区分 (環)環境データサイエンス科目 社会環境科目 社会環境基本科目 (生)環境データサイエンス科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
専門性 理解力 実践力
カリキュラム・ポリシーとの関係
専門知識 教養知識 思考力
実行力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
環境データサイエンス科目に位置づけ、経済学の基礎的な知識を身につける。
科目の目的
経済全体のお金の流れについて(そもそもお金とは何か、何のためにあるか、利便性だけでなくそれが持つ負の側面なども含めて)また、資本主義とはどんなしくみであり、それが食や環境にどのような影響を与えているのかについて理解する。また、お金が私たちの生産活動や消費活動になくてはならないものであることを理解すると同時に、お金が私たちの生活の実態(生産活動や消費活動、そして経済以外の活動)から離れて株式市場をはじめとする金融市場の場で暴走し、むしろ逆に私たちの生活の実態(生産活動や消費活動、そして経済以外の活動)を脅かす危険性についても理解する。  
到達目標
家計、企業、金融機関、政府、日本銀行などの役割が説明できるようになる。価格や利子率、為替レートの役割やそれらの決まり方について説明できるようになる。金融危機や財政赤字問題などが発生するメカニズムについて説明できるようになる。資本主義がどんなしくみであり、それが食の問題や環境問題や格差の問題をどのように引き起こしているのかについて説明できるようになる。
科目の概要
現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。
科目のキーワード
お金(貨幣、通貨)、価格、物価、融資、社債、株式、 国債、日本銀行、 GDP、 バブル、金融危機、 財政赤字、資本主義、産業革命、フードレジーム、世界システム論、公共貨幣、信用創造
授業の展開方法
パワーポイント(スライド資料も紙で配付する)を用いながら講義を進める。上映するスライドはカラーであるが、配布する紙のスライド資料には色が付いておらず、またメモのスペースが取られているので、受講生は講義を聴きながら適宜鉛筆でメモを取ったりマーカーで印をつけたりする。毎回、理解度チェックのための演習問題を配布し、授業の中間や終わりに解き、その後解説をする。また、毎回、次回の予習のためのプリントを配布する。
オフィス・アワー
【火曜日】昼休み、【木曜日】3・4時限目、【金曜日】2時限目(後期のみ)、昼休み・3・4時限目
科目コード ENS602
学年・期 1年・後期
科目名 環境経済学入門
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 選択
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 なし
展開科目 環境エネルギー論、新時代の国際貿易と環境リスク、環境経済学史、地域経済、地球環境変動論
関連資格 なし
担当教員名 山根卓二
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 イントロダクション 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は、イントロダクションである。
細目レベル①
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、ⅲーⅶ

細目レベル②
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、2ー10

細目レベル③
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、11ー19
コマ主題細目 ① 人も自然も壊さない経済へ向けて ② 食と農の現実 ③ 資本主義 ④ ⑤
細目レベル ① 経済成長で全体としては社会が豊かになっているはずなのに、個別で見れば飢餓や貧困や失業で苦しんでいる人々もいて、自然環境も破壊されてきている。「私たちが生まれたときから当たり前だと思っている経済のしくみ(資本主義)に何か問題があるのではないか」、という問いからこの授業を始める。「経済成長」とは、GDP(国内総生産)が年々増加することをいう。GDPは1年間に1国内で生産された生産物の価値をお金で計ったものである。だから、「経済成長で社会が豊かになった」とは、お金で計ることのできる部分が年々増加しているということである。現在の資本主義はお金で計ることのできる部分を成長させることを目的とした経済のしくみである。その目的の達成のために人間の健康や自然環境が犠牲になっているといえる。私たちが生まれたときから当たり前だと思っているこの資本主義の歴史はせいぜい200~300年である。人間の健康や自然環境を守りつつ経済活動を続けるにはどうしたらよいのか。それを考えるためには、現代の資本主義の内容とその成立過程を知ることが必要である。
② 現在の農業の生産現場はのどかな風景であるとは限らない。広大な農地に農薬や化学肥料や遺伝子操作された種子、大きな機械が投入されて作物が生産されている。大量生産のために、作物は大豆やトウモロコシが単一栽培(モノカルチャー)されている。その穀物の多くは狭い空間に押し込められた鶏や豚や牛のエサとなる。農薬や化学肥料を製造したり農業機械を動かしたりするためには燃料として大量の石油が用いられている(二酸化炭素が大量に排出されている)。家畜に対しては大量の抗生物質が投与されるため、薬が効かない耐性菌が生まれる。「密」な空間に押し込まれた家畜に病気(鳥インフルエンザや豚コレラ)が発生すると大量の殺処分をせざるをえなくなる。また、このように大量生産された食料は一人一人に平等に分配されているわけではない。世界にはまだ飢餓に苦しむ人がいる一方で肥満や生活習慣病になる人もいる。以上の問題は食糧が商品となってしまったことと大きく関係している。
③ 現在では食料はお金で買って手に入れるのが普通であるが、このような生活様式は人類史上でいうと比較的新しいものである。かつては世界のほとんどの地域で大多数の人々は、自然に近い農村に住み、自給自足の生活を送っていた。また、労働とは、家族が使用するものを自分たちで作ることを意味していた。土地は、自分の土地か借りた土地か村が共同で所有する土地であった。ところが200~300年ほど前から、多くの人々が農村を離れて都市部の工場や商店で働き始めた。自分の土地も村の共有財産も失い、自力では生活の物資を作ることはできなくなった。代わりに、多くの人々は資本家の土地や工場で労働をして(賃労働)、稼いだお金で生活の物資を買うようになった。食べるものは、自分で栽培・飼育するものから企業が生産した商品へと代わった。自分で使うものを作るときには、空腹を満たす、寒さを防ぐ、などの「使用価値」が重要となる。それに対し、商品として作るときには、売ってなるべく多くの利潤を得ることが重要となる。農産物を原料とする製造業、さらには流通業、外食産業、商社や金融業など、農業に関わる様々な産業も発展してきた。この経済のしくみにおいては、人々の健康や自然環境が悪化することにより経済が成長することもある。例えば、人々が必要以上に食べたり、メタボになって医者に行ったり、トクホの食品を買ったり、食品ロスの処理事業が増えたりすることで経済が成長する。


キーワード ① 経済成長 ② GDP ③ 資本主義 ④ 使用価値 ⑤ 交換価値
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。「経済成長」とは、GDP(国内総生産)が年々増加することを意味すること。GDPは1年間に1国内で生産された生産物の価値をお金で計ったものであること。現在の資本主義はお金で計ることのできる部分を成長させることを目的とした経済のしくみであること。その目的の達成のために人間の健康や自然環境が犠牲になっているかもしれないこと。現代の農業では、広大な農地に農薬や化学肥料や遺伝子操作された種子、大きな機械が投入されて作物が生産されており、大量生産のために、作物は大豆やトウモロコシが単一栽培(モノカルチャー)されていること。農薬や化学肥料を製造したり農業機械を動かしたりするためには燃料として大量の石油が用いられていること。現在では食料はお金で買って手に入れるのが普通であるが、このような生活様式は人類史上でいうと比較的新しいものであること。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
2 お金の役割と価値 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は経済社会の血液の役割を果たすお金について学ぶ。まず、お金の三つの役割について知り、お金には現金通貨と預金通貨があることを理解する。
細目レベル①
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、16-19

細目レベル②
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、19-23

細目レベル③
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、25-30
コマ主題細目 ① お金が持つ三つの役割 ② 資産選択 ③ 現金と預金 ④ ⑤
細目レベル ① お金には、1.価値尺度としての役割2.交換手段としての役割3.価値保蔵機能としての役割、がある。価値尺度としての役割とは、お金が商品の価値を測るための目盛となることである。この世に物差しがなかったら家の大きさを冷蔵庫で測ったりしなければならないのと同じように、お金がなかったら、経済活動は不便である。交換手段としての役割とは、文字通りお金が経済活動で果たす交換手段の役割である。もしも家を買いたい人がその対価としてヤギを100頭差し上げると申し出たら断られるだろう。価値穂蔵機能としての役割も、文字通りの役割である。実は、お金とは実体のない記号であるので、記憶媒体さえしっかりしていれば永久に保存できる。
② 家計の金融資産の構成について学ぶ。価値を保存する方法にはさまざまなものがある。現金でそのまま保存する方法の他に、銀行に預金する、保険に加入する(第14回)、株式や債券などの金融商品を買う(第4回)などがある。これらは金融資産と呼ばれる。金融資産のどれをどれだけ保有するかの資産選択をする際にはさまざまな基準が考慮される。第一に、元本がどれだけ保証されているかである。例えば、預金は元本が保証されるが、その代り、もらえる金利が少ない(ローリスク・ローリターン)。株式は元本が保証されないが、その代りもらえる配当が多かったり少なかったりする(ハイリスク・ハイリターン)。また、現金にすぐ換えることができるか(流動性)、という基準も重要である。
③ お金は現金通貨と預金通貨から成り立っている。多くの人々は現金(紙幣や貨幣)だけがお金だと思っているが、そうではない。ほとんどの人が持っている銀行口座の数字はお金である。これを預金通貨と呼ぶ。お金とは簡単に言えば決済手段として使えるものであるが、例えば一般家庭は預金口座を用いて水道代やスマホの利用料を支払っている。企業の取引で行われる決済では家計よりもっと多額の決済が銀行口座を用いて行われている。お金の定義にもよるが、世の中に存在する90%以上のお金が預金通貨だと思って差し支えない。ちなみに、現在普及が進んでいる電子マネーやQRコード決済はお金と言うよりは、たとえて言うならば、食堂の食券みたいなものである。「チャージする」とは食券を現金通貨や預金通貨で買う行為と同じである。


キーワード ① 現金・預金 ② 株式・債券 ③ 流動性 ④ 所得・消費・税・社会保険料・貯蓄 ⑤ 可処分所得
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。お金には1.価値尺度としての役割2.交換手段としての役割3.価値保蔵機能としての役割、があること。実は、お金とは実体のない記号である、ということ。価値を保存する方法にはさまざまなものがある、ということ。現金でそのまま保存する方法の他に、銀行に預金する、保険に加入する、株式や債券などの金融商品を買うなどがあること。金融資産のどれをどれだけ保有するかの資産選択をする際には、元本の保証や流動性など、さまざまな基準が考慮されること。お金は現金通貨と預金通貨から成り立っている、ということ。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
3 金融と金利 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は金融と金利の役割について学ぶ。実体のないお金を、お金が余っている主体からお金の足りない主体へと融通することが金融であるが、金融を大きく二つに分けると間接金融と直接金融とに分かれる。今回は間接金融について学ぶ。

細目レベル①
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、44-45

細目レベル②
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、53-60

細目レベル③
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、46-47
コマ主題細目 ① 資金の融通 ② 金利の決まり方 ③ 金融の機能低下 ④ ⑤
細目レベル ① 金融とは資金の融通である。金融の有り難みについて理解する。もしも、この世に金融がなかったら、例えば、自分の家を持ちたいと思っている人はすぐに家を建てることができない。何十年も仕事を続けて節約してようやく家を買うことができるようになった頃には、すでに死期が迫っているかもしれない。また、事業で儲けるチャンスがあるのに十分なお金がない人は、金融がなければ事業を始めることすらできない。銀行は資金が余っている人々に預金をしてもらい、そのお金を資金が足りない人々に貸し出している(実は、どの大学の経済学部で学ばれているこの構図は正確に言うと間違っている。詳しくは2年次配当の科目『環境経済学Ⅰ』で学ぶが、現実の銀行は何もないところから預金通貨を作り出し、それを企業や家計に貸しているのである)。
② 昔は日本でも金利の水準が高かったが、現在のさまざまな金利は軒並み低水準である。なぜこのような違いが生じるのかを学ぶ。金利を決める要因はさまざまなものがあるが、基本的には、普通の商品の価格と同様に、(資金)需要と(資金)供給のバランスによって決まる。資金需要が逼迫(ひっぱく)していれば金利は上昇し、資金需要が緩んでいれば、金利は下落する。また、金利は流動性によっても左右される。例えば、定期預金はなかなか引き出すことができない(流動性が低い)代わりに金利が高いが、普通預金は流動性が高い分、低い金利が適用される。さらに、金利はリスクにも左右される。貸しても返ってこなさそうな人に対しては高めの金利が適用される。
③ 銀行の貸出先である企業の業績が悪化し、返済が困難になるようなことがたびたび起こると、銀行は新たな貸出に消極的になる(貸し渋り)。新規の貸出先の経営状態がたとえ良くても貸出には消極的となる。このようなことが重なると企業は資金繰りが悪化し、倒産してしまうこともある。実は企業に貸出を行っている銀行(A銀行)も、多くの場合、他の銀行(B銀行)から融資を受けている。企業からお金が返済されないと、A銀行はB銀行への返済が滞ることになる。そうするとB銀行も疑心暗鬼となり、他の銀行への貸し出しをあまり行わなくなる。融資を受けられなくなった銀行も経営破綻するような事態が数多く生じると、金融システム全体がまひすることになる(金融危機)。


キーワード ① 審査・担保 ② 預金金利・貸出金利 ③ 資金需要・資金供給 ④ 流動性・貸倒リスク・デフォルト・リスクプレミアム ⑤ 金融危機
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。金融とは資金の融通であること。金利を決める要因はさまざまなものがあるが、基本的には、(資金)需要と(資金)供給のバランスによって決まること。金利は流動性によっても左右されること。金利はリスクにも左右されること。銀行の貸出先である企業の業績が悪化し、返済が困難になるようなことがたびたび起こると、銀行は新たな貸出に消極的になる、ということ。融資を受けられなくなった銀行も経営破綻するような事態が数多く生じると、金融システム全体がまひすることになる(金融危機)、ということ。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
4 株式と社債 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は銀行の融資とは別のタイプの金融について学ぶ。実体のないお金を、お金が余っている主体からお金の足りない主体へと融通することが金融であるが、金融を大きく二つに分けると間接金融と直接金融とに分かれる。今回は直接金融について学ぶ。
細目レベル①
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、62-64

細目レベル②
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、62-64

細目レベル③
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、68-70
コマ主題細目 ① 債券(社債) ② 株式 ③ 株価が決まるしくみ ④ ⑤
細目レベル ① 債券とは、企業が資金調達のために発行する証券(約束が書かれた紙切れ)の一種である。債券には発行者(借り手)、額面(期限が来るとかえってくるお金)、発行日(借りた日)償還日(返済期限)、クーポン金利などが約束として書かれている。債券を買った投資家は毎年一定の金利(利子、クーポン)がもらえ、期限が来ると額面金額が戻ってくる。投資家は債券を返済期限まで保有することもできるが、流通市場においてそれを他の投資家に売却することもできる。このため、債券の価格は流通市場での需要と供給のバランスに応じて変動する。投資家は債券を保有する限り、利子を得ることができる(インカムゲイン)が、購入と売却の価格差による利益を得ることもできる(キャピタルゲイン)
② 株式とは、企業が資金調達のために発行する証券(約束が書かれた紙切れ)の一種である。株式を買った投資家(株主)には定期的に利益の大きさに応じてた配当が支払われる。また、企業と投資家の関係は貸借関係ではない。つまり、企業に返済の義務はない。債券の場合と同様、投資家は株式をずっと保有することもできるが、流通市場においてそれを他の投資家に売却することもできる。このため、株式の価格は流通市場での需要と供給のバランスに応じて変動する。投資家は株式を保有する限り、(企業が十分な利益を出すことができれば)配当を得ることができる(インカムゲイン)が、購入と売却の価格差による利益を得ることもできる(キャピタルゲイン)。
③ 株価は通常の商品の場合と同様、需要と供給のバランスで決まる。簡単に言えば、人気のある株式の価格は高くなり、人気のない株式の価格は安くなる。ただし、株式の人気の高さの理由には、企業の実力に基づくものと、根拠のない思い込みによるものとがある。真面目に企業分析をした結果を自身の株価の予想に反映しようとする投資家も、大多数の投資家の根拠のない予想に同調して自分の意思に逆らった株の売買をしなければならないこともある。その結果、企業の実力を正しく反映しない株価が付いてしまうことが多々ある。株価の上昇・下落は、投資家の保有する資産価値を上昇・下落させ、彼らの購買意欲に影響を与える。株価が上昇すると投資家は自身が保有する株式の価値が上昇するため、消費を増やす(資産効果)。


キーワード ① 額面・償還日 ② 額面・償還日 ③ 公募発行・私募発行・発行市場・流通市場・証券取引所・上場 ④ 株主総会・議決権 ⑤ インカムゲイン・キャピタルゲイン・ファンダメンタル価値・資産効果
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。債券とは、企業が資金調達のために発行する証券(約束が書かれた紙切れ)の一種であること。投資家は債券を保有する限り、利子を得ることができる(インカムゲイン)が、購入と売却の価格差による利益を得ることもできる(キャピタルゲイン)こと。株式とは、企業が資金調達のために発行する証券(約束が書かれた紙切れ)の一種であること。投資家は株式を保有する限り、(企業が十分な利益を出すことができれば)配当を得ることができる(インカムゲイン)が、購入と売却の価格差による利益を得ることもできる(キャピタルゲイン)こと。株価は通常の商品の場合と同様、需要と供給のバランスで決まること。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。

5 バブルはどうやって起こるの? 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は、バブル発生のメカニズムとバブル崩壊が経済に与える影響を理解する。実体のないお金を、お金が余っている主体からお金の足りない主体へと融通することが金融である。前々回と前回で間接金融と直接金融を学んだ。間接金融とは私たちにとっていちばんなじみの深い金融機関である、銀行が行っているタイプの金融であった。前回は株式や債券を用いてお金を融通する直接金融について学んだ。どちらも現代の経済にとってなくてはならない金融の形態である。これらの金融があるからこそ、大規模な工場やオフィスの建設や私たちの生活に役に立つ商品などの研究開発などが可能になるのであるが、これらが巧妙な形で合体されて悪用されるとバブルが生じて経済活動が急激に拡大したり(投資家は裕福になって消費が増える)、バブルが破裂して経済活動が急激に縮小したりする。バブルが崩壊すると投資家の資産が減って消費が減るだけでなく、金融システムが麻痺することにもなる。
細目レベル①
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、78、80-84

細目レベル②
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、85-87

細目レベル③
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、87-90
コマ主題細目 ① バブル ② バブルの崩壊 ③ なぜバブルは拡大するか ④ ⑤
細目レベル ① 株式の価値は、理論上はファンダメンタル価値によって決まるとされている。ファンダメンタル価値とは、将来にわたって生じる配当の(割引現在価値の)合計である。しかし、現実の株価はファンダメンタル価値と一致しないことが多い。現実の資産価値のうち、実力(ファンダメンタル価値)を上回る部分をバブルという。キャピタルゲインが目的で株式が売買される場合、実力と異なる価格が成立しやすい。例えば、(理由は不明だが)、この株式の価格は近い将来必ず値上がりするので、安いうちに買っておいた方がいいよ!(キャピタルゲインが稼げるよ)という噂が広がると、みんながその株式を買おうとするので人気が高まり、本当に値上がりする。そうするとさらにみんながその株を買おうとする・・・。
② バブルの崩壊も、大衆心理が関係して起こる。バブル崩壊のメカニズムは、バブル形成のメカニズムの、ほぼ逆である。例えば、「この株式は実力からかけ離れた価格だから、近い将来値下がりするかも。高いうちに売っておかないと損だよ!(キャピタルロスが発生するよ!)」という不安が生じると、投資家みんなが売ろうとするので人気を失い、株は本当に値下がりする。そうすると、「やっぱり下がった、売らなければ」となり、などなど・・・。株価の下落は経済全体に悪影響を与える。株価が下がると投資家の保有する資産の価値が下落し、投資家は買い物を減らす。実は、バブル崩壊の悪影響はこれだけではない。借金で株を買う人がいるからである。
③ お金を借りて投機的取引をする理由は、借りない場合と比べてもうかるからである。しかし、取引が失敗すると本人だけでなく、経済全体にも悪影響が及ぶ。お金を借りて投機的取引をしていた場合、バブルが膨らむと、自己資金だけで投機をする場合よりも何倍ももうかるだけでなく、借金も確実に返すことができる。ところが、バブルが崩壊すると投資家は自己資金を失うだけでなく、借金を返すこともできなくなる。(銀行から見ると不良債権が発生する)。投資家の返済が困難になるようなことがたびたび起こると、銀行は新たな貸出に消極的になる(貸し渋り)。新規の貸出先の経営状態がたとえ良くても貸出には消極的となる。このことが他へ波及して深刻な金融危機が発生することがある。


キーワード ① ファンダメンタル価値 ② バブル ③ キャピタルゲイン ④ 不良債権 ⑤ 貸し渋り
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。株式の価値は、理論上はファンダメンタル価値によって決まるとされている。しかし、現実の株価はファンダメンタル価値と一致しないことが多い。現実の資産価値のうち、実力(ファンダメンタル価値)を上回る部分をバブルという。キャピタルゲインが目的で株式が売買される場合、実力と異なる価格が成立しやすい。バブル崩壊のメカニズムは、バブル形成のメカニズムのほぼ逆である。株価が下がると投資家の保有する資産の価値が下落し、投資家は買い物を減らす。お金を借りて投機的取引をする理由は、借りない場合と比べてもうかるからである。しかし、取引が失敗すると本人だけでなく、経済全体にも悪影響が及ぶこと。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
6 日本銀行の役割 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は、日本銀行の政策が市中銀行を通じて経済に与える影響について学ぶ。実体のないお金を、お金が余っている主体からお金の足りない主体へと融通することが金融であるが、金融を大きく二つに分けると間接金融と直接金融とに分かれると言うことをこれまで見てきた。今回は私たちにとっていちばんなじみの深い金融機関である、銀行を統括している日本銀行について学ぶことになる。銀行があるからこそ、大規模な工場やオフィスの建設や私たちの生活に役に立つ商品などの研究開発などが可能になるのであるが、これらが悪用されるとバブルの崩壊などによって不景気になる。すると今度は銀行が大規模な工場やオフィスの建設や私たちの生活に役に立つ商品などの研究開発などへ融資を行わなくなり、経済が停滞してしまう。このような不景気から脱却するために日本銀行がとる金融政策に期待がかけられている(日本銀行が行う金融政策が本当に有効化については議論の余地があるが、本講義では有効であるとの前提で議論が進められる)。
細目レベル①
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、92-96

細目レベル②
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、97-102

細目レベル③
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、103-107
コマ主題細目 ① 日本銀行の役割 ② 金融政策 ③ オペレーション ④ ⑤
細目レベル ① 日本銀行の役割として、さまざまなものがある。まず日本銀行は日本銀行券を発行する唯一の主体である(硬貨を発行するのは日本政府である)。ただし、日本銀行券は印刷されただけでは現金通貨にはならない。金融機関から引き出された時点でそれは現金通貨となる。次に、日本銀行は銀行の銀行である。市中銀行(民間銀行)は日本銀行に口座を持ち、それを使って銀行間の送金などを行っている。また、日本銀行は政府の銀行であり、政府が徴収した税金などが預けられている。さらに、日本銀行は「最後の貸し手」であり、金融危機などが起こった際に金融機関に特別融資を行う。最後に、日本銀行は金融政策を実施する主体であり、経済を過熱や不景気から正常な状態に戻すことが期待されている。
② 金融政策には緩和政策と引き締め政策とがある。日本銀行が市中銀行に預金や現金を渡すと、市中銀行は企業などにお金を貸そうという気になる。資金の供給が増えると金利が低下するが、このことが設備投資や住宅投資の増加につながり、経済全体の需要を増加させ、物価の上昇や、生産・雇用の増加につながる(と期待されている)。これが金融緩和政策である。逆に、日本銀行が市中銀行から預金や現金を回収すると、市中銀行はお金を貸す余裕がなくなる。資金の供給が減ると金利が上昇するが、このことが設備投資や住宅投資の減少につながり、経済全体の需要を減少させ、物価上昇の抑制や、生産・雇用の抑制につながる(と期待されている)。これが金融引き締め政策である。
③ 現在日本の金融政策は、主にオペレーション(公開市場操作)を用いて行われる。金融緩和政策で用いられる手法が売りオペレーション(売りオペ)である。売りオペレーションとは、市中銀行が保有する国債などを日本銀行が買うことであり、これによって市中銀行の日銀当座預金の残高が増加する。これが貸出増加、ひいては景気の回復につながる(と期待されている)。金融引き締め政策で用いられる手法が買いオペレーション(買いオペ)である。買いオペレーションとは、市中銀行に日本銀行が国債などを売ることであり、これによって市中銀行の日銀当座預金の残高が減少する。これが貸出減少、ひいては景気の加熱抑制につながる(と期待されている)。


キーワード ① 日本銀行券 ② 銀行の銀行 ③ 日銀当座預金 ④ 最後の貸し手 ⑤ 買いオペレーション・売りオペレーション
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。日本銀行は日本銀行券を発行する唯一の主体であり、銀行の銀行であり、政府の銀行であり、「最後の貸し手」であり、金融政策を実施する主体である。金融政策には緩和政策と引き締め政策とがある。生産・雇用の増加を期待して行うのが金融緩和政策であり、物価上昇の抑制や、生産・雇用の抑制を期待して行うのが金融引き締め政策である。現在日本の金融政策は、主にオペレーション(公開市場操作)を用いて行われる。金融緩和政策で用いられる手法が売りオペレーション(売りオペ)である。金融引き締め政策で用いられる手法が買いオペレーション(買いオペ)である。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。

7 GDPを理解する 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は、経済を理解するのになぜGDPが必要かについて学ぶ。現代社会は自給自足の経済ではないため、自分が消費するもののほとんどが他人が生産したものである。したがって、他人が生産したものを手に入れるための手段が必要である。その手段の一つがお金であった。実はお金は実体がないものである。そのお金を増やすことが人々の目的となりバブルが形成されそれが崩壊すると、生産活動を行うための融資(大規模な工場や機械やオフィス、将来の私たちが享受する有用な商品を生み出すための研究開発など)が行われなくなり、景気が停滞する。経済とは、もともとモノやサービスを得るために存在するためにあるのにもかかわらず、である。そこで、今回はモノやサービスの規模を測るために用いられるGDPについて学ぶのである。GDPについて正確に理解することは、GDPが本当に私たちの豊かさを表す指標なのかを見当する際にも役立つ。
細目レベル①
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、120-121

細目レベル②
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、121-123

細目レベル③
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、124-129
コマ主題細目 ① GDP(国内総生産) ② 経済成長率 ③ GDPの大きさの決まり方 ④ ⑤
細目レベル ① GDPとは、1年間に1国内で生産された付加価値の合計である。例えば、自動車の価値とガラス、タイヤ、ハンドル、エンジン、座席、さらにそれらの原料の価値をすべて合計してしまうと、何重にも重複計算をすることになってしまう。つまり、付加価値を合計するのは、重複計算を防ぐためである。あるいは、部品などの中間的な要素を考えずに、完成品の価値だけを計算すると考えても同じである。GDPはまた、お金の分配状況も表している。各々の付加価値は、主に企業や労働者に分配される。例えば、自動車が一台売れると、その収入は、自動車会社の経営者と労働者、ガラス会社の経営者と労働者、エンジンを作る会社の経営者と労働者・・・などに分配されるのである。
② 「経済成長率」とは、GDPの年間増加率のことである。つまり、経済成長率は、当該年度とその前年度のGDPの差額を前年度のGDPで割ったものに100を掛けたもので表される。日本も、高度成長期と呼ばれる時代には驚異的なスピードで成長したが、現在では、ごくわずかな成長率にとどまっている。中国は、かつての日本を思い起こさせる勢いで経済成長を遂げている。経済が成長するということは、以前よりも生産の規模が大きくなっているということであり、以前よりも生産の規模が大きくなっているということは、分配の規模がおおきくなっているということであり、分配の規模が大きくなっているということは、支出の規模が大きくなっているということである。
③ GDPの大きさの決まり方は、時代や地域によって異なってくる。発展途上の経済では、「腹ぺこ」であるのに生産する力がないから生産力を上げないと生産は伸びない。したがって発展途上の経済ではGDPの大きさは供給力に左右される。成熟した経済では、生産する力は有り余るほどあるが、商品を買いたい気持ちはそれほどでもない。したがって、成熟した経済では、GDPの大きさは需要の大きさに左右される。実を言うと、「景気」という言葉は経済学の専門用語ではない。しかし、あえて景気とは何かについて説明するなら次のようになる。1国の経済は生産→分配→支出の流れから見ることができる。この流れが大きくてスムーズであるならば、景気が良いといわれる


キーワード ① 付加価値 ② 経済成長率 ③ 生産面 ④ 分配面 ⑤ 支出面
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。GDPとは、1年間に1国内で生産された付加価値の合計である。GDPはまた、お金の分配状況も表している。各々の付加価値は、主に企業や労働者に分配される。経済成長率とは、GDPの年間増加率のことである。経済成長率は、当該年度とその前年度のGDPの差額を前年度のGDPで割ったものに100を掛けたもので表される。GDPの大きさの決まり方は、時代や地域によって異なってくる。発展途上の経済ではGDPの大きさは供給力に左右される。成熟した経済では、GDPの大きさは需要の大きさに左右される。1国の経済は生産→分配→支出の流れから見ることができる。予習課題:次回は前半の復習である。これまでの回の資料をもう一度見直しておく。
8 前半の復習 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は、前半の復習である。現代社会は自給自足の経済ではないため、自分が消費するもののほとんどが他人が生産したものである。したがって、他人が生産したものを手に入れるための手段が必要である。その手段の一つがお金であった。実はお金は実体がないものである。そのお金を増やすことが人々の目的となりバブルが形成されそれが崩壊すると、生産活動を行うための融資(大規模な工場や機械やオフィス、将来の私たちが享受する有用な商品を生み出すための研究開発など)が行われなくなり、景気が停滞する。経済とは、もともとモノやサービスを得るために存在するためにあるのにもかかわらず、である。そこで、今回はモノやサービスの規模を測るために用いられるGDPについて学ぶのである。GDPについて正確に理解することは、GDPが本当に私たちの豊かさを表す指標なのかを見当する際にも役立つ。
細目レベル①
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、16-30、44-47、53-60

細目レベル②
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、62-64、68-70、78、80-90

細目レベル③
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、92-107、120-129
コマ主題細目 ① 復習(第2・3回) ② 復習(第4・5回) ③ 復習(第6・7回) ④ ⑤
細目レベル ① 復習問題を解くことで、以下のことを確認する。お金には1.価値尺度としての役割2.交換手段としての役割3.価値保蔵機能としての役割、があること。実は、お金とは実体のない記号である、ということ。金融資産のどれをどれだけ保有するかの資産選択をする際には、元本の保証や流動性など、さまざまな基準が考慮されること。お金は現金通貨と預金通貨から成り立っている、ということ。金利を決める要因はさまざまなものがあるが、基本的には、(資金)需要と(資金)供給のバランスによって決まること。金利は流動性やリスクにも左右されること。銀行の貸出先である企業の業績が悪化し、返済が困難になるようなことがたびたび起こると、銀行は新たな貸出に消極的になる、ということ。融資を受けられなくなった銀行も経営破綻するような事態が数多く生じると、金融システム全体がまひすることになる(金融危機)、ということ。
② 復習問題を解くことで、以下のことを確認する。債券/株式とは、企業が資金調達のために発行する証券の一種であること。投資家は債券/株式を保有する限り、利子/配当を得ることができる(インカムゲイン)が、購入と売却の価格差による利益を得ることもできる(キャピタルゲイン)こと。株価は通常の商品の場合と同様、需要と供給のバランスで決まること。株式の価値は、理論上はファンダメンタル価値によって決まるとされている。現実の資産価値のうち、実力を上回る部分をバブルという。バブル崩壊のメカニズムは、バブル形成のメカニズムのほぼ逆である。株価が下がると投資家の保有する資産の価値が下落し、投資家は買い物を減らす。お金を借りて投機的取引をする理由は、借りない場合と比べてもうかるからである。しかし、取引が失敗すると本人だけでなく、経済全体にも悪影響が及ぶこと。
③ 復習問題を解くことで、以下のことを確認する。日本銀行は日本銀行券を発行する唯一の主体であり、銀行の銀行であり、政府の銀行であり、「最後の貸し手」であり、金融政策を実施する主体である。生産・雇用の増加を期待して行うのが金融緩和政策であり、物価上昇の抑制や、生産・雇用の抑制を期待して行うのが金融引き締め政策である。現在日本の金融政策は、主にオペレーション(公開市場操作)を用いて行われる。GDPとは、1年間に1国内で生産された付加価値の合計である。GDPはまた、お金の分配状況も表している。各々の付加価値は、主に企業や労働者に分配される。経済成長率とは、GDPの年間増加率のことである。GDPの大きさの決まり方は、時代や地域によって異なってくる。発展途上の経済ではGDPの大きさは供給力に左右される。成熟した経済では、GDPの大きさは需要の大きさに左右される。1国の経済は生産→分配→支出の流れから見ることができる。


キーワード ① お金と金融 ② 株式 ③ バブル ④ 日本銀行 ⑤ GDP
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。お金には1.価値尺度としての役割2.交換手段としての役割3.価値保蔵機能としての役割がある。資産選択をする際には、元本の保証や流動性などがある。お金は現金通貨と預金通貨から成り立っている。金利は基本的には、資金需要と資金供給のバランスによって決まるが、流動性やリスクにも左右される。企業の業績が悪化し、返済が困難になるようなことが起こると、銀行は新たな貸出に消極的になる。融資を受けられなくなった銀行も経営破綻するような事態が数多く生じると、金融危機が起こる。債券/株式とは、企業が資金調達のために発行する証券の一種である。投資家は債券/株式を保有する限り、利子/配当を得ることができるが、購入と売却の価格差による利益を得ることもできる。株価は通常の商品の場合と同様、需要と供給のバランスで決まる。株式の価値で、実力を上回る部分をバブルという。バブル崩壊のメカニズムは、バブル形成のメカニズムの逆である。株価が下がると投資家の保有する資産の価値が下落し、投資家は買い物を減らす。お金を借りて行う投機的取引が失敗すると本人だけでなく、経済全体にも悪影響が及ぶ。日本銀行は日本銀行券を発行する唯一の主体であり、銀行の銀行であり、政府の銀行であり、「最後の貸し手」であり、金融政策を実施する主体である。金融政策には金融緩和政策と金融引き締め政策がある。現在日本の金融政策は、主にオペレーションを用いて行われる。GDPとは、1年間に1国内で生産された付加価値の合計である。GDPはまた、お金の分配状況も表している。経済成長率とは、GDPの年間増加率のことである。GDPの大きさの決まり方は、時代や地域によって異なってくる。1国の経済は生産→分配→支出の流れから見ることができる。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
9 市場と政府(1)市場と政府の役割 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は、市場と政府の補完関係について理解する。現代経済は大昔の自給自足の経済とは違って各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っており、そしてそれらの間で商品や金融、税のやりとりが行われている。大ざっぱに整理すると、経済は市場と政府から成り立っている(他の学問から見ればさらに経済を支える制度は他にもあるが)。市場はその他の制度よりもモノやサービスと効率的に(むだなく)配分すると言われている。だが、市場は万能ではないとも言われる。市場では十分に提供できないモノを提供するのが政府の役割であるとされている。実をいうと経済学には市場を重視する学派、政府を重視する学派、その中間の学派など、さまざまな学派が存在し、日々論争を重ねている。市場・政府どちらにも偏らずそれらをバランス良く学ぶのが今回の講義である。
細目レベル①
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、154-161

細目レベル②
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、162-166

細目レベル③
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、167-179
コマ主題細目 ① 市場の役割 ② 市場の失敗 ③ 政府の役割 ④ ⑤
細目レベル ① 商品の多くは市場を通じて民間企業が供給している。市場価格は需要と供給の関係で決まる(実際にはその他のさまざまな要因も関係する)。商品の価格を縦軸に、数量を横軸に取ると、需要曲線は右下がりに描かれる。つまり、価格が上昇すると需要量は減少する。供給曲線は右上がりに描かれる。つまり、価格が上昇すると供給量は増える。商品の価格と取引数量は需要曲線と供給曲線の交点で決まると(理論的に)言われる。価格が高すぎると売れ残りが発生するため、企業が価格を下げる。価格が安すぎると品不足が発生するため、消費者は価格を上げられても文句は言えない。需要曲線や供給曲線がシフト(移動)すると、価格と取引数量はさまざまに変化する。
② 先ほど学んだように、市場で商品が売買されると売れ残りや品不足が発生しない、と(理論的に)言われているが、現実には、市場を持ってしても売れ残りが発生する場合がある。売れ残りは「市場の失敗」と呼ばれる現象の中の一つである。その他、さまざまな現象が市場の失敗の例として説明されている。民間では供給されないモノやサービスが存在することも市場の失敗の例である。また、独占(1社だけが存在)や寡占(数社だけが存在)も市場の失敗の例である。それらがあると、企業どうしの競争がなくなり、消費者は高い価格での買い物を余儀なくされる。最後に、外部効果(工場からの汚染物質の排出など)と呼ばれる現象も市場の失敗の例である。
③ 市場の失敗をカバーする政府の役割として、「市場で取引が円滑に行われるしくみの整備」「公共財の提供」「所得再分配政策」「経済の安定化」がある。「市場で取引が円滑に行われるしくみの整備」の例としては公正取引委員会によるカルテルの取り締まりがある。「公共財の提供」の例としては、消防サービスの自治体による提供がある。消防サービスが民間によって提供されるとお金を払った人のみが消防サービスを受けることができることになり、市民の安全が脅かされる。「所得再分配政策」は市場経済の競争で生じる所得格差を埋めるための政策である。「経済の安定化」は景気を改善するために、例えば、買い物をなかなかしてくれない民間部門に代わって政府が買い物をすることである。


キーワード ① 民営化・規制緩和 ② 失業 ③ 独占・寡占・カルテル ④ 外部効果・公共財 ⑤ 累進課税制度・生活保護
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。商品の多くは市場を通じて民間企業が供給している。市場価格は基本的には需要と供給の関係で決まる。現実には、市場を持ってしても売れ残りが発生する場合がある。売れ残りは「市場の失敗」の一つである。民間では供給されないモノやサービスが存在することも市場の失敗の例である。独占(1社だけが存在)や寡占(数社だけが存在)も市場の失敗の例である。外部効果と呼ばれる現象も市場の失敗の例である。市場の失敗をカバーする政府の役割として、「市場で取引が円滑に行われるしくみの整備」「公共財の提供」「所得再分配政策」「経済の安定化」がある。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
10 市場と政府(2)財政赤字問題 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は財政赤字問題の原因とそれが経済に及ぼす影響について学ぶ。
細目レベル①
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、188-190

細目レベル②
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、190-195

細目レベル③
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、190-195
コマ主題細目 ① 財政赤字 ② 財政赤字が引き起こす問題(1) ③ 財政赤字が引き起こす問題(2) ④ ⑤
細目レベル ① 通説では、税収よりも一般歳出の方が大きければその年の財政は赤字となり、それが毎年繰り返されると債務残高(借金の累積)が増大していく。基本的にはこの説明で良いのだが、返済のことを考えるともっと複雑になる。歳出には一般歳出の他に国債費というものもある。国債費とは過去の借金を返済するための費用である。税収よりも一般歳出と国債費の合計が多ければ、その差額を公債金(新たな借金)で穴埋めしなければならない。しかしながら、一方では借金(公債金)をし、他方では借金を返している(国債費)わけであるから、その差額がその年に純粋に増えた借金である。これをプライマリーバランス赤字という。この赤字が年々増えると債務残高が増大していく。
② 政府債務(政府の借金)の増加が引き起こす問題には、さまざまなものがある。政府債務残高(政府の借金の累積額)が増加するにつれて、歳出の中で国債費(借金を返すためのお金)の占める割合が大きくなる。国債費の占める割合が大きくなると、その分だけ一般歳出が圧迫されることになる。例えば、道路や橋が古くなっても補修ができなくなるだろう。そのように、公共サービスが低下すると、日本国民にとって、日本に住む魅力が低下し、海外に移住したり、本社を移転したりするインセンティブが働く。そのことにより、税金を払う住民や企業がいなくなるので、さらに税収が減少し、政府債務残高(政府の借金の累積額)が増加していくことになるだろう。
③ 政府債務の増加が引き起こす問題の第二として、財政破綻がある。財政が破綻すると言っても、「債務残高が何兆円以上になれば破綻」という絶対的なラインがあるわけではない。財政破綻が起こるのは、「借金がどうやっても返せなくなった」たときである。デフォルト(債務不履行)が生じるのではないかとの不安が金利の上昇(国債価格の下落)を招く。しかしながら、国債を日本人に買ってもらっている限りは財政破綻は起こりえないとする節も有力である。ギリシャ政府は国債の多くを外国人に買ってもらっていたが、日本政府の国債を保有する人のほとんどは日本人である。財政破綻が予想されると、国債の価格は暴落するが、そうなるとこうした国債を保有する金融機関の資産の価値が減少することになるので、財政危機は金融危機につながることもある。


キーワード ① 政府債務残高 ② 税金 ③ 公債金・国債費・プライマリーバランス・デフォルト ④ 財政破綻 ⑤ 金融危機
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。通説では、税収よりも一般歳出の方が大きければその年の財政は赤字となり、それが毎年繰り返されると債務残高(借金の累積)が増大していく。プライマリーバランス赤字が年々増えると債務残高が増大していく。政府債務残高が増加するにつれて、歳出の中で国債費(借金を返すためのお金)の占める割合が大きくなり、その分だけ一般歳出が圧迫されることになる。政府債務の増加が引き起こす問題の第二として、財政破綻がある。財政破綻が予想されると、国債の価格は暴落するが、そうなるとこうした国債を保有する金融機関の資産の価値が減少することになるので、財政危機は金融危機につながることもある。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
11 第1次フードレジーム 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は第1次フードレジームについて学ぶ。植民地のプランテーションで奴隷など安い労働力を用いて生産された「世界商品」(小麦、砂糖、茶)が、イギリスなどヨーロッパの宗主国における産業革命、都市化、資本主義の発展に貢献した(特に、安い食料が労働者を安く養うことを可能にした)ことを確認する。
細目レベル①
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、32ー38

細目レベル②
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、38ー43

細目レベル③
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、43ー48
コマ主題細目 ① 資本主義と産業革命の始まり ② 砂糖の世界史 ③ 小麦粉も世界商品に ④ ⑤
細目レベル ① 産業革命(イギリスで始まった)により大きな工場が成立し、社会構造が変化した。このことにより、近代資本主義経済が確立した。工場で機械を導入して大量生産するということは、機械に投入する原料が大量に必要となり、同時に大量に作った商品を販売するために大きな市場が必要で、安く長時間働く労働者も必要となることを意味している。工場のある都市には食料やその他の必需品を作るための農場がない。
 本格的な産業革命は綿工業において始まった。もともと、イギリスはインドから綿織物を輸入していた(アジア製の方が品質が高かった)。機械の技術革新が進んでインド製と同じ品質の綿製品が大量生産できるようになると、イギリスはインドから原料の綿花を大量に輸入し、イギリス国内の工場で綿織物を生産し、それを輸出するようになった。イギリスの安価な綿製品はインドの綿工業を壊滅させることとなった。
 綿製品の大量生産には原料の綿花の大量生産が必須となる。綿花のほとんどは北米やインドの植民地のプランテーションで栽培された。労働力は先住民やアフリカから連れてこられた黒人奴隷などでまかなわれた。
 工場で工業製品を生産するために雇われた労働者はどこからやってきたのか。もともと農村にいたのだが地主や領主の囲い込み(エンクロージャー)によって追い出された人々が都市の労働者になったという説が有名である。

② では、農村から切り離された労働者の食事はどうなったのか。都市の労働者の多くは、農場どころか満足な台所や燃料も持たなかった。しかも、かなり長時間働いて料理の時間もない。低賃金であるためほぼ全員が働きに出ている。そこで、彼らは日常生活に必要なものを市場で購入するしかなかった。その食料はどこからやってくるか。植民地からである。北米から小麦、カリブ海から砂糖、インドから紅茶、である。工場労働者は小麦パンと砂糖入り紅茶で手っ取り早く胃袋を満たした。
砂糖はもともと王侯貴族が薬として口にできる高価なものであったが、18世紀の半ばから砂糖を入れた紅茶が普及しはじめ、19世紀半ばには価格が急落し、イギリスの労働者の食事に欠かせないものとなった。その陰にはサトウキビの栽培地の取り合いや奴隷労働の歴史がある。カリブ諸島は欧州諸国によって植民地とされ、プランテーションでは奴隷たちが砂糖を大量生産することをしいられた。奴隷はアフリカから強制的に連れてこられた人たちであった(いわゆる三角貿易の一部)。

③ パンの原料の小麦も砂糖と同じく世界商品として世界的に貿易されるようになった。産業革命が進展し、資本家の力が大きくなってくると、イギリスでは自国内で農産物を生産するより、外国で栽培した穀物を安く輸入しようとする動きが強まった。1846年の穀物法の廃止はこの動きの一環である。資本家にとって穀物の価格が安くなることは安い賃金で労働者を雇って利潤を増やすことにつながるため好都合である。イギリスが植民地化した北米やオーストラリアでは、輸出用に小麦が栽培され、ロール製粉機で製粉された小麦は穀物商社によってイギリスに持ち込まれた。それらの小麦は、イギリス国内でこれまた大型機械による大量生産でパンに加工された。
 以上の話から言えることは、それぞれの国はセパレートコースを走っているのではなく、すべての国の動向は「世界システム」の動きの一部として把握されるべきである、ということである。「イギリスは、工業化されたが、インドはされなかった」という言い方は正確ではない。「イギリスが工業化したために、その影響を受けたインドは、容易に工業化できなくなった」という方が正確である。



キーワード ① 産業革命 ② プランテーション ③ 砂糖・茶・小麦 ④ 労働者の食事 ⑤ 世界システム論
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。工場で機械を導入して大量生産するということは、機械に投入する原料が大量に必要となり、同時に大量に作った商品を販売するために大きな市場が必要で、安く長時間働く労働者も必要となることを意味していること。機械の技術革新が進んでインド製と同じ品質の綿製品が大量生産できるようになると、イギリスはインドから原料の綿花を大量に輸入し、イギリス国内の工場で綿織物を生産し、それを輸出するようになったこと。綿花のほとんどは北米やインドの植民地のプランテーションで栽培され、労働力は先住民やアフリカから連れてこられた黒人奴隷などでまかなわれたこと。都市の労働者の多くは日常生活に必要なものを市場で購入するしかなくなったこと。その食料は小麦・砂糖・茶であり、それらは植民地からやってきたこと。それぞれの国はセパレートコースを走っているのではなく、すべての国の動向は「世界システム」の動きの一部として把握されるべきであること。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
12 第2次フードレジーム 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は第2次フードレジームについて学ぶ。主に、以下のことを確認する。農業にも機械が導入され農業が工業化されたが、主にアメリカで大量生産された小麦、大豆、トウモロコシなどが過剰生産となった。この事態を打開するために、アメリカはヨーロッパや日本の戦後復興のために「食料援助」を行い、その後途上国へも戦略的な食料援助を行った。また、食品産業が発展し、食の高度化が起こった。
細目レベル①
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、50ー61

細目レベル②
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、61ー64

細目レベル③
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、66ー69

細目レベル④
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、69ー76
コマ主題細目 ① 過剰生産と恐慌 ② 恐慌への新しい政策対応 ③ 大きな政府の下で「資本主義の黄金時代」 ④ 食の高度化 ⑤
細目レベル ① 以前の授業回で学んだ需要曲線と供給曲線は19世紀後半に確立された経済理論である。この理論によれば、ある商品が一時的に供給過剰となってもその後価格が下がって需要と供給は一致するため、売れ残りは発生せず、不況(恐慌)など存在しないことになる。しかしながら、資本主義経済は、やがて供給過剰で不況(恐慌)がたびたび発生する時代を迎えた。需要供給曲線の理論の欠点は、経済全体のお金の循環を考慮していないことである。利潤最大化を目指す企業はなるべく機械化による大量生産を進め、少ない人数の労働者を低賃金で雇おうとする。ところが、経済全体で見ると労働者は消費者でもある。賃金を減らしすぎると購買力が弱まって、大量生産された商品の多くは売れ残ってしまうことになる。
② 1929年から始まった世界大恐慌においても、最初は景気の自然回復が待たれていた。しかしながら、1933年に就任したルーズヴェルト大統領は前例とは違うニューディール政策をとった。主な政策としては公共投資があった。これは、政府が大規模公共事業を進めて失業者を雇って賃金を払い、消費を刺激する政策であった(以前の回で学んだ財政政策である)。このほかにも、農産物の作付け制限(作りすぎによる価格下落を防ぐために生産量を調整)や、政府補助金の支払による農産物価格の回復を目指した「農業調整法」もあった。ニューディール政策は景気回復に効果があったと言われている。しかし実際には、第二次世界大戦による軍事支出の拡大による特需によってアメリカは恐慌から立ち直ることができたというのが通説である。
③ 第二次世界大戦後、多くの先進資本主義諸国では、政府が経済に介入しながら資本主義の「黄金時代」を迎え、高い経済成長を実現した。「大きな政府」が農業や国内産業を外国の産業から保護し、労働者も保護し、財政政策や金融政策によって景気の波を調整した。労働者はまじめに働けばそれなりの賃金を得て、工業部門が生産した新製品を買うことができた。その消費がさらなる経済成長を生み出した(大量生産・大量消費)。
この時代、農業も工業化・大規模化され、農薬や化学肥料、農業機械を使った大量生産になった。大量生産された食料を大量に販売する市場が今度は必要になる。第二次世界大戦後、アメリカ政府は必要以上に生産した小麦や大豆を「食料援助」も利用して日本や途上国に輸出した。冷戦が激しくなると、食料援助は途上国を資本主義陣営に引き込む意味も持つようになった。

④ 新しい食べ方や新商品の開発によって、国内外の市場において、より多く食べさせる努力がなされてきた。そこには政府と企業が大きく関わっている。アメリカの農業政策などによって大量生産されるようになったトウモロコシを原料に、新しい甘味料が大量生産されるようになった。これは、インスタント食品など加工食品の発展につながっている。この糖分は砂糖よりも安い、という特徴だけでなく、味を新鮮に保つことができる、などの利点を持っている。トウモロコシは、現代の畜産業において、家畜の飼料としても大量に使われている(家畜は「動物工場」のような建物に閉じ込められて飼料を与えられる)。このように、トウモロコシは加工食品や動物性食品に姿を変えて大量消費されている。最近までこのトウモロコシを世界一大量に輸入していた国は日本であった。日本人の体は4割がトウモロコシ由来であるという説もある。

キーワード ① 需要曲線・供給曲線 ② 不況(恐慌) ③ ニューディール政策 ④ 食料援助 ⑤ 加工食品・動物工場
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。需要曲線・供給曲線の理論によれば、ある商品が一時的に供給過剰となってもその後価格が下がって需要と供給は一致するため、売れ残りは発生せず、不況(恐慌)など存在しないことになること。需要・供給曲線の理論の欠点は、経済全体のお金の循環を考慮していないこと。労働者が解雇されたり賃金をカットされたりすると、労働者は消費者でもあるため、大量生産された商品の多くは売れ残ってしまうこともあること。世界大恐慌の時のアメリカのルーズヴェルト大統領がニューディール政策をとり、大規模公共事業を進めて失業者を雇って賃金を払い、消費を刺激したこと。ニューディール政策は景気回復に効果があったと言われているが、実際には、第二次世界大戦による軍事支出の拡大による特需によってアメリカは恐慌から立ち直ることができたかもしれないこと。第二次世界大戦後、多くの先進資本主義諸国では、「大きな政府」が農業や国内産業を外国の産業から保護し、労働者も保護し、財政政策や金融政策によって景気の波を調整したこと。黄金時代においては、農業も工業化・大規模化され、農薬や化学肥料、農業機械を使った大量生産になったこと。第二次世界大戦後、アメリカ政府が必要以上に生産した小麦や大豆を「食料援助」も利用して日本や途上国に輸出したこと。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
13 第3次フードレジーム 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は第3次フードレジームについて学ぶ。正式名称として第3次フードレジームというものはない。しかしながら、現在のフードレジームにあえて名称を与えるならば「グローバル・コーポレート・フードレジーム」あるいは「ネオリベラル・フードレジーム」という言い方が当てはまるかもしれない。資本主義の黄金時代が終わった後に経済のグローバル化や企業の多国籍化が進み、新自由主義(ネオリベラリズム)という考え方が広まった。そこで、今回は経済のグローバル化とは何か、新自由主義とは何か、それらが私たちの食生活やその他の生活領域にどのような影響を与えたのかについて考える。
細目レベル①
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、138ー144

細目レベル②
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、144ー149

細目レベル③
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、149ー155
コマ主題細目 ① 資本主義の黄金時代の終わり ② 新自由主義とグローバリゼーション ③ 総合商社のグローバル戦略 ④ ⑤
細目レベル ① 大量消費に支えられた大量生産による右肩上がりの経済成長の時代(資本主義の黄金時代)は1970年代頃から行き詰まりを見せるようになった。資本主義の世界経済が軌道変更し始めた大きなきっかけとして、まず「オイルショック(石油危機)」が挙げられる。石油価格が急騰し、それまでのように安い石油(=安いエネルギー、安い素材)で大量生産・大量消費して経済成長をすることが難しくなってしまった。また、穀物価格の急騰という別のショックも1972~1974年に小麦、トウモロコシ、大豆など、穀物・油糧種子の価格が急騰して市場が大混乱した。日本のようにこれらの穀物を主にアメリカから輸入していた食料輸入国は特に混乱した。日本はそこからブラジルにお金や人材を送り込んで大豆栽培のためのアマゾン大開拓を支援した。ブラジルは現在、世界的な大豆生産国である。
② 資本主義の行き詰まりを打開しようと、政府の介入を排し、できるだけ市場の自由な取引に身を委ねようとする「新自由主義」の考え方が広まった。この考え方が広まると、企業はあらゆる手でコスト削減の努力をするようになった。製品を安く生産するために、安い原料や安い労働力を求めて世界中に手を伸ばすようになったのである。政府は規制を緩和し、貿易も自由化すべしとされた。企業は多国籍化し、世界中から世界中にモノを輸出入したり、一つ一つの部品を世界各地で作って最後にアメリカや日本で組み立てたり、するようなことが多く行われるようになった。この流れの中で、農産物や食品の国際貿易量も急増し、食品関係の企業、製造業、流通業、小売業、外食産業など、すべての段階で多くの企業が複数の国で事業を展開する多国籍化が進んだ。グローバリゼーションが進む中で、中国も市場を開放した。ここには日米欧の企業も大きく関わっている。中国は改革開放への転換以降、海外からの投資を呼び込み、規制を緩和し、貿易も自由化してきた。例えば、外国からの投資を受け入れて近代的な大規模畜産システムを発展させ、飼料としての穀物を大量に輸入し、鶏や豚や牛を大量生産するようになった。中国は現在、世界一の大豆輸入国かつ豚肉生産国である。
③ 改革開放政策に転換し、急激に経済成長を遂げている中国には、日本の総合商社や大手食品企業も進出している。総合商社とは本来、貿易や商取引のみを取り扱う会社で会ったが、現在では、投資と商取引を融合させる会社である。例えば、日本の総合商社は小麦、大豆、トウモロコシなどの食料を北米と南米から日本を経由して中国に流すと同時に、中国やアジアの加工食品産業や畜産業に投資して、食料への需要を増やすような戦略をとっている。こうした日本の企業のグローバル展開を日本政府も後押ししている(企業の活動を規制するのではなく自由な活動を後押ししている)。日本で作った製品を輸出するのではなく、海外で日本が関わってビジネス展開する戦略への切り替えである。


キーワード ① 石油危機 ② 穀物価格高騰 ③ 貿易自由化 ④ 多国籍企業 ⑤ 中国経済
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認する。資本主義の黄金時代が1970年代頃から(石油危機や穀物価格の高騰などをきっかけとして)行き詰まりを見せるようになったこと。この時代以降、日本がブラジルにお金や人材を送り込んで大豆栽培のためのアマゾン大開拓を支援したこと。ブラジルが現在、世界的な大豆生産国であること。資本主義の行き詰まりを打開しようと、政府の介入を排し、できるだけ市場の自由な取引に身を委ねようとする「新自由主義」の考え方が広まったこと。この考え方が広まると、企業はあらゆる手でコスト削減の努力をするようになったこと。この流れの中で、農産物や食品の国際貿易量も急増し、食品関係の企業、製造業、流通業、小売業、外食産業など、すべての段階で多くの企業が複数の国で事業を展開する多国籍化が進んだこと。グローバリゼーションが進む中で、中国も市場を開放したこと。中国には、日本の総合商社や大手食品企業も進出していること。総合商社は現在、投資と商取引を融合させる会社となっていること。こうした日本の企業のグローバル展開を日本政府も後押ししていること。予習課題:今回配布した資料を読んでおく。
14 政府貨幣、公共貨幣 科目の中での位置付け 現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。以上を踏まえて、現代経済、そして食料に関わる現代の産業がなぜこのような形になったのか、その形成史について解説する。今回は、民間の銀行が発行しているお金とは性質を異にする公共貨幣の可能性について考える。
細目レベル①
H.デイリー『エコロジー経済学』NTT出版、2014年、261-273

細目レベル②
H.デイリー『エコロジー経済学』NTT出版、2014年、261-273

細目レベル③
H.デイリー『エコロジー経済学』NTT出版、2014年、261-273
コマ主題細目 ① 政府貨幣 ② 銀行が発行するお金 ③ 公共貨幣 ④ ⑤
細目レベル ① 現在の日本政府はお金を借りまくって利子まで支払おり、これが累積して借金地獄になっている。その膨大な借金は今のところ返せそうもないし、たとえ借金を返せたとしてもそれはそれで環境破壊や人の体の酷使につながってしまう。現在の政府の立場、そして多くの経済学者の立場は、何が何でも借金は返すというものであるが、そもそも、なぜ政府がお金を借りなければいけないのか。なぜ、政府は自分が発行したお金を使わないのだろうか。昔は王がお金を発行していたが、現在ではお金のほとんどが銀行によって発行されている。そのため、現在の政府は税収が足りなくて、お金に困ったときには、政府は銀行が発行したお金を借りるしかなく、それを利子をつけて返している。
 政府がお金を発行するのはずるいと思われるかもしれないが、「借金が膨らむことがない」「返済のために国民に重い税金をかける必要もない」「人や自然環境を痛めつけることもない」「災害復興などに機動的にお金を投じることができる」などメリットがある。デメリットもある。発行しすぎてインフレーションになる、無益な戦争に使用される、などがある。

② 民間の銀行が発行するお金にもデメリットが多くある。「発行しすぎるとインフレーションやバブルが発生する」「お金の発行量や使用目的が民主的に決められてはいない」「バブルが後に崩壊して、不景気になる」「政府が景気回復のために借金をし、債務が膨張する」などである。これらのデメリットについて、アイスランドの事例でデータで確認する。
 銀行はいつお金を発行しているのか。それは、銀行がお金を貸すときである。つまり、銀行は自分で発行したお金を貸していることになる。貸出は口座に数字を記入することで行われる。銀行は借り手に口座を開設させて、そこに400万円という数字を書き込む。これで、借り手にお金を貸したことになる。もちろん、借り手は、このお金を、お札を引き出して現金通貨にしてから使ってもよいが、私たちが電気代を払うときと同じ要領で、預金通貨のままでも支払に使うことができる。こんなふうに、お金を自分で生み出して、人に貸出し、回収時に利子をとる。これが銀行のやっていることである。

③ 民間銀行がお金を発行することのデメリットの解決策として、ソディや現代の幾人かの経済学者たちが提案しているお金の改革案がある。それが銀行の業務を分割するという方法である。この改革案によれば、例えば、ある銀行は、銀行の業務のうち、預金業務と、決済業務しかできない。別の銀行は貸し出し専用の銀行となる。例えば、預金業務と決済業務しかできない銀行をA銀行とする。A銀行はXさんやYさんから例えば、札束で100万円ずつ預けてもらったとする。そうすると二人にそれぞれ預金通貨100万円ずつが与えられる。だから口座の数字と銀行の金庫内の現金が100%対応している。したがって、現実の銀行が毎日やっているようなお金発行ができない。そこで、政府が代わりにお金を発行することになります。これに対してF銀行を貸出業務しかできない銀行とする。H社という会社に、F銀行はお金を貸す。もともと持っていたお金を誰かに貸すだけである。自分で発行したお金ではない。
銀行が発行する場合にも、政府が発行する政府貨幣の場合にも、特定の人たちが勝手に際限なく発行することで問題を起こす。これからのお金は、皆が合意の上で発行量を決めるとよい、という考え方(公共貨幣の考え方)がある。



キーワード ① 財政赤字 ② 利子(金利) ③ 現金通貨 ④ 預金通貨 ⑤ 信用創造
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認しておく。日本で一番多く流通しているのは、銀行が発行したお金(預金通貨)である。銀行がお金を発行するときはお金を貸し出すときなので、銀行が発行するお金には利子が付いている。銀行が発行するお金にはどんなデメリットがあるか。政府が発行するお金のメリットにはどんなものがあるか。政府が発行するお金のデメリットにはどんなものがあるか。ソディをはじめ、多くの論者が民間銀行によるお金の発行の権限を縮小することを提唱したが具体的に彼らはどんなことを提唱したか。予習課題:次回分の配付資料を読んで、シラバスでキーワードを確認しておく。
15 後半の復習 科目の中での位置付け 今回は後半の復習である。現代社会は自給自足(自分で食べたり、着たり、使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済ではないため、自分が消費するもののほとんどが他人が生産したものである。したがって、他人が生産したものを手に入れるための手段が必要である。その手段の一つがお金であった。実はお金は実体がないものである。そのお金を増やすことが人々の目的となりバブルが形成されそれが崩壊すると、生産活動を行うための融資(大規模な工場や機械やオフィス、将来の私たちが享受する有用な商品を生み出すための研究開発など)が行われなくなり、景気が停滞する。経済とは、もともとモノやサービスを得るために存在するためにあるのにもかかわらず、である。そこで、今回はモノやサービスの規模を測るために用いられるGDPについて学ぶのである。GDPについて正確に理解することは、GDPが本当に私たちの豊かさを表す指標なのかを見当する際にも役立つ。現代経済は大昔の自給自足(自分が食べたり着たり使ったりするものをすべて自分で生産すること)の経済とは違って、各人が各様の役割を分担している経済である。経済が家計、企業、金融機関、政府、日本銀行、外国人というプレーヤー(経済主体)から成り立っていること、そしてそれらの間でお金が循環し、そのお金を通じて商品や金融(株式、債券、保険など)、税金のやりとりが行われていることを理解する。そして、経済は民間の経済主体だけで回っているのではなく、政府や中央銀行(日本では日本銀行)が民間の経済をサポートしていることを理解する。また、バブル経済やバブルの崩壊、それに伴う金融危機や景気対策によって生じる財政赤字問題、さらには通貨危機などが発生するメカニズムなどについても学ぶ。
細目レベル①
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年、154-179、188-195

細目レベル②
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、32-48、50ー61、66ー76

細目レベル③
平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年、138ー155
H.デイリー『エコロジー経済学』NTT出版、2014年、261-273

コマ主題細目 ① 復習(第9・10回) ② 復習(第11・12回) ③ 復習(第13・14回) ④ ⑤
細目レベル ① 復習問題を解くことで、以下のことを確認する。商品の多くは市場を通じて民間企業が供給している。市場価格は基本的には需要と供給の関係で決まる。現実には、市場を持ってしても売れ残りが発生する場合がある。売れ残りは「市場の失敗」の一つである。民間では供給されないモノやサービスが存在することも市場の失敗の例である。独占(1社だけが存在)や寡占(数社だけが存在)も市場の失敗の例である。外部効果と呼ばれる現象も市場の失敗の例である。市場の失敗をカバーする政府の役割として、「市場で取引が円滑に行われるしくみの整備」「公共財の提供」「所得再分配政策」「経済の安定化」がある。通説では、税収よりも一般歳出の方が大きければその年の財政は赤字となり、それが毎年繰り返されると債務残高(借金の累積)が増大していく。プライマリーバランス赤字が年々増えると債務残高が増大していく。政府債務残高が増加するにつれて、歳出の中で国債費(借金を返すためのお金)の占める割合が大きくなり、その分だけ一般歳出が圧迫されることになる。政府債務の増加が引き起こす問題の第二として、財政破綻がある。財政破綻が予想されると、国債の価格は暴落するが、そうなるとこうした国債を保有する金融機関の資産の価値が減少することになるので、財政危機は金融危機につながることもある。
② 復習問題を解くことで、以下のことを確認する。工場で機械を導入して大量生産するということは、機械に投入する原料が大量に必要となり、同時に大量に作った商品を販売するために大きな市場が必要で、安く長時間働く労働者も必要となることを意味していること。機械の技術革新が進んでインド製と同じ品質の綿製品が大量生産できるようになると、イギリスはインドから原料の綿花を大量に輸入し、イギリス国内の工場で綿織物を生産し、それを輸出するようになったこと。綿花のほとんどは北米やインドの植民地のプランテーションで栽培され、労働力は先住民やアフリカから連れてこられた黒人奴隷などでまかなわれたこと。都市の労働者の多くは日常生活に必要なものを市場で購入するしかなくなったこと。その食料は小麦・砂糖・茶であり、それらは植民地からやってきたこと。それぞれの国はセパレートコースを走っているのではなく、すべての国の動向は「世界システム」の動きの一部として把握されるべきであること。需要曲線・供給曲線の理論によれば、ある商品が一時的に供給過剰となってもその後価格が下がって需要と供給は一致するため、売れ残りは発生せず、不況(恐慌)など存在しないことになること。需要・供給曲線の理論の欠点は、経済全体のお金の循環を考慮していないこと。労働者が解雇されたり賃金をカットされたりすると、労働者は消費者でもあるため、大量生産された商品の多くは売れ残ってしまうこともあること。世界大恐慌の時のアメリカのルーズヴェルト大統領がニューディール政策をとり、大規模公共事業を進めて失業者を雇って賃金を払い、消費を刺激したこと。ニューディール政策は景気回復に効果があったと言われているが、実際には、第二次世界大戦による軍事支出の拡大による特需によってアメリカは恐慌から立ち直ることができたかもしれないこと。第二次世界大戦後、多くの先進資本主義諸国では、「大きな政府」が農業や国内産業を外国の産業から保護し、労働者も保護し、財政政策や金融政策によって景気の波を調整したこと。黄金時代においては、農業も工業化・大規模化され、農薬や化学肥料、農業機械を使った大量生産になったこと。第二次世界大戦後、アメリカ政府が必要以上に生産した小麦や大豆を「食料援助」も利用して日本や途上国に輸出したこと。
③ 復習問題を解くことで、以下のことを確認する。資本主義の黄金時代が1970年代頃から(石油危機や穀物価格の高騰などをきっかけとして)行き詰まりを見せるようになったこと。この時代以降、日本がブラジルにお金や人材を送り込んで大豆栽培のためのアマゾン大開拓を支援したこと。ブラジルが現在、世界的な大豆生産国であること。資本主義の行き詰まりを打開しようと、政府の介入を排し、できるだけ市場の自由な取引に身を委ねようとする「新自由主義」の考え方が広まったこと。この考え方が広まると、企業はあらゆる手でコスト削減の努力をするようになったこと。この流れの中で、農産物や食品の国際貿易量も急増し、食品関係の企業、製造業、流通業、小売業、外食産業など、すべての段階で多くの企業が複数の国で事業を展開する多国籍化が進んだこと。グローバリゼーションが進む中で、中国も市場を開放したこと。中国には、日本の総合商社や大手食品企業も進出していること。総合商社は現在、投資と商取引を融合させる会社となっていること。こうした日本の企業のグローバル展開を日本政府も後押ししていること。日本で一番多く流通しているのは、銀行が発行したお金(預金通貨)である。銀行がお金を発行するときはお金を貸し出すときなので、銀行が発行するお金には利子が付いている。銀行が発行するお金にはどんなデメリットがあるか。政府が発行するお金のメリットにはどんなものがあるか。政府が発行するお金のデメリットにはどんなものがあるか。ソディをはじめ、多くの論者が民間銀行によるお金の発行の権限を縮小することを提唱したが具体的に彼らはどんなことを提唱したか。


キーワード ① 市場と政府 ② 第1次フードレジーム ③ 第2次フードレジーム ④ 第3次フードレジーム ⑤ 公共貨幣
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習課題:授業中に配布したスライド資料、演習問題をもう一度見直し、以下のことを確認しておく。市場価格は基本的には需要と供給の関係で決まる。現実には、市場を持ってしても売れ残りが発生する場合がある。民間では供給されないモノやサービスが存在することも市場の失敗の例である。独占(1社だけが存在)や寡占(数社だけが存在)も市場の失敗の例である。市場の失敗をカバーする政府の役割がある。税収よりも一般歳出の方が大きければその年の財政は赤字となり、それが毎年繰り返されると債務残高(借金の累積)が増大していく。政府債務残高が増加するにつれて、歳出の中で国債費(借金を返すためのお金)の占める割合が大きくなり、その分だけ一般歳出が圧迫されることになる。政府債務の増加が引き起こす問題の第二として、財政破綻がある。財政破綻が予想されると、国債の価格は暴落するが、そうなるとこうした国債を保有する金融機関の資産の価値が減少することになるので、財政危機は金融危機につながることもある。工場で機械を導入して大量生産するということは、機械に投入する原料が大量に必要となり、同時に大量に作った商品を販売するために大きな市場が必要で、安く長時間働く労働者も必要となることを意味していること。機械の技術革新が進んでインド製と同じ品質の綿製品が大量生産できるようになると、イギリスはインドから原料の綿花を大量に輸入し、イギリス国内の工場で綿織物を生産し、それを輸出するようになったこと。都市の労働者の多くは日常生活に必要なものを市場で購入するしかなくなったこと。その食料は小麦・砂糖・茶であり、それらは植民地からやってきたこと。それぞれの国はセパレートコースを走っているのではなく、すべての国の動向は「世界システム」の動きの一部として把握されるべきであること。需要・供給曲線の理論の欠点は、経済全体のお金の循環を考慮していないこと。労働者が解雇されたり賃金をカットされたりすると、労働者は消費者でもあるため、大量生産された商品の多くは売れ残ってしまうこともあること。世界大恐慌の時のアメリカのルーズヴェルト大統領がニューディール政策をとり、大規模公共事業を進めて失業者を雇って賃金を払い、消費を刺激したこと。第二次世界大戦後、多くの先進資本主義諸国では、「大きな政府」が農業や国内産業を外国の産業から保護し、労働者も保護し、財政政策や金融政策によって景気の波を調整したこと。黄金時代においては、農業も工業化・大規模化され、農薬や化学肥料、農業機械を使った大量生産になったこと。第二次世界大戦後、アメリカ政府が必要以上に生産した小麦や大豆を「食料援助」も利用して日本や途上国に輸出したこと。資本主義の黄金時代が1970年代頃から(石油危機や穀物価格の高騰などをきっかけとして)行き詰まりを見せるようになったこと。資本主義の行き詰まりを打開しようと、政府の介入を排し、できるだけ市場の自由な取引に身を委ねようとする「新自由主義」の考え方が広まったこと。この考え方が広まると、企業はあらゆる手でコスト削減の努力をするようになったこと。この流れの中で、農産物や食品の国際貿易量も急増し、食品関係の企業、製造業、流通業、小売業、外食産業など、すべての段階で多くの企業が複数の国で事業を展開する多国籍化が進んだこと。グローバリゼーションが進む中で、中国も市場を開放したこと。中国には、日本の総合商社や大手食品企業も進出していること。日本で一番多く流通しているのは、銀行が発行したお金(預金通貨)である。銀行がお金を発行するときはお金を貸し出すときなので、銀行が発行するお金には利子が付いている。銀行が発行するお金にはどんなデメリットがあるか。政府が発行するお金のメリットにはどんなものがあるか。政府が発行するお金のデメリットにはどんなものがあるか。
履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
お金の役割と価値 お金には1.価値尺度としての役割2.交換手段としての役割3.価値保蔵機能としての役割、があることを理解している。お金とは実体のない記号である、ということを理解している。現金でそのまま保存する方法の他に、預金する、保険に加入する、株式や債券などを買うなどがあることを理解している。資産選択の際には、元本の保証や流動性など、が考慮されることを理解している。お金は現金通貨と預金通貨から成り立っていることを理解している。 第2回のキーワード 5 2
金融と金利 金融とは資金の融通であることを理解している。金利は基本的には(資金)需要と(資金)供給のバランスによって決まることを理解している。金利は流動性やリスクにも左右されることを理解している。銀行の貸出先である企業の業績が悪化し、返済が困難になるようなことがたびたび起こると、銀行は新たな貸出に消極的になることを理解している。融資を受けられなくなった銀行も経営破綻するような事態が数多く生じると、金融システム全体がまひすることを理解している。 第3回のキーワード 10 3
株式と社債 債券とは、企業が資金調達のために発行する証券の一種であることを理解している。投資家は債券を保有する限り、利子を得ることができるが、購入と売却の価格差による利益を得ることもできることを理解している。株式とは、企業が資金調達のために発行する証券の一種であることを理解している。投資家は株式を保有する限り、配当を得ることができるが、購入と売却の価格差による利益を得ることもできることを理解している。株価は需要と供給のバランスで決まることを理解している。 第4回のキーワード 10 4
バブル 株式の価値は、理論上はファンダメンタル価値によって決まるが、現実の株価はそれと一致しないことが多いことを理解している。現実の資産価値のうち、実力を上回る部分をバブルというが、キャピタルゲインが目的で株式が売買される場合、バブルが生じやすいことを理解している。バブルが崩壊すると投資家の保有する資産の価値が下落し、投資家は買い物を減らすことを理解している。借りたお金で行った株式の取引が失敗すると本人だけでなく経済全体にも悪影響が及ぶことを理解している。サブプライムローン問題において、返済能力の低い人々に次々とお金が貸し付けられたのは、借り手が銀行に「途中で返せないと思ったら、住宅を売れば良い」と言われていたからであると理解している。サブプライムローン問題において。住宅価格が高騰していたときにうまく回っていた歯車が、住宅価格が下落するとことごとく回らなくなったことを理解している。 第5回のキーワード 10 5
日本銀行の役割 日本銀行は日本銀行券を発行する唯一の主体であり、銀行の銀行であり、政府の銀行であり、「最後の貸し手」であり、金融政策を実施する主体であることを理解している。金融政策には緩和政策と引き締め政策とがあり、生産・雇用の増加を期待して行うのが金融緩和政策、物価上昇の抑制や、生産・雇用の抑制を期待して行うのが金融引き締め政策である、ということを理解している。現在日本の金融政策は、主にオペレーションを用いて行われることを理解している。 第6回のキーワード 5 6
GDP GDPの定義を知っている。GDPはまた、お金の分配状況も表しており、各々の付加価値は、企業や労働者などに分配されることを理解している。経済成長率は、当該年度とその前年度のGDPの差額を前年度のGDPで割ったものに100を掛けたもので表されることを知っている。GDPの大きさの決まり方は、時代や地域によって異なってくる(発展途上の経済では供給力に、成熟した経済では、需要の大きさに左右される)ことを理解している。1国の経済は生産→分配→支出の流れから見ることができることを理解している。 第7回のキーワード 10 7
市場と政府 市場価格は基本的には需要と供給の関係で決まること理解している。市場の失敗とは何かを理解している(例も挙げることができる)。市場の失敗をカバーする政府の役割としてどんなものがあるかを知っている。プライマリーバランス赤字が年々増えると債務残高が増大していくことを理解している。政府債務残高が増加するにつれて、歳出の中で国債費の占める割合が大きくなり、一般歳出が圧迫されることを理解している。財政破綻が予想されると、国債の価格は暴落して金融危機が起こることがあることを理解している。 第9回、第10回のキーワード 15 9,10
資本主義、フードレジーム 資本主義とそれ以前の社会の違いを理解している。現代の資本主義がどのように形成されたのかを理解している。それぞれの時代のフードレジームがどのように形成されたのかを理解している。なぜ大量生産・大量消費が可能になったのか理解している。産業革命以降、原材料や労働者がどのように調達されるようになったのか理解している。恐慌(不況)の原因について理解している。なぜ政府が市場に介入するようになったのか理解している。先進国による「食料援助」がなぜ行われたのか理解している。食の高度化について説明できる。なぜ資本主義の黄金時代の終焉以降、新自由主義とグローバリズムが広まったのか理解している。日本の総合商社の活動について説明できる。 第11回~第13回のキーワード 25 11,12,13
政府貨幣、公共貨幣 世の中に流通しているお金のほとんどが、政府が発行したものではなく、民間銀行が発行したものであるということを理解している。民間銀行が発行したお金は利子付きのお金であるということを理解している。政府は財源不足を、自分でお金を発行してまかなうのではなく、民間銀行が発行したお金を借りているため、債務が増大する傾向があることを理解している。民間銀行が貸し出しを増やすと経済全体のお金の量が増えることを理解している。政府が発行するお金のメリット・デメリットを理解している。 第10回、第11回のキーワード 10 14
評価方法 期末試験100%で評価する。 *成績発表後、教務課にて試験・レポートに関する総評が閲覧できます。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 なし
参考文献 平賀綠『食べ物から学ぶ世界史』岩波ジュニア新書、2021年.
山口雅生『経済のことが基礎からわかる本』日本能率協会マネジメントセンター、2011年.
実験・実習・教材費 なし