区分 基礎科目-人間と生活の理解
ディプロマ・ポリシーとの関係
実践能力 倫理観 専門性探求
地域社会貢献 グローバル性
カリキュラム・ポリシーとの関係
豊かな人間性 広い視野 知識・技術
判断力 探求心
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
人間と生活を理解する科目として、児童期、青年期を生きるライフステージの質を考え、人間生活について考える。
科目の目的
教育心理学の諸理論について、単に知識を習得するだけでなく、学校教育において活かす豊かな発想ができることをめざす。そのために、幼児、児童及び生徒の心身の発達の過程及び特徴について理解し、幼児、児童及び生徒の学習に関する基礎的知識を身に付け、発達を踏まえた学習を支える指導について基礎的な考え方について理解できる。さらには、基礎的な知識を基に実際の教育場面において、自ら調べることによりさらなる知識を得ようとする態度を培う。
到達目標
・幼児、児童及び生徒の心身の発達の過程及び特徴について理解できる。
・幼児、児童及び生徒の学習に関する基礎的知識を身に付け、発達を踏まえた学習を支える指導について基礎的な考え方について理解できる。

科目の概要
教育心理学の研究は20世紀になってから盛んになってきた。当初は心理学の知見や技術を教育に応用しようとしたものであった。しかし、教育現象はそれ自体、独自の現象であり、単純に心理学を教育の改善に応用するのではなく、十分に深く教育の現実に根ざした独自科学としての理論や実証研究が必要であると考えられるようになってきた。これまでは、教育心理学は、教育に関連する諸事情について心理学的に研究し教育の効果を高めるのに役立つような心理学知見と心理的技術を提供しようとする学問であると定義されていた。 今日では、教育心理学は、教育現象を扱う独自の理論、研究方法、技術を持つ心理学の分野として広く受け入れられるようになってきている。近年は、教育現場に実際に役立つことを重要視し、教育実践の場に身を置き、現実場面の実践を直接の対象とすると言う研究が盛んになってきている。研究領域においては「発達」「性格」「社会」「教授・学習」「測定・評価」「臨床」「障害」の領域に整理しているが、本科目においては、これらの領域に加え、不登校、いじめ問題を心理学的視点から取り上げ、学校教育に応用できる心理学の基本概念を学ぶ。
科目のキーワード
学習、記憶、知能・個人差、動機づけ、教授モデル、発達、認知、社会性、障害、不適応、教育評価
授業の展開方法
教育現場の経験から教育心理をどのように役立てたか、あるいは、経験したエピソードを交えて各コマにおいて言及していく。授業の提示では、パワーポイントを使用し、必要に応じて視聴覚教材を取り入れて進めていく。配布資料は、基本的には書き込み式のノートである。教科書も使用して補足説明をしていくので余白や欄外にメモをしてもらいたい。また、適宜、心理劇や構成的グループエンカウンターなどのアクティビティや、心理テスト、教育評価での作問などをして、その時に感じた心の動きをシェアリングする展開もある。
オフィス・アワー
(準備中)
科目コード BC04
学年・期 1年・前期
科目名 教育心理学
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択(養護教諭は必修)
学習時間 【授業】15h 【予習・復習】30h
前提とする科目 対人関係の基礎をなすもので、該当しない
展開科目 全ての看護学へ展開する
関連資格 養護教諭
担当教員名 宮田延実
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 教育心理学とは 科目の中での位置付け 教育心理学とは、単に心理学を教育に生かすといったものではない。教育現象はそれ自体、独自の現象であり、単なる知識だけでなく、学校教育に応用できる心理学の基本概念を学び、現場の事象を心理学的に捉え、児童生徒の理解や対応に活かす力を身につけることが本科目における教育心理学の目的である。ある調査によると、熟練した教師ほど、教育心理学によく学び、その知見活用しているという結果がある。熟練教師は、単純に心理学を教育の改善に応用するだけではなく、自身が十分に深く教育の現実に根ざした実践をしていることが推察される。本コマでは第1回目であるので、科目の鍵概念である、発達、動機づけ、学習、知的能力、パーソナリティ、社会性、不適応、障害等、教育評価や不登校、いじめ問題などの学級集団等の重要なアウトラインを理解する。第2回以降のコマによって詳細に学び、自分自身の振返り、将来の教師像のイメージ創り等、自分の内面の豊かさに結び付くことを期待する。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p1~2
②『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p2~8
③『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p2
コマ主題細目 ① 教育心理学とは ② 教育心理学の範囲 ③ 教育心理学を学ぶ理由
細目レベル ① 教育心理学とは、倉石(1978)によると、教育に関する心理学的な事実や法則を明らかにし、教育の営みを効果的に推進するために役立つような知見や技術を提供するものとしている。東(1989)は、人の精神について、それが文化・環境との相互作用の中で発達と学習によって形成されるという観点から解明を進める学問であるとする。また、久世(1988)によると、教育心理学の基本的立場は、教育課程における教育的関係を研究する心理学であること、全体としての人間を生涯発達という視点からとらえる実践的性格を担った心理学であることとしている。さまざまな視点から教育心理学を定義しているが、市川(2003)が述べているように、ここでは、最大公約数的な定義とする、教育という事象を理論的・実践的に明らかにし、教育に資するための学問であることを理解する。
② 教育心理学は、学校だけでなく子どもを教育するさまざまな場面で活用されてきた。これまで教育心理学は4領域とされてきたが、近年では集団・人間関係や臨床・障害などに関する研究領域も重要視されている。学校では、児童生徒の理解や授業の進め方において、教育心理学を応用したことがあるとする教員は若手よりベテランが多い。このように、教育に関わる現象のなかに問題を求め、倫理的および実践的研究を推進することを通じることにより、教師は教育の目的や内容の妥当性を検討するようになっていく。そして、より優れた教育を実践するための視点を教育心理学の知見からヒントに見いだし実践していくのである。ここでは、そのことを理解する。
③ 問題解決に向けて、教育心理学の理論を学ぶことで多様な視点を得ることができることが最大の理由である。長年の教師の経験則やカンでは通用しないことが多い。例えば「学習」には最適な時期がある。つまり、適切な教育を行うためには「最適な時期」それは、「発達」を知る必要がある。そこで、本講義で学ぶことや重要事項は次のとおりである。それは、生涯発達、認知・感情の発達、親子関係、社会性の発達、学習の過程、学習意欲、記憶・知能、学校の心理学、教師-児童・生徒関係、児童生徒の理解、自己意識、適応と不適応、発達障害と学習障害、教育評価、発達と教育の支援である。ここでは、現職の教員が活用する理由を理解する。
キーワード ① 教育 ② 心理学 ③ 学校 ④ 問題解決 ⑤ 教師
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第2回のシラバスをよく読んでおくこと。特に、学習の過程、条件づけ、観察学習における教科書9ページの該当箇所である「第2章学習への行動論的アプローチ」をよく読み、古典的条件づけ、オペラント条件付け、観察学習(モデリング)についての大体の知識を入れておく。また、心理学者の名前については、適宜調べておくこと。
2 学習のメカニズム 科目の中での位置付け 学習とは、皆さんが学校で学んできた「学習」のことだけを指すではない。教育心理学では、学習については、「経験によって生じる行動可能性の比較的永続的な変化」と定義される。つまり、行動の変化すべてを指す。行動の変化をもたらす刺激や条件、要因はさまざまあるが、本コマでは、学習の過程における2つの基礎的な理論となる条件付けについて学ぶ。条件付けの中でも、直接的な経験によるものをオペラント反応、あるいは、リスポンデント反応という。他方、自発的、随意的な反応のことオペラント反応という。私たちの行動の多くがオペラント反応である。これらの条件付け理論は、人間だけでなく動物も当てはまることが確かめられている。条件付け理論の組み合わせによって、動物の調教に用いられたり、今では認知行動療法として精神医療の現場で応用されたりするようになった。条件付けとは異なるが、他者の代理的経験の観察だけでも行動に変化をもたらす観察学習についても学ぶ。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p9~15
②『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p11~12
③『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p14~15
コマ主題細目 ① 古典的条件付け ② オペラント条件付け ③ 観察学習
細目レベル ① 古典古典的条件づけは、レスポンデント条件づけとも言う。古典的条件付けの実験を行った学者といえばパブロフである。犬を使った実験は倫理的な問題はあるが、その理論は、通常、無条件刺激と無条件反応は1対1で対応するため、別の無条件刺激によって誘発されることはないが、後天的にそれが起こるように条件付けることができるというものである。学習の過程で説明すると、もし一度間違った学習をしてしまっても、同時に提示することをやめれば消去することが可能である。テキストに載っているアルバート君の例では、恐怖反応の除去も同様だが、単純ではない。この実験から、PTSD(心的外傷後ストレス障害)は古典的条件付けによるものである。ここでは、古典的条件付けのメカニズムを理解する。

② オペラント反応とは、自発的、随意的な反応のことである。私たちの行動の多くがオペラント反応である。オペラント条件付けといえば、スキナーの実験を思い浮かべることができる。オペラント条件付けの例として、レバーを押してエサ(賞)がもらえればレバーを押す回数が増加する。これを正の強化子とも言う。しかし、レバーを押して電流が流れれば(罰)レバーを押さなくなる。これを負の強化子とも言う。学校現場で最もよく起こるオペラント条件づけの例は次の例である。テストを行って、○がもらえれば以降の類似問題も同じように解けばいいとわかる。×をもらってしまうと、以降の類似問題で同じように解く確率は減る。ここでは、学校現場で活用できる他のオペラント反応についても考える。オペラント条件付けのメカニズム
③ 観察学習とは、他者の行動をお手本(モデル)として見て学ぶことである。モデルの観察によって代理的に学習を行うのである。人は多くのことを観察学習によって間接的に学んでいる。つまり、モデルの観察によって模擬体験をする。観察学習と言えば社会心理学者のバンデューラが有名である。例えば、いたずらをした、お兄ちゃんがお母さんから怒られている。それを見た妹は同じような失敗はしない。実験例として、モデルによる学習の有名な実験がある。モデルが暴力的な行動をする映像を子どもに見せる。すると、そのモデルがほめられた映像を見た子どもは、その後の模範的行動が増加する。ここでは、実験結果からも、教育的には、よい手本(モデル)を準備することが必要であることを理解する。
キーワード ① 条件反射 ② 強化子 ③ モデリング ④ パブロフ ⑤ スキナー
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第3回のシラバスをよく読んでおくこと。特に、記憶・知能、記憶の過程、忘却、知能検査に関するのは、教科書の20ページの「情報処理論アプローチ」であるので、よく読み、大体の知識を入れておくこと。また、心理学者の名前については、適宜調べておくこと。
3 記憶のメカニズム 科目の中での位置付け 記憶とは、過去の経験を貯蔵あるいは保持して、何らかの形でそれを再現し、現在の経験や行動に影響を与えるはたらきである。人間の脳の働きによるものであるが、コンピュータの機能のように考えると理解しやすい。また、学習する能力、学習によって獲得された知識および技能を新しい場面で利用する能力であり、また獲得された知識によって選択的に適応をする能力である。知能の考え方にはさまざまな考え方や定義がある。ここでは比較的新しく、有名な説を3つ紹介する。その知能を測定する方法として知能検査が開発されてきた。知能は目に見えるものでもないし、物差しで測れるものでもない。知能の実態を明らかにしようとする場合は、知能検査を使用するのが一般的である。その知能を初めて測定しようとしたのはビネーである。その後、知能はIQ(知能指数)という概念を使ってあらわされるようになった。児童相談所などで手帳の判定に使われているのはビネー式。日本では翻訳され、田中ビネー式・鈴木ビネー式として一般化されている。このコマでは、主に脳の働きについて学ぶ。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p20~23
②『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p31
③『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p32~35
コマ主題細目 ① 記憶 ② 知能 ③ 知能検査
細目レベル ① 記憶とは、過去の経験を貯蔵あるいは保持して、何らかの形でそれを再現し、現在の経験や行動に影響を与えるはたらきである。単に覚えることを指すものではない。記銘(覚える)し、そして、それを保持(貯蔵)し、想起(思い出す)するといった一連の過程すべてを記憶ということを理解したい。人間の脳の働きによるものであるが、コンピュータの機能のように考えると理解しやすい。記憶の種類もさまざまであり、宣言的記憶とは、意味記憶とエピソード記憶を合わせたものである。意味記憶は、一般的知識の記憶で、エピソード記憶は、出来事の記憶である。手続き的記憶は手順や段取りの記憶で、展望的記憶は、未来の記憶、つまり、頭の予定表に書き込んだ記憶である。ここでは、これらの記憶のメカニズムに加えて、忘却やその原因についても理解する。
② 学習する能力、学習によって獲得された知識および技能を新しい場面で利用する能力であり、また獲得された知識によって選択的に適応をする能力である。ウェクスラーは、次の様に定義している。目的的に行動し、合理的に思考し、効果的に環境を処理する総合的・全体的な能力である。しかし、知能の考え方にはさまざまな考え方がある。ここでは比較的新しく、有名な説を3つ紹介する。知能の構造として、スタインバーグは、知能を分析的、創造的、実用的側面からとらえるべきとして、知能の鼎立理論、コンポーネント理論、経験理論、文脈理論を提唱した。キャッテルは、知能には流動性知能と結晶性知能の2つがあると主張した。ガードナーは、多重知能理論を提唱している。ここでは、様々な知能の定義があることを理解する。
③ 知能は目に見えるものでもないし、物差しで測れるものでもない。知能の実態を明らかにしようとする場合は、知能検査を使用するのが一般的である。その知能を初めて測定しようとしたのはビネーである。その後知能はIQ(知能指数)という概念を使ってあらわされるようになった。知能指数の考え方としては、IQ=精神年齢(MA)/歴年齢(CA)×100
として算出する。ここでの精神年齢は、テストの結果から算出された年齢で、歴年齢は実際の年齢である。知能検査の種類についても知っておきたい。児童相談所などで手帳の判定に使われているのはビネー式。日本では翻訳され、田中ビネー式・鈴木ビネー式として一般化されている。ビネー式よりも細かい結果が表されるのが、ウェクスラー式である。年齢ごとに検査道具が違う。ここでは、知能の表し方について理解する。

キーワード ① 記憶 ② 忘却 ③ 知能 ④ 記憶の過程 ⑤ 知能検査
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第4回のシラバスをよく読んでおくこと。個人差に関するのは、教科書の27ページの「パーソナリティ」の箇所である。よく読み、大体の知識を入れておくこと。現在も使用されている知能テストについて調べ、ビネー、ウェクスラーの業績についても適宜調べておくこと。
4 個人差:児童生徒の理解-パーソナリティ理論とその測定 科目の中での位置付け 性格という「もの」は存在しない。何らかのかたちで行動に反映された時、初めて観察可能になる。例えば、困っている人を助けてあげる行為は、やさしい性格。いつもせかせかと動いている行動は、せっかちな性格。動物にも性格は存在し、大きな個体ほど個体に差が出る。また、人は年齢の増加とともに個体差が大きくなる。心理学で「性格」は様々に定義されているが、人の行動、感じ方、考え方には、ある程度の一貫性がある。このような個人内で一貫性する特性をここではパーソナリティと呼ぶことにする。類似する言葉に、「性格」「気質」「キャラクター」があるが、心理学ではパーソナリティをよく使う。パーソナリティの測定方法として質問紙法があるが、ここでは取り扱わない。それよりもその測定方法の基になる理論について理解する。その理論は、類型論と特性論である。また、パーソナリティの語源はラテン語のペルソナ(persona)で、これは「仮面」の意味であるが、社会的役割、外見的な自分という意味が含まれている。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p27~29
②配付資料
③配付資料
コマ主題細目 ① 性格とは ② 類型論 ③ 特性論
細目レベル ① 性格とは、オルポートの定義のよると、個人のうちにあって、その個人に特徴的な、行動や思考を、決定する、精神身体的、体系の、力動的組織であるとする。特徴的とは、個人に固有であり、他の人と区別できる独特な特徴を持ち合わせていることである。行動や思考とは、個人がしめす、あらゆる行動全般をつかさどっていることである。決定するとは、行動の決定主体であり、動機づけたり、方向づけたりするものであるということ。精神身体的とは、パーソナリティの組織は、心とからだと両方の機能が絡み合った統一体であり、生理的基礎を持っているということ。体系とは、相互に作用しあう要素の複合体であり、行動のエネルギーを提供しつづけるものである。力動的組織とは、パーソナリティは静的なものではない。動的に活動を方向づける機能と組織化する機能とをもっていることである。これらの定義を理解する。
② 一定の基準で人をタイプにわけて記述する方法を類型論という。ここでは、クレッチマーとユングの唱えた類型論を扱う。クレッチマーは、体格と性格との関連に注目し、分裂性気質の体型は細長型、躁うつ性気質の体型は肥満型、粘着性気質の体型は闘士型であるとした。他方、ユングは、人を内向型か外向型かの2つのタイプに分類した。内向型は、関心や興味が自分の内面や主観に向いている人とした。また、外向型は、自分以外の客観的な物事や他者に関心が向いている人とした。これらの類型論は、一人一人がもつ多様なパーソナリティの全体像を日常的な場面で直観的に把握するためにはとても便利であるが、多様なパーソナリティを少数の類型に当てはめてしまうと、持っていない特徴でもその人が持っていると決めつけてしまうことにはならないかという課題がある。
③ 類型論の問題点を克服しているのが特性論である。すべての人に共通する特性をどの程度持つかの違いが一人ひとりのパーソナリティの特徴となってあらわれるという考え方である。ここでは、オルポートとキャッテル、ギルフォードの理論を取り上げる。オルポートは、14種類の特性を抽出した。他方、キャッテルは35種類の表面特性と12種類の根源特性から構成されていると考えた。根源特性をもとに16PFという質問紙検査を作成した。ギルフォードは13特性を想定した。この質問紙は、矢田部・ギルフォード性格検査に発展している。特性論の問題点は、研究者によって、見いだされる特性や因子が必ずしも一致しない。最近では5因子に収束し、「ビックファイブ」が作られていることを押さえる。
キーワード ① 類型論 ② 特性論 ③ クレッチマー ④ オルポート ⑤ ビッグ・ファイブ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。特に、古典的な類型論者のクレッチマー、ユングについてはよく覚えておくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第5回のシラバスをよく読んでおくこと。学習意欲、 動機づけ、自己実現に関するのは、教科書の47ページの「動機づけ」の箇所である。よく読み、大体の知識を入れておくこと。自己実現はマズロー以外も様々に使用している用語であるのでインターネット等で調べておくとよい。
5 学習意欲、 動機づけ、自己実現 科目の中での位置付け 学習意欲はやる気とも言う。学習意欲は目に見えないので、行動で推測するしかない。教育心理学では、学習意欲は動機づけの問題として扱われている。本コマでは、動機づけ、自己効力感を関係づけて扱う。学習意欲が伴う行動上のポイントは、たとえば、学校への忘れ物が多いほど学習意欲は低い、授業中に先生に質問する回数が多いほど学習意欲は高い、欠席の少ない生徒ほど学習意欲は高い、塾へ通う子どもほど学習意欲は高い、親が教育熱心なところの子どもほど学習意欲が高い、子どもの目が輝いているほど学習意欲が高いといった言説があるが果たして本当のところは疑問である。実際にやる気があるかどうかを判断するのは難しいことは覚えておかなくてはならない。言えることは、子ども全体の様子を見ていくことが必要ということである。そして、行動をある方向に向けてスタートさせ、それを目標に達するまで持続させる動機づけをいかにして高めるかといった議論もしていく。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p47~49
②『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p52~53
③配付資料
コマ主題細目 ① 動機付け ② 自己効力 ③ 自己実現
細目レベル ① 動機づけとは行動をある方向に向けてスタートさせ、それを目標に達するまで持続させる過程、作用あるいは状態のことである。この動機づけには、外発的動機づけと内発的動機づけの2種類がある。外発的動機づけとは、外的な力によって行動を引き起こそうとするものである。たとえば、報酬や罰を与える競争させるとか、持続性や注意を高めることも外発的動機づけである。協同学習も効果がある。他方、内発的動機づけとは、能動的・自発的に動機づけが高まるものである。たとえば、好奇心。「楽しいから」「好きだから」といった気持ちも該当する、教育現場では、内発的動機づけが重要視され、できれば「報酬(罰)のために」にならないようにしたい。
② 自己効力感とは、ある結果をみちびくために必要な行動をうまく実行できるという自分自身がもつ信念のことである。自己効力感が高い人は、失敗に対する不安が少なく、自分の意志で積極的に行動することができる人である。このような自己効力感を高めるためにはバンデューラは4つの方法を唱えた。まず直接経験。これは本人が成功経験を積み重ねて、自信をつけていくということである。次に代理経験。これは本人が直接成功しない場合でも、成功しているのを見るということである。同じ状況の人が頑張って成功を手にした話を聞くこともこれにあたる。そして言語による説得。「やればできる」などと励まされることである。さらに情動喚起。困難な場面でも冷静でいられる自分に気づくことである。
③ 自己実現とは、人が自分の潜在的な才能や能力のすべてを発揮し、個性を実現し、その人の最高の状態をめざそうとする傾向である。マズローは、欲求の階層物質的な欲求として、生理的欲求、安全・安定欲求がある。それをベースに所属と愛情の欲求、自己尊重(承認)の欲求、そして、自己実現の欲求が最上位の欲求として位置付けた。また、欠乏欲求とよばれるものは、自己実現欲求以外の生理的欲求、安全・安定欲求、所属と愛情の欲求、自己尊重(承認)の欲求である。欠乏欲求の上位に14の成長欲求があるとしている。つまり自己実現欲求は個人によって様々な欲求があるといえる。動機づけは、欠乏欲求を満たすことによって高められるということは重要な指摘である。
キーワード ① 動機付け ② バンデューラ ③ マズロー ④ 外発的 ⑤ 内発的
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。特に、バンデューラ、マズローは他の業績もあるので、それと関連させて覚えておくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第6回のシラバスをよく読んでおくこと。教授学習モデルに関するのは、教科書の55ページの「学習過程」の箇所である。授業では扱わない教授法もあるので、教科書をよく読んでおくこと。興味ある用語はインターネット等で調べておくとよい。
6 教授モデル 科目の中での位置付け 先生が教え、子供が学ぶ一連のプロセスを教授学習過程と呼ぶ。最近は教授・指導・支援と区別する。「教授」とは教え授けることである。教師が子供に知識や技能を注ぎ込むと言う教師主体の語感がある。そのため授業における教師と子供と言う二者関係から、指導という語が用いられるようになった。近年、学習者主体の事業間が主流となり、学習者の自発的で能動的な学習を支え、そして助けると言う意味から支援という用語が一般化した。まず、各種教授・指導・支援の方法を理解する上で、有意味―機械的、受容―発見と言う2つの軸を掛け合わせることによってできる学習の4類型を把握しておきたい。有意味とは意味を備えていると言うことである。機械的と言うのは内容を抑えず単純に方通りであることをいう。受容とは受け入れとなることからも分かるように、内部に取り入れる事ことを言う。発見とは外部に新しく見いだすことを言う。有意味受容の学習とは、学習者が既に持っている知識の仕組みに合わせて知識が取り込まれる学習のことである。有意味発見学習とは学習者が主体となって問題を取り組み、その結果として得られた知識が自らの知識となる学習である。機械的受容学習とは、与えられた内容を学習者がただ記録する暗記的な学習である。機械的発見学習とは学習者が主体となって問題解決に取り組むが、それがある程度決まった形で行われるものである。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p57~58
②『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p55~56
③『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p58
コマ主題細目 ① プログラム学修 ② 有意味受容学修 ③ 適性処遇交互作用
細目レベル ① プログラム学習はスキナーによって提唱されたオペラント条件付けの理論に基づいた個別学習指導方法である。この教材は主に次のような原理で作成されている。①スモールステップの原理。これは正解率が上がるように学習内容を小さい単位に分割する。その成功経験によりさらなる学習への意欲が高まる。②積極的反応の原理。教材を読み、空欄に当てはまる解答を考え、記入し、それを確認するという一連の流れが、学習者の積極的な取り組みにより行われるように作成する。③即時フィードバックの原理。自ら考えた回答が正答か誤答かを学習者が解答直後に確かめることができる。このことにより素早く間違いが発見され、意欲が低下しない。④自己ペースの原理。学習は個別に進むため、個人差に応じた学習速度が決められる。
② 有意味受容学習とはオースベルが提唱した学習方法である。学習者がすでに所有している認知構造の中に新しい教科内容を関連づけ、取り込むことができたとき、この学習が成立する。この方法では、先行オーガナイザーの提示が必要である。先行オーガナイザーとは既知の認知と新しい認知をつなぐ補助教材(手がかり)のことである。たとえば、アメリカ人学生に仏教を教える前に、キリスト教の概要を教える方が理解しやすい。この場合、先行オーガナイザーはキリスト教の概要である。学習者が既に持っている知識とこれから学ぶ新しい知識の獲得の関係を考えて、学習を大きく2つの次元でとらえる。受容学習/発見学習の次元と有意味学習/機械的学習という次元。この2×2から4つの学習タイプが区別される。そのうちのひとつが有意味受容学習である。
③ 学習者それぞれが持つ適性によって、学習指導の効果が変化することを適性処遇交互作用と言う。これはクロンバックにより提唱された考え方である。同一の学習内容であっても、教師が言語的なコミュニケーションを主に行う場合とOHPや教材提示装置、ビデオ、パソコンなどを用いて映像を主とした事業を行う場合がある。どちらが優れた効果をもたらすかは単純な判断ができない。スノーらの研究によると、対人的に積極的な学習者には言語的コミュケーションを主とした学習が効果的であり、対人的に消極的な学習者には映像中心の学習が効果的であることがわかった。このように子どもの適性に考慮し処遇を考えることが重要である。教師は自分の適性に合った教え方を選びやすいので気をつけなくてならない。
キーワード ① プログラム ② 個性 ③ 学習方法 ④ 発見学習 ⑤ 協同学習
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で扱っていない教授法や教育プログラムについては教科書から探して、読んでおくこと。特に、教科書の55ページの「学習過程」には様々な方法が記載されている。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第7回のシラバスをよく読んでおくこと。発達段階と発達課題に関するのは、教科書の65ページの「発達段階」「ハヴィーガーストの発達課題」の箇所である。また、90ページのエリクソンの「自我同一性の危機」の箇所をよく読み、大体の知識を入れておくこと。
7 発達段階と発達課題 科目の中での位置付け 古代において子どもは、早く大きくなって労働力の担い手となることが望まれていた。そして社会が必要とする絶対的な教育内容が子どもに押し付けられた。中世になっても基本的には変わることなく子どもは大人の小さなもの、未熟な、不完全な大人として捉えられていた。しかし、18世紀末になると、子どもを見直そうとする動きが現れた。子どもは大人へと変化する。それだけでなく大人になっても人は生涯変化し続ける。この変化が発達と呼ばれるものである。つまり、発達とは出生から死亡までの個体の心身の構造や機能に生ずる漸進的、連鎖的変化を表す概念である。本コマでは、発達の区分としての発達段階や段階ごとに社会から発達を遂げ、学習することを期待されている発達課題、そして、青年期の自我同一性の危機について取り扱う。ほとんどの受講者は、人間の自我発達にとって一生のうちで最も重要なテーマである、アイデンティティーの獲得と統合に直面していくことを認識されたい。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p65
②『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p65~60
③『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p90~91
コマ主題細目 ① 発達段階 ② 発達課題 ③ 自我同一性
細目レベル ① 発達は、個体の心身の構造や機能に生ずる漸進的・連鎖的変化ではある。その変化はある時期には早く、ある時期にはゆっくりとなされる。また、量的に変化するだけでなく、質的にも変化する。そこで、心身の構造や機能に関して、ある時期の特徴がその前後の時期と異なり、期間間の関連パタンにも違いが見られる時、これを1つの発達期として区分し、時系列的に記述することができる。これを発達期区分とか発達段階と呼ぶ。しかし、発達段階をどの機能に重点を置くか、どのような理論によっているのかで異なる。フロイトの性格形成に関する学説に基づくリビドーの発達段階を始め、ピアジェの認知発達理論、エリクソンの発達段階などがある。
② ハヴィーガーストは、発達期区分、発達段階という場合、個体の活動の側からの段階ではあるが、一定の活動の発達を要請する社会の側からいくつかの段階に分けられることに注目した。答えには各段階において社会から発達を遂げ、学習することを期待されている課題があり、これを発達課題と呼んだ。各段階の発達課題をうまく果たしていくことが次の段階での発達によって欠くべからざるものであり、それによって安定と成功がもたらされると考えた。生涯発達の視点に立ったハヴィーガーストの発達課題はテキスト66ページに掲載されているので、自分がこれまでに発達課題がクリアできているか検討されたい。今後、社会の変動、時代の変化によって課題にも変更がなされることになるであろう。
③ アイデンティティー(自我同一性)とはテキスト91ページに示されているように、青年期の自己発達のテーマである。エリクソンは、このアイデンティティーの獲得と統合こそが人間の自我発達にとって一生のうちで最も重要なテーマであると考えた。アイデンティティーとは、「自分とは何か」という問いかけに対する答えであり、アイデンティティーの感覚は、自分は他者とは異なる独自の存在であるという「斉一性」の感覚と、今でも、今も、これからもずっと自分であり続けると言う、一貫した自分らしさの感覚を維持し続ける連続性の感覚である。青年期に獲得されるアイデンティティーはそれまでの親を中心に様々な人により作られた自分に対し、自ら納得できる主体的、能動的な自分であり、社会的現実の中で他者や社会に認められる役割、職業等の「~としての自分」として定義づけられる自分である。つまりそれは他者や社会の中で自分が選んだよい自分を生きていく、自分のその存在証明とも言える。
キーワード ① 発達段階 ② 発達課題 ③ エリクソン ④ アイデンティティー ⑤ ハヴィーガースト
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第8回のシラバスをよく読んでおくこと。ここでは、乳幼児からの認知発達について扱うので、教科書の71ページの「乳幼児期の発達」の箇所をよく読んでおくこと。また、ピアジェについても人名索引で調べて読み、大体の知識を入れておくこと。
8 認知発達理論(ことばの発達・思考の発達) 科目の中での位置付け 新生児は当時の他児の泣きを聞くとつられるようにして泣くことがある(情動伝染という)。また、生後数日の新生児が舌を出したり口を開閉したりする大人の顔を見てそれを真似ることがある(新生児模倣という)。これらは、大人とのやりとりの機会を増すことにつながり、乳児が人の情動を感じ取る手がかりとなっていくと考えられる。養育者も乳児の月齢が上がると乳児の喜び等の情動表出に調子を合わせる情動調律などを行う。そして一歳前後になると子どもにとってよくわからない曖昧な状況においては、養育者等の顔色(情動表出)を見て自分の振る舞いを変えること(社会的参照という)が現れる。このように乳児は、運動の発達が未熟ではあるが、乳児は人に対して反応するように準備されて生まれてくるのである。本コマでは、コミュニケーションの認められるものが出現する言葉の初期発達では、コミュニケーション上の機能がまず獲得され、その後、より効果的に共有できる形式である言語などが獲得される過程ついて理解する。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p79
②『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p76~78
③『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p81~84
コマ主題細目 ① 言葉の発達 ② 認知の発達 ③ 心の理論
細目レベル ① 子どもは一歳前後になると、それまでの叫びや喃語またはエコラリーとは質的に異なった「マンマ」「ブー」などと有意味語を単独に発する。この初語の出現後、しばらくはゆっくりと語彙は増加していく。この期の語は、形の上からは単語に相当するように見えるが、それが使われた時と場所によって様々な意味を含んでいると解釈できるので一語文と呼ばれる。1歳後半から2歳になると、急激な語彙の増加が見られるが、それとともに語を連結させて、「ホン ナイナイ」「コレ ダイジ」など補語+述語、主語+述語などの初歩的ながら文の構造を持った発話、二語文が現れてくる。2歳代では多語文、従属文が使えるようになり、4歳ごろまでには一応文章を構成する要素の文法体系が習得される。
② ピアジェは知ると言う働きは、生体と環境との交渉による生体の適応作業であり、既に持っている枠組みを用いて外界を自分の中に取り入れる「同化」と、同化できない時、その枠組みを外界に合わせて修正する「調節」、そしてこの同化と調節の漸進的な「均衡化」によって認知は発達すると考えた。ピアジェの認知の発達段階はテキスト77ページに詳細が掲載されている。認知の最も大きな変革は、感覚運動的知能の第6段階での、頭の中で思い浮かべる(表象する)ことができるようになることである。それ以前の感覚運動的水準では、実際に目の前にある対象に実際に働きかけることによって問題を解決していた。しかし一歳半ごろから頭の中で思い浮かべ、シュミレイトすることによって解決できるようになる。
③ 心の理論とは、自分や他人の行動を予測したり、説明したりするために使われる心の動きについての知識や原理である。マキシー課題やアンとサリーの課題を用いて子どもの心の理論の発達過程を調べる研究やなどがあるが、83ページに示されるような急激な発達変化の傾向を見いだし、心の理論を持つのは4歳ごろからであると結論づけている。しかし、健常児に比べ、ほとんどの自閉症児は間違った判断をしていた。これ以降、自閉症児は心の理論を欠くという仮説に関して多くの検討がなされた。「他者が何を見ているか」についての推測過程を調べる三山の課題についても自閉症児の困難さが認められた。反対にダウン症の子どもたちは、アンとサリーの課題は容易に解けたのである。
キーワード ① 内言と外言 ② シェマ ③ 同化 ④ 調節 ⑤ 均衡化
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第9回のシラバスをよく読んでおくこと。ここでは、社会性の発達について扱うので、教科書の87ページの「青年期の発達」の箇所を中心に関連箇所をよく読んでおくこと。また、コールバーグについても人名索引で調べて読み、大体の知識を入れておくこと。
9 社会性の発達 科目の中での位置付け 私たちの周りには守ることが期待されているさまざまな約束事がある。しかし、近年、公共の場において、子どもによる迷惑行為を目にする機会は非常に多い。駅のホームや電車内で地べたに座り込む者、駐輪場で自転車を禁止区域に平気で止める者、図書館などで周りの他者を気にせず大きな声で話し続ける者など、青少年による迷惑行為の例は枚挙にいとまがない。こうした迷惑行為の背景にあるものとして、近年子どもの規範意識の崩れが指摘されている。しかし、子どもの規範意識は特には低くなっていないと指摘する研究者もいる。子どもたちの道徳的規則はこれまで以上に守られているが、他者に迷惑を掛けなければよいとのレベルでルールを自分たちで変更しているとの指摘もある。そこで、本コマでは、規範意識の低下について、道徳性の発達の視点から探る。そして、子どもたちの道徳性の発達や子ども同士の遊びを通して社会性がどのように培われていくか理解を探める。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p87~88
②『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p90
③『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p82~85
コマ主題細目 ① 規範意識 ② 道徳性 ③ 遊びと社会的スキル
細目レベル ① チュリエルは、規範意識を「道徳領域」、「慣習領域」、「個人領域」の三つの領域からとらえた。人間の行為は、知り得た事実がどの領域に属するかによって、どのように行動するかが決定すると考えられている。道徳領域は、人として絶対に守らなければならないものであり、正義(善悪)の概念を土台に構成されている。慣習領域は、自分が所属する集団や社会によって変わる。家族・学校・会社などの集団の人間関係を調整する行動上の取り決めに基づいて構成され、食事のマナー、礼儀作法、地域のしきたりなどがある。個人領域は、自分だけに関係するもので、行動の影響が自分だけにあり、社会秩序の維持や善悪の判断には制限されない。例えば、遊びの選択、友人の選択、プライバシーに関係した行為や自分の生活に関係した行為。近年の規範意識の低下はどの領域を指しているのか議論したい。
② ピアジェの考え方は、道徳性は他律的なものから自律的なものへ変化していくと考えた。最初、道徳ルールは神様から下された掟だと理解する。行為の意図の理解もできないが、徐々に意図の理解が深まっていくとした。コールバーグは、子供の道徳発達を図り、彼は、ピアジェの考え方が土台にし、3水準6段階の発達段階を考えた。そして、道徳は慣習の上に成立するとしている。つまり、文化が違えば道徳も違うのである。しかし、慣習に違反したり背反したりするとき、道徳と慣習は区別される。また、ギリガンは道徳性の発達には、男女差があると考え、コールバーグの正義を中心とした考え方は男性的だと批判した。女性は人間関係、気配り、共感などを主要原理とする配慮と責任の道徳性を発達させると考えた。
③ 自己制御能力は自己抑制能力と自己主張能力に分かれ、3歳~4歳で自己主張・実現行動が発達し、その後は停滞するが、自己制御行動は6歳まで発達を続ける。仲間遊びの中で自己制御行動が発達していくため、仲間遊びはとても大切である。パーテンは、年齢により、遊びも発達することを指摘している。このようにして社会的スキルが自然に身についていくものであるが、近年、社会的スキルの獲得が必要な子どもたちがいる。社会的スキルとは、対人関係を円滑に運ぶために役立つスキルである。例えば、相手に話しかける、状況を判断することをうまくやる技術である。ソーシャルスキルとも言われる。これは学習可能な行動であり、もって生まれた特殊な能力ではない。佐藤は子どもにとって必要なスキルを3つ挙げている。それは、主張性スキル、社会的問題解決スキル、友情形成スキルなどである。
キーワード ① 道徳領域 ② 慣習領域 ③ 個人領域 ④ コールバーグ ⑤ 社会的スキル
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第10回のシラバスをよく読んでおくこと。ここでは、不登校について扱うので、教科書の103ページの「不登校」の箇所をよく読んでおくこと。なお、不登校者数などの最新の情報は文部科学省のホームページに掲載されているので検索するとよい。
10 不登校 科目の中での位置付け 不登校は、学校に行けない、行かない状態像でしかない。一時期、不登校したがその後の生活は充実し、心理的に安定しているならば、不登校は大きな教育問題や社会問題にする必要はない。1992年の学校不適応対策調査研究会議報告の「不登校はどの子にも起こりえる」の視点以降は、学校からの働きかけが少なくなったのか、不登校児童生徒や保護者も学校に何としてでも登校させなければならないと強迫的な混乱した状況は減少し、同時に、不登校児童生徒は適応指導教室に預ければよいといった風潮や、不登校問題について学校現場で真剣に取り組む姿勢が少なくなってきたと指摘される。不登校を経験した人が社会的に自立しているならば、不登校問題は成長の一過程の問題であり、一時期の混乱として捉えることができる。不登校を経験した約7割の人は、20歳段階で就職、就学していると報告されている。しかし、問題は約3割であっても不登校をしたことにより、その人自身に不利益がある。また、成人以降に大きな課題が残ることを検討していきたい。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p103~104
②『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p104~106
③『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p107~110
コマ主題細目 ① 不登校の定義 ② 不登校の状況 ③ 早期発見
細目レベル ① 不登校とは、何らかの心理的・情緒的・身体的、社会的な要因により、子どもが登校しない、あるいは、したくともできない状況にあることである。不登校は、人生を生きていく上で、多大な不利益が生じる。単に心の問題と捉えるのではなく、進路の問題など将来の社会的自立に向けて支援することが大切である。必要な場合には登校刺激を行うなど働き掛けや関わりが重要である。原因としては、学業不振、友人関係、教職員との信頼関係、部活動への不適応、入学・転入学・進級時の不適応の問題などが挙げられる。家庭を支援するとともに、子どもの立場にそった理解や励まし、時には注意や叱責も必要になる。体験の不足を補い、励まし援助する必要がある場合もある。
② 不登校の状況には次のような型が見られる。①学校生活上の影響の型。いやがらせをする子どもの存在や教職員との人間関係等、明らかにそれと理解できる学校生活上の影響がから登校しない型。②あそび・非行型。遊ぶためや非行グループに入ったりして登校しない型。③無気力型。無気力でなんとなく登校しない。登校しないことへの罪悪感が少なく、迎えにいったり強く催促したりすると登校するが長続きしない。④不安など情緒的混乱の型。登校の意思はあるが、身体の不調を訴え登校できない、漠然とした不安を訴え登校しない等、不安を中心とした情緒的混乱によって登校しない型。⑤その他として、意図的な拒否や複合型、貧困問題や発達障害が不登校の背景にある型が近年増加している。
③ 学校での早期発見のポイントは、理由のはっきりしない欠席が多くなったり、身体の不調を訴えて保健室に行ったりすることが多くなる。たとえば、休日の翌日や特定の教科の日に欠席が多くなったり、休み時間に友だちと過ごさず、保健室や人のあまり行かないところへ行ったりするようになる。部活動や委員会活動を休みがちになり、辞めたがる。家庭での早期発見のポイントは、前日学校の準備をするが、翌朝起きてこないことがある。たとえば、朝、登校を促すと、腹痛・頭痛・下痢・発熱などの身体症状を訴え、休みたがる。保護者が学校に欠席連絡すると元気になる。食欲がなく、顔色が悪くなる。朝食や身支度に時間がかかる。休まないがぐずぐずして遅刻するようになる。早期に変調を発見し対応する必要がある。
キーワード ① 複合型 ② インキュベーション ③ 登校刺激 ④ 文部科学省 ⑤ 30以上の欠席
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第11回のシラバスをよく読んでおくこと。ここでは、いじめについて扱うので、教科書の110ページの「いじめ」の箇所をよく読んでおくこと。なお、いじめに関する定義の変遷やいじめの詳細情報は文部科学省のホームページに掲載されているので検索するとよい。
11 いじめ問題 科目の中での位置付け 各学校でいじめの認知率は高く、いじめに悩んでいる子供たちが多いと捉えるべきである。冷やかしやからかい、悪口や脅し、文句、嫌なことを言われる。軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする。仲間はずれ、集団による無視をされる。嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする。ひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりする。さらには、金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりするなどが発生している。いじめの程度を考えるときに、いじめの軽重を一般論で論ずることはできない。なぜならいじめられた子が一般に軽いと思われるケースであっても深刻に受け止める事はよくあることである。たとえば、冷やかしやからかいが精神的に大きなダメージになることもあり、仲間外れが続いて孤立し不登校状態になった子どももいる。本コマでは、このようないじめの態様やメカニズムについて学び、いじめのない学級づくりについて議論する。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p110~113
②『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p113~114
③『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p115~116
コマ主題細目 ① いじめの定義 ② いじめの構造 ③ いじめのない学校づくり
細目レベル ① 文部科学省ではいじめの定義を、「当該児童生徒が、一定の人間関係のあるものから、生理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。なお起こった場所は学校の内外を問わない」としているより広くいじめの問題を捉え、より適切に実態を把握できるように見直しを行った。平成6年から平成17年度までは、「自分より弱いものに対して一方的に、身体的、心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わないこととする」であった。平成5年度以前の調査における定義から、「学校としてその事実を確認しているもの」との文言を削除するとともに、「個々の行為がいじめに当たるか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うよう事前指導の徹底を図っている。
② 被害者は、一人の場合が多い。加害者は、複数の場合が多い。以前、いじめられたことがあり、立場が逆転していることもある。観衆は、はやし立てたり面白がって見ていたりする子どもで、加害の中心の子どもに同調・追従し、いじめを助長する。傍観者は、見て見ぬふりをする。人がいじめられているのを無視することは、加害者側には暗黙の了解と解釈され、結果的にはいじめを促進する可能性がある。自分がいじめられたりすることを恐れて、一緒にはやし立てたりして、いじめ側につくこともある。周りの子供に対する指導援助がいじめの問題の解決にとっては絶対に必要なことである。自分たちの行動がいじめを防ぐことに気づかせ、いじめに対する判断力の育成と排他性やストレス感情を低くする学級経営に、教師は日頃の指導援助を積み重ねることが必要である。
③ いじめを受けた多くの子供たちは、殴られる蹴られるの肉体的ないじめよりも、陰湿な集団からの無視の方が、より精神的にダメージが強いとも考えられる。いじめられた子がどのように受け止めているかを十分に把握した指導援助が必要になる。そして、学校を上げていじめを許さない雰囲気をつくるために、校長などが、いじめをしない、周りの子供たちはいじめを止めよう、困った事は先生に相談しよう、全校児童に直接呼びかけ、校長が先頭になっていじめがあったことを認め、保護者にも呼びかけて解決した例があった。いじめの予防は周りの子供に対する指導が決め手になる。各学級担任は、いじめの実態を把握把握し、指導するために道徳や特別活動の時間を特設し、自らの学級づくりを総点検する必要がある。
キーワード ① いじめ定義 ② 4層構造 ③ 傍観者 ④ 観衆 ⑤ トラウマ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第12回のシラバスをよく読んでおくこと。ここでは、発達障害について扱うので、教科書の121ページの「発達障害の諸相」の箇所をよく読んでおくこと。なお、教科書の発達障害はDSM-Ⅴによって命名が異なってきている。たとえば、学習障害は限局性学習症と訳によって異なるが、最新情報をインターネット等で入手しつつ、それらの障害についての症状について調べておくこと。
12 神経発達症群の諸相 科目の中での位置付け 2006年6月になされた学校教育法の一部改正により、従来の特殊教育が特別支援教育へと変更され、翌2007年4月から新しい考え方での特別支援教育が始まった。また、発達障害についての概念や理念も変わり、知的障害を伴わないADHD (注意欠如•多動性障害)やLD (学習障害)、高機能自閉症(高機能広汎性発達障害、HFPDD)等に関する特別支援教育や発達支援の幅が広がってきた。16人に1人ともいわれる数値が示すように、発達障害をもつ子どもは、もはや特殊な例外的子どものことではない。2013年5月アメリカ精神医学会が13年ぶりに診断と統計のマニュアルDSM-IV-TRを改訂し、DSM-5を発表した。発達障害は神経発達症群に、広汎性発達障害は自閉スぺクトラム症といった変更が加わった。2018年6月のWHOの国際疾病分類の改訂版ICD-11が発表され、同様の疾患名の変更がなされている。本コマでは、このような精神医学の最新情報や変更を取り入れ、学校における特別支援教育の中で活用できる知識としていきたい。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p121
②『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p128~129
③『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p130~131
④『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p125~127
コマ主題細目 ① 発達障害とは ② 限局性学習症 ③ 注意欠陥・多動症 ④ 自閉スペクトラム症
細目レベル ① 医学的概念としての神経発達症群(発達障害)には、知的障害も含まれる。非進行性なので、基本的には、成長に伴い発達的変化は生じる。したがって、学校においては、療育・教育的支援で能力を最大限引き出し、その子なりの適応力を獲得させることが求められる。障害の表れ方として、「遅れ」は、同年代の9割ができることができない。これは、知的能力障害が該当する。知的能力障害は18歳未満で診断され、大人になってからの事故の後遺症は含まない。知能テストでIQ70~75未満の子どもたちは知的障害があると診断される。
「偏り」は通常範囲を超えているということであり、ADHDが該当する。また、「歪み」は、一般の子どもに見られない行動として見られ、自閉スペクトラム症(ASD)が該当する。

② 限局性学習症は略してSLDと表記する。知的発達に遅れがないのに特定の能力の習得と使用が著しく困難を示す。聞く・話す・読む・書く・計算する・推理する などの特定の能力である。限局性学習症は認知・情報処理がうまく機能しないという脳の機能的な問題があるとされ、前頭葉の働きが鈍い(十分に機能していない)ためだと考えられている。なお、幼い時に発覚することよりも、学童期以降の発覚が多い。発達とともにその障害の問題がもとでさらなる問題が起こることを二次障害というが、学習症は勉強に関して自信を喪失し、不登校に陥ることもある。なお、有名人のSLDが知られている。たとえば、黒柳徹子は計算ができないSLD、またトム・クルーズは台本が読めない(失読症)SLDである。
③ 注意欠陥・多動症はADHDとも言う(ADHDとも書く)。Attention Deficit / Hyperactivity Disorderの略である。ADHDには「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの特徴があり、これらが少なくとも2つ以上の状況(例えば学校と家庭など)でみられる。ADHDには、不注意・忘れ物が多い不注意型(AD)と、動き回る・行動が抑制できない多動性・衝動性型、そして2つの特徴を持った混合型がある。彼らは、その特徴によって社会生活上の不適応を起こしてしまう。そして、叱責などによって、自己肯定感が低下し、二次的な障害を引き起こすことがある。SLD同様に、脳(前頭葉)の機能的な問題のため、SLDなども併発している場合がある。他の発達障害と違い、ADHDには薬がある。また、学童期以降の発覚も多いし、ADタイプは気付かれにくく、適切なフォローを受けられないということもある。
④ 自閉スペクトラム症 (Autistic Spectrum Disorder)は、 自閉症や自閉症スペクトラム(ASD)とも言われる。これまで自閉スペクトラム症の中でもコミュニケーションの障害のマイルドな人たちをアスペルガー障害と言っていた。また、知的障害のない自閉スペクトラム症を高機能広汎性発達障害と言っていた。「自閉症」といっても、自分の殻に閉じこもるという意味の障害ではない。彼らには特徴的な3つの障害があり、「障害の三つ組み」とも言われている。それは、まず、社会性の障害である。強いこだわり、感覚過敏、目が合わないことが多い。次に、コミュニケーションの障害である。ことばを話さない、「オウム返し」、会話が成立しないということが多い。さらに、想像力の障害である。「ちょっと」「少し」といったニュアンスがわからない。また、お世辞や社交辞令もわからない。
キーワード ① ADHD ② ASD ③ LD ④ DSMⅣ ⑤ 知的発達
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第13回のシラバスをよく読んでおくこと。ここでは、神経発達症群の子どもへの支援について扱うので、教科書の133ページの「発達障害児への支援」の箇所をよく読んでおくこと。また、保健室でできる心理テストも扱うので、シラバスに掲載した心理テストについてインターネット等でその概略について調べ、テストの目的と方法について調べておくこと。
13 神経発達症群の子どもへの支援 科目の中での位置付け 国連の「障害者の権利に関する条約」が2014年に批准された。やがて、学校は、特別支援教育に関する校内委員会の設置、特別支援教育コーディネーターの指名、関係機関と連携した「個別の教育支援計画」の策定と効果的な支援を進めるようになった。障害の児童生徒一人一人については、「個別の支援計画」を作成して個別ニーズに応じた教育を進めることと、校内研修や学校外の研修を通して、特別支援に関連した専門性を高めることとなった。そのような状況において、様々な障害をもった子どもが通常学級にも在籍するようになった。2017年の『発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン』には、医師の診断がなされていなくともその疑いのある子どもたちも支援の対象となるという。すべての教師が学校において、障害を超えて当該児の支援ができるようになることが期待されている。本コマでは教育心理学の発達の視点から、ADHDを中心とした基本的な支援を扱う。そして、養護教諭として簡単な心理テストを通したアセスメントについて学ぶ。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p140~143
②『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p33~35
③配付資料
コマ主題細目 ① ADHDの子どもの支援 ② 進んできた検査 ③ 保健室でできる心理テスト
細目レベル ① 不注意が顕著な子どもは放置されがちになる。しかし、本人は困り感がある。また、集中できない子どもは、新しい刺激に次々と注意がそれる。支援の工夫としては、余計な刺激を遮断するとか、もう一度個別に声を掛ける支援が望まれる。集中が持続せず、すぐ飽きてしまう子どもには、休憩をとることや新しい刺激を次々と与えること支援が効果的である。
要は、子どもの観察を行う。気温や湿度の高いときと体調が悪いときが重なっている場合の変化などが分かってくる。また、必要に応じて心理検査をするとよい。そうすることで実態が分かってくる。そのようにして日常生活の中で支援を工夫する必要がある。そして、情報を家庭に知らせ、支援をつなげていくことが必要である。

② その子どもに適した指導や学習方法を探るための検査としては、WISC-Ⅳ、K-ABCⅡなどがある。WISC-IVの対象は、5歳0カ月~16歳11カ月の子どもである。全15の下位検査で構成されており、10の基本検査を実施することで、5つの合成得点が算出される。それらの合成得点から、子どもの知的発達の様相をより多面的に把握できる。K-ABCⅡは、認知処理能力だけでなく基礎的学力を個別式で測定できる日本初の検査であり、子どもの知的活動を認知処理過程と習得度から測定し、検査結果を教育的働きかけに結び付けて活用できる。幼児や障害のある子どもでも知的活動を公平に測定。特に、発達障害児のアセスメントに有効である。非言語性尺度が用意されており、難聴児や言語障害がある場合でも、妥当なアセスメントが可能である。
③ 心理テストを行う上の留意点として、次のことが挙げられる。テスト1つで判断してはいけない。テストは可能性を示すもので、断定できない。テストを実施しても、専門家の指導を受ける。できるだけ準備の要らない簡単なものがよい。テストの結果は必ず本人に返す。
そのまま返してはいけないときもある。知能テストは保健室では取り扱わない。保健室でよく実施する心理テストとしては、「3つの願い」「無人島問題」「バウムテスト」「エゴグラム」などがある。実施するには訓練が必要なテストもある。心理テストの結果は、その子どもと共有しそこから相談に移ることも多い、テストはその子どものために実施するのであり、目的をしっかりもち実施する必要があることを理解する。

キーワード ① 発達レベル ② 心理テスト ③ 困り感 ④ アセスメント ⑤ 保健室
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第14回のシラバスをよく読んでおくこと。ここでは、教育評価とテスト理論について扱うので、教科書の145ページの「教育評価」の箇所をよく読んでおくこと。なお、授業で、教育心理学の復習を兼ねて客観テストの作問をするので、当日資料とするものを持参すること。
14 教育評価 科目の中での位置付け 学習評価は、学校における教育活動に関し、子供たちの学習状況を評価するものである。「子供たちにどういった力が身に付いたか」という学習の成果を的確に捉え、教員が指導の改善を図るとともに、子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにするためには、この学習評価の在り方が極めて重要であり、教育課程や学習・指導方法の改善と一貫性を持った形で改善を進めることが求められる。子供たちの学習状況を評価するために、教員は、個々の授業のねらいをどこまでどのように達成したかだけではなく、子供たち一人一人が、前の学びからどのように成長しているか、より深い学びに向かっているかどうかを捉えていくことが必要である。また、学習評価については、子供の学びの評価に留まらず、学習・指導方法や教育課程の評価と結び付け、子供たちの学びに関わる学習評価の改善を、教育課程や学習・指導方法の改善に発展・展開させ、授業改善及び組織運営の改善に向けた学校教育全体のサイクルに位置付けていくことが必要である。
①『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p145
②『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p146~148
③『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、p148~149
コマ主題細目 ① 教育評価とは ② 評価の方法 ③ 評価の留意点
細目レベル ① 現在、各教科について、学習状況を分析的に捉える観点別学習状況の評価と、総括的に捉える評定とを、学習指導要領に定める目標に準拠した評価として実施することが明確にされている。評価の観点については、学校教育法第30条第2項が定める学校教育において重視すべき三要素を踏まえて再整理され、現在、「知識・理解」「技能」「思考・判断・表現」「関心・意欲・態度」の四つの観点が設定されているところである。今後は、小・中学校を中心に定着してきたこれまでの学習評価の成果を踏まえつつ、目標に準拠した評価を更に進めていくために、育成すべき「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の資質・能力の三つの柱に沿って各教科の指導改善等が図られ、評価の観点についても3観点に沿った整理がなされる。
② 評価は学習指導のどの段階で行うかにより、診断的評価・形成的評価・総括的評価の3つに分けられる。診断的評価とは、前もって学習者の実態を把握し、それに合わせた指導計画を立てるための評価。形成的評価とは、教授活動を通して学習者がどの程度理解したかを確認するための評価。これまでに教育活動で扱った内容について、どの程度理解しているか確認することによって、学習者は自分自身の理解の度合いを確認することができる。総括的評価とは、従来から行われてきた中間・期末試験による評価を指す。その意義として、学習者は自分自身の努力の結果を知ることができる。また、教授者も次の教育活動に対する改善点などの情報を得ることができる。
③ 知識量のみを問うペーパーテストや特定の活動結果のみに偏重した評価ではなく、三要素のバランスのとれた学習評価を行っていく必要がある。そのためには、指導と評価の一体化を図る中で、論述やレポートの作成、発表、グループでの話合い、作品の制作等といった多様な活動に取り組ませるパフォーマンス評価を取り入れ、ペーパーテストの結果に留まらない、多面的な評価を行っていくことが必要である。さらには、総括的な評価のみならず、一人一人の学びの多様性に応じて、学習の過程における形成的な評価を行い、子供たちの資質・能力がどのように伸びているかを、例えば、日々の記録やポートフォリオなどを通じて、子供たち自身が把握できるようにしていくことも考えられる。そして、子供たちには学習にどのような価値があるのかを認め、その意味に気付かせていくことが求められる。
キーワード ① 評価目的 ② 指標 ③ 診断的評価 ④ 形成的評価 ⑤ 総括的評価
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(60分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習(30分):第15回のシラバスをよく読んでおくこと。ここでは、第14回で作成したテストを行った後に、グループ・ワークを行う。構成的グループエンカウンターについてインターネット等で予備知識を入手しておくこと。
15 まとめとグループワーク 科目の中での位置付け 本コマは教育心理学の最終回である。前半は、第1回から第14回までの復習を行う。内容は、受講生が受けた授業から各自が作問し、その問題を全員が行う。後半は、教職に就いて子どもの人間関係を構築することが求められることから、心理学的アプローチによる受講生同士の人間関係づくりワークを行い、心の変化を体感するものである。このグループワークは、構成的グループエンカウンター(StructuredGroupEncounter、以下、SGE)を採用する。これは、「集中的グループ体験」であり、カウンセリングの一形態であるとされる。また予防的カウンセリングとして、人間関係を開発する技法でもある。SGEの目的はリレーションと自己発見である。感情交流で、自分の本音に気づく、気づいた本音を自己開示し、他者の本音を受け入れることである。自己発見とは、周りの人々は気づいているが自分は気づいていない自分自身に気づくことである。本コマで体感した関係性構築のスキルを今後に生かしてほしい。
①配付資料
②配付資料
③配付資料
コマ主題細目 ① 教育心理学のまとめと復習 ② 構成的グループエンカウンターの理論 ③ グループワークの実践
細目レベル ① 教育心理学の次の範囲から、各自が重ならないように事前に作問を行う。学習のメカニズム(条件づけ、観察学習)、記憶のメカニズム(記憶・知能・忘却)、個人差(知的能力/パーソナリティ)、動機づけ(2つの動機付けとその理論、自己効力)、学習過程(教授学習モデル)、発達①(発達段階と発達課題)、発達②(認知発達理論)、発達③(社会性、道徳性の発達)、学校不適応①(不登校の問題)、学校不適応②(いじめ)、発達障害①(発達障害の諸相)、発達障害②(アセスメントと支援方法)、教育評価(教育評価とテスト理論)である。一斉に採点を行い、疑問点は作問者や教員に質問を行い、学修が十分でなかった領域については各自復習する。
② SGEの原理は3つある。第一はあるがままの自分に気づくことである。第二はSGE体験の構成であり、エクササイズをはじめとした枠を介して自己開示が促進される。第三はシェアリングであり、物事の見方や受け取り方、考え方である認知の拡大・修正をねらいとして行われる。また、言葉によらないコミュニケーションや感情・感性にも目を向け取り組むことが特徴である。自己の成長やいじめの予防などにも役立つとされる。ただ、次のルールを設定することが重要である。それは、守秘義務を守る。非難したり批判的・評価的発言をしたりしない。沈黙の自由を守るために発言を強要しない。エクササイズをパスする自由を守るために、エクササイズを強要しない。
③ 構成的グループエンカウンターを行うときには大切な流れがある。それは、インストラクション(説明)→エクササイズ(演習)→シェアリング(分かち合い)という流れである。インストラクションとは、その時に行うエンカウンターの説明や指示を言い、必要に応じてリーダーがデモンストレーションをおこなうこと。エクササイズはエンカウンターの中心になるものだが、エクササイズ=エンカウンターではない。エクササイズだけして終わることがないように注意したい。シェアリングとは、エクササイズが終わった後、気付いたことや考えたことをホンネで交流する活動。エクササイズのねらいに沿った「話し合い、葛藤、自己評価、相互評価」の場面であり、このシェアリングによって自分の考えを修正したり、明確化したり、新しい見方に気付いたり、相手に共感したりすることができる。
キーワード ① エンカウンター ② エクササイズ ③ シェアリング ④ インストラクション ⑤ 体験
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習(90分):本コマで学修した教科書の該当箇所を通読するのはもちろん、今回の授業の要点整理とするために本コマのシラバスを読んでおくこと。また、本講義で出てきた教育心理学の用語や人物名を教科書の索引から探して、読んでおくこと。その他に興味が湧いてきた事柄についてはインターネット等で調べておくとよい。予習:定期試験に向けて15回分の書き込み式ノートを見直し復習をしておくこと。また、第15回に行った自作テストによる復習をしておくこと。
履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
学習と記憶・知能★ 古典的条件づけは、通常、無条件刺激と無条件反応は1対1で対応するため、別の無条件刺激によって誘発されることはないが、後天的にそれが起こるように条件付けることができるというものである。レスポンデント条件づけとも言う。パブロフが古典的条件付けの実験を行った。オペラント反応については、スキナー箱の実験で示され、自発的、随意的な反応のことである。また、観察学習とは、他者の行動をお手本(モデル)として見て学ぶことであることを押さえておくこと。
記憶とは、過去の経験を貯蔵あるいは保持して、何らかの形でそれを再現し、現在の経験や行動に影響を与えるはたらきである。単に覚えることを指すものではないことを押さえておく。また、知能とは、学習する能力や学習によって獲得された知識、および、技能を新しい場面で利用する能力であり、また獲得された知識によって選択的に適応をする能力である。しかし、知能は測定することは容易ではない。さまざまな要素で知能を定義づけることも押さえておくこと。
学習と記憶・知能、古典的条件づけ、オペラント条件づけ、観察学習 20 1,2,3,15
個人差と動機づけ、教授モデル★★ オルポートの定義のよると、性格とは、個人のうちにあって、その個人に特徴的な、行動や思考を、決定する、精神身体的、体系の、力動的組織であるとする。類型論と特性論で性格を捉えようとする考え方があり、クレッチマーは、体格と性格との関連に注目し、分裂性気質は細長型、躁うつ性気質は肥満型、粘着性気質は闘士型であるとした。ユングは内向性外向性での類型論である。オルポートとキャッテル、ギルフォードは特性論を唱えたことを押さえておくこと。
動機づけとは行動をある方向に向けてスタートさせ、それを目標に達するまで持続させる過程、作用あるいは状態のことであり、この動機づけには、外発的動機づけと内発的動機づけの2種類があることを押さえておく。また、自己効力感とは、ある結果をみちびくために必要な行動をうまく実行できるという自分自身がもつ信念のことである。自己実現とは、人が自分の潜在的な才能や能力のすべてを発揮し、個性を実現し、その人の最高の状態をめざそうとする傾向である。これらの定義について押さえておくこと。
教授モデルには、スキナーによって提唱されたオペラント条件付けの理論に基づいた個別学習指導方法であるプログラム学習、オースベルが提唱した有意味受容学習、学習者それぞれが持つ適性によって、学習指導の効果が変化する適性処遇交互作用、その他、発見学習や協同学習などについても押さえておくこと。
個人差、動機づけ、教授モデル 20 1,4,5,6,15
発達と認知、社会性★★ 発達は、個体の心身の構造や機能に生ずる漸進的・連鎖的変化ではある。その変化はある時期には早く、ある時期にはゆっくりとなされるという定義を押さえておくこと。発達段階には、フロイトのリビドー発達段階を始め、ピアジェの認知発達理論、エリクソンの発達段階なども理解しておくこと。発達課題はハヴィーガーストが唱え、一定の活動の発達を要請する社会の側からいくつかの段階に分けられることを押さえておくこと。
知るという働きは、生体と環境との交渉による生体の適応作業であり、既に持っている枠組みを用いて外界を自分の中に取り入れる「同化」と、同化できない時、その枠組みを外界に合わせて修正する「調節」、そしてこの同化と調節の漸進的な「均衡化」によって認知は発達するというピアジェの理論は押さえておくこと。また、心の理論は、自分や他人の行動を予測したり、説明したりするために使われる心の動きについての知識や原理であることも押さえておくこと。
ことばの発達、認知の発達、ピアシェ、心の理論 20 1,7,8,9,15
不適応と教育評価★ 不登校は、学校に行けない、行かない状態像であるが、年々増加し、不登校のタイプについて大体の理解をしておくこと。また、いじめの定義について理解し、いじめの4層構造である、被害者、加害者、観衆、傍観者の役割を理解し、いじめが発生するメカニズムを押さえておくこと。教育評価は学習指導のどの段階で行うかにより、診断的評価・形成的評価・総括的評価の3つに分けられ、それぞれの教育評価の目的と実施時期について押さえておくこと。 不登校、いじめ、相対評価、絶対評価 20 1,10,11,14,15
発達障害とその支援★★★ 発達障害とは神経発達症群と呼ばれるようになり、医学的概念としての神経発達症群(発達障害)には、知的障害も含まれることを理解する。また、発達障害についての知識として、限局性学習症SLD注意欠陥・多動症ADHD自閉スペクトラム症 (ASD)についはそれぞれの特徴について押さえておくこと。 SLD、ADHD、ASD 20 1,12,13,15
評価方法 定期試験(100%)によって評価する。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 西村純一・井森澄江編、『教育心理学エッセンシャルズ(第2版)』、ナカニシヤ出版、2010年、2,376円。
参考文献 文部科学省著『生徒指導提要』文部科学省,2010年,270円
実験・実習・教材費 なし