区分 高度専門科目Ⅰ
ディプロマ・ポリシーとの関係
SDGs力 科学コミュニケーション力 研究力
カリキュラム・ポリシーとの関係
教養 応用力 実践力
科目間連携 総合心理力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ

科目の目的
本科目は、現代社会の問題にフォーカスした高度専門科目である。犯罪心理学概論で学んだ犯罪心理学の基礎知識をもとに、本科目では近年問題となっているヘイトクライムやヘイトスピーチについて、心理学的な観点から学ぶことを目的としている。ヘイトクライムやヘイトスピーチは、金銭や恋愛のトラブルなど個人間での問題が動機になるのではなく、被害者となる人や集団が「ある属性や特徴をもっているから」という理由に基づいている点が特徴である。つまり、ある属性や特徴を有しているだけで、誤った偏見によって犯罪のターゲットとなってしまう。その点では、無差別に危害を加えるような犯罪とは異なる。本科目では、こういった偏見に基づく犯罪の現状について学び、さらに背景にある心のメカニズムに焦点を当てて理解を深めていく。この科目を学ぶことによって、暴行や殺人といった犯罪の類型にとどまらず、個人や社会の在り方からより深く犯罪について学ぶことができる。
到達目標
1.ヘイトクライムやヘイトスピーチの実態や歴史的背景について理解する。
2.ヘイトクライムやヘイトスピーチの背景にある偏見や差別について心理学的視点から理解する。
3.ヘイトクライムやヘイトスピーチの背景にある偏見や差別の低減について理解する。

科目の概要
この科目では、近年顕在化している、スティグマに起因する犯罪(ヘイトクライム)について取り上げ、犯罪の背景にある社会的要因・認知的要因について講義を行う。また、犯罪や精神疾患に関連するスティグマ、具体的には犯罪加害者や被害者に対するスティグマについても扱う。「犯罪心理学概論」で学んだ犯罪心理学のとらえ方に基づき、スティグマと犯罪の関連ついて考えることを目的とする。犯罪被害者の実際の体験について扱う「被害者の心理学」と併せて受講することが望ましい。加害者や被害者が犯罪後に地域・社会でどのように暮らしていくことができるのか、スティグマによる犯罪をどのように防ぐのかについて考えるきっかけとなるであろう。
科目のキーワード
ヘイトクライム、ヘイトスピーチ、ステレオタイプ、偏見、差別、スティグマ、レイシズム、セクシズム、エイジズム、接触仮説
授業の展開方法
本科目では,LMSにアップロードする授業独自の教材(コマ用オリジナル配布資料)を使用して講義を進める。基本的には授業独自の教材をスクリーンに投影しながら,該当箇所の解説を行っていく形式で実施する。
開講日について、本科目では第10回目以降、週2コマ(火・木)実施する。

オフィス・アワー
※できるだけ事前にメールで連絡してください。
前期:水曜2限
後期:水曜2限

科目コード SE3010
学年・期 2年・前期
科目名 偏見・差別と犯罪(個人と社会のスティグマから犯罪を知る)
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目
展開科目
関連資格
担当教員名 大井瞳
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 ヘイトクライム 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
第1回の前半では、講義の進め方についてガイダンスを行う。続いて、本科目の全体像や到達目標についての説明を行う。後半では、偏見や差別に基づいた犯罪であるヘイトクライムの概要について説明をする。また、様々な時代、地域で行われてきたヘイトクライムの事例について紹介する。

①②③
鵜塚健・後藤由那(2023). ヘイトクライムとは何か 連鎖する民族差別犯罪 角川新書
コマ主題細目 ① ガイダンス ② ヘイトクライムとは ③ 歴史からみるヘイトクライム
細目レベル ① 初回であるため、講義の進め方の説明を行う。具体的には、出席要件、講義の進め方、質問の仕方、予習や復習の仕方について説明する。出席要件については、本学のルールに則り出席を管理する。講義の進め方として、最初に前回の講義で挙がった質問に対して回答する。当該講義回の本科目の中での位置づけや目標を確認し、その目標を意識して講義に進む。講義の後半には、LMSでの小テストを実施し、講義内容の理解度を確認する。最後に次回講義回の内容紹介を行い、当該講義回と次回講義回のつながりについて説明を行う。各講義回で生じた質問はヨリソルを経由して行う。予習、復習については、コマシラバスおよび各講義で配布される文字教材を用いて行う。
② 実際の、または認識されている人種、肌の色、宗教、障がい、性的指向、国籍に対する偏見に基づいて行われる犯罪をヘイトクライムという。ヘイトクライムには、暴行や殺人など人身に対する犯罪や物理的な破壊行為による犯罪などが含まれる。ヘイトクライムの背景にある主な偏見には、人種・民族・家系に基づくもの、性的指向に基づくもの、宗教に基づくもの、障がいに基づくもの、性別に基づくものがある。アメリカではヘイトクライム統計法に基づき、ヘイトクライムのデータ収集が義務付けられている。FBIのデータによるとヘイトクライムは増加傾向にあり、2024年時点で1万件を超えるヘイトクライムが発生している。アメリカ以外の国においてもヘイトクライムの増加が指摘されている。
③ ヘイトクライムという言葉が知られるようになったのは最近のことであるが、歴史的に見ると人種や宗教など理由とした犯罪や虐殺は様々な時代、地域で行われてきた。個人に対するヘイトクライムに関しては、マシュー・シェパード事件やジェームズ・バード・ジュニア事件が有名である。集団に対するヘイトクライムでは、ナチスドイツによるホロコースト、関東大震災時の朝鮮人虐殺などがある。また、近年では、COVID19パンデミック時のアジア人への暴力などがある。こして、これらのヘイトクライムは社会運動の契機となったり、法制度の見直しにつながったりした。ここでは、ヘイトクライムがいかに歴史的に大きな問題となってきたかについて実際の出来事や事件をもとに紹介する。
キーワード ① ガイダンス ② ヘイトクライム、ヘイトクライム統計法 ③ 人種差別撤廃条約
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料をキーワードを中心に読み返す。第1回においては、ヘイトクライムとは何か、どのような偏見に基づいているかついて理解することが重要であるため,これらに関する説明を自分なりの言葉で説明できるようにまとめておく。また、ヘイトクライムに関する歴史について復習し、実際の事例が社会運動や法整備にどのような影響を与えたのかを理解しておく。第2回ではヘイトスピーチについて取り上げる。ヘイトクライムについて理解をしておくことで、ヘイトクライムとヘイトスピーチは何が異なるのかについて理解を深めながら学ぶことができる。
【予習】この復習をふまえて,予習として第二回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。また、コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

2 ヘイトスピーチ 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
第1回では、差別に基づいて主に身体的な危害を及ぼすヘイトクライムを扱ってきた。第2回では、差別的言動をさすヘイトスピーチについて扱う。ヘイトスピーチは近年、日本において大きな問題となっている。ここでは、ヘイトスピーチの実態や規制と言論の自由の考え方について学んでいく。


本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律 https://laws.e-gov.go.jp/law/428AC0100000068

魚住裕一郎・西田昌司他(2016). ヘイトスピーチ解消法 成立の経緯と基本的な考え方, 2-6, 第一法規

中川慎二・河村克俊他(2021). インターネットとヘイトスピーチ 法と言語の視点から, 144-155, 212-229, 明石書店


中川慎二・河村克俊他(2021). インターネットとヘイトスピーチ 法と言語の視点から, 87-92, 136-143, 明石書店
コマ主題細目 ① ヘイトスピーチとは ② ヘイトスピーチ解消法 ③ ヘイトスピーチの実態
細目レベル ① 日本においては、日本国外の国または地域の出身であることを理由として、その出身者またはその子孫を日本から排除することを扇動する不要な差別的言動が行われている。このような差別的言動はヘイトスピーチと呼ばれている。ヘイトクライム同様、ヘイトスピーチも近年広く知られるようになったが、古くから行われてきた差別の一つである。用語自体は1980年代にアメリカでポリティカル・コレクトネス運動の中で広まった。ヘイトクライムが主に暴力や殺人を指すのに対し、ヘイトスピーチは差別に関する発言を指す。特に、人種主義的ヘイトスピーチはその後の大規模人権侵害や大量虐殺につながるとして国連の人種差別撤廃委員会において問題視されている。
② ヘイトスピーチが日本国内で大きな問題となり、平成28年にヘイトスピーチ解消法が施行された。ヘイトスピーチ解消法では、その解消に向けた取り組みについて、基本理念を定め、および国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進することを目的としている。標的となった集団の属性を理由に差別意識を浸透させ、社会から排除することを防ぐべくして制定された。ただし、ヘイトスピーチ解消法では、禁止規定や罰則については定められていないことが問題として指摘されている。さらに、ヘイトスピーチの規制に関しては、言論の自由の問題があり、両者のバランスをどのように考えるかによって各国での考え方や法律が異なっている。例えば、言論の自由に重きを置く国においては、ヘイトスピーチの規制に対して慎重である。
③ 日本でのヘイトスピーチとして顕著なものが、在特会(在日特権を許さない市民の会)を中心としたものである。2007年以降、インターネットで参加を呼び掛けた排外主義デモや差別街宣が全国各地で行われるようになった。2014年には、ヘイトスピーチが名誉棄損と業務妨害とされ、在特会に1200万円の賠償判決が確定した。世界に目を向けると、第1回の講義で紹介したホロコーストに関しても、いきなり虐殺が始まったのではなく、少数者へのヘイトスピーチから始まっている。ヘイトスピーチを行うものの中には、拡声器やプラカードなどをもって広場や街頭で差別的発言を行うものがあったが、近年では特にインターネット上でのヘイトスピーチが問題となっている。
キーワード ① ヘイトスピーチ ② ヘイトスピーチ解消法、言論の自由 ③ インターネット上のヘイトスピーチ、SNS
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、ヘイトスピーチとは何か、ヘイトスピーチの解消を目的とした法律や条例にはどのようなものがあるか、ヘイトスピーチは実際にどのような形で行われているのかについて理解することが重要であるため、これらに関する説明をキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。
【予習】第3回からは、これまで学んできたヘイトクライムやヘイトスピーチの背景にある心のメカニズムについて学んでいく。偏見に基づく犯罪がなぜ起きてしまうのかについて、これまでのヘイトクライムやヘイトスピーチの実態やついて理解しておくことが予習となる。また、予習として第3回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

3 ステレオタイプの形成 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
ここまでの講義では、偏見や差別に基づく犯罪の概要について、ヘイトクライムとヘイトスピーチを中心に扱ってきた。第3回目では、そもそも偏見や差別がどのように生じるのかに心理的なメカニズムへの理解へつなげるために、ステレオタイプについて学んでいく。具体的には、ステレオタイプとはなにか、マイノリティに対してステレオタイプが生じやすいのはなぜかについて学ぶ。本コマで学んだ内容は、第4回のステレオタイプの維持について学ぶ上で基礎となる内容である。


上瀬由美子(著)(2002). ステレオタイプの社会心理学 偏見の解消に向けて p. 2-14, サイエンス社

北村英哉・内田由紀子(編)(2016). 社会心理学概論 p.33-37, ナカニシヤ出版

北村英哉・唐沢穣(編)(2018). 偏見や差別はなぜ起こる?心理メカニズムの解明と現象の分析 p.9-19, ちとせプレス


J.R. スミス & S. A. ハスラム(編)樋口匡貴(監訳)社会心理学・再入門 p.229-246 新曜社

上瀬由美子(2002). ステレオタイプの社会心理学 偏見の解消に向けて p.30-33, サイエンス社

北村英哉・内田由紀子(編)(2016). 社会心理学概論 p.36-37, ナカニシヤ出版


上瀬由美子(2002). ステレオタイプの社会心理学 偏見の解消に向けて p.34-41, サイエンス社

縄田健悟(2013). 集団間紛争の発生と激化に関する社会心理学的研究の外観と展望 実験社会心理学研究, 53, 52-74.
コマ主題細目 ① カテゴリー化 ② 錯誤相関 ③ 社会的アイデンティティ
細目レベル ① 自己や他者を含む社会に関する情報処理を社会的認知とよぶ。ここでは、その社会的認知の中でもステレオタイプを扱っていく。ステレオタイプとは、さまざまな社会集団に対するイメージを指す。ステレオタイプは事実に即しているかにかかわらず、ある集団と何らかの特性を組み合わせて知識として獲得される。ステレオタイプの形成過程の一つに、カテゴリー化がある。私たちは、外見、動き、声、所属、言語などさまざまな特徴を手掛かりにして、対象物や人をカテゴリー化して情報処理にかかる認知的負荷を節約している。そして、同じカテゴリーに属する人びとが、目に見えない本質的特徴を共有しているかのように錯覚し、他のカテゴリーと区別しようとする。ここでは、ステレオタイプの形成過程として、カテゴリー化を中心に学んでいく。
② ステレオタイプが形成されていく中では、誤った情報が組み込まれることもある。ある集団について入手した偽の情報をそのまま信じてしまうこともそうだが、個々人の情報を知っていくうちに事実無根のステレオタイプが形成されていくことがある。実際には関係のないところに関係があると捉えてしまうことは錯誤相関と呼ばれ、二つのまれな事柄に同時に遭遇した時に、それらの事柄同士が結びついた状態で記憶に残りやすくなることから生じると考えられている。ここでは、錯誤相関に関する実験を紹介し、どのようなメカニズムで錯誤相関が起こるのかについて学んでいく。具体的には、ハミルトンとギルフォードが行った錯誤相関モデルを紹介する。彼らは、少数者とネガティブな行動が結び付けられやすいことに着目し、これを実証的に明らかにしようとした。
③ ここまでにカテゴリー化について紹介したが、人を何らかのカテゴリーに基づいて区別する際、同時に自分が所属する集団(内集団)と所属しない集団(外集団)の区別も行われている。ある集団に自分が所属しているという認識を社会的アイデンティティとよぶ。社会的アイデンティティは、自分が何者であるかという個人的アイデンティティとは異なるものであり、集団への所属や所属意識が重要となる概念である。自己を含んだ社会的カテゴリーの価値や評価は、自分自身の価値や評価に反映されるため、内集団をより高く、外集団をより低く位置付けるように個人の価値づけが異なる。これを集団間バイアスとよぶ。この集団間バイアスは集団間の葛藤や偏見、差別につながる要因の一つである。
キーワード ① ステレオタイプ、カテゴリー化 ② 錯誤相関 ③ 社会的アイデンティティ、集団間バイアス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、ステレオタイプとは何か、ステレオタイプが形成される背景にはどのような認知的処理があるか、特にマイノリティに対してステレオタイプが生じやすいのはなぜか、自身の所属する集団とそうでない集団に対してどのような評価の違いが生じるかについて理解することが重要であるため、これらに関する説明をキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。
【予習】これらの復習を踏まえて、予習として第4回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

4 ステレオタイプの維持 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
第3回では、ステレオタイプがどのようにして形成するのかに焦点を当てて学んできた。本コマはそれに続く内容として、ステレオタイプがどのようにして維持されるのかに着目する。次回の第5回ではステレオタイプが否定的評価と結びつく偏見や差別について扱っていく。


北村英哉・内田由紀子(編)(2016). 社会心理学概論 p.37-39, ナカニシヤ出版


上瀬由美子(2002). ステレオタイプの社会心理学 偏見の解消に向けて p.61-77, サイエンス社

北村英哉・内田由紀子(編)(2016). 社会心理学概論 p.39-43, ナカニシヤ出版


上瀬由美子(2002). ステレオタイプの社会心理学 偏見の解消に向けて p.92-102, サイエンス社

北村英哉・内田由紀子(編)(2016). 社会心理学概論 p.44-46, ナカニシヤ出版
コマ主題細目 ① ステレオタイプ化 ② ステレオタイプに基づく解釈 ③ ステレオタイプ脅威
細目レベル ① ステレオタイプに基づいて他者を判断することをステレオタイプ化とよぶ。ステレオタイプ化が生じる過程については、いくつかのモデルで説明されている。ここでは、二重処理モデル、連続体モデル、分離モデルについて紹介する。二重処理モデルでは、最初に自動的な処理過程として、対象人物の性別、年齢、人種といった基本的なカテゴリー属性が同定され、それに基づく認知や感情が生じると考える。二重処理モデルでは、いったんカテゴリ依存型処理が行われると、対象人物はあくまでも特定の社会的カテゴリーの一員として扱われ、カテゴリーに基づいた判断がなされると考えている。一方、連続体モデルでは、ステレオタイプ化の過程を連続的な過程としてとらえている。分離モデルでは、ステレオタイプ的知識とステレオタイプに関する個人的信念を区別し、それぞれがステレオタイプ化の過程で担う役割を理論化している。
② 人間の行為は、その人の特性、状況、文脈によってさまざまな解釈をすることができる。1つの解釈を構築するのに十分な情報が得られない場合には、行為者が所属集団のステレオタイプに沿った解釈がなされやすくなる。さらに、私たちは、気づかないままにステレオタイプによって他者の行為を解釈し、その行為を証拠として自らのステレオタイプを確証、強化していると考えられている。また、ステレオタイプの自動的活性化もステレオタイプの維持に関連している。ステレオタイプには、カテゴリーに関する手がかりがあると自動的に活性化してしまうという特徴がある。意識的に抑制しようとしない限り、他者をステレオタイプ化しやすく、これがステレオタイプの維持につながっている。
③ ここでは、ステレオタイプのターゲットとなる人々の心理に焦点を当てる。特定のステレオタイプと関連付けられる能力が問われる課題や状況に直面した際、人は「自分がそのステレオタイプを裏付けてしまうのではないか」と不安を抱くことがある。このような心理的プレッシャーはステレオタイプ脅威と呼ばれ、実際のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことがある。たとえば、「女性は数学が苦手」という社会的固定観念の中で女性が数学の試験を受けると、本来の能力を十分に発揮できなくなることがある。また、他者からの評価に対して「それが自分の実力によるものなのか、それともステレオタイプの影響によるものなのか」が判断しづらい状態は原因帰属の曖昧性と呼ばれる。否定的なステレオタイプを持たれる集団に属している場合、この曖昧性は特に強まり、評価に対する納得感や自尊心の維持が困難になることもある。
キーワード ① ステレオタイプ化 ② 自動的活性化 ③ ステレオタイプ脅威
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、ステレオタイプに基づいた判断はどのようなモデルによって説明されるか、ステレオタイプはどのようにして維持されるか、特に否定的なステレオタイプに関してステレオタイプのターゲットとなる人々にはどのような心理が働くかについて理解することが重要であるため、これらに関してキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。
【予習】これらの復習を踏まえて、予習として第5回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

5 偏見・差別 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
第3、4回では、特定の集団に対するイメージとしてステレオタイプについて学んだ。ステレオタイプには、ネガティブなものもあればそうでないものもある。本コマでは、ステレオタイプにネガティブな評価が含まれる偏見、偏見に基づいた行動を指す差別、それらがレッテル化するスティグマについて学んでいく。


J.R. スミス & S. A. ハスラム(編)樋口匡貴(監訳)社会心理学・再入門 p.183-227, 新曜社


上瀬由美子(2002). ステレオタイプの社会心理学 偏見の解消に向けて p.87-91, サイエンス社
コマ主題細目 ① 偏見・差別とは ② 差別に関する心理学的実験 ③ スティグマとは
細目レベル ① ステレオタイプに否定的な評価や感情が加わると、それは偏見(prejudice)となる。偏見は個人の経験や社会的影響によって形成され、必ずしも意図的とは限らない。例えば「女性は理系に向いていない」という考えは、根拠に乏しい偏見の一例である。さらに、偏見やステレオタイプと関連する言葉に差別(discrimination)がある。差別とは、ある集団の成員に対して意図的に否定的な行動をとることを指す。ヘイトスピーチやヘイトクライムのように顕在化するものだけでなく、日常生活の中にも無意識の偏見や差別が存在している。ここでは、ステレオタイプ・偏見・差別という三つの概念を区別し、それぞれがどのような特徴を持つのかを明らかにしていく。
② 集団間での態度や行動が集団間の特徴にどのように影響するかを検証した有名な実験として、心理学者シェリフによるサマーキャンプ実験がある。サマーキャンプ実験は、内集団形成、集団間葛藤、葛藤低減という3つの段階から偏見や差別といった集団間態度と行動が集団間関係の特徴にどのように影響されるかを検証することを目的として行われた。また、心理学の古典的研究であるタジフェルらの最小条件集団実験について紹介する。この最小条件集団実験では、集団としての要素が最小の集団をつくり、集団として最少のその状況のどのような要素を加えることが差別が生じるかを明らかにしようとした。最小条件集団実験では、外集団成員よりも内集団成員の方にひいきをすることが示され、この現象は集団間バイアスと呼ばれる。
③ 所属集団が否定的なステレオタイプの対象となっている場合、その集団の一員であることはステレオタイプや偏見に基づく蔑視や排斥をもたらす社会的な目印となる。この社会的な目印は、本来烙印という意味を持つ「スティグマ」と呼ばれる。スティグマ化された集団の代表的事例としては、犯罪者や精神疾患患者、障がい者、民族や宗教などが挙げられるが、社会の中でどのような集団がスティグマ化されるかは、時代や地域、文脈によっても変化するものである。スティグマには、構造的スティグマ、パブリックスティグマ、セルフスティグマ、関係者のスティグマがある。スティグマをもつ人々は自己への否定的評価を、偏見や差別に帰属しないということが明らかとなっている。
キーワード ① 偏見、差別 ② 集団間バイアス ③ スティグマ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、ステレオタイプ、偏見、差別、スティグマについて理解することが重要であるため、これらに関する説明をキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。次回は、偏見や差別の測定に関する内容を扱うため、これらの概念について理解をしておくことが重要である。また、サマーキャンプ実験はどのような実験であり、どのようなことが明らかになったのかについて理解しておく。
【予習】これらの復習を踏まえて、予習として第6回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

6 偏見・差別の測定 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
ここまでの講義では、偏見・差別が生じる心理的なメカニズムについて学んできた。ここでは、心理学において偏見や差別をどのように研究していくのかという研究手法に焦点を当てて学んでいく。

①②③
北村英哉・内田由紀子(編)(2016). 社会心理学概論 p.103-111, ナカニシヤ出版
コマ主題細目 ① 自己報告による測定 ② 潜在連合テスト ③ 評価的プライミング・感情誤帰属手続き
細目レベル ① 偏見を測定する方法の一つに、質問紙によって回答者自身が回答する方法がある。自己報告式尺度の利点は、直接回答者の意識にある態度を測定できることである。質問項目が理解しやすく、結果の解釈も得点が高ければ偏見が強い、など直感的である。一方で、短所としては社会的望ましさの影響を受けやすいという点がある。人は自分は偏見を持っていないと考えたり、偏見を持っていてもそれを隠そうとしたりする。そのため、回答がゆがめられ、研究者が測定したいと考えている態度を適切に測定することができない可能性がある。心理学の質問紙調査ではこの社会的望ましさがしばしば問題となるが、偏見というテーマに関してはなおさら注意をする必要がある。
② 潜在連合テスト(Implicit Association Test: IAT)は、人が自覚していない心の中の概念同士の関連性の強さを、反応時間を通じて測定する方法である。このテストでは、2種類のカテゴリー(例:「男性」「女性」)と2種類の属性(例:「よい」「悪い」)を使い、参加者にそれぞれの刺激語をできるだけ速く分類させる課題を行う。IATは、強く結びついた概念同士は素早く同じカテゴリーに分類できるという考えに基づいている。例えば、「男性」と「よい」や「女性」と「悪い」のような連合が強い場合、その組み合わせを選択する際、反応時間が短くなる。反対に、弱い連合の組み合わせでは反応時間が長くなる。IATは、表面上は意識しない部分の心理状態を測定できるため、潜在的な態度の測定に有用なツールとされている。
③ ファジオらは、意味プライミングの考え方を応用し、対象への態度がその対象を知覚するだけで自動的に活性化することを示した。態度対象に対してポジティブ(またはネガティブ)な態度を持っているのであれば、プライムとして対象と関連した刺激を呈示すると、後続の直接関連のないターゲットに対するポジティブ(またはネガティブ)な反応が速くなると想定される。この原理を利用して偏見の測定を試みるのが評価的プライミングという方法である。また、似ている方法として感情誤帰属手続きというものがある。この方法では、快または不快な態度対象を呈示し、直後に別のニュートラルな刺激を呈示して、後に提示されたニュートラル刺激への評価を問う手続きである。IATと異なり、対になるカテゴリでなく単一の刺激についても自動的評価が測定できる点がメリットとなる。
キーワード ① 態度、自己報告 ② 潜在連合テスト(IAT) ③ プライミング、感情誤帰属手続き
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、偏見・差別の測定方法として、自己報告、潜在連合テスト、評価的プライミング、感情誤帰属手続きについて理解することが重要であるため、これらに関する説明をキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。方法の手続きだけでなく、それぞれの特徴についても理解しておくことが望ましい。
【予習】次回はこれまでの講義の復習コマとなっている。予習としては、第7回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

7 まとめ(1) 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
本コマは科目前半の復習コマとなっている。科目前半で扱ってきた内容を大きく3つのテーマにわけ、ヘイトクライム・ヘイトスピーチ、偏見・差別の背景にある心のメカニズム、偏見・差別の測定、という内容について復習を行っていく。質問が出た箇所や小テストで誤答が多かった箇所については、適宜補足説明を行いながら復習をしていく。

コマ主題細目 ① ヘイトクライム・ヘイトスピーチ ② 偏見・差別の背景にある心のメカニズム ③ 偏見・差別の測定
細目レベル ① ヘイトクライムとは、特定の人種、宗教、性的指向などに基づく偏見から生じる犯罪であり、暴行や殺人、物理的な破壊行為などが含まれる。アメリカでは近年、ヘイトクライムの増加が報告されており、関連データの収集が義務付けられている。歴史的な事例としては、マシュー・シェパード事件やホロコースト、関東大震災時の朝鮮人虐殺などが挙げられ、これらの事件は社会運動や法改正の契機となってきた。近年では、COVID-19パンデミック時にアジア人を対象とした暴力が問題視された。ヘイトスピーチとは、日本において特定の出身地などを理由に差別的な発言を行い、社会的排除を扇動する言動を指す。近年ではインターネット上でのヘイトスピーチが増加しており、対応が求められている。ヘイトクライムとヘイトスピーチに共通するのは、いずれも偏見に基づいて行われるという点である。
② ステレオタイプは、特定の社会集団に対する固定的なイメージであり、情報処理の負担を軽減するためにカテゴリー化を通じて形成される。しかし、この過程で錯誤相関が生じることがあり、無関係な事象が結びついて記憶されることで、根拠のないステレオタイプが強化される。また、人は自らの所属する集団(内集団)と他者の集団(外集団)を区別し、社会的アイデンティティを形成する。このようなステレオタイプは判断にも影響を与え、二重処理モデルや連続体モデルなどによって説明される。ステレオタイプに否定的な感情が伴うと偏見となり、これが行動に表れると差別となる。心理学では、シェリフのサマーキャンプ実験やタジフェルの最小条件集団実験を通じて、集団間の偏見や差別のメカニズムが明らかにされている。さらに、特定の集団が社会的に否定的なイメージを持たれることをスティグマと呼び、これが偏見や差別を助長する要因となる。
③ 偏見や差別を測定する方法について復習を行う。自己報告式尺度では、質問紙を用いて回答者が自身の態度を報告する。例えば、現代的人種偏見尺度や象徴的人種主義尺度がある。この方法の利点は、意識的な態度を直接測定でき、結果の解釈が直感的であることだ。しかし、社会的望ましさの影響を受けやすく、回答の歪みが生じる可能性がある。IATは、反応時間を用いて無意識の態度を測定する。例えば、「男性」「女性」などのカテゴリーと、「よい」「悪い」などの評価語を組み合わせ、素早く分類させることで、潜在的な連合の強さを測定する。意識的な操作が難しいため、社会的望ましさの影響を受けにくい。評価的プライミングでは、態度対象の刺激が後続のターゲットに対する反応を自動的に変化させることを利用する。また、AMPは快・不快な刺激を提示し、その直後にニュートラルな刺激への評価を測定する。
キーワード ① ヘイトクライム、ヘイトスピーチ ② ステレオタイプ、偏見、差別、スティグマ ③ 自己報告、潜在連合テスト(IAT)、プライミング
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、ヘイトクライム・ヘイトスピーチ、偏見・差別の背景にある心のメカニズム、偏見・差別の測定について理解を深めることが重要であるため、これらに関する説明をキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。科目の後半の内容はここまでの内容が基礎となっているため、理解できていない点や小テストで間違えた問題に関しては、ここで整理をしておくことが望ましい。
【予習】これらの復習を踏まえて、予習として第8回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

8 レイシズム 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
第7回までで前半が終了し、第8回目以降は特定の差別や偏見について扱っていく。まず、本コマでは差別や偏見の問題として大きく論じられているレイシズムについて学ぶ。後半では、人種による逮捕率の違いなどレイシズムと犯罪の関連についても理解を深めていく。

①②
北村英哉・唐沢穣(編)(2018). 偏見や差別はなぜ起こる?心理メカニズムの解明と現象の分析 p.97-132, ちとせプレス
コマ主題細目 ① 人種・民族に関する差別や偏見 ② レイシズムの解消に向けた方略 ③ 犯罪とレイシズム
細目レベル ① 歴史的に最も問題とされてきた差別が人種・民族に関する差別や偏見である。黒人やユダヤ人など特定の人種や民族に対する偏見、そしてヘイトクライムはこれまでに多くの人が被害者となり深刻な問題となってきた。公民権運動以前のレイシズムを古典的レイシズムと呼ぶのに対し、現代では象徴的レイシズムの概念が登場している。象徴的レイシズムの背景には、差別は存在しないため、現に起きている社会的地位の差は本人たちの努力不足であるといった考えがある。人種そのものを非難する古典的レイシズムと異なり、その集団の人々の振る舞いを非難しており、明らかに偏見であると認識されにくい。一方で、自分自身は差別は行っていないという認識のもとで偏見の対象となる人や集団を回避し、差別的な態度をレイシズムを回避的レイシズムとよぶ。
② レイシズムの解消に向けた考え方には、いくつかの方略が提案されてきた。ここでは、レイシズムの解消に向けてどのような考え方が提唱されてきたのか、またそれらの問題はなにかについて学んでいく。レイシズムの解消のための方略としてはじめに注目されたものに、人種や民族は存在しないかのように扱うというカラーブラインド方略がある。しかし、この方法には問題点もある。人種や民族に関連する社会的な現実を無視することとなり、偏見や不平等を解消するための有効な手段とはならないという批判が存在する。一方で、人種や民族の境界を無視するのではなく、それらの差異に注意を向けさせることで偏見を解消しようというマルチカルチュラリズム方略というものもある。
③ 犯罪に関連する問題の中で、警察の暴力や人種による差別的な扱いが重要な課題となっている。特に、警察による逮捕率や職務質問を受ける確率が人種によって異なることが指摘されており、これが一種の構造的な不平等を生み出している。また、アメリカでは、有罪判決や量刑が被告の人種によって差異がみられることが明らかにされている。この現象は、司法制度における人種的偏見が影響していることを示唆しており、正義が平等に適用されていないことを浮き彫りにしている。 ヘイトクライムの文脈においては、特定の人種や民族が犯罪のターゲットになることが学ばれているが、これにとどまらず、犯罪の加害者として疑われることや、量刑における不公平が生じるという意味でも偏見や差別が存在する。犯罪の被害者だけでなく、疑われた側にも不公平な扱いがされることが、社会の中での深刻な問題である。
キーワード ① レイシズム、象徴的レイシズム、回避的レイシズム ② カラーブラインド方略、マルチカルチュラリズム方略 ③ 司法におけるレイシズム
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、レイシズムとは何か、レイシズムにはどのような種類があるか、レイシズムの解消に向けた方略としてはどのようなものがあるか、について理解することが重要であるため、これらに関してキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。また、司法領域におけるレイシズムの影響について理解しておく。
【予習】これらの復習を踏まえて、予習として第9回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。次回は特定の集団に対する差別・偏見の内容の続きとして、エイジズムやセクシズムについて扱う。コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

9 セクシズム・エイジズム 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
第9回では、第8回に引き続き特定の集団に対する偏見や差別について扱っていく。本コマでは、高齢者を対象とするエイジズム、ジェンダーやセクシュアリティに基づく偏見、差別に焦点を当てて学んでいく。


北村英哉・唐沢穣(編)(2018). 偏見や差別はなぜ起こる?心理メカニズムの解明と現象の分析 p.153-168, ちとせプレス


北村英哉・唐沢穣(編)(2018). 偏見や差別はなぜ起こる?心理メカニズムの解明と現象の分析 p.169-186, ちとせプレス

③④
北村英哉・唐沢穣(編)(2018). 偏見や差別はなぜ起こる?心理メカニズムの解明と現象の分析 p.203-219, ちとせプレス

竹内真純・片桐恵子(2020). エイジズム研究の動向とエイジング研究との関連:エイジズムからサクセスフル・エイジングへ 心理学評論, 63, 355-374.
コマ主題細目 ① ジェンダーに基づく偏見・差別 ② セクシュアルマイノリティに対する偏見・差別 ③ エイジズム ④ エイジズムの心的基盤
細目レベル ① ジェンダーに関する偏見や差別の特徴の一つは、対象が社会全体の半数を占める集団であるにもかかわらず、不平等が根強く存在する点である。多くの偏見や差別は少数派に向けられる傾向があるが、ジェンダーに関しては、特に社会経済的地位の面で男性優位のシステムが維持されている。このようなジェンダーシステムの背景には、ステレオタイプの影響が大きく関わっている。ジェンダーに関するステレオタイプには、「女性(男性)は~である」という記述的ステレオタイプと、「女性(男性)は~であるべきだ」という規範的ステレオタイプの二種類がある。例えば、「女性は感情的である」「男性は論理的である」といった記述的ステレオタイプは、それぞれの性別に対する固定観念を強化する。一方、「女性は家庭を優先すべき」「男性は家計を支えるべき」といった規範的ステレオタイプは、社会における役割分担を強化し、不平等な構造を維持する要因となる。このようなステレオタイプが広く共有されることで、ジェンダーに基づく不平等が正当化され、社会的・経済的な格差が再生産される。
② 性に関しては、「からだの性(生物学的性)」「こころの性(性自認)」「表現する性(性表現)」が一致しており、さらに「好きになる性(性的指向)」が異性であるという人々が多数派として認識されている。このため、それ以外の性のあり方を持つ人々は、多数派に対する少数派という意味でセクシュアルマイノリティと総称される。セクシュアルマイノリティは、世界中で偏見や差別に直面している。性的指向や性自認に基づく偏見は、単なる個人的な価値観の問題ではなく、社会制度や文化に根付いた差別として現れる。例えば、同性婚を認めない法制度、職場での昇進差別、教育現場でのいじめ、公共の場でのハラスメントなど、多様な形で排除が行われる。さらに、性的指向に対する偏見は、ヘイトクライムの動機の一つとなることも指摘されている。加えて、セクシュアルマイノリティの人々は、日常的に「マイノリティストレス」と呼ばれる慢性的な心理的苦痛を感じやすいことも研究で明らかになっている。これは、差別的な社会環境、カミングアウトへの不安、家族や職場での孤立などが原因となり、メンタルヘルスの悪化につながる。
③ 現代社会において、約3人に1人が65歳以上という超高齢化社会が到来している。さらに、今後も高齢者の人口は増加すると予測されており、日本を含む多くの国や地域で、高齢者はもはや決して少数派とは言えない存在である。しかし、そのように私たちの身近にいる高齢者に対して、偏見や差別が根強く残っているのが現実である。高齢者に対する偏見や差別は「エイジズム(Ageism)」と呼ばれ、これは高齢者に対する否定的な態度や、年齢を理由にした差別的な扱いを指す。エイジズムは、社会の中で高齢者がどのように見られ、どのように扱われるかに大きな影響を与える。ここでは、エイジズムを測定するためのいくつかの尺度を紹介し、それを通じてエイジズムの具体的な内容を明らかにする。また、エイジズムの背景にある「高齢者はこうあるべきだ」という社会的な規範としてのステレオタイプ、すなわち規範的ステレオタイプについても詳しく説明する。
④ エイジズムの心理的基盤について、いくつかの理論をもとに説明する。まず、第5回で紹介した社会的アイデンティティ理論がある。この理論では、人々は自分が属する集団を肯定的に捉え、他の集団と区別しようとする傾向があるとされる。高齢者に対する偏見も、若年層が自己のアイデンティティを守るために生じる可能性がある。二つ目に、恐怖管理理論による説明がある。この理論では、人間は死の不可避性を認識すると、それが心理的脅威となると考える。そして、その脅威から自己を守るために、社会の中で価値のある存在であることを確認しようとする。最後に、病気回避メカニズムの観点からも説明できる。加齢は身体的衰えと結びつきやすく、病気のリスクを想起させる。その結果、人々は本能的に高齢者を避ける傾向を持つと考えられる。これらの理論は、エイジズムの根底にある心理メカニズムを理解するうえで重要である。
キーワード ① セクシズム、システム正当化装置 ② セクシュアルマイノリティ ③ エイジズム ④ 社会的アイデンティティ理論、恐怖管理理論
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、ジェンダーに関する偏見、差別にはどのようなものがあるか、セクシュアルマイノリティはどのような排除を受けているか、エイジズムとは何か、エイジズムの背景にはどのようなステレオタイプや心的基盤があるかについて理解することが重要であるため、これらに関してキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。
【予習】これらの復習を踏まえて、予習として第10回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

10 疾患・障がいと偏見・差別 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
第10回では、身体疾患や身体障がい、精神疾患に関する偏見にはどのようなものがあるのか、偏見や差別をもたらす要因は何かについて理解していく。ここでは、特に第5回で学んだスティグマの考え方が重要となる。


北村英哉・唐沢穣(編)(2018)偏見や差別はなぜ起こる?心理メカニズムの解明と現象の分析 p.133-152, ちとせプレス


北村英哉・唐沢穣(編)(2018)偏見や差別はなぜ起こる?心理メカニズムの解明と現象の分析 p.133-152, ちとせプレス

和田香織・杉原保史他(編)(2024). 心理支援における社会正義アプローチ 不公正の維持装置とならないために p.173-181, 誠信書房


笠井清登(編)(2023). こころの支援と社会モデル トラウマインフォームドケア・組織変革・共同創造 p.224-237, 金剛出版
コマ主題細目 ① 身体疾患・障がいに関する偏見・差別 ② 精神疾患に関する偏見・差別 ③ 医学モデルと社会モデル
細目レベル ① 身体疾患の中でも、伝染性があるものや社会的に忌避される病気は、特に強いスティグマの対象となることが報告されている。また、身体障がいについても、しばしば誤って本人の能力と結びつけられ、不当な評価を受けることがある。こうした能力評価において重要な概念の一つが統制可能性である。統制可能性とは、その状態が本人の意思によって変えられるかどうかを示すものであり、他者の認識に影響を与える。統制可能性が低いと認識される場合、対象者は同情の対象となり、援助を受けやすくなる一方で、社会から距離を置かれる傾向もみられる。一方、統制可能性が高いと認識される場合、その状態が本人の努力不足や選択の結果とみなされ、自業自得といった否定的な評価につながりやすい。このように、統制可能性の認知は、病気や障がいを持つ人への態度を左右し、偏見や差別の形成にも関わる重要な要因となっている。
② 精神疾患は社会においてしばしば偏見の対象となり、その偏見は「危険である」「怠けている」といった否定的なステレオタイプに基づくことが多い。そのため、精神疾患を持つ人々は周囲から敬遠されたり、その能力を過小評価されたりする傾向がみられる。このような偏見や差別の背景には、メディアの影響が関与している。映画やドラマなどでは、精神疾患を持つキャラクターが暴力的な人物や社会に適応できない人物として描かれることが多く、こうした描写が一般の人々の認識に影響を与えている。また、歴史的・文化的に精神疾患がどのように扱われてきたかも、現在の偏見に深く関わっている。かつては精神疾患を持つ人々が社会から隔離されたり、不適切な治療を受けたりしていたことが、偏見を根強く残す要因となっている。その結果、精神疾患患者が孤立し、適切な医療や福祉サービスを受ける機会が減少したり、雇用の場で不利な扱いを受けたりすることがある。さらに、研究によれば、精神疾患に対する偏見は、身体疾患に対する偏見よりも強いことが示されており、社会全体での意識改革が求められている。
③ 障がいや疾患について考えるにあたり、その原因や治療方法をどこに求めるかによって、とらえ方が異なる。従来からある医学モデルでは、障がいや疾患の原因は個人の身体や精神にあると考えられ、治療やリハビリによって正常とよばれる状態に近づけることが目標とされてきた。一方で、社会モデルではその人個人ではなく、社会の障壁が障がいを生じさせていると考える。前者の障がいを個人が正常でない状態とみなしている医学モデルの考え方はスティグマにつながる。障がいや疾患を直すべきものではなく、多様性の一つとして考えることの重要性が近年指摘されるようになった。ここでは、このようなスティグマにつながる考え方の一つとして医学モデルを紹介し、それに替わる考え方として社会モデルについて紹介していく。
キーワード ① 身体疾患、統制可能性 ② 精神疾患、スティグマ ③ 医学モデル、社会モデル
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、身体疾患・身体障がい・精神疾患に関する偏見、差別にはどのようなものがあるか、それらの偏見を形成している要因は何かについて理解することが重要であるため、これらに関する説明をキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。また、医学モデルと社会モデルの違いについても復習し、理解をしておく。
【予習】これらの復習を踏まえて、予習として第11回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

11 犯罪被害・加害と偏見・差別 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
第11回では、犯罪被害・加害と偏見に焦点を当てて、犯罪被害者や犯罪加害者家族がどのような偏見、差別を経験するのかについて学んでいく。これらの偏見の背景には、原因帰属という私たちの心の働きが関係しており、最初に基礎として原因帰属の過程について理解をしていく。


北村英哉・内田由紀子(編)(2016). 社会心理学概論 p.56-61, ナカニシヤ出版


越智啓太・桐生正幸他(編)(2024). 特殊詐欺の心理学 p.211-225, 誠信書房

小俣謙二・島田貴仁(編著)(2011). 犯罪と市民の心理学 犯罪リスクに社会はどうかかわるか p.80-102, 北大路書房


阿部恭子(著)(2020)加害者家族を支援する 支援の網の目からこぼれる人々 p.4-66, 岩波書店
コマ主題細目 ① 原因帰属 ② 被害者非難 ③ 犯罪加害者家族非難
細目レベル ① 私たちは、何らかの出来事が起きた時にその原因を探ろうとする。この過程は原因帰属と呼ばれ、原因帰属の働きは偏見や差別と大きくかかわっている。原因帰属について、古典的な理論としてはハイダーの帰属理論がある。ハイダーは、人が他者の行動をどのように意味づけしているか、言い換えれば行動からどのように不変的な性質を抽出するかに関心を持っていた。ハイダーによれば、行動の結果に関する帰属は、行動能力(行為者の能力や状況要因)と動機(行為者の意図や努力)から説明できる。例えば、試験で悪い成績をとった場合には、行動能力がないと推論されたり、動機がなかったと推論されたりする。このように行動の原因を人(内的要因)あるいは状況(外的要因)に区別する考え方はその後の帰属研究の枠組みとなった。犯罪の分野においては、この原因帰属がこの後に詳しく紹介する犯罪被害者、犯罪加害者家族の非難につながっている。
② 犯罪が起きたときに、私たちは犯罪が起きた何らかの原因を考えようとする。被害者に原因を求めてしまう、つまり被害者が原因だとして非難される傾向は被害者非難(victim blaming)とよばれる。こうした傾向は、家庭内暴力や性犯罪、詐欺の被害者においてよくみられる。犯罪被害者がその被害に関して、家族や友人、警察などからの言動によって精神的苦痛を感じることがある。これは最初に受けた犯罪被害に関してさらに被害を受けることから二次被害と呼ばれる。例えば、警察や検察とのやり取りにおいて被害者が非難されること、被害を軽視されること、また周囲の人々が被害を疑うことや加害者を擁護することが二次被害に含まれる。特に性被害においては、被害者が二次被害を受けることが多く、それには強姦(レイプ)神話が関係している。強姦(レイプ)神話とは、強姦に対する誤った社会通念、社会の中に存在する誤解や偏見を指す。こういった被害者への二次被害の背景には、公正世界仮説という心的過程がある。
③ 重大な犯罪が起こった際、法的責任がない加害者家族までもが差別や批判の対象となることがしばしばある。特に、未成年が犯罪を起こした場合、その親に責任が求められることがある。具体的には、家族が加害者となった場合に、誹謗中傷や個人情報の暴露、自宅への投石や落書きといった違法な行為を含む加害者家族への攻撃が行われるケースがある。また、加害者家族という出自を明らかにすることは、失職や転居など社会的な排除にもつながる。加害者家族は被害者性と加害者性の両面をもつことが指摘されているが、被害者としての一面には着目されることが少ないため「忘れられた被害者」とよばれることもある。ここでは、加害者家族に対する偏見・差別と加害者家族に対する支援について学んでいく。
キーワード ① 原因帰属 ② 被害者非難、公正世界仮説 ③ 加害者家族、誹謗中傷
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、私たちはどのように原因帰属をしているのか、被害者非難はどのようなことを指し、被害者にどのような心理的影響を与えるのか、被害者非難の背景にある公平世界信念とは何か、犯罪加害者の家族は偏見によってどのような影響を受けているのかについて理解することが重要であるため、これらに関する説明をキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。
【予習】これらの復習を踏まえて、予習として第12回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

12 テクノロジーと差別 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
第12回では、私たちの生活に欠かせないインターネットや近年発展が目覚ましいAIに代表されるテクノロジーと差別の関係について学んでいく。テクノロジーは私たちの生活を便利で豊かにする一方で、差別を行うリスクもはらんでいることについて理解する。


宮下萌(編著)(2002). テクノロジーと差別 ネットヘイトから「AIによる差別」まで p.29-50, p.118-133, 解放出版社


宮下萌(編著)(2002). テクノロジーと差別 ネットヘイトから「AIによる差別」まで p.172-177, 解放出版社


宮下萌(編著)(2002). テクノロジーと差別 ネットヘイトから「AIによる差別」まで p.177-186, 解放出版社
コマ主題細目 ① インターネットと人権侵害 ② AIによる差別 ③ テクノロジーに関する差別を防ぐには
細目レベル ① インターネットの普及は、私たちの生活に大きな変化と利便性をもたらした。情報の取得、他者との交流、買い物など、あらゆる面でその恩恵を受けている。一方で、インターネット上ではヘイトスピーチに代表される人権侵害も深刻な問題となっている。匿名性や拡散力の高さが、差別的言動の広がりを助長しているのが現状である。インターネットを利用した人権侵犯事件は2012年以降増加傾向にあり、2018年に一時減少したものの、依然として増加し続けている。特に注目すべきは、2017年に部落差別に関する人権侵犯事件数が、実社会よりもインターネット上の方が多くなった点である。これは、部落差別をはじめとする差別の場が、現実社会からインターネット空間へと移行しつつあることを示している。
② 近年人工知能(AI)の発展と普及が目覚ましいが、AIによる差別は倫理的問題として大きな問題となっている。AIは人による多くのデータを用いて医療などさまざまな場面で活用されている。そして、データからの学習によってプログラムを変化させる性質を持っている。このような性質をもつがゆえに、AIは差別的な判断を行ってしまう恐れがあることが指摘されている。AIに関連した差別は、アルゴリズムの設計に起因するもの、学習するデータに起因するもの、集団への属性に基づく判断に起因するもの、人間によるAIへの責任転嫁に分類することができる。AIを用いた顔認証技術は、特定の人種に対する正確性が低く、誤認逮捕などが実際に問題となっている。
③ 細目レベル①で扱ったインターネット上の人権侵害に関しては、国内外で法制度の整備が進められている段階であり、誹謗中傷や差別的言動を防ぐ仕組みが構築されつつある。また、細目レベル②で取り上げたAIによる差別についても、各国でAIに関するルールやガイドラインの策定が進行中である。特に「公平性」に関する項目では、AIがデータに基づくバイアスを含みうることが明記されており、個人や特定の集団が不当に差別されないような配慮が求められている。さらに、近年ではAIの公平性を評価・可視化するアプリケーションの開発も進んでいる。こうした状況の中で、AI開発者だけでなく、私たち利用者一人ひとりもAIの可能性とリスクの両方を理解しながら利用する姿勢が求められる。
キーワード ① インターネット ② 人工知能(AI)、顔認証 ③ ガイドライン、公平性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、インターネットをはじめとするテクノロジーの発展、普及によって差別の形はどのように変化してきたか、AIによる差別はどのようなものがあるか、AIによる差別はどのような仕組みで生じているか、テクノロジーに関連した差別を防ぐためにどのようなことが行われているかついて理解することが重要であるため、これらに関してキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。
【予習】これらの復習を踏まえて、予習として第13回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

13 接触仮説・認知的制御 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
第13回では、差別や偏見を減らすために心理学からどのようなことができるかについて理解をしていく。具体的には、接触仮説、拡張接触仮説、仮想接触仮説、認知的制御について学んでいく。

①②
池上知子(2014). 差別・偏見研究の変遷と新たな展開ー悲観論から楽観論へー 教育心理学年報, 53, 133-146.

北村英哉・唐沢穣(編)(2018). 偏見や差別はなぜ起こる?心理メカニズムの解明と現象の分析 p.81-93, ちとせプレス


北村英哉・唐沢穣(編)(2018). 偏見や差別はなぜ起こる?心理メカニズムの解明と現象の分析 p.74-81, ちとせプレス
コマ主題細目 ① 接触仮説 ② 接触仮説を応用した理論 ③ 認知的制御
細目レベル ① 偏見の低減に関する理論として最も有名なのが、オルポートによる接触仮説である。これは、偏見は無知や誤解に基づくものであり、実際に相手と接することでその人の真の姿を知れば、偏見は自然と減少するという考え方に基づいている。ただし、単に接触するだけでは十分ではなく、効果的な接触にはいくつかの条件があるとされる。具体的には、接触する双方が平等な立場にあり、共通の目標に向かって協力し合うこと、制度的にその接触が支持されていること、さらに頻繁で親密な交流が行われることが重要とされる。この接触仮説は、人種間の関係だけでなく、障がい者や性的少数者、宗教的に異なる集団など、さまざまな間集団関係に応用され、多くの研究がなされてきた。
② 偏見の低減に向けては、直接的な接触だけでなく、間接的な接触も有効であることが示されている。たとえば、拡張接触仮説によれば、自分の所属する内集団成員に外集団に属する友人がいると知っているだけでも、偏見の低減につながるとされている。また、内集団と外集団の人々が協力的・友好的に関わっている場面を見たり聞いたりすることでも、同様の効果が得られる。拡張接触は、直接接触に伴いやすい不安や緊張、恐れといった否定的な感情を避けながら、外集団に関する肯定的な情報を得ることができる点で利点がある。さらに、仮想接触仮説では、自分自身が外集団の成員と好意的に接する場面を想像するだけでも、偏見の低減が促されることが示されている。ただしこの効果は、想像された接触の内容がどれほど具体的で鮮明であるかによって変化する。
③ 偏見や差別を低減するためには、まずそれらの背景にあるステレオタイプ的な思考を抑えることが方略として挙げられる。そのためには、個人が非ステレオタイプ的な思考を持とうとする動機を持つことや、自分の思考がステレオタイプに影響されていることに気づくことが求められる。こうした意識を高めることにより、ステレオタイプに基づく判断を避けやすくなる。また、偏見の自己制御モデルという方略もある。偏見を持ちたくないという意識を持つ人であっても、無意識のうちにステレオタイプに従った言動をしてしまうことがある。そうした失敗経験を繰り返さないよう心理的な調整が起こり、偏見の自己制御を働かせる手がかりが作られることによって偏見の低減につながる。
キーワード ① 接触仮説 ② 拡張接触仮説、仮想接触仮説 ③ 自己制御モデル
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、接触仮説とは何か、偏見を低減するために重要な接触の条件とは何か、接触仮説を応用した理論にはどのようなものがあるか、ステレオタイプや偏見を抑制するための認知的方略とはどのようなものかついて理解することが重要であるため、これらに関してキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。
【予習】これらの復習を踏まえて、予習として第14回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

14 偏見・差別の低減に向けた方略 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
第14回では、前回に引き続き偏見や差別の低減に関する理論や方略について学んでいく。特に、14回目では理論にとどまらず実際の方略に焦点をあて、協同学習やメディアによる変容について扱っていく。

①②
上瀬由美子(2002). ステレオタイプの社会心理学 偏見の解消に向けて p.124-155, サイエンス社
コマ主題細目 ① カテゴリー化の変容 ② 協同学習 ③ メディアによる変容
細目レベル ① 第3回で学んだように、偏見や差別の背景には、内集団と外集団の分類、そして内集団へのひいきが関係している。これに対する方策の一つが再カテゴリー化である。これは、もともと別々の集団をより広い上位のカテゴリーに統合し、共通点に注目させることで、偏見の解消や低減を図る方法である。ガードナーらの研究では、初めに区分されていた集団に共通の目標を与えることで、一体感や協力意識が生まれやすくなることが示された。さらに、カテゴリーを消そうとするよりも、新たな共通のカテゴリーを形成する方が、より肯定的な集団意識を築きやすいことが示唆されている。このことは、偏見低減のための有効な接触のあり方を考える上で重要である。
② これまでに紹介してきた偏見・差別の低減方略を活用したものが協同学習である。これは偏見に関連するカテゴリーを混成した集団で学習を進めるものであり、主として学校現場で用いられている接触形態である。協同学習の代表例がアロンソンらが開発したジグソー法と呼ばれる学習法である。この学習法は、正の相互依存性のある(お互いに頼りあう)状況で子どもたちに学習を行わせるものである。ジグソー法を取り入れたクラスでは従来型のクラスに比べ、ステレオタイプ的な見方や人種間の偏見が減少したことが報告されている。協同学習はお互いに頼りあう状況をつくりだすため、他者の視点に立ったり相手の長所を認めたりする機会が増えると考えられている。
③ テレビや映画などのメディアは、ステレオタイプや偏見を生み出す一因となることがある。たとえば、ある特徴を持つ人が犯罪者として描かれるなど、固定化された人物像が繰り返されることで、視聴者の中に無意識の偏見が形成・強化される可能性がある。一方で、メディアの在り方次第では、偏見や差別を低減する役割を果たすこともできる。映画やドラマでは、多様な人々を多面的かつ肯定的に描くことが重要である。また、ニュース報道においては、情報の伝え方に偏りがなく、中立性と正確性を保ち、差別的な表現や先入観を避ける配慮が求められる。メディアには社会的認知を形成する力があるため、意識的に公平で多様性に富んだ表現を行うことが重要である。
キーワード ① 再カテゴリー化 ② 協同学習、ジグソー法 ③ メディア
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、再カテゴリー化とは何か、協同学習とはどのような方略でどのような効果が見込めるか、映画やニュース報道などのメディアは偏見の低減に向けてどのようなことを行うべきかついて理解することが重要であるため、これらに関する説明をキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。
【予習】次回は最終回であり、科目後半の復習コマとなっている。予習としては、第15回のコマシラバスを読んで概要を理解しておく。コマシラバスを読むなかで、わからない用語があればあらかじめ下線を引くなどして、講義中で理解できるようにしておく。

15 まとめ(2) 科目の中での位置付け 本科目では、近年特に問題視されている偏見・差別に関する犯罪について学び、これらの犯罪を減らすために心理学がどのように貢献できるかを検討することを目的とする。具体的には、第1~2回で、差別・偏見に関する犯罪の現状や歴史的経緯について学び(第Ⅰ部)、第3~6回では偏見・差別の心理学について学ぶ(第Ⅱ部)。第8~11回では、ある属性や特徴をもつ人、集団に対する偏見・差別について学び、第12~14回では偏見・差別と犯罪のこれからについて、テクノロジーの発展に伴う偏見・差別を低減するためのアプローチについて学んでいく。なお、第7回は第1~6回の内容を、第15回は第8~14回の内容を復習し、まとめるためのコマ(復習コマ)とする。
第15回は、最終回であり、科目後半の内容をまとめる復習コマとなっている。第9回以降に学んできた、特定の集団に対する偏見・差別、犯罪と偏見・差別、偏見・差別の低減のための理論や方略について復習を行っていく。

コマ主題細目 ① 特定の集団に対する偏見・差別 ② 犯罪と偏見・差別 ③ 偏見・差別の低減に向けて
細目レベル ① 偏見や差別にはさまざまな形があり、人種・民族、ジェンダー、セクシュアリティ、年齢、病気・障がいなどを対象とする。人種差別には古典的レイシズムに加え、象徴的・回避的レイシズムといった現代的な形もあり、司法制度や警察の対応にも不平等が見られる。ジェンダーやセクシュアルマイノリティに関する差別は、ステレオタイプや制度的な排除により社会的格差を再生産している。エイジズムは高齢者に対する差別であり、若年層の自己防衛意識や死の恐怖など心理的要因が背景にある。身体疾患・障がいには統制可能性の認知が偏見に影響を与え、精神疾患に対する差別はメディアや歴史的背景によって強化されている。また、従来の医学モデルに代わり、障がいを社会的文脈で捉える社会モデルの重要性が近年注目されている。
② 人は出来事の原因を探る傾向があり、これを原因帰属という。ハイダーの帰属理論では、他者の行動を能力や動機など内的要因と、状況など外的要因から説明しようとする。この傾向は、偏見や差別と深く関係している。たとえば、犯罪が起きたとき、被害者に原因があると考えて非難する被害者非難が生じる。特に家庭内暴力や性犯罪の被害者は、警察や周囲からの言動によって二次被害を受けることがある。性被害の場合には、強姦(レイプ)神話と呼ばれる誤った通念が背景にあり、被害を軽視したり被害者に責任を帰す態度が根強い。また、重大な犯罪の際には、法的責任のない加害者家族までが誹謗中傷や社会的排除を受けることがあり、忘れられた被害者とも呼ばれる。偏見や差別の背後には、公正な世界であってほしいという信念が影響していると考えられている。
③ 偏見や差別を低減するためには、さまざまな心理的・教育的アプローチがある。代表的なのがオルポートの接触仮説であり、相手と実際に接することで誤解が解け、偏見が減るとされる。ただし、接触は平等な立場・共通の目標・制度的支援・親密さといった条件が必要である。間接的な接触としては、外集団に属する人とのつながりを知る拡張接触や、接触を想像する仮想接触も効果がある。また、偏見低減にはステレオタイプを抑える動機や自己制御も重要で、失敗経験を通して内省し、修正されていく。さらに、異なる集団を一つの上位カテゴリーに統合する再カテゴリー化や、混成集団での協同学習も有効である。加えて、メディアも偏見を助長する一方で、表現次第では多様性を肯定し、偏見を減らす力を持つとされ、情報のあり方に注意が求められる。
キーワード ① レイシズム、エイジズム、セクシズム、社会モデル ② 原因帰属、被害者非難、犯罪加害者、公正世界仮説 ③ 接触仮説、認知的制御、メディア
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 【復習】本コマの復習として、LMS上にアップロードされたコマ用オリジナル配布資料を読み返す。本コマにおいては、どのような集団や人に対する偏見が存在するか、犯罪被害や加害に関する偏見、差別にはどのようなものがあるか、偏見や差別の低減に向けた理論や方略にはどのようなものがあるかについて理解することが重要であるため、これらに関する説明をキーワードを用いて説明できるようにまとめておく。また、これらの復習を踏まえたうえで、ヘイトクライムやヘイトスピーチのない社会について自分なりに考えることが望ましい。
【予習】本コマは最終回であるため、次回の予習はない。期末試験に向けて、キーワードを中心にこれまでの文字教材を読み返しておくこと。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
ヘイトクライム・ヘイトスピーチ ヘイトクライム、ヘイトスピーチとは何かについて違いを理解したうえで説明ができること。ヘイトクライム、ヘイトスピーチの現状および歴史について、キーワードを用いて説明できること。ヘイトスピーチ解消法はどのようなことを目的としており、どのような内容の法律であるか説明できること。 ヘイトクライム、ヘイトスピーチ、ヘイトスピーチ解消法 18 1,2,7
ステレオタイプの形成・維持 ステレオタイプとは何か、ステレオタイプはどのようなメカニズムで形成されるのかについて、カテゴリー化、錯誤相関、社会的アイデンティティ理論から説明ができること。また、ステレオタイプはどのようにして維持されるか、ステレオタイプのターゲットとなる人にはどのような心理的負担が生じるのかについて説明できること。 ステレオタイプ、カテゴリー化、錯誤相関、社会的アイデンティティ、ステレオタイプ化、自動的活性化、ステレオタイプ脅威 16 3,4,7
偏見・差別・スティグマ 偏見、差別、スティグマがそれぞれ何を指すのかについて説明できること。さらに、これらに関して心理学ではどのような測定方法が用いられているのかを理解していること。 偏見、差別、スティグマ 12 5,6,7
特定集団への偏見・差別 人種、民族、ジェンダー、セクシュアリティ、年齢、疾患、障がいに関する偏見、差別にはどのようなものがあるかについて理解していること。それぞれの偏見、差別の背景にある理論について説明ができること。また、偏見によって犯罪被害者や犯罪加害者家族を非難する背景には、どのようなこころの働きがあるか説明できること。 レイシズム、エイジズム、セクシズム、セクシュアルマイノリティ、疾患、障がい、被害者非難、公正世界仮説 30 8,9,10,11,15
テクノロジーと差別 インターネットをはじめとするテクノロジーの発展、普及によって差別の形はどのように変化してきたか、AIによる差別はどのようなものがあるか、AIによる差別はどのような仕組みで生じているか、テクノロジーに関連した差別を防ぐためにどのようなことが行われているかついて説明ができること。 インターネット、人工知能(AI)、公平性 6 12,15
偏見・差別の解消 偏見を低減するための理論や方略について、キーワードを用いて説明できること。 接触仮説、自己制御モデル、協同学習、ジグソー法 18 13,14,15
評価方法 期末試験(100%)で評価する。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書
参考文献
実験・実習・教材費