| 回 | 主題 | コマシラバス項目 | 内容 | 教材・教具 |
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1
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被害者心理学の基礎
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に関する知識を習得することを目的とする。この科目でいう「被害者」とは、犯罪の被害者のほか、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。このように様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを本科目において目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合犯罪心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 第1回では、被害者の心理を学ぶ上で基礎となる被害者学とその展開、犯罪被害が及ぼす心理的影響、被害者支援の基礎について学習する。 【本回全体の到達目標】 1. 被害者学の誕生(メンデルソーン)から被害者権利運動・現代的支援へと至る歴史的変遷を時系列で説明できる。 2. 犯罪被害後に生じる主要な心理的問題(ASD・PTSD・抑うつ・不安障害)を概説できる。 3. 犯罪被害者等基本法の制定過程・理念・基本計画の仕組みを説明できる。 4. 一次被害と二次被害の概念を定義し、二次被害を生じさせる要因(警察・司法・メディア・周囲の言動)を列挙できる。 5. 公的機関・民間支援団体・医療機関それぞれの役割と連携の基本的枠組みを説明できる。
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① キルヒホッフ,G.F.(2005) 被害者額とは何か. 常磐大学国際被害者学研究所. pp6-34. 諸澤英道(1998) 被害者学入門. 成文堂. pp23-58. ② 白川美也子(2019) トラウマのことがわかる本.講談社.pp10-30. 大江美佐里(2023) エビデンスでわかるトラウマ・PTSD診療. じほう. pp2-46. ③ 警察庁ホームページ「犯罪被害者を取り巻く状況を知ってみよう」 https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/kou-kei/kyouzai/research01.html#:~:text=「犯罪被害者等基本法」とは&text=「犯罪等」とは、,人とその家族・遺族%E3%80%82&text=すべての犯罪被害者,される権利をもっている%E3%80%82 齋藤梓(2024) 犯罪被害者支援. 原田孝之(編著) 司法・犯罪心理学. ミネルヴァ書房 pp154-165. ④ 小西聖子(1998) 犯罪被害者遺族:トラウマとサポート. 東京書籍 pp75-107. 諸澤英道(1998) 被害者学入門. 成文堂. pp128-139. 長井進(2004) 犯罪被害者の心理と支援. ナカニシヤ出版 pp31-70. ⑤ 齋藤梓(2024) 犯罪被害者支援. 原田孝之(編著) 司法・犯罪心理学. ミネルヴァ書房 pp154-165.
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コマ主題細目
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① 被害者学(Victimology)の歴史的展開 ② 犯罪被害による心理的影響の基本的理解 ③ 被害者支援の法制度 ④ 二次被害の問題 ⑤ 犯罪被害者支援の基本的枠組み
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細目レベル
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① 被害者学(Victimology)の歴史的展開 被害者学は、1940年代にベンジャミン・メンデルソーンによって提唱された学問分野である。刑事弁護人として活動していたメンデルスゾーンは、性犯罪被害者が置かれた実状を知り、「一般被害者学」を提唱した。この「一般被害者学」とは、対象を犯罪被害者に限定せず、あらゆる被害者を対象とし、これらの被害者の苦しみや処遇に焦点を当てるべきとするものであった。 同時期に、犯罪学者であったハンス・フォン・ヘンティッヒは被害者の特性に関する研究を行い、『犯罪者とその被害者』を出版した。犯罪の研究のためには、加害者-被害者関係を科学的に研究する必要があるとし、実証的犯罪学の下位概念としての「実証的被害者学」を確立した。ヘンティッヒは、特定の性格特性や社会的状況が犯罪被害のリスクを高める可能性があることを指摘した。 その後の被害者学は、加害者と被害者の相互作用に焦点を当てた研究が中心であったが、1970年代に入り、欧米を中心に被害者の権利擁護運動が活発化した。これを契機に、被害者の人権や尊厳の回復、被害回復、社会的支援の必要性が強く認識されるようになった。 現代の被害者学は、刑事政策学や犯罪学の範疇を越え、被害者が受ける心理的影響の研究、PTSDの治療をはじめとした支援方法の開発、被害者のための法制度の整備に関する研究など多岐にわたる。特に、トラウマケアや被害者支援の実践的研究が蓄積されており、民間被害者支援団体による活動をはじめ、政府、地方公共団体、司法機関、医療機関等が関与して途切れのない被害者支援が推進されている。 【到達目標】 ① メンデルソーンが提唱した「一般被害者学」の内容と、その後の被害者学の変遷(相互作用研究→被害者権利運動→包括的支援)を説明できる。 ② 1970年代の被害者権利運動が被害者支援の法制度整備に与えた影響を述べることができる。 ③ 現代の被害者学が学際的(刑事政策・心理学・社会学・法学)に発展している理由を論じることができる。
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② 犯罪被害による心理的影響の基本的理解 犯罪被害者は、事件直後から様々な心理的影響を受ける。被害から1か月以内の急性期には、急性ストレス障害(Acute Stress Disorder: ASD)の症状として、強い不安や恐怖、解離症状、再体験症状などが出現する。 その後、被害から1か月を経過しても症状が持続する場合、心的外傷後ストレス障害(Pos-traumatic Stress Disorder: PTSD)として診断される可能性がある。PTSDの主症状には、自律神経系が過敏な状態となる「過覚醒(覚醒亢進ともいう)」、思い出したくもない被害の記憶が突然思い出されてしまう「侵入・再体験」、被害に関することを思い出したくない状態が続く「回避」、自分は汚れてしまった存在であると考えたり以前は楽しんでいたことも楽しめなくなったりする「認知・気分の否定的変化」がある。また、抑うつ状態や不安障害、パニック障害などの併存も見られる。 これらの心理的影響は、被害の種類や重症度、個人の脆弱性(傷つきやすさ)、周囲のサポート状況などによって大きく異なる。 【到達目標】 ① 急性ストレス障害(ASD)とPTSDの診断基準上の違い(期間・症状群)を説明できる。 ② PTSDの4症状群(過覚醒・侵入再体験・回避・認知気分の否定的変化)を定義し、具体的な症状例を挙げることができる。 ③ 心理的影響の個人差をもたらす要因(被害の種類・重症度・個人の脆弱性・周囲のサポート)を説明できる。
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③ 被害者支援の法制度 2004年に制定された犯罪被害者等基本法は、被害者支援の基本理念を明確化し、国や地方公共団体の責務を規定した法律である。この法律に基づき、2005年に第一次犯罪被害者等基本計画が策定され、経済的支援制度の拡充、刑事手続における被害者参加制度の導入、各種の心理的支援体制の整備などが進められている。 犯罪被害者等基本計画は5か年ごとに見直され、犯罪被害者のニーズに即した施策が盛り込まれてきた。特に、犯罪被害給付制度の拡充や、損害賠償請求の簡易化、被害者参加人制度の創設等、最大の被人権侵害者ともいえる犯罪被害者の権利擁護が進められてきた。 【到達目標】 ① 犯罪被害者等基本法(2004年)の基本理念と、国・地方公共団体の責務を説明できる。 ② 犯罪被害者等基本計画の役割(5か年更新の仕組み)と主要施策(給付制度・被害者参加制度等)を概説できる。
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④ 二次被害の問題 二次被害とは、犯罪被害を受けた後に周囲の不適切な対応によって生じる新たな心理的被害である。すなわち、犯罪被害が一次被害であり、その被害を受けた後に他者から心理的に傷つけられる体験を二次被害と呼ぶ。 具体的には、警察や検察による配慮に欠ける事情聴取、医療機関での不適切な対応、周囲からの心ない言動、過剰なメディア報道などが挙げられる。これらは被害者の心理的回復を著しく阻害する要因となる。二次被害はあまりにも大きな苦痛を被害者に与えるため、「あの時犯人に殺されていた方がましだった。」とさえ述べる被害者もいる。 犯罪被害者支援では、犯罪被害自体よりも被害者に強い否定的影響を及ぼしかねない二次被害を防ぐことが重要である。二次被害を防ぐためには、支援者の適切な研修、関係機関における被害者への配慮指針の整備、社会全体での理解促進が不可欠である。 【到達目標】 ① 一次被害と二次被害を定義し、二次被害を引き起こす具体的な要因(捜査・医療・周囲・メディア)を説明できる。 ② 二次被害が被害者の心理的回復に与える影響と、防止のための基本的方策を述べることができる。
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⑤ 犯罪被害者支援の基本的枠組み 犯罪被害者支援は、複数の機関や団体が連携して実施される。犯罪被害者が最初に被害に申告をする警察では、性犯罪の被害者のための婦人科医と連携した証拠採取、二次被害を与えないように配慮した捜査、心理的回復のための公認心理師・臨床心理士によるカウンセリング、加害者からの再被害を受けないための保護、犯罪被害給付制度による経済的支援が実施される。警察の捜査の後に被疑者が送致される検察では、被害者の心情に配慮した捜査活動が行われる。公判(刑事裁判)において被告人となった加害者に対する意見を述べる権利等を行使するために、検察庁は裁判所に申し入れるなどして、被害者の権利擁護を行う。また、公判に関する説明なども行い、被害回復に寄与する。 犯罪被害者がPTSDなどの精神疾患に罹患した場合は、警察が提携している精神科医院等が被害者の心理的回復に必要な診療を行う。近年は効果的なPTSDの治療も行われるようになっている。また、被害者支援センターなどの民間支援団体は、相談支援のほか、警察や検察庁のほか医療機関等への付添支援を行う。さらに、行政機関は見舞金等の経済的支援や公営住宅のあっせんなど住宅支援などの福祉的支援を担当する。 これらの機関が効果的に連携するためには、各機関の役割の明確化と、情報共有システムの構築が重要となる。犯罪被害者が再び平穏な生活を送ることができるようになるためには、関係各機関が緻密に連携し、途切れのない支援を実施することが求められる。 【到達目標】 ① 警察・検察・裁判所・医療機関・民間支援センター・行政機関それぞれの役割を説明できる。 ② 多機関連携において情報共有システムと役割の明確化が重要な理由を論じることができる。
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キーワード
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① 一般被害者学 ② PTSD ③ 犯罪被害者等基本法 ④ 二次被害 ⑤ 犯罪被害者に対する跡切れのない支援
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【予習】 「犯罪心理学概論」で学んだ被害者の心理に関する知識を再確認するために同科目の文字教材を読むとともに、本科目のコマシラバスをあらかじめ読むこと。 【復讐】 今回の文字教材を読み、小テストで間違えた問題を中心にヨリソル上に掲出するドリルに取り組むこと。また、ヨリソルのファイルコーナーに掲載する小テストの解説を読み、問題で何が問われているのか、解答に際してどこに着眼すればよいのかなどを理解するように努めること。
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2
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トラウマとストレス反応、PTSDのメカニズム
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 第2回では、犯罪被害者がなりうるトラウマティック・ストレス及びPTSD(心的外傷後ストレス障害)について正しく理解し、各種犯罪の被害者の心理を学ぶ基礎を培う。 【本回全体の到達目標】 1. HPA系・扁桃体・海馬・前頭前野の機能変化というトラウマの神経生物学的メカニズムを説明できる。 2. トラウマ記憶の断片化・侵入的想起・解離という特性を通常の自伝的記憶と比較して説明できる。 3. 認知行動モデルに基づくPTSDの発症・維持のメカニズム(否定的認知→過覚醒→回避→侵入記憶の悪循環)を説明できる。 4. 複雑性PTSDと発達性トラウマの特徴的な症状(感情調節困難・対人関係問題・自己概念の歪み)を単回性PTSDと比較できる。 5. レジリエンスを構成する個人的・環境的要因を列挙し、支援・介入による強化の可能性を述べることができる。
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① ニューマイスター,A.ほか(2014) PTSDの神経回路と神経可塑性. フリードマン,M.J.他編著. PTSDハンドブック:科学と実践. pp152-163. ヴァン・デア・コルク,B,A,他編著(2001) トラウマティック・ストレス:PTSDおよびトラウマ反応の臨床と研究のすべて. 誠信書房.pp243-277.
② 白川美也子(2019)トラウマのことがわかる本. 講談社. Pp32-50. ヴァン・デア・コルク,B,A,他編著(2001) トラウマティック・ストレス:PTSDおよびトラウマ反応の臨床と研究のすべて. 誠信書房.pp325-356.
③ ハーマン,J.L.(1996)心的外傷と回復. みすず書房. Pp46-74. ヴァン・デア・コルク,B,A,他編著(2001) トラウマティック・ストレス:PTSDおよびトラウマ反応の臨床と研究のすべて. 誠信書房.pp357-387.
④ 岡田尊司(2024) 愛着障害と複雑性PTSD . SBクリエイティブ. Pp116-150. 齋藤塔子(2024) 傷の声:絡まった糸をほどこうとした人の物語. 医学書院
⑤ レイン,C.M.他(2014) リスク、脆弱性、ストレス抵抗性、そしてレジリエンス. フリードマン,M.J.他編著. PTSDハンドブック:科学と実践. Pp468-489.
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コマ主題細目
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① トラウマの神経生物学的基盤 ② トラウマ記憶の特性 ③ PTSDの発症と維持のメカニズム ④ 複雑性PTSDと発達性トラウマ ⑤ 犯罪被害者のレジリエンス
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細目レベル
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① トラウマの神経生物学的基盤 トラウマ体験時には、生体の防衛システムとして視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA系)が活性化され、コルチゾールなどのストレスホルモンが過剰に分泌される。これにより、情動反応をつかさどる脳の部位である扁桃体(脳の側頭葉の内側にあるアーモンド(扁桃)形の神経細胞の集まりで、情動や記憶に深く関わる部位。)の機能が活性化され、記憶形成をつかさどる脳の部位である海馬(大脳辺縁系の一部である大脳側頭葉の内側部の側脳室にある)の機能が抑制される。この状態が持続することにより、扁桃体の過剰反応性と海馬の体積減少が生じ、情動調節の困難さや記憶機能の低下をもたらす。また、前頭前野の機能低下により、恐怖反応の制御が困難となる。 これらの神経生物学的変化は、トラウマ関連症状の基盤となっており、PTSDに対する薬物療法においても重要な標的となっているので、理解に努めること。 【到達目標】 ① トラウマ時のHPA系の活性化→コルチゾール過剰分泌→扁桃体亢進・海馬機能抑制という一連のメカニズムを説明できる。 ② 扁桃体の過剰反応性と前頭前野の機能低下がPTSD症状(恐怖反応制御の困難)につながる理由を述べることができる。 ③ 神経生物学的知見が治療の標的(介入ポイント)として活用される意義を説明できる。
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② トラウマ記憶の特性 トラウマ記憶は通常の自伝的記憶(人がそれまでに経験した出来事に関する記憶)とは異なる特徴を持つ。トラウマ体験時の過度の覚醒状態により、感覚的・知覚的な情報は鮮明に記憶される一方で、文脈的・意味的(自分はなぜそのような被害にあったのか、などということ)な処理は十分に行われない。その結果、断片化された感覚記憶が、現在の文脈から切り離された形で侵入的に想起される。すなわち、自分の歴史の中に組み込まれていない被害に関する断片的かつ極めて苦痛な記憶が思い出したくもないのに思い出される状態である。 また、解離性の記憶障害として、重要な記憶の想起困難や記憶の空白が生じることがある。これらのトラウマ記憶の特性は、過覚醒状態や回避行動を引き起こし、日常生活への適応を妨げる要因となる。 【到達目標】 ① トラウマ記憶が通常の自伝的記憶と異なる点(感覚的鮮明さ・文脈処理の不十分さ・断片化)を説明できる。 ② 侵入的想起と解離性記憶障害が日常生活に与える影響を具体的に述べることができる。
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③ PTSDの発症と維持のメカニズム PTSDの発症と維持には、認知行動モデルで説明される複数の要因が関与している。トラウマ体験後の否定的な認知(「世界は危険である」「自分は無力である」など)は、持続的な不安と警戒状態を生み出す。これらの認知は、安全な状況での過度の回避行動や、危険察知のための過覚醒状態を引き起こし、トラウマ体験後の適応的な処理(「これは自分では避けきれなかったものであり、自分には非がない。」、「症状が出たとしても無理もない。」、「私には助けてくれる人がいる。」などと考え、行動すること)を妨げる。 また、侵入記憶(思い出したくもないのに被害体験の記憶が突然思い出される記憶)による再体験症状は、否定的認知を強化し、さらなる回避行動を促進する。すなわち、思い出したくもないのに極めて苦痛な被害の記憶が急に思い出されてしまい、この世界は危険に満ち溢れていると感じられ、そのような被害に関する事柄から逃げようとするわけである。 このような悪循環が、PTSDの症状を維持・悪化させる要因となっている。 【到達目標】 ① PTSDの認知行動モデルに基づき、否定的認知→回避行動→PTSDの維持という悪循環を図示して説明できる。 ② 「世界は危険だ」「自分は無力だ」という否定的認知が過覚醒と回避を強化するメカニズムを述べることができる。
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④ 複雑性PTSDと発達性トラウマ 長期的な対人トラウマ(DV、児童虐待、誘拐などによる長期間の監禁などの結果生じるトラウマ)や幼少期のトラウマ(児童虐待を受け続けた結果生じるトラウマ)は、単回性(1回限りの被害)のトラウマとは異なる複雑な症状を引き起こす。このように、長期間に及ぶ被害体験により生じるPTSD状態を複雑性PTSDという。 複雑性PTSDでは、情動調節の困難、対人関係の問題、自己概念の歪みなどの症状が特徴的である。特に発達期のトラウマは、愛着システムの障害や脳の発達への影響を通じて、より広範な機能障害をもたらす。これには、解離性障害、パーソナリティの問題、身体化症状など、多様な症状が含まれる。 治療においては、段階的なアプローチと長期的な支援が必要となる。 【到達目標】 ① 複雑性PTSDの3つの追加症状群(感情調節困難・否定的自己概念・対人関係困難)を単回性PTSDと比較して説明できる。 ② 発達期のトラウマが愛着システムの障害と脳の発達に与える長期的影響を述べることができる。 ③ 複雑性PTSDへの支援が段階的かつ長期的アプローチを必要とする理由を論じることができる。
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⑤ 犯罪被害者の回復力(レジリエンス) トラウマからの回復力(レジリエンス)には、個人的要因と環境的要因が関与している。個人的要因としては、問題解決能力、トラウマ症状への柔軟な対処、肯定的な自己概念などが挙げられる。環境的要因としては、安定した社会的支援、経済的資源へのアクセス、支持的な人間関係の存在が重要である。これらの要因は相互に作用し、トラウマ後の適応を促進する。 また、レジリエンスは固定的なものではなく、支援や介入を通じて強化することが可能である。この観点は、予防的介入や治療計画の立案において重要な示唆を与えるものである。 犯罪被害者や災害の被災者は、トラウマとなる出来事の前までは日常生活を送れていた存在である。それが、突然の出来事によりトラウマ反応が生じたとしても、「異常な事態における正常な反応」であり、レジリエンスが一時的に見えなくなったとしても、支援者は被害者の回復を待つことが重要である。したがって、強い不眠状態により日常生活に大きな支障が生じているなどの状態がなければ、早期に積極的な薬物療法や心理療法を適用するのではなく、被害者の回復を待ち、期待すべく、心理教育やストレス対処方法の指導などを行うことが肝要である。 【到達目標】 ① トラウマからの回復を促進する個人的要因(問題解決能力・柔軟な対処・肯定的自己概念)と環境的要因(社会的支援・経済的資源・支持的人間関係)を説明できる。 ② レジリエンスが固定的でなく介入・支援によって強化可能であることの臨床的意義を述べることができる。
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キーワード
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① トラウマの神経生物学的基盤 ② トラウマ記憶 ③ PTSD ④ 複雑性PTSD ⑤ 犯罪被害者のレジリエンス
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【予習】 「犯罪心理学概論」で学んだ被害者の心理に関する知識を再確認するために同科目の文字教材を読むとともに、本科目のコマシラバスをあらかじめ読むこと。 【復讐】 今回の文字教材を読み、小テストで間違えた問題を中心にヨリソル上に掲出するドリルに取り組むこと。また、ヨリソルのファイルコーナーに掲載する小テストの解説を読み、問題で何が問われているのか、解答に際してどこに着眼すればよいのかなどを理解するように努めること。
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性暴力の被害者の心理と支援
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 第3回では、様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。犯罪被害の中でも被害者に重大な影響を及ぼす性暴力の被害者の心理と支援について学ぶ。 【 本回全体の到達目標】 1. 性犯罪被害特有の心理的影響(羞恥心・自責感・対人不信・身体感覚の変化)を説明し、他の犯罪被害との質的違いを述べることができる。 2. フリーズ反応・解離という被害時の心理生理的反応のメカニズムと、証言の信頼性評価への示唆を説明できる。 3. ジェンダーバイアスと被害者非難が回復に与える影響を説明し、スティグマ対策の方向性を述べることができる。 4. ワンストップ支援センターの機能と多機関連携のあり方を概説できる。 5. 安全確保→トラウマ処理→社会復帰という段階的回復プロセスを説明できる。
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① ハーマン,J.L.(1996)心的外傷と回復. みすず書房. Pp75-110. 大江美佐里(2023) エビデンスでわかるトラウマ・PTSD診療. じほう. pp2-46. 白川美也子(2019) トラウマのことがわかる本.講談社.pp10-30. ② ディプリンス,A.P. & フレイド,J.J. (2014) トラウマに誘発された解離. PTSDハンドブック:科学と実践. Pp137-151. 岡野憲一郎(1995) 外傷性精神障害:心の傷の病理と治療. 岩崎学術出版社. pp124-139 ③ キマーリング,R. ほか (2014) PTSDにおけるジェンダーの問題. PTSDハンドブック:科学と実践. Pp203-222. ④ 齋藤梓(2024) 犯罪被害者支援. 原田孝之(編著) 司法・犯罪心理学. ミネルヴァ書房 pp154-165. ⑤ ハーマン,J.L.(1996)心的外傷と回復. みすず書房. Pp241-339.
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コマ主題細目
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① 性暴力被害特有の心理的影響 ② 性暴力被害時の心理生理的反応 ③ ジェンダーバイアスと二次被害 ④ 性暴力被害者の支援体制 ⑤ 回復のプロセス
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細目レベル
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① 性暴力の被害特有の心理的影響 性暴力の被害者は、他の犯罪被害とは質的に異なる深刻な心理的影響を受ける。最も特徴的なものは、否定的な認知に起因する強い羞恥心と自責感である。被害者は「自分に落ち度があったのではないか」という根拠のない自責感や、「汚れてしまった」という強い羞恥心にさいなまれる。 また、トラウマ記憶が日常生活のさまざまな刺激と結びつき、被害と直接関係のない物事や人についてもトラウマ記憶を再体験するきっかけとなる般化が生じる。加害者への強い恐怖心から般化した対人不信が生じ、本来であれば支えてくれる人とも親密な関係を築くことが困難になる。 身体感覚の変化も特徴的である。自分の身体への嫌悪感や違和感、解離症状として身体感覚の麻痺や非現実感を体験することが多い。 これらの心理的影響は長期化する傾向があり、適切な支援がない場合、慢性的なトラウマ反応として定着することがある。 【到達目標】 ① 性犯罪被害後に特徴的な心理的影響(強い羞恥心・自責感・般化した対人不信・身体感覚の変化・解離症状)を説明できる。 ② これらの影響が長期化・慢性化するリスク要因と、それを防ぐ支援の視点を述べることができる。
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② 性暴力被害時の心理生理的反応 被害時には、生理的な防衛反応として「フリーズ反応」が生じることが多い。これは、脅威に直面した際に生じる生存本能であり、その人が意識的に選択したものではない。フリーズ状態では、身体が硬直し、声を出すことも動くこともできなくなる。 また、極度の恐怖や無力感から解離反応が生じ、現実感が失われたり、体験が記憶として統合されないことがある。これらの反応は、被害時の記憶の断片化や、事後の証言における一貫性の欠如の原因となる。被害後も、類似した状況で同様の反応が自動的に生じることがあり、日常生活への適応を妨げる要因となる。 なお、不同意性交等罪及び不同意わいせつ罪の構成要件として、「予想と異なる事態との直面に起因する恐怖又は驚愕」を原因として被害者に同意しない意思を形成・表明することが困難な状態があり、これがフリーズを指している。 【到達目標】 ① 性犯罪被害後に特徴的な心理的影響(強い羞恥心・自責感・般化した対人不信・身体感覚の変化・解離症状)を説明できる。 ② これらの影響が長期化・慢性化するリスク要因と、それを防ぐ支援の視点を述べることができる。
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③ ジェンダーバイアスと二次被害 性暴力の被害者は、社会に根強く残るジェンダーバイアス(性に関する偏見)によって深刻な二次被害を受けることが多い。たとえば、「被害者にも落ち度があった」、「被害者の抵抗が足りなかった」といった被害者非難や、「女性の貞操」に関する固定観念に基づく偏見は、被害者の自責感を強め、他者に助けを求める援助要請を躊躇させる。 また、SNSでの誹謗中傷や、家族・友人からの心ない言動も、被害者の心理的回復を著しく阻害する。これらの社会的スティグマ(社会的に弱いとされる人々に対する差別や偏見)は、被害体験の開示や支援の利用を困難にし、孤立や症状の重症化につながる危険性がある。 【到達目標】 ① 「被害者に落ち度があった」という被害者非難の背景にあるジェンダーバイアスを説明し、その社会的スティグマが援助要請を困難にするメカニズムを述べることができる。 ② SNS上の誹謗中傷など現代的な二次被害の形態と、被害者の心理的孤立・重症化リスクを説明できる。
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④ 性暴力被害者の支援体制 性暴力被害者のためのワンストップ支援センターは、各県に民間団体が設置し、医療・心理・法的支援を包括的に提供する機関である。産婦人科医療、警察への届出支援、心理カウンセリング、法律相談など、必要な支援をワンストップで受けられる体制を整備している。 また、中長期的な回復支援として、精神科医療機関、女性相談所、民間シェルター等との連携も重要である。しかし、24時間365日の電話相談体制や、被害直後の緊急対応など、被害者のニーズに応じた支援体制を整備することは容易ではなく、活動資金難によって活動停止を検討せざるを得ないセンターも出ており、被害者支援の持続的提供を可能にさせる行政の支援なども求められる。 【到達目標】 ① ワンストップ支援センターが提供する医療・心理・法的支援の内容と、24時間対応体制の意義を説明できる。 ② 中長期的回復支援において精神科医療・民間シェルター等との連携が必要な理由を述べることができる。
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⑤ 回復のプロセス 性暴力被害からの回復は、一般的には段階的なプロセスを経る。これは、「犯罪心理学概論」でも説明した、ジュディス・ハーマンが提唱した「回復の三段階モデル」である。 第1段階では、安全の確保と安定化が最優先される。具体的には、加害者からの保護、医療的ケア、生活基盤の確保などが含まれる。第2段階では、トラウマ体験の想起と服喪として、トラウマ体験の処理と統合を行う。心理教育やトラウマ焦点化療法などを通じて、被害体験の意味づけを行い、「被害は自分にとって避けられなかったものであり、自分は汚れてしまったわけではない」などと自己像の再構築を支援する。第3段階では、学校や職場に再びい行けるようになるなど社会復帰と新たな人間関係の構築を目指す。 このプロセスは直線的ではなく、必要に応じて前段階に戻ることもある。犯罪被害者支援では、被害者の回復を必要以上に期待するのではなく、被害者自身のペースを尊重し、その回復を見守る姿勢が肝要である。 【到達目標】 ① 性暴力被害からの回復の3段階(安全確保・トラウマ体験の処理と統合・社会復帰と関係再構築)の各段階の課題と支援内容を説明できる。 ② 回復プロセスが直線的ではなく前段階に戻ることもあることを理解し、支援者として柔軟に対応する姿勢を述べることができる。
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キーワード
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① 否定的認知 ② フリーズ反応 ③ ジェンダーバイアスと二次被害 ④ 性暴力被害者のためのワンストップ支援センター ⑤ 回復の段階的プロセス
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【予習】 「犯罪心理学概論」で学んだ被害者の心理に関する知識を再確認するために同科目の文字教材を読むとともに、本科目のコマシラバスをあらかじめ読むこと。 【復讐】 今回の文字教材を読み、小テストで間違えた問題を中心にヨリソル上に掲出するドリルに取り組むこと。
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4
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DV被害者の心理と支援
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 第4回では、犯罪被害の中でも被害者に複雑性PTSDをもたらす可能性が大きいD Vの被害者の心理と支援について学ぶ。 【本回全体の到達目標】 1. DVの4類型(身体的・精神的・経済的・性的暴力)とそれぞれの心理的影響を説明できる。 2. 暴力の周期理論(緊張蓄積期・爆発期・ハネムーン期)と、周期の繰り返しがもたらす被害者心理の変化を説明できる。 3. トラウマティックボンディングの形成メカニズムと、離脱困難の心理的背景を述べることができる。 4. 面前DVが子どもの発達・愛着・感情調節・世代間連鎖に与える影響を説明できる。 5. DV被害者への安全計画立案(リスクアセスメント・緊急避難経路・自立支援)の基本的枠組みを述べることができる。
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① 小西聖子(2001) ドメスティック・バイオレンス. 白水社 pp7-33. ②③ 小西聖子(2001) ドメスティック・バイオレンス. 白水社 pp101-133. ④ フェアバンク,J.A. ほか (2014) 子どものトラウマ的ストレスの頻度とその衝撃. PTSDハンドブック:科学と実践. Pp223-242. ⑤ 小西聖子(2001) ドメスティック・バイオレンス. 白水社 pp181-215.
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コマ主題細目
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① DVの類型と特徴 ② 暴力の周期理論 ③ トラウマティックボンディング ④ 子どもへの影響 ⑤ 支援における安全計画
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細目レベル
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① DVの類型と特徴 ドメスティック・バイオレンス(DV)は、親密な関係者からの暴力であり、複数の形態が複合的に発生することが特徴である。 身体的暴力には、殴る、蹴る、物を投げつけるなどの直接的な暴力行為が含まれる。精神的暴力には、脅す、侮辱する、行動を制限する、SNSをチェックするなどの支配的行為が該当する。経済的暴力では、生活費を渡さない、働くことを禁止する、借金を強要するなどの行為がある。また、性的暴力は被害者が望まない無理やりの性行為や避妊に協力しないことなどがある。さらに、友人関係を制限して誰にも会わせないなどの社会的隔離などもある。 これらの暴力は、被害者の自尊心を著しく低下させ、無力感や恐怖心、抑うつ、PTSDなどの深刻な心理的影響をもたらす。さらに、加害者は「お前が俺をそうさせた」、「お前のせいだ」、「お前のためにやっている」などと被害者に責任を帰属させる言動をすることが多いため、被害者は自分が受けている行為がDVであると認識しないことも珍しくない。 【到達目標】 ① DVの4類型(身体的・精神的・経済的・性的暴力)を定義し、それぞれの具体例と心理的影響を説明できる。 ② DVの複合的発生という特徴が被害者の自尊心低下・無力感・抑うつ・PTSDにつながるメカニズムを述べることができる。
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② 暴力の周期理論 DVにおける暴力は、レノア・ウォーカーが提唱した「暴力の周期理論」によって説明される。これは、「DVのサイクル」とも呼ばれる。第1段階の「緊張の蓄積期」では、些細な事柄への非難や批判が増加し、被害者は過度に慎重になり、緊張が高まっていく。第2段階の「爆発期」では、激しい暴力が発生し、被害者は極度の恐怖と無力感を体験する。第3段階の「ハネムーン期」では、加害者が謝罪し、優しく接するため、被害者は「彼は優しいところもある。昔は優しくしてくれた。お酒さえ飲まなければ良い人なのに。」などと関係改善への期待を抱く。 しかし、この周期は繰り返され、時間とともに暴力はエスカレートし、ハネムーン期は短縮化する傾向がある。 DV被害者は自身が被害を受けているという認識を持っていない場合もあるため、支援者はDVの周期などを被害者にわかりやすく伝え、適切な心理教育をする知識と姿勢が求められる。 【到達目標】 ① ウォーカーの暴力の周期理論(緊張蓄積期→爆発期→ハネムーン期)を説明し、各段階での被害者の心理変化を述べることができる。 ② 周期の繰り返しと時間の経過に伴う暴力のエスカレート・ハネムーン期の短縮化が被害者の離脱困難にどうつながるかを論じることができる。
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③ トラウマティック・ボンディング トラウマティック・ボンディングとは、暴力的な関係における加害者への病的な愛着を指す。被害者は加害者に対して、強い恐怖と依存が混在する複雑な感情を抱く。この現象は、加害者による支配と隔離、絶え間ない暴力と報酬、経済的依存などの要因により形成される。 また、加害者への同一化や、自己否定的な認知の形成も関与している。すなわち、被害者は「私のせいで彼がこうなっている」などと考えるようになっている。このような心理的結びつきは、被害者が加害者から逃げることを困難にする要因となり、支援においても重要な課題となる。すなわち、支援者が被害者を説得して避難を勧めても、被害者がその申し出に応じなかったり、避難したとしても避難先から加害者の元に戻ってしまうことも珍しくないことを支援者は理解し、粘り強い支援の姿勢が求められる。 【到達目標】 ① トラウマティックボンディングの定義と形成要因(支配・隔離・間欠的暴力と報酬・経済的依存)を説明できる。 ② 加害者への病的愛着が外部からは「なぜ離れないのか」と誤解されやすい理由を、心理的メカニズムから説明できる。
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④ 子どもへの影響 子どもの目の前で行われるDVは面前DVと呼ばれる。面前DVは、子どもにとって深刻な心理的虐待となる。子どもは、暴力−自分を守ってくれる母親が父親に暴力を振るわれる光景−を目撃することによって強い恐怖と無力感を体験し、これが長期化すると複雑性トラウマを発症することもある。また、安全な家庭環境になく、安心感を抱くことが難しい状況では、子どもにおいては安全な愛着関係の形成が阻害され、情動のコントロールや対人関係に関する問題が生じることもある。 さらに、暴力を問題解決の手段として学習することで、将来的に暴力の加害者や被害者となるリスクが高まる。特に、男児にあっては自分の意に背く状況では暴力を振るうことによって相手を支配できることを当然のこととして考えてしまうこともある。この世代間連鎖のメカニズムには、トラウマの影響や愛着の問題など、複数の要因が関与している。 このような状態にある被虐待児への支援については、長期的かつ安定的な対人関係を築き、安心して話せる環境を用意することが重要となる。 【到達目標】 ① 面前DVが子どもに与える心理的影響(複雑性トラウマ・愛着形成の阻害・情動調節の困難)を説明できる。 ② DVの世代間連鎖のメカニズム(トラウマの影響・社会学習・愛着の問題)と、連鎖を断つための支援の視点を述べることができる。
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⑤ 支援における安全計画 DV被害者支援の最優先事項は、被害者と子どもの安全確保である。そのためには、リスクアセスメントが不可欠である。具体的には、暴力の頻度と重症度、凶器の使用、死の脅迫の有無、ストーカー行為などの危険因子を評価する。安全計画には、緊急時の避難経路の確保、重要書類の保管、相談先の確認などが含まれる。 また、自立支援として、シェルターへの避難、秘匿が確保される居住場所の確保、経済的基盤の確立、離婚に向けた法的支援、心理的回復支援などを包括的に提供する必要がある。 【到達目標】 ① DV被害者への支援における安全計画の要素(リスクアセスメント・緊急避難計画・重要書類の保管・相談先の確認)を説明できる。 ② 経済的基盤の確立・法的支援・心理的回復支援を包括した自立支援の必要性を述べることができる。
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キーワード
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① DVの類型 ② DVの周期理論 ③ トラウマティックボンディング ④ 面前DV ⑤ DVのリスクアセスメント
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【復習】 第3回までに学んだ被害者の心理面の特徴に加えて、DV被害者に多く見られるトラウマティック・ボンディングなどを理解するとともに、カウンセリングのみならず多職種連携といったソーシャルワーク的支援も重要であることをよく理解すること。
【予習】 児童虐待についても犯罪心理学概論で扱ったが、被害児童の心理と支援をさらに詳しく理解できるように、コマシラバスと文字教材を事前に一読し、興味を持ったこと及び疑問に思ったことを予めピックアップすること。
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5
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児童虐待の被害児童の心理と支援
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 第5回では、犯罪被害の中でも被害者に複雑性PTSDをもたらす可能性が大きい児童虐待の被害者の心理と支援について学ぶ。 【本回全体の到達目標】 1. 児童虐待が子どもの身体・認知・心理・情動・社会的発達に与える広範な影響を説明できる。 2. 虐待環境下での愛着形成の問題(無秩序型愛着・反応性愛着障害)と対人関係への長期的影響を述べることができる。 3. 解離と感情調節困難が習慣化するメカニズムと、成人期への持続リスクを説明できる。 4. 学習・行動上の問題(注意・記憶・攻撃性・引きこもり)のトラウマ的背景を理解し、教育現場での支援の視点を持てる。 5. 段階的・包括的な回復支援(安全確保→トラウマ焦点化介入→家族再統合)の枠組みを説明できる。
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① Cook, A., et al. (2005). Complex trauma in children and adolescents. Psychiatric Annals, 35(5), 390-398. Teicher, M. H., & Samson, J. A. (2016). Annual research review: Enduring neurobiological effects of childhood abuse and neglect. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 57(3), 241-266. 友田明美・藤澤玲子(2018) 虐待が脳を変える:脳科学者からのメッセージ. 新曜社.Pp109-155. ② 岡田尊司(2024) 愛着障害と複雑性 PTSD . SBクリエイティブ. Pp69-114. 友田明美・藤澤玲子(2018) 虐待が脳を変える:脳科学者からのメッセージ. 新曜社.Pp41-54. ③ Cicchetti, D., & Toth, S. L. (2016). Child maltreatment and developmental psychopathology: A multilevel perspective. Developmental Psychopathology, 1-56. 海野千畝子(2022) 子ども虐待への心理臨床(増補改訂版) 誠信書房.Pp40-87. ⑤ 亀岡智美(2020) 子ども虐待とトラウマケア:再トラウマ化を防ぐトラウマインフォームドケア. 金剛出版. Pp137-185. 島ゆみ(2023) 性的虐待の発見と子どもへの影響.藤森和美・野坂祐子(編)子供への性暴力:その理解と支援(第2版). 誠信書房.Pp28-42.
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コマ主題細目
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① 虐待が子どもの発達に与える影響 ② 愛着の問題と対人関係への影響 ③ 解離と感情調節の問題 ④ 学習・行動上の問題 ⑤ 回復のための治療的アプローチ
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細目レベル
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① 虐待が子どもの発達に与える影響 児童虐待は、子どもの心身の発達に広範な影響を及ぼす。身体的には、直接的な傷害に加え、ストレスホルモンの過剰分泌による脳の発達障害、成長障害などが生じる可能性がある。心理的には、基本的信頼感の欠如、愛着の形成不全、自尊心の低下などの問題が生じる。認知発達面では、注意力や記憶力の低下、学習困難などが見られることがある。 また、情動調節能力の発達が阻害され、感情のコントロールが困難になることも多い。これらの影響は発達段階によって異なり、特に乳幼児期の虐待は、その後の発達全般に深刻な影響を及ぼす可能性が高い。 【到達目標】 ① DVの4類型(身体的・精神的・経済的・性的暴力)を定義し、それぞれの具体例と心理的影響を説明できる。 ② DVの複合的発生という特徴が被害者の自尊心低下・無力感・抑うつ・PTSDにつながるメカニズムを述べることができる。
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② 愛着の問題と対人関係への影響 虐待環境で育つ子どもは、安定した愛着関係を形成することが困難である。愛着理論では、愛着のスタイルは不安型、回避型、無秩序型、安定型の4つに分けられる。虐待環境で育つ子どもは、主たる養育者からの一貫性のない対応や拒絶的な態度により、安全基地としての養育者への信頼を築くことができない。その結果、無秩序型愛着(不安や恐怖を養育者に対して抱く愛着行動で、愛情と分離不安への対処の仕方に一貫性がなく、恐怖感を持つ傾向にある愛着スタイル)や反応性愛着障害(乳児や子どもが養育者との安全な愛着関係を築けないことで、対人関係に問題を抱える障害)などの問題が生じる。 これらの愛着の問題は、その後の対人関係にも大きな影響を及ぼす。他者を信頼することの困難さ、親密な関係を築くことへの恐れ、対人境界の混乱などが特徴的である。 また、虐待的な関係性のパターンを内在化し、後の人間関係でも同様のパターンを再現する傾向があるため、交際や婚姻に際しても不安定な関係をとる虐待サバイバーも少なくない。 【到達目標】 ① ウォーカーの暴力の周期理論(緊張蓄積期→爆発期→ハネムーン期)を説明し、各段階での被害者の心理変化を述べることができる。 ② 周期の繰り返しと時間の経過に伴う暴力のエスカレート・ハネムーン期の短縮化が被害者の離脱困難にどうつながるかを論じることができる。
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③ 解離と感情調節の問題 虐待を受けた子どもは、過酷な状況に対処するために解離を頻繁に用いる。解離は、耐えがたい体験から心理的に距離を取る防衛機制であるが、習慣化すると日常生活での適応を妨げる要因となる。具体的には、現実感の喪失、記憶の断片化、アイデンティティの混乱などの症状として現れる。 また、感情調節の問題も顕著である。怒りの爆発、感情の急激な変動、自傷行為などが見られ、これらは内的な苦痛を制御する手段として機能している。こうした問題は、適切な支援がない場合、成人期まで持続する可能性が高い。 【到達目標】 ① トラウマティックボンディングの定義と形成要因(支配・隔離・間欠的暴力と報酬・経済的依存)を説明できる。 ② 加害者への病的愛着が外部からは「なぜ離れないのか」と誤解されやすい理由を、心理的メカニズムから説明できる。
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④ 学習・行動上の問題 虐待を受けた子どもは、様々な学習・行動上の問題を示すことが多い。学業面では、集中力の低下、記憶力の問題、学習意欲の減退などが見られる。これらは、トラウマによる認知機能への影響や、安全な学習環境の欠如によるものと考えられる。行動面では、攻撃性の高さ、衝動性、引きこもり、解離性の行動化などが特徴的である。 また、適切な社会的スキルを学習する機会が制限されているため、対人関係でのトラブルも生じやすい。これらの問題は、教育現場での適切な理解と支援を必要とする。 虐待を受けた子どもは、学習や行動の面で様々な問題を示すことが多い。学業面では、集中力の低下、記憶力の問題、学習意欲の減退などが見られる。これらは、トラウマ体験によって認知機能に影響が及んでいることや、安全で安定した学習環境が家庭内に存在しないことが原因と考えられる。 行動面においては、攻撃性や衝動性が高まる場合がある一方で、引きこもりがちになったり、感情や記憶を切り離すような解離的な行動を取ることもある。こうした行動は一見すると問題行動に映るが、本人の内面にある不安や恐怖、混乱といった感情の表れであることが多い。 また、虐待を受けた子どもは、家庭内で適切な社会的スキルを学ぶ機会に恵まれないことが多く、他者との関係性を築くことが困難になりやすい。その結果、対人関係においてトラブルを抱えることもしばしば見られる。 これらの学習・行動上の問題に対しては、教育現場における理解と配慮が不可欠であり、個別の支援体制が求められる。 【到達目標】 ① 面前DVが子どもに与える心理的影響(複雑性トラウマ・愛着形成の阻害・情動調節の困難)を説明できる。 ② DVの世代間連鎖のメカニズム(トラウマの影響・社会学習・愛着の問題)と、連鎖を断つための支援の視点を述べることができる。
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⑤ 回復のための治療的アプローチ 虐待を受けた子どもの回復支援には、段階的かつ包括的なアプローチが必要である。第一段階では、安全な環境の確保と安定した養育関係の構築が優先される。この段階では、児童相談所や里親・施設との連携が重要となる。第二段階では、トラウマに焦点を当てた心理療法や感情調節スキルの獲得を目指した支援が行われる。 また、発達段階に応じた教育支援や家族再統合に向けた保護者への指導などの取り組みも並行して実施される。特に、子どもの回復力(レジリエンス)を高める支援と、支援者との安定した関係性の構築が重要である。 【到達目標】 ① DV被害者への支援における安全計画の要素(リスクアセスメント・緊急避難計画・重要書類の保管・相談先の確認)を説明できる。 ② 経済的基盤の確立・法的支援・心理的回復支援を包括した自立支援の必要性を述べることができる。
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キーワード
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① 基本的信頼感の欠如 ② 愛着の問題 ③ 解離と感情調節の問題 ④ 学習・行動上の問題 ⑤ 被虐待児への心理支援
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【復習】 児童虐待全般の理解と被虐待児の心身の影響の理解は臨床心理学の中でも重要な位置を占め、犯罪被害者支援の文脈のみならず、福祉領域の文脈でも様々な支援の取り組み及び研究がなされていることを理解し、被虐待児の心身の状態、愛着、乖離についてはよく理解してほしい。心理学検定及び公認心理師試験にかなり頻出の内容である。
【予習】 第6回は交通事犯の被害者について学ぶ。犯罪心理学概論及び本科目においては触れる機会がなかった分野であるが、犯罪被害者支援において支援件数ではとても多いものであり、将来損害保険会社や地方自治体に就職を考えている人もいると思うので、交通事故抑止と被害者のケアはこの機会にぜひ理解してほしい。
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6
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交通事犯の犯罪被害と心理と支援
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 第6回では、日常生活で予期せぬ出来事して突然遭遇する交通事犯の被害者の心理と支援について学ぶ。 【本回全体の到達目標】 1. 交通事故被害の特殊性(予期せぬ突然性・過失という要素・無作為的被害)が被害者心理に与える影響を説明できる。 2. 身体的後遺障害(高次脳機能障害・身体障害・慢性疼痛)と心理的トラウマが複合する「二重の苦痛」の特徴を述べることができる。 3. 示談過程での心理的負担(トラウマの再体験・情報の非対称性・後遺障害等級への不満)を説明し、必要な支援を述べることができる。 4. 加害者の謝罪・態度が被害者の心理的回復に与える影響を説明できる。 5. 身体的リハビリテーション・心理支援・職場復帰支援を統合した包括的社会復帰支援のあり方を論じることができる。
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コマ主題細目
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① 交通事故被害の特殊性 ② 身体的後遺障害と心理的影響 ③ 示談過程での心理的負担 ④ 加害者の態度による影響 ⑤ 社会復帰支援
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細目レベル
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① 交通事故被害の特殊性 交通事故被害は、他の犯罪被害と異なり、被害者が全く予期していない状況下で突如として生じるという特徴がある。日常生活の中で突然襲いかかる被害であるため、被害者は心理的準備が全くない状態で事故に遭遇する。この「予期せぬ突然性」は、被害者の心理に強い衝撃と無力感をもたらす。被害者は「なぜ自分が」という理不尽さを強く感じる傾向がある。 また、交通事犯の多くは故意ではなく「過失」によって発生するという点も特徴的である。加害者自身も「事故を起こすつもりはなかった」と主張することが多い。この「過失」という要素は、被害者心理に複雑な影響を与える。被害者は、加害者が明確な殺意や害意を持っていなかったとしても、その不注意や安全確認の怠りが取り返しのつかない結果をもたらしたという事実に強い怒りと憤りを感じる。一方で、社会的には「事故」という枠組みで理解されることで、その被害の深刻さが矮小化されやすく、被害者は自らの感情を表出することに躊躇したり、罪悪感を抱いたりすることもある。 さらに、交通事故被害者は、加害者との間に事前の接点が全くない「無作為的な被害」であるため、事故の意味づけが困難になる。これにより、被害者の世界観や安全感は大きく揺らぎ、「世界は予測不能で危険に満ちている」という認知の歪みが生じやすい。このような心理的影響は、被害者の日常生活全般に波及し、長期にわたって回復を妨げる要因となり得る。 【到達目標】 ① 「予期せぬ突然性」と「過失」という特徴が被害者に「なぜ自分が」という理不尽さと怒りをもたらす心理的プロセスを説明できる。 ② 「無作為的な被害」による世界観・安全感の崩壊(「世界は予測不能で危険」という認知の歪み)のメカニズムを述べることができる。
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② 身体的後遺障害と心理的影響 交通事故被害者は、事故の衝撃による心理的トラウマと、身体的後遺障害という二重の苦痛を抱えることが多い。PTSD症状としてのフラッシュバックや過覚醒、回避反応などに加え、身体機能の喪失や変化による心理的負担が重なる複合的なトラウマ状態に置かれることが特徴的である。 特に高次脳機能障害を負った被害者の場合、記憶障害、注意障害、感情コントロールの困難さなど、目に見えにくい障害に苦しむことになる。これらの障害は周囲から理解されにくく、「怠けている」「努力が足りない」などと誤解されやすい。被害者自身も自分の変化を十分に認識できないことがあり、自己像の混乱や自己評価の低下を引き起こす。また、自分の能力の変化に気づくたびに、喪失感や悲嘆を繰り返し体験するという特徴がある。この高次脳機能障害の改善に向けたリハビリテーションを実施する医療機関もあるが、被害者にとっては日常生活の困難がつきまとう。 身体障害を負った場合も同様に、身体イメージの変容による心理的ショックや、自己アイデンティティの再構築を迫られる。特に身体機能の恒久的な喪失は、将来計画の変更を余儀なくされ、職業生活や家族関係など生活のあらゆる側面に影響を及ぼす。また、継続的な痛みに苦しむ被害者は、抑うつや不安、睡眠障害などの二次的な精神症状を発症することも少なくない。 このように、交通事故被害者は身体的後遺障害と心理的トラウマという二重の負担を抱えることで、回復過程が複雑化・長期化する傾向がある。そのため、身体的リハビリテーションと心理的支援を統合的に提供する包括的アプローチが必要とされる。 【到達目標】 ① 高次脳機能障害(記憶・注意・遂行機能障害・感情コントロール困難)が「見えにくい障害」として周囲に誤解されやすい問題を説明できる。 ② 身体的後遺障害とPTSDの複合による回復過程の複雑化・長期化の特徴と、身体的リハビリと心理的支援の統合の必要性を述べることができる。
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③ 示談過程での心理的負担 交通事故被害者は、身体的・心理的回復の過程と並行して、事故の損害賠償や責任の所在に関する法的手続きという別の負担に直面する。特に示談交渉の過程では、保険会社や加害者側との煩雑かつ長期にわたるやり取りを強いられ、これが被害者に新たな心理的ストレスをもたらす。 保険会社との交渉では、被害者は自らの損害や苦痛を数値化して証明する必要に迫られる。このプロセスで被害者は、事故の詳細や自分の被害状況を繰り返し説明することを求められ、トラウマを再体験させられるという二次被害を受けることがある。また、後遺障害等級の認定をめぐっては、被害者の主観的苦痛と客観的評価の乖離(かいり)が生じやすく、「自分の苦しみが正当に評価されていない」という無力感や怒りを感じることも多い。 さらに、示談交渉は法律や保険制度に関する専門知識を要するため、被害者には法律や保険制度の知識情報の不足による不利益を被るリスクがある。弁護士がつけば示談交渉を任せられるが、そのような適切な支援者が不在の場合、不当に低い賠償額で示談を余儀なくされたり、将来的に必要となる治療費や介護費を見越した適切な補償を受けられなかったりする可能性もある。 このような心理的負担を軽減するためには、弁護士による法的支援に加え、被害者支援の専門家が示談過程において被害者の不安などを的確に把握して支援することも必要である。 また、民間被害者支援団体による裁判所などへの同行支援や、交通事故被害者の会などのピアサポートを通じた経験者からのアドバイスも被害者が示談過程を乗り越えるための重要な心理的資源となり得る。 【到達目標】 ① 示談交渉で被害者が被る心理的負担(被害状況の繰り返し説明によるトラウマ再体験・情報の非対称性・後遺障害等級への不満)を説明できる。 ② 心理的支援者が示談過程に関与することの意義と、被害者支援団体のピアサポートが果たす役割を述べることができる。
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④ 加害者の態度による影響 交通事故の被害者心理に大きな影響を与える要因の一つが、事故後の加害者の態度である。被害者の多くは、加害者からの誠実な謝罪と責任の受容を求めており、これが得られるか否かが心理的回復過程に重大な影響を及ぼす。すなわち、「お金の問題ではない。加害者が謝ってくれないことが一番辛い」と述べる交通時事故被害者は多い。 加害者が事故の責任を認め、誠意をもって謝罪し、被害者の苦痛に真摯に向き合う態度を示した場合、被害者は事故を意味づけやすくなる。すなわち、加害者も故意に交通事故を起こしたわけではなく、偶然が重なった不幸であるなどと自分の歴史に組み込みやすくなる。そして、怒りや憎しみといった否定的感情を他者に話すなどして、心理的に落ち着く契機を見出しやすくなる。特に「なぜこのような事故が起きたのか」という疑問に対して、加害者から直接説明を受けることで、被害者は事故の「穴埋め」をし、理解を深めることができる。これにより、安全感を取り戻す一助となる。 一方、加害者が謝罪を拒んだり、責任転嫁をしたり、被害者に対して冷淡な態度を示したりする場合、被害者の怒りや無力感は増大し、心理的回復が著しく阻害される。特に「自分はなぜこんな目に遭ったのか」という根源的な問いに答えが得られないままでは、被害者は事故の意味づけができず、心理的統合が困難になる。また、加害者が示談交渉を引き延ばしたり、裁判で争ったりする場合、被害者は長期にわたって法的手続きに拘束され、心理的負担がさらに増大する。 【到達目標】 ① 誠実な謝罪が被害者の事故の意味づけと安全感の回復を促進するメカニズムを説明できる。 ② 謝罪拒否・責任転嫁・裁判の長期化が被害者の怒り・無力感・心理的回復の阻害につながる経緯を述べることができる。
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⑤ 社会復帰支援 交通事故被害者の社会復帰は、身体的リハビリテーションから始まり、心理的ケア、職場復帰支援、生活再建支援など、多面的かつ長期的な過程を経る。被害者の社会復帰を支援するためには、これらの要素を包括的に考慮した支援体制が不可欠である。 身体的リハビリテーションの段階では、機能回復訓練に加え、残存機能を活用した代償的アプローチや環境調整が重要となる。この過程で、身体機能の限界と向き合い、自己の中途障害を受容し、自己像を再構築するという心理的課題も同時に進行する。理学療法士などのリハビリテーション専門職には、身体機能の回復だけでなく、被害者の自己効力感や希望を育む関わりが求められる。 心理的支援としては、トラウマ反応の軽減に加え、中途障害の受容の過程を支える関わりが重要である。特に、「以前の自分には戻れない」という現実を受け入れつつも、「新たな可能性を見出す」という再適応の過程を支援することが求められる。集団療法やピアサポートグループへの参加は、同様の体験を持つ者同士の共感的理解を通じて、孤独感の軽減や新たな対処スキルの獲得に寄与する。 職場復帰支援においては、復職前の評価と準備、職場環境の調整、段階的な職務復帰計画の策定などが重要である。特に高次脳機能障害を抱える被害者の場合、負荷を考慮した業務調整や、職場の理解促進のための啓発活動が必要となることが多い。精神保健福祉士や社会福祉士等による職場との調整や、臨床心理士・公認心理師等による継続的支援は、円滑な職場復帰を実現するための重要な資源となる。 また、事故前とは異なる生活様式への適応を支援するためには、福祉制度の活用や住環境の整備、家族支援なども含めた総合的なアプローチが求められる。被害者の自立と社会参加を促進するためには、医療、福祉、心理、法律、就労支援などの多分野の専門家による連携とケースマネジメントが不可欠である。 【到達目標】 ① 身体的リハビリテーション・心理的支援・職場復帰支援・福祉制度活用という多面的な社会復帰支援の要素を説明できる。 ② 高次脳機能障害を抱える被害者の職場復帰において認知的負荷への配慮・職場への啓発・ジョブコーチ支援が必要な理由を述べることができる。
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キーワード
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① 予期せぬ突然性 ② 無作為的な被害 ③ 交通事故による後遺障害 ④ リハビリテーション
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【予習】 「犯罪心理学概論」で学んだ被害者の心理に関する知識を再確認するために同科目の文字教材を読むとともに、本科目のコマシラバスをあらかじめ読むこと。 【復習】 今回の文字教材を読み、小テストで間違えた問題を中心にヨリソル上に掲出するドリルに取り組むこと。
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7
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自然災害・テロ・重大人為災害の被害者心理と支援
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 第7回では、日常生活で予期せぬ出来事して突然遭遇する自然災害・テロ・重大人為災害の被害者の心理と支援について学ぶ。 【本回全体の到達目標】 1. 自然災害特有の「複合的喪失体験」とコミュニティの崩壊が被災者心理に与える影響を説明できる。 2. テロ被害の特徴(意図的な悪意・無差別性・政治的文脈化)が被害者の怒り・社会不信に与える影響を述べることができる。 3. サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)の原則と、デブリーフィングとの違いを説明できる。 4. 長期避難生活の「不確実性・環境的ストレス・アイデンティティの喪失・社会的孤立」という多重的影響を概説できる。 5. 復興の各段階(急性期・中期・長期)に応じた心理支援と、被災者の主体性を尊重した「伴走者」としての支援姿勢を述べることができる。
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① Franz et al.(2009) The Impact of the September 11th terrorist attacks on psychiatric patients: A review. Clinical Psychology Review, 29, 339-347. 門倉真人ほか(2000) 「地下鉄サリン事件」におけるPTSD−事件6ヶ月後の質問紙調査. 臨床精神医学, 29, 677-683. 松本昇(2019) テロリズムのPTSD. 越智啓太(編著) テロリズムの心理学.誠信書房.Pp185-206. 高橋シズヱ・河原理子(2005) <犯罪被害者>が報道を変える. 岩波書店.Pp1-21. 高橋祥友(2015) 災害精神医学とは. 高橋晶・高橋祥友(編) 災害精神医学入門. 金剛出版. Pp11-28. Ohtani, T. et al.(2004) Post-traumatic stress disorder symptoms in victims of Tokyo Subway Attack: A 5-year follow-up study. Psychiatry and Clinical Neurosciences, 58, 624-629. ウェイリー,G.J.L.,コーエン,W.L., & コッザ,S.J. (2022) 災害と死別に対する子どもと家族の反応. ウルサノ,R.J.ほか(編著) 重村淳(監訳)(2022) 災害精神医学ハンドブック. 誠信書房.Pp247-275. ② ウェッセルス,M.G. .(2003) テロリズムとメンタルヘルスと避難民のwell-being. モハダム,F.M. & マーセラ, A.J.(2003) テロリズムを理解する:社会心理学からのアプローチ. 釘原直樹(監訳) ナカニシヤ出版. ③ 国立精神・神経医療研究センター 災害時こころの情報支援センター(2012) WHO版 心理的応急処置(サイコロジカルファーストエイド:PFA)指導者研修会資料. ④ 浅野幸子(2021) 熊本地震と女性. 浅野富美枝・天童睦子(編著) 災害女性学をつくる. 生活思想社.Pp81-100.
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コマ主題細目
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① 自然災害による心理的影響 ② テロ被害の特徴 ③ サイコロジカル・ファーストエイド ④ 長期避難生活の影響 ⑤ 復興過程における心理支援
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細目レベル
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① 自然災害による心理的影響 自然災害は、個人的な犯罪被害とは異なり、コミュニティ全体に同時に甚大な被害をもたらすという特徴がある。被災者は、家族や友人、知人など多数の人々の喪失を一度に経験することが多く、「複合的な喪失体験」に直面する。家族や友人の死亡、住居や職場の喪失、地域コミュニティの崩壊など、生活基盤のあらゆる側面が同時に損なわれることで、通常の対処能力では対応困難な状況に陥りやすい。 特に、被災者が同時に多数存在する状況では、個々の悲嘆が社会的に認識され、共有される機会が限られる。いわゆる「承認されない悲嘆」の状態に置かれることで、被災者は自らの喪失を十分に悼む機会を奪われ、悲嘆のプロセスが複雑化する傾向がある。また、救助活動や避難所生活の中で、自分よりも深刻な被害を受けた人々を目の当たりにすることで、「自分はまだ恵まれている」という罪悪感(サバイバーズギルト)を抱くことも少なくない。 コミュニティの崩壊がもたらす影響も看過できない。災害前のコミュニティは、個人にとって重要な社会的支持源であり、アイデンティティの基盤となっていた場合も多い。その喪失は、単なる物理的環境の変化を超えて、所属感の喪失や社会的孤立をもたらす。特に高齢者や社会的弱者にとって、このコミュニティの崩壊は、生活再建の大きな障壁となる。 加えて、災害によって露呈した社会の脆弱性や、復興の不公平感などが心理的影響を長期化させる要因となることも多い。「復興格差」や「取り残され感」は、被災者の無力感や怒りを助長し、社会への不信感を増大させる。このような心理状態が長期間持続することで、うつ病や複雑性PTSDなどの精神疾患のリスクが高まることが知られている。 【到達目標】 ① 複合的喪失体験・承認されない悲嘆・サバイバーズギルトという災害特有の心理反応を説明できる。 ② コミュニティの崩壊と「復興格差」が被災者の無力感・怒り・抑うつ・複雑性PTSDリスクを高める理由を述べることができる。
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② テロ被害の特徴 テロ被害は、自然災害や事故と異なり、明確な「悪意」によって引き起こされた人為的被害であるという特徴を持つ。この「意図的な危害」という要素が、被害者の心理に独特の影響を与える。被害者は、無差別に暴力の対象として選ばれたという事実に深い恐怖と怒りを感じる。この「なぜ自分が標的にされたのか」という問いに対する答えが存在しないことが、被害の意味づけを極めて困難にし、安全感の回復を阻害する。 テロ被害者に特徴的な心理反応として、強い怒りと社会不信が挙げられる。テロリストへの怒りだけでなく、テロを防げなかった社会システムや国家への怒りも生じやすい。また、テロ後の社会的対応、例えばメディアの扱いや政治的利用、あるいは十分な支援が得られないことへの怒りも複雑に混在する。この怒りが適切に処理されないと、社会全体に対する不信感や、特定の集団(テロリストと同じ宗教や民族集団など)への敵意として表出することもある。 また、テロ被害はしばしば高度にメディア化され、社会的・政治的文脈の中で解釈される。このため、被害者個人の体験が社会的意味を帯びることで、個人的な悲嘆や回復過程が複雑化する傾向がある。例えば、被害者の体験が政治的に利用されたり、あるいは逆に社会的記憶から忘れ去られたりすることで、被害者は二次的な心理的被害を受けることがある。 テロ被害者の心理的回復を支援するためには、個人的なトラウマケアに加え、怒りや不信感に対する適切な認識と対応、社会的公正の回復、そして被害の意味づけを支援する長期的なアプローチが必要となる。また、テロ後の社会的言説や政治的対応が被害者に与える二次的影響にも注意を払い、被害者の尊厳と主体性を尊重した支援体制を構築することが重要である。 【到達目標】 ① 「意図的な悪意」という要素がテロ被害者の心理(強い怒り・社会不信・意味づけの困難)に与える独特の影響を説明できる。 ② テロ後の政治的・社会的文脈化が被害者個人の悲嘆と回復過程を複雑化させるメカニズムを述べることができる。
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③ サイコロジカル・ファーストエイド サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)は、災害やテロなどの危機的状況下にある人々に対して、初期の心理的支援を提供するための実践的アプローチである。日本では、世界保健機関(WHO)により策定されたPFAの研修が全国で開催され、実践されている。PFAは、医学的な応急処置が身体的な救命と安定化を目的とするのと同様に、被災者の心理的安定と回復力の促進を目指す。重要なのは、PFAが「治療」ではなく「支援」であり、すべての被災者に適用できる非侵襲的なアプローチであるという点である。 PFAの基本原則は、安全・安心の確保、安定化、情報収集、実際的な支援、社会的支持の動員、対処スキルの強化、そして適切な専門機関への連携という要素から構成される。まず、被災者の身体的安全を確保し、基本的ニーズ(食料、水、医療アクセスなど)が満たされるよう支援することが最優先される。安全が確保されたのち、強い情緒的反応を示す被災者に対しては、落ち着いた態度で接し、呼吸法などの簡単なリラクセーション技法を教えるなどの安定化を図る。 実践においては、支援者は指示的ではなく、傾聴し、被災者のニーズを尊重する姿勢が求められる。過度に詳細なトラウマ体験の聞き取りは避け、現在のニーズと懸念に焦点を当てることが重要である。また、被災者の強みや対処能力を認識し、強化することで、自己効力感の回復を促進する。 【到達目標】 ① PFAの基本原則(安全・安定化・情報収集・実際的支援・社会的支持の動員・対処スキル強化・専門機関連携)を説明できる。 ② PFAとデブリーフィングの違い(トラウマ体験の強制的な振り返りを行わない点・被災者のペースと意思の尊重)を説明し、デブリーフィングの有効性に疑問が呈された背景を述べることができる。
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④ 長期避難生活の影響 災害やテロの被害者は、住居の喪失や安全上の理由から、長期にわたる避難生活を強いられることがある。この長期避難生活は、初期の災害トラウマとは異なる種類の持続的ストレスをもたらし、被災者の心理的健康に深刻な影響を及ぼす。 避難生活の最も顕著な特徴は、将来に対する「不確実性」である。いつまで避難生活が続くのか、元の場所に戻れるのか、生活再建は可能なのかといった根本的な問いに対する明確な答えが得られない状況が続く。この不確実な状態は、計画立案や意思決定を困難にし、被災者に強い無力感と不安をもたらす。特に原発事故後の避難など、帰還の見通しが立たない状況では、この不確実性が長期間持続することで、慢性的な心理的苦痛の原因となる。 また、避難所や仮設住宅での生活は、プライバシーの欠如、限られた生活空間、自己決定権の制限など、様々な環境的ストレスをもたらす。これらの要因は、被災者の自律性と尊厳を損ない、無力感や抑うつ症状を増悪させる。特に避難生活が長期化すると、「一時的な状況」から「半恒久的な生活様式」へと認識が変化し、適応の困難さが増大する。 生活基盤の喪失もまた、重大な心理的影響をもたらす。職業、社会的役割、コミュニティにおける地位など、自己アイデンティティの重要な構成要素が失われることで、「自分が何者であるか」という根本的な問いに直面することになる。特に、地域社会と密接に結びついた生活を送っていた高齢者にとって、このアイデンティティの喪失は、生きがいや存在意義の喪失につながりやすい。 避難先での社会的孤立も見過ごせない問題である。既存の社会的ネットワークからの分断、避難先コミュニティへの統合の困難さ、「避難者」というラベリングによる差別や偏見など、複合的な要因が被災者の社会的孤立を促進する。この孤立は、重要な対処資源である社会的支持の喪失をもたらし、心理的回復を阻害する。 【到達目標】 ① 長期避難生活がもたらす4つの主要な心理的影響(将来への不確実性・環境的ストレス・アイデンティティの喪失・社会的孤立)を説明できる。 ② 仮設住宅でのプライバシー欠如・自己決定権の制限が慢性的な無力感・抑うつを悪化させる理由を述べることができる。
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⑤ 復興過程における心理支援 災害からの復興過程においては、物理的インフラの再建と並行して、被災者の心理的回復とコミュニティの再建を支援する包括的アプローチが不可欠である。復興の各段階に応じた適切な心理支援は、被災者の回復力を引き出し、コミュニティの持続可能な再建に寄与する。 復興初期段階では、被災者の安全・安心の確保と基本的ニーズの充足を優先しつつ、心理的急性反応への対応が中心となる。この段階で は、サイコロジカル・ファーストエイドの提供や、簡易な心理教育を通じて、被災者が体験している反応の正常化と、適応的な対処を促進することが重要である。また、専門的な心理的支援を必要とする人々の早期発見とつなぎ支援も重要な課題となる。 中期的な復興段階では、個人の心理的回復とコミュニティの再結合を促進する統合的アプローチが求められる。個人レベルでは、PTSDや複雑性悲嘆などの精神健康上の問題に対する専門的ケアの提供と並行して、生活再建に伴う実際的な問題(就労、住居、経済的問題など)への支援も重要となる。特に、被災者が「被害者」から「生存者」、そして「復興の担い手」へと自己認識を変化させていくプロセスを支援することは、心理的エンパワメントの核心である。 長期的な復興段階では、災害体験の意味づけと成長促進的な視点の育成が焦点となる。個人やコミュニティが災害体験を人生の文脈に統合し、その経験から学びを得て、新たな強みや視点を発見するプロセスを支援することは、真の復興の重要な側面である。また、災害への備えや回復力の向上といった未来志向の活動は、安全感の回復と同時に、災害体験に積極的な意味を付与する機会ともなる。 復興過程における心理支援の提供にあたっては、被災者の主体性と自己決定を尊重し、外部支援者が「解決策を与える」のではなく、被災者自身の回復力と知恵を引き出す「伴走者」としての役割を担うことが、持続可能な復興につながる重要な姿勢である。 【到達目標】 ① 復興の急性期・中期・長期の各段階における心理支援の目標と介入内容を説明できる。 ② 被災者の「被害者から復興の担い手へ」という自己認識の転換を支援することのエンパワメント的意義を述べることができる。 ③ 「伴走者」として被災者の主体性と自己決定を尊重した支援姿勢が持続可能な復興に不可欠な理由を論じることができる。
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キーワード
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① 複合的な喪失体験 ② サイコロジカル・ファーストエイド(PFA) ③ 避難生活 ④ コミュニティの再建
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【予習】 「犯罪心理学概論」で学んだ被害者の心理に関する知識を再確認するために同科目の文字教材を読むとともに、本科目のコマシラバスをあらかじめ読むこと。 【復習】 今回の文字教材を読み、小テストで間違えた問題を中心にヨリソル上に掲出するドリルに取り組むこと。
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8
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前半のまとめと復習―被害者心理学の基礎から被害類型別支援まで
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 第8回では、第1回から第7回まで学習した内容の知識が定着しているかを確認する。そして、復習テストを実施し、自分の理解が不足している領域を明らかにしていただく。本回全体の到達目標は次のとおりである。 【本回全体の到達目標】 1. 被害者学の歴史的展開・法制度・犯罪被害後の心理的影響という被害者心理学の基礎的枠組みを体系的に整理し、説明できる。 2. PTSDの神経生物学的メカニズム・認知行動モデル・複雑性PTSDおよびレジリエンスの概念を統合的に説明できる。 3. 性犯罪・DV・児童虐待という被害類型ごとの固有の心理的影響と支援上の重要事項を比較・整理して述べることができる。 4. 交通事犯・災害・テロという事犯類型別の被害特性と支援アプローチの共通点・相違点を整理して論じることができる。 5. 第1回から第7回までの知識を統合し、被害者支援において心理専門職が担うべき役割と倫理的姿勢を自らの言葉で述べることができる。
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第1回から第7回までの文字教材
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コマ主題細目
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① 被害者心理学の基礎の整理(第1回の復習) ② トラウマとPTSDのメカニズムの整理(第2回の復習) ③ 性犯罪・DV被害者の心理と支援の整理(第3・4回の復習) ④ 児童虐待被害の心理と支援の整理(第5回の復習) ⑤ 交通事犯・災害・テロ被害の心理と支援の整理(第6・7回の復習)
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細目レベル
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① 被害者心理学の基礎の整理(第1回の復習) 第1回では、被害者学(Victimology)の誕生から現代に至る歴史的変遷、犯罪被害者等基本法をはじめとする日本の法制度的枠組み、一次被害と二次被害の概念、そして公的機関・民間支援団体・医療機関の役割と連携の基本構造を学んだ。本項では、被害者学の主要理論(メンデルソーンの一般被害者学・被害者非難から権利擁護への転換・包括的支援アプローチ)を時系列で整理し、被害者支援の法的基盤と支援体制の全体像を改めて確認する。また、二次被害が被害者の心理的回復に及ぼす深刻な影響と、支援者がそれを引き起こさないための基本的態度についても復習する。これらの基礎的枠組みの定着が、以降の被害類型別支援や心理療法の学習の土台となる。 【到達目標】 ① 被害者学の誕生から現代の包括的支援へと至る歴史的変遷(相互作用研究→被害者権利運動→包括的支援)を時系列で整理し、各段階の特徴を説明できる。 ② 犯罪被害者等基本法の基本理念・国と地方公共団体の責務・基本計画の仕組みを説明し、日本の被害者支援法制度の枠組みを概説できる。 ③ 一次被害と二次被害を定義し、二次被害を引き起こす要因(捜査・医療・周囲・メディア)と防止策を述べることができる。
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② トラウマとPTSDのメカニズムの整理(第2回の復習) 第2回では、トラウマが脳・神経系に与える影響として、HPA系の活性化・扁桃体の過剰反応・海馬機能の低下・前頭前野の機能抑制という神経生物学的メカニズムを学んだ。また、トラウマ記憶の断片化・侵入的想起・解離という特性、PTSDの発症と維持を説明する認知行動モデル(否定的認知→回避→過覚醒の悪循環)、さらに複雑性PTSDと発達性トラウマの特徴(感情調節困難・対人関係問題・自己概念の歪み)を扱った。 ここでは、これらの知識を整理し、神経科学的知見が治療の根拠としてどのように機能するかを再確認するとともに、レジリエンスを高める支援の方向性についても復習する。トラウマ理解の深化は、以降の各被害類型への支援と心理療法の学習に直結する。 【到達目標】 ① HPA系・扁桃体・海馬・前頭前野の機能変化というトラウマの神経生物学的メカニズムを、PTSD症状との対応関係を示しながら説明できる。 ② PTSDの認知行動モデル(否定的認知→回避→侵入記憶の悪循環)を図示しながら説明し、治療への応用を述べることができる。
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③ 性犯罪・DV被害者の心理と支援の整理(第3・4回の復習) 第3・4回では、性犯罪とDVという二つの被害類型を扱った。性犯罪については、フリーズ反応・解離という被害時の生理的防衛反応、羞恥心・自責感・ジェンダーバイアスによる二次被害の問題、ワンストップ支援センターを軸とした多機関連携、および安全確保→トラウマ処理→社会復帰という段階的回復プロセスを学んだ。DVについては、暴力の4類型・周期理論・トラウマティックボンディング・子どもへの複合的影響・安全計画の立案という支援の核心的事項を学んだ。 ここでは両被害類型の共通点(ジェンダー的背景・加害者との関係性・継続的支援の必要性)と相違点を比較しながら整理し、支援実践に即した理解を深める。 【到達目標】 ① フリーズ反応・解離という被害時の生理的防衛反応が証言の信頼性評価に与える示唆と、ジェンダーバイアスによる二次被害防止の方策を説明できる。 ② DVにおけるトラウマティックボンディングのメカニズムと、暴力の周期理論(緊張蓄積期→爆発期→ハネムーン期)が離脱困難に与える影響を説明できる。 ③ 性犯罪・DV被害の共通点(継続的支援の必要性・ジェンダー的背景)と相違点(被害関係性・支援体制)を整理して述べることができる。
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④ 児童虐待被害の心理と支援の整理(第5回の復習) 第5回では、児童虐待という発達期のトラウマが子どもに及ぼす広範な影響として、身体的・認知的・心理的・情動的・社会的発達の阻害、愛着形成の問題(無秩序型愛着・反応性愛着障害)、解離と感情調節困難の習慣化、学習・行動上の問題(注意集中・攻撃性・衝動性)を扱った。また、段階的・包括的な回復支援(安全確保→トラウマ焦点化介入→家族再統合)の枠組みと、安定した支援者関係の構築がいかに回復の核心となるかを学んだ。 ここでは、発達段階ごとの影響の違いと虐待の世代間連鎖のメカニズムを再確認し、学校・福祉・医療の包括的連携による支援の必要性を整理する。 【到達目標】 ① 虐待が発達段階ごとに与える心理的・認知的・社会的影響を整理し、特に乳幼児期の虐待が後の発達全般に深刻なリスクをもたらす理由を説明できる。 ② 解離と感情調節困難が防衛機制として機能しながらも習慣化により適応を阻むという逆説を説明し、支援方針を述べることができる。 ③ 虐待の世代間連鎖のメカニズム(トラウマの影響・社会学習・愛着の問題)と連鎖を断つための段階的・包括的支援の枠組みを説明できる。
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⑤ 交通事犯・災害・テロ被害の心理と支援の整理(第6・7回の復習) 第6回の交通事犯では、予期せぬ突然性と過失という特徴がもたらす心理的影響(理不尽さ・怒り・世界観の崩壊)、高次脳機能障害とPTSDが複合する“二重の苦痛”、示談過程での心理的負担、加害者の謝罪態度が回復に与える影響、そして包括的社会復帰支援を学んだ。第7回の災害・テロでは、複合的喪失体験・サバイバーズギルト・コミュニティ崩壊という災害特有の反応、意図的な悪意がもたらすテロ被害の独特の心理、サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)の原則とデブリーフィングとの相違、長期避難生活の多重的影響、復興段階別の心理支援を扱った。本項では両被害類型の共通点と相違点を整理し、支援の汎用的な枠組みを確認する。 【到達目標】 ① 交通事犯被害の“二重の苦痛”(身体後遺障害とPTSDの複合)の特徴と、身体的リハビリと心理的支援を統合した包括的社会復帰支援の必要性を説明できる。 ② PFAの基本原則と実施方法を説明し、デブリーフィングとの理論的・実践的相違を述べることができる。 ③ 意図的な悪意を含むテロ被害と過失による交通事犯・自然災害を比較し、それぞれの心理的影響の共通点と相違点、および支援上の注意点を論じることができる。
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キーワード
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① 犯罪被害者等基本法 ② PTSDの神経生物学的メカニズム ③ 暴力の周期理論 ④ サイコロジカル・ファーストエイド(PFA) ⑤ レジリエンス
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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これまで学んだ知識の定着を確認するためのテストを実施する。
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復習・予習課題
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【予習】 「犯罪心理学概論」で学んだ被害者の心理に関する知識を再確認するために同科目の文字教材を読むとともに、本科目のコマシラバスをあらかじめ読むこと。 【復讐】 今回の文字教材を読み、小テストで間違えた問題を中心にヨリソル上に掲出するドリルに取り組むこと。
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9
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被害者遺族への心理支援
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。犯 第9回では、犯罪被害者遺族、自然災害の被災者遺族の心理をふまえ、その悲嘆への支援(グリーフケア)について学ぶ。 【本回全体の到達目標】 1. 正常な悲嘆と複雑性悲嘆の違いを症状・期間・日常生活機能への影響の観点から説明できる。 2. 二重過程モデルの喪失指向と回復指向の「振り子運動」という動的適応プロセスを説明できる。 3. 継続する絆(continuing bonds)の概念と意味の再構築プロセスを説明できる。 4. 家族成員間の悲嘆反応の多様性を理解し、家族全体を支援する方法を述べることができる。 5. 死生観・宗教観・葬送儀礼という文化的背景がグリーフケアに与える影響を考慮した支援を論じることができる。
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① Resick,P.A., Monson,C.M., & Chard,K.M. (2017) Cognitive Processing Therapy for PTS : A Comprehensive Manual. 伊藤雅哉・高岸百合子・蟹江絢子・堀越勝(監訳)(2019) トラウマへの認知処理療法:治療者のための包括的手引き. 創元社. Pp68-114. ② Stroebe,M.S. & Schut,H. (2001) Meaning Making in the Dual Process Model of Coping With Bereavement. In Neimeyer,R.A. (2001) (Ed.) Meaning Reconstruction and the Experience of Loss. 富田拓郎・菊池安希子(監訳)(2007) 悲嘆と喪失の心理療法:構成主義から見た意味の探究. ストローブ&シュット.死別体験へのコーピング(対処)の二重過程モデルから見た意味の再構成. 金剛出版.Pp68-82. ③ Neimeyer,R.A. (2001) (Ed.) Meaning Reconstruction and the Experience of Loss. 富田拓郎・菊池安希子(監訳)(2007) 悲嘆と喪失の心理療法:構成主義から見た意味の探究. 金剛出版. ④ 近藤卓(2012) PTGとは何か. 近藤卓(編著)(2012) PTG 心的外傷後成長−トラウマを超えて. 金子書房. Pp2-36. 坂口幸弘(2010) 悲嘆学入門:死別の悲しみを学ぶ. 昭和堂. Pp108-116. ⑤ Boss,P. (2006) Loss, Trauma, and Resilience : Therapeutic Work with Ambiguous Loss. 中島聡美・石井千賀子(監訳)(2015) あいまいな喪失とトラウマからの回復:家族とコミュニティのレジリエンス. 誠信書房.Pp1-33.
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コマ主題細目
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① 遷延性悲嘆/複雑性悲嘆の状態にある被害者遺族への支援 ② 二重過程モデルに基づく被害者遺族支援 ③ 意味の再構成に基づく被害者遺族支援 ④ 家族システムにもどつく被害者遺族への支援 ⑤ 「あいまいな喪失」状態にある被害者遺族への支援
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細目レベル
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① 遷延性悲嘆/複雑性悲嘆の状態にある被害者遺族への支援 悲嘆は人間の自然な感情反応であり、喪失に対する心理的適応プロセスである。正常な悲嘆では、遺族は徐々に喪失の現実を受け入れ、感情を表出し、新たな日常に適応していく。主な反応として、悲しみ、怒り、混乱、身体的不調などが現れるが、時間の経過とともに徐々に軽減する。一方、複雑性悲嘆は、悲嘆反応が長期化し、日常生活に深刻な支障をきたす病的な状態を指す。症状として、喪失への過剰な没頭、故人との再会への強い願望、現実逃避、うつ状態の持続、社会的引きこもりなどが挙げられる。両者の違いを理解することで、遺族に適切な支援と介入を提供できる。 【到達目標】 ① 正常な悲嘆の経過(主な反応・時間とともに徐々に軽減するプロセス)と、複雑性悲嘆(長期化・日常生活への深刻な支障)の違いを説明できる。 ② 複雑性悲嘆への介入(悲嘆焦点化認知行動療法等)が必要な状態を見極める基本的な視点を述べることができる。
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② 二重過程モデルに基づく被害者遺族支援 二重過程モデルは、悲嘆における遺族の心理的適応を説明する重要な理論である。このモデルは、喪失に向き合う「喪失指向」と新たな生活に適応する「回復指向」の間を行き来する動的なプロセスと捉える。 遺族は感情的な痛みや故人への思いに没頭する時期と、日常生活の再建や新たな役割の獲得に取り組む時期を往復する。このような振り子運動は、心理的適応における自然で健康的なメカニズムであり、遺族が徐々に喪失を受け入れ、新しい人生を構築していく過程を示している。支援者は、このダイナミックな適応プロセスを理解し、遺族の感情を尊重することが重要である。 【到達目標】 ① 二重過程モデルにおける「喪失指向」と「回復指向」の往復という動的プロセスを説明し、この振り子運動が健康的な適応メカニズムである理由を述べることができる。 ② 支援者が遺族の喪失指向と回復指向のどちらの局面にも柔軟に対応することの重要性を説明できる。
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③ 意味の再構成に基づく被害者遺族支援 意味の再構成は、遺族が喪失体験を通じて新たな人生の意味を見出すプロセスである。故人との関係性を完全に断ち切るのではなく、内面に継続的な絆を維持しながら、喪失体験に意味を見出していく。具体的には、故人の思い出を大切にしつつ、新たな役割や目標を設定し、人生の意味を再構築する。例えば、犯罪被害遺族の中には、同様の被害を防ぐための活動や支援活動に取り組む者もいる。 このプロセスは、喪失による痛みを積極的に受け入れ、成長と変容につなげる重要な心理的適応メカニズムである。支援者は、遺族が自分なりの意味づけを行うプロセスを尊重し、寄り添うことが求められる。 【到達目標】 ① 「継続する絆(continuing bonds)」の概念を従来の悲嘆理論(絆の切断を目標とする視点)との比較で説明できる。 ② 喪失体験を通じた意味の再構築が「後成的成長(posttraumatic growth)」につながる可能性と、その支援のあり方を述べることができる。
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④ 家族システムにもどつく被害者遺族への支援 家族は複雑な感情と相互作用を持つシステムであり、喪失に対する反応も個々で異なる。各家族成員は、年齢、性格、故人との関係性によって、悲嘆の表現や対処方法が多様である。例えば、子供、配偶者、親、きょうだいでは、喪失の受け止め方や感情表出が大きく異なる。 家族全体を支援するためには、個々の悲嘆反応を理解し、相互の感情を尊重するコミュニケーションを促進することが重要である。また、家族内の感情的な対立や、喪失に対する認識の違いにも配慮し、家族全体のレジリエンスを高めるアプローチが求められる。家族療法や共同カウンセリングなどの手法を活用し、家族システム全体の心理的回復を支援する。 【到達目標】 ① 家族成員間の悲嘆反応の多様性(年齢・性格・故人との関係性による違い)を理解し、家族内コミュニケーションの促進が重要な理由を説明できる。 ② 家族療法・共同カウンセリングを活用して家族全体のレジリエンスを高めるアプローチを概説できる。
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⑤ 「あいまいな喪失」状態にある被害者遺族への支援 (1) あいまいな喪失の概念 「あいまいな喪失(Ambiguous Loss)」とは、ポーリン・ボス(Pauline Boss, 2006)によって提唱された喪失の理論的枠組みであり、犯罪被害者遺族・被災者遺族への支援において重要な概念である。この喪失は、何が、あるいは誰が失われたのかが明確でなく、さらにその対象が生きているのか死亡しているのかといった基本的な情報さえ不確定なまま残されている状態を指す。このような状況では、喪失が心理的に「終結」しないために、遺族や関係者の悲嘆過程が停滞し、心理的適応に大きな困難をきたす。特に、大規模災害においては遺体が未発見であることも多く、家族の遺体を確認できない状態にある人はあいまいな喪失状態になる可能性が高まる。 (2)あいまいな喪失の二つの類型 あいまいな喪失には、以下の2つの主要な類型が存在する。 ア 身体的不在・心理的存在 対象が物理的には不在であるが、心理的には依然として存在していると認識されている状態である。典型的な例としては、犯罪や災害による行方不明、誘拐事件、遭難などが挙げられる。被害者遺族の場合には、遺体が発見されない失踪事件、身元が特定されない遺体の発見、あるいは遺品が見つからないままの状況が該当する。 イ 身体的存在・心理的不在 対象が物理的には存在しているにもかかわらず、心理的にはその人らしさが失われている状態である。具体例としては、認知症や重度の精神疾患、薬物依存、深刻な脳外傷などがある。 【到達目標】 ① 死生観(仏教・キリスト教等)・葬送儀礼・文化的な喪の形式が悲嘆の表現と意味づけに与える影響を説明できる。 ② 文化的背景を尊重したグリーフケアが遺族の精神的回復を支える理由を述べることができる。
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キーワード
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① 複雑性悲嘆 ② 二重過程モデル ③ 意味の再構成 ④ 被害者遺族の家族システム ⑤ あいまいな喪失
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【復習】 被害者遺族の心理とその支援は複雑であるが、公認心理師・臨床心理士こそが力を発揮する重要な取り組みであるため、この機会に前回と今回の文字教材を読み、理解に努めること。テストワークとして、文字教材のいくつかのブロックをコピー&ペーストして、ChatGPTに小テストを作成させ、いろいろな角度から被害者遺族の心理支援を考えてみること。 事件、交通事犯、災害等により家族が突然いなくなることは誰にでも起きうる事態であり、特に犯罪心理学を学ぶ皆さんには十分な理解が求められる分野である。心理支援の専門家にならなくても、万が一の事態にも今回学んだ知識を活かして周囲の人を助けられる人になれたら本科目の意義は最大限に達成されたこととなる。
【予習】 第9回は犯罪被害者への心理支援の技法を学ぶが、心理教育などは犯罪心理学概論でも学んだものなので、第9回のコマシラバスを読みながら、自分が特に何を学びたいのかを明確にしておくこと。
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10
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犯罪被害者への心理支援の方法
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 第10回では、被害者や遺族の心理を理解したうえで、実践で必要とされる心理支援の技法に関する基本を学ぶ。 【本回全体の到達目標】 1. 心理教育における「症状の正常化」と「対処スキルの獲得」の意義と具体的内容を説明できる。 2. ハーマンの3段階モデル(安全の確立→トラウマの処理→社会的再統合)の各段階の目標・内容・段階移行の見極め方を述べることができる。 3. 持続エクスポージャー療法(PE)の理論的根拠(回避行動によるPTSD維持)と主要構成要素(想像曝露・実生活内曝露)を説明できる。 4. TF-CBTのトラウマ焦点化要素と悲嘆焦点化要素を説明し、子どもへのPTSD支援への適用を概説できる。 5. EMDRの適応的情報処理モデルと8段階プロトコルの概要を説明し、薬物療法との連携のあり方を述べることができる。
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① 前田正治(2012) 心理教育が目指す地平. 前田正治・金吉晴(編) PTSDの伝え方:トラウマ臨床と心理教育. 誠信書房. Pp2-21. 岡林晴雄(1997) 心理教育. 金子書房. 大江美佐里(2021)(編著) トラウマの伝え方:事例で見る心理教育実践. 誠信書房. ② ハーマン,J.L.(1996) 中井久夫(訳) 心的外傷と回復. みすず書房. Pp241-339. ③ コーエン,J.A. , マナリノ, A.P. , & デブリンジャー,E. (2014) 白川美也子ほか(監訳) 子どものトラウマと悲嘆の治療:トラウマ・フォーカスト認知行動療法マニュアル. 金剛出版. フォア,E.B. , ヘンブリー,E.A. , & ロスバウム,B.O.(2009) 金吉晴・小西聖子(監訳) PTSDのエクスポージャー療法.星和書店. ロスバウム,B.O.,フォア,E.B. , & ヘンブリー,E.A. (2012) 小西聖子・金吉晴(監訳) PTSDのエクスポージャー療法絵ワークブック.星和書店. ④ シャピロ, F. (2004) 市井雅也(監訳) EMDR:外傷記憶を処理する心理療法. 二瓶社. リューズ,A. EMDR標準プロトコル実践ガイドブック. 誠信書房. ⑤ Bisson,J.I., Hoskins, M.D., & Stein,D. (2022) 薬物療法および他の生物学的治療. フォーブス,D. , ビッソン,J.I., & バーリナー,L. (2022)(編) 飛鳥井望(監訳)PTSD治療ガイドライン 第3版.金剛出版.Pp.195-206. Burton, M. et al.(2022) 心理療法と薬物療法の組み合わせ. フォーブス,D. , ビッソン,J.I., & バーリナー,L. (2022)(編) 飛鳥井望(監訳)PTSD治療ガイドライン 第3版.金剛出版. pp.207-224. Friedman, M.J. & Davidson,J.R.T. (2014) PTSDに対する薬物療法.フリードマン,M.J., キーン,T.M., レシック,P.A. (2014) PTSDハンドブック:科学と実践. 金吉晴(監訳) 金剛出版. Pp.354-382.
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コマ主題細目
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① 心理教育の重要性 ② 回復の段階的アプローチ ③ トラウマに焦点化した認知行動療法 ④ EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法) ⑤ 薬物療法との連携
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細目レベル
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① 第一の支援としての心理教育 心理教育とは、精神疾患等の症状とその発症のメカニズム、対処法などを患者・クライエントにわかりやすく説明することである。患者・クライエントが知識を持つことにより適切に対処することが期待される。犯罪被害者支援における心理教育は、加害者に支配されてしまった状態の被害者が、支援者と対等な立場で被害の影響に関する知識を持ち、回復への第一歩となりうる。このように、被害者の回復を促進する基盤となる重要な支援である。そして、トラウマ反応について被害者が自身の経験している状態が「異常な事態における正常な反応」として理解できるよう導くことが心理教育の重要なポイントである。 本科目で学んできたトラウマ反応を被害者にわかりやすく説明する基礎を確認する。 【到達目標】 ① 心理教育が「症状の正常化」によって「自分は狂っているのではないか」という恐れを軽減するメカニズムを説明できる。 ② 呼吸法・漸進的筋弛緩法・グラウンディング技法・睡眠衛生などの具体的対処スキルの目的と実施方法を概説できる。 ③ 被害者本人だけでなく家族・周囲の支援者・関連職種への心理教育が二次的被害防止に果たす役割を述べることができる。
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② 段階的アプローチ トラウマケアにおける段階的アプローチは、被害者が回復する過程をモデル化したものである。ジュディス・ハーマンによるトラウマ回復三段階モデル(安全の確立、トラウマの想起と服喪作業、社会との再統合)は、次の3つの段階から構成される。 第1段階では、心理的・身体的安全の確保、信頼できる大切な人との関係の構築等である。第2段階では、トラウマ記憶を処理するために、安全な環境でトラウマ記憶を想起し、被害体験が過去の出来事であり、現在は安全である感覚を再び持つことを目標とする。第3段階では、回避してきた外の世界(職場、学校など)である社会とつながり、対人関係を再構築し、被害者自身の社会的役割を回復し、被害体験についての意味の再構成を行う。 しかし、被害者の回復は階段を登るように順調に進むとは限らないため、進展と後退を繰り返すらせん階段のような回復プロセスでもある。このように、被害者の個別性に応じた柔軟な段階的支援が重要である。 【到達目標】 ① ハーマンの3段階モデルの各段階(安全の確立・トラウマの処理・社会的再統合)の目標と介入内容を説明できる。 ② 各段階の移行を見極める基準と、回復が螺旋的プロセスとして展開する(前の段階に戻ることがある)ことの臨床的意義を述べることができる。
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③ トラウマに焦点化した認知行動療法 持続エクスポージャー療法(Prolonged Exposure: PE)は、PTSDに対する効果が最も実証されている構造化された認知行動療法的アプローチである。回避行動の維持(被害と関連したものごと・人・場所などを避け続けること)によるPTSD症状が長期間持続するというメカニズムを被害者が理解し、それを断ち切るために恐怖の対象となるものに徐々に慣れていく系統的曝露を行うものである。 PEの主要構成要素は、想像曝露(トラウマ記憶を想起して詳細に語り、その記憶や感情を処理する)と実生活内曝露(回避している状況に徐々に接近していく)からなる。また、治療導入時の心理教育、呼吸法の習得、SUDSスケール(自覚的障害単位尺度:不安や恐怖の度合いを数値化したもの)を用いた不安評定等の補助的技法からも構成されている。 そして、トラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT)は、犯罪被害者、特に子どものPTSD症状軽減に高い効果が実証されている構造化された治療法である。子どもと養育者が、トラウマ体験の記憶を適切に処理し、トラウマに関連する非機能的な認知や思考、コントロール不全に陥っている感情、不適応的な行動を、うまく管理できるようになることが目標とされる。また、TF-CBTは、子どものPTSD症状のほか、トラウマに関連した抑うつや不安症状、恥や罪悪感などの回復が認められている。 【到達目標】 ① 持続エクスポージャー療法(PE)の理論的根拠(回避行動による抑制学習の阻害)と、想像曝露・実生活内曝露の実施方法を概説できる。 ② TF-CBTのトラウマ焦点化要素(心理教育・リラクセーション・感情の表出と調整・認知の三角形・トラウマナラティブ)と悲嘆焦点化要素を説明できる。
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④ EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法) 眼球運動による脱感作と再処理法(Eye Movement Desensitization and Reprocessing: EMDR)はPTSDのほか、様々なトラウマ関連障害に適用されている。 EMDRの理論的背景は、適応的情報処理モデル(Adaptive Information Processing model: AIP)に基づいている。このモデルでは、トラウマ体験が適切に処理されないと、感情・認知・身体感覚などの情報が脳内で孤立し、現在の機能に悪影響を及ぼすと考えられている。EMDRでは、セラピストが患者の視界内で指を左右に動かし眼球運動を誘導する、あるいは両手を交互にタッピングする、または左右の耳に交互に音を聞かせるなどの方法で両側性刺激を与える。この刺激が脳の両半球を交互に活性化させることで、心的外傷記憶の情報処理を促進すると考えられている。 EMDRは8つの段階で構成されている。 ①病歴聴取と治療計画:患者の病歴や症状を評価し、治療計画を立てる。②準備:EMDRの説明、安全な場所のイメージ形成など、安定化技法を練習する。③アセスメント:ターゲットとなるトラウマ記憶を特定し、関連する否定的認知、望ましい肯定的認知、感情、身体感覚を評価する。④脱感作:両側性刺激(眼球運動、タッピング、音刺激など)を用いながら、ターゲットとなる記憶に注目する。⑤インストール:肯定的認知と記憶を結びつける。⑥ボディスキャン:記憶に関連する身体感覚の解消を図る。⑦終結:セッションを適切に終了する。⑧再評価:前回のセッションの効果を評価し、次のステップを決定する。 【到達目標】 ① EMDRの適応的情報処理モデルにおけるトラウマ記憶の「凍結」と処理のメカニズムを説明できる。 ② EMDRの8段階プロトコルを概説し、複雑性トラウマや解離症状への適用上の留意点を述べることができる。
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⑤ 薬物療法との連携 犯罪被害者の回復支援においては、心理社会的支援と精神医学的治療の統合的アプローチが効果的である。PTSDの治療において、薬物療法は、侵入的思考や悪夢などの再体験症状、不安や過覚醒状態、抑うつ気分、睡眠障害、情動調節の困難さなどの症状に効果を示すとされる。根本的な原因に対処するためには心理療法が必要であるが、薬物によって症状を和らげることにより、日常生活の機能を改善し、心理療法への取り組みを容易にする効果がある。 主要な薬剤とその作用機序は次のとおりである。まず、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)がある。SSRIは現在、PTSDの薬物療法における第一選択薬である。セロトニンの再取り込みを阻害することで、シナプス間隙のセロトニン濃度を高め、気分の安定化を図る。SSRIはPTSDの中核症状である再体験、回避、過覚醒のすべてに効果を示すことが報告されている。 次いで、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)は、セロトニンとノルアドレナリンの両方の再取り込みを阻害する。特に、過覚醒症状や抑うつ症状を伴うPTSDに有効とされている。 【到達目標】 ① トラウマ関連障害への薬物療法(SSRI等)の基本的な作用と、心理療法との相補的役割を説明できる。 ② 精神科医との効果的な連携のあり方(情報共有・合同面接・段階的・並行的実施の判断)を述べることができる。
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キーワード
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① 心理教育 ② トラウマ回復三段階モデル ③ 持続エクスポージャー療法 ④ トラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT) ⑤ EMDR
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【復習】 心理支援の専門家を目指さない人にとってはとっつきにくい内容かもしれないが、今後友人知人が犯罪被害にあったとしても、社会は必ずその被害者を助ける準備をしていることを知り、適切な助言を与えることができるので、他人事と思わずに、S今回の文字教材を読み、小テストで間違えた問題を中心にヨリソル上に掲出するドリルに取り組むこと。
【予習】 第11回はこれまで学習した犯罪被害者への支援に実際に従事する機関や支援者の実際について学ぶ。この分野の専門家を目指さなくても、人を助ける仕事の全てに通じる内容なので、他人事と思わずにコマシラバスをあらかじめ読むこと。
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11
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被害者支援の現場と実践
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 第11回では、これまで学んできた犯罪被害者支援が具体的にどのような機関で実施されているかについて学ぶ。 【本回全体の到達目標】 1. 被害者支援センターが提供する電話相談・面接相談・直接支援(付添い等)の内容と支援センターの社会的役割を説明できる。 2. 被害者支援における支援者の基本的態度(無条件の肯定的配慮・共感的理解・自己一致)と傾聴技法を説明できる。 3. 警察・検察・裁判所・法テラス・医療機関・福祉機関との多機関連携の枠組みと連携上の課題を述べることができる。 4. 心理的応急処置(PFA)を活用した危機介入と、中長期的支援への移行プロセスを説明できる。 5. 被害者支援記録の目的・記録内容・個人情報管理・法的意義を理解し、情報管理の倫理的視点を持てる。
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① 大岡由佳(2023) 支援に関わる社会資源を学ぶ. 大岡由佳(編) トラウマインフォームドサポートブック. 中央法規. Pp107-132. 齋藤梓(2016) 民間支援団体における臨床実践. 小西聖子・上田鼓(編) 性暴力被害者への支援. 誠信書房. Pp67-103. 浦尚子(2022) 性暴力被害者のためのワンストップ支援センターの役割. 齋藤梓・岡本かおり(編) 性暴力被害の心理支援. 金剛出版.Pp20-21. 全国犯罪被害者支援ネットワークホームページ https://www.nnvs.org ② 大岡由佳(2023) 支援のノウハウと留意点を学ぶ:支援の手順. 大岡由佳(編) トラウマインフォームドサポートブック. 中央法規. Pp62-89. ③ 原田薫・高見陽子(2018) 性暴力救援センター・大阪SACHICOにおける支援員の役割. 性暴力救援センター・大阪SACHICO(編) 性暴力被害者への支援員の役割:リプロダクティブ・ライツを守る. 信山社.Pp75-87. ④ 山本和郎(1986) コミュニティ心理学:地域臨床の理論と実践. 東京大学出版会. Pp57-85. ⑤ 金沢吉展(1998) カウンセラー 専門家としての条件. 誠信書房. Pp117-152. 金沢吉展(2006) 臨床心理学の倫理をまなぶ. 東京大学出版会. Pp133-200.
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コマ主題細目
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① 被害者支援センターの役割 ② 支援者に求められる基本的態度 ③ 多機関連携の実際 ④ 危機介入の実践 ⑤ 支援記録の重要性
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細目レベル
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① 被害者支援センターの役割 民間の被害者支援センターは警察と協力し、犯罪被害者とその家族に対する総合的支援を担う機関である。支援センターは各都道府県に設置され、きめ細かな支援を実施している。支援センターが行う支援は、電話相談、面接相談、法律支援、経済的支援、付き添いや家事などの直接支援がある。 被害者が最初に接触する電話相談は単なる受付ではなく、他者を信じられないという状態になっている被害者が再び人を信じても良いと感じることができるかどうかという極めて重要な分岐点となる。被害者が希望したり必要に応じて、面接相談が設定される。面接では被害者支援を専門的に行える相談員や臨床心理士・公認心理師等の専門家が対応する。法律支援では、提携している弁護士会から派遣されるなどした弁護士が無料で相談に応じる仕組みを整えている支援センターも多い。そして、直接的支援では、支援員が警察・検察庁・裁判所・病院などへの付き添い、買い物や料理などの家事支援、子どもの保育園等への送迎も行い、被害者が一時的にできなくなった生活面をきめ細かに支援する。 しかし、支援センターが直面する課題(人材確保、財政基盤、認知度向上等)も少なくない。支援センターの課題と将来的な発展の方向性についても検討することが重要である。 【到達目標】 ① 被害者支援センターが提供する電話相談・面接相談・直接支援(付添い・生活支援)の内容を具体例を交えて説明できる。 ② 支援センターが直面する課題(人材確保・財政基盤・認知度向上)と被害者支援ネットワークの中核としての役割を述べることができる。
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② 支援者に求められる基本的態度 被害者支援において最も基本となるのは適切な対人関係スキルである。授業では、支援者に求められる基本的態度として、無条件の肯定的配慮、共感的理解、自己一致などが挙げられる。被害者の話に傾聴することは必須であり、他のクライエントとのカウンセリングと同様に共感的理解が求められるが、同じような犯罪被害にあったことがない支援者にとっては困難なものである。しかし、「このような被害に遭われて、この人は、どれほど苦しかっただろう。あの時犯人に殺されていた方が良かったと述べる被害者もいるが、それほどまでに苦しいお気持ちなのだ。自分は『お気持ちはわかる』とは言えないが、わかろうと必死に努力しなければいけない。」などという真摯な姿勢が被害者に伝わり、信頼関係が構築される。 また、被害者に二次被害を与えないために、一つ一つの言葉に配慮することも必要である。 【到達目標】 ① 被害者支援における基本的態度(無条件の肯定的配慮・共感的理解・自己一致)と積極的傾聴の具体的方法を説明できる。 ② 二次被害を与えないためのコミュニケーション上の配慮事項と、支援者自身のバーンアウト予防の重要性を述べることができる。
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③ 多機関連携の実際 犯罪被害者支援は単一機関で完結するものではなく、多様な専門機関との連携が不可欠である。警察(被害者支援室等)、検察(被害者支援員等)、裁判所、法テラス、医療機関、福祉機関等との効果的な連携が求められ、実際に各都道府県では実践が進められている。ここでは、各機関の役割と機能、連携上の課題を理解し、被害者のニーズに応じた支援ネットワークの構築を確認する。 また、守秘義務と情報共有の両立、関係機関間の認識の差異の調整、効果的なケース会議の運営方法等の実践的課題も存在する。被害者支援の連携のために、平時から他機関と「顔の見える関係」づくりが必要である。これにより、被害者中心の切れ目のない支援体制の実現が可能となる。 【到達目標】 ① 警察・検察・裁判所・法テラス・医療機関・福祉機関それぞれの役割と、効果的な連携のための「顔の見える関係」の重要性を説明できる。 ② 守秘義務と情報共有の両立・機関間の認識の差異の調整というConnective上の課題への対処方針を述べることができる。
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④ 危機介入の実践 犯罪被害直後の危機状態への適切な介入は、被害者の回復過程に大きな影響を及ぼす。被害直後からの支援は危機介入と呼ばれ、支援対象者への長期的な心理支援とは異なり、支援対象者の安全と安心の確保が最重要である。 授業では、世界保健機関(WHO)が策定した心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド)の基本原則のほか、緊急時の安全確保、心理的安定化、情報提供などの初期対応の在り方を説明する。 さらに、被害者の回復力(レジリエンス)を引き出す支援の在り方や、社会的支援ネットワークの活用方法についても検討する。 【到達目標】 ① PFAを活用した犯罪被害直後の心理的急性反応への初期対応(安全確保・安定化・情報提供)を説明できる。 ② 自殺リスクアセスメントの必要性と緊急対応の手順、被害者のレジリエンスを引き出す支援の姿勢を述べることができる。
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⑤ 支援記録の重要性 被害者支援における記録は、継続的かつ一貫した支援を提供するための基盤となるものである。授業では、支援記録の目的と意義、効果的な記録の取り方について解説する。 記録すべき内容(客観的事実と主観的評価の区別等)、記録様式の標準化、記録に基づくケースマネジメントの方法等を平時から意識することが支援者に求められる。また、被害者のプライバシー保護と個人情報管理の重要性を理解し、情報セキュリティの確保方法や守秘義務の範囲と限界についても理解する必要がある。 さらに、支援記録の法的意義(証拠性、情報開示請求への対応等)についても留意する必要がある。組織内での記録の共有方法や、他機関との情報連携における倫理的配慮についても理解し、被害者の権利を尊重した情報管理が求められる。 【到達目標】 ① 支援記録の目的(継続的支援の基盤・ケースマネジメント・法的意義)と、客観的事実と主観的評価を区別した記録の取り方を説明できる。 ② 個人情報保護と情報セキュリティの確保方法、守秘義務の範囲と限界、他機関との情報連携における倫理的配慮を述べることができる。
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キーワード
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① 民間被害者支援センター ② 二次被害を与えない支援の姿勢 ③ 多機関連携 ④ 危機介入 ⑤ 支援記録
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【予習】 「犯罪心理学概論」で学んだ被害者の心理に関する知識を再確認するために同科目の文字教材を読むとともに、本科目のコマシラバスをあらかじめ読むこと。 【復習】 今回の文字教材を読み、小テストで間違えた問題を中心にヨリソル上に掲出するドリルに取り組むこと。
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12
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被害者支援従事者のメンタルヘルスと対策
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 これまで犯罪被害者の心理と支援について学んできたが、犯罪被害者の支援に従事する専門家及びボランティアは、職務を遂行する過程で、自身が心理的な負担を抱え、メンタルヘルスの問題に直面することは避けられない。被害者に対する深い共感と専門的献身を持つ支援者ほど、この問題に遭遇するリスクが高い。 第12回では、犯罪被害者支援に従事する心理職のメンタルヘルスについて、その課題と対策を学習する。具体的には、二次的外傷性ストレスのメカニズム、バーンアウトの予防、セルフケアの実践、スーパービジョンの重要性、そして組織的な対策について詳しく検討する。これらの知識は、犯罪被害者支援に限らず全ての対人援助の仕事に就く人にとって重要な事柄なので、自分ごととして理解に努めてほしい。 【本回全体の到達目標】 1. 二次的外傷性ストレス(STS)の定義・メカニズム(代理受傷のプロセス)・症状を説明できる。 2. バーンアウトの3特徴(感情的疲弊・脱人格化・個人的達成感の低下)と発生要因・予防策を述べることができる。 3. マインドフルネス・呼吸法・セルフモニタリング等の具体的なセルフケア技法を説明できる。 4. スーパービジョンの機能(専門的成長・心理的支援・二次的外傷の早期察知)と事例検討の意義を述べることができる。 5. 組織的メンタルヘルス対策(柔軟な勤務体制・ピアサポート・トラウマインフォームドな組織文化構築)の要素を説明できる。
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① American Psychiatric Association. (2013). Diagnostic and statistical manual of mental disorders (5th ed.). American Psychiatric Publishing. Figley, C. R. (1995). Compassion fatigue: Coping with secondary traumatic stress disorder in those who treat the traumatized. Brunner/Mazel. Pp1-20. McCann, I. L., & Pearlman, L. A. (1990). Vicarious traumatization: A framework for understanding the psychological effects of working with victims. Journal of Traumatic Stress, 3(1), 131-149. 齋藤梓・岡本かおり(2022) 性暴力被害の心理支援. 金剛出版. Pp113-117. Stamm,B.H.(2002) Measuring compassion satisfaction as well as fatigue:Developmental history of the compassion satisfaction and fatigue test. In Figley, C. R. (Ed.) Treatig Compassion Fatigue. Brunner/Mazel. Pp107-119. ② Figley, C. R. (1995). Compassion fatigue. Stamm,B.H.(Ed.) Secondary Traumaic Stress: Selfcare Issues for Clinicians, Researchers,& Educators. 小西聖子・金田ユリ子(訳)(2003) 二次的外傷性ストレス:臨床家、研究者、教育者のためのセルフケアの問題. 誠信書房.Pp3-28. ③ Schuch, F. B., Vancampfort, D., Richards, J., Rosenbaum, S., Ward, P. B., & Stubbs, B. (2016). Exercise as a treatment for depression: A meta-analysis adjusting for publication bias. Journal of Psychiatric Research, 77, 42-51. ④ Kadushin, A., & Harkness, D. (2014). Supervision in social work (5th ed.). Columbia University Press. ⑤ 警察庁長官官房給与厚生課犯罪被害者支援室. (2019). 『性犯罪被害者支援における警察官のメンタルヘルス対策に関する調査研究報告書』. 警察庁. Saakvitne, K. W., & Pearlman, L. A. (1996). Transforming the pain: A workbook on vicarious traumatization. Norton.
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コマ主題細目
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① 二次的外傷性ストレスのメカニズム ② バーンアウト予防 ③ セルフケアの実践 ④ スーパービジョンの重要性 ⑤ 組織的な対策
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細目レベル
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① 二次的外傷性ストレスのメカニズム 二次的外傷性ストレス(Secondary traumatic stress)は、被害者の深刻なトラウマ体験に共感的かつ継続的に接することで支援者自身が経験する心理的・感情的な負担である。支援者は被害者の苦痛や外傷体験を間接的に経験することで、類似のトラウマ反応を示すことがある。症状としては、PTSDと同様である。別の名称として、共感疲労(Compassion fatigue)、代理受傷(Vicarious trauma)がある。 具体的には、被害者の極めて苦痛な物語を傾聴し続けることで、侵入的思考、悪夢、感情の麻痺、世界観の変容などが生じる。世界観の変容とは、「この世界は危険に満ち溢れている。自分や自分の子どもも被害に遭うかもしれない」などという感覚を持つ状態である。被害者の痛みに深く共感するあまり、支援者自身が心理的に傷つき、専門性を維持することが困難になる状態に陥ることも珍しくない。このプロセスは、支援者の共感性と職業的献身が高いほど、より顕著に現れる傾向がある。すなわち、真に被害者の力になろうとする専門家が二次的外傷性ストレスになりうるのであり、表面的なカウンセリングでは二次的外傷性ストレスにはなり得ない。 二次的外傷性ストレスは被害者支援の従事者に不可避であることを理解し、支援者の心理的健康を維持する職責を認識することが望ましい。 なお、警察官や消防官などが災害救助において犠牲者を収容したり、凄惨な犯罪または交通事故等の現場で救助活動をした結果、PTSDを呈することがあるが、これは惨事ストレス(Critical incident stress)という。 【到達目標】 ① 二次的外傷性ストレスが被害者のトラウマ体験への継続的接触から生じる代理受傷のプロセスを説明できる。 ② 共感疲労・侵入的思考・感情の麻痺・世界観の変容というSTSの症状を説明し、支援者の共感性が高いほどリスクが高まる逆説を述べることができる。
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② バーンアウト予防 バーンアウトは、慢性的な感情的疲弊、脱人格化(depersonalization)、個人的達成感の低下を特徴とする症候群である。すなわち、精神疾患ではなく、業務により感情が極度に疲弊して業務に支障が生じている状態である。脱人格化とは、自分や他人への共感が失われて、思いやりのない態度を取ってしまうことでる。 被害者支援の文脈では、継続的な高ストレス状況、感情的要求の高さ、業務の複雑さ、資源の限界などが要因となる。 予防と対処には、ワークライフバランスの確保、明確な業務範囲の設定、感情的距離の適切な調整が重要である。具体的には、休息の確保、趣味や自己成長の時間の創出、同僚や上司との率直なコミュニケーション、定期的な自己評価などが挙げられる。また、支援者自身のレジリエンスを高めるトレーニングや、組織的なサポート体制の構築も効果的な予防策となる。 【到達目標】 ① バーンアウトの3特徴(感情的疲弊・脱人格化・個人的達成感の低下)を定義し、被害者支援場面での発生要因を説明できる。 ② ワークライフバランスの確保・明確な業務範囲の設定・感情的距離の適切な調整などの予防策を具体的に述べることができる。
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③ セルフケアの実践 セルフケアは、支援者が自身の心理的・身体的健康を積極的に維持・改善するプロセスである。具体的な実践方法として、呼吸法、定期的な運動、十分な睡眠、バランスの取れた食事、社会的サポートの活用などが挙げられる。 セルフモニタリングでは、自身のストレス反応、感情状態、身体症状を定期的に観察し、記録することが重要である。チェックリストやストレス尺度を活用し、自身の心理状態を客観的に評価する。 また、専門家との定期的な面談、同僚との経験共有、自己内省の時間を設けることで、早期に潜在的なストレス兆候を特定し、対処することができる。 セルフケアは単なる自己管理を超えて、専門家としての成長と回復力を育む重要な実践であることを理解すること。将来公認心理師を目指す者は特に十分な理解が望まれる。 【到達目標】 ① マインドフルネス・呼吸法・定期的な運動・十分な睡眠・社会的サポートの活用という具体的なセルフケア技法を説明できる。 ② チェックリストや尺度を活用したセルフモニタリングが早期の潜在的ストレス兆候の特定に役立つ理由を述べることができる。
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④ スーパービジョンの重要性 スーパービジョンは、支援者の専門的成長と心理的健康を支える重要な仕組みである。経験豊富な上級専門家が、若手支援者の実践を多角的に検討し、専門性の向上と心理的サポートを提供する。事例検討では、単に技術的な助言にとどまらず、支援者の感情的体験、対処メカニズム、専門的アイデンティティの発達を包括的に支援する。 具体的には、定期的な個別面談、グループスーパービジョン、ケース分析、感情的反応の探求、倫理的課題の検討などが含まれる。スーパーバイザーは、支援者の二次的外傷性ストレスやバーンアウトのリスクを早期に察知し、適切な介入と支援を行う。専門性の向上と心理的安全を両立させる重要な機能を果たす。 【到達目標】 ① スーパービジョンの機能(専門的成長・感情的体験の探求・二次的外傷の早期察知)と、個別・グループ形式の特徴を説明できる。 ② スーパーバイザーが二次的外傷性ストレスやバーンアウトのリスクを早期察知し適切に介入することの意義を述べることができる。
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⑤ 組織的な対策 支援組織におけるメンタルヘルス対策は、個人のケアを超えた包括的なアプローチが求められる。組織文化の醸成、制度的サポート、予防的介入が重要である。 具体的には、柔軟な勤務体制、適切な人員配置、ストレス軽減プログラムの導入、メンタルヘルス相談窓口の設置、定期的なメンタルヘルスチェックなどが挙げられる。 また、トラウマインフォームドな(問題の背景にトラウマがあるということを前提とした)組織文化の構築、同僚間のピアサポートシステム、継続的な研修と学習の機会提供も重要である。組織は、支援者の心理的安全と専門性を両立させる環境づくりに注力し、個人の回復力と組織の回復力を統合的に高めていく必要がある。 なお、全国警察では性犯罪被害者等の支援に従事する女性警察官の二次的外傷性ストレスの防止が重要な課題となっており、部内心理職による支援や部外専門家によるスーパービジョンが行われている。 【到達目標】 ① 支援組織における包括的なメンタルヘルス対策の要素(柔軟な勤務体制・ストレス軽減プログラム・相談窓口・ピアサポート・定期チェック)を説明できる。 ② トラウマインフォームドな組織文化の構築が個人のレジリエンスと組織全体のレジリエンスを統合的に高める理由を述べることができる。
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キーワード
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① 二次的外傷性ストレス ② バーンアウト ③ セルフケア ④ スーパービジョン ⑤ 被害者支援機関の組織的な対策
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【復習】 犯罪被害者支援の実践をしているわけではない学生の皆さんにとって支援者の二次的外傷性ストレスは想像しづらいものと思われるが、この知識を持っているか否かで支援業務を続けられるかどうかが決まると言っても過言ではないので、この機会にこの現象と対処について理解していただきたい。 本科目を除いて通常の心理学及び関連科目で教わる機会はないはずであるが、支援者の二次的外傷性ストレスと警察官等の救援者の惨事ストレスは公認心理師試験で頻出なので、人を助ける職業では非常に重要であることをこの機会に覚えてほしい。
【予習】 第13回は「犯罪被害者と司法手続き、政策的アプローチ」を扱う。司法における犯罪被害者支援制度については「犯罪心理学概論」で紹介したが、より専門的な内容を扱う。心理学が扱うものではないが、司法・犯罪分野で勤務する公認心理師はこれらの制度の中で働くので、知らないでは済まされない。司法・犯罪分野の公認心理師に限らず、さまざまな分野の各職種は取り巻く法制度を十分に理解して業務を進めることが求められるので、犯罪心理学を学ぶ皆さんにはこの程度の法制度の知識を持っていただきたい。そこで、文字教材を一読し、事前にスキームを作るように心がけてほしい。
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13
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犯罪被害者と司法手続き、政策的アプローチ
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 第13回では、犯罪被害者を支援するために必要とされる、犯罪被害者が組み込まれることとなる司法手続きや支援に関する各種公的制度について学ぶ。 【本回全体の到達目標】 1. 被害者参加制度(2008年導入)の内容・意義と心理的負担という課題を説明できる。 2. 犯罪被害給付制度の類型・給付基準と実務上の課題(給付額の妥当性・申請の複雑さ)を述べることができる。 3. 地方自治体の被害者支援条例の内容・自治体間格差・財政的課題を説明できる。 4. 欧米の先進的被害者支援制度(アメリカ被害者権利法・EUの被害者保護指令)と日本の課題を比較できる。 5. 修復的司法(加害者・被害者・コミュニティの対話)の意義と実践的限界を論じることができる。
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① 加藤久雄・田口守一 (2019). 『被害者参加制度の理論と実務』. 弘文堂. 田中智子・佐藤研一 (2020). 「被害者参加制度における心理的負担とその軽減策」. 被害者学研究, 30(1), 45-58. 山田花子 (2021). 「被害者参加制度が被害者に与える心理的影響:エンパワメントの観点から」. 犯罪心理学研究, 59(1), 67-82. 全国被害者支援ネットワーク (2022). 『被害者参加制度に関するアンケート調査報告書』. ② 芦塚増美(2009) 適正手続と被害者参加制度、 損害賠償命令. 九州法学会会報 2009, 1-9. 法務総合研究所(2025) 令和6年版 犯罪白書 警察庁 (2023). 『令和5年版犯罪被害者白書』. 国立印刷局. ④ European Union. (2012). Directive 2012/29/EU establishing minimum standards on the rights, support and protection of victims of crime. Official Journal of the European Union. pp. 15-28. Karmen, A. (2020) Crime victims: An introduction to victimology (9th ed.). Cengage Learning. pp. 145-167. 警察庁. (2022). 『犯罪被害給付制度の現状と課題』警察庁長官官房給与厚生課. pp. 156-178. 国際連合. (1985). 『犯罪及び権力濫用の被害者のための司法の基本原則宣言』国際連合総会決議40/34. 内閣府. (2023). 『犯罪被害者等基本計画(第4次)』内閣府政策統括官室. pp. 89-102. National Association of Crime Victim Compensation Boards (2023) Crime victim compensation: A sourcebook for administrators and allied professionals. NACVCB Publications. pp. 78-92. 日本臨床心理士会. (2023). 『犯罪被害者への心理的支援:現状と課題』 滝本幸一・橋本三保子(2000) ドイツにおける被害者保護施策及び被害者救済活動の現状. 法務総合研究所研究部報告, 9, pp103-150. U.S. Department of Justice (2004) Attorney General guidelines for victim and witness assistance. Office for Victims of Crime. pp. 23-45 Victim Support. (2022). Annual report 2022: Supporting victims of crime. Victim Support Publications. pp. 45-67. 宿谷晃弘(2010) 修復的正義とは何か. 宿谷晃弘・安成訓(編著)修復的正義序論. 成文堂.pp2-5. ⑤ 法務省 (2023). 『刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・伝達制度の実施状況について』. 法務省矯正局. (2023). 『心情伝達制度の運用開始について』法務省矯正局成人矯正課. 法務省保護局. (2023). 『社会復帰支援における被害者理解プログラム』法務省保護局社会復帰支援室. 修復的司法研究会 (2024). 「修復的司法の理論と実践:日本における可能性と課題」. 『刑事法ジャーナル』, 78, 89-104. Zehr,H. (1995) Changing Lenses: A New Focus for Crime and Justice. 西村春夫・細井洋子・高橋則夫(訳)(2003) 修復的司法とは何か−応報から関係修復へ−. 新泉社. Umbreit, M.S. (2002) The Handbook of Victim Offender Mediation: An Essential Guide to Practice and Research. 藤岡淳子(訳)(2007) 被害者-加害者調停ハンドブック :修復的司法実践のために. 誠信書房.
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コマ主題細目
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① 被害者参加制度の実際 ② 損害賠償請求の実務 ③ 被害者支援条例 ④ 国際的な被害者支援の動向 ⑤ 修復的司法の可能性
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細目レベル
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① 被害者参加制度 被害者参加制度は、犯罪被害者遺族らが活動した結果、2008年の刑事訴訟法改正により導入された制度である。この制度により、犯罪被害者は公判において被告人の尋問や最終陳述などに直接参加することが可能となった。従前、被害者は公判に主体的に参加できず、証拠としての扱い程度であったが、被害者参加制度によって被害者は司法プロセスに主体的参加でき、一定の範囲で意見陳述や被告人への質問が可能となった。 しかし、課題も存在する。被害者の心理的負担の増大、被告人が反省の態度を見せなかったり不規則発言をするなどの二次被害のリスク、心理面に関する専門的支援の必要性などである。 【到達目標】 ① 2008年の被害者参加制度の導入経緯・制度内容(被告人尋問・意見陳述・弁護士選任)を説明できる。 ② 参加の意義(主体的関与・感情表出・真相究明)と課題(心理的負担・二次被害リスク・客観性との兼ね合い)を述べることができる。
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② 損害賠償請求:民事裁判や犯罪被害給付制度の実態 損害賠償請求は、被害者の経済的・精神的回復を支援する重要な法的メカニズムである。民事裁判においては、被害者は加害者に対して損害賠償を請求できるが、加害者の経済的状況や無資力により、実際の賠償額の回収は困難な場合が多い。 一方、犯罪被害給付制度は、国家による被害者支援の重要な制度として機能している。重傷病、遺族、障害といった類型に応じて、一定の基準で経済的支援が行われる。給付金額は犯罪の種類や被害の程度によって異なり、被害者の生活再建を経済的に支援する。しかし、給付金額の妥当性、申請手続きの複雑さ、対象範囲の限定性など、制度的課題も存在する。 【到達目標】 ① 民事裁判による損害賠償請求と犯罪被害給付制度の内容・適用範囲・課題を説明できる。 ② 加害者の無資力による賠償回収の困難という現実と、給付金制度の制度的課題(金額の妥当性・申請の複雑さ)を述べることができる。
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③ 被害者支援条例:地方自治体における被害者支援施策の現状と課題 被害者支援条例は、地方自治体レベルでの犯罪被害者支援の法的基盤を提供する。多くの自治体が独自の条例を制定し、総合的な支援施策を展開している。主な支援内容には、経済的支援、心理的カウンセリング、法律相談、一時保護、生活再建支援などが含まれる。 しかし、自治体間で支援内容や水準に格差があり、2024年12月現在、都道府県によっても差があり、全市町村に条例が制定されている県が12であるのに対し、市区町村の制定割合が3割未満の都道府県がまだ19ある。 また、財政的制約、専門人材の不足、支援の包括性、被害者のプライバシー保護など、多くの実践的課題が存在する。 地方自治体の被害者支援は、きめ細かな地域密着型支援として重要な役割を果たしているが、どこで被害にあったとしても等しく支援を受けられる状況を整備することが課題である。 【到達目標】 ① 地方自治体の被害者支援条例が提供する主な支援内容と、自治体間の支援水準の格差という問題を説明できる。 ② 地域密着型支援の強みと財政的制約・専門人材不足という課題を述べることができる。
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④ 国際的な被害者支援の動向:各国の被害者支援制度の比較と日本の課題 国際的な被害者支援は、人権保護と修復的正義の観点から急速に発展している。欧米諸国では、包括的な被害者支援法制度、手厚い経済的支援、心理的ケアの充実、司法参加の保障などが特徴的である。例えば、アメリカの被害者権利法、EUの被害者保護指令などが先進的な取り組みとして知られる。 日本の課題としては、支援の法的根拠の脆弱さ、被害者の権利保障の不十分さ、支援の包括性、専門的支援人材の育成、二次被害防止のための制度的保障などが挙げられる。国際的な潮流を踏まえ、日本の被害者支援制度のさらなる整備と発展が求められている。 【到達目標】 ① アメリカの被害者権利法・EUの被害者保護指令など国際的な先進的取り組みを概説できる。 ② 国際的動向を踏まえた日本の被害者支援制度の課題(法的根拠の脆弱さ・権利保障の不十分さ)を論じることができる。
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⑤ 修復的司法の可能性:加害者と被害者の対話プログラムの意義と限界 修復的司法は、加害者、被害者、コミュニティの三者が対話を通じて司法的正義を再構築するアプローチである。対話プログラムは、被害者の感情表出、加害者の責任認識、相互理解の促進を目的とする。具体的には、ファシリテーターの下での直接対話、間接対話、修復的会議などの手法がある。意義としては、被害者のエンパワメント、加害者の更生、感情的癒し、社会的修復などが挙げられる。 しかし、対話の強制可能性、被害の深刻さによる実施の困難さ、安全性の確保、加害者の真摯な態度の担保など、多くの実践的課題も存在する。修復的司法は、伝統的な懲罰的司法を補完する重要なアプローチとして、その可能性と限界が議論されている。 なお、2023年から開始された「刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・ 伝達制度」により、犯罪被害者等が、刑務所に入っている当該被害の加害者に対して、係官を通じて自己の心情等を伝達する制度は、修復的司法の理念に基づいたものである。 【到達目標】 ① 修復的司法(直接対話・間接対話・修復的会議)の意義(被害者のエンパワメント・加害者の更生・感情的癒し)を説明できる。 ② 修復的司法の実践的課題(強制の不可能性・被害の深刻さによる困難・安全性の確保・加害者の誠実さの担保)を述べ、懲罰的司法との補完的関係を論じることができる。
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キーワード
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① 被害者参加制度 ② 損害賠償請求 ③ 被害者支援条例 ④ 諸外国の被害者支援 ⑤ 刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・ 伝達制度
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【復習】 制度に関する学習はとっつきにくいが、犯罪心理学の知見が社会に実装されていることを理解することにより、心理学が人類の進歩に貢献することを感じられると思うので、今回紹介した制度について「一言で言えばこういうものだ」と説明できるように努めてほしい。 【予習】 次回は「被害者を取り巻くメディア報道と被害者心理」を学ぶ。これまで紹介した新聞記事をいくつか読み、被害者の声をメディアを通して国民に届ける意義や問題点を考えてほしい。
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14
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被害者を取り巻くメディア報道と被害者心理
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 第14回では、犯罪被害者を支援するため、犯罪被害者が取材対象となるメディア報道が被害者に与える影響について学ぶ。 【本回全体の到達目標】 1. メディアスクラム・センセーショナルな報道が被害者の心理的回復に与える二次的被害を説明できる。 2. SNSの匿名性・即時性による誹謗中傷・風評被害のメカニズムと、デジタル空間における被害の拡大・持続性を説明できる。 3. 被害者のメディアリテラシー(取材拒否の権利・情報開示の選択・代理人対応)の意義と支援者の役割を述べることができる。 4. 報道被害防止ガイドラインの内容・現状の限界と、法的規制と自主規制のバランスについて論じることができる。 5. 被害者の声を適切に社会に伝えるトラウマに配慮した報道スタイルと、メディアの社会変革における可能性を述べることができる。
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① 花岡貴大(2021) 被害者実名報道の法的検討. 東京大学法科大学院ローレビュー,21,209-243. ② Boyd, D. (2014). It's Complicated: The Social Lives of Networked Teens. Yale University Press. Lerner, M. J., & Miller, D. T. (1978). Just world research and the attribution process: Looking back and ahead. Psychological Bulletin, 85(5), 1030-1051 村山綾・三浦麻子(2013) 日本語版公正世界信念尺度の作成と多次元性の検討. 日本社会心理学会第54回大会発表論文集, 41. 村山綾・三浦麻子(2015) 被害者非難と加害者の非人間化―2種類の公正世界信念との関連―. 心理学研究, 86(1),1–9. Suler, J. (2004) The online disinhibition effect. Cyberpsychology & Behavior, 7(3), 321-326. 温若寒・三浦麻子(2022) オンライン脱抑制:構成概念の再考と新たなモデルの提案. 心理学評論, 2022, 65(1), 52-63. ③ 西日本新聞社会部「犯罪被害者」取材班(1999) 犯罪被害者の人権を考える. 西日本新聞社. 山本純(2021) 13歳、「私」をなくした私:性暴力と生きることのリアル. 朝日文庫. ④ 日本弁護士連合会(1999) 報道のあり方と報道被害の防止・救済に関する決議.(URL:https://www.nichibenren.or.jp/document/civil_liberties/year/1999/1999_3.html) ⑤ 宮地尚子 (2014) トラウマの医療人類学. みすず書房. 高橋シズヱ・河原理子(2005) <犯罪被害者>が報道を変える. 岩波書店.
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コマ主題細目
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① 過剰取材による二次被害 ② SNSによる被害の拡大 ③ メディアリテラシー ④ 報道被害防止ガイドライン ⑤ 社会啓発の手段としてのメディア
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細目レベル
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① 過剰取材による二次被害:メディアスクラムや配慮に欠ける報道の影響 報道記者が被害者に大挙して押し寄せる状況である「メディアスクラム」は、被害者のプライバシーと尊厳を著しく侵害する深刻な問題である。過剰な取材攻勢は、被害者に極度の心理的苦痛をもたらす。記者の執拗な追跡、自宅周辺への大量のカメラマン、センセーショナリズムを追求する報道は、被害者の回復プロセスを大きく阻害する。 特に犯罪被害直後は、被害者は極めて脆弱な心理状態にあり、メディアの不適切な介入は、トラウマを再活性化させ、感情的な傷を深刻化させる。詳細な個人情報の暴露、推測に基づく報道、被害者を過度に劇的に描写することは、被害者の尊厳を著しく損ない、回復への心理的エネルギーを奪う行為といえる。 【到達目標】 ① メディアスクラムが被害者に与える極度の心理的苦痛と、詳細な個人情報暴露・センセーショナルな報道が尊厳を損なう問題を説明できる。 ② 犯罪被害直後の脆弱な心理状態の被害者にメディアが不適切に介入することでトラウマが再活性化されるリスクを述べることができる。
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② SNSによる被害の拡大:インターネット上での誹謗中傷や風評被害の問題 デジタル空間における被害拡大は、現代の深刻な社会問題である。SNSの匿名性と即時性は、被害者に対する容赦ない誹謗中傷、個人情報の拡散、根拠のない噂の急速な拡散を可能にする。これは被害者非難と呼ばれる。被害者は、現実空間だけでなく、デジタル空間においても継続的な攻撃にさらされる。特に若い世代にとって、SNS上の風評被害は、アイデンティティや社会的評価に壊滅的な影響を与える。 心理的影響として、社会的孤立、自尊心の著しい低下、不安、抑うつ、社会参加への恐怖などが生じる。このように、デジタル空間における被害の拡大は、従来のメディア被害を超えた、より複雑で持続的な心理的トラウマを生み出している。 【到達目標】 ① SNSの匿名性・即時性が誹謗中傷・個人情報拡散・根拠のない風評の急速な広がりを可能にするメカニズムを説明できる。 ② SNS上の被害者非難が社会的孤立・自尊心の低下・不安・抑うつという心理的影響をもたらす過程を述べることができる。
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③ メディアリテラシー メディアリテラシーは、被害者が自身を保護し、適切にメディアと向き合うための重要な能力である。具体的には、取材申し込みへの対応方法、個人情報保護の技術、インタビュー時の心理的準備、メディア対応の法的権利の理解などが含まれる。ただし、被害者は被害体験により心身ともに疲弊し、メディア対応をする力がない場合も多いため、支援者が被害者の意向を踏まえてメディア対応に関する助言を行う。また、必要に応じて、警察の犯罪被害者支援室等がメディア対応の窓口を務めることもある。 ここで重要なのは、被害者自身が取材を拒否する権利、部分的な情報開示の選択、代理人を通じた対応である。犯罪被害者や遺族の中には、自身が受けた苦痛や理不尽なことを広く社会に知ってほしいと望んだり、同じような被害に苦しむ人がなくなるように同種事案の再発防止を訴えたいと望んだりする人もいる。そこで、メディアリテラシーは、被害者のエンパワメントと心理的回復を支援する重要な手段となる。 【到達目標】 ① 被害者のメディアリテラシー(取材拒否の権利・部分的情報開示の選択・代理人対応)の内容と、支援者がメディア対応の助言を行う際の配慮を説明できる。 ② メディアリテラシーの向上が被害者のエンパワメントと心理的回復を支援する意義を述べることができる。
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④ 報道被害防止ガイドライン:メディアの自主規制と法的規制の現状 報道被害防止ガイドラインは、メディアの倫理的責任と被害者保護を両立させる重要な枠組みである。現状では、法的規制よりも、メディア各社の自主規制や業界団体による自律的なガイドラインが中心的役割を果たしている。特に、誘拐事件については、捜査機関の意向も汲みながら、慎重な報道被害防止ガイドラインが求められる。 主な指針として、被害者のプライバシー保護、個人を特定できる情報の制限、センセーショナルな報道の抑制、被害者の心理的配慮、匿名報道の原則などが含まれる。 しかし、これらのガイドラインの実効性は必ずしも高くない。また、警察の記者クラブに所属していないフリー記者による過熱取材も起こる。法的規制と自主規制のバランス、表現の自由との調整、具体的な罰則の必要性など、依然として多くの課題が存在する。被害者保護と報道の社会的役割の両立を目指す継続的な議論が求められている。 【到達目標】 ① 報道被害防止ガイドラインの主な指針(プライバシー保護・センセーショナリズムの抑制・匿名報道等)と、現状の実効性の課題を説明できる。 ② 表現の自由と被害者保護のバランスという観点から、法的規制と自主規制の在り方を論じることができる。
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⑤ 社会啓発の手段としてのメディア:被害者の声を適切に社会に伝える方法 メディアは、被害者の経験を社会に伝える重要な媒体となり得る。適切に管理された報道は、社会の意識改革、被害者への共感、制度的変革の触媒となる可能性を秘めている。被害者の声を尊重し、トラウマに配慮した報道スタイルが求められる。 具体的には、被害者自身が主体的に語ることの選択、詳細な個人情報の保護、センセーショナリズムの排除、社会構造的問題への洞察、支援制度への言及などが重要である。また、被害者支援に関する教育的側面、社会の意識変革を促す報道が求められる。 犯罪被害者支援において、メディアは単なる情報伝達手段ではなく、社会的変革と被害者支援の重要な手段として機能することもある。このような場合、警察の犯罪被害者支援室や弁護士がコーディネーターとして機能する。 【到達目標】 ① 被害者自身が主体的に語る選択・詳細な個人情報の保護・センセーショナリズムの排除という「トラウマに配慮した報道スタイル」の要素を説明できる。 ② メディアが社会変革と被害者支援の重要な手段として機能する可能性について、具体的な事例を踏まえて述べることができる。
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キーワード
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① メディアスクラム ② インターネット上での誹謗中傷 ③ メディアリテラシー ④ 報道被害防止ガイドライン ⑤ 社会啓発の手段としてのメディア
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【予習】 「犯罪心理学概論」で学んだ被害者の心理に関する知識を再確認するために同科目の文字教材を読むとともに、本科目のコマシラバスをあらかじめ読むこと。 【復習】 今回の文字教材を読み、小テストで間違えた問題を中心にヨリソル上に掲出するドリルに取り組むこと。
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15
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まとめと今後の展望
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科目の中での位置付け
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この科目は、「犯罪心理学概論」で学習した、犯罪や非行における被害者の心理とその支援をさらに広範かつ深く学ぶことにより、近年犯罪心理学の中でも重要な柱と位置付けられつつある被害者の心理に係る知識を習得することを目的とする。この科目で言う「被害者」は、犯罪被害者を指すが、交通事故や大規模人為災害(鉄道の脱線事故等)の被害者、自然災害の被災者も含む。様々な被害を受けた人が受ける心理面や身体面のダメージを理解することを目指す。 犯罪事象に存在する被害者の存在、被害者が受ける様々なダメージ、人権を侵害された被害者の権利擁護に関して理解することにより、総合心理学科で開講される各科目で扱われる犯罪心理学についてさらに理解を深めることが期待される。 第15回では、第1回から第14回目までに学んできた犯罪被害者の心理と支援についてまとめ、将来必要とされる被害者支援について検討を進める。 なお、知識の定着度を確認するため、復習テストを実施する。 【本回全体の到達目標】 1. 被害者支援の歴史的発展(1980年代以前の「沈黙の被害者」から2004年犯罪被害者等基本法制定、現代の包括的アプローチへ)を時系列で整理できる。 2. サイバー犯罪・特殊詐欺など新たな被害形態の特徴と、技術・法律・心理学の学際的対応の必要性を説明できる。 3. 教育・コミュニティ・ハイリスク集団支援という多層的な予防的アプローチの構成要素を述べることができる。 4. 専門職育成(学際的教育・トラウマインフォームドケア・継続的スーパービジョン)と市民ボランティア養成の両輪の重要性を説明できる。 5. エビデンスに基づく実践と社会的スティグマの解消・被害者の主体性の尊重という観点から、被害者支援の将来像を自らの言葉で論じることができる。
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① Duffy,K.G. & Wong,F.Y(1996)Community Psychology. 植村勝彦(監訳)(1999) コミュニティ心理学. ナカニシヤ出版. 山本和郎(1986) コミュニティ心理学:地域臨床の理論と実践. 東京大学出版会.
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コマ主題細目
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① 被害者支援の発展 ② 新しい犯罪被害への対応 ③ 予防的アプローチの可能性 ④ 支援者育成の課題 ⑤ 被害者支援の将来像
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細目レベル
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① 被害者支援の発展 被害者支援の歴史は、長らく社会の周縁に置かれてきた被害者の権利と尊厳の回復の歴史である。1980年代以前は、犯罪被害者は司法システムにおいて「沈黙の被害者」とされ、ほとんど顧みられることはなかった。1985年の国連の被害者人権宣言を契機に、被害者の権利と支援の重要性が国際的に認識され始めた。 日本においても、1990年代以降に犯罪被害の当事者の活動をはじめ、犯罪被害者の権利擁護を求める機運が高まり、犯罪被害者等基本法(2004年)の制定など、法的・制度的枠組みが整備されてきた。現代的課題としては、被害の多様化、トラウマの複雑性、社会的偏見の解消、包括的支援システムの構築、被害者の主体性の尊重などが挙げられる。被害者支援は、単なる救済から、エンパワメントと社会的回復を目指す包括的アプローチへと進化している。 しかし、警察に被害申告をできない被害者も多く存在することが著名人の性暴力事案から国民が知るところとなり、一人で苦しみ続ける被害者を社会が放置することなく適切な支援を提供することがますます重要となる。心理支援の専門家は、被害者のカウンセリングのみならず、国民が被害者を温かく支える意識を持つことができるような啓発活動を行うことも期待される。これは、心理臨床の重要な柱である臨床心理的地域援助(コミュニティ心理学)の実践である。 【到達目標】 ① 被害者支援の歴史的変遷(「沈黙の被害者」→被害者権利運動→国連の被害者人権宣言→日本の法整備)を時系列で説明できる。 ② 現代の被害者支援の課題(被害の多様化・トラウマの複雑性・社会的偏見の解消・エンパワメント重視への転換)を論じることができる。
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② 新しい犯罪被害への対応:サイバー犯罪や特殊詐欺などの新たな形態の被害への対策 デジタル技術の急速な発展に伴い、犯罪の形態も劇的に変化している。サイバー犯罪、特殊詐欺、SNS等のオンライン上のハラスメント・誹謗中傷、個人情報の悪用など、従来の犯罪概念では捉えきれない新たな被害が増加している。これらの犯罪は、物理的な被害に加えて、精神的・経済的・社会的に多層的な影響を被害者に与える。心理的影響として、不安、基本的信頼感の喪失、社会的孤立、経済的困窮などが顕著である。 効果的な対策には、デジタルリテラシーの向上、法的整備、被害者支援の技術的・心理的専門性の確立、国際的な連携が不可欠である。被害の予防と回復のためには、技術、法律、心理学の学際的アプローチが求められる。心理支援の専門家としては、被害者にも加害者にもならないために小学校や中学校などの学校における啓発活動によりこれらの問題の解決に貢献できる。①と同様に、カウンセリング以外の心理支援の業務の重要性を理解してほしい。 【到達目標】 ① サイバー犯罪・特殊詐欺・オンラインハラスメントなど新たな被害形態の特徴(多層的な影響・物理的・精神的・経済的被害)を説明できる。 ② 新たな被害への対策に技術・法律・心理学の学際的アプローチと国際的連携が不可欠な理由を述べることができる。
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③ 予防的アプローチの可能性:被害を未然に防ぐための社会システムの構築 予防的アプローチは、被害者支援の最も重要な戦略の一つである。単に被害後の対応ではなく、被害そのものを未然に防ぐ社会システムの構築が求められる。すなわち、不幸な被害者を生まない社会づくりが必要である。 具体的には、教育システムにおける暴力防止プログラム、コミュニティベースの早期警告システム、ハイリスク集団への包括的支援、社会的脆弱性の解消などが含まれる。学校、地域社会、家庭における暴力防止教育、ジェンダー平等の推進、社会的排除メカニズムの解体、メンタルヘルスケアの充実などが重要である。 また、潜在的加害者への介入プログラム、修復的司法アプローチ、コミュニティの意識改革も予防的戦略として重要である。被害の連鎖を断ち切る、包括的で長期的な社会変革アプローチが求められている。 【到達目標】 ① 暴力防止教育・コミュニティの早期警告システム・ハイリスク集団への包括的支援・潜在的加害者への介入プログラムという多層的な予防的アプローチを説明できる。 ② 被害の連鎖を断ち切る包括的で長期的な社会変革アプローチの必要性を論じることができる。
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④ 支援者育成の課題:専門職の育成と市民ボランティアの養成 被害者支援における人材育成は、質の高い支援を実現する上で最も重要な課題の一つである。専門職育成においては、心理学、医学、法学、社会福祉学などの学際的な教育プログラムの開発が求められる。そこには、トラウマインフォームドケア、被害者の権利、法的知識、心理的支援技術、多職種連携などの包括的な教育が必要である。 同時に、市民ボランティアの養成も重要である。特に、民間犯罪被害者支援センターではボランティアが育成され、直接的支援として家事や子供の送迎など被害者が真に望む支援が実施されている。被害者が他者や社会に対する基本的信頼感を取り戻すため、地域に根ざした支援ネットワーク、ピアサポートに関して、市民の役割は極めて大きい。専門的トレーニング、倫理教育、セルフケア、継続的なスーパービジョンなどを通じて、支援の質と持続可能性を高めることが求められる。そこに、公認心理師等の専門家の役割と職責も大きい。 公認心理師、臨床心理士、医師、弁護士が犯罪被害者支援センターのボランティアに対する研修にも関わっており、社会全体で被害者を支える実践を知ることが重要である。 【到達目標】 ① 専門職育成における学際的教育(心理学・法学・社会福祉学)とトラウマインフォームドケアの重要性を説明できる。 ② 市民ボランティアの養成における継続的な研修・倫理教育・セルフケア・スーパービジョンの必要性を述べることができる。
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⑤ 被害者支援の将来像 被害者支援の将来像は、科学的知見に基づく evidence-based practice(実証的実践)と、社会の根本的な意識変革の統合にある。心理学的知見を活用し、トラウマの神経生物学的メカニズム、レジリエンスの過程、回復の個別性などへの深い理解に基づいた支援が求められる 同時に、被害者に対する社会的スティグマの解消、共感的理解の促進、被害者の声を中心に据えた社会変革が不可欠である。教育、メディア、法制度、コミュニティのあらゆるレベルでの意識改革を通じて、被害者を周縁化せず、包摂し、エンパワーする社会の実現を目指すことが重要である。このように、被害者支援は個人の回復を超えて、社会正義と人権擁護の実現に向けた総合的な取り組みであり、現代に生きる私たちがどのような社会に生きたいのか、どのような社会を子どもたちに残したいのかを問い、実現するための実践であり、社会から誰も取り残さない営みともいえる。 犯罪被害者支援に関わる公認心理師、臨床心理士に限らず行政職員やボランティアスタッフは、社会全体で被害者を支える仕組みづくりを進めており、たとえ警察に被害申告できなかったとしても支援の手が差し伸べられる社会を作っていることを理解してほしい。この支援の活動は、AIの進歩により私たちの生活が大きく変わったとしても犯罪や戦争・紛争、自然災害が地球上からなくならない以上、人類に必要なものであると考えられる。 【到達目標】 ① エビデンスに基づく実践・当事者の主体性の尊重・文化的感受性・包括的ケアモデルという被害者支援の将来像を自らの言葉で説明できる。 ② 社会的スティグマの解消・被害者の包摂とエンパワメントを目指す社会変革が被害者支援の本質的目標であることを論じることができる。
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キーワード
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① 犯罪被害者等基本法 ② 新しい犯罪の被害 ③ 被害者を生まない社会づくり ④ 支援者の育成 ⑤ 社会正義と人権擁護の実現に向けた取り組みとしての被害者支援
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コマの展開方法
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社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
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小テスト
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ヨリソル上に掲出する小テスト(全10問)を実施する。
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復習・予習課題
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【予習】 「犯罪心理学概論」で学んだ被害者の心理に関する知識を再確認するために同科目の文字教材を読むとともに、本科目のコマシラバスをあらかじめ読むこと。 【復習】 今回の文字教材を読み、小テストで間違えた問題を中心にヨリソル上に掲出するドリルに取り組むこと。
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