区分 基盤スキル科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
SDGs力 科学コミュニケーション力 研究力
カリキュラム・ポリシーとの関係
教養 応用力 実践力
科目間連携 総合心理力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
総合心理学を学ぶためのすべてのはじまり
科目の目的
 この科目の目的は、総合心理学部での学びをスムーズにスタートさせるために、大学での研究活動で必要となる心がまえと技術を知ることにあります。これからスタートする大学での研究生活の日々を「明るく、楽しく、ためになること」を学べる毎日となるようにしたいと思います。具体的には、本を読み、感想を抱き、それを他者に伝え、話し合い、他者の考えも参考にしながら、自分の考えをまとめる力を育むことに取り組みます。このときに、図書館で資料を探して、活用するための力も育みます。また、心理学の実験、調査、臨床研究で実際にどのようなことをしているのかも体験してもらいます。そして、近い将来、自分の研究テーマを持ち、心理学の研究を進めていけるようになるイメージが持てるようになることを理想としています。
到達目標
 この科目修得後には、心理学を学ぶ上で、本を最後まで読みきると言う基本姿勢を身に付けることになります。このための力を、科学の歩みに対する理解、文献と引用に関する理解、本を読んで質問する力を身につけること、文章を書いて意見を主張できるようになること、文章を適切に要約できるようになることで、履修判定します。
科目の概要
 この授業は2時限連続ですが、その内の1時限は課題図書を読み進めながらアカデミックスキル(ここでは、本を読み、文章を書き、質問し、考えを整理する力とする)を身に付けることに取り組みます。課題図書は、ユクスキュルとクルサート著「生物から見た世界」(岩波文庫, 2005)を使用します。加えて、残りの1時限においては、心理学の体験をしてもらいます。
 心理学の分野はおおざっぱに言うと、心の性質を知るための基礎分野と、現実社会における心の問題の解決を目指す応用分野に分けることができます。基礎分野において、心の性質を調べるための心理学実験がどのように準備されていき、データ収集に至るのかに関する一連の流れを体験します。また、応用分野に関しては、心の健康を支援するための臨床心理学の研究を体験します。第1回目において、心理実験と臨床心理学の研究体験の意義について、担当教員より説明し、第2回目以降の流れを説明します。
 アカデミックスキルについては、第2-3回は、とにかく「本を読む」ことから取り組み始めます。そして、第4-5回で「感想を書く」ことを練習し、それぞれが書いた感想文について、第6-7回で参加者に「感想を伝える」ことに取り組みます。ここまででが、いわゆる「作文」に関する練習です。次のステップは、「作文」から、いわゆる「小論文」への学びとなります。あなたの感想文をもとに、自分の考えを他者の意見を参考にしながら、論理的にふくらませる作業となります。まず第8-9回では、「図書室に行く」ことで、自分の感想と似たことが書かれていそうな本を探したり、自分の感想をよりふくらませることに役立ちそうな本を探すことに取り組みます。第10-11回では、ここまで育んできた自分の感想について、論理展開を組み入れていき、あなたの思いや考えの道筋が理解されやすい文章(小論文)となるように仕上げていきます。まずは「文献を活用して自分の言いたいことに論拠をあたえる」ことに注力します。そして、第12-13回では、ここまでに仕上げてきたあなたの文章をみんなに読んでもらい、「他者の意見に応える」かたちで、文章を仕上げていきます。最後の第14-15回では、あなたの考えを他者に伝えるために、パワーポイントを用いて、スライドショーで発表することについて学びます。

科目のキーワード
科学、先行研究、引用、本を読む、質問をする、文章を書く、要約する
授業の展開方法
 第1回目に、この授業を担当する全教員から15回の進め方のガイダンスを行います。2回目以降は、1コマ目または2コマ目で取り組むことが違います。片方が、アカデミックスキルを身につけるための練習を座学講義形式で行います。教員から講義を聞く時間に加えて、実際に文章を読んでみる、文章を書いてみる、質問をしてみるなどの実践練習に取り組む時間もあります。また、アカデミックスキル定着のため予習復習内容と授業の内容は連動しています。予習復習の方法についてもガイダンスで説明します。もう片方の時間で心理学の体験活動に参加します。このためのグループ分けと、スケジュール表はガイダンス(初回授業)にて配布します。
オフィス・アワー
高野裕治:前期:月曜1限・木曜1限
後期:月曜1限・木曜1限
中嶋智史:前期:月曜お昼、火曜3限、金曜お昼・4限
後期:月曜お昼、火曜お昼、木曜お昼・3限、金曜お昼・3限
金谷英俊:前期:月曜お昼、木曜1限
※月曜・火曜・木曜の5限終了後も可能です。
後期:火曜5限
※月曜・火曜の5限終了後も可能です。
武田知也:前期:水曜1限
後期:水曜1限
横光健吾:前期:月曜4限
後期:金曜2限

科目コード RC1010
学年・期 1年・前期
科目名 基礎ゼミナール(初級心理学実習)
単位数 2
授業形態 実験・実習
必修・選択 必修
学習時間 【授業】90分×30 【予習】60分以上×15 【復習】60分以上×15
前提とする科目 なし
展開科目
関連資格
担当教員名 高野裕治・中嶋智史・金谷英俊・武田知也・横光健吾・松山道後キャンパス教務課
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 心理学をはじめる! 科目の中での位置付け  この科目では、総合心理学部での学びのスタートとして、大学での研究活動で必要となる心がまえと技術を身につけます。その中でも特に、文章を書くことを学び、同時に心理学の体験活動にも参加することで、卒業論文に向けて、今後、自分がどんなことができるようになって行くのかのイメージを持てるようになることを目的としています。今回は、その第一回目となるので、まずは卒業研究へ向けた総合心理学部のカリキュラムがどうなっているのかの理解を深めることで、次回以降からはじまる「本を読み、感想を抱き、それを他者に伝え、話し合い、他者の考えも参考にしながら、自分の考えをまとめる」ための学びに向けて、その大事さをつかみ、大学生活でもとめられる学習姿勢を知るという位置付けとなっています。今後の授業、そして大学生活に大きな期待を持ってもらえるように、基礎ゼミ担当教員(高野裕治、中嶋智史、金谷英俊、横光健吾、武田知也)が授業の進めかたと教育にかける思いを全力で語りたいと思います。
履修の手引き
コマ主題細目 ① 心理学ができるようになる ② 心理学実験の体験意義 ③ 心理臨床研究の体験意義 ④ 卒業論文に向けて
細目レベル ① 本日より心理学の勉強がはじまります。授業と聞くと、座って、先生の話を聞く時間をイメージするかと思います。大学でもこのような時間は必要で、講義科目と呼ばれています。これに加えて、実習科目というものがあります。中学や高校の理科室でやっていたような授業に近いものかもしれません。つまり、講義科目で心理学の話を聞いて理解したことを、自分でやってみて確かめることができるようになることが実習の目的となります。さらに言えば、講義で聞いて疑問にわいたことを自分で、その後に研究できるように計画し、実行にうつすための技術を身につけるための科目です。実際に、卒業研究において、自分の疑問に取り組み、研究を進める時間が演習科目となります。この基礎ゼミナールは実習科目の位置付けとなりますので、卒論に向けての技術を身につけはじめるスタート、全ての技術の土台という位置づけになっています。
② そもそも心理学という言葉から、「こころ」について実験するというイメージが、1年生のみなさんにとっては、わかりにくいと思います。実験といえば、理科の中の化学分野のイメージが大きいのではないでしょうか。そこで、まずは代表的な心理学の実験を受けてもらい、さらにはその実験に必要な準備や段取り(手続き)についての体験をしてもらいたいと思います。特に、実験の準備として、実験で使用する素材(刺激)づくりの体験に重きをおきます。刺激を受けて、心にどのような変化が生じるかを計測することで、心の在りようを推定していくというのが心理学実験だからです。また、どのような刺激が作れるのかという部分を世界中の研究室で心理学者は競っておりますので、1年生のみんなにも、その最前線を少しでも感じてもらい、卒業研究へ向けての準備体操ができたらいいなという願いを込めた体験活動に参加してもらいます。
③ 心理臨床については、心はいつでも健康ではなく、時には支援を必要とする人たちがいて、大学そして、大学院で、その支援の方法を学ぶということはイメージしやすいことかもしれません。しかし、その支援方法がどのように確立されてきたのか、さらにはより良い支援方法へと発展するための研究となると、何が必要となるかは目に見えにくいと思います。そこで、1年生のはじめだからこそ、未来のより良い心理臨床に向けて、まずは研究方法を体感してもらうことからはじめようと思いました。人の心に働きかけたら、何らかの変化は、いつだって生じます。この心の変化を異なる環境にいる人同士で比べていったら、それはもちろん色々と異なっていて、心の健康状態ついても色々あるとなります。「色々ある」と言ってしまったままでは、効果的な支援方法を確立していくことができません。効果がある支援というのは、何と比べて効果があるのかということを積み上げ、実証することで確立されてきました。ここに心理臨床研究の醍醐味がありますので、まずは体験してもらいたいと思います。
④ 心理学はおおざっぱには、実験と臨床で成り立っているという話を最初に行い、それぞれを体験して行ってもらいます。しかし、実際には実験か、臨床かをはっきりと区別するということはできませんし、あまり有意義ではありません。これから双方を含むかたちで、基盤専門科目で知識を、基盤スキル科目においては技術を積み上げて行き、高度専門科目を通して、自分の興味関心を広げることで、総合的に心理学を学んでもらいたいと思います。4年間のカリキュラムマップについて、オリエンテーションでも説明しましたが、上記の基礎ゼミ体験の意義も含めて再度、この授業でも説明したいと思います。特に、科目区分の意味と科目間の関連性について理解してもらえたらと思います。そして、各自が、少しでも卒業論文に向けたイメージを育みはじめてもらえたらと思っています。
キーワード ① 総合心理学 ② カリキュラム ③ 心理学実験 ④ 臨床心理学 ⑤ 卒業論文
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本学の授業には、一回の授業ごとに、このような授業案が事前に示されています。これをコマシラバスと呼んでいます。どの授業においても共通する予習方法として、授業を受ける前にコマシラバスを読んでおくことがもとめられます。第1回「心理学をはじめる」に関するコマシラバスを読み、授業内容について押さえておいてください。
 本日の授業では、基礎ゼミの意義と目的についての説明を行い、卒業論文に向けたカリキュラムの説明をしました。そこで復習としては、現在、作成・登録中のあなたの1年次の時間割で心理学を学びはじめることをふまえて、2年次以降にどのような科目を自分が学ぶことになるのか、履修要項を読むことで、そのイメージをふくらませてみてください。また、授業に関しては、manabaに本授業を紙上で再現したものを毎回アップして行きますので、復習に活用してください。

2 本を読む①: 本を最後まで読んでみる! 科目の中での位置付け  第2回目の今回から、卒業研究に向けて、心理学の研究をイメージできるようなるための体験活動と、文章を書けるようになるための練習がスタートします。これらの土台となる力は、何はさておき、まずは「本を読む」ことに尽きます。本なんてページをめくって、文字が読めれば、誰でも読めると思うかもしれませんが、卒業論文に向けて、科学的な文章を書けるようになるために、必要とされる「本を読む」という力は全く別物となります。第2回の授業は、本を読む力を身につけるために、まずは科学の歩みがどのようなものかを知り、いわゆる難しくて長い本を読むための心がまえを身につけることを目的としています。その上で、これから一回一回授業が進んでいく中で、「本を読み、感想を抱き、それを他者に伝え、話し合い、他者の考えも参考としながら、自分の考えをまとめられる」ようにと進んでいきます。本を読むことが好きな人も、苦手な人も、みんなが楽しんで、本を読めるようになれるための授業を展開していきたいと思います。
ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫 11-26ページ(序章)
高橋源一郎 読んじゃいなよ 岩波新書 (特に、ページ2-22)
コマ主題細目 ① 科学の歩み ② 先行研究 ③ 本を最後まで読む
細目レベル ① 心理学は心の科学です。科学というのは、テーマを定めて、考えたり、調べたりする中で、その方法が共有されることで、みんなで同じ結論に至りながら、それを知識として積み上げていき、理解を深めることです。科学というと高校までの理科系の分野の話と思うかもしれません。それは自然科学と呼ばれますが、それだけが科学ではありません。いわゆる文系科目のことも人文科学、社会科学と呼びます。心理学には、自然科学と人文科学の両方の側面がありますが、この話の続きの話は、「心理学概論」及び、2年になってからの科目である「科学と人間(科学の可能性と限界)」を中心に学んでください。
 いずれにしましても、科学の歩みが前に進めるかどうかは、考えや調べかたを誰が読んでもわかるように、読者がもう一度同じようにやってみることができるように、記録されているかどうかにかかっています。そこで、今日から、このためのトレーニングをはじめます。この授業では、課題図書を選定しますので、みんなで読むことに取り組みます。また、実際に、心理学の研究手法についても体験の時間を毎回準備しています。ぜひ、心理学に参加することを楽しんでもらえたらと思います。この授業がこれからの14回で目指している最大の目的は、体験している内容を文章にまとめて、体験をしていない人でもわかるように、心理学を伝える力を身につけるためのスキルを身につけることをはじめることにあります。

② これまでにどのように考えられ、調べられてきて、どこまでがわかっていること(知識)なのか、これを科学の世界では「先行研究」と呼んでいます。どんなテーマにも必ず先行研究は存在しており、自分がテーマとしたいことに関係すること、似たようなことを考えている先人がいるものです。本を読むときには、どこまでが先行研究で、どこからがその著者の新たな視点なのかを理解しながら、文章を読めるようになることが科学の歩みに参加するための第一歩となります。このための練習として、今回は、みんなで課題図書を読み、その内容を一緒に読み解きながら、読んだ箇所を題材として、本の著者が新たに考えたことと、先人が考えたことを意識的に分けてみる練習に取り組みます。この練習は本の内容を理解することにも役立ちますが、自分で文章を書くときにも、必須な力となります。
③ 科学の世界では、高校までの国語の時間で言えば、小説というよりは、説明文というジャンルで取り組んできた読解力を土台とします。小説やラノベ、ミステリー、漫画ならともかく、説明文ともなると、これからの大学生活において読むことになる分量は、新入生の皆さんにとっては、とてもとても長いと感じる分量なのかもしれません。「一冊丸ごと最初から最後まで読んだ経験なんて無いよ」、という人もいるかもしれません。また、一回読んだだけでは内容を理解することが難しかったり、そもそも文章の中に出てくる言葉の読み方や意味がわからないことも多いかもしれません。でも、安心してください、この授業では、いまのあなたにとって、言わば、たとえ長くて訳のわからない文章だとしても、「とりあえず、その本、最後まで読んじゃいなよ」という助言からはじめたいと思います(参考書:高橋源一郎(編) 「読んじゃいなよ」(岩波新書, 2016)。そして、本授業で繰り返し本を読みながら、毎回の課題に取り組むことで、大学を卒業する頃には本を自然と読めるようにナビゲートしたいなと思っています。まずは、課題図書を最後まで読むことを目標としてみてください。
キーワード ① 科学 ② 自然科学 ③ 人文科学 ④ 社会科学 ⑤ 先行研究
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  第2回目の授業の予習としては、コマシラバスを読むことに加えて、課題図書を読みはじめてみることに取り組んでください。一人一人の読むスピードや、漢字や言葉の知識が違うので、一週間で何ページまで読めるかどうかは問題としていません。知らない漢字や言葉は調べながら、各自のペースで読み進めてください。漢字や言葉の意味はなかなか身につかないものなので、同じことを何度も調べることもあるでしょう。誰の中にも忘れっぽさは必ずありますので、4年間、粘り強く調べ続けてください。
 復習としては、manabaにあげた教材を読みながら、課題図書を読み進めてください。授業で学んだように課題図書の著者が自分の論を組み立てるための先行研究と著者の意見を分けることを意識して取り組んでください。今回の課題図書は岩波文庫に含まれる一冊です。岩波文庫というのは、全ての学問の土台となるような、言わば古典がセレクトされているシリーズです。大学生のスタートとして、岩波文庫を読み切るという本授業の目標を達成できれば、大学生としての自信を深め、誇りが高まることでしょう。

3 本を読む②:読んだ文章の中には必ずわからないことがある! 科目の中での位置付け 総合心理学部の1年生のみんなが、「本を読む」ことを継続させて、本の内容を理解し、自分なりの考えを抱き、表現できるようになるための練習をスタートしています。近い目標としては、これまで読書感想文などを書くことが苦手だった人でも、自然と文章が書けるようなることを目指しています。そして、徐々に、文章に論拠を加えながら、それを他者に伝わりやすいような文章が書けるような練習へとこれから段階的に進んでいきます。本授業を構成する15回は、卒業論文を書くために必要な力を身につけるために、どこが1回欠けても支障があると考えています。また、授業の順番には教育上の意味もありますので、授業に欠かさずに出席してください(これはどの授業でも共通の約束事となります)。もちろん、風邪を引いてしまうなど体調を崩すことは誰にでもありますので、その際は、担当の先生やメンター教員にその後必ず相談することで、休んだ回の内容を教えてもらうように頼んでください。
ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫 11-26ページ(序章)
コマ主題細目 ① 読む力を把握する ② 一回読むだけでは誰もわかっていない ③ 引用文献、参考文献、注釈
細目レベル ① 第1回に続いて、課題図書を読み進めて行きます。まずは前回取り組み始めたように、先行研究と著者オリジナルの考えとを意識してみてください。そして、今回はさらに、あなたが好きな文章や、覚えておきたいなと思った箇所に線を引くか、ふせんを付けるなど、目印を付けるように努力してみてください。さらには、読んでいく中で、意味のわからない言葉、内容が取れなかった文章、ちんぷんかんぷんな段落のように、自分が理解できていない部分が必ず残されているということも意識してみてください。さて、あなたは、どのくらい見つけられるでしょうか?課題図書を読みながら、一緒に数えてみましょう!自分でどのくらいわからないことに気がつけるのかが、現在のあなたの読む力です。たくさん見つけてください。
② 勉強を続けていき、知識が増えれば、将来的には一回読むだけで、本の内容を全部把握できるようになれると夢見ちゃうかもしれません。または、いわゆる頭がいい人、良さそうな人は、スイスイと読んでいるのではないか、と思っているかもしれません。しかし、現実は違います。みんな人それぞれに「なんか良いこと書いてある気がするんだけど‥」、「全然、わからない‥‥」、「あー、だから、前のページに、あんな風に書いてあったのかな、やっとわかったような気がする」というのが現状だと思います。だから、自分は本を読むのが苦手だと早とちりしている人がいたら、課題図書をみんなで読むことに取り組んでいるこの授業の中で、そんなこと絶対にないと気がついてください!とにかく1冊、最後まで読んじゃいなよ!の心がまえで、最後のページまで、頑張ってみてください。
③ 本には、章の終わりか、本の最後に、引用文献や参考文献の紹介や、注釈といったものがついています。引用文献欄とは、本の中で展開されている話の中で主張されていることの論拠となる文章(先行研究)を特定するものです。図書室や、書店でこれらを手に入れれば、元ネタを手にいれることができるようになっているのです。また、参考文献という書き方もあります。参考文献と呼ぶときは、直接的な論拠という訳ではないけれども、その本を読むために必要とされる背景知識を手にいれるのに役立つ書物といった位置づけとなっていることが多いです。注釈と呼ばれるものもあります。これは、単語の使い方が複数あるときに、著者がどのつもりで使っているかを特定したり、本文の流れとはそれるかもしれないが、今ここで関連性について述べておきたいことだったり、より詳しい情報の追加説明だったりします。注釈は、だいたい本のページの下側か、左端っこに少し小さめの字で載っています。今読んでいる課題図書ではどんなことが書いてあるか、少し目を向けてみましょう。このように手元の本の文献欄にも気を配ることをまずは身に付けてください。
キーワード ① 感想 ② 付箋 ③ 引用文献 ④ 参考文献 ⑤ 注釈
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  第3回目の授業の予習として、コマシラバスを読み、引き続き課題図書を読み続けることに取り組んでください。そろそろ速い人は、課題図書を1回は最後まで読み終えているかもしれません。しかし、安心してください、同じ課題図書の2週目に進めば良いのです。1回目に読むときには気がつかなかったことや、感じなかったこと、考えなかったことがなど、必ず新たな発見があります。
 復習としては、文章で再現された今回までのmanaba上にある教材を読んでみてください。教材は、本日の内容を想定して書いてはいますが、事前に書いていますので、もちろん内容は異なります。しかし、1回の授業の中で伝えたいことは同じなので、同じ内容がほんの少し異なる角度から書かれたものだと考えてください。授業中にできたことができなくなっていたり、練習したときには分かり難かったことが、今度は腑に落ちるということもあるかもしれません。

4 感想を書く①:自分の気持ちの変化に耳をすませる! 科目の中での位置付け 第4回目は、これまで課題図書を読み続けてきましたが、いよいよあなたの感想を文章にすることに取り組みはじめます。「本を読み、感想を抱き、それを他者に伝え、話し合い、他者の考えも参考にしながら、自分の考えをまとめられる」という力を身につけるという目標に向けての、階段を一段登るという大切な位置づけの日です。本の感想を文章に書きはじめるのですから、卒業論文を書くという4年間の最終目標に向けての偉大な一歩なのです。ゆえに、場合によっては、つまずいてしまうこともあるかもしれません。しかし、卒業論文を書いていた時間は、僕にとっては、本当に楽しい時間でした、だから、どうか信じて、授業に楽しい気持ちで参加してもらえたらと思います。授業での取り組みを続けていけば、全員が卒業論文を書けるようなスタートを切ることができます。そして、どうか予習・復習に書いてあることに授業外でも取り組み続けてください。わからないこと、疑問に感じたこと、不安に感じること、納得いかないこと、もっと聞きたいこと、全然関係ないかもしれないような気がするけど感じたことなど、モヤモヤする時は、何でも先生たちに話しかけてください。
ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫
コマ主題細目 ① 感想をつかまえる ② 感想を書いてみる ③ 誰が読んでも同じ意味にとれる文章を書く
細目レベル ① 自分の読む体力にあわせて、各自のペースで、とにかく、最後のページを目指して、課題図書を読み続けてください。授業内では、同一箇所を一緒に読むことを続けますので、先に進んでいる人はどんどん進んでください。読む際は、なるべく前回までに学んだ先行研究、気になる部分の印付けなども意識することに取り組んでください。今回からは、さらに積極的な読書として、読みながら、あなたの心の中に浮かんできたことや、立ち止まって考えてみたことに、注意を向けて、書き残す練習をはじめてみたいと思います。その中には、具体的にはっきりと考えることができたことばかりではなく、ぼんやりとしていて、全然はっきりしないこともあるかもしれませんが、とにかく、それを言葉にして書きとめることに取り組みます。最初から、上手な文章を書こうとすると、大変ぎこちない文章となってしまうこともありますので、まずは自然に浮かんできた自分の言葉で、単語レベルでも良いので、素直に、飾らずに書いてみましょう。
② 本を読む中で、自分がどの部分について、感想を抱き、どのようなことを考えることができたかを文章にしていきましょう。最初は、少しはずかしいかもしれませんし、どうしても人の目が気になってしまい、「こんなこと書いていていいのかな」とか悩んでしまうかもしれません。しかし、大学でこれからたくさん文章を書くことに取り組めば、自然に書く力はつきますので、とにかくまずは思い切って踏み出してみてください。書いちゃダメなことなんてありません。ただし、書くときには、それは先行研究についての感想なのか、本の著者オリジナルの考えへの感想なのかは意識してみてください。誰についての考えに呼応して、あなたが感じ、続けて自分の頭で考えた文章なのかがはっきりするように、心がけてみてください。
③ 自分の思いや考えを文章としたものは、自分以外の人が読むと大変わかりにくいものです(他者の視点に立つこと;視点取得)。はじめて書いてみたことならば、なおさらわかりにくいものです。あなたが書いてみた思いや考えというのは、その文章を書くきっかけとなるずっと以前から、あなたが経験してきたことや、ずっと気にかけてきたことなど、あなた以外の人が決して知ることができない前提となる事柄がたくさん含まれているからです。自分にとっては当たり前のことが気づかれずに、省略されてしまっているのです。あなたの頭の中にだけあることは、まわりの人には見えません。このことに気をつけて、あなたの書いた文章を自分で読み返してみて、誰が読んでも同じ意味にとれる文章だと思えるまで修正を繰り返すことに取り組んでみましょう。
キーワード ① 文章執筆 ② 著者 ③ 読者 ④ 視点取得 ⑤ 背景知識
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  第4回目の授業の予習としては、課題図書を読むことを続けてください。今回は、これまであなたが読んできた文章の中で、色々と感じてきたことを文章にすることに取り組みます。このため、読んできて気になっている箇所や、面白いと感じている箇所をできるだけたくさん見つけてから、授業に参加するようにしてください。
 復習としては、授業内に書いた文章を再度今週いっぱい読み返しながら、誰が読んでも同じ意味に取れる文章になっているのかを確認してみてください。そして、書いた文章をメンター教員に読んでもらい、基礎ゼミでこんな文章を書いていることを知らせてみてください。そして、誰が読んでも同じ意味に取れるかどうかという視点で助言をもらうようにしてください。この復習は次回の予習とも連動していますので、第5回のコマシラバスへと進んでください。

5 感想を書く②:文章は何度も何度も書き直すものです! 科目の中での位置付け 第5回目では、あなたの課題図書への感想文を仕上げていくために、予習課題として提出された文章にコメント付けて配布しますので、そのコメントに沿って文章を修正することに取り組みます。これは、卒業論文執筆という目標に向けて、「本を読み、感想を抱き、それを他者に伝え、話し合い、他者の考えも参考にしながら、自分の考えをまとめられる」という力を身につける上での第二段階です。「感想を抱く」といったときに、一人よがりとならないための大切な練習です。つまり、次のステップとなる「他者に伝える」に登るためにも非常に重要な位置づけの一日となります。もちろん、授業内90分で内容をすっきりと消化できないことも予測されます。必ずmanabaにある教材において、家でも授業を追体験するようにしてください。基礎ゼミ最初の山場だと思います。今回取り組む「感想を抱く」際に、他者からのコメントに基づいて、何度も自分の文章を書き直すということが苦にならなければ、残りの階段となる「他者に伝える、話し合う、他者の考えも参考にしながら、自分の考えをまとめる」はどれも登れるようになると思います。
ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫
コマ主題細目 ① 感想をもらう ② 文章を修正する ③ 査読
細目レベル ① 書店に売られている本も、学術論文とよばれるものでも、著者以外の人が読んで、少なからずの修正を繰り返したのちに、世の中に出てきます。著者が書いたものが、そのままということは、まずないのです。「てにをは」、単純な書き間違え、いわゆるタイポ(Typo)、言葉の使い方の統一のような修正は必ずあります。このプロセスを校正と言います。加えて、著者以外の人が、はじめて読んだときに、説明不足や言葉使いが難しいといった理由などで、内容がわかりにくいために加筆修正することもあります。このような修正の指摘というのは、誰が書いた文章にも必要なプロセスです。最初は少し気はずかしいかもしれませんが、まずは自分が書いた文章を自分以外の人に読んでもらうことに慣れていきましょう。
② コメントをもらったら、まずは、一点一点確認していき、どのように修正できるかを考えてみましょう。修正するときには、修正した箇所の前後の文脈関係にも影響が生じますので、必ず修正箇所の前後も含めて、何度も読み返し、コメントもらった箇所に関する疑問点がしっかりと解決されているか、丁寧に確認することに取り組みます。この作業もなかなか自分一人で完了することは難しく、まだその文章を一度も読んだことのない人が、まっさらな気持ちで、読んでみて、内容を理解できるのか確認してもらうというのが理想的です。自分の言いたいことが、相手に伝わらなくて、修正の指摘が続くというのは、最初はけっこうガッカリすることかもしれません。ときには、読んでくれた相手に腹を立ててしまうこともあるかもしれません。しかし、これらはごく普通の反応で、文章を書くのに慣れているはずの大学の教員だとしても、少ししょんぼりすることなのです。しかし、修正を提案されるということは、相手が真剣にあなたの書いていることをわかりたいと思っている証拠でもありますので、誠実に対応できるように、練習を繰り返しましょう。
③ 研究者(大学の教員など)が自分たちの研究を報告する学術書や学術論文では、出版社に提出されて校正に進む前に、査読というプロセスが必ず入ります。査読は、提出された原稿に対して、同じ分野の研究者数名がそれぞれ別々に、内容を確認する作業です。同じ分野の研究者からみたときに、内容に誤りがないか、不足している情報はないか、わかりにくい部分はないか、あいまいな部分がないか、異なる観点での追記が必要ないか、結論を得るにはさらに研究を追加する必要はないか、等々、様々な確認が入ります。そして、著者に査読結果が戻されると、著者らは査読者からの様々な質問や修正に応えて、原稿を修正する作業に取り組みます。現行の修正を終えると、どのような意図で、どこを修正したかも手紙にまとめて、修正原稿と一緒に、査読者宛に提出されます。このようなやり取りを数回繰り返したのちに、査読者が内容をしっかりと理解できた後に、原稿は出版社の編集担当に戻され、ようやく出版へとたどりつきます。つまり、科学的な文章を読む際に、あなたが読んでいる文章が出版社による校正作業のみなのか、専門家による査読を経てのものなのかは、情報の確からしさに大きな影響を及ぼすとも言えます。しかしながら、査読付きの学術論文をしっかりと読めるようになるには、本学の基盤専門科目程度の知識が前提とされます。このため卒業論文に本格的に取り組み出す3年次の後半までに、学術論文が読めるようになるために、基盤専門科目をしっかり学んで欲しいと思います。
キーワード ① 学術論文 ② 査読 ③ 校正 ④ 修正 ⑤ 出版
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  第5回目の授業の予習として、コマシラバスを読み、引き続き課題図書を読み続けることに取り組んでください。加えて、今回は、大事な課題を出しますので、受講前に必ず済ませておいてください。その課題は、これまでに書いた感想文を担当教員に、前の週の金曜日までにメール提出しておくという課題となります。担当教員があらかじめ提出されたものを読み、伝わりにくい部分、もう少し書き足すと良いかなと感じた部分などにコメントを入れおくようにします。そして、授業ではその修正に取り組みます。
 復習としては、manabaにあげてある教材をじっくりと読んでください。上手くみんなの授業中の気持ちを代弁して書けているかわからないけれども、教材の中には、自分の書いた文章にコメントをもらい、それを修正することに取り組んでいる登場人物がいます。その姿を読むことで、文章を書き直し続けることで、誰が読んでもわかるような文章を書くことの大事さを復習してもらえたらと願います。

6 感想を伝える①:コミュニケーションをあきらめない! 科目の中での位置付け 第6回目では、予習課題として提出されたみなさんの課題図書への感想文を取りまとめたものを配布しますので、みんなの感想文へコメントを書くことに取り組みます。その後に、回収して、ランダムに配布することで、あなたの課題図書への他者のコメントを読むことになります。そして、自分の感想がどのように伝わるものなのかを実感することで、「感想を伝える」ということ、さらには感想のやり取り(話し合う)といったことが、科学にとって、なぜ大事なことなのかを学びます。これは「本を読み、感想を抱き、それを他者に伝え、話し合い、他者の考えも参考にしながら、自分の考えをまとめられる」という力を身につける上での中間点に位置付けられます。科学が参加するものたちの合意形成で進歩していくということを学ぶ上でも重要な回となります。また、みんなの感想文へコメント書くことで、第4-5回の授業で取り組んだ内容である「感想を抱く」の復習にもなっています。
ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫
コマ主題細目 ① なぜ感想を言葉にするのか? ② 感想のやり取り ③ わかったこと、わからないことの共有
細目レベル ① 感想を文章に残すという練習をしてきたのに、今更なのですが、そもそも感想はうまく相手に向かって話せないと思いませんか?例えば、誰かと映画を観に行ったとしまして、感動して、泣いて、エンドロールが流れる。その後は、黙って二人で歩いてしまい、言葉少なくなるような気がしませんか?しかし、それでも、なんか偶然に喫茶店にでも二人がたどり着けば、何か感想めいたことをどちらからともなく言葉にしはじめて、もどかしいみたいな感じです。
 今回のテーマは感想を相手に伝えるです。映画の後で、という先の例は、日常生活場面であり、おそらく大抵の場合、人間関係を築くためなのだろうと思われます。それでは、大学で科学の本を読んでみて、その感想を誰かに伝えるというのは、伝えようとした側にとって、何のためになるかを今回は考えてみたいと思います。

② 前回までに書き込んできた作文を無記名にしたものを配布しますので、まずは読んでもらいます。そして、その相手の感想を読んで、あなたが抱いた感想を書いたり、質問を書いてみるという練習に取り組みます。書く際には、前回までに注意してきたように、相手に戻したときに、あなたの感想と質問の意図がなるべく正確に伝わるように書けているかの復習をしてみてください。その次に、あなたはその文を相手に向かって書くことで、何をしようとしているのか?について考えてみてください。例えば、相手の感想に呼応しようとしている、相手の感想を受けての自分の視点からの感想を伝えようとしている、相手の感想の中でもっと詳しく聞きたくなったことを伝えることで更に相手の感想をもらおうとしている‥。様々な意図がそこにはあるかとは思いますが、気をつけたいことは、相手の話とは関係のない自分の感想だけを書いていないか、または相手を単に否定してしまうだけとなりコミュニケーションを閉じてしまっていないか、ということです。反対意見を相手にしっかりと伝えることはもちろん重要です。この時は、相手のどの部分に、なぜ反対するのかを丁寧に述べる必要があります。また逆に、どの部分までは同じ考えをたどれているのかも伝えていかないとコミュニケーションは成立しにくいです。
 他者の文章への感想を書き終えたら、それを回収して、ランダムに配布します。そこには、あなたの文章への感想も書かれていることになります。それを注意深く読んでください。そして、あなたの感想文は相手にどのように読まれていたのかを考えることに取り組みます。

③ 科学の本を読んで、このように感想のやり取りを続けることは何をしていることになるのでしょうか?このようなやり取りを続けて行くと、実は、本を読んで、わかったことと、わからないことについて、何となくではあるのですが、把握できるようになります。第一回目の「科学の歩み」、「先行研究」の復習となりますが、科学はみんなが納得できた先に、何がまだわかっていないのかを合意形成しながら、ゆっくりと前に進みます。もちろん、これは心理学も同じです。つまり、感想のやり取りができるようになることは、心理学を学び、さらなる発見へとつなげていくための第一歩なのです。今回の授業1回では難しいかもしれませんが、次回もう一度、感想のやりとりを続けて練習して行きます。そして、4年間継続して、このようなコミュニケーションを学んで行きます。
キーワード ① 自己主張 ② 他者理解 ③ 共感 ④ 合意形成 ⑤ 科学コミュニケーション
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  第6回目の授業の予習として、今回は複雑な作業に取り組みますので、コマシラバスを熟読しておいてください、よろしくお願いします。
 今回も課題を出しますので、受講前に必ず済ませておいてください。やはり、提出されたものを次回の授業で使用します。提出してもらいたいのは、第5回目の授業中に修正作業に取り組んだ作文です。あなたが納得行くまで修正した文章について、今週金曜日17:00までにメール提出してください。課題図書を読むことも続けてみてください。そろそろ一回通して読めた頃になりますでしょうか。もちろん読むペースは特に指示しませんが、読まない週が無いように自分を律して、授業に参加してください。
 manabaにあげてある教材で、現実に感想をやり取りする上での注意事項について、教材の中に登場する人物たちのやりとりを読むことで、復習に取り組んでください。みなさんの状況が客観視できて、質問が上手になるような教材となるように全力で書いてみます。

7 感想を伝える②:質問するために本を読む! 科目の中での位置付け 第7回目では、感想を伝えるために、質問ができるようになるための練習に取り組みます。このために教員も課題図書への感想文を書いてきますので、それに対して、みなさんが質問してみるということをやります。みなさんからの質問をもらって、僕がその場で回答していきます。周りに気後れしてしまい、時間内に質問しそびれてしまうこともあるかもしれませんので、その時はメールをください。なるべくすぐに回答します。いずれにせよ、感想から、質問、そして回答を聞くという流れの中で、「本を読む」ということは、一人ではできないということを学びます。そして、この授業の目的である「本を読み、感想を抱き、それを他者に伝え、話し合い、他者の考えも参考にしながら、自分の考えをまとめられる」ということについて、中間点までの総まとめを行います。今日の練習に取り組み、次回以降に「他者の考えも参考にしながら、自分の考えをまとめる」という最終段階へと向かいたいと思います。
ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫 99-105ページ(八章)
高橋源一郎 間違いだらけの文章教室 朝日文庫
コマ主題細目 ① 質問をしてみる ② 本は一人では読めない ③ 先生について
細目レベル ① 今回は、前回に続いて、あなたが伝えた質問が、相手に何を引き起こすのかをもう少し考えてみたいと思います。あなたが、本を読んで、誰かにその内容について質問をすれば、質問を受けた相手は何かを返答しようとします。「あなたと同感で、指摘箇所の理解が私もできません」、「たぶん、著者が言いたいことは‥‥だと思います」、「あー、そのような考え方もあるのですね」、等々、様々な反応が生じることでしょう。相手の返答を受けてあなたの気持ちが納得すれば、「ありがとうございます」、「わかりました」等々となるでしょう。しかし、時間が限られている時は別として、通常は、相手の返答を受けて、さらに知りたいことや、わからないこと、あなたが新たに考えたこと等が、次々浮かんできて、しばらくやり取りが続くことになります。科学というものは、先行研究に基づいて、考え方を更新することだと第一回でやりました。このため、科学に参加するには、質問をして、考えを更新するためのやり取りに加わる力が必要となります。つまり、質問ができるようになることが、本を読めるようになることだと言えるかもしれません。授業では、教員が感想文を例示しますので、それについての質問をみなさんの方から、教員にすることで練習に取り組みます。
② 大学で学ぶ多くのことは、まだ完全には解明されきっていない内容となります。現在進行形で加わってくる新たな発見も含めて、どのように考えることができるか、次に何をすべきなのかを考えるというのが学びの中心です。このため、本(先行研究)を読んで、質問と回答を繰り返すことで、理解を深めて行き、わかったと思えることと、まだわかっていないかもしれないことを分けることが、科学を前に進めるためには必要です。これまでの授業の繰り返しになりますが、科学が合意形成である限り、この作業は一人ではできません。つまり、本は一人では読めない、ということになります。本を読むことは、質問をするためだからです。参考書として、高橋源一郎著の「間違いだらけの文章教室(朝日文庫, 2019)」をあげておきます。この本は、少しだけ過激な物言いも含まれていますが、文章についての考え方が広がり、今日までの話の理解の参考となると思います。
③ 科学を前に進める目的となると、本は一人では読めません。この時、先生という人間の役割は何かを考えてみます。そんなに答えの定まらない、あいまいな、科学だというならば、一体、先生とは何か?何をしている人なのか?という問いです。僕たちが、大学で先生という呼び名を受け入れるのは、その読んでいる本、先行研究について、その場にいる誰よりも読み込み、関係するだろう他の本も読んでおり、そこから考えられる質問を誰よりも多く発することができるからです。つまり、読む本に対して、先生がいることで、質問と回答のやり取りというものが、科学を前に進めるために役立ちます(本についての背景知識を説明するという役割も、もちろんあります)。一緒に、たくさんの本や論文を読み、心理学をたくさん学んで、みなさんと卒業研究を共に歩むことで、心理学を前に、進めて行けたらなと思います。
キーワード ① 質問 ② 回答 ③ 再考 ④ 本を読む ⑤ 先生
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  第7回目の授業の予習としては、コマシラバスを何度か読んでみてください。もしかすると、僕がこの授業の中で一番伝えたいことが書けた回のような気がしています(特に、コマ主題細目「本は一人では読めない」)。また、課題図書を読み続けることも怠らないようにしてください。
 復習としては、manaba上にある教材を読みつつ、今回の授業で練習した「質問をする」ということを続けてください。授業や教材の中で例示してあるような質問をするときの注意事項を守りながら(前回の第6回の内容、例えば、単に相手を否定するだけの質問にならないようにするなども復習しながら)、様々なタイプの質問を考えてみてください。そして、その中でもどうしても聞いてみたいという質問について、教員にメールをするという課題に取り組んでください。

8 図書館に行く①:実際に本を手に取り、ページをめくって! 科目の中での位置付け 第8回目では、卒業論文を目指して、「本を読み、感想を抱き、それを他者に伝え、話し合い、他者の考えも参考にしながら、自分の考えをまとめられる」という力を身につける中の、「他者の考えも参考にする」ときに、その元となる材料を手に入れるために、新たな本に出会う練習に取り組みます。つまり、図書館の散策に行きます。本と出会い、自分の考えをさらに深めるステップへと進む準備となります。本を一冊読み切って、さらに次の本に出会うというステップが円滑にできるようになることは、大学の学びを支える大切なスキルであり、最も楽しいことの一つだと思います。また、卒業論文を書くには、非常に多くの文献との出会いが必須となりますので、図書館についても、しっかりと学んでください。
 本日は基礎ゼミの中間地点となり、これまで心理学実験を体験してきたグループ、臨床心理研究の体験をしてきたグループは前半の体験課題の最終日となります。来週からは各グループそれぞれの体験の内容が入れ替わりとなります。

ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫
コマ主題細目 ① 本に出会う ② 図書館を歩く ③ 一般書と専門書
細目レベル ① この授業で読んでいる本は、僕がみんなで読んでみたいなと思って、選んだものです。そして、ここまで一緒に読み進めてきた皆さんは、この本から広がる世界について、それぞれが別々のことをもう少し知りたいと思いはじめた所かなと思います。この知的欲求を満たすためには、次の本に出会う必要があります。今回と次回は、本との出会い方についてです。本との出会いかたには、正解も間違いもなく、先生からの紹介、友達からのおすすめ、新聞やインターネットでの書評など、様々あります。通常、勉強をしていて、一番頻繁に行うことになるのは読んでいる本に掲載されていた引用文献や参考文献欄から読みたいものを探すだと思います。これに加えて、大学に入ったばかりの皆さんに実践してもらいたい本との出会い方は、大学の図書館を歩くです。今日は、図書館を散策して、一冊借りてみましょう(授業進行の都合で申し訳ないのですが、引用文献が記載されてある本を借りてください)。
② 大学の図書館にはたくさんの本がありますが、総合心理学部のある松山道後キャンパスの図書館のほとんどの本が、実は僕たち教員が一冊一冊選んでそろえています。心理学を総合的に学ぶ上で、どんな本があると良いかに関するアイデアを出し合って準備してきました。教員同士もここに集まるまでは、別々の場所で働いてきましたから、図書館に並べる本の意見を出し合うということは、お互いの頭の中をチラ見し合うようで、とても刺激的な時間でした。これからもどんどん本を集めて行きたいと思います。このような図書館がキャンパスにありますので、ぜひ、自分で実際に本を手にとって、読みたい本を探してみてください。本を探しながら、どの棚に、どんなジャンルの本があるのかについて、自分なりの見取り図をイメージしていってください。最初の1年でこの見取り図ができると、その後の心理学の学びがスムーズになります。今日はたくさん本を手にとってください。
③ 科学的な文章の中で、一番専門性が高いのは、学術論文です。学術論文の知識をまとめて学ぶのに編集されたものが専門書となります。この専門書の内容を大学でその学問を勉強していない人でもわかるように書いたものが一般書となります。繰り返しになりますが、3年生の後半くらいから学術論文を読めるようになる必要が出てきて、その前の基盤専門科目を学んでいる段階では専門書を読むことになります。今は1年生ですから、一般書を読むことも多い段階です。一般書というのは、非常に幅が広いのですが、科学的な姿勢があるものとしては、岩波新書、岩波科学ライブラリー、岩波ジュニア新書、講談社現代新書、講談社ブルーバックス、ちくま新書、ちくま学芸文庫といったシリーズが読みやすいでしょう。これらの本の中には、専門家が大学での教科書を想定して書いたものもたくさんあります。読んではいけない本が、世の中にある訳ではないのですが、一般書の場合は、本の内容の信頼性を判断するのが難しいものも多々あります。しかし、まずは自分でどんどん読んでみてください。大学での学びが進むことで、一般書の中身について、どう取り扱うべきか判断できるような力(リテラシー)が身に付いていきます。
キーワード ① 図書館 ② 一般書 ③ 専門書 ④ 学術論文 ⑤ リテラシー
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  第8回目では図書館に行きます。そして、課題図書に関連して、自分が読みたい本を借りることを通して、道後キャンパス図書館の理解を深めることをねらっています。課題図書の次に読みたい本への出会いをスムーズにするためにも(なるべく授業時間内にぜひ借りたいという本を見つけるためにも)、今回の予習は、課題図書を読むことに全力を注いでください。課題図書の中で、自分が興味関心を抱いて、次に読んでみたい本に出会うためにも、予習よろしくお願いします。
 復習としては、今回の授業で、借りることができた本が図書館の中で、どのジャンル(自然科学、人文科学、社会科学など)の棚にあったのかを確認するようにしてください。図書館では、心理学の本であっても、全てが同じ書棚にないということを学びました。ぜひ、今週中にもう一度、授業時間以外に図書館に足を運んで、本の配置について復習してください。加えて、今回までで、心理学の体験活動が半分まできました。そこで、これまでの体験の内容を800〜1200字の文章にまとめてみてください。そして、この体験を受けていない人が読んでも、どんな体験をしたのかが伝わるように、書くように心がけてください。書けた文章を、この授業科目を担当していない教員へメール提出するという課題を出します。

9 図書館に行く②:本との出会いで自分らしさを 科目の中での位置付け 第9回目は、前回に引き続いて、図書館と本との出会いについて学びます。みんなが図書館で、すごす時間がどんどんと増えていくことを願います。本を読むことは、この授業で繰り返しやってきましたが、卒業論文に向けてのはじまりの力です。この授業で図書館についての理解を深めることで、「本を読み、感想を抱き、それを他者に伝え、話し合い、他者の考えも参考にしながら、自分の考えをまとめられる」という力を身につけるための最後の階段を登る準備をしましょう。いよいよ、来週からはこれまで書いてきた作文をベースとして、小論文になるように「他者の考えも参考にしながら、自分の考えをまとめられる」ように練習を積み重ねていきます。作文の段階は、あなたの意見が誰が読んでも同じ意味に読み取れるように書いてあれば良いのですが、小論文では文章に論理を組み入れて、なるべく多くの人があなたの意見に納得できるように書くことがもとめられます。このためにもあなたの意見を補強するような本を探せるようになりましょう。
ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫
コマ主題細目 ① 図書館に置いてなかった本を手配する ② 次から次へと本に出会う ③ 検索について
細目レベル ① 前回の授業で1冊の本と出会い、借りることができたと思います。今日は、その手元にある本の中の引用文献、参考文献の中から、さらに読みたい本を探してみたいと思います。借りた本の読んでこれた部分の中に出てきた引用文献を、引用文献欄から特定することに取り組みます。その後に、本日も図書館にいきまして、その本を探してみます。今回は、あなたにとって必要な本が特定されていますので、図書館の蔵書を検索してみましょう。本館に取り揃えていない場合は、他の図書館から取り寄せるということになりますので、本の取り寄せの手続きも覚えてもらいます。自分が探している本が松山道後キャンパスにあった人は、無い本を選んで取り寄せとなった友達と一緒に手続きを学んでください。
② このように一つ学ぶと、次から次へと学びは広がります。一冊読み終える頃には、さらに何冊も読みたい本が出てきます。この時の学びの広がりには、大きく分けて三つあるので、次に読もうとしている本がどっちになるのかを意識してみてください。一つ目は、読んでいる本を理解するために必要となる背景知識を全般的に手に入れるための参考書。二つ目は、読んでいる本の興味を持ったテーマに関する先行研究(学問上の時間的な縦の流れ)。三つ目は、読んでいる本のテーマから興味の範囲の幅を広げる関連本(学問上のテーマとしての横の流れ)。次に何を読むのかということこそが、大学での主体的な学びにおいて、みなさんの個性を発揮する点となります。先行研究と言えども、そのすべてを読むことはできないため、個々が重きをおいている部分から学びを深めることになるからです。
③ 興味のあること、知りたいことがあると、まずはGoogleにきいてみるというのが最近の一般的な流れなのかもしれません。学問の世界においても、Google Scholarというものもあるし、国立情報学研究所が作成しているCiNii Articleで検索することで、効率的に文献情報を手に入れることもできます。自然科学に関して言えば、PubMedというものもあります。これらの検索ツールは非常に便利ではあるのですが、ここでは入力する検索キーワードに関連したものしか見つけることができません。最低でも基盤専門科目を学び終えるくらいまで知識を積み上げないと、キーワード検索を大学での学びに活かすことはできません。検索ツールに関しては、今後の実習科目の中で詳しく学びはじめますが、3-4年次の卒論に向けての演習(ゼミ)活動が軌道に乗り始めるくらいまでは、本を探す主たる道具として用いないことをお勧めします。まずは実際に、図書館で本を手にとることからはじめましょう。
キーワード ① 検索 ② Google ③ Google Scholar ④ CiNii Article ⑤ PubMed
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  第9回目の予習として、第8回の授業において、図書館で借りた本を読むことに取り組んでください。読み進む中で、これまで書いてきた作文を小論文にするために、どのような部分の話をあなたの考えを広げたり、補強するために紹介することが効果的かを考えながら読んでみてください。
 復習として、課題図書、前回(第8回)に借りた本の両方が紹介されている別の本を図書館で探してみましょう。両方の本が引用されているような別の本をもし見つけることができれば、それらの関連性はあなた以外の人にとっても非常に深いものだと言えるでしょう。もし、そのような本が見つからない場合は、どちらか片方が引用されている本を探してみてください。それも見つからない場合は、3冊を並べて、自分の頭の中での関連性を他者がなるほどと思えるような説明ができるように家でじっくりと考えてみてください。

10 文献を活用する①:他者の意見を自分に取り入れてみよう! 科目の中での位置付け 第10回目は、小論文を書くことに取り組みます。感想文との違いは、感想文は自分の感じたこと、考えたことを正確に相手に伝えることが目的だと思います。小論文では、何がしかの根拠に基づいたあなたの意見がもとめられます。根拠というとき、科学では先行研究を引用する、またはデータを利用するというのが一般的となります。このため、第8-9回目の授業では図書館に行くという課題に取り組んでいました。第7回目までに書き込んできたあなたの文章に、図書館で借りてきた文献を用いて、根拠を加えるための練習に取り組み始めることによって、この授業で取り組んできた「本を読み、感想を抱き、それを他者に伝え、話し合い、他者の考えも参考にしながら、自分の考えをまとめられる」という力を身につける最終段階がはじまります。論拠を探すためには、「本を読む」という力を身につけるという、この授業の最初から一所懸命に取り組んできたことが、ますます必要となってきます。最初から、自分の論拠を組むために必要な文献に、適確にスイスイと出会う人はいません。これから4年間、たくさんの試行錯誤が必要とされます。しかし、本との出会いの楽しい面に注目して、じっくりと「本を読む」力を自分のペースで、育ててください。
ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫
コマ主題細目 ① 作文から論文へ ② 直接引用と間接引用 ③ 孫引きについて
細目レベル ① 第6回までに、課題図書の感想文を作成することに取り組んできました。今回からは、各自の感想文をもとにして、前回までに借りてきた本の内容を含めることで、小論文へと発展させることに取り組みます。感想は心に抱いた事柄が相手に伝われば良いのですが、小論文ではさらにあなたの意見がもとめられます。意見ともなると、あなたが一人で思っていることを書いても、説得力に欠けるということも起こりえます。そこで、あなた以外の人の意見や発見が、あなたの意見に説得力を持たせるために必要となります。課題図書の中でも、先行研究を上手に紹介することで、わかりやすく著者の意見を伝えることに成功している部分がありますので、解説したいと思います。論理については、「こころは数値化できるか?」で扱っていますので、復習してみてください。
② 文献資料を用いて、自分の意見を組み立てる際には、引用ということをします。引用には二つの方法があります。一つは直接引用という方法です。これは引用したい本文を「」で抜き出して、そのまま使う方法となります。自然科学では、特定の人物の特定の言葉自体に重要な意味がない限りは、直接引用はほとんど用いられることはありません。もう一つは、間接引用です。間接引用というのは、自分の意見を組み立てるのに必要な箇所を、あなたの言葉で要約して使用する方法となります。自然科学においては、ほとんどの場合において、間接引用を用いるのですが、適切な間接引用ができるようになるには、引用先の文章を正確に理解する力と、要約して書く力を身につけることが不可欠となります。今回は、課題図書の内容について、間接引用を用いて、文章を書く練習に取り組みます。
③ 先行研究をたどって行った時に、どうしても手に入れることができない文献というものも実際にはあります。そして、たとえ直接的には読むことができなくとも、あなたが論を組み立て、文章を書く際に、不可欠となる知見も時にはあることでしょう。このような時は、その手に入らない文献の内容を紹介している文献を引用することで代用するしかありません。このような引用方法は、孫引きと呼ばれます。ただし、孫引きは、自分で元の文献の内容を確認できていない訳ですから、基本的にはしない方が良いことだということは記憶にとどめておいてください。また、第7回で一般書と専門書の違いを勉強しましたが、一般書などでたまにあることなのですが、その本を書かれるために用いられた引用文献の一覧が記載されていません。このため引用文献欄の無いような一般書は、自分の興味の幅を広げるための日常の読書としては有意義ではあるのですが、書かれている内容が科学的に妥当な議論なのかを検証できないので、卒業論文を含む科学的な文章を書く際には、引用として用いるのにふさわしくありません。この点で、日常の読書と、科学する上での読書には違いがあります。
キーワード ① 小論文 ② 論文 ③ 直接引用 ④ 間接引用 ⑤ 孫引き
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  第10回へ向けた予習としては、課題図書を起点として、あなた自身が見つけた本を読み、小論文を書く際に、あなたの意見に論拠を与えるために、使いたい(引用したい)箇所を可能な限り見つけてください。この時、その本のページに付箋をつけるなどでして、特定しておくようにしてください。
 今回の講義において、科学の中で書かれる論文では、直接引用または間接引用がなされることを、みなさんは学びました。そこで、復習としては、課題図書と図書館から借りている本を用いて、その中に出てくる特定の箇所を直接引用を用いて引用するか、間接引用を持ちいて引用するかをして、800字程度の新たな小論文を書くことに取り組んでください。引用の練習をするという趣旨なので、テーマは自由となります。自由では書きにくいという場合は、担当教員に相談してください(その場でテーマ名を一緒に考えましょう)。

11 文献を活用する②:他者の意見を引き受ける責任! 科目の中での位置付け 前回に引き続いて、小論文を書くことに取り組みます。小論文を書くことの中でも、意見に論拠を与える一つの方法である引用の練習に取り組みます。特に、心理学の論文で使用される間接引用について重点的に練習します。この時に必要とされる力は、文章を要約することです。要約とは、話の中から相手の言いたいことを要は何であるかを、あなたなりの理解に基づいて短くまとめる力だと言えます。このため、どうしても引用元にある考えに、あなたの理解の程度が反映されてしまいます。あなたの本意ではない影響を与えてしまい、元々の文献の中で著者が伝えたいことではなくなってしまっては、科学することができなくなってしまいます。このような理由で、この授業の目的である「本を読み、感想を抱き、それを他者に伝え、話し合い、他者の考えも参考にしながら、自分の考えをまとめられる」という力を身につける最終段階において、「要約する」という練習が最重要課題なのです。
ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫
コマ主題細目 ① 間接引用の難しさ ② 引用文献の書き方 ③ 図の活用
細目レベル ① 前回に引き続いて、課題図書の特定の箇所を間接引用しながら、自分の意見を述べることの練習に取り組みます。復習になりますが、間接引用とは、文章の中の特定の部分をあなたの言葉で要約して、それを活用するものです。このため、要約がうまくできないと、読者に間違ったことを教えてしまうことにもなります。また、豊富な知識のある読者が相手ともなると、「その本では、そんなこと言ってないよ!」と、引用することで、逆に、知識不足を感じさせてしまうことさえあります。私たち研究者(教員)の論文出版への道のりには、査読というプロセスがあることは第4回で説明しましたが、この査読の際にも、不適切な引用に関する指摘は少なからずあります。卒業論文に向けて、今から、文章を要約する力を一緒に磨いて行きましょう。
② 文章を書くのに、引用文献を用いることを練習してきました。課題図書での文献の紹介の仕方に注目してください。文献の紹介には、本ごとにルールがあります。例えば、著者、出版年、タイトル、出版社のような順序などがあります。この順序は本ごとに、学術雑誌ごとに異なります。しかし、同じ本の中や、論文の中では、統一された順序で記載されています。このようなルールを設けることで、読者が確実に引用されている文献を手に入れて、内容を確認できるようになっているのです。4年生になると、卒業論文に取り組むわけですが、その際には卒業論文執筆の手引きというものが配布されることでしょう。そして、その中では、引用文献の執筆の仕方についてのルールが記載されることになります。このルールは厳密に守られなくてはなりませんので、卒業論文の前に、「心理学実験実習」や「調査法実習」においても、引用文献の書き方について繰り返し学び、練習する機会が設けてあります。
③ 文章を書いていると、どんなに書いて、書き直してと、繰り返していても、理解しやすい文章がかけているかなと、ふと不安になることがあります。特に、映像的なことを伝えるときには、文章することに限界を感じることがあります。このような時は、一枚の絵を文章に添えることが効果的なことがあります。この授業の課題図書の中にも、みなさんの読書の理解を助けるような挿絵がたくさんあると思います。同様に、科学の世界でも、本や論文の中で図を活用します。心理学では、図は実験の装置や、結果の数値をグラフィカルに示すのに不可欠であり、文章だけよりも理解しやすくなるため頻繁に用いられています。このため、科学が得意になるには、わかりやすい図を作成する力も必要となってきます。「心は数値化できるか?」の授業でも、いろいろな図が紹介されていると思います。図を作る力は、将来どの世界で働くことになっても、役立ちますので、4年間かけて、文章力と合わせて、作図力も学んでください。
キーワード ① 要約 ② 間接引用の難しさ ③ 引用文献に関する書式 ④ 図 ⑤ 表
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  第11回目は、前回の復習事項に文献引用を用いて小論文(800字程度)を書くことをもとめていますので、一週間の課題としても、ヘビーかもしれないということを考えまして、授業を受けるための予習として、あなたが書いた小論文を何度も何度も読み返して、時間ギリギリまで修正する作業とします。この授業でずっと取り組んできたことですが、一つの文章を何度も何度も書き直すことは、卒業論文に向けた大切な力となります。
 復習としては、現在、図書館から借りている引用文献欄を見比べて、それぞれの本で引用文献の書式が同じか、異なるかを確認することに取り組んでみてください。また、同じだった場合でも、異なっていた場合でも、一度は図書館を訪れて、まだ借りていない本の文献欄も確認することに取り組んでみてください。色々な書式があることを知れると思いますが、必ず一冊の中では同じ書式に統一されていることもわかるはずです。

12 他者の意見に応える①:文章の中にある「あなたらしさ」 科目の中での位置付け 人があなたに話しかけてきたら、どうなるかといえば、よほどのことがない限りは、何とかしたいと思うし、何かを答えてあげたいと思うところです。このような気持ちは大学授業、特に発表場面でも同じであります。誰かが文章を書き上げて発表するという成果をあげたら、みなで分かち合うことで、会話が生まれて、次の研究に進むということを第2回の細目「科学の歩み」という部分ではじめて、今回まで強調し続けてきました。みなさんの卒業研究も心理学の歩みへの参加であり、この意味では私たち教員の書く学術論文と同じ重要性を担っています。そこで、第12回では、前回までにみなさんが書いてきた文章のいくつかについて(時間の都合で事前に著者と交渉成立したものに限ります)、著者に発表してもらいまして、感想を共有し合うことに取り組みます。これは次回に取り組む感想に応えて文章を修正するという練習も含めて、みなさんの小論文を仕上げに向かわせるという位置づけになります。
ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫
野矢茂樹 大人のための国語ゼミ 山川出版社
コマ主題細目 ① 書いた文章を発表する ② 文献の世界を広げる ③ 国語力
細目レベル ① 前期の授業も後半となりました。これまでに課題図書を一緒に読み進めながら、あなたの感想を土台として、小論文を書くことに取り組んできました。そこで、本日は、みんながどんな文章を書いてきたのかを共有しあいたいと思います。みんなでお互いの文章への感想を共有し合いたいと思います。この目的は、現段階の文章の出来不出来を競い合うことや、比較し合うことではありません。一つの課題図書から、たくさんの文章が生まれたことを実感してもらいたい方にあります。そして、文章それぞれがその人らしさを示すものであることを知り、自分の書く文章に自信を持ってもらえたらなと思います。今後の大学生活においても、たくさんの文章を書くことになりますが、文章を書くことを通じて、自分を表現していくことが楽しくなってくれることを願います。
② 図書館の中には、あなたが読んでみたいと思っている本が、まだまだたくさんあったかと思います。今後も、時間ができたら、図書館へ行くという感じで、うろうろすることを続けてみてください。必ず出会いがあります。しかし、それでもなお、本の世界には、あなたが自然には手に取らないような本も残ります。このような視点で、みんなの発表を聞いてみてください。みんなはどんな本を、どんな風に引用しているでしょうか?今後、本を読むときにも、読み進めている本では、どんな本をどのように引用するかたちで、話を展開しているのかにも注意してみましょう。このような姿勢で、本を自然と読めるようになってくると、勉強はどんどん加速して、楽しくなっていきます。
③ この授業で身に付けようとしている文章を読み書きする力というのは、一般的には国語力と呼ぶのかもしれません。本屋さんには、国語力を学ぶための書物がたくさんあります。国語力をすぐに上げるということは、なかなか難しいと思いますので、復習用にも本講義に沿った内容のオリジナル教材を作ってきました。このまま本学のカリキュラムをこなしてくれれば、卒業論文を書くのに十分な力がつくと考えています。さらに、このような国語力を高めることに興味が沸いて、まだまだ余力のあるみなさん向けには、大学で必要となるような力(アカデミックスキルと呼ぶことある)を独習できる参考図書として、野矢茂樹(著)「大人のための国語ゼミ」(山川出版社, 2017)を紹介しておきます。
キーワード ① 発表 ② 質問 ③ アカデミックスキル ④ 国語 ⑤ 卒業論文
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 第12回目の予習としては、授業で、みなさんの書いた文章の中から、何本かを発表してもらい(みんなの前で授業なかに発表したい人を数名募集します)、それに対して、質問するということに取り組むため、課題図書の読み込みを進めてください。課題図書について、何度も読み返し、内容を把握できていれば、できているほど、質問が自然と沸いてきます。その場で、全く知らないことを聞かれて、何となくでも答えようとするのが日常会話ではありますが、科学の場面ではしっかりとした勉強に基づいて、自分が身につけた知識に結びついた質問できるようになることが目指されます。次週まで、ひたすら課題図書を読み進めてみてください。
 第12回目の復習としても、本日、共有された感想や意見を踏まえて、課題図書を繰り返し読むということを続けてください。そして、議論されていた場面を課題図書の中から、その前後含めて読み返すようにしてみてください。

13 他者の意見に応える② 科目の中での位置付け この授業の前半では、大学で「本を読む」ということ、「本の感想を書くこと」に取り組み、「感想を相手に伝える」ことをやりました。後半からは、あなたの感想に論拠を加えることで、説得力のある意見を構築し、小論文を書くということに取り組んできました。論拠となる情報は図書館に通うことで、次に読みたい本に出会うという方法で手に入れるということにも取り組みました。これは将来的に研究に取り組み、あなたが心理学の新発見を卒業論文に取りまとめるために必要だと強調してきました。第13回では、伝える力とあわせて不可欠となる、応える力を練習します。自分が発表した際に、誰かに質問されたり、意見を言われたり、反対意見を言われたりすると、慣れないうちは攻撃されたと感じてしまうこともあります。そこで、相手の意見に耳を傾けて、相手の意見に受け応えることに取り組みます。そして、相手が自分の文章に対して、なぜそのような質問や意見を述べたのかを考えて、その後に、自分の文章に相手の質問や意見の内容を反映させることにも挑戦します。つまり、第13回は、この講義の目標をより高いレベルで達成するための練習に取り組むという位置づけとなります。
ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫
日高敏隆 動物と人間の世界認識 ちくま学芸文庫
竹田信弥/ 田中圭祐 読書会の教室 晶文社
コマ主題細目 ① 筆を置く ② 翻訳 ③ 読書会
細目レベル ① これまでに課題図書を読んで、書いた文章を皆で共有しあって、その感想を交わし合ってきました。それを受けて、いろいろな気持ちが生じたと思います。少し書き足したい気持ちや、書き直したい場所が出てきたかと思います。今回は、最後にもう一度、読み直しながら、修正することに取り組みます。これで満足ということは、最後は著者自身である「あなた」が決めるしかありません。もちろん、文章はいつまでも書き続けることができるし、このシラバスの文章でさえ、そのようなもので、僕は、締め切り間際まで、「書き直して、感想をもらう」を繰り返しています。みなさんが取り組んできた文章の締め切りは、来週の授業のはじめまでとしたいと思います。筆を置く、「できた、これで良しとしよう」という感覚を味わってください。
② この授業を通じて、大学で本を読むことについて、実習してきました。僕は日本語の環境で育ち、中学から英語を勉強して、今に至っているので、日本語と英語で読み書きができます。しかし、英語の方はとりあえず書くことはできたとしても、論文を仕上げるときには、専門家の校閲を受けています。読むこともだいぶできるようになってきましたが、全然、英語を読むよりも日本語を読む方が速いし、楽です。ドイツ語やフランス語はあこがれるけども勉強したことがありません。このため、日本語以外の本を読むときは、翻訳本は必須です。当たり前ですが、翻訳本には翻訳者がいます。翻訳本を読むときには、どんな人が翻訳したのかも確認しましょう。また、同じ本でも翻訳者が違うものも手にいれることができます。この課題図書の翻訳者は、日高敏隆と羽田節子となりますので、このことについての解説を授業でします。日高敏隆は、この授業で使用した課題図書の解説本にもなるような、「動物と人間の世界認識」(ちくま学芸文庫, 2007)という本の著者となります。
③ ここまで勉強してくると、授業以外でも、自主的に読書会を開催したいという気持ちになった人もいるかと思います。読書会というのは、文字通り、みんなで本を読む会ですが、その開催方法はいくつかあります。例えば、「自分のオススメの本を紹介し合う」、「担当者がレジュメを作り発表しながら、課題本を読み込んでいく」、「その場で朗読しながら進める」などあります。詳しくは、竹田信弥・田中佳佑(著)「読書会の教室」(晶文社, 2021)を参考にしてください。自主的に本を読むのに読書会を開催するのもキャンパスライフの一コマです。学生のみなさんだけでも読書会を開催を試みることも重要だし、また、気楽にゲストとして先生を誘ってみたり、最初から企画を一緒にやるところからはじめてみるのも手かもしれません。
キーワード ① 脱稿 ② 翻訳 ③ 翻訳者 ④ 言語 ⑤ 読書会
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 第13回の予習としては、第13回の授業中に、あなた自身によって、あなたの小論文はこれで完成と判断してもらいますので、図書館に行って追加で引用したい文献を探す、もっと課題図書を読み込むなど、各自が必要だと思うことに取り組んでみてください。今までに比べて、今回の予習課題はかなり自由度が高いです。あなたが自分の文章を読み返してみて、いま、必要なことをせよ、という課題となります。もしも途方にくれてしまい、動き出せないときは、最後の手段として、担当教員またはメンター教員に文章を読んでもらって、助言をもとめてください。しかし、明日くらいまでは、まずは自分で自分の文章を何度も読み返して、完成に向けて、残り何が必要かをまずは自分で考えてみてください。
第13回の復習としては、今回の授業までに書いてきて、本日いよいよ脱稿となったあなたの文章を読み返してみてください。もちろん、少し書き直したい部分などがまだあるかもしれませんが、完成という判断をしたものなので、もう修正は不要です。

14 文章をスライドにまとめる① 科目の中での位置付け この授業では卒業論文に向けて、必要となる読む力、書く力、考える力、伝える力を「本を読む」ということを通じて、練習しました。しかし、これまでの練習は大学生活は4年間あるわけですから、はじまったばかりです。力を身につけてもらいたいという意味に加えて、一人一人がどの力をもっと伸ばしてみたいかを考えるきっかけにもしてもらいたいという意味もありました。3年次にも、卒業論文に向けて「心理学テクニカルライティング」、「心理学英語文献購読」という選択科目がありますので、もっとやってみたい、伸ばしてみたい力という観点が芽生えて、授業選択が楽しくなってくれることを願っています。そして、今回は卒業後も見越して、研究成果を発表する場面で用いられるブレゼンテーションを体験してもらいたいと思います。この授業では、書いたものを発表するということに取り組みましたが、社会に出ると(科学の世界であっても)、発表はスライドショーを背景に口頭で行われることが頻繁になります。そこで、今回は本授業の発展という位置づけとなります。まずは、プレゼンテーションをきく側にもとめられる技術を概説しながら、練習してみたいと思います。
ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫
コマ主題細目 ① 発表をきいてみる ② 質問をメモする ③ TED
細目レベル ① この授業も本日を含めて、あと2回となりました。最後に、プレゼンテーションについても入門してみます。社会に出ると、文章を書く技術に加えて、プレゼンテーションする機会も増えていきます。現在はパワーポイントのようなスライド作成ソフトで作成されたスライドを用いた発表が主流です。そこで、今回の課題図書を僕が読んで、同じように調べ物を加えて、自分なりに文章を書いたものをベースに発表をしてみたいと思います。そして、スライドの作成方法について、見出しの付け方、説明文の長さ、レイアウト、図表に使い方等について、解説してみたいと思います。しかし、スライドの作成方法については、はっきりとした正解はなく、要は相手にとってわかりやすいかどうかです。これをきっかけとして、パワーポイントを用いた発表を聴く際には、あなたにとって、どのようなスライドを用いてなされたプレゼンテーションがわかりやすいかについて考え続けてみてください。さらには、あなたがどのようなスライドを作成するのが得意になるかだと思います。4年間かけて、自分のスタイルを作り上げてください。
② プレゼンテーションの聞き方も大変難しいです。美しいスライドを背景として、流暢に話が進んでいくあまりに、わかりやすし、面白かったと感じたはずなのに、頭に何も残らないということもあります。だからと言って、話の内容を全部メモしようとすると、肝心の話の内容理解が追いつかないということもあります。ただ話を聞いても、メモを取り続けても、上手な話の聞き方ではないのかもしれません。僕は次の二つのことを意識して話を聞いています。一つ目は、プレゼンテーターの話の中で興味がわいたテーマの情報源をメモするようにしています。これをメモできれば、話を聞いた後で、プレゼンの内容を自分で再構築できるようになります。二つ目は、プレゼンテーターに質問してみたいことをメモするようにしています。質問には、「わからないことを聞く」、「もっと知りたいことを聞く」、「プレゼンテーターに自分の意見をぶつけて、意見をもらう」、「オーディエンス全体にとって重要なことを代表として聞く」などがありますが、いずれにせよ、話を聞いて、質問をまとめていると、自分にとって一番大事な部分がはっきりとするでしょう。まずは、私のプレゼンを受けて、とにかく質問してみる練習からはじめたいと思います。
③ 発表の聞き方、質問の仕方の上達方法は、たくさんのプレゼンテーションを聞くのが良いかと思います。みなさんにとっての一番身近なプレゼンは、私たち教員による授業です。先生ごとに、いろいろなスタイルがありますので、理解のさまたげにならないように、観察してみるのも面白いかもしれません。加えて、いろいろなプレゼンテーションの方法を見聞きしたいと思うときに、役立つものとして、TEDというものがあります。TEDはインターネット上で視聴することが可能であり、様々な分野の著名人のプレゼンテーションを体験することができます。英語字幕や日本語字幕なども付いていることもあり、英語のリスニングの勉強にも役立てることができるでしょう。
キーワード ① プレゼンテーション ② スライドショー ③ PowerPoint ④ Keynote ⑤ TED
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  予習としては、自分が普段使っているパソコンの中に入っているスライドショー作成ソフトを確認しておいてください。4月のPC関連オリエンテーションでPowerPointが準備されているはずです。PowerPointが使用できていない状況にある場合は、メンター教員に連絡をとるようにしてください。今後、頻繁に使用することになるソフトウェアなので、実際にソフトを起動してみて、使ってみておいてください。
 復習としては、TEDの中から、授業内で紹介したリストの中から、一つ選んで視聴することに取り組んでください。そして、視聴した動画、自分でしてみたいと思った質問を列挙して、メールで担当教員に提出するようにしてください。

15 文章をスライドにまとめる② 科目の中での位置付け いよいよ15回の授業も本日で終了です。「本を読む」ということを通じて、みなさんの「読む力、書く力、考える力、伝える力」に刺激を与えて、練習を重ねることで、それぞれの技術習得が進むような練習に励んでもらってきました。卒業論文に向けて、これから様々な授業を受けることになりますが、今、勉強がどんどん楽しくなっていると感じてくれていると、嬉しく思います。今回も、社会に出るという先の目標までも見据えて、ブレゼンテーションに必要なスライド作成に取り組みます。最後に自分のスライドを大きく投影して見ることで、社会に出て、それぞれの分野で活躍するという目標に向けて、自分の現在地を知ってもらうという、まさに仕上げの位置づけとなります。また、社会人の代表として、担当教員より、みなさんと同じ課題図書を用いて、プレゼンテーションをしまして、今後の授業に向けて、どんどん心理学がわかり、できるようになっていくための応援メッセージを贈りたいと思います。
ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫
CNN English Express編 スティーブ・ジョブズ伝説のスピーチ&プレゼン
コマ主題細目 ① スライド作成 ② 発表に対して質問してみる ③ スティーブ ・ジョブズ
細目レベル ① 大学4年間かけて、自分らしく、そして伝わりやすいスライドを作れるようになってもらえたらと思います。そこで、まずは予習として、スライド作成に取り組んできてもらいました。今回の授業では、そのスライドをグループに分かれて、各自がスクリーンに投影してみるところまでを実践してみます。パワーポイントを作成しているときは、十分だと思っていた文字サイズが、スクリーンに実際に映してみると、小さすぎたり、図の解像度が十分ではなくてぼやけてしまったり、選択した配色の関係で文字が読みにくい(配色がバリアフリーになっていない)など自分のイメージと異なることは多々あります。今回の目標は、卒業までにスライド作成が上達することを目指して、自分の良い点も悪い面も含めて、今後の課題を少しでも感じてもらうことにあります。プレゼンテーションスライドを用いて、話す部分まではこの授業ではやりません、その力を身につけるには、この先の3-4年の演習科目での取り組み(ゼミ活動)が必要となります。
② 最後に、前回に引き続いて、スライドを用いた発表例を紹介します。私が心理学をテーマとして、予備知識のいらないような高校生向けのプレゼンテーションをするので、質問したい内容を考えてみましょう。この時、「わからないことを聞く」、「もっと知りたいことを聞く」、「プレゼンテーターに自分の意見をぶつけて、意見をもらう」、「オーディエンス全体にとって重要なことを代表として聞く」というように、いろいろなタイプの質問ができるようになってもらいたいと思います。質問を考えながら、第6回で練習した、あなたの質問が、相手を単に否定しているだけにとどまっていないか、質問することで建設的な展開が期待できるのかどうかについても復習するように心がけてみてください。
③ 科学の世界ではないのですが、プレゼンテーションの達人と言えば、Apple社を創設し、マッキントッシュコンピューターを開発したスティーブ・ジョブズが挙げられます。ジョブズの新商品発表のプレゼンは世界を魅了してきました。i-phone発表のプレゼンテーションなどyoutubeなどで、みなさんも見ることができます。今回、紹介したいのは、ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で、卒業生に向けておこなったスピーチとなります。スライドは用いていない、スピーチなのですが、それは映像的であり、ジョブズがこれから社会に出る学生に向けて伝えたいメッセージが明確であり、たとえ卒業生以外であっても、誰もが自分について見つめなおしたくなるようなものでした。このスピーチの何が素晴らしいのかついては、様々な意見が挙げられるでしょうがtake home messageの明確さに加えて、そこに至るまでに選択された、自分らしさをさらす3つのストーリーにあるでしょう。発表するのに、誰かのスタイルを真似をする必要は一切ありませんが、その発表で何が言いたいのか、これだけは相手に確実に伝えたいという部分を意識した準備が非常に重要であることをジョブズのスピーチから、まずは学んでもらえたらと思います。
キーワード ① プレゼンテーション ② スティーブ・ジョブズ ③ youtube ④ スピーチ ⑤ take home message
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  予習としては、PowerPointを用いて、この授業で書き上げたあなたの小論文を元としたプレゼンテーション用のスライドを作成してみてください。スライドを作る際には、一枚一枚のスライドで何をしたいのかを意識して、文字を書きすぎないように推敲を重ね、かつ、自分がそのスライドを前にして話すとやりやすいという部分を僕は意識しています。次に、今日はじめて僕の声を聞く人、予備知識の程度などを想像して、言葉を選ぶ作業を繰り返しながら、仕上げています。
 復習として、課題図書を読むことを今週中は取り組んでください。そして、この15回の授業期間に、課題図書をどこまで読めたかなということを記して、担当教員にメールにて提出してください。繰り返し読んでいる人は、そのことも記してください。まだ読み終えていないという場合も、読む速度は問題としていませんので、ページ数を教えてください。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
1 科学に対する理解 この授業では、心理学(Psychology)を理解し、できるようになるために、アカデミックスキルの習得に励んできました。その中で、科学(science)が先行研究と新たな根拠に基づいた合意形成によって進歩していることを学びました。科学であれば、自然科学のみならず、人文科学や社会科学でもこの点は共通であることを学んでいます。このため、様々な考えや態度に対して、それが科学的な態度なのかどうかを自分自身で判断できるようになっていることがもとめられます。具体的には、提示された文章の指定箇所について、その文章を執筆した著者本人の意見なのか、先行研究で既に示されてきている意見なのかを判断するができる力が身についているかどうかで履修判定を行います。 科学、心理学、人文科学、社会科学、自然科学 10 1, 2, 6
2 文献への理解 この授業では、科学の歩みには先行研究(previous studies)を学ぶことが不可欠であることを繰り返し学んできました。先行研究は直接引用または間接引用という形で、文章の根拠として活用されます。また、引用されたものは書物においては、文献欄(references)に示されるということも学びました。そこで、その引用が直接引用なのか、間接引用なのかを判断できること、さらには文献を読んで直接引用でも間接引用でも、自分で使い分けて根拠として活用できるようになる姿勢がもとめられました。履修判定は、提示された文章内の引用が直接引用か間接引用なのかを区別できること、提示された引用文献リストから書式の修正点を見つけることができるようになっているかで行います。1年の前期終了段階のため、間接引用を用いた文章を独力で書けるようになることまでは、履修判定にはもとめません。 先行研究、引用、引用文献欄、直接引用、間接引用 25 3,10,11
3 本を読む力 この授業では、本を読むことで、質問ができるようになることを練習してきました。本を読んで、質問が浮かんでこないと、それは読んだことになりません。質問することで、科学は次にやるべきことが定まるからです。1年前期の終了の段階では、文章を読んで、語彙ではなくて、その内容に関する質問ができることがもとめられます。具体的には、提示された文章を読んで質問を書くことができるようになっていることが履修判定のポイントとなります。1年の前期終了段階であるため、科学を進歩させるような質問ができるというような、質問の質の良し悪しについての力までは履修判定にはもとめません。 本を読む、質問する、科学 25 7,14,15
4 文章を書く力 この授業には、卒業論文に向けて文章を書くというアカデミックスキルを習得するという目的がありました。科学的な文章の書き方として、誰が読んでも文の内容が一つの意味に定まるように書くということを練習してきました。さらに、文章を書く際に、書き手しか知り得ないような事前知識に基づいた文ではなく、誰もが事前知識なく理解できる文を書くことも練習してきました。1年前期の終了段階では、文を書くときにこれらの2点を意識することができるようになっていることをもとめます。文章が提示された際に、上記2点の視点から、問題のない科学的な文章かどうかを判断できるようになっているかどうかで履修判定します。 科学的な文章、文意、背景知識 20 4,5,12,13
5 要約する力 心理学では先行研究は、間接引用の形で活用されることが多いという関係で、この授業では、文章の要約文(abstract)を書く練習に取り組みました。練習を通して、適切な間接引用をできるようになることを目指してきました。1年前期の終了段階では、著者の主張が明示されている部分を含むように、要約することを目指す力を身に付けようとする姿勢が重視されます。逆に言えば、著者が主張を展開するときに用いた例の部分だけを用いた要約を書いてしまっていないかどうかを自分で判断できる力が身についていることも重要となります。履修判定では、文章の要約文に対して、修正すべき箇所が指摘でき、修正案を選択肢から選択することができるようになっていることがもとめられます。1年前期終了段階であるため、独力で適切な要約文をゼロから書く力までは履修判定においてもとめられていません。 要約、主張、例え 20 10,11
評価方法 期末試験(100%)によって評価する。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 ユクスキュル/ クリサート(著)日高敏隆/ 羽田節子(訳) 生物から見た世界 岩波文庫 792円
参考文献 高橋源一郎 読んじゃいなよ 岩波新書 1078円、高橋源一郎 間違いだらけの文章教室 朝日文庫 748円、竹田信弥/ 田中圭祐 読書会の教室 晶文社 1870円、野矢茂樹 大人のための国語ゼミ 山川出版社 1980円、日高敏隆 動物と人間の世界認識 ちくま学芸文庫 924円、CNN English Express編 スティーブ・ジョブズ伝説のスピーチ&プレゼン 1100円
実験・実習・教材費