区分 水域フィールド科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
自然と生物の専門知識 フィールド生物調査 環境データ解析
自然共生社会
カリキュラム・ポリシーとの関係
教養 分析思考 実践技能
フィールド間連携
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
 フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究をおこなう学科である。陸域・水域・農業の3つの分野について詳しく学ぶとともに、統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成している。また、柔軟な考え方や実践的な提案力を養うため、学科共通の授業や複数の分野にかかわる授業も設けている。これにより、幅広い視野をもち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。
 本科目では、人と自然の関係にかんする専門知識を修得するために、人類およびヒトの進化過程や、ヒトの本来の生業活動である狩猟採集について解説する。また、先史時代から現在までのヒトによる自然利用の変遷をたどることで、自然環境を保全する意義について考えるための土台をつくる。また、本科目は二年次以降に開講される関連科目〈環境共生型社会のデザイン〉〈屋久島演習(保全生態学演習)〉〈陸の動物学演習〉などに向けた、人と自然の関係にかんする基礎知識を修得するものとして位置づけられる。

科目の目的
地球環境問題への対応やその解決においては、科学的知見を得ると共に、問題への柔軟な解釈と策を見出す能力が求められる。我々人の生活は、自然生態系からサービスを享受することで発展してきた。しかし人類の歴史上、生態系サービスを過剰に搾取し、自然環境の自浄作用を過信し、その結果多くの環境問題を引き起こしてきた。現代そして未来を生きる人が自然とどう向き合い、解決していくべきか、多岐にわたる環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、科学的判断ツールとしてリスクの概念を理解し、多角的な思考法を身に付けることが本講義の目的である。
到達目標
講義中に事例を上げて問題解決への課題を紹介する。
《基礎》環境問題とその社会的考え方を学ぶ
《応用》自然共生と社会経済の両立の困難さを学ぶ
《発展》環境に対する現在の未来に対する責任を学ぶ
それぞれの社会的問題について、1.自らの問題として考え、2.問題を解決するための思考力を養うため、授業内で出される詳細問題に対し自らの解決策を提示することができる。エネルギー選択、環境リスクに関する指標、生態系との相互作用、世代間を超えた責務について具体例を挙げて説明することができる。

科目の概要
本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第1回から4回は基本の環境問題とキーワードを扱うため難易度は易、第5回から8回は基本を踏まえた上での社会問題に目を向けていくため難易度は中程度、第13回から15回では人の社会問題とともに複雑な自然環境の回復に向けた内容になるため難度は高くなっていくため、各タームで振り返りの時間を設ける。
科目のキーワード
① 環境問題(汚染、破壊、保護) ―― 全回
② 自然共生(環境負荷、二項対立、トレードオフ関係) ―― 1回〜3回
③ 環境リスク(リスクコミュニケーション、社会的ジレンマ、予防原則) ―― 2回〜3回、15回
④ 多角的視点(技術連関、文化財保護、プラグマティズム) ―― 3回〜7回
⑤ 社会活動(バーチャルウォーター、狩猟、乱獲) ―― 8回〜10回
⑥ 複雑さ(経済乱獲、技術依存、善悪、社会的不平等) ―― 11回〜15回
米国を発端とする自然保護活動(1、3、5、6)から、現代に至る(2、4、6〜15)考え方の変化を捉える

授業の展開方法
毎回の授業では、Wordで作成したオリジナルテキスト(PDF版)を配布し、その内容に沿って授業を進めていきます。テキストは、コマシラバスの「コマ主題細目」に対応した章立てとなっており、各コマは「解説」「練習問題」「まとめ」の三つの要素で構成されています。
授業の最初の10分間では、当該回で取り扱う内容の全体像を概観し、そのコマで学習すべき重要事項や学習のポイントを明示します。続く60分間では、コマ主題細目に沿って、細目レベルに関する解説を行い、その内容を踏まえた練習問題を解くことで理解度を確認します。その後、各コマ主題細目に要点を整理し、まとめを行います。これを授業回ごとに繰り返すことで、知識を段階的に積み重ね、系統的な理解へと導きます。
授業の終盤10分間には、その回の内容全体を振り返り、学んだことを整理します。最後に小テストを実施し、理解度を客観的に確認したうえで、解答と解説を行います。
授業終了後には、次回までに復習を行うことが求められます。配布オリジナルテキストの解説や練習問題を見直すだけでなく、ChatGPTを活用して、自ら20問程度の練習問題を作成・解答することで理解を深めます。さらに、その解答と解説を確認することで、より確実に知識を定着させることができます。
 基本的には、教員がパワーポイントの資料を投影しながら解説する。それらの回における配布資料は、パワーポイントを一部空欄などにした資料を用いる。教員の解説を聞きながら、スライド投影されたパワーポイントと同様の資料に書き込みすることで、学生は当該箇所を確認しながら授業に参加できる。第4、8、12、15回ではそれまでの講義内で扱った個別事象間の関係性を考察することから、一部学生同士のグループディスカッション(一グループ5-6名)を行う。

オフィス・アワー
吉田弥生:【前期】
自然共生社会
基礎ゼミナールⅠ
海の大型動物生態学
全科目:月曜~金曜の5限
【後期】
動物行動観察演習A・B
基礎ゼミナールⅡ
環境共生型社会のデザイン
動物行動学
全科目:月曜~金曜の5限
甲斐貴光:【前期】
農業基礎演習Ⅰ
農業地理学
基礎ゼミナールⅠ
土壌生態学
インターンシップⅠ
全科目:月曜昼~4限
【後期】
農業基礎演習Ⅱ
基礎ゼミナールⅡ
全科目:月曜1・2限
三中信宏:【前期】
万物は進化する月5限
基礎ゼミナールⅠ月5限
環境データ解析の基礎月5限
【後期】
環境データの可視化技法火曜5限
基礎ゼミナールⅡ月曜5限
基礎ゼミナールⅣ月曜5限
環境研究デザイン論火曜5限

科目コード TE1020
学年・期 1年・前期
科目名 自然共生社会
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目
展開科目
関連資格
担当教員名 吉田弥生・甲斐貴光・三中信宏
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 【ガイダンス(概論 講義の進め方)】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第1回の講義では、本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観する。

難易度:★やさしい

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料
(2) 環境省 30by30 30by30とはHP
(3) 自然共生サイト登録への道 レジュメP.9-11

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料」
環境省 30by30 30by30とはHP

主題細目③ 
教材3自然共生サイト登録への道
【参考】
(1)環境と倫理(2005)、有斐閣アルマ 第一章
(2)環境倫理学(2009)、東京大学出版会 序章

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 環境問題を倫理学で解決できるか
主題細目② 
参考1,2 沈黙の春からSDGsまで
コマ主題細目 ① 講義のテーマと概要 ② 自然共生サイトとは ③ 講義で扱う環境問題
細目レベル ① まず、講義を担当する教員の自己紹介から始める。これは、大学の講義はその分野の専門家によるものであるが、その素性や実績が示されなければ、今後の講義を展開する上で、何を担保として信頼していいのかが学生には伝わらないためである。次に、講義のテーマと講義の進め方について確認し、環境問題の捉え方や自然共生の考え方を学ぶ過程を概観する。また環境という広い言葉において、言葉を使用する場合や、個人のような身近な領域において使用する場合において、その考え方や使い方を混同してしまうことも多い。よって、講義のテーマと講義の進め方について確認し、環境問題の捉え方や自然共生の考え方、自然とは何を指すのかを学ぶ過程を概観する。
② 本講義で扱う自然共生と私たち人間との関係を考える上で、必要なことは自然とは何かを理解した上で、人の社会との関係を過去現在の事例から学ぶ必要がある。現在、環境省により「自然共生サイト」と呼ばれる民間の取り組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域がある。つまり、国が認定した自然との共生を目指した区域であり、これらはOECM(Other Effective area-based Conservation Measures)として国際データベースにも登録される。姉妹キャンパスである岡崎キャンパスもまた、この自然共生サイトに登録された。自然共生サイトには文化的・歴史的な価値を有する地域、企業敷地内の緑地、屋敷林、ゴルフ場やスキー場など、人の生活と共にある区域もまた対象とされている。この自然共生サイトを認定する意図や目指す取り組みを概説する。
③ 現在私たちが直面する環境問題は、過去の様々な人間活動の影響により引き起こされているものである。過去の行いを知り、今ある環境問題の原因を探り、今そして未来に何を解決せねばならないかを考えなければならない。例えば、公害と呼ばれた環境汚染は、自然環境への過大な負荷とその許容量を見誤ったために引き起こされた。有名な水俣病は海洋への水銀の大量廃棄により、生態系システムの中で高濃度に生物へと蓄積され、その生物を口にした人の健康を害した事件である。原因を取り除くために、廃棄を差し止め、海洋環境の回復と水銀の回収が必要となっている。今生きる人間が、今後同じ過ちを起こさないためには、環境問題の過去と現在の関係を学ぶ必要があるだろう。本講義で取り上げる過去の事例を一部紹介し、次週以降における事例の考え方、自然との共生を目指した過去事例の重要さを理解する。
キーワード ① 環境問題(汚染、負荷) ② 自然共生(環境省、OECM) ③ 環境負荷(水俣病、廃棄)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:講義担当者は吉田弥生である。海棲哺乳類に関する研究に従事し、捕鯨にまつわる様々な人の考え方、立場による意見の違いを目の当たりにしてきた。食に関する問題や命に関する問題にも直面し、人と動物や自然との関係についてを講義し、学生とともに意見を交わしていく。また、海洋開発におけるアセスメント調査にも携わってきた経験から、環境を評価する手法についても触れていく。これらの情報をもとに、講義担当者に対する興味と本講義に対する興味を心に留める。

【次コマの予習】
予習:「自然」「環境」「保全」という言葉を、辞書を用いて調べ、ノートにまとめる。また、自然共生サイトのホームページを閲覧し、登録されている地域をノートにまとめる。参考文献1、2の該当箇所を読み込むこと

2 【人間と自然】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第2回の講義では、自然を守るとは何か、自然の中での人とは何かについて理解する。

難易度:★やさしい

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料①
(2) コマ用オリジナル資料②
(3) コマ用オリジナル資料③
(4) コマ用オリジナル資料④


【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①
主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」
主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」
主題細目④ 
教材4「コマ用オリジナル資料④」
【参考】
(1)西尾実ら編(2011)岩波国語辞典第七版新版,岩波書店.「自然」と「環境」と言う言葉を検索.
(2)環境と倫理 第1,2章
(3)環境倫理学 第1章
【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 岩波国語辞典第七版新版
主題細目② 
参考1,2 環境問題を倫理学で解決できるか,人間中心主義と非人間中心主義の対立
主題細目③
参考1,2 環境問題を倫理学で解決できるか,人間中心主義と非人間中心主義の対立
主題細目④ 
参考3 功利主義と環境問題
コマ主題細目 ① 自然と環境 ② 予防原則 ③ リスクコミュニケーション ④ 人間中心主義と自然環境主義
細目レベル ① 自然と環境という言葉は何が違うのか。自然とは何を指す言葉か、環境とは何を指す言葉か、その言葉の意味を知らないと今後の授業の中で理解が進まない。自然とは「おのずからそう決まっている様、そのままで、人為のくわわらない様、あるがままの様」のことを指す。一方で、環境という言葉は、「四囲の外界、周囲の事物、特に人間または生物を取り巻き、それと作用を及ぼし合う物として見た外界」のことを指す。つまり、自然という言葉は、人が含まれていない言葉であり、環境という言葉は人間も含めた自然を指す。また、環境という言葉は、自然的環境と社会的環境の二つの意味が含まれており、まずはこの違いを理解する。
② この授業では、あえて人を含めた自然環境という言葉を使う。自然環境を守るために、重要視されることは何か。それは原因となる行為を予防することであり、予防原則という言葉もある。自然環境を良くするためには、環境を改善するということが必要であるが、予防ができていれば、そもそも改善する必要はないからである。つまり、予防原則とは、未然に防止すること、そして最悪の結果を避ける用心である。例えば、咳が出る、体がだるいなどのとき、アルバイトのシフトが入っているなど予定があったらどうするか。以前ならば軽症であれば出かけるだろう。しかし、covid19が流行しその後どうなったかを考えてみる。感染経路がはっきりするまでに時間がかかる。その間放置していると、さらに感染が広がり、オーバーシュートを引き起こす可能性が高いことから、隔離が行われた。つまり、世の中が停止してしまう前に予防することが必要であった。数年前のパンデミックについて考えることで、予防原則の大切さが理解できる。
③ 人の生活や活動には様々なリスクが含まれる。だからこそ活動をする上で、基本原則として「相対的に低いリスクを選択する」がとても大切である。もし何もしないを選択した場合、そのリスクは何も解決されず、悪化していくのみになるからだ。リスクをゼロにすることはできず、何事も何かをすれば、どこかに影響が出る。その影響は立場が違えば、良いことばかりではない。そのリスクをどのように評価するか、何をもって低いリスクを選べば良いのか。自然環境へのリスクを数値化した環境リスクという考え方がある。これは比較しにくい事柄の考える方向を示すものであり、リスクを比べ、比較し、より良い選択をするために提唱されている。こういった数値化をすることで、わかりやすくリスクを評価することをリスクコミュニケーションと呼ぶ。
④ 人と自然の関係を考えるとき、様々な主義主張があることを理解する。多くの主張の中で中心となるものは、人間中心主義的思考と自然環境主義的思考である。この二つは人間対自然という一対一の対立構図(2項対立図式)を生み出す。しかし、どちらかを追求すると、片方が必ず犠牲になることは多く、この関係性を「トレードオフ関係」と呼び、また人間社会の中のひずみや問題を「社会的ジレンマ」と呼ぶ。しかし、実際には2対立図式では問題の解決に至らない。なぜなら自然環境主義の中にも、様々な主義主張があるからである。自然環境を守るためには、これ以上悪化させないためには、何を考えなければいけないかということについて、私達は、自然の価値を議論する中で、人間中心主義的な考え方、自然環境主義的な考え方、これらの多様な主義主張を理解する必要があることをおさえる。
キーワード ① 環境(自然、人間) ② 環境リスク(相対的、数値化) ③ トレードオフ関係(二項対立図式、犠牲)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:本講義では人を含めた自然を自然環境と定義した。次回以降の講義において、この考え方は理解できているものとして進行していく。そのため、考え方の理解を深めることを目的として、各自で考えうる様々な自然を書き出し、人がどのように関わり、環境を作り出しているのかノートにまとめる。
【次コマの予習】
予習:「自分が育ってきた自然環境の美しさを、子どもや孫に残したい」この文章を人間中心主義で捉えた場合の重要視される点はどこかを書き出す。また、自然環境主義で捉えた場合の重要視される点はどこか書き出す。参考文献1、2、3の該当箇所を読み込むこと

3 【人為と自然】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第3回の講義では、都市に存在する自然を本来の自然と呼ぶべきか、そもそも自然とは何を示すのかを理解する。

難易度:★やさしい

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料①
(2) コマ用オリジナル資料②
(3) コマ用オリジナル資料③
(4) コマ用オリジナル資料④
【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」

主題細目④ 
教材4「コマ用オリジナル資料④」

【参考】
(1)環境と倫理 第3章
(2)環境倫理学 第5章

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 持続可能性とは何か
主題細目② 
参考1 持続可能性とは何か
主題細目③
参考2 自然の権利
主題細目④ 
参考2 自然の権利
コマ主題細目 ① 技術連関とは ② 対人責任と対物責任 ③ 都市の自然環境 ④ 自然と技術連関
細目レベル ① 人と自然の関係性を維持する。つまり、ちょうど良い調和とはどのような形があるのか。原生の自然(手付かずの自然)と、科学技術が作り出した都市の中の自然環境(植木や噴水)、今の人間にとって馴染みの深い環境とはどちらか考える。私達は、原生自然の中で、今の生活はできない。一般的に後者の科学技術が作り出した都市の中の自然と共に違和感なく暮らすことが、私たちの当たり前になっている。こうした科学技術が作り出した都市の中の環境のことを「技術連関」と呼ぶ。連関とは、「物質的、あるいは精神的な様々な領域において、個々の部分や要素が一定の緊密な関係結合関係にもたらされたところに成立する全体」を示す哲学用語。つまり、技術連関とは科学技術が作り出した環境を意味する用語であり、人間らしく生きるために必要なものと考えられている。
② 技術連関の中では、主に二つの責任概念がある。一つが対人への責任、一つが対物つまり文化財や芸術作品に対する責任である。人は文化財や芸術品を守り、保存するがなぜそんなことをするのか。ここでは、対物責任について考える。今道(1990)は次のように述べる:「古いものとの共存は、現在の生活を豊かにするものである。古いものと新しいものの混在は歴史とともに、多様性の中で豊かに生きることと同義である。つまりそれこそが人間らしい品位を持って生きること」と述べている。また、私達が目指す自然保護と文化財保護の起源は同じであることを理解することで、都市の中の自然の理解も深まる。そもそも自然環境保護の概念は北米で生まれたが、北米は歴史的な記念物を持たない。彼らがアイデンティティを求めた先が自然であり、自然国立公園を創出することで、自身の文化を創出しようとした。それが自然保護の概念の始まりである。つまり、自分たちのアイデンティティを創出する自然環境の保護と文化財の保護の起源は同じであることを理解する。
③ 回は、都市にある自然を考えているが、都市とは「人々が住むために作られた場所」である。「昔からある都市を守ること」と「自然を守ること」これは無関係と言えるか?どちらも同じ起源を持つ概念であるならば、別のものではなく"自然環境"として都市の自然を捉えることができる。都市の自然環境を考える際に2つの着目点を紹介する。①都市は環境持続性の維持に貢献できる。都市自体は自然が失われた地域だが、例えば、大都市の新宿や横浜は住居集中により、エネルギーの節約、効率化が可能である。つまりエコロジカルな場所と言える。一方で、例えば田園が広がる地方農村ではエネルギーが個々に消費され、効率化が困難な場所であると言える。つまり、都市の生活と農村の生活では、エネルギーの利用の仕方に差が出る。エネルギーの節約は現代の喫緊の課題であり、直接地球環境に影響を及ぼす原因であるとすれば、都市と地方農村はどちらが自然にとって良い環境であろうかを考えることが出来るだろう。
④ もう一つの着目点は、②都市内の自然環境維持は保全に対する動機づけとなる、点である。都市に自然は存在するのかと考えると、例えば公園に植えられている植木や花壇、また神社やお寺の森、これらを見て何を感じるか。たとえそれが人工的に植えられたとしても、私達はそれを一種の「自然」と感じる。つまり都市の中にある自然を守ることは、自然への意識を芽生えさせる一つの役割があると捉えられている。近年、都市の中に市民農園や屋上を緑化するなどの取り組みがあるのはなぜか。町中にあるお寺の雑木林、公園内の小川、庭にある池、これらに自然を感じることはないか。人は人工的な空間に、昔から人為的に自然を作り、めでてきた(寺の庭園なども同じく)。これらを多くの人は見世物とは捉えず、自然と捉える。つまり、都市の自然を守ることは、人と自然の関係性を守ることと同義とされる。紹介する事例を深く考え、いかに"自然"の文脈を人工物の技術連関と調和させるかが大切であるかを理解する。
キーワード ① 技術連関(科学技術、都市) ② 現生自然(文化財保護、自然保護) ③ 都市の自然(市民農園、環境持続性)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:本講義では都市の中にある、身近な自然環境の保全について考えた。都市の中には、普段気が付かないところに自然がある。では、松山市内を歩いた際に人が作り出した人工的な自然環境にはどのようのものがあるか、各自で目にしたものをノートにまとめる。
【次コマの予習】
予習:「生い茂る森林を宅地開発のために切り開き、造成した」その地域には、その後どのようなことが起こると予想するか?例えば、キャンパス裏の護国神社の境内の山を切り壊し、山の高台に山手住宅地作るとする。これをした場合に、その後その場所はどうなると考えるか、ノートに書き出す。参考文献1、2の該当箇所を読み込むこと。

4 【自然と共生する社会の目指すところ1】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第4回の講義では、自然と共生する社会の目指すものは文化や社会構成により異なり、捉え方にも多様性が存在する。日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。

難易度:★やさしい

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料①
(2) コマ用オリジナル資料②
(3) コマ用オリジナル資料③
(4) コマ用オリジナル資料④
【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」

主題細目④ 
教材4「コマ用オリジナル資料④」

【参考】
(1)環境と倫理、有斐閣アルマ 第1,2章
(2)環境倫理学、東京大学出版会 第1,5章

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 環境問題を倫理学で解決できるか、人間中心主義と人間非中心主義との不毛な対立
主題細目② 
参考1 環境問題を倫理学で解決できるか、人間中心主義と人間非中心主義との不毛な対立
主題細目③
参考2 功利主義と環境問題、自然の権利
主題細目④ 
参考2 功利主義と環境問題、自然の権利
コマ主題細目 ① 自然保護の2つの視点 ② 保存思想 ③ 保全思想 ④ 生態学的自然の捉え方
細目レベル ① 自然を守るとは何を守ることを指すのか。前回の予習で「生い茂る森林を宅地開発のために切り拓き、造成した際、この後、その地域にはどのようなことが起こると予想されますか」と問題を出した。これについて二つの視点を紹介する。①住民の家や便利な道路ができ、便利な生活ができる。住民も増え、地域に人が増える。つまり、開発が大切で人を中心とした人間中心主義の視点。②昔から生えていた木々や植物を取り払うため、そこに住んでいた動植物が追い払われる。つまり自然環境主義の視点。自身がどちらの視点に近い考えを持つのか、確認する。次に、「木材を得るため、生い茂る森林を伐採する。今後も木材は必要であるから、必要な材木を植林した」この例題を考える。自然保護の視点で考えた際、やはり人間中心主義的な考え方と自然環境主義的な考え方ができる。自然保護という行為自体に二つの視点が混ざっていることを理解する必要がある。
② 保護における2つの視点は、人間のためになる保全と、自然自体に価値があるから人間のためではない保存、である。つまり、保全とは、人間のために自然を守ることであり、保存とは自然のために自然を守るということである。この違いを理解する。
保存における自然の価値とは何か?保存思想の中での自然の価値とは、「それ(自然の存在)自体、他に代えがたい価値、内在的価値を持つものだ」と考えられている。しかし、その概念自体が意図的である。例えば、熱帯雨林の中に入りヘイタイアリに囲まれる、木からヒルが降ってきて私達の血を吸う、そんな経験を全ての人が好んで守るだろうか?結局、美的な価値判断というもの、つまり、生まれ育った気候、社会に生まれ育った文化やメディアの影響を大きく受けて、盲目的に"素晴らしいもの"と捉えていないだろうか。つまり、保存思想における自然の価値自体が、人間の価値観から生まれる価値である。

③ 一方、保全思想の中の自然の価値とは何か。そもそも自然から得る人間の利益とは何かを考える。今で言う、生態系サービスと同義になるが、草木から服を作り、木材から家を建て、漁をしてお腹を満たし、癒しの感覚を得る、衣食住を自然から恵んでもらうことこそが、保全思想の自然の価値になる。利益そのものが"自然"に枠づけられた価値である、と捉えることができる。つまり保存思想と保全思想、この二つは自然のためか、人間のためかの違いであるが、保存か保全かという対立はそれぞれの自然の価値の原点を考えると無意味になることを理解する。では、自然保護とは何を守ることなのかを今一度考える。前回の講義で都市にある自然はなぜ必要かを述べた。都市に自然があることで、我々は人として価値のある生活をできるということがわかった。また、自然共生サイトに登録される場所は、原生林だけではなく、敷地内の緑地や屋敷の林、ゴルフ場やスキー場など、人の生活とともにある区域もまた対象としている。つまり、日本における自然共生とは、人為的に作り出された自然も含めた自然環境も指す。とするならば、自然を守るとは何を守ることか。それは前回の授業でも触れた、「人間と自然の関係性を守ること」こそが"自然を守る"の意味することであると理解する。
④ 自然環境の破壊といった現象について、近年一般化してきた生態学的な視点を紹介する。自然は人間からの介入があると、完全にその姿を失っていくのか。と言えば、実はそうではない、と言う考え方である。例えば、林道は木を切り開き、道を作った際、その後何が起こるか。姿は変わり、元の形ではないかもしれないが、光が当たり、道の周りに新しい花が咲き、新しい生き物がそこに生活できるようになる。自然は人の力がなくても、人に介入されても、その姿を変えて新しい姿を作っていく力がある。そもそも、先住民たちははるか昔より、森から採取をしながら生活をしてきた。我々が今言う原生林とは、近代的な生活をしている私達が未踏なだけであって、はるか昔から人類やその祖先たちが利用してきた場所である。つまり、自然というものは人間からの介入に対して敏感に反応し、新しい姿を自ら創造していくことができることを示している。つまり、自然と人の関係性というものを今一度考えた上で、自然保護、自然環境保護を考えていく必要があることを確認する。
キーワード ① 保護(自然環境主義、人間環境主義) ② 保存思想(自然の価値、人間の価値観) ③ 保全思想(保護、守る)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:本回では保護の中に保存と保全、2つの考え方があることを示した。保全における自然の価値の中で、自然から享受する癒しの感覚とは何か、なぜ癒しが必要なのか、各自で自身が自然から受ける癒しの正体をノートにまとめる。
【次コマの予習】
予習:次回は食と自然について講義する。1週間、自身が食べるものの中に家畜肉がどの程度量含まれているのか、それらが自然にとって負荷をかけているのかを考え、ノートに書き出す。参考文献1、2の該当箇所を読み込むこと。

5 【食と自然】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第5回の講義では、家畜問題を取り上げ、食を通した環境問題が存在することを理解する。

難易度:★★普通

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料①
(2) コマ用オリジナル資料②
(3) コマ用オリジナル資料③
(4) コマ用オリジナル資料④
【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」

主題細目④ 
教材4「コマ用オリジナル資料④」
【参考】
(1)環境と倫理、有斐閣アルマ 第10章
(2)環境倫理学、東京大学出版会 第12章
【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 消費者の自由と責任
主題細目② 
参考1 消費者の自由と責任
主題細目③
参考2 食の倫理学
主題細目④ 
参考2 食の倫理学
コマ主題細目 ① 環境問題と食料問題 ② 穀物消費問題 ③ 牧草地による環境破壊 ④ 動物飼育上の問題 ⑤ 肉食の是非
細目レベル ① 環境問題の一つに食糧問題が挙げられる。まず食糧問題の中でも、その環境負荷が明確に示されてきた牛肉消費の問題を取り上げる。某牛丼屋、某ハンバーガー店は便利で安価で早いが売りであるが、その経済的な手軽さはどこから来るのか。低価格で我々が利用することができるのは、経済効率最優先の大量生産システムが支えている。牛肉が生産される際、牛たちは生後1年から2年、広々とした牧草地で育つ。しかしその後に区画割りされた堆肥場であるフィードロッドにて密集飼育され、配合飼料による飼育が行われる。過密飼育の中では、牛たちは身動きを取ることもできない。配合飼料といえど私達の生活の中でよく口にする穀物ばかり(麦、小麦、大豆など)であるが、牛たちは出荷数ヶ月前には、大量の配合飼料を与えられる。これは効率よく太らせ、早く大きくするためである。このような配合飼料は消化器疾患を発症させ、牛たちに病気をもたらす。つまり、私達が手軽に肉を安価で消費する中で、低価格を追求すればするほど大量生産が加速することになる。こういった背景の中にある我々の食は、正しい食のあり方なのかを考える。
② 牛肉1キロに対して7から10キロの穀物を必要とする。では、牛丼一杯200gの牛肉を作るために、穀物はおよそ2キロになります。牛丼一杯200gの牛肉のために、必要な穀物の米2キロとは、私達の何食分になるのかを考えると、その日の食事もままならない人々が世界には大勢いる中で、一杯の牛丼で何人の人が1日のご食事を取ることができるか。現在地球上の飢餓人口は、10億人以上という現実がある。この現実をどのように捉えるか、各自で考えをまとめる。また、世界の穀物生産のうち4割が家畜の飼料であるが、世界の穀物の生産量は現在頭打ち、急成長する途上国における消費量増加が問題となっている。家畜の大量生産がさらに増加することで、穀物の家畜飼料も当然増加する。人の肉食において低価格を追求するほどに、穀物消費量は増加し、穀物価格は高騰していく、悪循環に陥りつつある。牛肉消費の裏で最も危惧されているのが、この穀物消費量の点であることに留意する。つまり肉食の問題は、飼育方法の問題だけでなく、私達の食を支えるもの全体に影響を及ぼしかねないことを理解する。
③ 牧草地は地球の表面の面積3割といわれ、飼料栽培の農地は農地全体の7割とされている。農地が拡大していく中で、1)大規模な森林伐採が行われ、野生生物の生息地の減少や有刺鉄線による動物の混獲などが行っている 2)牧草地化をした後、表土の露出(貧栄養価)が起こり、フンによる動植物の減少も起こっている。3) 牛のげっぷによる温暖化メタンガスの温暖化効果は二酸化炭素の21倍といわれており、家畜が元のメタンガスは全体の37%と言われている。4) ある食材を最終的に生産するまでに使用した理論上の水量(バーチャルウォーター)は、牛肉1キロに対し1600tとされており、牛丼一杯に換算すると600L、つまりお風呂9杯分にあたる。これだけの環境負荷をかけてまで私達は肉を食べ続けていいのか考える必要がある。
④ 食にまつわる環境問題から、環境配慮型菜食主義が生まれたと言われる。その後、動物たちの苛烈な飼育状況を知り、動物倫理型菜食主義という思想が生まれる(ピーターシンガー,1974)。動物倫理方菜食主義とは、菜食主義の中でも畜産状況の問題に重きを置いた主義主張である。この主義が生まれた発端は、工場式畜産の現場で、無慈悲に扱われる動物への哀れみから生まれた考え方です。工場式畜産とは、経済効率を最優先にした大量生産システムのことを指すことは、先にも触れた。例えば養鶏には2種類おり、肉用鶏(ブロイラー)と産卵系(レイヤー)である。ブロイラーは生後六、七週間で肉の柔らかいうちに出荷される(平均寿命10から20年)。レイヤーは卵が産めなくなる生後2年で殺処分される(平均寿命5-10年)。過密飼育においても大きな問題があり、ベビーキングと呼ばれる生後1から2週間のひよこを熱した金属のハサミでくちばしを切ってしまう行為や、早い成長を促すための強制換羽も行われる。早く大きくするために、このようなことが行われていることを我々は問題と捉えなければならないことを理解する。
⑤ 家畜たちの過酷な飼育状況について、さまざまな議論がなされている。シンガーの「平等の概念」や「利益の概念」である。また、シンガーは動物解放(1974)において、これらの思考は西洋の伝統的な支配的な伝統に立つ倫理の拡張としており、倫理感が育った文化や歴史の文脈からは切り離せないと議論している。では我々日本人としての倫理観や歴史的文脈を顧みた時、何を思考するべきか。現在の私達が肉食を否定することはできるのかを考えると、例えば屠畜をなりわいにしてきた人々の仕事はどのように捉えるのか、動物の倫理と人に対する倫理というものを、同様に扱ってよいのか。様々な問題があることを理解する。
キーワード ① 大量生産システム(家畜、穀物消費量) ② 食肉(バーチャルウォーター、環境負荷) ③ 環境配慮型菜食主義(動物解放、平等の概念)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:本回では食料問題を取り上げ、環境問題として捉えるべきその背景を紹介した。また世界における食料問題の捉え方やその主義思考の一部も紹介した。では、日本国内において動物倫理方菜食主義の思考は根付くのか、各自で意見をノートにまとめる。
【次コマの予習】
予習:次回は外来生物と在来生物について講義する。松山市HPを閲覧し、松山市内の特定外来生物をノートに書き出す。参考文献1、2の該当箇所を読み込むこと。

6 【外来生物と在来生物】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第6回の講義では外来生物問題を取り上げ、生物多様性と生物の命に関する捉え方を理解する。

難易度:★★普通

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料①
(2) コマ用オリジナル資料②
(3) コマ用オリジナル資料③
(4) コマ用オリジナル資料④
【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」

主題細目④ 
教材4「コマ用オリジナル資料④」
【参考】
(1)環境と倫理 第8章
(2)環境倫理学 第6章

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 自然保護
主題細目② 
参考1 自然保護
主題細目③
参考2 生物多様性
主題細目④ 
参考2 生物多様性
主題細目⑤
参考1,2 自然保,生物多様性
コマ主題細目 ① 外来種とは ② 外来種の影響 ③ 海外の事情1 ④ 海外の事情2 ⑤ 日本の事情
細目レベル ① 環境問題の一つに、外来種の問題がある。近年、外来種はどの地域でも確認されており、ヒアリやセアカゴケグモなどが有名となった。今回は外来種と地域社会との関係を見ていく。まず外来種とは「人為的要因により、自然分布域外で生息する生物のことを全て」とされています。外来種は1992年の生物多様性条約「人類に様々な便益を与える野生生物の多様性の包括的な保全と持続的利用を図る」の中、第8条に「締結国は、可能かつ適切な範囲において、生態系、生息地、もしくは生物相を脅かす外来種を導入阻止制御あるいは根絶すべき」と記載されている。つまり、外来種は生態系多様性を損なう主要因の一つと捉えられている。生態系、生息地、もしくは生物種を脅かす外来種を『侵略的外来種』と呼ぶ。生物多様性条約の中では、「国内法を整備し、国家戦略や計画の作成と実行」が求められている。環境省のホームページには、日本の外来種対策が一覧で見ることができるため、特定外来種のリストを確認する。
② なぜ外来種は根絶すべきなのか。なぜ外来種が生物多様性を損なわせるのか。自然に移入する生物は良く、人為的に移入することが駄目なのはなぜだろうか。外来種が生物種として加わることで、生物多様性は増すのではないか。生物は生物同士、様々な相互作用を通じて関係し合っている。長い年月により適応的形質の種が残るといった特徴もある。しかし外来種はこの相互作用と無関係に持ち込まれ、既存にはない種類の相互作用をもたらす。これらは高頻度に起こり、予測が不可能である。また、長い年月により適応的形質が地域固有種として残るが、適応が間に合わない在来種は減少し、最終的に絶滅してしまう。これらの相互作用の結果、生態系が破壊され、既存の生態系を維持することが難しくなる。
③ 海外の外来種根絶のモデル、まずはイギリスのヌートリア根絶事業について紹介する。ヌートリアの原産地は南米の沼や沢、分類は半水生の齧歯類、草食性である。ヌートリアは良質な毛皮が取れ、飼育が容易なこともあり、世界中で輸入され、養殖された生物である。しかし、養殖場から逃げ出し野生化、分布が国内に拡大した。イギリスでは1950年代に、ヌートリアによる菜食被害、農地の破壊、また水辺の利用により洪水などが激増した。イギリスではヌートリアの根絶に向けて、研究調査、根絶計画を立て、根絶を成功させた。約11年、5億円をかけて根絶したが、もし継続して制御をしていた場合、数億から数十億の被害が出ていたと考えられている。一方で、イギリス国内では、ミンクの根絶事業も同時にされていたが、広範囲に分布することや俊敏に動き捕まえにくいことから、捕獲コストが経済効果よりも大きくなるため、イギリス政府は根絶を断念した。
④ もう一つ、ニュージーランドの在来種、キウイ救出作戦を紹介する。キウイは、原産地がニュージーランドの森林で、飛べない鳥として知られている。昆虫を食し、夜行性の動物である。一方、ポッサムはオーストラリアの森林に生息する有袋類で雑食性、ペットとしてニュージーランドに輸入された。ニュージーランド国内でポッサムが野生化し、植物、昆虫、キウイの卵やひなを食べてしまう被害が激増たため、ポッサムの根絶とともに、キウイ救出作戦を決行した。保護したキウイをサンクチュアリの中で飼育、国民への定期的な保護キャンペーンなど市民参加型にする、ポッサムに効く毒を広範囲に散布することで、ポッサムの根絶に成功した。しかし、キウイ以外の在来種ごと一掃することになったことは忘れてはならない。ニュージーランドのキウイ救出作戦の裏には、「在来生物層を復元し、維持することは、人の使命であり、ペットや家畜の外来種を排除することは人の責任である」との価値観がある。つまり、ニュージーランドにおける毒によるポッサムの根絶、これは社会的な善として、捉えられている。
⑤ 日本国内の例としてタイワンザルとニホンザルを紹介する。タンワンザルはニホンザルの近縁種で、原産地は台湾、雑食性、日本国内では特定外来生物として指定されてきた(2018年根絶)。一方、ニホンザルは日本在来種、雑食性、日本全土に分布している。台湾ザルは日本国内に動物園観光地施設で輸入され、そこから脱走野生化したものが外来種となった。森山の中ではニホンザルと交雑して、雑種が生まれているとも報告されている。タイワンザルを根絶する活動が和歌山県で行われたが、市民から根絶のための安楽死に反対する意見が出され、再検討される事態となった。ニホンザルを守りたい保全派とタイワンザルの命を守る愛護派、これらは野生環境から外来種を除去する必要性と命までを奪う必要はないという違う問題を抱えて対立している。外来種問題の中では、様々な価値観によって何を第1優先にすべきかが決まりづらいこと、生態系上、生命上、政策上のそれぞれの主張があることを理解する。
キーワード ① 特定外来生物(侵略的外来種、生物多様性条約)  ② 根絶モデル(ヌートリア、キウィ) ③ 多様な価値観(善悪、愛護)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:本回では外来種問題を取り上げ、環境問題として捉えるべきその背景を紹介した。また世界における外来種動物への対応、その価値観の一部も紹介した。では、日本国内における外来植物はどのような被害を及ぼすのか、各自で意見をノートにまとめる。
【次コマの予習】
予習:次回は野生動物の保護と管理について講義する。保護、保全、管理の違いを辞書で調べノートに書き出す。参考文献1、2の該当箇所を読み込むこと。

7 【野生動物の保護と管理】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第7回の講義では、野生動物の保護区と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さを理解する。

難易度:★★普通

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料①
(2) コマ用オリジナル資料②
(3) コマ用オリジナル資料③
(4) コマ用オリジナル資料④
【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」

主題細目④ 
教材4「コマ用オリジナル資料④」
【参考】
(1)環境と倫理、有斐閣アルマ 第8章
(2)環境倫理学、東京大学出版会 第4章
【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 自然保護
主題細目② 
参考1 自然保護
主題細目③
参考2 土地の倫理
主題細目④ 
参考2 土地の倫理
コマ主題細目 ① 狩猟の歴史 ② スポーツハンティング ③ カメルーンの事例 ④ 生物多様性と野生動物保護
細目レベル ① 今回は、野生動物の持続可能な保護管理について考えていく。私達は生活する上で、狩猟という行為を行ってきた。今でこそ店に行けば、肉が手に入る時代であるが、狩猟採集民であった我々の祖先は狩猟をして、衣食住を賄ってきた。しかし、時代が経るにつれ、衣食住のために狩猟する目的から自己主張欲求不満を満たす娯楽、獲得する産物で力を象徴する権力として、狩猟は変化する。権力者の威厳を示すため、その場所は貴族よって占有化されていった。15世紀頃、西欧諸国がアフリカ探検に出始めると、狩猟はブルジョワ階級の娯楽へと変化していく。時代が経るにつれ、それらが娯楽としてのスポーツハンティングへと変化していく。しかし、20世紀初頭、野生動物の狩猟が過激になり、アフリカ大陸の多くの野生生物が激減、絶滅に追い込まれた。危機感を覚えた植民地支配政府は、狩猟を法的に規制し、保護区を設定し、自然保護に動き出した。動物保護区が設定された背景を確認する。
② しかし、20世紀後半商業的な密猟が大規模化していく。様々な政策を支配国が行っていくが、住民の人権を無視し、住民を敵とみなすような政策に対し、多くの批判が集まった。そこで支配国は、現地の人々を活動の主として捉える住民参加型保全へとシフトしていく。ここから時代は大きく変わり、動物との付き合い方、環境の捉え方も変わっていったとされている。現在スポーツハンティングの目的の観光客は年間2万人近くに上り、アフリカ諸国25カ国では正式にスポーツハンティングが許可され、年間125億円以上の利益がある。スポーツハンティングは経済的に有益であり、インフラ整備が少なくて済む。また、少ない人数で多額の利益を得ることができ、環境負荷も少ないとしている。また、動物ごとに捕獲枠や規制により管理することで持続可能な野生動物管理となる、と主催国は主張している。
カメルーン北部の事例を紹介する。カメルーンはフランスによる植民地化が行われ、フランス政府による野生動物保護区が指定されていた。その後、カメルーン共和国として独立後、ガルア国立公園として制定された。国立公園内では人的活動は禁止され、観光は許可されており、周辺に狩猟区を設置することでスポーツハンティング事業を行っている。

③ 狩猟区は国として重要な財源であるが一方で、地域住民にとっては生活空間として使われてきた土地である。遊牧系牧畜民にとって、区画内で狩猟すること採取することは法令違反となる。区画内は法律上、税を払う観光業者のみが活動を許可されており、元々の地域住民や遊牧系の牧畜民には許可がされていない。合法的に行うには多額の税金を払えば可能となるが、地域の住民には、それらは不可能だろう。つまり地域住民の狩猟は現在、密猟と捉えられ、罰金、あるいは禁固刑となってしまう。アフリカにおける野生動物の狩猟における問題は何か。政府や事業者の持続可能性の概念と、住民による狩猟の概念が異なっているため、ここにもねじれの2項対立図式が出来上がってしまっている点にある。
政府や事業者の経済最優先の利己的な保護の解釈によって地域住民に不利益が生じている問題は解決せねばならない大きな問題である。つまり、野生動物を保護するという活動の中で、実は野生動物自体の数を守るではなく、人々の生活を守るといった視点において問題が複雑化している点を理解しなければならない。

④ 今一度、生物多様性の意味と意義について考えると、生物多様性を保全するとは「自然界の生存/競争/共生など自然な相互関係により、自由に進化、絶滅していくダイナミズムの確保」とされている。生物多様性はなぜ大切なのか、それは人間の生活は他の生物生態系からの恩恵により成り立っているからである。国際ミレニアム生態系評価(2005)において、人類が自然生態系から受けるサービスを四つに分類している。供給、調節、文化的、基盤、四つのサービスである。これらを支える生物の多様性を守らねばならないとされている。生物の多様性は実際に低下しているのか。国際自然保護連合IUCNのレッドリストによると、年々、絶滅危惧種に分類される生物が増加している。このまま生物多様性が低下し続けると、生態系が自己回復できる限界点を超えるとまで言われている。
一方、生物多様性条約の中で間違えてはいけない点として、保全を目的としており、保存ではない点である。保全と保存は異なることを今一度確認する。野生動物の減少は現実に起こっている事象であり、生物の多様性は刻一刻と減少している意味を、身近な問題として捉えることが必要である。
今後、生物多様性の保全において求められることは、生態系に対し、人が手を加え、うまく管理するという点である。うまく管理する方法を考えることが、プラグマティズムと呼ばれるものである。現在、生物多様性保全のプラグマティズムとして、科学的に現状を把握し、将来予測のための広域かつ長期的な観察、データ収集、解析の継続をし、多国間での予防的順応的な取り組みを行うことが提言されている。

キーワード ① スポーツハンティング(娯楽、権力) ② 密猟(動物保護区、狩猟区と地域住民) ③ プラグマティズム(生態系保全、科学)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:本回は野生動物の保護と地域住民との問題を取り上げ、環境問題として捉えるべきその背景を紹介した。また生物多様性が損なわれることで、何が問題なのかを振り返りつつ、野生動物保護の問題を考えた。では、スポーツハンティングを将来に渡り残すべきなのか、各自で意見をノートにまとめる。

【次コマの予習】
予習:次回はこれまでの5/6/7回のテーマを用いて、保全と保存と管理の違いを考えていく。3回分の内容のキーワードを書き出し、その違いについてノートに書き出す。参考文献1、2の該当箇所を読み込むこと。

8 【保全/保護/管理の関係】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第8回の講義では、第5回から第7回までの講義で取り上げた保全保護管理について、その違いと繋がりを理解する。

難易度:★★普通

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料①
(2) コマ用オリジナル資料②
(3) コマ用オリジナル資料③
(4) コマ用オリジナル資料④
【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」

主題細目④ 
教材4「コマ用オリジナル資料④」

【参考】
(1)環境と倫理、有斐閣アルマ 第10,8章
(2)環境倫理学、東京大学出版会 第4,6,12章

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 自然保護、消費者の自由と責任
主題細目② 
参考1 自然保護、消費者の自由と責任
主題細目③
参考1 自然保護
参考2 文明と人間の現存在の意味への問い、消費者の自由と責任
主題細目④ 
参考2 土地の倫理
コマ主題細目 ① 食と環境問題 ② 外来種と地域社会 ③ 野生動物管理 ④ 生物多様性の意義
細目レベル ① 牛肉の大量生産システムは、経済効率を優先する一方で、多大な環境負荷と動物福祉の問題を引き起こしていることを学んだ。牛肉1キロの生産には7~10キロの穀物や1600トンの水が必要で、これに伴う森林伐採、土壌劣化、メタンガス排出などが環境を悪化させていた。さらに、飢餓人口が10億人を超える現実を考えると、大量の穀物を家畜飼料に使用する現状が問題視されていた。一方、家畜の飼育方法にも問題があり、過密飼育や非人道的な処遇が広く行われていた。これに対し、動物福祉を重視する動物倫理型菜食主義が提唱され、工場式畜産のあり方への批判が高まっていく過程を学んだ。ここで出て来ていたピーター・シンガーは「平等の概念」を拡張し、動物の利益を考慮すべきとの主張は忘れてはならない。しかし、日本の文化的・歴史的文脈を踏まえると、肉食を完全に否定するのは簡単ではなく、屠畜に従事する人々の仕事や、動物倫理と人間倫理の関係性についても深く考える必要があった。自然環境保全や保護を考える上で、身近な食の問題が大きく関わっていたことを確認する。
② 外来種問題は、生態系の破壊や生物多様性の損失を引き起こす深刻な環境問題であった。外来種は人為的な移入によって本来の分布域外に生息する生物を指し、その中でも生態系に重大な影響を及ぼす「侵略的外来種」の管理や根絶が国際的に求められている。イギリスのヌートリア根絶事業では、11年間と5億円を費やして根絶に成功したが、ミンクのように経済効果を上回る捕獲コストが問題で根絶を断念した例もあった。一方、ニュージーランドでは、在来種キウイを守るためポッサム根絶が行われ、毒散布や市民参加の保護活動で成果を上げましたが、他の在来種への影響が課題となっていた。日本では、ニホンザルと交雑するタイワンザルの根絶活動が、保全派と愛護派の対立を生むなど価値観の多様性が浮き彫りになっていた。外来種問題には、生態系の保全、動物福祉、政策的要素が絡み合い、何を優先すべきかが難しい問題であることを確認した。地域社会の価値観を反映しながら、持続可能な対策が必要であることを思い出してほしい。
③ 狩猟は衣食住のための行為から娯楽や権力の象徴として変遷してきたが、20世紀初頭には過剰狩猟により野生動物の激減が問題化した。その後、植民地政府や国際的な取り組みにより、自然保護区の設置や住民参加型保全が進められた。しかし、現在も狩猟や保護活動には課題が残る。カメルーンではスポーツハンティングが合法化され、観光収益が重要な財源となる一方、住民は狩猟区での活動が制限され、狩猟は密猟とみなされていた。このように、経済優先の保護政策と住民の生活のねじれが問題であった。真の保護には野生動物だけでなく、地域住民の生活を守る視点が求められていたことを思い出す。
④ 生物多様性保全の目的は、自然のダイナミズムを維持することとされる。自然生態系から受ける供給、調節、文化的、基盤といった生態系サービスが、人間の生活を支えているが、生物多様性の低下が続くと、生態系の自己回復力が限界を超えると懸念されている。自然環境の保全や保存だけでなく、生態系をうまく管理することが求められている。
今後科学的データに基づいた長期的な観察と、多国間での予防的な取り組みが必要であり、生物多様性の保全を身近な問題として捉え、持続可能な管理方法を模索するプラグマティズムが鍵となることを確認する。その際には、保存とは自然をそのまま残すこと、保全とは人との関係を守りながら自然環境として残すこと、管理とは保全を前提として人が積極的に関与すること、これらの言葉の違いや振る舞いの違いを間違えてはいけない。

キーワード ① 平等の概念(動物倫理、人間倫理) ② 自然の価値(自然のダイナミズム、生態系サービス) ③ プラグマティズム(生態系保全、科学) 
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:本回はこれまでの5/6/7回のテーマを用いて、保全と保存と管理の違いを考えた。では、近年注目されている里山の概念において、保全保存管理のいずれにあたるのか。里山の概念を調べ、いずれの思想にあたるかを理由とともにまとめる。
【次コマの予習】
予習:次回は動物倫理の考え方を学ぶ。動物愛護と生命倫理を辞書で調べ、その意味をノートに書き出す。参考文献1、2の該当箇所を読み込むこと。

9 【動物倫理の考え方】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第9回の講義では、生命倫理の一つである動物倫理を扱う。害獣駆除を事例に取り上げ、様々な自然や命の捉え方を理解する。

難易度:★★★難しい

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料①
(2) コマ用オリジナル資料②
(3) コマ用オリジナル資料③
(4) コマ用オリジナル資料④
【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」

主題細目④ 
教材4「コマ用オリジナル資料④」

【参考】
(1)環境と倫理、有斐閣アルマ 第6章
(2)環境倫理学、東京大学出版会 第2章

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 動物解放論
主題細目② 
参考1 動物解放論
主題細目③
参考2 義務論と環境問題
主題細目④ 
参考2 義務論と環境問題
コマ主題細目 ① 動物倫理とは ② 動物倫理と動物福祉 ③ 動物権利運動 ④ 動物倫理上の対立
細目レベル ① 動物倫理という概念は、元は「愛護」という考え方から派生したものだと言われている。旧来の動物愛護運動、これは愛玩動物が対象であった。犬や猫など家の中で一緒に暮らす動物が対象である。これらの動物愛護運動の中で以前にも紹介したピーターシンガーの動物解放論が取り上げられるようになる。彼の論説である「動物の権利」人と動物のあるべき関係が動物権利運動へと発展していく。そして、人と動物のあるべき関係を考えることが動物の動物倫理という概念に繋がったと言われている。環境倫理学の動物を巡る論旨には必要不可欠な人となるため、今一度押さえておく。
第7回で取り扱ったタイワンザルを再び例に出す。このタイワンザル問題はそもそも、外来種問題として取り上げられたが、台湾ザルが日本国内に持ち込まれ、生態系を攪乱そして交雑種による遺伝的撹乱を起こしているといった環境問題の事例であった。タイワンザル問題において、動物の扱いについて二つの立場があった。一つは捕まえた台湾ザルを終生飼育する立場、一つは安楽死させる立場である。それぞれの主張において終生飼育では、外来種対策は必要だが、命までは奪う必要がないと考えるものであった。一方で、移入種駆除は在来種を保全し、生態系を維持することが重要であると考えるものである。それぞれの問題は、外来種の駆除が発端であるにもかかわらず、全く異なる問題点を主張していることを理解する。

② 動物愛護の側を考えると、安楽死は本当に動物福祉(動物虐待を禁じる思考)に反するのか、なぜ反するのかを考えねばならない。そもそも、人間は動物を虐待してよいかといった問いかけに対して、良いと答える人はいないと考えられる。ではなぜいけないのか。このいけない理由を考える。デカルト(仏1600年代)は近代哲学の父と言われており、動物は意識を持たない機械のようなものと述べている。一方、カント(独 1700年代後半)は批判哲学の祖と言われており、人間以外の動物に理性はない、しかし動物虐待は乱暴な行いがクセになり、しいては他の人間に対しても同じになってしまうだろうと述べている。2人の哲学者の主張を紹介したが、動物倫理の代表的な立場としては、彼らも踏まえて、なぜ動物を虐待してはいけないかの問いかけに対し、次の4つの立場に分かれる。1.自分自身の不利益になるから虐待してはいけない 2.他の人間に対して不利益になるからしてはいけない 3. 動物の利益も人間ほどでないにせよ、考慮する必要があるから 4. 動物の利益は人間の利益と同じくらい考慮する必要があるから、この四つの段階にわかれる。1は宗教的な思考、2はカント思想、3.愛護思考、4.動物権利思想と言われている。では、次に4の動物権利思考について理解を深めていく。
③ 細目レベル①でも出てきた動物権利運動とは何かを知らねばならない。これはピーターシンガーらによる動物の解放をきっかけに世界中に広まった。動物の権利を考える運動である。この当時の運動家の思想として、「動物は苦痛を感じる能力に応じて、人間と同様の配慮を受けるべき存在である。種が異なることを根拠に差別を容認するのは種の差別である。動物が唯一持つ権利は平等な思いやりを受ける権利である」と述べられている。動物倫理的な思想の中で最も強烈な思考かもしれない。ここで言う動物の権利とは何か、これは「動物には人間から削除搾取されたり、残虐な扱いを受けることなく、それぞれの動物の本性に行き、従って生きる権利がある。」とされており、この権利のことを動物の権利と呼んでいる。従来の愛護福祉運動家は人間による動物からの搾取を否定している。一方で、動物の権利運動化は人間による動物からの搾取を否定しない。どちらの運動家においても共通概念として、動物になるべく苦しみを与えるべきではないといったことは共通している点に注目する。動物権利運動の背景には動物解放論があると述べたが、特にシンガーの畜産動物に関する対する動物の解放論は大きな契機となった。また、1800年代のベンサムによる最大多数の最大幸福「幸福の総量を最大にする選択を選べ」これもまた、動物権利運動の一端で大きく述べられるようになった。ベンサムの思想はあくまで人に対して述べたものであったが、動物権利運動に応用されていったものであることは間違えてはいけない。
④ もう1人、動物解放運動の中で取り上げられた人物がトムリーガン(米 1980年代)である。彼はその書の中で、生の主体について述べている。「生の主体は内在的価値である。(内在的価値とは有感である・欲求や信念がある・記憶するなど) そして1歳以上の哺乳類なら、こうした能力を持つ」リーガンの主張の中には「他者に危害を加えてはならない」とも述べられており、その後に「他者は人間に限らない」と解釈され、対象が動物へと拡大していった。つまり、動物化権利運動の基礎になったものは、様々な考え方が融合し、基作り上げられていった。最後に、ここで台湾ざる外来種問題について振り返る。台湾ざる問題に見られる動物倫理的意見の齟齬として、終生飼育を望むものは愛護の主義、安楽死を望むものは入手駆除をつまり在来種の保全を望む。それらは、動物権利運動の中から生まれた主義主張に言い換えれば、愛護は生命中心主義つまり個々が大切であり、一方で移入種駆除については生態系中心主義つまり全体が大切と捉えられる。しかし生態系中心主義は、本来生命の価値は否定していない。生態系の価値自体が生命の価値から派生するものであり、生命中心主義となんら変わらない主張になる。そして生命中心主義は、そもそも生態系を守るために外来種を駆除するのであって、その生態系維持は何のためなのか、個の価値と矛盾しない形で説明する必要がある。それぞれの主義を主張するだけでなく、再度自らの主張を振り返り、全く異なる問題となってしまう論点のすり合わせをいかにするのかが、動物をめぐる環境問題の難しさであることに、留意する。
キーワード ① 動物解放論(愛護運動、権利運動) ② 動物福祉(動物の権利、生命) ③ 生命の価値(生態系中心主義、生命中心主義)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:本回は外来種駆除問題から話題を広げ、動物倫理問題を取り上げ、動物福祉的考え方の生まれた背景を紹介した。また背景の中では様々な人々そして運動があり、相反する考え方だけではない思考の微妙な違いを取り上げた。では、動物倫理の観点から以前に取り上げたスポーツハンティングの主張の根幹となる主義は何か?各自で意見をノートにまとめる。
【次コマの予習】
予習:次回は今回の動物倫理上の背景を踏まえた上で、乱獲問題について講義する。近年マグロの乱獲によって、どのような対策が取られたのかを調べノートに書き出す。参考文献1、2の該当箇所を読み込むこと。

10 【動物倫理と乱獲問題】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第10回の講義では、乱獲と資源管理の現状を学び、資源管理における同意形成の重要さを理解する。

難易度:★★普通

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料①
(2) コマ用オリジナル資料②
(3) コマ用オリジナル資料③
(4) コマ用オリジナル資料④
【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」

主題細目④ 
教材4「コマ用オリジナル資料④」

主題細目⑤ 
教材4「コマ用オリジナル資料⑤」

【参考】
(1)環境と倫理、有斐閣アルマ 第11章
(2)乱獲、東海大学 第4章
【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 京都議定書と国際協力
参考2 漁業資源の今とこれから
主題細目② 
参考2 漁業資源の今とこれから
主題細目③
参考2 漁業資源の今とこれから
主題細目④ 
参考2 漁業資源の今とこれから
コマ主題細目 ① 乱獲とは ② 乱獲と捕鯨 ③ 遊漁は是か非か ④ 漁業の環境負荷 ⑤ 漁業の持続的利用に向けて
細目レベル ① 乱獲とは、生態系や経済に悪影響を及ぼす過剰な狩猟や漁獲を指す。ここでは水産資源をめぐる問題を取り扱う。「生産乱獲」は漁獲しすぎて生態系のバランスを崩すこと、「経済乱獲」は漁獲量の変動が経済的な損失を招くことを意味します。漁業とはどのような形をとってしても、生物や生態系に影響を及ぼすものであり、適切な漁獲レベルというものは存在しないと言われている。我々が食料を手に入れるための適切量を持続的に維持するためには、どうしたらよいか。1987年のブルントランド委員会では、持続的開発を「次世代のニーズを損なわずに現在のニーズを満たすこと」と定義した。これは資源を継続的に利用しつつ、生態系を保全することを意味する。乱獲は未来に生きる人々の利益を損ない、経済的混乱や失業を引き起こし、社会全体に問題を広げる。そのため今、漁業資源と生態系の維持が不可欠とされている。
② 捕鯨の歴史は、乱獲の典型例としてよく知られている。(捕鯨については、次の回で詳しく取り扱う)1100年代にバスク地方(スペイン)で行われていた捕鯨は、座礁した鯨を対象とするものから、船を利用して沿岸の鯨を捕獲する形へと発展した。対象となっていた種はセミクジラであり、その動きの緩慢さと沿岸を好む性質から、捕獲しやすく捕獲の対象となっていた。しかし、地域の鯨が枯渇し始めると、捕鯨は北極海まで遠征する形へと拡大する。1600年代には船や加工技術の向上により、長期航海が可能となり、鯨油が燃料として重宝されました。しかし、過剰な捕獲により北極海の鯨もまた激減してしまう。その後1800年代には石油が主な燃料となり、捕鯨の重要性は衰退しました。捕鯨の歴史は、資源の乱獲がもたらす影響を象徴するものであることが理解できる。
③ 捕鯨事例から、乱獲が引き起こす社会的そして生態的問題は計り知れないことがわかった。では、我々が普段行う釣りについてはどうか。釣りは漁業の中では、遊漁(ゲームフィッシング)と言われる。スポーツハンティングと環境問題については、第7回で扱ったが、ゲームフィッシングについて考える。ゲームフィッシングは個人が少量の魚を釣る娯楽であるが、人口が増えるとその総漁獲量が商業漁業を上回る可能性がある。一方、商業漁業者は生計のため大量の魚を漁獲するが、規制により特定の魚種の捕獲が制限されると漁獲できなくなる。北米では、政府が高価値魚種を指定し遊漁者に対する価値をあげた。しかし商業漁業では指定した魚種の捕獲を制限され、漁業が成り立たなくなってしまった。この結果、漁業者と遊漁者の対立が生じている。この対立は資源管理を巡る根本的な問題を反映しており、漁業者にのみ責任を押し付ける現状や、遊漁者が規制の対象外となる矛盾が批判されている。数が少ない魚が価値を高める構造は、乱獲や過剰利用による資源の枯渇を招く要因となり、これに対する包括的な解決策が求められる。つまり、資源管理は漁業者だけでなく、遊漁者も含めた全体的な取り組みが必要ではないか。
④ 遊漁については、もう一つ問題がある。それはキャッチアンドリリース問題である。キャッチアンドリリースは、釣り上げることが目的であり、釣った後に針を外して水に帰す行為である。環境配慮としての利点がある一方で、日本の文化では「食べ物で遊ぶ」ことがタブー視され、動物福祉の観点からも批判されている。水性の生物は人の体温に触れると火傷を負うこともあり、針の一度かかった傷ついた体のまま放流される。このように遊漁は娯楽としての価値が認められる一方で、倫理的・環境的な論争は複雑化している。漁業と畜産業、農業の環境負荷を比較すると、漁業は畜産よりも炭素排出が少なく、農業より生態系への負担が小さいとされるが、根本的にはどの1次産業も自然に影響を与えることは間違いがない。漁業の持続可能性を追求するには、環境影響の軽減と文化的・倫理的視点をバランス良く考慮することが必要であることがわかる。
⑤ 漁業を生態系に基づいて管理することは、乱獲による環境問題と社会問題を解決する鍵となる。しかし、各立場によって捉え方は異なることをここで押さえておきたい。自然保護の視点:生態系維持のため漁獲圧の大幅削減を求める、漁業者:複数の目的の調整を重視する、食料生産者:魚を食べる捕食者の管理を必要とする これらの立場を統合せねばならない。持続可能な資源管理を実現するためには、予防原則が重要視されますが、この原則の実践には矛盾も伴う。絶滅を防ぐために漁獲を控えるべきとされる一方、実際に漁獲しなければ生態系への影響が分からないという現実があるからだ。そこで考案されたのが、国連食糧農業機関(FAO)の「予防的アプローチ」である。これはリスクと利益のバランスを取りつつ、一定の漁獲レベルを維持することを目指したアプローチ法の提言である。この中では乱獲を防ぐ一歩として、科学的根拠に基づいた実行可能な管理策が求められている。
キーワード ① 乱獲(生産乱獲、経済乱獲、捕鯨) ② ゲームフィッシング(キャッチアンドリリース、漁業) ③ 予防的アプローチ(FAO、漁獲レベル)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:本回は乱獲問題と環境問題を取り上げた。経済的な問題や動物福祉的考え方などさまざまな捉え方があることを紹介した。これまでの回の中で出てきたキーワードが出てきており、9回までの授業内容が理解できている前提で、今後進んでいくことは理解できただろう。では、前回予習課題にて調べた乱獲事例には、どのような社会的背景があったか、各自で調べてノートにまとめる。
【次コマの予習】
予習:次回は今回の捕鯨による鯨乱獲の背景を踏まえた上で、日本における捕鯨問題について講義する。1週間の間に、身近なスーパーマーケットに足を運び、鯨肉が売っているのか、何が売られているのかを調査し、まとめる。参考文献1、2の該当箇所を読み込むこと。

11 【乱獲と捕鯨問題の相違】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第11回の講義では、第10回の講義で学んだ乱獲問題と捕鯨問題の関係を学び、日本における捕鯨の危うさを理解する。

難易度:★★普通

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料①
(2) コマ用オリジナル資料②
(3) コマ用オリジナル資料③
(4) コマ用オリジナル資料④
【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①」
主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」
主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」
主題細目④ 
教材4「コマ用オリジナル資料④」
主題細目⑤ 
教材4「コマ用オリジナル資料⑤」

【参考】
(1)環境と倫理、有斐閣アルマ 第11章
(2)乱獲、東海大学 第5章
(3)日本鯨類研究所 資料
【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 京都議定書と国際協力
参考2 捕鯨の歴史と教訓
主題細目② 
参考1 京都議定書と国際協力
参考2 捕鯨の歴史と教訓
主題細目③
参考1 京都議定書と国際協力
参考2 捕鯨の歴史と教訓
主題細目④ 
参考2 捕鯨の歴史と教訓
参考3 鯨類通信
主題細目⑤ 
参考2 捕鯨の歴史と教訓
参考3 鯨類通信
コマ主題細目 ① 捕鯨とは何か ② 捕鯨に関する他国の事例 ③ 捕鯨に関する日本の事情① ④ 捕鯨に関する日本の事情② ⑤ 文化的問題と経済問題
細目レベル ① 捕鯨は、鯨類の保存と持続可能な利用を目指して国際的に管理されている。1946年に設立された国際捕鯨委員会(IWC)は、1951年に条約を締結し、商業捕鯨の制限を進めてきた。1982年には商業捕鯨の一時中止(モラトリアム)が採択され、乱獲による鯨類の減少に歯止めをかけようとした。この措置は鯨類の保護を図る一方で、人類が鯨を持続的に利用する方法を探るものであった。現在、一部地域では先住民生存捕鯨が認められており、デンマーク、アラスカ先住民、ロシアなどの5カ国が対象である。これは食料や文化的資源として鯨を必要とする先住民に限られ、年370頭以下、伝統的手法での捕鯨という厳しい条件が付されている。一方で、IWC非加盟国ではフィリピンやインドネシアなどで少規模な捕鯨が行われており、これに対しては国際的な黙認の状態が続いている。IWCの取り組みは鯨類保護のための重要な枠組みであるが、伝統や食料資源として捕鯨を求める地域との調和を図る課題が残されている。
② ノルウェー、アイスランド、日本など、IWC(国際捕鯨委員会)に加盟する(していた)捕鯨国の事情はそれぞれ異なる背景を持つ。ノルウェーは、かつて世界最大の捕鯨国であり、IWCの設立にも寄与した。1982年の商業捕中止に異議を申し立て、条約から一部免除される形で調査捕鯨を継続、後に商業捕鯨を再開している。ノルウェーは捕鯨資源を持続的に利用するという初期のIWCの意図を重視しているが、加盟国増加と大国の影響で初期の理念からずれてしまったとして、不満を抱いている。
アイスランドは1992年にIWCを一時脱退したが、2002年に再加盟。その際、商業捕鯨再開を明言しているが、IWCはこれを黙認している。日本は、IWCの商業捕鯨中止に従い1987年に南極海調査捕鯨へ移行した。第二次世界大戦後、食糧不足を補うため捕鯨が必要とされ、IWCにも加盟した。しかし1994年以降、南極海サンクチュアリ設置や捕鯨枠の制限強化により批判が高まり、2014年の国際司法裁判所の判決で南極海での調査捕鯨が停止された。2019年、日本はIWCを脱退し、現在は自国水域内での商業捕鯨を行っている。これらの国々の捕鯨の背景には、それぞれの歴史的、文化的、経済的要因があり、捕鯨に対する国際的な議論は複雑な様相を呈している。

③ ノルウェーやアイスランドが捕鯨を続けられた一方で、日本が捕鯨を続けることが難しかった背景には、国際的な視点の違いや捕鯨の運用方法に起因する問題がある。ノルウェーとアイスランドの捕鯨事情//IWCの商業捕鯨モラトリアムに異議申し立てを行い、その間条約の一部から免除されることで捕鯨を継続してきた。これら2国では、捕鯨対象をミンククジラやナガスクジラに限定し、捕獲頭数も自国内の管理で抑えている。日本の捕鯨の事情//日本は戦後の食糧難を背景に捕鯨を拡大し、IWCの商業捕鯨モラトリアム以降は調査捕鯨に移行した。しかし、調査捕鯨で得られた鯨肉を販売して調査費用に充てる運用が、国際司法裁判所では商業捕鯨と見なされた。このため、2014年に南極海での捕鯨停止命令を受けた。これらの背景の中で、問題の中核は、日本の捕鯨は南極海という国際的に複雑な地域で行われていたため、反捕鯨国との交渉が困難を極めた。特に、オーストラリアやニュージーランドの強い反対により、日本の捕鯨船が南極海周辺を航行する際の妨げとなり、捕鯨活動が制限された。
④ 日本が抱えるもう一つの問題が国内経済の問題です。日本は戦後の食糧難を背景に捕鯨を拡大しましたが、鯨肉需要はその後減少し、調査捕鯨では余剰が生じるまでになった。さらに、当時のIWCが商業捕鯨を解禁したとしても、他国の参入による競争で国内市場が圧迫される懸念があった。このため、商業捕鯨再開を加入状態で強く求めることができず、調査捕鯨に頼らざる得ないといった事情がある。結局、日本政府は税金による補助を活用し、捕鯨業者を雇用する形で産業の維持を図った。しかし2014年、国際司法裁判所の判決で調査捕鯨が停止され、日本はIWC内で交渉を続けましたが、2019年に脱退を決断。現在は自国水域で商業捕鯨を再開した経緯がある。今後、鯨肉の需要と経済確保のバランスをいかに取るか、が日本の捕鯨継続の課題となる。
⑤ 一方、捕鯨問題には文化的な側面があるとよく言われるが、日本の捕鯨文化とされるものの多くは、沿岸小型捕鯨が担ってきた。和歌山県太地町などではイルカを対象とした捕鯨が行われており、鯨の肉のみならず骨、ひげが日用品や伝統芸能の材料として活用されてきた。そのような伝統文化の中での活用において文化の保全問題が全面に押され、大型の鯨捕鯨と混同されている。伝統文化が失われる危機感から、捕鯨には賛成の意見も多い。しかし現在の日本における鯨肉消費量は1人当たり年間50g以下と非常に少なく、捕鯨の支持が必ずしも鯨肉需要と結びついているわけではない。日本は反捕鯨国との関係や、鯨肉消費の低下、捕鯨の経済的持続性が課題としてあり、今後、捕鯨が家畜肉に代わるタンパク源としての可能性を示せるかが注目されるが、その行方は不透明である。
キーワード ① 捕鯨(IWC、推進国) ② モラトリアム(南極海、反捕鯨) ③ 経済救済(沿岸小型捕鯨、需要)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:本回は乱獲問題を知った上での、捕鯨の問題を取り上げた。キーワードとなるのはIWCである。IWC脱退直前の会議記録をLMS上に提示している。内容を熟読し各自で要点をノートにまとめる。
【次コマの予習】
予習:次回は、命の倫理観、乱獲や捕鯨の問題を全体として考える回となる。9-11回の内容からキーワードを書き出し、ノートにまとめる。

12 【自然と共生する社会の目指すところ2】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第12回の講義では、第9から 11回までの講義で取り上げた乱獲に対する動物倫理的視点を振り返り、未来に向けた資源管理の重要さを理解する。

難易度:★★普通

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料①
(2) コマ用オリジナル資料②
(3) コマ用オリジナル資料③

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①」

主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」

主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」


【参考】
(1)環境と倫理、有斐閣アルマ 第6章
(2)乱獲、東海大学 第5章
(3)環境倫理学、東京大学出版会 第2章
【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 京都議定書と国際協力
参考3 義務論と環境問題
主題細目② 
参考1 京都議定書と国際協力
参考2 捕鯨の歴史と教訓
主題細目③
参考1 京都議定書と国際協力
参考2 捕鯨の歴史と教訓
コマ主題細目 ① 動物倫理上の意見対立 ② 乱獲問題と持続可能な資源利用 ③ 捕鯨問題の国際的視点と日本の課題
細目レベル ① 動物倫理は、旧来の動物愛護運動から発展したものであった。ピーター・シンガーの動物解放論を契機に、「動物の権利」という概念が生まれた。この思想は、動物が苦痛を感じる能力を基準に、人間と同様の配慮を求め、種差別を否定する立場を取る。また、トム・リーガンの「生の主体」論は、哺乳類を含む動物に内在的価値を認め、動物への危害を否定する倫理観を提唱していた。日本における台湾ザル問題は、動物倫理の対立を象徴する事例であった。終生飼育を求める愛護派は生命中心主義(個々の命を重視)を主張し、一方で安楽死を望む保全派は生態系中心主義(全体の生態系維持を重視)を支持している。しかし、両者の主張は本質的に矛盾しない可能性があり、相対する問題ではないことを議論した。動物倫理における課題は、異なる主張の論点をすり合わせ、包括的な解決策を見つけること。外来種問題を通じて、個々の命と生態系全体をどう調和させるかという複雑な問いに向き合う必要があることが示されていた。動物倫理を考えることは、環境問題における新たな視点を提供する。
② 乱獲は生態系と経済に悪影響を与える過剰な狩猟や漁獲で、「生産乱獲」は生態系を破壊し、「経済乱獲」は経済的損失を招くことであった。歴史的な捕鯨は乱獲の典型例であり、鯨油需要により北極海の鯨が激減した。このような資源の枯渇は、現代の乱獲問題にも通じている。釣りについても、遊漁が漁業資源に影響を与えており、商業漁業者との対立や資源管理の矛盾が浮き彫りになっていた。さらに、キャッチアンドリリースは環境配慮の一方で、動物福祉や文化的観点から批判されている。水産資源は遊漁も含めた包括的な資源管理が必要であり、自然保護、生業維持、食料生産の立場を統合することが求められる。国連FAOの「予防的アプローチ」は、リスクと利益のバランスを取りながら、科学的根拠に基づいた管理策を提案していた。漁業の持続可能性には、生態系への負担軽減と倫理的配慮の両立が不可欠であり、予防原則に基づき、乱獲を防ぐ管理体制の強化と、文化的・社会的な合意形成が重要であったことを確認する。
③ 捕鯨は鯨類の保護と持続可能な利用を目指し、国際捕鯨委員会(IWC)による管理のもと進められてきた。1982年の商業捕鯨モラトリアム採択後も、ノルウェーやアイスランドは異議を申し立て、捕鯨を継続。一方、日本は調査捕鯨を経て2019年にIWCを脱退し、自国水域での商業捕鯨を再開した。捕鯨継続の背景には、それぞれの国の文化、歴史、経済的事情があった。ノルウェーとアイスランドは自国内管理の下で捕鯨を行い続けているが、日本は戦後の食糧難をきっかけに捕鯨を拡大した。しかし、鯨肉需要の減少や国際司法裁判所の判決による南極海調査捕鯨の停止、反捕鯨国との対立が課題となっていた。現在、日本の鯨肉消費量は低下し、捕鯨産業の経済的持続性も疑問視されている。捕鯨には伝統文化の側面もあり、和歌山県太地町の小型捕鯨など、鯨を多目的に活用する歴史がある。しかし、文化保全と大型捕鯨問題の混同や、消費低迷が問題を複雑化している。捕鯨の持続可能性と国際的調和を図るためには、経済、文化、環境の視点を統合する包括的な議論が必要であることを確認する。
キーワード ① 包括的解決策(経済、文化、環境) ② 予防的アプローチ(FAO、狩猟レベル) ③ 国際調和(管理、合意)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
"復習:本回は9/10/11回振り返り、動物の命の価値、経済的問題、予防のための方策を取り上げた。これまでにも食の問題や野生動物管理についても述べて来たことを踏まえ、自身の根底にある自然環境保護の根幹主張とは何かを考え、各自でノートに書き出す。
【次コマの予習】
予習:次回は、公害問題と環境問題の関係を考える。日本国内の4大公害について調べ、ノートにまとめる。参考文献1、2の該当箇所を読み込むこと。

13 【公害問題と社会】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第13回の講義では、公害問題を取り上げ、自然の自浄作用の限界と社会のあり方について理解する。

難易度:★★★難しい

【教材・教具】
(4) コマ用オリジナル資料④
【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①」
主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」
主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」
主題細目④ 
教材4「コマ用オリジナル資料④」
主題細目⑤ 
教材4「コマ用オリジナル資料⑤」

【参考】
(1)環境と倫理、有斐閣アルマ 第5章
(2)環境倫理学、東京大学出版会 第8章
【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 環境正義の思想
主題細目② 
参考2 環境正義
主題細目③
参考2 環境正義
主題細目④ 
参考1 環境正義の思想
参考2 環境正義
コマ主題細目 ① 日本における公害の歴史とその変遷:環境問題から学ぶ教訓 ② 日本初の大規模公害 ③ 生物濃縮が引き起こした公害 ④ 公害問題の歴史と教訓
細目レベル ① 今回は公害問題の歴史的背景とその変遷、環境問題として捉えるべき背景について述べていく。公害は環境汚染による人間生活への害を指し、日本では他人の土地利用妨害を含む広義の意味を持っている。1950~60年代に産業公害が発生、1970年代には対策が進展したものの、1980年代以降は都市生活型や環境ホルモン型の公害が台頭し、2000年代には国際的課題となった。2010年代以降、国際的に予防・改善の取り組みが進みつつある。公害は時代の産業発展と密接に関わることが示されている。
日本における公害の歴史は、戦国時代や江戸時代の鉱山開発に端を発する。当時、環境破壊の概念はなく、鉄砲製造や鉱毒問題が発生していた。江戸時代には鉱毒被害が記録され、西洋医学の影響で科学的対応が進んでいた。明治維新以降、殖産興業政策により大気汚染や水質汚濁などの問題が顕在化、大正・昭和期には、工業化が進む中で四大公害病が発生し、市民の健康被害が深刻化した。平成以降、法規制や技術の進展により公害は沈静化したが、近代化と経済発展の陰で市民の権利が軽視されてきた歴史が浮かび上がる。

② 鉱毒公害の一つ足尾銅山鉱毒事件は、栃木県と群馬県を流れる渡良瀬川上流の足尾銅山で発生した公害事件として知られている。1870年代、銅は日本の主要輸出品であり、銅山は重要な経済拠点であった。しかし、鉱毒が排水として流出し、魚の大量死や農業被害が発生した。当初、被害原因は特定されず、流行病と誤解されていた。行政と鉱山経営者が癒着し、調査や原因解明が遅れ、被害隠蔽のため住民にわずかな見舞金が渡される状況が続いた。1890年代に被害が顕著となり、問題は公の議論に発展する。ようやく1970年代になり、企業が責任を認めるに至った。この事件は、環境問題における経営者や技術者の倫理、行政の役割、そして環境保護の重要性を問いかける契機となった。
③ 有名な公害である熊本水俣病は1950年代、熊本県水俣湾沿岸で発生した有機水銀中毒による公害事件である。メチル水銀化合物で汚染された魚を食べた住民に手足のしびれ、言語障害、歩行困難、重症では意識混濁や死亡が見られた。原因は、日本窒素肥料株式会社(現チッソ)の工場から排出された有機水銀で、アセトアルデヒドの生産過程で副産物として生成され、排水が水俣湾を汚染した。水銀は食物連鎖を通じて生物濃縮され、人々に中毒を引き起こした。当初、住民の訴えは無視され、わずかな見舞金で隠蔽が図られた。1956年に公害として認定されるも、企業は責任を否定しつつ排水経路を変更するなど問題解決に消極的であった。しかしその結果、被害は水俣湾から不知火湾へと拡大した。この事件は、環境負荷の限界を超えた結果として自然環境と地域社会に甚大な被害を与え、企業倫理や環境保護の重要性を問う大きな教訓となった。
④ 日本における公害の歴史を通じて、公害問題の認識と対策が進化してきたことが分かる。特に1967年の公害対策基本法の制定が重要な転換点であり、公害の定義を明確にし、企業責任の追及が始まりまった。4大公害裁判(新潟水俣病、富山イタイイタイ病、四日市喘息、熊本水俣病)を通じ、被害者の救済や公害防止が法制度として確立させた。これらの公害では、自然環境への負荷が限界を超えたことが問題の本質にある。当時は科学的知識の不足や情報の遅れがあり、被害拡大を防げることはできなかった、今日ではこれらの教訓から環境負荷を減らす重要性が認識されている。1993年には環境基本法が制定、「環境負荷」の概念が明記され、予防原則が重視されるようになる。しかし、当初は関係省庁が責任を回避し、問題が深刻化した。この対応の遅れを受け、1971年に環境庁(現環境省)が設立され、公害対策が政府の主要課題となった。これらの事例は、環境保護の重要性と予防措置の必要性を私たちに教えている。過去の教訓を活かし、環境への負荷を抑える努力を続けることが求められる。
キーワード ① 4大公害病(健康被害、法規制) ② 鉱毒(水俣病、イタイイタイ病) ③ 環境負荷(限界、被害拡大) 
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:本回は公害問題を取り上げた。公害問題は環境汚染から環境破壊、人の生活にまで害を直接及ぼした事件である。授業の中では水俣病を取り上げたが、では愛媛や瀬戸内海における公害の事例を調べ各自でノートにまとめる。
【次コマの予習】
予習:次回は、エネルギー利用と環境問題の関係を考える。自分の自宅で使用している主なエネルギーが何を使って作られているのかを調べ、ノートにまとめる。

14 【自然エネルギーと保護経済】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第14回の講義では、自然エネルギー問題を取り上げ、エコ思想の実現と社会問題の関係について理解する。

難易度:★★★難しい

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料①
(2) コマ用オリジナル資料②
(3) コマ用オリジナル資料③
(4) コマ用オリジナル資料④
【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①」
主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」
主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」
主題細目④ 
教材4「コマ用オリジナル資料④」
主題細目⑤ 
教材4「コマ用オリジナル資料⑤」

【参考】
(1)環境と倫理、有斐閣アルマ 第3章
(2)環境倫理学、東京大学出版会 第10章
【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 持続可能性とは何か
主題細目② 
参考1 持続可能性とは何か
主題細目③
参考2 気候主義
主題細目④ 
参考2 気候主義
コマ主題細目 ① 自然エネルギーと環境問題 ② エネルギー選択 ③ 気候変動への対応 ④ 風力発電の課題と日本の未来
細目レベル ① 今回は、自然エネルギーや環境問題について紹介する。現在、日本の主要なエネルギー源である火力発電、水力発電、原子力発電は、環境への負荷が大きく、自然破壊を招くため問題視されている。特に火力発電は化石燃料の燃焼により二酸化炭素を排出し、地球温暖化や気候変動を引き起こしている。これにより生態系が変化し、多くの動物が適応できず絶滅することで生物多様性が減少し、さらなる環境悪化を招いていることは自明であろう。そのため、地球に優しく生活への影響が少ないエネルギーが求められている。その一例が風力発電で、二酸化炭素排出が(相対的に)少なく、経済性があるものとされる。しかし一方で、バードストライクや景観への影響、新たな環境問題を伴っていることも事実である。
② 私たちには水力、火力、原子力といった既存エネルギーのほかに、風力、太陽光、バイオマス、地熱、小規模小水力発電といった自然エネルギーを選ぶことができる。エネルギー効率では既存エネルギーが優れており、特に原子力発電が最も高い効率を誇る。一方、自然エネルギーは廃棄物が少なく、小規模設備でも運用可能だが、効率が低く、安定性やコスト面で課題がある。電力の自由化により、各家庭で電力の種類を選べるようになったが、それでも自然エネルギーの普及を妨げている要因は、このようなデメリットにある。自然エネルギーは環境への負荷軽減が目的であり、温暖化対策や生物多様性向上には直接結びつかない事は忘れてはならない。エネルギー問題の本質は、環境負荷、経済性、効率のバランスをどう取るかであり、その課題解決に影響負荷抑制のための選択が求められる。
③ 化石燃料を用いる火力発電の気候変動への影響は、異常気象の増加、生物多様性の喪失による食料問題、生活環境の悪化が挙げられる。これに対し、温暖化ガス削減や持続可能な資源利用が必要とされるが、その実現には技術開発や制度の構築、啓発活動が不可欠であろう。効率的な発電技術の開発はエネルギーコストの低下を促すが、同時に技術依存が社会に及ぼす影響も懸念されている。技術社会では技術への従属が進み、生活が不自然になる可能性が指摘されている。そのため、技術の本質的な目的を見失わないことが重要であり、持続可能性と技術活用のバランスを模索する必要がある。風力発電には、バードストライクや景観への影響、工事に伴う環境破壊といった問題があった。これを解決するためには、鳥の警戒装置の導入、小規模で効率を上げる技術開発、環境アセスメントの実施が有効とされる。しかし、環境アセスメントの費用負担が高額になると実施自体が抑制される可能性があり、課題も残る。エネルギー問題の解決には、社会の複雑な仕組みや多様な利害関係を理解し、公益性を軸とした公平性の維持が必要であり、特に、分配正義と合意形成を通じて、社会の対立を抑えながら問題解決を進めることが求められる。これらを実践する具体的な事例を知ることは、今後の指針となる。
④ 自然エネルギー先進国であるデンマークは、「市民風車」という市民が資金を出資し、自分たちで電気を作る仕組みを構築している。この取り組みは分配正義を重視し、金銭的利益や社会貢献、ネットワーク形成など多様な価値を提供し、市民の生活に自然エネルギーを根付かせている。市民の8割が個人や組合で風車を所有し、利益を共有することで合意形成を図っている。日本でもデンマークをケーススタディとした市民風車が広がりつつあり、洋上風力発電が注目されているが、騒音や海底環境への影響など課題も存在する。また、日本のエネルギー自給率は4%と低く、その点においても化石燃料や原子力発電の問題から再生可能エネルギーへの転換が求められている。2012年の再生可能エネルギー特措法では、再生可能エネルギーを国が固定価格で買い取る仕組みが導入され、普及を後押ししている。今後、技術開発を進め、環境を破壊せず既存の問題を解決するエネルギー選択が必要であることは言うまでもない。
キーワード ① エネルギー源(再生可能、化石燃料) ② 自然エネルギー(廃棄物、再生、技術依存) ③ 市民風車(合意形成、分配正義)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:本回はエネルギー問題を取り上げた。エネルギー問題の出口には4つのシナリオが考えられる。1,あらゆる化石燃料を使い果たしてから、自然エネルギーへ転換する 2,化石燃料の利用を停止して、直ちに自然エネルギーへと転換する 3, 化石燃料を抑制して、徐々に自然エネルギーへ転換する 4,核融合反応によってエネルギーを得る 最も実現されないと思われる方策はいずれか?ノートにその理由とともに書き出す。
【次コマの予習】
予習:次回最終回は、ここまで扱ってきた環境問題と現在の私たちの責任について考える。第一回からの内容をそれぞれ150文字程度に要約しノートにまとめる。参考文献1、2の該当箇所を読み込むこと。

15 【過去と現在と未来の環境問題の解決とは】 科目の中での位置付け 本講義では、環境問題や科学的なものの考え方を踏まえた上で、過去と現在に存在する環境問題解決上の意見や同意形成上の問題を取り上げ、多角的で合理的な思考力を身に付けられるように段階を追って展開していく。第1回から第4回では本講義において扱う自然共生を考えるにあたり、必要な環境問題とその社会的考え方を概観し、日本が掲げる「自然共生」の意味と国際的な捉え方の違いを、具体例を挙げながら確認していく。第5回から第8回では環境保全/保護/管理と社会問題を取り上げ、自然共生と社会経済の両立の困難さ、身近な食の問題も含めて、具体例を挙げながら確認していく。第9回から第12回では先の回までに取り上げた食にまつわる環境問題を掘り下げ、日本特有に直面する捕鯨問題と国際的な捉えられ方を理解する。第13回から第15回では人の社会活動に注目し、社会の発展のためになくてはならない経済活動と自然破壊問題を取り上げる。これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解し、今何ができるのかを考えていく。第15回の講義では、これまで学んできた環境問題の捉え方に基づいて、改めて環境問題の複雑さや、考慮すべき事項について概観し、現在の未来に対する責任を理解する。

難易度:★★★難しい

【教材・教具】
(1) コマ用オリジナル資料①
(2) コマ用オリジナル資料②
(3) コマ用オリジナル資料③
(4) コマ用オリジナル資料④
【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材1「コマ用オリジナル資料①」
主題細目②
教材2「コマ用オリジナル資料②」
主題細目③ 
教材3「コマ用オリジナル資料③」
主題細目④ 
教材4「コマ用オリジナル資料④」
主題細目⑤ 
教材4「コマ用オリジナル資料⑤」

【参考】
(1)環境倫理学、東京大学出版会 第7章
(2)環境と倫理、有斐閣アルマ 第12章
【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考1 世代間倫理
主題細目② 
参考1 世代間倫理
主題細目③
参考2 環境と平和
主題細目④ 
参考2 環境と平和
コマ主題細目 ① 世代間倫理と未来世代への責任 ② 社会的不平等 ③ 予防原則の意義 ④ 環境問題への我々の責任
細目レベル ① 私たちの生活は豊かになりつつも、新たな環境問題が生じ、十分な解決には至っていない。様々な課題に対して、未来世代への配慮を意味する「世代間倫理」が求められる。世代間倫理とはまだ生まれていない未来世代の利益に配慮し、現在の行動を見直す責任を指す。環境問題では、現在世代が加害者、未来世代が被害者になる構図があり、未来世代は現状に抗議できない。さらに、未来世代も次の世代に負担を転嫁する可能性があるため、という理由で、現在の振る舞いが正当化されるべきではない。未来世代への公平性は、住む時代による差別をなくし、利益を平等に分配することで実現される。これは、自分の子や孫だけでなく、遠い未来に生きる人々を含め、広く考えるべきであり、私たちは、未来世代に対して責任を果たし、持続可能な行動を選択しなければならない。
② 現代社会では、先進国と途上国、富裕層と貧困層、企業と市民といった構造により、社会的不平等が存在し、弱者がより多くの不利益やリスクを背負っている。例えば、先進国が危険廃棄物を途上国に受け入れ金とともに押し付ける構造は、一時的には利益を生むものの、途上国や未来世代に深刻な負担を残す。このような社会的不平等の延長にある環境問題は、未来世代への倫理的責任を問いかけている。しかし、未来の予測が不確実であること、どの程度まで配慮すべきかが曖昧であることから、世代間倫理を理論的に正当化するのは困難であるともされる。また、未来世代と現世代には直接的な相互関係がなく、義務と権利の相互尊重が成立しない点も課題となる。現代の生活や経済活動をどの程度制約し、どれほど先の世代を目標に行動すべきか、議論が求められている。この倫理的ジレンマを解決するには、長期的視野と現実的な行動のバランスを探る必要がある。
③ 現代世代の選択は、未来世代の存在や生活に大きく影響する。例えば、温暖化を防ぐ政策を取らなければどうなるか。島が水没し、島民が富裕国に移住して新たな生活を営む可能性がある。一方、防ぐ政策を取れば水没は免れるが、島民は貧しい状況に留まる可能性がある。未来世代は現代世代の選択に従うしかなく、この一方的な関係は平等ではないだろう。現代世代には、予見可能な害悪を防ぎ、未来世代の権利と生活の質を尊重する義務がある。そこで、環境問題における「予防原則」が重要視される。予防原則は、深刻な環境被害の可能性がある場合、「科学的確実性が欠けても防止措置を取るべき」とする考え方で、国際会議のリオ宣言にも盛り込まれている。この原則は、環境問題に限らず、新型コロナ対策などでも適用され、緊急事態宣言が出されたことは記憶に新しいだろう。つまり、予防原則は未来世代への責任を果たすための有効な手段なのだ。現代世代はこの原則を意識し、持続可能な選択を進めるべきであろう。
④ 未来世代への配慮は、現代世代が一方的に負うべき義務と責任である。予防原則によれば、不確実性を理由に環境問題への対策を延期することは許されない。未来世代の存在や生活は、現代世代の選択に左右されますが、その逆は成立せず、これは平等な関係とは言えない。哲学者ハンス・ヨナスは、現代世代が未来世代への責任を認識し、自然全体や未来へ視野を広げる倫理の必要性を主張している。また、ウォルター・ワグナーは、人間が自己愛を通じて未来を志向する本性を持つとし、未来に関心を持つことが現在の幸福とつながると説いている。この考え方は、東洋の「先人木を植え、後人その下に憩う」という言葉にも通じ、緑豊かな地球を次世代に引き継ぐバトンタッチの関係性を示している。現代世代が未来世代にどのような環境を残せるかは、私たちの選択次第であり、未来のためにも、環境問題に真剣に取り組むことが求められている。これまでに扱ってきた環境問題、その問題の複雑さ、背景、歴史的転換、解決のための考え方を踏まえ、自然と共生していく我々の生活をいかに向上させていくかを考えるきっかけとして欲しい。
キーワード ① 世代間倫理(過去、未来) ② 倫理的ジレンマ(制約、目標) ③ リオ宣言(義務、責任)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
復習:最後に環境問題の世代間不平等を取り上げた。では、自分自身の普段の生活や活動で未来世代に影響を与える環境問題はないか。そして、それに対して自身ができることはないのか、ノートに書き出す。これまでに参照した参考文献を再度読み込むこと。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
環境問題の捉え方 環境という言葉の示す意味はというものはどのように捉えるべきものなのかを説明することができる。また、環境という言葉を踏まえて環境問題というものはどのように捉えるべきものなのかを300文字程度で説明することができる。注意として、ここでは言葉の意味自体を問うているのではない。例えば「環境」を辞書で調べると「人間または生物をとりまく、まわりの状況。そのものと何らかの関係を持ち、影響を与えるものとして見た外界。」と記載されているが、そのようなことではなく、捉え方を理解できているかを確認する。(★やさしい) 自然共生、保護、保存思想、保全思想、動物解放論 20 1,3,7
身の回りへの問題意識 ★★我々は、様々なものや事象の危険要因を受容して生活をしている。それらはどこかで環境問題に結びつくことが多い。そのような事例におけるもの、もしくは事象を示された際、どのような点において環境問題と結びつくのかについて説明をすることができる。また、直接的に環境問題に結びつかなくても、直接的に自身の身体に影響を及ぼす事例も多い。その際に、どのような点においてリスクが潜んでいるかを認識することが必要である。それらの危険要因についても、科学的根拠をもとにして300文字程度で説明することができる。
(★★普通)
大量生産システム、穀物消費量、特定外来生物、自然エネルギー 20 4,5,6
環境リスクの観点 ★データ、もしくは情報が与えられた際に、環境リスクの観点から複数の考え方を提示することができる。この際に、個人の「価値観」を持ち込んでの議論を行うと、他者へ伝えることは困難となる。科学的な根拠をもとに議論する際には、コミュニケーションツールとして「数字」を用いる必要があることを本講義において学んだ。これらのポイントをおさえたうえで、問題提起、リスクとベネフィット、解決案を科学的根拠に基づいて300文字程度で説明することができる。
(★やさしい)
環境リスク、トレードオフ関係、プラグマティズム、予防的アプローチ、環境負荷 20 2,8,12
自然環境保全の捉え方 「自然環境を守る」が示す意味は、様々な思想からの視点があること、その違いを明確にして説明することができる。その際に幾つかの事例が示された際、どのような点において環境問題の解決の困難さをもたらしているのか、問題の中核にある要点とは何かを即座に説明することができることも重要である。大切なことは、環境問題を解決したいと考える視点は同じであること、置かれた立場で見方が変わることを理解しているかどうかを重要視する。
(★★★難しい)
生物多様性条約、自然の価値、平等の概念、世代間倫理 20 9,10,15
資源確保の重要性理解 資源が示す意味とは、食料だけでなく、エネルギーを含め生態系サービスから得られるもの全てを指す。資源を確保し、安心安全な未来に進むために、資源をいかに分配するべきかを300文字程度で説明することができる。また、環境問題の解決に向けた公平性の確保、予防原則について、言葉の意味を理解し、正しく用いることができることも重要である。
(★★普通)
経済乱獲、キャッチアンドリリース、経済救済、公害病、技術依存 20 11,13,14
評価方法 試験(100%)により評価する。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 指定の教科書はありません
参考文献 環境と倫理(2005)有斐閣アルマ、環境倫理学(2009)東京大学出版会、乱獲(2009)東海大学出版会、日本鯨類研究所紀要
実験・実習・教材費 実験・実習・教材費 なし