区分 基盤専門科目
ディプロマ・ポリシーとの関係
SDGs力 科学コミュニケーション力 研究力
カリキュラム・ポリシーとの関係
教養 応用力 実践力
科目間連携 総合心理力
カリキュラム全体の中でのこの科目の位置づけ
本科目は,心理学についての基本的な知識を学ぶ,基盤専門科目群に位置づけられるます。特に臨床心理学分野を学ぶ上での最も基盤となる科目であり,これを土台として,公認心理師関連の諸科目や,高度専門科目のアドバンスト心理療法科目が積み重ねられます。なお,本講義は,令和4年版公認心理師試験出題基準・ブループリント,及び日本心理学会作成標準シラバスに準拠しています。
科目の目的
本科目は,臨床心理学分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。また,特に公認心理師やカウンセラー,公務員の心理職等,心理専門職として働くために,臨床心理学,ひいては心理学を学ぶことがいかに重要であるかを感じてもらうことも主要な目的です。この後,興味を持って臨床心理学を学んで行けるような,臨床心理学のメンタルマップをぜひ描いてほしいと思います。
到達目標
本講義を受けた後には,まずは心理職が活躍する「5領域」の現場と,その分野における心理職の意義について,明確なイメージを持ってほしいと思います。また,何をすることが心理職の仕事なのか,必要最低限の業務について説明できるようになってほしいと思います。その上で,そうした心理職の専門的な視点として,多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法が開発されていますので,それらの名称と概要を説明できるようになっていてほしいです。さらに,そうした理論がどのような歴史的変遷を経て誕生してきたのか,時間的流れと必然性についても理解しておいてくれると嬉しいです。
科目の概要
本科目の一番の目的は,心理臨床分野に興味を持ち,その分野で必要とされる臨床心理学という学問に興味を持つと共に,その意義を感じてもらうことです。そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,第2回,第3回では,「臨床5領域」と言われる心理職の活躍が求められる現場を紹介します。どのような職場で何のために心理職が雇われているのか,実例を交えながら紹介していきます。第4回と第5回では,そうした現場で心理職に求められる「共通業務」を紹介します。アセスメント,ケースフォーミュレーション,処遇,自己研鑽の4つの業務について,実際の事例に則しながら解説を加えます。さらに第6回では,心理職が守るべきルールや職責について紹介します。第7回でこれまでのまとめを行った後,第8回から第13回までは,多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介します。第14回では,後半の心理療法の部分に関する総括を行います。最後に第15回では,ここまで紹介してきた臨床心理学理論がいつ頃出来たのかを時系列に沿って紹介しながら,臨床心理学発展の縦軸を明確にしたいと思います。
科目のキーワード
臨床心理学,5領域,心理アセスメント,ケースフォーミュレーション,心理療法,公認心理師,臨床心理士,臨床心理学理論
授業の展開方法
毎回の講義は,パワーポイントスライドに基づき進めます。できるだけ実例や具体例に基づいて話を展開します。スライドに基づきトークを進めますが,スライドの内容,また話すことやさらなる追加情報については文字教材にまとめていますので,授業は基本的に文字教材を見ながら受けていただければと思います。また,必要に応じて近くの人とグループディスカッションをしたり,その日学んだことを書き出す課題を行います。これは,自身の習得した知識を確認したり,疑問点を明確にする時間です。その後,小テストを行います。自身が得た知識の確認をしてみてください。
オフィス・アワー
前期:火曜5限・金曜1限
後期:火曜5限・木曜1限
できれば事前にLINEやメールで、一報してください。

科目コード RD2020
学年・期 1年・後期
科目名 臨床心理学概論
単位数 2
授業形態 講義
必修・選択 必修
学習時間 【授業】90分×15 【予習】90分以上×15 【復習】90分以上×15
前提とする科目 なし
展開科目
関連資格 公認心理師
担当教員名 伊藤義徳・松山道後キャンパス教務課
主題コマシラバス項目内容教材・教具
1 オリエンテーション・臨床心理学という学問 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第1回は、オリエンテーションを行った後、臨床心理学という学問はどういう学問と言えるのかについて考えていきます。まず心理学はどのような学問であるかを明確にし、それとの関係の中で、臨床心理学の位置づけを考えていきます。これから学ぶ学問の位置づけを明確にすることで、この先に続く学びの土台を作ります。

細目レベル①
第1回文字教材p.6-p.9
山田冨美雄 2002 瞬目による感性の評価:驚愕性瞬目反射と自発性瞬目による感情評価 心理学評論 45(1), 20-32.(1.2L193 自発性瞬目の詳しい解説)
読売新聞オンライン(2021/09/30)
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20210930-OYO1T50021/
  (1.2L198 瞬目を測定するめがねを開発(立命館大学双見助教の記事))

細目レベル②
第1回文字教材p.9-p.12
渡邊芳之 1998 メタファーとしての「こころ」 ~心的概念が意味しているもの 北海道医療大学看護福祉学部紀要 5, 75-82.(2.1L268 心の定義についての参考図書)

細目レベル③
第1回文字教材p.13-p.15
サトウタツヤ 2021 2.2ウィトマーのサイコロジカルクリニック 臨床心理学史 東京大学出版会 pp.93-98.(3.1L338 臨床の定義、ウィトマーの経歴)
コマ主題細目 ① 心理学という学問 ② 心理学の位置づけ ③ 臨床心理学という学問
細目レベル ① 皆さんは、前期に心理学概論を受講してきましたので、心理学でどんなことを学ぶかについては大凡イメージできると思います。しかし、心理学とはどんな学問か、それを一言で言え、といわれるとどのように答えられるでしょうか。心理学は、環境からの刺激に対する個体の反応の間の法則を見つけようとします。特に人間はその関係性が個人によって多様なため、そこに法則性を見いだすためには色々工夫が必要です。そうやって、何とか人における刺激と反応の間の法則を見つけるのが心理学である、と言えるかも知れません。心理学の定義は未だ定まっているとは言えませんので、これが正解というわけではありませんが、本講義では、まずは心理学を大局的に理解する一つの視点として、こうした定義を提起したいと思います。
② しかし、そもそも、実際に「心」がどこかに存在するわけではありません。どこにもないのに、実態があるかのように前提にして生活している。そういう概念を、「構成概念」と言います。例えば「時間」等もそれに該当します。「心」は構成概念に過ぎないのです。それでは、心があると仮定することで、我々の生活はどんな恩恵を受けているのでしょうか。自分にあるように他人にもある、みんながそれを持っている、と信じられるからこそ、人の気持ちが理解できたり、それを慮ったり、共感し、共同作業が出来るようになります。集団生活を行う上で、それは欠かせないものです。また、他の学問と比較すると、心理学はどう位置づけられるでしょうか。人―環境の相互作用を仮定したとき、人の固体内についての学問という意味では、医学、哲学等とも類似していると言えますが、環境側の法則を見いだすのが物理学だとすると、心理学は、案外物理学と近い学問なのかも知れません。こうしたメタ的な視点から心、そして心理学について捉え直すことで、益々心理学の大局的理解を目指したいと思います。
③ 臨床心理学についても、そうした大局的な視点から位置づけを検討してみたいと思います。多くの「~心理学」という学問領域は、心理学と前提を共有しつつ、より細分化した領域について探求する学問分野と言えます。臨床心理学という学問もまた、基本的には同じ位置づけです。「臨床」とは、患者の「床」に「臨」むという意味であり、苦しむ人に直接手を差し伸べるという意味です。ウィトマーは、原理や観念を追求する学問的な心理学に対して、人を助けるための心理学である臨床心理学の重要性を主張しました。つまり、病気や他害など、問題となる場面における心理学が臨床心理学だ、ということになります。講義内では、社交不安症の例をとって、心理学的法則により如何にして臨床疾患が予測されるかを説明します。臨床心理学もまた、心理学の一部であることを理解してもらえればと思います。
キーワード ① 心理学 ② 構成概念 ③ 反応モダリティ ④ 臨床心理学 ⑤ ウィトマー
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。その上で、本講義では、心理学は「人の法則を見つける学問」と紹介しました。また、他の学問と比較すると、「物理学と近い」と紹介しました。でもそれが正解というわけではありません。私にとって心理学とはどういう学問と言えるか、資料を見ながら考えてみましょう。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
次回は心理職が働く現場の中でも、医療機関、教育機関の実際について紹介します。自分の地元のどこにそんな施設があったか思い出したり、地図を見て確認してみましょう。

2 臨床心理学を必要とする現場1 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第2回は、初めに第1回に引き続く話として臨床心理学と心理療法の関連について論じます。その後,第2回から第3回にかけて,心理療法を活用する実践の現場がどのようなものなのかイメージを持つために,公認心理師5領域ごとに紹介します。特に第2回では,医療保健領域と,教育領域について紹介します。

細目レベル①
第2回文字教材
坂野雄二・前田基成(編著) 2002 セルフエフィカシーの臨床心理学 北大路書房 pp.2-11.
Clark, D.M., & Fairburn, C.(著) 伊豫雅臣(監訳) 認知行動療法の科学と実践 星和書店 pp.69-102.
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修) 2020 臨床心理学概論 ミネルヴァ書房 pp.4-5.
細目レベル②
第2回文字教材
宮脇 稔・大野太郎・藤本 豊・松野俊夫 2018 健康・医療心理学 医歯薬出版株式会社 pp.56-149.
細目レベル③
第2回文字教材
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修) 2021 教育・学校心理学 ミネルヴァ書房 pp.15-20.
コマ主題細目 ① 臨床心理学と心理療法 ② 臨床心理学の目的 ③ 医療臨床現場 ④ 教育臨床現場
細目レベル ① 第1回で,問題となる場面に関わる法則を見出すのが臨床心理学であるという話をしました。さらに,そうした問題の生起や消去に関わる法則を活かして,問題を解決することを目指すのが、心理療法と言えます。しかしながら、「心理療法」には他のルーツもあります。苦しみからの解放は、人の有史以前からの願いです。そうした苦悩からの解放の方法や苦悩についての哲学に基づいて心理療法が成立するケースも少なからずあります。心理学としての臨床心理学以外にも、様々な出自を持つ心理療法、ひいては臨床心理学があるということを紹介することで、心理学における臨床心理学の独自性を論じます。
② 心理学の知識に基づいて、ある程度、人の行動を予測することも出来ます。それによって驚きや喜びが得られるのも確かですし、それを巧みに活用したエンターテイメントがあるのも事実です。さらに、心理学的法則に基づかずとも、人の気持ちや言動を「当てる」人もいます。でも、それが心理学、臨床心理学の目的かと言えば、そうではありません。当ててもらうと嬉しい、という人の欲求は確かにありますし、だからこそ、「当てられる人になりたい」と期待する人もいるかも知れませんが、当てられることと、困難を抱えている人を助けられることは違うことです。困難を抱えている人の援助に役立つ、心の法則を見いだすことが臨床心理学の目的であり、すごい当てる人よりも、困っている人の役に立てる人をぜひ皆さんには目指してほしいと思います。両者の違いについて認識すると共に、「すごい人」を目指している自分がいなかったかどうか、ちょっと内省してみて頂きたいと思います。
③ 医療臨床とは,基本的には病院で行われる心理支援活動を意味します。一口に病院と言っても,単科精神科病院,総合病院,精神科や心療内科のクリニック等,様々なタイプの病院があり,また心理職が活躍する診療科も,精神科や心療内科だけでなく,小児科,外科,産婦人科等,どんどん増えてきています。ここでは,それぞれにおいて心理職がどのような仕事をしているのかを概説し,また講師自身が経験した医療臨床におけるエピソードも簡単に紹介しながら,医療臨床の特長について論じます。さらに,医療臨床の特徴として,病院における全ての活動は必ず主事の医師がいるため,心理職も医療にかかわる患者に支援を行う際には,必ず主事の医師の指示を受けなくてはなりません。医師の下で働くコメディカルとしての役割と,多職種チームにおける役割についても紹介しながら,病院の中で働く心理職をリアルに感じて頂きたいと思います。
④ 教育領域の心理職といえば,多くの人がスクールカウンセラーをイメージするかもしれません。この30年の間に,スクールカウンセラーは着実に学校教育に普及し,浸透してきました。しかし,教育を支える心理職の活躍の場はそれだけではありません。市町村教育委員会には教育相談室が設置されており,その多くで心理職が活動しています。また,不登校児童生徒の居場所づくりと登校支援のため,適応指導教室が相談室内に設置されており,そこで働く心理職もいます。この他,放課後児童デイサービスやフリースクール等で働くひともいます。教育を支える専門職として,心理職はなくてはならない存在になっています。講師の適応指導教室員,スクールカウンセラーとしての経験も紹介しながら,教育臨床の現場とそこにおける心理職の役割について,具体的にイメージしてもらえるよう論じていきます。
キーワード ① 心理療法 ② 当てることと役に立つこと ③ 医療臨床現場 ④ 教育臨床現場
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。その上で、本講義では、医療臨床の現場と,教育臨床の現場について紹介しました。実際にどんな病院や教育機関があるのか,インターネット等で調べてみましょう。特に,そうした期間を利用した人の声について調べてみると,また違った角度から心理臨床現場が見えてくるかもしれません。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
次回は心理職が働く現場の中でも、福祉,産業・労働,司法・矯正の領域における実際について紹介します。自分の地元のどこにそんな施設があったか思い出したり、地図を見て確認してみましょう。

3 臨床心理学を必要とする現場2 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第3回は、第2回に引き続いて,心理療法を活用する実践の現場がどのようなものなのかイメージを持つために,公認心理師5領域ごとに紹介します。特に第3回では,福祉領域,産業・労働領域,司法・矯正領域について紹介します。

細目レベル①
第3回文字教材
川畑直人(監修) 2020 福祉心理学:福祉分野での心理職の役割 ミネルヴァ書房 pp.29-78. pp101-150.
細目レベル②
第3回文字教材
川畑直人(監修) 2020 産業・組織心理学:個人と組織の心理的支援を学ぶために ミネルヴァ書房 
細目レベル③
第3回文字教材
川畑直人(監修) 2020 司法・犯罪心理学:社会と個人の安全と共生をめざす ミネルヴァ書房 pp.67-148.
コマ主題細目 ① 福祉臨床現場 ② 産業・労働臨床現場 ③ 司法・矯正臨床現場
細目レベル ① 福祉の現場は,心理職が最も古くから活躍した場所の一つです。児童相談所における児童心理司は,児童福祉法第にも規定される専門職であり,かつては心理判定員と呼ばれていました。近年児童相談所の対応件数はうなぎ登りで,人員不足が大きな課題となっています。この他,児童養護施設や児童心理治療施設等,多くの福祉施設で心理職の重要性が高まっています。さらに,発達障害を含めた様々な障害を抱える児童が生活訓練を受けたり放課後の居場所を得るための障害児入所施設や障害児通所施設,放課後等デイサービス等においても心理職が活躍しています。福祉領域には多様な施設が整えられていますが,それ自体あまり知られていないことも多と思います。各施設の詳細は別の講義に譲るとして,本講義では,その活動の一例を紹介し,福祉臨床業務の特徴をつかんでもらうことを目的とします。
② 1998年以降の急速な自殺率高騰の影響を受け,職場メンタルヘルスへの対応は2006年頃から急速に進められてきました。労働者の心の健康の保持増進のための指針,いわゆる「メンタルヘルス指針」の策定により,企業におけるメンタルヘルス担当の配置やメンタルヘルス教育,休職者に対する復職支援等が充実してきました。さらに,こうしたメンタルヘルス対策を担う企業も登場し,ビジネスマンとしてEAP(従業員支援プログラム)を提供する心理職も増えています。また,休職者の復職を支援する復職支援プログラムを提供する病院,クリニック,企業もあり,各企業の産業メンタルヘルス部門と連携しながら,労働者の支援を行っています。企業や個々の労働者の状態に応じた支援を,効率よく,システマティックに提供することが求められる産業・労働領域の臨床活動の特徴と言えます。他の領域との異同を理解しつつ,本領域の特徴をつかんでもらいたいと思います。
③ 司法・矯正領域とは,主に少年鑑別所,少年院,刑務所等を指します。この領域も,児童相談所と並んで,古くから心理職が活躍する領域です。少年鑑別所では,非行や触法行為を行った少年の処遇を決定するための鑑別が行われます。短期間に少年の生育環境,行動傾向,パーソナリティ等をアセスメントし,最適な処遇についての意見を家庭裁判所に提出します。また,家庭裁判所から保護処分として送致された少年に対し、その健全な育成を図ることを目的に、矯正教育や社会復帰支援等を行う法務省所管の施設が少年院です。また,近年刑務所においても心理職が活躍するケースが増えてきました。従来の刑務作業中心の服役では再犯防止が進まないことから,特別改善指導として積極的に心理的処遇が取り入れられるようになり,さらに刑務所運営の民間委託も進んでおり,心理職が活躍する機会がさらに広がっています。古くて新しい司法・矯正領域の実際の活動の一例を紹介しながら,司法・矯正領域における心理支援の「面白さ」を伝えたいと思います。
キーワード ① 福祉領域 ② 産業・労働領域 ③ 司法・矯正領域
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。その上で、本講義では、福祉領域,産業・労働領域,司法・犯罪領域について紹介しました。特に関心を持った領域について,インターネットや本で調べてみましょう。まだ,どうしてその領域に興味を持ったのでしょうか。その理由について内省したり,友達と話し合ってみましょう。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
次回とその次は,心理職の仕事の流れについて紹介します。第4回は,心理アセスメントとケースフォーミュレーションについて紹介します。この2つのカタカナ語について,インターネット等で調べてみましょう。

4 心理師の仕事1 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第4回,第5回では,心理職の主な業務について、一つの模擬ケースの進進行を追いながら紹介します。第4回目では、心理アセスメントとケースフォーミュレーションについてお話しします。

細目レベル①
第4回文字教材
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修) 2020 臨床心理学概論 ミネルヴァ書房 pp.14-24.
下山晴彦(編著) 2021 公認心理師のための「心理査定」講義(臨床心理フロンティア) pp.18-22.
細目レベル②
第4回文字教材
下山晴彦(編著) 2021 公認心理師のための「心理査定」講義(臨床心理フロンティア) pp.17-18.
細目レベル③
第4回文字教材
下山晴彦(編著) 2021 公認心理師のための「心理査定」講義(臨床心理フロンティア) pp.2-4.
コマ主題細目 ① 心理アセスメント①観察法・面接法・検査法 ② 心理アセスメント②アセスメントを行う際の注意点 ③ ケースフォーミュレーション
細目レベル ① アセスメントとは、何かの行動を起こす為に必要で的確な情報を得る為に行う活動を意味します。心理療法を行う上で必要な情報について,出来るだけ「客観的指標」を用いて収集することが求められます。心理アセスメントには様々な方法があります。観察法は、クライエントの非言語的な情報である表情、動作、振る舞いなどを観察し、精神状態を把握する方法です。また、面接法とは、面と向かって話し合うことを通してクライエントの心理状態を把握する方法です。さらに、検査法とは、道具を用いてそれに対する反応から直接的、間接的に精神状態を把握する方法です。そこには、質問紙や評価尺度を用いて言葉による回答を分析する方法や、特定の課題を行わせて、そこに反映する精神状態を間接的に分析する方法が含まれます。多様なアセスメント法が現場でどのように用いられているのか、一例を取って紹介するとともに、そこから分かる情報の質的、量的違いを想像してほしいと思います。
② 心理アセスメントには多様な方法がありますが、どれが特段優れていてどれが不必要と言うことはありません。それぞれに長所と短所(限界)があります。クライアントの抱える問題や特性に応じて適宜テストバッテリーを組み、多面的にアセスメントを行う必要があります。また、どの検査も使用する側のスキルやセラピストとクライエントの関係性、クライエントのそのときの精神状態等が如実に結果に影響を与えます。検査に影響を及ぼす要因を可能な限り統制したり、それを理解しながら結果を解釈する必要があります。心理アセスメントが上達するためにはどの様な訓練が必要なのかを想像し、3年次で受講する「心理的アセスメント」に対するモチベーションを高めてもらいたいと思います。
③ 心理アセスメントにより情報を集めたら、それで終わりではありません。その情報を束ねて、クライエントの何が問題でどうしたら解決するのかについての地図を描きます。こうしたプロセスを、ケースフォーミュレーション(事例定式化)と呼びます。集められた情報を整理し、吟味して仮説を立て、その仮説を可能な限り検証しながら、最適で実行可能な処遇を検討します。処遇にはもちろん心理療法が含まれますが、それだけではありません。規則正しい生活を求めたり、家族への理解を求めると言った、生理的、社会的働きかけも含まれます。まずは、一つのケースの中で行われるケースフォーミュレーションの実際を紹介し、得られた情報が処遇に紡がれていくプロセスを確認することで、ケースフォーミュレーションこそが心理療法の醍醐味であることを感じて頂きたいと思います。
キーワード ① 心理アセスメント ② 様々な検査法 ③ テストバッテリー ④ ケースフォーミュレーション
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。その上で、本講義では、実際の事例を通しながら、心理アセスメントとケースフォーミュレーションについて解説してきました。改めて、この事例の少年は各段階でどんな気持ちを抱えていたでしょうか。心理アセスメントが、ケースフォーミュレーションがその気持ちをどのように変えていったか、想像してみましょう。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
次回は、さらに事例の紹介を進めて行きます。そして、その中で処遇(心理療法)と成果の公表(自己研鑽)について詳しく解説します。特に、自分が知っている心理療法にはどのようなものがあるでしょうか。紙に書き出してみたり、インターネットや本で調べてみましょう。

5 心理師の仕事2 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第4回,第5回では,心理職の主な業務について、一つの模擬ケースの進進行を追いながら紹介します。第5回目はケース進行の後半部分であり,実際に援助するための処遇を行うプロセスを紹介します。心理療法は処遇の一つの方法ですが,それだけで全てが解決するわけではありません。多方面から可能な方法を駆使してアプローチします。さらに,一つのケースが終了したらそれで終わりではなく,さらなる自己成長に活かすための反省の機会とすることも必要です。

細目レベル①
第5回文字教材
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修) 2020 臨床心理学概論 ミネルヴァ書房 pp.18-20.
細目レベル②
第5回文字教材
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修) 2020 臨床心理学概論 ミネルヴァ書房 pp.15-16.
細目レベル③
第5回文字教材
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修) 2020 臨床心理学概論 ミネルヴァ書房 pp.32-34.
コマ主題細目 ① 処遇①心理療法 ② 処遇②生理・社会的処遇 ③ 成果の公表(自己研鑽)
細目レベル ① 処遇を検討する際,心理療法は一つの選択肢です。一口に心理療法と言っても,価値観から治療技法まで大変多岐にわたっています。本講義では,第8回~第13回に渡って詳しく見ていきます。いずれの心理療法も,治療者の熟練を要しますし,また患者の年齢や性別,疾患の種類等によって適用/不適用があります。治療者はできるだけ多くの患者に適切な処遇を行えるよう,多様な心理療法について訓練を受けておく必要があります。近年は,「折衷」といって多くの心理療法のよい部分を集めて使う方法を取られることもありますが,これには賛否両論あります。この点は,第13回で詳しく解説したいと思います。ここでは,色々な心理療法がある,ということを知ってもらうため名称の紹介と最低限の開設程度にとどめたいと思います。
② 処遇は,心理療法だけではありません。本架空事例のように,スクールカウンセリングの現場で,あう回数も制限されるような状況では,むしろ心理療法以外の処遇の方が重視されます。Bio-Psycho-Socioモデル(生物-心理-社会モデル)に基づけば,人は多様な側面から成り立っており,多様な側面からアプローチが可能です。心理療法が心理的アプローチだとするなら,他にも心理職が出来るアプローチとして,睡眠や食事の習慣を整える(生理的アプローチ)ことや,家族との関係調整(社会的アプローチ)等も考えられます。100%理想的な処遇ではなく,その場で実行可能な処遇を考え,関係者をできるだけ巻き込みながら多方面からアプローチすることが重要です。そうした処遇の実際の様子を,子どもの変化と共に紹介します。
③ 一つのケースが終わると,心理職はほっとします。しかし,それでこのケースを忘れてよいわけではありません。一つのケースには,様々な失敗や成功を含んでいますし,多くの場合,実施者本人は気づいていません。このケースからより多くのことを学び,自身の成長へとつなげるためには,この成果を公表し,第三者から意見をもらうことが有効です。公表をする場は,学会や研修会等における事例報告会,論文等による事例研究発表,スーパーバイザーとの間での個人スーパービジョンなど様々です。全てのケースを公表することは難しくとも,数ケースに一つは第三者の意見をもらえる場に挙げることが望ましいと言えます。ケースを公表する際には,必ずケース当事者から書面で許可を得ると共に,発表時には個人が特定できないよう個人情報に配慮する必要があります。公認心理師には,自己研鑽義務も課せられます。成果の公表のプロセスについて,概説していきます。
キーワード ① 処遇 ② 心理療法 ③ 成果の公表 ④ 自己研鑽
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。その上で、本講義では、実際の事例を通しながら、ケースフォーミュレーションに基づく多様な処遇を行ってケースを解決に導き,その成果を振り返るプロセスについて紹介しました。改めて、この事例の少年は各段階でどんな気持ちを抱えていたでしょうか。心理職による支援が,その気持ちをどのように変えていったか、想像してみましょう。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
次回は、心理的支援を行うスペシャリストとして,公認心理師,臨床心理士という資格と,その資格を持っている人が必ず果たすべき職責について紹介します。両の資格の違いについて,インターネットや本で確認をしておきましょう。

6 心理職とその職責 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第6回では,これまで紹介してきたような心理的処遇を用いた支援を行うスペシャリストとして,主に公認心理師,臨床心理士という資格に焦点を当てて,成立の経緯やその違いについて紹介します。この二つ以外にも多様な心理関連の資格があります。それらの違いについても概説します。その上で,心理専門職として必ず守らなくてはならないルール(=職責)を確認します。とはいえ,全体としては,心理職や,色々な資格を得ることの「面白さ」を中心に論じます。

細目レベル①
第6回文字教材
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修) 2020 公認心理師の職責 ミネルヴァ書房 pp.4-6.
細目レベル②
第6回文字教材
公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会 2014 臨床心理士とは(ホームページ) http://fjcbcp.or.jp/about/
細目レベル③
第6回文字教材
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修) 2020 公認心理師の職責 ミネルヴァ書房 pp.6-9.
コマ主題細目 ① 公認心理師 ② 臨床心理士 ③ 心理職の職責
細目レベル ① 2015年9月9日に公認心理師法が成立し(2017年9月15日同法律施行),2018年9月に第1回公認心理師試験が実施されて、国内初の心理系の国家資格として公認心理師が誕生しました。「公認心理師」とは、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、「アセスメント」「相談」「コンサルテーション」「心の健康教育」の4つの行為を業とするものと法律で規定されています。本資格の法的根拠については,「公認心理師の職責」等の講義で詳述しますので,本講義では,この資格が出来るまでの苦労,出来てからの社会の変化について,講師が現場で感じていることを伝え,本資格の取得に興味を持ってもらえればと思います。
② 臨床心理士は,財団法人臨床心理士資格認定協会が認定を行っている民間資格です。公認心理師国家資格が出来るまで,日本では一番信頼のある心理職のための資格でした。1988年の認定開始以来,現在まで38,397名が本資格の認定を受けています。2007年以降は完全に認証を受けた大学院指定校を修了したものしか受験資格が得られなくなり,5年に1度資格更新のための書類審査を受けるために一定以上の研修を積む義務がある等,教育と自己研鑽に力を入れている点が本資格の特色と言えます。他にも,日本心理学会が認定する認定心理師や,日本認知・行動療法学会が認定する認知行動療法師等,学会や協会が認定する資格は多数あります。そうした資格も紹介しながら,国家資格が出来た今,そうした認定資格を取ることの意味について検討してみたいと思います。
③ どんな専門職に就くとしても,況んや一般職であったとしても,その職務遂行上守るべきルールがあります。心理職もそれぞれにルールを整備していますが,国家資格である公認心理師については法律でこれが定められていますので,公認心理師法に規定される職責に関わる条項を概観していきたいと思います。それは,「他職種との連携義務(主治の医師がある場合には医師の指示に従う),「秘密保持義務」「信用失墜行為の禁止」「自己研鑽義務」の4つです。詳しい解説は他授業に譲りますが,これを守るのと守らないのではどんな違いが生じるか,想像してもらえるようなエピソードを紹介します。この他,各職能団体では,「倫理綱領」を作成しています。日本公認心理師協会が作成している「倫理綱領」にもざっと目を通して,公認心理師という職業の厳しさを感じてもらいたいと思います。ただし,冒頭にも述べたように,こうしたルールは公認心理師だけにあるわけではありません。社会に出ると言うことは,厳しいルールを背負うのだと言うことを皆さん心して頂きたいと思います。
キーワード ① 公認心理師 ② 臨床心理士 ③ 心理師の職責
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。その上で、本講義では、様々な心理専門職について紹介し,そうした資格を得て仕事をすることの「面白さ」をお伝えしました。自分がそんな仕事に就いたら,どんなことが出来て,どんな楽しい人生を送れそうでしょうか。想像してみましょう。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
次回は、ここまでの総括をします。臨床心理学とは何か,心理療法とは何か,心理療法を用いる現場はどのようなところか,その現場で心理職は実際にはどんなことをするのか,それをする心理職とはどんな仕事なのか,といったことについてこれまで学んで来ました。これらで得た知識について,模擬テストで知識の確認をしていきます。1~6回の資料をよく読んで復習をしておきましょう。

7 ここまでのまとめ① 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第7回では,ここまで学んで来たことの総括を行います。模擬テスト形式でこれまでの知識の定着を確認するほか,その答え合わせをしながら,これまで使用してきた文字教材資料を振り返り,重要だった点を改めて確認していきます。

細目レベル①
第7回文字教材
文字教材第1回,第2回
細目レベル②
第7回文字教材
文字教材第2回,第3回
細目レベル③
第7回文字教材
文字教材第4回,第5回,第6回
コマ主題細目 ① 臨床心理学と心理療法 ② 心理職の現場 ③ 心理職の醍醐味と職責
細目レベル ① 本講義の第1回と第2回では,臨床心理学と心理療法という概念について具体的なイメージを持ってもらうために,学問としての臨床心理学を柱としながら概念整理を行いました。はじめに心理学と臨床心理学の関係性を理解し,それに基づき臨床心理学と心理療法の違いを整理しました。本来なら,心理学の傘の下に臨床心理学も入るはずですが,人の苦悩を癒やす心理療法は,心理学とは別の文脈より派生した流れも自ずと含んでおり,そうした心理療法を支える基盤としての理論も臨床心理学に含まれてしまうため,結果として心理学の傘に入りきらない臨床心理学も多数登場しています。その結果,日本心理学会の会員数が約8,000人であるのに対して,日本心理臨床学会の会員数は30,000人に迫るといういびつな構造が少なくとも本邦ではできあがっています。心理学の傘に必ずしも収まらないのが臨床心理学の面白さでもありますが,その不思議さや怪しさに惹かれるだけではなく,困難を抱える人の役に立つ専門家となることを目指してほしい,というのが,第1回,第2回の趣旨でした。
② 第2回,第3回では,公認心理師5領域毎に,どんな施設があり,そこで心理職はどんな活動をしているのかについて,講師の具体的な実践例も交えながら紹介しました。どの現場でももっとも重視されるのは他職種との連携です。心理職は,よく「隙間産業」と言われます。人の間に入って,人々の手が届かないところを埋めていくような仕事だと言うことです。また,よくカメレオンに例えられることもあります。相手や環境に合わせて自身の色を変えながら環境に順応し,その中で役割を果たすことが求められます。5領域のどれかを職域というわけではなく,人の間(はざま)こそが職域です。こんなに広い職域で仕事をする専門職は他にはありません。そもそも,厚生労働省と文部科学省というように,複数の省庁が合同で出している国家資格というのも本邦では公認心理師だけです。「どこの色にも,誰の色にも染まるりつつ,黒子に徹する」心理職の特長を改めてご確認下さい。
③ 第4回,第5回では,一つの架空事例を紹介しながら,心理職がケースを進める上で不可欠な4つの段階について概説していきました。心理アセスメント,ケースフォーミュレーション,処遇,成果の公表(自己研鑽)の4つです。これがどれか一つでも欠けると,心理職はどこかいびつになります。これがしっかりかみ合って一つの成果を出せたとき,心理職は大きな達成感を得られるし,それこそが心理職の醍醐味と言えます。心理職を目指す方は,この4つの段階をしっかり経て一つの成果を出せるようになって頂きたいと思います。他方で、第6回では心理職の職責について論じました。心理職もまた社会の歯車の一つであり,その地位や待遇に見合った責任を果たさねばなりません。国家資格が出来て,義務違反には法的罰則が科せられるようになりました。今後はより重い責任を感じながら仕事をする必要があります。
キーワード ① 臨床心理学 ② 心理アセスメント ③ ケースフォーミュレーション ④ 処遇 ⑤ 自己研鑽
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。今回の文字教材は,これまでの振り返りとなっていますので,改めてこれまでの総括をしておきましょう。そして,小テストで自信を持って解答できなかった箇所,間違った箇所について,どうして正答がこれなのか,自身の中で説明できるか確認してみましょう。出来なければ,担当教員に是非お気軽にご質問下さい。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
次回からは,がらっと趣向が変わり,多様な心理療法の概説に入っていきます。まずは精神分析療法について概説します。これを創始したフロイトという人がどんな人物だったのか,インターネットや本で調べてみましょう。

8 精神分析学と力動的心理療法 科目の中での位置付け  本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第8回~13回は,様々な心理療法の理論と実践について概説していきます。それぞれの詳細は,2年次で学ぶ「心理学的支援法」や各専門科目で扱いますので,本講義ではそれぞれに興味を持ってもらうことを目的に特徴的な点に焦点化してお話しします。第8回は,精神分析療法と,これを創始したS.フロイトという人,さらに,それに続く様々な精神分析学派の心理療法について紹介します。

細目レベル①
第8回文字教材
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修) 2020 臨床心理学概論 ミネルヴァ書房 pp.84-85.
藤山直樹 2016 集中講義・精神分析上―精神分析とは何か フロイトの仕事 岩崎学術出版社 pp.113-202.
細目レベル②
第8回文字教材
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修) 2020 臨床心理学概論 ミネルヴァ書房 pp.85-88.
藤山直樹 2016 集中講義・精神分析上―精神分析とは何か フロイトの仕事 岩崎学術出版社 pp.203-205.
細目レベル③
第8回文字教材
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修) 2020 臨床心理学概論 ミネルヴァ書房 pp.89-94.
藤山直樹 2016 集中講義・精神分析下―フロイト以降 岩崎学術出版社 pp.23-224.
コマ主題細目 ① フロイトの精神分析学 ② 精神分析療法の理論と実践 ③ 多様な精神分析学理論と療法
細目レベル ① S.フロイト(Sigmund Fred; 1856-1939)はオーストリア出身のユダヤ人でした。神経学者でしたが,パリでの留学中に催眠術を習ったことでこれに傾倒し,これに独自の工夫を重ねて自由連想法を考案し,これを中核とした一連の方法を精神分析と命名しました。当時流行したヒステリーという症状に対する病因論として,初期には幼少期の性的虐待に着目していましたが,自身の父の死に対する大きなショックを内省する内に,それはエディプスコンプレックスへと発展していきました。また,これらが自身の意識できないところで影響することから,「無意識」の精神作用の発見者とも言われます。こうした無意識の精神活動を説明するために,フロイトは自我の構造論を唱えました。さらに晩年には,夢判断など,無意識の精神活動に対する考察を深めていきました。彼を慕って多くの弟子が世界中から集まりますが,そのほとんどと決別しているのも彼の特徴です。ここでは,フロイトという人物に思いを馳せながら,精神分析療法を概観したいと思います。
② 精神分析療法における最も中核的な発見は,「無意識」であったと思われます。産業革命以降,人は理性で何でも出来ると信じられていた時代に,自我では認識できない精神活動の存在を主張することは革新的でした。さらに彼は,無意識が精神活動に及ぼすメカニズムについて,自我の構造論の観点から説明しました。我々が意識できる範囲のほとんどの精神活動は「自我」が担っているが,無意識のレベルでは「エス」という意識し得ない構造があり,親のしつけなど,生育の過程で作られた「超自我」という構造によってエスが前意識を経て意識に上ってくるのを抑圧している,というものです。この可能な抑圧を,フロイトは一切の抵抗なく語ることが解放してくれることを発見し,自由連想法を開発するに至りました。後年になるほど,語ることへの抵抗やその抵抗への解釈に重きが置かれる様になりますが,詳細な語りの効果は,現在のトラウマ治療でも活用される重要な方法です。精神分析療法の理論と実際について,難しくならない程度に紹介します。
③ フロイトの理論は,賛否を含め多くの関心と議論を巻き起こしました。特に「無意識」の発見は,多くの人々を触発し,弟子となり,やがて離れていきました。その中には,C.ユングやA.アドラー等の著名人もいます。自身の娘であるアンナ・フロイトや,アンナと激しい論争を繰り返したメラニー・クラインもそうです。二人は,児童の精神分析を対象とした点では共通していましたが,アンナはフロイト流に個人の精神分析を志したのに対して,メラニーは親子を含む人間関係の中で生じる力動に焦点を向け,「対象関係論」に基づく新たな学派を作ります。この他,フロム,ラカン,ホーナイ,ライヒ・・・。ここでは,フロイトに続く何人かの著名人とその考え方を簡単に紹介しながら,精神分析学全体のイメージと,精神分析に対する興味を持ってもらうことを目的に論じます。より詳しくは,アドバンスド臨床心理学IV精神分析療法をお楽しみに。
キーワード ① S.フロイト ② 精神分析療法 ③ 自由連想法 ④ 分析心理学 ⑤ 対象関係論
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。その上で、本講義では、S.フロイトに始まる精神分析学派の基本的な考え方について紹介してきました。S.フロイトのキャラの濃さに目が行きがちですが,それとは独立に,精神分析学派の「共通点」はどこにあるのか,確認しておきましょう。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
次回は、行動理論と行動療法について紹介します。ここでも,I.パブロフと,B.H.スキナーという個性的なキャラが登場します。どんな人物だったのか,インターネットや本で調べてみましょう。

9 行動理論と行動療法 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第9回は,行動理論について紹介します。行動理論は心理学の一理論であり,レスポンデント条件付けとオペラント条件付けが有名です。この原理と,それぞれに基づく心理療法,さらにはその発展とも言える応用行動分析について概説します。

細目レベル①
第9回文字教材
三田村 仰 2017 はじめてまなぶ行動療法 金剛出版 pp.39-54.
細目レベル②
第9回文字教材
三田村 仰 2017 はじめてまなぶ行動療法 金剛出版 pp.71-103.
細目レベル③
第9回文字教材
三田村 仰 2017 はじめてまなぶ行動療法 金剛出版 pp.104-1178.
コマ主題細目 ① レスポンデント条件付けとそれに基づく介入 ② オペラント条件付けとそれに基づく介入 ③ 応用行動分析
細目レベル ① レスポンデント条件付けは,ロシアの生理学者イワン・パブロフ(Ivan Petrovich Pavlov;1849-1936)によって発見された心理学的原理です。通常口の中に食べ物が入る(無条件刺激)と唾液が出ます(唾液反射)。食べ物(無条件刺激)を与える前にベル(条件刺激)を鳴らす(対呈示)ことを繰り返すと,やがてベルの音が唾液を引き出すようになります(条件反射)。これは些細なことに感じられるかも知れませんが,生理学的には説明のつかない現象であり,人の様々な無自覚な行動の背景にこうした条件付けの原理があると想定されました。J.B.ワトソン(John Broadus Watson; 1878-1958)は,生後11ヶ月のアルバート坊やを対象に恐怖条件付けが成立することを証明する実験を行い,行動主義心理学を主張しました。古典的条件付けを心理療法に応用した例として,J.ウォルピ(Joseph Wolpe; 1915-1997)による系統的脱感作法が有名です。原理の発見から心理療法の開発に至るまで,それぞれの人となりを交えながら概説します。
② オペラント条件付けは,B.F.スキナー(Hurrhus Frederic Skkiner; 1904-1990)によって提唱されました。ワトソンの行動主義の提唱後,S(刺激)とR(反応)の間にO(有機体)を仮定するような「新行動主義」が横行する時代,スキナーは「徹底的行動主義」を提唱し,個体の自発的行動の増減を説明するモデルを,一切の内的プロセスを想定することなく描き出しました。きっかけ(誘発刺激)が与えられたとき,個体が行動を自発する(オペラント行動)。それに対する環境からの働きかけ(強化)の質によって,同じ誘発刺激が生じた際のオペラント行動の生起頻度が変化する,というのがオペラント条件付けです。強化には,環境からの働きかけが与えられる場合と除去される場合,オペラント行動の生起頻度が上昇する場合と減少する場合で4つのパターンが想定されます。我々が能動的に行っていると思っている行動も,実は環境に操られているということです。行動療法の父と言われる,H.アイゼンク(Hans Jurgen Eysenck; 1916-1997)による行動療法の定義だけは,しっかり紹介したいと思います。
③ このオペラント条件付けの原理を応用して,問題となる場面を分析し,整理する方法論として,応用行動分析(Applied Behavior Analysis: ABA)があります。先行刺激(Antecedent; A)-行動(Behavior; B)-結果(Consequence; C)の3つ組で人の行動を理解し,Bがもし問題となるなら, Aに適切なBで反応できるよう訓練したり,Bに対する環境からの適切なCが与えられるような環境作りをしたりして改善を目指します。スポーツのコーチングやマーケティングで用いられることもありますが,もっとも頻繁に利用されているのは,発達障がい児や幼児の問題行動を扱う場面です。問題を起こしている子どもの環境を観察し,問題となるABCを特定し,多くの場合は,子どもの問題となるBを修正するより,これから増やしたいBに対して担任教師や保護者が適切なCを与える訓練を行ったりします。子どもを罰するのではなく,褒めて伸ばす,の真骨頂と言えます。実際に使用した例を紹介するので,その場面をぜひイメージしてほしいと思います。
キーワード ① レスポンデント条件付け ② 行動主義心理学 ③ オペラント条件付け ④ 応用行動分析
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。今回は,有名な心理学者が多数登場します。どの人物がどのような原理,あるいは心理療法の開発に関わっていたのか,整理しておきましょう。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
 次回は,「第3勢力」と呼ばれた人間性心理学と人間中心アプローチについて紹介します。有名なC.ロジャーズや,A.マズローなどが登場します。他の授業でも出てきた名前かと思いますので,そちらの授業資料を振り返っておいて下さい。また,聞き覚えがないという方は,インターネットや本等で調べておいて下さい。

10 人間性心理学と人間中心アプローチ 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第9回は,行動理論について紹介します。行動理論は心理学の一理論であり,レスポンデント条件付けとオペラント条件付けが有名です。この原理と,それぞれに基づく心理療法,さらにはその発展とも言える応用行動分析について概説します。

細目レベル①
第10回文字教材
下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修) 2020 臨床心理学概論 ミネルヴァ書房 pp.72-82.
細目レベル②
第10回文字教材
中野 明 2016 マズロー心理学入門:人間性心理学の源流を求めて (FLoW ePublication Kindle版 2章~4章 (Kindle版のためページは不確定だが,525-1459/2133ページ)
細目レベル③
第10回文字教材
中野 明 2019 人間性心理学入門 アルテ (パールズpp.117-134.,フランクルpp.53-74.)
石渡 崇文 2018 「症例エレン・ウェスト」とルートヴィヒ・ヴィンスヴァンガーの現存在分析 東京大学教養部哲学・科学史部会 哲学・科学史論叢 20,85-109.
コマ主題細目 ① C.R.ロジャースのクライエント中心療法 ② A.H.マズローの自己実現理論 ③ 人間性心理学の各流派(F.パールズ,Lビンスワンガー,V.E.フランクル)
細目レベル ① C.R.ロジャーズ(Carl Ransom Rogers; 1902-1987)は,アメリカの調査で,20世紀最も影響の大きかった心理療法家の第1位に選ばれた人物です。父親の影響で農学を専攻しますが,結局牧師を目指して史学を専攻します。しかし,牧師の道にも疑問を感じるようになり,結局臨床心理学を学ぶようになって,児童虐待などに関わる職を得ます。当時流行していた精神分析や行動主義の,悲観的人間観,問題解決的な治療観に疑問を感じ,もっと人間本来のあり方を肯定的に受け止めることは出来ないかと考えて,クライエント中心療法を創設しました。人が本来持つ自己実現する力を発揮し,成長と可能性の実現を促す環境作りこそが治療者の果たす役割と考え,そのための技術として,無条件の肯定的関心,共感的理解,支援者自身の自己一致等を挙げました。また,治療者-患者という上下関係を嫌い,セラピストークライエントという用語を用い,こうした関係で行われるセラピーを,カウンセリングと命名しました。ロジャーズの「あなたはあなたのままでいい」というスタンスの温かみをお伝えできればと思います。
② A.H.マズロー(Abraham Harold Maslow; 1908 -1970)は,欲求階層に基づく自己実現理論を提唱したことで有名です。人の欲求は,生理的欲求を最も下層の土台とし,その上に安全欲求,社会的欲求,承認欲求,自己実現欲求と階層上に重ねられる構造を持っている,というのがその理論です。ロジャーズがいう自己実現を達成するためには,カウンセリングで与えられるもの以上の欲求が満たされる必要があると言えます。ロジャーズの盟友でもあり,人間性心理学会を創設したりもしてますが,晩年は自己実現を超えた自己超越に関心を持ち,トランスパーソナル心理学会を創設したりもしています。ここでは,欲求階層説を中心に概説します。
③ 人間性心理学に属するのは,いずれもキャラのたった人たちばかりです。F.パールズのゲシュタルト療法,Lビンスワンガーによる現存在分析,そしてV.E.フランクルによるロゴセラピー等がその代表例です。ゲシュタルト療法は,人が自然と持つ思い込みや堅さ(形=ゲシュタルト)から自由になるため,今ここでの気づきを活用します。ビンスワンガーという人は,人を理解するためには可能な限りを全て記述し尽くすことだ,と考えて,統合失調症患者と10年孤城に二人だけで住んで記述を続けました。そして,V.E.フランクルの著書「夜と霧」は,世界では聖書の次に読まれているというくらい多くの人に影響を与えていますが,彼自身がユダヤ人で,ナチスの手で強制収容所に入れられた経験を持ち,そこでの経験も踏まえて創始されたセラピーです。いずれも熱い人たちですので,熱く紹介します。
キーワード ① クライエント中心療法 ② 自己実現理論 ③ ゲシュタルト療法 ④ 現存在分析 ⑤ ロゴセラピー
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。今回もまた,たくさんの人物とそれらの人が創始した心理療法が出てきました。誰がどの心理療法を作ったのか,つなげられるようにしておきましょう。また,それぞれの心理療法には創始者の熱い想いが込められています。どんな想いが込められていたか,確認しておきましょう。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
 次回は,行動療法の発展として登場してきたと言われる,認知療法について紹介します。実際には行動療法とはそんなに接点はないのですが,似ていると言われる理由を考えるために,まずはA.エリスとA.T.ベックという二人の人物についてインターネットや本等で調べておいて下さい。

11 認知理論と認知行動療法 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第11回は,認知理論と認知行動療法の発展についてお話しします。その創始者であるエリスとベックを紹介しますが,彼らの功績だけでは現在のような一大ムーブメントは起こりえませんでした。多様な後押しを経て認知行動療法が誕生するプロセスと,少しだけさらなる発展としての第3世代の認知行動療法にも触れておきます。

細目レベル①
第11回文字教材
アルバート・エリス(著) 野口京子(訳) 理性感情行動療法 金子書房 pp.1-81.
アーロン・ベック(著) 大野 裕(訳) 認知療法:精神療法の新しい発展 pp.16-35.
細目レベル②
第11回文字教材
アルバート・T・バンデューラ(著) 原野広太郎・福島脩美(共訳) 1975 モデリングの心理学:観察学習の理論と方法 金子書房 pp.6-9.
リチャード・S ラザルス・スーザン・フォークマン(著) 本明 寛・春木 豊・織田正美(監訳) 1991 ストレスの心理学 実務教育出版 pp.25-39.
細目レベル③
第11回教材
ドナルド・マイケンバウム(著) 根建金男(監訳) 1992 認知行動療法:心理療法の新しい展開 同朋舎出版 pp.131-151.
細目レベル④
第11回文字教材
S.C.ヘイズ V.M.フォレット M.M.リネハン(編著) 武藤 崇・伊藤義徳・杉浦義典(監訳) 2005 マインドフルネス&アクセプタンス:認知行動療法の新次元 ブレーン出版 pp.3-11.
コマ主題細目 ① エリスの論理情動行動療法とベックの認知療法 ② 後押しをした心理学理論(A.バンデューラ,R.ラザルス) ③ マイケンバウムの認知行動療法 ④ 第3世代の認知行動療法
細目レベル ① 認知療法の歴史は,A.エリス(Albert Ellis; 1913-2007)とA.T.ベック(Aaron Timkin Beck;1921-2021)の二人の創意工夫により始まります。エリスは作家志望で,依頼でドキュメンタリー記事を書くための取材を重ねる中で,心理学に興味を持ち始めました。そして,論理療法を1962年に創始します。その後,創意工夫を重ね続け,1993年の論理情動行動療法へと発展します。他方ベックは,精神科医としてうつ病の精神分析の効果を実証しようと試みますが上手くいかず,むしろその研究の過程で得たインスピレーションを体系化して,1963年に認知療法を考案します。両者に共通するのは,出来事が人に問題をもたらすのではなく,出来事に対する個人の考え方(認知)が問題をもたらす,という考え方でした。本講義では,エリスとベックの苦労話などを交えながら,まずは認知療法のABCモデルがあるということをご理解頂ければと思います。
② エリスとベックは,いずれも心理学者ではありませんでした。しかし,考案したタイミングがよく,心理学界ですぐに受け入れられるようになりました。一つは,1950年代半ばに,当時の行動主義の過熱ぶりに反発するための「認知革命」と称する領域横断的なムーブメントが持ち上がり,人の認知プロセスへの探求を深めようという機運が高まってきたことがあります。さらに,社会心理学者のA.バンデューラ(Albert Bandura; 1925-2021)による社会的学習理論(1977)や,R.ラザルス(Richard Lazarus; 1922-2002)らによるストレスの認知的評価理論(1984)など,認知療法のABCモデルを支持する心理学的モデルとこれに基づく多くの実証研究が行われたことがあります。こうしたことが重なり,1970年代以降,エリスとベックは一躍時の人となります。ここで出てくる話は,いずれも他の授業でも取り上げられると思います。知識よりも,まずは流れや時代背景を理解しておいてください。
③ 1980年代までに,認知への興味は確定的なものとなり,行動主義の人々さえも「認知的行動療法」を工夫するまでになっていました。多くの人が独自の「認知行動療法」を考案する中で,これらを束ねて現在の認知行動療法の骨格を形成したのは,D.H.マイケンバウム(Donald H. Meichenbaum; 1940- )によるストレス免疫訓練(1985)の開発です。ストレス免疫訓練は,①心理教育,②リハーサル,③生活適用の3つの段階を設定し,ここに従来の行動理論,認知理論で使えるものは全て当てはめて使っていきます。その中で,困っている問題に対する対処スキルを身につける②では,「患者の問題に誂える」という観点から,行動的技法も認知的技法も何でも必要に応じて組み合わせて用いる方法を採用しました。理論よりも効果を優先した「パッケージ療法」としての認知行動療法の誕生です。特にアメリカでは,このタイプの認知行動療法が主流となり,本邦の認知行動療法家もこれが認知行動療法だと信じている方が多くおられます。ただ,本来そうではなかったということも本講義ではお話しします。
④ 恐らく時間がなくなるので,講義中に触れるのは本当に一部になると思いますが,認知行動療法は2000年代に入って,新たな時代を向かえます。行動療法が第1世代,認知行動療法の誕生を第2世代とすると,第3世代の認知行動療法の幕開けです。ここでは,扱う対象が認知か行動かではなく,症状を無くすことよりも,「関わり方を変える」あるいは「上手くつき合う」ことを目標とします。そもそも,精神的問題を抱えている状態が「治る」とはどういうことでしょうか。好きな人に振られて落ち込んでいるときに,立ち直るのは,その相手のことを忘れたり,その存在をこの世から亡き者に出来たとき,ではありません。そんな苦い思い出を胸に秘めながらも前に進もうと決めたときです。そうしたよりナチュラルな人としてのあり方を含んだ第3世代の認知行動療法には,アクセプタンス&コミットメントセラピー,マインドフルネス認知療法,機能分析的心理療法等が含まれます。認知行動療法がこうして発展した経緯について,可能であれば触れますが,時間がなければ,まずは紹介のみにとどめて,詳しくは「認知行動療法」の授業で紹介します。
キーワード ① 論理情動行動療法 ② 認知療法 ③ 社会学習理論 ④ 認知的評価理論 ⑤ 第3世代の認知行動療法
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。今回も,さらにたくさんの人物とそれらの人が創始した心理療法が出てきました。誰がどの心理療法を作ったのか,つなげられるようにしておきましょう。認知行動療法が成立する流れについて,整理しておきましょう。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
 次回は,ここまでで紹介しきれなかった心理療法の内,主なものについてざっと紹介します。グループ療法と個人療法ではどちらの方が効果がありそうでしょうか?それぞれのメリットとデメリットは?考えてみて下さい。

12 その他の心理療法 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第12回は,これまで紹介してきていないその他の主要な心理療法について紹介します。はじめに,個人療法と集団療法という心理療法における異なる形式についてそれぞれのメリットとデメリットについて検討します。さらに,遊戯療法,家族療法,コミュニティ心理学へと視点を広げていきます。

細目レベル①
第12回文字教材
野島一彦・岡村達也(編) 2018 臨床心理学概論 遠見書房 pp.113-126.
細目レベル②
第12回文字教材
伊藤建一・吉田弘道 2010 遊戯療法:二つのアプローチ 福村出版 pp.3-24.
細目レベル③
第12回文字教材
野島一彦・岡村達也(編) 2018 臨床心理学概論 遠見書房 pp.99-112.
コマ主題細目 ① 個人療法と集団療法 ② 遊戯療法 ③ 家族理論と家族療法 ④ コミュニティ心理学 ⑤ 森田療法
細目レベル ① これまで紹介してきた多くの心理療法は,個人対個人の形式で行われることもあれば,複数の患者に対して一人か少数の治療者が関わる集団療法の形式で行われることもあります。その効果は,対象にもよりますが,ほぼ同等と言われています。それなら,同じ時間あたりに一人の治療者が対応できる患者数は集団療法の方が多いのですから,費用対効果の面で言えば,集団療法の方が圧倒的に有利です。また,集団療法には,集団がもたらす独自の効果もあります。集団の参加者が,時にモデルとなり,反面教師となり,またお互いに励まし合う自助作用もあります。他方で,指導者の指示が薄まるネガティブな効果も想定されます。同じ心理療法を個別で行う場合とグループで行う場合を比較しながら,そのメリットとデメリット,またどのような場合にどちらを用いるのか等,検討していきます。
② 特に子どもを対象とした心理療法を行う場合,言語で正確にやりとりをすることは難しかったり,プレッシャーを与えることもあります。そこで,子どもが自由に自分を表現できる「遊び」の場面を設定し,共に遊びに関わりながらアセスメントを行い,さらにはその中で心理療法的なやりとりを行うのが遊戯療法(プレイセラピー)です。子どもを対象とした精神分析療法やクライエント中心療法が初期から用いており,Axline(1959)の8原則等も有名ですが,認知行動療法でも子どもを対象とする場合にはプレイセラピーの形式を取ることが一般的です。本講義では,遊びを通して行われる臨床実践の実例を紹介しながら,それが個室で行われる臨床活動とどのような点で異なりどのような点で似ているのかを考える機会を提供します。
③ 家族療法は,家族の不和を取り除くことや,そのために家族の誰か一人の問題を解決することが目的ではありません。家族全体を一つのシステムと見なし(システム論),このシステム全体の不調の改善を目指すのが特徴であり,時にはそれを使って個人の病理の改善を目指すこともあります。家族療法では,特定の患者だけに問題を起因することはありません。相互に影響を与え合う,円環的・循環的相互作用により問題が発生,維持されていると捉えますが,その中で,当座の問題を抱えている個人をIP(Identified Patient; 患者と見なされたもの)として,その問題を中心に家族システムの問題を探ります。家族療法にはいくつかの学派があり,それぞれに複雑な理論を持っていますが,家族システムや家族の歴史が今の個人を形成しているという視点は,どんな臨床をしていても不可欠な視点であると言えます。
④ コミュニティ心理学は,より高次の視点(巨視的)から臨床活動を捉えています。人は環境に働きかけ,環境もまた人に働きかける相互作用の連鎖の中でそれぞれが存在する,という生態学的視点に立ち,人の行動は,無数の人間の縦横の相互作用の中で生じる社会的文脈の中で意味を持つものと見なされます。そして介入の目標は,人と環境の適合(person-environment fit)の観点から検討されます。介入の目的も「治療」だけにとどまらず,「予防」「開発」「エンパワメント」等より広い視野から検討され,予防と治療の狭間で生じる「危機介入」は,学校におけるいじめや自殺,教員の不祥事等の問題により混乱した場のケアを行い,現代社会においては不可欠な役割を担っています。コミュニティ心理学の詳細は別の講義でお話ししますので,ここでは,心理療法的活動は思った以上に裾野が広い,という印象さえつかんでもらえれば十分です。
キーワード ① 個人療法 ② 集団療法 ③ 遊戯療法 ④ 家族療法 ⑤ コミュニティ心理学
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。今回は,人の支援についての多様な考え方が出てきました。どの概念がどの心理療法のものだったかごちゃごちゃにならないよう,しっかりノート等に整理しておきましょう。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
 次回は,心理療法に関わる周辺部分の話で,最初に言っておきますが,そんなに面白い話ではありません。有名人が出てきて熱い人生が語られるとか,みんなも知っていることが実は!という驚きがあるわけでもありません。でも,この先「心理学的支援法」や「心理学研究法」等でも扱う大事なテーマです。退屈したり寝てしまわないように,自分なりの工夫を考え実践して,講義に臨んでみて下さい。

13 心理療法の折衷と技法選択、効果のエビデンス 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第13回は,心理療法についての研究法について概説します。これまでに紹介してきた心理療法は,全く異なる効果機序を持つのかというと必ずしもそうではなく,実際には心理療法の共通要素が一番効果をもたらすといわれます。そこから,その要素だけを組み合わせた折衷的技法も登場しています。そもそも心理療法の効果とはどのように検証するのか。効果量が大きければ誰にでも有効な心理療法となるのか。心理療法とその効果に関わる研究法のお話しです。

細目レベル①
第13回文字教材
野島一彦・岡村達也(編) 2018 臨床心理学概論 遠見書房 pp.168-180.
山崎洋史 2015 マイクロカウンセリング 一社日本学校教育相談学会 研修テキスト 59 1-9. 
https://jascg.info/wp-content/uploads/2015/03/a0c97685f5f24e737499666853a36910.pdf
丹野義彦 2013 心理療法の共通要因 Lambert(1992) 論文を批判する 丹野義彦のページ 1-14. 
https://tannoy.sakura.ne.jp/lambertcritic.pdf
細目レベル②
第13回文字教材
中山健夫 2010 臨床研究から診療ガイドラインへ:根拠に基づく医療(EBM)の原点から 日耳鼻 113,93-100. 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/113/3/113_3_93/_pdf
細目レベル③
第13回文字教材
南風原朝和・市川伸一・下山晴彦(編) 2001 心理学研究法入門:調査・実験から実践まで 東京大学出版会 pp.153-218.
コマ主題細目 ① 心理療法の共通要素と折衷技法 ② 治療効果研究とRCT ③ 事例研究の意義
細目レベル ① これまで多様な心理療法を紹介してきましたが,全てに共通する要素がもしあるなら,それだけを抜き出せば,効率よく効果的な心理療法を作ることも可能です。実際に技法レベルでそれを目指した,マイクロカウンセリング(Ivey,1978)」等もあります。近年,心理職を対象としたアンケートを行うと,多くの心理職が自身の技法的背景を「折衷派」と称しています。心理療法の折衷は本当に可能なのでしょうか。心理療法の効果を分析したLambert(1992)によると,心理療法の効果は,技法や共感といった心理療法に特異的要因よりも,非特異的要因の影響の方が大きいとのことでした。この論文は世界的にセンセーショナルに報道されましたが,本邦の東大名誉教授(佐藤先生の後輩)である丹野義彦先生は,この論文を痛烈に批判しており,心理療法毎の技法によりもたらされる効果は異なることを主張しています。本講義では,丹野教授の批判の趣旨を紹介します。
② 1990年代以降,医療の世界では,EBM(Evidence Based Medicine: 証拠に基づく医療)が求められるようになりました。勘や経験に頼るのではなく,根拠に基づく効果的な治療を行うべき,という考え方です。心理療法の世界においてもこうした考え方はすぐに導入されました。ただでさえ心理療法は怪しい,密室で何をしているか分からない,と陰口をたたかれてきた側面があります。効果を実証的に示すために,RCT(Randomized Control Trial: 無作為統制試験)が心理療法に対しても行われるようになりました。心理療法も,エビデンスに基づいて評価される時代になっています。このエビデンスも,研究の質によりランクづけがなされます。そうしたエビデンスレベルについてのいくつかの基準も紹介されています。心理学研究法でもこうした話はされると思いますが,本講義では,どの心理療法がどのような評価をされているのか,一覧をご覧頂こうと思います。
③ 近年の心理学研究は,このエビデンスレベルに振り回され,RCTやメタアナリシスばかりが珍重される風潮がありますが,エビデンスレベルが低い研究には価値がないかといえばそうではありません。RCTは,過度にサンプルの統制を行うため,少しでも標準から外れるデータは捨てられてしまいます。しかし,臨床現場で目の当たりにする患者に,RCTが対象とする「標準的」患者は一人もいません。現場で,色々な特徴を持つ患者に対して治療者がどのように照準を合わせ,工夫を凝らすのか,そうした生の経験には多くの含蓄があり,その意味で事例研究は,エビデンスレベルは低くとも重要な情報源です。また,臨床家自身にとっても,事例研究を通して自身の経験をできるだけ公正に表現することは,自己研鑽の意味で大きな意味を持ちます。研究の価値は,エビデンスレベルだけでなく,多側面から評価する視点を持って頂きたいと思います。
キーワード ① ランバート ② 折衷技法 ③ 治療効果研究 ④ RCT ⑤ エビデンスレベル
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。今回は,心理学研究法の話が主でした。ランバートの研究を巡る議論,エビデンスレベルについての議論は特に重要です。今一度自分の言葉で説明できるよう整理しておきましょう。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
 次回は,これまで述べて来た心理療法についての模擬テストを行います。これまでの資料を今一度よく読み返して,模擬テストに臨んでみて下さい。ここでの成績に一喜一憂せず,力試しだと思って前向きに望んでみて下さい。

14 ここまでのまとめ② 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第14回では,後半部分の総括を行います。特に,様々な心理療法の理論と実践,その考案者の人物像等について多数紹介してきましたので,この点について模擬テストを行い,解説を加えながら知識のさらなる定着を図ります。

細目レベル①
第14回文字教材 
第9回,第11回文字教材
細目レベル②
第14回文字教材
第8回,第10回文字教材
細目レベル③
第14回文字教材
第12回,13回文字教材
コマ主題細目 ① 心理学的心理療法 ② 心理学に出自を持たない心理療法 ③ 心理療法の拡大
細目レベル ① ざっくり分けるなら,行動療法,認知行動療法などが,心理学理論に基づく心理療法といえます。行動療法は,レスポンデント条件付けやオペラント条件付けといった学習理論に,認知行動療法は認知理論に基づいて体系化されてきました。科学的に実証された原理に基づく心理療法といえます。まずはその原理について,何を説明するための原理で,それはどのように説明され,どのような特徴があるのか,自分がある程度説明できるか確認をしてみて下さい。その上で,心理療法にはそれがどのように応用されているのか。その原理以外にもどのような法則が関わっているのか等,ここまでの知識を整理しておいてほしいと思います。ここで話されることは,今後他の授業でも触れられますので,ここで全て完璧に覚えておく必要はありませんが,大枠のイメージを持っておくことは必要です。
② こちらには,精神分析療法,人間性心理学等,心理学理論や研究に基づかない出自を持つ心理療法が含まれます。精神分析療法は,フロイトの患者と自己に対する深い観察から「無意識」が発見され,自由連想法が生まれました。人間性心理学に含まれる様々な創始者らも,心理学実験を積み重ねてというよりは,宗教や,実存哲学等,自身が傾倒した思想や信条に基づいて心理療法を立ち上げたと言えます。それは決して悪いことではありません。それぞれの心理療法に対して,納得したり,興味を覚える部分があって当然だと思います。「心理」とついても,心理学に出自を持つわけではない,多様な両方があるのだということを覚えておいてほしいと思います。その上で,どんな理論や人間観に基づき,どんな心理療法があったのか,創設者名―療法名―その特徴くらいはつなげて言えるようにしておけると,今後の学習がはかどるでしょう。
③ 心理療法の視野は,個人の治療だけにとどまりません。集団形式で行うこともあります。集団で行う際には特別な注意点もありますが,集団でしか得られないメリットもあります。集団を扱う,というとき,「家族」という集団は特別な単位であり,そのシステムを扱う家族療法という療法もあります。さらには,人の集まるより大きな単位である「コミュニティ」を扱う心理学分野もあり,臨床家の職務対象ともなっています。多様な視点から臨床活動を眺め,関わることが出来るのです。
また,心理療法の効果についての考え方も様々です。より聞く技法だけを集める,という折衷という考え方もありますし,折衷が必ずしもよい成果につながらないという考え方もあります。効果研究で雌雄を決することも可能かも知れませんが,効果研究にもまた限界はあります。心理療法に対する研究にも様々な方法と限界があると言えます。

キーワード ① 精神分析療法 ② 人間中心アプローチ ③ 行動療法 ④ 認知行動療法 ⑤ 遊戯療法
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。今回は,模擬テストを通して後半の心理療法の概論についての知識定着を確認しました。どういうところは点が取れて,どういうところは点が取れなかったでしょうか。自分なりにしっかり分析してみて下さい。

【次コマの予習】
 まずは、次回のコマシラバスに目を通しておいてください。また,文字教材をざっと斜め読みしてみましょう。そして、ふと目にとまった単語を何でもいいので調べてみて下さい。
 次回は,これまで述べて来た心理療法の縦軸を整理します。これまでにどんな心理療法を学んだか今一度思い起こしておいてください。また,1880年代頃から現在までのヨーロッパ,アメリカ,日本の文化,価値観,風習や流行等の変化について,インターネットや本等で調べておいてみて下さい。

15 臨床心理学理論の歴史的発展 科目の中での位置付け 本科目は,臨床心理学と心理療法の分野を広く概観し,この後に続く臨床心理学学習への準備をすると共に,モチベーションを高めてもらうことを目的としています。
そのために,第1回で臨床心理学という学問の位置づけを確認した後で,前半は心理職についての話(第2回,第3回は現場の紹介、第4回、第5回は,心理職に求められる「共通業務」、第6回は心理職の職責)を行います。第7回でこれまでのまとめを行った後,後半(第8回から第13回)は、多様な臨床心理学理論とそれに基づく心理療法について紹介するより学問的な内容となります。第14回では,後半部分の総括を行います。これらを踏まえて,第15回では臨床心理学発展の歴史を総括します。
 こうした中で、第15回は,これまで学んで来た心理療法や臨床心理学理論の発展について,その縦糸を理解します。どんな時代にどんな心理療法があり,それがあったからこそ次の心理療法が誕生した,といった心理療法の歴史を総括します。

細目レベル①
第15回文字教材
サトウタツヤ 2021 臨床心理学史 東京大学出版会 pp.3-82.
細目レベル②
第15回文字教材
サトウタツヤ 2021 臨床心理学史 東京大学出版会 pp.83-401.
細目レベル③
第15回文字教材
サトウタツヤ 2021 臨床心理学史 東京大学出版会 pp.113-392.
細目レベル④
第15回文字教材
S.C.ヘイズ V.M.フォレット M.M.リネハン(編著) 武藤 崇・伊藤義徳・杉浦義典(監訳) 2005 マインドフルネス&アクセプタンス:認知行動療法の新次元 pp.4-11.
細目レベル⑤
第15回文字教材
福島哲夫(編集責任) 2018 公認心理師必携テキスト 学研 pp.304-306.
コマ主題細目 ① 19世紀以前の心理療法 ② 20世紀前半の心理療法 ③ 20世紀後半の心理療法 ④ 21世紀の心理療法 ⑤ 心理アセスメントの歴史
細目レベル ① 精神分析療法が心理療法のスタートと言えるかも知れませんが,その精神分析は催眠術をベースに考案されました。催眠術は,悪魔を追い払う「抜魔術」に起源を持ち,やがて「動物磁気説」に基づき,整体の電流バランスを整える方法と理解されるようになります。1845年にW.グリージンガーが「精神病は脳病である」とする身体起源説を提唱するまで,精神病は悪魔が取り憑いて起こる,と信じられていたので,それも仕方ないかも知れませんまた,実はフロイトが師匠のシャルコーと決別したのは,催眠が「下手」だったからだと言われます。言葉に頼り,思弁的に過ぎると催眠は上手く誘導できません。しかし,そのことがむしろ自由連想法の考案につながっていったのかも知れません。その時代と,その人らしさが上手く融合したとき,新しいものが生み出されるのかも知れません。
② 20世紀初頭から精神分析が一世を風靡しますが,それに対する強い対抗心から,20年代頃から行動主義が台頭します。他方で,宗教や実存哲学を背景に,40年代頃には人間性心理学が第三勢力として現れてきます。それぞれにその時の流行を反映しているようで,興味深いです。また,精神分析と人間性心理学に共通するのは,ユダヤ系の人が多いということです。フロイト,アドラー,フロム,マズロー,パールズ,フランクル・・・他にも多数います。ドイツを中心にユダヤ人迫害政策が年々厳しくなり,フロイトも実力はありながら大学教員にはなれませんでした。こうした時代背景がそれぞれの心理療法の発展に及ぼす影響も少なくないと考えられます。
③ 期せずして登場した二人の認知療法家の,偶然の考え方の一致を,全く無関係の心理学者らが行った認知研究がサポートするという,不思議な縁の集まりで,認知理論が台頭し,時代の潮流にのって認知行動療法が一世を風靡するようになります。認知行動療法は,各国の保険制度などにもマッチし,多くの国々で,「認知行動療法が出来なければ心理職には就けない」という状況になります。ところが日本だけは,精神分析やカウンセリングの影響が長く続き,認知行動療法が理解され始めるのは,次の世紀を待たなくてはなりませんでした。これには,本学の創設者でもある河合隼雄氏の存在が大きく影響していると考えられます。他方,この間に精神分析も現代的な発展を遂げ,対人関係療法等の新しいアプローチも登場します。
④ 流行となった認知行動療法に対して内省的な動きが起こり始め,「真の認知行動療法」を模索する中で,第三世代の認知行動療法が生じました。アクセプタンス&コミットメントセラピー,マインドフルネス認知療法,機能分析的心理療法等は,いずれも認知行動療法の効果メカニズムを,心理学的研究のみ重ねにより追求する中で登場してきました。新たな行動理論,新たな認知理論が背骨となっています。また,第三世代ではありませんが,PTSD治療には自由連想法により近い,語りの技法が採り入れられるようになったり,認知行動療法のテキストの第1章にクライエント中心療法のテクニックが紹介されるようになったりと,治療訪韓の垣根も低くなってきているように思われます。
⑤ 精神分析が広がりを見せると同時に,「無意識を測定する」という目的で,投影法が盛んに開発されました。ロールシャッハテストやTAT等が現在まで残っています。他方で,アメリカでは強い軍隊を作るために,適性テストや知能検査の開発が進みました。症状に対する質問紙検査の開発の流行は1950年代からですが,実は認知療法の開発者であるベックも一役買っています。近年では,心理学実験法に基づく心理検査も開発されています。
キーワード ① 産業革命 ② ウィクトリア朝時代 ③ 戦争 ④ 高度経済成長 ⑤ ポストモダン
コマの展開方法 社会人講師 AL ICT PowerPoint・Keynote 教科書
コマ用オリジナル配布資料 コマ用プリント配布資料 その他 該当なし
小テスト 「小テスト」については、毎回の授業終了時、manaba上において5問以上の、当該コマの小テスト(難易度表示付き)を実施します。
復習・予習課題 【本コマの復習】
 まずは、文字教材を今一度読み返してみて下さい。特に下線の引かれた部分,自身がマークをした部分は,どうして強調されているのかが説明できるか確認してみましょう。今回は,臨床心理学,心理療法,そして心理アセスメントの歴史を整理しました。文字教材に掲載されている年表を見ながら,今日の話を振り返ってみて下さい。どの心理療法がどれの影響を受けてどこにつながっていくのか,今一度思い起こしてみましょう。そして,流れが上手く説明できないところがあれば,周囲の人に確認してみたり,担当教員に質問してみましょう。
 テストに向けては,各授業で使用した資料を丸暗記すれば,それだけで90点は取れます。まずはしっかり過去の資料を見返しましょう。さらに高得点を目指したい人は,資料には必ずしも書いていませんが,講義で話したことや,講義の中で一貫して伝えてきた「考え方」が理解されているかを問う問題も10点程度出す予定です。ただ資料を読み返すだけではなく,本講義を通して担当教員が伝えようとしていたことは何だったか,考えて見ることも重要な復習の機会となるでしょう。

履修判定指標
履修指標履修指標の水準キーワード配点関連回
心理学,臨床心理学,心理療法の概念整理 心理学と臨床心理学の関連と違い,また臨床心理学と心理療法の関連や違いについて理解しておいてほしいと思います。そして,臨床心理学には純粋に「心理学」と言えない部分を内包しており,それがどのようにして生じたのか,その経緯について説明できるようになっておいてほしいと思います。心理学や臨床心理学の定義は定説があるわけではなく,講義で紹介したのもあくまで担当講師の考え方ですが,まずはそれを理解していることを表現し,その上で,さらに自分の考え方を根拠に基づいて呈示できたなら,より高得点になるでしょう。 推測,構成概念,法則,出自 15 第1回,第2回
公認心理師5領域の区別 公認心理師が活躍する領域として,公認心理師5領域を紹介しました。それは,医療保健領域,教育領域,福祉領域,産業・労働領域,司法・矯正領域の5つです。それぞれどんな特徴を持つ領域だったでしょうか。特に講義では,それぞれに関わる施設や機関を紹介してきました。どんな施設や機関がそこに含まれ,心理職はそこでどんな仕事をしていたでしょうか。すべての施設や機関名を列挙する必要はありませんが,各領域の業務の異同についてしっかりイメージできていてほしいと思います。 医療保健領域,教育領域,福祉領域,産業・労働領域,司法・矯正領域 10 第2回,第3回
心理職の業務 講義では,一つのケースの進行を追いながら,心理職が一つのケースを進める上で不可欠な4つの仕事を紹介してきました。アセスメント,ケースフォーミュレーション,処遇,自己研鑽です。心理アセスメントは何のために,なぜ行われるのでしょうか。他の3つも同様に,それらはどのような目的で,どのような理由(必然性)をもって行われるのでしょうか。整理して説明できるようになって頂きたいと思います。さらに,公認心理師の4つの職責についても説明できるようになっておいてほしいと思います。 アセスメント,ケースフォーミュレーション,処遇,自己研鑽,公認心理師の職責 10 第4回,第5回,第6回
各心理療法に対する理解 本講義では,主な心理療法として,精神分析療法,行動療法,人間中心アプローチ,認知行動療法を紹介してきました。この中で登場した様々な心理療法や理論について,考案者と心理療法あるいは理論の内容を紐付けた上で,その内容を概要レベルでよいので説明できるようになってほしいと思います。また,第12回で触れた各心理療法についても,概要を説明できるようになって頂きたいと思います。多数ありますので,混乱しないよう,上手く整理して覚えて頂きたいと思います。 精神分析療法,行動療法,人間中心アプローチ,認知行動療法,考案者,概要 45 第8回~12回
心理療法と研究法 第13回で検討したランバートの研究を巡る議論について,ランバートの研究の趣旨と丹野の批判の趣旨について説明できるようにしておいてください。また,エビデンスレベルについて,どのような基準があって,どのような研究はエビデンスレベルが高いと言われているのか,説明できるようにしておいて頂きたいと思います。その上で,技法を折衷的に用いることのメリットとデメリットについて論じられるようになって頂けると素晴らしいと思います。 ランバート(1992),丹野(2013),エビデンスレベル,RCT,メタ分析,事例研究,技法の折衷 10 第13回
心理療法の歴史について 履修指標4でも触れた,様々な心理療法の発展における時間的経緯について,整理しておいて頂きたいと思います。各心理療法は全く独立に成立しているものもあれば,互いに強く影響し合って考案されているものもあります。そうした関連性について,時代背景等も踏まえながら,説明が出来るようにしておいて頂きたいと思います。心理アセスメント,関連する心理学理論等についても同様です。例えば,心理療法AとBでは, Bの方が公案者の生誕は早くても,当該心理療法を公表した年はAの方が早い,等と言うこともあり得ます。歴史の世界は,マニアックになろうとすればいくらでもなれるのが怖いところです。 時系列,影響,時代背景 10 第15回
評価方法 原則,期末試験の成績のみで評価します。
評価基準 評語
    学習目標をほぼ完全に達成している・・・・・・・・・・・・・ S (100~90点)
    学習目標を相応に達成している・・・・・・・・・・・・・・・ A (89~80点)
    学習目標を相応に達成しているが不十分な点がある・・・・・・ B (79~70点)
    学習目標の最低限は満たしている・・・・・・・・・・・・・・ C (69~60点)
    学習目標の最低限を満たしていない・・・・・・・・・・・・・ D (60点未満)
教科書 特にありません。毎回の文字教材を大事にして下さい。
参考文献 サトウタツヤ 2021 臨床心理学史 東京大学出版会   下山晴彦・佐藤隆夫・本郷一夫(監修) 2020 臨床心理学概論 ミネルヴァ書房
実験・実習・教材費 特別に必要はありません。