区分 農業フィールド科目
ディプロマ・ポリシーとの関係

カリキュラム・ポリシーとの関係

カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
 フィールド自然学科は、自然と人間が共存できる社会を目指し、科学的知見に基づいた教育と研究を行っています。陸域・水域・農業の3つの分野についてくわしく学び、さらに統計データ解析や幅広い教養を育むカリキュラムを編成しています。また、柔軟な考え方や実践的な提案をする力を育てるために、学科共通の授業や複数の分野に関わる授業も用意されています。これにより、幅広い視野を持ち、さまざまな課題に対応できる人材を育成する。
 微生物は、生態系の中で動植物の死骸や落ち葉、排泄物といった有機物を分解し、窒素やリンなどの栄養素を再び利用できる形に戻す「分解者」として、自然界の循環を支えている。森林や草原では、土壌中の微生物が分解を進めることで栄養が土に戻り、植物が生育し、また新たな生態系が維持される。水の中でも同様に、細菌がプランクトンや生物由来の有機物を分解し、炭素や窒素などの循環を支えている。このように微生物は「自然のしくみ」を動かす重要な存在であり、微生物がいなければ生態系そのものが成り立たない。
 本実習は、微生物を“実際に自分の手で扱って確かめる”ことを目的とした基礎実験である。さらに、地域の資源や産業とつながる微生物の活用を学んだ「地域産業学」につながる、技術的な基礎づくりという位置づけでもある。
培地の作製、無菌操作、分離・保存、染色、観察など、微生物を扱うための基本的な実験技術をしっかり身につけることで、今後の発展的な学び(微生物ものづくり実習や天然物化学)へつながる土台を築く。

科目の目的
本科目「微生物基礎実験実習」では、自然界で微生物が果たしている“分解者”としての役割を、実際の観察と実験を通して理解することを目的とします。土壌や水中での有機物分解や物質循環をはじめとする発酵に関わる微生物の働きを、自ら培養・分離・染色・観察することで、微生物が私たちの生活と環境を支える身近な存在であることを実感する。
さらに、培地の作製、無菌操作、コロニーの観察、放線菌やカビ・酵母の分離と保存など、微生物を安全かつ正確に扱うための基礎的な技術を身につける。これにより、微生物の機能による堆肥化やコンポストによる資源循環、農業における共生微生物の活用、環境浄化に関わる微生物機能といった、社会や環境での応用を理解するための実践的な基盤が形成される。
実習の終盤では、分離した微生物の性質を自分たちで調べ、結果をまとめ、発表することで、科学的な考察力やコミュニケーション力を育む。これらの経験を通じて、「身近な生活 → 地域の環境や産業 → 広い社会や未来技術」へと視野を広げながら、微生物の可能性を多角的に捉える姿勢を養う。
本科目を履修することで、基礎的な微生物の多様性・機能を理解し、その力を活かして「微生物ものつくり実習」が目指す地域社会や環境に貢献できる応用微生物学へと発展させる。得られた基礎技術と知識は、今後の専門科目や研究活動の重要な基盤となる。

到達目標
【1. 知識(Acknowledgement)】
本実習ではまず、微生物が自然界において「分解者」として重要な役割を果たしていることを理解し、培地や無菌操作、コロニー、染色法といった微生物学の基本概念を正しく説明できる知識を身につけることを目指す。あわせて、細菌・酵母・カビ・放線菌など主要な微生物群の特徴を、形態や生育条件、観察結果に基づいて区別できるようになり、それらが環境・農業・食品・産業などの分野でどのように応用されているのかを理解する力も育成する。

【2. 技能(Technique)】
本実習を通して、火炎滅菌やピペット操作を含む無菌操作、培地の作製、希釈平板法による分離、コロニー観察、細菌と真菌の染色による顕微鏡観察、分離株の基本的保存など、微生物を安全かつ正確に取り扱うための基礎的な技能を習得する。また、OD測定や阻止円測定を用いた生育評価、PCRや電気泳動、BLAST検索といった初歩的な分子生物学的手法にも触れ、現在の微生物研究に必要とされる基礎的な技術理解を深める。

【3. 姿勢(Attitude)】
実験を進めるにあたっては、微生物を扱う際の安全意識を常に持ち、実験室のルールや指示に従って適切に行動できることを重視する。さらに、実験ノートや記録を正確かつ丁寧に残し、データの信頼性や再現性を意識しながら作業する姿勢を身につける。班で協力し、円滑なコミュニケーションのもとに作業を進めるとともに、結果の違いや予期せぬ事象を前向きに捉え、その原因を考察する姿勢を養うことも大切な目標とする。

【4. 応用(Application)】
最終的には、分離した微生物の形態や性質、生育特性などを自ら分析し、得られた実験データを整理して図表化し、科学的に考察して説明できる力を身につける。また、班別のミニ研究では、テーマ設定から計画立案、実験実施、解析、発表までのプロセスを経験し、微生物の観察や実験を通じて得た知見を、地域の環境・社会・産業と関連づけて考える姿勢を育む。これらの経験を通じて、微生物の多様性や機能を理解し、今後の専門学習や研究活動に必要な科学的思考力と実践的な基盤を確立することを目指す。

科目の概要
本実習では、微生物を安全かつ正確に取り扱うための基礎的な技術の習得を目的として、培地の作製、無菌操作、微生物の分離・観察・染色、さらには保存や簡易的な生育評価など、微生物学の根幹となる実験操作を段階的に学んでいく。細菌・酵母・カビ・放線菌など、多様な微生物を実際に培養し、コロニー形態や顕微鏡像を記録することで、それぞれの特徴や自然界での役割を理解するとともに、微生物が環境・農業・食品産業などでどのように活用されているかを体験的に学ぶ。
 また、実際に環境微生物を分離培養することで、微生物研究の進め方を知る機会を提供する。実習の後半では、自ら分離した微生物を用いて小規模な研究テーマに取り組み、計画立案から実験、結果の整理までを通じて科学的に考察する力を育成する。こうした一連の経験を通じて、微生物の基礎(実教出版)知識と実験技能を確実に身につけ、今後の専門科目や研究活動につながる実践的な学びの基盤を形成する。

科目のキーワード
1. 微生物実験の基礎(微生物の役割、無菌操作、実験器具の扱い)—— 第1回〜第4回(導入編)
2. 培養技術の基礎(培地調製・継代・コロニー観察・染色)—— 第5回〜第10回(基本技術編)
3. 麹菌の取り扱いと保存(培養・保存・応用)—— 第11回〜第14回(応用編)
4. 環境微生物の分離と応用実験(放線菌の分離・保存)—— 第15回〜第23回(実践編1)
5. 生産培養と生物活性(生産培養・抽出物作製)—— 第24回〜第28回(実践編2)
6. 実験の統合(研究計画・データ整理)—— 第29回〜第30回(総括編)

授業の展開方法
本実習は全30回で構成されており、前半では微生物を扱うための安全教育と基礎技術(無菌操作・培地作製・基本的な観察)を習得し、中盤で微生物の分離・染色・保存など応用的な操作を実践、後半では定量評価や簡易的な分子生物学的解析、班ごとのミニ研究と発表を行う流れで展開される。実習を中心としながら、必要に応じて講義を交えることで、操作の「理由」や「背景となる原理」を理解し、技術と知識を結びつけることを重視している。
毎回の授業は、基本的に 講義(導入)+実験(実施)+振り返り という三段構成で進める。授業冒頭では、配布するオリジナルテキスト(PDF版)に基づき、当日の目的や重要事項、操作手順上の注意点を示し、実験に入る前の理解を促す。導入講義では、扱う微生物の特徴、実験の原理、生育環境、使用する試薬や器具の操作方法について説明し、学生が安全に正確な手順で実験できるよう準備を整える。必要に応じて実演を行い、学生が操作イメージをつかめるよう配慮する。
実習では、培地作製、コロニー観察、染色、顕微鏡観察、分離・保存などの操作を段階的に習得していく。各自の実験ノートには作業内容・観察結果・考察を記録し、データの整理や比較を行いながら微生物の性質を理解する。実験中は安全管理を徹底し、教員の指示に基づき作業工程を進めることで、実験室のルールや科学的な態度を身につける。
授業の最後には簡単な振り返りを行い、重要な概念や注意点を確認したうえで、次回までの課題に取り組む。課題には、テキスト内容の復習、観察記録の整理、実験結果の簡易考察などを含めるほか、ChatGPT を活用してテキスト内容をもとに自作の練習問題を生成し、これを解いて理解を深めることを推奨する。自作問題の解答・解説も照らし合わせることで、知識の定着をより確実なものとする。
 後半のミニ研究では、計画立案から実験、データ整理、発表までの一連の流れを経験する。これにより、微生物学の基礎技術を活用しながら、自ら考え、手を動かし、科学的に分析する力を育成する。本実習は、今後の専門科目や卒業研究へとつながる重要な基盤となるよう構成されている。

オフィス・アワー
中島琢自:※指定時間以外に希望する場合、時間を調整するのでメールなどでご連絡ください。
【前期】
環境と微生物
基礎ゼミナールⅠ
微生物利用学
全科目:火曜1限、水曜昼~5限、木曜2限、金曜4限
【後期】
地域産業学
基礎ゼミナールⅡ
基礎微生物学演習
全科目:月曜5限、火曜1限、木曜4・5限、金曜4限
吉田弥生:【前期】
自然共生社会
基礎ゼミナールⅠ
海の大型動物生態学
全科目:月曜~金曜の5限
【後期】
動物行動観察演習A・B
基礎ゼミナールⅡ
環境共生型社会のデザイン
動物行動学
全科目:月曜~金曜の5限
松原慧:【前期】
情報リテラシーⅠ金曜5限
農業基礎演習月曜4限
基礎ゼミナールⅠ木曜4限
【後期】
情報リテラシーⅡ金曜5限
農業基礎演習Ⅱ月曜5限
基礎ゼミナールⅡ火曜5限
昆虫生態学水曜5限

科目コード TF4020
学年・期 2年・後期
科目名 基礎微生物学演習
単位数 4
授業形態 演習
必修・選択 選択
学習時間
前提とする科目
展開科目
関連資格
担当教員名 中島琢自・吉田弥生・松原慧
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 微生物学の誕生と発展(導入編) 科目の中での位置付け 本コマは、微生物利用学の学習を始めるにあたり、微生物という「見えない存在」がどのように発見され、どのように科学として扱われるようになったのかを理解するための導入的な内容です。レーウェンフックによる顕微鏡観察、パスツールの自然発生説の否定、コッホの原則の確立といった歴史的な発展をたどることで、微生物学の基礎的な枠組みを学びます。
これらの歴史的転換点を理解することは、後続の講義で扱う純粋培養、発酵、微生物利用技術などの基盤的概念を正しく理解するうえで不可欠です。また、「なぜ微生物を研究するのか」という学問的意義を把握することで、実習や応用分野への学習意欲も高まります。第1コマは、微生物利用学全体の入り口として、科学的視点を育む役割をもつ導入回です。(難易度:★ 基礎的内容)

1.微生物の発見と顕微鏡技術の進歩
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第1章 人間生活と微生物, 6-15
3) 中西載慶(著):応用微生物学, 第1章 微生物学の歴史と発展, 1-11

2.パスツールと近代微生物学の成立
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第1章 人間生活と微生物, 6-15
3) 中西載慶(著):応用微生物学, 第1章 微生物学の歴史と発展, 1-11

3.コッホの原則と病原体概念の確立
1) 解説教材「コマ用オリジナル資料」
2) 中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第1章 人間生活と微生物, 6-15
3) 中西載慶(著):応用微生物学, 第1章 微生物学の歴史と発展, 1-11
コマ主題細目 ① 微生物の発見と顕微鏡技術の進歩 ② パスツールと近代微生物学の成立 ③ コッホの原則と病原体概念の確立
細目レベル ① 微生物学の歴史は、17世紀にレーウェンフックが自作の単レンズ顕微鏡を用いて微小な生物を観察したことから始まります。それまで人々は、腐敗や発酵などの現象を「自然に起こるもの」と捉えており、微生物の存在を想像することはできませんでした。レーウェンフックは湖水や歯垢などを観察し、「animalcules(小動物)」と呼ばれる生命体を記録しました。彼の観察は、微生物が肉眼では見えないながらも確かに存在し、多様な世界を形成していることを初めて明らかにしました。顕微鏡の改良とともに、微生物観察は再現性のある科学的手法となり、微生物を「見える存在」として科学が扱う基礎が築かれました。この視点の転換は、後の発酵研究や病原体研究につながり、微生物学の扉を開く重要な第一歩となることを理解するところまで。
② 19世紀になると、微生物の役割に関する理解が大きく進みました。特にルイ・パスツールは、自然発生説を否定した実験で知られています。彼の「白鳥の首フラスコ」を用いた実験では、空気の出入りは許されているにもかかわらず、微生物が侵入できない構造により培養液が腐敗しないことを示し、「生命は自然には発生しない」という原理を実証しました。また、パスツールは発酵が微生物によって起こる現象であることを明らかにし、微生物の代謝と産業利用の基盤となる知見を提供しました。ワクチンの基礎研究も彼の貢献であり、減毒した微生物を用いる予防法の原理は現在のワクチン技術にも通じています。パスツールの仕事は、微生物を「目に見えない働き手」として理解し、科学的・産業的に活用する近代微生物学の根幹を形成するところまで。
③ パスツールの研究を受け、19世紀後半にはロベルト・コッホが病原体研究を体系化しました。コッホは感染症の原因となる微生物を特定するため、純粋培養の技術と標準化された観察法を確立しました。特に「コッホの原則」と呼ばれる4つの基準は、ある微生物が特定の病気の原因であると証明する科学的手法として画期的でした。この原則は、病原体の分離・培養・再感染の実験を伴い、今日の微生物学や医療の発展に決定的な役割を果たしました。また、寒天培地の導入により再現性の高い培養が可能になり、微生物研究の実験技術が飛躍的に向上しました。コッホが築いた方法論は、発酵、環境微生物学、食品衛生など多様な応用分野にも広がり、現代の微生物利用学の基盤となることを理解するところまで。
キーワード ① 微生物の発見(レーウェンフック、自作顕微鏡、animalcules) ② 自然発生説の否定(パスツール、白鳥の首フラスコ、再現性実験) ③ 発酵研究の進展(微生物起源、代謝、産業応用) ④ 病原体概念の確立(コッホ、純粋培養、コッホの原則) ⑤ 微生物学の技術革新(寒天培地、顕微鏡改良、抗生物質の発見)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
授業後の復習では、微生物学の誕生と発展を支えた3つの柱――観察技術の確立(レーウェンフック)、自然発生説の否定と発酵研究(パスツール)、病原体を科学的に証明する方法の確立(コッホ)――を一つの流れとして整理することが重要です。まず、レーウェンフックの観察によって微生物の存在が可視化され、「見えない生物の世界」が科学の対象となったことを確認します。次に、パスツールの白鳥の首フラスコ実験が生命現象の背後に微生物が関与していることを示し、発酵研究が微生物利用技術(食品発酵・医療応用など)の原点となったことを振り返ります。そして、コッホの原則によって、原因微生物の特定が実験的に証明できるようになり、純粋培養や培地利用といった現代の微生物学の手法が体系化されたことを整理します。さらに、これらの歴史的発展が現代の微生物利用(抗生物質、食品発酵、環境浄化など)につながっていることを押さえると、学習内容がより深く理解できます。最後に、「微生物を見つける → 分かる → 利用する」という流れが、主題2以降の実習にどのようにつながっていくかを意識し、学びの基盤として定着させることが復習の目的です。

[次回授業の予習]
主題2では、微生物実習に臨むうえで欠かせない「安全行動」と「基本操作」の意味を理解します。予習ではまず、実験室のマナー(白衣、手洗い、髪の固定、飲食禁止など)が“単なるルールではなく、科学的根拠に基づく安全対策である”ことを理解することが重要です。これらは、自分自身を守るだけでなく、扱う微生物が意図せず拡散しないようにするための基本行動です。また、本実習で扱う菌株がBSL1レベルの非病原性菌であることを押さえておくと、過度に恐れることなく冷静に実験に向き合うことができます。そのうえで、リスク評価の考え方(「安全な菌でも扱い方を誤ると事故につながる」)を理解し、安全行動の必要性を自分の言葉で説明できるようにしておくと理想的です。さらに、滅菌・消毒・廃棄の基本原理を軽く予習しておくと、実習中の操作が意味を理解したうえで行えるようになります。特に、オートクレーブ滅菌とアルコール消毒の“目的の違い”を知っておくことで、実際の手順がより理解しやすくなります。予習の目的は、“安全な実験姿勢は科学的態度そのものである”という視点をもって授業に臨む準備を整えることです。

2 微生物の安全な取り扱い(導入編) 科目の中での位置付け 本コマは、実習に安全に取り組むための基本的な知識と姿勢を身につけることを目的とした、安全教育の基礎となる内容です。実験室での行動ルール、白衣や手洗いといった基本マナー、スピル(こぼれ)への対応などを理解することで、安全に配慮した科学的態度を養います。
また、本実習で扱うのは教育用に選定された非病原性菌株であり、その特徴やリスクを正しく理解することは、安心して実験を進めるうえで欠かせません。滅菌・消毒の基本原理や廃棄手順についても学ぶことで、汚染防止と実験結果の信頼性向上につながる操作の重要性を体験的に理解する準備が整います。第2コマは、以後の実習全体の前提となる“安全な実験操作”の基盤を形成する重要な回として位置付けられています。(難易度:★ 基礎的内容)

【教材・教具】
1.実験室における安全行動と基本マナー
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)田村隆明(著):超基本バイオ実験ノート(羊土社), 第1章 実験を始める前に, 12-20

2.バイオセーフティレベルと実習で扱う菌株のリスク理解
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社)(講談社), 第11章 遺伝子組換え実験の安全性, 167-180

3.滅菌・消毒・廃棄の基本操作とクリーン作業の重要性
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)田村隆明(著):超基本バイオ実験ノート(羊土社)(羊土社), 第6章 無菌操作, 90-98
コマ主題細目 ① 実験室における安全行動と基本マナー ② バイオセーフティレベルと実習で扱う菌株のリスク理解 ③ 滅菌・消毒・廃棄の基本操作とクリーン作業の重要性
細目レベル ① 実験室で安全に行動することは、事故を防ぐだけでなく、信頼性の高い実験結果を得るための前提条件です。本コマでは、白衣の着用、手洗い、髪の固定、飲食物の持ち込み禁止など、基本的な安全マナーの意味を確認します。これらは単なる「ルール」ではなく、微生物の意図しない拡散や汚染を防ぎ、自分と周囲を守るための科学的根拠をもつ行動です。また、スピル(こぼれ)の対応手順を理解しておくことで、万一のトラブルが起きても冷静に対処できるようになります。適切な片付けと作業環境の清潔維持は、実験結果の再現性を高めるうえで重要な要素であり、安全行動は科学的操作として必須のスキルであることを学ぶところまで。
② 本実習で扱う微生物は、教育用として安全性の高い非病原性菌株(例:大腸菌K-12)に限定されています。これらの菌株はバイオセーフティレベル(BSL)1に分類され、通常の生活環境で感染リスクがほとんどないものです。しかし、安全な菌株であっても、適切な操作を怠ると汚染やトラブルの原因になります。そのため、BSLの概念やリスク管理の基礎を理解し、なぜルールが必要なのかを科学的に説明できることが重要です。また、菌株の増殖特性や培養条件を知ることで、実習中に起こり得るリスクを予測し、予防措置を取る力が身につきます。安全な実験環境を整えることは、実習の成功と信頼性の高いデータ取得の両方に不可欠であることを理解するところまで。
③ 微生物実験では、滅菌・消毒・廃棄の操作が欠かせません。滅菌は微生物を完全に除去する方法で、オートクレーブによる高温高圧滅菌が代表的です。一方、消毒は危険性を減らすために微生物数を低下させる操作で、アルコールや次亜塩素酸が用いられます。これらの原理と使い分けを理解することで、実験目的に応じた適切な処理ができます。また、使用済み器具や培地は必ず指定された方法で廃棄し、環境中に微生物が残らないよう管理します。さらに、クリーンベンチの正しい使い方(風の向き、作業手順、手の動き)を習得することは、汚染を防ぎ、実験の再現性を確保するうえで重要です。これらの操作は、安全を守るだけでなく、科学的信頼性を支える基本技術であることを理解するところまで。
キーワード ① ラボ基本行動(白衣、手洗い、髪の固定) ② 安全対応手順(スピル対応、清掃、汚染予防) ③ バイオセーフティレベル(BSL1、非病原性菌株、リスク評価) ④ 教育用菌株(大腸菌K-12、増殖特性、扱いやすさ) ⑤ 微生物制御技術(オートクレーブ滅菌、アルコール消毒、廃棄物管理)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
授業後の復習では、まず学んだ安全マナーの背景を整理し、「なぜその行動が必要なのか」を理解し直すことが大切です。白衣は衣類や皮膚を保護し、手洗いは意図しない菌の付着や外部への持ち出しを防ぎます。スピル対応では、こぼれた状況をどう把握し、安全に処理するかという“危機対応の基本”を学んだはずです。これらの行動は、安全だけでなく“信頼できる実験結果”を得るためにも不可欠である点を再確認しましょう。また、BSL1菌株の特徴とリスクを復習し、実習中に何が“安全”を支えていたのかを言語化してみると理解が深まります。滅菌・消毒・廃棄の三つの操作についても、操作そのものではなく「目的の違い」と「どの場面で必要になるか」を整理することがポイントです。たとえば、滅菌は“完全除去”、消毒は“リスク低減”、廃棄は“環境への拡散防止”というように役割が異なります。最後に、クリーン作業の重要性を振り返り、無菌操作の基礎がどのように汚染防止と実験成功につながるかを再確認することで、本講義の学びが次の実習に自然につながります。

[次回授業の予習]
次回の授業に臨む前に、まず「滅菌」と「消毒」という2つの言葉の違いを整理しておきましょう。滅菌は“微生物を完全にゼロにする操作”、消毒は“感染の原因となる微生物を減らし、危険性を下げる操作”というように目的が異なります。どちらも清潔さを保つための手段ですが、使う場面や方法が変わることを知っておくと、授業内容がぐっと理解しやすくなります。また、手洗いがなぜ感染予防につながるのかを考えることも大切です。私たちの手には常在菌が数多く存在し、洗浄方法によってその数がどれほど変化するのかを知ることは、実習で行うスタンプ培養の結果を読み解く助けになります。加えて、アルコール・紫外線・煮沸など、身近な消毒手段がどのような仕組みで微生物に作用するのかを簡単に調べておくと、デモンストレーションの意義をより深く理解できます。予習では専門的な内容を暗記する必要はありませんが、「どんな原理で微生物が制御されるのか?」という視点をもつことがポイントです。

3 滅菌と消毒(導入編) 科目の中での位置付け 本コマは、微生物利用学における実験・実習の基礎技術を身につける導入的な位置を占めています。微生物を扱う際には、安全性を確保しつつ正しく観察・評価を行うための基本操作が欠かせません。滅菌や消毒の原理を理解し、適切な方法を選択できるようになることは、以後の実習や各種微生物の取り扱いに直結します。
特に、手洗い前後のスタンプ培養を用いた実験は、「目に見えない微生物の存在」を可視化し、日常的な衛生行動の重要性を体験的に理解する機会となります。また、アルコール、紫外線、煮沸など複数の消毒手段を比較するデモンストレーションは、微生物制御の原理と限界を学ぶ上で効果的です。
これらの内容は、後続の講義で扱う発酵、環境微生物、食品微生物などの応用領域において、汚染防止や品質管理を考える際の基礎土台になります。したがって本コマは、微生物利用学において、安全で正確な実験操作を支える基盤的な役割を担っており、実践的な学びへと進むための必須ステップとして位置付けられています。(難易度:★ 基礎的内容)

1. 滅菌と消毒の基本概念とその違い
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)田村隆明(著):超基本バイオ実験ノート(羊土社), 第6章 無菌操作, 90-98

2. 手洗いの重要性と微生物の可視化(スタンプ法実験)
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)田村隆明(著):超基本バイオ実験ノート(羊土社), 第6章 無菌操作, 90-98

3. 消毒法の種類と効果の比較
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)田村隆明(著):超基本バイオ実験ノート(羊土社), 第6章 無菌操作, 90-98
コマ主題細目 ① 滅菌と消毒の基本概念とその違い ② 手洗いの重要性と微生物の可視化(スタンプ法実験) ③ 消毒法の種類と効果の比較
細目レベル ① 滅菌とは、存在するすべての微生物を完全に死滅・除去する操作を指し、オートクレーブや乾熱滅菌、濾過滅菌などが用いられます。一方、消毒は病原性のある微生物を減らし、感染リスクを下げることを目的とした操作で、アルコールや次亜塩素酸などの化学的処理が代表的です。両者は似ているようで目的や強度が異なり、状況に応じた使い分けが重要です。本コマでは、実験室と日常生活でどのように滅菌・消毒が使い分けられているのかを理解し、微生物を扱う際に必要な基礎的な知識を身につけるところまで。
② 手指には多様な常在微生物が存在し、私たちの生活環境に大きな影響を与えています。手洗いは感染予防の基本ですが、洗い方次第で微生物の除去効果は大きく変わります。この実習では、手洗い前後の手指を寒天培地にスタンプし、次回にコロニーの数や種類を比較することで「目に見えない手洗いの効果」を可視化します。単なる習慣としての手洗いではなく、その科学的根拠や重要性を体感的に理解することが目的であることを理解するところまで。
③ 消毒には多様な方法があり、それぞれ作用原理や効果に違いがあります。アルコールはタンパク質の変性を引き起こし、70%付近で最も効果が高いことが知られています。紫外線はDNAを損傷させることで増殖を阻害し、煮沸や加熱は高温によって微生物を失活させます。本コマでは、これらの消毒方法を比較するデモンストレーションを行い、どの方法がどのような場面に適しているかを理解します。また、消毒法には限界もあることを知り、適切な選択と組み合わせの重要性も学ぶところまで。
キーワード ① 滅菌(オートクレーブ、乾熱、濾過) ② 消毒(アルコール、次亜塩素酸、界面活性剤) ③ 手洗い効果(常在菌、スタンプ法、コロニー比較) ④ 物理的殺菌(紫外線、煮沸、熱処理) ⑤ 効果の評価(作用機序、濃度依存性、限界)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
授業後の復習では、まず滅菌と消毒の定義と違いを、自分の言葉で説明できるか確認しましょう。実験室では滅菌と消毒を目的によって使い分けるため、どの場面でどちらが適切なのか整理しておくことが重要です。また、手洗い前後のスタンプ培養で観察したコロニー数の変化を振り返り、手洗いがどの程度微生物の数に影響するかを考察します。「なぜ完全にはゼロにならないのか」「洗い方の違いで結果がどう変わるか」といった問いを持つことで、日常の衛生行動を科学的に見直す良い機会になります。さらに、授業で扱ったアルコール・紫外線・煮沸などの消毒法について、作用機序と効果の強さ・限界を整理しておきましょう。例えば、アルコールは濃度によって効果が変動し、紫外線には照射範囲の制限があるなど、それぞれに得意・不得意があります。最後に、「どの場面でどの消毒法が最適なのか」を自分なりに例示できるようにすると、実践的な理解が大きく深まります。

[次回授業の予習]
次回の授業に向けて、まずは微生物実験でよく使われる器具の名称と用途をざっくり把握しておきましょう。試験管、シャーレ、ピペット、マイクロチューブなど、どれも日常には登場しませんが、微生物実習では欠かせない基本装備です。事前に「どの器具が何に使われるのか」をイメージしておくことで、授業中の説明が理解しやすくなります。また、白金線やアルコールランプといった器具は、火炎滅菌の操作とセットで扱われるため、「なぜ火で器具を加熱する必要があるのか」という理由も考えておくとよいでしょう。さらに、この主題では無菌操作(アセプティックテクニック)が重要なテーマになります。外部の微生物がどのように混入するのか、逆にどうすれば汚染を防げるのかを、日常の衛生管理と照らし合わせながら考えておくとイメージがつかみやすくなります。予習では細かい専門手順を覚える必要はありませんが、「器具の特性」「火炎滅菌の原理」「無菌操作の必要性」という3つの視点をもって授業に臨むと、操作の意味が理解しやすくなります。

4 実験器具の種類と取り扱い・無菌操作(導入編) 科目の中での位置付け 本コマは、微生物利用学の実習を安全かつ正確に進めるための基本技術を養う重要な位置付けにあります。微生物を扱う操作では、ピペット、白金線、シャーレ、培地など多様な器具を適切に使用し、清潔域を維持する無菌操作(アセプティック操作)が不可欠です。これらが正しく行えるかどうかが、実験結果の再現性や安全性を大きく左右します。
また、このコマで学ぶ技術は、発酵微生物の培養、菌株の継代、環境試料からの分離など、後続の講義・実習で中心となる作業の基礎となります。器具の名称や用途を理解するだけでなく、「どのような原理で汚染を防ぐのか」「どこにリスクがあるのか」を体感的に学ぶことで、微生物を扱う姿勢そのものが養われます。
微生物利用学の実験スキルの出発点として、基礎知識と実践的な操作技術の両方を結びつける役割を担っており、以後の応用的な実験・研究に進むための不可欠なステップとして位置付けられています。(難易度:★ 基礎的内容)

1.基本的な実験器具の種類と特徴
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第11章 遺伝子組換え実験の安全性, 181-195
3)田村隆明(著):超基本バイオ実験ノート(羊土社), 第4章 機械の取り扱い, 44-66

2.火炎滅菌と器具の適切な扱い方
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第4章 微生物の観察ととり扱い, 72-99
3)田村隆明(著):超基本バイオ実験ノート(羊土社), 第6章 無菌操作 90-98

3.無菌操作の基本原則と実習
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)田村隆明(著):超基本バイオ実験ノート(羊土社), 第6章 無菌操作, 90-98
コマ主題細目 ① 基本的な実験器具の種類と特徴 ② 火炎滅菌と器具の適切な扱い方 ③ 無菌操作の基本原則と実習
細目レベル ① 微生物実験では、多様な器具を正しく使い分けることが安全で精確な作業の第一歩になります。試験管・シャーレ・ピペット・マイクロチューブなどはそれぞれ用途と扱い方が異なり、誤った使用は汚染や事故の原因となります。本コマでは、これらの器具の特徴、素材(ガラス・プラスチック)、再使用の可否、滅菌方法の違いなどを学びます。また、白金線やコンラージ棒など特殊な器具についても理解を深め、適切な操作の基礎を身につけることで、後の実験をスムーズに進めるための準備を整えるところまで。
② 白金線や白金耳は微生物を扱う際の基本工具であり、その効果を最大限に発揮するには確実な火炎滅菌が欠かせません。本コマでは、アルコールランプを用いた正しい火炎滅菌の手順、加熱時間、冷却のタイミングなどを実演しながら学びます。また、ピペット(パスツールピペット、マイクロピペット)の種類と使用上の注意点、誤操作による汚染やサンプル損失を防ぐためのポイントも解説します。器具を清潔に保ち、確実に処理することは、安全で再現性の高い実験を行うための基礎となることを理解するところまで。
③ 無菌操作(アセプティックテクニック)は、微生物実験の信頼性を左右する重要な操作です。外部の微生物が混入しないように作業環境を整え、アルコールランプの炎による上昇気流を利用して清浄な空間を確保します。本コマでは、水を使った模擬作業を通して、シャーレの開閉方法、器具の持ち替え、試料の移し替えなどの基本動作を練習します。実際には目に見えない微生物を想定しながら丁寧に練習することで、実験の失敗リスクを減らし、安全で正確な作業の習得を目指すところまで。
キーワード ① 基本器具(試験管、シャーレ、マイクロチューブ) ② 火炎滅菌(白金線、アルコールランプ、冷却) ③ ピペット操作(マイクロピペット、チップ交換、容量設定) ④ 無菌操作(上昇気流、シャーレ開閉、持ち替え) ⑤ 汚染防止(滅菌、清潔区域、作業手順)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
復習にあたり、実習で触れた器具の名称・用途・扱い方を、自分の言葉で整理しておきましょう。同じ「ピペット」でもマイクロピペットとパスツールピペットでは構造も使い方も異なり、白金線の扱い方には火炎滅菌や冷却のタイミングなど、細かい注意点があります。授業で見たデモや自分が行った操作を思い出しながら、「なぜその手順が必要なのか」をセットで理解することが大切です。また、無菌操作のポイントを確認し、シャーレの開閉方法、器具の持ち替え、作業位置の工夫など、実際に手を動かして覚えた内容を振り返りましょう。アルコールランプの炎による上昇気流の役割や、清潔区域を保つための姿勢・動線の作り方も復習しておきたいポイントです。さらに、作業中にどこで汚染のリスクが生じやすいかを考察してみると、後の実験パフォーマンスが大きく向上します。最後に、「なぜ無菌操作が実験の再現性と安全性につながるのか」をまとめておくと、次回の実習への理解がより深まります。

[次回授業の予習]
 次回は、固体培地と液体培地の作製を通して「微生物を育てるための基盤づくり」を体験します。予習の段階では、まず“培地とは何か”を押さえておきましょう。微生物の栄養源となる材料を溶かし、固めたり液体にしたりすることで、微生物が増殖できる環境を人工的に作ったものが培地です。寒天培地と液体培地の違いや、寒天の役割(固化剤)、オートクレーブによる滅菌が必要な理由を理解しておくと、実習の流れがイメージしやすくなります。また、秤量・溶解・滅菌・分注といった作業手順に共通して「無菌操作」と「正確さ」が求められることを意識しておくとよいでしょう。粉末培地の秤量が数グラム単位で行われること、寒天は高温で溶けること、滅菌後には外部の微生物が混入しやすくなることなど、基本的な性質を予習しておくと、実際の操作の意味がよりクリアになります。難しい専門知識を覚える必要はありませんが、「培地は自分で作ることで初めて実験が成立する」という視点をもって授業に臨むと、作業の重要性がよく理解できます。

5 培地の作製(基礎実験編) 科目の中での位置付け 本コマは、微生物利用学における培養技術の基盤を構築する重要な役割を担っています。微生物の観察・分離・保存・応用において、培地の品質は実験結果に直結します。寒天培地や液体培地を自ら秤量し、溶解し、滅菌し、適切に分注する一連の作業を体験することで、培地がどのように準備され、どの条件が微生物の生育に影響するのかを理解することができます。
ここで学ぶ内容は、以後の講義や実習で扱う菌株の継代培養、コロニー観察、発酵試験、微生物の増殖解析など、あらゆる “微生物を育てて扱う作業” の土台となります。また、培地作製には無菌操作や滅菌技術が密接に関わるため、前回までに習得した安全教育・消毒・器具操作の実践的な確認にも位置付けられています。
本講義は、微生物培養に不可欠な「基礎インフラ」を自ら作り上げる能力を育てる段階として、微生物利用学全体の学習を支える基盤的なコマであり、後続の応用実験へと進むための必須工程となっています。(難易度:★★ 応用的内容)

1.固体培地(寒天培地)の作製手順
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第2章 培地の作製と滅菌法, 9-22

2.液体培地の作製と試験管の適切な取り扱い
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第2章 培地の作製と滅菌法, 9-22

3.滅菌と無菌操作の実践的理解
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34
コマ主題細目 ① 固体培地(寒天培地)の作製手順 ② 液体培地の作製と試験管の適切な取り扱い ③ 滅菌と無菌操作の実践的理解
細目レベル ① 固体培地の作製は、微生物実験における最も基本的な操作の一つです。まず、粉末の寒天培地を正確に秤量し、規定量の水と混合します。加熱して寒天を完全に溶かした後、オートクレーブで滅菌し、無菌状態を確保します。滅菌後は、50〜60℃程度まで冷却し、固まる前にシャーレへ分注します。このとき、気泡が入らないように静かに注ぎ、シャーレの蓋は必要以上に開けないことが重要です。さらに、作業はなるべくアルコールランプ周辺で行い、外部の微生物が混入しないよう配慮します。これらの工程を丁寧に行うことで、均一で清潔な培地が完成し、確実な微生物観察や分離につながることを理解するところまで。
② 液体培地は、微生物の増殖、継代、酵素活性測定などに広く利用されるため、正確な作製が求められます。粉末培地を計量し、水に溶解した後、試験管へ規定量を分注します。この際、分注量のばらつきを防ぎ、キャップの締め具合を適度に調整することが大切です。キャップを完全に閉めてしまうと圧力差により破損の可能性が生じるため、滅菌前は軽く締めるのが基本です。オートクレーブで滅菌した後は、キャップをしっかりと閉めて保管します。液体培地は透明度の変化や濁度から微生物の増殖を観察できるため、容器の清潔さや蓋の扱いにも注意し、無菌的に取り扱う習慣を身につけるところまで。
③ 固体・液体培地の作製を成功させるには、滅菌と無菌操作への理解が不可欠です。オートクレーブ滅菌は121℃・15分という条件が基本で、容器の材質や容量によって適切な設定が異なることも学びます。滅菌後の培地を扱う際には、外部からの微生物混入を防ぐため、アルコールランプの炎による上昇気流を利用し、清潔な作業空間を確保します。シャーレや試験管の蓋を開ける角度、器具の持ち替え、培地分注のスピードなど、無菌操作の基本動作を丁寧に練習することで、実験の成功率は大きく高まります。微生物は目に見えないため、常に“見えない汚染源”を意識して作業することが、安全で再現性の高い実験につながることを理解するところまで。
キーワード ① 固体培地(寒天、秤量、分注) ② 液体培地(試験管、分注量、キャップ調整) ③ 滅菌(121℃、15分、オートクレーブ) ④ 無菌操作(温度管理、シャーレ扱い、気泡防止) ⑤ 培地の種類(基本培地、選択培地、増菌培地)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
授業後の復習では、固体培地と液体培地の作製手順を、自分が実際に行った順番のとおりに整理してみましょう。特に、秤量の正確さ、加熱のタイミング、オートクレーブに入れる際のキャップの締め具合、滅菌後の冷却温度、シャーレへの分注時の注意点など、「どのポイントにリスクがあるのか」を振り返ることが大切です。また、固体培地では寒天の溶解と冷却のタイミングが結果を左右し、液体培地では濁度の観察が増殖評価につながるため、授業中に見た“微妙な違い”を思い出しておきましょう。さらに、滅菌後の操作は外部からの汚染が最も起こりやすいため、シャーレの開閉角度、試験管の持ち替え方、アルコールランプ周辺の上昇気流を利用した無菌操作の動作など、実習で体得した動きを頭の中で再現してみると理解が深まります。最後に、「なぜこの工程が必要なのか」を一つひとつ言語化してみることで、次回以降の実習—特にコロニー観察や継代培養—の成功率がぐっと高まります。培地作製は地味なようで実験の成否を左右する要の作業であり、今回の復習が応用的な実験への確かな土台となります。

[次回授業の予習]
次回は、微生物を新しい培地へ移して“世代をつないでいく”継代培養を学びます。予習段階ではまず、微生物が同じ培地でいつまでも増え続けられるわけではないという基本的な性質を確認しておきましょう。栄養の枯渇や老廃物の蓄積によって増殖が止まるため、一定のタイミングで新しい環境へ移す必要があります。この「継代」の概念を理解しておくと、実習の意味がぐっとつかみやすくなります。また、今回の操作では白金線や白金耳を使うため、火炎滅菌の原理や無菌操作の理由も復習しておくと安心です。固体培地・寒天培地・液体培地の違いや、それぞれへの接種の目的を事前に整理しておくと、当日どの操作がどの場面につながるのか理解しやすくなります。加えて、大腸菌K-12や酵母といった教育用菌株がどの温度で育つのか、ざっくりとした至適温度の知識も予備知識として役に立ちます。専門的な暗記は不要ですが、「なぜ新しい培地へ移すのか」「どうすれば1つのコロニーだけを正確に運べるのか」という問いを持って授業に臨むことで、実習内容が立体的に理解できるようになります。

6 微生物の継代培養(基礎実験編) 科目の中での位置付け 本コマは、微生物利用における「微生物を育て続けるための基礎技術」を身につける重要な位置を占めています。継代培養は、微生物を新鮮な培地へ移し世代をつないでいく基本操作であり、安定した菌株を維持するために欠かせない工程です。特に大腸菌K-12や酵母のような教育・研究で多用される非病原性菌株では、継代の正確さが実験データの再現性や安全性を左右するため、この段階で確実な技術習得が求められます。
また、白金線操作や無菌技術の実践を通じて、前のコマで学んだ滅菌・消毒、器具操作の知識を統合的に使うことができ、より高度な微生物操作へ進むための橋渡しとなります。さらに、培養条件(温度・時間)の設定は、微生物の増殖を制御するうえで不可欠であり、将来的に発酵生産、菌株管理、環境微生物の評価など応用分野で活用される基本概念です。
「微生物を扱う者としての技術的な土台」を形成するコマであり、以後の発酵実験・微生物利用の応用的学習に直結する必須ステップとして位置付けられています。(難易度:★★ 基礎から応用への移行段階)

1.継代培養の目的と原理の理解
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34

2.白金線を用いた固体・寒天・液体培地への継代技術
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34

3.培養条件(温度・時間・培地選択)の設定
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34
3)中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第4章 微生物の観察ととり扱い, 72-99
コマ主題細目 ① 継代培養の目的と原理の理解 ② 白金線を用いた固体・寒天・液体培地への継代技術 ③ 培養条件(温度・時間・培地選択)の設定
細目レベル ① 継代培養とは、微生物を長期間にわたって生きた状態で維持するために、新しい培地へ定期的に移し替える操作のことです。微生物は培地中の栄養が枯渇したり、老廃物が蓄積したりすると、増殖が止まり弱ってしまいます。そのため、新鮮な培地へ移すことで生命活動を継続させることができます。継代培養は「微生物を飼う」作業に近く、安定した実験材料として同じ株を保つために欠かせません。また、継代方法によって菌の性質が変化しにくい条件を選ぶ必要があり、増殖速度、世代時間、栄養要求性などの生理特性を理解しておくことが重要です。本コマでは、継代培養がなぜ必要なのか、どのようなリスク(突然変異、コンタミネーション、形質変化)があるのかを学び、「継代のタイミング」や「目的に応じた培養法の選択」を自分で判断できる基礎力を養うところまで。
② 継代培養では、白金線や白金耳を使って微生物を確実に新しい培地へ移す技術が求められます。白金線は火炎滅菌によって無菌状態を作り、冷却後に菌を一つまみ取り、新しい寒天培地や液体培地へ丁寧に移植します。固体培地から単独コロニーを選ぶ際には、他の菌や周囲のコンタミを拾わないよう注意が必要で、細かな手の動きと観察力が重要になります。寒天培地への移植では、培地表面を傷付けない角度で白金線を滑らせ、均一に菌を付着させる練習を行います。また液体培地へ移す際は、キャップの開閉タイミング、白金線の挿入深さ、気泡の混入防止など、無菌的環境を保つための手順を学びます。この実習を通じて、微生物を「確実に一つだけ運ぶ」技術を身につけることが目的であり、その技能は以降の実験の精度を大きく左右することを理解するところまで。
③ 微生物の継代培養では、移植後の増殖を適切に進めるために、温度・時間などの培養条件を正しく設定することが重要である。多くの教育用菌株として利用される大腸菌K-12は37℃付近でよく増殖し、酵母は30℃前後で安定して増える。このような「至適温度」は微生物ごとに異なり、温度が高すぎると酵素活性が失われ、低すぎると代謝が進まなくなるため、結果として生育が不十分になったり増殖曲線が変化したりする。また、培養時間によっても細胞の状態は大きく変わり、対数増殖期の細胞を継代することで元気な菌体を維持できる一方、静止期に入ると代謝が低下し継代の成功率が下がる。実習では、培養器の設定や、どの段階で継代するかを判断する観察眼を養うことが目的となる。こうした条件制御の理解は、発酵タンクのスケールアップ、酵素生産の最適化、環境微生物の解析など、応用領域における微生物制御の基礎として欠かせないことを理解するところまで。
キーワード ① 継代培養(世代交代、栄養枯渇、形質安定) ② 無菌操作(火炎滅菌、清潔域、コンタミ防止) ③ 白金線操作(単一コロニー選択、寒天接種、液体接種) ④ 培養条件(至適温度、培養時間、培地選択) ⑤ 菌株維持(純度確保、突然変異回避、長期保存法)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
授業後の復習では、白金線を使った固体・寒天・液体培地への接種操作がどのような手順だったかを、自分の動きに沿って振り返ることが大切です。火炎滅菌のタイミング、白金線の冷却、単一コロニーの正しい選び方、寒天培地表面を傷つけない角度、液体培地へ挿入する深さやキャップの扱いなど、実際に操作してみることで気づいた細かなポイントを整理しておきましょう。継代の目的である「元気な菌を維持する」という観点からは、増殖曲線や世代時間の考え方も復習しておくと理解が深まります。また、培養条件(温度・時間)の設定が結果にどれほど影響するかも重要な復習ポイントです。どの温度でどの菌が最も良く育ったか、培養時間による菌体の状態の違いなど、実習中の観察内容を具体的に思い返すことで、自分自身の判断力が養われます。さらに、継代中に起こりうるリスク—突然変異、コンタミネーション、形質変化—を整理し、どの操作に注意すればそれらを防げるか考えることも、次回以降の実験の成功率を高める助けになります。最後に、「継代は微生物を健全に保つための管理作業である」という視点を持ち、今回学んだ技術を応用領域へつなげていく準備をしておきましょう。

[次回授業の予習]
次回は、微生物を“見て理解する”基本技術として、コロニー観察と顕微鏡観察を学びます。予習の段階では、まず「コロニーとは何か」を理解しておくことが大切です。コロニーは、単一の細胞が増殖して形成した微生物集団であり、その形・色・光沢・縁の形状などの特徴が、微生物の種類や生育状態と深く関わっています。観察項目を知っておくだけでも、実習での視点が格段に広がります。また、顕微鏡観察では細胞の形態(球菌、桿菌、酵母など)を直接確認するため、微生物の基本的な形態分類を軽く予習しておくと観察がスムーズになります。標本作製には無菌操作が必須である点も忘れず、白金線やスライドガラスの扱い方を前の主題の復習として思い返しておくとよいでしょう。顕微鏡の構造や焦点合わせの原理を事前に知っておくことで、当日の観察時間を効率的に使えます。予習の目的は細かい名称を暗記することではなく、「どの特徴を見れば微生物の違いを読み解けるのか」という視点を準備することです。この視点があると、実習内容が立体的につながって理解できるようになります。

7 コロニー観察と顕微鏡観察(基礎技術編) 科目の中での位置付け 本コマは、微生物利用学における「微生物を見て理解する力」を育てる重要な導入的ステップとして位置付けられています。コロニーの形態観察は、微生物の種類や生育状態を推測するための基本技術であり、分離・純化・菌株判別の基礎となります。大きさ・色・光沢・質感などの特徴を視覚的に捉えることで、微生物の多様性や生育環境との関連性を感覚的に理解できるようになります。
顕微鏡観察によって、コロニーの背後にある細胞レベルの形態(球状・桿状・酵母様形態など)を直接確認する経験は、微生物学の理解を立体的にするうえで欠かせません。ぬぐい取り標本の作製は、無菌操作の基礎を実践しながら、細胞の配置や増殖様式を読み取る力を養う場ともなります。
これらの観察技術は、後続の実習で扱う菌の純度確認、発酵性の評価、環境・食品サンプル中の微生物の比較など、応用的な分析や実験判断の基礎となります。したがって主題6は、「微生物を自分の目で識別し評価する力」を育成し、以後の培養・分類・応用研究へと進むための重要な基盤として位置付けられています。(難易度:★★ 応用的内容)

1.継代培養のコロニー形態の観察
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34
3)中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第4章 微生物の観察ととり扱い, 72-99

2.継代培養のコロニー形態の記録
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第4章 無菌操作と菌株保存法, 23-34
3)中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第4章 微生物の観察ととり扱い, 72-99

3.顕微鏡の正しい操作と微生物形態観察
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第4章 顕微鏡観察, 35-54
3)中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第4章 微生物の観察ととり扱い, 72-99
コマ主題細目 ① 継代培養のコロニー形態の観察 ② 継代培養のコロニー形態の記録 ③ 顕微鏡の正しい操作と微生物形態観察
細目レベル ① これまでに継代培養した微生物を対象に、コロニー形態観察に適した状態を整えることを目的とする。コロニー観察は、微生物の種類や生育状態を判断するための基本的な手法であるが、正確な観察を行うためには、培養日数や培地条件が適切であることが重要である。生育が不十分なコロニーや、過密に形成されたコロニーでは、形態的特徴を正しく捉えることが難しい。そのため、本実習では、観察に適した培養期間のコロニーを選び、寒天表面の結露を除去するなど、観察前の準備操作を行う。また、コンタミネーションの有無を確認し、純粋培養が維持されているかを判断することも重要な作業である。これらの準備を通じて、学生は「観察は培養条件から始まっている」という実験の基本的な考え方を理解し、次の記録・解析へとつなげる土台を整えるところまで。
② 準備したコロニーを対象に、その形態的特徴を客観的に記録する方法を学ぶ。コロニー形態は、大きさ、色、表面の質感、縁の形、隆起の有無など複数の要素から構成されており、これらを体系的に観察・記録することで、微生物の性質を比較・整理することが可能となる。実習では、肉眼観察に加え、必要に応じて実体顕微鏡を用い、観察項目ごとにチェックシートやノートへ記録を行う。スケッチや写真記録を併用することで、時間経過による変化や他班との比較も容易になる。重要なのは、主観的な印象ではなく、誰が見ても同じ情報が伝わるように表現することである。本細目を通じて、学生は観察結果を「データ」として扱う姿勢を身につけ、後の同定や考察につながる基礎的な記録力を養うところまで。
③ 顕微鏡の基本構造と正しい操作方法を理解し、微生物の細胞レベルでの形態観察を行う。顕微鏡観察は、コロニーという集団の背後にある微生物一つ一つの姿を確認するための重要な手法であり、微生物学の基礎技術の一つである。実習では、対物レンズの切り替え、ピント調整、光量調節などの基本操作を確認したうえで、簡単なぬぐい取り標本や染色標本を観察する。球菌や桿菌、酵母様細胞などの形態の違いを観察し、コロニー形態との関連性を考えることが重要なポイントとなる。また、レンズの取り扱いや油浸観察時の注意点など、安全かつ正確な使用方法も学ぶ。本細目を通して、学生は「見えない微生物を正しく見る」ための基礎技能を身につけ、以後の染色実習や同定的観察への理解を深めるところまで。
キーワード ① コロニー形態(大きさ、色、質感) ② 外観分類(形、縁、盛り上がり) ③ 観察記録(スケッチ、写真記録、記載様式) ④ 顕微鏡操作(焦点合わせ、倍率変更、光量調整) ⑤ 微生物形態(球菌、桿菌、酵母)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
授業後の復習では、まず観察したコロニーの特徴を思い出しながら、「自分は何を観察し、どう記述したか」を整理しましょう。大きさ、色、表面の質感、盛り上がり、縁の状態などを記録することが、微生物の種類推定や汚染の有無を判断する基盤となります。また、同じ菌でも培地や条件で形態が変化することを確認し、観察条件の記録がなぜ重要なのか再確認しておくとよい学びになります。標本作製については、菌量の調整、広げ方の均一性、無菌操作の難しさなど、実際にやってみて気づいた点をメモしておくことで、次回の操作精度が高まります。顕微鏡観察では、焦点合わせのコツ、倍率ごとの見え方の違い、光量やコンデンサー調整が像の見えやすさにどう影響したかを整理することが重要です。また、観察した細胞の形態(球状・桿状・楕円形)、細胞の連なり方、運動性の有無などを比較し、「コロニーで見た特徴と細胞レベルの特徴がどのようにつながるか」を振り返ることが理解を深めます。最後に、観察技術が菌株判別や純度確認にどのように役立つかを自分の言葉でまとめると、主題6の学びが応用実習へしっかり橋渡しされます。

[次回授業の予習]
次回は、微生物がどのような環境で育つのか、そして混ざり合った菌の中から“目的の菌だけを取り出す方法”を学びます。予習ではまず、「微生物の生育は環境条件で大きく変わる」という基本概念を押さえておくことが重要です。特に温度は生育と直結し、酵素反応や膜の状態に影響するため、生育の速さやコロニーの形態も変化します。大腸菌の至適温度が37℃、酵母が30℃付近といった代表的な例を知っておくと、温度別培養の結果の予測ができるようになります。また、栄養源・水分活性・酸素供給など、微生物の多様な生育要因について簡単に把握しておくと、実習内容の理解が深まります。次に、希釈平板法の基本的な考え方も予習しておきたいポイントです。試料を段階的に希釈し、最終的に「コロニーが互いに離れて生える状態」をつくることで純粋な菌株が得られるという仕組みを理解しておくと、実習時の操作の意味が自然につかめます。予習の目的は、細かい数値を覚えることではなく、“微生物ごとに得意な環境がある”“混ざった菌は希釈すれば分けられる”という2つの視点をもって授業へ臨むことです。

8 微生物の生育条件と分離法(基礎技術編) 科目の中での位置付け 本コマは、微生物利用学において「微生物を選び、育て、見分ける」ための基礎的な分析技術を身につける重要な位置づけにあります。微生物は温度・栄養・水分・酸素などの環境条件によって増殖の度合いや速度が大きく変化します。温度別培養の比較を通して、微生物にはそれぞれ至適条件があることを体験的に理解し、環境微生物や発酵に関わる菌がどのような環境を好むかを考える視点を養います。
また、希釈平板法は、混合した微生物集団から個々の菌を分離し、純粋なコロニーを得るための微生物学の核心となる手法です。この操作を身につけることで、環境サンプルや食品材料など、多様な微生物が含まれる試料から目的菌を取り出す技術的基盤が形成されます。これは、後に学ぶ発酵制御、微生物利用、菌株選抜にも直結する力です。
本コマで学ぶ生育条件の理解と分離技術は、培養・観察・同定・応用研究といった微生物実験の全プロセスに横断的に影響する基本概念であり、以後の実験計画や菌株操作を正確かつ安全に進めるための欠かせないステップとして位置づけられています。(難易度:★★ 基礎から応用への橋渡し)

1.微生物の生育に影響する環境要因(温度・栄養・水分・酸素)
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)中西載慶(著):応用微生物学, 第3章 微生物の分離と培養, 46-64

2.温度別培養による増殖特性の比較と解析
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)中西載慶(著):応用微生物学, 第3章 微生物の分離と培養, 46-64

3.希釈平板法を用いた微生物の分離と純粋培養
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)中西載慶(著):応用微生物学, 第3章 微生物の分離と培養, 46-64
3)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34
コマ主題細目 ① 微生物の生育に影響する環境要因(温度・栄養・水分・酸素) ② 温度別培養による増殖特性の比較と解析 ③ 微生物の分離と純粋培養
細目レベル ① 微生物の生育は、温度・栄養・水分・酸素などの環境要因によって大きく左右される。微生物ごとに「至適温度」が存在し、例えば大腸菌は37℃付近、酵母は30℃前後で最もよく増殖する。一方で、低温に適応した低温菌(サイコロファイル)や、高温に強い好熱菌(サーモフィル)など、多様な適応が見られる。温度が酵素反応速度や細胞膜の流動性に影響するため、環境によって生育速度が大きく変化する。また、栄養源の種類や濃度も重要で、糖類、アミノ酸、無機塩類のバランスによって生育の可否が決まる。さらに、水分活性や酸素供給も生育に直結し、好気性菌・嫌気性菌の違いが増殖様式を規定する。本細目では、温度別培養の比較実験を通じて、環境要因が微生物の増殖にどのような影響を与えるかを観察し、微生物の多様性と適応の仕組みを学ぶ。これらの理解は、発酵制御、保存、環境微生物の挙動解析など、応用領域で不可欠な基礎知識となることを理解するところまで。
② 温度別培養は、微生物の増殖特性を理解するための代表的な基礎実験である。同じ菌株を低温(例:15℃)、常温、至適温度(例:30〜37℃)で培養し、コロニー数や成長速度の違いを比較することで、温度が細胞の代謝活性に及ぼす影響を捉えることができる。温度が低い環境では酵素反応が遅くなり増殖が緩やかになる一方、高温すぎる環境ではタンパク質の変性や細胞膜の障害により増殖が阻害される。このように、微生物の生育は温度依存的であり、その性質を理解することは発酵制御や食品保存の設計にも応用される。実習では、培養後のコロニーの大きさ・色調・出現速度などを記録し、温度が生育形態に及ぼす影響を定性的に評価する。また、観察結果から至適温度帯を推定し、環境条件が代謝・生育に与える影響を考察する力を養う。こうした解析能力は、微生物の性質を理解し実験条件を適切に設定するために不可欠な基礎となるところまで。
③ 混合した微生物集団から個々の菌を分離し、純粋なコロニーを得るための基本技術である。試料を段階的に希釈し、少量を寒天平板へ接種することで、平板上にコロニーが十分離れて現れるようにする。単離されたコロニーは、その菌が単一細胞から増殖したものであり、純度の高い培養株として扱うことができる。実習では、希釈倍率の設定、滅菌ピペットの正しい扱い、プレート表面への均一な塗布(スプレッディング)など、無菌操作と精密さが求められる操作を習得する。特に、希釈の誤差や塗り広げの不均一さは分離効率に直結するため、丁寧な手順が必要となる。また、得られたコロニーを観察し、その形態的特徴から微生物の種類や性質を推測する訓練にもつながる。希釈平板法は、環境・食品・発酵現場の微生物調査、菌株スクリーニング、汚染原因解析など、幅広い領域で用いられる技術であり、微生物を扱う者にとって必須の基本操作であることを理解するところまで。
キーワード ① 生育条件(至適温度、栄養要求、水分活性) ② 温度応答(低温菌、中温菌、好熱菌) ③ 微生物の分離方法(段階希釈、平板塗布、単離コロニー) ④ 純粋培養(コロニー選択、汚染確認、形態観察) ⑤ 増殖特性(増殖速度、代謝活性、環境適応)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
授業後はまず、温度別培養で観察したコロニーの変化を振り返りましょう。同じ菌でも温度によってコロニーの大きさ・色・成長速度が大きく異なったはずです。この違いを「酵素活性」「膜の流動性」「代謝速度」といった生理的背景と結びつけて整理することで、生育特性の理解が深まります。また、至適温度とその前後で何が起きるのか(低温での代謝遅延、高温でのタンパク質変性など)を自分の言葉で説明できるか確認しましょう。次に、希釈平板法の操作を振り返り、どの段階で精度が必要だったか整理します。段階希釈の計算、ピペット操作の正確さ、スプレッディングの均一性、無菌操作の徹底など、分離に直結するポイントは多くあります。得られたコロニーが単離されていたかどうか、コロニーの形態からどのような推測ができたかも、復習として記録しておくと良い学習になります。さらに、「なぜ希釈が必要なのか」「なぜ分離が微生物学の中心技術なのか」を実感をもって整理すると、発酵・環境サンプル解析・食品微生物評価など、今後の応用分野につながる視点が身につきます。主題7で得たこの“条件を整え、菌を選び出す力”は、今後のほぼすべての実験の基礎となる重要な学びです。

[次回授業の予習]
次回は、単純染色とグラム染色を通して「微生物を見て分類する」技術を学びます。予習ではまず、単純染色の役割を理解しておきましょう。細菌はそのままでは透明に近く見えにくいため、塩基性色素で染めることで形態(球菌、桿菌、らせん菌など)や連鎖の仕方を観察しやすくなります。細胞がどのように配置しているかを見取ることは、分類や性質の理解に直接つながります。また、グラム染色では細胞壁の構造によって染まり方が変わることを知っておくと、当日の実習が非常にスムーズになります。厚いペプチドグリカン層を持つグラム陽性菌は紫に、薄い層と外膜を持つ陰性菌はピンクに染まるという基本だけ押さえておけば十分です。さらに、スライド作製における「塗抹の厚さ」「加熱固定の目的」「油浸レンズを使う理由」など、観察技術に関わる基礎を予習しておくと、実際の作業に余裕が生まれます。予習のポイントは、単純染色=形を知る、グラム染色=細胞壁の性質を知る、という2つの視点を持つことです。この視点があるだけで、染色の操作が“作業”ではなく“理解のための観察”へと変わっていきます。

9 細菌の染色法(単純染色・グラム染色)(基礎から応用編) 科目の中での位置付け 本コマは、微生物利用学における「微生物を識別し分類するための観察技術」を習得するうえで非常に重要な位置付けにあります。単純染色では、細菌を一様に染めることで形状(球菌・桿菌など)や細胞の基本的な配置を把握する力を身につけ、微生物の形態学的理解の基盤を形成します。一方、グラム染色は、細胞壁構造の違いに基づいて微生物をグラム陽性菌とグラム陰性菌に区別する、微生物学で最も基本的かつ重要な分類手法です。染色結果の違いは、菌の性質、薬剤感受性、生育特性などにも関係し、後続の講義内容とも強く結びついています。
本コマでは、加熱固定、染色、脱色、対比染色といった一連の染色操作を実践することで、無菌操作や顕微鏡観察で培ってきた技能をさらに発展させることができます。特にグラム染色は、微生物の同定や品質管理、医療・食品・環境分野の微生物検査において最初に行われる標準的な技術であるため、学生が実践的な微生物分析へと進むうえで不可欠な知識となります。
本講義は、微生物を「見て区別する」能力を養い、今後扱う微生物の性質理解や実験計画に直結する基本技術として、講義全体の中で基礎から応用への橋渡しとなる重要な位置づけにあります。(難易度:★★ 応用的内容)

1.単純染色による細胞形態の基本観察
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第5章 微生物の分類, 55-68

2.グラム染色の原理と細胞壁構造の理解
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第5章 微生物の分類, 55-68

3.顕微鏡による細菌の観察
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第4章 顕微鏡観察, 35-54
3)中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第4章 微生物の観察ととり扱い, 72-99
コマ主題細目 ① 単純染色による細胞形態の基本観察 ② グラム染色の原理と細胞壁構造の理解 ③ 顕微鏡による細菌の観察
細目レベル ① 単純染色は、細菌をメチレンブルーなどの単一の色素で染め上げ、細胞の形態や配置を観察するための最も基本的な染色法である。細胞表面に陰性電荷をもつ細菌は、正電荷を帯びた塩基性色素と結合しやすく、染色することで背景とのコントラストが生まれ、細胞の形・大きさ・配置パターンを明確に観察できる。球菌、桿菌、らせん菌などの基本形状の違いを把握することは、微生物の分類・同定の第一歩になる。単純染色は操作が比較的容易であり、固定・染色・洗浄・乾燥という流れを通じてスライド作製の基本技術を習得できる点も重要である。さらに、形態観察を通じて、細胞の連鎖性や集落形成の特徴など、微生物の増殖様式を推測する感性も育つ。後続のグラム染色との比較にも役立ち、微生物を顕微鏡で「見る」技術の基礎固めとして欠かせない工程であることを理解するところまで。
② グラム染色は、細菌をグラム陽性菌と陰性菌に区別する代表的な染色法であり、細胞壁構造の違いを視覚的に理解するための基本技術である。グラム陽性菌は厚いペプチドグリカン層をもち、クリスタルバイオレットとヨウ素によるCV–I複合体が細胞内に保持されるため紫色に染まる。一方、グラム陰性菌は薄いペプチドグリカン層と外膜をもち、脱色工程で複合体が抜けやすく、サフラニンによって赤色~ピンクに染まる。この構造的違いは、抗生物質への感受性、生育環境への耐性、栄養要求性など、微生物の性質と密接に関連している。実習では、固定・主染・媒染・脱色・対比染色の各工程を丁寧に行い、脱色の時間や洗浄の強さが結果に大きく影響することを体験的に学ぶ。グラム染色は微生物検査の最初の鑑別ステップとして医療・食品・環境分野で広く活用されており、その基礎を理解することで応用的な微生物評価へ進む準備が整うことを理解するところまで。
③ 染色結果を正しく読み取るためには、スライド作製と顕微鏡観察の技術が欠かせない。まず、清潔なスライドガラスに菌体を塗抹し、適切な厚さの塗り広げを行うことが重要である。塗りが厚すぎると染色ムラが生じ、薄すぎると細胞が観察しづらくなる。加熱固定では、細胞をスライドに定着させつつ、形態が崩れないよう温度と時間の感覚が求められる。染色後の観察では、顕微鏡のピント調整、光量調整、対物レンズの切り替えなど基本操作を確実に行い、1000倍油浸レンズで細胞壁の色調差や細胞形態の細部を見分ける。観察結果を記録し、形態・色調・配置様式の違いを整理することも学習内容の一部である。本細目を通じて、単純染色およびグラム染色の結果を正確に読み取る観察力と、スライド作製の再現性を高める技能が養われ、以後扱う菌株の同定、汚染確認、実験計画立案などに応用できる基礎が確立されることを理解するところまで。
キーワード ① 単純染色(形態観察、塩基性色素、固定操作) ② グラム染色(CV–I複合体、脱色反応、細胞壁構造) ③ 細胞壁構造(ペプチドグリカン層、外膜、透過性) ④ 顕微鏡観察(油浸レンズ、光量調整、焦点操作) ⑤ スライド作製(塗抹厚さ、加熱固定、再現性)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
授業後の復習では、まず単純染色で観察した細胞形態を振り返り、自分がどのように形・大きさ・配置を記録したか整理しましょう。球菌の連鎖や桿菌の並び方など、形態学的な特徴を言語化しておくと、後の分類学や同定技術の大きな助けになります。次に、グラム染色の結果を整理し、どの菌が紫(陽性)、どの菌がピンク(陰性)になったか、その理由を細胞壁構造と結びつけて説明できるようにしておくことが重要です。特に脱色の時間や洗い方で結果が変わるという体験は、染色技術が「知識だけではなく手技の精度」で成り立つことを実感できる良い学びになります。スライド作製については、塗抹の厚さ、固定の加減、乾燥の時間など、実際に作業してみて上手くいった点・課題点を振り返り、次回の操作に活かせるよう整理すると効果的です。さらに、観察した形態やグラム反応から、菌の性質(細胞壁の強さ、薬剤感受性、環境適応性など)を推測するトレーニングも復習として有効です。最後に、「染色は微生物を見て理解するための入り口である」という視点を持ち、観察技術を応用的な微生物評価へつなげる準備をしておくと、主題8の学びがより深まります。

[次回授業の予習]
次回は、酵母やカビなど“真菌特有の形態”を観察し、細菌とは異なる構造を理解することが中心になります。予習ではまず、真菌の基本構造を軽く押さえておきましょう。酵母は単細胞で出芽によって増殖する一方、カビは菌糸と呼ばれる糸状の構造を形成し、分生子や胞子など多様な繁殖形態をもつという点を理解しておくと、顕微鏡観察で何を見るべきかが明確になります。また、ラクトフェノールコットンブルー染色の目的—「固定しながら細胞壁(キチン)を鮮明に染める」というポイント—を知っておくと、染まった像の意味がつかみやすくなります。細菌染色とは異なり、真菌では細胞壁の構造や菌糸の形、胞子のつき方が分類の鍵になるため、それらの観察ポイントを予習しておくと実習の理解がぐっと深まります。さらに、胞子や菌糸は壊れやすく、スライド作製には繊細な操作が必要であることを知っておくと、当日の作業で戸惑いにくくなります。予習の目的は、真菌が「細菌とは別世界の構造をもつ微生物」であることを理解し、観察の視点(菌糸・胞子・分生子柄・出芽痕など)を持って実習に臨めるようにすることです。

10 真菌の染色法(酵母・カビ)(基礎から応用編) 科目の中での位置付け 本コマは、微生物利用学における「真菌を理解し、形態から識別するための基礎技術」を習得する重要な位置付けにあります。酵母やカビは細菌とは構造や大きさが異なり、多細胞性の菌糸や分生子など独特の形態を示すため、その観察には専用の染色法と顕微鏡技術が必要となります。ラクトフェノールコットンブルー染色は、真菌の細胞壁を鮮明に染め、菌糸・胞子・分生子柄などの特徴を明瞭に観察できる標準的な手法であり、真菌分類や同定の基礎を支える染色技術です。
スライド作製、染色、顕微鏡観察の一連の操作を実践することで、真菌の多様な形態を自らの目で捉え、細菌との違いや真菌特有の生活様式を理解する力を育てます。また、真菌は発酵食品、抗生物質生産、環境分解など幅広い分野で活用されるため、その形態を識別できることは以後の学習内容(麹菌・酵母の応用、環境微生物、産業利用など)に直結します。
本実習は、真菌の観察技術を通じて微生物の世界の「もう一つの主要グループ」を理解する導入的かつ応用的な橋渡しとして、微生物利用学全体の学習を支える重要なコマとして位置付けられています。(難易度:★★ 応用的内容)

1.真菌の基本構造と染色の目的理解
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)宮地 誠、西村和子、宇野 潤(編):病原真菌(廣川書店),第1編第1章 病原真菌の分類と検査法,3-26
3)宮地 誠、西村和子、宇野 潤(編):病原真菌(廣川書店),第2編第1章 病原真菌の同定法,27-52

2.真菌の染色手法と原理
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)宮地 誠、西村和子、宇野 潤(編):病原真菌(廣川書店),第2編第1章 病原真菌の同定法,27-52

3.麹菌の培地作成(次週のため)
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第5章 かびの分離と培養, 100-113
コマ主題細目 ① 真菌の基本構造と染色の目的理解 ② 真菌の染色手法と原理 ③ 麹菌の培地作成(次週のため)
細目レベル ① 真菌(酵母・カビ)は、細菌とは異なる細胞壁組成・大きさ・構造を持つため、観察には専用の染色法が必要となる。酵母は単細胞性で出芽や分裂によって増殖する一方、カビは菌糸と呼ばれる細長い細胞糸を形成し、分生子や胞子など多様な繁殖構造を持つ。このような形態的特徴は、分類・同定・生活環の理解において重要な指標となる。ラクトフェノールコットンブルー染色では、乳酸とフェノールによって菌体を固定・殺菌し、コットンブルー色素がキチンを含む細胞壁に結合することで、菌糸や胞子が青色に鮮明に染まる。これにより、細胞壁の輪郭や分生子柄の形状、分生子の配列など細菌では見られない真菌特有の構造が観察しやすくなる。本細目では、真菌の形態観察が必要となる理由と、染色の目的(構造強調・対比の確保・分類の補助)を理解し、真菌の多様性を捉える基礎的な視点を養うところまで。
② ラクトフェノールコットンブルー染色は、真菌観察に最も広く用いられる染色法であり、固定・殺菌・染色を同時に行える効率的な技術である。乳酸は細胞壁を安定化させ、フェノールが菌体を殺菌することで安全な観察用標本を作成できる。コットンブルーはキチンおよびセルロースに結合しやすく、菌糸や胞子を鮮明に青く染め上げる。実習では、針先で少量の菌糸を採取し、スライド上で染色液と軽く混和した後、カバーガラスをかけて観察を行う。この際、菌糸が折れたり潰れたりしないよう、強い圧力を避ける繊細な操作が求められる。また、コンタミを防ぐために無菌操作を保つことも重要である。仕上がった標本では、隔壁の有無、分生子の形成パターン、酵母の出芽痕など細胞構造の細部まで観察できる。こうした観察は、真菌の分類学的理解に加え、麹菌・酵母など実用微生物の特性把握にも直結することを理解するところまで。
③ 本細目では、次週以降に行う麹菌の培養・観察・胞子形成実習に備え、麹菌に適した培地を作製することを目的とする。麹菌は糸状菌であり、培地の栄養組成や水分条件によって菌糸成長や胞子形成の様式が大きく変化する。そのため、培地作成は単なる前準備ではなく、実習全体の成否を左右する重要な工程である。本実習では、PDA培地や米由来成分を含む培地など、麹菌が生育しやすい培地を対象に、秤量、溶解、加熱、滅菌、分注といった基本操作を一つひとつ確認しながら作業を行う。また、培地の濃度や寒天量が菌糸の広がり方や胞子形成に与える影響についても意識し、目的に応じた培地設計の考え方を学ぶ。作製した培地は次週の純粋培養に使用されるため、無菌操作の徹底やラベリングの正確さも重要なポイントとなる。本細目を通じて、学生は「培地は微生物の生育環境そのものを作る作業である」ことを理解し、麹菌実習を円滑に進めるための基礎的かつ実践的な力を身につけるところまで。
キーワード ① 真菌形態(菌糸構造、分生子、出芽痕) ② 染色法(固定作用、キチン染色、対比強調) ③ ラクトフェノールコットンブルー(乳酸固定、フェノール殺菌、細胞壁染色) ④ 顕微鏡観察(隔壁構造、胞子形成、形態識別) ⑤ 培地設計(PDA培地、SDA培地、栄養組成)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
授業後の復習では、スライドに染まって見えた真菌の構造を丁寧に振り返ることが重要です。まず、菌糸の太さ、隔壁の有無、分岐のしかた、分生子柄の形態、分生子の配列(鎖状・房状など)など、観察できた形質を自分の言葉で整理しましょう。酵母を観察した場合は、細胞の大きさ、出芽痕の位置、出芽の様式といった特徴が分類のポイントになります。次に、ラクトフェノールコットンブルー染色の結果を振り返り、どの部分が特に染まりやすかったか、菌糸や胞子の輪郭がどれだけ鮮明に見えたかを確認します。染色の仕上がりは、試料の量・混和の仕方・カバーガラスを置く際の力加減など細かな操作に影響されるため、うまくいった点・改善点を振り返ることが次回以降のスキル向上につながります。さらに、観察した形態がどのように分類・同定に結びつくのか(例:分生子の付き方→カビの種類推定、出芽痕→酵母の生活環理解など)を関連づけて整理すると、応用的な視点が育ちます。最後に、細菌との違い(大きさ、細胞壁成分、形態の複雑性)も比較しておくと、真菌を扱う際の注意点や活用場面の理解が深まり、主題9の学びがより確かなものになります。

[次回授業の予習]
次回の授業では、麹菌を用いた真菌培養の準備として、培地作製、植菌、スタート株の取り扱いを行います。予習ではまず、「培地とは何か」「なぜ培地を自分で作る必要があるのか」を整理しておきましょう。培地は微生物が生育するための環境そのものであり、成分やpHの違いによって生育速度や形態が大きく変化します。本実習で用いるPDA培地は糸状菌の菌糸成長や胞子形成を観察しやすい培地であり、SDA培地は高糖・弱酸性条件により真菌を優先的に生育させる特徴があります。次に、麹菌がどのような構造をもつ真菌であるか(菌糸、分生子、分生子柄など)を事前に確認しておくと、植菌や次週の観察内容が理解しやすくなります。また、麹菌は食品利用実績のある安全な微生物ですが、胞子は非常に軽く飛散しやすいため、無菌操作や飛散防止が重要です。スタート株の取り扱いがなぜ慎重でなければならないのかを考えておくことも予習のポイントです。予習の目的は、今回の実習が「観察のための仕込み」であり、操作の正確さが次週の結果を左右することを理解し、意味をもって実験に臨む準備を整えることです。

11 有用微生物の培養:真菌(1)(応用編) 科目の中での位置付け 本コマは、果物表面に生息する酵母・カビを対象に、「真菌はどこにいて、どんな働きをしているのか」を理解する導入的な位置付けにある。日常的な食品素材である果物を切り口として、野生酵母や環境カビが果実の成熟・腐敗・発酵に関わることを学び、真菌が食品発酵・酵素生産・バイオテクノロジーなど多様な応用分野と結びついていることを把握する。さらに、自然界から有用微生物を探索するという発想そのものを学ぶことで、今後の分離培養実習(主題12)や観察・保存回(主題13・14)に向けた“問題意識”と“探究テーマ”を準備する役割を担う。(難易度:★★★ 応用への導入)
1.麹菌の培地作成(シャーレに分注)−PDAとSDAプレート
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)高鳥浩介(著):図解カビ検査・操作マニュアル(テクノシステム), 第2章 価微雨の検査法, 41-70

2.麹菌のPDAとSDAに植菌・スライド培養(次週観察用)
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)高鳥浩介(著):図解カビ検査・操作マニュアル(テクノシステム), 第2章 価微雨の検査法, 41-70

3.麹菌のスタート株の取り扱いと接種準備
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)高鳥浩介(著):図解カビ検査・操作マニュアル(テクノシステム), 第2章 かびの検査法, 77-93
コマ主題細目 ① 麹菌の培地作成(シャーレに分注)−PDAとSDAプレート ② 麹菌のPDAとSDAに植菌・スライド培養(次週観察用) ③ 麹菌のスタート株の取り扱いと接種準備
細目レベル ① 本細目では、麹菌の培養に用いる代表的な寒天培地であるPDA(Potato Dextrose Agar)およびSDA(Sabouraud Dextrose Agar)を作製し、シャーレに分注する操作を行う。PDAはデンプン由来成分を含み、糸状菌の菌糸成長や胞子形成を観察しやすい培地である。一方、SDAは高糖・弱酸性条件を特徴とし、真菌の生育を促進しつつ細菌の増殖を抑制する目的で用いられる。これら2種類の培地を比較することで、培地組成やpHが麹菌の生育様式に与える影響を理解することができる。実習では、培地の秤量、溶解、加熱、滅菌後の冷却、無菌的なシャーレ分注といった一連の基本操作を確認する。特に、寒天温度や分注量の違いが平板の均一性に影響する点を意識させる。本細目を通じて、学生は「培地を作ることが微生物の生育環境を設計する行為である」ことを理解し、次週の培養観察につながる基礎技術を身につけるところまで。
② 本細目では、作製したPDAおよびSDA平板に麹菌を植菌し、次週に行う観察実習に向けた培養を開始する。植菌操作では、麹菌スタート株を用い、白金線や滅菌器具を使用して寒天表面に適切な量の菌体または胞子を接種する。過剰な接種は菌糸の重なりを招き、観察を困難にするため、植菌量の調整が重要となる。また、平板培養に加えてスライド培養を行うことで、寒天上で成長する菌糸や分生子形成を、構造を保ったまま顕微鏡観察できる利点を学ぶ。培養後は、温度や培養期間を適切に設定し、菌糸成長から胞子形成への変化が次週に確認できるよう準備する。本細目は、培地条件の違いによる生育差を比較しながら、観察に適した標本を「仕込む」重要な工程であり、真菌培養実習の中核となることを理解するところまで。
③ 購入した市販の麹菌スタート株を安全かつ適切に取り扱う方法を学ぶ。麹菌は食品利用実績のある安全な真菌である一方、胞子は非常に軽く、空気中に拡散しやすいため、取り扱いには注意が必要である。実習では、スタート株の保管状態の確認、開封時の注意点、接種前の準備手順を整理し、無菌操作と飛散防止の基本を確認する。特に、接種量の目安や、胞子懸濁液を用いる場合の調製方法を理解することで、再現性の高い培養が可能となる。また、ラベル記載や記録の重要性についても触れ、菌株管理の基礎を身につける。本細目を通じて、学生は「微生物を扱う責任」と「安全な実験操作」の両立を学び、以降の麹菌培養・観察・保存実習へと円滑につなげる準備を整えるところまで。
キーワード ① 培地作成(PDA、SDA、寒天分注) ② 植菌操作(接種量調整、白金線操作、無菌操作) ③ 培養条件(温度設定、培養期間、生育制御) ④ スライド培養(構造保持、菌糸観察、胞子形成) ⑤ 麹菌スタート株(市販菌、安全管理、接種準備)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、麹菌を培養・観察するための準備段階として、培地作製、植菌、スタート株の取り扱いという一連の基礎操作を行った。まず、PDA培地とSDA培地を作製し、シャーレへ分注する過程を通して、培地組成やpHの違いが真菌の生育環境をどのように規定するかを学んだ。培地は単なる「土台」ではなく、微生物の生育様式や観察結果を左右する重要な実験条件であることを理解することが重要である。次に、作製した培地への植菌操作では、接種量や器具操作の丁寧さが、次週の観察のしやすさに直結することを確認した。過剰な接種は菌糸の重なりを招き、形態観察を難しくするため、適切な量を意識した操作が求められる。また、スライド培養の準備を通じて、菌糸や分生子形成を構造的に観察するための工夫を学んだ。さらに、麹菌スタート株の取り扱いでは、胞子の飛散防止や無菌操作の重要性を再確認し、安全性と再現性を両立させた実験操作の意義を理解した。今回の実習は、次週の観察結果を左右する「仕込み」の工程であり、基礎操作の正確さがその後の学習の質を高めることを意識して振り返ることが大切である。

[次回授業の予習]
次回は、麹菌を用いた米麹作製実験を実際に開始する。予習ではまず、「麹菌培養は数日間にわたる時間管理型の実験である」という点を理解しておくことが重要である。接種した瞬間に結果が出るわけではなく、温度・湿度・時間の積み重ねによって菌糸の伸長や酵素産生が進行する。そのため、事前に実験全体のスケジュールを把握し、どの工程がどの結果につながるのかを意識しておく必要がある。次に、麹菌が増殖する基質としての「米」の役割を整理しておく。米の状態(粒の大きさ、水分、広がり方)は、麹菌の生育ムラに直結するため、薄く均一に広げる理由を理解しておくと操作の意味が明確になる。また、市販麹菌(種麹)は安全性の高い真菌であるが、胞子が軽く飛散しやすいため、無菌操作と丁寧な取り扱いが必要であることも予習の重要点である。予習の目的は、「麹を作る作業」を食品加工としてではなく、微生物を計画的に培養・制御する実験操作として捉え、各工程の意味を理解した状態で実習に臨む準備を整えることである。

12 有用微生物の培養:真菌(2)(応用編) 科目の中での位置付け 本コマは、これまでに学んだ真菌の構造理解、染色観察、培地作成、純粋培養といった基礎的内容を踏まえ、麹菌を用いた実践的な培養操作を総合的に体験する応用段階のコマとして位置付けられる。麹菌による米麹作製は、微生物の生育条件を人為的に設計・制御する代表的な事例であり、発酵・食品産業における微生物利用の本質を理解するうえで極めて重要である。
本コマでは、単なる操作手順の習得にとどまらず、数日単位で進行する培養プロセスを見通した計画立案、基質(米)の前処理、接種条件の設定といった「実験を成立させるための思考力」を重視する。特に、温度管理や時間経過による変化を前提とした計画作成を通じて、微生物培養が即時的な結果を得る実験ではなく、時間管理と環境制御を伴う操作であることを体験的に学ぶ。
真菌培養の基礎を実際の微生物利用へと結び付ける橋渡しとなる位置にあり、後続の観察・評価・保存・応用実習へと発展するための中核的な役割を担っている。(難易度:★★★ 技術的応用)

1.真菌分離培養の原理と培地設計(酵母用/カビ用)
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)高鳥浩介(著):図解カビ検査・操作マニュアル(テクノシステム), 第2章 かびの検査法, 41-126

2.スタンプ培養・洗浄液培養を用いた果物由来真菌の分離
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)高鳥浩介(著):図解カビ検査・操作マニュアル(テクノシステム), 第2章 かびの検査法, 41-126

3.インキュベーション条件設定と分離株取得に向けた記録・管理
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)高鳥浩介(著):図解カビ検査・操作マニュアル(テクノシステム), 第2章 かびの検査法, 41-126
コマ主題細目 ① 麹菌実験に向けた計画作成 ② 米麹と種麹作製 ③ 市販麹菌の接種
細目レベル ① 本細目では、麹菌を用いた米麹作製実験を円滑に進めるために、実験全体のスケジュールを立てることを目的とする。麹菌培養は、接種後すぐに結果が得られる実験ではなく、温度管理や時間経過に伴う変化を継続的に観察する必要がある。そのため、事前に各工程(米の準備、滅菌、接種、培養、途中観察、完成)の流れを整理し、どのタイミングで何を行うのかを明確にしておくことが重要である。本細目では、麹菌の生育速度や至適条件を踏まえながら、数日単位の実験計画を立案することで、「培養は時間を管理する実験である」という視点を養う。また、計画作成を通じて、後続の観察・評価実習につながる記録項目や注意点を整理し、再現性のある実験を行うための準備力を身につけるところまで。
② 本細目では、麹菌培養の基質となる米を準備し、雑菌の混入を防ぐための簡易的な滅菌操作を行う。実習では市販のパックご飯を用い、簡易滅菌用パウチに入れて薄くのばすことで、均一な加熱と培養環境を確保する。この工程は、産業現場で行われる本格的な蒸米・滅菌操作を簡略化したものであり、教育用実習として安全性と再現性を両立させている。米を薄く広げることは、麹菌が表面に均一に生育するために重要であり、塊が残ると局所的な生育不良や雑菌増殖の原因となる。本細目を通じて、学生は「培養対象(微生物)だけでなく、基質の状態も実験結果を左右する」という重要な考え方を理解し、培養前処理の意義を学ぶところまで。
③ 本細目では、準備した米に市販の麹菌(種麹)を接種し、実際に米麹の作製を開始する。接種操作では、種麹を均一に散布することが重要であり、接種量や散布方法の違いが麹菌の生育ムラや品質差につながることを理解する。麹菌は食品利用実績のある安全な真菌であるが、胞子は非常に軽く飛散しやすいため、無菌操作と飛散防止を意識した取り扱いが求められる。接種後は、麹菌が米表面で発芽・菌糸伸長を開始し、時間とともに酵素産生能を高めていく。本細目では、単に麹を「作る」だけでなく、微生物を人為的に制御し、目的の機能を引き出す培養操作であることを理解する。これにより、発酵・微生物利用の基本的な考え方を実体験として学ぶところまで。
キーワード ① 培養計画(スケジュール管理、工程整理、再現性) ② 米麹作製(基質調整、均一展開、前処理操作) ③ 種麹(市販麹菌、胞子散布、接種量) ④ 培養制御(温度管理、時間経過、生育誘導) ⑤ 微生物利用(発酵基礎、酵素産生、人為的制御)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
授業後の復習では、麹菌実験に向けた計画作成から、米の準備、種麹の接種までを行い、米麹作製の初期段階を実体験した。復習ではまず、作成したスケジュールを振り返り、培養実験において「時間を見積もり、管理すること」がどれほど重要かを整理する。次に、パックご飯を用いた米の準備と簡易滅菌操作について、なぜ薄く広げる必要があったのかを考えることが大切である。米の状態が均一でない場合、麹菌の生育に偏りが生じ、結果として品質や観察結果に影響することを理解しておきたい。また、市販麹菌の接種操作では、接種量や散布の均一性がその後の菌糸成長を左右することを学んだ。胞子の飛散防止や無菌操作を意識した取り扱いは、安全性の確保だけでなく、再現性の高い実験につながる重要なポイントである。さらに、接種後すぐに変化が見えなくても、麹菌が内部で発芽・増殖を開始していることを理解し、次回の観察に向けて「何が起こっている途中なのか」を意識することが復習の要点となる。今回の実習は、発酵実験のスタート地点であり、基質・微生物・時間を制御するという微生物利用学の基本を確認する回であったと整理してください。

[次回授業の予習]
次回は、これまで培養・観察してきた麹菌を実際に利用し、甘酒の仕込みを行う。予習ではまず、麹菌が食品発酵において果たす役割を整理しておくことが重要である。麹菌は米そのものを直接甘くするのではなく、菌が生産するアミラーゼ類などの酵素によって、米中のデンプンを糖へと分解する。この「糖化」という反応が甘酒の甘味の正体であり、微生物の代謝や酵素作用が食品の性質を変える代表例である。次に、麹菌の生活環における胞子形成の意味を確認しておきたい。胞子は増殖や保存のための形態であり、産業的には「種麹」として再利用される重要な段階である。今回の実習では、自分たちが培養した麹菌から胞子を回収し、スターターとして利用する点が大きな特徴となる。また、甘酒の仕込みでは温度管理と時間経過が結果に大きく影響するため、「どの条件で、何が起こっているのか」を考えながら操作する姿勢が求められる。予習の目的は、甘酒作りを調理実習として捉えるのではなく、麹菌の酵素機能を引き出す実験として理解し、各工程の意味を意識した状態で実習に臨むことである。

13 甘酒作り:真菌(3)(応用編) 科目の中での位置付け 本コマは、これまでに学習してきた麹菌の培養、観察、胞子形成といった基礎・応用技術を、食品としての発酵利用へと結び付ける実践的な到達点として位置付けられる。麹菌が生産する酵素(主にアミラーゼ類)が、デンプンを糖へと変換する過程を実体験として理解することで、微生物の働きが「目に見える成果」として現れることを学ぶ重要なコマである。
コロニーおよびスライド培養の観察によって胞子形成を確認し、自ら作製した胞子粉末をスターターとして用いる点に特徴がある。これにより、微生物を「観察する対象」から「機能を引き出して利用する対象」へと認識を発展させる。また、甘酒の仕込みを通じて、培養条件・温度管理・時間経過が発酵結果に直結することを理解し、発酵食品製造の基礎概念を習得する。
真菌培養実習の集大成として、微生物学と食品科学をつなぐ橋渡しの役割を担い、以後の応用微生物学的思考を育成する重要な位置にある。(難易度:★★ 技術的応用)

1.コロニー・スライド培養の観察
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)高鳥浩介(著):図解カビ検査・操作マニュアル(テクノシステム), 第2章 かびの検査法, 77-93

2.胞子粉末の作製
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)吉田隆(著):発酵と醸造のいろは(NTS),第2章 主な発酵微生物とその取扱い,37−80

3.甘酒の仕込み
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)吉田隆(著):発酵と醸造のいろは(NTS),第2章 主な発酵微生物とその取扱い,37−80
コマ主題細目 ① コロニー・スライド培養の観察 ② 胞子粉末の作製 ③ 甘酒の仕込み
細目レベル ① 本細目では、前回までに培養した麹菌のコロニーおよびスライド培養を対象に、胞子形成の進行状況を観察する。肉眼では、コロニー表面の色調変化(白色から黄緑色への移行)や粉状化の有無を確認し、胞子形成が進んでいるかを判断する。さらに、ラクトフェノールコットンブルー染色などを用いた顕微鏡観察により、分生子柄、頂囊、分生子の形成状態を詳細に観察する。これらの構造は、麹菌が栄養成長期から繁殖期へ移行したことを示す重要な指標である。本細目を通じて、学生は胞子形成が単なる形態変化ではなく、環境条件や培養段階と密接に関係していることを理解する。また、後続の胞子回収作業に適した成熟段階を見極める判断力を養い、観察結果を次の操作に結び付ける実験的思考を身につけるところまで。
② 本細目では、成熟した麹菌コロニーから胞子を回収し、甘酒づくりに用いるスターターとして胞子粉末を作製する。胞子は非常に軽く飛散しやすいため、作業は飛散防止を意識した環境下で行い、乾燥麹をふるいにかけて粉状化する。得られた胞子粉末は、次の発酵工程において麹菌の供給源となる重要な材料である。本実習では、胞子量の厳密な定量よりも、均一に散布できる状態を整えることを重視し、実用的なスターター作製を目標とする。また、胞子粉末の作製過程を通じて、麹菌が産業現場で「種麹」として利用されている理由や、その保存・再利用の意義についても理解を深める。本細目は、微生物を単に培養する段階から、次の利用工程へ受け渡すための重要な橋渡しとなることを理解するところまで。
③ 本細目では、パックご飯と作製した米麹(または胞子スターター)を用いて甘酒の仕込みを行う。甘酒は、麹菌が生産したアミラーゼ類によって米のデンプンが分解され、糖が生成されることで甘味が生じる発酵食品である。実習では、加温条件や混合比を確認しながら仕込みを行い、仕込んだ試料は翌日まで冷蔵保存して糖化の進行を待つ。この工程を通じて、温度管理や時間経過が発酵結果に与える影響を理解することが重要である。本細目では、完成品の味や香りを目的とするのではなく、微生物の酵素作用による物質変換を体験的に学ぶことを主眼とする。これにより、麹菌培養から食品利用へと至る一連の流れを自らの実験として理解し、発酵現象を科学的に捉える力を養うところまで。
キーワード ① 胞子形成(分生子、成熟判定、色調変化) ② 顕微鏡観察(分生子柄、頂囊、形態確認) ③ 種麹作製(胞子粉末、ふるい操作、スターター) ④ 甘酒発酵(糖化反応、アミラーゼ、温度管理) ⑤ 微生物利用(食品応用、工程連結、機能発現)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、麹菌のコロニーおよびスライド培養を観察し、胞子形成の進行を確認したうえで、胞子粉末を作製し、甘酒の仕込みを行った。復習ではまず、コロニー表面の色調変化や粉状化が、麹菌の生育段階の変化を示す重要な指標であったことを整理したい。顕微鏡観察で確認した分生子柄や分生子の形成は、麹菌が繁殖段階に入ったことを示しており、次の工程である胞子回収に適した状態であったかを振り返ることが重要である。次に、胞子粉末の作製では、飛散防止や均一化といった操作上の注意点が、実用的なスターター作製に直結することを学んだ。甘酒の仕込みでは、米と麹を混合し、適切な温度条件で保持することで糖化が進行するが、この変化は目に見えにくく、時間をかけて起こる現象である。そのため、仕込み直後に変化が見えなくても、内部では酵素反応が進行していることを理解する必要がある。今回の実習を通じて、麹菌培養から食品利用までが一続きのプロセスであること、そして微生物の機能が人間の生活と深く結びついていることを、科学的な視点で整理しておきたい。

[次回授業の予習]
麹菌を用いた甘酒作り実習の最終段階として、発酵結果の評価と麹菌の保存、安全な取り扱いについて学ぶ。予習ではまず、甘酒の甘味がどのように生じるのかを整理しておくことが重要である。甘酒は糖を加えた食品ではなく、麹菌が産生するアミラーゼ類の作用によって、米中のデンプンが糖へと分解されることで甘味が生じる。この糖化の程度は、温度、時間、麹量などの条件によって左右されるため、結果を評価する際には「どの条件で仕込んだか」を思い出す必要がある。また、糖化の確認は味覚だけでなく、ヨウ素反応などの簡易的な化学反応を用いることで、より客観的に判断できる点も予習しておきたい。次に、麹菌の保存について、胞子懸濁液が再接種用のスターターとしてどのような役割を果たすのかを理解しておくと、実習の意味が明確になる。さらに、食品利用される Aspergillus oryzae と、毒素産生能をもつ近縁種 A. flavus の違いに触れ、「微生物は見た目だけで安全性を判断できない」という重要な視点を持つことが予習のポイントである。予習の目的は、甘酒作りを単なる調理や成功・失敗で終わらせず、微生物利用の成果を科学的かつ安全に評価する実習として臨む準備を整えることである。

14 甘酒の評価:真菌(4)(応用編) 科目の中での位置付け 本コマは、麹菌を用いた一連の実習(培養・観察・胞子形成・甘酒仕込み)を総合的に振り返り、微生物利用の成果を評価し、安全に次へつなぐ最終段階として位置付けられる。甘酒の品質評価を通じて、麹菌の酵素作用が食品としての性質にどのように反映されるかを確認すると同時に、麹菌を再利用・保存するための基礎技術を学ぶ点に本コマの特徴がある。
また、食品として安全に利用できる麹菌(Aspergillus oryzae)と、近縁でありながら毒素産生能をもつ Aspergillus flavus との比較を通じて、微生物を扱う際の「種の同定」と「安全管理」の重要性を理解する。これにより、学生は微生物を単に利用するだけでなく、正しく見分け、責任をもって取り扱う姿勢を身につけることができる。
甘酒作り実習のまとめであると同時に、真菌を用いた微生物利用全体を科学的・倫理的に整理する総括的なコマとして位置付けられる。(難易度:★★ 技術的応用)

1.甘酒の品質判定方法
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)吉田隆(著):発酵と醸造のいろは(NTS),第2章 主な発酵微生物とその取扱い,37−80
3)齋藤啓太(著):甘酒の分析と感応評価の関連性調査(https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/633512.pdf)

2.麹菌の保存方法(胞子懸濁液の作製)の実習
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)吉田隆(著):発酵と醸造のいろは(NTS),第2章 主な発酵微生物とその取扱い,37−80

3.麹菌の取り扱いのまとめ
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)吉田隆(著):発酵と醸造のいろは(NTS),第2章 主な発酵微生物とその取扱い,37−80
コマ主題細目 ① 甘酒の品質判定方法 ② 麹菌の保存方法(胞子懸濁液の作製)の実習 ③ 麹菌の取り扱いのまとめ
細目レベル ① 前回仕込んだ甘酒を対象に、麹菌の酵素作用によってどの程度糖化が進行したかを評価する。糖化の確認には、味覚による甘味の確認だけでなく、ヨウ素反応を用いたデンプン残存の判定や、外観・粘度・香りといった複数の指標を組み合わせて行う。これにより、発酵・糖化が感覚的な現象ではなく、酵素反応に基づく科学的過程であることを理解する。さらに、仕込み条件(温度、時間、麹量)の違いが糖化度に与える影響を比較し、結果のばらつきについて考察する。本細目を通じて、学生は微生物利用の成果を客観的に評価する視点を身につけ、実験結果を「良い・悪い」で終わらせず、条件との関係から説明する力を養うところまで。
② 今後の実習や再利用に備えて、麹菌を保存するための基本技術として胞子懸濁液の作製を行う。成熟した麹菌コロニーから胞子を回収し、滅菌水などに懸濁することで、均一な接種源を得ることができる。胞子懸濁液は、短期保存や再接種に適した形態であり、種麹の簡易的な保存方法としても有効である。実習では、胞子の回収量や懸濁の均一性に注意し、ラベリングや保存条件(冷蔵保存など)を確認する。また、胞子保存の利点と限界についても触れ、長期保存法との違いを理解する。本細目を通じて、学生は「作った微生物を次に活かす」という研究・産業の基本的な考え方を学ぶところまで。
③ 麹菌の取り扱いに関する知識と実習経験を総合的に振り返る。特に、食品利用される Aspergillus oryzae と、近縁種でありアフラトキシンを産生する Aspergillus flavus との比較を通じて、外見が似ていても安全性が大きく異なる微生物が存在することを学ぶ。この比較により、微生物利用では「正しい菌を選ぶこと」「同定と管理を徹底すること」が不可欠であることを理解する。また、胞子の飛散防止、廃棄方法、作業後の清掃といった安全管理の基本を再確認し、実験者としての責任ある行動を整理する。本細目は、真菌を扱う実習全体のまとめとして、知識・技術・安全意識を統合する役割を担うことを理解するところまで。
キーワード ① 甘酒品質(糖化度、ヨウ素反応、官能評価) ② 酵素作用(アミラーゼ、デンプン分解、温度依存性) ③ 胞子保存(胞子懸濁液、再接種、短期保存) ④ 安全管理(飛散防止、廃棄処理、作業後清掃) ⑤ 菌種識別(Aspergillus oryzae、A. flavus、毒素産生)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、仕込んだ甘酒を評価し、麹菌の保存と取り扱いについて総合的に学んだ。復習ではまず、甘酒の品質判定をどのような基準で行ったかを整理したい。甘味の有無だけでなく、ヨウ素反応によるデンプン残存の確認、外観や香りなど複数の指標を用いることで、糖化が酵素反応として進行したことを客観的に理解できた点が重要である。また、仕込み条件の違いによって糖化度に差が生じた場合、その理由を温度や時間、麹量と結びつけて説明できるかを振り返ることが大切である。次に、胞子懸濁液の作製を通じて、麹菌を「使い切りの存在」ではなく、再利用・保存できる資源として扱う考え方を学んだ。ラベリングや保存条件の確認は、再現性のある実験や食品利用に不可欠である。さらに、Aspergillus oryzae と A. flavus の比較から、微生物利用には正確な菌種管理と安全意識が欠かせないことを再確認した。胞子の飛散防止や廃棄、作業後清掃といった基本操作も含め、今回の実習は知識・技術・安全管理を統合するまとめの回であった。麹菌培養から甘酒作り、保存までの一連の流れを整理し、微生物を「理解し、利用し、管理する」ことの重要性を自分の言葉で説明できるようにしておきたい。
[次回授業の予習]
これまで扱ってきた麹菌などの食品利用微生物から視点を広げ、自然環境中に存在する有用微生物、とくに放線菌を対象とした学習が始まる。予習ではまず、「放線菌とはどのよう な微生物か」を整理しておくことが重要である。放線菌は土壌中に多く存在し、糸状に成長する特徴をもち、抗生物質や生理活性物質を産生することで知られている。これらの物質は医薬品や農業分野で利用されており、放線菌は未知の有用微生物を探索するうえで最も重要な対象の一つである。次に、放線菌が単に土壌中に存在するだけでなく、植物根圏や植物体内にも生息し、植物成長促進や病害抑制に関与する場合があることを理解しておきたい。このような生態的背景を知ることで、なぜ分離試料として土壌や植物が選ばれるのかが明確になる。また、放線菌は一般細菌より増殖が遅いため、選択培地を用いて他の微生物を抑えつつ分離する必要がある。プロリン寒天培地やジェランガム培地の特徴を事前に確認し、「培地設計が分離結果を左右する」という視点を持って授業に臨むことが、予習の大きな目的である。

15 有用微生物の分離:放線菌(1)(実践編1) 科目の中での位置付け 本コマは、これまでに扱ってきた麹菌を中心とする「食品利用微生物」から、自然環境中に存在する「有用微生物の探索」へと学習対象を広げる転換点として位置付けられる。特に放線菌は、抗生物質や生理活性物質の生産で知られる重要な微生物群であり、応用微生物学・環境微生物学の両面から注目されている。本コマでは、甘酒作り実習の成果を簡単に振り返ったうえで、微生物利用の視点を「既知の有用菌の利用」から「未知の有用菌の探索」へと発展させる。
また、放線菌の分布や生態、植物根圏や植物体内における特徴を理解し、次回以降に行う分離実習の理論的背景を整理する。さらに、希少な放線菌を選択的に分離するための培地調整を行い、自然環境から目的微生物を取り出す技術的準備を整える。本コマは、後続の放線菌分離・培養・純化実習の基盤を形成する導入的かつ実践的な位置付けにある。(難易度:★★★ 技術的応用)

1.放線菌の分布と役割
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)中西載慶(著):応用微生物学(講談社), 第2章 微生物の特徴と分類, 12-45
3)日本放線菌学会(編):放線菌の分類と同定(日本学会事務センター),第1章 放線菌の基本的な特徴,3-35

2.植物根圏・内生放線菌の特徴
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)栗原大樹,他(著):植物内生放線菌に関する研究微生物農薬を目指して,Kagaku to Seibutsu 54(3): 223-225 (2016)

3.分離に用いる選択培地の調整(1)
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)日本放線菌学会(編):放線菌の分類と同定(日本学会事務センター),第2章 培養性状および生理生化学性状,37-47
コマ主題細目 ① 放線菌の分布と役割 ② 植物根圏・内生放線菌の特徴 ③ 分離に用いる選択培地の調整(1)
細目レベル ① 放線菌が自然環境中にどのように分布し、どのような役割を担っているかを学ぶ。放線菌は土壌中に広く存在し、セルロースやキチンなど難分解性物質の分解に関与するほか、多くの抗生物質や生理活性物質を生産することで知られている。特に Streptomyces 属は、医薬品や農薬の開発において重要な微生物群である。本細目では、放線菌が土壌の匂い(ゲオスミン)の原因となることや、微生物群集の中で競争的優位性をもつ点なども紹介し、環境中での生態的意義を理解する。これにより、なぜ放線菌が「有用微生物探索」の対象として重視されてきたのかを理論的に把握するところまで。
② 放線菌の中でも特に植物根圏や植物体内に生息する放線菌の特徴を理解する。根圏は植物の分泌物によって栄養条件が整えられた特殊な環境であり、特定の微生物が集積しやすい。一部の放線菌は植物体内に侵入し、内生菌として共生的に存在することが知られており、植物成長促進や病害抑制に関与する例も多い。本細目では、土壌由来放線菌との違いや、内生放線菌がもつ潜在的な有用性について学ぶ。これにより、単なる土壌微生物の分離にとどまらず、「植物と微生物の相互作用」を意識した分離実習へと視野を広げるところまで。
③ 次回以降に行う放線菌分離実習に備え、選択培地の調整を行う。プロリン寒天培地は、放線菌が利用しやすいアミノ酸を炭素・窒素源として含み、一般細菌の増殖を抑えつつ放線菌の生育を促進する。一方、ジェランガム培地は寒天とは異なる多糖を用いることで、培地表面の性状が変化し、希少な放線菌が出現しやすい条件を提供する。本細目では、秤量、溶解、加熱、滅菌といった培地作成の基本操作を確認するとともに、培地組成が微生物分離に与える影響を理解する。これにより、目的微生物に応じて培地を設計・選択するという応用的な視点を養うところまで。
キーワード ① 放線菌(抗生物質、二次代謝、糸状細菌) ② 環境分布(土壌微生物、根圏、生態的役割) ③ 内生放線菌(植物共生、成長促進、病害抑制) ④ 選択培地(プロリン寒天、ジェランガム、希少菌分離) ⑤ 有用微生物探索(スクリーニング、環境由来、資源化)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、微生物利用の対象を食品由来の麹菌から自然環境中の放線菌へと広げ、その分布、生態、役割について学んだ。復習ではまず、放線菌が土壌中で果たしている役割を整理したい。難分解性物質の分解や抗生物質の産生といった機能は、微生物同士の競争や環境維持と深く関わっており、放線菌が有用微生物探索の中心的存在とされる理由である。次に、植物根圏や内生放線菌の特徴を振り返り、植物と微生物の相互作用という新しい視点が加わったことを確認する。これにより、単なる土壌微生物の分離ではなく、「植物と共生する微生物を探す」という応用的発想が重要であることが理解できる。さらに、分離に用いる選択培地の調整を通じて、培地組成やゲル化剤の違いが、どの微生物を増やし、どの微生物を抑えるかに直結することを学んだ。培地は単なる栄養源ではなく、目的微生物を選び出すための重要な“装置”である。今回の内容を踏まえ、次回以降の分離実習では、どの環境から、どのような放線菌が得られるかを予測しながら実験に取り組む準備を整えておきたい。

[次回授業の予習]
次回の講義では、植物由来サンプルから内生放線菌を分離するための「準備工程」を学ぶ。予習ではまず、放線菌分離において重要なのは、実際に培地へ播種する操作そのものよりも、その前段階である「培地選択」と「試料処理」であるという点を理解しておくことが重要である。放線菌は一般細菌に比べて増殖が遅く、競争に弱いため、HVアガーやAIAといった選択培地を用いて、生育しやすい環境を意図的に整える必要がある。また、分離対象が植物根内部の放線菌である場合、植物表面に付着した微生物を除去しなければ、目的菌を検出することができない。そのため、表面殺菌や乾燥処理といった前処理操作が不可欠となる。特に乾燥処理には時間がかかり、すぐに結果が得られない点は、分離実習が「時間管理を含む計画的な実験」であることを象徴している。予習では、各操作の目的(何を除き、何を残したいのか)を意識し、なぜこの順番で処理を行うのかを整理しておくと、実習の理解が深まる。予習の目的は、放線菌分離を単なる操作としてではなく、環境中から目的微生物を選び出すための論理的プロセスとして捉える準備を整えることである。

16 有用微生物の分離:放線菌(2)(実践編1) 科目の中での位置付け 本コマは、前回学習した放線菌の生態や選択培地の基礎を踏まえ、実際に植物由来サンプルから放線菌を分離するための前処理技術を習得する実践的な段階として位置付けられる。特に本コマでは、植物根を対象とした内生放線菌の分離を見据え、培地調整とサンプル処理という二つの重要な準備工程を扱う。
放線菌の分離では、分離操作そのものよりも、その前段階である「培地選択」と「試料処理」が結果を大きく左右する。本コマで行う表面殺菌や乾燥処理は、植物表面の付着微生物を除去し、根内部に存在する放線菌を選択的に検出するために不可欠な操作である。乾燥に1週間を要する工程を含めることで、微生物分離が即時的な結果を得る実験ではなく、時間管理を含めた計画的操作であることを理解させる役割も担う。
次回以降の「根内部放線菌の分離・培養」を成立させるための基盤を築くコマであり、応用微生物学的な分離実習への本格的な入口として位置付けられる。(難易度:★★ 技術的応用)

1.分離に用いる選択培地の調整(2)
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)日本放線菌学会(編):放線菌の分類と同定(日本学会事務センター),第2章 培養性状および生理生化学性状,37-47

2.植物サンプルの処理手順
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)日本放線菌学会(編):放線菌の分類と同定(日本学会事務センター),第2章 培養性状および生理生化学性状,37-47

3.根内部放線菌の分離のための表面殺菌と乾燥
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)栗原大樹,他(著):植物内生放線菌に関する研究微生物農薬を目指して,Kagaku to Seibutsu 54(3): 223-225 (2016)
コマ主題細目 ① 分離に用いる選択培地の調整(2) ② 植物サンプルの処理手順 ③ 根内部放線菌の分離のための表面殺菌と乾燥
細目レベル ① 放線菌、特に Streptomyces 属の分離に適した選択培地であるHVアガー(Humic acid–Vitamin agar)およびAIA(Actinomycete Isolation Agar)を調製する。HVアガーは腐植酸を主要炭素源とすることで、一般細菌の増殖を抑制し、土壌・植物由来の放線菌が生育しやすい環境を提供する。一方、AIAは放線菌の生育に適した栄養組成をもち、Streptomyces 属の分離・形態観察に広く用いられてきた標準培地である。実習では、培地成分の秤量、溶解、加熱、滅菌といった基本操作を確認しながら、培地の違いが微生物の出現に与える影響を考える。複数の選択培地を併用することで、分離される放線菌の多様性が広がることを理解し、目的微生物に応じた培地設計の重要性を学ぶところまで。
② 放線菌分離に用いる植物サンプルとして、植物の根を適切に準備する手順を学ぶ。植物根は土壌微生物が密集する環境にあり、放線菌を含む多様な微生物が存在するため、分離実習に適した試料である。一方で、過剰な土壌付着や損傷は分離結果に影響を与えるため、丁寧な取り扱いが求められる。実習では、根の採取、土壌の除去、水洗による粗洗浄といった基本操作を確認し、根をできるだけ傷つけずに処理することを重視する。また、サンプルのラベリングや採取条件の記録を通じて、試料情報の管理が分離結果の解釈に重要であることを理解する。本細目を通じて、学生は「良い分離は良いサンプル準備から始まる」という分離実習の基本姿勢を身につけるところまで。
③ 植物根内部に存在する内生放線菌を分離するために、表面殺菌と乾燥処理を行う。表面殺菌は、植物表面に付着した細菌や真菌を除去し、根内部の微生物を選択的に検出するための重要な工程である。実習では、エタノールや次亜塩素酸などを用いた段階的処理を行い、過度な殺菌によって内部微生物まで損なわれないよう注意する。また、殺菌後に行う乾燥処理は、放線菌の分離効率を高める効果があり、一般細菌の生育を抑制する役割も果たす。乾燥には約1週間を要するため、本細目では処理開始後の管理や保管方法についても確認する。これにより、学生は分離実習における「待ち時間」も含めた計画的な実験設計の重要性を理解するところまで。
キーワード ① 選択培地(HVアガー、AIA、Streptomyces 分離) ② 植物根サンプル(採取、洗浄、試料管理) ③ 内生放線菌(根内部、生態的適応、有用性) ④ 表面殺菌(エタノール処理、次亜塩素酸、選択性) ⑤ 乾燥処理(生育抑制、分離効率、時間管理)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、次回以降の内生放線菌分離実習に向けて、選択培地の調整と植物根サンプルの前処理を行った。復習ではまず、HVアガーおよびAIA培地の特徴を整理し、それぞれがどのような理由で放線菌分離に適しているのかを確認したい。腐植酸を炭素源とするHVアガーや、放線菌標準培地であるAIAは、一般細菌の増殖を抑えつつ、放線菌の生育を促す「選択性」をもつ培地であり、培地設計が分離結果を左右することを実感したはずである。次に、植物根サンプルの処理では、丁寧な洗浄やラベリングが分離結果の解釈に直結することを学んだ。さらに、表面殺菌と乾燥処理を通じて、外部微生物を除去し、根内部の放線菌を選択的に検出するための工夫を確認した。乾燥に時間を要する点は、微生物分離が即時的な実験ではなく、待ち時間を含めた計画的操作であることを理解する重要なポイントである。今回の実習を通して、「分離の成否は準備段階でほぼ決まる」という放線菌分離の基本的な考え方を整理し、次回の実際の分離培養へとつなげておきたい。

[次回授業の予習]
  次回は、放線菌分離実習の中核となる操作として、培地の分注、植物根サンプルのホモジナイズ、希釈系列の作成を行う。予習ではまず、放線菌分離の成否が「播種そのもの」よりも、培地の状態とサンプル濃度の調整に強く依存することを理解しておくことが重要である。放線菌は増殖が遅く、一般細菌や真菌に比べて競争に弱いため、培地表面の水分量や平滑性がコロニー形成に大きな影響を与える。そのため、オートクレーブ後の培地を適切な温度で保温し、均一にシャーレへ分注する操作の意味を整理しておきたい。また、植物根サンプルは内部に放線菌を含む一方で、組織内に不均一に分布しているため、ホモジナイズによって微生物を均質に懸濁する必要がある。さらに、希釈系列は微生物密度を調整し、平板上に識別可能な数のコロニーを出現させるための重要な工程である。予習の段階では、「なぜ希釈が必要なのか」「希釈倍率が結果にどう影響するのか」を数値的にイメージしておくと、実習操作の理解が深まる。予習の目的は、本コマの操作を単なる作業としてではなく、放線菌を“見える形で出現させるための論理的準備”として捉えることである。

17 有用微生物の分離:放線菌(3)(実践編1) 科目の中での位置付け 本コマは、これまでに行ってきた放線菌分離に向けた理論理解(分布・生態)、選択培地の準備、植物サンプルの前処理(表面殺菌・乾燥)を受けて、実際に分離操作を開始する実践的段階として位置付けられる。ここでは、放線菌を培地上に「出現させる」ために不可欠な試料調製操作である培地分注、サンプルのホモジナイズ、希釈系列作成を行う。
放線菌分離の成否は、分離培地の状態とサンプル濃度の調整に大きく左右される。本コマでは、オートクレーブ後に保温された培地を用いて適切に分注することで、寒天の凝固状態や水分条件を整え、安定した培養環境を作る。また、ホモジナイズと希釈系列を通じて、混合微生物集団を段階的に分散させ、放線菌コロニーが識別可能な密度で出現するよう調整する。
本コマは、次回の「培地への播種・培養」に直結する重要な準備段階であり、分離実習の中核を成す操作技術を集中的に習得するコマである。(難易度:★★ 技術的応用)

1.放線菌分離用シャーレ培地の作製
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第2章 培地の作製と滅菌法, 9-22
3)日本放線菌学会(編):放線菌の分類と同定(日本学会事務センター),第2章 培養性状および生理生化学性状,37-47

2.放線菌の分離のためのサンプル処理
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)早川正幸・野々村英夫(著):土壌放線菌の選択分離法(日本放線菌学会),第1章 放線菌の新選択分離培地HV agar,4-15

3.放線菌の分離のためのサンプル処理
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)松本厚子(著):未利用放線菌の分離とその分類研究 ―その魅力と可能性―,Actinomycetologica 39(1), 7-19, 2025
コマ主題細目 ① 放線菌分離用シャーレ培地の作製 ② 放線菌の分離のためのサンプル処理(1) ③ 放線菌の分離のためのサンプル処理(2)
細目レベル ① 本細目では、オートクレーブ滅菌された分離培地を用い、シャーレへ分注する操作を行う。放線菌分離では、培地の表面状態や水分量がコロニー形成に大きな影響を与えるため、寒天温度を適切に保温し、気泡や結露が生じないよう注意して分注することが重要である。実習では、培地が高温すぎる場合の問題点(抗菌剤失活、シャーレ変形)や、低温すぎる場合の問題点(分注不良、表面凹凸)を確認しながら、適切なタイミングで作業を行う。また、シャーレへの分注量を揃えることで、後のコロニー数比較がしやすくなることを理解する。本細目を通じて、学生は「培地を均一な実験条件として整える」ことの重要性を学び、安定した分離実験の基盤を作ることを理解するところまで。
② 本細目では、乾燥および表面殺菌処理を行った植物根サンプルを対象に、ホモジナイズ操作を行う。ホモジナイズは、植物組織を物理的に破砕し、内部に存在する放線菌を懸濁液中へ均一に分散させるための重要な工程である。実習では、乳鉢・乳棒やホモジナイザーを用い、滅菌生理食塩水などを加えながらサンプルをすり潰す。過度な力を加えると微生物が損傷する可能性があるため、均一性と穏やかさのバランスが求められる。また、ホモジナイズ後の懸濁液は混合微生物を含むため、速やかに次の希釈操作へ進むことが重要である。本細目を通じて、学生は「試料を均質化する」ことが分離効率を左右する要因であることを理解するところまで。
③ 本細目では、ホモジナイズしたサンプル懸濁液を用いて、段階的な希釈系列を作成する。希釈系列は、微生物密度を調整し、寒天平板上に適切な数のコロニーを形成させるために不可欠な操作である。実習では、10倍希釈を基本とした段階希釈(例:10⁻¹〜10⁻⁴)を行い、各段階の操作を正確に行うことの重要性を確認する。ピペット操作やチューブの混和が不十分であると、希釈倍率が正しく反映されず、分離結果の解釈が困難になる。本細目では、希釈倍率の意味を数値的に理解するとともに、後続の播種結果から「どの希釈段階が分離に適していたか」を評価する視点を養う。これにより、分離実験を単なる作業ではなく、条件設定を伴う科学的操作として捉える力が身につくところまで。
キーワード ① 分離培地(保温分注、寒天状態、均一条件) ② サンプル調製(ホモジナイズ、組織破砕、懸濁化) ③ 希釈系列(段階希釈、微生物密度、再現性) ④ 分離操作(前処理連結、効率向上、操作精度) ⑤ 分離準備(培地管理、時間配分、実験計画)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、放線菌分離に向けて、シャーレ培地の作製、植物根サンプルのホモジナイズ、希釈系列の作成を行った。復習ではまず、培地分注時の寒天温度や分注量が、培地表面の状態や後のコロニー形成に影響することを整理したい。培地が高温すぎる、あるいは低温すぎる場合に生じる問題を振り返り、安定した分離条件を整える重要性を再確認する。次に、サンプル処理では、ホモジナイズ操作によって植物組織内部の放線菌を均一に懸濁できたかを振り返る。過度な破砕は微生物を損傷する可能性がある一方、不十分な処理では分離効率が低下するため、操作の加減が重要であったことを理解しておきたい。さらに、希釈系列の作成では、各段階の操作精度が最終的なコロニー密度に直結することを学んだ。混和不足やピペット操作の誤差が結果の解釈を難しくする点を確認し、「どの希釈段階が分離に適しているか」を評価する視点を持つことが重要である。今回の実習を通じて、放線菌分離は偶然に任せる操作ではなく、条件を設計し制御する科学的プロセスであることを整理し、次回の播種・培養実習へとつなげておきたい。

[次回授業の予習]
 次回は、これまで準備してきた放線菌分離用サンプルと培地を用い、実際に寒天平板へ播種する操作を行う。予習ではまず、放線菌分離において「播種操作」と「記録管理」が極めて重要であることを理解しておく必要がある。放線菌は生育が遅く、コロニーが現れるまでに時間を要するため、後から結果を見て条件を思い出すことは難しい。そのため、播種前にサンプル番号、希釈倍率、使用培地を整理し、追跡可能な形でラベリングすることが不可欠である。また、本実習で用いる塗抹培養法は、寒天表面に微生物を広げることで、放線菌特有の乾燥・粉状コロニーを観察しやすくする方法であり、混釈培養との違いを理解しておくと操作の意味が明確になる。さらに、播種は分離のゴールではなく、次回以降に行うコロニー観察や純化培養の出発点である。そのため、同時に準備するISP-2、ISP-4培地が「分離後に菌を育て直すための培地」であることを理解しておきたい。予習の目的は、本コマが単なる作業回ではなく、分離実習全体の成否を決定づける重要な工程であることを意識し、意味をもって操作に臨む準備を整えることである。

18 有用微生物の分離:放線菌(4)(実践編1) 科目の中での位置付け 本コマは、放線菌分離実習において、前回までに調製したサンプル懸濁液と分離培地を用い、実際に寒天平板上へ微生物を播種する工程を扱う段階として位置付けられる。サンプル番号の整理、塗抹培養法による播種、さらに後続の純化培養に備えた培地作製までを一連の流れとして行う点に本コマの特徴がある。
放線菌の分離では、播種操作の正確さと記録管理が、後のコロニー判別や菌株選抜の成否を左右する。本コマでは、混釈培養と塗抹培養の考え方を整理したうえで、滅菌綿棒を用いた塗抹培養を実践し、放線菌コロニーが識別しやすい状態を作り出す。また、同時に純化培養用培地(ISP-2、ISP-4)を準備することで、分離から純化へとスムーズに移行できる体制を整える。
分離実習の核心である「播く・育てる」操作を確実に習得し、次回以降のコロニー観察・純化培養へとつなぐ重要な中核コマとして位置付けられる。(難易度:★★ 技術的応用)

1.サンプル番号の整理
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第2章 培地の作製と滅菌法, 9-22
3)日本放線菌学会(編):放線菌の分類と同定(日本学会事務センター),第2章 培養性状および生理生化学性状,37-47

2.塗抹培養法
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)中西載慶(著):応用微生物学, 第3章 微生物の分離と培養, 46-64

3.純化培養のための培地作製
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)中西載慶(著):応用微生物学, 第3章 微生物の分離と培養, 46-64
3)早川正幸・野々村英夫(著):土壌放線菌の選択分離法(日本放線菌学会),第1章 放線菌の新選択分離培地HV agar,4-15
コマ主題細目 ① サンプル番号の整理 ② 塗抹培養法 ③ 純化培養のための培地作製
細目レベル ① 本細目では、放線菌分離実習におけるサンプル番号の整理とナンバーリングの重要性を学ぶ。分離実習では、植物サンプルの由来、処理方法、希釈倍率、使用培地など複数の条件が同時に存在するため、適切な番号付けを行わないと、後の結果解釈が困難になる。実習では、サンプルごとに一意の番号を割り当て、培地名、希釈段階、日付を組み合わせたラベルを作成する。これにより、コロニー出現後に「どの条件から得られた放線菌か」を正確に追跡できるようになる。本細目を通じて、学生は分離操作が単発の作業ではなく、数週間にわたる連続実験であることを理解し、研究における記録管理の基礎姿勢を身につけるところまで。
② 本細目では、寒天培地への播種方法として、混釈培養法と塗抹培養法の違いを理解したうえで、滅菌綿棒を用いた塗抹培養を実践する。混釈培養は微生物を寒天内部に均一に分散させる方法であるのに対し、塗抹培養は寒天表面に微生物を広げる方法であり、放線菌のコロニー形態観察や釣菌に適している。実習では、希釈系列サンプルを綿棒に含ませ、寒天表面に均一に塗り広げる操作を行う。この際、力を入れすぎず、寒天表面を傷つけないことが重要である。本細目を通じて、学生は播種方法の選択が分離効率や観察性に影響することを理解し、放線菌分離に適した塗抹培養技術を習得するところまで。
③ 本細目では、分離後に得られた放線菌コロニーを純化・維持するための培地として、ISP-2およびISP-4培地を作製する。ISP培地は放線菌研究の標準培地として広く用いられており、ISP-2は栄養豊富で菌糸生育を確認しやすく、ISP-4は炭素源や無機塩組成の違いにより形態差が現れやすい特徴をもつ。実習では、培地の秤量、溶解、滅菌、分注といった基本操作を行い、分離培地とは異なる「維持・評価用培地」の役割を理解する。本細目を通じて、学生は分離と純化が連続した工程であることを認識し、次回の釣菌・純化培養実習へと円滑につなげる準備を整えるところまで。
キーワード ① サンプル管理(ナンバーリング、条件追跡、記録整理) ② 播種法(塗抹培養、混釈培養、寒天表面) ③ 滅菌操作(綿棒使用、汚染防止、操作精度) ④ 純化培地(ISP-2、ISP-4、菌株維持) ⑤ 分離工程(播種、培養準備、次段階接続)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、放線菌分離実習の中核となる播種操作を行い、分離培養を実際に開始した。復習ではまず、サンプル番号の整理とラベリングが、今後の結果解釈にどれほど重要かを振り返りたい。希釈倍率や培地の違いを正確に記録しておくことで、コロニー出現後に「どの条件が分離に適していたか」を評価できるようになる。次に、塗抹培養法の操作について、寒天表面を傷つけずに均一に塗り広げることが、コロニー識別のしやすさに直結する点を確認する。混釈培養と比較して、塗抹培養が放線菌分離に適している理由を、自分の言葉で説明できるか整理しておきたい。また、同時に作製したISP-2およびISP-4培地について、それぞれが分離後の純化・維持にどのような役割を果たすかを復習することも重要である。今回の実習を通じて、分離は一度の操作で完結するものではなく、「播種 → 観察 → 純化 → 保存へ」と連続する工程であることを実感できたはずである。次回のコロニー観察では、どの培地・どの希釈段階から放線菌が出現しやすいかを意識し、今回の操作と結果を結び付けて考察できるよう準備しておきたい。

[次回授業の予習]
次回は、分離培地上に出現した放線菌様コロニーを対象に、純化培養へと進む。予習ではまず、「分離されたコロニー=単一菌株とは限らない」という点を理解しておくことが重要である。寒天平板上に現れたコロニーは、一見すると一つの微生物由来に見えても、近接した複数の菌が混在している可能性がある。そのため、以後の評価や保存、応用実験を行うには、単一菌株として安定した状態にする純化培養が不可欠となる。次に、純化培養では分離培地とは異なり、放線菌が安定して生育し、形態的特徴を保ちやすい培地条件が必要であることを整理しておきたい。どの培地を用いるか、どのような表面状態が望ましいかを意識することで、培地作製の意味が明確になる。また、純化対象となるコロニーを選ぶ際には、粉状・乾燥性・放射状の縁など、放線菌特有の形態的特徴を観察する必要がある。予習では、これらの特徴をあらかじめ確認し、「どのコロニーを選ぶべきか」を判断する視点を持って実習に臨むことが重要である。予習の目的は、本コマが単なる作業ではなく、研究の信頼性を高めるための重要な転換点であることを理解することである。

19 分離株の純化培養:放線菌(5)(実践編1) 科目の中での位置付け 本コマは、前回までに分離培地上に出現した放線菌様コロニーを対象に、単一菌株として取り出し、純化培養へと進める段階として位置付けられる。分離培養によって得られたコロニーは、必ずしも単一の微生物由来とは限らず、周囲の微生物が混在している可能性がある。そのため、本コマで行う純化培養は、以後の菌株評価や保存、応用実験の前提条件となる重要な工程である。
純化用培地の準備、放線菌コロニーの形態的特徴の観察、そして純化培養の意義を体系的に理解することを目的とする。肉眼・実体顕微鏡・光学顕微鏡を併用した観察を通じて、放線菌特有のコロニー形態を見極め、純化対象として適切なコロニーを選抜する力を養う。
放線菌分離実習において「質を高める」転換点となるコマであり、次回以降の釣菌・継代・保存へとつながる中核的な位置を占めている。(難易度:★★ 技術的応用)

1.純化培地の作製
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)早川正幸・野々村英夫(著):土壌放線菌の選択分離法(日本放線菌学会),第1章 放線菌の新選択分離培地HV agar,4-15
3)松本厚子(著):未利用放線菌の分離とその分類研究 ―その魅力と可能性―,Actinomycetologica 39(1), 7-19, 2025

2.放線菌コロニーの特徴観察
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)日本放線菌学会(編):放線菌の分類と同定(日本学会事務センター),第1章 放線菌の形態観察法,23-35

3.純化培養の意義
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)宮道慎二(著):不思議な微生物,放線菌,生物工学 90,32−36,2012
コマ主題細目 ① 純化培地の作製 ② 放線菌コロニーの特徴観察 ③ 純化培養の意義
細目レベル ① 放線菌の純化培養に用いる培地を作製し、シャーレへ分注する操作を行う。純化培養では、分離培地とは異なり、放線菌が安定して生育し、形態的特徴を保持しやすい培地条件が求められる。そのため、事前にオートクレーブ滅菌された培地を適切な温度で保温し、実習開始時に分注することで、均一な培養環境を整える。分注時には、寒天の凝固状態、表面の平滑性、分注量の均一性に注意し、後のコロニー比較がしやすい条件を作ることが重要である。本細目を通じて、学生は「純化培養では培地の安定性が結果を左右する」ことを理解し、菌株維持に適した培養基盤を自ら準備する力を身につけるところまで。
② 分離培地上に形成された放線菌様コロニーを対象に、その特徴を多角的に観察する。肉眼観察では、粉状・乾燥性の表面、放射状の縁、色素産生の有無など、放線菌に特有のコロニー形態を確認する。さらに、シャーレ裏面ののぞき窓を用いて、基質菌糸の広がり方やコロニー内部の構造を観察する。必要に応じて顕微鏡観察を行い、菌糸の分岐や隔壁構造を確認することで、放線菌である可能性をより高めて判断する。本細目を通じて、学生は「どのコロニーを純化対象として選ぶべきか」を形態情報から判断する力を養い、次の釣菌操作へとつなげる準備を行うところまで。
③ 放線菌分離実習における純化培養の意義を理論的に整理する。分離培地上に現れたコロニーは、単一菌由来である保証はなく、混合コロニーや隣接微生物の影響を受けている可能性がある。純化培養とは、こうした不確実性を取り除き、単一菌株として安定に増殖させるための工程である。純化された菌株は、形態観察、代謝物生産、保存、同定など、あらゆる後続実験の基盤となる。本細目では、純化を行わずに評価を進めた場合に生じる問題点を例に挙げながら、純化培養の必要性を理解する。本細目を通じて、学生は「純化は手間ではなく、研究の信頼性を支える工程である」ことを認識し、微生物研究における基本姿勢を身につけるところまで。
キーワード ① 純化培養(単一菌株、混在排除、再現性) ② コロニー形態(粉状表面、放射状縁、色素産生) ③ 観察手法(肉眼観察、のぞき窓、顕微鏡) ④ 純化培地(菌株安定、生育維持、形態保持) ⑤ 菌株選抜(形態判断、釣菌準備、評価基盤)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、分離培地上に出現した放線菌様コロニーを観察し、純化培養に向けた準備を行った。復習ではまず、純化培養用培地を作製する際に、寒天の表面状態や分注量の均一性が、後のコロニー形成や比較に影響することを確認したい。培地の安定性が、菌株の形態保持や生育の再現性を支えていることを理解することが重要である。次に、放線菌コロニーの特徴観察では、肉眼やシャーレ裏面からの観察、必要に応じた顕微鏡観察を通じて、粉状表面や放射状の縁、色素産生などの形態的指標を確認した。これらの情報を基に、どのコロニーが純化対象として適切であったかを振り返ることで、形態観察の重要性が明確になる。さらに、純化培養の意義について、分離段階のコロニーをそのまま評価した場合に生じる問題点を整理することで、純化が研究の信頼性を支える工程であることを再確認したい。今回の実習を通じて、放線菌分離は「見つけること」が目的ではなく、信頼できる単一菌株を確立することがゴールであることを整理し、次回の釣菌・継代培養へとつなげておきたい。

[次回授業の予習]
次回は、分離培地上に出現した放線菌様コロニーを実際に取り出し、単一菌株として純化培養を行う。予習ではまず、「どのコロニーを選ぶか」という判断そのものが、純化操作の成否を左右する重要な工程であることを理解しておく必要がある。放線菌は、乾燥性・粉状の表面、放射状の縁、独特の色素産生など、他の細菌とは異なる形態的特徴を示すが、すべてのコロニーが純化に適しているわけではない。周囲に一般細菌やカビが混在していないか、成長が速すぎないかといった点も判断材料となる。また、本実習では白金線ではなく滅菌爪楊枝を用いてコロニーをピックアップする点に特徴があり、これは放線菌が菌糸状に広がる性質をもつためである。どのような理由で器具を使い分けるのかを理解しておくと、操作の意味が明確になる。さらに、本コマでは純化培養と並行して保存株作成の準備を行うため、グリセロールがなぜ保存に用いられるのか、保存とは「後で使える状態を維持する操作」であることも予習しておきたい。予習の目的は、本コマが単なる技術練習ではなく、放線菌を研究資源として確立するための決定的段階であることを意識して実習に臨むことである。

20 分離株の純化培養:放線菌(6)(実践編1) 科目の中での位置付け 本コマは、分離培地上に出現した放線菌様コロニーを対象に、実際に純化培養を行い、単一菌株として確立する操作を実践する段階として位置付けられる。前回までに学んだ放線菌コロニーの特徴観察を基礎として、本コマでは「どのコロニーを選び、どのように取り出すか」という判断と操作が中心となる。
また、本コマでは、純化培養と並行して保存株作成に向けた準備を行い、分離した菌株を一過性のものではなく、継続的に利用可能な研究資源として扱う視点を養う。純化操作と保存準備を同一コマで扱うことで、微生物分離から菌株管理へと発展する一連の流れを理解させる役割を担う。
放線菌分離実習の中でも技術的完成度と判断力が要求される重要な実践コマであり、以後の保存・評価・応用実習の基盤を確立する位置にある。(難易度:★★ 技術的応用)

1.純化培養の実施(1)
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第4章 微生物の観察ととり扱い, 72-99

2.純化培養の実施(2)
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第4章 微生物の観察ととり扱い, 72-99

3.保存株作成のための準備
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34
コマ主題細目 ① 純化培養の実施(1) ② 純化培養の実施(2) ③ 保存株作成のための準備
細目レベル ① 本細目では、純化培養に用いる対象コロニーを選抜するために、放線菌の見極め方を実践的に学ぶ。放線菌は、乾燥性・粉状の表面、放射状の縁、独特の色素産生など、他の細菌とは異なるコロニー形態を示すことが多い。本実習では、肉眼観察やシャーレ裏面からの観察(のぞき窓)を通じて、放線菌らしい形態をもつコロニーを選び出す。さらに、周囲に急速増殖する一般細菌やカビが混在していないかを確認し、純化に適したコロニーを判断する力を養う。本細目を通じて、学生は単なる作業としての純化ではなく、「形態情報に基づいて菌株を選ぶ」という研究的判断を身につけるところまで。
② 本細目では、選抜した放線菌コロニーを滅菌爪楊枝を用いてピックアップし、純化培地へ接種する操作を行う。放線菌は菌糸状に広がるため、白金線よりも爪楊枝の方が菌体を適量かつ安定して回収しやすい。本実習では、乾熱滅菌器で滅菌した爪楊枝を用い、コロニー表面に軽く触れることで菌糸を回収し、新しい培地に画線接種を行う。過剰な接触や強い圧力は寒天表面を傷つけ、汚染や形態変化の原因となるため、慎重な操作が求められる。本細目を通じて、学生は放線菌特有の性質に適した純化操作を体験し、安定した継代培養へとつなげる技術を習得するところまで。
③ 本細目では、純化した放線菌株を保存するために必要となる滅菌グリセロール溶液を調製する。グリセロールは凍結時の細胞損傷を防ぐ保護剤として用いられ、放線菌の長期保存に適した材料である。実習では、所定濃度のグリセロール溶液を調製し、オートクレーブや濾過滅菌によって無菌化する操作を行う。保存溶液のラベリングや保管条件についても確認し、保存株作成に向けた準備を整える。本細目を通じて、学生は分離した菌株を「使い捨て」にせず、将来の研究や実習に活用可能な資源として管理する考え方を学ぶところまで。
キーワード ① 純化操作(コロニー選抜、単一菌株、判断力) ② 放線菌形態(乾燥性、粉状表面、放射状縁) ③ ピックアップ法(滅菌爪楊枝、画線接種、操作精度) ④ 保存準備(グリセロール、滅菌操作、ラベリング) ⑤ 菌株管理(純化、保存、再利用)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、放線菌様コロニーを選抜し、滅菌爪楊枝を用いて純化培養を実施するとともに、保存株作成に向けた準備を行った。復習ではまず、どのコロニーを純化対象として選んだか、その判断理由を整理したい。粉状で乾燥した表面、放射状の縁、周囲に急速増殖する菌が少ないことなど、形態情報に基づく判断が重要であった点を振り返る。また、コロニーピックアップ操作では、寒天表面を傷つけないよう慎重に菌糸を回収し、画線接種によって単一菌株へと導く技術が求められた。操作の精度が、後の生育安定性や再現性に直結することを理解しておきたい。さらに、滅菌グリセロール溶液の調製を通じて、分離した菌株を「その場限りの材料」ではなく、将来の実験や評価に利用可能な資源として管理する視点を学んだ。保存準備は、純化と同じくらい重要な工程であり、菌株管理の第一歩である。今回の実習を通じて、放線菌分離のゴールはコロニーを得ることではなく、信頼できる単一菌株を確立し、次へつなげることであると整理し、今後の保存・評価実習へとつなげておきたい。

[次回授業の予習]
次回は、これまで行ってきた放線菌の純化培養が十分な純度に達しているかを評価する。予習ではまず、「純化は一度で終わるとは限らない」という点を理解しておくことが重要である。放線菌は生育が遅いため、分離や純化の途中で一般細菌やカビが混在してしまうことがあり、その有無を確認するためには丁寧な観察が不可欠である。本コマでは、純化プレート上のコロニーが形態的に均一であるか、色や成長速度にばらつきがないかを確認することで、菌株の品質を判断する。シャーレ裏面ののぞき窓から基質菌糸の広がり方を観察することも、混合培養を見抜く重要な手がかりとなる。また、コンタミネーションが疑われた場合には、再純化を行うことが「失敗」ではなく、むしろ研究における標準的な改善工程であることを理解しておきたい。さらに、純化が確認された株は次段階としてグリセロール保存へ進むため、保存準備がどのような意味を持つのかを考えておくと実習の意義が明確になる。予習の目的は、本コマを「結果を見る回」ではなく、菌株の品質を評価し、次に進むかどうかを判断する回として捉えることである。

21 純化株の観察:放線菌(7)(実践編1) 科目の中での位置付け 本コマは、前回までに実施した純化培養の結果を評価し、分離株が「研究・保存に耐えうる純度に達しているか」を確認する段階として位置付けられる。放線菌の分離・純化は一度で完了するとは限らず、複数回の観察と再純化を経て初めて安定した菌株が得られる。本コマでは、純化プレートの観察を通じてコンタミネーションの有無を判定し、必要に応じて再純化を行う判断力を養う。
また、純化が確認された株については、次段階となるグリセロール保存に向けた準備を行い、分離株を長期的に管理する体制を整える。これにより、学生は「分離 → 純化 → 評価 → 保存」という微生物研究の基本サイクルを体系的に理解する。
したがって主題21は、放線菌分離実習における品質管理と最終確認の役割を担う重要な評価コマであり、以後の保存株作成や応用実験へ進むための分岐点として位置付けられる。(難易度:★★ 技術的応用)

1.純化株の観察とコンタミネーション
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34

2.コンタミネーションの再純化
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34

3.グリセロール保存のための準備
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34
コマ主題細目 ① 純化株の観察とコンタミネーション ② コンタミネーションの再純化 ③ グリセロール保存のための準備
細目レベル ① 本細目では、純化培養後の放線菌株を対象に、コンタミネーションの有無を評価する観察を行う。肉眼観察では、コロニーの形状、色調、成長速度が均一であるかを確認し、異なる形態の微生物が混在していないかを判断する。また、シャーレ裏面ののぞき窓を用いて、基質菌糸の広がり方やコロニー内部の様子を観察し、混合培養の兆候がないかを確認する。放線菌は生育が比較的遅いため、周囲に速く生育する細菌やカビが存在すると、容易に見分けることができる。本細目を通じて、学生は「純化できているかどうか」を形態情報から判断する力を身につけ、菌株の品質を評価する視点を養うところまで。
② 本細目では、観察の結果コンタミネーションが疑われた株について、再純化を行うための準備を行う。再純化は、問題のある株を排除する作業ではなく、より高い純度を目指すための標準的な工程である。本実習では、新たに純化用培地を準備し、再度コロニーのピックアップと接種を行う計画を立てる。どの部分を取り直すべきか、どの培地条件が適しているかを考えることで、分離・純化が反復的なプロセスであることを理解する。本細目を通じて、学生は失敗や不完全な結果を次の改善につなげる科学的姿勢を学び、再現性のある菌株確立に向けた判断力を養うところまで。
③ 本細目では、純化が確認された放線菌株を長期保存するために、グリセロール保存の準備を行う。セラムチューブを用いた保存は、密閉性が高く、凍結保存に適した方法である。実習では、あらかじめ調製・滅菌されたグリセロール溶液をセラムチューブに分注し、保存操作に備える。分注量やラベリングの正確さは、後の保存管理や再利用に直結するため重要なポイントとなる。本細目を通じて、学生は保存操作が単なる作業ではなく、分離した菌株を研究資源として維持するための責任ある工程であることを理解するところまで。
キーワード ① 純化株評価(形態均一性、成長速度、品質確認) ② コンタミネーション(混在判定、異形コロニー、再確認) ③ 再純化(再ピックアップ、培地再調製、反復操作) ④ 保存準備(グリセロール分注、セラムチューブ、密閉管理) ⑤ 菌株管理(評価、保存、長期維持)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、純化培養後の放線菌株を観察し、コンタミネーションの有無を評価するとともに、必要に応じた再純化や保存準備を行った。復習ではまず、観察によって何を基準に純度を判断したのかを整理したい。コロニーの形状や色調が均一であったか、成長速度にばらつきがなかったか、異なる形態の微生物が混在していなかったかといった点が重要な判断材料であった。放線菌は成長が遅いため、速く生育する細菌やカビが存在すると容易に見分けられることも確認できた。次に、コンタミネーションが疑われた株について再純化を検討した点から、分離・純化が反復的なプロセスであることを学んだ。再純化は結果を否定する作業ではなく、より高い再現性と信頼性を確保するための工程である。さらに、グリセロール保存に向けた準備を通じて、分離株を長期的に維持・管理する視点を身につけた。分注量やラベリングの正確さが、将来の再利用に直結する点も重要である。今回の実習を通して、放線菌分離のゴールは「コロニーができること」ではなく、信頼できる純化株を確立し、保存できる状態にすることであると整理し、次回の保存操作へとつなげておきたい。

[次回授業の予習]
 次回は、分離・純化によって確立した放線菌株を、研究資源として安定的に保存・管理する方法を学ぶ。予習ではまず、「良い菌株を得ること」と「その菌株を長く使える形で保存すること」は別の技術である、という点を理解しておくことが重要である。放線菌は菌糸状に生育するため、一般細菌のような保存法がそのまま使えない場合が多く、放線菌特有の保存技術が発展してきた。本コマで扱うストロー打ち抜き法は、寒天培地上の菌糸構造を保ったまま保存できる点に特徴があり、放線菌の再生性を高く保つために用いられてきた。予習では、この方法が「寒天ごと保存する」理由を考えておくと、操作の意味が理解しやすくなる。また、保存法には短期保存と長期保存があり、目的(すぐに使うのか、将来のために残すのか)によって使い分ける必要がある点も重要である。さらに、本コマではシード培地の作製も行うため、保存はゴールではなく「次の培養・生産につなげるための準備」であることを意識しておきたい。予習の目的は、保存操作を単なる後片付けではなく、微生物研究を継続可能にするための中核技術として捉えることである。

22 純化株の保存:放線菌(8)(実践編1) 科目の中での位置付け 本コマは、分離・純化によって確立した放線菌株を、研究資源として安定的に保存・管理する段階として位置付けられる。これまでの実習では、コロニーの選抜、純化、評価を通じて「信頼できる菌株」を得ることを目指してきたが、本コマではそれらを長期的に利用可能な形で保存する技術を習得する。
放線菌は菌糸状に生育するため、一般細菌とは異なる保存法が用いられてきた。寒天培地から菌体を打ち抜いて保存するストロー打ち抜き法を中心に、短期保存と長期保存の考え方を整理する。また、次段階となる生産培養や機能評価に備え、シード培地(液体培地)の作製も行い、保存から培養への橋渡しを意識した構成とする。
放線菌分離実習の中で「菌株を守り、次に使う」ための技術と考え方を身につける総仕上げ的な位置付けを担っている。(難易度:★★ 技術的応用)

【コマ主題細目】
1.純化株の保存方法
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34
3)中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第4章 微生物の観察ととり扱い, 72-99

2.短期・長期保存法の習得
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34

3.シード培地の作製
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第7章 微生物の増殖, 83-100
コマ主題細目 ① 純化株の保存方法 ② 短期・長期保存法の習得 ③ シード培地の作製
細目レベル ① 本細目では、放線菌株の保存法として広く用いられてきたストロー打ち抜き法を学ぶ。ストロー打ち抜き法は、寒天培地上で生育した放線菌の菌糸を含む部分を、滅菌したストローで円筒状に打ち抜き、そのまま保存する方法である。この方法は、菌糸構造を保持したまま保存できる点に特徴があり、放線菌の長期維持に適している。実習では、使用するストローの乾熱滅菌や保管方法を確認し、無菌操作の重要性を再確認する。また、どの部位を打ち抜くかによって保存後の再生性が変わることにも注意を向ける。本細目を通じて、学生は放線菌特有の生育様式に対応した保存技術を理解し、菌株保存の実践的手法を習得するところまで。
② 本細目では、放線菌株の保存法を「短期保存」と「長期保存」に分けて整理し、それぞれの目的と特徴を理解する。短期保存には斜面培地や低温保存が用いられ、日常的な継代や観察に適している。一方、長期保存にはグリセロール保存や打ち抜き法による低温保存が用いられ、菌株の性質を維持したまま長期間保存することが可能である。実習では、保存期間や再利用頻度に応じて保存法を選択する判断基準を学ぶ。また、保存条件の違いが菌株の安定性や突然変異リスクに影響することにも触れ、保存は単なる保管ではなく、菌株品質を維持するための管理技術であることを理解する。本細目を通じて、学生は菌株管理の全体像を把握し、研究・産業利用における保存戦略を学ぶところまで。
③ 本細目では、保存した放線菌株を用いた次段階の培養に備え、シード培地(液体培地)を大量に作製する。シード培地は、生産培養や機能評価実験の出発点となる重要な培養段階であり、培地組成や培養条件が後続の結果に大きく影響する。実習では、バッフルフラスコを用いて液体培地を調製し、秤量、溶解、分注、滅菌といった基本操作を確認する。バッフルフラスコは攪拌効率を高め、放線菌の酸素供給を改善するために用いられる。本細目を通じて、学生は保存株を「眠らせる」だけでなく、「再び活性化して利用する」ための準備工程を理解し、保存と培養が連続したプロセスであることを学ぶところまで。
キーワード ① 菌株保存(ストロー打ち抜き、長期維持、再生性) ② 保存技術(短期保存、長期保存、管理戦略) ③ 無菌操作(滅菌ストロー、汚染防止、器具管理) ④ シード培地(液体培養、初期増殖、活性化) ⑤ 培養準備(バッフルフラスコ、酸素供給、大量調製)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
  今回の授業では、純化した放線菌株を対象に、保存と次段階培養に向けた準備を行った。復習ではまず、ストロー打ち抜き法による保存操作を振り返り、どの部位を打ち抜いたか、無菌操作をどのように意識したかを整理したい。菌糸を含む寒天片をそのまま保存することで、放線菌の再生性を高く保てる点が、この方法の大きな利点であることを確認する。また、短期保存と長期保存の違いについて、保存期間・再利用頻度・菌株安定性の観点から整理し、なぜ保存戦略を使い分ける必要があるのかを理解しておくことが重要である。次に、シード培地の作製を通じて、保存した菌株を再び増殖させ、機能評価や生産培養へとつなげる準備を行った点を振り返る。バッフルフラスコを用いる理由や、液体培養での酸素供給の重要性も、放線菌培養の特徴として押さえておきたい。今回の実習を通して、放線菌分離のゴールは「見つけること」や「純化すること」ではなく、信頼できる菌株を保存し、次の研究や応用に使える形で残すことであると整理し、分離実習全体を一連の研究プロセスとして振り返っておきたい。

[次回授業の予習]
次回は、再純化を経た放線菌株について、最終的な純度確認と保存確定を行う。予習ではまず、「純化が完了したと思われる株でも、必ず最終確認が必要である」という点を理解しておくことが重要である。放線菌分離では、成長の遅さや菌糸状生育という特性から、見た目だけでは混在を見落とす可能性がある。そのため、本コマでは再純化株のコロニー形態が本当に均一か、成長速度や色調にばらつきがないかを慎重に観察する。また、シャーレ裏面ののぞき窓を用いた観察によって、基質菌糸の広がり方や内部構造を確認することが、最終判定の重要な手がかりとなる。次に、純度が確認された株は、グリセロールを用いた凍結保存へ進むため、保存操作が「菌株を確定する最終工程」であることを理解しておきたい。さらに、−80℃フリーザーでのラック管理は、単なる保管ではなく、菌株を研究資源として長期的に維持・共有するための管理技術である。予習の目的は、本コマを「作業の続き」ではなく、放線菌分離実習の最終合格判定を行う回として位置付け、観察・判断・保存のすべてに責任をもって臨む準備を整えることである。

23 再純化株の観察:放線菌(9)(実践編1) 科目の中での位置付け 本コマは、純化および保存を経た放線菌株について、再度その純度と安定性を確認し、最終的に「信頼できる保存株」として確定する段階として位置付けられる。放線菌分離実習では、一度の純化で完全な単一株が得られるとは限らず、再純化と再評価を行うことで、はじめて研究や応用に耐えうる菌株が確立される。本コマでは、再純化株の形態観察を通じてコンタミネーションの有無を最終確認し、問題のない株については正式な保存操作へと進む。
また、グリセロール保存および −80℃でのラック管理を実践的に学ぶことで、菌株を「実験材料」から「研究資源」へと格上げする意識を育てる。本コマは、放線菌分離・純化ユニットの総仕上げとして、以後の生産培養や機能評価へ進むための重要な分岐点を担っている。(難易度:★★ 技術的応用)

1.再純化株の観察
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34
3)中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第4章 微生物の観察ととり扱い, 72-99

2.再純化株の保存
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34
3)中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第4章 微生物の観察ととり扱い, 72-99

3.保存株の管理
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34
3)中西載慶(著):微生物の基礎(実教出版), 第4章 微生物の観察ととり扱い, 72-99
コマ主題細目 ① 再純化株の観察 ② 再純化株の保存 ③ 保存株の管理
細目レベル ① 本細目では、再純化後に得られた放線菌株を対象に、最終的な純度確認を行う。肉眼観察では、コロニーの形態、色調、成長速度が均一であるかを確認し、異なる形態の微生物が混在していないかを慎重に判断する。さらに、シャーレ裏面ののぞき窓を用いて、基質菌糸の広がり方やコロニー内部構造を観察し、再純化が十分に行われたかを評価する。放線菌は比較的生育が遅いため、速く生育する細菌やカビが混入している場合には、形態の違いとして明確に現れる。本細目を通じて、学生は「最終確認としての観察」の重要性を理解し、菌株確定に必要な判断力を養うところまで。
② 本細目では、再純化によって純度が確認された放線菌株について、正式な保存操作を行う。保存方法としては、グリセロールを用いた凍結保存を基本とし、セラムチューブへの分注を通じて、密閉性と管理性の高い保存形態を整える。また、必要に応じて寒天培地から菌体を採取するための滅菌ストローの準備も行い、保存操作全体を安全かつ確実に実施できる体制を整える。実習では、分注量、ラベリング、記録の正確さが保存後の再利用に直結することを確認する。本細目を通じて、学生は保存操作が単なる作業ではなく、菌株の価値を守る重要な工程であることを理解するところまで。
③ 本細目では、作製した保存株を −80℃フリーザーで適切に管理する方法を学ぶ。低温保存では、単に凍結するだけでなく、ラック番号や保存容器の配置を明確に管理することが不可欠である。実習では、ラックとラック保存容器を用いた体系的な管理方法を確認し、どの菌株がどこに保存されているかを誰でも追跡できる状態を整える。保存記録と実際の配置が一致していない場合、菌株の紛失や誤使用につながるため、管理の重要性を強調する。本細目を通じて、学生は微生物研究における「保存後の管理」まで含めて初めて実験が完結することを理解し、研究倫理と実務能力を身につけるところまで。
キーワード ① 再純化株(最終確認、形態均一性、品質保証) ② 純度評価(目視観察、観察方法、混在判定) ③ 凍結保存(グリセロール、セラムチューブ、再利用) ④ 保存管理(−80℃、ラック番号、配置記録) ⑤ 菌株確立(研究資源化、長期維持、信頼性)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
  今回の授業では、再純化株を対象に最終的な観察を行い、純度が十分であるかを確認したうえで保存操作と管理を実施した。復習ではまず、どのような基準で「純度が確保されている」と判断したのかを整理したい。コロニーの形態や色調が均一であること、成長速度に大きな差がないこと、異なる微生物が混在していないことが重要な判断材料であった。また、のぞき窓からの観察によって、基質菌糸の広がり方が一様であるかを確認できた点も、最終判定に有効であった。次に、再純化株の保存では、グリセロール分注量やセラムチューブへのラベリングが、将来の再利用に直結する重要な操作であることを理解した。さらに、−80℃フリーザーでのラック管理を通じて、保存後の管理が不十分であれば菌株の価値が失われる可能性があることを学んだ。今回の実習を通じて、放線菌分離のゴールは「分離できたこと」ではなく、純度が保証され、管理された保存株として確立することであると整理しておきたい。本コマは、微生物を研究資源として扱うための最終確認であり、実験技術だけでなく責任ある研究姿勢を身につける重要な締めくくりであった。

[次回授業の予習]
次回は、これまでに分離・純化・保存してきた放線菌株を用いて、生産培養を開始する。予習ではまず、「生産培養は菌を増やすことが目的ではない」という点を理解しておくことが重要である。分離培養や純化培養では、菌株を安定に維持することが目的であったが、生産培養では放線菌がもつ代謝機能を引き出し、代謝産物を作らせることが目的となる。そのため、用いる培地は単なる栄養補給の場ではなく、代謝を誘導するための設計が施されている。炭素源や窒素源、無機塩類の組成やバランスが、どのような代謝物が作られるかに影響することを意識しておきたい。次に、シード培養の役割を整理しておく。シード培養は、生産培養に移行する前に菌体の状態を均一に整える工程であり、ここでの接種量や操作精度が後の結果に影響する。さらに、生産培地をバッフルフラスコで作製する理由として、酸素供給や攪拌効率の重要性を理解しておくと実習の意味が明確になる。予習の目的は、本コマを単なる液体培養実習ではなく、放線菌の機能を引き出すための出発点として位置付けて臨むことである。

24 生産培養:放線菌(10)(実践編2) 科目の中での位置付け 本コマは、これまでに分離・純化・保存された放線菌株を用いて、代謝産物の生産を目的とした培養(生産培養)を開始する段階として位置付けられる。分離培養や純化培養が「菌株の確立」を目的としていたのに対し、本コマでは微生物の代謝機能を引き出し、物質生産へとつなげる点に重点が置かれる。
放線菌は培地組成や培養条件によって産生する代謝物が大きく変化するため、生産培養では培地設計と培養操作が結果に直結する。本コマでは、生産培地の組成理解、シード培地への植菌、さらに大量の液体培地作製を通じて、研究・産業現場で行われている生産培養の基本的枠組みを体験的に学ぶ。
放線菌分離実習の後半に位置する応用微生物学・発酵工学への導入コマであり、次回以降の代謝物抽出・分析・活性評価へと発展するための重要な起点となる。(難易度:★★ 技術的応用)

1.生産培地の組成の理解
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第7章 微生物の増殖, 83-100

2.シード培地への植菌
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第7章 微生物の増殖, 83-100

3.生産培地の作製
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第7章 微生物の増殖, 83-100
コマ主題細目 ① 生産培地の組成の理解 ② シード培地への植菌 ③ 生産培地の作製
細目レベル ① 本細目では、放線菌による代謝物生産を目的とした生産培地の組成について理解を深める。生産培地は、単に菌体を増殖させるための培地とは異なり、炭素源・窒素源・無機塩類のバランスによって、二次代謝産物の産生量や種類が大きく左右される。実習では、典型的な放線菌用生産培地を例に、各成分が担う役割を整理し、なぜ特定の組成が選ばれているのかを考える。また、栄養制限やストレス条件が代謝物生産を誘導する場合があることにも触れ、培地設計が微生物制御の重要な要素であることを理解する。本細目を通じて、学生は「培地は成長の場であると同時に、代謝を誘導する装置である」という視点を身につけるところまで。
② 本細目では、保存株または再純化株をシード培地へ植菌し、生産培養に適した菌体を準備する操作を行う。シード培養は、生産培養の前段階として、菌体を安定的かつ均一な状態にそろえる重要な工程である。実習では、エーゼを用いて寒天培地上の菌体を適量採取し、液体シード培地へ接種する。接種量や操作の正確さは、その後の生育速度や代謝状態に影響を与えるため、無菌操作と再現性を重視する。本細目を通じて、学生は「液体培養への移行」が単なる作業ではなく、生産成功の鍵を握る工程であることを理解し、培養操作の精度を高めるところまで。
③ 本細目では、生産培養に用いる液体培地を大量に作製し、バッフルフラスコへ分注する操作を行う。バッフルフラスコは攪拌効率と酸素供給を高める構造をもち、好気性の放線菌培養に適している。実習では、培地の秤量、溶解、分注、滅菌といった基本操作を確認しながら、大量調製における作業分担や効率化の工夫についても学ぶ。大量の培地を扱うことで、研究・産業現場でのスケール感を体験し、個別実験から集団的生産へと視点を広げる。本細目を通じて、学生は生産培養がチーム作業と計画性によって支えられていることを理解するところまで。
キーワード ① 生産培養(代謝物産生、培地設計、応用段階) ② 生産培地(炭素源、窒素源、無機塩類) ③ シード培養(前培養、均一化、接種精度) ④ 液体培養(バッフルフラスコ、酸素供給、攪拌) ⑤ 培養操作(エーゼ使用、無菌操作、再現性)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
  今回の授業では、放線菌株を用いた生産培養の準備として、生産培地の組成理解、シード培地への植菌、生産培地の作製を行った。復習ではまず、生産培地が菌体増殖用培地とどのように異なるかを整理したい。炭素源・窒素源・無機塩類の組み合わせが、放線菌の代謝状態や二次代謝産物の産生に影響する点を確認し、培地設計が生産結果を左右する重要な要素であることを理解することが重要である。次に、シード培養への植菌操作について、接種量や無菌操作の精度が生育の均一性に影響することを振り返る。シード培養は生産培養の前段階として、菌体を整える役割を果たしており、ここでのばらつきが生産段階に持ち越される可能性がある。さらに、生産培地の大量作製を通じて、バッフルフラスコの構造や攪拌・酸素供給の重要性を実感したはずである。今回の実習を通して、生産培養が個人作業ではなく、計画性と分担によって成り立つ工程であることを理解し、次回以降の代謝物抽出や活性評価へとつなげておきたい。今回のコマは、放線菌分離実習が「探索」から「生産」へ移行した重要な転換点であったと整理しておく。

[次回授業の予習]
次回は、前回開始した放線菌の生産培養を、再現性のある実験系として確立するための操作と考え方を学ぶ。予習ではまず、「生産培養は一度うまくいけばよい実験ではない」という点を理解しておくことが重要である。放線菌による代謝物生産では、培養条件だけでなく、使用するシード培養の状態や純度が結果に大きく影響する。そのため、同じ条件を何度でも再現できる体制を整えることが、研究や産業利用では不可欠となる。次に、凍結シードの役割を整理しておきたい。凍結シードは、一定の生育状態で菌体を保存し、次回以降の生産培養を同じスタートラインから開始するための手段である。これにより、菌体の生理状態のばらつきを抑え、培養結果の比較が可能になる。また、生産培養に入る前には、必ずコンタミネーションの有無を確認する必要がある。外観や匂い、沈殿の様子などから異常を見抜く視点を持つことは、品質管理の第一歩である。予習の目的は、本コマを「作業の延長」ではなく、生産培養を実験として成立させるための品質管理回として位置付け、再現性と安全性を意識して実習に臨む準備を整えることである。

25 生産培養:放線菌(11)(実践編2) 科目の中での位置付け 本コマは、前回開始した生産培養を「再現性のある生産系」として確立するための重要な段階として位置付けられる。主題24では培地設計と培養開始を扱ったのに対し、本コマでは、生産培養の概念理解、凍結シードの作製、そしてコンタミネーションの確認を通じて、培養系の信頼性を高めることを目的とする。
放線菌による代謝物生産では、培養条件だけでなく、シード培養の状態や純度が結果に大きく影響する。そのため、本コマでは単発的な培養ではなく、同じ条件を繰り返し再現できる体制を整えることを重視する。また、培養液から簡易的な抽出物を作製し、異常な増殖や汚染がないかを確認することで、生産培養が健全に進行しているかを評価する。
生産培養を「実験として成立させる」ための品質管理と再現性確保を学ぶコマであり、次回以降の本格的な抽出・分析・活性評価へと進むための前提条件を整える役割を担っている。(難易度:★★ 技術的応用)

1.生産培養の理解
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第7章 微生物の増殖, 83-100

2.シード培養から生産培養へ
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第7章 微生物の増殖, 83-100

3.コンタミチェック
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)道久則之(著):ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社), 第3章 無菌操作と菌株保存法, 23-34
コマ主題細目 ① 生産培養の理解 ② シード培養から生産培養へ ③ コンタミチェック
細目レベル ① 本細目では、放線菌による生産培養の考え方と特徴を整理する。生産培養は、菌体増殖を主目的とする培養とは異なり、抗生物質や酵素などの二次代謝産物を得ることを目的として行われる。そのため、栄養条件、培養時間、溶存酸素などが生産量に大きな影響を与える。本実習では、増殖期と生産期の違いを概念的に理解し、なぜ一定時間培養した後に代謝物が蓄積するのかを学ぶ。また、培養条件を意図的に制御することで微生物の代謝を誘導するという、応用微生物学・発酵工学の基本的な考え方を整理する。本細目を通じて、学生は生産培養を単なる「大量培養」ではなく、目的物質を得るための設計されたプロセスとして捉える視点を身につけるところまで。
② 本細目では、生産培養を安定して繰り返すための基盤として、凍結シードの作製を行う。凍結シードとは、一定の状態で培養したシード培養液を凍結保存したものであり、再利用時に同じ条件から生産培養を開始できる利点がある。実習では、シード培養液に適切な濃度のグリセロールを添加し、分注・凍結することで凍結シードを作製する。これにより、毎回異なる状態の菌体を用いることによるばらつきを抑え、培養の再現性を高めることができる。本細目を通じて、学生は研究・産業現場において「凍結シード」が重要な役割を果たしていることを理解し、単発実験から系統的な培養管理へと視点を発展させるところまで。
③ 本細目では、生産培養に先立ち、シード培養が純粋であるかを確認するためのコンタミネーションチェックを行う。培養液から簡易的な抽出物を作製し、外観、沈殿の有無、匂いなどを確認することで、異常な増殖や汚染の兆候がないかを評価する。必要に応じて平板培養などを用いた確認を行い、シード培養が生産培養に使用可能であるかを判断する。本細目を通じて、学生は「生産培養に入る前に確認すべきポイント」を理解し、問題がある場合には培養を中止・やり直す判断力を養う。これは、研究や産業における品質管理の基本姿勢を学ぶ重要な経験となることを理解するところまで。
キーワード ① 生産培養(代謝物産生、二次代謝、培養設計) ② シード管理(凍結シード、再現性、初期条件) ③ 培養再現性(条件統一、ばらつき低減、品質管理) ④ コンタミネーション(汚染確認、異常判定、培養健全性) ⑤ 培養評価(抽出物作製、事前確認、次段階準備)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
  今回の授業では、生産培養の考え方を整理したうえで、凍結シードの作製とコンタミネーションチェックを行った。復習ではまず、生産培養が菌体増殖を目的とした培養とは異なり、二次代謝産物の産生を目的とする培養であることを再確認したい。増殖期と生産期の違いを理解することで、なぜ培養時間や条件管理が重要になるのかが明確になる。次に、凍結シード作製を通じて、同じ状態の菌体を保存・再利用することが、生産培養の再現性を高める鍵であることを学んだ。グリセロール添加や分注、凍結といった操作の正確さが、将来の培養結果に影響する点を整理しておきたい。また、コンタミネーションチェックでは、培養液から得た抽出物の外観や匂いを確認することで、生産培養に進めるかどうかを判断した。これは単なる確認作業ではなく、問題があれば培養を中止・やり直すという重要な意思決定を伴う工程である。今回の実習を通じて、生産培養は「培養すること」ではなく、再現性・信頼性・品質管理を含めた総合的な実験プロセスであると整理し、次回以降の抽出・分析・活性評価へとつなげておきたい。

[次回授業の予習]
次回は、放線菌を対象に行ってきた一連の実習を総合的に振り返り、分離から抽出物作製へ至る流れを整理する。予習ではまず、これまでの各回の実習が「独立した作業」ではなく、連続した研究プロセスの一部であったことを意識することが重要である。環境サンプルの処理、分離培養、純化、保存、シード培養、生産培養といった工程は、それぞれが次の操作の前提条件となっており、どこか一つが不十分であれば最終的な成果に影響する。特に放線菌研究では、サンプル処理や純化の段階での判断が、後の培養安定性や抽出物の質を左右する点を理解しておきたい。また、本コマは新しい操作を行う回ではなく、次に進む「抽出・分析・活性評価」を意味づける整理回であるため、各工程で何を意識していたか、どの判断が重要であったかを思い出しておくと理解が深まる。予習の目的は、実習全体を点ではなく線として捉え直し、放線菌探索がどのように研究成果へつながるのかを俯瞰的に理解する準備を整えることである。

26 分離から抽出物作製までのまとめ:放線菌(12)(実践編2) 科目の中での位置付け 本コマは、放線菌を対象とした一連の実習(環境サンプルの処理、分離、純化、保存、シード培養、生産培養)を体系的に振り返り、「有用微生物探索から抽出物作製へ至る流れ」を整理する総括的な位置付けにある。これまでの実習では、それぞれの工程を段階的に学んできたが、本コマではそれらを一本の実験ストーリーとして再構成し、各操作がどのように次の工程につながっているのかを明確にする。
放線菌研究では、単一の操作が成果を生むのではなく、前段階の処理や判断の積み重ねが最終的な抽出物の質を左右する。本コマでは、個々の実験操作を「点」ではなく「線」として捉え、どの段階で何を意識すべきだったのかを振り返ることで、実験設計力と再現性に対する理解を深める。したがって主題26は、次に行う抽出・分析・活性評価を意味づけるための整理回であり、放線菌実習ユニット全体を総合的に理解するための重要な節目となる。(難易度:★★ 技術的応用)

1.サンプル処理
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)乙黒美彩・中島琢自・宮道慎二(著):生物工学会誌 第90巻 第8号 493–498.2012

2.分離から純化
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)乙黒美彩・中島琢自・宮道慎二(著):生物工学会誌 第90巻 第8号 493–498.2012

3.シード培養から生産培養
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)乙黒美彩・中島琢自・宮道慎二(著):生物工学会誌 第90巻 第8号 493–498.2012
コマ主題細目 ① サンプル処理 ② 分離から純化 ③ シード培養から生産培養
細目レベル ① 本細目では、放線菌分離の出発点となった環境サンプル処理について振り返る。植物根の採取、洗浄、表面殺菌、乾燥、ホモジナイズ、希釈系列作製といった一連の操作は、分離結果の成否を大きく左右する工程である。これらの処理が不十分であった場合、一般細菌や真菌が優占し、放線菌が分離できなくなる可能性がある。本細目では、各処理の目的を再確認し、「なぜその操作が必要だったのか」を整理する。さらに、サンプル条件の違いが分離結果に与えた影響を比較することで、環境由来微生物を扱う際の注意点を理解する。本細目を通じて、学生はサンプル処理が単なる前準備ではなく、実験全体を方向付ける重要な判断工程であることを再認識するところまで。
② 本細目では、分離培地への播種から純化培養、再純化、コンタミネーション確認に至るまでの流れを整理する。放線菌様コロニーの出現、形態観察による選抜、釣菌、純化培養、再評価といった工程は、単一菌株を確立するために不可欠である。本細目では、どの段階で判断が必要であったか、また判断を誤るとどのような問題が生じるかを具体例とともに振り返る。これにより、純化が「作業」ではなく「評価と選択の連続」であることを理解する。本細目を通じて、学生は信頼できる菌株を得るための論理的思考と観察力を整理し、微生物研究における純化の意義を明確にするところまで。
③ 本細目では、確立した放線菌株を用いたシード培養および生産培養の流れを振り返る。シード培養は、生産培養の成否を左右する重要な前段階であり、凍結シードの作製やコンタミネーションチェックを通じて、再現性の高い培養系を構築することが求められる。本細目では、培地組成、接種条件、培養期間が代謝物産生に与える影響を整理し、なぜ段階的な培養が必要であったのかを理解する。また、分離株がどのように「抽出物作製」へとつながっていくのかを示すことで、基礎実習と応用実験の連続性を明確にする。本細目を通じて、学生は放線菌研究の全体像を俯瞰し、次の分析・評価工程への準備を整えるところまで。
キーワード ① サンプル処理(表面殺菌、ホモジナイズ、希釈系列) ② 分離操作(選択培地、播種、コロニー出現) ③ 純化工程(釣菌、再純化、コンタミ確認) ④ 培養段階(シード培養、生産培養、再現性) ⑤ 実験統合(工程整理、因果関係、総合理解)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、放線菌を対象とした一連の実習工程を振り返り、分離から抽出物作製へ至る流れを整理した。復習ではまず、環境サンプル処理の段階で行った洗浄、表面殺菌、乾燥、ホモジナイズ、希釈といった操作が、放線菌分離の成否を大きく左右していた点を再確認したい。次に、分離培地への播種から純化・再純化、コンタミネーション確認に至る過程では、観察と判断を繰り返すことが、信頼できる単一菌株の確立に不可欠であったことを整理する。さらに、保存、シード培養、生産培養を経て、放線菌株が「研究資源」として扱われる段階へ移行したことを確認することが重要である。これらの工程は、単なる技術習得ではなく、再現性と品質を意識した実験設計の訓練であった。本コマを通じて、放線菌研究では個々の操作よりも工程全体のつながりが成果を生むことを理解できたはずである。分離から抽出物作製までの流れを自分の言葉で説明できるよう整理し、次の分析・活性評価実習へとつなげておきたい。

[次回授業の予習]
次回は、これまでに分離・培養・生産培養してきた放線菌が産生した代謝産物について、生物活性という観点から評価を行う。予習ではまず、「微生物を育てること」と「微生物の働きを評価すること」は異なる段階であることを理解しておく必要がある。本コマでは、放線菌そのものではなく、培養液中に含まれる代謝産物が、他の微生物(検定菌)の生育に影響を与えるかどうかを調べる。これは、有用微生物探索において最も重要な問いの一つである。次に、検定菌培地の役割を整理しておきたい。検定菌培地は、生物活性を比較するための「物差し」であり、条件が揃っていなければ結果を正しく解釈できない。そのため、培地組成や分注条件を統一することが不可欠である。また、培養液抽出物は、培養の結果を代表する試料であり、抽出や前処理の仕方によって含まれる成分が変化する可能性がある。さらに、有機溶媒(エタノール)を用いた処理は、活性物質を濃縮する一方で、安全管理や操作手順への配慮が求められる工程である。予習の目的は、本コマを「結果が出る実験」として期待するのではなく、生物活性評価の入り口となる慎重な検証作業として位置付け、操作と条件管理の意味を理解したうえで実習に臨むことである。

27 放線菌培養液抽出物を使った生物活性:放線菌(13)(実践編2) 科目の中での位置付け 本コマは、放線菌の分離・培養・生産培養を通じて得られた成果を、「生物活性」という形で評価する段階として位置付けられる。これまでの実習では、微生物そのものを扱う操作が中心であったが、本コマでは放線菌が産生した代謝産物に着目し、その機能を実験的に検証する点に特徴がある。
放線菌は多様な抗生物質や生理活性物質を生産することで知られており、培養液から抽出した成分が他の微生物の生育に影響を与えるかを調べることは、有用微生物探索の核心的な作業である。本コマでは、検定菌培地の準備、培養液抽出物の作製、有機溶媒処理を通じて、放線菌研究が「培養」から「機能評価」へと移行することを体験的に学ぶ。
放線菌実習ユニットの中で応用段階への入口となる重要なコマであり、次回以降の活性評価や分析結果の解釈につながる基盤を形成する。(難易度:★★★ 技術的応用)

1.検定菌培地作製
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)乙黒美彩・中島琢自・宮道慎二(著):生物工学会誌 第90巻 第8号 493–498.2012

2.培養液抽出物の作製
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)乙黒美彩・中島琢自・宮道慎二(著):生物工学会誌 第90巻 第8号 493–498.2012

3.培養液の有機溶媒処理
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)乙黒美彩・中島琢自・宮道慎二(著):生物工学会誌 第90巻 第8号 493–498.2012
コマ主題細目 ① 検定菌培地作製 ② 培養液抽出物の作製 ③ 培養液の有機溶媒処理
細目レベル ① 本細目では、放線菌培養液抽出物の生物活性を評価するために用いる検定菌培地を作製する。検定菌とは、抽出物の影響を受けやすい指標微生物であり、その生育阻害や変化を通じて生物活性を判定する。本実習では、検定菌の菌液および培地を前日までに準備し、当日は均一な条件で培地に混和または塗布できる状態を整える。培地作製では、培地組成や寒天濃度が検定結果に影響するため、分注量や混合条件を揃えることが重要である。本細目を通じて、学生は「評価実験では条件をそろえることが結果の信頼性を支える」という品質管理の考え方を学ぶところまで。
② 本細目では、生産培養によって得られた放線菌培養液から抽出物を作製する。培養液には、菌体成分と菌体外に分泌された代謝産物が混在しているため、抽出操作によって評価対象となる成分を分離する必要がある。実習では、培養液をろ過や遠心によって処理し、上清を回収することで、菌体を除いた抽出前試料を得る。この工程を通じて、どの段階の試料を評価に用いるかによって結果が変わることを理解する。本細目では、抽出物が「培養の結果を代表する試料」であることを意識し、操作の正確さと記録管理の重要性を学ぶところまで。
③ 本細目では、培養液抽出物に対して有機溶媒処理を行い、生物活性物質を濃縮・回収する。アルコール抽出は、放線菌が産生する比較的低分子の代謝産物を効率よく回収できる方法であり、多検体を一括して処理できる利点がある。本実習では、培養液をエタノールで処理し、スケール感のある操作を体験する。大量試料を扱うことで、研究・産業現場における安全管理、作業分担、溶媒管理の重要性を理解する。本細目を通じて、学生は生物活性評価に向けた前処理が、結果の再現性と安全性の両立を求められる工程であることを学ぶところまで。
キーワード ① 生物活性評価(検定菌、生育阻害、指標反応) ② 検定菌培地(条件統一、前日調製、再現性) ③ 抽出物作製(培養上清、前処理、試料化) ④ 有機溶媒抽出(アルコール、濃縮、成分回収) ⑤ 機能探索(代謝産物、活性物質、有用性評価)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、放線菌培養液から抽出物を作製し、検定菌を用いて生物活性を評価する準備と操作を行った。復習ではまず、検定菌培地の作製において、培地条件を揃えることが結果の信頼性に直結していた点を整理したい。検定菌の生育にばらつきがあれば、抽出物の影響なのか、条件差によるものなのか判断できなくなるため、前処理の重要性を再確認する。次に、培養液抽出物の作製では、菌体を除いた上清を回収することで、評価対象を代謝産物に限定した点が重要であった。どの段階の試料を用いるかによって、生物活性の見え方が変わる可能性があることも理解しておきたい。さらに、有機溶媒処理では、エタノールによって活性物質を回収・濃縮する操作を体験し、大量試料を扱う際の安全管理や作業分担の重要性を学んだ。今回の実習を通じて、放線菌研究では「活性があるかどうか」だけでなく、その結果がどの工程に由来するのかを考察する姿勢が不可欠であることを整理しておきたい。本コマは、有用微生物探索が培養から機能評価へ進んだ重要な節目であり、次回以降の活性判定や結果解釈につながる基盤となる回であった。

[次回授業の予習]
次回は、放線菌培養液から得られた抽出物を用いて、生物活性を実際に評価する。予習ではまず、これまで行ってきた培養・抽出・溶媒処理が、この回の評価実験につながっていることを意識することが重要である。本コマでは、放線菌そのものではなく、培養液中に含まれる代謝産物が検定菌の生育に影響を与えるかどうかを調べる。これは、有用微生物探索における最終的な判断材料となる工程である。次に、遠心分離の役割を整理しておきたい。遠心分離は、固形残渣と可溶性成分を分け、評価に用いる画分を明確にするための操作であり、回収時の丁寧さが結果の信頼性を左右する。また、ペーパーディスク法は、抽出物を寒天培地上で拡散させ、その拡散範囲と検定菌の生育阻害を観察する方法であるため、ディスクの配置や条件統一が不可欠である。阻止円の有無や大きさは、単なる「成功・失敗」ではなく、濃度や拡散性、培地条件など複数の要因の結果として現れる。予習の目的は、本コマを「結果を見る回」ではなく、条件をそろえて活性を評価する科学的測定実験として理解し、慎重に操作へ臨む準備を整えることである。

28 放線菌培養液抽出物を使った生物活性:放線菌(14)(実践編2) 科目の中での位置付け 本コマは、放線菌培養液から得られた抽出物を用いて、実際に生物活性を評価する工程を体験する段階として位置付けられる。前回までに行った培養、抽出、有機溶媒処理によって得られた試料を対象に、抗菌活性などの生物活性を定量的・半定量的に測定する点に本コマの特徴がある。
放線菌研究では、培養液から得られた成分が「活性をもつかどうか」を確認することが、有用微生物探索の最終的な判断材料となる。本コマでは、遠心分離による抽出物の回収、ペーパーディスク法によるアッセイ、測定結果の整理を通じて、生物活性評価の基本的な考え方と操作を学ぶ。
放線菌実習ユニットの中で成果を可視化する最終的な実験段階であり、次の総括・発表回へとつながる重要な位置を占めている。(難易度:★★★ 技術的応用)

1.培養上清の回収
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)乙黒美彩・中島琢自・宮道慎二(著):生物工学会誌 第90巻 第8号 493–498.2012

2.ペーパーディスク法
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)乙黒美彩・中島琢自・宮道慎二(著):生物工学会誌 第90巻 第8号 493–498.2012
3)上野芳夫・大村智(監)微生物薬品化学(南江堂),化学療法剤とその作用,144-166, 2007

3.培養液抽出物の測定
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)乙黒美彩・中島琢自・宮道慎二(著):生物工学会誌 第90巻 第8号 493–498.2012
コマ主題細目 ① 培養上清の回収 ② ペーパーディスク法 ③ 培養液抽出物の測定
細目レベル ① 本細目では、有機溶媒処理後の培養液抽出物を遠心分離によって回収する操作を行う。遠心分離は、固形残渣と可溶性成分を分離し、評価に用いる上清や沈殿を明確に分けるための基本操作である。実習では、遠心条件(回転数・時間)の意味を確認し、遠心後に得られる各画分がどのような成分を含むかを理解する。特に、回収時に沈殿を巻き上げないよう慎重に操作することが重要であり、操作の丁寧さが後の測定結果に影響する。本細目を通じて、学生は抽出操作の最終段階が評価実験の信頼性を支えていることを理解するところまで。
② 本細目では、次の工程で実施する抗菌試験の原理を理解し、アッセイに必要な準備を行う。ペーパーディスク法は、培地上に生育させた検定菌に対して、培養液抽出物を含ませたディスクを配置し、拡散した成分による生育阻害の有無を評価する方法である。本細目では、阻止円が形成される仕組みや、拡散性・濃度・培地条件が結果に影響する点を整理する。あわせて、ディスクの材質、抽出物の添加量、配置間隔、対照(溶媒のみディスク)の設定など、実験条件を統一する重要性を確認する。実習では、ペーパーディスクの滅菌、抽出物の分注準備、検定菌プレートの状態確認を行い、次のアッセイが正確に実施できるよう体制を整える。本細目を通じて、学生は抗菌試験を「結果を見る実験」ではなく、「条件を設計して評価する実験」として理解するところまで。
③ 本細目では、準備した検定菌培地と培養液抽出物を用いて、抗菌試験のアッセイを実施する。抽出物を含ませたペーパーディスクを検定菌培地上に配置し、一定条件下で培養することで、阻止円の形成を観察する。配置時にはディスク同士の間隔や培地表面への密着性に注意し、結果の再現性を確保することが重要である。培養後は、阻止円の有無や大きさを観察し、抽出物が検定菌の生育に与えた影響を評価する。本細目では、活性の強弱を単純に比較するだけでなく、対照区との違いから抗菌効果の有無を判断する視点を重視する。これにより、学生は放線菌培養液抽出物が示す生物活性を実験的に確認し、有用微生物探索における抗菌試験の意義を実感的に理解するところまで。
キーワード ① 生物活性測定(阻止円、抗菌活性、視覚評価) ② 被検菌(グラム陽性、グラム陰性、真菌) ③ 遠心分離(画分回収、上清、操作精度) ④ ペーパーディスク法(アッセイ、検定菌、阻止円) ⑤ 測定評価(直径測定、定量化、比較)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
 今回の授業では、放線菌培養液抽出物を回収し、ペーパーディスク法による抗菌活性試験を実施した。復習ではまず、遠心分離によって回収した画分が、どのような成分を含む試料であったかを整理したい。沈殿を巻き上げずに上清を回収する操作の正確さが、後のアッセイ結果に影響する点を再確認する。次に、ペーパーディスク法では、抽出物を含ませたディスクと溶媒のみの対照ディスクを比較することで、抗菌効果の有無を判断した。阻止円の形成は、抽出物中に生物活性物質が含まれている可能性を示すが、その大きさや形は拡散性や濃度にも左右されるため、単純な比較ではなく条件との関係から解釈する必要がある。また、検定菌の種類によって反応が異なる場合があることも重要な観察点である。今回の実習を通じて、放線菌研究では「活性が出たかどうか」だけでなく、なぜその結果になったのかを考察する姿勢が不可欠であることを理解したはずである。本コマは、分離から培養、抽出へと積み重ねてきた工程の成果を可視化する重要な段階であり、次回の総括・発表に向けて結果と考察を整理しておきたい。

[次回授業の予習]
次回は、放線菌を対象としてこれまで行ってきた一連の実験(分離・純化・保存・生産培養・抽出・抗菌試験)を総合的に整理し、実験結果を一つの研究ストーリーとして再構成する。予習ではまず、各回の実習が「独立した作業」ではなく、相互に強く結びついた工程であったことを意識することが重要である。例えば、サンプル処理や分離条件の違いが、最終的な抗菌活性の有無に影響していた可能性がある。本コマでは、結果そのものだけでなく、「どの操作がどの結果につながったのか」という因果関係を整理することが求められる。そのため、抗菌試験の結果、分離・純化の成否、生産培養の条件などを事前に見直し、どの工程が鍵となったかを考えておくと理解が深まる。また、結果にばらつきが生じた場合、それを失敗と捉えるのではなく、改良点や再現性の観点から考察する姿勢が重要である。予習の目的は、本コマを単なる「まとめの回」ではなく、放線菌研究の流れを自分の言葉で説明できるようにするための整理・考察の場として位置付け、積極的に振り返りに臨む準備を整えることである。

29 総合実習:これまでの実験結果の整理(総括編) 科目の中での位置付け 本コマは、放線菌を中心とした一連の実験(分離・純化・保存・生産培養・抽出・抗菌試験)を総合的に振り返り、個々の実験結果を一つの研究ストーリーとして整理する総括的な位置付けにある。これまでの実習では、工程ごとに操作や観察を行ってきたが、本コマではそれらを再構成し、「どの操作がどの結果につながったのか」を因果関係として理解することを重視する。
また、本コマは単なる結果の確認ではなく、実験条件の違いや操作の精度が結果に与えた影響を考察し、再現性や改良点を見出す力を養う場でもある。放線菌研究においては、最終的な抗菌活性の有無だけでなく、そこに至る過程の妥当性が重要であり、その視点を整理することで、次の発表や応用的学習へとつなげる。
放線菌実習ユニットの知識・技術・思考を統合する最終整理回として、科目全体の学習成果を定着させる役割を担っている。(難易度:★★ 技術的応用)

1.抗菌活性の結果とまと
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)乙黒美彩・中島琢自・宮道慎二(著):生物工学会誌 第90巻 第8号 493–498.2012
3)上野芳夫・大村智(監)微生物薬品化学(南江堂),化学療法剤とその作用,144-166, 2007

2.放線菌の分離・純化・保存のまとめ
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)DOJINDOホームページ(https://dojindo.co.jp/products/contents/bacterial_lp.html)

3.生産培養と培養液抽出物の作製のまとめ
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)NITEホームページ(https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/support/jikken.html)
コマ主題細目 ① 抗菌活性の結果とまとめ ② 放線菌の分離・純化・保存のまとめ ③ 生産培養と培養液抽出物の作製のまとめ
細目レベル ① 本細目では、ペーパーディスク法によって得られた抗菌試験の結果を整理し、放線菌培養液抽出物が示した生物活性をまとめる。阻止円の有無や大きさを比較し、どの菌株・条件で活性が確認されたかを一覧化することで、結果を視覚的に把握する。また、陰性対照や溶媒対照との比較を通じて、観察された阻止効果が抽出物由来であるかを検討する。本細目では、結果を単に「出た・出なかった」で終わらせず、培養条件や抽出工程との関連を考察することを重視する。これにより、抗菌活性評価が実験全体の最終判断材料であることを理解し、結果の解釈力を養うことを理解するところまで。
② 本細目では、環境サンプルから放線菌を分離し、純化・保存に至るまでの工程を振り返る。サンプル処理、選択培地の使用、コロニー選抜、再純化、保存操作といった一連の流れを整理し、どの工程が特に重要であったかを確認する。また、分離がうまくいかなかった場合の原因や、純化の難しさについても振り返り、改善点を考える。本細目を通じて、学生は「信頼できる菌株を得るためには多段階の判断と確認が必要である」ことを理解し、微生物研究における分離・純化の意義を再認識することを理解するところまで。
③ 本細目では、確立した放線菌株を用いたシード培養、生産培養、培養液抽出物作製の工程を整理する。培地組成や培養条件が代謝物産生に与えた影響を振り返り、なぜ段階的な培養が必要であったのかを理解する。また、抽出操作の目的や注意点を再確認し、培養結果がどのように抗菌試験へとつながったかを明確にする。本細目を通じて、学生は基礎的な培養操作が応用的な活性評価へと発展する流れを俯瞰し、放線菌研究の全体像を把握するところまで。
キーワード ① 抗菌活性結果(阻止円、活性比較、対照) ② 放線菌分離(選択培地、純化工程、保存) ③ 培養プロセス(シード培養、生産培養、条件制御) ④ 抽出物作製(培養上清、有機溶媒、前処理) ⑤ 結果整理(因果関係、再現性、改善点)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、放線菌実習ユニット全体を振り返り、分離から抗菌活性評価に至るまでの結果を総合的に整理した。復習ではまず、抗菌試験の結果を中心に、どの菌株・条件で阻止円が確認されたかを整理し、その結果が培養条件や抽出工程とどのように関係していたかを考察したい。次に、放線菌の分離・純化・保存の過程を振り返り、どの工程が特に重要であったか、また問題が生じた場合にどのような改善が可能であったかを整理することが重要である。純化や再純化、保存確認といった工程は、信頼できる菌株を確立するために不可欠であり、その積み重ねが最終結果の信頼性を支えていた。さらに、シード培養や生産培養、抽出物作製の流れを整理することで、基礎的な培養操作がどのように応用的な活性評価へとつながったかを俯瞰できたはずである。本コマを通じて、放線菌研究では結果の良し悪しだけでなく、そこに至る過程を論理的に説明できることが重要であると理解できた。今回の整理をもとに、次の発表や応用的学習へとつなげていきたい。

[次回授業の予習]
次回は、本実習科目の最終回として、これまで行ってきた微生物実験の成果を整理し、他者に伝える力を養う回である。予習ではまず、分離・培養・純化・保存・生産培養・抽出・抗菌試験といった各工程が、どのようにつながって一つの研究ストーリーを形成していたかを振り返っておくことが重要である。特に、放線菌培養液抽出物の抗菌活性評価は、実験全体の結論に相当する部分であり、どの菌株がどの条件で活性を示したのかを整理しておく必要がある。また、結果そのものだけでなく、「なぜその結果になったのか」を説明するために、培養条件や抽出工程、操作上の工夫や課題を思い出しておくと、考察が深まる。発表資料を作成する際には、背景・目的・方法・結果・考察という基本構成を意識し、実験の流れが初めて聞く人にも理解できるように情報を取捨選択することが求められる。予習の目的は、本コマを単なる発表の場ではなく、自分たちの実験を研究としてまとめ直す最終工程として捉え、整理と発信の準備を整えることである。

30 まとめとプレゼンテーション(総括編) 科目の中での位置付け 本コマは、本実習科目全体の最終回として、これまでに行ってきた微生物実験の成果を整理し、他者に伝える力を養う総括的な位置付けにある。培養・分離・純化・保存・生産培養・抽出・抗菌試験といった一連の操作は、単独では完結せず、結果をまとめ、解釈し、共有することで初めて学習として定着する。本コマでは、放線菌培養液抽出物の分析結果と生物活性評価を軸に、実験全体を一つの研究ストーリーとして再構成する。
また、ポスターやスライドを用いた発表を通じて、実験結果を論理的かつ簡潔に説明する力を身につけることを目的とする。これは、研究者や技術者として不可欠な科学的コミュニケーション能力の基礎となる。したがって主題30は、技術習得の最終段階であると同時に、微生物実験を「学び」から「発信」へと昇華させる重要な締めくくりのコマである。(難易度:★★★ 技術的応用)

1.培養液抽出物の分析と生物活性評価のまとめ
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)DOJINDOホームページ(https://dojindo.co.jp/products/contents/bacterial_lp.html)
3)NITEホームページ(https://www.nite.go.jp/nbrc/cultures/support/jikken.html)

2.実験データの整理と発表資料(ポスター・スライド)の作成
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)学会運営ジャーナルホームページ(https://www.soubun.com/journal/%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E7%99%BA%E8%A1%A8%E3%83%9D%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BB%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E7%94%A8%E3%83%9D%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%81%AE%E4%BD%9C%E3%82%8A%E6%96%B9/)

3.ショートプレゼンテーションを通じた学習成果の共有と振り返り
1)解説教材「コマ用オリジナル資料」
2)ルートテックホームページ,プレゼンテーションのコツ
(https://www.seraku.co.jp/tectec-note/industry/presentation_tips/)
コマ主題細目 ① 培養液抽出物の分析と生物活性評価のまとめ ② 実験データの整理と発表資料(ポスター・スライド)の作成 ③ ショートプレゼンテーションを通じた学習成果の共有と振り返り
細目レベル ① 本細目では、放線菌培養液から得られた抽出物の分析結果および抗菌試験の結果を総合的に整理する。ペーパーディスク法によって得られた阻止円の有無や大きさを一覧化し、どの菌株がどの程度の生物活性を示したかを比較する。また、陰性対照や溶媒対照との比較を通じて、観察された活性が抽出物由来であるかを再確認する。本細目では、結果の数値や写真を単に並べるのではなく、培養条件や抽出工程との関係を踏まえて解釈することを重視する。これにより、学生は生物活性評価が実験全体の「結論」に相当することを理解し、結果を科学的にまとめる力を養うところまで。
② 本細目では、これまでに得られた実験データを整理し、発表資料を作成する。発表資料では、背景、目的、方法、結果、考察という基本構成を意識し、実験の流れと成果が第三者にも理解できるよう工夫する。写真や図表を効果的に用い、情報量を絞って要点を伝えることが重要である。本細目を通じて、学生は「実験をしたこと」と「実験を説明できること」は別であることを理解し、科学的情報を整理・編集する力を身につける。これは、今後のレポート作成や研究発表の基礎となる重要な技能であることを理解するところまで。
③ 本細目では、作成した発表資料を用いてショートプレゼンテーションを行い、班ごとに学習成果を共有する。限られた時間の中で要点を伝えることで、論理的に話す力や説明力を養う。また、他班の発表を聞くことで、自分たちとは異なる結果や考察に触れ、微生物実験の多様性や再現性の重要性を実感する。質疑応答や意見交換を通じて、自らの理解を振り返り、実験全体で何を学んだのかを言語化する。本細目は、知識と経験を内省的に整理し、次の学習や研究活動へとつなげるための重要な振り返りの場となることを理解するところまで。
キーワード ① 生物活性評価(抗菌試験、阻止円、結果比較) ② データ整理(図表化、要点抽出、論理構成) ③ 発表資料(ポスター、スライド、視覚表現) ④ プレゼンテーション(要点説明、時間管理、伝達力) ⑤ 学習成果(振り返り、共有、次への課題)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業時間内に、LMS上において当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 [今回授業の復習]
今回の授業では、放線菌実習全体の結果を整理し、ポスターやスライドを用いたショートプレゼンテーションを通じて学習成果を共有した。復習ではまず、自分たちの発表が実験の流れを論理的に説明できていたかを振り返りたい。抗菌試験の結果を中心に、どの工程が結果に影響したのかを因果関係として説明できたかが重要なポイントである。また、限られた時間の中で要点を伝える難しさや、図表・写真の使い方によって理解度が大きく変わることを実感したはずである。さらに、他班の発表を通じて、同じ実習条件であっても結果に違いが生じること、そしてその違いをどう解釈するかが研究では重要であることを学んだ。質疑応答では、自分では気づかなかった視点や改善点が示され、実験結果を多角的に見る重要性を再認識できた。本コマを通じて、微生物実験は「操作して終わり」ではなく、結果を整理し、説明し、共有することで初めて学習として完結することを理解したはずである。この経験を、今後のレポート作成や研究活動、実験発表へとつなげていきたい。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
1.微生物実験の基礎 微生物が自然界で果たす役割と、実験室で安全に扱うための基本操作について400字以上で説明できる。基礎水準では、微生物が分解者として物質循環を支えていることと、白衣着用・手洗いなどの基本的安全行動を説明できる。中度水準では、無菌操作の目的や、器具(シャーレ・ピペット・白金線など)の正しい扱い方を説明できる。高度水準では、安全行動や器具操作が、実験の成功・失敗やデータの信頼性にどのように影響するかを具体例とともに論じることができる。(難易度:★ やさしい) 分解者、無菌操作、安全行動、実験器具 10 第1回〜第4回
2.培養技術の基礎 微生物を培養・観察・識別するための基礎技術について400字以上で説明できる。基礎水準では、寒天培地と液体培地の違い、継代培養の目的、コロニー観察や染色の基本的意義を説明できる。中度水準では、培養条件や操作の違いがコロニー形態や染色結果に与える影響を説明できる。高度水準では、培養・観察・染色を一連の技術として捉え、微生物の性質理解にどのようにつながるかを体系的に論じることができる。(難易度:★ やさしい) 培地作製、継代培養、コロニー、染色 20 第5回〜第10回
3.麹菌の取り扱いと保存 麹菌の特徴と取り扱い方法、および応用との関わりについて400字以上で説明できる。基礎水準では、麹菌が真菌であることと、培養・取り扱い時の基本的注意点を説明できる。中度水準では、培地条件や培養環境が麹菌の生育や形態に与える影響を説明できる。高度水準では、麹菌の培養・保存技術を食品発酵や産業利用と結び付け、実験操作の意味を踏まえて論じることができる。(難易度:★★ 普通) 麹菌、真菌培養、保存、安全管理 20 第11回〜第14回
4.環境微生物の分離と応用実験 境中の微生物を分離・保存し、その意義を400字以上で説明できる。基礎水準では、環境中には多様な微生物が存在することと、分離操作の基本的考え方を説明できる。中度水準では、希釈・培養・コロニー選択によって放線菌を分離する原理を説明できる。高度水準では、環境微生物の分離が新規有用微生物の探索や応用研究につながる意義を、実験結果と結び付けて論じることができる。(難易度:★★ 普通) 環境微生物、放線菌、分離、純粋培養 30 第15回〜第23回
5.生産培養と生物活性 微生物による生産培養と生物活性評価について400字以上で説明できる。基礎水準では、生産培養と通常培養の違いを説明できる。中度水準では、培養条件や抽出操作が得られる試料の性質に影響することを説明できる。高度水準では、微生物が生産する物質の活性評価を通して、微生物利用の可能性と限界を考察できる。(難易度:★★★ 難しい) 生産培養、生物活性、抽出、評価 20 第24回〜第28回
6.実験の統合 実験全体を振り返り、研究としてまとめる力を400字以上で示すことができる。基礎水準では、実験内容と結果を時系列で整理して記述できる。中度水準では、結果の意味を考察し、条件や操作との関係を説明できる。高度水準では、研究計画の妥当性、結果の解釈、今後の改良点を含めて、科学的に一貫したまとめを行うことができる。(難易度:★★★ 難しい) 研究計画、データ整理、考察、発表 20 第29回〜第30回
評価方法 期末試験を実施します。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 決まった教科書は使用しません。適宜オリジナル資料とスライドを使用します。なお,参考書は下記を勧めます。
参考文献 中村聡/中島春紫/伊藤政博/道久則之/八波利恵・著, 新版 ビギナーのための微生物実験ラボガイド(講談社)2019年, 2970円
実験・実習・教材費 実験あり・実習費15,000円