区分 (生)フィールド生態科目 フィールド生態共通科目 (環)フィールド生態科目 (心・犯)学部共通科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門性 理解力 実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
専門知識 教養知識 思考力
実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
個人・社会・自然が直面する課題に対して専門的な理解を深めると共に、学際的な柔軟性を有し、実践的な能力を有する。グローバルな視野を持ち、国際社会に貢献できる力を有する。企業・地域社会などのあらゆるコミュニティに寄与する組織的な活動能力を有する。
科目の目的
私たちのいのちや暮らしは,例えば農業による食料の供給や,森林による水の浄化や酸素の供給といった,生態系の恵み(生態系サービス)により支えられている.この講義では,生態系の構造及び機能や,その特徴を学ぶとともに,それらがもたらす生態系サービスを将来にわたり持続的に利用していく方法について考える.さらには,生態系サービスと人間の関わりの歴史的背景を踏まえた上で,その考えをどのように社会に活かし,自然環境との共生を図っていけば良いかを考える.
到達目標
生態系の要素と機能,及びそれらの人間との関係性(特に生態系サービス),生態系改変の歴史,現在の地球環境問題,生物多様性の役割について,それぞれの内容を端的に説明ができると共に,それらの関係性についても総括的に説明することができる.
科目の概要
生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆく.現在,国の政策や企業経営においてその位置づけが重視されているSDGsや,その前身となったMDGs,生態系に関する大規模総合評価として世界で初めての試みであるミレニアム生態系評価,生態系と生物多様性の金銭的価値評価を目指したTEEBなど,前述の事項を扱っていく上で落とすことのできない世界的な動きや日本の施策についても扱う.また,今後の専門科目の履修につなげられるよう,随所に生態学に関するトピックスを織り交ぜていく.
科目のキーワード
生態系機能,生態系サービス,生物多様性,生態系管理,環境評価,農業,人間の福利,持続可能性,ミレニアム生態系評価,SDGs
授業の展開方法
本授業は,可視的に理解を補う意図でスライドを用いた説明を中心に行う.配布プリントは,そのスライドに基づいた資料であり,手元とスライドを相互に確認をしながら授業を受講することとなる.なお,手元にスライド資料があるからと言って,授業時に口頭もしくは板書にて行われる説明を基に,自らしっかりと資料に書き込みをしないと,後に復習を行う際に当該授業における重要事項が曖昧なものとなってしまい,知識が定着しないばかりか,場合によっては不適切で使えない間違った知識が身についてしまう.また,まとめの回では,それまでの複数回の授業内容について,それぞれの内容の関連性や展開事項等を,演習を交えながら理解を深める.
オフィス・アワー
【月曜日】3・4時限目(後期のみ)、【火曜日】1時限目、2時限目(前期のみ)、【木曜日】1・2時限目・昼休み、【金曜日】1時限目
科目コード ENS200
学年・期 1年・前期
科目名 生態系の機能と社会
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 なし
展開科目 生態系における物質循環、基礎生態学
関連資格 なし
担当教員名 藤井芳一
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 生態系の概念 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.本科目の土台的知識として,生態系についての基本的な見方や考え方について知っておく必要があることから,第1回では,生態系の概念,生態系の構成要素,気候帯に対応した生態系区分であるバイオームについて扱う.生態系とは,単に生物の集まりを指す語ではなく,生物的要素と非生物的要素との相互作用によって成立するものであり,その相互作用によって形成される(化学)物質の移動や物質の形態の変化つまり物質循環を伴うもの,またエネルギーの移動を伴うものであることを理解することが今回の重要事項である.
以下の文献情報を中心として作成した配布資料を用いる.
① 鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社, 32-33頁. D. サダヴァ他, 石田泰樹・斎藤成也 監訳(2014)『大学生物学の教科書 第5巻生態学』講談社, 13-21頁. A. Mackenzie, A.S. Ball, S.R. Virdee, 岩城英夫訳(2001)『生態学キーノート』シュプリンガー・フェアラーク東京, 1-2頁, 173-177頁.
② 鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社, 4-13頁. D. サダヴァ他, 石田泰樹・斎藤成也 監訳(2014)『大学生物学の教科書 第5巻生態学』講談社, 23-51頁. A. Mackenzie, A.S. Ball, S.R. Virdee, 岩城英夫訳(2001)『生態学キーノート』シュプリンガー・フェアラーク東京, 217-244頁.
③ 鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社, 14-23頁,56-57頁,D. サダヴァ他, 石田泰樹・斎藤成也 監訳(2014)『大学生物学の教科書 第5巻生態学』講談社, 190-230頁. A. Mackenzie, A.S. Ball, S.R. Virdee, 岩城英夫訳(2001)『生態学キーノート』シュプリンガー・フェアラーク東京, 59-66頁.
コマ主題細目 ① 生態系とは ② バイオーム ③ 生態系と物質循環 ④ ⑤
細目レベル ① 生態系の定義は,教科書によって様々な表現があるが,「ある空間におけるすべての動物,植物および物理的相互作用を含むもの」「生物とその生物が相互作用する外部環境をまとめたもの」「生物とそれを取り巻く非生物的な環境からなるシステム」などとされる.そのような中で,一般的には,森,川,海といった認識可能な景観の単位をもって生態系を定義することが多く,それぞれの生態系で特有の生物群集と,物質およびエネルギーの動きを見出すことができる.その構成要素は,生産者,消費者,分解者などと区分される生物的要素と,光,水,温度,空気,土壌などの非生物的要素がある.それらの要素がお互いに関わりを持って(相互作用によって)秩序を保っており,その結果,物質の移動や形態の変化,つまり物質循環が形成される.
② ①の通り,生態系において,生物的要素と非生物的要素は相互作用をしていることからすると,生物種(生物的要素)はそれらが受容できる環境(非生物的要素)でしか存在しえないと言え,つまり,類似した環境では類似した生物種が見られると捉えることができる.ここで,気候が類似した地域では,類似した植生が見られるという特徴から,バイオーム(生物群系)という概念が誕生した.バイオームとは,生態学的に類似した生物が,類似した適応をして生息している特定の物理的環境のことであり,ツンドラ,熱帯林,温帯多雨林などの世界の主要群集タイプの単位となっている.植生タイプに大きく影響を及ぼす要因として,平均年間気温・降水量,季節変動といった気候条件の他に,土壌の性質も重要である.バイオームの境界は不明瞭なものであり,エコトーン(移行帯)で相互に混じり合う.
③ 人を含め,生物が利用する養分(元素)は,太陽からの光エネルギーによって駆動する大気や水の流れによって移動する.様々な場所に様々な化学形態で存在する養分(元素)だが,生物にとって適切な場所で適切な化学形態で存在しない限り生物は利用できない.このことは,特に自ら移動ができない植物において顕著であるが,移動ができる動物においても体の大きさ等によりその行動範囲の制約があるため重要な観点である.そのため,どの養分(元素)が,どのようにどこにどの化学形態で移動し,存在するかといった,各種養分(元素)の生物地球化学的循環(簡単には,物質循環)について知ることは,生態系を理解する上で重要である.広い意味での物質循環は,生物的,地質的,化学的循環を指し,それらは様々な生態系に大きく影響を及ぼす.


キーワード ① 生態系 ② 生物的要素 ③ 非生物的要素 ④ バイオーム ⑤ 物質循環
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:生態系とはどのようなものか,生態系の構造や生態系の構成要素について説明ができるよう,ノートに改めてまとめてみること.特に,生態系の構成要素である生物的要素,非生物的要素の代表的なものを3つ程度は挙げられるようにしておく.また,生物的要素と非生物的要素との相互作用によって形成される物質循環について,その物質の動きが生じる具体例を示せるようにしておくこと.バイオームとは何か,その区分にはどのようなものがあったかを,確認しておくこと.

予習課題:次回のコマシラバスをよく読み,生態系の仕組みと機能について理解をしておくこと.特に,生物的要素内の関係性である,生物間相互作用や食物網について,コマシラバス記載事項程度は理解ができている状態としておくこと.また,生物多様性,生態系サービスの細目レベルの記載事項を読み,自身の理解と異なる部分があった際には,その内容についてコマシラバスの記載にマークをしておくこと.

2 生態系の構造と機能 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.本科目の土台的知識として,生態系についての基本的な見方や考え方について知っておく必要があることから,第2回では,第1回でも扱った生態系の構成要素の一つである“生物的要素”の中の関係性である生物間相互作用や食物網について扱う.人によっては,これらの内容こそが“生態系”という語をイメージする部分であるかもしれない.また,“生物多様性”や“生態系機能”“生態系サービス”といったキーワードについても,例えば“生物多様性”は単に種の多様性のみを指すものではないことなど,その語の示す意味について確認を行う.さらに,地球規模の環境評価の枠組みの一つであるプラネタリー・バウンダリーズ(2015)における生物多様性と生態系機能の扱いについても紹介する.
以下の文献情報を中心として作成した配布資料を用いる.
① A. Mackenzie, A.S. Ball, S.R. Virdee, 岩城英夫訳(2001)『生態学キーノート』シュプリンガー・フェアラーク東京, 18-20頁,73-137頁. 鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社, 22-23頁,34-35頁,40-41頁,70-75頁. D. サダヴァ他, 石田泰樹・斎藤成也 監訳(2014)『大学生物学の教科書 第5巻生態学』講談社, 104-137頁. 宮下直・瀧本岳・鈴木牧・佐野光彦(2017)『生物多様性概論』朝倉書店,47-53頁. 宮下直・野田隆史(2003)『群集生態学』東京大学出版会, 1-72頁. 森章(2018)『生物多様性の多様性』共立出版, 78-122頁.
② A. Mackenzie, A.S. Ball, S.R. Virdee, 岩城英夫訳(2001)『生態学キーノート』シュプリンガー・フェアラーク東京, 178-192頁.鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社, 18-21頁, 宮下直・瀧本岳・鈴木牧・佐野光彦(2017)『生物多様性概論』朝倉書店,15-17頁. 宮下直・野田隆史(2003)『群集生態学』東京大学出版会, 106-138頁.
③ 宮下直・瀧本岳・鈴木牧・佐野光彦(2017)『生物多様性概論』朝倉書店,1-19頁
. 森章(2018)『生物多様性の多様性』共立出版, 26-77頁.
④ 宮下直・瀧本岳・鈴木牧・佐野光彦(2017)『生物多様性概論』朝倉書店,19-22頁. 鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社, 26-27頁. 森章(2018)『生物多様性の多様性』共立出版, 123-164頁. 東北大学生態適応グローバルCOE 編(2013)『生態適応科学』, 16-54頁. J.ロックストローム(著)武内和彦(監修)谷淳也・津高政志・蓑輪智子・北村恵以子・高橋愛・眞鍋由実・吉田哲郎・森秀行(訳)(2018)『小さな地球の大きな世界 プラネタリ―・バウンダリーと持続可能な開発』丸善出版,59-81頁.
コマ主題細目 ① 生物間相互作用 ② 食物網 ③ 生物多様性 ④ 生態系サービス ⑤
細目レベル ① 生物群集は,様々な種からなる個体群(ある空間に存在する同一種の個体の集団)の集合体であり,各個体群はお互いに何らかの形で影響し合っていることが多い.また,個体群内の個体においても,相互作用し合っているか潜在的に相互作用しうる状態にある.このため,生物群集の成り立ちや維持機構を考える上では,生物間相互作用を把握することが重要である.相互作用のメカニズムから類型化すると,主なものとして競争,捕食,寄生,共生などが挙げられる.ある生物種は,特定の資源,時間等の条件下において出現しうるが,そのような要求性によって特徴づけられる生態学的な特性をニッチという.ニッチが重なりあう者がいる場合,資源の奪い合い等が生じるため,そのような競争相手がいない場合に比べてより狭いニッチ空間での生活範囲となりうる.これは,競争の相互作用の一例といえる.
② 一次生産者である植物は,群集の最初の栄養段階を構成し,一次消費者(植食動物など)が第二の栄養段階として一次生産者を利用し,二次消費者(肉食動物など)が第三の栄養段階として一次消費者を利用する.この栄養段階間の関係を食物連鎖と呼ぶ.また,一般に群集の生食連鎖系では,植物生産力(一次生産)が大きな基盤をつくり,それに依存する一次消費者の生産力はそれよりも小さくなり,さらにその次にくる二次消費者の生産力はいっそう小さくなるといったように,栄養段階はバイオマスのピラミッド構造をもつことがある(生態ピラミッド).しかし,この構造には多くの例外もある.また,いずれの生態系にも多くの食物連鎖が存在し,それが結合して一体になることがあることから,食物連鎖よりも,食物網と呼ぶ方がむしろ正確であるだろうとも言われる.食物網は,群集における餌資源と消費者の相互作用(いわゆる,食う―食われるの関係)の全体像を表現したものであり,その理解は,そのまま全体群集の構造の理解につながる.
③ 生物多様性とは,一般的に種の多様性をイメージするが,1992年に採択された生物多様性条約における概念は,「生物多様性国家戦略2012-2020」や「生物多様性及び生態系サービスの総合評価報告書(環境省,2016)」においても継承されており,“様々な生態系が存在すること,また生物の種間及び種内に様々な差異が存在すること”として,種内(遺伝子)の多様性,種間(種)の多様性,生態系の多様性の3つのレベルでの多様性を含むものと定義されている.近年ではさらに,景観の多様性を含めて4つのレベルで考える提案も成されている.なお,「生物多様性国家戦略2012-2020」においては,“「生物多様性」を「つながり」と「個性」という2つの言葉に言い換えてみると理解がしやすくなります”と表現されており,「つながり」という言葉を用いて生物間相互作用の多様性についても生物多様性の概念の枠組みとして説明が成されていることから,遺伝子の多様性や生態系の多様性についてイメージがしやすくなるかもしれない.なお,生物多様性を守る意味として「すべての生命が存立する基礎となる」「人間にとって有用な価値を有する」「豊かな文化の根源となる」「将来にわたる暮らしの安全性を保証する」の4つが挙げられている.生物多様性の評価方法として,種多様性だけに着目することの限界や問題が指摘されており,系統的多様性や機能的多様性といった,生物の特性に注目した方法が提案されてきている.
④ 生態系内の相互作用による物質の生産,分解,循環などのプロセスを生態系機能と呼び,それは,人間が生態系から得ている様々な生態系サービス(公益的機能)を支えている.世界中の全ての人々は,地球上の生態系と,その恵みである生態系サービスに完全に依存していることから,生態系機能の維持は重要である.③の生物多様性と,生態系機能もしくは生態系サービスとの関係性については,機能の安定性,多機能性や機能的冗長性の観点を中心に明らかにされつつあるが,地球規模の環境評価の枠組みの一つであるプラネタリー・バウンダリーズ(2015)においては,生物多様性(特に遺伝的多様性)の状況が危機的と判断されている一方で,機能的多様性については未定量状態であり,益々の調査・研究の進展が待たれるところである.

キーワード ① 生物間相互関係 ② 食物網 ③ 生物多様性 ④ 生態系機能 ⑤ 生態系サービス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:生態系の構成要素の一つである生物的要素としての生物群集は,様々な生物間相互作用の結果,成り立っているが,具体的にはどのような相互作用が考えられるのか,相互作用の類型として2つ程度は説明ができるようにしておくこと.食物網とは何かについて,説明ができるようにしておくこと.生物多様性条約における生物多様性の概念に基づき,生物多様性の3つのレベルでの多様性について説明ができるようにしておくこと.生物多様性,生態系機能,生態系サービスの関係について,簡単に説明ができるようにしておくこと.

予習課題:次回のコマシラバスをよく読み,生態系に関する大規模総合評価として世界で初めての試みであるミレニアム生態系評価の内容について理解をしておくこと.

3 ミレニアム生態系評価 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.第3回では,地球上の生態系の変化が人間の福利に及ぼす影響を評価することを目的として実施され,生態系に関する大規模総合評価として世界で初めての試みとなったミレニアム生態系評価を扱う.この報告書は,生態系からの人類に対するサービス(生態系サービス)として4つに区別し,それに基づいた評価を行った結果に基づき,生態系の保全と持続的な利用を進め,人間の福利への生態系の貢献を高めるために,我々が取るべき行動は何かが科学的に示されている.今回はミレニアム生態系評価の実施に至った背景や4つの生態系サービスの概念,評価における4つのシナリオを中心に学ぶ.
以下の文献情報を中心として作成した配布資料を用いる.
①Millennium Ecosystem Assessment 編『生態系サービスと人類の将来―国連ミレニアムエコシステム評価』オーム社, 241pp.
鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社, 130-131頁. 小宮山宏・武内和彦・住明正・花木啓祐・三村信男 編(2010)『サステイナビリティ学 4 生態系と自然共生社会』東京大学出版会, 35-49頁.
②Millennium Ecosystem Assessment 編『生態系サービスと人類の将来―国連ミレニアムエコシステム評価』オーム社, 241pp. 鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社, 132-135頁. 小宮山宏・武内和彦・住明正・花木啓祐・三村信男 編(2010)『サステイナビリティ学 4 生態系と自然共生社会』東京大学出版会, 49-60頁.
③Millennium Ecosystem Assessment 編『生態系サービスと人類の将来―国連ミレニアムエコシステム評価』オーム社, 241pp. 小宮山宏・武内和彦・住明正・花木啓祐・三村信男 編(2010)『サステイナビリティ学 4 生態系と自然共生社会』東京大学出版会, 60-74頁.
コマ主題細目 ① ミレニアム生態系評価 ② 4つの生態系サービス ③ 4つのシナリオ ④ ⑤
細目レベル ① ミレニアム生態系評価は,ラムサール条約,ボン条約,生物多様性条約,砂漠化対処条約などを経て各国から挙げられた様々な要請に応える形で,2001年から2005年にかけて国連環境計画(UNEP)を事務局として“生態系の変化が人間の福利に及ぼす影響を評価する”ことを目的に実施された.これによると,世界の生態系の構造と機能は,20世紀後半,人類の歴史上かつてない速さで改変されており,その大部分は,食糧,水,木材と燃料の需要の増大を満たすために引き起こされたものである.この改変は,地球上の生命の多様性という面において,莫大かつ概して不可逆的な喪失をもたらした.ミレニアム生態系評価は,焦点となるほとんどの課題に関連した重要な情報を提供できたものの,政策的質問に答えるには十分な科学的情報が得られなかった.
② 生態系サービスとは,人々が生態系から享受する便益のことである.生態系サービスには,食糧,水,木材,繊維,遺伝子資源などを供給する供給サービス,気候,洪水,疫病,水質などを調整する調整サービス,レクリエーション,審美的享受,精神的充足感などの文化的サービス,土壌形成,花粉媒介,栄養塩循環などのように,他の生態系サービスの基盤となる基盤サービスがある.これらのサービスの多くは,相互に強い関連がある.全ての生態系サービスの人間による利用は,急速に増加している.ミレニアム生態系評価においては,調査された生態系サービスのうち,約60%(生態系サービスの内容を24の区分に分けて評価したうちの15のサービス)は悪化しているか,持続的利用が不可能な状態であることが判明した.

③ ミレニアム生態系評価では,生態系と人間の福利について確からしい将来を検討するために,生態系の変化の要因とその相互作用について異なる仮定を立て,それに基づき2050年における状況に焦点を合わせ,地球規模の4つのシナリオを作成している.ⅰ. 世界協調,ⅱ. 力による秩序,ⅲ. 順応的モザイク,ⅳ. テクノガーデンである.この時,地球規模の開発に関して,グローバル化が進行する道と地域化が進行する道との二つを,生態系管理に関して,事後対応的に対策に取り組むものと予防的な生態系管理との二つのアプローチについて検討している.ⅱ. 以外の3つのシナリオにおいては,政策,制度,実践の大幅な変更により,生態系に対し増大し続ける負荷による負の影響の多くを軽減できることが示されている.それには大幅な改善が必要とされるが,今のところそのような改善は進展していない.ⅱ. のシナリオにおいては,供給サービス,調整サービス,文化的サービスが今日よりも2050年において悪化すると推定されている.ⅱ. 以外の3つのシナリオにおいては,前述3つのサービスのうち少なくとも一つは向上すると予測されるが,生物多様性の減少は急速に進行すると推定されている.4つ全てのシナリオにおいて,2050年までに,人類による生態系サービスの利用は大幅に増加し,多くの場合,これは生態系サービスの質の低下を伴う.


キーワード ① ミレニアム生態系評価 ② 生態系サービス ③ 人間の福利 ④ 持続的利用 ⑤ シナリオ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:ミレニアム生態系評価について,その実施背景と成果について説明ができるようにしておくこと.ミレニアム生態系評価において提示された生態系サービスの4つの区分について,それぞれのサービスの内容について簡単に説明ができるようにしておくこと.ミレニアム生態系評価において立てられた4つのシナリオについて,それぞれのシナリオの内容について簡単に説明ができるとともに,どのシナリオにおいてどの生態系サービスが悪化してしまいうるのかについて理解をしておくこと.

予習課題:人類が生態系に対して,意図的に直接的に大きな働きかけを行った最初の事象は農業である.生態系と人間との関係についての理解を目指す本科目において,農業の在り方について知ることは重要である.次回のコマシラバスをよく読み,人間と生態系との関わりの歴史的背景としての農業について理解をしておくこと.

4 人間と生態系との関わりの歴史~人間と農業~ 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.第4回では,人間の生態系に対する働きかけの代表的な事例として農業を取り上げ,その歴史と生態系への影響について理解する.人間は,その出現以降,道具を用いた高い狩猟技術により動物を狩りつくしに近い状態までに狩りを行うことができたことから,農業開始以前から自然の破壊者であったと言える.一方,農業は,植物を栽培する営みであることから,大規模な農地開拓などが無ければ,むしろ自然保護の活動と捉えることもできる.農業を通した人間の自然との関わりの延長として,里地里山や林業(人工林造成)についても概観する.
以下の文献情報を中心として作成した配布資料を用いる.
① 鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社, 104-113頁.湯本貴和 編,松田裕之・矢原徹一 責任編集(2011)『シリーズ日本列島の三万五千年―人と自然の環境史 第1巻 環境史とは何か』文一総合出版, 75-84頁.
② A. Mackenzie, A.S. Ball, S.R. Virdee, 岩城英夫訳(2001)『生態学キーノート』シュプリンガー・フェアラーク東京, 299-307頁
. 鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社, 118-119頁. 湯本貴和 編,松田裕之・矢原徹一 責任編集(2011)『シリーズ日本列島の三万五千年―人と自然の環境史 第1巻 環境史とは何か』文一総合出版, 84-104頁.
③ 湯本貴和 編,松田裕之・矢原徹一 責任編集(2011)『シリーズ日本列島の三万五千年―人と自然の環境史 第1巻 環境史とは何か』文一総合出版, 84-90頁.
④ 鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社, 120-121頁. 中静透・菊沢喜八郎 編(2018)『森林の変化と人類』共立出版, 68-123頁.
コマ主題細目 ① 人類の出現 ② 農耕の発達 ③ 里山の景観 ④ 拡大造林政策の影響 ⑤
細目レベル ① 人類の出現と分布の拡大が,有史以前より世界各地の生態系に大きな影響を与えてきた.人間は,約5.2万年前にアフリカから西アジアに,約4.5万年前には中国,3.5万年前には日本に到達したとされる.このような移住の過程で,ヒトはマンモスをはじめとする大型哺乳類を狩り,多くの大型哺乳類を絶滅させた.おそらく人間の農耕開始前の資源利用は,ある場所で狩猟によって資源が減れば,次の場所に移動するというもので,多くの動物の行動と同様であるが,道具を使い高い狩猟技術を獲得した人間は,他の動物とは異なり,狩り尽くしに近い資源利用をしていたものと考えられる.大型哺乳類の多くは草食獣であり,多量の植物を食べることを通じて,生態系の状態を決定付ける役割を果たすと言える.つまり,大型哺乳類の絶滅は,生態系の状態を大きく変化させると考えられる.農耕の開始が人間による環境破壊の始まりだとする見解もあるが,大型哺乳類の絶滅を通して生態系を大きく改変した点で,既に自然環境の破壊者であったと言える.
② 人間による農耕は,約1万3千年前には開始されていた.農耕開始の要因として,ⅰ. 人口増加,ⅱ. 大型哺乳類の利用度低下,ⅲ. 食材の多様化などが可能性として挙げられている.ヒトの生活は,狩猟中心から採集中心へと変化し,貯蔵可能な食物を利用する食生活から,より定住的な生活を可能にした.種子や果実の貯蔵が,播種による栽培行為を準備したと言える.植物は移動しないので,採集によって採り尽くしが成されてしまう.このような略奪的な利用は長期的持続性を欠くことを学び,栽培という技術が開発され,多様な植物を隣接する地で育てる行為(初期の農耕)が開始された.このように考えると,農耕の初期はむしろ,人間による自然保護(資源の保全)の始まりであったとも言える.しかしながら,人口増加や塩類化などによる土地に劣化に伴う農地の拡大は,森林の減少を招いた.樹木の再生速度を決める雨量などの環境要因の違いによって,環境が劣化し社会の持続性が損なわれた地域とそうでない地域が存在した.さらに,化学肥料・農薬・農業機械などの利用による生産力の向上によって,農業生産量は増加し,人口増加を支えたが,水域の汚染や富栄養化などの環境劣化が世界各地で進行した.
③ 日本の水田や里山に代表されるような独特な生態系は,人間による生態系の適度な改変により成立している.丘陵地の河川を改変などは,稲作を行うための治水工事として弥生時代に始まり,森と水田と小川やため池が隣接するという人為的な環境として,里山の景観が出来上がった.森林に覆われた改変前の景観に比べ,小川やため池という水域が多く,森林面積を減らしたという点で環境破壊としての一面を持つと同時に,里山に見られる生物はこのような里山環境に適応して生息しており,生物多様性を高める効果をもたらす.このような里山景観の創出が,“自然を守った”行為なのか“自然を壊した”行為なのかは,簡単には決められない.“自然を守る”として,人間が改変した里山を森林に戻すことになれば,里山環境に適応してその地に生息していた生物はいなくなり,多様性が減少する可能性がある.
④ 日本の人工林は,森林面積の41%を占めており,そのうちの69%がスギかヒノキである(平成24年現在,林野庁資料より).かつて,戦中の必要物資や戦後の復興資材を確保するために大量の木材が必要とされたことから,大規模な森林伐採が行われ,これにより荒廃した国土を緑化するために,伐採跡地への植林が進められた.昭和20年代半ば(1950年代)から昭和40年代半ば(1970年代)にかけては,毎年30万ha以上の植林が行われ,特に昭和30年代(1950年代半ば)以降には,石油,ガスへの燃料転換により薪炭需要が低下するとともに,高度経済成長の下で建築用材の需要が増大する中,薪炭林等の天然林を人工林に転換する「拡大造林」が進められた.これらの人工林の造成に当たっては,ⅰ. 早期に森林を造成して国土の保全や水源の涵養を図ることができ,ⅱ. 建築用途に適し経済的価値も見込めることから,成長が速いスギ・ヒノキ等の針葉樹を中心に人工林が造成された.これらの常緑針葉樹林は,葉の平均寿命が長く葉量が多い.人工林では基本的に樹木の間に無駄な隙間はつくらず,お互いに触れあった状態で育てる.この閉鎖したスギ・ヒノキの人工林では,光は樹冠で遮られて林内は暗くなり,下生えが少なくなり,その結果,森林の種組成は単純になり,生物量としてはほとんど単一の造林樹種だけになる.偏った樹種のみによる人工林化は,このような生態系の不健全化を招き,多様性の乏しく脆弱な生態系が形成されることとなった.

キーワード ① 資源利用 ② 農業 ③ 里山生態系 ④ 人工林 ⑤
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:農業が「人間の生態系に対する働きかけの代表的な事例」として挙げられる理由について説明ができるようにしておくこと.農業のような「人間の生態系に対する働きかけ」が,生物多様性を高めることがあるが,その仕組みについて説明ができるようにしておくこと.農業と生態系(自然)との関わりの歴史的推移について説明ができるようにしておくこと.広大な面積に人工林が造成された背景について説明ができるとともに,人工林の生態系への影響,及びその悪影響の軽減策について説明ができるようにしておくこと.

予習課題:次回,第1回から第4回までの授業内容について,それらの関連性や展開事項を踏まえつつ,演習を行う.自ら解答できるよう,各回の内容について復習をしておくこと.

5 まとめ~生態系の見方・考え方~ 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.第1回及び第2回においては,本科目の土台的知識として,生態系についての基本的な見方や考え方として,生態系の概念,生態系の構造と機能について学んだ.第3回では,生態系(自然)から得られる恵みを生態系サービスとして捉え,主に人為的活動に伴う生態系の変化が人間の福利に与える影響を生態系サービスの観点から評価した,ミレニアム生態系評価について学んだ.第4回では,生態系に変化を生じる人為的活動の代表例である農業について歴史的背景とともに概観し,里地里山や人工林を含めた生態系への人為的影響について生物多様性の観点から正の影響,負の影響を確認した.第5回は,それらの総括として,人間活動と生態系との繋がりの観点から各回で学んだ内容の関係性について演習を通じて確認を行う.
第1回から第4回までの授業内容と配布資料に基づき構成した,確認用資料を用いる.
コマ主題細目 ① 生態系の構成要素と物質循環 ② 生態系の構造と機能 ③ ミレニアム生態系評価 ④ 農業生態系 ⑤
細目レベル ① 本科目において,生態系と人間との関係性を考えられるようになるためには,そもそも生態系とは何か,について知っておく必要がある.その観点から,第1回で学んだ内容の中でも最重要事項について,他回の内容の理解のためには,その内容が土台となっていることを確認する.生態系の概念,生態系の構造や構成要素,気候帯に対応した生態系区分であるバイオームについて,それらを正しく理解ができているかについて,演習を通じて確認を行う.生態系の構成要素である生物的要素(多様な生物),非生物的要素(光,水,大気,土壌など)の代表的なものについて正しい理解ができているとともに,その両者の相互作用によって形成される物質の移動や物質の形態の変化,つまり物質循環やエネルギーの移動を含めて生態系が成り立っていることを,正しく理解ができているかについて確認を行う.
② 本科目において,生態系と人間との関係性を考えられるようになるためには,そもそも生態系とは何か,について知っておく必要がある.その観点から,第1回でも扱った生態系の構成要素の一つである“生物的要素”の中の関係性である生物間相互作用や食物網について,その理解の程度を確認する.また,生物間相互作用の類型区分としては,どのようなものがあるかについて複数挙げられる程度の理解をしていることを確認する.“生物多様性”は単に種の多様性のみを指すものではないが,その他にはどのような“生物多様性”の概念があるのかについて,確認を行う.さらに,地球規模の環境評価の枠組みの一つであるプラネタリー・バウンダリーズにおいて,どのような判断・提言が成されたのかについて,確認を行う.

③ 本科目において,生態系と人間との関係性を考えられるようになるためには,生態系が人間に対してどれほどの貢献を果たしているかを知ることも重要である.このことから,地球上の生態系の変化が人間の福利に及ぼす影響を評価することを目的として実施され,生態系に関する大規模総合評価として世界で初めての試みとなったミレニアム生態系評価について,実施背景とその成果について,確認を行う.ミレニアム生態系評価においては,基盤,供給,調整,文化的サービスといった4つの生態系サービスの区分が提示されたが,これらの生態系サービスのそれぞれの内容について理解ができているかを確認する.ミレニアム生態系評価における評価に際し立てられた,世界協調,力による秩序,順応的モザイク,テクノガーデンといった4つのシナリオについて,その内容について簡単に説明ができるか,また,どのシナリオにおいてどの生態系サービスが悪化してしまいうるのかについての理解を確認する.
④ 本科目において,生態系と人間との関係性を考えられるようになるためには,人間の生態系に対する働きかけの代表とも言える農業について理解を深めておく必要がある.その観点から,農業の歴史と農業が及ぼす生態系への影響について理解ができているか確認をする.「人間の生態系に対する働きかけ」は,生物多様性から視ると一般に負の影響を与えるように思われるが,正の影響を与えることもあり,その両者についてどのような場合において負の影響,正の影響を与えるかについて,適切に説明ができるかについて確認をする.「人間の生態系に対する働きかけ」の一つとして,農業以外にも人工林の造成などがあるが,日本において広大な面積に人工林が造成された背景について説明ができるとともに,人工林の生態系への影響,及びその悪影響の軽減策について説明ができるかを確認する.

キーワード ① 生態系 ② 生物多様性 ③ ミレニアム生態系評価 ④ 生態系サービス ⑤ 農業生態系
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業時に解答できなかった事項,及び授業時に理解が追い付かなかった事項について,改めて第1回から第4回までの学習内容の確認を行うこと.その上で,やはり理解のできない事項がある際には,担当教員に質問し,確実な理解を得ておくこと.各項目について,それぞれ単独に用語を覚えているだけでは,役に立たない知識である.それらがどのようにお互いに関係し合い,どのように自然環境を形成していて,どのように人間に恵み(サービス)を提供しているかについて思考を巡らすことは,実践的な知恵として知識を昇華させることに役立つ.

予習課題:第6回からは,第3回のコマ主題細目②でも扱った生態系サービスの詳細について扱う.次回のコマシラバスをよく読み,生態系の供給サービスについて理解しておくこと.

6 生態系の供給サービス 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.第3回で扱ったミレニアム生態系評価において4つの生態系サービスの区分について触れたが,第6回においてはそのうちの(資源)供給サービスについて学ぶ.ミレニアム生態系評価において得られた主要な四つの結論のうちの一つとして,『過去50年間にわたって,主に食料,淡水,木材,繊維および燃料の需要の急速な増大に対応するために,人類は歴史上かつてない速さで,大規模に生態系を改変してきた.この改変は地球上の生命の多様性という面では,莫大かつ概して不可逆的な喪失をもたらした.』ことが挙げられているが,ここで人類が求めた物は,生態系の供給サービスによって得られる物であり,人類による生態系の改変は,膨大な供給サービスの要求によって生じたと言える.

以下の参考文献の情報を中心として作成した配布資料を用いる.
① Millennium Ecosystem Assessment 編『生態系サービスと人類の将来―国連ミレニアムエコシステム評価』オーム社, 1-18頁,65-82頁,180-189頁
. Pushpam Kumar edit. (2010) The Economics of Ecosystems and Biodiversity (TEEB) 報告書『Ecological and Economic Foundations(生態系と生物多様性の経済学:生態学と経済学の基礎,IGES仮訳)』1章15-39頁,2章16-29頁. 宮下直・瀧本岳・鈴木牧・佐野光彦(2017)『生物多様性概論』朝倉書店,19-22頁.
② Millennium Ecosystem Assessment 編『生態系サービスと人類の将来―国連ミレニアムエコシステム評価』オーム社, 1-18頁,65-82頁,180-189頁. Pushpam Kumar edit. (2010) The Economics of Ecosystems and Biodiversity (TEEB) 報告書『Ecological and Economic Foundations(生態系と生物多様性の経済学:生態学と経済学の基礎,IGES仮訳)』1章15-39頁,2章16-29頁.
③ 鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社, 112-119頁. 小宮山宏・武内和彦・住明正・花木啓祐・三村信男 編(2010)『サステイナビリティ学 4 生態系と自然共生社会』東京大学出版会, 75-107頁.
コマ主題細目 ① 供給サービス ② 供給サービスの持続可能性 ③ 里地里山における供給サービス ④ ⑤
細目レベル ① 供給サービスは,生態系から得られた生産物であり,ミレニアム生態系評価の分類では,食糧,(淡)水,繊維,燃料,遺伝資源,生化学物質,自然薬品,装飾品の木材が挙げられている.また,生物多様性の地球規模での損失に関する経済的評価の重要性から実施されたTEEB(The Economics of Ecosystem and Biodiversity: 生態系と生物多様性の経済学)プロジェクト(第12回でも扱う)における分類では,食糧,水,原材料,遺伝資源,医薬品資源,観賞資源が挙げられている.それぞれ多少の記載項目の違いはあるが,いずれも生態系における生産物であることには違いはない.このことから考えると,化石燃料は通常の時間スケールでは再生産ができず持続可能ではないので,一般に生態系サービスには含まない.人類はこれらをより多く得るために様々な方法を尽くしてきたが,その結果として,大規模な生態系改変が生じている.
② 人間に利用される供給サービスの量は,今なお増え続ける人口とその需要に比例し伸び続けている.世界人口が1960年から2000年の間に30億人から60億人へと倍増したのに対し,食糧生産はおよそ2.5倍,水の利用は2倍,木材生産は60%近く増加した.この中,いくつかの供給サービスの利用は,世界全体で見ても持続不可能となっている.現在の海産および淡水産の漁獲物利用のレベルは持続可能ではなく,重要な商業用の魚類資源の25%は,過剰に利用され著しく消耗している.現在の農業もまた,地域によっては持続不可能である.その原因は,持続不可能な水源への依存,過剰な肥料あるいは農薬の使用による有害影響,土壌形成速度を超えた土壌の消失などである.
③ 里地里山では一般に,「ムラ(集落)」―「ノラ(田畑)」―「ヤマ(二次林)」という3つの空間単位が規則的に配列されている.このうち,「ノラ」と「ヤマ」は,供給サービスが提供される場として利用されてきた空間である.「ノラ」は主に食料生産の場として様々な農作物を提供する.「ヤマ」は建築材料や道具用材などに利用される木材,薪や炭などの燃料,山菜や果実,野生動物などの食料,さらには薬草など,生活に欠かせない多様な資源を供給する.これらの供給サービスを得るための活動を人間が行ってきた結果として,環境モザイク(モザイク景観)とも呼ばれる多様な環境の人為的な維持・管理がなされてきたのが,里地里山である.このことはつまり,里地里山の創出は,元々あった森林の面積を減らすなどの環境破壊としての一面を持つと同時に,里山の景観を作り出すことで生物多様性を高める効果をもたらしてきたと言える.


キーワード ① 供給サービス ② TEEB ③ 人口増加 ④ 持続可能性 ⑤ 里地里山
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:生態系の供給サービスについて,それが指す具体例を3つ程度挙げることができるようにしておくこと.供給サービスを得るという観点から,生態系と人間との関係についての一つの事例を,歴史的な推移を具体的な数値を用いて説明ができるようにしておくこと.
日本における里地里山と呼ばれる自然との関わり方が見直されているが,それはなぜか.継続的に少量の供給サービスを得るといった観点から,その行為がどのように生態系に影響を及ぼすのかについて説明ができるようにしておくこと.

予習課題:第6回からは,第3回のコマ主題細目②でも扱った生態系サービスの詳細について扱う.次回のコマシラバスをよく読み,生態系の調整サービスについて理解しておくこと.

7 生態系の調整サービス 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.第3回で扱ったミレニアム生態系評価において4つの生態系サービスの区分について触れたが,第7回においてはそのうちの調整サービス(調節プロセス)について学ぶ.調整サービスには,第6回で扱った供給サービスを安定的に維持するための間接的なサービスが多く含まれており,生態系サービスと人間の福利との間の関連の強さは,供給サービス並みかそれ以上に強いものである.しかしながら,供給サービスの多くは定量的に数値が取りやすく,既に多くのデータも存在する一方,調整サービスは正確な数値として評価することが難しい項目が含まれる.
以下の参考文献の情報を中心として作成した配布資料を用いる.
① 宮下直・瀧本岳・鈴木牧・佐野光彦(2017)『生物多様性概論』朝倉書店,19-22頁. Millennium Ecosystem Assessment 編『生態系サービスと人類の将来―国連ミレニアムエコシステム評価』オーム社, 65-82頁,189-202頁
. Pushpam Kumar edit. (2010) The Economics of Ecosystems and Biodiversity (TEEB) 報告書『Ecological and Economic Foundations(生態系と生物多様性の経済学:生態学と経済学の基礎,IGES仮訳)』1章15-39頁,2章29-41頁.
② Millennium Ecosystem Assessment 編『生態系サービスと人類の将来―国連ミレニアムエコシステム評価』オーム社, 65-82頁.
③ 蔵治光一郎(2012)『森の「恵み」は幻想か』化学同人,31-54頁.
コマ主題細目 ① 調整サービス ② 調整サービスの変化 ③ 森林における調整サービス ④ ⑤
細目レベル ① 調整サービスは,生態系プロセスの調節から得られた便益であり,ミレニアム生態系評価の分類では,大気質の調節,気候の調節,自然災害の防護,水(量)の調節,水の浄化と廃棄物の処理,土壌浸食の抑制,花粉媒介,病害虫の抑制,疾病の予防が挙げられている.また,生物多様性の地球規模での損失に関する経済的評価の重要性から実施されたTEEB(The Economics of Ecosystem and Biodiversity: 生態系と生物多様性の経済学)プロジェクトにおける分類では,大気質の調整,気候調整,極端な事象(異常気象)の緩和,水流(量)調整,廃遺物処理(特に浄水),浸食防止,土壌品質の維持,受粉サービス,生物学的コントロールが挙げられている.なお,調整サービスの中で,その実態が最も科学的に解明されているものは送粉サービスである.
② 調整サービスに対する変化の多くは,供給サービスをより多く得るために行われた人間の行為によって偶然生じたものである.土地利用の改変によって,二酸化炭素やメタン,亜酸化窒素のような温室効果ガスが増加してしまう要因を作ることで,生態系の気候調節サービスを大幅に変えた.この土地利用の改変は,ある種の病原体あるいはその媒介動物の生息地の増減,あるいは,人々を様々な病原体と間近に接触させることで,疾病の傾向を様変わりさせることとなった.また,土地利用の改変によって,1940年代以降,すべての大陸での洪水や森林火災が増加した.地球規模で起こる窒素負荷は平均して80%が水域生態系によって浄化されるが,湿地帯の喪失によってこの自浄能力が大きく減少している.
③ 森林は,水源涵養機能を有していると言われるが,それは,しばらく雨が降らない日が続いても森林(もしくはその流域)から水が供給され川の水が枯れない,といったような「渇水緩和機能」を主に指す言葉と考えられる.一方,降水を森林土壌中等に浸透させ,水の流出速度を緩やかにし,大雨時のピーク流量を低減する「洪水緩和機能」も,森林の水量調整機能として重要である.これらの機能は,森林の持つ「平準化作用」「蒸散作用」「樹冠遮断作用」によって発揮される.森林の水源涵養機能との比較として,よくコンクリートダムが挙げられるが,水害軽減の観点からはこの両者はどちらも100%安全ということはなく,限界がある.水害を軽減するには,この両者どちらにも頼る必要があり,ともに十分に機能を発揮することで安全度が上がる.森林のみ,ダムのみに頼ることなく,その土地の水害に対する危険度に応じた備えをしておくことに越したことはない.


キーワード ① 調整サービス ② 気候調節 ③ 水の浄化 ④ 渇水緩和機能 ⑤ 洪水緩和機能
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:生態系の調整サービスについて,それが指す具体例を3つ程度挙げることができるようにしておくこと.供給サービスをより多く得ることを目的とした人間の行為により多くの調整サービスに変化が生じたが,その具体的な事例について少なくとも一つ説明ができるようにしておくこと.森林における調整サービスは,いくつかの機能や作用と付随して説明をすることができるが,その機能や作用についてそれぞれ説明ができるようにしておくこと.洪水や渇水といった水害軽減策として,森林の調整サービスを十分に発揮させるためにはどのような管理・施業が必要かについて,説明ができるようにしておくこと.

予習課題:第6回からは,第3回のコマ主題細目②でも扱った生態系サービスの詳細について扱う.次回のコマシラバスをよく読み,生態系の文化的サービスについて理解しておくこと.

8 生態系の文化的サービス 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.第3回で扱ったミレニアム生態系評価において4つの生態系サービスの区分について触れたが,第8回においてはそのうちの文化的サービス(非物質的な便益)について学ぶ.第6回で扱った供給サービス,第7回で扱った調整サービスとともに,この文化的サービスは,精神的,霊的,審美的,さらにレクリエーションの機会に関わるため,身体面と感情面の両面から人間の健康に強い影響を与える.さらに,特に地域環境との強い関わりのある文化を持つ地域における社会的関係においては,文化的サービスの変化に強く影響を受ける.社会経済的要因は供給サービスや調整サービスの変化に対して介入できるが,文化的サービスの変化に対しては介入できない点においても,文化的サービスの特異な重要性が垣間見られることに注目する.
以下の参考文献の情報を中心として作成した配布資料を用いる.
① Millennium Ecosystem Assessment 編『生態系サービスと人類の将来―国連ミレニアムエコシステム評価』オーム社, 65-82頁,202-204頁. Pushpam Kumar edit. (2010) The Economics of Ecosystems and Biodiversity (TEEB) 報告書『Ecological and Economic Foundations(生態系と生物多様性の経済学:生態学と経済学の基礎,IGES仮訳)』1章15-39頁,2章44-46頁.
② Millennium Ecosystem Assessment 編『生態系サービスと人類の将来―国連ミレニアムエコシステム評価』オーム社, 65-82頁,202-204頁.
③ Millennium Ecosystem Assessment 編『生態系サービスと人類の将来―国連ミレニアムエコシステム評価』オーム社, 65-82頁,202-204頁.
Pushpam Kumar edit. (2010) The Economics of Ecosystems and Biodiversity (TEEB) 報告書『Ecological and Economic Foundations(生態系と生物多様性の経済学:生態学と経済学の基礎,IGES仮訳)』1章15-39頁,2章44-46頁
コマ主題細目 ① 文化的サービス ② 文化的多様性の衰退 ③ 生物多様性の副次的価値 ④ ⑤
細目レベル ① 文化的サービスは,精神的な質の向上,知的な発達,内省,娯楽,審美的経験を通して,人々が生態系から得る非物質的な便益であり,地域のアイデンティティとなるような文化的多様性,文化的遺産価値,精神的・宗教的価値,エコツーリズムと娯楽,伝統的・慣習的知識体系など多種多様な価値を含む.生物多様性の地球規模での損失に関する経済的評価の重要性から実施されたTEEB(The Economics of Ecosystem and Biodiversity: 生態系と生物多様性の経済学)プロジェクトにおける分類でも同様である.また,農林業を始めとする生活の営みは,自然に適応した農林業技術,気象予測,薬用植物の利用などの独自の知識や技術を生み出し,伝統的知識や在来技術として地域社会に蓄積されてきたものであり,それらも文化的サービスを得て生まれたものである.人類の文化,知識体系,宗教,社会活動および娯楽的サービスは,生態系の性質に影響を受け形成されてきたものであり,人類の文化と生態系の間にある異なる精神的・知的・物理的つながりを完全に切り離すことは不可能である.
② 人間の文化,知識体系,宗教,文化遺産および自然遺産の価値などは,その地の生態系の性質や生態系の状態によって影響され,形作られている.近年では,急速な都市化や大家族の崩壊,伝統制度の喪失,交通の利便性の向上,および経済と社会のグローバル化など,社会と経済の発展に伴い,かつて多様であった生態系は相対的に似たような農耕地への変化し,生態系と文化の多様性・独自性との間のつながりはかなり弱められてきた.文化的に貴重な生態系や景観の急激な喪失は,社会の混乱や社会的疎外化の原因になり得る.生態系と文化の多様性・独自性との間のつながりの弱化は,人々が生態系から得られる精神的な便益自体の弱化,及びその文化的便益への認識と理解を低下させてしまう.一方で,残された生態系特性に対する精神的な価値を高めることもあり得る.
③ 開発途上国などにおいては,野生動物の種数と地域住民の収入には正の関係性が生じることがある.その背景として,人口増加,富裕層の余暇時間の増加,レクリエーション活動と観光をサポートするインフラ整備などで,生態系のレクリエーションと観光用途(エコツーリズム)は増加している.アフリカ国々などにおけるこのようなレクリエーションを介した文化的サービスの享受者の多くは先進国の人々であり,そこから生じる金銭的利益の受益者は現地の国,企業,住民である.同様に,各地域で,森林があり,川があり,湖沼があるからこそ,それぞれの場所に適応した生物が生息し,それぞれの景観の異質性があり,森林でキャンプ,川でシャワークライミング,湖沼でフィッシングなどのように文化的サービスの多様さが生まれる.


キーワード ① 文化的サービス ② 文化 ③ 宗教 ④ レクリエーション ⑤ 経済
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:生態系の文化的サービスについて,それが指す具体例を3つ程度挙げることができるようにしておくこと.文化的サービスに含まれる伝統的・慣習的価値と生態系との関係性について,説明ができるようにしておくこと.急激な都市化などによって文化的サービスはどのような影響を受けるのかについて,相対する2つの視点から説明ができるようにしておくこと.レクリエーションと観光を融合した取り組みとしてエコツーリズムが注目されているが,その,生態系や経済との関係性について,説明ができるようにしておくこと.

予習課題:第6回からは,第3回のコマ主題細目②でも扱った生態系サービスの詳細について扱う.次回のコマシラバスをよく読み,生態系の基盤サービス,生息・生育地サービスについて理解しておくこと.

9 生態系の基盤サービス 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.第3回で扱ったミレニアム生態系評価において4つの生態系サービスの区分について触れたが,第9回においてはそのうちの基盤サービスについて学ぶ.第6回で扱った供給サービス,第7回で扱った調整サービス,第8回で扱った文化的サービスを支え,維持するために必要であるのが、基盤サービスである.また,生物多様性の地球規模での損失に関する経済的評価の重要性から実施されたTEEB(The Economics of Ecosystem and Biodiversity: 生態系と生物多様性の経済学)プロジェクトにおいて,基盤サービスを置き換える形で新たに追加された,生息・生育地サービスの概要について学ぶ.
以下の参考文献の情報を中心として作成した配布資料を用いる.
① Millennium Ecosystem Assessment 編『生態系サービスと人類の将来―国連ミレニアムエコシステム評価』オーム社, 65-82頁,204-207頁
. 金子信博(編)(2018)『土壌生態学』朝倉書店,171-175頁.
② Millennium Ecosystem Assessment 編『生態系サービスと人類の将来―国連ミレニアムエコシステム評価』オーム社, 65-82頁,204-207頁. 岡崎正規・木村園子ドロテア・波多野隆介・豊田剛己・林健太郎(2010)『図説 日本の土壌』朝倉書店,90-97頁. 金子信博(編)(2018)『土壌生態学』朝倉書店,171-175頁.
③ Pushpam Kumar edit. (2010) The Economics of Ecosystems and Biodiversity (TEEB) 報告書『Ecological and Economic Foundations(生態系と生物多様性の経済学:生態学と経済学の基礎,IGES仮訳)』1章15-39頁,2章41-44頁
コマ主題細目 ① 基盤サービス ② 基盤サービスとその他三つの生態系サービスとの関係 ③ 生息・生育地サービス ④ ⑤
細目レベル ① 基盤サービスは,他の3つの生態系サービスの生産に必要なものであり,土壌形成,光合成,一次生産,栄養塩循環,水循環などを含む.供給・調整・文化的サービスにおける変化は,人々に直接的で短期の影響を及ぼすのに対して,基盤サービスは,しばしば人々への影響が間接的で,非常に長い期間にわたって表れる.土壌浸食の抑制のようないくつかのサービスは,時間スケールと人々への影響の直接性によって,基盤サービスと調整サービスの両方に分類できることがある.基盤サービスはどの要素も欠かすことのできないものであるが,例えば栄養塩循環においては,生命に必須な元素の適切でバランスの取れた供給を通じて他の生態系サービスの基盤となっている.窒素,リン,カリウムなどの主要な栄養塩の循環は,人為活動により大きく改変され、他の生態系サービスや人間の福利に対して重要な正または負の結果をもたらしてきた.生態系における栄養塩の効率的な利用や循環を保証する緩衝メカニズムを働かせるには,一定の生物多様性を保つことが不可欠とされる.
② 森林の一次生産という基盤サービスが,木材生産(供給サービス)や気候制御(調整サービス)などの生態系サービスを提供してくれる.土壌形成という基盤サービスが,降水を保持,浄化することで,洪水の制御(調整サービス)や飲み水の供給(供給サービス.安全な飲み水,という意味では調整サービスともいえる)を担う.これらは,1対1で対応するものではなく,一次生産(基盤サービス)は,食糧や燃料を供給するサービス(供給サービス)や気候を調整するサービス(調整サービス)に貢献する一方,食糧を供給するサービス(供給サービス)は,一次生産や栄養塩循環,花粉媒介などの基盤サービスに支えられている.また,特に基盤サービスとしての土壌形成においては,多くの供給サービスが地力に依存しているため,土壌形成速度は,人間の福利に様々な影響を及ぼす.
③ ①の通り,ミレニアム生態系評価においては,基盤サービスとして他の3つの生態系サービスを支える要素として区分されているが,TEEB(生態系と生物多様性の経済学)の報告書(生態系と生物多様性の経済学:生態学と経済学の基礎,2010)においては,その位置づけとして他の3つの生態系サービスとの重複を避けるため,基盤サービスは除外された.それに代わり,生息・生育地サービス(Habitat Service)が追加された.一部の移動性生物種には商業的価値があり,その場合,繁殖環境を提供する生態系は,それ自体が(経済的に)価値あるものと考えられ,重要な生育サービスを提供する.マングローブにおいては,多くの魚類及び甲殻類の種に繁殖環境を提供することから,生育サービスを考慮すべきである.また,固有種が並外れた集中をしている,生物多様性のホットスポットは,劇的に生息地の喪失が進んでおり,遺伝的多様性の維持に対し,このようなホットスポットの重要性に加え,生息地の提供という意味でのサービスとしての重要性が含まれる.


キーワード ① 基盤サービス ② 間接的影響 ③ 一次生産 ④ 土壌形成 ⑤ 生息・生育地サービス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:生態系の基盤サービス,及び生息・生育地サービスについて,それらが指す具体例をそれぞれ3つ程度挙げることができるようにしておくこと. 基盤サービスと他の3つの生態系サービスのどれかとの区別をしにくい事項について,3つ程度挙げられるようにしておくこと.その際,このような視点からは基盤サービスと言え,別のこのような視点からは調整サービスと言えるなど,対象事項に対する生態系サービスの捉え方についても明確に説明ができるようにしておくこと.ミレニアム生態系評価においては基盤サービスの区分があったのに対し,TEEBにおいてはそれを採用せず,新たに生息・生育地サービスを採用することとした背景について,説明ができるようにしておくこと.

予習課題:次回,第6回から第9回までの授業内容について,それらの関連性や展開事項を踏まえつつ,演習を行う.自ら解答できるよう,各回の内容について復習をしておくこと.

10 まとめ~生態系サービス~ 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.第3回で概観したミレニアム生態系評価において提示された生態系サービスについて,第6回では供給サービス,第7回では調整サービス,第8回では文化的サービス,第9回では基盤サービスについて,それらの詳細を学んだ.同時に,生物多様性の地球規模での損失に関する経済的評価の重要性から実施されたTEEBにおける4つの生態系サービスの分類についても確認した.第9回における基盤サービスはTEEBでは採用しておらず,新たに生息・生育地サービスが加えられているため,基盤サービスとともに生育・生息地サービスを同時に確認をした.第10回は,それらの総括として,人間活動と生態系との繋がりの観点から,生態系からの人類への恵みとしての生態系サービスについて,各回で学んだ内容及びそれらの関係性とともに演習を通じて確認を行う.
第6回から第9回までの授業内容と配布資料に基づき構成した,確認用資料を用いる.
コマ主題細目 ① 供給サービス ② 調整サービス ③ 文化的サービス ④ 基盤サービス ⑤ 生息・生育地サービス
細目レベル ① 本科目において,生態系と人間との関係性を考えられるようになるためには,人々が生態系から享受する便益のことを指す生態系サービスについて理解をしておく必要がある.人類による生態系の改変は,膨大な供給サービスの要求によって生じたとも言われている.このことから,生態系から得られた生産物である供給サービスについての正しい理解は重要であり,その確認を行うこととする.人間に利用される供給サービスの量は,人口とその需要に比例し伸び続けており,その結果として,いくつかの供給サービスの利用は世界全体で見ても持続不可能となっていること,特に現在の海産および淡水産の漁獲物利用のレベルは持続不可能であり,重要な商業用の魚類資源の一部は過剰に利用され著しく消耗していることについて説明をすることができるか,確認を行う.農業もまた,地域によっては持続不可能であり,その原因として,持続不可能な水源への依存,過剰な肥料あるいは農薬の使用による有害影響,土壌形成速度を超えた土壌の消失などを挙げることができるかについて確認を行う.供給サービスを得ることは,古くから自然からの恵みとして実感を伴うもので分かりやすいものであるが,その様な供給サービスを介した生態系と人間との関係について,歴史的な推移を具体的な数値を用いて説明ができるか,確認を行う.里地里山における従来の供給サービスの利用方法が見直されているが,どういった点が望ましい利用方法と言えるのかについて説明ができるか,確認を行う.また,近年では里地里山における供給サービスの利用方法はどのようになっているかについても合わせて説明ができるか,確認を行う.
② 本科目において,生態系と人間との関係性を考えられるようになるためには,人々が生態系から享受する便益のことを指す生態系サービスについて理解をしておく必要がある.人類による生態系の改変は,膨大な供給サービスの要求によって生じたとも言われている.供給サービスを安定的に維持するための間接的なサービスが多く含まれており,かつ,生態系サービスと人間の福利との間の関連の強さは,供給サービス並みかそれ以上に強いものである調整サービスについて理解をしておく必要がある.供給サービスの多くは定量的に数値が取りやすく,既に多くのデータも存在する一方で,調整サービスは正確な数値として評価することが難しい項目が含まれるとされ,このことを,調整サービスの具体的分類項目を3つ程度挙げた上で,具体的に数字の得にくさについて説明をすることができるか,確認を行う.洪水や渇水といった水害軽減策として,森林の調整サービスを十分に発揮させるためにはどのような管理・施業が必要かについて,森林の持つ各機能や各作用と合わせ,説明ができるか,確認を行う.
③ 本科目において,生態系と人間との関係性を考えられるようになるためには,人々が生態系から享受する便益のことを指す生態系サービスについて理解をしておく必要がある.文化的サービスは,調整サービスとともに精神的,霊的,審美的,さらにレクリエーションの機会に関わるため,身体面と感情面の両面から人間の健康に強い影響を与える.このことから,文化的に貴重な生態系や景観の急激な喪失は,社会の混乱や社会的疎外化の原因にもなり得,文化的サービスについて理解をしておくことは重要である.文化的サービスに含まれる伝統的・慣習的価値と生態系との関係性について説明ができるか,確認を行う.急激な都市化などによって文化的サービスはどのような影響を受けるのかについて,相対する2つの視点から説明ができるか,確認を行う.エコツーリズムの,生態系や経済との関係性について,説明ができるか,確認を行う.
④ 本科目において,生態系と人間との関係性を考えられるようになるためには,人々が生態系から享受する便益のことを指す生態系サービスについて理解をしておく必要がある.基盤サービスは,供給,調整,文化的サービスを支え,維持するために必要である.このことから,基盤サービスはどの要素も欠かすことのできないものであるが,基盤サービスの具体例をどれほど挙げることができるか,確認を行う.ミレニアム生態系評価においては採用されたこの基盤サービスであるが,TEEBにおいては採用されず,新たに生息・生育地サービスが採用された背景について説明ができるか,確認を行う.土壌浸食の抑制のようないくつかのサービスは,時間スケールと人々への影響の直接性等によって,基盤サービスと調整サービスの両方に分類することができるが,具体的にはどのような視点から基盤,もしくは調整サービスと言えるのかについて,説明ができるのか確認をする.基盤サービスと他3つの生態系サービスとの違いについて,人間への影響の直接・間接,及びその影響時間の長短の観点から説明ができるか,確認をする.
⑤ 本科目において,生態系と人間との関係性を考えられるようになるためには,人々が生態系から享受する便益のことを指す生態系サービスについて理解をしておく必要がある.生物の繁殖環境を提供することでその生態系自体が(経済的に)価値あるものとして考えることができ,重要な生態系サービスを提供していると言え,それを生息・生育地サービスと分類することがTEEBによって提案された.これを踏まえると,マングローブなどは,生息・生育地サービスが高く提供されている場と考えられるが,それはなぜか説明できるかについて確認を行う.生物多様性のホットスポットにおいては,生息・生育地サービスが高いと考えられるが,これは裏を返すとその地の喪失が進むと生物多様性に大きな負の影響を及ぼすと言える.この内容について理解をして,説明をすることができるかについて,確認を行う.
キーワード ① 供給サービス ② 調整サービス ③ 文化的サービス ④ 基盤サービス ⑤ 生息・生育地サービス
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業時に解答できなかった事項,及び授業時に理解が追い付かなかった事項について,改めて第6回から第9回までの学習内容の確認を行うこと.その上で,やはり理解のできない事項がある際には,担当教員に質問し,確実な理解を得ておくこと.各項目について,それぞれ単独に用語を覚えているだけでは,生態系サービスについて理解ができたとは言い難い.それらがどのようにお互いに関係し合い,その総体としてどのように人間に恵み(サービス)を提供しているかについて思考を巡らすことは,実践的な知恵として知識を昇華させることに役立つ.

予習課題:生態系サービスを持続的に得続けるには,闇雲に乱獲などをせずに一定の管理を行う必要がある.次回のコマシラバスをよく読み,そのような生態系管理の概要について理解をしておくこと.

11 生態系管理 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.第1回から第5回において学んだ“生態系”から,第6回から第10回において学んだ“生態系サービス”を得るにあたり,過去100年程の人間の活動の結果として大きな生態系改変が生じていることから,持続可能な“生態系サービス”を得ることのできない状態となってしまっている.そこで第11回では,生物多様性の保全を重視すると同時に,人間社会が必要とする資源の持続可能な利用を追及する「生態系管理」の必要性を理解し,レジリエンスやアダプティブマネジメント,Eco-DRRについての考え方を身につける.
以下の参考文献の情報を中心として作成した配布資料を用いる.
① 森章 編(2012)『エコシステムマネジメント―包括的な生態系の保全と管理へ―』共立出版, 1-40頁
② 森章 編(2012)『エコシステムマネジメント―包括的な生態系の保全と管理へ―』共立出版, 19-20頁,126-150頁. 鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社, 100-101頁,124-125頁,146-151頁.Brian Walker and David Salt, 黒川耕太訳(2020)『レジリエンス思考 変わりゆく環境と生きる』みすず書房,1-17頁,31-43頁.
③ 森章 編(2012)『エコシステムマネジメント―包括的な生態系の保全と管理へ―』共立出版, 41-42頁,
④ 中村太士・菊沢喜八郎 編(2018)『森林と災害』共立出版, 1-23頁. 環境省自然保護局(2016)『生態系を活用した防災・減災に関する考え方』1-64頁.
コマ主題細目 ① 生態系管理 ② レジリエンス(回復力)を基準にしたアダプティブマネジメント(順応的管理) ③ 生態系管理の事例 ④ Eco-DRR ⑤
細目レベル ① 人間の活動により元の姿とは異なり何らかの問題を抱えてしまった(生物多様性や生態系サービスが低下した)生態系を,よりよい(生物多様性や生態系サービスが高い)状態へと導くために,我々は生態系を復元し,適切に保全・管理する必要に迫られている.なお,ここで“管理”は“management”の訳語であり,“control”ではないことに注意が必要である.生態系を人間の管理下に置くのではなく,生態系に主眼を置いて生態系レベルでの特性やプロセスを重視するものであり,生態系管理の訳語としても,そのままを連想する“ecosystem management”よりも,よりその内容を表現しているように見える“ecosystem-based management”の方が好まれる傾向がある.この考えに立つと,生態系に唯一の姿,つまりゴールがあるかのような概念は捨てるべきであり,生態系に存在するさまざまなプロセスを包括的に保全することが必要であり,その上で,時代とともに変化する様々な利害関係や社会的なニーズに対応することが必要である.人間の影響を生態系から排除することを第一義に考える方策に頼るだけでは,自然環境の保全や復元は困難であることが知られている.
② 生態系は,何らかの外的条件(自然撹乱であれ人為撹乱であれ)に対して,ある程度の耐性・回復性を持っており,これはレジリエンス(resilience)と呼ばれる.個々の生態系はレジリエンスの範囲内で,多少の揺らぎはあるものの,ある一定の状態を動的に維持している.しかし,ある臨界点(生態学的閾値の一つ)を越える外的負荷が生態系に加わった場合,これまでとは異なる状態(多くは悪い状態)へと,突然に推移(レジームシフト)することがある.生態系の総合的な管理においては,予測可能な撹乱のレベルが生態学的閾値を超えるのを回避しつつ,同時にある程度の撹乱を許容する(変化を受け入れる)ことで種多様性や機能的冗長性を最大化し,不確実な撹乱に対して備えることが重要である.そのためには,生態系の構造や組成を管理することが最重要事項であるが,生態学的レジリエンスを支える生態系の要素(種多様性,相互作用網,空間構造など)の管理も必要不可欠と言える.このような生態系の中で発生する劇的な変化と向かい合う管理が必要であり,レジリエンスに着目して,実践しながら柔軟にフィードバックをしつつマネジメントの在り方を適宜修正し,それに応じた生態系のモニタリングを続けるといった,持続可能性を模索するアプローチとして,アダプティブマネジメント(順応的管理)の試みが提案されてきているが,まだ多くは浸透していない.
③ 国内におけるアダプティブマネジメントの事例として,知床におけるエゾシカの保護管理がある.エゾシカは知床の本来の生態系の構成員であり,外来種とは異なり,昔から生態系の一部として重要な役割を担ってきた.しかしながら,1990年代後半から高密度状態が続き,エゾシカによる採食の影響により特定樹種の激減,森林の更新不良など,様々な影響が確認されている.このようなエゾシカの増減とそれに伴う植生の変化は過去にも繰り返されてきた現象ともいえるが,各種調査・分析の結果,現在は過去300年間で最も激しく植生影響が生じていると推察され,対策が行われることとなった.エゾシカの捕獲,防鹿策の設置,エゾシカの生息状況調査や植生のモニタリングなどが行われ,毎年その結果を基に次年度以降の対策やモニタリング方針について議論がされている.この対策の目的は,絶対的なゴールとしてエゾシカの根絶をすることではなく,適正な個体数密度で管理をしていくことであり,この“適正”な密度がどれくらいなのか,については,植物を指標として毎年モニタリングを行いながら検討が進められている.
④ 生態系を活用した災害リスク軽減(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction: Eco-DRR)の考え方が広まってきており,これは,様々な生態系には防災・減災の機能が備わっていることを認識し,ダムや堤防などのハードな構造物による防災のみに依存するのではなく,生態系の公益的機能を生かした社会基盤の整備をすべきだとの考え方に基づく.防災・減災に係る生態系サービスとしては,第7回で扱った調整サービスにおける“局所災害の緩和”“水量の調節”“土壌浸食の抑制”などを位置付けることができる.Eco-DRRは,現存する生態系を活かすことを前提とするため,事業費や維持費が安価で済むというだけでなく,伝統的な地域特有の知識や文化的価値を維持し,二酸化炭素の吸収にも貢献できる.さらに,生物多様性の保全と持続可能な利用,災害後のレジリエンスが高いと考えられている.

キーワード ① 生態系管理 ② レジリエンス ③ アダプティブマネジメント ④ モニタリング ⑤ Eco-DRR
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:生態系管理の在り方として,生態系に唯一のゴールは無く,生態系に主眼を置いてその特性やプロセスを重視した包括的な保全を行うことが必要であることについて,理解をしておくこと.さらにその上で,様々な利害関係や社会的ニーズにも対応することが,生態系管理であることについて,他者に説明ができるようにしておくこと.レジリエンス,アダプティブマネジメント,モニタリングといったキーワードの意味を理解し,説明ができるようにしておくこと.さらに,これらの用語を適切に用いて,生態系管理のよりよい在り方について説明ができるようにしておくこと.Eco-DRRとは何か,その正式な用語を英語で記載できるとともに,その意味について説明ができるようにしておくこと.

予習課題:大きく改変された生態系を修復していくには,費用(コスト)がかかるものである.生態系や自然に対して,その価値が見いだせれば,その保全や修復にかかるコストについて,費用対効果等を検討することが可能となる.次回のコマシラバスをよく読み,環境の価値評価方法について理解をしておくこと.

12 環境(生態系)の価値評価 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.第11回では生態系管理について学んだが,管理方策を決めた後には,その実施に多くの費用がかかることからも明らかであるように,環境はタダでは守れない.環境問題が生じる背景には,環境をタダとして扱ってしまう経済のしくみが存在し,環境が適正に評価されないが故に,環境破壊が深刻化してしまう.このことから,環境と経済(コスト)は切り離して考えることはできない.特に価値の評価においては,貨幣単位で表現をすることで,具体的な環境問題に対する対応策・解決策の検討が可能となる場合が多い.第12回では,環境評価の観点から,環境と経済(コスト)の関係を学ぶ.
以下の参考文献の情報を中心として作成した配布資料を用いる.
① 森章 編(2012)『エコシステムマネジメント―包括的な生態系の保全と管理へ―』共立出版, 263-275頁. 中静透・菊沢喜八郎 編(2018)『森林の変化と人類』共立出版, 235-237頁. 栗山浩一・馬奈木俊介(2008)『環境経済学をつかむ』有斐閣, 146-175頁. 東北大学生態適応グローバルCOE 編(2013)『生態適応科学』, 200-224頁.
② 森章 編(2012)『エコシステムマネジメント―包括的な生態系の保全と管理へ―』共立出版, 263-275頁. 栗山浩一・馬奈木俊介(2008)『環境経済学をつかむ』有斐閣, 146-175頁.
③ 森章 編(2012)『エコシステムマネジメント―包括的な生態系の保全と管理へ―』共立出版, 263-275頁. 中静透・菊沢喜八郎 編(2018)『森林の変化と人類』共立出版, 235-237頁
④ 中静透・菊沢喜八郎 編(2018)『森林の変化と人類』共立出版, 238-244頁. 東北大学生態適応グローバルCOE 編(2013)『生態適応科学』, 178-198頁.柴田晋吾(2019)『環境にお金を払う仕組み-PES(生態系サービスへの支払い)が分かる本』大学教育出版,1-16頁,100-127頁.
コマ主題細目 ① 環境の評価 ② 環境評価手法 ③ 農業の多面的機能の価値の評価 ④ 生態系サービスに対する支払い(PES) ⑤
細目レベル ① 環境(生態系,と置き換えてもよい)は,様々な価値をもっているが,その価値を利用形態から分類すると,“利用価値”と“非利用価値”に大別できる.“利用価値”には,直接的利用価値,間接的利用価値,オプション価値があり,“非利用価値”は,遺産価値や存在価値などとして区分することができる.例えば森林の価値の中で,市場価値が存在するのは,木材として利用するときの直接的利用価値の場合のみである.それ以外の場合は基本的には市場価値が存在しないので,市場価格をもとに森林を評価すると木材生産の価値しか評価されず,過小評価となる可能性がある.価格が存在しない環境の価値を金額で評価するために,“環境評価手法”と呼ばれる手法が開発されてきた.環境評価は,環境経済学で誕生した新しい分野であるが,今日では環境経済学の主要な役割を果たしている.第6回から第10回にかけて扱ったTEEBは,前述の通り生態系サービスの経済評価を進めており,このことで,1)生態系サービスの価値を認識すること,2)生態系サービスの価値を示し,意思決定に活かすこと,3)意思決定に経済的メカニズムを導入することが可能となるとしている.
② 環境評価手法の多くは,生態系サービスのある一部分について評価する手法であり,多くの場合,主要と思われるサービスを特定して評価することになる.その評価手法として,代替法は,ある生態系サービスを市場に存在する代替的な商品やサービスで置き換えた場合に必要となる費用から,その価値を評価する手法である.ヘドニック法は,環境が地代や賃金などに及ぼす影響をもとに環境の価値を評価する手法である.トラベルコスト法は,旅行費用をもとにレクリエーションの価値を評価する手法である.仮想評価法(Contingent Valuation Method: CVM)は,仮想的な状況を設定し,その状況に対する支払意思額や受入補償額をアンケート調査や聞き取り調査で直接尋ねることで環境の価値を評価する手法である.
③ 農業や森林の多面的な機能は,生活や経済の安定に重要な役割を果たしているが,その価値を定量的に評価することは困難な面がある.しかしながら,学術的知見に基づく定量的な評価は,農業及び森林の有する価値について正しい理解と社会的な認知を得ることに繋がる.このことから林野庁(2001)では,主に代替法を用いて森林の有する機能の定量的評価を実施しており,例えば,洪水緩和を治水ダムの減価償却費および年間維持費で評価することで6兆4,686億円/年,水質浄化を水道代や雨水処理施設の減価償却費および年間維持費で評価することで14兆6,361億円/年などのように評価している.しかしながら,このような評価結果は,森林の有する機能の一部分を評価したに過ぎず,全てを網羅することは非常に困難であることを念頭に置く必要がある.それを踏まえると,環境評価は生態系サービスのとある一部分について評価する手法であるといえる.
④ 生態系サービスの価値は,これまであまり高い経済評価を受けてこなかったが,近年,生態系サービスの維持に経済的メカニズムを導入しようとする動きが出ている.生態系サービスに対する支払い(Payments ofr Ecosystem Services: PES)である.広い意味では認証制度などもPESの一つとして考えることができ,持続性の高い,生態系サービスに配慮した木材生産をすることなどに対して市場がそのコストを支払う仕組みとなっている.また,森林や水源環境の保全のための法定外目的税なども,PESの例と言える.森林施業で見ると,生態系サービスを考慮しない森林所有者は伐採した木材対価のみ受け取るが,同時に土砂流出等の対策のために下流ではダム等の社会コストが生じる.一方,生態系サービスを考慮する森林所有者は生態系配慮のためにコストがかかるため,木材対価収入は減ることになるが,生態系サービスが大きくなる分,前述でかかっていた社会コストは減少する.この減少した分の一部を生態系サービスを考慮する森林所有者に還元することで,森林所有者の収入が生態系サービスを考慮しない場合と比べて上がったり,同時に社会コストも減少させることのできる可能性がある.これがPESの基本的な考え方である.また,環境政策の原則として,汚染者負担原則がよく知られるが,PESの場合は,生態系サービスの受益者が生態系サービスの供給者に対して支払いを行う受益者負担原則を適用するケースもあり,目新しい観点とされる.

キーワード ① 環境評価 ② 代替法 ③ 仮想評価法 ④ 多面的機能 ⑤ PES
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:環境保全と経済(コスト)は切り離して考えることができないと言われるが,それはなぜかについて説明ができるようにしておくこと.環境の価値の分類について,授業においては大きく2つの区分と小さく5つの区分とを扱った.それら各区分において,それぞれどのようなものが当てはまるのか,具体例を挙げられるようにしておくこと.環境評価手法について,授業では4つの具体的な手法を紹介したが,そのうち少なくとも2つについてはその内容について具体的な適用例を挙げながら説明することができるようにしておくこと.農業の多面的機能についての環境評価について,少なくとも1つの具体的項目の評価額を示し,その額の妥当性について検討ができるようにしておくこと.生態系サービスに対する支払い(PES)の考え方について,具体的な事例を挙げて説明ができるようにしておくこと.

予習課題:これまで各回において,生態系機能や生態系サービスと生物多様性との関係について随所に触れてきた.次回のコマシラバスをよく読み,生態系機能と生物多様性との関係について理解をしておくこと.

13 生態系機能と生物多様性 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.第1回及び第2回においては,本科目の土台的知識として,生態系についての基本的な見方や考え方として,生態系の概念,生態系の構造と機能について学んだ.第3回では,生態系(自然)から得られる恵みを生態系サービスとして捉え,主に人為的活動に伴う生態系の変化が人間の福利に与える影響を生態系サービスの観点から評価した,ミレニアム生態系評価について学んだ.第13回においては,第1回から第3回までの知識を土台として,生態系サービスと密接に関連する生態系機能を中心に,生物多様性との関係性について学ぶ.
以下の参考文献の情報を中心として作成した配布資料を用いる.
① 森章(2018)『生物多様性の多様性』共立出版, 123-172頁
. D. サダヴァ他, 石田泰樹・斎藤成也 監訳(2014)『大学生物学の教科書 第5巻生態学』講談社, 161-165頁. 宮下直・瀧本岳・鈴木牧・佐野光彦(2017)『生物多様性概論』朝倉書店, 47-53頁.
② 森章(2018)『生物多様性の多様性』共立出版, 123-172頁.
③ 環境省自然保護局(2012)『生物多様性国家戦略2012-2020』1-102頁. 宮下直・瀧本岳・鈴木牧・佐野光彦(2017)『生物多様性概論』朝倉書店, 152-155頁.次期生物多様性国家戦略研究会(2021)『次期生物多様性国家戦略研究会報告書』http://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/initiatives5/files/100_hokokusho.pdf.
コマ主題細目 ① 生態系機能の安定性を支える生物多様性 ② 多機能性と機能的冗長性 ③ 生物多様性国家戦略 ④ ⑤
細目レベル ① 生態系機能は,生態系サービスと密接に関連するので,生物多様性の豊かさが,ひいては多様な生態系サービスの恒常的な提供を可能にし得る.この生態系サービスの恒常的な提供という観点からは,生態系機能の安定性が重要である.多種系では,種間の環境応答の違いが重要であり,例えば種aは温暖な環境を好み,種bは寒冷な環境を好むとすると,どちらの種もその地に存在することで,大きな気候変動があった際にも,どちらかの種が補完的に機能を発揮するため,その地における生態系機能が担保されることになる.どちらか一方の種のみであれば,温暖な気候では種bは機能せず,寒冷な気候では種aが機能しないかもしれず,その地の生態系機能が発揮されない可能性がある.このような種数と一次生産との関係についてはよく研究がされており,多種いるほうが環境変動に対する保険となり得ることが知られている.
② 我々が未知の生物の潜在性や有用性を含め,多様なサービスの創出と維持のためには,生態系機能の機能的多様性が重要であり,そのような生態系の多機能性のためには,自然界における生命の多様さが必要である.1種,あるいは少数種のニッチだけではカバーしきれない生態系機能を,別の種のニッチが補うことによって生態系機能が向上することを,多様性の生態系機能への相補性効果(complementary effect)と呼ぶ.生態系機能を担う群集の(初期)構成種の数が増えるほど,高い生態系機能を発揮する種が群集に含まれる(=高い生態系機能をもつ種が選択される)確率が高くなることによって起きる効果を,選択効果(selection effect)と呼ぶ.このような効果の存在からも,生物多様性と生態系機能との関係性を見ることができる.とはいえ,ある一つの生態系機能に着目すると,種数が増えれば増えるだけ機能性が無限に高まる訳ではない.概して,種数増加に伴い,次第に機能性は頭打ちとなる.これは,ある生態系機能に対する貢献度の低い(あるいは無い)種(“機能的に冗長な種”)の存在を示す.一般に,“冗長”とは,無駄や余剰を指す語であるが,ここでの“機能的に冗長な種”はバッファであり保険であると言え,環境変動下においては,冗長に見える種もいずれかの生態系機能対して機能的に貢献し始める可能性がある.
③ 生物多様性国家戦略2012-2020(環境省,2012)は,生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本的な計画として,政府が策定した計画である.2010年の生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)において採択された愛知目標の達成に向けた日本のロードマップとしての役割を担うとともに,東日本大震災が人と自然との関係を改めて考える契機となったことを踏まえ,「自然と共生する世界」の実現に向けた方向性を示す役割を持つ.生物多様性国家戦略では,4種類の生物多様性の危機要因を挙げている.“開発など人間活動による危機(オーバーユース)”,“自然に対する働きかけの縮小による危機(アンダーユース)”,“人間により持ち込まれたものによる危機(外来種や化学物質など)”,“地球環境の変化による危機(温暖化をはじめとする気候変動など)”である.また,生物多様性の保全と持続可能な利用に向け,重点的に取り組むべき国の施策の基本戦略として,5つを挙げている.“生物多様性を社会に浸透させる”,“地域における人と自然の関係を見直し,再構築する”,“森・里・川・海のつながりを確保する”,“地球規模の視野を持って行動する”,“科学的基盤を強化し,政策に結びつける”である.なお,次期戦略は,2022年9月頃に閣議決定が成される見込みである.


キーワード ① 生態系機能 ② 安定性 ③ 多機能性 ④ 機能的冗長性 ⑤ 生物多様性国家戦略
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:生物多様性の豊かさが,生態系機能の安定性を導き,そのことが生態系サービスの恒常的な提供を可能にするが,このことについて例示をしつつ説明ができるようにしておくこと.多数の生態系機能を同時に高いレベルで維持するためには,生物多様性の高さが重要であるが,種数が増えれば増えるほど生態系機能が無限に高まる訳ではなく,機能的に“冗長な”種の存在を認識することができる.この“冗長な”種の存在は,自然環境において無駄で余剰なものではないのか.その存在意義について説明ができるようにしておくこと.生物多様性国家戦略2012-2020において示されている,生物多様性の危機要因を4つ,重点的に取り組むべき国の基本戦略を5つ,それぞれ挙げられるようにしておくこと.

予習課題:現在の国際社会全体としての取り組みとして,“持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)”がある.次回のコマシラバスをよく読み,SDGsの概要について理解しておくこと.

14 生態系と社会 科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.第1回から第5回において学んだ“生態系”から,第6回から第10回において“生態系サービス”の内容を学び,第11回でその生態系サービスを維持するための“生態系管理”について学び,第12回で費用対効果の高い効率的な生態系管理を行うための指標とすべく“環境評価”について学び,第13回で生態系サービスと密接に関わる“生態系機能と生物多様性”について概観した.第14回では,これまで見てきた生態系と人間との関係について,広く持続可能な社会の在り方を考えるべく,国際社会全体が,人間活動に伴い引き起こされる諸問題を喫緊の課題として認識し,協働して解決に取り組んでいくことを決意した合意である“持続可能な開発のための2030アジェンダ”の中核をなす“持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)”について学ぶ.これは現在,国の施策のみならず企業にとっても大きな指標となっており,今後,益々その取り組みが進んでいくものと思われる.
以下の参考文献の情報の他,各種政府の指針や報告書の情報を基に作成した配布資料を用いる.
① 村上芽・渡辺珠子(2019)『SDGs入門』日本経済新聞出版社, 16-78頁.日能研(2017)『SDGs 2030年までのゴール』みくに出版,1-90頁.
② 村上芽・渡辺珠子(2019)『SDGs入門』日本経済新聞出版社, 16-78頁.
③ 村上芽・渡辺珠子(2019)『SDGs入門』日本経済新聞出版社, 16-78頁
.水口剛(2017)『ESG投資』日本経済新聞出版社,13-52頁.
④ 次期生物多様性国家戦略研究会(2021)『次期生物多様性国家戦略研究会報告書』http://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/initiatives5/files/100_hokokusho.pdf.
コマ主題細目 ① SDGsとは ② SDGsへの取り組みに対する日本の現状 ③ SDGsと生態系との関わり ④ 生態系と社会とのつながり ⑤
細目レベル ① 2015年に国連サミットで全加盟国による採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核をなす持続可能な開発のための目標(SDGs)は,包括的な17のゴールと169のターゲットから成る2030年までの国際目標であり,先進国,途上国問わず全ての国に適用される普遍性が特徴である.持続可能な開発のキーワードとして,5つのP〔People(人間),Planet(地球),Prosperity(繁栄),Peace(平和),Partnership(パートナーシップ,連帯)〕が掲げられており,17のゴールはこれらを具現化したものである.なお,日本の環境基本計画等に示された環境政策が目指す方向性と同様に、ESG(Environment:環境,Social:社会,Governance:ガバナンス)の三側面(細目レベル③においても扱う)において,バランスがとれ統合された形で持続可能な開発を達成しようとしていることを,明確に打ち出している.また,SDGsの前身の一つであるMDGs(Millennium Development Goals)のゴールと比較して,環境の側面が増加していることも特徴である.
② SDGsが採択された後,日本では,全閣僚を構成員とするSDGs推進本部を設置し,2016年にSDGs実施指針を決定した.以降,SDGsアクションプラン2018,拡大版SDGsアクションプラン2018,SDGsアクションプラン2019を決定した.2016年に発表されたベルテルスマン財団と持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)による報告書「持続可能な開発目標(SDGs)インデックス&ダッシュボード」によると,日本のSDGs全体の達成度は,評価をされた149カ国中18位であった.17のゴールのうち,1. 貧困を無くそう,5. ジェンダー平等を実現しよう,7. エネルギーをみんなにそしてグリーンに,13. 気候変動に具体的な対策を,14. 海の豊かさを守ろう,15. 陸の豊かさも守ろう,17. パートナーシップで目標を達成しよう,の7つのゴールについては,4段階評価で最も達成の度合いが低いと評価された.同報告書の2017年版では11位,2018年版では15位,2019年版では15位,2020年版では17位,2021年版では18位と,近年は順位を落としている.現時点での最新報告である2021年版では,日本は,5.ジェンダー平等を実現しよう,13.気候変動に具体的な対策を,14.海の豊かさを守ろう,15.陸の豊かさも守ろう,17.パートナーシップで目標を達成しよう,が,最低評価である“Major Challenge(大きな課題あり)”であった.さらに改善傾向度では15.陸の豊かさも守ろう,において悪化した.
③ SDGsの目標において,生態系及び生物多様性の保全については,一般的には主に15. 陸の豊かさも守ろう,に含めて議論が成され,日本においては細目レベル②の記載の通り,未だ重要な課題として挙げられている.なお,生態系及び生物多様性の保全は他にも,14. 海の豊かさを守ろう,はもちろんのこと,多くの目標とも関連する事項であることは想像に難くない.SDGs実施指針(改定版,2019年)における8つの優先課題は,細目レベル①に挙げた5つのPに対応した分類であり,1つでも欠けると目標達成は成されないとされる項目であるが,そのうちの1つとして“生物多様性,森林,海洋等の環境の保全”が挙げられており,SDGs達成のために着実な推進が期待される.
④ 地域規模から地球規模までの社会的課題に,企業活動が与える影響に対する消費者の関心の向上や,ESG投資の活発化により,大企業へはSDGsの浸透は一定程度進んだが,企業の大半を占める中小企業への更なる浸透が課題である.中小企業は地域社会とその経済を支える存在であり,SDGsへの中小企業の取組みの定着は,市民の生活にSDGsを根付かせる観点からも重要である.ビジネスと人権,責任あるサプライ・チェーン,企業の社会的責任に関する取組みは,企業の信頼を高め,投資家の高評価を得る上で重要であると同時に,生産と消費の中核を担う民間セクターが、SDGsが目指す持続可能な社会・経済・環境づくりに貢献する上で不可欠である.
 社会と個人それぞれの価値観と行動が自然共生社会の実現に向かうよう,ビジネスと生物多様性の好循環とライフサイクルに反映させることが重要である.社会・経済・暮らしの在り方を変えていくために注力すべき分野や効果的な取り組みについてはまだ十分に明らかになっておらず,経営層は生物多様性を始めとする知識不足や無関心によるリスクやオポチュニティへの認識が低いが,2021年3月に取りまとめられた『生物多様性及び生態系サービスの総合評価 2021』には,生物多様性と生態系の健全性の確保と回復のための方向性が示され,持続可能な生産・消費の実現に向けてビジネスと生物多様性の好循環を生み出すことや,それを支える教育や価値観の醸成を促進していくことが重要なアプローチであること等が挙げられている.


キーワード ① SDGs ② 17のゴール ③ アクションプラン ④ ESG ⑤ CSV
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:SDGsにおけるゴールとターゲットの数について解答できるとともに,ゴールについては全て挙げられるようにしておくこと.日本のSDGs達成度の低いゴールについて挙げることができるとともに,なぜ達成度が低いと考えられるのか,述べられるようにしておくこと.企業においてもSDGsに貢献する取り組みが増えている.なぜ企業はSDGsへの貢献が必要なのかについて,説明ができるようにしておくこと.企業におけるSDGsに貢献する取り組みとして,CSRやCSVなどが挙げられるが,これらはそれぞれどのような取り組みか,説明ができるようにしておくこと.

予習課題:次回,第11回から第14回までの授業内容について,それらの関連性や展開事項を踏まえつつ,演習を行う.自ら解答できるよう,各回の内容について復習をしておくこと.

15 まとめ
~生態系管理の在り方~
科目の中での位置付け 本科目では,生態系についての基本的な見方や考え方を学んだ上で,生態系と人間との関係について“生態系機能”及び“生態系サービス”を主なキーワードとして理解を深める.このことで,単に野生動植物の有り様だけを知ること等に留まらない,自然との共生を見越した生態学を学んでいく学生としての基礎的素養を身につけてゆくことを目指している.第11回では生態系サービスを維持するための“生態系管理”について学び,第12回で費用対効果の高い効率的な生態系管理を行うための指標とすべく“環境評価”について学び,第13回で生態系サービスと密接に関わる“生態系機能と生物多様性”について概観した.さらに第14回では国際社会全体として取り組んでいくSDGsについて学んだ.第15回は,それらの総括として,人間活動と生態系との繋がりの観点から,人間活動はどうあるべきかについて,各回で学んだ内容及びそれらの関係性とともに演習を通じて確認を行う.
第11回から第14回までの授業内容と配布資料に基づき構成した,確認用資料を用いる.
コマ主題細目 ① 生態系管理 ② 環境の評価 ③ 生態系機能と生物多様性 ④ SDGs ⑤
細目レベル ① 本科目において,生態系と人間との関係性を考えられるようになるためには,生物多様性の保全を重視すると同時に,人間社会が必要とする資源の持続可能な利用を追及する生態系管理の必要性を理解することが重要である.しかしながら,その管理の在り方には唯一の解はなく,対象となる生態系に主眼を置いてその特性やプロセスを重視した包括的な保全を行うことが必要である.さらに人間社会の側においても様々な利害関係や社会的ニーズがありそれらの考慮をした上で,よりよい生態系管理法を示す必要があるが,これらのことについて説明ができるか,確認を行う.さらに,生態系管理の在り方について説明する上でキーワードとなる,レジリエンス,アダプティブマネジメント,モニタリングといった用語の意味を理解できているかについても確認を行う.また,生態系機能を活かすEco-DRRについて,その活用によってどのような利点があるのか,より効果的に活用する際にはどのような生態系管理をすべきか,について説明ができるか,確認を行う.
② 本科目において,生態系と人間との関係性を考えられるようになるためには,生態系管理の在り方を理解するとともに,その管理における実行可能性(費用)や対象とする生態系(環境)の価値の側面についての考慮も重要である.環境問題が生じる背景には,環境をタダとして扱ってしまう経済のしくみが存在し,環境が適正に評価されないが故に,環境破壊が深刻化してしまう側面がある.このことから環境と経済(コスト)は切り離して考えることはできないと言われるが,このことについて,具体例を挙げてその理由について説明ができるか,確認を行う.いくつかの環境評価手法について,具体的な事例を挙げながら説明ができるか,確認を行う.生態系管理を実行するにあたり,農業の多面的機能についての環境評価結果や,生態系サービスに対する支払い(PES)の考え方は,どのように活かすことができるのかについて,説明ができるか確認を行う.
③ 本科目において,生態系と人間との関係性を考えられるようになるためには,生態系管理の在り方を理解することが重要である.その生態系管理は,人類が生態系から得る恵みである生態系サービスの恒常的な提供が可能となる様,生態系サービスに密接に関連する生態系機能の安定性,多様性が重要であり,それには生物多様性が豊かさである必要がある.これらの関係性について適切に説明ができるか,確認を行う.生態系機能と生物多様性との関係性を議論する上で,機能的冗長性の概念は重要である.このことについて,具体例を挙げて説明ができるか,確認を行う.以上を踏まえると,生物多様性の保全は重要であり,生物多様性国家戦略2012-2020といった国の施策が示されることも至極当然ではあるが,重点的に取り組むべき基本戦略として挙げられている5つについて,それらがどのように生物多様性の保全に結びつくのか,それぞれ説明ができるか,確認を行う.
④ 本科目において,生態系と人間との関係性を考えられるようになるためには,生態系の大きな改変を防ぐためには人間活動がどうあるべきかについて理解をする必要がある.国際社会全体が人間活動に伴い引き起こされる諸問題を喫緊の課題として認識し,協働して解決に取り組んでいくための目標としてSDGsが定められている.国の施策であればまだしも,企業においてもSDGsに貢献する取り組みが増えている.ここで,なぜ企業はSDGsへの貢献が必要なのかについて説明ができるか,確認を行う.また,企業におけるSDGsに貢献する取り組みとして,ESGやCSR,CSVなどが挙げられるが,これらはそれぞれどのような取り組みなのかについて説明ができるか,確認を行う.


キーワード ① 生態系管理 ② 環境の評価 ③ 生態系機能 ④ 生物多様性 ⑤ SDGs
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業時に解答できなかった事項,及び授業時に理解が追い付かなかった事項について,改めて第11回から第14回までの学習内容の確認を行うこと.その上で,やはり理解のできない事項がある際には,担当教員に質問し,確実な理解を得ておくこと.各項目について,それぞれ単独に用語を覚えているだけでは,生態系管理の在り方について理解ができたとは言い難い.それらがどのようにお互いに関係し合い,その総体としてどのような生態系管理を目指すべきかについて思考を巡らすことは,実践的な知恵として知識を昇華させることに役立つ.また,今回は最終回であるので,第5回,第10回,第15回のまとめ回の内容を中心として復習を行い,さらに各回の内容に立ち返り,理解を確実なものとしておくこと.
履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
生態系の概要 生態系の概念,生態系の構造や構成要素,気候帯に対応した生態系区分であるバイオームについて,重要な用語を用いて説明をすることができる.生態系の構成要素である生物的要素(多様な生物),非生物的要素(光,水,大気,土壌など)の代表的なものについて挙げることができるとともに,その両者の相互作用によって形成される物質の移動や物質の形態の変化,つまり物質循環やエネルギーの移動を含めて生態系が成り立っていることについて,説明をすることができる.生物間相互作用や食物網等について,その用語を説明することができる.プラネタリー・バウンダリーズにおいて,どのような判断・提言が成されたのかについて,説明をすることができる. 生態系,物質循環,生物間相互作用 20 1, 2, 5
ミレニアム生態系評価とSDGs ミレニアム生態系評価について,実施背景とその成果について,説明をすることができる.ミレニアム生態系評価における評価に際し立てられた,4つのシナリオについて,正しくそれらの位置づけについて区分をすることができる.SDGsが扱う分野として挙げられている5つのPを示すことができる.SDGs達成に貢献するための企業活動の指標,もしくは企業や事業への投資や融資の際の指標としても注目される3項目について示すことができる. ミレニアム生態系評価,人間の福利,SDGs,17のゴール 15 3, 14, 15
生態系機能の理解 生物多様性の概念について,説明をすることができる.生物多様性と生態系機能,生態系サービスとの関係について,具体的な例とともに説明をすることができる.生物多様性国家戦略における4つの生物多様性の危機要因,4つの生物多様性を守る意味,5つの国の施策の基本戦略を挙げることができる.生態系機能について,生物多様性との関係から,その安定性,多機能性,機能的冗長性などを含めて説明することができる.地球規模の環境評価の枠組みの一つであるプラネタリー・バウンダリーズにおいて,どのような判断・提言が成されたのかについて,説明をすることができる. 生態系機能,安定性,多機能性,機能的冗長性,生物多様性 35 2, 5, 13, 15
生態系サービスの理解 供給サービスについて,近年50年間ではどのようなものの需要が増大しているのかについて,少なくとも3つ程度挙げることができる.特に現在の海産および淡水産の漁獲物利用レベルは持続不可能であることについて,具体的に数値を用いて説明をすることができる.調整サービスとはどのようなものを指すのか,少なくとも3つ程度挙げることができる.洪水や渇水といった水害軽減策として,森林の調整サービスを十分に発揮させるためにはどのような管理・施業が必要かについて,説明をすることができる.文化的サービスとはどのようなものを指すのか,少なくとも3つ程度挙げることができる.エコツーリズムの,生態系や経済との関係性について,説明をすることができる.基盤サービスと他3つの生態系サービスとの違いについて,人間への影響の直接・間接,及びその影響時間の長短の観点から説明をすることができる.基盤サービス,及び生息・生育地サービスとはどのようなものを指すのか,少なくともそれぞれ3つ程度挙げることができる. 生態系サービス,供給サービス,調整サービス,文化的サービス,基盤サービス,生息・生育地サービス 3, 5, 6, 7, 8, 9, 10
環境評価手法の理解 環境保全と経済(コスト)は切り離して考えることができないと言われるが,それはなぜかについて説明をすることができる.それぞれの環境評価手法について,具体的な適用例を挙げながら説明することができる.環境の価値の分類について,それぞれどのようなものが当てはまるのか,具体例を挙げることができる.生態系管理の実行にあたり,農業の多面的機能についての環境評価結果や,生態系サービスに対する支払い(PES)の考え方は,どのように活かすことができるのかについて,説明をすることができる. 環境評価,多面的機能,PES 30 12, 15
生態系管理の理解 生態系管理のよりよい在り方について,人類,もしくは日本の歴史的背景を踏まえ,近年の知見と合わせて説明をすることができる.生態系,もしくは生態系管理に唯一の解は存在しないことについて,具体例を用いて説明をすることができる.レジリエンス,レジームシフト,アダプティブマネジメント,モニタリングといったキーワードの意味について,説明をすることができる.Eco-DRRとは何か,その正式な用語を英語で記載できるとともに,その意味について説明をすることができる. 資源利用,農業,生態系管理,レジリエンス,アダプティブマネジメント,Eco-DRR 4, 5, 11, 15
評価方法 試験(100%)により評価する. *成績発表後、教務課にて試験・レポートに関する総評が閲覧できます。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 なし
参考文献 Millennium Ecosystem Assessment 編『生態系サービスと人類の将来―国連ミレニアムエコシステム評価』オーム社,2,800円+税.D. サダヴァ他, 石田泰樹・斎藤成也 監訳(2014)『大学生物学の教科書 第5巻生態学』講談社,1,400円+税.A. Mackenzie, A.S. Ball, S.R. Virdee, 岩城英夫訳(2001)『生態学キーノート』シュプリンガー・フェアラーク東京,3,200円+税.宮下直・野田隆史(2003)『群集生態学』東京大学出版会,3,200円+税.小宮山宏・武内和彦・住明正・花木啓祐・三村信男 編(2010)『サステイナビリティ学 4 生態系と自然共生社会』東京大学出版会,2,400円+税.湯本貴和 編,松田裕之・矢原徹一 責任編集(2011)『シリーズ日本列島の三万五千年―人と自然の環境史 第1巻 環境史とは何か』文一総合出版,4,000円+税.森章 編(2012)『エコシステムマネジメント―包括的な生態系の保全と管理へ―』共立出版,4,500円+税.森章(2018)『生物多様性の多様性』共立出版,1,800円+税.Brian Walker and David Salt, 黒川耕太訳(2020)『レジリエンス思考 変わりゆく環境と生きる』みすず書房,1-17頁,31-43頁.柴田晋吾(2019)『環境にお金を払う仕組み-PES(生態系サービスへの支払い)が分かる本』大学教育出版,1-16頁,100-127頁.中静透・菊沢喜八郎 編(2018)『森林の変化と人類』共立出版,3,300円+税.中村太士・菊沢喜八郎 編(2018)『森林と災害』共立出版,3,300円+税.栗山浩一・馬奈木俊介(2008)『環境経済学をつかむ』有斐閣,2,200円+税.鷲谷いづみ(2018)『新版 絵でわかる生態系のしくみ』講談社,2,200円+税.村上芽・渡辺珠子(2019)『SDGs入門』日本経済新聞出版社,900円+税.宮下直・瀧本岳・鈴木牧・佐野光彦(2017)『生物多様性概論』朝倉書店,2,800円+税.J.ロックストローム(著)武内和彦(監修)谷淳也・津高政志・蓑輪智子・北村恵以子・高橋愛・眞鍋由実・吉田哲郎・森秀行(訳)(2018)『小さな地球の大きな世界 プラネタリ―・バウンダリーと持続可能な開発』丸善出版,3,200円+税.蔵治光一郎(2012)『森の「恵み」は幻想か』化学同人,1,700円+税.岡崎正規・木村園子ドロテア・波多野隆介・豊田剛己・林健太郎(2010)『図説 日本の土壌』朝倉書店,5,200円+税.金子信博(編)(2018)『土壌生態学』朝倉書店,3,600円+税.水口剛(2017)『ESG投資』日本経済新聞出版社,2,200円+税. 環境省自然保護局(2012)『生物多様性国家戦略2012-2020』https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/initiatives/files/2012-2020/01_honbun.pdf. 環境省自然保護局(2016)『生態系を活用した防災・減災に関する考え方』http://www.env.go.jp/nature/biodic/eco-drr/pamph01.pdf. Pushpam Kumar edit. (2010) The Economics of Ecosystems and Biodiversity (TEEB) 報告書『Ecological and Economic Foundations(生態系と生物多様性の経済学:生態学と経済学の基礎,IGES仮訳)』https://archive.iges.or.jp/jp/archive/pmo/pdf/1103teeb/teeb_d0_j.pdf. 東北大学生態適応グローバルCOE 編(2013)『生態適応科学』 http://meme.biology.tohoku.ac.jp/gema/Documents/textbook/ .次期生物多様性国家戦略研究会(2021)『次期生物多様性国家戦略研究会報告書』http://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/initiatives5/files/100_hokokusho.pdf.
実験・実習・教材費 なし