区分 (生)フィールド生態科目 フィールド生態共通科目 (環)フィールド生態科目 (心・犯)学部共通科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
(心)専門的知識と実践的能力 (心)分析力と理解力 (心)地域貢献性
(環)専門性 (環)理解力 (環)実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
(心)課題分析力 (心)課題解決力 (心)課題対応力
(環)専門知識 (環)教養知識 (環)思考力 (環)実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
個⼈・社会・⾃然が直⾯する課題に対して専⾨的な理解を深めると共に、学際的かつ実践的な能⼒を有する。企業・地域社会などのあらゆるコミュニティに寄与する組織的な活動能⼒を有する。
科目の目的
昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。この授業では、生物多様性を認識する学問である分類学や系統学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎を学ぶ。また、養蚕や養蜂、天敵利用など、資源としての昆虫や、外来種について、昆虫の保護・保全の実際についてなど、昆虫と人間、そして環境との関わりについての知識を習得する。
到達目標
昆虫学を学ぶにあたり、生物多様性を認識する手段である分類学ならびに系統学について、また、学名の表記方法や分類階級等について説明できるようになる。種の定義、そして種分化のメカニズムについて簡単に説明できる。昆虫の定義について、基本的な外部形態にもとづき、定義づけて説明できるようになる。また、昆虫類のグループ(ここでは目)について、どのようなものが存在するか、またその形態や生態について簡単に説明できる。昆虫の外部形態や内部形態について、それぞれについてどのような名称のものがあり、どのような構造になっているか説明できる。人間や環境との関わりについて、資源として用いられてきた昆虫や農業害虫、益虫にはどのようなものがあるか例を挙げることができる。昆虫の保護・保全について、具体例を挙げて説明することができる。具体的な到達目標については後に示す履修判定指標の項目を参照のこと。
科目の概要
昆虫は地球上でもっとも種数が多く、形態・生態的にも多様性に富む生物である。本講義では、生物多様性を認識する上で重要な分類学や系統学、学名の表記方法、命名規約について学ぶ。昆虫に含まれるグループ(ここでは目)について、それぞれの形態や生態、人間との関わり等について、昆虫の外部形態・内部形態や、移動、擬態、寄生、社会性昆虫など、昆虫に関する基礎を学ぶ。そのほか人間や環境との関わりとして、養蜂や養蚕など資源としての昆虫、そして害虫としての昆虫、外来種としての昆虫のほか、希少種の保護・保全の実例などを学ぶ。今後の専門科目の履修につなげられるよう、各講義の随所に昆虫学に関するトピックスを織り交ぜていく。なお、第6回及び第15回は、これまでの内容を復習するまとめの回とする。
科目のキーワード
昆虫、生物多様性、形態、分類学、系統学、生理、生態、昆虫資源、外来種、保護・保全
授業の展開方法
講義は基本的に、パワーポイント、板書等で行う。配布プリントは、そのスライドに基づいた資料であり、また、可視的に理解を補う意図で、映像、標本や昆虫の調査器具、昆虫生体等を資料として使用することもある。テキストは指定しないが、教材・教具に挙げている文献等を使用する。更に詳しく学びたい場合はシラバスの参考文献を参照のこと。各回の内容につき質問等がある場合は、時間を設けて授業内で紹介・解説を行うこともある。第1回では「イントロダクション」として、授業全体の概要・進め方を説明する。第2回では分類学や系統学、学名について、第3~5回では「昆虫の起源と進化」について学ぶ。第6回はまとめの回として、第1~5回目までの内容を振り返る回とする。第7~10回目は「昆虫の形態と生理」、第11~14回は「昆虫と人間・環境との関わり」について学ぶ。第15回は、第11~14回までの復習回とする。
オフィス・アワー
【月曜日】2時限目・昼休み、【火曜日】昼休み
科目コード ENS213
学年・期 1年・後期
科目名 環境昆虫学
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 なし
展開科目 動物分類学
関連資格 なし
担当教員名 久松定智
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 イントロダクション 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第1回目はイントロダクションとして、本講義を受講するにあたり、科目全体の概要と授業の進め方を説明するほか、出席の取り方や最終評価についてなどの確認を行う。
【コマ主題細目①~⑤】
・第一回目はこれから本科目を展開するにあたり、授業の概要を説明する回であるため、特に配布資料なし。
コマ主題細目 ① 昆虫の多様性 ② 昆虫の分類 ③ 昆虫の外部形態と生態との関わり ④ 昆虫と人間との関わり ⑤ 授業の進め方と評価について
細目レベル ① 地球上の生物種は、名前がついているものだけでも180万種と言われており、まだ名前のついていないものは少なく見積もっても800万種、多ければ1億種を超えるという予想もある。そして、命名された生物180万種のうち、半数程を昆虫が占めている。昆虫のうち最も種類が多いのがコウチュウ目であり、世界中から39万種が知られている。次にチョウ類・ガ類を含むチョウ目、次にカやアブ等を含むハエ目、ハチ類・アリ類を含むハチ目が続く。たくさんの種類に進化した昆虫だが、大部分の昆虫は小型であり、それだけ多くの生態的地位nicheを占めることが可能であること、多様な環境や生活への適応度が高いこと、翅が発達し移動能力を獲得したこと、完全変態の発達したこと等により種類と個体数が多いと言える。多様な形態の他、食性などの生態も多様であり、それだけ様々な環境に適応して進化してきたと言える。昆虫のグループ(ここでは目)やそれぞれの形態・生態を概観し、地球上で昆虫が多様に発展した理由の概要を理解する。
② 1758年、スウェーデンの博物学者であるリンネは『自然の体系』Systema Nature の第10版において、動植物を属名と種小名の二名式名で表した。この命名法は、以降世界中の学者に用いられ、生物を科学的な体系に組み立てる基礎となった。リンネにより確立された二語命法名およびりンネ式階層分類体系Linnean hierarchical classification system, Linnean hierarchyは、今日まで用いられている。分類階級は、動物の場合は界Kingdam、門Phylum、綱Class、目Order、科Family、属Genus、種speciesという階層構造で表される。また、学名は2語(属名と種小名)で標記され、二語命法名とよばれる。分類階級、学名の標記の方法について理解する。
③ 昆虫は空を飛んだ最初の動物であると言われ、そのことでより好適な生息環境を求めて探索・移動が用意になり、外敵から逃避できる機会も多くなり、より多くの交配相手を探索できるようになるなど多くの利点を生み出した。遺伝子の解析によると翅の獲得は4億年以上前だとされる。空を飛ぶ昆虫では、トンボ目の仲間であるアメリカギンヤンマは最高時速27km/hと言われる。渡りをするチョウとして有名なオオカバマダラは、北アメリカ大陸を移動し、その生息範囲は南北に約3,500kmにもわたっている。その他、アサギマダラも渡りをするチョウとして知られる。ウスバキトンボは最も分布域が広いトンボの一つである。日本へは春先に南方から渡ってくるが、世代を繰り返しながら日本列島を北上し、冬には耐寒性がないことから死滅してしまう。昆虫が翅を獲得したことから地球上で最も発展したともいえる。翅などの外部形態と生態との関わりについて理解する。
④ 古くから、昆虫は資源として人間に利用されてきた。例えば、絹糸を得るために古来からカイコという蛾の仲間が飼育され、養蚕が行われて来た。また、作物の花粉媒介の為にミツバチ類などが利用されてきた。ミツバチ類は作物の受粉のためだけでなく、ハチミツを得るためにも飼育される。また、染色に用いられるコチニールは、サボテンにつくコチニールカイガラムシを用いたものである。そのほか、昆虫は、イナゴや蜂の子(ハチの幼虫)が国内でも古くから食料とされてきた。海外ではタガメなどが食用とされている。また、セミなどに担子菌類が寄生してできる冬虫夏草は漢方薬として利用されている。昆虫など生物を真似た新素材を人工的につくることをバイオミメティクスと呼ぶ。例えば、中南米に生息するモルフォチョウの構造色から着想を得た繊維が開発され、商品化されている。資源としての昆虫と、人間との関わりを、具体例を挙げて説明できる。
⑤ 講義は基本的に、パワーポイント、板書等で行う。配布プリントは、そのスライドに基づいた資料であり、また、可視的に理解を補う意図で、映像、標本や昆虫の調査器具、昆虫生体等を資料として使用することもある。テキストは指定しないが、教材・教具に挙げている文献等を使用する。更に詳しく学びたい場合はシラバスの参考文献を参照のこと。また、本授業の出席は、出席票を記入することにより行うこととする。また、本授業の評価は、第16週に試験を行うことにより行うこととする。授業の進め方の概要や到達目標、履修指標の水準、各回の復習課題をシラバスや今回の講義等で確認し、最終評価の方法について理解する。なお、授業内容については随時質問を受け付けることとする。もし質問がある場合は、出席票に記入し提出することとする。各回の内容につき質問等がある場合は、時間を設けて授業内で紹介・解説を行うこともある。
キーワード ① 多様性 ② 昆虫の目 ③ 分類学 ④ 昆虫資源 ⑤ 授業評価
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:地球上の生物種は、名前がついているものだけでも180万種と言われる。そのうち半数程を昆虫が占める。昆虫のうち最も種類が多いのがコウチュウ目であり、次にチョウ目、ハエ目、ハチ目が続く。昆虫のグループ(ここでは目)やそれぞれの形態・生態を概観し、地球上で昆虫が多様に発展した理由について説明できるように復習する。1758年、スウェーデンの博物学者であるリンネは『自然の体系』Systema Nature の第10版において、動植物を属名と種小名の二名式名で表した。この命名法は、以降世界中の学者に用いられ、生物を科学的な体系に組み立てる基礎となった。学名の標記方法について説明できるように復習する。古くから、昆虫は資源として人間に利用されてきた。例えば、絹糸を得るために古来からカイコという蛾の仲間が飼育され、養蚕が行われて来た。昆虫と人間・環境との関わりについて、具体例を挙げて説明できるように復習すること。シラバスを読み込み、これからの授業展開や出席の取り方、評価の方法について理解すること。
2 分類と学名 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第2回では、昆虫学を学ぶにあたって必要な分類学や系統学、および学名について学ぶ。
【コマ主題細目①】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、2017年、187-193頁。
・馬渡峻輔『動物分類学の論理』、東京大学出版会、1994年、1-28頁。
【コマ主題細目②】
・馬渡峻輔『動物分類学の論理』、東京大学出版会、1994年、1-28頁、29-63頁。
・E.O.ワイリー・D.シーゲル-カウジー・D.R.ブルックス・V.A.ファンク(宮正樹訳)『系統分類学入門 分岐分類の基礎と応用』、1頁。
【コマ主題細目③】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、2017年、187-189頁。
・佐々治寛之『動物分類学入門』、東京大学出版会、96-103。
・岡西政典『新種の発見 見つけ、名づけ、系統づける動物分類学』、中公新書、2020年、180-185。
コマ主題細目 ① 分類階級とは ② 分類学とは・系統学とは ③ 国際動物命名規約について
細目レベル ① 1758年、スウェーデンの博物学者であるリンネは『自然の体系』Systema Nature の第10版において、動植物を属名と種小名の二名式名で表した。この命名法は、以降世界中の学者に用いられ、生物を科学的な体系に組み立てる基礎となった。リンネにより確立された二語命法名およびりンネ式階層分類体系Linnean hierarchical classification system, Linnean hierarchyは、今日まで用いられている。分類階級は、動物の場合は界Kingdam、門Phylum、綱Class、目Order、科Family、属Genus、種speciesという階層構造で表される。また、学名は2語(属名と種小名)で標記され、二語命法名とよばれる。分類階級、学名の標記の方法について理解し説明できる。
② 分類学Taxonomy とは、生物を記載し、命名し、分類することである。分類学は、生物の多様性を認識する手段でもあり、自然の法則を解明するため、生物多様性の解明のため、進化学の材料として、また我々の知識の体系化のために必要である。分類学の理論には、伝統分類学conventional taxonomy, orthodox classification(関係の基準としてウエイトをかけた表形的類似を用いる直観的で実用的な考察に基づく分類法で、進化史を考慮するが、系統的な解析な十全には含まない)、そして数量分類学numerical taxonomy(表形分類法phenetic methodとも。対象となる分類含意の形質状態に基づき数量的な手法を用いて分類単位のグルーピングを行うもの)などの考え方がある。一方、系統学Phylogeneticsとは、Hennig(1950, 1966)が最初に定式化した概念であり、共通祖先の保有関係を再構成するにあたって派生形質を用いることにより、共通祖先の保有に基づく分類群をつくりだすことである。分類学と系統学それぞれの基本的概念や具体的方法を理解し説明できる。
③ 動物の学名や命名法は、国際動物命名規約で規定されている。その目的とは、生物の名称の普遍性と安定性を推進し、各分類群の学名が唯一かつ独自であることを保証することである。規約に反して命名された名称は使用不可となる。本規約は、1905年に萬国動物命名規約が規定され、その後改訂が重ねられ、最新は1999年に出版された第4版である。動物以外には、国際藻類・菌類・植物命名規約、国際原核生物命名規約がある。動物の学名や命名法が規約で規定されていることを知る。新しい種階級群(種・亜種)が記載された場合、タイプ標本Type specimenが指定される。タイプ標本には、ホロタイプHolotype(正模式標本)、パラタイプParatype(副模式標本)の他に、シンタイプSyntype(総模式標本)、レクトタイプLectotype(後模式標本)、パラレクトタイプParalectotype(副後模式標本)、ネオタイプNeotype(新模式標本)がある。今回は本規約について概要を紹介するほか、動物命名の実際の例をもちいて、その事例を紹介する。動物の学名や命名法が国際動物命名規約で規定されていること、そしてタイプ標本の概念や種類について理解し、説明できる。
キーワード ① 分類学 ② 系統学 ③ 学名 ④ 分類階級 ⑤ 国際動物命名規約
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:分類学で用いられる階層構造、そして学名の標記方法について説明できるように復習する。分類学の理論には伝統分類学や数量分類学などがある。そのほか、系統学とは、共通祖先の保有関係を再構成するにあたり派生形質を用いることにより、共通祖先の保有に基づく分類群をつくりだすことである。それぞれの考え方について理解し復習する。動物の学名や命名法は、国際動物命名規約で規定されている。この規約は、生物の名称の普遍性と安定性を推進し、各分類群の学名が唯一かつ独自であることを保証することである。規約に反して命名された名称は使用不可となる。国際動物命名規約の目的や役割について理解し、また、タイプ標本の意味や種類について解説できる。
3 昆虫の起源と進化―種分化― 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第3回では、昆虫の起源と進化その1として、種の概念と、種分化が起きるメカニズムについて学ぶ。
【コマ主題細目①】
・馬渡峻輔『動物分類学の論理』、東京大学出版会、1994年、54-57頁。
・佐々治寛之『動物分類学入門』、東京大学出版会、1989年、12-29頁。
・藤田敏彦(著)・太田次郎・赤坂甲治・浅島誠・長田敏行(編集)『動物の系統分類と進化』、裳華房、2010年、31-34頁。
・ジュディス・E・ウィンストン(著)馬渡峻輔・柁原宏(訳)『種を記載する』、新井書院、2008年、66-68pp.
【コマ主題細目②】
・馬渡峻輔『動物分類学の論理』、東京大学出版会、1994年、129-134頁。
・佐々治寛之『動物分類学入門』、東京大学出版会、1989年、40-47頁。
・岩槻邦男・馬渡峻輔・石川良輔『節足動物の多様性と系統』、裳華房、2008年、189-283頁。
・藤田敏彦(著)・太田次郎・赤坂甲治・浅島誠・長田敏行(編集)『動物の系統分類と進化』、裳華房、2010年、34-40頁。
【コマ主題細目③】
・馬渡峻輔『動物分類学の論理』、東京大学出版会、1994年、132-134頁。
・佐々治寛之『動物分類学入門』、東京大学出版会、1989年、40-47頁。
・藤田敏彦(著)・太田次郎・赤坂甲治・浅島誠・長田敏行(編集)『動物の系統分類と進化』、裳華房、2010年、31-34頁。
【コマ主題細目④】
・吉村仁(著)・石森愛彦(絵)『素数ゼミの謎』、文芸春秋、2005年、1-126頁。
・吉村仁『17年と13年だけ大発生?素数ゼミの秘密に迫る』、サイエンス・アイ新書、2008年、1-226頁。
・藤田敏彦(著)・太田次郎・赤坂甲治・浅島誠・長田敏行(編集)『動物の系統分類と進化』、裳華房、2010年、34-40頁。
コマ主題細目 ① 種の定義 ② 種分化のメカニズム ③ クラインについて ④ 生殖隔離機構の実例
細目レベル ① 種の定義は現在までに多数のものが提唱されている。例えば、表形的種概念phenetic species concept、生物学的種概念biological species concept、系統的種概念phylogenetic species concept、生態的種概念ecological species concept、凝集的種概念cohesion species conceptなどである。その中で、最も汎用性があり有名なものはMayr(1942)による「種とは互いに交配しうる自然集団の群で、それは他のそのような群から生殖的に隔離されている」という生物学的種概念である。そして生殖的隔離機構とは、大きく交尾前隔離機構と、交尾後隔離機構とに分かれる。交尾前隔離機構の例として、交尾をする季節や一日の中での交尾時間が異なる等の時間的な隔離や、同じ地域に共存していても、生息する場所を違えてすみわけている場合等の生態的隔な隔離が挙げられる。また、求愛ダンスや鳴き声、フェロモンなど異種の雌雄間の配偶行動がかみ合わない行動的隔離や、外部生殖器の構造の違いにより種間交尾が妨げられる機械的隔離がある。また、交尾後隔離機構として、メスの体内に入った異種の精子がその体内環境にうまく適応していないため、卵に出会う前に弱って運動能力を失ったり死んでしまったりして受精に至らない配偶子と生殖管の不和合による隔離や、できた雑種の生存力が弱く、性的に成熟する前に死んでしまうような雑種の生存不能による隔離、雑種が機能的な配偶子を作れないこと等の雑種を通しての遺伝子拡散の減少等の隔離機構が知られている。種の概念や生殖隔離機構について、説明できる。
② 種分化speciation が起きるメカニズムの一つとして、異所的種分化(分断的種分化、周辺的種分化)がある。それは、互いに地理的に隔離された集団から新たな種が形成されることである。その他に、側所的種分化と同所的種分化があるが、この二つは、生殖隔離に先立つ物理的隔離を前提とせず、いわば繁殖集団の内部に別の繁殖集団が生じるとする点が異所的種分化とは大きく異なることから、非異所的種分化としてまとめられることがある。側所的種分化と、地理的形質傾斜(クライン)の中に、急激な違いが生じることによりクラインは分断され異なる別種へと分化する等と定義される。同所的種分化とは、集団内のある個体が一足飛びに他のすべての個体と生殖的に隔離されること等である。例えば、染色体を倍数化させることによる新種の形成等が挙げられる。これら生殖隔離が始まってから完成するまでの時間は、ショウジョウバエの同所的種分化では8~20万年、異所的種分化では110~270万年と推定されている。種分化にはどのようなものがあるか、そしてそのメカニズムを説明できる。
③ 種としては遺伝的に連続した集団であっても、その分布域が広い場合、必然的に、地理的に離れていればそれだけ交配の機会は少なく、亜種としてまで分化していなくても、地域によって多少の遺伝的傾向が違ってくる。それが一連の傾向をもっている場合、クライン(地理的傾斜)という。クラインの例を挙げる。ナミテントウは日本列島の北から南へ向かって遺伝的多型である二紋型の比率が顕著に増加する。この斑紋多型は単一座位の複対遺伝子の支配を受けており、それ以外の形質には再がないので、斑紋のクラインであると同時に遺伝子頻度のクラインである。エゾエンマコオロギは南方に行くほど生育期間が延び、その結果、頭はガが大きくなるが、これは生態的クラインであるとともに大きさのクラインである。クラインの意味を理解し、昆虫での具体例を挙げて説明できる。その他、ある一種が地理的な障壁を取り囲むように分布域を拡大し、やがてリング状につながった状態を輪状種という。隣接した個体群の間では遺伝子の交流があるものの、距離が離れるについれ、ほとんど交流がない状態となり、リングがつながる頃には、末端の個体群の間では遺伝的な差がかなり大きくなり、生殖隔離が生じている状態に至っているものである。
④ 生殖的隔離機構の例として、13年ゼミと17年ゼミの例がある。これらは北アメリカ大陸に生息し、13年と17年に一度、成虫が出現するセミの仲間である。ちなみに、アメリカ中の13年ゼミや17年ゼミが一斉に出てくる訳ではなく、それぞれの地域で13年あるいは17年ごとに出現するものであり、それぞれの地域ごとの群れをブルードと呼ぶ。地球の歴史上、氷河期と呼ばれる寒冷な時期が数度起こった。セミは地中で幼虫期を過ごすが、氷河期の気温下で成長のスピードは遅くなった。交尾して子孫を残すためには一斉に成虫になり、成虫同士が出会う必要がある。そして、一か所で集団で成虫が生息することにより成虫同士が出会い交尾を行う確率も増えることにより、定住性、集合性も固定された。13と17という数字は素数である。このことにより他の発生周期をもつセミと同時に発生し交雑することが少なくなり、氷河期を生き抜き、現在までこの習性をたもったまま生存していると考えられている。これは種分化機構のうち、時間的隔離機構の例と言える。生殖的隔離機構について、昆虫の事例を具体的に挙げて説明できる。
キーワード ① 種 ② 異所的種分化 ③ 非異所的種分化 ④ クライン ⑤ 生殖的隔離機構
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:種の定義は現在までに多数のものが提唱されている。その中で最も汎用性があり有名なものはMayr(1942)による「種とは互いに交配しうる自然集団の群で、それは他のそのような群から生殖的に隔離されている」という生物学的種概念である。種の定義についてどのようなものがあるか理解し、説明できるように復習する。種分化が起きるメカニズムの一つとして、異所的種分化、側所的種分化、そして同所的種分化等がある。それぞれの違いと具体的な仕組み、その事例について説明できるように復習する。生殖的隔離機構の例として、13年ゼミと17年ゼミほかの事例を示す。その他、昆虫の生殖的隔離機構の事例について説明できるように復習する。
4 昆虫の起源と進化―昆虫の起源と目ごとの特徴①― 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第4回では、昆虫の起源と進化その2として、昆虫の起源や形態的な定義について学ぶ。
【コマ主題細目①】
・藤田敏彦(著)・太田次郎・赤坂甲治・浅島誠・長田敏行(編集)『動物の系統分類と進化』、裳華房、2010年、89-111頁。
【コマ主題細目②】
・Misof, B. ほか『ゲノムデータによって明らかとなった昆虫の進化パターンと分岐時期』, Science, 2014, 346(6210): 763-767(英文)。
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、5-20頁。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、92-115頁。石川良輔『昆虫の誕生』、中公新書、1996年、2-28頁。
【コマ主題細目③】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、193-211。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、129-141頁。
・石川良輔『昆虫の誕生』、中公新書、1996年、36-49頁。
【コマ主題細目④】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、193-211。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、142-497頁。
・石川良輔『昆虫の誕生』、中公新書、1996年、49-190頁。
コマ主題細目 ① 生物の体系 ② 昆虫の起源と定義 ③ 内顎綱について ④ 外顎綱について その①
細目レベル ① 生物の分類体系は、紀元前4世紀のアリストテレスの時代から18世紀のリンネの時代まで、生物は動物界と植物界の2つに分類されていた。その後、ヘッケル(1866)により三界説(原生生物界・植物界・動物界)、コープランド(1956)による四界説(モネラ界・原生生物界・植物界・動物界)、ホイタッカー(1969)による五界説(モネラ界・原生生物界・菌界・植物界・動物界)、ウーズ・フォックス(1977)による六界説(真正細菌界・古細菌界・原生生物界・菌界・植物界・動物界)、そしてウーズら(1990)により三ドメイン説(真正細菌ドメイン・古細菌ドメイン・真核生物ドメイン)が提唱されている。この、三ドメイン説のうち昆虫は、真核生物の中の節足動物門に所属する。生物全体の分類体系を見渡し、その中の節足動物門にはどのような分類群があるか、昆虫とその周辺の生物の体系について把握する。
② 昆虫は、約4億万年前に誕生したと言われ、地球上のあらゆる生物の中で、種類・形態・生態ともに最も多様性に富んだ分類群である。昆虫とは、狭義には外顎綱に含まれる分類群のことであるが、内顎綱(トビムシ目、コムシ目、カマアシムシ目)を含めて昆虫類(=六脚亜門Hexapoda)と呼ぶこともある)。昆虫類の定義は次の通り。体は頭部、胸部、腹部から構成される。頭部は各1対の触角、複眼、大顎、小顎をもち、口器の背面を上唇、腹面を下唇が覆っている。胸部は前胸、中胸、後胸の3節からなり、各節に1対の脚を具え、有翅昆虫では中胸と後胸にそれぞれ1対の翅がある。そして腹部は基本的には12節以下からなる。昆虫類の定義を理解し説明できる。
③ 内顎綱Endognatha は、狭義には昆虫に含まれないが、昆虫類(六脚類Hexapoda)として扱われる。内顎綱には、カマアシムシ目、トビムシ目、コムシ目が含まれ、いずれも落ち葉の下などに生息する土壌性の種で、単眼複眼を欠く。カマアシムシ目Protura は、体長0.5-2.0mm。体は細長い円筒形で、複眼と単眼を欠く代わりに偽眼をもつ。前脚を頭部の側方に持ち上げたまま歩行し、鎌をふるようなしぐさをするのでカマアシムシと呼ばれる。トビムシ目Collembola は体長1-3mm(最大10mm)。複眼は消失するか8個以下の眼斑と呼ばれる個眼からなる。腹部腹面には、第1節に腹管、第3節に保体、第4節に跳躍器がある、等の特徴をもつ。いずれも落ち葉の下などに生息する土壌性の種で、単眼複眼を欠く。コムシ目は、体長2-5mm程度。体は細長く、円筒形もしくは背腹側に扁平。触角は数珠状で長い、等の特徴をもつ。内顎綱に含まれる昆虫類の目の種類、形態や生態の特徴を説明できる。
④ 外顎綱Insecta に含まれる目は、狭義の”昆虫綱”のことである。この中で、無翅類Apterygota にはイシノミ目、シミ目が含まれる。他の分類群は有翅類Pterygota に分類され、その中で旧翅類と言われるグループには、トンボ目、カゲロウ目が含まれる。新翅類のうち、多新翅類からはカワゲラ目、ハサミムシ目、ジュズヒゲムシ目、バッタ目、シロアリモドキ目、ナナフシ目、ガロアムシ目、カカトアルキ目、カマキリ目、ゴキブリ目が含まれる。新翅類のうち、準新翅類にはカジリムシ目、アザミウマ目、カメムシ目が含まれる。そして新翅類のうち内翅類(完全変態類を行うグループ)には、ラクダムシ目、ヘビトンボ目、アミメカゲロウ目、コウチュウ目、ネジレバネ目、ハエ目、シリアゲムシ目、ノミ目、トビケラ目、チョウ目、ハチ目が含まれる。外顎綱に含まれる目の種類、形態や生態を把握する。
キーワード ① 昆虫の起源 ② 昆虫の定義 ③ 昆虫の目 ④ 内顎綱 ⑤ 外顎綱
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:昆虫とは、狭義には外顎綱に含まれる分類群のことであるが、内顎綱に含まれる分類群(トビムシ目、コムシ目、カマアシムシ目)を含めて昆虫類(=六脚亜門Hexapoda)と呼ぶこともある。昆虫類の定義とは、体は頭部、胸部、腹部から構成されること、頭部は各1対の触角、複眼、大顎、小顎をもち、口器の背面を上唇、腹面を下唇が覆っていること、胸部は前胸、中胸、後胸の3節からなり、各節に1対の脚を具え、有翅昆虫では中胸と後胸にそれぞれ1対の翅があること、そして腹部は基本的には12節以下からなること等である。昆虫の定義を理解し、説明できるように復習する。そして今回の講義では、主に内顎綱についてと、その他、外顎綱の一部の目について学んだが、昆虫にはどのような目が含まれるか、本日学んだグループについて、その形態や生態について理解し説明できるように復習しておくこと。
5 昆虫の起源と進化―昆虫の起源と目ごとの特徴②― 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第5回では、昆虫の起源と進化その3として、前回に引き続き、昆虫の目(もく)ごとの形態や生態の概要について学ぶ。
【コマ主題細目①】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、195。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、142-145頁
【コマ主題細目②】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、18-20、195-197頁。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、146-165頁。
・石川良輔『昆虫の誕生』、中公新書、1996年、56-69頁。
【コマ主題細目③】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、197-202。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、167-235頁。
・石川良輔『昆虫の誕生』、中公新書、1996年、73-113頁。
【コマ主題細目④】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、202-204頁。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、236-289頁。
・石川良輔『昆虫の誕生』、中公新書、1996年、114-137頁。
【コマ主題細目⑤】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、204-211頁。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、290-497頁。
・石川良輔『昆虫の誕生』、中公新書、1996年、138-190頁。
コマ主題細目 ① 外顎綱について その②無翅類 ② 外顎綱について その③旧翅類 ③ 外顎綱について その④多新翅類 ④ 外顎綱について その⑤準新翅類 ⑤ 外顎綱について その⑥内翅類(完全変態類)
細目レベル ① 外顎綱のうち、イシノミ目、シミ目は無翅類と呼ばれる。両目ともに翅は無い。イシノミ目は、体長7.0-25mm程度。体型は円筒形で、体表は鱗片で覆われる。主に夜行性で、地表近くの岩の表面や、樹皮下、落葉下などで地衣類、緑藻類、昆虫の死体などを食べる。シミ目は、体長10-20mm程度、体は背腹面に扁平で、ほとんどの種類は灰銀色の鱗片に覆われる。ヤマトシミのように家屋内で見られる種類もいて、和紙や衣類を食べるため家屋害虫として知られている(和名のシミ(紙魚)は、本や障子を食べることに由来する)。野外では樹皮の下などに生息していたり、アリやシロアリの巣で生息する種類もいる。無翅類の形態や生態を把握し説明できる。
② 外顎綱のうち、カゲロウ目、トンボ目は旧翅類と呼ばれる。カゲロウやトンボの仲間は、翅を立ててとまり、他の昆虫(例えば、カブトムシなどのコウチュウ類)のように翅を腹部の上に折りたたむことが出来ない。このように、翅の構造について古い状態を保っていると考えられていることが旧翅類と呼ばれる所以である。カゲロウ目は、体長3.0-30mm程度。幼虫は水中で生活する。水質などで種構成が異なる為、環境を測る指標生物として用いられることがある。成虫は翅をもち、口器が退化しているので摂食できない。トンボ目はほとんどの幼虫が水中で生活する(ムカシヤンマの仲間で湿った蘚苔類の下で生活する幼虫もいる)。成虫は翅をもつ。幼虫、成虫ともに肉食性である。旧翅類に含まれる目の形態や生態を把握し説明できる。
③ 外顎綱新翅類のうち、カワゲラ目、ハサミムシ目、ジュズヒゲムシ目、バッタ目、シロアリモドキ目、ナナフシ目、ガロアムシ目、カカトアルキ目、カマキリ目、ゴキブリ目は多新翅類と呼ばれる。多新翅類の特徴の一つは、前翅よりも大きい後翅をもつことである。カワゲラ目は幼虫期を水中で過ごす水生昆虫である。ハサミムシ目は尾鋏をもつことが大きな特徴である。ジュズヒゲムシ目は、触角が数珠状で9節からなること等が特徴である。バッタ目にはキリギリス、コオロギの仲間などのキリギリス類と、トノサマバッタやイナゴの仲間などのバッタ類が含まれる。シロアリモドキ目は、シロアリ類とは系統的には関係がないが、形が似ているのでこの名がある。前脚にある絹糸腺から絹糸を分泌することが特徴である。ナナフシ目は樹上生活に適応した昆虫である。ガロアムシ目は、山地の森林のなかの石の下や岩石の隙間、洞窟などに生息している。カカトアルキ目は、2002年に創設された目である。カマキリ目は、前脚が鎌状の捕獲肢となることが特徴で、ゴキブリ目に系統的に近い。ゴキブリ目は、従来独立した目として扱われていたシロアリ類を含む。シロアリ類は消化管内に共生する原生動物の働きによりセルロースを分解できる。多新翅類に含まれる目の形態や生態を把握し説明できる。
④ 外顎綱新翅類のうち、カジリムシ(咀顎)目、アザミウマ目、カメムシ目は準新翅類と呼ばれる。このうち、咀顎目は従来チャタテムシ目とシラミ目とに分けられていたグループのことである。カメムシ目はアブラムシなどが含まれる腹吻亜目Sternorrhyncha、セミやウンカ、ヨコバイなどが含まれる頚吻亜目Auchenorrhyncha、日本には分布しない鞘吻亜目Coleorrhyncha、そしてタガメ、アメンボ、クサギカメムシなどいわゆる”カメムシ”が含まれる異翅亜目Heteropteraに分けられる。アザミウマ目はキュウリやピーマン等の作物を吸汁し農業害虫として知られるミナミキイロアザミウマなどが含まれる。準新翅類に含まれる目の形態や生態を把握し説明できる。
⑤ 外顎綱新翅類のうち、ラクダムシ目、ヘビトンボ目、アミメカゲロウ目、コウチュウ目、ネジレバネ目、ハエ目、シリアゲムシ目、ノミ目、トビケラ目、チョウ目、ハチ目は、内翅類(完全変態類)と呼ばれる。ラクダムシ目は肉食で、胸部が長く伸びることなどが特徴である。ヘビトンボ目にはヘビトンボ科とセンブリ科が含まれる。ヘビトンボの幼虫は孫太郎虫として薬や食用となる。アミメカゲロウ目には幼虫がアリ地獄として知られるウスバカゲロウ類を含む。コウチュウ目はカブトムシ、テントウムシ等が含まれる。前翅が角質化しその下に飛翔に用いられる後翅が収納されている。ネジレバネ目はすべての種が他の昆虫に内部寄生する。ハエ目は、後翅が平均棍に変化していることが特徴である。カ、ガガンボ、アブ、ハエ類が含まれる。シリアゲムシ目は、雄が腹端に発達した把握器をもち、サソリのように腹端を背中側に持ち上げることに由来する。ノミ目は、ほ乳類や鳥類に外部寄生して吸血する。トビケラ目は幼虫は水中で生活し、水生昆虫として知られているが、成虫はガ類(チョウ目)に似ている。チョウ目は成虫の翅や体が鱗粉で覆われる。チョウ類とガ類を含む。ハチ目にはハチ類とアリ類が含まれる。内翅類(完全変態類)に含まれる目の形態や生態を把握し説明できる。
キーワード ① 無翅類 ② 旧翅類・新翅類 ③ 多新翅類 ④ 準新翅類 ⑤ 内翅類(完全変態類)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:今回は昆虫類のうち、外顎綱に含まれるグループについて学んだ。外顎綱のうち、無翅類にはイシノミ目、シミ目が含まれる。旧翅類にはカゲロウ目、トンボ目が含まれる。多新翅類にはカワゲラ目、ハサミムシ目、ジュズヒゲムシ目、バッタ目、シロアリモドキ目、ナナフシ目、ガロアムシ目、カカトアルキ目、カマキリ目、ゴキブリ目が含まれる。準新翅類にはカジリムシ(咀顎)目、アザミウマ目、カメムシ目が含まれる。内翅類(完全変態類)には、ラクダムシ目、ヘビトンボ目、アミメカゲロウ目、コウチュウ目、ネジレバネ目、ハエ目、シリアゲムシ目、ノミ目、トビケラ目、チョウ目、ハチ目が含まれる。前回の授業と合わせ、昆虫類に含まれる目について、どのようなグループがいるか、その形態と生態的特徴について復習すること。
6 まとめ① 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第6回では、まとめその1として、第2~5回までの講義内容について、復習を行う。
【コマ主題細目①~⑤】
第2~5回までの教材を使用。
コマ主題細目 ① 分類階級と学名 ② 国際動物命名規約について ③ 種の定義と種分化 ④ 昆虫類の目 内顎綱 ⑤ 昆虫類の目 外顎綱
細目レベル ① 1758年、スウェーデンの博物学者であるリンネは『自然の体系』Systema Nature の第10版において、動植物を属名と種小名の二名式名で表した。この命名法は、以降世界中の学者に用いられ、生物を科学的な体系に組み立てる基礎となった。リンネにより確立された二語命法名およびりンネ式階層分類体系Linnean hierarchical classification system, Linnean hierarchyは、今日まで用いられている。分類階級は、動物の場合は界Kingdam、門Phylum、綱Class、目Order、科Family、属Genus、種speciesという階層構造で表される。また、学名は2語(属名と種小名)で標記され、二語命法名とよばれる。分類階級、学名の標記の方法について理解し説明できる。
② 分類学とはTaxonomy のことであり、生物を記載し、命名し、分類することである。分類学は、生物の多様性を認識する手段でもあり、自然の法則を解明するため、生物多様性の解明のため、進化学の材料として、また我々の知識の体系化のために必要である。分類学の理論には、伝統分類学conventional taxonomy, orthodox classification(関係の基準としてウエイトをかけた表形的類似を用いる直観的で実用的な考察に基づく分類法で、進化史を考慮するが、系統的な解析な十全には含まない)、数量分類学numerical taxonomy(表形分類法phenetic methodとも。対象となる分類含意の形質状態に基づき数量的な手法を用いて分類単位のグルーピングを行うもの)などがある。一方、系統学Phylogeneticsとは、Hennig(1950, 1966)が最初に定式化した概念であり、共通祖先の保有関係を再構成するにあたって派生形質を用いることであり、共通祖先の保有に基づく分類群をつくりだすことである。分類学と系統学それぞれの基本的概念や具体的方法を理解し説明できる。
③ 種の定義は現在までに多数のものが提唱されている。その中で最も汎用性があり有名なものはMayr(1942)による「種とは互いに交配しうる自然集団の群で、それは他のそのような群から生殖的に隔離されている」という生物学的種概念である。そして生殖的隔離機構とは、大きく交尾前隔離機構と、交尾後隔離機構とに分かれる。交尾前隔離機構の例として、交尾をする季節や一日の中での交尾時間が異なる等の時間的な隔離や、同じ地域に共存していても、生息する場所を違えてすみわけている場合等の生態的隔な隔離が挙げられる。また、求愛ダンスや鳴き声、フェロモンなど異種の雌雄間の配偶行動がかみ合わない行動的隔離や、外部生殖器の構造の違いにより種間交尾が妨げられる機械的隔離がある。また、交尾後隔離機構として、メスの体内に入った異種の精子がその体内環境にうまく適応していないため、卵に出会う前に弱って運動能力を失ったり死んでしまったりして受精に至らない配偶子と生殖管の不和合による隔離や、できた雑種の生存力が弱く、性的に成熟する前に死んでしまうような雑種の生存不能による隔離、雑種が機能的な配偶子を作れないこと等の雑種を通しての遺伝子拡散の減少等の隔離機構が知られている。種の概念や生殖隔離機構について、説明できる。
④ 内顎綱Endognatha は、狭義には昆虫に含まれないが、昆虫類(六脚類Hexapoda)として扱われる。内顎綱には、カマアシムシ目、トビムシ目、コムシ目が含まれ、いずれも落ち葉の下などに生息する土壌性の種で、単眼複眼を欠く。カマアシムシ目Protura は、体長0.5-2.0mm。体は細長い円筒形で、複眼と単眼を欠く代わりに偽眼をもつ。前脚を頭部の側方に持ち上げたまま歩行し、鎌をふるようなしぐさをするのでカマアシムシと呼ばれる。トビムシ目Collembola は体長1-3mm(最大10mm)。複眼は消失するか8個以下の眼斑と呼ばれる個眼からなる。腹部腹面には、第1節に腹管、第3節に保体、第4節に跳躍器がある、等の特徴をもつ。いずれも落ち葉の下などに生息する土壌性の種で、単眼複眼を欠く。コムシ目は、体長2-5mm程度。体は細長く、円筒形もしくは背腹側に扁平。触角は数珠状で長い、等の特徴をもつ。内顎綱に含まれる昆虫類の目の種類、形態や生態の特徴を説明できる。
⑤ 外顎綱Insecta に含まれる目は、狭義の”昆虫綱”のことである。この中で、無翅類Apterygota にはイシノミ目、シミ目が含まれる。他の分類群は有翅類Pterygota に分類され、その中で旧翅類と言われるグループには、トンボ目、カゲロウ目が含まれる。新翅類のうち、多新翅類からはカワゲラ目、ハサミムシ目、ジュズヒゲムシ目、バッタ目、シロアリモドキ目、ナナフシ目、ガロアムシ目、カカトアルキ目、カマキリ目、ゴキブリ目が含まれる。新翅類のうち、準新翅類にはカジリムシ目、アザミウマ目、カメムシ目が含まれる。そして新翅類のうち内翅類(完全変態類を行うグループ)には、ラクダムシ目、ヘビトンボ目、アミメカゲロウ目、コウチュウ目、ネジレバネ目、ハエ目、シリアゲムシ目、ノミ目、トビケラ目、チョウ目、ハチ目が含まれる。外顎綱に含まれる目の種類、形態や生態を把握する。
キーワード ① 分類階級と学名 ② 国際動物命名規約 ③ 種の定義と種分化 ④ 内顎綱 ⑤ 外顎綱
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:第2回から5回までのまでの授業を振り返り、今回のまとめの講義も参照にしながら、改めて講義内容の復習を行うこと。分類学とは生物多様性を認識する手段であり、昆虫学を学ぶ上でも重要である。分類階級について、学名の構成や表記方法について、タイプ標本について、そして動物の学名や命名法を既定する国際動物命名規約等について復習する。昆虫は、約4億万年前に誕生したと言われ、地球上のあらゆる生物の中で最も多様性に富んだ分類群である。昆虫類の定義は次の通り。体は頭部、胸部、腹部から構成される。頭部は各1対の触角、複眼、大顎、小顎をもち、口器の背面を上唇、腹面を下唇が覆っている。胸部は前胸、中胸、後胸の3節からなり、各節に1対の脚を具え、有翅昆虫では中胸と後胸にそれぞれ1対の翅がある。そして腹部は基本的には12節以下からなる。狭義の昆虫類は、外顎綱Insecta に含まれる分類群のことであるが、内顎綱Endognatha に含まれる分類群も併せて昆虫類(=六脚亜門Hexapoda)と呼ぶこともある。これらの分類群の形態や生態的特徴、人間との関わり等について復習する。
7 昆虫の形態と生理―外部形態― 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第7回では、昆虫の形態と生理その1として、昆虫の外部形態について学ぶ。
【コマ主題細目①】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、13、5-38頁。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、96-102頁。
【コマ主題細目②】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、13、5-38頁。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、102-107頁。
【コマ主題細目③】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、5-38頁。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、113-115頁。
・中筋房夫・大林延夫・藤家 梓『害虫防除』、朝倉書店、1997年、39頁。
・斎藤哲夫・松本義明・平嶋義宏・久野英二・中島敏夫『新応用昆虫学 三訂版』、朝倉書店、1996年、20-21頁。
【コマ主題細目④】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、13、5-38、57-68頁。
【コマ主題細目⑤】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、119-130頁。
コマ主題細目 ① 昆虫の頭部 ② 昆虫の胸部 ③ 昆虫の腹部 ④ 外部形態と行動様式との関連 ⑤ 翅の獲得
細目レベル ① 昆虫とは外骨格exoskeletonであり、体の外側が固い殻で覆われ、これに筋肉が付着している。昆虫の基本的な体の構造は、外見的には頭部、胸部、腹部に分かれ、頭部に1対の触角を、胸部に2対の翅と3対の脚を持つ。頭部は感覚を、胸部は運動を、腹部は生殖をつかさどる部分と言える。頭部には、感覚器官として脳、複眼、単眼、触角などを具える。口器は噛む、吸う、舐めるなどの形状に発達している。頭部は、外見上一つのかたまりのように見えるが、発生学上は先節と6節(上唇節、触角節、挿入節、大顎節、小顎節、下唇節)が融合したものであることが分かっている。触角や口器を形成している小顎や大顎は、いずれも付属肢が変化したものである。コウチュウ目の多くの口器は噛むことに適したものだが、クワガタの大顎のように、闘争に用いられるものもある。セミ、タガメなどカメムシ目の仲間は、吸う口になっている。また、チョウ目(チョウやガの仲間)は、ストローのような吸う口になったものが多く、花の蜜などを吸う。単眼は成虫の頭部にあり、光を感知するほか、水平を保つことにも使われていると考えられている。複眼は多数の個眼が集まったものであり、昆虫の視覚は主に複眼によるものである。触角には匂いなどを感じる様々な感覚器が密集しており、その形状も多様である。頭部の各部位の名称について、その名前と役割を理解し説明できる。
② 胸部は、前胸・中胸・後胸に分かれ、それぞれに前脚・中脚・後脚がある。また、前翅が中胸に、後翅は後胸についている。胸部はこのように、基本的には3対の脚、2対の翅があり、飛ぶ、跳ぶ、走る、歩く、滑走する、つかまえる、ぶら下がるなどの運動機能が集中している。昆虫は4億年以上前に翅を獲得し、空を飛んだ最初の生物である。飛翔することにより外敵から逃れたり、より好適な生息地に移動したりできるようになった。翅の進化は昆虫のグループによって異なり、トンボ目やカゲロウ目のように4枚の翅を別々に動かして飛翔したり、コウチュウ目のように前翅は鞘翅といわれ硬化して体や後翅を保護する役割を果たし飛翔には後翅のみを用いるグループがいたり、ハエ目のように、後翅は退化して平均棍となっているグループも存在する。昆虫の脚は基節、転節、腿節、脛節、跗節からなり、跗節の先端に爪がある。コウチュウ目のうち水域に生息するゲンゴロウ類は泳ぐのに適した脚をもち、ゴミムシ類は地上を素早く走り、カマキリの前脚は獲物を捕らえるのに適した形となり、また、バッタ目のうちコオロギ類、キリギリス類は脛節に鼓膜があり音を認識する。胸部の各部位の名称について、その名前と役割を理解し説明できる。
③ 腹部は生殖をつかさどる部分として、雌雄それぞれの生殖器官があるほか、神経系、気管系、消化器官の一部である腸などが納められている。腹部は基本的には12節以下から構成されるが、第12節を尾節telsonとして区別することがある。しかしほとんどの昆虫では尾節は消失し10~11節が認められるだけである。腹部の各節には脚がない。腹部末端の数節は交尾や産卵に適応して特殊化し、生殖節と呼ばれる。腹部は背板、腹板、そして一対の側板から構成されるが、側板は通常膜質である。背板の側縁近くに気門がある。雄交尾期の陰茎や把握器は種による違いが表れる場所であり、分類学では重要な形質として扱われてきた。ハチ目の刺針は第一産卵弁片と第二産卵弁片が変化したものである。腹部の各部位の名称について、その名前と役割を理解し説明できる。
④ 昆虫は、基本的な体の構成は共通するが、生態に応じて各部位が特殊化する場合がある。ナナフシ類は枝に擬態しているほか、コノハムシの仲間は、植物の葉に擬態して外敵から逃れる。訪花昆虫の中には、イチジクとイチジクコバチ、ユッカとユッカガのように、特定の植物の受粉のみを行う昆虫もいる。水生昆虫は、生活史のいずれかの段階で水生生活を行う昆虫のことである。ゲンゴロウ類は泳ぐのに適した体型や脚をもち、また、呼吸は鞘翅の下などに気泡をつけて潜ることにより行われる。アメンボの仲間は、長い脚を用いて水面を滑走する。昆虫は形態や習性を様々な環境に適応させてきたことにより爆発的に発展したと考えられている。外部形態と行動様式との関連について、具体例をもって説明できる。また、これらの理解により昆虫が多様な環境に適応して発展してきたことを理解する。
⑤ 昆虫は空を飛んだ最初の動物であると言われ、そのことでより好適な生息環境を求めて探索・移動が用意になり、外敵から逃避できる機会も多くなり、より多くの交配相手を探索できるようになるなど多くの利点を生み出した。遺伝子の解析によると翅の獲得は4億年以上前だとされる。空を飛ぶ昆虫では、トンボ目の仲間であるアメリカギンヤンマは最高時速27km/hと言われる。渡りをするチョウとして有名なオオカバマダラは、北アメリカ大陸を移動し、その生息範囲は南北に約3,500kmにもわたっている。その他、アサギマダラも渡りをするチョウとして知られる。ウスバキトンボは最も分布域が広いトンボの一つである。日本へは春先に南方から渡ってくるが、世代を繰り返しながら日本列島を北上し、冬には耐寒性がないことから死滅してしまう。昆虫が翅を獲得したことから地球上で最も発展したともいえる。翅を獲得した利点や昆虫の移動の実例について説明できる。
キーワード ① 頭部 ② 胸部 ③ 腹部 ④ 翅 ⑤ 形態と行動様式
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:昆虫とは外骨格exoskeletonであり、体の外側が固い殻で覆われ、これに筋肉が付着している。昆虫の基本的な体の構造は、外見的には頭部、胸部、腹部に分かれ、頭部に1対の触角を、胸部に2対の翅と3対の脚を持つ。頭部は感覚を、胸部は運動を、腹部は生殖をつかさどる部分と言える。頭部には、感覚器官として脳、複眼、単眼、触角などを具える。胸部は、基本的には3対の脚、2対の翅があり、飛ぶ、跳ぶ、走る、歩く、滑走する、つかまえる、ぶら下がるなどの運動機能が集中している。腹部は生殖をつかさどる部分として、雌雄それぞれの生殖器官があるほか、神経系、気管系、消化器官の一部である腸などが納められている。また、ナナフシ類は枝に擬態しているほか、ゲンゴロウ類は泳ぐのに適した体型や脚をもち、アメンボの仲間は、長い脚を用いて水面を滑走する。昆虫は形態や習性を様々な環境に適応させてきたことにより爆発的に発展したと考えられている。昆虫の頭部・胸部・腹部それぞれについてどのような名称の部位があり、どのような役割をしているかを理解し、説明できる。また、外部形態と行動様式との関連について、具体例を挙げて説明できる。
8 昆虫の形態と生理―内部形態― 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第8回では、昆虫の形態と生理その2として、昆虫の内部形態や変態等について学ぶ。
【コマ主題細目①】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、23-31頁。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、115-118頁。
・斎藤哲夫・松本義明・平嶋義宏・久野英二・中島敏夫『新応用昆虫学 三訂版』、朝倉書店、1996年、12-33頁。
・中筋房夫・大林延夫・藤家 梓『害虫防除』、朝倉書店、1997年、39-44頁。
【コマ主題細目②】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、23-31頁。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、115-118頁。
・斎藤哲夫・松本義明・平嶋義宏・久野英二・中島敏夫『新応用昆虫学 三訂版』、朝倉書店、1996年、12-33頁。
・中筋房夫・大林延夫・藤家 梓『害虫防除』、朝倉書店、1997年、39-44頁。
【コマ主題細目③】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、28-33頁。
・平嶋義宏・森本桂・多田内修『昆虫分類学』、川島書店、1989年、115-118頁。
・斎藤哲夫・松本義明・平嶋義宏・久野英二・中島敏夫『新応用昆虫学 三訂版』、朝倉書店、1996年、12-33頁。
・中筋房夫・大林延夫・藤家 梓『害虫防除』、朝倉書店、1997年、39-44頁。
【コマ主題細目④】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、36-37頁。
・中筋房夫・大林延夫・藤家 梓『害虫防除』、朝倉書店、1997年、44-45頁。
コマ主題細目 ① 昆虫の消化系 ② 昆虫の神経系・循環器系 ③ 昆虫の呼吸 ④ 変態と無変態
細目レベル ① 昆虫の内部形態として、体の中央を消化管、腹側に神経(中枢神経索)、背側に心臓にあたる背脈管が通っている。その他、呼吸に関わる気管が体内に広がっている。消化系は口腔~肛門に至る連続した管状の気管であり、消化管は大きく分けて前腸、中腸、後腸からなる。前腸は、咽頭、食道、嗉嚢、前胃に分けられる。中腸は胃に相当する部分で、食物の消化・分解を行う。後腸は、結腸と直腸の二つの部分、もしくは回腸、結腸、直腸の三つの部分に分けられる。マルピーギ管は、中腸と後腸の間付近から出ている細長い管で、退役から老廃物を吸収し尿酸に変えて排出する。唾液腺には様々な種類の唾液が分泌される。例えば動物から吸血する昆虫は、血液が固まるのを防ぐ物質を唾液の中にもっている。また、シロアリ目の多くの種では腸内(後小腸)に大量の原生動物が寄生している。ゴキブリやキクイムシでは腸内で集合フェロモンを分泌する。昆虫の内部形態のうち、消化系について理解し、説明できる。
② 昆虫の神経は、体の腹面中央を能からつながる一対の神経索と、それと連結している一対の神経節が前後に伸びる、はしご状神経系である。神経系は、中枢神経系、末梢神経系、内臓神経系に大別される。幼虫期などでは体節ごとに神経節が均一にみられるが、成虫になると、神経節が集合して、脳、食道下神経節、胸部神経節、腹部神経節などに分化し、様々な週中枢として働く。脳は視覚情報の処理や記憶・学習など、食道下神経節は口器の感覚と運動など、胸部神経節は飛翔、歩行などの行動、腹部神経節は呼吸や循環、交尾や産卵行動など、中枢が分化し、脳以外の神経節も昆虫の様々な活動や機能に関わる中枢となっている。昆虫の循環系は血管をもたない開放血管系であり、体液が体の内部に満たされている。体液の循環は、体の背面中央を通る背脈管によって行われる。背脈管は前後部に分かれ、後部は心臓に相当し、前部は細い管となり大動脈に相当する。昆虫の内部形態のうち、神経系と循環器系について理解し、説明できる。
③ 昆虫には肺がなく、気管を使って呼吸を行っている。呼吸の方法として、体節側面に開口する気門spiracleから気管内に空気を取り入れる。水生昆虫では、物理鰓、気管鰓、血液鰓などにより呼吸が行われる。水生昆虫の内、ゲンゴロウ類は鞘翅の下に空気を貯め、ガムシ類は腹面に撥水性の毛を持ち、これらの毛が空気層を保持することにより呼水中で呼吸を行う(プラストロン呼吸)が、これらの例を物理鰓という。一方、気管鰓とはカゲロウ、カワゲラ、トビケラ、トンボなどの幼虫がもつ呼吸器官のことである。薄い袋状、あるいは細かい糸状に突出した体表の突起の中に空気の入った気管が入り込んだ構造になっている。血液鰓とは、ユスリカの幼虫(赤虫)など一部の水生昆虫がもつ鰓で、鰓の中に気管が入っておらず,血液が循環している。この鰓を持つ水生昆虫では鰓の中の血液と体外の水との間でガス交換が行われ、酸素や二酸化炭素は血液によって運搬される。昆虫の呼吸方法と、その具体例を理解し、説明できる。
④ 昆虫の変態には、卵からふ化してから、成長過程で形態が殆ど変化せず、脱皮によって大きさだけが変化する無変態、蛹の時期がなく、卵→ 若虫(幼虫)→ 成虫と成長する不完全変態、そして明瞭な蛹の時期があり、卵→ 幼虫→ 蛹→ 成虫と移行する完全変態とに分けられる。無変態は内顎類やシミ目など無翅昆虫に見られる。不完全変態はバッタ目、ゴキブリ目、トンボ目やカメムシ目に、そして完全変態はコウチュウ目やハチ目、チョウ目などで見られる。昆虫の既知種の八割以上は完全変態昆虫である。また、ツチハンミョウやオオハナノミ、ネジレバネなど一部の完全変態昆虫では、幼虫期に体型の異なる複数の発育段階を経る。このような現象を過変態と呼ぶ。無変態、不完全変態、完全変態との違いを説明できる。
キーワード ① 消化管 ② 神経 ③ 解放血管系 ④ 気門 ⑤ 変態
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:昆虫の内部形態として、体の中央を消化管、腹側に神経(中枢神経索)、背側に心臓にあたる背脈管が通っている。その他、呼吸に関わる気管が体内に広がっている。消化系は口腔~肛門に至る連続した管状の気管であり、消化管は大きく分けて前腸、中腸、後腸からなる。神経は、体の腹面中央を能からつながる一対の神経索と、それと連結している一対の神経節が前後に伸びる、はしご状神経系である。神経系は、中枢神経系、末梢神経系、内臓神経系に大別される。循環系は血管をもたない開放血管系であり、体液が体の内部に満たされている。体液の循環は、体の背面中央を通る背脈管によって行われる。昆虫の変態には、卵からふ化してから、成長過程で形態が殆ど変化せず、脱皮によって大きさだけが変化する無変態、蛹の時期がなく、卵→ 若虫(幼虫)→ 成虫と成長する不完全変態、そして明瞭な蛹の時期があり、卵→ 幼虫→ 蛹→ 成虫と移行する完全変態とに分けられる。消化管、神経、背脈管それぞれの役割を復習する。また、昆虫の変態の種類について復習しておくこと。
9 昆虫の形態と生理―擬態、コミュニケーション― 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第9回では、昆虫の形態と生理その3として、昆虫の擬態やコミュニケーション等について学ぶ。
【コマ主題細目①】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、69-84頁。
【コマ主題細目②】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、109-117頁。
・大崎直太『擬態の進化 ダーウィンも誤解した150年の謎を解く』、海游舎、11-286頁。
【コマ主題細目③】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、47-55頁。
・斎藤哲夫・松本義明・平嶋義宏・久野英二・中島敏夫『新応用昆虫学 三訂版』、1996、朝倉書店、78-83頁。
・中筋房夫・大林延夫・藤家 梓『害虫防除』、1997年、朝倉書店、54-58頁。
コマ主題細目 ① 共生とは ② 擬態の種類 ③ 昆虫のコミュニケーション
細目レベル ① 共生とは、異種の生物が行動的、生理的結びつきをもちながら、一所に生活する状態のことである。その中で、相利共生とは、双方が利益を伴う共生であり、昆虫では、イチジクとイチジクコバチとの関係等が挙げられる。片利共生とは、片側だけが利益を受ける共生で、イソギンチャクとクマノミの例が挙げられる。一方で、寄生とは、異種の生物が一所に生活する時、片方が害を被る状態のことである。寄生はさらに、内部寄生と外部寄生とに分けられる。例えば、セミヤドリガ(チョウ目)の幼虫は、ヒグラシ、アブラゼミなどの腹部に外部寄生する。ネジレバネ目は、ウンカ、ヨコバイ(カメムシ目)やスズメバチ類(ハチ目)などに内部寄生する。昆虫の共生や寄生の種類について理解し、具体例を挙げて説明できる。
② 擬態とは、捕食者から回避するための適応である。擬態の種類には、1.隠蔽的擬態と2.標識的擬態がある。隠蔽的擬態とは、背景などと同調することである。例えば、木の枝に擬態したナナフシ類、植物の葉に擬態したコノハムシ類、花に擬態したハナカマキリなどが挙げられる。一方で、標識的擬態は、更に2-1.ベイツ型擬態と2-2.ミューラー型擬態とに分けられる。前者は、有力な防御機能をもたない生物が、警告色をもって、捕食を免れることであり、例えば、スカシバガが、ハチに似た模様をもつことなどの例がある。後者は、2種以上の動物の持つ警告色が、たがいに似た色彩や斑紋に収斂することで、それによって未経験捕食者からの被攻撃率を低めることである。例として、スズメバチ類が互いに似たような色彩をもつことなどが挙げられる。擬態の種類と、その具体例について説明できる。
③ 昆虫のコミュニケーションの方法には様々なものがある。まず、同種間情報物質のフェロモンがある。生殖可能であることを他個体に知らせる性フェロモン、交尾や越冬のために集合するときに分泌される集合フェロモンなど。異種間情報物質として、化学物質を出す側が利益を受けるアロモン、化学物質を受ける側が利益を受けるカイロモン、そして化学物質を出す側と受ける側双方が利益を受けるシノモンがある。その他、発音等もコミュニケーション手段として用いられる。キリギリス類(バッタ目)は、特に鳴き声により交信する。コオロギ、スズムシのほか、クツワムシも鳴く昆虫として有名である。昆虫のコミュニケーションの方法を理解し、説明できる。
キーワード ① 相利共生 ② 片利共生 ③ 隠蔽的擬態 ④ 標識的擬態 ⑤ フェロモン
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:共生とは、異種の生物が行動的、生理的結びつきをもちながら、一所に生活する状態のことである。相利共生とは、双方が利益を伴う共生である。片利共生とは、片側だけが利益を受ける共生である。一方で、寄生とは、異種の生物が一所に生活する時、片方が害を被る状態のことである。寄生はさらに、内部寄生と外部寄生とに分けられる。擬態とは、捕食者から回避するための適応である。擬態の種類には、隠蔽的擬態と標識的擬態がある。昆虫のコミュニケーションの方法には様々なものがある。同種間情報物質のフェロモン、性フェロモン、集合フェロモンなどがある。その他、発音等もコミュニケーション手段として用いられる。キリギリス類(バッタ目)は、特に鳴き声により交信する。昆虫の共生や擬態の種類、コミュニケーションの方法について理解し復習しておくこと。
10 昆虫の形態と生理―視覚、聴覚― 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第10回では、昆虫の形態と生理その4として、昆虫の視覚、嗅覚等について学ぶ。
【コマ主題細目①】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、9-14頁。
・斎藤哲夫・松本義明・平嶋義宏・久野英二・中島敏夫『新応用昆虫学 三訂版』、朝倉書店、1996年、70-92頁。
・石井象二郎『昆虫生理学』、培風館、1982年、128-152頁。
【コマ主題細目②】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、14頁。
・斎藤哲夫・松本義明・平嶋義宏・久野英二・中島敏夫『新応用昆虫学 三訂版』、朝倉書店、1996年、70-92頁。
・石井象二郎『昆虫生理学』、培風館、1982年、128-152頁。
【コマ主題細目③】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、131-151頁。
・斎藤哲夫・松本義明・平嶋義宏・久野英二・中島敏夫『新応用昆虫学 三訂版』、朝倉書店、1996年、63-67頁。
コマ主題細目 ① 昆虫の視覚 ② 昆虫の嗅覚・聴覚 ③ 昆虫の社会性
細目レベル ① 昆虫の感覚には通常味覚、嗅覚(科学的感覚)、視覚、器械的感覚、聴覚、湿度感覚、温度感覚などが区別される。刺激はそれぞれの受容器にうけとられ、神経中枢に達し、感覚を生成し、命令となって感覚器の運動期間に伝えられ、運動ないしは行動を引き起こす。視覚器官には単眼と複眼がある。単眼は成虫の頭部にあり、三つが三角形に並ぶ。弱い光や光の変化を感知し、水平を保つのにも使われていると考えられている。複眼は多くの個眼からなる。個眼の数は、種類により著しく異なり、イエバエでは4,000個、大型のトンボ目では10,000~28,000個等である。複眼は、寄生性昆虫や洞窟で生活するものでは著しく退化し、カマアシムシ目、コムシ目では存在しない。昆虫の色覚について、一般に昆虫は紫外線に感応し、赤色など長波長の光には感じない。誘蛾灯には蛍光灯などの短波長の光が応用されている。昆虫の視覚について、複眼、単眼それぞれの役割を説明できる。
② 昆虫は頭部の正面あるいは側面に一対の触角をもつ。触角の形状はグループにより様々で、糸状(オサムシ等)、数珠状(セスジムシ等)、棍棒状(ゴミムシダマシ、テントウムシ等)、鋸歯状(コメツキムシ等)、羽毛状(カの雄等)、扇状(クシヒゲムシ等)、櫛歯状(コメツキムシ等)、膝状(コバチ等)等が見られる。また、触角の第一節を柄節scape、第二節を梗節pedicel、第三節以降を鞭節flagellumと呼ぶ。触角は、主に匂いや音、感触などの感覚器官で、エサの探索や種内の交信など、さまざまな機能をもっている。カイコガ等では、雌の性フェロモンを感知するために触覚の表面積を広げ、感覚器の数も多くしている。カ類の雄の触角第二節は非常に発達しており、この部位に弦音気管があり、聴覚をつかさどっている。この器官をジョンストン器官と呼ぶ。他にバッタ類やキリギリス類、コオロギ類は鼓膜器官をもち、より正確に音を聞き分けることが出来る。一般的にキリギリス類は前脚の脛節、バッタ亜目では腹部に耳をもっている。セミは腹部第二節に発達した鼓膜器官がある。ゴキブリ類の尾葉には感覚毛があり、頭皮行動を起こす。チョウ目幼虫では体表の感覚毛が、アリ類では触角上の感覚毛が音を感受する。昆虫の聴覚について、具体例を挙げて説明できる。
③ 高度に組織化された集団をつくるアリ、シロアリ、ミツバチ、スズメバチは社会性昆虫と呼ばれている。これらは、繁殖分業(不妊の個体がいること)、世代重視(親世代と子世代が同居していること)、共同育児(複数の個体が共同して幼い個体を保育すること)という3つの特徴を備え、真社会性と呼ばれる。一方で、これら3つの特徴を一つももたないものを単独性と言う。単独性と社会性の間にはいくつものパターンがある。亜社会性とはある時期だけ自らの子の世話をするもの、共同巣性とは保育は行わないが同世代の個体が共同して巣をつくるもの、疑似社会性とは、共同して保育を行うもの、半社会性とは、同世代の個体が共同で子を保育し、個を生む個体と育児のみを行う個体が集まったものである。真社会性のシロアリは、生殖階級、労働階級、兵隊階級とよばれる3つの階級に分かれ、それぞれの階級で分業を行う。昆虫の社会性とその発達段階を理解し、具体例を挙げて説明できる。
キーワード ① 視覚 ② 聴覚 ③ 嗅覚 ④ 触角 ⑤ 社会性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:昆虫の感覚には通常味覚、嗅覚(科学的感覚)、視覚、器械的感覚、聴覚、湿度感覚、温度感覚などが区別される。視覚器官には単眼と複眼がある。単眼は弱い光や光の変化を感知し、水平を保つのにも使われていると考えられている。複眼は多くの個眼からなる。一般に昆虫は紫外線に感応し、赤色など長波長の光には感じない。昆虫は頭部の正面あるいは側面に一対の触角をもつ。触角は、主に匂いや音、感触などの感覚器官で、エサの探索や種内の交信など、さまざまな機能をもっている。高度に組織化された集団をつくるアリ、シロアリ、ミツバチ、スズメバチは社会性昆虫と呼ばれている。これらは、繁殖分業、世代重視、共同育児という3つの特徴を備え、真社会性と呼ばれる。一方で、これら3つの特徴を一つももたないものを単独性と言う。単独性と社会性の間にはいくつものパターンがあり、亜社会性、共同巣性、疑似社会性、半社会性などがある。昆虫の視覚について、複眼、単眼それぞれの役割、昆虫の聴覚について、そして昆虫の社会性とその発達段階を理解し、具体例を挙げて説明できるように復習する。
11 昆虫と人間・環境との関わり―昆虫資源、昆虫の調査方法― 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第11回では、昆虫と人間・環境との関わりその1として、資源としての昆虫、そして採集技術など、昆虫の調査方法等について学ぶ。
【コマ主題細目①】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、153-167頁。
・斎藤哲夫・松本義明・平嶋義宏・久野英二・中島敏夫『新応用昆虫学 三訂版』、朝倉書店、1996年、234-239頁。
【コマ主題細目②】
・馬場金太郎・平嶋義宏『昆虫採集学』、1991年、九州大学出版会、227-426頁。
【コマ主題細目③】
・馬場金太郎・平嶋義宏『昆虫採集学』、1991年、九州大学出版会、527-573頁。
コマ主題細目 ① 昆虫資源としての利用 ② 昆虫の採集技術 ③ 昆虫標本の作製技術
細目レベル ① 古くから、昆虫は資源として人間に利用されてきた。例えば、絹糸を得るために古来からカイコという蛾の仲間が飼育され、養蚕が行われて来た。また、作物の花粉媒介の為にミツバチ類などが利用されてきた。ミツバチ類は作物の受粉のためだけでなく、ハチミツを得るためにも飼育される。また、染色に用いられるコチニールは、サボテンにつくコチニールカイガラムシを用いたものである。そのほか、昆虫は、イナゴや蜂の子(ハチの幼虫)が国内でも古くから食料とされてきた。海外ではタガメなどが食用とされている。また、セミなどに担子菌類が寄生してできる冬虫夏草は漢方薬として利用されている。昆虫など生物を真似た新素材を人工的につくることをバイオミメティクスと呼ぶ。例えば、中南米に生息するモルフォチョウの構造色から着想を得た繊維が開発され、商品化されている。資源としての昆虫と、人間との関わりを、具体例を挙げて説明できる。
② 昆虫の採集方法には様々な方法がある。見つけ捕り法とは、肉眼で見付けた昆虫を採集する方法である。ビーティング法とは、網を受けた上で、棒などで昆虫が潜んでいる枯れ枝などを叩く方法である。土壌動物(昆虫含む)を採集する方法は、落葉落枝をふるいにかけ、残りをツルグレン装置やウィンクラー装置にかけ昆虫等を抽出する方法である。そのほか、トラップを用いて昆虫をおびき寄せて採集する方法もある。ライトトラップとは、光源におびき寄せた昆虫を採集する方法である。マレーズトラップとは、飛翔中の昆虫を採集する方法である。FITとは、衝突版を用いて、受け皿に落ちた昆虫を採集する方法である。また、バナナやパイナップルを用いて昆虫をおびき寄せるベイトトラップもある。昆虫の採集技術を習得することは、昆虫の調査研究には欠かせない。昆虫を採集する主な方法や機材について、その名称と仕組み等を説明できる。
③ 標本の作製方法には、大きく乾燥標本と液浸標本がある。基本的には、陸上の生物は乾燥標本にして、水中の生物は液浸標本にする。また、乾燥標本については、標本にする種類やサイズによって方法は異なる。例えば、コウチュウの仲間は台紙に貼るか直接昆虫針で刺す。トンボは腹部に芯を通したのちに乾燥させ、チョウは展翅する。このほかにもいろいろな方法がある。このように採集後に処理を施し標本にすることにより、長期間保存でき、研究等に使用することが出来る。また、標本を作製する際には、添付するラベルは重要である。①採集場所、②採集年月日、そして③採集者の3つは必ず記載する必要がある。その他、緯度経度、採集状況(何と言う種類の花から採集したか、どのトラップを用いて採集したか等)もラベル中に記載しておくと、なお良い。ラベルというデータを付与することにより、後々まで学術的に利用される標本となりうる。昆虫標本の作製方法や、標本ラベルの重要性を理解し、説明できる。
キーワード ① 昆虫資源 ② バイオミメティクス ③ 昆虫の採集技術 ④ 昆虫の標本作成技術 ⑤ 標本のラベル
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:例えば、絹糸を得るために古来からカイコという蛾の仲間が飼育され、養蚕が行われて来た。また、作物の花粉媒介の為にミツバチ類などが利用されてきた。ミツバチ類は作物の受粉のためだけでなく、ハチミツを得るためにも飼育される。また、染色に用いられるコチニールは、サボテンにつくコチニールカイガラムシを用いたものである。そのほか、昆虫は、イナゴや蜂の子(ハチの幼虫)が国内でも古くから食料とされてきた。昆虫など生物を真似た新素材を人工的につくることをバイオミメティクスと呼ぶ。例えば、中南米に生息するモルフォチョウの構造色から着想を得た繊維が開発され、商品化されている。資源として利用されている昆虫の例でどのようなものがあるか、復習すること。その他、昆虫採集の技術にはどのようなものがあるのか、そして標本の作製方法とラベルの重要性について復習すること。
12 昆虫と人間・環境との関わり―害虫・天敵・指標生物― 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第12回では、昆虫と人間・環境との関わりその2として、害虫や天敵、そして指標生物等について学ぶ。
【コマ主題細目①】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、160-167頁。
・中筋房夫・大林延夫・藤家 梓『害虫防除』、朝倉書店、1997年、71-84頁。
・斎藤哲夫・松本義明・平嶋義宏・久野英二・中島敏夫『新応用昆虫学 三訂版』、朝倉書店、1996年、183-234頁。
【コマ主題細目②】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、155-160頁。
・中筋房夫・大林延夫・藤家 梓『害虫防除』、朝倉書店、1997年、123-136頁。
・斎藤哲夫・松本義明・平嶋義宏・久野英二・中島敏夫『新応用昆虫学 三訂版』、朝倉書店、1996年、162-178頁。
【コマ主題細目③】
・津田松苗・森下郁子『生物による水質調査法』、山海堂、1974年、94-103頁。
・森下郁子『指標生物学 生物モニタリングの考え方[普及版]』、山海堂、1986年、102-103頁。
・環境省『水生生物による水質評価法マニュアル-日本版平均スコア法-』、https://www.env.go.jp/water/mizukankyo/hyokahomanual.pdf、2017年、1-30頁。
・環境省『河川生物の絵解き検索』、https://www.env.go.jp/press/files/jp/106083.pdf、2017年、1-31頁。
コマ主題細目 ① 農業害虫 ② 天敵利用 ③ 指標生物
細目レベル ① 人間との関わりとして、害虫として知られている昆虫も存在する。イネの害虫として、茎内部を食害するニカメイガ、サンカメイガ、茎から吸汁し枯死させるトビイロウンカなど、大豆やマメ類には、葉を食害するヒメコガネ、果樹害虫として、果実などから吸汁するカイガラムシ類、果実に寄生するミバエ類、などが知られる。森林害虫として知られる昆虫には、キクイムシ類やカミキリムシ類が知られる。マツノマダラカミキリに食害されたアカマツは、強制しているマツノザイセンチュウにより枯死する。衛生害虫には、蚊はメスが人間から吸血することにより、マラリア、デング熱、脳炎などが媒介される。ノミ類やシラミ類は、人間にも寄生し吸血する。害虫としてどのような事例があるか説明できる。
② 農業害虫となる昆虫がいる一方で、益虫として知られる昆虫も存在する。農業分野では、天敵を用いた生物学的防除法が知られる。天敵に悪影響を与える化学合成農薬の使用を削減し、できるだけ天敵などの自然の力を利用しつつ、色々な病害虫防除法を駆使する病害虫防除技術体系を、総合的害虫管理IPMという。天敵を用いた生物学的防除の例として、柑橘の害虫であるイセリアカイガラムシに対するベダリアテントウ、同じく柑橘の害虫であるヤノネカイガラムシに対するヤノネキイロコバチとヤノネツヤコバチ、クリの害虫であるクリタマバチに対するチュウゴクオナガコバチの例などが挙げられる。益虫として天敵を利用した防除法にどのようなものがあるか説明できる。
③ 昆虫をはじめとした動物を、環境を測る指標として用いることを生物指標という。水生昆虫を用いた生物学的水質判定法には、いくつかの方法がある。Beck-Tsuda法のうち、α法とは、定量的調査法であり、川の瀬の石れき底で、50X50cmの枠(コドラート)を設置してその範囲内の肉眼的動物をすべて採取し、全部の種類を同定、その後、汚れに弱い種(A)と、強い種(B)に分け、2A+Bとして数値を計算するものである。それを2回繰り返して、数値の大きい方の値をとる。Beck-Tsuda法のうち、β法とは、定性的調査法であり、コドラートを設置せず、場所も瀬に限定せずに、3~4人で30分程度、その地点における種類を出来る限り網羅するような調査法である。Beck-Tsuda法は、調査で得られた水生動物を全種類同定して判定するために、高度な同定技術が必要となる。その他、環境省が行っている全国水生生物調査もある。これは、29種の生物が指標生物として選ばれ、生き物の種類と数から、川の水の汚れの程度を4段階で評価するものである。この全国水生生物調査を更に検討したものが日本版平均スコア法であり、環境省により2017年より用いられている。これは、1976年にイギリスの環境省で開発されたBMWP(Biological Monitoring Working Party)スコア法をもとに、我が国の生物相の特徴に合わせて、改訂された方法である。水生生物を採集し、基本的に科レベルまで同定、出現した科に設定されたスコアを合計して総スコアを算出し、総スコアを出現科数で割り、平均スコアを求め、水環境を平均スコアと総スコアで評価するものである。Beck-Tsuda法、そして日本版平均スコア法の具体的な調査や評価方法について説明できる。
キーワード ① 害虫 ② 益虫 ③ 生物学的防除 ④ 生物指標 ⑤ 日本版平均スコア法
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:害虫として知られている昆虫として、イネの害虫としては、茎内部を食害するニカメイガ、サンカメイガ、茎から吸汁し枯死させるトビイロウンカなどが知られる。農業害虫となる昆虫がいる一方で、柑橘の害虫であるイセリアカイガラムシに対するベダリアテントウなど、益虫として知られる昆虫も存在する。農業害虫として、そして天敵として利用されている昆虫について、具体例を挙げながら理解し復習しておく。また昆虫は、環境を測る生物指標としても用いられる。水生生物を用いて水環境を評価する方法には、Beck-Tsuda法、そして日本版平均スコア法などがある。水質を、指標となる生物を用いて評価する方法について、具体例を挙げながら理解し復習しておくこと。
13 昆虫と人間・環境との関わり―外来種― 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第13回では、昆虫と人間・環境との関わりその3として、外来種等について学ぶ。
【コマ主題細目①】
・環境省『日本の外来種対策』、2019年、https://www.env.go.jp/nature/intro/index.html。日本生態学会編『外来種ハンドブック』、地人書館、2002年、3-35頁。
【コマ主題細目②】
・環境省『日本の外来種対策』、2019年、https://www.env.go.jp/nature/intro/index.html
【コマ主題細目③】
・愛知県『あいちの外来種 移入種対策ハンドブック』、https://www.pref.aichi.jp/kankyo/sizen-ka/shizen/gairai/
【コマ主題細目④】
・北海道『北海道の外来生物リスト-北海道ブルーリスト2004-』、http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/grp/01/bluelist2004.pdf。愛知県『愛知県移入種対策ハンドブック ブルーデータブックあいち2012』、https://www.pref.aichi.jp/kankyo/sizen-ka/shizen/gairai/handbook/
コマ主題細目 ① 外来種とは ② 外来種が引き起こす問題点 ③ 特定外来生物とは ④ 外来種に係る法令について
細目レベル ① 外来種とは、主に明治元年以降に侵入した生物が対象となり、過去あるいは現在の自然分布域外に導入された種、亜種、それ以下の分類群であり、生存し、繁殖することができるあらゆる器官、配偶子、種子、卵、無性的繁殖子を含む。また、外来種はその起源によって、国外外来種と国内外来種に分けられる。国外外来種の例として、ブラックバス、ブルーギル、アライグマ、ミシシッピアカミミガメ等が挙げられる。昆虫では、ヒアリ、アリモドキゾウムシ、ブタクサハムシなどが挙げられる。一方、国内由外来種として、昆虫では、ホタル、北海道に持ち込まれたカブトムシ、などが挙げられる。外来種について、国内由来の外来種、国外由来の外来種があること、それに含まれる種類や、昆虫にも外来種にはどのような種類がいるのかを理解し、説明できる。
② 外来種が引き起こす問題としては、”生態系への影響”、”人の生命・身体への影響”、”農林水産業への影響”等が挙げられる。生態系への影響としては、その地域の中で長い歴史をもって形成された生態系は、食う・食われるの食物連鎖のバランスの上に成り立っている。こういった環境に、他の地域に由来をもつ生物が人為的に侵入すると、在来種が食べられる、といった捕食が起きたり、在来種との生息環境の競合、そして近縁な在来種との間に交雑種が生まれるという遺伝的攪乱等が生じる。人の生命・身体への影響としては、カミツキガメやワニガメに噛まれたり、ヒアリやセアカゴケグモに刺されること等が想定される。農林水産業への影響としては、アライグマによる農林被害、クビアカツヤカミキリによるサクラやモモへの被害等が挙げられる。
③ 特定外来生物とは、外来生物(海外起源の外来種)であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすおそれがあるものの中から指定される。アライグマ、セアカゴケグモ、カミツキガメ、ブルーギル、オオクチバス、ヒアリ、ウシガエル、オオキンケイギク、オオフサモなどが挙げられる。昆虫に関しては、ヒアリ、アカカミアリ、クビアカツヤカミキリ、ツマアカスズメバチ等が挙げられる。この中でヒアリは、南米原産のアリの仲間である。体長は2-6mm程度だが、攻撃性が強く、刺されると激しい痛みを伴う。また、農作物や環境への被害も甚大であり、本種が移入・定着したアメリカでは年間5,000億円もの経済損失を被っていると試算されている。このような特定外来生物を許可なく輸入、販売、飼育、運搬等を行った場合には重い罰則が科せられる。等特定外来生物とはどのような種類が含まれ、どのような問題を引き起こしているかを理解する。
④ 外来種に係る法律等として、外来生物法(正式名称「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」)などがある。その他、北海道では「北海道の外来生物リスト ブルーリスト」が2004年に、都道府県としては初めて策定された。愛知県においても「愛知県移入種対策ハンドブック ブルーデータブックあいち2012」が作成され、特に自然環境などへの影響があり、対策の必要性が高い移入種の解説や、愛知県内で確認されている外来種のリスト等が公表されている。昆虫類では、アルゼンチンアリ、タイワンタケクマバチ、ムネアカハラビロカマキリ、クビアカツヤカミキリ等が挙げられている。特定外来生物ほか外来生物が、どのような法律などにより規制されているか、また国や都道府県の取り組みについて具体例を挙げて説明できる。
キーワード ① 国内外来種 ② 国外外来種 ③ 特定外来生物 ④ 外来生物法 ⑤ ブルーリスト
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:外来種とは、主に明治元年以降に侵入した生物が対象となり、過去あるいは現在の自然分布域外に導入された種、亜種、それ以下の分類群であり、生存し、繁殖することができるあらゆる器官、配偶子、種子、卵、無性的繁殖子を含む。また、外来種はその起源によって、国外外来種と国内外来種に分けられる。外来種が引き起こす問題としては、”生態系への影響”、”人の生命・身体への影響”、”農林水産業への影響”等が挙げられる。特定外来生物とは、外来生物(海外起源の外来種)であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすおそれがあるものの中から指定される。外来生物には、国外外来種と国内外来種があること、そして外来種が引き起こす問題について復習すること。また、特定外来生物にはどのような種類の昆虫がいるか、そしてどのような法令により規制されているか復習すること。
14 昆虫と人間・環境との関わり―保護・保全― 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第14回では、昆虫と人間・環境との関わりその4として、昆虫の保護・保全等について学ぶ。
【コマ主題細目①】
・日本自然保護協会『自然観察からはじまる自然保護~生物多様性の保全をめざして~』、日本自然保護協会、15-19頁。
【コマ主題細目②】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、175-186頁。久松定智・近藤茂孝・小沢潤『愛媛県特定希少野生動植物ハッチョウトンボの季節的消長と保護活動の取り組みについて』、愛媛県立衛生環境研究所年報、2017年、10-16頁。
【コマ主題細目③】
・平嶋義宏・広渡俊哉編著『教養のための昆虫学』、東海大学出版部、175-186頁。馬場金太郎・平嶋義宏『昆虫採集学』、1991年、九州大学出版会、133-225頁。
【コマ主題細目④】
・愛知県環境部自然環境課『レッドデータブックあいち2009』、2009年、https://www.pref.aichi.jp/kankyo/sizen-ka/shizen/yasei/rdb/dl_rdb.html。愛知県環境部自然環境課『「レッドリストあいち 2015』、2015年、https://www.pref.aichi.jp/kankyo/sizen-ka/shizen/yasei/redlist/。
コマ主題細目 ① 自然保護の三つのタイプ ② 昆虫の保護・保全 ③ 保護・保全の為の条例等 ④ レッドリスト・レッドデータブックについて
細目レベル ① ”自然保護”というと、自然を手つかずのまま守ることだと思っている人も多いであろう。自然保護には様々なタイプがある。まず大きく三つのタイプ(P型、C型、R型)に分類して、自然保護の概念を整理する。まずP型の自然保護(Preservation, Protection)とは、手を付けずに守る、外からの圧力から自然を守るという考え方であり、保存・保護と訳される。原生自然や絶滅危惧種などの多くは、このような保護の仕方が必要となる。次にC型の自然保護(Conservation)とは、人の営みも生態系の一部として含めたうえで自然が保たれるという考え方であり、保全と訳される。里山管理などがその例であろう。そしてR型の自然保護(Restoration, Rehabilitation, Recovery)とは、都市化や開発によって一度失われたり劣化したりした自然環境を取り戻すという考え方であり、復元あるいは回復と呼ぶ。自然保護の三つのタイプを理解し、その事例を理解する。
② C型の自然保護とは、人間のために自然を保全すること(≒手を加える)であり、一方の保存・保護preservationとは、自然のために自然を守ること(≒手を加えない)とも言えるであろう。この中で昆虫の保全活動の事例として、愛媛県でのハッチョウトンボの事例を紹介する。ハッチョウトンボとは、全国35都府県で絶滅危惧種に指定されている、日本最小のトンボの一種である。愛媛県においてハッチョウトンボは、絶滅危惧I類に指定されている他、2009年に特定希少野生動植物に指定され、条例で守られている。2011年に保護管理事業計画が策定され、同計画にもとづき、庄内ハッチョウトンボ保存会のメンバーにより、生息地である保護区湿地の維持管理などが行われている。その他、昆虫の保護・保全についての事例とその取り組みについて理解し、説明できる。
③ 昆虫など生物を保全する為の法律等として、”種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)”、”文化財保護法”、などが挙げられる。その他、各都道府県別の条例等により採集等が禁じられている場合がある。愛知県岡崎市では、山中八幡宮のヒメハルゼミ生息地が岡崎市指定文化財(天然記念物)に指定されている。県外においても、例えば、愛媛県においては、愛媛県特定希少野生動植物として、カスミサンショウウオ(現アキサンショウウオ)、ナゴヤダルマガエル、ハッチョウトンボ、ミズスギナ、トキワバイカツツジ等、23種(2020年1月現在)の動物・植物が指定されており、これらの採集等が原則禁止されている(罰則あり)。昆虫の保全・保護について、関連法律にどのようなものがあるか、理解する。
④ レッドリストとは絶滅のおそれのある野生生物の種のリストのことである。一方で、レッドデータブックとは、レッドリスト等に基づき、生息状況等をとりまとめた書物のことである。レッドリストでは、絶滅の危険性の高さによるカテゴリー分けがなされている。レッドリストとは、1966年に、国際的な自然保護団体である国際自然保護連合(IUCN)によって作成されたのが始まりである。その後、同様のリストが各国で独自に作成された。国版は環境省ほかにより、地方版は地方自治体(主に都道府県)などにより作成されている。愛知県版レッドリスト(動物)による区分では、絶滅の危険性の高いものから順に、絶滅(EX)、絶滅危惧I類(CR+EN)、絶滅危惧II類(VU)、準絶滅危惧(NT)、情報不足(DD)とされている。レッドリストとレッドデータブックという用語と、その内容について理解する。
キーワード ① 保護・保全 ② 種の保存法 ③ 文化財保護法 ④ レッドリスト ⑤ レッドデータブック
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:愛媛県におけるハッチョウトンボの保全など、授業で紹介した昆虫の保護・保全の事例について理解し、具体例を復習する。種の保存法、文化財保護法など、昆虫など生物を保全する為の法律等について、どのようなものがあるか復習する。レッドデータブックとレッドリストの違いについて理解する。レッドリストでは絶滅の危険性の高いものから順に、絶滅(EX)、絶滅危惧I類(CR+EN)、絶危惧II類(VU)、準絶滅危惧(NT)、情報不足(DD)とカテゴリー分けされている。カテゴリーの他、環境省版の他、愛知県版もあることやその内容について復習すること。人間との関わりの中での昆虫の保護・保全について具体的事例を復習する。
15 まとめ② 科目の中での位置付け 昆虫は、地球上でもっとも種類が多く多様性に富む生物であり、環境や私たちの生活にも深い関わりをもっている。本科目では、生物多様性を認識する学問である分類学について学ぶとともに、昆虫の、外部形態、内部形態、生理、生態、目ごとの特徴など、昆虫学の基礎をはじめ、昆虫と人間や環境との関わりについて学ぶ。第1回目は導入として、昆虫の定義やグループなど、科目全体の概要を示す。第2回は分類学や学名について、第3~5回では昆虫の起源と進化として、種の定義について、種分化のメカニズムについて、目(もく)ごとの形態・生態的特徴などを学ぶ。第7~10回目は、昆虫の形態と生理として、昆虫の外部形態・内部形態について、擬態やコミュニケーションの方法、視覚、嗅覚等の感覚について学ぶ。第11~14回は昆虫と人間・環境との関わりとして、養蚕など資源としての昆虫、そして採集技術など昆虫の調査方法について学ぶほか、害虫や環境指標生物としての昆虫、そして保護・保全の実際について学ぶ。上のような科目全体の中で、第15回では、まとめその2として、第7~14回までの内容について、復習を行う。
【コマ主題細目①~⑤】
・第7~14回までの教材を使用。
コマ主題細目 ① 昆虫の外部・内部形態 ② 昆虫の共生 ③ 昆虫資源と昆虫の調査方法 ④ 外来種 ⑤ 昆虫の保護・保全
細目レベル ① 昆虫とは外骨格であり、体の外側が固い殻で覆われ、これに筋肉が付着している。昆虫の基本的な体の構造は、外見的には頭部、胸部、腹部に分かれ、頭部に1対の触角を、胸部に2対の翅と3対の脚を持つ。頭部は感覚を、胸部は運動を、腹部は生殖をつかさどる部分と言える。頭部には、感覚器官として脳、複眼、単眼、触角などを具える。胸部は、前胸・中胸・後胸に分かれ、それぞれに前脚・中脚・後脚がある。また、前翅が中胸に、後翅は後胸についている。腹部は生殖をつかさどる部分として、雌雄それぞれの生殖器官があるほか、神経系、気管系、消化器官の一部である腸などが納められている。昆虫の基本的な体の構造や各部の名称とその機能について理解し説明できる。昆虫の内部形態として、体の中央を消化管、腹側に神経(中枢神経索)、背側に心臓にあたる背脈管が通っている。その他、呼吸に関わる気管が体内に広がっている。消化系は口腔~肛門に至る連続した管状の気管であり、消化管は大きく分けて前腸、中腸、後腸からなる。神経は、体の腹面中央を能からつながる一対の神経索と、それと連結している一対の神経節が前後に伸びる、はしご状神経系である。神経系は、中枢神経系、末梢神経系、内臓神経系に大別される。循環系は血管をもたない開放血管系であり、体液が体の内部に満たされている。体液の循環は、体の背面中央を通る背脈管によって行われる。昆虫の変態には、卵からふ化してから、成長過程で形態が殆ど変化せず、脱皮によって大きさだけが変化する無変態、蛹の時期がなく、卵→ 若虫(幼虫)→ 成虫と成長する不完全変態、そして明瞭な蛹の時期があり、卵→ 幼虫→ 蛹→ 成虫と移行する完全変態とに分けられる。昆虫の消化系、神経系、そして循環器系について理解し説明できる。
② 共生とは、異種の生物が行動的、生理的結びつきをもちながら、一所に生活する状態のことである。その中で、相利共生とは、双方が利益を伴う共生である。片利共生とは、片側だけが利益を受ける共生である。一方で、寄生とは、異種の生物が一所に生活する時、片方が害を被る状態のことである。寄生はさらに、内部寄生と外部寄生とに分けられる。擬態とは、捕食者から回避するための適応である。擬態の種類には、隠蔽的擬態と標識的擬態がある。昆虫のコミュニケーションの方法には様々なものがある。同種間情報物質のフェロモン、性フェロモン、集合フェロモンなどがある。その他、発音等もコミュニケーション手段として用いられる。キリギリス類(バッタ目)は、特に鳴き声により交信する。コオロギ、スズムシのほか、クツワムシも鳴く昆虫として有名である。昆虫の共生、寄生、擬態について、また、フェロモンなどのコミュニケーションの方法について理解し、説明できる。
③ 昆虫は古くから資源として、人間に利用されてきた。例えば、古来から、絹糸を得るためにカイコという蛾の仲間が飼育され、養蚕が行われてきた。また、作物の花粉媒介の為にミツバチ類などが利用されてきた。ミツバチ類は作物の受粉のためだけでなく、ハチミツを得るためにも飼育される。昆虫を研究する上で、採集技術を習得することや標本作成技術を身につけることは欠かせない。例えば、見つけ捕り法とは、肉眼で見付けた昆虫を採集する方法であり、ビーティング法とは、網を受けた上で、棒などで昆虫が潜んでいる枯れ枝などを叩く方法である。土壌動物(昆虫含む)を採集する方法は、落葉落枝をふるいにかけ、残りをツルグレン装置やウィンクラー装置にかけ昆虫等を抽出する。そのほか、トラップを用いて昆虫をおびき寄せて採集する方法もある。標本の作製方法には、大きく乾燥標本と液浸標本がある。基本的には、陸上の生物は乾燥標本にして、水中の生物は液浸標本にする。また、乾燥標本については、標本にする種類やサイズによって方法は異なる。例えば、コウチュウの仲間は台紙に貼るか直接昆虫針で刺す等。資源としてどのように用いられてきたか、また、昆虫の調査手法について、具体例を挙げて説明できる。
④ 外来種とは、主に明治元年以降に侵入した生物が対象となり、過去あるいは現在の自然分布域外に導入された種、亜種、それ以下の分類群であり、生存し、繁殖することができるあらゆる器官、配偶子、種子、卵、無性的繁殖子を含む。また、外来種はその起源によって、国外外来種と国内外来種に分けられる。外来種が引き起こす問題としては、”生態系への影響”、”人の生命・身体への影響”、”農林水産業への影響”等が挙げられる。外来生物の中でも特定外来生物とは、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすおそれがあるものの中から指定される。アライグマ、セアカゴケグモ、カミツキガメ、ブルーギル、オオクチバス、ヒアリ、ウシガエル、オオキンケイギク、オオフサモなどが挙げられる。昆虫に関しては、ヒアリ、アカカミアリ、クビアカツヤカミキリ、ツマアカスズメバチ等が挙げられる。外来種として人間や環境に影響を与えている昆虫等について、具体的にどのようなものがいるか、また、その影響について説明できる。
⑤ 愛媛県においてハッチョウトンボは、絶滅危惧I類に指定されている他、2009年に特定希少野生動植物に指定され、条例で保護されている。2011年に保護管理事業計画が策定され、同計画にもとづき、庄内ハッチョウトンボ保存会のメンバーにより、生息地である保護区湿地の維持管理などが行われている。昆虫など生物を保全する為の法律等として、種の保存法、文化財保護法などが挙げられる。その他、各都道府県別の条例等により採集等が禁じられている場合がある。レッドリストとは絶滅のおそれのある野生生物の種のリストのことである。一方で、レッドデータブックとは、レッドリスト等に基づき、生息状況等をとりまとめた書物のことである。レッドリストでは、絶滅の危険性の高さによるカテゴリー分けがなされている。愛知県版レッドリスト(動物)による区分では、絶滅の危険性の高いものから順に、絶滅(EX)、絶滅危惧I類(CR+EN)、絶滅危惧II類(VU)、準絶滅危惧(NT)、情報不足(DD)とされている。昆虫の保護・保全について実例を挙げて説明できる。また、レッドリストやレッドデータブックについて理解し説明できる。
キーワード ① 昆虫の外部・内部形態 ② 昆虫の生理 ③ 昆虫資源 ④ 外来種 ⑤ 保護・保全
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:改めて第7回から第14回までの内容の復習を行うと同時に、まとめの回に確認をした事項を中心として、全15回の総復習を行うこと。昆虫の外部形態について、昆虫とは外骨格であり、体の外側が固い殻で覆われ、これに筋肉が付着している。外見的には頭部、胸部、腹部に分かれ、頭部に1対の触角を、胸部に2対の翅と3対の脚を持つ。昆虫の定義となる基本的な体の構造について復習する。共生とは、異種の生物が行動的、生理的結びつきをもちながら、一所に生活する状態のことである。その中で、相利共生とは、双方が利益を伴う共生である。片利共生とは、片側だけが利益を受ける共生である。一方で、寄生とは、異種の生物が一所に生活する時、片方が害を被る状態のことである。昆虫の共生、寄生について復習する。昆虫は古くから資源として、人間に利用されてきた。例えば、古来から、絹糸を得るためにカイコという蛾の仲間が飼育され、養蚕が行われてきた。資源としての昆虫について復習する。外来種とは、主に明治元年以降に侵入した生物が対象となり、昆虫に関しては、ヒアリ、クビアカツヤカミキリなど多数のものが含まれる。どのような種類が外来種として知られているか、復習する。レッドリストとは絶滅のおそれのある野生生物の種のリストのことである。一方で、レッドデータブックとは、レッドリスト等に基づき、生息状況等をとりまとめた書物のことである。昆虫の保護・保全について、具体的事例を理解しながら復習すること。
履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
分類階級と学名 分類学とは、生物多様性を認識する手段でもあり、自然の法則を解明するため、生物多様性の解明のため、進化学の材料として、また我々の知識の体系化のために必要である。昆虫を含む動物の分類階級について、どのようなものがあるか理解し、説明できるようになること。また、学名の標記方法について理解し、説明できるようになること。動物の学名や命名法は、何により規定されており、その目的は何であるか理解する。また、タイプ標本の概念と、具体的にはどのような種類があるか、説明できること。 分類階級、学名、二名式、タイプ標本 10 1, 2, 6, 15
種の定義と種分化 種の定義は現在までに多数のものが提唱されているが、その中で最も汎用性があり有名なものはMayr(1942)による定義である。その概念について、説明できるようにしておくこと。種分化が起きるメカニズムについて、どのようなものがあり、どういう過程を経て種分化が起きるかを説明できるようにしておくこと。またその具体例について、講義の中で説明した昆虫の例を挙げて、少なくとも一つの例を挙げて説明できるようにしておくこと。 種の定義、異所的種分化、非異所的種分化 10 3, 6, 15
昆虫の定義と含まれる目 昆虫とは地球上の様々な環境に適応して繁栄してきた生物である。昆虫とは何か、それを基本的な外部形態にもとづき、定義づけて説明できるようにしておくこと。昆虫類の目について、どのようなものが存在するか、またその形態や生息している場所などの生態的特性について、また、人間の資源として用いられているグループが含まれていたり、外来種などとして知られる種類が含まれることもあるが、これらを踏まえて、少なくとも5つの目については、これらを具体的に説明することができるようにしておくこと。 昆虫の目、形態、生態 30 4, 5, 6, 15
昆虫の外部形態・内部形態 昆虫の外部形態について、頭部、胸部、腹部それぞれについての各部名称や、その役割等について説明できるようにしておくこと。昆虫の内部形態について、消化系、神経系、循環器系それぞれについてどのような構造になっているか30字程度で説明できるようにしておくこと。昆虫の変態の種類について、どのような種類があり、それぞれどのようなものか説明できること。またそれぞれの変態のタイプに、どのような昆虫の目が含まれるか、少なくとも一つの目を挙げることができるようにしておくこと。 外部形態、内部形態、変態 20 7, 8, 15
昆虫と人間・環境との関わり 人間は古くから昆虫を資源として用いてきた。その用いられてきた昆虫にはどのようなものがあるか、どのように用いられてきたか、具体例を少なくとも一つは挙げて説明できること。また、農業上の害虫や益虫についてどのようなものがあるか、具体的な種類をそれぞれ、少なくとも一つは例を挙げて説明できるようにしておくこと。昆虫をはじめとした動物を、環境を測る指標として用いることを生物指標というが、その具体的な調査手法についてどのようなものがあり、その内容について説明できること。 昆虫資源、農業害虫、生物指標 10 11, 12, 13, 15
昆虫の保護・保全 昆虫の保護・保全について、具体的にどのような事例があるか具体的事例を少なくとも一つ上げて説明できるようになること。昆虫を保護・保全するためにはどのような条例があるのか、少なくとも一つは名称を挙げることができること。レッドデータブック、レッドリストとはどのようなものなのか、また、それぞれの違いについて説明できるようにしておくこと。また、愛知県版レッドリストのランク(カテゴリー)について、すべてのランクの名称を挙げることができるようにしておくこと。 保護、保全、レッドデータブック、レッドリスト、カテゴリー 20 14, 15
評価方法 試験(100%)により評価する。 *成績発表後、教務課にて試験・レポートに関する総評が閲覧できます。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 なし。
参考文献 馬場金太郎・平嶋義宏(1991)『昆虫採集学』,九州大学出版会,6,500+税.藤田敏彦(著)太田次郎・赤坂甲治・浅島誠・長田敏行(編集)(2010)『動物の系統分類と進化』,裳華房,2,500円+税.平嶋義宏・広渡俊哉(編著)(2017)『教養のための昆虫学』,東海大学出版部,3,000円+税.平嶋義宏・森本桂・多田内修(1989)『昆虫分類学』,川島書店,9,515+税.動物命名法国際審議会(2000)『国際動物命名規約 第4版 日本語版』,日本動物分類学関連学会連合,3,000円+税.石川良輔(1996)『昆虫の誕生』,中公新書,700円+税.岩槻邦男・馬渡峻輔(1996)『生物の種多様性』,裳華房,4,200円+税.岩槻邦男・馬渡峻輔・石川良輔(2008)『節足動物の多様性と系統』,裳華房,6,300+税.馬渡峻輔(1994)『動物分類学の論理』,東京大学出版会,3,300円+税.三中信宏(2006)『系統樹思考の世界』,講談社現代新書,780円+税.三中信宏(2009)『分類思考の世界』,講談社現代新書,800円+税.中筋房夫・大林延夫・藤家 梓(1997)『害虫防除』,朝倉書店,3,800+税.岡西政典(2020)『新種の発見 見つけ、名づけ、系統づける動物分類学』,中公新書,860円+税.大久保憲秀(2006)『動物学名の仕組み』,伊藤印刷出版部,2,858円+税.斎藤哲夫・松本義明・平嶋義宏・久野英二・中島敏夫(1996)『新応用昆虫学 三訂版』,朝倉書店,4,900+税.佐々治寛之『動物分類学入門』,東京大学出版会,1,400+税.E.O.ワイリー(著)宮正樹・西田周平・沖山宗雄(共訳)『系統分類学 分岐分類の理論と実際』,文一総合出版,7,767円+税.E.O.ワイリー・D.シーゲル-カウジー・D.R.ブルックス・V.A.ファンク(著)宮正樹(訳)(1992)『系統分類学入門 分岐分類の基礎と応用』,文一総合出版,2,428円+税.ジュディス・E・ウィンストン(著)(2008)馬渡峻輔・柁原宏(訳)『種を記載する』,新井書院,7,800円+税.吉村仁(著)・石森愛彦(絵)(2005)『素数ゼミの謎』,文芸春秋,1,429円+税.吉村仁(2008)『17年と13年だけ大発生?素数ゼミの秘密に迫る』,サイエンス・アイ新書,952円+税.
実験・実習・教材費 なし。