区分 基盤スキル科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
SDGs力 科学コミュニケーション力 研究力
カリキュラム・ポリシーとの関係
教養 応用力 実践力
科目間連携 総合心理力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ

科目の目的
 学生のみなさんが、実験実習に関連するあらゆる講義、および、卒業研究の履修に当たって、絶対に必要でとなる心理学に関する研究方法について、必要最低限について十分に理解することを目的とする。ここで強調しておきたいことは、「必要最低限」ではなく、「十分に」という点である。つまり、受講生の全員が、理解すべきことを理解するということである。
 ここで扱う「心理学研究法」は、あくまで、科学的心理学に基づいたものである。詳細は、第1回講義の「ガイダンス(講義の方針、講義のねらい、講義概要に関して)」で説明することになるので、集中して聴講すること。

到達目標
 上記で記載した科目の目的に従って、本講義の達成目標は、心理学に関する科学的手法について、必要最低限の知識を身について、その意義や意味について、理解することである。ただし、その知識や理解は、いい加減なものではなく、実験実習を履修し、卒業研究を行うために十分なものでなければならない。
 本講義では、学生が達成すべき目標を、すべてのコマシラバスの細目に記載してある。そこれが、学生の達成目標となる。

科目の概要
 本講義を大きく分けると、以下の5つになる。第一に、科学的心理学の説明とその理解のための講義である。具体的に言えば、第2回の講義「心理学とは(心理学研究法の導入)」、第3回目の講義「心理学支える考え方と心理学のアプローチ」がそれにあたる。第二に、具体的な研究方法について説明した講義である。具体的に言えば、第4回の講義「実験法」、第5回の講義「観察法と質問紙法」、第6回の講義「面接法と事例研究」、第7回の講義「精神物理学的測定法」がそれにあたる。第三に、心理的事象を測定する方法について説明をした講義である。第8回の講義「評定法と検査法」、第9回の講義「性格検査と検査の信頼性と妥当性」がそれにあたる。第四に、統計、主に検定統計に関する説明をした講義である。第10回の講義「データ分析の基礎(測定尺度と記述統計)」、第11回の講義「データ分析の基礎(推測統計の考え方)」、第12回の講義「変数間の差の検定(t検定と分散分析)」、第13回の講義「変数間の関係(相関と多変量解析)」がそれにあたる。最後に、研究の仕方(進め方)と研究倫理に関して説明した第15回の「研究倫理、研究、論文について」である。
 加えて、第1回の講義「ガイダンス」のコマシラバスの「科目の中での位置づけ」で、上記に記載したことをさらに詳しく記載しているので、その欄も参考にしてほしい。

科目のキーワード
科学的心理学、仮説、操作主義、実験法、質問紙法、評定法、検査法、性格検査法、データ分析、記述統計、帰無仮説、統計的仮説検定、推測統計、t検定、学術論文、研究倫理
授業の展開方法
 本講義は、演習ではなく、一般的に言われている講義形式の講義に該当する。しかし、学生が自ら学ぶ姿勢を促すための多くの工夫を行うという点では、アクティブ・ラーニング(学生の学び方を「受動的な学習」から「能動的な学習態度」に変容させることで学びの質を高める方法)。そのため、講義はパワー・ポイントを使用することなく、必要なことは板書をしながら、講義を進めてゆく。また、教材テキストとして、講義を担当する教員が心理学の研究法を学ぶ学生のために記載したものを使用する。
オフィス・アワー
前期:火曜1限・2限・お昼、
金曜1限・2限・お昼
後期:火曜1限・2限・お昼、
金曜1限・2限・お昼

科目コード RC2020
学年・期 1年・後期
科目名 心理学研究法
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 必修
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 なし
展開科目
関連資格 公認心理師
担当教員名 加藤司・松山道後キャンパス教務課
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 ガイダンス(講義の方針、講義のねらい、講義概要に関して) 科目の中での位置付け 本講義の概要を説明する。まず、大きな枠組みとして、以下の3つの研究領域について説明する。その3つの研究領域とは、①心理学における実証的研究法(量的研究及び質的研究)。②データを用いた実証的な思考方法。③研究における倫理である。
それぞれの研究領域について、具体的に説明すると以下のことである。①心理学における実証的研究法(量的研究及び質的研究)では、(1)科学と実証(たとえば、科学的説明 実証と反証 再現可能性)、(2)実験的方法と観察的方法(たとえば、相関関係と因果関係 相関関係の解釈 別の因果関係)、(3)実証の手続き(たとえば、変数 補助仮説・操作的定義 信頼性 妥当性)、(4)実験的方法としての実験法(たとえば、独立変数と従属変数 変数の操作と測定、剰余変数と統制 要求特性 観察反応(反応性))、(5)実験的方法としての実験法と準実験法の相違(たとえば、実験室実験と質問紙実験。現場実験と自然実験 準実験(横断的方法と縦断的方法))、(6)観察的方法としての調査法(たとえば、相関的方法、質問項目と回答方法、質問票の構成、標本抽出(サンプリング) 調査方法の種類)、(7)観察的方法としての検査法(たとえば、標準化、知能検査 学力検査 適性検査等 人格目録法検査 投影(投映)法検査 作業検査 信頼性と妥当性)、(8)観察的方法としての観察法(たとえば、自然観察法と実験観察法、参加観察法、見本法、記述法、観察者のバイアス 観察の信頼性 質的方法と仮説生成)、(9)実験的方法としての面接法(たとえば、調査的面接法と心理臨床的面接法、面接の構造化、面接ガイド、記述法、ラポール、面接者のバイアス 質的方法と仮説生成)である。
 ②データを用いた実証的な思考方法では、(1)相関関係から因果関係へ(たとえば、因果の方向性 疑似相関、別の因果関係)、(2)定性的研究から定量的研究へ(たとえば、探索的研究、仮説生成と仮説検証)、(3)データの統計的記述(たとえば、数量化 効果量 統計的検定)、(4)複雑な心理事象のモデリング(たとえば、多変量解析)である。
 ③研究における倫理については、(1)人権尊重とインフォームドコンセント(たとえば、倫理原則・規程、人権保護、法令等順守、倫理審査)、(2)研究の不正の禁止(たとえば、捏造・改竄・盗用、利益相反)である。
 これらのプログラムは、「公益社団法人日本心理学会」および「公認心理師養成大学教員連絡協議会」が2018年8月22日に発行した「公認心理師大学カリキュラム 標準シラバス」に対応している。

改訂版「心理学の研究法」加藤司著 北樹出版 2008年出版 ISBN: 978-4-7793-0157-5 目次のページ
コマ主題細目 ① 心理学研究法を学ぶ意味 ② 実証的研究法と科学的心理学 ③ データ ④ 実証的な思考方法 ⑤ 研究倫理
細目レベル ①  科学的心理学を学ぶうえで、必要不可欠な講義科目がある。「心理学研究法」と「心理統計法」である。これらの科目は、科学的心理学を掲げている学部、学科、専攻において、卒業単位の必須科目とされている。学生は、これらの科目を通じ、科学的心理学の基礎的な考え方を習得する。心理学にとって、最も重要なこの科目を学ぶことによって、科学的なものの見方を身につけることも本講義の狙いのひとつである。そして、これらの科目は「実験実習」への理解を深め、卒業論文の礎(いしずえ)となる。卒業論文の作成を最終目的とするならば、心理学領域を専攻する学生にとって、「心理学研究法」、「心理統計法」、「実験実習」は、最も、力を入れるべき科目であろう。しかし、多くの場合、学生はこれらの科目を得意としない。場合によっては軽視さえしている。そのためだろうか、いざ、卒業論文を作成する時期が来ても、多くの学生が、何をどのようにやればいいのか、困り果てる。この講義では、15回を通じて「心理学研究法」と「心理統計法」に関して、必要最低限だと思われる説明をする。以上の研究方法を学ぶ意義について理解すること。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。
②  高校までには決して習わなかった実証的な研究方法を学ぶとはどのようなことなのか。具体的な詳細については、それぞれの下位での講義で話をするが、第1回目のガイダンスでは、その大枠について理解する。そして、そのような事柄を今後も何で行くという覚悟と意気込みを得る。
 さらに、心理学では、なぜ、実証的研究方法を重視し、それについて学ばなければならないのか、心理学の小史(詳細については第2回の講義で説明する)について説明するので、その説明から理解する。
 心理学を専攻としない学生の多くは,占いも心理学も,ほとんど違いはないと思っているかもしれない。実際,あなたは,占いと心理学との違いについて,答えることができるだろうか。具体的な心理学における研究方法や,心理学で用いられている統計法を学ぶ前に,本章では,心理学がいかなる学問であるのか,心理学を支える基本的な考え方を学ぶことで,その理解を深めてみよう。現時点では、表面的な理解でよいが、すべての講義が終えていることには、十分に理解している必要がある。

③  これまでに日常生活や、高校までの学びの中で、データという意味は、ある程度理解しているかもしれない。しかし、大学で取り扱うデータとは、少し意味が違っているかもしれない。本講義の心理学研究法だけでなく、科学で扱うデータとはいかなるものなのか、具体的な詳細については、それぞれの下位での講義で話をするが、第1回目のガイダンスでは、その大枠について理解する。
 さらに、この心理学研究法では、データを収集する方法を学ぶことになるだけではなく、収集したデータを用いて「統計」という、高校では学ぶことのなかった方法を用いて、得られたデータがどのような意味を持つのか、科学的に分析する方法を説明する。統計は数学の知識が必要であることを事前に理解し、その心構えを持ってほしい。データに関する理解ができていること。

④  先に説明した実証的研究方法の根幹となる実証的なものの見方は、心理学だけではなく、医学、生物学、物理学、化学などの自然科学に加え、法学、政治学、社会学、経済学、経営学などの社会科学においても重要な考え方である。
 この細目では、実証の意味を理解することが最低限の達成目標となる。そして、その「実証」と心理学がどのように関連しているのかについて理解を深めることになる。
 科学的なものの見方は、この実証的な思考方法だけではないが、心理学を学ぶためには、まずは、この実証的な思考方法を身につけることが、科学的なものの見方を身につけることの先駆けとなるだろう。このことについては、第2回の講義「心理学とは(心理学研究法の導入)」、そして、第3回の講義の「心理学支える考え方と心理学のアプローチ」と深く関連しており、本講義は、それらの講義を理解するための事前学習となる。そのつもりで、本講義の説明を聞いてほしい。
 科学的なものの見方は、この実証的な思考方法だけではないが、心理学を学ぶためには、まずは、この実証的な思考方法を身につけることが、科学的なものの見方を身につけることの先駆けとなるだろう。このことについては、第2回の講義「心理学とは(心理学研究法の導入)」、そして、第3回の講義「心理学支える考え方と心理学のアプローチ」と深く関連しており、本講義は、それらの講義を理解するための事前学習となる。そのつもりで、本講義の説明を聞いてほしい。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。

⑤   本講義で説明した科学的心理学、科学的なものの見方、実証的な思考方法、実証的研究方法について、学生それぞれの頭の中で、まとめてほしい。それらについて、明確な解答を求めているわけではない。これらの知識は、第2回の講義「心理学とは(心理学研究法の導入)」と第3回の講義「心理学支える考え方と心理学のアプローチ」で詳細に学ぶからである。それゆえ、第2回と第3回の講義の事前準備として、今回の講義について、自身な中で、まとめておいてほしい。
 本講義でも説明するが、心理学研究法では、数学を用いなければならない。具体的に言えば、第10回の講義である「データ分析の基礎(測定尺度と記述統計)」、第11回の講義である「データ分析の基礎(推測統計の考え方)」、第12回の講義である「変数間の差の検定(t検定と分散分析)」、第13回の講義である「変数間の関係(相関と多変量解析)」で、数学の知識を必要とする講義を行うことになる。それゆえ、本講義が終了してから、毎日、少しずつ、高校でならった数学を振り返り、第11回講義、第12回講義、第13回講義を受講する準備をしてほしい。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。

キーワード ① 科学的心理学 ② 科学 ③ 実証 ④ 研究方法 ⑤ 倫理
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義で説明した科学的心理学、科学的なものの見方、実証的な思考方法、実証的研究方法について、学生それぞれの頭の中で、まとめてほしい。それらについて、明確な解答を求めているわけではない。これらの知識は、第2回の講義「心理学とは(心理学研究法の導入)」と第3回の講義「心理学支える考え方と心理学のアプローチ」で詳細に学ぶからである。それゆえ、第2回と第3回の講義の事前準備として、今回の講義について、自身な中で、まとめておいてほしい。
 本講義でも説明するが、心理学研究法では、数学を用いなければならない。具体的に言えば、第10回の講義である「データ分析の基礎(測定尺度と記述統計)」、第11回の講義である「データ分析の基礎(推測統計の考え方)」、第12回の講義である「変数間の差の検定(t検定と分散分析)」、第13回の講義である「変数間の関係(相関と多変量解析)」で、数学の知識を必要とする講義を行うことになる。それゆえ、本講義が終了してから、毎日、少しずつ、高校でならった数学を振り返り、第11回講義、第12回講義、第13回講義を受講する準備をしてほしい。

2 心理学とは(心理学研究法の導入) 科目の中での位置付け  心理学の研究法を説明する前に、心理学が一体どのような学問であるのかを理解する必要がある。本講義では、心理学の研究法を理解するための基礎的な学術用語について簡単に説明しつつ、心理学という学問について概説する。
 心理学とはいかなる学問であるのか、簡単に答えることは難しい。人間行動を科学的に解明することを放棄し、「魂」なる実体なきものを「精神」とか「こころ」などとよび、愛情や人間味など響きのよい言葉を並べ、ひたすら自説が正しいことを力説することを心理学とよんでいる研究者たちもいる。そのような研究者には、本講義は何の役にも立たない。心理学とは、単に「こころ」に関する問題を扱う学問ではない。もしそうであるならば、哲学や思想もまた、心理学であるといえる。心理学とは、科学的な立場から、人間行動を明らかにしようとする学問領域である。科学的立場を放棄した自称心理学者が数多く見られることから(あなたの大学の講師もそうかもしれない)、科学的心理学は行動科学(behavior science)とよばれることもある。本講義では、科学的心理学の歴史からこの問題に迫ってみたい。

改訂版「心理学の研究法」第1章の第1節と第2節
資料映像あり
コマ主題細目 ① 科学的心理学史 ② ヴントと行動主義 ③ 実験者と被験者 ④ 独立変数と従属変数 ⑤ 刺激と反応
細目レベル ①  心理学が誕生するまでの心理学前史について、簡単にその大枠を理解する(詳細を理解することはこの講義の目的ではない。いかに非科学的な方法を用いて、ひとの心理を理解しようとしていたかを理解する)。心理学を「こころ」に関する学問であると定義づけるならば、心理学の歴史は古い。「こころ」や「精神」、「霊魂」といった概念が生まれた時代へと遡(さかのぼ)る必要がある。すなわち、心理学の歴史は、古代ギリシヤの自然哲学者であるアリストテレス(Aristoteles)の「霊魂論」(De Anima)に、その起源をもとめることができる。アリストテレスは、すべての生物は質料としての身体と、形相としての霊魂(精神)から構成されており、質料(身体)と形相(精神)はわけることができない、と考えた。そして、霊魂に関する学問(言い換えれば心理学)は、質料(身体)の営みを通じて、理解されるべきであると考え、学問としての心理学の重要性について言及している。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。
②  科学的心理学の始まりは、ヴント(Wundt、 W.)がライプツィヒ大学に心理学研究室を開設した1879年であると考えられている。ヴントは、その後、心理学の歴史を大きく左右する4つの考え方を提唱している。その4つとは、意識主義、内省主義、要素主義、構成主義である。
 科学的心理学の真の幕開けは、行動主義の誕生である。ワトソン(Watson、 J.B.)は、心理学を客観的な自然科学であるとし、心理学の対象は客観的に直接観察することが可能である行動(behavior)でなければならないと考えた。ワトソンのいう行動は、感覚刺激に対して生じる反応としての筋肉や腺(分泌機能をもつ器官)といった末梢(まっしょう)的反応である。ヴントの内省主義は主観的な方法によるものであり、意識を客観的に観察することはできないとし批判した。そして、心理学の目的は、この刺激と反応との関係における法則や原理を見出したり、行動の予測と制御を可能にしたりすることであるとした。ある程度十分に理解できること。100字程度で説明できるようになること。

③  実験者と被験者の違いについて、理解できるようになる。実験を行う者を実験者(experimenter)といい、実験を受ける者を被験者(subject)という。実験を受ける者が動物の場合は、被験体(subject; animal)という。調査研究の場合、被調査者(subject)という用語を用いる。近年では、実験や調査へは、自発的に参加することの重要性が強調され、被験者や被調査者は実験参加者(participant)や調査参加者(participant)といわれる。
 実験者は必ずしも実験を計画した人物とは限らない。分業化の進んだ研究では、研究者(実験計画者や実験責任者)と実験者が異なることは珍しいことではない。実験者は、その行為によって、観察者、評定者、面接者、調査者などとよばれる場合もある。また、実験者、被験者、実験計画者や実験責任者のほか、サクラ(paid participant)とよばれる実験協力者(confederate)を用いることもある。実験協力者とは、実験計画者の指示に従って行動する、実験を受けない者のことである。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。

④  独立変数と従属変数との違いについて理解できるようになる。独立変数(independent variable)と従属変数(dependent variable)という用語は、その用語が使用される文脈によって、多少意味合いが異なる。次項で説明する刺激と反応との関係でとらえるならば、独立変数が刺激であり、従属変数が反応である。原因と結果という因果関係でとらえるとするならば、独立変数が原因であり、従属変数が結果である。実験においては、実験者が操作する変数が独立変数、測定された被験者の反応が従属変数である。
 社会心理学などの領域では,人口統計量や環境要因が独立変数となったり,被調査者の回答が独立変数となったり,逆に,従属変数となることもある。また,重回帰分析などでは独立変数は説明変数を意味し,従属変数は基準変数を意味する。第13回講義の「変数間の関係(相関と多変量解析)」につながる(この意味は、第13回講義終了時点までに理解できれば良い)。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。最終的には、用語を100程度で簡潔に説明できるようになること。

⑤ 刺激と反応との違いについて理解できるようになる。行動主義を提唱したワトソンは、行動を支配する法則や原理を刺激(stimulus)と反応(response)との関係でとらえようとした。このような行動のとらえ方はS-R図式としてまとめることができる。一方、新行動主義では、刺激と反応との間に、観察不可能な媒介変数(intervening variable)である生活体(organism)を仮定している。このような行動のとらえ方はS-O-R図式としてまとめることができる。S-O-R図式では,同一の刺激が与えられても,生活体の内的な状態によって,反応が異なることを説明することができる。この生活体の内的な状態は,直接観察することができないため,操作的定義によって定義することになる。実験では,被験者に呈示される独立変数を刺激とよび,従属変数として観察される行動を反応という。一方,質問紙法では,質問紙が刺激,質問紙に対する評定が反応である。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。最終的には、ある程度の文字数(100字から200字)で、それぞれの用語を説明できるようになること。
キーワード ① ヴント ② 行動主義 ③ 実験者 ④ 独立変数 ⑤ 刺激と反応
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義で最も重要なことは、科学的心理学がどのようなものかを理解しておくことである。科学的心理学への理解は、今後のすべての本講義に影響するからである。必ず、自分自身の中で復習してほしい。また、教材テキストを、繰り返し読み、講義内容を思い出し、再確認してほしい。
 本講義では、実験を中心に、科学的研究方法で用いるさまざまな用語が出てきた。それぞれの用語について理解し、ある程度、理解できるようになろう。
 理解すべき用語を、以下に挙げておく。
唯物論、経験論、進化論、ヴント、意識主義(consciousism)、内省主義(introspectionism)、要素主義(elementalism)、構成主義(structuralism)、ワトソン(Watson、 J.B.)、行動主義(behaviorism)、ゲシュタルト心理学、ウェルトハイマー(Wertheimer、 M.)、ケーラー(Köhler、 W.)、コフカ(Koffka、 K.)、ブリッジマン(Bridgman、 P.W.)、シュリック(Schlick、 M.)、論理実証主義(logical positivism)、新行動主義(neo-behaviorism)、ハル(Hull、 C.L.)、トールマン(Tolman、 E.C.)、ガスリー(Guthrie、 E.R.)、スキナー(Skinner、 B.F.)実験者と被験者、独立変数と従属変数、刺激と反応、信頼性と妥当性について簡単に説明する。

3 心理学支える考え方と心理学のアプローチ 科目の中での位置付け  心理学では、直接観察することのできない概念を客観的に扱おうとするために、さまざまな科学的手法を用いて、その概念をとらえようと努めようとしてきた。本講義では、科学的手法によって、心理学を研究するために必要な基本的な考え方である操作主義、仮説演繹法、因果関係、統制、科学的なものの見方などについて説明する。これらの考え方(哲学)は必ずしも正しいという保証はないが、心理学を理解するうえで、きわめて重要な考え方であるため、受講生は、一生懸命聞いてほしい。
 また、以下のことについては、心理学を考えるうえで重要な哲学であるため、覚えるのではなく、その意味を心に刻みこんでほしい。何をもって科学とみなすのか、それにはさまざまな考え方がある。本章で先述した歴史的経緯からもわかるが、心理学は、最も科学的立場にこだわる研究領域であるといえる。そのため、心理学者は、「科学とは」、「心理学が科学であるために」という問いに、さらされ続けなければならない。そこで、以下の側面から、科学について考えてみよう。なお、「何をもって科学とするか」、という問いに対する絶対的な回答はない。

改訂版「心理学の研究法」第1章の第3節と第4節
資料映像あり
Kenny, D.A. (1979). Correlation and causality. New York: Wiley.
コマ主題細目 ① 操作主義 ② 仮説と検証 ③ 仮説演繹法 ④ 因果関係 ⑤ 統制
細目レベル ①  操作主義について理解できるようになる。受講生にとっては理解するのが困難かもしれないが、理解できるように、講義を集中して聞いてほしい。操作主義(operationism)とは、科学的概念は一連の操作(operation)と同義であるという考え方である。物理学者であるブリッジマン(Bridgman、 P.W.)が、1927年「現代物理学の論理」(The Logic of Modern Physics)において、「科学で用いられる概念は、概念が得られた操作と同一であるべきだ」と提唱したことに始まる。
 質量,引力,重量などという物理学で用いられている概念は,実体のないものであり,直接観察することができない。直接観察することはできないが,そのようなものが存在することを認め,概念として用いることで,さまざまな現象を説明することが可能になる。直接観察することのできない仮説的な概念を,操作によって定義することで,客観的にとらえようとする立場が操作主義である。このような概念の定義は操作的定義(operational definition)といわれる。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。難しい用語なので、ある程度の理解(他者に説明できる)で十分である。

②  科学の世界で用いる仮説は、一般用語で用いられている仮説とは違う。その違いについて理解するようになる。仮説(hypothesis)とは、ある現象を説明するために設定された命題を意味する。仮説にはさまざまな水準の仮説が存在し、実験や調査に臨(のぞ)んで立てられる具体的な仮説は、実験仮説(experimental hypothesis)あるいは作業仮説(working hypothesis)とよばれる。仮説に対して、一般法則、あるいは、理論(theory)という概念がある。仮説は直接検証可能であるのに対して、一般的法則や理論は直接検証することができない。
 一般的法則や科学的説明、仮説が真であることを確認するさまざまな方法があるが、ここでは、検証と反証について説明する。検証(verification)とは、呈示された一般法則や仮説が正しいことを、実験や調査などによって実証することである。検証することが可能であるかどうかを検証可能性(verifiability)という。
 反証(falsification)とは、呈示された一般的法則や仮説に誤りがあることを、実験や調査などによって実証することである。検証可能性に対して、反証可能性(falsifiability)という。科学哲学者であるポパー(Popper、 K.)は「科学は観察に基づいた論理を通じて、理論の誤りを証明すべきだ」と提唱し、検証可能性ではなく、反証可能性の重要性を説いた。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。いずれも100字程度で、説明できるようになること。

③  仮説演繹法がどのような意味なのかを大体理解できるようになる。一般的法則あるいは仮説を導き出す2つの推論がある。帰納的推論と演繹的推論である。
 心理学では,一般的に,前提となる普遍的命題が仮説である場合が多い。すなわち,前提となる命題は,必ず真であるという保証はない。一般的に,前提となる命題は多くの場合,心理的現象を説明するものであるため,その前提となる命題を直接検証することは困難である。そのため,前提とする命題が真であると仮定し,そこから導き出される個別的な命題を仮説として検証する。もし,その仮説を実証することができなければ,前提となる命題を修正する。もし,その仮説が実証されれば,前提とする命題が真である可能性が高まる。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。説明が難しいようであるので、相手に理解できるように、自分の言葉で、説明できるようになれば良い。

④  因果関係が何であるのか、理解できるようになる。因果関係(causation)とは、原因とそれによって生ずる結果との関係のことである。ケニー(Kenny、 1979)によれば、2変数間に因果関係(Xが原因でYが結果である場合)が成立するためには、以下の3つの条件を満たさなければならない、と述べている。①変数Xと変数Yは、お互いに関係し、系統的に変化している。②変数Xは変数Yより、時間的に先行している。③変数Xと変数Yとの間の関係を解釈する際、第3の変数である別の変数による解釈の可能性がない。
 たとえば、多くの研究によって、貧困層と富裕層よって、心疾患のかかりやすさが異なるといったことが知られている。この現象の因果関係、すなわち、経済的に貧しいほど心疾患にかかりやすいという因果関係について、上記の因果関係の条件と照らし合わせて検討する。まず、①変数Xと変数Yは、ともに関係し、系統的に変化している、という条件に関して、貧困であることと、心疾患にかかりやすいという現象は共変しているため、この条件①は満たしている。②変数Xは変数Yより、時間的に先行している、という条件に関して、心疾患患者は入院費などの医療費がかかるため、経済的に豊かではない、という逆の可能性も考えられる。
 それでは、③はどうなるだろうか。講義で一生に考えてみよう。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。これも、自分の言葉で説明できるようになれば良い。

⑤  科学で用いられている統制の意味を理解できるようになる。心理学の研究では、独立変数以外の変数が従属変数に影響を及ぼす可能性がつきまとう。そのような変数を剰余変数(extraneous variable)という。剰余変数の影響は、できる限り排除することが望ましい。しかし、排除できないこともある。その場合、剰余変数が従属変数に及ぼす影響を統制(control)することになる。統制するということは、剰余変数が従属変数に及ぼす影響を一定にすることである。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、ある程度は理解ができていること。十分に説明できなくてもよいが、理解している必要がある。
キーワード ① 操作主義 ② 仮説 ③ 演繹法 ④ 因果関係 ⑤ 統制
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義を踏まえて、以下のことについて考えてみよう。
 科学に身を置き続けることは困難を伴う。科学にはルールがあるからだ。科学のルールは、研究者の立場によって一致しているわけではないが、「第三者が検証可能な実験によって、仮説(研究者の考え)を実証する」ことが基本的なルールである。本講義では、この科学のルール(特に心理学)について概説してきた。科学者は、このルールを順守し、研究を進めなければならない。ある意味において、科学はスポーツに似ているところがある。科学をサッカーにたとえるならば、サッカーボールに手で触れてはならないというルールが、科学の基本的なルールに相当するだろう。サッカーの初心者にとっては、ボールを頭や足でコントロールするのは難しい。だからと言って、このルールを無視して、ボールを抱え、競技をする者はいない。心理学では、「こころ」という直接観察することのできないものを、研究の対象としているため、科学の基本的なルールを守って、研究を進めることは非常に難しい。科学のルールを守ることは、さまざまな足かせをつけることになるからである。ルールを厳格にすればするほど、研究は大変になる。心理学者は、ルールを守るために、さまざまな工夫を凝らさなければならない。心理学者は、この作業に最も多くの知的能力を費やす。心理学がサッカーと異なる点は、心理学は科学のルールを守らなくてもいい、と誤解している者が多く、手でボールを抱えようとするプレイヤー(研究者)がいることである。もちろん、ルールを守らなければ、心理学の研究を進めることは飛躍的に容易になる。自称心理学者は、科学のルールを破り、手でボールを抱えて得点しようとする。その罪から逃れるために、「人のこころは科学では理解できない」と主張する。初心者だけでサッカーを楽しむときには、オフサイドなどの細かなルールを適応しなかったり、多少のルール違反には目をつむったりし、サッカーを楽しむことを最優先するだろう。しかし、プロのサッカー選手は、真剣にサッカーをしている競技者たちは、サッカーのルールを遵守する。科学的立場を放棄した自称心理学者は、もはや、プロの選手ではない。

4 実験法 科目の中での位置付け  実験といえば、博士と助手が試験管の溶液を別の試験管の溶液と混ぜ合わせ、化学反応が生じ、博士と助手の頭髪が真っ黒になる、というテレビ番組の古典的コントを思い出すのは筆者だけだろうか。
心理学でも、他の自然科学と同様に、実験という手法を用いる。実験のイメージが試験管である学生にとって、心理学と実験を結びつけることは容易ではないかもしれない。実験を理解するためには、実験を経験することと、実験に関する知識を身につけることが必要である。前者のためには実験実習のカリキュラムを習得しなければならない。後者のためには実験法を学ぶ必要がある。
 実験は実験計画に基づいて実施される。実験計画(experimental design)は実験デザインともいわれ、どのように実験を行うか実験の枠組みを示すものである。実験に関する知識がなければ、実験を行うことはできない。実験計画を学ぶことは、どのような実験を行えばいいのか、実験の仕方の基礎を学ぶことである。

改訂版「心理学の研究法」第2章
資料映像あり
コマ主題細目 ① 実験とは ② 実験計画の基礎 ③ 被験者間計画と被験者内計画 ④ 事前事後テスト ⑤ ブラインド法
細目レベル ①  実験を理解するためには、実際に実験を自らおこなわなければならない。しかし、それは、実験実習などの他の講義に譲り、ここでは、卓上での(理屈の上での)、実験について理解できるようになる。
  近代心理学の誕生は、ヴント(Wundt、 W.)がライプツィヒ大学に心理学研究室を開設した1879年であると考えられている。これは近代心理学の幕開けであると同時に、実験心理学の始まりも意味している。実験(experiment)は科学の基本的な方法であると同様、心理学にとっても基本的な方法である。実験は、独立変数を意図的に操作し、操作した独立変数以外の変数が従属変数に影響を及ぼさないように統制し、独立変数が従属変数に及ぼす影響(因果関係)を検証する方法である。基本的に、実験では、意図的に操作する条件はひとつであり、操作していない条件と比較して、従属変数の測定値が異なれば、それは操作によるものだと判断する。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。説明することは難しいことであるので、何が実験で、何が実験ではないのか、区別できるようになること。

②  従属変数に影響を及ぼす独立変数を要因(factor)という。要因の取り得る値を水準(level)という。たとえば、明るさが記憶に及ぼす影響を検証するために、明るさの異なる3つの部屋で、記憶テストを行ったとする。この実験では、実験者によって操作された明るさが独立変数となり、記憶テストの結果(再生率など)が従属変数となる。明るさは従属変数である記憶テストの結果に影響を及ぼす要因である。研究者の操作によって3つの水準が用意され、それぞれの水準における記憶テストの結果が比較される。この実験では、要因は「明るさ」の1つであり、水準の数は3つであるため、1要因3水準という。明るさに加え、雑音も記憶テストの結果に影響するかどうか検証することになり、大きさの異なる2つの雑音の水準を用意したとする。すなわち、明るさ(大)・雑音(大)、明るさ(大)・雑音(小)、明るさ(中)・雑音(大)、明るさ(中)・雑音(小)、明るさ(小)・雑音(大)、明るさ(小)・雑音(小)の6つの条件の部屋を用意する。この実験では、要因は「明るさ」、「雑音」の2つ、明るさの水準は3つ、雑音の水準は2つとなり、2×3の2要因とあらわすことができる。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。
③  被験者間計画(between-subjects design)とは、比較しようとする条件において、割りあてられた被験者が異なる実験計画(design of experiment)である。たとえば、被験者が4名(a、 b、 c、 d)集められたとし、条件Aと条件Bを比較する場合、条件Aでは、被験者4名のうち2名(a、 b)が実験を受け、条件Bでは残りの2名(c、 d)が実験を受けるような場合の実験計画である。操作を加えた実験群(experimental group)と統制群(control group)との間の従属変数の異なりを検証する実験計画などは被験者間計画である。統制群はコントロール群ともいわれる。実験群と統制群の2群間比較の場合、1要因2水準の被験者間計画と表される。
 一方、被験者内計画(within-subjects design)とは、それぞれの条件の実験を同一被験者が受ける実験計画である。たとえば、被験者が4名(a、 b、 c、 d)集められたとし、条件Aと条件Bを比較する場合、被験者4名全員が条件A、条件Bともに実験を受けるような場合を被験者内計画という。この場合、1要因2水準の被験者内計画と表される。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。

④  事前・事後テストがどのようなものであるのか、理解できるようになる。
 従属変数の測定をどの地点で行うかによって,操作の後に測定を行う事後テスト,操作の前および後で行う事前・事後テストに分類することができる。新しく開発したダイエット訓練の効果について,以下の実験計画に沿って考えてみよう。
 ダイエット訓練の効果があったかどうか検証する方法として,まず,思いつく方法が,ダイエット訓練を行った後,体重を測定する方法である。しかし,この方法では,どの程度,体重が減少したのかわからない。そこで,事前に体重を測定し,ダイエット訓練(操作)を行った後,再び,体重を測定する方法を思いつく。この方法が,最も単純な事前・事後テスト計画(pre- and post-test design)である。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。

⑤  ブラント法とダブル・ブラインド法について理解し、その方法を用いる理由について説明できるようになる。
 実験者効果を統制する方法として,最も知られている方法がブラインド法(blind test)である。盲検法ともいう。ブラインド法は,被験者や実験者に実験の目的が知られることで,実験の結果が歪められることを防ぐために,実験の目的を教えない,あるいは偽る方法である。ブラインド法には,被験者だけに実験の目的を教えない方法もあるが,被験者だけでなく実験者にも実験の目的を伝えない方法もある。特に後者をダブル・ブラインド法(double blind test)という。ブラインド法のほか,実験者を複数用意し,実験者の効果を統制する方法もある。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。実際に、100字程度で説明できるようになること。

キーワード ① 実験 ② 要因と水準 ③ 被験者間計画 ④ 被験者内計画 ⑤ 剰余変数
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  講義の内容を振り返り、以下のヒントに基づいて、実験法の優れている点とその理由について、具体的な例を考えてみましょう。
●日常場面では滅多に生じない状況、あるいは、起こり得ない状況を人為的に作り出すことができる。
●同一条件で、繰り返し、追試することができる。
●仮説の検証において、最も適した条件を設定することができる。
●統制が取りやすい。
●反応の客観的な測定が可能である。
●独立変数を操作することによって、因果関係を検証することができる。
 また、講義を踏まえ、動物実験についても考えてみましょう。
 ヒト以外の動物を用いた研究では,ヒトでは統制しきれない要因を統制することができるという利点がある。実験の基礎を習得するためには,動物実験を経験することが必要だと考えている研究者は多い。筆者も,実験の重要性や統制の仕方などを学ぶためには,動物実験を経験することが必修だと考えている。さらに,倫理的に,ヒトではできないような実験を,動物を被験体として実施することができる,という利点もある。
 心理学では,実験の本当の意義や実験計画の立て方などを,身を持って知るには,動物実験を経験する必要がある。心理学者を志す者は,動物実験のできる大学に進学することを筆者は勧める。どのような領域で心理学を研究しようとも,動物実験で得たことは必ず,必要となる。

5 観察法と質問紙法 科目の中での位置付け  心理学を研究する方法は実験法ばかりではない。観察法、質問紙法などさまざまな研究方法がある。それぞれの研究方法にはそれぞれの特徴があり、心理学者は、その特徴を生かし、自説を検証する必要がある。ある特定の研究法しか用いることができないことは、その研究者の幅を狭めることになる。本講義では、観察法と質問紙法のそれぞれの研究法について概説する。
 科学の基本的な方法は、研究対象の観察(observation)である。心理学における実験もまた、観察によるものである。心理学における狭義の意味での観察法(observational method)とは、観察の対象である観察対象者(被験者・被験体)の行動を、観察者(実験者)が客観的に記録する研究方法である。
 一方、質問紙法は、質問紙法(questionnaire method)とは、被験者に対して、質問用紙に回答させる研究方法である。広義の質問紙法は、実験、面接、調査などさまざまな研究で用いられる。狭義の意味での質問紙法は、質問紙(questionnaire)を用いた調査研究方法である質問紙調査法(questionnaire survey)を意味する。知識がほとんどなくとも、質問紙を作成し、指導教授に頼み講義時間中に質問紙調査を実施すれば、データを収集することができる。しかも、SPSS(SPSS社)などの統計ソフトを用いれば、何らかの結果が得られ、卒業論文や修士論文としてまとめることができる。そのため、実験法と比較して、質問紙法は簡単であると誤解し、安易に使用される傾向がある。そして、実際には、適切ではない方法によって実施したり、時には、何の仮説もなく、単に、質問紙調査を実施したりすることが多い。実際に、質問紙調査を実施することで、仮説を実証することはたやすいことではない。

改訂版「心理学の研究法」第3章の第1節と第2節
資料映像あり
コマ主題細目 ① 自然観察法 ② 質問紙法の手順 ③ 項目作成時の留意点 ④ 評定をゆがめる要因 ⑤ サンプリング
細目レベル ①  観察法の中での自然観察法について、理解する。観察法は、観察対象者の行動に統制を加えず、観察対象者の生活空間において、日常的行動を自然のまま観察する自然観察法(naturalistic observational method)と、実験の目的に応じて、観察対象者の行動に一定の統制を加え、観察対象者の行動を観察する実験観察法(experimental observational method)に大別することができる。一般的に、観察法といえば自然観察法を意味する。自然観察法は、乳幼児の行動観察、自然動物の行動観察など、文化人類学や社会学の現地調査などで用いられている。
 自然観察法の種類には、(1)時間見本法(time sampling method)、(2)場面見本法(situational sampling method)、(3)参加観察法(participant observation)があり、それぞれには長所と短所がある。講義ではそれらについて説明するので、その長所と短所について理解する。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。

②  質問紙を実際に実施する際、どのようなことを行わなければならないのか、詳細は理解できずとも、その概要を理解できるようになる。
 大まかにいえば,質問紙調査は,以下のような手順で実施される。
①研究の目的を明確にする
 これは,質問紙法だけでなく,すべての研究法に共通している。卒業論文を前にして,どのような研究をしてよいのやらわからず,なんとなく,質問紙を作成しようとする学生がいるが,このような姿勢では質問紙を作成することはできない。すべての研究法に共通しているが,研究の目的が明確でなければ何も始まらない。
②質問項目を作成する
 質問紙で一番重要な手続きである。質問項目は,自分自身で作成する場合もあれば,既存の尺度を用いる場合もある。項目を作成するために,予備調査を実施することもある。項目の作成に伴い,教示文も作成しなければならない。
③予備的データの収集
 作成した仮の質問紙を用いて予備調査を実施し,項目分析を行う。項目分析を通じて,本調査で用いる項目の選定をする。本調査で,既存の尺度を用いる場合,予備調査では既存の尺度を用いない場合もある。
④本調査の実施
 本調査を実施するにあたっては,サンプリングと実施方法が重要となる。
⑤データの入力
 得られたデータを入力する作業がある。質問紙調査では入力するデータが多いため,最近では,マークシートを用いて,マークシート・リーダーによるデータ入力がなされる場合もある。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。

③  質問項目を自分で作成する場合についての留意点について理解できるようになる。十分に理解し、500字程度で説明できるようになること。
●項目作成の基礎
項目は単純明快で,誰でも理解できるような内容にすべきである。特定の集団にしか通用しない隠語,学術用語,省略語,俗語などは,一般的に使用すべきではない。高校生や大学生を被調査者とした場合,高校生や大学生がよく用いる特別な隠語を用いてもかまわない,と考えている研究者もいるかもしれない。しかし,高校生や大学生の中にも,そのような隠語の意味が理解できない者もいるし,不快に思う者もいる。
●ダブルバーレル
 ひとつの質問項目の中に,2つ以上の論点を含んではならない。
●誘導的質問
 ある特定の意見などを質問項目に加えることによって,回答を誘導してしまう可能性がある。
●調査対象者
 被調査者が誰であるのか明確にし,被調査者に合わせた項目内容にしなければならない。
●質問項目の分量
 質問項目は必要最小限とする。分析に用いない変数は質問紙に組み込まない。

④  質問紙に回答する際、その評定を歪めてしまう主要な要因について理解する。質問紙法などの言語報告では、虚偽の報告(misreporting)がなされる可能性がある。たとえ、虚偽の報告をしようと意図しなくとも、結果として、真実ではない評定を行うこともあり得る。質問紙法では、被調査者による虚偽の報告に関する知識を得、十分な対策をたてる必要がある。
 具体的に、評定を歪めてしまう主要な要因をあげると、以下のようなものがある。(1)黙従傾向(yes-tendency)、(2)中心化傾向(central tendency)、(3)社会的望ましさ(social desirability)、(4)キャリーオーバー効果(carryover effect)、(5)ハロー効果(halo effect)、(6)寛大効果(leniency effect)、(7)でたらめな回答である。
 これらの要因は、実際に質問紙調査によくみられることであり、学生が実験実習を行ったり、卒業研究を行う際に、学生が注意しなければならないことを理解する。それぞれについて、100字程度で説明できるようになること。

⑤  無作為抽出についても理解する。具体的に言えば、無作為抽出によって被験者を集めることの重要性を理解する。
 研究の対象の全体集合を母集団といい、その部分集合が標本であり、標本が実際に収集したデータである。サンプリング(sampling)とは母集団から標本を抽出することである。サンプリングは標本抽出ともいう。サンプリングの仕方は、無作為抽出と有作為抽出にわけることができる。ここでは、無作為抽出法に焦点を当てる。
 無作為抽出法(random sampling)を理解し、なぜ、無作為抽出法が重要なのかを理解する。無作為抽出とは、母集団から無作為に標本を抽出する方法である。確率抽出(probability sampling)ともいう。無作為抽出には、単純無作為抽出、系統抽出、層別無作為抽出、多段階抽出など、さまざまな方法がある。
 また、無作為抽出についても理解する。具体的に言えば、無作為抽出によって被験者を集めることの重要性を理解する。
 無作為抽出法(random sampling)を理解し、なぜ、無作為抽出法が重要なのかを理解する。無作為抽出とは、母集団から無作為に標本を抽出する方法である。確率抽出(probability sampling)ともいう。無作為抽出には、単純無作為抽出、系統抽出、層別無作為抽出、多段階抽出など、さまざまな方法がある。100字程度で説明できるようになること。

キーワード ① 時間見本法 ② 参加観察法 ③ 時間見本法 ④ 質問紙法 ⑤ 無作為抽出
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 講義の内容を振り返りながら、質問紙調査法の問題について考えてみましょう。特に、第3回講義でならった「実験法」と比較しながら、質問紙調査法の問題点について、他者に説明できるようになろう。
質問紙法の問題点について、以下に、そのヒントとなる大枠について記載する。質問紙調査法では、比較的、コストと労力がかからないという利点があるが、質問紙調査によって得られたデータは被調査者の主観による言語報告であることを忘れてはいけない。主に、以下の点がある。(1)質問紙調査では、因果関係を断定することはできない。第2回講義でならった、因果関係について復習も行いましょう。また、因果関係について推測できる研究手法はなんであったのかも、思い出しましょう。(2)質問紙調査は被調査者の主観的な言語報告である。(3)すべての人間に対して実施することはできない。

6 面接法と事例研究 科目の中での位置付け  前々回の講義では実験法、前回の講義では、観察法と質問紙法の概説とそれぞれの利用の仕方、利点や決定について説明した。心理学の研究方法は、実験法、観察法、質問紙法のほかに、面接法と事例研究法が存在する。本講義では、面接法と事例研究のそれぞれの研究法について概説する。科学的な面接法と事例研究法についてとはどのような手法なのかを理解する。
 本講義で学ぶ面接法は、一定の場所で、特定の目的のもと、直接、顔を合わせ、会話をすることによって、その目的を達成する科学心理学的研究手法である。面接法には、面接者(interviewer)の要請で行われる調査的面接と、被面接者(interviewee)の要請で行われる治療的面接(相談面接)がある。
 個人の特性を理解しようとする研究を事例研究(case study)という。広義の意味での事例研究には単一被験者研究も含まれている。個人の特性を理解しようとする事例研究は、その特徴から、心理臨床現場で用いられることが多く、そこではクライエント(client)の心情をセラピストが勝手に推測して記録したり、クライエントの行動に対するセラピスト(therapist)の純粋な心情を記録したり、客観的な記録より主観的な記録が重視されることも珍しくはない。このような事例研究には客観性が乏しく、科学的な心理学の研究方法とはいえない。ただし、心理臨床に対して、スキナーの応用行動分析(applied behavior analysis)、学習理論に基づく行動療法(behavior therapy)などでは、単一被験者研究の技法をもとにクライエントの行動を客観的に記録しており、その意味では、すべての事例研究が客観性を失った非科学的心理学というわけではない。詳細はバーロー・ハーセン(1993)に譲る。

改訂版「心理学の研究法」第3章の第3節と第4節
資料映像あり
バーロー・ハーセン(1993)
Barlow, D.H., & Hersen, M. (1984). Single case experimental designs: Strategies for studying behavior change, 2 ed. Pergamon Books.
コマ主題細目 ① 面接法 ② 事例研究 ③ ベースラインとABデザイン ④ 逆転デザインと多重ベースライン計画 ⑤ 操作交代デザイン
細目レベル ①  科学的な面接法とは、どのようなものなのか。そして、科学的視点から、面接方がいかなる問題を持っているのかを理解する。例えば、以下のようなことである。面接法においても、面接者の主観が入り込む余地がある。そのため、面接法によって得られたデータには、観察法と同様、客観性に欠ける可能性が大きく、自然観察法と同様の問題がある。しかし、観察対象である被面接者と直接接するため、自然観察法より、客観性の問題は大きい。観察法と同様に、訓練を積み、客観的にデータを収集しなければならない。もちろん、得られたデータは仮説として、実験によって検証すべきである。理解の程度は、この時点では、表面的理解でよいが、講義を終えるころには、十分な理解ができていること。特に、メリットとデメリットについて、100字程度で説明できるようになること。
②  科目での位置づけで説明したように、事例研究法が科学的な手法であることを理解する。また、事例研究法の意義について、以下のようなことを理解する。単一被験者研究は、実験法や質問紙法に対応する特別な研究方法というわけではなく、実験計画のひとつの方法であり、単一被験者計画(single-subject design)ということができる。単一被験者計画は、スキナー(Skinner、 B.F.)による実験行動分析(experimental analysis of behavior)に負うところが大きい。スキナーは被験体のデータを平均化することなく、1個体の被験体に対して実験を繰り返すことによって、心理学領域はもちろんのこと、心理学以外の分野においても数多くの業績を残した。スキナーは「1000匹のネズミを用いて1時間の研究、あるいは、100匹のネズミを用いて10時間の研究を行うより、1匹のネズミを用いて1000時間の研究を行うべきである」と述べている。特に、問題点について、臨床の事例研究との違いについて、自分の言葉で、説明できるようになること。
③  ベースラインについて理解する。ベースライン(baseline)とは、測定の対象とする行動、すなわち、標的行動(target behavior)が自発的に生起する頻度をいう。つまり、独立変数が存在しない自然な状態で、標的行動がどの程度生起するのかを測定する。ベースラインは基準となるため、通常、ベースラインが安定するまで測定を行う。
 さらに、ABデザインについて理解する。単一被験者計画では、Aはベースラインを示し、それ以外のアルファベットは操作の導入を示す。ABデザイン(AB design)とは、まず、ベースラインを測定した後、操作を導入し、その後、標的行動の測定を行う計画である。標的行動がベースラインと比較して増減していれば、操作の効果があったと考える。それぞれの用語について100字程度で説明できるようになること。

④  逆転デザインについて理解する。逆転計画(reversal design)は、ベースラインを測定した後、操作を導入し、その操作を除去する手続きである。その典型的な手続きがABAデザイン(ABA design)である。ABAデザインでは、まず、ベースラインを測定した後、操作を加え再び測定する。その後、操作をしない状況で再びデータを測定する。
 さらに、多重ベースライン計画について理解できるようになる。多重ベースライン計画(multiple baseline design)では,複数の標的行動や複数の状況において,ABデザインによる操作を実施し,操作の効果を検証する方法である。多重ベースライン計画では,複数のデータベースを同時に測定し始め,時間的間隔をおきながら,それぞれの標的行動あるいは,それぞれの状況における標的行動に対して,操作を加える。ある程度理解できれば、それで構いません。すべて理解できなくてもOKです。

⑤  操作交代デザイン(alternating treatment design)では,2種類以上の操作を急速に交代させる方法である。この実験計画の最も単純な形はABCデザインである。すなわち,ベースラインを測定した後,ある操作を導入し,その後,別の操作を導入する。ABAデザインでは操作を除去するのに対し,操作交代計画では,操作を除去するのではなく,別の操作を導入するのである。操作交代計画の目的は操作Bと操作Cとの比較にある。ベースライン測定後,セッション初日では指導法Bを行い,2日目には指導法Aを実施し,3日目には指導法Bを,というように指導法を変えていく。指導法Bと指導法Cでは,徐々に,正答率に差が開いており,この差によって,どちらの指導法が効果的か判断することになる。複雑なので、特に関心のある学生だけ、理解できれば構いません。そんな方法もある、ということが理解できればOKです。
キーワード ① 面接法 ② 事例研究法 ③ ベースライン ④ ABデザイン ⑤ 逆転デザイン
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  事例研究に関して、以下の事柄について、科学的心理学の視点から考えてみましょう。具体的に言えば、なぜ、以下の例は科学的心理学とは言えないのだろうか。
 事例研究と称して、心理臨床の事例を報告しているものがある。そこには、クライエントとセラピストのやり取りが、日記や作文のように記述されているものもある。そして、クライエントの反応やカウンセリングの効果は、セラピストの主観によって、言葉で記述されている。このような事例報告は科学的心理学ではない。ここまで、勉強を進めてきた学生ならば、そのことは容易に理解できるだろう。心理学あるいは臨床心理学などと称して、このような事例研究を教えている大学の講師もいるが、残念ながら、その講師からは科学的心理学を学ぶことはできない。

7 精神物理学的測定法 科目の中での位置付け 心理学で対象としようとする現象は、直接観察することができない構成概念(教材テキストの7頁参照)を扱うことが多い。心理学的測定法(psychometrics)とは、このような構成概念を数量的に測定する方法の総称である。物理学の世界では、長さを測定するには「ものさし」を用いる、重さを測定するには「はかり」を用いる。一方、心理学では、「ものさし」や「はかり」に相当する尺度(scale)を作成し、この尺度を用いて、直接観察することができない心理的事象を測定しようと試みている。このような心理学的測定法を尺度構成法(scaling method)という。心理的測定法は、主に、精神物理学的測定法、評定法、検査法に分類することができる。
 本講義では、心理学的測定法の代表である精神物理学的測定法について解説する。
 心理学的測定法とは、このような構成概念を数量的に測定する方法の総称であることを理解する。物理学の世界では、長さを測定するには「ものさし」を用いる、重さを測定するには「はかり」を用いる。しかし、心理学では、「ものさし」や「はかり」に相当する尺度(scale)を作成し、この尺度を用いて、直接観察することができない心理的事象を測定しようと試みている。このような心理学的測定法を尺度構成法という。

改訂版「心理学の研究法」第4章の第1節
資料映像あり
コマ主題細目 ① 精神物理学的測定法 ② 刺激閾と弁別閾 ③ 調整法と極現法 ④  マグニチュード推定法 ⑤ 恒常法
細目レベル ①  精神物理学的測定法がどのような測定方法なのかを理解する。精神物理学的測定法は(psychophysical methods)、フェヒナー(Fechner、 G.T.)の精神物理学(psychophysics)に由来する。フェヒナーは、物理学的な事象としての刺激と、心理学的な事象としての感覚の関連性を理論づけようとした。簡潔にいえば、精神物理学とは、刺激と反応との間の関係を数量的にとらえようとする科学である。精神物理学での反応は感覚であり、刺激と感覚との関数法則の追求が精神物理学の目的である。フェヒナーの精神物理学で用いた測定法をもとに発展したものが精神物理学的測定法である。
 こうした測定方法が、科学的心理学の中で導入された理由も理解できるようになる。それぞれ100字程度で説明できるようになること。

②  刺激閾と弁別閾について理解し、両者の違いについて説明できるようになる。
 刺激閾(stimulus threshold)とは,感覚で検出する(感じる)ことができる最低の刺激強度のことである。絶対閾ともいう。また,検出することのできない刺激強度を閾下(subliminal)という。サブリミナル効果という言葉を耳にしたことのある読者もいると思うが,サブリミナルとはこの閾下のことである。サブリミナル効果は,1950年代アメリカで,映画の放映中,ヒトが見ることのできない短い時間,ポップコーンの宣伝を行ったところ,ポップコーンの売上が伸びた,ということで注目を集めた。
 弁別閾(difference threshold)とは,識別することが可能な刺激強度の差である。たとえば,両手に,重量の異なるおもりを持ち,どちらが重いか識別することができる重さの最小の差をという。刺激量の差異がちょうど識別できるという意味から,弁別閾は丁度可値差異(j.n.d.:just noticeable difference)ともいわれる。それぞれ、100字程度で説明できるようになること。

③  調整法と極限法について理解し、両者の違いについて説明できるようになる。
 調整法(method of adjustment)がどのような測定法でなのか、その長短について理解する。調整法とは、標準刺激の刺激量と比較し、被験者自身が比較刺激の刺激量を自由に変化させる方法である。たとえば、ミュラー・リヤーの錯視(Müller-Lyer illusion)の実験で、調整法によって主観的等価点を測定する場合、標準刺激(主線)と等価になるように、被験者が比較刺激の長さを自由に変える方法である。調整法では、被験者が副線の長さを自由に伸縮することができる。
 極限法(method of limits)がどのような測定法でなのか、その長短について理解する。極限法とは、刺激量を少しずつ一定方向に変化させながら、変化させるたびに被験者に判断を求め、被験者の判断がある特定の変化を示す刺激量を求める方法である。刺激量を段階的に増加させる上昇系列と、段階的に減少させる下降系列がある。たとえば、ミュラー・リヤーの錯視の実験で、主観的等価点を測定する場合、実験者が段階的に主線の長さを変化させ、被験者が主線と同じ長さであると判断した副線の長さを測定する方法である。それぞれ、100字程度で、説明できるようになること。

④  マグニチュード推定法について理解し、他の方法との違いについて説明できるようになる。さらに、マグニチュード推定法が、どのような場面で、実際に使用されているのか理解する。
 マグニチュード推定法(method of magnitude estimation)とはスティーヴンス(Stevens, S.S.)が提唱した測定法であり,被験者に感覚の大きさを数量化させることで,刺激と感覚との関係を数量的にとらえようとする方法である。スティーヴンスは,基準となる刺激を単位とし,さまざまな刺激量に対して,基準となる刺激に対する比率で評定させた。たとえば,基準となる明るさを10とした場合,ある明るさは基準の明るさの1.5倍明るいと主観的に感じたとする。その場合,その明るさは15となる。基準の明るさの半分程度の明るさであると判断した場合は,その明るさは5となる。それぞれ、100字程度で説明できるようになること。

⑤  恒常法について理解できる。さらに、調整法と極限法と比較して、恒常法がどのように違うのか、その相違点について説明できるようになる。実際には、ミュラー・リヤーの錯視の実験の例を挙げ、説明できるようになる。
 恒常法(constant method)がどのような測定法でなのか、その長短について理解する。恒常法とは、あらかじめ刺激量の異なるいくつかの比較刺激を用意し、それらの刺激を被験者にランダムに呈示し、それぞれの刺激に対する被験者の判断を求めるという方法である。たとえば、ミュラー・リヤーの錯視の実験で、主観的等価点を測定する場合、主線と同じあるいは異なる長さの副線を被験者にランダムに呈示し、被験者が主線と同値であると判断した副線の長さを測定する方法である。それぞれ、100字程度で説明できるようになること。・

キーワード ① 精神物理学的測定法 ② 刺激域 ③ 弁別閾 ④ 主観的等価点 ⑤ 恒常法
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  講義内容を振り返り、古典的な精神物理学的測定法として、調整法、極限法、恒常法を取り上げ、その長所と短所について考えてみましょう。
 解答(学習)のヒントとして、以下の長所と短所の記述を挙げておく。それぞれの長所が、どの古典的な精神物理学的測定法に当てはまり、それぞれの短所がどの古典的な精神物理学的測定法に当てはまるのかを考えましょう。
 まず、以下の点が、ある精神物理学的測定法の長所となる点である。
○被験者が理解しやすい。
○短時間で行うことができる。
○主観的等価点の測定に適している。
○刺激閾や弁別閾の測定にも用いることができる。
○被験者の反応をとらえるという点では優れている。
○適応範囲が広い。
 次に、以下の点が、ある精神物理学的測定法の短所となる点である。
○測定の操作が被験者にゆだねられているため,結果の透明性,信頼性に問題がある。
○刺激閾や弁別閾の測定には適さない。
○慎重な被験者には向かない。
○調整法より手間がかかる。
○刺激の判断において,前試行の刺激の影響を受ける。
○時間と労力がかかる。

8 評定法と検査法 科目の中での位置付け  本講義では、評定法について、前回の講義で説明した精神物理学的測定法がどのような経緯で影響したのか、現在の評定法に至るまでの経緯などについて説明する。また、心理学で一般的に用いられている検査法(知能検査、発達検査、性格検査、作業検査、適性検査、学力検査)について説明する。
 評定法(rating method)は、フェヒナー(Fechner、 G. T.)の実験美学(experimental aesthetics)に由来すると考えられる。その後、順位法、一対比較法などが考案され、やがて、評定尺度法が誕生することになった。
 検査法(test method)とは、課題や問題に対する解答(回答)や反応から、個人の学力、能力、適正、性格などを数値であらわそうとする心理学的測定法である。知能検査、発達検査、性格検査、作業検査、適性検査(aptitude test)、学力検査(achievement test)などがある。これらの総称として人格検査(personality test)という用語がある。検査法は、検査の作成手続きによって、標準検査(standardized test)と個別作成検査(informal test)に分類することができる。標準検査とは、質問項目(問題項目)、その呈示方法や回答(解答)方法などが明確に標準化(standardization)されている検査である。標準検査を実施するために、通常、マニュアルが作成されており、そのマニュアルに従って検査を実施する。標準検査では、さまざまな人々から多くのデータを収集し、平均値や標準偏差が算出されており、個人の検査結果から個人の相対的な位置を確認することができる。一方、個別作成検査は、学校の教師が作成する検査のように、必要に応じて作成され、標準化の手続きがなされていない検査である。

改訂版「心理学の研究法」第4章の第2節と第3節
資料映像あり
コマ主題細目 ① 評定尺度法 ② セマンティック・ディファレンシャル法 ③ 知能検査 ④ 発達検査 ⑤ デジタル評定尺度とソシオメトリック・テスト
細目レベル ①  評定尺度法について理解し、実際に使用できるようになる。
 評定尺度法(method of rating scale)とは,ある対象に対する感情,態度,意見,価値,嗜好などの反応を,心理学的な連続体上で評定する心理学的測定法の一種である。
 リッカート法やサーストン法などがある。
 リッカート法(Likert scaling)は,サーストン法,ガットマン法(Guttman method)とともに,個人の態度を測定する伝統的な方法のひとつであり,リッカート(Likert, R.)によって考案された尺度構成法である。リッカートの評定加算法(method of summated ratings)ともいう。現在用いられている質問紙の多くが,リッカート法によって測定されている。
 サーストン法(Thurstone scaling)とは,サーストン(Thurstone, L.L.)によって提唱された態度を測定するための尺度構成法のひとつである。サーストンの等現間隔法(method of equal-appearing intervals)ともよばれている。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

② セマンティック・ディファレンシャル法について理解し、その方法を実際に使用できるようになる。
セマンティック・ディファレンシャル法(semantic differential method)とは,個人が抱く印象,イメージ,好みなどの感情的意味を,相反する形容詞対によって測定する方法である。たとえば,ある企業や製品のイメージに対して,「良い―悪い」,「美しい―醜い」,「重い―軽い」などの形容詞対に対して評定する方法である。SD法,意味差異法ともいわれる。そもそも,SD法はオズグッド(Osgood, C.E.)によって開発された方法である。SD法では,被験者に関する情報,形容詞対に関する情報,評定の対象に関する情報の3相のデータを得ることができる。これまでの形容詞対に関する研究から,評価性(evaluation),力量性(potency),活動性(activity)の3つの次元が抽出されている。簡単にいえば,形容詞対が,評価性,力量性,活動性に関する3つのグループにわかれるということである。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

③  知能検査がどのような目的で開発されたのかを理解し、知能検査について正しい理解がでできるようになる(特に差別との関係で)。
 現在の知能検査(intelligence test)の原型は,ビネー(Binet, A.)によって作成された。フランス政府の命により,ビネーは精神薄弱児を検出するための検査を開発することになり,1905年,シモン(Simon, T.)とともに知能検査を考案した。その後,さまざまな知能検査が作成されたが,本講義では,最も代表的な2つの知能検査であるビネー法とウェクスラー法について紹介する。
 ビネーによる知能検査では,精神年齢(MA:mental age)という概念を用いて,児童の知能の程度を,普通の児童では何歳に相当するか,という指標であらわす。精神年齢に対して,実年齢を生活年齢(CA:chronological age)という。
 ウェクスラー法では,言語性検査(verbal test)と動作性検査(performance test)の2つの側面から知能を査定する構造になっている。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

④  知能検査に代わり、使用されている方法が発達検査である。本講義では、知能検査の流れから、なぜ、発達検査が使用されるようになったのかを理解する。
発達検査(developmental test)は,乳幼児や児童など,子どもの発達状況を測定するために開発された標準化された検査である。今日の発達検査の原型は,ビューラー(Bühler, C.)やゲゼル(Gesell, A.)の貢献に負うところが大きい。現在,わが国では,津守式幼児精神発達検査,遠城寺式幼児分析的発達検査,新版K式発達検査,MCCベビーテスト,MN式発達スクリーニング・テスト,日本版デンバー式発達検査などが用いられている。発達検査の主な目的のひとつがスクリーニング(screening)である。スクリーニングとはふるいにかけるという意味であり,発達検査には乳幼児や児童が正常に発達しているかどうかふるいにかける役割がある。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。加えて、知能検査の問題点について、自分自身の言葉で語れるようになること。

⑤  デジタル評定尺度とソシオメトリック・テストを理解し、それぞれのテストを使用できるようになる。
 デジタル評定尺度(digital rating scale)では,ある一定の数値の範囲を設定し,ある項目(対象)に対する範囲内での数値(得点)で回答させる。たとえば,澄みきった春日部の青空の美しさについて,0から10までの範囲で,数値によって回答する場合が,デジタル評定尺度となる。
 ソシオメトリック・テスト(sociometric test)は,モレノ(Moreno, J.L.)によって作成された集団内での人間関係をとらえる方法である。ソシオメトリック・テストでは,特定集団内での選択人物と排斥人物を記述させることで,その集団の凝集性,その集団内での個人の社会的地位などを算出することができる。さらに,ソシオグラム(sociogram)とよばれる選択・排斥関係を示す図を作成することで,その集団の人間関係を視覚的にとらえることができる。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

キーワード ① リッカート法 ② サーストン法 ③ ソシオメトリック・テスト ④ 一対比較法 ⑤ 知能検査
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義を振り返り、知能検査による差別と偏見について、以下の文章から、再度考え直してみよう。なぜ、差別や偏見が生まれるのだろうか。
ビネー検査は知的障害を抱えた子どもたちを特定するために作成され,本来,知能指数はそれ以上の意味を意図したものではなかった。しかし,知能指数という概念がアメリカへ渡ると,本来の意図と異なる目的で使用されるようになった。知能指数は知的障害者を差別する道具となったり,職業の選択基準となったり,差別の道具として用いられるようになった。知能指数がこのような用いられ方をする原因のひとつが,アメリカ陸軍で使用されたアーミー・テストである。アーミー・テストの考案者の中心人物であったヤーキーズ(Yerkes, R.M.)は,このテストの実施により膨大なデータを収集し,アメリカ白人成人の平均精神年齢が約13歳であり,黒人成人の平均精神年齢はアメリカ白人成人より低く約10.4歳であると報告した。これらのデータは,知能指数が遺伝的に決定しているという考え方と結びつき,さまざまな差別政策の科学的根拠とされた。また,知能検査によって測定された値が,真の意味で「知能」を測定しているとの誤解を広める原因ともなった。

9 性格検査と検査の信頼性と妥当性 科目の中での位置付け  本講義では、検査法において、もっとも重要な信頼性と妥当性について知り、その重要性について理解できるようになる。この信頼性と妥当性を理解することが、科学的心理学を理解することにつながる。
 テレビや雑誌でみかける心理テストと学術研究で用いられている心理テストとでは,どこがどのように異なるのであろうか。また,血液型占いや星座占いと学術研究で用いられている心理テストとでは,どこが異なるのであろうか。読者の中には,まったく同じであると思っている者もいるかもしれない。通常,研究者が用いる心理テストが読者の前にさらされることはない。もちろん,テレビや雑誌などでみかけることは皆無といっていいだろう。テレビや雑誌などでみかける心理テストや占いと学術研究で用いられる心理テストの違いはただひとつ,検査(test)の信頼性と妥当性が検証されているかどうかである。検査の信頼性と妥当性は,検査にとって最も重要な概念である。信頼性と妥当性の観点からいえば,テレビや雑誌などでみかける心理テストや占いには違いはないのである。

改訂版「心理学の研究法」第4章の第4節と第5節
資料映像(ロールシャッハ・テストなど)あり
日本MMPI研究会(1976)Minnesota Multiphasic Personality Inventory マニュアル 三京房
Rosenhan, D. L. (1973). On being sane in insane places. Science, 179, 250-258.
コマ主題細目 ① 性格検査法 ② Y-G性格検査 ③ NEO-PI-R ④ 精神的健康状態を測定する ⑤ 信頼性と妥当性
細目レベル ①  性格検査法の概要について、理解できるようになる。
 性格検査(character test)には質問紙法、投影法、作業検査法などがある。代表的な質問紙には、MMPI、Y-G検査、NEO-PI-R、EPPS、16PF、モーズレイ人格目録などがある。投影法(projective technique)とは、比較的あいまいな言語刺激や視覚刺激を被験者に呈示し、その刺激に対する被験者の自由な反応から被験者の性格を推測したり、被験者が比較的自由度の高い作品を作成し、その作品から被験者の性格を推測したりする方法である。質問紙法による性格検査とは異なり、被験者の深層心理を測定することが可能であるという建前になっている。投影法ではいくつかの仮定がある。被験者に呈示する刺激があいまいなほど、投影される投影量が多く(被験者の反応が豊かであり)、無意識水準の個人的傾向が反映されることなどである。代表的な投影法に、ロールシャッハ・テスト、TAT、描画検査(樹木画検査、H-T-P検査、なぐり描き法)、SCTなどがある。本項では代表的な質問紙法および投影法について説明する。
それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。加えて、性格検査法の利点と欠点について、自分の言葉で、説明できるようになること。

②  実際に、Y-G性格検査を体験したうえで、Y-G性格検査に理解できるようになる。
 Y-G性格検査(Yatabe-Guilford Personality Inventory)は谷田部―ギルフォード性格検査の略称であり,ギルフォード(Guilford, J.P.)の性格理論に基づき,谷田部達郎によって作成された。Y-G性格検査では,120問の項目に対して,「はい」,「いいえ」,「?」のいずれかで回答させ,その回答によって,抑うつ性(D),回帰性傾向(C),劣等感(I),神経質(N),客観性のなさ(O),協調性のなさ(Co),攻撃性(Ag),一般的活動性(G),のんきさ(R),思考的外向(T),支配性(A),社会的外向(S)の12の性格傾向を検査する。この12の性格傾向を個人のプロフィールに記載し,プロフィールの形状によって,図4-7のように被験者を5つのタイプに分類する。5つのタイプはA型(平均型),B型(右より型),C型(左より型),D型(右下がり型),E型(左下がり型)である。
 A型は平均型であり,万事につけて調和的で適応的なタイプである。B型は不安定積極型であり,情緒不安定,社会的不適応,活動的,外向的で,爆発的行動に出やすいタイプである。C型は安定消極型であり,おとなしく消極的で,内向的なタイプである。D型は安定積極型であり,最も理想的なタイプといわれている。E型は不安定消極型であり,ノイローゼ傾向が高いタイプである(辻岡, 1976)。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

③  学生が卒業研究でも使用する可能性の高い、NEO-PI-Rを経験し、その理論的背景を含め、結果の解釈の仕方などについて理解できるようになる。
 NEO-PI-R(Revised NEC Personality Inventory)は、パーソナリティの基本次元として考えられている5つの特性を測定するため、1989年、コスタ(Costa、 Jr.、 P.T.)とマックレー(McCrea、 R.R.)によって作成された。5つの性格特性は神経質傾向(N: Neuroticism)、外向性(E: Extraversion)、経験への開放性(O: Openness)、調和性(A: Agreeableness)、誠実性(C: Conscientiousness)であり、これらはビック・ファイブ(big five)とよばれている。NEO-PI-Rはビック・ファイブの5つの下位尺度(sub-scale)からなり、それぞれの下位尺度は6つの次元を有する(表4-3参照)。NEO-PI-Rのすべての項目数は240項目である。研究で用いるにはNEO-PI-Rの項目数が多いため、後に、NEO-PI-Rの短縮版としてNEO-FFI(NEO Five Factor Inventory)が作成された。NEO-FFIのそれぞれの5つの下位尺度は12項目からなり、計60項目から構成されている。研究領域では、コスタとマックレーのNEOは、性格の基本的次元を測定するために用いられる最も使用頻度の高い性格検査である。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

④  NEO-PI-Rと同様に、学生が卒業研究でも使用する可能性の高い精神的健康鵜を測定することができるいくつかの尺度について、実際に経験し、その理論的背景を含め、結果の解釈の仕方などについて理解できるようになる。
 SATI(State-Trait Anxiety Inventory)は,不安を測定するためにスピルバーガー(Spielberger, C.D.)らが作成した検査である。STAIは状況に応じて変化する不安の傾向をとらえる状態不安尺度(State Anxiety Scale)20項目,個人の不安に関する傾向を測定する特性不安尺度(Trait Anxiety Scale)20項目の計40項目からなる。STAIの使用頻度は高く,質問紙調査研究だけでなく,実験でも頻繁に使用されている。MMPI,Y-G性格検査,NEO-PI-Rとは異なり,STAIはある特定の傾向を測定する検査である。STAIのように,ある特定の個人的傾向を測定する検査は無数に作成されている。たとえば,抑うつの程度を測定するBDI(Beck Depression Inventory)やCES-D(Center for Epidemiologic Studies'' Depression Scale),主観的な心身の状態を測定するHopkins Symptom Checklist,SCL-90などがある。また,感情状態を測定するPOMS(Profile of Mood State),楽観性を測定するLOT(Life Orientation Test),社会的問題解決能力を測定するPSI(Problem Solving Inventory)など多様な目的で検査が作成されている。ここでは性格検査として,これらの質問紙検査を紹介したが,不安,抑うつ,心身の状態,感情などが性格というわけではないので,少し注意してほしい。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

⑤  信頼性と妥当性について理解する。信頼性と妥当性の両概念は、科学的心理学を理解するために必修である。必ず、復習が必要である。
 信頼性(reliability)は検査の精度(安定性や一貫性)を意味する。精度の高い「ものさし」や「はかり」で測定した測定値は,対象となる物質が変化しない限り,どのような条件で測定しようが,いつ測定しようが,誰が測定しようが,変わらない。しかし,心理学で用いられる検査では,測定値が一致しないことが通常である。いつ測定しようが検査結果が安定していたり,誰が測定しても同一の結果が得られたりする検査は,その検査の信頼性が高いという。
 検査の妥当性(validity)とはその検査の正しさを意味する。妥当性のとらえ方にはさまざまな議論があり,現在でも,統一された考え方はない。1970年以降の古典的な検査の妥当性が意味する内容は,検査が測定しようとしている概念を測定しているかどうかであり,内容的妥当性,基準関連妥当性,構成概念妥当性の3つの妥当性が提唱されていた。1980年頃から,妥当性の概念は,検査の得点に基づいて,測定しようとする構成概念に対してなされる推論や解釈を支える証拠がどの程度適切であるかを示す手続きであると考えられるようになった。この用語は複雑なので、本講義終了時点では、なんとなくわかっていればOKだが、すべての講義を終えることには、ある程度は理解できるようになること。それでも、完璧ではなくてもよい。少なくても、わかっているような気になる程度には理解すること。

キーワード ① 性格検査 ② ミネソタ多面人格目録 ③ ロールシャッハ・テスト ④ 信頼性 ⑤ 妥当性
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  信頼性と妥当性に関して、必ず、復習すること。蘇の復習を手助けするために、ロールシャッハ・テストの妥当性の問題について、以下の文章を参考に考えてみましょう(講義の内容も必ず振り返ること)。
最も批判を受けている妥当性の問題は,ロールシャッハ・テストが精神疾患を鑑別することができないという事実である。この事実は1950年代から十分な科学的データによって裏付けられていた。たとえば,バークレイ大学で行われた研究では,ロールシャッハ・テストでは,健康な成人の3分の2を不適応であると判定してしまうと報告している。このような結果は2000年に入っても繰り返し報告されている。カリフォルニア州で行われた研究では,献血を受けた健康な成人(MMPI-2やWAIS-Rによって問題がないとされた者)123名を対象に包括システムを実施した結果,およそ6人のうち1人が分裂病に関する指標で病的であると評定された。また,ロールシャッハ・テストの専門家たちに,包括システムによって正常で健康な成人を診断させたところ,約75%を精神病者として診断した,という報告もある。このような報告は珍しいものではない。繰り返し,このような報告がなされているのである。加えて,1999年には衝撃的な事件が起こった。エクスナーが報告したロールシャッハ・テストの基準となるデータは捏造あるいは意図的なデータ改ざんと思われる事実が次々と出てきたのである。この問題は2001年のニューヨークタイムズ誌でも取りあげられた(教材テキストの83頁参照)。
補足:ロールシャッハ・テストについて
 ロールシャッハ・テスト(Rorschach test)は,スイスのロールシャッハ(Rorschach, H.)によって,1921年に考案された検査である。ロールシャッハ・テストでは,インクのシミを垂らしたような左右対称の図版を被験者に呈示し,被験者の反応を記録する。図版は濃淡のある黒白図版が5枚,赤黒図版が2枚,色彩図版が3枚,計10枚である。まず,10枚の図版を定められた順序に従い,被験者に呈示し,その図版が何に見えたか(反応内容)などの被験者の反応を記録する。次に,再度,被験者に図版を呈示し,どの部分(反応領域)が,なぜそのように見えたのか(決定因)など詳しく質問をしながら記録する。その記録を記号化することによって,検査結果をデータ化する。

10 データ分析の基礎(測定尺度と記述統計) 科目の中での位置付け  Excel(Microsoft社)やSPSS(SPSS社)などの統計ソフトを用いることで、初学者でも、データ分析を簡単に行うことができるようになった。加えて、これらの統計ソフトを使いこなすためのマニュアル本まで販売されている。心理学領域を専攻とする学生の多くは文科系であり、「心理学統計法」の講義を不得手とする傾向がある。その一方で、マニュアル本を片手に、統計ソフトを用いて、データの分析をする。コンピュータによって、なにやら数値が計算されるため、学生は安心し、統計ソフトを安易に使用する。学生は表面的な体裁を取り繕い、データ分析に関する基礎的な学力は低下する。その結果、誤った分析方法によって得られた結果を報告する。結果的に、それは虚偽の報告につながる。もはや、それは科学的心理学とは遠く離れた学問である。学生は、データ分析を学習することなく、4年間もかけて、今後役に立つことのないコンピュータの使い方を習得するのである。
 本講義を含め第11回、第12回、第13回、第14回では、上記のような過ちを避けるために、「心理学統計法」の基礎的な考え方について説明する。数式がいくつも出てくるかもしれないが、数式を覚えることが目的ではない。数式を片手に、自分自身で、計算を体験することを通じて、「心理学統計法」の基礎的な考え方を理解することが目的である。基礎的な考え方さえ理解していれば、統計ソフトによって、誤った分析をすることもなくなるのである。あなたは、嘘でごまかしたレポートや論文を書きたいですか? まずは、電卓を机の上に用意しよう。

改訂版「心理学の研究法」第5章の第1節と第2節
資料映像あり
コマ主題細目 ① 名義尺度と順序尺度 ② 間隔尺度と比率尺度 ③ 度数分布 ④ 平均値 ⑤ 標準偏差と分散
細目レベル ①  名義尺度と順序尺度について理解し、何が名義尺度で何が順序尺度であるのか、区別することができるようになる。
 名義尺度(nominal scale)はそれぞれのカテゴリーに数値を割りあてることであり,対象や事象をカテゴリーに分類することである。それぞれのグループに数値を割りあてる尺度が名義尺度である。一般的に,グループはカテゴリー(category)といわれる。学校のクラス番号,電話番号,ユニフォームの背番号なども名義尺度によって測定された変数である。数値は単なる記号の意味でしかなく,個人の名前と同じであると考えてよい。数値の割りあては,同一カテゴリー,あるいは,対象や事象に対して2つ以上の数値を割りあてたり,異なるカテゴリーに対して同一の数値を割りあてたりしなければ,どのような数値を割りあててもよい。
 順序尺度(ordinal scale)では,相対的な順序関係をあらわす数値を割りあてることで,それぞれのカテゴリーの分類を行う。そのため,割りあてられた数値は,数値の大小関係のみの意味をもつ。順序尺度は,名義尺度の数値が順序の情報を有したものである。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。加えて、両概念を区別できるようになること。

②  間隔尺度と比率尺度について理解し、実際の数値から間隔尺度と比率尺度を区別することができるようになる。
 間隔尺度(interval scale)では,数値の差が意味を持ち,連続した数値間の間隔は等間隔となる。摂氏・華氏の温度計,知能検査,西暦表,時計などが間隔尺度にあてはまる。たとえば,摂氏による温度の場合,10℃と20℃との間の差と,20℃と30℃との間の差は等間隔であり,その意味で,間隔尺度に該当する。間隔尺度は順序尺度の数値間の間隔が等しくなった場合の尺度である。
 比率尺度(ratio scale)では,間隔尺度の差の等価性に加え,絶対的な原点ゼロを有する。比率尺度によって測定される距離では,10kmと20kmとの間の差,50kmと60kmとの間の差の間隔は等しいことに加え,原点ゼロを有することで,10kmの5倍は50kmというような比率の意味を有する。重さ,長さ,時間,絶対温度などの変数も比率尺度によって測定されたものである。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。加えて、両概念を区別するようになること。

③  度数分布について理解し、実際のデータから度数分布が書けるようにする。
 ロー・データが得られたら,まず,データの全体像を把握することが重要である。データの全体的様相を分布(distribution)という。データの分布を把握するためには,カテゴリーや観測値を示すデータの個数を数える必要がある。カテゴリーや観測値を示すデータの個数を度数(frequency)といい,度数によってデータの分布を示したものが度数分布(frequency distribution)である。度数分布は表やグラフにすることによって,視覚的にまとめることができる。度数分布を表にすれば度数分布表(frequency table)となり,グラフにすれば棒グラフ(bar graph)やヒストグラム(histogram:柱状グラフ)が完成する。講義では、さらに,質的変数と量的変数にわけ,度数分布のまとめ方について説明する。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。加えて、実際の度数分布図を書いたり、算出したりすることができるようになること。

④  平均値について理解し、実際のデータから平均値を算出することができるようになる。平均値(M:mean)とは、それぞれのデータの総和を総データ数で割ったものである。一般的に、平均とはこの算術平均(arithmetic mean)のことであり、平均には、算術平均(相加平均ともいう)のほか、調和平均(harmonic mean)、幾何平均(geometric mean)などがある。ここでは、算術平均について説明し、以下、平均は算術平均を意味する。平均値は、間隔尺度、比率尺度によって測定されたデータの場合に算出することが可能である。つまり、名義尺度、順序尺度によって得られたデータからは算出することができない。たとえば、男性10名、女性15名からデータを得たとする。男性に「1」という数値を割りあて、女性に「0」という数値を割りあてた場合、コンピュータでは、0.40という平均値を算出することができる。しかし、性別は名義尺度であり、男性に「1、000」、女性に「10」という数値を割りあてた場合、コンピュータでの平均は406となる。名義尺度や順序尺度でも、コンピュータは平均値を算出するが、その値は何の情報も持たない。説明できるようになるよりは、計算できるようになること。簡単な数値ならば暗算で、できるようになること。数式は暗記しなくてもよい。
⑤  標準偏差と分散の意味が理解でき、講義時間中に説明する標準偏差と分散の計算式の意味についても理解できるようになる。講義では実際のデータを用いて、黒板に計算過程を記載しながら、標準偏差と分散を説明する。一部の学生には、実際のデータから標準偏差と分散を算出できるようになる。
 標準偏差(SD:standard deviation)と分散(variance)は,平均値から算出されるデータのバラツキ具合を距離で示したものである。両者の違いは単位である。このことについては後に説明する。標準偏差や分散の値が小さいということは,多くのデータが平均値,あるいは平均値に近い値をとっていることを意味している。逆に,標準偏差や分散が大きいということは,平均値から遠いデータが多いことを意味している。数値を計算することはできなくてもよいが(ハイレベルの学生は、計算でkるようになること)、その理屈(計算の方法)については理解し、他者に説明できるようになること(他の人が理解できるように説明する)。

キーワード ① 名義尺度 ② 間隔尺度 ③ 質的データと量的データ ④ 代表値 ⑤ 散布度
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  代表値の性質について、講義を振り返りながら、改めて考えてみましょう。
 本講義では,代表値として,平均値,中央値,最頻値の説明をしたが,得られたデータの尺度水準が,間隔尺度あるいは比率尺度ならば平均値,順序尺度ならば中央値,名義尺度ならば最頻値というように,必ずしも,尺度水準によって代表値を選出するわけではない。どのようなデータの場合,どのような代表値で示すか絶対的な基準はない。それぞれの代表値の性質に応じて,代表値を示す必要がある。以下に,いくつかの判断材料のヒントを提示する。なぜ、注意が必要であるのかも考えること。
●尺度水準
 まず,得られたデータの尺度水準によって判断する。平均値は間隔尺度,比率尺度の場合,中央値は順序尺度,間隔尺度,比率尺度の場合,最頻度はいずれの尺度水準の場合でも適用することができる。ここで考えなければならないことが2つある。①平均値はさまざまな数学的処理が可能であるため,平均値を代表値とする方が都合がよい。②心理学の領域で,間隔尺度として用いられている数値は,厳密な意味では順序尺度である場合が少なくない。
●外れ値
 平均値は外れ値(outlier)の影響を受ける。特に,データ数が少ない場合は顕著である。総データ数が少なく,外れ値がある場合,通常,平均値ではなく中央値を用いることが適切である。
●度数分布の形状
 いずれの代表値を選択するかは,度数分布の形状によっても左右される。最も,注意すべき度数分布の形状は,ヤマが2つ以上ある場合である。

11 データ分析の基礎(推測統計の考え方) 科目の中での位置付け  今回の講義では、あまり数値は出てこないが、非常に理解することが難しい推測統計の考え方について説明する。この考え方を理解することは難しいが、しかし、心理学のみならず、医学や生命科学など、多くの自然科学の領域で用いられている推測統計の考え方を理解できなければ、心理学を理解することはできない。そればかりか、実験実習や卒業研究も実施できない。それゆえ、覚悟して聴講しなければならない。決して、気を緩めることができない。学生にとって、本講義は、「心理学研究法」の講義の中で、最も、集中して講義を受講しなければならない回である。
 得られたデータを集約,整理し,データの性質を簡単,明確に記述することが記述統計であるのに対し,推測統計(inferential statistics)とは,母集団から無作為に抽出した標本に基づいて,母集団の推測を行うことを意味する。推測統計は,主に,統計的推定(statistical estimation)と統計的仮説検定(testing statistical hypothesis)に分類することができる。統計的推定は単に“推定”,統計的仮説検定は単に検定(test)とよぶこともある。

改訂版「心理学の研究法」第5章の第3節
資料映像あり
統計数値表編集委員会(1977)統計数値表コンサイス版 日本規格協会
コマ主題細目 ① 帰無仮説 ② 統計的仮説検定の手順 ③ 有意水準と臨界値 ④ 片側検定と両側検定 ⑤ 検定力
細目レベル ①  帰無仮説の意味を理解する。
 初めて,友人と賭けをしたときに,あなたは,友人が投げたコインの“表”が出る確率は1/2であり,「“表”が出ることは偶然である」と考えていたに違いがない。これが帰(き)無(む)仮説(null hypothesis)である。しかし,何度か“表”が出続けると,「“表”が出ることは偶然である」という帰無仮説が信じられなくなる。信じられなくなった瞬間,帰無仮説を捨て去り,「“表”が出ることは偶然ではない」という仮説を信じることになる。「“表”が出ることは偶然ではない」という仮説を対立仮説(alternative hypothesis)という。帰無仮説は,ある命題の真偽を検証するために統計学的用いられる仮説であり,帰無仮説を否定する仮説が対立仮説である。統計記号では,一般的に,帰無仮説はH0,対立仮説はH1とあらわす。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。ただし、簡潔に説明できなくてもOKとする。すくなくとも、自分の言葉で説明できればOKとする。

②  統計的仮説検定を実際に行うことができるように、その手順について理解する。ただし、この説明は何度も聞き、実際にデータを扱わないと、本当の意味で理解することは困難であるため、おおまかに理解できることを目標とする。
①まず、母集団に対して、帰無仮説を立てる。
②有意水準を設定する。
心理学領域では、5%の基準を用いるのが一般的である。
③データを収集する。
 母集団から標本を抽出する。
④検定統計量の算出する
 帰無仮説に合った検定統計量を算出する。後の章で説明するt 値、F値、χ2値などである。
⑤統計的な判断する。
 ④で算出した検定統計量と臨界値を比較し、帰無仮説を棄却するのか、採択するのか、判断する。臨界値については次項で説明する。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

③  有意水準と臨界値の意味を理解し、検定統計量を算出したあと、統計的判断をくだすことができるようになる。
 帰無仮説を棄却し、対立仮説を採択する統一基準を有意水準(level of significance)、あるいは、危険率という。心理学領域では5%水準の基準を用いることが一般的である。論文中で表記される表現や表記、記号は統一されているので、覚える必要がある。なお、†はダガー、✽はアスタリスクと読む。
 検定統計量を算出し、統計的判断をくだす場合、検定統計量と臨界値(critical value)を比較する。臨界値とは、帰無仮説を棄却するための検定統計量の値である。先に説明した通り、検定統計量が棄却域に入れば、帰無仮説は棄却される。そのため、帰無仮説を棄却するかどうか統計的判断をくだす際は、検定統計量と臨界値の値を比較することになる。すなわち、|臨界値|<|検定統計量|の場合、帰無仮説は棄却され、|検定統計量|≦|臨界値|の場合、帰無仮説は採択される。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。ただし、詳細に説明することは難しいことなので、なんとなく、相手に理解できるような説明でOK。決して、用語の解説文章を暗記するようなことだけはしないこと。

④  片側検定と両側検定の意味を理解し、両者を区別することができるようになる。
 講義の説明では,棄却域を右すそにのみ触れてきた。しかし,負の事象(左すそ)にあってもいいように思える。棄却域を片側にのみ設ける統計的仮説検定を片側検定(one-tailed test)といい,両側に設ける統計的仮説検定を両側検定(two-tailed test)という。たとえば,「男性と女性では,身長に異なりがない」という帰無仮説を立てたとする。この場合,男性の方が女性より身長が高い場合,女性の方が男性より身長が高い場合,2つの可能性が考えられる。この両方の可能性を考慮に入れた検定が両側検定である。一方,片側検定では,男性の方が女性より身長が高い,あるいは,女性の方が男性より身長が高い,いずれか,一方の可能性しか考慮に入れていない。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

⑤ 検定力について理解し、どのような時に検定力が必要になるのか、実際の使われ方について理解する。
検定力(power of test)とは、帰無仮説を正しく棄却する確率である。初学者は、本項の説明を読む前に、本章の「第一種の誤りと第二種の誤り」を今一度、読み返してほしい(場合によっては、本項は読み飛ばしてもかまわない)。
 教材テキストの124頁(図5-20)は、第一種の誤りと第二種の誤りを図示したものである。縦に細かなストライプの入った領域が、棄却域であり、第一種の誤りをおかす確率(α)である。第二種の誤りをおかす確率(β)は、水玉で示された領域である。検定力は斜めのストライプであり、対立仮説の分布の曲線下の面積が1であることから、1-βで示すことができる。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。深く理解できていなくても、OKとする。卒業するまでには、十分に理解してほしい。そのために、現時点で、少しでも理解を深めておくこと。

キーワード ① 帰無仮説 ② 有意水準 ③ 第一種の誤りと第二種の誤り ④ 棄却域 ⑤ 片側検定と両側検定
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義では、繰り返し何度も、復習することが絶対である。
 そのため、小テストとは別に、練習問題を作成した。
 教材テキスト、124頁の「帰無仮説が棄却され,対立仮説が採択されること」について考えなさい(講義の中での説明を踏まえて、解答すること)。
前提条件:もし,帰無仮説が棄却され,対立仮説が採択された場合,あなたの仮説が正しかったことになる。帰無仮説が棄却され,対立仮説が採択されることを,有意である(significant)という表現を用いる。上記の場合,「『おじゃる丸』に対する好感度において,外向な人物と内向的な人物との間の差は,有意であった(p< .05)」とあらわされる。逆に,帰無仮説を採択することを,有意ではない(non-significant)という。上記の場合,「『おじゃる丸』に対する好感度において,外向な人物と内向的な人物との間の差は,有意ではなかった(n.s.)」とあらわされる。
 解答のヒントは、以下の通りである。
 帰無仮説が棄却され,対立仮説が採択されることの意味を,今一度考えてみよう。有意水準5%のもとで,帰無仮説が棄却されるということは,帰無仮説が正しいにもかかわらず,帰無仮説を棄却してしまう可能性が5%未満であるということである。
「『おじゃる丸』に対する好感度において,外向な人物と内向的な人物との間の差が,有意であった(p< .05)」という記述の意味は,「実際には,外向な人物と内向的な人物との間に差がないにもかかわらず,差があると判断してしまう確率が5%未満であった」,という意味である。

12 変数間の差の検定(t検定と分散分析) 科目の中での位置付け  心理学で用いられるデータ分析は、2つに大別することができる。第一に、変数間の差を問題とする分析であり、第二に、変数間(条件間)の関連性を問題とする方法である。本章では、前者について説明する。後者に関しては、次回の第13回講義「変数間の関係(相関と多変量解析)」で説明する。変数間の差を問題にするとは、ある変数とある変数に違いがあるかどうか、ということを検定することである。たとえば、文学部と経済学部では就職率に違いがあるのか、男性と女性では給与に違いがあるのか、というような問題を検証することである。
 本講義では、学部学生の卒業論文などで、使用頻度が高いt検定、分散分析、χ2検定などの算出の仕方について説明する。実際には、t検定、分散分析、χ2検定に必要な計算をマスターしたり、計算式を暗記したりする必要性はない。しかし、特に、t検定、分散分析、χ2検定の基本的な考え方くらいは、理解できるようになってほしい。
 本講義と次回の講義では、明らかに数学を用いた講義を行うことになるが、真剣に講義を聴講すれば、必ず、理解できるように、ゆっくりと丁寧に説明するので、特段の心配をする必要はない。

改訂版「心理学の研究法」第6章
資料映像あり
発展資料:森・吉田(編著)『データ解析テクニカルブック』
コマ主題細目 ① さまざまな差の検定 ② 要因の数と条件の数と対応のあるなし ③ 対応のある・なしの詳細 ④ t 検定 ⑤ 分散分析
細目レベル ①  変数間の差を検定する方法は、ひとつではない。実際に得たデータに基づいて、適切な検定方法を選択し、実行しなければならない。そのことを理解する。
 変数間に違いがあるかどうか検定する方法はひとつではない。さまざまな方法がある。どのような検定を用いるかは、データに依存しており、データを分析する者は、あらかじめ、どのような分析方法があるのか熟知し、自分が収集したデータはどのような分析方法が適切か判断しなければならない。本講義では、データのどのような性質に注目し、用いるべき検定を選択するのか説明する。
 まず、得られたデータの尺度水準は名義尺度であるのか順序尺度であるのか、間隔尺度あるいは比率尺度であるのか、判断する。次に、データ分布の形状は正規分布しているか、外れ値などは存在しないかなどを考慮し、代表値として平均値、中央値などを用いることができるか判断する。代表値として平均値を代表値とすることができる場合、そのデータは間隔尺度として処理することができる。中央値を代表値とすることのできる場合、そのデータは順序尺度として処理できる。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。しかし、実際に、計算できなくてもよいし、計算式を暗記する必要はない。

②  「要因の数と条件の数」と「対応のあるなし」によって、使用する統計の仕方が違うことを理解する。ただし、ここでは、計算式や計算方法については触れない。
まず,分析に必要な要因の数をカウントする。要因の数がひとつの場合の検定方法である。なお,要因の数が2つ以上の場合は,森・吉田(編著)『データ解析テクニカルブック』を参照。次に,比較する水準数,条件数をカウントする。簡単にいえば,2変数間の差を検定しようとしているのか,それ以上の変数間の差を検定しようとしているのか,判断する。
次に,比較しようとしている変数は,対応のあるデータであるのか,対応のないデータであるのか,判断する。改訂版「心理学の研究法」の第2章の第1節の「被験者内計画と被験者間計画」21頁参照。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。加えて、両概念を明確に区別することができるようになること。

③  ここでは、「対応のあるデータ」と「対応のないデータ」のそれぞれについて理解し、両者を明確に区別することができるようになる。
●対応のあるデータの場合
 対応のあるデータ(paired-sample)とは、比較しようとする2つのデータが独立ではない場合(同一被験者からデータを得た場合)であり、被験者内計画によって得られたデータである。たとえば、被験者が4名(a、 b、 c、 d)集められたとし、条件Aと条件Bを比較する場合、被験者4名全員が、条件A、条件Bともに実験を受けるような場合、このデータは対応のあるデータという。
●対応のないデータの場合
 対応のないデータ(independent-sample)とは、比較しようとする2つのデータが独立である場合(異なる被験者からデータを得た場合)であり、被験者間計画によって得られたデータである。たとえば、被験者が4名(a、 b、 c、 d)集められたとし、条件Aと条件Bを比較する場合、条件Aでは、被験者4名のうち2名(a、 b)が実験を受け、条件Bでは、残りの2名(c、 d)が実験を受けるような場合、このデータを対応のないデータという。ただし、被験者間計画によって得られたデータが、必ずしも、対応のないデータであるとは限らない。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

④  t 検定について理解できるようになる。ただし、実際のデータを用いてt値を計算できるようになるまでの水準は要求しない(ただし、上級者は計算できるようになる)。
 まず、実際に,t 値を算出する前に,t 検定を行うための前提条件について説明する(以下の3つについて)。
① 標本が母集団から無作為に抽出されていること
② 2つの条件におけるデータが,正規分布しているとみなすことができる
③ 2つの条件におけるデータの分散が,ほぼ等しい(等分散である)こと
(対応のないt 検定の場合のみ)
 次に計算方法について説明する。ここでは(このシラバス)、数式を記載することができないが、実際には、黒板に、数式を記載し、実際のデータを用いて、計算方法について説明する。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

⑤  分散分析の基本的な考え方を理解する。分散分析はt検定について、理解できていなければ、理解することができない。それゆえ、本日の講義で、t検定が理解できていることが、分散分析を学ぶ前提となる。
 間隔尺度あるいは比率尺度によって測定され、条件が2以上である場合、分散分析(ANOVA:analysis of variance)を行う。通常、分散分析では、F検定(F-test)を実施し、F値(F-value)といわれる検定統計量が算出される。分散分析は、t 検定と同様、卒業論文などで頻繁に見られる基礎的な分析方法である。
 分散分析では、観測値の値にバラツキをもたらす要因を変動因(sources of variation)としてとらえ、この変動因を要因による分散と誤差による分散に分解する。そして、要因による分散を分子とし、誤差による分散を分母とし、この比率が一定以上である場合、要因の効果があると考える。すなわち、観測値の分散に占める要因のみの分散の割合が大きいことをもって、要因の効果があると判断するのである。この比率がF比(F-ratio)である。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。上記と同様に、計算式を機送る必要もないし、計算できるようになる必要もない。

キーワード ① t検定 ② 分散分析 ③ χ2検定 ④ 多重比較 ⑤ 要因計画
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  変数間の差の検定を理解したり、実際のデータを用いて、実施したりすることができるためには、最低条件として、第10回の講義「データ分析の基礎(測定尺度と記述統計)」と第11回の講義「データ分析の基礎(推測統計の考え方)」を理解していなければならない。それゆえ、本講義を受講する前に、学生は、必ず、第10回講義と第11回講義の振り返りを行ってほしい。特に、得られたデータが、名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比率尺度のいずれに分類されるのか、その分類ができるようになること。さらに、得られた統計量をもとに、統計的な解釈ができるようになっておく必要がある。
 加えて、本講義行ったことは、1年次の学生にとっては、十分に理解できないかもしれない。それゆえ、復習も必要である。とくに、t検定については繰り返し復習してほしい。余裕がある学生は、分散分析について学習を進めてほしい。さらに余裕のある学生は、χ2検定について学びなおしてほしい。

13 変数間の関係(相関と多変量解析) 科目の中での位置付け  前回の講義「変数間の差の検定(t検定と分散分析)」では、心理学で主に用いられるデータ分析のうち、変数間の差の検定について説明した。本講義ではもうひとつのデータ分析である変数間の関係(相関と多変量解析)を問題とする方法について説明する。変数間の関係を検討する方法の基礎は相関である。多くの研究で用いられている多変量解析も相関をその基礎にすえている。本講義では、主に、相関について説明する。
 相関(correlation)とは、2変数間の関連性をあらわすときに用いる用語である。たとえば、身長が高くなるにつれ、体重が重くなるという現象がみられた場合、2変数(身長と体重)間に相関があるといわれる。
 2変数間の関連性を検証するためには,まず,散布図(scatter diagram)を描く必要がある。散布図を描くことで,2変数間の関係を大まかにつかむと同時に,外れ値など,留意しなければならない点に,気づくことがあるからである。散布図とは,2変数間の関係を図示するため,縦軸,横軸にそれぞれの変数をとり,測定値をプロットしたものである。通常,縦軸が従属変数であり,横軸は独立変数とする。
 このプロットが、本講義で説明する「変数間の関係」を理解する基本となる。

改訂版「心理学の研究法」第7章
資料映像あり
繁桝・柳井・森(編著)『Q&Aで知る統計データ解析』Question 45
コマ主題細目 ① 相関の意味 ② 相関係数の意味 ③ ピアソンの相関係数の算出 ④ 相関係数の臨界値表から統計的判断をする ⑤ 相関係数の留意点
細目レベル ①  相関についての意味が理解できるようになる。具体的に言えば、以下のようなことである。
 一般的に,2つの変数が同じような変化あるいは変動を示すとき“相関がある”という。また,2つの変数の変動が似ていれば似ているほど,“相関が強い”という。2変数間の関係には,大別すると,正の相関,負の相関,無相関,曲線相関があり,それを散布図で示すと,図7-1のようになる。一方の変数の値が大きいほど,他方の変数の値も大きくなる関係を正の相関(positive correlation)という。たとえば,身長が高くなれば,体重も重くなる関係である。逆に,一方の変数の値が小さいほど,他方の変数の値が大きくなる関係を負の相関(negative correlation)という。たとえば,身長が高くなれば,体重が軽くなるなどの関係である。このような関連性がまったくみられない場合は,無相関(uncorrelation)という。通常,相関といえば線形相関(直線的相関)のことを意味するが,図7-1の右端のグラフのように,2変数間に曲線的な関係も考えられる。このような場合,2変数間には曲線相関(curved correlation)があるという。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

②  相関の意味を理解したのちは、「相関係数」についての意味が理解できるようになる。具体的に言えば、以下のようなことである。
 相関の程度は,相関係数(correlation coefficient)という値によってあらわすことができる。相関係数の値は-1から1までの値をとる(-1 ≦ r ≦ 1)。正の相関の場合,その値は,正の値をとる。負の相関では,負の値をとる。無相関の場合,その値はゼロとなる。表7-1(教材テキスト164頁参照)は“相関の強さ”の程度を示したものである。相関係数の値はあくまで目安であり,表7-1に示したような明確な基準があるわけではない。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

③  「相関の意味」「相関係数の意味」で説明したことを理解できた学生にとって、ピアソンの相関係数の意味を理解することは容易であろう。そこで、ここでは、ピアソンの相関係数の算出方法について、具体的に、話をする。実際には、黒板に計算式を記載するだけでなく、その計算過程に関して、図で解説しながら説明する。ピアソンの相関係数が図によって算出される過程が理解できれば、ここでの学習目標が達成されたことになる。
 以下に、ピアソンの相関係数の算出方法の概要だけ示す。
 2変数がともに間隔尺度あるいは比率尺度である場合,変数間にどの程度直線的な関係があるのか示す指標として,ピアソンの積率相関係数(Pearson''s product moment correlation coefficient)を求めることができる。変数xと変数yとの間のピアソンの積率相関係数(rxy)は,次の式によって定義されている。この公式の分子は,変数xと変数yとの共分散(covariance)とよばれる値となる。分母は以下の式によって定義される。変数xの標準偏差と変数yの標準偏差をかけた値である。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。しかし、計算式を暗記する必要もないし、研鑽できるようになる必要もない。

④  実際にデータを用いて計算した相関係数から、統計的解釈ができるようにする。その具体的手順に関して、以下のように説明する。
 通常,有意性の検定では,t 値やF値を算出し,その値が統計的に有意であるかどうか検定することになる。しかし,ピアソンの積率相関係数の臨界値が明示された表(附録4の「ピアソンの積率相関係数の臨界値」教材テキスト「改訂版「心理学の研究法」」)があり,この表を用いることによって,わざわざ,t 値やF値を算出する必要はなくなる。
 たとえば,ピアソンの積率相関係数が0.856(r= .856),自由度が3(df= 3),有意水準(両側検定)5%(p< .05)の場合,まず,附録4「ピアソンの積率相関係数の臨界値」から,自由度3の横の列をみる。自由度3の横の列と有意水準5%(両側検定)の縦の列が交わる臨界値に焦点をあてる。自由度3,有意水準(両側検定)5%の場合の臨界値は,0.878となる。次に,ピアソンの積率相関係数の絶対値と,臨界値を比較する。ピアソンの積率相関係数の絶対値が臨界値より大きければ,有意であると判断する。逆に,ピアソンの積率相関係数の絶対値が臨界値より小さければ,有意ではないと判断する。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。加えて、統計的判断ができるようになる(これは、とても、とても重要)。

⑤  相関係数を算出する場合には、いくつかのことについて留意をしなければならない。その留意点について理解できるようになる。
 本講義では、(1)選抜効果:特定の範囲のデータしか得られていない場合,実際に,2つの変数間に強い相関があったとしても,相関係数を求めると,その値が小さい場合がある。このような現象がみられる原因のひとつに,選抜効果(selection effect)がある。(2)曲線相関:2変数間の関係は,必ずしも,線形的あるいは直線的な関係ばかりではない。直線的な関係は,ピアソンの積率相関係数などによってあらわすことができる。
(3)擬似相関:2変数間に,実際には,ほとんど関連性がみられないにもかかわらず,別の変数の影響によって,見かけ上の相関が高くなる場合がある。別の変数のことを第3の変数(third-variable)といい,このような見かけ上の相関を擬似相関(spurious correlation)という。
(4)因果関係:2変数間に有意な相関があるからといって,必ずしも因果関係があるとはいえない。たとえば,ある性格傾向と,癌の発病率との間に正の相関がみられたとしても,「その性格傾向が強いほど,癌になりやすい」,「性格によって癌になるかどうか決まる」などという結論には至らない。このことはきわめて重要なことである。
(5)相関係数が有意であることと相関の強さ:相関係数が有意であることは,「2条件間の関連は偶然ではない」ということである。有意性の検定では,相関係数の値が小さくても,データ数が多ければ,有意であるという結果が得られる。
(6)外れ値:ピアソンの積率相関係数は,平均値を用いて算出するため,外れ値の影響を受けやすい。特に,データ数が小さい場合は,外れ値の影響は大きくなる。平均値をもとに計算される値では,外れ値に注意を払わなければならない。留意点について理解でき、100字程度でそれを説明できること。

キーワード ① 相関 ② ピアソンの相関係数 ③ 順位相関係数 ④ 有意性検定 ⑤ 偏相関
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義では、主に「相関」と「相関係数」について説明をした。くわえて、それらの発展である「多変量解析」についても説明をした。しかし、時間の関係から、「多変量解析」の説明に十分な時間を割くことができなかった。
 そこで、以下の「多変量解析」の振り返りと講義の発展の手助けとして、「多変量解析」の概要について、説明しなおしておく。
 2変数間の関係ではなく,3変数間以上の関係を検討する方法に多変量解析(multivariate analysis)というさまざまな統計的手法がある。学生には代表的な多変量解析のイメージを掴んでもらうための簡単な説明をする。初学者にとっては,これらの分析ができるようになることより,論文に記載されている分析結果の意味を理解できるようになることが先決である。特に,分析結果を示した図表をみて,どのような結果を示しているか理解できるようになることを目標にして学習を進めよう。本講義では,多変量解析のうち,因子分析,重回帰分析,階層的重回帰分析,構造方程式モデリングについて,簡単に説明したことも思い出してほしい。

14 研究倫理、研究、論文について 科目の中での位置付け  本講義をここまで受講してきた学生は、科学的心理学が客観的に得られたデータに基づいた学問であることを理解したであろう。心理学的な現象を解き明かす第一歩は、客観的にデータを得ることである。いくら心理学に関連する書物や学術論文を読むことによって知識をつけたとしても、それは単なる心理学マニアであり、物知りでしかない。研究者は決して心理学マニアではない。心理学領域を専攻する学生(総合心理学部の学生であっても)も心理学マニアであってはならない。学生の皆さんは研究者になるわけではないかもしれませんが、心理学の研究者と同様に研究を実施し、研究成果をまとめるという講義や演習を体験することになる(特に、心理学実験実習、卒業研究)。心理学マニアで終わらないためには、実際にデータを収集し、仮説を実証するという作業を行う必要がある。本講義では、実際に研究(study)を行うにあたって、直接必要とされる最低限の事柄について説明する。具体的に言えば、研究の進め方と研究倫理の問題である。
改訂版「心理学の研究法」第8章
資料映像あり
Zimbardo, P.G. (1971). The power and pathology of imprisonment. Congressional Record. Serial No. 15, October 25. Hearings before Subcommittee No. 3, of the committee on the judiciary, house of representatives, ninety-second congress, first section on corrections, part II, prison, prison reform and prisoner''s rights: California. Washington, DC: U.S. Government Printing Office.
American Psychological Association. (1992). Ethical principles of psychologists and code of conduct. American Psychologist, 47, 1597-1611.
コマ主題細目 ① 研究の進め方 ② 疑問を持つ ③ 学術論文を読む ④ 学術論文に書かれている内容 ⑤ 研究倫理について
細目レベル ①  学生の皆さんが卒業研究を行うにあたって、研究を行う必要がある。その研究は、どのようにすれば、行うことができるのか。1年次である、今から、その準備をしなければならない理由や、研究を行うための準備の仕方などについて理解し、実践できるようになる。
 たとえ、心理学に関する基本的な講義、および、実験実習などの基本的な演習を習得したとしても、すぐに研究を実施することはできない。卒業論文(あるいはその発展として修士論文)を書くための研究を行うには、事前に準備すべき事柄を知らなければならない。本講義では、研究を実施するまでに行っておくべきことを簡単に説明する。多くの学生が、研究を行う直前になり、本講義で説明する内容の重要性に気づき、何ヶ月間も研究に取り掛かることさえできないでいる。本講義で説明することは、大学入学時(1年時の今からでも間に合うので、直ちに準備に取り掛かりましょう)から準備しておく必要がある。ある程度理解できるようになれば、それでOKです。

②  研究を行うための最初の段階である「疑問を持つ」という作業について理解できるようになる。
 研究を行うためには,まず,何らかの疑問を持つ必要がある。疑問がなければ,研究を行う必然性がない。つまり,研究が始まらないのである。卒業論文や修士論文の作成にあたり,学生は「○○○に関心があります」という。関心があることと疑問を持つことは大きく異なる。関心があるだけでは研究を始めることはできない。具体的にいうならば,研究を始めるにあたり,仮説となる疑問を呈示することができなければならない。仮説になるような疑問を抱くようになるためには,どのようにすればいいのだろうか。まず,知識を身につけることである。心理学に関連するさまざまな講義や書物,時には日常生活からも知識を得ることができる。しかし,単純にその知識を吸収していたのでは疑問は生じない。科学的心理学の視点から,問題を提起しながら知識を吸収する必要がある。本講義で説明したことがその基盤となる。私の説明が理解できれば、OKです。

③  学術論文医興味を持ち、学術論文がいかなるものか理解する。加えて、実際に、学術論文を読んでみる。
 講義や書物だけでは,心理学に関する十分な知識は得られない。査読のある学術論文を読むという作業が必要である。先に説明したように,科学的心理学の知見は客観的に収集されたデータによって支えられている。査読のある学術論文に,そのデータが掲載されている。つまり,講義や書物は査読のある学術論文のデータに基づいたものであり,その原典は学術論文にある。講義の教員や書物の著者が誤った発言をしている可能性もあり得る。実際に,実験や調査を行った記録である学術論文を読むことはきわめて重要なことである。
 仮に,あなたがある事柄に関する疑問を持ったとしよう。講義や書物では,あなたの疑問に対して十分な解答が得られず,あなたはそのような研究がなされていないと思うかもしれない。そして,その疑問をもとに仮説を生成したとしよう。しかし,その疑問に関する研究がすでに行われている可能性は高い。そのなぞを解き明かしてくれるのが査読のある学術論文である。講義や書物で紹介される研究は,誰もが知っている代表的な研究がほとんどである。一方,学術論文は心理学に関連する研究だけでも,毎年,数千もの報告がなされている。あなたが考えた疑問に答える研究はすでに行われている,と考えるのが妥当である。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

④  学術論文に書かれていることの概要について理解できるようになる。
 予備的知識もなく,学術論文を読むことは難しい。本項では学術論文に書かれてある内容を簡単に説明する。また,見出しで用いられることの多い英語を挿入したので,英語で書かれた学術雑誌を読むときの参考にするといい。
 具体的には、以下のことが書かれている。
(1)表題
 学術論文の最初の頁には,表題(title),執筆者(author),その研究のアブストラクト(abstract)が書かれている。執筆者はひとりとは限らない。複数いる場合もあるが,最初に書かれている執筆者が,その論文の責任者という意味である。アブストラクトは,その研究がどのように行われ,どのような結果が得られたのか簡単に書かれた研究の要約である。初学者にとって,全体の内容を把握することができる要約は魅力的かもしれない。
(2)目的
 目的(introduction)には,その研究を行う目的および仮説,仮説生成に至るプロセスが記載されている。「問題と目的」,「序論」などともいう。すなわち,先行研究と照らし合わせ,本研究で呈示しようとする仮説がいかに妥当であるかが記載されている。研究の目的は,第一段落あるいは最終段落で簡潔にまとめられている場合が多く,本研究の目的(present study)という見出しが最終段落につけられる場合もある。仮説は最終段落で記載されていることが多く,仮説(hypothesis)という見出しが書かれている場合もある。
(3)方法
 方法(method)では,どのような方法によって研究を行ったかが記載されている。方法には,追証することが可能になるように記述されている。方法では以下のようないくつかの小見出しが用いられている。被験者(subjects)あるいは参加者(participants)では被験者に関する情報が掲載されている(sampleと記載されている場合もある)。表にしてまとめられている場合もある。実験装置(apparatus)には実験に用いた装置に関する情報が記載されている。特に,実験や調査で用いられる刺激は材料(materials)といわれる。質問紙も材料であるが,特に,質問紙調査研究では質問紙(measures)という見出しをつける場合もある。分析方法(data analysis, statistical analyses)あるいは実験計画(design)について記載されている場合もある。手続き(procedure)では教示を含め,実験や調査の進め方について記載されている。課題(task)として,課題に関する情報が記載されている場合もある。小見出しは学術雑誌や論文によって異なり,必ず,上記のような小見出しがあるとは限らない。
(4)結果
結果(results)には,得られたデータの分析結果が記載されている。初学者にとって,読みにくい箇所は統計に関する記述であろう。学術論文を読み始めたころには,細かい統計用語を理解する必要はない。仮説が支持されたのか,されていないのか,それが分析の結果から理解できれば十分である。結果では,図(Figure)や表(Table)が用いられ,重要な結果は図や表で示されている。つまり,その研究の集約は図表に示されている。図や表には脚注(note)が書かれている場合がある。
(5)考察
 考察(discussion)では,結果の持つ意味が記載されている。討論ともいう。なぜそのような結果となったのか,結果が客観的に考察されている。考察では,研究の問題点や一般化可能性に関する研究の限界などについて記述した限界(limitations)という小見出しを設ける場合もある。最後に,研究をまとめた結論(conclusion)の小見出しを設ける場合もある。研究が複数にもわたる場合,それらの研究をまとめて考察する必要があるため,総合的考察(general discussion)という小見出しのある論文もある。
(6)その他
 謝辞(acknowledge),引用文献(references),附録(appendix)などの見出しがある。それそれの用語を100字程度で説明できるようになること。

⑤  ここでは、研究倫理ついて理解することになる。実際に、心理学の研究領域で、倫理的に重大な違反をした研究(ミルグラムの服従実験とジンバルドーの監獄実験)を取りあげ、どこが、どのような倫理に違反したことになったのかについて説明することによって、研究倫理について、より深い理解ができるようになる。
 以下に、研究倫理の基本を紹介する。
 第二次世界大戦で行われたナチスドイツによる残虐的行為に対する反省から,1946年,ヒトを被験体とした医療実験に関するガイドライン「ニュルンベルグ綱領」が採択された。続いて,1948年「ジュネーブ宣言」が,1964年「ヘルシンキ宣言」がなされた。心理学領域では,1992年,American Psychologistという学術雑誌に,アメリカ心理学会(American Psychological Association)から心理学者のための倫理規定(Ethical principles of psychologists and code of conduct)が公表された。
 以下に、研究倫理の基本を紹介する。
 第二次世界大戦で行われたナチスドイツによる残虐的行為に対する反省から,1946年,ヒトを被験体とした医療実験に関するガイドライン「ニュルンベルグ綱領」が採択された。続いて,1948年「ジュネーブ宣言」が,1964年「ヘルシンキ宣言」がなされた。心理学領域では,1992年,American Psychologistという学術雑誌に,アメリカ心理学会(American Psychological Association)から心理学者のための倫理規定(Ethical principles of psychologists and code of conduct)が公表された。理解できるだけではなく、実際に研究をする際に、何が問題になるのか、200字程度で説明できるようになること。また、将来、卒論を書く際に、それが使えるようになること。

キーワード ① 論文 ② ミルグラムの服従実験 ③ ジンバルドーの監獄実験 ④ インフォームド・コンセント ⑤ ディブリーフィング
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  ここでは、研究の進め方と研究倫理ついて説明しました。学生は、講義に沿って、それらについて振り返りましょう。
 振り返りの手助けになるヒントとして、剽窃(ひょうせつ)について、以下に説明しておきます。剽窃は、学生にとって、とくに理解しておく必要な研究倫理の問題です。試験で言えば、剽窃を行った学生は、カンニングを行ったことと同じになることを、講義を振り返りながら、思い出しましょう。
 大学生が陥りやすい倫理的な問題のひとつが剽窃である。剽窃とは、他者の考えや文章を、その出典を明示することなく、自分のものとしてあらわすることである。わが国の学生は、幼いころから、自分の考えと他者の考えを区別する訓練を受けていない。そのため、実験レポート、卒業論文、修士論文でさえ、剽窃が見られる。ひどいレポートになると、インターネットの文章をコピーし、そのまま貼り付けている場合もある。この場合は、剽窃ではなく盗作である。このような剽窃が許されないだけでなく、剽窃に対する罰(退学や停学、不可の評価)を受けても仕方がないということを、学生は知らなければならない。実際に、本学以外の大学では、剽窃による退学者も出ています。

15 講義のまとめ 科目の中での位置付け  本講義では、心理学を学ぶ上で、欠かすことのできない「心理学研究法」について説明してきた。今回の講義は、そのまとめの回に当たる。
 これまでに行ってきた講義を大きく分けると、以下の5つになる。第一に、科学的心理学の説明とその理解のための講義である。具体的に言えば、第2回の講義「心理学とは(心理学研究法の導入)」、第3回目の講義「心理学支える考え方と心理学のアプローチ」がそれにあたる。第二に、具体的な研究方法について説明した講義である。具体的に言えば、第4回の講義「実験法」、第5回の講義「観察法と質問紙法」、第6回の講義「面接法と事例研究」、第7回の講義「精神物理学的測定法」がそれにあたる。第三に、心理的事象を測定する方法について説明をした講義である。第8回の講義「評定法と検査法」、第9回の講義「性格検査と検査の信頼性と妥当性」がそれにあたる。第四に、統計、主に検定統計に関する説明をした講義である。第10回の講義「データ分析の基礎(測定尺度と記述統計)」、第11回の講義「データ分析の基礎(推測統計の考え方)」、第12回の講義「変数間の差の検定(t検定と分散分析)」、第13回の講義「変数間の関係(相関と多変量解析)」がそれにあたる。最後に、研究の仕方(進め方)と研究倫理に関して説明した第15回の「研究倫理、研究、論文について」である。

改訂版「心理学の研究法」を使用します。
コマ主題細目 ① 科学的心理学の説明とその理解 ② 具体的な研究法方法の説明とその理解 ③ 評定法と検査法の説明とその理解 ④ データ解析の説明とその理解 ⑤ 研究と研究倫理の説明とその理解
細目レベル ①  心理学の研究法を説明する前に、心理学が一体どのような学問であるのかを理解するための講義であった。この講義では、心理学の研究法を理解するための基礎的な学術用語について簡単に説明し、心理学という学問について理解を深めるために用意された。
 その基本となる考え方が、科学的心理学である。心理学研究法を学ぶ意味を理解するためにも、科学的心理学の考え方を理解する必要があった。
 今一度、以下の事柄について、講義をふり返ってほしい。人間行動を科学的に解明することを放棄し、「魂」なる実体なきものを「精神」とか「こころ」などとよび、愛情や人間味など響きのよい言葉を並べ、ひたすら自説が正しいことを力説することを心理学とよんでいる研究者たちもいる。そのような研究者には、本講義は何の役にも立たない。心理学とは、単に「こころ」に関する問題を扱う学問ではない。もしそうであるならば、哲学や思想もまた、心理学であるといえる。心理学とは、科学的な立場から、人間行動を明らかにしようとする学問領域である。科学的立場を放棄した自称心理学者が数多く見られることから(あなたの大学の講師もそうかもしれない)、科学的心理学は行動科学(behavior science)とよばれることもある。

②  この「心理学研究法」では、具体的な研究方法として、実験法、観察法、質問紙法、面接法、事例研究などについて説明した。特に、実験法の重要性について言及した。
 実験(experiment)とは、科学の基本的な方法であると同様、心理学にとっても基本的な方法である。実験は、独立変数を意図的に操作し、操作した独立変数以外の変数が従属変数に影響を及ぼさないように統制し、独立変数が従属変数に及ぼす影響(因果関係)を検証する方法である。基本的に、実験では、意図的に操作する条件はひとつであり、操作していない条件と比較して、従属変数の測定値が異なれば、それは操作によるものだと判断する。以上ことに焦点を当て、再度、講義をふり返ってみる。

③  評定法としては、リッカート法、サーストン法、セマンティック・ディファレンシャル法、視覚的アナログ尺度、デジタル評定尺度、ソシオメトリック・テストなどについて説明をした。評定法加えて、順位法、一対比較法などについても説明をした。
 検査法としては、知能検査法(ビネー法やウェクスラー法、そして集団知能検査法など)、発達検査法、性格検査法(質問紙法,投影法,作業検査法)などについて説明をした。
 それぞれの評定方法や、検査方法について理解していることも重要であるが、この単元(評定法と検査法の説明とその理解)で最も重要になることは、検査法の信頼性と妥当性である。この振り返りの講義では、検査法の信頼性と妥当性について、学生が十分に理解しているかどうかについて確認することになる。

④  「データ解析の説明とその理解」では、統計の計算過程に入る前に、統計そのものに関する理解から始まった。そこでは、名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比率尺度などの測定尺度について、それぞれの尺度が意味することと、それぞれの違いについて説明をした。加えて、質的データと量的データについても解説した。そして、記述統計(主に平均値と標準偏差)がどのようなものなのかについても説明をした。
 これらの基礎知識に基づいて、統計的仮説検定の考え方について概説した。統計的仮説検定の考え方は、卒業するまで、付きまとってくるものなので、本講義でも重点的に振り返りを行う。
 この統計的仮説検定の考え方に基づき、卒業研究などで実際に用いるt検定、分散分析、χ2条検定、相関係数、多変量解析などについて、概説した。これらの統計技法をもとに、実験実習や卒業研究を行うことになる。

⑤  学生の皆さんが卒業研究を行うにあたって、実際に研究を行う必要がある。その研究は、どのようにすれば、行うことができるのか。1年次である、今から、その準備をしなければならない理由や、研究を行うための準備の仕方などについて理解し、実践できるようになるために必要な事柄に関して、具体的に説明した。たとえば、「疑問を持つこと」「学術論文を理解すること」「学術論を読み方(見方」「学術論文の書き方(簡単に)」について、この講義で、再度振り返ることにする。
 加えて、卒業研究(実験実習を含む)を行うに当たって、学生自身が気を付けなければならない研究倫理事項を中心に、説明をした。特に、剽窃に関しては、再度確認し、学生自身がそのようなことを行わないように、注意すべきであることを、本講義で、振り返ることにする。

キーワード ① 科学的心理学 ② 実験法 ③ 信頼性と妥当性 ④ 推測統計 ⑤ 学術論文
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題  本講義がどのような目的行っており、何を重視しているのかを、再度振り返ること。
予習:コマシラバスの〈科目の概要〉欄と第一回講義の欄を再読し、人間環境学の理念を再度正確に押さえるべく、第一回講義の復習課題にもう一度取り組む。さらに、今回のコマシラバスを熟読し、各主題細目で書かれている内容を踏まえて、その内容について、自分なりに(学生ひとりひとりで)、まとめておくこと。
復習:期末試験に備えて、全ての回の内容をよく復習しておく。その際には、コマシラバスを大いに活用して、次のように復習すること。コマシラバスの各回の復習課題はその回のポイントを押さえるためのものであるので、まずはこれを全てやり直すことで、各回の
最重要な点を確認することができる。各回の復習課題に取り組んだ結果、理解が不十分であることが明らかになった場合には、該当する回のコマシラバスを熟読すること。それでもまだ復習課題をうまくクリアできない場合には、該当する回の講義レジュメまでよく読み、再度課題に取り組む。

16 定期試験とその解説 科目の中での位置付け 定期試験を実施します。60分間を予定しています。定期試験終了後、定期試験のポイントと、定期試験の狙いと重要な点について、解説します。
定期試験の解説の際に、改訂版「心理学の研究法」を使用します。
コマ主題細目 ① ② ③ ④ ⑤
細目レベル




キーワード ① ② ③ ④ ⑤
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト
復習・予習課題 定期試験の内容をふり返ること。
履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
科学的心理学と科学的心理学研究方法への理解  心理学の研究法を説明する前に、心理学が一体どのような学問であるのかを理解していること。まず、そのために、心理学の研究法を理解するための基礎的な学術用語について、それぞれ、自分の言葉で、50字程度で説明ができるようになること(キーワードなどを参考に)。
 次に、心理学という学問について理解を深めるための基本である、科学的心理学について、自分なりの言葉で(できる限り学術用語を用いず)、500字程度で説明ができるようになること。同時に、心理学と科学との関係についても、
自分なりの言葉で(できる限り学術用語を用いず)、500字程度で説明ができるようになること。
科学的心理学、ヴント、行動主義、実験者、刺激、独立変数、従属変数、信頼性、妥当性、操作主義、仮説、因果関係、統制、仮説演繹法 30 第1回から第3回
具体的な研究法方法の説明とその理解  具体的な研究方法として、実験法、観察法、質問紙法、面接法、事例研究について、それぞれの長所と短所に関して、250字程度で、自分自身の言葉で説明できるようになること。特に、心理学において(科学において)、実験法の重要性については、300字で説明できるようになること。
 また、実験法や質問紙法などで説目した代表的な学術用語に関しても、それぞれの学術用語に関して、50字程度で説明ができるようになること。
 なお、実際に、それぞれの研究方法が使用できるかどうかは、評価しない。
実験法、観察法、質問紙法、面接法、事例研究法 20 第4回から第6回
心理的事象を測定する方法についての理解  リッカート法、サーストン法、セマンティック・ディファレンシャル法、視覚的アナログ尺度、デジタル評定尺度、ソシオメトリック・テスト、順位法、一対比較法などについて、100字程度で説明できること(自分の言葉で)。
 検査法としては、知能検査法(ビネー法やウェクスラー法、そして集団知能検査法など)、発達検査法、性格検査法(質問紙法,投影法,作業検査法)などについては、それぞれの問題点を含め、200字程度で説明ができること。特に、差別との関係で、知能検査に関する理解は必要である。
 最も重要になることは、検査法の信頼性と妥当性であり、それぞれに関して、300字程度で、詳細に説明ができるようになること。
リッカート法、サーストン法、セマンティック・ディファレンシャル法、視覚的アナログ尺度、デジタル評定尺度、ソシオメトリック・テストなどについて説明をした。評定法加えて、順位法、一対比較法などについても説明をした。
知能検査法(ビネー法、ウェクスラー法、集団知能検査法など)、発達検査法、性格検査法(質問紙法,投影法,作業検査法)
20 第7回から第9回
データ解析の説明とその理解  、統計そのものに関する理解していること。具体的には、名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比率尺度などの測定尺度について、それぞれの尺度が意味することと、それぞれの違いについて、100字程度(自分の言葉で)で説明できるようになること。また、記述統計(主に平均値と標準偏差)について、簡単な計算ができること。
 統計的仮説検定の考え方について、自分自身の言葉で、200字程度で、きちんと説明ができるようになること。
 t検定、分散分析、χ2条検定、相関係数、多変量解析などについて、簡単な問題(用語の意味など)に解答することができるようになること。計算はできなくてもよい。
名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比率尺度、統計的仮説検定、t検定、分散分析、χ2条検定、相関係数、多変量解析 20 第10回から第13回
研究の進め方と研究倫理に関する理解  学生が実験実習や卒業研究を行うにあたって、実際に自ら研究を行う必要がある。その研究は、どのようにすれば、行うことができるのか。研究を行うための準備の仕方などについて理解し、実践できるようになるために必要な事柄に関して、具体的に説明できること。それぞれ、100字程度(自分の言葉で)で説明ができるようになる。そのなかで、「疑問を持つこと」「学術論文を理解すること」「学術論を読み方(見方」「学術論文の書き方(簡単に)」についても、それぞれ100字程度で説明できるようになること。
 加えて、卒業研究(実験実習を含む)を行うに当たって、学生自身が気を付けなければならない研究倫理事項を十分に理解していること。特に、剽窃に関しては、何をどのように気を付けなければならないかを、200字程度で記載できるようになること。
学術論文、研究倫理、剽窃、ミルグラム、ジンバルどー、インフォームド・コンセント 10 第1回、第14回
評価方法 定期試験によって評価(100%)する。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 改訂版「心理学の研究法」加藤司著 北樹出版 2008年出版 ISBN: 978-4-7793-0157-5 
参考文献
実験・実習・教材費