われない。 非行少年は、犯罪少年(14歳以上20歳未満で罪を犯した少年)、触法少年(14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした少年)、虞犯少年(20歳未満で将来罪を犯すおそれのある少年)の3種類に分けられる。 イ 非行少年の刑事司法手続き 少年の刑事司法手続きでは、すべての少年が家庭裁判所に送られる全権送致主義がとられる。触法少年と14歳未満の虞犯少年は家庭裁判所より先に児童相談所に送られ、14歳以上の虞犯少年は直接家庭裁判所に送られる。犯罪少年は検察庁を経て家庭裁判所に送られるか、直接家庭裁判所に送られる。なお、犯罪少年のうち、刑事処分が相当と認められる場合は検察庁に逆送される。また、故意に被害者を死亡させた16歳以上の少年は原則として検察庁に送られる。 成人の刑事司法手続きと同様、犯罪心理学の活用のために非行少年に対する手続きは必要な知識であるので、覚えるように努めること。 【到達目標】 • 犯罪少年、触法少年、虞犯少年の違いを説明することができる。 • 少年事件における全件送致主義の意味を説明することができる。 • 特定少年の位置づけと、改正少年法による変更点を説明することができる。
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③ 警察の業務 ア 警察業務の概要 警察は、警察法に基づき、個人の生命、身体及び財産の保護を目的とし、犯罪の予防、鎮圧、捜査、被疑者の逮捕、交通の取り締まり、その他公共の安全と秩序の維持を目的としている。また。犯罪少年を検挙した場合、必要な操作を行って事件を検察庁に送致する。 犯罪が認められたとき、あるいは被害者から犯罪被害の申告があったとき、警察官は犯人及び証拠の捜査を行う。警察が捜査を行った結果被疑者を検挙した場合、事件を検察官に送致する。被疑者の逮捕については緊急逮捕、通常逮捕及び現行犯逮捕がある。緊急逮捕は、被疑者が一定以上の法定刑の罪を犯したことを疑う充分な理由がある場合で急速を要するときに、逮捕状がない状態で逮捕することをいう。通常逮捕は、検察官、検察事務官、司法警察職員(警察官、麻薬取締官、海上保安官など)が裁判所から得た逮捕令状で逮捕することをいう。現行犯逮捕は、現に犯行を行っているか、犯行を行い終わった者を令状無くしてする逮捕をいう。そして、警察が被疑者を逮捕したときは、48時間以内に検察庁に送致しなければならない。 なお、犯罪被害者への支援は警察の本来業務とされており、政府が定める犯罪被害者等基本計画では、犯罪被害給付制度の拡充、犯罪被害者のカウンセリングに必要な費用の公費負担制度の整備等が行われている。 イ 警察組織 警察の組織として、都道府県警察と警察庁がある。都道府県警察は各都道府県公安委員会のもとで地方自治体の治安維持にあたる。警察官の具体的業務は第4回で扱う。 【到達目標】 • 警察の目的と基本的な業務内容を説明することができる。 • 緊急逮捕、通常逮捕、現行犯逮捕の違いを説明することができる。 • 警察が犯罪被害者支援において果たす役割を説明することができる。
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④ 検察庁の業務 検察庁の検察官は、犯罪をしたとされる者を扱う刑事事件について裁判所に公訴(起訴)を行う。検察官も警察官と同様に操作や逮捕を行えるが、司法警察職員等から事件の送致を受け、事件について裁判所に起訴する権限を唯一与えられており、これを起訴独占主義という。 なお、検察庁においても犯罪被害者への支援が実施されており、検察官や検察事務官に加えて被害者支援員が検察庁における調査段階や公判段階での各種支援を行うほか、公判記録の閲覧・コピー等の支援も行っている。 【到達目標】 • 検察官の基本的な役割を説明することができる。 • 起訴独占主義の意味を説明することができる。 • 検察庁における犯罪被害者支援の概要を説明することができる。
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⑤ 裁判所の業務 裁判所は、法に基づいて紛争を解決し、正義を実現する国家機関である。主な業務は以下の通りである。 刑事裁判(公判):被告人の有罪・無罪を判断し、刑罰を決定する。 民事裁判:個人間や企業間の紛争を解決する。 行政事件裁判:行政機関の処分の適法性を判断する。 家事審判:離婚や相続などの家庭内問題を扱う。 少年審判:非行少年の処遇を決定する。 これらの業務を遂行するため、裁判所には様々な職種の専門家が携わっている。裁判官は、事件の審理を行い、判決を下す中心的な役割を担う。法律の専門家として、提出された証拠や証言を基に公平な判断を下す。最高裁判所の裁判官は違憲立法審査権も有する。書記官は、裁判の運営を支える重要な存在である。訴状や証拠の受付、期日の調整、判決文の作成補助など、裁判の実務的な面を担当する。また、調書の作成を通じて裁判の記録を残す役割も果たす。家庭裁判所調査官は、家庭裁判所に特有の職種で、心理学、社会学、教育学などの専門知識を活かして業務を行う。 【到達目標】 • 裁判所の主要な業務を列挙し、それぞれの概要を説明することができる。 • 刑事裁判、民事裁判、行政事件裁判、家事審判、少年審判の違いを説明することができる。 • 裁判官、書記官、家庭裁判所調査官の役割を説明することができる。
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キーワード
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① 刑事司法制度 ② 少年法 ③ 警察による捜査活動 ④ 検察官 ⑤ 裁判
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 第3回のコマシラバスを読み、成人と少年の刑事司法手続きの大枠を把握すること。 【復習】 刑事司法手続きの知識は犯罪心理学の理解を深めるうえで必要であることを理解し、成人と少年の手続きの違い、警察・検察庁・裁判所の業務について、それぞれ簡潔に説明できるようになること。
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4
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犯罪心理に関する専門職の業務
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科目の中での位置付け
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司法・犯罪分野では様々な職種が働き、この国の秩序が維持されているが、犯罪心理学を基礎にしている専門職も多い。具体的には警察官、警察心理職、家庭裁判所調査官、法務省心理技官、保護観察官及び児童相談所職員などがいる。これらの職種は犯罪者や非行少年、犯罪被害者を相手にすることが多いものであり、将来AIに置き換えることが難しいと考えられる。これらの職種を志望する場合はもとより、志望しない場合でも関連する職種として将来接する機会があるかもしれない。たとえば、行政機関、医療機関、教育関係でも対象者が事件を起こしたり、犯罪被害にあったりすることは十分可能性がある。そのようなときにそれぞれの専門職の業務を理解しておくことで対応も円滑に進むであろう。 これらの業務を理解することにより、本科目において学ぶ犯罪心理学の諸理論及び臨床を立体的に理解する土台を作ることを目指す。 また、これらの業種を志望する場合、早期に試験対策の動機付けを高める契機にもしてもらいたい。
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細目レベル① 島田貴仁(2020). 警察の中での心理学・心理職―専門性を活かすために. 門本泉(編).司法・犯罪心理学―社会と個人の共生を目指す. ミネルヴァ書房.pp67-77.
細目レベル② 小板清文(2024). 少年非行. 原田隆之(編)司法・犯罪心理学.ミネルヴァ書房.pp44-58.
田中教仁(2020). 家庭裁判所―少年と家庭の将来を見据えた司法的解決を目指して. 門本泉(編).司法・犯罪心理学―社会と個人の共生を目指す. ミネルヴァ書房.pp81-87.
細目レベル③ 田中かおり(2020). 矯正―施設内処遇から社会復帰へ. 門本泉(編).司法・犯罪心理学―社会と個人の共生を目指す. ミネルヴァ書房.pp97-108.
細目レベル④ 赤木寛隆(2020). 更生保護―地域社会における指導と支援. 門本泉(編).司法・犯罪心理学―社会と個人の共生を目指す. ミネルヴァ書房.pp115-125..
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コマ主題細目
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① 警察官及び警察心理職の業務 ② 家庭裁判所調査官の業務 ③ 法務省心理技官及び教官の業務 ④ 保護観察官の業務 ⑤ 児童相談所職員の業務
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細目レベル
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① 警察官及び警察心理職の業務 警察官と警察心理職は公共の安全維持のため、それぞれの専門業務に従事している。 ア 警察官の業務 地域警察:交番やパトカーによる地域の安全確保、110番通報対応、鉄道警察など住民に最も身近な存在として活動する。 生活安全警察:人身安全対策(児童虐待・DV・ストーカー)、サイバー犯罪対策、少年健全育成を担当する。心理職が在籍する少年サポートセンターを含む。 刑事警察:強行犯・知能犯・盗犯捜査、鑑識、機動捜査など、刑事事件解決のための証拠収集・分析・被疑者検挙を行う。 交通警察:交通事故抑止、交通違反取締り、運転免許事務、交通安全教育を行う。75歳以上の認知機能検査で心理学知見を活用する。 警備警察:デモ規制、雑踏警備、災害警備、要人警護、外事警察(防諜活動)による事件・事故の未然防止を行う。 イ 警察心理職の業務 都道府県警察と科学警察研究所に配属され、心理臨床と犯罪捜査の2分野で活動。 心理臨床:少年サポートセンターでの非行少年・被害少年カウンセリング、犯罪被害者支援、警察官の惨事ストレス対策、警察学校でのメンタルヘルス支援を行う。 犯罪捜査:科学捜査研究所でのポリグラフ検査実施、犯罪者プロファイリング、取調べ時の心理状態把握とアドバイスを行う。 【到達目標】 • 警察心理職の業務を、心理臨床と犯罪捜査の二側面から説明することができる。 • 警察活動において心理学の知見がどのように活用されているかを説明することができる。
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② 家庭裁判所調査官の業務 家庭裁判所調査官は、心理学、教育学、社会学、医学等の知識と技術を活かし、主に家庭内の問題や未成年者に関する事件において、裁判官が適切な判断を下すための資料や情報を提供する。具体的には、家庭裁判所に持ち込まれる少年事件、家事事件及び人事訴訟に対し、当事者や関係者への面接、家庭訪問、関係資料の収集などを通じて、事実関係の把握や問題の背景を明らかにする作業を行う。また、調査結果をもとに、裁判官が判断を下す際の重要な参考資料となる調査報告書を作成、提出する。 さらに、家庭裁判所調査官は、家庭内の紛争や未成年者に関する問題を解決するための調停手続きにおいて、当事者間の合意形成を支援し、円満な解決を目指す。特に、離婚や親権に関する事案では、子どもの福祉を最優先に考え、親権者の選定や養育費の取り決めなど、子どもの将来に大きな影響を与える事項について、公平かつ専門的な観点から調整を行う。 【到達目標】 • 家庭裁判所調査官の役割と専門性を説明することができる。 • 少年事件や家事事件における調査方法を説明することができる。 • 家庭裁判所調査官の調査が裁判官の判断にどのように生かされるかを説明することができる。
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③ 法務省心理技官及び教官の業務 ア 法務省心理技官 主に刑務所や少年院などの矯正施設において、受刑者や非行少年の心理的支援を行う専門職である。心理学の知見を活用し、受刑者や非行少年に対する心理テストや面接を実施し、対象者のパーソナリティや問題行動の背景を分析する。そして、個別のカウンセリングやグループセッションを通じて、犯罪や非行の再発防止のための指導を行い、社会適応能力を高めるための支援を行う。 さらに、少年鑑別所が地域援助として開設する法務少年支援センターの相談員として、飛行問題に係る相談を受理し、関係機関と連携して、非行問題の解決に向けた相談業務を担当している。 イ 法務教官 主に少年院や少年鑑別所において、非行少年が更生し、社会復帰できるように、適切な教育プログラムを行う。法務教官は、教科指導や生活指導を通じて、少年たちが社会的な規範を理解し、自立した生活を送るための基礎を築くように指導する。また、非行の原因を探り、再発防止のための個別指導やグループ活動を計画・実施することも求められる。さらに、少年たちとの信頼関係を築きながら、彼らの心のケアや進路相談にも応じることが必要である。法務教官は、単なる教育者ではなく、少年たちが自らの行動を見直し、将来の目標を持って社会復帰できるように支援する、重要な役割を担っている。 【到達目標】 • 法務省心理技官の業務内容を説明することができる。 • 法務教官の業務内容を説明することができる。
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④ 保護観察官の業務 保護観察官は、犯罪をした人や非行少年に対し、通常の社会生活を送らせながら、円滑な社会雨復帰のために指導を行う「社会内処遇」の専門家である。保護観察官は、対象者の心理的な背景や行動パターンを理解し、再犯リスクを評価するために心理学的アセスメントを行う。そして、保護観察官は、対象者が社会で適応しやすいように、面接指導を行い、ストレス管理や問題解決のスキルを身につけさせる支援を行う。これにより、対象者が犯罪や非行に至る要因を克服し、健全な生活を送れるようにする。このように、保護観察官は心理学的支援を通じて対象者の内面的な変化を促し、再犯防止に寄与する役割を果たしている。 保護観察官が全国に52か所ある保護観察所で勤務する場合は、家庭裁判所で保護観察処分を受けた少年や仮釈放者を対象とする保護観察を実施するほか、矯正施設に収容されている者の出所後の住居や就業先等の生活環境の調整や犯罪予防に関する業務を行う。 また、保護観察官が地方公正保護委員会に勤務する場合は、刑事施設からの仮釈放や少年院からの仮退院に関する審理のために必要な調査を行うほか、仮釈放の取り消しや仮退院中の者の退院、保護観察付執行猶予者の保護観察の仮解除に関する業務を行う。 【到達目標】 • 保護観察官の役割を社会内処遇の観点から説明することができる。 • 保護観察における指導監督と補導援護の内容を説明することができる。 • 保護観察官が再犯防止に果たす役割を説明することができる。
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⑤ 児童相談所職員の業務 都道府県・政令指定都市の児童福祉専門機関職員として、要保護児童への援助活動、家庭裁判所送致少年への支援を実施する。非行少年・家族への相談対応では、行動背景・家庭環境確認、再犯防止のための心理支援を行い、関係機関との連携による社会復帰支援を実施する。 また、知能・発達問題のある子どもへの心理判定(アセスメント)、心理テスト・行動観察による科学的分析、適切な支援策提案も重要な業務として行う。 【到達目標】 • 児童相談所職員の基本的な役割を説明することができる。 • 非行少年や家族に対する支援内容を説明することができる。
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キーワード
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① 警察心理職 ② 家庭裁判所調査官 ③ 法務技官 ④ 保護観察官 ⑤ 児童心理司
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 第4回のコマシラバスを読み、司法・犯罪分野における心理職の名称、各機関の業務の概要を把握すること。 【復習】 警察心理職、家庭裁判所調査官、法務省心理技官、保護観察官、児童相談所心理職員の各業務について簡潔に説明できるようになること。
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5
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時間軸と空間軸から捉える犯罪1 少年非行~加害者の動機、更生、被害者の特徴と支援~
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科目の中での位置付け
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第5回から第11回にかけて、犯罪・非行の具体的な罪種等を取り上げ、発生に至る原因、被害者への支援、加害者の更生、再発防止までを一つの時間軸として学び、犯罪の規模と時間の経過の二つの軸から犯罪を多角的に分析する力を醸成することを目的とする。 本回では、少年の非行について、発生に至る原因、被害者のケアのほかに非行少年自身が抱えている可能性のあるトラウマのケア(トラウマインフォームドケア)、施設内及び社会内での更生、そして非行の再発防止までを理解することを目指す。
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細目レベル①~③ 河村博(2023). 少年法―その動向と実務―(第四版). 東京法令出版.
小板清文(2024). 少年非行. 原田隆之(編)司法・犯罪心理学.ミネルヴァ書房.pp44-58.
岡秀明(2020). 日本の刑事政策. 門本泉(編).司法・犯罪心理学―社会と個人の共生を目指す. ミネルヴァ書房.51-62.
新海浩之(2024). 刑事司法. 原田隆之(編)司法・犯罪心理学.ミネルヴァ書房.pp60-72.
渡辺巧(2009). 犯罪学入門. 成文堂. pp25-40.
細目レベル④ 赤木寛隆(2020). 更生保護―地域社会における指導と支援. 門本泉(編).司法・犯罪心理学―社会と個人の共生を目指す. ミネルヴァ書房.pp115-125.
田中かおり(2020). 矯正―施設内処遇から社会復帰へ. 門本泉(編).司法・犯罪心理学―社会と個人の共生を目指す. ミネルヴァ書房.pp97-108.
田中教仁(2020). 家庭裁判所―少年と家庭の将来を見据えた司法的解決を目指して. 門本泉(編).司法・犯罪心理学―社会と個人の共生を目指す. ミネルヴァ書房.pp81-87.
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コマ主題細目
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① 少年非行の推移 ② 少年法の概要 ③ 非行の原因 ④ 非行少年の更生
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細目レベル
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① 少年非行の推移 ア 検挙人員 少年による刑法犯の検挙人員では、1951年の166,433人をピークとする第一の波、1964年の238,830人をピークとする第二の波、1983年の317,438人をピークとする第3の波とする3つの波がある。その後は一時的な増加が見られたものの、全体として減少傾向にあり、2012年以降は戦後最小を記録している。 少年刑法犯人口比(10歳以上20歳未満の少年10万人当たりの少年刑法犯検挙人員の比率は、成人のそれよりも常に高い傾向にあるが、その差は年々縮まっている。1981年の第1のピーク、1998年の第2のピーク、2003年の第3のピーク以降は減少続けている。 イ 罪種別 近年の少年刑法犯の罪種別については、いずれの年も窃盗、横領(主に自転車の占有離脱物横領)、傷害の順に構成比が高い。総数としては2003年以降減少しているが、増加している罪種として、詐欺、不同意性交等、大麻取締法、脅迫が挙げられる。特に、大麻取締法違反により検挙される少年の人員の増加が顕著である。増加の原因として、大麻に対する有害性の認識が低いこと、インターネットを通じて違法薬物の情報を容易に入手できること、SNSを介した取引が普及したことが考えられる。 ウ 家庭内暴力 少年非行の件数が減少している一方で、少年による家庭内暴力事案の認知件数は、2012年から増加し続け、2021年は減少したものの、2022年は再び増加し、4,551件(前年比9.9%増)であった。就学・就労別で見ると、2015年以降、中学生が最多である。近年、小学生による家庭内暴力の認知件数が大きく増加している。家庭内暴力の被害者は、一貫して母親が最多である。少年刑法犯検挙人員が減少傾向であるが、少年非行が家庭内で生じやすくなっていることが大きな問題と言える。 エ いじめ いじめは、特定の個人に対して、集団や個人が継続的に精神的、肉体的な苦痛を与える行為である。文部科学省は、いじめを「当該児童・生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義し、学校内外で行われるすべての行為を含むとしている。この定義には、暴力行為や言葉の暴力、ネット上での中傷などが含まれる。いじめは、加害者が被害者を意図的に攻撃し、支配・排除する目的で行われることが多く、被害者に深刻な影響を及ぼすものである。 いじめの件数は増加しており、その背景には、教育現場でのいじめに対する認識が進んだことが挙げられる。文部科学省は、いじめを早期に発見し、適切に対処することの重要性を強調しており、教員に対する研修や指導が強化された結果、いじめの報告件数が増加したと考えられる。また、インターネットやSNSの普及により、サイバー空間でのいじめの増加も統計に反映されている。 【到達目標】 • 少年刑法犯検挙人員の推移について説明することができる。 • 少年非行の罪種別の特徴と近年増加している罪種を説明することができる。 • 家庭内暴力やいじめの増加と、その背景要因について説明することができる。
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② 少年法の概要 少年法は、日本における未成年者の犯罪行為に対する特別な取り扱いを規定する法律である。少年法の目的は、未成年者が再び社会に適応し、健全な成長を遂げるための保護と教育を重視する点にある。具体的には、20歳未満の者を「少年」として扱い、犯罪を犯した場合でも刑罰よりも教育的措置が優先される。 少年法では、犯罪を起こした少年に対し、家庭裁判所が中心となり、審判を行う制度が設けられている。家庭裁判所は、少年の家庭環境や心理状態、生活歴などを考慮し、保護観察や児童自立支援施設への送致などの処分を行う。これにより、少年が社会復帰を果たし、再犯を防ぐことを目指している。また、少年事件に関する情報は原則として非公開であり、少年のプライバシー保護が重視される。 少年法の下では、14歳以上の少年が刑事責任を問われるが、20歳未満であれば原則として家庭裁判所での審判が行われる。14歳未満の者に対しては刑事責任を問えず、児童相談所を通じて適切な措置が講じられる。一方で、重大な犯罪を犯した16歳以上の少年については、検察官送致(逆送)され、成人と同様に刑事裁判が行われる場合もある。 少年法は未成年者の再教育と社会復帰を重視する一方で、犯罪被害者や社会の安全を保護する観点から、処分の厳格化が求められる場合もある。近年、重大犯罪を犯した少年に対する厳罰化の議論が進み、2022年の改正では、18歳と19歳の者(「特定少年」と呼ぶ。)に対する処遇が一部厳格化された。 家庭裁判所調査官や法務省技官等の専門家も法律に基づいて業務に当たっているため、とりわけ少年法の理解に努めてほしい。 【到達目標】 • 少年法の目的と基本理念を説明することができる。 • 2022年改正による特定少年の位置づけを説明することができる。
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③ 非行の原因 少年の非行は、複数の要因が絡み合う結果として発生するが、特に心理的要因が大きな影響を与える。少年期は、自我の形成や他者との関係性を構築する重要な時期であるが、この過程で自己肯定感の低下や感情のコントロールが困難になることが、非行につながる一因と言える。 自己肯定感が低い少年は、自分に価値を見出せず、周囲からの否定的な評価に過敏になることが多く、自分を守るために攻撃的な行動を取ったり、仲間内での地位を保つために非行に走ったりすることがある。また、例えば親からの虐待または過度の期待など家庭環境が不安定である場合、少年は安心感や基本的信頼感を持てず、非行行動を通じて自己表現やストレス解消を試みることがある。 さらに、感情のコントロールがうまくできない少年は、衝動的な行動を取る傾向があり、これが非行に繋がることがある。特に、怒りや不安を抱えた少年がその感情を適切に処理できず、暴力行為や窃盗などの反社会的な行動に出ることがある。また、仲間からの影響も大きく、同調圧力や仲間内での承認欲求が強い場合、非行を行うことで集団内の一体感を得ようとすることがある。 なお、第1回授業で見たとおり、犯罪の抑制に関わっている背外側前頭前皮質の容積や機能がヒトの20歳代後半まで進行する一方、感情と報償感を制御している大脳辺縁系は前頭前皮質が未熟な10歳ころにホルモン量が増えて成熟が促されることがわかっている。すなわち、10代の若者は感情をつかさどる大脳辺縁系と衝動的な行動を抑制する前頭前皮質の成熟がミスマッチな状態であり、犯罪等の危険な行動を取りやすいことが明らかにされている。しかし、環境が適切に整えられれば、10代の若者も適応することが可能であるという脳の可塑性も明らかにされている。 【到達目標】 • 少年非行に関与する心理的要因、家庭的要因、仲間関係要因を説明することができる。 • 自己肯定感の低さや感情統制の困難さと非行との関連を説明することができる。 • 脳の発達や可塑性の観点から、非行のリスクと支援可能性を説明することができる。
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④ 非行少年の更生 非行少年の更生は、複数の機関が連携して取り組む重要な課題であり、それぞれの機関において心理職が重要な役割を果たしている。警察、児童相談所、家庭裁判所、少年鑑別所、少年院での心理職の業務を通じて、少年の非行に至る心理的及び社会的背景を理解し、適切な支援が提供されることが、少年の更生に必要である。また、少年の非行の背景に、非行少年自身が犯罪被害や児童虐待等の体験(「小児期逆境体験」と呼ぶ。)を有していることが少なくないことから、非行少年と関わる場合は、当該少年に小児期逆境体験があることを想定して関わりを進めることが重要である。このように、対象者にトラウマ体験があることを想定して支援を行うことをトラウマインフォームドケアと呼ぶ。 以下、各機関での非行少年の更生について説明する。 ア 警察 警察における少年サポートセンターでは、非行少年や問題行動を起こした少年に対する初期対応が行われる。ここでの心理職の役割は、少年の心理状態や家庭環境をアセスメントし、少年及び保護者へのカウンセリングを通じて少年の立ち直りのための支援を行う。警察の対応は、少年の非行が進む前に問題を解決するために重要ある。 イ 児童相談所 児童相談所では、非行少年に対する保護や支援が行われる。児童相談所の心理職(相談員)は、少年の生活環境や心理的な問題をアセスメントし、適切な支援策検討する。また、家庭内での問題や虐待の有無を確認し、必要に応じて一時保護や他の支援機関との連携を行う。また、虐待を行う保護者への指導も行う。 ウ 家庭裁判所 家庭裁判所では、少年の処遇を決定するために、家庭裁判所調査官が中心となって調査が行われる。家庭裁判所調査官は、少年の将来を見据えた最適な処遇を決定するために、少年の心理的特性のほか家庭環境や交友関係等の非行の原因を分析し、裁判官に対して処遇の提案を行う。この段階での心理的評価は、少年の更生の方向性を左右する重要な要素である。 エ 少年鑑別所 少年鑑別所では、家庭裁判所から送致された少年が一時的に収容され、医学、心理学、教育学、社会学などの専門的知見に基づいた鑑別が行われる。少年鑑別所における法務技官(心理)の役割は、少年の性格や行動特性、心理的問題を詳細に評価し、家庭裁判所に提出する鑑別報告書の作成に寄与することである。この鑑別結果は、少年の処遇を決定する上で極めて重要な情報源となる。 オ 保護観察所 保護観察所では家庭裁判所の決定により保護観察に付された少年に対して、原則として20歳になるまで、または保護観察が解除されるまで、保護観察を行う。保護観察では、保護観察官や保護司が少年の更生のために必要な指導監督及び補導援護(対象者が自立した生活を送るため、住居、職業、生活環境などに対する援助)を行う。 なお、少年に対する保護観察は、家庭裁判所の決定による場合のほか、地方更生保護委員会の決定により少年院からの仮退院が許されたものも、保護観察に付される。 カ 少年院 少年院は、家庭裁判所で保護処分を受けた少年が更生プログラムを受ける場である。少年院の法務技官(心理)は、少年の心理的問題を軽減し、健全な社会復帰を支援するためのプログラムを実施する。具体的には、個別カウンセリングや集団療法を通じて、少年が自分の行動を振り返り、自己理解を深める手助けを行う。また、社会的スキルや感情のコントロールを養うための教育も提供される。これにより、少年が再び社会に適応し、再犯を防ぐための土台が築かれる。 以上のように、非行少年の更生には、各機関での心理職の役割が非常に重要である。心理職の専門的な支援を通じて、少年たちは自らの問題と向き合い、健全な社会復帰を目指すことができる。各機関が連携し、少年に対する包括的な支援を提供することで、非行の再発防止と更生が促進されことが期待されている。 【到達目標】 • 非行少年の更生に関わる主要機関の役割を説明することができる。 • トラウマインフォームドケアの考え方を説明することができる。
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キーワード
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① 少年による犯罪の検挙人員の推移 ② 少年法 ③ 家庭裁判所 ④ 少年鑑別所 ⑤ 保護観察所
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 本講義において扱った非行少年に関する部分を復習し、少年の非行の統計や原因等について確認しておくこと。 【復習】 非行少年の手続きに関わる各機関の業務を簡潔に説明できるようになること。
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時間軸と空間軸から捉える犯罪2 殺人~加害者の動機、更生、被害者の特徴と支援~
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科目の中での位置付け
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犯罪の中でも加害者及び被害者遺族に重大な結果を及ぼす殺人について、加害者の動機、更生、被害者及び被害者遺族の特徴と支援を扱う。
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細目レベル⑤ 小西聖子(1996). 犯罪被害者の心の傷. 白水社. pp9-56.
小西聖子(1998). 犯罪被害者遺族. 東京書籍. pp13-108.
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コマ主題細目
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① 殺人事件の推移 ② 殺人加害者と被害者の面識関係 ・動機 ③ 殺人事件の加害者の更生 ④ 殺人事件の被害者遺族の心理と支援
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細目レベル
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① 殺人事件の推移 日本における殺人事件の認知件数は、長期的に減少傾向にある。戦後のピークは1950年代であり、当時は年間3,000件以上の殺人事件が発生していた。しかし、経済成長とともに治安も向上し、1990年代以降は年間1,000件を下回るようになった。近年は減少傾向で、2020年には認知件数が929件、2021年が874件、2022年が853件であったが、2023年が912件、2024年が970件と増加に転じている。 大きな流れでは殺人事件の認知件数は減少しているが、その背景として、第1に少子化の影響が考えられる。犯罪の主な担い手は30歳未満の若者であるが、若者の人口が減れば犯罪も減ると考えられ、戦後の日本でも少子・高齢化の進行とともに犯罪は減少している。第2に、防犯カメラの普及や街灯の整備など、犯罪抑止力の向上がある。第3に、警察の捜査技術の進歩により、検挙率が維持されていることも犯罪を思いとどまらせる要因と考えられる。その他の減少の要因として、銃規制の厳格さ、貧困率の相対的な低さ、そして社会の安定性が挙げられる。加えて、学校教育や家庭環境の改善、メディアを通じた防犯意識の向上なども、殺人事件減少に寄与していると考えられる。 一方で、ストーカーによる元交際相手等の殺害、介護疲れによる高齢者の配偶者の殺害、児童虐待の末の子どもの殺害など、社会の耳目を集める新たな形態の殺人事件も発生しており、社会の変化に対応した対策が求められる。 【到達目標】 • 日本における殺人事件の長期的な推移を説明することができる。 • 殺人事件の減少要因と近年の増加傾向について説明することができる。 • 社会の変化に伴って現れている新たな殺人事件の特徴を説明することができる。
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② 殺人加害者と被害者の面識関係 ・動機 日本の殺人事件では、加害者と被害者の間に何らかの面識がある場合が多い。警察庁の統計では次のとおりとなっている。面識ありの事件の中で最も多いのは、親族間の殺人である。これには配偶者間(夫婦間)の殺人、親子間の殺人、兄弟姉妹間の殺人などが含まれる。特に配偶者間の殺人は、ドメスティックバイオレンス(DV)が発展したケースも少なくない。2023年に発生した既遂検挙件数203件のうち、親族間によるものは104件(51.2%)であり、親(36件、17.7%)、配偶者(31件、15.3%)、子(21件,10.3%)の順に多い。次に多いのは知人間の殺人である。2023年では、知人・友人が27件(13.3%)、交際相手が21件(10.3%)、職場関係者が8件(3.9%)などである。金銭トラブルや恋愛関係のもつれなどが動機となることが多い。 一方、面識なしの殺人は15件(7.4%)である。面識なしの殺人事件は、犯行の予測や防止が難しいため、社会に与える影響が大きい。近年では、インターネットを通じて知り合った相手による殺人など、新たな形態の事件も増加している。これらは従来の面識の定義を曖昧にし、事件の分類や対策に新たな課題を投げかけるものである。 このような面識関係の統計は、殺人事件の予防や捜査において重要な指標となっている。心理学の知見を活用して人間関係の問題の探求につながるものであるため、深く理解すること。 【到達目標】 • 殺人事件における加害者と被害者の面識関係の特徴を説明することができる。 • 親族間、知人間、面識なしの事件の違いを説明することができる。
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③ 殺人加害者の更生:特別改善指導(被害者の視点を取り入れた教育) 刑務所における殺人事件の加害者に対する特別改善指導の中で、被害者の視点を取り入れた教育は特に重要な位置を占めている。この教育プログラムは、加害者に自らの犯罪行為が被害者やその遺族、さらには社会全体に与えた影響を深く理解させることを目的としている。プログラムでは、被害者や遺族の手記を読むこと、ビデオ講話を視聴すること、また、被害者支援団体の関係者による講話を聴くことなどが含まれる。これらの活動を通じて、加害者は被害者側の心理的苦痛、喪失感、生活面のを具体的に学ぶ。 心理技官は、このプログラムの実施において中心的な役割を果たす。心理技官は、加害者の心理状態を継続的に評価し、個々の受刑者の理解度や反応に応じてプログラムの内容を調整する。また、グループワークやロールプレイングなどを用いて、加害者の共感能力を育成する取り組みも行う。さらに、心理技官は加害者の内省を促すための個別カウンセリングも実施する。ここでは、加害者が自身の犯罪行為を直視し、その責任を受け入れるプロセスを支援する。同時に、加害者の精神的な安定を図りつつ、贖罪意識を高め、再犯防止への動機づけを強化する。 このプログラムの最終段階では、加害者に被害者や遺族への謝罪の手紙を書かせるなど、具体的な行動を通じて学んだことを表現させる取り組みも行われる。心理技官は、これらの活動全体を通じて、加害者の変化や成長を見守り、評価する役割を担っている。 【到達目標】 • 被害者の視点を取り入れた教育の目的を説明することができる。 • 加害者更生プログラムにおける心理技官の役割を説明することができる。
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④ 犯罪被害者遺族が置かれる現状と支援 殺人事件の犯罪被害者遺族が受ける心理面、生活面、経済面の影響はそれぞれ大きく、次のような状態に直面することとなる。 ア 心理面の影響 遺族は深い悲しみや怒り、無力感に襲われる。PTSDやうつ病を発症するリスクが高く、長期的な心理的ケアが必要となる。事件の詳細や裁判過程で繰り返し被害体験に直面することとなり、心理的な影響が長期間持続する可能性がある。その必要な支援として、心理教育を通じた症状の理解と対処法の習得に関する支援、必要により専門的なカウンセリングや心理療法の提供、同じ経験を持つ遺族との交流の場(自助グループ等)の設定などがある。 イ 生活面の影響 遺族は日常生活の大きな変化を強いられる。特に収入の柱であった人や家庭を切り盛りしていた人が亡くなった場合、家族の役割再編が必要となる。仕事や学業の継続が困難になったり、転居を余儀なくされたりすることもある。さらに、マスメディアの取材や裁判対応など、新たな負担も生じる。その必要な支援として、日常生活の援助(家事支援、子育て支援など)、職場や学校との調整支援、法的手続きや行政手続きの支援、メディア対応に関する助言などがある。 ウ 経済面の影響 被害者の収入喪失による経済的打撃が大きい。特に、収入の柱であった人が亡くなった場合、遺族は経済的な困難に直面することとなる。葬儀費用、弁護士費用、医療費など予期せぬ出費も重なり、子どもの就学など長期的な生活設計の変更を余儀なくされる。その必要な支援として、警察が実施する犯罪被害者給付金制度の利用支援、地方自治体や社会福祉事務所が窓口となる生活資金や就労支援の提供、弁護士会等が窓口となる法律相談や損害賠償請求の支援などがある。 これらの影響は相互に関連し、長期にわたって遺族の生活に影響を与える。そのため、心理、生活、経済の各面で包括的かつ継続的な支援が必要となる。支援においては、遺族の個別のニーズに応じた柔軟な対応が求められる。また、社会全体の理解と支援体制の整備も重要である。警察、検察、裁判所、福祉機関、医療機関、民間支援団体などが連携し、切れ目のない支援を提供することが必要である。 【到達目標】 • 殺人事件の被害者遺族が受ける心理的影響を説明することができる。 • 生活面・経済面における遺族の困難を説明することができる。 • 遺族支援において包括的かつ継続的支援が必要である理由を説明することができる。
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キーワード
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① 殺人事件の認知件数の推移 ② 殺人加害者と被害者の面識関係 ③ 特別改善指導(被害者の視点を取り入れた教育) ④ 犯罪被害者遺族
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 これまで扱った成人の刑事手続き、犯罪原因論について、コマシラバスや文字教材を読むこと。 【復習】 殺人事件の統計、加害者と被害者の面識関係、動物虐待と殺人の関係(素行障害を含む)、殺人事件の被害者遺族の心理について簡潔に説明できるようになること。
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時間軸と空間軸から捉える犯罪3 性犯罪~加害者の動機、更生、被害者の特徴と支援~
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科目の中での位置付け
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犯罪の中でも被害者に重大な心身の影響を及ぼす性犯罪について、加害者の動機、刑事司法手続き及び更生、被害者の心理及び支援を扱う。
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細目レベル① 西田篤・元木良洋(2017).性犯罪者の横顔. 門本泉・嶋田洋徳(編) 性犯罪者への治療的・教育的アプローチ. 金剛出版. pp47-62.
越智啓太(2013). ケースで学ぶ犯罪心理学. 北大路書房. 63-73.
渡辺巧(2009). 犯罪学入門. 成文堂. pp59-76.
細目レベル⑤ ジュディス・L・ハーマン(1992). 心的外傷と回復. みすず書房. pp46-74.
小西聖子(1996). 犯罪被害者の心の傷. 白水社. pp23-94.
宮﨑浩一・西岡真由美(2023). 男性の性暴力被害.集英社.
西日本新聞社社会部「犯罪被害者」取材班(1999). 犯罪被害者の人権を考える. 西日本新聞社.
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コマ主題細目
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① 性犯罪の発生要因 ② 性犯罪の推移及び関連法規 ③ 性犯罪事件に係る刑事司法手続き ④ 性犯罪事件の加害者の更生 ⑤ 性犯罪事件の被害者の心理と支援
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細目レベル
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① 性犯罪の発生要因 ア 不同意性交等罪(旧強制性交等罪、旧強姦罪) 不同意性交等罪の加害者は、性的欲求の充足の目的のみならず、それ以上に他者を支配したい欲求や他者に対する優越感を得ようとする心理が強く働いている。加害者は他者を物のように扱い、自らの欲求を満たすために他者の権利を侵害することに対して、罪悪感や共感を欠く傾向がある。また、自己制御能力が低いことが多く、衝動的な行動をとることが多い一方、被害者の生活環境等を調べ、警察に検挙されないように計画的に犯行に及ぶ者も少なくない。 不同意性交等罪の加害者は、被害者と何らかの形で面識がある場合が多い。これは、信頼関係や状況の悪用が犯行に結びつくことが多いためである。また、被害者が加害者を警戒しにくい状況下での犯行が多いことも、面識の有無が重要な要因であるとされる。2008年に内閣府が全国の男女5,000人を対象に実施した性暴力に関する調査の結果、「異性から無理やり性交された経験がある」と回答した123人(7.3%)のうち、その加害者は、「よく知っている人」が 61.8%、「顔見知り程度の人」が13.8%で、約8割が面識のあった者からの被害である。このように、性暴力は夜道で見知らぬ人から受けるよりも、知っている人からの被害が多い。 イ 不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪) 不同意わいせつ罪の加害者は、性的欲求の充足という点では強制性交等罪と共通するが、より直接的な身体接触を求めるケースが多い。犯行は、計画的ではなく、衝動的に行われることが多い。犯人は、他者の身体的境界を侵害することへの認識が希薄であり、自己中心的な思考が顕著である。また、自己評価が低く、他者からの注目や承認を求める心理が背景にある場合も多い。 【到達目標】 • 不同意性交等罪および不同意わいせつ罪の加害者の心理的特徴を説明することができる。 • 性犯罪において、性的欲求のみならず支配欲や優越感が関与することを説明することができる。 • 面識のある者による性暴力が多い理由を説明することができる。
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② 性犯罪の推移及び関連法規 ア 性犯罪の推移 不同意性交等及び不同意わいせつの認知件数はいずれも前年比及び令和元年(2019年)比で増加となっており、2023年では不同意性交等が2,711件、不同意わいせつは6,096件となっている。増加の背景には情勢の変化等、様々な要素があると考えられ、単純な経年比較はできないものの、不同意性交等及び不同意わいせつについて、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律により、構成要件の一部が変更されたことや、政府として性犯罪の被害申告・相談をしやすい環境の整備を強力に推進してきたこともあいまって、認知件数が増加したものと推認される。 イ 性犯罪の関連法規 性犯罪に関する法律は、近年二度の重要な刑法改正を経て大きく変化した。これらの改正は、性犯罪に対する社会の厳しい目や被害者保護の観点から行われたものであり、被害当事者による活動も大きく影響した。 2017年の刑法改正では、強姦罪が強制性交等罪に改められた。この改正により、被害者の性別を問わず罪に問えるようになり、また刑の下限が引き上げられ、懲役3年以上の刑罰が科されることとなった。これは、刑の下限を引き上げることにより犯罪の抑止効果を狙ったものである。同時に、監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪が新設され、18歳未満の者に対する親権者等による性的虐待を罪に問えるようになった。さらに、強制性交等罪と強制わいせつ罪が非親告罪化された。親告罪とは、被害者が告訴しなければ起訴できない犯罪のことである。つまり、被害者が「告訴」を行わない限り、検察はその犯罪について起訴できない。この変更は、被害者に告訴の負担をかけず、犯罪者の適正な処罰を目指したものである。 2023年の刑法改正では、さらに踏み込んだ改正が行われた。最も大きな変更点は、性犯罪における暴行・脅迫要件の撤廃である。これにより、不同意性交等罪と不同意わいせつ罪が新設された。これらの罪は、被害者の同意がない性的行為を広く処罰対象とするものである。また、地位・関係性利用罪も新設され、上下関係や監護関係を利用した性的行為も処罰対象となった。さらに、性交同意年齢が13歳から16歳に引き上げられ、16歳未満の者との性的行為は原則として違法となった。ただし、年齢差が小さい場合などには例外規定が設けられている。 これらの改正により、性犯罪に関する法律は被害者保護をより重視したものとなった。同意の有無を中心に据えることで、より多様な被害実態に対応できるようになったと言える。 これらの法改正の経緯は極めて重要であるため、よく理解しておくこと。 【到達目標】 • 近年の性犯罪の認知件数の推移を説明することができる。 • 2017年改正および2023年改正の主要な内容を説明することができる。
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③ 性犯罪事件に係る刑事司法手続き 性犯罪に関する司法手続きは、被害者が犯罪を警察に通報することから始まる。警察は被害者から詳しい事情を聴取し、証拠を収集する。この際、被害者はプライバシーの保護や心理支援を受けることができる。性犯罪の捜査は繊細であり、被害者の安全や心理的負担を考慮しながら進められる。 次に、警察は収集した証拠を基に捜査を進め、被疑者を検挙し、検察庁に事件を送致する。検察庁は、警察から送致された事件を精査し、被害者の意見や感情を考慮しつつ、起訴するかどうかを判断する。検察官が被疑者を起訴することとなると、裁判所に公判の開廷を請求する。被告人となった被疑者は弁護人を通じて自己防衛のための主張を行う。裁判所は、提出された証拠や証言を基に、犯罪が成立するかどうかを判断し、有罪か無罪の判決を下す。有罪と判断された場合、刑罰が科される。 被害者は、司法手続きの中で証人として出廷することが求められることがある。この場合、精神的な負担が大きいことから、衝立を用意されて被告人と顔を合わさないで済むようにしたり、別室で受け答えするビデオリンク方式などの特別な配慮がなされる。また、裁判所が被害者のために控室を用意し、警察や検察庁または民間被害者支援団体の被害者支援員や検察官が公判前や公判後に被害者に説明したり、落ち着くための面談を行ったりなど、被害者保護の取り組みが行われている。 【到達目標】 • 性犯罪事件の通報から裁判までの流れを説明することができる。 • 性犯罪捜査において被害者の心理的負担に配慮した手続を説明することができる。 • 被害者保護のための各種措置について説明することができる。
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④ 性犯罪事件の加害者の更生 性犯罪者の更生のために、矯正施設(少年院や刑務所等)において再犯防止と社会復帰を目的として矯正プログラムが実施されている。 ア 少年院 少年院では、家庭裁判所で「少年院送致決定」を受けた入所時20歳未満の少年を通常1年間収容し、矯正教育を行う。少年刑務所は刑務所の一種で、未成年者が受刑することとなったとき、原則として少年刑務所に収容される。 少年院では、在院生ごとのより個別的な問題に応じた働きかけを行うため、特定生活指導が用意されている。特別生活指導の一つに性非行防止指導がある。内容は次のとおりである。まず、性に関する正しい知識と理解を深めるための教育が行われる。これには、身体的・心理的な性の発達や、性感染症、避妊などの基本的な知識が含まれる。次に、自己の行動を振り返り、問題点を認識させる指導が行われる。ここでは、非行に至った経緯や、その行為が被害者や社会に与えた影響について考えさせる。さらに、被害者への共感性を育成する取り組みが行われる。被害者の心情を理解し、自らの行為の重大さを認識させることにより、再非行防止への動機づけを高める。また、適切な対人関係スキルの獲得を目指し、コミュニケーション能力の向上や、健全な人間関係の構築方法を学ぶことで、社会適応力を高める。最後に、再非行のリスク因子を特定し、それに対処する方法を学ぶ。ストレス管理技術や衝動制御の方法など、具体的なスキルの習得を目指す。これらの指導は、個別指導とグループワークを組み合わせて実施される。専門的な訓練を受けた法務教官や心理技官が中心となって指導にあたる。 イ 刑務所 刑務所では、性犯罪の要因となる認知の偏り,自己統制力の不足等がある者を対象に、性犯罪再犯防止指導が行われている。これは、グループワーク及び個別に取り組む課題を中心とし、必要に応じてカウンセリングその他の個別対応が行われる。法務教官、法務技官、刑務官、処遇カウンセラー(認知行動療法の技法に通じた臨床心理士等)が担当しする。 オリエンテーションでは指導の目的の理解、性犯罪につながる問題生を助長させるおそれがある行動の理解、対象者の不安の軽減が行われる。ついで、準備プログラムでは、参加者の動機づけを高めさせる。ついで、第1科から第5科までの本科が実施される。それぞれの科での目標は、第1科では自己統制、第2科では認知の歪みと変容の方法、第3科では対人関係と親密性、第4科では感情統制、第5科では共感と被害者の心情の理解となっている。 【到達目標】 • 少年院における性非行防止指導の内容を説明することができる。 • 刑務所における性犯罪再犯防止指導の構成を説明することができる。 • 加害者の更生において、認知の歪みの修正、自己統制、共感性の育成が重要であることを説明することができる。
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⑤ 性犯罪事件の被害者の心理と支援 性犯罪の被害者は、恐怖や不安、恥辱感、無力感など、さまざまな感情に直面する。特に、信頼していた人からの被害や、暴力を伴う性犯罪の場合、その心理的影響は深刻であり、長期的に持続することがある。 被害者は、麻痺症状または解離症状のため、事件後すぐには感情をうまく表現できず、混乱状態に陥ることもある。このような状況では、自分を責める傾向が強くなることがあり、「なぜ自分がこうなったのか」「自分に何か問題があったのではないか」といった自己批判的な考え持つことがある。これらの感情は、被害者の自尊心を著しく低下させ、日常生活に支障をきたす。 また、性犯罪被害者は、人間に命の危険を感じる暴力を受けたことから、他者への信頼関係を築くことが難しくなり、孤立感を感じることがある。このような心理的状態は、被害者が再び社会に適応するのを難しくし、長期的な心理的支援が必要となることがある。 性犯罪被害者に対する医療的支援として、直後には婦人科において適切な処置及び緊急避妊が行われる。全国警察では婦人科医院等と協定を結び、被害者の負担が減るような診療・聴取の体制を整えている。加えて、心理的支援が非常に重要である。まず、被害者が経験している心身の状態が「異常な事態における正常な反応」であり、無理もないことなどを説明する心理教育が行われる。そして、被害者の回復力(レジリエンス)が取り戻されることが期待されるが、外傷後ストレス障害(PTSD)の症状が持続する場合は、心理療法を通じて、被害者がトラウマに関する記憶を処理する支援が必要となる。 なお、近年になり、男性の性暴力被害者の心理的影響の大きさが理解されるようになった。男性の被害者はなかなか他者に被害の相談をすることができずに一人で抱え込むことがあり、回復の遅れが顕著となる。たとえば、自身は被害について苦痛であったにもかかわらず、加害者によって性的快感を覚えさせられることがある。これは被害者自身ではコントロールができないものであるが、被害者は自責感や屈辱感を持ち、一方で加害者からは同意のうえであった旨の発言を受けるなど、被害者は複雑な心理状態となる(宮﨑・西岡,2023)。 【到達目標】 • 性犯罪被害者に生じやすい心理的反応を説明することができる。 • 男性被害者を含め、多様な被害者に応じた支援の必要性を説明することができる。
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キーワード
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① 性犯罪に係る刑法改正 ② 性犯罪者の心理 ③ 動機づけ面接 ④ 性犯罪再犯防止指導 ⑤ 性犯罪被害者の心的外傷
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 第7回のコマシラバスを読み、性犯罪の罪種、関連法規について大枠を把握しておくこと。 【復習】 性犯罪の各罪種ごとの発生要因、性犯罪の刑法改正の経緯、性犯罪者の更生、性犯罪被害者の心理について、それぞれ200字程度で説明できるようになること。
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時間軸と空間軸から捉える犯罪4 ストーキング~加害者の動機、更生、被害者の特徴と支援~
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科目の中での位置付け
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犯罪の中でも被害者の心理面に重大な影響を及ぼすとともに、殺人事件にも発展する危険性があるストーキング犯罪について、加害者の動機、刑事司法手続き及び更生、被害者の心理及び支援を扱う。
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細目レベル① Mullen, P.E., Pathe,M., & Purcell,R. (2000). Stalkers and their victims. 詫摩武俊(監訳)・安岡真(訳). ストーカーの心理―治療と問題の解決に向けて. サイエンス社. pp71-187.
越智啓太(2013). ケースで学ぶ犯罪心理学. 北大路書房. 75-87.
細目レベル①~② 渡辺巧(2009). 犯罪学入門. 成文堂. pp59-76.
細目レベル①、④ Dixon,L. & Bowen,E.(2024). Interpersonal violrence and stalking. In Davies,D.M.,Beech,A.R.,& Colloff,M.F. (Ed) Forensic Psychology: Crime, Justice, Law, Interventions, 4th Edition, Willey. Pp337-366.
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コマ主題細目
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① ストーキング犯罪の発生要因及びストーカーの類型 ② ストーキング犯罪の推移及び関連法規 ③ ストーキング犯罪の加害者の更生 ④ ストーキング犯罪の被害者の心理と支援
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細目レベル
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① ストーキング犯罪の発生要因及びストーカーの類型 ア ストーキング犯罪の発生要因 ストーキング加害者の多くに見られる特徴として、対人関係の未熟さがある。健全な人間関係を築く能力が不足しており、相手の気持ちを適切に理解し尊重することが難しい。これが、相手の意思を無視した執着行動につながる。次に、強い所有欲や支配欲が挙げられる。加害者は被害者を自分のものとして扱いたいという欲求を持ち、相手の自由を認めることができない。この欲求が満たされないと、怒りや焦りを感じ、さらに執着行動を強めていく。また、現実認識の歪みも重要な要因である。加害者は、被害者との関係性を実際以上に親密なものと誤って認識していることが多い。些細な行動を好意の表れと解釈したり、拒絶を一時的なものと考えたりする。 自己愛性パーソナリティ障害の特徴を持つ加害者も少なくない。過大な自己評価と承認欲求が強く、拒絶に対して極端に敏感で怒りを感じやすい。被害者からの拒絶を自尊心への脅威と捉え、報復的な行動に出ることがある。相手が拒絶や不快感を示しても、それを無視し、行動を正当化する思考を持つ。 さらに、アタッチメント(愛着)の問題も指摘されている。不安定なアタッチメントスタイルを持つ加害者は、親密な関係性に対して強い不安や恐れを感じ、それが過度の執着や支配的行動として表れる。 ストーキング犯罪には、これらの要因が組み合わさることにより発生の可能性が高まる。まとめると、未熟な対人関係、執着心、共感の欠如、過去の逆境・被害体験、自己中心的な思考が、加害者の心理に影響を与え、ストーカー行為につながる。このため、ストーキング犯罪の予防や対処には、加害者の心理的問題に焦点を当てた介入が必要である。 イ ストーカーの5類型 ストーカーの類型として、ミューレンら(Mullen et al.)は次のように5つのタイプに分類している。 (1)拒絶型(The Rejected Stalker) (2)復讐型・憎悪型(The Resentful Stalker) (3)略奪型・性的攻撃型(The Predatory Stalker) (4)親密希求型ストーカー(The Intimacy-Seeking Stalker) (5)相手にされない求愛型(The Incompetent Stalker) 【到達目標】 • ストーキング犯罪の発生要因として、対人関係の未熟さ、支配欲、認知の歪み、愛着の問題などを説明することができる。 • ストーカー加害者にみられる自己愛的特徴や拒絶への過敏さについて説明することができる。 • ミューレンらによるストーカーの5類型を挙げ、それぞれの特徴を説明することができる。
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② ストーキング犯罪の推移及び関連法規 ア ストーキング行為に関する件数 2010年代前半から中盤にかけて、ストーキング行為の認知件数は急増したが、2012年に「ストーカー規制法」が改正され、規制が強化され、被害者が警察に通報することが増え、認知件数が増加したことが要因と考えられる。 2012年のストーカー規制法改正以降のデータを見ると、ストーキング行為は社会問題として依然として深刻であり、警察や社会全体での継続的な取り組みが求められている。特に、被害者が早期に警察に相談しやすい環境を整えることが重要であり、法整備や支援体制の強化が引き続き必要である。 イ ストーカー規制法 ストーカー規制法(正式名称: 「ストーカー行為等の規制等に関する法律」)は、ストーカー行為から被害者を保護し、犯罪を未然に防ぐための法律である。この法律は、桶川ストーカー殺人事件等の社会問題化を受け、ストーカー被害者の安全確保と加害者への対策が急務となったことを背景に2000年に制定され、その後数回の改正を経て、ストーカー行為への対処が強化されている。以下に、ストーカー規制法の概要と、主要な改正ポイントを説明する。 (1)ストーカー規制法の概要 ストーカー規制法は、特定の個人に対して執拗な追跡や付きまとい、監視、嫌がらせなどを行うストーカー行為を禁止し、これに対して刑事罰を科すことを目的としている。次のような行為をストーカー行為として規制している。 ・つきまとい・待ち伏せ: 被害者の自宅や職場付近での執拗な待ち伏せ。 ・監視・尾行: 被害者を監視したり、後をつけたりする行為。 ・無言電話・しつこい連絡: 被害者に対して繰り返し電話やメールを送りつける行為。 ・名誉毀損・侮辱: 被害者に対して誹謗中傷や侮辱的な言葉を浴びせる行為。 ・性的羞恥心を害する行為: 被害者の性的なプライバシーを侵害する行為。 被害者がこのような行為を受けた場合、警察に相談し、警告や接近禁止命令を出すことができる。また、違反者には刑事罰が科されることがある。 (2)ストーカー規制法の改正のポイント 電子メールやインターネットを利用した新しい形態のストーカー行為が規制対象に追加され、法の適用範囲が拡大されてきた。2013年、2016年、2021年の改正のポイントは次のとおりである。 ・2013年改正 ・電子メールの規制:しつこいメールの送信がストーカー行為として処罰の対象となった。 ・警察本部長等の権限を拡大し、禁止命令等を出せるようにした ・罰則を強化(懲役刑の上限を1年から2年に引き上げ) ・2016年改正 ・インターネット上の執拗な行為の規制: インターネットを利用した執拗な行為(SNSでの嫌がらせや監視)が規制対象に追加。 ・GPS追跡の規制: 加害者が被害者の車や持ち物にGPS端末を取り付けて追跡する行為が規制対象に追加。 ・国及び地方公共団体によるストーカー加害者に対する更生支援の実施。 ・2021年改正 ・リベンジポルノ等の画像等の無断公表を規制対象に追加。 ・接近禁止命令の実効性確保のため、被害者の住所等を秘匿できる制度を導入。 ・罰則のさらなる強化(懲役刑の上限を2年から3年に引き上げ) 【到達目標】 • ストーキング行為の認知件数の推移と、その背景にある通報環境や法改正の影響を説明することができる。 • ストーカー規制法の目的と、規制対象となる行為の内容を説明することができる。
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③ ストーキング犯罪の加害者の更生 各地の警察で、個別の加害者ごとに判断して治療を具体的に働きかける取り組みを進められてきたが、2024年からストーカー規制法に基づき被害者への接触などを禁じる禁止命令を受けた加害者全員を対象に、警察が連絡して近況などを確認する制度が開始された。加害者全員を対象に、禁止命令を出す際に、医療機関での治療やカウンセリングが有効な場合があることをリーフレット等で知らせる。そして、警察が電話や訪問などで加害者に連絡し、被害者への執着の程度や生活の様子などを確認し、その度に再発や報復の恐れなどのリスクを評価する。 ストーカー加害者に対する国費による警察主導のカウンセリング治療プログラムは、ストーカー規制法の改正に基づいて2017年から開始された。対象者は警察から警告や禁止命令等を受けたストーカー加害者であり、参加は任意で、実施は警察署や関連施設で行われる。実施者はストーカーの心理に通じた精神科医、臨床心理士、公認心理師である。カウンセリングの内容は、認知行動療法を中心としたアプローチであり、ストーカー行為の問題点の理解、適切な感情表現と対人関係スキルの習得、再犯防止のための具体的な計画立案である。 ただし、参加が任意であるため、真に更生が必要な加害者が参加しない可能性があるほか、長期的な効果の検証が必要である。 【到達目標】 • ストーカー加害者に対する警察の矯正制度の概要を説明することができる。 • 認知行動療法を中心とした加害者プログラムの目的と内容を説明することができる。 • 加害者更生の課題として、任意参加であることや長期的効果の検証の必要性を説明することができる。
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④ ストーキング犯罪の被害者の心理と支援 ストーカー被害者は、継続的な恐怖や不安にさらされ、深刻な心理的影響を受けることが多い。また、ストーカー被害により生活全般にわたって様々な問題が生じる。 ア ストーカー被害者の心理 ストーカー被害者が経験する心理的影響は、以下のようなものが代表的である。 ・恐怖と不安: 被害者は、ストーカー行為によって常に監視されているという感覚になる。この恐怖と不安は、日常生活の中で逃れられないものであり、常に緊張状態になる。 ・過度の警戒心: 常に監視されている感覚により、自分の身を守るために常に逃げるか闘うかという状態になり、過度の警戒心を抱くようになる。換言すると自律神経系が興奮状態となり、交感神経が優位な状態が続く。これにより、被害者の疲労が募ることとなる。 ・無力感: ストーカー行為に対して何もできないという無力感を抱く。また、被害者は、警察に相談しても行動が止まらない場合、自分が守られていないと感じることが多い。 ・PTSD症状: 長期間にわたるストーカー行為は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こすことがある。被害者は、ストーキング被害により生命の危険を感じると、覚醒亢進(過度の警戒)、再体験(被害状況が思い出されたり悪夢を見たりする)、回避・麻痺(被害に関することを避けたり、被害が現実に起きたものではないと感じる)といったPTSD症状の全て、もしくは部分的に症状を呈することがある。 イ ストーカー被害者への支援 ストーカー被害者には、次のような心理的なケアが必要である。 ・安全・安心の確立:被害者は自宅にいてもストーカーに見張られているという感覚を持つことから、安全な環境を確保し、安心感を持ってもらうことが重要である。また、警察から緊急通報装置が貸し出され、緊急時に発報されると警察に通報が届く体制を取ることも可能である。 ・心理支援:被害にあったときには上記のような心身の反応が生じても自然なものであるという説明を行う。これを心理教育という。そして、不安が高まったときのために、ストレス対処法の習得を支援する。 ・PTSD症状の軽減:加害者が検挙されている犯罪被害と異なり、ストーカーの加害者が未検挙の場合は、被害者にPTSD症状があったとしても軽減は難しく、恐怖や不安は自己の生存のために必要でもあるので、被害者の恐怖や不安を傾聴し、ストレス対処の指導が中心となる。 【到達目標】 • ストーカー被害者にみられる恐怖、不安、過覚醒、無力感、PTSD症状について説明することができる。 • 被害者支援において、安全・安心の確保が最優先となる理由を説明することができる。
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キーワード
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① ストーカー規制法 ② ストーキングの形態 ③ ストーカーに対する精神医学的・心理学的アプローチ ④ ストーキング被害者の心理
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 第8回のコマシラバスを読み、ストーキング犯罪の発生要因、ストーカーの類型、ストーカー禁止法の改正経緯、ストーカー被害者の心理について大枠を把握しておくこと。 【復習】 ストーキング犯罪の発生要因、ストーカーの類型、ストーカー禁止法の改正経緯、ストーカー被害者の心理について簡潔に説明できるようになること。
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時間軸と空間軸から捉える犯罪5 児童虐待、ドメスティック・バイオレンス ~加害者の動機、更生、被害者の特徴と支援~
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科目の中での位置付け
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親子や夫婦といった家族において発生する対人暴力である児童虐待及びドメスティック・バイオレンス(DV)について、加害者の動機、刑事司法手続き及び更生、被害者の心理及び支援を扱う。
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細目レベル①~③ 渡辺巧(2009). 犯罪学入門. 成文堂. pp77-94.
細目レベル③ Bancroft,L. & Silverman,J.G. (2002). The batterer as parent addressing the impact of domestic violence on family dynamics. 幾島幸子(訳). DVにさらされる子どもたち. 金剛出版. 3-36.
小西聖子(2001). ドメスティック・バイオレンス. 白水社. pp7-100.
越智啓太(2013). ケースで学ぶ犯罪心理学. 北大路書房. 89-94.
細目レベル⑤ Bancroft,L. & Silverman,J.G. (2002). The batterer as parent addressing the impact of domestic violence on family dynamics. 幾島幸子(訳). DVにさらされる子どもたち. 金剛出版. 37-68.
Herman,J.L.(1992).Trauma and Recovery. 中井久夫訳(1996). 心的外傷と回復. みすず書房. pp147-180.
大山みち子(1999). トラウマを受けた子どものケア. 藤森和美(編) 子どものトラウマと心のケア. 誠信書房. pp100-128.
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コマ主題細目
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① 児童虐待の推移及び関連法規 ② DVの発生状況の推移及び関連法規 ③ 児童虐待及びDVの発生要因 ④ 児童虐待及びDV の加害者の更生 ⑤ 児童虐待及びDVの被害者の心理と支援
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細目レベル
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① 児童虐待の関連法規及び推移 (1)児童虐待防止法 ア 概要 児童虐待防止法は2000年に施行された。この法律の制定背景には、1990年代後半に相次いだ児童虐待事件があり、社会的な問題として認識されるようになったことがある。この法律の目的は、児童虐待の発見・通報を促進し、虐待を受けた子どもに対する保護や支援を強化することである。さらに、虐待の再発を防止するための施策も盛り込まれている。 児童虐待防止法(児童虐待の防止等に関する法律)における児童虐待は、以下の4つの類型に定義される。極めて重要で各種試験で頻出のものなので、今回を機に覚えること。 1.身体的虐待 保護者が児童の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えることである。 2.性的虐待 保護者が児童にわいせつな行為をすること、または児童をしてわいせつな行為をさせることである。 3.ネグレクト(保護の怠慢・拒否) 保護者が児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食または長時間の放置をすることである。また、保護者以外の同居人による虐待を放置することや、保護者としての監護を著しく怠ることも含まれる。 4.心理的虐待 保護者が児童に著しい暴言を浴びせること、または著しく拒絶的な対応をすることなど、児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うことである。また、配偶者に対する暴力(DV)を児童に見せることも心理的虐待に該当する。
イ 改正 2004年に行われた初めての大規模な改正では、児童相談所や市町村が児童虐待に対して迅速に対応できるようにするための体制強化が図られた。また、虐待の定義が拡大され、次の2点が児童虐待として含まれた。(1)保護者以外の同居人による児童に対する身体的虐待、性的虐待及び心理的虐待を保護者が放置することが、保護者としての監護を著しく怠る行為(いわゆるネグレクト)。(2)児童の目前で配偶者に対する暴力が行われることなど、直接児童に対して向けられた行為ではなくても、児童に著しい心理的外傷を与えるものであれば児童虐待に含まれること(子どもの面前でのDVなど)。
(2)児童虐待の推移 ア 児童相談所における虐待対応件数 児童相談所では、児童虐待又はその疑いがあるとして一般からの相談、警察からの通告、または加害者である保護者からの直接の相談が寄せられる。 日本全体の児童虐待の件数は、子ども家庭庁が集計する児童相談所における虐待相談対応件数から見ることができる。令和2年度(2020年)に20万5944件、令和3年度(2021年)に20万7660件、令和4年度(2022年)に21万4843件と増加傾向にある。この増加の背景には、社会全体で児童虐待への関心が高まり、通報が行いやすくなったことが一因と考えられるが、実際の虐待件数が増加している可能性も否定できない。 児童相談所における虐待相談の内容別件数について、令和4年度では、心理的虐待が最多で60%、次いで身体的虐待が23%、ネグレクト(養育放棄)が16%、性的虐待が1%となっている。
イ 児童虐待による死亡事例 子ども家庭庁が調査により把握した児童虐待による死亡事例の件数及び死亡児童数は、令和3年度において68件で74人、令和4年度において65件で72人となっている。 令和4年度において、死亡した子どもの年齢は0歳が最多で、25人(44.6%)である。死因となった虐待の類型は、ネグレクトが最多で24人(42.9%)、身体的虐待が30.4%であった。主たる加害者は実母が最多で23人(41.1%)であった。加害者の動機は、子どもの世話・養育方法がわからない・余裕がないが6%(10.8%)で最多で、子どもの存在の否定が3人(5.4%)であった。 【到達目標】 • 児童虐待防止法の目的と、児童虐待の4類型について説明することができる。 • 児童虐待防止法の改正点と、面前DVが心理的虐待に含まれることを説明することができる。 • 児童相談所における虐待対応件数や死亡事例の推移から、児童虐待の現状を説明することができる。
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② DVの関連法規及び発生状況の推移 (1)DV防止法 ア 概要 配偶者からの暴力とは、配偶者からの身体に対する暴力、またはこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動である。DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)は、2001年に施行された。この法律の制定背景には、1990年代にかけて家庭内での暴力が社会問題化し、特に女性に対する暴力が深刻な問題として認識されたことがある。当時、家庭内での暴力は「家庭の中の問題」として警察が介入することが難しかったが、被害者の支援団体や女性団体の活動が活発化し、法的な対策が求められるようになった。この法律の目的は、配偶者からの暴力の防止、被害者の保護、及び支援を行うことにある。特に、警察や市町村、民間支援機関などが連携して、DVの被害者を迅速かつ効果的に保護する体制を整備することが重要視された。 なお、以下の者も法の対象となる。①事実婚の相手、②元配偶者(離婚後も引き続き暴力を受ける場合)、③生活の本拠を共にする交際相手(平成25年の改正により追加)。
DV防止法における配偶者からの暴力(ドメスティック・バイオレンス、DV)は、以下のように定義される。 ①身体的暴力 殴る、蹴る、物を投げつける、刃物で傷つけるなどの行為である。 ②精神的暴力 脅す、侮辱する、無視する、子どもに危害を加えると脅すなどの行為である。 ③性的暴力 強制的な性行為、避妊に協力しない、中絶を強要するなどの行為である。 ④経済的暴力 生活費を渡さない、外で働くことを禁止する、収入を取り上げるなどの行為である。 ⑤社会的隔離 実家や友人との付き合いを制限する、外出を制限するなどの行為である。
(2)DVの発生状況の推移 ア 配偶者からの暴力事案等(DV)の相談件数 全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられたDVの相談件数は、2014年(平成26年)は102,963件、2017年(平成29年)は106,110件、2020年(令和2年)は129,491件、2022年(令和4年)は122,211件と増加傾向にある。 警察に寄せられたDVの相談件数も増加傾向にあり、2014年(平成26年)は59,072件、2017年(平成29年)は72,455件、2020年(令和2年)は82,643件、2023年(令和5年)は88,619件であった。 イ DVの検挙件数 警察が刑法犯等(暴行事件が最多、次いで傷害事件)により検挙したDV事案の件数は高い水準で横ばいの状態である。2014年(平成26年)は6,875件、2017年(平成29年)は8,342件、2020年(令和2年)は8,702件、2022年(令和4年)は8,535件、2023年(令和5年)は8,636件であった。 このように、DVに対して社会が許さないという機運が高まり、啓発活動も進み、被害申告が増えている状況が窺われる。 【到達目標】 • DV防止法の目的と、法の対象となる関係性の範囲を説明することができる。 • DVに含まれる身体的・精神的・性的・経済的暴力および社会的隔離について説明することができる。
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③ 児童虐待及びDVの発生要因 (1)児童虐待の発生要因 ア 過去のトラウマや虐待経験 児童虐待の加害者には、子どもの頃の被虐待経験を持つ者も少なくない。児童虐待を行った親の約20%が自身も子供時代に虐待を受けた経験があるとされている(厚生労働省, 2019)。これは「虐待の世代間連鎖」と呼ばれる現象であり、加害者は無意識のうちに自分が受けた痛みや苦しみを他者に転嫁し、同じ行動を繰り返すことがある。 イ ストレスや心理的負担 経済的な問題、仕事のストレス、人間関係の問題などが児童虐待をする者に強い影響を与える。育児ストレスが高い親は、そうでない親と比較して児童虐待を行う可能性が約2倍高いことが示されている(国立成育医療研究センター, 2021)。また、日本の子育て世代の約40%が高い育児ストレスを報告しており、特に乳幼児を持つ親で顕著となっている。近年は相対的貧困家庭も増加しており、経済的に追い詰められると心理的に余裕がなくなり、苛立ちの矛先が子どもに向かうこともある。 ウ 精神疾患 児童虐待加害者には、パーソナリティ障害等の精神疾患を抱えている者もいる。児童虐待を行った親の約30%が何らかの精神疾患の診断基準を満たしていることが報告されている(日本子ども虐待防止学会, 2018)。特に、うつ病や不安障害、発達障害などが多く見られる。これらの疾患は感情のコントロールを難しくし、児童虐待のリスクを高める可能性がある。 エ 社会的孤立とサポートの欠如 加害者が社会的に孤立している場合、虐待のリスクが高まる。社会的サポートが少ない家庭では、サポートが十分な家庭と比較して虐待のリスクが約3倍高いことが示されている(内閣府, 2020)。また、母親が夫からDV被害を受け、夫に逆らえないまま子どもを虐待してしまう事例もある。 オ 未熟な育児スキルと教育の欠如 育児に関する知識やスキルが不足している場合、親は子どもを適切にケアする方法を知らず、自分の思うとおりに子どもが言うことを聞かない場合、虐待に至ることがある。例えば、育児教育プログラムに参加した親の間で児童虐待のリスクが約25%減少したという報告がある(日本子ども家庭総合研究所, 2021)。ただし、このようなプログラムへのアクセスは地域や社会経済的状況によって大きく異なり、支援を最も必要とする家庭ほどアクセスが困難である場合が多いのが現状である。
(2)DVの発生要因 ア 配偶者に対する甘えと嫉妬 DV加害者(主に男性)について、欧米では嫉妬から来る怒りを被害者にぶつけることが多い。嫉妬とは、他の異性と親しくなることを過度に嫌い、自分だけの者であってほしいという願望から来るものである。一方、日本のDV加害者は妻に甘えや母性を求め、拒絶されたときに怒りを爆発させる(信田,2024)。また、仕事のストレス等を癒してほしいという甘えが大きくなり、「僕がこんなに苦しいのに、なぜわかってくれないのか」と感情を爆発させて妻に暴力を振るう加害者も少なくない。 イ 権力と支配の欲求 DVの主な動機として「支配・束縛」が全体の69%を占めている。加害者はパートナーに対して支配的であろうとし、自分の意志に従わせるために暴力を用いることがある(警察庁,2022)。 ウ 感情コントロールの欠如 DVの動機として「いらいら・ストレス」が14.8%を占めている。加害者は感情のコントロールがうまくできず、衝動的に暴力を振るうことがある(警察庁,2022)。 エ 性別役割に関する固定観念 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考えに賛成する人の割合は、男性で31.1%、女性で27.7%となっている。このような固定観念は、DVを正当化する要因となりうる(内閣府,2019)。 オ アルコールや薬物の問題 DV事案の11%で加害者の飲酒が関与している。アルコールや薬物の使用が暴力のリスクを高める要因となっている(警察庁,2022)。 カ 社会的孤立 DV被害者の38.8%が「相談できる人がいなかった」と回答している。加害者が被害者を孤立させることで、暴力が継続しやすくなる。これらの要因が複雑に絡み合って、DVが生じるリスクが高まる(内閣府,2023年)。 キ DVのサイクル DVの特徴として、①緊張の蓄積期(緊張形成期)→②暴力の爆発期→③ハネムーン期のサイクルを繰り返すことが指摘されている。すなわち、①加害者が職場などでストレスを感じ、イライラを募らせていく。②パートナーにわかってもらいたい、なぜわかってくれないのだと怒りが爆発する。③暴力を振るった後に正気に返り、パートナーに泣いて謝る。すると、パートナーは「彼は優しいところもあったし。これが最後。」などと加害者の謝罪を受け入れ、優しくしてくる加害者を受け入れ、仲良くなる。しかし、加害者は徐々にイライラを募らせていく・・・、というサイクルが繰り返される。 【到達目標】 • 児童虐待の発生要因として、被虐待経験、ストレス、精神疾患、社会的孤立、育児スキル不足などを説明することができる。 • DVの発生要因として、支配欲、嫉妬、感情統制の困難、性別役割観、アルコール等の影響を説明することができる。 • DVのサイクルの特徴を説明し、暴力が継続しやすい構造を理解することができる。
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④ 児童虐待及びDV の加害者の更生 (1)児童虐待の加害者の更生 ア 加害者とのかかわり 児童虐待の加害者の中には自身が被虐待経験を持っていることが多く、そのためのトラウマが根底にあることが多い。児童虐待で摘発された保護者の約4割が自身の被虐待経験を報告している(厚生労働省、2019)。このような背景を持つ加害者に対しては、トラウマインフォームドケア(問題行動の背景にトラウマがあると想定し、対応すること)の観点を持ち、解決されていない過去のトラウマに焦点を合わせて保護者と関わる。 なお、児童相談所の職員が第一の対応に当たることが多いが、児童相談所は子供を保護する危機介入機関としての立場にあるため、児童相談所の支援に巨費を示す保護者もいる。そこで、心理支援の当面目標は、拒否的な保護者との関係を改善し、児童相談所の支援を受け入れる体制を整えることが重要である。 イ 教育 感情調整やストレスを管理するスキルの習得が有効である。これにより、子どもとの関係改善が期待できる。また、「サインズ・オブ・セーフティ」アプローチでは、加害者の共感能力を養うことに重点を置いており、共感の欠如は児童虐待の一因となり得ることからも、他者の感情を理解し、配慮する能力を向上させることが再発防止に有用である。 ウ 社会的支援 経済面の安定も虐待加害者の更生に必要である。経済的困窮が虐待のリスク要因の一つとされており、これらの環境が整わないと再犯のリスクが高まる可能性がある。そのため、生活支援や就労支援などの包括的なアプローチが必要とされている。 エ 保護者からの隔離 保護者が子どもを養育する意識を持たず、親が生きるための道具として子どもを考えている保護者の場合は、子どもに売春をさせたり児童ポルノ動画に出演させたりなどの事例も見られる。また、繰り返される身体的暴力により子どもが死亡する危険性のアセスメントを行った結果、子どもの安全が確保されない事例もある。このような場合は、子どもを保護者から隔離し、保護することも必要である。
(2)DV加害者の更生 DV加害者は、しばしばパートナーに対して支配的で攻撃的な行動をとるが、このような行動の根底には、自己肯定感の低さや過去のトラウマ、ストレス管理能力の不足があることが多い。そこで、DV加害者には、カウンセリング、教育、社会的支援が重要である。 ア カウンセリング 加害者が自身の考え方や行動パターンを認識し、非暴力的なコミュニケーション方法を学ぶように援助することが必要である。具体的には、暴力行為に至る前のトリガーや、その後の感情反応を管理するためのスキルを身に付けることが目指される。また、幼少期の被虐待等のトラウマを抱えている加害者も少なくないため、トラウマインフォームドケアの観点から、加害者のトラウマ体験に焦点を合わせ、その処理を行い、自分の加害行動の原因を理解させることも有効である。これにより、過去の傷が現在の行動にどのように影響しているかを理解し、適切な対処法を学ぶことができる。 イ 教育 DV加害者に対する教育プログラムについては、自治体や民間機関において、「男性のための非暴力プログラム」が行われている。これは、DV加害者に対して暴力の影響を理解させるとともに、非暴力的なコミュニケーションスキルを学ばせることを目的としている。これらのプログラムは、加害者が暴力行為を再発させるリスクを低減するために設計されている。 なお、加害者の更生プログラムについては、全国の配偶者暴力相談支援センターの約30%が加害者更生プログラムを実施または連携している(厚生労働省,2022)。これらのプログラムに参加した加害者の再犯率は、参加しなかった加害者と比較して約40%低下したという報告もある。 ウ 社会的支援 加害者が更生を遂げるためには、社会的な孤立を防ぐための支援が必要である。日本では、DV加害者を対象としたカウンセリングや支援グループが設けられており、これにより加害者が健全な社会生活を営むためのサポートが提供されている。これらの支援サービスを利用した加害者の約60%が、暴力的な行動の減少を自己報告している(厚生労働省,2022)。 さらに、2023年に施行された改正DV防止法では、加害者更生プログラムの重要性が明記され、国や地方自治体による取り組みの強化が求められている。これにより、今後はより多くの加害者が更生プログラムにアクセスできるようになることが期待される。 【到達目標】 • 児童虐待及びDV加害者の更生におけるカウンセリング、教育、社会的支援の意義を説明することができる。 • 子どもの安全確保のために、必要に応じて保護者からの隔離が必要となる場合を説明することができる。
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⑤ 児童虐待及びDVの被害者の心理と支援 (1)児童虐待の被虐児の心理 虐待を受けた子どもの心理的特徴は次のようなものがある。 ア 外傷後ストレス反応 虐待を受けた子どもの多くがPTSD(心的外傷後ストレス障害)様症状を呈する。具体的には、フラッシュバック、悪夢、過覚醒、回避行動などが見られる。また、深刻な虐待を受けた子どもの中には解離症状が見られる。これは、過酷な体験から心理的に距離を置くための防衛機制である。 イ 愛着障害 虐待を受けた子どもの多くが何らかの愛着の問題を抱えている。これは、安定した愛着関係を形成できなかったことによる。 ウ 自尊心の低下 虐待を受けた子どもの多くが自尊心の低下を示している。これは、親から自尊心を繰り返し傷つけられる言動を受けることが原因である(日本子ども虐待防止学会)。 エ 感情調整の困難 虐待を受けた子どもの多くが感情調整の困難を抱えている。怒りの爆発や極端な感情の起伏が見られることがある。 (2)被虐待児への心理支援 ア 安全・安心な環境の提供 児童福祉法に基づき、虐待から子どもを保護し、安全で安心できる環境を提供することが最優先される。厚生労働省の統計によると、2022年度に児童相談所が一時保護した児童は約36,000人に上る。 イ 心理教育 被虐待児は自分が悪いから親に虐待されたと思わされていることも少なくないため、悪いのは加害者であること、自分を責めるなどの心理状態は無理もないことなどを伝え、外傷性ストレス反応とその対処についてわかりやすく説明することが必要である。 ウ 愛着形成支援 安定した愛着関係の形成を目指して、施設等でのケアにおいて、個別的で継続的な関わりの重要性が必要である。 エ 自尊心の回復 自尊心を傷つけられてきた子どもに対して、日ごろの成功体験の積み重ねが自尊心の回復に有効である。 オ トラウマに焦点を当てた治療 トラウマ体験の再構成や、不適切な認知の修正を行うトラウマフォーカスト認知行動療法(TF-CBT)の有効性が示されている。 カ 家族支援 被虐待児が家族のもとで再び生活するために、虐待した親への指導が必要であり、家族再統合や家族機能の改善を目指した支援が重要であり、親子関係再構築プログラムなどが実施されている。
(3)DV被害者の心理 DV被害者の心理面の特徴は次のとおりである。 ア 外傷性ストレス反応 多くのDV被害者がPTSD(心的外傷後ストレス障害)症状を呈する。具体的には、被害状況のフラッシュバックや悪夢(再体験)、強い緊張(過覚醒)、被害のことを考えることを避ける(回避)などが見られる。また、長期的なDV被害を受けた人の約40%が複雑性PTSDの症状を示している報告もある。これは通常のPTSDよりも重症であり、感情調整の困難や対人関係の問題を伴う。 イ 学習性無力感 長期的なDV被害を受けた人の多くが学習性無力感を示している。これは、繰り返される暴力によって、状況を変えられない、逃げても捕まってしまうという無力感を学習してしまったことによる。 ウ 自尊心の低下 D V被害者の約80%が自尊心の低下を報告している(内閣府,2023年)。これは、継続的な否定や批判にさらされることにより、自尊心を傷つけられたためである。
(4)DV被害者への支援 ア 安全の確保 DV防止法に基づき、被害者の安全を最優先に確保することが重要である。 イ 心理的支援 悪いのは加害者であり被害者は悪くないということ、様々な外傷性ストレス反応等を呈していても無理もないことなどを丁寧に説明する心理教育が必要である。特に、自分が受けている被害をDVであると認識していない、あるいは認識したくない被害者は少なくないため、時間をかけて心理教育を行うことが求められる。また、外傷性ストレス反応や抑うつ症状を呈している場合、適切な心理療法が必要である。そして、無力感を抱いてきた被害者に対し、自己肯定感の回復や意思決定スキルの向上を目指す支援も有効である。 ウ 法的支援 DV防止法に基づく保護命令のほか、加害者である配偶者との離婚手続きなど、弁護士被害者が法的保護を受けられるよう、弁護士との連携や法的手続きの支援が必要となる。 エ 経済的支援 DV被害者の多くが経済的暴力も受けており、多くの人が経済的困難を抱えている。就労支援や生活保護などの福祉制度の活用、自立支援金の給付などが重要となる。 オ 子どもへの支援 DV事案の約60%で子どもが同居している(警察庁,2022年)。面前DVは子どもへの心理的虐待に当たるため、子どもの心理的ケアや学習支援、親子関係の再構築支援なども必要となる。 DV被害者への支援は、複雑性PTSDをはじめ複雑な心理を理解した上で、多面的かつ長期的なアプローチが必要である。さらに、社会全体でDVに対する理解を深め、予防と早期介入のための取り組みを強化していくことが重要である。 【到達目標】 • 被虐待児にみられる外傷後ストレス反応、愛着の問題、自尊心の低下、感情調整の困難を説明することができる。 • DV被害者にみられる複雑性PTSD、学習性無力感、自尊心の低下について説明することができる。 • 被害者支援における安全確保、心理教育、心理療法、法的支援、経済的支援の必要性を説明することができる。
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キーワード
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① 児童虐待の防止等に関する法律 ② 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律 ③ 児童虐待の分類 ④ DV加害者の心理 ⑤ 被虐待児のケア
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 第9回のコマシラバスを読み、児童虐待とDVの発生要因の大枠を理解する。 【復習】 児童虐待とDVの発生要因は複雑であり、その更生のための援助も複雑かつ困難であることが多いが、コマシラバスと文字教材を読み、それぞれの発生要因及び更生のために必要なことを簡潔に説明できるようになること。
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10
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時間軸と空間軸から捉える犯罪6 サイバー犯罪~加害者の動機、関連法規、対処~
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科目の中での位置付け
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国家や企業の重大な秘密情報の漏洩に限らず戦争にも発展するサイバー犯罪について、加害者の動機、関連法規、対処、能動的防御を扱う。 サイバー犯罪者の心理については世界でも研究が始まったばかりであり、知見の蓄積がない状況であるが、サイバー犯罪は相当な速度で発生が増加しており、誰もが加害者にも被害者にもなりえるとともに、近年の戦争の手段にもなりうるものである。 総合犯罪心理学科において今後サイバー犯罪対策、サイバー犯罪者の心理等について学習していく上での基礎知識を習得することを目指す。 特に、民間企業や行政職員としての公務員としての就職を考えている人は毎日のようにサイバー犯罪に関する話題が職場で持ち上がり、インターネット・ユーザーとして強い自覚を持っていないと使用端末にウイルスが感染し、組織のネットワークがダウンしたり、秘密情報が漏洩する可能性もあるため、他人事とせずに理解してほしい。
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細目レベル①②④ 足立照嘉(2017) サイバー犯罪入門. 幻冬舎新書
羽室英太郎(2018). サイバーセキュリティ入門. 慶應義塾大学出版会. pp16-41.
喜入暁(2017). サイバー犯罪. 越智啓太・桐生正幸(編) テキスト犯罪心理学. pp247-261.
松原実穂子(2023) ウクライナのサイバー戦争. 新潮新書
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コマ主題細目
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① サイバー犯罪の手口及び関連法規 ② サイバー犯罪の発生状況の推移 ③ サイバー犯罪の加害者の動機 ④ サイバー犯罪への対処 ⑤ サイバー犯罪の加害者の心理を踏まえた能動的サイバー防御
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細目レベル
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① サイバー犯罪の手口及び関連法規 日本におけるサイバー犯罪の発生状況は、近年急増しており、新たな手法も増えている。サイバー犯罪のそれぞれの手法別の発生状況は次のとおりである。
(1)サイバー犯罪の主な手口 ア サイバー空間上の不法侵入 利用がIDやパスワードなどによって管理されたコンピュータに対するハッキング行為である(日本では、不正アクセス禁止法の不正アクセス罪となる。) この類型のサイバー犯罪を行う者は相応の高い技術力を持っていることが普通であるため、この類型の犯罪者であるハッカー(クラッカーともいう)の行う犯罪全般をひとまとまりの類型とするとわかりやすい。 また、標的としたコンピュータに大量の情報を集中的に送って機能を停止させる「D(ディー)-Dos(ドス)攻撃」や、指定の金額を払わないとコンピュータの機能を停止させたままにすると脅す企業恐喝で使用される ウイルス(ランサムウェア)もこの類型である。 これらのサイバー犯罪者たちの犯罪の道具を交換する場所は、ダークウェブと呼ばれる空間である。 イ サイバー空間上のわいせつ文書 わいせつ文書(動画等)のウェブ上の公開、販売などである。中心となるのが児童ポルノである。これは、児童の性的虐待または性暴力(レイプ)の記録として扱われることが多い。(なお、このような児童ポルノの動画を事件の証拠として数多く見る警察官のストレスは非常に大きく、精神疾患の診断基準(DSM-5)では、PTSDを発症させるトラウマ的出来事として含まれる。ちなみに、同等の出来事は、レイプ、目の前での家族の虐殺など非常に苦痛なものであり、児童ポルノがいかに非人道的かがわかる。) ウ サイバー空間上の暴力 インターネットで展開される言葉の暴力のことである。匿名性を背景に、普通のインターネット・ユーザーが過激な言動を行う。 日本でも問題となっている、ネットいじめ、インターネットを用いたストーカー行為、ヘイトスピーチ、ネット上の名誉棄損なども当てはまる。 エ サイバー空間上の財産犯 電子メールや偽のウェブサイトを通じて個人情報や金融情報を不正に取得しようとするフィッシング詐欺、架空の取引により代金や商品を搾取するインターネット詐欺、インターネットを通じて相手に恋愛感情を持たせて金品を要求するロマンス詐欺、暗号資産への投資を名目とした詐欺、インターネットを利用した著作権詐欺などが当てはまる。 技術力がない者でも敢行できる財産犯であり、潜在的な犯罪者の数が多いものと懸念される。
(2)サイバー犯罪の関連法規 サイバー犯罪に対する法規は、インターネットやコンピュータを悪用した犯罪を防ぐために制定された法律である。これらの法律は、サイバー犯罪を行った者を処罰するだけでなく、被害者を保護し、社会全体のサイバーセキュリティを確保する役割を果たしている。
ア 不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法) この法律は、他人の識別符号(IDやパスワード等)を無断で使用してコンピュータにアクセスする行為を禁止している。不正アクセスは、個人情報の流出や金銭的な被害を引き起こす可能性があるものである。例えば、友人のパスワードを無断で使用してその人のSNSアカウントにログインする行為も、この法律に違反する。 イ 不正指令電磁的記録作成等罪(いわゆるコンピュータウイルスに関する罪) これらの条項では、コンピュータウイルス等の不正プログラムを作成、提供、取得、保管する行為を処罰するものである。また、実際にウイルスを他人のコンピュータに送信した場合は、刑法第234条の2の「電子計算機損壊等業務妨害罪」が適用され、より重い刑罰(5年以下の懲役または100万円以下の罰金)に処せられる可能性がある。 ウ 電子計算機使用詐欺罪 これは、コンピュータを使用して財産上不法の利益を得る行為を処罰するものである。例えば、インターネットバンキングで他人の口座から不正に金銭を引き出す行為がこれに該当する。また、フィッシング詐欺のように、偽のウェブサイトを使用して他人の情報を騙し取る行為も、この条項や詐欺罪(刑法第246条)に該当する可能性がある。 エ 個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法) 個人のプライバシーを守るために制定されたもので、個人情報取扱事業者に対して個人情報の適切な取り扱いを義務付けている。 オ サイバーセキュリティ基本法 2021年に成立したこの法律は、サイバーセキュリティに関する施策を総合的かつ効果的に推進することを目的としており、国や地方公共団体、重要インフラ事業者等の責務を明確化している。 【到達目標】 • サイバー犯罪の主要な手口を分類し、それぞれの特徴を説明することができる。 • 不正アクセス禁止法、不正指令電磁的記録作成等罪、電子計算機使用詐欺罪などの関連法規を説明することができる。 • サイバー犯罪が現代社会において多様化・巧妙化していることを説明することができる。
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② サイバー犯罪全体の発生動向 (1) サイバー犯罪の検挙件数の概要 サイバー犯罪として「不正アクセス禁止法」「コンピュータ・電磁記録対象犯罪(コンピュータ・ウイルスなど)」、「その他のサイバー犯罪」の検挙件数は、最近20年間では、平成16年以降増加傾向にあり、令和4年は1万2,369件(前年比160件(1.3%)増)であった。 【到達目標】 • サイバー犯罪の検挙件数が増加傾向にあることを説明することができる。 • 不正アクセス禁止法違反、コンピュータ・電磁的記録対象犯罪、その他のサイバー犯罪の区分を説明することができる。
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③ サイバー犯罪の特徴及び加害者の動機 (1)サイバー犯罪の特徴 サイバー犯罪者の心理面については研究が始まったばかりであるため、まずはサイバー犯罪の特徴から概観する(中野目・四方,2021)。 ア 変化のスピードの速さ サイバー空間の発展・変化はとても速い。サイバー空間を構成するものは、プラットフォームである。サイバー犯罪は、これらのサイバー空間のセキュリティの脆弱性(もろく弱いところ)をついて行われることが多い。サイバー空間の変化が加速するのと同様に、サイバー犯罪の変化も犯罪者によって加速している。 イ 日常的な越境性 サイバー犯罪はインターネットにより国境を自由に超えて行えるものであり、日本人がサイバー犯罪の被害にあったとして、加害者が外国に居住していたり、海外のサーバーを経由していることもある。そこで、外国の捜査機関に捜査協力を求めることとなる。しかし、捜査権は各国警察にあるため、他国の領域において証拠収集などの捜査を行えない。外国警察に捜査協力を仰ぐ場合は国際捜査共助と呼ばれる手続きを取る必要がある。 ウ 電気通信として行われることに伴う特徴 現実空間の犯罪と比べて、サイバー犯罪は可視性が低い。すなわち、生身の人間には目に見えない形の犯罪が多く、被害者は犯罪被害を認識することも難しい。 エ 暗数の多さ サイバー犯罪には被害が小さなものも多く、捜査も困難であるため被疑者が検挙される見通しも低いことから、被害者が警察に被害申告をしない割合が多いと推察される。また、サイバー犯罪には被害者が被害を認識できないものも多い。 オ ICTに関する専門的知識技能の必要性 サイバー犯罪の捜査、立法、政策立案などには、ICTの専門的な知識と技術が必要となる。加速するサイバー犯罪の手口の巧妙さに対処するために必要な法律の制定や改正を行うにあたり、行政官や法律家にもICTに関する専門的知識が求められる。 同様に、犯罪の中でも社会問題となるサイバー犯罪に対して、犯罪心理学が何もできないという状態のままでは、国民が安心して暮らせる社会の実現が遠のいてしまうため、犯罪心理学を学ぶ私たちもICTの最低限の理解に努める必要がある。
(2)サイバー犯罪者の動機 ア 経済的な利益の追求 サイバー犯罪の中には、金銭的な報酬を目指して行われるものが多い。例えば、クレジットカード情報を盗み、そのデータを闇市場で売買する行為や、ランサムウェアを使って企業から身代金を要求する行為がこれに該当する。これらの行為は、金銭的報酬という正の強化によって維持される。 イ 知的挑戦と自己顕示 現実世界で自己肯定感が低く、社会的な承認を得ることが難しいと感じる場合、サイバー空間で力を誇示することで自己価値を見出そうとする。ハッキングやフィッシングなどの行為は、他者を支配したり、自分が特別な能力を持っていると感じるための手段となる。 ウ イデオロギー的動機 加害者のイデオロギーな動機からサイバー犯罪を手段として用いることがある。政治的目的のハッキングとしてのハクティビズム、特定の組織や個人に対する抗議活動としてのD(ディー)-DoS(ドス)攻撃(標的のコンピュータに大量の情報を集中的に送付して機能を停止させる)、内部告発目的での機密情報の流出などがある。 エ スパイ活動と国家支援 他国での企業に対するスパイ活動による企業秘密を摂取したり、防衛省等から国家機密情報を収集したり、ロシアのウクライナに対するように敵対国のインフラへのサイバー攻撃などもある。 オ 「愉快犯」的な側面及び好奇心 加害者は、他者を混乱させたり、社会に対して悪影響を与えることで快感を得ることがある。このような加害者は、他者の痛みや不便さに共感せず、むしろそれを楽しむ傾向がある。そこで、好奇心からのシステム侵入などを行う。これには反社会的な性格傾向や、共感性の欠如が関与していると考えられる。 カ 社会的要因 加害者が所属するコミュニティや文化の影響を受けて、サイバー犯罪が正当化されたり、奨励されたりすることがある。一部の国では、国家として他国にサイバー攻撃を仕掛けるという報道もなされている。 また、オンラインフォーラムやダークウェブ上での交流が、犯罪行為への参加を促進する要因にもなる。加害者は、自分が属するグループ内での評価や地位を上げるために、サイバー犯罪に手を染めることがある。これは、社会的アイデンティティ理論(Tajfel & Turner)とも関連し、内集団への同一化と外集団への差別化が犯罪行為を助長する可能性がある。
これまで見てきたとおり、サイバー犯罪を防ぐためには、ハッカーが使用したIPアドレスを突き止めるだけではなく、ハッカーが無力感を覚えるような心理学を応用した仕掛けも検討されており、総合犯罪心理学がサイバー犯罪の加害者をターゲットとすることも可能であることを理解してほしい。 【到達目標】 • サイバー犯罪の特徴として、変化の速さ、越境性、可視性の低さ、暗数の多さを説明することができる。 • サイバー犯罪者の動機として、経済的利益、自己顕示、イデオロギー、好奇心などを説明することができる。 • オンラインコミュニティやダークウェブが犯罪行為を促進する要因となることを説明することができる。
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④ サイバー犯罪への対処 (1)法的対応の強化 不正アクセス禁止法やコンピュータウイルス関連の法律など、既存の法規を強化するとともに、技術の進展に対応した新たな法整備も求められている。また、サイバー犯罪は国境を越えて行われることが多いため、各国の捜査機関が連携し、犯罪者の引き渡しや情報共有を行うための国際的な協定が必要である。さらに、サイバー犯罪条約(ブダペスト条約)への加盟国を増やすことにより、国境を越えた捜査協力体制を強化することも重要である。 (2)技術的対策 企業や政府機関におけるファイアウォール、暗号化、多要素認証(※2)などの導入が有効である。企業や官公庁においては、情報セキュリティの専門家を配置し、内部のシステムが常に安全に保たれるように監視する体制を整える必要がある。さらに、サイバー攻撃を受けた場合に備え、迅速に対応するための計画を策定することも重要である。 (3)教育・啓発活動 現在では多くの小学生がスマートフォンを所有している状況であるため、初等教育からネットリテラシーの教育が有効である。 具体的には、フィッシング詐欺やマルウェア(被害をもたらすことを目的とした悪意のあるソフトウェア)の危険性などインターネットを安全に利用するための基本的な知識を教育することにより、被害者となるリスクを減少させることができる。 また、多くの企業や官公庁では職員に対して定期的なセキュリティ研修や標準型攻撃メール訓練を実施している。このように、悪意あるメールを開いてしまうことによって端末がウイルス感染し、職場のシステムにウイルスが蔓延し、情報が流出する危険性を減らす取り組みがなされている。 【到達目標】 • サイバー犯罪対策における法的対応の強化の必要性を説明することができる。 • 技術的対策として、ファイアウォール、暗号化、多要素認証等の意義を説明することができる。 • 教育・啓発活動がサイバー犯罪被害の予防に果たす役割を説明することができる。
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⑤ サイバー犯罪の加害者の心理を踏まえた能動的サイバー防御 (1)概要 能動的サイバー防御とは、単なる受動的な防御策ではなく、積極的に脅威を検出し、対処する戦略であり、現在日本政府がこれに関する法律の制定を検討している。サイバー犯罪の加害者の心理を理解した上での能動的サイバー防御は、犯罪を未然に防ぎ、加害者の攻撃を効果的に抑止するために非常に重要である。このアプローチは、加害者の心理的特徴や行動パターンを踏まえて、より効果的にサイバー犯罪に対処することが可能である。 (2)加害者の動機に基づく予測的分析 サイバー犯罪者は、経済的利益、権力の誇示、他者の苦しみを楽しむなど、さまざまな動機を持っている。このような動機を理解することで、彼らがどのようなターゲットを選び、どのような手口を用いるかを予測できる。例えば、金銭的利益を目的とする加害者は、銀行や金融機関を狙うことが多いため、これらの機関は特に強固な防御策を講じる必要がある。また、権力誇示を目的とする場合は、加害者が注目を集めようとする攻撃パターンを検知し、早期に対応することが求められる。 (3)リアルタイムでの脅威インテリジェンスの活用 能動的サイバー防御には、リアルタイムで脅威情報を収集し、それに基づいて迅速に対応することが含まれる。具体的には、ネットワークの監視システムやAIを活用して、不審なアクセスや異常な活動をリアルタイムで検出し、即座に対処する。このような対応は、加害者が攻撃を開始する前に、その兆候を見逃さずに捕らえることで、被害を未然に防ぐことができる。 (4)デセプション技術(欺瞞技術) デセプション技術とは加害者を欺き、虚偽の情報や偽のターゲットに誘導する技術である。デセプション技術を用いることで、加害者が攻撃を仕掛けた際に、実際のデータやシステムに到達する前に罠にかけることが可能である。これにより、加害者の行動を監視し、さらなる攻撃を予防するための情報を収集することができる。また、加害者に対して時間的な遅延や混乱を引き起こすことで、彼らの攻撃意図を挫(くじ)く効果もある。 また、サイバー犯罪者は仲間から失敗を指摘されたり力を低く見られることを嫌う傾向があるため、犯罪者の心理を標的にするデセプション技術は心理学的知見を活用したものともいえる。 (5)加害者の社会的なつながりやオンラインコミュニティの監視 サイバー犯罪者はしばしばオンラインフォーラムやダークウェブ上で情報交換を行うため、これらのコミュニティを監視し、攻撃の計画や新しい攻撃手法に関する情報を早期に入手するプログラムを開発し、被害に遭うことが予想される企業や官公庁に通報する企業がある。このような情報を基に、防御策を事前に強化することにより、加害者が実行する前に対策を講じることが可能である。 【到達目標】 • 能動的サイバー防御の概要と、受動的防御との違いを説明することができる。 • 加害者の動機に基づく予測的分析の意義を説明することができる。 • デセプション技術やオンラインコミュニティ監視が心理学的知見を活用した対策であることを説明することができる。
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キーワード
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① サイバー犯罪の検挙件数の推移 ② 不正アクセス禁止法 ③ サイバー犯罪者の動機 ④ サイバー犯罪への対処 ⑤ 能動的サイバー防御
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 第10回のコマシラバスを読み、サイバー犯罪の種類の大枠を把握すること。 【復習】 サイバー犯罪にまつわる用語はなじみがないものが多いが、日本の警察が現在最も力を力を入れている分野の一つがサイバー犯罪の抑止であり、現代人の生活に不可欠なインターネット空間が安全であるためにも、サイバー犯罪者たちの目的やねらいを把握することが重要になる。サイバー犯罪が存続にも関わる重大な被害を及ぼすことから、大手企業や官公庁ではサイバー犯罪対策は極めて重要な課題であり、この機会によく理解していただきたい。
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11
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時間軸と空間軸から捉える犯罪7 テロリズム~加害者の動機、更生、被害者の特徴と支援~
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科目の中での位置付け
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多数の死傷者が発生し、戦争や紛争につながるテロリズムについて、加害者の心理、発生状況、加害者の更生、被害者の心理について扱う。
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細目レベル①~③ 越智啓太(2013). ケースで学ぶ犯罪心理学. 北大路書房. 37-50. 大上渉().テロリズム. 越智啓太・桐生正幸(編) テキスト・司法犯罪心理学. 北大路書房. pp68-87.
Taylor,M.(2024). Terrorism. In Davies,D.M.,Beech,A.R.,& Colloff,M.F. (Ed) Forensic Psychology: Crime, Justice, Law, Interventions, 4th Edition, Willey. Pp368-391.
細目レベル④ 小林良樹(2020). テロリズムとは何か. 慶應義塾大学出版会
細目レベル⑤ 伊勢崎賢治(2004). 武装解除―紛争屋が見た世界. 講談社現代新書.
永井陽右(2023). 紛争地で「働く」私の生き方. 小学館.
瀬谷ルミ子(2011). 職業は武装解除. 朝日新聞出版.
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コマ主題細目
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① テロリズムの発生状況 ② テロリズムの発生要因 ③ テロリストの心理的特徴 ④ テロリズム対策と人質交渉 ⑤ 元テロリストの更生
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細目レベル
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① テロリズムの定義及びテロリズム事件の発生状況 (1)テロリズムの定義 テロリズムとは、一般大衆の恐怖心を引き起こすことにより、徳敵の政治的な目的を達成するための手段として定義される暴力のことである。具体的な手段として、爆破、銃乱射、大量殺人、要人暗殺、誘拐・脅迫、人質立てこもり、ハイジャックなどが挙げられる。 ただし、被害を受けた片方の立場からはテロとされたとしても、実行した側からは自由や解放のための「聖戦」と捉えられ、テロリストとされる者は英雄扱いされることもあり、テロの定義は大変難しい。 しかし、統一的なテロの定義がなされないままであると、テロ行為やテロ組織を取り締まることができず、学術的研究も進まない。 現状ではテロリズムは次のように定義される。 1. 個人的な動機付けではなく、何らかの大義がある。 2. テロリストは、支配的な政府が準備している正統な手段では、その他意義を実現できないと認識している。 3. 恐怖を媒介にして人々を従わせ、強制的に自分たちの大義を実現しようと試みる行為である。 4. 内戦やゲリラ戦ではない。
(2)テロリズムの分類 政府機関の公安調査庁では、テロを実行主体別に分類し、左翼過激派組織、民族主義組織、イスラム過激派組織に大別している。これらに加え、新興宗教によるテロ類似行為を含めて説明する。 ア 左翼過激派組織 左翼過激派組織のテロは、主に社会変革と階級闘争を目的とする。 資本主義社会への根本的な批判と、階級間の矛盾を暴力的に解決しようとする思想に基づいている。1970年代から80年代にかけて、ドイツの赤軍派(RAF)やイタリアの赤い旅団などが代表的な例である。彼らは、国家や資本主義システムを敵視し、武装闘争によって社会変革を目指した。 イ 民族主義組織 民族主義組織によるテロは、特定の民族や地域の独立、分離独立を目的とする。 自民族の権利や文化的アイデンティティを主張し、他の民族や国家支配に対抗する。北アイルランドのIRA(アイルランド共和軍)、バスク地方のETA(バスク祖国と自由)、クルド労働者党(PKK)などが典型的な例である。民族的抑圧や歴史的対立、領土問題が背景にある。 ウ イスラム過激派組織によるテロ イスラム過激派テロは、原理主義的なイスラム解釈に基づき、西洋的価値観や世俗主義に対抗する。アルカイダやISIS(イスラム国)が代表的な組織である。彼らは宗教的理想を暴力的に実現しようとし、聖戦(ジハード)の概念を極端に解釈する。政治的、社会的変革を暴力によって達成しようとする特徴がある。 エ 新興宗教におけるテロ類似行為 新興宗教におけるテロ類似行為は、カルト的な思想や教義に基づく集団的暴力行為である。オウム真理教による地下鉄サリン事件が最も有名な例である。カリスマ的指導者への絶対的服従、現実社会への強い批判意識、終末論的世界観が特徴的である。通常の宗教団体とは異なり、暴力的手段によって独自の世界観を実現しようとする。
これらのテロ組織は、それぞれ異なる思想的背景と目的を持つが、共通して暴力的手段によって政治的、社会的変革を目指す点で類似している。テロリズムの理解には、単なる暴力行為としてだけでなく、その背景にある社会的、歴史的、イデオロギー的文脈を総合的に分析することが重要である。
(3)テロリズム事件の発生状況 テロリズムとは、一般大衆の恐怖心を引き起こすことにより、徳敵の政治的な目的を達成するための手段として定義される暴力のことである。具体的な手段として、爆破、銃乱射、大量殺人、要人暗殺、誘拐・脅迫、人質立てこもり、ハイジャックなどが挙げられる。 グローバル・テロリズム・データベースの分析によると、世界のテロ事件は2000年代初頭から2010年代にかけて急増している。この時期最大の事件は、2001年9月11日に発生した米国同時多発テロ事件(9.11テロ)である。アルカイダによって実行されたこの攻撃は、ニューヨークの世界貿易センタービルやワシントンD.C.の国防総省を標的とし、約3,000人の命を奪った。この事件を契機に、アメリカを中心とした「対テロ戦争」が開始され、2001年にはアフガニスタン侵攻、2003年にはイラク戦争が勃発した。これらの軍事行動は中東地域の不安定化を招き、反アメリカを唱える新たなテロ組織の台頭につながった。 2014年から2016年にかけてピークを迎え、年間約17,000件から18,000件のテロ事件が報告されている。この増加は「イスラム国(ISIS)」の台頭やシリア内戦、イラク情勢の不安定化などが主な要因とされている。2017年以降はテロ事件の発生件数が減少傾向に転じ、2020年には約8,000件となり、ピーク時の半数以下まで減少した。この減少は、ISISの領土喪失、国際的なテロ対策の強化、紛争地域での和平進展、さらにCOVID-19パンデミックによる移動制限なども影響していると考えられる。 これらの事件を通じて、テロリズムが世界的な脅威となり、国際社会における対テロ対策の重要性が増大した。同時に、テロ組織のネットワーク化や、過激思想の拡散といった新たな課題も浮き彫りとなった。 このようなテロリズムの発生状況を念頭に、戦争にもつながりうるテロリズムの理解と防止を心理学の見地から行う取組が重要である。 【到達目標】 • テロリズムの定義と、その定義が難しい理由について説明することができる。 • 左翼過激派、民族主義組織、イスラム過激派、新興宗教によるテロ類似行為の特徴を説明することができる。
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② テロリズムの発生要因 (1)政治的要因 多くのテロリズムは、特定の政治的目的を達成するために行われる。例えば、国家や政府に対する不満や、独立や自治を求める動きがテロリズムに結びつくことがある。中東地域におけるテロリズムの多くは、国家間の紛争や民族間の対立から生じている。2022年における世界全体のテロ事件の約60%が、政治的対立を背景に発生している。このような政治的動機によるテロリズムは、長期的な紛争の中でしばしば発展し、解決が困難な場合が多い。
(2)経済的要因 貧困、失業、経済的不平等は、テロリズムを生み出す土壌となることがある。貧困層や社会的に疎外された人々が、極端な思想に引き寄せられることは少なくない。例えば、アフリカのサハラ以南の地域では、経済的困窮が若者を過激派グループに加入させる要因となっている。実際、世界銀行の報告によると、2021年におけるテロリズムの約40%は、経済的な困窮や不平等が原因で発生している。
(3)宗教的要因 宗教的な過激思想や宗教間の対立が、テロ行為を正当化する理由として利用されることがある。特に、宗教的信念が政治的または社会的目的と結びつく場合、その影響は一層深刻になる。中東や南アジアにおけるテロリズムの多くは、宗教的な動機に基づいており、特にイスラム過激派グループがこれを利用してテロ行為を遂行している。国連の報告によれば、2020年のテロ事件の約30%が、宗教的な動機に基づいているとされる。
(4)社会的要因 社会的な不公正や差別、排除感が強い場合、個人や集団が過激な手段に訴える可能性が高くなる。特に、移民やマイノリティ集団が長期間にわたって差別や不平等な扱いを受けると、その社会的疎外感がテロリズムへの動機となる。例えば、ヨーロッパにおける一部のテロ事件は、移民や難民が受ける社会的な排除や差別に起因しているとされる。統計データによると、2015年から2020年にかけて、ヨーロッパで発生したテロ事件の約25%が、このような社会的要因と関連している。
(5)心理的要因 個人の心理状態や過去の経験がテロリズムの発生に影響を与えることがある。個人が過去に経験したトラウマや暴力、またはアイデンティティの喪失感が、テロ行為への傾倒を促進することがある。特に、極端な環境下で育った若者や、過激な思想に影響を受けた人々がテロリズムに参加するケースが多い。これらの心理的要因は、特定の個人が過激な行動に出る要因として理解されている。 このような個人テロリストは、「ローンアクター型テロリスト」、または「ローンウルフ型テロリスト」と呼ばれる。これらは突発的に現れ、犯行の予測が困難であるため、捜査当局の対応に限界がある。たとえば、ヨーロッパなどでもインターネットを通じてテロリズム集団に洗脳され、自分が育った国で宗教テロを行う者がおり、「ホームグロウンテロリスト」と呼ばれる。 このように、心理的要因を含む様々な要因によりテロリズムが発生することを理解し、この解明と防止のために心理学の応用を考えること。 【到達目標】 • テロリズムの発生要因として、政治的、経済的、宗教的、社会的要因を説明することができる。 • 心理的要因として、トラウマ、疎外感、アイデンティティの喪失が関与することを説明することができる。 • ローンアクター型テロリストやホームグロウンテロリストの特徴を説明することができる。
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③ テロリストの心理的特徴 テロリストの動機や心理は一様ではなく、個人差が大きい。また、テロリズムを個人の心理のみに還元することはできず、政治的、社会的、経済的要因など、より広範な文脈で理解する必要があるという指摘も多いが、テロリストの心理的特徴に関する研究として、次の者が挙げられる。 (1)強い信念、価値観 テロリストの心理的特徴として挙げられるのは、強い信念や価値観の存在である。多くの場合、彼らは政治的、宗教的、あるいはイデオロギー的な信念に基づいて行動している。この信念は絶対的なものと見なされ、他の価値観を受け入れる余地がほとんどない。この点については、多くのテロリストは自己の信念を他者に強制しようとする強い意志を持っているとされる。
(2)被害者意識、怒り テロリストは自分たちやその所属するグループが不当な扱いを受けていると感じたり、家族が空爆により殺害されるなどアメリカなどから侵略を受けたという被害者意識や怒りの感情がテロリストの行動に影響し、その怒りや憎しみが暴力的行動の動機となる。 (3)集団心理 テロリストが所属する組織やグループの影響が大きいことが指摘されている。集団内での同調圧力や、集団への帰属意識が個人の行動を強く規定することがある。また、集団内での役割や地位の獲得が、テロ行為への参加動機になることもある。 (4)パーソナリティの問題 一部のテロリストには、自己愛性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害といった精神病理学的特徴を持つ者がいることも報告されている。しかし、これはすべてのテロリストに当てはまるわけではなく、多くのテロリストは精神医学的には正常範囲内にあるとする研究も少なくない(Victoroff, 2005)。 (5)社会的アイデンティティ理論 個人は自己の所属する集団(内集団)を肯定的に評価し、外集団を否定的に評価する傾向があり、この傾向が極端化すると、外集団に対する攻撃的行動につながる可能性がある(Tajfel & Turner, 1979)。
(6)ラディカリゼーション この過程では、個人的な挫折経験、社会的疎外感、さらにはインターネットを通じた過激思想への接触などが重要な要因となり、テロリズムに接近することとなる(Borum, 2011)。
このように、テロリストの動機の理解に心理学の知見が有用であることを理解し、総合犯罪心理学の学びの幅を広げていただきたい。 【到達目標】 • テロリストの心理的特徴として、強い信念、被害者意識、怒り、集団心理を説明することができる。 • 社会的アイデンティティ理論やラディカリゼーションの視点から、過激化の過程を説明することができる。 • テロリズムを個人心理だけでなく、社会的・政治的文脈の中で理解する必要性を説明することができる。
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④ 国際テロリズム対策と人質交渉 (1)日本における国際テロリズム対策 日本人が国外で官公庁や企業の駐在員、人道支援団体職員、ジャーナリスト等により活動することに加え、旅行客も多いが、テロリストに誘拐され人質となるケースもある。例えば、1996年の在ペルー日本国大使公邸占拠事件ペルー大使館占領事件などがあり、高額の身代金や身柄を拘束されているテロリストの解放などを要求されることもある。このようなテロリズムに対し、警察庁では国際テロ緊急展開チーム(TRT)を設置し、国外で邦人や日本権益に関係する重大テロ事件が発生した際に、TRTを派遣し、現地治安機関と緊密に連携し、情報収集や人質交渉等の捜査活動支援を実施する。2002年のインドネシア・バリ島における爆弾テロ事件後、TRTを改組し、現地治安機関に対してより広範囲の支援活動を行う能力をもつ国際テロリズム緊急展開班(TRT-2)を発足させた。日本政府は警察庁に国際テロリズム対策課を設置し、平時からの情報分析、諸外国政府との情報共有に加え、テロリストによる人質事件への対応として人質交渉の対応を進めている。
(2)テロリズムの未然防止対策 テロリズムが発生しないように未然の防止対策がこれまで行われている。これらの事例をもとに、テロリズムの防止対策を検討する。 ア 攻撃実行能力への対策 テロ組織やテロリストが攻撃できる能力に制約を加えることを目的とした対策として、武力的な対策と非暴力的な対策に分けられる。 (ア)武力的な対策 ・ 軍による活動 ・ インテリジェンス機関による活動 (イ)非武力的な対策 ・ テロ組織との交渉 ・ テロ組織の活動を制限するための仕組みづくり (ウ)攻撃実行の意図への対策 テロ組織やテロリストの攻撃実行の意図を低減させることを目的とした対策として、社会レベルと個人レベルの2つの側面から検討することができる。また、社会学的犯罪学理論において説明した「社会的絆理論」に基づき、欧米諸国においてイスラム系コミュニティを対象に、学校や地域社会などを通じた働きかけを実施し、イスラム系国民が自国や近隣住民との絆を認識する機会を増加させる試みがなされている。
(2)テロリズム対策としての人質交渉 人質交渉担当官の任務は、テロリストによる邦人誘拐事件が発生した国の捜査当局及び政府機関と日本国政府と緊密な連携を図りながら、被害者の家族への対応も行い、事件解決を試みる。人質交渉担当官は訓練を受けているものの、大変厳しい交渉場面や不測の事態に備え、極めてストレスフルな状況下に置かれることから、適切なストレスマネジメントが必要となる。平時からのセルフケアの技術習得に加え、事案に対応する事前及び事後の組織的なストレス対策も必要となる。また、被害者が殺害されたり負傷したりする事態もあり得ることから、人質交渉担当官には犯罪被害者及び犯罪被害者家族の心理とケアに関する知識も必要となる。
日本の警察でも国際テロリズム対策を推進し、担当講師も協力しており、心理学がテロ対策に貢献することを理解してほしい。 【到達目標】 • 日本における国際テロリズム対策の概要を説明することができる。 • 人質交渉担当官の役割と、必要な心理学的知識を説明することができる。
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⑤ 元テロリストの更生 テロリズム事件による被害は甚大であることが大きいため、加害者であるテロリストが受ける刑罰は大変重いが、テロリズム集団に加入させられて殺害に加担させられた者も少なくなく、テロリズム集団から解放された後の更生がテロリズム集団の弱体化及びテロリズム事件の再発防止に重要となる。 日本による取組みとして、国際協力開発機構(JICA)が2005年から2009年までの間アフガニスタンにおいて実施した「基礎職業訓練プロジェクト(旧:除隊兵士の社会復帰のための職業訓練プロジェクト)」がある。また、日本人による取組みとして、テロリズム集団から解放された者が所持している武器を放棄させる代わりに職業訓練の機会を提供する活動がある(伊勢崎,2004;瀬谷,2011;永井,2023)。これらの取組みには経済的な支援のみならず、テロリズム集団により洗脳されていた考え方の解除や平和的な職業に就くことへの動機づけや自己効力感など心理学の知見が有用である。 伊勢崎賢治氏は、紛争地帯での紛争解決に携わってきた経験から、テロリストの背景にある社会的・経済的要因を重視し、テロリズムの根本原因を解決することにより、個人の更生を促すもことを目指している。特に、テロリストが直面する社会的排除や経済的困難に対する理解を深め、それを克服するためのサポートを提供することが、更生にとって不可欠であると主張している(伊勢崎,2004)。 瀬谷ルミ子氏は、紛争地域における武装解除、動員解除、社会復帰(DDR: Disarmament, Demobilization and Reintegration)プログラムを実施しており、元戦闘員の社会復帰を支援してきた。瀬谷氏は、心理的支援が重要な要素として位置づけ、元戦闘員が過去の暴力的な行動から心理的に回復するプロセスを支えること重要視している。また、カウンセリングを通じて、元戦闘員が自らの経験を再評価し、新たなアイデンティティを構築することが、更生への鍵であると考えている(瀬谷,2011)。 永井陽右氏は、元テロリストを含む紛争被害者の社会復帰を支援している。永井氏は、もとテロリストが地域社会との関係を再構築することを重視し、元テロリストが過去の行動を反省し、新たな人生を築くための環境を提供することを目指している。特に地域社会が元テロリストの心理を理解することが更生において重要であるとしている(永井,2023)。 このように、日本人がテロリズムの再発防止のために心理面に焦点を当てて活動していることを理解し、総合犯罪心理学のさらなる学びを広げる姿勢を持つことが期待される。 【到達目標】 • 元テロリストの更生がテロ再発防止に重要である理由を説明することができる。 • 元テロリストの更生において、職業訓練、心理的支援、地域社会との再統合が重要であることを説明することができる。
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キーワード
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① テロリズムの発生状況 ② テロリズムの発生要因 ③ テロリストの心理的特徴 ④ 国際テロ対策と人質交渉 ⑤ 元テロリストの更生
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 第11回のコマシラバスを読み、テロリズムの発生状況、発生要因の大枠を把握すること。 【復習】 テロリズムの発生要因とテロリストの更生に心理学が深く関係していることを理解し、これらを簡潔に説明できるようになること。
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捜査心理学~ポリグラフ検査、プロファイリング
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科目の中での位置付け
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犯罪の被疑者の捜査に関わる心理学として、目撃証言の心理学、犯罪者プロファイリング、ポリグラフ検査、被疑者の取調べと供述の心理学及び司法面接を扱う。
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細目レベル① 大塚祐輔(2024). 捜査と裁判. 原田隆之(編)司法・犯罪心理学.ミネルヴァ書房.pp144-153.
渡辺昭一(2004). 目撃証言の心理. 渡辺昭一(編) 捜査心理学. 北大路書房. pp8-29.
細目レベル② 岩見広一・高村茂・三好照美(2000). プロファイリング研究とその手法. 高村茂・桐生正幸(編) プロファイリングとは何か. 立花書房.pp57-115.
岩見広一・高村茂・三好照美(2006). 犯罪者プロファイリングの歴史と方法. 渡邉和美・高村茂・桐生正幸(編) 犯罪者プロファイリング入門. 北大路書房31-86.
細目レベル③ 大塚拓朗(2020). ポリグラフ検査と虚偽検出. 河野荘子・岡本英生(編).コンパクト司法・犯罪心理学. 北大路書房.pp51-60.
山本直宏・廣田昭久(2017). ポリグラフ検査. 越智啓太・桐生正幸(編) テキスト犯罪心理学. pp357-376.
渡辺昭一(2004). ウソ発見の心理. 渡辺昭一(編) 捜査心理学. 北大路書房. pp30-40.
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コマ主題細目
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① 目撃証言の心理学 ② 犯罪者プロファイリング ③ ポリグラフ検査 ④ 被疑者の取り調べと供述の心理学 ⑤ 司法面接
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細目レベル
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① 目撃証言の心理学 目撃証言とは、被害者や参考人が目撃した内容を警察の捜査段階、または裁判をはじめとする司法段階において、自らの記憶をもとに報告することである。この目撃の供述について、記憶の観点からの研究が行われている。記憶の過程は記銘、保持、想起の3段階に分類される。 ア 記銘段階 情報を記憶に入力する段階である。目撃時に相当する。具体的には、犯行現場の状況や犯人の特徴について記憶するということである。目立ちにくいものや一瞬しか見ていないものを正確に記憶することは困難である。逆に、目立つものや長時間目にしたものについては記憶に残りやすい。 また、記憶する情報については、事件の持続時間(どのくらいの時間性被害を受けていたかなど)は不正確であることも多く、強いストレスを感じる状況下ではより長いと感じる傾向がある。さらに、自分の年齢に近い被疑者の年齢であれば正確に推定しやすく、自分と年代が離れていたり異なる人種の場合は記憶に残りづらいという研究もある(渡辺ら,1987)。 目撃者(被害者)の心身状態も記憶に影響する。たとえば、心理的ストレスは中心的な事柄に関する記憶を促進させる傾向がある。この仕組みの一つである「凶器注目効果」とは、凶器を所持した犯人に襲われた場合、被害者の注意は犯行が続いている間、犯人が持っている凶器に引き付けられる。その結果、凶器についてはよく説明できるが、そのほかの部分の説明が難しくなる。 イ 保持 犯行を目撃してから証言するまでの期間は、記憶過程では保持段階に相当する。保持段階では、犯行に関する情報の一部は変容することなく、記憶に残る。しかし、ある部分は時間の経過とともに変容したり忘却したりする。変容について、目撃した後に、その事件に関する新しい情報に接することがある。たとえば、その事件に関する新聞記事を読んだり、家族や近所の人と話したりすることで得られる情報を事後情報と呼ぶが、その事後情報によりオリジナルの記憶が変容してしまうことがあり、これを事後情報効果という。 また、忘却については、情報を記銘した直後の短期間に急激に忘却が進み、その後は次第にゆっくり進行する。 ウ 想起 記憶想起の段階では、記銘、保持段階を経て目撃者の記憶に残った情報について警察官等が聴取する。警察官等が目撃者の記憶を喚起し、良質の証言を引き出すように面接手法が重要となる。 目撃証言を扱うことは記憶の研究と密な関係にあり、心理学の応用に直結しているので、理解に努めること。 【到達目標】 • 目撃証言に関わる記憶の過程を、記銘・保持・想起の3段階から説明することができる。 • 凶器注目効果や事後情報効果が目撃証言の正確性に及ぼす影響を説明することができる。
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② 犯罪者プロファイリング 犯罪者プロファイリングとは、行動科学的な視点から捜査を支援する手段の一つである。犯人を個人特定するのではなく、あくまで可能性の高い犯人像を犯行現場の様々なデータから科学的に推測して提示するものである。 ア 臨床的プロファイリング(FBI方式) 臨床プロファイリングは、臨床心理学や精神医学の知見を基盤として、犯行中の犯人の行動系列から、犯人の行動特徴や性格特徴、精神病理面等について推論を行うものである。具体的には、犯行現場の評価を行い、その結果から犯行現場で何が行われたのかを再構成し、そのような犯行をする犯人の人物像を示すものである。 FBIアカデミー(アメリカ連邦捜査局の法執行研修・研究機関)の行動科学科が1970年代初頭に、心理学を学んだ捜査員と精神科医のチームで性的殺人犯36人に対する面接調査や公式記録調査を行い、「秩序型」と「無秩序型」に分類した。秩序型は計画性と証拠隠滅の周到さが犯行の特徴であり、平均以上の知能を持ち、社交的で、熟練を要する職業に就いているなど社会的立場が高い人物像が想定される。無秩序型は自宅近くで目に付いた人に危害を加えるなど衝動的な犯行であり、証拠隠滅意にもあまり配慮せず、平均以下の知能であり、社会性に欠け、単純労働に従事しているといった社会的には不適応状態という人物像が想定される。この結果を新規発生の事件のプロファイリングに活用した。 イ 統計的プロファイリング(リヴァプール方式) 統計的なプロファイリングは、過去の類似事件の発生状況の統計的な分析結果を根拠とし、犯人像に関する推論を行うものである。具体的には、過去の類似事件に関する情報を用いて、被害者情報と犯罪行動に関する情報と、犯人特徴との関連性を見出す分析を行う。 リヴァプール大学のカンター(Canter,D.)はロンドン警視庁の依頼に基づき、1982年から1986年にかけて発生した「鉄道レイプ魔」と呼ばれる連続レイプ殺人事件の犯罪者プロファイリングを行った。カンターは、犯人の行動に関する約100項目について非計量的多次元尺度法を用い、犯行の構造を見出すことにより、同一犯の犯行としてリンクされる事件を検討したり、犯行がエスカレートするかなどについて捜査員に情報を提供した。この後、リヴァプール大学に捜査心理学センターが設立され、カンターを中心として様々な心理学的犯罪捜査支援方法が研究されることとなった。 統計的プロファイリングでは、犯人の犯行行動の構造に注目し、多変量解析(要因がたくさんある場合にそれらを要約し、複雑な事象を把握しやすくする解析方法)を用いて犯行テーマを見出し、その犯行テーマ別に異なる犯人特徴を明らかにする。より科学的な手法を目指した統計的プロファイリングは、実施に際しての過程の再現性がある。 ウ 地理的プロファイリング 地理的プロファイリングは、連続して発生した犯行地点の位置から、犯人が居住している可能性の高い地域を推定することである。地理的プロファイリングでは、連続発生事件を対象とし、発生地点や犯行にかかわる場所の分布から、犯人の拠点があると考えられるエリアを推定し、犯行の移動手段や経路あるいは地点選択の特徴から、犯人属性に関する検討を行う。 【到達目標】 • 犯罪者プロファイリングの目的と限界を説明することができる。 • 臨床的プロファイリングと統計的プロファイリングの違いを説明することができる。 • 地理的プロファイリングが犯人の拠点推定にどのように用いられるかを説明することができる。
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③ ポリグラフ検査 ア 概要 ポリグラフ検査とは、検査対象となっている事件に関連のある事柄を、事件とは直接関係のない事柄に織り込んで被検査者に質問し、2つのタイプの質問に対応して生じる生理反応を比較することによって結果を導くものである。被検査者となる被疑者が虚偽の返答をした際に、心理的動揺から呼吸や脈拍の変化、口内の渇き冷や汗、瞳孔の拡大など種々の身体反応が現れる。ポリグラフ装置は、このような異なる生理反応を同時に記録する。これらの感情に伴う身体的変化は、内臓の動きをコントロールしている自律神経系と密接な関係があり、ヒトの意識とは無関係に心臓、腺、不随意筋、消化管の活動を調整している不随意的反応(意識的に変えられない反応)である。 イ ポリグラフ検査の手続き 事前面接、事前テスト、検査の実施から構成される。日本の警察では、隠匿情報検査が用いられている。これは、被検査者が事件事実を認識しているかどうか、すなわち、事件事実を記憶しているかどうかを調べる検査である。CITでは、犯人しか知りえない事件内容に関する項目(裁決項目)と、それと同じ範疇に属するが事件とは無関係な内容に関する項目(非裁決項目)を組み合わせた質問票を用いて実施される。 ウ ポリグラフ検査で測定される生理反応 ポリグラフ検査で測定される生理反応は、心拍数と血圧、呼吸パターン、皮膚電気活動(発汗)、末梢血流量である。これらの生理反応は、自律神経系の活動を反映しており、意識的にコントロールすることが難しいとされる。ただし、これらの反応は必ずしも嘘をついていることを直接的に示すものではなく、単に緊張や不安を反映している可能性もある。したがって、ポリグラフ検査の結果を解釈する際は、これらの生理反応のパターンを総合的に分析し、他の証拠や状況と併せて慎重に判断する必要がある。 ポリグラフ検査は基礎心理学に裏付けされたものであるため、理論的背景を理解することが望まれる。 【到達目標】 • ポリグラフ検査の概要と、測定される生理反応を説明することができる。 • 隠匿情報検査(CIT)の基本的な手続きを説明することができる。
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④ 被疑者の取り調べと供述の心理学 取り調べの過程で被疑者がどのような心理状態にあるかを理解することは、供述の信頼性を評価し、真実を引き出すために不可欠である。 日本の警察における取り調べの質問の種類には、自由再生質問(相手が制限なく自由に回答できる質問方法)、焦点化質問(いつ、どこで、誰が、何を、どのように、なぜという55W1Hを尋ねる)、選択式質問(面接者が知りたい事実に焦点を絞って選択肢を示す)、はい・いいえ質問(相手が「はい・いいえ」で答えられる質問)、誘導質問(質問内容に同意を求める質問)の5つがある。 取り調べに際して、誘導的にならないように最大限の配慮が求められるが、否認している被疑者の取り調べは非常に困難なものであるため、警察庁では取り調べの科学化の研究が行われ、都道府県警察に向けた指導がなされている。 【到達目標】 • 取り調べにおける被疑者の心理状態を理解する重要性を説明することができる。 • 日本の警察における主な質問法の種類を説明することができる。 • 誘導的な取り調べが供述の信頼性に与える問題を説明することができる。
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⑤ 司法面接 司法面接は、主に児童虐待や性犯罪の被害に遭った、または目撃者となった疑いのある未成年者から正確な供述を得るための専門的な面接技法である。この手法は、被害少年の心理的負担を最小限に抑えつつ、信頼性の高い情報をできるだけ多く収集することを目的としている。 司法面接の手続きとして、次のことが含まれる。(1)被面接者への負担を最小限にするため、面接を繰り返さないで済むように録音録画し、複数の機関(検察官、警察、児童相談所等)が連携して一度の面接で関係者揃って確認すること。(2)日面接者から正確な情報を可能な限り多く引き出すため、記憶の変容が起こらないように、また供述が変遷しないように、できるだけ早い時期に、原則として一度だけ面接を行うこと。そして、誘導暗示を与えることのないように自由報告を主とする構造化された面接手法を用いること。 司法面接は検察官や訓練を受けた警察官、児童相談所職員等のみが行うが、その基本手続きは子どもへの支援に有用であるため、理解しておくこと。 【到達目標】 • 司法面接の目的と対象を説明することができる。 • 司法面接において録音録画、一回性、構造化面接が重視される理由を説明することができる。 • 被面接者の心理的負担を軽減しつつ正確な情報を得る工夫を説明することができる。
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キーワード
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① 目撃証言 ② FBIによる犯罪者プロファイリング ③ 統計的プロファイリング ④ 隠匿情報検査(CIT) ⑤ 司法面接
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 これまで学んだ記憶や生理心理学に関する事柄について、コマシラバスや文字教材等を読んでおくこと。 【復習】 第12回5つのキーワードについて各200字程度で説明できるように努めること。
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13
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加害者の更生~施設内処遇、社会内処遇
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科目の中での位置付け
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犯罪者・非行少年を収容して行う施設での処遇の概要、社会内で再発防止を目的に行う処遇の概要を扱う。
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細目レベル①~③ 朝比奈牧子(2024). 施設内処遇. 原田隆之(編)司法・犯罪心理学.ミネルヴァ書房.pp116-131.
細目レベル④ 谷真如(2024). 社会内処遇. 原田隆之(編)司法・犯罪心理学.ミネルヴァ書房.pp132-143.
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コマ主題細目
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① 犯罪者・非行少年の収容処遇施設の目的と機能 ② 犯罪者・非行少年を収容する施設の種類 ③ 施設内処遇における犯罪者・非行少年に対する指導 ④ 犯罪者・非行少年の社会内処遇の制度 ⑤ 刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・伝達制度
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細目レベル
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① 犯罪者・非行少年の収容処遇施設の目的と機能 刑務所と少年院は犯罪者や非行少年を収容し、一定期間身柄を拘束して、さまざまな働きかけを行い、再犯防止の指導を行うことによって、社会内の非行や犯罪を減らすことを目的として設置されている。これらの施設の中で犯罪者や非行少年を処遇することを施設内処遇と呼ぶ。施設内処遇の機能は、拘束(社会からの隔離)、応報(懲らしめること)、抑止(このような目に遭うのは嫌だから二度と犯罪をしないと思わせること)、改善更生(再び犯罪をしないように改善させること)の4点である。 犯罪者や非行少年を単に長期間施設に入れておくのではなく、出所した後に再販することなく善良な市民として納税者となることが求められるため、効果的な再犯防止のための処遇に関するエビデンスを蓄積し、適切な処遇を行うことが重要となる。 このようなエビデンスのある改善指導の企画と実施に際し、法務省心理技官等が研究と実践を行っており、その社会的意義を理解する必要がある。 【到達目標】 • 施設内処遇の目的と機能を説明することができる。 • 拘束、応報、抑止、改善更生という4つの機能を説明することができる。
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② 犯罪者・非行少年を収容する施設の種類 犯罪者や非行少年を施設に収容するに当たり、対象者の年齢が大きな基準となる。 ア 厚生労働省所管の社会的養護施設 児童相談所と一時保護所は18歳未満の少年を入所させて保護する施設であり、対象は非行を起こした少年に限らない。例えば、被虐待児が保護されることもある。 児童養護施設は、さまざまな事情で適当な保護者がいない18歳未満の少年を入所させて擁護する施設であり、対象は非行、少年に限らない。 児童自立支援施設は、不良行為をするか、またはするおそれのある少年のほか、児童養護施設では対応が困難と考えられる少年を入所させて生活指導を行う施設である。 イ 法務省所管の矯正施設 非行や犯罪を起こした者に対し、矯正施設に入所させて適切な処遇を実施することについて、少年については家庭裁判所、成人については裁判所において決定される。 少年矯正施設には少年鑑別所と少年院がある。少年鑑別所及び少年院の業務は本講義の第4回及び第5回において説明したとおりである。少年鑑別所は全国に52か所設置されており、家庭裁判所において「観護措置決定」を受けた20歳未満の少年を対象に、最大4週間収容する。 成人を対象とした矯正施設は刑事施設と呼ばれ、拘置所、少年刑務所、刑務所がある。第6回、第7回において刑事施設における非行少年・犯罪者の更生について説明したため本講義での詳説は行わないが、復習しておくこと。 【到達目標】 • 児童相談所、一時保護所、児童養護施設、児童自立支援施設の役割を説明することができる。 • 少年鑑別所、少年院、拘置所、刑務所の役割と対象者の違いを説明することができる。
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③ 施設内処遇における犯罪者・非行少年に対する指導 ア 少年鑑別所 少年鑑別所では、家庭裁判所から「観護措置決定」を受けて送致された少年が一時的に収容され、医学、心理学、教育学、社会学などの専門的知見に基づいた鑑別が行われる。観護措置とは、家庭裁判所が少年の審判を行う前に、必要あると判断したときに取られる措置であり、送致された少年は「鑑別」を受ける。 「鑑別」は、法務技官(心理)が面接や心理検査により非行に至った背景等を検討し、法務教官が行動観察を行い、医師が診察・診断を行い、その結果を統合する形で行われる。鑑別結果は家庭裁判所に亭主たれ、裁判官が少年審判を行う際の資料となる。 なお、少年鑑別所の入所者はこれから審判を受ける身分であり、無罪である可能性もあるため、非行があることを前提とした矯正教育の対象にはならないが、健全な育成への配慮として、基本的な生活習慣に関する指導・助言等がなされる。 イ 少年院 少年院は、家庭裁判所で保護処分を受けた少年が更生プログラムを受ける場である。少年院の法務技官(心理)は、少年の心理的問題を軽減し、健全な社会復帰を支援するためのプログラムを実施する。 少年院では20名程度の在院生が寮単位で生活し、5~6名程度の寮担任職員(法務教官)と構成する集団を生活の基本としている。5~6名程度の寮担任職員のうち1名が各在院生にとっての個別担任に指定され、各種教育内容の進捗状況を確認したり、在院生の悩み事や出院後の生活に関する相談に応じる。なお、在院生は日中は教科指導、職業指導、体育指導も受けて過ごす。在院生は個別担任との関係を通して大人との関係の持ち方を学ぶ。このように、少年院の処遇は、個々の在院生の長所を引き出し、健全な体験を体得させることを通して社会に適応できる力を身に付けさせることを目指すものである。 このほか、在院生の特性に応じ、特定生活指導も行われる。特定生活指導には、被害者の視点を取り入れた教育、薬物非行防止指導、性非行防止指導、暴力防止指導、家族関係指導、交友関係指導があり、生活指導を補完している。 ウ 拘置所 拘置所は、刑が確定する前の未決拘禁者が収容されている。未決拘禁者は有罪が確定する前の状態であり、無罪が推定される状態であるため、生活上の制限は刑務所よりも少なく、改善指導の対象にもならない。 拘置所における心理技官の業務は、心理アセスメントとして新規入所者の心理状態評価や自殺リスクの評価、釈放前の心理教育プログラムの実施、社会適応に関する個別カウンセリングなどが挙げられる。 エ 少年刑務所、刑務所 受刑者には、刑の執行に当たり、それぞれの特徴に応じて処遇指標が付される。処遇指標として、犯罪傾向が進んでいない者、犯罪傾向が進んでいる者、精神上の疾病または障害を有するため医療を主として行う刑事施設等に収容する必要があると認められる者などである。それぞれの刑務所には収容する受刑者の処遇指標が指定されており、医療措置の要否や性別、年齢、刑期、犯罪傾向の進度などの特徴が似通った受刑者が同じ施設に収容される。 刑務所では、30~100名程度の受刑者と工場担当職員(刑務官)1~2名からなるユニットを生活の基本とする。二中は刑務作業や受刑者の生活を支える作業(炊事や洗濯等)を生活の中心とし、必要に応じて職業訓練や教科指導を受けたり、特別改善指導を受ける。特別改善指導には、薬物依存離脱指導、暴力団離脱指導、性犯罪再犯防止指導、被害者の視点を取り入れた教育、交通安全教育、就労支援指導があり、法務技官、法務教官、刑務官が連携して指導に当たる。これらの指導は、受刑者が社会に復帰した後に再犯をすることなく適応することを目指したものであり、就労支援や福祉的支援などが重視されるようになっている。 【到達目標】 • 少年鑑別所における鑑別の意義と手続きを説明することができる。 • 少年院における生活指導、教科指導、特定生活指導の内容を説明することができる。
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④ 犯罪者・非行少年の社会内処遇の制度 ア 社会内処遇の概要 社会内処遇とは、有罪判決を受けた者が矯正施設から出所したり、刑の執行猶予などで矯正施設に収容されずに社会内で生活しながら犯罪や非行を再び起こさないように指導することである。 社会内処遇の中核となるものが「保護観察」である。保護観察は、(1)地域の民間ボランティアによる生活指導や見守り、(2)RNR原則に基づく再犯リスク管理と専門的処遇プログラム、(3)生活再建の実際的支援を行う社会福祉的支援(住居、就労等)の層に分類される。 イ 社会内処遇の実施 社会内処遇の実施を担当するものは保護観察官である。保護観察官は、医学、心理学、教育が、社会学その他更生保護に関する専門的知識に基づいて社会内処遇に従事する専門職員であり、国家公務委員採用総合職試験や法務省専門職員(人間科学)採用試験保護観察官区分の合格者の中から主に採用される。保護観察官は保護観察所や地方更生保護委員会で勤務している。そして、法務大臣から委嘱を受けた民間ボランティア(無給の非常勤国家公務員)である保護司が対象者の地域への再統合を補い、対象者と定期的に面談を行い、保護観察官と協働して対象者の再犯防止と社会適応に取り組んでいる。 保護観察所は全国に50か所あり、家庭裁判所で保護処分を受けた少年や仮釈放者を対象に保護観察を実施する。また、矯正施設に収容中の人の出所後の住居や就業先などの生活環境の調整も行う。全国に8か所ある地方更生保護委員会では、収容中の本人と面接を行い、刑事施設からの仮釈放や少年院からの仮退院に関する心理のために必要な調査を行う。 保護観察の種類には、(1)懲役・禁固刑(2025年6月以降は拘禁刑に一本化)や少年院送致の処分を受け、矯正施設に収容された状態にあるものについて、地方更生保護委員会の決定により仮に出所・出院させ、処分が終了するまでの期間に社会内で保護観察を受ける人(成人の場合は仮釈放者、少年の場合は少年院仮退院者)、(2)裁判所による刑の執行猶予の言い渡しや保護観察処分によって矯正施設に収容せず、最初から社会内で保護観察を受ける人(成人の場合は保護観察付前執行猶予者及び保護観察付一部執行猶予者、少年の場合は保護観察処分少年及び特定保護観察処分少年)の2種類がある。 【到達目標】 • 社会内処遇の概要と意義を説明することができる。 • 保護観察における保護観察官と保護司の役割を説明することができる。
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⑤ 刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・伝達制度 令和4年6月に刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律、少年院法及び更生保護法が改正され、被害者の心情等を踏まえて、刑事施設(刑務所、少年刑務所、拘置所)や少年院などの施設内処遇や、社会内処遇の充実化が図られた(令和5年12月から施行)。これによって、被害者等の思いに応える施設内処遇及び社会内処遇を実現させるとともに、受刑者等や保護観察対象者の改善更生にも資することが期待される。 矯正施設において、受刑者や少年院の在院者が、自分の犯罪・非行に向き合って心から反省するためには、被害者やその親族等の被害に関する心情やその人たちの置かれている状況等について正しく理解することが重要である。具体的には、刑事施設や少年院の長は、(1)被害者等から被害に関する心情や置かれている状況等を述べたいという申出があったときは、その心情等を聴取すること、(2)受刑者の処遇要領又は在院者の個人別矯正教育計画を策定するときは、被害者の心情等を考慮すること、(3)被害者から聴取した心情等を受刑者等に伝達することを希望するという申出があったときは、指導を行うに当たり、その心情等を受刑者等に伝達すること等が制度(心情等聴取・伝達制度)として定められた。 また、保護観察の充実として、(1)地方更生保護委員会が行う被害者からの意見等の聴取事項として、加害者の生活環境の調整(釈放後の住居や仕事の確保、家族・福祉・医療の各関係者から必要な協力等が得られるようにするための調整)や仮釈放中の保護観察に関する意見を加えること、(2)保護観察所は、被害者等から被害に関する心情等を述べたい旨の申出があったときは、保護観察対象者に伝達する場合に限らず、社会内で行う処遇に活かすため当該心情等を聴取すること(心情等伝達制度を心情等聴取・伝達制度とすること)が追加された。 このように、犯罪被害者支援の施策と犯罪・非行を犯した者の矯正の双方を併せた法改正がなされ、開始されたところであり、法務省に限らず、日本臨床心理士会でも本制度に関する研修が実施されており、犯罪心理学を学ぶ上で理解に努める必要がある。 【到達目標】 • 心情等聴取・伝達制度の概要を説明することができる。 • 被害者の心情等を施設内処遇や社会内処遇に反映させる意義を説明することができる。 • 被害者支援と加害者の改善更生を両立させる制度的意義を説明することができる。
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キーワード
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① 少年鑑別所 ② 少年院 ③ 少年刑務所、刑務所 ④ 保護観察所の専門的処遇プログラム ⑤ 刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・伝達制度
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 第6回、第7回での刑事施設における非行少年・犯罪者の更生について復習しておくこと。 【復習】 少年鑑別所、少年院、少年刑務所・刑務所、保護観察所における処遇の概要をそれぞれ200字程度で説明できるように努めること。
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犯罪被害者への支援
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科目の中での位置付け
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犯罪が発生するところには被害者が存在する。犯罪被害者への支援を理解することは総合犯罪心理学の学修に重要であることから、犯罪被害者支援の歴史、制度、関連法規、犯罪被害者の心理と支援を扱う。 この回では、実際に犯罪被害者支援に従事されている「えひめ犯罪被害者支援センター」の事務局長を務める稲葉省三氏を迎え、犯罪被害者支援の実務及び犯罪被害者の心情に配慮した捜査活動の実際を講話いただく。
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細目レベル①~② 諸澤英道(1999). トラウマから回復するために. 講談社.
細目レベル② 高橋シズヱ・河原理子(編著)(2005). <犯罪被害者>が報道を変える. 岩波書店.
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コマ主題細目
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① 犯罪被害者支援の歴史及び制度 ② 犯罪被害者支援の制度 ③ 犯罪被害者の心身の反応 ④ 犯罪被害者への心理支援 ⑤ 民間犯罪被害者支援団体の取組
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細目レベル
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① 犯罪被害者支援の歴史及び制度 ア 犯罪被害給付制度からの犯罪被害者支援 日本における犯罪被害者支援の歴史は、1980年に施行された「犯罪被害者等給付金支給法」に基づき、犯罪被害者に対する経済的支援である犯罪被害給付制度から始まった。それ以前は、犯罪被害者に対する公的支援制度がほとんど存在せず、被害者は犯罪被害後の生活再建や心理的な支援を個人的に行う必要があった。 1974年に無差別テロ事件である三菱重工ビル爆破事件が発生し、8名が死亡、380人が重軽傷を負ったが、偶然現場に居合わせた被害者は経済的保障を受けることができなかった。この事件を契機に犯罪被害者に経済的補償を求める機運が高まり、1980年に「犯罪被害者等給付金支給法」が成立した。この制度は、犯罪被害者の遺族や、犯罪被害により重傷病または後遺障害を負った被害者に対して国が給付金を支給するものである。当初は死傷による遺族への給付が中心であったが、2008年の法改正により、傷害や後遺障害を受けた被害者への支給も拡充された。 イ 警察における犯罪被害者支援 日本における組織的な犯罪被害者支援は、犯罪被害者等給付金制度を所管する警察において進められてきた。上記アのとおり、当初は経済的な支援であったが、犯罪被害者やその家族は心理的に極めて苦しむことから、警察庁が1996年に「犯罪被害者対策要項」を策定し、犯罪被害者支援は警察の本来業務であると明記された。 そして、各都道府県警察がそれぞれ臨床心理士等の資格を有する犯罪被害者支援カウンセラーの採用を始めた。さらに、全警察官が犯罪被害者に二次被害を与えずに的確な対応ができるように、教育研修が進められている。 また、犯罪被害者への支援に従事した結果、支援者も被害者が経験するような外傷性ストレス反応に苦しむことが明らかとなった。これを代理受傷または二次的外傷性ストレスと呼ぶ。警察庁は全国の警察職員に対して犯罪被害者支援に従事した結果生じる外傷性ストレス反応に係る調査を実施し、2015年にその結果をまとめた報告書が発行された。そして、全国警察において犯罪被害者支援に従事する職員、性犯罪捜査等に従事する警察官に対して代理受傷対策が推進されるようになった。 ウ 犯罪被害者等基本法の制定 犯罪被害者への経済的支援や警察における支援は進んできたものの、刑事裁判において犯罪被害者は証拠の一つという扱いであり、加害者とされる被告人への質問などもできない状況であったことから、2000年に犯罪被害者遺族による「全国犯罪被害者の会(あすの会)」が結成され、犯罪被害者が置かれた状況を社会に周知する活動が始まった。さらに、同会は欧米の刑事司法手続きにおける犯罪被害者の処遇を調査し、報告書にまとめ、国に働きかけるなどした。このような機運が高まり、2004年に「犯罪被害者等基本法」が成立した。そして、同法に基づき、2005年に「犯罪被害者等基本計画」が閣議決定され、犯罪被害者に対する様々な支援を国を挙げて実施することが定められた。同計画は5年ごとに見直され、犯罪被害者のニーズに即して、きめ細かな支援の充実が図られている。 このように、犯罪被害者の心理面のほか様々なニーズに即して法律や制度が整備されてきたことを踏まえ、心理学の調査研究も社会をより良いものにする一助となることを理解すること。 【到達目標】 • 日本における犯罪被害者支援の歴史を、犯罪被害給付制度から説明することができる。 • 警察における犯罪被害者支援の発展と、支援が警察の本来業務と位置づけられた経緯を説明することができる。 • 犯罪被害者等基本法および基本計画の意義を説明することができる。
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② 犯罪被害者が置かれる状況 ア 刑事司法手続き 本科目の第3回、第5回、第7回において加害者に対する刑事司法手続きを概観した。また、第12回において目撃証言について学んだ。これらの状況において、犯罪被害者は警察官に被害にあった旨を申告し、被害届を出し、加害者の特徴などの目撃情報を話し、さらに検察官にも被害に関する話をして、公判(刑事裁判)では証言をすることもある。 かつては犯罪被害者は証拠の一つの扱いであったが、犯罪被害者等基本法が施行され、公判において検察官の隣に座り被告人に質問する権利も得るなど、刑事司法手続きに関与できることが増えている。 しかし、殺人事件の遺族や性暴力被害の被害者は過酷な心理状態にあり、加害者と同じ空気を吸うことすら困難であることも多いため、公判に際しては別室で証言するビデオリンク方式や遮蔽措置が取られたり、性犯罪の被害者については氏名を読み上げないようにしたりなど、被害者保護の施策が実施されている。 イ 犯罪被害者が置かれる生活状況 犯罪被害者は被害により後遺障害を持つこともある。たとえば、四肢の障害、外傷後ストレス障害(PTSD)などによる心理的後遺症などにより、被害前にできていた仕事や家事ができなくなるなど社会生活上で大きな支障が生じる。このような状態により、就労を継続できなくなり、収入がなくなるなどの状況に陥ることもある。 また、一家の大黒柱が犯罪被害により亡くなった場合、遺族は犯罪被害給付金や交通事故の場合は保険金を得ることも可能であるが、経済的に困窮することもある。特に、交通事故以外の犯罪被害を受けた直後の場合、葬儀費用の捻出も大変な状況になりうる。そのほか、治療費用、転居費用、弁護士の依頼費用など、当面必要とする金額も大きなものになり、遺族には極めて厳しい状況となる。一部の地方自治体では犯罪被害者等支援の条例に基づいて当面の生活に充てる見舞金を支出しているが、一時しのぎに過ぎない。しかし、2024年6月に改正犯罪被害者等給付金支給法施行令が閣議決定され、6月15日以降発生した事件の被害者を対象に、子どもや専業主婦等の無収入または低収入の被害者が死亡した場合に遺族に支払われる給付金の最低額を現行の320万円から1,060万円に引き上げられるなど、経済的支援のさらなる拡充が進んでいる。 ウ 二次的被害 犯罪被害者やその家族は、犯罪被害を受けた後も周囲の者に苦しめられることがあり、これを二次的被害と呼ぶ。犯罪被害者支援が公的に開始される以前の1990年代ころまでは警察官、検察官、弁護士等から被害者の落ち度(「なぜ逃げられなかったのか」「あなたにも落ち度があったのではないか」など)を指摘されることもあったが、犯罪被害者支援が周知され、現在では司法関係者による二次的被害はほぼなくなっている。 しかし、学校の友人や近所等の周囲の人々から中傷を受けるなどの二次的被害は現在でも散見される。また、被害直後に報道記者から繰り返し同じ質問を受けたり、自宅に記者が張り付くなどの二次的被害を受ける犯罪被害者もいる。このような報道記者が押し寄せる二次的被害をメディア・スクラムと呼ぶ。メディア・スクラムの解消のため、警察が犯罪被害者の心情を代読するなどにより、国民が報道に知る権利を守る試みもなされている。 このように、誰もが犯罪被害者となりえる状況では、犯罪被害者が平穏な生活を取り戻すために必要なことを考えることが重要である。 【到達目標】 • 犯罪被害者が刑事司法手続において経験する負担や配慮措置について説明することができる。 • 犯罪被害後の生活面・経済面の困難について説明することができる。 • 二次的被害やメディア・スクラムの問題について説明することができる。
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③ 犯罪被害者の心身の反応 犯罪の被害を受けた後、被害者には心身に様々な反応が生じる。これは「異常な事態における正常な反応」とされ、その被害者が弱いわけでも特別なわけでもなく、生物として自然な反応が生じているものである。犯罪被害者に生じる外傷性ストレス反応として次のものがある。 ア 身体的反応 不眠、食欲不振、過食、動機、手足の震え、発汗、発熱、腹痛、頭痛、倦怠感、過呼吸 イ 心理的反応 出来事について思い出したくないのに記憶がよみがえる・悪夢を見る(再体験・侵入症状)、出来事に関係するものを避ける・感情が感じられなくなる・集中力が低下する(回避、麻痺症状)、イライラする・情緒不安定になる(覚醒亢進症状)、抑うつ的になる、死にたい気持ちになる ウ 生活・行動の変化 仕事や学校に行けなくなる、人に会いたくなくなる、幼児がえりをする、家族等近しい人とのけんかが増える、出来事を思い出さないようにゲームやインターネット等に没頭する、アルコールや薬物に依存する、自傷行為をする エ 考え方の変化 世界に対する安全感が失われる(一人で出歩いても安全だなどという感覚)、自分に対して否定的な見方をする(私はけがれてしまった人間などという感覚)、自分を責める、他人への信頼感を喪失する(誰も信じられなくなる) そして、トラウマとなる出来事として、実際にまたは危うく死ぬ・重症を負う・性的暴力を受ける出来事について直接体験したり、直に目撃したり、近親者や友人がそのような体験をしたことを聞いたりした場合、上記イに示した再体験・侵入症状、回避・麻痺症状、覚醒亢進症状及び上記エに示した認知と気分の否定的変化が1か月以上続き、生活面や仕事面で重大な支障が生じている場合、外傷後ストレス障害(PTSD)の診断を受ける可能性がある。PTSDの診断には、CAPSと呼ばれるPTSD診断用構造化面接尺度を実施する必要がある。 なお、上記のように生命の危機を感じるような出来事に遭わずに外傷性ストレス反応が生じている場合は適応障害と診断されることとなる。しかし、PTSDの診断が出ていなくても犯罪被害者が心理的に苦しくないというわけではないことに留意する必要がある。 また、外傷性ストレス反応が3日間以上1か月未満持続している場合は、急性ストレス障害(ASD)と診断される可能性がある。 【到達目標】 • 犯罪被害後に生じる身体的反応、心理的反応、生活上の変化を説明することができる。 • PTSD、ASD、適応障害の違いを概説することができる。 • 犯罪被害後の反応が「異常な事態における正常な反応」であることを説明することができる。
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④ 犯罪被害者への心理支援 ア 安全の確保 犯罪被害者は突然の被害に遭い、世界が安全であるという感覚を失ってしまっている。そのため、第一に安全の確保が重要となる。具体的には、自宅において信頼できる人と過ごす環境を確保すること、警察署や面接室等において警察官や支援者が被害者のペースで話をできるように環境を整えること、加害者が未検挙の場合は非常通報装置等を携帯するなど緊急時に警察に即座に通報が行くシステムを整えること、不安が強い場合は外出時に付き添うことなどが挙げられる。 安全の確保がなされない限りは犯罪被害者は再被害の不安を払しょくできず、安心できないため、心理支援に先立ち、安全の確保が必要である。 イ 心理教育 犯罪被害者の多くは被害に遭う前は平穏な生活を営んでいたことから、被害後に様々な心身の反応が生じたとしても、周囲の者は「病気扱い」することを避ける必要がある。上記③で概観した犯罪被害を受けた後に生じる心身の反応について、被害者にわかりやすく説明することを「心理教育」と呼ぶ。心理教育は、「あなたはこういう状態になりますよ」などと外傷性ストレス反応などの発現を予告するのではなく、「仮にこのような反応が現れたとしても、無理もないことであり、多くの犯罪被害者が経験しうるものである。まずは、そのようなことが生じる可能性があることを知ることが大切である。」という説明に基づき、犯罪被害後に生じる可能性のある心身の反応を「異常な事態における正常な反応」として説明することが求められる。 ウ 犯罪被害者へのカウンセリング、治療 犯罪被害者への心理支援に際しては、犯罪被害者のレジリエンスを期待し、早急にカウンセリングや治療を実施しないが、不眠や学校・仕事に行けずにいる状態が続くなど日常生活に支障が生じている場合は専門的なカウンセリング、治療が求められる。カウンセリングや治療の詳細は「被害者の心理学」において説明することとなる。 【到達目標】 • 犯罪被害者支援において、安全の確保が最優先となる理由を説明することができる。 • 心理教育の目的と実施上の留意点を説明することができる。 • 専門的カウンセリングや治療が必要となる状況について説明することができる。
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⑤ 民間犯罪被害者支援団体の取組 日本における民間犯罪被害者支援団体の活動は、1980年代に端を発する。当初は、犯罪被害者やその遺族の孤立という深刻な課題に対応するため、有識者が個々に活動したり、ボランティア団体が支援活動を展開していた。これらの団体は、被害者の心理的ケア、必要な情報の提供、法律相談のサポートなどを通じて、犯罪被害者の権利擁護を図ってきた。 1998年、日本全国の民間支援団体を統括する組織として「全国被害者支援ネットワーク」が設立された。この組織の誕生により、各団体間の連携が強化され、支援活動の質と効果が大幅に向上した。さらに、このネットワークを通じて、被害者の声を国や地方自治体の政策に反映させる取り組みも積極的に行われるようになった。 そして、「犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(犯罪被害者等支援法)」に基づき、犯罪被害者を支援するための事業を適正かつ確実に行なえると認められる団体に対し、都道府県公安委員会に指定された民間犯罪被害者支援団体は、犯罪被害者等早期援助団体として活動することとなった。 民間団体の業務は多岐にわたり、専門家による心理的支援やカウンセリング、日常生活の再建に向けた直接的な支援(医療機関等への付き添い、買い物代行等)、弁護士による法律相談経済的支援(治療費の援助、自宅が殺害現場になったためのハウスクリーニング、自宅で性被害等を受けた場合の転居費用等)などが挙げられる。加えて、犯罪被害者の権利擁護に関する社会啓発活動や、被害者の声を国の政策に反映させるための提言活動も積極的に行っている。 民間犯罪被害者支援団体は心理専門職のほか相談員やボランティアもおり、総合犯罪心理学を学んだ者が活躍できるところであるため、自分がどのような支援をできるかを考えてみること。 【到達目標】 • 民間犯罪被害者支援団体の成立と発展の経緯を説明することができる。 • 全国被害者支援ネットワークや犯罪被害者等早期援助団体の役割を説明することができる。 • 民間団体が担う心理支援、生活支援、法律相談、社会啓発の内容を説明することができる。
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キーワード
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① 犯罪被害者支援の歴史 ② 犯罪被害給付制度 ③ 犯罪被害者の外傷性ストレス反応 ④ 代理受傷 ⑤ 犯罪被害者等早期援助団体
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 第14回のコマシラバスを読み、犯罪被害者支援の制度、犯罪被害者の心理の大枠を把握すること。 【復習】 犯罪被害者支援の制度、犯罪被害者の心理、犯罪被害者の支援について、それぞれ200字程度で説明できるように努めること。
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15
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犯罪心理学の知見に基づく安心・安全な社会を作るために必要な犯罪抑止対策の検討
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科目の中での位置付け
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総合犯罪心理学の目標の一つは犯罪が起きない安心・安全な社会を作ることを踏まえ、心理学の知見を応用した犯罪を予防するための理論と実際を学ぶ。
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細目レベル① 小俣謙二(2011) コミュニティと防犯. 小俣謙二・島田貴仁(編) 犯罪と市民の心理学.北大路書房.130-160. 島田貴仁(2021) 犯罪予防の社会心理学.ナカニシヤ出版.113-170.
細目レベル② 雨宮護(2011) 場所に基づく犯罪予防. 小俣謙二・島田貴仁(編) 犯罪と市民の心理学.北大路書房.161-184.
細目レベル③ 大久保智生(2013) 店舗の分析. 大久保智生・時岡晴美・岡田涼(編) 万引き防止対策に関する調査と社会的実践. ナカニシヤ出版.119-154.
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コマ主題細目
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① コミュニティと防犯 ② 場所に基づく犯罪予防の理論 ③ 万引きの防止対策
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細目レベル
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① コミュニティと防犯 これまでの授業で見てきたとおり、犯罪が発生すると被害者とその家族は心理面、生活面、経済面など様々な影響を被るが、加害者も刑務所や少年院に入ったり、加害者の家族も誹謗中傷を受けるなど、多くの人が平穏な生活を奪われることとなる。したがって、犯罪が発生しないことが重要であり、そのために日本の警察は防犯活動に注力してきた。さらに、官民一体となった取り組みが推進されており、各地域で防犯パトロールが行われている。地域住民が青色回転灯を装備した自動車で巡回する「青パト」活動も広く行われている。また、登下校時の子どもの見守り活動や、防犯灯・防犯カメラの設置なども進められている。警察庁(2020)の統計によれば、全国の防犯ボランティア団体数は約4万8千団体、参加者数は約180万人に上る。この数字は、日本社会における地域防犯活動の浸透度の高さを示している。 クラーク(Clarke,R.V.)は、それまでの犯罪原因論が犯罪の生じる過程に目を向けてきたことを批判し、犯罪が発生する状況要因に着目している。万引きや自転車盗などは、普段は犯罪と無縁な人によって行われることから、目前の選択と決定の結果から犯罪が生じるという犯罪現象の解明を主張している。すなわち、犯罪者のみに着目して犯罪発生のメカニズムを考えるのではなく、犯罪が行われる状況にも注目する必要性を述べている。 このように、犯罪を起こす可能性がある潜在的犯罪者が常に犯罪を起こすのではなく、潜在的犯罪者が狙った成果を得る潜在的被害者または標的と出会う(犯罪機会の発生)ことにより、犯罪が生じるという環境犯罪学の理論は犯罪発生の理解に有用である。また、クラークは、犯罪者は逮捕されるリスクや受けるかもしれない刑の重さと、犯行によって得られる利得とを比較考慮し、犯行するか否かを決定するという合理的選択理論を提唱している。 したがたって、潜在的犯罪者が犯罪を起こすことが高リスクであると認識するような環境を整備することが犯罪抑止に寄与することとなる。 【到達目標】 • 地域防犯活動が犯罪予防に果たす役割を説明することができる。 • 環境犯罪学および合理的選択理論の観点から、防犯環境整備の重要性を説明することができる。
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② 場所に基づく犯罪予防の理論 ウィルソンとケリング(Wilson & Kelling)による「割れ窓理論」は、軽微な秩序違反を放置すると、より重大な犯罪に発展するという考えであり、地域の秩序維持の重要性を強調した。このように、その地域が犯罪を引き起こす可能性がある。 犯罪が多発する場所はホットスポットと呼ばれる。ホットスポットが形成されることを説明するものとして、「日常活動理論」がある。日常活動理論は、コーエンとフェルソン(Cohen & Felson)が提唱したものであり、犯罪の発生を(1)犯罪を行おうとする者の存在、(2)ふさわしい犯行対象(人・物)の存在、(3)有能な守り手(一般住民の目)の不在という3要素が絡み合った結果生じるという理論である。 また、クラークとエック(Clarke & Eck)は犯罪のホットスポットの発生について、次の3種類に分類している。(1)犯罪を生み出す場所(多くの人が集まり、犯罪を行おうとする者と犯行対象が空間的に収束しやすい生活を持つ場所)、(2)犯罪にとって魅力的な場所(繁華街の特定の場所など、犯罪を行おうとする者が好んで集まる性格を持つ場所)、(3)犯罪を阻止できない場所(管理者が不在になった駐車場など、犯罪の抑止力になりうる人の目や設備がない場所)。 このように、犯罪者の性格傾向や所属集団のみならず、犯罪者が犯罪を起こしやすい場所に注目することが犯罪抑止に必要であり、安全な地域社会を作るうえで重要な観点となる。 【到達目標】 • 割れ窓理論の概要と意義を説明することができる。 • 日常活動理論の3要素を説明することができる。 • ホットスポットや犯罪を生み出しやすい場所の特徴を説明することができる。
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③ 万引きの防止対策 刑法犯の中でも窃盗犯が最多であり、その中でも万引きが多い。特に、少年が万引きをすることも多く、万引きが成功すると規範意識が形成されず、その後の健全育成に支障が生じる可能性もあるため、万引きの防止対策は犯罪の抑止のためにも重要なものである。 大久保(2013a)は、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、書店、その他計90店舗を対象に、万引きの実態を調査している。その結果、万引きが多い店舗としてスーパーマーケットが多く、その理由として店舗の開放性が高く、来客数も多く、店員から見られているという感覚が少なく、商品との接触が容易という特徴があり、上記②で取り上げた「日常生活理論」の観点からも、犯罪が起きやすいことが推定されている。 また、大久保(2013b)は、万引きの被疑者として警察で取り調べを受けた129名及び一般の青少年を対象に万引きの発生要因を検討している。その結果、万引きされやすい店の要因として、「通報しない」、「防犯カメラが少ない」、「死角が多い」、「店員や警備員が少ない」と捉えており、逆に万引きされにくい店の要因として、「店員に声を掛けられる」、「防犯カメラがある」、「警備員が巡回している」、「店員が多い」、「防犯ミラーがある」と捉えていることが明らかとなった。このように、犯罪機会を抑止する要因として、他者に見られているという感覚が顕著であり、大勢が集まる開放性の高い場所であっても監視されていることを潜在的犯罪者に感じさせる仕掛けが有効であるとされる。 なお、上記研究では、万引きの被疑者は規範意識が高いことが見出されており、悪いことを承知の上で万引きをしていることから、万引きをしづらい環境の整備が重要であるといえる。店舗によっては警備員を雇用することに経済的負担が大きいこともあるため、店員が客を注意深く観察したり、制服姿の警察官が立ち寄れる仕組みを取り入れたり、死角をなくす商品の陳列など、経済的負担のない仕掛けが重要となる。 【到達目標】 • 万引きが発生しやすい店舗環境の特徴を説明することができる。 • 万引き防止において「見られている感覚」を高める工夫の有効性を説明することができる。 • 経済的負担の少ない万引き防止策を具体的に挙げることができる。
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キーワード
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① 環境犯罪学 ② 割れ窓理論 ③ 日常活動理論 ④ 万引きの防止
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
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復習・予習課題
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【予習】 第15回のコマシラバスを読み、犯罪を予防するための環境面について大枠を把握する。 【復習】 犯罪の予防策を提言することは社会貢献に直結することから、本講義のキーワードを用いて、犯罪が置きづらい仕組みについて200字程度で説明できるように努めること。
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