区分 学部共通科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
(心)専門的知識と実践的能力 (心)分析力と理解力 (心)地域貢献性
(環)専門性 (環)理解力 (環)実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
(心)課題分析力 (心)課題解決力 (心)課題対応力
(環)専門知識 (環)教養知識 (環)思考力 (環)実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
個人・社会・自然が直面する課題に対して専門的な理解を深めると共に、学際的な柔軟性を有し、実践的な能力を有する。
科目の目的
伝統的なものから現代のものにいたるまで、日本文化が国際的な人気と評価を得るようになって久しいが、日本の芸術文化は国際的な影響関係を見なければその本質を捉えることが難しい。日本の伝統文化として認識される禅宗文化を基調にした芸術文化は、中国を中心に考えなければならない。また、近世から近代にかけての日本美術には、中国以上に西洋美術を視野に入れる必要がある。この授業では中国・西洋の美術との影響関係に主眼を置き、中世から近代までの日本美術文化の歴史を国際的視点から捉えなおす。
到達目標
中国美術、西洋美術の特質を理解し、それら外来文化の受容による日本文化の成り立ちを理解する。
科目の概要
前半は、五代の水墨画の成立から北宋末の皇帝徽宗による画院改革を経て南宋院体画様式の成立に至る中国美術、日中の禅僧の交流から生まれた初期水墨画から日本の水墨画が確立するまでの中世日本美術を作例とともに解説。続いて、明代に院体画様式を受け継いだ浙派と精神性を重視した文人画の呉派、明末清初以降の江南の都市画壇の隆盛、清代中期の中国洋風画などの中国美術、そうした中国絵画の新しい展開を受けた日本の文人画や写生画などの近世日本美術を作例とともに解説する。
後半は、ルネサンス以降の明暗法・遠近法による合理的視点や解剖学による正確な人体表現による美術の成立に至る西洋美術の概説に始まり、キリスト教の布教、享保の改革を契機とした西洋美術の日本への流入とその影響を受けた近世日本美術、開国を契機として西洋に流出した日本美術とその影響を受けた近代西洋美術を作例とともに解説する。

科目のキーワード
①宋元画 ②明清画 ③水墨画 ④文人画 ⑤ルネサンス ⑥洋風画 ⑦浮世絵 ⑧モダン・アート
授業の展開方法
前半は、中世の日本絵画の規範となった宋元画とそこに至るまでの中国絵画の歴史、日本での宋元画受容の結果生み出された中世日本絵画(漢画)、近世の日本絵画に影響を与えた明・清代の中国絵画(明清画)、漢画・やまと絵に明清画・蘭画が入り混じった近世日本絵画(文人画・写生画)をスライド上映によって紹介する。後半は、自然科学的見地に基づく合理的視点によって描かれたルネサンス以降の西洋美術、その影響を受けた近世日本絵画(洋風画・浮世絵)、さらに開国後に日本美術から影響を受けた近代西洋美術をスライド上映によって紹介する。
オフィス・アワー
(岡崎キャンパス)【月曜日】昼休み・4時限目、【火曜日】2時限目・昼休み、【水曜日】2時限目・昼休み
(大府キャンパス)講義前後、メール(f-sugahara@uhe.ac.jp)にて質問に対応する。なお、メールの場合は、大学発行のアドレスからのみとする。

科目コード COM301
学年・期 1年・後期
科目名 芸術文化論
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 なし
展開科目 なし
関連資格 なし
担当教員名 菅原太
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 授業の概要 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、本コマの第2回では、中国絵画とその影響を受けた日本の中世・近世絵画の変遷、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係といった、科目全体の概要説明をおこなう。

① シラバス第1回/細目レベル①
② シラバス第1回/細目レベル②
③ シラバス第1回/細目レベル③
コマ主題細目 ① 宋元画と日本中世絵画 ② 明清画と日本近世絵画 ③ 西洋と日本の美術 ④ ⑤
細目レベル ① 第2〜5回に扱う北宋から南宋にかけての中国の絵画と中世日本の絵画をシラバスと照らし合わせて概説する。まず、中世の日本で大きな影響力を持った中国絵画がどういうものであったかを、第2〜3回で紹介する画像群から抜粋したものをスライド上映して紹介する。つづいて、平安時代から江戸時代までの時代の流れを縦軸にして、そこに「やまと絵」と呼ばれる平安時代から描かれてきた日本の伝統的な絵画と、「漢画」と呼ばれる中国絵画の影響を受け南北朝時代から室町時代にかけて隆盛した絵画という二つの様式の空間を設けた図を提示。その図のどの位置に第4〜5回の各コマが来るのかを見せることで、中国の影響関係を交えた日本絵画の歴史を図解する。
② 第6〜8回に扱う明・清代の中国と近世日本の絵画とその影響関係をシラバスと照らし合わせて概説する。まず、日本近世絵画の影響源となった明・清代の中国絵画を、第6〜7回で紹介する画像群から抜粋したものをスライド上映してその概要を紹介する。特にここでは、北宗画・南宗画が並立することから、規範に則った写実的な作風と個性と自由を重んじる作風という、ヴァリエーションの豊かさに見を向けてゆく。つづいて、明清画に影響を受けた近世日本絵画を、第8回で紹介する画像群から抜粋してスライド上映。その画風は明清画だけでなく中世までの日本絵画や西洋絵画の影響も受けており、宋元画と中世日本絵画に比べてその影響関係は複雑であることも解説する。
③ 第10~14回に扱う、近世から近代にかけての西洋と日本の美術の影響関係をシラバスと照らし合わせて概説する。まず、西洋美術の規範となったルネサンス美術からバロック美術への流れを第10〜11回で紹介する画像群から抜粋してスライド上映。つづいて、西洋絵画の影響を受けた日本絵画として、桃山時代から江戸時代初期にかけての初期洋風画、明暗法や遠近法などルネサンス以降の西洋絵画の画法を取り入れた江戸中期の洋風画(欄画)や浮世絵を第12~13回で紹介する画像群から抜粋してスライド上映。さらに、開国後に西洋に流出した日本美術から影響を受けた西洋近代美術として印象主義・ポスト印象主義・世紀末美術などを第14回で紹介する画像群から抜粋してスライド上映する。


キーワード ① 院体画 ② 文人画 ③ 漢画 ④ ルネサンス ⑤ ジャポニスム
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:まず、シラバスの第1回の5つのキーワードを調べておく。続いて、第1回の細目レベルを読み返し、わからない語や興味のある語があれば調べておく。また、五代から清代までの中国と南北朝時代から室町時代までの日本の美術史、ルネサンスから19世紀までの西洋と桃山時代から明治時代までの日本の美術史の各時代を調べて、大まかな歴史の流れを把握しておく。さらに、第1回の細目レベルに書かれた内容が第2~8回、第10~14回の各授業のどのコマに該当するのかを各回の細目レベルに目を通して確認し、これからの授業展開を把握しておく。
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第2回の5つのキーワードについて事前に調べ、要点をノートにまとめておく。資料は指定の参考文献以外の文献やインターネット検索でも構わない。

2 宋元画1 五代・北宋の絵画 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、本コマの第2回は水墨技法を確立した五代の荊浩、文人画の祖とされる薫源、北宋代に主流となった平遠山水の李成と高遠山水の范寛、両者の統合様式を生み出した郭熙など、中国水墨画の成立から黄金期までを概観する。

① オリジナル配布資料「宋元画1  五代・北宋の絵画」No.1-8、プリント配布資料「中国の美術と工芸」第9章 pp.110-113、シラバス第2回/細目レベル①
② オリジナル配布資料「宋元画1  五代・北宋の絵画」No.9-13、プリント配布資料「中国の美術と工芸」第9章 pp.113-116、シラバス第2回/細目レベル②
③ オリジナル配布資料「宋元画1  五代・北宋の絵画」No.14-16、プリント配布資料「中国の美術と工芸」第9章 pp.116-117、シラバス第2回/細目レベル③
コマ主題細目 ① 五代までの山水画の歴史 ② 平遠山水と高遠山水 ③ 郭熙と地域性の統合 ④ ⑤
細目レベル ① 水墨による山水画が成立するまでを概観する。それまでの山水画は色彩による装飾性が重視される青緑山水であったが、唐代には写実に基づく様式が完成に向かい独立したジャンルとして成立する。そして、唐の滅亡後、地方政権の分立に伴い各地の風土に根ざした山水画が展開。そうした中、五代の乱世を避けて太行山に隠棲していた荊浩が伝統的な画法である線描と、革新的な画法である水墨(墨による豊かな階調表現)を融合させて本格的な水墨山水画を創始することを解説。作例として、細密な描写と緻密な彩色で唐代に青緑山水の手本とされた展子虔の伝称作《遊春図巻》、唐代の山水画を確立し北宗画の祖とされる李思訓の伝称作《江帆楼閣図軸》、五代の水墨山水画の祖荊浩の伝称作《匡盧図》、そして、南宗画の祖とされる薫源の伝称作《寒林重汀図》を取り上げる。
② 北宋が建国されて分裂・動乱の時代に終止符が打たれると、知識官僚による文治主義が推し進められて学問・芸術が栄え、絵画では山水画が最盛期を迎える。山水画には深い自然観照に基づいて自然の真理を追究することが求められ、山石を表す皴法や大気・陽光を表す水墨法などによる写実表現と、近景・中景・遠景に分ける三分割法とモチーフの大きさを段階的に変える合理的遠近法で奥行を表す構成法が発達する。作例として、前山から後方の山を眺望し深い奥行きを表す平遠山水の李成の伝称作《喬松平遠図》、下方から山の頂上を見上げて高くそびえる山を表す高遠山水の范寛《谿山行旅図》を取り上げ、黄河下流域・中流域それぞれの風土に根ざした様式が華北山水の規範となったことを解説。
③ 五代以来の山水画様式を集大成し、山水世界を理想的に再構成した北宋後期の郭熙を紹介する。郭熙は北宋後期の最高位の画院画家として神宗皇帝の庇護のもと、普遍的な山水画の創造を目指す。作例として取り上げる代表作の《早春図》は、三分割法・合理的遠近法のほか、画面左に李成に代表される平遠の景、画面中央に范寛に代表される高遠の景を配し、さらに画面右の渓谷には深遠の景を配するという三遠法による画面構成を実現。より発達した水墨法による季節・気候・時間描写も含め、複雑で変化に富んだ深遠な山水表現は一つの小宇宙を生み出していること、こうした写実性と構築性を備えた理知的で体系的な絵画表現は西洋のルネサンス絵画に匹敵する東洋絵画の到達点であることを解説。


キーワード ① 荊浩 ② 李成 ③ 范寛 ④ 郭熙 ⑤ 三遠法
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:五代に、伝統的な画法である線描と革新的な画法である水墨を融合させて本格的な水墨山水画を創造した荊浩。北宋代に、黄河下流域の平遠山水、中流域の高遠山水それぞれの風土に根ざした様式をつくり華北山水の規範となった李成と范寛。五代以来の山水画様式を集大成し、山水世界を理想的に再構成した北宋後期の郭熙。こうした華北山水の発展について、オリジナル配布資料の指定された画像を見直して、作品画像から作品名・作者名が、作品名・作者名から作品画像がわかるようにしておく。また、授業中に行った小テストの解答を参照し、復習して正解が得られるようにしておく。さらに、小テストの内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるかをチェックしておく。
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第3回の5つのキーワードについて事前に調べ、要点をノートにまとめておく。資料は指定の参考文献以外の文献やインターネット検索によるものでも構わない。

3 宋元画2 南宋・元初期の絵画 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、本コマの第3回は北宋末に画院を改革し院体様式を生み出した徽宗皇帝に始まり、南宋の画院画家の馬遠・夏珪・梁楷、画僧の玉澗・牧谿など、日本の中世絵画に絶大な影響を与えた画家たちの作品を紹介する。

① オリジナル配布資料「宋元画2 南宋・元初期の絵画」No.1-6、プリント配布資料「中国の美術と工芸」第10章 pp.121-126、シラバス第3回/細目レベル①
② オリジナル配布資料「宋元画2 南宋・元初期の絵画」No.7-13、プリント配布資料「中国の美術と工芸」第10章 pp.122,127-128、シラバス第3回/細目レベル②
③ オリジナル配布資料「宋元画2 南宋・元初期の絵画」No.14-16、プリント配布資料「中国の美術と工芸」第10章 pp.128-132、シラバス第3回/細目レベル③
コマ主題細目 ① 徽宗と翰林図画院の改革 ② 南宋院体画 ③ 南宋末元初の禅宗絵画 ④ ⑤
細目レベル ① 北宋最後の皇帝で宮廷画院を改革し、院体画として南宋絵画に影響を与えた徽宗と、北宋・南宋の両画院に属した李唐を紹介する。まず、徽宗自らが筆をとった《桃鳩図》は北宋山水画の大画面から小画面に主流が移り、ジャンルも多様化した時代を象徴する花鳥画の例であり、精巧な写実に彩色の美しさ、曲線美による装飾性と詩的情趣が加わった新しい絵画様式を如実に表していることを解説。続いて北宋代と南宋代の李唐の山水画を比較することによってその様式の転換を見る。徽宗の指導下にあった李唐が北宋画院で描いた《万壑松風図》は樹木に鮮やかな彩色が施されて装飾性が増してはいるものの、范寛の系譜に属する大画面であるのに対し、南宋画院で描いた《山水図》(大徳寺高桐院)では高遠の主山が姿を消した小画面に変わっていることを解説。
② 徽宗の改革以降、ジャンルが一気に多様化した南宋画院の作品を紹介。作例はまず、対角線の片隅に景を描く院体山水画様式で日本の山水画の規範となった馬遠の伝称作《山徑春行図》と夏珪の《観瀑図》、画院画家でありながら禅僧との交流も深かった梁楷の作品として、山水画の《雪景山水図》、減筆体による人物画の《李白吟行図》、潑墨による道釈人物画の《潑墨仙人図》、院体花鳥画を代表する画家李迪の最高傑作とされる《紅白芙蓉図》など、日本に請来されて大きな影響を与えた画家たちを取り上げる。続いて風俗画としては、都の雑踏を描いた張択端による南宋画で最も有名な画巻である《清明上河図》と、母子・行商人を細密に白描で描いた李嵩の《市檐嬰戯図》を取り上げる。
③ 画院画家である馬遠・夏珪が日本で「真体」の手本とされたのに対して、中国では知名度が低いにも関わらず日本で「行体」の手本とされた牧谿と「草体」の手本とされた玉澗の作品を紹介する。まず、牧谿は南宋末元初の四川の画僧で、骨法や皴法を用いない柔らかな光と大気の表現が高い評価を受ける。作例としては日本の画家に多大な影響を与えた最高傑作とされる《観音猿鶴図》を取り上げる。続く玉澗は南宋末元初の浙江の詩画僧で、潑墨による抽象性の高い造形はその詩とともにやはり日本で高く評価された。作例としては、玉澗の詩賛入りの画巻をであったのが日本で裁断されて八幅の画軸となった内の一幅《瀟湘八景 山市晴巒図》を取り上げる。また、この回のまとめとして、北宋画ではなく南宋画がなぜ日本で受け入れられたのかを考察する。


キーワード ① 徽宗 ② 馬遠 ③ 夏珪 ④ 牧谿 ⑤ 玉澗
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:北宋最後の皇帝で宮廷画院を改革し、院体画として南宋絵画に影響を与えた徽宗。徽宗の改革以降、ジャンルが一気に多様化した南宋画院の画家たち。画院画家である馬遠・夏珪が日本で「真体」の手本とされたのに対して、日本で「行体」の手本とされた牧谿と「草体」の手本とされた玉澗。こうした日本で「宋元画」と呼ばれる作品と画家について、オリジナル配布資料の指定された画像を見直して、作品画像から作品名・作者名が、作品名・作者名から作品画像がわかるようにしておく。また、授業中に行った小テストの解答を参照し、復習して正解が得られるようにしておく。さらに、小テストの内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるかをチェックしておく。
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第4回の5つのキーワードについて事前に調べ、要点をノートにまとめておく。資料は指定の参考文献以外の文献やインターネット検索によるものでも構わない。

4 宋元画と中世日本絵画1 初期水墨画 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、第4回は禅僧の交流から生まれた禅余画にはじまり、専門の画僧である東福寺派の明兆、相国寺派の如拙にいたる日本の初期水墨画を概観する。

① オリジナル配布資料「宋元画と中世日本絵画1 初期水墨画」No.1-6、プリント配布資料「飾りと遊びの豊かなかたち」第3章 pp.38-39、シラバス第4回/細目レベル①
② オリジナル配布資料「宋元画と中世日本絵画1 初期水墨画」No.7-13、プリント配布資料「飾りと遊びの豊かなかたち」第3章 pp.39-40,43-44、シラバス第4回/細目レベル②
③ オリジナル配布資料「宋元画と中世日本絵画1 初期水墨画」No.14-18、プリント配布資料「飾りと遊びの豊かなかたち」第3章 pp.40-41,43-44、シラバス第4回/細目レベル③
コマ主題細目 ① 初期水墨画の道釈人物画 ② 明兆と東福寺派 ③ 如拙・周文と相国寺派 ④ ⑤
細目レベル ① 日中の交流による禅宗文化の修得期に描かれた道釈人物画を見てゆく。下書き無しで即興的に描かれ、衣文を草書体のように濃墨で荒々しく描き、頭部と手を薄墨の細筆で描く道釈人物画の代表的な画法「衣文粗筆・肉身細筆」を紹介。作例として、その先駆けとされる石恪の伝称作《二祖調心図》を取り上げる。続いて、無背景の画面に消え入る様な極度の薄墨で描かれ、瞳・鼻穴・口だけ濃墨のアクセントをつける「罔両画」を紹介。罔両画は宋・元代に中国で描かれたが日中間の交流の結果、日本に多く現存している。作例として、繊細で写実的な南宋代罔両画の代表的作品である直翁の《六祖挟担図》、元代に中国に渡って高僧となり現地で没した黙庵の《四睡図》・《布袋図》を取り上げる。
② 絵仏師として東福寺のために道釈人物画や頂相を工房制作し、東福寺派の基礎を作った明兆を紹介する。明兆は宋元画の写実性・再現性を抽象化し、明るい色調と明快な線で新しいタイプの道釈人物画を創造した。作例としてまず、建長寺(鎌倉)にあった南宋代の仏画に忠実な初期作である《五百羅漢図》全45幅の内〈白蛇が羅漢を呑む図〉を取り上げる。続いて、写実的な宋元画の道釈人物を抽象的で明快な線描と単純な彩色に変換した《達磨図》と《鉄拐図》を取り上げ、その手本となった中国絵画も紹介する。さらに禅僧の交流の中で漢詩文が盛行し、詩文の贈答や詩会が行われたことで描かれるようになった詩画軸の初期の例とされる明兆の伝称作《渓陰小築図》も取り上げる。
③ 室町幕府の御用絵師となり、禅余画であったそれまでの詩画軸に南宋院体画の様式を取り入れることで日本水墨山水画の主流を形成した相国寺派の画僧如拙とその弟子周文を紹介する。室町幕府4代将軍足利義持の主催による公的で企画性の強い作品として知られる如拙の《瓢鮎図》は、馬遠・夏珪の「辺角の景」の構図や梁楷の「減筆体」による人物の描法を取り入れている。また、真筆の現存しない周文の数多い伝称作の中で、最もその作風を伝えているとされる《水色巒光図》では、主山は中央、近景の書斎は隅に置かれて構図が整い、斧劈皴によって岩肌が描写され、直線的で簡略化された遠山が描かれるなど、南宋院体画様式の理解が進んでいることがわかる。このようにして日本の水墨山水画が禅僧間の私的サークルのコミュニケーションツールから公的アカデミーの視覚メディアへと変貌を遂げたことを解説。


キーワード ① 黙庵 ② 可翁 ③ 明兆 ④ 如拙 ⑤ 禅余画
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:日中の交流による禅宗文化の修得期に描かれた道釈人物画。絵仏師として東福寺のために道釈人物画や頂相を工房制作し、東福寺派の基礎を作った明兆。室町幕府の御用絵師となり、禅余画であったそれまでの詩画軸に南宋院体画の様式を取り入れることで日本水墨山水画の主流を形成した相国寺派の画僧如拙とその弟子周文。こうした日本の初期水墨画とその画家について、オリジナル配布資料の指定された画像を見直して、作品画像から作品名・作者名が、作品名・作者名から作品画像がわかるようにしておく。また、授業中に行った小テストの解答を参照し、復習して正解が得られるようにしておく。さらに、小テストの内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるかをチェックしておく。
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第5回の5つのキーワードについて事前に調べ、要点をノートにまとめておく。資料は指定の参考文献以外の文献やインターネット検索によるものでも構わない。

5 宋元画と中世日本絵画2 水墨画の正統 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、第5回は馬遠・夏珪様式をもとに瀟洒な日本の山水画様式を確立した周文、その弟子とされ、明快で雄渾な画風が武士に広く支持されて日本水墨画最大の巨匠となった雪舟を紹介する。

① オリジナル配布資料「宋元画と中世日本絵画2 水墨画の正統」No.1-3、『日本美術館』pp.502-503、『飾りと遊びの豊かなかたち』第3章 pp.37,40-41、シラバス第5回/細目レベル①
② オリジナル配布資料「宋元画と中世日本絵画2 水墨画の正統」No.4-8、『日本美術館』p.522、『飾りと遊びの豊かなかたち』第3章 pp.41,45-46、シラバス第5回/細目レベル②
③ オリジナル配布資料「宋元画と中世日本絵画2 水墨画の正統」No.9-12、『日本美術館』p.523、シラバス第5回/細目レベル③
コマ主題細目 ① 周文派と日本水墨画様式 ② 雪舟と真体山水画 ③ 雪舟と道釈人物画・潑墨山水画 ④ ⑤
細目レベル ① 馬遠・夏珪の院体画様式をもとに正系の日本水墨画様式を確立した周文とその系譜を図示し、雪舟、第6回で扱う狩野派、周文の画風を継承する小栗派との関係を解説。続いて現存の伝称作から周文の画風を概観する。作例として、前回に取り上げた詩画軸の《水色巒光図》と同じく伝称作の屏風《四季山水図屏風》を比較することで、請来された院体山水画の小品が詩画軸の制作に取り入れられ、それが拡大されて障屏画になる過程を見る。縦長の詩画軸に対し横長の屏風では画面構成の改変が必要となるが、片側半分に近景の楼閣と中景の主山を配し、残りの空間を水面として遠景に対岸を配することで解決。左隻と右隻は左右対称の配置で、両隻を並べると中央に広い水面と対岸が来ることになり、室内で中国の湖水を眺望できるようになっていることを解説。
② 相国寺で周文に学んだ後、山口に下向、明に渡って多様な画法を学び、独自の画風を切り開いた雪舟の山水画の展開を追う。まずは雪舟の明滞在中の作《四季山水図》(東京国立博物館)を取り上げ、当時の中国の宮廷で主流であった馬遠・夏珪の様式を継承する浙派らの影響を解説。続いて、近世以降、山水画の聖典とされ狩野派などに多くの模本が残る《山水長巻》を取り上げ、この作品が夏珪とその後継者らの山水図巻に由来する構図や表現を踏襲していること、モチーフの疎蜜・色調の対比が強く変化に富む力強い画面構成が雪舟の特徴であることを解説。そして最も有名な雪舟作品である《秋冬山水図》を取り上げ、戦国武将や近世以降の武士の広い支持を得た明快で雄渾な作風を紹介する。
③ 院体画の流れを汲む真体山水だけでなく、様々な様式・技法を駆使して多彩なジャンルをこなした雪舟作品の中から道釈人物画の代表作《慧可断臂図》と草体山水(潑墨)の代表作《破墨山水図》を紹介する。《慧可断臂図》では、雪舟が影響を受けた浙派の祖戴進の《禅宗六代祖師図巻》も取り上げ、写実的な状況説明をする戴進の作品に対し、雪舟の作品は禅宗の始祖達磨と第二祖の慧可の緊張感あふれる心のやりとりに焦点を置き、余分なモチーフを取り払った表現主義的なものであることを解説。《破墨山水図》では、馬遠・夏珪を模範とする院体山水画様式とは対極の玉澗を模範とする抽象的な潑墨山水においてもその高い手腕を見ることができることを、美術史的に重要とされる賛とともに解説する。


キーワード ① 周文 ② 雪舟 ③ 山水長巻 ④ 慧可断臂図 ⑤ 破墨山水図
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:馬遠・夏珪の院体画様式をもとに正系の日本水墨画様式を確立した周文とその系譜。相国寺で周文に学んだ後、山口に下向、明に渡って多様な画法を学び、独自の画風を切り開いて日本水墨画最大の巨匠となった雪舟。こうした日本水墨画の確立期における作品と画家について、オリジナル配布資料の指定された画像を見直して、作品画像から作品名・作者名が、作品名・作者名から作品画像がわかるようにしておく。また、授業中に行った小テストの解答を参照し、復習して正解が得られるようにしておく。さらに、小テストの内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるかをチェックしておく。
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第6回の5つのキーワードについて事前に調べ、要点をノートにまとめておく。資料は指定の参考文献以外の文献やインターネット検索によるものでも構わない。

6 明清画1 明の絵画 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、第6回では、明代前期に南宋院体画の伝統を継承し宮廷・在野で活躍した浙派、明代中期に元の文人画を継承して文人による画壇を形成した呉派、明代末期に文人画を大成した董其昌を紹介する。

① オリジナル配布資料「明清画1 明の絵画」No.2-6、プリント配布資料「中国の美術と工芸」第13章 pp.158-159,162-163、シラバス第9回/細目レベル①
② オリジナル配布資料「明清画1 明の絵画」No.7-12、プリント配布資料「中国の美術と工芸」第13章 pp.159-160,164-165、シラバス第9回/細目レベル②
③ オリジナル配布資料「明清画1 明の絵画」No.13-16、プリント配布資料「中国の美術と工芸」第13章 pp.160,165-166、シラバス第9回/細目レベル③
コマ主題細目 ① 浙派と宮廷絵画 ② 沈周・文徴明と呉派文人画 ③ 董其昌と文人画の大成 ④ ⑤
細目レベル ① 明代前期の宮廷絵画の隆盛期に南宋院体画の伝統を継承して主流となった浙派の山水画を紹介する。浙派は宮廷・在野を含む浙江省出身の職業画家たちで、雪舟をはじめ室町時代の日本絵画に影響を与えた。作例としては、南宋画の辺角構図に北宋画の主山を描き込んだ浙派の祖である戴進の《春冬山水図》、宮廷画家で雪舟が入明中に学んだ画家の一人である李在の《山荘高逸図》、以前の浙派に比べ、複雑な構図が単純化され筆致が粗放になる後期浙派の中心的画家呉偉の《漁楽図》、衰退期に向かう明後期の宮廷画家朱端の《寒江独釣図》を取り上げ、その変遷を概観する。時代を経るにつれて、南宋院体画や日本水墨画正系の緊密な構図と緻密な描写から乖離してゆくことを解説。
② 明代中期、江南の都市が経済発展して科挙試験を受験できる知識層が増加したため、官吏(士大夫)になれない在野の知識層(文人)が増加、文人文化の普及と共に民間の絵画需要も増加したことで文人による画壇が形成される。そうした中で隆盛した呉派を紹介する。作例としては、蘇州の文人社会の名士で呉派の祖となった沈周が元末四大家の一人王蒙を範とした《廬山高図》、同じく元末四大家の一人倪瓚を範とした《策杖図》、続いて沈周の後継者として呉派の様式を確立させた文徴明の細筆・淡彩による都会的で洗練された画風 の《雨余春樹図》、極端にデフォルメされた後期の作品《松壑飛泉図》を取り上げる。彼らのおおらかで親しみやすい画風は明末蘇州派と呼ばれる多くの後継者を生み、日本の文人画に影響を与えたことを解説。
③ 松江を拠点に、古画を研究・参照することで独自の画風を確立するだけでなく、自ら絵画史・画論を打ち立て、後世に多大な影響を残した董其昌を紹介する。作例としては郷里の松江の名山、崑山の草堂を描いた前期の代表作《婉孌草堂図》、王蒙《青卞隠居図》を範とした中景に倪瓚《漁荘秋霽図》のような近・遠景を加え、うごめくような山塊に奥行を与えた後期の代表作《青弁山図》、古画の研究から自らの様式を確立し、定式化へ向かう晩年の作品《倣古山水図冊》を取り上げる。董其昌が職業画家の北宗画に対する文人画家の南宗画の優位性を説いた「南北二宗論」は、その後の文人画中心の絵画観の支柱となり、明末以降は文人画が中国絵画の主流となることを解説。


キーワード ① 浙派 ② 沈周 ③ 文徴明 ④ 董其昌 ⑤ 南北二宗論
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:明代前期の宮廷絵画の隆盛期に南宋院体画の伝統を継承して主流となった浙派。明代中期、文人文化の普及とともに文人による画壇が形成される中で隆盛した呉派。明代末期、古画を研究・参照することで独自の画風を確立するだけでなく、自ら絵画史・画論を打ち立て、後世に多大な影響を残した文人画最大の巨匠董其昌。こうした絵画と画家について、オリジナル配布資料の指定された画像を見直して、作品画像から作品名・作者名が、作品名・作者名から作品画像がわかるようにしておく。また、授業中に行った小テストの解答を参照し、復習して正解が得られるようにしておく。さらに、小テストの内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるかをチェックしておく。
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第7回の5つのキーワードについて事前に調べ、要点をノートにまとめておく。資料は指定の参考文献以外の文献やインターネット検索によるものでも構わない。

7 明清画2 明末〜清中期の絵画 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、第7回では、明末清初期に董其昌の倣古(古典の教養に基づいた詩・書・画の制作)を継承し宮廷の主流になる正統派文人画と董其昌の新奇(個性・自由・奇想)を追求する民間画家、明代中期に宮廷で流行した中国洋風画と揚州で活躍した職業的文人画家を紹介する。

① オリジナル配布資料「明清画2 明末〜清中期の絵画」No.2-5、プリント配布資料「中国の美術と工芸」第13章 p.160、シラバス第10回/細目レベル①
② オリジナル配布資料「明清画2 明末〜清中期の絵画」No.6-12、プリント配布資料「中国の美術と工芸」第13章 pp.161,166-167、シラバス第10回/細目レベル②
③ オリジナル配布資料「明清画2 明末〜清中期の絵画」No.13-18、プリント配布資料「中国の美術と工芸」第13章 pp.161-162,168-169、シラバス第10回/細目レベル③
コマ主題細目 ① 董其昌の倣古と正統派文人画 ② 董其昌の新奇と遺民画家 ③ 中国洋風画と揚州画派 ④ ⑤
細目レベル ① 明末清初期は董其昌の打ち立てた絵画観が大きな影響力を持って山水画が主流となる。そして、董其昌の倣古(伝統)の継承と新奇(革新)の追求というそれぞれの方向性を示す画家たちが現れる。その内、古典の教養に基づいた詩・書・画を制作するという倣古の理論を継承する正統派文人画が清初期に主流派として活躍、董其昌の愛弟子王時敏の孫王原祁が清朝宮廷に仕えることで画院の指導様式となり、清代を通して影響力があった。作例としては王原祁が乾隆帝へ献上した《松渓仙閣図》、元末四大家の一人黄公望が得意とした代赭で彩色された山水《倣黄公望浅絳山水図》を取り上げる。文人画であっても宮廷画らしい節度と厳粛さが呉派や董其昌の作風とは異なることを解説。
② 明宗室の末裔で明滅亡後に曹洞宗の僧となり奉新山に隠棲した八大山人、同じく明宗室の末裔で南京で臨済宗寺院の住持を務めた石濤、明末に文学・政治結社で活動し、明滅亡後は南京の清涼山で絵画教師をしながら描いた龔賢。清朝に帰順せず、董其昌の新奇(革新)を追求して独創的な個人様式を確立した3人の反骨の民間画家たちを紹介する。作例として、写意花鳥画というジャンルに新生面を開拓した八大山人の《案晩帖》、構図・色彩感覚共に中国絵画の伝統に縛られない石濤の《黄山八勝画冊》・《廬山観瀑図》、人物のいない幻想的な独自の山水様式を確立した龔賢の《山水図冊》(ネルソン・アトキンズ美術館)・《千巌万壑図》(リートベルク美術館)を取り上げる。
③ 清代中期に宮廷画家となったイタリア人宣教師の朗世寧による、院体画に西洋絵画の遠近法・明暗法を取り入れた中国洋風画が宮廷の内外で流行する。作例として、《八駿図》と《百駿図巻》を取り上げる。また、中国洋風画の流行を受けて漢洋折衷様式の写実的な花鳥画を民間で制作していた沈南蘋は、日本に招かれて18世紀の日本絵画に大きな影響を及ぼすことを解説。その作例として、来日時の作とされる《老圃秋容図》、日本からの注文が絶えなかったという帰国後の作である《雪中遊兎図》を取り上げる。さらに、塩の流通で繁栄した揚州で新奇性の高い作品を描いた揚州画派から、揚州八怪の一人である金農の《墨戯冊》・《月華図》、華嵒の《鵬挙図》を取り上げる。


キーワード ① 八大山人 ② 石濤 ③ 朗世寧 ④ 沈南蘋 ⑤ 揚州画派
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:明末清初期に、董其昌の倣古の継承と新奇の追求というそれぞれの方向性を示す画家たち。明代中期に、院体画に西洋絵画の遠近法・陰影法を取り入れて宮廷の内外で流行した中国洋風画と塩の流通で繁栄した揚州で新奇性の高い作品を描いた揚州画派。こうした絵画と画家について、オリジナル配布資料の指定された画像を見直して、作品画像から作品名・作者名が、作品名・作者名から作品画像がわかるようにしておく。また、授業中に行った小テストの解答を参照し、復習して正解が得られるようにしておく。さらに、小テストの内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるかをチェックしておく。
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第8回の5つのキーワードについて事前に調べ、要点をノートにまとめておく。資料は指定の参考文献以外の文献やインターネット検索によるものでも構わない。

8 明清画と近世日本絵画 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、本コマの第8回ではまず、江戸中期に中国の文人への憧憬と脱俗の気運が高まったことで成立した初期の日本文人画、日本文人画の大成者である池野大雅と与謝蕪村を紹介。つづいて、写生画の確立者である円山応挙、写生画と文人画を融合させた呉春を紹介する。

① オリジナル配布資料「明清画と近世日本絵画」、『飾りと遊びの豊かなかたち』第9章pp.118-120、シラバス第8回/細目レベル①
② オリジナル配布資料「明清画と近世日本絵画」、『日本美術館』pp.782,788-789、『飾りと遊びの豊かなかたち』第9章pp.117,120-123、シラバス第8回/細目レベル②
③ オリジナル配布資料「明清画と近世日本絵画」、『日本美術館』pp.792-793、『飾りと遊びの豊かなかたち』第10章 pp.129-135、シラバス第8回/細目レベル③
④ オリジナル配布資料「明清画と近世日本絵画」、『日本美術館』p.793、『飾りと遊びの豊かなかたち』第10章 pp.135-137、シラバス第8回/細目レベル④
コマ主題細目 ① 日本の初期文人画 ② 日本文人画の大成者 ③ 写生画の確立 ④ 呉春と写生画・文人画の融合 ⑤
細目レベル ① 幕府の体制教学となった儒教(朱子学)と漢詩文の普及により文人の存在が広く認知され、江戸中期には文人への憧憬と脱俗の気運が高まったことで成立した初期の日本文人画(南画)を紹介。明末清初に出版された文人画の木版画譜が日本で翻刻され、広く流布することで儒学者を中心に日本でも文人画が流行、宋元画から明清画へ、手本とする中国絵画様式が転換する。まず、黄檗僧により将来され、初期文人画家たちの山水画の入門書となり、次第に広まったとされる木版画譜の例として『芥子園画伝』初集を取り上げる。つづいて、画家としては、初期文人画の多くが儒学者であるのに対し、町人出身の職業画家として活躍、法橋に叙せられた彭城百川を紹介。作例として、初期日本文人画の代表的大作とされる《山水図屏風》(東京国立博物館)を取り上げる。
② 日本文人画の二大巨匠である池野大雅と与謝蕪村を紹介する。池大雅は幼少より書の才能を発揮、15歳の頃から扇屋を営んで自作の扇絵を販売、20代より好んで登山をし、その実体験に基づく自然把握を踏まえた真景図を多く描いた。作例として《浅間山真景図》を取り上げる。そして大雅は40代から独自の画風を確立。作例として《楼閣山水図屏風》(東京国立博物館)を取り上げる。つづく与謝蕪村は、松尾芭蕉以後の質の平俗化が進む俳諧を復興させ、晩年には俳句と絵が補い合って豊かな世界を広げる俳画を確立、文人画の大成者として大雅と並び称される。作例として、気象表現に長け、静と動のコントラストを情感豊かに描く《鳶鴉図》、京都東山の夜景を描く晩年の傑作《夜色楼台図》を取り上げる。
③ 沈南蘋や西洋画の影響を受けた写生画の確立者である円山応挙を紹介する。応挙は、狩野派に学んだ後、興行のための「眼鏡絵」を西洋の遠近法で描き、生計を立てた。その後、円満院の門主祐常のお抱え絵師となり、本草学図解のため南蘋派の花鳥画や写生画を学び、動植物の写生を行う。このように日本絵画の本流ではない分野で活躍し、現実のものを写生して絵画化して来た経験が写生画の確立の礎となる。やがて応挙は写生画を大和絵の世界に持ち込み、伝統的な画題や画面形式に描くことで、従来の絵画の需要層にもアピールする様式を生み出し、18世紀の京都で絶大な人気を獲得する。作例として、従来の吉祥の意味を持つ装飾的絵画の花鳥画に写生画を導入した《牡丹孔雀図》、伝統的な大樹の画題と技法を踏襲しつつ、陰影法・遠近法を用いて立体感と奥行きを生み出した代表作《雪松図屏風》を取り上げる。
④ 与謝蕪村と円山応挙に学び、写生画と文人画を融合させた呉春を紹介する。蕪村の門人として俳諧と絵を学んだ呉春は、蕪村の死後、応挙との交流によって円山派の客観的で理性的な写実に文人画の叙情を加味した平明な作風を生み出す。作例として、写生画の端正な構図や形態表現と文人画のリズミカルな筆致を生かした《柳鷺群禽図屏風》、応挙の《雪松図》の構図を意識し、その画法である付立法で描いた代表作の《白梅図屏風》を取り上げる。また、呉春は自らの流派である四条派を開き、応挙の円山派とともに円山四条派と呼ばれ上方画壇の主流を形成するようになる。そして、明治以降になると円山四条派は写実的な西洋絵画に対抗できるアカデミックな絵画として近代日本画壇の基礎となっていったことも解説する。

キーワード ① 池野大雅 ② 与謝蕪村 ③ 画南 ④ 丸山応挙 ⑤ 写生画
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:黄檗僧により将来され、初期文人画家たちの山水画の入門書となり、次第に広まったとされる木版画譜。町人出身の文人画家として活躍、法橋に叙せられた彭城百川。日本文人画の二大巨匠である池野大雅と与謝蕪村。沈南蘋や西洋画の影響を受けた写生画の確立者である円山応挙。こうした絵画と画家について、オリジナル配布資料の指定された画像を見直して、作品画像から作品名・作者名が、作品名・作者名から作品画像が言い当てられるようにしておく。また、授業中に行った小テストの解答を参照し、復習して正解が得られるようにしておく。さらに、小テストの内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるかをチェックしておく。
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第2〜8回の配布プリントを見直しておく。

9 前半のまとめ 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、本コマの第9回では、第2~5回の宋元画とその影響を受けた日本の中世絵画、第6~8回の明清画とその影響を受けた日本の近世絵画といった、科目前半をの内容を振り返る。

①第2・3回のオリジナル配布資料、シラバス第9回/細目レベル①
②第4・5回のオリジナル配布資料、シラバス第9回/細目レベル②
③第6・7回のオリジナル配布資料、シラバス第9回/細目レベル③
④第8回のオリジナル配布資料、シラバス第9回/細目レベル④
コマ主題細目 ① 宋元画 ② 中世日本絵画 ③ 明清画 ④ 近世日本絵画 ⑤
細目レベル ① 中世の日本絵画に絶大な影響を与えた中国絵画を振り返る。それまで色彩による装飾性が重視されていた山水が、写実に基づく様式を備えることで独立したジャンルとなった唐代。唐の滅亡後、地方政権の分立に伴い各地の風土に根ざした山水画が展開する中、伝統的な画法である線描と、革新的な画法である水墨を融合させて本格的な水墨山水画が創始された五代。中国が再び統一されて文治主義による学問・芸術が栄え、深い自然観照に基づく真理の追究が求められて山水画様式が集大成された北宋代。北宋末の皇帝徽宗による宮廷画院の改革後、精巧な写実に彩色の美しさ、曲線美による装飾性と詩的情趣が加わり、ジャンルも一気に増大した南宋代までを期末テストに出題される画像の確認とともに振り返る。
② 日本水墨画の黎明期から確立期までを振り返る。日中の交流による禅宗文化の修得期に描かれた道釈人物画。絵仏師として東福寺のために道釈人物画や頂相を工房制作、宋元画の写実性・再現性を抽象化し、明るい色調と明快な線で新しいタイプの道釈人物画を創造して東福寺派の基礎を作った明兆。禅僧の交流の中で漢詩文が盛行し詩文の贈答や詩会がおこなわれたことで描かれるようになった詩画軸。室町幕府の御用絵師となり、禅余画であったそれまでの詩画軸に南宋院体画の様式を取り入れることで日本水墨山水画の主流を形成した相国寺派の画僧如拙とその弟子周文。相国寺で周文に学んだ後、山口に下向、明に渡って多様な画法を学び、独自の画風を切り開いた雪舟までを期末テストに出題される画像の確認とともに振り返る。
③ 明代前期から清代中期までの中国絵画を振り返る。明代前期の宮廷絵画の隆盛期に南宋院体画の伝統を継承して主流となった浙派の山水画。明代中期に文人による画壇が形成される中で隆盛した呉派。明代末期に、古画を研究・参照することで独自の画風を確立するだけでなく、自ら絵画史・画論を打ち立て、後世に多大な影響を残した董其昌。明末清初期に、古典の教養に基づいた詩・書・画を制作するという董其昌の倣古の理論を継承する正統派文人画と、清朝に帰順せず董其昌の新奇を追求して独創的な個人様式を確立した反骨の民間画家。清代中期に、西洋絵画の遠近法・陰影法が取り入れられた中国洋風画と、塩の流通で繁栄した揚州で新奇性の高い作品を描いた揚州画派。こうした明清画を期末テストに出題される画像の確認とともに振り返る。
④ やまと絵や漢画、琳派といった伝統的な日本の絵画を踏まえつつ明清画の影響を受けた江戸時代中期以降の日本絵画を振り返る。明末清初期に出版された文人画の木版画譜が江戸中期に日本で翻刻され、広く流布することで儒学者を中心に描かれ、幕末にかけて流行した日本の文人画。従来の絵画教育のように手本を写すのではなく、現実のものを写生して絵画化する手法で京都画壇の主流となり、明治維新後は西洋絵画に通じる写実性から近代日本画の礎となった写生画。いずれも日本人の嗜好や風土に合わせ、明清画にとどまらない多くの要素を包含し独自の発展をとげる。こうした18世紀から19世紀にかけて発生した百花繚乱の絵画を期末テストに出題される画像の確認とともに振り返る。

キーワード ① 院体画 ② 文人画 ③ 漢画 ④ 洋風画 ⑤ 浮世絵
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:期末テストの準備として、以下の項目をおこない、これまでの復習課題で不十分なところを重点的に見直しておく。
1. オリジナル配布資料の指定された画像から作品名・作者名が言い当てられるようにしておく
2. 作品名・作者名から、オリジナル配布資料のどの画像に該当するのかがわかるようにしておく
3. 各コマでおこなった小テストをもう一度やり直し、答え合わせをして正解が得られるようにしておく
4. 小テストの各設問の内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるか、作品名・作者名を書き出しておく
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第10回の5つのキーワードについて事前に調べ、要点をノートにまとめておく。資料は指定の参考文献以外の文献やインターネット検索によるものでも構わない。

10 西洋美術1 ルネサンスと西洋美術の規範 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、本コマの第10回では、ルネサンス絵画を明暗法・遠近法の発展、美術・医学における解剖学の発展という視点で読み解く。作例としては主に、13世紀末〜14世紀前半のプロトルネサンス、15〜16世紀のルネサンス絵画を聖母子像を中心に比較検討し、現代の実写映像と同じ原理による視覚表現が成立するまでの過程を捉える。

①オリジナル配布資料「西洋美術1 ルネサンスと西洋美術の規範」No.2〜4、『西洋美術館』pp.416-417、シラバス第10回/細目レベル①
②オリジナル配布資料「西洋美術1 ルネサンスと西洋美術の規範」No.5〜14、『西洋美術館』pp.172-175,354-355,364,410-411、『古代からルネサンスまで』第14章pp.196-197,201-210、シラバス第10回/細目レベル②
③オリジナル配布資料「西洋美術1 ルネサンスと西洋美術の規範」No.5〜9、13〜16、『西洋美術館』pp.355,364,403,415,420、『古代からルネサンスまで』第15章pp.210-211、シラバス第10回/細目レベル③
コマ主題細目 ① レオナルド・ダ・ビンチと自然科学 ② 遠近法の発展 ③ 明暗法の発展 ④ ⑤
細目レベル ① 第1回の「中世から近世へ」で扱った近代科学の発展と技術革新がルネサンス美術にどのように反映しているのか。近代科学と美術の関係をレオナルド・ダ・ビンチの手稿を手がかりに見てゆく。まず、『パリ手稿E』 紙葉43表面 、『アトランティコ手稿』 紙葉846裏面 によって鳥の観察と飛行装置の研究を、続いて『アトランティコ手稿』 紙葉4裏面によって土木工学機械や軍事技術の設計に携わっていたことを紹介。続いてウィンザー城王室図書館所蔵の《女性の内臓》によって臓器の構造の研究、『解剖手稿A』 紙葉4両面によって筋肉の構造の研究を紹介する。特に解剖学にレオナルドをはじめとしたルネサンスの画家たちは熱心で、そのことが絵画・彫刻におけるリアルな人体表現のデータベースとなったことを解説。
② ルネサンス絵画の大きな特徴の一つである遠近法(透視図法)を作例とともに解説。ここでは、ビザンティン・イコンの《ウラジーミルの聖母》を比較対象として、13世紀末から16盛期初頭にかけてのイタリアの「聖母子像」である、中世のチマブーエ《マエスタ》(サンタ・トリニタの聖母)、プロト・ルネサンス期のジョット《マエスタ》 (オニサンティの聖母)、ルネサンス初期のマザッチョ《聖母子と奏楽の天使》、ルネサンス中期のピエロ・デッラ・フランチェスカ《ブレラ祭壇画》といった作品を時代順に見てゆくことで、その展開を概説する。その過程でマザッチョの《聖三位一体》、レオナルド・ダ・ビンチ 《最後の晩餐》といった遠近法を語る上で欠かせない作品も紹介する。
③ ルネサンス絵画の大きな特徴の一つである明暗法(陰影法)を作例とともに解説。ここでは、ビザンティン・イコンの《ウラジーミルの聖母》を比較対象として、13世紀末から16盛期初頭にかけてのイタリアの「聖母子像」として、中世のチマブーエ《マエスタ》(サンタ・トリニタの聖母)、プロト・ルネサンス期のジョット《マエスタ》 (オニサンティの聖母)、ルネサンス初期のマザッチョ《聖母子と奏楽の天使》、ルネサンス中期のピエロ・デッラ・フランチェスカ《ブレラ祭壇画》、ルネサンス盛期のラファエッロ《美しき女庭師の聖母》といった作品を時代順に見てゆくことで、その展開を概説する。さらに明暗法を高度に発展させ、ラファエロ作品に影響を与えたレオナルド・ダ・ビンチ のスフマート技法による《モナ・リザ》も見る。


キーワード ① ジョット  ② マザッチョ  ③ ピエロ・デッラ・フランチェスカ ④ レオナルド ⑤ ラファエッロ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:ビザンティン・イコンの《ウラジーミルの聖母》を比較対象として、13世紀末から16盛期初頭にかけてのイタリアの「聖母子像」を時代順に見てゆくことで明らかにした、ルネサンス絵画の特徴である遠近法(透視図法)と明暗法(陰影法)の発展。こうしたテーマについて、オリジナル配布資料の指定された画像を見直して、作品画像から作品名・作者名が、作品名・作者名から作品画像がわかるようにしておく。また、授業中に行った小テストの解答を参照し、復習して正解が得られるようにしておく。さらに、小テストの内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるかをチェックしておく。
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第11回の5つのキーワードについて事前に調べ、要点をノートにまとめておく。資料は指定の参考文献以外の文献やインターネット検索によるものでも構わない。

11 西洋美術2 カトリック改革と西洋美術の展開 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、本コマの第11回では、16〜17世紀のカトリックの本山バチカンを中心に、盛期ルネサンスからバロックまでの美術の変遷をたどる。作例としてミケランジェロ、ルーベンス、ベルニーニ、ポッツォの絵画・彫刻・建築作品を取り上げる。宗教改革によって失ったカトリックの権威回復と信者獲得のためにこうした美術作品がどのような役割を果たしたかを見てゆく。

①オリジナル配布資料「西洋美術2 カトリック改革と西洋美術の展開」No.2〜10、『盛期ルネサンスから十九世紀末まで』第1章pp.9-20、『西洋美術館』pp.430-441、シラバス第11回/細目レベル①
②オリジナル配布資料「西洋美術2 カトリック改革と西洋美術の展開」No.11〜12、『盛期ルネサンスから十九世紀末まで』第10章pp.138,141-142、『西洋美術館』p.589、シラバス第10回/細目レベル②
③オリジナル配布資料「西洋美術2 カトリック改革と西洋美術の展開」No.13〜20、『盛期ルネサンスから十九世紀末まで』第7章pp.96-103、『西洋美術館』pp.586-587,590-591,604-605、シラバス第10回/細目レベル④
コマ主題細目 ① ミケランジェロとカトリック改革 ② ルーベンスとカトリック改革 ③ バチカンの劇場空間的公共建造物 ④ ⑤
細目レベル ① カトリック改革と関係の深かった盛期ルネサンス〜バロックの芸術家たちを紹介し、美術とカトリック改革の関係を探る。最初はバチカンで活躍したミケランジェロを扱う。ミケランジェロが、カトリックの正統性を訴えてバチカンの権威回復を目指すローマ教皇の要請でローマに招かれ、システィーナ礼拝堂の天井画と祭壇画という大規模な絵画を2期に分けて制作した様を紹介。それと並行して、ユリウス2世の側近エジーディオの改革とカトリックの新大陸への拡大、カール5世軍のローマ略奪、イエズス会のバチカン直属修道会化、トリエント公会議の召集などのバチカンの歴史を通観する。ミケランジェロの業績をカトリック改革の時代の美術に求められた壮大なスペクタクルの先駆けとして位置付ける。
② カトリック改革と関係の深かったバロックの芸術家として、まず、バロック絵画最大の巨匠であるルーベンスを紹介。アントウェルペン大聖堂の祭壇画《キリスト昇架》を取り上げ、新教徒の支配下だったフランドル地方が1585年にスペインに降伏、破壊された大規模祭壇画がルーベンスらによって復活した様を紹介。同時に非対称の構図に肉体の過剰な量感・誇張されたポーズ・劇的な感情表現・激しい動感が描かれるバロック絵画の特徴を解説し、こうした要素が信仰心の鼓舞に貢献したことを示す。さらに、カトリック改革の尖兵となったイエズス会の創設者の活躍を描く《聖イグナティウス・デ・ロヨラの奇跡》も、宗教改革で失ったカトリックの地盤回復をヨーロッパ外に求めた同会の活動とともに紹介する。
③ カトリック改革と関係の深かった芸術として、最後は建築空間と融合した彫刻・絵画を紹介する。教皇や枢機卿から委嘱を受け、彫刻と建築を融合した劇的なバロック的総合芸術を創造した、イタリア・バロック最大の彫刻家・建築家であるベルニーニと、建築空間を壮大に見せる大規模な聖堂・宮殿装飾でカトリックの栄光を讃えたトロンプルイユの画家ポッツォを取り上げる。彼らの生み出す視覚効果を最大限に利用した建築空間が、世界宗教としてその版図を拡張し多数の信者を獲得してゆくカトリックの権威を実感させることを、示す。作例としては、ベルニーニのサン・ピエトロ広場回廊とヴィットリオ聖堂コルナーロ礼拝堂、ポッツォのサンティニャーツィオ聖堂天井画を見てゆく。


キーワード ① ミケランジェロ ② ルーベンス ③ ベルニーニ  ④ ポッツォ ⑤ 対抗宗教改革
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:ルネサンス以降の西洋の油彩画や銅版画に描かれた遠近法・明暗法の特徴と日本・中国の絵画の表現との違い。西洋の緻密な写実表現と明暗表現を中国の花鳥画に取り入れた南蘋派の影響と西洋の書物の挿絵の影響のもとに生まれた洋風画。浮世絵版画に西洋の透視図法を持ち込んだ浮絵が発展し、印象派に多大な影響を与えた浮世絵風景画へと至る過程。こうしたテーマについて、オリジナル配布資料の指定された画像を見直して、作品画像から作品名・作者名が、作品名・作者名から作品画像がわかるようにしておく。また、授業中に行った小テストの解答を参照し、復習して正解が得られるようにしておく。さらに、小テストの内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるかをチェックしておく。
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第12回の5つのキーワードについて事前に調べ、要点をノートにまとめておく。資料は指定の参考文献以外の文献やインターネット検索によるものでも構わない。

12 西洋美術と日本美術1 西洋絵画と近世日本絵画 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、本コマの第12回は、初めての西洋との出会いを契機として安土桃山時代に生まれた初期洋風画、江戸中期の蘭学の興隆に伴って流入した写実表現や遠近法用いた蘭画や浮世絵など、西洋絵画の技法が日本絵画にいかに影響を与えたかを探る。

①オリジナル配布資料「西洋美術と日本美術1 西洋絵画と近世日本絵画」、『飾りと遊びの豊かなかたち』第5章pp.73-75、『日本美術館』pp.630-635、シラバス第12回/細目レベル①
②オリジナル配布資料「西洋美術と日本美術1 西洋絵画と近世日本絵画」、『飾りと遊びの豊かなかたち』第11章pp.141-148、『日本美術館』pp.806-811、シラバス第12回/細目レベル②
③オリジナル配布資料「西洋美術と日本美術1 西洋絵画と近世日本絵画」、『飾りと遊びの豊かなかたち』第12章p.168、『日本美術館』pp.770-773,822-823、シラバス第12回/細目レベル③
コマ主題細目 ① 南蛮屏風と初期洋風画 ② 南蘋派と洋風画 ③ 遠近法と浮世絵風景画 ④ ⑤
細目レベル ① 16世紀後半から17世紀初頭にかけて、キリスト教布教のために訪れたスペイン、ポルトガル人から様々な文物がもたらされることで生まれた美術を紹介する。まずは、来日した西洋人に対する興味・関心が金碧障壁画に西洋風俗を描かせた南蛮屏風を紹介する。作例として、豊臣家の御用絵師であった狩野内膳の《南蛮屏風》を取り上げる。つづいて、こうした異国文化を日本絵画の様式で描く南蛮屏風に対し、キリスト教布教のための教育機関で西洋絵画の技法を学んだ日本人によって描かれた初期洋風画を紹介する。作例として、初期洋風画の白眉と言える《洋人奏楽図屏風》を取り上げる。しかし、日本初のこうした西洋の影響を受けた絵画群は禁教令によって途絶え、これ以上の展開を見ることはなかったことも解説する。
② 享保の改革によって輸入品目の制限を緩和したことから入手可能となった西洋の書物の挿絵の影響のもとに生まれた洋風画と、西洋画の緻密な写実表現や明暗法を中国の花鳥画に取り入れた南蘋派の影響を通観する。まずは平賀源内から西洋画法を伝授されたと言われる秋田藩士小田野直武の《不忍池図》、直武に学んだ秋田藩主佐竹曙山の《松に唐鳥図》を紹介。沈南蘋風の明暗法と緻密な写実による近景の花鳥、銅版画の遠近法の影響を受けた遠景の風景表現を解説する。続いて銅版画・油彩画を研究・制作した司馬江漢のそれぞれの代表作として《両国橋図》、《異国人物風景図》を紹介。さらに、松平定信の援助のもと銅版画・油彩画を研究・制作した亜欧堂田善の《ミツマタノケイ》、《両国図》を通して、その背後にある幕末へと向かう時代の西洋文明研究の必要性にも触れる。
③ 浮世絵版画に西洋の透視図法を持ち込んだ浮絵が発展し、印象派に多大な影響を与えた浮世絵風景画に至る過程を通観する。初期の浮絵の作例として奥村政信の《芝居狂言舞台顔見世大浮絵》を、続いて、政信の浮絵の問題点である視点の高さと視点の不統一を改良した歌川豊春の《浮絵新吉原惣仕舞之図》を取り上げる。このように視点が低く奥行きの深い空間表現は屋外の風景表現をも一新させ、鳥居清長の《飛鳥山の花見》のような美人画へと応用される様を見る。一方、西洋銅版画の遠近法と陰影法を木版に取り入れる試みとして葛飾北斎の《くだんうしがふち》を紹介。こうした取り組みが洗練され、やがて北斎の《冨嶽三十六景》や歌川広重の《東海道五十三次》といった浮世絵風景画の傑作シリーズを生み出したことを解説。また、日本絵画が西洋に受け入れられるには、その相違点だけでなく共通する空間認識が存在したことにも言及する。


キーワード ① 南蛮美術 ② 初期洋風画 ③ 南蘋派 ④ 蘭画 ⑤ 葛飾北斎
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:ルネサンス以降の西洋の油彩画や銅版画に描かれた遠近法・明暗法の特徴と日本・中国の絵画の表現との違い。西洋の緻密な写実表現と明暗表現を中国の花鳥画に取り入れた南蘋派の影響と西洋の書物の挿絵の影響のもとに生まれた洋風画。浮世絵版画に西洋の透視図法を持ち込んだ浮絵が発展し、印象派に多大な影響を与えた浮世絵風景画へと至る過程。こうしたテーマについて、オリジナル配布資料の指定された画像を見直して、作品画像から作品名・作者名が、作品名・作者名から作品画像がわかるようにしておく。また、授業中に行った小テストの解答を参照し、復習して正解が得られるようにしておく。さらに、小テストの内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるかをチェックしておく。
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第13回の5つのキーワードについて事前に調べ、要点をノートにまとめておく。資料は指定の参考文献以外の文献やインターネット検索によるものでも構わない。

13 西洋美術と日本美術2 明治維新と文化交流 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、本コマの第13回は明治維新によって流入した西洋絵画が日本絵画にいかに影響を与えたか、また、明治政府が日本の伝統工芸を国際的地位向上のためにいかに利用したか、さらに、欧米に流出した浮世絵がいかに西洋美術に影響を与えたかを探る。

①オリジナル配布資料「西洋美術と日本美術2 明治維新と文化交流」、『飾りと遊びの豊かなかたち』第11章pp.150-152、『日本美術館』pp.866-867、シラバス第13回/細目レベル①
②オリジナル配布資料「西洋美術と日本美術2 明治維新と文化交流」、『飾りと遊びの豊かなかたち』第15章pp.201-203,206-208、『日本美術館』pp.896-897、シラバス第13回/細目レベル②
③オリジナル配布資料「西洋美術と日本美術2 明治維新と文化交流」、『日本美術館』pp.926-927、シラバス第13回/細目レベル③
コマ主題細目 ① 西洋絵画の流入 ② 欧化主義と西洋画 ③ 万国博覧会と輸出工芸品 ④ ⑤
細目レベル ① 幕末から明治にかけて西洋絵画に本格的に取り組み、その草分けとなった高橋由一を通して、日本人が如何にその技法を習得していったかを概観する。下野国佐野藩士の子として生まれた由一は、はじめ狩野派について学ぶが、西洋の石版画を見てその迫真性に魅せられ、幕府の洋学研究機関に入る。そして、横浜の居留地にいたチャールズ・ワーグマンらに付いて油彩画の技法を学ぶことになる。作例としては油彩が持つ色彩や細部に至るまでの記録性を生かした《花魁》、写実に優位性のある油彩の特質を生かした即物的な《鮭》、江戸時代から浮世絵に描かれていた名所を描くことで洋画を普及させようと描いた《江の島図》を取り上げ、油彩という新しいメディアの可能性を追求する様を追う
② 留学によって西洋絵画の伝統的な技法と主題を学んだ日本人の魁の一人、山本芳翠を通して明治初期の欧化政策のもと、日本人が如何に国際文化としての油彩画を習得したかを概観する。日本で最初の官立美術学校に学んだ山本芳翠は、本場パリの国立美術学校でその真髄に触れる。作例としてはまず、在仏時代に学んだ西洋美術の伝統的な技法で裸婦像に取り組んだ《裸婦》(岐阜県美術館)を取り上げ、由一から格段にその理解が深まったアカデミックな油彩画を見る。つづいて、欧化主義の反動による国粋主義の時代に帰国し、洋画排斥の苦境の中、西洋の歴史画に比肩しうる画題として日本の説話を描いた《浦島図》を取り上げ、国粋主義の風潮に対応しつつも本格的な洋画の定着を目指した様を見る。
③ 幕藩体制の中、高度な技術に磨きをかけてきた職人の技は、明治以降、万国博覧会への出展をはじめとした輸出工芸品の制作に向けられる。それは殖産興業・輸出振興といった経済面のみならず、日本が国際社会にその存在をアピールするための外交手段となったことを解説。作例としては1873年のウィーン万博に出品された横山彌左衛門の銅器《源頼光大江山入図花瓶》、1890年の内国勧業博覧会で妙技1等となった海野勝岷の彫金《蘭陵王置物》、1900年のパリ万博に出品されて金牌を受賞した並河靖之の七宝《四季花鳥図花瓶》を取り上げる。さらに、日本の風俗を紹介する「衣装人形」の作品がヨーロッパ各国に残る安本亀八による《相撲生人形》のリアリズムも紹介する。こうした過剰な技巧や装飾性がヨーロッパの中国趣味の流れを受けたものでありながら日本文化を海外にアピールする手段となり、西洋の美術の新しい流れとしてアール・ヌーボーをはじめとした美術工芸に影響を与えていったことを解説。


キーワード ① 欧化主義   ② 油彩画  ③ 高橋由一   ④ 山本芳翠  ⑤ 万国博覧会
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:明治初期の欧化主義のもと、日本人がいかに国際文化としての油彩画を習得したか。殖産興業・輸出振興のみならず、日本が国際社会ににその存在をアピールするための外交手段となった過剰な技巧と装飾性を誇る職人技。ヨーロッパの最新の美術潮流に大きな影響を与えた浮世絵とその実際。こうしたテーマについて、オリジナル配布資料の指定された画像を見直して、作品画像から作品名・作者名が、作品名・作者名から作品画像がわかるようにしておく。また、授業中に行った小テストの解答を参照し、復習して正解が得られるようにしておく。さらに、小テストの内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるかをチェックしておく。
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第14回の5つのキーワードについて事前に調べ、要点をノートにまとめておく。資料は指定の参考文献以外の文献やインターネット検索によるものでも構わない。

14 西洋美術と日本美術3 西洋近代絵画とジャポニスム 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、本コマの第14回では、19世紀末から20世紀初頭にかけて非西欧世界の文物が美術に影響を及ぼす中、西洋の近代美術とその展開に影響を与えたを日本絵画を扱う。

①オリジナル配布資料「西洋美術と日本美術2 明治維新と文化交流」、『飾りと遊びの豊かなかたち』第11章pp.150-152、『日本美術館』pp.866-867、シラバス第13回/細目レベル①
②オリジナル配布資料「西洋美術と日本美術2 明治維新と文化交流」、『飾りと遊びの豊かなかたち』第15章pp.201-203,206-208、『日本美術館』pp.896-897、シラバス第13回/細目レベル②
③オリジナル配布資料「西洋美術と日本美術2 明治維新と文化交流」、『日本美術館』pp.926-927、シラバス第13回/細目レベル③
コマ主題細目 ① 印象主義と近代都市の風俗 ② ポスト印象主義と風景画 ③ 世紀末美術と女性像 ④ ⑤
細目レベル ① ルネサンス以来の西洋美術を革新した印象主義の作品と、印象派の画家たちが愛好した浮世絵を見ることで、西洋近代美術の発展に日本美術が如何に影響を与えたかを探る。まずは、印象主義に影響を与えた近代美術の先駆者とされるマネの作品を取り上げ、明暗法による立体感を抑制した人物描写と、遠近法を排除した無背景で奥行の無い画面が浮世絵を意識したものであることを解説。つづいて、印象主義の絵画と伝統的なアカデミズムの絵画を比較してその違いを解説。そして、印象主義の画家としてモネとドガの作品を取り上げ、そこに浮世絵の影響を見てゆく。いずれも都市生活の日常を切り取ったスナップショットのような画面が、入念に構成された画面にモニュメンタルな主題を描くアカデミックな絵画と大きく異なることを解説。
② 色彩重視の印象主義に欠如していた構築性や形態感に重きを置いたポスト印象主義の風景画と浮世絵風景画に目を向ける。まず、アンリ・リヴィエールが葛飾北斎の《富嶽三十六景》の富士山にエッフェル塔を見立てて近代化したパリを描いた版画集《エッフェル塔三十六景》に浮世絵風景画の影響を探る。つづいて、近代文明を謳歌する印象主義やリヴィエールとは裏腹に、近代都市に背を向け南フランスの農村を描く風景画として、ゴッホがアルルで描いた《ラングロワの橋》、セザンヌが故郷プロバンスの山を《富嶽三十六景》のごとく連作で描いた作品の一つ《松の木のあるサント・ヴィクトワール山》を見る。いずれもアカデミックな西洋絵画に無い大胆な画面構成に浮世絵風景画の影響を見ることができる。
③ ここでは、帝国主義による繁栄とその歪みによる破滅の不安を抱えたヨーロッパの世紀末美術に目を向ける。この時代は愛(エロス)と死(タナトス)の対概念の象徴としてファム・ファタル(魔性の女)のイメージを持つ女性像が盛んに描かれた。作例として、アール・ヌーボーの挿絵画家ビアズリーの《クジャクのスカート》、ラファエル前派の先導者ロセッティの《プロセルピナ》、ウイーン世紀末の画家クリムトの《ユディトⅠ》、パリで人気を博しアール・ヌーボーの代表的イメージとなったミュシャのポスターから《ジスモンダ》などを取り上げる。こうした退廃美に彩られた作品群にも、西洋の秩序や宗教的価値観の外にある日本美術の影響を随所に見ることができる。


キーワード ① ジャポニスム ② 印象主義 ③ ポスト印象主義 ④ アール・ヌーボー  ⑤ ウイーン世紀末
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:ルネサンス以来の西洋美術を革新した印象主義の作品と、印象派の画家たちが愛好した浮世絵。色彩重視の印象主義に欠如していた構築性や形態感に重きを置いたポスト印象主義の風景画と浮世絵風景画。ファム・ファタルのイメージを持つ女性像が盛んに描かれた世紀末美術と浮世絵の関係。こうしたテーマについて、オリジナル配布資料の指定された画像を見直して、作品画像から作品名・作者名が、作品名・作者名から作品画像がわかるようにしておく。また、授業中に行った小テストの解答を参照し、復習して正解が得られるようにしておく。さらに、小テストの内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるかをチェックしておく。
予習課題:次回授業の理解を深めるために、第10〜14回の配布プリントを見直しておく。

15 後半のまとめ 科目の中での位置付け 本科目では国際的視点から日本の芸術文化を捉えなおす。第1回では、授業の前提として、中国・西洋美術と日本美術の歴史上の影響関係を概観する。前半の第2回から9回までは中国美術とその影響を受けた日本美術を、主に絵画に焦点を当て見てゆく。第2・3回は「宋元画」と題して、宋代を中心とした中国絵画の歴史を辿る。第4・5回は、禅僧の余技にはじまり、周文、雪舟へと受け継がれる日本水墨画の正系に至るまでの、宋元画の影響を受けた漢画の展開を見る。第6・7回は「明清画」と題して、明代から清代中期にかけての中国絵画の歴史を辿る。第8回は日本の文人画や写生画といった明清画の影響を受けた近世の日本絵画を紹介する。第9回は、前半のまとめとして中国絵画とその影響を受けた日本中世・近世絵画を扱った第8回までを振り返る。後半の第10回から15回までは西洋美術と日本美術の影響関係を見てゆく。第10・11回は「西洋美術」と題して、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、西洋美術の規範となったルネサンス美術の展開を辿る。第12・13・14回ではルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を見てゆく。第15回は後半のまとめとして、近世・近代の西洋美術と日本美術の影響関係を扱った第14回までを振り返り、期末テストに向けての解説をおこなう。
以上のような本科目全体の中で、本コマの第15回では、第10~11回の近世ルネサンス以降の西洋美術の特徴とその変遷、第12~15回の西洋美術と日本美術の影響関係といった、科目後半の内容を振り返る。

①シラバス第15回/細目レベル①
②第10・11回のオリジナル配布資料、シラバス第15回/細目レベル②
③第12・13・14回のオリジナル配布資料、シラバス第15回/細目レベル③
コマ主題細目 ① 期末テストの説明 ② ルネサンスと西洋美術 ③ 西洋美術と日本美術 ④ ⑤
細目レベル ① 期末テストは主に「はい・いいえ」「単一選択」「複数選択」「並べ替え」「マッチング」などの形式で出題される。設問は基本的に小テストで出題されたものと同じ内容となるが、出題形式は必ずしも一致しない。また、問題・解答用紙の他に、資料として授業で指定された出題画像を掲載したプリントが配布され、画像の作品名や作者名を問う問題や、小テストの設問内容にどの作品が関係するのかを問う場合もある。したがって、それに対応できるように小テストの設問内容と関連する出題画像を覚え、選択肢からその作品名や作者名を選べるようにしておく必要がある。出題範囲は「1.宋元画」「2.宋元画と中世日本絵画」「3.明清画」「4.明清画と近世日本絵画」「5.西洋美術」「6.西洋美術と日本美術」の6つの履修指標の内の4つからとなる。以上の内容に加えて詳細な補足説明もおこなう。なお、出題画像の確認は次のコマ主題細目②・③でおこなう。
② 西洋美術の規範となったルネサンス美術と、西洋美術が日本を含む海外へ展開する契機となるカトリック改革の時代の美術を振り返り、世界を席巻することとなる合理的思考と科学技術による視覚芸術に目を通す。中世のイコンから、13世紀末〜14世紀前半のプロトルネサンス、15〜16世紀のルネサンスにかけて、遠近法・明暗法、解剖学に基づく人体表現など、現代の実写映像や3DCGと同じ原理による視覚表現が成立するまでの過程を、聖母子像を中心に見直す。つづいて、16〜17世紀のカトリックの総本山バチカンを中心に、ミケランジェロが彫刻・壁画制作に建築設計に活躍する盛期ルネサンスから、ベルニーニ、ポッツォによるバロックの総合芸術に至るまでの美術の変遷をたどる。
③ ルネサンス以降の西洋美術の影響を受けた近世から近代にかけての日本美術と、西洋の近代美術に影響を与えた日本美術を振り返る。初めての西洋との出会いを契機として安土桃山時代に生まれ、禁教令によって断絶した初期洋風画、江戸中期の享保の改革による蘭学の興隆に伴って流入した写実表現や遠近法を用いた蘭画や浮世絵。明治維新によって流入した西洋絵画に教育機関を設立して本格的に取り組み、発展していった日本の洋画。明治政府が国際的地位向上のために利用したか日本の伝統工芸の技。19世紀末から20世紀初頭にかけての西洋文化の変革期に、非西欧世界の文物が美術に影響を及ぼす中で西洋の近代美術に日本美術が及ぼした影響。こうした西洋美術と日本美術の密接な関係について見直してゆく。


キーワード ① 院体画 ② 文人画 ③ 漢画 ④ ルネサンス ⑤ ジャポニスム
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題・予習課題:期末テストの準備として、以下の作業をおこない、これまでの復習課題で不十分なところを重点的に見直しておく。
1. オリジナル配布資料の指定された画像から作品名・作者名が言い当てられるようにする
2. 作品名・作者名から、該当するオリジナル配布資料の画像がわかるようにする
3. 各コマでおこなった小テストをもう一度やり直し、答え合わせをして正解が得られるようにする
4. 小テストの各設問の内容と関連するオリジナル配布資料の画像がどれに当たるかを選び出し、その作品名・作者名を書き出す
5. 出題形式が変わっても対応できるよう、配布資料を参照して小テストの内容を十分に理解する
6. 第15回の細目レベル①をよく読み直して、それに対応した準備や心構えをしておく

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
宋元画 五代に、本格的な水墨山水画を創造した荊浩。北宋代に、それぞれの風土に根ざした様式をつくり華北山水の規範となった李成と范寛。北宋後期に、五代以来の山水画様式を集大成した郭熙。北宋最後の皇帝で宮廷画院を改革した徽宗以降、ジャンルが一気に多様化した南宋画院。画院画家である馬遠・夏珪が日本で「真体」の手本とされたのに対して、日本で「行体」の手本とされた牧谿と「草体」の手本とされた玉澗。こうした宋元画について、具体的な作例と関連づけて理解する。 院体画、三遠法、辺角の景 25 2・3
宋元画と中世日本絵画 衣文粗筆・肉身細筆や罔両画の技法で描かれた道釈人物画。絵仏師として東福寺のために道釈人物画や頂相を工房制作し、東福寺派の基礎を作った明兆。室町幕府の御用絵師となり、禅余画であったそれまでの詩画軸に南宋院体画の様式を取り入れることで日本水墨山水画の主流を形成した相国寺派の画僧如拙。如拙を継いで正系の日本水墨画様式を確立した周文。周文に学んだ後、明に渡って多様な画法を学び、日本水墨画最大の巨匠として後世の規範となった雪舟。こうした日本の水墨画の展開と作品について、具体的な作例と関連づけて理解する。 禅余画、詩画軸、院体画、相国寺、浙派 25 4・5
明清画 明代前期、南宋院体画の伝統を継承して主流となった浙派。明代中期、文人文化の普及とともに隆盛した呉派。明代末期に古画を研究・参照することで独自の画風を確立するだけでなく、自ら絵画史・画論を打ち立て、後世に多大な影響を残した董其昌。明末清初、董其昌の倣古の継承と新奇の追求というそれぞれの方向性を示す画家たち。明代中期、院体画に西洋絵画の遠近法・陰影法を取り入れた中国洋風画と、揚州で新奇性の高い作品を描いた揚州画派。こうした明清画について、具体的な作例と関連づけて理解する。 浙派・呉派・正統派文人画・遺民画家・南蘋派 25 6・7
明清画と近世日本絵画 江戸中期、文人画の木版画譜が日本で翻刻され、広く流布することで儒学者を中心に広まった初期文人画。登山の実体験に基づく真景図を多く描き、後年に独自の画風を確立して文人画を大成した池大雅。俳句と絵が補い合って豊かな世界を広げる俳画を確立、大雅と並び称された与謝蕪村。従来の絵画のように絵手本を写すのではなく、現実のものを写生して絵を描き写生画を確立させた円山応挙。応挙の客観的で理性的な写実に文人画の叙情を加味し、平明な作風を生み出した呉春。こうした写生画の成立と展開について具体的な作例と関連づけて理解する。 南画・明末蘇州派・円山四条派 25 8
西洋美術 ルネサンス以降、西洋美術がどのように変わったのか。13世紀末から16盛期初頭にかけての聖母子像の変遷を追うことで見ることのできる遠近法(透視図法)と明暗法(陰影法)の発展。システィーナ礼拝堂の絵画を制作したミケランジェロ、宗教改革によって破壊された大規模祭壇画を復興させ、イエズス会の絵画も描いたルーベンス、バロック的総合芸術を創造したベルニーニやポッツォといったカトリック改革と芸術家の関わり。こうした事柄を、具体的な作例と関連づけて理解する。 ルネサンス、バロック、印象主義、ポスト印象主義、世紀末美術 25 10・11
西洋美術と日本美術 西洋の写実表現と明暗表現を中国の花鳥画に取り入れた南蘋派の影響と西洋の書物の挿絵の影響のもとに生まれた洋風画。西洋画の遠近法を持ち込んだ浮世絵版画。油彩画の草分けとなった高橋由一と、本格的な留学によって西洋絵画の伝統的な技法と主題を学んだ山本芳翠。日本が国際社会にアピールするための外交手段となった工芸の数々。印象主義・ポスト印象主義・世紀末芸術など、ヨーロッパの最新の美術潮流に大きな影響を与えた浮世絵とその実際を具体的な作例と関連づけて理解する。 南蛮美術、蘭画、欧化主義、万国博覧会、ジャポニスム 25 12・13・14
評価方法 期末テスト
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 なし
参考文献 栗本徳子編 『信仰、自然との関わりの中で』・『飾りと遊びの豊かなかたち』藝術学舎 各2,750円、金子典正編『中国の美術と工芸』藝術学舎 2,750円、水野千依編『古代からルネサンスまで』・『盛期ルネサンスから十九世紀末まで』藝術学舎 各2,750円、『日本美術館』・『西洋美術館』小学館 各14,000円、『日本美術全集』小学館 各巻16,500円
実験・実習・教材費 なし