区分
農業フィールド科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
カリキュラム・ポリシーとの関係
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる持続可能な社会の実現を目指し、自然科学の基礎から応用までを体系的に学ぶカリキュラムを編成している。1年次では基礎的な自然科学や地域理解を通して自然と社会の関係を俯瞰的に捉え、2年次以降は専門性を高めながら、具体的な課題解決に結びつける力を養う。
本科目は、自然界における微生物の基本的な役割を理解したうえで、それを食品・農業・環境・エネルギー・資源といった多様な分野へと展開する専門基礎科目である。特に「分解者」という共通概念を軸に、微生物の代謝や発酵の仕組みを出発点として、社会的・産業的応用へと段階的に学びを発展させる点に特色がある。
前半では、麹菌・酵母・乳酸菌などの発酵微生物を通して、日常生活や食文化との接点を理解する。これにより、微生物が個人レベルの生活基盤を支えていることを実感する。中盤では、堆肥化、根粒菌・菌根菌との共生、下水処理や環境浄化などを扱い、社会レベルにおける資源循環や農業生産への貢献を学ぶ。後半では、バイオエネルギー、バイオマイニング、バイオプラスチック、さらには合成生物学といった未来産業への応用を取り上げ、地球規模での課題解決に微生物が果たす可能性を考察する。
本科目は「個人(食と生活)→社会(農業・環境)→地球(資源・エネルギー・未来産業)」という三段階のスケールで構成されており、微生物利用を総合的・体系的に理解するための中核科目に位置づけられる。また、本科目で培われる知識と視点は、高学年次に開講される「実験実習」「天然物化学」「環境関連科目」などの専門科目への橋渡しとなり、理論と実践を結び付ける基盤を形成する。
本講義は、基礎科学の理解を土台としながら、地域社会や地球規模の課題解決へと発展させる応用力を養う、2年次前期における重要な専門基盤科目である。
科目の目的
本科目「微生物利用学」では、自然界において微生物が果たす「分解者」としての基本的な役割を理解し、その知識を食品・農業・環境・産業といった幅広い分野の応用に結び付けることを目的とする。森林や土壌における有機物分解や物質循環、パンやヨーグルトといった発酵食品に代表される生活との接点を通じて、微生物が身近な存在であることを実感する。さらに、堆肥化やコンポストによる資源循環、根粒菌や菌根菌との共生による作物栽培、下水処理や油分解に代表される環境浄化など、社会や環境における微生物利用の多様な実例を学ぶ。
加えて、発酵飼料やバイオ農薬による農業応用、さらにはバイオエネルギー、バイオマイニング、バイオプラスチックといった未来産業における最新の活用技術を取り上げ、微生物が持続可能な社会の形成に果たす可能性を考察する。これにより、「個人レベル(食や生活)→社会レベル(農業・環境)→地球レベル(未来産業・循環型社会)」という学びのスケールアップを通じて、微生物利用の全体像を体系的に理解することができる。
本科目を履修することで、微生物の多様性と共通性を理解するとともに、微生物の力を活かして現代社会の課題解決に貢献できる視点を養う。最終的には、学んだ知識を自らの生活や地域社会に活かし、持続可能な未来づくりに主体的に関わる力を身につけることを目指す。
到達目標
1. 《個人レベル》 個人の生活(食)における分解者の役割を説明できる。微生物を「自分の食生活に直接関わる存在」として理解し、“生活にある微生物を自ら発見し説明できる力” を育てる。
1) 自分の生活にある食品・飲料・日用品の中から、微生物(分解者)が関わる製品を見つけ、説明できる。例:パン、ヨーグルト、味噌、醤油、うま味調味料、発酵飲料など。
2) 麹菌・酵母・乳酸菌などの身近な微生物が、何を分解し、どのように食品・調味料を作っているかを理解し、図や言葉で説明できる。
3) 工業的発酵(アミノ酸・有機酸の生産)と日常生活とのつながりを、自分の言葉で説明できる。
2. 《社会レベル》 社会や自然環境(循環)における分解者の役割を説明できる。「社会の循環は微生物が支えている」という視点を獲得し、微生物を社会課題や地域の農業と結びつけて考える力を高める。
1) 堆肥化・下水処理・環境浄化など、社会インフラにおける微生物の働きを説明できる。
2) 根粒菌・菌根菌・発酵飼料・バイオ農薬など、農業における微生物利用の具体例を理解し、「微生物がなぜ農業を支えられるのか」を論理的に説明できる。
3) 自分の生活と地域の農業・環境問題(生ごみ処理、食品ロス、土づくりなど)を結びつけ、微生物を活かした解決策を自分の意見として述べることができる。
3. 《地球レベル》 未来社会・地球規模での微生物の役割おける展望について説明できる。地球規模の視点で微生物利用の未来を描き、科学と社会をつなぐ洞察力を育てる。
1) バイオエネルギー・バイオマイニング・生分解性プラスチックなど、地球規模の課題を解決する微生物技術について仕組みと意義を説明できる。
2) 微生物の分解力が未来産業を支える科学的根拠を理解し、「分解者の力を未来社会でどう活かすか」を自分なりに展望できる。
3) 合成生物学やデザイン微生物など、未来技術に対して科学的視点と社会的視点を持ち、利点・課題・倫理を含めて自分の考えを表現できる。
科目の概要
本科目では、微生物の基本から応用までを、個人レベル・社会レベル・地球レベルの3つの段階で学びます。「個人レベル(1~5回)」:日常的に食べている発酵食品を題材に、工業的発酵の仕組みを学ぶ。「社会レベル(6~10回)」:「人が生きる社会や自然環境全体を、分解者が支えている」ことを学ぶ。「地球レベル(11~15回)」:「分解の力を利用して、未来社会をどう作るか?」を考察する。このように微生物が私たちの生活や社会または地球規模で、どのように関わっているかを探求します。つまり、「食 → 社会環境 → 未来産業」 へとスケールアップし、最初から最後まで「分解者」が軸になってつながります。本講義を通じて、微生物と産業利用に関する知識を習得するとともに、現代社会の課題解決や未来に向けた実践的な応用力を身に付けることを目指します。
科目のキーワード
1. 分解者の基礎(有機物分解、発酵、物質循環) —— 第1回〜第3回
2. 発酵微生物と食文化(麹菌、酵母、乳酸菌) —— 第2回〜第3回
3. 工業的発酵の応用(アミノ酸、有機酸、発酵工業) —— 第4回〜第5回
4. 資源循環と社会実践(堆肥、コンポスト、地域活動) —— 第6回
5. 植物との共生(根粒菌、菌根菌、栄養吸収) —— 第7回
6. 環境浄化(下水処理、油分解菌、重金属耐性菌) —— 第8回
7. 農業応用(発酵飼料、バイオ農薬、持続可能農業) —— 第9回
8. 生活と社会の接点(リサイクル、食卓、未来視点) —— 第10回
9. バイオエネルギー(メタン発酵、バイオエタノール、残飯利用) —— 第11回
10. バイオマイニング(鉱石分解、バイオリーチング、都市鉱山) —— 第12回
11. バイオプラスチック(生分解性、分解菌、循環型社会) —— 第13回
12. 未来産業と合成生物学(デザイン微生物、社会受容、未来社会) —— 第14回
13. 総まとめ(分解者の共通性、未来展望、生活との接点) —— 第15回
授業の展開方法
毎回の授業では、Wordで作成したオリジナルテキスト(PDF版)を配布し、その内容に沿って授業を進めていきます。テキストは、コマシラバスの「コマ主題細目」に対応した章立てとなっており、各単元は「解説」「練習問題」「まとめ」の三つの要素で構成されています。
授業の最初の10分間では、当該回で取り扱う内容の全体像を概観し、そのコマで学習すべき重要事項や学習のポイントを明示します。続く60分間では、コマシラバス細項目に沿って、小テーマに関する解説を行い、その内容を踏まえた練習問題を解くことで理解度を確認します。その後、各コマに要点を整理し、まとめを行います。これを繰り返すことで、知識を段階的に積み重ね、系統的な理解へと導きます。
授業の終盤10分間には、その回の内容全体を振り返り、学んだことを整理します。最後に、小テストを実施し、理解度を客観的に確認したうえで、解答と解説を行います。
授業終了後には、次回までに復習を行うことが求められます。配布テキストの解説や練習問題を見直すだけでなく、ChatGPTを活用して、自ら20問程度の練習問題を作成・解答することで理解を深めます。さらに、その解答と解説を確認することで、より確実に知識を定着させることができます。
オフィス・アワー
中島琢自:※指定時間以外に希望する場合、時間を調整するのでメールなどでご連絡ください。
【前期】
環境と微生物
基礎ゼミナールⅠ
微生物利用学
全科目:火曜1限、水曜昼~5限、木曜2限、金曜4限
【後期】
地域産業学
基礎ゼミナールⅡ
基礎微生物学演習
全科目:月曜5限、火曜1限、木曜4・5限、金曜4限
甲斐貴光:【前期】
農業基礎演習Ⅰ
農業地理学
基礎ゼミナールⅠ
土壌生態学
インターンシップⅠ
全科目:月曜昼~4限
【後期】
農業基礎演習Ⅱ
基礎ゼミナールⅡ
全科目:月曜1・2限
吉田弥生:【前期】
自然共生社会
基礎ゼミナールⅠ
海の大型動物生態学
全科目:月曜~金曜の5限
【後期】
動物行動観察演習A・B
基礎ゼミナールⅡ
環境共生型社会のデザイン
動物行動学
全科目:月曜~金曜の5限
科目コード
TF3020
学年・期
2年・前期
科目名
微生物利用学
単位数
2
授業形態
講義
必修・選択
選択
学習時間
前提とする科目
展開科目
関連資格
担当教員名
中島琢自・甲斐貴光・吉田弥生
回
主題
コマシラバス項目
内容
教材・教具
1
微生物「分解者」としての役割(個人レベル)
科目の中での位置付け
本科目はは、「微生物「分解者」としての役割」は、「微生物利用学」の学習において最初に取り上げる基盤的な内容です。本コマでは、自然界での有機物分解や物質循環の仕組みを理解し、さらに微生物の代謝=発酵の基本原理を学びます。また、パンやヨーグルト、堆肥化など身近な事例を通じて、微生物の働きが日常生活や環境保全と深くつながっていることを実感できるよう構成されています。
この内容は、後続の講義で扱う麹菌・酵母・乳酸菌など具体的な微生物利用の事例を理解するための土台となります。同時に、自然環境と人間社会という両面から微生物の役割を考える視点を養うことで、持続可能な社会や資源循環の実現に結びつける応用的学びへと発展していきます。したがって、主題1は「微生物利用学」において、基礎知識を身につけると同時に、微生物と生活・社会との接点を認識する導入的な位置付けにあります。(難易度:★ 基礎的内容)
1.有機物分解と物質循環
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第3章 微生物の種類 p.39-55、第4章 地球環境の微生物たち p.57-106
3) 左巻健男(編)「身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本」(明日香出版社、2019年)」、Lesson 4. 「分解者」としての微生物 p.56-62
4) 企業の廃棄物削減 生ごみをコンポストで堆肥化する事例5つ(https://operationgreen.info/haikibutu_namagomi_company/)
2.発酵と代謝の基本
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第5章 役に立つ微生物 p.107-117
3.日常生活との関わり
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第5章 役に立つ微生物 p.107-117
3) 農林水産省「発酵の世界」(https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2211/spe1_01.html)
4) 農林水産省「にっぽんの発酵食品」(https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/traditional-foods/files/user/pdf/japanese_hakko.pdf)
コマ主題細目
① 有機物分解と物質循環 ② 発酵と代謝の基本 ③ 日常生活との関わり
細目レベル
① 森に落ちる落ち葉や、家庭から出る生ごみは、放っておくと山のようにたまってしまいます。しかし、自然界では微生物がそれらを分解し、二酸化炭素や水、無機物にまで変えてくれるため、再び植物が利用できる栄養素として循環します。例えば、落ち葉を土の中で分解するカビや細菌は、セルロースやリグニンといった複雑な物質を酵素で分解していきます。
また、生ごみの処理でもコンポストに微生物が働き、有機物を小さな分子に変えることで悪臭を抑えつつ、堆肥として再利用できるようになります。このように微生物は、地球の「掃除屋」として物質循環を支えており、人間社会のごみ処理や資源の再利用にも欠かせない存在であるところまで。
② 微生物のはたらきの中でも、発酵は人間の生活に深く結びついています。発酵とは、微生物がエネルギーを得るために糖を分解し、アルコールや乳酸などの物質をつくり出す代謝のしくみです。たとえば、酵母はブドウ糖を分解してアルコールと二酸化炭素を生み出します。これがパンのふくらみや酒のアルコール成分のもとになります。
一方、乳酸菌は糖を分解して乳酸をつくり、ヨーグルトや漬物の酸味を生み出します。発酵は、酸素が十分にない環境でもエネルギーを得られる仕組みであり、微生物の生存戦略のひとつです。代謝の基本を理解することで、微生物が「食べて、分解し、つくる」という一連の流れを通じて、私たちの身近な食品や環境に直接つながっているところまで。
③ 微生物による分解や発酵は、私たちの身近な暮らしの中でたくさん利用されています。パン作りでは、酵母が生地の中の糖をアルコール発酵させ、発生する二酸化炭素によってふわふわに膨らみます。ヨーグルトは乳酸菌が牛乳の乳糖を分解し、乳酸をつくることで酸味ととろみを生み出します。
また、家庭でのコンポストや堆肥づくりでは、野菜くずや落ち葉を微生物が分解し、植物の肥料として再利用できます。これらの例は、自然界での「分解と循環」という大きな仕組みとつながっています。つまり、私たちが毎日食べている食品や使っている資源の裏側には、微生物の力が働いているのです。微生物は目に見えませんが、生活と地球環境の両方を支える「小さなパートナー」であるところまで。
キーワード
① 機物分解(落ち葉、セルロース、リグニン) ② 物質循環(二酸化炭素、水、無機化) ③ 発酵と代謝(糖分解、アルコール、乳酸) ④ 日常生活(パン、ヨーグルト、堆肥化) ⑤ 環境と社会(食文化、リサイクル、持続可能性)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、微生物が「分解者」として果たす役割について学びました。森に落ちる落ち葉や家庭から出る生ごみは、放置するとたまる一方ですが、微生物が酵素を使って分解することで、二酸化炭素や水、無機物に変えられ、再び植物に利用される栄養として循環します。このしくみは自然界の物質循環の基盤であり、微生物は地球の「掃除屋」といえます。さらに、微生物の代謝として重要な「発酵」にも注目しました。
酵母は糖を分解してアルコールと二酸化炭素を生み出し、パンの膨らみや酒の成分をつくります。一方、乳酸菌は乳酸をつくり、ヨーグルトや漬物の酸味や保存性を生み出します。このような発酵は酸素が乏しい環境でも生きるための戦略であり、人間の食文化に深く結びついています。また、パンやヨーグルトなどの発酵食品だけでなく、コンポストや堆肥化にも微生物の力が利用され、資源循環や環境保全にも役立っています。つまり微生物は、自然界と私たちの生活の両方を支える「小さなパートナー」なのです。また、ChatGPTで20題程度の問題を作成し、回答することを勧めます。
[次回授業の予習]
次回の授業では、日本の発酵文化を支える重要な微生物である「麹菌」について学びます。麹菌は米や麦などに繁殖し、デンプンやタンパク質を分解する強力な酵素をつくります。代表的な酵素であるアミラーゼはデンプンを糖に変え、プロテアーゼはタンパク質をアミノ酸やペプチドに分解します。これらの分解産物は酵母や乳酸菌のはたらきにつながり、アルコールや有機酸の生成に利用されます。
さらに、アミノ酸やペプチドは「うま味」や独特の香りをつくり出し、日本の食文化を豊かにしてきました。味噌、醤油、清酒といった伝統食品は、いずれも麹菌の酵素による分解作用を基盤としています。また、日本酒では「並行複発酵」という独特の仕組みが成立しており、これは麹菌と酵母が同時に働く高度な技術です。麹菌は2006年に「国菌」として認定され、日本文化における象徴的な存在となっています。授業では、麹菌の科学的特徴と文化的意義を結びつけて理解していきます。
2
麹菌による分解(個人レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物「分解者」としての役割」は、「微生物利用学」の学習において最初に取り上げる基盤的な内容です。本コマでは、自然界での有機物分解や物質循環の仕組みを理解し、さらに微生物の代謝=発酵の基本原理を学びます。また、パンやヨーグルト、堆肥化など身近な事例を通じて、微生物の働きが日常生活や環境保全と深くつながっていることを実感できるよう構成されています。
この内容は、後続の講義で扱う麹菌・酵母・乳酸菌など具体的な微生物利用の事例を理解するための土台となります。同時に、自然環境と人間社会という両面から微生物の役割を考える視点を養うことで、持続可能な社会や資源循環の実現に結びつける応用的学びへと発展していきます。したがって、主題1は「微生物利用学」において、基礎知識を身につけると同時に、微生物と生活・社会との接点を認識する導入的な位置付けにあります。(難易度:★ 基礎的内容)
1.酵素生産の力
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第5章 役に立つ微生物たち p.107-117
3) 小泉武夫(編)「発酵食品を楽しむ教科書」(ナツメ社、2023年)」、「麹」p.89-96
4) みんなの発酵BLEND presented by カルピス「麹菌とは」 (https://www.hakko-blend.com/study/b_01.html)
2.発酵と代謝の基本
5) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
6) 宮尾茂雄(編)「発酵と醸造のいろは」(NTS、2017年)」、「第1編、第2章:麹菌」p.41-52
7) 進藤 斉(編)「発酵と醸造のいろは」(NTS、2017年)」、「第2編、第1章:日本酒」p.121-200
3.日常生活との関わり
8) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
9) 森永 康(編)「発酵と醸造のいろは」(NTS、2017年)」、「第2編、第10章:うま味調味料」p.237-250
10) 日本うま味調味料協会(https://www.umamikyo.gr.jp/spice/)
コマ主題細目
① 酵素生産の力 ② 日本の伝統食品 ③ うま味の生成
細目レベル
① 麹菌は、日本の発酵文化を支える代表的な微生物であり、その最大の特徴は「強力な酵素生産力」にあります。麹菌は米や麦などのデンプンを分解するアミラーゼや、タンパク質を分解するプロテアーゼを大量につくり出します。アミラーゼはデンプンを糖に変える働きを持ち、この糖は酵母がアルコール発酵を行う際の原料となります。
一方、プロテアーゼはタンパク質をアミノ酸やペプチドに分解し、食品の味や栄養に直結します。このように、麹菌は「糖とアミノ酸を生み出す工場」のような存在であり、酵母や乳酸菌と連携しながら発酵食品の基盤を形づくります。また、麹菌が生産する酵素は食品分野だけでなく、工業的にも広く応用されており、バイオテクノロジーの分野でも注目されています。つまり麹菌の酵素は、自然界から人間の食卓、さらには産業技術に至るまで幅広い役割を果たしているところまで。
② 麹菌は、日本の伝統的な発酵食品づくりに欠かせない存在です。たとえば、味噌では大豆を蒸して麹菌を働かせ、酵素でタンパク質を分解してアミノ酸やペプチドをつくります。これが味噌特有のうま味やコクの源となります。醤油の場合も同様に、大豆と小麦に麹菌を繁殖させ、アミラーゼやプロテアーゼによって原料を分解し、長期熟成によって独特の香りと深みが生まれます。
さらに清酒造りにおいては、麹菌が米のでんぷんを糖に変え、その糖を酵母がアルコールに変えることで酒ができます。これを「並行複発酵」と呼び、世界的にも珍しい高度な発酵技術です。このように麹菌は、日本の伝統食品の基盤を支える存在であり、「国菌」として指定されるほど日本文化と密接に結びついています。麹菌のはたらきを理解することは、日本の食文化や発酵の奥深さを学ぶ上で欠かせないことを理解するところまで。
③ 麹菌の酵素による分解は、食品の風味を大きく変化させます。特にプロテアーゼがタンパク質を分解して生み出すアミノ酸やペプチドは、うま味や香りの形成に直結します。代表的なアミノ酸であるグルタミン酸は、昆布のだしにも含まれる「うま味成分」として知られています。さらに、分解産物が加熱や熟成によって変化することで、発酵食品特有の香ばしさや深い香りが生まれます。
例えば、味噌汁の豊かな香りや、醤油を加熱したときに広がる香ばしい風味は、麹菌が生み出した分解物から生じています。また、アミノ酸やペプチドは栄養的にも重要であり、人間の体に必要なたんぱく質の供給源として機能します。このように麹菌は、食品の味や香りを豊かにするだけでなく、栄養面からも私たちの健康を支えているのです。うま味成分の生成を学ぶことは、日本食が世界的に評価される理由のひとつを知識として得るところまで。
キーワード
① 酵素生産(アミラーゼ、プロテアーゼ、分解力) ② 伝統食品(味噌、醤油、清酒) ③ 並行複発酵(糖化、アルコール発酵、酵母との協働) ④ うま味成分(グルタミン酸、ペプチド、香り) ⑤ 国菌の意義(日本文化、食の多様性、発酵技術)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、日本の発酵文化を支える「麹菌」のはたらきについて学びました。麹菌は強力な酵素生産力を持ち、アミラーゼでデンプンを糖に、プロテアーゼでタンパク質をアミノ酸やペプチドに分解します。これらの分解産物は酵母や乳酸菌の活動の基盤となり、アルコールや有機酸の生成につながります。特にアミノ酸やペプチドは、食品の「うま味」や香りを生み出す重要な要素であり、味噌汁の豊かな風味や醤油の香ばしさのもとになっています。
また、味噌・醤油・清酒といった日本の伝統食品は、いずれも麹菌の分解作用が支えています。清酒造りでは、麹菌が糖をつくり、その糖を酵母がアルコールに変える「並行複発酵」という高度な発酵様式が利用されていることも学びました。さらに麹菌は、日本の食文化を象徴する存在として2006年に「国菌」に指定されています。今回の授業を通じて、麹菌が科学的にも文化的にも欠かせない微生物であることを理解できました。
[次回授業の予習]
次回の授業では、酵母と乳酸菌という二つの代表的な発酵微生物について学びます。酵母は糖を分解してアルコールと二酸化炭素を生み出す「アルコール発酵」を行い、パンを膨らませたりワインやビールのアルコール成分をつくり出したりします。乳酸菌は糖を分解して乳酸をつくる「乳酸発酵」を行い、ヨーグルトや漬物に酸味を与えると同時に、pHを下げることで雑菌の増殖を防ぎ、保存性を高めます。
これらの発酵は食品の風味や保存に役立つだけでなく、人間の健康にもつながります。特に乳酸菌は腸内環境を整える「善玉菌」として知られ、近年はプロバイオティクスとして注目されています。酵母と乳酸菌のはたらきを理解することで、自然界の代謝と私たちの食文化、そして健康とのつながりを実感できるでしょう。授業では、パン・ワイン・ヨーグルト・漬物といった具体的な食品を取り上げ、微生物利用の広がりを考えます。
3
酵母と乳酸菌の大量培養(個人レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物利用学」の中で、麹菌に続いて具体的な発酵微生物を取り上げる重要な学習段階に位置付けられる。酵母によるアルコール発酵、乳酸菌による乳酸発酵は、人類の歴史において最も早く利用されてきた発酵技術であり、パンやワイン、ヨーグルト、漬物など、現代の食生活にも欠かせない食品の基盤をなしている。
本コマでは、酵母と乳酸菌が行う代謝の仕組みを理解するとともに、その結果生じるアルコール、二酸化炭素、乳酸の役割を食品の風味、保存性、健康効果と関連付けて学ぶ。これにより、微生物の代謝と人間の文化的・社会的営みがどのように結びついてきたのかを体系的に把握することを目的とする。
この内容は、次回の「アミノ酸や有機酸の発酵生産」といった産業的な応用へとつながる基礎知識を形成するものであり、発酵産業や食品科学を学ぶうえで不可欠な土台となる。(難易度:★ 基礎的内容)
1.アルコール発酵
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 進藤 斉(編)「発酵と醸造のいろは」(NTS、2017年)」、「第1編、第3章:アルコール発酵」p.85-88
3) みんなの発酵BLEND presented by カルピス「酵母とは」 (https://www.hakko-blend.com/study/b_02.html)
2.乳酸発酵
4) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
5) 根岸晴夫(編)「発酵と醸造のいろは」(NTS、2017年)」、「第1編、第3章:乳酸発酵」p.89-98
6) みんなの発酵BLEND presented by カルピス「乳酸菌とは」 (https://www.hakko-blend.com/study/b_03.html)
3.食品例
7) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
8) 柳田藤寿(編)「発酵と醸造のいろは」(NTS、2017年)」、「第2編、第2章:ワイン」p.137-143
9) 堀内啓史(編)「発酵と醸造のいろは」(NTS、2017年)」、「第2編、第13章:乳製品/乳酸菌飲料」p.299-310
10) 島 純(編)「発酵と醸造のいろは」(NTS、2017年)」、「第2編、第15章:その他の発酵食品」p.337-344
コマ主題細目
① アルコール発酵 ② 乳酸発酵 ③ 食品例― 発酵がつなぐ食と文化 ―
細目レベル
① (酵母による糖分解 → アルコール・二酸化炭素)
酵母は、微生物の中でも特に人間の生活に古くから利用されてきた存在です。その代表的なはたらきが「アルコール発酵」です。酵母は糖を分解してエネルギーを得る過程で、アルコール(エタノール)と二酸化炭素を生み出します。パンづくりでは、この二酸化炭素が生地の中に気泡をつくり、ふわふわに膨らませる役割を果たします。また、清酒やワイン、ビールといった酒類のアルコール成分は、酵母がつくり出したエタノールによって生まれます。アルコールは保存性を高める効果もあり、古くから食品の長期保存に役立ってきました。さらに発生する二酸化炭素は、炭酸飲料やスパークリングワインなどの独特な口当たりにも活用されています。このように酵母のアルコール発酵は、食品の味や香りを豊かにし、さらに社会的・文化的にも大きな役割を担ってきたところまで。
② (乳酸菌による乳糖分解 → 乳酸 → 酸味と保存性)
乳酸菌は、糖を分解して乳酸を生み出す「乳酸発酵」を行う微生物です。代表的には乳糖を分解して乳酸を生成し、食品に酸味を与えると同時に保存性を高めます。ヨーグルトでは乳酸菌が牛乳中の乳糖を分解し、乳酸を生成することで酸味ととろみが生じます。また、乳酸の増加によりpHが下がるため、他の雑菌の繁殖が抑えられ、食品の保存性が高まります。漬物やキムチなどの発酵食品も、乳酸菌が野菜の糖を分解して乳酸を生産することで、さっぱりとした酸味と独特の風味が生まれます。さらに乳酸菌は「善玉菌」として腸内環境を整えるはたらきがあり、健康にも寄与します。このように乳酸発酵は、食品の味や保存性だけでなく、人間の健康にもつながる重要な微生物のはたらきであるところまで。
③ (パン・ワイン・ヨーグルト・その他)
酵母や乳酸菌による発酵は、私たちの食生活に欠かせない食品を生み出してきました。パンでは、酵母のアルコール発酵によって生じる二酸化炭素が生地を膨らませ、ふんわりとした食感を実現します。ワインはブドウに含まれる糖を酵母が分解し、アルコールをつくることで完成します。
一方、ヨーグルトは乳酸菌が乳糖を分解し、乳酸を生み出すことで酸味ととろみを加えています。また、漬物は乳酸菌の働きによって酸味が生じ、同時に保存性が高まります。これらの発酵食品は、単においしいだけでなく、保存性や栄養価の向上、さらには腸内環境の改善など健康面にも役立っています。つまり、酵母と乳酸菌は、食品の風味を豊かにすると同時に、私たちの生活や健康を支える重要なパートナーであるところまで。
キーワード
① アルコール発酵(酵母、エタノール、二酸化炭素) ② 乳酸発酵(乳酸菌、乳糖分解、酸味) ③ 食品保存(pH低下、雑菌抑制、長期保存) ④ 発酵食品(パン、ワイン、漬物) ⑤ 健康効果(腸内環境、善玉菌、栄養価向上)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、酵母と乳酸菌という二つの微生物が行う発酵について学びました。酵母は糖を分解してアルコールと二酸化炭素を生み出す「アルコール発酵」を行います。パンづくりでは、この二酸化炭素によって生地が膨らみ、ふんわりとした食感が生まれます。また、ワインやビール、日本酒といった酒類のアルコール成分も酵母のはたらきによるものです。
一方、乳酸菌は糖を分解して乳酸をつくり出す「乳酸発酵」を行います。これによりヨーグルトや漬物などに酸味が加わり、同時に食品の保存性も高まります。さらに乳酸菌は腸内環境を整える「善玉菌」として健康にも寄与します。このように酵母と乳酸菌の発酵は、食品の風味や保存性を向上させるだけでなく、私たちの食文化と健康を支える重要な役割を担っています。
今回の学びを通じて、微生物の代謝が私たちの暮らしとどれほど密接に結びついているかを理解できました。
[次回授業の予習]
次回の授業では、微生物を利用してアミノ酸や有機酸を生産する工業的な発酵について学びます。代表的な例として、グルタミン酸やリジンなどのアミノ酸発酵があります。グルタミン酸は「うま味調味料」として食品産業に広く用いられ、リジンは家畜用飼料の栄養補強に欠かせません。
また、有機酸発酵ではクエン酸や乳酸が重要です。クエン酸は清涼飲料や医薬品に利用され、乳酸は食品加工だけでなく、生分解性プラスチックの原料としても注目されています。これらの発酵生産は、研究室レベルの実験にとどまらず、大型タンクを用いた工業的スケールで行われ、世界的な発酵産業を支えています。
環境にやさしい生産方法としての側面もあり、持続可能な社会に向けた技術として期待されています。授業では、これらの発酵の仕組みと応用を理解し、微生物利用が食品や医薬だけでなく産業全体に広がっていることを学びます。
4
アミノ酸や有機酸の発酵生産(個人レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物利用学」において、基礎的な発酵の理解から工業的応用へと進む学習の転換点を担う内容である。本コマでは、微生物が生産するアミノ酸や有機酸が、食品調味料や飼料添加物として利用されるとともに、医薬品や新素材開発にまで応用されていることを学ぶ。
アミノ酸発酵では、グルタミン酸やリジンを例に、食品のうま味や栄養管理に直結する役割を理解する。有機酸発酵では、クエン酸や乳酸が飲料・保存料・医療分野に加え、生分解性プラスチックといった持続可能な社会に貢献する素材として利用されている点を確認する。さらに、これらの発酵が研究室レベルを超え、大型タンクを用いた工業的スケールで展開され、国際的な発酵産業を形成していることを学ぶ。
この主題は、従来の食品中心の学びをさらに広げ、微生物利用が環境・エネルギー・産業といった社会全体にどのように関わるかを考えるための基礎を与える。したがって、主題4は「微生物利用学」において、基礎から応用へと学習をつなげる橋渡しの役割を果たす。(難易度:★★ 応用的内容)
1.アミノ酸発酵
解説教材「コマ用オリジナル資料」
小泉武夫(編)「発酵食品を楽しむ教科書」(ナツメ社、2023年)」、「発酵の利用」p.48-54
青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第8章 微生物の応用」p.147-154
2.有機酸発酵
解説教材「コマ用オリジナル資料」
青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第8章 微生物の応用」p.139-146
3.工業的スケール
解説教材「コマ用オリジナル資料」
青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第8章 微生物の応用」p.147-154
コマ主題細目
① アミノ酸発酵 ② 有機酸発酵 ③ 工業的スケール
細目レベル
① (グルタミン酸・リジン → うま味調味料・飼料添加物)
微生物を利用したアミノ酸発酵は、現代の食品産業や畜産業を支える重要な技術です。代表例がグルタミン酸とリジンの大量生産です。グルタミン酸は、コリネ型細菌と呼ばれる微生物によって糖を分解させることでつくられ、うま味調味料(いわゆる「味の素」)として広く利用されています。グルタミン酸は昆布だしにも含まれる天然のうま味成分ですが、発酵技術によって安定的かつ大量に供給できるようになりました。
一方、リジンは必須アミノ酸のひとつで、人間や家畜の体では合成できません。そのため発酵によるリジン生産は、特に家畜用の飼料添加物として欠かせない存在です。リジンを飼料に加えることで、栄養バランスが改善され、畜産の効率が大きく向上しました。このようにアミノ酸発酵は、人間の食文化と家畜の栄養管理の両方に深く関わっており、微生物利用の代表的な成功例まで。
② (クエン酸・乳酸 → 飲料・医薬・食品加工)
アミノ酸と並んで有機酸の発酵生産も、食品や医薬、工業において広く利用されています。代表的なのがクエン酸と乳酸です。クエン酸はカビの一種であるアスペルギルス属の微生物を用いた発酵で大量に生産され、清涼飲料の酸味料、食品の保存料、医薬品のpH調整剤など、多用途に使われています。乳酸は乳酸菌によって糖が分解されて生じる有機酸で、ヨーグルトや漬物など食品の酸味に関わるだけでなく、工業的には乳酸発酵を利用して乳酸を大量生産し、生分解性プラスチック(ポリ乳酸)の原料としても注目されています。
また、医療現場では点滴や薬剤の安定化剤としても活用されています。このように有機酸の発酵生産は、私たちの食生活を豊かにするとともに、持続可能な新素材の開発や医療の分野にまで広がっているところまで。
③ (大型タンク培養・世界的発酵産業)
アミノ酸や有機酸の発酵は、研究室レベルの実験にとどまらず、大規模な工業生産に発展しています。工場では大型の発酵タンクを用い、数万リットル規模で微生物を培養し、アミノ酸や有機酸を安定的に生産しています。こうした工業的発酵は、滅菌や温度管理、酸素供給などを精密にコントロールする必要があり、高度なバイオテクノロジーの知識と技術が集約されています。日本は発酵産業の先進国のひとつであり、グルタミン酸やクエン酸の生産技術は世界に輸出され、国際的な産業競争力を持っています。
また、環境にやさしい生産方法としても注目され、石油化学に依存しない持続可能な資源循環型の産業モデルとして期待されています。発酵によるアミノ酸・有機酸生産は、食品や医薬品だけでなく、エネルギー・素材産業にも影響を与える、現代社会を支える基幹技術のひとつであるところまで。
キーワード
① アミノ酸発酵(グルタミン酸、リジン、必須アミノ酸) ② 有機酸発酵(クエン酸、乳酸、生分解性プラスチック) ③ 応用利用(食品調味料、飼料添加物、医薬品) ④ 工業的生産(大型タンク、温度管理、酸素供給) ⑤ 発酵産業(日本の技術、国際展開、持続可能性)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、微生物を利用したアミノ酸や有機酸の発酵生産について学びました。まず、アミノ酸発酵では、コリネ型細菌を用いてグルタミン酸やリジンを大量に生産できることを確認しました。グルタミン酸はうま味調味料として食品産業を支え、リジンは必須アミノ酸として飼料添加物に利用され、畜産の生産性を大きく高めています。次に、有機酸発酵ではクエン酸や乳酸の例を学びました。
クエン酸は飲料や医薬品、保存料として活用され、乳酸はヨーグルトや漬物の酸味に加え、生分解性プラスチックの原料としても注目されています。さらに、これらの発酵は大型の培養タンクを使った工業的規模で行われ、世界的な発酵産業を形成しています。今回の学びを通して、微生物の代謝が食品や健康分野だけでなく、工業・環境・資源循環といった広い分野に応用されていることを理解する。
[次回授業の予習]
これまでの授業では、麹菌・酵母・乳酸菌といった代表的な発酵微生物の特徴や、食品生産への利用方法を学んできました。今回の授業では、それらを一度整理し、日常生活と工業的発酵を結びつける「小まとめ」を行います。私たちの家庭で日常的に口にしている味噌や醤油、パン、ヨーグルト、ワイン、ビールなどは、いずれも微生物の分解や発酵の力によって生み出されたものです。しかし、これらは単なる家庭料理にとどまらず、工場規模で大量に生産され、社会全体を支える発酵工業へと発展しています。また、微生物の利用は食品だけではなく、医薬品や化学品の生産にも広がっており、抗生物質、アミノ酸、クエン酸や乳酸など、多様な物質が工業的に生産されています。さらに麹菌・酵母・乳酸菌はいずれも「分解者」として共通の役割を持ち、原料を分解して新たな物質を生み出すという点で家庭と産業を結びつけています。授業では、この共通性と広がりを意識し、微生物利用の全体像を俯瞰(ふかん)できることを理解する。
5
日常生活とつながる工業的発酵(個人レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物利用学」において、前半で学んできた麹菌・酵母・乳酸菌の基礎的な知識を整理し、日常生活と工業的発酵をつなげる役割を担う。味噌や醤油、パン、ヨーグルト、ワイン、ビールなどの家庭で身近な発酵食品と、発酵工業による大規模生産の仕組みとを結び付け、微生物利用が生活と産業の両面で果たす重要性を理解することを目的とする。
また、食品分野にとどまらず、抗生物質・アミノ酸・有機酸など、医薬品や化学品への応用へと広がる流れを学び、微生物利用の多様性と社会的意義を俯瞰する。さらに、麹菌・酵母・乳酸菌に共通する「分解と生成」という視点を通じて、家庭での食品生産から産業規模の工業発酵まで一貫した原理が働いていることを確認する。
この主題は、基礎的な発酵微生物の理解をまとめ、応用的な工業発酵や持続可能な社会への展開へと学びをつなげる橋渡しとして位置付けられる。(難易度:★★ 基礎から応用への移行段階)
1.家庭と産業のつながり
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第5章 役に立つ微生物たち p.107-117
3) 小泉武夫(編)「発酵食品を楽しむ教科書」(ナツメ社、2023年)」、「麹」p.89-96
4) 宮尾茂雄(編)「発酵と醸造のいろは」(NTS、2017年)」、「第1編、第2章:麹菌」p.41-52
5) 進藤 斉(編)「発酵と醸造のいろは」(NTS、2017年)」、「第2編、第1章:日本酒」p.121-200
2.微生物利用の広がり
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 森永 康(編)「発酵と醸造のいろは」(NTS、2017年)」、「第2編、第10章:うま味調味料」p.237-250
3) 小泉武夫(編)「発酵食品を楽しむ教科書」(ナツメ社、2023年)」、「発酵の利用」p.48-54
4) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第8章 微生物の応用」p.147-154
5) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第8章 微生物の応用」p.139-146
3.分解者としての共通性
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第3章 微生物の種類 p.39-55、第4章 地球環境の微生物たち p.57-106
3) 左巻健男(編)「身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本」(明日香出版社、2019年)」、Lesson 4. 「分解者」としての微生物 p.56-62
コマ主題細目
① 家庭と産業のつながり ② 微生物利用の広がり ③ 分解者としての共通性
細目レベル
① (調味料・飲料・発酵食品 → 発酵工業へ)
私たちの家庭で日常的に使っている味噌、醤油、パン、ヨーグルト、ワイン、ビールなどの発酵食品は、いずれも微生物の力によって生み出されています。これらは「家庭の味」として親しまれてきましたが、その背景には大規模な産業技術としての発酵工業が存在します。例えば、味噌や醤油は麹菌による分解作用を基盤とし、清酒やビール、ワインは酵母のアルコール発酵によって成り立っています。
これらの食品は伝統的な家庭調理から始まりましたが、近代以降は工場規模での生産が確立され、安定供給と品質管理が可能になりました。さらに発酵による調味料や飲料は、国内だけでなく世界に輸出され、日本の食文化を支える産業として発展しています。このように、家庭で使う身近な発酵食品と、社会全体を支える発酵工業とは切り離せないつながりを持っているところまで。
② (食品 → 医薬品・化学品へ)
微生物の利用は、食品分野にとどまらず、医薬品や化学工業の分野へと広がっています。たとえば抗生物質は、カビや放線菌などがつくる二次代謝産物を利用して発見され、現代医療を支える必須の医薬品となりました。また、微生物を利用したアミノ酸発酵では、グルタミン酸が調味料に、リジンが飼料添加物に利用され、食文化や畜産業に大きな影響を与えています。
さらに有機酸発酵で生産されるクエン酸や乳酸は、飲料や食品の保存料としてだけでなく、医薬品の安定化剤や生分解性プラスチックの原料としても利用されています。このように微生物利用の範囲は、食品から医療、そして環境配慮型の新素材産業へと大きく拡大しています。つまり、微生物は「食べ物をつくる存在」というだけではなく、健康や産業全体を支える基盤として広く社会に組み込まれているところまで。
③ これまで学んできた麹菌、酵母、乳酸菌はいずれも「分解者」として共通の役割を担っています。麹菌はデンプンやタンパク質を分解する酵素をつくり、糖やアミノ酸を生み出します。酵母はその糖を利用してアルコール発酵を行い、乳酸菌は糖を乳酸に変えて酸味と保存性を与えます。つまり、それぞれの微生物が役割を分担しながら、食べ物の風味や保存性を高め、私たちの生活を支えてきました。
そして、この「分解と生成」という基本的なはたらきは、工業的な発酵プロセスにも共通しています。大型タンクで行われるアミノ酸や有機酸の生産も、原料を微生物が分解し、新たな物質を生み出す仕組みに基づいています。この視点で見ると、家庭の食卓に並ぶ発酵食品と、産業規模で生産される化学品や医薬品は、一見異なるようでありながら、「分解者としての微生物」という共通のキーワードでつながっているところまで。
キーワード
① 家庭と産業(調味料、飲料、発酵食品) ② 発酵工業(大量生産、品質管理、輸出) ③ 応用分野(食品、医薬品、化学品) ④ 共通性(麹菌、酵母、乳酸菌) ⑤ 社会的意義(健康、環境、持続可能性)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、これまで学んできた麹菌・酵母・乳酸菌のはたらきを整理し、日常生活と工業的発酵のつながりについて振り返りました。まず、味噌や醤油、パン、ヨーグルト、ワインやビールといった身近な発酵食品は、家庭の食卓で親しまれると同時に、工場規模で大量生産される発酵工業と直結していることを確認しました。次に、微生物利用は食品分野にとどまらず、抗生物質やアミノ酸、クエン酸や乳酸といった有機酸の生産など、医薬品や化学品へと広がっていることを学びました。
さらに、麹菌・酵母・乳酸菌はいずれも「分解者」として原料を小さな分子に変え、新しい物質を生み出すという共通点を持ち、これは工業的な発酵プロセスにも通じています。今回のまとめを通じて、家庭と産業、食品と医薬、自然と社会が、微生物を軸にして一つの大きな循環としてつながっていることを理解できました。
[次回授業の予習]
次回の授業では、生ごみや落ち葉を堆肥として再利用する「コンポスト」の仕組みを学びます。堆肥化の中心となるのは、好気性微生物による有機物の分解です。細菌は糖やアミノ酸といった比較的分解しやすい物質を処理し、分解の初期段階を担います。この活動によって温度が上昇し、病原菌や雑草の種子が死滅する効果もあります。さらに放線菌はセルロースやリグニンといった分解しにくい成分を処理し、堆肥に特有の土の香りを生み出します。カビ(糸状菌)は強力な酵素を分泌してデンプンやタンパク質を分解し、他の微生物と協力しながら堆肥化を進めます。
こうした複数の微生物の協働によって、生ごみや落ち葉は黒褐色の栄養豊富な堆肥へと変わります。授業では、家庭用コンポストや学校での落ち葉堆肥づくりといった身近な事例を取り上げ、微生物の働きを実感的に学びます。堆肥づくりの理解は、資源循環や持続可能な社会づくりを考える第一歩となります。
6
堆肥とコンポスト ― 生ごみを分解する微生物(社会レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物利用学」において、微生物の基礎的な代謝や発酵利用を踏まえ、それを社会規模での資源循環や環境保全に結びつけて考える段階に位置付けられる。本コマでは、堆肥やコンポストの分解プロセスを通して、微生物が有機物を分解し、再び自然の循環に戻す仕組みを理解する。
さらに、細菌・放線菌・カビといった異なる微生物が役割を分担し、協働して有機物を処理する「チームプレー」の重要性を学ぶ。この知識をもとに、家庭用コンポストや学校での落ち葉堆肥といった身近な実例を取り上げ、循環型社会の実践に直結する活動として位置付ける。
この主題は、微生物利用を食文化や産業応用からさらに拡張し、地域社会や環境教育と関連付けて考える視点を養うものである。したがって、主題6は「微生物利用学」において、学問的理解を社会的実践へと橋渡しする応用的な学習段階として重要な役割を果たす。(難易度:★★ 応用的内容)
1.堆肥を作る微生物
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第4章 地球環境の微生物たち p.57-106、第5章 役に立つ微生物たち p.107-170
3) 左巻健男(編)「身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本」(明日香出版社、2019年)」、Lesson 4. 「分解者」としての微生物 p.56-62
2.働く主役・微生物(細菌・放線菌・カビの役割)
4) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
5) 山里一英(編)「微生物の分離法」(R&Dプランニング、2001年)、第4章 植物材料 p.193-198
3.身近な実例(家庭用コンポスト・学校の落ち葉堆肥)
6) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
7) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第5章 役に立つ微生物たち p.107-170
コマ主題細目
① 分解プロセス ② 働く主役・微生物 ③ 身近な実例
細目レベル
① 堆肥やコンポストの基本となるのは、好気性微生物による有機物分解です。家庭から出る生ごみや落ち葉などは、炭水化物・タンパク質・脂質といった有機物を多く含んでいます。これらを好気性の細菌やカビなどが分解すると、まず糖やアミノ酸などの小さな分子に分かれます。その後、さらに代謝されて二酸化炭素や水、無機物へと変化します。
この過程では発熱が起こり、堆肥の内部温度は50〜70℃程度に達することがあります。これにより雑草の種子や病原菌が死滅し、衛生的な処理が可能になります。分解が進むと、元の生ごみや落ち葉は姿を変え、土のような黒褐色の物質「堆肥」となります。堆肥は栄養源を豊富に含み、植物の肥料として再利用できるため、自然の物質循環を小さな規模で再現する仕組みであるところまで。
② 堆肥やコンポストの分解を進める主役は、多様な好気性微生物です。まず細菌は分解の初期段階で働き、糖やアミノ酸などの分解を担います。分解の速度が速く、堆肥の温度を上昇させる重要な役割を持ちます。次に放線菌が登場します。放線菌は糸状の菌体を持ち、セルロースやリグニンなど分解しにくい植物成分を処理する能力に優れています。また、堆肥が熟成する過程で特有の土の香りをつくり出すのも放線菌です。
さらにカビ(糸状菌)は、強力な酵素を分泌してデンプンやタンパク質を分解し、分解産物を他の微生物と共有します。これらの微生物は互いに役割を分担しながら活動し、複雑な有機物を少しずつ分解して堆肥へと変えていきます。つまり、堆肥づくりは細菌・放線菌・カビの「チームプレー」によって成り立っているところまで。
③ 堆肥やコンポストは、私たちの身近な暮らしの中でも実践されています。家庭用コンポストでは、生ごみをバケツ型や回転式の容器に入れ、微生物が働きやすいように空気を取り込みながら分解を進めます。適度な水分と温度が保たれることで分解がスムーズに進み、数か月で肥料として利用可能な堆肥が得られます。また、学校や地域活動では落ち葉を集めて「落ち葉堆肥」をつくる取り組みが行われています。落ち葉はセルロースやリグニンを多く含むため分解に時間がかかりますが、放線菌やカビの働きによって、やがて栄養豊富な堆肥に変わります。
こうした活動は環境教育の一環としても有効であり、自然の物質循環を体験的に学ぶことができます。家庭や学校での堆肥づくりは、資源を無駄にせず再利用する「循環型社会」の実践例であるところまで。
キーワード
① 分解プロセス(有機物、好気性分解、発熱) ② 細菌の役割(初期分解、糖・アミノ酸、温度上昇) ③ 放線菌の役割(セルロース、リグニン、土の香り) ④ カビの役割(酵素分泌、デンプン分解、タンパク質分解) ⑤ 身近な実例(家庭用コンポスト、落ち葉堆肥、循環型社会)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、生ごみや落ち葉を堆肥化する際に働く微生物の役割について学びました。堆肥化のプロセスは、好気性微生物による有機物の分解が基本です。細菌は初期段階で糖やアミノ酸などを素早く分解し、発熱によって堆肥の温度を上昇させます。これにより雑草の種子や病原菌が死滅し、衛生的な分解が進みます。次に放線菌がセルロースやリグニンといった難分解性の成分を処理し、熟成した堆肥特有の土の香りを生み出します。
さらにカビ(糸状菌)はデンプンやタンパク質を酵素で分解し、他の微生物と協力しながら堆肥化を完成させます。こうした微生物の「チームプレー」によって、生ごみや落ち葉は黒褐色で栄養豊富な堆肥へと変わり、植物の成長に役立つ資源となります。家庭用コンポストや学校の落ち葉堆肥づくりは、こうした仕組みを身近に体験できる実例であり、資源循環や持続可能な社会づくりの実践につながることを理解しました。
[次回授業の予習]
次回の授業では、植物と微生物の共生関係に注目し、根粒菌と菌根菌のはたらきを学びます。根粒菌はマメ科植物の根に感染して「根粒」と呼ばれる組織を形成し、大気中の窒素をアンモニアに変える「窒素固定」を行います。植物はこの窒素を栄養源として利用し、根粒菌には光合成で得られた炭素化合物を供給します。つまり、双方が利益を得る「相利共生」の関係が成り立っているのです。
一方、菌根菌は植物の根に共生し、菌糸を土壌中に広げてリンやミネラルを効率的に吸収させます。さらに乾燥や塩害など環境ストレスへの耐性を高め、植物の生育を助けます。こうした微生物との共生は、枝豆や大豆といったマメ科植物、さらには麦類やトウモロコシなど、私たちの食卓にも身近な作物に深く関わっています。授業では、微生物と植物の協力関係について具体例を通して理解し、農業や食文化における意義を考えます。
7
植物との共生 ― 根粒菌と菌根菌(社会レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物利用学」において、微生物の基礎的な代謝や分解作用を踏まえ、植物との共生関係という新たな利用形態に視野を広げる学習段階に位置付けられる。本コマでは、根粒菌による窒素固定や菌根菌によるリン吸収といった生態学的な機能を理解し、微生物が作物の栄養吸収や環境適応を支える仕組みを学ぶ。
さらに、枝豆や大豆などのマメ科植物、麦類やトウモロコシといった私たちの食卓に身近な作物を例に取り上げ、微生物との共生が農業生産や食文化に直結していることを実感する。本コマは、微生物利用を食品や工業分野から農業・環境分野へと広げ、持続可能な農業や資源循環を考える基礎を提供する。
したがって、主題7は「微生物利用学」において、自然界での共生関係とその応用を理解し、農業と食文化を支える微生物の役割を学ぶ応用的な位置付けにある。(難易度:★★ 基礎から応用への橋渡し)
1.窒素固定の仕組み
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第9章 微生物の生態と地球化学的物質循環への寄与」p.171-183
3) 微子絵物のはなし(https://www.sakaegreen.com/topic5_sg.htm)
2.菌根菌の役割
4) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
5) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第4章 微生物の種類 p.57-80
3.身近な作物
6) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
7) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第5章 役に立つ微生物 p.57-80
8) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第9章 微生物の生態と地球化学的物質循環への寄与」p.171-183
9) 根粒菌(秋田県立大生物環境科学科:https://www.akita-pu.ac.jp/oshirase/oshirase2007/505)
10) 菌根菌(セイコーエコロジア:https://ecologia.100nen-kankyo.jp/column/single145.html)
コマ主題細目
① 窒素固定の仕組み ② 菌根菌の役割 ③ 身近な作物
細目レベル
① (根粒菌が大気窒素をアンモニアに変える)
植物が成長するためには窒素が欠かせませんが、空気中に多く含まれる窒素(N₂)は非常に安定した分子であり、そのままでは植物は利用できません。ここで重要な役割を果たすのが、マメ科植物の根に共生する根粒菌です。根粒菌は根に感染して「根粒」と呼ばれるこぶのような組織をつくり、その中で窒素固定という反応を行います。
窒素固定とは、大気中の窒素分子をアンモニア(NH₃)に変換する働きであり、このアンモニアが植物の成長に利用できる形の窒素源となります。根粒菌はこの過程で多くのエネルギーを必要としますが、宿主である植物が光合成で得た炭素化合物を提供することで共生が成り立っています。こうして植物は窒素肥料を外部から与えられなくても自ら栄養を確保でき、環境にやさしい生産が可能になります。窒素固定は地球の窒素循環を支える重要なプロセスであり、持続的な農業に不可欠な仕組みであるところまで。
② 植物の根には、根粒菌以外にも「菌根菌」と呼ばれる微生物が共生することがあります。菌根菌は土壌中に広がる菌糸を通じてリンやミネラルを効率よく吸収させる役割を担います。リンは植物の生育に必要不可欠な栄養素ですが、土壌中では溶けにくく、植物が吸収しづらい形で存在しています。菌根菌は菌糸を広げることで吸収可能なリンを効率的に取り込み、植物に供給します。
さらに菌根菌は、乾燥や塩害といった環境ストレスへの耐性を高める効果も持ち、植物が過酷な条件下でも成長できるように助けています。この共生関係によって、植物は栄養吸収能力と環境適応力を強化できるのです。菌根菌は森林生態系でも重要な役割を果たしており、多くの樹木が菌根菌と共生することで豊かな森を維持しています。菌根菌のはたらきは、農業だけでなく、自然環境の保全や再生にも大きく貢献しているところまで。
③ 根粒菌や菌根菌のはたらきは、私たちの身近な作物にも深く関わっています。例えば、枝豆や大豆といったマメ科植物は根粒菌と共生し、窒素固定によって得られる栄養を利用して成長します。そのため窒素肥料を多く与えなくても実をつけることができ、環境負荷の少ない栽培が可能になります。
大豆は味噌や醤油、豆腐など多くの食品の原料であり、私たちの食卓に欠かせない存在です。また、菌根菌は麦類やトウモロコシなどにも共生し、リンの吸収を助けて収量を高めるほか、乾燥した土地でも栽培を可能にします。これらの作物は私たちの食卓にも日常的に並ぶものであり、微生物との共生が食文化や栄養供給の基盤となっていることがわかります。身近な食べ物を通して、微生物と植物が協力し合う仕組みを理解することは、農業や環境における微生物利用の意義を実感する第一歩となるところまで。
キーワード
① 窒素固定(根粒菌、アンモニア、窒素循環) ② 共生関係(光合成産物、栄養供給、相利共生) ③ 菌根菌の役割(リン吸収、ミネラル、ストレス耐性) ④ 森林と農業(樹木共生、土壌肥沃化、収量向上) ⑤ 身近な作物(枝豆・大豆、麦類、トウモロコシ)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、植物と微生物の共生関係について学び、特に根粒菌と菌根菌の役割を確認しました。根粒菌はマメ科植物の根に感染して根粒を形成し、大気中の窒素をアンモニアに変える「窒素固定」を行います。これにより植物は外部から多量の窒素肥料を与えられなくても成長でき、根粒菌は植物から光合成産物を受け取ることで共生関係が成立します。
一方、菌根菌は植物の根と結びつき、菌糸を広げてリンやミネラルを効率的に吸収させるとともに、乾燥や塩害などのストレスへの耐性を高めます。こうした微生物のはたらきは、植物の栄養吸収と環境適応を助け、農業生産に大きな貢献をしています。
身近な例として、枝豆や大豆、麦類やトウモロコシといった作物が挙げられ、私たちの食卓に直結していることも学びました。今回の授業を通じて、微生物と植物の共生が食文化や農業の基盤を支えていることを理解できました。
[次回授業の予習]
次回の授業では、微生物がどのように水や土をきれいにしているのかを学びます。私たちが日常的に使う水は、そのまま排出すると川や海を汚してしまいますが、下水処理場では活性汚泥と呼ばれる微生物の群集が働き、有機物を分解して安全な状態に戻しています。細菌や原生生物、カビなど多様な微生物がチームとして活動し、汚水を二酸化炭素や水に変えるのです。
また、油流出や工場排水のような環境汚染にも微生物は活躍します。油分解菌は油を分解して無害化し、重金属耐性菌は有害な金属を吸着・固定して環境への影響を減らします。さらに、河川や海岸の水質悪化、災害時の浸水による汚染など、身近な問題にも微生物の力は利用されています。今回の授業では、こうした事例を通して微生物が果たす環境浄化の役割を理解し、資源循環や持続可能な社会づくりとの関わりを考えていきます。
8
環境浄化 ― 微生物が水や土をきれいにする(社会レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物利用学」において、これまで学んできた発酵や共生といった微生物の基本的機能をさらに発展させ、環境保全という社会的課題への応用を考える段階に位置付けられる。本コマでは、下水処理における活性汚泥法を中心とした微生物群集の働きや、油分解菌・重金属耐性菌による汚染物質の分解といった事例を通して、微生物が持つ浄化力の多様性を理解する。
さらに、河川や海岸の水質改善、災害時の水質問題といった身近な事例を取り上げ、微生物の活動が生活環境や地域社会の安全と直結していることを実感させる。本コマは、微生物利用を「食」や「農業」から「環境」へと広げて捉える視点を養うとともに、持続可能な社会の実現における微生物の役割を考える基盤を提供する。
したがって、主題8は「微生物利用学」において、微生物の環境応用を体系的に理解し、科学的知識を社会的課題の解決に結び付ける応用的な学習段階として位置付けられる。(難易度:★★ 応用的内容)
1.下水処理のしくみ
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第10章 微生物の環境保全への利用:微生物を用いる環境保全の仕組み」p.188-192
2.油や有害物質の分解
3) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
4) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第10章 微生物の環境保全への利用:環境保全・浄化と微生物」p.185-187
3.身近なつながり
5) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
6) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第10章 微生物の環境保全への利用:バイオレメディエーション」p.185-187
コマ主題細目
① 下水処理のしくみ ② 油や有害物質の分解 ③ 身近なつながり
細目レベル
① 活性汚泥と微生物群集)
私たちの生活から出る下水は、そのままでは川や海を汚染し、環境や健康に悪影響を与えます。これをきれいにするために活躍しているのが「活性汚泥法」と呼ばれる下水処理の仕組みです。活性汚泥とは、微生物が集まったフロック(塊)のことで、水中の有機物を分解・除去する働きを持っています。細菌や原生生物、糸状菌など多様な微生物が共存し、チームワークで有機物を二酸化炭素や水に分解します。処理槽では酸素を供給して好気性微生物を活発に活動させ、水を循環させることで分解が効率的に進みます。
処理後の水は沈殿池で固形物を取り除かれ、再び自然に戻されます。活性汚泥法は都市部の下水処理場で広く使われており、微生物の力が公衆衛生と環境保全を支えています。このしくみを理解することは、日常生活と環境浄化の密接なつながりを知る第一歩となるところまで。
② (油分解菌・重金属耐性菌)
微生物は食品や有機物だけでなく、環境汚染物質の分解にも大きな役割を果たします。例えば、油の流出事故が起きた際には「油分解菌」と呼ばれる微生物が活躍します。これらの菌は油分をエネルギー源として利用し、炭化水素を分解して二酸化炭素や水へと変えることができます。また、工場排水などに含まれる有害物質の浄化にも微生物が利用されます。特に「重金属耐性菌」と呼ばれる細菌は、金属イオンを吸着したり無害化する能力を持ち、環境中の毒性を減らすことに貢献しています。
こうした微生物は自然界に存在するものもあれば、研究開発によって能力が強化されたものもあります。油や有害物質の分解は、災害時や産業活動による環境汚染を緩和するうえで不可欠な技術です。微生物の分解力は、汚染された環境を再生し、持続可能な社会を築くうえで欠かせない存在であるところまで。
③ 微生物による環境浄化は、私たちの日常生活や社会活動とも密接に関わっています。例えば、河川や湖沼、海岸の水質は下水や生活排水の影響を受けやすく、富栄養化や水質悪化が問題になります。そこでは下水処理場の微生物群集が大きな役割を果たしており、私たちが安心して水を利用できる環境を支えています。また、油流出事故や大規模災害時の水質汚染でも、微生物による分解が環境回復の手助けとなります。
例えば、東日本大震災後の一部地域では、浸水した土地や排水溝で微生物による水質改善の取り組みが行われました。さらに、学校や地域の河川清掃活動でも「水をきれいにする仕組み」に微生物が関わっていることを学ぶ機会が増えています。このように、環境浄化は身近な生活や地域社会と直結しており、微生物を理解することは環境保全の意識を高めることにつながるところまで。
キーワード
① 下水処理(活性汚泥、微生物群集、酸素供給) ② 油分解(油分解菌、炭化水素分解、環境修復) ③ 有害物質処理(重金属耐性菌、吸着、無害化) ④ 地域環境(河川、湖沼、海岸) ⑤ 災害対応(水質悪化、油流出、復旧支援)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、微生物が環境をきれいに保つ仕組みについて学びました。まず下水処理では、活性汚泥と呼ばれる微生物群集が中心的な役割を果たしていることを確認しました。細菌や原生生物、糸状菌など多様な微生物が有機物を分解し、二酸化炭素や水に変えることで、汚水は安全な状態に戻されます。次に、油流出や工場排水などによる環境汚染への対応として、油分解菌や重金属耐性菌の活躍を学びました。
油分解菌は炭化水素を分解して無害化し、重金属耐性菌は金属イオンを吸着・固定することで水質を改善します。さらに、河川や海岸の水質悪化や災害時の浸水被害においても、微生物の分解力が環境回復に役立つことを理解しました。今回の学びを通じて、微生物が家庭や都市、さらには災害対応においても欠かせない存在であり、持続可能な社会を支える基盤であることを実感できました。
[次回授業の予習]
次回の授業では、農業における微生物利用の応用例として、発酵飼料とバイオ農薬について学びます。まず発酵飼料の代表であるサイレージは、刈り取った牧草やトウモロコシを空気遮断下で保存し、乳酸菌の発酵によって腐敗を防ぎながら栄養価を安定化させた家畜用飼料です。これにより年間を通じた安定供給が可能となり、畜産の効率を高めます。次に、害虫防除に用いられる微生物農薬の代表がBT剤です。BT菌が産生するタンパク質は特定の害虫幼虫だけに作用し、人や家畜、益虫には無害であるため、環境にやさしい農薬として利用されています。
さらに、こうした微生物利用は単なる技術にとどまらず、化学肥料や化学農薬への依存を減らし、環境負荷を軽減する「持続可能な農業」への転換を後押しします。授業では、発酵飼料やバイオ農薬の仕組みと効果を理解し、微生物の力がこれからの農業にどのように貢献できるのかを考えます。
9
農業応用 ― 発酵飼料とバイオ農薬(社会レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物利用学」において、環境浄化に続き、微生物利用を農業生産の現場に結びつける学習段階に位置付けられる。本コマでは、発酵飼料やバイオ農薬の事例を通じて、微生物が畜産や作物栽培を支える仕組みを理解し、農業の効率化と環境負荷の軽減の両立を考える。
具体的には、乳酸菌を利用した発酵飼料(サイレージ)が家畜の安定的な栄養供給を可能にすること、BT菌を中心とした微生物農薬が化学農薬に代わる害虫防除手段となることを学ぶ。これらの技術は、持続可能な農業の実現に直結しており、農業分野における微生物利用の社会的意義を示すものである。
本コマは、微生物を「食」や「環境」にとどまらず「農業社会の持続可能性」という文脈で捉える視点を育てる役割を担う。したがって、主題9は「微生物利用学」において、学んだ知識を社会レベルの課題解決に応用するための重要な橋渡しとなる。(難易度:★★ 応用的内容)
1.発酵飼料(サイレージ)
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 左巻健男(編)「身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本」(明日香出版社、2019年)」、Lesson 4. 「分解者」としての微生物 p.56-62
2.微生物農薬(BT剤など)
3) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
4) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第8章 微生物の応用」p.139-180
5) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第5章 役に立つ微生物 p.107-170
3.持続可能な農業
6) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
7) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第8章 微生物の応用」p.139-180
8) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第5章 役に立つ微生物 p.107-170
コマ主題細目
① 発酵飼料(サイレージ) ② 微生物農薬(BT剤など) ③ 持続可能な農業
細目レベル
① (乳酸菌が作る保存性と栄養価)
発酵飼料、特にサイレージは、微生物利用の代表的な農業応用です。サイレージとは、牧草やトウモロコシなどを刈り取った後、空気を遮断して貯蔵し、乳酸菌による発酵を利用して保存性を高めた飼料のことです。サイロやビニールラップに密閉された牧草の中では酸素が不足し、乳酸菌が糖を分解して乳酸を生成します。この乳酸が環境を酸性に保ち、腐敗菌やカビの増殖を抑えるため、長期間保存できる高品質の飼料が得られます。
また、乳酸発酵の過程で栄養価が安定し、家畜にとって消化吸収しやすい状態になります。サイレージは、気候条件に左右されやすい生草の代わりに、年間を通じて安定した飼料供給を可能にし、畜産の効率を高めています。この仕組みは、微生物の保存力と分解力を巧みに利用したものであり、農業における微生物の恩恵を最も身近に示す実例のひとつであるところまで。
② (害虫防除に利用される細菌)
化学農薬に依存しない害虫防除の方法として注目されているのが、微生物農薬です。代表的なものに、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis、略してBT菌)を利用した製剤があります。BT菌は芽胞形成期に結晶性タンパク質を生産し、これを摂取した害虫の幼虫は腸で毒素により麻痺し、最終的に死に至ります。この毒素は特定の害虫にのみ作用するため、人間や家畜、益虫には無害とされています。そのためBT剤は、環境や生態系への影響が少ない「選択性の高い農薬」として広く利用されています。
また、BT菌以外にも放線菌やウイルスを利用した微生物農薬の研究・実用化が進んでいます。これらは化学農薬に代わる安全で持続的な害虫防除手段として注目されており、微生物の多様な可能性を示しているところまで。
③ 現代農業は大量の化学肥料や農薬に依存してきましたが、その結果として土壌劣化や環境汚染、生態系への悪影響が問題視されています。これに対して、微生物を活用する技術は「持続可能な農業」を実現するための鍵と考えられています。発酵飼料によって畜産を効率化し、微生物農薬によって環境にやさしい害虫防除を行うことは、農業の環境負荷を軽減する具体的な方法です。
さらに、根粒菌や菌根菌を利用した作物栽培、堆肥やコンポストの活用など、微生物利用は農業のあらゆる場面で広がっています。これらの取り組みは、化学肥料や農薬の使用量を減らすだけでなく、資源循環や生態系保全にもつながります。持続可能な農業は地球規模で求められる課題であり、微生物の力を活かすことがその解決策のひとつであるところまで。
キーワード
① 発酵飼料(サイレージ、乳酸菌、保存性) ② 栄養価(消化吸収、安定化、家畜成長) ③ 微生物農薬(BT菌、選択性、環境負荷低減) ④ 害虫防除(幼虫作用、益虫保護、安全性) ⑤ 持続可能農業(化学肥料削減、資源循環、生態系保全)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、農業における微生物利用の応用として、発酵飼料とバイオ農薬について学びました。発酵飼料の代表であるサイレージは、乳酸菌の働きによって草やトウモロコシを長期保存できるようにした飼料であり、酸性環境によって腐敗菌の増殖を防ぐと同時に、栄養価を安定させて家畜が消化吸収しやすい状態をつくります。これにより、季節に左右されずに安定した飼料供給が可能となり、畜産の効率化に大きく貢献しています。
次に、害虫防除の分野で利用されるバイオ農薬については、BT菌を例に学びました。BT菌が生産するタンパク質は特定の害虫幼虫にのみ作用し、人や家畜、益虫には無害であるため、環境負荷の少ない農薬として注目されています。これらの技術は、従来の化学肥料や化学農薬に依存した農業からの転換を促し、資源循環や環境保全に貢献します。
今回の講義を通じて、微生物利用が持続可能な農業の実現に欠かせない役割を担っていることを理解できました。
[次回授業の予習]
次回の授業では、これまで学んできた発酵、共生、環境浄化、農業応用といった内容を整理し、それらを私たち生活にどう結び付けられるかを考えます。まず、給食や家庭で出る残飯を堆肥化してリサイクルする取り組みは、微生物の分解力を直接活かす身近な実例です。
堆肥は学校菜園や家庭菜園での野菜づくりに利用でき、食べ残しが再び食卓を支える循環を体験することができます。また、農業と環境の関係に目を向ければ、味噌や醤油の原料となる大豆の栽培には根粒菌が関与し、麦やトウモロコシには菌根菌が養分吸収を助けるなど、分解者や共生微生物の働きが「食卓に届くまで」に深く関わっています。
さらに、持続可能な農業や環境保全の視点からは、化学肥料や農薬への依存を減らし、資源循環を進めることが重要です。授業では、これらの知識をまとめ直し、微生物と自分たちの生活・未来社会の接点を改めて確認します。
10
農業・環境と私たち生活の接点を整理(社会レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物利用学」において、これまで学習してきた分解、発酵、共生、環境浄化、農業応用といった内容を総合的に整理する役割を担う。本コマでは、給食残飯のリサイクルや学校菜園における堆肥利用など、私たち自身の生活に身近な事例を取り上げ、微生物の働きと日常生活の結び付きを確認する。
また、農業と環境のつながりを俯瞰し、食卓に届くまでの作物の背後にある分解者や共生微生物の役割を理解することで、微生物が食文化や生活基盤を支えていることを再認識する。さらに、持続可能な農業や環境保全の視点から、化学肥料・農薬への依存を減らす社会的意義を整理し、微生物利用を未来にどう活かすかを考える基盤を形成する。
この主題は、学んだ知識を自らの生活や将来像に結び付ける実践的な意義を持ち、全体学習のまとめとして総括や評価(小テスト)につながる重要な位置付けにある。(難易度:★★ 基礎から応用を整理する発展段階)
1.日常生活との接点
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第4章 地球環境の微生物たち p.57-106、第5章 役に立つ微生物たち p.107-170
3) 左巻健男(編)「身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本」(明日香出版社、2019年)」、Lesson 4. 「分解者」としての微生物 p.56-62
2.農業と環境のつながり
4) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
5) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第9章 微生物の生態と地球化学的物質循環への寄与」p.171-183
6) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第4章 微生物の種類 p.57-80
3.未来に活かす視点
7) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
8) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第8章 微生物の応用」p.139-180、
「第10章 微生物の環境保全への利用:微生物を用いる環境保全の仕組み」p.188-192
9) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第5章 役に立つ微生物 p.107-170
コマ主題細目
① 日常生活との接点 ② 農業と環境のつながり ③ 未来に活かす視点
細目レベル
① (給食残飯のリサイクル、野菜栽培と堆肥)
私たちが普段の生活で出す給食や家庭の残飯は、そのまま廃棄すれば単なるごみとなります。しかし、これを堆肥化すれば資源として再利用することができます。残飯や野菜くずをコンポストに入れると、微生物が有機物を分解し、やがて植物の肥料として使える堆肥に変わります。堆肥は栄養源を豊富に含み、野菜栽培に活用すれば循環型の暮らしが実現します。例えば、給食の残飯を堆肥化し、その堆肥を使って学校菜園で野菜を育て、再び給食で利用する取り組みは、地域や教育現場でも広がりつつあります。
こうした実践は「ごみを減らす」だけでなく、「食べ物を育てる」ことにつながり、日常生活の中で微生物のはたらきを実感できる機会となります。身近な取り組みを通じて、私たちは資源を大切にし、自然と共生する暮らし方を学ぶところまで。
② 私たちの食卓に並ぶ野菜や穀物の背後には、常に微生物のはたらきがあります。堆肥づくりでは、細菌や放線菌、カビといった分解者が落ち葉や残飯を処理し、栄養豊富な土をつくります。そこから育った作物は、さらに根粒菌や菌根菌といった共生微生物の支えを受けながら成長します。これらの植物が収穫され、加工・流通を経て、私たちの食卓に届くのです。つまり、分解者としての微生物の存在は、食の出発点から消費の段階まで一貫して関わっています。
また、下水処理や環境浄化の場面でも微生物が活躍し、農業や生活環境が衛生的に保たれています。こうした視点で見ると、農業と環境は切り離せない関係にあり、微生物はその接点を支える「見えない仲介者」といえます。私たち生活の中で口にする食事も、自然界の微生物の働きによって支えられていることを意識することが大切であることを理解するところまで。
③ これまで学んできた微生物の力は、私たちの未来社会にどう活かせるのでしょうか。その一つが「持続可能な農業」です。発酵飼料やバイオ農薬、堆肥化や共生微生物の利用は、化学肥料や農薬への依存を減らし、環境負荷を軽減する手段となります。さらに、環境浄化に関わる微生物の利用は、水質保全や土壌回復に役立ち、災害時の環境再生にも貢献します。これらはすべて「微生物の分解力や共生力を人間社会に取り入れる」実践例であり、持続可能な社会づくりの基盤をなしています。
私たちの生活に置き換えれば、食べ残しを減らす、リサイクルや堆肥化に参加するなど、小さな行動が未来に直結します。微生物を理解することは、科学の知識にとどまらず、環境保全に向けた主体的な行動につながるのです。授業の学びを、自分たちの暮らしや将来の社会にどう活かすかを考えることが、今後の課題となることを理解するところまで。
キーワード
① 日常生活(給食残飯、リサイクル、家庭菜園) ② 堆肥利用(コンポスト、落ち葉堆肥、土づくり) ③ 農業と環境(分解者、食卓、流通) ④ 持続可能性(農薬削減、資源循環、生態系保全) ⑤ 私たち生活(学校菜園、地域活動、食育)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、これまで学んできた微生物利用の知識を整理し、農業や環境、そして学生生活との接点を確認しました。まず、給食や家庭から出る残飯を堆肥化してリサイクルし、その堆肥を用いて学校菜園や家庭菜園で野菜を育てる活動は、微生物の分解力を生活の中で実感できる例であることを学びました。次に、農業と環境のつながりに目を向け、分解者としての微生物が堆肥や共生関係を通じて作物の成長を支え、その成果が私たちの食卓に届いていることを理解しました。さらに、持続可能な農業や環境保全の観点から、化学肥料や農薬に依存しない農業の重要性を確認しました。これまで扱った堆肥化、発酵飼料、微生物農薬、共生微生物などの知識は、資源循環や生態系の維持に直結しており、未来の社会に活かすべき視点であると学びました。今回のまとめを通じて、微生物の学びが自分たちの生活と社会全体の持続可能性に深く関わっていることを実感しました。
[次回授業の予習]
次回の授業では、微生物を利用したエネルギー生産について学びます。私たちはこれまで、食品や農業、環境浄化といった分野で微生物の力を見てきましたが、今回は「再生可能エネルギー」という未来社会に直結する応用です。まず、嫌気性微生物によるメタン発酵を利用したバイオガスについて扱います。家畜ふん尿や食品残渣、下水汚泥といった廃棄物を原料にし、微生物が分解して発生するメタンを燃料や発電に利用する仕組みです。
次に、酵母を使ってサトウキビやトウモロコシなどからつくられるバイオエタノールを学びます。これは自動車燃料として利用され、カーボンニュートラルの観点から注目されています。ただし食糧との競合や栽培に伴う環境負荷といった課題も存在します。さらに、学校給食の残飯をエネルギーに変える取り組みなど、学生生活に身近な事例も紹介します。授業では、微生物の分解力をどのようにエネルギー資源として活用できるかを考え、持続可能な社会に向けた展望を探ります。
11
バイオエネルギー ― 微生物がガスや燃料を作る(地球レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物利用学」において、農業や環境での微生物利用をさらに発展させ、エネルギー分野における応用を考える段階に位置付けられる。本コマでは、嫌気性微生物によるメタン発酵で得られるバイオガスや、酵母発酵によるバイオエタノールといった事例を通じて、微生物が再生可能エネルギーの担い手となることを学ぶ。
また、学校給食の残飯や地域の有機廃棄物をエネルギー資源へと変える事例を取り上げ、資源循環や廃棄物削減といった社会的課題とのつながりを考える。さらに、バイオエタノールの食糧利用による問題点やセルロース系燃料開発の課題を整理し、技術的・社会的側面を総合的に理解する。
この主題は、微生物利用を「食・環境」から「エネルギー産業」へと拡張して捉える視点を育て、持続可能な社会構築における微生物の役割を学ぶ応用的学習の一環である。(難易度:★★★ 応用的内容)
1.バイオガス
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第3章 微生物の種類 p.39-55、第4章 地球環境の微生物たち p.57-106
3) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)、「第3章 微生物の種類と分類」p.29-53
2.バイオエタノール
4) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
5) ecosmart「バイオエタノールについて」(https://ecosmartfire.mmlproducts.com/pages/bioethanol?srsltid=AfmBOoqmsHFU3bLUFQkh7BD8oJ3GKIG94tlEaJeDiLYDcSpJyXRd390P)
6) 資源エネルギー省(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/bioethanol_01.html)
3.残飯利用
7) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
8) 環境省(https://www.env.go.jp/content/900533526.pdf)
9) 農林水産省(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/kankyo/seisaku/pdf/1example.pdf)
コマ主題細目
① バイオガス ② バイオエタノール ③ 廃棄物利用
細目レベル
① (メタン発酵、嫌気性微生物、再生可能エネルギー)
バイオガスは、嫌気性微生物によるメタン発酵を利用して生み出される再生可能エネルギーのひとつです。嫌気性微生物は酸素のない環境で有機物を分解し、最終的にメタン(CH₄)と二酸化炭素を発生させます。このガスが「バイオガス」と呼ばれ、発電や熱利用に用いられています。バイオガスの原料には、家畜ふん尿、食品残渣、下水汚泥など、廃棄されるはずの有機廃棄物が活用されます。こうして廃棄物をエネルギー資源に変えることができ、環境負荷の低減にも貢献します。
さらに、メタン発酵の過程で残る発酵残渣は肥料として再利用でき、資源循環型の仕組みを実現します。化石燃料に依存しないエネルギー生産として、バイオガスは持続可能な社会の実現に向けた重要な技術です。特に農業地域や食品工場などでは、地産地消のエネルギー源としても期待されていることを理解するところまで。
② (酵母、サトウキビ・トウモロコシ、輸送燃料)
バイオエタノールは、酵母を利用してサトウキビやトウモロコシなどの糖質作物を発酵させ、アルコール(エタノール)を生産する技術です。このエタノールはガソリンと混合して自動車燃料に利用され、二酸化炭素排出量の削減に貢献しています。ブラジルやアメリカではサトウキビやトウモロコシ由来のバイオエタノールが大規模に生産され、輸送エネルギーの重要な一部を担っています。
バイオエタノールは「植物が光合成で吸収した二酸化炭素を原料にしている」点で、燃焼時に二酸化炭素を出してもカーボンニュートラルと見なされます。一方で、食糧作物を燃料に利用することによる食糧価格への影響や、栽培に必要な肥料・水の環境負荷が課題として指摘されています。そこで現在は、セルロース系バイオエタノールなど、非食用資源を活用する新しい技術開発が進められていることを理解するところまで。
③ (給食残飯、廃棄物削減、地域循環)
学校給食や家庭から出る残飯は、従来であれば焼却や埋立処分されてきました。しかし、近年は微生物を利用してエネルギーや肥料に変換する取り組みが広がっています。例えば、給食残飯を嫌気性発酵させてバイオガスを取り出し、発電や給湯に利用する方法があります。さらに発酵残渣は肥料として地域の農業に還元でき、食べ物の「廃棄」が「資源」へと循環します。このような残飯利用は、廃棄物処理コストの削減や温室効果ガス排出の抑制にも効果があります。
また、地域で出た残飯を地域でエネルギーや肥料に変え、再び地域の農業や学校給食に活用する「地域循環型モデル」として注目されています。学生にとっても、給食の残飯がエネルギーに変わるプロセスを学ぶことは、微生物利用の身近な可能性を理解する良い機会となります。こうした取り組みは、持続可能な社会を築くうえで重要な一歩であることを理解するところまで。
キーワード
① バイオガス(メタン発酵、嫌気性微生物、再生可能エネルギー) ② 発酵残渣(肥料利用、資源循環、廃棄物削減) ③ バイオエタノール(酵母、糖質作物、輸送燃料) ④ 技術課題(食糧利用、環境負荷、セルロース系開発) ⑤ 残飯利用(給食残飯、地域循環、地産地消)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、微生物を利用してガスや燃料をつくる「バイオエネルギー」について学びました。まず、嫌気性微生物によるメタン発酵で生まれるバイオガスは、家畜ふん尿や食品残渣、下水汚泥などを原料とし、再生可能エネルギーとして発電や熱利用に活用できることを確認しました。さらに、発酵の過程で残る発酵残渣は肥料として利用でき、資源循環の仕組みに組み込まれていることも理解しました。
次に、酵母による発酵で生産されるバイオエタノールは、ガソリン代替燃料として広く使われており、カーボンニュートラルの観点から注目されています。ただし、食糧作物を利用することによる食糧問題や環境負荷といった課題もあるため、セルロース系原料を用いる新技術の必要性が示されました。最後に、学校給食の残飯をエネルギーに変える取り組みなど、地域循環型の事例を通じて、バイオエネルギーが私たちの生活にも直結していることを学びました。
今回の授業を通じて、微生物の力が環境とエネルギーの両面で持続可能な社会に貢献できることを実感しました。
[次回授業の予習]
次回の授業では、微生物を利用して鉱石や廃電子機器から金属を回収する「バイオマイニング」について学びます。従来の金属製錬は高温や強酸・強アルカリを必要とし、環境に大きな負荷を与えてきました。一方、酸化細菌などの微生物は自然の力で鉱石中の硫化物を分解し、銅や金などの金属イオンを溶出させることができます。こうした仕組みを応用すれば、低品位鉱石や廃鉱石からも効率よく金属を取り出すことが可能です。
さらに、現代社会で欠かせないレアメタル資源――例えば銅は電線や配線材料、金は電子回路や接点、リチウムはスマホや電気自動車のバッテリーに利用されており、その需要は急増しています。廃棄されたスマホやゲーム機からレアメタルを回収する「都市鉱山」においても、微生物の力を利用したリサイクル技術が期待されています。授業では、こうした事例を通して、バイオマイニングが循環型社会や未来産業にどのように貢献できるかを考えます。
12
バイオマイニング ― レアメタルを取り出す微生物(地球レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物利用学」において、微生物の分解力をエネルギー利用からさらに拡張し、資源回収という新しい産業分野に応用する段階に位置付けられる。本コマでは、酸化細菌などによる鉱石分解の仕組みを理解し、銅・金・リチウムといったレアメタル資源を効率的に取り出す技術を学ぶ。
また、スマートフォンやゲーム機に使われる電子部品のリサイクル、いわゆる「都市鉱山」における微生物利用の可能性を考察し、廃棄物削減と資源循環の両立を考える。これにより、微生物が未来産業や循環型社会の構築にどのように貢献するかを具体的に捉えることができる。
この主題は、これまでの「農業・環境」への応用に続き、社会的に重要性の高い「資源・産業」分野に微生物利用を広げる視点を養う学習段階であり、持続可能な社会づくりを考えるための応用的学びとなる。(難易度:★★★ 応用的内容)
1.鉱石分解
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 沖部奈緒子(著)バイオマイニング―効果的な鉱物分解を目指した微生物群の探索―、環境バイオテクノロジー学会誌.11(1・2), 39–46, 2011
2.バイオリーチング
3) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
4) 上村一雄・金尾忠芳(著)微生物を用いる湿式冶金―バイオリーチング―、生物工学、95(11), 662-666, 2017
3.都市鉱山
5) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
6) 産総研マガジン「都市鉱山」(https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20230301.html)
コマ主題細目
① 鉱石分解 ② バイオリーチング ③ 都市鉱山
細目レベル
① (酸化細菌、硫黄酸化、金属イオン溶出)
バイオマイニングとは、微生物を利用して鉱石から金属を取り出す技術であり、従来の高温・高圧を必要とする製錬法に比べて環境にやさしい方法として注目されています。その中心となるのが「酸化細菌」です。たとえば、鉄酸化細菌は、鉄や硫黄を酸化する能力を持ち、鉱石中の硫化物を分解します。この過程で金属イオンが溶け出し、銅や金などの有価金属を溶液中に取り出すことが可能になります。
従来であれば採掘が難しい低品位鉱石や廃鉱石からでも、微生物の働きを利用することで効率的に金属を回収できるのです。バイオマイニングは、微生物の「分解力」を自然の化学反応として活かした技術であり、資源の有効利用や環境負荷の低減につながる点で、持続可能な鉱業のあり方を示すものであることを理解するところまで。
② (銅、金、リチウム)
バイオリーチングは、鉱石に含まれる金属を微生物の働きで溶出させ、液体中に取り出す方法を指します。バイオマイニングという言葉が「微生物を利用した採鉱全般」を意味するのに対し、バイオリーチングはその中でも特に「浸出(リーチング)」の工程に焦点を当てた技術です。具体的には、金鉱石のバイオマイニングプロセスでは、まず微生物の働きで硫化物鉱石を分解して金を溶液中に溶け出しやすい状態にします(バイオリーチング)。その後、溶け出した金を取り出して精製する一連の工程すべてを含めてバイオマイニングと呼びます。
銅は電線や建材、電子機器に欠かせない金属であり、低品位鉱石からの回収にバイオリーチングが広く応用されています。また、金についても環境に有害なシアン化合物を用いずに回収する方法として研究が進められています。さらに、リチウムはスマホや電気自動車のバッテリーに不可欠な資源で、その需要は急増しています。これまで主に塩湖資源に依存してきましたが、バイオリーチングによる新しい回収法が注目されており、持続可能な資源確保の手段として期待されていることを理解するところまで。
③ (スマホ、ゲーム機、リサイクル)
現代社会で使われるスマートフォンやゲーム機、パソコンなどの電子機器には、多くのレアメタルが組み込まれています。銅や金は回路基板の導電材として、リチウムはバッテリーとして利用されています。しかし、これらの機器が廃棄されると資源の無駄になるだけでなく、環境汚染の原因にもなります。そこで注目されるのが「都市鉱山」と呼ばれるリサイクル資源です。廃電子機器からレアメタルを回収する過程に微生物を利用する研究が進んでおり、従来の化学的処理よりも低エネルギーで環境負荷を抑えた方法が模索されています。
例えば、微生物が鉱石と同じように金属を溶出させる性質を応用すれば、不要になったスマホやゲーム機からも資源を取り出すことが可能になります。こうした技術は、循環型社会の実現に直結し、廃棄物削減と資源確保を同時に進める未来産業の基盤となることを理解するところまで。
キーワード
① 鉱石分解(酸化細菌、硫黄酸化、金属溶出) ② 銅の回収(低品位鉱石、廃鉱石、電線利用) ③ 金とリチウム(金回収、電子材料、電池資源) ④ 都市鉱山(廃電子機器、資源リサイクル、環境負荷低減) ⑤ 循環型社会(資源確保、持続可能性、未来産業)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
今回の授業では、微生物を利用して鉱石や廃電子機器から金属を回収する「バイオマイニング」について学びました。酸化細菌などの微生物は鉄や硫黄を酸化することで鉱石を分解し、銅や金などの金属イオンを溶液中に溶出させます。この仕組みにより、従来は採算が取れなかった低品位鉱石や廃鉱石からも有価金属を効率的に回収できることを理解しました。また、レアメタルとして重要な銅・金・リチウムは、電子機器や電池、通信機器に欠かせない資源であり、その安定供給が現代社会の基盤を支えていることも確認しました。
さらに、スマホやゲーム機といった廃電子機器を資源として再利用する「都市鉱山」においても、微生物を利用したリサイクル技術が注目されていることを学びました。今回の学びを通じて、バイオマイニングは資源確保と環境負荷の低減を両立させる未来型の産業技術であり、循環型社会の実現に向けた重要な一歩であることを理解しました。
[次回授業の予習]
次回の授業では、石油由来のプラスチックに代わる新しい素材として注目されている「バイオプラスチック」と、それを分解する微生物について学びます。近年、海洋ごみやマイクロプラスチックによる環境問題が深刻化し、自然に分解される素材への関心が高まっています。代表的なバイオプラスチックには、トウモロコシやサトウキビ由来の乳酸から作られるポリ乳酸(PLA)や、細菌が体内に蓄積するポリヒドロキシアルカン酸(PHA)があります。これらは使用後に微生物によって二酸化炭素や水に分解される「生分解性」を持つ点が特徴です。
さらに、乳酸菌を利用した発酵法や遺伝子組換え技術によって効率的に生産する方法も開発されています。一方で、自然環境では分解速度が遅い場合もあり、処理方法や利用シーンに課題が残されています。授業では、バイオプラスチックの生産と分解の仕組みを理解し、資源循環型社会の構築にどのように貢献できるかを考えていきます。
13
バイオプラスチックと分解菌(地球レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物利用学」において、資源循環型社会の実現を目指す最新の応用分野を学ぶ段階に位置付けられる。本コマでは、石油由来プラスチックに代わる新素材として注目されるポリ乳酸(PLA)やポリヒドロキシアルカン酸(PHA)といった生分解性プラスチックの特性を理解し、微生物による発酵生産の仕組みを学ぶ。
さらに、土壌やコンポストに存在する分解菌が使用後のバイオプラスチックを分解し、資源を自然の循環に戻す仕組みを整理することで、「つくる」と「分解する」の両面から微生物利用を捉えることを目的とする。また、自然環境での分解速度や処理システムといった課題を考察し、技術的・社会的展望を持つことも重視する。
この主題は、バイオマイニングなど資源分野の応用に続き、未来社会における素材開発と環境保全の両立を探る学習段階であり、持続可能な社会に向けて微生物の可能性を広く理解するための応用的な位置付けにある。(難易度:★★ 応用的内容)
1.生分解性プラスチック
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 環境省「バイオプラスチック導入ロードマップ」(https://www.env.go.jp/content/900534511.pdf)
3) 大日本印刷「生分解性プラスチックは環境に良い? 問題点やデメリットに迫る」(https://www.dnp.co.jp/biz/column/detail/20172226_4969.html)
2.微生物によるバイオプラスチックの生産
4) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
5) 科学技術振興機構「多用途の生分解プラスチックの実用化に目途」(https://www.jst.go.jp/seika/bt2018-09.html)
6) 産総研マガジン「バイオプラスチック」(https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20240911.html)
3.プラスチック分解菌
7) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
8) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)、第5章 役に立つ微生物たち p.107-170
9) 左巻健男(編)「身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本」(明日香出版社、2019年)」、Lesson 4. 「分解者」としての微生物 p.56-62
コマ主題細目
① 生分解性プラスチック ② 微生物によるバイオプラスチックの生産 ③ プラスチック分解菌
細目レベル
① (ポリ乳酸、PHA、環境負荷低減)
バイオプラスチックは、従来の石油由来プラスチックに代わる環境にやさしい素材として注目されています。特に代表的なのがポリ乳酸(PLA)とポリヒドロキシアルカン酸(PHA)です。ポリ乳酸はトウモロコシやサトウキビから得られる乳酸を原料とし、発酵を経て合成される高分子で、包装材や食器、レジ袋などに利用されています。
PHAは一部の細菌が自らのエネルギー貯蔵物質として生産する天然由来の高分子で、柔軟性や耐久性を持ち、医療材料やフィルムなど幅広い用途に適しています。これらのバイオプラスチックは、使用後に微生物の働きで二酸化炭素と水に分解される「生分解性」を持ち、環境中に長期間残らないことが大きな特徴です。海洋ごみやマイクロプラスチックによる環境汚染が深刻化する中、生分解性プラスチックは廃棄物問題の解決策のひとつとして期待されていることを理解するところまで。
② (乳酸菌、遺伝子組換え、発酵法)
バイオプラスチックは、微生物の発酵能力を利用して生産されます。ポリ乳酸の場合、乳酸菌が糖質を分解して乳酸を生成し、その乳酸を原料として化学的に重合することで合成されます。一方、PHAは特定の細菌が培養環境で栄養過多になると体内に蓄積する高分子を回収して利用します。
さらに近年では、遺伝子組換え技術を用いて、大腸菌や酵母などの微生物にバイオプラスチック生産の能力を持たせる研究も進んでいます。これにより生産効率が向上し、大量生産が可能になりつつあります。従来の石油化学的な製造法と異なり、微生物生産は再生可能資源を活用する点で持続可能性が高く、二酸化炭素排出削減にもつながります。発酵法を基盤としたバイオプラスチックの生産は、バイオテクノロジーと産業を結び付ける代表的な実例といることを理解するところまで。
③ (コンポスト、土壌細菌、循環型社会)
バイオプラスチックの特性を活かすためには、その分解を担う微生物の存在も重要です。土壌や堆肥には、ポリ乳酸やPHAを分解する能力を持つ細菌やカビが存在しており、これらがプラスチックを分解して二酸化炭素や水に変えます。特にコンポスト環境では高温条件と多様な微生物群が働くため、分解が効率的に進みます。この仕組みを利用すれば、使い終わった生分解性プラスチックを堆肥とともに処理し、自然に還すことが可能になります。
こうした分解菌の働きは、プラスチック廃棄物の削減だけでなく、資源循環型社会の実現にもつながります。ただし、自然環境下では分解が遅れる場合もあるため、利用シーンや処理システムの整備が課題となります。分解菌とバイオプラスチックを組み合わせることで、「つくる」と「戻す」の両面から循環を実現する取り組みが進められていることを理解するところまで。
キーワード
① 生分解性(ポリ乳酸、PHA、環境負荷低減) ② 微生物生産(乳酸菌、遺伝子組換え、発酵法) ③ 分解菌(コンポスト、土壌細菌、堆肥化) ④ 循環型社会(廃棄物削減、資源循環、持続可能性) ⑤ 課題と展望(自然環境での分解速度、処理システム、産業利用拡大)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、バイオプラスチックとそれを分解する微生物について学びました。まず、ポリ乳酸(PLA)やポリヒドロキシアルカン酸(PHA)といった代表的なバイオプラスチックは、石油由来プラスチックと異なり、使用後に微生物によって二酸化炭素や水に分解される「生分解性」を持つことを確認しました。これにより、海洋ごみやマイクロプラスチックによる環境汚染を軽減する可能性があります。次に、その生産方法として、乳酸菌を利用した発酵法や遺伝子組換え微生物を用いた効率的な合成技術について理解しました。また、バイオプラスチックを自然に還す役割を果たす分解菌についても学びました。
土壌やコンポスト中にはPLAやPHAを分解できる細菌やカビが存在し、堆肥化を通じて資源循環に貢献しています。ただし、自然環境下では分解速度が遅い場合があるため、処理方法や利用分野の工夫が求められることも確認しました。今回の学びを通じて、バイオプラスチックと分解菌が循環型社会の実現に重要な役割を果たすことを理解できました。
[次回授業の予習]
次回の授業では、これまで学んできた未来型の微生物利用を整理しながら、新しい分野にも触れていきます。まず、バイオエネルギー、バイオマイニング、バイオプラスチックといった応用は、いずれも微生物の分解や生産の力を利用してエネルギーや資源、素材をつくり出す技術です。これらは持続可能な社会の実現に直結しており、今後ますます重要性が高まることを確認します。
次に、簡単に「合成生物学」という新しい考え方を紹介します。これは微生物の遺伝子を少し工夫して、人間の役に立つ物質をつくらせる技術で、香水や人工肉、医薬品などの生産に応用が広がっています。難しそうに聞こえますが、「微生物をデザインして新しい働きを持たせる」というイメージで理解できます。
最後に、こうした未来産業が学生の生活ともつながっている点を考えます。給食残飯の再利用、スマホに含まれる金属資源、プラスチック問題など、身近な話題を通して未来の社会にどう活かせるかを考えていきます。
14
微生物「分解者」としての役割(地球レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物利用学」において、応用編の集大成として位置付けられる。本コマでは、バイオエネルギー・バイオマイニング・バイオプラスチックといったこれまでの未来応用分野を整理し、微生物の力がエネルギー・資源・素材の循環に貢献していることを体系的に理解する。
加えて、合成生物学という新しい視点をわかりやすく紹介し、「微生物をデザインする」という未来的な発想を通じて、産業や生活に新たな可能性が広がることを学ぶ。同時に、安全性や社会受容といった課題にも触れ、技術と社会との関わりについて考える機会を提供する。
この主題は、これまでの学びを総合しつつ未来社会との接点を意識することで、学生に「微生物利用が自分たちの生活や将来にどうつながるか」を展望させる役割を持つ。したがって、主題14は総まとめ(主題15)への橋渡しとして、応用と未来を結び付ける重要な位置付けにある。(難易度:★★★ 応用的内容)
1.微生物が生み出す未来産業
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 産総研マガジン「都市鉱山」(https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20230301.html)
3) 環境省「バイオプラスチック導入ロードマップ」(https://www.env.go.jp/content/900534511.pdf)
4) 大日本印刷「生分解性プラスチックは環境に良い? 問題点やデメリットに迫る」(https://www.dnp.co.jp/biz/column/detail/20172226_4969.html)
2.わかりやすい合成生物学
5) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
6) 岡部祐(著)合成生物学が切り拓く技術領域と適用分野(https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/__icsFiles/afieldfile/2022/10/11/2209p_abe.pdf)
3.未来社会と微生物
7) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
8) 上村一雄・金尾忠芳(著)微生物を用いる湿式冶金―バイオリーチング―、生物工学、95(11), 662-666, 2017
9) 産総研マガジン「バイオプラスチック」(https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/20240911.html)
コマ主題細目
① 微生物が生み出す未来産業 ② わかりやすい合成生物学 ③ 未来社会と微生物
細目レベル
① (エネルギー・資源・素材)
これまでの授業では、微生物がエネルギーを生み出す「バイオエネルギー」、金属を取り出す「バイオマイニング」、分解できる素材をつくる「バイオプラスチック」といった応用を学んできました。これらは一見バラバラに見えますが、いずれも「微生物の分解や生産の力を利用して、未来の産業を支える」という共通点があります。
たとえば、食品残渣や家畜ふん尿からバイオガスをつくれば、エネルギーと肥料を同時に得られます。廃鉱石や電子機器から金属を回収すれば、限られた資源を有効活用できます。生分解性プラスチックをつくり、それを分解する微生物を利用すれば、ごみ問題の解決につながります。このように、微生物は「循環」と「持続可能性」をキーワードに、未来産業の基盤となる存在であることを理解するところまで。
② (微生物をデザインする)
「合成生物学」という言葉は難しく聞こえますが、簡単に言えば「微生物を人間の望む形にデザインして使う」技術です。従来の微生物利用は、自然界にある性質をそのまま活用するものでした。しかし、合成生物学では遺伝子を少し工夫して組み替えることで、新しい働きを持たせることができます。
たとえば、微生物に香水の成分を作らせたり、人工肉をつくる原料を生産させたり、あるいは医薬品の成分を効率よくつくらせることが研究されています。学生にとって身近な例で言えば、「酵母にビタミンを多く作らせる」といったイメージに近いでしょう。
ただし、新しい技術には安全性や社会の受け止め方という課題もあります。合成生物学は、未来の産業を切り拓く可能性を持ちながら、その使い方を私たち自身が考えていく必要のある分野であることを理解するところまで。
③ (持続可能性と学生生活の接点)
微生物を利用する未来産業は、学生生活や日常生活ともつながっています。例えば、給食の残飯や家庭の生ごみがエネルギーや肥料に変わる仕組みを理解することで、身近な資源循環に気づくことができます。また、スマホやゲーム機に使われる金属をリサイクルする技術は、自分たちが使っている製品の背景にある資源問題を考えるきっかけになります。
さらに、環境にやさしいプラスチックを開発し、使い終わったら自然に分解される社会を実現できれば、未来の環境問題を大きく改善できます。こうした未来産業の視点は、持続可能な社会づくりのために重要です。微生物を理解することは、科学の知識を得るだけでなく、自分たちの生活や未来に直接つながっているのだということを実感できるところまで。
キーワード
① 未来産業(バイオエネルギー、バイオマイニング、バイオプラスチック) ② 合成生物学(デザイン微生物、新しい素材、安全性) ③ 循環型社会(資源循環、持続可能性、環境保全) ④ 日常生活の接点(給食残飯、スマホ資源、プラスチック問題) ⑤ 課題と展望(技術開発、社会受容、未来社会)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、これまで学んできた未来型の微生物利用を整理し、「合成生物学」という新しい分野についても触れました。まず、バイオエネルギー、バイオマイニング、バイオプラスチックの応用は、いずれも微生物の分解や生産の力を利用し、エネルギーや資源、素材をつくる技術であることを確認しました。これらの技術は、廃棄物削減や資源循環、環境保全といった課題解決に直結しており、持続可能な社会づくりに重要であることを理解しました。
次に、合成生物学については「微生物をデザインする」というイメージで紹介し、香水成分や人工肉、医薬品など新しい素材づくりへの応用可能性を学びました。同時に、安全性や社会の受け止め方といった課題があることも確認しました。
最後に、給食残飯の再利用やスマホの金属資源、プラスチック問題など、学生生活に身近な事例を通して、微生物利用が未来社会と直結していることを実感しました。今回の学びを通じて、微生物の力が未来産業を切り拓く重要な存在であることを理解できました。
[次回授業の予習]
次回の授業は、これまで14回にわたって学んできた「微生物利用学」の総まとめです。これまで私たちは、微生物の基礎的な役割から始め、発酵や分解、共生、環境浄化、農業応用、さらに未来産業まで幅広く学んできました。
第15回では、それらを「分解者」という共通の視点から整理し直すことで、微生物が自然界・人間社会・未来技術をどのようにつなげているかを理解します。まず、分解や発酵を通じて食文化や生活に役立ってきた歴史を振り返り、次に農業や環境での応用事例を確認します。そして、エネルギーや資源、素材といった未来産業における可能性を俯瞰します。
さらに、これらの知識を学生自身の生活や社会の課題と結びつけて考え、持続可能な社会において微生物が果たす役割を展望します。総まとめの授業は、理解を定着させると同時に、次の学びや行動につなげるための大切な機会となります。
15
分解者の視点から未来を展望(地球レベル)
科目の中での位置付け
本科目は、「微生物利用学」の最終回として、全15回の学びを体系的に整理する役割を担う。本コマでは、分解・発酵・共生といった基礎的理解から、環境浄化や農業応用、さらにエネルギー・資源・素材に広がる未来産業まで、各回で扱った知識を総合的に振り返る。
また、麹菌・酵母・乳酸菌に代表される伝統的な微生物から、未来産業を担うデザイン微生物まで、「分解者」という共通視点で捉え直すことで、微生物の多様性と共通性を再確認する。さらに、学生自身の生活や社会的課題と結び付けて考えることを通じ、学んだ知識を持続可能な社会づくりにどう活かすかを展望する。
この主題は、微生物利用の基礎から応用・未来までを統合し、学習の到達目標を確認するとともに、今後の学びや行動へと発展させるための総仕上げの位置付けにある。(難易度:★★ 基礎から応用を統合する発展段階)
1.これまでの学びの整理
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)
3) 左巻健男(編)「身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本」(明日香出版社、2019年)」
4) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)
2.分解者の共通性と多様性
5) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
6) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)
7) 左巻健男(編)「身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本」(明日香出版社、2019年)」
8) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)
3.私たちの視点と未来社会
9) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
10) 日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連、2006年)
11) 左巻健男(編)「身近にあふれる「微生物」が3時間でわかる本」(明日香出版社、2019年)」
12) 青木健次(編)「微生物学」(化学同人、2018年)
コマ主題細目
① これまでの学びの整理 ② 分解者の共通性と多様性 ③ 学生の視点と未来社会
細目レベル
① (分解・発酵・共生・環境・農業・未来産業のつながり)
この授業全体を通じて、私たちは微生物が果たす多様な役割を順を追って学んできました。最初に有機物の分解と物質循環を理解し、微生物が「地球の掃除屋」として環境を支えていることを確認しました。続いて、発酵や代謝の仕組みを学び、パンやヨーグルト、味噌や醤油といった身近な食品に直結していることを知りました。
さらに、堆肥やコンポストによる資源循環、根粒菌や菌根菌による植物との共生、下水処理や油分解など環境浄化の実例を通じて、微生物が農業や社会インフラを支えていることを学びました。後半では、発酵飼料やバイオ農薬による持続可能な農業への応用、さらにバイオエネルギー、バイオマイニング、バイオプラスチックといった未来産業への展開を見てきました。
これらを通じて、微生物利用は単なる科学の知識にとどまらず、私たちの生活や社会の持続可能性と深くつながっていることを整理できたことを理解するところまで。
② (麹菌・酵母・乳酸菌から未来のデザイン微生物まで)
本講義では多くの微生物が紹介されましたが、その根底にある共通点は「分解と生成の力」です。麹菌はデンプンやタンパク質を分解して糖やアミノ酸を生み出し、酵母は糖を分解してアルコールや二酸化炭素をつくり、乳酸菌は糖から乳酸を生成して食品に酸味と保存性を与えます。このように、それぞれの微生物は異なる生成物を生み出しますが、基本的には「原料を小さく分解し、新しい物質に変える」という共通のはたらきを持っています。その多様性こそが、食品、農業、環境、産業といった幅広い応用につながっています。
さらに、未来の合成生物学では、自然の微生物に新しい遺伝子を導入し、私たちが望む物質をつくらせる「デザイン微生物」の可能性も広がっています。つまり、分解者という視点で見ると、微生物は昔から食や環境を支えてきただけでなく、未来の産業や社会を形づくる存在としてもつながっているところまで。
③ (日常生活との接点、持続可能性、学びをどう活かすか)
今回の講義の最後に強調したいのは、微生物の学びが私たち自身の生活や未来社会と直接結び付いているという点です。
例えば、給食や家庭で出る残飯は、堆肥化やバイオガス生産を通じてエネルギーや肥料に変えられます。スマホやゲーム機に使われているレアメタルは、微生物の働きによってリサイクルでき、資源循環の一部になります。プラスチックごみ問題に対しても、生分解性プラスチックや分解菌の利用が解決策になり得ます。
これらの例は、すべて「微生物が身近な社会課題に関わっている」ことを示しています。私たちにとって重要なのは、この知識を単なる学問として終わらせるのではなく、日常生活の選択や地域社会への参加に活かすことです。
持続可能な未来を築くには、一人ひとりが「微生物とともに生きる社会」を意識し、小さな行動につなげていくことが大切です。この講義を通じて得た視点を、未来社会に活かして行くところまで。
キーワード
① 学びの整理(分解、発酵、共生) ② 環境応用(堆肥化、浄化、農業) ③ 未来産業(エネルギー、資源、素材) ④ 分解者の共通性(麹菌、酵母、乳酸菌) ⑤ 私たちの視点(日常生活、持続可能性、社会貢献)
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
[今回授業の復習]
今回の授業では、これまで学んできた「微生物利用学」の内容を総合的に整理しました。最初に、微生物が有機物を分解し、発酵を通じて食品や生活に役立ってきた基礎的なはたらきを振り返りました。
次に、堆肥やコンポスト、根粒菌や菌根菌による共生、下水処理や油分解などの環境浄化、発酵飼料やバイオ農薬による農業応用といった具体的な事例を確認し、微生物が私たちの生活や社会を幅広く支えていることを再確認しました。
さらに、未来産業の分野として学んだバイオエネルギー、バイオマイニング、バイオプラスチック、そして合成生物学を通じて、微生物が持続可能な社会や新しい産業の基盤となる可能性を展望しました。最後に、これらの学びを私たち自身の生活や地域社会と結びつけて考えることの大切さを強調しました。
今回のまとめを通じて、微生物を「分解者」という共通の視点で捉えることで、過去・現在・未来をつなげて理解できたことが大きな成果です。
履修判定指標
履修指標
履修指標の水準
キーワード
配点
関連回
1.代謝の基本
微生物の代謝の基本を400字以上で説明できる。基礎水準では、解糖系や発酵のエネルギー産生を理解できる。中度水準では、代謝産物の種類と役割を説明できる。高度水準では、代謝経路を人間の生活や産業利用と結び付けて論じられる。(難易度:★ やさしい)
糖分解、エネルギー獲得、ATP
10
第1回〜第3回
2.発酵微生物の応用
発酵微生物の特徴とその応用を400字以上で説明できる。基礎水準では、麹菌・酵母・乳酸菌の役割を食品例とともに説明できる。中度水準では、並行複発酵やうま味生成などの特徴を理解して記述できる。高度水準では、発酵微生物の科学的特徴と日本の食文化との関わりを結びつけて論じることができる。(難易度:★★ 普通)
麹菌、酵母、乳酸菌、伝統食品
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第2回〜第5回
3.資源循環と堆肥化
堆肥化の仕組みを400字以上で説明できる。基礎水準では、好気性分解や発熱について理解できる。中度水準では、細菌・放線菌・カビの役割分担を具体的に説明できる。高度水準では、家庭用コンポストや落ち葉堆肥の実例を挙げ、循環型社会とのつながりを論じられる。(難易度:★ やさしい)
堆肥、コンポスト、放線菌、循環型社会
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第6回
4.共生微生物
植物との共生関係を400字以上で説明できる。基礎水準では、根粒菌の窒素固定の仕組みを説明できる。中度水準では、菌根菌によるリン吸収やストレス耐性について説明できる。高度水準では、枝豆や大豆、麦類など身近な作物との関係を示し、農業・食文化への意義を考察できる。(難易度:★★ 普通)
根粒菌、菌根菌、窒素固定、リン吸収
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第7回
5.環境浄化
微生物による環境浄化について400字以上で説明できる。基礎水準では、下水処理における活性汚泥の役割を理解する。中度水準では、油分解菌や重金属耐性菌の事例を説明できる。高度水準では、災害時や地域環境保全における微生物利用の意義を具体的に論じることができる。(難易度:★★ 普通)
下水処理、活性汚泥、油分解菌、重金属耐性菌
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第8回
6.エネルギーと資源の未来産業
未来産業における微生物利用(エネルギー・資源分野)を600字以上で説明できる。基礎水準では、嫌気性発酵によるバイオガスや酵母発酵によるバイオエタノールの仕組みを理解する。中度水準では、バイオリーチングや都市鉱山など、鉱石や廃電子機器から金属を回収する事例を具体的に説明できる。高度水準では、バイオエネルギーやバイオマイニングが資源循環やエネルギー転換にどのように貢献するかを社会的背景とあわせて評価できる。(難易度:★★★ 難しい)
バイオエネルギー、バイオマイニング、資源循環
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第11回〜第12回
7.新素材と環境の未来産業
未来産業における微生物利用(新素材・環境分野)を600字以上で説明できる。基礎水準では、ポリ乳酸(PLA)やポリヒドロキシアルカン酸(PHA)といった生分解性プラスチックの特徴を理解する。中度水準では、乳酸菌による生産や分解菌による堆肥化処理を具体例として説明できる。高度水準では、バイオプラスチックと分解菌を組み合わせた循環型社会の実現可能性を、課題と展望を含めて論じることができる。(難易度:★★★ 普通)
バイオプラスチック、分解菌、循環型社会
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第13回
8.総合理解と未来展望
全授業内容を総合して800字以上でまとめられる。基礎水準では、分解者としての共通性を整理できる。中度水準では、学んだ知識を「個人・社会・地球」のスケールで関連付けられる。高度水準では、合成生物学や未来産業の展望を取り入れ、学生生活や社会課題との接点を論じることができる。(難易度:★★ 普通)
合成生物学、デザイン微生物、循環型社会
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第14回〜第15回
評価方法
評価基準
評語
学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・
S (100~90点)
学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・
A (89~80点)
学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・
B (79~70点)
学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・
C (69~60点)
学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・
D (60点未満)
教科書
決まった教科書は使用しません。適宜オリジナル資料とスライドを使用します。なお,参考書は下記を勧めます。
参考文献
日本微生物生態学会教育研究部会(編)「微生物ってなに?」(日科技連)2006年)、2000円;青木健次 (著、編集)「微生物学」(化学同人)2007年、3500円
実験・実習・教材費
なし