区分 高度専門科目Ⅰ
ディプロマ・ポリシーとの関係
SDGs力 科学コミュニケーション力 研究力
カリキュラム・ポリシーとの関係
教養 応用力 実践力
科目間連携 総合心理力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ

科目の目的
 この科目では、【犯罪心理学概論】などの犯罪心理学系科目でこれまでに学んできた内容を、それらの科目にはない新たな視点から捉え直すことを目的とする。【発達心理学】や【比較認知心理学(こころの進化と多様性)】で得た知見を踏まえ、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入する。
 犯罪に関連するさまざまな行動を理解するためには、その行動がどのような仕組みで生じているのかというメカニズム(至近要因)を知るだけでは不十分である。発達の過程においてその行動がどのように形成され、変化していくのか、さらにその行動の進化的起源はどこにあり、なぜそのような行動が進化してきたのかという究極要因についても考える必要がある。本科目では、メカニズムの探究を含むこれら四つの視点から、犯罪に関連する諸問題を総合的に考察する。
 そのために、比較心理学、動物行動学、進化生物学、進化心理学、発達心理学、文化心理学といった関連分野の基礎を押さえたうえで、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、さらには支援と更生の問題について、「比較発達犯罪心理学」という枠組みから検討していく。

到達目標
 本科目では、以下に示す4つの目標に到達することをめざす。
 ① 比較発達犯罪心理学の多層的な視点の習得: 犯罪行動を単一の要因(個人の性格や社会環境のみ)に還元せず、「ティンバーゲンの4つの問い」に基づき、至近要因(メカニズム)、発達要因(個体発生)、究極要因(適応)、系統要因(進化)の4つの視点から多層的に理解し、説明できること。
 ② 犯罪行動の進化的・適応的基盤の理解: 攻撃、欺瞞(詐欺)、資源獲得(窃盗)といった反社会的とされる行動が、進化の過程でどのような適応的意義(生存や繁殖上の利益)を持っていたのか、また現代社会との間でどのような「ミスマッチ」を引き起こしているのかを理解し、説明できること。
 ③ 発達的変化と生物学的基盤の相互作用の理解: 遺伝、脳機能、ホルモンなどの生物学的要因と、愛着や逆境経験(ACE)などの発達的環境が、いかに相互作用して反社会的な行動傾向を形成するのか、その可塑性とメカニズムについて理解し、説明できること。
 ④ ヒトの特異性と社会規範の起源の理解: 道徳性、公平感、第三者罰、仲裁行動などの比較研究を通じ、ヒト固有の高度な社会知性と動物種としての共通性の両面を理解した上で、刑事司法や更生支援における新たな視点(社会情動の回復など)について論じられること。

科目の概要
 本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、新たな観点から犯罪心理学を捉え直すことを目的とする。
 本科目では、まずイントロダクションとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明したうえで(第1回)、本学問と密接に関連する比較心理学(第2回)、進化生物学・進化心理学(第3・4回)、発達心理学(第5回)について、その概略を学ぶ。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論についても、あらためて整理・総括を行う(第6回)。第7回ではこれら総論部分のまとめを行う。
 これらの導入部を踏まえ、第8回以降は、犯罪に関連する諸問題を個別に取り上げて論じる各論へと移る。具体的には、殺人や攻撃行動(第8・9回)、詐欺などの欺瞞行動(第10・11回)、窃盗(第12回)、道徳(第13回)、そして支援と更生(第14回)を扱う。これらの各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点の双方から問題を捉え直し、それらを統合的に理解することをめざす。最後の第15回では、全体の総括を行う。

科目のキーワード
犯罪、攻撃行動、欺瞞行動、道徳、進化、適応、発達、社会・文化
授業の展開方法
 本科目では、毎回LMSにアップロードする、講義内容をまとめた文字教材をもとに講義を進める。さらに補助資料としてパワーポイントを用いる。各授業の後に理解度を測る小テストを行うとともに、最終回では期末テストに向けた模擬試験も実施する予定である。
オフィス・アワー
※その他の時間帯も調整可能(メールなどで連絡してください)
前期:水曜4限
木曜4限
金曜4限
後期:水曜4限
木曜4限
金曜2限・4限

科目コード SE5010
学年・期 3年・前期
科目名 比較発達犯罪心理学(罪を犯すこころの進化と発達)
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目
展開科目
関連資格
担当教員名 友永雅己
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 はじめに:犯罪を進化・発達・比較から理解する 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、第1回では、比較発達犯罪心理学という新しい研究領域について、その基本的な考え方と目的を説明したうえで、犯罪行動を進化・発達・比較という多層的視点から理解する枠組みを提示し、霊長類研究や乳児研究などの具体例を通して、この分野の意義と魅力を紹介する。


※全体の参考文献は【参考文献】を参照すること

ポール・ブルーム(著) (2015). ジャスト・ベイビー:赤ちゃんが教えてくれる善悪の起源,NTT出版

フランス ドゥ・ヴァール (2014). 道徳性の起源: ボノボが教えてくれること, 紀伊国屋書店

長谷川眞理子(2002). 生き物をめぐる4つの「なぜ」, 集英社新書

マイケル・トマセロ(著) (2020). 道徳の自然誌, 勁草書房

コマ主題細目 ① 比較発達犯罪心理学とは何か ② ティンバーゲンの4つの問い ③ 比較という視点:「ヒト」を動物界に位置づける ④ 比較発達犯罪心理学的研究の紹介
細目レベル ① 比較発達犯罪心理学とは何か
本領域は、従来の犯罪心理学に「比較」「発達」「進化」の時間軸を加え、逸脱行動を多層的に捉える学際的アプローチである。 犯罪行動を単一の原因に帰すのではなく、脳や気質といった生物学的基盤、愛着形成や逆境体験(ACE)などの発達的要因、そして不平等や文化的規範といった社会環境の動的な相互作用として理解する。 例えば攻撃性は、安定した環境では適切に管理されるが、慢性的なストレス下では「逸脱」として現れやすくなる。 このように、心理・生物・発達・比較の各知見を統合することで、犯罪を「特別な人の異質な行動」ではなく、人間行動の連続性における現象として再定義する。 これにより、人類の進化史における適応的意義(究極要因)と、直近の心理メカニズム(近接要因)の両面から、犯罪の原因分析と介入の精度を飛躍的に高めることが可能となる。


② ティンバーゲンの4つの問い
複雑な生命現象を科学的に解明するためのフレームワークである「4つの問い」を犯罪行動に適用する。 第一の「メカニズム」は、前頭前野や扁桃体の活動、認知バイアスといった直近の引き金を扱う。 第二の「発達(個体発生)」は、養育環境や愛着形成が、生涯の行動傾向にいかに影響するかという可塑性を問う。 第三の「適応」は、攻撃や欺瞞が生存や繁殖においてどのような利益をもたらしてきたかという進化的意義を考察する。 第四の「系統発生(進化)」は、その行動がいつ現れ、他の霊長類とどう共有されているかを種間比較で探る。 これら「近接要因(メカニズム・発達)」と「究極要因(適応・系統発生)」の視点は、互いに対立するものではなく、補完し合うものである。 全ての問いに答えることで、犯罪行動という複雑な事象を、多層的かつ完全な形で理解することを目指す。


③ 比較という視点:「ヒト」を動物界に位置づける
ヒトを生物学的な系譜の中に位置づけ、他種との対照を通じて犯罪行動の原初的な形を探る。 ここでは「連続性」と「非連続性」の両面に注目する。「連続性」とは、攻撃や協力の仕組みが他の哺乳類や霊長類と共通の基盤を持つことを指す。 一方で「非連続性」とは、言語や高度な象徴操作能力により、ヒトが「正義」や「法」といった概念を共有する特異性を指す。 しかし、この特異性は皮肉にも、計画的殺人や組織的詐欺など、犯罪をより残酷で複雑なものへと変容させた。 研究手法としては、野生下の「事実」を捉える観察法、因果関係を特定する実験法、そして種間を対照させ「起源」を探る比較法の三位一体のアプローチを用いる。 霊長類の同盟形成や戦術的欺瞞は、人間社会における権力争いの原型を示しており、逸脱行動を「生存のための社会的駆け引き」の延長線上で捉え直す視座を提供する。


④ 比較発達犯罪心理学的研究の紹介
道徳性や社会性の根源を、霊長類の行動や乳児の発達から実証的に確認する。 霊長類の研究では、フサオマキザルが不当な報酬格差に抗議する「不平等嫌悪」が示されており、正義感の原型が言語以前の心理メカニズムに備わっていることがわかる。 また、乳児研究では、生後数か月の乳児が「助ける者」を好み、社会規範を乱す者を評価・回避する傾向があることが判明している。 これらの知見は、ヒトが「裏切り者を監視し排除するシステム」を生得的な適応装置として持っていることを示唆している。 進化の過程で培われたこの「道徳の種」は、発達の過程における養育環境や社会的な学習を通じて、複雑な規範体系へと精緻化されていく。 犯罪は、この多層的なシステムが機能不全に陥った際、あるいは特定の環境で古い適応戦略が誤って発動した際に現れる現象として理解される。


キーワード ① 比較発達犯罪心理学 ② ティンバーゲンの4つの問い ③ 多層的理解 ④ 進化的適応 ⑤ 比較(霊長類・乳児研究)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で,その内容をあらためて確認し,どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し,理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み,重要だと感じたところと,むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。

2 比較心理学:心の系統発生と動物界との連続性 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、第2回では、比較心理学の視点から、ヒトの心を動物界の連続性の中に位置づけ、犯罪行動の系統発生的なルーツを探る 。学習原理や基本情動といった「共通OS」から、霊長類に見られる高度な社会的知性までを概観し、犯罪を生物学的な適応戦略の変容として捉え直す 。


※全体の参考文献は【参考文献】を参照すること

フランス ドゥ・ヴァール (2014). 道徳性の起源: ボノボが教えてくれること, 紀伊国屋書店

マイケル・トマセロ(著) (2020). 道徳の自然誌, 勁草書房

コマ主題細目 ① 比較心理学とは何か ② 心的過程の連続性 ③ 社会的知性と社会行動 ④ 犯罪心理学への示唆
細目レベル ① 比較心理学とは何か
比較心理学は、多様な生物種の心を対照させ、進化のプロセス(系統発生)を解明する学問である 。ダーウィンの「連続性」の視点に始まり、モーガンの節約律を経て、擬人化を排した客観的な科学へと発展した 。野外観察と統制実験を組み合わせ、報酬系や抑制機能といった客観的指標で知性を測定する手法は、犯罪行動を「個人の悪意」ではなく「生物学的な反応パターン」として分析することを可能にする 。ヒトを特別な例外から多様な適応戦略の一つへと相対化することで、暴力や略奪を人間の理性の故障ではなく、進化の樹状図における一つのバリエーションとして冷徹に捉え直す 。この系統発生的視点は、犯罪を「得体の知れない異分子」ではなく、ヒトという種が内包する普遍的なリスクとして理解し、合理的で効果的な対策を練るための土台となる 。

② 心的過程の連続性
ヒトの犯罪行動の動力源は、生物が数億年かけて磨き上げた「学習と情動のシステム」の延長上にある 。学習面では、パブロフ型条件づけが薬物再発や対人攻撃の身体的メカニズムを、オペラント型学習が報酬系に基づく犯行の定着を説明する 。認知面では、注意や記憶の仕組みが生存のためのインフラとして機能しており、これが現代では犯行計画や下見に転用されている 。また、扁桃体が司る「恐怖」や「怒り」といった基本情動は、爬虫類から受け継がれた防衛装置であり、現代社会のルールと適合しない場合に衝動的な犯罪を引き起こす 。社会性の原型としては、互恵性に基づく協力関係の中で利益だけを享受する「フリーライダー」の存在が挙げられ、これは人間社会における犯罪の最も根源的な形態である 。


③ 社会的知性と社会行動
ヒトの高度な知性は、集団内の複雑な関係を処理する「社会的知性」として進化した 。他者の視線を追う視線追従や共同注意のメカニズムは、共感の土台であると同時に、スリなどの注意操作にも利用される 。かつてヒト特有と考えられた「心の理論」の萌芽は類人猿にも見られ、相手の知識状態を推測して出し抜く「戦術的欺瞞」を可能にしている 。 この他者の心を操作する能力は、協力の精度を高める一方で、巧妙な詐欺や横領の認知的条件となる 。また、葛藤後の「和解」や「仲裁」といった社会修復プログラムは、現代の修復的司法の進化的基盤である 。さらに、不当な扱いに抗議する「不公平感」は、社会秩序を維持するための生得的な防衛装置であるが、時に主観的な不遇感が規範を破る際の大義名分(中和化)として犯罪の動機にもなり得る 。


④ 犯罪心理学への示唆
比較心理学は、犯罪を表面的な善悪を超えた生物学的な深度で捉える 。多くの犯罪行動は、かつての進化的適応環境において生存確率を高めた「適応戦略」の現代的な変容と解釈できる 。社会という協力システムが存在する以上、裏切り者(フリーライダー)の発生は構造的に避けられないコストであり、対策はゼロを目指すのではなく被害の最小化と管理にシフトすべきである 。霊長類の「政治」に見られる同盟形成や社会的排除の分析は、現代の組織犯罪やホワイトカラー犯罪の心理的本質を解明する鍵となる 。最終的に、ヒトの生物学的な特性や認知バイアスを受け入れた上で、監視カメラによる「見られている感覚」の醸成(視線追従の利用)や社会的絆の修復支援など、私たちの「心の節理」に適合した、より科学的で実効性の高い犯罪予防・更生支援モデルの構築が期待される 。


キーワード ① 比較心理学 ② 心的過程の連続性 ③ 社会的知性 ④ 不公平感・フリーライダー ⑤ 適応としての犯罪(進化的視点)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で,その内容をあらためて確認し,どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し,理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み,重要だと感じたところと,むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。





3 進化心理学Ⅰ:適応戦略としての行動メカニズム 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、第3回では、ヒトの心理を「なぜそのような形になったのか」という設計原理から検討する。自然選択や包括適応度、性選択といった進化心理学の基本概念を軸に、攻撃、協力、性差などの行動傾向が生存・繁殖において果たしてきた機能を理解する 。特に、祖先環境で適応的だった形質が現代で「誤作動」を起こす「進化的ミスマッチ」の視点から犯罪行動を分析する 。

授業中に指示します。
コマ主題細目 ① 進化の基本原理:行動を生むメカニズム ② 行動の適応的意義 ③ 性差と性選択:繁殖戦略の不斉性と行動差 ④ 心理メカニズムの適応的デザイン
細目レベル ① 進化の基本原理:行動を生むメカニズム
進化心理学は、心を有益な生存課題を解決するために自然選択で彫琢された「心理メカニズム」の集合体と捉える 。生存・繁殖に相対的に有利な特性が次世代に伝わる「自然選択」の結果として「適応」が生じるが、これは道徳的価値とは無関係な機能的概念である 。また、自己の繁殖成功だけでなく血縁者への貢献も含めた「包括適応度」の視点が、利他行動の維持を説明する 。行動には遺伝的要因が関与するが、実際の表出は環境との相互作用(リアクション・ノーム)による柔軟性を持つ 。進化を「進歩」と混同せず、事実(である)から価値(すべき)を導く「自然主義的誤謬」を避けることが、行動を客観的に分析する前提となる 。


② 行動の適応的意義
ある行動が進化の過程で維持されるには、繁殖上の利益(ベネフィット)がコストを上回らなければならない 。攻撃行動は負傷等の高コストを伴うが、資源獲得や地位向上という大きな利益が見込まれる状況で発動する「条件付き戦略」である 。協力行動も、血縁選択や「将来の返報」を期待する互恵性に基づき、長期的には自己の適応度を高める合理的な仕組みとして維持される 。親子関係においても、有限な資源を巡って投資を分散・節約したい親と、投資を最大化したい子の間で「親子葛藤」という利害の不一致が適応戦略として生じる 。これらの行動は道徳的善悪ではなく、環境条件に応じた機能的な戦略として理解される 。


③ 性差と性選択:繁殖戦略の不斉性と行動差
繁殖成功に影響する「性選択」は、異性から選ばれる「配偶者選択」と同性と競う「同性間競争」の側面を持つ 。哺乳類ではメスが妊娠・授乳等の多大な生物学的投資(親の投資)を行うため、資源を持つ配偶者を慎重に選ぶ傾向がある 。一方、相対的に投資コストの低いオスは、地位や資源を巡る同性間競争を通じて繁殖機会を最大化しようとする戦略をとりやすい 。この淘汰圧の差が、特に青年期男性におけるハイリスク・ハイリターンなリスク選好や競争性を生み出し、現代の「犯罪の性差」や年齢曲線の背景となっている 。ただし、これらの傾向は固定された運命ではなく、文化的規範や環境刺激に応じて柔軟に調整・発現される 。


④ 心理メカニズムの適応的デザイン
ヒトの心理は、祖先が長期間直面してきた「進化的適応環境(EEA)」の課題解決に特化した「領域固有」のデザインを持つ 。心は万能装置ではなく、危険察知や裏切り者検出といった特定のドメインごとに専用の処理アルゴリズム(モジュール)が備わっている 。この視点は、石器時代の脳を抱えたまま現代を生きる「進化的ミスマッチ」を浮き彫りにし、特定の犯罪を適応戦略の暴走として捉える手がかりを与える 。進化心理学的説明が後付けの「適応ストーリー」に陥らないよう、反証可能性を持った厳格な科学的検証が必要である 。近年の研究では、心理メカニズムの「可塑性」が強調されており、生得的バイアスを前提としたより実効性の高い予防や環境設計が展望されている 。


キーワード ① 自然選択・適応・包括適応度 ② コスト・利益分析と条件付き戦略 ③ 性選択 ④ 進化的適応環境(EEA) ⑤ 進化的ミスマッチ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で,その内容をあらためて確認し,どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し,理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み,重要だと感じたところと,むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。



4 進化心理学Ⅱ:社会的知性の進化と現代のミスマッチ 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、第4回では、ヒトを「社会的動物」たらしめている高度な心理メカニズムの進化的基盤と、現代環境における「進化的ミスマッチ」を詳述する 。他者の意図を読み、協力を築き、秩序を守るための「社会的知性」がいかなる選択圧で形成されたかを探る 。また、本来小規模集団向けに最適化された「制裁衝動」などが、現代の匿名・デジタル環境下で引き起こす「誤作動」を犯罪学の視点から分析する 。

授業中に指示します。
コマ主題細目 ① 社会的知性の進化 ② 認知・情動・社会性の発達 ③ 欺瞞・協力・社会秩序の進化 ④ 現代社会におけるミスマッチ
細目レベル ① 社会的知性の進化
複雑な集団生活を維持するための認知的負荷が脳の拡大を促したとする「社会脳仮説」に基づき、ヒトの知性の起源を辿る 。他者の意図や信念を推測する「心の理論」は、資源獲得や協力の成否を分ける適応的な知性として発達したが、同時に巧妙な「戦術的欺瞞」を可能にする諸刃の剣ともなった 。また、他者の情動に反応する「共感」は、集団内の緊張を下げ、社会秩序を支える心理的重石として機能してきた 。類人猿の社会に見られる同盟形成や仲裁といった「政治的」な相互作用は、ヒト社会の権力構造や集団内葛藤の原型であり、現代の組織犯罪やいじめ等の問題行動とも生物学的な連続性を持っている 。


② 欺瞞・協力・社会秩序の進化
ヒトの協力システムは大きな利益をもたらすが、常に「ただ乗り(フリーライダー)」のリスクを孕む脆弱なものである 。これに対抗するため、ヒトの認知システムには「社会的契約」の裏切りを瞬時に見抜く領域固有の「裏切り検出器」が発達した 。裏切りを抑制するためには、怒りや義憤といった情動に基づく「制裁」が不可欠であり、これが裏切りの期待利得を低下させる装置として機能する 。欺瞞(相手を騙す行為)は、成功時の利益と発覚時のリスクを天秤にかける戦略的行動であり、監視の欠如や高報酬といった特定の環境条件がその期待利益を高めた際に誘発される 。


③ 社会秩序の進化と道徳
不公平感は、協力関係の破綻を早期に察知して調整を促すための心理的シグナルであり、人間の公平性判断の基盤である 。特に、当事者以外の第三者が規範違反者を罰する「第三者罰」の存在こそが、他の動物には見られない大規模かつ複雑な人間社会の協力を安定させた主要因である 。これらの背後には、恥、罪悪感、義憤といった「道徳感情」が情動的な監視装置として備わっており、外的な強制力がなくても個体の行動を社会的に規律する 。生物学的メカニズムと言語・文化が統合されることでヒト特有の高度な社会秩序が成立したが、このシステムは本来、小規模な対面集団を前提にデザインされている 。

④ 現代社会におけるミスマッチ
「石器時代の心」が、進化のタイムスケールでは想定外の巨大都市やデジタル空間に置かれたことで「進化的ミスマッチ」が生じている 。SNS等の匿名空間では、物理的な反撃リスクという「ブレーキ」が効かず、本来秩序を守るための「制裁衝動」が異常増幅され、過剰なバッシングや炎上を招く 。また、かつて地位防衛に役立った「攻撃性」や「嫉妬」が、格差や匿名性という未知の刺激に反応して、現代犯罪(DVや特殊詐欺等)として噴出する 。進化心理学の示唆は、人間の本性を教育で変えようとするのではなく、心理メカニズムが逸脱を選ばないような環境(状況的犯罪予防)を設計し、ミスマッチをメタ認知によって制御することの重要性にある 。


キーワード ① 社会脳仮説 ② 心の理論 ③ 互恵的協力と裏切り ④ 第三者罰 ⑤ 進化的ミスマッチ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で,その内容をあらためて確認し,どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し,理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み,重要だと感じたところと,むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。


5 発達心理学の基礎:行動の変化と可塑性 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、第5回では、人間が誕生から成人に至る過程で、心や行動が環境との相互作用により形づくられるプロセスを学ぶ 。行動が固定的なものではなく、経験により変化しうる「可塑性」を核心概念とし、主要な発達理論や心理機能の成熟、気質と環境の適合性が逸脱や適応に与える影響を概観する 。

授業中に指示します。
コマ主題細目 ① 発達理論の基礎と主要モデル ② 認知・情動・社会性の発達プロセス ③ 気質とパーソナリティ発達のダイナミクス ④ 発達視点の意義と可塑性の理解
細目レベル ① 発達理論の基礎と主要モデル
発達心理学は、認知、情動、社会性が形成・変化する過程を解明する学問であり、行動を経験と環境の相互作用による「可塑的」なプロセスと捉える 。本節では、子どもを能動的学習者と見なすピアジェ、他者との協働や言語を重視するヴィゴツキー、生涯にわたる心理社会的課題(危機)を提唱したエリクソンという三つの主要理論を整理する 。発達は単なる知識の蓄積ではなく、思考の枠組みそのものがアップデートされる「質的変化」の連続である 。例えば、具体的事象から抽象的・仮説的な思考が可能になる移行は、将来の損失をシミュレーションする判断力を劇的に向上させる 。犯罪心理学の文脈では、これらの理論を統合することで、逸脱行動を単一の原因ではなく、発達段階における認知の未熟さや社会文化的支援の欠落、自己像の拡散といった多層的な「ズレ」や「未解決の課題」として分析することが可能になる 。


② 認知・情動・社会性の発達プロセス
適応的な社会生活を支える「実行機能」「情動調整」「共感性」の成熟プロセスを検討する。目標達成のために行動を制御する実行機能(抑制制御等)は、前頭前野の成熟とともに青年期まで発達し、その未熟さは衝動性やリスク選好と密接に関連する 。情動調整能力は、乳児期の養育者による「共同調整」を土台に、次第に自らの感情をコントロールする「自己調整」へと移行・洗練されていく 。共感性は、原始的な「情動感染」から、他者の視点に立って論理的に推論する「認知的共感」へと段階を追って発達し、向社会的な行動を支える基盤となる 。また、仲間関係は社会的スキルの練習の場となるが、青年期には影響力が強まり、仲間の承認が行動を強く方向付ける 。協力的な仲間は適応を促す保護因子となる一方、反社会的な仲間との結びつきは逸脱を強化する重大なリスク要因となり得る 。


③ 気質とパーソナリティ発達のダイナミクス
個人の行動傾向の出発点となる生得的な「気質」と、それが環境と調和・調整されるプロセスを解明する。新奇な刺激を求めリスクを厭わない「刺激追求」は、進化的には資源獲得に有利なエネルギーであったが、現代ではリスク行動を高める側面と創造的推進力となる側面の両義性を持つ 。衝動を意図的に抑制する「努力制御」は自己調整の中核であり、この能力が高いと学校適応や非暴力的な葛藤解決が可能になる 。核心的な概念は「気質と環境の適合性(Goodness of Fit)」であり、個人の特性そのものではなく、周囲の養育態度や社会的資源との調和が発達の方向を決定する 。例えば、刺激追求が高い子供も、探究心を尊重する環境では強みを発揮できるが、抑圧的な環境では反抗や逸脱を招きやすい 。幼児期の気質的特徴は将来の非行リスクを予測する有力な指標であり、個人の特性に応じた早期のオーダーメイド支援を設計するための科学的根拠を提供する 。


④ 発達視点の意義と可塑性の理解
人間の行動を時間とともに変化し続ける「可塑的なプロセス」として捉え、発達犯罪学における重要な知見を整理する 。非行の出現時期に基づき、幼児期からリスクが持続し強力な支援を要する「早期発現型(early starter)」と、思春期のホルモンや仲間関係の影響で一時的に生じ、成人期に自然沈静化しやすい「青年期発現型(late starter)」を区別する 。行動の軌道は、個人の特性と環境条件の複雑な「相互作用」によって形づくられ、同じ脆弱性を持つ個人でも、支援的な環境か逆境下かによって描く軌道は全く異なる 。逸脱のメカニズムは、衝動性や虐待等の「リスク因子」と、信頼できる大人や成功体験等の「保護因子」の動的なバランスとして理解される 。保護因子を強化し、個人の「レジリエンス(回復力)」を向上させるという視点は、法的な処罰を超えて、健全な発達を再構築するための建設的な支援モデルを構築する理論的土台となる 。


キーワード ① 可塑性 ② 発達の質的変化 ③ 実行機能 ④ 気質と環境の適合性 ⑤ リスク因子と保護因子
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で,その内容をあらためて確認し,どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し,理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み,重要だと感じたところと,むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。

6 犯罪原因論:生物・発達・社会要因の統合 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、第6回では、犯罪行動の原因を「生物・発達・社会」の三層から読み解く「バイオ・サイコ・ソーシャルモデル」を構築する 。脳機能や遺伝的素因を運命ではなく環境との交差点にある「脆弱性」と位置づけ 、逆境体験や仲間関係といった発達・社会的要因との動的な相互作用から、決定論に陥らない多因子統合モデルを理解する 。

授業中に指示します。
コマ主題細目 ① 脳科学と犯罪行動のメカニズム ② 遺伝・神経化学・ホルモンの影響 ③ 発達的・社会的要因の累積効果 ④ 多層的な犯罪原因統合モデル
細目レベル ① 脳科学と犯罪行動のメカニズム
脳の各領域の機能バランスが、いかに行動傾向に影響を与えるかを検討する 。行動の司令塔である前頭前野は、衝動抑制や社会的判断を司り、その未熟さや機能不全は短絡的な犯罪の要因となる 。情動を処理する扁桃体は、過敏であれば過剰な攻撃性を、鈍感であれば罰への不感症をもたらす 。快楽と動機づけを制御する報酬系は、特に青年期において高い感受性を示し、刺激追求やリスク行動を加速させる 。これら個別の領域は社会脳ネットワークとして連携し、他者への共感や道徳的判断を支えるが、幼少期の逆境体験はこの発達を阻害し、対人認知の歪みを生じさせるリスクがある 。脳の特性は固定されたものではなく、経験によって変化しうる「可塑性」を持つことが重要である 。


② 遺伝・神経化学・ホルモンの影響
遺伝や物質が行動に与える影響を、環境との相互作用の観点から整理する 。遺伝率は集団内のばらつきを示す相対的指標であり 、反社会性に関連するMAOA遺伝子も、幼少期の虐待という環境要因が重なった場合にのみリスクとして顕在化する 。神経伝達物質では、セロトニンの低下が衝動的攻撃を強め、ドーパミンの過敏性が報酬追求による逸脱を誘発する「脆弱性」として働く 。男性ホルモンのテストステロンは、単なる攻撃性の原因ではなく「社会的地位を巡る競争行動」を促進する因子であり、その表出は文化規範や環境に大きく依存する 。これらの生物学的素因は環境という「スイッチ」によって発現が左右されるため、決定論を排した遺伝×環境相互作用(G×E)の多層的理解が不可欠である 。


③ 発達的・社会的要因の累積効果
環境が心に刻む「見えない傷」が行動軌道に与える累積的な影響を分析する 。幼少期の愛着形成は「安全基地」の有無を通じて他者への信頼感や内的作業モデルを決定づける 。ACE(逆境的小児期体験)は、個別の体験以上にその「累積数」が脳のレジリエンスを低下させ、非行リスクを指数関数的に高めることが示されている 。深刻なトラウマは扁桃体を過敏化させ防衛的な攻撃性を定着させるが、適切な支援による回復も可能である 。また、不適切な養育環境は、曖昧な他者の意図を悪意と捉える敵意帰属バイアスを形成させ、対人トラブルの強力な引き金となる 。これらの発達的要因は、個人の行動選択の幅を狭めるリスクとなるが、環境の質を変えることで再編の余地が残されている 。


④ 多層的な犯罪原因統合モデル
生物、発達、社会の各要因を網の目のように絡み合うシステムとして統合する 。社会的学習理論は、行動が模倣や強化で獲得されることを説き、特に青年期の仲間集団による「ピア圧力」が逸脱の強力な報酬となることを示す 。学校不適応や地域の暴力、名誉を重んじる文化的規範といった環境の複層性は、個人の脆弱性を増幅または緩和させる 。行動軌道は、これらの要因がリスク因子と保護因子の動的バランス(天秤)として作用した結果であり、保護因子を増やしレジリエンスを最大化させる介入こそが、発達軌道の修正に繋がる 。多因子的な理解は、人間を「変えられない存在」とする決定論を回避し、どの地点に介入すれば変化が生じうるかを探るための実務的知性を提供するものである 。


キーワード ① バイオ・サイコ・ソーシャルモデル ② 遺伝 × 環境相互作用(G×E) ③ ACE(逆境的小児期体験) ④ 内的作業モデル ⑤ リスク因子と保護因子
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で,その内容をあらためて確認し,どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し,理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み、重要だと感じたところと、むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。


7 中間まとめ:理論的統合と各論への視座 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、本回では、第1回から第6回までの理論を体系的に統合し、犯罪を「生物・心理・社会」の三層が重なり合う多層的現象として再確認する 。進化的適応環境(EEA)での戦略が現代で起こす「ミスマッチ」や、個体の愛着形成・逆境体験が行動軌道を方向づけるプロセスを総括し、次回の各論へ繋ぐ理論的羅針盤を構築する 。

授業中に指示します。
コマ主題細目 ① 進化的基盤:犯罪行動を究極要因から捉え直す ② 比較発達の視座:霊長類との連続性とヒトの特異性 ③ 発達のダイナミクス:個体の軌道と可塑性のプロセス ④ 統合の原因論:バイオ・サイコ・ソーシャルの相互作用
細目レベル ① 進化的基盤:犯罪行動を究極要因から捉え直す
犯罪行動を個人の欠陥ではなく、生物としての生存・繁殖に根ざした「究極要因」から総括する 。ティンバーゲンの4つの問いを用い、メカニズムや発達といった近接要因に、系統発生と適応という進化的時間軸を統合することで、犯罪を人間行動の連続性の中に再定義する 。物理的攻撃性やリスク選好は、祖先の小規模集団(EEA)では資源獲得に有効な「適応戦略」であったが、現代の大規模匿名社会では法的規範と衝突し「進化的ミスマッチ」として顕在化する 。また、将来が不確実な環境では目先の利益を優先する「短期的戦略」が生物学的合理性を持つことを確認した 。さらに、裏切り者を検知し「第三者罰」を加える制裁衝動こそが、人類の高度な協力システムを支える生物学的インフラであることを明らかにする 。


② 比較発達の視座:霊長類との連続性とヒトの特異性
ヒトの心を動物界の連続性の中に位置づけ、系統発生的なルーツを整理する 。類人猿の社会で見られる同盟形成や戦術的欺瞞は、人間社会の権力争いや組織犯罪の心理的プロトタイプ(原型)である 。脳の大型化を促した「社会脳ネットワーク」と「心の理論」は、高度な協力を可能にした一方で、詐欺や操作といった緻密な「知的犯罪」を可能にする武器ともなった 。他者の苦痛を察知する共感や、義憤・罪悪感といった道徳感情は、外的な強制力がなくても個体の行動を律する内面的な監視装置として機能する 。しかし、これらの機能は対面集団を前提としており、現代の匿名的なデジタル空間では、評判や共感によるブレーキが効かず、制裁衝動や攻撃性が暴走する「バグ(誤作動)」を引き起こしやすい 。


③ 発達のダイナミクス:個体の軌道と可塑性のプロセス
種の設計図の上に個別の経験が重なり、行動の軌道が形成されるプロセスを辿る 。発達の核心は、思考の枠組みが劇的に作り替えられる質的変化を伴う「可塑性」にあり、適切な介入によって行動の軌道は修正可能である 。幼少期の愛着形成は、将来の対人信頼感や自己価値観を左右する「内的作業モデル(心の地図)」を構築し、不適切な経験はその後の行動選択の幅を狭めるリスクとなる 。 また、報酬系の早期成熟に対し前頭前野の完成が遅れる「アクセルとブレーキの不均衡」が、青年期特有のリスク行動の背景にある 。逆境的小児期体験(ACE)の累積は脳を過敏にしリスクを高めるが、信頼できる大人との絆などの「保護因子」がレジリエンス(回復力)として機能し、発達軌道を適応的な方向へ押し戻す希望の根拠となる 。


④ 統合の原因論:バイオ・サイコ・ソーシャルの相互作用
生物・発達・社会の諸要因が網の目のように絡み合う「バイオ・サイコ・ソーシャルモデル」を完成させる 。脳機能や遺伝的素因は運命を決定するものではなく、環境ストレスに対する個人の「感受性の差異」であり、安定した養育環境があればリスクは発現しない 。逸脱行動は他者の模倣やピア圧力による「社会的学習」で獲得され、敵意帰属バイアス等の認知の歪みがそれを増幅させる 。犯罪の発生は、負の影響(リスク因子)と支え(保護因子)の「天秤」による動的なバランスで決まり、介入の目標はこの均衡を適応的な側へ動かすことにある 。この統合モデルは、人間を特定の要因に縛られた固定的な存在と見なす「決定論」を排し、個体と環境の適合性を改善することで変化の可能性を最大限に信じる実務的な知性を確立するものである 。


キーワード ① ティンバーゲンの四つの問い ② 進化的ミスマッチ ③ 内的作業モデル ④ バイオ・サイコ・ソーシャルモデル ⑤ リスク因子と保護因子のバランス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で、その内容をあらためて確認し、どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し、理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み、重要だと感じたところと、むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。


8 殺人Ⅰ:攻撃行動の比較・進化的基盤 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、第8回では、殺人という極端な暴力行動を、個人の異常性のみに帰さず、生存と繁殖のための適応戦略という究極要因から再構成する。動物行動学や進化心理学の知見を用い、資源競争や地位防衛における攻撃の合理的側面を解明するとともに、現代社会における不適切な発現メカニズムを多層的に理解する。

授業中に指示します。
コマ主題細目 ① 従来の説明:攻撃・殺人の基本枠組み ② 動物行動学:動物の攻撃行動と調整 ③ 進化心理学:攻撃の適応的機能と現代 ④ 発達・神経メカニズムと攻撃の発現
細目レベル ① 従来の説明:攻撃・殺人の基本枠組み
従来の犯罪心理学における攻撃行動の捉え方を整理し、その限界と補完の必要性を検討する。一般に攻撃は、感情の爆発を伴う「衝動型」と、目的遂行のための「計画型(道具型)」に二分される。これらは反社会性パーソナリティ障害や衝動性といった個人の特性、あるいは飲酒や過度なストレスといった状況要因によって説明されてきた。しかし、これらの説明は「どのように(How)」攻撃が起こるかという近接要因に終始しており、「なぜ(Why)」ヒトという種に暴力の予備能が備わっているのかという起源の説明を欠いている。本節では、既存の枠組みを認めつつも、それだけでは零れ落ちる「暴力の進化的背景」を導入するための土台を構築し、個人の異常性と生物学的普遍性の双方から殺人を捉え直す視座を提示する。


② 動物行動学:動物の攻撃行動と調整
動物界における攻撃行動を「資源と地位を巡る調整手段」として分析する。自然界において、攻撃や威嚇は限られた食物や配偶者、縄張りを確保するための合理的なロジックに基づいている。無秩序な暴力は負傷のリスクという高いコストを伴うため、多くの種では「儀式的展示(威嚇)」によって実力差を測り、コストを最小化する戦略が進化している。また、攻撃は単なる破壊行為ではなく、集団内の順位を安定させ、不必要な闘争を避ける機能も持つ。特筆すべきは、攻撃後の「仲裁・和解・慰め」といった社会修復行動の存在であり、これらは葛藤を解消し集団の凝集性を維持するためのインフラである。霊長類の政治的な文脈における攻撃の分析は、人間社会の暴力が決して無意味な暴発ではなく、複雑な社会的駆け引きの延長線上にあることを示唆している。


③ 進化心理学:攻撃の適応的機能と現代
ヒトの攻撃性を、性淘汰と繁殖戦略の観点から解明する。統計的に殺人の加害者・被害者の多くが青年期男性である事実は、地位や資源を巡る「同性間競争」の激しさを反映している。祖先環境において、地位の失墜は繁殖機会の喪失に直結したため、侮辱に対する過敏な反応や地位防衛のための暴力は、適応度を高める戦略として機能してきた。しかし、この「地位への執着」や「配偶者防衛」の心理メカニズムは、法秩序が確立し匿名化した現代社会においては、ささいな面ツブシからの殺人や、過剰な嫉妬によるDV・殺害といった「進化的ミスマッチ」を引き起こす。暴力という古いOSが、現代の法規範や社会構造と衝突することで、かつての適応戦略が「犯罪」という形に変容する機序を明らかにする。


④ 発達・神経メカニズムと攻撃の発現
生物学的な予備能が、個体の発達過程でいかにして具体的な殺意や暴力へと発現するかを詳述する。青年期は、情動を司る系が早期に成熟する一方で、抑制を担う前頭前野の完成が遅れるため、構造的に衝動制御が脆弱な時期である。この時期に実行機能(抑制、認知的柔軟性等)が十分に機能しないと、将来の損失を考慮できず、短絡的な暴力行使に至りやすくなる。さらに、幼少期の虐待や逆境体験は扁桃体を脅威に対して過敏にさせ、中立的な刺激を敵意と誤認する「敵意帰属バイアス」を固定化させる。生存を目的とした防衛的攻撃が、劣悪な環境下で培われた「他者は敵である」という歪んだ信念と結びつくことで、攻撃行動が正当化・常態化していくプロセスを神経・認知のレベルから解明する。


キーワード ① 殺人の究極要因 ② 儀式的展示と社会修復 ③ 性淘汰と同性間競争 ④ アクセルとブレーキの不均衡 ⑤ 敵意帰属バイアス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で、その内容をあらためて確認し、どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し、理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み、重要だと感じたところと、むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。


9 殺人Ⅱ:ヒト固有の認知・文化・社会構造 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、第9回では、ヒト固有の高度な認知能力や社会・文化構造が、殺人という行為をいかに特殊化させているかを解明する。言語や象徴操作による「非人間化」が生物学的な抑制ブレーキを無効化する機序や、「名誉の文化」、経済的不平等といった環境要因が致死的攻撃に与える影響を多層的に分析する。
 

授業中に指示します。
コマ主題細目 ① ヒトの高度な認知能力と殺人 ② 文化と環境の影響:名誉と不平等の心理学 ③ 社会構造と集団暴力:非人間化と正当化 ④ 統合モデル:殺人行動の連続性と非連続性
細目レベル ① ヒトの高度な認知能力と殺人
人間が進化の過程で獲得した高度な知性が、殺人の性質をいかに変容させたかを考察する。他者の意図や信念を読み取る「心の理論」は、協力の土台であると同時に、冷酷な「策略」や計画的殺人を可能にする。また、人間は言語や象徴を用いて特定の対象から人間性を剥ぎ取る「非人間化」を行い、脳の共感システムを意図的にオフにすることで、攻撃への心理障壁を劇的に低下させることができる。さらに、集団内での「評判」を死守しようとする強力な心理システムは、社会的排除への根源的な恐怖と結びつき、現代においても名誉殺人や報復的殺人の直接的な動機となる。ヒトの知性は、協力のための究極の道具であると同時に、殺人を「正義」や「任務」へと昇華させる恐るべき装置という二面性を持っている。


② 文化と環境の影響:名誉と不平等の心理学
殺人発生率を左右する文化的規範と社会環境の影響を検討する。侮辱への徹底的な報復を義務づける「名誉の文化」では、些細な自尊心への侵害が生存に不可欠な抑止力の問題へと変換され、致死的な暴力が正当化される。また、殺人率を予測する強力な要因は経済的不平等であり、格差による「相対的剥奪感」は、低順位の個人にリスクの高い暴力戦略を選択させる心理的土壌となる。居住環境の質や社会的排斥のリスクも攻撃性を高め、先制攻撃を「合理的」な生存戦略へと変容させる。さらに、武器の技術的進化は物理的・心理的な距離を生み出し、被害者の苦悶を直視しない状況を作り出すことで、本来備わっているはずの同種殺しに対する生理的な抑制ブレーキを機能不全に陥らせている。


③ 社会構造と集団暴力:非人間化と正当化
個人の衝動を超えた「集団による暴力」が発生し、正当化される社会構造的メカニズムを分析する。人間には「道徳的分離」という心理メカニズムがあり、暴力に「家族や国家を守るため」という大義名分を付与することで、自己を個人的な罪悪感から切り離し、殺人を賞賛されるべき任務へと定義し直すことができる。また、集団からの承認は生存に直結する欲求であるため、集団規範が暴力を奨励する場合、強力な「同調圧力」が個人の内なる倫理観を圧倒し、不本意であっても殺人へと駆り立てる。言語によって敵対者を「下等な動物」等と定義する「非人間化」は、集団的な虐殺やリンチを支える不可欠な認知的フレームワークであり、良心的な個人をも非道な暴力の実行犯へと変容させる。このように、ヒトの殺人は個人の気質以上に、埋め込まれた集団のダイナミクスに強く支配される。


④ 統合モデル:殺人行動の連続性と非連続性
これまでの知見を統合し、殺人を「生物学的基盤を持つ極めて文化的な現象」として捉え直す。本節では、日常的な微細な攻撃から致死的暴力に至る「暴力のスペクトラム」における連続性と、武器や言語といったヒト特有の「非連続性」要因が暴力を大規模化させる機序を整理する。殺人は、進化的情動、発達的脆弱性、そして文化的正当化が不吉に共鳴した動的なシステムの出力であり、各段階での介入が連鎖を断つ鍵となる。殺人の動機そのものは普遍的なものであるが、それが現実に致死的な暴力へと転じるには、特殊な社会環境や認知的フレームワークの介在が必要であることを明らかにする。この多層的な理解は、司法的な処罰を超え、実効性のある犯罪予防策や介入のポイントを特定するための不可欠な知的土台となる。


キーワード ① 心の理論と策略的殺人 ② 非人間化 ③ 名誉の文化 ④ 経済的不平等(相対的剥奪) ⑤ 道徳的分離
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で、その内容をあらためて確認し、どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し、理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み、重要だと感じたところと、むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。


10 詐欺Ⅰ:欺瞞の比較・進化・認知基盤 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、第10回では、詐欺の本質を「協力社会へのハッキング」と定義し、動物界の生存戦略からヒトの高度な知的能力に至る欺瞞(ぎまん)の系譜を辿る。擬態や霊長類の戦術的欺瞞といった進化的背景を確認し、欺く側と見破る側の「軍拡競争」がいかにヒトの社会的知性を洗練させたのかを多層的に理解する。

授業中に指示します。
コマ主題細目 ① 従来の「詐欺の心理学」の整理 ② 比較心理学:動物界の欺瞞戦略 ③ 進化心理学:協力社会の裏切り ④ 犯罪としての詐欺の特殊性
細目レベル ① 従来の「詐欺の心理学」の整理
従来の犯罪心理学における詐欺の理解を総括し、その到達点と限界を整理する。詐欺師個人の特性としては、マキャベリアニズム(他者を操作し利用する傾向)や冷淡なパーソナリティが強調されてきた。また社会心理学の観点からは、返報性や一貫性といった人間の「心理的脆弱性」を突く説得技術や、被害者の信頼を悪用するメカニズムが解明されている。さらに、犯行を繰り返す中で「相手が悪い」といった合理化が強化される学習プロセスも重要な至近要因である。しかし、これらの知見は「どのように(How)」騙すかに答える一方、「なぜ種として欺瞞能力がこれほど発達したのか」という究極要因の説明を欠いている。本節では、既存モデルを尊重しつつ、進化的視点を導入するための理論的空白を明確にする。


② 比較心理学:動物界の欺瞞戦略
ヒトの詐欺行動を動物界の生存戦術の延長線上にあるものとして捉え直す。自然界における欺瞞は、捕食を免れる擬態や獲物を誘い出す偽装シグナルなど、生存確率を高めるための合理的な戦略として広く存在する。特に霊長類では、優位個体の目を盗んで報酬を隠す「隠匿」や、あえて無関心を装う「注意逸らし」といった、他者の視線を意識した「戦術的欺瞞」が観察される。これは「他者が何を知っているか」を推測する初期的な認知機構(心の理論の萌芽)に基づく、高度に社会的な駆け引きである。ヒトの詐欺は、こうした動物界の普遍的な生存戦術が、言語や高度な認知能力によって洗練された極致であり、長い生物学的連続性の上に成り立っていることを明らかにする。


③ 進化心理学:協力社会の裏切り
人間特有の大規模な協力社会が、いかに「詐欺」というリスクを内包し、またそれに対抗してきたかを検討する。互恵的利他主義(助け合い)は集団に利益をもたらすが、そこには常にコストを払わず利益のみを得る「裏切り戦略」が内在しており、詐欺はこのシステムを悪用するハッキング行為と言える。このフリーライダー(ただ乗り者)問題は社会崩壊を招くため、ヒトは相手の信頼性を瞬時に評価する「裏切り者検出バイアス」を進化させた。欺く側の精巧化と見破る側の鋭敏化が連鎖する「軍拡競争」こそが、ヒトの高度な社会的知能を押し上げた原動力である。個人レベルの検出に加え、評判の共有や第三者による制裁(第三者罰)が集団レベルで機能することで、脆弱な協力社会が維持されている構造を解明する。


④ 犯罪としての詐欺の特殊性
生物学的・進化的基盤を踏まえ、現代の犯罪としての詐欺が持つ特異性を分析する。詐欺は暴力犯罪とは異なり、被害者の「自発的な協力」を偽りの合意によって引き出すという、高度な社会的信頼の破壊構造を持っている。これを実行するには、相手の心理的リアクションを正確に予測する認知的成熟が必要であり、ある種の「高度な適応能力」の誤用という側面を持つ。また、現代の制度やテクノロジーの複雑化は、進化した「裏切り者検出器」が想定していない匿名の刺激を提供し、欺瞞の期待利得を不当に高めるミスマッチを生んでいる。詐欺を単なる個人の異常ではなく、進化した社会的知性が現代環境の隙間を突いた結果として再定義し、実効性のある抑制策への示唆を提示する。


キーワード ① 戦術的欺瞞 ② 軍拡競争(欺く能力と見破る能力) ③ 互恵的利他主義と裏切り戦略 ④ 裏切り者検出バイアス ⑤ ハッキングとしての詐欺
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で、その内容をあらためて確認し、どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し、理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み、重要だと感じたところと、むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。


11 詐欺Ⅱ:発達と文化的文脈 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、第11回では、嘘をつく能力の形成過程を「認知的成熟」の指標として捉え、発達と文化の相互作用を解明する。幼児期の否認から青年期の戦略的使用に至る軌道を確認し、文化規範による「嘘の価値づけ」がどのように巧妙な詐欺や社会的スキルへと分岐していくのかを多層的に理解する。

授業中に指示します。
コマ主題細目 ① 発達心理学:嘘をつく能力の形成 ② 欺瞞の精緻化と社会的操作の発達 ③ 文化による嘘の価値づけと許容境界 ④ 発達 × 文化の統合:欺瞞行動の軌道
細目レベル ① 発達心理学:嘘をつく能力の形成
嘘をつく能力は、脳の成熟と密接に関連した高度な認知発達の産物である。2〜3歳頃の初期のごまかしは、単なる事実の「否認」にとどまり、他者の知識状態を考慮していないため容易に見破られる。しかし、4〜6歳頃に「心の理論」を獲得すると、他者の信念を操作する精緻な嘘が可能になる。この時期の嘘は、実行機能や作業記憶の成熟を示すポジティブな知性的指標でもある。発達が進むにつれ、嘘の動機は叱責を免れるための「自己防衛」から、報酬を得るための「利得追求」や、他者の感情に配慮する向社会的な嘘へと変化していく。嘘をつく能力そのものは中立的な認知ツールであり、その使用方向がその後の発達環境によって規定される。

② 欺瞞の精緻化と社会的操作の発達
児童期から青年期にかけて、欺瞞はより複雑な社会的駆け引きの道具として洗練される。他者の知識状態を意図的に操作する欺瞞は、嘘を維持し続けるための高い「認知的負荷(Load)」を伴うが、これを管理する実行機能の向上が巧妙な欺瞞を支える。仲間関係においては、集団への所属や評判管理のために嘘が戦略的に使用され、社会的地位の維持に寄与する側面を持つ。この能力は、日常生活を円滑にする「社会的スキル」へと昇華される適応的側面を持つ一方で、抑制機能の欠如や不適切な環境と結びつくことで、深刻な詐欺犯罪へと繋がるリスクを孕んでいる。欺瞞能力の発達は、協力的な関係を築くための「配慮」と、他者を出し抜く「操作」という表裏一体の進化を遂げる。

③ 文化による嘘の価値づけと許容境界
何が「悪質な嘘」で何が「許容される欺瞞」かは、属する文化圏の規範によって大きく異なる。多くの文化では、他者との摩擦を避け調和を保つための「善意の嘘(White lies)」が容認・推奨される。特に体面や名誉、和を重視する文化圏では、欺瞞が社会的な礼儀や自己防衛の不可欠な機能として位置づけられることがある。一方で、個人主義的な文化や契約を重視する社会では「真実性」に重い価値が置かれ、欺瞞への社会的制裁がより厳格になる傾向がある。グローバル化に伴う異なる規範の衝突は、欺瞞の解釈を巡る摩擦を生み出し、現代の組織的不正や国際的な詐欺事案の背景にも影響を及ぼしている。文化は、個人の欺瞞能力がどのような形で発現すべきかの「境界線」を規定する。

④ 発達 × 文化の統合:欺瞞行動の軌道
欺瞞行動の最終的な形は、生得的な認知能力と長年の発達経験、そして文化的規範が動的に相互作用した結果として立ち現れる。子供は周囲のモデルを観察する「社会的学習」を通じて、文化的に許容される嘘の境界線を内面化していく。道徳性の発達に伴い、単なる利得のためではなく、状況に応じた「嘘の使い分け」を習得するが、この軌道が反社会的な方向へ固定化された場合、成人期の巧妙な詐欺犯罪へと連続していく。成人詐欺師が示す高度な「心の理論」の活用は、突如現れるものではなく、生涯を通じた試行錯誤と環境による強化の果てに研ぎ澄まされたものである。詐欺を理解するには、それが単なる成人期の逸脱ではなく、個人の発達史と文化規範が不吉に交差したプロセスであることを認識せねばならない。


キーワード ① 心の理論の獲得と精緻化 ② 認知的成熟の指標としての嘘 ③ 善意の嘘(White lies) ④ 欺瞞の社会的学習 ⑤ 発達・認知・文化の動的相互作用
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で、その内容をあらためて確認し、どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し、理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み、重要だと感じたところと、むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。


12 窃盗:所有・資源・規範の比較発達 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、第12回では、窃盗を、生存に不可欠な「資源獲得戦略」の進化的変容として多層的に理解する。霊長類の食物奪取からヒトの所有権概念の発達、そして現代の法制度との「ミスマッチ」を辿り、脳の報酬系や抑制機能が関与する臨床的窃盗(クレプトマニア)への支援までを概観する。

授業中に指示します。
コマ主題細目 ① 比較・進化心理学:資源獲得と「所有」の起源 ② 発達心理学:所有概念の形成と自己抑制 ③ 神経心理学:報酬系とコントロールの不全 ④ 予防と更生支援:多層的なアプローチ
細目レベル ① 比較・進化心理学:資源獲得と「所有」の起源
窃盗行動の生物学的原型を、資源獲得が生存と繁殖に直結した祖先環境の文脈から解明する。多くの動物、特に霊長類において、他者の食物を奪うことや見つからないように隠す「隠匿」は、最小のコストで資源を得るための合理的な生存戦略である。人間社会における窃盗も、この根源的な資源獲得衝動がベースにある。しかし、ヒトは進化の過程で「所有」という概念を発達させ、直接手にしていない物に対しても排他的な権利を認める高度な社会システムを構築した。現代の窃盗は、この「石器時代の資源獲得プログラム」が、所有権が厳密に定義され法制化された現代環境と衝突した結果生じる「進化的ミスマッチ」であると捉え直すことができる。


② 発達心理学:所有概念の形成と自己抑制
子供がいかにして「自分のもの」と「他人のもの」の境界を学び、衝動を抑制できるようになるかを辿る。幼児期初期には「mine(私のもの)」という自己中心的な所有主張が強く現れるが、認知的成熟とともに他者の所有権を認める客観的な視点(視点取得能力)を獲得していく。この発達過程で、他者の物を奪うことへの「罪悪感」や、欲しいという欲求を抑える「実行機能(抑制制御)」が彫琢される。しかし、不適切な養育環境や逆境体験はこの抑制機能の発達を阻害し、欲求に忠実な「幼児的な資源獲得パターン」を成人期まで持続させるリスクとなる。窃盗行動の理解には、この所有概念と自己調整機能の発達的軌道を分析することが不可欠である。


③ 神経心理学:報酬系とコントロールの不全
窃盗行動、特に繰り返される臨床的な万引き(クレプトマニア)の背景にある脳科学的メカニズムを検討する。窃盗は、物を手に入れた際の「快感」や「安堵感」によって脳の報酬系(ドーパミン系)が強化される学習プロセスを持つ。本来、このアクセル役の報酬系を抑制するのが前頭前野のブレーキ機能だが、この領域の機能低下や刺激追求特性があると、衝動的な奪取行動を制御不能に陥らせる。特に「欲しいから盗む」という実利目的を超え、盗む行為そのものが報酬化しているケースでは、神経学的な依存のメカニズムが強く関与している。この視点は、窃盗を単なる道徳の問題ではなく、生物学的な調整不全として捉え、医療的な介入やスキルトレーニングの必要性を裏付ける根拠となる。


④ 予防と更生支援:多層的なアプローチ
窃盗の再発防止に向けた、個人と環境の両面からの介入戦略を提示する。個人への支援では、窃盗を正当化する「認知の歪み」(例:「自分は不遇だから盗んでも良い」)を特定し、認知行動療法を通じて健全な代替行動を選択する力を強化する。一方、環境面では「状況的犯罪予防(CPTED)」に基づき、照明の改善や死角の解消、店舗レイアウトの変更といった物理的な工夫を行う。これは、ヒトが本来持つ「監視の視線に対する敏感さ」を再活性化させ、「見つかるリスク」の主観的実感(知覚される抑止力)を高める効果がある。個人の内的抑制機能の向上と外的な状況コントロールを組み合わせた多層的なアプローチこそが、実効性のある支援となる。


キーワード ① 資源獲得戦略としての窃盗 ② 所有概念の発達 ③ 進化的ミスマッチ(所有権の制度化) ④ 前頭前野の抑制不全と刺激追求 ⑤ 状況的犯罪予防(CPTED)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で、その内容をあらためて確認し、どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し、理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み、重要だと感じたところと、むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。


13 道徳:協力維持システムとしての道徳 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、第13回では、道徳を、人類が進化史を通じて集団内の協力維持と裏切り抑制のために発達させてきた「心理的インフラ」として捉え直す。進化的起源、乳児期の萌芽、感情の機能、そして文化による多様性までを三層構造から統合的に検討する。

授業中に指示します。
コマ主題細目 ① 進化的視点:協力の理論と秩序維持のロジック ② 比較・発達的視点:道徳性の生得的基盤と内面化 ③ 道徳感情:行動を調整する適応的装置 ④ 文化と責任能力:多層的視点による評価
細目レベル ① 進化的視点:協力の理論と秩序維持のロジック
道徳の起源を生存戦略の観点から解明する。血縁選択や互恵的利他主義を整理し、それらの限界を補完するために「裏切り者検出」や「第三者罰」の心理メカニズムがいかに秩序維持のロジックとして成立したかを解説する。道徳は、フリーライダーによるシステムの崩壊を防ぎ、大規模な社会秩序を安定させるための進化的解決策である。私たちは自分が直接被害を受けていなくてもルールを破った個体にコストを課そうとする強い「制裁衝動」を備えることで、警察以前から自律的秩序を構築してきた。犯罪と処罰はこのシステムの動的な発動と見なされ、秩序維持の進化的基盤を理解することは現代の刑罰制度が持つ心理的エネルギー源を解き明かすことに直結する。

② 比較・発達的視点:道徳性の生得的基盤と内面化
道徳性が言葉や教育以前にいかに備わり、成熟するかを辿る。霊長類に見られる公平感や、乳児が示す「助ける者」への社会的選好といった生得的基盤を確認する。道徳判断の発達は、ピアジェが提唱した「他律的(結果重視)」から「自律的(意図重視)」へと、認知能力の発達段階に応じて内面化・高度化していく。個人の道徳性は、これら進化的な準備性と個体発生の過程での経験が相互作用することで形づくられる。特定の年齢で見られる危うさは認知の未熟さの結果であり、発達を可塑的なプロセスとして捉えることは、適切なタイミングでの環境調整が行動を修正しうるという希望の根拠となる。生得的な「種」が環境により規範意識へと育つダイナミズムを解明する。

③ 道徳感情:行動を調整する適応的装置
罪悪感、恥、怒り、同情といった感情が、社会行動を内側から制御する機能を分析する。これらは外的な強制力がなくても個体の行動を規律し、裏切りを思い止まらせたり関係修復を促したりする適応的装置として機能する。義憤や裏切りへの怒りは制裁の情動的なエンジンであり、恥や罪悪感は個体の行動を社会的な方向へ規律する内面的な監視装置である。犯罪心理学における規範意識の議論において道徳感情の進化的基盤は無視できず、道徳は理性以前に進化が用意した「情動的な監視装置」であると言える。この装置が適切に作動しない、あるいは環境刺激で誤作動することが、現代の逸脱行動や深刻な対人トラブルの根底にあることを明らかにする。


④ 文化と責任能力:多層的視点による評価
普遍的な道徳の心理基盤が文化的な価値体系によっていかに修飾され、責任能力評価に影響を与えるかを考察する。個人主義や名誉文化など、規範の解釈は多様であり、それが犯罪判断の境界に影響する。責任能力を固定的な二値ではなく、認知的成熟、道徳感情、成育環境による可塑性を統合した「発達的プロファイル」として捉える視座を提示する。例えば虐待が感情発達を阻害している場合、それは脳の適応的な変化に伴う制御能力の制約として評価されるべきである。進化・発達・文化の三層から道徳を捉える枠組みは、罰すべき点だけでなく支援・更生すべき点をも明確にし、公正で効果的な司法判断と処遇の実現に寄与することを宣言する。

キーワード ① 規範内面化プロセスと認知的成熟 ② 文化による「道徳性」の価値付け ③ 道徳感情(罪悪感・恥・義憤) ④ 第三者罰と社会秩序維持 ⑤ 責任能力の発達的評価(プロファイル)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で、その内容をあらためて確認し、どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し、理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み、重要だと感じたところと、むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。


14 支援と更生:仲裁・修復の心理学 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、第14回では、犯罪を個人の異常と切り捨てず、人間が本来備える「関係修復能力」に焦点を当てた更生モデルを検討する。霊長類の和解行動や道徳感情を基盤に、断絶した社会関係を再構築する心理学的プロセスを詳述する。

授業中に指示します。
コマ主題細目 ① 支援と更生の理論的枠組み:RNRから関係性へ ② 比較心理学:和解と仲裁の進化的起源 ③ 発達的支援:社会情動能力の再構築 ④ 社会的再統合:寛容と包摂の循環モデル
細目レベル ① 支援と更生の理論的枠組み:RNRから関係性へ
従来の矯正実務における主要モデルであるRNR(リスク・ニーズ・レスポンス)モデル等の成果と限界を整理する。本講義では、単なるリスク管理や認知の修正に留まらず、「尊厳の回復」と「関係性の再構築」を更生の中核に据える。加害者の背景にある発達的脆弱性や逆境体験を適切に理解した上で、一方的な罰の付与ではなく、社会的な絆を再形成するための動機づけをいかに高めるかを検討する。これは、犯罪を社会という協力システムからの「一時的な逸脱」と捉え、適切な支援によって再び適応的な軌道へと戻す、発達的・進化的な視点に基づくアプローチである。個人の内省を促すと同時に、社会側が受け入れ可能な状態をどう作るかという「適合性」の視点を導入し、再犯防止に向けた多層的な理論的枠組みを提示する。


② 比較心理学:和解と仲裁の進化的起源
ヒトの修復的司法や調停制度の根源を、霊長類の社会に見られる適応的行動から読み解く。チンパンジー等の類人猿は、激しい対立の後に抱擁や毛づくろいを行う「和解」や、第三者が介入して争いを鎮める「仲裁」の仕組みを、集団の凝集性を維持するための生存戦略として持っている。対立を破綻で終わらせず、関係を修復して協力を再開するプロセスは、社会性動物にとって普遍的な知恵である。更生支援とは、この「本来備わっている修復プログラム」を現代的な制度の中で再起動させる作業であるといえる。本節では、種を越えて共通する「仲裁」のロジックを確認し、それが現代の法的・社会的な介入にいかなる示唆を与えるかを考察する。進化的に裏打ちされた修復のメカニズムを理解することで、更生を生物学的な節理に適合したプロセスとして捉え直す。


③ 発達的支援:社会情動能力の再構築
加害者の更生を、共感、罪悪感、自己調整といった社会情動機能の「能力の再構築」として捉える。実行機能の未熟さや情動調整の不全に対して、メタ認知の強化やスキルトレーニングといった具体的な支援策を提示し、加害者が自身の衝動を制御し、他者の痛みを推察できる認知的基盤を整える。被害者支援においても、共感的理解の起源と、発達的配慮を要する回復過程の複雑性を考慮し、人間本来の回復能力(レジリエンス)を引き出す多角的なアプローチを重視する。発達的視点に立つ更生支援は、加害者を単に「罰せられた存在」に留めるのではなく、自律的に規範を遵守し社会に貢献できる「社会的一員」へと変容させるための不可欠なプロセスである。脳の可塑性を前提とし、どの発達段階の欠落を補完すべきかを具体的に分析する。


④ 社会的再統合:寛容と包摂の循環モデル
更生の最終段階として、加害者が再び社会という協力のネットワークに繋ぎ止められる「再統合」の循環モデルを提示する。これは、加害者による真摯な責任の引き受けと償い、そして社会側による「再度の受け入れ」というステップが循環することで完成する。進化心理学的には、裏切り者を永続的に排除し続けることは集団にとって人的資源を失うコストを伴うため、十分な反省が確認された個体への「寛容さ」が種としての繁栄に寄与してきた。社会が「許し」と「包摂」のメカニズムを持つことは、加害者にとっての新しい社会的自己の構築を助け、信頼回復という報酬が更生への動機を強化する。この循環こそが、本講義が目指す「冷徹で温かい人間理解」に基づく、実効的な社会防衛と更生の最終的な到達点であることを総括する。


キーワード ① 仲裁・和解の比較心理学 ② 修復的司法の進化的基盤 ③ 社会情動能力の再構築 ④ 再統合の循環モデル ⑤ 寛容と包摂の機能的意義
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で、その内容をあらためて確認し、どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し、理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

※chatGPTを用いてテストワークをしよう※
文字教材をchatGPTにアップロードし、5選択肢の問題をたくさん作って解いてみよう。以下にプロンプトの例を示す。

 読み込んだ教材をもとに、5選択肢の問題を30問作ってください。この時、
・教材から重要項目を10個ピックアップする
・各重要項目につき受講者の90%以上が正解できる「かんたんな」問題、70%程度が正解できる「ふつうの」問題、そして50%程度が正解できる「むずかしい」問題を1問ずつ、計30問作成する
・「である調」で作成する
・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
・各問題にかんたんな解説をつける

【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み、重要だと感じたところと、むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。


15 各論のまとめと全体総括 科目の中での位置付け  本科目は、犯罪に関連する諸問題に「進化」と「発達」という視点を導入し、犯罪心理学を新たな観点から捉え直すことを目的とする。
 まずイントロとして「比較発達犯罪心理学」の目的を説明した後、比較心理学、進化生物学・進化心理学、発達心理学の基礎を概観する。さらに、従来の犯罪心理学における犯罪原因論を整理・総括する。これらの導入を踏まえ、以降は各論に移り、殺人や攻撃行動、詐欺などの欺瞞行動、窃盗、道徳、支援と更生、を取り上げる。各論では、進化的視点と発達的・社会文化的視点を統合し、犯罪に関わる行動を総合的に理解することをめざす。
 このような科目構成の中で、本回では、全15回の講義を総括し、逸脱行動を進化史、個体発達、社会構造の三層から捉える新たな犯罪観を提示する。適応戦略のミスマッチや発達的軌道を再確認し、関係修復能力に基づいた更生の展望をまとめる。

授業中に指示します。
コマ主題細目 ① 理論的枠組みの総括:多層的理解 ② 主要な犯罪類型の再考 ③ 道徳・支援・更生の統合 ④ 社会への提言と今後の課題
細目レベル ① 資源獲得戦略の進化的総括
殺人、詐欺、窃盗といった具体的な犯罪類型を、かつての生存・繁殖を最大化するための「適応戦略」という究極要因から振り返る。物理的攻撃や欺瞞、所有物の奪取は、祖先環境(EEA)において合理的な資源獲得装置として機能していた。しかし、現代の急速に変化した法的規範や匿名社会においては、これら古いOSが深刻な「進化的ミスマッチ」を引き起こし、犯罪として表出する。本節では、各論で扱った適応の論理を統合し、ヒトという生物が抱える「設計の癖」と現代社会の衝突という構図を再定義する。犯罪を単なる個人の「悪」や異常に帰すのではなく、生物学的な背景と環境刺激の交差が生み出す必然的な現象として客観的に捉え直すことで、より実効性の高い社会設計や状況的予防への示唆を総括する。


② 発達的軌道と抑制メカニズムの再確認
生物学的基盤が個体の発達過程において、いかに複雑な行動軌道を規定していくのかを整理する。「心の理論」の精緻化や実行機能、道徳感情の成熟がいかに衝動を制御し、社会的な適応を可能にするのかを再確認する。特に、アクセル役の報酬系とブレーキ役の前頭前野の不均衡や、逆境体験が脳の可塑性に与える影響が、いかにして逸脱のリスクを形成するのかを多層的に論じる。また、文化や社会構造が暴力や欺瞞に特有の「意味」を付与し、「非人間化」を通じて生物学的な抑制ブレーキを無効化させるプロセスについても振り返る。個人の脆弱性と環境の相互作用を時間軸の中で捉える発達的視点は、決定論を排し、どの地点にどのような介入を施せば行動軌道の修正が可能になるのかという、更生支援の科学的根拠を提示するものである。


③ 比較心理学にみる和解と仲裁のロジック
犯罪を「人間関係の破綻」と再定義し、霊長類にも見られる関係修復能力に基づいた更生・支援の在り方を総括する。類人猿が対立後に用いる和解や第三者介入(仲裁)のロジックは、ヒトの修復的司法の進化的基盤であり、集団の凝集性と適応度を維持するための不可欠な仕組みである。被害者支援の本質が損なわれた尊厳と社会的信頼の再構築にあること、そして加害者が自身の責任を引き受け社会的に承認されるプロセスがその核となることを強調する。人間が本来持っている「やり直す能力」を科学的に信頼し、それを現代の制度の中でいかに機能させるかが重要である。比較心理学的な視座は、対立を単なる破綻で終わらせず、社会的な絆を再編するための普遍的な知恵を提供し、司法制度をより人間的な節理に適合したものへと導く指針となる。


④ 未来への展望:寛容と包摂の循環モデル
本講義の結論として、加害者が真摯な償いを経て再び協力ネットワークへと戻る「再統合の循環モデル」を提示する。進化心理学的には、裏切り者を永遠に排除し続けることは集団にとって人的資源を失うコストを伴うため、反省が確認された個体への「寛容さ」が種としての繁栄に寄与してきた。社会の側にも「許し」と「包摂」のメカニズムが必要であり、信頼の回復という報酬こそが更生への動機づけを強力に強化する。発達的視点で見れば、再統合は加害者が「新しい社会的自己」を構築する貴重な機会である。犯罪を切り捨てるのではなく、回復のサイクルへと組み込む多層的な視座こそが、比較発達犯罪心理学が提示する最終的な処方箋である。学生が本講義を通じて、冷徹な科学の目と温かい人間理解の両輪を持って、複雑な社会問題に向き合う姿勢を持つことを期待する。


キーワード ① 比較心理学にみる和解と仲裁 ② 尊厳の回復:被害者支援の心理学 ③ 社会的能力の再構築と更生 ④ 寛容と包摂の機能的意義 ⑤ 再統合の循環モデル
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小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  今回のコマシラバス、配布資料、および文字教材を再度読んだ上で、その内容をあらためて確認し、どの部分の理解が足りていなかったのかを把握し、理解できるようにしておく。
 キーワードや講義中に出てきた専門用語については、インターネット検索なども活用し、特に十分に理解するようにしておこう。

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・選択肢の中から、正しいもの、または最も適切なものを選択する
・文字教材の内容に含まれない問題や正解の選択肢を作成しない
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【次回の予習】
 次回のコマシラバスや配布予定資料を読み、重要だと感じたところと、むずかしいと思ったところはチェックしておくようにしておこう。


履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
1. 多層的・学際的犯罪理解の習得 1)犯罪を個人の性格や異常性のみに帰す単因論的な見方の限界を理解し説明できること。
2)近接要因と究極要因の区別を理解し、犯罪を複数の要因が重なる現象として理解し説明できること。
3)ティンバーゲンの4つの問いを用い、特定の犯罪を多角的に分析する方法を理解し説明できること。
4)バイオ・サイコ・ソーシャルモデルに基づき、各要因の動的な相互作用を理解し説明できること。
5)学際的視点から、犯罪を人間行動の連続性の中で理論的かつ立体的に統合して理解し説明できること。

比較発達犯罪心理学、ティンバーゲンの4つの問い、近接要因、究極要因、多層的理解、バイオ・サイコ・ソーシャルモデル、学際的アプローチ 10 1,6,7,15
2. 進化・系統発生的視点による行動分析 1)ヒトを特別な例外と見なす考えを相対化し、進化的な背景の必要性を理解し説明できること。
2)ヒトと動物の行動の連続性を認め、パブロフ型等の基本学習原理を理解し説明できること。
3)自然選択、適応、包括適応度の概念を用い、行動の進化的利得を理解し説明できること。
4)欺く能力と見破る能力の「軍拡競争」が知性を洗練させた機序を理解し説明できること。
5)系統発生的遺産が現代の社会秩序や逸脱行動に与える影響を理解し説明できること。

系統発生、動物界との連続性、自然選択、適応、包括適応度、進化的適応環境(EEA)、軍拡競争 10 2,3,4,10
3. 進化的ミスマッチと現代犯罪の機序 1)現代の犯罪を、単なるルール違反ではなく適応の観点から理解し説明できること。
2)EEA(進化的適応環境)の概念を理解し、過去の適応戦略の存在を理解し説明できること。
3)本来は秩序維持に役立つ衝動が、匿名空間等で「誤作動」する現象を理解し説明できること。
4)格差や地位防衛への執着が、現代環境下で重大犯罪に繋がる機序を理解し説明できること。
5)ミスマッチを前提とした状況的犯罪予防(CPTED)の有効性を理解し説明できること。
進化的ミスマッチ、石器時代の心、匿名性、社会的排除、環境の変化、状況的犯罪予防(CPTED)、適応戦略の誤作動 10 4,8,9,12
4. 発達的可塑性とリスク・保護因子の動態 1)人間の性質が固定されたものではなく、生涯を通じて変化しうることを理解し説明できること。
2)発達における可塑性を理解し、環境との相互作用による変化の可能性を理解し説明できること。
3)ACE(逆境体験)とレジリエンスが、発達軌道を分岐させる機序を理解し説明できること。
4)早期発現型と青年期発現型の違いに基づき、適切な介入時期や方法を理解し説明できること。
5)リスク因子と保護因子の動的天秤モデルを用い、更生支援の戦略を理解し説明できること。

可塑性、発達の質的変化、内的作業モデル、ACE(逆境的小児期体験)、レジリエンス、早期発現型、青年期発現型 10 5,6,7
5. 生物学的・神経学的基盤と自己制御 1)脳や遺伝の影響を決定論としてではなく、環境との相互作用として理解し説明できること。
2)前頭前野や扁桃体の主要な機能を理解し、衝動抑制の仕組みを理解し説明できること。
3)報酬系と前頭前野の「不均衡」が青年期のリスク行動に与える影響を理解し説明できること。
4)遺伝×環境相互作用(G×E)を理解し、生物学的脆弱性と環境の交差を理解し説明できること。
5)神経心理学的知見を、依存的行動の治療的支援や責任能力評価へ適用する方法を理解し説明できること。
前頭前野、扁桃体、報酬系、実行機能、努力制御、アクセルとブレーキの不均衡、遺伝×環境相互作用(G×E) 10 5,6,8,12
6. 社会的知性と欺瞞・操作の認知基盤 1)嘘や操作の背後にある高度な認知能力とその適応的側面を理解し説明できること。
2)心の理論の獲得プロセスを理解し、嘘が認知的成熟の指標であることを理解し説明できること。
3)戦術的欺瞞や裏切り者検出バイアスが、社会生活で果たす機能を理解し説明できること。
4)高度な知性が「ハッキング」として詐欺等に転用されるプロセスを理解し説明できること。
5)認知能力、発達史、文化規範が共鳴して詐欺師が形成される軌道を理解し説明できること。

社会脳、心の理論、共感、戦術的欺瞞、裏切り者検出バイアス、自己欺瞞、認知的成熟 10 4,10,11
7. 攻撃性と殺人の進化的・文化的背景 1)殺人の進化的・適応的な背景を、動物行動学の知見と併せて理解し説明できること。
2)性淘汰と同性間競争の原理を理解し、男性のリスク選好の背景を理解し説明できること。
3)地位防衛や資源確保のための攻撃が、EEAにおいて合理的であった点を理解し説明できること。
4)非人間化や道徳的分離の機序を理解し、集団暴力が正当化されるプロセスを理解し説明できること。
5)名誉の文化や不平等の影響を統合し、致死的攻撃を抑制する策を理解し説明できること。

性淘汰、同性間競争、地位防衛、非人間化、名誉の文化、不平等(相対的剥奪)、道徳的分離 10 8,9
8. 所有概念と資源獲得戦略としての窃盗 1)窃盗を、生存に関わる資源獲得戦略の進化的変容として理解し説明できること。
2)霊長類の隠匿行動等の知見から、窃盗の生物学的原型を理解し説明できること。
3)所有概念の発達と実行機能の成熟が、奪取行動の抑制に関わる機序を理解し説明できること。
4)報酬系が窃盗行為を強化し、依存状態に陥る神経学的な機序を理解し説明できること。
5)個人へのスキル支援と環境的なCPTEDを組み合わせた再発防止策を理解し説明できること。

資源獲得戦略、隠匿、所有概念の発達、視点取得能力、所有権の制度化、報酬系の強化、依存メカニズム 10 12
9. 協力維持システムとしての道徳と規範 1)道徳を、協力維持と裏切り抑制のための心理的インフラとして理解し説明できること。
2)互恵的利他主義を理解し、秩序維持における制裁の必要性を理解し説明できること。
3)恥、罪悪感、義憤等の道徳感情が、内面的な監視装置として果たす機能を理解し説明できること。
4)第三者罰の進化的意義を理解し、大規模な協力社会を支える機序を理解し説明できること。
5)発達的プロファイルに基づき、責任能力を多層的に評価する方法を理解し説明できること。

互恵的利他主義、フリーライダー、第三者罰、道徳感情(罪悪感・恥)、規範の内面化、責任能力、発達的プロファイル 10 4,13
10. 和解・仲裁のロジックと社会的再統合 1)刑罰による排除のみならず、人間が本来持つ関係修復能力の重要性を理解し説明できること。
2)霊長類の和解・仲裁行動を理解し、修復的司法の進化的基盤を理解し説明できること。
3)社会情動能力の再構築を通じ、加害者が社会に再統合される過程を理解し説明できること。
4)寛容と包摂が集団の繁栄に寄与してきた機能的意義を理解し説明できること。
5)再統合の循環モデルを理解し、科学と支援を統合した更生の到達点を理解し説明できること。

和解と仲裁、修復的司法、関係性の再構築、社会情動能力、寛容と包摂、再統合の循環モデル、尊厳の回復 10 14,15
評価方法 期末試験(100%)によって評価する
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 指定しない
参考文献 ※すべての回を通じての参考文献※   【進化心理学】長谷川寿一・長谷川眞理子・大槻久 (2022). 進化と人間行動(第2版), 東京大学出版会. 小田亮・大坪庸介 (2023). 広がる!進化心理学, 朝倉書店.  【比較心理学】藤田和生 (1998). 比較認知科学への招待 : 「こころ」の進化学, ナカニシヤ出版.  中島定彦 (2023). 動物心理学への扉:異種の「こころ」を知る, 昭和堂.  【犯罪心理学】D. C. ロウ 著 / 津富宏 訳 (2009). 犯罪の生物学:遺伝・進化・環境・倫理, 北大路書房.  越智啓太・桐生正幸 (編著) (2017). 司法・犯罪心理学, 北大路書房.  大上渉 (編) (2025). 犯罪を生む心、社会を守る心:心理学ビジュアル百科 司法・犯罪心理学編, 創元社.  【発達心理学・文化心理学】開一夫・齋藤慈子 (編) (2018). ベーシック発達心理学, 東京大学出版会.  高橋一公・中川佳子 (編著) (2019). 発達心理学15講, 北大路書房.  北山忍 (2025). 文化が違えば、心も違う?:文化心理学の冒険 (岩波新書), 岩波書店.
実験・実習・教材費 なし