区分
専門基礎科目-人体の構造と機能
ディプロマ・ポリシーとの関係
コミュニケーション能力
アセスメント能力
判断力
創造力
実践力
自己研鑽力
カリキュラム・ポリシーとの関係
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
科目の目的
科学的根拠に基づいた臨床判断に基づき質の高い看護実践の習得を目指すためには、解剖生理学・疾病治療論などの専門基礎科目の知識と看護学を関連付けて学習することが重要である。本科目のねらいは、人体の構造・機能、病態生理、疾病治療についての知識を看護学に関連付けて教授することで、解剖生理学がどのように人間の生活行動と関連するのか、病態生理や疾病がどのように対象者への看護と関連するのかを理解させる。
到達目標
1. 消化管、消化管の付属腺、循環器系、呼吸器系、内分泌系、脳神経系、筋骨格系、および女性生殖器の構造と機能について理解できる
2. 系統別に代表的な疾病について、症状・徴候の病態生理を理解できる
3. 疾病の症状・徴候・看護を理解するために必要な解剖生理を理解できる
4. 解剖生理学の基礎知識を人間の生活行動や疾病・看護に関連して習得できる
科目の概要
本科目は、消化器系、循環器系、呼吸器系、脳神経系、筋骨格系、内分泌代謝、生殖器系の系統別に展開していくことを基本とし、それぞれの解剖生理がどのように人間の生活行動と関連するかを学習したのちに、それぞれの代表的疾患における病態生理を学習し、対象への看護の理解につなげる科目である。
まず系統別に、人体の正常な構造と機能を学修した後、これらの形態や生理機能に異常な変化を生じることで、症状や徴候といった病的な状態が引き起こされることを学修する。そこからさらに、ある疾患を持つ患者の治療や援助にどのようにつなげるかを考える根拠を知ることができる。よって、解剖生理学から、病態生理学、看護へとリレーすることによってそれぞれを関連付けて学修する。
科目のキーワード
解剖生理学、病態生理学、代表的疾患、、症状、徴候、看護
授業の展開方法
解剖生理学では、教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」とコマ用オリジナル配布資料を使って授業を行う。臓器間の位置関係を理解するために、等身大の模型を用いる。模型を観察し、取り出し可能な臓器を出し入れすることにより、三次元的な立体構築がイメージできるよう促す。病態生理学では、教科書「病態生理学 疾病の成り立ちと回復の促進②」とコマ用オリジナル配布資料を使って授業を行う。また、看護師としての実践で得た経験や事例をもとに、対象の看護を理解するために必要な形態機能と疾病について講義を進める。以上の知識を踏まえた上で、実際の看護ではどのような援助が必要なのかを学修する。
オフィス・アワー
(準備中)
科目コード
BE11
学年・期
1年・後期
科目名
看護のための形態機能と疾病
単位数
4
授業形態
講義
必修・選択
必修
学習時間
【授業】60h 【予習・復習】180h
前提とする科目
人体の構造と機能を学ぶ科目の基盤となる科目である。体の仕組みと生活
展開科目
人体の構造と機能を学ぶ科目の基盤となる科目である。形態機能学、微生物学、生化学、栄養学、生活援助技術、フィジカルアセスメント
関連資格
看護師,保健師,養護教諭
担当教員名
西由紀・原好恵
回
主題
コマシラバス項目
内容
教材・教具
1
本科目の総論
科目の中での位置付け
本科目は、消化器系、呼吸器系、循環器系、脳神経系、筋骨格系、皮膚、内分泌代謝、生殖器系の系統別に展開していくことを基本とし、それぞれの解剖生理がどのように人間の生活行動と関連するかを学習したのちに、それぞれの代表的疾患における病態生理・疾病治療を学習し、対象への看護の理解につなげる科目である。
科学的根拠に基づいた臨床判断に基づき質の高い看護実践の習得を目指すためには、解剖生理学・疾病治療論などの専門基礎科目の知識と看護学を関連付けて学習することが重要である。本科目のねらいは、人体の構造・機能、病態生理、疾病治療についての知識を看護学に関連付けて教授することで、解剖生理学がどのように人間の生活行動と関連するのか、病態生理学や疾病治療論がどのように対象者への看護と関連するのかを理解させることである。
本コマでは本科目の進め方について解説する。上記に示したように系統別に授業を展開していくことになる。4回で1つの系統を学修する。すなわち、解剖生理学、代表的疾患における病態生理・疾病治療、対象への看護、その系統のまとめの順に展開する。
コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p2-4, p27-28
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p55-62
コマ主題細目③:教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」p2-4
コマ主題細目
① 解剖生理 ② 代表的疾患 ③ 看護
細目レベル
① 解剖生理学は、人体を正常な臓器の構造と機能を系統立てて理解し、学ぶ分野である。解剖生理学に加え、生化学、栄養学、薬理学、病理学、病態生理学、微生物学等の知識を総動員することにより、健康・疾病・障害に関する観察力、判断力を養い、臨床で活用可能なものとする。また、臨床において看護を実施する際に、様々な場面に遭遇する。その時自らの知識により的確かつ迅速に対応するには、解剖生理学による基礎知識が必須となる。
すなわち、人体の臓器の正常な構造や機能、その位置関係を理解することは、医療従事者としての専門知識と技術を習得する上での盤石な礎となるのである。
本科目では、消化器系、呼吸器系、循環器系、脳神経系、筋骨格系、皮膚、内分泌代謝、生殖器系の解剖生理学を学修する。
② 身体を構成している細胞・組織・器官が正常な形態を保ち、的確に生理機能を果たすことで、私たちは健康な生活を営んでいる。これらの形態や生理機能に異常な変化が生じることで、 症状や徴候といった病的な状態が引きおこされる。病的な状態の身体におきている異常な変化を研究し、疾病の原因やなりたち進展など, 疾病の背後にある問題を学修する。 本科目では、胃がん・大腸がん、糖尿病、心不全、慢性閉塞性肺疾患・誤嚥性肺炎、脳血管障害、大腿骨頸部骨折および乳がん・月経異常について学ぶ。
これらの代表的疾患を学ぶことで、失われた機能を補填するにはどうすればよいかを知り、治療や援助にどうつなげるかを考える根拠を知ることができる。これは、疾病の理解だけでなく、患者への援助を行う際の根拠となるため、看護師が病態生理学を理解し、その知識を持つことは非常に重要である。
③ 本科目では、系統別に、人体の臓器の正常な構造や機能(形態機能)を理解し、それぞれの形態や機能に異常な変化が生じた状態や、病的な状態の身体に起きている異常な変化について、代表的疾患の病態生理を学修する。代表的疾患は、どこに、何による、どのような異常が生じているのかという視点を持ちながら、各臓器の構造と機能について理解を深める視点が重要となる。このような学修を通して、看護の対象である人のからだや生活行動を理解するために必要な基礎的知識を習得し、正常な形態やその機能および疾患などで異常な状態にある対象者への看護ケアに繋げていく視点を学修する。人間の健康の保持・増進・回復を目標とする看護を学修するための基礎的知識として、非常に重要な科目であることを理解する。
キーワード
① 解剖生理学 ② 病態生理学 ③ 疾病治療 ④ 看護 ⑤ 生活活動
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
予習:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」2ページから4ページを読む。人体の構造と機能についてなにを学び、どのように学ぶかを理解する。教科書27ページから28ページを読む。そのほか、教科書55ページから62ページを読む。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」2ページから4ページを読む。
復習:人体の階層性についてまとめる。また、「解剖生理学 人体の構造と機能①」56ページの表を確認する。器官が、系統別にまとめられている。ホメオスタシス(内部環境・外部環境)について「解剖生理学 ワークブック」の14.15ページの問題を解く。
教科書「病態生理学 疾病のなりたちと回復の促進②」2ページから4ページを読み返し、「病態生理」、「症状」、「徴候」、「症候」のワードについてまとめておく。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】
2
消化器系の構造・機能①(口腔~胃)
科目の中での位置付け
本科目全体の中で、本コマ(第2回)から4回にわたって、消化器系の形態機能と疾病について学修する。
私たちは食物を摂取することで、活動のエネルギーや身体の構成に必要な物質を得ている。消化器系は、食物を体内へ取り込み、不要物を体外へ送り出す働きをする臓器の集まりである。消化器系は、摂取された食物が通過する消化管(口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肛門)と、消化を助ける付属器(歯、舌、唾液腺、肝臓、胆嚢、膵臓)からなる。口から取り入れた食物は、胃・小腸に移送される間に、消化管内に分泌される消化液中の消化酵素の作用を受けて消化される。消化液は、胃や小腸などの消化管の細胞から分泌されるだけでなく、唾液腺や膵臓、肝臓からも分泌される。本コマ(第2回)では口腔から胃までの構造と機能を学修する。ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。
コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p64-72
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p72-75
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p75-76
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p76-78
コマ主題細目⑤:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p78-82
コマ主題細目
① 口腔 ② 咽頭 ③ 食道 ④ 胃の構造 ⑤ 胃の機能
細目レベル
① 口腔の表面は、重層扁平上皮の粘膜で覆われ、口腔前庭と固有口腔に区分される。口腔の天井である口蓋は、前2/3が骨を含む硬口蓋で、後1/3は筋肉性の軟口蓋である。舌には4種類の乳頭(糸状乳頭・葉状乳頭・茸状乳頭・有郭乳頭)がある。舌粘膜も重層扁平上皮であり、味の受容体である味細胞を含む味蕾が点在している。口腔には唾液を分泌する大唾液腺(耳下腺・舌下腺・顎下腺)が3対ある。それぞれの導管が口腔のどこに開口するか学修する。また、唾液の成分とその作用についても理解する。唾液分泌の調節には交感神経も関与するが、主に副交感神経の支配を受けて反射的に行われる。歯では、乳歯と永久歯の本数の違い、咀嚼では、咀嚼筋(側頭筋・咬筋・内側翼突筋・外側翼突筋)の種類とその作用について学修する。
② 咽頭は、鼻腔・口腔・喉頭の後ろにあり、口腔から食道に抜ける食物路と、鼻腔から喉頭に抜ける呼吸路との交差点である。咽頭は、①上咽頭(咽頭鼻部)、②中咽頭(咽頭口部)、③下咽頭(咽頭喉頭部)の3つに分けられる。通常、喉頭蓋は開いており、気道を確保するように軟口蓋と喉頭蓋が反射的な動きをしている。しかし、食塊を飲み込むときは、軟口蓋が背側に動いて鼻腔と耳管への逆流を防止し、同時に喉頭蓋によって気管入口がふさがれ、声門の閉鎖と呼吸の停止が起こる。これによって食塊が食道へ送り込まれ、気管は食物の通路から遮断されて、誤嚥を防ぐことができる。咀嚼された食物が、口腔から咽頭を通って運ばれ、飲み込まれる過程(嚥下)の3相(口腔相、咽頭相、食道相)を理解する。
③ 食道では、3ヶ所の生理的狭窄部について図をみながら確認する。咽頭に続く食道の入口(輪状軟骨の下縁)、大動脈弓によって圧迫される部位(気管分岐部の後ろ)、横隔膜貫通部であり、食塊の停滞などの問題が起こりやすい。筋層が口側では骨格筋であるが、次第に平滑筋に置き換えられていくことを理解する。食道と気管の位置関係も再度確認する。食道の口側3-4㎝の部位の輪状咽頭筋は強く収縮しており、上部食道括約筋と呼ばれる。食道の下端、胃との接合部から2-5㎝の部位では食道輪状筋が収縮しており、下部食道括約筋として機能している。上部食道括約筋と下部食道括約筋は、食塊の移送に大きく関与する。食道には消化吸収の機能はないが、口腔で咀嚼された食物を胃に送り、それを逆流させないことが食道の大きな役割である。
④ 胃では、各部の名称(噴門、胃底、胃体、幽門、小弯、大弯)について図を見ながら確認する。胃壁の構造は機能を理解する上で重要である。胃体部にある胃底腺は1日に1~2Lの胃液を分泌する。胃腺を構成する3種類の細胞(壁細胞:塩酸を分泌する、副細胞:粘液を分泌する、主細胞:ペプシノゲンを分泌する)、幽門部にある幽門腺(ガストリン:胃酸分泌を促進する消化管ホルモン)について理解する。胃の筋層は平滑筋であり、他の消化管と同様に、内層の輪状筋と外層の縦走筋の2層からなっている。しかし、噴門から胃体部までには最内層に斜走筋層があり、3層となっている。塩酸を含むため胃液のpHは1~2の強酸性であり、食物とともに胃に入った細菌を殺菌する働きがある。胃液の分泌調節は、刺激の作用部位によって3相(頭相、胃相、腸相)に分けられる。胃の蠕動運動によって、胃の内容物を胃液と混和するとともに粉砕し、かゆ状液の消化が促進される。
⑤ 胃に食塊が入ると、反射的に胃壁は弛緩し、胃内圧をあまり高めずに胃内容積を増やす。しばらくすると、蠕動運動が始まる。胃内の食塊は攪拌され、胃液と混和されて糜汁となる。胃運動は自律神経によって調節されている。胃の蠕動運動はアウエルバッハ神経叢にあるニューロンによって調節されるが、このニューロンはさらに迷走神経による調節を受ける。食塊は胃の消化作用によって細かくなり、固形物の直径が1㎜程度になってはじめて十二指腸に送られる。十二指腸への排出は液体では比較的速い(10分ほど)が、固形物では遅く3~6時間を要する。栄養素別にみると、胃から排出されるまでにかかる時間は脂肪が最も長い。胃から十二指腸へのかゆ状液の排出は、幽門部の内圧上昇による排出促進と、十二指腸からの神経性刺激およびホルモン性刺激による抑制によって調節される。胃底腺に存在する3種類の細胞からそれぞれ分泌液が産生される。そのほか、幽門部からはガストリンが分泌される。胃液はpH1~2の強い酸性で、主成分は、塩酸、消化酵素、粘液で、各種電解質なども含まれる。壁細胞から分泌される塩酸は、食物とともに胃に入った細菌を殺菌するはたらきがある。また胃酸は、タンパク質を変性させると同時に、主細胞が分泌するペプシノゲンに作用して、これを活性型のペプシンにかえる。ペプシンはタンパク質を分解してポリペプチドにする。さらに胃酸は、十二指腸に排出されると、十二指腸粘膜を刺激してセクレチンという消化管ホルモンを分泌させ、膵液の分泌を促進するとともに、それ以上の胃液の分泌を抑制する。胃液分泌調節は、自律神経系、ヒスタミン、消化管ホルモン(ガストリン、セクレチン、GIP)などにより調節される。
キーワード
① 唾液腺 ② 味蕾 ③ 生理的狭窄部 ④ 胃底腺 ⑤ 蠕動運動
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote
教科書
コマ用オリジナル配布資料
コマ用プリント配布資料
その他
該当なし
小テスト
「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題
予習:「系統看護学講座 解剖生理学」p.64-82を熟読し、わからない部分について明らかにしておく。
復習:口腔~胃までを復習する。口腔では、舌(舌乳頭、味蕾)、唾液腺、歯(乳歯と永久歯)、咀嚼(咀嚼筋)について復習する。咽頭は、消化器系と呼吸器系を兼務する器官であること、食道の構造と合わせて嚥下の3相について復習する。食道では、構造上の特徴(生理的狭窄部)について図をみて確認する。胃では、各部位の名称について復習する。胃壁の構造と機能(内側から粘膜、粘膜下組織、筋層、漿膜)、胃底腺と幽門腺すなわち、粘膜上皮(円柱上皮)、胃底腺(壁細胞、副細胞、主細胞)、幽門腺(ガストリン分泌)について復習する。消化における胃の役割は、①食べた物を一時的に収納して十分に消化するとともに少しずつ腸へ送ること、②胃酸による殺菌作用、酵素の活性化、鉄のイオン化、③ペプシンによるタンパク質の消化、④粘液分泌による胃壁の保護、⑤消化管ホルモンの一種であるガストリンの分泌による胃液分泌促進、⑥内因子放出によるビタミンB12の吸収促進であることを復習する。「系統看護学講座 解剖生理学」p64-82を読み返し、「系統看護学講座準拠 解剖生理学ワークブック」16~20ページを解答し、復習する。
【予習学習時間目安:1時間/復習学習時間目安:2時間】
3
消化器系の構造・機能②(小腸~大腸)
科目の中での位置付け
本科目全体の中で、第2回から4回にわたって、消化器系の形態機能と疾病について学修する。
私たちは食物を摂取することで、活動のエネルギーや身体の構成に必要な物質を得ている。消化器系は、食物を体内へ取り込み、不要物を体外へ送り出す働きをする臓器の集まりである。摂取された食物が通過する消化管(口腔、咽頭、食道、胃、小腸、大腸、肛門)と、消化を助ける付属器(歯、舌、唾液腺、肝臓、胆嚢、膵臓)からなる。本コマ(第3回)では小腸・大腸の構造と機能を学修する。小腸は、胃の幽門に続いており、長く軟らかい管状の器官である。明確な境界はないが、十二指腸、空腸、回腸に区分され、右下腹部で大腸につながる。大腸は、回盲弁から肛門までの約1.5mの管状の器官で、盲腸、結腸、直腸、肛門から成り立っている。結腸はさらに4部に分けられ、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸を区分する。小腸は消化・吸収における最も重要な部分であり、すべての栄養素の消化と吸収がここで行われる。また、大腸運動および分泌機能と排便機構について学修する。ここでは教員が看護実践での経験をふまえ、より具体的にイメージができるよう教授する。
コマ主題細目①:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p82
コマ主題細目②:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p82-87
コマ主題細目③:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p87-90
コマ主題細目④:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p90-93
コマ主題細目⑤:教科書「解剖生理学 人体の構造と機能①」p94-95
コマ主題細目
① 十二指腸 ② 小腸の構造・機能 ③ 栄養素の消化と吸収 ④ 大腸の構造 ⑤ 大腸の機能
細目レベル
① 胃から送られてきた糜粥は、腸液、胆汁、膵液の働きによって消化され、ほとんどの栄養分が吸収される。そして、その残りかす(残渣)は大腸に送られる。十二指腸は消化の中心的役割を担っており、胆汁と膵液を排出する大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)とオッディ括約筋の構造を理解することは機能の理解にもつながる。十二指腸は後腹壁に固定されているが、空腸と回腸は腹膜腔にあり、可動性で、大腸が囲む腔の中に収まっている。十二指腸下行部の中央辺りに、総胆管と主膵管がY字状に合流して、胆汁と膵液が十二指腸に流入する部位があり、十二指腸の内側の開口部を大十二指腸乳頭(ファーター乳頭)という。ここには、輪状の平滑筋(オッディ括約筋)があり、胆汁と膵液の流入を調節している。
② 空腸は輪状ヒダが発達していることから、消化の中心的な役割を担っている。また、回腸下部ではパイエル板が発達している。パイエル板は集合リンパ小節であり、消化管の内容物に対する免疫反応の場となっている。小腸粘膜は、輪状ヒダをもち、粘膜の表面には一面に絨毛がある。さらに絨毛の上皮細胞には無数の微絨毛があるため、小腸粘膜の表面積は著しく広いものとなる。小腸の分泌液(腸液)は1日に約3L分泌される。十二指腸からの分泌液はアルカリ性であり、胃酸による消化作用から十二指腸を保護する役割がある。一方、小腸全体に分布する腸腺からの分泌液は、ほぼ純粋な細胞外液で、弱アルカリ性である。腸内の消化産物を希釈し、その消化・吸収を促進する。
小腸壁の平滑筋の収縮・弛緩によって、かゆ状液が消化液と混和されるとともに、徐々に大腸へ向かって移送される。小腸壁の運動は、胃と同様に筋原性の活動電位が基本リズムとなる。この活動電位は、筋層の間にあるアウエルバッハ神経叢による調節を受け、さらに自律神経と消化管ホルモンによってリズムが修飾される。小腸の運動は、振子運動(縦走筋の働きによる運動で、粥状液を行ったり来たりさせる)、分節運動(輪走筋による運動で、粥状液を混和させる)、蠕動運動(主として輪走筋による運動で、粥状液を大腸方向へ移動させる)の3種類に分けられる。基本的に小腸の運動は小腸平滑筋自体の性質や壁内神経叢によって調節される。小腸運動はさらに副交感神経の興奮で亢進し、交感神経の運動で抑制される。蠕動音は、腹壁に聴診器をあてれば聞き取ることができ、腸が正常に動いているか否かの指標となる。
③ 小腸において糖質、タンパク質、脂肪などの各栄養素は、膵液、小腸上皮細胞に含まれる消化酵素の働きにより、それぞれグルコースなどの単糖類、アミノ酸、脂肪酸とモノグリセリドなどの最終分解産物にまで分解される。十二指腸に流入する胆汁は消化酵素を含まないが、脂肪の消化に重要である。十二指腸に分泌される膵液には、酸性の胃液を中和する重炭酸イオンと多くの消化酵素が含まれている。十二指腸壁に酸性のかゆ状液が接触すると、セクレチンが分泌される。セクレチンは膵臓に作用して重炭酸イオンに富んだ膵液を分泌させる。一方、十二指腸に、アミノ酸やペプチドなどのタンパク質分解産物や、脂肪が触れると、コレシストキニンが分泌され、消化酵素に富んだ膵液の分泌を刺激する。
④ 大腸は右下腹部の盲腸から結腸に続く。結腸は、右腹部の上行結腸、上腹部の横行結腸、左腹部の下行結腸、下腹部にまわるS状結腸と続き、骨盤内の直腸となって肛門に開く。盲腸は、回盲弁より下にある短い袋状の部分で、腹腔後壁に癒着している。虫垂は、盲腸の左後壁から出る鉛筆くらいの太さの突起である。虫垂の粘膜にはリンパ組織が豊富にあり、免疫系の一部をなす。青年期には細菌感染により虫垂炎を起こしやすく、マックバーニー点(臍と右上前腸骨棘を結ぶ線上の臍から2/3の位置)に圧痛を生じる。結腸は4部に分けられ、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸を区分する。結腸のうち、上行結腸と下行結腸は後腹壁に接しており、結腸間膜をもたない。また、結腸の外観上の特徴として、結腸ヒモ、腹膜垂、および結腸膨起が挙げられる。結腸の内側には小腸のような絨毛はない。ほとんどの栄養素が大腸に到達する前に吸収されているからである。その代わり、粘液を産生する杯細胞がたくさん存在している。粘液は潤滑剤として働き、便が消化管末端である肛門の方向へ移動するのを助けている。大腸の壁は、小腸と同じように粘膜と平滑筋層を備えているが、少し違いがある。大腸の粘膜には輪状ヒダも腸絨毛もなく、腸腺だけが備わっている。平滑筋層は内輪・外縦の2層からなるが、結腸では外縦の筋が3か所に集まって結腸ヒモをつくる。
⑤ 大腸では、消化はほとんど行われない。栄養素のほとんどが小腸で吸収されるため、大腸では水と電解質のみが吸収される。しかし、大腸の吸収能は高いため、肛門から大腸内に挿入して薬剤を吸収させる坐薬などに利用される。大腸の運動は主として分節運動であり、内容物の移動速度は遅い。ただし食事の後には大腸の蠕動運動が亢進し(胃大腸反射)、結腸の内容を急激に直腸に送る(大蠕動)。大蠕動では、横行結腸からS状結腸にかけての広範囲の平滑筋が同時に収縮して、内容物は一気に直腸へ運ばれる。大腸には、小腸で十分に吸収されなかった水分を吸収し、消化されなかった食物残渣を便に形成して体外へ排泄する働きがある。口から摂取した食物は、約4時間で盲腸に達する。食物の残渣は大腸に12~24時間以上とどまっている。大腸内には大腸菌や腸球菌、ビフィズス菌など、1000種類以上の細菌が常在している(これらの細菌群は腸内細菌叢とよばれる)。大腸自体は消化酵素を産生しないが、大腸内の細菌がいくつかのビタミン(ビタミンK、各種のビタミンB複合体)を合成する。このように大腸は、食物残渣からこれらのビタミン、ある種の電解質、水分を吸収し、便を形成する。腸内細菌によるビタミンKの産生は、1日の必要量をまかなえるほどの量に達しており、重要である。直腸に糞便が送り込まれ直腸壁が伸展されると、その情報が大脳に伝えられて便意を催すとともに排便反射が起こる。すなわち、直腸壁が伸展し、その情報が脊髄の排便中枢に伝わると、反射的にS状結腸、直腸が収縮し、内肛門括約筋と外肛門括約筋が弛緩する。排便反射の中枢は仙髄にあるが、通常は大脳皮質からの神経線維により抑制されている。大脳皮質からの抑制がなくなると、副交感神経である骨盤内臓神経を介して直腸の収縮と内肛門括約筋の弛緩を生じる。このとき、外肛門括約筋は一時的に収縮するが、意志によって排便開始を決めると、陰部神経を介して弛緩がおこる。息を吸い込んだ状態でとめ、腹筋を収縮させて腹腔内圧を上昇させることで排便は促進される。
キーワード
① ファーター乳頭 ② 輪状ヒダ ③ 腸絨毛 ④ 回盲弁 ⑤ 肛門括約筋
コマの展開方法
社会人講師
AL
ICT
PowerPoint・Keynote