区分 農業フィールド科目
ディプロマ・ポリシーとの関係

カリキュラム・ポリシーとの関係

カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
 本科目は、フィールド自然学科のカリキュラムにおける農業フィールドの科目群の中で重要な位置づけにある。約12,000年前を起源とする農業は長らく「経験と勘」を頼りに運営されてきた面があり、生産性の不安定化につながってきたと考えられる。20世紀初頭から中期にかけて農業用機械や農薬・化学肥料などが開発され、単一作物の大規模栽培形体などが発達したことにより、効率的に農業を運営することが可能となり、いわば農業の「工業化」が進められた。その結果、人を含む様々な生物・環境に対して農業が及ぼす負の影響が顕在化することとなった。そのような状況下で、生態学の概念を農業に取り入れることで、農業に関わる様々な問題を解決しようとする動きが強まった。それまで純粋な科学として発展してきた生態学で構築された「物質循環」や「群集構造」、「種間相互作用」などの概念を、農業における作物や土壌、病害虫、天敵生物などに応用し、農業を科学的に捉えることが期待されたのである。そして現代にかけて「農業生態学 Agricultural Ecology」や「農生態学 Agroecology」などと呼ばれる分野として発展してきた。「持続可能な開発のための2030アジェンダ」で示された「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成のために、農業もまた「持続可能」でなければならない。そのためには、農業を科学的に捉え、分析することが求められている。本科目では、生態学の基礎的な知識を修得するとともに、それらが農業においてどのように応用されているのかについて学修する。それにより、「農業基礎演習I, II」や「農業地理学」、「土壌生態学」で修得した作物の栽培手法や病害虫防除技術に関する知識を統合してそれらの意義を考察し、高学年時に開講される科目につなげるものとして位置づけられる。
科目の目的
 本科目では、生態学における基礎的な概念の一つである「個体群」と「群集」について理解し、農地内外で見られる様々な「生物間相互作用」を学ぶ。特に、植物と植物の相互作用、植物と植食者の相互作用、植食者と捕食者の相互作用、植物と植食者と捕食者の相互作用に注目し、農地内外で見られる現象を生態学的な視点で捉え理解することを目指す。また、「農業基礎演習I, II」や「農業地理学」、「土壌生態学」で修得した作物の栽培手法や病害虫防除技術に関する知識を農業生態学の視点で振り返り、それらの意義を考察する。
到達目標
《1》 基礎I  生態学における個体群の概念を説明できる。
《2》 基礎II  生態学における群集の概念を説明できる。
《3》 応用I  生態学における生物間相互作用(競争、捕食-被食、共生など)の概念を説明できる。
《4》 応用II  生態学における生物間相互作用の概念を用いて、農地内外に見られる様々な現象を説明できる。
《5》 発展I  現代の農業を多角的に考察し、「持続可能な農業」の方向性を検討できる。

科目の概要
 本科目では、生態学の基礎的な知識を修得するとともに、それらが農業においてどのように応用されているのかについて学修する。植物と植物の相互作用、植物と植食者の相互作用、植食者と捕食者の相互作用、植物と植食者と捕食者の相互作用に注目し、農地内外で見られる現象を生態学的な視点で捉え理解することを目指す。

 第1回目の講義では、農生態系と自然生態系の違いについて概説するとともに、農業生態学がどのような経緯で発展してきたのかについて紹介する。第2回目から第5回目までの講義では、農地の中で構築された生態系に注目する。特に、生態学における個体群と群集などの概念を概説しつつ、実際の圃場で見られる現象について理解する。第6回目から第10回目までの講義では、農地の外に構築された生態系にも注目する。特に、生態学における競争や捕食-被食、共生などの生物間相互作用の概念を概説しつつ、農地内外の生物間で見られる現象について理解する。第11回目から第15回目までの講義では、それまでに学修した内容を踏まえて、農地が周囲の生態系に及ぼしている影響と、農地が周囲の生態系から受けている影響について、生態学の視点から概説する。また、持続可能な農業の実現に向けて、生態学を農業に応用することでどのような取り組みが必要とされているのかについても考察する。

科目のキーワード
《1》 農地内の生態系(個体群、群集、ニッチ)-第1回~第5回
《2》 農地外の生態系(生物間相互作用、競争、捕食-被食、共生)-第6回~第10回
《3》 生態学の農業への応用(天敵導入、生態系サービス、IPM)-第11回~第15回

授業の展開方法
 毎回の授業では、Wordで作成したオリジナルテキスト(PDF版)を配布し、その内容に沿って授業を進める。テキストは、コマシラバスの「コマ主題細目」に対応した章立てとなっており、各コマは「解説」「練習問題」「まとめ」の三つの要素で構成されている。授業の最初の10分間では、当該回で取り扱う内容の全体像を概観し、そのコマで学習すべき重要事項や学習のポイントを明示する。続く60分間では、コマ主題細目に沿って細目レベルに関する解説を行い、その内容を含む論文などを紹介することで、「教科書における知識」と「現実に見られる現象」との結びつきを図り、理解を深める。その後、各コマ主題細目に要点を整理し、まとめを行う。これを授業回ごとに繰り返すことで、知識を段階的に積み重ね、系統的な理解へと導く。授業の終盤10分間には、その回の内容全体を振り返り、学んだことを整理し、小テストを実施することで理解度を客観的に確認したうえで、解答と解説を行う。

 授業終了後には、次回までに復習をおこなうことが求められる。テキストの解説や練習問題を見直すだけでなく、ChatGPTを活用して、自ら20問程度の練習問題を作成・解答することで理解を深める。さらに、その解答と解説を確認することで、より確実に知識を定着させる。

オフィス・アワー
松原慧:【前期】
情報リテラシーⅠ金曜5限
農業基礎演習月曜4限
基礎ゼミナールⅠ木曜4限
【後期】
情報リテラシーⅡ金曜5限
農業基礎演習Ⅱ月曜5限
基礎ゼミナールⅡ火曜5限
昆虫生態学水曜5限
甲斐貴光:【前期】
農業基礎演習Ⅰ
農業地理学
基礎ゼミナールⅠ
土壌生態学
インターンシップⅠ
全科目:月曜昼~4限
【後期】
農業基礎演習Ⅱ
基礎ゼミナールⅡ
全科目:月曜1・2限
後藤益滋:※演習時に疑問に思ったこと、わからなかったこと、気づきは遠慮なく聞いてください。ただし、質問事項を整理したうえで来訪してください。
【前期】
基礎ゼミナールⅠ木曜4・5限
河川生態学水曜4・5限
【後期】
基礎ゼミナールⅡ木曜4・5限
水生動物学木曜4・5限
群衆生態学月曜2限・昼火曜昼

科目コード TF4010
学年・期 2年・後期
科目名 農業生態学
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間
前提とする科目
展開科目
関連資格
担当教員名 松原慧・甲斐貴光・後藤益滋
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 農業生態学の概要説明 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 農業生態学の目標と学修内容 ② 農業生態系と自然生態系との違い ③ 農業生態学の歴史
細目レベル
キーワード ① 農業生態系 ② 自然生態系 ③ 生物的要因 ④ 非生物的要因
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
2 農地内の生態系(植物と植物) 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 生態学における個体と群集 ② ニッチ理論 ③ 植物間の競争
細目レベル
キーワード ① 個体 ② 個体群 ③ 種 ④ 群集 ⑤ ニッチ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
3 農地内の生態系(植物と植食者) 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 植物を食べるもの ② 植物と植食者の軍拡競争 ③ なぜ世界は「緑」に覆われているのか
細目レベル
キーワード ① 植食者 ② 採餌 ③ 防衛 ④ 軍拡競争 ⑤ HSS仮説
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
4 農地内の生態系(植物と植食者と捕食者) 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 植食者を食べるもの ② 被食防衛 ③ 寄生
細目レベル
キーワード ① 捕食者 ② ロトカ・ヴォルテラの捕食者-被食者モデル ③ 採餌 ④ 防衛 ⑤ 寄生・捕食寄生
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
5 農地の中に見られる生態系 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 植物と植物の相互作用 ② 植物と植食者の相互作用 ③ 植物と植食者と捕食者の相互作用
細目レベル
キーワード ① 生物間相互作用 ② 共生 ③ 見かけの競争 ④ アレロパシー
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
6 農地が農地外に及ぼす影響(非生物的要因) 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 農地の外の生態系 ② 水を通じた影響 ③ 導入した化学物質の流出
細目レベル
キーワード ① 景観 ② 農薬 ③ 肥料 ④ 河川
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
7 農地が農地外に及ぼす影響(生物的要因) 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 生物を通じた影響 ② 害虫個体群・導入生物の移出 ③ 薬剤抵抗性遺伝子の流出
細目レベル
キーワード ① 景観 ② 生物の移出入 ③ 病害虫 ④ 薬剤抵抗性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
8 農地が農地外から受ける影響 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 農地に移入してくるもの ② 農地外から受ける負の影響 ③ 農地外から受ける正の影響
細目レベル
キーワード ① 景観 ② 病害虫の移出入 ③ 送粉 ④ 薬剤抵抗性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
9 農地の存在が生物種に及ぼす影響 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 生物の生息場を奪う農地 ② 生物の生息場を提供する農地 ③ 農地は「自然」か否か
細目レベル
キーワード ① 保全 ② 自然 ③ 人間活動 ④ 希少種 ⑤ 攪乱
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
10 農地と農地外の生態系 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 農地が農地外に及ぼす影響 ② 農地が農地外から受ける影響 ③ 農地と農地外を含めた生態系
細目レベル
キーワード ① 生物間相互作用 ② 農薬・肥料 ③ 景観 ④ 病害虫 ⑤ 保全
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
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小テスト
復習・予習課題
11 農地管理と保全の意識(水田) 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 生態系における水田の役割 ② 中干し、素掘り水路の存在 ③ 生産者の負担にならないために
細目レベル
キーワード ① 水田 ② 保全 ③ 希少種 ④ 経済性・生産性 ⑤ 一次産業
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
12 農地管理と保全の意識(太陽光パネル) 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 耕作放棄地が引き起こす問題 ② 太陽光パネルの負の影響 ③ 太陽光パネルの正の影響
細目レベル
キーワード ① 耕作放棄地 ② 保全 ③ 太陽光パネル ④ 二元論
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
13 かつて見られた農地の文化 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① かつて見られた雑草・害虫 ② 雑草・害虫の利用法 ③ 農地の生き物の文化的サービス
細目レベル
キーワード ① 生態系サービス ② 雑草 ③ 害虫 ④ 文化的サービス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
14 総合的病害虫管理(IPM)の概念 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 総合的病害虫管理(IPM)の3つの概念 ② 化学的防除以外の選択肢 ③ 化学的防除の問題点
細目レベル
キーワード ① 総合的病害虫管理 ② 経済的被害許容水準 ③ 要防除水準 ④ 化学的防除
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
15 持続可能な農業の実現に向けて 科目の中での位置付け
コマ主題細目 ① 農地管理が及ぼす生物種への影響 ② 農地周辺に見られる生物からの恩恵 ③ 農業生態学を応用した持続可能な農業
細目レベル
キーワード ① 農地管理 ② 生態系サービス ③ 持続可能な農業
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題
履修判定指標
評価方法
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書
参考文献 日本生態学会ほか 編集「未来を生きるすべての人の教養の生態学」東京化学同人、中筋房夫ほか 著「応用昆虫学の基礎」朝倉書店、スティーヴン・グリースマン著「アグロエコロジー 持続可能なフードシステムの生態学」農山漁村文化協会
実験・実習・教材費