区分 専門基礎科目-疾病の治療と回復促進
ディプロマ・ポリシーとの関係
実践能力 倫理観 専門性探求
地域社会貢献 グローバル性
カリキュラム・ポリシーとの関係
豊かな人間性 広い視野 知識・技術
判断力 探求心
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
解剖生理学での正常な体の働きの知識に基づき、異常が生じた状態である病気のなりたちを学ぶ
科目の目的
病理学とは病気及び病的状態の本質について研究する医学分野で、病気(疾病)とは、正常の生活現象の調和が乱れ正常とは異なるようになった状態をさし、発育・運動・生体反応・物質代謝などのさまざまな働きが異常となることをいう。これらは、全身、臓器、組織、細胞、遺伝子、体液等の異常や、それぞれの固有の機能の異常としてとしてあらわれるので、これらを学ぶことにより疾病の原因を科学的に理解し、疾病の発症の機序を学ぶ。その結果として、人体にどのような影響が現れどのような臨床症状を呈するかを学習する。看護学とは、病的状態のヒトとの関わりかたを学ぶ学問であり、病気の本質を理解することは極めて重要である。
到達目標
病気の原因となる体内のメカニズムを理解する。各々の臓器の代表的な疾病における病理学的変化を、臨床症状と関連づけて理解する。看護師国家試験問題で要求されるレベルの基本的な知識を身につける。具体的には、履修判定指標の項目をを参照。

科目の概要
病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる病理学的事象と、各臓器で特異的におこる病理学的事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる病理学的事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有におこる病理学的事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。
科目のキーワード
細胞 組織 再生 修復 循環障害 炎症 免疫 感染症 代謝異常 老化 先天異常 腫瘍
授業の展開方法
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」の教科書の記述に沿って講義を進める。総論として9回、各論として6回の講義を行う。教科書の図表は特に重要であるが、十分な理解が必要な事項については、ホワイトボードにシェーマや図表を書いて注意ポイントを個別に解説する。また講義の理解度を自己点検するため「manaba」を用いた小テストを実施するが、問題は教科書に付属する「病理学整理ノート」の問題集から出題し、その結果をフィードバックして個々の理解の程度を確認し効率的な学習をうながす。
オフィス・アワー
研究室704:火曜2限
E-mail:k-honda@uhe.ac.jp

科目コード ERE01
学年・期 2年・前期
科目名 病理学
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 必修
学習時間 【講義】30h
【予習・復習】60h
前提とする科目 解剖生理学Ⅰ、解剖生理学Ⅱ
展開科目 疾病・治療論Ⅰ、疾病・治療論Ⅱ、疾病・治療論Ⅲ
関連資格 看護師資格 保健師資格
担当教員名 本田和男・松山キャンパス教務課
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 病理学の領域 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。ここでは、病理学とはどのような学問なのかを理解する。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」3~11頁、および付属の「病理学整理ノート」1~2頁
コマ主題細目 ① 病理学の概要 ② 疾病、人体病理学と実験病理学 ③ 病理診断、病理解剖
細目レベル ① 病理学とは、病気および病的状態の本質について得研究する医学の一分野で、疾病とは正常の調和が破れ正常と異なるようになった生活現象をさし、物質代謝、発育、増殖、反応、運動などのさまざまな働きが異常となることをいう。これらの身体の異常は、全身、臓器、組織、細胞、体液などの異常としてあらわれるため、異常が発生している臓器組織、体液などを研究することにより,病気の基本的しくみや本体があきらかとなる。病理学は、病気の原因、発生の仕組み、経過、転帰(病気の結末)などの一連の過程を調べ病気の本質を研究する学問であることを理解する。病理学は総論と各論に分けられる。総論とは病気の原因とそれに対する生体の反応、病気の経過・転帰などについて、全身の臓器で共通する一般的な原理を学ぶ。各論ではそれぞれの臓器別の病態を学ぶ。
② 病気について学ぶには、経験のみによる知識では無く、科学的根拠に基づいた情報を集め整理して学習する必要がある。これを科学的根拠(エビデンス)に基づいた医療(evidence-based medicine:EBM)という。健康の維持は動的平衡状態にある内部環境の定常性によりもたらされており、このホメオスタシスを破る原因を病因という。病因には外因と内因(素因)が存在し、外因とは生体の統合性を脅かし,個体の健康と生存に有害な影響を与えるもので有害刺激といわれる。似た概念にストレスがあるが、これには有害刺激とそれに対する身体反応も同時に含まれている。内因には遺伝的要因が関与する。人体病理学は生検や術中診断などの病理学的診断と死亡患者の病理解剖での知見を基盤とする。一方、実験病理学は動物実験や細胞培養などにより病気の状態を再現して病気の仕組みを研究する。
③ 診断病理学は臨床医学の一分野で、症状や徴候、検査所見で診断するのでは無く、組織そのものを用いて診断するので、ほとんどの場合、「確定診断」の意義を持つ。1)生検:患者から病変臓器や組織の一部を採取して検査する。 2)手術標本病理検査:摘出された早期や組織を診断する。 3)術中迅速診断:手術中に摘出された組織の診断を直ちに行いその結果により手術方針を決定する。4)細胞診:分泌物内の細胞や細い針で組織を穿刺吸引して採取した細胞を顕微鏡で調べて癌細胞の有無を検査する。病理解剖とは、患者の死亡後、遺族の承諾のもとに行われる。臨床診断の適否、病気の進行度、治療の適否、治療による病変の修飾、死因の解明などを行う。
キーワード ① 病理学、疾病、病因、転帰 ② ホメオスタシス、有害刺激、身体反応 ③ 診断病理学、細胞診、生検、死体解剖
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の3~11頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の1~2頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で3頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

2 細胞・組織とその障害 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。ここでは、病気(疾病)を、細胞や組織などのミクロのレベルでの障害として理解する。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」13~23頁、および付属の「病理学整理ノート」4~6頁
コマ主題細目 ① 細胞の構造と機能、組織 ② 細胞障害 ③ 壊死とアポトーシス、萎縮
細目レベル ① 体は細部の集合体であるため、健康の基本は体を構成している細胞すべてが健全であることが必要である。細胞は、体を構成し生活現象を営む最小単位であり、細胞膜で包まれている。人体では細胞は赤血球と血小板を除いてすべて核をもっていて、DNAとクロマチンを含み46本の染色体を形成する。細胞質には細胞内小器官が存在し、エネルギーを産生するミトコンドリアとタンパク分解酵素を含むライソゾームが重要である。組織は同じ方向に分化した細胞群で構成される。さまざまな組織に分化でき自己複製能力を持つ特別な細胞を幹細胞と呼ぶ。組織は上皮組織、支持組織、筋組織、神経組織に分類される。そのうち、上皮組織は円柱上皮、移行上皮、重層扁平上皮がある。また筋組織は骨格筋、平滑筋、心筋の3種類がある。
② 細胞は休みなく活動し常に物質を代謝していて、周囲からの刺激や環境の変化に対応して、形をかえたり働きを調整したりして適応する。しかし適応できる範囲には限度があり、これを超える要求やストレスが細胞に及ぶと細胞が障害される。細胞を障害する原因としては、虚血による低酸素症、病原微生物、化学物質(毒物)、物理的障害(放射線、紫外線など)などがある。これらの原因で細胞・組織・臓器におこる変化として、変性、壊死、萎縮があげられる。変性では細胞質の腫脹や脂肪空胞の出現などが見られるが、可逆的変化であり、障害の原因がなくなれば細胞は正常に回復する。壊死では細胞死が起こり、萎縮では細胞・組織・臓器の容積が減少する。
③ 壊死とは高度の障害で生じる細胞や組織の死で、ライソゾーム内に含まれるさまざまな酵素が活性化されて、細胞を構成する成分が分解される自己融解と呼ばれる不可逆的変化である。凝固壊死や融解壊死、壊疽(感染が合併)などに分類される。一方、アポトーシスは細胞が自ら命を絶つ能動的な細胞死である。組織の発生・分化の過程で不要になった細胞や生体の恒常性の維持にとって不要になった細胞はこの仕組みで除去される。細胞・組織・臓器の容積が減少することを萎縮と呼ぶ。最初から充分に形成されていないため容積が小さい場合は低形成とよぶ。萎縮には生理的萎縮(成人での胸腺の萎縮、閉経後の子宮や卵巣の萎縮)、無為萎縮(脳性麻痺による四肢の筋肉の萎縮)、圧迫萎縮(水腎症の腎実質の萎縮、皮膚の褥瘡)がある。
キーワード ① 細胞膜、核、細胞内小器官、上皮組織、支持組織、筋組織、神経組織 ② 変性、壊死、萎縮 ③ 壊死、アポトーシス、萎縮、低形成
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の13~23頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の4~6頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で6頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

3 再生と修復 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。ここでは、傷害された組織の修復の機転を理解する。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」25~32頁、および付属の「病理学整理ノート」7~9頁
コマ主題細目 ① 再生と再生医療、化生 ② 創傷治癒と肉芽組織 ③ 異物の処理、肥大と過形成
細目レベル ① 生体が損傷や障害などにより消失した組織を復元する働きを再生という。表皮、毛髪、爪、子宮内膜、血球などは常に再生していて,生理的再生とよばれる。全く同じ物が再現される場合完全再生という。再生が不完全であったり,元の状態と異なる場合は不完全再生とよぶ。病的な状態での再生ではほとんどが不完全再生で,結合組織に置き換えられることが多い。再生しない組織として目のレンズ、中枢神経細胞、心筋などがある。再生能力の弱い組織は、腺上皮、骨格筋、平滑筋で、再生能力の強い組織は、扁平上皮、血液細胞、卒号組織、末梢神経繊維、神経膠組織などである。既に分化した組織が,他の分化した組織に置換されることを化生という。喫煙による気管支粘膜の円柱上皮の扁平上皮化生、慢性胃炎による胃粘膜の腸粘膜上皮化生などがある。
② 創傷治癒とは、外傷による組織の欠損を直そうとする過程で、炎症反応と肉芽組織の増殖よりなる。創傷で傷口から盛り上がる薄赤い柔らかい組織が肉芽組織で、白血球や組織球の浸潤と線維芽細胞の増殖がみられる。肉芽組織は、線維芽細胞が産生する膠原線維に置き換わり白い硬い組織となり、これを瘢痕とよぶ。肉芽組織が瘢痕組織に変化する過程を器質化とよぶ。創傷治癒過程は浸出期、増殖期、瘢痕形成期の3つの時期に分かれる。創傷部位の肉芽形成が少ない場合瘢痕形成も少なく、一次的治癒とよぶ。組織欠損が多いと多くの肉芽組織が形成され、大きな瘢痕を残して治癒し、二次的治癒とよぶ。骨折の場合には骨折端に血腫が形成され、次いで線維芽細胞が増殖して仮骨が形成され、これが石灰化して治癒する。
③ 異物は外来性のものと自分自身の組織に由来するものがあるが、生体にとって異物は有害なので、炎症反応や免疫反応が生体防御に働く。異物を体外に排除するのがもっともよい対処法であるが、異物が組織にとどまる場合はマクロファージに貪食され消化吸収される。消化や吸収がむつかしい異物に対しては、異物をマクロファージや異物巨細胞が取り囲む異物肉芽腫形成が行われる。器質化が充分に行えない場合には、肉芽組織から変化した線維性結合組織で異物をおおってしまい体内で隔離してしまう被包化がおこるが、これは不完全な異物の処理である。個々の細胞の大きさが増加することを肥大という。細胞の大きさはかわらないが、細胞の数が増加することを過形成という。
キーワード ① 完全再生、不完全再生、再生しない組織、扁平上皮化生、腸粘膜上皮化生 ② 浸出期、増殖期、瘢痕形成期期 ③ 貪食、基質化、異物肉芽腫、被包化、生理的肥大、病的肥大、代償性肥大、仮性肥大
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の25~32頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の7~9頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で9頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

4 循環障害と炎症 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。ここでは、病因として最も多い循環障害と炎症について理解する。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」33~68頁、および付属の「病理学整理ノート」10~16頁
コマ主題細目 ① 組織の血流 ② 全身循環の異常 ③ 急性炎症、慢性炎症
細目レベル ① 血液の循環は大(体)循環と肺循環、微小循環系に大別される。肉眼的所見の充血とは、動脈の拡張により組織の血液が増加した状態で、うっ血は静脈の環流が傷害されて組織の血液が増加する(肺うっ血、肺水腫)。血液の全成分が血管系の外に出ることを出血という。血管壁が破れる破綻出血と毛細血管壁から赤血球が漏れ出す漏出性出血がある。なかなか止血しない素質を出血性素因とよび、血液凝固異常、血小板の異常、血管壁の異常が関係する。血液の凝固が血管内や心臓内でおこることを血栓症という。血流によって運ばれてきた非溶解性の異物によって血管が閉塞された状態を塞栓症という。虚血とは局所に流入する動脈血が減少した状態で、梗塞は虚血状態になった領域が限局性に壊死に陥ることである。
② 浮腫とは血管外組織に過剰な液体成分が増加した状態である。浮腫の原因として、毛細血管での静脈圧の上昇、血液膠質浸透圧の低下、リンパ管の閉塞、毛細血管透過性亢進が挙げられる。腹腔、胸腔、心嚢腔に液体が貯留することを、腹水、胸水、心嚢水と呼ぶ。からだを流れる血液量が急激かつ高度に減少することにより、生命維持に必要な血液供給が出来ない重篤な状態をショックという。低容量性ショック、心原性ショック、閉塞性ショック、血液分布異常性ショックがある。収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧が90mmHg以上の場合を高血圧という。大部分は本態性高血圧で、動脈硬化症が原因となる。血圧上昇の原因となる基礎疾患が明らかなものを二次性高血圧とよぶ。
③ 炎症とは生体に加わるいろいろな刺激に対する生体反応で、炎症を起こす刺激には、細菌やウイルス感染、化学物質(酸やアルカリなど)、物理的刺激(外傷など)、放射線や紫外線、熱などがある。炎症は,有害な刺激を排除し組織障害を修復・再生する生体防御反応である。炎症の四徴は発赤、発熱、疼痛、腫脹であり、機能障害を加えて五徴という、炎症に関わる細胞は炎症細胞と呼ばれ、白血球、マクロファージ、リンパ球がある。化学伝達物質としては血管作動性アミンやアラキドン酸代謝産物が関与する。慢性炎症は急性炎症が長引いて移行するものと、ウイルス性肝炎のように最初から慢性炎症として発症する場合がある。肉芽腫性炎症は結核やハンセン病、梅毒などによる慢性増殖性炎症である。炎症が全身に広がった重篤な状態をsystemic inflammatory response syndrome :SIRSとよぶ。
キーワード ① 充血、うっ血、出血、血栓症、塞栓症、虚血、梗塞 ② 浮腫、ショック、高血圧 ③ 発赤、発熱、腫脹、疼痛、機能障害、SIRS
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の33~68頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の10~16頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で16頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

5 免疫とアレルギー 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。ここでは、免疫機構に異常が起こって発症する疾患を学ぶ。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」69~86頁および付属の「病理学整理ノート」17~20頁
コマ主題細目 ① 免疫系の仕組みと働き ② アレルギー ③ 自己免疫疾患、免疫不全症、移植免疫
細目レベル ① 体内に入ってきた微生物や,癌細胞、移植された組織などの非自己の物質を抗原と呼び、非自己を認識して排除する反応が免疫反応である。生まれつき備わっている自然免疫と、リンパ球が特異的に抗原を認識する獲得免疫がある。骨髄のB細胞は活性化すると形質細胞となり抗体(IgG, IgA, IgM, IgE)を産生して液性免疫応答をおこす。胸腺のT細胞は刺激を受けて、細胞傷害性(キラー)T細胞、他のリンパ球を助けるヘルパーT細胞となり細胞性免疫にはたらく。抗原特異性の低い免疫応答するナチュラルキラー(NK)細胞は、腫瘍細胞や感染細胞を殺す。マクロファージは、肝臓ではクッパー細胞、脳ではミクログリア細胞とよばれ、貪食作用を行うことにより自然免疫をになっているが、抗原提示能力もある。抗原提示に特化した細胞として樹状細胞がある。液性因子としては抗体以外に補体がある。
② 体内に入ってきた異物そのものの作用ではなく、免疫応答によって生体組織の障害や病気がもたらされる。Ⅰ型:即時型はアナフィラキシー型ともよばれ、気管支喘息、花粉症、じんま疹など大部分のアレルギー疾患はこの機序による。肥満細胞や好塩基球の表面のIgE抗体に抗原が結合すると、細胞からヒスタミン、セロトニン、ロイコトリエンなどの化学伝達物質が放出され、組織の障害をひきおこす。Ⅱ型:細胞障害型は、細胞や赤血球の表面抗原にIgGやIgM等の抗体と補体が結合して細胞を破壊する。Ⅲ型:免疫複合体型は、血液中で抗原とIgGが結合して免疫複合体となり、さまざまな臓器の血管壁に沈着し、これに補体が結合して炎症を起こす。Ⅳ型:遅延型は、細胞性免疫で細胞傷害性(キラー)T細胞により細胞障害がおこる。
③ 自己免疫疾患とは、通常は自己の構成成分に対しては免疫応答を起こさない(免疫寛容、トレランス)が、この仕組みが何らかの原因で破綻すると自己の組織や細胞を攻撃排除しようとしいて発症する。臓器特異的自己免疫疾患として、橋本病(甲状腺)、重症筋無力症(アセチルコリンレセプター)、自己免疫性溶血性貧血(赤血球)、全身性自己免疫疾患として、全身性エリテマトーデス(抗核抗体)、関節リウマチ(抗滑膜抗体)などがある。先天性あるいは後天性の原因によって免疫系がうまく働かない状態。感染症(日和見感染)にかかりやすくなる。後天性免疫不全症候群(AIDS)はヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によりおこる。供与者(ドナー)から移植された臓器に存在する同種抗原を、移植を受けた受容者(レシピエント)の免疫系が非自己と見なした時に拒絶反応がおきる。
キーワード ① 免疫担当細胞、抗体、補体 ② 即時型、細胞障害型、免疫複合体型、遅延型 ③ 免疫寛容、トレランス、臓器特異的自己免疫疾患、全身性自己免疫疾患後天性免疫不全症候群(AIDS)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の69~86頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の17~20頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で20頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

6 感染症 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。ここでは、病原微生物の感染によって発症する疾患を学ぶ。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」87~98頁、および付属の「病理学整理ノート」21~23頁
コマ主題細目 ① 病原微生物と感染 ② 感染臓器と病原菌 ③ 抗菌薬、耐性菌、菌交代現象、感染対策
細目レベル ① 病原微生物が侵入門戸にとどまる状態を定着、宿主に病気を発症させれば感染と呼ぶ。細菌、真菌、ウイルス、原虫、寄生虫などがある。細菌感染では感染症の患者の喀痰、尿、血液,膿等に含まれる細菌は、グラム染色により、グラム陰性菌(桿菌が多い)とグラム陽性菌(球菌が多い)に分けられる。血液や膿など細菌検査に提出する材料は、「臨床検体」とよぶ。感染様式には、内因性感染、外因性感染、水平感染、垂直感染、市中感染、院内感染などがある。病原微生物が身体に侵入し感染症を発症するまでの期間を潜伏期とよぶ。インフルエンザウイルスは1~2日、麻疹や風疹は数日から2週間、HIVは数年におよぶ。感染防御には、貪食細胞、細胞性免疫、液性免疫、抗体、補体などの免疫系、皮膚、粘膜などの物理的バリアがある。
② 病原体と各臓器の間には特異的な組み合わせがある。気管支炎・肺炎(肺炎球菌、インフルエンザ菌)、膀胱炎(大腸菌)、性感染症(淋菌)、皮膚感染症(連鎖球菌、黄色ぶどう球菌)、消化管感染症(サルモネラ、大腸菌O157)、心内膜炎(連鎖球菌)など。最初に感染した臓器で筋の増殖を封じ込めることができないと、菌が血液中に流入し全身に回り、末梢の動脈血中に菌の存在が認められる状態を菌血症とよぶ。さらにこれが全身のさまざまな臓器の感染症に発展すると敗血症とよぶ。臨床的には、呼吸数20/分以上、心拍数90/分以上、体温38℃以上または36℃以下、白血球数12000以上または4000以下の4項目のうち2項目以上を満たせば、敗血症とみなし強力な集中治療が必要とされる。
③ 抗菌薬は病原菌の再生・増殖に必要なタンパク質や細胞壁の合成を阻害する。作用機序には、細胞壁合成阻害(βラクタム系抗菌薬(ペニシリン、セファロスポリン)グリコペプチド)、たんぱく合成阻害(アミノグリコシド)、DNA複製阻害(フルオロキノン)、RNA重合阻害(リファンピシン)、葉酸代謝阻害(サルファ剤)などがある。同じ抗菌薬が効きにくくなる抵抗性を獲得した菌を耐性菌と呼びMRSAが代表的である。抗菌薬を長期間投与していると感受性を示さない別の菌が増殖する場合があり、菌交代現象と呼ぶ。日常的予防は手洗い・うがいなどで、感染経路別予防として、手指消毒、手袋着用、マスク・ガウン着用などがある。ある特定の感染症の予防のためにはワクチンの予防接種が行われる。
キーワード ① 細菌、グラム陽性菌、グラム陰性菌、潜伏期、細胞性免疫、液性免疫 ② 菌血症、敗血症 ③ 耐性菌、日和見感染、手洗い、手指消毒、予防接種
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の87~98頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の21~23頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で23頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

7 代謝異常と老化 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。ここでは、代謝の異常により起きる疾病と老化による老年病について学習する。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」99~132頁、および付属の「病理学整理ノート」25~30頁
コマ主題細目 ① 代謝異常 ② 生活習慣病 ③ 老化
細目レベル ① 糖尿病はインスリン作用の不足により慢性的な高血糖をきたす。Ⅰ型糖尿病は遺伝的素因と自己免疫が関係して、膵臓のランゲルハンス島のB細胞が減少しインスリン分泌が減少して発症する。Ⅱ型糖尿病は遺伝的素因と生活習慣がひきがねとなり、インスリン分泌の低下とインスリンレセプターの減少によるインスリン抵抗性の進行により発症する。病理学的には高血糖が持続することによる血管障害で、細小血管障害、大血管障害がおこる。網膜症、腎症、神経障害の三つが重要である。脂質代謝異常では高LDLコレステロール血症と低HDLコレステロール血症と高トリグリセライド血症がみられ動脈硬化をおこす。核酸の代謝異常により尿酸が関節などにたまり痛風を発症する。
② 動脈硬化や糖尿病、肥満症、高血圧など、長年の生活習慣の蓄積が発症や進行に関与する病気は生活習慣病といわれる。不適切な食事、喫煙、運動不足、精神的ストレスなど、個人の生活習慣が関与している。肥満の定義は体格指数(BMI)25以上であるが、内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満がある。肥満症とは肥満に起因する健康障害を合併している状態をさす。脂肪細胞は重要なサイトカインを産生していて、レプチンは視床下部の満腹中枢を刺激して食欲を抑える。アディポネクチンは、動脈内膜へのマクロファージの侵入やコレステロールの沈着を抑制し粥状動脈硬化を防止する。内臓脂肪型肥満でインスリン抵抗性、脂質異常、高血圧などを合併した状態をメタボリックシンドロームとよぶ。
③ 細胞の機能低下は、細胞分裂の回数が通常は50回から60回くりかえすと細胞の寿命をむかえることによる(ヘイフリック限界)。これは染色体末端部にあるテロメアトよばれる繰り返し配列が,細胞分裂のたびに短縮してゆくことによる。老化した細胞では、核がいびつでクロマチンの凝集がみられ、ミトコンドリアは膨化しクリスタが消失、細胞質への異常蛋白の沈着などがみられる。DNAに傷を持つ細胞が無秩序に増殖をくりかえすと癌が発生する。臓器の老化は機能低下をおこす。脳:認知症、アルツハイマー病、肺:老人性肺気腫、心血管系:心不全、不整脈、腎臓:腎不全、生殖器:閉経、更年期障害、骨関節:骨粗鬆症、変形性関節炎、感覚器:白内障、老人性難聴
キーワード ① Ⅰ型糖尿病、Ⅱ型糖尿病、インスリン依存性、インスリン抵抗性、LDLコレステロール、HDLコレステロール、尿酸 ② 肥満、メタボリックシンドローム、レプチン、アディポネクチン ③ ヘイフリック限界、癌化、認知症、心不全、骨粗鬆症
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の99~132頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の25~30頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で30,31頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

8 新生児の病理と先天異常 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。新生児の生理は成人とは異なり、特別なケアが必要である。早産児では特有の病態がある。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」133~156頁、および付属の「病理学整理ノート」31~37頁
コマ主題細目 ① 正常産児の疾病 ② 早産児の疾病 ③ 先天異常
細目レベル ① 日齢28日未満の乳児を新生児という。日齢7日未満は「早期新生児」で新生児死亡の半数はこの時期である。胎児は羊水に囲まれ胎盤で母親とつながり、胎盤を介して酸素や栄養が供給され老廃物は処理される。在胎器官が37週以降42週未満で出生した新生児を正規産児とよぶ。37週未満で出生した場合は早産児とよぶ。低酸素性虚血性脳症は、胎盤機能不全と新生児仮死に引き続き発症し、虚血・低酸素と再灌流傷害により遅発性神経細胞死がおこる。精神発達遅滞と脳性麻痺を合併する。胎便吸引症候群は、低酸素状態で胎児の腸管蠕動運動が亢進し出生前に羊水中に胎便を排泄し羊水混濁がおこる。これを気管内に吸引すると、肺炎、サーファクタントの不活化により無気肺や肺気腫がおこる。分娩外傷は、頭血腫、帽状腱膜下出血、産瘤、頭蓋内出血などがある。
② 在胎22週未満の出産は流産とよぶ。在胎22週以降で出産した早産児では、臓器が未熟で皮膚の角質も未発達のため特別なケアが必要である。また2500g未満の体重で出生した場合は低体重児とよぶ。いずれも胎外環境への適応が困難なため、さまざまな疾患を併発する。皮膚は角質層が形成されていないため、感染対策が必要である。呼吸促迫症候群(respiratory distress syndrome:RDS)は、肺の機能が低く努力呼吸とチアノーゼがみられる。原因は肺胞Ⅱ型上皮から分泌されるサーファクタントの分泌・合成障害のため、気道内にサーファクタントの投与し呼吸管理を行う。動脈管開存症は、胎児で肺動脈と大動脈を結ぶバイパスの役割をする血管が、出生後も閉鎖しない状態である。その他に脳室内出血、消化管穿孔などがある。
③ 遺伝的要因では単一遺伝子疾患として常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X連鎖性遺伝があり、染色体異常としては数の異常(トリソミー、モノソミー)、形態の異常などがある。ほとんどの遺伝病(口唇口蓋裂、無脳症、二分脊椎、幽門狭窄症、ヒルシュスプリング病、多指症、先天性心疾患など)は多因子遺伝病で、複数の遺伝子と環境要因が作用する。妊娠中の感染症によっても胎児の異常が起こり、TORCH症候群とよばれ、トキソプラズマ・その他(パルボウイルス、梅毒など)・風疹ウイルス・サイトメガロウイルス・単純ヘルペスウイルス感染症の頭文字である。ダウン症候群は21番染色体トリゾミーである。水頭症は二分脊椎症に合併する。泌尿器では尿道下裂、停留精巣がある。
キーワード ① 新生児、早期新生児、低酸素虚血性脳症 ② 流産、早産、呼吸促迫症候群、動脈管開存症、 ③ 単一遺伝子疾患、染色体異常、環境要因、TORCH症候群、ダウン症候群、二分脊椎症、尿道下裂、停留精巣
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の133~156頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の31~37頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で36頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

9 腫瘍と重篤疾患 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。腫瘍は我が国の死因の第一位である。ここでは腫瘍の形態、発生、伸展吉敷を学ぶ。また、集中治療を要するような重篤疾患について学ぶ。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」157~181頁、および付属の「病理学整理ノート」37~43頁
コマ主題細目 ① 分類、伸展と転移 ② 原因と発生のメカニズム ③ 重篤疾患
細目レベル ① 宿主に対する影響で良性腫瘍と悪性腫瘍に分類される。良性腫瘍は、発育速度が遅く膨張性で、局舎再発や遠隔転移は起こらない。細胞の異型性は弱く血管・リンパ管への浸潤はない。良性腫瘍は、発育速度が遅く膨張性で、局舎再発や遠隔転移は起こらない。細胞の異型性は弱く血管・リンパ管への浸潤はない。悪性腫瘍は、発育速度が早く浸潤性・破壊性で、局舎再発や遠隔転移を起こす。細胞の異型性は強く血管・リンパ管への浸潤をおこす。発生組織による分類では、上皮性腫瘍と非上皮性腫瘍、混合腫瘍がある。悪性の上皮性腫瘍は癌腫、悪性の非上皮性腫瘍は肉腫と呼ばれる。腫瘍がもとの病巣(原発巣)から離れて他の部位に定着増殖することを転移と呼び、血行性転移(静脈内に腫瘍細胞が侵入し血流により遠隔臓器に運ばれて定着しそこで発育する)、リンパ行性転移(リンパ管内に腫瘍細胞が侵入しリンパ液により所属リンパ節に運ばれて定着しそこで発育する)、播種性転移(胸膜や腹膜などの漿膜の表面に腫瘍細胞が露出し体腔内にばらまかれて定着しそこで発育する)がある。
② 腫瘍の原因は,体外性の要因(外因)と宿主側の要因(内因)にわけられる。外因には、化学薬品などさまざまな物質(アスベスト、タールなど)や、放射線、紫外線、ウイルス(ヒトパピローマウイルス、ヒト成人T細胞白血病ウイルス)、細菌(ヘリコバクター・ピロリ)などがあげられる。内因としては、遺伝的素因、栄養状態、加齢、免疫力低下、ホルモンの状態などがある。腫瘍細胞にはいくつかの遺伝子に変異がみられ、癌遺伝子と癌抑制遺伝子の2種類にわけられる。細胞の遺伝子の変異が積み重なってより悪性度の高い腫瘍に変化してゆくことを多段階発がん説という。がん遺伝子の多くは細胞の増殖に関係する遺伝子で、この遺伝子に変異が起こることにより、増殖に関係するタンパク質の活性が上昇し,細胞の増殖能が増す。がん抑制遺伝子は細胞の増殖を制御したりアポトーシスを誘導したりする遺伝子で、これらに以上が起こると細胞増殖のブレーキがきかなくなって異常増殖が起こる。
③ 救急医療や集中治療の観点から見ると、死因に直結するような生命の危機をもたらす致死的急性重症疾患には、多発外傷、広範囲熱傷、急性中毒などがある。播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation: DIC)は、全身感染症による敗血症などにより血液凝固が異常に亢進して血管内で凝固が起こり、全身の微小循環系で微小血栓が形成され重要臓器の血流障害を生じる。また大量の血小板や凝固因子が消費される結果、出血傾向が生じる重篤疾患である。多臓器機能障害症候群(multiple organ dysfunction syndrome: MODS)は、ショック、重症外傷、敗血症などを原因として、2つ以上の臓器・系に制御不能の炎症が生じた進行性の機能不全である。急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome: ARDS)は急性の呼吸不全で、必ずしも肺に原因がない間接的な障害によっても発症する。炎症細胞が肺に集積し、血管透過性亢進により肺水腫が生じる。
キーワード ① 癌腫、肉腫、血行性転移、リンパ行性転移、播種性転移 ② 遺伝子変異、がん遺伝子、がん抑制遺伝子 ③ DIC、MODS、ARDS
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の157~181頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の37~43頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で40, 43頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

10 循環系と呼吸器系 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。ここでは、循環器系の疾患と呼吸器系の疾患について学ぶ。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」185~226頁、および付属の「病理学整理ノート」44~49頁
コマ主題細目 ① 心臓の主な疾患 ② 血管系の主な疾患 ③ 呼吸不全と炎症性肺疾患、塵肺と肺癌
細目レベル ① 心臓の冠動脈の狭窄によりおこる虚血性心疾患には、狭心症と心筋梗塞がある。冠動脈の狭窄の原因となるのは動脈硬化(粥状硬化症)で、狭心症では狭くなった冠動脈が自律神経異常による痙攣(攣縮:スパズム)を起こすことによって、一時的に心臓の血流が低下し、発作性の激しい胸痛をきたす。心筋梗塞では、血管内腔が閉塞して支配領域の心筋の血流が断たれるので心筋は壊死に陥り、生命の危機にさらされる。心臓弁膜症は、リウマチ熱や感染性心内膜炎などにより心臓内の弁の変性が起こり、狭窄や閉鎖不全をきたす。僧帽弁と大動脈弁に多く、いずれも肺うっ血がおこる。心奇形としては、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症、ファロー四徴症などがある。
② 動脈硬化は、粥状硬化、メンケベルグ型中膜硬化、細動脈硬化があるが、一般的には内膜が丘状に隆起した粥腫を形成する粥状硬化をさす。粥腫は、内部に脂質コア(コレステロール結晶をふくむ粥状物)があり、線維性被膜で覆われていてマクロファージやリンパ球の浸潤をみとめる。粥状硬化の発生には、低比重リポタンパク(LDLコレステロール)の上昇と、高比重リポタンパク(HDLコレステロール)の低下が関係している。大動脈瘤は、内膜の粥状硬化により中膜が破壊され菲薄化して、動脈が紡錘状に拡張したもので、破裂により大出血を起こす。解離性大動脈瘤では、内膜の裂隙から血液が中膜に浸入し、中膜が血圧によって内層と外層に裂けて行き(解離)、壁内に偽腔が形成される。
③ 無気肺とは肺胞が開かず潰れている状態で、肺気腫は肺胞壁が破壊され気腔が異常に拡張した状態である。肺気腫の原因は加齢、喫煙、大気汚染、職業因子、慢性気管支炎などが挙げられる。運動や労働時の息切れ喘鳴があり、肺尖部にブラができて気胸の原因となる。炎症性肺疾患には肺炎、気管支喘息、インフルエンザ、肺結核、サルコイドーシスなどがある。二酸化ケイ素の吸入による珪肺、アスベストによる肺線維症(アスベスト肺)がある。肺癌のうち扁平上皮癌と小細胞癌は喫煙と関連があり、小細胞癌は肺の中枢に発生するため発見が遅れ、急速に増大し遠隔転移、リンパ節転移の頻度も高く悪性度が高い。腺癌がもっとも多く、早期に発見され治療の予後も良い。胸膜に発生する悪性中皮腫は、アスベストとの関連がある。
キーワード ① 虚血性心疾患、弁膜症、心奇形 ② 粥状硬化、粥腫、大動脈瘤、解離性大動脈瘤 ③ 呼吸不全、炎症性肺疾患、肺線維症、アスベスト、喫煙、扁平上皮癌、小細胞癌
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の185~226頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の44~49頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で46, 49頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

11 消化器系 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。ここでは、消化管と消化吸収に関与する臓器の疾病について学ぶ。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」227~260頁、および付属の「病理学整理ノート」50~56頁
コマ主題細目 ① 歯・口腔・食道・胃 ② 小腸・大腸 ③ 肝・胆道・膵
細目レベル ① 口内細菌が歯に付着した食物を分解し、また細菌の酵素によって歯が破壊されることをう蝕といい、罹患した歯はう歯とよばれる。歯周疾患である歯槽膿漏は全身的原因(糖尿病、血液疾患、内分泌異常など)でも発症する。口腔内に発生する悪性腫瘍は扁平上皮癌が最も多い。食道癌は扁平上皮癌で、中高年に多く早期発見では内視鏡的治療が可能であるが、進行すると重篤な合併症をひきおこす。胃潰瘍や胃がんの原因としてヘリコバクター・ピロリ菌が注目されている。胃癌は腺癌で、早期胃がんとは癌の浸潤が粘膜下層までにとどまるもので、さらに深く浸潤した場合は進行胃がんとよばれる。胃癌の伸展は、所属リンパ節転移、ウイルヒョウ転移(左鎖骨上窩リンパ節転移)、播種性転移(癌性腹膜炎)、血行性肝転移・肺転移がある。
② 急性虫垂炎は、腹痛、嘔気・嘔吐、右下腹部の圧痛、発熱、白血球増多などで発症し、カタル性虫垂炎、化膿性虫垂炎、壊疽性虫垂炎の3段階で重症化する。穿孔すると腹膜炎になる。腸の内容物の通過障害が起きる場合を腸閉塞といい、機械的腸閉塞と機能的腸閉塞がある。ヘルニアは、腹膜をかぶったまま腸管が腹腔から脱出する疾患で、鼡径ヘルニアでは鼠径管から脱出する。慢性炎症性腸疾患としては、クローン病と潰瘍性大腸炎が重要で、クローン病は飛び石的に腸管の炎症性狭窄が起こり、潰瘍性大腸炎は、出血・潰瘍を伴う粘膜炎症が直腸から口側に伸展する連続的病変が特徴である。大腸癌は頻度の多い悪性腫瘍で3分の2は直腸からS状結腸に生じる。腺腫からの複数の遺伝子の段階的変異による多段階発癌が認められる。
③ ウイルス性肝炎はA型、B型、C型があり、A型は経口感染、B、C型は血液感染である。B型は急性肝炎として発症し約10%が慢性肝炎に移行する。C型は高頻度に慢性肝炎に移行し、肝硬変となる。肝硬変では肝性脳症(肝性昏睡)や門脈圧亢進症などの合併症を生じる。肝癌は慢性肝炎から肝硬変を経て発症することが多い。肝硬変になると肝臓で血液がうっ血し門脈圧亢進症となる。門脈血は肝臓を通らず側副血行路(食道静脈瘤、腹壁静脈怒張など)を通って体循環に合流する。急性膵炎は急性膵壊死ともいわれ、膵臓組織が膵酵素で自己消化される重篤な疾患で適切な全身管理が必要である。膵癌は早期発見がむつかしく悪性度の高い予後の悪い癌である。
キーワード ① う歯、歯周病、歯槽膿漏、食道癌、ヘリコバクター・ピロリ菌、早期胃がん、進行胃がん ② クローン病、潰瘍性大腸炎、大腸癌 ③ ウイルス性肝炎、肝硬変、、肝癌、門脈圧亢進症
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の227~260頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の50~56頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で51, 56頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

12 内分泌と造血系 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。ここではホルモンの働きにより全身の生体反応を調節している内分泌系と、赤血球、白血球、血小板などの血液成分をつくっている造血系の疾病について学習する。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」261~289頁、および付属の「病理学整理ノート」57~62頁
コマ主題細目 ① 脳下垂体、甲状腺、副甲状腺、 ② 副腎、膵臓ランゲルハンス島、脂肪組織 ③ 貧血、脾腫、リンパ節炎、白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫
細目レベル ① 脳下垂体は視床下部からのホルモンによる制御を受けていて、下垂体から分泌されるホルモンは上位の視床下部に作用して分泌量を抑制する(負のフィードバック)。脳下垂体で成長ホルモンが過剰に産生されると、下垂体性巨人症や先端巨大症になり、成長期に分泌が不足すると下垂体性小人症になる。脳下垂体にACTH(副腎皮質刺激ホルモン)産生腫瘍が出来ると、副腎皮質から過剰なコルチゾルが分泌されクッシング病になる。バセドウ病では甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、橋本病(臓器特異的自己免疫疾患)では甲状腺ホルモンが低下する。甲状腺機能低下症では、粘液水腫、皮膚乾燥、低体温、精神鈍麻、発汗減少などがみられる。副甲状腺は機能亢進では血清カルシウムが増加し、機能低下では血清カルシウムが低下する。
② 副腎皮質からコルチゾールが多量にでると、クッシング症候群になる。満月様顔貌、中心性肥満、腹部皮膚線条、高血圧、糖尿病などが特徴である。逆に機能低下状態はアジソン病とよばれ全身倦怠感、体重前障、食欲不振、低血圧、低血糖がみられる。副腎皮質腺腫がアルドステロンを過剰に分泌すると原発性アルドステロン症となり多尿となる。ランゲルハンス島のB(β)細胞からのインスリン分泌の低下と耐糖能の低下によりⅡ型糖尿病になる。Ⅰ型糖尿病は自己免疫疾患で、B細胞に対する抗体が出現しラ氏島にはリンパ球が浸潤している。脂肪組織からは抗糖尿病、抗動脈硬化作用のあるアディポネクチンや、摂食抑制作用のあるレプチンが分泌される。
③ 貧血は末梢血のヘモグロビン濃度が低下している状態で、原因により鉄欠乏性貧血、再生不良性貧血(骨髄造血機能低下)、溶血性貧血(自己免疫や遺伝病による溶血)などがある。脾腫とは脾臓が腫大した状態で、血液疾患や門脈圧亢進症、感染症でおこる。感染症により局所のリンパ節炎がおこる。白血病は、白血球が悪性化し全身に浸潤増殖する疾患で、急性骨髄性白血病では白血病裂孔がみられる。慢性骨髄性白血病ではフィラデルフィア染色体がみられ、脾腫、肝腫がみられる。多発性骨髄腫は形質細胞が悪性化したもので、骨の破壊像、血漿Mタンパク(ベンスジョーンズ蛋白)、腎障害が特徴である。悪性リンパ腫にはB細胞リンパ腫とT細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫がある。
キーワード ① 成長ホルモン、ACTH、甲状腺ホルモン、血清カルシウム ② クッシング症候群、アジソン病、原発性アルドステロン症、糖尿病 ③ ヘモグロビン、汎血球減少症、門脈圧亢進症、白血病裂孔、フィラデルフィア染色体、ベンスジョーンズ蛋白
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の261~289頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の57~62頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で59, 62頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

13 腎・泌尿器系と生殖器・乳腺 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。ここでは、腎臓・尿管・膀胱・尿道を含む泌尿器系の疾患と、男性生殖器・女性生殖器・乳腺の疾患について学習する。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」291~321頁、および付属の「病理学整理ノート」63~67頁
コマ主題細目 ① 腎臓、尿路の疾患 ② 男性生殖器の疾患 ③ 女性生殖器、乳腺の疾患
細目レベル ① 急性腎不全は重症熱傷、外傷、重篤な感染症などでおこり、臨床的には尿量の減少(乏尿)、BUNの急な上昇がみられる。急性尿細管壊死では、急性期を乗り越えると尿細管が再生し腎機能が回復に向かうため急性期の適切な全身管理が重要である。慢性腎不全のほとんどは糖尿病に併発し、進行性の場合には人工透析が必要となる。糸球体の病気としてネフローゼ症候群(タンパク尿、低蛋白血症、高コレステロール結晶)、急性糸球体腎炎(溶連菌感染後)、IgA腎症(IgAがメサンギウムに沈着、メサンギウム増殖性腎炎)、自己免疫疾患(SLEのループス腎炎)や糖尿病(糖尿病腎症)によるものがある。尿路の疾患としては、尿路感染症、尿路結石症、癌などがある。腎細胞癌は中高年に多い、膀胱癌は移行上皮癌で化学物質(アニリン色素など)が発生に関係する。
② 前立腺肥大症は、尿道を取り巻く前立腺内腺の結節性過形成で加齢に従って増大し、高齢男性の排尿障害の主な原因となる。排尿障害(頻尿、残尿、下腹部膨満感)や膀胱炎・腎盂腎炎などを引き起こす。前立腺癌は日本でも増加傾向で、50歳代以上で前立腺外腺から発生する。スクリーニング検査として血清のPSA(前立腺特異抗原)検査が重要である。前立腺癌の多くが男性ホルモンであるアンドロゲン依存性の増殖をするため、内分泌療法が有効である。また骨転移を起こす頻度が高く、一般の骨転移は溶骨性(単純X腺撮影で黒くぬける)であるが、骨形成性の転移(単純X腺撮影で白く濃くなる)をきたすのが特徴である。精巣腫瘍ではセミノーマが最も頻度が高く、停留睾丸での発生頻度が高い。
③ 子宮頸がんは、子宮頚部頸管移行部に発生する扁平上皮癌で、ヒトパピローマ(乳頭腫)ウイルスが関与する。パピローマウイルスの持続感染は子宮頚部上皮の異形成を引き起こし上皮内癌から浸潤癌に移行する。検診では子宮腟鏡により粘膜を擦過して検体の細胞診(パパニコロウ染色)を行う。子宮体がんは子宮体部の粘膜から生じ、腺癌で、不正性器出血を主訴として発見されることが多い。子宮の良性腫瘍としては子宮筋腫の頻度が高い。卵巣腫瘍は女性生殖器腫瘍のなかで最も死亡数が多い。乳腺の良性腫瘍として線維腺腫があり、20~30歳代に頻発する可動性の良い弾性軟の球状の腫瘤で、被膜に覆われていて悪性化することはない。悪性腫瘍は乳癌で、日本でも増加傾向にあり、40歳代以降に急増する。臨床的には腫瘤触知、異常乳頭分泌(血清分泌物)などで発見され、検診ではマンモグラフィー、超音波検査が行われる。遺伝性乳がん卵巣がん症候群ではBRCA1やBRCA2遺伝子の変異をもつ。
キーワード ① 急性尿細管壊死、糸球体腎炎、尿路結石、膀胱癌 ② 前立腺肥大症、前立腺癌、セミノーマ ③ 子宮頸がん、子宮体がん、卵巣腫瘍、乳がん、BRCA遺伝子
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の291~321頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の63~67頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で65, 68頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

14 脳神経系 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。ここでは、脳など中枢神経系ののさまざまな疾患、末梢神経の疾患ついて学習する。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」323~337頁、および付属の「病理学整理ノート」69~71頁
コマ主題細目 ① 脳血管障害 ② 神経変性疾患と脱髄疾患 ③ 感染症、外傷、腫瘍
細目レベル ① 脳は全体が頭蓋骨と硬膜に包まれ脳脊髄液に使った状態で保護されているが,この閉鎖腔に腫瘍や血腫などの容積を占める病変が出現した場合には、頭蓋内圧が高くなりやすく、頭痛・嘔吐・うっ血乳頭(眼底鏡による眼底の観察)・意識障害・徐脈などの臨床症状があらわれる。さらに圧迫されると、小脳テント(天幕部)の下方に脳実質が陥入し、これを脳ヘルニアとよび生命を脅かす危険な状態である。脳卒中とは、急激に起こり意識障害・運動麻痺などの神経症状を合併する脳血管障害全般をさす。脳梗塞は動脈の粥状硬化に伴って血栓が形成され、脳血管が閉塞する。脳出血は細動脈の破綻による脳内出血で、クモ膜下出血は脳動脈瘤の破裂の場合が多い。
② 神経の変性疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)が代表的である。アルツハイマー病では大脳全体のびまん性の萎縮がおこり、認知症、物忘れ、見当識の低下が進行する。脳にはβタンパクからなるアミロイドが沈着し老人斑を形成し、神経細胞内には神経原繊維変化がみられる。パーキンソン病は、筋強剛、振戦、無動症(運動減少)等の錐体外路症状を示し、病理学的には中脳の黒質にあるドーパミン含有神経細胞が脱落変性し、レビー小体とよばれる細胞内封入体がみられる。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、筋肉の運動を支配する脊髄前角細胞や脳幹の運動神経核細胞が選択的に脱落し、骨格筋に神経原性の筋萎縮がおこり、呼吸筋も麻痺して死に到る。脱髄性疾患としては多発硬化症があげられ、跳躍伝導をおこすために軸索を取り巻いている髄鞘が破壊され脱髄斑が広範にみとめられる。

③ 脳実質に炎症が起こる脳炎は、日本脳炎ウイルスの感染による物が多かったが最近では見られない。髄膜炎では、脳脊髄を包む髄膜に炎症が起こり、脳脊髄液中にリンパ球や好中球などが多数出現するので髄液検査が重要である。病原体は細菌、ウイルス、真菌などさまざまである。頭部の外傷による頭蓋内血腫として、硬膜外血腫は頭蓋骨の骨折などにより生じ、頭蓋骨と硬膜の間に出血した場合をいう。慢性硬膜下血腫は、はっきりした外傷の既往がない高齢者で徐々に時間をかけて硬膜下の血腫が増大して発症する。神経膠細胞から発生しグリオーマと呼ばれる。アストロサイトーマ(星細胞腫)、グリオブラストーマ(膠芽腫)、メデュロブラストーマ(髄芽腫)、シュワノーマ(神経鞘腫)などがある。下垂体腺腫では内分泌異常を伴うものがある。
キーワード ① 脳ヘルニア、粥状硬化、塞栓、脳動脈瘤 ② 老人斑、レビー小体、ドーパミン、脱随班 ③ 髄液検査、慢性硬膜下血腫、グリオーマ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の323~337頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の69~71頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で71頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。

15 運動器系と感覚器系 科目の中での位置付け 病理学は病気(疾病)の原因を研究する学問であるが、そのメカニズムとして全身で共通しておこる事象と、各臓器で特異的におこる事象に大別される。そこでまず総論として、全身で共通しておこる事象:「病理学の概要」、「細胞・組織とその傷害」、「再生と修復」、「循環障害と炎症」、「免疫とアレルギー」、「感染症」、「代謝異常と老化」、「新生児の病理と先天異常」、「腫瘍と重篤疾患」について9回で講義する。さらに各論として臓器固有ににおこる事象:「循環系と呼吸系」、「消化器系」、「内分泌と造血系」、「腎・泌尿器系と生殖器・乳腺」、「脳神経系」、「運動器系と感覚器系」について6回の講義を行う。ここでは、骨、関節、筋肉などの運動器系の臓器と、資格、聴覚、臭覚、触覚に関わる感覚器の異常について学習する。
ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第5版」339~376頁、および付属の「病理学整理ノート」73~81頁
コマ主題細目 ① 骨 ② 関節・筋肉 ③ 視覚・聴覚・嗅覚・皮膚(触覚)
細目レベル ① 骨折には一次性治癒と二次性治癒がある。一次性治癒とは、両骨折端が解剖学的に隙間無く未着して強固に固定できた場合に認められ、骨芽細胞が骨折端をまたいで侵入し骨新生が起こる。二次性治癒では骨折端の血腫が肉芽組織に代わり、線維芽細胞が増殖して結合織性仮骨となり、これにカルシウムなどが沈着して成熟した仮骨トなり骨癒合がおこる。骨の虚血性壊死によるものとしてペルテス病(大腿骨頭、6から8歳に好発)やオスグッド病(脛骨粗面、10から16歳に好発)がある。骨粗鬆症は骨量(骨密度)が減少した状態で、閉経後の女性に多い。骨肉腫は代表的な骨悪性腫瘍で、10歳代から20歳代で、大腿骨遠位、脛骨近位、上腕骨近位等に多く予後が悪い。
② 相対している関節面が接触を失った状態を脱臼といい、肩関節、股関節などでおこる。関節運動障害の状態を原因でわけると、強直とは関節運動制限の原因が関節の構成要素の病変にあるもので、拘縮は、周囲の支持軟部組織に原因がある。変形性関節症は、軟骨の老化により関節軟骨の変性と増殖がおきて関節面が変形し、疼痛や運動域の低下がおこる。関節リウマチは自己免疫疾患で、関節滑膜に対する自己抗体により炎症が生じ、次第に軟骨、骨を破壊して変形が生じる。筋萎縮症(サルコペニア)は筋肉量減少と筋力低下がおこる。運動器不安定症とは転倒リスクが高まった状態、ロコモティブシンドロームとは介護・介助が必要かそのリスクが高まった状態をいう。
③ 緑内障は、眼房水の静脈系への排出路であるシュレム管の狭窄による眼圧の上昇により、視神経が傷害され、視野狭窄や失明がおこる。白内障は、水晶体を構成するタンパク質が変性し混濁したもので、加齢とともに進行する老人性白内障や、外傷、放射線、薬物などによるものがある。糖尿病では、細小血管障害による網膜循環障害で、毛細血管瘤、網膜出血、白斑、血管新生などが起こり、網膜剥離や緑内障を合併して失明する(糖尿病網膜症)。中耳の疾患は化膿性中耳炎、内耳の疾患はメニエール病、突発性難聴がある。単純疱疹は単純へルパスウイルスによるもので、帯状疱疹は水痘ウイルスによりおこる。皮膚の悪性腫瘍としては、有棘細胞癌、悪性黒色腫が代表的である。
キーワード ① 一次性治癒、二次性治癒、虚血性壊死、骨粗鬆症 ② 強直、拘縮、運動器不安定症、ロコモティブシンドローム ③ 緑内障、白内障、帯状疱疹、悪性黒色腫
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 予習方法:教科書「カラーで学べる病理学」の339~376頁を熟読し、読み方のわからない医学用語に下線を引いておく。また医学用語についての説明が理解できない部分もチェックしておき、講義中に疑問が解消できなければ積極的に質問して疑問点を放置しないように準備する。掲載されている図表の説明文を確認し、本文の記述のどの部分と関連しているのかを確認しておく。
復習方法:教科書の付録の「病理学整理ノート」の73~81頁に目を通し、講義で示された重要ポイントを再確認する。その上で77, 82頁に掲載されている確認問題に解答して、末尾の正解と比較し答え合わせを行い、理解が不十分な項目を自己チェックする。不正解であった項目については、再度、教科書「カラーで学べる病理学」の該当する記述を復習する。。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
病理診断の理解、組織・細胞の障害と修復、再生、老化について理解 病理診断の意義を理解するとともに、臨床病理学での組織診断および細胞診の手順を説明できる。悪性腫瘍と良性腫瘍の違いについて述べることができる。上皮性腫瘍と肉腫の違いを説明できる。組織・細胞の障害と修復・再生の過程を理解する。壊死とアポトーシスの違いについて説明できる。肥大と過形成の違いを理解する。異物に対する貪食細胞の働きを理解する。創傷治癒の過程を説明できる。また細胞の分化、組織や各臓器の老化のメカニズムについて述べることが出来る。 組織診断、細胞診、悪性腫瘍、再生、創傷治癒、細胞分化、老化 10 1,2,3
炎症、感染症について理解 炎症反応について、炎症の機序、関与する細胞を説明できる。炎症マーカーと炎症性サイトカインの生体における意義を述べることが出来る。炎症性疾患の発症原因とSIRS(全身性炎症反応)について説明できる。また炎症の原因となる各種感染症の病原微生物を列挙しその特徴を説明できる。薬剤耐性菌の発生の原因と代表的な耐性菌、菌交代現象について説明できる。日常的感染対策、感染経路別予防策、特定感染症への予防策について説明できる。 炎症、炎症性サイトカイン、SIRS 10 4,6,9
免疫とアレルギー、自己免疫疾患、膠原病について理解について理解 免疫臓器、免疫に関与する細胞を列挙することが出来る。細胞性免疫に関与する細胞と細胞間での情報伝達機構を述べることが出来る。液性免疫に関与する細胞と、免疫グロブリンおよび補体について説明できる。1~4型アレルギーのメカニズムと関与する細胞について説明できる。代表的なアレルギー疾患を列挙できる。全身性自己免疫疾患と臓器特異的自己免疫疾患の違いを説明し、それぞれの代表的疾患を挙げることが出来る。 リンパ球、細胞性免疫、免疫グロブリン、アレルギー、自己免疫病、膠原病 10 5
先天異常と腫瘍について理解 新生児と早期新生児の定義を述べることが出来る。低酸素性虚血性脳症の発生頻度と臨床症状を説明できる。早産児の定義を述べることが出来る。呼吸促迫症候群の呼吸管理について説明できる。染色体異常と遺伝子の変異の違いについて説明し、それぞれの代表的な疾患について説明できる。良性腫瘍と悪性腫瘍のちがいを理解する。悪性腫瘍の成因について述べることが出来る。血行性転移、リンパ行性転移、播種性転移について説明できる。癌遺伝子と癌抑制遺伝子の作用の違いを説明できる。 染色体異常、遺伝子変異、浸潤、転移 10 8,9
血液疾患について理解 血液凝固に関与する諸因子と血液凝固反応の段階的な進展について説明できる。その上でさまざまな凝固異常症について、おのおのどの因子が関与しているか説明できる。血栓症と塞栓症の違いを説明できる。粥状動脈硬化の原因を説明できる。鉄欠乏性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血、急性白血病、慢性白血病、多発性骨髄腫の臨床症状とその病態を説明できる。 B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫のそれぞれの特徴を述べることが出来る。 凝固、血栓症、動脈硬化、白血病、悪性リンパ腫 10 12
代謝、内分泌疾患について理解 Ⅰ型糖尿病とⅡ型糖尿病の違いを説明できる。痛風の原因物質とそれらが引き起こす臨床症状を述べることが出来る。脂質異常症についてLDLコレステロールとHDLコレステロールのそれぞれの役割を述べることが出来る。下垂体性ホルモン分泌異常により引き起こされる代表的疾患を列挙できる。甲状腺ホルモン分泌異常亢進症と甲状腺ホルモン分泌低下症の臨床症状を説明できる。副腎皮質ホルモン分泌亢進症(クッシング症候群)と副腎皮質ホルモン分泌低下症(アジソン病)の病態を説明できる。 糖尿病、痛風、バセドウ病、クッシング症候群 10 7,12
循環器疾患、呼吸器疾患について理解 心不全の病態と全身臓器に与える影響について説明できる。虚血性心疾患である狭心症の心筋梗塞ちがいについて述べることが出来る。心臓弁膜症として、僧帽弁と大動脈弁それぞれの狭窄症と閉鎖不全症の発症機序、症状を理解する。高血圧症の定義と本態性高血圧症、二次性高血圧症の原因のちがいについて説明できる。肺炎の代表的原因病原体を列挙できる。COPD、無気肺、肺気腫、気管支喘息、塵肺症について説明できる。肺癌で、扁平上皮癌と小細胞癌と喫煙の関連性について理解する。肺腺癌の特徴を説明できる。 心不全、心筋梗塞、肺炎、COPD、肺癌 10 10
消化器疾患について理解 胃・十二指腸潰瘍の原因としてのヘリコバクターピロリの除菌の意義について説明できる。早期胃がんと進行胃がんの定義について述べることが出来る。慢性炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎とクローン病の各々の特徴を対比して説明できる。大腸腺腫から大腸癌に至る過程の遺伝子変化を述べることが出来る。ウイルス性肝炎のA型、B型、C型について、それぞれの感染経路と病態の特徴を説明できる。胆管炎、膵炎の原因を説明できる。肝癌、胆管癌、胆嚢癌のそれぞれの悪性度について説明できる。膵癌の予後について述べることが出来る。 胃・十二指腸潰瘍、胃癌、大腸癌、肝炎、肝癌、胆管癌、膵癌 10 11
脳・神経、運動器疾患について理解 脳浮腫によりおこる頭蓋内圧亢進症と脳ヘルニアの病態について説明できる。脳梗塞の原因と代表的な症状について説明できる。脳出血とくも膜下出血のちがいと病態を述べることが出来る。アルツハイマー病に特徴的なな老人斑の原因物質について述べることが出来る。パーキンソン病の発症の機序を説明できる。代表的な脳腫瘍を列挙できる。頭部外傷による硬膜外血腫と慢性硬膜下血腫の違いを説明できる。関節の強直と拘縮のちがいを説明できる。運動器不安定症とロコモーティブシンドロームの各々の定義を述べることが出来る。 脳梗塞、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄疾患 10 14,15
泌尿生殖器疾患について理解 ネフローゼ症候群、急性糸球体腎炎、IgA腎症について発生のメカニズムと症状を説明できる。本態性高血圧症と腎性高血圧症のちがいを説明できる。代表的な尿路感染症を列挙できる。腎癌とウイルムス腫瘍のちがいを説明できる。膀胱癌の化学発癌について説明できる。子宮頸癌と子宮体癌の組織と発生機序の違いについて説明できる。前立腺癌の生化学検査、画像診断、針生検について説明できる。精巣腫瘍を列挙できる。 乳癌の遺伝子異常について述べることが出来る。 糸球体腎炎、腎癌、膀胱癌、子宮癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌 10 13
評価方法 期末テスト(100%)
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 ヌーベルヒロカワ社「カラーで学べる病理学 第4版」および付属の「病理学生理ノート」
参考文献 なし
実験・実習・教材費