区分 フィールド自然共通科目
ディプロマ・ポリシーとの関係

カリキュラム・ポリシーとの関係

カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
 フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究をおこなう学科である。陸域・水域・農業の3つの分野について詳しく学ぶとともに、統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成している。また、柔軟な考え方や実践的な提案力を養うため、学科共通の授業や複数の分野にかかわる授業も設けている。これにより、幅広い視野をもち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。
 本科目では、各教員が自らの専門分野を紹介しつつ、それぞれ異なる視点からフィールド自然学について解説する。授業では、学生は数名ずつの少人数グループ(班)に分かれ、二週ごとに異なる教員の講義を受ける。各回の講義では、教員の専門分野の歴史から最新の研究動向について紹介し、それらがカリキュラム全体や卒業研究とどのように関係しているかを解説する。この講義を通して、山・川・海から身近な農地まで多様な環境についての知見を広げ、さらに生態学・農学・進化学といった幅広い研究分野がどのように連携しているのかを理解することを目指す。本科目を履修することで、履修科目を選択する上で参考になるとともに、二年次以降のフィールド領域分属や三年次以降の研究室所属を学生が決める上でも役立つことが期待される。

科目の目的
本科目は、少人数での学びを通して、フィールド自然学科での学習の土台を築くことを目的としている。授業では、全教員が講義を担当し、学生ひとりひとりとていねいに対話することで、それぞれの関心や理解を深く把握することができる。学生にとっては、各教員の専門分野のおもしろさや、研究分野の将来性について知る貴重な機会となる。また、教員が二週ごとに交代して講義を行う形式により、フィールド自然学が対象とする幅広い学問分野を見渡すことができる。これにより、学生は、生態学・農学・水産学・環境学などの分野がどのようにつながっているかを理解し、異なる分野の知識を関連づけて考える力を身につけることを目指す。
到達目標
本科目では、生態学・農学・水産学・環境学といった分野の基礎的な知識を学び、それらの学問がどのように関わりあっているのかを理解することを目指す。また、環境問題をさまざまな角度から捉え、異なる分野の知識を組み合わせて考える力を養うことを目標とする。授業は、全教員が週替わりで講義を行うローテーション形式で進められ、各分野の最先端の研究や将来の展望に触れることで、学生の知的好奇心を刺激し、実践的な学びへの関心を高める。それとともに、基礎的な生物学の知識を確実に身に付けることで、フィールド自然学科における履修計画や卒業研究の流れを把握し、自分自身の研究テーマや将来の進路を考える力を育む。本科目では、こうした学びを通して、学生が主体的に学ぶ姿勢を身につけ、探究心や課題を見つける力を高め、学び続ける力を養うことを到達目標としている。
科目の概要
本科目は、フィールド自然学の基礎を学び、さまざまな学問分野の広がりとそのつながりを理解することを目的とした全15回の講義で構成される科目である。第1回から第8回までの前半は、教員が毎週交代して講義を行い、それぞれ異なる専門分野について学ぶ。各回では担当教員が自分の研究分野の世界と日本の研究動向を解説し、教員の研究史を紹介するとともに、現在取り組んでいる研究内容と将来的な展望を説明し、それが授業のカリキュラムや卒業研究とどのように関わっているのかを解説する。続く第9回から第15回までの後半は、今後の学修に必要となる生物学の基礎的知識を解説する。これらの講義をふまえて、学生が得た知識や気づきを整理しながら、今後の学修計画について考える機会とする。このような構成を通して、学生は自然環境に対する幅広い視点を身につけ、異なる分野の知見を結びつけて考える力を育み、専門分野への関心を深めていくことを目指す。
科目のキーワード
フィールド自然学(生態学・農学・進化学)、有機農業(土壌微生物・堆肥・コンポスト)、河川工学(多自然川づくり・ホタル・環境DNA)、微生物学(放線菌・代謝産物・生物活性)、昆虫学(行動生態・防衛行動・害虫防除)、海洋哺乳類学(行動生態・鳴音行動・イルカ)、海洋学(海洋環境・物質循環・生態系)
授業の展開方法
本科目は、少人数グループ制と全教員のローテーション形式を採用し、学生が多角的な視点からフィールド自然学を学べるよう設計されている。前半8回の講義は全教員が担当し、教員ごとに異なる専門分野(生態学・農学・水産学・環境学など)を扱うため、フィールド自然学がカバーする幅広い学問領域をまとめて学ぶことができる。各回では担当教員が自分の研究分野の世界と日本の研究動向を解説し、教員の研究史を紹介するとともに、現在取り組んでいる研究内容と将来的な展望を説明し、それが授業のカリキュラムや卒業研究とどのように関わっているのかを解説する。これにより、学修の方向性を考えやすくなるように設計されている。また、講義内では質疑応答やディスカッションを積極的に取り入れ、教員と学生との対話を重視することで、学生ひとりひとりの興味や関心に応じたフィードバックを行い、学びを深める機会を提供する。続く第9回から第15回までは、今後の学修に必要となる生物学の基礎的知識を解説する。学生はこれまでの学びを振り返り、各学生が得た知識を整理するとともに、今後の学修計画を考える機会とする。学生はフィールド自然学における自身の興味を明確にし、主体的な学びを継続するための基盤を築くことができる。本科目は、専門的な知識の獲得のみならず、学際的な視点を養い、研究の魅力を実感する機会を提供することを目的とする。
オフィス・アワー
三中信宏:【前期】
万物は進化する月5限
基礎ゼミナールⅠ月5限
環境データ解析の基礎月5限
【後期】
環境データの可視化技法火曜5限
基礎ゼミナールⅡ月曜5限
基礎ゼミナールⅣ月曜5限
環境研究デザイン論火曜5限
甲斐貴光:【前期】
農業基礎演習Ⅰ
農業地理学
基礎ゼミナールⅠ
土壌生態学
インターンシップⅠ
全科目:月曜昼~4限
【後期】
農業基礎演習Ⅱ
基礎ゼミナールⅡ
全科目:月曜1・2限
三瓶真:【前期】
地球環境学火曜3・4限
基礎ゼミナールⅠ木曜5限
【後期】
海洋と水産の科学月曜5限
海洋学演習金2限・5限
基礎ゼミナールⅡ火曜4・5限
中島琢自:※指定時間以外に希望する場合、時間を調整するのでメールなどでご連絡ください。
【前期】
環境と微生物
基礎ゼミナールⅠ
微生物利用学
全科目:火曜1限、水曜昼~5限、木曜2限、金曜4限
【後期】
地域産業学
基礎ゼミナールⅡ
基礎微生物学演習
全科目:月曜5限、火曜1限、木曜4・5限、金曜4限
久松定智:【月曜日】昼休み、【火曜日】2時限目
吉田弥生:【前期】
自然共生社会
基礎ゼミナールⅠ
海の大型動物生態学
全科目:月曜~金曜の5限
【後期】
動物行動観察演習A・B
基礎ゼミナールⅡ
環境共生型社会のデザイン
動物行動学
全科目:月曜~金曜の5限
後藤益滋:※演習時に疑問に思ったこと、わからなかったこと、気づきは遠慮なく聞いてください。ただし、質問事項を整理したうえで来訪してください。
【前期】
基礎ゼミナールⅠ木曜4・5限
河川生態学水曜4・5限
【後期】
基礎ゼミナールⅡ木曜4・5限
水生動物学木曜4・5限
群衆生態学月曜2限・昼火曜昼
松原慧:【前期】
情報リテラシーⅠ金曜5限
農業基礎演習月曜4限
基礎ゼミナールⅠ木曜4限
【後期】
情報リテラシーⅡ金曜5限
農業基礎演習Ⅱ月曜5限
基礎ゼミナールⅡ火曜5限
昆虫生態学水曜5限

科目コード TC1021
学年・期 1年・前期
科目名 基礎ゼミナールⅠ(フィールド自然学入門)
単位数 2
授業形態 演習
必修・選択 必修
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目
展開科目
関連資格
担当教員名 三中信宏・甲斐貴光・三瓶真・中島琢自・久松定智・吉田弥生・後藤益滋・松原慧
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 【フィールド自然学を学ぶ第一歩】[担当:三中信宏] 科目の中での位置付け  フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究をおこなう学科である。陸域・水域・農業の3つの分野について詳しく学ぶとともに、統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成している。また、柔軟な考え方や実践的な提案力を養うため、学科共通の授業や複数の分野にかかわる授業も設けている。これにより、幅広い視野をもち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。
 本科目では、各教員が自らの専門分野を紹介しつつ、それぞれ異なる視点からフィールド自然学について解説する。授業の前半8回では、学生は毎週異なる教員の講義ののち、小テストを受け、数名ずつの少人数グループ(班)に分かれて各教員と面談する。各回の講義では、教員の専門分野の歴史から最新の研究動向について紹介し、それらがカリキュラム全体や卒業研究とどのように関係しているかが解説される。授業の後半7回では、生物学の知識の基盤を確実にするため、生物の個体から始まり集団、群集、生態系へといたる自然の階層について説明をする。これら一連の講義を通して、山・川・海から身近な農地まで多様な環境についての知見を広げ、さらに生態学・農学・進化学といった幅広い研究分野がどのように連携しているのかを理解することを目指す。本科目を履修することで、履修科目を選択する上で参考になるとともに、二年次のフィールド領域仮分属や三年次のフィールド領域本分属、そして四年次の研究室配属を学生が決める上でも役立つことが期待される。
 三中信宏が担当する第一回は、フィールドワークを重視する本学科の全体を見渡し、各教員の立場から見た専門分野間につながりがあることの理解を目的とする。三中からは生物多様性研究と統計データ解析について解説をする。

なし
コマ主題細目 ① フィールドを基盤とした学際的な学び ② 多様な専門領域をカバーするカリキュラム ③ 生物多様性と統計データ解析
細目レベル ① [フィールドを基盤とした学際的な学び] フィールド自然学科は、自然環境を観察・調査することを重視し、学際的な視点から環境問題や生態系の理解を深めることを目的とする。生態学・農学・水産学・環境学などの多様な学問分野が融合し、現場での経験を通じて理論と実践を結びつけることが特徴である。授業では、フィールドワークを軸に、自然環境の変化や人間活動の影響を総合的に分析し、持続可能な社会の実現に貢献できる知識と技術を養うことを目指す。
② [多様な専門領域をカバーするカリキュラム] 本学科のカリキュラムは、陸域・水域・農業フィールドという三つの主要な領域から構成されている。これらのフィールドに関する幅広い専門分野を体系的に学ぶことができる点が、大きな特徴である。まず、地球環境や生態系の仕組み、環境保全の基本概念について知識を身につけることで、自然と人間社会との関わりについての理解を深める。その上で、環境に関するデータの収集・解析技術、持続可能な社会の実現に向けた生物資源や水資源の管理手法など、実践的かつ応用的な内容へと段階的に学修が進められる。加えて、少人数制で実施されるゼミナールや、キャンパス内外の自然環境や農地などを活用したフィールド実習では、教員からの個別指導を受けながら、解決策について考察する。これらの学びを通じて、学生は自らの関心に基づく専門性を高める。
③ [生物多様性と統計データ解析] 三中信宏は、農学部で生物統計学を学びつつ、生物の分類理論や系統推定法に関連する研究テーマに関心をもつようになった。「はたして正しい分類はあるのか」、「進化の歴史(すなわち「系統」)はどのように推定できるのか」、「生物の多様性はどう整理(すなわち「体系化」)すればいいか」といった根本的な問いに取り組むようになった。研究を進めるなかで、三中は生物学における系統推定法に限らず、言語学や歴史学など他分野における「系譜」や「分類」の方法にも関心を広げていった。比較を通じて分類や系統を論じることは、生物だけに限られることではなく、複数の学問分野をまたぐ重要性があるという認識に至った。三中は、体系化することは単なる分類の技術ではなく、自然科学と人文科学を隔てる壁を乗り越えて、この世界そのものを理解する枠組みであるとみなしている。
キーワード ① フィールド自然学 ② 学際融合 ③ 生物多様性 ④ 統計データ解析
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、ヨリソル上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】フィールド自然学科では観察・調査を重視し、生態学・農学・水産学などの学際的視点から自然環境を理解する姿勢が求められることを確認する。また、陸域・水域・農業の三領域にわたるカリキュラム構成と、それぞれの領域に関する専門知識の段階的習得の流れについても整理が必要である。さらに、データ解析技術や資源管理手法などの実践的な内容、少人数ゼミやフィールド実習による個別指導の意義についても把握しておきたい。加えて、環境問題を多角的かつ科学的に捉える力、分野を横断して考える思考力の育成を目指す姿勢、主体的な学びを促す講義の工夫など、学びの本質を改めて振り返ることが重要である。生物多様性研究や統計データ解析はさまざまな研究分野にまたがって登場する。異なる分野をつなぐ連携研究の萌芽はいたるところにある。
【予習】コマシラバスについて、次回以降の内容や履修判定指標を読み込み、これからの授業展開や評価の方法等について理解すること。次回の週からは別の教員が担当するため、講義内容はそれぞれ異なる。各教員のコマシラバスを熟読し、関連する研究分野について調べておくとよい。興味を持った分野について、文献やウェブ資料を調べ、さらにはChatGPTを利用してより詳しい知識を得ることができる。

2 【コウチュウ目の分類と系統、その研究最前線——コウチュウ目とは】[担当:久松定智] 科目の中での位置付け  フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究をおこなう学科である。陸域・水域・農業の3つの分野について詳しく学ぶとともに、統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成している。また、柔軟な考え方や実践的な提案力を養うため、学科共通の授業や複数の分野にかかわる授業も設けている。これにより、幅広い視野をもち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。
 本科目では、各教員が自らの専門分野を紹介しつつ、それぞれ異なる視点からフィールド自然学について解説する。授業の前半8回では、学生は毎週異なる教員の講義ののち、小テストを受け、数名ずつの少人数グループ(班)に分かれて各教員と面談する。各回の講義では、教員の専門分野の歴史から最新の研究動向について紹介し、それらがカリキュラム全体や卒業研究とどのように関係しているかが解説される。授業の後半7回では、生物学の知識の基盤を確実にするため、生物の個体から始まり集団、群集、生態系へといたる自然の階層について説明をする。これら一連の講義を通して、山・川・海から身近な農地まで多様な環境についての知見を広げ、さらに生態学・農学・進化学といった幅広い研究分野がどのように連携しているのかを理解することを目指す。本科目を履修することで、履修科目を選択する上で参考になるとともに、二年次のフィールド領域仮分属や三年次のフィールド領域本分属、そして四年次の研究室配属を学生が決める上でも役立つことが期待される。
 久松定智が担当する第2回は昆虫類のグループの一つであるコウチュウ目を取り上げ、その分類・系統学的研究の歴史と動向について説明する。

【コマ主題細目①~②】
・コマ用オリジナル配布資料。
・日本甲虫学会(2011)日本の甲虫学研究史[新甲虫学会第1回大会特別座談会].さやばねニューシリーズ,(2): 1-17.
【コマ主題細目③】
・コマ用オリジナル配布資料。
コマ主題細目 ① コウチュウ目の分類・系統学的研究における世界の研究動向 ② コウチュウ目の分類・系統学的研究における日本の研究動向 ③ 久松定智はなぜこの研究分野に興味をもったのか
細目レベル ① コウチュウ目の分類・系統学的研究における世界の研究動向 コウチュウ目とは、漢字で甲虫目と書く。また、硬くキチン質化した上翅の特徴から、鞘翅(しょうし)目と言われることもある。いわゆる昆虫に含まれるグループであり、身近なものではカブトムシ、クワガタムシ、カミキリムシ、ホタルなどが含まれる。その形態は多様で、一般によく硬化した外骨格をもつ。前翅は角質化し、後翅は膜質で前翅より長く、飛翔に使われる。分類学的には、動物界、節足動物門、外顎綱、コウチュウ目に含まれ、世界から4亜目193科、約380,000種が知られている。最も多様な生物群であり、地球上で記載されている生物種の50%以上を昆虫が占め、その昆虫の中でも40%以上をコウチュウ目が占めている。このコウチュウ目という分類階級は、分類学の父とも称されるLinnaeusにより1758年に創設された。その後の主な研究史として、Jacquelin du Valは1855~1856年に、ヨーロッパの属の検索表と属の記載およびその種リストを出版した。Lacordaireは1854~1871年にかけて、世界のコウチュウ目すべての属までの検索表とその記載をGenera des Coléoptères全12巻として出版した。近年ではLawrence & Newton(1995)によりFamilies and subfamilies of Coleopteraが出版され、2010年以降はHandbook of Zoologyのシリーズによりコウチュウ目の体系が示され、各科の解説が行われている。また、Cai et al. (2022)では、現生甲虫科193科のうち129科を対象にした塩基配列データによる系統解析に化石記録と形態の情報を加えたコウチュウ目の新しい体系が提案された。世界の主要なコウチュウ目の科と、その分布、近年の主要な分類・系統学的な研究について理解する。
② コウチュウ目の分類における日本の研究動向 日本列島は、ユーラシア大陸の東端沖に位置し、南北に3,000kmほどの長さをもつことからも、北は亜寒帯から南は亜熱帯まで、さまざまな気候区分に属している。これらの地理的・気候的特性から、生物多様性のホットスポットとしても知られており、生物についても多くの固有種が知られている。このような日本のコウチュウ目について、初めて学名が与えられたのはFabriciusによるオオゾウムシで、1775年のことである。その後、Thunbergが1775~1776年まで日本に滞在中に持ち帰った採集品が、数回に分けて報告されている。続いて、Sieboldが1823~1828年にかけて長崎に滞在して、いろいろな動植物を採集している。この採集品はライデンの博物館にあり、いろいろなヨーロッパの研究者により命名記載された。Lewisは1864~1872年、そして1880~1881年にかけて来日し、日本全土から昆虫を採集している。この採集品に基づいて、当時のヨーロッパの研究者が、コウチュウ目についても研究を行った。1879年にはLewis自身が日本産コウチュウ目のカタログを編纂して2,227種を載録した。その後、Schönfeldtは1887年に日本産コウチュウ目のカタログを出版し、1897年までに追加分を含めて3,783種を記録している。以後、日本の研究者による業績としては松村松年による日本千虫図解、平山修次郎による原色千種昆虫図譜、加藤正世による分類原色日本昆虫図鑑、江崎悌三らによる原色日本昆虫図説などがある。そして1984年から1986年にかけて保育社より出版された原色日本甲虫図鑑I~IV巻では、約6,000種が図示あるいは解説されている。これらの研究によりコウチュウ目は、2026年1月時点で134科、約14,000種ほどが日本から記録されている。ここでは、日本におけるコウチュウ目の主要な分類・系統学的研究について理解する。
③ 久松定智はなぜこの研究分野に興味をもったのか 私はコウチュウ目の中でも特に、ケシキスイ科を始めとしたケシキスイ上科の分類を専門としている。研究を始めた大学院入学当初、所属していた愛媛大学昆虫学研究室が分類学の研究室であり、また、ケシキスイ科の文献や標本が充実していたという現実的な理由により、ケシキスイ科の分類学的な研究を開始した。ケシキスイ科は平均体長が2mmほどと微小であり、形態形質を詳しく見るために解剖するにも慣れが必要である。しかしながら研究対象としていると、次第に愛着もわいてくるものである。現在までに、中米~南米にかけて生息するCyclocaccus属、日本産ヒラタケシキスイ属、そして台湾のケシキスイ科の分類学的研究などを進めてきた。また、コウチュウ目はケシキスイ科を始めとして体長の小さい科が多く、それらは分類群を越えて微小甲虫や雑甲虫と言われ、分類学的な基礎的研究が不十分なグループが多い。すなわち、これらの分類群には未解明の課題が多く、今後の研究の発展が大いに期待される分野である。ここでは、久松定智が現在までに研究を行ってきたケシキスイ科を始めとする研究概要や今後の研究課題を理解する。
キーワード ① 分類学 ② 系統学 ③ コウチュウ目 ④ ケシキスイ科 ⑤ 研究史
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】講義内での議論や質問を振り返り、自分がどの点に疑問を持ったのか、どのような考えを持ったのかを整理する。
【予習】コマシラバスについて、次回以降の内容や履修判定指標を読み込み、これからの授業展開や評価の方法等について理解すること

3 【昆虫の行動生態学】[担当:松原慧] 科目の中での位置付け 本科目は、フィールド自然学の基礎を学び、さまざまな学問分野の広がりとそのつながりを理解することを目的とした全15回の講義で構成される科目である。第1回から第8回までの前半は、教員が毎週交代して講義を行い、それぞれ異なる専門分野について学ぶ。各回では担当教員が自分の研究分野の世界と日本の研究動向を解説し、教員の研究史を紹介するとともに、現在取り組んでいる研究内容と将来的な展望を説明し、それが授業のカリキュラムや卒業研究とどのように関わっているのかを解説する。続く第9回から第15回までの後半は、今後の学修に必要となる生物学の基礎的知識を解説する。これらの講義をふまえて、学生が得た知識や気づきを整理しながら、今後の学修計画について考える機会とする。このような構成を通して、学生は自然環境に対する幅広い視点を身につけ、異なる分野の知見を結びつけて考える力を育み、専門分野への関心を深めていくことを目指す。

 今回の授業では、松原の専門とする昆虫の行動生態学について紹介する。昆虫を子細に観察してみると、彼らは様々な行動をしている。走る、飛ぶ、落ちる、液体を放出する、翅を大きく広げるなど、小さな体で非常にダイナミックな動きを見せる。昆虫が“なぜ”そのような行動をするのかについて考察するのが行動生態学の一端である。まず、昆虫の行動生態学を研究してきた論文を紹介する。次に、昆虫の行動生態がどのような分野に応用され、我々の生活と関係しているのかについて概説する。最後に、本学の4年間のカリキュラムにおける昆虫行動生態学の位置づけ、他分野との関りについて概説する。

◆コマ主題細目①
・第3回テキスト「昆虫の行動生態学(松原)」 第1節「昆虫の行動に注目する」
◆コマ主題細目②
・第3回テキスト「昆虫の行動生態学(松原)」 第2節「行動生態学の研究事例」
◆コマ主題細目③
・第3回テキスト「昆虫の行動生態学(松原)」 第3節「カリキュラムの中での位置づけ」
コマ主題細目 ① 昆虫の行動に注目する ② 行動生態学の研究事例 ③ カリキュラムの中での位置づけ
細目レベル ① 「昆虫を研究する」と聞いて、どのような研究を想像するだろうか。昆虫は、海中をのぞく地球上のあらゆる環境において見られ、日本おいてのみに注目しても3万種以上が記載されているほど種多様性の高いグループである。昆虫を子細に観察してみると、彼らは様々な行動をしている。走る、飛ぶ、落ちる、液体を放出する、翅を大きく広げるなど、小さな体で非常にダイナミックな動きを見せる。様々な環境に適応し、形態・行動形質の多様性も高く、あらゆる視点で昆虫を観察することで、多くの研究ネタを得ることができるグループだといえるだろう。ここでは、昆虫が“なぜ”そのような行動をするのかについて考察するのが行動生態学の一端であることを学ぶ。餌を得るため、天敵から身を守るため、交尾相手を得るためなど、様々な要因が行動とどのような関わりであるのかを学ぶ。ここで学修するのは、種多様性と行動の多様性をもつ昆虫を題材に、餌獲得・天敵回避・繁殖などの要因と行動との関係を考察する行動生態学の基本的視点を理解することまで。
② 特に注目している研究テーマについて紹介する。昆虫は、様々な方法で天敵から身を守っている。例えば、一部の昆虫は、鳥やトカゲやクモなどの天敵に襲われた際に、植物体などから落下することで瞬時に逃げることができる。これは、「落下行動」と呼ばれる防衛行動の一つである。松原は、この落下行動に関係するさまざまな危険性に注目し、その進化に及ぼす影響について研究している。落下行動にまつわる研究の具体例として、過去に執筆した論文を紹介しながら紹介する。また、このような行動生態学の研究の一部は、物理的防除として農地などの一次産業の現場で活用されつつある。その応用研究の動向についても、具体例を挙げながら紹介する。ここで学修するのは、昆虫の天敵回避行動の一つである落下行動に着目した研究内容とその進化的意義を理解し、行動生態学的研究が農業現場へ応用される可能性について把握することまで。
③ フィールド自然学科のカリキュラムの中で、昆虫の行動生態学や害虫防除の研究がどのような位置づけにあるかについて説明する。①で紹介したように、昆虫の行動生態学は農業の分野と密接な関係にある。農業フィールドの科目である「農業基礎演習I」、「農業基礎演習II」、「農生物演習」および「農業生態学」では、害虫防除の視点から昆虫の行動生態学の基礎を学ぶ。また、陸域フィールドの科目である「環境昆虫学(昆虫学I)」、「昆虫生態学(昆虫学II)」、「保全昆虫学演習」、「離島演習(フィールド昆虫演習)」では、応用面よりも基礎的な研究に注目して昆虫の分類学や行動生態学の基礎を学ぶ。このように、昆虫の行動生態学は、農業フィールドと陸域フィールドのいずれにも関連する分野である。どちらの領域を選択しても、それぞれで基礎を学ぶことができる。ここで学修するのは、昆虫の行動生態学や害虫防除研究がフィールド自然学科の農業フィールドと陸域フィールド双方の科目に位置づけられていることを理解することまで。
キーワード ① 昆虫 ② 行動生態学 ③ 防衛行動 ④ 害虫管理 ⑤ 天敵
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 ◆今回授業の復習
 今回の授業では、昆虫の行動生態学がどのような分野であるのかを概説し、具体的にどのような研究事例があるのかについても示した。また、昆虫の行動生態学が、他の分野においてどのような場面で応用され、我々の生活に密接に関係しているのかについても触れ、本学のカリキュラムにおける位置づけについても説明した。文章教材をもう一度熟読し、それぞれの内容について不明な点がある場合には速やかに教員に質問に来ること。また、各自で文章教材等を生成AIに読み込ませ、小テストを自ら作成し、学修内容を確認すること。

◆次回授業の予習
 次回は、中島先生の専門分野である放線菌と放線菌が生産する有用物質についての内容を学習する。特に、放線菌がどのように我々の生活に身近な場面で活用されており、今後どのような分野に応用が期待されているのかについて予習しておくこと。次回の文章教材に目を通して予習しておくこと。気になった単語や文章について、次回の授業で質問できるように目印を付けておくのも有効である。また、気になった単語について、Web検索や生成AIを用いて調べてみることも有効である。

4 【放線菌の生活環と能力】[担当:中島] 科目の中での位置付け 本科目は、少人数グループ制と全教員のローテーション形式を採用し、学生が多角的な視点からフィールド自然学を学べるよう設計されている。入学時に学生は班ごとに分けられ、学力や関心のばらつきを考慮した編成が行われることで、グループ内での議論や協力が促進され、主体的な学びの機会が生まれる。講義は全教員が担当し、回ごとに異なる専門分野が扱われるため、生態学・農学・水産学・環境学など、フィールド自然学がカバーする幅広い学問領域を体系的に学ぶことができる。各講義は2コマで構成され、前半では国内外の専門分野の動向や研究の最前線について紹介し、各教員が自身の研究を行う背景や、学問の歴史的な展開について説明する。後半では、現在の研究内容や将来の展望について掘り下げ、フィールド自然学のカリキュラム全体や卒業研究との関連を明確に示すことで、学生が自身の学修の方向性を考えやすくなるように設計されている。また、講義内では質疑応答やディスカッションを積極的に取り入れ、教員と学生の対話を重視することで、個々の興味や関心に応じたフィードバックを行い、学びを深める機会を提供する。最終回となる第15回の講義では、これまでの学びを振り返り、各学生が得た知識を整理するとともに、今後の学修計画を考える機会とする。これにより、学生はフィールド自然学における自身の興味を明確にし、主体的な学びを継続するための基盤を築くことができる。本科目の講義は、専門的な知識の獲得のみならず、学際的な視点を養い、研究の魅力を実感する機会を提供することを目的とする。
 今回の授業では、本コマのテーマである「放線菌が生産する有用物質―植物内生放線菌とは」に沿って、放線菌研究の基礎から応用までを概観する。まず、放線菌の生活環に着目し、胞子から発芽し、基底菌糸を伸ばして栄養増殖を行い、気中菌糸の形成と形態分化を経て再び胞子をつくるという一連の流れを確認する。その過程で生産される二次代謝産物、とくに抗生物質がどのような意義をもつのかを考える。あわせて、抗生物質の多くが放線菌由来であることや、その設計図が遺伝子にコードされていることにも触れ、微生物がもつ潜在的な可能性について理解を深める。次に、放線菌の利用分野として、医療・農業・工業・環境といった多方面での応用例を紹介し、基礎研究がどのように社会へ還元されているのかを整理する。さらに応用微生物学の視点から、植物と微生物の関係、とくに根圏や植物体内に生息する内生放線菌の働きに注目し、成長促進や病害抑制などの機能が持続可能な農業とどのようにつながるのかを考察する。最後に、基礎研究と応用研究のつながり、ならびに将来の研究展望について理解を深める。

オリジナル解説教材
コマ主題細目 ① 放線菌の生活環 ② 放線菌の利用分野 ③ 応用微生物学
細目レベル ① 放線菌の生活環や研究の発展について紹介する。まず、放線菌が胞子から発芽し、基底菌糸を伸ばして栄養増殖を行い、やがて気中菌糸を形成し、形態分化を経て再び胞子をつくるという生活環の理解がどのように深められてきたかを概説する。とくに、胞子形成前の段階で生産される二次代謝産物の発見は、放線菌研究を大きく前進させた重要な成果である。一次代謝と二次代謝の違いを明確にし、なぜ放線菌が抗生物質のような有用物質を生産するのかという問いに対して、生活環との関連から説明する研究が進められてきた。
 さらに、抗生物質の多くが放線菌由来であり、その構造が遺伝子(DNA)にコードされていることが明らかになったことで、二次代謝産物の生合成機構の解明が進展した。生活環のどの段階で遺伝子が発現し、どのように化学物質がつくられるのかを解析する研究は、新たな抗生物質探索へとつながっている。

② 放線菌の利用分野について、医療・農業・工業・環境という観点から整理する。まず医療分野では、放線菌が生産する二次代謝産物の代表例として抗生物質が挙げられる。ストレプトマイシンやエバーメクチンなどは、いずれも放線菌由来の化学物質であり、病原菌の増殖を抑えることで人類の感染症治療に大きく貢献してきた。抗生物質の設計図は遺伝子(DNA)にコードされており、どのような遺伝子がどの二次代謝産物を生み出すのかを解明する研究が進められている。
 農業分野では、放線菌が生産する抗菌物質や生理活性物質が、植物病原菌の抑制や害虫防除に応用されている。また、土壌中で有機物を分解する働きにより、植物が吸収しやすい形へと栄養を変換する役割も果たしている。これらの機能は、化学農薬や化学肥料の使用量削減につながる可能性をもつ。
 工業分野では、放線菌が生産する酵素が発酵技術やバイオテクノロジーに活用されている。さらに環境分野では、セルロースやリグニンのような分解が困難な物質を分解する能力が注目され、環境浄化や資源循環への応用が期待されている。このように、放線菌の二次代謝産物や分解能力は、多方面で社会に貢献していることを理解する。

③ 応用微生物学の観点から、放線菌と植物との関係について整理する。植物の周囲、とくに根のまわりの根圏には多様な微生物が存在しており、その中で放線菌は重要な役割を担っている。放線菌は土壌中の有機物を分解し、植物が吸収しやすい形に変えることで栄養供給を助ける。また、二次代謝産物として抗生物質を生産し、植物病原菌の増殖を抑える働きももつ。
 さらに、植物体内に共生する植物内生放線菌にも注目する。植物内生放線菌は、植物ホルモン様物質を生産して成長を促進したり、抗菌活性を示す物質を分泌して病害を防いだりすることが報告されている。これらの機能は、放線菌がもつ多様な遺伝子にコードされた二次代謝産物の生産能力と深く関係している。
 このように、放線菌の生活環や二次代謝産物の理解は、医療分野だけでなく、持続可能な農業や環境保全にも応用されている。応用微生物学では、放線菌の遺伝子や代謝産物の特性を解明し、それらをどのように社会へ還元するかを探究することが重要である。

キーワード ① 放線菌の生活環(胞子・形態分化・二次代謝産物) ② 産業利用(抗生物質、環境、農業) ③ 応用微生物学(土壌、植物内生菌、土壌改良)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、ヨリソル上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの予習】
放線菌の形態的特徴と生活環をあらためて整理し、胞子形成や形態分化、二次代謝産物の生産がどの段階で起こるのかを説明できるようにしておきたい。とくに一次代謝と二次代謝の違いを明確にし、なぜ二次代謝産物が医薬品として利用されるのかを自分の言葉でまとめておくことが重要である。
さらに、放線菌の利用分野について、医療・農業・工業・環境それぞれの具体例を調べ、どのような仕組みで社会に役立っているのかを確認しておきたい。加えて、植物内生放線菌や根圏微生物に関する基礎知識を調べ、微生物が植物の成長促進や病害抑制にどのように関わるのかを理解しておくと、応用微生物学の内容がより深く理解できる。最後に、微生物を活用した持続可能な農業の事例を一つ挙げ、その意義について簡単に考察しておくとよい。

【本コマの復習】
本コマでは、細目1〜3の内容を相互に関連づけながら整理することが大切である。まず放線菌の生活環については、胞子から発芽し、基底菌糸によって栄養を吸収しながら増殖し、気中菌糸の形成と形態分化を経て再び胞子をつくるという一連の流れを正確に説明できるようにしておきたい。また、その生活環の中で、とくに胞子形成前の段階に二次代謝産物が生産されること、一次代謝との違い、そして抗生物質がこの二次代謝産物に含まれることを理解することが重要である。
次に、放線菌の利用分野として、医療分野ではストレプトマイシンやエバーメクチンなどの抗生物質が人類の感染症治療に大きく貢献してきたこと、農業分野では病害虫抑制に役立つ物質の生産、工業分野では酵素利用、環境分野ではセルロースやリグニンの分解などに応用されている点を整理する。
さらに応用微生物学の視点では、放線菌が根圏や植物体内でどのように植物と関わり、栄養供給や成長促進、病原菌抑制に寄与しているのかを理解することが求められる。特に植物内生放線菌の働きが、化学肥料や農薬の使用削減につながり、持続可能な農業の実現に貢献する可能性をもつ点を、自分の言葉で説明できるようにしておきたい。

5 【日本農業の現状と有機農業の課題】[担当:甲斐貴光] 科目の中での位置付け  フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究をおこなう学科である。陸域・水域・農業の3つの分野について詳しく学ぶとともに、統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成している。また、柔軟な考え方や実践的な提案力を養うため、学科共通の授業や複数の分野にかかわる授業も設けている。これにより、幅広い視野をもち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。
 本科目では、各教員が自らの専門分野を紹介しつつ、それぞれ異なる視点からフィールド自然学について解説する。授業の前半8回では、学生は毎週異なる教員の講義ののち、小テストを受け、数名ずつの少人数グループ(班)に分かれて各教員と面談する。各回の講義では、教員の専門分野の歴史から最新の研究動向について紹介し、それらがカリキュラム全体や卒業研究とどのように関係しているかが解説される。授業の後半7回では、生物学の知識の基盤を確実にするため、生物の個体から始まり集団、群集、生態系へといたる自然の階層について説明をする。これら一連の講義を通して、山・川・海から身近な農地まで多様な環境についての知見を広げ、さらに生態学・農学・進化学といった幅広い研究分野がどのように連携しているのかを理解することを目指す。本科目を履修することで、履修科目を選択する上で参考になるとともに、二年次のフィールド領域仮分属や三年次のフィールド領域本分属、そして四年次の研究室配属を学生が決める上でも役立つことが期待される。
 第5回は、農業分野の中核テーマである「慣行農業と有機農業、そして政策的枠組み」を扱う回であり、科学的事実・制度・社会的課題を統合的に考える力を養う重要なコマである。慣行農業の歴史的成果と環境的課題をデータに基づいて検討し、有機JAS制度やみどりの食料システム戦略の内容を具体的に理解することで、農業を単なる生産技術ではなく、環境・制度・政策と結びついた社会システムとして捉える視点を育む。本コマは、二年次以降の専門科目や研究室選択に向け、農業を多面的に考察する基礎を形成する位置づけにある。

◆コマ主題細目①
・第5回テキスト「日本農業の現状と有機農業の課題」 第1節「慣行農業の特徴と現状——有機農業との比較の視点から」
◆コマ主題細目②
・第5回テキスト「日本農業の現状と有機農業の課題」 第2節「有機農業の定義と有機JAS認証」
◆コマ主題細目③
・第5回テキスト「日本農業の現状と有機農業の課題」 第3節「有機農業とみどりの食料システム戦略」
コマ主題細目 ① 慣行農業の特徴と現状——有機農業との比較の視点から ② 有機農業の定義と有機JAS認証 ③ 有機農業とみどりの食料システム戦略
細目レベル ① この細目の理解は、慣行農業の仕組みと成果、そして課題を整理し、有機農業との比較の視点を持てるまでとする。ここでは、化学合成農薬や化学肥料の活用によって反収が増加し、食料生産が安定し、人口増加を支えてきたという歴史的成果を確認する。一方で、過度な投入が水質汚濁や生物多様性の低下、土壌微生物の減少などの環境問題を引き起こしてきた側面にも触れる。功罪の両面を扱い、単純な善悪で判断しない姿勢を重視する。方法は、①収量推移データの読解、②投入資材と環境影響の因果関係図の作成、③有機農業との違いを比較表で整理することを通して、多角的に考察する。
② この細目の理解は、有機農業の制度上の定義と有機JAS認証の条件を具体的に説明できるまで。ここでは、有機農業が、原則として播種または植付け前2年以上(多年生作物では収穫前3年以上)、化学合成農薬および化学肥料を使用していない圃場で行われることを確認する。また、動植物由来の堆肥などを用いた土づくりを基本とし、使用可能な資材は有機JAS規格で認められたものに限定されていることを整理する。さらに、有機JAS認証は登録認証機関の審査を受け、年次調査を通じて継続的に管理される制度であることにも触れる。方法は、①規格条文の読解、②慣行農業との比較表の作成、③認証の流れの図解を通して、理念と制度の両面から理解する。
③ この細目の理解は、みどりの食料システム戦略の目的と数値目標を踏まえ、有機農業がその中でどのように位置づけられているかを説明できるまで。ここでは、2050年に向けて化学農薬使用量の低減や有機農業面積の拡大などを掲げる政策の概要を整理し、有機農業が環境負荷低減や持続可能性の実現にどのように貢献すると期待されているのかを確認する。また、理念だけでなく、生産現場での課題(収量、労力、流通、価格)にも触れる。方法は、①戦略本文の要点整理、②数値目標の抜き出しと解釈、③慣行農業との比較を通して政策的意義と現実的課題の両面から考察する。
キーワード ① 慣行農業(化学合成農薬・化学肥料) ② 反収と食料増産 ③ 有機農業の定義 ④ 有機JAS認証制度 ⑤ みどりの食料システム戦略
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 ◆今回授業の復習
 今回の授業では、①慣行農業の特徴と成果、②有機農業の制度的定義、③みどりの食料システム戦略の位置づけを関連づけて整理することです。まず、慣行農業が化学合成農薬や化学肥料を活用することで反収を向上させ、食料増産に貢献してきた点と、その一方で環境問題や土壌微生物の減少などの課題を生じさせた点をまとめてください。次に、有機農業の転換期間や有機JAS認証の仕組みを具体的に整理してください。さらに、みどりの食料システム戦略が掲げる目標と、有機農業が果たす役割を確認してください。最後に、「これからの農業に求められる姿とは何か」を300~400字で考察してください。

◆次回授業の予習
 次回の授業では、海洋生態系を支える「低次生物(プランクトン)」と、それらが関わる海のしくみを学びます。予習として、まず植物プランクトンと動物プランクトンの役割の違いを整理し、「どのように海の生きもの全体を支えているのか」を考えておきましょう。また、プランクトンがどのように有機物を生み出し、それが食物網の上位へとつながるのかを図でイメージできるようにしてください。さらに、地球温暖化によって海氷や海洋環境が変化すると、プランクトンや食物網がどのように影響を受けるのかを考えておきましょう。加えて、河川を通じて陸域と海洋がつながっている点にも注目し、農業と海の関係についても簡単に整理しておきましょう。

6 【海洋生態系と物質循環】[担当:三瓶真] 科目の中での位置付け フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究をおこなう学科である。陸域・水域・農業の3つの分野について詳しく学ぶとともに、統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成している。また、柔軟な考え方や実践的な提案力を養うため、学科共通の授業や複数の分野にかかわる授業も設けている。これにより、幅広い視野をもち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。
 本科目では、各教員が自らの専門分野を紹介しつつ、それぞれ異なる視点からフィールド自然学について解説する。授業の前半8回では、学生は毎週異なる教員の講義ののち、小テストを受け、数名ずつの少人数グループ(班)に分かれて各教員と面談する。各回の講義では、教員の専門分野の歴史から最新の研究動向について紹介し、それらがカリキュラム全体や卒業研究とどのように関係しているかが解説される。授業の後半7回では、生物学の知識の基盤を確実にするため、生物の個体から始まり集団、群集、生態系へといたる自然の階層について説明をする。これら一連の講義を通して、山・川・海から身近な農地まで多様な環境についての知見を広げ、さらに生態学・農学・進化学といった幅広い研究分野がどのように連携しているのかを理解することを目指す。本科目を履修することで、履修科目を選択する上で参考になるとともに、二年次のフィールド領域仮分属や三年次のフィールド領域本分属、そして四年次の研究室配属を学生が決める上でも役立つことが期待される。三瓶真が担当する第6回は海洋(特に低次)生態系と物質循環を取り上げ、その科学的・社会的意義、これまでの研究成果および他の専門分野との関わりを含めたフィールド自然学科のカリキュラムの中での位置づけなどについて概要の説明を行う。

独自教材
コマ主題細目 ① 海洋「低次」生態系と物質循環とは ② 研究事例紹介 ③ カリキュラムの中での位置づけ
細目レベル ① 「低次生物」とは海洋生態系の根幹、つまり海洋生物全体を支える基礎生産のほとんどを担う植物プランクトン、およびその生産物である有機物をより栄養段階が上の高次捕食者へ転換し、また一方ではその摂餌・消化を通して植物プランクトンによって固定された栄養塩類を再鉱化して植物プランクトンが基礎生産を行うための栄養塩類の再供給の役割を担っている動物プランクトン生物群のことをいう。このプランクトン生物群が海洋の生態系を支えるためのキーファクターとなり、海洋の物質循環を制御している。これらの特徴を踏まえた上で、低次生態系や物質循環についての概要に触れる共に、昨今の急速な地球温暖化環境下においてのそれらの重要性についてのイメージを持てるようにする。
② 三瓶真は、主に極域(北極圏や南極圏海域)を主なフィールドに、地球温暖化が海洋生態系や物質循環にどのような影響を与えているかについて研究を行ってきた極域海洋観測のスペシャリストである。これまでの研究について、大きく3つに分けると以下のようになる。①「生物ポンプ」と炭素循環:生物ポンプ(Biological Carbon Pump)のメカニズム解明について、炭素の輸送について、海面近くの植物プランクトンが光合成で取り込んだ二酸化炭素(炭素)が、プランクトンの死骸や糞として深海へ沈降していくプロセスを研究するとともに、気候変動の影響について、海氷が減少することでこの「沈降する炭素の量」がどの様に変化するかを、セジメント・トラップ(沈降粒子捕集装置)という装置をはじめとする海洋観測機材を海底に設置して長期間観測してきた。②動物プランクトンの生態と役割:特に海洋生態系で重要な役割を果たす動物プランクトン(カイアシ類など)に注目して、その鉛直移動行動により物質を深層へ運ぶ「能動的な輸送」としてどれほど寄与しているかを定量化したり、温暖化で海氷が消失することで、これらプランクトンの種類や発生時期がどのようにズレるのか、またその結果として起こる食物網構造の変動について解明してきた。③海氷減少がもたらす生態系へのインパクト:北極は地球上で最も温暖化が進んでいる地域であり、そのインパクトが地球上で最も強く受ける海域であることが予想される。そのため、カナダ北極海(ボーフォート海)やチュクチ海などでの国際共同研究に参画してその理解の進歩に大きく貢献してきた。特に近年は海氷の消失に伴い、氷の下に住む藻類(アイスアルジー)から、氷がなくなった後の植物プランクトン主体への「主役交代」が、生態系全体の物質やエネルギーの流れをどう変えるかについての解明を目指している。
③ 海洋を満たす「水」や、その中に存在する「物質」の多くは、河川を通して海へ流れ込む。さらに河川は、農地や陸上生物が生活する「陸上のフィールド」とつながっている。つまり、海洋の低次生態系や物質循環は、農業や陸域のフィールドと深く結び付いている。また、このつながりは、海洋生態系の上位捕食者である魚類や海生哺乳類にまで及び、フィールド自然学科の他の教員の専門分野とも関わる。言い換えると、海の学びは他の科目の学習とも連動している。そのため、海洋低次生態系や物質循環をより深く学ぶには、カリキュラム内の他分野をまたぐ学びが大きな力になる。こうした幅広い学びを踏まえ、卒業研究では、海洋低次生態系や物質循環の解明、地球温暖化との関係性などを主題に課題学習を行う。そこで得た知見を、地球温暖化時代における海洋生態系の変動予測に資する形で蓄積するとともに、水産業の持続性を支える基礎として、食料生産の重要なフィールドである海と漁業のつながりを科学的に理解する力を身に付ける。
キーワード ① プランクトン ② 生物ポンプ ③ ブルーカーボン ④ 食物網 ⑤ 北極・南極
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施する。
復習・予習課題 【復習】講義内での議論や質問を振り返り、自分がどの点に疑問を持ったのか、どのような考えを持ったのかを整理する。
【予習】コマシラバスについて、次回以降の内容や履修判定指標を読み込み、これからの授業展開や評価の方法等について理解すること。

7 【海洋哺乳類の生きる海】——[担当:吉田] 科目の中での位置付け 本科目は、少人数グループ制と全教員のローテーション形式を採用し、学生が多角的な視点からフィールド自然学を学べるよう設計されている。前半8回の講義は全教員が担当し、教員ごとに異なる専門分野(生態学・農学・水産学・環境学など)を扱うため、フィールド自然学がカバーする幅広い学問領域をまとめて学ぶことができる。各回では担当教員が自分の研究分野の世界と日本の研究動向を解説し、教員の研究史を紹介するとともに、現在取り組んでいる研究内容と将来的な展望を説明し、それが授業のカリキュラムや卒業研究とどのように関わっているのかを解説する。これにより、学修の方向性を考えやすくなるように設計されている。また、講義内では質疑応答やディスカッションを積極的に取り入れ、教員と学生との対話を重視することで、学生ひとりひとりの興味や関心に応じたフィードバックを行い、学びを深める機会を提供する。続く第9回から第15回までは、今後の学修に必要となる生物学の基礎的知識を解説する。学生はこれまでの学びを振り返り、各学生が得た知識を整理するとともに、今後の学修計画を考える機会とする。学生はフィールド自然学における自身の興味を明確にし、主体的な学びを継続するための基盤を築くことができる。本科目は、専門的な知識の獲得のみならず、学際的な視点を養い、研究の魅力を実感する機会を提供することを目的とする。吉田が担当するこの回は海洋哺乳類学を取り上げ、研究の内容や関連する科目について説明する。
コマオリジナル資料
コマ主題細目 ① 自己紹介 ② 海洋哺乳類学とは ③ 学科の関連科目との関係
細目レベル ① 経歴から研究まで
大学の時の卒業研究テーマ「河川棲昆虫幼虫の棲み分け」で、フィールドワークの楽しさに目覚め、かねてより考えていた鯨類の音声研究の世界へ踏み出し、博士課程(修士課程・博士課程)に進学した。学生の皆には、その都度の選択で迷うこと、諦めなければ、叶うこともあることを講義の中で感じてほしい。研究はこれまで、海洋哺乳類の中でも主にハクジラ類(イルカ)を研究対象に、個体間関係を軸とした「鳴音行動」や「群れ行動」をキーワードとして、日本国内の飼育施設から海外のフィールドを含め、フィールドワークによる行動観察、鳴音観察、そしてデータ分析により実証的研究をおこなってきた。イロワケイルカやスナメリなどを研究対象に、特殊な鳴音による個体間の情報交換、群れ内の情報交換、夜間の生態の解明に取り組んできた。近年は、スナメリを対象とした海洋開発の影響調査や音声記録機器(研究手法)の開発、鳴音だけでなく水中音と形態構造の研究も行っており、海洋環境保全のための方策について共同研究を進めている。また、ヒトと動物の関係の視点から、海洋哺乳類の食としての日本文化にも興味を広げ、地方都市に残るイルカ食やクジラ食の文化人類学調査にも着手している。

② イルカからアザラシまで。
海洋哺乳類とは、イルカやクジラを含む鯨類、アシカやアザラシを含む鰭脚類など海洋に生息する哺乳類のことを指す。彼らは、陸で進化した哺乳類が再び水中へと生活を移した生き物の末裔である。広大な海で生活をする彼らを通じて、生物進化の多様さを知ることができることは大きな魅力であろう。特に、海中は10mも潜れば視界の効かない真っ暗な闇が続く、「見えない世界」である。その環境の中で、ヒトと同じ哺乳類である海洋哺乳類は互いに情報を交換し、周囲の環境を理解し、世界中の海に生息している。彼らは暗い水中世界で視覚の代わりに聴覚を発達させ、特殊な聴覚能力と発声能力を身につけてきた。たとえばイルカの発声する鳴音はコミュニケーションに用いられるだけでなく、生きるために必要な食事(餌)を得る際にも利用され、それらは暗闇の空を飛ぶコウモリと同様の能力でもある。イルカの聴覚と発声そしてその行動、陸上哺乳類との類似した行動進化、海中での特殊な行動進化、とても魅力的な学問分野を紹介する。

③ 関連科目から卒論テーマまで。
この研究分野は、海洋生物学や生態学、動物行動学に関連している。フィールドワークによる調査研究から海洋環境に生息する生物の探究に取り組んできた経験から、海洋生物に関する基礎的な理解を深める「海の大型動物生態学」や「沿岸環境学演習」の科目に直接関連する。また、「海洋哺乳類の保全」では、実地でのフィールドワークを通じて動物行動学への理解を深めるとともに、野生動物と水産業の軋轢や被害対策といった人と自然の関係にも関連する。また、人と自然の関係を人の視点から俯瞰し、山積する環境問題を解決する糸口を理解するための「自然共生社会」や「環境共生型社会のデザイン」で都市の自然を扱う。
卒論では、海洋哺乳類の生態研究に主に対応している。野生下と飼育下のどちらの動物も対象としたテーマに対応可能である。またイルカだけでなく、アザラシやペンギン(海鳥)、海辺に生息する陸上の野生動物(タヌキ、ネコ、ムクドリなど)も対象としてきた。大切な視点は動物がいかに海を利用して生活しているか、を考えることである。自分が知りたいことを明確化し、そのことを明らかにするための手法を3年次までの学修で身につけておいてほしい。

キーワード ① 海洋哺乳類学(イルカ、クジラ、鰭脚類) ② 海(沿岸、外洋、湾) ③ 鳴音行動(ホイッスル、クリックス、ソング) ④ 行動生態(音響定位、採餌、繁殖、休息) ⑤ 自然共生(野生動物、軋轢、被害対策)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】今回は本科目の第7回目の授業を実施した。授業内でも確認したが、改めてシラバスを確認しておくこと。特に「授業の展開方法」および第1~15回の内容に一通り目を通し、講義全体の流れをイメージしておくことが重要である。
復習については、文字教材の復習課題を読み、内容が理解できているかを確認するとともに、シラバスに示された「履修判定指標」と照らし合わせて自己点検すること。さらに、第7回の要点や重要なポイントを各自でノートに整理し、理解を定着させることを求める。加えて、学びを深めたい場合は、シラバスに記載されている「参考文献」を大学図書館などで借りて読み込むことを推奨する。また、文字教材の解説や練習問題を見直すだけでなく、ChatGPTを活用して自ら約20問の練習問題を作成・解答し、その後に解答や解説を確認することで、知識をより確実に定着させることができる。

【予習】コマシラバスについて、次回以降の内容や履修判定指標を読み込み、これからの授業展開や評価の方法等について理解すること。

8 【応用生態工学と呼ばれる河川工学と生態系保全の融合と環境DNAと言われる新たな調査手法のアプローチ】[担当:後藤益滋] 科目の中での位置付け  本科目は、少人数グループ制と全教員のローテーション形式を採用し、学生が多角的な視点からフィールド自然学を学べるよう設計されている。入学時に学生は班ごとに分けられ、学力や関心のばらつきを考慮した編成が行われることで、グループ内での議論や協力が促進され、主体的な学びの機会が生まれる。講義は全教員が担当し、回ごとに異なる専門分野が扱われるため、生態学・農学・水産学・環境学など、フィールド自然学がカバーする幅広い学問領域を体系的に学ぶことができる。各講義は2コマで構成され、前半では国内外の専門分野の動向や研究の最前線について紹介し、各教員が自身の研究を行う背景や、学問の歴史的な展開について説明する。後半では、現在の研究内容や将来の展望について掘り下げ、フィールド自然学のカリキュラム全体や卒業研究との関連を明確に示すことで、学生が自身の学修の方向性を考えやすくなるように設計されている。また、講義内では質疑応答やディスカッションを積極的に取り入れ、教員と学生の対話を重視することで、個々の興味や関心に応じたフィードバックを行い、学びを深める機会を提供する。最終回となる第15回の講義では、これまでの学びを振り返り、各学生が得た知識を整理するとともに、今後の学修計画を考える機会とする。これにより、学生はフィールド自然学における自身の興味を明確にし、主体的な学びを継続するための基盤を築くことができる。本科目の講義は、専門的な知識の獲得のみならず、学際的な視点を養い、研究の魅力を実感する機会を提供することを目的とする。この回を担当する後藤は、多自然川づくりから環境DNA解析まで、河川工学における生態系保全と土木の融合から、新たな生態系調査手法としての環境DNAの開発エピソードについて、その苦闘も含めて紹介する。
オリジナル文章教材
コマ主題細目 ① 多自然型川づくり ② ホタルの保全 ③ 環境DNAという新たな調査のアプローチ
細目レベル ① 多自然川づくりは、様々な国々で行われている河川政策の一つである。河川は、農業、交通や産業にとって人間に大きな恩恵をもたらす一方で、洪水などの災害で人間にとって脅威ともなっていた。そのため、その脅威から様々な対策(護岸の設置、河道の掘削や直線化)によって、低減を図ってきたものの、本来の川が持つ豊かな生態系は蔑ろにされてきた歴史がある。この反省点から、従来の治水・利水を優先した直線化やコンクリート護岸中心の河川改修を見直し、自然の生態系を再生・保全することを目的とする取り組みについて、ヨーロッパ(近自然工法(Naturnaher Wasserbau))やアメリカ(サクラメント川の氾濫原再生やエルワ川のダム撤去)、アジア(長江河口の干潟再生)の例を紹介するとともに、日本では1997年の河川法改正により「環境の整備と保全」が目的に明記された内容についてその具体例について紹介する。この細目では治水と環境保全をいかに両立させてきたか、その重要性を理解する。
② ゲンジボタルがなぜ、保全対象となったのか?その歴史からこれまでの保全の経緯を山口県を舞台に紹介する。山口県山口市では、1933年に椹野川のゲンジボタルが天然記念物に指定されたことが保全の出発点となったことや戦後の高度経済成長期に工業化・都市化による水質汚濁、河川改修などが山口県のみならず、全国的にホタルを減少させたこと、公害問題が顕在化し法整備が進んだこと(1967年の公害対策基本法、1993年の環境基本法、さらに多自然川づくりの提唱と1997年の河川法改正)を理解するとともに、その具体例として、山口県下関市豊田町の事例(住民と行政が清掃や農薬制限、カワニナ増殖で生息環境を再生)、山口市の一の坂川の事例(石積み護岸と植生帯で治水と景観・生息場保全)、①に連動する山口市の一の坂川の事例(石積み護岸と植生帯で治水と景観・生息場保全)や吉敷川(簡易ホタル護岸工法)を紹介する。を紹介する。後藤ら行ったホタル護岸の機能評価、PHABSIMやGISによる適地推定、水路設計、遺伝解析まで研究によって、遺伝的多様性低下や移入による遺伝子汚染への警鐘も示されたことも併せて紹介する。この細目では、保全とは「守る」だけでなく、科学的評価に基づき行政と市民が協働して生息場を再生・維持し、放流の影響も含めて地域固有性を守る総合的取り組みであることを理解する。
③ 環境DNA(eDNA)は、従来の捕獲・目視調査と異なり、水や土壌などに生物が残したDNAから非侵襲的に生物の在不在や分布を把握できる点、その有効性と研究動向を学ぶことを目的とする。利点は、生物を傷つけず捕獲圧や生息地への影響を抑えつつ、希少種確認・外来種管理・多様性評価に活用できることである。環境DNAの分析手法は、リアルタイムPCRによる種特異的解析(検出=存在可能性が高い)と、ユニバーサルプライマー+次世代シーケンサーによる網羅的解析(メタバーコーディング)に大別される。この手法の違いについて後藤がこれまで開発した内容や苦闘について解説するとともに、その内容を理解する。また、外来種の管理手法としての環境DNAについて、山口県で実施したヌートリアの事例を挙げて、山口県内におけう分布の広がりや、Maxicent解析を用いた分布予測を紹介し、その内容を理解する。
キーワード ① 多自然川づくり ② ホタル護岸 ③ 環境DNA ④ 外来種管理
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、ヨリソル上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】内容が多岐にわたる上、専門用語も多いため、Chat GPTなど検索機能を使いながら、内容の理解を進めていくことが望ましい。また、将来的に行政や土木&環境コンサルタントを希望するのであれば最低限知っておく必要のある内容ばかりである。今回紹介した具体的な事例について、多自然川づくりが治水中心の河川改修から生態系保全との両立へと転換してきた国際的・国内的経緯、山口県におけるゲンジボタル保全の歴史と科学的評価手法(PHABSIM・GIS・遺伝解析)、さらに環境DNAの原理と外来種管理への応用(ヌートリア事例)を通して、河川環境保全は法制度・科学技術・地域連携に基づく総合的取り組みであることを理解しておくこと。

【予習】コマシラバスについて、次回以降の内容や履修判定指標を読み込み、これからの授業展開や評価の方法等について理解しておくこと

9 〈生物学基礎I〉【生命の設計図と基本単位】[担当:三中信宏 科目の中での位置付け  フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究をおこなう学科である。陸域・水域・農業の3つの分野について詳しく学ぶとともに、統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成している。また、柔軟な考え方や実践的な提案力を養うため、学科共通の授業や複数の分野にかかわる授業も設けている。これにより、幅広い視野をもち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。
 本科目では、各教員が自らの専門分野を紹介しつつ、それぞれ異なる視点からフィールド自然学について解説する。授業の前半8回では、学生は毎週異なる教員の講義ののち、小テストを受け、数名ずつの少人数グループ(班)に分かれて各教員と面談する。各回の講義では、教員の専門分野の歴史から最新の研究動向について紹介し、それらがカリキュラム全体や卒業研究とどのように関係しているかが解説される。授業の後半7回では、生物学の知識の基盤を確実にするため、生物の個体から始まり集団、群集、生態系へといたる自然の階層について説明をする。これら一連の講義を通して、山・川・海から身近な農地まで多様な環境についての知見を広げ、さらに生態学・農学・進化学といった幅広い研究分野がどのように連携しているのかを理解することを目指す。本科目を履修することで、履修科目を選択する上で参考になるとともに、二年次のフィールド領域仮分属や三年次のフィールド領域本分属、そして四年次の研究室配属を学生が決める上でも役立つことが期待される。
 三中信宏が担当する〈生物学基礎I〉第一回は遺伝子と細胞 ―「生命はどのように成り立つか」をテーマとする。生命は細胞から成り立つ存在であり、その細胞は膜で囲まれた「小さな工場」として機能している。細胞の内部ではさまざまな生命活動が行われ、その働きを支えているのが遺伝子である。遺伝子(DNA)は生命の設計図であり、タンパク質の構造や働きに関する情報を持つ。細胞はこの設計図を読み取って自身の構造や機能を作り出している。したがって、生命とは遺伝子と細胞が相互に関わりながら成立するシステムである。

解説教材
コマ主題細目 ① 生命とは何か ② 細胞の基本構造 ③ 遺伝子とは何か ④ 細胞と遺伝子の関係
細目レベル ① 生命とは何かという問いは生物学の出発点であるが、単純に定義することは容易ではない。一般に生命は、細胞から構成され、エネルギーを取り入れて代謝を行い、自己を維持しながら増殖する存在であると考えられている。また、環境に応じて変化し、長い時間の中で進化するという特徴も持つ。石や水のような無生物と異なり、生命は内部に秩序を保ちながら外界と物質やエネルギーをやり取りする開放系である点が重要である。さらに、生命は「情報」を保持し、それを次世代へと伝える仕組みを持つ。この情報こそが遺伝子であり、生命を生命たらしめる本質の一つである。したがって生命とは、「細胞・エネルギー・情報」の三つの側面から理解されるべき存在である。
② 細胞はすべての生物に共通する基本単位であり、生命活動が実際に行われる場である。細胞は外側を細胞膜によって囲まれ、内外の物質の出入りを制御している。内部には細胞質があり、そこではさまざまな化学反応が進行する。真核細胞の場合、核が存在し、その中に遺伝子(DNA)が収められている。また、ミトコンドリアや葉緑体などの細胞小器官が特定の機能を担う。細胞は単なる構造体ではなく、物質の合成や分解、エネルギーの変換などを行う「動的なシステム」である。単細胞生物では一つの細胞がそのまま一個体であるが、多細胞生物では多くの細胞が分業しながら協調して働く。したがって細胞とは、生命の最小単位であると同時に、生命活動の中心的な舞台である。
③ 遺伝子とは、生物の形や働きを決定する情報を担う単位であり、DNAという物質に記録されている。DNAは塩基と呼ばれる分子の配列によって情報を保持しており、その並び方が異なることで多様な情報が表現される。遺伝子は主にタンパク質の合成に関する設計図として機能し、細胞内で必要な分子を作り出す指示を与える。タンパク質は酵素や構造物質として働き、生命活動のほとんどを支えている。したがって遺伝子の違いは、生物の形態や性質の違いとして現れる。また、遺伝子は親から子へと受け継がれ、世代を超えて情報を伝達する役割を持つ。遺伝子とは単なる物質ではなく、「生命の設計情報」を担う存在である。
④ 細胞と遺伝子は切り離して考えることができない密接な関係にある。遺伝子は細胞の中に存在し、その情報は細胞の働きを決定する。一方で、遺伝子の情報は細胞という場がなければ実現されない。すなわち、遺伝子は設計図であり、細胞はそれを実行する場であると言える。細胞内では、遺伝子の情報が読み取られてタンパク質が合成され、その結果として細胞の構造や機能が形成される。また、細胞分裂の際には遺伝子が正確に複製され、次の細胞へと受け渡される。このように、細胞と遺伝子は相互に依存しながら生命を維持している。生命を理解するためには、遺伝子という情報の側面と、それを実行する細胞という物質的基盤の両方を統合的に捉えることが不可欠である。
キーワード ① 生命 ② 細胞 ③ 遺伝子 ④ 進化
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、ヨリソル上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】第1回では、「生命とは何か」を細胞と遺伝子の関係から理解することが中心であった。まず重要なのは、すべての生命は細胞から成り立つという点である。細胞は単なる構造ではなく、物質の合成や分解、エネルギーの利用などを行う動的なシステムであることを押さえる必要がある。次に、遺伝子(DNA)は生命の設計図であるという理解が重要である。遺伝子はタンパク質の情報を担い、その結果として生物の形や働きが決まる。そして最も重要なのは、細胞と遺伝子は相互に依存する関係にあるという点である。遺伝子は細胞の中で働き、細胞は遺伝子の情報を実現する場となる。この「情報(遺伝子)と実体(細胞)」の対応関係を明確に理解しておくことが復習の核心である。
【予習】第2回では「生命を支えるエネルギーの仕組み」を扱うため、まず生物はエネルギーを必要とする存在であるという前提を理解しておく必要がある。生命活動はすべてエネルギーの出入りによって支えられており、その全体を代謝と呼ぶことを押さえておくことが重要である。また、呼吸はエネルギーを取り出す過程であり、光合成はエネルギーを作り出す過程であるという対比を意識しておくとよい。さらに、これら二つの過程が酸素と二酸化炭素を介してつながっているという点に注目する必要がある。すなわち、第1回で学んだ細胞という「装置」が、どのようにしてエネルギーを得て働いているのかという視点を持つことが、第2回の理解に直結する。生命を「情報とエネルギーのシステム」として捉える準備をしておくことが予習の要点である。

10 〈生物学基礎I〉【生命のエネルギーのしくみ】[担当:三中信宏] 科目の中での位置付け  フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究をおこなう学科である。陸域・水域・農業の3つの分野について詳しく学ぶとともに、統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成している。また、柔軟な考え方や実践的な提案力を養うため、学科共通の授業や複数の分野にかかわる授業も設けている。これにより、幅広い視野をもち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。
 本科目では、各教員が自らの専門分野を紹介しつつ、それぞれ異なる視点からフィールド自然学について解説する。授業の前半8回では、学生は毎週異なる教員の講義ののち、小テストを受け、数名ずつの少人数グループ(班)に分かれて各教員と面談する。各回の講義では、教員の専門分野の歴史から最新の研究動向について紹介し、それらがカリキュラム全体や卒業研究とどのように関係しているかが解説される。授業の後半7回では、生物学の知識の基盤を確実にするため、生物の個体から始まり集団、群集、生態系へといたる自然の階層について説明をする。これら一連の講義を通して、山・川・海から身近な農地まで多様な環境についての知見を広げ、さらに生態学・農学・進化学といった幅広い研究分野がどのように連携しているのかを理解することを目指す。本科目を履修することで、履修科目を選択する上で参考になるとともに、二年次のフィールド領域仮分属や三年次のフィールド領域本分属、そして四年次の研究室配属を学生が決める上でも役立つことが期待される。
 三中信宏が担当する〈生物学基礎I〉第二回は代謝・呼吸・光合成 ―「生命はどうやって動くのか」をテーマとする。生物は常にエネルギーを出し入れしながら生命活動を維持しており、その全体の仕組みを代謝という。呼吸は有機物を分解してエネルギーを取り出す過程であり、動物を含む多くの生物に共通する。一方、光合成は光エネルギーを利用して有機物を合成する過程であり、植物や一部の微生物に見られる。これら二つの過程は酸素と二酸化炭素を介して密接に結びついている。生命はこのようなエネルギーの流れの中で成り立っている。

解説教材
コマ主題細目 ① 代謝とは何か ② 呼吸 ③ 光合成 ④ 呼吸と光合成の関係
細目レベル ① 代謝とは、生物が生命を維持するために体内で行うすべての化学反応の総称である。生物は外界から物質やエネルギーを取り入れ、それらを変換しながら自己を維持している。この過程は大きく二つに分けられる。一つは物質を分解してエネルギーを取り出す「異化」であり、もう一つはエネルギーを利用して新たな物質を合成する「同化」である。例えば、食物を分解してエネルギーを得ることは異化にあたり、そのエネルギーを使って体の組織を作ることは同化にあたる。代謝は細胞内で連続的に行われる反応のネットワークであり、酵素によって精密に制御されている。したがって代謝とは、生命が秩序を保ちながら存在し続けるための根本的な仕組みである。
② 呼吸とは、生物が有機物を分解してエネルギーを取り出す過程であり、細胞内で行われる重要な代謝の一つである。一般に呼吸では、グルコースなどの有機物が酸素と反応し、二酸化炭素と水に分解される。このときに放出されるエネルギーはATPという形で蓄えられ、細胞のさまざまな活動に利用される。呼吸は主にミトコンドリアで行われ、効率的にエネルギーを取り出す仕組みが整っている。なお、「呼吸」という言葉は日常的には肺でのガス交換を指すことが多いが、生物学では細胞レベルでのエネルギー獲得過程を意味する点に注意が必要である。呼吸はすべての生物に共通する基本的な仕組みであり、生命活動を支えるエネルギー供給の中心である。
③ 光合成とは、光エネルギーを利用して無機物から有機物を合成する過程であり、主に植物や藻類、一部の細菌で行われる。具体的には、二酸化炭素と水を材料として、光のエネルギーを用いてグルコースなどの有機物を合成し、その副産物として酸素を放出する。この過程は葉緑体で行われ、光を吸収する色素であるクロロフィルが重要な役割を果たす。光合成によって作られた有機物は、植物自身のエネルギー源となるだけでなく、他の生物にとっても食物として利用される。また、光合成は地球上の酸素の供給源でもあり、生物圏全体の基盤を支えている。したがって光合成は、エネルギーを「生み出す」生命活動として極めて重要である。
④ 呼吸と光合成は、一見すると逆の働きを持つが、実際には互いに補い合う関係にある。光合成では二酸化炭素と水から有機物と酸素が生成されるのに対し、呼吸では有機物と酸素から二酸化炭素と水が生じる。このように、両者は物質の流れとして循環関係を形成している。また、光合成によって固定されたエネルギーは、有機物の形で蓄えられ、その後の呼吸によって取り出されて利用される。すなわち、光合成はエネルギーを蓄える過程であり、呼吸はそれを取り出す過程であると言える。この関係は個体レベルにとどまらず、生態系全体におけるエネルギーの流れと物質循環の基盤をなしている。したがって、呼吸と光合成は生命を支える二つの基本的な仕組みとして統合的に理解されるべきである。
キーワード ① 代謝 ② 呼吸 ③ 光合成
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、授業時間内に、ヨリソル上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】第2回では、生命を支えるエネルギーの仕組みとして代謝・呼吸・光合成を学んだ。まず重要なのは、代謝とは生命を維持するための化学反応の総体であり、「分解(異化)」と「合成(同化)」から成るという理解である。生物は外界から物質とエネルギーを取り入れ、それを変換することで自己を維持している点を押さえる必要がある。次に、呼吸は有機物を分解してエネルギーを取り出す過程であることを理解することが重要である。このとき得られるエネルギーが細胞の活動を支えている。一方で、光合成は光エネルギーを利用して有機物を合成する過程である。そして最も重要なのは、呼吸と光合成が物質(酸素・二酸化炭素)とエネルギーの流れの中で相互に結びついているという点である。すなわち、生命とはエネルギーの流れの中で成立するシステムであるという視点を確立することが復習の核心である。
【予習】第3回では「発生と遺伝情報」を扱うため、同じ遺伝子を持つ細胞がどのようにして異なる働きを持つのかという問いを意識しておくことが重要である。第1回で学んだように、すべての細胞は基本的に同じDNAを持っているにもかかわらず、実際には筋肉や神経など多様な細胞が存在する。この違いはどこから生じるのかという疑問を持つことが出発点となる。また、細胞は分裂によって増えるという基本的な仕組みと、その際に遺伝情報がどのように受け継がれるのかを意識しておく必要がある。さらに、個体が形成される過程では、単に細胞数が増えるだけでなく、細胞が役割を分担していく(分化する)ことが重要である。このように、遺伝子という「情報」がどのように時間的・空間的に使い分けられるのかという視点を持つことが、第3回の理解に直結する。すなわち、生命を「情報の制御システム」として捉える準備をしておくことが予習の要点である。

11 〈生物学基礎I〉【個体はどのようにできるか】[担当:三中信宏] 科目の中での位置付け  フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究をおこなう学科である。陸域・水域・農業の3つの分野について詳しく学ぶとともに、統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成している。また、柔軟な考え方や実践的な提案力を養うため、学科共通の授業や複数の分野にかかわる授業も設けている。これにより、幅広い視野をもち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。
 本科目では、各教員が自らの専門分野を紹介しつつ、それぞれ異なる視点からフィールド自然学について解説する。授業の前半8回では、学生は毎週異なる教員の講義ののち、小テストを受け、数名ずつの少人数グループ(班)に分かれて各教員と面談する。各回の講義では、教員の専門分野の歴史から最新の研究動向について紹介し、それらがカリキュラム全体や卒業研究とどのように関係しているかが解説される。授業の後半7回では、生物学の知識の基盤を確実にするため、生物の個体から始まり集団、群集、生態系へといたる自然の階層について説明をする。これら一連の講義を通して、山・川・海から身近な農地まで多様な環境についての知見を広げ、さらに生態学・農学・進化学といった幅広い研究分野がどのように連携しているのかを理解することを目指す。本科目を履修することで、履修科目を選択する上で参考になるとともに、二年次のフィールド領域仮分属や三年次のフィールド領域本分属、そして四年次の研究室配属を学生が決める上でも役立つことが期待される。
 三中信宏が担当する〈生物学基礎I〉第三回は発生と遺伝情報 ―「生命の設計図はどう実現されるか」をテーマとする。個体は受精から始まり、細胞分裂と分化を繰り返すことで形成される。この過程において、すべての細胞は同じDNAを持ちながらも、使われる遺伝子が異なるために異なる性質をもつ細胞へと分化する。このような遺伝子の選択的な発現が、筋肉や神経など多様な細胞の成立を可能にする。また、体細胞分裂と減数分裂はそれぞれ異なる役割を担い、成長と世代継承に関与する。個体の形成とは、遺伝情報が時間的・空間的に制御されて発現する過程である。

解説教材
コマ主題細目 ① 発生とは何か ② 細胞分裂 ③ 遺伝子発現 ④ 発生と環境
細目レベル ① 発生とは、一つの受精卵から出発して、多細胞生物としての個体が形成されていく一連の過程である。受精卵は最初は一個の細胞にすぎないが、細胞分裂を繰り返しながら数を増やし、やがて異なる構造や機能をもつ細胞へと分化していく。この過程では、単に細胞数が増えるだけでなく、体の各部分が適切な位置に配置され、全体として秩序ある構造が形成されることが重要である。発生は、あらかじめ決められた設計図がそのまま展開される単純な過程ではなく、細胞同士の相互作用や環境の影響を受けながら進行する動的なプロセスである。また、発生は個体の形成にとどまらず、進化の過程とも深く関わっている。したがって発生とは、「遺伝情報が時間と空間の中で具体的な形として実現される過程」であると捉えることができる。
② 細胞分裂とは、細胞が自己を複製して新たな細胞を生み出す過程であり、生物の成長や組織の維持に不可欠な仕組みである。細胞分裂には主に体細胞分裂と減数分裂の二種類がある。体細胞分裂では、一つの細胞が二つの同一な細胞に分かれ、遺伝情報は正確にコピーされる。この過程は個体の成長や組織の修復に関与する。一方、減数分裂は生殖細胞を作る際に行われ、染色体数が半分になることで、受精の際に元の数に戻る仕組みとなっている。また、この過程では遺伝情報の組み合わせが変化するため、多様性が生じる。細胞分裂は単なる増殖ではなく、遺伝情報の維持と多様性の創出という二つの役割を担っている点が重要である。
③ 遺伝子発現とは、DNAに記録された情報が読み取られ、タンパク質として具体的に実現される過程である。すべての細胞は基本的に同じ遺伝子を持っているが、実際には細胞ごとに働きや形が異なる。この違いは、どの遺伝子がどの程度働くかという「発現の違い」によって生じる。例えば、筋肉細胞では収縮に関わる遺伝子が活発に働き、神経細胞では情報伝達に関わる遺伝子が主に発現する。このように、遺伝子の選択的な利用が細胞の機能を決定している。遺伝子発現は転写や翻訳といった段階を経て行われ、さまざまな調節機構によって制御されている。したがって、遺伝子発現とは「同じ設計図をもとに異なる働きを生み出す仕組み」であり、発生や生命活動の基盤となる重要な過程である。
④ 発生は遺伝子の情報に基づいて進行するが、その過程は環境からの影響も強く受ける。すなわち、個体の形や性質は遺伝子だけで決まるのではなく、外部環境との相互作用の中で形成される。例えば、温度や栄養状態は発生の速度や結果に影響を与えることが知られている。また、同じ遺伝子を持つ個体であっても、育つ環境が異なれば異なる特徴が現れることがある。このように、遺伝子によって決まる可能性の範囲の中で、環境がその現れ方を左右する。この関係は「遺伝と環境の相互作用」として理解されるべきである。したがって発生とは、遺伝情報が一方的に実現される過程ではなく、環境との関わりの中で柔軟に形づくられる現象である。
キーワード ① 発生 ② 細胞分裂 ③ 遺伝子発現 ④ 発生と環境
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、授業時間内に、ヨリソル上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】第3回では、遺伝子という情報がどのように個体として実現されるかを、発生・細胞分裂・遺伝子発現の観点から学んだ。まず重要なのは、発生とは受精卵という一つの細胞から出発し、細胞分裂と分化を通じて個体が形成される過程であるという理解である。ここで押さえるべき核心は、すべての細胞が同じDNAを持つにもかかわらず、異なる細胞が生じる理由である。それは、遺伝子発現の違いによって細胞の性質が決まるためである。また、細胞分裂には、遺伝情報を正確に維持する仕組みと、多様性を生み出す仕組みの両方があることも重要である。さらに、発生は遺伝子だけで決まるのではなく、環境との相互作用の中で進行するという点を理解する必要がある。すなわち、生命とは「遺伝情報が制御されながら具体的な形として現れる過程」であると捉えることが復習の要点である。
【予習】第4回では進化を扱うため、まず個体レベルではなく「集団」や「世代」という視点を持つことが重要である。進化は一個体の変化ではなく、世代を超えた遺伝的変化の蓄積として理解される必要がある。また、個体の間には必ず違い(変異)が存在するという点を意識しておくことが出発点となる。この違いの一部は遺伝し、次世代に受け継がれる。さらに、環境によって有利な性質を持つ個体がより多く生き残るという自然選択の考え方を準備しておくことが重要である。ここで、第3回で学んだ「遺伝子発現」や「発生」とのつながりを意識すると理解が深まる。すなわち、個体の性質(表現型)は遺伝子に基づいて形成され、それが環境との関係の中で選ばれていく。このように、生命を「時間の中で変化するシステム」として捉える視点を持つことが、第4回への予習の要点である。

12 〈生物学基礎I〉【生命の多様性と進化】[担当:三中信宏] 科目の中での位置付け  フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究をおこなう学科である。陸域・水域・農業の3つの分野について詳しく学ぶとともに、統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成している。また、柔軟な考え方や実践的な提案力を養うため、学科共通の授業や複数の分野にかかわる授業も設けている。これにより、幅広い視野をもち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。
 本科目では、各教員が自らの専門分野を紹介しつつ、それぞれ異なる視点からフィールド自然学について解説する。授業の前半8回では、学生は毎週異なる教員の講義ののち、小テストを受け、数名ずつの少人数グループ(班)に分かれて各教員と面談する。各回の講義では、教員の専門分野の歴史から最新の研究動向について紹介し、それらがカリキュラム全体や卒業研究とどのように関係しているかが解説される。授業の後半7回では、生物学の知識の基盤を確実にするため、生物の個体から始まり集団、群集、生態系へといたる自然の階層について説明をする。これら一連の講義を通して、山・川・海から身近な農地まで多様な環境についての知見を広げ、さらに生態学・農学・進化学といった幅広い研究分野がどのように連携しているのかを理解することを目指す。本科目を履修することで、履修科目を選択する上で参考になるとともに、二年次のフィールド領域仮分属や三年次のフィールド領域本分属、そして四年次の研究室配属を学生が決める上でも役立つことが期待される。
 三中信宏が担当する〈生物学基礎I〉第四回は進化 ―「なぜ多様な生物が存在するのか」をテーマとする。進化とは、世代を超えて遺伝的な変化が蓄積していく現象である。個体の間に生じる変異が遺伝し、その中で環境に適した性質をもつ個体がより多く生き残り、子孫を残す。この自然選択の過程が繰り返されることで、生物の形や性質は徐々に変化していく。こうした長期的な変化の積み重ねが、現在見られる多様な生物の姿を生み出してきた。したがって生命とは固定されたものではなく、環境との関わりの中で変化し続ける存在である。

解説教材
コマ主題細目 ① 進化とは何か ② 変異と遺伝 ③ 自然選択 ④ 進化による統合
細目レベル ① 進化とは、生物の集団において遺伝的な性質が世代を超えて変化していく現象である。ここで重要なのは、進化は個体の変化ではなく、集団全体の遺伝子の構成(遺伝子頻度)が変化することであるという点である。例えば、ある環境に適した性質を持つ個体が多く子孫を残すと、その性質に関わる遺伝子が次世代で増加する。このような変化が長い時間をかけて積み重なることで、生物の形や性質は徐々に変化し、新たな種が生じることもある。進化は目的をもって進むものではなく、環境との相互作用の中で結果として生じる過程である。したがって進化とは、「遺伝子の変化が世代を通じて蓄積することで、生物集団が変わっていく現象」である。
② 進化の出発点となるのが変異である。変異とは、個体間に見られる遺伝的な違いのことであり、その原因にはDNAの変化(突然変異)や遺伝子の組み合わせの違いなどがある。例えば、減数分裂の過程で遺伝子の組み合わせが変わることや、受精によって異なる遺伝子が組み合わさることにより、多様な個体が生じる。このような変異のうち、遺伝子に基づくものは親から子へと受け継がれるため、次世代の集団に影響を与える。一方で、環境によって生じた変化のすべてが遺伝するわけではない点にも注意が必要である。したがって、変異と遺伝とは、生物の多様性を生み出し、それを次世代へと伝える仕組みであり、進化の基盤をなす重要な要素である。
③ 自然選択とは、環境に適した性質を持つ個体がより多く生き残り、より多くの子孫を残すことによって、その性質が集団内に広がっていく過程である。生物の個体にはさまざまな変異が存在するが、その中で環境に適したものが有利となる。例えば、捕食者から見つかりにくい体色を持つ個体は生存しやすく、その性質が次世代に受け継がれる可能性が高まる。このような選択は意図的に行われるものではなく、環境条件のもとで結果として生じるものである。また、環境が変化すれば有利な性質も変わるため、進化の方向も一定ではない。自然選択は、変異と遺伝によって生じた多様性の中から、特定の性質を選び出す仕組みであり、進化を進める主要な要因である。
④ 進化はそれ単独で理解されるものではなく、これまで学んできた内容と密接に結びついている。遺伝子は生物の性質を決定する情報であり、その変化が進化の基盤となる。また、発生の過程では遺伝子発現によって個体の形や機能が形成されるが、その結果として現れる性質が自然選択の対象となる。さらに、代謝や呼吸、光合成といったエネルギーの仕組みは、生物が生存し繁殖するための条件を規定し、どのような性質が有利になるかに影響を与える。このように、遺伝子・細胞・発生・エネルギーといった各要素が相互に関連しながら、長い時間の中で進化が進行する。したがって生命とは、「情報とエネルギーのシステムが時間の中で変化し続ける存在」として統合的に理解されるべきである。進化はそれ単独で理解されるものではなく、これまで学んできた内容と密接に結びついている。遺伝子は生物の性質を決定する情報であり、その変化が進化の基盤となる。また、発生の過程では遺伝子発現によって個体の形や機能が形成されるが、その結果として現れる性質が自然選択の対象となる。さらに、代謝や呼吸、光合成といったエネルギーの仕組みは、生物が生存し繁殖するための条件を規定し、どのような性質が有利になるかに影響を与える。このように、遺伝子・細胞・発生・エネルギーといった各要素が相互に関連しながら、長い時間の中で進化が進行する。したがって生命とは、「情報とエネルギーのシステムが時間の中で変化し続ける存在」として統合的に理解されるべきである。
キーワード ① 進化 ② 変異 ③ 自然選択
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、ヨリソル上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】第4回では、進化を「時間の中での生命の変化」として理解した。まず重要なのは、進化は個体ではなく集団における遺伝子の変化であるという点である。個体は進化せず、世代を通じて遺伝子の構成が変化することで進化が生じる。また、その出発点として変異が存在し、その一部が遺伝することを押さえる必要がある。さらに、自然選択によって環境に適した性質が広がるという仕組みが進化の方向を決定する。ここで重要なのは、進化が目的をもって進むのではなく、環境との関係の中で結果として生じる現象であるという理解である。加えて、第1回から第3回までの内容との統合も不可欠である。すなわち、遺伝子が生み出す個体の性質(発生・遺伝子発現)が、環境の中で選択されることで進化が進む。この「情報→個体→選択→変化」という連鎖を明確に理解することが復習の核心である。

【予習】ここまでの講義では、生命を主に「個体」や「細胞」のレベルで理解してきた。次回以降は、視点を時間的にも空間的にもさらに広げて、複数の個体が集まった「個体群」、異なる種が共存する「群集」、さらにそれらと環境を含めた「生態系」へと理解を拡張する。進化で学んだ自然選択も、実際には個体同士の競争や協力、環境との相互作用の中で生じる。すなわち、進化の舞台は個体ではなく、個体群や生態系であると言える。このように、生命を「個体」ではなく「関係の中で存在するもの」として捉え、個体群・群集・生態系という階層構造を意識することが重要である。

13 【植生の多様性と遷移】[担当:甲斐貴光] 科目の中での位置付け  フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究をおこなう学科である。陸域・水域・農業の3つの分野について詳しく学ぶとともに、統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成している。また、柔軟な考え方や実践的な提案力を養うため、学科共通の授業や複数の分野にかかわる授業も設けている。これにより、幅広い視野をもち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。  本科目では、各教員が自らの専門分野を紹介しつつ、それぞれ異なる視点からフィールド自然学について解説する。授業の前半8回では、学生は毎週異なる教員の講義ののち、小テストを受け、数名ずつの少人数グループ(班)に分かれて各教員と面談する。各回の講義では、教員の専門分野の歴史から最新の研究動向について紹介し、それらがカリキュラム全体や卒業研究とどのように関係しているかが解説される。授業の後半7回では、生物学の知識の基盤を確実にするため、生物の個体から始まり集団、群集、生態系へといたる自然の階層について説明をする。これら一連の講義を通して、山・川・海から身近な農地まで多様な環境についての知見を広げ、さらに生態学・農学・進化学といった幅広い研究分野がどのように連携しているのかを理解することを目指す。本科目を履修することで、履修科目を選択する上で参考になるとともに、二年次のフィールド領域仮分属や三年次のフィールド領域本分属、そして四年次の研究室配属を学生が決める上でも役立つことが期待される。
 第13回は、後半の基礎生態学パートの中核にあたり、「生態系」と「植生構造」という自然理解の根幹概念を扱う回である。生産者・消費者・分解者の相互作用や食物網の構造を整理し、さらに森林の階層構造や土壌形成との関連を学ぶことで、自然を「つながりの体系」として捉える視点を確立する。本コマは、山・川・農地など多様なフィールドを科学的に読み解くための基礎を固め、今後の専門分野選択や卒業研究へとつながる理論的土台を形成する重要な位置づけにある。

◆コマ主題細目①
・第13回テキスト「植生の多様性と遷移」 第1節「生態系」
◆コマ主題細目②
・第13回テキスト「植生の多様性と遷移」 第2節「植生と生態系」
◆コマ主題細目③
・第13回テキスト「植生の多様性と遷移」 第3節「植生の遷移」
コマ主題細目 ① 生態系 ② 植生と生態系 ③ 植生の遷移
細目レベル ① この細目の理解は、生態系を構成する要素とその相互作用を、自分の言葉で説明できるまで。ここでは、「生態系とは何か」を高校基礎レベルから大学初年次レベルへ一段深めることを目標とする。まず、生態系を「生物的環境(動植物・微生物など)と非生物的環境(光・水・土壌・温度など)が相互に作用しあうまとまり」と定義し、環境要因と環境形成作用の具体例(森林が日陰をつくり気温や湿度を変えるなど)を扱う。次に、生産者・消費者・分解者の役割を整理し、食物連鎖と食物網、生態ピラミッド、栄養段階の関係を図解で理解させる。方法としては、①模式図の作成、②身近な公園や農地を例にした関係図づくり、③人間がどの栄養段階に位置するかの討議を行う。単なる用語暗記ではなく、「つながり」として説明できる段階まで掘り下げる。
② この細目の理解は、植生の種類と構造の違いが、生態系の多様性や土壌形成とどのように結びつくかを説明できるまで。ここでは、日本の国土の約67%が森林である事実を踏まえ、雑木林・社寺林・河川敷・人工林(公園など)といった具体的な植生の違いを比較する。次に、森林の階層構造(高木層・亜高木層・低木層・草本層)と林冠・林床の明るさの違いを図で示し、木漏れ日が生む環境差を理解する。さらに、土壌の形成に分解者(ダンゴムシ、ダニ、ミミズ、菌類)が関わること、森林土壌が「天然のダム」として水を蓄える働きをもつことを扱う。方法は、①階層構造の断面図作成、②身近な林や公園の観察記録、③土壌サンプルの比較観察を通じ、植生が多様な環境を生み出す仕組みを具体的に考察する。
③ この細目の理解は、植物の遷移を時間的変化の過程として説明し、一次遷移と二次遷移の違いを具体例を挙げて説明できる段階までとする。ここでは、裸地に地衣類やコケ植物が侵入する初期段階から、草本群落、低木林、やがて極相林へと移り変わる過程を整理し、土壌形成や光環境の変化が植物群落の構成種を変化させる仕組みを理解する。また、遷移の進行に伴い陽生植物から陰生植物へと優占種が変化すること、攪乱後に成立する二次遷移の特徴を説明できるようにする。さらに、遷移は一定方向に進むが攪乱によって再び初期段階に戻ることもあるという動的平衡の視点を身につけ、自然環境を時間軸で捉える力を養う。
キーワード ① 生態系 ② 食物連鎖(食物網) ③ 森林の階層構造 ④ 分解者と土壌形成 ⑤ 植生の遷移(一次遷移・二次遷移)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、ヨリソル上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 ◆今回授業の復習
 今回の授業では、①生態系の構成要素、②植生の構造と役割、③植生の遷移の仕組みを、自分の言葉で関連づけて整理することです。まず、「生物的環境」と「非生物的環境」の具体例をそれぞれ3つずつ挙げ、生産者・消費者・分解者の関係を図にまとめてください。次に、森林の階層構造(高木層・低木層・草本層など)と光環境の違いを説明し、なぜ森林で多様な生物が暮らすことができるのかを文章で整理してください。さらに、一次遷移と二次遷移の違いを、土壌や種子の有無に注目して比較してください。あわせて、極相やギャップの意味も確認してください。最後に、「植生はなぜ変化し続けるのか」という問いについて、400字程度でまとめてみましょう。

◆次回授業の予習
 次回の授業では、「気候の違いが植生や生物の分布にどのような影響を与えるのか」を地球規模で考えます。そのために、以下の点を押さえて予習してください。まず、緯度・気温・降水量の関係を確認してください。赤道付近と高緯度地域では、なぜ気温や降水量が異なるのかを簡単に整理し、地図帳で世界の気候区分を確認してください。次に、主なバイオーム(熱帯雨林・サバンナ・砂漠・温帯林・針葉樹林・ツンドラなど)の名称と分布地域を調べ、それぞれの気候の特徴(年間気温・降水量の傾向)と代表的な植物をまとめてください。最後に、「なぜ気候が変わると植生も変わるのか」という問いについて、これまで学んだ光・水・土壌との関係を踏まえて、200〜300字で自分の考えを書いてみてください。

14 【バイオームとその分布】[担当:甲斐貴光] 科目の中での位置付け  フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究をおこなう学科である。陸域・水域・農業の3つの分野について詳しく学ぶとともに、統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成している。また、柔軟な考え方や実践的な提案力を養うため、学科共通の授業や複数の分野にかかわる授業も設けている。これにより、幅広い視野をもち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。  本科目では、各教員が自らの専門分野を紹介しつつ、それぞれ異なる視点からフィールド自然学について解説する。授業の前半8回では、学生は毎週異なる教員の講義ののち、小テストを受け、数名ずつの少人数グループ(班)に分かれて各教員と面談する。各回の講義では、教員の専門分野の歴史から最新の研究動向について紹介し、それらがカリキュラム全体や卒業研究とどのように関係しているかが解説される。授業の後半7回では、生物学の知識の基盤を確実にするため、生物の個体から始まり集団、群集、生態系へといたる自然の階層について説明をする。これら一連の講義を通して、山・川・海から身近な農地まで多様な環境についての知見を広げ、さらに生態学・農学・進化学といった幅広い研究分野がどのように連携しているのかを理解することを目指す。本科目を履修することで、履修科目を選択する上で参考になるとともに、二年次のフィールド領域仮分属や三年次のフィールド領域本分属、そして四年次の研究室配属を学生が決める上でも役立つことが期待される。
 第14回は、生態系の理解をさらに広げ、地球規模での自然の成り立ちを考える回である。気温や降水量といった気候要因が植生分布を規定し、バイオームという大きなまとまりを形成することを学ぶことで、地域差の背後にある原理を理解する。また、日本における水平分布と垂直分布を整理することで、身近な自然と地球規模の気候帯とのつながりを具体的に把握する。本コマは、個体・群集・生態系と学んできた内容を地理的スケールへと拡張し、フィールドを科学的に読み解く力を養う総合的な位置づけにある。

◆コマ主題細目①
・第14回テキスト「バイオームとその分布」 第1節「地球上の植生分布」
◆コマ主題細目②
・第14回テキスト「バイオームとその分布」 第2節「世界のバイオーム」
◆コマ主題細目③
・第14回テキスト「バイオームとその分布」 第3節「日本のバイオーム」
コマ主題細目 ① 地球上の植生分布 ② 世界のバイオーム ③ 日本のバイオーム
細目レベル ① この細目の理解は、気候(特に気温と降水量)の違いが植生分布を規定し、その結果としてバイオームが成立することを説明できるまで。ここでは、緯度や日射量の違いが気温差を生み、さらに降水量の違いと組み合わさって地域ごとの気候が形成される仕組みを整理する。気候が植物の生育条件を左右し、動物の分布にも影響を与えることを具体例で確認する。次に、バイオームを「相観」と「優占種」によって特徴づけられる生物群系として定義し、森林・草原・荒原の違いを比較する。針葉樹林は年降水量300mm以上で成立するなど、成立条件にも触れる。方法としては、①世界地図と雨温図の読解、②気温‐降水量グラフと植生対応表の作成、③代表地域の事例整理を通して理解を深める。
② この細目の理解は、各気候帯に対応する代表的なバイオームの名称・成立条件・相観の違いを整理し、相互に比較できるまで。ここでは、森林型バイオームとして熱帯多雨林、亜熱帯多雨林、雨緑樹林、照葉樹林、夏緑樹林、針葉樹林を取り上げ、気温・降水量・落葉の有無・葉の形態の違いを軸に比較する。次に、草原(サバンナ・ステップ)と荒原(砂漠・ツンドラ)を扱い、乾燥や低温という制約条件が植生をどのように規定するかを整理する。方法は、①雨温図と分布図の対応づけ、②各バイオームの特徴を表にまとめる比較学習、③代表地域の写真読解を通して相観と優占種を確認することで、気候と植生の関係を体系的に理解する。
③ この細目の理解は、日本におけるバイオームの水平分布と垂直分布の関係を、気温指標と結びつけて説明できるまで。ここでは、日本が降水量に恵まれた地域であり、多くの地域で極相が森林となることを前提に、南から北へと照葉樹林・夏緑樹林・針葉樹林へ移り変わる水平分布を整理する。さらに、暖かさの指数とバイオームの関係を扱い、南西諸島のマングローブ成立条件にも触れる。加えて、低地帯(丘陵帯)から山地帯、亜高山帯、高山帯へと変化する垂直分布と森林限界の意味を確認する。方法は、①日本地図への分布記入、②山地断面図の作成、③雑木林や山地草原の成立要因の考察を通じ、水平分布と垂直分布の対応関係を体系的に理解する。
キーワード ① 気温と降水量(気候要因) ② バイオーム(生物群系) ③ 相観と優占種 ④ 水平分布と垂直分布 ⑤ 暖かさの指数とマングローブ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 ◆今回授業の復習
 今回の授業では、①気候と植生の関係、②世界のバイオームの特徴、③日本におけるバイオームの分布を関連づけて整理することです。まず、気温と降水量が植生分布をどのように決めているのかを、図や文章でまとめてください。次に、熱帯多雨林・草原(サバンナ、ステップ)・砂漠・ツンドラなどの特徴を比較し、それぞれの成立条件を整理してください。さらに、日本のバイオームについて、照葉樹林・夏緑樹林・針葉樹林の水平分布と、低地帯から高山帯への垂直分布の違いを説明してください。暖かさの指数やマングローブの成立条件にも触れてください。最後に、「なぜ日本では多くの地域で森林が極相となるのか」を300~400字でまとめてみましょう。

◆次回授業の予習
 次回の授業は、生態系におけるエネルギーの流れとバランス、生物多様性の保全について学びます。予習として、まず「太陽のエネルギーがどのように生態系へ取り込まれ、生産者・消費者・分解者へと移動するのか」を確認し、食物連鎖と関連づけて整理してください。次に、「生態系のバランス」とは何かを自分なりに定義し、人間活動(森林伐採、農業、都市化など)がどのような影響を与えているのかを具体例で調べてください。地球温暖化の仕組みや、温室効果ガスとの関係についても基本的な内容を確認してください。さらに、レッドリストやレッドデータブックの意味、身近な外来生物の例を調べ、「私たちにできる保全行動」について200~300字で考えをまとめておきましょう。

15 【生態系とその保全】[担当:甲斐貴光] 科目の中での位置付け  フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究をおこなう学科である。陸域・水域・農業の3つの分野について詳しく学ぶとともに、統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成している。また、柔軟な考え方や実践的な提案力を養うため、学科共通の授業や複数の分野にかかわる授業も設けている。これにより、幅広い視野をもち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。  本科目では、各教員が自らの専門分野を紹介しつつ、それぞれ異なる視点からフィールド自然学について解説する。授業の前半8回では、学生は毎週異なる教員の講義ののち、小テストを受け、数名ずつの少人数グループ(班)に分かれて各教員と面談する。各回の講義では、教員の専門分野の歴史から最新の研究動向について紹介し、それらがカリキュラム全体や卒業研究とどのように関係しているかが解説される。授業の後半7回では、生物学の知識の基盤を確実にするため、生物の個体から始まり集団、群集、生態系へといたる自然の階層について説明をする。これら一連の講義を通して、山・川・海から身近な農地まで多様な環境についての知見を広げ、さらに生態学・農学・進化学といった幅広い研究分野がどのように連携しているのかを理解することを目指す。本科目を履修することで、履修科目を選択する上で参考になるとともに、二年次のフィールド領域仮分属や三年次のフィールド領域本分属、そして四年次の研究室配属を学生が決める上でも役立つことが期待される。
 第15回は、本科目の総括的内容に位置づけられ、生態系におけるエネルギー流動と物質循環の違い、生態系の復元力、人間活動の影響、生物多様性の価値と保全の意義を統合的に扱う回である。これまで学んできた個体・群集・生態系・バイオームの理解を踏まえ、自然の仕組みを「流れ」と「つながり」の観点から再整理する。また、温暖化や外来種問題など現代的課題と結びつけることで、科学的知識を社会課題の理解へと接続する。本コマは、専門選択や将来の研究テーマを考える上での思想的・理論的基盤を形成する重要な位置づけにある。

◆コマ主題細目①
・第15回テキスト「生態系とその保全」 第1節「生態系でのエネルギーの流れ」
◆コマ主題細目②
・第15回テキスト「生態系とその保全」 第2節「生態系のバランス」
◆コマ主題細目③
・第15回テキスト「生態系とその保全」 第3節「生物多様性の保全」
コマ主題細目 ① 生態系でのエネルギーの流れ ② 生態系のバランス ③ 生物多様性の保全
細目レベル ① この細目の理解は、エネルギーは生態系内を循環せず、一方向に流れることを図を用いて説明できるまで。ここでは、太陽の光エネルギーが生産者の光合成によって有機物中の化学エネルギーとして固定され、その後、食物連鎖を通じて一次・二次・三次消費者へと移動する過程を整理する。また、各栄養段階で呼吸などによりエネルギーの多くが熱として失われ、最終的に生態系外へ放出されることを確認する。物質は循環するがエネルギーは循環しないという対比も明確にする。方法は、①エネルギー流動図の作成、②栄養段階ごとのエネルギー減少を示す模式図の読解、③物質循環との比較整理を通して、エネルギー保存と散逸の仕組みを理解する。
② この細目の理解は、生態系がもつ復元力の意味と、人間活動がそのバランスに与える影響を具体例で説明できるまで。ここでは、生態系のバランスを「生物間の相互作用と物質・エネルギーの流れが一定の範囲で保たれている状態」と整理し、攪乱後も元に戻ろうとする復元力の概念を扱う。次に、森林伐採、都市化、化石燃料の大量消費が温室効果ガスを増加させ、地球温暖化を引き起こす仕組みを確認する。さらに、川を流れる有機物や栄養塩類が下流域や海域に影響を及ぼすことにも触れる。一方で、里山のように人間の適度な管理が多様性を維持してきた事例も整理する。方法は、①因果関係図の作成、②温暖化の模式図読解、③里山事例の比較検討を通して理解を深める。
③ この細目の理解は、生物多様性の価値とその喪失の問題点を整理し、保全の必要性を具体的に説明できるまで。ここでは、生物多様性を「種の多様性・遺伝的多様性・生態系の多様性」の三つの側面から整理し、それが生態系の安定や人間生活(食料・医薬品・文化)を支えていることを確認する。次に、絶滅が進む背景として、生息地の破壊、乱獲、外来生物の侵入などを扱い、外来種が在来種を圧迫する仕組みを具体例で示す。レッドリストやレッドデータブックの役割も確認する。さらに、絶滅種の復元の困難さに触れ、保全の重要性を考察する。方法は、①事例調査、②地域の外来種の確認、③自分にできる行動の整理を通して理解を深める。
キーワード ① エネルギーの一方向的流れ ② 復元力(レジリエンス) ③ 地球温暖化と温室効果ガス ④ 里山と人間活動 ⑤ 生物多様性とレッドリスト
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 ◆今回授業の復習
 今回の授業では、①生態系におけるエネルギーの流れ、②生態系のバランスと人間活動の影響、③生物多様性の保全の意義を関連づけて整理することです。まず、太陽エネルギーが生産者から消費者へどのように移動し、最終的に熱として放出されるのかを図でまとめてください。次に、生態系の復元力とは何かを説明し、地球温暖化や栄養塩類の流出などがバランスに与える影響を具体例で整理してください。さらに、里山の事例をもとに、人間活動が生態系の維持に果たしてきた役割を考えてください。最後に、レッドリストの意義と、生物多様性を守るために自分にできる行動を300~400字でまとめてください。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
三中
講義を通じて得た進化学に関する国際と国内の研究体系を理解する。また最新の研究動向を押さえ、卒論との関連を理解し説明できる。 生態学、農学、水産学、統計学、フィールドワーク、生物多様性 - 1
久松 【初級】
コウチュウ目の形態的な特徴や身近にいるコウチュウ目の仲間について例を挙げて説明できる。また、世界および日本のコウチュウ目について、おおよその種数を挙げることができ、多様性に富む生物群であることを理解している。
【中級】
講義中に紹介した、コウチュウ目の分類・系統学的研究について、世界および日本の研究史の概要を理解している。
【上級】
昆虫の中でもコウチュウ目に関する、国際と国内の研究体系を理解し、卒論との関連性を説明できる。
昆虫、コウチュウ目、分類学、系統学、研究史、ケシキスイ - 2
松原 【初級】
昆虫類を題材にして、どのような研究が進められているのかについて理解している。
【中級】
講義中に紹介した、昆虫類の行動に注目した研究例の概要を理解している。
【上級】
昆虫の行動生態学に関する国際と国内の研究体系を理解し、卒論との関連を説明できる。
昆虫、行動生態学、防衛行動、害虫防除、天敵 - 3
中島 【初級】
放線菌の基本的な特徴や生活環(胞子形成、菌糸の発達、二次代謝産物の生産)について理解している。
【中級】
講義で紹介した放線菌の利用分野(医療・農業・工業・環境)や、抗生物質などの二次代謝産物の役割について具体例とともに理解している。
【上級】
放線菌の生活環と二次代謝産物の関係を踏まえ、植物内生放線菌を含む応用微生物学的な研究の意義を理解し、社会応用や自身の研究(卒業研究)との関連を説明できる。
放線菌、応用微生物、実践的研究、生物活性 - 4
甲斐 【初級】
「慣行農業」「有機農業」「有機JAS認証」「みどりの食料システム戦略」といった基本用語の意味を正確に説明できることを目標とする。「基礎を学んだ」とは、単に用語を知っているだけでなく、慣行農業が化学合成農薬や化学肥料を用いる農業であり、有機農業がそれらに依存しない農業であることを区別して説明できる段階を指す。また、有機JAS認証が国の制度であり、一定期間の無農薬・無化学肥料条件を満たす必要があることを理解していることも含まれる。すなわち、各概念の定義と基本的特徴を誤りなく再現できるレベルまで。

【中級】
慣行農業と有機農業の違いを単なる定義ではなく、「なぜその方法が採用されているのか」という背景とともに説明できることを目標とする。「基礎を応用できている」とは、慣行農業が食料増産や安定供給に貢献してきた一方で、環境負荷という課題を抱えること、有機農業が環境保全に寄与するが収量や労力に課題があることを、具体的に対比できる段階を指す。また、有機JAS認証の条件やみどりの食料システム戦略の数値目標を踏まえ、制度と現場の関係を説明できることも求められる。

【上級】
本水準では、農業を「生産技術」だけでなく、「環境・制度・社会を含む総合的なシステム」として捉え、自分の言葉で評価・考察できることを目標とする。「基礎を深く理解した」とは、慣行農業と有機農業のいずれかを単純に良い・悪いと判断するのではなく、食料安全保障、環境保全、経済性といった複数の視点からその役割を整理し、みどりの食料システム戦略の意義と課題を論理的に説明できる段階を指す。さらに、「これからの農業のあり方」について、自らの立場を根拠をもって示せるレベルまで到達していることが求められる。
慣行農業(化学合成農薬・化学肥料)、有機農業、有機JAS認証、みどりの食料システム戦略、堆肥 - 5
吉田 【初級】
講義を通じて得た海洋哺乳類に関する研究体系を理解する。
【中級】
海洋哺乳類の研究動向を押さえ、紹介される研究が海洋生物学や生態学内のどこに位置づけられるのかを理解する。
【上級】
海洋哺乳類学が学科内科目のどの科目と関連しているのか、また卒論との関連を理解し説明できる。
海洋哺乳類学、海、鳴音行動、行動生態、イルカ、海洋生物学、ヒトと動物の関係 - 6
三瓶
【初級】
海洋低次生態系や物質循環の基礎知識を獲得する。
【中級】
それらの研究に関する科学的・社会的意義について理解する。
【上級】
海洋低次生態系や物質循環について、卒論との関連を理解し説明できる。
プランクトン、炭素循環、環境変動、食物網構造、生物ポンプ - 7
後藤 【初級】
多自然川づくりの基本概念や、従来の治水中心の河川改修との違いを理解し、環境保全の重要性を説明できる。ホタル保全の歴史について、開発や水質悪化により減少した背景と、法整備や地域活動による回復の流れを把握する。また、環境DNAの基本的な仕組みと従来調査との違いを理解し、生物調査における利点(非侵襲性・効率性)を説明できる。

【中級】
多自然川づくりにおける治水と生態系保全の両立の考え方を、国内外の具体事例(欧米・日本)を挙げて説明できる。ホタル保全については、山口県の事例を基に、行政と住民の協働や河川構造の工夫が生息環境に与える効果を理解する。さらに環境DNAの分析手法(リアルタイムPCRとメタバーコーディング)の違いを説明し、外来種管理への応用例を理解できる。

【上級】
多自然川づくりの理念を踏まえ、治水機能と生物多様性保全を統合的に評価・提案できる。ホタル保全では、遺伝的多様性の維持や放流の影響、科学的評価(PHABSIM・GIS解析等)を含めた持続的管理の重要性を論じることができる。さらに環境DNAについて、検出結果の解釈や限界、分布予測(MaxEnt等)との統合的活用を踏まえ、生態系管理への応用を批判的に考察できる。
多自然川づくり、ホタルの保全、遺伝的多様性、環境DNA、希少種、外来種の管理、分析手法の課題点 ここまでで48 8
生物学基礎I(三中) 【初級】
細胞や遺伝子、代謝、発生、進化といった基礎用語について、自分の言葉で説明できることが求められる。また、細胞が生命の基本単位であること、遺伝子が生命の設計図として機能すること、呼吸と光合成がそれぞれ異なる役割を担うこと、発生が細胞分裂と分化によって進むこと、そして進化が世代を通じた変化であることを理解している必要がある。この段階では、知識を個別の事項として把握できているかどうかが評価の中心となる。
【中級】
遺伝子と細胞の関係を設計図と実行装置の関係として説明できることや、代謝・呼吸・光合成の関係をエネルギーの流れとして捉えられることが求められる。また、遺伝子発現が細胞分化をもたらす仕組みや、変異・遺伝・自然選択が連続した過程として進化を生み出すことを説明できる必要がある。さらに、発生が環境の影響を受けることを理解し、講義内容を図や模式図として整理できる能力も評価対象となる。この段階では、知識が相互に関連づけられた構造として理解されているかが問われる。
【上級】
生命を遺伝子に代表される情報の側面と、代謝に代表されるエネルギーの側面の両方から捉え、それらがどのように結びついているかを説明できることが求められる。また、遺伝子から発生を経て個体の性質が形成され、それが自然選択を通じて進化に至るという一連の流れを統合的に理解している必要がある。さらに、呼吸や光合成を含むエネルギーの仕組みを生態系の中での循環として捉えたり、個体レベルの現象と集団レベルの現象(進化)を区別して説明したりできることも重要である。加えて、環境変化が発生や進化に与える影響を具体例とともに論じることができれば、より高い評価に値する。この段階では、知識が一つの体系として統合され、現実の現象に応用できるかどうかが判断基準となる。
細胞、遺伝子、DNA、タンパク質、代謝、異化、同化、呼吸、光合成、ATP、ミトコンドリア、葉緑体、発生、細胞分裂、減数分裂、遺伝子発現、分化、変異、自然選択、進化 - 9, 10, 11, 12
生物学基礎II(甲斐) 【初級】
この水準では、「生態系」「植生」「生産者・消費者・分解者」「遷移」といった基本概念を正確に説明できることを目標とする。ここでいう「基礎を学んだ」とは、用語を暗記するだけでなく、生態系が生物的環境と非生物的環境の相互作用によって成り立つこと、植生が地域の気候や土壌と関わる生物のまとまりであること、遷移が植生の時間的変化であることを、自分の言葉で言い換えられる段階を指す。また、生産者・消費者・分解者の役割を区別し、一次遷移と二次遷移の違いを例を挙げて説明できることも含む。

【中級】
この水準では、森林の階層構造や土壌形成といった具体的内容を、生態系の仕組みと結びつけて説明できることを目標とする。「理解が進んだ」とは、高木層・低木層・草本層などの階層構造が光環境や生物のすみかの違いを生み、多様な生物を支えていることを説明できる段階を指す。また、分解者が落ち葉や有機物を分解し、土壌形成に関わること、森林土壌が保水機能をもつことを、植生との関連で説明できることも求められる。さらに、遷移の進行にともない優占種や環境条件が変わることを整理し、図で表現できることも含む。

【上級】
この水準では、植生を固定した景観としてではなく、時間と空間の中で変化し続ける動的な存在として捉え、その変化の要因を説明できることを目標とする。「深く学んだ」とは、植生の遷移が土壌の発達、光環境の変化、攪乱の有無などによって規定されることを、具体例を挙げて論理的に説明できる段階を指す。また、森林・草地・裸地などの違いを、単なる見た目ではなく、生態系機能や生物多様性との関係から比較できることも求められる。さらに、自然環境を保全・管理するうえで、遷移を理解することの意義を考察できるところまでを含む。
生態系、植生、生産者・消費者・分解者、一次遷移、二次遷移、森林の階層構造、林冠・林床、分解者、土壌形成、優占種、極相、攪乱、動的平衡、遷移系列、植生管理、生物多様性、環境形成作用 ここまでで52点 13, 14, 15
評価方法 試験(100%)により評価する。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書
参考文献
実験・実習・教材費 実験・実習・教材費 なし