| 回 | 主題 | コマシラバス項目 | 内容 | 教材・教具 |
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1
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異常とはなにか
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。 1つ目のパートである第1回講義では、まず講義の全体像を説明する。そのうえで、講義の導入として正常と異常の区別について学習する。心理学的な基準としてしばしば挙げられる4つの基準とセリグマンらが挙げた7つの基準について理解することを目的とする。
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講義スライド、文字教材
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コマ主題細目
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① 正常と異常の一般的な4つの基準 ② セリグマンらの7つの基準 ③ 異常を定義づけることのリスク
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細目レベル
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① 正常と異常の4つの基準 「異常」という言葉は日常的にもしばしば使用され、私達もその意味を理解している気になるが、それを明確に説明しようとすると容易ではないことに気がつく。正常と異常の区別については多くの文献において4つの観点が紹介されている。それは(1)適応(機能)的基準、(2)価値(理念)的基準、(3)統計(平均)的基準、(4)病理(医学)的基準の4つである。つまり、(1)適応-不適応、(2)規範−逸脱、(3)平均−偏り、(4)健康−疾病という軸における分類である。(4)病理(医学)的基準の土台となるのは精神医学の診断分類であり、具体的にはDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)やICD(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)が参照されることになる。このように、心理学では精神医学的な観点よりさらに広く異常を捉えている。
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② セリグマンらの7つの基準 セリグマンら(2016)は、(1)苦痛を感じていること、(2)不適応的であること、(3)非合理的であること、(4)予測不能で制御不能であること、(5)稀であり一般的でないこと、(6)周囲を不快にすること、(7)規範に反することの7つの基準を挙げている。①で取り上げていないものとして、(3)非合理的であること、(4)予測不能で制御不能であること、(5)周囲を不快にすることの3つがある。(3)非合理的であることとは、ある人の行動が合理的な意味をもたないように見えるとき、私達がその行動や人物を異常だと判断する傾向にあることを示すものである。(5)予測不能で制御不能であることには、個人の感情や行動が時間的に一定しておらず、ある状態から次の状態を予測できないことや、通常の行動が急に崩壊することなどが含まれる。
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③ 異常を定義づけることのリスク 「異常」を定義づける上記の基準は、「異常」とみなしうる観点を価値中立的に記述したものであり、そこには何らかの配慮がなされているわけではない。それ故に、こうした「異常」の基準の運用には危険も伴う。例えば、社会が判断を誤るリスクがある。周囲を不快にすることや一般でないこと、規範に反することなどは、社会の側が判断することになるが、その判断が妥当でないことや、悪意をもってその判断がなされることが考えられる。また、判断の不一致の問題もある。ある行動に異常が認められるかの判断が個人個人で異なる場合、異常な状態に合意が得られない。これは当事者と周囲の人の間でも起こるし、周囲の人同士の間でも起こり得る。また、異常について知ることで、自身がそうした異常を有していると必要以上に捉えてしまうリスクがある。こうした現象は「実習生症候群」とも呼ばれる。
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キーワード
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① 適応 ② 価値 ③ 統計 ④ 病理 ⑤ リスク
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。また、講義内で示された各基準について、自身で複数の例をあげること。そのとき、その例が他の基準にも当てはまらないかを吟味し、当てはまる基準をすべて挙げておくこと。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義は医療人類学について学習するため、クラインマンのヘルスケアシステムの理論について調べておくこと。参考となる書籍として、「日本のありふれた心理療法−ローカルな日常臨床のための心理学と医療人類学−」を挙げる。また、世界中の各地域に特有の精神疾患について調べること。
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2
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文化と異常―精神医学と医療人類学―
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。 1つ目のパートである第2回講義では、文化と異常の関連を検討する。この講義では、特に、文化許容行動、文化依存症候群/文化結合症候群、ヘルス・ケア・システム理論を取り上げる。これらはそれぞれ、文化によって異常とされる基準が影響を受けること、文化によって特定の異常が亢進されること、文化が異常の捉え方とその治療のあり方に介在することを示唆するものである。
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東畑開人(2011). 日本のありふれた心理療法 ローカルな日常臨床のための心理学と医療人類学 誠信書房
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コマ主題細目
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① 文化許容行動 ② 文化依存症候群/文化結合症候群 ③ ヘルス・ケア・システム理論
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細目レベル
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① 文化許容行動 文化許容行動とは、その文化のなかで慣習的になされる特定の方向性を持つ行動ないし症状は、他の文化においては比較的容易に問題行動ないし症状とみなされるようなものであっても問題とみなされにくくなる(許容されやすくなる)こと指す。日本国内に限定しても、東京における「普通」の振る舞いが、大阪においては「普通でない」ということがあるし、逆に、大阪における「普通」の振る舞いが、東京においては「普通でない」こともあることを考えれば想像しやすい。日本における「よくあること」は、アメリカにおいて「異常なこと」となるかもしれないのである。このように、ある行動が許容されやすいかどうかは文化に依存しており、したがって「病気」や「異常」の判断も文化によって影響を受ける。
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② 文化依存症候群/文化結合症候群 文化依存症候群ないし文化結合症候群とは、その文化における環境や慣行によって発生しやすくなる特定の行動や症状のことを指す。日本には日本の、アメリカにはアメリカの、「土地柄」が生みやすい行動・症状があるということである。例えば,日本の対人恐怖症・ひきこもり・狐憑き、韓国の火病、インドネシアのラタ、中国から東南アジアにかけてのコロー、南米のススト−、ネイティブアメリカンのウィンディゴ、ポリネシアのヴードゥー死、欧米の拒食症などが挙げられる。このように文化依存症候群と考えられる行動・症状は世界中の様々な地域で報告されており、その文化における環境や習慣が特有の「異常」の発生に関与していることが示唆される。
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③ ヘルス・ケア・システム理論 ヘルス・ケア・システム理論は、医療人類学者のクラインマンが提唱する理論であり、「医療と文化がどのように関わっているのかを研究するための理論的な枠組み」である。ここで言及されている「医療」とは、現代的な西洋医学に限定されていないことに注意が必要である。シャーマニズムのような霊的治療から、薬草治療、占い、カイロプラクティック、健康食品、心理療法などの様々な治療的営みが含まれている。それぞれの治療的営みは、独自の「病むこと」「癒やされること」についてのモデル(説明モデル)を有している。例えば、沖縄では、現代にあっても、不調があった際にユタにみてもらうことは自然なことである。各文化において、何が病みの原因であり、何が治療となるかについてのリアリティ(臨床リアリティ)が異なる。その意味で、西洋医学も普遍的なものというよりは、その土地の文化によりリアリティを持つ一つの治療的営みということもできる。治療的営みの成立には、そこに生きる人を取り囲む文化が介在しているのである。
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キーワード
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① 文化許容行動 ② 文化依存症候群/文化結合症候群 ③ ヘルス・ケア・システム理論 ④ 臨床リアリティ ⑤ 説明モデル
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義のシラバスを確認し、当該授業回に関連するキーワードについてよく調べておくこと。参考図書や論文が示されているときには、それを優先的に参照すること。調べて上で理解が難しい点や疑問を整理し、授業までにまとめておくこと。
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3
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こころの病の発明−精神医学史と診断基準−
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。 1つ目のパートである第3回講義では、異常心理学のなかでも中心的な位置を占める精神疾患がいかなる変遷を辿って現在の形に至ったかを確認する。ここでは、精神医学の展開に伴って異常の捉え方が変化してきたことが重要である。そのために、特にDSMの変遷を取り上げる。現在の診断基準や診断名は固定的なものだと素朴に考えてしまうかもしれないが、第5回講義以降で取り上げる各疾患の診断基準も診断名も絶対的なものではなく、今後も変わりゆく可能性が高い。また、DSMの改訂が直線的に「進歩」していると考えることにも慎重でなくてはならない。医学的診断に対する批判として、反精神医学による社会構築主義的批判を取り上げる。
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コマ主題細目
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① DSM以前のこころの病 ② DSM誕生と変遷 ③ 精神医学的診断に対する批判
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細目レベル
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① DSM以前のこころの病 精神的な問題は、その時代のなかで様々に受け取られてきた。より古い時代では、悪魔、神々、呪術などが原因と捉えられ、その対処の方法は祈祷や儀式などであった。地域と時代のなかで精神的な問題の捉え方の独自の理解が生じてきたが、現代の主流である西洋的な精神医学が形成され始めたのは今から200年ほど前であった。その端緒としてしばしば言及されるのが、フランスのフィリップ・ピネル(1745-1826)である。ピネル以前の時代は、精神の障害があるとみなされた人たちは収容施設に鎖で繋がれていた。当時の啓蒙思想の流れのなかでピネルは彼らを解放し、彼らの声を聞き、彼らが生きている精神の問題への理解を始めた。その後、精神の障害を理解して治療しようとする動向が精神医学を形成していく。クレペリン(1856-1926)は診断基準の基礎にもなった早発性痴呆と躁うつ病の区別を行い、生物的な観点から精神疾患を捉える生物学的精神医学の土台を築いた。他方、同時期に活躍したフロイト(1856-1939)が臨床実践を通じて精神分析学を打ち立て、より心理学的な精神疾患の説明を形成していき、それを取り入れて展開する形で力動的精神医学が生まれた。この生物学的精神医学と、力動的精神医学(精神分析)はその後も大きな影響力を持っていった。
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② DSM誕生と変遷 DSMはアメリカ精神医学会が2022年に出版された第5版改訂版が最新のものである。1952年に出版されたその第1版(DSM-Ⅰ)は、徴兵選抜のために作成された精神医学的なスクリーニング基準の有用性が認識されたことを受け、民間の精神医療においても標準化された基準を導入しようとするなかで作成された。この当時アメリカでは精神分析が主流であり、診断基準もその影響を強く受けたものだった。1968年に出版された第2版(DSM-Ⅱ)も同様に精神分析的な影響を受けたものであったが、一方で「病因」について特定の立場を避けようともされた。 1970年代にかけて、専門家の間で診断の一致率が低いこと、診断基準が明瞭でなく臨床家の経験を頼りにしていることなどが批判された。そこで、症候・兆候・経過などの統計に基づいて疾病を明確に分類する操作的診断基準を導入した第3版(DSM-Ⅲ)が作成され、1980年に公表された。症状をベースに作成された基準であるため、「病因論」は排除されており、様々な立場の専門家が共通の基準で疾病を理解することが可能になった。1987年の第3版改訂版(DSM-Ⅲ-R)、1994年の第4版(DSM-Ⅳ)、2000年の第4版改訂版(DSM-4-TR)、2013年の第5版(DSM-Ⅴ)、2022年の第5版改訂版(DSM-Ⅴ-TR)においても、同様の操作的診断基準が採用されている。 それぞれの版の更新において、特筆すべき重要な変更点を挙げることができる。例えば、第2版では「同性愛」が「性の逸脱(sexual deviation)」のサブタイプとして含まれていたが、これらの基準は第3版以降で削除されている。また、掲載されている疾患数はDSM-Ⅰで106種類、DSM-Ⅱで182種類、DSM-Ⅲで265種類、DSM-Ⅳで297種類、DSM-Ⅴで約300種類(正確なカウントが難しい)となっており、診断の射程の拡張と細分化が生じていることがわかる。
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③ 精神医学的診断に対する批判 DSMが多様な状態を精神疾患として認定することで、過剰な診断を生み出すことが懸念されている。例えば、文化に対する配慮がなされてはいるが、実際に地域ごとに特定の疾患の罹患率に偏りが生じていることはそうした懸念と関連する。またスティグマ(社会的烙印)がラベルとして当事者に負の影響を与えたり、その状態を固定的なものにするリスクも指摘されている。病因論を排除したためにその背後にある本質的な問題を取り扱いづらくなることや、製薬会社との利害関係に一定の影響を受けている可能性も指摘されている。 さらに強い批判としては、社会構築主義(あるいはそれを基礎とした反精神医学)の立場からなされるものであり、「精神疾患」や「正常/異常」は客観的な存在ではなく、社会的・文化的に作られるもの(=構築されるもの)に過ぎないというものである。この立場からすると、精神疾患や異常とされるものは文化や政治、歴史的背景等によって変わりうるものである。また、診断名を与える事(「異常」を押し付けること)自体になんらかの形で権力が作用しており、DSMはそうした権力による線引きを強化するリスクがあることも指摘される。 DSM以前においても、以後においても、精神疾患やこころの病、狂気、異常のようなものはその土地の社会・文化のなかで作られてきたということができる。DSMのみの展開を追っても、疾患が増やされたり減らされたりする歴史を見ることができる。一方で、そうであったとしても「困っている人」は現実にいるのであり、社会制度(福祉制度、医療保険等)のなかで援助を行わざるを得ない構造上の事情もある(診断が援助の条件になることがある)。私たちが「異常」を理解(研究)したり支援したりするとき、「異常」は普遍的なものでなく、複雑な背景のなかで暫定的に見出されるものという見方が可能であると認識することは重要である。
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キーワード
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① DSM ② 診断基準 ③ 精神医学 ④ 社会構築主義 ⑤ 病因論
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義のシラバスを確認し、当該授業回に関連するキーワードについてよく調べておくこと。参考図書や論文が示されているときには、それを優先的に参照すること。調べて上で理解が難しい点や疑問を整理し、授業までにまとめておくこと。
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4
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異常の治療−治療機序とプラセボ−
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。 1つ目のパートである第4回講義では、異常を治療する際に治療機序やプラセボをどう捉えるかを検討する。
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コマ主題細目
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① 治療機序とは ② プラセボ効果あるいは期待効果について ③ 精神医学や心理療法におけるセラピスト効果について
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細目レベル
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① 治療機序とは 治療機序とは、なんらかの病や問題についての説明に対応した、治療や回復が生じるときの仕組みである。鍼治療には鍼治療で想定される治療機序があり、身体医学には身体医学の治療機序があり、精神医学には精神医学の治療機序があり、心理療法には心理療法の治療機序があり、宗教的実践には宗教的実践の治療機序がある。これらの議論は、第2回「文化と異常―精神医学と医療人類学―」で取り上げたクラインマンのことを思い出せば理解しやすい。何かしらの治療的実践(介入)はそれがなぜ治療として機能するかの理論に支えられている。もちろん、「理由はわからないが効果がある」という現象は生じるが、それについても説明を用意し、理論の中に収めようとする動きが必ず生じる。このとき、同じ問題(例えばうつ病)について、異なるアプローチが、異なる治療機序を想定した場合にどのように考えるかという問題が生じる。さらに言えば、ある特定の介入に効果があったからといって、それが実際に想定した治療機序によって生じたかについても検討される必要がある。
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② プラセボ効果あるいは期待効果について プラセボ効果は、効果が期待される成分を含まない偽薬を与えられた患者群においても本物の薬と同様に治療的効果が生じる現象を指す。プラセボ効果は1945年頃から学術的な文脈で検討されるようになってきたが、古くは宗教的な事柄(例えば悪魔憑きとエクソシスト)の真偽を検討する時にはすでに見出されていたものでもある。これは身体医療の領域で(主に痛みの問題)検討が進んできたが、現在では精神疾患の治療薬においても同様にプラセボ効果が見出されている。ここで、ある治療薬が特定の疾患に効果を示したとき、その効果はその治療機序として精神医学や精神薬理学が想定しているプロセスによってどの程度説明できるものなのだろうか。
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③ 精神医学や心理療法におけるセラピスト効果について 精神疾患に対する精神医学的治療は主に薬物療法が用いられる。その背景には生物学的な治療機序が想定されており、その治療機序が生じるように治療薬が作成される。当然ながら作成される治療薬は同じ成分を含む同質のものである。しかし、その効果は、それを処方する医師ごとに異なるという知見がある。同じ薬を用いるにも関わらず、誰が処方するかによって効果がことなるというのは、精神薬理学的な治療機序の想定から外れた事態である。こうした現象は、心理療法においても当然生じる。同じ心理療法的立場を取っていても、同じ治療結果が出せるとは限らず、そこにはセラピストによる効果が現れる。異常の治療は、想定される治療機序に向けて行われるが、そこで生じる効果は慎重に理解されなければならない。
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キーワード
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① プラセボ効果 ② ノセボ効果 ③ 薬物療法 ④ 治療機序 ⑤ セラピスト効果
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義のシラバスを確認し、当該授業回に関連するキーワードについてよく調べておくこと。参考図書や論文が示されているときには、それを優先的に参照すること。調べて上で理解が難しい点や疑問を整理し、授業までにまとめておくこと。
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5
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うつ病の異常心理学
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。 2つ目のパートである第5回講義では、うつ病について取り上げる。
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コマ主題細目
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① うつ病の理解 ② うつ病の治療方法 ③ うつ病の再発予防
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細目レベル
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① うつ病の理解 主に2つの観点からうつ病について検討する。一つは生物学的な観点であり、もう一つは心理学的な観点である。 生物学的な観点から、遺伝率、神経伝達物質、ホルモンの3つの視点を整理する。遺伝については、うつ病の患者を家族に持つ第一度近親は、そうでない人よりもうつ病になるリスクが5〜8倍高くなる。双子研究では、一卵性双生児の場合は48%、二卵性双生児の場合は42%の一致率を示す。遺伝の要因が少なくないことが示されているが、双極性障害や統合失調症に比べると環境要因の影響も大きい。神経伝達物質の観点からは、特定のモノアミン、つまりノルエエピネフリン、ドパミン、セロトニンなどの関与が考えられており、それらに働きかける薬物療法には一定の効果が認められている。 心理学的な観点では、特に認知理論、行動理論、対人関係理論から考えることができる。認知理論はつまりBeck. A.に連なる認知療法の流れであり、うつ病の人の認知(考え、信念)の特徴からうつ病を説明する。行動理論は特にスキナーに連なる行動分析学の流れであり、学習された行動の結果としてのうつ的な行動様式の固定化を説明する。対人関係理論では、対人関係療法の流れであり、うつ病を対人関係の帰結として理解する。
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② うつ病の治療方法 うつ病の心理学的治療として特に頑健な効果を示す代表的なものはのは、認知療法、行動療法、対人関係療法である。しかし、認知行動療法として総合的に問題に介入することで効果を上げていることは意義深いが、認知理論の想定と行動理論の想定のズレからうつ病の理解を深める。認知行動療法の治療要素の効果を調べたJacobson et al.(1996)の研究からは、認知的技法(自動思考や信念を変える技法)が必ずしも必要ではなく、行動的な技法のみでも十分な効果が得られることが示されている。また、認知(考え方)の変化が起こるより先にうつ症状などが変化する現象がみとめられるなど、認知的な要素の意義について議論がある。そうした中、Teasdale et al.(2002)の研究では、認知療法が認知の内容を変化させることでなく、ネガティブな認知や感情と「距離を取ること」で効果を示している可能性を見出している(メタ認知的気づき)。こうしたことは、特定の治療が効果があることがわかっても必ずしもその治療機序が作動しているとは言い切れず、想定した治療機序に収まらない変化が効果につながっていることも考えられることは重要である。
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③ うつ病の再発予防 先述のTeasdaleたちは、うつ病の再発予防を促進するために、うつ病の再発メカニズムを検討していた。そのなかで明らかになるのは、どのような人たちがうつ病を再発しやすいかということであり、主に2つの重要な点が浮かび上がった。つまり、ちょっとしたネガティブな気分に反応して思考内容がネガティブな方向に大きく傾く人(認知的反応性が高い人)、うつ気分があるときにそれについてぐるぐると考え込んでしまう人(抑うつ的反すう傾向)がうつの再発をしやすいということであった。こうした再発メカニズムの研究から、思考内容を変更することを目指すのではなく、気分や思考に影響を受けにくくくすることを目指す心理療法のあり方が構想された。代表的には、マインドフルネス認知療法やアクセプタンス&コミットメント・セラピーが挙げられる。
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キーワード
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① うつ病 ② 認知療法 ③ 行動療法 ④ メタ認知的気づき ⑤ 再発
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義のシラバスを確認し、当該授業回に関連するキーワードについてよく調べておくこと。参考図書や論文が示されているときには、それを優先的に参照すること。調べて上で理解が難しい点や疑問を整理し、授業までにまとめておくこと。
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6
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双極性障害の異常心理学
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。
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コマ主題細目
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① 双極性障害の症状と経過 ② 双極性障害の原因 ③ 双極性障害の治療
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細目レベル
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① 双極性障害の症状と経過 双極性障害は基本的に躁状態とうつ状態を交互に経験する障害である。躁症状は、大きく4つの観点から整理できる。すなわち、気分面、認知面、動機面、身体面である。躁の気分の側面としては、開放的であり、多幸的あるいは怒りっぽいことが特徴である。多幸的なことよりも怒りっぽいことが多い。特に自分のやりたいことに反対されたり邪魔されると怒りは顕著に出現する。認知面としては、思考が誇大的になる。自分の能力の限界を考えず、計画を実行するときに生じる悲惨な結果を考慮できない。例えば、1週間に3台の車を買い、1,000万を使ってしまうが、その後の支払いの困難さを理解できない。動機面としては、活動の動機づけが「熱狂的」になる。それは仕事、政治活動、宗教活動、性的関係など多岐にわたる。身体面では、睡眠欲求の現象が著しい。2、3日寝ずに活動し、極度の疲労から躁状態が緩和したりする。 双極性障害は20歳から30歳の間に発症することがおおく、90%の人が50歳より前に発症を経験する。一般に、一度発症すると「治る」ということは難しく、再発のリスクがつきまとう。そのため、治すというよりは再発をいかに抑えるかが重要となる。症状によって周囲との摩擦や仕事上の問題、家庭の問題を生じやすく、アルコールへの依存も併発しやすい。
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② 双極性障害の原因 原因ははっきりとはわかっていない。生物学的な要因の影響が大きいと考えられており、双生児研究からは、一卵性双生児の片方が双極性障害を発症すると、他方も70%〜90%が発症することがわかっている。これは(単極の)うつ病の場合は一卵性双生児の片方が罹患した場合は他方の30%程度が罹患することと比べると、生物学的(遺伝的)な要因の影響が大きいことがわかる。 仮説として、自己修復のための生物学的プロセスが制御されなくなったことが原因というものがある。つまり、うつ状態になると多幸的な状態を転換し、多幸的な状態が過剰になるとうつ的状態への転換で中和するような生物学的な自己修復のプロセスが制御不能になり、過剰な躁状態と過剰なうつ状態が生じることが考えられている。一般に、単極性のうつ病よりも双極性障害のうつ状態の方が程度が重いことはこの仮説を支持している。また、脳内の3つの領域のアンバランスが多様な症状を作り出しているとする仮説もある。
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③ 双極性障害の治療 双極性障害の治療はまず第一に炭酸リチウムによる薬物療法である。後に紹介する心理学的な支援においてもあくまで薬物療法の補助的な位置づけと考えられている。双極性障害のおよび80%が炭酸リチウムの処方中に症状が改善している(Schou, 1997)。ただし、再発リスクが非常に高いため、投薬を継続することが重要である。有効とされる心理学的介入は、再発を防止することに注力するものになる。 アメリカ精神医学会(APA)の第12部会が公表している双極性障害に効果のある心理療法は、認知療法、家族療法、対人関係・社会リズム療法、心理教育、システマティック・ケアの5つである。認知療法はうつ状態と躁状態での考え方の偏りに焦点を当てて介入するほか、自身の気分の波に気づいたり、服薬の継続対して有効な認知を形成するなどのアプローチが取られる。家族に焦点を当てた介入は、患者の家族の対応によって双極性障害の再発リスクが変化することに注目して行われている。対人関係・社会リズム療法では、対人関係上のストレスや睡眠等の社会生活のリズムの乱れが再発に結びつくことへの認識から、対人関係の安定と生活リズムの安定を援助している。心理教育では上記のリスク要因について理解し、自己管理を向上させるよう導いている。システム・ケアのアプローチでは、関係する専門家等が患者のリスクに対して総合的に対処していく組織的な体制での支援である。
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キーワード
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① 双極性障害 ② 双生児研究 ③ 遺伝 ④ 再発 ⑤ 炭酸リチウム
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義のシラバスを確認し、当該授業回に関連するキーワードについてよく調べておくこと。参考図書や論文が示されているときには、それを優先的に参照すること。調べて上で理解が難しい点や疑問を整理し、授業までにまとめておくこと。
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不安障害の異常心理学
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。
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コマ主題細目
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① パニック障害の理解と治療 ② 社交不安症の理解と治療 ③ これからの不安障害への介入
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細目レベル
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① パニック障害の理解と治療 パニック障害は1990年代まで、完全に生物学的な疾患だとする見方が強かった。そうした見方の根拠としては、例えば、頻繁に発作がある患者の場合、化学作用によってパニック発作を誘発することができたこと、遺伝的な影響が見られること、薬物療法が非常に有効だったこと、脳の特定領域に異常が見られることなどが挙げられた。しかし、心理学的な介入の有効性が示される中で、そうした見方は変化してきた。APAによるエビデンスの評価では、認知行動療法、精神分析、応用リラクゼーション(これは認知行動療法の一部ということもできる)の3つが挙げられている。認知行動療法では、パニック発作は身体感覚に対する過剰に破局的な解釈によって誘発されることを示し、その解釈を修正することを通じて治療を行う。それに対して、精神分析的アプローチは無意識的な葛藤や防衛機制の失敗、転移などに注目して治療を行う。現状、精神分析がAPAのエビデンス評価に掲載されているのはこのパニック障害の頁のみであり、治療効果としては「中程度(modest)」のエビデンス強度とされているが、その治療機序については「議論の余地がある(controversial)」と評価されている。応用リラクゼーションは、パニックになりそうな状況と兆候を特定し、パニックになりそうな状況やパニックの兆候があるときに不安に対抗するリラクゼーションを自発できるように訓練するものである。この場合は具体的には漸進的筋弛緩法の訓練である。
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② 社交不安症の理解と治療 社交不安症に対する最も一般的な心理学的治療は認知行動療法である。APAのエビデンス評価において掲載されている心理学的介入は認知行動療法のみである。疾患の理解において特に有名なのはClark & Wells(1995)の社交不安症の認知モデルである。社交的状況が自己注目を増進し、否定的自己イメージを活性化させる。それにより不安が増大するが、同時に身体的な反応(手の震えや発汗、硬直)などが強まり、それ自体を見られることへの不安が増大する。それを低減するために安全確保行動(目を合わせない、手を隠す、声を小さくするなど)を取るが、そうした安全確保行動を取ることによってネガティブな自己イメージや思考が強化されてしまう。こうした状態に対して、自己イメージを変容したり、否定的な思考を修正したり、行動実験(安全確保行動をやめるなど)を行い今までと異なる体験をすることを通して社交不安を維持するプロセスを変化させ、治療を目指す。
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③ これからの不安障害への介入 不安障害は認知変容やエクスポージャー、リラクゼーション等の認知行動的介入によって効果が得られることが多い疾患群である。しかし、ここで紹介されたような理解や介入は近年さらに発展させられている。例えば、APAのエビデンス評価においても、これからの展望として、いくつかのアプローチが挙げられている。例えば、マインドフルネスに基づく介入やアクセプタンス&コミットメント・セラピー、メタ認知療法などである。マインドフルネス認知療法のようなマインドフルネスに基づく介入は、身体感覚、思考、感情の評価判断をしない態度での観察、すなわち「気づき」の力を高め、「気づきながらも流されないでいる」力を育むことを目指す。実際に、マインドフルネスに基づくアプローチによってパニック障害、社交不安症などの不安障害が改善するという知見が多く報告されている。また行動療法の流れから生まれたアクセプタンス&コミットメントセラピーも、思考と現実の混同やネガティブな体験からの回避が問題を維持・増悪させることに着目し、「思考と距離取ること」(脱フュージョン)、「ネガティブな体験に自ら接触すること(アクセプタンス)」を促進する介入を行い、不安障害への効果を上げている。またメタ認知療法は、思考以上に、「思考に対する思考」(考え続けることは良いことだ)が問題の中核にあること、また、注意制御能力の欠如によりネガティブな思考から抜けられなくなることを問題視して、思考に対する思考を修正したり、注意のコントロール能力を高めたりすることを目指し、効果を上げている。
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キーワード
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① 不安障害 ② 社交不安症 ③ パニック障害 ④ 認知モデル ⑤ 認知行動療法
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義のシラバスを確認し、当該授業回に関連するキーワードについてよく調べておくこと。参考図書や論文が示されているときには、それを優先的に参照すること。調べて上で理解が難しい点や疑問を整理し、授業までにまとめておくこと。
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PTSDの異常心理学
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。
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コマ主題細目
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① PTSDの理解 ② PTSDの治療 ③ C-PTSDの理解と治療
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細目レベル
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① PTSDの理解 PTSDは正しくはPost-traumatic Stress Disorderの略称であり、日本語では心的外傷後ストレス障害と訳される。PTSDは元々ベトナム戦争の帰還兵を診断するためにDSM-Ⅲから採用された疾患概念であり、当然戦争状況での生死に関わる過酷な状況を念頭に置いていた。DSM採用前の段階においても「外傷性神経症」や「シェルショック」としてその症状は見出されていた。 PTSDの理解については、外傷的な記憶が現在に様々な問題を生じていると捉える見方が優勢である。ジャネによるトラウマの記憶統合の理論から、過去の外傷的記憶をいかにしてより問題のない状態にするかが課題となったきた。PTSDに対する研究は多岐にわたるが、ヴァン・デア・コークの「身体はトラウマを記憶する 脳・心・体のつながりと回復のための手法」では外傷的体験は身体に記憶されるものの、当事者は身体とのつながりを失ってしまうことなどが指摘された。こうしたことから、従来の会話型の心理療法ではなく、身体を治療的に活用するセラピーへの注目も高まっている。
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② PTSDの治療 ジャネによるトラウマの記憶統合の理論から、過去の外傷的記憶をいかにしてより問題のない状態にするかが課題であった。PTSDに対する心理療法として最も早く有効性を築いたのは、持続的エクスポージャー(Prolonged Exposure:PE)であった。PTSDの情動処理理論を基盤とした介入方法であり、外傷的体験による恐怖構造の形成、それによる各種PTSD症状の発生、回避による恐怖構造の温存、慢性化という経過を想定する。それに対し、意図的にその外傷性の記憶を詳細に語り恐怖に暴露し、その外傷的な記憶を安全な情報とともに処理することで情動処理を促し、その体験関連したネガティブな意味付けを再構成することを目指す。一方でPEの治療に耐えられず治療を中断する率の高さが課題となっている。その他に、眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)やそれを取り入れてエクスポージャー、イメージ書き換えなどを組み合わせたAccelarated Resofution、認知療法的な観点から思考や体験の意味付けの修正を行う認知処理療法など9つの心理学的介入がAPAのエビデンス評価に掲載されている。評価中とはされているものの、現在中心療法が取り上げられているのは重要である。これはトラウマ記憶には触れず、現在の生活や行動、感情に注目して適応的な反応を取ることを目指すものだが、これも最近の知見では一定の有効性が示されている。
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③ C-PTSDの理解と治療 C-PTSDは、Complex PTSDの略語であり、複雑性PTSDと言われることもある。DSM-Ⅴでの掲載は見送られたものの、国際疾病分類第10版(ICD-10)には掲載された。C-PTSDは、慢性的で反復的な外傷的体験(例えば、虐待や、監禁等)によって引き起こされるPTSDよりも広範な症状と人格的変化を伴う疾患である。通常のPTSD症状に加えて、自己組織化の障害(Disturbances in self-organization:DSO)が存在し、感情調整の困難、否定的自己イメージ、対人関係の障害が生じる。C-PTSDの治療も大筋ではPTSDに対するものに沿っており、感情と対人スキルの訓練とトラウマ記憶の語りと意味付けから構成されるSTAIR/NSTや、先述の調整を加えたEMDR、認知処理療法などが有効とする研究がある。
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キーワード
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① PTSD ② C-PTSD ③ トラウマ ④ 記憶 ⑤ 身体
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義のシラバスを確認し、当該授業回に関連するキーワードについてよく調べておくこと。参考図書や論文が示されているときには、それを優先的に参照すること。調べて上で理解が難しい点や疑問を整理し、授業までにまとめておくこと。
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強迫性障害の異常心理学
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。
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コマ主題細目
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細目レベル
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① 強迫性障害の症状 強迫性障害は繰り返し生じる強迫観念、強迫行為を特徴とし、それらによって生活が障害される疾患である。その強迫症状には複数のタイプがあり、それによって具体的な介入の方法は変わってくる。以下では、症状のタイプを挙げる。1.洗浄・汚染型、2.確認方、3.対称性・秩序型、4.侵入思考型、5.儀式・迷信型、6.感覚型、7.収集・ため込型、などがある。また、強迫性障害は本人の問題だけで収まらないことも多い。恋人や家族、友人などに自分の代わりに確認をしてもらったり、「大丈夫だよ」と声掛けをしてもらうなど、巻き込みが発生するためである。強迫性障害は、自然経過での回復が特に起きにくい疾患と考えられており、WHOが発表している疾患による損失年数が長い障害のリストにおいて、身体疾患を含む全ての疾患のなかでも上位10位以内に入る疾患となっている。
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② 強迫性障害の理解 強迫性障害の疾患モデルとして代表的なのは認知行動理論によるモデルである。特に行動理論に基づく理解がなされており、レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)とオペラント条件づけ(道具的条件づけ)による疾患の発生と維持を考えることができる。まず、本来的に不快ではなかった刺激が不快になる機能を獲得することで強迫観念が形成されていく。例えば、大便が汚い(そのため不快)という一般に了解可能な認識から、便座、トイレットペーパー、ドアノブ、靴下、ドアノブを触った手などと汚くて不快と感じるものが派生していく。一方で、その不快感を低下させるためにする行為(例えば、汚い手を洗浄する)によって一時的に落ち着くことができるが、その行動を辞めることができなくなる。また、それを繰り返すと落ち着くのに必要な強度が増加していく(例えば、最初は10秒で手洗いを追われたのに、10分手を洗わないときれいになった気がしないなど)。
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③ 強迫性障害の治療 上記の理解に基づいて、エクスポージャーによって条件づけされた刺激と不快感の関係を解除していくことを目指す。しかし、刺激への暴露の最終に不快感を下げるための行動を行うと、刺激と不快感の関係が解除(消去)が中断されてしまい、元の状態に戻ってしまう。そのため、普段は行っている不快感を減少させる行為を行わず(反応妨害)、エクスポージャー(暴露)を行う必要がある。そのため、それらを両立する方法を、反応妨害暴露療法という。こうした認知行動療法的なアプローチが、APAのエビデンス評価において唯一記載されている心理学的介入となっている。ここでは、同時に、それまで巻き込まれていた家族も確認などの強迫行為に付き合わないことが求められる。
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キーワード
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① 強迫性障害 ② 強迫観念 ③ 強迫行為 ④ レスポンデント条件づけ ⑤ オペラント条件づけ
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義のシラバスを確認し、当該授業回に関連するキーワードについてよく調べておくこと。参考図書や論文が示されているときには、それを優先的に参照すること。調べて上で理解が難しい点や疑問を整理し、授業までにまとめておくこと。
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摂食障害の異常心理学
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。 2つ目のパートである第10回講義では、摂食障害について取り上げる。
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コマ主題細目
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① 摂食障害の症状 ② 摂食障害の理解 ③ 摂食障害の治療
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細目レベル
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① 摂食障害の症状 DSM-5には「食行動障害および摂食障害群」として複数のタイプが掲載されている。その中でも、神経性やせ症/神経性無食欲症、回避・制限性食物接種症/回避・世間性食物接種障害、神経性過食症/神経性大食症、過食性障害の区別について説明する。神経性やせ症/神経性無食欲症は、極端な食事制限によって著しい体重低下を示し、体重増加に対する強い恐怖と歪んだ身体イメージを有する障害である。それに対し、回避・制限性食物接種症/回避・世間性食物接種障害は、低体重に至るほど食物の摂取量が少ないものの、身体イメージの歪みや体型・体重へのこだわりがないものである。神経性過食症/神経性大食症は、過食に加えて排出行動を繰り返す障害である。それに対し、過食症は排出行動を伴わず、単純に過食のみが存在する障害である。
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② 摂食障害の理解 摂食障害は女性が罹患することが多い。神経性無食欲症と大食症は発展途上国よりも先進国において多く見られる(Garfinkel & Garner, 1982)。アメリカにおいては、国内の民族集団によって有病率が異なり、黒人女性よりも白人女性に多い。これは文化によって理想的な体型や摂食行動が影響を受けているためと考えられたが、Becker(1995)による報告は強いインパクトを持っていた。フィジー島は1995年以前にはテレビを利用する機会が非常に制限されていたが、島にテレビが導入された1ヶ月後にBeckerはフィジーでデータを取り始めた。1995年の段階では体重コントロールのために嘔吐を行った経験がある女性は3%ほどであったが、1998年には15%の女性が嘔吐を経験していると報告した。その三年間で、自分が大きすぎる/太りすぎていると報告した人は50%も増加した。彼らが見ていたのは「ビバリーヒルズ高校白書」/「メルローズ・プレイス」など、痩せた女性が主役であるドラマであった。 他方、歴史的には摂食障害が家族に由来するものと考える人達もいた。特に管理が過剰であり、自律を阻害されていることが誘引になっていると考えられた。食行動は自身の自律(自分でコントロールすることができる)を経験する方法として選択され、食の制限によって家族が自身を気に掛けるようになることがある種の成果として経験されるという考えである。現在では十分な根拠もなく家族(特に母親)に原因を帰属することを問題視し、「どこかに原因があるわけではない」「原因はわからない」(不可知)の立場を強く表明する心理療法もある。確かに摂食障害患者の家族に過干渉の傾向があることや、患者には安全な愛着を築けていない人がお多いことなども報告されているが、そうした研究の多くが相関研究であり、因果を示すものではないし、なにより家族に原因を帰すこと事態が重要な治療リソースを失わせることにもなりかねない。
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③ 摂食障害の治療 神経性やせ症の治療は、弁証法的行動療法、認知行動療法、家族療法がAPAのエビデンス評価において掲載されている。弁証法的行動療法は衝動の制御に問題を抱える境界性パーソナリティ障害の治療のために作成された心理療法であるが、不適応行動の変容と徹底した受容という対極的な要素を同時に獲得することにより治療効果が得られると想定されている。認知行動療法は特に不適応的な食行動の正常化や特徴的な認知の再構成、再発予防の要素から構成されている。家族療法では、家族全体を治療の単位として捉え、親は治療の中心的な協力者に位置づけられる。親が主導して子どもの栄養状態と体重を回復させていくフェーズ、徐々に主導権を子どもに返還していくフェーズ、発達段階に沿った問題や摂食以外の問題の支援、家族との関係の再構築のフェーズの3つの段階が設定されている。 神経性大食症には認知行動療法、家族療法に加えて対人関係療法がAPAのエビデンス評価において掲載されている。認知行動療法および家族療法は神経性やせ症へのプログラムを同様の構造で調整したものである。対人関係療法では、症状が対人関係と密接に関連していることを想定し、症状と対人関係の関連の探索、その対人関係への対処、将来的な対人関係の困難への対応の検討という3つの段階で構成されている。
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キーワード
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① 神経性やせ症 ② 神経性大食症 ③ 家族療法 ④ 対人関係療法 ⑤ 認知行動療法
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義のシラバスを確認し、当該授業回に関連するキーワードについてよく調べておくこと。参考図書や論文が示されているときには、それを優先的に参照すること。調べて上で理解が難しい点や疑問を整理し、授業までにまとめておくこと。
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統合失調症の異常心理学
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。
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コマ主題細目
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① 統合失調症の症状 ② 統合失調症の理解 ③ 統合失調症の治療
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細目レベル
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① 統合失調症の症状 統合失調症は、「人類が経験する最も重い精神疾患と考えられている」(Seligman et al., 2016)。思考、知覚、感情、行動の異常が生じる。特に、妄想と幻覚は統合失調症の代表的な症状であり、「現実」とのつながりの喪失を伴う。注意や集中、処理などの神経認知的機能に困難が生じ、思考はまとまりを失い、会話は無関係な連想や繰り返しによって細切れになってしまう。治療がなされなければ、社会生活を営むことが極めて困難となる疾患である。 統合失調症の脆弱性の原因は少なくとも2つあり、一つは遺伝であり、もう一つは胎生期および分娩時のウィルス感染や身体的・社会的ストレスへの暴露である。一卵性双生児の双子研究によれば、双子の片方が発症した場合に他方は40〜50%程度が発症する。薬物療法に効果が認められており、治療は基本的に薬物療法の継続を前提とする。前頭葉の容積の減少や脳室の拡大などの構造的異常がみとめられるが、これらが直接に症状を引き起こしているというよりも、特にドパミンに関わる神経伝達に由来して症状が生じていると考えられている。
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② 統合失調症の理解 統合失調症は確かに生物学的基盤が存在する可能性が高い疾患である。しかし、心理社会的要因が関係しないわけではない。Zubin & Spring(1977)はストレス-脆弱性モデル(Stress-Vulnerability Model)を提唱している。これは、遺伝的素因や神経発達上の異常、認知傾向等の生得的な「発症しやすさ」があり、そこに心理社会的ストレッサー(例えば、失業や人間関係、トラウマ、家庭環境等)、薬物乱用や睡眠不足等の身体的ストレッサーなどが重なり発症に至ると考えるモデルである。 統合失調症の経過に関係すると思われる対人関係上の特徴がある。これは感情表出(Expressed Emotion:EE)と言われ、家族やその他の介護者による患者に対する批判的または敵意に満ちた言葉、感情的な関わりのことを指す。批判や敵意が統合失調症の素因を持つ子どもに向けられた場合、その子どもは統合失調症類縁疾患の症状を示す可能性が高い。一方で、感情表出が低い(穏やかな)家庭環境では患者の悪化が防がれ、回復が促進される。 ところで、統合失調症は世界的に見て、各国で1%程度と一致している。これは文化と統合失調症の関連がないことを示すように思われるが、統合失調症の経過は文化の影響を受けることがわかっている。具体的には、ある時点から2年後のフォローアップの調査において、発展途上国では63%の患者が症状が軽減していたのに対し、先進国では軽減したのは37%に過ぎなかった。また、先進国における調査では「予想される最悪の結果」というカテゴリーに含まれた患者は38%であったが、発展途上国では22%であった。理由はまだ判然としないが、例えば、イタリアとアメリカの比較調査においては、イタリアの統合失調症患者のほうが生活満足度が高い。イタリアの患者は雇用率が良く、原家族や配偶者と同居する率が高く、患者が社会の中で健全なつながりを持っていることもわかっており、こうした要因が良い予後につながっている可能性がある。
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③ 統合失調症の治療 統合失調症の治療はまず第一に薬物療法である。多くの定型型抗精神病薬や非定型抗精神病薬が開発されており、一定の効果を持つが、副作用も少なくない。しかし、治療および再発防止を考えるうえでは服薬を継続することが重要であり、心理学的な介入は基本的に服薬支援を視野に入れている。上述したことから統合失調症には、ストレスや感情表出が激しくない家族、社会の中で雇用されていることが役立つことが示唆される。また、陽性症状が優位なときに自身の幻覚や妄想を自覚し、それらから受ける影響を減じたり、陰性症状が優位なときにネガティブな状態から脱する認知スキルを持つことなども望ましいし、低下している神経認知機能の回復が生活を安定させる可能性がある。そうしたことから、認知機能改善療法(Cognitive Remediation Therapy:CRT)のような神経認知機能を回復させるアプローチ、アクセプタンス&コミットメント・セラピーや認知行動療法のような症状の影響力を下げるアプローチ、社会的学習/トークン・エコノミー・プログラムや社会生活スキル訓練のような安定し、服薬などの適応的行動を形成・維持するアプローチ、それらを組み合わせたIllness Management and Recovery(IMR)、家族への心理教育や支援を行う家族心理療法のアプローチ、実際に社会で働いてもらいながらそこで支援を展開する援助付き雇用(Supported Employment)といったアプローチ、多職種がチームで個別の対応を用意して24時間体制でのケアを用意する包括型地域生活支援プログラム(Assertive Community Treatment:ACT)や認知障害の悪影響をうまくケアする具体的実践を生活の場にて行うCognitive Adaptation Therapy(CAT)のような丁寧な生活の管理のアプローチが用いられている。ここであげたものが現在のAPAのエビデンス評価において取り上げられている介入である。
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キーワード
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① 統合失調症 ② 薬物療法 ③ 遺伝 ④ ストレス-脆弱性モデル ⑤ 感情表出
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義のシラバスを確認し、当該授業回に関連するキーワードについてよく調べておくこと。参考図書や論文が示されているときには、それを優先的に参照すること。調べて上で理解が難しい点や疑問を整理し、授業までにまとめておくこと。
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パーソナリティ障害の異常心理学
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。
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コマ主題細目
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① パーソナリティ障害の分類と特徴 ② 境界性パーソナリティ障害の理解 ③ 境界性パーソナリティ障害の治療
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細目レベル
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① パーソナリティ障害の分類と特徴 パーソナリティ障害は、クラスターA〜Cの3つのカテゴリーに分類される。クラスターAは「奇妙・風変わり」系である妄想性パーソナリティ障害(不信感が強く、悪意を見出しやすい)、シゾイドパーソナリティ障害(社会的にひきこもりがちで感情表現が乏しい)、統合失調型パーソナリティ(奇妙な考えや行動を取りがちで、幻覚・妄想様の経験があることもある)の3つからなる。クラスターBは「劇場型・感情不安定」系である。反社会性パーソナリティ障害(権利や法の無視、共感性や罪悪感の欠如)、境界性パーソナリティ障害(見てられ不安、不安定な人間関係と自己像、感情的激しさ)、自己愛性パーソナリティ障害(誇大的で自己中心的、共感性が乏しく、批判に弱い)、演技性パーソナリティ障害(注目を浴びたがり、大げさなあるいは演技が買った振る舞い)の4つからなる。クラスターCは「不安が強い」系である。回避性パーソナリティ障害(拒絶への恐れ、対人関係の回避、自尊心の低さ)、依存性パーソナリティ障害(他者に頼り、自己決定や責任を避ける)、強迫性パーソナリティ障害(完璧主義、秩序やルールの過剰な遵守)の3つかなる。 パーソナリティ障害においてもっとも研究が進んでいるのは境界性パーソナリティ障害である。これは境界性パーソナリティ障害が何らかの形で(結果的に)支援を受けることが比較的多いためである。一般的に、パーソナリティ障害は治療動機が低く、支援機関を訪れることが少ない。疾患のモデルあるいは治療機序は介入とその効果によって一定の妥当性が認められることを考えれば、十分な根拠をもって検討できるのは境界性パーソナリティ障害に絞られる。APAのエビデンス評価において、研究によって支持される心理療法の記載があるパーソナリティ障害は、境界性パーソナリティのみである。
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② 境界性パーソナリティ障害の理解 境界性パーソナリティ障害の特徴は、対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性にある。診断には、(1)現実に、または想像のなかで見捨てられることを避けようとするなりふりかまわない努力、(2)理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる不安定で激しい対人関係様式、(3)不安定な自己像、自己間、(4)自己を着付ける可能性のある衝動性(浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、むちゃ食いから少なくとも2つ)、(5)自殺の行動、そぶり、脅し、または繰り返される自傷行為、(6)気分反応性による感情不安定性、(7)慢性的な空虚感、(8)不適切で激しい怒り、または怒りの制御困難、(9)一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離症状の9つのうち、5つ以上当てはまることでなされる。 境界性パーソナリティ障害は、一卵性双生児研究において、片方が発症した場合に他方は35-69%が発症する(Torgersen et al., 2000)。よって遺伝的な要因が関与していることが想定されている。 また、境界性パーソナリティ障害の90%が、何らかの形で幼少期に虐待やトラウマ体験をしていること(Zanarini et al., 1997)、幼児期の性的虐待の既往がBPDの発症リスクを高めること(Herman et al., 1989; Battle et al., 2004)などが指摘されている。 関連すると思われるが、アタッチメントスタイルにも一定の偏りがあることがわかっている。Levy et al.(2006)は境界性パーソナリティ患者の多くが「不安定型」「無秩序型」の愛着スタイルを持つことを報告している。また、両親の情緒的サポートの不足や感情的な無反応が子どもの境界性パーソナリティ障害の傾向と関連すること(Crowell et al., 2009)、家庭内の過保護と過干渉あるいは逆の放任的・無関心な育児スタイルが境界性パーソナリティ障害のリスク要因となること(Paris, 1997)が指摘されている。こうしたことから、遺伝的素因と主に家庭を中心とした幼少期の経験の組み合わせの中で境界性パーソナリティが形成されていくものと考えられる。
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③ PAのエビンデンス評価において、境界性パーソナリティ障害のみが有効性が支持される介入を持つパーソナリティ障害として掲載されている。そこで挙げられているのは、転移焦点型療法、メンタライゼーションに基づく治療(Mentalization-based Treatment: MBT)、スキーマ療法、弁証法的行動療法の4つである。転移焦点化療法は精神分析の流れから生じたものでありその中でも対象関係論をベースにしている。重要なのは、幼少期の経験のなかで、自己・他者の表彰が良い自己・悪い自己・良い他者・悪い他者に分裂し、「良くも悪くもある自己」「良くも悪くもある他者」という統合した表彰を取れないことによって症状が生じると考えている。よって目指されるのは転移を認識することを通じた表彰の統合である。メンタライジングに基づく治療は愛着理論と心の理論から産まれている。幼少期の育ちのなかで、適切に自己や他者の心の推測の能力(メンタライジング)が育まれなかった結果として、感情の制御が困難にならざるを得ないと考える。よって、目指されるのはメンタライジング能力の涵養となる。スキーマ療法は認知(行動)療法と愛着理論を組み合わせたもので、幼少期の経験の中で特徴的な「早期スキーマ」が形成され、そのスキーマによる精神的苦痛に対応するための反応が習慣化することによって問題が生じると考える。これらを合わせた一時的な自己状態をスキーマモード呼び、スキーマモードや早期スキーマの自覚、傷ついた子どもの部分の癒やし、健全な大人のモードの育成を目指す。弁証法的行動療法はマインドフルネスを取り入れた行動分析学の流れから生じている。弁証法的行動療法は、遺伝的要因と幼少期の子どもの感情や行動が過度に否定される環境、すなわち無効化環境(invalidating environment)の掛け合わせによって感情制御不全が生じ、それこそが境界性パーソナリティの中核である考えている。よって、この無効化環境の対局をなす徹底した承認を自らに与えることが重要になる。そしてそれと矛盾する「変化」を目指すことも同時に行い、対立する両者が対立を乗り越える形で新しい段階へと進歩することが目指される。
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キーワード
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① 境界性パーソナリティ障害 ② メンタライゼーションに基づく治療 ③ 弁証法的行動療法 ④ 転移焦点化療法 ⑤ スキーマ療法
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義のシラバスを確認し、当該授業回に関連するキーワードについてよく調べておくこと。参考図書や論文が示されているときには、それを優先的に参照すること。調べて上で理解が難しい点や疑問を整理し、授業までにまとめておくこと。
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13
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犯罪と精神疾患
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。 3つ目のパートである第13回講義では、犯罪と精神疾患の関係について取り上げる。
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コマ主題細目
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① 精神疾患患者と犯罪の関連 ② 犯罪におけるリスクファクター ③ 犯罪者の更生
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細目レベル
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① 精神疾患患者と犯罪の関連 精神疾患をある種の「異常」として捉えるのであれば、犯罪者も同様にある種の「異常」とみなすことができる。一般に、異常心理学の研究領域は犯罪行動の分析までは広がっておらず、それは犯罪心理学の領域になる。よって、本講義のなかで扱うのは、これまで概観してきた精神疾患と犯罪がどのように関連するかについてである。 まず精神疾患患者の犯罪率はどのようになっているだろうか。精神疾患においても症状は様々であり、犯罪行動との関連が想像しやすいものとしにくいものがあることだろう。よって一概に精神疾患患者ないし精神障害者として扱うことはそれほど合理的ではない。参考までに確認しておくと、令和5年の刑法犯の検挙人員総数における精神障害者「等」の割合は0.8%であった。一般人口における精神疾患患者の割合は厚生労働省の資料から見ると3.3%ほどとなることを考えれば、犯罪率はむしろ低いと考えることができる。 一方で、統合失調症や双極性障害などの重度の精神疾患を持つ人は、一般人口と比較して暴力行為を行うリスクがやや高い傾向がある(Swanson et al., 1999)。ただし、このリスクは薬物乱用やアルコール依存の併存によって大きく影響をうけていたことは押さえておく必要がある。Elbogen et al.(2009)によると、精神疾患そのものよりも薬物乱用や反社会的傾向、社会的ストレスが暴力や犯罪と強く関連する要因であることが示されている。 1966年から2001年までに発表された受刑者における精神疾患の有病率調査したFazel & Danesh(2002)では、計23,000人の受刑者のうち、精神病性障害(統合失調症に類する)は男性3.7%/女性4.0%、うつ病は男性10%/女性12%、反社会性パーソナリティ障害は男性65%/女性42%、薬物使用障害は男性30%/女性51%、アルコール使用障害は男性18%、女性30%であった。これらは、精神病性障害やうつ病よりもはるかに反社会性パーソナリティ障害、物質乱用が犯罪との関係が深いことを示唆している。
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② 犯罪におけるリスクファクター 現在の非行・犯罪に対するリスク評価は、Andrews & Bonta(2010)のRNRモデルにおける「セントラル8」によって行われることが多い。彼らが再犯に関わる要因をレビューして浮かび上がったものから構成されるこの8項目は、①過去の犯罪歴、②反社会的な交友関係、③反社会的認知、④反社会的パーソナリティ、⑤家庭内の問題、⑥教育・職業上の問題、⑦物質使用、⑧余暇活動により構成される。前節で指摘された、精神疾患以上に犯罪と関連が深かった薬物乱用やアルコール依存、反社会的傾向、などもこの中に含まれる(⑦および④)。特に④の反社会性パーソナリティ傾向は前回紹介したパーソナリティ障害のクラスターBに分類される精神疾患とつながっている。 この反社会性パーソナリティ障害については、DBTマーチ(Disruptive Behavior Disorders)として知られる反社会性パーソナリティ障害につながると想定される一連の経過がある。それは、ADHDから反抗挑戦性障害、ついで素行障害、最終的に反社会性パーソナリティへと連なる経路である。
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③ 犯罪者の更生 これまで見てきた精神疾患への治療と同様に、犯罪者に対する心理学的介入も確認する。現在の世界的な流れにおいては、Andrews & Bonta(2010)のRNRモデルに基づく処遇がなされる事が多い。RNRモデルでは、リスク(Risk)、ニーズ(Need)、反応性(responsivity)の観点から評価と処遇の決定を行うことになる。リスクの原則は再犯リスクの高さを評価し、それに応じた程度の処遇を行う必要があるということである。ニードの原則は、その個人にとって特に再犯と関連が深い要因に焦点をあてて介入を行う必要があるということである。反応性の原則は、一般反応性として、一般に刑務所処遇において特に効果が認められる認知行動療法を優先してしようすること、個別反応性として、文化背景や知的能力、精神状態に合わせた個別の対応を調整することである。こうしたモデルに基づいた介入は日本においても導入されているが(簡略化しているが)、特に薬物事犯と性犯罪の再発予防のために用いられる。法務省主導の効果検討においても効果が認められ、その有効性が確認されている。
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キーワード
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① 犯罪 ② 反社会性パーソナリティ障害 ③ 物質乱用 ④ DBDマーチ ⑤ 更生
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義のシラバスを確認し、当該授業回に関連するキーワードについてよく調べておくこと。参考図書や論文が示されているときには、それを優先的に参照すること。調べて上で理解が難しい点や疑問を整理し、授業までにまとめておくこと。
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14
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異常の責任−スティグマと法−
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。
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コマ主題細目
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① 異常は誰のせいか ② スティグマと法 ③ 対人支援の場での態度
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細目レベル
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① 異常は誰のせいか 精神疾患という「異常」について概観したとき、現代において最も精力的に有効性を示しているのは認知行動療法系の心理療法だということがわかったはずである。幼少期の体験により形成されるスキーマや、自動的に生じる自動思考、刺激の対提示によるレスポンデント条件づけ、環境の変化によって強化ないし弱化が生じるオペラント条件づけなどがその理論の中核にある。ここで重要なのは、これらはその人の存在をたまたま取り囲んでいた環境によって本人の希望とは関係なく否応なしに「学習された」ないし「条件づけられた」反応群なのである。認知モデルも行動モデルも、つきつめるとそこには自分をコントロールする座を設定することができない。行動療法の(特に行動分析学の)基礎を気づいたスキナーはそのことに特に自覚的であり、「行動の科学的分析によって自律的人間は追い払われる。そして自律的人間の役目だとされてきたコントロールの仕事は環境へと引き継がれる」(Skinner,1971)としている。つまり行動分析学が想定する原理を突き詰めれば、人間は環境と個体の間で生じる自動的な条件づけの集積体なのであって、自由意志を持たないということになる。他にも効果が支持される研究として登場した世界的潮流の一つである精神分析学においても、その理論の中核にあるのは無意識の存在であり、私達は無意識というある種の巨大な謎に動かされる存在であり、それは決定論的前提を持つ(デイビス, 2018)。
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② スティグマと法 精神疾患を持つ人達は、しばしば自分を責める。それぞれの出来事についても、自身が病気になっていることについても自身の「責任」を問う。特にうつ病ではその傾向は顕著である。PTSDにおいても自分が被害を受けたにもかかわらず「私が悪かったのかもしれない」と考えてしまうことはよく起こる。逆に、精神疾患の患者に対して、「努力が足りないから」「甘えてるから」「怠けているから」などと本人に責任を帰属する見方がある。「うつは甘え」といったスティグマは未だにSNS上で飛び交っているが、少なくとも、認知モデルや行動モデル、精神分析は自由意志をかなり小さく見積もっており、その意味で、「誰かのせい」として人間に責任を問うことが難しくなる構造をしている。 精神障害を持つ犯罪者の場合、「心神耗弱」により罪に問われないという事態が起こり得るが、この意味での「責任」を問えないということではなく、そもそも犯罪者が罪を犯すときに、一体何をもって「責任」があると言えるのだろうか。統合失調症の回でストレス-脆弱性モデルの説明をしたが、生物学的な素因は本人が選べるものではない。また、どのような家に産まれ、どのような人と出会うかは偶然に委ねられているし、自身の好みや行動パターンは条件づけによって決められ、世界の見方は外部から学習される。多くの社会心理学的知見を参照すれば、私達が今この瞬間の反応が環境からの影響で成立していることが理解できる。そうしたことから責任概念自体を「虚構」とする見方もある(小坂井, 2008)。心理学を学べば学ぶほどに、自らの意思で選べるものがどれだけあったのかが不明瞭にならざるを得ない。犯罪行為は「法」で裁くという「当たり前」のこの状況について、私たちは何も考えずにいてよいのだろうか。
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③ 対人支援の場での態度 ここまで述べたことは、あくまで「こういう見方もできる」という一つの立場を示したに過ぎない。しかし、自由意志については古くから現在まで哲学上の大きなトピックであり続けている。昨今は神経科学(脳科学)が隆盛を極め、ますます「こころ」が物質的な作用の従属物として捉えられる材料が増えてきている。こうした自由意志や責任にまつわる見方を取り上げるのは、対人支援における態度において非常に重要だからである。行動分析学には、「個人攻撃の罠」という言葉がある。これは、問題行動や望ましくない行動の原因や可決を考えるときに、クライアント個人の性格や「意志」の弱さなどに「責任」を押し付けるという誤りを戒めるためにある言葉である。行動の背景には学習歴と環境があるのであって、断じて「意志」の問題ではないと考えるのである。このように人を捉えることができれば、対人支援の場はもっと温かくなることだろう。そしてそうした見方を得た支援者は、自身に対しても優しくいられることだろう。
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キーワード
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① 責任 ② 自由意志 ③ スティグマ ④ 法 ⑤ 個人攻撃の罠
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、次回講義前後に質問できるように準備しておくこと。 [予習]次回講義のシラバスを確認し、当該授業回に関連するキーワードについてよく調べておくこと。参考図書や論文が示されているときには、それを優先的に参照すること。調べて上で理解が難しい点や疑問を整理し、授業までにまとめておくこと。
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15
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展望とまとめ
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科目の中での位置付け
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本科目は、主に大きく3つのパートに分かれている。1つ目のパートは第1回から第4回の講義で、正常と異常についての理解を深める。とりわけ、現代の日本人の価値観の土台となっているであろう精神医学的な立場を相対化し、多角的に異常を捉えることができるようにする。2つ目のパートは第5回から第12回の各疾患の異常心理学の講義であり、そこでは各疾患のメカニズムを検討する。想定されている疾病のメカニズムは治療(介入)と結びけられているため、対応する治療(介入)についても検討する。3つ目のパートは第13回および第14回の講義であり、社会が「異常心理」をどう扱っているか、また今後どう扱っていく必要があるかについて検討する。 本科目の最終回として、これまでの講義を振り返り、全体のまとめを行う。
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コマ主題細目
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① 1つ目のパート:異常とはなにかを考える ② 2つ目のパート:それぞれの異常を理解する ③ 3つ目のパート:社会的な観点から異常を検討する
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細目レベル
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① 1つ目のパート:異常とはなにかを考える 第1回から第4回までは、「異常」とされる事態が何を指すのかを考えるために設定された。第1回では異常を規定する基準を示した。現在の社会において想定される異常の基準は複数あり、ある見方では異常あってもある見方では異常でないという事態がありえることや、日常で異常と感じていたことがいかなる意味で異常なのかについてを説明することができるようになった。第2回では、文化と異常について検討し、そのために精神医学(特に文化精神医学)の観点から、文化によって許容される行動に差異があることや文化によって生成されやすい異常状態があることが確認された。また、医療人類学の観点から、ある「異常」をどのように説明し、またどのように治療するのかも文化に依存するのであり、その土地において「リアリティ」がある説明モデルや治療が存在することを確認した。第3回では、こころの病がいかに「発明」されたのかについて検討した。DSM以前、そしてDSMの誕生、そして変遷のプロセスのなかで、こころの病の捉え方が変化していく様が見て取れたはずである。こころの病が普遍的に存在しているのではない。こころの病としていかに切り出すかによってこころ病は変わってしまうことを学んだ。第4回では、治療機序とプラセボについて取り上げた。ここではある治療が効果を持つことがわかったときに、そこで想定している治療機序に沿って効果が発現したのかどうかを問う視点を学んだ。薬物療法に限らず、様々な治療でプラセボ効果は生じうる。また、薬物療法のような同質の治療を用いたときでさえ、なぜか処方する医師が誰かによって効果が変動してしまう。こうしたことは、想定する治療機序の妥当性を常に問い治す姿勢が重要であることを示唆している。これは異常についてより妥当に理解しているか?についてを問うことである。
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② 2つ目のパート:それぞれの異常を理解する 第5回から第12回までは、各精神疾患という異常についての具体的な説明と治療を確認していった。APAのエビデンス評価をベースに紹介を行ったため、研究上の厳密さは確保されたはずだが、近年ではそこで取り上げなかった精神分析や来談者中心療法などが科学的な手法で効果を積み上げるようになってきたことも指摘しておく必要がある。疾患によって違いはあるが、概ね認知行動療法に基づく介入の効果が確認されていたはずである。しかし、例えば境界性パーソナリティ障害の治療では、認知行動療法系の他に転移焦点化療法やメンタライゼーションに基づく治療も効果が確認されていることが紹介され、そこで想定される説明モデルと治療には個性があったことも見ることができた。境界性パーソナリティ障害という特定の異常に対して、なぜ複数の説明がありえて、なぜ複数の治療がそれぞれ効果を発揮することができるのかについて、一歩引いた視点から考え直すことは有用だろう。
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③ 3つ目のパート:社会的な観点から異常を検討する 第13回および第14回は、視点を広げ、社会のなかでの異常についてを検討した。第13回では、犯罪と精神疾患を取り上げた。例えば京都アニメーションの放火事件など、精神障害を持つ人による犯罪が大きくされることは珍しくない。しかし精神障害者全般として見たときには犯罪率はむしろ低いと言いうるのであり、異質なものに対するスティグマが流布している現状が伝わったことと思われる。しかし、DSMにも記載されている反社会性性パーソナリティ障害や薬物使用、アルコール使用などは犯罪のリスク要因であり、ここにおいて精神障害と犯罪密接に関係している。刑務所等の司法にて臨床を志す人にとっては、そうした人たちの「異常」こそが支援の対象となる。また、第14回では、心理学理論を突き詰めたときに生じる意志と責任についての見方を確認した。そこではスティグマとしてしばしば見られる精神疾患の自己責任論や、法における裁きのあり方についてを捉え直す一つの立場を提供した。これはあくまで立場であり、可能性である。しかし、その立場にたつことができれば、それまでとは違った世界との、人との関わりが可能になるであろう立場である。
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キーワード
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① 異常 ② 精神疾患 ③ 治療 ④ 社会 ⑤ 責任
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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復習・予習課題
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[復習]この講義の文字教材を通読すること。講義スライド内で紹介した画像等がある場合はスライド資料も参照すること。わからなかった点については講義中に示された文献等を中心に調べること。そのうえで理解できなかった点や生じた疑問については記録し、試験までに担当教員に質問にいくこと。 [予習]本科目内では特定の疾患に対する介入方法の詳細を説明することができなかった。各心理療法の具体的な治療機序の理解および介入の方法論については、各自発展科目の受講に備えて準備すること。
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