区分 高度専門科目Ⅰ(総合犯罪心理系)
ディプロマ・ポリシーとの関係
SDGs力 科学コミュニケーション力 研究力
カリキュラム・ポリシーとの関係
教養 応用力 実践力
科目間連携 総合心理力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ

科目の目的
本講義の目的は、認知加齢の基本的なメカニズムを理解し、それが日常行動や社会問題、とりわけ犯罪とどのように関係するかを説明できる力を養うことである。記憶・注意・実行機能などの変化を基盤に、被害・加害・目撃という三つの視点から具体的事例を分析し、認知の変化が行動に及ぼす影響を考察する。さらに、個人および環境レベルの予防方略を学び、認知加齢を理解し活用する実践的視点を身につける。
到達目標
本講義は、認知加齢の基礎的理解から出発し、その変化が人間の行動や社会問題にどのように関与するかを統合的に捉える力の育成を目的とする。記憶や注意、処理速度といった認知機能の変化を軸に、日常生活における意思決定への影響を理解し、さらに特殊詐欺や万引き、目撃証言といった具体的事例を通して、被害・加害・目撃の三視点から分析できる能力を養う。また、正常老化と病的老化を区別しつつ、個人および環境レベルの予防方略を学ぶことで、認知加齢を前提とした社会設計の重要性を理解する。最終的には、認知の変化を自他の行動理解に応用し、実践的に活用できる視点の獲得を目指す。

認知加齢の基本概念(記憶・注意・処理速度など)を説明できる
正常老化と病的老化(認知症)の違いを区別できる
認知機能の変化が日常行動や意思決定に与える影響を理解できる
高齢者と犯罪(被害・加害・目撃)の関係を具体例で説明できる
特殊詐欺・万引き・目撃証言を認知メカニズムから分析できる
認知加齢に基づく予防方略(個人・環境)を説明できる
認知の変化を前提とした社会設計の重要性を理解できる
自身や身近な人の行動を認知加齢の観点から考察できる

科目の概要
本講義では、認知加齢の基礎から応用までを体系的に学ぶ。第1回で認知の概念を整理し、第2回で加齢の基本と研究枠組みを理解する。第3・4回では記憶や注意などの認知機能の変化とその全体像を扱う。第5・6回では個人および環境レベルの予防方略を学ぶ。第7回は模擬テストによる復習を行い、第8回で高齢者と犯罪の関係を概観する。第9〜14回では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を取り上げ、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防を検討する。第15回は総復習を行い、認知加齢の社会的応用を総合的に理解する。
科目のキーワード
認知加齢、記憶、注意・抑制、処理速度、認知予備力、意思決定、特殊詐欺、万引き、目撃証言、予防科学
授業の展開方法

オフィス・アワー
前期:月曜1限・4限
火曜1限・2限・3限
水曜1限~3限
木曜1限~4限
後期:月曜1限・2限
火曜1限・2限
木曜1限~昼
金曜1限・2限

科目コード SE6020
学年・期 3年・後期
科目名 認知加齢と予防科学(こころと社会の健康を考える認知健康科学)
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 こころの安心・安全学、犯罪心理学概論、心理学概論、サイバー犯罪の心理学、葛藤解決の心理学、高齢者の世界
展開科目 総合犯罪心理学演習Ⅰ、総合犯罪心理学演習Ⅱ、総合犯罪心理学演習Ⅲ、総合犯罪心理学演習Ⅳ、卒業論文
関連資格
担当教員名 野内類
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 認知とは何か 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 認知はどこにあるのか(脳・身体・環境・社会) ② 認知は処理か構成か(哲学〜認知科学) ③ 認知と行動(意思決定との関係)
細目レベル ① 認知とは単に「頭の中で起こる情報処理」ではなく、脳・身体・環境・社会の相互作用の中で成立する現象である。従来の心理学では認知は脳内の処理として理解されてきたが、近年では身体化認知や拡張された心の概念により、身体の動きや道具、さらには他者との関係も認知の一部とみなされるようになっている。例えば、メモやスマートフォンを使って記憶を補う行為は、脳外の資源を含めた認知活動である。本講義ではこの広い意味での認知を前提とし、加齢によって変化する対象を「脳機能」だけでなく「環境との関係」として捉える視点を導入する。
② 認知は外界の情報をそのまま処理する受動的な過程なのか、それとも主体が能動的に世界を構成する過程なのか。この問いは古代哲学から現代認知科学まで続く中心的テーマである。デカルト以降の近代では、認知は心の中の表象処理として理解され、認知革命以降は情報処理モデルが主流となった。しかし、ヘルムホルツの無意識的推論や現代の予測処理モデルは、知覚すらも推論的であることを示している。すなわち、人は「見ている」のではなく「解釈している」のである。この視点は、加齢による変化を単なる能力低下ではなく、世界の捉え方の変化として理解する基盤となる。
③ 認知は単なる内的過程ではなく、最終的には行動として現れる。特に意思決定は、認知機能の統合的な出力であり、記憶・注意・感情・判断が複雑に関与する。例えば、日常の買い物や対人判断、リスクの選択などはすべて認知の働きによって支えられている。しかしこの過程は合理的とは限らず、ヒューリスティックやバイアスの影響を強く受ける。加齢に伴いこれらのプロセスが変化すると、判断や行動の様式も変わる。本講義では、認知を「行動を生み出すシステム」として位置づけ、その変化が日常生活や社会問題、特に犯罪とどのように関係するかを明らかにしていく。
キーワード ① 身体化認知 ② 拡張された心 ③ 表象と構成 ④ 意思決定 ⑤ ヒューリスティックとバイアス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
2 加齢とは何か 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 正常老化と病的老化(認知症との区別 ② 老化の多面的理解(生物・心理・社会) ③ 認知加齢研究の成立(知能研究・縦断研究)
細目レベル ① 加齢に伴う変化には「正常老化」と「病的老化」という重要な区別がある。正常老化とは、誰にでも生じる生理的・心理的な変化であり、処理速度の低下や記憶の変化などが含まれる。一方で病的老化は、アルツハイマー型認知症などの疾患による機能低下を指す。この両者を混同すると、「年を取ると何もできなくなる」という誤解が生まれる。実際には、正常老化では意味記憶や判断力の一部は維持されることも多い。本講義では主に正常老化を対象とし、その範囲内でどのような認知変化が生じるのかを扱う。また、どこからが病的なのかという境界を理解することは、予防や支援を考えるうえでも極めて重要である。
② 老化は単一の現象ではなく、生物学的・心理的・社会的な側面が相互に関係しながら進行する。生物学的には、神経細胞の変化や白質の劣化などが認知機能に影響を与える。心理的には、記憶や注意、感情調整などの変化が見られる。さらに社会的には、退職や人間関係の変化、役割の喪失が認知や行動に影響を及ぼす。例えば、社会的交流の減少は認知刺激の減少につながり、認知機能低下を加速させる可能性がある。このように老化は「脳だけの問題」ではなく、「生活全体の変化」として理解する必要がある。本講義ではこの多面的視点を前提に、認知加齢を統合的に捉えていく。
③ 認知加齢研究は、もともと知能研究の中から発展してきた。初期の研究では、年齢とともに知能が低下するという単純なモデルが提唱されていたが、これは主に横断研究に基づくものであった。その後、Schaieによる縦断研究により、同一個人を長期的に追跡することで、多くの認知機能は中年期まで大きく低下しないことが示された。また、流動性知能と結晶性知能の区別により、「低下する能力」と「維持される能力」が明確化された。これにより、認知加齢は単なる衰えではなく、機能ごとの異なる変化として理解されるようになった。本講義はこの現代的な認知加齢観に基づいて構成される。
キーワード ① 正常老化と病的老化 ② 生物・心理・社会モデル ③ 縦断研究 ④ 流動性知能と結晶性知能 ⑤ 個人差
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
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小テスト
復習・予習課題
3 認知加齢①:記憶と注意 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 記憶の変化(エピソード・意味・誤記憶 ② 注意と抑制の変化(選択・干渉・抑制) ③ 日常生活への影響(忘却・見落とし・誤判断)
細目レベル ① 加齢に伴う記憶の変化は一様ではなく、記憶の種類によって異なる。特にエピソード記憶(いつ・どこで何があったか)は低下しやすく、新しい出来事を正確に思い出すことが難しくなる。一方で意味記憶(知識や語彙)は比較的維持されることが多く、場合によっては増加することもある。また、高齢者は誤記憶が生じやすく、実際には経験していない出来事を「見た」「聞いた」と確信してしまうことがある。これは記憶が単なる保存ではなく、再構成される過程であることに起因する。若年者に比べ、高齢者は細部よりも要点(gist)を重視する傾向があり、この特徴が誤記憶と関係している。
② 注意機能も加齢に伴い変化する。特に重要なのは、不要な情報を排除する「抑制機能」の低下である。若年者は重要な情報に集中し、無関係な刺激を無視することができるが、高齢者はそれが難しくなり、結果として情報過多の状態に陥りやすい。このため、複数の情報を同時に処理するマルチタスクや、雑音の多い環境での判断が困難になる。また、干渉(interference)の影響を受けやすくなり、過去の記憶や無関係な情報が現在の判断に入り込む。このような注意と抑制の変化は、日常生活だけでなく、意思決定や対人場面にも大きな影響を与える。
③ 記憶や注意の変化は、日常生活に具体的な形で現れる。例えば、約束を忘れる、物の置き場所を思い出せないといった忘却はエピソード記憶の低下と関係している。また、重要な情報を見落とす、複数の作業を同時に行えないといった問題は注意資源の制約と抑制機能の低下に起因する。さらに、誤った判断や思い込みも増えやすく、これは記憶の再構成性や不要情報の混入と関係している。これらの現象は「能力の欠如」ではなく、「認知システムの変化」として理解する必要がある。若年者でも同様のエラーは起こるが、高齢者ではその頻度や影響が大きくなる点が特徴である。
キーワード
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
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小テスト
復習・予習課題
4 認知加齢②:全体像 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 処理速度低下と認知全体への影響 ② 認知機能の連動(記憶・注意・実行機能 ③ 維持と補償(経験・戦略・環境)
細目レベル ① 加齢に伴う最も安定した変化の一つが処理速度の低下である。処理速度とは、情報を理解し、判断し、反応するまでの時間的効率を指す。この低下は単独の機能にとどまらず、記憶や注意、意思決定など多くの認知機能に影響を及ぼす。Salthouseは、処理速度の低下によって「時間内に処理が完了しない」ことや「複数の情報を同時に保持できない」ことが、他の認知機能の低下として現れると説明している。例えば、会話の内容を理解しきれない、複雑な指示に対応できないといった現象は、単なる記憶の問題ではなく処理速度の制約と関係している。このように処理速度は認知加齢の基盤的要因として位置づけられる。
② 認知機能は独立して存在するのではなく、相互に密接に関連している。例えば、作業記憶は注意によって支えられ、注意は抑制機能によって不要情報の影響を受けにくくなる。また、実行機能はこれらの情報を統合し、適切な行動へと導く役割を持つ。加齢によってこれらのいずれかが変化すると、他の機能にも連鎖的な影響が生じる。例えば、抑制機能が低下すると不要な情報が増え、作業記憶の負荷が高まり、結果として判断ミスが増える。このように、認知加齢は「個別機能の低下」ではなく、「システム全体の変化」として理解することが重要である。
③ 認知加齢は単なる低下ではなく、維持や補償の側面も持つ。意味記憶や語彙のように比較的保たれる機能は、経験の蓄積によって支えられている。また、高齢者は自らの弱点を補うために戦略を用いることが多く、メモを取る、確認を繰り返すなどの行動が見られる。さらに、環境の工夫によって認知負荷を軽減することも可能である。例えば、情報を整理して提示する、選択肢を減らすなどの方法は判断を助ける。このような補償は「認知予備力」とも関連し、教育や生活経験が個人差を生む要因となる。認知加齢は低下・維持・補償の三つの要素からなる動的なプロセスとして捉えるべきである。
キーワード ① 処理速度 ② 認知機能の連動 ③ 作業記憶 ④ 実行機能 ⑤ 認知予備力
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復習・予習課題
5 認知加齢の予防①:個人 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 認知予備力と可塑性 ② 運動・学習・社会活動の効果 ③ 認知機能との対応(何に効くのか
細目レベル ① 認知加齢において重要な概念が「認知予備力」である。これは、脳の損傷や加齢による変化があっても、機能を維持・補償する能力を指す。教育歴や知的活動、社会経験などがこの予備力を高める要因とされている。また、脳は加齢後も変化し続ける可塑性を持ち、適切な刺激によって機能改善が可能であることが示されている。例えば、認知トレーニングや新しい技能の習得は神経回路の再編成を促す。このため、認知加齢は不可逆的な衰えではなく、介入可能なプロセスとして理解されるべきである。ただし、すべての機能が同様に改善するわけではなく、どの機能にどのような介入が有効かを見極める必要がある。
② 個人レベルでの予防には、運動・学習・社会活動の三つが特に重要である。運動は前頭葉機能や海馬の活動を高め、実行機能や記憶の維持に寄与することが知られている。学習活動は意味記憶や注意機能を刺激し、新たな神経結合の形成を促す。また、社会活動は対人コミュニケーションを通じて複数の認知機能を同時に活性化させる。これらの活動は単独でも効果があるが、組み合わせることで相乗的な効果が期待できる。重要なのは「継続性」と「適度な負荷」であり、日常生活の中で無理なく取り入れることが長期的な認知維持につながる。
③ 予防を効果的に行うためには、どの活動がどの認知機能に影響するのかを理解することが重要である。例えば、運動は処理速度や実行機能に影響しやすく、学習活動は記憶や注意に効果を持つ。また、習慣化された行動は作業記憶の負荷を軽減し、日常生活でのミスを減らす。逆に、複雑すぎる課題や過度な負荷はストレスとなり、認知機能を低下させる可能性もある。したがって、個々の認知特性に応じた介入が求められる。本講義では、認知機能ごとの特徴と対応する予防手段を関連づけて理解することで、実践的な応用につなげていく。
キーワード ① 認知予備力 ② 可塑性 ③ 運動効果 ④ 社会活動 ⑤ 認知機能別介入
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復習・予習課題
6 認知加齢の予防②:環境・社会 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 環境設計(選択アーキテクチャ ② テクノロジーと認知支援 ③ 予防から犯罪予防への接続
細目レベル ① 認知加齢に対する予防は、個人の努力だけでなく環境の設計によっても実現できる。この考え方は「選択アーキテクチャ」と呼ばれ、人の意思決定を支える環境の構造に注目する。例えば、複雑な手続きや情報の多い状況では、高齢者は判断に負荷がかかり誤りやすくなる。そのため、選択肢を整理する、重要な情報を強調する、手順を簡略化するなどの工夫が有効である。これは個人の能力を変えるのではなく、環境側を調整することで認知負荷を軽減する方法である。認知加齢を「弱点」と捉えるのではなく、「設計によって補える特性」として理解する視点が重要である。
② 現代社会では、テクノロジーが認知機能を補助する重要な役割を担っている。スマートフォンのリマインダー機能やナビゲーション、音声アシスタントなどは、記憶や注意の負担を軽減する具体例である。これらは単なる便利な道具ではなく、「拡張された認知」として脳の外部に機能を分散させる役割を持つ。また、高齢者向けに設計されたインターフェースや簡易化された操作系は、処理速度や作業記憶の制約に対応している。ただし、技術の利用には習熟が必要であり、過度な複雑さは逆に認知負荷を高める可能性もある。したがって、テクノロジーは「適切な設計」と「利用支援」がセットで初めて有効に機能する。
③ 環境設計やテクノロジーによる認知支援は、犯罪予防とも密接に関係する。例えば、詐欺対策としてATMの利用制限や警告表示を設けることは、判断の誤りを未然に防ぐ仕組みである。また、複雑な契約手続きを簡略化することは、誤解や不正のリスクを低減する。これは個人に「注意しなさい」と求めるのではなく、認知の特性に合わせて社会の仕組みを調整するアプローチである。さらに、地域社会の見守りやコミュニティのつながりも重要な予防資源となる。このように、認知加齢の理解は個人の問題にとどまらず、社会設計の問題として位置づけられる。
キーワード ① 選択アーキテクチャ ② 環境設計 ③ 拡張された認知 ④ 認知支援技術 ⑤ 犯罪予防
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小テスト
復習・予習課題
7 模擬テスト①とまとめ 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 基礎理解の確認(認知と加齢) ② 認知機能の理解(記憶・注意・処理速度) ③ 予防の理解と応用
細目レベル ① 本回ではこれまで学習してきた基礎概念について、模擬テスト形式で理解を確認する。具体的には、認知とは何か、どこに存在するのかという基本的な定義から、加齢と老化の違い、正常老化と病的老化の区別といった重要概念を扱う。学生は選択式や短答式の問題を通して、自らの理解の曖昧な部分を自覚することができる。また、誤答の解説では単に正解を示すのではなく、「なぜ間違えやすいのか」という認知的背景も説明する。これにより、知識の定着だけでなく、誤解の修正が促される。本講義では復習を単なる振り返りではなく、理解の再構築の機会として位置づける。
② 次に、記憶や注意、処理速度といった認知機能の理解を確認する。例えば、「エピソード記憶と意味記憶の違い」「抑制機能の役割」「処理速度低下が他の機能に与える影響」などを問う問題を用いる。ここで重要なのは、個別の知識を覚えることではなく、それらがどのようにつながっているかを理解することである。解説では、記憶と注意がどのように連動するか、処理速度が全体の基盤として働くことなどを再確認する。また、若年者との比較を通して、どの機能がどのように変化するのかを明確にする。これにより、後半の犯罪パートで必要となる認知モデルの土台が固まる。
③ 最後に、認知加齢の予防に関する理解を確認する。個人レベルの介入としての運動や学習、社会活動、そして環境設計やテクノロジーによる支援がどのように認知機能に作用するかを問う。例えば、「運動がどの認知機能に影響するか」「環境設計がどのように判断を支援するか」といった問題を通じて、理論と実践の結びつきを確認する。さらに、これらの予防がどのように犯罪予防へとつながるかを考察する。ここでは、「人を変えるのではなく環境を変える」という視点を再確認し、後半の講義への橋渡しとする。
キーワード ① 概念の再構築 ② 認知機能の統合 ③ 若者比較 ④ 予防と応用
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復習・予習課題
8 高齢者と犯罪 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 高齢者と犯罪の現状(被害・加害・目撃) ② 犯罪統計の読み方と特徴 ③ 認知加齢と犯罪の関係
細目レベル ① 本回では、高齢者と犯罪の関係を全体的に把握するため、被害者・加害者・目撃者という三つの視点から現状を整理する。一般には高齢者は犯罪の被害者として注目されることが多いが、実際には万引きなどの軽犯罪の加害者として関与するケースも存在する。また、目撃者や証言者として司法過程に関わることも少なくない。これらの役割は互いに独立しているわけではなく、同じ認知変化が異なる形で現れている可能性がある。本講義では、高齢者を単に「弱者」として捉えるのではなく、多様な立場で犯罪と関わる存在として理解する視点を導入する。
② 次に、犯罪統計を通じて高齢者と犯罪の特徴を具体的に理解する。例えば、特殊詐欺の被害は高齢者に集中している一方で、万引きの検挙者にも高齢者が一定数含まれている。このようなデータを単に数値として捉えるのではなく、「なぜそのような分布になるのか」という視点で読み解くことが重要である。また、年齢層ごとの違いを比較することで、高齢者特有の傾向が浮かび上がる。ここでは統計を根拠として議論する姿勢を養うとともに、数字の背後にある心理的・認知的要因に目を向ける準備を行う。
③ 最後に、これまで学んできた認知加齢の知識を用いて、犯罪との関係を整理する。例えば、抑制機能の低下は詐欺被害や衝動的行動に関与し、記憶の再構成性は誤った証言につながる可能性がある。また、処理速度の低下は複雑な状況での判断を困難にする。このように、犯罪は特別な人の問題ではなく、認知の変化の延長として理解することができる。本回では、個々の犯罪現象を認知機能と結びつける視点を確立し、次回以降の具体的事例分析への基盤を形成する。
キーワード ① 犯罪の三視点(被害・加害・目撃) ② 犯罪統計 ③ 年齢差 ④ 認知機能と犯罪 ⑤ 現実との接続
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小テスト
復習・予習課題
9 被害者①:特殊詐欺(オレオレ詐欺) 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 特殊詐欺の実態 ② 認知メカニズム(抑制・判断・感情) ③ 若者との比較(なぜ差が生まれるのか)
細目レベル ① 本回では、代表的な犯罪として特殊詐欺(いわゆるオレオレ詐欺)を取り上げ、その具体的な手口と被害の流れを分析する。典型的には、電話で家族を装い緊急事態を強調し、短時間で現金の振り込みを求めるという構造を持つ。この過程では、被害者に考える時間を与えず、感情的な反応を引き出すことが重要な要素となる。また、複数の人物が役割を分担することで信頼性を高めるなど、巧妙な演出がなされている。こうした事例を詳細に検討することで、単なる「騙された」という結果ではなく、「どのような状況が判断を歪めたのか」を具体的に理解する。
② 特殊詐欺が成立する背景には、認知加齢に伴ういくつかの変化が関与している。まず、抑制機能の低下により「怪しい」と感じる情報を十分に吟味できず、疑念を持ちにくくなる。また、処理速度の低下により短時間で複雑な情報を整理することが難しくなり、結果として相手の提示するストーリーをそのまま受け入れやすくなる。さらに、家族に関わる緊急事態という設定は強い不安や焦りを引き起こし、感情が判断を優先する状態を生む。このように、詐欺は知識の不足ではなく、認知と感情の相互作用を利用した構造として理解する必要がある。
③ 同様の詐欺に対して、若年者と高齢者では反応が異なることが多い。若年者は不審な点に気づきやすく、第三者に確認するなどの行動を取りやすいが、高齢者は提示された情報を信じやすく、即時に行動してしまう傾向がある。この違いは単なる経験の差ではなく、認知機能の変化に基づいている。例えば、抑制機能の低下により疑いを持ちにくくなることや、ポジティビティバイアスにより他者を善意に解釈しやすくなることが関与している。また、社会的孤立が強い場合、対人関係への欲求が判断に影響することもある。このような比較を通じて、年齢による違いを構造的に理解する。
キーワード ① 特殊詐欺 ② 抑制機能低下 ③ 感情と意思決定 ④ 処理速度 ⑤ ポジティビティバイアス
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復習・予習課題
10 被害者②:予防(詐欺対策) 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① なぜ注意喚起では防げないのか ② 環境設計による予防 ③ 判断の外部化と社会的支援
細目レベル ① 詐欺被害を防ぐために「知らない人の話は疑いましょう」といった注意喚起が行われることが多い。しかし実際には、知識として理解していても被害に遭うケースは少なくない。その理由は、詐欺が認知の弱点を突く構造を持っているためである。特に高齢者では、抑制機能の低下により疑念を持続させることが難しく、感情が強く喚起される状況では理性的判断が後回しになる。また、処理速度の低下により短時間での情報整理が困難となり、相手の提示するストーリーを十分に検討できない。このように、詐欺は「知っているかどうか」ではなく、「その場でどう判断するか」という認知プロセスに依存しているため、単なる教育では不十分である。
② 効果的な詐欺対策として注目されているのが、環境設計による予防である。これは個人の判断力に依存するのではなく、誤った行動が起こりにくい仕組みを構築するアプローチである。例えば、ATMでの高額振込時に警告を表示する、一定額以上の送金に制限を設けるといった措置は、判断の誤りを未然に防ぐ役割を果たす。また、複雑な手続きを簡略化することも、認知負荷の軽減につながる。こうした仕組みは、選択アーキテクチャの考え方に基づき、人の行動を自然に望ましい方向へ導くものである。認知加齢を前提とした環境設計は、今後の社会において重要な課題となる。
③ もう一つの重要な予防戦略が、判断を個人の内部に閉じず、外部に広げることである。例えば、「すぐに決めずに家族に相談する」「一度電話を切って確認する」といった行動は、判断の外部化と呼ばれる。これは作業記憶や注意の負担を軽減し、より適切な意思決定を可能にする。また、地域社会や金融機関による見守りや声かけも重要な役割を果たす。高齢者が孤立している場合、外部からの介入が難しくなるため、社会的つながりの維持も予防の一部といえる。このように、詐欺対策は個人の努力だけでなく、社会全体で支える仕組みとして考える必要がある。
キーワード ① 注意喚起の限界 ② 環境設計 ③ 選択アーキテクチャ ④ 判断の外部化 ⑤ 社会的支援
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11 加害者①:万引き 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 高齢者万引きの実態 ② 認知メカニズム(実行機能・衝動) ③ 社会的要因(孤立・役割喪失)
細目レベル ① 本回では、高齢者による万引きなどの軽犯罪を取り上げ、その実態を具体的に理解する。統計的には、万引きの検挙者の中に一定数の高齢者が含まれており、その背景には単なる経済的困窮だけでは説明できない要因が存在する。例えば、日常的に同じ行動を繰り返す中で、支払い行為を忘れてしまうケースや、「これくらいなら問題ない」と判断してしまうケースなどが報告されている。また、社会的孤立や役割の喪失により、行動の規範が弱まることも関係している。これらの事例を通して、高齢者の犯罪を単純な「悪意」として捉えるのではなく、その背後にある認知的・社会的要因を多面的に検討する必要がある。
② 高齢者の軽犯罪には、実行機能の変化が大きく関与している。実行機能とは、行動を計画し、抑制し、状況に応じて柔軟に調整する能力であり、主に前頭葉に関連する。この機能が低下すると、衝動的な行動を抑えにくくなり、結果として万引きなどの行為が生じやすくなる。また、リスク評価の変化により、「見つからないだろう」という過小評価や、「少量なら問題ない」という判断が強まることもある。さらに、習慣化された行動が優先されるため、支払いというステップが抜け落ちることもある。このように、加害行動は意図的な犯罪というよりも、認知機能の変化による行動のずれとして理解することが重要である。
③ 認知的要因に加えて、社会的環境も高齢者の犯罪行動に影響を与える。退職や家族構成の変化により、社会的役割が減少すると、日常行動の規範が弱まりやすくなる。また、孤立した生活は他者からのフィードバックを減少させ、自分の行動を客観的に見直す機会を失わせる。さらに、社会との接点が少ない場合、軽微な逸脱行動が修正されないまま繰り返されることがある。このように、高齢者の犯罪は個人の問題だけでなく、社会的な関係性の中で生じる現象として理解する必要がある。認知と社会の相互作用が、行動の変化を生み出している点が重要である。
キーワード ① 万引き ② 実行機能 ③ 衝動制御 ④ リスク認知 ⑤ 社会的孤立
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12 加害者②:予防 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 行動設計と環境調整 ② 認知機能維持と習慣化 ③ 社会的支援と役割の回復
細目レベル ① 高齢者の加害行動を防ぐためには、個人の意思や道徳に依存するのではなく、行動が逸脱しにくい環境を設計することが重要である。例えば、セルフレジの操作を簡略化する、支払いの確認を視覚的・音声的に強調するなどの工夫は、支払い忘れを防ぐ効果がある。また、店内の動線や商品配置を工夫することで、無意識のうちに商品を持ち出してしまうリスクを減らすことも可能である。このような環境調整は、実行機能の低下や注意の分散といった認知特性に対応するものであり、「人を変える」のではなく「状況を変える」アプローチである。認知加齢を前提とした設計は、加害予防の中核となる。
② 加害予防には、認知機能の維持と適切な行動の習慣化も重要である。例えば、「必ずレシートを確認する」「支払い前に一度立ち止まる」といった行動を繰り返すことで、自動化されたチェック機能が形成される。このような習慣は作業記憶の負担を軽減し、注意の抜けを補う役割を持つ。また、日常的な活動の中で実行機能を刺激することも有効であり、計画的な行動や意思決定の機会を持つことが認知機能の維持につながる。ただし、過度な負荷は逆効果となるため、個人の能力に応じた適切な難易度設定が必要である。
③ 社会的支援は加害予防において不可欠な要素である。特に、孤立を防ぎ、社会とのつながりを維持することは、行動の安定に大きく寄与する。例えば、地域活動やボランティアなどの役割を持つことは、自己効力感を高めると同時に、行動規範を維持する効果がある。また、周囲の人々がさりげなく見守る環境は、小さな逸脱行動を早期に修正する機会を提供する。さらに、家族や地域社会とのコミュニケーションは、認知的なフィードバックとしても機能する。このように、加害予防は個人の問題ではなく、社会全体で支える仕組みとして構築する必要がある。
キーワード ① 行動設計 ② 環境調整 ③ 習慣化 ④ 実行機能維持 ⑤ 社会的支援
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13 目撃者①:目撃証言(誤認・冤罪 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 誤認逮捕・冤罪 ② 認知メカニズム(記憶・誤記憶・注意) ③ 若者との比較(gistと細部)
細目レベル ① 本回では、目撃証言に基づく誤認逮捕や冤罪の事例を取り上げる。実際の事件では、目撃者が「確かに見た」と強く確信していても、その証言が後に誤りであると判明するケースが存在する。特に暗い場所や短時間の観察、ストレスの高い状況では、知覚や記憶の精度が低下しやすい。また、警察の取り調べや報道による情報が後から加わることで、記憶内容が変化することもある。こうした事例は、記憶が客観的な記録ではなく、状況に応じて変化するものであることを示している。本講義では、証言を無条件に信頼するのではなく、その限界を理解する視点を養う。
② 目撃証言の問題は、認知の基本的な性質に由来する。まず、記憶は再生ではなく再構成であり、思い出すたびに内容が変化する可能性がある。また、誤記憶は外部からの情報や暗示によって容易に形成される。ロフタスの研究は、言葉の違いだけで記憶内容が変わることを示している。さらに、注意には限界があり、すべての情報を同時に正確に処理することはできない。特に高齢者では、注意資源の制約や抑制機能の低下により、不要な情報が混入しやすくなる。このような認知的特性が重なることで、確信を伴う誤った証言が生じる。
③ 若年者と高齢者では、記憶の特徴に違いがある。若年者は細部情報(detail)を比較的正確に保持するのに対し、高齢者は要点(gist)を中心に記憶する傾向がある。このため、高齢者は出来事の大まかな流れを理解する能力には優れているが、具体的な人物の特徴や細かな状況の記憶には誤りが生じやすい。また、外部情報の影響を受けやすく、後から提示された内容を自身の記憶と統合してしまうこともある。このような違いは優劣ではなく、情報処理のスタイルの違いとして理解する必要がある。証言の評価においては、この特性を踏まえることが重要である。
キーワード ① 目撃証言 ② 誤記憶 ③ 再構成 ④ 注意の限界 ⑤ gist処理
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14 目撃者②:予防(司法・証言 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 認知面接と聴取技法 ② 誘導防止と環境設計 ③ 高齢者の強みの活用
細目レベル ① 目撃証言の精度を高めるために開発された方法の一つが認知面接である。これは、記憶の再構成性を前提とし、目撃者が持つ情報をできる限り正確に引き出すための技法である。具体的には、出来事の文脈を再現させる、異なる順序で思い出させる、複数の視点から再構成させるなどの方法が用いられる。これにより、断片的な記憶を統合しやすくなり、想起の量と質が向上する。また、自由報告を重視し、誘導的な質問を避けることも重要である。認知面接は、高齢者においても有効であり、記憶の特性を理解した上での適切な関わりが求められる。
② 証言の信頼性を確保するためには、誘導の影響を最小限に抑える必要がある。質問の仕方や言葉の選び方によって、記憶内容が変化することが知られており、特に高齢者はその影響を受けやすい。したがって、「はい・いいえ」で答えさせる質問や、特定の方向に導く表現は避けるべきである。また、安心して話せる環境を整えることも重要であり、緊張や不安が強い状況では記憶の想起が妨げられる。さらに、複数回の聴取や他者の発言が記憶に影響を与える可能性もあるため、情報の管理も必要である。このように、証言は個人の能力だけでなく、環境との相互作用によって形成される。
③ 高齢者の証言には限界がある一方で、強みも存在する。特に、出来事の意味や文脈を理解する能力は比較的保たれており、状況全体の把握や社会的判断において有利に働くことがある。また、豊富な経験に基づく推論は、曖昧な情報を解釈する際に役立つ。このような特性を活かすことで、証言の質を向上させることが可能である。重要なのは、弱点を補うだけでなく、強みを引き出す関わり方である。認知加齢を「低下」としてのみ捉えるのではなく、「特性の変化」として理解することで、より適切な司法対応が可能となる。
キーワード ① 認知面接 ② 誘導効果 ③ 環境要因 ④ 証言の信頼性 ⑤ 高齢者の強み
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15 模擬テスト②と総復習 科目の中での位置付け 本講義は、認知心理学および発達・老年心理学の知見を基盤とし、それらを社会的課題へと接続する応用科目として位置づけられる。前半では、認知の基本概念と加齢に伴う変化について、記憶や注意、処理速度といった主要な認知機能を中心に体系的に理解する。続いて、認知予備力や環境設計などの予防科学の観点から、認知加齢への介入可能性を検討する。後半では、特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的犯罪を題材に、被害・加害・目撃の三視点から認知メカニズムと予防方略を分析する。これにより、本講義は理論的理解にとどまらず、認知加齢を社会の中でどのように活用し、問題解決に結びつけるかを学ぶ実践的な科目として機能する。
コマ主題細目 ① 認知加齢の統合理解(全体構造の再構成) ② 犯罪の三視点の統合(被害・加害・目撃) ③ 社会への応用と予防(最終メッセージ)
細目レベル ① 本回では、これまで扱ってきた認知加齢の内容を模擬テスト形式で再確認し、全体構造として再構成する。認知とは何かに始まり、加齢による変化、記憶や注意といった個別機能、そして処理速度を基盤とした統合モデルを整理する。重要なのは、個別の知識を覚えることではなく、それらがどのようにつながっているかを理解することである。例えば、処理速度の低下が記憶や判断に影響し、その結果として行動の変化が生じるという一連の流れを明確にする。また、正常老化と病的老化の違いを再確認し、本講義が主に正常加齢を扱っていることを再認識する。
② 次に、犯罪パートで扱った被害者・加害者・目撃者の三つの視点を統合する。特殊詐欺、万引き、目撃証言といった具体的事例は異なる現象に見えるが、その背後には共通する認知メカニズムが存在する。例えば、抑制機能の低下は詐欺被害や衝動的行動に関与し、記憶の再構成性は誤証言につながる。また、注意や処理速度の制約は、状況理解や判断の遅れとして現れる。このように、犯罪は個別の出来事ではなく、認知加齢という共通の枠組みで説明可能である。本回では、それぞれの現象を一つのモデルとして統合的に理解する。
③ 最後に、認知加齢の理解を社会にどのように応用するかを考える。これまで見てきたように、認知の変化は避けることができないが、その影響は環境設計や社会的支援によって調整することが可能である。例えば、詐欺対策における環境設計や、目撃証言における認知面接などは、認知科学の知見を応用した具体例である。また、高齢者を一方的に保護の対象とするのではなく、特性を理解した上で適切に関わることが重要である。本講義の最終的な目的は、認知加齢を「問題」としてではなく、「理解し、活かすべき現象」として捉える視点を身につけることである。
キーワード ① 認知加齢モデル ② 統合理解 ③ 犯罪の三視点 ④ 共通メカニズム ⑤ 社会的応用
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履修判定指標
評価方法
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書
参考文献
実験・実習・教材費