区分 (生)フィールド生態科目 フィールド生態共通科目 (環)環境データサイエンス科目 環境情報科目 環境情報基本科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門性 理解力 実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
専門知識 教養知識 思考力
実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
個⼈・社会・⾃然が直⾯する課題に対して専⾨的な理解を深めると共に、学際的かつ実践的な能⼒を有する。企業・地域社会などのあらゆるコミュニティに寄与する組織的な活動能⼒を有する。
科目の目的
卒業研究のみならず、大学生活において数値を取り扱う場面は多くある。さらに、社会組織における他者とのコミュケーションにおいても、定量的なエビデンスやファクトに基づいて誰もが納得する分析や提案を行うことが求められている。つまり、学科や領域に関わらず、数学の基礎知識と技術の習得は、実験、実習等で得る測定値のデータ処理、数値解析を将来行うにあたって必要不可欠である。本講義では、上記の通り、数学の基礎知識と技術の習得を目的とする。特に数値計算、統計的な処理、物理単位・有効数字の取り扱い、表とグラフの活用を適切に行えるよう、理解を深める。適宜PCを活用し、数値計算に関する感覚を養う。到達目標数量の扱い、計算方法、数量の比較に関する基礎知識と技術を習得する。
到達目標
数字を扱う際における、示し方、数量や有効数字の扱い方を理解している。それをもとに、方程式や公式を用いて計算ができ、比較もできる。また、図の作成や行列演算といった、高度な技術が身に付いている。これらの基礎知識と技術を習得する。
科目の概要
本講義では、数値解析の基礎を、回を追って段階的に展開していく。第1回の講義では、アチーブメントテストを実施する。第2回の講義では、数と量、有理数と無理数、関数、計算法の基本を理解し、指数表記、キロ、ミリ、マイクロなどの接頭語、百万分率(ppm)などに慣れる。第3回の講義では、有効数字という考え方を理解し、有効数字を考慮した計算法を習得する。また、数の習え方として数列とΣ(シグマ)計算を学ぶ。第4回の講義では、未知数を求める方法の基礎として一次方程式と連立方程式の解法を学び、未知数を求める方法の応用として不等式の性質と解法を学ぶ。第5回の講義では、数量と数量の関係として、データ間の相関を表す方法のひとつである一次関数を学ぶ。第6回の講義では、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方を学ぶ。第7回の講義では、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について学ぶ。第8回の講義では、数値データの扱い方として、三角関数を学び、その中でも正弦定理と余弦定理を理解する。第9回の講義では、数値データの扱い方として、第8回に続き三角関数を学び、その中でも加法定理を理解する。第10回の講義では、線形代数の基礎として、ベクトルの意味や向きと大きさ、加法、スカラー、零ベクトルを学ぶ。第11回の講義では、線形代数の基礎として、行列の意味、演算、単位行列、ゼロ行列を学ぶ。第12回の講義では、データを線形目盛の2次元直交座標に記点する方法を学び、対数目盛も理解する。第13回の講義では、平均値と中央値の意味と算出方法を学ぶ。値のバラツキの程度の指標として、分散や標準偏差の算出方法を学ぶ。第14回の講義では、二種類のデータ間の相関についても学ぶとともに、クロス集計を学ぶことでデータの活用法を理解する。第15回の講義では、全般にわたる演習問題を行い、理解を確実なものにする。第2回の講義から第5回までの講義を数量の扱いの基本として第1部に位置づけ、第6回の講義から第7回の講義を数値表示の基本として第2部に位置づけ、第8回から第14回の講義を数値データの集まりの扱い方として第3部と位置付ける。第15回講義は学びの確認と位置付ける。
科目のキーワード
①有効数字 ②指数・対数 ③接頭語 ④方程式 ⑤相関 ⑥平均 ⑦標準偏差 ⑧ベクトル ⑨関数 ⑩作図
授業の展開方法
講義では、教科書と教員が作成したコマ用オリジナル配布資料を用いる。配布資料は、ワードやパワーポイントによって作成されたテキストの解法を中心とした資料で、教員がスクリーンに投影しながら解説する。また、黒板への板書も併用する。講義時間中に練習問題へも取り組み、講義毎に小テストをおこなうことで進捗の確認を行う。練習問題を各自で解いた後に、すぐに教員から回答例や解説を受けることで、学生は当該箇所を確認しながら授業に参加し、理解を深めることができる。

【15回の授業内容】
1. アチーブメントテスト
2. 数と式1_計算の基本
3. 数と式2_有効数字と整式
4. 方程式_一次方程式と不等式
5. 関数1_直線を表す一次関数
6. 関数2_指数と指数関数
7. 関数3_対数と対数関数
8. 関数4_三角関数の基礎
9. 関数5_三角関数の加法定理
10. ベクトルと行列1_ベクトル
11. ベクトルと行列2_行列
12. 数値データの集まり1_数直線と図
13. 数値データの集まり2_基本統計量
14. 数値データの集まり3_データの関係
15. まとめと演習

オフィス・アワー
【火曜日】4時限目、【水曜日】昼休み、【木曜日】1時限目~4時限目、【金曜日】1時限目~昼休み
科目コード ENS210
学年・期 1年・後期
科目名 基礎数学
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 必修
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 なし
展開科目 環境統計解析学基礎
関連資格 社会調査士
担当教員名 谷地俊二
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 プレイスメントテスト 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。
今回では、学生の現状を把握してフィットした講義内容を展開することを目的とし、計算の基本、有効数字、方程式、指数、対数、三角関数、ベクトルと行列、基本統計量の理解を問うプレイスメントテストを実施する。

【教材・教具】
(1)人間環境大学「基礎数学のコマシラバス」2022年、全ページ
(2)芦田宏直著「シラバス論:大学の時代と時間、あるいは〈知識〉の死と再生について」晶文社、2019年、30-43項。
(3)芦田宏直著「シラバス論:大学の時代と時間、あるいは〈知識〉の死と再生について」晶文社、2019年、184-190項。
(4)プレイスメントテスト(試験問題を配布)

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 教材(1)「基礎数学のコマシラバス」
主題細目② 教材(2)「シラバス論」、教材(3)「シラバス論」
主題細目② 教材(4)「試験問題」
コマ主題細目 ① 基礎数学の概要 ② 基礎数学のプレイスメントテスト(実力テスト)について ③ プレイスメントテスト
細目レベル ① 卒業研究のみならず、大学生活において数値を取り扱う場面は多くある。また、学科や領域に関わらず、数学の基礎知識と技術の習得は、実験、実習等で得る測定値のデータ処理、数値解析を将来行うにあたって必要不可欠である。本講義では、上記の通り、数学の基礎知識と技術の習得を目的とする。特に数値計算、統計的な処理、物理単位・有効数字の取り扱い、表とグラフの活用を適切に行えるよう、理解を深める。関数電卓やPCを積極的に活用し、数値計算に関する感覚を養う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第9回の講義から第12回の講義にかけては、数値表示の基本として指数と対数、指数と対数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数、データの作図方法の習得する(第2部)。第13回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、統計の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。この通り、本講義での学びについておさえる。
② 細目レベル①でおさえた通り、本科目では基礎から回を追って段階的に学びを深めていくことで、最終的にデータの整理のスキルを身につけることになる。しかし、学生個人の学問領域への興味や、これまでの教育で得た知識には個人差が存在する。そのため、授業展開の速度をどの回においても一定とした場合、その理解度にはばらつきが生じる恐れがある。すなわち、学びについてゼロから始めることは、学生の利益になり得ない可能性がある。この状況を鑑み、本科目ではプレイスメントテスト(実力テスト)を実施し、その結果をもとに2回目以降の講義からの進行速度の調整を考える。これにより、すべての学生に対して公平平等な講義となり、学生にフィットした内容を展開できる。
③ プレイスメントテストは、制限時間60分間として実施する。ここでは、計算の基本、有効数字、方程式、指数、対数、三角関数、ベクトルと行列、基本統計量の理解を問うこととする。この結果をもとに今後の授業展開の速度を調整する目安とする。なお、このプレイスメントテストは、細目レベル②で示した通り、現状を把握して、学生によりフィットした講義内容を展開することを目的として実施される。また、コマシラバスの記載で分かるように、到達目標は明確である。すなわち、授業進行速度が調整されたとしても、学生の満足度の面において公平性は保たれる。なお、このプレイスメントテストによる各得点数は、学生の現状把握のみに教員が利用することとしており、期末試験の点数に加点もしくは減点されるものではない。
キーワード ① 数学 ② 理解度 ③ プレイスメントテスト ④ 到達目標 ⑤ 授業満足度
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
今回のプレイスメントテストにより、自身の得意・不得意箇所は把握できたはずである。それを、そのままにすることなく、得意箇所も含めて見直すことが必要である。基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。今回に関しては、特に復習課題は設けていないが、各自でプレイスメントテストにおいて難しいと感じた問題について、解法を調べておくこと。
【予習】
単位の接頭語を学ぶため、身近で用いている単位をノートにまとめる。

2 数と式1_計算の基本 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。
今回では、第1部の数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いを理解する。今回では、第1部の基礎として、数と量、有理数と無理数、関数、計算法の基本を理解し、また、指数表記、キロ、ミリ、マイクロなどの接頭語、百万分率(ppm)などに慣れる。

【教材・教具】
(1)コマ用オリジナル資料 1-7頁。
(2)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、1-4頁。
(3)コマ用オリジナル資料7-8頁。
(4)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、12-13頁。
(5)コマ用オリジナル資料9-10頁。
(6)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、7-11頁。
(7)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、14-15頁。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材(1)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

主題細目②
教材(1)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

主題細目③ 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」、(4)「数学プライマリー」

主題細目④
教材(5)「コマ用オリジナル資料」、(6)「数学プライマリー」、(7)「数学プライマリー」

【参考】
(1)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、12-27頁。
(2)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、13-33頁。
(3)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、114-115頁。
(4)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、116-117頁。
(5)村上道夫ら「基準値のからくり」、講談社、2014年、135-140頁。
(6)村上道夫ら「基準値のからくり」、講談社、2014年、200-202頁。

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考(1)「もう一度、高校数学」、(2)「高校数学の教科書 上」

主題細目② 
参考(3)「もう一度、高校数学」、(4)「もう一度、高校数学」

主題細目③ 
参考(5)「基準値のからくり」、(6)「基準値のからくり」
コマ主題細目 ① 四則演算 ② べき乗 ③ 平方根 ④ 展開と因数分解
細目レベル ① 数の分類として、正の整数、分数、負の整数、少数、ゼロ、無理数、虚数などが挙げられる。ここで、有理数と無理数を大きく分けると、以下のようになる。分数a / bのa、bが整数のとき、その値は整数、有限小数または循環小数となる。このように、整数比の分数で表される数を有理数と呼ぶ。言い換えると、分子・分母ともに整数であるような分数と言える。これに対し、整数比の分数で表すことのできない数が無理数である。この違いをおさえる。次に、四則演算には決まりがあり、これを守らなければ、正答を得られない。1. 乗除算を先に行う。A+B×Cの場合、B×Cを先に行いその結果をAに加える。A−B÷Cの場合、B÷Cを先に行いその結果をAから減ずる。2. 加減算を先に行うときは括弧をつける。C×(A−B)の場合、A−Bを先に行い、その結果にCをかける。3. 交換法則とは、加算(足し算)と乗算(かけ算)の場に成立する。A+B=B+A、A×B=B×Aとなる。負の数を考えると減算(ひき算)を加算として扱うことができる。A、B、Cを正の数とすると、A−B≠B−Aだが、A+(−B)= (−B) +Aとなる。4. 結合法則は、四則演算(加減乗除算)のすべてについて成立する。A×B×C= A×(B×C)、(A×B)×C= A×(B×C)、(A×B)÷C= A×(B÷C)、A+(B+C)= (A+B)+Cとなる。5. 分配法則は四則演算のすべてについて成立する。A×(B+C)= (A×B)+(B×C)、A×C−B×C=(A−B)×Cとなる。以上を基礎としておさえる。
② べき乗計算の計算は、底(てい)およびべき指数と呼ばれる2つの数によって定まる。例として、A^5の場合、Aは「底」となり、5は「べき指数」である。A^5とは、 A × A × A × A ×Aを計算することになり、Aを5回掛けることになる。例えば、5^5とは、 5 × 5× 5× 5× 5を計算することになり、3,125になる。なお、5^0は1となるが、今回の講義では0乗の考え方までは触れないこととする。この後の第7回の講義「関数2_指数と指数関数」において、具体的な計算方法を学ぶことになるが、今回の講義では、計算の方法をおさえることとする。べき乗計算と加減乗除算が混じった場合、べき乗計算も乗除算のひとつとして、計算の順序を考えることをおさえる。
これに続き、指数の日常での使い方についても学ぶ。環境中の物質の量などの数量は非常に大きいものから小さいものまであり、ケタ違いの値を比較することが多々ある。これらの数は10のべき乗を利用して表現される。10 進法で大きな数を表そうとするとゼロをたくさん並べなければならない場合がある。例えば1億は100000000で0が8個必要となる。あるいは1億分の1は1/100000000 = 0.00000001で、小数点以下に0が7個並ぶ。こういう場合、ゼロの数を数えるのは面倒だし、数え間違いが起きやすい。整数の場合は一つの方法として桁区切りを使うことがある。金額の表示の場合などはこれにあたる。すなわち1億円を表すのに100,000,000 円 のように書く。こうすると数え間違いは少なくなる。より一般的な方法として指数表記がある。例えば5億であれば、5.0×10^8、20万分の1ならば1/ (2×10^5) = 0.5 /10^5 = 5.0 ×10^-6のように書く。また、10^8のかわりにE+08を使い、5.0 E+08と表記し、10^-4のかわりにE-04 を使い、5.0 E-04のように書くこともある。これは計算機や Excel などでよく用いられる記数法である。このとき、5.0の部分を仮数(部)、10^8の+08、10^-4の-04 などの部分を指数(部)と呼ぶ。数値データを表にするとき、あるいは計算するとき、この指数表記法に慣れておくことが大事であることをおさえる。

③ まずは、指数を振り返ると、x^nとして表すことができる。ここで、2以上の自然数nと十数aが与えられとき、方程式x^n = aができたとする。この式における解(根)を、aのn乗根と呼ぶ。このn乗根は、単に累乗根とも呼ばれるが、とくに、2乗根のことを平方根、3乗根のことを立方根とも呼ぶ。nが偶数のとき、aが正ならば、aのn乗根(実数)は2つある。これは、定理によりy = x^nとy = aが2点で交わることから明らかなことである。それらのうち、正の方をn√a(ここで、nは√ルート記号の左斜め上に書く)と示すと、負はマイナスをつけて – n√aとなる。また、0のn乗根は0のみである。これもn√0で表す。そして、aが負の場合には、aのn乗根は実数の範囲には存在しない。ここでは、主に平方根の扱いを習得することを目的とする。なお、平方根の場合、単純に「√」のみで表されることも、あわせておさえる。
④ 式の展開と因数分解は、同時に学ぶと理解が早い。端的には、展開公式の逆が因数分解と捉えることができる。整式の積の形になっている式を、単項式(元が1つ)の和の形に表すことが展開である。一方、整式をいくつかの1次以上の整式の積に直すことが因数分解である。展開公式を紹介すると、(x + a)(x + b) = x^2 + (a + b) x + ab、(x + a)^2 = x^2 + 2ax + a^2、(x - a)^2 = x^2 - 2ax + a^2、(x + a)(x - a) = x^2 – a^2がある。次に、因数分解は、上述の通り展開公式の逆である。例えば、a(a + 1)を展開すると、a^2 + aとなる。因数分解ではその逆の作業となるため、a^2 + aを因数分解すると、a(a + 1)となる。ここで、a^2はa×aであり、因数「a」を2つ持つといえる。また、ab + ac – ad = a (b + c – d)のように因数分解できる。つまり、因数分解とは、共通因数をくくり出すことである。なお、自然数に対して素数の積に分解することを素因数分解と呼び、分解の対象を自然数から多項式に発展したものが因数分解である。なお、2016年に大流行したドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の第8話において、森山みくりさんは津崎平匡さんへの「割り切れない」気持ちを抱えたまま帰省している。しかし、みくりさんは自身の気持ちを因数分解し、最後に残った意志(因子)を導き出したと、電話で平匡さんに伝えている。その際に、その計算方法について平匡さんは、「素因数分解ですね」と訂正を入れている。細かい箇所だが、ドラマを試聴して気になっていた学生は、その違いも合わせて理解していただきたい。ここでは、整式の計算の基礎として、展開と因数分解をおさえる。
キーワード ① 指数表記 ② 接頭語 ③ 負のべき乗 ④ 平方根 ⑤ 素数
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
この回のポイントは、数学における計算の根幹となる四則演算の確認と、単位の理解、そして計算式の変換方法の理解である。基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料の11ページから12ページの課題と数学プライマリーの練習1.1、1.2、2.1、2.2、4.3、4.4、5.1、6.1を解くこととする。回答と解法は翌週の講義資料として配付する。
【予習】
有効数字と数列、Σ(シグマ)計算を学ぶため、インターネットなどで意味を調べてノートにまとめる。

3 数と式2_有効数字と整式 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。
今回では、整式や、第1部以降につながる重要な数値の扱い方としての有効数字という考え方を理解し、有効数字を考慮した計算法を習得する。また、数の考え方として数列とΣ(シグマ)計算を学ぶ。

【教材・教具】
(1)コマ用オリジナル資料 1-2頁。
(2)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、1-2頁。
(3)コマ用オリジナル資料2頁。
(4)コマ用オリジナル資料3-6頁。
(5)コマ用オリジナル資料7-9頁。
(6)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、29-31頁。
(7)コマ用オリジナル資料10-12頁。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材(1)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

主題細目② 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材(4)「コマ用オリジナル資料」

主題細目④
教材(5)「コマ用オリジナル資料」、(6)「数学プライマリー」

主題細目⑤
教材(7)「コマ用オリジナル資料」、(6)「数学プライマリー」

【参考】
(1)矢野宏「誤差を科学する どこまで測っても不正確!?」、講談社、1994年、46-44頁。
(2)矢野宏「誤差を科学する どこまで測っても不正確!?」、講談社、1994年、70-76頁。
(3)村上道夫ら『基準値のからくり』、講談社、2014年、36-38頁。
(4)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、224-235頁。
(5)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、236-245頁。

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目② 
参考(1)「誤差を科学する」、(2)「誤差を科学する」

主題細目③ 
参考(3)「基準値のからくり」

主題細目④ 
参考(4)「もう一度、高校数学」

主題細目⑤ 
参考(5)「もう一度、高校数学」
コマ主題細目 ① 整式 ② 測定値の精度と有効数字 ③ 有効数字を考慮した計算 ④ 数列 ⑤ Σ(シグマ)計算
細目レベル ① 最初に、いくつかの言葉の定義を確認することにする。例えば、「- 2」、「x^2」、「- 5abc^2」がある。これらは、いくつかの文字や数を掛け合わせて得られている。このような式を、単項式と呼ぶ。単項式において、掛け合わせた文字の個数を次数と呼び、数字の部分は係数と呼ぶ。上記の「- 2」と示した単項式では、次数は0で、係数は- 2である。次の「x^2」で示した単項式では、次数は2で係数は1である。「- 5abc^2」で示した単項式では、次数は4で、係数は- 5である。いくつかの単項式の和の形に表される式を、多項式と呼び、それを構成する各単項式をその多項式の項と呼ぶ。そして、単項式と多項式をあわせて、整式と呼ぶ。この整式について、例えば「3xy^2 – 2 x^2y + 4xy^2 – 3x^2y + 8x - 4x +1」とあったとすると、これは、「7xy^2 – 5 x^2y + 4x +1」と、同類項つまり文字の部分が同じ項同士をまとめることができる。これを、整式を整理すると呼ぶ。ここでは、数学において重要な言葉の定義を確認する。
② 測定値の精度は測定器具や方法によって決まり、測定値の記載はその精度を踏まえた上で行わなければならない。測定値の精度を表現するために利用されるのが有効数字という考え方である。この章では有効数字の桁の数え方と有効数字を考慮した計算について学び理解する。ものの大きさを測るとき、いくらでも精度よく測れるものではない。測定に用いる機器によって、測れる精度が決まってくる。1 mm刻みの物差しで物の大きさを測る場合、最も細かい目盛の程度が測定精度と考えられる。例えば、12.3~12.4 cmのものを測ったとき、12.3 cm に近いときには「12.3 cm」、12.4 cmに近いときには「12.4 cm」となる。この場合、測定結果の「有効数字は3桁」であるという。指数表記を用いると有効数字が表しやすい。上の結果は例えば 1.23 ×10^1 cmと書く。ここでは、測定精度と、有効数字の考え方までをおさえる。
次に、有効数字について考える。有効数字では、数値の中にゼロがある場合には、その桁の読み方に注意が必要である。1. 有効数字の最初の数字は、ゼロではない最高位の数字となる(例:0.00352では、有効数字は「352」の3桁となる。「3」より上の「0」は有効数字ではない)。2. 二つの有効数字の間にあるゼロは有効数字である(例:30.7 では、有効数字は「30.7」の3 桁であり、「0」も有効数字である)。3. 小数点以降のゼロは有効数字である(例:7.0、7.00、7.000では、有効数字はそれぞれ2 桁、3 桁、4 桁であり、精度がそれぞれ1/10、1/100、1/1000 まであることを意味する)。4. 十、百、千などを表すゼロの使い方について、これらが有効数字なのか、位取りなのかは一般には分からない。この場合には精度を明確に示すか、あるいは指数表記で表してもらう(例:500の有効数字は、1桁かもしれなし、3桁かもしれない。3桁の場合には、5.00×10^2と表記すれば明確になる)。5. 有効数字の桁数は、単位の取り方とは無関係である(例:34.5 mgの有効数字は3桁であるが、単位を変えて「0.0345 g」、「3.45×10^4 μg」と表示してもよい。ただし、「34500 μg」と表示すると,「5」より下位のゼロが有効数字なのか、位取りなのか不明瞭になる)。6. 気体定数、アボガドロ定数などの定数、円周率など、これらは、最も有効数字の桁数が少ないものよりも2桁多くとり、その後の数字は切り捨てて計算に用いる。7. 実験の回数、百分率を求めるための100、原子価を示す数などについて、これらは有効数字を考えなくてよい。これらをおさえる。

③ 和・差の計算では小数点以下の最も少ない桁数まで求める。例1:3.42 + 12.8 + 2.281=18.501 → 18.5となる。これは、そのまま計算し、有効数字の桁の最も少ないものの桁数まで求める。上の場合、12.8が小数点以下1桁なので、これに合わせて計算結果を丸める。結果の小数点以下2桁目は有効数字にならない。例2:4.30 + 7.00 = 11.30 → 11.30と考えてよい。これは足し算によって有効数字の桁数が大きくなる場合である。ただし、計算によって小数第1位の不確かさが累積するとみなされる場合は有効数字の桁数も大きくならないと考える。例3:単位が入ってくる場合について、3.572g + 28mg = 3.572g + 0.028g = 3.600gとなる。これは、測定の精度によって不確かさが現れるのが小数点以下3桁目であるので、3 桁目まで有効と考え、有効数字4桁と考えてよい。積・商の計算で、異なる桁数の有効数字で計算する場合、結果の有効数字は、もとの有効数字のうち最も桁数の小さい桁数まで求める。例: 4.23 × 0.38 = 1.6となる。このように、和・差の計算と、積・商の計算では、有効数字の取り方が異なることをおさえる。
④ 数列とはある規則性をもった数字の並びのことを示す。規則とは1、2、3、4、5・・・の数列では数字の差が1ずつ増えることであり、このように数字の間の差が等しい数列を等差数列という。2、4、8、16、32・・・の数列では右の数字÷左の数字がすべて2となり、等しい比で変化する。このように常に前後(左右)比が一定の数列を等比数列という。他にも1、3、7、15、31、63・・・では右の数字と左の数字の差が2、4、8、16、32となり前後の数字の差が等比数列となっている。このような数列を階差数列という。先に示した等差数列の1と2、3、4などの数字を項といい、最初の項を初項、数字の差を公差という。また、数列の最後の項は最終項といい、n番目の項を一般項という。初項はa、公差はd、、末項はl、一般項はa_nで表される。等差数列の一般項は、a_n=a+(n-1)dで表され、末項はnが最後の値となればいいのでl=a+(n-1)dとなる。1、2、3、4、5・・・の数列では、初項が1、公差が1であるため、a_n=1+(n-1)=nとして表される。先ほどの1、2、3、4、5・・・18、19、20の数列の和を計算する場合、1+2+3+4+5+6・・・18+19+20を計算して210を計算できる。これが20までではなく、10000までの場合、手計算や電卓での計算は困難である。このような時に先ほど示した等差数列の一般項a_n=a+(n-1)dを用いると計算が容易になる。nまでの項の和をSとした場合、S=a+{a+(1-1)d}+{a+(2-1)d}+{a+(3-1)d}+・・・+{a+((n-2)-1)d}+{a+((n-1)-1)d}+{a+(n-1)d}となる。lを初項とした場合に公差は-dとおくことができるため、a_n=l+(n-)(-d)となる。上と同様にnまでの項の和をSとするとl+{l+(1-1)(-d)}+ {l+(2-1)(-d)}}+ {l+(3-1)(-d)}+・・・+{l+((n-2)-1)(-d)}+ {l+((n-1)-1)(-d)}+{l+(n-1)(-d)}となる。2つのSの和をとると、2S=(a+l)+(a+l)+・・・+(a+l)+(a+l)となり、(a+l)がn個続くことになる。そのため、2S=(a+l)nとでき、S={(a+l)n}/2となる。nが20の場合で確認してみると、S={(1+20)×20}/2とでき、210となる。末項が10000では、S={(1+1000)1000}/2=500500となる。このように規則性を有する数字の総和を得るには数列が有利であることをおさえる。
⑤ 数列の一般項は主にΣ計算で用いられる。Σ(シグマ)は日本語では累乗の和や総和で用いる記号である。1、2、3、4、5・・・の数列は細目レベル④で一般項a_n=nとできることを示したが、シグマを用いると初項からn項目までの和をΣkとする。Σk={n(n+1)}/2であり、Σk^2={n(n+1)(2n+1)}/6、Σk^3=[{n(n+1)}/2]^2で表すことができる。Σ(a+b)はΣa+Σbとわけて計算すればよく、Σ(c×a_k)の場合はcΣa_kとできる。1、2、3、4、5・・・18、19、20の数列の和を計算する場合、一般項a_kはkとでき、Σa_k=Σk={n(n+1)}/2となる。このときの項数nは20であるため、Σk={20×(20+1)} /2={20×21}/2=210となる。3、5、7、9、11・・・の数列では一般項は2n+1であり、項数が20の時のこの数列の総和Sは次のように計算できる。S=Σ(2n+1)=2Σn+Σ1となり、S=2×[{n(n+1)}/2]+nとできる。nに20を代入すると、S=2×[{20(20+1)}/2]+20=420+20=440となる。複雑な数列の総和を求めるにはシグマを用いるのが適していることをおさえる。
キーワード ① 測定精度 ② 有効数字 ③ 有効数字を考慮する計算 ④ 数列 ⑤ Σ(シグマ)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
この回のポイントは、有効数字の理解と、シグマの使い方である。有効数字は、卒論研究はもちろん、他の講義や、日常生活においても理解しておかなければ不便が生じる。シグマも同様に、特別な言葉ではなく、一般常識として捉えられる範疇であり、この後に続く統計学でも頻出である。これらを理解するためには、基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料の13ページの課題と数学プライマリーの練習12.1から12.7を解くこととする。回答と解法は翌週の講義資料として配付する。
【予習】
一次方程式を学ぶため、インターネットなどで意味を調べてノートにまとめる。

4 方程式_一次方程式と不等式 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。今回では、第1部の基礎として、未知数を求める方法の基礎として一次方程式と連立方程式の解法および、不等式の解法を学ぶ。
【教材・教具】
(1)コマ用オリジナル資料 1-2頁。
(2)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、23-24頁。
(3)コマ用オリジナル資料3-8頁。
(4)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、27-28頁。
(5)コマ用オリジナル資料9-10頁。
(6)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、68-69頁。
(7)コマ用オリジナル資料11-12頁。
(8)コマ用オリジナル資料13-16頁。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材(1)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

主題細目② 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」、(4)「数学プライマリー」

主題細目③ 
教材(5)「コマ用オリジナル資料」、(6)「数学プライマリー」

主題細目④
教材(7)「コマ用オリジナル資料」、(6)「数学プライマリー」

主題細目⑤
教材(8)「コマ用オリジナル資料」、(6)「数学プライマリー」

【参考】
(1)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、58頁。
(2)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、70-71頁。
(3)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、59頁。
(4)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、76頁。
(5)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、77頁。

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考(1)「もう一度、高校数学」

主題細目② 
参考(2)「もう一度、高校数学」、(3)「もう一度、高校数学」

主題細目③ 
参考(4)「もう一度、高校数学」

主題細目④ 
参考(4)「もう一度、高校数学」

主題細目⑤ 
参考(5)「もう一度、高校数学」
コマ主題細目 ① 一次方程式とその解法 ② 連立方程式とその解法 ③ 不等号と不等式の性質 ④ 一次不等式 ⑤ 連立不等式
細目レベル ① 一次方程式は、正確には一元一次方程式という。元とは文字のことを意味し、一元とは数字以外に用いる文字が1つであり、その文字のべき指数が1であることを示す。文字は英文字で示され、未知数を示す。一般的に文字としてxが一次方程式では用いられることが多い。一次方程式は3x+7=x-9のように=(イコール)を中心に左右に数や式が書かれている。このように=で右側の式や数字と左側の式や数字が結ばれたものを等式とよぶ。右側に示されているものを右辺といい、左側に示されているものを左辺という。前に示した3x+7=x-9の右辺はx-9であり、左辺は3x+7である。一次方程式の解法で重要なことは移項である。移項とは左辺にある数字や文字を右辺に移動させることであるが、左辺から右辺に動かす場合には符号を逆転させる。同様に右辺から左辺に移動させる場合もある。一次方程式を解く場合には左辺に未知数であるxを移項し、数字を右辺に移項する。つまり、3x+7=x-9では、3x-(x)=7-(-9)となり、3x-x=7+9となる。これを計算すると、2x=16となり、x=8と計算できる。ここでは移項の方法をおさえる。
② 連立方程式は、正確には二元一次方程式という。二元とは未知数である文字が2つあることを示し、文字にはxとyが用いられる。2x-y=5の様に示されるが、未知数が2つある場合は式が2つ必要になる。しかし、とあるxの値の時のyの値を求める場合は式が1つとなる。具体的にはxが2の時のyの値を知りたい場合には先に示した式のxに2を代入する。つまり、2×2-y=5となり、左辺の数字を右辺に移項して-y=5-4となる。これを整理すると-y=1となり、両辺の符号を逆転させてy=-1となる。つまり、2x-y=5はxが2のとき、yは-1となる。しかし、xが1の時は同様に計算するとy=-3となる。1つの連立方程式ではxもyも定まった値とすることができない。化学分析では測定したxの値を用いて1つの連立方程式から濃度となるyの値を計算する。ここでは連立方程式のそれぞれの未知数の関係についておさえる。
次に、連立方程式は上記で示した様に2つの式を持ちいて2つ未知数の解を求める。解法として、加減法と代入法がある。加減法とは消したい文字の係数をそろえる方法であり、代入法とは消したい文字をもう一方の文字で表す方法である。2x-y=5と5x-3y=13の2つの式が与えられている場合で考える。2x-y=5を式1とし、5x-3y=13を式2とする。加減法では消したい文字の係数をそろえることが必要である。式1のyの係数は-1であるため、式1に3をかけることで式2のyの係数が一致する。つまり、式1×3-式2をおこなうとyの係数は0(ゼロ)となり、xのみの一次方程式となるため、xの値が決まる。決まったxの値を式1もしくは式2に代入することで未知数がyのみとなり、yの値が定まる。このときのyの値は式1と式2のどちらから求めても同じ値となる。代入法では式1を移項によりy=2x-5のように変形させる。式2のyに変形させた式1を代入すると、5x-3(2x-5)=13となり、5x-6x+15=13となる。これを計算すると-x=-2となり、x=2となる。このxの値を加減法と同様に式1もしくは式2に代入してyを計算すると、yは-1となる。ここでは連立方程式を解くための加減法と代入法についておさえる。

③ 不等式とは、不等号を用いて左辺と右辺の数の大小関係を示す式である。不等号は主に4つあり、<と>、≦、≧がある。aとbを比べるとき、aがbよりも大きい場合には>を用いて、a>bとして示す。aがbよりも小さい場合にはa次に、不等式は右辺と左辺の大小を示すものであるため、不等号の向きに注意が必要である。例えば、A>Bのとき、A+C>B+CはCの値が何であろうと右辺と左辺の大小関係は代わらないため、不等号は変化しない。しかし、A×C>B×Cの場合は、Cが0よりも小さい場合には不等式が成立しない。具体的な数字を当てはめてみると、Aが3でBが2、Cが-1のときでは次のようになる。左辺であるA×Cでは3×(-1)で-3となり、B×Cである右辺では2×(-1)で-2となる。そのため、左辺よりも右辺が大きくなるためにCが0よりも小さい場合にはA×C>B×Cは成立しない。Cが0の場合は左辺と右辺ともに0となるため、同様にA×C>B×Cは成立しない。このように負の値を両辺にかける場合には不等号の向きが逆転する。同様に負の値で両辺を割る場合も不等号の向きが逆転する。ここでは不等式の不等号の逆転についておさえる。
④ 一次不等式の解法は、一次方程式と同様であるが、②で示した様に不等号の向きに注意することが必要である。一次不等式では未知数は1つである。4x-21>9x-6の不等式からxの範囲を求める場合は連立方程式と同様に左辺にxをまとめるように移項し、右辺に数字をまとめるように移項する。つまり、4x-9x>-21-(-6)となり、-5x>-15とできる。両辺に-5でわることで左辺にあるxの係数を1にするが、マイナスの値をかけるために②で示した様に不等号が逆転することに注意をする。-5x>-15の両辺を-5でわることで、x<3とできる。分数や小数点を含む数字が不等号に入る場合も先ほどと同様に左辺にxをまとめ、右辺に数字をまとめるように移項し、xの係数が1となるように両辺に同じ値をかけるか割るかをして計算すればよい。ここでは不等式の解法についておさえる。
⑤ 連立不等式は一次不等式であれば2つ以上の不等式を組み合わせたものであり、解は全ての式の解を満たす範囲を示すものになる。例えば、x+1>-4を式1として3x+1≧2x+3を式2とする。この式1と式2の連立不等式を個別に解き、その解が重なる範囲となる。式1は、両辺に-1を加えることで左辺をxのみにすることで、x>-5とできる。式2では、左辺にxをまとめ、右辺に数字をまとめる。まず、3x+1≧2x+3は両辺に-2xを加え、(3x-2x)+1≧(2x-2x)+3とし、x+1≧3とする。次に両辺に-1を加えて左辺をxのみにする。つまり、x+(1-1)≧3-1となり、x≧2となる。式1はx>-5となり、式2ではx≧2となる。-5よりも大きく2以下であるとなり、-5
キーワード ① 移行 ② 未知数 ③ 加減法と代入法 ④ 不等号 ⑤ 不等号の逆転
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
この回のポイントは、連立方程式と、不等式の理解である。両者は似ており、解き方はおおよそ同じである。しかし、不等式ではマイナスをかける、わるなどの計算によって不等号が逆向きになる。この計算への慣れが必要といえる。基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料の9ページから10ページの課題と数学プライマリーの練習9.1と練習9.2、練習9.7、練習11.1、練習24.1から24.4を解くこととする。回答と解法は翌週の講義資料として配付する。

【予習】
一次関数を学ぶため、インターネットなどで意味を調べてノートにまとめる。

5 関数1_直線を表す一次関数 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。今回では、第1部の主要箇所として、データ間の相関を表す方法のひとつとして、一次関数を学ぶ。
【教材・教具】
(1)コマ用オリジナル資料 1頁。
(2)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、34-35頁。
(3)コマ用オリジナル資料2-3頁。
(4)コマ用オリジナル資料3-4頁。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材(1)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

主題細目② 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

主題細目③ 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

【参考】
(1)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、100-101頁。
(2)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、102-103頁。

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考(1)「もう一度、高校数学」

主題細目② 
参考(2)「もう一度、高校数学」

主題細目③ 
参考(2)「もう一度、高校数学」
コマ主題細目 ① 一次関数の表し方 ② 傾きと切片 ③ 一次関数の変形
細目レベル ① 第4回の講義で連立方程式では2つの未知数を扱うが、一方の値が定まれば連立方程式からもう一方の値が定まることを学んだ。つまり、連立方程式を知ることができれば、データ点のないところがどうなるかを推定できる。そのような直線を求める準備として、まず、直線の図がどのような関数で表されるかを復習する。一次関数とは、 y = f (x) = ax + bで表される関数である。定数項(変数 x、y を含まない項、この式では b )のほかには x についても y についても1次の項しか含まれない形の式である。ちなみに、この式で ax は x の1次の項である。x^2を含む項があれば x の2次の項と呼び、その項を含む関数は2次関数、x^nを含む項があれば x の n 次の項と呼び、その項を含む関数は n 次関数ということになる。yを縦軸に、xを横軸にとり、この式に当てはまる点(y, x)をプロットすると、それらの点は傾きをa、切片をbとする直線上に並ぶ。まずは、一次関数の表し方までをおさえる。
② 切片とは、この直線が y軸と交わるところの y座標の値である。y軸上の点の x 座標の値はすべて x = 0である。従って、y軸と交わるところの y座標の値はx = 0と置いたときの yの値である。傾きは、xが増えた量に対する、yが増えた量である。つまり、「傾き = yが増えた量 / xが増えた量」である。例えば、例えば x座標が0から1だけ増えたとき、y座標の値は4から5.8に1.8だけ 増加したとする。上記の式より、傾きは「1.8 / 1 = 1.8」ということになる。座標で考えてみると、x座標がx1 からΔxだけ増えてx2になったとし、そのとき y座標がy1からΔyだけ増えてy2になったとする。ここでΔは「デルタ」と読み、変数が増えた量を示す時に使われる。このとき、xが増えた量(Δx)は、Δx = x2 – x1、yが増えた量(Δy)は、Δy = y2 – y1となる。つまり、傾きは、(y2 – y1)/(x2 – x1)となる。この計算方法をおさえる。
③ 直線の式についてもう少し考えてみる。直線は直線の通る点1点と傾きがわかると一意的に決まる。そこで、点(x1, y1)を通る傾 a の直線を考えると、y−y1 = a(x−x1)であり、つまり、y = ax−a(x1−(y1/a))である。すなわち切片bは、b = −a(x1−(y1/a))ということになる。xとyに関する1次式は、xとyについて1次の項の加減算だけで表される式である。このような式は変形することによって必ずy = f (x) = ax + bのような形に表すことができる。1次式をy = f (x) = ax + bの形に表せば、傾きと切片は a, b に相当する値から知ることができる。傾きa が正の時、直線は右上がりに、傾きa が負の時、直線は右下がりになる。このような一次関数の変形の方法について理解するとともに、この方法ができるようになるところまでをおさえる。
キーワード ① 一時関数 ② 傾き ③ 切片 ④ 予測 ⑤ 直線
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
この回のポイントは、問題を解くことと同時に、今後必要となる「予測」という概念の第一歩に触れたことである。まず、その点への理解を、配布資料を見直すことに注力してほしい。そして、基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料の5ページから6ページの課題と数学プライマリーの練習13.1から13.6を解くこととする。回答と解法は翌週の講義資料として配付する。

【予習】
指数関数とネイピア数を学ぶため、インターネットなどで意味を調べてノートにまとめる。

6 関数2_指数と指数関数 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。
今回では、第二部における指数計算の取り扱いに慣れることを目的として、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数を学ぶ。

【教材・教具】
(1)コマ用オリジナル資料 1頁。
(2)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、44-45頁。
(3)コマ用オリジナル資料 2-4頁。
(4)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、44-46頁。
(5)コマ用オリジナル資料 5-6頁。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 教材(1)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

主題細目② 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」、(4)「数学プライマリー」

主題細目③ 
教材(5)「コマ用オリジナル資料」、(4)「数学プライマリー」

【参考】
(1)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、114-115頁。
(2)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、208-210頁。
(2)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、115-117頁。
(2)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、148-149頁。

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考(1)「もう一度、高校数学」、(2)「高校数学の教科書 上」

主題細目② 
参考(3)「もう一度、高校数学」

主題細目③ 
参考(4)「もう一度、高校数学」、(2)「高校数学の教科書 上」
コマ主題細目 ① 底と指数 ② 指数計算 ③ 指数関数
細目レベル ① 第2回の講義で、底(てい)およびべき指数と呼ばれる2つの数によって定まることを学び、第2回の講義で、例えば5.0×10^8の場合、5.0の部分を仮数(部)、10^8の+08の部分を指数(部)と呼ぶことを学んだ。これらを用いる場面としては、環境中の物質の量などの、数量が非常に大きいものから小さいものまでについて、ケタ違いの値を比較する際などや、表示する際などが挙げられる。例えば、水の中の藻類の細胞密度(個数 / mL)を10 進法で大きな数を表そうとするとゼロをたくさん並べなければならない場合がある。例えば1億は100000000で0が8個必要となる。つまり、藻類の細胞密度を示したい時に、2000000個 / mLのようになってしまう。これでは、ゼロの数を数えるのは面倒だし、数え間違いが起きやすい。この時に、2.0×10^6の個 / mLのように示せば、理解しやすい。この回では、このような使う場面を想像することで理解をするところまでをおさえる。
② 指数表記をした数の演算にはいくつかのポイントがある。このポイントをおさえることで計算が容易になるため、ポイントをおさえる。加減算について、位取りの桁に注意して行う。まず、指数表記の「×10^k 」の部分を揃える。例えば5.34×10^8 + 2.1×10^7、の場合は指数の大きい方に揃えて5.34×10^8 + 0.21×10^8とし、仮数部を計算して5.55 ×10^8と計算する。また、5.34×10^8 + 8.78×10^8の場合、仮数部を足し算すると 14.12 となるので、答えは1.412×10^9と、小数点の左を一桁になおして書き表す。仮数部は小数点の左に0でない数一桁として書き表すのが一般的である。乗除算について、仮数部と指数部を別々に計算し、結果を小数点の左一桁にして書き表す。例えば(3.14×10^3)×( 4.0 ×10^2) ならば 12.56×10^5 = 1.256×10^6 = 1.3×10^6となる。(3.14×10^3)÷( 4.0 ×10^2)ならば0.785×10^1 = 7.9とする。同じ底をもつ指数の乗除算について、103のように指数表記された数については 10 を「底(てい)」、3 を「指数」と呼ぶ。同じ底をもつ指数の乗除算については次が成り立つ。a^n × a^m = a^(m+n)、a^n ÷ a^m = a^(n-m)となる。これらのポイントをおさえる。
③ 無理数については第2回で述べた。分母、分子が整数であるような分数で表すことができない数が無理数、小数で表すと、有限小数、循環小数とならず、小数点以下が無限に続くような数が無理数であるということを学んだ。平方根や円周率は代表的な無理数である。この無理数の仲間に、ネイピア数と呼ばれる数、eがある。eは円周率のような定数であり、e = 2.718 281 828 459 045 235 360 287 471 352 - - - - - - という無限小数である。電卓やExcel使って計算する場合、円周率とeを使うことがよくある。上のような入力法を覚えておこう。このネイピア数は、先ほどの正規分布関数にも出てくる。そのほか、これを底とする対数は自然対数とされ、10を底とする常用対数と対比される。また、最も重要な性質は、この数を底とする指数関数を微分しても積分しても結果はe^xとなる。すなわち微積分に対して不変の関数を与えることである。その結果として、自然現象を書き表す数式に頻繁に現れる。円周率とともにこの数の持つ意味を理解し、2.71828 くらいまでを記憶しておくとよい。
さて、指数に関連する要項に触れたところで、指数関数についてみていく。指数関数とは、aが1でない正の定数(a > 0、a ≠ 1)のとき、y = a^xを、aを底とする指数関数と呼ぶ。指数法則は、以下の通りである。a^m × a^n = a^(m + n)、a^m ÷ a^n = a^(m - n)、こ(a^m)^n = a^(mn)、(ab)^m = a^m×a^n、(a/b)^m = (a^m)/(a^n)である。これは、計算を楽にしてくれる重要な公式である。大学入学から現在までの授業を受けて、「藻類の毒性試験も興味深い」「卒業研究では絶対に毒性学をテーマ選択し、谷地先生と一緒に農薬のリスク研究をすすめ、人と生物が共生する社会づくりに向けて取り組みたい」と思った学生は多いはずだ。藻類の増殖は細胞分裂によって起こるため、指数増殖を起こすと表現される。このように、数学で学んだ知識は、他の学問領域への興味にもつながる。ここでは、指数関数の計算を習得することはもちろんだが、さまざまな研究にもつながっていることをおさえる。

キーワード ① べき乗 ② 指数 ③ 指数表記 ④ 指数の乗除算 ⑤ 自然数
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
今回のポイントは、日常生活や研究活動にも取り入れられていることを理解することである。そのため、身の回りを今一度確認し、指数関数で表現されている事象を探すことに、理解をすすめるヒントがある。特に見つけられない場合は、谷地研究室(5401)を訪れることを強く勧める(研究室訪問は復習課題とはしないため、希望者のみとする)。農薬のリスク研究に興味を持ってもらえたのなら、先生は大変うれしい。未来の研究のためにも、基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料の7ページの課題と数学プライマリーの練習16.1と練習16.2、練習16.3を解くこととする。

【予習】
対数関数について学ぶため、logについて使用方法などについてインターネットなどを用いて検索しておく。

7 関数3_対数と対数関数 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。
今回では、第二部における対数の取り扱いに慣れることを目的として、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について学ぶ。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材(1)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

主題細目② 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」、(4)「数学プライマリー」

主題細目③ 
教材(5)「コマ用オリジナル資料」、(6)「数学プライマリー」

【参考】
(1)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、150-151頁。
(2)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、216-218頁。
(3)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、124-125頁。
(4)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、218-219頁。
(5)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、126-133頁。

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考(1)「もう一度、高校数学」、(2)「高校数学の教科書 上」

主題細目② 
参考(2)「高校数学の教科書 上」、(3)「もう一度、高校数学」

主題細目③ 
参考(4)「もう一度、高校数学」、(5)「高校数学の教科書 上」
コマ主題細目 ① 対数 ② 対数関数 ③ 対数関数の演算
細目レベル ① この回では、対数関数について学ぶ。常用対数、自然対数とそれらを含んだ式の計算について理解し、応用できる力をつけることを目標とし、ポイントをおさえることとする。対数関数は指数関数の逆関数である。一般に、a > 0、a≠1のとき、実数xと正の実数yについて、y = a^xが成り立つことと、x = log a yが成り立つ。そのため、指数関数y = a^xの逆関数は、対数関数x = log a yである。ここで、逆関数というものが何かについて説明する。yがxの関数であるとき、y = f (x)と書くことを第5回の講義で述べた。この式を変形してx = g (y)のように表す。このときの関数g (y)をf (x)の逆関数という。例えば1次関数y = f (x)= 2x+7を変形すると、x = g (y) = (y-7) / 2と表される。独立変数、従属変数に使う文字は自由であるから、x = g (y)と書くかわりにy = g (x)と書いても良い。すなわちg (x) = (x-7) / 2は、f (x)= 2x+7の逆関数と言っても良いということである。 ここでは、まず対数の表記方法を知り、さらに対数関数は指数関数の逆関数であることをおさえる。
② 指数関数y = f (x)= 10^xを考える。先ほどの①の例にならってこのf (x)の逆関数を考えてみる。x = g (y)の形に変形するのであるが、この意味は、「yという数を与えた時、それが10の何乗であるか?という質問に対する答えがxになる」ということである。例えばy = 100と与えたとする。すると100 = 10^2であるから、この場合の答えはx =2ということになる。これを言い換えると、「10を底とする100の対数 xは2である」ということになる。式で書くと、x = g (y)= log10 yであり、y = 100のときx = g (100)= log10 100 = 2となる。 すなわち、対数関数は指数関数の逆関数ということである。一般に対数関数は y = f (x) =loga xとして表す。ここで、aは今までに述べてきたように「底(てい)」と呼ばれ、xは「真数」と呼ばれる。上の式は「aを底とする真数xの対数はyである」という意味の式であり、aをy乗するとxとなる関係を表している。 指数関数、対数関数のaとxについては、a > 0、x > 0という制約があることに注意が必要である。
ここでは、対数関数の変換方法をおさえる。

③ 対数が考え出された理由について理解することで、計算のポイントをおさえる。対数の定義より、amの対数loga a^mはmである(y = loga a^mは、aをy乗するとamを意味するからy =m )。ここで、指数関数に関する計算の公式を思い出してみる。A = a^m、B =a^nとする。対数をとると、loga A = m、loga B = nであり、A×B = a^m+ a^n = a^(m+n)とする。これについて、両辺の対数をとるとlog (A×B) = m+n = log A + log Bとなる。すなわち、AとBの乗算をそれぞれの対数をとることによって加算に変えることができる。これが歴史的に対数を考え出した理由である。対数計算の公式は以下のようになる。loga1 = 0、loga a = 1である。loga M×N = loga M + loga Nである。loga M/N = loga M − loga Nである。loga M^P = p loga Mである。loga b = logc b / logc aである(底の変換)。
ここでは、対数関数の計算方法をおさえる。

キーワード ① 対数 ② 底 ③ 常用対数 ④ 真数 ⑤ 逆数
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
今回のポイントは、logの変換である。公式をすべて暗記することは困難かもしれない。そのため、意味としてy = loga a^mは、aをy乗するとamを意味するからy =mであることを理解することに注力してほしい。それを身につけるためには、基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料の6ページの課題と数学プライマリーの練習17.1から17.4と練習18.1から18.3を解くこととする。

【予習】
次回から、三角関数の基礎を学んでいく。三角比について、各自でsin、cos、tanを調べ、その意味することをノートにまとめておくこととする。

8 関数4_三角関数の基礎 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。
今回からは第3部として、線形代数の基礎を学ぶ。今回ははじめとして、三角関数の基礎を学び、言葉の意味と計算方法を理解する。

【教材・教具】
(1)コマ用オリジナル資料 1-2頁。
(2)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、57-59頁。
(3)コマ用オリジナル資料 2-4頁。
(4)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、60-61頁。
(5)コマ用オリジナル資料 5-6頁。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材(1)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

主題細目② 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」、(4)「数学プライマリー」

主題細目③ 
教材(5)「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、154-163頁。
(2)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、264-269頁。
(3)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、164-165頁。
(4)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、266頁。

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考(1)「もう一度、高校数学」、(2)「高校数学の教科書 上」

主題細目② 
参考(3)「もう一度、高校数学」、(4)「高校数学の教科書 上」、

主題細目③ 
参考(3)「もう一度、高校数学」、(4)「高校数学の教科書 上」
コマ主題細目 ① 三角比 ② 正弦定理と余弦定理 ③ 三角形の面積
細目レベル ① 三角比とは、直角三角形のある角度における「斜辺」に対する「高さ」および「底辺」、また「底辺」に対する「高さ」の比の値を示す。例えば、直角を右下とした三角形があれば、左側の角度(θ)によって、三角比は決まる。なお、基礎数学では、頂点を大文字、その頂点に対する辺(対辺)は、その頂点の小文字で表す。また、反時計回りにアルファベットを打っていくことを覚える。三角比の定義として、正弦(sine:サイン, sin)、余弦(cosine:コサイン, cos)、正接(tangent:タンジェント, tan)がある。サインはsinθ= 高さ÷斜辺、コサインはcosθ= 底辺÷高さ、タンジェントはtanθ= 高さ÷底辺となる。なお、三角比とは直接的に関係しないが、三平方の定理は、直角三角形において、斜辺の2乗は他の2辺の2乗の和に等しいこともあわせて覚える。
ここで、代表的な2つの直角三角形の三角比についても確認を行う。代表的な直角三角形として、「30°60°90°」と「45°45°90°」の直角三角形がある。まず、「30°60°90°」の直角三角形の三角比は、「1:2:√3」である。このことから、sin 30°= 1/2、cos 30°= √3/2、tan 30°= 1/√3となり、sin 60°= √3/2、cos 60°= 1/2、tan 60°= √3となる。また、「45°45°90°」の直角三角形の三角比は、「1:1:√2」である。このことから、sin 45°= 1/√2、cos 45°= 1/√2、tan 45°= 1となる。
次に、sinθ、cosθ、tanθの符号と変域を確認する。交点0の二次元座標軸があったとする。x 軸上に長さ1の棒(動径)があり、反時計回りに動いたときにx 軸となす角をθとする。0°<θ<90°が第I象限、90°<θ<180°が第II象限、180°<θ<270°が第III象限、270°<θ<360°が第IV象限とする。その時に、棒が位置する象限により、三角比の符号は決定する。具体的には、第I象限では全ての符号が正(+)、第II象限ではsinθの符号が正(+)、第III象限ではtanθの符号が正(+)、第IV象限ではcosθの符号が正(+)となる。これは、一般角の三角関数において、半径rの円周上の同点P(x, y)は、動径OPとx軸のなす角がθのとき、sinθ= y/r、cosθ= x/r、tanθ= y/xと定義していることによるものである。例えば、θ= 210°のときのsinθ、cosθ、tanθの値を求めるとする。動径が210°となる点をPとして、点Pからx軸に垂線をひき、その足をQとする。ここで、△OPQは角POQ = 30°の直角三角形である。よって、3辺の比はPQ:OP:OQ = 1:2:√3より、半径r = 2の円と考え、|PQ| = 1、|OP| = 2、|OQ| = √3である。そのため、点Pの座標は、点P(x, y)= (- |OP|, -|PQ|)=(-√3, -1)となる。したがって、sinθ= y/r = -1/2であり符号は負(-)、cosθ= x/r = -√3/2であり符号は負(-)、tanθ= y/x =-1/ -√3であり符号は正(+)となる。簡単な暗記方法として、「ストック(s, t, c)」として覚えることをお勧めする。
三角比の相互関係として、まず「sinθ、cosθ、tanθの関係式」を押さえる。
sin^2θ+cos^2θ= 1、tanθ= sinθ/cosθ、1 + tan^2θ= 1/cos^2θの3つを押さえる。
次に、「鈍角(90°<θ<180°)を鋭角の三角比で表す」方法を押さえる。要点として、1つ目にsinθとcosθは変化できる、2つ目に90°を基準とした際にsinとcosは変化できるが、180°を基準とした際には不変である、3つ目に、最初に示した三角比の角度で符号は決定する。以上の3点がある。sin 110°の場合、sin(180°- 70°)とすると、sin 110°は第II象限では正(+)のため符号は正(+)となり、180°を基準としていることから、+ sin 70°となる。これをsin(90°+ 20°)とすると、sin 110°は第II象限では正(+)のため符号は正(+)となり、90°を基準としていることからsinとcosが変化し、+ cos 20°となる。
ここでは、これらのルールをおさえる。

② 正弦定理とは、sinθ(正弦)を用いて三角形の外接円の半径と、その三角形との関係を表している。ここで、正弦定理を示すと、(a/sin A)=(b/sin B)=(c/sin C)= 2Rとして示すことができる。ここで、Rは外接円の半径を示す。なお、外接円とは、三角形の3つの頂点を通る円を示す。考え方のポイントとしては、一般的に1組の向かいあった辺と角がわかれば正弦定理と考えることができる。証明では、a/sin A = 2R、b/sin B = 2R、c/sin C = 2R、つまりa = 2R sin A、b = 2R sin B、c = 2R sin Cとなる。よって、a:b:c = 2R sin A:2R sin B:2R sin C = sin A:sin B:sin Cである。
余弦定理とは、cosθ(余弦)を用いて三角形の3辺と1つの内角の関係を表している。ここで、余弦定理を示すと、a^2 = b^2 + c^2 – 2bc cos A、b^2 = c^2 + a^2 – 2ca cos B、c^2 = a^2 + b^2 – 2ab cos Cである。考え方のポイントとしては、一般的に2辺とその間の角、または3辺がわかれば余弦定理と考えることができる。例えば、△ABCにおいて、a = 3、b = 4、C = 60°のとき、辺 cの長さは余弦定理(c^2 = a^2 + b^2 – 2ab cos C)を使って求めることができる。3^2 + 4^2 – 2×3×4 cos 60°で、ここでcos 60°は三角比より1/2であることから、計算すると13となる。
ここでは、正弦定理と余弦定理を使って、三角形の辺の長さあるいは角の求め方をおさえる。

③ 三角形の面積は、△ABC = BC×AH×1/2(底辺×高さ÷2)である。ここで、高さにあたるAHをsinθで表すことができる。AH / AB = sinθである。つまり、AH = AB sinθである。これを面積の公式に代入すると、 △ABC = BC×AB sinθ×1/2となり、つまり△ABC = 1/2×AB×BC sinθとなる。ここでの考え方のポイントとして、2辺とその間の角がわかれば三角形の面積は求まることである。また、この式を使う際に、bとcの長さがわかっているが、Aがcos Aとして示されていることがある。この場合には、sin^2 + cos^2 = 1の公式を用いてsin^2 = 1 – cos^2とすることで対応できる。
また、三角形の面積には、ヘロンの公式もある。これは、3辺の長さが分かれば面積は求まるというものである。これはS = √s(s - a)(s - b)(s - c) ただし、s = (a + b + c)/2である。証明については授業内で解説することとするが、一見するとこの公式には三角比が使われていないように見える。しかし、この公式を導く中で三角比は利用されている。
ここでは、三角形の面積の求め方をおさえる。

キーワード ① sin ② cos ③ tan ④ 鋭角 ⑤ ラジアン
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
今回のポイントは、正弦定理と余弦定理の理解である。これを理解するためにも、まずは三角比を確実なものとすることが重要である。それを身につけるためには、基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料の7ページの課題と数学プライマリーの練習21.3を解くこととする。

【予習】
次回から、三角関数の加法定理を学んでいく。連立方程式の知識を多用するため、第4回の講義資料を見直すこととする。

9 関数5_三角関数の加法定理 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。
今回は、第8回からの続きとして、三角関数の主要な計算方法として加法定理の基礎を学び、演習問題を解きながら計算方法を理解する。

【教材・教具】
(1)コマ用オリジナル資料 1-2頁。
(2)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、60頁。
(3)コマ用オリジナル資料 2-4頁。
(4)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、62-63頁。
(5)コマ用オリジナル資料 5-6頁。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材(1)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

主題細目② 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」、(4)「数学プライマリー」

主題細目③ 
教材(5)「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、176-181頁。
(2)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、182-187頁。
(3)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、188-191頁。

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考(1)「もう一度、高校数学」

主題細目② 
参考(2)「もう一度、高校数学」

主題細目③ 
参考(3)「もう一度、高校数学」
コマ主題細目 ① 加法定理 ② 2倍角、半角、3倍角の公式 ③ 和と積の公式
細目レベル ① 三角関数の加法定理は、三角関数を学ぶ上で利便性の高い公式である。例えば、これまでに学んできた三角比の値は、θ= 30°、45°、60°だけであった。しかし、加法定理の公式を用いることで、例えば15°や75°も簡単に求めることが可能となる。加法定理は6つある。うち、3つはプラスとマイナスが逆転しているのみのため、実質的に3つを覚えると良い。
加法定理に入る前に、まずは、単位円(半径1の円)の周上の点Pの座標として、点P(cosθ, sinθ)とすることを確認する。これは、斜辺1の直角三角形において、sinθ= b/1 = b(高さ)であり、cosθ= a/1 = a(底辺)として求めている。
加法定理の一つ目は、cos(α-β)= cosα×cosβ+ sinα×sinβである。これは、「コツコツ進もう」として暗記することを勧める。証明では、単位円において、動径OP、OQのなす角をそれぞれα、βとしたとき、点P(cosα, sinα)点Q(cosβ, sinβ)とおく。そこで、2点間PQの長さは、2点間の距離の公式(2点A(x1, y1)とB(x2, y2)の距離ABは、AB = √(x2 – x1)^2 + (y2 – y1)^2)より、PQ^2 = (cosα - cosβ)^2 + (sinα – sinβ)^2であり、PQ^2 = (cos ^2α - 2 cosα×cosβ+ cos ^2β ) + (sin ^2α - 2 sinα×sinβ+ sin ^2β )となり、三角比の相互関係(sin^2θ+ cos^2θ= 1)をもとに整理すると、PQ^2 = 2 - 2(cosα×cosβ+ sinα×sinβ)となる…①。△OPQにおいて、余弦定理(a^2 = b^2 + c^2 – 2bc cos A:角POQ = |α-β|)より、PQ^2 = 1^2 + 1^2 -2×1×1×cos|α-β|となり、PQ^2 = 2 - 2×cos|α-β|となる…②。式①と②より、2 - 2×cos|α - β|= 2 - 2(cosα×cosβ+ sinα×sinβ)であり、つまりcos|α-β|= cosα×cosβ+ sinα×sinβである。よって、cos|α-β|= cos (α-β) = cos (β-α)より、cos(α-β)= cosα×cosβ+ sinα×sinβである。これについて、ブラスとマイナスが逆転する場合には、第II 象限であることからcos (-β)はcosβとなることに注意する。
加法定理のニつ目は、sin(α+β)= sinα×cosβ+ cosα×sinβである。これは、「咲いたコスモス、コスモス咲いた」として暗記することを勧める。同様に、sin(α-β)=sinα×cosβ- cosα×sinβである。
加法定理の三つ目は、tan(α+β)= (tanα+ tanβ)/(1 – tanα×tanβ)である。これは、「タンプラタンで1枚タンタン」として暗記することを勧める。同様に、tan(α-β)= (tanα- tanβ)/(1 + tanα×tanβ)である。
ここでは、三角関数の加法定理を習得することを目指す。

② 2倍角の公式は、加法定理より導くことになる。公式は3つあり、sin 2α= 2 sinα×cosα、cos 2α= cos^2α- sin^2α= 2 cos^2α- 1 = 1 – 2 sin^2α、tan 2α= (2 tanα)/(1 – tan^2α)である。
sin 2α= 2sinα×cosαの証明では、sin(α+β)= sinα×cosβ+ cosα×sinβにおいて、βをαとすると、sin (α+α) = sin 2α = sinα×cosα+ cosα×sinαであるため、2 sinα×cosαである。
cos 2α= cos^2α- sin^2α= 2cos^2α- 1 = 1 – 2sin^2αの証明では、cos(α+β)= cosα×cosβ- sinα×sinβにおいて、βをαとすると、cos 2α= cos (α+α) = cosα×cosα- sinα×sinα= cos^2α- sin^2αである。つまり、cos 2α= cos^2α- sin^2αである…①。また、三角比の相互関係(sin^2θ+ cos^2θ= 1)からsin^2α+ cos^2α= 1より、sin^2α= 1 - cos^2α…②で、cos^2α= 1 - sin^2α…③である。式①と②より、cos 2α= cos^2α- (1 – cos^2α) = 2 cos^2α- 1となる…④。式①と②より、cos 2α= (1 – sin^2α) – sin^2α= 1 – 2 sin^2α- 1となる…⑤。したがって、式①④⑤より、cos 2α= cos^2α- sin^2α= 2 cos^2α- 1 = 1 – 2 sin^2αとなる。
tan 2α= (2 tanα)/(1 – tan^2α)の証明では、tan(α+β)= (tanα+ tanβ)/(1 – tanα×tanβ)において、βをαとすると、tan 2α= tan (α+α) = (tanα+ tanα)/(1 – tanα×tanα) = 2 tanα/(1 – tan^2α)となる。
半角の公式は、2倍角の公式より導くことになる。公式は3つあり、sin^2θ/2 = (1 – cosθ)/2、cos^2θ/2 = (1 + cosθ)/2、tan^2×θ/2 = (1 - cosθ)/(1 + cosθ)である。
sin^2θ/2 = (1 – cosθ)/2の証明では、cos 2α= 1 – 2sin^2αより、2 sin^2α= 1 - cos 2αは、つまり、sin^2α= (1 – cos 2α)/2である。ここで、α = θ/2とおくと、sin^2×θ/2 = (1 – cosθ)/2である。
cos^2θ/2 = (1 + cosθ)/2の証明では、cos 2α= 2 cos^2α- 1より、2 cos^2α= 1 + cos 2αは、つまり、cos^2α= (1 + cos 2α)/2である。ここで、α = θ/2とおくと、cos^2θ/2 = (1 + cosθ)/2である。
tan^2θ/2 = (1 - cosθ)/(1 + cosθ)の証明では、tanθ= sinθ/cosθより、分子と分母を二乗して、(sin^2θ/2)/(cos^2×θ/2)とする。上記のsin^2θ/2の公式よりsin^2/θ= (1 – cosθ)/2と、cos^2θ/2の公式よりcos^2θ= (1 + cosθ)/2を用いて、tan^2θ/2 = ((1 – cosθ)/2)/( (1 + cosθ)/2)となり、分母と分子を2倍することで、tan^2θ/2 = (1 - cosθ)/(1 + cosθ)である。
最後に、3倍角の公式を学ぶ。3倍角の公式は、加法定理より導くが、上記までの三角比の公式を多数用いていくことになる。sin 3α= 3 sinα- 4 sin^3αである。証明では、sin(α+β)= sinα×cosβ+ cosα×sinβにおいて、3α= 2α+αより、sin 3α= sin (2α+α) = sin 2α×cosα+ cos 2α×sinαとする。ここで、sin 2αとcos 2αは2倍角の公式より変換し、sin 3α= 2 sinα×cosα×cosα+ (1 – 2 sin^2α)×sinαとなる。これはsin 3α= 2sinα×cos^2α+ (1 – 2 sin^2α)×sinαとなる。ここで、sin^2α+ cos^2α= 1であることから、cos^2α= 1- sin^2αとなり、よって、sin 3α= 2 sinα×(1- sin^2α) + (1 – 2 sin^2α)×sinαとなる。よって、sin 3α= 2 sinα- 2 sin^3α+ sinα– 2 sin^3αとなる。よって、sin 3α= 3 sinα- 4 sin^3αである。
ここでは、2倍角、半角、3倍角の公式をおさえる。

③ 三角関数の和と積について、まず正弦の加法定理から導くこととする。まず、積から和(差)の変換を確認する。sinα×cosβ= 1/2 (sin (α+β) + sin (α-β))と、cosα×sinβ= 1/2 (sin (α+β) – sin (α-β))を考える。sinα×cosβ= 1/2 (sin (α+β) + sin (α-β))について、sin(α+β)= sinα×cosβ+ cosα×sinβ…①、sin(α-β)= sinα×cosβ- cosα×sinβ…②とする。①+②より、2 sinα×cosβ= sin (α+β) + sin (α-β)となる。つまり、sinα×cosβ= 1/2 (sin (α+β) + sin (α-β))となる。次に、① - ②より、2 cosα×sinβ= sin (α+β) - sin (α-β)となる。つまり、cosα×sinβ= 1/2 (sin (α+β) – sin (α-β))となる。
次に、和(差)から積の変換を確認する。sin A + sin B = (2 sin (A + B)/2)×(cos (A – B)/2)と、sin A - sin B = (2 cos (A + B)/2)×(sin (A – B)/2)を考える。まず、sin A + sin B = (2 sin (A + B)/2)×(cos (A – B)/2)について証明する。sinα×cosβ= 1/2 (sin (α+β) + sin (α-β))において、α+β= A、α-β= Bとする。α+β= A、α-β= Bの2式を連立方程式として解くと、α= (A + B)/2、β= (A – B)/2となる。これを、sinα×cosβ= 1/2 (sin (α+β) + sin (α-β))に代入すると、sin ((A + B)/2)×cos ((A – B)/2) = 1/2 (sin A + sin B)となる。この式について両辺を2倍すると、つまり、sin A + sin B = 2 sin (A + B)/2×cos (A - B)/2となる。同様に、cosα×sinβ= 1/2 (sin (α+β) – sin (α-β))にも代入すると、cos ((A + B)/2)×sin ((A – B)/2) = 1/2 (sin A - sin B)となる。この式について両辺を2倍すると、つまり、sin A - sin B = (2 cos (A + B)/2)×(sin (A – B)/2)となる。
次に、余弦の加法定理から導くこととする。まず、積から和(差)の変換を確認する。cosα×cosβ= 1/2 (cos (α+β) + cos (α-β))と、sinα×sinβ= 1/2 (cos (α+β) – cos (α-β))を考える。まず、cosα×cosβ= 1/2 (cos (α+β) + cos (α-β))から証明する。cos(α+β)= cosα×cosβ- sinα×sinβ…①、cos(α-β)= cosα×cosβ+ sinα×sinβ…②とする。①+②より、2 cosα×cosβ= cos (α+β) + cos (α-β)となり、つまり、cosα×cosβ= 1/2 (cos (α+β) + cos (α-β))である。次に、sinα×sinβ= 1/2 (cos (α+β) – cos (α-β))を証明する。① - ②より、-2 sinα×sinβ= cos (α+β) – cos (α-β)となり、つまり、sinα×sinβ= 1/2 (cos (α+β) – cos (α-β))となる。
最後に、和(差)から積の変換を確認する。cos A + cos B = (2 cos (A + B)/2)×(cos (A – B)/2)と、cos A - cos B = (2 sin (A + B)/2)×(sin (A – B)/2)を考える。まず、cos A + cos B = (2 cos (A + B)/2)×(cos (A – B)/2)について証明する。cosα×cosβ= 1/2 (cos (α+β) + cos (α-β))において、α+β= A、α-β= Bとする。α+β= A、α-β= Bの2式を連立方程式として解くと、α= (A + B)/2、β= (A – B)/2となる。これを、cosα×cosβ= 1/2 (cos (α+β) + cos (α-β))に代入すると、cos ((A + B)/2)×cos ((A – B)/2) = 1/2 (cos A + cos B)となる。この式について両辺を2倍すると、つまり、cos A + cos B = 2 cos (A + B)/2×cos (A - B)/2となる。同様に、cos A - cos B = (2 sin (A + B)/2)×(sin (A – B)/2)にも代入すると、sin ((A + B)/2)×sin ((A – B)/2) = 1/2 (cos A - cos B)となる。この式について両辺を2倍すると、つまり、cos A - cos B = (2 sin (A + B)/2)×(sin (A – B)/2)となる。
ここでは、三角関数の和と積について、正弦および余弦の加法定理からの導き方をおさえる。

キーワード ① sinθ ② cosθ ③ 座標 ④ 単位円 ⑤ 加法定理
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
今回のポイントは、加法定理の理解と計算の習得である。これを習得するためには、加法定理の暗記が必要である。それを身につけるために、基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料の7ページの課題と数学プライマリーの練習22.2、23.1、23.2を解くこととする。

【予習】
次回から、ベクトルと行列を学んでいく。聞いたことがない学生もいると思うため、まずはインターネットで言葉を検索し、調べた内容をノートにまとめることとする。

10 ベクトルと行列1_ベクトル 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。
第10回と第11回は、線形代数の本題であるベクトルと行列を学ぶ。今回ははじめとして、ベクトルの基礎を学び、言葉の意味や考え方、計算方法を理解する。

【教材・教具】
(1)コマ用オリジナル資料 1-3頁。
(2)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、80-82頁。
(3)コマ用オリジナル資料 3-4頁。
(4)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、83-84頁。
(5)コマ用オリジナル資料 5-7頁。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材(1)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

主題細目② 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」、(4)「数学プライマリー」

主題細目③ 
教材(5)「コマ用オリジナル資料」、(4)「数学プライマリー」

【参考】
(1)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、176-181頁。
(2)石井俊全「まずはこの一冊から 意味がわかる線形代数」ベレ出版、2011年、54-60頁。
(3)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、182-187頁。
(4)石井俊全「まずはこの一冊から 意味がわかる線形代数」ベレ出版、2011年、61-62頁。
(5)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、188-191頁。
(6)石井俊全「まずはこの一冊から 意味がわかる線形代数」ベレ出版、2011年、63-70頁。


【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考(1)「もう一度、高校数学」、(2)「意味がわかる線形代数」

主題細目② 
参考(3)「もう一度、高校数学」、(4)「意味がわかる線形代数」

主題細目③ 
参考(5)「もう一度、高校数学」、(6)「意味がわかる線形代数」
コマ主題細目 ① ベクトル ② ベクトルの成分表示 ③ ベクトルの演算
細目レベル ① 線形空間(ベクトル空間)を学ぶにあたり、まずはベクトルと呼ばれる元(げん:要素)について学ぶ。例えば、数直線において0から正の方向(数直線上では右)に+5だけ伸ばすと、表現としては「+5とは、0から右へ5目盛り移動した位置」と呼べる。そして、数直線において0から負の方向(数直線上では左)に-3だけ伸ばすと、表現としては「-3とは、0から左へ3目盛り移動した位置」と呼べる。この際に、目盛りの上に「矢印」を使って移動を表現すると、どこからどこへ移動したかが理解しやすいと思う。数直線上において、+ 5 – 3 = 2という式は、「+ 5の位置から左に - 3だけ移動した点が2である」ことを表している。この際に、+5も移動した位置であると捉えて表現すると、「原点0から右へ5だけ移動し、続いて左に3だけ移動した点は、原点から右へ2だけ移動した点である」ということを表している。これは、原点0から見ると、移動が2回続いたことになる。同様に、- 5 + 3 = - 2という式は、「原点0から左に5だけ移動した点から、右に3だけ移動した点は、原点0から左に2だけ移動した点である」ということを表している。この、+ 5 – 3 = 2という式と、- 5 + 3 = - 2という式は、等式では、数直線上では「2本の矢印で表される移動を連続して施す移動が、1本の矢印の移動に等しい」となる。この式における「+ 5」や「- 5」は、数直線上に点をプロットする場合でも、足し算の結果を数直線上にプロットする場合でも、数直線上の図で見ると、「+ 5は、右向きの大きさ5の矢印」であり、「- 5は、左向きの大きさ5の矢印」で表現されている。このように、向きと大きさを持った情報をベクトルと呼ぶ。そして、ベクトルは図形的には矢印で表す。この矢印の根元を視点、矢印の先を終点と呼ぶ。数直線を思い浮かべて、数直線上の「- 5」は、左方向に大きさ5の矢印を表した。この「- 5」のベクトルは、矢印の置かれた位置には関係していない。つまり、あくまでも始点と終点の位置関係だけがベクトルが表すものである。これをもとに、実数における足し算をベクトルで解説する。例えば、「- 5 + 3」は、原点0を始点としたときの- 5のベクトル(左向き)の終点に、3のベクトル(右向き)を重ね合わせ、3のベクトルの終点がある位置に書かれている数直線上の目盛りを読むことになる。
数直線上での考え方をもとに、座標平面へ拡張することができる。例えば、原点O (0, 0)を始点として、A (2, 5)を終点としたベクトルをつくるとする。これは、「x軸方向に+ 2、y軸方向に+ 5という移動」を示す。ここで、数直線で示した通り、ベクトルとは移動の仕方を示しているものである。つまり、始点は原点に限らず、任意の点でも構わない。例えば、始点B (- 1, 2)で終点C (1, 7)のベクトルがあったとする。これは、「x軸方向に+ 2、y軸方向に+ 5という移動」を示す。つまり、原点Oから終点Aのベクトルと等しいベクトルであることを示す。
ここでは、ベクトルの表し方と考え方をおさえる。

② コマ主題細目①で示した例をもとに説明する。原点O (0, 0)を始点として、A (2, 5)を終点としたベクトルをつくるとする。これは、「x軸方向に+ 2、y軸方向に+ 5という移動」を示す。また、始点B (- 1, 2)で終点C (1, 7)のベクトルがあったとする。これも、「x軸方向に+ 2、y軸方向に+ 5という移動」を示す。つまり、原点Oから終点Aのベクトルと等しいベクトルであることを示す。このベクトルで示された移動分である+ 2と+ 5を、縦に並べて表記する。その場合、上にくる「2」が第1成分であり、下にくる「5」が第2成分である。このような示し方を、ベクトルの成分表示と呼ぶ。そして、この原点O (0, 0)を始点として、A (2, 5)を終点としたベクトルについて (4, 3)で表した点にはAと名前がついている。その場合、始点と終点を並べて、文字の上に矢印を載せてOA (このOAの上に→)と書くこともできる。このように、文字の上に矢印をつけることで、ベクトルを表すことになる。また、始点と終点を示さずに、a (このaの上に→)のように、1文字で書くこともできる。
ここでは、ベクトルの成分表示の方法と、意味をおさえる。

③ コマ主題細目①で示した通り、数直線上での数の和は、「2本の矢印で表される移動を連続して施す移動を1本の移動に直す」ことである。ここでのポイントは、2本の矢印の始点と終点をつなげて、1本の矢印とすることである。これに基づき、(5↑, 2↓)←(左が上、右が下に書かれているベクトルとし、このコマシラバス上では上矢印と下矢印で示す)が表す移動と、(2↑, 3↓)が表す移動の和を考えてみる。まずは、平面座標上に、どちらも原点Oを始点として、Oからx方向に+ 5、y方向に+ 2だけ移動して点A (5, 2)を、Oからx方向に+ 2、y方向に+ 3だけ移動して点B (2, 3)をプロットし、それぞれをOAとOBのベクトルとする。これの移動の和では、点AからOBを繋げるイメージとなる。つまり、点Aから、x方向に+ 2、y方向に+ 3だけ移動して点C (7, 5)に移動することになる。この移動をまとめると、点Oから、x方向に+ 7、y方向に+ 5だけ移動して点C (7, 5)に移動したといえる。これを式で表すと、(5↑, 2↓) + (2↑, 3↓) = (7↑, 5↓)となる。この計算では、第1成分同士の足し算と、第2成分同士の足し算が行われたことになる。つまり、平面上のベクトルの和は、x方向の移動同士、y方向の移動同士の和を取ることになる。よって、ベクトルの和を計算する際には、第1成分同士、第2成分同士の和を計算するといえる。
次に、積を確認する。例えば「4×- 2」を数直線上で確認する。意味としては、「左向きの大きさ2の矢印が、4個分」である。つまり、- 2の矢印の大きさは変えずに、その矢印を4個つなげることになる。ここで、「- 4×- 2」についても考える。先ほどの式との違いでは、左向きの大きさ2の矢印が、「- 4個分」である。この「- 4個分」の場合、向きを反対側にするという意味となる。つまり、意味としては、「左向きの大きさ2の矢印が、反対側に向かって4個分」である。つまり、- 2の矢印の大きさは変えずに、その矢印を反対向きにして4個つなげることになる。このように、ベクトルに数をかけることを、「スカラー倍する」と呼ぶ。これは、「4×- 2」で考えると、4を数として、- 2をベクトルと見ているわけである。これを、平面座標上にも用いて考える。例えば、- 3×(2↑, 4↓)について見ていく。数直線上で見た通り、- 3倍とは、矢印の向きを反対方向にして、大きさを3倍した矢印を求めることを意味している。そのため、(2↑, 4↓)の向きを反対方向にすると、(- 2↑, - 4↓)となる。これを3倍すると、(- 6↑, - 12↓)となる。この式をおさらいすると、ベクトル (2↑, 4↓)を、-3でスカラー倍したとなる。このような演算されたベクトルを2次元列ベクトルと呼ぶ。
ここで、どんなベクトルに足しても、そのベクトルを変えないベクトルが存在することに注意する。これは (0↑, 0↓)として表現でき、ゼロベクトル(零ベクトル)と呼び、0で示される。
ここで、ベクトルの計算法則をまとめて紹介する。

結合法則:(a + b) + c = a + (b + c)
交換法則:a + b = b + a
逆元:a + x = x + a = 0 この式を満たすただ1つの元xが存在する。このとき、「xをaの逆元」と呼び、- aと示す。
スカラー倍
1×a = a
k (a + b) = k a + k b
(k + l) a = k a +l a
(k l) a = k (l a)
最後の計算方式を覚えつつ、ベクトルの演算方法をおさえる。

キーワード ① ベクトル ② スカラー ③ 零ベクトル ④ スカラー倍 ⑤ 元
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
今回のポイントは、ベクトルの理解と習得である。これを習得するためには、図に書いてみると、理解が進む。資料を振り返る際には数直線や、平面座標を書いて取り組むことを勧める。それを身につけるために、基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料の8ページの課題と数学プライマリーの練習29.1、29.2を解くこととする。

【予習】
次回は、ベクトルと行列のうち、行列を学ぶ。聞いたことがない学生もいると思うため、まずはインターネットで言葉を検索し、調べた内容をノートにまとめることとする。

11 ベクトルと行列2_行列 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。
第10回と第11回は、線形代数の本題であるベクトルと行列を学ぶ。今回は、行列の基礎を学び、言葉の意味や考え方、計算方法を理解する。

【教材・教具】
(1)コマ用オリジナル資料 1-3頁。
(2)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、88-89頁。
(3)コマ用オリジナル資料 3-4頁。
(4)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、90-91頁。
(5)コマ用オリジナル資料 5-7頁。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材(1)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

主題細目② 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」、(4)「数学プライマリー」

主題細目③ 
教材(5)「コマ用オリジナル資料」、(4)「数学プライマリー」

【参考】
(1)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、402-403頁。
(2)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、82-83頁。
(3)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、404-405頁。
(4)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、83-84頁。
(5)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、406-407頁。
(6)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、84-86頁。

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考(1)「もう一度、高校数学」、(2)「高校数学の教科書 上」

主題細目② 
参考(2)「もう一度、高校数学」、(4)「高校数学の教科書 上」

主題細目③ 
参考(3)「もう一度、高校数学」、(6)「高校数学の教科書 上」
コマ主題細目 ① 行列の意味 ② 行列の演算 ③ 行列の乗法の性質
細目レベル ① 行列は、もともと連立方程式を解くためにつくられ、発達してきたものである。例えば、圧着端子を4個、ネジを2つ買ったら合計で24円して、圧着端子を3個、ネジを6つ買ったら合計で27円だったとする。圧着端子とネジの一つの値段を求める場合はどうするだろうか。この場合、連立方程式によって、代入や加減法を用いて解を求めることができる。式で書くと以下の通りである。
4 x + 2 y = 24…①
3 x + 6 y = 27…②
この場合、まず①の式を3倍して②の式を引き算し、xを求めた後に①か②の式にxの値を代入して、yを求める。この程度であれば難なく計算はできるのだが、より複雑な問題(未知数が数十個)となった際には、計算が大変困難となる。その際に、行列を使うことで、複雑な問題であっても「単純な計算を繰り返すのみ」で解を求め、また解がない(不能)や、解が無数にある(不定)などを判定することができる。例えば、上記の例であれば以下の通りに求めることができる。
まず、行列では、式の①と②を下のように並べる。なお、ここでは第1行と第2行のカッコは繋がっているものとし、イコールは第1行と第2行の間に1つだけあるものとする。
(4 2) (x) = 24
(3 6) (y) = 27
これを解くと
= (5)
= (2)
となる。
計算には慣れが必要ではあるが、複雑になるほど連立方程式を解くよりもはるかに効率的に計算が可能となる。また、上述したが、行列を使うことで、複雑な問題であっても「単純な計算を繰り返すのみ」で解を求めることができる。しかし、人間にとっては単純な計算を繰り返すことほど苦痛なものはない。一方で、コンピュータを使うことで、この作業は一瞬で完了する。今後、学生は別の講義においてコンピュータアルゴリズムや、機械学習、ディープラーニングの仕組みを学習するが、その基礎として、行列は必要な知識となる。
なお、行列の読み方は、ヨコの並びを「行」と読み、タテの並びを「列」と読む。下で示している行列の場合は、「2行3列の行列」または「2×3行列」と表現する。
第1列 第2列  第3列
第1行 4 2 24
第2行 3 6 27
次に、行列における数字や文字を、「成分」または「要素」と呼ぶ。上で示した行列において、27は、「第2行、第3列の成分」または、「(2, 3)成分」呼ぶ。
また、「2×2行列」や「3×3行列」のような「n×n行列」は、正方行列とよぶ。
ここでは、行列の意味と、読み方をおさえる。

② 行列演算において、加法と減法は、同じ成分同士の単純な計算となる。下に示す行列の通り、左側の行列の(1, 1)成分は、同じく右側の行列の(1, 1)成分との和(もしくは差)を求めることとなる。ただし、ここで注意すべき点として、同じ型の行列同士でしか計算できないことがあげられる。なお、ここでは第1行と第2行のカッコは繋がっているものとし、左辺のおける左側の行列と右側イコールをつなぐ記号(±)は、第1行と第2行の間に1つだけあるものとする。
(a b) ± (p q) = (a±p b±q)
(c d) ± (r s)= (c±r d±s)
次に、行列の実数倍では、行列Aに対し、その各成分をk倍する場合、下に示す行列の通り、行列Aとkの積で表すことができる。
k・A = k・(a b) = (k・b  k・b)
 (c d) = (k・c  k・d)
行列をAとB、実数をkとlによって表現すると、k (l A) = (k l )A、(k + l ) = k A + l A、k (A + B) = k A + k Bとなる。
次に、行列の積について考える。行列の積は、計算のコツを掴むことがまず重要となる。以下に、行列の積の基本となる式を示す。なお、左辺の左側の行列と右辺のac + bdは、左辺の右側の行列の第1行と第2行の間に書いてあるものとする。
(a b) (c) = ac + bd
(d)
行列の積では、ヨコ×タテのイメージをもって計算に臨むと良い。これの理解には、例えば、コマ主題細目①で示した連立方程式をイメージしても良い。
4 x + 2 y = 24…①
3 x + 6 y = 27…②
この式を行列で示すと、
(4 2) (x) = 24
(3 6) (y) = 27
となる。つまり、左辺の左側にある行列の (1, 1)成分である4に、右側にある (1, 1)成分であるxをかけ、次に、左辺の左側にある行列の (1, 2)成分である2に、右側にある (2, 1)成分であるyをかけると、4 x + 2 yとなる。このように、行列の積では、ヨコ×タテのイメージ(コツ)をつかむことが必要である。
ここでは、いくつかの例題を通して計算方法に慣れる。

③ 行列の乗法の性質を考える上で、数の計算で用いた法則のうち、適用できるものと適用できないもの、さらに、この適用できない法則は通常は適用できないものの場合によっては適用できることがある。まず、適用できる性質や法則を確認する。なお、ここでは行列をA、B、Cと表現し、それぞれは同じ型 (m×n行列)であることとする。
まず、常時適用できる法則を3つあげる。1つ目に、k (AB) = (k A)B = A(k B)である。この際に、kは実数である。2つ目は、(AB)C = A(BC)である。これは、結合法則である。3つ目にA(B + C) = AB + AC、(A + B)C = AC +BCである。これは、分配法則である。以上が、常時適用できる法則である。
次に、通常は適用できない法則をあげる。AB ≠ BAである。これは、交換法則であり、通常は適用できない法則である。例えば、
A = (1 -1) B = (2 1)
(0 2) (1 3)
とする。
AB = (1 -2)
(2 6)
となる。
しかし、BAを計算すると、
BA = (2 0)
(1 5)
となる。
よって、交換法則は成立しない。しかし、以下の行列との積の場合は交換法則が成立する。
単位行列E:E = (1 0) 零行列O:O = (0 0)
(0 1) (0 0)
これらについては、AE = EA = A、AO = OAであることがわかる。単位行列は、数の世界における「1」に相当し、零行列は「0」に相当する。
 ここでは、行列の乗法の性質および、単位行列と零行列についておさえる。

キーワード ① 行列 ② 第1行 ③ 第2列 ④ m×n行列 ⑤ 零行列
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
今回のポイントは、行列の理解と習得である。これを習得するためには、行列を自分で書いてみることが必須である。特に、乗算の計算方法はコツに近い。それを身につけるために、基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料の8ページの課題と数学プライマリーの練習30.1、30.2を解くこととする。

【予習】
次回は、対数目盛りを使った図を扱うことから今回の講義内容をよく確認しておくとともに、対数目盛りについてインターネットなどを用いて検索しておく。

12 数値データの集まり1_数直線と図 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。
今回では、数直線と図の書き方をおさえる。データを線形目盛の2次元直交座標に記点する方法を学び、対数目盛も理解する。

【教材・教具】
(1)コマ用オリジナル資料 1頁。
(2)コマ用オリジナル資料 2頁。
(3)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、34頁。
(4)コマ用オリジナル資料 3頁。
(5)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、34-35頁。
(6)コマ用オリジナル資料4-7頁。
(7)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、51-52頁。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材(1)「コマ用オリジナル資料」

主題細目②
教材(2)「コマ用オリジナル資料」、(3)「数学プライマリー」

主題細目③ 
教材(4)「コマ用オリジナル資料」、(5)「数学プライマリー」

主題細目④
教材(6)「コマ用オリジナル資料」、(7)「数学プライマリー」

【参考】
(1)藤沢晃治「「わかりやすい表現」の技術 意図を正しく伝えるための16のルール」、講談社、1999年、51-55頁。
(1)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、76-81頁。
(2)加茂将史「生態学と化学物質とリスク評価」、共立出版、2017年、54-59頁。
(3)加茂将史「生態学と化学物質とリスク評価」、共立出版、2017年、60-64頁。

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考(1)「もう一度、高校数学」

主題細目② 
参考(2)「生態学と化学物質とリスク評価」

主題細目③ 
参考(3)「生態学と化学物質とリスク評価」
コマ主題細目 ① 表 ② 数直線 ③ 2次元座標と相関図 ④ 線形目盛と対数目盛
細目レベル ① 第1部と第2部では、数値や量を、数字を用いて表し、計算を行ってきた。実際のデータ解析では、データの数値を表やグラフにしてみることにより、データの特徴やデータとデータ相互の関係がわかりやすくなる。まず、データを表にまとめることを学ぶ。例えば、「河川水の水質調査を3地点(A地点、B地点、C地点)で行った。物質aの〇〇基準値超過状況についてA地点では3種類、B地点では3種類、C地点では1種類だった。物質bの〇〇基準値超過状況では、A地点では2種類、B地点では1種類、C地点では2種類だった。物質cの〇〇基準値超過状況では、A地点では3種類、B地点では3種類、C地点では0種類だった。」と文章で書かれていたとする。これは、情報としては正しいものの、相手に理解させるという意味では不親切である。また、データとして捉えた際に、後に演算を行う際には扱いにくい。このような場合、例えば、行に物質名、列に地点名としてまとめると、情報の見やすさ向上とともに、エクセルなどPCで作成した場合は演算も容易となる。これは、表と呼ばれるものであり、データ整理の基本である。ここでは、表を作成し、データ整理の基本をおさえる。
② ここでは、数直線や2次元のグラフ上にデータ点を描く(プロットする)ことを学ぶ。これまで学んだ数(実数=有理数と無理数の全集合)は、数直線上の点として表すことができる。数直線は1本の直線で、最小値(始点)と最大値(終点)とをもつ有限の線分、始点だけ、あるいは終点だけを持つ半無限の直線、始点も終点もない無限の直線で表される。第2回の講義で学んだ通り、有理数は分母、分子が整数の分数で表される数である。例えば3/5や、2.4といった数も、有理数として数直線上にプロットできる。ただし、数直線上の点は有理数のみで埋まっているわけではない。例えば3√2 = 4.24・・・となり、4.2と4.3の間にあることがわかる。このように、無理数の点も数直線上にある。これらのことをおさえ、数直線上に正しくプロットできるようにする。
③ 数直線上の点は1方向に並んでいる。直線は1次元の図形であるが、このような数直線2つを直交させることにより、2次元の平面上の点を決めることができる。例えば、10人について身長 cmをもとに、体重を kgで測ったデータが表でまとめてあったとする。このデータについて、2次元の平面上に身長と体重の組合わせた点をプロットする。このとき、データ点の配置が見やすいように 1. 縦・横軸の範囲と目盛を選ぶこと、2. 縦・横軸のラベルと単位を記入すること、3. グラフのタイトルを入れる。このように、データを表にまとめ、その情報を2次元のグラフに表示することにより、数値を単に並べただけではわからない様々な特徴が見えてくる。作図の技術は、卒論作成時やその後の社会にでても必要な技術である。この回において、作図の方法までをおさえる。
④ 数直線や②で示した身長と体重の例では、グラフの軸の目盛りが等間隔に並んでいる。しかし、軸の目盛りを対数にする場合もある。例えば放射線強度の変化を2次元のグラフにする場合、縦軸を等間隔(線形目盛)にすることも対数間隔(対数目盛)にすることもできる。例えば、ヨウ素121が環境放射能の主な成分である場所で初期強度I0を 100 GBq(ギガベクレル)、その後の各時刻の測定データがあったとする。強度は指数関数で下がっていくので、これをグラフにすると縦軸が線形の場合、50日以降はほとんどゼロになってしまって変化がわからない。縦軸を対数目盛にすると50日以降も変化が分かりやすいグラフになる。ヨウ素121の場合は、半減期τ(タウ:最近は見かけない数学定数)は8日であり、Iと時間tの関係は理論的にはI = I0×2^(-t/τ)の指数関数で表される。この式をグラフにすると、実線のように対数目盛の場合直線になっていることがわかる。この例のように指数関数的に変化する場合に、対数目盛は大変有用であることをおさえる。
キーワード ① 数直線 ② 2次元直交座標 ③ 有理数 ④ 無理数 ⑤ 相関図
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
今回のポイントは、作図である。作図の知識と技術は、今後の卒業研究においても必ず必要となる。しかし、すぐに描けるものでもなく、早期から慣れることが必要である。基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料の6-7ページの課題と数学プライマリーの練習13.1と練習13.2、練習13.3、練習13.5、練習16.9を解くこととする。

【予習】
平均値や標準偏差について学ぶため、平均値や標準偏差の使用方法などについて第7回目の講義資料やインターネットなどを用いて検索しておく。

13 数値データの集まり2_基本統計量 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。
今回では、基本統計量の基礎として、平均値、分散、標準偏差といった主要な記述統計量の意味と算出方法を学ぶ。

【教材・教具】
(1)コマ用オリジナル資料 1-4頁。
(2)コマ用オリジナル資料 5頁。
(3)コマ用オリジナル資料 6-8頁。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材(1)「コマ用オリジナル資料」

主題細目② 
教材(2)「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1)高橋一雄「語りかける高校数学」、ベレ出版、2013年、614-616頁。
(2)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、70-74頁。
(3)高橋一雄「語りかける高校数学」、ベレ出版、2013年、613-614頁。
(4)日本統計学会編「改訂版 日本統計学会公式認定 統計検定3級対応 データの分析」、東京図書株式会社、2020年、55-58頁。
(5)日本統計学会編「改訂版 日本統計学会公式認定 統計検定3級対応 データの分析」、東京図書株式会社、2020年、31-34頁。
(6)鳥居泰彦「はじめての統計学」日本経済新聞出版社、1994年、8-9頁。
(7)鳥居泰彦「はじめての統計学」日本経済新聞出版社、1994年、33-36頁。

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考(1)「語りかける高校数学」、(2)「高校数学の教科書 上」、(3)「高校数学の教科書 上」

主題細目② 
参考(4)「データの分析」

主題細目③ 
参考(5)「データの分析」、(6)「はじめての統計学」、(7)「はじめての統計学」
コマ主題細目 ① 平均値 ② 分散 ③ 標準偏差
細目レベル ① 多数の測定値がある場合,その代表値を取り上げて議論をすすめることがよくある。今回では、数値の集まりの代表値である、平均値と中央値の意味と算出方法を学ぶ。第8回で扱った身長と体重のデータを例に挙げる。あるグループの10人の測定を行った結果をグループⅠとする。もう一つ、別の10人のグループⅡについて測定データを得たとする。この2つの集団の測定結果は似たようなものであったとしても、当然、人が異なるので値も違うものとなる。それぞれのデータグループを特徴づけるいくつかの数値を代表値と呼ぶ。代表値には次のようなものがある。最大値、最小値、中央値(メディアン)、平均値、最頻値(モード)、分散、標準偏差が挙げられる。
さて、代表値の中で最も普通に用いられるものが平均値である。平均値はデータの総和をデータの個数で割ることで表されることが最も多く、これを相加平均と呼ぶ。相加平均は算術平均とも呼ばれる。これに対して、データグループの特徴や解析の目的によって相乗平均(幾何平均ともいう)を求めることもある。これは、データの積にデータの個数のn乗根を取ったものである。例えば、年間の物価上昇率(前年比)のデータがあったとする。このとき、年間の物価上昇率の平均について、上昇率の特徴を「前年の何倍になっているのか」という風に考えると、それは3年間同じ上昇率と考えた場合の平均上昇率ということになり、相乗平均を考える方が自然である。「変化率」の平均を考える場合には相加平均よりも相乗平均をとることが適切であることをおさえる。データの数が多い場合、数字の羅列を見ただけでは全体としての傾向や特徴は何もわからない。このようなとき、データを複数のクラス(階級)に分類してクラスごとの度数を調べることが適切である各クラスの度数の集まりを度数分布といい、階級値はそれぞれの階級を示す数値で階級の中央の値を意味する。階級値と相対度数の積を積算すると平均値に近い値になる。この度数分布を柱状のグラフで表したものをヒストグラムという。ヒストグラムだけが与えられていた場合には、加重平均(重み付き平均)を用いることができる。加重平均は、いくつかの決まった値が出る確率が与えられているときにも応用できる。このように様々な平均値の算出方法があり、使い分けることができるようなるところまでをおさえる。

② データの集まりの特徴を表すには、平均値や中央値だけでなく、値のばらつきの程度を示す必要がある。このばらつきを表現するために用いられるのが分散と標準偏差である。第13回ではこれらについて、その意味と算出方法を学ぶ。10個のデータからなる2つのデータ群について考えてみる。例えば、A群 = {3, 4, 6, 5, 4, 5, 7, 5, 5, 6}、B群 = {9, 5, 3, 5, 8, 6, 2, 1, 6, 5}の2つのデータ群があったとする。平均を計算してみると、ともに 5 となることがわかる。個々のデータが平均値からどのように離れているか、という量を偏差と呼ぶ。偏差の定義は、「偏差 = 個別のデータ – 平均値」である。個々のデータは平均より大きかったり小さかったりするので、偏差は正になったり負になったりする。それぞれの絶対値は、個々のデータが平均からどれから離れているかを示す値になる。絶対値の合計が大きいほど、データの散らばり方が大きいことは理解できる。データの散らばり方の程度を表すのにこの絶対値の平均をとるのもひとつの方法と考えられるが、統計処理では絶対値を取る代わりに偏差の2乗の和(平方和)の平均を取ることにしている。これを分散と呼んでいる。分散は「分散 = 偏差の平方和 / データの個数」である。ここまでの計算と、定義からその意味をおさえる。
③ 分散はデータの広がりを表す数であるが、個々のデータや平均値とは異なる次元をもつ。次元が異なるとは、平方していることを示す。同じ次元にするには分散の平方根を取ればよい。この平方根を標準偏差と呼ぶ(標準偏差^2=分散)。標準偏差と分散はデータの散らばり具合を示す代表値として広く使われる量であり、平均値とともにデータ解析の基礎的な量としてよく理解し、計算できるようにしておくことが必要である。データの散らばり具合を表すのに絶対値でなく、分散、標準偏差が使われるのは、統計数学で用いられる二項分布、正規分布において分散が重要な役割を果たすことがその理由と考えられる。二項分布、正規分布等については「統計処理法」で詳しく学ぶことになる。このことからも、ここまでの計算方法をおさえる。
さて、データは平均値を中心としてその両側に散らばっている。そこでデータ群の性質を知るためにまず平均値が重要である。と同時に散らばり方(バラツキ)が広いか狭いかも重要である。この散らばり方を表す数値(量)が標準偏差と分散である。「標準偏差^2=分散」であるから、標準偏差、分散のどちらかがわかれば他方は計算できる。大事なことは標準偏差(あるいは分散)が大きいほどデータの散らばり方が広いということである。例えば、Aという土壌を使って収穫したイチゴが100 kgあったとする。そこから100粒(約1 kg)のイチゴを拾い出して標本(サンプル)とし、甘さ(糖度)を測定、その結果をもとに全体100 kg(母集団)の平均値を推定することを考える。標本のデータの平均値が全体の平均値にぴったり同じになるとは限らない。しかし、他に方法がないので、標本の平均値が全体の平均値だとみなすことになる。「標本平均値=全体の平均値」としたとき、それが間違っている確率は、標本データのばらつきが大きいほど、すなわち標本データの標準偏差が大きいほど高くなる。これらのことの理解を確かにするところまでをおさえる。

キーワード ① ヒストグラム ② 平均値 ③ 偏差 ④ 分散 ⑤ 標準偏差
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
今回のポイントは、標準偏差の算出方法の習得である。これを習得するためには、考え方を自分で書いてみることが必須である。例えば、「ネジをたくさん製造したが、それらはどの程度の誤差をもっているのだろう」という疑問に対し、「とりあえず、1本1本が平均からどれくらい離れているかを知れば、概観できそうだ」と考えると理解しやすい。この計算方法は式を書いてみると流れも理解できる。この算出方法と流れを身につけるために、基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料の9から10ページの課題を解くこととする。

【予習】
次回は、因果関係や相関関係について学ぶ。例えば、「日本国内において、都道府県ごとの農薬Aの普及率と、その各都道府県別のカラオケ店の出店数に関係があったとする(農薬Aの普及率が高い県ほど、カラオケ店の出店数が多い)」。一見すると、これは相関関係があるのだが、因果関係はない。このような事例がないか、身の回りを見回して探しておくこととする。

14 数値データの集まり3_データの関係 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。
今回では、第3部の基礎として、作図によって得たデータ間の関係について学ぶ。また、クロス集計表の作成方法を学び、データの活用法を理解する。

【教材・教具】
(1)コマ用オリジナル資料 1-4頁。
(2)コマ用オリジナル資料 5-6頁。
(3)コマ用オリジナル資料 7-8頁。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材(1)「コマ用オリジナル資料」

主題細目② 
教材(2)「コマ用オリジナル資料」

主題細目③ 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」

【参考】
(1)鳥居泰彦「はじめての統計学」日本経済新聞出版社、1994年、213-215頁。
(2)日本統計学会編「改訂版 日本統計学会公式認定 統計検定3級対応 データの分析」、東京図書株式会社、2020年、81-86頁。
(3)日本統計学会編「改訂版 日本統計学会公式認定 統計検定3級対応 データの分析」、東京図書株式会社、2020年、86-91頁。
(4)日本統計学会編「改訂版 日本統計学会公式認定 統計検定3級対応 データの分析」、東京図書株式会社、2020年、8-9頁。

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考(1)「はじめての統計学」、(2)「データの分析」

主題細目② 
参考(2)「データの分析」、(3)「はじめての統計学」

主題細目③ 
参考(4)「データの分析」
コマ主題細目 ① 正の相関、負の相関と無相関 ② 相関係数 ③ クロス集計表
細目レベル ① 第13回目の講義では代表値、すなわち平均値、標準偏差などについて学んだ。またデータのグラフ化し、ヒストグラムを表示することで、数値や表だけではわからない特徴がわかりやすく示されることを理解した。この回では2種類のデータグループ間の関係と、グラフによる表示について学ぶ。第13回の講義において、10人のグループの身長と、体重のデータを扱った。このデータに、例えば1 kmの歩行時間のデータと、数学の成績のデータを追加したとする。身長と体重の関係をグラフにプロットすると、データ点は左下から右上へと右上がりに並んでいて、身長の大きい人ほど体重も重くなる傾向になるとする。このような関係を身長と体重の間には「正の相関がある」ということをおさえる。
次に、身長と1 kmの歩行時間の関係をグラフにプロットすると、先ほどと違ってデータ点は右下がりに並び、身長の大きい人ほどかかる時間が短くなったとする。このような場合、身長と歩行時間の間には「負の相関がある」という。 さらに、これらの人(学生)の数学試験結果を用いて、身長と成績の関係をグラフにすると、データは単に散らばっているだけで、右上がりにも右下がりにも見えなかったとする。このような関係については、身長と成績には相関がない「無相関」と言う。すなわち、2種類のデータグループ間の相関がある場合とない場合があり、相関がある場合には正の相関と負の相関の2つの場合がある。ない場合を、無相関と呼ぶ。これらの関係と名称をおさえる。

② グラフを描くと相関の様子がわかるが、相関の性質を表す数値として、共分散と相関係数がある。それぞれ次の式で求める。「共分散 = (Σ(xの偏差)×(yの偏差)) / データの個数」、「相関係数 = 共分散 / ((xの標準偏差)×(yの標準偏差))」として求めることができる。なお、共分散のΣは、xの偏差とyの偏差の積を全て足し合わせた総和を表している。共分散、相関係数が正の時は正の相関があり、負の時は負の相関がある。相関係数(r)は次元 (単位) が無く、必ず「- 1と+ 1」の間の値になる。絶対値が1.0に近いほど相関が強いことを示す。相関の強さについては通常次のように考えられている。「0から0.2は、ほぼ相関無し」、0.2から0.4は、弱い相関有り」、「0.4から0.7は、相関有り」、「0.7から1.0は、強い相関有」とされる(ただしこれは分野によって異なることに注意する)。特に、相関係数の算出と、その意味について説明できるようになるところまでおさえる。
さて、先週の予習課題において、例えば、「日本国内において、都道府県ごとの農薬Aの普及率と、その各都道府県別のカラオケ店の出店数に関係があったとする(農薬Aの普及率が高い県ほど、カラオケ店の出店数が多い)」という話を出した。一見すると、これは相関関係があるのだが、実際には、農薬とカラオケに関係があるとはいえない。例えば、昆虫の神経系に影響を与える農薬が、人間の神経に作用して陽気にさせたなどは、そもそも体のメカニズムが全く異なるため議論する意味がない。このように、相関係数は算出することは可能だが、そもそも因果関係がないものに実行しては意味がない。ここでは、相関関係と因果関係についても理解する。

③ 二種類のデータを考える際に、より複雑なデータを扱うこともある。これは、「本当に関係があるかどうか、微妙なデータ」が現れたときである。例えば、「デザインを決定しようとしていて、色と指向性には何か関係があるか」という状況である。「100人を対象に実験を行った結果、青いボタンにつながるサイトを見た人が75人、赤いボタンにつながるサイトを見た人が25人いた。青いボタンにつながるサイトを見た人のうち、ボタンを押した人は20人いた。赤いボタンにつながるサイトを見た人のうち、ボタンを押した人は10人いた。」などの場合、クロス集計表を作成することで、データの活用法が見えてくる。ここでは、クロス集計表の作成方法を学び、データの活用法を理解するところまでをおさえる。
キーワード ① 正の相関 ② 負の相関 ③ 共分散 ④ 相関係数 ⑤ クロス集計表
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
ここでのポイントは、データのプロットと解釈である。卒業研究において、作図と解釈ができなければ論を進めることはできない。ここでは、得られたデータを解釈するための重要なスキルを獲得することが目的である。よって、相関係数を計算できるのみならず、その解釈までもセットで理解する必要がある。また、解釈においては、扱うデータの性質によってはクロス集計表を作成することでより複雑なデータセットの関係性への理解も進む。クロス集計表については、表の作り方の理解と、ミスを防ぐためにその後に加算して積算値が同じ値になること確認することを癖づけることが必要である。このような知識としての理解と図表作成方法を定着させるためにも、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料の9ページの課題を解くこととする。

【予習】
これまでの講義で学んだ内容のまとめを行うため、これまで本科目で学んだ内容を復習しておくこととする。

15 まとめと演習 科目の中での位置付け 本講義では、数値解析の基礎となる次の3項目について講義と演習を行う。具体的には、第2回の講義から第6回までの講義にかけては、数量の扱いの基本として、四則演算、有効数字、数学的表記、関数、方程式、不等式の取り扱いの習得を目的として展開される(第1部)。第6回の講義から第7回の講義にかけては、指数、指数関数の理解、指数を含む数の加減乗除算計算、ネイピア数の意味や扱い方や、通常の数と対数との関係、対数同士の演算について習得する(第2部)。第8回の講義と第14回の講義にかけては、数値データの集まりの扱い方として、線形代数の基礎である三角関数とベクトル、また統計学の基礎である平均値、標準偏差の計算法とデータの整理、表とグラフ作成と活用法を習得する(第3部)。第15回講義は、ここまでの学びの確認のための演習を実施する。
今回は、これまで行ってきた1部から3部の内容を総括し、演習問題を通してこれまでの学びの就学状況の確認とまとめを行う。

【教材・教具】
(1)コマ用オリジナル資料 1-2頁。
(2)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、1-4、23-24、27-31、34-35、68-69頁。
(3)コマ用オリジナル資料 3-4頁。
(4)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、34-35、51-52、57-67、80-86頁。
(5)コマ用オリジナル資料 5-6頁。
(6)丸本嘉彦ら「数学プライマリー」、講談社、2020年、44-52頁。

【教材・講義レジュメとコマ主題細目との対応】
主題細目① 
教材(1)「コマ用オリジナル資料」、(2)「数学プライマリー」

主題細目② 
教材(3)「コマ用オリジナル資料」、(4)「数学プライマリー」

主題細目③ 
教材(5)「コマ用オリジナル資料」、(6)「数学プライマリー」

【参考】
(1)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、13-33頁。
(2)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、12-27、58-59、70-71、76-77、100-103、114-117、224-245頁。
(3)村上道夫ら「基準値のからくり」、講談社、2014年、36-38、135-140、200-202頁。
(4)矢野宏「誤差を科学する どこまで測っても不正確!?」、講談社、1994年、46-44、70-76頁。
(5)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、208-210、216-219頁。
(6)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、114-117、124-133、148-151頁。
(7)石井俊全「まずはこの一冊から 意味がわかる線形代数」ベレ出版、2011年、54-70頁。
(8)加茂将史「生態学と化学物質とリスク評価」、共立出版、2017年、54-64頁。
(9)芹沢光雄「新体系 高校数学の教科書 上」講談社、2010年、70-74、82-86、188-191、264-269頁。
(10)高橋一雄「もう一度 高校数学」、日本実業出版、2009年、76-81、154-165、176-187、182-187、402-407頁。
(11)高橋一雄「語りかける高校数学」、ベレ出版、2013年、613-616頁。
(12)鳥居泰彦「はじめての統計学」日本経済新聞出版社、1994年、8-9、33-36、213-215頁。
(13)日本統計学会編「改訂版 日本統計学会公式認定 統計検定3級対応 データの分析」、東京図書株式会社、2020年、8-9、31-34、55-58、81-91頁。

【参考とコマ主題細目との対応】
主題細目① 
参考(1)「高校数学の教科書 上」、(2)「もう一度 高校数学」、(3)「基準値のからくり」、(4)「誤差を科学する」

主題細目②
参考(5)「高校数学の教科書 上」、(6)「もう一度 高校数学」

主題細目③ 
参考(7)「意味がわかる線形代数」、(8)「生態学と化学物質とリスク評価」、(9)「高校数学の教科書 上」、(10)「もう一度 高校数学」、(11)「語りかける高校数学」、(12)「はじめての統計学」、(13)「データの分析」
コマ主題細目 ① 数量の扱い ② 指数対数の演算 ③ 数値データの扱い
細目レベル ① 第1部の「数量の扱い」の中で、基本として重要と考えられるものは、単位と有効数字といえる。この回では、単位と有効数字について重点的に確認する。測定値の精度は測定器具や方法によって決まり、測定値の記載はその精度を踏まえた上で行わなければならない。測定値の精度を表現するために利用されるのが有効数字という考え方である。有効数字の桁の数え方と有効数字を考慮した計算について学び理解することは、基礎数学の第1部の「数量の扱い」の中で、特に重要と考えられる。理解のためにおさえるべきポイントは、「測定値の記載はその精度を踏まえた上で行う。」、「測定値の精度を表現するために利用されるのが有効数字である」ということである。
計算については、方程式の扱いが重要となる。未知数を求める方法の基礎として一次方程式と連立方程式の解法および、不等式の解法がある。特に、ここでは連立方程式を解くための加減法と代入法について確認する。

② 第2部の「指数対数の演算」の中で特に重要と考えられるものは指数と対数の考え方や計算と作図の考え方である。指数の加減算では位取りの桁(指数表記の「×10^k 」の部分)に注意する。同じ底をもつ指数の乗除算はa^n × a^m = a^(m+n)、a^n ÷ a^m = a^(n-m)となる。無理数では分数の他に円周率とネイピア数であるeを使う。ネイピア数であるeを底とする対数は自然対数とされ、10を底とする常用対数と対比される。また、最も重要な性質は、この数を底とする指数関数を微分しても積分しても結果はe^xとなる。すなわち微積分に対して不変の関数を与えることである。指数関数はy=a^xで表され、その逆関数である対数関数はy=logzxで表される。この時のaは底である。実際のデータ解析では、データの数値を表やグラフにしてみることにより、データの特徴やデータとデータ相互の関係がわかりやすくなる。数直線は1本の直線で、最小値(始点)と最大値(終点)とをもつ有限の線分、始点だけ、あるいは終点だけを持つ半無限の直線、始点も終点もない無限の直線で表される。直線は1次元の図形であるが、2つを直交させることにより2次元の平面上の点を決めることができる。2次元のグラフに表示することにより、数値を単に並べただけではわからない様々な特徴が見えてくる。
ここでは、演算からグラフ表示までについて確認する。

③ 第3部の「数値データの扱い」の中で、重要と考えられるものは、線形代数の基礎であるベクトルと行列や、基本統計量となる分散や標準偏差の算出方法といえる。この回では、ベクトルと行列は計算方法確認を行うが、特に分散や標準偏差の算出方法について重点的に確認する。分散や標準偏差の基礎となる測定値の集まりの特徴を表す代表値として平均値や中央値がある。データの集まりの特徴を表すには、平均値や中央値だけでなく、値のばらつきの程度を示す必要がある。このばらつきを表現するために用いられるのが分散と標準偏差である。分散は「分散 = 偏差の平方和 / データの個数」である。分散はデータの広がりを表す数であるが、個々のデータや平均値とは異なる次元をもつ。同じ次元にするには分散の平方根を取ればよい。この平方根を標準偏差と呼ぶ(標準偏差2=分散)。標準偏差と分散はデータの散らばり具合を示す代表値として広く使われる量であり、平均値とともにデータ解析の基礎的な量としてよく理解し、計算できるようにしておくことが必要である。これらは2種類のデータグループ間の関係の理解にもつながる。これらを、演習問題を通して確認する。
キーワード ① 方程式 ② 指数 ③ ベクトル ④ 行列 ⑤ 標準偏差
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【復習】
まとめと演習ではあるため、重要箇所の演習問題を多くこなすこととなる。基礎数学において、反復練習は最も重要と言える。これは、理解を深めると同時に、計算へ慣れることができるためである。講義中は、一度説明をした後に各自が練習問題を解き、その後に講義担当教員が解答や解説を示す。しかし、わからなかった問題について、聞いて納得したつもりでも、いざ自分で解こうとすると、必ずしも解けるとは限らない。このようなことを防ぐために、練習問題のプリントを配布する。これを、各自が自宅もしくは大学での空きコマ中に自力で解答することで、真の意味で理解できたといえる。よって、配布した練習問題を自力で解くこととする。ただし、解法がわからない場合は、講義中に使用した資料を参照しても良いこととする。具体的には、コマ用オリジナル資料別冊としてこれまで配布した資料や数学プライマリーの演習を解くこととする。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
数量の扱いの基本 有効数字を理解した上で、解答欄に記入された解答をもとに採点し、評価する。四則演算には決まりがあり、これを守らなければ、正答を得られない。1. 乗除算を先に行う。2. 加減算を先に行うときは括弧をつける。3. 交換法則とは、加算(足し算)と乗算(かけ算)の場に成立する。4. 結合法則は、四則演算(加減乗除算)のすべてについて成立する。5. 分配法則は四則演算のすべてについて成立する。これらの知識を用いて換算ができていることを確認する。 計算順序、交換法則、結合法則、分配法則 2-15
数列と総和 数列の意味を理解し、与えられた数字の並びから規則性を見いだすことで一般項を求めることができることと、その一般項を用いて与えられた数字の総和についてシグマを用いて求めることができることを、解答欄に記入された解答をもとに採点し、評価する。数列には等差数列や等比数列、階差数列があるが、これらの数列の一般項は初項と項数、公差を用いて表される。また、シグマの計算は変数のべき数によって公式が与えられており、与えられた一般項を展開した後にべき数ごとにシグマ計算を行う必要がある。これらの知識を用いて換算ができていることを確認する。 数列、一般項、項数と公差、シグマの公式 3, 7-8, 13-15
測定値の代表値 数値データグループが与えられれば、中央値、相加平均、相乗平均を求めることができることを、解答欄に記入された解答をもとに採点し、評価する。比較的簡単な計算などで得られる測定値の代表値には次のようなものがある。最大値、最小値、中央値(メディアン)、平均値、最頻値(モード)が挙げられる。平均値はデータの総和をデータの個数で割ることで表されることが最も多く、これを相加平均と呼ぶ。相加平均は算術平均とも呼ばれる。これに対して、データグループの特徴や解析の目的によって相乗平均(幾何平均ともいう)を求めることもある。これは、データの積にデータの個数のn乗根を取ったものである。これを計算などで求めることできることを確認する。これらの知識を用いて換算ができていることを確認する。 平均値、中央値、最小値、最大値 13-15
有効数字 有効数字の意味を理解し、それを考慮して足し算、引き算、掛け算、割り算ができることを、解答欄に記入された解答をもとに採点し、評価する。有効数字では、数値の中にゼロがある場合には、その桁の読み方に注意が必要である。1. 有効数字の最初の数字は、ゼロではない最高位の数字となる。2. 二つの有効数字の間にあるゼロは有効数字である。3. 小数点以降のゼロは有効数字である。4. 十、百、千などを表すゼロの使い方について、これらが有効数字なのか、位取りなのかは一般には分からない。この場合には精度を明確に示すか、あるいは指数表記で表してもらう。5. 有効数字の桁数は、単位の取り方とは無関係である。6. 気体定数、アボガドロ定数などの定数、円周率など、これらは、最も有効数字の桁数が少ないものよりも2桁多くとり、その後の数字は切り捨てて計算に用いる。7. 実験の回数、百分率を求めるための100、原子価を示す数などについて、これらは有効数字を考えなくてよい。これらの知識を用いて換算ができていることを確認する。 有効数字、精度、定数 3, 6, 7, 13-15
指数と対数の理解 10のべき乗を用いた指数表示、指数と対数にいて計算できることを、解答欄に記入された解答をもとに採点し、評価する。同じ底をもつ指数の乗除算については、次に示す通りに成り立つ。a^n × a^m = a^(m+n) 、a^n ÷ a^m = a^(n-m) となる。ただし、仮数部の小数点の左を一桁になおして書き表すことや、仮数部は小数点の左に0でない数一桁として書き表すなどがポイントとなる。対数計算の公式は以下のようになる。loga1 = 0、loga a = 1である。loga MN= loga M + loga Nである。loga M/N = loga M − loga Nである。loga M^P = ploga Mである。loga b = logc b / logc aである(底の変換)。これらの知識を用いて計算ができていることを確認する。 対数関数、指数関数、底、べき乗、底の変換、暗算 6, 7, 12,15
測定値のバラツキ 数値データグループが与えられれば、分散や標準偏差を求めることができることを、解答欄に記入された解答をもとに採点し、評価する。偏差の定義は、「偏差 =個別のデータ – 平均値」である。分散は「分散 = 偏差の平方和 / データの個数」である。分散の平方根を標準偏差と呼ぶ(標準偏差^2=分散)。標準偏差と分散はデータの散らばり具合を示す代表値として広く使われる量である。これらの知識を用いて計算ができていることを確認する。 範囲、標準偏差、分散 13-15
方程式の理解 方程式を計算して解を求め、不等式の場合はその解の範囲を示すことができることを、解答欄に記入された解答をもとに採点し、評価する。未知数が2つの方程式である連立方程式の解を求めるには2つの式が必要であり、2つの式を加減法もしくは代入法を用いて解となる2つの未知数の値を求める。加減法とは消したい文字の係数をそろえる方法であり、代入法とは消したい文字をもう一方の文字で表す方法である。不等式では方程式を適切に計算し、解の範囲を明確に示すことがポイントとなる。これらの知識を用いて計算ができていることを確認する。 連立方程式、不等式、数直線 70 4, 5, 10, 11, 15
三角関数と線形代数の理解 正弦定理と余弦定理を使って、三角形の辺の長さあるいは角の求め方を確認する。また、三角関数の加法定理は、三角関数を学ぶ上で利便性の高い公式である。加法定理の公式を用いることで、例えば15°や75°などを求めることができるかを確認する。ベクトルの成分表示として、座標平面上におけるベクトルの成分を正しく記載でき、かつ、スカラー倍などの演算ができるかを確認する。行列の理解と演算について確認する。行列をAとB、実数をkとlによって表現すると、k (l A) = (k l )A、(k + l ) = k A + l A、k (A + B) = k A + k Bとなる。特に、2×2行列の乗算においては、左側にある行列の (1, 1)成分と(1, 2)成分に、右側にある行列の(1, 1)成分と(2, 1)成分をかけるといった、複雑な計算が行われる。これらを理解しているかを確認する。 三角関数、ベクトル、行列 4, 5, 8-11, 15
図の作成 2次元座標を用いて測定値をプロットできることを、解答欄に記入された解答をもとに採点し、評価する。また、このとき、軸のタイトル、軸の目盛等を正しく記入できることも、作図の上で必要不可欠な要素であるため、評価する。作図については、解答用紙として専用の方眼用紙が添付されている。これには、マス目が切られているのみで、各自が自由に目盛りを打つことができるものとする。これらの知識を用いて作図ができていることを確認する。 グラフ、直交座標、軸のタイトル、軸の目盛り 30 7, 11-15
評価方法 期末試験 (100%)により行う。 *成績発表後、教務課にて試験・レポートに関する総評が閲覧できます。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 丸本嘉彦ら (2020)「数学プライマリー」講談社 ¥1,045 (ISBN 978-4-87361-280-5)
参考文献 芦田宏直 (2019)「シラバス論:大学の時代と時間、あるいは〈知識〉の死と再生について」 晶文社 ¥2,970 (ISBN978-4794971623)。石井俊全 (2011)「まずはこの一冊から 意味がわかる線形代数」ベレ出版¥ 2,200 (978-4-860642884)。加茂将史 (2017)「生態学と化学物質とリスク評価」共立出版 ¥ 1,980 (ISBN978-4-320-00917-2)。高橋一雄 (2009)「もう一度 高校数学」日本実業出版 ¥ 3,080 (ISBN978-4-534-04584-3)。高橋一雄 (2013)「語りかける高校数学」ベレ出版 ¥ 2,860 (ISBN978-4-86064-349-2)。 鳥居泰彦 (1994)「はじめての統計学」日本経済新聞出版社 ¥ 2,456 (ISBN978-4-532-13074-9)。日本統計学会編 (2020)「改訂版 日本統計学会公式認定 統計検定3級対応 データの分析」東京図書株式会社 ¥ 2,420 (ISBN978-4-489-02332-3)。丹羽勝市 (2009)「図解雑学 統計解析」 ナツメ社 ¥1,300 (ISBN978-4-8163-3472-6)。藤沢晃治(1999)「「わかりやすい表現」の技術 意図を正しく伝えるための16のルール」講談社 ¥ 880 (ISBN 978-4062572453)。村上道夫ら (2014)「基準値のからくり」講談社 ¥ 1,012 (ISBN978-4-06-257868-4)。矢野宏 (1994)「誤差を科学する どこまで測っても不正確!?」講談社 ¥ 789 (ISBN4-06-257024-6)。芳沢光雄 (2010)「新体系・高校数学の教科書 上」講談社 ¥ 1,298 (ISBN978-4-06-257677-2)。芳沢光雄 (2010)「新体系・高校数学の教科書 下」講談社 ¥ 1,298 (ISBN 978-4-06-257678-9)。
実験・実習・教材費