区分 専門科目-基盤看護学-地域・在宅看護学
ディプロマ・ポリシーとの関係
実践能力 倫理観 専門性探求
地域社会貢献 グローバル性
カリキュラム・ポリシーとの関係
豊かな人間性 広い視野 知識・技術
判断力 探求心
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
在宅療養者と家族の理解および療養生活の継続支援に必要な知識・技術・態度を習得する。また社会資源の活用及び多職種連携と協働の重要性を学び、在宅看護・在宅医療について理解を深める。対象者の疾患及び療養状況・環境等を捉えた在宅ケアの特徴、マネージメント、介護保険、地域包括ケアシステム、権利保障、尊厳と自己決定、家族の介護力、在宅看護技術・医療技術の概要、主な対象別看護等について学習する。
科目の目的
在宅看護における社会・歴史的背景を踏まえ、在宅看護の概念を理解するとともに在宅療養者とその家族の生活環境及び健康上の課題について理解し、住み慣れた地域で質の高い療養生活を安定して継続できるように支援するために必要な知識・技術・態度を学ぶ。また、在宅療養者・家族を支援する地域包括ケアシステムの概要および、在宅看護における社会資源の活用及び保健・医療・福祉チームによる多職種連携と協働の重要性を学び、在宅看護・在宅医療について理解を深めることを目的とする。この科目の修得により社会で広く活躍する看護師の資質が期待される。
到達目標
1.在宅看護の目的・意義を説明できる。 2.継続看護、退院支援・退院調整等について理解し、在宅看護における看護職の役割が説明できる。 3.在宅ケア機関とその特性について説明できる。4.介護保険に関連する施設サービス、在宅サービス、地域密着型サービスの提供機関とその特性について理解し、多職種連携の重要性について説明できる。5.在宅療養者・家族の尊厳と自己決定について理解できる。6.地域包括ケアシステムの概要について理解できる。
科目の概要
在宅看護学領域での学修へ導入する科目である。在宅医療の現状を理解し、在宅看護の役割について理解を深める。そして対象者の疾患及び療養状況・環境等を捉えた在宅ケアの特徴及びサービス、多職種の連携と協働、マネージメントの重要性、介護保険、地域包括ケアシステム、在宅療養者・家族の権利保障、尊厳と自己決定、家族の介護力、在宅看護技術・医療技術の概要、主な対象別看護等について学習する。多死社会における在宅医療の役割を理解し、在宅医療の実践、地域貢献を理解する。病院等での臨床経験及び訪問看護ステーション経験者としての実務経験から、在宅看護の目的・役割、地域包括ケアシステム、多職種連携等、概論について教授する。また、日本のおける著名な地域医療実践医師から、地域医療の社会・歴史的背景とその重要性、地域医療の最新情報等、在宅における実例を交えながら教授を受ける。
科目のキーワード
在宅ケア、在宅看護、療養者・家族、生活支援、地域包括ケアシステム、多職種連携、ケアマネジメントの重要性、在宅療養者及び家族の尊厳と自己決定、在宅医療、介護保険、看取り、意思決定支援、ACP、地域づくり
授業の展開方法
在宅看護の目的と特性を踏まえた社会動向と在宅医療・在宅看護における保健・医療・福祉制度の理解ができるよう、グループワークを交えて授業を展開する。授業の一環として、在宅療養者及び家族の在宅療養における実体験を聴き、理解を深めることができるように計画をする。また実際に地域で活躍されている地域医療の専門家(医師)から、地域医療の実情と取り組み等について現場の事例を紹介していただきながら、地域医療における看護の役割等が理解できるよう、訪問看護師等の活躍の場と対象者の特徴、地域包括ケアシステムの概要等段階的に講義を進める。
オフィス・アワー
青井みどり:研究室711:月曜日から金曜日実習、講義以外の時間で予約の上お越しください
Email:m-aoi@uhe.ac.jp
永井康徳:E-mail:y-nagai@uhe.ac.jp

科目コード ERH01
学年・期 1年・後期
科目名 地域・在宅看護学概論
単位数 1
授業形態 講義
必修・選択 必修
学習時間 【講義】16h
【予習・復習】29h
前提とする科目 看護学原論Ⅰ、Ⅱ、生活援助論
展開科目 在宅看護援助論Ⅱ、在宅看護学実習、在宅・終末期看護援助論、在宅・終末期看護技術論、在宅・終末期看護学外演習、在宅・終末期看護演習
関連資格 看護師資格 保健師資格
担当教員名 青井みどり・永井康徳・松山キャンパス教務課
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 在宅看護の目的と特徴 在宅看護における看護の役割 科目の中での位置付け 日本は平均寿命、健康寿命共に延伸し超高齢社会となり、多死社会を迎えようとしている。政策的にも在宅医療の推進とともに、介護保険の導入、地域包括ケアシステム構築の推進等が図られ、2019年4月には『人生会議』が提唱された。在宅看護は自宅やそれに準じた環境で療養生活している新生児から高齢者までを対象に、生活の質quality of life(QOL)を高めるため、療養者及び家族に対し看護を提供しているが、今後益々在宅看護の需要が高まっている。在宅看護は統合科目として位置づけられ、地域で生活する生活者としての視点から、多様な考え方、長年住み慣れた在宅療養環境や生活史を踏まえたうえでの多様なニーズを理解でき、マネージメントできる基本的な姿勢を養う基盤となるものである。第1回は在宅看護の目的と特徴、看護師の役割、第2回は在宅看護の対象、第3回は日本の訪問看護制度の創設と発展、諸外国の動向、第4回は在宅ケアシステムを支える制度、第5回はなぜ今在宅医療か。第6回は住み慣れた場所での看取り、第7回は、在宅ケアにおける看護技術、第8回は在宅医療で地域を支える、によって構成される。
1回目は、日本看護協会における在宅ケアの概念について理解し、在宅看護の特性、対象者のQOLを高める支援、在宅看護が必要とされる社会背景と在宅看護における看護師の役割等について学ぶ。

「地域・在宅看護論」序章~2章
コマ主題細目 ① 在宅ケアの概念と特性 ② 在宅看護が必要とされる社会背景 ③ 対象者のQOLを高めるための在宅看護における看護師の役割
細目レベル ① 在宅ケアとは、地域の生活者としての個人や家族に対して、人々の住む場を根拠として、疾病や障害を持ちながら現状の社会生活を維持し、それらのことから生ずる心身と社会生活への影響を最小限にするための保健・医療・福祉的側面からの総合的なサービスの概念である。在宅ケアは保健・医療・福祉で構成され、それらを含めたものが在宅看護であり、その中核をなすのが訪問看護になる。在宅看護は、疾病や障害、加齢に伴う変化などを有する全ての療養者・家族のQOLの維持・向上を目指した生活支援が重要である。在宅看護の特性として、対象者の意思の尊重、信頼関係の形成、生活を支援、家族を単位とした看護、総合アセスメント、セルフケア支援、医療者不在時の対応支援、他職種・他機関の専門職と連携・協働等々があげられる。
② 在宅看護が必要とされる社会背景として、年齢構成の変化として少子化と超高齢社会の進展、生活習慣病を主とする慢性疾患や認知症等の増加等々による疾病構造の変化、医学や医療技術の進歩とそれに伴う入院日数の短縮化、障害を抱えた人々の増加、国民の健康意識の高まり、ノーマライゼーションの考えの普及、介護保険制度の導入等々、医療保険制度を含め、在宅ケア制度が大幅に見直されている。そして、介護保険の改正により各々の居住地域に即した地域包括システムの構築が推進され、住み慣れた自宅やそれに準じた環境で生活を希望する人も増加し、グループホーム・ケア付き高齢者住宅、小規模多機能施設等々在宅療養の場の多様化、疾病予防を含めた多角的な対応が求められている。
③ 地域包括ケアシステムの構築推進により、保健・医療・福祉の統合が図られようとしており、在宅看護の重要性が求められている。このような社会情勢の中で、医療職としての看護師が持つべき看護の視点は何かを教授し、在宅看護における看護師の役割について理解を促す。様々な場で療養する在宅療養者・家族に対して各々の生活の場で必要としているニーズを把握し、ニーズに応じたアセスメント、QOLの維持・向上を目指した看護実践を行うことが重要である。現在は在宅看護が提供される場が、居宅介護支援事業所、訪問看護ステーション、看護小規模多機能居宅介護事業所等々も含まれ拡大しており、益々在宅看護における看護職の役割が増大している。
キーワード ① 在宅ケア ② QOLの維持・向上 ③ 超高齢多死社会 ④ 地域包括ケアシステム ⑤ 在宅看護における訪問看護師の役割
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:看護の対象である人間は、周囲の環境から影響を受け、環境との相互作用の中で絶えず変化しながら生活を営んでいるという人間の特性を復習しておく。また、看護学の根底である「患者の生命力の消耗を最小にするよう、環境を整え、健康の回復を目指す」という考え方を看護学概論等で復習しておく。
予習:日本は少子化を伴う超高齢社会に突入しているが、近年の平均寿命、生産年齢人口(15歳から64歳)、老年人口(65歳以上)、年少人口(0~14歳)の推移や平均在院日数の推移を厚生労働者の統計データから予習しておく。また、医療法や介護保険法において「居宅等」とされている在宅看護が提供される場は大変幅広いが、どのようなものがあるか調べておく。

2 在宅看護の対象者 看護が提供される多様な場と生活の場の特性 科目の中での位置付け 日本は平均寿命、健康寿命共に延伸し超高齢社会となり、多死社会を迎えようとしている。政策的にも在宅医療の推進とともに、介護保険の導入、地域包括ケアシステム構築の推進等が図られ、2019年4月には『人生会議』が提唱された。在宅看護は自宅やそれに準じた環境で療養生活している新生児から高齢者までを対象に、生活の質quality of life(QOL)を高めるため、療養者及び家族に対し看護を提供しているが、今後益々在宅看護の需要が高まっている。在宅看護は統合科目として位置づけられ、地域で生活する生活者としての視点から、多様な考え方、長年住み慣れた在宅療養環境や生活史を踏まえたうえでの多様なニーズを理解でき、マネージメントできる基本的な姿勢を養う基盤となるものである。第1回は在宅看護の目的と特徴、看護師の役割、第2回は在宅看護の対象、第3回は日本の訪問看護制度の創設と発展、諸外国の動向、第4回は在宅ケアシステムを支える制度、第5回はなぜ今在宅医療か。第6回は住み慣れた場所での看取り、第7回は、在宅ケアにおける看護技術、第8回は在宅医療で地域を支える、によって構成される。
 2回目は、在宅看護の特徴及び対象者と看護が提供される多様な場、生活支援の重要性について理解を深めることに主眼を置く。一人の療養者が複数の疾患を抱え、他者からの生活支援を必要とする療養者が増加しており、家族支援も考慮することが重要である。看護が提供される場は多様化しており、生活支援を重視したかかわりが求められている状況を理解した上で、継続看護、退院支援・退院調整等地域の関連機関と協働関係を形成する看護援助方法、保健・医療・福祉機関の連携・協働を含めた看護の活動・役割について学ぶ。

「地域・在宅看護論1」1~4章
コマ主題細目 ① 在宅療養者の特徴と在宅生活の継続支援 ② 在宅看護の対象者としての家族 ③ 家族の介護負担
細目レベル ① 在宅療養者は、年齢、疾患、障害等々により多種多様である。疾患では、難病、精神障害、ターミナル等あらゆる疾患が包含され、障害から見た特徴では、障害の程度の指標、日常生活自立度、認知症の程度、要介護度が重要となる。これらは実習でよく目にする主治医の指示書や国試にも出題されており、判定基準を覚えておくことが求められる。在宅療養状態別にみた対象者の特徴では、在宅療養初期、安定期、終末期、疾病予防・悪化防止の支援期がある。看護者は外来通院時、入院時等から患者の身体状況の変化と生活上に及ぼす影響を見通して、退院時にはスムーズに次の療養の場に移行できるようマネージメントし、医療と生活・介護上の橋渡し役が求められる。入院経過状況やタイミングを見極めながらかかわる必要があり、退院支援・退院調整について学ぶ。
② 在宅看護では家族も対象者で共に生きるための支援が必要であり、家族の介護力のアセスメントも重要である。在宅療養者と家族が共に生きるための支援では、家族が共に生活する場での看護の提供であり、療養者の支援と同時に家族の希望・要望等を尊重することが求められる。家族は様々な機能を有しており、療養者と家族の生活史、生き方を尊重し、家族の健康維持能力を引き出すかかわりとして、家族システム理論が有用である。家族システムの特徴を理解し、家族機能のアセスメントと共に個別性を尊重することが大切である。家族への支援として、情報提供・意思決定支援、療養・介護指導、相談と支持的援助、家族関係の調整等により悪循環に陥らないよう早期に課題解決の軌道に修正する有用性について事例を通して学ぶ。
③ 在宅療養生活を順調に継続していくためには、家族等の介護者の介護負担の考慮・アセスメントが重要となる。介護者が負担感を感じる内容としては、腰痛・肩こり等の身体的負担、収入や年金が少額等の経済的負担、療養者や親戚、サービス担当者等の人間関係上の負担、趣味等今まで出来ていたことができなくなる社会的活動の制約、いつまで続くかわからない見通しの不透明さ、介護技術上の負担等々がある。介護負担の軽減として、レスパイトケア(ホームヘルプ、デイサービス・デイケア、ショートステイ)を有効に活用することが有用である。各々の家族状況に応じた介護負担の内容や状況についてアセスメントし、ニーズに沿った支援、家族を支える適切なサポートについて教授する。
キーワード ① 障害高齢者・認知症者の日常生活自立度判定基準 ② 継続看護 ③ 退院支援・退院調整 ④ 家族システム ⑤ 介護負担、レスパイトケア
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:在宅看護は、疾病や障害、加齢に伴う変化などを有するすべての人が自宅やそれに準じた環境で生活できるようにすることを目的とする看護実践であり、保険・医療・福祉のあらゆる面から、対象者及びその家族に対して、生活の質(QOL)の向上を目指すものであることを理解しておく。
予習:在宅看護の場の広がりに伴う、看護師の働き方がどのように変化しているのかを調べておく。医療機関ではない場で、働く看護師の数を調べておく。超高齢・多試写会を乗り切るために、看護師は療養者の生活の場に赴いて必要な看護を提供していけるようにするにはどうすればよいか、考えてくる。また、学校や職場を含む「生活の場」などの社会活動の場において提供される看護も在宅看護と呼ばれるが、具体的にどのようなものがあるか調べてくる。

3 日本の訪問看護制度の創設と発展経緯及び諸外国の訪問看護の動向 科目の中での位置付け 日本は平均寿命、健康寿命共に延伸し超高齢社会となり、多死社会を迎えようとしている。政策的にも在宅医療の推進とともに、介護保険の導入、地域包括ケアシステム構築の推進等が図られ、2019年4月には『人生会議』が提唱された。在宅看護は自宅やそれに準じた環境で療養生活している新生児から高齢者までを対象に、生活の質quality of life(QOL)を高めるため、療養者及び家族に対し看護を提供しているが、今後益々在宅看護の需要が高まっている。在宅看護は統合科目として位置づけられ、地域で生活する生活者としての視点から、多様な考え方、長年住み慣れた在宅療養環境や生活史を踏まえたうえでの多様なニーズを理解でき、マネージメントできる基本的な姿勢を養う基盤となるものである。第1回は在宅看護の目的と特徴、看護師の役割、第2回は在宅看護の対象、第3回は日本の訪問看護制度の創設と発展、諸外国の動向、第4回は在宅ケアシステムを支える制度、第5回はなぜ今在宅医療か。第6回は住み慣れた場所での看取り、第7回は、在宅ケアにおける看護技術、第8回は在宅医療で地域を支える、によって構成される。 
3回目は、訪問看護について学ぶ。訪問看護は療養者が望む居宅等において看護職等が直接出向き、療養生活を支援する看護活動である。この回では、日本の訪問看護制度の創設と発展経緯及び、在宅看護の中核である訪問看護の制度と現状、訪問看護を実施している機関、訪問看護ステーションの開設基準、従事者、対象者、サービス内容、サービス開始までの流れ、利用料等について学ぶ。その後諸外国の訪問看護として、アメリカ、イギリス、オランダ、スウェーデンにおける現状について説明する。

「地域・在宅看護論1 第6版」6章

コマ主題細目 ① 日本の訪問看護制度の創設と発展経緯 ② 日本の訪問看護制度と現状および諸外国の訪問看護 ③ 在宅ケアを支える訪問看護ステーション
細目レベル ① 日本では、高齢化の進展とともに高齢者の介護体制を総合的に整備する必要性が論じられ、在宅看護の制度化がすすめられた。老人訪問看護制度の創設で老人訪問看護ステーションの設置が開始され、保健師若しくは看護師が医療機関外の場で初めて管理者として運営・経営するようになり、社会の注目を浴びた。2年後には健康保険法の改正により、訪問看護制度が創設され、老人以外も対象となり、以後は「老人」を削除して「訪問看護ステーション」という呼称が用いられるようになった。2000(平成12)年には、「介護保険法」が施行され、介護保険制度が創設された。介護保険法の施行により、訪問看護は介護保険法の居宅サービスとして位置付けられ、訪問看護ステーションも居宅サービス事業者の指定を受けて訪問看護を行うことになった。介護保険の訪問看護を利用できない在宅療養者は、医療保険制度の訪問看護を受ける。
② 現在の訪問看護制度は、2000年に開始された介護保険法で「指定老人訪問看護ステーション」「指定訪問看護ステーション」の制度が整備され、これらの施設は「指定居宅サービス事業者」として訪問看護を担っている。2008年からは「高齢者の医療の確保に関する法律」により、後期高齢者医療制度が創設された。2014年の介護保険の改正で、地域包括ケアシステムの構築が掲げられ、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(医療介護総合確保推進法)が成立した。諸外国の訪問看護として、アメリカ、イギリス、オランダ、スウェーデンにおける現状について説明する。そして日本と世界の訪問看護について理解し、今後の日本の在宅看護について考える。
③ 訪問看護ステーションは、介護保険法・健康保険法に基づく訪問看護事業の規定がある。訪問看護事業を開始するためには、人員基準等を満たし、都道府県知事から「指定居宅サービス事業者」の指定を受ける必要がある。介護保険法に基づく指定を受けた訪問看護事業所は、健康保険法に基づく訪問看護事業所の指定を受けたとみなされる。各々の規定には、実施主体、実施形態、管理者、人員・設備及び運営基準・開設基準が定められている。訪問看護ステーションは、2019年4月現在11,161か所の施設が稼働している。介護保険法での管理者は保健師若しくは看護師であるが、健康保険法では助産師も管理者となれる。訪問看護サービスを利用するには、必ず主治医からの訪問看護指示書が必要となる。利用者が支払う訪問看護の利用料は保険の種類によって異なる。
キーワード ① 訪問看護の歴史 ② 訪問看護ステーション ③ 管理者 ④ 諸外国の訪問看護 ⑤ 介護保険
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:在宅看護の場の広がりに伴う、看護師の働き方がどのように変化しているのかを復習しておく。医療機関ではない場で、働く看護師数の変化を復習しておく。超高齢・多死社会を乗り切るために、看護師は療養者の生活の場に赴いて必要な看護を提供していけるようにするにはどうすればよいかまとめておく。また、学校や職場を含む「生活の場」などの社会活動の場において提供される看護も在宅看護と呼ばれるが、具体的にどのようなものがあるか復習しておく。
予習:地域包括ケアシステムの要素である①医療・介護、②介護・リハビリテーション、③保険・予防のサービスと、地域生活の前提となる④生活支援・福祉サービス、⑤住まいと住まい方について概要を予習しておく。(テキストp19図1-7)

4 在宅ケアを支える制度、地域包括ケアの概念およびシステム 科目の中での位置付け 日本は平均寿命、健康寿命共に延伸し超高齢社会となり、多死社会を迎えようとしている。政策的にも在宅医療の推進とともに、介護保険の導入、地域包括ケアシステム構築の推進等が図られ、2019年4月には『人生会議』が提唱された。在宅看護は自宅やそれに準じた環境で療養生活している新生児から高齢者までを対象に、生活の質quality of life(QOL)を高めるため、療養者及び家族に対し看護を提供しているが、今後益々在宅看護の需要が高まっている。在宅看護は統合科目として位置づけられ、地域で生活する生活者としての視点から、多様な考え方、長年住み慣れた在宅療養環境や生活史を踏まえたうえでの多様なニーズを理解でき、マネージメントできる基本的な姿勢を養う基盤となるものである。第1回は在宅看護の目的と特徴、看護師の役割、第2回は在宅看護の対象、第3回は日本の訪問看護制度の創設と発展、諸外国の動向、第4回は在宅ケアシステムを支える制度、第5回はなぜ今在宅医療か。第6回は住み慣れた場所での看取り、第7回は、在宅ケアにおける看護技術、第8回は在宅医療で地域を支える、によって構成される。 
4回目は、在宅ケアを支える制度、地域包括ケアの概念およびシステムについて学ぶ。在宅ケアを支える制度は社会情勢とともに変遷してきた。日本の医療保険制度は、すべての国民が何らかの公的保険に加入する国民皆保険制度によって支えられている。また2000年からは介護保険制度が実施され、様々なサービスが誕生している。医療職は在宅ケアを支える制度について理解し、対象者の生活支援につながる適切なアドバイス等が重要である。訪問看護ステーション、看護小規模多機能型居宅介護、地域包括支援センター等とその特性について、また介護保険に関連する施設サービス、在宅サービス、地域密着型サービスの提供機関とその特性について学ぶ。

医学書院 系統看護学講座 「地域・在宅看護論1」2章
コマ主題細目 ① 在宅看護にかかわる法令・制度 ② 医療保険制度及び関連する制度 ③ 介護保険制度と地域包括ケアシステム
細目レベル ① 日本の医療保険制度は、すべての国民が何らかの公的保険に加入する国民皆保険制度によって支えられている。在宅看護は医療保険制度、後期高齢者医療制度、介護保険制度が主として重要となる。後期高齢者医療制度は75歳以上の後期高齢者に対して適応される。2006年には「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」が施行され、地域連携の推進が盛り込まれた。加えて、医療機関の情報を広く住民に公表するための広告記載が見直され、専門看護師や認定看護師に関する広告が可能となり、ホームページやリーフレットに記載できるようになった。その他、2013年4月に障害者総合支援法、2015年1月に「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が施行され、対象者が拡大された。医療職はそれらの制度を理解し、在宅看護の対象者や家族、地域住民等々に必要な情報等を提供することが求められる。
② 医療法の改正により、「居宅等」が医療提供の場として追加され、訪問看護を提供する場が拡大された。医療保険制度において訪問看護を提供しているのは、病院・診療所と訪問看護ステーションである。後期高齢者等に対しては、後期高齢者医療制度が実施されている。障害者総合支援法の施行により、訪問看護ステーションは、障害時を含む身体障碍者、精神障碍者、知的障碍者等に対して都道府県知事より指定自立支援医療機関の指定を受けて医療の給付が可能となった。またその他に主な公費負担医療として児童福祉法による「小児慢性特定疾病医療」、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律、労働者災害補償保険法、生活保護法、公害健康被害の補償等に関する法律等がある。
③ 介護保険制度は、社会保険方式で運用されており、介護に対する社会的支援、高齢者の能力に応じた自立支援、利用者本位の各種サービスの総合的な体系の構築を趣旨としており、介護保険制度における訪問看護について学ぶ。介護保険制度の保険者は市町村(特別区を含む)であり、国、都道府県、医療保険者、年金保険者が市町村を重層的に支え合っている。被保険者は、65歳以上の第1号被保険者・40歳以上65歳未満の医療保険加入者で16特定疾病による第2号被保険者に区分される。要介護認定、給付対象サービス等々について学ぶ。地域包括ケアシステムについては、本人の選択と本人・家族の心構え」を前提条件とし、「住まいと住まい方」「介護予防・生活支援」「医療・看護」「介護・リハビリテーション」「保健・福祉」が互いに連携しながら提供され地域での生活を支えることとされており、定義、目的等について学ぶ。
キーワード ① 障害者総合支援法、難病法 ② 社会保険方式 ③ 介護認定 ④ 16特定疾病 ⑤ 地域包括システム構成要素
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:地域包括ケアシステムの要素である①医療・介護、②介護・リハビリテーション、③保険・予防のサービスと、地域生活の前提となる④生活支援・福祉サービス、⑤住まいと住まい方について概要を復習しておく。(テキストp19図1-7)また、地域包括ケアシステムの「重度の要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体に提供される」という理念を理解しておく。
予習:在宅看護が対象とする患者はどのような療養者かを調べておく。また、健康状態に応じた様々な入院に際して、2007年に医療法改正によって明確に打ち出された入院期間の短縮化の背景にはどのような政府の状況があるか調べてくる。(テキストp20)

5 在宅医療について なぜ今在宅医療か? 科目の中での位置付け 日本は平均寿命、健康寿命共に延伸し超高齢社会となり、多死社会を迎えようとしている。政策的にも在宅医療の推進とともに、介護保険の導入、地域包括ケアシステム構築の推進等が図られ、2019年4月には『人生会議』が提唱された。在宅看護は自宅やそれに準じた環境で療養生活している新生児から高齢者までを対象に、生活の質quality of life(QOL)を高めるため、療養者及び家族に対し看護を提供しているが、今後益々在宅看護の需要が高まっている。在宅看護は統合科目として位置づけられ、地域で生活する生活者としての視点から、多様な考え方、長年住み慣れた在宅療養環境や生活史を踏まえたうえでの多様なニーズを理解でき、マネージメントできる基本的な姿勢を養う基盤となるものである。第1回は在宅看護の目的と特徴、看護師の役割、第2回は在宅看護の対象、第3回は日本の訪問看護制度の創設と発展、諸外国の動向、第4回は在宅ケアシステムを支える制度、第5回はなぜ今在宅医療か。第6回は住み慣れた場所での看取り、第7回は、在宅ケアにおける看護技術、第8回は在宅医療で地域を支える、によって構成される。
5回目は、在宅医療の現状について日本における在宅医療の先駆者である医師から講義を受け、在宅療養の実事例を紹介していただきながら、在宅医療を支える保険・医療・福祉チーム員の機能と専門性、対象者を中心とするチームの構築方法について学ぶ。

永井康徳・永吉裕子:在宅医療を始めよう!非がん患者の自宅での看取り、南山堂、2016、p9~22
永井康徳・永吉裕子:宅医療を始めよう!医療を変える、地域を変える、文化を変える南山堂、2016、p7~18
永井康徳・永吉裕子:在宅医療たんぽぽ先生多職種連携、金芳堂、2020、p2~36

コマ主題細目 ① 在宅医療とは ② 在宅医療を支える各チーム員の専門性と多職種連携 ③ 超高齢多死社会
細目レベル ① 1947~1949年生まれの団塊の世代が後期高齢者になる2025年前後は、医療や介護の費用など社会保障費が増大するために社会保障制度自体の危機が予測され、「2025年問題」と言われている。それに加え、病院が高齢者であふれ、治療が必要な急性期でも入院ができなくなるのではないか等々、医療体制の崩壊、医療従事者の疲弊も危惧されている。しかし、24時間体制でしっかり対応する質の高い在宅医療が各地域に普及することで解決できる。病気や障害で地域やコミュニティと分断されることなく、住み慣れた場所で最後までその人らしく暮らし、亡くなっていく…、そのような生き方を選べるようになる。在宅医療は、日本人の生き方や文化さえ変える可能性を秘めている。在宅医療は「Doingの医療とBeingの医療」に表現できる。Doingの医療は、治し、施す医療である。Beingの医療は療養者を支え、療養者に寄り添う医療であり、これこそが在宅医療だと考えている。
② Beingの医療は、病気や老化は治せなくても、痛みを取り除いて、身体を楽にすることはできる。療養者は身体が楽になると、「あれが食べたい」、「あそこに行きたい」と、いろいろな意欲がわいてくる。そのような希望が出てきたときには、多職種で連携して、その希望をかなえていく。それが在宅医療の醍醐味であり、在宅医療でしかできない在宅ケアではないかと考えている。Beingの医療は医師をはじめ、ケアマネジャー、訪問看護師、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士等のリハビリスタッフ、訪問ヘルパーなど、多くの専門職が一つのチームになって、療養者・家族に関わる必要がある。それぞれがバラバラにかかわるのではなく、「チーム」になることが肝要である。チームになるには、理念や方針等の情報を共有する必要がある。病院と違い、在宅医療の場合、他職種は他事業所に所属していることが多いため、カンファレンスを充実させることが重要である。カンファレンスを通して、地域の中の事業所スタッフとも共感しあえる関係ができてくる。さまざまな症例を通して地域の事業所スタッフも在宅療養者をどのようにみていけるのかイメージできるようになり、引き出しが少しづつ増えていく。そして新しい事業所スタッフも引き入れていき、信頼できる地域の仲間を増やしていく。

③ 超高齢社会の次にやって来る社会は何か?それは「多死社会」と言われている。「多死社会」という言葉から受けるイメージは暗く不吉なものであるが、 私達はこの問題にしっかりと向き合っていかなければならない。終戦前までは死亡数は高いレベルであったが、その後死亡率は低下している。1980年くらいまでは 人口が増加しても死亡数は増加していなかったが、それ以降死亡数が増加している。何故か?医療の進歩はめざましく、日本の医療レベルはどんどん高くなっているのに、どうして死亡数が増加しているのか。80才未満の死亡数は増加しておらず、 増加しているのは80才以上の高齢者の世代のみである。これはすなわち、治せる病気は医療により治しているということで、治せない病気や寿命で亡くなる人が 増加しているために死亡数が増えているということである。多死社会が意味するもの、それは医療ではどうしようもない「寿命」の問題である。多死社会に求められる医療は、医学がいくら発達しても治せないものがあり、「人は必ず死ぬ」ということを念頭に置いて、 老いや死にしっかりと向き合っていくことが求められている。

キーワード ① 超高齢多死社会   ② 在宅医療 ③ 地域包括ケア ④ 介護保険と医療保険 ⑤ 多職種連携と訪問看護、訪問リハビリ
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:在宅看護に携わる者が心得ておくべき倫理的課題について復習しておく。倫理的課題とは、「日ごろの活動の中で、正しいか、間違っているか、よいか悪いか、個人の権利と義務などに関して、判断に困ること」とされるが、看護職の倫理的ジレンマの事例にはどのような事例があったかテキストp23から復習しておく。
予習:在宅看護は、乳幼児から高齢者までのすべての世代が対象となる。また、急性期の治療を終えた退院患者、慢性期にある在宅療養者、要介護状態の高齢者、終末期にある人々が対象になる。さらに、看護師は療養者だけでなく家族や周囲の人々も含む。在宅看護の対象者の、年齢、疾患、障害、療養状態、住まい、家族についてテキストから予習しておく。テキスト(p27図2-1、図2-2)

6 在宅医療について 住み慣れた場所での看取り 科目の中での位置付け 日本は平均寿命、健康寿命共に延伸し超高齢社会となり、多死社会を迎えようとしている。政策的にも在宅医療の推進とともに、介護保険の導入、地域包括ケアシステム構築の推進等が図られ、2019年4月には『人生会議』が提唱された。在宅看護は自宅やそれに準じた環境で療養生活している新生児から高齢者までを対象に、生活の質quality of life(QOL)を高めるため、療養者及び家族に対し看護を提供しているが、今後益々在宅看護の需要が高まっている。在宅看護は統合科目として位置づけられ、地域で生活する生活者としての視点から、多様な考え方、長年住み慣れた在宅療養環境や生活史を踏まえたうえでの多様なニーズを理解でき、マネージメントできる基本的な姿勢を養う基盤となるものである。第1回は在宅看護の目的と特徴、看護師の役割、第2回は在宅看護の対象、第3回は日本の訪問看護制度の創設と発展、諸外国の動向、第4回は在宅ケアシステムを支える制度、第5回はなぜ今在宅医療か。第6回は住み慣れた場所での看取り、第7回は、在宅ケアにおける看護技術、第8回は在宅医療で地域を支える、によって構成される。
第6回は、「住み慣れた場所で最期を迎えたい」と望む人のために、「自宅での看取り」の質を高める方法を学ぶ。

「在宅医療を始めよう!非がん患者の自宅での看取り」;永井康徳・永吉裕子著、南山堂、2016、p2~38 「在宅医療を始めよう!医療を変える、地域を変える、文化を変える」;永井康徳・永吉裕子著、南山堂、2016、p93~115
コマ主題細目 ① 看取りの場所について ② 住み慣れた自宅での看取り ③ 終末期の点滴の悪循環と自然な看取り ④ 食支援の実際及び重要性について
細目レベル ① 2005年以降、日本では死亡数が出生数を上回り、人口は減り続けている。そして、2030年代にはわが国の死亡数はピークに達すると考えられている。第1次ベビーブームの世代は「団塊の世代」と呼ばれ、 現在、この団塊の世代が65才を迎えて介護保険の第1号被保険者となり、介護保険の利用増が見込まれ見直しが迫られている。さらに10年後の2025年には、団塊の世代が後期高齢者となる。介護が必要となり、 寿命で亡くなる時代に入るわけである。2025年以降の死亡数のピークは、その団塊の世代の方々が亡くなる時代なのである。死亡数が増えた時、今のままでは病院のベッド数はまったく足りない。日本の医療計画では、 病床数は減少することはあっても増加することはないので、2030年には約60万人の方に看取りの場所がない計算になる。そうなると、これからは自宅や多様な施設などの住み慣れた場所で、 看取りを行っていく必要があると思う。しかし、「介護や住まい、病状など条件さえ揃えば、最期は自宅で」と考える人が多いことは、様々なアンケート調査で明らかになっている。その希望を叶えるためには、 社会環境の整備と、「自宅での看取り」という選択肢があることを医療従事者が伝えることが必要である。
② 沖縄のある離島でのお話。沖縄は日本でも有数の長寿県。その島の高齢者は、病院ではなく、大抵自宅で看取られるそうだ。「この島では、老衰で亡くなると、大往生できたと言って赤飯を炊いてお祝いするんですよ」と住民の方から伺った。在宅医療が普及しているわけでもないのに自宅での看取りが根付いている理由の一つは、この島の「大往生なら、お祝いする」、すなわち「天寿を全うした死を肯定的に受け入れる」という住民の意識ではないかと考える。超高齢化が進み、死亡者が増加する多死社会を迎える日本では、このような住民の意識改革が必要になってくるのではないかと思っている。「治すこと」を目指して発展してきた日本の医療では、「自然のままに看取る」という選択肢をほとんど提示してこなかったのが実情である。治せる病気には、当然、治療が必要だ。しかし、老化やまもなく訪れようとしている死と正面から向き合わず、本人にとってつらい治療を続けてしまうということがある。亡くなる最後の瞬間まで点滴を続けるのは、「また元気になるのではないか、生き続けてほしい」という家族の思いと、「何もしないのは医療の敗北だ」と考える医療者の意識の双方のなせる結果とも言えるだろう。


③ 老衰とは、「老いて心身が衰えること」とされている。老衰死とは、高齢の方で死因と特定できる病気がなく、加齢に伴って自然に生を閉じることである。現在は、食事を摂れなくなったら病院で検査をして、がんなどの病気が見つかることが多い。病気が見つかると、手術や抗がん剤などの治療の選択肢を提示されることが多いと思う。しかし、在宅医療では、無理に積極的な治療を行わず、楽になる治療を優先し、出来る限り輸液を減らしていくので、老衰死の確率は高くなる。在宅医療では、無理な延命措置を行わず、あくまで自然に看ていくので、苦痛を伴わず、呼吸も穏やかに枯れるように亡くなる老衰死に出会うことが多い。映画『おくりびと』誕生のきっかけとなった、青木新門の著書『納棺夫日記』1)にはこう書かれている。青木さんが納棺の仕事を始めた1970年代前半は、自宅で亡くなる人が半数以上で、「枯れ枝のような死体によく出会った」そうである。ところがその後、病院死が大半になり、「点滴の針跡が痛々しい黒ずんだ両腕のぶよぶよ死体」が増え、「生木を裂いたような不自然なイメージがつきまとう。晩秋に枯れ葉が散るような、そんな自然な感じを与えないのである」と記している。一時的な 脱水を改善したり、口から食べる量が少ないときに補助的に点滴を行う事は非常に有効であるが、全く口から食べられなくなった時に、この末梢輸液だけでは、必要なカロリーが身体に入らない。カロリーが少ない点滴をずっと続けていると 低栄養となり、水分だけが身体に入ることになり、身体で処理できなくなり、身体のむくみがひどくなったり、胸やお腹に水がたまったり、痰が多くなって吸引が必要になるなど 身体のしんどさばかりが目立つようになってくる。また、認知症の患者さんや不穏が強い方は持続的に点滴をすること自体が難しく、点滴をするために拘束をしたりすることもあり、亡くなる前に点滴をするために手などをしばって、動かないようにするのは忍びない。安易に食べられないからといって、点滴をするのではなく、食べられないことが不可逆性の変化であれば、結果を先延ばしするのではなく、何がその方にとって一 番楽な方法なのかを優先して考えてあげることが必要なのではないだろうか。
 死も人の大切な営みの一つである。その時が来たら、人の身体は楽に逝けるよう、死の準備をはじめる。身体はどうすれば楽に逝けるのかを知っている。それは、草や木と同じ、枯れるように逝くことである。前と同じように食べられなくなったからといって、無理に食べなくてもいい。身体は楽に逝くために体内の水分をできるだけ減らそうとしていく。そんなとき、無理に水分や栄養を入れると、体に負担をかけることになる。むくみが出たり腹水がたまったり、痰も多くなってしまうのである。死は人の最後の営みであり、その時が近づいたら、体が求めるままにうとうとと眠り、食べたいものを食べたいだけ口にしてほしい。その穏やかな寝息を聞きながら、家族はお別れのときが近づいていることを静かに覚悟することであろう。

④ 終末期において、「食べる」ということと栄養経路の選択が非常に大きなテーマになっている。中でも、在宅医療の対象となる患者は、すでに食べることが困難か、近い将来食べられなくなる方がほとんどである。現在、日本で胃瘻栄養を行っている高齢者は40万人、毎年新たに胃瘻を造設する方は20万人と言われている。これは、世界でも類を見ない数のようで、日本は世界一、胃瘻患者の多い胃瘻大国と言われている。「あなたが将来、認知症が進行して寝たきりになり、食べられなくなった時、あなた自身は胃瘻栄養を行いたいか」と聞くと、多くの人が胃瘻栄養はしたくないと答える。自分自身は胃瘻栄養をしたくないと答える人も、「自分の家族が食べられなくなった時に胃瘻栄養をしますか」と問われると、言葉に詰まってしまう。それほどに、他者の生き方、死に方を判断することは困難であるが、現在、食べられなくなった時に胃瘻栄養をするかどうかを判断しているのは、家族と医療従事者であり、本人の意志がほとんど入っていないのが実情である。食べられなくなった時、胃瘻栄養という選択肢があるのはよいことであり、且つ機能回復のための胃瘻造設は大変有用であり、胃瘻栄養を続けて、ご本人もご家族も幸せな療養生活を維持している場合も多くある。ただ、本人の意思ではなく、家族と医療者だけで胃瘻造設を決定し、「栄養補給の方法があるのに選択しないのは忍びない」と、最期を先延ばしにするかたちで胃瘻栄養を選択する場合が多かったことも事実である。むしろ「胃瘻栄養をせず、自然に看取りたい」という家族は、医師から「見殺しにするのか」といった心ない批判を受けたという話を何度も聞く。現在の日本では、「胃瘻を選択する方が当たり前」という社会風潮がある。このように、「自然に看取る」という選択肢が提示されにくい現状をしっかり理解した上で、その選択肢もあることを示し、それを選択した家族が罪悪感を持たずに済むようなサポート体制が必要なのではないかと思う。さまざまな選択肢のメリット・デメリットを十分に説明した上で、個々にとっての最善の選択肢は何なのか、ご家族と十分に話し合った上で結論を出せばよい。十分に話し合い、共に考え、ご家族が重荷を感じながら出した結論を「それが正解だったんだ」と言って後押しすることが大切である。たんぽぽのおうちでは、「最期まで自分らしく生きたい」と願う方をサポートしている。やりたいことをするためにも、まずは痛みを取ることを何より優先して行い、ケアマネジャーや訪問看護等と連携して、外出や外泊のサポートもする。 「たんぽぽのおうちで過ごしながら、時々自宅に戻って家族と一緒に過ごす」、「自宅で療養をしていたけれど、最期はたんぽぽのおうちで…」といった、ご自宅とたんぽぽのおうちを行き来することも可能である。また噛む力や飲み込む力が弱ったために食べられなくなった方に、摂食・嚥下のための訓練を行っている。医師・看護師・言語聴覚士・管理栄養士による摂食・嚥下栄養チーム『ドルチェ』と管理栄養士・調理師による介護食研究チーム「たんぽぽクック・ラボ』が、患者様の「食べたい!」という気持ちに応える。 嚥下内視鏡による嚥下力検査の後、最適な食事形態を患者様の嗜好に合わせて作ったり、摂食・嚥下機能を高めるためのリハビリや介護補助具の利用も行っている。




キーワード ① 病院での看取り率 ② 意思決定支援 ③ 希望する最後の場所 ④ 看取りの体制 ⑤ 終末期における食支援
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:ケアマネージメントの概念、看護職のマネージメントの重要性及び多職種連携、マネージメント等により療養者及び家族の生活支援の重要性を理解し、チーム医療の中での相互の尊重・連携・協働および効果的な話し合いをするための方法について復讐しておく。
予習:「住み慣れた場所で最期を迎えたい」と望む人のために、「自宅での看取り」の質を高める方についてテキスト、参考文献に目を通してくる。また、① 看取りの場所について ② 住み慣れた自宅での看取り ③ 終末期の点滴の悪循環と自然な看取り ④ 食支援の実際及び重要性について、厚労省のホームページ等で統計を調べ、自分ならば、または自分の家族を看取る際、どのような人生の最期を送りたいかを考えてくる。

7 在宅ケアにおける医療技術 科目の中での位置付け 日本は平均寿命、健康寿命共に延伸し超高齢社会となり、多死社会を迎えようとしている。政策的にも在宅医療の推進とともに、介護保険の導入、地域包括ケアシステム構築の推進等が図られ、2019年4月には『人生会議』が提唱された。在宅看護は自宅やそれに準じた環境で療養生活している新生児から高齢者までを対象に、生活の質quality of life(QOL)を高めるため、療養者及び家族に対し看護を提供しているが、今後益々在宅看護の需要が高まっている。在宅看護は統合科目として位置づけられ、地域で生活する生活者としての視点から、多様な考え方、長年住み慣れた在宅療養環境や生活史を踏まえたうえでの多様なニーズを理解でき、マネージメントできる基本的な姿勢を養う基盤となるものである。第1回は在宅看護の目的と特徴、看護師の役割、第2回は在宅看護の対象、第3回は日本の訪問看護制度の創設と発展、諸外国の動向、第4回は在宅ケアシステムを支える制度、第5回はなぜ今在宅医療か。第6回は住み慣れた場所での看取り、第7回は、在宅ケアにおける看護技術、第8回は在宅医療で地域を支える、によって構成される。
第7回では、在宅療養者が直面している、服薬、褥瘡、尿道留置カテーテル、ストーマ、経管栄養、中心静脈栄養、在宅酸素療法、在宅人工呼吸器療法、腹膜透析等々在宅における医療技術の現状および概要について学ぶ。

医学書院 系統看護学講座 「地域・在宅看護論1」 1~6章  
                            
コマ主題細目 ① 在宅医療にかかわる診療報酬と薬剤等の調達 ② 服薬支援について ③ 在宅で遭遇する医療処置及び管理の状況について
細目レベル ① 在宅療養指導管理料は、在宅医療にかかわる診療報酬である。在宅療養指導管理料は、医療処置の必要な療養者に対し、主治医あるいは往診医が病状管理や医療処置に関する指導管理を行った場合、月1回算定できる。この場合、当該指導管理に対するアルコール等の消毒薬、衛生材料(ガーゼ、絆創膏等)、酸素、注射器、注射針、翼状針、カテーテル、膀胱洗浄用注射器、クレンメ等がこれらに含まれている。これらの医療材料・衛生材料は主治医等の所属する医療機関より処方してもらうことができる。在宅療養における医療処置等に使用する薬剤・医療材料・衛生材料の調達は、薬剤については主治医の処方により、訪問診察時に主治医が持参したり、訪問看護師が受け取り訪問時に持参することが多かったが、最近は薬剤師が持参する場合も増えている。この場合、薬剤師は居宅療養管理指導料が算定できる。医療・衛生材料は、訪問診療医師や訪問看護師が調達し、療養者宅に持参することが多いが、最近ではドラッグストアやスーパー等で安価に手に入る場合も増えている。
② 在宅で療養する高齢療養者の多くは複数の疾患を抱えており、多種類の薬剤を服用している。薬剤は誤薬事故につながる場合もあり、注意が必要である。物忘れや認知症等処方通り服用できないことも多い。そのような療養者に対して訪問看護師は、薬の説明や服薬方法の工夫、医師との連携による薬の調整などの管理を要する。訪問時に服薬状況・残薬の確認と整理、服薬による症状の改善や副作用等の観察をする。在宅での介護の中心は家族である。そして一人の療養者に多くの職種(医師、訪問看護師、ホームヘルパー、介護支援専門員、理学療法士等々)がかかわることが多い。そのため家族や多くの職種が予約に関わる場面があり、その事によるリスクを予測し、対応を共有しておく必要がある。服薬支援においては、関わっている職種と連携し、連携ノートの活用や服薬ボックス・服薬カレンダーの使用、服薬の声掛けや確認依頼等、各々の療養者・家族の状況に合わせて臨機応変に対応する必要がある。
③ 医療技術の進展等により、様々な医療処置を要する人々が在宅療養可能な状況になってきている。在宅で生活する自力で動けない重度の障害を持った療養者が増えることにより、褥瘡も重要な問題となる。褥瘡発生の予防スケールの使用による危険度に応じたマットレスの使用、疾患管理、皮膚ケア、姿勢管理、栄養管理、介護力の評価等々が重要である。また、尿道留置カテーテルの使用者も多く、感染予防が大切であり、毎日の陰部洗浄、水分出納管理が重要である。最近は大腸がん等も増加しており、消化管ストーマ造設者も多くなってきた。ストーマは尿路もあり、対応が異なる。日常生活の中で長期に管理しなければならず、臭気等にも配慮したかかわりが求められる。その他にも経管栄養法(胃瘻)、在宅中心静脈栄養、腹膜透析、在宅酸素療法、在宅人工呼吸療法等々様々である。医療処置等を実施している写真やスライドを交え、理解を促しながら説明を加える。
キーワード ① 在宅療養指導管理料 ② 医療処置 ③ 薬剤管理 ④ 褥瘡 ⑤ 尿道留置カテーテル
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:病院で実施する看護技術の基本的なものを復習しておく。特に、呼吸管理、経管栄養、与薬、褥瘡処置、尿道留置カテーテル等を病院ではどのように実施されているか基礎看護学のテキストで再確認しておく。
予習:在宅で療養する高齢療養者の多くは複数の疾患を抱えており、多種類の薬剤を服用している。薬剤は誤薬事故につながる場合もあり、注意が必要である。物忘れや認知症等処方通り服用できないことも多い。そのような療養者に対して訪問看護師は、薬の説明や服薬方法の工夫、医師との連携による薬の調整などの管理を要する。訪問時に服薬状況・残薬の確認と整理、服薬による症状の改善や副作用等の観察をする。在宅での介護の中心は家族である。そして一人の療養者に多くの職種(医師、訪問看護師、ホームヘルパー、介護支援専門員、理学療法士等々)がかかわることが多い。安全な服薬管理のために多職種が連携して具体的にどのようにケアしているかをイメージしてくる。

8 在宅医療で地域を変える 科目の中での位置付け 日本は平均寿命、健康寿命共に延伸し超高齢社会となり、多死社会を迎えようとしている。政策的にも在宅医療の推進とともに、介護保険の導入、地域包括ケアシステム構築の推進等が図られ、2019年4月には『人生会議』が提唱された。在宅看護は自宅やそれに準じた環境で療養生活している新生児から高齢者までを対象に、生活の質quality of life(QOL)を高めるため、療養者及び家族に対し看護を提供しているが、今後益々在宅看護の需要が高まっている。在宅看護は統合科目として位置づけられ、地域で生活する生活者としての視点から、多様な考え方、長年住み慣れた在宅療養環境や生活史を踏まえたうえでの多様なニーズを理解でき、マネージメントできる基本的な姿勢を養う基盤となるものである。第1回は在宅看護の目的と特徴、看護師の役割、第2回は在宅看護の対象、第3回は日本の訪問看護制度の創設と発展、諸外国の動向、第4回は在宅ケアシステムを支える制度、第5回はなぜ今在宅医療か。第6回は住み慣れた場所での看取り、第7回は、在宅ケアにおける看護技術を学ぶ。
第8回は在宅医療で地域を支える、によって構成される。8回では、地域に暮らす人や在宅療養者とその家族の状況について講義し、強みや主体性を引き出し、セルフケア力の発揮を促す支援について学ぶ。

「在宅医療を始めよう!非がん患者の自宅での看取り」;永井康徳・永吉裕子著、南山堂、2016、p-1~188 「在宅医療を始めよう!医療を変える、地域を変える、文化を変える」;永井康徳・永吉裕子著、南山堂、2016、p1~168
コマ主題細目 ① 在宅療養生活を支えるサービスについて ② セルフケア力を高めるために ③ 地域医療
細目レベル ① 地域で療養生活を送るためには、在宅医療制度の知識が重要となる。介護保険の適応の可否や介護度によって患者さんが利用できる医療サービスや介護サービスが異なってくる。介護保険の要介護認定を受けていても患者さんの疾患名によって、訪問看護が医療保険になる場合があり、患者さんが使える介護保険の枠(区分支給限度基準額)に訪問看護分だけの「空き」が出る。その「空き」を活用できるか?制度の知識が自在に使えるようになると患者さん・家族の思いに沿ったプランを提案できるようになる。介護保険適応者であれば、退院前の早い段階からケアマネジャーに関わってもらうことができる。退院後の介護保険のケアプラン相談の他に介護用品のレンタルや自宅改修等の準備も進めてもらえる。また介護者の負担軽減策(デイサービス・デイケア、ショートステイ等)について介護を始める前から提示しておくことが大切である。状態悪化時の対応については、入院先の主治医に確認し受け入れを了解してもらうことや24時間体制での訪問看護や医師の訪問が可能であること等十分に説明し、安心してもらうことが重要である。
② 在宅療養生活において、本人と家族で意思決定を重ねながらセルフケア力を高める意義について学ぶ。 
誰でもいつでも、命に関わる大きな病気やケガをする可能性がある。命の危険が迫った状態になると、約7割の方が医療やケアなどについて、自分の意思を伝えることが出来なくなると言われている。希望する医療やケアを受けるためには、常日頃から自分が大切にしていることや、誰とどこでどのように暮らしたいかを考え、周囲の信頼する人たちと話し合っておくことが重要だ。このように本人・家族や友人等、医療・ケアチーム等と繰り返し話し合い共有する取組みを、厚生労働省は「人生会議」と名付けた。「2025年問題」を皆さんはご存知だろうか?今、日本で一番人口の多い団塊の世代の方たちが後期高齢者となるのが、これ以降である。それは日本の歴史上、最も死亡者が多くなる時代で、「多死社会」とも呼ばれている。「治す」ことを追求して発展してきた日本の医療だが、80歳以上の高齢者の死亡数が爆発的に増えていくこの「多死社会」を迎え、皆が亡くなるまで治し続ける最期で良いのかという命題が私たちに突きつけられている。
 今、日本では医療者も国民も死に向き合いきれていないと言われている。最期まで治療を行うということは、その人に食べる力や水分を処理する力がなくなっても点滴を続けてしまうことになる。そうすることで体がむくみ、痰が増えて、つらい吸引が必要となり、ずっと絶飲食のまま亡くなっていくことになる。しかし、その人の命に向き合い、体が拒否をする点滴をしないという選択をすることで、吸引は必要なくなり、最期まで食べるというチャレンジや住み慣れた場所へ帰ることができるという希望も出てくる。死に向き合えば自分がどんな最期を迎えたいかを考えることができる。「逝き方」を考えることは、「生き方」を考えること。一度しかない人生をどう生きるか、そして、いつか亡くなる時に本人もご家族も「いろいろあったけど、ああ、いい人生だった」と納得できる最期を迎えることができればよいと思う。
 病気や治療の話というと、「早く決めなければならない」と思いがちだが、この「人生会議」で大切なことは日々の会話だ。「決めなくてもいいからいっぱい話をしよう」ということである。どこで死にたいか、病気になった時どうしたいかなどの重い話ばかりしなくてもいい。あなたは何が好きですか、何を大切にしていますか?自分の思っていることを大切な人に伝えておく事が大事だ。笑顔でいろんな話をしてください。結論を急ぐことはありません。何回変わっても、迷っても良い。そうすることで、予期しないことや自分らしさを見失いそうな時に、みんなで納得しながら選択していくことができる。元気なうちから、いっぱい話をしていこう。それが「人生会議」だ。

                                

③ へき地医療の現状について学ぶ。多死社会の切り札とされる在宅医療は、これまで大都市から普及していく傾向にあり、地方や僻地では、地域医療の疲弊と相まって多くの地域で在宅医療が未開拓となっている。今後、大都市で起こってくる団塊世代の高齢化により、高齢者や要介護者の療養場所がなくなる医療クライシス、地方での地域医療や救急医療の疲弊、僻地の無医地区化、被災地の医療復興などを解決していくためには、すべての地域で在宅医療が課題解決の鍵となるのではないかと考える。私たちの法人では、市町村合併の余波で余儀なく廃止された僻地診療所を市から民間委譲し、松山市の複数の医療スタッフとの連携で循環型の地域医療を行っている。人口が少なく交通の便が悪い僻地でも、24時間対応の質の高い在宅医療を行うことによって、経営は安定し、住民の診療所受診率も上がった。何より、住民が望む医療を医療者が疲弊せずに長続きできるシステムが出来上がった。医療者が、やりがいを持って疲弊せずに医療に打ち込める環境をシステムで解決していくことが求められている。近年の在宅医療は、大都市から地方へ広がってきた。全国の僻地診療所の多くは赤字経営で、一般会計からの繰り越しを続けており、地方自治体の財政の悪化に伴い、苦しい運営を強いられている。しかし、国の政策が在宅医療に大きくシフトしている今、在宅医療に積極的に取り組み、さまざまな工夫を行うことで、人口の少ない地域で経営も成立することが証明できれば、逆に、僻地から都市部、大都市へこの僻地モデルを適用して在宅医療を広げていくことができるのではないか。また、僻地での在宅医療の広域での展開は、在宅医療の地域間格差を埋める取り組みにもなる。さらに、僻地はこれから日本が迎える超高齢社会や多死社会の縮図でもあり、このような方法で在宅医療を広めて、自宅での看取りを増加していくことができれば、今後の多死社会における医療のあり方を指し示すモデルともなり得ると考える。

キーワード ① ケアマネジャー ケアプラン ② 意思決定支援 家族へのケア ③ 地域偏在 ④ 2025年問題 ⑤ 在宅医療
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 復習:在宅における医療処置や服薬管理の実際を復習しておく。特に多職種によるケアにはどのようなものがあったかまとめておく。
予習:療養者本人・家族や友人等、医療・ケアチーム等と繰り返し話し合い共有する取組みを、厚生労働省は「人生会議」と名付けた。「2025年問題」を皆さんはご存知だろうか?今、日本で一番人口の多い団塊の世代の方たちが後期高齢者となるのが、これ以降である。それは日本の歴史上、最も死亡者が多くなる時代で、「多死社会」とも呼ばれている。「治す」ことを追求して発展してきた日本の医療だが、80歳以上の高齢者の死亡数が爆発的に増えていくこの「多死社会」を迎え、皆が亡くなるまで治し続ける最期で良いのかという命題が私たちに突きつけられている。これらの内容について厚生労働省のホームページで情報を得ておく。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
在宅看護の目的と特徴、対象者および看護の役割、対象者の権利保障、尊厳と自己決定
在宅看護の特性として、対象者の意思の尊重、信頼関係の形成、生活を支援、家族を単位とした看護、総合アセスメント、セルフケア支援、医療者不在時の対応支援、他職種・他機関の専門職と連携・協働等々があげられる。在宅看護の目的・特徴および対象者について、および対象者の権利擁護として個人の尊厳と自己決定への支援、虐待について理解できる。また超高齢多死社会の進展と地域包括ケアシステムの中で保健・医療・福祉機関の連携・協働を含めた看護の活動・役割について理解できる。 在宅看護の目的・特徴・対象者および役割、尊厳と自己決定、 20 第1・2回
在宅ケアを支える制度、
訪問看護にかかる法令と制度の概要を理解し、訪問看護ステーション、看護小規模多機能型居宅介護、地域包括支援センター等とその特性について説明できる。介護保険に関連する施設サービス、在宅サービス、地域密着型サービスの提供機関とその特性について理解でき、介護保険の16特定疾病について覚える。また継続看護、退院支援・退院調整等地域の関連機関と協働関係を形成する看護援助方法について説明できる。地域における多職種連携の意義とチーム医療の中での看護の役割について説明できる。 介護保険サービス、16特定疾病、訪問看護、継続看護、退院支援・調整 20 第3・4回
在宅医療と在宅での見取り、在宅医療で地域を変える 多様なニーズと個別性を持つ患者・家族への終末期ケアにおいて、チーム医療は欠かせない。医療やケア、残された時間の過ごし方等のニーズに対応し対象者が満足できる医療やケアを提供するためには、医師、看護師等々様々な職種が協力することが重要である。地域に暮らす人や在宅療養者とその家族の強みや主体性を引き出し、セルフケア力の発揮を促す支援について説明できる。保健・医療・福祉チーム員の機能と専門性、対象者を中心とするチームの構築方法について説明できる。在宅医療における看取りの意味と看護師の役割を理解する。 在宅医療、見取り、チーム医療、地域力 20 第6・8回
地域包括ケアシステム,
在宅ケアの連携とマネージメント、生活支援
地域包括ケアシステムは、本人の選択と本人・家族の心構え、住まいと住まい方、介護予防・生活支援、医療・看護、介護・リハビリテーション、保健・福祉で構成され、これらの取り組みが包括的、継続的に行われるシステムである。入院環境から暮らしの場への移行支援、医療やケアが継続できるための看護ケアマネージメントを行い、病院内外を含めた多職種との連携、共同が重要となる。多職種連携、マネージメント等により療養者及び家族の生活支援の重要性を理解し、チーム医療の中での相互の尊重・連携・協働および効果的な話し合いをするための方法について説明できる。 地域包括ケアシステム、多職種連携、マネージメント、生活支援、チーム医療 20 第2・6回
在宅で求められる看護・医療技術の応用 看護職が療養者の生活支援に欠かせない信頼関係を形成するコミュニケーション技術やポイント、在宅看護を展開する上で検討すべきポイントについて理解できる。また在宅療養における医療処置等に使用する薬剤・医療材料・衛生材料の調達の現状や服薬管理のポイント、具体的な工夫例等についての理解ができる。 褥瘡、尿道留置カテーテル、消化管ストーマ、経管栄養法(胃瘻)、在宅中心静脈栄養、在宅酸素療法、在宅人工呼吸療法等、在宅での観察及び看護技術の応用および医療技術の概要について理解できる。 在宅看護技術、在宅医療技術、生活支援 10 第7回
在宅医療における看取り 住み慣れた場所で最期を迎えることをいかに支援していくかを理解する。終末期の身体管理をはじめとする症状緩和と家族への支援を理解する。また、最後まで口から食べることの意味も含め週末kのリハ義理テーションの重要性を理解する。 ACP
在宅での看取り
症状緩和
終末期医療
10 第6.7.8回
評価方法 基本期末試験100%で評価する
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 教科書:「地域・在宅看護論1.2 第6版」;河原加代子著者代表、医学書院、2022.1:2200円 2:2,750円
参考文献 萱間真美:ストレングスモデル実践活用術 医学書院2016 永井康徳・永吉裕子:在宅医療を始めよう!非がん患者の自宅での看取り、南山堂、2016、 永井康徳・永吉裕子:宅医療を始めよう!医療を変える、地域を変える、文化を変える南山堂、2016 永井康徳・永吉裕子:在宅医療たんぽぽ先生多職種連携、金芳堂、2020
実験・実習・教材費